電脳筆写の記事の中からこれはと思うものを メルマガ『心超臨界』
にて配信しています。是非一度お立ち寄りください。
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★玉虫色の米朝合意をどう読むか――西岡力・モラロジー研究所教授/麗澤大学客員教授
【「正論」産経新聞 H30.06.14 】https://tinyurl.com/ybdxaeel
★「トランプ外交」は危機の叫びだ――西尾幹二・評論家
【「正論」産経新聞 H30.06.08 】https://tinyurl.com/ybg67og3
★全国民監視システムの恐怖――石平さんhttps://tinyurl.com/y7oa9rz4
【「石平のChina Watch」産経新聞 H30.05.31 】
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●歴史用語を減らす動き(2) 狙いは何だったのか
正論SP vol.3『産経教育委員会100の提言』https://tinyurl.com/yag2fb4p
【 産業経済新聞社、2018年05月、p256 】
高大連携歴史教育研究会の提言案の問題点を、以下、4点にわたってのべます。
第1は、人物用語について、「維新の志士」の代表的な人物である、吉田松陰、坂本龍馬、高杉晋作がごっそりとセットで消されているという問題です。
これは要するに、幕末の危機の中で日本の独立と尊厳を守るためにたたかって明治維新を成し遂げた、という肯定的な明治維新観を否定し、生きた歴史としての明治維新を語れなくしようとするものです。
この提言では、歴史用語問題の形式をとって、実質的に昔の古色蒼然とした左翼史観に引き戻そうとする、左翼歴史学界・歴史教育会の止みがたい衝動がむしろ赤裸々に表明されている、といえます。
第2に、提言では、「人名はできる限り削減する方向とする」という方針を掲げています。しかし、なぜそうするのか説明はありません。歴史から人名を削っていけば、当然、「人間のいない歴史」が出現します。
人名にかわって重視されているのが、歴史の時代全体を捉える体制概念や、それに連なる人名外の歴史用語です。次のような言葉が、歴史教科書に必ず書くべき事項として提案されています。
〈天皇制(近現代の)、教育勅語、アジア・太平洋戦争(大東亜戦争、太平洋戦争)、ファシズム、軍国主義、皇国史観、日中15年戦争、南京大虐殺、従軍慰安婦、「逆コース」、基地反対闘争、ベトナム反戦運動、非正規労働者、格差社会、排外主義的ナショナリズム、歴史認識・教科書問題、戦時性暴力、賠償(戦争、災害など)、平和運動、ジェンダー主流化、家父長制〉(産経新聞調べ)
もはや、この提言グループのイデオロギー的偏向は明白です。
◆思考には語彙力が前提
第3に、このような歴史用語の規制は高校の歴史教科書にとどまらず、大学の入学試験についても同様に適用されるという問題です。報告書では、歴史用語増大の原因として、大学入試で教科書に出ていない細かい事実を問うような問題が出される傾向があり、その事項が次の改訂の際に教科書に追加されるというメカニズムがあると説明されています。
こうなると、高校教科書における収録用語膨張傾向の問題に対処するためには、高校の歴史教科書だけを見ていてもダメで、用語の精選は教科書だけでなく、大学入試の出題用語の精選と並行して行う必要があるということになります。「高大連携」という団体名はこのことを反映しています。
第4に、「歴史用語を減らせば、考える授業ができる」という命題が正しいかどうかとう根本問題があります。用語を減らせば考える授業ができるという議論は、言葉と思考の関係についての、倒錯した前提から成り立っています。
当然のことながら、豊かな思考のためには、豊富な語彙が必要なのです。歴史を語るための語彙を減らせば生徒は考えるようになるというならば、いっそのこと、全部の時間を「考える授業」に充ててみたらどうなるか、という思考実験をしてみるとよいでしょう。そういうことは不可能であることがわかるはずです。
最後に、今回の動きを主導している人物にふれておきます。高大連携歴史教育研究会の会長・油井大三郎氏です。
油井氏はその著書『未完の占領改革』(1989年)で、占領軍の日本国家解体が不徹底であったと批判している学者です。このような人が文部科学行政に影響力をもっていることは、深刻な事態であるというべきです。
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★玉虫色の米朝合意をどう読むか――西岡力・モラロジー研究所教授/麗澤大学客員教授
【「正論」産経新聞 H30.06.14 】https://tinyurl.com/ybdxaeel
★「トランプ外交」は危機の叫びだ――西尾幹二・評論家
【「正論」産経新聞 H30.06.08 】https://tinyurl.com/ybg67og3
★全国民監視システムの恐怖――石平さんhttps://tinyurl.com/y7oa9rz4
【「石平のChina Watch」産経新聞 H30.05.31 】
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●歴史用語を減らす動き(2) 狙いは何だったのか
正論SP vol.3『産経教育委員会100の提言』https://tinyurl.com/yag2fb4p
【 産業経済新聞社、2018年05月、p256 】
高大連携歴史教育研究会の提言案の問題点を、以下、4点にわたってのべます。
第1は、人物用語について、「維新の志士」の代表的な人物である、吉田松陰、坂本龍馬、高杉晋作がごっそりとセットで消されているという問題です。
これは要するに、幕末の危機の中で日本の独立と尊厳を守るためにたたかって明治維新を成し遂げた、という肯定的な明治維新観を否定し、生きた歴史としての明治維新を語れなくしようとするものです。
この提言では、歴史用語問題の形式をとって、実質的に昔の古色蒼然とした左翼史観に引き戻そうとする、左翼歴史学界・歴史教育会の止みがたい衝動がむしろ赤裸々に表明されている、といえます。
第2に、提言では、「人名はできる限り削減する方向とする」という方針を掲げています。しかし、なぜそうするのか説明はありません。歴史から人名を削っていけば、当然、「人間のいない歴史」が出現します。
人名にかわって重視されているのが、歴史の時代全体を捉える体制概念や、それに連なる人名外の歴史用語です。次のような言葉が、歴史教科書に必ず書くべき事項として提案されています。
〈天皇制(近現代の)、教育勅語、アジア・太平洋戦争(大東亜戦争、太平洋戦争)、ファシズム、軍国主義、皇国史観、日中15年戦争、南京大虐殺、従軍慰安婦、「逆コース」、基地反対闘争、ベトナム反戦運動、非正規労働者、格差社会、排外主義的ナショナリズム、歴史認識・教科書問題、戦時性暴力、賠償(戦争、災害など)、平和運動、ジェンダー主流化、家父長制〉(産経新聞調べ)
もはや、この提言グループのイデオロギー的偏向は明白です。
◆思考には語彙力が前提
第3に、このような歴史用語の規制は高校の歴史教科書にとどまらず、大学の入学試験についても同様に適用されるという問題です。報告書では、歴史用語増大の原因として、大学入試で教科書に出ていない細かい事実を問うような問題が出される傾向があり、その事項が次の改訂の際に教科書に追加されるというメカニズムがあると説明されています。
こうなると、高校教科書における収録用語膨張傾向の問題に対処するためには、高校の歴史教科書だけを見ていてもダメで、用語の精選は教科書だけでなく、大学入試の出題用語の精選と並行して行う必要があるということになります。「高大連携」という団体名はこのことを反映しています。
第4に、「歴史用語を減らせば、考える授業ができる」という命題が正しいかどうかとう根本問題があります。用語を減らせば考える授業ができるという議論は、言葉と思考の関係についての、倒錯した前提から成り立っています。
当然のことながら、豊かな思考のためには、豊富な語彙が必要なのです。歴史を語るための語彙を減らせば生徒は考えるようになるというならば、いっそのこと、全部の時間を「考える授業」に充ててみたらどうなるか、という思考実験をしてみるとよいでしょう。そういうことは不可能であることがわかるはずです。
最後に、今回の動きを主導している人物にふれておきます。高大連携歴史教育研究会の会長・油井大三郎氏です。
油井氏はその著書『未完の占領改革』(1989年)で、占領軍の日本国家解体が不徹底であったと批判している学者です。このような人が文部科学行政に影響力をもっていることは、深刻な事態であるというべきです。