孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

タイ  バンコクは再び不穏な気配 往きはよいよい、帰りは・・・

2008-12-30 01:02:21 | 国際情勢

(今夜はバンコク泊まり。超定番メニューですが、Sala Rim Naam のタイダンス・ディナーショーを予定しています。こういう民族舞踊みたいなものが好きですし、一人旅で夜は暇なものですから。
それにしても、この時期限られた日数でタイに行くのは、相当な賭けです。予定どおり戻れるか、だんだん不安になってきました。
“flickr”より By rsepulveda
http://www.flickr.com/photos/rsepulveda/2811415753/)

今日30日、福岡からタイに向かいます。
福岡のホテルに前泊しているところですが、鹿児島から福岡への高速バスの中で簡単に書いたものをアップします。(ドコモのデータ通信カードを始めて使いましたが、移動するバスでも使えるのには少し感激しました。)

今回の目的地はタイ北部の古都スコータイ。
遺跡めぐりでもして、のんびり正月を過ごそうかという計画です。

反タクシンの旧守派に支えられた反政府運動の“無理”が押し通されてアピシット政権が誕生したタイですが、
予想されていたように、今度はタクシン派のアピシット新首相に対する抗議活動が始まっています。

****タクシン派が議会を封鎖、タイ新首相の演説阻止へ****
タイの首都バンコクでは29日、タクシン・シナワット元首相の支持者数千人が、反タクシン派のアピシット・ウェチャチワ新首相の施政方針演説を阻止しようと国会議事堂前の道路を封鎖し、緊張が高まっている。
警察によると、前夜から議事堂周辺に集結したタクシン元首相支持者らは9000人に上る。元首相への忠誠を示す赤いシャツを着、議事堂入口を取り囲んだ支持者らは、2週間前に議会で首相に選出されたアピシット新首相が辞任するまで抗議を続けると主張している。【12月29日 AFP】
******************

この「反独裁民主同盟」の約9千人の抗議活動のため、新首相の施政方針演説は今日30日に延期されました。
タクシン派は、28日の段階では「国会封鎖など過激な抗議行動はしない」と言っていましたが、次第にエスカレートするようにも見えます。
タクシン派の心情としては無理からぬところではありますが。

しかし、21日ブログでも書いたように、タクシン派には軍・警察のバックアップがありません。もし、過激な行動に出ると、PADのときとは違って、軍・警察が速やかな対応をとることも予想されます。

もっとも、新首相も苦しいところではあります。
“タクシン元首相の義弟であるソムチャイ前首相が10月7日、施政方針演説に臨んだ時は、反元首相派の民主主義市民連合(PAD)が国会を封鎖。警察が強制排除した際に多数の死傷者が出た。当時野党だった民主党党首のアピシット首相は政府の対応を激しく批判した経緯があり、今回は元首相派の意趣返し。首相らは警察に排除を命じるかどうか、苦慮している模様だ。”【12月29日 朝日】
強制排除すると、一気に混乱が拡大するおそれもあります。

とにかく、私が旅行中は空港閉鎖だけは勘弁してもらいたいというのが本音です。
我ながら身勝手なものだとは思いますが。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

パレスチナ  イスラエルの大規模空爆に、後に引けないハマス 紛争激化の懸念

2008-12-29 12:05:38 | 国際情勢

(ガザ地区の少女 “flickr”より By smallislander
http://www.flickr.com/photos/28722516@N02/3142813863/)

【息を潜めるガザ地区住民】
27日、イスラエル軍はパレスチナ・ガザ地区を実効支配するハマスを標的とした大規模な空爆を実施。
死者は200人越え、28日もイスラエル軍の空爆は続行されています。
イスラエル軍はガザ地区境界に戦車部隊を集結させているとの報道もあります。

“(ガザ地区の)市民の間には、終わりの見えないイスラエル軍攻撃への不安が広がっている。商店の大半がシャッターを閉めたままの一方で、開店中のパン屋の前には買いだめに走る人々が殺到した。多くが外出を避けて家の中に閉じこもり、「家族全員、死ぬのも生き残るのも一緒だ」(地元住民)と息を潜めているという。”【12月28日 AFP】

戦争の恐怖は知る由もありません。
子供の頃、家が倒壊する台風に襲われたことがあります。明かりが消え、きしむ家の中で、夜が開けて台風が通り過ぎるのを家族がじっと息を殺して待ちました。そんな息苦しさを思い出します。

【読み違い?】
イスラエルは半年続いた停戦の延長を望んでいましたが、「停戦の公約を尊重せず、ガザ地区の封鎖を続けている」としてハマスが拒否。
その後、ハマスなどの武装勢力はイスラエルに対するロケット弾攻撃を激化させていました。

ハマスも政治部門は停戦再発効を模索していたようですが、軍事部門がこれを拒否。【12月29日 朝日】

****ガザ空爆 報復合戦“悪夢再び” ハマス、強硬路線裏目****
停戦の失効に伴い、ハマス武装部門を中心としたガザの武装勢力は連日、ロケット弾をイスラエル領に撃ち込んでいた。戦闘状況を悪化させることで、次の「停戦」に向けて国際社会の介入を呼び込み、「封鎖解除の徹底」などハマス側の求める条件を交渉に反映させたいとの狙いがあったとみられる。

イスラエルの総選挙が2月に予定されていることから、ハマスは投票日近くまで戦闘を長引かせ、戦闘が続く中で投票日を迎えたくないイスラエル中道右派の与党、カディマから譲歩を引き出せると計算したとの指摘もある。世論調査によると対パレスチナ強硬派の右派リクードとカディマの支持率は拮抗(きっこう)しており、戦闘が長引けば国内世論は右に振れ、リクードに有利に働く可能性があるからだ。

こうしたハマスの狙いを読んだカディマと、連立与党の中道左派・労働党は激しい反撃に出ることで、「次の停戦交渉でも決して妥協はしない」との姿勢を明確にしたものとみられる。
ただ、攻撃の犠牲者が大規模であったことから、パレスチナやアラブ世界の「反イスラエル世論」が沸騰し、ハマスは当面、武力衝突を激化させざるを得なくなったばかりか、逆にハマスのアラブ世論内での政治的立場を強める可能性もある。自爆テロ再開も含めて、状況が双方の思惑を超えて制御不能の事態に陥る可能性も否定はできない。【12月29日 産経】
*********************

選挙後の新政権ができるまで政府を率いるイスラエル・オルメルト暫定首相は、ガザへの本格攻撃に慎重と見られていました。
ロケット弾攻撃を激化させてイスラエルの反撃を誘い、逆にイスラエルによるガザ地区封鎖の“非人道性”を国際社会に訴えることを狙っていたハマスにとって、“想定以上”の被害が出たことも“裏目”のひとつとされています。
200人以上の犠牲を出したハマスは、もはや後に引けなくなった形です。
シリア在住のハマスの指導者マシャル氏は、パレスチナ人に「第3次インティファーダ(反イスラエル闘争)を呼びかける」と語っています。

イスラエル政府が28日の閣議で軍事作戦の準備状況などを検討するため、同日以前の攻撃開始はないと伝えられていたことで、ハマス側にとって予想外の攻撃となり、“想定以上”の被害を出す結果となったとも報じられています。【12月28日 毎日】

【弱腰批判を恐れるイスラエル与党】
総選挙を控えて“弱腰”との批判を受けたくないイスラエル与党の事情が今回の攻撃の背景にあります。
“イスラエル政府を率いる中道右派カディマは来年2月の総選挙を前に、ロケット弾攻撃の阻止を求める世論から「及び腰だ」と厳しく批判されてきた。対パレスチナ強硬派の最大野党リクードが支持率を伸ばすなか、最近では和平推進派の左派政党メレツでさえ「ガザ攻撃やむなし」と主張する状況だった。”【12月28日 毎日】

今後、ハマス側の自爆テロなどの攻撃が激化すると、後に引けなくなるのはイスラエルも同じです。
“イスラエル領内で再び自爆テロが起きればイスラエル世論が強硬になるのは必至で、現政権はさらに激しい攻撃をしなければならない状況に追い込まれる可能性がある。”【12月28日 毎日】
“ただ、イスラエル軍が空爆だけでハマスを崩壊させるのは不可能で、大量の地上兵力を投入して「再占領」をする必要がある。この場合にはイスラエル兵自身の多大な犠牲も覚悟しなければならず、強硬な対応が逆に選挙に悪影響を及ぼす恐れもある。” 【12月29日 朝日】

来年1月に誕生する米国のオバマ次期政権は、イスラエルによるガザへの本格的な軍事攻撃には慎重な姿勢と見られているため、イスラエルがオバマ氏の就任前に駆け込みの軍事攻撃をした・・・との見方も各紙が報じています。

【イスラエル批判の中東、理解を示す米英】
国連安全保障理事会は28日未明、ガザ地区における全ての軍事活動の即時停止と、全当事者に人道危機に対処することを求める声明を出しました。
当初ロシアが提出した声明案の文言は米国の強い求めで表現が弱められ、最終的な声明文ではイスラエルとハマスのいずれにも言及しないことで合意されたとのことです。【12月28日 AFP】
また、“議長声明”にアメリカが難色をしめし、公式文書ではない報道機関向け声明の形になりました。

中東諸国はイスラエル非難を強めており、アラブ22カ国・機構で作る「アラブ連盟」は来年1月2日にカタールの首都ドーハで緊急首脳会議を開く方向です。
また、イラン最高指導者ハメネイ師は28日、イスラエルはイスラム諸国によって罰せられなければならないとして、パレスチナ人を守るようイスラム教徒に訴える声明を出しています。

一方、アメリカのライス国務長官は27日、ハマスのイスラエルに対するロケット攻撃を強く非難し、「停戦違反とガザにおける暴力の再燃はハマスの責任だ」と指摘、ガザの情勢悪化は全面的にハマスの責任との見方を示しています。【12月28日 時事】
イギリスのブラウン首相は27日、イスラエルのオルメルト首相と電話会談し、パレスチナ自治区ガザでの軍事作戦で自制を示すよう促す一方で、同日の声明では、「ガザの民兵に対し、イスラエルへのロケット攻撃を即時停止するよう求める」として、イスラム原理主義組織ハマスを非難。
「イスラエル政府には、自国民を守らなければならないという義務がある」として、イスラエル側に理解を示しています。

フランス・サルコジ大統領は声明でパレスチナ側の「無責任な挑発行為」と、イスラエルによる「過度の武力行使」を非難し、「イスラエルへのロケット弾攻撃と、イスラエルのガザ砲撃の即時停止」を求めています。

こうしたハマス支持の中東諸国、イスラエルに理解をしめす米英・・・という構図のなかで、日本の河村官房長の「非常に残念だ。ゆゆしいことだ。」という発言は、責任・白黒を明確にしない日本らしい表現で、不謹慎ですがユーモラスでもあります。

【グルジア紛争とパレスチナ 闘いはいつも・・・】
イスラエルの譲歩を狙ったハマスのロケット弾攻撃、弱腰との国内批判を受けたくないイスラエル、予想に反したイスラエルの即時・大規模反撃、想定外の被害、後に引けなくなったハマス、今後のハマスの反撃次第でイスラエルも泥沼に引き込まれる懸念、イスラエルの過剰反応を非難する中東諸国、先に手を出したハマスを非難する米英・・・グルジア紛争の展開を思わせるものがあります。
グルジアでも、ロシアの反応を読み違えたグルジア側の先制攻撃で紛争が始まり、グルジア・ロシア互いに後に引けない状況においこまれました。弱腰と批判されたくない政権基盤の弱いメドベージェフ大統領の事情もあったと推察されます。

“相手の出方を読み違う”“想定外の展開で後に引けなくなる”“弱腰との国内批判を恐れる”・・・そのうち状況は制御不能に激化する・・・戦争はいつもこうして始まります。

【和平を望まぬ武装組織 それを支持する世論】
イスラエルとの共存を認めず武闘路線に走るハマスがガザ地区を支配する限り、パレスチナに平和はないように思います。
血であがなわれるインティファーダとイスラエルの侵攻があるだけです。
おそらくハマスのような武装組織は、闘争自体が目的であり、闘争においてこそ存在意義が発揮される組織ですから、市民生活の安定・和平を望むインセンティブがそもそも欠落しているのではないでしょうか。
“平和になってもらっては困る”と本音では考えている・・・というのは言いすぎでしょうか。

今回のような衝突によって、パレスチナ人のハマス武闘路線支持が更に強まることが予想されます。
“既に東エルサレムやヨルダン川西岸自治区でパレスチナ人による抗議デモが頻発。西岸の中心都市ラマラでは、数十人のパレスチナ人がイスラエル軍に投石し、軍がゴム弾などで応戦する事態に発展した。西岸の別の町ヘブロンでも同様の衝突が起きた”【12月28日 毎日】
暴力の連鎖を選択するのであれば、パレスチナの苦しみの責任の一端はパレスチナ人自身にもあります。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

緊張を増す印パ関係  渡航禁止 軍の移動 激昂する世論

2008-12-28 15:03:45 | 国際情勢

(毎日印パ国境で行われるflag off ceremony  関係が緊張している今も行われているのでしょうか? 止めるといろんな憶測を呼びますから続けているのではないでしょうか。 “flickr”より By radicaleye
http://www.flickr.com/photos/moviemaverick/88581751/)

金融危機・世界同時不況に襲われ混迷の世界への岐路に立たされた今年も残すところ数日となりましたが、国内では雇用不安が深刻化し、国外では印パ関係・パレスチナの状況悪化など、暗い新年を懸念させるような事態が続いています。

【パキスタンへの渡航禁止】
ムンバイの同時テロ事件に端を発する印パ関係悪化は、収まるどころか、ここに来てさらに不安定さを増しています。

インド政府は26日、国民に対し、パキスタンへの渡航を中止するよう呼びかけました。
24日にパキスタン・ラホールの大通りで女性1人が死亡、4人が負傷する爆発事件があり、パキスタンのメディアは匿名の情報として、爆発の発生直後にインド国籍の人物が拘束され、その後、事件に関与したとされるインド人数人が逮捕されたと報じています。
これを受けて、“インド人のパキスタン渡航が危険になった”とのインド政府の判断です。
パキスタン政府はこれまで、この報道について否定も肯定もしていませんが、インド外務省報道官は、インド人の逮捕報道は「法と文民統制を無視する(パキスタンの)機関」によって演出された反インドのプロパガンダであると非難しています。【11月27日 AFP】

【2万人の兵力を移動】
一方、パキスタンはアフガニスタン国境でイスラム過激派対策にあたっていた兵員をインド国境に移動させる動きをみせています。

****国境緊迫、凍える冬 パキスタン、抑えきかぬ軍…対テロ戦影響****
インド・ムンバイでの同時テロ容疑者引き渡しをめぐり、同国とパキスタン間に緊張が高まる中、パキスタンは、インドとの国境沿いに2万人の兵力を移動した。インド軍による急襲を念頭に置いた予防的配備とみられる。
だが、パキスタン内で軍強硬派が主導権を強めれば、事態は一触即発の状態になる恐れもある。米国主導のアフガニスタン国境付近でのテロ掃討作戦が手薄になるとの懸念も、現実味を増している。

インド側は、ムンバイ同時テロをめぐって、パキスタンのイスラム武装組織「ラシュカレトイバ」などの関与を指摘して、容疑者の引き渡しを求めている。だが、パキスタン側は、証拠がインド側から提示されればパキスタンの国内法に従って独自に事件を処理するとの姿勢を崩していない。
両国間には、犯罪人引き渡し条約が締結されておらず、「インド側の不満は高まるばかりで、パキスタン側も圧力回避に躍起となっている」(観測筋)との見方が有力だ。(中略)

今回の兵力移動の背景は、陸軍参謀長を兼任していたムシャラフ前大統領の時代とは異なる。「配置は文民のザルダリ大統領ではなく、陸軍主導で進められた可能性がある」(観測筋)からだ。
2002年には、インド国会議事堂襲撃事件をきっかけに、カシミール地方でインド側75万、パキスタン側25万の兵力が集結。当時は、ムシャラフ氏の指導力と米国の仲介のもと、緊張緩和が図られたが、今回は、ザルダリ大統領が軍を掌握できず、武力衝突するとの懸念もぬぐえない。
パキスタンの外交筋は、「パキスタン軍は、アフガン国境付近から兵士を移動しており、これ以上の移動は、テロとの戦いに支障をきたす可能性がある。移動は緊張緩和に向けて米国の積極的な関与を求めるメッセージの意味合いもある」と指摘している。【12月28日 産経】
****************************

両国のエスカレートする緊張について【毎日】は次のように報じています。
“「これが最後通告だ」。インドのムカジー外相は24日、パキスタン政府が「全過激派の撲滅」に乗り出さなければ、軍事行動を辞さないとの構えを示した。地元メディアは25日、同国西部ラジャスタン州のパキスタン国境に、軍の戦闘部隊2部隊5万人が配備されたと報じた。
これに対しパキスタン軍幹部は、毎日新聞に「アフガニスタン国境で対テロ戦に当たる部隊約12万5000人の半数を、東側(インド国境側)に持っていく計画だ」と発言。AP通信によると27日、同国中部のインダス川西岸付近で、東へ向かって移動する軍部隊の長い車列が目撃された。部隊がどこへ向かうのかは不明だ。”【12月27日 毎日】

【強硬姿勢の国内事情】
上記記事は、インドの強硬姿勢の背景には、来春の総選挙を前にヒンズー民族主義の最大野党インド人民党が「ムンバイの事件は政府の対テロ策の失敗が原因」と非難し支持を急拡大していることがあり、シン首相と与党・国民会議派には、パキスタン関与を強調し非難の矛先をかわす狙いがあるとも報じています。

パキスタン側の事情ももっと深刻です。
ザルダリ政権下で経済や治安が極度に悪化。政権は失望する国民に「有事に強い政府」であることを示して、威信を回復したい意向があると報じられていますが、軍に基盤のないザルダリ大統領が軍をコントロールしているとは思われません。

【いつまで制御できるのか?】
核保有国である印パ両国の緊張が高まるなかで、米国家安全保障会議(NSC)のジョンドロー報道官は26日、パキスタン治安部隊の一部がインド国境に移動を開始したとの報道を受け、「緊迫しているこの時期、不必要な緊張を高める行為は避けるよう望む」と述べ、印パ両国に自制を求めています。
冒頭産経記事にもあるように、アフガニスタン国境でのイスラム過激派対策が手薄になることも懸念しています。

パキスタン・ザルダリ大統領は27日のTV演説で「インドに対して先に行動することはない」と先制攻撃を否定。
また、インド軍筋は27日地元テレビ局に対し、今回のパキスタン軍の移動は、「パキスタンの国内世論を抑えるのが目的であり、過大な心配はしていない」と述べています。
今のところ、お互いまだ冷静さを保っているような発言をしています。

国内の失政、経済悪化、国民の不満増大等を、国民の目を国外に向けさせることでそらそうとするのは為政者の常ですが、一旦動き出した国民世論は為政者の当初の思惑を超えて更なる行動を求めはじめます。
今日のTV番組では、「パキスタンを叩き潰せ!」と叫びながらデモを行うインドの民衆の様子が放映されていました。
パキスタンでも同様でしょう。軍事的に劣勢な立場にあり、いつもテロを自分達にせいにされているという不信感・苛立ちがあるだけに、インドへの批判はより強硬な形で噴出しやすいかと思われます。

【わずかばかりの想像力を】
それにしても、「パキスタンを叩き潰せ!」とか「インドに屈するな!」といった類の偏狭なナショナリズムは、印パ両国だけでなく、国外・国内どこでも見られるものですが、個人的には、こうした感情にはどうしても馴染めません。
“諸悪の根源”の大きなひとつに思えます。

国家間の利害が反すること、意見をことにすること、あるいは相容れない価値観を持つこと・・・そのようなことはごく普通にあることです。
それは国家間に限らず、社会で暮らす個人の間でも同様です。
しかし、だからと言って一方的に「あいつは許せない、叩き潰せ!」と叫んでしまっては、社会関係は崩壊します。
互いに譲れるところは譲り、我慢できるところは我慢して、何とか折り合いをつけて暮らしているのではないでしょうか。そうした関係を保つなかで、次第にお互いに相手のことも理解できるようになっていくものでは。

ところが、国際的な問題となると、“民族の誇り”とか“愛国”とかいったもののもとで、隣国・相手国を感情のままに罵ることが許される傾向があります。
それが“正論”としてもてはやされることもあります。
しかし互いに罵りあう関係からは何物もうまれません。
激昂する世論と、それに取り入ろうとする為政者がつながるとき、そこに待つのは破局だけです。
必要なのは、相手の立場であれば・・・と考える、わずかばかりの想像力です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

様々なアフリカ ルワンダ:虐殺を越えて、シエラレオネ:ダイヤモンド鉱山での児童労働

2008-12-27 18:46:18 | 世相

(ルワンダの首都キガリの児童 手にしているのはOLPC(One Laptop per Child)の“100ドルパソコン” “flickr”より By One Laptop per Child
http://www.flickr.com/photos/olpc/2946278209/in/set-72157608077722142/)

【トンネルの向こうに光が・・・しかし世界不況の大波が】
まだ金融危機が表面化していなかった今年5月、横浜にアフリカの首脳を招いて第4回アフリカ開発会議(TICAD)が開催されました。
会議で、エチオピアのゼナウィ首相が「いまトンネルの向こうに光が見えたところ。あと十数年、この成長が続けば、アフリカは成功したといえる」と語ったそうです。

****金融危機とアフリカ 光を消してはならない=西川恵****
ここ数年、アフリカは平均経済成長率が6%を記録し、一部の例外はあるものの、全般的には平和構築とグッド・ガバナンス(よき統治)の努力が徐々に実を結びつつあった。エチオピア、タンザニアなどはその模範で、ゼナウィ首相の発言もそうした実績を踏まえてのことだ。(中略)
しかしその後勃発(ぼっぱつ)した世界的な経済・金融危機は、アフリカにもボディーブローのように効いている。資源価格が急落し、輸出が落ち込み始めた。海外からの送金が細くなった。欧米企業の工場建設が延期された。欧州で働くための労働ビザが出なくなった。資金調達コストが急騰している--など、アフリカのニュースが目に付く。
特にアフリカの場合は米欧の金融機関と密接な取引関係にある。アジアの金融機関に危機が直接は及ばなかったのと異なり、大きく傷ついた米欧の金融機関にアフリカを顧みる余裕はない。危機は、離陸に向けて助走を始めたアフリカの国々の努力を中折れさせ兼ねないのだ。(後略)【12月20日 毎日】
********************

アフリカ関連のニュースはどうしても内戦・飢餓・貧困・災害などに関するものが多く、“グッド・ガバナンス(よき統治)の努力が徐々に実を結びつつあった”というのは少し意外な感じもします。
いずれにせよ、今回の世界的不況が弱い立場にあるアフリカの途上国に深刻な打撃をあたえるであろうことは非常に懸念されます。

【ルワンダ “グッド・ガバナンス”】
そんなアフリカでも最悪のジェノサイドを経験したルワンダについて、“グッド・ガバナンス”を思わせる記事がありました。
少し長い記事ですが、非常に印象的なのでそのまま引用します。

****ルワンダのきらめき:虐殺を超えて/上 「心を一つに」 大統領も清掃活動****
 ◇国の再生誓い
 朝もやに煙る緑の丘が美しい。空気がきらめいているようだ。このすがすがしさは、車の排ガスや騒音がないせいでもある。
 毎月末土曜日の午前、アフリカ中部ルワンダ全土で車が路上から姿を消す。「ウムガンダ」と呼ばれる政府主導の清掃などの奉仕活動が実施されるためだ。「大統領も掃除をする。今、ルワンダは心を一つにしなければならない」。首都キガリの石畳の道で、溝を丹念に掃除するボナバンチュール・ムバウェヨさん(30)は言う。
 94年の大虐殺直後、街は遺体であふれた。野良犬がうろつき、異常な数の鳥が空を覆った。「虐殺の記憶を清算すると同時に、決して忘れないとのメッセージが奉仕活動に込められている」

 キガリではビルの建設ラッシュが続く。03年に当選したカガメ大統領の指導下、年5%以上の経済成長を達成してきた。コーヒーや紅茶の輸出が主要産業だが、情報産業立国を目指す。実用的な電子政府を導入。小国を逆手にとり、周辺国の中継地としての可能性を見いだしつつある。04年以降、海外からの投資促進にも力を注ぐ。
 「即」「15分」「30分」。政府の許認可書類には、役人が順守すべき「対応スピード」が記されている。営業免許や会社登録などは無料。官僚主義がはびこるアフリカでは異例だ。外務協力省幹部は「知恵を絞り、再建を模索してきた。それを農業生産で培われた勤勉な国民性が支えている」と胸を張る。
 「大統領自ら車を運転する姿も珍しいことではない」とキガリのタクシー運転手は話す。清廉さもルワンダをきらめかせる。閣僚、次官級を除き公用車を原則廃止。援助国の車の供与も停止した。エレベーターのない省庁もあるが「(その整備より)他に優先すべき課題は山のようだ」と職員は階段を駆け上がった。07年には世銀が「世界ガバナンス指標」の汚職対策分野で中・東部アフリカでトップの評価をした。
 今年2月、ブッシュ米大統領はアフリカ訪問国5カ国の一つにルワンダを選び、投資を進める2国間協定を締結した。ベルギーの信託統治領だった経緯から仏語圏諸国の影響が強かったが、キガリでは、米資本の飲食店なども目立ち始めた。
 奉仕の日、郊外では植林も実施されていた。カラリサさん(40)は軽やかに語る。「この国には『規律』という美徳がある。大虐殺ではそれが間違った方向に働いた」
    ◇
 ジェノサイドから来年で15年を迎えるルワンダの今を報告する。【キガリで高尾具成】【12月26日 毎日】
**********************

ルワンダの悲劇について書かれた「ジェノサイドの丘」(フィリップ・ゴーリヴィッチ著)を以前読んだことがあります。
その本に記された、当時の反政府組織のリーダー、現在の大統領カガメの人物像はとても傑出したものです。
公正で、規律を重んじ、理性的で、決断力に富み・・・まさに“理想のリーダー”を思わせるものでした。

あまりに理想的すぎて、相当に著者の思い入れが入り込んでいるのだろう・・・とは感じましたが、話半分にしても、日本にもこんな政治家が欲しいものだと思ったことがあります。
上記の記事を読むと、あながち“思い入れ”だけでもないようです。

“「即」「15分」「30分」。政府の許認可書類には、役人が順守すべき「対応スピード」が記されている。”・・・信じられないことです。あのアフリカで・・・・。
時間とか効率という面では世界でもトップクラスではないかと自負する日本ですが、それでも“お役所仕事”にはうんざりすることもあります。
やはり、カガメ大統領はすごい人物なのかも。

【シエラレオネ 相変わらずのTIA】
一方で、“ああ、やっぱりアフリカは・・・”と思わせる記事もあります。
シエラレオネはかつて内戦に苦しみ、産出するダイヤモンドがその資金として利用され“ブラッド・ダイヤモンド”(紛争ダイヤモンド、血塗られたダイヤモンド)とも呼ばれていました。
(参照 08年6月26日ブログ http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080626
    07年8月15日ブログ http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20070815

そんな内戦も終わって平和が訪れたはずですが・・・

****学費を稼ぐためにダイヤモンド鉱山で働く子どもたち、シエラレオネ****
シエラレオネ東部コイドゥの違法なダイヤモンド鉱山で、ガードマンたちが目を光らせるなか、子どもたちが自分の学費や家族の食費を稼ぐために働いている。
子どもたちは毎日、数キロ離れた学校に通い、学校が終わると、焼け付く太陽のもとで採掘に励む。10歳足らずの子どもの姿もある。鉱山のセネガル人オーナーは、「俺たちはあの子たちに賃金を払い、子どもたちは生活のために働く。フェアな取り引きだろ?」と悪びれる様子もない。(中略)
政府は、こうした鉱山で働く未成年者を600人程度と見積もっているが、実際はその3倍にのぼるとの指摘もある。(中略)
鉱山では、子どもたちがダイヤを隠したり飲み込んだりすることのないよう、ガードマンたちが見張っている。子どもが見つけたダイヤは、ガードマンたちがただちに回収するという。
同国では児童労働は違法だが、法律は整備されておらず、取り締まる側の警察もわいろを受け取っているケースが多い。(後略)【12月26日 AFP】
*******************

ここにはまだ“グッド・ガバナンス”の恩恵が及んでいないようです。
08年6月26日ブログでも取り上げたディカプリオ主演の映画“ブラッド・ダイヤモンド”に関して、シエラレオネ政府が国内での上映禁止を望んでいるとの記事がありました。

“シエラレオネ投資輸出振興庁のアデヨルミ・サンディー長官は8月21日AFPに対し、「この映画はシエラレオネの悪いイメージを世界に発信している」との見方を示し、同庁は政府と関連機関にブラッド・ダイヤモンドの即時禁止措置を取るよう求めていることを明らかにした。”【8月24日 AFP】

実態とは異なる“悪いイメージ”ということであれば、長官の思いもわからないではありませんが、どうも実態が未だ“悪いイメージ”とさほど変わっていないのでは・・・とも思われます。
ルワンダもシエラレオネも、TIA(This is Africa)でしょうか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

バングラデシュ  非合法キャンプで暮らすミャンマー難民

2008-12-26 18:22:29 | 世相

(バングラデシュ・コックスバザールの難民キャンプ 学校があるので正式の難民キャンプでしょうか。 Photo by Ruben Flamarique/Austcare “flickr”より By Austcare - World Humanitarian Aid
http://www.flickr.com/photos/austcare/2776556619/in/set-72157606824816963/)

【ロヒンギャ族非合法難民】
20日ブログでは、タイで暮らすミャンマーからの難民(主にカレン族)について、日本政府が第三国定住を認めたことを取り上げました。
(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20081220)
ミャンマー軍事政権によって難民となったのはタイに暮らすカレン族だけではありません。
62年にネ・ウィン政権樹立すると国内の少数民族の抵抗が激化し、タイへ逃げたカレンニー族、ミャンマー東部からバングラデシュへ逃げたイスラム系ロヒンギャ族、また、インドに逃げたグループなどがあります。

*****バングラデシュ:ミャンマーから「非合法」難民20万人****
バングラデシュ南東部には、ミャンマーから逃げ出してきた「ロヒンギャ族」の人々が多数、生活している。だがUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の報告書(07年5月)によると、その中で難民として正式に登録してキャンプで居住するのは約2万6000人でほんの一部という。
それ以外に10万~20万人がキャンプからあふれ、「非合法」の状態で貧困に苦しんでいる。彼らは「ミャンマーに帰ると、また迫害される。早く難民と認めてほしい」と口々に訴えている。
ロヒンギャ族はミャンマー西部ラカイン州に住むイスラム教系の少数民族。軍事政権の弾圧を受け、1991~92年に25万人以上がバングラデシュに逃げ込んだとされる。【12月23日 毎日】
***************************

なお、【ウィキペディア】では“1996年と1997年に発生した10万人規模のロヒンギャ難民は、宗教的迫害や強制労働を理由としてミャンマーから流出してバングラデシュに逃れたが、同国政府はこれを歓迎せず、ほとんどが送還された”とあります。
以下に、ビルマ情報ネットワークのサイトに掲載されているミャンマー政府によるロヒギャン族迫害の経緯を引用します。

******ロヒンギャ 迫害の歴史 ******
ロヒンギャの迫害が始まったのは1942年からである(注1)。ミャンマー軍とともにモッグ族(注2)により、10万人が殺され、50万人が家を失った。
その後も迫害が続き、1978年ネ・ウィン政権のもとで operation king dragon作戦(編注:「ナーガミン作戦」とも)により30万人のロヒンギャが難民としてバングラデシュにのがれた。このときは国際的な救援活動が不十分だったため、1万人ものロヒンギャが亡くなり、その大半はこどもであった。のちに両国の合意が成立し、3年間ほどかかり20万人がビルマに帰国した。

しかし、1982年の市民権法が成立し、ビルマのロヒンギャは無国籍(guest citizen)としてあつかわれるようになってしまった。ミャンマー政府は「彼らはバングラデシュからの違法移民なので、とりしまっている」という見解を示している。市民権が与えられないため、教育の機会や医療を受ける権利もない。職業も限られ、その多くは農民である。税金と称し作物・米をとりたて、それを払うことができなければ、強制労働に従事させられ、拒めば投獄されていた。ビルマ民族の入植もしだいにすすめられ、ロヒンギャはもとから住んでいた土地をおい出されていった。

1988年アウンサン=スーチー氏らの民主化運動をロヒンギャは支持したため、ビルマ軍事政権はアラカン地方に7~8万人の軍隊を集結し、モッグ族とともに再び迫害・襲撃を開始した。また軍事施設や道路・橋を建設し始め、労働力としてロヒンギャをかりたてた。彼らは、強制労働させられるだけでなく、家の財産や家財道具・食料・家畜も略奪され、反抗すれば暴行や強姦もうけ、場合によっては殺されることもあった。この軍事行動はpia Taych作戦とよばれた。その結果、1991年12月末から1992年3月にかけてロヒンギャは1~2kmの川幅のナフ川を小船でわたり、あるいは山々を歩き、国境を超えバングラデシュにのがれた。その数は、28万人であった(注3)。当時としてはカンボジア難民(約35万人)にせまる数であり、このような急激な大量難民の発生は、最近の10年間についてみると、アジアにはなかった。
注1: 外部に知られ始めたのはこの頃であるが、以前から迫害はあったのだろう。現在もロヒンギャが各国に散らばっているのもそのためである。
注2: アラカン地方の仏教徒少数民族でロヒンギャとの対立はあり、ミャンマー政府はその対立を利用している。
注3: バングラデシュ政府発表である。UNHCRの発表では23万人となっている。
【2001年5月19日 山村淳平 ビルマ情報ネットワーク】より
**********************

いずれにしても、大量のミャンマー難民を抱えることになったバングラデシュ自身が非常に苦しい経済状態ですから、“厄介者扱いする”あるいは保護しきれない事情は想像に難くありません。
バングラデシュから送り返されると、今度はミャンマー軍事政権によって「彼らはバングラデシュからの違法移民なので、とりしまっている」と弾圧されるのではたまりません。
難民が厄介なのは日本政府も同じで、日本は“ミャンマー国内に戻っても政治的迫害を受ける危険はない”となかなか難民認定を行いません。

また、少数民族統治に対立する民族を利用するというのも、古今東西よく取られる手法です。
ヤンゴンなどでのビルマ族の反政府活動には、少数民族からなる治安部隊が動員され、厳しい鎮圧が断行されます。

【合法、非合法難民の格差】
バングラデシュ政府が難民として受け入れている人々の正式な難民キャンプに隣接して、非合法の難民たちが大勢暮らす“非合法キャンプ”があり、公的支援を受けられない“非合法キャンプ”の人々を、公的にある程度支援されている難民たちが救いの手をさしのべ、助け合って暮らしているそうです。

*****バングラデシュ:「非合法キャンプ」で助け合う難民たち*****
「見てくれよ、こんなに違いがあるんだ」。男性たちが、私たちを非合法区域内に呼び込んだ。彼らは、正式キャンプ内で教師や医師を務める難民たちだった。男性教師(21)は「本当は禁じられているけど、あまりの格差に黙っておれず、こっそり来て子どもたちの面倒を見ているのだ」と話した。
両キャンプの様子は残酷なほど対照的だ。正式キャンプでは、建物の屋根は新しいトタンが用いられ、立派なモスクや学校があり、井戸や太陽光発電装置もあった。一方、非合法キャンプでは、竹や草を使ってかろうじて住宅を作り、壁は破れてボロボロだ。水はため池を使い、医療や教育のサービスはもちろんない。当局の目を逃れながら、拾った薪(まき)を街で売るなどして生計を立てているが、1日に1食しか食べられないことも珍しくないという。

私たちが訪れた日の朝、10代の少女が高熱で苦しんだあげくに死亡した。墓地では、少年たちが墓穴を掘る。ある男性は「1日1人は死んでいる。ほとんどが子どもだ」と嘆いた。1人暮らしの男性、アブルカシムさん(60)が建物の脇で横になったまま、動けなくなっていた。心臓病を患い、やせ細り、いつ命を落としてもおかしくない。「とにかく楽になりたい」。そう声を振り絞った。
正式キャンプの男性医師(62)は「キャンプ内の薬は分けているが、まったく足りない。バングラデシュ政府は資金不足で新たに登録難民を受け入れられないというが、なんとかならないのか」と険しい表情で訴えた。
しかし、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の報告書によると、バングラデシュ政府は国際機関などと協力して問題解決を図ろうとはしているが、そのめどは立っていないという。 【12月23日 毎日】
*************************

実際は記事のような美談的“助け合い”だけでなく、待遇の違いは正式難民と非合法難民の間で対立や憎しみを生むこともあろうかとも思われます。
深刻化する世界不況のなかで、最初に切り捨てられるのはこうした弱い立場に起かれた人々です。

【イスラム女性難民を支える難民IDカード】
また、ロヒンギャはイスラム系ですが、「女性はわれわれ(男性)に委託された存在だ。」とするイスラム社会では女性の地位が日本人的感覚では認められていませんので、難民キャンプでの負担のしわ寄せの多くが彼女らにのしかかります。
そうしたなか、UNHCRが発行する名前・写真の入った個人ごとのIDカードは、彼女達の生活・生命を支える数少ない支えとなります。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ガス・ビッグ3」を中心にガス版OPEC結成  そのOPECの価格支配力は?

2008-12-25 16:20:25 | 国際情勢

(北海道・稚内の天然ガス試掘だそうです。 詳細はわかりません。 稚内郊外には大正時代に石油の試掘をしていたら天然ガスとともに温泉が噴出したという豊富温泉がありますから、ガス・石油の類は埋蔵されているのでしょう。 “flickr”より By shinyai
http://www.flickr.com/photos/shinyai/335202644/)

【「最後の1ルーブルまで」】
ガスに特段の関心がある訳ではありませんが、昨日のウクライナ・ロシアの天然ガス騒動に続き、たまたま今日も天然ガスの話題です。
なお、ウクライナの件について付け加えると、ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領はテレビ局の年末インタビューで、金融危機に直面しているウクライナに対し、ガス債務を「最後の1ルーブルまで」全額支払わなければウクライナは制裁措置に直面するだろうと語ったそうです。【12月25日 AFP】
怖い人の借金の取立てみたいで、凄みがあります。
多重債務者のようなウクライナは身包みはがされることになるのでしょうか。

【ガス版OPEC】
さて、本題に戻すと、ロシア主導で天然ガス版「OPEC」のような組織が作られるそうです。

****15カ国でガス版OPEC発足 埋蔵量は世界の7割*****
主な天然ガス生産国が参加する「ガス輸出国フォーラム」が23日、モスクワで開かれ、新機構を創設する規約を採択した。インタファクス通信によると15カ国が加盟し、本部はカタールのドーハに置く。加盟国で世界のガス埋蔵量の7割、産出量の4割を占め、石油輸出国機構(OPEC)のガス版ともいえる。生産量や価格の調整が主眼ではないとしているが、ガスを輸入に頼る西欧などは警戒している。

同通信などによると、フォーラムには天然ガス埋蔵量が世界1、2、3位のロシア、イラン、カタールなどのエネルギー相らが参加。会議後の会見でロシアのシマトコ・エネルギー相は新機構について「生産調整はしない」とし、ガス田開発の投資計画の調整や技術協力を進めるとした。
また、ロシアのプーチン首相も会議の冒頭で「安いガスの時代は終わろうとしている。ガス田開発に必要な費用は増えている」と述べ、常設機構による協力の必要性を強調した。

同フォーラムは01年に情報交換を主眼に結成され、このうち「ガス・ビッグ3」ともいわれるロシア、イラン、カタールが10月21日にガス市場で緊密に協力していくことで合意し、新機構の創設をめざしていた。
「ガス版OPEC」を巡っては、「ガス外交」を展開するロシアや反米のイランが積極的に進める一方、ロシアやアルジェリアに天然ガスの約3分の1を頼る西欧諸国をはじめ、米国などが警戒。加盟国の中にも、新機構が政治的に利用されることへの懸念が出ている。【12月24日 朝日】
*****************************

「天然ガス版OPEC」の創設は07年にイランが提唱しましたが、天然ガスは世界市場が形成されておらず、価格が2国間の長期契約で決められることが多いことから、OPECのような価格カルテルは実現困難との見方が強くありました。
その後プーチン首相が関心を示し、今年9月にはメドベージェフ大統領が「ガス版OPEC構想は立ち消えになったわけではない」と発言、記事にあるように10月21日に、イランのノーザリ石油相、ロシア政府系天然ガス企業「ガスプロム」のミレル社長、カタールのアティーヤ・エネルギー産業相が会談し、「天然ガス輸出国機構」の創設に向けた取り組みの開始で合意しました。

埋蔵量で言うと、ロシアが全世界の25.2%、イランが15.7%、カタールが14.4%と3カ国で55%を占め、これに続く第4位はアラブ首長国連邦の3.4%ですから、文字通りの「ガス・ビッグ3」です。

しかし、上述のような価格カルテルは困難な事情もあって、生産調整はせず、ガス田開発の投資計画の調整や技術協力を中心とするとされています。

【OPEC加盟国のロシア批判】
今回のプーチン首相が議長を務めた「ガス輸出国フォーラム」では、参加国からロシアに対する厳しい意見が出されたようです。

************
一方フォーラムではロシアに対し、石油輸出国機構(OPEC)の減産に同国が協力していないとの批判が向けられた。(中略)
参加国は、OPECの減産を支持するというメドベージェフ大統領の公約を踏まえ、ロシアは生産を一部犠牲にするべきだったと批判。
リビア代表の閣僚は「ガス市場の状況を是正すると同時に石油市場の状況を是正する必要があった」と述べ、「(石油)市場を支援するためだけでなく、天然ガス市場も支援するために、ロシア連邦による(石油)生産削減の決定を待っている」と述べた。
OPECのヘリル議長はロイターに対して、ロシアは痛みを分かち合うことなくOPECの減産の利益を享受している、と述べた。(後略)【12月24日 ロイター】
******************

ロシアはサウジアラビアに次ぐ世界第2位の産油国ですが、OPECには加入していません。
最近急速に進む原油価格下落に歯止めをかけるべく、OPECは17日、アルジェリアのオランで臨時総会を開き、過去最大幅の日量220万バレル減産することで合意しました。生産調整は来年1月1日から開始します。

この会議にはロシアもオブザーバー参加しましたが、会議に先立ってメドベージェフ大統領は11日、OPECとの協調減産に応じる用意とともに、OPEC加盟の可能性も排除しない考えを表明しています。
ロシアはこれまでOPECとの協調減産には慎重でしたが、世界的な金融危機の影響で原油価格が低迷、来年にも同国が財政赤字に転落する恐れが出てきたことから、方針を転換したとみられています。【12月12日 時事】

「ガス輸出国フォーラム」参加の産油国からの厳しい意見は、本当にロシアは原油生産調整に協力するのかという疑念の表れです。
シベリアなどのパイプラインは厳冬期に一旦閉めると再開に時間を要するという技術的問題もあるようですが、国際社会におけるロシアの信用の問題でもあります。
OPEC会議後に減産協力の約束を翻すような何かがあったのでしょうか。

【大幅減産決定、価格は40ドル割れ】
一方、原油のほうはOPECの臨時総会で日量220万バレルの大幅減産を決め、9月と10月に実施した計日量200万バレルの減産をあわせると、累計の減産量は420万バレルとなっています。
また、17日の閣僚会議前には、非OPEC加盟国のロシアとアゼルバイジャンが日量30万バレル規模の協調減産に応じる用意があると発表しています。

しかしOPECが大幅減産の決定した17日のNY原油先物相場は続落、一時2004年7月以来の1バレル=40ドルを割り込みました。
その後も下げ基調が続き、24日のニューヨーク・マーカンタイル取引所の原油先物相場は9営業日続落。
指標である米国産標準油種(WTI)の2月渡しは35.35ドルに下落しました。
7月につけた最高値(147.27ドル)からの下落幅は約76%と4分の1までに下落しています。

【薄れるOPECの価格支配力】
OPECは1973年の第四次中東戦争の折、イスラエルを支持する先進諸国を標的に、石油輸出国機構は原油価格を約4倍にする値上げを断行してオイルショックを起こしました。
そのときの強烈なイメージがありますが、その後は先進諸国の石油備蓄の拡大、代替エネルギーへの促進、北海油田やアラスカ・メキシコなどの非石油輸出国機構の産油量の増大などの外的要因や、生産調整、原油価格設定をめぐる足並みが乱れるなど内部対立も表面化してきており【ウィキペディア】、その価格支配力は急速に薄れているとも言われてきました。

実際、原油価格の動向はOPECの意思決定に反して動くことが多く、オイルショックのような価格決定を動かしたように見える場面でも、その後の他の生産品の価格動向を勘案して長期的に見ると、必ずしも実質的価格を決定したとは言いにくいこともあるようです。

特に、今年の原油価格高騰は投機マネーに翻弄されているようでした。
また、最近の続落傾向において大幅な減産で合意しても、加盟国が順守するかどうかはっきりしません。
独立系の調査会社によると、これまでに合意した減産への加盟国の順守状況は11月は50%をわずかに上回る水準にとどまっているそうです。【12月17日 ロイター】
これは価格支配力を持った寡占者のイメージよりは、需要減退による価格下落に追随して行動を決めるしかない完全競争下の生産者のイメージがあります。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ウクライナ・ロシア  天然ガス供給で再びトラブル 混迷するウクライナ政局 厳しさ増すロシア経済

2008-12-24 17:14:14 | 国際情勢

(バイクにまたがる美女はティモシェンコ現ウクライナ首相 以前の選挙前キャンペーンポスターだそうです。 “オレンジ革命のジャンヌダルク”とも、“ガスの王女”とも呼ばれたこともあります。“flickr”より By the waving cat
http://www.flickr.com/photos/thewavingcat/122497369/)

【20億ドル未払い】
毎度お騒がせのロシア対ウクライナの天然ガス問題。
また、「代金払わないなら止めるぞ!」と揉めているようです。

*****債務支払わなければガス供給を停止=ロシアがウクライナに警告*****
ロシアのガス最大手ガスプロムは18日、ウクライナが債務を支払わなければ、来年1月から同国にガスを供給する義務はないと警告した。同社の警告は、ウクライナ経由でガス供給を受ける欧州諸国にも削減が広がるのではないかとの不安を引き起こしている。

ガスプロム広報担当のセルゲイ・クプリヤノフ氏は「もし来年1月1日までに債務が返済されず、他に解決策が見つからなければ、新契約を結ぶことはできないし、ウクライナの消費者にガスを供給するという法的な根拠もなくなる」と語った。同氏はガスプロムがウクライナへのガス供給を停止すると明言はしなかったものの、同氏の発言は、債務を支払わなかった場合の結果に対するはっきりした警告と言っていい。

インタファクス通信によると、ウクライナのユーシェンコ大統領はキエフで、17日にガスプロムに8億ドルの債務を支払ったと述べるとともに、近い将来、さらに2億ドルを支払うと約束した。
クプリヤノフ氏はウクライナがガスプロムに8億ドルを支払ったことを確認したが、ウクライナの債務はまだ20億ドル残っているとしている。【12月19日 時事】
****************************

ウクライナ向けの天然ガス価格は、従来からの経緯があって欧州向けの正規料金より格安に設定されていましたが、その後のウクライナのロシア離れ・欧米接近を受けて、ロシア側は価格改定を求め、また、その圧力でウクライナを牽制してきました。

ウクライナのティモシェンコ首相とロシアのプーチン首相は今年10月、ガス供給価格を09年から3年間で段階的に値上げし、最終的に欧州向けの価格水準まで引き上げることで基本合意し、詳細はガスプロムとウクライナ国営石油ガス会社との交渉で確定することになっていいました。

【連立解消、再連立・・・混迷するウクライナ政局】
ただ、ウクライナでは、オレンジ革命をともに戦い(紆余曲折はあったものの)連立を組んでいたユーシェンコ大統領とティモシェンコ首相の対立が夏頃から再燃して、ついに連立解消にまで至り、ティモシェンコ首相は従来の親欧米路線から転換して親ロシア勢力に接近するなど、政局は著しく混迷しています。
両者の対立の背景には、来年末に予定されている大統領選挙に、ユーシェンコ大統領とティモシェンコ首相がともに出馬の予定であることからの確執があると言われています。

その後、ティモシェンコ首相はまた方針を変えたようで、12月16日、大統領派「我がウクライナ・国民自衛」と首相派「チモシェンコ連合」、更に中立派「リトビン連合」が親欧米連立与党復活で合意したそうです。
しかし、「我がウクライナ」の反首相派はユーシェンコ大統領とともに連立復活に反対しており、不安定な政局が続いています。
また議会解散・繰上げ総選挙についても、実施を求める大統領と反対する首相の対立が続いています。

こうした政局が混迷はガス価格問題にも影響し、ユーシェンコ大統領は11月21日、ロシアへの未払い問題はティモシェンコ首相の責任だと非難。これに対し、首相は同日、訪問先のストックホルムで「(ロシアとのガス供給にかかる)契約には間もなく署名できる」と反論・・・という具合で、問題解決が遅れています。【11月23日 毎日】
金融危機を受けて、10月末に165億ドル(約1兆5400億円)の融資を受けることでIMFと暫定合意したウクライナ経済には、20億ドルの支払いは負担が重いようにも思えます。

【迷惑する川下の欧州各国】
06年1月の同様の問題のとき、ロシアがウクライナ向けのガス供給を一時停止しましたが、欧州各国へのガス供給も減少して混乱は欧州全体に広がりました。
ロシアからのガスに依存することの危険性が欧州で改めて意識されましたが、ロシアはウクライナが欧州向けのガスから抜き取ったために起きたことだとウクライナを非難しています。
いずれにせよ、ロシアから欧州各国へのガス供給の80%がウクライナを経由しており、一番迷惑するのは欧州各国です。

大統領就任以前はガスプロム会長でもあったメドベージェフ大統領は先月20日、ガスプロムに「強制的な手段を行使しても」徴収するよう命じたそうです。【11月23日 毎日】
一方、ロシア・ガスプロムによると、“(ウクライナは10月分までの8億ドルは支払ったが)年内はこれ以上は支払わないと通知してきた”【12月22日 朝日】とも報じられています。

ロシアの資源を政治に利用したやり方がよく云々され、実際そういう側面がありますが、このウクライナのガス問題に関してはウクライナ側も、金は払わない、ガスは抜き取る・・・と、相当にしたたかです。
いつも触れるように、ティモシェンコ首相自身が01年には文書偽造・ロシア産天然ガスの密輸入の容疑で逮捕されたことがあり、また、04年には天然ガス輸入を手掛けていた際にロシア国防省高官に賄賂を贈ったなどとして、ロシア検察当局に指名手配されています。(本人は不当な嫌疑だと主張していますが。)
この指名手配中に1回目の首相に就任しましたが、ロシアは首相在任中は訪ロしても逮捕しないとしていました。首相解任後の05年12月にはロシアが起訴を取り下げています。
親ロシア勢力と組んだり、離れたり・・・したたかという点ではティモシェンコ首相も相当なものです。

【プーチン名指し批判も】
一方のロシア。
12月11日ブログ「ロシア 金融危機・資源価格低迷で落ち込む経済 北方領土問題に変化は?」
(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20081211
でも取り上げたように、ロシア経済も景気後退・資源価格下落の影響を強く受けていますが、最近ではウラジオストクでの日本車輸入関税引き上げをめぐる住民の反対運動と、その強硬な鎮圧が伝えられています。

****自動車輸入関税引き上げ、賛否で混迷 ロシア国内*****
ロシア政府が来年1月から導入する自動車の輸入関税引き上げをめぐり、ロシア国内は賛否を二分する騒ぎになっている。日本の中古車の輸入に依存する極東では抗議デモが相次ぎ、治安部隊まで投入される一方、ロシア車の生産都市では政府支持の集会が開かれる。金融危機を受けた自国経済の防衛策が、むしろ国内の混迷を深めている。

プーチン首相が今月署名した政令では、たとえば製造5年以内の車の場合、関税が現在の25%から5~10%引き上げられる。ロシア国内の自動車メーカーや、トヨタなど外国メーカーのロシア現地生産にとっては有利になる。
しかし、輸入業者にとっては大きな痛手だ。多くの住民が中古車輸入に携わる極東のウラジオストクでは、関税引き上げの影響で来年2月には約8万人が失業するとの予測も。今月14日には数千人が抗議行動に参加し、一部は空港への道路を封鎖。高い支持率を誇るプーチン首相の辞任まで要求する異例の動きも出た。「北方領土と一緒にウラジオを日本に渡せ」といったスローガンまで掲げられた。
21日には治安部隊が抗議集会を強制排除。NHKのロシア人カメラマンらが市民とともに一時拘束され、けが人が出る事態になった。抗議行動はシベリアやモスクワでも相次いでいる。

一方、ロシア大衆車生産の拠点である沿ボルガ地域のトリヤッチなどでは18日、関税引き上げを歓迎する集会が開かれた。コメルサント紙によると、自動車大手アフトバズでは約500人が集まり、「政府の決定こそ公平だ」と訴えた。
極東などで高まった抗議行動にプーチン首相やメドベージェフ大統領は表だった反応を見せていない。ただ、デモを取り締まる強硬姿勢だけは鮮明にしている。その背景には、関税引き上げが国内的には総じて支持される、との読みがあるようだ。
プーチン首相が動いたのは19日。カマス自動車工場のあるロシア南西部タタールスタン共和国を訪れ、減産を迫られている国内自動車メーカーへの追加支援を表明、極東への国産車の鉄道輸送無料化なども提案した。ロシアで現地生産している外国メーカーについても「国家支援を期待する権利がある」と述べ、関税引き上げの正当性を強調した。【12月22日 朝日】
*************************

ロシアではソ連崩壊後外車が増え続け、国産メーカーの販売シェアは3割以下だそうです。
極東部やシベリア東部では「安価で高性能」と日本製中古車が主流になっています。
2000年のプーチン政権発足以後、こうした「草の根」の抗議集会は、年金生活者らを対象にした社会保障制度の改革に抗議する全国規模の抗議行動が起きた05年以来とか。【12月19日 毎日】

ロシア当局のモスクワから治安部隊を動員した強権的な抗議行動排除については特に驚きませんが、“高い支持率を誇るプーチン首相の辞任まで要求する異例の動きも出た。「北方領土と一緒にウラジオを日本に渡せ」といったスローガンまで掲げられた。”は意外な感があります。
景気悪化のなかで追い詰められつつある人々の焦燥感が背景にあるのでしょう。
磐石のようなプーチン支配に見えますが、今後景気後退がこれ以上に進行していくと、国民からの批判が表に噴出すこともあるのかもしれません。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ソマリア海賊退治  EU・日・中・米各国の思惑

2008-12-23 12:59:01 | 国際情勢

(11月18日、ソマリア沖でタイの漁船を「海賊の母船」と誤認して撃沈したと言われているインド海軍のフリゲート艦“Tabar” なお、“Tabar”とはサンスクリット語で、闘いに使う斧の意味とか。 “flickr”より By DEEPAK>
http://www.flickr.com/photos/76932422@N00/3053902799/)

【海上、更に陸上も】
実質的な無政府状態が続くソマリア沖での海賊行為の横行に対する国際的な取組みが報じられています。

国連安全保障理事会はアメリカ・フランスの主導(日本も共同提案)で12月2日、1年間の期限付きでソマリア領海内での実力行使を含む制圧行為などを加盟国に認める決議を全会一致で採択しました。この決議は各国がソマリア領海内で海賊の取り締まりのために「必要なあらゆる措置」を取ることを認めています。

更に16日、国連安保理はアメリカの主導で、ソマリア領海に加え陸上・領空での軍事作戦を承認する決議案を全会一致で採択しました。これで各国は海賊制圧のため陸海空から部隊を展開できることになりました。

“主権国への他国軍の侵入を許す異例の決議の背景には、ソマリアが無政府状態に陥っていることがある。作戦はソマリア暫定政府の許可を得て実施される。ライス米国務長官は決議について「(海賊に)非常に大きな打撃を与える」と評価した。しかしAP通信によると、米軍は現時点で地上攻撃などは視野に入れていないという。”【12月17日 毎日】

国際的な海賊封じ込め活動の一方で、海賊はその活動範囲を拡大しているとの報告もあります。 
国際海事局海賊情報センター所長は、これまでソマリア沖を拠点としていた海賊らは、東はケニア沖640-800キロから南はタンザニア沖まで、活動範囲を東方および南方に大きく拡げていると指摘しています。【12月9日 AFP】

【EU海軍始動】
こうした国際的流れのなかで、先ず行動を起こしたのがEUです。
EUは8日の外相理事会で、ソマリア沖の海賊対策のため軍艦と航空機を派遣し、EU初の海上作戦を行うことで合意しました。
派遣されるのは英国、フランス、ギリシャの軍艦各1隻と、フランス、スペインの偵察機各1機。ドイツも同国議会の承認が得られ次第、軍艦1隻を派遣することになっており、最終的には、少なくとも8加盟国が参加する見通しとのことです。

この海域では、既に北大西洋条約機構(NATO)の艦船4隻が海賊防止・パトロールなどを実施していましたが、これらの任務はEU艦隊に引き継がれました。
併せてEU艦隊は、人道支援物資をソマリアに届ける国連世界食糧計画(WFP)の貨物船の護衛も行います。

EUはこれまでアフリカやバルカン半島での平和維持・人道支援活動を行ってきましたが、陸上作戦に限られており海上作戦は初めての取組みです。
このEUの行動を【12月24日号 Newsweek誌】は若干の皮肉をこめて報じています。
“EUは国連からコンゴ東部の紛争地域に部隊を送ってほしいと要請を受けている。だが、景気後退による財政難などを理由に、一部加盟国は派遣に難色を示している。ところがアデン湾での海上作戦に反対の声は殆どなかった。EUにとって目下の課題であるシーレーン防衛に力を入れることができるからだ。何より重要なのは“EU海軍”の力を誇示するいいチャンスになるということだろう。大したコストもリスクも伴わずに。“

【ソマリア海賊とコンゴ東部紛争】
ソマリアの海賊は経済的に大きな問題です。
ただ、海賊の目的は身代金ですから、基本的には生命に危害を及ぼすことはしていません。
海賊の基地となっている町には、拘束している者のためのレストランまであるそうです。
一方、コンゴ東部の紛争は大勢の犠牲者が発生しており、更に多くの人々が難民となって逃げ惑っています。
また、ソマリア海賊が元漁師が軽武装した集団であるのに対し、コンゴの反政府勢力は政府軍を相手に戦う“軍隊”です。

コンゴでは1万7000人規模の国連平和維持部隊が活動していますが、国連はEUに対し、国連の増強部隊が到着するまでの4カ月間、約3000人の部隊の派遣を要請しています。
しかし英独が反対するなど、EU各国はこの要請に消極的な姿勢を見せています。

どちらがより深刻で早急の対策が必要な事態かという点については、そのような比較は軽々にはできないとの考えもあるでしょう。
しかし、どちらがEUにとってメリットがあり、どちらがコストが低く、どちらがリスクが少ないかという比較の答えは考えるまでもなく明らかです。

【日本へも要請】
なお、EU艦隊のフィリップ・ジョーンズ司令官(英国)は9日、日本の海上自衛隊の艦船がEUの海上作戦に参加する可能性について、日本政府と協議していることを明らかにしています。
司令官は「EU部隊に参加する可能性のある(EU域外の)欧州、アフリカ、極東の国々と協議している。日本はその一つだ」と述べています。【12月10日 毎日】

おそらく日本政府も、イラク空自撤収後の活動として、シーレーン確保・海自海外派遣の実績づくりのメリット・アフガン派遣などに比べたら格段にコスト・リスクが低いことなどを検討しているところかと思われます。

【中国も艦船派遣 米中軍事交流】
ソマリアには中国も艦船派遣を決定しています。
“中国国防省は20日、海賊事件が多発しているアデン湾などソマリア沖海域に、海軍の駆逐艦2隻と補給艦1隻を派遣すると正式に発表した。
26日に海南島・三亜から出航する。外務省の劉建超・報道局長によると、自国船舶のほか、人道支援物資を運ぶ国際機関の船舶護衛を主な任務にするという。”【12月21日 読売】
中国海軍として初の遠洋での警備活動となります。

この中国の艦船派遣は中国にとってのプレゼンス誇示となるだけでなく、米中軍事交流という側面もあるそうです。

****米中軍事交流の改善に期待、米太平洋軍司令官 中国艦隊のソマリア派遣で****
米太平洋軍のティモシー・キーティング司令官(海軍大将)は18日、中国がソマリア沖の海賊対策のためアデン湾周辺海域に艦隊を派遣する準備を進めていることについて、米中軍事関係の修復につながるとして歓迎する意志を示した。
中国は、米国の台湾への武器売却に抗議し、10月から米国との軍事交流を中止しているが、キーティング司令官は記者団に対し、「(アデン湾では)中国海軍と緊密に協力することになるだろう」と述べ、中国艦隊のソマリア沖派遣が、米中軍事交流の復活につながるとの期待を示した。
キーティング司令官によると、中国人民解放軍がアデン湾で活動するにあたっての情報提供について、すでに軍や政府の諸機関と連絡を取り合っているという。【12月19日 AFP】
**************************

ソマリア海賊は、自分達の意図しないところで、EU、日本、中国、アメリカなど各国の様々な思惑を導いているようです。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国・台湾  大陸進出台湾企業への融資枠拡大 「三通」開始

2008-12-22 15:39:00 | 国際情勢

(台北101上空を飛行する台湾空軍ミラージュ2000編隊 “flickr”より By Miles 麥爾斯
http://www.flickr.com/photos/mileswen/1425155881/sizes/m/)

【経済協力促進】
中国と台湾の関係が緊張すると、最終的にはアメリカが台湾擁護の立場でどこまで“体を張った”対応をするかという問題となり、最悪の事態となれば、日本もアメリカとの関係で、また、自国の存立を考え、重大な局面に立たされる問題でもあります。

もっとも、現在のところ、中国は飛躍的に力をつけた経済力を背景に、巨大な市場としての魅力で台湾を取り込み、そのままウゴウゴと丸呑みしていこうか・・・というようにも見えます。
台湾も親中国的な国民党・馬政権のもとで、政治的な独自性は維持しながら、中国との経済的関係を強化して台湾経済の牽引車としようという際どい政策をとっています。
そうした、互いの思惑が一致して、このところの中台情勢は非常に良好です。

中国・共産党と台湾・国民党が交流促進を話し合う「両岸(中台)経済貿易文化フォーラム」(4回目、国民党が政権を奪還してからは初めて)が20・21日、上海で開かれました。
中台は国際的な金融危機に共同で対処する必要性を訴え、経済協力促進を強調しています。
フォーラムは、内需拡大プロジェクトやインフラ建設への中台企業の相互参入など9項目の共同提案を宣言して閉幕しました。

****中国:台湾企業への融資枠、1兆7千億円に拡大*****
中国政府は21日、中国に進出している台湾企業が国際金融危機の影響で資金難に陥っている問題に対処するため、台湾企業に対する融資枠を計1300億元(約1兆7000億円)に拡大すると発表した。上海で開かれていた「両岸(中台)経済貿易文化フォーラム」で明らかにした。中国の3銀行が今後3年以内に行う。【12月22日 毎日】
******************************

輸出依存経済の中国自身がアメリカの急激な経済悪化に引きずられて急ブレーキ状態で、農村から出てきていた出稼ぎ者の地方への帰還、新卒者の就職難という社会不安を増幅しかねない問題を抱えた正念場にさしかかっていますが、融資で進出台湾企業の経営が存続すれば、結果、中国国内の労働雇用も確保される・・・ということで、台湾への配慮だけでもないのでしょう。

【「三通」実現で景気回復狙う】
一方、今月15日には、分断後初めての中台間の海運直航便と郵便の直接往来が解禁されました。
これにより「三通」(中台間の直接の通商、通航、通信)が実質的に実現したことになります。

*****経済再生期し中台「三通」始動 馬政権、手探りの航海*****
対中融和で経済再生を目指す馬英九政権の期待は大きいが、深刻な世界不況下で台湾を取り巻く経済環境は厳しい。三通の実現が、景気回復を促し、支持率低迷に苦しむ政権の浮揚に直結するかは不透明だ。
(中略)
台湾の財政部(財務省)によると、11月の香港を含む中国大陸向けの輸出は約56億ドルで、前年同月比38・5%減という過去最大の下げ幅を記録した。台湾の経済紙、工商時報によると、好調に推移してきた中国向けは、輸出全体の約3分の1を占めるが、世界的な景気低迷の影響で9月からマイナス成長に転じた。品目別では電機部品、プラスチックといった台湾経済の“稼ぎ頭”を直撃しており、財政部では「貿易全体が衰退の危機にひんしている」と警鐘を鳴らす【12月16日 産経】
**********************

【精鋭部隊公開とWTO参加問題】
対中融和的な「三通」進展とのバランスをとる考えがあってか、台湾軍は16日、東部・花蓮に駐留する空軍の最精鋭部隊を報道陣に公開しました。
“軍事的には強大化する中国軍と対峙(たいじ)する立場を国際社会にアピールした。(中略)米国防総省は10月、台湾への地対空ミサイル「パトリオット」(PAC3)などの武器売却を決めたが、台湾が求める改良型のF16(C/D)は認めず、馬政権として来月発足するオバマ新政権に対し、改良型の売却を促す狙いもあったとみられる。”【12月17日 産経】

台湾のWTO総会へのオブザーバー参加問題への中国側の対応も注目されるところです。

****台湾のWHOオブザーバー参加 「妨害なら対中感情悪化」
台湾の対中窓口機関、海峡交流基金会の江丙坤理事長(中国国民党副主席)は5日、都内で開いた記者会見で、台湾が求めている世界保健機関(WHO)年次総会へのオブザーバー参加問題について、来年春の次期総会でも中国が妨害工作を行えば、「台湾の住民感情に影響してくる」と述べ、中国に一定の譲歩を求めた。
台湾の馬英九政権は今年5月の発足後、中台直行便解禁など経済関係で対中関係の「正常化」を急いでいる。だが国際機関の参加問題で中国が一定の譲歩をみせなければ今後、対話の進展にも影響を与えるとの見方で中国側を牽制(けんせい)した。
馬政権の対中傾斜への懸念について江氏は、「台湾の主権堅持と(中台)対等の原則があり、(中国に台湾がのみ込まれて)一体化するとの危惧(きぐ)はない」と否定した。【12月6日 産経】
************************

ただ、どうでしょうか。
この種の問題では中国は“譲歩”はしないのでは・・・と思えます。
台湾が空軍精鋭部隊をアピールするのと同様に、中国としても“ひとつの中国”をアピールするのでしょう。
それはそれ、経済は経済・・・ということで、いたずらに緊張することなく推移すれば、日本にとっても好都合なことです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

タイ  前途多難なアピシット新政権の船出

2008-12-21 12:43:44 | 国際情勢

(気勢をあげるタイPAD 長い闘いによって彼等が得たものが何だったのか、これから明らかになります。 “flickr”より By adaptorplug
http://www.flickr.com/photos/11401580@N03/2597026333/)

【ほうきを手に清掃】
タイでは、タクシン派政権の退陣を要求する民主市民連合(PAD)が8月26日に首相府占拠を開始、空港占拠の混乱、憲法裁判所による旧与党「国民の力党」(PPP)解党を経て、17日に旧野党「民主党」を中心とする連立でアピシット首相が誕生しました。

19日には首相府が4ヶ月ぶりに再会し、アピシット首相もほうきを手に清掃に参加したそうです。
有力華人系の名門出身。英中部ニューカッスルで生まれ、両親とも医師。イートン校からオックスフォード大学に進み、哲学、政治学、経済学などを勉学。(首席卒業とも言われていますが、徴兵義務逃れの批判もあるようです。)
帰国後、タイの国立タマサート大学で講師を務め、初当選後は要職を歴任しエリートコースを歩み、44歳の若さで首相へ。
おまけに容姿端麗で、アイドル並に女性ファンも多いとか。

いささか僻みたくなるようなエリートですが、それだけにタクシン派支持者が多い東北部低所得層には反発する者も多いようです。
“ほうきを手に清掃”というのは、エリート臭さを薄める意味でも、“混乱は終わった。これから再出発だ”というメッセージとしても、上出来のパフォーマンスですが、前途は多難のようです。

【静かなクーデター】
今回の政変はPADの首相府・空港占拠というなりふりかまわぬ強硬手段を、タクシン元首相に利権・権限をそがれた旧エリート勢力が陰に陽に支えて実現したものであることは広く報じられているところです。

PADの活動を資金的に支えたのは、タクシン政権時代に利権を奪われた財界などの守旧派勢力でした。司法命令で与党が解党しソムチャイ政権が崩壊すると、経済団体は「行き詰まり打開のため、新たな枠組みの政権が望ましい」との声明を発表し、民主党による多数派工作を後押ししました。

06年のPAD抗議行動とときは、PADのタクシン首相批判を受ける形でクーデターを決行し表舞台に立った軍ですが、軍部暫定政権が経済政策で失政を続け、その後の選挙でのタクシン派勝利・復権に至った反省から、今回は表に登場することは避けていました。
しかし、PADの抗議行動を黙認し、政府の排除要請に協力しないことでPADを実質的に支援し、政権に対しては退陣・総選挙を要請していました。

憲法裁判所が今月2日、「国民の力党」(PPP)など与党3党を解党、ソムチャイ前首相ら党幹部を政界追放すると、実質的な軍トップであるアヌポン陸軍司令官が即座に旧連立与党の中小政党幹部を官舎に招いて「助言」。PPPの派閥を率いるネウィン元首相府相を寝返らせ、「民主党」中心の連立成立への道筋をつくったと言われています。
更に、6日、民主党が政権奪取を宣言し一気に流れを引き寄せた際も、各党幹部は記者会見の直前にアヌポン司令官宅を訪れ、結束を確認したとされています。【12月16日 朝日】

一方、流れを決定付けたのは、やはり旧守派が多いとされる司法でした。
憲法裁判所は07年5月、選挙違反を理由に旧タクシン与党のタイ愛国党を解党し元首相ら同党幹部を政界から追放する一方で、やはり選挙違反で訴追された民主党については全面無罪にした経緯があります。
今回も、今年9月には「料理番組に出演して副業禁止規定に違反した」といういささか強引な理由で、当時のサマック首相を失職させました。
代わってソムチャイ政権が成立すると、今月2日、選挙違反に絡んで最大与党PPPなど3与党に解党判決を出し、政権を崩壊させています。
“いずれも国際基準では大きな疑問符が付く判決だったが、「政治混乱打開には司法が役割を果たすべきだ」という国王のお墨付きを得た司法の判断を国内世論は受容した。”【12月16日 毎日】

【1年遅れの政変】
こうした財界・軍部・司法の旧守派のもくろみでは、今回の連立は本来なら昨年の選挙で実現するはずでした。
憲法裁判所は旧タクシン与党のタイ愛国党を解党して元首相ら同党幹部を政界から追放。
軍部は旧愛国党を離れた議員らに政党設立を働きかけ、さらに憲法を改正して選挙制度を小選挙区から中選挙区制に変えて、「民主党」に有利な環境をつくりました。

しかし、北部・東北部の低所得層を中心に、バラマキ政策とも批判されることが多いタクシン元首相を支持する声が思いのほか強く、昨年12月の総選挙ではタクシン派PPPが圧勝。
バンコクなど都市部中間層・南部に強く、実業家・官僚・軍部の支援を受ける「民主党」は敗北。
そこで、選挙で勝てない民主党に代わって再び街頭活動に出たのがPADでした。
PADのメンバーの多くが総選挙では民主党から立候補した者で、空港占拠を指揮したPADの担当幹部は民主党の下院議員です。【12月16日 朝日】

PADの強引な手法がもたらす混乱に一般市民はかなり距離を置いており、国民の支持を得られないPADの活動も先細りになる傾向もありましたが、結局、空港占拠という強硬手段、これをバックアップする軍・司法の“タクシン潰し”が成功したのが今回の騒動でした。
タイ社会で決定的な力を持つ王室も反タクシン勢力に近いとも言われ、PADの行動を黙認しました。

【タクシン派の今後の動きは?】
こうして成立したアピシット政権に対して、タクシン派は当然強く批判しており、攻守の立場を変えた反政府活動の再燃も懸念されています。
タクシン有力者が“チェンマイとプーケット国際空港を占拠する”と明言しているとも。

13日には、タクシン派はバンコクの国立競技場で5万人規模の大規模集会を開きました。
国外逃亡している元首相も録画ビデオを公開し、親タクシン派が政権の座を追われた原因について、軍と司法が陰で働きかけたためだとして非難しました。
しかし、外交旅券も失効し、国外逃亡生活を余儀なくされている元首相の影響力は低下しつつあるとも見方もあります。

なによりタクシン派にとって不利なのは、軍・警察のバックアップがなく、資金的な援助もないことです。
もし、反政府行動に出ると、PADのときとは違って、軍・警察が速やかな対応をとると思われます。
タクシン派の反独裁民主戦線(UDD)幹部ウィラ氏は、空港占拠をする行為は違法でありテロ行為だとの考えを示したうえで、「我々は不公平な行為は絶対しない。民主主義であるがゆえに前反タイ政府団体の民主主義市民連合(PAD)と正反対となる活動しか行わない。武力行使も武器所持もせず、できる限り法律を遵守する。そのため民主党を中心とした連立政権が樹立されたとしても、空港占拠をすることはないだろう」と述べています。【12月11日 タイ通】
個人的にもこの正月、タイ北部のスコータイに旅行しますので、再び空港閉鎖となると非常に困ります。

【波乱含みの新内閣】
しかし、20日にプミポン国王の承認を得て発表されたアピシット新内閣の顔ぶれは波乱含みです。
PADの空港占拠事件を「革新的な抗議行動だ」と称賛し、集会ステージに上がっていたカシット氏が外相に起用されました。
金で票を買うタクシン的な金権政治一掃を名目に「選挙による議員は3割に留め、残りは任命制にする」というPADの主張は民主制否定、低所得者層の政治からの排除であり、容認できません。
裏の繋がりはともかく、このような活動の指導者を表立って外相にすえることについては、今後タクシン派の反発を招きそうです。

また、タクシン派から寝返ったネウィン元副農相派から内相等の要職に4人を起用するなどの旧与党厚遇についても、民主党内からの不満、更に、旧与党勢力が要求するタクシン的ばらまき政治継続と、これに反発する財界・旧利権グループとの対立を招きそうです。

タクシン派と反タクシン派に二分した国民の融和と、今回の混乱で失った国際社会からの信頼を回復するという難題を背負ったアピシット新首相の前途は多難です。
深刻化する世界的な不況への対応もあります。
低迷する経済に対して効果的な政策を打ち出せなければ、タクシン派が主導権を握る可能性もあるとの指摘もあるようです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする