崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

「古木には鳥も来ない」

2010年09月18日 05時55分57秒 | エッセイ
 韓国の民謡に「木でも古くなる(古木)といつも来ていた鳥も来ない(남구라도 고목이 되면 오던 새도 아니오고)」という詩句がある。年をとると人間関係も疎遠になるということである。私の恩師がそれを持ってエッセーを書いた。来年米寿になるが、時々私のほうへ電話で「だれだれから何の連絡もない」と不評をいう。耳が遠くなって通話が不便であり、電話するのも難しく思われるが、先生は人からの音信が欲しい。その不評は人への関心であり、愛情であることは十分感ずる。
 高齢者の孤独が社会問題になっている。デーサービスが増えつつある。私の近所にも数箇所ある。覗いてみると集まっていてもただ背向きに孤独に座っている人が多い。人と話すことに不向きであった人が高齢になって変わるわけはない。家内が散歩の時、鳥に餌を上げる老女が言うには人は訪ねてこないのに鳥でも訪ねてくるから嬉しいと。孤独は来ない鳥への思いやり、愛情を深める時間でもある。