漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
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佐野洋子「役にたたない日々」覚書

2011-05-12 | 

60代後半からの5年間(2003-2008)の佐野洋子さんの出来事エッセイ。

佐野さんの言葉は、飾り気がまったくなく、感情を正直に
すごくまっすぐ、隠し事なく書いている。

彼女の日々の出来事の中に感じるさまざまが、痛いほどよくわかる。
自分もそんな年齢に近づきつつあるからだろう。

「バアさんだか男でも女でもない」自分をはばからない。
こうあるべきだと世間で言われる尊敬すべき老人を生きようなんて全然思っていない。
そして堂々と冬ソナにはまり、忘れっぽくなった自分を恐れ、
友人に電話で泣きながら自己嫌悪し、有名人をズバッと切り捨てて表現する。
がんを患い余命一年といわれたとたん、帰りに近所でジャガーを買い、
気持ちは晴れ晴れして長年患っていたうつ病はどかへすっ飛んだ。
(これで認知症になる恐怖から逃れられるということらしい)

納得のいかない事象に対して
「人類は滅びる。人は平等ではない。もしかしたら何の権利も
与えられていないのかもしれない。老人の私は妻夫木君に
にたつきながらほとんど怒り狂っている。
狭い家の中ででれついたり怒り狂えて幸せである。」

笑わずにはいられない。こんなバアさん最悪だよと思いながら心底共感している。
読んでいると元気が湧く。こうやって生きるのが王道かもしれない。

認知症の検査を受けるシーンで、
「「木、犬、電車」覚えててください」と医師に言われて
木のそばに犬が座り遠くに行く電車を眺めている景色を思い浮かべた
-という発想がいいなあと思った。

1938年 北京生まれ--2010年 絵本作家でもある


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