孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

新型コロナによる自宅での自粛の家庭生活への影響  離婚増加やDV増加のニュースも

2020-03-31 23:06:44 | 疾病・保健衛生

(外出禁止令後に道路脇の芝生で運動する人々【3月31日 文春オンライン】)

【家事への男性の参加を促す効果は?】
新型コロナウイルス感染に関しては、世界各地から山のような情報(その多くは悲惨なものですが)が伝えられており、日本でも緊急事態宣言の現実味が大きくなっているような状況です。

新型コロナは各国の経済・政治、国際関係、働き方や追跡監視における個人情報など社会的な問題など、幅広い影響をもたらしていますが、家庭生活にも影響が。

****パナマ、外出認める曜日を男女別に指定 新型ウイルス対策を強化****
中米パナマ政府は30日、新型コロナウイルスの拡散抑制を目指して外出制限を強化し、外出を認める曜日を男女別に分ける措置を発表した。
 
これまでの外出制限では、性別による規制は設けられていなかったが、4月1日からは、男性と女性がそれぞれ異なる曜日に、一度に2時間までに限って外出が認められるという。
 
男性がスーパーマーケットか薬局に行けるのは、火・木・土曜日で、女性の外出が許されるのは月・水・金曜日となる。日曜日は男女ともに外出禁止で、この新たな措置は15日間継続される。
 
パナマで新型ウイルスの感染症例が最初に報告されたのは今月10日。以後27人が死亡した。感染が確認されたのは1075人で、うち43人が集中治療を受けている。 【3月31日 AFP】
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パナマの家庭内における男女の役割分担がどのようになっているのかは知りませんが、日本でこれを実施すれば、とかく女性に任せられてきた家事の男女分担が少し進むのでは・・・と感じた次第です。・・・・甘いかな? 世の奥様方からのブーイングが聞こえそうですね。下手に手を出されるとかえって面倒ってこともありますし・・・。

【中国 離婚申請増加「お互いにこれ以上は妥協できない」】
いずれにせよ、夫婦が自宅での自粛を強いられることで、夫婦の絆も強まり・・・かつてのニューヨーク大停電のときも、その後の出生数が大幅にアップしたというし・・・・なんて思ったら、中国からは下のようなニュースも。

****コロナで夫婦にすれ違い? 中国で離婚手続きの予約殺到****
新型コロナウイルスの感染抑え込みが進み、各地の政府機関で業務再開が本格化している中国で、離婚届の手続きの予約が殺到していると話題になっている。

長期間の自宅隔離や在宅勤務で家庭内でのストレスがたまり、夫婦げんかやすれ違いが増えているとの指摘も出ている。
 
中国メディアによると、陝西省西安市では、新型肺炎の蔓延(まんえん)で1月下旬から休止していた婚姻・離婚の手続き窓口が3月2日から再開。

混雑を防ぐため1日当たりの手続き上限数を決めて予約制としたところ、市内に17カ所ある窓口に離婚手続きの申し込みが相次ぎ、18日まで予約でいっぱいになった。広東省河源市や四川省達州市でも同様に予約が相次いでいるという。
 
窓口の休止期間中、手続きできなかった人たちが殺到したのが一因とみられるが、夫婦関係の専門家で、国営中央テレビの結婚相談番組に出演したこともある周小鵬さんは、別の理由もあると指摘する。
 
周さんはSNSの公式アカウントで、「家にこもり顔を突き合わせる時間が長くなり、お互いにこれ以上は妥協できないと考える夫婦が増えている」と投稿。「こんな時だからこそ、最初に感じた相手への愛情を思い出してみて」と呼びかけている。【3月17日 朝日】
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現実は厳しいようです。

【英・豪ではDV増加も】
まあ、お互いの合意で離婚するならそれはそれでいいのですが、家庭内暴力・DVとなると笑ってすますことができません。

****英“外出禁止令”で家庭内暴力が増加か*****
新型コロナウイルスの影響により事実上の外出禁止令が出ているイギリスでは、家庭内暴力の増加が懸念されています。政府は、被害にあった場合は専用ダイヤルなどを通じて助けを求めるよう呼びかけています。

イギリスのパテル内相は29日、地元メディアに対し、現在の状況が「家庭内暴力の犠牲者を特に危険な状態にさらしている可能性がある」と述べました。事実上の外出禁止令により、家の中にとどまる時間が増えることで、家庭内暴力が増加する懸念を示したものです。

その上で「慈善団体が支援活動を続けられるよう努めているほか、専用の電話相談窓口も利用できる」などと訴え、必要な場合は助けを求めるよう呼びかけました。

イギリスメディアによりますと、地元警察は、今後数週間で家庭内暴力事件が「3倍に増加する可能性がある」と警戒しています。【3月30日 日テレNEWS24】
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同様のDVに関する問題はオーストラリアでも。政府が対策に乗り出す事態にも。

****ウイルスでDV被害増 豪首相、対策資金100億円投入を発表****
オーストラリアは29日、新型コロナウイルスの感染拡大に関連し家庭内暴力の被害件数が急増しているとの支援団体からの報告を受けて、DV対策資金として1億5000万豪ドル(約100億円)を投入すると発表した。
 
新型ウイルスの封じ込め策として全国規模で不必要なサービスが一時停止される中、スコット・モリソン首相は、グーグルでのDV支援に関する検索件数は75%増加したと指摘した。
 
豪で最も人口の多い州、ニューサウスウェールズ州でDV支援を提供する慈善団体「ウィメンズ・セーフティ」によると、スタッフの40%超が相談者数の増加を目にし、相談件数の3分の1以上が新型ウイルスの流行に直接関係しているという。
 
隣のビクトリア州で女性へのサポートを行う「Wayss」は、この1週間で警察からの支援要請件数は約2倍になり、「かつて経験したことのない」暴力の形態に対応したと述べた。Wayssのリズ・トーマス最高経営責任者によると、ウイルスを持っているとしてパートナーを家に閉じ込めたり、自主隔離しているパートナーのもとに人を連れて来て、その人が感染者であるなどと言って脅したりする事例があるという。
 
モリソン首相は29日に明らかにした保健関連分野への追加支出11億豪ドル(約730億円)の一部として、1億5000万豪ドルをDV被害者・加害者向けの電話支援サービスに充てる方針を発表。

首都キャンベラで報道陣に対し、「被害を受けやすい人やその可能性のある人への支援に、より多くの資金を投じる必要がある」と述べた。 【3月30日 AFP】
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家の中にとどまる時間が増えること、および外出できないストレス、ウイルスへの不安などがDV増加に影響しているのでしょう。

【ロックダウンされた都市での生活は?】
日本で緊急事態宣言が出された場合、具体的にどのような制限が課されるのかはよく知りませんが、あまり厳しいレベルではなく、一定に通常の市民生活が許されるほどほどのものがいいようにも思えます。

****日本の緊急事態宣言、欧米のロックダウンと異なる=西村再生相****
西村康稔経済再生相は31日の経済財政諮問会議後の記者会見で、新型コロナウイルス特措法で想定されている緊急事態宣言は、欧米のロックダウンと異なり、強制力を持たず罰則があるわけではないと説明した。

西村再生相は、諮問会議で民間議員から、緊急事態宣言を想定すべき時期が来るのではないかとの質問があったが、「今はそのような状況でない」と説明したと述べた。

その上で、再生相は「特措法による緊急事態宣言は欧米都市でみられるロックダウンとは異なり、都道府県知事がイベントや施設の利用制限を指示するもの。強制力を持たず罰則もなく、緩やかな手法で感染症を閉じ込めるもの」と説明した。【3月31日 ロイター】
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“強制力を持たず罰則があるわけではない”とは言うものの、日本社会の特異性から、法律によらない“自粛”が蔓延するような懸念も感じます。

下記は、ロックダウン、つまり、外出禁止令が出されているアメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスのビーチタウン、サンタモニカの様子。

****公園は閉鎖、スーパーは入場制限? ロックダウンで何が起こるか****
(中略)
ロックダウンでもできること・できないこと
もっとも、外出禁止令とは言っても、まだできることは様々ある。
 
食料品や薬など生活必需品の買い出しや、病院やクリニックでの受診や治療など生活に不可欠な行動を取ることはできる。

ケアをするためなら友人や親族を訪問することも可能だ。銀行などの金融機関にも行ける。乗客の減少から間引き運転されてはいるがバスや電車など公共交通機関の利用もできるし、車での移動も可能だ。
 
レストラン内での飲食は禁止になったが、レストランのフードのテイクアウトはできるし、デリバリーを注文することもできる。

他の人と6フィート(1.8メートル)の社会的距離をあけている限りは、屋外での散歩、ジョギング、サイクリング、ワークアウトなどの活動もできる。
 
反対にできないのは、市民生活を支えるのに不可欠な仕事(インフラ整備や医療関係など)以外の仕事に行くこと、緊急性のない友人や親族宅への訪問、病院や介護施設などへの訪問、他都市への必要のない訪問、ビーチで群れること、グループで行うスポーツをすること、グループで行う野外活動に参加することなどだ。(後略)【3月31日 文春オンライン】
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スポーツ・野外活動はともかく、仕事に行けないとなると、廃業・失業などの深刻な問題を伴いますので、その面のフォローが不可欠となります。

 

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新型コロナ 行動制限を課すことなく感染拡大を抑制した韓国 各国が実施するスマホ位置情報追跡

2020-03-30 22:48:49 | 疾病・保健衛生

(韓国で、感染が確認された患者の位置情報などを確認できるアプリのダウンロード数が急増している。
2月27日のアプリストア「グーグルプレイ」のランキングでダウンロード数上位15位のうち6つが感染の追跡などを支援するアプリだった。

一部のアプリは政府機関の公的な情報を利用しているが、開発業者によれば、2月の公開以降ダウンロード数が急増しているという。

「コロナ100m」の開発業者によれば、(中略)このアプリは新型コロナウイルスの患者の感染が確認された日付や国籍、性別、年齢、訪問先などを確認できる。新型コロナウイルスに感染した患者がどのくらい近くにいるかもわかるという。2月11日の公開以降、100万回以上ダウンロードされた。(後略)【3月3日 CNN】)

【行動制限を課すことなく増加曲線を抑制 各国が韓国の対応に注目】
欧米各国が新型コロナとの戦いに疲弊するなか、大規模なアウトブレイクが発生しながらも、中国のように都市封鎖・行動制限といった強硬な手段を使うことなく感染拡大を封じ込めているとして韓国が注目されています。

****韓国の新型コロナ感染者 1日70人台に低下=新規完治者195人****
肺炎を引き起こす新型コロナウイルスを巡り、韓国の中央防疫対策本部は30日、この日午前0時現在の韓国での感染者数は前日午前0時の時点から78人増え、計9661人になったと発表した。

前日の増加数(105人)から大きく低下。新規感染者が2桁になったのは3日ぶり。死者は前日から6人増え計158人になった。(後略)【3月30日 聯合ニュース】
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韓国の対応の特徴としてThe New York Times は、「素早い行動、広範な検査体制と接触者追跡、そして国民の重大な支援」という点を指摘しています。

****世界で賞賛される「韓国」コロナ対策の凄み****
行動制限を課すことなく増加曲線を抑制
数字をどう見ても、1つの国が際立っている――韓国だ。 2月下旬と3月上旬、同国における新型コロナウイルスの感染者数は数十から数百人、数千人へと爆発的に増加した。

ピーク時には、医療従事者は2月29日の1日で909人の症例を特定し、人口5000万人の同国は打ちのめされる寸前のように見えた。しかし1週間弱経つと、新たな症例数は半減した。4日以内で、再び半減した――そしてその次の日も再び半減した。

封鎖政策も行われていない
韓国は22日、ほぼ1カ月の間で最少となる、わずか64人の新規感染者を発表した。他国では感染者数が1日ごとに数千人単位で増加し、医療システムや経済が壊滅的状況に追い込まれている中で、である。イタリアでは毎日数百人の死亡者を記録している。韓国は1日当たり8人を超えたことはない。

韓国は大規模なアウトブレイクが発生しながら、新規感染者数の増加曲線を抑えることができたわずか2国のうち、中国ではないほうの国である。そして韓国は中国のように言論や行動に厳しい制限を課すことなく、またヨーロッパやアメリカのように経済に打撃を与える封鎖政策を行わずに、それを成し遂げている。

ウイルスによる世界の死亡者数が1万5000人以上に膨らみ、世界中の役人や専門家は教訓を求めて韓国を徹底的に研究している。

そしてそれらの教訓は、簡単にはほど遠いものの、比較的ストレートで経済的にも負担が少ないように見える――素早い行動、広範な検査体制と接触者追跡、そして国民の重大な支援である。

しかし強く打撃を受けたほかの国は韓国のような対策は打てなかった。その手法を見習おうと関心を示し始めた国もあるが、もはや早々に制御できない時点までエピデミックが加速してしまった後のことであった。

韓国の文在寅大統領の周辺によると、フランスのエマニュエル・マクロン大統領とスウェーデンのステファン・ロベーン首相は、韓国の対策の詳細を聞くために文大統領に電話をしてきたという。

世界保健機関の事務局長テドロス・アダノム・ゲブレイェソスは、ウイルスの封じ込めは難しいものの「可能である」ことを示したとして、韓国を称賛した。テドロス氏は各国に「韓国その他で得られた教訓を応用する」よう促した。

韓国の当局は、同国の成功は一時的なものであると警告する。再発のリスクは残されている。国境の外ではエピデミックが猛威を振るい続けているため、なおさらだ。

今では1日に10万の検査キットを生産
それでも、アメリカ食品医薬品局(FDA)元長官のスコット・ゴットリーブはツイッターで「韓国は賢く精力的な公衆衛生によってCOVID-19が克服できることを示している」と書き、何度も韓国をモデルに掲げてきた。

教訓1:介入は早く、危機的状況になる前に
1月下旬に同国初の感染症例の診断が下ってからわずか1週間後、当局は製薬会社数社の代表者たちと面会した。当局は緊急承認を約束したうえで、大量生産のためのコロナウイルス用検査キットの開発に直ちに着手するよう促した。

韓国で確認された症例数は2桁にとどまっていたが、2週間以内に何千もの検査キットが発送された。同国は今では1日に10万キットを生産しており、当局によるとキットの輸出について17カ国の政府と協議中だという。 

当局はまた、地元の教会から感染が素早く拡大した人口250万人の都市テグで迅速に緊急措置を施行した。

「主な感染源が教会の礼拝だったことが割と早い段階でわかっていたため、韓国は人の動きを制限することなく対処できた」と政府にコロナウイルス対応を助言する疫学者であるキ・モランは話す。「判明するのがもっと遅かったら、ずっとひどい状況になったかもしれない」。

韓国はまた、ヨーロッパやアメリカと異なり、2015年の中東呼吸器症候群(MERS)のアウトブレイクにより国内で38人の死亡者を出した経験を持つため、コロナウイルスを国家非常事態として扱う準備ができていた。

コロナウイルスは5日間の潜伏期間があると考えられており、多くの場合その後風邪と間違われるような軽度の症状が出現するが、その際にウイルスが非常に伝染しやすくなる。

このパターンにより、アウトブレイクが明白になるまで1、2週間のタイムラグが生じる。一握り程度に見えた患者数が実は数百人、数百人に見えたものが実は数千人ということもありうる。

「このウイルスのこのような性質により、閉鎖と隔離に重点を置く従来型の対応は非効果的となる」と韓国保健福祉部次官キム・ガンリプは語る。「(感染者数が)いったんある程度に達してしまうと、古いやり方では感染拡大の防止に効果はない」。

1日当たりの検査率はアメリカの40倍
教訓2:検査は早く、頻繁に、安全に
韓国はほかのどの国よりもはるかに多くの人を検査してきた。そのため、多くの人を感染後すぐに隔離・治療することが可能となった。 同国では30万回以上の検査を実施し、1人当たりの検査率はアメリカの40倍となっている。(中略)

病院やクリニックがキャパオーバーにならないよう、当局は可能な限り多くの人を、可能な限り早く検査できるよう設計された検査センターを600カ所開設した。医療従事者の安全を確保するために接触を最小限に抑える狙いもあった。

50カ所のドライブスルー検査施設では、患者は車に乗ったままで検査が受けられる。患者は質問票を渡され、遠隔体温スキャンと喉の検体採取を行う。このプロセスは10分程度かかる。検査結果は通常数時間で上がってくる。 (中略)

公共メッセージが容赦なく発せられ、韓国人は自分や知人が症状を発症したら検査を受けるよう促される。海外からの訪問者は症状のセルフチェックを行わせるためのスマートフォンアプリのダウンロードが義務づけられている。

オフィスやホテル、その他の大きなビルではしばしば発熱している人を特定するためにサーモグラフィーカメラを使用している。多くのレストランでは来店客を受け入れる前に体温チェックを行っている。

社会からウイルスを「ほり出す」
教訓3:接触者追跡、隔離および監視

陽性反応を示す患者が出ると、医療従事者は患者の直近の動きを追跡して接触した可能性のある人を特定し、検査し、必要があれば隔離する。このプロセスは接触者追跡として知られている。 

これにより医療従事者は伝染の可能性のあるネットワークを早期に特定することができる。まるで外科医がガンを取り除くように、社会からウイルスをほり出すのだ。

韓国はMERSのアウトブレイク中に精力的な接触者追跡のためのツールとプラクティス(実践法)を開発した。保健関係の係員はセキュリティーカメラの映像やクレジットカードの記録、車や携帯電話のナビのデータまでも使用して患者の動きをたどるのである。

「私たちはまるで刑事のように疫学上の捜査を行った」とキは言う。「その後、伝染病危機の際には個人のプライバシーよりも社会の安全を優先するよう法律が改正された」。

コロナウイルスのアウトブレイクが大きくなりすぎて患者を集中的に追跡するのが困難になると、当局はよりマスメッセージングに頼るようになった。

韓国人の携帯電話は居住地区で新規感染者が発見されるたびに緊急警報のバイブレーションが鳴る。ウェブサイトやアプリでは感染患者の1時間ごと、時には1分ごとの移動経路を表示する――どのバスに乗ったか、いつどこで乗り降りしたか、はたまたマスクを着用していたかどうかまで。

感染患者と経路が交わったと思う人は検査センターに届け出るよう促される。 韓国人はプライバシーの損失を、必要なトレードオフとして広く受け入れるようになった。

自主隔離命令を受けた人はもう1つアプリをダウンロードしなければならない。患者が隔離から抜け出した場合、当局に連絡が行くというアプリだ。違反した場合の罰金は最大2500ドルにもなる。

感染を早期に特定し治療すること、また軽度の症例は特別センターに分離することで、韓国は病院が最重症患者を受け入れられる状態を確保してきた。同国の症例死亡率は1%をわずかに超える程度で、世界でも最も低い国の1つである。

アウトブレイク抑圧には国民の協力が必要
教訓4:公衆の助けを募る

医療従事者の数も足りず、全員を追跡できるだけの体温スキャナーもないため、市井の人々が協力しなくてはならない。

首脳陣の結論は、アウトブレイクの制圧には国民に対し完全な情報共有を続けること、そして国民の協力をお願いすることが必要ということだった、と保健福祉部次官のキム氏は話す。

テレビ放送、地下鉄の駅の告知、スマートフォンのアラートが、マスク着用の促進や社会的距離戦略、その日の感染データについて無限に注意喚起をしてくる。こうしたメッセージはまるで戦時中のような共通目的の感覚を植え付ける。

世論調査では大多数が政府の取り組みに賛同を示しており、人々は自信があり、パニックは少なく、買いだめもほとんど起こっていない。(中略)

中国は、ほとんどのヨーロッパの国よりも大きい湖北省における初の破壊的なアウトブレイクを駆逐した。ただし、その経済を閉鎖するというコストが伴った。

ゴットリーブ元FDA長官はツイッターで「われわれは韓国のような結果が得られるチャンスはおそらく逃してしまっている」と書いたが、韓国の手法はアメリカでも役立つかもしれない。「イタリアで生じているような悲劇的な苦しみを回避するためのことはすべてやらなければならない」。【3月27日 東洋経済ONLINE】
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【新型コロナで威力を発揮するスマホ位置情報追跡 監視社会への扉を開く可能性も】
韓国が実践した「接触者追跡、隔離および監視」については、他の国々でも携帯電話等を用いたシステムが実施・検討されていますが、感染対策として有効な反面、「監視社会」への入口となる可能性もあり、運用には十分な配慮が必要とされます。

****コロナ対策でスマホ位置情報追跡、欧州で広がる**** 
新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため多くの国で封鎖措置が敷かれている欧州で、市民の順守状況を監視するため、通信会社が携帯電話の位置情報を政府と共有する動きが広がっている。プライバシー規定に抵触しないよう、データを匿名化することに注力しているようだ。 
 
これまでのところ、ドイツ、オーストリア、スペイン、ベルギー、英国などで実施されている。 
 
欧州以外では、韓国の保健当局が新型コロナ感染者や感染リスクがあるとみられる特定の人物について、携帯の位置情報を追跡し、匿名で居場所をネット公開している。

イスラエル当局も、感染リスクのある人物の居場所を特定するために、携帯データを活用している。(中略)

通信データに関する欧州連合(EU)のプライバシー法「一般データ保護規則」(GDPR)では、企業に対し、個人情報を収集するには各ユーザーからの許可が必要だと定めている。

コロナ対策としてデータを分析する政府当局者や通信会社は、匿名化されたデータしか使用していいないため、GDPRには違反していないと説明する。 
 
だが調査会社ガートナーのバイスプレジデントアナリスト、バート・ウィルムセン氏は、匿名化の手法がぜい弱な場合、個人情報が特定される恐れがあると指摘する。例えば、暗号化による匿名化を行っても、暗号がのちに解読されるなどのリスクが考えられるという。(後略)【3月28日 WSJ】 
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****携帯電話傍受し感染者を監視…イスラエル、30日間限定****
イスラエル政府は16日、閣議を開き、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための緊急措置として、自宅隔離を義務付けた感染者らの携帯電話のデータを傍受して位置情報を把握し、自宅にとどまっているかどうかを監視することを決めた。
 
30日間限定で実施する。こうした監視は通常、テロリスト対策など犯罪捜査の目的で使う手法だという。治安当局が感染者の行動を把握し、過去14日間に接触した可能性のある市民を特定して自宅隔離を求める。(後略)【3月18日 読売】
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****ロシアでのテクノロジーを用いたコロナウイルスの潜在的な患者の追跡****
ロシアでコロナウイルス患者の移動の監視が始まった。それにより感染した人と接触した全ての人々が自己隔離すべきだということが警告される。この監視システムがどのように実行され、それが市民の権利を侵害しているかどうかをこの記事で伝える。
 
何が起こったのか
ロシアの首相ミハイル・ミシュスチンは、ロシア情報技術・通信省にコロナウイルス患者と接触している市民を追跡するシステムを作成するよう指示した 。

そのシステムではSMSメッセージを利用して自己隔離の必要性が警告される。このシステムは、2020年3月末までの、できるだけ早い時期に作成する必要がある。

このシステムはどのように機能するか?
次のように収集された情報で市民の追跡を行う。

携帯電話事業者が、コロナウイルスに感染した人の携帯電話の地理位置情報を提供する。 
これのデータに基づいて、病気に感染した人が隔離されるまでの経路を決定する。 

このシステムが、コロナウイルスCOVID-19に感染した人にすぐ近くにいた全ての通信契約者を識別し、彼らに対して14日間の隔離の必要と伝える自動メッセージを送信する。 

また、感染の可能性に関する全ての情報が、地域のコロナウイルス対策本部に送られる。

これは可能か?
技術的にはこのようなシステムを作成することは可能であると、ロシアの携帯電話会社メガフォンが雑誌『コメルサント』の記事で伝えた。例えば、ロシア非常事態省でも同様の方法を用いて、緊急事態について市民に警告を発している。
 
「しかし、情報技術通信省によって提案されたこのプロジェクトを実施するために必要なメカニズムはまだ完全には理解されていません。これを実施するには規制分野の変更が必要とするかもしれません」と、メガフォンは伝えた。

密集した建物のある場所でも加入者の位置を追跡することは可能だが、誤差は約50メートルになると、匿名希望のとあるロシアのモバイルオペレーターは述べた。村や田舎では誤差がさらに大きくなると、このオペレーターは確信をもって話した。 (後略)【3月27日  RUSSIA BEYOND】
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新型コロナによって、テレワークの一般化などポスト・コロナの社会生活が大きく変化することが予想されます。
上記のような接触者追跡が「監視」に対する抵抗感を和らげ、本格的な「監視社会」への扉を開くことに・・・ということも十分に想像されます。

感染拡大抑止について言えば、日本は現在、非常事態宣言が云々される「ぎりぎりの状況」とも。
強硬手段の中国、迅速対応かつ徹底検査の韓国とも異なる(他国からはわかりづらい、何もしていないようにも見える)緩やかな第三の方法を示すことになるのか・・・そうあって欲しいものです。

“日本の新型コロナの封じ込め「成功」が世界を困惑させている=中国報道”【3月30日 Searchina】

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新型コロナ禍もあって霧散したかの欧州・トルコの難民問題 火種はそのまま残る

2020-03-29 23:27:07 | 難民・移民

(ギリシャ国境近くのトルコ北西部ドイランでは、欧州を目指す難民らが立ち往生し、シートや毛布で簡易テントをつくっていた。【3月28日 GLOBE+】)

【難民ら欧州流入を容認したトルコ・エルドアン大統領 流入阻止のギリシャと難民が国境で衝突】
世の中、特に現在感染拡大の中心地となっている欧州では新型コロナ対策一色となり、その他の問題が吹き飛んでしまいましたが、新型コロナ禍が欧州で本格化する直前、欧州にとって重要な問題となっていたのがトルコが難民の欧州移動を容認した問題。

2015〜16年の移民・難民危機に成立した欧州とトルコの間の合意が守られていないこと、トルコ軍のシリア侵攻に批判的な欧州の対応などに業を煮やしたエルドアン大統領の欧州への「脅迫」「圧力」とも見られています。

ギリシャ国境では数万人規模の難民流入を阻止しようとするギリシャ側と難民の間で衝突が生じていました。

****トルコ、EUにシリア軍事作戦への支援要請 国境で移民らギリシャ警察と衝突****
トルコは4日、欧州連合に対し、ギリシャとの間で発生した新たな移民問題を解決する条件として、シリアで実施している軍事作戦への支援を要請した。欧州各国からEUを「脅迫」していると批判を受けたが、トルコはこれをはねつけた。
 
レジェプ・タイップ・エルドアン大統領は先週、移民・難民がトルコから欧州に向かうことを容認する発言を行い、トルコとギリシャの国境付近には1万人を超える規模の移民が集結。警察との衝突も発生する事態となっている。
 
エルドアン大統領は、ロシアの支援を受けたシリア政府軍がシリア北部を攻撃し、トルコ軍兵士34人が死亡したことを受けてこの発言を行った。同大統領はこれを契機に、国際社会からのさらなる支援を要請している。
 
一方EUの指導者らからは、欧州に100万人を超える難民が流入した2015〜16年の移民・難民危機の再来を懸念する声が出ている。
 
トルコ当局は、パザルクレの国境検問所付近で緊張が高まる中、ギリシャ側から実弾が発射され、移民1人が死亡、5人が負傷したと主張した。ギリシャ側はこれを強く否定した。
 
だが現場のAFPカメラマンは、移民の一団がフェンスを越えて前進しようとした際、そのうちの1人が足を撃たれたのを目撃した。この銃撃が実弾あるいはゴム弾のいずれであったかは確認できていない。
 
その一団がギリシャ警察に向かって投石すると警察は催涙ガスで応戦。複数回にわたって発射音と叫び声が聞こえた。 【3月5日 AFP】
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****ギリシャ、難民3.5万人の入国阻止 トルコは人権侵害と批判****
トルコ政府が国境を開放して以来、ギリシャが3万5000人近い難民の不法入国を阻止したことが、ギリシャ政府関係者らの話で分かった。(中略)

一方、トルコ側は、ギリシャの難民の扱いについて人権侵害だと批判、欧州人権裁判所に提訴する準備を進めているとしている。トルコのソイル内相は5日、ギリシャとの国境に近いエディルネを訪問し、難民がトルコ領内に逆流するのを阻止するため、1000人の特別警察部隊を配備することを明らかにした。【3月6日 ロイター】
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“難民がトルコ領内に逆流するのを阻止するため、1000人の特別警察部隊を配備”・・・・コンスタンチノープル攻防戦を題材にした塩野七生氏の小説の中に書かれている、トルコ軍の後ろに抜刀した親衛隊イエニチェリが控えて、自軍の退却・逃亡を許さなかった、そのため兵士たちは前に進むしかなかった・・・という話を思い出しもしました。

****トルコから流入の難民、ギリシャ軍が「身ぐるみはがし追放」か****
トルコ北西部パザルクレ国境検問所(CNN) トルコ北西部エディルネ県から国境を越えてギリシャ側へ入ろうとした難民らが、ギリシャ側の治安部隊に持ち物を奪われ、裸同然で追い返されているとの情報が8日までにわかった。

CNNは複数の男性が国境の川越しに、下着姿でトルコ側へ戻る場面の映像を入手した。トルコ国営放送が撮影したとされるが、CNNは状況の真偽などを確認していない。国際人権団体には近年、同様の証言が数十件寄せられているが、ギリシャ当局は一貫してその内容を否定してきた。

CNNにはこの数日間でシリア、アフガニスタン、モロッコ、パキスタンからの難民男性数人が、ギリシャ治安部隊から受けた扱いについて語っている。

シリア出身の男性(20)は「武装した軍か警察」の集団に殴られ、下着姿で追い返されたと話す。歩けないほどのけがを負った仲間もいるという。身分証明書と衣服は焼かれ、携帯電話と現金も奪われた。

幼い息子を抱いたアフガン人の男性(23)は家族で国境を越え、5時間ほど歩いたところで治安部隊につかまった。持ち物を取られ、棒のような物で殴られて追放されたという。

ギリシャのミツォタキス首相は6日、CNNとのインタビューで、同国には国境を守る権利があると強調。過剰な武力は行使していないと改めて主張した。(後略)【3月8日 CNN】
********************

こうした事態に、トルコ・エルドアン大統領は「ナチス」という言葉を使用してギリシャ側を批判していました。

****「ナチスと変わらない」 トルコ大統領、ギリシャの難民対応を非難****
トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領は11日、対ギリシャ国境におけるギリシャ側の難民対応を、ナチス・ドイツになぞらえて非難した。
 
現地テレビ局は、移民が欧州へ向けてギリシャ国境を突破しようとして催涙ガスを浴びる様子を捉えた映像を放映。同じ放送の中でエルドアン大統領は、「ギリシャ国境からのこれらの映像を見ると、ナチスがしたことと変わらない」と指摘した。
 
大統領は同時に、「自由な移動をはじめ...関税同盟や金融支援の更新など、トルコが期待するすべてが具体的に実現されるまで、われわれは国境での慣行を継続する」として、欧州連合が自身の要求を満たさない限り、欧州を目指す難民に国境を開放し続ける姿勢を改めて示した。(中略)

ギリシャ側は武力行使を否定するとともに、必死になった人々をけしかけて欧州を目指す危険を冒させているのは、トルコの方だと非難している。
 
エルドアン大統領は国境の開放について、シリア内戦をめぐり欧州諸国が支援を強化するよう圧力をかけるためだと主張。トルコは反体制派の最後の拠点となっているシリア北西部イドリブ県で、政権軍の攻撃に対抗している。 【3月11日 AFP】
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【「難民カード」で欧州に圧力をかけるトルコ】
上記記事にもあるように、欧州側は難民のギリシャ国境への移動はトルコによって仕組まれたものだと批判しています。

****トルコが切った「難民カード」、憤る欧州との摩擦激化*****
(中略)
<難民たちが駆け引きの材料に> 
トルコとEUとの外交摩擦について、アムネスティ・インターナショナルのマッシモ・モラッティ氏は「難民たちが再び政治的な駆け引きの材料にされている」と批判する。

また、トルコが同盟国や潜在的な支援国に圧力をかける強硬策は裏目に出る恐れがあり、トルコ自体が「根本的に孤立してしまうという問題がある」とアナリストは指摘する。 

特に緊張が高まっているのは、ギリシャとの国境地帯だ。トルコ側からギリシャの国境に押し寄せた難民は治安当局の催涙ガスによって追い返され、その多くが食料も身を寄せる場所もないままトルコ側にとどまっている。 

トルコのチャブシオール外相は3日、ギリシャ軍の兵士が入国しようとした難民3人を殺害したと述べた。証拠は示しておらずギリシャ側は否定している。 

一方、ギリシャは難民が国境を超えるのをトルコが組織的に支援していると批判。トルコの移民当局は難民をバスで国境まで送り届けているとの報道を否定した。

だがエルドアン氏が難民の流出を容認すると発表した数時間後、イスタンブールではすでに難民を移送するバスが複数台用意されていた。 

トルコの旅行業界関係者は移民に協力する財団から連絡を受けてバスの手配を依頼されたと明らかにした。「以前難民をあちこちに運んで大金を得た。今回は無料だ」と語った。 

トルコの政府系メディアなどは難民がイスタンブールからバスに乗り込み西部のエディルネ州の国境に向かって歩き、足止めされる様子を逐一報じている。(中略) 

欧州の外交筋はトルコがEUから追加の経済的支援を引き出すことが目的だと主張。「(難民は)移動することを許されているだけでなく、むしろ退去することを促され、すべてが計画されたものだと信じる強力な根拠がある」と述べた。 

エルドアン氏は2日、EUとの協議で10億ユーロの支援を打診されたことを明らかにした上で、トルコはもはや資金を求めないとし「誰もトルコの尊厳をもてあそぶことはできない」と述べた。【3月6日 ロイター】
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その後、世の中は新型コロナ一色になりましたが、コロナの話もあって(と言うより、コロナを表の理由にして)トルコ側は再び国境を閉鎖して難民流入は止まったようです。

****トルコ、対ギリシャ国境を閉鎖=新型コロナ対策、難民越境停止****
トルコは19日、欧州各国への渡航を目指して数万人規模のシリア難民らが殺到していたトルコ西部の対ギリシャ国境を閉鎖した。現地メディアが伝えた。

地元当局は「世界的に拡大する新型コロナウイルスから国民を保護する取り組みの一環」と説明している。これにより、トルコ国内の難民らは越境できなくなった。(後略)【3月19日 時事】
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【エルドアン大統領の決定の背景に、トルコ国内において強まる難民への批判も】
エルドアン大統領が国境開放という強硬手段をとった背景には、400万人を超す難民を受け入れてきたトルコ国内における難民らへの反発があると指摘されています。

****「難民を使った脅し」と批判するEU トルコから見える現実は****
(中略)
そもそもトルコはなぜこのタイミングで国境を開放したのか。10年目に入ったシリア難民問題を、トルコとEUとの関係から考えてみたい。

■トルコはなぜ国境を開放したのか
トルコに国境開放を決断させたのは、今年2月末、シリア北西部のイドリブ県で、ロシア軍とアサド政権軍による攻撃を受けトルコ兵士30人以上が死亡したのがきっかけだった。

かねてからトルコ国民の間で「なぜシリア人のためにトルコ兵士が死ななければならないのか」という不満が出ており、国民のシリア難民に対する不満が一気に爆発しかねない状況を察知しての政府の判断だったとみられる。

また、トルコの「これ以上の受け入れは無理」という度重なる訴えを前に、「深刻な人道危機」と言いながらも積極的に関与しようとしないEUに対する「ショック療法」の意味合いもあった。

紛争が続くシリア隣国の中でも、トルコは910㎞という最も長い国境線を接する。2011年のシリア内戦ぼっ発以降、戦火を逃れてきたシリア人を、国境開放政策のもと受け入れ続けてきた。

トルコに身を寄せるシリア難民は、いまや360万人。シリア以外の難民を入れると410万人に上り、2014年以降、トルコは世界最大の難民受け入れ国だ。

イドリブ県が陥落すればさらに100万人以上が流入すると見積られている。たとえ流入なくしても、難民の出生率は高く、人口はどんどん増えていく。トルコ国内で生まれたシリア人の子供は過去9年間で52万人に上る。

■試行錯誤のシリア難民支援
トルコは東西の十字路に位置するがゆえに、歴史的に多くの難民や移民を受け入れてきた。古くはコーカサスやバルカンから、80年代以降はイランやイラク、アフガニスタンのほか、最近ではアフリカからも受け入れている。

そんなトルコでも、年に100万人単位での難民の流入はかつてない経験であり、試行錯誤しながらの支援を続けてきた。

「シリア難民」と呼ばれるが、トルコではヨーロッパから難を逃れてきた人のみを「難民」という定義にしているため、シリア人は難民条約に基づく正式な「難民」ではない。だが、シリア人に対しては「一時的保護」という特別の身分を与えることで、教育や医療などのサービスを無料で受けることができる制度を整えた。

当初は国内20か所以上に難民キャンプを作り収容してきたが、難民数の増大から、今や難民の98%がキャンプ外で、トルコ全土の様々な地域に居住している。シリアに近い南東部地域では13年以降、シリア人の急激な流入で、アパートの家賃は3倍に跳ね上がった。病院には無料で診察を受けられるシリア人の長い列ができた。

こうした中でも、トルコの人々は、隣人の苦境を不憫に思いつつトルコ社会に受け入れてきた。

シリアでイスラム国(IS)が台頭した14年以降は、難民に交じりテロリストもトルコ国内に流入、15年、16年には、国内でテロが相次ぎ400人以上が命を落とした。テロリストは一般人にまぎれており、どこに潜んでいるかわからない。シリア難民支援は、トルコの人々にとって、いわば命がけの人道支援でもあった。

■EUトルコ協定とその後の不和
国境を開放したトルコに、EUは「協定を遵守すべきだ」と声を荒げた。これは2016年3月に締結された協定を指す。きっかけは、ISが勢力を拡大した15年、トルコに逃れたシリア人らが、さらに陸路・海路で国境を超え、百万単位でEUに流入する「難民危機」が起きたことだ。(中略) 

EUとして有効な対策を講じられない中、2016年3月、トルコとの間でこれに対処する協定が結ばれた。ヨーロッパ側に渡った難民をトルコに送り返すと同時に、トルコが引き受けた数と同数のシリア難民を、EUがトルコから受け入れる、というものだ。

トルコは見返りに、①計60億ユーロの支援金、②EUへのビザなし渡航の実現、③関税同盟の更新、④EU加盟交渉の加速化を約束された。

この協定により、EUを目指す難民は激減。欧州委員会は18年、同協定発効により、ヨーロッパに渡る不法移民は97%減となったと発表した。トルコは協定を遵守したという自負がある一方で、EUがこれまでトルコから受け入れたのは2万人程度、支援金は半分程度しか支払われていない上、それ以外の約束はまるで動きがないことに不満を抱いてきた。

この協定は当初から資金の使い方などを巡り両者感で隔たりがあったほか、トルコがEUに対し大きな影響力をもつことになる、といった懸念もEU内であがっていた。しかし、EUにとっては、目の前の難民流入を食い止めることが先決だった。

■高まる反難民感情と現実
内戦から10年。帰還の目途もたたない中で、シリア難民の存在は国内政治にも大きな影響を及ぼしている。

昨年のトルコ地方選では最大都市イスタンブールと首都アンカラで25年ぶりに世俗派野党が市長の座を奪った。政権与党の牙城だっただけに、トルコでは大きな衝撃をもって受け止められた。選挙戦で「難民帰還」を訴えたことが得票率拡大の一因と考えられている。

世論調査では、8割以上がシリア難民の早期帰還を求め、経済の低迷と失業者の増大から、「なぜシリア人ばかりが優遇されているのか」、「なぜ税金を払っていないのに教育も医療もただなのか」と言った不満が募ってきており、今や政府も無視することができない。

不満の矛先は、特に雇用と治安だ。「シリア人がトルコ人の職を奪い、シリア人のせいで犯罪が増えた」というものだ。だが、実際には、トルコ人と競合しない分野で雇用されているシリア人が多く、捕まれば強制送還の可能性があるため、シリア人の多くは犯罪に手を染めぬよう用心している。内務省の発表でも、シリア人の犯罪率はトルコ人の半数以下だ。事実よりも心理的嫌悪が勢いを増している。

■新型コロナウィルスの危機、難民にも
当初、難民の入国阻止に躍起になっていたEUは、欧州各国での新型コロナウィルスの蔓延を受け、3月17日から、第三国からEUへの入国を制限することで合意。難民はトルコとギリシャ国境に置き去りにされる形となった。

報道では、難民はEUへの入国を断行したい一部を除き、徐々にトルコ側の元の居住地に戻り始めているという。

コロナウィルスの広がりにより、難民のコロナ対策が今後深刻になると予想される。難民の中には、複数の世帯が家賃を出し合いながら一つのアパートの部屋を借りているケースや、空き家となった不衛生な場所に住んでいる人も少なくない。

感染の脅威は国内に留まらない。シリア難民支援に従事するNGOによると、戦闘下のイドリブ県では、十分な食料も医療施設もないまま、2,3世帯が一つのテントで避難生活を営んでいる。トイレはさらに多くの世帯と共用している状態という。

イドリブにおける停戦合意が破られ戦闘が再開すれば、100万人のトルコへの流入が予想されている。

■今後の展望
シリア難民の今後の可能性としては、EUによる受け入れ、帰還、トルコでの滞在継続などがありうるが、EUは各国内に反移民勢力が多く、強いリーダーシップがない中で難民受入政策をまとめ上げるのは容易ではない。

帰還について、トルコ政府は内戦当初の2011年から、シリア国内に「安全地帯」を設定し、その地域に送り返す案を、国連総会など様々な機会に訴えてきた。

しかし、ISの台頭やトルコとクルド勢力の戦いなど、内戦が様々な局面を見せる中、欧米から「安全地帯」の設置はトルコの越境攻撃を正当化する口実だ、との批判が上がったほか、安全地帯が難民の出身地とは異なる地域にあること、インフラのほか教育、医療体制を整えるのに莫大なコストがかかるなどとして、国際的な支持は集まらなかった。

トルコに滞在する難民の8割以上が、当面トルコで生活したいと考えていることも考慮すれば、最も現実的なのは、EUと協力した上でのトルコでの滞在継続の選択肢だろう。(後略)【3月28日 GLOBE+】
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難民の子供のなかには、シリアを知らない、トルコ生まれの子供も増加しています。
その意味でも「トルコでの滞在継続」は現実的ではありますが、トルコ側の負担を軽減する必要もあります。

 

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中国  新型コロナ一定に終息で、武漢封鎖も一部緩和 経済再建に向けて始動

2020-03-28 22:35:47 | 中国

(中国・湖北省武漢の駅に到着し、列をつくるマスク姿の乗客たち(2020年3月28日撮影)【3月28日 AFP】)

【武漢の封鎖緩和】
世界の主要都市で移動や経済活動の制限が強まる中で、新型コロナの震源地ともなった中国・武漢では、新規感染者数がゼロになったとされ、封鎖が一部緩和されています。

****中国・武漢の封鎖緩和、駅は帰還した乗客で混雑 出境は禁止続く***
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)の発火点となった中国・武漢では28日、2か月超続いたほぼ全面的な封鎖が部分的に解かれ、武漢駅は同市へ戻ってきた人々で混雑した。
 
武漢は今年1月に封鎖下に置かれ、住民の外出が禁止された他、市の郊外では往来を制限するために路上で検問が行われ、日常生活においても徹底的な規制が課された。
 
だが、長期間にわたった隔離は終了する兆しが見えており、国営メディアは28日午前0時を過ぎて間もなく、公式な許可を得た乗客らが初めて列車で市内に到着する様子を伝えた。
 
ただ、人々が市内に入境することは認められるものの出境はできず、さらに列車の多くは、数日前に予約で満席となっていた。
 
AFPの記者は28日、武漢駅に到着した人々でごった返し、多くの乗客らがキャリーケースを引く様子を目にした。
 
ただ移動禁止の強制が緩和され始めていたため、名目上は降車が禁じられていたものの、前日以前から武漢駅に停車する鉄道に乗って市内にこっそり戻る人々は一部存在していた。
 
27日に到着したある女性はAFPに対し、自身の娘、夫と10週間近く離れ離れになっていたと説明。
「列車が武漢に近づくと、子どもも私もとても興奮した」「鉄道は以前よりも速く動いているように感じた。娘は私たちが本当に早く家に帰りたいことを運転士が分かっているに違いないと話していた」と語った。
 
さらに、「娘が父親の元に走り寄るのを後ろから目にして、泣かずにはいられなかった」と話した。
 
海外で感染者数が増加する中、中国は現在、海外から感染者が入国するのを抑制しようと奮闘している。
 
武漢駅から外へ出るため、乗客らは列をつくる一方、防護服を着用した作業員は、海外から戻ってきた人々に申告を呼びかけた。
 
武漢に到着した人々は、健康状態が良好であることを示すため、携帯電話のアプリで「緑色」のコードを示す必要がある。
 
また武漢以外の中国各地でも、同市へ向かう高速列車に乗車するため、駅で長い列をつくる旅行客の姿が見られた。 【3月28日 AFP】
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「鉄道は以前よりも速く動いているように感じた・・・・」のコメントは、溢れる思いが感じられて秀逸ですね。

武漢以外の湖北省各都市では、武漢に先立って封鎖解除が進んでいます。

****湖北省の各都市、封鎖解除 武漢以外、正常化急ぐ****
中国湖北省の武漢市以外の各都市は25日、新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐために続けてきた事実上の封鎖措置を解除した。

1月下旬から航空便や鉄道を止めて外部との人の往来を制限していたが、駅などが再開した。中国政府は出稼ぎ労働者らの職場復帰を進め、経済活動の正常化を急ぐ。
 
ただ住民によると、労働者が職場復帰のために検査を受けて無症状感染が判明する事例が発生。中国政府は無症状の感染者は発表に含めておらず、市民の間では再流行が起きるのではないかとの不安も強い。
 
北京紙、新京報によると、武漢市以外の駅で切符の販売を再開した。【3月25日 共同】
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武漢では生産活動も再開されているようです。

****工場再開の武漢、賑わい戻る上海。新型コロナ「制圧後」中国は今****
(中略)
今週に入って湖北省武漢も少しずつですが街が動き出し始めたとの連絡が。まだ移動制限があるものの日常を取り戻しつつあるようです。(中略)

3月16日武漢のお客様と連絡用に作っているWeChatのグループチャットに「本日より100名体制で再稼働」と久しぶりの通知がありました。

通常は350名ほどの規模で稼働しているお客様なので1/3程度の規模でありますが、湖北省武漢市内の工場が稼働再開。

縮小している理由として2/3が外地人であるのだと思います。まだ湖北省へは外地からの移動制限がされているでしょうから、春節に田舎に戻らなかった、または武漢出身のスタッフのみで稼働再開となったようです。(後略)
【3月27日 MAG2NEWS】
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【『本当かよ?』という感じ】
もちろん、中国の公表情報に対しては懐疑的な雰囲気があります。

****麻生財務相、中国のコロナ終息アピールに「本当かよ?」****
麻生太郎財務相は13日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染源である中国が国内感染は終息に向かっていると内外にアピールしていることについて、「本当に収まったのか。そのまま素直に受け取る人のほうが少ないと思う。『本当かよ?』という感じのほうが大きい」と述べ、懐疑的な見方を示した。
 
一方、「(中国での終息が)本当だとすれば、いろんな話が終息していくんだと思う」とも述べ、感染の押さえ込みで金融市場の動揺が沈静化することには期待感も示した。
 
中国の習近平国家主席は10日、新型コロナの発生後初めて被害が最も深刻な湖北省武漢市を視察。「(感染状況に)前向きな変化があり、重要な成果が出ている」とアピールしている。【3月13日 産経】
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また、習近平氏の武漢訪問に合わせて、感染者ゼロが演出されているとの指摘もあります。

****武漢の改善、欺瞞と医師が告発 習氏視察で隔離解除、検査停止****
新型コロナウイルス感染症の被害が最も深刻な中国湖北省武漢市で、10日に行われた習近平国家主席による視察に合わせ、症状の残る多数の患者が隔離を急きょ解除され、一部の感染検査も停止されたことが19日、分かった。
隔離施設の医師が共同通信の取材に、武漢市の状況改善は欺瞞だと告発した。
 
医師は、習氏への配慮から対策成功アピールのため治療中の患者数を意図的に減らしていると指摘した。中国で現場の医師がこうした告発を行うのは異例。

中国政府は武漢で18日に新規感染者が0人になったと発表したが、医師は政府の集計は「信頼できない」と断言した。【3月20日 共同】
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“陽性だが無症状の人は感染者とカウントせず人数も公表しない指針”も感染拡大再燃を懸念させています。
また、上記のような「状況改善の演出」が起きる背景には、中央の厳しい圧力に地方が萎縮している統治システムの問題があるとも。

****“感染者ゼロの武漢”実は今も新たな感染者がいる?その理由****
 “4日連続で新規感染ゼロ” 感染押さえ込みは予定通り?でも拭えぬ不信感
3月21日、武漢で4日連続で新規感染者がゼロになった。中国政府はすでに事実上の勝利宣言をし、今は海外からの入国者による感染拡大の食い止めに重点を置く。(中略)

中国メディアは、習主席の強いリーダーシップの元で感染に勝利した!と報じる。中国メディアでは、連日、感染との戦いを終えた医療関係者が武漢市民の感謝を受けながら地元に戻っているとのニュースを放送している。

(中略)もともと中国では地方政府による統計数字改ざんの“前科”があり、中国発表のデータに対する不信感がある。

既に感染収束までの壮大なストーリーができているのでは、と穿った見方が出てくるのもそのためだ。予定通り感染者がゼロになり、経済が元に戻り、習近平国家主席のおかげで感染に勝利――果たして、中国が描くシナリオ通りになっていくのだろうか。

“無症状の感染者は感染者とカウントしない“市民は政府に不信感
「昨夜、新たな感染者が出た。外出を控え注意を」すでに新規感染者はいないと発表されている20日、武漢のある住宅地で、こんな張り紙が出され、ネット上にも出回った。

62歳の男性が前日19日に陽性判定されたというのだ。ただ男性は咳や発熱などの症状はなかった。

地元政府は、中国政府が2月に示した“陽性だが無症状の人は感染者とカウントせず人数も公表しない指針”により感染者とされなかったが、住宅地側が間違って張り紙を出した、との調査結果を公表した。

この他、ネット上には、武漢にはまだ感染者が出ているとする文章も出回った。「ある住宅街で2例出た」「別の住宅街でも新規感染が出ている」などの内容だ。(中略)

ネットには「無症状でも周りにいたら感染するのでは?」「確かに周りに最近感染した人はいる」「無症状感染者はいるが政府の要求に合わないからカウントされない」「武漢市の発表は一言も信用出来ない」と不信感が溢れている。

統計は一定の条件のもとでやるしかないが、無症状でも他人に感染させる恐れがある中、陽性なのにカウントされていないとしたら、実際に感染拡大が抑えられているのか不安は感じる。

一方、中国ではそれに加え、統治システムが抱える問題から、「感染者ゼロ」が作り出されているのでは、、とさらに不安を感じさせる指摘が専門家から出た。

「1人の感染者も許されない」中央の厳しい圧力に地方は萎縮し・・・
3月15日、経済の専門家である北京大学国家発展研究院の姚洋院長が、論文『疫病との戦いから見る統治システムの現代化』を発表し、現体制の問題点を指摘した。この研究院は中国の社会科学や経済を研究するシンクタンクで政府に近く、このような批判は異例だ。

論文は、中国政府が、経済への深刻な影響が出る中で一刻も早い企業活動の再開を進めようとしているが進まない背景について指摘している。

姚院長は、その理由として、「地方の末端の当局者は、“1例の感染者も出してはならない”と指令を受けており、出した場合は処分される。このような状況で誰が思いきった経済対策をやろうとするだろうか」と強調する。(中略)

つまり、地元で感染者を出せば処分される、とプレッシャーを受けている地方政府は萎縮し、肝心な経済の復興に自主的に取り組めなくなっているとの批判だ。論文はその上で、「地方政府に自主権や実権を与えるべきだ」と訴えた。

この論文の指摘から感じられるのは、地方政府は誰もが、至上命題である“感染者ゼロ”、ありきで行動するようになるため、実際には感染者がいても絶対に表に出てこないのでは、という疑念だ。

処罰を恐れる地方の役人達が保身に走り、正確な情報を上に報告しない(感染者が出ても隠す)、ということが起きるのは中国では容易に想像できる。(後略)【FNN PRIME】
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コロナ禍を世界中に拡大させたのも、武漢における初期の“処罰を恐れる地方の役人達が保身に走り、正確な情報を上に報告しない”という対応であったとおもわれます。それは中国統治システムの根本的問題です。

武漢での死者数についても疑念が持たれています。

****中国武漢で死者数巡る疑念が再燃 埋葬開始、葬儀場に多数の行列****
中国湖北省武漢市で28日までに、新型コロナに感染した死者の遺骨の受け取りや埋葬が始まった。検査が追いつかず政府発表より実際の死者数が多い可能性が以前から指摘されていたが、多数の人が行列を作ったことで、市民の間で死者数を巡る疑念が再燃している。
 
住民によると、武漢の葬儀場では26日ごろから感染防止のため停止していた遺骨の受け取りが始まった。SNSでは受け取りや墓の購入のため、葬儀場や墓地に大勢の人が並ぶ写真が出回った。
 
武漢の感染による死者数はこれまでに計2538人。SNSでは行列の人数などから感染による死者は数万人に上るとの推測も広がった。【3月28日 共同】
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中国メディアによると、引き取りにきた親族らの列はおよそ200メートルに及び整理券も配られたとか。
死者数が発表より多いのか・・・実際のところはわかりませんが、“こうした映像がネットに投稿されると相次ぎ削除される事態が起きている。”【3月28日 日テレNEWS24】のような当局対応に根本的な“問題”を感じてしまいます。

【経済再建に大きく舵を切る中国政府】
問題・疑問は多々ありますが、中国の感染状況が一定に改善したのは事実で、これを受けて中国政府は経済の再建に大きく舵を切ってきます。

****中国で旅行予約再開、新型コロナ状況好転で―仏メディア****
中国紙・環球時報によると、フランスのニュースサイトLaQuotidienneは24日、「ヨーロッパで新型コロナウイルス感染症のトンネルの出口がまだ見えない中、中国人は旅行の予約を再開している」とし、次のように伝えている。 

中国の大手旅行予約サイト2社によると、人々は、2カ月間の「隔離期間」を経て、4〜5月の旅行の予約を始めている。 

Qunar(去哪儿)はすでに、新疆ウイグル自治区や四川省などを目的地とした1000以上の国内旅行商品を販売している。 

Ctrip(携程)では、国内1400カ所以上の観光名所を予約でき、5A級観光地の4割以上が営業を再開している。 

タイ政府観光庁と衛生当局は、4月の中国人観光客の再来に備え、あらゆる衛生対策を講じて信頼を得ると表明しており、中国の旅行会社は一度は失われた海外旅行を取り戻そうとしている。【3月27日 レコードチャイナ】
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個人的な関心事としては、先日タイから帰ってきましたが、感染拡大で次の旅行先が見つからないということがあります。中国の入国規制が緩和されたら、夏ごろの次の旅行先は中国ですかね・・・。それまでに入国規制がどうなっているか・・・・日本の状況次第でしょう。

****中国で「万里の長城」が入場再開 新型コロナ対策で2カ月ぶり****
新型コロナウイルス対策で閉鎖されていた北京郊外の「万里の長城」の入場が約2カ月ぶりに再開され、28日に初めての週末を迎えた。入場者数を制限し検温もするなど特別態勢は続くが、マスク姿の家族連れなどが青空の下、散策を楽しんだ。
 
中でも代表的な観光スポット「八達嶺」が24日に再開された。28日は朝からシャトルバス乗り場に数百人が行列。1メートルの間隔を空けるよう指示され、サーモグラフィーで体温も検査された。入場者は1日約2万人まででインターネット予約が必要だ。
 
中国政府は感染者の増加ペースが落ちたことを受け、全土で経済、社会活動の再開を促している。【3月28日 共同】
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飲食店の再開も始まっていますが、結構厳しい条件がつけられているようです。

****中国各地でレストランが再オープンもかなり厳しい条件付き―カタールメディア****
2020年3月25日、中国紙・環球時報はカタールの衛星テレビ局・アルジャジーラの報道を引用し、中国各地で飲食店が再オープンしているが、厳しい条件付きだと伝えた。 

記事は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための措置が徐々に緩和されるにつれ、中国では多くの飲食店が営業を再開していると紹介。しかし、危険が完全になくなったわけではないため、顧客数を以前のレベルにまで戻すのは容易なことではないと指摘している。 

S&Pグローバル中国が2月19日に発表したデータによると、中国のレストランの1、2月の売り上げは大幅に減少しており、第1四半期は前年同期比55%減になる見込みだという。

そのため、安徽省や江西省、江蘇省などでは、政府関係者が外食する際に少なくとも100元(約1500円)消費するよう促しており、「その主な目的は国民の外食に対する信頼性を回復させることにある」と伝えた。 

だが、店内での食事の許可を得た店でも、「複雑な健康手順を必ず遵守しなければならない」と記事は紹介。これには、「4時間ごとに店員にマスクを1枚配布すること、頻繁に体温を測定すること、テーブル間の安全な距離を保つこと、2時間ごとにすべての顧客を店外に出して消毒作業を行うこと」などが含まれると伝えた。 

(中略)広東式の茶餐廳を営む陳(チェン)さんは、「店を閉めて2カ月以上になるが、いまだにいつになったら完全に回復できるか分からない」と述べている。陳さんによると、支店の一つが開店許可を得て店内での飲食が可能になったが、1度に入店できる人数には制限があるという。 

記事は、「中国のデータによると2019年末までで、ホテルや飲食業に従事する人の数が2600万人を超えており、このうち飲食業が約60%を占める」と紹介。これに小規模な飲食店やバー、カフェなどを加えると、その人数は「2億人近くになるとみられる」という。

記事は「現在、中国の飲食業界ではオンライン、フードデリバリー、テイクアウトなどの方法での経営が、融通の利いた効果的な方法となっている」と結んだ。【3月28日 レコードチャイナ】
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政府関係者が外食する際に少なくとも100元(約1500円)消費するよう促しており・・・というのも、中国らしい面白い話です。

いずれにしても、今回のコロナ禍で、勤務形態は在宅に、飲食業はオンライン、フードデリバリー、テイクアウトなどの方法へと、生活様式が大きく変わるのでしょう。

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新型コロナのパンデミック加速 対応を欠けば膨大な犠牲者も 必要とされる国際協調体制

2020-03-27 23:38:37 | 疾病・保健衛生

(タイの規制強化で、首都バンコクから出身地・出身国に戻るため数万人が殺到した高速バスターミナル(タイ・バンコク市内【3月27日 FNN PRIME】)

【今後の適切な対応がなければ死者は何百万人とも、4000万人とも 貧困層が多く、医療体制のぜい弱な国での対応が焦点】
WHOの発表などによると、26日の時点で、感染者の数は前日に比べて4万9219人増えて46万2684人、死亡した人は2401人増えて2万834人と、2万人を超えました。【3月27日 NHK】

今後の“可能性”については、空恐ろしい数字も。あくまでも、適切な対応がとられなかったときの“可能性”の数字ですが。

****WHO事務局長「何百万人が死ぬ可能性」「パンデミックは加速度的に拡大」****
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は26日、主要20か国・地域(G20)首脳のテレビ会議に参加し、新型コロナウイルスの感染拡大を巡り、「すべての国が積極的な行動を取らなければ、何百万人もの人が死ぬ可能性がある」と述べ、強い危機感を表明した。WHOが発表した。
 
テドロス氏は会議で、世界の感染者数が10万人に達するまで67日間かかったのに対し、30万人から40万人に増えるのには2日間しか要していないと指摘した。

「このパンデミック(感染症の世界的流行)は加速度的に広がっている。これは国際的な対応を要する、地球規模の危機だ」と述べ、各国で医療体制を強化する必要性を強調した。【3月27日 読売】
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更にショッキングな数字も

****「対策なければ死者4000万人も」 英専門家チーム ****
(中略)イギリスの「インペリアル・カレッジ・ロンドン」の感染症の専門家チームは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響について、各国の最新の状況をもとに分析した結果を公表しました。

それによりますと、各国が今後有効な対策をとらなければことしだけで世界で4000万人が死亡するとしています。

一方で、外出制限や自宅での隔離などの強力な対策を感染拡大の初期段階で実行し、感染を調べる検査を数多く実施すれば、大幅に状況を変えることができ、亡くなる人は130万人に減少すると分析しました。

ただこうした対策はワクチンが開発されるまである程度の期間続ける必要があり、社会的、経済的にも痛みを伴うため、貧困層が多く、医療体制のぜい弱な国は大きな影響を受けることになると警告しています。

専門家チームは、「各国は、急速に広がる感染にまとまって迅速に行動する必要がある」などとコメントしています。【3月27日 NHK】
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今までのところ、感染は中国や欧米といった比較的国家体制がしっかりし、ある程度の医療体制を有する国で広まっていますが、おそらく検知されていない「静かな感染拡大」は全世界に及んでおり、今後はインドなどの南アジア、中東、アフリカなど、“貧困層が多く、医療体制のぜい弱な国”が感染の中心になると思われます。

そして犠牲者の数、市民生活のダメージも、現段階を超えるレベルになることも予想されます。

【タイでは非常事態宣言 出稼ぎ労働者数万人の帰国で一時的には周辺国に感染拡大も】
18日まで滞在していたタイでは、帰国日前後から日増しに規制が強化され、非常事態宣言も。

****タイ全土に非常事態宣言 県境などに検問所350カ所****
タイ政府は26日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、全土に非常事態を宣言した。外国人の入国を原則禁止し、高齢者らの自宅待機や県境を越える移動の自粛などを強く求めている。4月30日まで。
 
タイではここに来て感染者数が急増。26日時点で1045人、うち死者は4人で、非常事態宣言はこうした状況を受けた。
 
パブやマッサージ店、娯楽施設などが全土で閉鎖され、大規模な集会なども禁止される。外国人の入国は労働許可証所持者など一部の例外を除いて禁止され、例外措置の対象者も渡航にあたり健康状態の保証書が求められる。

これに先立ち、感染者が多いバンコク首都圏では22日からショッピングモールなどが閉鎖され、飲食店も持ち帰りを除き営業が禁止されている。
 
県境を越える往来の自粛を求めたことを受け、全国の約350カ所に検問所が設置された。中部サムットプラカーン県とバンコクとの境では26日、警察官らが車を止め、運転手らに質問するなどしていた。
 
公共交通機関の運行も制限され、バンコク市内のバスターミナルは26日、閑散としていた。警備員の男性(49)は「22日ごろまではターミナル内がごった返していたが、バスの行き先が減り、一気に人が来なくなった」と話した。
 
北部チェンライ行きのバスを待っていたウィーラパン・パンティさん(38)はバンコクで感染が広がったことから、チェンライ県当局から「入県許可」を得て実家に戻るという。「バンコクの服飾品の工場で仕事をしていたが、実家に戻るために辞めた。早く戻りたい」と話した。【3月26日 朝日】
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タイのこうした措置は、タイ国内にとどまらず、周辺国へ影響を及ぼします。
出稼ぎ労働者などのタイからの出国者が急増することで、少なくとも一時的には周辺国へ感染を拡散させることにもなります。

****東南アジアで感染爆発リスク…移民数万人が拡散****
3月22日、外国人の出稼ぎ労働者数万人が、タイの首都バンコクから一斉に脱出して帰国の途についた。新型コロナウイルス感染抑制策の強化で、彼らの仕事先の商業施設などが一時閉鎖となり、出稼ぎ労働者が生活の糧を失ったためだ。

しかし帰国先のカンボジア、ミャンマー、ラオスでは、彼らがウイルスを自国に持ち帰るのではないかとの警戒感が高まっている。

爆発的な感染拡大を防ぐために有効とされる都市封鎖措置(ロックダウン)だが、一時的に各地での感染拡大を誘発する可能性もある。

出稼ぎ労働者6万人が大挙出国 
タイの首都バンコクにある高速バスターミナルに22日、数万人の外国人労働者が殺到した。その多くはタイと国境を接するミャンマー、カンボジア、ラオスの三カ国から働きに来ている出稼ぎ労働者だった。仕事先の閉鎖で職を失い、バンコクから一路、帰国を急いでいた。

少子高齢化が進むタイでは、隣国ミャンマーやカンボジア、ラオス出身の多くの外国人労働者が単純労働の一部を担っている。その数はタイ全土で400万人以上にも上り、バンコクでも町を歩くとレストランや建設現場など、様々な場所で外国人労働者の姿を見かける。

しかし3月22日、バンコクで商業施設の閉鎖などが始まったことに加え、タイ政府が隣国との国境閉鎖を突然決めたため、大急ぎで母国に戻ろうとする労働者が高速バスターミナルに殺到した。

当時のバスターミナルは満員電車のように人々がひしめき合っていて、タイの内務省は数日間で、6万人の外国人労働者が帰国したと発表した。

タイの感染者はバンコクが4割
こうした出稼ぎ労働者が帰国先のミャンマーやカンボジアなどにウイルスを持ち込んでしまうのではないかとの警戒が強まっている。タイは東南アジアで2番目に感染者が多く、全感染者のうち4割がバンコクに集中しているからだ。

タイからの新型コロナウイルス流入の懸念は既に現実になりつつある。タイの保健省は3月24日、バスターミナルを利用していた33歳のタイ人男性が新型コロナウイルスに感染していたと発表した。男性はタイ北部チェンライに帰郷後に発症し、感染が判明したという。男性は、集団感染が発生したバンコク市内のバーで働いていたことも分かった。

森の中で自主隔離も…ミャンマーの危機感
最も多くの出稼ぎ労働者がタイから帰国したのはミャンマーだ。国境に到着したミャンマー人の出稼ぎ労働者は、数日間で3万人を超えた。不法労働者も多いため、実際にはこの倍以上の人数に上るとの指摘もある。

地元当局は全ての帰国者に対して、検問所での検温など健康チェックを行うことに加え、14日間の自主隔離を義務付けた。

しかし帰国者の中にも新型コロナウイルスの影は早くも忍び寄っている。

地元メディアは、帰国者の11人に発熱症状が出ていたことが分かり、病院に搬送されたと報じている。出稼ぎ労働者はミャンマーの都市部ではなく地方から来た人が多く、仮に感染していた場合は、ウイルスが地方部まで運ばれ、国全体に散らばってしまう恐れがある。

こうした感染拡大を防ぐため、帰国した村民をしばらくの間、受け入れない決断をする村落も出てきている。

また帰国者の中にも、故郷での自主隔離を諦め、森の中で隔離期間を過ごすことを決めた人たちが現れた。仮に村にウイルスが持ち込まれれば、医療体制が整っていないため、村全体が危機に陥る。このことを理解した上で、帰国した出稼ぎ労働者も自主的に行動を取り始めている。

カンボジアでも発熱者の情報
隣国カンボジアにも大量の出稼ぎ労働者が帰国している。カンボジア政府によると、これまでに4万以上がタイから帰国した。

地元政府は、行政と警察が連携して帰国者の追跡や監視体制を構築しているとしているが、これだけ多くの人を完全に追うのは困難だ。

すでにプノンペン郊外の村では、経過観察中の帰国者から38度以上の高熱を発熱した人が出たとの情報も出ている。地元当局は、これからしばらくの間は帰国者の動向に神経を尖らせることになる。

日本でも、海外から帰国した人が国内にウイルスを持ち込むケースが相次いでいる。3月19日以降、海外で感染したと疑われる感染者は連日10人以上確認されている。

しかし、ミャンマーやカンボジアは、帰国した人の数が万単位と、桁違いに多い。

感染拡大を防ぐための「ロックダウン」だが、これが出稼ぎ労働者の大量移動を引き起こし、一時的に東南アジア各地での感染拡大を誘発するリスクが現実化してきている。帰国者による感染拡大を封じ込められるかが、これらの国では今後数週間の焦点となる。【3月27日 FNN PRIME】
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ミャンマー、カンボジア、ラオス・・・いずれも“貧困層が多く、医療体制のぜい弱な国”であり、いったん火が付けば鎮火は難しいでしょう。

【いまだ脆弱な国際協調体制】
上記事例にも見るように、適切な各国の対応に加えて、国際間の協調も不可欠です。感染拡大のほか、医療支援の面でも。

ただ、これまでのところ各国は自国のことで手いっぱいという感じで、国際的な協調体制が脆弱なままです。

****コロナ対策、先進国と途上国の格差大きく G20指導力にハードル****
20カ国・地域(G20)はテレビ会議形式の首脳会議の後で出した声明の冒頭で、新型コロナウイルス感染の世界規模の拡大に「団結の精神」で立ち向かう意思を示した。

保健や医療、財政のレベルに大きな差がある先進国と貧困国が同じ危機に直面するなか、指導力を発揮すべきG20には高いハードルが待ち受けている。
 
声明によると、関係国の財務相と保健相が数カ月のうちに合同会議を行い、世界保健機関(WHO)の報告の下で必要な医療、財政支援を協議する見通しだ。
 
声明で、G20首脳は「タイムリーで透明性ある情報の共有」の必要性を訴えた。欧州の先進各国でさえ感染者・死者数に開きが生じているなか、国境を越えて広がる「見えない敵」との戦いに情報共有が欠かせないことは間違いない。
 
しかし、感染拡大の原因をめぐって米中が批判し合う事態となっているほか、イランなど実態を隠蔽していると指摘される国もある。事実に基づく情報の共有を実現しなければ、収まった感染拡大の再発などで「いたちごっこ」が世界中で続く恐れもある。
 
また、声明はアフリカでの感染拡大を「深く懸念する」と表明した。アフリカでも貧しい国が多いサハラ砂漠以南では検査態勢が整っていない上、医療機関がごく少数しかない国もあるとされる。感染者・死者数の把握さえおぼつかないのが実情だ。
 
紛争や貧困に端を発する難民や避難民への対処も不可欠だ。シリア内戦では560万人が難民となり、ミャンマーの少数民族ロヒンギャは70万人以上がバングラデシュに避難した。リビアなどから密航船で欧州を目指す人の流れも絶えず、こうした集団では感染が一気に広がりかねない。
 
ロイター通信は当事国の政府筋の話として、通常のG20首脳会議でも意見の相違を埋めるために数カ月前から準備を行っているとし、テレビ形式の会議だけで細部を詰めた合意に達するのは難しいとの見方を伝えた。
 
差し当たり連帯を確認したが、G20が実効性ある対策を打ち出せるかは今後、どれだけ結束できるかにかかっているといえそうだ。【3月27日 産経】
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指導的な役割を果たすべきWHOにも批判が向けられる状況。

****WHO、新型ウイルスのパンデミックで再び矢面に****
国連の世界保健機関は病気が流行するたびに、過剰反応をした、あるいは逆に行動が遅過ぎたなど、批判を受けてきた。だが今回の新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)への対応ほど、強い非難にさらされことは過去にもほぼ例がない。
 
WHOは2009年のH1N1型インフルエンザ流行時、騒ぎ過ぎだと言われた。その5年後、アフリカ西部でエボラ出血熱の感染が拡大した時には、対応が遅過ぎると批判された。エボラ出血熱の流行では、1万1000人以上が亡くなった。
 
この反省から改革を行ったWHOは即時対応班を設置。コンゴ民主共和国でエボラ出血熱が2度拡大した際には、支援に当たってきた。
 
そのWHOが、昨年末中国・武漢で発生した新型コロナウイルスをめぐり、十分に迅速かつ強力な対応を怠ったとして、再び矢面に立たされている。
 
中国の怒りを買うことを恐れて警告を遅らせた、パンデミック宣言が遅過ぎた、一貫した国際対応の調整に失敗したとの非難を浴びている。
 
さらに、感染拡大を抑えるには公共の場の閉鎖の必要性が共通認識になりつつあるとみられる中、WHOはこういった措置に関しては指針を出していないに等しい。
 
専門家らは、中国の初期対応には多くの批判材料があるという点では意見が一致している一方で、中国が新型ウイルスの遺伝子情報を速やかに共有し、拡散を食い止めようと強硬な封鎖措置を講じたことなど、同国が正しく行ったことを評価したという意味では、WHOは間違っていなかったという声も多い。

「初期段階で中国の過ちを指摘して中国を孤立させていたら、失策だっただろう」と語ったのは、WHOの予防接種プログラムを統括するアン・リンドストランド氏。
 
中国政府の協力は必要不可欠だったとして、「テドロス事務局長は正しいことをした」という見方を示した。
 
テドロス事務局長も、自身とWHOとが中国の圧力に屈したとする指摘を一蹴し、WHOが加盟諸国と築いてきた協力関係を強調。
 
テドロス氏は今月の記者会見で「加盟国から何が来ようとも圧力とは受け取らない」と述べた。
 
一部からは、今回の新型ウイルス感染症のパンデミックにより、真逆の問題が浮き彫りになったのではないかという声も聞かれている。加盟国の方こそWHOからの圧力を感じる必要があるにもかかわらず、そもそもWHOにそれだけの力がない、という指摘だ。
 
スイス・ジュネーブにある国際開発高等研究所の世界保健センターのスーリー・ムーン氏は「テドロス氏とWHOはオーケストラを指揮しようと奮闘しているが、奏者らが協力していない」と話した。 【3月27日 AFP】
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イギリス元首相のブラウン氏は一時的に「世界政府」を設立するよう呼び掛けたとのことですが、もちろん各国政府は聞く耳など持たないでしょう。

****元英首相が「世界政府」を提案=新型コロナ、医療・経済危機に対応****
英国のブラウン元首相は世界の主要国の指導者に対し、一時的に「世界政府」を設立するよう呼び掛けた。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、医療・経済両面での危機に対応するためだという。英紙ガーディアンが26日に報じた。
 
報道によると、ブラウン氏は「これは一つの国で対応できる問題ではない。協調した世界的な対応が必要だ」と指摘。まずは医療で緊急対応が必要だとしながらも「医療に介入すればするほど、経済を危機にさらすことになる」と述べた。
 
その上で、強い権限を持つ世界的な「タスクフォース(特別作業班)」をつくり、ワクチンの共同開発のほか、中央銀行による金融緩和や政府による財政出動での協調、新興国からの資本流出の阻止などに取り組むよう求めた。【3月27日 時事】 
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正論ではありますが、可能性はゼロ。
ただ、そうした発想を持って、国際的な協調に尽力することは必要です。

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ブラジル  州政府の外出禁止措置に反対するボルソナロ大統領 国情を考えると配慮すべき点も

2020-03-26 23:13:17 | ラテンアメリカ

(新型コロナウイルスのパンデミックをめぐる記者会見中、マスクを目に当てるジャイル・ボルソナロ大統領(2020年3月18日撮影)【3月19日 AFP】)

【南米最大の感染国ブラジル 州政府による外出禁止措置】
新型コロナウイルスの感染は南米でも拡大していますが、最も多い感染者を出しているのがブラジル。

そのブラジルでは、サンパウロ州やリオ州で検疫のための外出禁止措置(クアレンテーナ)が実施されています。
その状況について、現地日系メディアは以下のように報じています。

****新型コロナウイルス=全国の感染者2千人超える=死者は12人増え、46人に=クアレンテーナは全国的規模に*****
新型コロナウイルスの感染者は、24日午後4時現在の保健省発表で2201人、死者は46人(サンパウロ州40人、リオ州6人)となり、最初の感染者確認から28日で感染者数が2千人を超えた。 
 
また、サンパウロ州やリオ州で検疫のための外出禁止措置(クアレンテーナ)を実施しはじめるなど、全国各州の州都で同様の対策をとっている。24日付現地紙、サイトが報じている。(中略)  
 
23日のサンパウロ州での死者は8人で、33歳の男性の他に男性が5人(68、75、76、77、78歳)と、女性が2人(80、88歳)となっている。同州での死者は同日までに30人を数えている。  
 
23日の段階の感染者が745人に達しているサンパウロ州では、サンパウロ市市長による市長令で、20日から、生活に必需のサービスを提供する店や分野を除く商店の営業が禁止されたのを皮切りに、24日からは州内全市でクアレンテーナが始まった。 
 
感染者数が23日の時点で233人となり、23日現在で4人の死者が出ているリオ州でも、24日からクアレンテーナが始まっている。  
 
クアレンテーナのやり方は各自治体によって多少の差があるが、基本、食品を売る店と薬局のような、必需サービス以外の商業活動などを止めることで、不特定多数の人が同じ空間に集まり、直接接触しての感染や飛沫感染などを起こすのを防ぐことが最大の目的だ。 
 
クアレンテーナは、健常者が感染者と接触する機会を減らし、感染の拡大を防ぐために、中国や欧米をはじめ、多くの国で実施されている。 
 
サンパウロ州のクアレンテーナは4月7日までだが、延長の可能性が高く、リオ州は無期限での実施となっている。特に、サンパウロ市やリオ市のように、ファヴェーラに代表される貧困地域でのコミュニティ感染が見られる地域では、急速な拡大が恐れられている。  
 
また、それ以外の各州と連邦直轄区など、ほぼすべての州都でも、20日以降、続々と市内での商業活動の停止などの措置を導入している。

それは、ショッピング・センターの営業を閉鎖するものから、バーやレストランも閉鎖するもの、実施期間も5日間から2週間まで、市の判断によって異なるが、日常の商業活動の機能は全国的にほぼ止まったものとなっている。  【3月25日 ニッケイ新聞】
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【外出禁止措置を「ヒステリー」「焦土作戦」と非難するボルソナロ大統領】
こうした自治体主体の外出禁止措置(クアレンテーナ)などの厳しい対応に反対しているのが、その極右的言動から「ブラジルのトランプ」とも称されるボルソナロ大統領です。

ボルソナロ大統領はかねてより、新型コロナをめぐる国内外の強硬な対応を「ヒステリー」と呼んでおり、会見時にマスクをもてあそぶ姿が話題になったりもしています。

****ブラジル政府にコロナ禍直撃、大統領は平然とマスクもてあそぶ****
ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領は18日、閣僚2人と上院議長が新型コロナウイルス検査で陽性だったと発表する中、記者会見でマスクをもてあそび、新型ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)をめぐる対応をまたもや「ヒステリー」と呼んだ。
 
極右のボルソナロ氏は、これまでも新型ウイルス危機に対するおざなりな対応を批判されてきたが、記者会見中にとんでもないやり方でマスクを使用し、ネット上で嘲笑の的になった。
 
ボルソナロ氏は会見中、マスクを何度も外したり、耳から垂らしたり、目に当てたりした。これはウイルスに感染してしまう間違った使い方だ。
 
あるツイッターユーザーは、この場面を収めた動画に「フェースマスクを使わない方法」と名付けた。
 
ボルソナロ氏は、世界で8700人超が死亡したパンデミックの「重大さ」を認める一方、「ブラジル国民には落ち着いてもらいたい。ヒステリーを起こさせるわけにはいかない」と述べた。【3月19日 AFP】
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そのボルソナロ大統領、今度は対新型コロナ隔離措置を「焦土作戦」とも形容して反対しています。

****対コロナ隔離措置は「焦土作戦」、ブラジル大統領が非難*****
ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領は24日、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を封じ込めるための各地の隔離措置を「焦土作戦」と呼び、経済を破綻させるリスクがあると非難した。
 
歯に衣着せぬ物言いで知られる右派政治家のボルソナロ氏は、サンパウロ州やリオデジャネイロ州が取った非常事態宣言のような措置に対し、人々の雇用を奪う誤った救命措置だと批判した。
 
ボルソナロ氏は国民に向けた演説で「一部の州や自治体は、交通機関の停止や店舗の閉鎖、一斉の外出禁止といった焦土作戦的な考え方を捨てる必要がある」「われわれは雇用や家計を守らなければならない」と語った。
 
さらに「もうすぐ事態は収束する。われわれは生きていかねばならないし、普段どおりに戻らねばならない」とも述べた。
 
この発言の直後、検疫・隔離の実施を求めて抗議するデモが発生。外出禁止令が出ている各地の都市ではボルソナロ氏の演説の放映中から、人々が窓辺で鍋やフライパンを打ち鳴らして抗議した。
 
ブラジルにおける新型ウイルス流行の中心地となっているサンパウロ州は同日、感染拡大を遅らせるため、部分封鎖を開始した。サンパウロ州の人口は、スペインとほぼ同じ約4600万人。
 
しかし、「熱帯のトランプ」の異名を取る大胆不敵なボルソナロ氏は、こうした極端な措置は不要だと主張している。

ボルソナロ氏はこれまでも新型ウイルス対策をめぐり、「ちょっとしたインフルエンザ」に「度を越した」反応をしていると述べたり、「ハイリスク群は高齢者なのになぜ休校にするんだ?」などと発言し、たびたび物議を醸してきた。
 
中南米最大の経済大国であるブラジルでは、新型コロナウイルスによるこれまでの死者は46人、感染が確認されたのは2201人と、同地域最大の被害が出ている。 【3月25日 AFP】
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本家トランプ大統領も当初、ボルソナロ大統領と同じような主張をしていましたが、一転して「戦時大統領」として矢継ぎ早の対策を実施、しかし経済優先の立場化から規制緩和を検討するなど、その対応は揺れていますが、「ブラジルのトランプ」の方は首尾一貫しています。

 

【大統領:経済破綻すれば「無秩序」に、略奪なども】
現在の世界の常識からすれば、ボルソナロ大統領の言動は「何言ってんだか・・・」ということになりますが、下記のように言われると「なるほどね・・・」と思うところもあります。

****コロナ対策で経済破綻すれば「無秩序」に、ブラジル大統領が警鐘****
ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領は25日、新型コロナウイルスの感染拡大を遅らせるために実施されている封じ込め措置について、無秩序と略奪につながる恐れがあると述べ、民主主義が危険にさらされていると警鐘を鳴らした。
 
極右のボルソナロ氏は、サンパウロ州やリオデジャネイロ州が取った企業やや学校の閉鎖といった新型コロナ対策について、中南米最大の経済大国であるブラジルの経済を破綻の危険にさらすものだと繰り返し非難してきた。
 
ボルソナロ氏は、首都ブラジリアにある大統領府の前で報道陣に対し、「企業は何も生産していない。従業員に賃金を支払うこともできない。そして経済が破綻すれば、公務員に給与を支払うこともできなくなる。われわれは無秩序に直面する」と語った。
 
さらに、「スーパーマーケットの略奪といった事態に陥る恐れがある。そこにはウイルスも残っているだろう。ウイルスに加えて無秩序にも直面することになる」「われわれは何をすべきか? 人々を職場に戻し、高齢者や健康上の問題がある人々を守る。それだけだ」と述べた。
 
ボルソナロ氏は、「これによってみなさんが堅く守っている『民主主義の規範』が揺らげばどうなるか?」「私がそうはさせない。心配無用だ」とも述べた。
 
ボルソナロ氏は、新型ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)に対する自身の取り組み方を、称賛するドナルド・トランプ米大統領のものになぞらえ、「われわれは同様の方針に従っている」と述べた。 【3月26日 AFP】

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無秩序状態、スーパーマーケットの略奪・・・・日本ではありそうもない状況ですが、世界有数の犯罪大国ブラジルとなると話は別です。

ただでさえ治安維持がままならないブラジルで、経済活動が停止して、その日暮らしの人々が生活の糧を失った場合、暴動・略奪の可能性も現実の問題となります。

****世界で最も危険な50都市ランキング****
2017年、ラテンアメリカはメキシコのCitizens' Council for Public Securityが毎年発表する世界で最も危険な都市ランキングに、依然として多くの都市がランクインするという不名誉な結果となった。

ランキングに掲載された50都市のうち、42がラテンアメリカの都市。ブラジルは17、メキシコは12、ベネズエラは5、コロンビアは3、ホンジュラスは2、エルサルバドル、グアテマラ、ジャマイカはそれぞれ1つがランクインした。

ラテンアメリカでの暴力は、大部分が麻薬密売と組織犯罪にかかわるもの。メキシコではここ数カ月、犯罪組織が分裂し、多くの血が流れている。状況は、政情不安、貧困、景気低迷からさらに悪化。汚職、警察による不正なども犯罪を助長している。

ランキングは人口30万人以上の都市が対象。紛争地域や調査不可能な都市の殺人件数は含まれていない。そのため、いくつかの都市はランキングに現れていない。また、一部、不完全なデータに基づいて殺人発生率を推定した都市もある。(後略)【2018年3月13日 BUSINESS INSIDER】
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****ブラジル、治安やや改善=昨年の殺人、11%減-NGO****
ブラジルのNGO「ブラジル治安フォーラム」は10日、2018年に同国で殺害された人の数が前年に比べ10.8%減少し、5万7341人となったと発表した。強盗件数も14.1%減の147万5978件。景気回復に伴い、治安が多少改善したことが浮かび上がった。
 
フォーラムのデリマ代表は治安悪化傾向に歯止めがかかったことを歓迎しながらも、「殺人は14年レベルまで減ったにすぎない。継続的に(件数を)減らす努力を怠ってはならない」と強調。政府に一層の治安対策強化を促した。
 
フォーラムによると、殺人発生率は人口10万人当たり27.5人。最悪レベルだった前年の30.8人は下回ったが、治安悪化が深刻なメキシコの23.1人と比べても依然として高水準で推移している。16年の日本の発生率は0.28人(世界銀行)だった。【2019年9月11日 時事】
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殺人発生率でみると、日本の約100倍、強盗などでは更に大きな開きがあります。
経済・市民生活の強制的停止の痛みは、真っ先にその日暮らしの貧困層を直撃します。失業者も急増します。
ブラジルのような犯罪が常態化した国で経済活動が止まると何がおきても不思議ではありません。

アメリカでも、治安悪化を懸念する人々が銃購入に殺到しています。

****米、新型コロナで銃の購入者急増 治安悪化を懸念****
新型コロナウイルスの流行が拡大する米国で、治安悪化を心配した人々が銃と弾薬を買いだめし、銃の売り上げが過去2週間にわたり急増している。
 
オクラホマ州タルサの銃販売店を経営する男性はAFPの取材に対し、「売り上げが約800%増えた」と説明。購入者の大半は初めて銃を所持する人々で、あるものは何でも買っていったと語った。
 
多数の感染者が出ているワシントン州で銃販売店では、開店の1時間前から並ぶ客もいるという。経営者の女性は、いつもなら客入りの良い日で20〜25丁が売れるが、「きょうは150丁ぐらい売れそうだ」と話した。
 
女性によると、ショットガンとその弾薬、さらに拳銃用の弾薬が全国的に品薄になっている。女性の店でも客の大半が初購入者で、性別や年齢、さらには黒人やアジア人、インド人、ヒスパニックといった人種にかかわらず、「誰もが銃を買い求めている」という。
 
ユタ州に本社を置く銃メーカーで、主に半自動小銃AR15を製造しているデルタ・チーム・タクティカルのマーケティングディレクター、ジョーダン・マコーミック氏によれば、同社は需要に応えるために休みなしに製造を続けている。
 
同氏は、封鎖措置を導入する州が増える中、銃販売店の休業が相次ぐのではないかという懸念が販売を後押ししていると説明。「多くの人は自衛したいと考えている」と語った。

「失業状態が続けば、略奪が起こるかもしれない。人々は、自分や財産、家族を守る力を持ちたいと思っている」(マコーミック氏) 【3月26日 AFP】
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もっとも、戒厳令下のように軍・警察が街中に展開するような状況になれば、犯罪も普段より少なくなるのかも。

よくわからないところが多々ありますが、ブラジルのような国にあっては、日本とは異なる配慮も必要になるのかも。

非常事態宣言のもとでの外出禁止や経済活動停止の影響を受ける貧困層や失業者に、生きていけるような対策がとれれば問題も大きくならないのでしょうが、ブラジルでそれができるかどうか?

 

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ロシア  実際の感染は公式発表をはるかに上回る? そのなかで改憲国民投票強行の姿勢だったが・・・

2020-03-25 23:18:51 | ロシア

(病院を訪問したプーチン大統領【3月25日 ロイター】 もっとも、プーチン大統領は過去に“影武者”計画があったことを認めていますので(実際には使ってはいないそうですが)、ひょっとしたら影武者かも)


【モスクワ市長、市内の感染者数は公式発表をはるかに上回っているとの認識】
世界各地で猛威をふるう新型コロナ、これまで感染爆発はなんとか持ちこたえてきた日本も、今日東京で新たに40人の感染者とか聞くと、この先の不安も感じます。

そうしたなかで“不思議に”感染者が少ないのがロシア。
これまで感染者495人、死者1人とか・・・本当かね? トルコメディアは以下のようにも。

****【新型コロナウイルス】 ロシアで事実隠ぺいか****
ロシアで新型コロナウイルス感染症の真の次元が隠蔽されており、症例が「肺炎」と記録されていると主張された。
 
ロシア医師組合連合のアナスタシア・ワシリエワ会長は映像を公表し、同国の新型コロナウイルス感染症に関する状況に見解を述べた。

新型コロナウイルスの真の次元が隠蔽されていると主張したワシリエワ会長は、医師たちは実際の状況を隠ぺいし、保護具が不足していることに関して沈黙を強いられている。我が国が危険にさらされている。これは当局の愚行である」と述べた。

医師たちは保護具を身に着けずに患者の治療に当たることを余儀なくされていると主張したワシリエワ会長は、
「医師にウイルスに対して全世界で使用されている保護具が配布されていないことは、国民に対する犯罪である」と見解を述べた。【3月23日 TRT】
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医師組合連合の会長の発言以上に重みがあるのが、下記のモスクワ市長のプーチン大統領への発言

****モスクワの新型コロナ感染は見かけよりはるかに深刻=市長****
モスクワのソビャニン市長は24日、病院の視察に訪れたプーチン・ロシア大統領に対し、市内の新型コロナウイルス感染者数は公式発表をはるかに上回っているとの認識を示した。

市長は大統領の側近。広大なロシア国内で新型コロナがどの程度拡大しているか完全に把握できていない現状が浮き彫りとなった。

これまでにロシアで確認された感染者は495人、死者は1人で、西欧主要国の死者・感染者をはるかに下回っている。

大統領は先に事態は制御下にあると発言したが、一部の医師は公式発表がどの程度現実を反映しているかを疑問視している。

政府は24日、拡大抑制策としてナイトクラブ、映画館、児童向け娯楽施設を閉鎖した。

ソビャニン市長は大統領との会談で、「深刻な事態が進行している」と発言。感染の実数は不明だが、急速に増加しつつあると述べた。【3月25日 ロイター】
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市長が公式発表数字を否定するというのも珍しい話ですが、上記記事の印象ではモスクワでは相当な感染拡大が懸念される状況にあるようにも思えます。

ただ、ロシアメディアによると、モスクワ市長は“感染者数は500人に達する恐れがある”としていると報じており、そのくらいの数字なら現在の世界の状況からすれば“制御下にある”と言えるレベルかも。

****ロシア 全土で新たに57人が感染****
ロシア全土の14の地域で24日はこれまでのところ新たに57人の新型コロナウイルス(COVID-19)の感染例が確認されている。ウイルス対策緊急本部が発表した。

これにより、ロシアで確認された感染者数は495人にのぼった。また24日にかけての一昼夜で22人が完治し、退院している。

中でも最も感染拡大が進んでいるのは首都モスクワ。同市のソビャニン市長は感染者数は500人に達する恐れがあるとし、感染者の大多数は外国から入国した市民でウイルス検査を受けようとはせず、帰国後、そのまま自宅ないしは郊外のセカンドハウスで自主的に隔離状態にあるとの見方を示している。

ソビャニン市長はプーチン大統領に健康問題について報告した中で、今週末までにモスクワでは1日あたり1万3千件のウイルス検査を実施することをあきらかにした。【3月25日 SPUTNIK】
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【プーチン政権 求心力が低下する前に、改憲国民投票強行 プーチン氏の5選も可能に】
実際のところ、どの程度感染が拡大しているかはわかりません。

そうした状況で、政権は憲法改正の是非を問う国民投票を予定通り4月22日に実施するようです。
例の、プーチン大統領の5選も可能にする改憲です。

次期は憲法上立候補できないプーチン大統領が、憲法改正で大統領権限を弱め、別の役職について院政をしくのでは・・・と、当初は見られていましたが、急にテレシコワ下院議員(懐かしい女性ですね。人類初の女性宇宙飛行士です)の追加改憲案で、プーチン大統領の5選も可能とされています。

テレシコワ議員が突然勝手に提案することはありませんので、当然にプーチン大統領のシナリオに沿った提案でしょう。

改憲後、実際にプーチン大統領が次期大統領選に出馬するかどうかは明らかにされていません。

****露政権、コロナ横目に改憲国民投票強行へ 求心力低下に危惧****
ロシアのプーチン政権は、国内で新型コロナウイルス感染が広がりつつある中でも、憲法改正の是非を問う国民投票を予定通り4月22日に実施する構えだ。

政権にとって現状での投票実施は投票所で感染が拡大して批判を招いたり、投票率が低下したりするリスクとなる。

それでも政権が国民投票を急ぐ背景には、露経済が今後さらに悪化するとの観測も出ている中、求心力を失う前に手続きを済ませ、改憲の正当化と既成事実化を図る狙いがある。
 
1月にプーチン大統領が提出した改憲法案は既に議会で可決され、国民投票で投票者の過半数が支持すれば発効する。政権側は改憲の正当性を示すために有権者の「6割投票・7割支持」を目標にしているとされる。
 
一方、新型コロナウイルスの感染者数はロシアでも増大。3月16日は100人以下だったが、22日には400人を超えた。検査精度の低さや検査態勢の不備も指摘され、実際の感染者数はもっと多いとみられる。
 
政権側は感染予防対策として大規模イベントを禁止するなどしてきた。それにもかかわらずプーチン氏は17日、国民投票を4月22日に行うとする大統領令に署名。

プーチン氏は「(実施は)状況が許せばだ」と延期の可能性も示唆する一方、「投票所の各記入台の距離を取るなどの予防措置を講じる」とし、予定通り実施したい考えを示した。
 
現在の状況で国民投票を実施した場合、感染を恐れる有権者が投票を控えることが想定され、高い投票率での新憲法成立を望む政権にとっては痛手となる。
 
それでも政権が国民投票を急ぐ背景には、プーチン氏の5選を可能にする改憲への批判的世論が強まる前に改憲を既成事実化する思惑があるとみられている。
 
さらに今月、原油協調減産をめぐる露・サウジアラビア間の協議が決裂し、露通貨ルーブルは1米ドル=60ルーブル台から約80ルーブルに急落。今後、経済状況や家計が悪化して国民からの求心力が弱まるとの危機感も政権を焦らせる要因となっている。
 
露経済紙ベドモスチは19日付の社説で、4月22日の国民投票実施を決めた政権を「ロシアでは政治が人々の安全より重要だということを示した」と揶揄(やゆ)した。
 
ただ、感染がさらに拡大した場合、国民投票が延期される可能性も残っている。露中央選挙管理委員会は3月末にも実施か延期かを最終判断する方針だ。【3月25日 産経】
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「6割投票・7割支持」・・・投票する者はおそらく多くが支持するでしょうから7割支持は問題ないでしょう。
問題は6割投票です。

これまでの選挙でも、政権はこの投票率を上げることに躍起になっていましたので、新型コロナ蔓延となると・・・・どうでしょうか、政権としても判断が難しいところでしょう。

【政権側、ニセ野党演出で反政権票分散を目論む?】
ロシアでは、今年9月には統一地方選、来年9月には下院選が予定されています。

政権側は、過去の選挙でもわざわざ(政権側を脅かすようなものにはならない)対立候補擁立を後押しして、国民の選挙への関心を高め、いかにもまっとうな選挙戦が行われたような形を演出するといったことをやってきましたが、今後の選挙においても似たような疑似野党をつくるようです。反政権票分散の目論見とも。


****ロシアで新党乱立、ニセ野党か 「反政権票分散」の見方****
ロシアで新たな政党をつくろうとする動きが相次ぎ、この半年での届け出が30件を超えた。地元有力メディアは、新党を乱立させて「反政権票を分散させる」とする大統領府関係者の発言を報道。来年9月に下院選を控え、政権側による選挙戦略ではないかとの見方が広がっている。
 
モスクワで10日、環境政党「緑の選択」の設立総会があった。党首に選ばれたルスラン・フボストフ氏(35)は、地球温暖化の抑止などを掲げ「下院選で議席をとり、環境問題で波を巻き起こす」と訴えた。夏までに政党の認可を受け、今年9月の統一地方選にも候補者を擁立するという。
 
同党は、環境保護を前面に打ち出して欧州で存在感を増す「緑の党」を連想させる。だが、ロシアの主要独立系メディアは「緑の党のイミテーション(偽物)」と呼び、政権の支援を受ける官製野党の一つだと伝えている。
 
ロシアでは、政権による野党勢力への締め付けが続いており、新党設置には高いハードルが課されている。モスクワの選挙監視団体「ゴロス」のアルカジー・リュバレフ氏は「新党設立には最低でも8カ月はかかる」と指摘。9月の統一地方選までに認可された場合は、政権の関与があった疑いが強いとみる。
 
有力紙ベドモスチ紙は、「大統領府は多数の新党を設立し、反政権票を分散させようとしている」と語る大統領府関係者の発言を報道。

他の大手紙も「緑の選択」を含む複数の新党の名前を挙げ、政権に批判的な都市部の中間層をひき付け、既存野党の得票を減らす狙いがあるとしている。
 
プーチン大統領は、大統領任期を2期までとした憲法改正案で、自身は任期が終わる2024年以降も大統領選に出馬できる例外規定を設けた。去就は「国民の気持ち次第」と含みを持たせているが、何らかの形で権力を維持するためにも、議会での与党の過半数維持が必須になっている。【3月22日 朝日】
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政権側が関与するのは、政権を脅かすような存在にはならない「野党」であって、アレクセイ・ナワリヌイ氏のような脅威となる可能性がある存在は徹底した封じ込めが行われます。

****反プーチン運動再燃も  ロシア改憲案、大統領5選可能に*****
(中略)「反プーチン運動」の指導者の一人で15年2月に殺害されたネムツォフ元第1副首相を追悼する行進が今年2月29日にモスクワであった。

2万人以上に達した参加者からは今回の憲法改正案について「一人の権力者が勝手に変えてよいのか」との批判の声が上がった。

モスクワでは10日、新型コロナウイルスの感染拡大を警戒して、大規模な集会の開催が禁じられた。

だが、政権の長期化が経済の停滞や欧米との対立を招いたとの不満は都市部の有権者を中心に根強く、市民が「反プーチン運動」に再び動く可能性はある。

参加者と治安部隊の衝突が繰り返される事態が再現されれば、プーチン氏が24年に向けて最も重視する「安定」も損なわれかねない。【3月13日 日経】
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反プーチン運動再燃についていえば、新型コロナは政権側に集会禁止の理由を与え、感染の不安が参加者をひるませるということで、香港の反中国デモ同様に、政権側に“吉”となっています。

もちろん対応に失敗して感染が拡大すれば、“凶”に転じることも。

 

【追加】

ブログをアップしてニュースを確認したところ、改憲国民投票を延期したとの記事がありました。

ときどき、アップ直後に状況が変わっているということがあります。

 

****露、新型コロナで改憲国民投票延期 政権批判リスク考慮****
ロシアのプーチン大統領は25日、国営テレビで演説し、新型コロナウイルス対策を理由に、憲法改正の是非を問う国民投票を予定日だった4月22日から延期する必要があると表明した。ロシア経済の悪化観測が出ている中、プーチン政権は求心力が低下する前に国民投票を済ませて改憲を果たす構えだった。しかし国民投票を通じて感染が拡大した場合、政権批判の強まりを招くなど、政権にとってより痛手になると判断したもようだ。
 

プーチン氏は「最優先されるのは国民の健康だ」とし、国民投票の延期の必要性を強調。新たな期日は専門家の見解や感染状況に応じて決定されるとも述べた。露中央選挙管理委員会も延期に同意した。(中略)


露政権は改憲の正当性を示すため、国民投票では「有権者の6割投票、7割支持」を目指してきたとされる。しかし国民が感染拡大に神経質となっている中で国民投票を強行した場合、投票率や支持率が低下する恐れがあり、プーチン氏はそうしたリスクを考慮したとみられる。【3月25日 産経】

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新型コロナでポピュリズム・分断の政治は変わるのか? 「戦時大統領」トランプ氏の動向

2020-03-24 23:47:20 | アメリカ

(暴落したアメリカ株価 【3月24日 NHK】 株価暴落・大量失業の危機のなかで「戦時大統領」をアピールするトランプ大統領の再選は?)

【新型コロナでポピュリズム台頭・自国第一主義の流れが変わるか?】
新型コロナへの対応は、防疫の面でも、経済的影響の面でも、一国対応では限界があり、国際的協調が必要とされます。ただ、現段階では各国がそれぞれの事情に応じて個々バラバラに対応しているようにも見えます。

国内政治への影響も、各国は防疫に手いっぱいで、まだそれを云々する状況でもありません。

新型コロナの拡大はまだ続いていますので、その政治面における今後の影響を見通すことは現段階では難しいですが、自国第一主義、ポピュリズムの台頭、国内の分断といったこれまでの政治傾向に大きな影響をもたらすことは間違いないでしょう。

****新型コロナはポピュリズムを断ち切るか**** 
新型コロナウイルスの経済的インパクトは劇的だが、世界の政治に対するこのウイルスの影響は、さらに大きいかもしれない。

まず、一部諸国が比較的早期に回復し、他の諸国がより長期的でより深刻な社会的・政治的危機に直面することで、世界のパワーバランスが大きく変化する可能性がある。

しかし今回の危機は、各国の国内政治にも影響しており、この点での変化が、最も長期にわたる影響を及ぼす公算が大きい。 
 
今回のパンデミック(感染症の世界的大流行)が起きるかなり以前から、しばしば独裁的指導者の下で進行したポピュリスト(大衆迎合主義者)的動きが、エスタブリッシュメント(既存勢力)による中道派の政党や思想と対立する状況が、世界各地で生じていた。

1990年代から国際的な中心課題となってきたグローバル化支持の自由貿易政策が、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)、欧州連合(EU)などの国際機関とともに、ポピュリストらの主要な標的になってきた。 
 
パンデミックが、技術的専門性と多国間協調主義を支持する新たな動きを誘発するのか、それとも、冷戦後の世界の「新自由主義的秩序(ネオリベラル・オーダー)」などと批判勢力が呼ぶ状況の後退を加速させるのかが、現在問われている。 
 
新型コロナウイルスのような問題に直面する状況下では、既存勢力による政治や国際的政策の立案に立ち戻るべき明確な理由が存在する。パンデミックに伴う医療および経済面の問題は、熟達した指導者や国際協調を必要とする。

感染症の世界的拡大とその経済的影響はどちらも、各国政府が単独で対処できるものではない。1つの国が流行の抑制に成功したとしても、隣国が失敗すれば、再流行が起きる。そして、世界の貿易慣行や金融市場の混乱に対しては、世界経済を立ち直らせるための協調行動が必要になる。 
 
しかし、これまでのところ、新型コロナウイルスは世界の指導者間の協力を促しているようにも、国際機関の尊重を促しているようにも見えない。

パンデミックによって、米中間の溝は広がっている。EUは迅速に動いて、ユーロ圏加盟国の財政赤字に関する規制を解除したものの、欧州の各国政府は現段階ではあまり調整せず、自国の問題への対応にほぼ集中している。

世界保健機関(WHO)は、緊急会合から台湾を除外したり、中国の新型コロナウイルス対応を称賛したりするといった措置のおかげで、中国政府の代弁者のように見えてしまっている。

主要7カ国(G7)も主要20カ国・地域(G20)も目立った役割を果たしておらず、IMFと世界銀行も世界的な対応の最前線には立っていない。主に対応策を取りまとめているのは、各国政府であり、国際機関ではない。 
 
こうした状況は、この前例なき世界的危機の展開に伴って、全く変わる可能性がある。だが、しばらくは現在の流れが続く公算が大きい。

ユーロ圏は一部例外となるものの、国からの融資や救済を求める企業が急激に増えることで、国の政治家の力が高まるだろう。それはまた、外国で発生した災難や危機から自国を守る存在として、有権者が国の指導者に目を向けるのを促すことにもなるだろう。 
 
しかし今回の危機の側面には、この政治的トレンドを押し戻すものがある。すなわち、多くの国々には、この種の衝撃を乗り越えるのに必要とされる資源が不足しているのだ。

パンデミックにより、エジプトやパキスタンといった国々の経済活動が損なわれれば、IMFや世界銀行といった国際的な機関や組織が舞台の中心に戻ってくる公算が大きいだろう。 
 
国際貿易システムはかつてない圧力に直面することになるだろう。WTOは現在のような時代を考慮して形作られていなかった。個々の独立国家が主導する経済回復期には、苦境にある同機関は一層圧力を受けることになるだろう。

貿易をめぐる政治力学の持続的変化の可能性を軽視すべきではない。中国が発生源の新型コロナウイルス、それに続くリセッション(景気後退)とサプライチェーン(供給網)の寸断は、多くの国において、保護主義と自給自足を唱える政治を支持する方向へ有権者を向かわせるかもしれない。

国家の指導者たちが、重要な医療、情報技術、防衛サプライチェーンを確保するため、重要な工業製品、医薬製品を自国で生産するのに必要となる保護主義的政策の経済コストを正当化することになれば、自由貿易の大義は深刻な敗北を喫することになる。 

世界は、今年の米大統領選をこれまでの以上の関心をもって注視することになる。世界で最も知られた反既存勢力のポピュリストであるドナルド・トランプ氏に対する米有権者の審判は、実質的な意味と象徴的な意味の双方で世界の政治に影響をもたらすことだろう。

ジョー・バイデン氏が勝利すれば、米政府の重点は多国間主義、グローバリゼーションというポスト冷戦プログラムの側に再び移ることになる。
 
象徴的な意味において、トランプ氏の敗北は世界中の政治家に対し、ポピュリストの人気が既にピークを打った可能性を示唆するだろう。われわれは、西側の別の地域で見られるような、よりコンセンサス重視の中道派政治・政策への移行を目の当たりにするかもしれない。
 
一方、トランプ氏が勝利した場合、世界に対し、分断をもたらす政治がまだ終わっていないことを示す極めて強いシグナルになるとみられる。トランプ氏の(2016年の)当選は古い国際体制に対して衝撃だった。パンデミック後にトランプ氏が再選されれば、一層大きな意味を持つことになろう。【3月24日 WSJ】
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【「戦時大統領」をアピールするトランプ氏】
上記にもあるように、アメリカ大統領選挙でトランプ氏が再選されるのかどうかが、これまでにも増して注目されるところです。

そのトランプ大統領は、国内感染の拡大という現実を目にして、当初の新型コロナに対する楽観論から一転して「戦時大統領」をアピールして危機を克服する強い指導者のイメージを演出しています。

****トランプ氏「私は戦時大統領」 コロナ楽観論を一転封印****
米国で新型コロナウイルスの感染が広がる中、トランプ大統領が連日のようにホワイトハウスで記者会見に臨んでいる。当初繰り返していた「春にもウイルスは消える」の楽観論から一転、「戦時大統領」を名乗って対策を訴える内容が多い。

背景には、11月の大統領選に向けた選挙集会が開けないなか、メディア露出を通して支持者にアピールする狙いがありそうだ。
 
トランプ氏は20日、今週に入って連日となる会見を開いた。前日に続いて、マラリア用の治療薬が新型コロナウイルスについても効果がある可能性に言及し、「(形勢を逆転する)ゲームチェンジャー」になることへの期待を語った。

ただ、19日の会見では「ほぼすぐに使えるようにする」と見通しを語ったものの、同席した担当部局の幹部は「間違った期待を提供しないことが大事」と述べ、安全性を確認した上での認可には時間がかかると修正した。両日とも、質疑を含め約1時間にわたってCNNなどが中継を続けた。
 
トランプ氏は最近まで、「うつりやすいウイルスだが、我々は素晴らしく制御できている」(15日の会見)などと楽観論を繰り返してきた。選挙集会でも「理論上は4月までに、少し暖かくなればウイルスは奇跡的に消え去るようだ」(2月10日)と述べ、危機対応への政権批判は民主党の「でっち上げ」(同28日)とまで主張していた。
 
ところが、米国内の感染者が一日に1千人規模で積み上がり、株価の急落にも歯止めがかからなくなると、言いぶりも変わった。16日の会見でトランプ氏は初めて感染拡大を制御できていないと認め、落ち着くのは「7月、8月かも」と長期化の可能性にも言及した。
 
翌日から強調し始めたのは、「リーダーシップ」だ。17日は「世間でパンデミックと呼ばれるずっと前から、私はパンデミックであると感じていた」と発言。18日は「私は常に中国ウイルスを深刻に受け止め最初から素晴らしい仕事ぶりだった」とツイートしたうえで、会見では「見えない敵」との「戦争」が続いており、「自分のことを戦時大統領だと捉えている」と述べた。
 
会見を続ける理由の一つは、選挙集会が開けないことだとみられる。トランプ氏は数千人の支持者が参加する集会を好み、その熱気を選挙運動の原動力としてきた。

しかし、新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、開催はままならない。そこで、テレビ中継される記者会見を通じて、支持者にアピールする作戦を取り始めたようだ。トランプ氏の支持者たちに影響力が大きい保守系メディアも、歩調を合わせるかのように楽観論から転換した。
 
保守系のフォックスニュースは番組で「最悪でも(被害は)インフルエンザ」(3月6日)、「コロナウイルスを知れば知るほど懸念は小さくなる」(同8日)などと伝えていたが、17日には同じ出演者が「新ウイルスへの免疫はなく未体験のパンデミックだ」と発言。最近の同局では「(トランプ氏ほど)迅速に動いた大統領はいない」(人気ホストのハニティ氏)などとトランプ氏をたたえる場面が多い。
 
ただ、会見でトランプ氏が発する情報が広く米国民に信頼されているとは限らない。公共ラジオNPRの調査(17日公表)では、トランプ氏のコロナウイルスに関する情報を「信用できる」「とても信用できる」と答えたのは37%にとどまり、「あまり信用できない」「全く信用できない」は60%。

18日の会見で記者から「信用度がとても低い」と問われると、トランプ氏は質問を遮り、一方的にしゃべり始めた。【3月21日 朝日】
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トランプ大統領の新型コロナ対応への国民評価については、上記記事はネガティブな側面を取り上げていますが、国民評価が急上昇しているという調査もあるようです。

*****トランプ氏、新型コロナ対応支持が55%に上昇****
米ABCニュースなどが20日に公表した世論調査によると、トランプ大統領の新型コロナウイルスへの対応を支持する人は55%に上り、前週から12ポイント上昇した。危機時の指導者として一定の評価を得たものとみられる。
 
世論調査は18、19両日に行われ、対応について支持が55%、不支持が43%だった。11、12両日の調査では支持43%、不支持54%で、1週間で見方が逆転した。
 
トランプ氏は当初、感染状況について楽観的な見方を繰り返し、対応が後手に回ったと批判されたが、最近は経済対策などに注力する姿勢を打ち出している。「私は戦時下の大統領だ」と語り、国民に結束を促す手法が奏功した模様だ。
 
一方、フランスのテレビ局LCIが報じた世論調査では、マクロン大統領の今月の支持率が2月と比べ13ポイント高い51%となった。仏政府の新型コロナウイルス対策が評価されたとしている。ドイツ公共放送ARDによると、19日公表の世論調査で、65%が独政府の対策を評価していると回答した。【3月22日 読売】
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一般的に、政治指導者にとっては、戦争などの危機的状況はリーダーシップを高め、国民の求心力を強めるうえでは格好の手段でもあります。

上記【読売】の紹介する調査結果は、そうした側面を如実に物語るものでしょう。
あの、自己主張が強い国民性のイタリアですら、危機的状況に際して、国民の多くが政府方針に不満を表すことなく従っています。危機感が強まれば、「この状況を何とかしてほしい」ということで、政府の役割・指導者の指導力への国民の期待が高まります。

【経済優先のトランプ氏 その結果は?】
ただ、トランプ大統領など指導者にとって問題なのは、新型コロナという相手が「未知」のもので、その破壊力がよくわからないことです。

「戦時大統領」として求心力が高まっても、相手が強すぎ、敗色濃厚となれば、逆に「敗戦」の責任を問われることにもなります。

いまのところ、アメリカは新型コロナの勢いに劣勢にまわっています。

“米、新型コロナ感染3.3万人・死者400人に倍増”【3月24日 ロイター】
“米国の1日の死者、100人超 医療現場で募る危機感”【3月24日 CNN】
“NY州の感染者2万人超す 全米の過半、外出制限拡大”【3月24日 共同】
“病院に不可欠な物資、底を突くまで「あと約10日」 米NY市長”【3月23日 AFP】
“NYで移民労働者ら解雇の嵐”【3月24日 産経】

犠牲者は急増し、市民生活は大きく制約され、経済への影響は甚大となることが予想されています。

この状況で、トランプ大統領は外出規制を緩和し、経済回復を促す方向を検討しているとのこと。

****経済優先のトランプ氏、外出自粛緩和へ 政権内にも異論****
トランプ米大統領は23日の会見で、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、米国民に対する外出自粛などの要請を近く緩和する考えを示した。企業活動を早期に再開させ、経済の回復を目指すためだが、米国内では感染者が爆発的に増えているだけに、政権内でも異論が出ている。
 
トランプ氏は会見で「我々の国に活動停止(シャットダウン)は適していない」と主張し、「(感染拡大の)問題そのものより、治療が悪いものであってはいけない」と強調。感染拡大封じ込めより経済活動を優先する姿勢を打ち出し、現在は15日間にわたって求めている外出自粛や、10人以上のグループで集まることを避けるなどの指針を「そんなに遅くない時期」に見直したいと述べた。
 
トランプ氏はまた、「医療関係者に任せると、シャットダウンを続けるべきだというかもしれない」と語り、医療の専門家は感染拡大防止策を優先させるべきだとしている、と認めた。米国の感染問題で陣頭指揮をとる国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長からも「同意を得ていない」と語った。連日、トランプ氏の会見に同席していたファウチ氏はこの日、欠席した。
 
米ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター(CSSE)によると、米国の感染者数は23日夜までに4万3817人に達し、死者数は557人にのぼる。確認された感染者数は約1週間の間で約10倍と爆発的に増えている。米メディアによると、50州中13州で実質的な外出禁止などの措置を取っている。
 
トランプ氏は16日、「米国に対する大統領のコロナウイルス・ガイドライン」を発表。感染拡大を遅らせるため、自宅で仕事や勉強を行う▽10人以上のグループで集まることを避ける▽バーやレストランなどで食事をすることを避ける――などを、米国民に対して15日間にわたって求めた。トランプ氏は当時、感染拡大が7月か8月ごろまで続く可能性を示していた。【3月24日 朝日】
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この流れに抗うような方針が実際にとれるのか、実施した場合にどのような結果につながるのか・・・「戦時大統領」の評価はそのあたりで大きく変わりそうです。

【埋没する民主党・バイデン氏】
一方の民主党・バイデン氏の方は、今のところは新型コロナで埋没した感も。

****米民主バイデン氏、新型コロナで影薄く 資金集めにも影響不可避****
米大統領選の民主党候補指名で優位を固めつつあるバイデン前副大統領は、選挙活動拠点にテレビスタジオを設けて国民に直接語り掛ける戦略を開始したが、新型コロナウイルス危機で今のところ注目を集めるには至っていない。

23日午前にこのスタジオから初めて演説したものの、主要なケーブルネットワークのニュースはニューヨーク州のクオモ知事による新型コロナ会見の内容を伝えた。

ほんの1週間前はバイデン氏とトランプ大統領による11月の大統領選に向けて機運が盛り上がるかに見えていたものの、新型コロナのパンデミック(世界的な大流行)で影が薄くなっている形だ。

対照的に、トランプ大統領は新型コロナに関する日々の会見でメディアに注目されている。

バイデン氏はデラウェア州の自宅から記者や寄付者、アドバイザーとの電話会見を行っているものの、数日間にわたって公開イベントが開かれていないため、テレビからはほとんど姿を消している状態だ。

バイデン氏の支持者でパラマウント・ピクチャーズのトップを務めていたシェリー・ランシング氏は、あらゆる資金集めが一段と困難になるだろうと指摘。新型コロナで人々が慈善的な寄付に目を向けるほか、景気低迷で人々の所得が打撃を受けるためだ。

また、人が集まるイベントを開けないことのデメリットも強調。ランシング氏が自宅で以前に開いた資金集めイベントでは数十人がバイデン氏との写真を撮るために列をなしたとし、「対面の接触に置き換われるものはない」と述べた。【3月24日 ロイター】
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米議会における共和・民主両党の対立については、ニューヨーク州のクオモ知事が「今は共和党だの民主党だの言っている場合ではない。我々はひとつだ!助け合わなければ解決できない!」とアピールしていますが、“米上院の新型コロナ法案、民主党が阻止 採決へ協議継続”【3月23日 ロイター】といった話もあって、当然ながらそう簡単ではないようです。

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紛争地域では新型コロナの「効用」で戦闘の停止も 懸念される難民キャンプやガザ地区の状況

2020-03-23 21:25:28 | 疾病・保健衛生

(トルコ国境付近にあるシリア難民キャンプの子供たち【2018 年 4 月 12 日 WSJ】 こういう環境でウイルスが蔓延すれば、その結果は悲惨です)

【リビア 新型コロナに備え、戦闘の一時停止】
新型コロナウイルスは、日本だろうが、欧米だろうが、アフリカ、あるいは南米アマゾン奥地だろうが、おかまいなく広がってきます。 紛争地でも。

ほんの10日ほど前までは、内戦が続くリビアでは、紛争のせいで外部からの流入者が少ないため、ウイルスも入ってこないと言う人々もいました。

****内戦で「ウイルスフリー」? リビアに思わぬ恩恵、感染者ゼロ****
新型コロナウイルスの感染は現在100以上の国と地域に広がっているが、内戦が続くリビアでは、国際社会との「隔離」がウイルスの脅威を和らげているかもしれないと考える国民が多くいる。

保健当局は人混みを避けるよう勧告しているが、若者たちは内戦の意外な肯定的な側面に気付き、イタリアのサッカーセリエAの試合を見ようと首都トリポリのカフェに集まっている。

トリポリで唯一機能している空港が閉鎖されており、外部世界とのつながりも限られていることから、多くの近隣諸国とは異なり、リビアはこれまでのところ新型コロナウイルスの影響を和らげられている。
 
カフェのテレビでサッカーを見ていた大学生は「リビアにいる自分たちはウイルスから保護されている。首都は包囲されているし、陸路や空路も閉ざされている」と持論を展開し、「恐れるべきものは何もない」と語った。
 
一方、医薬品の貿易会社を営む男性は、衣料品マスクや手袋といった衛生用品の在庫が不足していると語った。
 
新型コロナウイルスの影響が拡大しているイタリアと地中海を挟んで向かい合うリビアだが、当局によると同国ではこれまでのところ感染者は確認されていない。【3月13日 AFP】
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つい目と鼻の先に新たな震源地イタリアがあって、ウイルスフリーなんてあるだろうか?と疑問にも。
武器・弾薬の調達、難民の流入など、いくら紛争地リビアでも、それなりの人の移動はあります。
感染者がいないのは、単に検査体制がとられていないからという理由ではないでしょうか。

万一、リビアのような紛争地にウイルスが入ると、効果的な防御対策が取れないだけに悲惨な状況ともなりかねません。

統治者も、そのあたりの危機感はあるようです。

****リビアが非常事態宣言 暫定政権、空港など閉鎖*****
内戦で国家分裂状態にあるリビア暫定政権のシラージュ首相は14日、新型コロナウイルスを巡り非常事態を宣言した。国内で感染者は確認されていないが、ロイター通信によると予防的措置として16日から全ての港や空港を閉鎖するという。
 
シラージュ首相は大学や学校を2週間休校にすると表明。結婚式場や人が集まるカフェも休業にするとしている。【3月15日 東京】
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毎日が非常時のリビアにあって「非常事態宣言」って何だろうか?と突っ込みたくもなりますが、賢明な判断でしょう。

更に、新型コロナの脅威に備えて「停戦」も合意されたようです。

****分裂のリビア 新型コロナウイルスで戦闘一時停止に同意 *****
(中略)リビアでは、独裁政権が崩壊したあと国が2つに分裂し、去年4月以降、西部の暫定政府が拠点を置く首都トリポリ周辺に東部の軍事組織が攻め込み、激しい戦闘が続いてきました。

新型コロナウイルスへの感染がリビアの周辺国でも広がる中、国連などは対策を迅速に進めるため、戦闘の停止を呼びかけてきましたが、西部の暫定政府と東部の軍事組織は、21日にかけて相次いで声明を出し、戦闘の停止を受け入れる意向を示しました。

国連の報道官は21日、それぞれの声明を評価したうえで「人道目的での戦闘の停止が、持続的な停戦という形に変わることを望んでいる」とする声明を出し、国連は恒久的な停戦につながることに期待を示しています。

リビアではこれまでに何度も停戦が呼びかけられ、双方の勢力が停戦に合意したこともありましたが、戦闘が完全に収まったことはなく、今回、果たして停戦が実現するのかどうか注目されます。【3月23日 NHK】
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新型コロナに備えて・・・と言うよりは、膠着状態の戦闘に疲れていた両勢力が新型コロナを口実に・・・・といったところが本音ではないかとも思いますが、何はともあれ、「停戦」が実現するなら結構な話です。

アメリカ・欧州など国民間の分断が進んでいた国々において、新型コロナという外敵に対して国民の結束が見られるようになったことに並んで、数少ない新型コロナのもたらした「効用」かも。

更に進んで、全世界が一致団結した行動をとれるようになれば、その「効用」も大きなものとなるだろうに・・・とも思います。

【ウイルス拡散も伝えられるシリア 懸念されるシリア難民キャンプ】
リビア同様に内戦が続くシリアでは、すでにウイルスが拡散しつつあります。

****内戦のシリアでコロナ初感染 流行の見方も****
内戦中のシリア・アサド政権の保健省は22日、シリアで初めての新型コロナウイルス感染を確認したと発表した。国営シリア・アラブ通信が伝えた。

一方、シリア人権監視団(英国)は同日、アサド政権の勢力下で既に約130人が隔離されており、感染が流行しているとの見方を伝えた。
 
内戦による混乱で実態は不明だが、アサド政権は内戦でイランによる軍事支援を受けているほか、シリア隣国のイラクやレバノンでも感染が拡大している。
 
保健省によると、感染者は外国からの到着者で、既に適切な処置を受けているとした。【3月23日 共同】
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今回の感染者は海外から来た20歳代の人物とのことですが【3月23日 朝日より】、イランから多くの人員が入っていますので、感染拡大は避けられないでしょう。

シリアのような紛争国で効果的な防御対策がとれないのは前述のとおりですが、最も感染拡大のリスクが大きいのが衛生状態が劣悪な環境に多くの人々が密集する難民キャンプです。

****シリア避難民にコロナ感染危機 手洗い困難、テントで密集****
内戦中のシリアの避難民に新型コロナウイルスの感染が広がる危険性が指摘されている。

反体制派の最後の拠点、北西部イドリブ県では、アサド政権の攻勢で100万人近くの避難民がトルコ国境近くに身を寄せる。

劣悪な医療体制に加え手洗いのための水不足、密集したテント生活などで感染防止に十分な距離を取りにくいなど悪条件がそろう。
 
米紙ニューヨーク・タイムズが23日までに伝えたところによると、イドリブ県のキャンプでは一つのテントに十数人が身を寄せている状況が見られる。支援団体幹部は「週に1回も手を洗えない子どもがいる」と指摘したという。【3月23日 共同】
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いったん火が付けば、その火は瞬く間に・・・という事態が懸念されます。

【パレスチナ・ガザ地区でも感染者 イスラエルとの戦闘行為はコロナ対応で小康状態】
難民キャンプ同様に劣悪な環境に多くの人々が密集し、「天井のない監獄」「世界最大の監獄」とも言われるパレスチナ・ガザ地区にもウイルスは進入したようです。

*****新型コロナ パレスチナ自治区ガザで初感染 「監獄」での拡大に懸念***** 
パレスチナ自治区ガザで22日、新型コロナウイルスの感染者が初めて確認され、拡大への懸念が高まっている。

イスラエルが人や物資の出入りを厳しく制限して「世界最大の監獄」とも呼ばれる状態が10年以上続き、経済悪化に加えて衛生・医療態勢への不安も大きい。国際機関は「感染が広がれば対応が追いつかなくなる」とし、隔離施設の増設など水際対策に全力を挙げている。
 
ガザ保健当局は22日、パキスタンからエジプト経由で入境したパレスチナ人2人の感染が初確認され、隔離したと発表した。広さ約365平方キロのガザには約200万人が住む。人口密度は約5500人で大阪府や神奈川県を上回る。
 
ガザに隣接するイスラエルの感染者は千人を超えた。皮肉にも、イスラエルが「監獄」と称されるほどヒトとモノの出入りを厳しく制限してきたことが感染拡大を防いだ形だ。
 
ガザは2007年、対イスラエル強硬派のイスラム原理主義組織ハマスがパレスチナの内部抗争で勝利して実効支配した。イスラエルはテロを警戒し、巨大な検問所を設けて不審人物や物資に目を光らせてきた。
 
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)などによると、ガザの住民の95%は清潔な水が使えず、電気は1日8時間しか来ない。稼働していない工場が多く、失業率、貧困率ともに50%を超える。
 
UNRWAの保健局長でアンマン在住の清田明宏さん(59)は、「感染が確認された場合、当初の対応はできると思う」とする半面、「住居環境が劣悪で医療サービスの能力にも問題があり、感染が一気に広がって対応不能になる危険性がある」と懸念する。
 
UNRWAは17日、ガザなどのパレスチナ難民の感染防止のため、今後3カ月間に1400万ドル(約15億5千万円)が必要だとする緊急声明を出した。イスラエル寄りの政策を打ち出してきた米政権は18年、UNRWAへの資金拠出の中止を表明している。
 
イスラエルで感染が拡大した今月に入り、ハマスとイスラエル軍は互いに目立った攻撃を仕掛けていない。感染防止に双方が躍起となる中、新型コロナが新たな軍事衝突を和らげる役割を果たしている格好だ。
 
「世界よ、監禁される気分はどう?」。現地の教員の男性(47)によると、ガザからはこうしたメッセージがSNS上にアップされている。隔離を強いられている欧米など世界各国の人々に、ガザの住民の閉塞感を理解してもらう好機と考えているようだ。【3月23日 産経】
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“新型コロナが新たな軍事衝突を和らげる役割を果たしている”・・・・ここでもウイルスの「効用」ですが、万一ガザ地区で感染拡大した場合、満足な医療物資もないだけに取り返しのつかない事態になります。

【アフガニスタン 捕虜交換交渉をせかせる新型コロナ】
ウイルスを意識した政治的動きはアフガニスタンでも。

****アフガン政府・タリバンがテレビ会談=和平合意後初、新型コロナで急ぐ****
アフガニスタン政府と反政府勢力タリバンが22日、双方が拘束した捕虜の釈放に関しテレビ会談を行った。米国のハリルザド・アフガン和平担当特別代表が同日、ツイッターで明らかにした。

両者の協議実施は、2月末に米国とタリバンが和平合意に調印して以降初めてとみられる。和平交渉の進展に向け、米国が歩み寄りを求めた形だ。
 
米国がテレビ会談という形式で双方に協議を急がせた背景には、新型コロナウイルスのアフガンでの感染拡大があったもようだ。

ハリルザド氏は「コロナウイルスの脅威により、捕虜釈放はさらに緊急性を増した」と強調。捕虜の衛生状態悪化の懸念があることを示唆した。【3月23日 時事】 
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“協議は2時間以上インターネットの電話を通じて行われ、双方が捕虜の釈放のほかに戦闘行為の抑制や、恒久的な停戦に向けて取り組むことも表明した。”【3月23日 毎日】とも。

2月末に署名されたアメリカとタリバンの和平合意では、3月10日の国内各勢力による和平交渉初日までに「タリバン側最大5000人、政府側最大1000人の捕虜釈放」が明記されました。

しかし交渉前の5000人の釈放を主張するタリバンと、段階的な釈放を求める政府側が対立。和平交渉も延期になっていました。

新型コロナにせかされる形で合意が進展すれば、これも新型コロナの「効用」でしょう。

なお、アフガニスタン政府はガニ大統領と、同氏と大統領選挙を戦ったアブドラ氏の対立・二重権力状態が続いていますが、ポンペオ米国務長官が23日、アフガンの首都カブールを訪問。両者の仲裁を図るとみられています。

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新型コロナは「不平等のリトマス紙」 弱い立場の人々へのケアが社会全体のリスクを軽減

2020-03-22 22:57:55 | 疾病・保健衛生

(米ニューヨーク・マンハッタンのタイムズスクエアで道路を横断する料理宅配業者の配達員(2020年3月17日撮影)【3月19日 AFP】)

【アメリカ・欧州も“公平”にウイルスの脅威に直面】
新型コロナウイルスの世界各地での感染拡大に歯止めがかかりません。むしろペースが速まり、今後の更なる悪化が懸念されています。

****新型コロナ、感染者30万人超える 増加ペースが加速****
新型コロナウイルスの世界の感染者数が22日、累計で30万人を超えた。米ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センターが世界保健機関や各国政府の発表をもとに集計した。

感染者数は、中国が初めて感染を確認したとする日から約3カ月後の今月7日に10万人を超え、その11日後に20万人、さらに4日後に30万人に達した。増加のペースが加速している。
 
同センターによると、日本時間22日午後5時現在で感染者は約170の国・地域に広がり、計30万7280人に上った。死者も1万3千人を超えている。(後略)【3月22日 朝日】
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感染者数の多い国には、中国・韓国、そしてアメリカや欧州の国々が並んでいます。
世界でもっとも強大で、もっとも豊かな国アメリカもウイルスの攻勢に脅かされています。

****米の新型コロナ感染者、2カ月で65万人に拡大も=症状軽く気付かず―コロンビア大****
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は20日、コロンビア大学の研究者の分析に基づき、今後2カ月で米国の新型コロナウイルス感染者が65万人に上る可能性があると報じた。感染の爆発的拡大を防ぐため、厳格な社会的接触の制限が必要と訴えている。
 
研究者は米国内の感染状況を分析した同紙のデータベースを利用。症状が軽いため感染に気付いていない「隠れ感染者」が、確認されている感染者の11倍に上るという。

こうした隠れ感染者が、感染を急速に拡大させており、政府の対策で感染率を半減させたとしても今後2カ月で65万人が感染すると見積もられている。(後略)【3月21日 時事】 
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今回の新型コロナウイルス感染について、“敢えて”まだましな面、救われる面を探せば、災難が特定の弱者・貧しい国に集中するのではなく、アメリカ・欧州を含めて全世界が“公平”に、その脅威に直面しているということでしょうか。もちろん“敢えて”言えばの話ですが。

【しかし、感染しやすい職業や立場の人が存在する「不平等のリトマス紙」】
しかし、その内実を見ていけば、やはり災いには“公平”“平等”ということはなく、世の中のすべてがそうであるように、現実には特定の弱者がより大きな危険にさらされています。

****新型コロナ感染症は「不平等のリトマス紙」なのか****
感染しやすい職業や立場の人にもケアを、米では1440万人がリスクの高い職業に

(中略)しかし、新型コロナのアウトブレイク(集団発生)や過去の研究からは、特定の職業の人やホームレス状態にある人、貧困層にとって、感染を防ぐのは容易ではないことがわかっている。 

新形コロナウイルスに感染しやすい人々は 
米ワシントン大学の推定によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染しやすい職業に従事している人は、米国に1440万人もいる。 
 
当然ながら、医療従事者は感染リスクが最も高い。(中略)
 
このほかにも、週に1度、月に1度程度の頻度で、高い感染リスクに見舞われるグループも数多く存在する。例えば、警察官、消防士、交通機関の保安検査官、ベビーシッターや介護助手のようなケアワーカーのほか、クリーニング店の従業員、廃水処理業者、歯科技工士といった人たちだ。 
 
人種や民族の問題も挙げられる。例えば、2009年のH1N1型インフルエンザのパンデミックの際に行われた米国内の調査では、「自分の仕事は職場でしかできない」あるいは「7〜10日間仕事を休んで家にいることは難しい」と答えたスペイン語を話すヒスパニック系の人々の割合が、白人や黒人と比べてはるかに高かった。また、黒人とヒスパニックの多くは「公共交通機関を利用しないことは難しい」と答えた。 
 
この研究を主導した米メリーランド大学のサンドラ・クイン氏は、低所得労働者の感染リスクが高い現状を懸念している。低所得者の場合、比較的混み合った環境で暮らしている、仕事を休むことが難しい、未治療の基礎疾患があり新型コロナ感染症が重症化しやすいなどの事情を抱えがちだからだ。 

「新型コロナウイルスの流行は、社会の中で最も弱い立場にある人たちにとって、とりわけ大きな打撃となるでしょう」と、クイン氏は言う。」(中略)
 
現在、米国でも新型コロナウイルスが拡散しつつある。そしてそこは、人種的・民族的少数者や農村部の市町村などが、すでに深刻な医療格差の犠牲となっている国だ。 
 
ワシントン州シアトルの大学地区にあるフードバンクの入り口には、現在、手洗い所が設置されている。このフードバンクは毎週約1300家族に食料を提供してきた。

責任者のジョー・グルーバー氏によると、コロナウイルス危機が始まってからも、訪れる人が減っている様子はないという。しかし、フードバンクで働くボランティアの約3人に1人は高齢者であり、自分の健康を守るためにシフトを抜けることを選んだスタッフもいる。 

「わたしたちは、社会的な立場が弱いたくさんの人々と繋がっています。通常のサービスをできるだけ長く維持するにはどうしたらよいかを考えることは、非常に重要です」と、グルーバー氏は言う。 
 
シアトルでは、ホームレスの人々が特に大きな懸念事項となっている。米国にとって新型コロナウイルスの被害が最も深刻な地域であるだけでなく、ホームレスの人口が最も多い街のひとつでもあるからだ。

シアトルに1万1200人存在するホームレスの大半は屋外で寝起きしている。そして彼らの多くが高齢者や、慢性的な健康問題を抱えている人々だ。 

「ホームレス状態にある人が、自分の健康を管理することは不可能です。通常の状況であってもそうなのですから、感染症が流行すればひとたまりもありません」。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校社会的弱者センターの責任者で、医学教授のマーゴット・クシェル氏はそう語る。 
 
カナダでSARSが流行した際、ホームレス支援機関は、清潔で安全な日用品を確保するのに苦労した。明確な衛生ガイドラインもなかった。すでにSARSの主要な症状が複数現れている人も多く、スクリーニング検査は一筋縄ではいかなかった。病気になったホームレスの人たちをどこへ、どのように隔離すればいいのかもわからなかった。 
 
感染症は「不平等のリトマス試験紙のようなもの」だと、米ミシガン大学の疫学の助教、ジョン・ゼルナー氏は述べている。

「社会的距離」を保てない人々にもケアを 
(中略)多くの職場や街の中心部では、「社会的距離の確保」という方法が採用されている。これは人と人との距離を取って、ウイルスの拡散を遅らせることを目的としている。(中略) 

一方で、この街でも特に貧しく弱い立場になる住民は、常に他の人々と距離を保てるわけではない。そして、ウイルスへの感染が拡大するにつれて、シアトルはそうした人々をケアするために何ができるかという問題に直面することになる。 
 
3月5日に行われた記者会見で、ワシントン州知事ジェイ・インスリー氏は、保険に加入していない人たちの新型コロナウイルス検査費用を州が負担すると述べた。州保健委員会はまた、保険会社に対し、検査費用の自己負担分を免除するよう命じている。

新型コロナ流行地域では、医師がテレビや電話を通じて行う遠隔医療にまで、高齢者向け医療保険制度(メディケア)の適用範囲が拡大され、さらに当局はコロナウイルス患者を隔離するためのモーテルも購入した。 

「多くの場合、経済的に厳しい制約を受けている人々が最後の防衛線になります」と、ゼルナー氏は言う。「家の中にこもるにしても、食料品店には行かなければなりません。では、食料品店で働いているのは誰でしょうか。必要なものをネットで注文すれば、外出せずに済むでしょう。しかし、誰がその荷物を運ぶのでしょうか」 【3月18日 NATIONAL GEOGRAPHIC】
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ネット注文商品を「誰がその荷物を運ぶのでしょうか」ということに関しては、以下のようにも。(外出規制下でも食品配達サービスは続けられるようです)

****感染怖いが休めない、ニューヨークの料理宅配ライダーたち****
新型コロナウイルスの感染拡大防止のためレストランなどが閉鎖された米ニューヨークでは、自宅で食事をとる習慣のない市民らが、自転車で料理を運ぶ宅配業者にますます頼るようになっている。
 
飲食店やバーに対する閉鎖命令が出て以来、料理の宅配業務を担う約4万人の配達員が、市内で重要な役割を果たしている。こういった配達員のほぼ全員が健康保険や在留許可を持たない移民たちだ。彼らは感染を恐れてはいるが、働き続けるほかないと言う。(中略)
 
移民支援団体「メーク・ザ・ロード・ニューヨーク」の活動にも参加しているゴンザレスさんは、配達員には「より手厚い保護が必要」だと語った。

「どういった人が検査を優先的に受けられるのか、保険や在留許可がない人々が検査や治療の費用を払わなければならないかどうかもはっきりしない」とゴンザレスさんは話した。

配達員らは感染リスクを最大限減らそうと苦心しており、多くは手袋やマスクを着用し、頻繁に消毒ジェルを使用し、中には自転車のハンドルをポリ袋で覆っている配達員もいる。

■「チップを増やそう」 SNSの呼び掛けにNY市民は
(中略)一部のニューヨーク市民はソーシャルメディア上で、連帯を示すために配達員へのチップを増やすよう呼び掛けている。
 
だが、AFPの取材に応じた10人ほどの配達員らは、これまでよりもチップが増えたと感じたことはないと話した。 【3月19日 AFP】
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【アメリカ:検査や治療をためらう移民】
リスクの高い職種についている在留許可がない人々は、単に感染リスクが高いだけでなく、摘発を恐れて検査を受けたがらない、費用が負担できず治療を受けないということで、更に感染を拡大させる危険性もあります。

****「強制送還される」「永住権取れなくなる」 米移民 新型コロナ受診ためらう****
新型コロナウイルスの感染者が急増する米国で、検査や治療をためらう声が移民の間に広がっている。不法滞在が発覚したり、政府の新たな移民規制策により永住権の取得などが難しくなったりするのを心配しているからだ。トランプ政権の強硬な移民制策が、感染拡大のリスク要因の一つに浮上している。
 
「病院に行き不法滞在だと知られたら強制送還されないか」「感染して治療を受けると永住権を取れなくなるのではないか」
 
西部カリフォルニア州ロサンゼルス郊外で移民の法律相談に応じる支援組織「TODEC」には、トランプ大統領が国家非常事態を宣言した3月13日以降、中南米系移民らからこうした相談が相次ぐ。
 
不法移民は医療施設でビザ(査証)や在留証明を提示できないため、摘発を担当する移民・関税執行局(ICE)への通報などを恐れて受診しない傾向が強い。
 
また、2月に施行されたトランプ政権の移民規制策は、永住権(グリーンカード)の申請者が政府の医療支援などを受けた場合、申請が却下される可能性があるとしている。
 
米国の不法移民は推計で1100万人以上。また、グリーンカード申請者のうち約38万人が新たな規制の影響を受けるとされる。
 
東部ニューヨーク州やカリフォルニア州など移民人口が多い地域で新型コロナウイルスの感染者が特に目立ち、当局は移民の受診控えによる感染者の増加を懸念する。
 
ICEは3月18日、感染拡大防止策が続く間は「医療施設やその周辺で摘発はしない」との声明を発表。移民局もグリーンカード申請について「コロナウイルスに関わる医療サービスを受けても影響はない」として、症状があれば積極的に受診するよう呼びかける。
 
しかし、TODECの責任者、ルース・ガレゴス氏は「トランプ大統領は言うことがころころ変わるため、多くの移民は本当に受診が不利益にならないのか疑心暗鬼になっている」と話す。
 
また、ガレゴス氏は「飲食店などが一時閉鎖されて解雇され、治療費を請求されても払えないという移民も増えている」と指摘する。
 
米紙ニューヨーク・タイムズによると、感染者の治療費は症状によっては2万ドル(約222万円)を超える可能性があるという。所得が低く無保険の移民は多く、高額な費用負担を恐れて受診に消極的な人もいるとみられる。【3月22日 毎日】
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トランプ政権の厳しい移民政策、アメリカの医療保険制度の不備が、コロナ被害を大きくしそうな気配です。

【中国:出稼ぎ貧困労働者が感染を拡大】
中国でも、出稼ぎ労働者などの地方出身の貧困層が当局の監視網から抜け落ち、治療を受ける機会も経済的負担能力もなく、感染を拡大させたたとの指摘があります。

****新型肺炎の最大の犠牲者は中国の貧困層****
(中略)23日に武漢の交通機関がストップしたとき、出稼ぎ労働者や地方出身の大学生の多くは、既に故郷に向けて出発した後だった。こうした人たちによるコロナウイルスの「持ち帰り」が危惧されるなか、各地の公衆衛生当局にとって、最新情報の収集は最重要課題となっている。

ところが現実には、武漢の近隣都市で感染者が確認されたニュースよりも、韓国やタイで感染者が見つかったニュースのほうがずっと早く報じられているのが現実だ。

<監視社会の意外な抜け穴>
(中略)中国は監視社会だが、その網は穴だらけだ。テクノロジーによるプロファイリングシステムで中流階級はかなり可視化されているが、貧困層は抜け落ちている。

全ての市民が常時携帯しているはずの身分証を、持っていない人もいる。紛失したが、高い旅費をかけて役所まで行って再発行する余裕がない人。そもそも出生を届け出ていない人もいる。彼らは身分証が必要な鉄道や飛行機ではなく、監視が難しいバスや相乗りのトラックを利用する。

彼らはインターネット上でも追跡が難しい。中国では微信(ウィーチャット)のようなサービスが広く浸透していると言われているが、ネット普及率はようやく60%を超えた程度だ。微信のアカウントや身分証を、家族で共有する例も少なくない。

<予防や治療の「格差」>
公衆衛生に関しては、地方は置き去りにされがちだ。手洗いやマスクなどの感染予防策や、健康に関する情報はなかなか広まらない。電話やネット回線の有無が、健康を守るための情報を左右する。

情報だけではない。コロナウイルスが武漢の外に広がるにつれて、公衆衛生の関連用品が不足し始めており、都市部から離れている病院ほど必要な医療品が届きにくい。

上海では春節で工場が休業する時期と重なり、マスクの供給不足に拍車が掛かっている。ある工場は、通常の3倍の給料で休日出勤を募集している。こうしたリソース不足と従来の格差が相まって、持てる者と持たざる者の「感染予防格差」が広がりそうだ。

さらに、ウイルスに感染した貧困層は、病院に行く可能性がかなり低い。中国の医療制度は、中流階級さえ、適切な治療を受けるのが難しいことで悪名高い。国民の大多数にとって、質の高い医療へのアクセスはないに等しいのだ。

<公的保険を利用できない出稼ぎ労働者>
医療の資源は、政策によって大都市や首都圏に集められている。(中略)

公的な医療保険も近年は拡充されているが、社会保障は戸口(戸籍管理制度)と結び付けられている。戸口の登録は基本的に出身地に縛られ、居住地や受けられる教育、公共サービスも限定される。

従って、地方の住民が、優秀な医師のいる都市部の病院で公的保険を使って受診することはできない。戸口のある土地から遠く離れた所で働く出稼ぎ労働者は、保険を全く利用できない。

彼らは命の危険が迫るまで病院に行かず、自分で治そうとするか、伝統的な民間療法に頼る。日常的に健康状態が悪くウイルスの影響を受けやすいため、風邪と勘違いしやすくなる。(後略)【1月25日 Newsweek】
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感染リスク、検査・治療機会において劣後する立場に置かれた人々をいかにフォローしていくかが、社会全体の感染拡大を抑止できるかのカギになりそうです。

【プライベートジェットで感染を避ける富裕層】
そうした中にあって、富裕層はコロナを避ける手立ても。

****新型ウイルスでプライベートジェット業界が活況?****
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を受けて大混乱に陥っている航空業界の中で、一つの分野だけが活況を呈している。富裕層を得意客とするプライベートジェット業界だ。
 
(中略)常連客の利用頻度は通常と変わらないが、新規顧客が急増している。その大半はプライベートジェットを初めて利用する人々で、急を要している顧客か、あるいは民間航空会社の座席を確保できなかったり、リスクを冒したくないと思っていたりする人々だという。(中略)

顧客がチャーター便を選ぶ理由には、渡航歴が「不明な」何百人もの乗客と一緒に閉鎖された空間にいたくないという気持ちや、プライベートジェットの利用者は通常、混雑した主要空港ターミナルから離れた場所で税関手続きや入国審査を行えることなどがある。(後略) 【3月22日 AFP】
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“定員12席のチャーター便を利用する場合、英ロンドン発米ニューヨーク行きでは往復15万ドル(約1600万円)。香港発日本行きでは片道約7万1000ドル(約760万円)かかる。だが、英国から南仏までは1万ドル(約100万円)余り”だそうです。

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