崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

温泉

2014年03月29日 06時03分20秒 | エッセイ
 久しぶりに海辺にある温泉に行った。日本では温泉に憧れるようなところがあるが、私はそれほど関心が高くはない。ある人に温泉の湯と普通のお湯とはどう違うかと聞いたら驚いた`表情をしながら薬効などの長説が語られた。日本人は温泉にお湯以上のイメージをもつ文化を育ててきた。温泉文化はお湯、お風呂文化の上に立つ文化である。私が育った子供時代にはお風呂さえなかった。今韓国で多くの日本人がエステ旅行などを楽しんでいるのをみると伝統がなくとも文化生活は急造されるものであるか、と考えている。しかしその楽しみ方やイメージ作りには年月がかかるといえる。
 大衆風呂のような温泉の中に裸の父子の光景が私の視線を引いた。長身の父から落ちた種から芽ばえた子のコンビ、これが命の神秘であろう。遺伝子が続くのである。日本に留学した当初は銭湯のお湯が熱くて火傷をするかと思ったのに幼児をお湯に入れる人を見て、内心怒ったが、その子供に温泉好きの遺伝子が伝わる。遺伝子には変わらないものと変わるものがあるという。伝統も変わりにくいものと変わりやすいものがある。人を広く深く愛するものが遺伝子に含まれるように種まきの季節である。