
(対独戦勝80年記念の軍事パレードを並んで観覧する中国の習近平国家主席(左)とロシアのプーチン大統領=モスクワで5月9日【5月9日 毎日】 北朝鮮の軍事パレード参加はなく、金正恩氏も訪ロせず)
【「蜜月」を演出する中ロ しかし、中国はウクライナ和平でのロシアの米接近を牽制】
ロシアを訪問した中国・習近平国家主席はプーチン大統領との親密な会談を行い、翌日には対ドイツ戦勝80年を祝う軍事パレードを両者が並んで見守るなど「蜜月」をアピールしています。
****プーチン大統領と習近平国家主席が隣り合わせに座りドイツ戦勝80年を祝う軍事パレード見守る 20カ国以上の首脳が参列、結束アピール****
プーチン大統領と習近平国家主席が蜜月ぶりをアピールしました。
快晴の中、ロシアの首都・モスクワの中心部では第2次世界大戦での対ドイツ戦勝80年を祝う軍事パレードが大々的に開催されました。観覧席には、前日に中ロ首脳会談を行ったばかりのプーチン大統領と習主席が隣り合わせに座ってパレードを見守りました。(中略)
プーチン大統領がパレード後、観覧した北朝鮮の軍高官と会話を交わす姿も確認され、プロパガンダ色の強いパレードとなりました。【5月9日 FNNプライムオンライン】
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ただ、アメリカ・トランプ大統領が仲介するウクライナの停戦・和平の動きがあるなかで、関税戦争などでアメリカと厳しく対立し、また、これまで経済的にロシアを支えてきた中国としては、ロシアがアメリカのペースで和平に向けて動けば、梯子をはずされたような状況にもなりかねない・・・ということにも。
そのため、習近平主席の今回訪ロはそのあたりについてロシア・プーチン大統領を牽制する狙いもあるとの指摘もあります。
****訪露した習主席、米との接近試みるプーチン政権をけん制…「中国抜き」ウクライナ和平交渉に焦りか****
ロシアを訪問中の中国の 習近平(シージンピン) 国家主席は8日、プーチン露大統領との約7か月ぶりの対面会談で中露の結束を再び打ち出した。習氏は今回の訪問で、ウクライナの和平交渉を機に米国との接近を試みるプーチン政権をけん制し、中国との関係の重要性を再認識させる狙いとみられる。
露大統領府によると、両首脳は会談で、第2次世界大戦に「勝利」した共通の歴史認識を前面に打ち出した。習氏は、戦後80年の両国関係について「血と火で鍛えられた友情が、世代から世代へと受け継がれてきた」と述べ、揺るぎない結束をアピールした。プーチン氏は今回、習氏のために1対1形式を含む3回の首脳会談を準備しており、厚遇ぶりは際立つ。
ただ、中国側には中露関係への不安もある。
習氏は7日、露政府紙ロシア新聞への寄稿で「一時の出来事に惑わされず、中露の相互信頼を破壊するたくらみに共同で対抗する必要がある」と呼びかけた。盟友のロシアに対して引き締めを図るような異例の発信には、ウクライナ和平交渉が中国抜きで進められていることへの焦りがあるとみられる。
中国は、米欧の制裁下にあるロシアから原油や天然ガスを大量に輸入し、当初からロシアのウクライナ侵略を事実上支援してきた。ただ、表向きは「中立」の立場で、ウクライナ側にも配慮しつつ、対話による解決を訴えてきた。
ロシアは中国の役割には謝意を示すものの、対話にはかじを切らず、北朝鮮軍を参戦させて戦局を複雑にした。東アジアの不安定化を誘発しかねない露朝共闘の動きに対し、「中国は不快感を持っていた」(北京の外交筋)という。
そうした中、今年1月に就任したトランプ米大統領は露寄りの立場で和平交渉を推進し、プーチン氏の態度も軟化した。ウクライナ問題を機に米露間の雪解けが進めば、中国が置き去りにされる可能性もある。
中露の発表によると、習氏は今回の会談で、トランプ政権の関税政策を意味する「いじめ行為」という言葉を使って対米でロシアと足並みをそろえたい意向を示したが、プーチン氏は米国批判に踏み込まなかった。プーチン氏に理解を示すトランプ氏の反発を懸念した可能性がある。
中国は和平交渉に参加できないだけでなく、ウクライナ側から批判を浴びている。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は4月、戦闘中に中国人が拘束されたと公表し、「少なくとも数百人の中国人が露軍に参加している」と中国の「中立性」に疑問を投げかけた。
対米貿易問題で欧州との連携を探る中国としては、ウクライナとの関係悪化は避けたい考えだ。中国政府関係者は「中国はウクライナ問題で欧州側と協議を始めている」としており、米露主導の和平交渉への関与を模索するとみられる。【5月9日 】
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【露朝共闘が進むなかでの北朝鮮の軍事パレード不参加 背景にギクシャクする中朝関係】
今回の軍事パレードにはウクライナでロシアとともに戦う北朝鮮は参加しておらず、金正恩朝鮮労働党総書記も訪ロしていません。
****北朝鮮がロシア軍事パレード不参加 金正恩氏の不慣れ、対中関係悪化背景か****
ロシアのウシャコフ大統領補佐官は6日、首都モスクワの「赤の広場」で9日に行う第二次大戦の対ドイツ戦勝80周年記念式典と軍事パレードに、中国や旧ソ連構成国など約30の国・地域の首脳や高官が出席すると発表した。また、中国など13カ国がパレードに自国軍を派遣するとした。タス通信が伝えた。
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記や朝鮮人民軍は発表に含まれておらず、参加は見送られたもようだ。
これに先立ち、ロシアは北朝鮮軍をパレードに招待。パレードに合わせて金氏が訪露する可能性も指摘されていた。ウシャコフ氏によると、北朝鮮からは駐ロシア大使が出席を予定。また、インドからはモディ首相ではなく高官が出席する。
北朝鮮が参加を見送った理由は不明だが、多数の首脳陣が集まる行事への出席に金氏が慣れていないことや、北朝鮮と中国との関係がぎくしゃくしていることが要因となった可能性がある。
北朝鮮の宗主国的立場を自任してきた中国は、北朝鮮がロシアと事実上の軍事同盟条約を昨年締結するなど対露傾斜を強めていることに不満を抱いているとされる。北朝鮮も、朝鮮半島の非核化に言及した昨年5月の日中韓首脳会談の共同宣言を「内政干渉だ」と批判するなど、対中姿勢の変化が指摘されていた。【5月7日 産経】
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露朝共闘に不快感を持つ習近平氏がプーチン大統領と一緒に見守る前で北朝鮮の朝鮮人民軍が行進する・・・また、それを金正恩氏が一緒に眺める(習氏と金氏のどちらがプーチン大統領のより近くに座るのか知りませんが)・・・というのは、いかにも気まずい。
この手の外交に不慣れな金正恩氏ならずとも、胃が痛くなるような避けたい場面ではないでしょうか。
中国からすると、北朝鮮とロシアの軍事的な接近は、朝鮮半島の安定が揺らぎ、米日韓の軍事的結束が強化される可能性があること、また、北朝鮮が中国を経由せずにロシアと直接的な軍事協力を進めることで、中国の地域における影響力が相対的に低下する恐れがあることなどのリスクがあります。
中国外務省の林剣報道官は、2024年10月の記者会見で「北朝鮮とロシアは独立した主権国家であり、両国間の協力については把握していない」と述べました。 これは、北朝鮮の行動に対する直接的な非難を避けつつ、関与を否定する立場を示しています。【2024年11月5日 JBpressより】
しかし、北朝鮮がロシアに兵士を派遣し、ウクライナ戦争に関与していることが明らかになると、中国は北朝鮮を「友好隣国」と呼ぶことを控えるなど、外交的な距離を示すようになりました。
こうした中国側の不快感もあって、最近の中朝関係はギクシャクした感じが垣間見えます。
****北朝鮮、無線巡り中国に異例反発 局設置計画「違反」と国連へ通告****
中国が北朝鮮との国境近くにFMラジオ放送などに使う無線局の設置を計画していることに対し、北朝鮮が国内の周波数に深刻な干渉を及ぼす恐れがあるとして反対していることが25日分かった。
北朝鮮は事前調整の要請がないとして、国連専門機関に国際規則違反だと通告した。複数の外交筋が明らかにした。中朝間の意見対立が表面化するのは異例。
中朝は今年、国交樹立75年の節目に当たるが、外交筋の間では関係冷え込みが指摘されており、今回の問題にも影響した可能性がある。中国が安全保障分野を含めてロシアに急接近する北朝鮮を快く思っていないとの見方もある。 (後略)【2024年8月25日 共同】
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****習近平氏が金正恩氏に答電、「親善的な隣国」欠落****
中国の習近平国家主席が、中国の75周年「国慶節」(建国記念日)に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記が送った祝電に対し、15日ぶりに答電を寄せ、「地域と世界の平和と安定、発展と繁栄を守るためにより大きな貢献をする用意がある」とした。
「兄弟」などの表現は昨年の内容と全体的に似ているが、「親善的な隣国」などの表現はなかった。北朝鮮がロシアに派兵までするほど北朝鮮とロシアの関係が血盟関係のレベルに近づいている中、このような朝ロの緊密な関係を不快に思う中国の本音が表れたとみられている。(中略)
地域情勢の安定を優先する中国の立場では、朝ロの軍事協力が好ましくない可能性が高い。北朝鮮の最友好国だった中国の北朝鮮に対する影響力が弱まりかねないからだ。
地域情勢の安定を優先する中国の立場では、朝ロの軍事協力が好ましくない可能性が高い。北朝鮮の最友好国だった中国の北朝鮮に対する影響力が弱まりかねないからだ。
中国外務省は、韓国情報当局の北朝鮮派兵の発表に、「すべての当事者が緊張緩和のために努力しなければならない」とだけ述べた。韓国政府消息筋は、「西側が注目するウクライナ戦争に北朝鮮が派兵を決定した状況は、中国の立場から見れば非常に不快なこと」と指摘した。
今年は中朝国交樹立75周年だが、両国間の交流や親善は低調だ。中国に派遣された北朝鮮労働者の帰国問題をめぐっても、両国間で神経戦が続いている。【2024年10月21日 東亜日報】
今年は中朝国交樹立75周年だが、両国間の交流や親善は低調だ。中国に派遣された北朝鮮労働者の帰国問題をめぐっても、両国間で神経戦が続いている。【2024年10月21日 東亜日報】
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****中国で北朝鮮スパイが逮捕されていた! 容疑は何か、「血盟」の両国関係に何があったのか****
<驚きのニュースが伝えられた。習近平にとって北朝鮮は重要な友好国ではあるが、頭痛の種でもあるようだ>
北朝鮮のスパイとされる人物が、中国当局により、中国の軍事技術を盗んだ容疑で逮捕された。韓国の聯合ニュースが4月29日に報じた。(中略)
逮捕されたのは、朝鮮労働党軍需工業部の下部組織から中国東北部の遼寧省に派遣されていた複数のIT部隊員の一人。
北朝鮮事情に詳しい情報筋によれば、この容疑者は先月、現地の宿泊施設からノートパソコンを持って逃走。その後行方不明になっていたが、中国の公安当局によって逮捕された。
調査の過程で、容疑者のノートパソコンから中国の兵器や軍事技術に関連する多数の情報が発見された。ハッキングによって得たとみられている。本人は取り調べで容疑を認めているという。
情報筋によれば、北朝鮮はこの逮捕を把握すると、同じ場所で活動していた他の全IT部隊員を呼び戻した。情報収集活動が露見することを恐れたためとみられる。
軍需工業部は、北朝鮮の兵器製造および研究開発計画を監督しており、国連制裁対象の組織となっている。同部や偵察総局が派遣するIT部隊員は、中国や東南アジアなどの地域で、寮生活を送りながら偽名でハッキングを行うことが広く知られている。(中略)
厳しい検閲の下にある中国のメディアでこの事件が報じられたという事実は、当局の黙認、あるいは明示的な承認があったことを示唆している。
友好的と思われていた中朝関係の緊張が露呈した?
「今回の事件は、北朝鮮が軍事力強化のため、ハッキング活動の対象を中国にまで拡大していることを示している」と北朝鮮の情報筋は聯合ニュースに語った。(中略)
この逮捕は、中国と北朝鮮という条約上の唯一の同盟国同士の間にある緊張を垣間見せるレアケースとなった。
中国は、孤立した北朝鮮の経済を支えることで難民危機を防ぎ、北朝鮮が中国とアメリカの同盟国である韓国との間の緩衝地帯として機能することを期待している。
武器の供与やウクライナ前線への兵士派遣など、北朝鮮がロシアと関係を強化していることは中国にとって頭痛の種だ。習近平(シー・チンピン)国家主席はこの関係を容認しているが、中国周辺地域にアメリカとその同盟国による軍事関与を招き、衝突のリスクを高める可能性がある。
なお、聯合ニュースによると、この容疑者は現在も拘束中だ。どのような罪に問われるのか、あるいは中国当局が事件の詳細を公にするのかは明らかになっていない。【5月9日 Newsweek】
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【北朝鮮には中国依存度を下げて、ロシアからの物資で経済の国家統制を進めたい思惑も】
経済的な中朝関係も低調になっているようですが、北朝鮮側が中国からの物資流入による市場経済より、ロシアとの関係を重視した国家管理された中央集権的経済を指向していることも背景にあるとも。しかしそれは北朝鮮経済にとっては“崩壊リスク”をはらんでいるとも。
****「中国離れ」「ロシア接近」の代償 北朝鮮経済が直面する崩壊リスク****
北朝鮮の非公式経済(市場経済)の要衝と言えば、北東部の清津(チョンジン)と首都・平壌郊外の平城(ピョンソン)である。前者は全国最大と言われる巨大市場を擁し、後者は国内外から集まった物資を大消費地の平壌や全国各地に送り出す機能を果たしている。
平城市場に次ぐ規模を誇る玉田(オクチョン)市場は、独特の流通ネットワークを形成していることで知られるが、韓国のサンドタイムズによると、この機能が今年3月初旬から麻痺状態に陥っているという。
北朝鮮全域の価格基準を定めてきたこの市場の機能停止は、単なる地域経済の問題にとどまらず、崩壊した中央集権的な計画経済に代わって30年にわたり機能してきた市場経済システムそのものが根本から揺らいでいる兆候であるとの見方が出ている。
北朝鮮経済に詳しい情報筋がサンドタイムズに語ったところによると、当局が貿易に対する統制を強化したことで、中国との国境に面する新義州(シニジュ)と恵山(ヘサン)からの物資の流入が遮断され、玉田市場への入荷が途絶え、機能が事実上停止した。
約1万人の商人が集まる玉田市場は、全国の商人が商品を仕入れる卸売流通の中心地であり、中国から輸入された工業製品、食料品、衣類用原材料などが列車で平城まで運ばれ、その後、オートバイや担ぎ屋の手で市場に持ち込まれる。そして「タルリギ」と呼ばれる卸売業者を通じて全国に送り出される。
平城玉田市場はまた、超短期衣類生産体制を備えていた。原材料が入荷すると、裁断、縫製、アイロンがけを経て半日で製品ができる家内工業システムが形成されていた。一家に一人は縫製技術者であり、関連産業まで含めると約8万人が従事していたとされる。
北朝鮮経済を研究するクァク・イノク教授は「平城で卸売される衣類加工品は中国から原材料(布地)を持ち込み、コンピューターを利用して作られる」「韓国のドラマや映画をモニタリングし、芸能人が着用する服と同じように裁断・設計し、サンプルを作って大量生産する」と述べた。
このシステムには平城理科大学、国家科学院のエリートや被服専門大学出身のデザイナーが関わり、新製品を生み出していた。しかし、この巨大なアパレル産業全体が機能停止に追い込まれた。
玉田市場は、全国のコメ、トウモロコシ、砂糖、食用油といった食料品や生活必需品の価格、さらに外為レートの基準となる「平城基準」を決める場でもあった。しかし市場の機能停止に伴い、この基準が出されなくなり、価格決定に混乱が生じている。
デイリーNKの内部情報筋によると、3月27日時点で貧困層の主食であるトウモロコシ1キロの価格は4500北朝鮮ウォン(約32円)と、2009年の調査開始以来最高値を更新した。コメ1キロの価格は平壌で9500北朝鮮ウォン(約67円)、恵山で9700北朝鮮ウォン(約68円)と史上最高値に近づきつつある。
問題は、この物価上昇が短期的なものではないことである。北朝鮮は現在、前年の収穫時に得た食糧が底をつく端境期を迎え、麦の収穫が始まる初夏まで穀物の高値が続くとみられている。価格安定に寄与してきた輸入穀物も入荷が途絶え、燃料価格も急騰し、北朝鮮ウォンの下落も続いている。
こうした背景については、中国との関係悪化とロシアへの接近という外交的要因が作用したとする分析がある。
北朝鮮は昨年6月、ロシアと「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結し、自国の兵力をウクライナ侵攻の最前線に派遣するなど、経済・軍事の両面で関係を強化した。またロシアとの間で自動車専用橋の建設が始まり、羅先(ラソン)の経済特区の開発もロシアの協力の下で進められている。
「羅先は数十年にわたり中国が独占的に事業を行ってきた地域だが、ロシアが参入することで経済主導権争いが本格化している」と情報筋は述べた。これが中国の逆鱗に触れたということである。
中国は北朝鮮貿易の98.3%を占めており、食糧やエネルギー供給、人材派遣による外貨獲得など、北朝鮮のライフラインを事実上掌握している。北朝鮮はこの高すぎる対中依存度を下げようとしていたとみられる。
情報筋によれば、北朝鮮当局は最近、商人と手工業者への統制を強化し、代わりに国の流通網、店舗網、アパレル工場に原材料の供給を増やしている。中国から流入した商品は市場経済システムに乗って流通するが、ロシアからの物資は国家の流通網に乗せて掌握できるという違いがある。
金正恩総書記は、昨年末の朝鮮労働党中央委員会第8期第11回総会で「経済全般を統一的に管理することのできるシステムと方法、計画化事業と価格事業を改善することをはじめ切実な方法論的問題の解決に力を入れる」と述べ、市場経済を抑制し中央集権的な計画経済体制への回帰を示唆した。
しかし市場を潰そうとすることは非常にリスクの高い行為である。故金正日総書記は市場経済の発展を嫌い、2009年11月に貨幣改革を通じて市場を潰そうとした。旧紙幣を銀行に預けさせ、交換限度額を定めて新紙幣に交換し、民間に蓄積された富を蒸発させ、市場も閉鎖した。
経済と社会は大混乱に陥り、激しいインフレが発生した。政策責任者を銃殺することで混乱の収拾を図ったが、その影響は長年残った。その後10年を経て市場経済の進展によりようやく生活が安定しつつあった矢先に、金正恩氏は再び市場を取り潰しにかかっている。
北朝鮮には現在、500以上の市場が存在し、人々の生活の中心であるだけでなく、商人から徴収される市場使用料が地方政府の予算や教師の給与などに割り当てられている。この財源が失われれば行政サービスは停止する。
当局は、その穴を埋めるために、「税金外の負担」と呼ばれる法的裏付けのない金品を住民から取り立て、生活をさらに困難に追い込んでいる。【5月6日 デイリーNKジャパン】
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ただ、中国が北朝鮮に不快感を持っており、関係がギクシャクしたものになっているにしても、地政学的に北朝鮮を緩衝地帯として利用するという中国の基本方針自体は変わっていませんので、中朝が表だって激しく対立するようなことにはならないと推測されます。