孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

香港立法会選挙 香港独立を掲げる「本土派」代表の立候補資格取り消しで波乱含みの展開

2016-07-31 22:37:23 | 東アジア

(7月30日夜、資格取消後に行われた「香港民族党」陳浩天氏の抗議集会 RFA中国語版によれば「参加者が多くなかったため、8月5日に再度集会を開くことを市民に呼び掛けた」とのこと 大きな運動にはなっていないということでしょうか? 【7月30日 RFA】)

【「本土派」代表の立候補資格取り消し 広がる反発
9月4日に行われる香港立法会(議会、定数70)選挙については、従来からの「親中派」と「民主派」の争いで「民主派」が重要法案を否決できる3分の1以上を確保できるかということに加え、香港こそが「本土」だとして中国からの独立を明示し、必要なら暴力的手段も辞さないとする「本土派」が初めて参戦し、議席を獲得できるかどうかが注目されていました。

****<香港議会選>届け出終了 反中勢力の議席獲得なるか****
9月4日に投開票される香港立法会(議会、定数70)選挙の立候補届け出が29日に締め切られた。香港で若者らを中心に反中意識が強まる中、親中派と民主派の争いに加え、初めて参戦する反中勢力の「本土派」が議席を獲得できるのかも注目される。
 
選挙は直接選挙枠と職能代表枠の各35議席を選ぶ。任期は4年。計154人が届け出手続きをした。選挙管理委員会が資格を審査し、最終的に立候補者を確定させる。
 
直接選挙枠は5選挙区(各定員5〜9人)に89人が届け出た。職能枠は29の産業別に団体などによって投票する制限選挙で、65人が届け出た。職能枠は中国寄り経済団体などに割り当てられていることから、今回選も全体では親中派が過半数を確保するとみられる。
 
民主派は、政府が提出する重要法案を否決できる3分の1以上を選挙後も確保できるかがカギ。

今回選には2014年に民主的な選挙制度を求めた「雨傘運動」を主導した若者が新政党を結成して相次いで参戦した。また反中意識が強く、香港を「本土」とみなす「本土派」も届け出た。
 
しかし、選管は立候補者に、香港が中国に属することなどを定めた香港基本法を支持する「確認書」への署名を義務づけた。民主派や本土派の大半は署名を拒否したという。

今回の措置は、独立世論を警戒する中国の影響力を背景に本土派らの抑え込みを狙ったものとみられている。選管は、署名がなくても立候補が無効になるわけではないと説明しているが、立候補を阻まれる人が出る可能性もある。【7月30日 毎日】
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「香港民族党」については、“「香港民族党」の呼びかけ人である陳浩天氏は、同党の考え方の中核は「民族自決、香港独立」と説明。香港人の利益と香港の確固たる民族意識を守るために、中華人民共和国における香港の地位を定めた「香港特別行政区基本法」を撤廃し、独立自由な「香港共和国」の成立をめざすという。”【3月31日 Searchina】とのことです。

上記記事の懸念のとおり、「本土派」代表の出馬を選挙管理委員会が認めないという事態になっています。

****独立主張の新党代表、出馬認めず=9月議会選で選管―香港****
9月4日に投票が行われる香港立法会(議会)選挙をめぐり、香港独立を唱える新政党「香港民族党」は30日、選挙管理委員会から党代表の陳浩天氏の出馬を認めないとの通知を受けたことを明らかにした。「政治上の主張を理由に被選挙権を剥奪した」と批判している。
 
陳氏は18日に立候補を届け出たが、地元メディアによると、出馬に当たって選管から求められた「香港は中国の不可分の一部」などとする香港基本法(憲法に相当)の確認文書への署名を拒否していた。
 
香港政府は「香港独立は基本法に合致しない」と説明。ただ、署名を拒んでも出馬が認められた候補者もおり、一部だけを狙い撃ちにした今回の措置は、物議を醸す可能性もある。【7月30日 時事】 
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“香港独立”という主張を公に掲げる「本土派」の存在は、中国にとっては看過できない存在であり、「本土派」代表を狙い撃ちにした今回措置の背景には中国のそうした意向があるのでは・・・というのは誰しも思うところです。

****香港独立派の立候補資格を取り消し 立法会選、反発の声****
・・・香港各紙によると、選管は今回の選挙から、「香港は中国の一部」などと定めた基本法の3条文を守るとの「確認書」への署名を候補者に要求。陳氏は確認書には署名していなかったが、基本法を守るとした立候補申請書類には署名していた。

選管は「その後も独立の主張を続けており、基本法と相いれない」と判断した。香港政府も「独立派は議員の職責を果たせない。政治的な審査や言論の自由の制限には当たらない」と選管を支持した。
  
陳氏は選管の決定を不服としており、選挙のボイコットを呼びかける一方、裁判所に資格確認を求めるか検討するとしている。
 
確認書をめぐっては、中国政府の出先機関・中央駐香港連絡弁公室の張暁明主任が「独立派を公然と香港の立法機関に入れることは一国二制度や基本法に合致するのか」と発言したため、中国側の意向が背景にあるとの見方もある。
 
民主派は「中国政府は香港の選挙に干渉すべきでない」と反発し、そろって確認書への署名拒否を表明している。今後も資格取り消しが続けば、さらに反発が広がる可能性もある。
 
立候補の届け出は7月29日に締め切られており、選管は8月2日までに候補者の資格について最終的に判断する見通しだ。【7月31日 朝日】
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「本土派」の「香港民族党」には、出馬を拒否された代表意外に立候補者がいるのか、それらの者の扱いがどうなっているのか・・・・基本的な情報ですが、各紙記事ではその点がよくわかりません。

もし、他にも候補者がいて出馬が認められているなら、ボイコットなどするより、今回措置に対する批判を追い風に選挙を戦った方がよい結果がでそうですが・・・。

一方、もし「本土派」の出馬が封じ込まれると、反中国票の奪い合いになっていた「民主派」にとっては、中国批判票を独占できるという側面もあります。

今後も資格取消が続くのかどうかはわかりませんが、「民主派」もそろって確認書への署名拒否を表明しているということで、選管(そして中国)の対応次第で選挙の様相は大きく変わります。もう少し情報がないと、なんとも言い難い状況です。

【「対話で目標を達成できず、他に手段がなければ一定の暴力もやむを得ない」】
「本土派」の存在が注目を集めたのは、今年3月に行われた立法会補選での予想外の“善戦”でした。
香港政庁・中国との対話路線を維持した「雨傘運動」の挫折が、「対話路線で民主化は達成できない」という意識を広げたとされています。

****過激な反中「本土派」勢い 香港議会補選、得票15%超****
香港で「本土派」と呼ばれる反中国の過激なグループが勢いを伸ばしている。香港を中国の一部ととらえず、香港こそが「本土」だとして、香港人の利益や文化を守ろうと訴える人たちだ。

時に暴力的な手段も辞さない姿勢に批判も根強いが、「香港人」意識を高める若者を中心に支持を広げている。
 
(2月)28日にあった立法会(議会)の補選。民主派が約16万票を獲得して約15万票の親中派を破ったが、香港メディアの関心は、本土派のグループ「本土民主前線」の大学生候補、梁天キ氏(24)に集中した。
 
約6万6千票で3位。支持層が重なる民主派の票を崩せば、結果に影響を及ぼしかねない票数だ。梁氏は29日、「満足はできないが、悪くない結果だ。香港の政治は今後、親中派、民主派、本土派の3派で争いたい」と語った。
 
補選は当初、従来通り民主派と親中派が争うとみられたが、春節に旺角で起きた騒乱事件で逮捕された本土派の梁氏への支持がネット上で急速に広がった。
 
本土派の主張は、中国政府を批判し、民主を求める点では従来の民主派と重なる。だが、目的達成のためなら一定の実力行使も許されるとの主張が異なる点だ。
 
梁氏は選挙期間中も「弾圧に対抗するにはあらゆる手段が必要」「極悪な政府と戦うには、(非暴力という)限界をもうけてはいけない」などと語り、旺角事件での投石や放火行為を否定しなかった。
 
これに対し、中国・香港両政府や政党、主要メディアは暴力行為を否定し、本土派を「暴徒」などと批判してきた。それだけに15%を超す得票には驚きが広がる。

梁氏は「『暴徒』が6万6千人の支持を得た。我々は主流派でないが、絶対に支持する人はいる」と自信を見せた。
 
高まる香港人意識、暴力辞さず
中国・香港政府や民主派政党から批判されながらも支持を広げる本土派。背景には、「雨傘運動」と呼ばれた民主化デモの挫折や中国との関係改善が見通せない現状がある。
 
行政長官選挙の民主化を求め、2カ月半続いた2014年の路上占拠デモは非暴力の対話路線を採った。だが、改革案を示した中国側が一歩も譲らず、要求は実現できなかった。

デモ参加者の間では中国への反発に加え、「対話路線で民主化は達成できない」と従来の民主派への不満が広まった。梁氏らの組織も、雨傘運動後に結成された組織の一つだ。
 
最近では、共産党を批判する本を出版していた書店関係者5人が失踪し、中国当局の関与が疑われている。言論の自由や高度な自治を保障した「一国二制度」が脅かされているという危機感が強まり、「香港人」意識が高まっている。
 
梁氏の選挙を支援した求職中の男性(26)は「返還後の19年間、民主派はデモをするだけで、結局何も勝ち取れなかった。対話で目標を達成できず、他に手段がなければ一定の暴力もやむを得ない」と話した。【3月1日 朝日】
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香港の現状では中国・習政権相手に「対話」では何も達成できない・・・というのはわかりますが、暴力的手段がどいう結果をもたらすかは「覚悟」が必要です。

【「雨傘運動」挫折で、若者らの心をとらえた「本土派」】
この補選後の3月28日に、陳浩天氏ら若者らが中心になって「独立」を目指す「香港民族党」が結成されましたが、その際、中国共産党機関紙の人民日報の系列紙である環球時報は「血迷った」、「政治的白痴と批判されている」と非難したうえで、“香港の社会の主流が十分に強く成熟することを望む。それが、『香港独立』といった政治的無頼の形成に対処する有効な方法だ。彼らを冷たく見るのはもちろん、法律で彼らを規制せねばならない。正常で闊達な精神で、絶対的。主動的でなければならない。そしてこの小さなグループに香港の正道を攪乱させてはならない”【3月31日 Searchina】と主張しています。

しかし、中国、親中派の批判は、「本土派」支持拡大を促す結果ともなっています。

****香港独立」掲げ新政党 若者に広がる中国離れ ****
■既存の民主派政党、「独立論」とは距離
既存の民主派政党も「香港はあくまで中国の一部だ」として独立論とは距離を置く。

雨傘運動を主導した一人、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏(19)が4月に設立した新政党、香港衆志(デモシスト)も「一国二制度が期限を迎える2047年以降の香港の将来を決めるため、10年後に住民投票を実施すべきだ」とするだけで、独立は選択肢の一つとの位置づけだ。

それでも香港民族党など「香港こそが自分たちにとっての本土だ」として中国からの自立を訴える「本土派」への支持は若者層を中心に急速な広がりを見せている。

香港中文大学が3月に実施した世論調査では、自らを「本土派」と位置付ける回答者が全年代では8.4%だったのに対し、18~29歳の若年層では29.8%と、「穏健民主派」(38.7%)に次ぐ2番手に躍り出た。

外資系企業に勤める女性(27)は「雨傘運動の前には中国からの独立なんて考えもしなかった。だが全く譲歩しない中央政府をみて、これまでのやり方ではどうしようもないとよくわかった」と香港民族党への支持を公言する。

香港政府の梁振英行政長官は26日の記者会見で「独立や自決の主張は中央の信任を失わせる。少数の人々の行動で700万人の全市民がツケを払うことになる」と域外からの投資や旅行客の落ち込みにつながりかねないと語った。
だが親中国派による度重なる警告は一部の若者の「離中感情」をさらに高め、独立論を勢いづける皮肉な結果を招きつつある。【4月29日 日経】
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より穏健な「香港衆志(デモシスト)」にも司法の壁
「香港衆志(デモシスト)」も、「雨傘運動」を受けて「香港民族党」と同時期に若者らが結成した新党です。

****香港「雨傘運動」の若者ら新政党 立法会選挙を目指す****
2014年秋に香港行政長官選挙の民主化を訴えたデモ「雨傘運動」に参加した香港の若者らが10日、9月の立法会(議会)選挙に立候補するため、新政党「デモシスト(香港衆志)」を立ち上げた。
 
中心になったのは、雨傘運動を引っ張った学生団体「学民思潮」や「学連」の元メンバーら。代表の主席に就いた羅冠聡さん(22)らが会見し、「香港の未来のため、過激でも保守でもない選択肢を有権者に示していきたい」と語った。具体的な政策は、市民との対話を通じて決めていく方針。
 
政党名は、民主を意味する「デモクラシー」とラテン語で「立ち上がる」などの意味がある「シスト」を組み合わせたという。
 
また、香港こそが本土と考え、中国に批判的な本土派の若者グループ「青年新政」ら6団体も同日、立法会選挙で3〜4人の当選を目指し、協力していくと発表した。将来的には香港独立も選択肢の一つとし、21年に香港人による市民投票を実施するなどの政策を掲げている。【4月10日 朝日】
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「香港民族党」より穏健な立場で、既存政治に満足しない若者らの受け皿になるとも思われますが、過激な「本土派」と支持を争う形にもなっています。

なお、立法会選挙に出馬している「デモシスト(香港衆志)」の代表である羅冠聡さんについても、出馬が危ぶまれています。

****香港民主化デモ、学生リーダーに有罪判決 「雨傘運動****
2014年に香港の大通りを占拠した民主化デモ「雨傘運動」をめぐり、香港の東区裁判所(地裁に相当)は21日、香港政府前で違法な集会に参加したなどとして、大学生団体「学連」の事務局長だった周永康さん(25)と羅冠聡さん(23)、中高生団体「学民思潮」のリーダーだった黄之鋒さん(19)に有罪と認める判決を出した。量刑は来月15日に言い渡される。
 
羅さんは9月の立法会(議会)選挙に立候補しているが、香港メディアによると、一定以上の刑が確定すれば被選挙権を失う。
 
判決によると、周さんと黄さんは14年9月下旬、香港政府前で開かれた集会の際、他の参加者らとともに政府の敷地内に突入し、公共の秩序を乱した。羅さんも演説でそれを扇動したとされる。この突入が雨傘運動のきっかけになった。【7月21日 朝日】
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台湾・香港を遠ざける習近平政権の強硬姿勢】
「一国二制度」を形骸化させる中国側の香港への圧力は相変わらずです。

****香港誌幹部2人に違法経営罪などで懲役判決、中国・深センの裁判所、「一国二制度」に反すると反発再び****
香港紙、蘋果日報(電子版)は27日、中国広東省深セン市の裁判所が26日、中国の指導者らのゴシップ記事を扱う月刊誌を香港で発行し、不当な利益を上げたとして香港人2人に対し、違法経営罪などでそれぞれ5年3月と2年3月の懲役判決を言い渡したと報じた。
 
2010年に香港で「新維月刊」など複数のゴシップ雑誌を始めた発行人と編集者の2人で、14年5月末に香港から深セン市に入境したところ公安当局に身柄を拘束され、起訴された。
 
このうち発行人は香港の身分証明のほか米国パスポートも保持していたが、拘束後に米国の領事面会の措置も認められなかった。
 
香港では、共産党政権を批判する「禁書」を扱った銅鑼湾書店の関係者5人が失踪した事件をめぐり、中国当局が司法管轄権を無視して香港の域内にまで踏み込んできた疑いがあるとして反発が強まっている。
 
今回の懲役判決についても、香港の民主派団体や記者協会などは、銅鑼湾書店の事件と同じく、香港の高度な自治と言論や出版の自由を認めている「一国二制度」に反するとして、中国当局側を強く非難した。【7月27日 産経】
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習近平国家主席は7月1日、北京の人民大会堂で開かれた中国共産党創設95周年の祝賀大会での演説で、香港への強硬姿勢を改めて示していますが、香港の人々の意識が大きく変わりつつあるのは台湾と同じです。

****中国人であることを誇りに思う」香港人、返還以来最低31%****
2016年7月1日、米国営放送ボイス・オブ・アメリカ(中国語電子版)によると、中国返還19周年に合わせて香港で実施された世論調査で、「中国の国民であることを誇りに思う」と回答した人の割合は前年同期比7ポイント低下の31%で、返還以来最低となった。「誇りに思わない」は、返還以来最高の65%。前年同期に比べて9ポイント上昇した。

調査は6月20日から4日間、香港人1000人強に対して電話で実施した。「誇りに思わない」と答えた人の割合は、18歳から29歳で特に高く86%に達した。「誇りに思う」は10%にとどまった。50代以上でも「誇りに思う」は半分以下の44%だった。

中国政府の香港政策を「評価する」は27%、「評価しない」は38%。「評価しない」は99年以来最高になった。香港メディアは「中国政府による香港への圧力が日増しに強まり、銅鑼湾の書店員失踪事件で『一国二制度』への疑問が拡大した。若い世代ほど中国政府への反発が強い」と伝えている。【7月2日 Record China】
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習近平政権の強硬姿勢は台湾でも、香港でも、人々を中国から遠ざける結果となっています。
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「世界は戦争状態にある」 難民問題、イエメン、南スーダン、ブルンジ

2016-07-30 22:08:32 | 国際情勢

(ポーランド・オシフィエンチムにあるアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所跡で、悪名高いスローガン「働けば自由になる」が掲げられた門を通るローマ・カトリック教会のフランシスコ法王(2016年7月29日撮影)【7月29日 AFP】)

【「真実を話すことを恐れるべきではない。平和を失った世界は戦争状態にある」】
ローマ法王はポーランドにあるナチス・ドイツのアウシュビッツ強制収容所跡を訪問して祈りをささげていますが、ポーランドに向かう飛行機の中では、報道陣に対し「真実を話すことを恐れるべきではない。平和を失った世界は戦争状態にある」と語り、難民保護への強い決意を語っています。訪問国ポーランドの難民拒否姿勢も強く批判しています。

****世界は戦争状態」と法王、初訪問ポーランドで難民受け入れ説く****
ローマ・カトリック教会のフランシスコ(Francis)法王は27日、ポーランドを初訪問し、「世界は戦争状態にある」が原因は宗教はではないと語った。
 
前日の26日にはフランスのカトリック教会で、礼拝中の司祭が男2人に殺害される事件が起き、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が犯行声明を出している。
 
こうした中、ポーランド南部クラクフに到着した法王は、ポーランドの人々に向けた第一声で、「恐怖を克服する」方法は、紛争や苦難を逃れてきた人々を受け入れることだと指摘。「戦争と飢えから逃れた人々を受け入れる精神と、自由と安全の中で信仰を告白する権利などの基本的人権を奪われた人々への連帯」を呼び掛けた。
 
また、移民に対して門戸を開くためには「偉大な英知と慈悲」が求められると述べ、第2次世界大戦後最悪の欧州難民危機にあたり、ポーランドの右派政権が負担の分担を拒否していると激しく非難した。
 
これに先だち法王は、伊ローマからポーランドに向かう飛行機の中で、報道陣に対し「真実を話すことを恐れるべきではない。平和を失った世界は戦争状態にある」と述べ、次のように続けた。

「私の言う戦争とは、利害や金銭、資源をめぐる戦争のことで、宗教をめぐる戦争ではない。全ての宗教は平和を望んでおり、戦争を望んでいるのは宗教ではない」【7月28日 AFP】
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アウシュビッツ強制収容所跡を訪問後も、「残虐さはアウシュビッツで終わらなかった」と今も続く紛争地での人権侵害を批判しています。

****<ローマ法王>現代の人権侵害を批判****
ポーランド訪問中のフランシスコ・ローマ法王は29日、同国南部にあるナチス・ドイツのアウシュビッツ強制収容所跡を訪問後、「残虐さはアウシュビッツで終わらなかった」と述べ、現代の紛争地などに残る人権侵害を批判した。
 
法王は、ポーランド南部クラクフの大司教館の窓からカトリック信徒に向かい、現代でも「多くの囚人が拷問され、過密な刑務所で動物同然の暮らしを送っている」と指摘。「70年前、銃やガスで人々が殺されたが、今も戦争地域の多くで同じことが起きている」と警鐘を鳴らした。
 
これに先立ち、クラクフの公園で世界各国から集まった若者を前に、「暴力、テロ、戦争のせいで無実の人々が命を落としているなら、神はどこにいるのか?」と問いかけ、シリア内戦を逃れた難民を「友愛」を持って受け入れるよう呼びかけた。
 
法王は27日、ポーランド訪問開始にあたり、フランスのカトリック教会で起きた神父殺害事件など欧州で相次ぐテロを受け、「世界は戦争中」との認識を示した。【7月30日 毎日】
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増え続ける難民・移民 犠牲者もすでに3千人超
ローマ法王の言葉にもかかわらず、欧州を目指す難民の悲劇は一向に減少していません。

****欧州目指す難民や移民 ことし25万人超える****
ヨーロッパを目指して地中海などを渡る難民や移民は、ことしに入ってから25万人を超え、去年の同じ時期よりも3万人以上多く、死者と行方不明者の数も3000人を超えたことが分かりました。

IOM=国際移住機関は29日、ヨーロッパを目指す難民や移民についての最新の調査結果を発表し、ことしに入ってから今月27日までで、合わせて25万1557人がアフリカなどからヨーロッパに渡ったことが分かりました。

これは去年の同じ時期よりも3万人以上多く、その大半はギリシャとイタリアに渡っていて、なかでもイタリアには、ことし5月と6月だけでおよそ4万2300人が渡ったということです。

また、3034人が船の事故などによって死亡したか行方不明になっていて、去年の同じ時期と比べると死者と行方不明者も1000人以上増えています。

IOMの担当者によりますと、ことしは去年よりも、北アフリカからイタリアを目指す難民や移民が増えていて、特にリビアから地中海を渡ろうとした人たちが死亡するケースが相次いでいるということです。

ヨーロッパを目指す難民や移民の数は、去年は8月から10月にかけてピークを迎えていて、IOMは、各国と連携して実態の把握を急ぐとともに、対応を検討することにしています。【7月30日 NHK】
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難民・移民の受入で様々な問題が起こること、欧州各地で難民・移民らによるテロが起きていることは事実ですが、そうしたことは、今年すでに死者と行方不明者の数が3000人を超えているという事実を無視していい理由にはなりません。

受け入れを拒む姿勢が「恐怖」を助長し、疎外感を感じた難民らをテロリストの側に追いやっていることを認識する必要があると思います。そのような状況では、どれだけ監視体制を強化しようとも、テロは今後も続くでしょう。

和平交渉が決裂したイエメン
普段取り上げられる機会が少ない「紛争地」の状況について、いくつか。

中東最貧国イエメンで続く内戦は、ハディ暫定大統領を支援して軍事介入しているサウジアラビアと、反政府勢力フーシ派の背後にいるとされるイランの代理戦争とも見られていますが、国連も仲介しての和平交渉は進展していません。反政府勢力フーシ派とサレハ前大統領派が共同してハディ暫定大統領派と戦う形になっています。

****死者6400人、クウェートでの和平交渉に進展なし****
国連(UN)が仲介してフーシ派とアブドラボ・マンスール・ハディ暫定大統領派の和平協議がクウェートで長期にわたって行われている。
 
6月25日夜にクウェートの首都クウェート市に入った潘基文(バン・キムン)国連事務総長は26日、和平へのロードマップを受け入れて15か月続いている紛争を解決するよう全当事者に呼び掛けたが、交渉に進展はみられていない。
 
フーシ派は2014年9月にイエメンの首都サヌアの政府庁舎を一時占拠。昨年3月にサウジアラビア主導の連合軍が介入を開始した。国連は、それ以降イエメンでは6400人以上が死亡し、その多くは一般市民だとしている。【6月29日 AFP】
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この和平交渉は事実上破綻したようにも伝えられています。

****イエメン(和平交渉の終焉****
イエメンではクウェイトでの交渉期限も迫り、その失敗も間近かと思われていましたが、どうやら最終的にクウェイト会談は決裂し、イエメンはまた戦場に戻る(もっとも会議中も戦場が完全に静かになったことはなかったが…)ことになりました。(中略)

まずhothy -サーレハ連合が、声明で両者がサナアで最高政治評議会を設置したが、これは大統領評議会の全ての権限(勅令の発布、政府機関に対する命令等)を行使するものであるとしました。(中略)

それがここにきて、hothy連合が一方的、かつ自分たちだけで、大統領表議会に代わるものを設置することとしたのは、実質的に会議を見切ったものと言えます。

これに対して副首相で政府側の交渉代表である外相は、国際社会に対して、このようなhothy連合の一方的措置を非難するように要請し、会議は終了したので、政府側代表団は30日クウェイトを引き上げると声明した由。(後略)【7月29日 野口雅昭氏 「中東の窓」】
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戦闘再燃も懸念される南スーダン 問われる国連PKOの意義
キール大統領派とマシャール副大統領派の内戦が続いていた南スーダンでは、いったんは両者の“手打ち”で混乱が収まったかのようにも見られ、日本政府も、邦人保護のために近隣国のジブチに派遣していた航空自衛隊のC130輸送機3機について、22日撤収命令を出しました。

しかし、副大統領派が内部対立で分裂、キール大統領がこれに乗じる形でマシャール副大統領を解任するということで、戦闘再燃が懸念される状況となっています。

****南スーダン 副大統領解任で戦闘再燃の懸念****
政府軍と反政府勢力の対立で激しい戦闘が続いたアフリカの南スーダンで、キール大統領が、反政府勢力を率いるマシャール副大統領を解任し、いったん収まった戦闘が再燃しないか懸念されています。

アフリカの南スーダンの首都ジュバでは、今月に入ってキール大統領派の政府軍とマシャール副大統領を支持する反政府勢力の間で戦闘が再び起き、270人以上が死亡する事態となっています。

11日の停戦命令のあとは戦闘は収まっているものの、マシャール副大統領はジュバから離れ、和解に向けた対話も行われないままとなっていました。

こうしたなかで、キール大統領は25日、マシャール氏を副大統領職から解任しました。そのうえで、キール大統領は、反政府勢力の中でマシャール氏と対立していたタバン・デン・ガイ前鉱物相を後任に任命しました。

南スーダンでは、ジュバで政府軍と反政府勢力の間で戦闘が起きたことで、現地に滞在していた日本の関係者が航空自衛隊の輸送機などで国外退避しましたが、国連のPKO=平和維持活動に参加している自衛隊の部隊は今もジュバで活動しています。

マシャール氏側は、副大統領職を解任されたことでさらに反発を強めるなど、双方の対立が深まっていて、いったん収まった戦闘が再燃しないか懸念されています。【7月27日 NHK】
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今月7日以降の戦闘で、再び多くの避難民が発生しています。

****ウガンダへ避難2万6千人超に=南スーダン****
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の報道官は22日、南スーダンでキール大統領派とマシャール副大統領派の衝突が始まった今月7日以降、隣国ウガンダに逃れた住民の数が2万6000人を超えたと明らかにした。
 
11日に両派の停戦が発効したが、難民らは戦闘が今も続き、武装集団による略奪や市民の殺害も行われていると訴えているという。21日には一日で最も多い8000人以上がウガンダに入った。【7月23日 時事】 
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緊迫した情勢が続く現地では、派遣されている国連PKOの存在の意味が問われる出来事も報じられています。

****戦闘激化の南スーダンで性的暴行120件、PKO要員が見ぬふりか****
国連は27日、南スーダンでサルバ・キール大統領を支持する政府軍とリヤク・マシャール第1副大統領(当時)の支持勢力との間で激しい戦闘が再発した今月8日以降、少なくとも120件の性的暴行事件が起きたと発表した。

国連の平和維持活動(PKO)要員が暴行現場を目撃していながら見逃した疑いがあるとして、調査を開始したという。

「PKO要員が窮地にある市民を救助しなかった疑いがあり、深刻に受け止めている」と、ファルハン・ハク国連事務総長副報道官は述べ、国連南スーダン派遣団(UNMISS)司令部が調査を行っていることを明らかにした。
 
報道によると、少なくとも1件の女性暴行事件の現場にPKO要員が居合わせたが、何もしなかったという。AP通信は目撃者1人の証言として、基地の入り口近くで女性が兵士2人に襲われ、助けを求めて叫んでいるのを中国とネパールのPKO部隊員30人余りが見ていたと伝えた。
 
ハク副報道官によると、首都ジュバでは国連基地の付近を含む市内各地で、軍服を着た南スーダン兵と私服の男たちが市民に対し性的暴行をはたらいたとみられ、集団暴行も起きたという。被害者には未成年者も含まれているという。
 
ジュバでは、7月8日~11日に政府軍とマシャール氏支持派との間で激しい戦闘が続き、少なくとも300人が死亡、数千人が国連の基地に避難した。

キール大統領は25日、マシャール氏を副大統領職から解任し、後任にマシャール派のタバン・デン・ガイ前鉱物相を任命。マシャール派内部では深刻な分裂が起きている。【7月28日 AFP】
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国連PKOが現地紛争に巻き込まれることを警戒するのはわかりますが、現地住民への暴行・虐殺を黙認したのでは、ルワンダでジェノサイドを座視したことの繰り返しともなります。

警戒が続くブルンジ 国連は警察部隊派遣を決定
そのルワンダでの反省から、同様のジェノサイドにもつながりかねないと国連が警戒しているのがルワンダの隣国ブルンジでの混乱です。

ブルンジでは、ヌクルンジザ大統領の3選出馬に対する抗議デモが激化した昨年4月以降、不穏な情勢が続いています。反体制派はヌクルンジザ氏の3期目就任は憲法違反だと反発し、治安当局は反体制派への弾圧を強めています。

****国連警察部隊をブルンジに派遣へ、安保理が決議採択****
国連安全保障理事会は29日、ブルンジに国連の警察部隊を派遣する決議案を採択した。1年以上にわたって暴力行為が頻発しているブルンジの危機的な状況を終息させるための措置としてはこれまでで最も強力なものとなる。
 
フランスが草案をまとめた決議は、最大228人の国連警察部隊を1年間、ブルンジの首都ブジュンブラと同国各地に派遣するという内容。
 
同決議は、国連の潘基文(バン・キムン)事務総長に対して、人権侵害と虐待の有無の状況を監視するためブルンジに警察部隊を「段階的に配備」するよう求めている。
 
国連安保理はブルンジの暴力行為に歯止めを掛けるよう国際社会から圧力を受けている。ブルンジでは、1994年に隣国ルワンダで起きた虐殺事件のように、暴力行為から大規模な残虐行為に発展する懸念が生じている。【7月30日 AFP】
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今年4月25日には、国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)のベンスダ主任検察官が、ブルンジ情勢について、人道に対する罪などに当たる犯罪があったかどうかを調べる予備調査を始めると発表しています。
ベンスダ氏はこれまでに430人以上が死亡、少なくとも3400人が拘束されたと指摘しています。

“国連の警察部隊”なるものがどのような位置づけにあって、どれだけの実効性を有しているのかは知りませんが、ブルンジでの混乱を未然に防ぐことができれば幸いです。

なお、ブルンジに対しては今年1月、アフリカ連合(AU)が平和維持部隊派遣を検討しましたが、ブルンジがこれを拒否して派遣は見送られています。

シリア・イラクや欧州各地のテロ事件だけでなく、「世界は戦争状態にある」のが現実です。

これを鎮めるのは容易ならざることであるのは言うまでもありませんが、あきらめたり、「自国第一」と、自分たちの世界とは関係がないと見なしたりすることは、その時点で敗北したことを意味します。

国際社会は「偉大な英知と慈悲」を保ちつつ、こうした事態に積極的・有効に関与していくことが求められています。
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シベリア炭疽菌感染が示す温暖化による永久凍土融解の危険性 温暖化問題に否定的なトランプ氏

2016-07-29 22:32:04 | 環境

(【7月29日 CNN】)

75年前に死んだトナカイの凍結死骸が暑さで解けて・・・・】
TVのニュースで、なんの話題だったかは忘れましたが、ロシアの軍幹部の会議の様子が放映されており、出席者が「クールビズ」のような半そでの軍服姿だったのが印象に残りました。

ロシアも暑いのだろうか・・・・と、暑さでぼんやりした(別に、暑くなくても同じですが)頭で考えていたのですが、あの永久凍土のシベリアでも35℃を記録する異常な暑さが観測されているそうです。

凍土が暑さで溶けると、中からはいろんなものが出てきます。
なかには危険なものも。例えば「炭疽菌」とか。

****トナカイの死骸から炭疽菌感染か、13人入院 シベリア西部****
ロシアのシベリア西部で炭疽菌(たんそきん)の感染が広がり、ヤマロネネツ自治区の当局者によると、28日までに13人が入院した。ロシア農務省の専門家は、75年前に死んだトナカイの凍結死骸が暑さで解けて感染源になったと推定している。

同地ではこの1カ月あまりでトナカイ1200頭が死に、当局は当初、熱波が原因と見ていた。この1カ月の最高気温は35度と、同地としては異常な暑さを観測していた。

しかし詳しく調べた結果、トナカイの死因は炭疽菌だったことが確認された。

入院した患者が炭疽菌に感染しているかどうかはまだ確認されていない。しかし感染を想定して抗生剤を使った治療を受けているという。

専門家は、炭疽菌に感染したトナカイの凍結死骸が暑さのために解け、熱波で弱ったトナカイがそれを食べて、遊牧民にまで感染が広がったと推測する。

ロシアの専門家によると、同地で炭疽菌の感染が広がったのは1941年以来。1968年以降は感染事例は確認されていなかった。

米国立衛生研究所の専門家によると、炭疽菌には切り傷などから胞子が入り込む皮膚感染と、食肉に起因する胃腸感染があり、皮膚感染の場合はおよそ5~10%の確率で死亡する。胃腸感染の場合、死亡率はもっと高いという。

ヤマロネネツ自治区の人口約50万人のうち、1万5000人は遊牧民として生活する。当局はウラル北部のヤマル地区で、遊牧民世帯を集団で避難させた。

当局は9月まで隔離を続け、住民や家畜に現地で検査を受けさせたりワクチンを接種するなどの対応を進めるほか、近く動物の死骸の回収と焼却に乗り出す方針。【7月29日 CNN】
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炭疽菌は生物兵器や2001年のアメリカ炭疽菌事件が連想されます。
実際、旧ソ連のスヴェルドロフスクの生物兵器施設では、1979年の4-5月にかけ、人為的ミスによる炭疽菌の漏出事件が発生し、周辺住民96名が感染、うち66名が死亡するという「事故」が起きています。

当時は冷戦時代で、当然のように「事故」は隠蔽されていましたが、1992年、ロシア連邦のエリツィン大統領が軍の炭疽菌によるバイオハザード(生物学的危害)であったことを公的に認めています。【ウィキペディアより】

炭疽菌にはそういった負のイメージがつきまといますので、今回も・・・と思ってしまいますが、炭疽菌自体は世界中で分離される普遍的な自然環境の常在細菌ですので、特段の「裏」はないでしょう。

炭疽菌が生物兵器に利用されるのは、生育環境が悪化すると芽胞を形成し、芽胞は熱や化学物質などに対して非常に高い耐久性を持つという特性もあってのことでしょうが、今回も“75年前に死んだトナカイの凍結死骸が暑さで解けて感染源になった”とのことです。

永久凍土から未知のウイルスが出現する危険性も
シベリアの永久凍土からは、もっともっと古い「危険物」も出てきます。

****シベリアの永久凍土で発見された3万年前の巨大ウイルスを蘇生させる研究を開始(フランス****
少なくとも3万年前のものと思われる太古のウイルスが、シベリアの永久凍土の氷床コアから発見された。

そこでフランスのエクス=マルセイユ大学のジャン・ミシェル・クラブリー教授率いる研究チームはこの巨大ウイルスを蘇生させる計画を発表した。どんな危険性が潜んでいるのかを見極めるためだ。

古代のウイルスが発見されたのは、後期更新世の堆積物の30m下においてだ。モルウイルス・シベリカムと名付けられた本ウイルスは、2003年以降に発見された先史時代のウイルスとしては4種類目で、同チームによる発見はこれで2個目となる。直径0.6ミクロンのモルウイルス・シベリカムは巨大ウイルスの仲間入りを果たした。

研究者は研究チームはウイルスを蘇生させる際、動物や人間に病気を引き起こす可能性がないことを事前に検証する必要がある。
 
永久凍土が溶け始め危険なウイルスが広まる可能性
クラブリー教授によれば、シベリアは危機に晒されているという。1970年代以降、永久凍土は縮小を続け、厚みも失われてきた。気候変化からも、今後一層の縮小が予測される。

また、同地域はアクセスも容易になっており、天然資源需要から注目を集めるようにもなってきた。クラブリー教授は、深い部分の層が露出すれば、危険な新種ウイルスが広まる可能もあると懸念する。

「 大災害のレシピです。商業的な採掘が開始されれば、永久凍土の層が各地に運搬されます。鉱業などによって、そうした古い層に穴が開けられます。危険なのはそこです」

クラブリー教授は、30年前に根絶が宣言された天然痘ウイルスが復活することもありうると語る。そうしたウイルスが、モルウイルス・シベリカムと同じ方法で生き残っているのであれば、天然痘は根絶されたのではなく、表面から消えただけということになる。深く掘り進めることで、天然痘が現代に蘇る可能性を高めることになる。

研究チームは、安全な実験室条件の下で、宿主となる単細胞アメーバと同じ環境に置くことで、このウイルスの蘇生を試みる予定だという。

クラブリー教授率いる研究チームは2013年、今回と同じ場所でピソウイルス・シベリカムと呼ばれる別種の巨大ウイルスを発見し、シャーレ内で蘇生させることに成功している。

この時は、ピソウイルス・シベリカムのアメーバへの感染が確認されているが、人間や動物に対して感染力はなかった。【2015年09月16日  カラパイア http://karapaia.livedoor.biz/archives/52200794.html
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なお、上記巨大ウイルスに関しては、フランスの研究チームによる蘇生の結果、人や動物には感染しないが、特定の微生物には感染しその細胞内で増えることが確認されたそうです。

今後、温暖化の影響で永久凍土が溶けたり、北極周辺などで原油採掘が進んだりすると、未知のウイルスが出現する危険性が高まると科学者らは警告しています。

大好きな「パンデミック」映画にありそうなシチュエーションですが、十分に現実性もありそうです。
永久凍土の変化が急速に進んでいることは、日本の研究機関によっても報告されています。

****シベリアの永久凍土の乾燥化進む 急激な温暖化が一因****
海洋研究開発機構(JAMSTEC)などの共同研究グループが、シベリアの永久凍土の乾燥化が進み、その一因がこの地域の急激な温暖化によるものであることを明らかにした。

温暖化の影響が北極周辺に広く及んでいることを裏付ける研究成果で、論文はこのほど英科学誌に掲載された。

JAMSTEC地球表層物質環境研究分野と名古屋大学宇宙地球環境研究所などの共同研究グループは、米航空宇宙局(NASA)とドイツ航空宇宙センター(DLR)が2002年に打ち上げた「重力観測衛星」のデータなどを使って02年4月から15年8月までの北極海沿岸のシベリアの永久凍土地帯の土壌、湿地や湖沼などに含まれる水の量(陸水貯留量)を分析した。(後略)【5月6日 Science Portal】
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永久凍土の融解が進めば温暖化は加速
永久凍土から出てくる「危険物」はウイルス・細菌だけではないことは、2015年8月25日ブログ“温暖化 アメリカ西部が「メガ干ばつ」へ ロシア・シベリアでは永久凍土融解でメタン放出”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150825でも扱ったことがあります。

先住民族ネネツ人の言葉で「世界の果て」を意味するロシア・西シベリアのヤマル地方の地平線まで広がるツンドラの平原に、突如月面のクレーターのような巨大な穴が出現し話題となりました。

穴は直径約37メートル、深さ約75メートルもあり、その後も同様の穴の報告が相次ぎ、(当時で)4個が確かめられています。

原因については、研究者の間では「永久凍土が溶け、メタンガスの圧力が地中で高まって爆発した」との説が有力です。

温暖化によるメタンガス放出は、更に温暖化を加速させるという「厄介者」であることは周知のところです。

****メタンの温室効果、CO2の25倍 温暖化進む恐れ****
永久凍土はシベリアだけでなく、カナダやアラスカなど、北半球の大陸表面の24%に存在する。

温暖化による極地の気温上昇は、世界平均の2倍の速さで進むとされる。国連環境計画(UNEP)が2012年にまとめた報告書によると、今から2100年までに全地球の気温が3度上がれば北極では6度上昇し、地表付近の永久凍土の30~85%が失われる可能性がある。

特に心配されているのが、温室効果ガスの大量放出だ。全世界の永久凍土にあるメタンや二酸化炭素(CO2)の炭素量は、現在の大気に含まれる量の2倍。メタンの温室効果はCO2の25倍ある。どれほどの影響がでるのか、専門家でもまだ見通せていない。

名古屋大学地球水循環研究センターの檜山哲哉教授は「永久凍土の融解が進めば温暖化は加速し、大地や植物だけでなく人間社会にも大きな影響を及ぼす。100年後、1千年後を見通すための研究が必要だ」と話す。【2015年7月19日 朝日】
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今回の「75年前に死んだトナカイの凍結死骸からの炭疽菌感染拡大」の問題は、上記のような永久凍土に潜む天然痘や“未知のウイルス”、あるいはメタンガスが出現するといった危険性が絵空事ではないことを示しています。

トランプ氏の不可解な確信
アメリカ共和党大統領候補のトランプ氏はかねてより温暖化問題については否定的で、「パリ協定」不参加を表明しています。

****<トランプ氏>パリ協定「不参加」・・・「時代遅れな規制****
米大統領選に向けた共和党候補指名争いで、実業家のドナルド・トランプ氏(69)は26日、遊説先で記者会見し、大統領に当選すれば温室効果ガス削減の新たな国際枠組み「パリ協定」への参加を取り消すと表明した。ロイター通信が伝えた。
 
ノースダコタ州で会見したトランプ氏は、パリ協定について「労働者に不利益で国益に反し、時代遅れで不必要な規制は完全に破壊されるべきだ」と、持論を展開した。パリ協定は4月に175カ国・地域が署名。オバマ政権は早期に批准手続きを終える意向だ。
 
パリ協定には「批准国は協定の発効後3年間は脱退を通告することができず、通告しても1年間は脱退できない」との条項が盛り込まれている。

このため、トランプ氏が大統領に就任したとしても、発効していれば任期中は事実上協定から抜けられない。ただし、国連気候変動枠組み条約自体から脱退すれば、4年を待たずにパリ協定からも抜け出ることは可能だ。(後略)【5月27日 毎日】
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最大の温暖化効果ガス排出国であるアメリカと中国の積極姿勢への転換で、ようやく動き始めた世界の温暖化対策ですが、「トランプ大統領」になれば、これもついえてしまうようです。

国際社会との協調に関心がなく、「国益が一番」という姿勢はトランプ氏の安全保障問題への対応などにも共通する傾向ですが(「トランプ氏」というより、「トランプ氏を支持するアメリカ世論の」と言うべきでしょうが)、こうした「自国の国益が一番」という傾向は、アメリカ・トランプ氏に限った話でもなく、欧州などでも広く顕在化している方向性です。

それにしても、長期の時間軸での検証が必要で、現時点における「絶対的証拠」もない「人間の産業活動に伴う温暖化効果ガスによる気候変動」について、「本当だろうか?」と疑念を呈することは十分にありえる話ですが、「そんなもの関係ない!」と逆の確信を抱く根拠はどこから出てくるのでしょうか?

内向き傾向を強めるアメリカ世論には受けるのでしょうが。

地下帯水層枯渇で選択を迫られるアメリカ農業
「人間の産業活動の地球環境に与える影響」に関して、温暖化よりももっと短期に「答え」が出そうな問題があります。アメリカ農業を支えてきた地下帯水層の枯渇です。

****北米最大の地下帯水層が枯渇****
乾燥した米国中部で近代的な生活が送れるのは、膨大な量の地下水を含んだ地層「オガララ帯水層」があるおかげだ。

そのオガララの水を調査するため、私たちはここカンザス州へやって来た。井戸に下ろした巻き尺の先端は、深さ60メートルでようやく水面に達した。1年前に測ったときより30センチも低い。このペースで水が減れば、井戸が枯れるのも時間の問題だ。「この状態で灌漑に使えば、ひと夏もちません」。米カンザス地質調査所で水資源データの管理責任者を務めるブライアン・ウィルソンは言った。

農業地帯を支える水
オガララ帯水層をめぐるウィルソンの調査に同行し、8000キロを旅した。私たちが車で走ったのは、サウスダコタ州からテキサス州にかけて広がる、米国有数の高い生産性を誇る農業地帯の一角だ。一帯の年間生産額は少なくとも200億ドル(約2兆円)に達し、米国内の小麦、トウモロコシ、肉牛の5分の1近くがここで育てられている。

そうした農家は今、難しい選択を迫られている。水を節約して地下水の枯渇を遅らせるか、目前に迫った終焉に向かってこのまま突っ走るのか。

なかには現実を直視したがらない農家もある。今の調子で水をくみ続け、帯水層が干上がってしまったら、世界の食料市場は大打撃を受けるだろう。

国連の試算によれば、21世紀半ばまでに世界の人口は90億人を超えるため、あと数十年で食料生産を6割増やす必要があるという。そんな世界情勢を尻目に、水はゆっくりと枯れつつある。

世界各地で枯れる地下水
オガララ帯水層は北米最大の地下水資源だが、同様の問題は世界中で起きている。アジア、アフリカ、中東の大規模な帯水層は、どこも急速に水量が減少しているのだ。オガララの南部を含め、そうした帯水層は地下水の回復スピードが極めて遅く、一度水を使い果たしたら、元に戻るまで何千年もかかる。(中略)

「影響は甚大です」と警鐘を鳴らすのは、米航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所の水文学者ジェイ・ファミグリエッティだ。彼の研究チームは、人工衛星による観測データを使って世界37カ所の巨大帯水層の変化を記録している。「食料生産を維持するには、まず地下水の維持が必要なのに、それができていません。オガララの水を使い切ることが、米国、ひいては世界の食料生産にとって賢い選択なのか、真剣に考えなくてはなりません」【ナショナル ジオグラフィック2016年8月号特集「地下水が枯れる日」より】
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「オガララ帯水層」枯渇で危機が表面化すれば、アメリカの温暖化問題への取り組みにも変化があるのかも。
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シリア  アレッポ包囲で飢餓状態 マンビジュでは誤爆も 反体制派の残虐行為 増大する犠牲者

2016-07-28 21:38:59 | 中東情勢

(がれきが散乱するシリアの路上で涙目のピカチュウ 【7月23日 AFP】)

政府軍・ロシア、のアレッポを包囲で飢餓状態 人道回廊設置も
シリア北部の国内第2の大都市アレッポでは、その支配権を巡って政府軍、反体制派、イスラム過激派、クルド人勢力など、シリア内戦主要メンバーが入り乱れての争奪戦が繰り広げられてきましたが、ロシアの支援を受けた政府軍の攻勢によって反体制派支配地域の包囲が完成したことが報じられています。

****反体制派北部拠点を包囲=シリア軍****
在英のシリア人権監視団は17日の声明で、シリア政府軍が北部アレッポの反体制派支配地域と外部を結ぶ道路を遮断し、同地域を完全に包囲したと明らかにした。政府側は反体制派との激しい交戦の末、道路の支配権を確保したという。
 
AFP通信によれば、軍は道路を行き来する人々を拘束するなどして締め付けを強化している。アレッポ東部には反体制派の拠点があり、攻勢を強める政権側に抵抗してきたが、物資補給が困難になれば弱体化が進む可能性が高い。【7月17日 時事】 
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政府軍による包囲によって、域内住民は食料・水が途絶する状況に追い込まれています。

****シリア政府軍、アレッポ包囲で補給路遮断 住民襲う食料難****
シリアのアサド政権軍が反政府派掃討を進める同国北部アレッポ市の戦況に関連し同市居住の報道写真家は28日までに、政府軍は市東部の反政府拠点に対する圧力を強めており、住民が確保出来る食料や水は払底しつつあるとの窮状を明らかにした。

報道写真家のカラミ・アル・マスリ氏がCNNに証言したもので、住民の空腹感は募る一方となっていると説明。多くの市場が閉鎖し、食料調達のために長い行列が出来ており、家族1世帯が得られるパンは2日ごとの6個のみだという。

シリア軍は27日、部隊と支持勢力が同市を包囲しているとし、反政府派拠点に通じる全ての補給路と回廊の切断を発表していた。

国営シリア・アラブ通信(SANA)は、軍は反政府派に対し保持する全ての武器引き渡しや、市内から立ち去るかもしくはとどまるよう求めたと伝えた。

住民は市内から退去を促す政府の文書を受け取ったとの情報もある。

ただ、マスリ氏は住民が退避を望んでもかなわない状況にあると指摘。市の東側地区は軍が完全封鎖し、全ての道路が切断される包囲下にあると述べた。

また、住民は政権軍が同市に進攻した場合、殺害される不安も抱いている。

アレッポ市内での市街戦は難しいことから軍の市内への進攻はない事態も有り得るが、住民を飢餓状態に直面させて投降を待つ選択肢を取る可能性があるとも述べた。

在英の反体制派「シリア人権監視団」によると、シリア軍のヘリコプターは26日、アレッポの一部地区に殺傷力の高い「たる爆弾」を投下し、少なくとも住民5人を殺害した。

国連はアレッポ市の現状を踏まえ人道危機が発生しかねないことへの深刻な憂慮を表明した。【7月28日 CNN】
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シリア内戦でも最も激しい戦闘が行われている地域に住民がまだ暮らしているということも不思議な感じがします。
安全な避難路がなく“出るに出らない”という状態なのか、「人間の盾」として使われているのか、何らかの意思で残っているのか・・・。

いずれにしても政府軍包囲、補給路遮断によって“飢餓状態”が進みます。
国連等の「人道危機」の懸念に対し、包囲戦を進めるロシアは一定の“人道配慮”をアピールしています。

****シリア情勢】ロシアが激戦地アレッポに人道回廊設置へ****
ロシアのショイグ国防相は28日、激しい戦闘が続くシリア北部アレッポで、シリア政府とともに複数の人道回廊を設置し、市民および降伏の意志がある武装勢力の戦闘員を市街に脱出させると表明した。インタファクス通信が伝えた。
 
ショイグ氏は回廊設置の理由として、武装勢力側の停戦違反が続き、人道上の問題が深刻化したためと述べている。回廊は計4カ所設置し、3カ所を市民用、1カ所を戦闘員用にするという。【7月28日 産経】
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“人道回廊”が政府軍・反体制派双方の攻撃に対し安全に機能するのかどうかは知りません。あるいは、避難したのち、反体制派協力者として拘束されるとか、そういったことがあるのかないのか・・・。

シリア政府軍・ロシアが一応の“人道配慮”をアピールしているということは、今後、住民を巻き込む激しい攻撃が予定されている・・・ということのようにも思えます。

クルド人勢力・アメリカのマンビジュ攻撃では誤爆も ISはテロで報復
一方、トルコの国境に近く、ISにとって武器や戦闘員の主要な供給ルートとなっているシリア北部のマンビジュに対しては、アメリカが支援するクルド人民兵とアラブ系の「シリア民主軍(SDF)」の関連組織が奪還作戦を行っています。

激しい戦闘において、誤爆も起きているようです。

****シリア空爆で市民多数巻き添えか、米軍が調査開始 IS掃討作戦****
過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦を進める米軍主導の有志国連合司令部のガーバー報道官は27日の記者会見で、今月19日にシリア北部マンビジュで実施した空爆で多数の市民を巻き添えにした可能性があるとして、調査を始めたと明らかにした。
 
シリア人権監視団(英国)は、空爆で子どもを含む市民少なくとも56人が死亡したと発表。住民らは空爆を有志国連合が行ったと主張していた。
 
ガーバー氏は、こうした主張を踏まえ「正式な調査をするのに十分な信用性があると判断した」と述べた。【7月28日 iza】
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死者56人のうち、子供は11人と報じられています。

なお、シリア関連報道で頻繁に出てくる「シリア人権監視団」なるものは、国連等の公的機関とは無関係の、イギリスに移住したシリア人が立ち上げたNGOであり、その情報の信憑性・中立性については疑問もあります。ただ、情報が絶対的に少ない中で、数少ない情報として利用されています。

アメリカの支援を受けるクルド人勢力の攻勢で劣勢に立たされている「イスラム国(IS)」は、クルド人居住地域へのテロ攻撃で報復しています。

****シリアで爆発、44人死亡 ISの犯行か****
シリアの少数民族クルド人が多く住む北東部カミシュリで27日、大きな爆発があった。シリア国営通信によると44人が死亡、140人が負傷した。過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出した。シリア北部マンビジュでISがクルド勢力に包囲され、米主導の有志連合の空爆を受けたことへの報復だとした。
 
AFP通信によると、トラックに仕掛けられた爆弾が爆発し、近くにある燃料のコンテナに引火して爆発した。爆発の影響で、国境を挟んでカミシュリに隣接するトルコ側の街の商店の窓ガラスも割れた。

内戦が続くシリアで、カミシュリのあるハサカ県はクルド系武装勢力が大半を実効支配しており、米主導の有志連合の支援を受けてISと戦闘を続けている。【7月27日 朝日】
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反体制派の残虐行為も
住民への残虐行為としては「イスラム国(IS)」の非道がしばしば報じられており、またシリア政府軍による「たる爆弾」攻撃での住民被害も報じられていますが、アメリカが支援する反体制派による残虐行為も。

****シリア反体制派が少年の首を切断、映像公開後「ミス」認める****
シリア北部アレッポの反体制派武装組織が少年の首をはねて殺害する映像がソーシャルメディアに投稿され、市民や反体制派の間で怒りの声が上がっている。
 
19日にソーシャルメディア上で拡散された映像には、アレッポ市内の反体制派支配地域の公道上で、ピックアップトラックの荷台に乗せられた少年が反体制派の武装組織「ヌルディン・アルザンキ(Nureddin al-Zenki)」の戦闘員に首をはねられる様子が映っている。
 
映像の中でヌルディン・アルザンキは、この少年がシリア政権寄りのパレスチナ人組織「アルクッズ旅団(Al-Quds Brigade)」に所属して戦闘に参加していたと非難。アレッポ北部での戦闘中に捕虜として拘束したと説明していた。
 
しかし、アルクッズ旅団は殺害された少年は組織の構成員ではなく、パレスチナ難民の12歳の一般市民だとする声明を発表した。
 
ヌルディン・アルザンキは19日の声明で、少年の殺害を「違反行為」として非難するとともに、組織の方針とは無関係の「個人的なミス」だと弁明。関与した複数の戦闘員の身柄は既に拘束しており、捜査のために司法委員会を設けて、できるだけ早期に評決を下すと説明している。

「こんな子どもを虐殺するなんて。公正な裁きを受けさせるべきだった。政権との捕虜交換だってできた」。市民からは、少年殺害を「憎むべき行為」と非難し、反体制派の名を汚したと批判する声が上がっている。

アレッポのモスク(イスラム教の礼拝所)では19日の日没の祈りの集会で、イスラム教指導者が「これは犯罪行為であり、イスラム教で禁じられている」と語った。【7月21日 AFP】
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日常的となったシリア人の死に涙目のピカチュウ
各勢力入り乱れての激戦のなかで、住民犠牲者の数だけが増えていきます。

****内戦のシリアに涙目のピカチュウ、ポケモン合成画像で窮状を訴え****
がれきが散乱するシリアの路上で悲しそうな目をして座っているねずみポケモンの「ピカチュウ」。銃を持ったイスラム過激派と並ぶ、かえんポケモン「リザ―ドン」
 
これらの印象深い合成画像を作ったのはシリア人アーティストのハリド・アキルさんだ。アキルさんら数人の活動家やアーティストは、スマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」の世界的な人気を利用して、内戦で傷ついたシリアの窮状に関心を集めようとしている。
 
アキルさんのウェブサイトに投稿された合成画像は、6年目に入り28万人以上の死者を出したシリア内戦の報道写真にポケモンたちをはめ込んだものだ。
 
建物から外装が剥がれ黒こげの車から煙が立ち上る、爆撃直後のように見える写真もある。あちこちにがれきが散らばる通りを歩く子どもの写真には、耳を垂らして座るピカチュウが合成され、荒廃した道を自転車で走る少年の写真にはあわはきポケモン「シャワーズ」が合成されている。
 
アキルさんはAFPに対し、「シリアのニュースとポケモンGOのニュースがごちゃ混ぜに報じられているのを見て、このアイデアを思いついたんです」と話した。「私が暮らすシリア北部アレッポの破壊された様子を捉えた写真を探し、シリアでポケモンGOを遊んだらどんなふうになるだろうか、内戦はポケモンたちにどう影響するだろうかと想像をめぐらせました」
 
アキルさんは「このささやかなプロジェクトの目標は、シリアで起きていることに光を当てることです」「内戦は5年たっても終わらず、残念ながらシリア人の死はありふれた、日常的なニュースになってしまいました」と語った。【7月23日 AFP】
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コメント

タイ  自由な議論や批判、広報活動を封殺した状況での「国民投票」という「茶番」

2016-07-27 22:06:06 | 東南アジア

(タイ軍事政権のプラユット首相=26日、バンコク(ロイター=共同)【7月26日 共同】)

【「いかなる種類の広報活動も許さない」】
タイでは、クーデターによって実権を掌握した軍事政権のもとで、8月7日に新憲法案に関する国民投票が行われます。

“新憲法案は、選挙で選ばれた議員や内閣の権限を狭める一方、任命制の憲法裁判所などの権限を強化する。さらに「移行期間」として、新憲法のもとで行われる総選挙後の5年間は軍が事実上、上院議員を選ぶ。軍が間接的に新政権を縛り、無力化できる内容だ”【5月20日 朝日】と指摘されるように、新憲法案は、選挙に強いタクシン派を弱体化させ、国王を頂点に軍や官僚、司法、国王側近などが国政の実権を握り「伝統的な統治」を維持するのが狙い、との見方が多くあります。

まあ、そうした新憲法内容については、国民がそれを望むのであれば・・・ということもできるかもしれませんが、実際は「国民投票」という形はとりつつも、一切の批判・議論を許さず、軍事政権の考えを受容することを国民せまるものになっています。

タクシン派も反タクシン派政党もこの新憲法案の非民主的側面に反対していますが、軍事政権はそうした反対意見を国民に訴えることを禁じています。

そのあたりのことは、5月3日ブログ“タイ 新家法草案の国民投票 軍政は、政党などによる組織的反対運動を禁止”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160503でも取り上げたところです。

****組織的反対運動認めず=憲法草案の国民投票―タイ軍政****
タイ軍事政権は、憲法起草委員会がまとめた新憲法草案の賛否を問う8月7日の国民投票を前に、草案否決を訴える組織的な反対運動を認めない方針を示し、国内外で懸念が広がっている。
 
軍政が上院議員を任命する権限を持つなど、軍の政治的影響力を温存する内容の憲法草案に対して、タクシン元首相派を中心に反対の声が上がる中、プラウィット副首相兼国防相は25日、混乱防止を理由に「(賛成、反対両派による)いかなる種類の広報活動も許さない」と記者団に強調した。
 
選挙管理委員会も、多額の費用をかけた大掛かりな運動は禁止されると説明。

個人がフェイスブックなどソーシャルメディアで意見を表明したり、賛否を表す小さな看板を自宅に掲げたりするのは可能だが、政党など政治団体が公開討論会を開くことはできず、参加できるのは学術団体やメディア、国家機関が組織したものに限られるとの見解を示している。【4月26日 時事】 
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****いいね!」で刑事罰も=憲法案の国民投票めぐり―タイ****
軍事政権下にあるタイの選挙管理委員会は、新憲法草案の賛否を問う8月の国民投票に関し、国民投票法違反で刑事責任を問われる恐れのある禁止行為に関する指針をまとめ、29日に公表した。

フェイスブックで違法な投稿に「いいね!」をクリックした場合も、刑事罰の対象になると警告している。
 
国民投票法は、有権者に特定の投票行動を取らせる目的で事実をねじ曲げたり攻撃的な言葉を用いたりして情報を流布した場合、最高で10年の禁錮刑を科すと規定している。
 
選管が同法に基づいて作成した指針では、個人が事実に基づいてソーシャルメディアなどで草案への意見を表明することはできるが、他の有権者に賛成や反対を訴える運動は禁じられる。
 
インターネットに虚偽情報を投稿することや、フェイスブックに投稿された虚偽情報に「いいね!」ボタンを押して共感を示すことは、国民投票法に抵触すると見なされる。特定の意見を表すシャツやリボンの着用を他者に働き掛けたり配布したりするのも、禁止行為とされている。【4月30日 時事】
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“事実をねじ曲げたり攻撃的な言葉を用いたりして情報を流布した場合”というのは、あくまでも新憲法案を成立させたい政権側の当局・司法が判断するものであり、結局、反対を訴える運動は「投票妨害」として禁錮10年以下の重罰が科されます。

「民主主義にのっとって・・・」という形式だけを整えた政治的茶番は世界中で珍しくありませんが、今回のタイの新憲法案国民投票もそうした茶番と化しています。

当然、こうした自由な議論を禁じる「国民投票法」は現在の暫定憲法にも反するのでは・・・という強い疑念がありますが、裁判所はこれを「合憲」と容認しています。

****反対運動禁止は「合憲」=新憲法案国民投票でタイ裁判所****
タイ憲法裁判所は29日、新憲法草案への賛否を問う8月7日の国民投票を前に、草案反対運動を事実上禁止した国民投票法の条項について、基本的人権を保障した暫定憲法に「違反しない」として、合憲判断を下した。
 
国民投票法61条は、有権者の投票行動に影響を及ぼす目的で、事実を歪曲(わいきょく)した内容や「暴力的、攻撃的、粗暴、扇動的または脅迫的な性格」を持つ文書、映像、音声を流すことを禁じ、違反者を最高10年の禁錮刑に処すと規定。これに対し、タクシン元首相派をはじめ草案反対派などから「あいまいで、表現の自由を制限する」と批判の声が上がっていた。【6月29日 時事】
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反対運動の取り締まり強化で相次ぐ逮捕者 8歳女児も送検
現実に、さまざまな形で反対運動・反対勢力への弾圧・拘束が実行されています。

****軍政に批判的なテレビ局に放送停止処分・・・タイ****
タイ軍事政権下の国家放送通信委員会(NBTC)は21日、軍政に批判的なタクシン元首相派系のテレビ局「ピースTV」に対し、30日間の放送停止処分を命じた。
 
地元紙バンコク・ポスト(電子版)が同日報じた。民政復帰に向けた新憲法草案の賛否を問う国民投票を8月7日に控えており、同テレビ局は草案に反対の姿勢を示していた。タクシン派は、軍政が反対派の封じ込めを図ったとして反発している。
 
同紙によると、NBTCは処分理由として、同テレビ局で放送された番組の内容が不和を生じさせ、国民を混乱させたとした。プラユット暫定首相は処分に先立ち、NBTCの権限を強化していた。【7月22日 読売】
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****国民投票控え逮捕者相次ぐ、タイ 軍政が新憲法草案批判封じ込め****
2014年のクーデターで発足したタイの軍事政権による8月7日の新憲法草案の是非を問う国民投票を前に、軍政は反対運動の取り締まりを強化、26日までの約3カ月間に敵対するタクシン元首相派の活動家ら100人以上を逮捕した。来年予定する総選挙後の軍の影響力維持を狙った新憲法草案に批判が相次いでいることが封じ込めの背景だ。
 
10日、タイ中部ラチャブリ県で停止中の車が警察官に捜索され、乗っていたインターネット新聞の男性記者(24)と反軍政の活動家計4人が逮捕された。「国民投票で反対に票を投じよう」と記されたステッカーなどを所持していたためだ。【7月26日 共同】
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****タイ北部、新憲法草案を批判する問題文書を押収****
北部チェンマイ県ムアン郡で7月23日、関係当局がチェンマイ県行政機構のブンラート機構長の関係先6か所を家宅捜索し、新憲法草案に関する大量の問題文書や封筒などを押収した。

同機構長はタクシン派・タイ貢献党と深いつながりがあるとされる。文書は新憲法草案は国民に多大な不利益をもたらすものであるといった批判色の強い内容であり、8月7日の国民投票で草案に反対票を投ずることを促すことが目的とみられている。【7月26日 バンコク週報】
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当局は「選挙妨害」する者はたとえ子供でも許さないという、タイらしからぬ厳しい姿勢です。

****有権者名簿を破いた8歳女児2人を送検 タイ****
タイの警察当局は23日、新憲法草案への賛否を問う国民投票の有権者名簿を破いたとして、8歳の女児2人が軍事政権の法律に基づいて送検されたと発表した。
 
軍政は来月7日の国民投票で草案を通す意向にあり、草案に関して批判的な議論をすることを禁止し、違反した場合は最高10年の禁錮刑に処すとしている。

また、あらゆる種類の反対運動を禁止しており、既に批判的な内容のチラシの配布や、反対票を呼び掛けるTシャツを着用した大勢の人々を逮捕したり、警告を出したりしている。
 
送検された8歳の2人は先週、北部の学校の外に掲示されていた有権者名簿の紙を、好きなピンク色だったからとの理由で破り、法律に違反したと判断された。

北部カムペーンペット県の警察署長は、2人が「国民投票の過程妨害、公文書毀棄(きき)、公共物破損の罪」で送検されたと説明した。
 
タイでは法律に沿って10歳未満に刑罰が適用されないことになっているため、この2人が刑務所に送られる可能性はないという。警察署長は、それでも警察には送検手続きを行う義務があると付け加えた。【7月24日 AFP】
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それではサルが破いたらどうするのだ?サルを逮捕するのか?という話も出ています。

****国民投票控えるタイ、サルの集団が批判禁止令に「抵抗」?****
タイの軍事政権が国家の危機を救うために行うと喧伝(けんでん)する、新憲法をめぐる国民投票を前に、100頭ほどのサルの集団が「選挙妨害」を働いた。
 
タイでは8月7日に予定されている国民投票のための有権者名簿を、8歳の少女2人が破いたとして数日前に起訴されたばかり。今度は北部ピチット県で、サルの集団が有権者名簿を破いた。
 
同県選挙管理委員会のプラユーン・チャクパチャラクル委員長は「サルはいたずら好きな動物だから(名簿を)破いてしまった」とAFPに語った。
 
ソーシャルメディア上ではこの出来事を、軍事政権の宿敵で亡命中のタクシン・シナワット元首相に絡めるジョークが広まった。フェイスブックには、タクシン元首相がバナナを与えているサルたちが喜んで有権者名簿を破いている様子を描いた風刺漫画が投稿された。
 
タイの軍政は国民投票を控え、手段を選ばずに反対派の押さえ込みにかかっている。特別法の下、新憲法草案を批判した場合には最長10年の禁錮刑を科される恐れがあり、一連の動きについて人権団体らは茶番だと非難している。

また多くの人権活動家らはこの草案について、軍事政権による支配を強化する内容とみている。【7月25日 AFP】
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自由な議論が封殺され、新憲法案の問題点が指摘されることもない状況では国民は適切な判断もできません。

****タイ新憲法案 軍支配の色強く国民無関心 投票不成立の可能性も****
2014年5月のクーデター後に発足した軍事政権が続くタイで、新たに制定される憲法草案をめぐって混乱が続いている。

今年8月7日の国民投票を前に軍事政権は、新憲法案を国民に浸透させようと全文が掲載された冊子のほか要約版についても、おのおの100万部を用意。全国で配布を続けているが、国民の関心はさっぱりだ。

他国からは「内容が非民主主義的で、軍支配の可能性を残している」などと批判の相次ぐ同草案。このままでは低投票率を理由に国民投票の成立さえも危ぶまれる状況だ。

 ◆反対行為に禁錮刑
市場調査や国民の意識調査などを行う独立系のタイ国家開発管理研究所(NIDA機関)の調査担当者は、6月に行った新憲法案に対する有権者の意識調査結果を見て愕然(がくぜん)とした。

賛否を尋ねた質問に対し、「決めていない・分からない」とした回答が全体の3分の2に近い62.96%となり、前月の調査結果39.53%から20ポイント以上も急上昇。「賛成票を投じる」の28.71%、「反対票を投じる」の7.13%をともに大きく上回ったのだ。
 
任命制の上院が首相の指名手続に加わることの可否についても意識調査が行われた。これについては52.70%が「決めていない・分からない」と回答。前月調査の38.47%を大きく上回った。

同様に「賛成する」は27.38%、「反対する」は18.92%と低調だった。NIDA機関の担当者は「新憲法に対する国民の関心が一気に低くなっている」と心配そうな表情で話した。
 
背景の一つには、暫定軍事政権による神経質なまでの徹底的な取り締まりがある。

新憲法案が発表された3月29日には、緊急勅令と並ぶ効力を持つ国家平和秩序維持評議会(議長・プラユット首相)による「評議会布告仏歴2559年第13号」が発布され、治安を乱す恐れのある動きに対しては軍と警察が裁判所の令状なく合同で公権力を行使できるとの通達がなされた。
 
また、4月7日には「仏歴2559年憲法草案国民投票法」が暫定議会を通過。新憲法案に対し事実でない発言や扇動といった手段を通じて反対票を呼びかけるような行為に対し禁錮刑を科すなどの処罰規定が盛り込まれ、内外の関係者らを驚かせた。

暫定政権の意向に従わない者について「矯正」を行うためのプログラムも用意されており、執念とも言うべき強権ぶりに国民がすっかり冷めてしまったというのが実態のようだ。(後略)【7月13日 SankeiBiz】
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新憲法案に批判的な者は続々逮捕される状況で、「さあ、国民投票で自由に判断してください」と言われても、おいそれと反対票も投じられませんから、反対票はそう多くはならないのでは・・・とも思えますが、「わからない」、「関心がない」が主流のようです。

【「民主主義は最悪の政治形態であると言える。ただし、これまで試されてきたいかなる政治制度を除けば」】
欧州では、イギリスのEU離脱をめぐる国民投票や、各国でのポピュリズムや極右勢力の台頭など、民主主義がもたらす結果への疑念も生じています。

タイの軍事政権は長年のタクシン派と反タクシン派の不毛の対立と混乱の結果ですが、新憲法案はタクシン派に代表されるような「民意」を信頼せず、「良識ある」軍部・司法勢力など一部エリート層が国家の枠組みを決定しようというものでもあります。

確かに民主主義というのは多くの問題を抱えた制度ですが、さりとてこれを否定して、よりましな政治形態がありうるのか?ということになると、やはり危険なものしかありえない・・・という感じを抱かせるタイ軍事政権の在り様です。
コメント

ベネズエラ  食料配給制度の歪み 迫るデフォルトの危機

2016-07-26 22:25:11 | ラテンアメリカ

(1日限りの国境開放で、隣国コロンビアへの買い出しに殺到するベネズエラ市民 【7月11日 BBC https://www.youtube.com/watch?v=TUGx_6VUGkU&feature=youtu.be】)

大統領罷免の国民投票要求に対し、時間稼ぎする政権側
南米・ベネズエラでは反米左派のチャベス路線を継承するマドゥロ大統領のもとで深刻な経済危機が進行しており、食糧・日用品品がスーパーから消えるというモノ不足とインフレーションで市民生活は崩壊の危機に瀕していることはこれまでも再三取り上げてきました。

野党勢力などはマドゥロ大統領の罷免を求める国民投票の実施を求める署名を集めて、すでに5月2日に選挙管理委員会へ提出していますが、政権側は実施に応じない姿勢を続けています。

仮に、国民投票が実施されるにしても、来年1月10日までに行わなければ、罷免成立は副大統領への首のすげ替えだけに終わり、殆ど意味をもちません。政権側はこのタイムリミットを睨んで、時間稼ぎをしているとも言われています。

****<ベネズエラ>大統領罷免の国民投票巡り、与野党対立激化****
南米ベネズエラでマドゥロ大統領の罷免を求める国民投票の実施を巡り、与野党対立が激化している。原油価格の低迷で財政危機に陥る同国では、反米左派を旗印にしたマドゥロ政権の求心力が急速に低下。

国民投票が年内に実現すれば政権交代は確実な情勢だが、政府は手続きを遅らせており、デモが多発するなど国内も混乱している。
 
左派政権にとっては来年1月10日が命運を分ける日付だ。憲法の規定上、これより前に国民投票でマドゥロ大統領が罷免されれば大統領選が行われ、同日以後であれば罷免されても残りの任期2年は与党のイストゥリス副大統領が大統領を務める。
 
中道右派の野党連合は昨年12月の国会議員選で3分の2超の議席を獲得しており、年内に国民投票まで持ち込みたい考えだ。

大統領罷免の手続きの第1段階は、有権者の1%の署名(約20万筆)を1カ月以内に集めることで、ロイター通信などによると、野党連合は1週間足らずで185万筆を集め、5月2日に選挙管理委員会へ提出した。
 
これに対し、イストゥリス副大統領は「不正行為」などを理由に署名活動は無効だと主張し、国民投票を実施しないと早々と宣言した。

マドゥロ大統領は、隣国ブラジルで左派のルセフ大統領に対する弾劾裁判開廷が決まった翌日の13日に非常事態を宣言。「国内右派の要請を受けワシントンが手段を講じている」と、ベネズエラとブラジルで国家転覆計画が進んでいるとの陰謀論を国民に説いた。
 
このため、今月中旬以降、首都カラカスでは野党連合の呼びかけに応じた数千人規模のデモ隊が軍や警官隊と衝突し、催涙ガスなどで鎮圧される騒動が相次いでいる。野党指導者で前回大統領選でマドゥロ氏に惜敗したカプリレス氏は17日、「軍人たちに告ぐ。憲法に従うか、マドゥロに従うか。真実を選択する時が来た」と呼びかけた。
 
4月末に発表された世論調査では、約70%の国民が政権交代を望んだ。同国経済は原油輸出の利益に依存し、食料品や生活必需品を輸入に頼っている。

2014年以降の原油価格低迷により、外貨収入が減少し、物不足が顕著となっている。【5月24日 毎日】
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こうしたベネスエラの経済・政治の混乱については、市民の対応としてのSNSを使った物々交換といった話を含めて、6月18日ブログ“ベネズエラ 崩壊する市民生活 マドゥロ大統領は年内の罷免要求国民投票について「時間が足りない」”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160618でも取り上げました。

【「CLAP(食料配給制度)は野党支持者のためにあるのではない」】
その後も状況は悪化するばかりです。
政権側は社会主義政権らしく、慢性的な食料品不足対策として、小売店を介さず直接市民に食料を届けるという配給制度を始めています。

しかし、食料品が絶対的に不足している状況で、政権支持者にしか配給されないという露骨な差別が行われているようです。

****社会を分断し国を不安定化させるベネズエラの食料配給制度「CLAP****
<ベネズエラでは慢性的な食料品不足対策として、小売店を介さず直接市民に食料を届けるという配給制度が始まった。しかしさっそく「CLAP(Local Committees of Supply and Production)」という配給員たちの不正疑惑がもちあがっている。>

食料不足が深刻化するベネズエラでCLAPによる食料品配布が始まりはや2ヶ月弱。すでに問題は至るところで散見されます。

当初から政府支持者でなければCLAPから食料を得られないという噂がありましたが、政府高官が「CLAPは野党支持者のためにあるのではない」と発言している上に、実際に配達される食料が少なかったり、予定通りに配達されない場合もあり、貧しい人々の怒りや絶望感は高まるばかりです。
不満をもつ国民の抗議運動は、毎日のように全国で起きています。

今回は、この誰の得にもならない制度CLAPの根本的な問題について紹介します。

政府派は本当にCLAPが機能すると考えているのだろうか? 政府与党が食料を家に配達することが、しばらくの間国民を食べさせていく方法として、本気で妥当だと考えているのだろうか?
これが社会の対立を収拾する方法だと、本心で考えているのだろうか?

CLAP、ベネズエラに最近できたこの残念なアクロニム*をもつ高リスク低IQの社会改革の試みについて考えるとき、こうした問いが頭の中をぐるぐる巡りつづける。
(訳注* CLAPは英語で「(手などを)叩く、拍手する」という意味のほかに「淋病」の俗語的な意味もある。)

CLAPとは、価格統制された食料品の小売システム崩壊を受け、人々に店に食べ物を買いに行かせるのではなく、家庭に食べ物を届けるために与党が組織した地区委員会である。要するに社会主義向けのUberといった感じか。

心配なのは、政府のこのやり方では、事実上の社会の安定のすべてがこの「性病みたいな」政策にかかっていることだ。

マクロ経済の大混乱という背景をもたず、賢明でよく管理された公共機関主導で、準備期間が十分にあるようなベストの状況においてですら、「食料の入手手段」ほどに基本的な制度を抜本的に改革すれば、物流や管理の大問題となるはずだ。

私のように経営の経験がまともにない者の目にも、食料品の買い物を廃止する(CLAPがカラカス中心街の一帯でやろうとしているのはまさにこういうことだ)という無謀な計画が大惨事をもたらすことは、はっきりと予想がつく。(中略)

この重大な難題を引き受ける運営組織が、プロイセン並みの能率を誇るはずがないのは言うまでもない。現政府におけるキューバ支持の強硬派がCLAPの組織に浸透しており、彼らの明らかにパルチザン的なバイアスのために、現場ではある種のジンバブエ的戦略を取り入れやすい状況ができている。つまり、社会統制の武器として、堂々と、あからさまに飢えが利用されるようになるということだ。

ただし、ジンバブエでの差別はより地理的環境に基づいたもので、故意に飢えにさらされていたのは与党に反する地域全体だった。ベネズエラで起きているのはこれとは異なる。入手可能な食料の量からして全員に食料を供給することは計算上不可能なため、政治的信条によって地域内の特定の家庭が選択的に飢えにさらされる。

選択的に一部の近隣住民を飢えさせ、同じ地区内の他の住民に食料を供給するようなことをして、いったいどのように社会の対立を制限しようというのか? この制度により、人々が表に出て抗議するようになることは明々白々ではないのか? 住民の半が絶望し、瀬戸際に立たされて、失うものは何もないような状況で、どうすれば地域が安定すると思うのか?

私には、この政府のロジックが本当に理解できない。政府派が国民のニーズを全くわかっていないというのは、長年見て慣れているので理解できる。

だが、この政策が自分たちの利益にならないということを政府自身がこれほど破壊的なまでに理解できていないという点は、本当に理解に苦しむ。

このような政策を続ければ、現在目にしている社会の対立はひたすら悪化するばかりだ。大規模な社会の対立を招けば、現政府がこのまま統治を継続することは明らかに難しくなる。政府は自分たちにとって不利になることをしているのだ。(後略)【7月25日 野田 香奈子氏Newsweek】
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石油収入に頼った輸入依存体質からもたらされた供給不足・インフレに対し、本来は国内生産・流通が拡大するように市場経済の環境を整備する必要がありますが、チャベス路線の現政権には価格統制や配給制といった事態を悪化させる方向の対策しかないようです。

価格統制や配給制といった人為的に経済をコントロールしようとする方策は有効でないばかりでなく、必然的に腐敗や差別を伴います。

現地在住の方のブログによれば、国民の不満を和らげるため、これまで国境を閉鎖している隣国コロンビアへの“買い出し”を臨時的に12時間だけ認めるといった措置もとられたようです。

****ベネズエラ隣国国境開放コロンビアへ買い出し殺到****
ベネズエラは何もありません。食料不足が深刻化しています。

マドゥロ大統領は、1年近く閉鎖してきたコロンビアとの国境を10日に、12時間に限って開放し生活必需品を求めて、ベネズエラ市民35.000人がコロンビアへ殺到しました。

ベネズエラの人びとはシモンボリバル橋(ベネズエラとコロンビアの国境)を渡るのに何時間も待っていました。ベネズエラとコロンビアの国境は1年近く閉ざされていました。

国境は、犯罪と密輸を防ぐため、ベネズエラのマドゥロ大統領が昨年8月に封鎖を命じたのでした。同じくマドゥロ大統領の命により、10日に時間を限って通行が許可されました。

ベネズエラ政府は、食料品や医薬品の不足には触れたがりませんが、コロンビア政府は今回の措置は人道援助だと考えています。

市民
「ベネズエラで入手できないものを買いに来ました。日に日に物が少なくなってきています」
「ここには、小麦粉も油もシャンプーやトイレットペーパーもあります」
「ベネズエラでは、コーヒーも砂糖もありません。」
「薬が手に入りません。ミルクもありません」(子を抱く男性)

コロンビアのククタの町のスーパーマーケットに走る人々の波は途絶えませんでした。そして、袋にいっぱいの買い物と隣国コロンビアへの感謝の気持ちを表し帰路につきました。

ベネズエラとコロンビアは、次回の国境開放について協議を進めています。
しかし両国の大統領、国防相、などが協議をしていますが、今のところ通行が許されているのは児童と生徒のみになります。【7月12日 「あほうどりのひとりごと」http://www.あほうどりのひとりごと.com/article/439972091.html
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大規模暴動、クーデターの可能性は?】
どうようもないところまできているベネズエラの現状ですが、政権側は先述のように延命策をとっており、今後不測の事態でも起きない限り、国民が求める罷免の国民投票に早期に応じることはないようにも思えます。

考えられる不測の事態としては、国民の暴動、軍部のクーデター、あるいはデフォルト(債務不履行)などが考えられます。

現在でも略奪行為などは頻発しているようですが、今後市民生活が更に困窮すれば、大規模な暴動が起きることもあり得ます。

ただ、6月18日ブログでも触れたように、政権維持装置としてのコレクティボスと呼ばれる武装した過激チャベス支持者による民兵組織があるようですから、そうした暴動は悲惨な結果となることも考えられます。

そうした混乱が顕著になったとき、軍部がどう動くか・・・というのがクーデターの話にもなります。
野党側からは軍部に対し、市民側に立って行動するようにとの要請もありますが・・・・。

****非常事態宣言下のベネズエラ、野党指導者が軍に選択迫る****
マドゥロ大統領は13日に60日間の非常事態を宣言。軍と警察に、国内の混乱に対応するため、より大きな権限を付与した。

(野党指導者のミランダ州知事)カプリレス氏は、非常事態宣言によって大統領が憲法で許されていない権力を得ていると批判。非常事態宣言を無視して街中で抗議するよう、国民に促した。

同氏は記者団に対し、「我々ベネズエラ人は宣言を受け入れない。マドゥロが憲法を超えた存在になろうとしている」とし、「非常事態を敷くためには、彼は戦車や戦闘機を展開する準備をすべきだろう」と語った。

その上で「軍に告げる。真実の時は迫っている。憲法に従うか、マドゥロに付くかを決める時だ」と述べた。

カプリレス氏は、野党は軍にクーデターを起こすよう求めているのではなく、むしろリコールを問う国民投票という、合法的で憲法に沿った方法でマドゥロ大統領の退陣を求めているとした。(後略)【5月18日 BBC】
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ただ、これも6月18日ブログでも触れたように、“軍は大半がチャベス氏に忠実な人物で占められ、マドゥロ大統領の生き残りにとってカギとなる存在だ。ただ、ベネズエラの経済危機とマドゥロ大統領の冗長な演説により、側近の間の支持が失われつつあるとの見方もある。チャベス氏とは異なり、マドゥロ大統領は軍出身ではないが、軍の行進に姿を見せることは多く、一部閣僚にも軍当局者を起用した。”【5月19日 ロイター】ということで、仮に軍事クーデターが起きたとしても、チャベス路線が変更されるとは限らないようです。

デフォルトの可能性
デフォルトの可能性はありそうです。ベネズエラ経済の外部環境は悪化し、財政状況は逼迫しています。

これまでベネズエラに融資してきた中国も、デフォルトの危険性が大きくなってきたことに伴い、対応を厳しくしています。

****中国からの融資返済に窮するベネズエラ****
本日の『週刊経済指標』に書いたことであるが、中国が2007年ベネズエラに対して行った500億ドルの融資の返済は原油で行うことになっていた。

当時の原油価格100ドル/バレルで換算すれば、毎年ベネズエラは中国に23万バレル返済分として輸出すれば良かった。ところが、原油価格が下落したために、バークレーズ銀行によれば、今では日量80万バレル供給しなければならないという

。2014年の同国の原油生産量日量237万バレルのうち、63万バレルが中国向けであったが、その45%は返済分で、現金収入は無いという。

ベネズエラでは原油価格下落によりモノ不足が深刻化しており、歳入の減収を補うために金塊をスイスに輸送して現金化しているが、それでも2017年には100億ドルの返済が控えている。

ベネズエラは中国に対して融資契約の見直しを要請しており、その内容は「原油価格が1バレル=50ドルを下回る限り、1年間にわたり借入金の元本返済を猶予し、利子のみの支払いを行う」というものである。これによりPDVSAはキャッシュフローが30億ドル以上増加するため、デフォルトは回避される。
 
だが、はたして中国政府がこの交渉に応じるかどうかは不明である。中国では資金流出が続き、人民元安を防衛するために中国人民銀行は人民元の買い支えを行っている。そのため外貨準備が急速に減っており、以前の潤沢な資金を持った中国とは状況が異なる。(後略)【7月5日 近藤 雅世氏 「みんなのコモディティ」http://column.cx.minkabu.jp/19925
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デフォルトについては、2017年の100億ドルの返済が焦点になりそうです。

中国との関係については、5月16日にはペレス経済担当副大統領が、最大の債権者である中国との間で、融資条件を有利な形に見直す交渉で合意に達したと発表してはいますが。【5月17日 ロイターより】
中国外務省報道官は「ベネズエラが現下の国内状況に適切に対処し、国の安定と発展を守ることを希望する」と述べるにとどめ、ベネズエラの状況について具体的なコメントはしていません。【5月16日 ロイターより】

****シティバンク、ベネズエラ政府の口座閉鎖を通告=マドゥロ大統領****
ベネズエラのマドゥロ大統領は11日、シティバンクNA<C.UL>が1カ月以内に政府の外貨口座閉鎖を計画していると明らかにし、同社を批判した。

演説で「シティバンクは、警告もなく30日以内に中央銀行とバンク・オブ・ベネズエラの口座を閉鎖すると通告してきた」と発言。その上で「金融封鎖をしようとしても、誰もわれわれを止めることはできない」と反発した。

バンク・オブ・ベネズエラは国内最大の国有リテール銀行。
シティバンクのコメントは得られていない。

ベネズエラ経済は危機的状況にあり、多くの外国企業が撤退や事業縮小に踏み切っている。
厳しい為替規制が導入された2003年以降、政府は外貨取引をシティバンクに依存している。【7月17日 ロイター】
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対外的破産宣告であるデフォルトしても、国内的には政権崩壊に直結する訳でもないでしょうが、経済危機のステージが更に高まることで、不測の事態の起こる危険性も増します。
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中国  「愛国不買運動」への批判 習近平政権の言論弾圧と「無謬性」 洪水被災地市長の「日本式謝罪」

2016-07-25 22:08:09 | 中国

(23日、中国河北省では今月18日から21日にかけて続いた豪雨により洪水や土砂崩れが発生している。被害が集中したケイ台市の董暁宇市長は、市民の生命や財産を守れなかったとして謝罪し、応急措置の能力が足りなかった関係幹部を停職処分にしたと発表した。【7月24日 Record China】
日本では見慣れた謝罪の光景ですが、過ちを犯すことははないという「党・指導者の無謬性」にこだわる中国にあっては異例のこととか。)

【「愛国不買運動」に批判的なネット世論やメディア
南シナ海を巡る仲裁裁判所の判決を受けて、中国国内ではケンタッキーフライドチキンなどで「日米韓比の製品ボイコット」を訴える現象が起きていることが報じられていましたが、現在・今後の状況はどうなのでしょうか?

よくわかりませんが、当初からこうした「愛国不買運動」に対してはネット上では批判的な声が多くあがっていました。

****日米韓比の製品ボイコット!」中国各地で運動も、ネットでは批判****
・・・・こうした運動は中国版ツイッター・微博(ウェイボー)でも大きく取り上げられているが、多くのネットユーザーは批判的な見方をしているようだ。

財経網の微博アカウントが伝えた記事には1万件余りのコメントが寄せられており、「いいね」が多いコメントは
「ボイコットすべきは日米韓の製品ではなく愚か者」
「ケンタッキーがなくなったらどこで用を足せばいいんだ?(中国では店舗が多い)」
「明らかにある組織の差し金。黒幕をつかまえて裁け。ちょっとでも常識がある人なら、どこかの国の製品をボイコットするなんていうことが愚かな行為だとわかっているだろう」などとなっている。

このほか、
「最近、愛国精神病が流行しているようだ」
「この程度とはね。大国としての今後が思いやられる」
「愛国主義の皮を被った知能レベルの低いやつらだ」
「中で働いているのはみんな中国人なのにね」「騒ぐ前に自分たちのスマホをまず破壊しなさい」といった批判コメントや、
「メディアはなぜ裏で糸を引いている者について報じない?」
「中国共産主義青年団はこの責任を取れるのか?」といったコメントも出るなど、批判が多数を占めている。なお、官製メディアも自制を呼びかける記事を掲載している。【7月20日 Record china】
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こうした「愛国不買運動」の発起人の一人が、米アップル社のスマートフォン、iPhone 6を使用してネット上で呼び掛けを行っていたとして嘲笑の対象にもなりました。

****中国「KFCボイコット」発起人、iPhoneユーザーと暴露される****
・・・・(仏RFI)記事によると、ボイコット活動の発起人の一人とされるのが、中国社会科学院国家文化安全・イデオロギー建設研究センター副主任という肩書を持つ朱継東(ジュウ・ジードン)氏。

朱氏は、同センターの中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」公式アカウントの「中の人」とされているが、このほど「ケンタッキーボイコット」などを呼び掛ける書き込みがiPhone 6を使用して投稿されたものであることを、めざといネット民によって暴露された。

ネット上には「米国製スマホでケンタッキーボイコットを呼び掛ける。朱先生はどんな気分なんだ」などの声が上がっている。【7月20日 Record china】
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共産党機関紙・人民日報も「このような『愛国行為』は、逆に社会や国家に害をもたらす」とする評論を掲載して、不買運動の拡大を警戒しています。

ただ、KFCやiPhoneへ抗議する群集のなかには多くの私服警察官もいるとのことで、当局としてはっきりと抗議行動を抑制することも行っていないようにも見えます。火の粉が自分たちに降りかかるのが怖いのでしょうが。一定に“ガス抜き”に役立つ程度には容認するという姿勢でしょうか。

****3千人がスマホ専売店囲み「米製品排斥」・・・・中国****
香港フェニックステレビのニュースサイトによると、江蘇省徐州市で19日夜、約3000人が米アップルのスマートフォン「iPhone」などの専売店を取り囲み、「米国製品排斥」などを叫ぶ騒ぎが起きた。
 
南シナ海の仲裁裁判判決を巡り、中国政府が米国や日本に批判の矛先を向ける中、中国国内で数千人規模の抗議活動が確認されたのは初めて。
 
騒ぎは、同店に近いケンタッキー・フライド・チキン店前で始まり、首謀者が「アップルの携帯電話を追い出せ」と拡声機で叫んだ後、数十人が店内に押し入った。破壊行為はなかった。群衆には100人以上の私服警察官が交じっていたといい、当局の監視下で行われたとみられる。【7月21日 読売】
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大手ニュースポータルサイト「捜狐」などでは、もっと踏み込んだ抗議運動批判の論調も見られます。

****日本製品ボイコットは愚かなこと・・・「道理」を忘れるな=中国報道****
中国では今なお日本製品のボイコットを呼びかける声が根強く存在する。だが、中国メディアの捜狐はこのほど、日本製品ボイコットは中国人にとって良いことではないと指摘し、その理由について説明する記事を掲載した。

記事は、古代中国の思想家である孟子の思想が記された滕文公章句(とうぶんこうしょうく)という書には「通功易事(つうこうえきじ)」という言葉があると説明。

これは交換を通じて、交換者の双方が自らの状況を改善することができるという考えを含んでいると指摘し、「市場における交換は一方だけが勝者なのではなく、双方どちらも勝者である」と記事は強調した。

続けて、「多くの中国人はこの道理を忘れている」と指摘する一方、中国の一部の地域では「破壊した日系車を戦果として認識する風潮すら存在する」と批判したうえで、「中国で製造された日系車には中国メーカーの部品も数多く使われている」と指摘。従って「日系車を破壊することは、中国製品を破壊することでもある」と論じた。(後略)【7月21日 Searchina】
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****愛国無罪は誤り!愛国とは中国人にとって利益になる行為だ=中国報道****
オランダ・ハーグの仲裁裁判所が南シナ海問題で中国の領有権に関する主張を退けたことで、一部地域では米国製品の不買運動や抗議活動が発生した。そんななか、中国メディアの捜狐は「真の愛国心を持っているならば、米国製品をたくさん買うべき」と論じる記事を掲載した。

中国では「愛国」という名のもとならば、常軌を逸した行動でも許されるといった風潮がある。だが記事は「愛国」とは、中国の土地を愛することや中国政府を愛することではなく、「中国人民を愛すること」であると指摘。さらに、愛国主義に基づく行為は中国人に対して行われることであると同時に、「大多数の中国人にとって利益になる行為を指す」と定義した。

そして愛国は「盲目的な行動ではなく、知識が必要となる」と述べている。つまり日本製、米国製という理由だけで破壊や不買を行うことは、大局的な視野に立って見た場合は中国にとって弊害でしかないという意味だ。

それでは、なぜ米国製品を買うべきなのだろうか。
まず第一に、米中貿易は双方にとって利益であること、第二に、競争は企業の成長に必要であることだという。第三に、経済が一体化しており、米国企業の製品であっても、日本の技術を用いて中国で組み立てられていたりと、現在のグローバル社会では多くの国が相互に関わりあっているため、米国製品を購入することは中国企業の利益にもつながると論じた。

さらに記事は、中国で米国製品が売れれば、米国企業の対中投資も増えるとの見方を示した。中国は積極的に日本や米国からの投資を受け入れて発展してきた経緯があり、今後の発展のためにも海外からの企業投資は不可欠だ。愛国主義の名のもとで見られる中国国内における短絡的かつ誤った行為に対して、冷静になるよう警告する内容と言えるだろう。【7月25日 Searchina】
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言論の自由を封殺する習近平政権
こうした冷静な論調が展開されていることは心強いことですが、一方で、習近平政権は政府批判につながりやすい自由な言論の統制を進めており、上記「捜狐」も対象に含まれています。

****中国、複数のニュースサイトを閉鎖 「独立した報道」を問題視*****
中国当局は、独立した報道を行いデリケートな問題になり得るテーマに関する記事を発表したとして、複数のオンラインニュースサイトを閉鎖した。
 
25日付の国営・新京報によれば、大手ニュースポータルサイトの「新浪微博(Sina Weibo)」や「捜狐(Sohu)」、「網易(NetEase)」、「鳳凰(iFeng)」などが、自由な論調で知られる政治・社会関連のニュースサイトやソーシャル・ネットワーク上のアカウントを閉鎖した。

これに先立ち中国のインターネット規制当局は、こうしたサイトが「法律や規制を違反した活動を多数行っている」として厳しく非難していた。
 
新京報は、これらのサイトが「独自に収集し編集した大量のニュース報道をアップロードして公開」しており、「特に下劣な影響」を与えていると批判する、ある高官の談話を匿名で引用している。またサイトには罰金が科されているとしているが、詳細には触れていない。
 
中国では、民間のニュースサイトのジャーナリストらに取材が許可されているのはスポーツと娯楽行事のみで、政治や社会に関するよりデリケートなニュースについては、新華社(Xinhua)通信など国営メディアが発表した報道を使うことが義務付けられている。
 
しかし、ハイテク時代を反映して独自取材による報道が増え、ホットな話題が毎日変化する中、商業的な利益を追う一部サイトは、独自の取材チームや調査報道のためのチームをつくっている。【7月25日 AFP】
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不買運動への批判なども「法律や規制を違反した活動」に含まれるのかどうかは知りませんが、いずれにしても自由な議論が抑圧されることで、冷静さを欠いた抗議行動や、当局が後ろで糸を操るような活動の歯止めがなくなることが懸念されます。

【「党・指導者の無謬性」へのこだわり
日本政府を含めて、どこの政府もジャーナリズムから批判されることを嫌いますが、一方で、多くの民主的な国にあっては、そういう批判が民主主義にとって必要不可欠なものであるとの認識はあります。(多分・・・)

しかし、「党・指導者の無謬性」にこだわる中国共産党にあっては事情が異なります。

****裁定が出ても中国が一歩も引くわけにはいかない理由****
「無謬性」の虜となった習近平
・・・・問題は、中国はいかなる裁定が出されようとも、南シナ海問題で一歩も引かない姿勢を貫く意思を明確にしていたことである。

そこまで中国が決意した背景は何なのか。
それは「党・指導者の無謬性」へのこだわりであり、ひいては習近平主席を「常に正しい判断をする指導者」であることを確保するためであったと言っていいだろう。

「無謬性」にこだわり過ぎて政策が硬直化
(中略)中国では、現在に至るも「無謬性」の神話が生きている。毛沢東は死後、文化大革命の責任を問われたものの、1981年の歴史決議で「功績第一、誤り第二」の結論となった。鄧小平に関しては、1997年に死去して今年で19年になるが、依然として1989年の天安門事件の責任さえ正式に問われてはいない。

では習近平の場合はどうか。「中華民族の偉大な復興」を「中国の夢」であるとする習近平主席は、東南アジアの「小国」に蚕食された南シナ海、とりわけ南沙諸島を「取り戻す」ことが自らに課せられた歴史的使命であるとともに、東アジア地域秩序を形成する盟主としての中国の地位確立にとってもきわめて重要な事業であると位置づけた。

そのために、これまで台湾やチベットなど「分離独立」の気配のある地域に限って使っていた「核心的利益」という修辞を南シナ海にも援用し、「領土主権に関わる問題について一切譲歩しない」姿勢を明確にしてきた。

つまり習近平政権は、南シナ海の領有をめぐる紛議に関して「退路を断つ」政策を強行してきたのである。南シナ海での中国の政策が「正しいもの」だとする「無謬性」へのこだわりが政策を硬直化させ、状況の変化に対し柔軟な軌道修正をする余裕を失わせてしまったと言える。(後略)【7月25日 阿部純一氏  JB Press】
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人間は過ちを犯す存在であることは子供でわかる道理であり、どうして「党・指導者の無謬性」などという荒唐無稽な論理が出てくるのか不思議ですが、それが中国の現実であり、周辺国にとっては厄介の種でもあります。
【異例の「日本式謝罪」を行った洪水被災地市長】
そうした「過ちを認めない」中国にあって、珍しく「日本式謝罪」を行った地方政府が話題になっています。

豪雨による洪水被害で多くの犠牲者を出した河北省ケイ台市の董暁宇(ドン・シャオユー)市長です。
「日本式謝罪」とは、会見の場で幹部が深々と頭を下げる例の謝罪です。

****中国河北省の洪水で市長が異例の“日本式謝罪”国内で広がる反****
豪雨による洪水被害で25人が死亡、13人が行方不明となった河北省●台市(●は「刑の右がおおざと」)の董暁宇市長ら市幹部は23日夜、記者会見を開き、対応に不手際があったとして謝罪した。中国メディアが報じた。中国の現職の行政幹部が謝罪するのは極めて異例だ。
 
「人民の生命と財産の安全を守ることができず、深い自責の念とやましさを感じている」。董氏はこう謝罪した後、6人の市幹部とともに深く頭を下げた。
 
中国共産党による一党統治は、過ちを犯さない「無謬性」が前提だ。昨年、多数の犠牲者を出した天津の爆発事故や広東省深●(=土へんに川)市の土砂崩れでも後に担当者の責任が追及されたものの、現職の市幹部が謝罪する場面はなかった。
 
中国のネット上では、董氏の謝罪への反響が広がっている。「役人の大きな進歩だ」と評価する意見のほか、「謝罪だけでなく行動も『日本式』にしてほしい」と注文をつける声も相次いだ。
 
大きな被害が出た同市大賢村の住民の多くは、ダムの水の放流が洪水を招いたにもかかわらず事前に何の連絡もしなかった「人災」と認識している。市側は洪水の原因は人為的なものではないと否定したが、不満の高まりを受けて謝罪に追い込まれた格好だ。
 
董氏は会見で、市側の落ち度として豪雨に対する予測が甘かったことや災害対応が遅れたこと、被害統計も不正確だったことなどを挙げた。市側は担当者の責任を追及する姿勢も示しており、董氏自身もその対象となる可能性がある。【7月24日 産経】
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権力の腐敗を進める言論弾圧
住民の怒りが噴出しているのは、単に洪水被害で多くが犠牲になったということだけでなく、深夜住民に知らせることなく川の上流にあるダムの放流を決定したことが洪水被害の原因だったという声があるためです。

董暁宇市長が住民に謝罪したことは大きな進歩です。ただ、ダム放流については上記記事では定かではありませんが、認めていないように思われます。

****中国河北省で豪雨、当局「川氾濫」と説明 105人死亡、104人不明 「天災ではなく人災だ」 子供含む遺体写真出回る****
中国北部の河北省で豪雨による洪水があり、同省民政庁の発表では23日までに105人が死亡、104人が行方不明になったほか、約750万人が家を流されるなどの被害が出た。このうち南部の●台(けいたい ●は「刑の右がおおざと」)市では20日深夜、大賢村など複数の村で洪水により25人が死亡、13人が不明となった。
 
地元政府は近くの河川の決壊が原因だと発表したが、村民たちは、川の上流にあるダムの放流を当局が決定したにもかかわらず、通知が不十分だったため避難できなかったと主張している。

インターネット上には、「これは天災ではなく人災だ」といった書き込みが殺到し、子供を含む多数の遺体の写真が出回っている。

地元政府は、村民らが北京に陳情に行かないように多くの警察官を動員し、周辺の高速道路も一時閉鎖された。【7月23日 産経ニュース】
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そうした住民の怒りのなかにあって、“住民の避難所となった病院には、「政府の救援に感謝します」と書かれた赤い横断幕が掲げられていた。”【7月23日 産経ニュ―ス】とも。

陳情防止のための道路封鎖にしても、政府救援を称賛する横断幕にしても、おぞましい権力の実態です。

言論統制を強化する習近平国家主席は、自由な議論が広がり、党・政府の失政への批判が高まることで、自分が「日本式謝罪」に追い込まれる、あるいは中南海の権力闘争で足をすくわれることを警戒しているのでしょうが、それは党・権力を内側から腐らせ、やがては巨木の倒壊につながることにもなります。

倒れるのは勝手ですが、それまでの間に国内・国外の蒙る迷惑・被害が甚大です。
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台湾  突出した日本への好感度 蔡英文総統「われわれは自己決定ができる国家だ」

2016-07-24 22:35:54 | 東アジア

(台湾は、中国の「九段線」とほぼ同様の「十一段線」に基づき、南シナ海全域の島嶼の領有権を主張、スプラトリー(中国名・南沙)諸島で、自然の島として最大のイトゥアバ(太平島)を実効支配しています。
そうしたことで、南シナ海をめぐる仲裁裁判所の裁定では、アメリカ支持と「主権」の擁護を求める世論との間で難しい対応を迫られています。写真は、太平島周辺海域に派遣される軍艦に乗船した蔡英文総統(中央)=2016年7月13日、台湾・総統府提供【7月23日 毎日】)

長きにわたり日本に得も言われぬ憧れを抱いている
戦前の日本統治にもかかわらずとうべきか、あるいは、それ故にと言うべきか、台湾が親日的だというのは以前からの話ではありますが、最近その傾向が特に強まっているようです。

****台湾 最も好きな国は日本56% 過去最高****
日本を訪れる旅行者が急増している台湾で、日本の印象についての世論調査が行われ、最も好きな国は日本と答えた人が56%と、調査開始以来最高となりました。

調査は日本の台湾との窓口機関、交流協会が民間の調査会社に委託して2008年以降行っていて、今回が5回目です。今回の調査は、ことし1月から2月にかけて行われ、およそ1000人から回答を得ました。

それによりますと、最も好きな国や地域は、どこかとの質問に対して、日本と答えた人が56%に上り、3年前の前回の調査より13ポイント増えて、調査開始以来最高となりました。

これは、2番目に多かった中国の6%、3番目のアメリカの5%を大きく上回っていて、20代と30代では60%以上の人が「日本が最も好き」と答えるなど、若い年齢層で日本への好感度が高くなっています。

また、「今後最も親しくすべき国や地域」でも39%の人が日本を挙げ、初めて中国を上回ってトップになりました。
台湾では、年間の日本への旅行者が去年、初めて300万人を超え、今回の調査でも、いちばん行きたい海外旅行先として日本が42%を占めてもっとも多くなり、観光などで日本を訪れる人が急増していることを裏付ける結果となりました。【7月24日 NHK】
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日本としては喜ばしいことではありますが、最も好きな国が日本という答えが中国・アメリカの5~6%に対し56%という突出ぶりは尋常ならざるものもあります。

これだけ好意的な評価を受けて、日本がその期待に応えられるのか・・・と考えると、複雑な感もあります。

もちろん、中国と政治的に対峙する状況にある現在の日本にとって台湾は重要なパートナーですが、日本にとっても中国との関係は政治的・経済的・軍事的に極めて重要であり、将来、日本・台湾・中国をとりまく環境が変化したとき、台湾との関係で難しい選択を迫られる可能性がない訳でもありません。

なお、上記調査によれば、「台湾に最も影響を与えている国・地域」としては、日本(11%)は中国(50%)、米国(31%)に次ぐ3位となっており、「好きな国」と「影響を与えている国」は別物という結果になっています。

台湾の日本への好意的評価は上記のような国家レベルの話にとどまらず、「台湾の多くの男性が日本女性に強いあこがれを抱いている」といったレベルにも及んでいます。

****台湾男子はどうして、日本の女の子に強い憧れを抱くのか? =台湾メディア****
・・・・台湾メディア・東森新聞雲は10日、「台湾男子は日本人の嫁さんをもらうことを夢見ている その理由は4つだ」とする記事を掲載した。

記事は、台湾人が長きにわたり日本に得も言われぬ憧れを抱いているとし、その対象が美しい景色、文化、スター、グルメ、そして国民のモラルにまで及ぶと説明。そして、多くの男性は日本の女性を妻として迎え入れたいとの憧れを抱いていると伝えた。

そのうえで、台湾の大手掲示板サイト・PTTにおいて、あるネットユーザーが「どうして台湾人はこれほど日本の女性を崇拝するのか」との質問をし、その理由について考察した結果「清潔好き」、「礼儀正しい」、「化粧やファッションを心得ている」、「気配りができる」の4点を示したことを紹介した。

そして、この質問が熱の入った議論を呼び、他のユーザーから「それが事実だ」、「台湾女性が日本女性に勝てる部分が見つからない」、「学生の時、日本企業でアルバイトしていたけど、日本の女性についての描写はみんな真実だよ」、「日本の女性と付き合うと、台湾の女性になんの興味も抱かなくなる」といった意見が寄せられたと伝えている。

台湾の女性が見たら怒りだしそうなコメントが並んでいる。日本の女性には日本の女性ならではの素晴らしい点があるのはもちろんだが、台湾の女性にも日本の女性にはないような魅力があるのだ。

どちらが好みかというのは、個人の問題なのである。ただ、この記事からは、台湾の一部の人がなおも日本に対してある種の憧れを抱いているということは読み取れそうだ。【7月13日 Searchina】
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国家的な影響という点ではさほど高くないところにありながら、日本が好意的に評価されるのは、“美しい景色、文化、スター、グルメ、そして国民のモラルへの憧れ”“日本の女性を妻として迎え入れたい”といった、日本のソフトパワーの故でしょう。

そうした日本への熱い視線があるためか、台湾にあっては日本が引き合いに出されることも多いようです。

****台風の台湾直撃、日本は3日前から予想していたのになぜ台湾ではできなかったのか! =台湾メディア****
例年より遅く発生した今年の「台風1号」が、いきなり台湾に深刻な爪痕を残していった。台湾では、台風の被害状況についての情報が逐次流れると同時に予報に対する疑問の声も出た。台湾メディア・東森新聞雲は9日、「日本では3日前に台湾を直撃すると予測されていたのに、どうして台湾では予測できなかったのか」との声に対する、気象会社の専門家のコメントを紹介する記事を掲載した。(後略)【7月11日 Searchina】
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台風被害が大きい鹿児島に暮らすため、個人的には台風情報には人並み以上の関心を持っていますが、日本の気象庁予測も大きくはずれることもあります。台湾の予測体制にもいろいろ事情はあったのでしょう。改善すべきところもあったのかも。

また、“好意を寄せる”日本が台湾をどのように見ているのかに敏感にもなっています。

****ショック!?日本人は台湾人をこんなふうに見ていた!―台湾メディア****
2016年7月20日、台湾・蘋果日報によると、日本人から台湾人観光客のマナー違反に対して「中国人観光客と変わらない」という指摘が出ている。

記事は、「台湾人の中には中国人の台湾でのある種の行動を嫌う人もいるが、日本を旅行した時、自分もこんな人になっているということを想像したことがあるだろうか?」と問いかけ、あるSNSの投稿を紹介している。

日本に長期滞在している作家の「老侯 台北會社員」氏は、このほどフェイスブック上で「日本人は実は台湾人のマナーは悪く、中国人とそれほど変わらないと思っている」と書き込んだ。

日本のポータルサイトを利用していたところ、偶然「台湾人、マナー、悪い」という検索予測がたくさん出てきた。信じられずに詳しく調べてみると、確かに日本人は台湾人のげっぷや交通ルール無視、不衛生な習慣、街中での子どものおむつ交換、屋台でお金を触った手で食べ物を触る、などを嫌っていることがわかったという。

当初は、台湾人と中国人を間違えて誤解しているのではないかと考えたが、ある日本のネットユーザーが「台湾も中国とそんなに変わらない」とコメントしているのを見た。

では、なぜ台湾人観光客は日本で比較的受け入れられているのか。ある日本人は、「災害の時に熱心に募金してくれたこと」のほかに、中国や韓国への対抗を理由に挙げたという。

同氏はこれについて、「ここ数日、台湾のネットユーザーが自作した『中国人観光客がいなくなって本当によかった』という映像が話題だが、実を言うと恥ずかしくて見られない。われわれは中国を嫌い、日本はわれわれを嫌う。差別の連鎖で一体誰が得をするのか」としている。

こうした記事に、台湾のネットユーザーからは、「以前はそうは思わなかったけど、海外旅行に行ってから台湾人と中国人は本当にそんなに変わらないと思うようになった」「全然違うだろ。どこにでもマナーの悪いやつはいる。問題は割合。それから、そういう人間に対する社会の姿勢だ」「家では自分は素晴らしいと言い、外では他人に嫌われる。問題が起きたら『どこどこの国だって』と比べたり、責任を逃れようとしたり。こういう人は多い」など、賛否両論が寄せられている。【7月23日 Record China】
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この“論争”には、在台日本人からの「台湾人のマナーが悪いと考えている日本人は少数。もし多くの日本人が台湾を嫌っていれば、毎年これほど多くの日本人観光客が台湾を訪れたりしない」との反論もあるようです。

最近、中国との関係において、「中国人」ではなく「台湾人」としてのアイデンティティーを強めている台湾にとっては、“憧れの”日本から「中国人と同じ」と見なされることは“ショック”なのかも。

蔡英文総統 米メディアに「一つの中国」に対する否定的な発言
その「台湾人」としてのアイデンティティーの高まりを背景として政権を獲得した蔡英文総統は、中国側が求める「一つの中国」「92年コンセンサス」を認めておらず、中国との間で緊張が高まっていることは再三取り上げてきたところです。

蔡英文総統が外遊中の7月1日には、台湾南部・高雄の軍港に停泊していた海軍ミサイル艇のミサイルが、担当の士官が水を飲みに席を外した2分弱の間に突然中国本土方向に発射され、約70キロ北の澎湖島沖合にいた台湾漁船に命中した「ミス」(?)が起きています。当時、習近平国家主席が北京の人民大会堂で「中国共産党創立95周年祝賀大会」を記念する重要演説をやっていたとのことで、まかり間違えば・・・という出来事でもありました。

7月2日ブログ「台湾 中国本土方向へミサイルを誤射」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160702
7月20日ブログ「台湾 「一つの中国」をめぐって中国側が圧力を強める中での、台湾側の“屈折した感情”」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160720など

冒頭調査で昨年に比べて数字が大きく動いているのも、「台湾人」としてのアイデンティティの高まり、中国との緊張を孕んだ関係にあって、「中国」への好意的評価が減少し、その分日本への評価が高まったことが背景にあるのでは・・・と推察されます。

現状維持を目指す立場から、「一つの中国」「92年コンセンサス」ついては敢えて曖昧にしてきた蔡英文総統ですが、「受入拒否」の報告で、一歩(半歩?)踏み込んだ発言も報じられています。

****台湾の蔡英文総統が「一つの中国」92年合意受け入れ“拒否” 米紙の取材に 中国は不快感示す****
台湾の蔡英文総統は22日までに、米紙ワシントン・ポストの取材に応じ、中国側が受け入れを求めている「一つの中国」原則に基づく「1992年コンセンサス(合意)」について、「(中国が)期限を設けて、台湾政府に民意に反して条件を受け入れるよう求めても、可能性は大きくない」と述べた。台湾メディアは、蔡氏が92年合意の受け入れを拒否したと報じた。
 
蔡氏が5月の就任後、メディアの単独取材に応じるのは初めて。総統府が22日、やり取りを公表した。就任演説では「一つの中国」原則や、その原則を中台双方が確認したとされる92年合意への言及を避けていた。
 
蔡氏はまた、台湾には「完全な政府と民主的な制度、軍隊がある。われわれは自己決定ができる国家だ」と主張。国際社会で広く承認されていないことに「不公平だ」と不満を漏らした。

中国は台湾を中国の一部とみなし、国家と認めていない。中国は、蔡氏が主席を務める民主進歩党についても「台湾独立派」だと批判しており、蔡氏の発言に反発を強めそうだ。
 
一方、中国国務院(政府)台湾事務弁公室の馬暁光報道官は22日、蔡氏の発言を受け「92年合意という政治的基盤を堅持して初めて両岸関係の安定的な発展を確保できる」と不快感を示し、「一つの中国」原則の確認がなければ中台交流は継続できないとの立場を強調した。【7月22日 産経】
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****台湾は『国』」=蔡英文総統が明言―米メディア****
2016年7月21日、米紙ワシントンポストは総統就任後初となる台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)氏に対する単独インタビューの内容を発表し、「台湾は一つの『国家』だ」とするコメントを伝えた。22日付で中国メディアの観察者網が報じた。

インタビューでは中国が「92コンセンサス」(中国と台湾双方が「一つの中国」を認める)の受け入れを迫っていることについて、蔡総統は「(中国が)台湾政府に民意に反して相手の設けた期限を受け入れるよう要求しても、その可能性は大きくはない」と回答し、中国の習近平(シー・ジンピン)政権に対して、台湾の民主的な意志を尊重し柔軟な措置を取ることを期待する、とした。

台湾と米国との関係について聞かれた際には、「われわれ台湾に住む人について言うならば、われわれは(台湾を)一つの『国家』であり、一つの民主的な『国家』だと思っている」とコメントした。

また若い人々の間で「台湾アイデンティティー」が強まっていることについては「台湾では世代と種族が異なれば、中国観も異なっている。ただ彼らの間で唯一合意されていることは『民主』だ」と語った。【7月23日 Record China】
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中国への直接的な発言の形ではなく、米紙ワシントンポストのインタビューという間接的な形で上記のようなコメントをしたのは、刺激を避けながら中国側の反応を確かめる意味合いがあってのことでしょう。

発言の細かいニュアンスはわかりませんが、明確に「一つの中国」92年合意受け入れを“拒否”した発言でもないように見えます。

ただ、中国側の要求は、台湾住民の民意に反した“恫喝”だとも言っているように見えますので、「台湾は『国』」という主張を今後も前面に出せば、「不快感」ではすまず、中国との関係悪化は避けられないでしょう。

そうなれば、台湾の日本への政治的・経済的期待は更に高まることも予想されます。

中国の今後の対応は、国内権力闘争絡み
中国について見ると、台湾でも、香港でも、また、南シナ海でも、習近平政権の中国の主張を前面に押し出した強硬な施策が、「結局、中国は周囲の国を属国としてしか見ていない」といった批判のように、関係国との緊張を高める結果ともなり、思惑どおりには進んでいません。

そうした状況にあって、更に力で押し通そうとするのか、方針の修正が図られるのか・・・そのあたりは中南海における権力闘争なども絡んでくる話でわかりません。

習近平主席に批判的な勢力が「外交失敗」を理由に批判を強めることもあり得ます。
逆に言えば、習近平主席としてはそうした批判を振り切るためには、誤りを認めず、今まで以上に力で押し通すしかない・・・とも言えます。
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ドイツで再びテロ  問題は難民の存在ではなく、彼らをテロリストに追いやる人々の“憎悪”にあるのでは

2016-07-23 20:21:54 | 欧州情勢

(イタリア海軍が公開した、地中海で2015年4月18日に移民数百人を乗せたまま沈没した漁船の残骸の写真(2016年6月29日提供)。【7月22日 AFP】)

今後、批判が強まることが予想されるメルケル首相
フランスやベルギーで昨年以降テロの惨劇が相次いだなかで、これまで大きなテロを未然に防いできたドイツでも、今月18日に南部ビュルツブルク近くでアフガニスタン出身とみられる容疑者(17)が走行中の列車の中でおのを振り回して乗客に襲いかかり5人が重軽傷を負った事件に引き続き、22日には南部の最大都市ミュンヘンのショッピングモール近くのマクドナルドでイラン系の男性(18)が、店内でハンバーガーなどを食べていた子供にも容赦なく発砲するなど銃を乱射し、9人が死亡し、16人が負傷する事件が発生しています。

両事件を受けて、これまで難民受入に寛容な政策をとってきたメルケル政権への批判が強まることが予想されています。

****難民寛容メルケル政権に試練=社会分断の危機―ドイツ****
ドイツ南部ミュンヘンで起きた銃乱射事件の容疑者がイラン系の男だったことで、独国内で移民や難民に対する風当たりが強まるとの見方が出ている。

昨年以降、中東などから難民らが殺到しており、一部国民の反移民・難民感情が悪化する懸念も強い。難民寛容政策を取ってきたメルケル政権は、「開かれた国」の是非をめぐり社会が分断する危機に直面、試練を迎えている。
 
欧州最大の難民受け入れ国ドイツには昨年、中東などの難民ら100万人以上が流入した。昨年11月のパリ同時テロを受け、難民に紛れてテロリストが潜入するとの懸念が高まり、メルケル政権が苦慮した経緯がある。
 
当局によれば、建物の破壊など難民施設が被害を受けるケースは昨年900件を超え、前年の5倍以上に達した。反難民政策を掲げる新興政党「ドイツのための選択肢」は10%前後の支持率を確保しており、難民に対する国民の不満の受け皿として基盤を固めた感がある。
 
今月18日に南部ビュルツブルク近くで起きた列車乗客襲撃事件は、アフガニスタン出身とみられる容疑者(17)が引き起こした。わずか数日でイラン系の男(18)による凶行が続いたことは国民心理への悪影響を増幅する可能性が大きい。
 
難民や移民の中でも若年層が過激思想や暴力に向かう傾向があることはこれまでも指摘されてきた。報道によれば、昨年9月以降、難民用施設やモスク(イスラム礼拝所)で過激派メンバーが難民らに接触を試みたケースが約320件あったが、当局は特に未成年者が勧誘になびきやすいとみて警戒していた。
 
一方、独政府は「難民や移民とテロは直接は結び付かない」と事あるごとに強調。難民らに対する反発の沈静化に躍起となってきたが、今回の事件で政府の主張に国民から疑問を突き付けられる事態も考えられる。【7月23日 時事】 
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今回事件が起きたミュンヘンがあるバイエルン州は、連立与党内にありながらもメルケル政権の難民寛容対応に批判的だった政権内最右翼のキリスト教社会同盟(CSU)の基盤でもあることから、連立与党内でメルケル首相への批判が強まることも予想されます。

****<独銃乱射>比較的裕福で高学歴、イラン系の犯行に衝撃****
ドイツ南部ミュンヘンのショッピングセンター近くで起きた銃乱射事件で、地元警察は23日、イラン系ドイツ人の男(18)による犯行との見方を示した。

経済的に豊かな人も多いイラン系による凶行は、独国内に衝撃を広げている。ミュンヘンのあるバイエルン州は政権内最右翼のキリスト教社会同盟(CSU)の基盤で、今後メルケル独首相に対し移民・難民への強い対応を求めることは必至だ。
 
地元警察によると、事件の動機や男の詳細な人物像は不明だが、ドイツとイランの二重国籍であることが判明している。第二次大戦後、多くのイラン人が独国内の大学で医学などを習得。1979年にイラン革命が起きると、多くの医師や学生が家族と共にドイツに移り住んだ。
 
独国内には約12万人のイラン系住民がいるとされる。トルコ系などに比べ、比較的裕福で高学歴な人が多いイラン系国民が起こした犯行は、独国内の移民政策のあり方に議論を起こすことは必至だ。
 
独南部ビュルツブルクで18日、アフガニスタン出身の少年(17)が刺傷事件を起こした際に、CSUのゼーホーファー党首は「国と州の治安機関は難民の監視を厳格化すべきだ」と言及。「あらゆる法的手段を導入すべきだ」とし、移民・難民への厳しい対応に慎重なメルケル政権に圧力をかけた。
 
バイエルン州は昨年秋の難民問題で、難民の約9割が入国経路として利用したドイツの「窓口」になった。元々カトリック系が強い地元では、イスラム教徒の流入に反発が広がった。難民への銃使用を容認する新興右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に、CSUの支持が流れるなど党内には不満がくすぶっている。
 
独国内で起きた銃乱射事件としては、近年にない大規模な犠牲者を出した事件に政府が対応を迫られるとみられる。だが、移民系を対象にした監視強化をメルケル氏が受け入れる見通しはない。来年秋の総選挙に向け、与党内の対立が際立つことは必至だ。【7月23日 毎日】
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難民らをテロリストに追いやっているのは、周囲の敵意・憎悪・冷たい視線ではないか
現実政治の流れとしては、国民世論においても、連立政権内においても、難民受け入れへの批判が強まるというのは避けられないところでしょうが、個人的にはそうした流れには納得しかねるものがあります。

確かに、難民を装い潜入するようなテロリストは存在するでしょう。
ただ、一方に戦乱で何万人も犠牲になり、何十万人、何百万人が家を追われるという世界がある以上、そうした世界を隔離して切り捨て、そこで何が起きようが自分たちとは関係がないことだということでない限り、豊かで安定した社会の側も何らかの影響を蒙るのは、いたしかたないところでもあります。

切り捨てて何が悪い・・・と言われれば、もはや人間としての価値観が違うとしか言い様がありません。

そうした最初からテロ目的で入り込む人間より、はるかに危険性が大きいのは、救いを求めてやってきた難民、あるいは、これまで社会の一員として暮らしていた外国系住民が、ある日社会に対して牙をむくような事件でしょう。

そこにはISなど過激派組織の影響力もあるかもしれませんが、彼らをテロリストの側においやった一番の原因は、彼らを“敵視”し、“厄介者”としてしか見ようとしうない社会の冷たい視線ではないでしょうか。

批判を恐れずに、また、昨今流行らない言い様であることを承知で言えば、テロを引き起こしているのは難民が存在することではなく、彼らを“厄介者”として排斥しようとする人々の存在、社会の冷たい視線だと考えています。

社会を不安定にしているのは、テロを起こす可能性を持つ難民が存在することではなく、彼らの存在が自分たちの社会を危うくしていると言い立てる人々の側にあるように考えています。

そういう意味では、今後とも下記のような取り組みが必要とされていると考えますが、今の社会の“空気”は違う方向を目指しているのでしょう。

****ドイツ警察、ネット上のヘイト投稿で初の一斉摘発****
ドイツの警察当局は13日、交流サイトのフェイスブック(Facebook)をはじめとするソーシャルメディア上で人種差別に基づいたヘイトスピーチ(憎悪表現)を投稿したユーザーの一斉摘発に乗り出した。
 
ドイツ連邦刑事庁(BKA)によると、「言葉による過激主義」と関連犯罪の取り締まりで、14州にまたがって60人の容疑者宅に強制捜査が入った。逮捕者は出ていないが、パソコン機器やカメラ、スマートフォンなどが押収された。
 
インターネット上のヘイトクライム(憎悪犯罪)を対象とした大規模な強制捜査はこれが初めて。ドイツでは移民・難民危機に伴ってネット上で差別を助長する書き込みが増加し、公共の場での議論に悪影響を及ぼしている。
 
BKAのホルガー・ミュンヒ長官は、警察が「ネット上のヘイトや扇動に対し、明確な姿勢を示した」と説明した。
 
一方、トマス・デメジエール内相は「いかなる形式であっても、また、いかなる背景事情があろうとも、暴力は許されない。これには言葉の暴力も含まれる」と述べ、「刑法はネット上にも適用される」と強調した。【7月14日 AFP】
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地中海に沈む沈没移民船 「まるでアウシュビッツ行き列車
最近はメディアもあまり取り上げないようになっていますが、欧州を目指す“命懸けの旅”を試みる難民・移民はいまだ多く存在しています。

****地中海で死亡の難民・移民 すでに2900人以上に****
IOM=国際移住機関は、中東や北アフリカから密航を試みてヨーロッパを目指す途中、地中海で命を落とした難民や移民が、ことしに入ってすでに2900人以上に上っていることを明らかにし、去年までのペースを大きく上回っているとして危機感を表しました。

IOM=国際移住機関は22日、中東や北アフリカから密航を試みてヨーロッパに渡る途中、地中海で船が沈むなどして死亡した難民や移民が、ことしに入ってから今月20日までに2977人に上ったと発表しました。これは去年の7月30日時点の数の1.5倍となっています。

内訳をみますと、リビアなどの北アフリカからイタリアを目指す「地中海中央ルート」が2549人と全体の85%を占めて最も多くなっていて、去年よりも大幅に増えています。次いでトルコなど中東とギリシャなどを結ぶ「地中海東部ルート」が383人となっています。

スイスのジュネーブで会見したIOMの広報官は、全体の死者数について「3000人を超えたのは去年は10月、おととしは9月のことで、7月にこの水準であることは非常に憂慮すべき事態だ」と述べて、強い危機感を表しました。【7月23日 NHK】
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地中海に沈んだ沈没船には折り重なるように遺体が詰め込まれており、まるで“ウシュビッツ行きの列車”思わせる光景であったと報じられています。

*****まるでアウシュビッツ行き列車」 沈没移民船から700人の遺体収容 証言****
「あの連中は、所かまわずぎゅうぎゅうに詰め込んだんだ。それが最後の旅路になってしまった人々を、まるでアウシュビッツ行きの列車みたいに」——移民数百人を乗せて沈没した漁船からの遺体収容というつらい任務は1年をかけて終わったが、イタリア消防当局の広報担当者、ルカ・カリさんは、目撃した恐ろしい光景に今もさいなまれている。

「船内では、1平方メートルに5人が押し込まれていた」。カリさんは21日の伊週刊誌パノラマに掲載された記事で、こう証言した。
 
悲劇が起きたのは、2015年4月だった。木造のトロール漁船を転用した移民船が、救難信号を受信して駆け付けたポルトガルの商船とリビア沖で衝突したのだ。衝撃にパニックを起こした移民たちが船体の片側に殺到し、暗闇の中で船は転覆。助かったのは28人だけだった。
 
数か月後、沈没した船体は引き上げられ、伊シチリアへ運ばれた。消防士らの手で先週ようやく最後の遺体が収容され、伊検察当局が発表した犠牲者数は700人に上る。
 
カリさんによれば船内では、巻き上げた錨(いかり)を収納するハッチから、汚水排水用ポンプが設置された船底の小部屋、機関室に至るまで、あらゆる場所で遺体が見つかった。遺体の状況から、船が転覆した後、移民たちが船から出ようと最期まで死力を尽くしていたことは明らかだった。

「沈みゆく船から脱出しようとした人々の姿は、私たちの網膜に焼き付いて永遠に消えないだろう」と、シチリアでの遺体収容任務を消防士の1人は語っている。消防士らは、母親の遺体の腕にしがみついたまま亡くなった子どもたちを見つけたが、母子を引き離す気にはなれなかったという。
 
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、2014年以降に欧州を目指して地中海を渡る危険な船旅を試み、死亡したか行方不明になった移民の数は1万人を超えている。【7月22日 AFP】
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救助されることを期待して、欧州側の船が見えるとわざと船を転覆させるような難民船も存在すると聞いています。
そうであったとしても、地中海に沈んだ何千人もの遺体が現実です。

地中海が“巨大な墓場”と化した現実を、自分たちには責任のないもの、関係ないものとして切り捨て、自分たちの社会の安全を守る議論だけに終始するのであれば、それはかつてアウシュビッツへ大勢を送り込んだ者、それを許容した人々と基本的に同じところに立っていると言わざるを得ません。
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パキスタン  シャリフ首相 「名誉殺人」防止法案実現に本気モード

2016-07-22 22:20:44 | アフガン・パキスタン

(オベイド・チノイ監督のドキュメンタリー『The Girl in the River: the Price of Forgiveness』の題材となった、父と叔父に銃で顔面を撃たれた後、袋に詰められ川に投げ捨てられたが一命を取りとめたサバ・カイセルさん 【2月3日 WSJ】)

ソーシャルメディアで有名な女性が「名誉殺人」で兄に殺害される
これまでもしばしば取り上げてきた「名誉殺人」はイスラム教国やインドなどに多い“風習”です。

****名誉殺人****
名誉殺人(英:honor killing)とは、女性の婚前・婚外交渉(強姦の被害による処女の喪失も含む)を女性本人のみならず「家族全員の名誉を汚す」ものと見なし、この行為を行った女性の父親や男兄弟が家族の名誉を守るために女性を殺害する風習のことである。イスラーム文化圏では同性愛者も対象となる。

概要
国際連合人権高等弁務官事務所の2010年の調査によると、名誉殺人によって殺害される被害者は世界中で年間5000人にのぼるとされる。

アムネスティ・インターナショナルは名誉殺人が行われている国および地域として、バングラデシュ、トルコ、ヨルダン、パキスタン、ウガンダ、モロッコ、アフガニスタン、イエメン、レバノン、エジプト、ヨルダン川西岸、ガザ地区、イスラエル、インド、エクアドル、ブラジル、イタリア、スウェーデン、イギリスを挙げている。

名誉殺人は、主に中東のイスラーム文化圏を中心に行われているため、イスラーム教と関連した風習と見なされることが多い。しかし、イスラーム教徒以外の間でも行われており、実際はイスラーム教とは無関係であり、専ら地域の因習によるものであるとされる(後略)【ウィキペディア】
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少なくともメディアにおいては、パキスタンでの「名誉殺人」が報じられることが多く、パキスタンに「名誉殺人」が多い背景として、“パキスタンは中央政府の統制力が弱く、地方においてはその土地の部族の力が伝統的に強いため、部族の慣習法が国の法律に先立つ状態となっているためである。実際にパキスタンの憲法では、連邦直轄部族地域について、パキスタン連邦議会および州議会の立法権限が及ばない地域であると明記しており、現地の部族勢力にかなりの裁量が許される状態にある”【ウィキペディア】とも説明されています。

6月19日ブログ“パキスタン 連日の「名誉殺人」報道に見る、社会変化に伴う価値観の衝突”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160619
6月4日ブログ“スイスの「握手文化」 パキスタンの「夫が妻を軽く殴る」権利と名誉殺人 エジプトのラマダン緩和”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160604

表に出てきているものだけでも“パキスタン人権委員会が今年発行した年報によると、昨年は1100人近い女性が親族の手で殺された”【7月22日 Newsweek】ということですから、連日報道がなされるのも当然のことです。

ただ、今回の事件は被害者女性が“セルフィー(自撮り)写真をソーシャルメディア上で公開して賛否両論を巻き起こし、有名人となっていた女性”だったことで、パキスタン国内でも大きな注目を集めています。

****パキスタンのSNS有名人、実の兄弟に「名誉のため」殺害される****
保守的なイスラム教国のパキスタンで15日、セルフィー(自撮り)写真をソーシャルメディア上で公開して賛否両論を巻き起こし、有名人となっていた女性が、実の兄弟によって殺害された。警察当局は17日、逃走していた容疑者は逮捕され、犯行を自供したと発表した。
 
殺害されたのはカンディール・バローチ(本名:ファウジア・アジーム)さんで、年齢は20歳代とみられている。

バローチさんは、社会的なタブーを果敢に打破することで、同国の多くの若者たちから称賛されていた一方、保守派からは非難を浴びていた。
 
警察当局によると、バローチさんはパンジャブ州ムルタン近郊の村ムザファラバードで絞殺された。
 
ムルタンの警察幹部はAFPの取材に対し、「カンディール・バローチさんは殺害された。彼女の兄弟によって絞殺された。名誉殺人とみられる」と語った。

バローチさんは家族とともに、イスラム教の断食月「ラマダン」明けを祝う祭り「イード・アル・フィトル」のため、ムザファラバードを訪れていた。
 
警察はバローチさんの父親の訴状に基づきバローチさんの兄弟のワシーム容疑者に対する捜査を開始した。父親は訴状の中で、「息子は娘に芸能活動を止めて欲しいと思っていた」ため、ワシーム容疑者がバローチさんを名誉のために殺害したとしている。
 
ムルタンの警察幹部はAFPの取材に対し、ワシーム容疑者は16日夜に逮捕され、バローチさんを「名誉」のために殺害したと自供していることを明らかにし、「ワシーム容疑者は、きょうだいが主にフェイスブックに最近いかがわしい動画を投稿したことで、名誉のために殺害したと供述しており、罪を認めている」と述べた。【7月17日 AFP】
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妹を殺害した兄ワシーム容疑者は「自分がしたことは、みじんも恥じていない」と語っており、事件の公正な裁きを求める声がある一方で、保守派の間では容疑者を擁護する声もあるようです。

****自撮り投稿の妹を絞殺した男「恥じていない」 パキスタン***
パキスタンでセルフィー(自撮り)画像をソーシャルメディア(SNS)で公開して有名人となった女性が兄に絞殺された事件で、この兄が17日、記者会見に臨み、妹の殺害について「恥じていない」と語った。パキスタンではこうした名誉殺人が続発しており、今回の事件を受けてその是非をめぐり国を二分する議論が再燃している。
 
(中略)ワシーム容疑者は父親の告訴を受けて翌日に逮捕された。(中略)
 
ワシーム容疑者はその上で「自分がしたことは、みじんも恥じていない」「いかなる事情であろうと、あんなこと(バローチさんによる自動リ画像の投稿)は全く容認できない」と主張した。
 
パキスタンでは毎年、何百人もの女性が「名誉」を理由に殺害されているが、法律の規定で犠牲者の家族が許せば殺害者は罪に問われないため、殺害者の大半が無罪放免となっている。今回の事件のように、殺害者自身も被害者の近親者であることが多い。
 
バローチさんが公開していた画像は、欧米の基準からすれば十分に許容される内容だが、極めて保守的なイスラム教国であるパキスタンでは多くの人から破廉恥と見なされていた。とはいえ、バローチさんの殺害は国民の間に衝撃や反発を引き起こしている。
 
東部の都市ラホールで16日夜に行われたバローチさんを悼む集会には多数が参加。事件に関して公正な説明を求めるインターネット上の請願書にも17日時点で1600人余りの署名が集まっている。
 
だがこうした動きに異議を唱える保守派も多く、ワシーム容疑者に同調してバローチさんの家族には殺害する以外に「選択肢はなかった」と主張する声も上がっている。【7月18日 AFP】
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シャリフ首相 、「名誉殺人」防止法案議会提出へ
“法律の規定で犠牲者の家族が許せば殺害者は罪に問われないため、殺害者の大半が無罪放免となっている”とのことで、今回事件も責任が問われることなくうやむやになるのか・・・とも思っていましたが、少し様相がこれまでとは異なるようです。

シャリフ首相の「名誉殺人」を今後防止する意向を受けて、「名誉殺人」防止法案が議会に提出する動きが具体化しているようです。

****大胆FBで有名だったパキスタン女性が兄に殺された事件で、「名誉殺人」防止法案提出へ****
<ソーシャルの過激な投降で有名になったパキスタンの女性が兄に殺害された事件で、シャリフ首相は家族が主に女性を殺害する「名誉殺人」を今後防止する意向を表明。法改正のための法案が議会に提出された>

パキスタンの保守的な女性観を変えたいと、ソーシャルメディアに挑発的な投稿をしていたカンディール・バローチ(本名はファウジア・アジーム、年齢は推定20代)が、先週末に兄に絞殺される事件が起きた。パキスタンではこうした家族による「名誉殺人」を防止する法案がまもなく議会で採決される。

パキスタンのシャリフ首相の娘で政治活動家ナリアム・ナワズ・シャリフは今週、ロイター通信のインタビューに答え、法案が議会に提出されると述べた。「2週間程度の間に」採決が行われる見通しだという。

「(妹殺しを)誇りに思う」
殺害されたカンディールはフェイスブックで、「社会に虐げられ支配される女性たちを勇気付けたい」と宣言し、80万以上の「いいね!」を集めていた。

今月4日の最後の投稿には、「間違った信念と古い慣習に閉じこもった人々の伝統的な価値観を変えたい」と書いていた。カンディールは17日、パンジャーブ州ムルターン近郊の自宅で兄ワシームに睡眠薬を飲まされて絞殺された。

ワシームは、「(妹殺害を)誇りに感じている。私たちの家族に不名誉をもたらしたからだ」と供述している。

パキスタンの人権活動家は数十年前から、家族が主に女性を殺害する「名誉殺人」を防止する法改正を求めて活動を続けてきた。

国際人権団体「イクオリティ・ナウ」のヤスミーン・ハッサンによると、カンディール殺害の他にもこの動きを促す出来事が続いている。今回の事件の直前には、パキスタンのイスラム法評議会が「名誉殺人」はイスラムの教えに反していると宣言した。

今年3月には、パキスタン人の女性映画監督シャーミーン・オベイド・チノイが「名誉殺人」を逃れた女性の姿を追ったドキュメンタリー『The Girl in the River: the Price of Forgiveness』がアカデミー賞短編ドキュメンタリー部門で最優秀作品賞を受賞した。この映画を見たシャリフ首相は、すぐに法改正をしたいと語った。
「こうした事例が重なって(法改正が)実現することになった。この成果は大変、感慨深い」と話している。

パキスタンの現行法の問題は、被害者の家族が加害者を「キサース・ディヤット法」という慣習法によって免罪できるところにある。現状、「名誉殺人」は被害者の家族に対する犯罪で、国家が裁く犯罪にはなっていない。

「『名誉殺人』では特に、被害者と加害者の家族は同じだ。家族が殺害を実行している」とハッサンは説明する。「家族は『名誉殺人』として申し立て、すぐに加害者を免罪する」

カンディールの殺害後、パキスタン政府は異例の介入を行っている。彼女の家族が「名誉殺人」を申し立てて兄を免罪する前に、国として殺人容疑で起訴したのだ。

保守化するイスラム社会
パキスタン人権委員会が今年発行した年報によると、昨年は1100人近い女性が親族の手で殺された。2014年の約1000件、2013年の869件と比べても増加している。

「イスラム世界は以前より保守的になっており、女性に対する態度にそれが表れている」とハッサンは言う。「女性の社会における役割、外見、行動、すべてが政治的な問題になってしまう。この傾向を変えなければ」(中略)

何も変わらなかった当時と比べると、今は大きな一歩を踏み出すときだ。【7月22日 Newsweek】
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シャリフ首相を動かしたドキュメンタリー映画
シャリフ首相が「名誉殺人に名誉はない。残酷な殺人を名誉と呼ぶことは、名誉を汚す行為にほかならない」と、「名誉殺人」に対する厳しい姿勢を見せていることは6月4日ブログでも取り上げました。

「本気だろうか・・・」という感もありましたが、どうやら本気のようです。
上記記事にもあるように女性映画監督シャーミーン・オベイド・チノイ氏のドキュメンタリーを観て、いたく心を動かされたようです。

****パキスタン映画、「名誉殺人」撲滅の原動力に****
パキスタンの著名な女性映画監督が最近、「名誉殺人」に関するドキュメンタリー映画を製作した。同作は、ここパキスタンで上映されていないにもかかわらず、女性保護のための法律強化に向けた政治的な取り組みにとって、弾みになろうとしている。
 
この40分間の作品は、サバ・カイセルさんという女性の身に起きた出来事を回顧する。彼女は父と叔父に銃で顔面を撃たれた後、袋に詰められ、パンジャブ州の川に投げ捨てられた。愛する男性と結婚するため家を逃げ出したことが撃たれた理由だった。当時18歳だった彼女は一命を取りとめた。
 
カイセルさんはこの映画の中で、「彼らを絶対に許さない」と述べている。彼女の顔には銃創が残っていた。
 
シャーミーン・オベイド・チノイ氏が製作・監督したこのドキュメンタリー映画「A Girl in the River: the Price of Honor」は、昨年3月に米国のケーブルテレビ局HBOで放送され、今年1月にアカデミー賞にノミネートされた。すると、作品はパキスタンのシャリフ首相の目にとまった。
 
シャリフ首相は、保守的なベテラン政治家で、社会問題よりもむしろ経済や安全保障の問題を中心に取り組んでいる。

だが政府として名誉殺人撲滅に乗り出すと述べ、「適切な法律を制定して、パキスタンからこの悪を排除する」ことを約束した。
 
人権擁護団体によると、パキスタン全体で1日当たり3人前後の女性が名誉殺人で死亡している。大半は、父親、兄弟およびその他の家族に殺されている。女性が決められた結婚相手を拒否したことで、自分たち家族の名誉が傷つけられたというのが、殺害の理由である場合が多い。
 
シャリフ首相の側近によると、同首相は今月、パキスタン各地から政治的指導者を集めて会合を開く予定だ。会合では、この国に深く根差した伝統と対峙し、是正するためのコンセンサスを構築する計画だという。パキスタンでは伝統的に、恋愛や結婚に関して年長の男性に従わなかった女性を殺すことが容認されている。
 
計画によれば、各地から集まる地方政治家たちに、「A Girl in the River」を首相官邸で鑑賞してもらう。パキスタンでこの作品が上映されるのはこれが初めてとなる。
 
この首相側近は、このドキュメンタリー作品が法律改正の「原動力」になるようシャリフ首相が期待していると述べ、「全ての利害関係者を動員する必要がある」と語った。この問題はとりわけセンシティブだ。それは、報復、許し、および「血の代償金」の支払いを容認しているイスラム法に関係するためだ。
 
同国で主流派の聖職者と政治家の大半は、名誉殺人を容認していない。しかし、シャリフ首相の提案に対する当初の反応からみて、この慣行を変えることがいかに困難かがうかがえる。
 
主要イスラム政党の元上院議員ハフィズ・フサイン・アハメド氏は、「イスラム法には報復と補償(キサース・ディーヤ法=慰謝料を支払うことで殺人罪を免れられる原則)に関する基本原則がある」と述べ、「これらに関しては修正の余地が一切ない。アッラーからのお告げだからだ」と付け加えた。

オベイド・チノイ監督は2012年に「セイビング・フェイス 魂の救済」でアカデミー賞を受賞した。これはプロポーズを断った男性から酸をかけられ、顔面を傷つけられた女性に関する話だ。この映画はパンジャブ州を動かし、このようなケースを反テロ裁判所で取り扱うことに道を開いた。反テロ裁判所では、より容易かつ迅速に裁判が受けられる。
 
同監督は、カイセルさんの痛ましい体験に関する地元紙の短い記事を読み、名誉殺人に関する映画を製作しようと思ったと述べた。そこで同監督は病院に出向き、カイセルさんと面会した。「サバ(カイセルさん)は熱心に話をしてくれた」という。
 
2004年以降、名誉を理由にした女性への攻撃は、通常の殺人および殺人未遂事件として扱われている。それ以前は、このような女性攻撃は一時的な激情による犯罪として弁護される場合があった。

だが、現在も罪をおかした犯人たちは罰を受けないことがしばしばだ。被害者自身ないし被害者の家族によって許されるからだ。

オベイド・チノイ監督は自分の映画をきっかけに、名誉殺人の許しを容認する法規定が変わることを期待している。
 
オベイド・チノイ監督は「自分の娘ないし姉妹を殺した人が投獄されない。そこで人々は、これが犯罪でないのだと思ってしまう」と指摘。「これでは罪を犯した連中をつけあがらせるだけだ」と話す。
 
この映画の中で、カイセルさんは家族や親戚、そして村人から圧力を受けて、自分を銃撃した父親を法律上許さざるを得なくなる。

その後、父親は釈放される。釈放された後この父親は、村社会で一層の尊敬を勝ち取ったと自慢する。映画の中で、彼は、娘を銃で撃ったのは自分の名誉を回復するためだったと述べ、他の娘たちも今では決して自分に逆らおうとはしなくなった、と語っている。【2月3日 WSJ】
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記事にでてくるイスラム慣習法「キサース・ディーヤ法」の“キサース”とは被害者が蒙ったのと同様の苦痛を加害者に与える刑罰、“ディーヤ”とは賠償金(「血の代償金」)のことで、遺族はどちらかを選択でき、結果的に慰謝料を支払うことで殺人罪を回避できるようです。

「名誉殺人」と「キサース・ディーヤ法」の関係は良く知りませんが、家族間の問題ということで国家の司法で裁かれることなく「キサース・ディーヤ法」で処理され、家族の申し立てで免罪となることが多いようです。

これでは「名誉殺人」が横行するはずです。

シャリフ首相が本気なのはわかりましたが、「名誉殺人」防止法案を制定することができるか・・・注目したいところです。

なお、女性を男性の保護下に置き、男性と同等の権利を認めない文化もあって、「名誉殺人」の対象は主に女性ですが、男性が殺害されることもあるようです。

****パキスタンでまた「名誉殺人」、被害者は男性****
パキスタンで、既婚女性と不倫関係にあったとして、男性が拷問され殺害された。警察当局が19日、発表した。いわゆる「名誉殺人」とみられているが、男性が被害者となるのはまれ。
 
警察当局によると、事件はパキスタン中部の貧困地区デラガジカーンで18日に起きた。アラ・ディッタさん(24)は、不倫関係にあるとされる女性が住む村にいるところを5人の男に目撃され、複数回にわたって刺された。ディッタさんは、両腕と唇、鼻を切り落とされていたという。
 
地元警察署長のアタ・ムハマド・カーン氏は、「被害者は病院に搬送されたが死亡した」と述べ、名誉殺人とみられ、容疑者を捜索中だと付け加えた。女性の側に被害はなかったという。
 
保守的なイスラム教の国であるパキスタンでは毎年、家族の名誉を汚したとして、数百人規模の女性が親族によって殺害されている。だが、男性が名誉殺人の犠牲になることは少ない。【7月20日 AFP】
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シャリフ首相の「名誉殺人に名誉はない。残酷な殺人を名誉と呼ぶことは、名誉を汚す行為にほかならない」との発言につきます。

本来は、「名誉殺人」を生む土壌となっている、女性の権利を認めないこと自体の改善が望まれるところですが、まずは通常殺人と同等に扱われることが第一歩です。
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