崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

陰になっていることが嬉しい

2014年03月26日 04時35分29秒 | エッセイ
昨日私の教え子の二人から本が届いた。一人は中国大連理工大学の准教授の孫蓮花、もう一人は富山在住の佐渡龍巳氏である。孫氏は私が広島大学大学院教授の時の学生であった。彼女は中国の長春の大学教員の時私の現地調査の通訳をしてくれたのが縁になって留学をすることになった。私は彼女に社会言語学的な研究を紹介しながら北朝鮮や中国の「偉大な将軍」とか「同志」「トンム(友人)」などの呼称に注目するよう勧めたことがあり、先行研究の英語の論文を一緒に読みながら指導したことがあった。それが博士論文、そして単行本として『多民族国家における言語生活研究 中国朝鮮語の呼称に着目して』 が出版されたのである。そのことは本書の後書きに触れている。
 佐渡氏は防衛大学の出身、自衛隊の軍人、イラク大使館に勤務した経歴の方である。イラクではテロの危機感を持って暮らした体験を生かしてすでに数冊の著書を書いておられ、私の現職の大学で博士号を取得。その論文を基に新書版の『心戦』として出版した。イスラム過激派や原理主義によるテロが大きく報道されながらその本質を分析した研究は少ない。外部からはテロと言われても内部では信仰、愛族、民族運動になっていることにメスを加えるように指導した。彼はテロ防止的な面から考えており、聖書、ユダヤ教やイスラム教などにも関心を注ぐようになった。二人の研究の実りとして出された2冊の著書には私の心も含まれているようで陰になっていることが嬉しい。