電脳筆写『 心超臨界 』

人の長所はその人の特別な功績ではなく
日頃の習慣によって評価されなければならない
( パスカル )

不都合な真実 《 松井やよりの記事の不審点——長谷川煕 》

2024-10-03 | 04-歴史・文化・社会
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そう願う心が臨界質量を超えるとき、思いは実現する
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記者の活動はさまざまである。取材したことを分析し、考え、問題点を見つけて一つの記事に仕上げることもあるし、発表文をそのまま正確に報じることもあるし、この元韓国人慰安婦に関する記事のように、相手の言ったことをうまくまとめて伝えることもある。あるいは評論も随筆もある。しかし、取材の相手によっては、その人が言うことに不審、疑問を感じ、質問し、それでも納得いかなかったら書かないという選択肢はある。


『崩壊 朝日新聞』
( 長谷川煕、ワック (2015/12/22)、p98 )

1981年(昭和56年)から85年(昭和60年)にかけて松井がアジア総局員としてシンガポールに駐在していたことはすでに見た。従って、吉田清治の講演を大きく取り上げた82年の大阪本社発行の紙面から始まる80年代前半の朝日新聞社の吉田証言報道のことは知らなかったか、仮にアジア総局で読んでいたとしても、それらの記事とは無関係だったろう。

しかし、日本に戻る半年ほど前の84年(昭和59年)11月2日付の朝日新聞夕刊に彼女がタイ南部に住む63歳の元韓国人慰安婦のことをシンガポール発で書いた記事は、前章で取り上げたマレーシア関係のそれと同じく、その粗雑さに驚かされる。

  「ある日、釜山(プサン)郊外で井戸の水を水がめにくんで頭に載せ
  て帰ろうとしたら、日本人巡査が3、4人来た。『待て』と言われ
  て身をかわした瞬間、水がめが落ちて割れ、巡査の服をぬらした。
  いくら謝っても許してもらえず、殴られたり、けられたりしたうえ、
  車の中に押し込まれた。それが人生の岐路となった。留置された部
  屋には若い女性がいっぱいだった。10日後に6人がダブダブの軍
  服を着せられ、『皇国使節団』として軍艦に乗せられた。1942
  年の秋だった。40日間の航海のあと『昭南島』と呼ばれたシンガ
  ポールに着いた。(略)挺身隊員としての地獄の日々が始まった」

記者の活動はさまざまである。取材したことを分析し、考え、問題点を見つけて一つの記事に仕上げることもあるし、発表文をそのまま正確に報じることもあるし、この元韓国人慰安婦に関する記事のように、相手の言ったことをうまくまとめて伝えることもある。あるいは評論も随筆もある。

しかし、取材の相手によっては、その人が言うことに不審、疑問を感じ、質問し、それでも納得いかなかったら書かないという選択肢はある。疑問を感じるか否か、どれだけその疑問を消せるか、疑問が膨らむかはその記者次第だろう。吉田清治の例で言えば、疑問だらけである。多少とも戦前戦中に知識があり、勘も働けば、彼の発言をそのまま事実として書くことはありえない。

タイ南部のこの元韓国人慰安婦に関する松井の記事も、やはり呑み込めない。紙面に出ている文面が彼女が送った全てかどうかは不明だ。紙面の都合その他で削られているかもしれない。文章をいじられたり、何らかの手を加えられているか否かも分からない。あくまで紙上の文面にもとづいての疑問だが、吉田清治の虚偽証言が、西部軍の命令によるという官憲の大量の女性狩りだったのに対し、これは、個々の巡査による宗数の女性狩りだ。

いずれも慰安婦にするのが目的というわけだが、松井やよりのこの記事も全く不可解だ。

その出来事は戦中の1942年(昭和17年)のことと書かれている。文献(ブランドン・パーマー著『検証 日本統治下朝鮮の戦時動員 1937~1945』)によれば、1943年時点の朝鮮警察官の3分の2は日本出身なので、記事の「日本人巡査」という表現それ自体はおかしくない。しかし、巡査の服が濡れたとしても、誤って水がめを落としたためで、その女性は謝ってもいる。それでも何人もの「日本人巡査」が寄ってたかって乱暴狼藉を一人の女性に働くものだろうか。
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