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ストロスカーン前IMF専務理事逮捕の裏側

2011年07月03日 18時07分08秒 | 外交問題
当初から陰謀説が広く語られていたようですが、今もって謎に包まれています。これからも解明されることはないでしょうが、陰謀説好き(愚)の拙ブログとしては、ここで妄想を披露しないわけにはいきますまい(笑)。
ついつい首を突っ込んでしまって、黙って見てられない性分ということで、通例の如く私見を書いておきます。


参考までに諸説あるようです
>http://www.47news.jp/47topics/premium/e/212388.php
>http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110703-00000066-san-int

さて、私の直感では、通貨戦争とも言うべき、基軸通貨体制を巡る争いだったのではないか、というものです。今もって解決には向かっていませんが、米国債のデフォルト問題は燻り続けています。議会はまだまだ反対姿勢を崩しておらず、債務上限引き上げができなければ、米国の資金調達はどうなってしまうのか、米国債のデフォルトは起こるのか、不安は払拭されたわけではありません。

日本は大震災後ですので、それどころではなかったでしょう。米国としても、かつてのように、日本に対して「もっと米国債を買え」といった圧力はかけ難くなっているでしょう。そうなると、米国債の買い主体は、中国やドルペッグ採用国―主だった国々は産油国でしょう―ということになり、それらの国々がドルを買い支えるよりない、ということを意味します。
米国の金融政策上ではドルを供給するよりなく、これによって諸外国にインフレを輸出しているようなことになっているものと思われます。原油価格上昇は、そうした影響を受けてしまっているでしょう。相対的なドル安基調となってしまいますから、結果的に産油国にとっては原油価格上昇で補うよりない、ということになると思われます。

今回のストロスカーン専務理事逮捕事件は、米国サイドの反感や強い拒否の意思を示したものと思われます。それは、サルコジ大統領が旗振りをしていた通貨改革に対して、ということになるかと思います。今年のサミットはフランスが議長国で、サルコジ大統領は議題として為替問題(通貨改革)とIMF改革を呼び掛けるとの報道が3月のロイター記事(http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-20356820110331)などで散見されていました。
これに加えて、ストロスカーン専務理事がやはり「人民元のSDR加入」に端を発して基軸通貨改革などの意向を示していたことから、この両者が外交的に本気で取り組んだ場合には、それなりの成果が得られる可能性があったかもしれません。次回の会合日程などが本格的に議論されて、新興国を取り込んだ通貨改革のテーブルが出来上がってしまう、といったような事態を恐れたものと思われます。こうした機運が高まれば、仏単独ではなく中国が当然これに加わることを意味するので、米国としてはこの対抗手段を失いかねない、と危惧したとしても不思議ではありません。

今年初めの一部報道などでは、フランスと中国が通貨改革に関し秘密会合を持った、という観測記事が流れたりしていました(当事国の仏中は否定していたはず)から、米国はフランスや中国の動きに対して、かなりの警戒心を持っていたはずです。牽制はストロスカーン逮捕事件以前から始まっていました。

これに関連する動きとしては、ルノー日産幹部の中国への「情報漏洩事件の捏造事件」というのがありました。
トヨタ・バッシングがどうやら情報操作の動きによる産物である、ということが知られるようになったことと、フランスへのプレッシャーを与える、という点においては、これも意味のあるものでした。「情報を漏洩した」という事件そのものが、どうやら捏造であった、ということらしいので、不可解な事件だったのです。
仏中接近への警告(脅し)としての効果もあったかもしれません。ルノーすなわち仏への反感を煽るにはいいネタ、ということを考えて、事件を生みだしたのかもしれません。ゴーンさんも「確たる証拠がある」と言っていた割には、その後に事件そのものが捏造だったようだ、ということになってしまったわけです。

(ちょっと寄り道:分かる人だけ読んでくれればいいです。
用意された事件というのは、どこか飛びつき難い部分というのが何となくあるものなのです。ブログ記事に書こうかとも思いましたが、当時は黙って見ていました。多分、過去記事の分析なんかで「ゴーン流」のやり方には反感や不満を抱いているのだろうな、という推測ができたのでしょう。米国内の自動車会社をターゲットに選ぶのはいかにもわざとらしい(それに米国内企業だから困るし)とも考えたでしょうから、ルノーを選択したというのは妥当だったのかもしれません。が、まだまだだね(笑))。


今度は、もう少し考えました。
万が一、ストロスカーンがサルコジに勝って大統領になってしまった場合、どういう方向に進むだろうか?サルコジかストロスカーンを選べと言われたら、どちらも通貨改革の旗振り役ではあるかもしれないが、最悪を選ぶよりは、ちょっと悪いくらいの方を選ぶべきなのではないか、と。悪いニュースと最悪のニュース、どちらがいいか、みたいなものです。

よって、フランス国内政治の面ではサルコジを支援することになってしまうとしても、とりあえずストロスカーンを撃て、ということになったのかもしれません。もっと切羽詰まった感じで、サミットの前に両輪(サルコジとストロスカーン、国際政治の舞台とIMF)が揃っていること自体が回避せねばならない、ということだったのかもしれません。

こうして、サミットは過ぎ去ってしまい、通貨改革問題はさしたる議題とはならずに済みました。サミットであまり取り上げられたくなかったテーマとしては、米国の立場とすれば、最大は基軸通貨のドルと米国債問題、次が原発事故問題、ということだったのでは。原発に関しては、米仏は推進派だったことで歩調が揃い易かったでしょうが、通貨問題とIMF改革は触れて欲しくない話でした。専務理事逮捕は直前の、絶妙のタイミングで行われたのでした。

その後、ギリシャ危機を再三再四取り上げ、ドルと米国債の問題から目を逸らせることに成功しました。ギリシャの問題は、以前にも書きましたけれども、日本で言えば都道府県レベルの小さな話であり、ユーロ圏の経済危機をもたらす程の話ではないでしょう。
もう一つ、ヒラリー・クリントンの世銀総裁の噂話、というのがありましたね。あれも恐らくはIMFへの牽制球ということで、専務理事後任人事に絡む外交上の権謀術策の産物ではないかと推測しています。米仏の妥協点が、ストロスカーン放免、後任人事には仏側の人材を充てるが米側の意見も聞いてくれる人、というようなことでは。米国が「世銀に肩入れするぞ」というのを取り下げた、ということもあるかもしれません。
仏大統領選に絡む謀略説というのが独り歩きしてくれると、サルコジが悪者になるだけで、米国は傷まない。これも有利に働く、と。

こうして、米仏の丁々発止の暗闘は、一段落となったということでは。
日本なんかと違い、仏は昔からの外交大国ですからね。一筋縄ではいきませんよ、ということではないかな、と。