(ガザ地区の病院 “flickr”より By dAVIDb1
http://www.flickr.com/photos/giant-steps/2314988174/)
【停戦合意 封鎖解除】
18日のブログで取り上げたように、イスラエルによる経済封鎖で困窮するガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとイスラエルの間で“停戦合意”が成立しました。
その概要は“イスラエルとハマスは19日午前6時、相互に暴力を停止し、この後3日間、順守状況を監視する。「平穏」が続けば、イスラエルはガザへの物資の輸送制限を徐々に緩和。そして第2段階として、拉致イスラエル兵の解放やラファ検問所の再開について、本格的に協議する。”という内容でした。
実際、当初「平穏」が続いたので、イスラエルは22日、停戦発効から3日間が過ぎたことを受け、ガザへの境界封鎖の段階的緩和を始め、食料や商品などトラック90台分の運搬を許可しました。
【再封鎖】
しかし、24日、ガザ地区から発射されたロケット弾3発がイスラエル南部に着弾、2名が負傷。
ハマスとは別組織ですが、これまでハマスと協調してきたイスラム原理主義組織の“イスラム聖戦”が攻撃を認めています。
イスラエル軍がヨルダン川西岸ナブルスで24日に行った掃討作戦で指導者が殺害されたことを受け、ガザから報復を加えたものです。
「今回の停戦に西岸は含まれておらず、イスラム聖戦がガザから攻撃したのは明確な合意違反。」【6月25日 時事】との見方がありました。
ハマス幹部は攻撃直後に「停戦を維持する」と表明しましたが、イスラエル軍の反撃が懸念される状態になりました。
イスラエルは25日、ガザ地区からロケット弾攻撃があったことを受け、ガザ地区との境界にある3つの検問所(カルニ、スファ、ナハル・オズ)を閉鎖したと発表。
エレツの検問所のみは通行可能に保たれました。
ガザの窮状打開のための一縷の希望として期待された今回の停戦ですが、実行前からイスラエル・オルメルト首相が「われわれは幻想を抱いていない。今回の停戦は脆弱なもので、短期間で終了する可能性がある」と述べていたように、極めて不安定・脆弱な合意であり、25日の検問所再封鎖の報に接し「ああ、やっぱりダメかね・・・」と落胆を感じました。
【再解除 停戦遵守】
それでも、ガザをこのままにしておけないのは、“統治責任”をガザ住民に負うハマスも、封鎖で国際世論の批判が強まっているイスラエルにしても同じであり、再度の仕切り直しがなされたようです。
イスラエル政府は29日、「過去数日間比較的治安が良好だった」ことを受けて、25日に封鎖した検問所2か所(カルニ、スファ)について、物資の輸送に限り封鎖を解除すると発表しました。
更に“喜ばしい”ニュースが入りました。
****ハマス、他派に「停戦守れ」 真剣な姿勢みせる****
【6月29日 朝日】パレスチナ自治区ガザを支配するイスラム過激派ハマスが、自派以外の武装勢力に停戦順守を呼びかけ、イスラエルとの停戦に真剣な姿勢を続けている。ガザの経済を崩壊させたイスラエルの境界封鎖を和らげるのが狙い。停戦違反のたびに境界封鎖が繰り返され、ガザの生活が楽になる見通しが立たないためだ。
27日にはガザからイスラエルへ迫撃砲弾が撃ち込まれ、3度目の停戦違反が起きた。いずれもハマス以外が実行。停戦対象でない別の自治区ヨルダン川西岸でイスラエル軍が続ける攻撃への報復だった。
ガザのハマス内閣を率いるハニヤ首相は27日、ガザ市内のモスクで記者団に対し「みんなが停戦合意を尊重し、パレスチナ人を苦しめている封鎖を終わらせなければならない」と語った。ハマスの強硬派幹部アッザハール氏は28日、サウジアラビア紙との会見で、すでに停戦違反者の拘束を始めたことを明らかにした。
イスラエルの治安機関「シャバク」の元長官顧問で、イスラム過激派を研究するシュタインバーグ博士は「ハマスは組織原理としてイスラエルとの共存を認めることはない。だが支配者の責任として、住民の苦しみを放置することもできず、封鎖緩和を期待できる停戦を選んだ」と指摘する。
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【当事者責任】
ガラス細工のような脆弱な合意ですので、これを書いている今にでも、“衝突再開”となっている可能性もあります。
ただ、ハマスが“支配者の責任”から、これまで協調してきた他の武装組織に対し“停戦違反者の拘束”を行ってでも“停戦遵守”を徹底するというのは、「やっと、本筋が見えてきたような気が・・・」と期待させるニュースです。
アメリカや第三国の仲介による和平合意ではなく、戦いの当事者であるイスラエルとハマスが、「ガザをなんとかしなければ」との思いから“一歩”踏み出したことは画期的にも思えます。
喜んでいられる間だけでも、せいぜい前向きに喜びたいところです。
なお、イスラエル政府は29日の閣議で、2年前にレバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラに拉致され、既に死亡しているとされるイスラエル兵2人の遺体と、イスラエルが拘束しているレバノン人らとの交換に応じることを承認したそうです。
2人は06年7月12日に国境付近の戦闘でヒズボラに拉致され、これがきっかけで34日間にわたりイスラエルとヒズボラの間で戦闘が繰り広げられました。
シリアとのゴラン高原返還交渉もありますが、こうした緊張を抑える動きが本格化することを願いたいものです。
ただ、イスラエルはイラン核施設爆撃を想定した大規模演習を実施・・・なんて話もありますので、どうなることか。