電脳筆写『 心超臨界 』

ものごとの意味するところはそれ自体にあるのではなく
そのことに対する自分の心構えにあるのだ
( サンテグジュペリ )

日本史 古代編 《 藤原氏の節度とは――渡部昇一 》

2024-09-05 | 04-歴史・文化・社会
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皇室との関係が深かった藤原氏の者はいくらもいるが、いずれも自分が天皇になろうとはしない。息子をならせようともしない。つねに孫を天皇にしようとするのである。このことが、藤原氏があれほど栄華を極めたけれども、亡びず今日に至っている理由なのかもしれない。


『日本史から見た日本人 古代編』
( 渡部昇一、祥伝社 (2000/04)、p239 )
3章 平安朝――女性文化の確立
――日本における「成熟社会」の典型は、ここにある
(1) 和歌に見る文化的洗練の達成

◆藤原氏の節度とは

このように見ると、不比等・三千代夫妻は、きわめて悪辣(あくらつ)みたいだけれども、重要なところで節度を守っていた。つまり自分が皇位に即(つ)こうという野心が、まったくなかったのである。

蘇我入鹿(そがのいるか)や恵美押勝(えみのおしかつ)が亡(ほろ)びたのは、自分が皇位に即こうという野心を示したからであり、道鏡の失敗も、まったく同じ原因であった。藤原氏は、鎌足も不比等も、平安朝になってからの有力者も、誰一人として自分が皇位に即こうとした者はいない。

たとえば藤原氏の最盛期を作った藤原道長(みちなが)は、

  此の世をば わが世とぞ思ふ 望月(もちづき)の 欠けたることも 無しと思へば

という歌を作ったので有名である。

彼の後宮政策は、まことに素晴らしい。

その娘彰子(しょうし)は一条(いちじょう)天皇(第六十六代)に嫁し、後一条(ごいちじょう)天皇(第六十八代)と後朱雀(ごすざく)天皇(第六十九代)を産み、次の娘の妍子(けんし)は三条(さんじょう)天皇(第六十七代)に、次の娘の威子(いし)は後一条天皇に嫁し、また別の娘の嬉子(きし)は後朱雀天皇との間に後冷泉(ごれいぜん)天皇(第七十代)を産むという具合であった。

それであるから、一時期には、彼の長女彰子が太皇太后(たいこうたいごう)、次女妍子が皇太后に、三女威子が中宮(ちゅうぐう)になるという、まことに前代にも後代にも、おそらく世界じゅうのどこをさがしてもない閨閥(けいばつ)を作り上げた。自分の長女の息子(孫)に別の娘が嫁し、そしてそれに……というふうに重なっていくのである。

しかしここでも道長は、自分が皇位に即く気はさらさらないのである。道長ほど濃厚でなくても、皇室との関係が深かった藤原氏の者はいくらもいるが、いずれも自分が天皇になろうとはしない。息子をならせようともしない。つねに孫を天皇にしようとするのである。このことが、藤原氏があれほど栄華を極めたけれども、亡びず今日に至っている理由なのかもしれない。

そして面白いことには、こういうふうにして出来た天皇は、あんがい藤原氏の専横(せんおう)を快く思わなかったりするのである。天皇の位に即かれると、血の繋(つな)がりで律し切れぬ別の意識が生ずるものらしい。それはずっと昔、蘇我氏の娘からお生まれになった崇峻(すしゅん)天皇(第三十二代)が、蘇我氏の権力を憎むというような例にも見られたことであった。
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