孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

キプロス  再統合へ向けて、小さな島国の大きな試み

2008-03-23 11:53:23 | 国際情勢
エーゲ海の小さな島国“キプロス”、鹿児島県ほどの大きさ。
1960年イギリスから独立しましたが、ギリシャ系住民とトルコ系住民の反目、ギリシャ・トルコの介入により、現在は島の北側3分の1がトルコ系の北キプロス・トルコ共和国(承認はトルコのみ)、南側の残り3分の2がギリシャ系のキプロス共和国(EU加盟)と、分断された状態がここ34年続いていました。

2月18日のブログ(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080218)で、ここにいたる簡単な経緯、そして2月17日に行われた南のキプロス共和国大統領選挙で、北キプロスとの統合に慎重な現職のパパドプロス大統領が激戦の末、3位で敗退したこと、決選投票に残った2候補はいずれも統合推進派であることから今後南北の“再統合”への動きが加速することが期待されることを取り上げました。

その後、2月24日に行われた大統領選決選投票で、左派・労働人民進歩党のフリストフィアス党首が右派のカスリデス欧州議会議員を破り当選しました。
決選投票の得票率はフリストフィアス党首が53.37%で、カスリデス氏は46.63%でした。
労働人民進歩党はキプロス共産党を前身とする左派政党で、フリストフィアス新大統領は北側の政治家と親交があり、選挙では「対話の架け橋になる」と公約していました。

今月21日、キプロス共和国(ギリシャ系)のフリストフィアス大統領と、北キプロス・トルコ共和国(トルコ系)のタラト大統領の最初の会談が、島中心部の国連管理下の緩衝地帯で実現しました。
両大統領は会談後、「双方の作業部会が準備を進めた上で三カ月後に再び会談し、国連事務総長の監視の下で交渉を開始する」との共同声明を発表。
また、両国間の往来を活発化させるため、境界線によって分断された首都ニコシア市中心部の主要道路に、新たに通過ポイント一カ所を設けることに合意しました。【3月22日 東京】

経済的に低迷しており南との格差が大きい北キプロス側は、国際的に孤立している現状もあって、南側との交渉にはメリットが大きいと推察されます。
問題は南側の今後の対応です。
04年、当時のアナン国連事務総長が示した調停案に関し、統合の是非を問う南北同時住民投票が実施されましたが、反対多数(76%)で否決した経緯があります。(北側は賛成65%)

調停案が北側トルコ系に有利な内容だったこともありますが、経済水準が格段に落ちる北側とは今更一緒になりたくないという事情、内戦で肉親を殺されたことへの遺恨、更にキリスト教とイスラム教という相容れ難い文化の違いが背景にあります。
フリストフィアス大統領は、再統合に向けた環境整備を慎重に進めたい考えのようです。

すんなりと再統合へ・・・という訳にはいかないようですが、南側も「我々は『失敗』に向かっているのではない。何度でも協議する」と対話姿勢を強調しているそうで、今後の粘り強い交渉が期待されます。
民族・宗教の違いから抗争・分離に向かう話ばかりの近年の世界情勢にあって、異なる民族・宗教の両者が共存に向けて合意を形勢できるとすれば、小さな島国ではありますが、大きなメッセージを世界に発信できるのではないかと思います。

コメント (1)
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