崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

奴隷の子孫

2010年03月08日 05時02分11秒 | エッセイ
カリブの国から来た黒人女性のSherese George氏と日本式レストランで昼食をした。彼女は刺身は食べれないというので刺身の入ってないメニュを探したが一つしかなかったのでそれを注文した。鍋物であり、私も初めてのものなので食べ方が分からず2回も店員に聞いた。私もこのような和食があったかなと思った。
 彼女は英語の教師として来られて複数の学校で英語を教えている。彼女の国アンティグア・バーブーダ(Antigua and Barbuda)は二つの島からなっている国家で人口27,000の小さい国であるという。最高の学部が2年制の短期大学しかなく、4年生の大学に進学したい人は国家間協力による総合大学へ行かざるを得ない。アフリカ系黒人が全人口の大部分を占めているという。どうして英語の教師をしているのかと聞いたらイギリスの植民地国家であったので英語はできるからだという。その国は17世紀半ばから1981年独立まで植民であった。
 彼女の祖母は84歳であり、アフリカから奴隷でその島に来られたという。正確には労働動員されてきたという。それをindenture systemといった。私は戦前の日本植民地政府によって朝鮮人の多くが動員された制度をイギリスのそのシステムと関連があると思って調べているのでまさにそのシステムで来られたひとの子孫と話ができたことに嬉しかった。そのシステムとはイギリスが奴隷狩りを止めて作ったものとして彼女は実際は奴隷制そのままと言った。彼女自身は「slave」という奴隷の子孫であることを堂々と語った。私は英語と日本語の対訳の本を薦めた。彼女は我が夫婦の『日韓を生きる』エッセイ集を買ってサインを求めてくれた。2時間以上一緒に英語で話をしたが彼女からは何一つ黒人という劣等感は感じなかった。私は彼女にジェントウマンシップの代わりにジェントルウマン(gentlewoman)、レディシップ(ladyship)という新造語を作って言ってあげた。