電脳筆写『 心超臨界 』

一般に外交では紛争は解決しない
戦争が終るのは平和のプロセスとしてではなく
一方が降伏するからである
D・パイプス

不都合な真実 《 アメリカの倦怠論――西尾幹二 》

2024-08-07 | 05-真相・背景・経緯
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アメリカ政府が日本を守る理由を次第に見失いつつあるということが、最近の新しい厄介な情勢の変化である。約30年ほど前までは日本の潜在的軍事力にアメリカは脅威を覚えていた。約20年ほど前には日本の技術力と経済力とに脅威を抱いていた。脅威のある間は日本を守ると称して、日本を抑制しておく必要があった。しかし今は守る必要も、抑止しておく必要も感じなくなった。中国への警戒心だけが日本を守る唯一の理由らしい理由である。しかもそれすらもこれからは変化する可能性がある。いつまでも今の状態が続くわけではない。


◆アメリカの「倦怠論」

『日本の希望』
( 西尾幹二、徳間書店 (2021/11/19)、p162 )

最大の問題は日本の保守政権と称する政治権力の中身である。こんなことがあった。

北朝鮮のテポドンが列島を越えて三陸沖に落ちたとき、あれは人工衛星の打ち上げ失敗だという北の公式発表があり、日本の国民は誰ひとり信じなかったが政府は違った。野中広務官房長官(当時)は対北抗議文を大まじめに読み上げ、コメ支援などの北朝鮮支援の見直しなどを決めたものの、制裁措置はチャーター便の中止くらいしか実現せず、追加制裁案はなかったことにして抑えられた。北朝鮮の人工衛星説に取りすがったのである。

このままでいくと、かりにミサイルが日本国内のどこかに着弾し、死傷者が出たとしても、北朝鮮政府があれは事故であった、申し訳ないと一言いえば、日本政府は安堵し、自衛隊に対し、防衛出動も治安出動も発することなく、災害派遣を要請するにとどめるであろう。そういう可能性が憂慮されるのである。否、北朝鮮政府がかりに謝罪しないでも、日本は「戦争ではない」ということにするためのありとあらゆる法的詭弁を繰り広げるはずである。今までそういうシーンを何度も見て来ている。自民党政府の性根が見える救いがたい場面である。

戦争であると認めれば日本は反撃しなければならない。しかし米軍がいる限り日本が先に反撃はできないし、その用意もない。だが着弾が一度ではなく、戦争を仕掛けられていると常識的にみとめざるを得ないほどに立ち至った場合を考えてみよう。当然、日米安保条約が発動する。アメリカは報復しようとするだろう。問題はそのときである。アメリカは日本が戦争をやる意志があるかどうかの最終確認を求めるであろう。運命の岐(わか)れ目はそのときである。国際社会のルールに従って戦争に踏み切れば、この国は生き延びられる。万が一、時の首相がアメリカに一寸(ちょっと)待ってくれ、とためらいを見せたら、それが「日本がアメリカから見捨てられる日」になるに相違ない。

日本がアメリカから見捨てられるというこのことの意味は、日本列島がアメリカ軍にほどなく「再占領」されるということである。東日本大震災時の無政府状態に陥ったときの列島のあの太平洋に頼りなく浮いている漂流国家の姿を思い出していただきたい。あのような状態が再来する可能性がある。しかも軍事的緊張の下にこのことが起こる。アメリカが東アジア全域をこういう場合に管理経営する権能を与えられていることを国際社会は暗黙のうちに認めている。そのための日米安保条約でもある。残念ながらこれが現実である。

アメリカは中国やロシアに対抗する要衝の地として日本列島を手放す気はない。アメリカにとっては事実上の最前線である。もし日本のマスコミや野党が妨害し、日本政府がフラフラしているなら、アメリカは躊躇(ちゅうちょ)せず、日本国憲法を停止するであろう。明日起こるというのではない。日本人が呆然とした無意志状態でいたら、そういうことも起こり得ると言っているのである。野中広務氏が官房長官であったテポドン三陸沖落下事件の折の、あの人口衛星説に取りすがった自民党首脳のあの体たらくぶりが、いよいよのときにまたまた起こらないという保証はない。私は日本政治の権力中枢をまったく信用していない。

私や日本人の一部が不信感を抱いているというだけならたいしたことではないが、私の見る限りアメリカ政府が日本を守る理由を次第に見失いつつあるということが、最近の新しい厄介な情勢の変化である。約30年ほど前までは日本の潜在的軍事力にアメリカは脅威を覚えていた。約20年ほど前には日本の技術力と経済力とに脅威を抱いていた。脅威のある間は日本を守ると称して、日本を抑制しておく必要があった。しかし今は守る必要も、抑止しておく必要も感じなくなった。中国への警戒心だけが日本を守る唯一の理由らしい理由である。しかもそれすらもこれからは変化する可能性がある。いつまでも今の状態が続くわけではない。

簡単にいえばアメリカは日本を守ることに今や少し飽きてきている。冒頭に取り上げた G20大阪会議直前のトランプ大統領の発言は、日米安保に対する否定論ではなく「倦怠論」なのである。アメリカは安い値段と小さな努力で日本を継続的に抑えておくことができるなら本当はそうしたい。しかし金はかかるし、血は流したくない。日本がアメリカの意に添うた国家として起(た)ち上がってくれるなら、ある程度の自由は任せても良い。とそこまではたぶん考えているだろう。しかし日本人の心は読めない。日本人は自分で起ち上がると口で言うので待っていたが、いつまで待っても起ち上がらない。潜在的な日本の軍事脅威を警戒していた時代がかえってなつかしいくらいだ、とたぶん今のアメリカ政府の要人は自分の矛盾した感情に戸惑っているだろう。
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