崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

基調講演

2015年05月20日 04時49分33秒 | 旅行
韓国珍島の国楽院主催の研究大会で基調講演を受諾したが何も考えずにいるうちに演題など提出の締切りがきたという。1968年に全国民俗総合調査の調査員として参加し、伝統的なムーダンの儀礼を見たことから私のシャーマニズムの研究は急転換したことを思い出す。朝鮮半島の南部における被差別の世襲巫の存在、そこから二つの問題に挑戦した。一つは朝鮮半島の南部には海外に開けた比較研究として沖縄のシャーマニズム、ユタとノロへの関心であり、もう一つは被差別の民間信仰のダンゴレに出会ったことである。これは巫俗といえば巫歌中心の研究からの新しい分野へ、歌舞、儀礼、社会生活などの新しい研究を願った。しかしこの二つは当時流行した文化起源論によるものであった。今は異文化や文化交流の研究に繋がっている。今度の研究は巫俗音楽などが主題となっている。巫歌といっても「歌詞」の研究の傾向の強い音楽研究から脱皮して総合的な研究大会になることを期待している。
 講演のために古いスクラップを見ているうちに二点、参考になるものがでた。一つは平成9年日本民俗音楽学会(会長小島美子)の大会で私が基調講演した「韓国側から見た韓日民俗文化の交流:泣きの文化人類学」、もう一つは川村湊氏(法政大学教授・評論)の日本読書新聞の「顔」に紹介され、評価されたことに感謝している。被差別ムーダンの巫歌の音楽がパンソリ起源と無関ではないとは言われていたがこの時実証することができた。それによって一時パンソリの「名唱」を卑としたと私に抗議した人が後に人間文化財になったことはアイロニーであった。今回は何か新しい提言をしたい。

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