孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

女性の地位  ロシア・プーチン大統領が語る女性への「愛と感謝」の実態

2024-03-09 22:43:51 | 女性問題

(モスクワで2019年11月、「いつか自由になる」と書かれたプラカードを持ち、DV対策法の整備を求めてデモを行う女性たち【2021年1月5日 東京】)

【女性の働きやすさ 日本はOECDのなかで最下位争い常連国】
昨日3月8日は国際女性デーということで、男女格差に関する報告や、各地での活動が報じられています。

そのひとつ、この時期に毎年報じられるのが「女性の働きやすさ」に関する国際ランキングで、日本は相変わらずの「嘆かわしい」状況。(「日本には日本の文化がある。他国からどうこう言われる筋合いはない」と怒る方もいらっしゃるのでしょうが)

“<変わろう、変えよう>女性の働きやすさ、日本は29カ国中27位 英誌エコノミスト”【3月7日 毎日】

【アメリカ 共和党州知事候補は過激なアンチ・フェミニズム】
女性の地位向上を求めるフェミニズムに対しては根強いアンチも存在します。

****「女性が投票できない時代の方が良い」主張の政治家、ノースカロライナ州知事候補に選ばれる****
アメリカ・ノースカロライナ州で3月5日に行われた予備選挙で、マーク・ロビンソン副知事が共和党の州知事候補に指名された。

ロビンソン氏は数々の女性蔑視発言で知られており、4年前には憲法修正第19条がなかった時代、つまり女性に選挙権がなかった時代に戻った方が良いとも主張している。

ロビンソン氏が知事候補に指名されたことで新たに注目されているのは、2020年3月にピット郡で開かれた共和党女性委員会主催のイベントだ。

ロビンソン氏はこのイベントで「アメリカを『再び偉大な国』にするには、『黒人が木に吊り下げられていた時代』と『女性に参政権がない時代』のどちらに戻る方がいいかと、保守派の政治活動家キャンディス・オーウェンズ氏が尋ねられていた」というエピソードを紹介。

「自分なら間違いなく、女性が投票を認められなかった時代に戻る」と主張した。
その理由を「その時代には真の社会変革のために戦う人々がいた。その人たちは共和党員と呼ばれていた」と説明している。

ロビンソン氏はその後に「(人種差別の法律)ジム・クロウ法を終わらせたのは共和党だ」とも主張している(実際には、民主党と共和党、両党の議員とリンドン・ジョンソン大統領が1964年の公民権法と1965年の投票権法を成立させて、ジム・クロウ法を終わらせた)。

数々の女性、フェミニスト蔑視
ロビンソン氏はFacebookなどでも、女性を蔑み、フェミニズムを攻撃する投稿を続けてきた。
2016年には、フェミニズムは悪魔が作ったと主張。自身をフェミニストだとする男性のことを「レースのパンティと同じくらい男らしく」「意思も心も弱い“男”」と馬鹿にしてきた。

フェミニストを何度も「フェミナチ」と呼び、「性差別主義者で、脇の下に毛が生え、うんち帽をかぶった左翼 」という言葉で批判したこともある。

また、2017年には「自分の居場所をわきまえない女より悪いのは、自分の居場所をわかっていない男だ」と書き込んでいる。

さらに、キリスト教保守派テレビ伝道師の故パット・ロバートソン氏同様に、「悪魔がレズビアニズムとフェミニズムを利用して、伝統的な家族を破壊している」という主張もしている。

フェミニズムを性差別や人種差別と同一視する投稿も多数あり、2016年9月には「黒人が人種差別に、女性は性差別に対して立ち上がるべきなら......男性はフェミニズムに対して立ち上がるべきではないのか?」という疑問を投げかけている。

同日には「フェミニズムとフェミニストにはうんざりだ。彼らは人種差別主義者と同じくらい、いやそれ以上にひどい」とも書き込んでいる。

さらに、ロビンソン氏は女性を「売春婦」「魔女」「拒絶されたドラッグ・クイーン」など、様々な言葉で攻撃してきた。

他にも、アドルフ・ヒトラーの言葉を引用し、イスラム教徒への偏見を煽り、性自認に沿ったトイレを使用するトランスジェンダー女性を逮捕すべきだと主張し、ホロコーストに疑念を投げかけ、数多くの危険な陰謀論を広めてきた。

公共の場で授乳する女性を嫌っており、2016年には「恥知らずの注目されたい豚ども」と批判している。
11月に行われる選挙で、ロビンソン氏は対立候補の民主党ジョシュ・スタイン司法長官と、ノースカロライナ州知事の座を争うことになる。(後略)【3月8日 HUFFPOST】
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このロビンソン氏が州知事候補に選ばれるのですから、トランプ氏が大統領候補になるのも何の不思議もないのかも。

【ロシア プーチン大統領が進めるロシア的価値観】
このようなアンチほどではなくても、伝統的な「女性は家庭で母親になることこそが幸せ」という考えは、日本を含めて多くの国で多くの者に支持されているところでしょう。

昨今の日本では、そういう考えを公の場で口にするとバッシングを受けることになりますが、ロシアは事情が違うようです。

ロシアでは3月8日の国際女性デーは、女性の地位向上のための日というよりも、身の回りの世話をする母や妻らに、男性がプレゼントを贈る「愛と感謝の日」として認識されており、例年プーチン大統領は女性に対する「愛と感謝のメッセージ」を公表しています。

報道によれば、今年の国民向けメッセージでは、「女性は母になるのが素敵な運命だ」と述べ、子どもや家族の世話が最も重要な役割だと強調したとか。

今年のメッセージは目にしていませんが、2019年のプーチン大統領のメッセージは以下のような内容でした。

****親愛なる女性の皆さん!****
国際女性デー、おめでとうございます。この祝日はすべての人々が敬愛しています。(中略)

今日、男性たちはあなたたちに感謝と敬愛の念を伝えようと慌ただしくしていることでしょう。最高の温かい感情をもって告白するでしょうし、妻や母、祖母、姉妹、娘、職場の同僚たちに対し、心を込めて「ありがとう」と言うでしょう。

あなたたちの寛大さは本当に無限だということを私たちは知っています。そう、それは天の恵みです。あなたたち女性は、そうした寛大さを職場の同僚や近しい人たちに対し、もっと注いでいますね。

あなたたちは信頼できる組織人であり、責任感のあるリーダーであり、とても繊細なことを正しく教えることができ、あらゆる事柄に取り組む創造性も持っています。

偉大なロシア人女性の献身的な貢献を抜きに、ロシアの発展と歴史を語ることはできません。今日、ありとあらゆる専門分野で高い水準に到達できたのは、事実上あなたたちの力によるところが大きいのです。

成功させること、それはロシア人女性の性分です。あらゆる分野であなたたちは成功を収めています。職場でも家庭でも。

そしてあなたたちは美しく輝き、魅力にあふれ、家族の中心であり続けています。愛情で家族をまとめ上げ、創造や人を助け、元気づける力もあります。

あなたたちには、新たな生命を創造するすべが与えられています。すなわち、子どもを産むことです。子どもの誕生は、母性や子育てという尊い幸福であり、世界を変え、上質な優しさや慈悲の心で包んでくれます。

さらには、ロシアの力の源泉になってきた伝統的な価値観を支えています。

私たちにとって親というのは何歳になっても尊い存在ですが、母親に対しては言うまでもなく、特別な感情を抱いてきました。気遣い、無限の愛、理解、許し。母親から享受したそうしたものに対し、感謝しています。何年もたってから、そうした教えや温かい眼差しと手の感触を思い出すのです。

私たちはいつもあなたたちに恩義があります。それは国家全土において、あらゆる人たちが当てはまります。子どもを育てるためにすべてを捧げる女性たちのために、国は優先して多くのことをしなければなりません。

親愛なる女性の皆さん! はっきり言って、男性があなたたちにふさわしくなることは、時に難しくもあります。しかし、私たちは女性が心強く信頼できるよう、すべてのことをしようと思っています。

この記念日だけでなく、私たちはいつもあなたたちを大切にし、愛しています。

もう一度すべての女性に対し、今日という日のお祝いを申し上げます。健康とご多幸をお祈り申し上げます。【2019年3月16日 関根和弘氏 HUFFPOST】
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歯が浮くような文面のなかには、女性が子供を生み育てることを強調し、それをロシアの伝統的価値観に結びつける考えが示されています。ただ、「運命」とか「最も重要な役割」という表現は見られません。

報じられているように、今年のメッセージで女性は母になるのが素敵な「運命」だと述べ、子どもや家族の世話が「最も重要な役割」だと強調したということであれば、2019年のメッセージから更に踏み込んだ内容とも考えられます。

欧米的な女性の積極的社会参加、地位向上的な価値観に対し明確な否定を示したものとも言え、昨今の欧米とロシアの対立を背景として、ロシアの伝統回帰路線を示すものでもあります。

【プーチン大統領が言う「愛と感謝」の実態 DV大国ロシア それを助長するプーチン政権】
子どもや家族の世話が女性の最も重要な役割なのか、女性も積極的に社会参加し、そこで平等に扱われることが重要なのか・・・そこらはいったん脇に置くとして、ロシアの女性がプーチン大統領が示すような「愛と感謝」をうけて幸せな家庭生活を送っているのかと言えば、そうでもないようです。

プーチン大統領も「男性があなたたちにふさわしくなることは、時に難しくもあります。」と言っていますが、現実はもっと「愛と感謝」からはほど遠いものです。

****DVに悩むロシアの女性、男性優越の壁壊せるか****
ロシア中部クラスノヤルスクに住む主婦のナタリア(37)=仮名=は昨夏、「散歩に行く」と言ったきり、夫(39)の元には帰らなかった。子どもの手を引き、市内の家庭内暴力(DV)の保護センターに駆け込んだのだ。

◆2年以上前から続いた夫の暴力、コロナで拍車
2年以上前から続いた夫の暴力は、新型コロナウイルスの流行とともに堪え難くなった。都市封鎖のため職場から3カ月の「休暇」を言い渡された夫は、収入減の不安と外出制限のストレスで、ナタリアに手を上げる回数が増えたからだ。

「コロナの第2波が来て再び都市封鎖になったら耐えられない」。夫からの着信をブロックして暮らすナタリア。国連のグテレス事務総長は昨年4月、「コロナ禍の世界でDVが激発している」と警告を発した。

ロシア政府などによると、DV被害に遭う女性は年間1600万人。ロシアの人口は約1億4500万のため、女性の5人に1人は暴力を受けている計算だ。死者は年間1万2000~1万4000人と推定される。昨春の都市封鎖で、DVの通報数は前年と比べて25%も増えた。だがこれらの数値すら「氷山の一角」と見られている。

◆「家族の問題」と周囲も止められず
ロシアでDV被害が絶えないのは「(男が女を)殴るのは愛の証し」ということわざがあるように、男性優越の考えが背景にある。妻はぶたれても「愛ゆえの行為」と自分に言い聞かせ、周囲も「家族の中の問題だから」と、暴力を止められないという。

こうした風潮に加え、プーチン政権が保守色を強めていることも問題視されている。2017年にはDVに対する罰則が軽減され、家族への暴力について、初犯で大けがを負わせていなければ、最大でも3万ルーブル(約4万3000円)の罰金刑で済むようになった。

「一家のあるじが刑務所に入れば、家族の収入が減る」という考えからだが、モスクワの民間DV被害防止センター代表、アンナ・リビナ(31)は「妻子に暴力を振るってカネさえ払えば許されるのはおかしい。DVが減らない責任の一端は政府にある」と憤る。

◆コロナ禍で深刻化、迫られる法整備
長年、DV問題に取り組む下院・家族問題副委員長のオクサナ・プーシキナ(57)は「コロナ禍は、DVを深刻化させる」と断言。DV対策の法整備を急ぐ必要があると訴える。

現在、プーシキナらが提出を目指す法案では、DVを「社会で解決すべき問題」と捉え、行政と保護センター、医療機関が連携することをうたう。加害者である男性が、被害者である妻子や交際していた女性に接触することも禁じる。

多くの先進国では既に導入されている取り組みだが、ロシアではこれでも過度に「前衛的」な内容と見なされている。議会は現在、有識者のヒアリングを進めているが、法案を提出しても可決されるか予断を許さない。

◆「女性が恥じる文化を変えなければ」
「ぶたれた女性が、恥じるような文化をまず変えなければ」。アンナは意識改革が必要との思いから、テレビ局と連携して啓発動画や、Tシャツなどのグッズをつくっている。グッズに刻まれた標語は「暴力を振るうのではなく、愛し合おう」だ。【2021年1月5日 東京】
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もちろんDVはロシアだけの問題ではありませんが、“「(男が女を)殴るのは愛の証し」ということわざがあるように、男性優越の考えが背景にある”社会にあって女性を家庭に縛り付けるような女性観は、結果として多くのDV被害者を生むことになります。

実際、ロシアはDV大国として知られていますが、上記記事にもあるようにプーチン政権はそれを助長するような法改正も行っています。いわゆる「平手打ち法」と称されるものです。

****DV大国ロシアで成立した「平手打ち法」の非道****
<ロシアは年間1万4000人の女性が死亡するほどDVが横行しているが、さらにDVの罰則を軽減する改正法をプーチンが成立させた>

ロシアで「平手打ち法」と呼ばれる改正法が成立した。

すでに圧倒的多数の賛成でロシア議会を通過していたこの刑法の改正法案は、今月7日プーチン大統領が署名をして成立させた。このニュースは世界的に報じられ、ロシア政府に対する非難の声が上がっている。

「平手打ち法」とはいったいどんなものなのか。実は、この改正法により、ロシアでは家庭内暴力(DV)の罰則が一部軽減されることになる。つまり、法律で「平手打ち」などのDVが容認されるというのだ。

ロシア刑法第116条が改正され、親族に対する暴行は刑事罰から排除されることになる。また犯行を繰り返す常習犯は刑法で裁かれるものの、初犯ならばDVは刑事事件ではなく行政処分の対象とされる。また妻や子供に痣や出血を伴う怪我を負わせた場合、罰金又は15日の禁固刑が科される場合があるが、改正前は最大で2年の禁固刑だった。

なぜロシアでは、こんな時代錯誤とも言える改正法が成立したのか。ロシアではDVに対して他の先進国とは違った認識をもっている人が少なくないようで、例えば米AP通信はモスクワからの配信記事で、ロシアでも暴行は犯罪だが、妻に平手打ちをするくらいは特に驚くことではないと伝えている。

事実、世論調査で、ロシア人の約20%は妻や子供を叩くことは問題ない、と公然と答えている。またイタル・タス通信によれば、世論調査の回答者のうち59%が、深刻なけがにならない程度なら、家族内でのちょっとしたいざこざに厳しい処罰をする必要はない、と答えている。

この法案を推進した議員らに言わせれば、これで家庭生活に政府が関与するのを減らすことができるという。なぜなら、ロシアでは伝統的に国家が市民の家庭生活に口を挟むのは好ましくないとされているからだ。

また賛成派は、この法律が体罰などで子供をしつける親の権利を守るものだとも主張している。というのは、ロシアでも最近は子供をしつけで叩くことが許されない風潮があるからだ。

こうした感覚から分かる通り、ロシアのDV事情はかなり深刻な状況にある。そして、この法律によってその状況がさらに悪化するという懸念がある。

ロシア内務省によると、ロシアでは年間1万4000人の女性が夫やパートナーからの暴力で死亡しており、これは1日に約40人が死亡している計算になる。また年間60万人の女性が家庭内で暴力や言葉による虐待を受けている。

さらにこんなデータもある。ロシアで唯一のDVホットラインを運営する「アナ・センター」の集計によれば、ロシア女性の約3分の1がパートナーによる暴力に苦しめられている。また、ロシアで発生するすべての暴力犯罪と殺人事件の40%は、家庭内で起きている。

ちなみに人口がロシアの2倍のアメリカでは、2001~2012年に合計約1万1000人の女性が夫または恋人の暴力で死亡している。年間1000人ほどが死亡している計算になり、これでも十分に驚くべき数字だが、ロシアとは比較にならない。

もちろん、この「平手打ち法」に反対する人たちもいる。(中略)ただ残念ながら、こうしたロシア女性の叫びが改正法に署名を済ませたプーチンに届くことはないだろう。【2017年2月10日 山田敏弘氏 Newsweek】
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プーチン大統領が言う「愛と感謝」の実態はこのようなものです。

【今なお続く女性器切除】
女性の地位向上は重要な問題ですが、それ以前の問題として、私が1日も早い改善を希望するのがアフリカを中心に今なお広く行われている女性器切除の問題です。

****女性器切除サバイバー、世界で2億3000万人以上 ユニセフ****
国連児童基金(ユニセフ)が8日、国際女性デーに合わせて公表した報告書によると、女性器切除を受けた上で生存している少女や女性(サバイバー)の数が世界で2億3000万人を超えた。

FGM(女性の性器の一部を切除してしまう慣習)には小陰唇や陰核(クリトリス)の一部または全部の切除、縫合による膣口の狭小化などが含まれる。FGMには出血や感染症のリスクがある他、不妊症、妊娠合併症、死産、性交痛といった長期的結果につながるリスクもある。

ユニセフは、FGMが一般的に行われている31か国を対象に調査を実施。地域別に見たFGMサバイバーの数は、アフリカが1億4400万人以上と最も多く、次いでアジアが約8000万人、中東が約600万人だった。

全体的にサバイバー数が増加しているのは一部の国の人口増加によるところが大きいが、その他の国ではFGMが減少傾向にある点を報告書は強調している。

例えばシエラレオネでは、FGMサバイバーが15〜19歳の全女性に占める割合が、30年間で95%から61%に減少した。エチオピア、ブルキナファソ、ケニアでも大幅な減少が記録されている。

一方、FGMサバイバーが15〜49歳の全女性に占める割合が多い国は、99%のソマリアを筆頭に、ギニアの95%、ジブチの90%、マリの89%と続いている。 【3月8日 AFP】
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アフガニスタン  最高指導者の女性人権に関する宣言は? 日本のジェンダーギャップ状況

2023-06-27 23:22:35 | 女性問題

(記念撮影に臨む主要7カ国(G7)男女共同参画・女性活躍担当相会合の出席閣僚ら。右から4人目が小倉将信男女共同参画担当相=25日、栃木県日光市(時事)【6月27日 HUFFPOST】)

【タリバンの最高指導者  女性は「自由で尊厳のある人間」としての地位を回復し、「伝統的な抑圧」から解放される】
タリバン支配のアフガニスタンにおける教育や就労などで女性の権利が著しく侵害されていることは再三取り上げてきました。

タリバン内部にも女性問題で意見の対立があることも、4月19日ブログ“アフガニスタン 女子教育再開をめぐりタリバン政権内に意見対立も”で取り上げました。
最終的には最高指導者アクンザダ師がどのような判断をするのか・・・というところでしょう。

そのタリバンの最高指導者アクンザダ師が、女性は「伝統的な抑圧」から解放されると宣言したとか。

****女性「抑圧しない」と宣言=タリバン指導者、柔和姿勢強調―アフガン****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンの最高指導者アクンザダ師は25日、イスラム教に基づく統治でも、女性は「自由で尊厳のある人間」としての地位を回復し、「伝統的な抑圧」から解放されると宣言した。AFP通信が報じた。

女性抑圧政策を国際社会から批判される中、柔和な姿勢をアピールする狙いとみられる。

アクンザダ師はイスラム教の「イードアルアドハー(犠牲祭)」を前に声明を発表。「社会の半分を占める女性の地位向上に向け、必要な措置が既に取られた」と主張した。【6月27日 時事】 
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この宣言の意味合いについては、上記記事は“柔和な姿勢をアピール”としていますが、“アクンザダ師は声明で教育問題に触れず、批判を無視した形だ。 ”【6月27日 共同】という評価も。

確かに、「必要な措置が既に取られた」ということで、「もう十分にやっている。批判される筋合いはない」という宣言にも思えます。

****タリバン「女性尊厳回復」声明 最高指導者、批判を無視****
(中略)タリバン暫定政権は、日本の中学・高校に当たる女子の中等教育と大学教育の停止を継続。各国は「女性への抑圧」だと懸念し、暫定政権を承認していない。アクンザダ師は声明で教育問題に触れず、批判を無視した形だ。
 
声明はイスラム教の「犠牲祭」の祝日を前に公表した。女性の地位向上のための取り組みとして、強制結婚を減らす対策や女性の相続権の保障などを挙げた。【6月27日 共同】
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“柔和な姿勢をアピール”ではなく“開き直り宣言”と理解すべきものでしょうか。

【国連 「ジェンダー・アパルトヘイト」と批判 支援予算減額】
タリバンの女性への対応は、これまでも欧米・国連から厳しく批判されていますが、国連特別報告者はジェンダーのアパルトヘイトに相当する恐れがあると報告しています。

****タリバンの女性処遇、「ジェンダー・アパルトヘイト」の可能性=国連****
アフガニスタンの人権状況に関する国連特別報告者リチャード・ベネット氏は19日、ジュネーブで行われた国連人権理事会で、同国で実権を掌握しているタリバンによる女性と少女の処遇は、ジェンダーのアパルトヘイトに相当する恐れがあると報告した。

ベネット氏は「タリバンの思想と規則の根幹には、女性に対する重大で組織的かつ制度的差別が存在する。これは、タリバンがジェンダー・アパルトヘイトに責任がある可能性を示している」と述べた。

国連は、ジェンダーまたは性別を理由に個人に対して行われる経済的・社会的性差別」をジェンダー・アパルトヘイトと定義している。

また、ベネット氏は記者団に「われわれはジェンダー・アパルトヘイトをさらに追及する必要性を強調した。現時点では国際犯罪となっていないが、そうなる可能性がある」と指摘。「現在、アパルトヘイトは人種を対象としているが、これをアフガンの状況に当てはめて人種の代わりに性別を適用すれば、その方向に向けた強い示唆となるとみられる」と述べた。

2021年8月に実権を掌握したタリバンは、高校や大学通学の阻止など、女性の権利と自由を極度に制限している。【6月20日 ロイター】
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アフガニスタンは世界でも最も国際支援を必要としている国のひとつですが、女性人権に関するこのような厳しい見方を背景に、アフガニスタンへの支援も削減される事態になっています。

****国連、アフガン支援予算を減額 女性出勤停止で、需要増も****
国連は6日までに、アフガニスタンでの今年の人道支援予算を46億ドル(約6400億円)から32億ドルに減額したと発表した。支援の需要は増しているが、イスラム主義組織タリバン暫定政権が国連で働く女性職員の出勤停止を命じ、十分な活動ができなくなったため。女性への抑圧的な政策が人道支援に悪影響を与えた。

国連人道問題調整室によると、アフガンで支援を必要とする人の数は今年初めの推定2830万人から、2880万人に増えた。国民の約7割に当たる。

アフガンでは女性が家族以外の男性と接触を避ける慣習があり、出勤停止命令によって女性や子どもに支援を行き渡らせることが難しくなった。【6月6日 共同】
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国連支援だけでなく、各国の個別の支援においても、タリバンの女性に対する頑なな姿勢はその障害となっています。タリバンの圧政と人道支援は切り離して・・・とは言っても、現実にはなかなか。

【タリバンも国際孤立を回避したい思いがあるのか・・・・】
最高指導者アクンザダ師は普段は表にほとんど出てこない人物なので、外部の人間にはその考えはわかりません。(おそらくタリバン内部でも、よくわからないのでは?)(絶対的権威を有した初代の最高指導者オマル師などは生きてるのか死んでるのか、それさえ長年わかりませんでした)

その最高指導者アクンザダ師がカタール首相と極秘会談したとか。

****タリバン指導者、カタール首相と極秘会談か=外国首脳と初、孤立回避狙う****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンの最高指導者アクンザダ師が5月、カタールのムハンマド首相と極秘で会談した。ロイター通信が31日、消息筋の話として伝えた。

タリバンはアフガン女性の人権を侵害していると国際社会から批判されており、会談は孤立回避が狙いとみられる。

ロイターによると、会談は5月12日にアフガン南部カンダハルで行われた。タリバンが2021年8月に実権を掌握して以降、アクンザダ師が外国首脳と会談したのは初めてとみられる。同師が公の場に出ることはほとんどなく、メディアの前に姿を見せたこともない。【6月1日 時事】 
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やはり、タリバンとしても「このままの孤立状態ではまずい」という判断があるのでしょうか。そうであれば女性に関する施策も多少は期待できるのですが・・・。

【小池都知事ならずとも、ため息がでる日本のジェンダーギャップ】
アフガニスタンの女性問題に関して、毎回とやかく言っていますが、国際的に見ると日本にそんなことを言う資格があるのか・・・という話にもなります。

例年の調査結果が公表されました。いつにも増して日本の女性の地位は“良くない”ようです。

****「ジェンダーギャップ指数2023」日本は過去最低の125位に後退、G7で最下位****
2023年6月21日、世界経済フォーラム(以下、WEF)が、世界各国の男女平等の度合いを数値化した「ジェンダーギャップ指数」の2023年版報告書を発表しました。

今回の調査では、男女が完全に平等な状態を100%とした場合の全世界の達成率は68.4%で、昨年度より0.3ポイントの改善が見られました。
「経済」「教育」「健康」「政治」の4つの分野のデータから成るこの指数、日本は国別のランキングで対象146カ国中125位(64.7%)と、過去最低の結果となっています。

世界全体の男女平等が達成されるまでには「131年」が必要
WEFは今回の報告書のなかで、現在の進捗速度では、世界の男女格差が解消されるまでに131年かかると推測しています。また、ジェンダー公正(Gender Parity)はコロナ禍以前の水準に回復しつつあるものの進展は鈍化しており、「経済活動への参加と機会」の分野は2022年よりも後退したと指摘しています。

日本の順位は過去最低の125位
日本は146カ国のうち125位で、昨年の116位から大きく後退し、依然として主要先進国(G7)のなかで最下位となっています。

また、地域別の結果を見ても、東アジア・太平洋地域の指数は8地域中5番目に高いスコアを示している一方で、日本はフィジー、ミャンマーと並ぶ最下位に位置し、現在の進捗率では、この地域がジェンダー平等を達成するには189年かかると試算されています。特に政治と経済の分野で格差解消が進んでいない状況です。(後略)【6月22日 PLAN INTERNATINAL】
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日本の評価が低いのは、特に「政治」(138位)と「経済」(123位)
政治では、衆院議員の女性比率が10%にとどまり、女性閣僚も少ないことが、経済でも、企業で役員・管理職への女性登用が進まないことなどが低い評価の原因となっています。

単に低いだけでなく、年々順位が後退していることが問題。(調査国が増えているせいなのかも。それにしても改善が図られたいないということには変わりありません)

もちろん、このような簡単な数値化でどれだけのものが示せるのか・・・という話はありますが、一面の真実を示す数値ではあるでしょう。

毎年取り上げられる調査報告であり、「相変わらずだね・・・」といった印象もありますが、現在日本で影響力が大きい数少ない女性政治家の一人、小池東京都知事もため息を禁じ得ないようです。

****男女平等指数ランキング、出るたびに「ため息」=小池都知事****
東京都の小池百合子知事は23日の記者会見で、世界経済フォーラム(WEF)の最新の「ジェンダー・ギャップ指数」で日本が対象146カ国中125位と前年の116位から後退したことについて「これに限らず、ランキングが出るたびにため息をついている」と述べた。男女格差の問題は「日本が抱えている大きな課題だ」との見解を示した。

日本を巡る状況について、小池知事は世界の国々との比較においてスピード感が違うと指摘。男女格差の解消について「本質から覚悟を持って進めていく」必要性を訴えた。【6月23日 ロイター】
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【本気度・スピード感が問われていますが、最終的には国民、女性の意識に依る面も】
「日本の常識 世界の非常識」を端的に示すのが冒頭の写真。

****G7女性活躍相会合にたった1人の男性閣僚。米誌「日本は男性を送り込んだ」と皮肉****
栃木県日光市で2日間にわたり開催されていたG7(主要7カ国)男女共同参画・女性活躍相会合が、6月25日に閉幕した。

そんな今注目を集めているのが、ジェンダーギャップに悩む日本の現状を表しているかのような、同会合の記念写真だ。

写真を見ると一目瞭然だが、他の出席閣僚は全て女性なのに対し、議長国である日本だけ、男性の小倉将信・男女共同参画担当大臣が写っている。

アメリカのTime誌はこの状況を「気まずい記念撮影」と皮肉り、「G7女性活躍相会合の議長に日本は男性の大臣を送り込んだ(Japan Sends Male Minister to Lead G7 Meeting on Women’s Empowerment)」と題した記事を掲載。日本の抱えるジェンダー問題に言及した。

この記事は印象的なタイトルと写真と共にSNSで広がり、ネット上では「恥ずかしい」「写真が全てを物語っている」など、国内外から多くの反応が寄せられた。

つい先日発表された世界経済フォーラム(WEF)の「ジェンダーギャップ指数2023」では、日本は146カ国中125位。特に政治参加分野では「世界最低レベル」の138位だった。

この記念写真を見て、改めてそのランキングに納得する人も多かったようだ。【6月27日 HUFFPOST】
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本気度・スピード感が問われていますが、先日の日本の難民対策でも述べたように、単に政府や企業の姿勢だけでなく、最終的には国民の意識、特に女性の意識に依る部分が小さくないでしょう。

極論すれば、「日本の女性は家庭に入って、良妻賢母として生きることを望んでいる。だから、ジェンダーギャップなんて意味ない」ということであれば、余計なお世話でしょう。

確かに、一部女性にそういう意識が見られるのも事実であり、そのことを男女平等を是とする価値観のなかにどのように位置づけるのかはひとつの問題でしょう。

ただ、もっと社会参加を望んでいるにもかかわらず、いろんな事情でそれが果たせない女性も少なくないでしょう。
そうした面を考えれば、日本社会の現状は変革を要するところが多々あると思われます。

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女性問題  英スコットランドでは世界初の「生理の貧困」対策 アフガニスタンの建前と現実の乖離

2022-08-18 23:25:56 | 女性問題
(【2021年3月5日 日テレNEWS24】 学生団体による調査 
厚労省が今年2月にインターネットで実施した調査(18~49歳の3000人から回答)では、生理用品の購入や入手に苦労したことが「よくある・ときどきある」との答えは8.1%。【4月18日 東京】)

【英スコットランド 「生理用品の無償提供は平等と尊厳の基礎であり、経済的な障壁を取り除くものだ」】
世界の多くの国々で、女性の権利が制度的、あるいはインフォーマルに仕組みによって制約を受けており、その地位の向上に向けた取り組みがなされています。

その取り組みは、生存に関わるもの、就業・教育といった基本的な人権に関するものもあれば、女性が適正に処遇されるためのより高次な取り組みもあります。

最近注目されているのが、経済的な理由で生理用品を購入できない女性がいるという「生理の貧困」という女性特有の問題です。

****スコットランド、生理用品の無償提供を自治体に義務付け 世界初****
英北部スコットランドで15日、生理用品を必要とする人への無償提供を学校や自治体などに義務付ける法律が施行された。英BBC放送によると、生理用品を無料で入手できる権利が法制化されたのは世界初という。

経済的理由で生理用品を買えない「生理の貧困」が世界各地で社会問題となる中、スコットランド議会は2020年に全会一致で法制化を支持していた。この日施行された法律の対象者は「生理用品を必要とする全ての人」とされ、今後は学校などの公共施設で無料で入手できるようになる。

スコットランド自治政府は17年以降、法制化に向けて2700万ポンド(約44億円)を投じて取り組みを進めてきた。自治政府のロビソン社会正義担当相は施行前日の14日、「生理用品の無償提供は平等と尊厳の基礎であり、経済的な障壁を取り除くものだ。世界で初めてこのような行動を取った(自治)政府であることを誇りに思う」との声明を出した。

英紙ガーディアンはスコットランドの市民団体が18年に公表した調査を引用する形で、女性は月平均13ポンド(約2100円)を生理用品の購入に支出し、生涯では数千ポンドに上ると伝えている。

だが近年は新型コロナウイルス禍などの影響もあり、困窮した女性が生理用品を入手できないケースも指摘されている。こうした中、日本でも対策に乗り出す自治体が徐々に増加。スコットランド自治政府によると、韓国やニュージーランドでも同様に無償化の動きがあるという。【8月17日 毎日】
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上記記事にもあるように、日本でも自治体独自の取り組みは増加しつつあります。
「生理の貧困」に係る地方公共団体の取組(第2回調査 2021年7月20日時点)(内閣府男女共同参画局)によれば下記のようにも。

****生理の貧困」に係る地方公共団体の取組(第2回調査 2021年7月20日時点)*****
【調査結果】
「生理の貧困」に係る取組を実施している(実施した・実施を検討している)ことを今回把握した地方公共団体の数は581団体。 ※前回調査(第1回調査 2021年5月19日時点)で把握した地方公共団体の数は255団体。

調達元としては、防災備蓄が最も多く、次いで予算措置(予備費の活用も含む。)、企業や住民等からの寄付が多い。 

社会福祉協議会や教育委員会と連携して取組を実施している例や、民間事業者と協定を締結して無料のナプキンディスペンサーを設置することで継続的に支援を 行う仕組みを構築している例もある。
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英スコットランドに話を戻すと、世界初の試みではありますが、いろいろと試行錯誤はあるようです。

*****「生理の尊厳担当官」に男性任命、広がる反発 英スコットランド****
英スコットランドのテーサイド地方で17日、初代「生理の尊厳担当官」に男性が任命され、激しい反発が広がった。女子テニスの元スター選手マルチナ・ナブラチロワ氏はこの決定を「ばかげている」と呼んだ。

スコットランドで初めて設置された「生理の尊厳担当官」に任命されたのは、エディンバラの北にあるダンディー市出身のジェイソン・グラント氏。生理用品の無償提供を推進するほか、閉経をめぐる問題についての議論も求められる。

四大大会(グランドスラム)で18回の女子シングルスで優勝18回のナブラチロワ氏は、男性の「生理の尊厳担当官」任命を受けて、「私たち(女性)が男性にひげのそり方や前立腺のケアなどを説明しようとしたことがあっただろうか? こんなのばかげている」とツイッターに投稿した。

英ラジオ局LBCスコットランド支局政治部のジーナ・デビッドソン記者は、娘を連れた女性と生理用品について話すグラント氏の写真が公開されたことを受けて、任命を「マンスプレイニングの典型」と評した。

マンスプレイニングとは、「女性は男性よりも知識がない」というジェンダー的な偏見に基づき、男性が女性を見下したような態度で物事を説明する行為のこと。

コラムニストで女性の権利活動家でもあるスーザン・ダルゲティ氏は「なぜ男を任命することが良い考えだと思ったのか、理解できない」とツイートした。

グラント氏は就任に当たりコメントを発表。「男性であることは障壁を取り除き、偏見を減らし、より開かれた議論を促すのに役立つと思う」「生理の影響を直接受けるのは女性だが、全員にとっての関心事だ」と述べた。 【8月18日 AFP】
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状況を改善していくのに男性も女性も関係ない・・・というのは、一応の理屈ではありますが、現実的には不自然な感じも。

【「女子は敬意を払われるべき存在」と言いつつ、現実には著しい女性の権利侵害】
「女性は男性よりも知識がない」というジェンダー的な偏見に基づき、男性が女性を見下したような態度で物事を説明する“マンスプレイニング”は、このような書き方をすればわかりやすいですが、「女性は肉体的にも、社会的にも弱い存在なので守ってやらねばならない」という話になると、現実世界にも多くの事例が。

そうした「守ってやらなければ」という保護・制約と「母性保護」という観点の取り組みの間には微妙な重複・相違があるようにも。

「守ってやらなければ」ということを建前にして、現実には女性の権利が著しく侵害されているのがイスラム世界であり、特に、タリバン支配化のアフガニスタン。

アフガニスタンでの女性問題については、8月14日ブログ“アフガニスタン 「8月15日は暗黒の日」 戦い続ける女性 「一日も早く学校に通いたい」と願う少女”でも取り上げました。

****「教育に反対する人はいない」 タリバン高等教育相インタビュー****
アフガニスタンのタリバン暫定政権のアブドル・バキ・ハッカーニ高等教育相が、首都カブールで毎日新聞の取材に応じた。

国際社会から懸念が出ている女子教育の制限について「アフガンで教育に反対している人はいない」と述べ、国立大学には女性も通っていると強調した。

再開が延期されている女子の中等学校(日本の中学、高校に相当)については資金不足で女子生徒のための交通手段など「イスラム法に則した」学習環境を整備できないことが理由だと主張した。

タリバン暫定政権は今年3月に中等学校の女子生徒の通学を再開するとしていたが、予定日当日に急きょ延期が発表された。ハッカーニ氏は「我々は資金不足に直面し、男女を別々の場所で教えるための十分な施設がない」と訴えた。

さらに「アフガン社会では、女子は敬意を払われるべき存在だと考えられている」と説明し、男子生徒のように徒歩や公共交通機関で通学するのではなく、車などの通学手段が確保されるべきだと主張した。こうした学習環境整備のために「世界中に支援をお願いしている」と述べた。

タリバン内部で女子教育に反対する声があるとの指摘もあるが、ハッカーニ氏は「我々は教育はすべての人のためのものだと考えている」と否定。一方で「我々にとって重要なのはアフガン社会やイスラム教の信仰に即した方法でなくてはならないということだ」と繰り返した。

報道によると、国連は国際会議などに出席するために一部のタリバン暫定政権幹部を制裁の対象外としてきたが、ハッカーニ氏ら2人を制裁対象に戻した。ハッカーニ氏は「ほかの国に渡航して高等教育の分野で支援を求めることができない」として「アフガンの発展を阻害する動きだ」と批判した。

タリバン暫定政権下では大学の他、小学校でも女子の授業が行われている。

◇大学も男女別学に
これまでアフガンの大学では共学が認められてきたが、タリバン暫定政権は女子学生への配慮のために男女共学を禁止した。当事者である女子学生はどう考えているのだろうか。

8月上旬にカブール大を訪ねると、試験を終えた大勢の女子学生が連れ立って門を出てきた。同大では男女の登校日が分けられ、この日は女子の登校日だった。構内の取材許可は得られず、少し離れた場所で友人と帰宅中のナルゲスさん(21)に声をかけた。

ナルゲスさんは周囲を気にしながら「勉強を続けることができて良かった」と話す一方で「タリバンが政権に就くまで毎日登校できたが、いまは週3日しか登校できないので、その他の日は自宅で勉強している。奨学金で日本で勉強できないか」と訴えた。【8月18日 毎日】
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女子は敬意を払われるべき存在、車などの通学手段が確保されるべき、しかしそうした環境整備のための資金がないので女性の通学は認めない・・・奇妙な論理です。詭弁と言うべきでしょう。

男子生徒のように徒歩や公共交通機関での通学に危険があるというのであれば、対処すべきはそうした危険を生んでいる男性への対応でしょう。

必要なのは、女性に自体に閉じこもることを強要し、顔を覆うことを求めることではなく、女性に危害を及ぼす男性の男根を切除することでしょう。

女性だけの外出が認められず、就業も著しく制約される状況では、男性がいない母子家庭は生きていく術がありません。

****タリバン最高幹部に単独インタビュー 「女性の権利の問題」認識するも「問題とは思わない」****
イスラム主義組織タリバンがアフガニスタンの実権を握って1年。最高幹部の一人・ムッタキ外相代行が、日本メディアの単独インタビューに初めて応じ、「女性の権利の問題は認識」するも「問題だとは思っていない」と述べました。

JNNは、アフガニスタン第二の都市・カンダハルで、タリバン最高幹部の一人・ムッタキ外相代行と接触。ムッタキ氏は、20年前のタリバン政権時代に閣僚をつとめ、前アフガン政権やアメリカとの和平交渉の際、タリバンの代表団を率いていました。

タリバン ムッタキ外相代行
「(予算内で)約8000人の職員の給与を支払い生活を維持できています」

国の統治は順調に進んでいると強調したムッタキ氏。女性の権利や教育への厳しい制限が、男性がいない母子家庭の命を脅かすとの指摘については。

タリバン ムッタキ外相代行
「我々は9200人の女性の職員を抱えています。多くの部署で女性が活躍しています。つまり問題として取り上げられるレベルのものとは認識していません。我々は女性の権利を守るために、具体的な政策を実施できるように努力しています」

このように述べたものの、女性の権利をめぐる具体的な策については明らかにしませんでした。【8月18日 TBS NEWS DIG】
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「問題として取り上げられるレベルのものとは認識していない」・・・これは事実隠蔽でしょう。あるいは都合の悪い現実を見ようとしていないとも。
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男女格差  日本、パキスタン、アフガニスタンの現状

2022-07-31 23:04:24 | 女性問題
(【7月13日 NHK】 「ジェンダーギャップ指数」の4分野バランス)

【女性に認められた法的権利は、男性のスコアを100とすると平均でわずか4分の3の76.5】
世界の多くの国・地域で、多くの場面で女性が男性に比べて劣後した権利しか有していない・・・というのは“今更”の自明の事実です。

****男性と同じ経済的権利を持たない女性は世界全体で24億人近く****
2021年、パンデミック下でも23カ国が女性の経済的包摂促進に向け法改正を実施
男性と同等の経済的機会を与えられていない労働年齢の女性は約24億人、女性の完全な経済参加を阻む法的障害が残る国は178カ国に上る、と世界銀行は報告書「女性・ビジネス・法律2022」(WBL)で指摘している。86カ国で女性が何らかの雇用制限を受けており、95カ国は同一労働同一賃金を義務付けていない。

世界全体で見ると、女性に認められた法的権利は、男性のスコアを100とすると平均でわずか4分の3の76.5に過ぎず、法的格差は明らかだ。

ただし、世界規模のパンデミックによる悪影響は女性の生活や暮らしに偏ってはいるものの、報告書によると、2021年に23カ国が法改正を実施し、女性の経済的包摂促進に向け不可欠な措置を講じた。

「進捗はみられたものの、男性と女性で期待できる生涯賃金には世界全体で172兆ドルの差がある。これは、年間の世界GDPの2倍近くに相当する。」と、マリ・パンゲストゥ世界銀行専務理事(開発政策・パートナーシップ)は述べた。「環境に配慮した強靭で包摂的な開発の達成に向けて前進するため、各国政府は、女性がその潜在能力をフルに発揮でき、100%の恩恵を平等に享受できるよう、法改正を加速させる必要がある。」

同報告書は、可動性、職場、賃金、結婚、育児、起業、資産、年金の8つの分野の法規制が女性の経済参加にいかに影響を及ぼしたかを190カ国を対象として検証している。こうして得られたデータは、ジェンダーの平等に向けた世界的進展の客観的かつ測定可能なベンチマークになる。(中略)

報告書最新版はまた、25カ国において「女性、ビジネス、法律」の分野別に法律の施行状況を検証している。分析の結果、紙の上の法と施行実態には大きな開きのあることが明らかになった。ジェンダーの平等向上には法律だけでは十分ではなく、履行や施行だけでなく、社会・文化・宗教上の規範といった要素も関わってくる。こうした開きについては、今後の「女性・ビジネス・法律」報告書でさらに掘り下げていく。(後略)【3月1日 世界銀行】
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【日本のジェンダーギャップ 改善の傾向がないことが問題】
“紙の上の法と施行実態には大きな開きのあること”・・・日本もその事例でしょう。
法律的には一定に平等が実現しているにもかかわらず、毎年発表される「ジェンダーギャップ指数」(経済、政治、教育、健康の4分野に関する統計データから算出する男女格差を示すもので、世界経済フォーラム(WEF)が発表)では、日本は下位を低迷しています。

2022年版では、日本の指数は146カ国中116位と主要7カ国(G7)で最低でした。

****ジェンダーギャップとは 日本はG7で最低****
▼ジェンダーギャップ 
社会や家庭などで男女の違いから生じている格差を示す。各国の格差の度合いを比べる指標として世界経済フォーラム(WEF)の「ジェンダーギャップ指数」が知られる。

2022年版で日本の指数は146カ国中116位と主要7カ国(G7)で最低だった。日本はこれまでも下から2~3割の順位が定位置となっており、男女平等の実現で出遅れている。

指数は経済、政治、教育、健康の4分野に関する統計データから算出する。日本は特に政治が139位、経済が121位と遅れが目立つ。識字率や初等教育の就学などでは男女同等だが、国会議員や管理職の女性比率の低さなどが足を引っ張る。意思決定の場に女性が少ないと格差を生む社会構造が温存されやすい。

多岐にわたる男女格差のなかで特に焦点となるテーマの一つが賃金だ。ジェンダーギャップ指数が1位のアイスランドは18年、企業が男女の同一労働同一賃金を証明するよう世界で初めて義務付けた。期限までに証明できない企業には罰金を科す。

日本も今年7月、女性活躍推進法の省令改正で大企業などに男女の賃金格差の情報開示を義務付けた。実際に賃金の男女差がどこまで縮小されるかが注目される。【7月31日 日経】
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日本の問題は単に格差が大きいということだけでなく、長期的に見て事態が改善されていないということにあります。

****韓国に大差をつけられ116位…日本のジェンダーギャップが「12年前のレベルに“後退”した」ワケ****
(中略)
今年も1位はアイスランドだったが、日本は分析対象国146カ国中116位だった。G7で最下位にあるのは変わりなく、OECD(経済協力開発機構)加盟38カ国の中でも、124位のトルコを除くともっとも低い。

さらに今年は、去年まで日本より順位が低かったバヌアツ共和国が日本より順位を上げたため、東アジア・太平洋地域でも最下位の19位となった(去年日本より下位にあったパプアニューギニアは、今回の評価に参加しなかった)。アジア・太平洋地域で政治・経済的リーダーの役割が期待される日本にとって、とても残念な結果である。

対象国数が近い2015年より大幅にダウン
(中略)日本の順位は昨年156カ国中120位だったため、一見今年は順位(116位)が上がったかのように見えるが、今年は対象国が10カ国も減ったので、相対的な順位が上がったとは言えない。
分析対象国数が145カ国で、今回と近かった2015年の日本の順位は101位と、今年よりはるかに高かった。

もちろん、ジェンダーギャップ指数だけで男女格差を十分に表すことはできない。女性の間の格差や性的マイノリティーの状況はこの指数だけでは分からないし、性別以外の属性もクロスして分析しなければ、社会のあらゆる格差を明らかにすることはできない。ジェンダーギャップ指数は、社会に存在する不平等のあり方を分かりやすく表す手法のうちの一つであることを留意したうえで、有効に活用することが大事だ。

それでは、15年間のジェンダーギャップ指数から何が見えてくるだろうか。世界と日本の15年間の変化を手がかりに日本の課題を考えてみたい。

「他国が頑張っているから遅れて見える」わけではなかった
ジェンダーギャップ指数は男女のギャップを0から1の数値で示しており、最高スコアである1は男女格差がない平等な状態(パリティ)を示す。反対にスコアが0に近くなるほど、男女のギャップが大きいことを意味する。

13年連続1位であるアイスランドと日本の総合スコアを比較してみると、アイスランドが0.908と、ジェンダー平等が90%程まで達成されているのに対して、日本は0.650にとどまっており、ジェンダー平等から程遠い状況がうかがえる。

日本のジェンダー格差は今年に限ったことではない。今年の総合スコアは0.650であるが、これは昨年の0.655を下回る。

また、ジェンダーギャップ指数が初めて発表された2006年からの長期的な変化を見ても、日本の総合点はほとんど変わっていない。2006年は0.645で、2015年にかろうじて0.670まで上がったものの、その後はスコアを落とし、挙げ句の果てに今年は2010年(0.652)以前の水準にまで後退した。

つまり、男女格差が大きいだけでなく、長期的にみても改善の傾向がないのであり、それこそが問題なのである。
この数値から言えるのは、これまで言い古されてきた「諸外国が頑張っているから相対的に日本が遅れて見えるだけ」というのは言い訳に過ぎず、「日本はこの十数年間ジェンダーギャップを放置してきた」ということである。

コロナでさらに開いた格差
分野別の数値からはさらに詳細が見えてくる。
経済と政治分野で男女差は一貫してとても大きい。とりわけ、昨年(2021年)と比べると、今年は経済分野で121位まで順位を下げて(昨年117位)おり、スコアも0.604から0.564に下がった。経済分野の男女格差が開いたのは、女性の労働参加率の下落幅が大きかったことが響いた。

「男女共同参画白書」でも、コロナ禍の影響には男女差があると指摘されている。特に小、中、高校の一斉休校があった2020年3月から4月には、男女ともに就業者数が大幅に減ったが、女性の就業者の減少幅は男性より1.8倍も大きかった。

その後も、女性の就業率はなかなか回復せず、回復の速度も男性より遅い。元々貧困率が高くケア責任も担っているシングルマザーたちは、特に苦しんだ。コロナ禍は「女性不況」とも言われるほど、女性に大きなダメージを与えたが、それに対する政府の対策はジェンダー格差を十分に考慮していたとは言えない。

定額給付金は世帯主にまとめて支給され、雇用維持のための各種支援も企業を通じて行われた。コロナ禍以前から存在していたケア負担や不安定な労働条件が原因で労働市場から撤退せざるを得なかった女性たちに、スピード感を持って的確な支援を届けることができなかったのである。(中略)

「善意にお任せ」だったが女性候補者3割超に
日本でも2003年に、「2020年までに社会のあらゆる意思決定の場における女性の比率を30%にする」という目標を掲げていた。しかしこの、いわゆる「202030」は達成できず、政府はその原因に対する精査もせず、「2025年までに国政選挙の候補者の女性割合を35%にする」という新しい目標を立てた。目標を立てているだけでそれを強制する方法は設けず、各政党の善意にお任せ状態である。

それでも、先日行われた参議院選挙では、各政党が世論に後押しされる形で女性候補者を増やす努力をした結果、女性候補者比率が初めて3割を超えた33%となった。

女性候補者を50%にする目標を掲げた立憲民主党が先導的にその目標を達成したほか、自民党も最終的に比例代表の女性候補者比率を3割に上げることに成功した。(中略)

まずは候補者を増やす努力を続けることで、政治を志す女性が増え、次の選挙にはもっと有能な人材が政治に参入することが期待できる。有権者にとっても女性候補者が増えると自分たちを代表してくれる人を選べる選択肢が増え、それ自体が選挙や政治に対する市民の関心を高めることになる。(後略)【7月26日 お茶の水女子大学 ジェンダー研究所教授 申 琪榮 (しん・きよん)氏 RESIDENT WOMAN】
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【パキスタン 女性、トランスジェンダー、移民労働者、遊牧民など数百万人は電子身分証明(ID)カード不所持】
“紙の上の法と施行実態には大きな開きのあること”の事例として日本を取り上げましたが、法律・制度的に差別が既定されているという話になれば当然ながらより深刻な問題になります。

****問題根深いパキスタンの電子ID、数百万人締め出し****
パキスタンでは選挙で投票したり、さまざまな公的サービスを受けるのに電子式の身分証明(ID)カード「CNIC」が必須だが、父親のIDカードを提示しないとCNICを取得できなかった。

しかし母子家庭で育った女性がCNICの発行を求めて起こした訴訟でシンド州の高等裁判所は昨年11月、女性の訴えを認める画期的な判決を下し、母親の市民権記録に基づいて発行するよう当局に命令。母子家庭で育つとCNICを取得できない状況に風穴が開いた。

もっともパキスタンでは女性やトランスジェンダーなど数百万人が依然としてCNIC制度から除外されており、問題は根深い。

訴訟を起こしたのはカラチ出身のルビナさん(21歳)。CNICを手に入れようと3年間にわたって何度も挑戦した挙句、提訴に踏み切った。

「申請に行くと父親のカードを持ってくるように言われる」とルビナさん。「私が生まれた直後に父は私たちを捨て、母が育ててくれた。父のID書類がそろえられるわけがない」

今回の判決により、ルビナさんは母親の定年退職後に州の教育局で母親の仕事を引き継ぐ申請が可能になった。

非営利団体「パキスタン人権委員会(HRCP)」のハリス・カリクエ事務局長によると、今回の判決で母子家庭の子どもは事実上CNICが取得できないという問題に終止符が打たれた。

CNICがないと、公立教育機関や医療保障制度を含めたあらゆる公的サービスへのアクセスができない上、銀行口座の開設や就職活動もできず、「端的に言って、市民としての権利がまったくない」

CNICを管轄する国家データベース登録局(NADRA)は、これまで制度から除外されてきた人々への接触に努めていると説明。連邦政府の政策の実施状況を監督する、首相直属の戦略改革チームを率いるサルマン・スフィ氏は、「データベースに登録されるはずの人々を排除しないというのが政府の明確な方針だ」と述べた。

<まるで外国人>
2000年に設立されたNADRAは国の生体認証データベースを管理し、成人の96%に相当する約1億2000万枚のCNICを発行しているという。パキスタンの総人口は約2億1200万人。

各カードは13桁の固有のID番号、本人の写真、署名、マイクロチップで構成され、チップには虹彩スキャンと指紋のデータが記録されている。

しかし女性、トランスジェンダー、移民労働者、遊牧民など数百万人はいまだにCNICを手にしていない。

世界銀行によると、全世界で身分を証明する手段を持たない人は10億人余りに上る。

各国政府はガバナンスを改善するためと称してデジタルID制度の導入を進めているが、国連の人権特別報告者は、こうした制度は疎外されたグループを排除しており、社会保障制度を利用する前提条件にすべきではないと訴えている。

HRCPが昨年行ったカラチの移民労働者への調査で、女性はCNICを持っていないケースが多く、夫が死んだり家を出たりすると貧困に陥る危険性があることが分かった。

親が身分登録をしていないと子どもは出生証明書を取得できないため、特に弱い立場に置かれ、人身売買や強制労働のリスクにさらされているという。

HRCPは、移動式の登録拠点や、特に立場の弱い人々の登録を支援する女性スタッフの増員、さらには手続きの簡素化、移民の申請を難しくしている書類要件の緩和などを提言している。

パキスタンに何十年も住んでいるアフガニスタン難民約280万人のうち、登録しているのはわずか半数。パキスタンには、未登録のベンガル系やネパール系、ロヒンギャ族の移民がかなりの数で存在する。

CNICの発行を求める活動を率いるシェイク・フェロス氏は最近の抗議行動で、「ベンガル系パキスタン人の大多数はCNICを持たず、自分の国であるにもかかわらず外国人や不法移民のように暮らしている」と訴えた。

NADRAは、バングラデシュ、ケニア、ナイジェリアのデジタルIDシステムの構築も支援しており、「特に女性、少数民族、トランスジェンダー、未登録者」に専門に対応する登録部門を設置していると説明している。

「女性が男性職員と接するのをためらうという社会文化的な障壁を克服するため」、特に国境沿いの州には女性専用の拠点が複数置かれ、高齢者や障害者を優先しているという。(後略)【7月30日 ロイター】
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【アフガニスタン タリバンによって就業機会を奪われた女性】
法律や明示された制度であれば改善の余地もありますが、権力者の恣意的意向で決まるという話になると、権力者の考えを変えさせるか、権力者そのものを変えるしかないということにもなります。

上記パキスタンの隣国アフガニスタンで、タリバンの意向によって女性の教育・就業の機会などが大きく制約されていることは、これまでもしばしば取り上げてきました。

タリバンによる女性に対するニカブ・ブルカ(顔を隠す衣装)の強要という問題もありますが、一番の問題は女性の就業機会が奪われたことでしょう。

失業した女性は生活の糧を失い、生きがい・夢を失い、追い詰められていきます。

****【アフガン】髪も抜け落ち… タリバン政権で失業 うつ病に苦しむ女性たち****
イスラム主義勢力タリバンの暫定政権発足後、たくさんの市民が仕事を失っています。

特に生活においてさまざまな制限が課されている女性たちが、失業をきっかけにうつ病にかかってしまうケースが増えているといいます。 仕事を失い希望まで奪われてしまっている女性たちの現状を、現地通信員が取材しました。【7月16日 日テレNEWS】
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****タリバン「女性の生活破壊」=デモ参加者に暴行、児童婚増加―人権団体****
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは27日、アフガニスタンでイスラム主義組織タリバン暫定政権の発足後、「女性の生活が破壊」されているとの報告書を公表した。暫定政権に抗議した女性への暴力や、児童婚が増えていると指摘。労働や教育の機会が奪われていると非難した。

アムネスティの調査員がアフガンを訪れ、14〜74歳の女性101人と面談するなどして状況を調べた。抗議デモに参加し、数日間拘束されたという女性は、タリバンの看守から家族の写真を見せられ「全員殺せる」と脅迫を受けた上、強く蹴られてけがをしたと証言した。

中部で暮らす女性(35)は昨年9月、生活苦から670ドル(当時のレートで約7万4000円)相当の現金と引き換えに13歳の娘を30歳の隣人と結婚させた。もう一人の10歳の娘には英語を学び、職を得て家族を支えてくれることを期待している。一方で「もし学校が再開しなければ、娘を結婚させなければいけない」と懸念も漏らした。タリバン政権下で女子が中等教育から排除される状態が続いている。【7月27日 時事】 
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「戦う女性兵士」 一方で、国外避難は女性・子供のみ 戦争における男女のリスク負担は?

2022-03-10 22:59:48 | 女性問題
(ウクライナ軍フェイスブックより【3月10日 ABEMA Times】)

一昨日、3月8日は「国際女性デー」でした。

ロシア軍に対し激しい抵抗を続けているウクライナ軍ですが、ウクライナでは2014年に起きたロシアによるクリミア併合以降女性の戦闘任務が可能となり、女性兵士の数は全体の15%にあたる3万人以上とか。

なお、下記記事の「地域防衛隊」は民間人が参加する国防省傘下の組織で、正規軍とは別組織になります。

****女性兵士の投稿、世界に拡散 軍隊への参加進むウクライナ****
ロシアに侵攻されているウクライナで、武器を手に立ち上がる女性たちの投稿写真が、ネット交流サービス(SNS)で世界中に拡散している。

もともと女性兵の割合が比較的高かったのに加え、民間人が参加する国防省傘下の「地域防衛隊」の中で、徹底抗戦を呼びかける役割を買ってでる女性も出ているようだ。
 
「太陽は輝いているし、鳥は歌っている。きっとすべては良くなる」。2月下旬、軍服を着た女性が青空を背景にほほえみながらカメラに向かって語る動画がSNS上で広がった。

動画の出所は不明だが、動画をシェアする投稿には女性が語る言葉を翻訳したとされる英文も添えられ、「心を打つ映像」「ウクライナに平和を」とたたえるコメントが相次いだ。
 
2月23日には、元「ミス・ウクライナ」のアナスタシア・レナさんが「ウクライナとともに立ち上がろう」というハッシュタグとともに銃らしきものを抱える写真をSNSに投稿。「いいね」を示すハートマークが14万個以上に上り、欧米メディアも取り上げた。
 
ウクライナはロシアがクリミア半島を強制編入した2014年以降、女性兵の募集に力を入れてきた。女性兵の数は全体の15%にあたる3万人以上。

ロシアがウクライナ国境周辺に軍隊を集結させた昨年末には、防衛戦に備え、国防省が18〜60歳の女性に入隊を要請し、多くの女性が呼応して軍事訓練に加わった。
 
一方、国防省は女性兵を総力戦のイメージ戦略に活用しようとしており、そのやり方を巡って批判も出ている。昨年7月、国防省が式典で披露する軍隊の行進練習を公開した際、ハイヒールを履いて行進する女性部隊が登場。女性政治家などから「性差別だ」と反発が起きた。
 
戦争史やパブリックヒストリーに詳しい東京女子大の柳原伸洋准教授は、SNS時代の戦いは「市民一人一人に焦点があたっている一方で、イメージの固定化も同時に起きている」と指摘。勇敢な女性像だけを一面的にたたえる風潮は「戦争の本質を見失わせる」と語った。【3月6日 毎日】
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ウクライナに限らず、軍における女性の存在は以前に比べて大きくなりつつありますが、上記記事にあるような“ハイヒール”など、従来の女性イメージを引きずる側面も多々あるようです。

女性の権利が十分に認められていないとの批判があるイスラム世界にあっても、クウェート軍では女性兵士に戦闘任務に就くことを認めているようですが、一方で大きな制約も。

****クウェート軍、女性兵士の戦闘任務許可 ただし丸腰で****
中東クウェートで、国防省が女性兵士に戦闘任務に就くことを認めたものの、男性保護者の許可が必要だとした上、武器の携行を禁止したため、女性の怒りを買っている。
 
国防省はさらに、女性兵士は民間人と異なり頭髪を覆わなければならないとも決定。女性権利活動家は、「一歩進んで二歩下がる」政策だと批判している。
 
クウェートは湾岸諸国で最も開かれた社会の一つと見なされており、今回の動きにインターネット上で反発が広がった。
 
体育教師でクウェートサッカー協会の女性委員会メンバーのガディール・カシティ氏は、「なぜ軍への入隊にこのような制限があるのか分からない」「警察を含め、あらゆる分野であらゆる女性が活躍しているのに」とAFPに語った。
 
カシティ氏の母親は、1990年にイラクのサダム・フセイン大統領(当時)がクウェートに侵攻した際、米主導の連合軍によって7か月に及ぶ占領から解放されるまでレジスタンス活動を支援していたという。「母はアバヤ(全身を覆う長衣)に武器を隠し、レジスタンス活動家のところまで運んでいた。父もそれを奨励していた」
「何を根拠に、女性を弱いと見なしているのか理解できない」
 
国防省は昨年10月、女性の戦闘任務参加を認めると決定したが、イスラム教のファトワ(宗教令)を理由に「(戦闘任務は)女性の本質に合わない」と主張する保守派議員から国防相に質問が出された後に制限を加えた。

■女性殉教者
クウェート女性文化社会協会のルルワ・サレハ・ムラ会長は、国防省の課した制限は差別的かつ違憲であり、協会として法的措置を取ると明言した。「わが国には、自らの意思で祖国を守った女性殉教者たちがいる。誰に命じられたわけでもない。祖国を愛していたからだ」

「クウェートがイスラム教国なのは事実だが、私たちは法律がファトワに左右されないことを求める。個人の自由は憲法で保障されており、法律は憲法に基づいている」
 
クウェート大学のイブティハル・カティーブ教授(英語学)は、新規則をめぐる議論は筋が通っていないと指摘。「軍は男女を差別することなくまとめる必要がある」「危険は男女を区別しいないし、戦闘中の死も同様だ」と述べた。 【3月6日 AFP】
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イスラム世界以外でも“地域事情”はいろいろ。
お隣、韓国では徴兵制のもとで男性には兵役義務がありますが、最近は女性にも同じような兵役義務を広げるべきとの議論が、特に兵役が現実問題となる若い男性から提起されています。

韓国では深刻なジェンダー対立があることは指摘されるところですが、兵役問題の背景にもこのジェンダー対立が存在するようです。

****「女性も徴兵制を」 韓国で議論が活発化する背景とは****
男性の徴兵制がある韓国で、女性にも兵役を課すべきだという議論が活発化している。今年5月には、女性徴兵制を求める大統領府あての請願に29万人以上が賛同し、話題を呼んだ。

20代の韓国人らに話を聞くと、兵役に不満を抱く男性だけでなく、女性からも賛成の声が聞かれた。
 
署名した市民や専門家に取材する中で、今の韓国社会が抱える課題が見えてきた。それは日本人にとっても人ごとではない問題だ。

29万人が賛同
「女性も徴兵の対象に含めてください」。今年4月、青瓦台(大統領府)のホームページ(HP)に、こんなタイトルの請願が投稿された。30日以内に賛同者が20万人を超えれば、政府が見解を出す仕組みになっている。
 
請願の投稿者はHP上で、「出生率の低下が軍の兵力の補充にも大きな支障をきたしている。軍務に適していない人員も無理やり徴兵対象となっているため、軍の質が落ちている」と指摘。

軍はすでに将校などに女性を募集しており、身体的に軍務に適していないとの理由は通らないとして「兵役の義務を男性にだけ負わせるのは非常に後進的で女性を卑下する発想だ」と訴えた。この請願では、30日以内に29万3140人が賛同した。政府が出した見解については後段でふれる。
 
これまでも女性徴兵制を求める声はあった。青瓦台に2017年に寄せられた同様の請願では12万人以上が賛同。国会に対する請願を受け付けるHPでも今年4月、同様の請願が出され、10万人が同意した。

少子化で兵士不足
なぜ女性徴兵制を求める人がこんなにも多いのか。青瓦台への請願に賛同したソウル市の男子高校生(18)はこう説明する。「少子化のために、本来は適任でない兵士まで徴兵されている。女性の中には男性よりも軍の仕事に適した人がおり、軍の質の向上にもつながるはず。女性に門戸を開かないのは旧時代的な女性差別だ」
 
韓国では近年、急速に少子化が進んでいる。2020年の合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子どもの数)は0.84と、日本の1.34(20年)を大幅に下回る。経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国(当時)のうち、1を下回ったのは韓国だけだ。

徴兵対象者の徴兵率は1993年に72%だったが、今では9割近くにまで上がっている。徴兵を所管する兵務庁は20年10月、1年に必要とされる20万人の兵士を32年以降は維持できなくなるとの見通しを示した。
 
世論調査会社の韓国ギャラップが今年5月に実施した調査で徴兵制の対象とすべき性別について聞いたところ、「男性だけ」(47%)と「男女両方」(46%)が拮抗(きっこう)した。20代は「男女両方」が51%と、「男性だけ」(37%)を大きく上回った。若い世代を中心とした議論の盛り上がりが見て取れる。

不公平感も背景に
韓国では原則として男性は約2年の兵役を課される。女性徴兵制に多くの賛同が集まった背景には、男性側が現行制度を不公平だと感じていることも背景にある。

 
青瓦台の請願には海外在住の韓国人も参加できる。賛同した京都市在住の韓国人男性(27)は「国は、男性の約2年にわたる多大な犠牲への補償をしてほしい。それができないなら、女性も国防の義務を分担すべきだ。数が減っている若い男性だけが国防を担うのは荷が重すぎる」と不満をのぞかせた。
 
「多大な犠牲」とは、青春時代の貴重な時間が失われることだけではない。それは、深刻な社会問題となっている若者の就職難に関係している。

教育部(文部科学省に相当)が高等教育を受けた人に実施した19年の調査では、韓国の大学卒・大学院修了者の就職率は67.1%にとどまった。韓国政府の統計によると、20年の若年層(15~29歳)の失業率は9.0%。日本の若年層(15~24歳)の完全失業率はこの年、4.6%だ。
 
このため競争は激烈だ。学生たちは就職で少しでも有利になるように早くからインターンシップ制度の利用や資格の取得などに奔走する。だが、兵役中は事実上、就職活動をすることができない。

以前は、兵役の義務を果たすと一部の公務員採用試験で点数が加算される「軍加算点制度」が実施されていた。だが兵役に就けない障害者や女性らが「差別的だ」と反対運動を展開。99年に憲法裁判所が「平等権を侵害する」として違憲と判断し、廃止された。
 
求人情報サイト「ジョブコリア」が今年、4年制大学卒の新入社員を採用した企業を対象に実施した調査で、新入社員の平均年齢は女性が27.3歳であるのに対し、男性は30.0歳。前述の京都市在住の男性(27)は、「同期の女性は、男性が兵役中に留学し、男性より早く就職する。不公平だ」と本音をもらす。(後略)【2021年10月3日 毎日】
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まあ、女性の側からすれば、「だったら女性だけが担う出産はどうしてくれるの? 最低育児は平等でないと!」といった話にもなるのでしょう。

ちなみに韓国社会は日本以上に男尊女卑の風潮が強く、先進国を中心とした29カ国を対象にした「女性の働きやすさ」ランキングでは例年韓国が最下位、日本が下から2番目という“好ライバル”状況です。

話を軍における女性の存在に戻すと、必ずしも女性に兵役を広げればいい・・・という話でもないとの議論もあるでしょう。

一方で、今回ウクライナで女性の出国避難が認められた一方で、「残って戦え!」と18〜60歳までの男性の出国が制限されたことへの疑問も。

****メディアが拡散する“ロシア軍と戦う女性兵士”と“子どもを連れ避難する母親”…ウクライナ侵攻、女性も男性と同じリスクを背負うべきなのか?****
「今年、私たちが手にしているのは花だけではない。銃も手にしている」と述べたのは、キエフに残る野党「声の党」のキラ・ルディク党首。実際、これまでも銃の訓練に参加する一般女性の様子が度々報じられており、志願して前線に赴く女性たちもいるという。

海外メディアによれば、ウクライナでは2014年に起きたロシアによるクリミア併合以降、女性の戦闘任務が可能となり、現在は軍全体の約15%にあたる3万人にのぼるという。

■戦争を遂行する側は“女性の顔”を利用する
あらゆる分野で女性の社会進出が進む中、国防も例外ではない。女性比率が18.8%だというアメリカ軍では2015年に女性兵士の職種を解放、最前線の戦闘任務に就く可能性も出てきた。女性比率が7.9%の自衛隊においても、ほぼ全ての職種が解放されている。

東京女子大学の柳原伸洋准教授(ドイツ・ヨーロッパ近現代史)は、「やはり堅強な人は女性であれ、男性であれ兵士になる。そういう考え方がヨーロッパを含めて浸透していると思うし、ロシア近隣の国においてはその割合がウクライナと同じぐらいになってきている。(中略)

その上で、「私が住んでいるドイツとウクライナは2000kmくらいの距離にあり、今週には女性と子どもがミュンヘンにも逃げてきた。そうした女性たちがSNSに発信する情報が、“私たちと続いているんだ”という意識を作ってくれている面はあると思う。

一方、前提として考えたいのは、どの国においても戦争を遂行する側が“女性の顔”を利用しようとするということだ。(中略)」

■女性も男性と同じリスクを背負うべき?
一方、ウクライナではロシアの侵攻が始まると、防衛態勢強化のために18〜60歳までの男性の出国が制限された。これに対し“なぜ男性だけなのか”といった疑問の声も上がっている。

ソフトウェアエンジニアでタレントの池澤あやかは「男性でも女性でも、戦争に行って自分の命を危険に晒すのは嫌だと思う。そこでなぜ女性だけが行かなくていいということになるのか。男性だけにリスクを背負わせるというのは良くないことだと思うし、ジェンダー平等を訴えるのであれば、女性も積極的にリスクを取っていく必要があると思う。ただ、戦地において生理中はどうするんだ、お風呂はどうするんだ、といった問題も出てくるので、ある程度はジェンダーバランスが取れていないと女性が参加するのは難しいのではないか」とコメント。

フィギュアスケート元日本代表の安藤美姫は「泣きながらボーイフレンドや旦那様と別れる女性、子どもを連れて国外に逃げる女性の姿をテレビで見ているが、もちろん国内に残りたいという人、戦いたいという人もいると思う。女性であるから戦争に行かないという時代ではないと思うし、日本ではできないことだろうが、私も同じ立場になったら自分や家族の身を守るためにも、銃を取ろうと思うかもしれない。ただ、他の女性の姿と自分と照らし合わせてしまうということは、あまりいい方向に動かないのかなという思いもある。

そして、もちろんお父さんが育てている家庭もあるとは思うが、子どもを守って育てていくという面ではやっぱりお母さんの方が長けていると感じるし、ウクライナ人の子孫を残していくという面では女性を守った方がプラスに動くこともあるのではないか。戦争という状況においては性差別やジェンダーの問題とは別に、選択肢として“女性と子ども”を逃がす、ということもあるのかなと思う」とコメントした。

■今も続く、“男性的な女性の語られ方”
安藤の話を聞き、父子家庭に育ったというギャルユニット『BlackDiamond』リーダーのあおちゃんぺは「もちろん、率先して行きたい方、身体能力がずば抜けていい方であれば活躍できるとは思うが、女性と子どもを逃がすというのは、子育てや子孫の繁栄を考えると正しい選択だと思う」と賛同。

ただ、「男性ばかりのところに女性が行けば弱い存在のように思われたり、性暴力の対象になったりする。私だったら絶対に行こうとは思えないと思う」と、戦場や各国の軍隊でしばしば問題になってきた女性への性暴力について問題提起した。

デザイナーでモデルの長谷川ミラは「戦争はどう考えてもそういう場になるが、東日本大震災の際には避難所での性的被害が多く報告されているわけで、どこでも起きうる問題でもある。その意味では、女性たちが自分を守るために対策をするだけでなく、男性たちを教育するための議論をすべきだ」と指摘。

「2021年の『ジェンダーギャップ指数』(世界経済フォーラム)では、ウクライナは74位で、ウクライナ系カナダ人の友人に、数年前まで女性が就けない職業もあったと聞いた。120位の日本よりも高い順位とはいえ、そういう背景もあると思う」と話した。

柳原氏は「男性側の教育が必要なのではないかという指摘は、本当におっしゃる通りだと思う。19世紀以降、国民国家というものが成立すると、戦争に参加するということが市民権であり、参政権につながった。だからこそ男性中心だったということだ。

そういう語り方が21世紀の今なお尾を引いているために、女性兵士についても“女性なのに強い”とか“女性なのに勇敢だ”というような、19世紀以来の男性的なモードが連続している。そういうことにも目を向けてもいいのではないかと思う」と話していた。(『ABEMA Prime』より)【3月10日 ABEMA Times】
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アフガニスタンでの女性権利保護、気候変動に関する行動を求める側の言行不一致・欺瞞

2021-11-03 21:30:13 | 女性問題
(1日、英グラスゴーでの国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)首脳級会合で行動の重要性を演説するジョンソン首相 【11月2日 時事】)

【「ソーセージパーティー」でタリバンに女性権利を求める各国・国際機関代表団の欺瞞】
アフガニスタンで教育や就業の面で女性の権利が認められていないことについては、多くの報道があります。
下記記事はそうしたものの一例です。


****「なぜ勉強できないの?」 学校を追われたアフガン少女たち****
アフガニスタンのアメナさんは、通っていた女子高校が今年5月、イスラム過激派組織「イスラム国」の爆弾攻撃を受け、同級生数十人の死を目の当たりにした。それでも教育を受け続ける覚悟だった。
 
ところが、中等教育を受けているほとんどの女子と同様、アメナさんは今、授業からまったく締め出されている。アフガニスタンで政権を奪還したイスラム主義組織「タリバン」は9月に学校再開を命じたが、女子生徒は除外された。

「勉強したいし、友達に会いたいし、明るい未来がほしいです。でも今はそれができません」。首都カブール西部にある自宅でアメナさんはAFPに語った。「最悪の状況です。タリバンが来てから、とても悲しいし、怒っています」
 
国連児童基金(ユニセフ)の幹部が15日語ったところによると、タリバン暫定政権の教育相は同機関に対し、すべての女子生徒が中等教育を受けられるようにする枠組みを近く発表すると述べたという。
 
だが今のところ首都カブールを含むアフガン全土で、女子生徒の大部分は授業を受けられていない。
 
一方、小学校は全ての子どもに対して再開した。また私立大学には女子も通うことができるが、服装や行動について厳しい制限が課せられている。

■「希望がない」
アミンさんはジャーナリストになることを夢見ていたが、今では「アフガニスタンに希望はない」という。
 
家ではきょうだいに勉強を助けてもらっている。学校襲撃で心に傷を負った妹はカウンセリングを受けている。アミンさんは時折、このカウンセラーからも勉強を教わっている。

「兄弟が本を家に持ってくるので、それを読んでいます」と語る。「それから、いつもニュースを見ています」
 なぜ男子だけが勉強することができて、女子には許されないのか、理解できないとアミンさんは訴える。「社会の半分は女子で、残りの半分が男子。なんの違いもありません」

「なぜ私たちは勉強できないのでしょうか? 私たちは社会の一員じゃないのでしょうか? なぜ男子だけに将来があるのでしょうか?」

■消えた夢
米軍主導の多国籍軍が旧タリバン政権を追放したのは、2001年。それから何年もたって生まれたザイナブさん(仮名、12)は、タリバンの5年におよぶ圧政の記憶もなく、学校通いを楽しんでいた。それも復権したタリバンの命令が出るまでだった。
 
先月、男子だけが学校に戻る様子を窓から見てがく然とし、「恐ろしい気持ち」になったという。
「毎日、どんどん悪くなっています」とザイナブさん。身の安全のために本名は伏せて取材に応じた。
 
姉のマラレーさん(仮名、16)は涙ながらに「絶望と恐怖」を感じていると明かした。今は掃除や皿洗い、洗濯など家事を手伝って過ごしている。
 
母親の前では涙をみせないようにしている。「母はたくさんのプレッシャーを背負っていますから」と説明した。
 
マラレーさんは女性の権利を向上させ、彼女の権利を奪う男性たちを説き伏せることを夢見ていた。
「学校、そして大学に行くのは私の権利です」とマラレーさん。「私の夢や計画はすべて、消えてしまいました」 【10月26日 AFP】
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女子教育についてもタリバンはイスラム法の許す範囲で云々とはいうものの、その実態は上記のような状況です。

ただ、今回取り上げるのは、そうしたタリバンの言行不一致ではなく、タリバンを批判して女性の権利を保護するように求めている欧米諸国や国際機関などの国際社会の"欺瞞"とも言うべき姿勢です。

なお、下記記事表題にもある「ソーセージパーティー」は男性のみの集まりを指す隠語で、その由来は・・・想像できるかと思います。

****タリバンも各国代表団も男性だけ 「ソーセージパーティー」に批判*****
スラム主義組織タリバンが実権を握るアフガニスタンの国際社会への受け入れに動く各国当局や支援団体が、タリバン側との協議に男性だけを派遣し、女性を排除していることに批判が出ている。
 
タリバンは8月の実権掌握以降、暫定政権から女性を排除、女性の労働や教育を制限しており、国際社会から批判されている。
 
各国政府や支援団体の代表団は、国際社会からの承認を希望するタリバン側と首都カブールで協議しているが、その席に女性の姿はほとんど見られない。

■「ソーセージパーティー」
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチのヘザー・バー氏は、ハッシュタグ「sausageparty(ソーセージパーティー、男性だけの集まり)」を付けて、タリバンが投稿した代表団との協議の際に撮られた一連の写真を掲載した。
 
バー氏はAFPに対し、「各国、特に支援団体は模範とならなければならない」と語った。「男性だけの集まりが普通のことだとタリバンに思わせるべきではない」
 
タリバンは外国の代表団との非公開協議の際の写真をソーシャルメディアに多数投稿しているが、女性は一人も写っていない。
 
英国のサイモン・ガス首相特使らは10月、タリバン暫定政権のアブドル・ガニ・バラダル副首相、アブドル・サラム・ハナフィ氏と会談したが、会談場所の豪華な部屋に女性の姿はなかった。
 
当局者はAFPに対し、英国側の出席者がいずれも男性だったのは偶然だと説明した。
 
パキスタンも、国際社会から支持が得られるようタリバンに助言しているが、外相と情報機関トップがカブールを訪問した際の写真や動画で確認できるのは男性だけだった。
 
カタールの首都ドーハで昨年行われたアフガン政府とタリバンとの和平交渉に参加したフォージア・クーフィ氏は「各国指導者は女性の権利について語るのなら行動を伴わなければならない。単なる政治的発言ではなく、信念であることを示さなければならない」と訴えた。
 
赤十字国際委員会や国連児童基金(ユニセフ)、国境なき医師団とタリバン側との会談の写真も公になっているが、いずれも代表団は少人数で、偶然全員が男性だったとしている。
 
国際赤十字・赤新月社連盟は、代表団の女性メンバーが会談直前に参加できなくなったため、男性だけになってしまったと説明した。
 
アフガンは極端な例かもしれない。だが、女性が男性と同席できないのはアフガンに限らない。
バー氏は「男性しかいない場で女性の権利をめぐる問題について懸念を提起するのは極めて奇妙だ」と述べた。
 
こうした批判を受け、国連は、全員女性から成る初の代表団をアフガンに派遣し、タリバン側と女性の教育問題について議論する計画を発表している。 【11月2日 AFP】
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各国・国際機関代表団に女性の姿がない・・・それは、そうしたレベルへの女性の参画が進んでいないという現実の一側面を示すものであり、そのことも改革を必要とする大きな問題です。

ただ、そういう現実があるにしても、女性の権利をなかなか認めないタリバンと会談し、女性の権利を認めるように求める場に女性がいないというのは「奇妙」なことでもあります。

意図的にでも女性メンバーを参加させて、タリバン側の認識の非を明らかにすべきところですが、各国・国際機関代表団にはそいう考えもなかったようです。

「ソーセージパーティー」で女性の権利について語る・・・笑止です。

【COP26 「行動を伴わない言葉は無意味だ」と言いつつ、各国首脳や企業家らは、専用機や自家用機を利用】
英グラスゴーで開催中の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、地球と人類の将来に漢詩て真摯な議論がなされている・・・はず。

イギリス・ジョンソン首相も、口先だけではない「行動」の重要性を力説しています。

****ジョンソン英首相、グレタさんまねる 気候変動で行動呼び掛け―COP26****
ジョンソン英首相は1日、英グラスゴーで開催中の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の首脳級会合で、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(18)の口まねをし、各国首脳に行動を呼び掛けた。
 
ジョンソン氏は演説で「もしわれわれが行動を起こさなければ、気温上昇を1.5度以内に抑えるという約束は、言葉を換えれば、『何とかかんとか』以外の何物でもなくなるだろう」と訴えた。グレタさんの名前には言及しなかった。
 
グレタさんは9月の気候変動に関する若者の国際会議で、世界の指導者たちが口約束ばかりで行動を欠いていると批判。その際に「より良い再建、何とかかんとか。グリーン経済、何とかかんとか。2050年までの排出ゼロ、何とかかんとか」などとジョンソン氏らの掲げるスローガンを引用しながらやゆしていた。【11月2日 時事】
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「行動を伴わない言葉は無意味だ」と息巻くジョンソン首相は正しい・・・・しかし、その実態は・・・・

****COP26に専用機など400機 首脳、企業家ら 偽善との批判も*****
「グラスゴー上空には偽善と熱気が漂っている」(英紙デーリー・テレグラフ)――。英グラスゴーで開かれている国連気候変動枠組み条約第26回締結国会議(COP26)に出席した各国首脳や企業家らは、専用機や自家用機を利用。その数は計約400機に上り、英メディアなどで批判的に取り上げられている。
 
英紙ガーディアンによると、英国のジョンソン首相は、グラスゴーからロンドンに戻る際に4時間半かかる電車ではなく、専用機を使う。
 
英首相官邸は、専用機の燃料の一部は環境配慮型だとしているが、ジョンソン首相は1日の首脳級会合のあいさつで「気候変動対策に取り組む時に、行動を伴わない言葉は無意味だ」と息巻いた。だが「説得力に欠ける」との非難を受けそうだ。
 
航空機は乗客1人当たりの二酸化炭素(CO2)排出量が鉄道より多くなることから、欧州では短距離の移動に鉄道の利用を促す機運が高まっている。
 
また、同じ航空機でもたくさんの乗客を運ぶ民間機と比べ、専用機は乗客1人当たりの排出量がさらに増える。このため輸送に関する英国の環境活動家、マット・フィンチ氏は英メディアに対し「プライベートジェット機は輸送手段の中でもっとも汚染度が高い。気候変動会議の行き来に使うのは、完全に間違ったメッセージの発信になる」と訴えた。
 
デーリー・テレグラフは「その最たるものがバイデン米大統領だ」とする。大統領専用機「エアフォースワン」と、それに同行する4機の大型ジェット機が米欧間を往復すると、約1000トンのCO2が発生すると指摘した。
 
さらに、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長も専用機で現地入りしたとし「彼女はブリュッセルからパリやロンドンといった短距離を含め、海外出張の半分以上に『エアタクシー』を使っている」批判した。
 
英紙インディペンデントは2日のCOP26の会合で、自然の回復などに20億ドル(約2280億円)の拠出を発表した米インターネット通販大手アマゾン・コム創業者、ジェフ・ベゾス氏がプライベートジェット機でやって来たことを紹介。ただ、ベゾス氏が気候変動対策のために設立した基金の担当者は、同紙に対し「環境配慮型の燃料を使い、排出されるCO2も全て相殺している」と答えた。【11月3日 毎日】
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専用機仕様でねん出した時間を使って、より効果的な行動を起こす・・・・ということであれば、目くじらをたてることもないでしょうが・・・どうでしょうか?
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トルコ・エルドアン大統領  自らが制定に重要役割を果たした女性へのDV防止条約から脱退

2021-03-20 22:49:56 | 女性問題

(「女性への暴力およびDV防止条約」脱退検討への抗議デモに参加した女性たち【2020年8月28日 SankeiBiz】)

 

【DV防止条約は、家族の調和を傷つけて離婚を助長 また、LGBTに利用される】

たまたまですが、昨日に引き続きトルコの話題。

 

****トルコ、女性へのDV防止条約から脱退****

トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン政権は19日、女性に対する暴力の防止と撲滅を目的とした「イスタンブール条約」からの脱退を発表した。

 

イスタンブール条約は2011年に欧州評議会で採択され、ドメスティックバイオレンスや夫婦間レイプ、女性器切除の加害者の訴追に向けた法整備を批准国に求めている。

 

エルドアン氏率いる保守派与党は条約について、家族の調和を傷つけて離婚を助長するほか、LGBTコミュニティーが社会でさらに受容されることを目指して利用しているなどと主張していた。

 

一方、野党は条約脱退に強く反発。与党が脱退を提起した昨年以降、トルコ国内では条約に関する激しい議論が交わされ、イスタンブールなど各地で女性による抗議デモが行われている。

 

トルコでは、DVとフェミサイド(女性を標的とした殺人)が深刻な問題となっている。女性権利団体「We Will Stop Femicide Platform」によると、昨年は約300人の女性が殺害された。 【3月20日 AFP】

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【かつては条約制定に重要な役割を果たしたトルコ】

「イスタンブール条約」は正式には「女性に対する暴力及びドメスティッ ク・バイオレンス防止条約」という名称で、欧州評議会が定めた条約です。採択されたのがトルコ・イスタンブールであったことから「イスタンブール条約」と呼ばれています。

 

欧州評議会はEUと紛らわしいですが、EUとは別組織で、1949年に設立されたヨーロッパの統合に取り組む国際機関です。

 

トルコやロシアを含む、ほぼすべてのヨーロッパ諸国が加盟しており、未加盟は人権上の問題があるベラルーシのほかはコソボとバチカンぐらいです。

 

「イスタンブール条約」という通称が示すように、トルコはこのDV(ドメスティックバイオレンス)防止の女性保護条約制定において重要な役割を果たしました。

 

個人的想像ですが、トルコがDV防止でそうした役割を担ったのは、EU加盟を進めるために、トルコの人権問題を疑問視するEUに対し「女性の権利保護」をアピールする狙いがあったのではないでしょうか。

 

条約がイスタンブールで採択された2011年当時は、大統領はエルドアン氏の盟友だったギュル氏で、エルドアン氏は首相でした。(当時は首相が実権を持つ政治制度でしたから、当時から政治的実権はエルドアン氏にありました)

 

【かつても今も、トルコにおける深刻なDV】

当時から、DVに関し、トルコは深刻な問題があることが指摘されていました。

 

****トルコ:暴力にさらされる女性たち****

法の不備と警察の鈍い対応 緊急に必要な保護受けられず

 

(イスタンブール)-トルコにおける家庭内暴力からの保護制度の欠陥により、同国の女性と少女は、家庭内の人権侵害に晒されたまま放置されている、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日公表した報告書で述べた。

 

法の不備と執行制度の欠如のため、虐待を受けている被害者の多くは、裁判所の保護命令や緊急避難シェルターの設置を含む「生命を守るための保護策」を利用できていない。

 

報告書「ドメスティックバイオレンス:トルコでの家庭内暴力の実態と保護へのアクセス」(全58ページ)は、女性が夫やパートナー、そして他の家族から受ける、残虐で長期にわたる暴力の現実や、家庭内暴力から逃れて保護を求めて奮闘する実態を取りまとめている。

 

トルコには虐待の被害にあった女性向けの避難シェルターの設置や保護命令を出す事を義務付ける強力な保護法がある。しかしながら、法の隙間と警察・検察官・裁判官その他当局者の執行システムの欠如が、保護システムそのものを恣意的、さらに言えば非常に危険なものにしている。

 

ヒューマン・ライツ・ウォッチの女性の権利に関する調査兼アドボカシー担当者で本報告書の執筆者でもあるガウリ・ヴァン・グリ(Gauri van Gulik)は、「強力な法律が存在するのに、トルコ政府当局者が家庭内暴力の被害者から基本的な保護を受ける権利を剥奪している事態は、許しがたい。トルコ政府は女性の権利に関して称賛すべき改革を積み重ねてきたが、警察・検察官・裁判官そしてソーシャルワーカーは、法律を絵に描いた餅とするのではなく、実行に移さなければならない」と語った。

 

ヒューマン・ライツ・ウォッチが聞き取り調査を行った14歳から65歳までの女性や少女は虐待の様子を詳しく語ってくれた。

 

たとえば、レイプされたこと、刺されたこと、妊娠中に腹部を蹴られたこと、ハンマー・ムチ・枝・ホースで骨折するまで殴られ、頭がい骨を割られたこと、犬などの動物と一緒に閉じ込められたこと、食事を与えられなかったこと、スタンガンで撃たれたこと、毒を注射されたこと、屋根から突き落とされたこと、激しい心理的暴力にさらされたこと...。家庭内暴力は、調査員が聞き取り調査を行った全ての地域で、収入の多少や教育水準に関わらず発生していた。

 

「初めて虐待を受けた時、夫は私を殴り、お腹にいた赤ちゃんを蹴り、最後には屋根から私を放り投げたのよ。」とセルヴィ・T(仮名)は話した。彼女は12歳の時に強制結婚させられ、何年も夫から虐待を受けている。

 

今回の報告書は、欧州評議会が「女性への暴力と家庭内暴力に関する地域協定」を採択する矢先に公表された。トルコは閣僚委員会の現議長国として、当該協定の草案に重要な役割を果たしてきた。同協定は、2011年5月11日にイスタンブールで開かれる首脳会議の席上で署名される予定である。

 

2009年にトルコの主要な大学が行った調査によれば、15歳以上のトルコ女性の42%、そして地方に住む女性の47%が、人生のいずれかの時点で、夫或いはパートナーによる身体的或いは性的暴力を経験しているという。(後略)【2011年5月4日 Human Rights Watch】

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警察・検察官・裁判官その他当局者が本気で女性の権利を守ろうとする意思を持っていないことが問題でした。

 

その後も、トルコにおける女性に対する暴力は変わっていません。

 

****脅かされる、トルコの女性 夫らの暴力、年間500人が命絶たれる****

男女間の格差が今も根強く残るトルコで、女性の人権が脅かされている。夫や交際相手らによる暴力がやまず、最近では1年間に500人近い女性が命を絶たれている。何が起きているのか。

 

 ■母の死、理解できぬ3歳の子

「私たちが今も生きていられるのは、この子の存在があるからなんです」

 

最大都市イスタンブールにあるアパートの一室。犬のぬいぐるみが置かれた子ども部屋で、アフメット・ペリットさん(61)がつぶやいた。傍らには孫の3歳の男の子。その母で、そしてアフメットさんの娘のトゥーチェさんは2020年1月、27歳の若さで亡くなった。夫に殺されたのだ。

 

14年に結婚したが、3、4カ月もするとけんかが増え、夫から暴力を受けるようになった。顔を殴られ頬を骨折したこともあり、アフメットさんらは「家を売ってあの男から逃げよう」と説得した。だが、トゥーチェさんは「どんな家庭も問題はある。乗り越えればきっと幸せになれるから」と言うだけだった。

 

息子が生まれても暴力は一時的にやんだだけ。トゥーチェさんは定職のない夫に代わって学校給食作りの仕事をし、顔のあざは化粧で覆って出勤した。文句一つ言わずに働いたのは、息子を教育水準の高い私立学校に入れたい一心からだった。

 

一度は離婚を決意し、警察にも相談したトゥーチェさん。しかし、「子どものために、父親がそばにいることが大切」と夫の元に帰ることを決めた。新たな生活を始めようと新居を見に行った際、夫と何かのトラブルがあったとみられ、トゥーチェさんは首を絞められて殺害された。「助けられなかった自分が許せない」。アフメットさんは今も後悔の念が募るばかりだ。

 

トゥーチェさんが育った部屋は壁紙を張り替えて子ども用家具を置き、3歳の息子のものになった。母が死んだことは理解できておらず、墓参りに行くと「僕が出してあげる」と穴を掘ろうとする。アフメットさんは言う。「いたずらしても叱れない。この子が『ママ』と呼ぶのが、あまりに切ないからだ」

 

 ■「男らしさ」守る社会背景に

女性の権利擁護団体「We Will Stop Femicides Platform」の推計によると、トルコで家庭内暴力や交際のもつれなどにより男性によって殺された女性は11年に121人だったのが、18年には440人に、19年は474人に増えた。女性の社会進出が進むにつれ、男性とぶつかることが多くなったことなどが原因との見方がある。

 

夫や交際相手などが加害者であることが多く、離婚協議中に事件が起こることもしばしばだ。同団体のヌルシェン・イナルさん(58)は「トルコでは就職面接を受ける女性が『結婚するの?』『子どもは産むの?』などと平然と問われることもある。男女平等など存在しない」と訴える。

 

トルコは政教分離に基づく世俗主義が国是で、他の中東諸国より女性の社会進出が進んでいるとされてきた。だが世界経済フォーラムの男女格差(ジェンダーギャップ)ランキングでみると、153カ国中130位(日本は121位)に位置する。

 

バフチェシェヒル大のニルフェル・ナルル教授(社会学)は、背景の一つに男性が女性よりも強く優位に立つ「男らしさ」を守ろうとする社会構造があると指摘する。

 

社会での女性の活躍についても、男性によっては「優位」が脅かされると捉え、離婚などの重要な問題で女性が主導的になろうとすると、暴力に転じることがあるとみる。また、イスラム教保守層の影響を指摘する声もある。

 

ナルル教授は、幼いころから「男女は平等だ」という意識を持たせることが重要だとし、「日本のように家庭科の調理実習でともに料理を作って、同じ立場で生きていることを実感させるような体験も有効だ」と話す。(後略)【1月20日 朝日】

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女性が置かれた現実は変わっていませんが、変わったのは保守的イスラム主義を隠そうとしなくなった、また、EU加盟の現実味がなくなり、欧米との対決姿勢を隠そうとしなくなったエルドアン大統領です。

 

****トルコ、DV防止条約脱退も 大統領が検討指示 女性デモ相次ぐ****

トルコのエルドアン政権が「女性への暴力およびドメスティックバイオレンス(DV)防止条約」からの脱退を検討している。

 

イスラム色の強い保守層が「家族構造を崩壊させる」と反発しているためだ。条約はトルコの男性優位社会を見直す重要な契機をもたらしてきた。与党内でも意見は割れ、女性団体による抗議デモが相次いでいる。

 

条約は2011年に欧州評議会で採択された。女性に対する暴力の防止、被害者の保護、加害者の訴追の実現を目指し、批准国に制度整備を求める。トルコは真っ先に署名した国の一つで、同条約は「イスタンブール条約」とも呼ばれる。14年に発効し、現在は欧州中心に34カ国が批准する。

 

トルコでは男性による女性に対する暴力が深刻で、性犯罪や殺人が後を絶たない。トルコが条約署名に動いたのも、欧州人権裁判所が国内のDV事件を問題視したことが大きな要因だった。署名時はエルドアン大統領が首相。国会も承認し、法整備が進められてきた。

 

しかし与党幹部は7月、条約が家族の形を傷つける懸念があると表明した。条約が呼び掛ける「ジェンダー、性的指向」に基づく差別の禁止が、LGBTなど性的少数者を助長しているというのが主な理由だった。

 

地元紙ミリエトによると、保守化を進めるエルドアン氏は与党の会合で条約脱退の検討を指示した。野党は強く反発。与党の女性議員や、政権に近い女性団体も脱退反対を表明し、政権の足並みは乱れている。

 

今月5日、イスタンブールのデモに参加した女子大学生のセネム・カバクさんは「トルコは最初に署名した国として誇りを持つべきだ。条約は政府の数少ない実績なのに、消し去ろうとしている」と批判した。【2020年8月28日 SankeiBiz】

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【政権のLGBT対応を批判する学生を大量逮捕】

保守的イスラム主義を進めるエルドアン大統領ですが、女性問題以外でも、“条約が呼び掛ける「ジェンダー、性的指向」に基づく差別の禁止が、LGBTなど性的少数者を助長しているというのが主な理由だった。”とあるように、性的マイノリティに対しても厳しい対応を示しています。

 

****トルコ大統領、LGBTの若者を非難 学生集会で約160人逮捕****

トルコの学生による抗議集会で、イスラム教の聖地とLGBT(性的少数者)を象徴する虹色の旗「レインボーフラッグ」を並べて描いた絵が掲げられたことを受け、レジェプ・タイップ・エルドアン大統領は1日、トルコのLGBT運動は「破壊行為」だと非難した。

 

先週末、イスタンブールにあるボアジチ大学で行われた学生集会では、イスラム教の聖地とレインボーフラッグを一緒に描いたとして4人が逮捕された。

 

1日、これを非難するエルドアン大統領の演説が放送されて間もなく、同大学では再び抗議集会が行われた。

 

ソーシャルメディアに投稿された映像によると、警察は平和的に抗議していた学生らを引きずって連行した。現場にいたAFPの記者らも、何人かの学生が警察に引きずられる様子を目撃している。イスタンブール県知事によると、159人の逮捕が確認されている。

 

エルドアン氏は、「わが国の若者たちを、LGBTの若者としてではなく、わが国の輝かしい過去に生きた若者のように未来へと導いていく」と、与党・公正発展党の党員へ向けた動画メッセージで発言。

 

さらに「あなたたちはLGBTの若者でも、破壊行為をする若者でもない。それどころか、あなたたちは傷ついた心を修復する人たちだ」と述べた。

 

人権団体らはエルドアン氏が18年に及ぶ在任期間を通じ、大半の国民がイスラム教徒であるものの公式には世俗国家であるトルコの社会を、保守的な方向へ導いていると非難している。

 

トルコでは先月、エルドアン氏が自らに忠実な人物をボアジチ大学の学長に任命したことがきっかけで、学生による抗議行動が相次いでいた。 【2月2日 AFP】

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昨日ブログで、クルド系政党への解党命令に対し欧米とトルコの間の軋轢がまた激しくなりそうだということを取り上げましたが、欧米側のトルコ・エルドアン政権への反発は、エルドアン大統領の女性やLGBTに対する厳し姿勢に見られるイスラム主義・強権姿勢を危惧していることが背景にあります。

 

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スーダンでは女性器切除を犯罪化 女性問題改善への一歩 日本ではジェンダー・ギャップ指数年々悪化

2020-07-12 23:07:52 | 女性問題

(年々低下する日本のジェンダー・ギャップ指数ランキング【4月15日 データのじかん】)

 

【スーダン 女性器切除を犯罪化】

2014年に発効した欧州評議会の「女性に対する暴力及びドメスティック・バイオレンス防止条約」(イスタンブール条約)は女性に対する暴力を犯罪とすることを締約国に義務つけており、該当する行為として精神的暴力(33条)、ストーカー行為(34条)、身体的暴力(35条)、レイプを含む性的暴力(36条)、強制的女性性器切除(38条)、中絶・不妊手術の強制(39条)が規定されています。

 

犯罪とされる女性に対する暴力のひとつが「女性器切除」

 

****女性器切除****

女性器切除(Female Genital Mutilation、略称FGM;「女性性器切除」とも表記する)あるいは女子割礼(じょしかつれい、Female Circumcision)とは、女性器のクリトリス切除を中心に小陰唇切除や大陰唇縫合あるいする行為。

 

主にアフリカを中心に行われる風習であり、成人儀礼のひとつ。

 

麻酔も無く行われることで死者も多発する、この風習では、どのパターンでも必ず性感帯である陰核切除をするので性行為に女性が快楽を感じることを悪とする考えの下で女性差別かつ児童虐待であると批判する人々が使う呼称であり、、一方で男性器の包皮切除を行う男子割礼と同等の儀礼であると肯定的に主張されるる場合では「女子割礼」の語が主に使われる。【ウィキペディア】

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後出の国連人口基金(UNFPA)の報告によれば、世界で性器切除(FGM)を経験した女性は2億人いるとも。

 

こうした悪しき風習がいまだに広く行われているのは、単に男性側の女性差別的発想だけでなく、それを受け入れる女性側の問題など、多くの要因があるとは思われます。それにしても・・・。

 

これまでもブログでしばしば取り上げてきましたが、まとまったものとしては、2008年3月9日ブログ“「国際女性の日」に女子割礼を考える”(「女子割礼」という言葉を使用したのは、別に、肯定的にみなした訳ではありません)

 

女性への身体的暴力の風習としては、胸の発育を強制的に止めるために胸を焼きつぶす「胸アイロン」といった風習も。

2017年1月8日ブログ“男性優位社会で女性に強いられる身体的犠牲「胸アイロン」 男性の性的暴力に関し、女性への責任転嫁も

 

遅々とした歩みのなかで、喜ばしい一歩も。

 

****女性器切除を犯罪化 スーダン統治機構が承認*****

スーダンの統治機構である「最高評議会」は10日、同国に広がる慣習の女性器切除を犯罪とする法律を裁可した。同国法務省が発表した。

 

同省の発表によると、軍人と文民で構成される最高評議会は、「女性の尊厳を傷つける」長年の慣行である女性器切除の犯罪化を含んだ一連の法案を承認した。

 

同国では、長年強権支配を続けてきたオマル・ハッサン・アハメド・バシル前大統領が、数か月にわたって続いた改革を求める大衆デモを受けて失脚。女性たちが重要な役割を果たしたデモから1年後、今回の改革が実現した。

 

内閣は4月、女性器切除を施した人物を処罰する刑法の改正を承認。同国法務省は、「女性器切除は今や、犯罪とみなされる」と述べており、最長3年の禁錮刑が科される可能性もある。女性器切除を施した医師や医療従事者は罰せられ、手術が行われた病院やクリニックなどは閉鎖され得るという。

 

同国のアブダラ・ハムドク首相は、10日の決定を歓迎し、「司法改革の途上における重要な一歩であり、また自由、平和、正義という改革のスローガンを達成するための重要な一歩だ」とツイッターに投稿した。

 

最も乱暴な方法では陰唇からクリトリスまで切除され、膣口は縫合して閉じられる。施術は不衛生な環境下で麻酔なしで行われることが多く、嚢胞(のうほう)や感染症が生じることも少なくない。また施術を受けた女性たちは後に性交痛に悩まされたり、出産時に合併症にかかったりすることもある。 【7月11日 AFP】AFPBB News

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スーダンでは“意外なほどの”民主的プロセスを経て、バシル前大統領独裁からの脱皮が実現しましたが、その民主的な流れは今も消えていないようです。

 

***女性器切除禁止、スーダンも****

アフリカや中東などの一部の国では、女性器の切除が長い間、慣習として続いてきた。今回、その禁止に踏み切ったのがスーダン。長期支配を続けた指導者が失脚して発足した暫定政権が、「人権侵害」と非難してきた欧米との関係改善などを図ったとみられる。すんなり浸透するのだろうか。

 

■指導者失脚、欧米との関係重視

(中略)ユニセフが2016年に出した報告書などによると、スーダンでは15~49歳の女性の87%が女性器の切除を経験していた。「性欲を抑えて貞操を守る」「結婚するために必要」「大人になるための儀礼」などとして行われていた。

 

ただ、術中に大量に出血したり、感染症になったりするケースが少なくない。欧米諸国を中心とした国際社会は「人権侵害だ」と批判してきた。スーダン国内でも、切除に反対する声が徐々に高まっていたが、状況はすぐには変わらなかった。

 

転機となったのは、スーダンで30年にわたる強権支配を続け、禁止措置に後ろ向きだったバシル前大統領が昨年4月に解任されたことだ。バシル氏の失脚につながった大規模デモでは、男性と比べて教育や職業の機会が限られてきた大勢の女性が参加し、自由や公平を求めた。

 

その後発足した軍と文民組織による暫定政権は、民主化に向けた取り組みや、前政権時代に対立していた欧米諸国との関係改善を模索。女性器切除の禁止もその一環とみられる。バシル氏についても汚職と外国通貨の違法所持などの罪で訴追に踏み切った。

 

ただ、切除の禁止がすぐに浸透するかどうかはまだ見通せない。複数の現地住民によると、性の話題をタブー視する家庭は今も多く、女性器切除について、話題にする機会はほとんどないという。

 

住民の一人は「切除が禁止されても、慣習が根強い地域ではしばらくは闇で行われる恐れがある」と心配している。

 

■根強い慣習、「闇」手術に懸念

女性器の切除は、スーダンだけの問題ではない。

 

ユニセフは報告書で、アフリカや中東などの約30カ国で少なくとも約2億人が女性器を切除した、と指摘している。15~49歳の女性のうち、切除した女性の割合はソマリアで98%、ギニア97%、ジブチ93%、シエラレオネ90%。5歳になるまでに切除する子どもも多く、イエメンでは85%の女児が生後1週間以内に切除していたという。

 

その一方、「人権侵害」との批判の高まりや女性の地位向上が進み、各国は撲滅に向けた取り組みを少しずつ進めている。

 

15~19歳で切除した少女は、1985年の51%から2015年ごろには37%にまで減った。国連は同じ年に定めた持続可能な開発目標(SDGs)で、30年までに女性器切除を含む有害な慣行を撤廃することを掲げている。

 

15~49歳の女性の2割が切除を経験しているというアフリカ東部のケニア。11年から女性器の切除を禁止し、違反者は禁錮か20万シリング(約20万円)の罰金が科されるようになった。ケニヤッタ大統領は昨年11月、「22年までに女性器切除を根絶する」と宣言した。実現するかは不透明だが、国内で切除する人は減少傾向にある。

 

スーダンの隣国エジプトでは、1990年代ごろから女性器切除に反発する声が強まり、2008年に違法になった。現在は法律に反して手術を行うと禁錮5~7年、女性が死亡したり重い障害が残ったりした場合はさらに刑期が長くなる。ただ、「切除してこそ一人前の女性」といった考え方もいまだに根強く、闇で切除が実施されているという。【6月9日 朝日】

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かつてはスーダンと言えば、約30万人が殺害され、約270万人が避難民になったとされる、国連が「世界最悪の人道危機」と呼んだバシル前大統領時代のダルフール紛争のイメージでしたが、いろいろ問題はあるにしても、こういう変化は喜ばしいことです。

 

そのダルフール紛争に関しては、暴力行為の中核にあったアラブ系民兵組織ジャンジャウィードの元幹部が13年越しで逮捕されたとか。【6月10日 時事より】

 

バシル前大統領に関しては、“スーダン政権を暫定的に運営する主権評議会は11日、ダルフール紛争をめぐって人道犯罪などに問われているバシル前大統領を国際刑事裁判所(ICC)に引き渡す方針を明らかにした。”【2月12日 CNN】とも報じられていました。現在の状況は知りません。

 

【出産前後の性差別によって「消失」した女性】

女性への暴力、女性差別といった問題に話を戻すと、その類の話は山のように世界でも、日本でもあって話は尽きませんが、そうしたもろもろの結果としておきることのひとつが・・・

 

****性差別により「消失」した女性、世界に640万人と推計****

国連人口基金(UNFPA)は30日、出産前後の性差別によって「消失」した女性がこの5年間で640万人に上った、という推計を発表した。UNFPAは女性差別をなくすための対策を続けているが、新型コロナウイルスの感染拡大で一部の支援が滞り、悪影響を懸念している。

 

UNFPAによると、男児と比べた出生率の低さや出産後の死亡率などから推計すると、「生きていたはずなのに、消失した女性」は1970年時点で6100万人いた。

 

一部の国で女児であれば中絶したり、育児放棄したりするためだ。この傾向はその後も一定の割合で続いており、今年までに累計で約1億4千万人に上る。特に、中国では累計7230万人、インドでは同4580万人が「消失」したという。

 

UNFPAは「世界人口白書」を毎年公表しており、今年は女性の人権侵害に焦点を当てた。処女検査や、性被害から守るために乳房を焼き潰す「胸アイロン」といった19の行為を「有害な慣行」と認定。世界で性器切除(FGM)を経験した女性は2億人、児童婚をした少女は6億5千万人いるという。

 

UNFPAはこうした差別をなくすための支援に取り組んでいるが、新型コロナによって一部の政策が中止を余儀なくされている。ナタリア・カネム事務局長は会見で「女性をモノのように扱うことをやめ、全ての人間には平等な権利があるということを理解しなければならない」と訴えた。【6月30日 朝日】

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【年々悪化する日本のジェンダー・ギャップ指数】

「消失」した女児の84%を中国・インドが占めていますが、日本も女性問題では世界的に非常に遅れた位置にあることは毎年の「ジャンダー・ギャップ指数」で明らかにされています。

 

しかも、経年的に悪化する傾向があります。

 

****ジェンダーギャップの縮まらない日本に光明はあるのか?ジェンダーギャップ指数2019が発表****

世界経済フォーラム(WEF)が、毎年発表しているジェンダー・ギャップ指数の2019年度版を発表しました。

 

日本は昨年よりもランキングを11位落とし、調査対象となった153カ国のうち121位となりました。この結果は、主要7カ国(G7)の中で最低だっただけでなく、2006年から開始したジェンダーギャップランキングの歴史の中で日本にとって史上最低のランクとなっています。

 

「女性の活躍を推進する」や「男女平等社会を目指す」という言葉がテレビなどでもよく見受けられるようになった一方で、なかなか進まないジェンダー格差の解消。日本が抱える課題とは一体何なのか、指標から探っていきます。

 

日本が史上最低のランクとなったジェンダーギャップ指数。過去の推移から原因を探る

ジェンダーギャップ指数とは、健康・教育・政治・経済という4つの分野を14項目に分けてそれぞれの分野の指標におけるジェンダーギャップから総合的に判断されるものです。(中略)

 

ジェンダーギャップランキングの推移を見て行くと、計測開始の2006年から、年々ランキングが下がる傾向にあることがわかります。(中略)

 

つまり日本のジェンダー格差の状態は、この十数年間でほとんど解消されておらず、その結果、相対的な順位が徐々に下がっていていると言えます。

 

では日本のジェンダーギャップにおける課題とは一体何なのか、分野別に見ていくと「政治」・「経済」の分野での遅れが足を引っ張っていることがわかりました。

 

特に「政治」の分野は昨年の125位から20位近くランクを落とし、144位と大きく出遅れています。

また、他国で「教育」の分野におけるジェンダーギャップの解消が進む中、変化のない日本は昨年の65位から大きくランキングを下げました。

 

それではジェンダーギャップにおける日本のウィークポイントである「政治」・「経済」の分野について項目ごとにその指数を見ていきましょう。

 

「経済」分野で指数となるのは次の5つの項目です。

労働参加率 男女間の同一労働での賃金格差 男女間の収入格差 管理職につく男女の人数の格差 専門職、技術職につく男女の人数の格差

 

この項目のうち「労働参加率」、「男女間の同一労働での賃金格差」、「男女間の収入格差」の三つの項目で日本は世界平均を上回っています。

 

一方で、「管理職につく男女の人数の格差」や「専門職、技術職につく男女の人数の格差」世界平均を下回り、特に前者の項目については、平均の半分以下のスコアとなっており、ランキングも131位と著しく低く、女性が要職につきにくいという日本の課題が顕著に表されました。

 

続いて日本のジェンダーギャップの縮小のボトルネックとなっている「政治」分野で指数となるのは次の3つの項目です。

 

国会議員の女性率 閣僚の女性率 過去50年間の女性元首

 

日本は政治分野の全項目で世界平均を下回っていることがわかります。

過去50年間に国家のトップとなる女性がいなかったというのはもちろんのこと、閣僚の女性率の低さも目立ちます。

このような課題は経済での課題として見えた、「女性が要職につきにくい」とも合致しています。(中略)

 

女性が管理職につきにくい状況に変革を。企業の取り組みを探る

女性がなかなか要職に付けない背景には、日本社会に年功序列が根付いており、労働時間に比例して役職につきやすいということがあります。

 

育児や介護などの負担が女性にかかりやすい日本では、必然的に女性の労働時間が長くなったりキャリアに空白期間ができたりして、年功序列から外れてしまう、という事例が多いのです。

 

そこで、近年、女性の活躍にもつながる新たな制度の導入に乗り出す企業も少なくありません。(中略)

 

ジェンダーギャップを解消するためには社会全体での取り組みが必要

一方で、福利厚生を充実させることにも、まだまだ課題は多くあります。

 

例えば、課題の一つとして、家庭の中で福利厚生の充実している企業に勤めている人にライフイベントに伴う負担の比重が偏ってしまい、その人自身だけでなく、企業側にも負担がかかりやすくなる、ということが挙げられます。

 

こうした課題を解消するためにも、働きやすい制度を特定の企業のみが採用するのではなく、社会で広く導入することで、きちんと負担を分け合うことが重要になってくると考えられます。

 

ジェンダーギャップを解消するための様々な改革を取り入れることははじめは負担が大きいかもしれませんが、少子高齢化で労働力不足が続く昨今、継続的に取り組めば、女性の労働力を最大限に活用することもでき、結果的に利益に繋がっていくと考えられます。(後略)【4月15日 データのじかん】

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最近目にした、興味深い記事。

明治時代の女性は、それまでの「まげ」をやめて髪を短く切った時に、役所に届け出る必要があったとか。

 

****明治の女性、髪を切るのに「断髪届」 千葉の民家で発見 ****

明治時代の女性が髪を切った時に千葉県に届け出る「断髪届」が、同県白井市の民家から見つかった。文明開化で男性はまげをやめたが、女性が髪を短くしてまげをやめることは禁止され、届け出をしないと罰せられた。

 

市教育委員会の戸谷敦司・学芸員は「女性に伝統的な美を守らせたいという、当時の価値観を示すとみられる貴重な資料」と話している。

 

市教委が谷田(やた)地区にある旧家の井上家で行った古文書調査で見つかった。日付は1876(明治9)年10月25日。井上家長男の妻が長患いが治るよう願をかけて7月に髪を切った、と義父らが届け出ている。押印されていないことから控えとみられるという。

 

71年に「散髪脱刀令」が出され、「ざんぎり頭をたたいてみれば、文明開化の音がする」と歌われたように男性の断髪が進んだ。女性でも髪を切ってまげをやめる人が出てきた。

 

まげは油で固めるため、洗髪は半日がかり。夏場でも月に1度洗髪できるかどうかで、悪臭のため頭痛に悩まされる人もいたという事情もあったようだ。

 

ところが、女性の断髪に対して世論は反発。72年以降、東京府(当時)を皮切りに全国で軽犯罪を取り締まる「違式●(ごんべんに縦に「土」を二つ。かい)(かい)違条例」が制定され、立ち小便や入れ墨などと一緒に、理由のない女性の断髪も禁止された。

 

戸谷学芸員は「井上家の場合、7月に病気回復の願かけとして髪を切ったのは、病気で夏場は耐えがたかったというのも理由なのでは」と推測している。【6月29日 朝日】

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“夏場でも月に1度洗髪できるかどうか”・・・・想像できない苦労ですね。

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イスラム主義を進めるトルコ・エルドアン大統領が絶賛する日本の女子大の存在意義は?

2019-07-12 22:48:58 | 女性問題

(【712日 FNN PRIME】 西宮市の武庫川女子大学を訪れたエルドアン大統領夫妻)

 

【「トルコにも日本のように女子大が必要だ!」 国内には「日本は世界的に女性の地位が低い国のひとつだ」との批判も】

トルコのエルドアン大統領が、イスラムを公的な場面に持ち込まない世俗主義を是としていたそれまでのトルコにあって、イスラム主義を推し進めていることは周知のところですが、G20で来日した際に大統領が目をつけたのが日本の「女子大」だったとのこと・・・・なるほどね。

 

****「トルコにも日本のように女子大が必要だ!」 熱弁をふるうエルドアン大統領の狙いは?****

「トルコにも日本のように女子大が必要だ!」 熱弁をふるうエルドアン大統領の狙いは?

 

女子大を絶賛したエルドアン大統領

トルコのエルドアン大統領が627日、G20大阪サミットに参加するため来日した。滞在中は安倍首相やアメリカのトランプ大統領と会談し、天皇皇后両陛下とも会見した。

 

これらは本国トルコでも当然報じられたが、それよりもトルコで話題になったニュースがある。エルドアン大統領が兵庫・西宮市の武庫川女子大学を訪れ、名誉博士学位を授与されたあとの演説だ。

 

エルドアン大統領:「日本には800の大学があり(注1)そのうち10%に当たる80校が女子大だ(注2)。 大学には、女子の学生しかいない。幼稚園から小中高校、そして大学まで、独特な女子教育システムが構築されている。このような日本のシステムがわが国においても非常に重要だ。トルコも日本と同様のステップを歩むべきだ。」

 

(注1)総務省統計局調査で、国内の大学は780校(2017年)

(注2)武庫川女子大学教育研究所調査で、国内の女子大は77校(2017年)

 

日本型の女子大設立を熱く訴えたエルドアン大統領。日本のメディアではあまり大きく取り上げられていないが、トルコメディアは一斉にトップで伝えた。

 

アナドル通信(国営) 「トルコにも日本のように女子大が必要」

ビアネット(ウェブニュース) 「日本の女子大を参考に」

アフバルニュース(左派系) 「トルコ初の女子大設立を目指し調査を指示」

日本国内の女子大の数が減少傾向にある中で、エルドアン大統領の狙いは一体どこにあるのか?

 

なぜいま女子大なのか?

トルコでは1914年に国内初の女子大が設立されたが、その7年後には共学化された。その後、全ての小学校、中学校が共学化され、1973年に男女共学を基本原則とする教育法が制定された。男女別の学校はイスラム系の高校に限って存在していた。

 

それが、2012年を境に一変した。

 

エルドアン大統領(当時は首相)が世論の反対を押し切って法改正を行い、中学においてもイスラム系の学校を復活させたのだ。これにより、女子学生のみが通う中学、高校が激増し、現在に至っている。

 

ただ、大学について言えばいまだに全て共学で、女子大は1つも存在しない。トルコは世界でも有数の親日国と言われるだけあって、エルドアン大統領が「日本を手本に」と言うのもわからなくはないが、なぜ今、女子大なのか?その目的は何なのか?

 

エルドアン大統領は日本での演説で、「わが国にもかつて男女別の高校があったが、のちに共学化されてしまった。今、我々は再び秩序を回復する時期に入ったのだ」とも述べていた。ここにヒントがありそうだ。

 

イスラム色を増すトルコ

トルコはアタチュルク初代大統領が1923年に共和国宣言をして以来、政教分離の世俗主義を国是としてきた。しかし、エルドアン大統領は2001年に与党である公正発展党(AKP)の初代党首に就任して以来、イスラム色の濃い政策を推し進めてきた。

 

女性の公務員が職務中にスカーフを着用できるよう憲法を改正したり、今年に入ってからは博物館として親しまれているイスタンブールの観光名所、アヤソフィアのモスク化さえも示唆している。

 

世俗化する社会に対し、今こそ“念願の”女子大を新設し、より一層イスラム色を前面に出した政策を推し進める構えのように見える。こうしたエルドアン大統領の“構想”に対し、トルコのメディアは次のように伝えている。

 

ハベルトゥルク紙(大手紙):

・日本のような先進国に女子大があるなら、国民の9割以上がイスラム教徒のトルコで女子大が設立できないわけがないと保守層は絶賛している。

・大統領が気に入ったのは女子大だけなのか?先進国日本から学ぶことはもっと他にあったのではないか?という批判の声もある。

・日本でも女子大の需要は下がっているという。

・社会進出を重要視する女性たちは、女子大ではなく、東京大学や京都大学のような共学大学を選ぶのではないか。

 

キュルトゥル・セルヴィスィ紙(文化紙):

・女子大構想は笑止千万。

・大統領が参考にした日本は、社会生活において男尊女卑が顕著な国である。

・世界経済フォーラム(WEF)が発表した報告書によると、日本の男女平等ランキング(2018年)は149カ国中110位と、順位が低い国の一つ。トルコは、130位だ。

・女子大新設は完全な女性差別であり本末転倒だ。

・トルコの教育システムは近年悪化しており、いま必要なのは教育改革だ。

 

保守層と世俗派で意見が分かれるのは当然だが、トルコのメディアをチェックする限り、女子大新設構想には否定的な論調が多いようだ。

 

623日に実施されたイスタンブールのやり直し市長選では、エルドアン大統領率いる与党が擁立した候補が、最大野党の新人に大敗。求心力低下が叫ばれるエルドアン大統領だが、今回の女子大新設をはじめとする教育改革が今後トルコ国民にどう受け止められるのか、注目していきたい。【712日 FNN PRIME】

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【なぜ女子大が必要なのか?】

もちろん各女子大は、それぞれ崇高な女子教育の理念のもとに運営されているのでしょうが、しょうじなところ、これだけ性による差別をなくしていくことが重視される現代社会において、女性だけ、あるいは男性だけの教育を行う必要性がどこにあるのか、素朴な疑問を感じるのも事実です。

 

“日本の男女平等ランキング(2018年)は149カ国中110位と、順位が低い国の一つ。”ということの結果、かつ、原因のひとつが「女子大」の存在ではないかとも思えます。

 

そもそも、(トルコのように)国によっては「女子大」が存在しないことも。

アジアやアメリカには存在しますが、欧州にはないようです。

 

****「日本にはまだ女子大があるのか!」驚く欧州人 ルーツや存在意義を考える ****

実践女子大学でメディア論を教える松下慶太さんをミラノ工科大学に案内した。松下さんは、1年間のサバティカル(長期休暇)でベルリンを拠点に、欧州各地でソーシャルデザインのリサーチをしている。

 

彼が東京の女子大に勤めていると自己紹介すると、相手の先生は怪訝な表情をする。

「女子大という存在が、日本にはまだあるのか?!」との驚きが見てとれる。そして「男性の教員もいるのか?」とかいくつかの質問を矢継ぎ早に聞かれた。

 

日本以外にも、韓国・中国・インド・中東・米国・英国という国々では女子大がそれなりの存在感を放っているようだが、欧州の大陸の国では「忘れられた」存在になっている。

 

ぼくは女子大についてほとんど知らないので、少々好奇心が芽生え、松下さんにこのあたりの事情を聞いてみた。そもそも女子大とは何か?というところから。

 

「大きな流れとしては、キリスト教宣教師などによって開かれた語学や、アメリカなどで見られるようなリベラルアーツを展開するもの。もうひとつは生活科学や医学・看護など実学・専門領域の教育を展開するものがあると思います」

 

日本であれば、東京女子、聖心女子、東洋英和、フェリス、白百合などはリベラルアーツを中心とした前者にあたる。東京女子医大や日本女子は後者となる。アジアの他国をみても、どちらの流れの大学もある。

 

そして、彼はこう指摘する。

「学祖の留学先などにも、結構影響されているかもしれないですね。津田梅子が津田塾大をつくり成瀬仁蔵が日本女子大を開校しましたが、彼らはアメリカから戻った後に学校をつくっていますね」

 

松下さんのこれまでの経験からすると、北欧はジェンダーギャップが少ないのと大学制度が比較的新しいので 、特に日本の女子大への質問が多いそうだ。他方、カナダやアメリカなどでは、女子カレッジの存在を知っているので、松下さんが女子大で教えていると説明しても、「ふーん」という反応だという。

 

以上から、ミラノ工科大学の先生の女子大への「あからさまともみえる好奇の目」は、欧州大陸における典型的なものだったといえる。どうもジェンダー差別撤廃への意識が高いほど、女子大という存在に戸惑うようだ。

 

しかし、こうした現象は日本においてもないわけではない。

実践女子大のオープンキャンパスの際、保護者などから「男子がいないということは、多様性や現実社会への対応としてどうなのか?」との質問を受けたこともあるようだ(「うちの娘はおっとりしているから女子大が安心」という親も多いが)。

 

松下さんは、次のように考えている。

「日本の社会や企業における男女格差などを考えると、女子大で育むリーダーシップや女子向け教育のメリットもあると思います」

 

「これが現実の社会だから、と(男子のリーダーシップを優先する状況を)納得させるのもなにか違いますよね」と松下さんは首をかしげる。

 

そもそもの前提として、女子大というカテゴリーを俎上にのせて論じる時代でもなくなったとの意識が松下さんにはある。それぞれの立ち位置や地域・学部の特色などを踏まえて考えるべきことが多い、と彼は認識している。(後略)【2018127日 安西洋之氏 SankeiBiz

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省略した部分に松下氏の女子大を含めた大学の在り方に関する持論が述べられていますが、正直なところピンときません。

 

むしろ、一番「だろうね・・・」と感じられるのは、“「うちの娘はおっとりしているから女子大が安心」という親も多い”という部分でしょう。

 

そういう現実の上にのっかって、旧態依然の「良妻賢母」を目指す女子教育を行うということであれば、現在のジェンダーフリーの流れの中で存在意義を見出すのは難しいかも。

 

【トランスジェンダーへの門戸を開くお茶の水女子大 「共学化に向けた議論へのパンドラの箱を開いた」とも】

ジェンダーフリーの流れということで言えば、「女子大」を代表する立ち位置にあるお茶の水女子大が昨年、「心は女性」というトランスジェンダーへの門戸を開くことを明らかにし、改めて「女子大」の意義が問われることにもなっています。

 

****パンドラの箱を開けた? 「心は女子」学生受け入れ決めたお茶の水女子大 「女子大の存在意義」議論の呼び水に****

国立のお茶の水女子大(東京都文京区)が全国に先駆け、平成32年度から戸籍上は男性でも自身の性別が女性と認識しているトランスジェンダー学生の受け入れ決定に踏み切った。

 

他大学にも波及しそうだが、施設整備や受験資格の確認など課題も残る。文部科学省内では「男女共学化議論の呼び水になりかねない」(幹部)との声もあり、減少傾向にある女子大の存在意義も改めて問われそうだ。

 

受験資格の確認は?

(中略)出願期間前に診断書があれば提出してもらい、自己申告の場合も今後設置する委員会で総合的に判断する方向だが、受験資格の線引きに曖昧さが残りかねない。

 

全国の女子大に影響

お茶の水女子大の決定は他大学の動向にも影響しそうだ。「まだ正式に決まっていないが、前向きに検討している」と話すのは国立の奈良女子大(奈良市)の担当者。29年9月に大学理事などで構成するワーキンググループを立ち上げ、問題の洗い出しを行っている。

 

公立では群馬県立女子大(群馬県玉村町)がお茶の水女子大の決定を受け、学内委員会で検討を開始。福岡女子大(福岡市)は「1年生全員が寮生活をするため保護者の理解などを含めクリアすべき課題は多い」(担当者)。状況把握のため他大学の情報収集に乗り出している。

 

女子教育を大学の理念に明確に掲げる私立でも検討は進んでおり、津田塾大(東京都小平市)、日本女子大(同文京区)、東京女子大(同杉並区)などで29年から議論している。

 

女子大の存在意義とは?

ピーク時には100近くあった女子大だが、定員割れに伴う学生募集強化や統廃合などを背景に共学化が相次いだ。29年度の学校基本調査では、女子大数は国立2校、公立2校を含め計76校。780ある大学の約1割にとどまる。

 

お茶の水女子大の記者会見では女子大の存在意義に関する質問も相次いだが、室伏学長は「共学化の議論はなかった」とし、「女性が社会で男性と同等に暮らせる状況にはなっていない。女子大の存在意義はまだまだある」と強調した。

 

ただ、27年には福岡女子大に入学願書を受理されなかった福岡市の男性が、不当な性差別で違憲だとして、不受理処分の取り消しなどを大学側に求め提訴したことがある。その後、訴訟継続が困難などとして取り下げられたが、公立女子大の存在意義を問うものとして注目された。

 

お茶の水女子大の決定について文科省幹部は「共学化に向けた議論へのパンドラの箱を開いた。今後、公金で運営される女子大の存在意義が広く問われる場面もあるのではないか」と指摘する。

 

元東京都国立市教育長で教育評論家の石井昌浩氏は「これだけ男女共学が進んだ時代に、女子大が存続する理由はよくわからない。この際、女子大という枠組みを問い直すべきではないか」と話している。【2018725日 iZa

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【いよいよ緊迫するトルコのロシア製「S400」導入問題】

トルコの話に戻すと、喫緊の課題が629日ブログ“トルコ・エルドアン大統領 S400問題、シリア、更にはリビアと問題山積、国内でも新党の動き”でも取り上げた、ロシアからのミサイル防衛システム「S400」導入をめぐるアメリカとの対立です。

 

****内憂外患で追い込まれたトルコ・エルドアン大統領****

トルコのエルドアン大統領の求心力の低下が囁かれている。最大の理由は、623日に再投票された最大都市イスタンブールの市長選で、世俗派の最大野党・共和人民党(CHP)のエクレム・イマームオール候補者が、得票率で約9ポイント、得票数で約80万票もの大差で与党候補のユルドゥルム元首相に勝利したことである。(中略)

 

エルドアン大統領の党内の掌握力が弱まりつつあることを示す今一つの動きが、AKP創設メンバーのババカン元首相とギュル元大統領による新党結成の動きである。既にババカン元首相筋は、今秋を目途に新党結成の可能性の高いことを明らかにしている。

 

エルドアン大統領は外交面でも難問に直面している。最大の課題は、ロシア製ミサイル防衛システム「S400」の導入を巡り悪化した米国との関係をいかに修復するかである。

 

トランプ米大統領とエルドアン大統領は629日、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の開催された大阪で会談し、ロシア製ミサイルの購入に関して意見交換している。

 

トランプ大統領は、同会談冒頭でトルコがロシア製ミサイル・システムを導入した場合に制裁を発動するかを記者団に問われ、検討していると答えるに留めた。その上で会談後の記者会見において、トルコが同ミサイル・システム購入を決定したことに懸念を表明し、トルコに対して、北大西洋条約機構(NATO)の同盟強化につながる対米防衛協力の推進を要請していた。

 

他方、トルコ大統領府は同会談後、トランプ大統領は両国関係を害することなく問題の解決を図りたいとの願いを口にしていたと発表していた。

 

今のところ、ロシア製ミサイル・システムのトルコ導入が始まっていないこともあり、米国の制裁も発動されていない。

 

ただし、米国は既に6月中旬時点で、ロシア製ミサイル・システムの購入を撤回しない限り、米国の最新鋭ステルス戦闘機「F35」をトルコに納入しないと表明している。また、仮に導入となった場合に備えて3種類の制裁が検討されていることも明らかにされている。

 

求心力が低下するなか、内憂外患に陥ったエルドアン大統領が、次に如何なる手を打ってくるのか注目したい。【712日 WEDGE】

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そのロシア製「S400」の第一陣がトルコに搬入されたことが今日報じられています。

 

エルドアン大統領は、トランプ大統領との会談で「米政権は制裁を行わない」との感触を得たとしていますが・・・・。【75日 産経】 ウマが合うトランプ大統領はともかく、米政権・議会がどう判断するか・・・。

 

もっとも、アメリカは中国、イラン、北朝鮮、ベネズエラと制裁を振りかざす「敵」が多い中で、インドとも貿易でもめていますし、デジタル課税ではフランスとも制裁が話題にのぼることにもなっています。

 

更に、NATO一員でもあるトルコとも・・・となると、まわりは「敵」だらけと孤立し、お友達はイスラエル、サウジアラビア、そして日本ぐらいのものになってしまいます。

 

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戦時下の武器としてのレイプによって妊娠した女性を見捨てるトランプ政権と宗教指導者

2019-04-29 21:53:48 | 女性問題

(シリア北東部のクルド人地域カーミシュリーにあるヤジディー教徒支援施設で、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」から救出された後、イラク北西部シンジャルへ向かうバスを待つヤジディー教徒の女性たち(2019413日撮影)【429日 AFP】)

 

【戦時下の武器としてのレイプによる中絶も認めないトランプ米政権】

イラクの少数派ヤジディ教徒がIS(イスラム国)によってジェノサイドとも言える虐殺・暴力の対象となり、多大な犠牲を強いられたことは周知のところです。

 

****イラク、IS犠牲者遺体遺棄場の発掘開始 ヤジディー拠点****

イラク当局は15日、同国北部シンジャルにある、ISの犠牲になった人の多数の遺体が埋められた場所で遺体の発掘を開始した。

 

少数派ヤジディー教徒の拠点シンジャルはかつてイスラム過激派組織「イスラム国」に支配され、ISはヤジディー教徒を暴力行為の標的としていた。

 

ISから逃れてヤジディ―教徒の人権保護を訴えノーベル平和賞を受賞したナディア・ムラドさんはこの日、故郷のコチョでの遺体発掘開始式典に出席した。

 

検死作業を支援している国連は域内初めてとなる遺体の発掘で、ISによる住民殺害の実態解明につながると見込んでいる。IS2014年に支配下に置いたコチョでは女性を含め数百人の住民が殺害されたとみられている。

 

IS2014年にイラク北部の広い範囲に勢力を拡大し、ヤジディー教徒を標的にしてシリア国境に近いヤジディ―教徒の拠点シンジャルを掌握した。

 

ISの戦闘員はヤジディ―教徒の男性と少年数千人を殺害した後、女性や少女を拉致し「性奴隷」として虐待した。ヤジディー教徒はクルド語を話しその信仰はゾロアスター教にルーツを持つが、ISは彼らを「背教者」とみなしている。

 

国連はこれまでISの行為がジェノサイド(大量虐殺)に匹敵し得るとの見方を示しており、現在、イラク各地でのISの残虐行為について調査を進めている。

 

国連調査団を率いるカリム・カーン氏は、多数の遺体の埋められた場所はこれまでシンジャルのみで73か所見つかっていることから、今回の遺体発掘で調査が「重要局面」を迎えたとの考えを示した。

 

カリム氏は「説明責任を果たすまでの道のりは長く、前途に多くの課題がある」とした上で「こうした状況にもかかわらず、生き残った人々の共同体とイラク政府の協力の精神は称賛されるべきだ」と強調した。 【318日 AFP】*****************

 

上記記事にもあるように、特に女性の場合は「性奴隷」として性的暴力の対象となり、単に当時の虐待だけでなく、ISが去った後においても、レイプ者の子供を妊娠しているといった深刻な問題に直面しています。

 

ISによる性暴力という過酷な試練を経験したノーベル平和賞受賞者ナディア・ムラドさんは、紛争下の性暴力加害者の責任追及を国連安保理で求めました。

 

****紛争下の性暴力、責任追及を=ノーベル賞のムラドさんら-国連安保理****

過激派組織「イスラム国」(IS)によるイラクの少数派ヤジディ教徒に対する性暴力告発者ナディア・ムラドさんと、戦時下の性暴力撲滅に取り組むコンゴ(旧ザイール)の医師デニ・ムクウェゲ氏のノーベル平和賞受賞者2人が23日、米ニューヨークの国連安保理で演説し、紛争下における性暴力加害者の責任追及を強く求めた。

 

ムラドさんは「これまでにヤジディ教徒を性奴隷にした罪で裁判にかけられた人はいない」と述べ、IS戦闘員を裁く特別法廷の設置を訴えた。

 

ムクウェゲ氏も「裁きなしに被害者(の傷)は完全には癒えない」と、被害者の補償や加害者の責任追及に向けた基金設立への協力を呼び掛けた。【424日 時事】 

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ムラドさんが参加した国連安保理では、戦時下における性暴力の絶滅を目指す安全保障理事会決議が可決されましたが、アメリカ・トランプ政権の反対によって「性に関する医療」、つまり、レイプ加害者の子供を妊娠した際の中絶のための医療提供が文言から削除されるというかたちで、“内容を薄めた”可決ともなりました。

 

****性暴力を非難する国連決議、米トランプ政権が中身薄める****

妊娠中絶への反対姿勢を示している米トランプ政権の影響が、国連決議に及んでいる。戦時下における性暴力の絶滅を目指す安全保障理事会決議が23日、内容を薄められて可決された。

 

この決議は、戦時下でレイプが武器となっていることを非難するとともに、紛争地域における性暴力問題への取り組みが進んでいない状況について、安保理として懸念を示す内容。ドイツが提出した。

 

当初の決議案では、戦争で性暴力を受けた女性たちが提供されるべき医療サービスとして、「性と生殖に関わるもの、心理社会的なもの、法的なもの、そして生活支援に関するもの」となっていた。

 

「妊娠中絶を暗示している」

しかしこれは後に、「性暴力を生き延びた人たちを速やかに支援することが重要であり、安保理決議2106に沿って、国連の関連組織や支援者たちに、差別のない包括的な医療サービスを提供するよう求める」に変更された。そして最終的には、この部分が丸ごと決議案から削除された。

 

これは米政府の意見を取り込んだためで、トランプ政権は「性と生殖に関わる医療」が妊娠中絶を暗示していると、この表現に反対していた。

 

アメリカ、中国、ロシアが反対

国連安保理事会では、早期の決議案にアメリカと中国、ロシアが反対。拒否権の行使もちらつかせた。最終的に、修正された決議案が賛成13、反対ゼロで可決された(中国とロシアは棄権)。

 

フランスのフランソワ・ドラトル国連大使は、性に関する医療についての文言が消されたのは女性の尊厳を損なうものだとして怒りをあらわにし、こう述べた。

 

「紛争において性暴力を受け、明らかに妊娠を望んだわけではない女性や少女は、妊娠を終わらせる権利を持つべきだ。安保理がそのように認められないなど、まったく容認できないし、理解できない」

 

ノーベル平和賞受賞者たちも支持したが

決議案の草案に対しては、幅広い層から支持する声が出ていた。

人権弁護士のアマル・クルーニー氏は23日の安保理事会に出席。「これが皆さんのニュルンベルク裁判(ナチス・ドイツによる戦争犯罪を裁いた国際軍事裁判)の瞬間だ」、「歴史において正しい側に立つ機会だ」と訴え、理事国に賛成票を投じるよう求めていた。

 

2018年にノーベル平和賞を受けたコンゴの産婦人科医デニ・ムクウェゲ医師と、イスラム国(IS)兵士たちに強姦されたイラクのヤジディ教徒ナディア・ムラド氏も、安保理に出席し、決議案への支持を表明していた。

 

活動家のアンジェリーナ・ジョリー氏は連名で、422日付の米紙ワシントン・ポストに、決議を支持する意見記事を寄稿していた。

 

イギリスの最大野党・労働党のエミリー・ソーンベリー影の外相は、「戦争でレイプを武器とすることに反対する国連決議に対し、ドナルド・トランプ米大統領が拒否権を発動すると脅したのと同じ日に、トランプ氏をイギリスに迎えて賞賛する計画をテリーザ・メイ英首相が進めているのは信じられない」と批判した。【424日 BBC

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人工中絶に関してはアメリカ国内では世論を二分して激しい議論となる問題で、日本では考えられないような激しい示威行為なども行われ、トランプ・反トランプを分ける境界線のひとつともなっていますので、トランプ政権が反対したというのは“政治的には”分かります。

 

分かりますが、平時とは異なる戦時下において武器としてのレイプの被害者となった女性への配慮があってしかるべきではないかという憤りも感じます。

 

IS戦闘員の子供の共同体受入れを拒否する宗教指導者】

性奴隷とされたヤジディ教徒女性がIS戦闘員の子供を宿し、ヤジディ教徒社会からも拒まれ、行き場を失ってしまうという問題は、27日ブログ“シリア・イラク  IS崩壊でも癒えないヤジディー教徒女性の悲劇”でも取り上げました。

 

****IS戦闘員の子を宿したヤジディ女性の選択 ****
イスラム国が残した余波、行き場ない母子の苦悩

ニスリーンさん(23)が赤ん坊の顔をのぞき込むと、たまに父親の面影に気づくときがある。彼女をレイプした過激派組織「イスラム国(IS)」の戦闘員のことだ。

IS
はイラク北部で勢力を拡大した当時、この地に住む少数派ヤジディ教徒の女性たちを奴隷にした。彼女もその一人だった。
 
ISは2014年夏、大量虐殺作戦でヤジディ教徒に標的を定めた。ニスリーンさんはこのとき他の数千人の女性とともにISに捕まった。それ以降、彼女を「所有」した3人目の戦闘員の子をみごもった。

 
3年間とらわれの身だったニスリーンさんは、ISが崩壊状態に陥った昨年ようやく解放された。だが故郷や家族は、ニスリーンさんを子供と一緒に受け入れることを拒否した。


ヤジディ教徒の社会ではイスラム教徒との結婚を禁じており、戦闘員との強制的な結婚によって生まれた子供を認めることはできない。そこに戻りたければ、赤ん坊を諦めるしかないのだ。

ニスリーンさんは子供を選んだ。膝の上で生後8カ月となる子供をあやしながら、「息子と離れては生きていけない」と語る。自分と子供の身の安全を考え、フルネームを明かさないことを希望した。
 
ニスリーンさんが陥った悲痛なジレンマは、イラク社会が和解を進める上での課題を物語っている。ISはかつて制圧した地域のほぼ全てからすでに敗走した。だがISがずたずたに引き裂いた社会の構造を修復するには、はるかに長い時間が必要だろう。(中略)
  
ISの奴隷にされた余波で、極めて閉鎖的で保守的なヤジディの社会では、最も基本的な原則の一部が揺らいでいる。

 
捕虜だった女性が解放され始めると、ヤジディの宗教指導者は、イスラム教徒によるレイプは結婚に関する原則に反するが、伝統を捨て、温かく迎え入れるよう指示した。

IS戦闘員を父親に持つことで複雑な問題が持ち上がる。ヤジディ教では両親がともにヤジディ教の信者でなくては子供を信者とは認められない。「われわれは純粋な血を守っている」。ヤジディ教の聖地、ラリッシュの管理者はこう話す。

 
奴隷だったヤジディ女性の多くは避妊薬を与えられたが、それでも一部の妊娠は避けがたかった。イラクおよびクルド人自治区の当局者は、何人の子供が生まれたかは不明だと話す。支援活動家らの話では、数百人とはいかなくても数十人以上はいるという。
 
選択を迫られた女性の大半は子供を手放し、中には諦めるよう強要された女性もいると当局者やヤジディの活動家は語る。赤ん坊は支援グループなどの手を借り、シリアやイラクの児童養護施設に収容されたり、イスラム教徒やキリスト教徒の家庭に引き取られたりした。
 
ニスリーンさんの場合、(中略)妊娠が目につくようになると、親族は堕胎のために病院に連れて行った。既に妊娠8カ月に入っており、医師は中絶手術は危険だと告げた。
 
やがて健康な男の子が生まれた。ニスリーンさんの母親は子供を手放すよう促したが、彼女は拒否した。長老たちも説得しようとしたが無駄だった。そこで親族は子供を連れて家に戻るよう告げたが、彼女はそれも断った。

結局、ニスリーンさんはイラク北部ドホークにあるシェルターに住むことにした。ISから救出された母親たちの支援活動を行う米オレゴン州出身のポール・キンガリー博士が運営する施設だ。
 
そこで再定住の申請をした。難民として欧米のある国に受け入れが決まった後、「息子には良い生活を送らせたい」とニスリーンさんは語った。その国では同郷者の再定住が進められているという。
 
ニスリーンさんは自分の子供をヤジディ教徒として育てるかどうかまだ決めていない。「心の命じるままに従いたい」【2018 8 27 日 WSJ】
****************

 

性奴隷だったときの子供のヤジディ共同体への受け入れを認めないという対応については、先週、宗教権威である最高評議会議長の前向き対応ともとれる発言があり期待されていましたが、結局、従来方針は変わりませんでした。

 

****ISのレイプで生まれた子、ヤジディー共同体への受け入れ認めず 宗教評議会****

イラクの少数派ヤジディー教の宗教指導者による最高評議会は27日夜、教徒の女性がイスラム過激派組織「イスラム国」の戦闘員にレイプされた結果生まれた子どもたちについて、共同体への受け入れは認めないとの見解を表明した。

 

ヤジディー教徒は、かつてイラク北西部の山岳地帯にある都市シンジャル周辺に約50万人が暮らしていた。しかし、2014年にシンジャルへ侵攻したISは、略奪や破壊の限りを尽くした。ヤジディー教徒の男性は殺害され、男児は強制的に戦闘員にされ、数千人の女性たちは性奴隷として拉致・監禁された。

 

閉鎖的なヤジディー教徒の共同体では、両親ともヤジディー教徒の場合にのみ生まれた子どもを共同体の一員として受け入れる慣習がある。このため、ISにレイプされたヤジディー女性が産んだ子どもの扱いをめぐって、激論が交わされてきた。

 

先週、最高評議会のハゼム・タフシン・サイード議長は「(ISによる犯罪を)生き延びた者、全員を受け入れる。彼らが経験した苦難は、彼ら自身の意思に反していたとみなす」との宗教令を発し、画期的な方針転換だと受け止められた。

 

ヤジディー教徒の人権活動家らは、ISのレイプで生まれた子どもたちも今後はヤジディー教徒の親族に囲まれて暮らせるようになると解釈し、「歴史的だ」と最高評議会の決定を称賛した。

 

だが、最高評議会は27日夜の声明で、宗教令について「レイプの結果生まれた子どもは含まない。ヤジディー教徒の両親の間に生まれた子どもについて述べたものだ」と明言した。

 

ヤジディー教徒の共同体では従来、教徒以外と結婚した女性はヤジディー教徒ではなくなると考えられてきた。2014年のIS侵攻でレイプ被害にあった女性たちも当初、ヤジディー教徒ではなくなったとみなされたが、翌15年にヤジディー教の宗教指導者ババ・シェイク師が、被害女性らの帰郷を歓迎すると決定した経緯がある。

 

ただ、このときはレイプによって生まれた子どもたちの問題は解決されなかった。そのためIS戦闘員の子どもを産んだ女性たちは、ヤジディー教徒の親族たちとの絶縁状態を受け入れるか、わが子を手放すかという困難な選択に直面している。

 

イラクでは子どもは国籍と宗教の宗派を父親から受け継ぐ。父親がIS戦闘員とみられ、行方不明だったり死亡したりしている場合、父親の身元を確認できないため子どもが無国籍状態になる恐れがある。 【429日 AFP

****************

 

中絶もできず、出産すれば子供は共同体参加を拒否される・・・被害者女性はどこで生きていけばいいのか?

 

アメリカ・トランプ政権も、ヤジディ教宗教指導者も、自分たちの価値観・伝統を維持することだけに関心が向けられ、最も救いを必要とするレイプ被害者女性に寄り添う心が感じられないのは残念であり、腹立たしいことです。

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