・1月4日(水)
年末に比べて年始は時間の流れがほんとうに早いもので、18きっぷを所持している身としてはそろそろ「消化」を考えなければなりません。
そこで思いつくのが手軽な関西近郊ですが、同じところに何度も行くのはなぁ……、そういえば通り過ぎるばかりで降りていないところがあったなぁ……と思い、東海道線・草津線・関西線を乗り継いで三重県へ。
亀山の一駅手前、関で下車しました。
接続が良いので京都からは2時間以内で着くことができます。伊勢や鳥羽へは近鉄で行くのが常套手段ですが、伊賀や亀山へは乗り換え回数が多いもののJRの方が早いですね。
跨線橋に上って列車を見送ります。
今や無用の長物と化した長いホームは、関西本線非電化区間おなじみの風景。しかしキハ120の走る線区にしては本数が多いので、全駅で交換設備が現役なのは嬉しいことです。
さて、駅を出て北に進むと、
東海道五十三次から数えて四十七番目の宿場町として栄えた、関宿の街並みが広がっています。
宿場と言えば個人的には江戸期のイメージが強いのですが(時代劇の影響でしょうか)、現存している建物は江戸後期から明治期のものが中心だそうです。
京町家を見慣れた身としては商家や宿屋が並ぶのは却って新鮮です。このテの保存地区は観光客がよく通る地域の一区画だけという印象があったのですが、適度に生活感もあり、200棟あまりが軒を連ねていてなかなか終わりが見えてこないので退屈しません。
気になったところとしては……
室外機は格子で覆われています。これは京都などでも同様に処理されているところ。
ポストは「書状集箱」と書かれた古風なものでした。
また、電線のない景観が相当長い範囲にわたって続いていますが、維持管理とか大変だろうなぁ……と、余計なことを考えてしまいます。(笑)
家々を眺める視線を少し上へやると、
漆喰彫刻や細工瓦の意匠が。
鶴や亀、龍などの縁起良い動物が配されており、歩く者の目を楽しませてくれます。
滞在時間の1時間はあっという間で、
東を向くと高低差あり、
西を向けば伊賀の山々が聳え立ち、ワンパターンではない景観が飽きを感じさせませんでした。江戸・明治期の建物が中心だとは思いますが、なかには昭和期のスタンダードであろうコンクリート造りや、もと銭湯のようなお宅もあり、旧東海道の歴史を重層的に感じることができました。
それから、急ぎ足で駅へ戻る途中「前田製菓店」さんで1個170円という安さにつられて花びら餅を買いました(京都で買うと倍はします……)。名物は「志ら玉」というお菓子だそうで、こちらは駅でも販売していました。
関からは再び関西本線に乗り、次の亀山で下車。
多くの人が名古屋行きの列車に乗り換えるなか、駅を出てバスに乗り換えます。
とりあえず鈴鹿へ抜けようと思い、三重交通のバスに乗って「みました」。
何の気なしに乗った路線ですが、これが結構な狭隘路線で、亀山駅出発後しばらくは住宅街のなかを周回。
その後は山道や田畑のなかを通り抜け、国道に出るまでは「そこで曲がるのか!」「こんなところを!」の連続で、なかなか楽しめました。
やがて鈴鹿市内に差し掛かりましたが、下調べが不十分だったため(だから乗って「みました」なのですが)、マップアプリを見ると駅から少し離れたところを通っているようで、停留所の間隔も長かったため、気付けば終点の鈴鹿中央病院へ。市街地からはやや外れたところです。
そうは言っても病院なので、待機しているタクシーに乗れば何とかなるのですが、
院内にあった時刻表を見ると、わずか5分後に鈴鹿市駅行きのバスが来ることが判明!
僥倖と言えば大げさかもしれませんが、まるで「ローカル路線バスの旅」です。(笑) 下調べなしに接続があることが分かると嬉しいものですね。
目的地は伊勢鉄道の鈴鹿駅ですが、どうやらバスは乗り入れていないようで、近くの近鉄鈴鹿市駅で降りました(恥ずかしながら近鉄鈴鹿線なる路線があることを初めて知りました。支線には疎いです……)。
鈴鹿市駅はファミリーマートに駅業務が委託されており、レジと改札が繋がっている珍しい駅です。自動改札ですから「店員さん」の出番は少ないのかもしれませんが、やはり鉄道ファンの店員さんは重宝されるのでしょうか?(笑)
それから、線路沿いに歩いて伊勢鉄道の鈴鹿駅へ。
正月飾りと新年の挨拶が掲げられていました。
駅員さんの手によるものと思いますが、殺風景な高架駅にも温もりを感じます。
四日市へ向かう伊勢鉄道と、伊勢若松へ向かう近鉄鈴鹿線の列車。
伊勢鉄道が少し遅れていたのでタイミングよくクロスしてくれました。設定をミスしたので流れてしまいましたが、こちらの方がむしろ交差している雰囲気が出ているでしょうか。
快速「みえ」は2両編成。
増結4連を期待しましたが、一応4日は平日なので解除されているようです。ちらっと見えた車内は、指定席と自由席で倍ほど乗車率が違いました。
撮影を終え、特急「南紀6号」に乗車します。こちらは増結6連ですが、自由席車は先頭の1両のみ。
案の定デッキで立ちっぱなしを強いられましたが、通路越しに「ワイドビュー」の前面展望が見えたので退屈しませんでした。
乗車券・特急券は鈴鹿駅で購入した硬券。収集を兼ねての実使用です。
伊勢鉄道は短距離ながらもJR乗り入れ・新幹線連絡の快速・特急が走っているので、硬券・常備券・補充券の類が豊富に設備されています。入場券も買えばよかったかな……。
小一時間で名古屋に到着した後は、地下鉄で栄へ。
名古屋と言えば今まで名古屋城と熱田神宮と徳川美術館しか訪れたことがなかったのですが、名古屋の中心部に初めて足を踏み入れました。
向かった先は、愛知県美術館の「ゴッホとゴーギャン展」。
共同生活をおこなっていた両者の作品を時期ごとに分けての展示でした。ゴッホと言えばひまわりですが、後年、ゴーギャンもひまわりを描いた作品を残しています。最後は喧嘩別れに終わり、ゴッホは自らの耳を切り落とすきっかけとなってしまった3か月間でしたが、ゴーギャンにとってはかつてないほどに刺激を受けた忘れられない時期だったのかもしれません。
また、一部の絵画では低い位置に子ども向けのキャプションが設けられており、却ってそちらの方が分かりやすかったり。(笑) そうしたこともあってか、親子連れの姿も多く見受けられました。私などは「南紀」車内で美術館の一覧を調べた際に「ゴッホ」の名につられてこの展示に行こうと思い立ったのですが、ネームバリューというフィルターを通していない時期に、純粋な気持ちで作品に接することができるのは、ある意味で幸せなことだと思います。
美術館を出るとすっかり陽も暮れていたので、名古屋駅に戻ります。
帰路につく前に、数年ぶりに名古屋駅ホーム端の「名代きしめん」へ。
甘みのあるつゆに鰹節の風味が効いているのは変わりません。すっかり温まりました。
名古屋からは岐阜・大垣・米原と乗り継いで京都へ。
関西から18きっぷで気軽に行くことのできる名古屋ですが、その道中にはまだまだおもしろいところがありそうです。特に三重県は京都府と接していながらあまり身近ではないので、今後もいろいろと訪れてみたいですね。