孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

南シナ海問題 中国・習近平主席のベトナム取り込みは? 相次ぐ海上でのトラブル

2015-11-30 22:03:02 | 南シナ海

(ハノイで、ベトナム訪問中の中国の習近平国家主席(左)と握手するベトナムのチュオン・タン・サン国家主席【11月6日 ロイター】

中国メディアの環球網は、日米の「対中包囲網の幻想」を揶揄する記事で、南シナ海問題で中国と対立するベトナムとフィリピンでも姿勢が異なると指摘。ベトナムはフィリピンのように激烈な姿勢を見せておらず「日本がASEANの他の国を“フィリピン化”できると思っているのは、実に純情だ」と皮肉っています。【11月29日 Searchinaより】

確かに、「中国の横暴にアジア各国がみな憤慨している」というのは日本の期待ではあっても、現実とは少し違うかも。経済的に中国なしでは回らなくなっている多くのアジア諸国は、これまで以上にその顔を中国に向けつつあるというのが現実の姿でしょう。

ただ、中国の横暴とも言える独善的行動が続けば、各国における反中感情も高まり、“フィリピン化”も起きてきます。)


不審船による襲撃で、ベトナム漁船乗組員死亡
南シナ海・南沙諸島海域で30日、ベトナム漁船乗組員が「武装集団」の銃撃を受け死亡しました。

****ベトナム漁民、撃たれ死亡=武装集団が襲撃―南シナ海****
ベトナム紙トイチェは30日、南シナ海・南沙(英語名・スプラトリー)諸島のミスチーフ(中国名・美済)礁に近い海域で26日、操業中のベトナム漁船の乗組員1人が銃で撃たれ、死亡したと報じた。不審船が接近して、武装した5人組が漁船に乗り込み、発砲したという。

南シナ海でベトナム漁民が銃撃で死亡する事件は珍しい。トイチェによれば、この海域では同国漁船が長年操業してきたが、不審船による襲撃はこれまで起きていなかった。

現場はミスチーフ礁とは別の岩礁から約30カイリ(約56キロ)の海域。ベトナム中部クアンガイ省の漁船が操業していたところ、1隻の船が近づき、5人が乗り込んできた。発砲により、42歳の男性乗組員が死亡。漁船には薬きょう4個が残っていたという。

南沙海域では、ベトナムや中国などが領有権をめぐって対立している。【11月30日 時事】
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「不審船」ということで、銃撃した武装集団が何者だったのかは、まだ明らかにされていません。

現実的対応のベトナム共産党 習近平主席訪問を歓迎
ベトナムはかねてより南シナ海において、西沙諸島や南沙諸島において中国と対立・衝突を続けており、ASEAN諸国の中にあっては、対中国ではフィリピンとともに強硬姿勢を示してきています。

国民感情のうえでも、南シナ海問題に限らず、中国に対する反発は根深いものがあるようにも見えます。

ただ、中国と国境を接し、これまでも中国と戦火を交えたこともあるベトナムにとっては、中国との関係は安全保障上の最重要課題でもあり、また、中国との経済的な関係が深まっているのは他の東南アジア諸国同様であることもあって、ベトナム共産党指導部の中国への対応は、例えば中国批判のデモを一定に容認しながらも、過激化・拡大することは抑えるといったように、抜き差しならない事態にならないよう現実的な対応を行っているように見えます。

そんなベトナムを、今月初め中国・習近平国家主席が訪問しました。中国主席のベトナム訪問はは2006年の胡錦濤主席以来、9年ぶりでした。

****南シナ海で対立回避演出=友好関係を強調―中越首脳****
中国の習近平国家主席(共産党総書記)は5日、ベトナムを訪れ、最高指導者グエン・フー・チョン共産党書記長とハノイで会談し、南シナ海の領有権争いでは対立を回避し、両国関係に悪影響を及ぼさないよう努力することで合意した。ベトナム政府によると、両首脳は、友好関係が「新しい次元に入った」と認識を一致させた。

中国主席の訪越は、2006年の胡錦濤氏以来9年ぶり。両首脳は、インフラ建設や貿易、投資などに関する協力文書に署名した。経済関係を一段と深める契機とする。

ベトナム政府によれば、会談でチョン書記長は、南シナ海問題を念頭に「事態をさらに複雑にし、緊張をもたらさないよう努力することが重要だ」と強調。軍事基地化を目指すような動きを控え、国際法に従って問題を解決する必要があると訴えた。

習主席は「ベトナムと共に、両国関係および南シナ海の平和と安定の維持に努力する」と応じたという。【11月5日 時事】 
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隣国で、また、同じ共産党政権にもかかわらず、9年間訪問がなかったことにも、両国の微妙な関係が窺われます。

逆に言えば、南シナ海で中国が造成する人工島近海へのアメリカ艦航行を受け、米中対立が深まるこの時期に敢えてそんなベトナムを訪問した習近平主席の、領有権をめぐり対立するベトナムに接近することで中国包囲網にくさびを打ち込もうとする強い意向が窺えます。

習近平主席訪問中も首都ハノイでは反中国デモが容認されていたようです。

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・・・・現地からの報道によると、習氏の訪問直前から首都ハノイでは抗議活動が続いた。参加者は「スプラトリー(中国名・南沙)諸島とパラセル(同・西沙)諸島をベトナムに返せ!」などと訴える横断幕を掲げて抗議。5日は中国大使館周辺にバリケードが築かれ、道路が封鎖された。

しかし、3日にハノイ中心部で行われた抗議活動の参加者は「警官はほとんど抗議者を放っておいた。すぐに追い払われた昨年の反中デモと違った」と証言しており、ベトナム政府の対応にも変化が表れている。(後略)【11月5日 産経】
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先述のような反中国の国民感情はありますので一定に”ガス抜き”は行いつつも、ベトナム共産党指導部は、安全保障・経済両面での対中国関係を重視する立場から、習主席を歓迎したようです。

ベトナム取り込みを狙う習主席
習近平国家主席は6日にベトナム国会で演説し、中国とベトナムとの関係について「(幾つかの部分で)対立を避けるのは難しい」と認めたうえで「(双方の)党や国家の指導の下で、友好関係の『新たなページ』を書き続けることができる」と呼び掛け、対話継続が重要と訴えたとのことです。【11月6日 時事より】 

指導層レベルでは概ね友好的な雰囲気で行われ、習主席の狙うベトナム取り込みが一定に成功したようにも見えた習主席の訪問でしたが、その後は不協和音を出ているように報じられています。

****中国主席発言に不快感=南シナ海で「二枚舌」―ベトナム****
中国の習近平国家主席による南シナ海領有権に関する最近の発言に対し、ベトナムで不快感が高まっている。ベトナムを5、6の両日訪問した際に、領有権をめぐる対立を回避する姿勢を示した一方、7日のシンガポールでの演説では「古くから中国の領土」と主張したためだ。メディアは「二枚舌」(トイチェ紙)と厳しく批判している。

ベトナム政府によれば、習主席とグエン・フー・チョン共産党書記長は5日の会談で、南シナ海問題が両国関係に悪影響を及ぼさないよう「適切に処理」することで合意。習主席は「平和と安定の維持に努力する」と語ったとされる。ベトナム国会での6日の演説でも、両国間の問題では対話を通じた解決を目指す考えを表明した。

その翌日、シンガポールという「南シナ海問題と(直接には)無関係の国」(トイチェ紙)で、友好ムードに水を差すような発言が出たことに、メディアは「化けの皮が剥がれた」(ペトロ・タイムズ紙)と反発。中国の主張は身勝手として、国際法に従うよう訴えている。

ベトナム政府高官や外務省は、習主席のシンガポールでの演説に関してコメントしていない。【11月10日 時事】 
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【“現場”海上で相次ぐ衝突・トラブル
一方、南シナ海などの“現場”では、最近両国の衝突・トラブルが相次いでいます。

****中国漁船数百隻がベトナム漁船を「襲撃」か  ベトナム報道「漁網次々に引きちぎる」「過去30年で最悪****
中国漁船数百隻がベトナム漁船5隻を襲撃した模様だ。環球時報がベトナムでの報道を引用して伝えた。ベトナムでは漁網30網以上が引きちぎられ、「過去30年来、最悪の事態」と報じられているという。

ベトナム漁船の船長が16日、ダナン市ソンチャー区の自国当局に報告したことで明らかになったという。船長によると8日に出港して、仲間の船との計5隻でトンキン湾で操業していた。トンキン湾はベトナムと中国の広西チワン族自治区、海南省(海南島)など囲まれた海域だ。

船長は、14日午前2時ごろ、「無数の中国漁船が突然出現し、蜂のように押し寄せてきた」と説明したという。記事は、ベトナム漁船を襲撃した中国漁船は「数百隻」だったと伝えた。

中国漁船はベトナム漁船が漁網を投じていた水面に次々に突入。30網程度が引きちぎられたという。ベトナム当局関係者は「中国漁船がベトナムの領海に進入したかどうかを確認する」と述べたという。

以前にも中国とベトナムの漁船が海上で「抗争」することはあったが、最近では少なくなっていた。中国政府・外交部の華春瑩報道官は、「海上で問題が出たことはあったが2014年以来、双方は問題を妥当に処理し、密接な意思疎通を保っている」と説明していた。

中国社会科学院の研究室主任で東南アジア研究の専門家である許利平主任は、「仮に、(権益関連の)境界線が定まっていない『グレー・ゾーン』で操業する場合には、双方が協力の気持ちを持たねばならない。相手を一方的に批判するのはフェアでない」と述べた。(後略)【11月19日 Searchina】
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****中国、ベトナム船を銃で威嚇か 南沙海域、現地紙報道****
ベトナム国営紙トイチェは27日、南シナ海・南沙(スプラトリー)諸島の周辺海域で今月13日、ベトナムの輸送船が中国の艦船から「銃を向けられ、威嚇された」と報じた。輸送船船長の証言として報じた。発砲やけが人はなかった。

報道によると、現場は米駆逐艦が10月27日に「航行の自由作戦」を実施した南沙・スビ礁の西約12カイリ。

13日午前9時、ベトナム輸送船が自国が管理する灯台へ補給活動を行うため付近を航行したところ、所属不明の中国船1隻が近づき、立ち去った。その後2隻の中国海警局の巡視船が接近。午前11時には、人工島の方向から中国軍の艦船とみられる別の艦船が現れ、拡声機で中国語で警告した。さらに同11時半、10人以上の迷彩服の隊員が甲板に出て、輸送船に銃口を向けた。緊迫した状態が約2時間続いたのち、中国船は立ち去ったという。

南沙諸島の周辺では、ベトナムの漁船や輸送船が中国船から妨害を受けることはたびたび報告されているが、銃を向けられたのは異例。ベトナム外務省のレ・ハイ・ビン報道官は同日、「力の行使や威嚇に激しく抗議する」とする声明を発表した。【11月27日 時事】
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こうしたトラブル・事件を経ての冒頭銃撃事件です。中国の影を感じてしまいますが、事実関係はまだわかりません。
もし、「不審船」が中国の船ということになれば、ベトナム側の対応が硬化することは避けられないでしょう。

ただ、その場合、一連の中国側の強圧的な姿勢が習近平指導部の意向を反映したものかどうかは疑問もあります。
これではベトナム訪問による「ベトナム取り込み」も無駄になってしまいます。

中国では軍部などにおける強硬派や反習近平勢力の動きを政権指導部が必ずしもコントロールできていないという話はよく聞くところですが、一連のベトナムへの強圧的な行動もそうした線でしょうか。
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アメリカ  再び「中絶戦争」の犠牲者 現実には減少傾向の中絶 増えるシングルマザー

2015-11-29 22:42:26 | アメリカ

(ワシントンDCで中絶反対を訴えるデモ参加者 【2013年03月28日 AFP】)

人工中絶をする施設を狙った爆破事件は42件、殺人事件は8件、放火事件は182件
銃規制問題とともにアメリカ社会の世論を二分する問題であり、度々事件を誘発し、また、選挙戦での争点となるのが「妊娠中絶を容認するか」という問題です。

****米コロラド州で男が銃乱射 3人死亡、9人負傷****
米西部コロラド州コロラドスプリングズで27日、男が銃を乱射し、少なくとも3人が死亡、警察官4人を含む9人がけがをした。CNNなどが伝えた。

米メディアによると、27日昼ごろ、コロラドスプリングズの医療施設「家族計画クリニック」で銃撃があったと通報があった。警官隊と容疑者の男との間で銃撃戦になり、目撃者によると5分間で20発ほど銃声が聞こえたという。

容疑者の男はクリニック内に立てこもったが、約5時間後に逮捕された。容疑者が爆発物などを持ち込んだ疑いもあり、警察はクリニックから患者や医者たちを避難させた。犯行動機は明らかになっていない。

現場近くにはショッピングセンターやレストラン、銀行もあった。米国は感謝祭の連休中で、にぎわっていた街は騒然となった。

同クリニックは妊娠中絶や性感染予防などのケアをしている。米国では人工妊娠中絶の是非を巡り、大きな議論になっており、中絶に反対する人々は同クリニックなどを批判している。

米メディアによると、1977年から14年まで、人工中絶をする施設を狙った爆破事件は42件、殺人事件は8件、放火事件は182件起きているという。【11月28日 朝日】
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“銃撃戦が起きた施設は、妊娠中絶を含む産科医療サービスを提供する「プランド・ペアレントフッド」が運営し、米各地に関連施設がある。テレビ映像には、身柄を拘束された白人とみられる容疑者の姿が映し出された。
男の身元や動機は不明だが、ロイター通信によれば、この施設は妊娠中絶反対派による抗議行動にたびたびさらされ、最近、現在の場所に移転した。”【11月28日 産経】とも。

オバマ大統領は銃規制が進まないなかでの銃犯罪という視点から苛立ちを示しています。

****米大統領 銃撃死傷事件「もうたくさんだ****
アメリカ西部のコロラド州にある医療関連施設で男が銃を発砲し、12人が死傷した事件についてオバマ大統領が声明を発表し、「もうたくさんだ」として、銃による犯罪がやまないことや銃規制の強化が進まない現状に強いいらだちを示しました。(中略)

オバマ大統領は28日、この事件について声明を出し「多くの国民が恐ろしい思いを味わった。これを日常にしてはならない」として、事件に対する憤りをあらわにしました。そのうえで、「戦場で使われる銃が簡単に入手できるような現状をどうにかしなければならない。もうたくさんだ」として、政治的な対立などが原因で銃規制の強化が進まない現状に強いいらだちを示しました。

アメリカでは銃による犯罪で年間1万人以上が死亡していて、オバマ大統領は、事件が大きく伝えられるたびに国を挙げての対応を呼びかけていますが、銃犯罪は後を絶ちません。【11月29日 NHK】
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犯行動機がわからない現在ですから、大統領は中絶の是非については敢えて何も言及していません。

アメリカの中絶を巡る論争については、2009年5月にも中西部カンザス州の教会で、中絶手術を行う産婦人科医テイラー氏が日曜礼拝の最中に中絶反対派の男に射殺される事件が起き、その関連で2009年7月17日ブログ「アメリカ 中絶容認医師殺害 オバマ大統領誕生による保守化への逆バネ」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20090717)で取り上げたことがあります。

そこでも触れたように、この問題の前提になるのが1973年に連邦最高裁が下した中絶容認判決で、「ロー判決」(ロー対ウェイド事件)と呼ばれるものです。

「われわれは既婚者であろうとなかろうと、産む産まないというような基本的な個人の問題に政府から不当な干渉を受けないという個人の権利を認める。その権利には妊娠を継続するか否かを決定する女性の権利が必然的に含まれる。」

もうひとつ留意する必要があるのが、日本では想像できない中絶反対運動の「過激さ」です。
前記記事にもあるように、これまでも施設爆破や殺人などの事件を引き起こしています。

従って、中絶手術を行う病院施設も厳重な警備がなされています。

****医師殺害で激化する「中絶戦争****
・・・・「要塞クリニック」といわれる仕事場は、道路側に窓がなく、駐車場側の窓ガラスは防弾ガラスで、防犯カメラも装備。86年に入り口に爆弾が仕掛けられ、93年には中絶反対派の女性に医師が襲撃され両腕を負傷した。

中絶反対派は毎日、クリニックの駐車場入り口で患者に中絶しないよう説得。
99年には別の反対グループが隣にクリニックを開設、死が避けられない胎児のための周産期ホスピスを始め、米国を二分する中絶論議の最前線となってきた。

医師射殺事件後、遺族はクリニックを閉鎖した。【2009年7月16日 毎日】
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保守層からの支持を受ける共和党が躍進したことで、州レベルでの規制強化の動き
1973年の「ロー判決」で中絶が女性の権利として認められたにもかかわらず論争が続いているのは、「最高裁は胎児が母体の外でも生存可能とみなされる場合は、州が生命尊重の立場から中絶を禁じることができるとの見方も示しているから」という事情があるようで、近年は共和党の保守化傾向の流れに乗って、中絶規制を強化する州が増加しているそうです。

下記記事は、2014年中間選挙時のものです。

****中絶規制が急増 中間選挙の争点に****
41年前に妊娠中絶の合憲性が認められた米国の各州で、中絶に制限を加える規制が急増している。

2011年以降の3年間で新たに発効した規制は205件で、過去のペースを大きく上回る水準。10年の中間選挙で保守層からの支持を受ける共和党が躍進したことで、規制拡大に弾みがついたとみられている。

ただし厳格な中絶規制には合憲性などの面から反発も大きい。中絶の是非をめぐる世論は米国内を二分しており、中絶問題が11月の中間選挙の争点になるとの見方も出ている。

昨年は22州で70件
(中略)規制内容は妊娠22週目以降の中絶禁止や医療保険の適用除外など。テキサス州で昨年7月に決まった中絶措置を行う医療施設に大病院並みの設備基準を求める規制強化では、既存の施設の多くが閉鎖される事態も起きている。

背景に共和党の躍進
規制強化の背景にあるのは10年の中間選挙で、保守層の支持を受ける共和党が躍進したことだ。知事が中絶反対を表明している州の数は21から29に増え、知事と議会の両方が中絶に反対する州の数も10から15に増えた。

こうした流れを受け共和党は改めて中絶反対の立場を強調し始めている。共和党全国委は1月24日、中絶問題への積極的な取り組みに関する決議文を採択し、「共和党は、これから生まれる生命のために誇りをもって立ち上がる」と宣言。「女性の権利を軽視している」との批判に対し、生命尊重の宗教・倫理的な観点から論戦に挑む考えだ。

米国では1973年1月、連邦最高裁判所がロー対ウェイド事件で、憲法は女性が中絶を選ぶ権利を認めていると判断した。それでも中絶の是非をめぐる議論が続いているのは、最高裁は胎児が母体の外でも生存可能とみなされる場合は、州が生命尊重の立場から中絶を禁じることができるとの見方も示しているからだ。

さらに胎児が母胎外で生存可能となる時期には解釈の余地が残されており、州によっては妊娠初期であっても中絶を規制しようとする動きがある。

ノースダコタ州では13年3月、妊娠6週目程度で行われる胎児の心音確認後の中絶を禁止する法律が成立。アーカンソー州でも同じ月に妊娠12週目を過ぎた後での中絶を禁止する法律が成立した。

48%対45%、賛否拮抗
ただし法律に基づいた中絶に肯定的な「プロ・チョイス」の立場からは、中絶規制の強化の流れが強まっていることへの批判の声も上がっている。

ノースダコタ、アーカンソーの両州の法律では、成立後すぐに違憲訴訟が起こされて法律は差し止めになった。

背景には、経済力が十分でない若い世代の女性が意図せずして妊娠した場合、女性自身が学校に通えなくなるなど教育の機会が閉ざされることへの懸念などがある。

ガトマカー研究所によると、米国では全ての妊娠のうち約半分が「意図していない妊娠」で、このうち4割程度で中絶が選択されている。中絶全体の2割弱は10代の女性によるものだという。また、中絶全体の9割程度は妊娠12週までに行われ、21週以降の中絶は1%程度でしかない。

プロ・チョイスの論者は中絶を禁止するよりも、性教育や避妊の普及に力を入れることで、意図していない妊娠を減らすことの重要性を訴えている。

米ギャラップ社が昨年5月に行った世論調査では、(中絶反対の)プロ・ライフ支持者とプロ・チョイス支持者の割合は48%対45%と拮抗。米紙ニューヨーク・タイムズは「中絶が中間選挙での活発な争点になろうとしている」と指摘している。【2014年3月9日 産経】
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保守的な価値観に根差した中絶反対運動の結果、「シングルマザー」が増加
一方で、実際に中絶が行われる件数は、73年の「ロー判決」にもかかわらず、近年は減少傾向にあるようです。
その傾向を、The Atlantic紙の論説、“Why Is the Abortion Rate Falling?””が分析しています。

下記はその記事を翻訳紹介したものです。

*****アメリカにおける妊娠中絶の減少要因とプロライフ派の方向性*****
・・・・妊娠中絶という選択が、アメリカ合衆国の中で一層珍しいものになりつつあります。

先日アメリカ疾病予防管理センターは、合衆国内で実施された妊娠中絶に関する最新の調査結果を発表しました。同センターによれば2011年における妊娠中絶は730,322件で、過去約40年間で最も少なくなったのです。

同センターが出した数字が実際よりも小さい可能性は高いとみられます。というのも、ほかの調査結果では2011年の妊娠中絶件数は100万件強だとされているものもあるためです。

とはいえ、正確な実施件数は不確かだとしても、その減少傾向は明らかです。
合衆国における妊娠中絶件数は1970年代から80年代にかけて顕著な伸びを見せ、1990年にピークを迎えましたが、ここ20年ほどの間におよそ半数程度まで減少してきているのです。【2014年12月17日 http://yuma-matsumoto.tumblr.com/post/105412530804/why-is-the-abortion-rate-falling-in-america
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The Atlantic紙の論説は、この減少傾向の要因が一人親(多くはシングルマザー)の増加にあるとする立場から背景事情が探られています。

結婚生活を送る前に妊娠した場合、カップルは、いわゆるできちゃった結婚、養子縁組、妊娠中絶、シングルマザーの4つの選択肢のうちのどれか1つを選ばざるを得ない状況に直面します。

中絶反対運動が注目される中で中絶への道徳的忌避が強まり、また、結婚の意義が低下したことを背景に、女性のの選択肢の優先順位に変化がみられるとのことで、近年はシングルマザーを選択するケースが増加したことで中絶が減少した・・・との分析です。

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1990年以降にはこれに加えて2つの変化が生じたとみられます。

第一に、プロライフ(妊娠中絶反対)運動の高まりによって、妊娠中絶が道徳的に問題となるということをアメリカ人が意識するようになったらしいことです。

妊娠中絶が法を犯す行為であると考えることに肯定的なアメリカ人はわずか5人に1人程度で、この割合は1970年代半ば以降ほとんど変わりありません。しかし、妊娠中絶が「道徳的に間違っている」と考える割合は過去15年間で増加しています。妊娠中絶が「道徳的に許される」と言い切るアメリカ人は、現在では38%にとどまっているのです。

そうこうしている間に、アメリカ社会の3分の2を占める比較的所得の少ない人々にとって、結婚は文化的なものとして位置づけられる経験からはるかにかけ離れたものに成り下がってしまいました。大学教育を受けていない男性の賃金が下落しているせいもあり、経済的な余裕のない女性からしてみれば、結婚することはますます無意味で危険とさえ言えるような選択に思えるものになっているのです。

結婚の意義が薄れるにつれ、未婚の母親という立場に立つことは、社会的に受け入れられやすい選択の結果というよりもむしろ、必然的な選択に近いものになってきています。

意図せぬ妊娠を遂げた際に直面する選択肢の序列は、したがって再び移り変わっていて、一人親、妊娠中絶、できちゃった結婚、養子縁組、という順番になっているようです。【同上】
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保守的な価値観に根差した中絶反対運動の結果、保守的家庭観が好まない「シングルマザー」が増加するという結果にもなっているとの分析です。

今年夏、中絶を巡ってある女性のクラウドファンディング(ネット上での募金の呼びかけ)が「炎上」しました。

****募金集まらなければ「中絶する」で炎上!とんでもない募金を集める妊婦に誹謗中傷*****
アメリカ人とみられる26歳の匿名の女性が企画したクラウドファンディングが物議を醸している。

女性は現在妊娠7週目の身だが、経済的に苦しく、子供を育てていく余裕が無い。養育費を確保するためにインターネット上で寄付を募ることにした女性は、あろうことか「100万ドル(およそ1億2000万円)集まらなかったら中絶する」と衝撃的な宣言を行った。

これを見た関係者は、お腹の中の子供を人質にして身代金を要求する脅迫ではないかと憤慨。ネットは炎上状態と化してしまった。

アメリカでは中絶の是非が長年にわたって議論されており、2013年にはノースダコタ州で中絶を全面的に禁止する法律が制定されたことで話題になった。

現在大学院に通っているという件の女性は、こうした厳格な中絶法は女性を苦しめることになると反対意見を主張。7月7日から10日にかけての72時間だけインターネット上でクラウドファンディングを実施し、中絶反対派に自分の中絶を阻止するチャンスを与えると宣言した。

「アメリカには中絶反対派が1億人以上もいるんだから、一人当たり1セント以下の募金額で済むのよ。きれいごとを言うだけでなく、実際に子を持つ女性を経済的に支援してみてよ。」と過激な言葉で世間を挑発している。ちなみに女性はすでに中絶手術の予約を取っており、目標額に届かなければ病院に行く準備は出来ているという。

この件に関し、中絶反対運動グループの代表リラ・ローズさんは、女性の声明を公式に批判。まだ生まれてもいない赤ん坊を利用して金銭を要求するなど道徳的に許されることではないと激怒した。中絶容認派の中にも、件の女性の手口は卑劣だと憤る者が少なくない。

はたして、女性のもとに100万ドルもの養育費は集まるのだろうか。【7月11日 秒刊SUNDAY】
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“お腹の中の子供を人質にして身代金を要求する脅迫”との批判ですが、彼女は最初からお金を集めることは考えておらず、「中絶が道徳的に悪いというなら、どうすればいいのか?どうやって生きていけというのか?」という問題提起をしたかっただけでしょう。いささか人騒がせな方法ではありますが。

中絶反対の立場を主張するのであれば、単に生命の尊さを説くだけでなく、こうした現実的な問いかけに対する答えも用意する必要があるでしょう。

共和党内部にも極端な規制への異論も
なお、中絶反対に寄り添う立場と思われる共和党内部にもいろいろな意見はあるようです。
ロー対ウェイド判決から42周記念日の1月22日に下院共和党議会は胎児保護法の投票を予定していましたが、女性議員が増えている下院で激しい反対に直面したため、投票予定を突然キャンセルしました。

法案はレイプ事件を警察に報告した被害者のみに中絶禁止を除外する内容ですが、レイプ被害の警察報告は稀である為、一般の女性には受け入れられない内容であるとして、数日前からこの法案に対する懸念が女性議員の間で拡大したと言われています。

もともと、米国憲法改正法第十四条が中絶の権利を保証していることにも抵触する内容で、“ロー対ウェイド判決から42周記念日の1月22日のタイミングをねらっただけの演出に過ぎない”との見方もあるようですが、今後も大統領選挙の動向も見ながら、同じような試みがなされるとも思われます。

イスラム教徒だけでない過激思想によるテロ行為
ついでに言えば、中絶反対の立場から関係者の殺害、施設の爆破も厭わないというのであれば、立派なテロ行為であり、そうした過激思想によるテロリストは不安視されているイスラム教徒のなかだけでなく、保守的アメリカ国民の中にも存在する訳で、イスラム教徒だけをことさらに危険視するのは筋違いでしょう。
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バングラデシュで頻発するテロ 社会不満から過激思想へ 貧困と疎外がもたらす「テロの温床」

2015-11-28 21:26:15 | 南アジア(インド)

(バングラデシュの縫製工場で働く女性 【10月9日 DIAMONDonline】)

【「政権側の弾圧で『野党不在』になりつつあり、代わるはけ口としてイスラム勢力が伸びてきている」】
バングラデシュでまたテロが発生、「イスラム国」(IS)の同国支部を名乗る犯行声明が出されています。

****バングラデシュで銃乱射、1人死亡 IS名乗る犯行声明****
バングラデシュ北部ボグラ近郊で26日夕、イスラム教シーア派モスクで男らが銃を乱射して1人が死亡する事件があり、過激派組織「イスラム国」(IS)の同国支部を名乗る犯行声明がネット上に出た。

地元報道によると、3人の男たちがモスクに押し入り銃を乱射。礼拝中だった男性1人が死亡し、3人がけがをした。バングラデシュでの殺人やテロでISを名乗る犯行声明が出たのは、これで4回目。

一方、同国政府は一貫してISの関与を否定し、地元の野党勢力が背後にいるとの見方を示している。【11月28日 朝日】
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バングラデシュでは、北部のロングプールで10月3日に日本人(星邦男さん 66歳)が覆面をした2人の男に至近距離から銃撃されて死亡する事件がありました。
その前、9月28日にもダッカでもイタリア人男性が殺害されています。

星邦男さんの事件も「イスラム国」(IS)を名乗る犯行声明は出ていますが、背後関係はよくわかっていないようです。

最近バングラデシュでは外国人のほか、世俗主義的なブロガーや出版関係者などへの暴力事件も頻発しています。

****バングラデシュで出版関係者ら襲撃される、1人死亡****
バングラデシュの首都ダッカで先月31日、今年2月にイスラム過激派に殺害されたとみられる無神論者作家の発行人が何者かになたで襲われ死亡した。ダッカではこの数時間前にも、世俗派ブロガー2人と発行人1人が襲われ負傷している。

同国では、世俗派の活動家がなたや大型の包丁で襲撃される手口の似た事件が相次いで発生している。警察当局によると、犯人が襲撃後、血だらけの被害者を残して外側から南京錠をかけ立ち去る点も共通しているという。

殺害されたのは、ファイサル・アレフィン・ディパン氏(43)。著名知識人で作家でもある父親のアブル・カシム・ファズルル・ハク氏がAFPに語ったところによると、ディパン氏は、ジャグリティ出版社の経営者で、ダッカ中心部にある建物の3階にあるオフィスで殺害されたという。警察がディパン氏の死亡を確認した。

ハク氏は、ダッカで同日、他の発行人やブロガーが襲撃されたことを聞き、息子を心配していたという。「息子はアビジット・ロイ氏の作品を出版していた。ロイ氏の作品を出版した他の発行人も襲われたが、息子だけが死亡した」

無神論者のブロガーだったロイ氏は、今年2月にブックフェアの外で襲撃されて死亡。バングラデシュで発生した一連の世俗派ライター襲撃事件で初の犠牲者となった。同国では、同様の事件で今年5人が殺害されている。

31日に発生した2事件では、「インド亜大陸のアルカイダ(AQIS)」がツイッター(Twitter)で犯行声明を出している。【11月1日 AFP】
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更には、シーア派住民を狙ったテロも起きています。

****イスラム国】ダッカの100人超負傷爆弾テロでも支部名乗るグループが犯行声明 少年死亡、2人逮捕****
バングラデシュの首都ダッカで24日未明、イスラム教シーア派の宗教行事に参加するため2万人以上の住民が集まっていた施設が爆弾テロに遭い、現地の警察当局によると、10代の少年1人が死亡、100人以上が負傷した。

ロイター通信によると、同教スンニ派過激組織「イスラム国」支部を名乗るグループが犯行声明を出した。バングラデシュで少数派のシーア派を狙ったテロは異例とされる。

AP通信によれば、テロ犯は自家製爆弾5個をシーア派の建物に投げ込み、3個が爆発した。当局は2人を逮捕した。(後略)【10月24日 産経】
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いずれの事件でも、「イスラム国」(IS)を名乗るが犯行声明が出されていますが、バングラデシュ政府はISの存在を否定し、野党バングラデシュ民族主義党(BNP)などが関与したとの見方を示しています。

おそらくは、「イスラム国」(IS)が組織的に関与したというよりは、現状への不満から過激な思想に走る者の暴力・テロが噴出しているというものではないでしょうか。

****イスラム過激派の台頭懸念 バングラ邦人殺害、政権はIS説否定****
日本人男性殺害事件で、過激派組織「イスラム国」(IS)を名乗る犯行声明が出たバングラデシュは、人口1億6千万人の9割がイスラム教徒の「イスラム大国」だ。声明の真偽は不明で、政権幹部らは否定的な見方を示した。ただ、最近ではイスラム過激派の活動が目に付いていた。

ISを名乗る声明は、3日の星邦男さん(66)殺害のほか、9月28日にダッカでイタリア人男性が殺された事件でも出ていた。

ハシナ首相は4日、両事件の背後に最大野党バングラデシュ民族主義党(BNP)とイスラム主義野党イスラム協会(JI)がいる可能性を示唆。

カーン内相も「目的は我が国の不安定化だろう。我が国に武装過激派はいない」とISの存在を否定した。発言の背景には、国内外の不安を打ち消し、外国投資などへの影響を防ぎたい思惑もあるとみられている。

これに対し、BNPは関与を否定した。

一方、国内では今年2月から8月にかけ、ネット上でイスラム過激思想に反対する言論活動を続けていた男性4人が、おのなどで殺される事件が続いていた。8月の事件では、国際テロ組織アルカイダの現地支部を名乗る犯行声明が出た。

近年は縫製業などの生産拠点として注目を集め、「ユニクロ」のファーストリテイリングなど外国企業の進出も相次ぐ。だが、2013年度の1人あたり国民総所得は960ドル(約11万5千円)と貧しい。中東などと同様に、貧困や格差、失業など社会への不満からイスラム過激思想に引き寄せられる層が出かねない状況があるとも言える。

また、政権側とBNPの対立が激しく、野党のストと警察による野党関係者の拘束が繰り返されてきた。

在留邦人の間には「政権側の弾圧で『野党不在』になりつつあり、代わるはけ口としてイスラム勢力が伸びてきている」との見方も出ていた。【10月5日 朝日】
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資本主義・グローバル化の光と影
経済活動が活発化して一部にその恩恵を享受する層が出現し始めると、その他の貧困に放置されたままの多くの者の間では社会に対する不満が大きくなります。

バングラデシュは近年では6%の経済成長を維持しており、世界銀行の分類によれば、低所得国から脱却し、中所得国となったとされています。
日本企業の進出も活発化し、重要な生産拠点となることが期待されています。

ただ、多くの労働者が厳しい環境での労働を余儀なくされている現実もあります。
2013年4月24日、首都ダッカ近郊シャバールで、縫製工場などが入居する8階建ての商業ビル「ラナ・プラザ」が崩壊した事故は、死者1,127人、負傷者2,500人以上の大惨事になりました。

2005年にも縫製工場が崩壊して70人以上が死亡。2012年には工場火災で111人が死亡しています。

****着捨てファッションの犠牲者****
・・・グローバル化がもたらす途上国の貧困問題に取り組む国際NGO(非政府組織)「ウォー・オン・ウォント」は2006年と08年の2回にわたって、バングラデシュにある(2013年崩壊事件の工場に発注していた激安ブランド)プライマークと激安スーパー「テスコ」「アスダ」の縫製工場を調査している。

報告書のタイトルはそのものズバリ「ファッションの犠牲者」だ。

08年時点では、バングラデシュは週48時間労働で残業は12時間までとされており、最高で週60時間労働しか許されていない。しかし実際は、納品の期限を守るため週最大50時間残業や午前3時までの就労を強いられることも珍しくない。

いくつかの工場では労働基準監督署の調査をごまかすため、午後7時以降は裏のタイムシートを使っていた。

プライマークなど3社の最低賃金は月13.97ポンド(2100円)。時給約10円である。月24.37ポンドもらっている従業員もいたが、最低限の暮らしを維持する生活賃金は月44・82ポンドだ。3社から支給される賃金ではとても生計を立てられない。幼子を親元に預けている女性もいた。

職場では言葉での嫌がらせやいじめ、体罰が横行していた。労働者の権利を守る労働組合の組織率はわずか3.5%。出産休暇は認められず、労災もまともに支払われていなかった。

報告書は「ファッションショーで紹介されて6週間後には世界市場に出荷する。消費者は1~2回着たら、次の新作を求める。着ては捨てる激安ファッションが普及している」と激安競争の背景を分析している。(後略)【2013年05月02日 ワフーニュースブログ】
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貧困に留め置かれた者の不満を政治に反映させるチャンネルが不在の場合、不満はテロ・暴力事件として暴発します。

ローマ法王「貧困と失望が恐怖と不信、絶望を生み、それが暴力と衝突、テロの温床となる」】
バングラデシュに限った話ではなく、世界各地に共通して見られる現象です。

****法王訪問中のアフリカ貧困地域にテロ予備軍4100万人****
サハラ砂漠の南側「サヘル」地域の国々では貧困と絶望が蔓延している

アフリカ歴訪中のローマ法王(教皇)フランシスコは、ケニアで宗教指導者と会談し、若者が過激主義に走り「野蛮な攻撃」を行っていると非難した。近年ケニアでは、武装グループによるテロ攻撃が頻発している。

法王のアフリカ歴訪は今回が初めてで、ケニアの他、ウガンダと中央アフリカ共和国も訪問する予定になっている。

ケニアの首都ナイロビで、地元のイスラム教、キリスト教などの宗教指導者と会談した法王は、武装闘争の思想を宗教で正当化しようとするテログループを非難した。「憎しみと暴力を正当化するために神の名を使うことは許されない」と語った。

最近ケニアは、イスラム原理主義を掲げる隣国ソマリアの過激派組織アルシャバブから度重なるテロ攻撃を受けている。

アルカイダとも繋がりがあるアルシャバブは、ソマリアでの同グループの反乱を鎮圧するアフリカ連合の活動にケニアが参加したことから、ケニアでのテロ活動を開始した。今年4月に、ケニア東部のガリッサ大学に過激派が侵入し、学生ら約150人が殺害された事件でも、アルシャバブが犯行声明を出している。

識字率36%、サヘル地域の暗闇
法王がこの後訪問する中央アフリカ共和国でも、イスラム教系とキリスト教系の武装勢力が活動を活発化させている。昨年9月以降、首都バンギでは、両派の散発的な衝突で90人近い死者が出ている。さらに国連機関によると、現在47万人の難民が近隣諸国に逃れている。

ケニアの会談で法王は、若者がしばしば「宗教の名の下に過激化し、対立と恐怖の種を撒き、社会の根幹をズタズタに引き裂く」と語った。

これに同意したケニア・イスラム最高評議会のアブドゥルガフール・エルブサイディ議長は、「世界は無謀な戦争に覆われている。イスラムはますます蛮行の根源と見られている」と語った。

さらに法王は、貧困が人々を暴力と過激派活動に追い込んでいる、とも指摘した。ケニアのウフル・ケニヤッタ大統領と会談した法王は、「経験則として、貧困と失望が恐怖と不信、絶望を生み、それが暴力と衝突、テロの温床となる」と語った。

アフリカでは、サハラ砂漠の南側に広がるサヘル地域に、最も貧しい国々が連なり、4100万人の若者が過激派に加わるリスクにあると言われている。

国連事務総長サヘル地域特使のイルーテ・ゲブレ・セラシは国連安全保障理事会に対して、サヘル地域の若者が「絶望に直面」し「大規模な移住や、テロ集団や個人の活動への勧誘、訓練の温床」となる危機にあると訴えた。

アフリカ大陸を横断するサヘル地域には、ブルキナファソ、チャド、モーリタニア、ニジェール、マリなどの国々が含まれる。先週末、マリの首都ババコで高級ホテルが襲撃されて外国人客ら約20人が殺害された事件では、アルカイダ系のテロ組織が犯行声明を出している。

セラシ特使によると、サヘル地域の児童の44%が小学校に通っておらず、識字率は36%にとどまっているという。【11月27日 Newsweek】
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この貧困の中で社会から疎外された人々の生活を改善し、その不満を政治に反映させるシステムを構築しない限り、いくら「イスラム国」(IS)やアルカイダを軍事的に制圧したとしても、第2、第3のISやアルカイダが「テロの温床」から生まれるだけの“もぐら叩き”でしかありません。
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現地紙記事に見る、今どきのタイ

2015-11-27 22:42:39 | 東南アジア

(前夜大量に川に流された灯篭(クラトン)のうち、岸辺にひっかかったものを川の流れに押し戻す現地の作業員 回収してしまうと、クラトンに託された思いが成就されないことにもなります。まあ、バナナの茎とか、木の葉・花といった自然素材で出来ていますので。
空に打ち上げられた大量の熱気球(コムローイ)のその後は? 大量打ち上げの主催者は、環境に配慮した素材でできていると説明していました。)

今日27日、タイのチェンマイ、スコータイの観光を終えて帰国しました。

半ズボンにTシャツ、それに薄手の上着1枚という格好で、冷房がガンガン効いたバンコク・スワンナプーム空港での乗換5時間待ちもこたえましたが(東南アジアの空港は冷房が効きすぎることがしばしばあります)、日本に着くと真冬のような寒さでふるえました。風邪でもひきそうな感じも。

空港や機内が寒いのはわかっている話で、チェンマイの空港で着替えようとも思っていたのですが、イーペン祭りのせいかチェンマイの空港が大混雑で、搭乗手続きに恐ろしく手間取り着替えのタイミングを失ったせいで・・・・。

チェンマイの現地旅行社の方からいただいたフリーペーパー「Chao」に、現地紙「タイニュース」と「チャンマイニュース」の記事を翻訳抜粋したものが掲載されていました。
今のタイの世相が見えるようで面白く、一部を紹介します。

中国人観光客の圧倒的な存在感
日本でも中国人観光客の「爆買い」が話題となりましたが、タイでも中国人観光客が目立ちます。
中国人観光客のマナーが問題となっているのも日本とおなじです。

それにしても、圧倒的な存在感があるようです。

****中国国慶節でフリーマーケットが大盛況****
10月初旬の中国の国慶節連休は、大量の中国人旅行者がチェンマイを訪れ、1日に4千人以上がチェンマイ空港を利用した。

中でもターペー門内側のフリーマーケットが、空前の大盛況となり、フリーマーケット周辺の店では、客のじつに80%が中国人観光客という事態になった。(中略)

(飲食店営業者は)「国慶節期間、売上は通常の2倍以上だった。8割が中国人で欧米人が2割、タイ人がほとんど見かけなかった」等と話す。
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****スパ・マツサージが中国人に大人気****
現在チェンマイのスパ・マッサージが有望な観光資源として注目されている。

北タイスパ協会理事長のショワナット氏は、次のように話す。

「チェンマイのスパはこれまで20~30%と低い稼働率が続いていたが、今年は50%以上まで上がった。客層の実に8割が中国人で、残りはアラブ系や、ヨーロッパ系などだ。中国人のスパ人気は今後も続くと見られるが・・・・(後略)
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携帯・スマホは生活必需品
携帯・スマホが、特に若い世代で生活必需品となっているのはタイも日本と同じですが、こんな事件も

****新機種が欲しい!」高2女子が自殺****
10月21日、チェンラーイ県チェンセーン郡内の高校2年に通う女子生徒が、自宅で首を吊って死亡しているのが発見された。

この日は母親が外へ用事に出ており、娘は家で1人で留守番をしていたが、母が戻ってくると既に娘は首を吊って息絶えていた。

母親は思い当たる点として、前日「携帯を新しい機種に変更したい」と娘に購入をねだられたが、拒否したために娘が落ち込んでいたことを挙げ、警察はおそらくこの件が自殺の直接の動機であろうと見ている。
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危険な交通事情
最近は、世界のどこへ行ってもテロの危険からは逃れられませんが、東南アジアの国々では現実問題としてはテロより遥かに危険なのが交通事故です。

運転マナーが普及する前に、また、道路・信号などの環境整備がなされる前に一気に車社会に突入したため、車が溢れる道路を横断するのにいつも大変な注意と「度胸」を必要とします。

そんな危険な道路を平気で渡っているようにも見える現地の方々ですが、さすがに交通事故が絶えまないようです。

****交通事故死亡率、タイは世界2位****
ユネスコで世界193ヶ国を対象に、交通事故による死亡率に関する調査が行なわれた。

この調査は、人口10万人あたりで1年間に交通事故で死亡する人の数を調査したもので、これによると、ナミビアが人口10万人中45人で世界第1位、タイは44人で僅差で世界第2イ立となった。

モルディブが2人で世界最少、平均は18人となっている。
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****西洋人男性が交通事故で死亡****
0月18日、チェンラーイ県ウィアンパーパオ郡のチェンマイヘと続く国道でバイクによる死亡事故があり、59歳のオーストリア人男性、ロバート・ラーパス氏が頭蓋骨陥没の状態で死亡しているのが発見された。

氏が乗っていたと見られるバイクが5m離れた場所で大破しており、警察は交通事故と見ているが、事故の原因は不明である。

また、10月20日、チェンマイ県サンカンベーン郡の国道の三差路で、交通事故が発生。乗用車に乗っていた79歳のアメリカ人男性、スタンリー・アップシャルト氏が死亡した。

氏の乗用車が国道を右折してチェンマイ市内へ入ろうとした際、直進のトラックに激突した。ただちに市内の病院へ運ばれたが、病院で死亡が確認された。また同乗していたタイ人妻も重症となった。
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これら西洋人が観光客なのか、現地在住者なのかはわかりません。
いずれにしても、現地での車・バイクの運転は大変危険です。

進行する少子化に伴う学校統廃合
タイ社会の「意外な」少子高齢化は、11月23日ブログ「タイ 少子高齢化社会へ」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20151123)でも取り上げましたが、そうした少子化に伴う学校統廃合の問題。

ただ、日本とは少し異なります。
日本では、統廃合を進めようとする当局に対し、住民側が反対する・・・という構図ですが、タイでは逆。
住民側が、教育の質を維持するために統廃合を求める・・・という話のようです。

****過疎化が進む公立小学校****
10月5日、パヤオ市内ドーム地区の4つの村の住民代表100人が集まり、村内の小学校に対し、複数の村の小学校の合併を要求するデモを行なった。

現在これらの村では児童の数が激減し、特に第7村の小学校では1年生がゼロ、全校生徒は2年から6年までで
28人しかいない。保護者の多くは、生徒数の少なさが教育の質の低下を引き起こすと懸念しており、今回のデモでは、これら生徒数の少ない4つの村の小学校を合併し、すべての児童を1つの小学校ヘ一斉編入させるように要求している。

第7村の校長はこれに対し、「生徒の数と教育の質との問には因果関係はない。生徒が少なくても、学校は生徒に対し必要十分な教育を行なっている。学校の合併には、多くの手続きと十分な時間が必要であるため、今はどうか現状を見守っていてほしい」と住民に説明した。

住民は校長の誠意ある回答を評価し、デモは散会となった。
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国立ゾウ病院
日本人的には、いかにもタイらしいと思われる記事も。

****産後の出血が止まらないずゾウを手術****
10月10日、ランパーン県の国立ゾウ病院で胎盤遺残の牝ゾウの手術が行なわれた。手術はチェンマイ大学とガセーサート大学の医学部代表18名が担当し、5時間に及ぶ大手術の末、成功した。

ゾウの胎盤遺残の手術の成功例は世界で初となる。術後も医療チームによるサポートのもと、子宮に雑菌が入らないようケアが行なわれ、牝ゾウは順調に回復している。
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タイ・チェンマイ  夜空を埋め尽くすコムローイ(熱気球)

2015-11-26 16:52:54 | 東南アジア

タイ・チェンマイを旅行中

11月25日 チェンマイは昨日から「ロイクラトン祭り」です。
「クラトン」は灯篭のことで、いわゆる灯篭流しのお祭りです。
灯篭流し以外にも、パレードやコムローイ(熱気球)上げなども。



午前中はチェンマイ市役所で行われるコムローイのコンペティションを見学に行ってきました。

このコムローイ(熱気球)は、夜に多数打ち上げられる小さな白い紙製のもの(冒頭写真)ではなく、人が乗るような熱気球を小さくしたようなもので、下部に多数の紙飛行機(30cmぐらい)と爆竹がつけられています。

松明のようなもので中の空気を暖め、空中に浮かび上がると、爆竹がさく裂し、紙飛行機が次々にリリースされます。紙飛行機は赤・青・黄色などの煙を出しながら空中を滑空します。

非常に面白いものですが、紙飛行が渋滞する路上の車列の上に落下してきたりもしますので、日本では難しいかも。(少なくとも市街地では) そもそも熱気球が最後にどこに落下するのか・・・という話もありますので。

通常の形以外にも、ドラえもんとかスノーマンなどの形をしたものも。
大きさも、建物3階ぐらい大きいものも。いろんな大きさ・形のものが順次40個ほどでしょうか、打ち上げられます。

打ち上げクルーは、気球が上がると、大声をあげて飛んでいく気球を景気づけます。ハンマー投げの選手が奇声を上げるような感じ・・・・と言えば失礼でしょうか。



会場では、クラトン(とうろう)作成コンテストも行われており、中学生ぐらいの女子(男子もいますが)が数人のグループになって、隣の大騒ぎするコムローイ上げには目もくれず、もくもくと作業しています。

灯篭はバナナの枝(?)を輪切りにした土台に、木の葉や花弁で飾り付けます。

たくさんの木の葉を組み合わせて葉っぱの形に仕上げ、そこに花弁を一枚づつ魚のうろこ状に取り付けていく・・・・。
どうやって取り付けるかと言えば、一枚づつ糸で縫い付けていきます。気の遠くなるような面倒な作業です。
タイ人のイメージとは異なる根気と正確さ、器用さです。(失礼)

一旦ホテルに帰って休憩及びカメラ充電してから、午後は「イーペン・ランナー・インターナショナル」へ。
冒頭写真にあるコムローイ一斉打ち上げで有名なイベントです。

本来は、仏教のある教団主催の行事ですから、単にコムローイを上げるというだけでなく、読経や瞑想タイム、信者の儀式などが組み込まれたイベントです。

「インターナショナル」とあるように、外国人観光客に特化したイベントです。
なお、コムローイは火を使用して火災の原因になることや、落ちてきたものが環境汚染にもつながりますので、今年は11月25日と12月31日に限定して認められています。

ですから11月25日(陰暦12月の満月の日)は、チェンマイ市内でもコムローイが夜になると打ち上げられ、夜空に星のように点々と輝いていますが、空を覆い尽くすようなコムローイとなると、郊外で開催される「イーペン・ランナー」ということになります。

「インターナショナル」のチケットは、現地旅行社を通じて手配しましたが、半日のJTB現地ツアーで、バス送迎こみ・日本語ガイド付きで約25,000円(2500円ではありません)ほどしました。

それだけ申し込みが殺到する人気イベントであるということですが、特に日本で大人気のようで、広い会場に集まった千人は軽く超えそうな観光客の大半は日本人で、あちこちで日本語が飛び交う、イベントの司会も日本語、中国語、そして英語の順で行われるという具合です。

「日本人がクソ多いな・・・だったら日本でやればいいのに」との観客のつぶやきも。

イベントの様子は旅行記サイトへアップしますが、宗教行事としての長い拘束時間のうち、お待ちかねのコムローイ打ち上げは最後の30分だけ。



一人一個のコムローイを三人一組になって計3個打ち上げますが、打ち上げが結構忙しく、写真も撮りたいし・・・・という慌ただしい30分で、肉眼での印象が薄くなったきらいも。観光地でよくあることです。

コムローイ自体は何年か前、年末年始にチェンマイを訪れたさいに、事前の情報もなく遭遇して感動した記憶があります。

2回目ということ、先述のように肉眼での印象が薄くなった等でやや不完全燃焼の気分もありましたが、記録した動画を再生すると、「うそ・・・!すごいよ!」といった感極まった周辺女性の声も入っていました。

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タイ・チェンマイの「イーペン祭り」開始

2015-11-25 16:17:08 | 東南アジア

1月24日 スコータイからチェンマイに戻ってきました。(バスで6時間)
ターペー門付近で、「チェンマイ・イーペン祭り」開始セレモニーとパレードがあるとかで、見物にでかけました。

「ロイクラトン(灯篭流しの祭り)」を、チェンマイでは「イーペン祭り」と称しているようです。

****『イーペン祭り』は川の恵みに感謝する祭り****
11月に欧米からチェンマイを訪れる旅行客のお目当ては、『チェンマイ・イーペン祭り』です。

2015年も11月24~26日の期間に行われます。美しいパレードが練り歩くこの3日間は、旅行客であふれます。

そもそも「イーペン」とは「陰暦12月の満月」のこと。

タイではこの陰暦12月の満月の夜、『ロイクラトン』というお祭りが各地で開催されます。川の恵みに感謝し、自らの心身を清めるため、花やロウソクで飾った灯籠(クラトン)を川に流す行事です。

そして、チェンマイでは、『ロイクラトン』は、『イーペン祭り』と呼ばれているのです。
http://exp-th.com/2013/10/11/yli2015-2/
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紛らわしいのは、明日見物に行く、熱気球「コムローイ」で有名な「イーペン・サンサーイ祭り」との関係です。
基本的には「イーペン・サンサーイ祭り」は「チェンマイ・イーペン祭り」とは別物の、特定教団による行事のようです。

ターペー門周辺はすごい人だかりで、何が行われているかわからいような状態でした。


パレードがターペー通りに進むと、人だかりも少なくなって、ゆっくりと眺めることも。




ずっと待っていれば、開始セレモニー会場に置いてあった飾り物やミスコン優勝者などを乗せた山車もあったのかもしれませんが、連日のバス旅の疲れもあって、これで引き揚げました。
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タイ スコータイのロイクラトン(灯篭流し) 世界遺産遺跡を舞台にした光と音のページェント

2015-11-24 19:01:54 | 東南アジア

11月22日(月曜日) タイを旅行中

昨夜到着したチェンマイから、朝にはスコータイへバスで移動。
スコータイはバンコクとチェンマイの中間ぐらい。今日スコータイで観光して、明日はまたチェンマイにもどります。片道6時間弱の長旅。

だったら最初からバンコクからスコータイへ入ればいいのに・・・・という話はありますが、フライトの都合とか、手配してもらった旅行社がチェンマイの旅行社だったりといった事情で、こういうスケジュールに。

まあ、結果的にチェンマイでサンデーマーケットは楽しめたし、よしとしましょう。

ただ、6時間のバス旅はちょっと疲れました。途中、地元の人々が乗り降りする各駅停車の生活路線バスといった感じもなって、なかなかはかどりません。
ローカルな雰囲気が少し味わえるといも言えますが。

途中で警官が車内に乗り込んでIDカードなどをチェックする検問も。
8月のバンコクテロの影響でしょうか。

ただ、「パスポートは荷物室のバッグの中にあるので・・・」という外国人もおとがめなしの様子で・・・まあ、タイですから。

昼食抜きで、3時にようやくスコータイ到着。
ホテルは以前使ったことがあるゲストハウス。

ホテルにチェックイン後、すぐに世界遺産にも登録されている遺跡公園に乗り合いソンテオで移動。
30B(約100円) ソンテオは安いのはいいのですが、客が十分集まるまで発車しないので、急いでいるときはイラっとします。

スコータイ王朝時代の遺跡が多数集中する広大な遺跡公園は以前も自転車を借りて数日観光していますので、今回の目的は今夜ここで行われるロイクラトンのお祭りです。

広大な遺跡群を背景にして、スコータイ王朝絵巻ともいった「ライト&サウンドショー」が行われます。
このために、チェンマイから遠路はるばるやってきたという、物好きです。

チケットは先述の旅行社を通して入手済み。(人気のショーですから、現地で当日券を入手するのは難しいかも)
ただ、手数料込の料金ですから約4000円ぐらいと、チケット料金そのものより相当高くなります。

まだ明るい5時頃に遺跡公園に到着。

普段の(と言っても、何年か前に1回来たことがあるだけですが)遺跡公園はだだっ広い敷地内に観光客もまばらで、食事ができるような場所もなくて困った・・・というところでしたが、今日ロイクラトンの遺跡公園は別世界です。

何べんも言うように、遺跡公園は城壁内だけでも、1km四方もあるような広大な敷地です。その敷地全体が一大マーケットと化して、夥しい人々で埋まっています。

「ロイクラトン」の“クラトン”は“灯篭”の意味で、川に灯篭を流す“灯篭流し”の行事です。
ですから、灯篭を売っている夜店ももちろん多数ありますが、食べ物や土産物、子供のおもちゃなど、いろんなお店がひしめき合い、いくつか設置されたステージでは歌い、踊り・・・という訳で、要は壮大な“お祭り騒ぎ”です。

北部タイはこの時期朝晩はかなりしのぎやすくなりますので、家族・友達・恋人が出歩くのにはいい季節です。

で、私はと言えば、ショーがはじまるまで、次第に暗くなるなかでライトップされた遺跡群や灯篭の写真を撮るのに夢中。

別に写真が趣味という訳でもありませんが、旅行ブログ用に毎回旅行ではたくさんの写真を撮影します。
ただ、いままでのコンデジでは夜景がうまく撮れませんでした。

そこで、今回はカメラを新しく購入(と言っても、手軽なコンデジにかわりありませんが)、なんと三脚まで買って、気合を入れてやってきました。

一体どの撮影モードで撮ると一番きれいに写るのか・・・・、慣れないカメラ、使ったことがない三脚と悪戦苦闘。
写真に夢中になってつい撮りすぎ、バッテリー残量が少なくなってしまいました。

予備に以前のカメラはもっていますが、ショーのステージ撮影には荷が重すぎるかも。まあ、仕方ありません。


そうこうしているうちにショーが始まる7時半に。

なんといっても世界遺産の遺跡群を背景にした一大絵巻ショー(スコータイ王朝成立の歴史が題材か)ですから、壮観であるのは間違いありません。

なかでも、3頭ののゾウを使った戦闘シーンは圧巻です。

以前チェンマイで鼻で絵筆をつかみキャンバスに絵を描くゾウを見ました。
もちろんゾウに絵心があるわけではなく、訓練されたようになぞっているだけでしょうが、それでも見事なものでした。

今回のショーのゾウも、演技を十分に心得ているかのようです。
ゾウ同士の戦いのシーン、しかも何百人もの観客の前、ライトがステージを照らし、大音量の音楽が流れる、スモークがたかれる・・・・そういうなかでの“演技”です。

興奮してマジになる様子もなく、冷静に頭を突き合わせて押したり引いたりする演技を披露してくれます。
たいしたものです。

演じる人間も、軽く百人を超す大規模なショーです。なにぶんステージが遺跡群で広いですから。
王朝時代の衣装に身をつつんだキレイどころも多数。

ただ、ゾウに比べると、ステージが広いだけにやや散漫な感も。写真撮影の方に気がいってしまい、肉眼であまり観ていないせいかも。よくある間違いです。

とにかく、ここでもなんとかショーの写真を・・・と悪戦苦闘。結果は惨敗でした。明暗の差が大きく、少し離れたステージを撮影するのはなかなか・・・。役者は動き回りますし、スモークで煙ったりもしますし。特に望遠を使うと難しいものがあります。

心配したとおり、途中でバッテリー切れ。予備のカメラでとにかく撮影。


ショー後半には、コムローイ(筒形の白い布でできた熱気球)が夜空に飛ばされ、花火も・・・。

チェンマイから往復12時間かけて観に来る価値があるかは好みの問題ですが、まあ、こんなものもたまにはよろしいのではないでしょうか。ライトで浮かび上がる遺跡群はきれいですし、とにかくゾウは圧巻です。

ショーが終わった後、屋台で食べ物・飲み物を買って、敷地内をしばし散策。敷地内がマーケットというか、遊園地になったような賑わいです。

帰りの乗ったソンテオが30分以上も出発せず、その間やぶ蚊の攻撃にさらされたのには閉口しました。まあ、タイですから・・・・。
せっかく日本からもってきた虫よけも部屋に忘れてきました。いつもこんな調子です。

明日24日はチェンマイにもどり(またバスで6時間)ます。
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タイ  少子高齢化社会へ

2015-11-23 09:00:16 | 東南アジア

(大勢の観光客で賑わうタイ・チェンマイのサンデーマーケット 11月22日)

タイ テロに幕引き】
いつもの一人旅でタイ・チェンマイに来ました。
今回の予定は、チェンマイで、コムロイと呼ばれる熱気球飛ばしで有名な「イーペンランナー」を、またスコータイで灯篭流しが美しい「ロイクラトン」を楽しむ予定です。

チェンマイもスコータイも、何年か前に観光していますので、今回は二つのお祭り見学に絞ったスケジュールです。

とりあえず、今日は新幹線で福岡に移動。福岡空港からタイ航空でバンコクへ。バンコクで乗り換えてチャンマイに現地7時頃到着。

チェンマイの空港で両替しようとしたら、バッグに入れたつもりの財布が見つかりません。すべてのおカネがその財布に入っています。焦り狂って4、5回バッグの中を探し、あきらめて「クレジットカードでATMから引き出すことで何とかならいか・・・」と考えていたときに財布を発見。「あるじゃないか・・・・」

色がバッグと同じ黒色だったせいで見落としたようです。
事なきを得ましたが、かなりボケてきたような・・・。

ホテルチェックイン後、ちょうど日曜日ということで、ターペー門周辺で開かれている「サンデーマーケット」に行ってきました。

延々と夜店が連なる大規模なマーケットで、外国人観光客であふれています。
「こんな場所で、爆弾テロなどがあったら・・・」なんてことは考えないことに。

8月にバンコクで起きた爆弾テロについては、幕引きがなされたようです。

ウイグル族の中国への強制送還への報復・・・といった線も取り沙汰されていましたが、そのあたりがどうなったのかは判然としません。

観光立国のタイですから、いつまでもテロの不安を引きずる訳にはいかない事情もあると思われます。

****バンコク爆破テロ、捜査終了 全容解明にはほど遠く****
タイの首都バンコクで8月に起きた爆破テロ事件で、タイ警察は27日、逮捕した容疑者らの身柄と捜査資料をすべて検察当局に送り、捜査を終えた。シーワラー国家警察庁長官補が明らかにした。検察は軍事裁判所に容疑者を起訴する方針。ただ、犯行動機を中心に不明な点が多く残されている。

バンコク中心部の「エラワン廟(びょう)」で起きた爆発では150人が死傷した。警察はアデム・カラダック容疑者(28)ら2人の中国・新疆ウイグル自治区出身者を実行犯として計画殺人容疑などで逮捕した。

しかし、ほかに逮捕状が出た15人は逃亡中で、事件の全容解明にはほど遠い状況だ。軍事法廷での公判は公開されない可能性があり、裁判の公正さや透明性を疑問視する声も出ている。【10月27日 朝日】
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なお、安倍首相はタイのプラユット首相と会談し、対テロでの結束を確認しています。

****安倍首相、タイのプラユット首相と会談 対テロでの結束を確認****
タイとも対テロでの結束を確認した。
安倍首相は20日、訪問先のマレーシアで、タイのプラユット首相と会談し、8月に起きたバンコクでの爆弾テロの犠牲者に対し、お悔やみを伝えた。

合わせて、パリで発生した同時多発テロについて、「国際社会が一致結束し、断固非難すべきだ」との考えを示し、タイを含む国際社会と緊密に連携する考えを示した。

これに対し、プラユット首相は、「テロに対する国際的な取り組みに、日本とともに協力していきたい」と応じ、協力していく考えを示した。【11月21日 FNN】
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少子高齢化に突入したタイ
タイ関連のニュースは最近あまり目にしませんが、「へえ・・・そうなんだ・・・」とちょっと驚いた記事が1件。

日本、韓国、台湾、シンガポール、更には「一人っ子政策」を放棄した中国も、少子高齢化の大問題を抱えていますが、タイもやはり同じ状況にあるそうです。

東南アジアというと、“子だくさん”のイメージがありますが、タイはそうした段階を過ぎたようです。
確かに言われてみると、タイでは「子供がワラワラ・・・」といった光景はあまり見かけないようにも思えます。

****老人の国へまっしぐら、高学歴女性ほど結婚しないタイ****
アジアの少子高齢化(2)~バンコクの合計特殊出生率は0.8

・・・ASEAN(東南アジア諸国連合)で第2位の経済大国、さらにこれからも投資拡大が期待されているタイも、実は少子高齢化問題が重くのしかかってきた。

タイと言えば、日本と二人三脚で発展してきたと言ってもよいほど日本企業の進出が著しい。タイで大規模なデモが発生して放火されるような事件があっても、日系企業の入っているビルは絶妙に避けるとも言われている。

日本にとってもアジアの拠点として最も重要な国と言ってもいい。しかし、この国でも少子高齢化が急ピッチだ。いまや日系企業がタイに進出する際の問題は、賃金やカントリーリスクの上昇ではなく、実は人出不足(高度人材含む)にある。

あと15年で高齢者率25%に
タイ国家統計局によると、2014年の60歳以上は6500万人の人口のうち約1000万人で、全人口の約15%にも上り、6.5人に1人が60歳以上という、すでに立派な高齢化社会となってしまった。

1994年に約7%だった60歳以上人口が2012年には約12%へと跳ね上がった。高齢者数は2030年には1760万人(総人口の約25%)、2040年には2050万人に達すると見込まれている。

また、合計特殊出生率も1.39と日本より低く、首都バンコクに限っては0.8とも言われ、平均年齢も他のアジア諸国よりはるかに高い34歳(ASEAN域内で2番目、トップはシンガポール)。

ASEAN域内では、イスラム国家ゆえに人口増が見込まれるインドネシアやマレーシアを除けば、タイはシンガポールに次いでいち早く、“超”少子高齢化社会へ向かうのは間違いないだろう。

他のアジアの国と同様、医療技術発展に伴い平均寿命が伸び、高齢化に拍車がかかり、一方、人口抑制策を進めるなか、女性の高学歴化による社会進出拡大で晩婚化、未婚化が急増していることが背景にある。(中略)

日本では「ワーキングプア」層の拡大で結婚できない男性が増えているが、タイでは女性や男性で年収が低いほど結婚率が高く、その反対に年収が高いほど結婚率が低いという現象が起きている。

地方でも子供は最大2人まで
・・・また、「結婚しない女」だけでなく、晩婚化で「子供を生まない女」も増えてきており、今では都市部に比べ子供が多いはずの地方ですら、夫婦の間に子供は2人までというのが常識化しているという。

そんななか、政府(軍事政権下)は政治経済の制度改革を図る「国家改革議会」が少子高齢化対策を重点施策と位置づけ、このほど同対策のため2017年度(2016年10から2017年9月)から、個人所得税の控除枠拡大計画を明らかにし、子育て支援目的の「年少扶養控除拡大」を盛り込んだ。(中略)

また、少子化対策だけでなく高齢社会に向けた取り組みも、まだ始まったばかりだ。

最大の問題は、高齢者の低所得問題。タイの国家統計局などの調べでは、高齢者のうち、貯蓄のある人は34%にとどまり、その半数以上が貯金が全くない状態で、「貧困高齢者」が増えているという。

経済発展に伴う物価上昇などで、公的年金では賄えず、生活費などのほとんどを子供や孫からの仕送りなどに依存し、医療費などへの将来不安などを理由に高齢者の自殺が20%近くにまで増加し、年々増加傾向にあるという。

首都バンコクには、24時間体制の高齢者専門医療施設があるが、破格な入居料で富裕層に限定されているのが現状だ。

とりわけタイでは、高齢化対策は少子化を上回る緊急課題。医療や介護サービス、さらには年金問題など取り組む問題は目白押しだ。高齢者基金は設立されたものの、高齢者医療保険や老齢年金についてはまだまだ検討の段階。

年老いた親が孤独死するケースも
制度面の問題だけでなく、少子高齢化問題は、タイの伝統的な家族制度の「大家族主義」も変えようとしている。都市部でも農村部でも共働きの両親に変わって祖父母が子供の面倒を見て、家族を支えてきたが、その大家族主義も崩壊危機寸前だという。

経済成長の発展で農村の若い世代は都市部に移住、年老いた親が孤独死するケースも増えてきたという。

現在のタイの1人当たりのGDPは約5426ドル(IMF統計、2015年10月時点)。今年にも人口ボーナス期が終焉すると見られるが、先進国との経済や技術力と後発新興国の追い上げの狭間で、このままいくと、豊かになる前に老いていく事態に陥ることが予想され、まさに「中所得国の罠」にはまってしまったと言える。

こうした事態は、中国リスクを避けるためもあっていまなお進出が絶えない日本企業にとって厄介な問題だ。アジアは日本と違って若い働き手がいっぱいいる、しかも賃金は安い――。このような考えをいまだ持っているとしたら、それは幻想に過ぎない。(後略)。【11月16日 末永 恵氏 JB Press】
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中南米 勢いを失いつつある左派政権 アルゼンチン・ブラジル・キューバなどの話題から

2015-11-21 22:41:59 | ラテンアメリカ

中米コスタリカとニカラグアの国境付近に滞留するキューバ人亡命者【11月19日 時事】

テロとか内戦や難民の話、あるいは中国関連の話などをはなれて、日頃触れる機会があまり多くない中南米の話題をまとめていくつか。

アルゼンチン:22日大統領選決選投票 政権交代も
アルゼンチンのフェルナンデス大統領の任期満了に伴う大統領選挙は、高いインフレが続く経済の立て直しを主な争点に6人が立候補するなかで10月25日に行われましたが、事前の予想を覆す形で野党候補が善戦し、決選投票にもつれこんでいます。

****与党候補、まさかの失速=決選投票へ競争激化―アルゼンチン大統領選****
アルゼンチンで25日投開票された大統領選挙では、世論調査で優勢が伝えられたブエノスアイレス州知事のダニエル・シオリ氏(58)がまさかの失速を見せ、野党でブエノスアイレス市長のマウリシオ・マクリ氏(56)の追い上げを許した。

11月22日の決選投票では、第1回投票で3位に終わった下院議員セルヒオ・マサ氏(43)の支持票獲得がカギとなる。シオリ、マクリ両氏は早くも支援を呼び掛けており、選挙戦が激しさを増すのは確実だ。

選管発表によると、第1回投票(開票率96%)は、シオリ氏が37%で辛うじて首位を確保。マクリ氏が35%と猛追した。マサ氏は21%を得票した。事前の世論調査では、シオリ氏がマクリ氏に10ポイント前後の差をつけているとみられていた。

シオリ氏は「私はすべての国民のために働く」と訴えるとともに、フェルナンデス大統領から受け継いだ支持基盤の貧困層や中間層に結束強化を呼び掛けた。

一方、財界からの期待が高いマクリ氏は、予想外の善戦に「きょう起きたことは政治を変えた」と強調。フェルナンデス路線からの「変革」に決意を示した。

フェルナンデス政権で若手のホープだったマサ氏は、決選投票への態度を明らかにしていない。第1回投票の敗北を認めるとともに、支持者に謝意を述べるにとどまっている。【10月26日 時事】
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決選投票は明日22日に行われますが、野党候補マクリ氏の優勢が伝えられています。
ただ、選挙予測というものは往々にしてはずれますので、ふたを開けてみないと・・・。

***大統領選、野党リード=22日に決選投票―アルゼンチン****
アルゼンチンで22日、フェルナンデス大統領(62)の任期満了に伴う大統領選挙の決選投票が行われる。「この国を変えよう」と訴え、12年間続く中道左派政権の打倒を目指す中道右派の野党連合「カンビエモス(変えよう)」のブエノスアイレス市長、マウリシオ・マクリ氏(56)がリード。

フェルナンデス大統領が推す与党連合「勝利のための戦線」のブエノスアイレス州知事、ダニエル・シオリ氏(58)が追う展開となっている。

政権交代が実現すれば、米国と国交回復したキューバ、深刻な不況に苦しむベネズエラなど、中南米で勢いを失いつつある左派勢力の一角が一つ崩れることになる。【11月21日 時事】 
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外交的に見ると、もし野党・中道右派のマクリ氏が勝利すれば、これまで12年間続いた中国・ロシアへの依存外交から欧米に重要度を置く外交に軌道修正することにもなります。

アルゼンチンが中国・ロシアに傾斜しているのは、左派政権ということに加え、2回のデフォルトによって資金調達が難しい同国を中国・ロシアが支援して関係を強めたことによります。

そして今、アメリカは中南米の左派勢力を切り崩す作戦を進めており、アルゼンチンの野党候補もアメリカの支持を受けているとか。

****米中の覇権争いとなったアルゼンチン大統領選。同国の将来はいかに!?****
・・・・一方で、現在のアルゼンチンは経済面で中国とロシアに依存した国になっている。

この両国への依存度が如何に強いか? それは、2期8年を勤めるクリスティーナ・フェルナンデス大統領が、中国とロシアへは数度訪問しているにもかかわらず、米国へは任期中に一度も訪問していないということからも明らかだろう。

特に、中国への依存度が高いことは国民レベルでも感じているようで、彼らの間で自国名をスペイン語で「アルヘンティーナ」という代わりに「アルヘンチナ」と皮肉る者もいるという(「チナ」=スペイン語で中国のこと)。

アルゼンチンから中国へは大豆など穀物を輸出し、中国からはその輸出を促進させる為だとして、インフラ整備などで中国資金がアルゼンチンに流入して来た。そして、中国製品で同国の市場は溢れている。

アルゼンチンが中国に傾斜した背景には、フェルナンデス大統領がベネズエラのチャベス前大統領やブラジルのルラ前大統領の反米意識に共鳴したからだ。

しかも、2001年にデフォルトを経験し、その後経済は回復したものの、インフレ率は常に高く輸出の伸展を妨げて来た。しかも、2014年には米国の「ハゲタカ」ファンドとの問題から再度デフォルトを経験した。

その為、アルゼンチンにとって外貨の獲得は容易ではない。そういった事情の中で、中国は容易にアルゼンチンに資金を提供する国として両国は関係をより深めたのである。

ロシアもそれに追随して、武器の供給や原子炉の建設などで協力している。この二国の支持もあって、現在アルゼンチンのBRICSへの加盟も間近に迫っているという。

アルゼンチンを舞台にした米中覇権争い
しかし、ここで留意されるべきことがひとつあるのだ。それは、「コンドル作戦」についてだ。
コンドル作戦とは、CIAが70-80年代に南米の左派勢力を一掃するべく当時の右派政権や現地の諜報組織に資金支援をし賄賂などを行わせ、時には人体に損傷を加えたりして左派系のリーダーを失脚させるべく行っていた工作活動のことだ。

その対象になった国はブラジル、アルゼンチン、ボリビア、チリ、パラグアイ、ペルーといった国で、さまざまなスピンを流すことで対象国の左派系リーダーを政治の表舞台から失脚させていた。

そして今、米国は「第2のコンドル作戦」を展開しているとして「RT」などのロシア系メディアなどが報じ始めているのだ。(中略)

そして今、現職のマドゥロ、コレア、モラレスらの失脚を第2コンドル作戦は狙っているという。この中に、アルゼンチン大統領選挙の行方が対象にされているというのである。即ち、米国が直接的間接的にマクリ候補を支援する活動を行っているというのだ。(中略)

ただ、どちらが大統領に選ばれるにせよ、フェルナンデス大統領政権下の負の遺産に取り組まねばならない。

アルゼンチン経済紙『iProfesional』によると、来年のインフレ34%、GDPはマイナス0.3%、貨幣の切下げ38%まで進む、財政赤字4.1%、失業率8.4%と予測されており、どの点においても非常に厳しい経済状況が控えているということである。【11月15日 白石和幸氏 HARBOR BUSINESS Online】
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ブラジル:汚職事件と経済低迷に苦しむルセフ政権
ブラジルでは、国営石油会社を巡る汚職事件や長引く経済低迷から、ルセフ大統領の弾劾を求める動きが広がっていることなどは、8月17日ブログ「ブラジル 汚職・経済低迷・・・今年3回目の大規模抗議デモ 治安問題のひとつに“警官による殺害”」()でも取り上げたところです。

8月の時点でルセフ大統領の支持率は8%で、歴代大統領の中で最低となっています。

汚職事件の捜査は、与党の最高実力者でルセフ政権の後ろ盾でもあったルラ前大統領にも及んでいます。

****ブラジルのルセフ政権に強まる逆風 汚職事件で2閣僚の捜査開始 「後ろ盾の」前大統領にも疑惑浮上****
南米ブラジルの国営石油会社ペトロブラスをめぐる汚職事件が、ルセフ大統領の政権運営に暗い影を落としている。

最高裁が今月5日、ルセフ政権の2閣僚について捜査開始を承認。連邦検察はさらに、ルセフ氏の「後ろ盾」ともいえるルラ前大統領の事情聴取を認めるよう最高裁に求めたもようで、政権への逆風はさらに強まりそうだ。

AP通信や地元メディアによると、ルラ氏は大統領を退任後、大手建設会社「オデブレヒト」の経費で海外に渡航し、同社の公共事業の受注を支援した疑いが指摘され、検察当局が捜査している。疑惑はペトロブラス汚職事件の捜査の過程で浮上した。ルラ氏側は全面否定している。

ペトロブラス事件をめぐっては、ルラ政権時代のジルセウ元官房長官が今年8月に逮捕され、今月訴追された。

ルラ氏は2003〜10年に大統領を務め、昨年のサッカーW杯や来年のリオデジャネイロ五輪の招致を成功させた。ルセフ政権への影響力も強く、ルラ氏をめぐる捜査が本格化すれば、ルセフ氏にとっても最大級の打撃となる。【9月15日 産経】
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ルラ前大統領がルセフ政権の後ろ盾であったのは事実ですが、最近は、汚職事件をめぐる動きに加えて、ルセフ政権の進める緊縮財政策を巡って両者の不和も伝えられています。

****緊縮財政巡る亀裂で揺らぐブラジル与党 ****
(2015年10月26日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

・・・・2003~10年まで8年にわたるルラ氏の任期中に首席補佐官を務めたルセフ氏とその恩師のルラ氏の間には意見の違いがあると長らくいわれてきたが、それが今月になって表に出てきた形だ。

■ルラ氏、財務相の政策に懸念
政権を握る左派労働党で今も影響力を保つルラ氏が、ルセフ政権で財務相を務める米シカゴ大学出身のジョアキン・レビ氏の経済政策を批判したことから対立が生じた。

11~14年の最初の任期中、長期の財政刺激策に多額の資金を投じたことから悪化した同国の財政を立て直すために、ルセフ氏は今年レビ氏を起用した。

ルラ氏と労働党が問題視するのが、インフレを防ぐための国有銀行の融資抑制や金利の引き上げなどのレビ氏の財政緊縮策が最悪のタイミングで行われたことだ。国有石油会社ペトロブラスの汚職疑惑で、同党の支持は著しく低迷している。

なお悪いことに、インフレが進む中で景気後退により失業率が上昇した。労働党の中核支持層である労働組合や労働者階級にとっては二重の打撃だ。来年の地方選挙を控え、レビ氏の財政緊縮策が国民の怒りを招くことを労働党は懸念している。

自身と労働党を現政権の財政緊縮策から距離を置く狙いから、ルラ氏は先に開催された労働組合の会議で、ルセフ政権が昨年10月の選挙で破った経済施策ではより正統派の野党ブラジル社会民主党(PSDB)のような振る舞いをしていると述べ、同政権を激しく非難した。

同士打ちに対してルセフ氏は、労働党の意見は政府の意見を代弁するものではなく、レビ氏に全幅の信頼を寄せていると言明した。(後略)【10月26日 日経電子版】
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ブラジル経済の方は、かつての「新興国」代表の面影をなくし、今年の成長率はマイナス3%とかなり厳しい状況にあります。

****ブラジル後退、遠い成長 成長率マイナス3%予想****
2000年代に新興国ブームを代表する国の一つと言われた、南米のブラジル。今年の成長率はマイナス3%と、四半世紀ぶりの落ち込みが予想される。主産業の自動車工場では解雇が進み、物価の急騰で市民は苦しむが、政治は混乱。新たな成長の牽引(けんいん)役は見つかっていない。(中略)

足もとでは、物価上昇率が10%に迫り、食料や家賃も上がって生活を直撃。増税や社会保障の削減に、市民の不満は募る。

 ■政治混乱、低迷に拍車
資源大国でもあるブラジルはこれまで、穀物や鉄鉱石を輸出して外貨を稼ぐ恩恵を受けてきた。しかし、最大の貿易相手国である中国経済の減速で資源価格が下落し、打撃を受ける。

ルセフ政権は、多数の与党議員らが絡んだ国営石油会社の汚職事件の発覚もあり、支持率が急落。退陣を求めるデモも相次ぎ、経済立て直しはままならない。

国際通貨基金(IMF)の勤務経験もあるレビ氏が1月に財務相に就いたが、増税や歳出削減で財政健全化を進めようとする手法に、野党や与党の一部が「景気に水を差す」と反発。ルセフ大統領は8月、「経済状況の深刻さに気づくのが遅れた。早く政策を転換すべきだった」と責任を認めた。

政府が来年度の予算案を赤字のまま提出したのを機に、米大手格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は9月、ブラジル国債の格付けを「投資不適格」の水準に引き下げた。お金の流出はさらに加速し、米国が利上げするとの観測も重なり、9月半ばには1ドル=4レアル台に。94年にレアルが始まって以来、最低の水準になった。

ブラジリア大学のパウロ・クラメル教授(政治学)は「ルセフ氏の政策失敗に加え、政治の混乱がさらなる経済低迷を招いている。こうした状況はしばらく続くだろう」と指摘する。【11月15日 朝日】
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キューバ亡命者急増で中米混乱
欧州に中東・アジア・北アフリカなどから押し寄せる難民の話は連日メディアに取り上げられていますが、中米では「キューバ亡命者」のラッシュが起きて周辺国を巻き込んだ問題が生じているという興味深い話も。

従来、アメリカはキューバ・カストロ政権への対抗策から、“カストロ政権に弾圧された”キューバ亡命者を受け入れてきましたが、周知のようにキューバとアメリカの関係改善が進むなかで、この亡命者受け入れ策が中止されるのでは・・・との思惑から、今のうちにアメリカに渡ろうとする“駆け込み”が起きているそうです。

そのしわ寄せで、コスタリカとニカラグアが対立を深めているとか。

****キューバ人亡命者、立ち往生=中米諸国に思わぬしわ寄せ―コスタリカ****
中米を経由して米国への亡命を目指すキューバ人をめぐり、コスタリカとニカラグアが対立を深めている。

両国が受け入れの責任を押し付けあう中、キューバ人約2000人が行き場を失って立ち往生。急増する亡命者が中米諸国に思わぬしわ寄せをもたらしている。

対立は、コスタリカが11月中旬、米国に向かうキューバ人に7日間の短期ビザを与え、ニカラグアへの通過を認めたのが発端。

ニカラグアは「何も話を聞いていない」と猛反発し、国境を守る軍隊に催涙弾を発砲させるなどしてキューバ人を追い返す強硬策に出た。

キューバ人亡命者は、経由地となる中米諸国の大きな負担となりつつある。通過先の隣国が受け入れを拒否した場合、自国に滞在する亡命者を多額の予算を投じて保護する必要があるためだ。外交筋は「人道的観点だけで安易に自国の通過を認めるわけにはいかない」と指摘する。

キューバでは2014年末の米国との関係改善後、「米国が間もなくキューバ人の受け入れを打ち切る」とのうわさが広がり、亡命希望者が急増している。

コスタリカ政府によると、同国が摘発したキューバ人不法滞在者は13年の約300人から15年は既に1万3000人を突破。取り締まりを逃れたケースを含めると、「さらに何倍もいる」(地元メディア)とみられている。

米国は「キューバ人受け入れ政策は変更しない」と訴えるが、全財産を処分して新天地を目指すキューバ人が減少する気配はない。

「地域で対応すべき問題だ」と中米諸国に問題解決への協力を呼び掛けているコスタリカに対し、これまでに前向きな回答は寄せられていないもようだ。【11月19日 時事】 
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ベネスエラ:大統領親族のスキャンダル
経済状況の悪化に苦しむベネズエラ・マドゥロ大統領に更なる追い打ちも。

****大統領の親族2人、麻薬密輸で起訴=議会選控え政権に打撃―ベネズエラ****
ベネズエラのマドゥロ大統領の親族2人が12日、コカインを密輸しようとした罪で米国で起訴された。ロイター通信などが報じた。

ベネズエラでは12月に議会選挙が行われる。与党の苦戦が予想される中、大統領親族のスキャンダルは政権にさらなるダメージを与えそうだ。

起訴されたのは、いずれもマドゥロ氏の妻のおいで、ホンジュラス経由で米国にコカインなどを持ち込もうとして、米国のおとり捜査官に接触した。米国の要請により10日にハイチで拘束され、米麻薬当局に引き渡された。【11月13日 時事】
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南米ペルーでは、マネーロンダリング(資金洗浄)容疑でウマラ大統領のナディネ・エレディア夫人への捜査が行われており、捜査中の女性検察官を更迭した法相が批判を受けて辞任しています。

南米ウルグアイの医師でもあるバスケス大統領が、公式訪問先のフランスへ移動中、機内で食物アレルギーで重い窒息状態になったフランス人女性を手当てして救ったという“明るい”ニュースもありましたが、南米左派政権は総じて勢いを失いつつあるような状況です。
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日本政府  特定秘密保護法の現状などに関する国連調査を来年秋以降に延期

2015-11-20 23:17:56 | 世相

(秩父神社の「お元気三猿」 【秩父ナビ http://秩父.1epi.info/post_2.html】)

【「予算編成などで担当者のスケジュールが合わない」?】
「どうして?」と首をかしげたくなるような話。

****表現の自由」調査、突如延期=日本政府が国連報告者に要請****
国連人権理事会のデービッド・ケイ特別報告者(表現の自由担当)が12月に予定していた日本での現地調査が、日本政府の要請で突如延期になったことが20日、明らかになった。ケイ氏は2013年に成立した特定秘密保護法の現状などを調査する予定だった。

岸田文雄外相は「予算編成作業などで十分な受け入れ態勢を整えることが困難なため」と説明した。ケイ氏の前任のフランク・ラ・ルー特別報告者は13年、特定秘密保護法について「秘密の範囲が非常に広範で根拠が不明確」と懸念を示していた。

ケイ氏は12月1日から8日まで日本政府やNGO関係者と会い、表現の自由に関する調査を予定していた。しかし、ケイ氏のブログによれば、ジュネーブ国際機関日本政府代表部から今月13日に、来年秋まで訪日を延期してほしいという要請があった。ケイ氏は日本側に再考を求めたが、受け入れられなかったという。【11月20日 時事】 
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“外務省人権人道課によると、ケイ氏側の希望に沿って12月1日から8日までの訪日で調整していたが、11月中旬に同省から「予算編成などで担当者のスケジュールが合わない」と延期を求めたという。その際、「国会などの時期は避けてほしい」とも要求し、事実上、来年秋以降の時期を提示した。”【11月20日 朝日】

「来年秋以降」ということは、1年近く先延ばしということです。「予算編成などで担当者のスケジュールが合わない」という理由でそんな先延ばしするというのは奇妙な話です。

要するに、特定秘密保護法に批判的な結果になることも予想される調査は受けたくないということでしょう。
「来年秋以降」というのは、来年の参院選が終わってからということでしょうか?

支持率で自民党が圧倒的に高く、野党が壊滅状態にあることに加え、改選議席の点でも民主党の大幅減が予想されることなどから、自民圧勝が予想される参院選ですが、これ以上一極集中してどうするのでしょうか?改憲を実現するためには更に上乗せしたいということでしょうか?

あるいは、先日、国連の「子どもの売買、児童売春、児童ポルノ」に関する特別報告者が来日した際の記者会見で「日本の女子生徒のおよそ13%が援助交際に関わっている」と発言して、「どこからそんな数字が出るのか?」と問題となった件もあって、政府には国連調査に対する拒否感があるのでしょうか。

(この「援交」報告に関して言えば、「13%」という数字は論外ですが、その点を問題にするのではなく、日本において「援助交際」のような現象が実際に多々見られること、それが国際的には奇妙な社会現象に見えることなどから、あらためて「どこか変では?」と、日本の現状を見直すきっかけにしていいものに思えます。
発言については、11日に特別報告者本人から「13%という数値を裏付ける公的な最近のデータはなく、誤解を招くものだった」との趣旨の書簡が日本政府に届いたそうです。)

政府・与党サイドは、特定秘密保護法のような法律はどこの国でも存在するものだと常々言っていましたが、そうであるなら、その旨を国連調査において縷々説明すればいいだけの話でしょう。
それとも、あれこれ詮索することも許されない、特定秘密保護法の現状は「特定秘密」に該当するということでしょうか?

東京地裁 特定秘密保護法違憲訴訟で合憲・違憲判断に踏み込まず
特定秘密保護法については、違憲訴訟が起こされていましたが、東京地方裁判所はこの訴えを退けています。

****特定秘密保護法 違憲訴訟 訴え退ける****
去年12月に施行された特定秘密保護法に反対するフリージャーナリストなどが、「国民の知る権利を侵害し、憲法に違反する」と主張して、法律の無効や賠償を求めた裁判で、東京地方裁判所は「立法によって取材が困難になったとは認められない」などとして訴えを退けました。

特定秘密保護法は、特に秘匿が必要な安全保障に関する情報を特定秘密に指定し、漏えいした公務員らに最高で10年の懲役を科すもので、去年12月に施行されました。

これについて、フリージャーナリストやフリーライターなど42人は、「取材活動を萎縮させ、国民の知る権利を侵害し、憲法に違反する」と主張して、法律の無効や賠償を求めていました。

18日の判決で、東京地方裁判所の谷口豊裁判長は「原告らの主張は、将来、罰則を適用される可能性があるという抽象的なものにすぎない」として、裁判の対象にならないという判断を示し、法律の無効を求める訴えを退けました。また、賠償を求める訴えについても、「立法によって取材が困難になったとは認められない」として退けました。

判決について、原告の代理人の弁護士は「憲法違反かどうかの判断に踏み込んでおらず、納得がいかない」と述べ、控訴する考えを示しました。【11月18日 NHK】
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この判決の意味するところは、特定秘密保護法を理由とした逮捕・起訴・言論抑圧などが明確に確認できない現在の段階では判断しようがないという趣旨のようです。

****特定秘密保護法違憲訴訟、原告の訴えを「肩すかし」で却下、違憲・合憲の判断を避ける****
・・・・谷口豊裁判長は、特定秘密保護法が実際に適用された具体例が存在しないことを理由に、現在の段階では「法律が憲法に適合するか否かを判断することはできない」として、原告の請求を退けた。(中略)

■解説/特定秘密保護法の性質を無視した判決
この訴訟は、2013年12月に成立し、1年後に施行された特定秘密保護法が憲法に違反するという認定を求めた憲法裁判である。

ところが日本の司法制度の下では、実際に発生した具体的事件で、取り締りの根拠となった法律が適用された場合に限って、違憲か合憲を判断するのを原則としている。

従って特定秘密保護法を理由とした逮捕・起訴・言論抑圧などが明確に確認できない現在の段階では、同法が違憲か合憲かを具体的事件にそくして判断しようがないから、原告の訴えを却下したというのが、この判決のポイントである。

谷口豊裁判長は、特定秘密保護法が違憲であるとも、合憲であるとも判断せずに、原告の訴えを「肩すかし」というかたちでかわしたことになる。

この種の司法判断をするのは、いわゆる憲法裁判所の役割という立場のようだ。その憲法裁判所は、日本の司法制度の中には組み込まれていない。存在しない。

ちなみに特定秘密保護法を根拠とした具体的な逮捕・起訴・取り締りが存在しないから憲法判断が出来ないという見解は、特定秘密保護法の危険な本質をよく理解していない証にほかならない。たとえば理解していても、故意に隠したとしかいいようがない。

と、いうのも特定秘密保護法の下では、公権力が言論を規制する事件を起こしたとしても、その行為が特定秘密保護法に基づいたものであることが公言されることはないからだ。警察は、「特定秘密保護法に基づいて逮捕する」とは宣告しない。起訴後の裁判でも、この点は秘密にされたまま審理が進む。

当然、逮捕された側は、その根拠が分からず、ロシアの作家・ソルジェニーツィンのように「えっ、どうして私が?」と自問することになる。シリアで消息を絶っているジャーナリストの安田純平氏に関する報道が皆無なのも、特定秘密保護法による規制を疑うより仕方がない。つまり、特定秘密保護法が原因で不可解な事態が生じたとしても、それを立証することは出来ないことになっているのだ。

このような事態が発生することが特定秘密保護法の大きな落とし穴であり、問題点であるとすれば、こうした法律の制定行為自体が、憲法の精神を無視した行為にほかならない。事件である。当然、その行為が行き着いた先にある特定秘密保護法が違憲か否かを判断しなければならい。

施行されたばかりの法律の違憲性を問うた今回の裁判を、「門前払い」にした谷口判例は、TPP違憲訴訟や今後に予想される安保関連法案の違憲訴訟にも影響を及ぼしそうだ。こうして日本はファシズムへ向かって進んでいく。【11月19日 MEDIA KOKUSYO】
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海外では、司法判断で重要施策が否定されたり、ときには政権が崩壊するなど「司法クーデター」とも思える事例が見ら、ときに「いかがなものか」という感もあります。

一方で、日本の司法は殆ど憲法判断に踏み込むことがなく、これまた「いかがなものか」という感もあります。
どっちに転んでも微妙な問題です。

ただ、上記記事が指摘するように、具体事例について特定秘密保護法が原因であることが明らかにされないにもかかわらず、「特定秘密保護法を根拠とした具体的な逮捕・起訴・取り締りが存在しないから憲法判断が出来ない」というのであれば、不可解な論理と言えます。

国際的には問題も指摘されている日本の「報道の自由」】
特定秘密保護法の成立を受けて、日本の「報道の自由」については芳しくない評価もあります。
国境なき記者団が発表する「世界報道自由度ランキング」では、2015年に日本は順位を前年の59位から61位に更に下げています。

****報道の自由度」ランキング、日本はなぜ61位に後退したのか****
日本大学大学院新聞 学研究科教授・福田充

国境なき記者団が発表する「世界報道自由度ランキング」で、2015年に日本が順位を61位まで下げたことが大きく報じられた。その理由は何なのか。言論・報道の自由が保障されている「はず」の日本に対して、なぜそのような評価がなされるのか。その背景を考察したい。

世界報道自由度ランキングとは?
「国境なき記者団」(Reporters Without Borders, http://en.rsf.org/ )は、世界の報道の自由や言論の自由を守るために、1985年にパリで設立された世界のジャーナリストによるNGOである。活動の中心は、世界各国の報道機関の活動と政府による規制の状況を監視することであり、その他にも、世界で拘束された記者の解放や保護を求める運動や、戦場や紛争地帯で危険に晒された記者を守る活動など、幅広い活動が展開されている。

その中心的な活動である世界各国の報道機関と政府の関係についての監視と調査の結果をまとめた年次報告書が「世界報道自由度ランキング」(World Press Freedom Index)である。

これは2002年から開始された調査報告書であり、世界180か国と地域のメディア報道の状況について、メディアの独立性、多様性、透明性、自主規制、インフラ、法規制などの側面から客観的な計算式により数値化された指標に基づいたランキングである。

つまり、その国のメディアの独立性が高く、多様性、透明性が確保されていて、インフラが整備され、法規制や自主規制などの規制が少ないほど、メディア報道の自由度が高いとされる指標である。

2002年から2015年までの間で13回発表されているが、国際的には、フィンランド、ノルウェー、デンマークなどの北欧諸国の報道がランキングの上位を占めてきた。一方で、毎年の変動はあるものの、アメリカやイギリス、フランスといった先進国は、その時代情勢によって10位代から40位代の中間よりやや上位を推移している。

また、中国や北朝鮮、ベトナム、キューバといった社会主義諸国のランキングは170位代前後を推移し、常に最下位レベルである。中東のシリアやイラン、アフリカで紛争の続いたソマリアやスーダンなどのランキングも常に最下位レベルである。

このように、国家の体制により、または国内の政治情勢により、政府とメディアの関係は大きな影響を受け、メディア報道の自由度が決まってくるという考え方である。同報告書では、2014年に報道の自由が世界的に低下したとされており、その一因をイスラム国やボコ・ハラムなど過激派組織の活動によるものと指摘している。

日本の評価は?
日本のランキングは2002年から2008年までの間、20位代から50位代まで時代により推移してきたが、民主党政権が誕生した2009年から17位、11位とランキングを上げた。2008年までの間は欧米の先進諸国、アメリカやイギリス、フランス、ドイツと変わらない中堅層やや上位を保っていたが、民主党政権誕生以降、政権交代の実現という社会的状況の変化や、政府による記者会見の一部オープン化もあり、2010年には最高の11位を獲得している。

しかしながら、2011年の東日本大震災と福島第一原発事故の発生の後、2012年のランキングでは22位に下落、2013年には53位、2014年には59位を記録した。そして今年2015年にはついに過去最低の61位までランキングを下げる結果となった。自由度を5段階に分けた3段階目の「顕著な問題」レベルに転落した状況である。

なぜ日本の順位は後退したのか?
世界報道自由度ランキングのレポートでは、日本の順位が下がった理由を解説している。ひとつは東日本大震災によって発生した福島第一原発事故に対する報道の問題である。

例えば、福島第一原発事故に関する電力会社や「原子力ムラ」によって形成されたメディア体制の閉鎖性と、記者クラブによるフリーランス記者や外国メディアの排除の構造などが指摘されている。

戦争やテロリズムの問題と同様に、大震災や原発事故などの危機が発生したときにも、その情報源が政府に集中することにより、「発表ジャーナリズム」という問題が発生する。政府が記者会見で発表した情報をそのまま鵜呑みにして報道する姿勢である。

また、同様に戦場や被災地など危険な地域に自社の記者を派遣しないで、フリー・ジャーナリストに依存する「コンプライアンス・ジャーナリズム」の問題も重要である。メディアとしての企業コンプライアンスによって、危険な地域に自社の社員を派遣できないという状況から、危険な地域に入るのはフリー・ジャーナリストばかりになるという構造的問題である。

このような日本のメディアの状況下で一昨年に成立した特定秘密保護法の成立が日本の順位下落に拍車をかけた形である。特定秘密保護法の成立により、戦争やテロリズムに関する特定秘密の存在が自由な報道の妨げになるという評価である。日本が置かれる国際状況や、日本国内の政治状況が大きく変化している現在こそ、日本のメディア、ジャーナリズムに自浄作用と改革が求められている。【3月4日 THE PAGE】
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この種の「ランキング」には、「幸福度」のように、数値化された順位にどれほどの意味があるのかよくわからないものあります。

先日、スイスの民間研究機関「世界経済フォーラム」が発表した男女平等の度合いを比較した2015年版のランキングでは、日本は101位ということで、「そんなにひどい状態だろうか?」という素朴な疑問もわきます。

ただ、内部の人間には当たり前に思えていることも、外部の視点で見ると当たり前ではないことも多々あります。
それらを鵜呑みにする必要もありませんが、貴重な参考にはなるでしょう。

外部の視点からは、あまり芳しくないとの評価がある状況で、国際的な調査は先延ばしにする、司法は判断を避けるということでは・・・・。

日常生活との直接的つながりが明確でないこの種の問題に関しては、私を含め、普通の人々には判断が難しいところがあります。
それだけに、国際的な評価とか司法の判断が参考として求められるのですが、それも提供されないのが日本の現状ということでしょうか。
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