崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

脱北者映画鑑賞

2010年08月27日 06時21分51秒 | エッセイ
 昨夜下関映画センター主催の試写会で脱北者を描いた韓国映画『クロッシング』(原題『크로싱』監督:김태균、2008年)を市民会館で鑑賞した。北朝鮮の咸鏡道にある炭鉱町に暮らすヨンス一家。妻のヨンファ、息子のジュニの3人で暮らしていた。ヨンファは肺結核で倒れる。ヨンスは中国に行き薬を購入することを決意し、命懸けで密出国する。中国へ行って働きながら薬を買う金を貯めるが、公安当局の取り締まりを受け、貯めた金をすべて失ってしまう。脱北ブローカーに言われるまま瀋陽に行き、ドイツ領事館に駆け込み、いつの間にか韓国亡命希望者に仕立てられて、そのまま韓国に送られてしまう。
 一方北朝鮮に残されたヨンファの病状は悪化しこの世を去り、ジュニは父の後を追い中国へ行く。ブローカーの手により豆満江を渡ることができ、父と再会するためにモンゴルまで行くが途中で寒さと飢えで死ぬ。
 今話題性のあるドキュメンタリーのような映画である。この映画を以って脱北者人権運動の動きもあるが、映画は「映画」である。脱北者の真実に迫った映画として見る必要はない。貧困な炭鉱から一気に国際化という舞台となるのは映画が強く物語る。政治宣伝臭を排除した作品とはいってもマスコミで見慣れた風景からそのように見えるのは当然であろう。絶望の中で家族のために命賭けで国境を越えた男の家族愛、父との再会を夢に行動する少年の演技に感動した。韓国ドラマの無理なハッピエンディングとは違って、珍しく悲劇的なエンディングであった。愛犬を殺して病弱の妻に食べさせる場面、少年が泣く場面は10歳ころの私の体験でもあった。
 北朝鮮に3回も訪問した私としては見覚えのある風景が多いが、炭鉱や強制収容所は知らない。韓国や中国、あるいは日本のどこかにもこのような死角があるのではないだろうか。日本の虐めや孤独死などもその死角であろう。
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