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『恋人たちの食卓』 アン・リー監督 ☆☆☆★
『いつか晴れた日に』の素晴らしさに感嘆し、アン・リー監督の他の映画を観なくてはと思って日本版ブルーレイを入手。英語のタイトルは「Eat Drink Man Woman」で、はるか昔の公開当時、友達が面白いと言っていたような気がするが私は観ていなかった。
しかしまあ、面白いより何より、とにかく旨そうだ。腹が減るったらない。冒頭からいきなり名シェフが中華のご馳走をこしらえる過程がつぶさに映し出される。見とれるほどの包丁さばき、鶏を絞めてすぐ調理するという贅沢、焼く炒める燻すあらゆる調理法のオンパレード。たまらん。とめどなくよだれが出てくる。
と、つかみは抜群のこの映画、その名シェフの三人娘が晩餐に集まった席で、次女の航空会社OLが家を出ると宣言するところから物語はスタートする。気難しい父親は娘みんなに煙たがられている様子だが、気が強い次女とは特に折り合いが悪いのだった。
その後、映画は三人娘それぞれの恋愛話となる。クリスチャンの長女は男嫌いでカタブツで学校の教師、大学時代の大失恋の痛手から男嫌いになったらしいが、そんな彼女の前に爽やかな青年バレーボール教師が現れる。と同時に、誰からか分からないラブレターが毎日届き始める。キャリアウーマンの次女はマンションを買って家を出ようともくろみ、社の重要プロジェクトでやり手と言われる男と一緒に働くことになり、さらに海外赴任の話まで持ち上がる。三女のマクドマルドでバイトする女子大生は、友達のカレが気に入って急接近。が、友達との仲は大丈夫か?
という具合に、三人三様の恋愛模様が繰り広げられる一方で、娘たちとの距離を痛感する父親は、近所の小学生の女の子にゴージャスな中華弁当をこしらえてあげたりしながら、自らの人生について考えをめぐらすのだった。
正直、娘達の恋愛エピソードは昔のトレンディドラマっぽいノリがあってそれほど感心しなかった。あえて言えば、男嫌いの長女のエピソードは意外性があってまあまあ悪くない。しかしこの映画の良さが発揮されるのは、恋愛エピソードが収束し始める終盤からである。コミカル色が濃くなり、人生見かけ通りじゃないしそうそう思った通りには行かないよ、というアイロニーがぐっと表面化してくる。そして、引っ張りに引っ張ったラストの大どんでん返しには大笑い。中盤までは、『いつか晴れた日に』のあの素晴らしさはまぐれだったかと気落ちしていたが、やはりこの監督は伏線の張り方とミスディレクションがうまい。ラストのどんでん返しも、びっくりするけれども思い返せばちゃんと伏線が張ってあることに気づく。
そういうわけで、観終わったあとの満足感はかなり大きいこの映画、やっぱり面白いより何より「旨そう」というのが一番の感想である。
『いつか晴れた日に』の素晴らしさに感嘆し、アン・リー監督の他の映画を観なくてはと思って日本版ブルーレイを入手。英語のタイトルは「Eat Drink Man Woman」で、はるか昔の公開当時、友達が面白いと言っていたような気がするが私は観ていなかった。
しかしまあ、面白いより何より、とにかく旨そうだ。腹が減るったらない。冒頭からいきなり名シェフが中華のご馳走をこしらえる過程がつぶさに映し出される。見とれるほどの包丁さばき、鶏を絞めてすぐ調理するという贅沢、焼く炒める燻すあらゆる調理法のオンパレード。たまらん。とめどなくよだれが出てくる。
と、つかみは抜群のこの映画、その名シェフの三人娘が晩餐に集まった席で、次女の航空会社OLが家を出ると宣言するところから物語はスタートする。気難しい父親は娘みんなに煙たがられている様子だが、気が強い次女とは特に折り合いが悪いのだった。
その後、映画は三人娘それぞれの恋愛話となる。クリスチャンの長女は男嫌いでカタブツで学校の教師、大学時代の大失恋の痛手から男嫌いになったらしいが、そんな彼女の前に爽やかな青年バレーボール教師が現れる。と同時に、誰からか分からないラブレターが毎日届き始める。キャリアウーマンの次女はマンションを買って家を出ようともくろみ、社の重要プロジェクトでやり手と言われる男と一緒に働くことになり、さらに海外赴任の話まで持ち上がる。三女のマクドマルドでバイトする女子大生は、友達のカレが気に入って急接近。が、友達との仲は大丈夫か?
という具合に、三人三様の恋愛模様が繰り広げられる一方で、娘たちとの距離を痛感する父親は、近所の小学生の女の子にゴージャスな中華弁当をこしらえてあげたりしながら、自らの人生について考えをめぐらすのだった。
正直、娘達の恋愛エピソードは昔のトレンディドラマっぽいノリがあってそれほど感心しなかった。あえて言えば、男嫌いの長女のエピソードは意外性があってまあまあ悪くない。しかしこの映画の良さが発揮されるのは、恋愛エピソードが収束し始める終盤からである。コミカル色が濃くなり、人生見かけ通りじゃないしそうそう思った通りには行かないよ、というアイロニーがぐっと表面化してくる。そして、引っ張りに引っ張ったラストの大どんでん返しには大笑い。中盤までは、『いつか晴れた日に』のあの素晴らしさはまぐれだったかと気落ちしていたが、やはりこの監督は伏線の張り方とミスディレクションがうまい。ラストのどんでん返しも、びっくりするけれども思い返せばちゃんと伏線が張ってあることに気づく。
そういうわけで、観終わったあとの満足感はかなり大きいこの映画、やっぱり面白いより何より「旨そう」というのが一番の感想である。
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