goo blog サービス終了のお知らせ 

孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

韓国  アメリカでの不法移民摘発で韓国人労働者がターゲットになったことで広がる怒り

2025-09-08 23:22:32 | 東アジア
(米国の移民当局が公開したジョージア州にある現代自動車工場での不法滞在・就労の取り締まり(ICEのホームページより)【9月8日 聯合ニュース】)

【「韓国が日本の方式をまねる必要はない」が「韓国も妥結急げ」】
トランプ関税については、日本はとりあえず“15%”でトランプ大統領の大統領令署名に漕ぎつけていますが、韓国は未だ公式文書には至っていません。

****米国、日本車に先に15%関税…韓国車は25%のまま****
「1カ月2100億ウォン(約223億円)、一日70億ウォン」。米国の自動車関税が15%でなく25%である場合、韓国自動車業界に生じる損失推算額だ。 

トランプ米大統領が4日(現地時間)、日本産輸入品相互関税15%、自動車品目別関税15%を骨子とする米日貿易合意を公式的に履行する内容の行政命令に署名した。両国の貿易合意から44日ぶりだ。これで米国は日本産輸入品のほぼ全体に15%の関税を適用し、自動車および自動車部品に15%関税を適用する。米国はその間、日本産自動車に従来の関税2.5%に品目別関税25%を加えた27.5%の関税を課してきた。

韓国は日本より8日後の7月30日に関税交渉が妥結したが、行政命令が遅れ、対米自動車輸出競争国の日本との価格競争力でひとまず遅れをとることになった。 

トランプ大統領が欧州連合(EU)に続いて日本との関税交渉に関する行政命令に署名したことで、韓国はこれらの国より10%ポイントほど高い関税を負担しながら対米輸出市場で競争するしかない。韓国の輸出はすでに厳しい状況を迎えている。(中略)

7月30日、韓国政府は対米3500億ドル規模投資をテコに関税を25%から15%に引き下げる合意案を米国から引き出した。しかし公式文書までは受けていない。 産業部の関係者は「引き続き(米国と)協議している」と明らかにした。

続いて「特に自動車品目関税などで米国と合意をした主要国はEUと日本、韓国ほど」とし「(初期交渉当時)政権はまだ発足していなかったうえ、合意も遅れた側面があり(明文化に)時間がかかる」と説明した。 

しかし終盤の交渉が難航している。通商当局は先月25日の韓米首脳会談で共同合意文に15%関税を明示する案を推進したが、不発に終わった。韓国が約束した3500億ドルを▼いつ(時期)▼どのように(調達方式)▼どこに(投入先)投資するのかを先に明文化するべきという米国側の要求のためだった。 (中略)

西江大のホ・ユン国際大学院教授も「大きい枠組みで数字などは決まったが、解釈に隔たりがあるようだ」とし「3500億ドルの対米投資でも米国は直接投資の比率が高くなることを望み、韓国はもう少し裁量権を持つことを望むはず」と分析した。 

大統領室の姜由楨(カン・ユジョン)報道官は「日本が完了したからといって韓国も完了するという形で接近することではない」と述べた。「韓米関税交渉の明文化に速度を出す計画があるのか」という質問には、「速度の問題ではない。交渉主導者間で最大限に国益となる点を見いだし、成果が具体化される時、最も私たちの国益になるだろう」と答えた。

大統領室は今回の米日貿易合意とは関係がなく慎重に協議を続ける方針だ。 与党の関係者は電話で「米連邦控訴裁がトランプ大統領の『相互主義』関税を不法と判決するなど随所に不確実性が残存している」とし「合意文を早期に書くことが交渉を総体的に展開する過程で最終的にむしろ不利になることもあり得る」と話した。【9月6日 中央日報】
********************

“日本は関税引き下げという火急の問題を解決する見返りに自国の国益を譲った”というのが韓国メディアの評価です。

“今回の大統領令によると、日本は米国と関税算定方式・投資・エネルギー・農産物・航空宇宙製品に至るまで幅広い貿易条件を文書で明確に規定している。米国産米の購入を75%増やし、トウモロコシ・大豆など年間80億ドル(約1兆1800億円)相当の農産品も購入することにした。5500億ドル規模の対米投資については、米政府が投資先を選定するようにするなど、米国の統制権まで許容した。日本は関税引き下げという火急の問題を解決する見返りに自国の国益を譲った。”【9月6日 朝鮮日報】

そのうえで、「韓国が日本の方式をまねる必要はない」としながらも日本に遅れをとって関税で不利になっている現状に対し、「交渉のスピードは上げなければならない」「韓国も妥結急げ」という思いもあります。

【不法移民摘発で韓国人労働者がターゲットになったことで韓国社会に広がる怒り】
そんな対米交渉を急ぎたい韓国の神経を逆撫でした感があるのが、トランプ政権による不法移民摘発の標的に韓国人労働者がなったこと。

ジョージア州の現代自動車とLGエナジーソリューションのバッテリー合弁工場建設現場で行われた不法移民摘発でビザなどの問題で約300人の韓国人労働者が拘束され(拘束者全体は475人)、しかも犯罪者として扱われる様子が拡散したことで韓国社会に怒りが広がっています。

****「投資誘致要請しながら不意打ち」「両手束縛は衝撃」…米国の韓国人社会が激高****
米移民当局がジョージア州の韓国企業建設現場を急襲し韓国人300人を拘禁した状況に在米韓国人は不安感に包まれたまま事態の推移を注視している。 

韓国人の間ではジョージア州の現代自動車とLGエナジーソリューションのバッテリー合弁工場建設現場で起きた大規模な韓国人取り締まりをめぐり「衝撃的だ」「米国が韓国に投資誘致を要請しながら不意打ちを食らわせた格好」という激高した反応が出ている。

一部では「彼らのビザが訪問・滞在目的に合わないということなら取り締まりの口実を提供したのではないか」とし問題点を見つけて根本的に改善することが至急だという話も出ている。 

ワシントンDCに居住する韓国人のシンさんは6日、「トランプ大統領が自身の熱烈支持層であるMAGA陣営の反移民世論を意識して政治的効果を狙い韓国の大企業をターゲットにしたようで怒りがこみ上げてくる」と話した。

また別の韓国人キムさんは「映画のようなことが起きた。強力犯でもないのに取り締まり過程でヘリコプターが飛び軍用車が大挙動員され、両手を縛られたまま連行された。取り締まり過程自体がとても非人権的だ。取り締まりの映像を見て衝撃を受けた」と話した。 

米国在住韓国人最大のネットコミュニティのひとつであるミッシーUSAの公開掲示板では、今回の大規模取り締まりに対するコメントが数十件に上るなど熱い話題として浮上した。ある会員は「とても残念なことが起きた。工場建設初期段階なので経歴がしっかりとした社員を送ったはずなのにこれはどういうことなのか」とコメントした。

また別の会員は「MAGA陣営の女性政治家が米政府当局に通報した結果というニュースを見て腹が立った」と、また別の会員は「熱心に働きもせず自分たちの暮らしが苦しい理由を外国人、特に東洋人のせいと考えているのだ。いらいらする」と吐露した。(後略)【9月7日 中央日報】
*******************

****現代自の米工場での労働者拘束、韓国に衝撃広がる-対米投資に影****
米ジョージア州にある韓国企業の電気自動車(EV)用バッテリー工場で行われた大規模な不法移民摘発は、韓国に大きな衝撃を与えた。李在明大統領がホワイトハウスでトランプ大統領と会談し、韓国企業による数千億ドル規模の対米投資を約束してから、わずか2週間足らずの出来事だった。

韓国当局は週末を通じて、現地で拘束されていた現代自動車とLGエナジーソリューションの合弁事業の建設現場にいた自国民300人の解放に向けて動いた。

拘束された労働者がどのようなビザを保有していたのか、また現場に立ち入る資格があったのかは依然不明。韓国政府は、行政手続きが完了次第、チャーター機を派遣して帰国させる方針を示した。

今回の取り締まりは李、トランプ両氏が首脳会談を行い同盟関係を誇示し、新たな貿易協定を確認した直後という微妙なタイミングで起きた。両国間の合意には、米国で事業拡大を進める韓国企業を支援するための3500億ドル(約51兆6000億円)規模の投資ファンド(うち1500億ドルは造船業向け)設立が盛り込まれ、民間企業も追加で1500億ドルの直接対米投資を約束していた。

今回の摘発により李政権には国内で圧力がかかるほか、米韓の間で大きな外交問題に発展する恐れもある。6日には韓国の主要紙が一面で取り上げたほか、手首や腰、足首を拘束されバスに乗せられる労働者のテレビ映像は国民の怒りを呼んだ。

韓国最大の発行部数を誇る朝鮮日報は6日、拘束された労働者がバスに手をつく写真を掲載。ジョージア州の収容施設の映像も紹介し、「カビに覆われており、刑務所よりひどい」と報じた。

ソウルにある崇実大学のキム・テヒョン教授は摘発について「背後から刺されたような気分だ」と述べ、「大半の韓国人が憤りを禁じ得ない」と指摘。韓国企業は「必然的に」対米投資計画に慎重になるだろうと語った。

今回の摘発は、韓国による巨額の対米投資計画に影を落としている。韓国の代表的投資プロジェクトに関わる労働者の拘束は、米国での事業展開には想定以上の政治・法的リスクが伴うと企業に受け止められかねない。

現代自動車は8月、2028年にかけて行う米国への投資額を260億ドルに引き上げると発表。3月に公表した210億ドルから50億ドル上積みされた。自動車や鉄鋼、ロボットの生産拡大を目指すとしている。【9月8日 Bloomberg】
**********************

釈放交渉は“韓国のチョ・ギジュン駐ワシントン総領事は7日(現地時間)、米移民・税関捜査局(ICE)の施設で記者団に対し、拘束者の帰国時期について「水曜日(10日)ごろと考えている」と明らかにした。”【9月8日 聯合ニュース】という形で終わったようです。

今回の不法移民摘発は共和党所属の極右系の政治家トリ・ブラナム氏による移民・関税執行局(ICE)への通報がきっかけとなったとされています。

同氏には批判のメールが殺到していると、もともと反米意識も強い韓国左派系メディアのハンギョレは報じています。 “現代自動車を通報した米国の極右政治家に「なんて愚かな…」米ネット民から批判殺到”【9月8日 ハンギョレ】

********************
ブラナム氏は、企業がコスト削減のために違法な労働力を搾取しているという趣旨の主張を展開しているが、ネットユーザーの反応は冷淡だ。

あるネットユーザーはブラナム氏のフェイスブックへのコメントで、「人をICEに通報しておきながらうそをつくな。彼ら(外国人労働者)がいくらもらっているか気にしたこともなく、強制労働にも関心がない。あなたは厚かましい機会主義者にすぎない」と批判した。

別のネットユーザーは「あなたは、屋根裏部屋の環境は苛酷すぎると言って、アンネ・フランク(ナチスの占領地で隠れ住まなければならなかったユダヤ人の暮らしを記録した『アンネの日記』の主人公)をゲシュタポに通報したはずだと断言する」と皮肉った。  

ブラナム氏は選挙での自身の勝利のために外国人嫌悪感情に寄りかかっている、とも指摘されている。(後略)【9月8日 ハンギョレ】
*********************

ただ、ハンギョレは明示していませんが、通報者ブラナム氏へ批判を浴びせているのは、おそらく韓国人ネットユーザーではないかとも想像されます。

いずれにしても今回の事件は、トランプ関税で苛立っている韓国社会に改めてアメリカへの不信感をうえつけることになりそうです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

台湾  頼清徳総統、防衛費を2030年までにGDP比5%に トランプ大統領要求に応える形

2025-08-23 23:13:38 | 東アジア
(海軍艦隊指揮部168艦隊を視察する頼清徳総統(手前右)=8月22日【8月22日 フォーカス台湾】)

【頼清徳総統、防衛費を2030年までにGDP比5%に】
台湾の頼清徳総統は15日、第2次世界大戦の終戦記念日に合わせてフェイスブックに投稿し、「侵略は敗北につながる」と主張、権威主義が再び勢いを増す中、自由と民主主義が重要だと訴えています。
中国には直接言及しなかったものの、軍事的圧力を強める中国をけん制する狙いがあるとみられています。【8月15日 ロイターより】

一方の中国・習近平国家主席が台湾侵攻をどのように考えているか・・・誰にもわかりませんし、習近平氏自身も多分に状況次第という部分もあるでしょう。

トランプ米大統領によれば、習近平国家主席はアメリカがトランプ政権である限り台湾を巡り動かないと述べている・・・とのことですが、どういう意図で習近平氏がそんな発言をしたのか疑問です。そもそも、そんな発言が本当にあったのかすら疑問、なんせすべてを自分に都合のいいようにしてしまうトランプ大統領の言うことですから・・・。

****トランプ氏、自分が大統領でいる限り中国の習氏は台湾巡り動かず****
トランプ米大統領によれば、中国の習近平国家主席は米国がトランプ政権である限り台湾を巡り動かないと述べている。

トランプ氏がアラスカ州で15日に行われたロシアのプーチン大統領との首脳会談に向かう途中、FOXニュースとのインタビューで明らかにした。

「私がここにいる限り、そんなことが起きるとは到底思えない」とトランプ氏は話し、習氏は「『あなたが大統領でいる間は決してない』と私に言った」という。【8月17日 Bloomberg】
**********************

『あなたが大統領でいる間は決してない』・・・・トランプ大統領、夢でも見たのかも。それならまだいいが、何らかの意図でウソを広めようとしているなら、もっとたちが悪い。

トランプ大統領の妄言をあてにはできないので、台湾頼政権は防衛費を増額して中国の侵攻に備えています。

****台湾防衛費GDP比3%超、26年度予算 中国威圧の中拡大****
台湾行政院(内閣)の卓栄泰院長(首相)は21日、来年度予算案を発表した。中国の政治的・軍事的圧力が強まる中、防衛費は域内総生産(GDP)比3%以上に増額した。前年度比で22.9%増となる。

2026年度の防衛費は9495億台湾ドル(312億7000万米ドル)。GDP比で3.32%と09年以来初めて3%を超えた。

卓院長は会見で「国家の主権と安全を守り、インド太平洋地域の安定と安全を維持し、世界に対し共通の責任を果たすという決意と能力を世界と国民に改めて具体的に示すものだ」と述べた。

「北大西洋条約機構(NATO)モデル」に倣い、防衛費には海巡署(沿岸警備隊に相当)や退役軍人向けの予算も含まれると説明した。

トランプ米政権は台湾に防衛費増額を求めている。頼清徳総統は今月、来年の防衛費をGDPの3%以上に引き上げたいと述べていた。

台湾高官は、防衛費に海巡署の予算が計上されるのは初めてとロイターに語った。海巡署は頻繁に中国海警局とにらみ合い状態になっており、中国の威圧行動の「最前線に立っている」と指摘した。【8月21日 ロイター】
*******************

更に、頼清徳総統は防衛費を2030年までに域内総生産(GDP)比5%まで引き上げたいと表明しています。

****台湾、防衛費を2030年までにGDP比5%に 総統表明****
台湾の頼清徳総統は22日、防衛費を2030年までに域内総生産(GDP)比5%まで引き上げたいと表明した。米国が台湾に求めてきた軍事予算増強の目標を引き上げた形だ。

台湾行政院(内閣)の卓栄泰院長(首相)は21日、来年度予算案を発表。中国の政治的・軍事的圧力が強まる中、防衛費をGDP比3.32%に増額した。

頼総統は台湾北東部の海軍基地を訪れ、中国の脅威が近年増していると指摘。30年までに防衛費を北大西洋条約機構(NATO)基準のGDP比5%に引き上げたいと述べた。

総統府が提供した動画によると、頼氏は「これは国家の安全保障を守り、民主主義、自由、人権を保護するわが国の決意を示すだけでない。国際社会と肩を並べ、共同で抑止力を発揮し、インド太平洋地域の平和と安定を維持する意志も示すものだ」と語った。【8月22日 ロイター】
*************************

【トランプ大統領 欧州・アジアに「5%」要求】
「5%」という数字の背後にはアメリカ・トランプ政権の要求があります。

****NATO加盟国、防衛費引き上げ「5%」目標合意-集団防衛も再確認****
北大西洋条約機構(NATO)加盟国は25日、オランダ・ハーグで開いた首脳会議で、防衛費支出を国内総生産(GDP)比5%に引き上げる新たな目標で合意し、集団防衛へのコミットメントを再確認した。ロシアが攻撃的な姿勢を強める中で、歴史的な判断を下した。

安全保障への支出が足りないと欧州の同盟国を繰り返し非難していたトランプ米大統領にとって、NATO加盟32カ国の決定は大きな勝利だ。

ヘグセス米国防長官は5月末のシンガポールでの演説で、日本を含めたアジアの同盟国に対しても、防衛費をGDP比5%に向け増やすよう要求した。

トランプ氏は首脳会議に向かう途上でも、NATOの根幹を成す北大西洋条約第5条が規定する集団防衛の義務を疑問視するかのような発言をしていた。だが、会議終了後には「素晴らしい」会合だったと評価し、第5条についても「支持している」と明言した。

採択された首脳宣言では、加盟国は「集団防衛に対する揺るぎない意思を再確認」し、「10億人の市民とNATO、自由と民主主義を守るという決意において、団結し、確固たる姿勢を貫く」とうたった。

米国が欧州からの兵力撤収を検討しているとの懸念が膨らむ中で、今回の首脳会議ではNATOへのトランプ氏つなぎ留めに大きな努力が払われた。欧州のウクライナ支援国は、4年目に入ったロシアのウクライナ侵攻に、有効な対応策をなかなか打ち出せずにいる。

国防費支出増へ
国防費の支出目標は、現在のGDP比2%から大きな上積みとなる。宣言によると、新目標は「安全保障上の深刻な脅威と挑戦、とりわけロシアが欧州と大西洋地域に及ぼす長期的な安全保障の脅威と、テロの脅威が続いていることに」対応する措置だという。

NATOのルッテ事務総長は、目標の引き上げを数カ月にわたり各国へ働き掛けていた。GDP比5%の支出目標のうち、3.5%が中核の防衛支出、残り1.5%はインフラやサイバーセキュリティーなど関連の投資とした。今回の合意により、2035年まで巨額の資金が防衛支出に向かうことになる。

ルッテ氏は、ロシアは5年以内にNATO攻撃を考えられる態勢が整うと示唆していた。

ただ、目標の引き上げを巡るあつれきも生じた。スペインのサンチェス首相は目標を拒否し、「支出は2.1%まで引き上げるが、それ以上でも以下でもない」とした。同氏は、NATOが掲げる兵器や兵力の新たな目標は達成するとしつつ、そのための費用については合意していないとし、他の加盟国からの強い批判を招いている。

トランプ氏はスペインの態度を強く非難し、報復としてスペイン製品に対する関税を2倍に引き上げる可能性を示唆した。トランプ氏は記者会見で「支払っていないのはあなただけだ。何が問題なのかわからない」と語気を強めた。(後略)【6月25日 Bloomberg】
*********************

トランプ政権の要求には日本を含めたアジアの同盟国にも。

****防衛費GDP比5%要求、防衛省幹部「受け入れは到底困難」 現行の1・8%の3倍近く****
日本政府は、米国が日本などのアジアの同盟国に対して国防費を国内総生産(GDP)比5%に引き上げるよう要求していることに苦慮している。

日本の防衛費は関連経費と合わせても令和7(2025)年度時点で9兆9000億円と、GDP比約1・8%にとどまる。3倍近くへの増額要求は「到底受け入れ困難」(防衛省幹部)なのが実情だ。

米国防総省のパーネル報道官はアジアの同盟国の国防費に関し、「欧州の水準に追いつくよう迅速に対応することは常識的だ」と発言。北大西洋条約機構(NATO)加盟国に求めるGDP比5%と同じ水準にすべきだとの認識を示した。

日本は9(27)年度に防衛費と関連経費の合計額でGDP比2%まで増やすのが当面の目標だが、10(28)年度分以降も米国からさらなる増額を迫られるのは必至の情勢だ。

中谷元・防衛相は24日の記者会見で「わが国の防衛費のあり方はわが国自身が主体的に判断すべきものだ。こうした考え方を丁寧に粘り強く米側に説明していく」と強調した。【6月24日 産経】
*********************

ロシアの脅威に備えてアメリカをNATOのどうしても引きとどめておきたい欧州と同様に、中国の侵攻に備えてアメリカの支援がどうしても不可欠な台湾・頼総統としては、トランプ政権が求める「5%」もやむなしとの判断のようです。

【軍人の待遇改善も】
そのうえで、軍人の待遇改善に意欲を示しています。

****台湾、2030年までに防衛費をGDP比5%に 頼総統、軍人の待遇改善に意欲****
頼清徳(らいせいとく)総統は22日、北東部・宜蘭県蘇澳を訪れ、海軍艦隊指揮部168艦隊の隊員らを激励した。

政府は今後継続して防衛費を増やすとし、2030年までには北大西洋条約機構(NATO)が加盟国に求めた目標と同じ、国内総生産(GDP)比5%への引き上げが望めると語った。軍人の待遇改善についても前向きな姿勢を示した。

頼総統は、近年は中国による台湾への脅威が日増しに高まり、グレーゾーンでの嫌がらせの回数も多くなっていると指摘。国軍は圧力を恐れず、敵情を正確に把握して戦闘訓練を強化しており、国民が安心できるよりどころになっていると述べた。

その上で、軍隊内の日頃のささいな出来事も敵からすれば重要な情報になり得るとし、警戒心を高めるよう求めた。

また来年度の防衛費はGDP比で3.32%になると説明。予算の引き上げを通じ、国家の安全や民主主義、自由、人権を守る決意だけでなく、国際社会と肩を並べて共に抑止力を発揮し、インド太平洋の平和と安定を守る意欲を示すと語った。

国軍の給与増額を目指して立法院(国会)が可決しながらも、行政院(内閣)が立法院に予算を組む権利がないなどとして違憲審査を申し立てる方針の「軍人待遇条例」については、司法院大法官が違憲性はみられないと判断した場合、当初の施行日にさかのぼって増額分を支給すると語った。違憲とされた場合は別の方法で国軍を支援するとした。

頼総統は同日、フェイスブックを更新し、軍事施設の改修や福利厚生の改善に加え、国内での製造や、海外からの購入などを通じて、次世代フリゲートや無人兵器など、より高性能な武器や装備を導入すると強調。国内の軍需産業を強化し、時代に即した形で国軍全体の戦力を向上させると語った。【8月22日 フォーカス台湾】
*********************

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国観光地で横行する“ぼったくり”を考える

2025-08-16 22:49:40 | 東アジア
(「オジンオ屋台」での不適切行為について謝罪する江原道束草市水協などの関係者【8月12日 KOREA WAVE】)

【観光地で横行する“ぼったくり” 「“ぼったくり”済州島に行くぐらいなら日本へ行く」】
韓国の「済州島」(朝鮮半島の南、長崎・五島列島の西)は韓国のハワイとも呼ばれ、美しい自然や独特の文化、そしてリゾート地として人気がある韓国を代表する観光地です。

「サムダルリへようこそ」「おつかれさま」といった人気韓国ドラマの舞台でもあり、韓国人にとって独特の印象を持つ島であることも伺えます。

しかし、常々ネットでは「ぼったくり価格」がひどすぎるとして、「済州島に行くぐらいなら、日本に行った方がましで、かえって安くつく」という意見も頻繁に目にします。これまでは韓国人観光客からの批判でしたが、被害は当然ながら外国人にも。

****ぼったくり横行の済州島、ついに外国人も標的に=韓国ネット「ただし中国人なら少しくらい…」****
2025年6月20日、韓国メディア・毎日経済は「済州(チェジュ)島がまたやらかした…韓国人だけでは飽き足らず外国人にもぼったくり」と題した記事を掲載した。

飲食店でのいわゆる「ぼったくり価格」で知られ、韓国人観光客の足が遠のいた済州島だが、「ついに外国人観光客を対象にぼったくり営業をするようになった」と物議を醸しているという。

関連業界によると、西帰浦(ソギポ)など済州島の観光地付近で違法タクシーの営業が横行している。外国人の多いクルーズターミナル前が主な営業場所となっており、ドライバーがスマートフォンの翻訳アプリを使うなどして客引きをしているという。

こうした違法タクシーは、4時間の観光で150ドル(約2万2000円)、5時間で170ドル(約2万5000円)、6時間で200ドル(約2万9000円)程度と、法外な値段になっている。

ある観光客は「韓国人はぼったくりをよく知っているが、(何も知らない)外国人の済州島の第一印象がぼったくりタクシーになってしまうのは、気持ちのいいものではない」とコメントしている。

こうしたぼったくりの主なターゲットは、済州を訪れる外国人で最も多い中華圏の観光客だという。最近、違法な有償運送行為を行った中国人2人と韓国人1人が相次ぎ摘発されている。済州自治警察団によると、取り締まり件数も急増傾向にあるという。年初からの違法観光営業取り締まり件数は、無登録旅行業4件、有償運送行為2件、無資格ガイド7件など計37件に上る。

この記事に、韓国のネットユーザーからは「済州島のぼったくりは悪名高い」「もう島ごと海の底に沈むべき」「国の恥だな」「済州道知事、済州市長は何をやってるんだ?」「これだからみんな日本に行く」「済州島、仁川(インチョン)の蘇莱浦口(ソレポグ)、ソウルの広蔵(クァンジャン)市場。この3つは絶対に行ってはいけない」といった声が寄せられている。

また、済州島での中国人観光客の振る舞いが問題視されていることもあり、「中国人は少しぼったくって、もう来ないようにしてもいい」「二度と韓国に来たくないと思わせる、いい手かもしれないよ」「済州島はもう韓国とは言えなくなってきているからな」といったコメントも見られた。【6月22日 レコードチャイナ】
**********************

韓国の「ぼったくり」に関する話題は、何も済州島に限った話ではなく、各地から報告されています。

****特産品のはずが「イカ1匹2000円」…韓国・「ぼったくり」離島の物価に観光客が悲鳴****
韓国・慶尚北道(キョンサンブクド)沖の鬱陵島(ウルルンド)で物価高への不満が噴出している。特に観光客の間で「ぼったくり」の指摘が相次ぎ、自治体も釈明に追われている。

旅行系ユーチューバーのキム氏が2日、「論争になっている鬱陵島に行ってきた」と題する動画を投稿。家族3人で2泊3日のパッケージツアーに参加したキム氏は、初日に訪れた韓国料理店で「オジンオ(イカ)プルコギ」を4人分注文し、計8万ウォン(1ウォン=約0.11円)を支払った。

夕食は中華料理店で「中サイズの酢豚」が4万ウォン、「ムール貝入りチャンポン」が1万6000ウォン。夕食はツアー代に含まれておらず、これだけで12万4000ウォンの自己負担だ。

鬱陵島では、輸送費がかかるため物価が高いとされるが、地元特産のイカの干物でさえ1匹2万ウォン。刺し身店では盛り合わせ1人前が4万ウォンに上るという。

宿泊費も高額だ。滞在先のプール付きヴィラは清潔で快適だったが、プールの利用に追加で7万ウォン必要だった。

一方、外部から移住した住民が経営する焼き肉店では、定食1人前が1万ウォンで、店主が「足りなければおかわりを」と言うほどの安心価格だった。

キム氏は「鬱陵島は自然の美しさを楽しむだけにしておいた方がよい」と本音を漏らした。

鬱陵島では先月、別のユーチューバーが脂身だらけのサムギョプサルを「告発」し、その店は食品衛生法違反で7日間の営業停止処分を受けた。これを受けてナム・ハングォン鬱陵郡守が謝罪し、観光サービスと価格の改善を誓う事態となっている。【8月16日 AFP】
*********************

単に「ぼったくり価格」だけでなく、利益優先の不適切・不親切な接客なども問題となっています。

****相次ぐ不親切・法外料金…韓国・地方都市に暗雲、「短期商売」体質の転換急務****
夏の繁忙期を迎えた韓国江原道の東海岸などの観光地で、飲食店の不親切や宿泊料金の法外な値上げといった長年の問題が今年も続き、地域の観光競争力に悪影響を及ぼしている。

束草市の屋台街「オジンオ屋台」で6月、1人で食事していた女性ユーチューバーに店員が「お嬢さん、奥で食べられませんか」「早く食べなさい」と発言する様子が動画で公開され、批判が殺到。

束草市一本釣り経営人協会は当該店舗を8月末まで営業停止とし、全店舗が6日間自主休業して規定を見直すことを決めた。しかし、地元では「一時的な宣言では再発防止は難しい」との懐疑論も根強い。

さらに、夏季ピーク時の宿泊料金高騰も深刻だ。江原道江陵市・春川市・洪川郡などではペンション1泊100万ウォン(約10万6600円)台、ホテルは200万ウォン(約21万3200円)台に達し、春川のあるペンションは4人1泊140万ウォン(約14万9240円)、洪川のホテルは朝食込みで220万ウォン(約23万4520円)を提示。一部のモーテルも閑散期の3倍以上となる約40万ウォン(約4万2640円)で取引された。

観光客からは「これでは海外旅行の方がまし」との声が出ており、業界内からも長期的な地域イメージの損失を懸念する意見がある。

江原道は2025~2026年を「江原訪問の年」と定め、観光活性化政策を推進中。祭り会場や海水浴場では「法外料金QRコード通報システム」を試験導入し、一部自治体で「宿泊料金ピーク制」を施行しているが、実効性は限定的だ。

専門家は、不親切対応や過剰請求は短期的には売り上げ増につながっても、長期的には観光客離れと地域ブランド低下を招くと指摘。持続可能な価格政策、体系的な接客教育、オンライン評判管理が不可欠だとしている。

江原道関係者は「宿泊料金を強制規制することはできないが、消費者被害申告期間の運営や観光産業改善策を準備中だ」と述べた。【8月12日 KOREA WAVE】
*******************

【“ぼったくり”横行は韓国社会全体の体質や国民性に関係しているのか?・・・・国民性や民族的体質というより、交渉文化や規制の遅れ】
言うまでもなく、「ぼったくり」「観光地価格」は何も韓国だけでなく日本にも存在しますが、韓国で問題となるケースが異様に多い・・・ということは、それほど韓国では普通に見られるような問題になっているのか? 何か社会共通の体質、あるいは国民性みたいなものが関係しているのか?

*****済州島やソウル明洞などでのぼったくり=韓国社会全体の体質や国民性か?*****
1. 「ぼったくり」は韓国に限らない観光地現象
観光客が集中する場所(済州島・明洞・プーケット・バリ・ベニス・パリなど)では、外国人=短期滞在=価格相場を知らない という前提から、世界中で「高値請求」や「追加料金」が起こりやすいです。
韓国だけの特殊な「国民性」ではなく、観光地の普遍的な問題と考える方が適切です。

2. 韓国で「ぼったくり」が目立つ理由
観光依存度の高まり
済州島は観光が基幹産業で、訪問者数が経済に直結します。短期的利益を優先して価格を吊り上げる業者が出やすい土壌があります。

急速な観光拡大と規制の遅れ
韓国は特に中国人観光客の急増(2010年代)に対応して、価格表示・消費者保護制度が追いつかず「不透明な料金」が放置されてきた面があります。

韓国社会の商習慣
韓国は市場や屋台で「交渉」が日常的に行われる文化があり、値段が流動的な部分があります。外国人から見ると「高値を吹っかけられた=ぼったくり」に感じられることも。

メディア報道の増幅効果
韓国の国会議員や観光公社が「ぼったくり防止」を公約・施策に掲げ、メディアも頻繁に取り上げるため「韓国=ぼったくり」というイメージが強化されやすいです。

3. 韓国人自身も被害に遭っている
韓国メディアや世論をみると、「外国人だけでなく韓国人観光客も同じように不当に高い料金を払わされている」と批判されています。
つまり「外国人差別的な意図」よりも、観光地における短期利益追求の商売慣行と考えた方が実態に近いです。

4. 政府・自治体の取り組み
ソウル市:明洞での価格表示義務化(未表示には過料)。
済州島:飲食費用の上限制や価格安定政策を導入検討中。
観光公社:**「観光不便申告センター」**を運営し、外国語で通報可能。
行政が「ぼったくり=観光業の信用を落とす深刻な問題」と認識して改善を進めているのは韓国らしい点でもあります。

まとめ
韓国の観光地での「ぼったくり」は、国民性や民族的体質というより、
①観光地に共通する「観光客は相場を知らない」構造、
②韓国特有の交渉文化や規制の遅れ、
③報道の目立ちやすさ、
が重なって強調されている現象です。

つまり「韓国人はぼったくりをする国民性」という理解は適切でなく、むしろ観光産業の短期利益追求が原因。現在は制度的に改善の方向に動いている、と言えます。【ChatGPT】
********************

【日本との違い 韓国は市場・屋台文化が強く、価格交渉が日常的→「値段が不明確でぼったくられた」という不満に】
では日本の観光地における「ぼったくり」と韓国のそれは何が違うのか?

****日本と韓国の観光地での「ぼったくり」や価格問題の比較*****
1 商習慣・文化の違い
日本
値段は基本「定価制」。観光地でも表示価格通り。 交渉文化がほとんどなく、値引きや値上げの余地が少ない。
「価格表示義務」や「おもてなし意識」が強く、外国人にも一律価格が適用されやすい。

韓国
市場・屋台文化が強く、価格交渉が日常的。 「常連・地元民」と「観光客」で価格差をつける慣行が残る。
そのため外国人は「言い値で損をした」と感じやすい。

2 制度・取り締まりの違い
日本
景品表示法や消費者保護法に基づき、虚偽・不当表示は厳しく規制。 行政指導やネットの口コミで炎上しやすく、悪質業者は早く淘汰される傾向。 「高額すぎる」ことはあっても「値段が不明確でぼったくられた」とは言われにくい。

韓国
制度自体はあるが、実際には観光地での取り締まりが後手に回ることが多い。 最近ようやく「価格表示義務化」「外国語通報窓口」など制度改善が進んでいる。 それでも「屋台・市場」など小規模事業者には徹底が難しい。

3 社会的イメージ・報道の違い
日本
「観光地は高い」という暗黙の了解がある。 海外メディアで「日本の観光地でぼったくり」と報じられることは少ない。 不満はSNSや口コミで拡散するが、国全体のイメージには直結しにくい。

韓国
国会やメディアで「ぼったくり」が観光政策上の課題として頻繁に取り上げられる。 「外国人観光客数の減少」に直結する問題と認識され、国際ニュース化しやすい。 そのため「韓国=ぼったくりが多い」という印象が強化されやすい。

5. まとめ
日本は「高いけど明示的」
韓国は「価格が不透明で交渉次第」

日本では「観光地価格」として容認される一方、韓国では「不当な扱い」と受け止められやすい。

つまり、両国の「観光地での高価格」は共通の現象ですが、
日本:制度と文化で“透明性”が担保されている
韓国:交渉文化と規制の弱さから“不透明さ”が強調されている
という違いが大きいです。【ChatGPT】
*********************

購入したりサービスを受ける際に定価が明示されておらず、売り手・買い手の間の価格交渉で価格が決まるという「交渉文化」からくる“不透明さ”というのは、日本と他国との違いとしてよくわかります。

“相場”が分かっている地元民なら問題なくても、相場が分からない旅行者、特に外国人は常に「騙されているのでは」という不安感が拭えませんし、実際、そうした“相場”を無視したぼったくりが横行しています。

【韓国と東南アジア諸国の違い 韓国は「先進国で日本と似たような価格透明性を期待」されるため、同じ現象でも不満が大きい】
では同じ「交渉文化」の東南アジア諸国と韓国の間で差異はあるのか?

*****韓国と東南アジア 「ぼったくり」に関する差異*****
「価格が不透明で交渉次第」という構造は、韓国だけでなく タイ・ベトナム・インドネシアなど東南アジア諸国でも一般的です。 ただし、韓国と東南アジアでは「ぼったくり」の性質にいくつか違いがあります。

共通点:観光地にありがちな「ぼったくり」
観光客は相場を知らない・短期滞在 → 高値を吹っかけやすい。
交渉文化が根強い → 初期提示価格が「相場の倍以上」であることも珍しくない。
屋台・露店が多い → 価格表示の法整備や取り締まりが難しい。
タクシーやトゥクトゥク → メーターを使わず言い値で請求、観光客を遠回りさせるなどは共通。

韓国的ぼったくりの特徴
価格差別が目立ちやすい
同じ商品でも「韓国人価格」と「外国人価格」が存在する(済州島の海鮮料理や明洞の屋台など)。
東南アジアでも外国人料金はあるが、韓国の場合「一見同じメニューでも客ごとに値段が違う」という「不透明さ」が強調されやすい。 

交渉文化と近代的制度のギャップ
韓国はOECD加盟国で「先進国」と見られているため、観光客は「値段は固定されているはず」と思いやすい。
その期待と現実のギャップで「騙された」「国民性の問題だ」と報道されやすい。

メディアと政治の注目度が高い
国会や地方議会で「ぼったくり撲滅」が議題に上がり、ニュースでも頻繁に報じられる。 そのため「韓国=ぼったくりの国」という印象が国際的に広まりやすい。

東南アジア的ぼったくりの特徴
「交渉前提」の商習慣
タイやベトナムの市場では、最初の提示価格が2〜5倍でも「そこから交渉するのが当たり前」。 観光客も「値切らないと損」と心得ているため、不満は「文化の違い」で済まされることが多い。

外国人価格の明示
アンコールワットやタイ国立公園など、公式に「外国人料金」を設定しているケースがある。 不公平感はあるが「制度として明示」されているため、韓国のような「裏で不当請求」とは性格が違う。

観光客の期待値の違い
東南アジアは「安くて雑多」というイメージが旅行者にあるので、「多少ぼられても安い」と納得されやすい。 韓国は「先進国で日本と似たような価格透明性を期待」されるため、同じ現象でも不満が大きくなる。

韓国 → 近代的な国なのに価格が不透明/報道で強調されやすい。
東南アジア → そもそも「交渉文化」が前提で、観光客の期待値が低い。

結果として「韓国的ぼったくり」は 現象そのものは東南アジアと共通 ですが、“先進国らしくない”というギャップと報道の目立ち方 が独自色を強めている、と整理できます。【ChatGPT】
*********************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国への配慮が優先するアメリカの台湾対応 台湾の対米信頼度は急速に低下

2025-07-31 22:21:53 | 東アジア
(これまでタブー視されてきた台湾有事のリアルを描く台湾ドラマ「零日攻撃 zero day」 台湾では8月2日に放送開始予定。日本などでの配信も予定されている。)

【奇策失敗 想定外の「完封負け」】
7月27日ブログでも取り上げたように、台湾・頼清徳政権が議会での少数与党という逆境を一気に挽回すべく放った奇策・・・親中国派の野党議員を大量にリコールして、そのうち幾つかの議席を与党で奪い返すという策は、思惑とは異なり終盤にかけて失速し、「完封負け」状態になりました。

****台湾リコール、まさかの「完封負け」 頼総統の演説に中間層が反発か****
26日に投開票された台湾の最大野党・国民党立法委員(国会議員に相当)24人に対するリコール(解職請求)の賛否を問う住民投票は、全ての選挙区で否決されて失敗するという一方的な結果に終わった。一時は推進派に勢いがあったとみられた台湾初の大規模リコールは意外な展開をたどった。

26日夕方、台北市中心部の立法院(国会に相当)そばで開かれた推進派の集会は沈痛な雰囲気に包まれた。開票速報がリコール反対票の優勢を伝えると、「なぜだ」との声が上がった。「まさかこんな結果になるとは誰も考えていなかった」(推進派団体幹部)

同じ頃、リコールの対象となった国民党の王鴻薇(おうこうび)立法委員は否決確実となって報道陣に「苦しい戦いだった」と認め、党などの支援で勝利できたと声を詰まらせた。2024年4月に国民党議員団の一員として訪中し、共産党幹部と会談したことで推進派から「親中派」と批判され、「リコール成立の可能性が高い一人」(台湾メディア)ともされてきた。

2月に始まった大規模リコール運動では、国民党に批判的な住民団体に多くのボランティアが集まり、各地でリコール投票に必要な署名活動を進めた。国民党側も与党・民進党立法委員に対するリコール運動を起こしたが、法定署名数が集まった立法委員は国民党31人に対し、民進党は0人。国民党は守勢に立たされる展開だった。

ただ、本来は個別の議員の資質を理由にするはずのリコールで「親中的」として国民党の立法委員全体を対象にした今回の運動方針は、世論の広い理解を得たとはいえなかった。民間団体「台湾民意基金会」が14日に発表した世論調査ではこうした方針のリコールに賛成しないとした人は48%で、賛成する人の42%を上回った。
 
さらに頼清徳総統が6月下旬に自らの政治理念を訴える一連の演説の中で「不純物を取り除く」との趣旨の発言をしたことが、台湾内の分断を加速させると野党側からの強い反発を生んだ。

台湾・清華大の小笠原欣幸栄誉講座教授はトランプ米政権との関税問題が浮上する中、野党との政治闘争にこだわる頼政権に対する不満が若者を中心にあったと指摘。世論調査で与野党の支持率が拮抗(きっこう)する中、「頼氏の発言をきっかけに、『頼政権が思い通りに国を動かしていいのか』という国民党の主張に共感する中間派の一部が反対に回ったのが大きい」と分析する。
 
リコール運動中は与野党関係者などから、強い政党支持のない層の投票動向は通常の選挙以上に読みにくいとの声があがっていた。リコール推進派団体幹部は「ネット空間や街頭で返ってくる反応には確かな手応えを感じていたが、自分たちに近い人しか見えていなかったのかもしれない」と振り返った。【7月27日 毎日】
****************

【トランプ政権 中国への配慮から台湾総統の「訪米」(立ち寄り)拒否】
このリコール作戦の失敗で窮地にある頼清徳政権を更に苦しめるのが、外交上のアメリカの“つれない”対応。

アメリカと正式国交がない台湾総統は、中国がアメリカに執拗にせまる「一つの中国」という立場から、正式にアメリカを訪問して米指導者と会談するのはできませんが、中南米に行く途中に「立ち寄る」という形でこれまでアメリカとの外交を行ってきました。

そのアメリカとの関係はトランプ関税をめぐって「ヤマ場」にあります。なんとしても米指導部と(その形式は「立ち寄り」だろうが何だろうが)会談を実現したいところ。(これまで米大統領との会談は実現していません)

しかし、「ヤマ場」にあるのは米中の関税交渉も同じ。アメリカ・トランプ政権からすれば重視すべきはおのずから決まっている・・・。

****トランプ政権、台湾総統の「訪米」拒否 対中関税交渉に配慮と英紙***
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は28日、トランプ米政権が台湾の頼清徳総統に対して、中南米訪問の際に経由地としてニューヨークに立ち寄ることを許可しなかったと報じた。トランプ政権が中国との関税交渉への影響に配慮したためだとしている。複数の関係者の話として伝えた。

FTによると、頼氏は8月に国交のあるパラグアイ、グアテマラ、ベリーズの中南米3カ国への訪問を計画。経由地として米東部ニューヨークや南部テキサス州に立ち寄ることを検討していた。台湾側は米国の保守系シンクタンク・ヘリテージ財団に対して、ニューヨークで頼氏が登壇するイベントの開催も働きかけていたという。

しかし、中国は頼氏が米国に立ち寄ることに反対。米政府は、28日にスウェーデンで始まった関税措置を巡る閣僚協議への悪影響を懸念し、ニューヨークへの立ち寄りを認めないと台湾側に伝えた。米側の通告後、台湾側は頼氏の中南米訪問をとりやめた。

台湾側は28日、台風被害や米国との関税交渉への対応などを理由に「近く外国を訪問する予定はない」とする声明を発表した。

FTによると、米国内の親台湾派の間では、関税交渉の妥結や米中首脳会談を模索するトランプ政権が対中姿勢を軟化させているとの懸念が広がっているという。

台湾の蔡英文前総統は、中南米訪問時に中継地として米国に何度も立ち寄った。2023年3〜4月には往路でニューヨーク、復路で西部カリフォルニア州ロサンゼルスを訪問。当時のマッカーシー連邦下院議長と会談したり、米シンクタンクの会合で講演したりした。中国は台湾周辺で軍事演習を実施するなど対抗措置をとった。【7月29日 毎日】
**********************

台湾側は「近く外国を訪問する予定はない」と取り繕ってはいますが、アメリカによる屈辱的対応は明らか。報道が事実なら・・・。

本来は、こういう話は表に出ない水面下で結着する話のはずですが、何故か表に漏れ出てきたようです。

アメリカ側は・・・・形式論で突っぱねた形。

****台湾総統外遊で「立場不変」 米****
米国務省のブルース報道官は29日の記者会見で、台湾の頼清徳総統の中南米訪問時の米本土への立ち寄りをトランプ政権が許可しなかったとする英紙報道に関し、「現時点で総統の外遊計画はなく、結果として何も中止されていない」と述べた。台湾総統に経由地として米国への立ち寄りを認めてきた従来の立場は「何も変わっていない」と強調した。【7月30日 時事】
*********************

【トランプ政権 6月に予定された台湾の国防部長(国防相に相当)の訪米を直前にキャンセル】
台湾側にとって追い打ちの一撃も。

****米国防総省、台湾との高官協議キャンセル 英報道 対中交渉優先か****
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は30日、米国のトランプ政権が、6月に予定された台湾の顧立雄(こりつゆう)国防部長(国防相に相当)の訪米を直前にキャンセルしていたと報じた。顧氏は、首都ワシントンで米国防総省ナンバー3のコルビー国防次官(政策担当)と会談する予定だった。

米側が対中関係の悪化を懸念して取りやめた可能性があるという。トランプ政権が中国との貿易交渉の進展を重視する構えを見せる中、台湾当局者の間では米国の対中姿勢への懸念が高まっていると報じられている。

Advertisement FTによると、米国は台湾に対し、6月22日のイラン核施設攻撃に言及して「タイミングが悪い」と説明したとされる。米台は新たな日程の調整を進めているが、米側は顧氏よりも下位の当局者との会談を求めているという。

複数の米政府関係者は、顧氏の訪米が、米中の貿易交渉や、トランプ米大統領が意欲を示す米中首脳会談の実現に悪影響を与えることに懸念を示したという。

FTは、台湾の頼清徳総統が中南米訪問の際に経由地としてニューヨークに立ち寄ることについて、在米中国大使館が懸念を伝達した後、米政府が許可しなかったとも報じた。【7月31日 毎日】
**********************

【アメリカへの信頼度は急速に低下】
こういうアメリカの中国を忖度する姿勢を見ると、台湾有事の際にアメリカは台湾支援で軍事行動に出られるのか・・・かなり疑問も。

*****最近の世論調査 台湾有事におけるアメリカは信用できるのか?****
①台湾世論調査(2025年3月・中研院「米国肖像」調査)
「中国が台湾を武力侵攻した場合、アメリカが軍事的に協防してくれるか?」
全国民回答:49.9%が「協防すると思う」と回答、42.4%が「しないと思う」と回答 

政党支持層別の差異:
民進党支持者:約 73.8% が「アメリカが協防すると思う」と信頼
国民党支持者:わずか 23.8% が同様に信じている 

傾向として、2024年調査と比べてどの支持層でも信頼度は約10ポイント下落傾向にあるとされています 

②他調査結果(2025年3月・民調)
台湾民意基金会による別の調査では、「米国が出兵して協防する信頼」は39%で、「52%が信頼しない」と回答しています。
この調査は全体数字でやや低い値を示していますが、政党別の内訳は明示されていません。

所感
民進党支持層ではアメリカへの信頼が高く、約7割が協防を期待しています。一方、国民党支持層ではその割合が大きく下がり、多数派が協防に懐疑的です。

全体では約5割前後が「協防される可能性がある」と信じている一方で、信頼感は低下傾向にあり、2024年と比べて約10ポイントほど下がった層もあります。

地政学的な緊張、米中関係の変化、台湾の安全保障政策や半導体産業のアメリカへの投資などが影響を与えている模様です。【ChatGPT】
********************

台湾世論がアメリカの対応に懐疑的になるのもやむを得ないところでしょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

台湾  野党24議員へのリコール投票が全て否決、頼政権に痛手

2025-07-27 23:41:28 | 東アジア
(リコール投票前日の25日に台北市内で開かれた国民党の大型集会の様子【7月27日 台北中央社】)

【台湾社会の分断は中国に付け入る隙を与える】
少数与党とため議会運営に苦慮する台湾・頼清徳政権は、野党国民党議員を親中派としてリコールし、議会勢力の刷新を図る動きにでました。しかし、24人を対象にしたリコール(解職請求)の是非を問う投票が行われ、全て否決されるという形で失敗に終わりました。

頼清徳政権が野党議員のリコールに出た背景は以下のようにも

********************
現政権の民進党は「台湾独立派」で、特に頼清徳総統は極端なほど独立志向が強い。対する野党第一党の国民党は「対中融和的」とされ、「統一には慎重であるものの、経済的には中国を切り離すことはすべきではない」と考えているのが現状だ。

立法院では、議員(立法委員)113議席のうち、民進党が51議席しかないのに対して、最大野党の国民党は52議席を占めている。国民党が野党・民衆党や他の野党と連携すれば、少数与党の議案はほぼ否決され、政権運営がうまくいかない。

特にトランプ2.0になってからは、台湾にも同等に厳しく、防衛費の大幅な増額を要求してきた。米国の要求を最重要視した頼清徳政権は、議会で何とか防衛費増額の予算案を通そうとしたのだが、国民党を中心とした野党の反対に遭い、増額の割合を削減あるいは凍結せざるを得ない状況に追い込まれている。

そこで頼清徳総統は、台湾各地の市民団体を支援する形で、「国民党議員は大陸のプロパガンダなどによる浸透工作に加担している」として、「国民党議員24人に対するリコール運動」を展開し、賛否を問う住民投票が26日に行なわれた。結果、24人すべてに対する「リコール反対票」が賛成票を上回り、罷免されなかったというわけだ。【7月27日 遠藤誉氏 YAHOO!ニュース】
********************

台湾社会の分断は中国に付け入る隙を与えることにも。

****「親中」議員の排除失敗 深まる与野党対立―台湾****
台湾最大野党・国民党立法委員(国会議員)の排除を目指したものの、失敗した26日の大規模リコール(解職請求)投票の背景には、「反中」の与党と「親中」とされる野党の深い亀裂がある。

与党・民進党の頼清徳総統は中国に対抗するためオール台湾の「団結」を訴えるが、「民進党は民衆と共に歩む」としてリコール運動支持も表明。今回の投票を機に与野党対立は一層激化している。

リコール投票全て不成立 野党24議員対象、頼政権に逆風―台湾
5月、台北市近郊の新北市の駅前。与党を支援する団体が、一帯を地盤とする国民党立法委員のリコール投票実施に必要な署名を集めていた。

署名に応じた会社員男性(61)は、立法院(国会)で多数派の国民党が主導した今年の防衛予算の削減・凍結を問題視。「国民党は大陸(中国)の独裁政権に寄り添っている」と断じた。
 
頼氏は2月、防衛予算の域内総生産(GDP)比を3%以上に高める方針を発表した。台湾の防衛費増額を迫るトランプ米政権との関係を強化し、頼氏を「台湾独立分子」と敵視する中国をけん制する狙いだ。頼政権が提案した予算が削減・凍結されると目算が狂い、中国を利する結果となる。
 
リコール推進団体は今月24日、台北市中心部で大規模集会を開催。参加した会社員の張佳怡さん(47)は「防衛予算を削減し、台湾の利益を顧みない」と国民党を非難した。
 
一方、国民党が翌25日に同じ場所で主催した大規模集会で、同党の韓国瑜・立法院長(国会議長)は「リコールが成功すれば民進党の一党独裁に後戻りする」と主張。詰め掛けた参加者は「頼清徳は辞めろ」と連呼した。北部・新竹県の会社員女性(52)は「民進党は税金の無駄遣いが多過ぎる」と批判する一方、与野党対立で「社会が引き裂かれており心配だ」と話した。
 
台湾社会の分断は中国に付け入る隙を与える。中国政府で台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の報道官は6月、台湾のリコール運動に関し「あらゆる方法で野党を弾圧している」と民進党を糾弾し、国民党に加勢した。台湾で対中政策を所管する大陸委員会は「中国共産党はリコール投票に赤裸々に介入している」と警戒感を示す。【7月27日 時事】
*********************

【頼清徳政権の言論弾圧下の強引な手法が反感を買う】
頼清徳政権は“親中国”に関して「言論弾圧」と言ってもいいほどの過度な取り締まりおこなっており、台湾の民主主義そのものが歪められているのではないかいう状況で、“親中国”野党議員をリコールするという強引な手法が国民の反感を勝っているようにも思えます。

***台湾の野党議員リコール投票はなぜ大敗したのか?****
7月26日、台湾で最大野党・国民党立法委員(国会議員に相当)(以後、議員)に対するリコール(解職請求)投票が行われたが、頼清徳政権(民進党)側は大敗を喫した。

その原因を中共のプロパガンダ(浸透工作)のせいにする傾向が強い。そういった要因は否定できないものの、頼清徳政権自身の「言論弾圧」と言ってもいいほどの過度な取り締まりが横行していたという経験をしたばかりだ。
 
実は今年初夏、台湾の「隠された歴史を研究する民間団体」に取材形式のオンライン講演を頼まれたのだが、「長春食糧封鎖という包囲戦から何を学ぶべきか」と聞かれたので、「大陸が台湾統一に際して、長春包囲戦と同様の包囲作戦を実行する可能性がある」と、書面によるQ&Aに回答したところ、真夜中なのに電話が入ってきた。
 
「遠藤先生、それだけは言わないようにしてください!」と切羽詰まった声で訴える。
「えっ!なぜですか?」と聞き返すと「そんな事を言ったら親中だと指摘されて生きていけなくなります!」と言うではないか。

何ごとかと説明を求めると、どうやら頼清徳政権が激しいネット言論の摘発をしていて、少しでも「大陸が台湾を包囲して統一を試みるだろう」と言った者には、「親中のレッテル」を貼り、個人は生きていけないほどのバッシングを受けるし、民間組織などは存続が不可能になるよう経費を遮断する方向で動くという。(中略)

驚いた。 この経験を参考にしながら、リコール大敗の経緯と台湾世論を考察する。

◆野党・国民党議員に対するリコール
(中略) 国民党が中国大陸の浸透工作に加担していると言っても、その証拠が出されたわけではなく、また若者に人気がある民衆党の柯文哲・党首を政治献金の虚偽記載疑惑・汚職疑惑で逮捕したりするなど、頼清徳政権の強硬性が先走っており、台湾の一般民衆の反感を買っている側面は否めない。
 
特に今年6月24日に頼清徳総統は「野党は濾過(ろか)されるべき不純物」という趣旨の発言をしている。この発言は大いに物議を醸し、野党側を勢いづかせた。
 
民進党側は、今回のリコール投票で大敗したのは、中国による激しい妨害に直面したためだと主張しているが、それだけではないことを、「野党は不純物」発言や、冒頭で書いた講演会主催者側の感想などが示している。
 
◆台湾民意教育基金会の最新の世論調査
 今年7月15日、財団法人「台湾民意教育基金会」は<大罷免(=大規模リコール)、国家アイデンティティと台湾民主>というタイトルで世論調査の結果を発表した。 その中からリコールに関係するデータを拾って、ご紹介する。

図表1:「罷免すべき」に賛同するか否か?

財団法人台湾民意教育基金会の調査結果を転載の上、日本語は筆者注 頼清徳総統が支援する市民団体は「この一年あまり、国民党議員は憲法を踏みにじり行政を乱してきたので罷免すべきである」と主張している。これに対してリコール投票前の段階での調査で、民意はその主張に「同意しない」が「同意する」よりも上回っている。(中略)

図表2:大規模リコールは「反共・台湾防衛」の意識を高めるか?

財団法人台湾民意教育基金会の調査結果を転載の上、日本語は筆者注 頼清徳総統が支援する市民団体は、国民党議員を罷免することによって「反共・台湾防衛」が果たされると主張しているが、これには無理がある。

頼清徳総統として、何としても議会における最大野党・国民党の議席数を減らし、結果的に「少数与党」である民進党の議席数を相対的に増やそうということが目的なのであって、そのような政争のために選挙で選ばれた国民党議員の特定の議員を意図的に選んで罷免しようということ自体が邪道だ。リコールが「反共・台湾防衛」に役立つと思わない人が53.1%もいるというのは、もっともなことだろう。

図表3:大規模リコールは台湾の存亡に関わるか?

財団法人台湾民意教育基金会の調査結果を転載の上、日本語は筆者注 図表3に至っては、なおさらだ。国民党議員をリコールすることが「台湾の存亡に関わる」などという大げさなことを主張することに賛同しない人が53.6%もいるのは当然だと言っていいだろう。

むしろトランプ関税を受け、一致団結をして難局に立ち向かっていかなければならないときに、国民党議員を減らすことが「台湾の存亡に関わる」などという主張に賛同する人は少ないに決まっている。

今年4月27日の台湾の「経済日報」は、ワシントンのシンクタンクであるブルッキングス研究所が4月25日、台湾国民の米国に対する信頼度に関する世論調査を発表したと報道している。それによれば、トランプ2.0では、台湾国民の米国に対する信頼度が低下し、中国本土の台湾侵攻に対するワシントンの関与に対する信頼度も低下し、回答者の46.7%が、台湾有事の際に米国が台湾を支援することは「不可能」または「可能性が非常に低い」と考えていることがわかった。

このように少なからぬ台湾の人々が強い対米不信に悩まされ、米国をもはや台湾にとって「信頼できないパートナー」とみなしている時期に、政争のために選挙で選ばれた国民党の議員を恣意的に選んで罷免することに没頭するのは適切ではないと思っていることが判明したのである。
 
台湾の存亡を言うなら、米国が台湾を見捨てるのか否かの方がもっと重要だと、台湾の人々が思っていることが図表3に如実に表れていると解釈される。

図表4:頼清徳総統に対する評価

財団法人台湾民意教育基金会の調査結果を転載の上、日本語は筆者注 図表4では、頼清徳総統に対する評価を下したようなもので、中国語では「頼清徳の声望」と書いてあるのでそのまま用いたが、「評価が下された」と解釈していいだろう。

これまで頼清徳氏の声望は高かったが、冒頭に書いた、中立的な歴史研究をしている民間団体の主催者が「頼清徳総統による言論弾圧」と言い、弾圧の対象となることをあれだけ恐れているということは、民主主義が歪められていることの証の一つだろうと思われる。それがこの財団法人台湾民意教育基金の世論調査の結果としても、表れているのではないだろうか。

8月23日には別の国民党議員7人を対象としたリコール投票が行われる予定のようだが、このようなことをやればやるほど、頼総統政権は追い詰められていくのではないかと懸念する。なぜなら、国民党議員は再度台湾国民の信任を得たことになり、議会では一層力を発揮することになる可能性が高いからだ。

冒頭に書いた歴史研究をする民間団体は、長春包囲戦(チャーズ)を掘り起こしたいと思っているほどだから、親中であるはずもなく、全くの中立である。長春食糧封鎖では、国民党は長春市内にいる一般庶民を見殺しにしたので、チャーズを掘り下げることは、国民党の味方をする行動でもない。そういった中立の人々が頼清徳政権を「言論弾圧」として恐れるようでは、台湾の民主主義そのものが歪められているのではないかと憂う次第である。【7月27日 遠藤誉氏 YAHOO!ニュース】
************************

【リコール失敗の要因分析】
リコール失敗の要因分析については以下のようにも

*****大規模リコール/台湾のリコール「失敗」 原因は国民党の強い地盤や現金配布政策など=専門家****
26日に投開票が行われた最大野党・国民党の立法委員(国会議員)24人らに対するリコール(解職請求)の賛否を問う住民投票は全てが不成立となった。

複数の専門家が27日までに中央社の取材に応じ、リコール失敗の原因などについての分析を語った。国民党の支持基盤の厚さや動員力の強さを指摘する意見が多く上がった他、リコール推進の社会運動全体を肯定する声も聞かれた。

▽陳文甲氏(政治大学国際関係学部非常勤准教授)
リコール運動で国民党に批判的な市民団体と、運動を支援した与党・民進党は「反中護台」(中国に反対し台湾を守る)を訴えて全力で動員した。だが世論調査では多くの有権者がリコール戦略に疑問を感じていると出ていた。

中間層や無党派層は冷静に投票する傾向にあり、一部で情勢を逆転させた。また国民党が第2野党・民衆党と手を組み、支持基盤を固めたことでリコール回避を成功させた。

▽王宏仁氏(成功大学社会科学部政治学科教授)
反対票は政党(野党)の動員で最大限引き出された。市民団体は当初「適任でない立法委員のリコール」を訴えていたが、結果的には与野党対決になった。民進党本部のリコール支援開始が遅かったほか、投票の対象となった選挙区のほとんどが国民党の地盤が強い地域だったため、同党が組織的動員を通じてリコール不成立に持ち込めた。

▽薛化元氏(台湾教授協会会長、政治大学台湾史研究所教授)
民主主義や憲政体制といった議題よりも、(国民党主導で投票の約2週間前に決まった)1人当たり1万台湾元(約5万円)の現金給付の方が関心を集めたことが結果から見て取れる。国民党の動員力がリコール推進派を大きく上回ることから、投票率が(ほぼ全ての選挙区で)5割を超えたことが国民党に有利な結果をもたらした。

リコール推進の過程で、人々の民主主義や憲政への理解が深まった。また従来は政治活動への参加が男性に偏っていたが、今回のリコール運動では女性のボランティアが多数を占め、台湾社会に好影響をもたらした。

▽張嘉尹氏(東呉大学法学部教授)
野党が掲げた生活に直結する政策が効果を発揮した。リコール推進派の市民団体が力を集めたことが、逆に国民党側の危機感をあおった。リコールが民進党主導ではなく社会運動だったため、動員力の違いが顕著に表れた。

現代の選挙はインターネット戦略が大きな鍵となっている。だがSNSは自身と似た考えを持つ人同士だけで交流する「エコーチェンバー現象」を生み、特に(短文投稿サイトの)スレッズでは(アルゴリズムによって)似た意見ばかりが目につくため、異なる言論を持つ人との関わりが生まれにくい。これも今回の結果と事前の予想が異なった原因である可能性がある。

市民団体が外部からの誹謗(ひぼう)中傷にさらされつつも、最終的に31件もの立法委員リコール案を(署名活動を経て)住民投票に持ち込んだのは、台湾における民主主義の成長の一部分だといえる。実を結ぶまでには時間を要するが、今後選挙に出る候補者にとっては無視できない力となるだろう。【7月27日 台北中央社】
*********************

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

香港  国安法施行5年 消える「自由・香港」 急速に進む中国化 分岐点は1984年

2025-07-05 23:36:37 | 東アジア
(旗に書かれた中国語のスローガン「香港を解放せよ、時代の革命」は、2019年の抗議活動でよく使われた。しかし、国家安全維持法の施行以降、香港当局はこのスローガンと民主化を求める抗議活動の両方を禁止した。長年にわたり平和的なデモを組織してきた団体「民生人権戦線」も活動を停止しており、主催者はその後拘留されている。【2021年 06月 25日 HRW】)

【国安法施行5年 消える「自由・香港」 急速に進む中国化】
6月30日で香港国家安全維持法(国安法)施行5年を迎えた香港は、一国二制度のもとでのかつての「自由・香港」は消滅し、中国との一体化が急速に進行しています。

****香港「社民連」が解散発表 統制が続き、民主派政党は全て消滅へ****
香港の民主派政党「社会民主連線」(社民連)は29日、香港島内で記者会見し、解散を決めたと発表した。30日で施行5年を迎える香港国家安全維持法(国安法)に基づき、民主派に対する統制が続いている。最大の民主党も近く正式に解散を決める見通しで、民主派政党は全て消滅することになる。

記者会見で陳宝瑩主席(党首)は「強大な政治的圧力に直面し、メンバーらに対する影響を考慮して、残念ながら解散するしかないと決定した」と述べた。香港メディアによると、当局の考えを知る関係者から党に対し、7月1日までに解散しないと「深刻な結果を招くことになる」との警告が3度にわたってあった。陳氏は解散の理由を詳しく説明することはできないとしている。

2020年に中国政府が主導して反政府的な言動を取り締まる香港国安法を制定して以降、民主派の団体や政党は次々に解散や活動停止に追い込まれている。

23年5月には公民党が解散を決め、民主派の中核的存在だった民主党も25年2月に解散に向けた手続きを進めることを決めた。陳氏は一連の動きを「ドミノ倒し」にたとえ、「我々の次は誰になるのだろうか」と訴えた。
 
社民連は06年に設立され、労働者らを中心に支持を得た。一時は立法会(議会)でも議席を獲得したが、議員を「愛国者」に限る選挙制度の改変によって、民主派は事実上排除された。主席として党を引っ張った梁国雄氏が国安法違反の罪で実刑判決を受けるなど党関係者の投獄も相次いだ。【6月29日 毎日】
*********************

****密告奨励、急増する監視カメラ 香港で消えていく自由 中国本土並みの「監視社会」へ 香港国安法施行5年****
中国の習近平政権が香港の民主化運動などを取り締まる目的で、「香港国家安全維持法(国安法)」を導入・施行してから30日で5年となった。同法違反など国安関連で332人が逮捕され、165人に有罪判決が下された。

中国・香港政府は「愛国者治港」(愛国者による香港統治)が進んだと統制強化を正当化する。しかし香港市民にとっては「国安治港」の下、一国二制度で認められていた〝自由・香港〟のシンボルが消えていく5年だった。

国安法は「安定と繁栄を守る守護神」
香港で21日に開催された国安法施行5年を記念するフォーラム。基調講演を行ったのは、中国政府で香港政策を統括する夏宝竜・香港マカオ事務弁公室主任(72)である。

「香港を破壊し、国家の安全に危害を加えた!」
選挙の民主化などを訴えた2019年の反香港政府・反中国共産党デモを厳しく非難した。そして、多くの香港市民の助けを求める声に応じ中国政府が国安法を香港に導入したのだ-と強弁しつつ、こう絶賛した。
「国安法は香港の安定と繁栄を守る守護神だ」

1997年に英国から中国へ返還された香港では一国二制度の下、資本主義的制度の50年間の維持が認められていた。社会主義体制の中国本土では許されないものの、香港では認められていたシンボルの一つが反中国的な報道で知られた蘋果(ひんか)日報(アップルデイリー)だった。

同紙が発行停止に追い込まれたのは2021年6月24日、国安法施行から約1年後のこと。創業者で民主活動家の黎智英(れい・ちえい、ジミー・ライ)氏(77)や同紙幹部らが、報道を通じて外国政府に中国や香港への制裁を求めた-などとする国安法違反の罪で起訴され、会社の資産が凍結されたのだ。

民主派系のネットメディア、立場新聞も幹部らが逮捕され、21年末、運営停止に。25年の報道の自由度ランキング(180カ国・地域)で香港は20年の80位から140位に後退。中国(178位)に近づいている。

24年3月には、国安法を補完する「国家安全条例」が香港立法会(議会)で成立、施行された。スパイ活動や、中国・香港政府への憎悪、侮蔑を扇動する行為などが禁じられた。外国人や外国メディアなどが標的となる可能性が取り沙汰されている。

香港外国記者会(FCC)が今年4月に発表した調査結果によると、回答した外国メディア記者の65%に当たる45人が報道に慎重になり、「過去1年半の間に自己検閲した」という。

天安門事件の追悼集会も開催阻止
国家安全が優先され、言論・集会の自由が制限される中、反政府デモは事実上禁止された。香港島のビクトリア公園で30年以上にわたり行われてきた天安門事件の犠牲者追悼集会も21年以降、警察によって開催が阻止されている。

国安法施行後、市民に警察への密告が奨励され、これまでに国安関連の通報が約92万件あったという。地下鉄の車両や構内、道路、公共施設などの監視カメラも急増中で、中国本土並みの監視社会の構築に向けて整備が進んでいる。

「国安」を名目にした政府による社会統制は強まる一方だ。今月、飲食店や娯楽施設で「国家の安全」を脅かす行為などがあれば政府は免許を取り消せることになった。萎縮させ、自由・民主化を求める声や政府批判を封殺する狙いとみられる。

また、香港の米国総領事館が主催する米独立記念日(7月4日)の祝賀行事を巡り、香港政府は一部の学校に参加しないよう圧力をかけたと報じられている。その理由も「国安法違反の疑いがある」だった。
香港国家安全維持法(国安法) 中国の立法機関、全国人民代表大会(全人代)常務委員会の法制工作委員会が法案を作成し、2020年6月30日、全人代常務委員会で可決・成立。同日深夜、公布と同時に施行された。犯罪行為には①国家分裂罪②国家政権転覆罪③テロ活動罪④海外勢力と結託し国家の安全に危害を加える罪-がある。これらを扇動、幇助、教唆することも罪に問われる。香港域外での言動や外国人にも適用される。犯罪行為が重大な場合は禁錮10年以上。最高刑は終身刑。中国本土に身柄を移送し中国本土での裁判も可能。【6月30日 産経】
**********************

【香港の運命を決定した1984年の英中共同声明 雨傘運動や国安法などその後の動きは“時間の問題、程度の問題”】
香港島と九龍半島、周りの島々を合わせて、広さは東京都の半分ほど。そこに約750万人が暮らす香港。
香港の歴史をザックリと振り返ると・・・

**********************
香港の激動の始まりは清の時代に遡る。アヘン戦争でイギリスに負けた清朝は、香港島を割譲。香港はイギリスの統治下に入った。

それから150年余り、1997年7月1日、香港はイギリスから中国に返還される。
この時、中国は「一国二制度」を約束。香港に50年間、経済や司法、言論の自由など、高度な自治を認めたのだ。

しかし、2014年に「雨傘運動」が起きる。中国政府が選挙制度などへの介入を強めたため、香港の人たちに危機感が募り、民主化を求める声が強まったのだ。

2019年には大規模な反政府デモが頻発。
そして2020年6月30日、反政府的な活動を取り締まる「国家安全維持法(国安法)」が施行される。違反すると最高で終身刑という重い罪が科される。

言論の締め付け…。市民の声はかき消され、政府に批判的なメディア関係者や活動家など、332人が逮捕された(2025年6月時点)。【7月4日 テレ東プラス「香港映画の聖地巡礼で、日本人が殺到?! 返還から28年…香港はいま」
************************

香港の運命を決定づけたのは「国家安全維持法(国安法)」ではなく、1997年7月1日のイギリスから中国への香港返還であり、1984年12月19日にその枠組みが英中間で合意された英中共同声明でした。

その後の「国家安全維持法(国安法)」を含めた動きは、1984年の英中共同声明の枠組みのなかの動きであり、「時間の問題・程度の問題」すぎなかった・・・と、個人的には考えています。

****香港返還****
背景
1842年の南京条約(第1次アヘン戦争の講和条約)によって、香港島が清朝からイギリスに割譲され、イギリスの永久領土となった。さらに、1860年の北京条約(第2次アヘン戦争(アロー戦争)の講和条約)によって、九龍半島の南端が割譲された。

その後、イギリス領となった2地域の緩衝地帯として新界が注目され、1898年の展拓香港界址専条によって、99年間の租借が決まった。以後、3地域はイギリスの統治下に置かれることとなった。

1941年に太平洋戦争が勃発し、イギリス植民地軍を放逐した日本軍が香港を占領したが、1945年の日本の降伏によりイギリスの植民地に復帰した。その後1950年にイギリスは前年建国された中華人民共和国を承認した。この後イギリスは中華民国ではなく中華人民共和国を返還、再譲渡先として扱うようになる。(中略)

1979年、香港総督として初めて北京を訪問したクロフォード・マレー・マクレホースは、中華人民共和国側に香港の帰属をめぐる協議を提案した。しかし、中華人民共和国側は「いずれ香港を回収する」と表明するに留まり、具体的な協議を避けた。それでもイギリス側は「1997年問題」の重要性を説き続けた。

1982年9月には首相マーガレット・サッチャーが訪中し、ここに英中交渉が開始されることになった。サッチャーは同年6月にフォークランド紛争でアルゼンチンに勝利して自信を深めていたが、鄧小平中央顧問委員会主任は「香港はフォークランドではないし、中国はアルゼンチンではない」と激しく応酬し、「港人治港」の要求で妥協せず、イギリスが交渉で応じない場合は、武力行使や水の供給の停止などの実力行使もありうることを示唆した。

当初イギリス側は租借期間が終了する新界のみの返還を検討していたものの、イギリスの永久領土である香港島や九龍半島の返還も求める猛烈な鄧小平に押されてサッチャーは折れた恰好となった。

1984年12月19日に、両国が署名した英中共同声明が発表され、イギリスは1997年7月1日に香港の主権を中華人民共和国に返還し、香港は中華人民共和国の特別行政区となることが明らかにされた。共産党政府は鄧小平が提示した一国二制度(一国両制)をもとに、社会主義政策を将来50年(2047年まで)にわたって香港で実施しないことを約束した。

この発表は、中国共産党の一党独裁国家である中華人民共和国の支配を受けることを良しとしない香港住民を不安に陥れ、イギリス連邦内のカナダやオーストラリアへの移民ブームが起こった。【ウィキペディア】
**********************

2014年の雨傘運動など、香港人として民主的香港を求め、中国の介入へ抵抗する若者たちの動きはありましたが、すでに中国への返還が決定し、枠組みが確定している状況での抵抗であり、所詮枠組みを変更するまでの力はなく、香港当局を追い込めば追い込むほどに、「国家安全維持法(国安法)」のような中国側の強硬な介入を招くだけでは・・・という思いで眺めていました。

もし、「自由・香港」の未来があったすれば、それは1984年12月19日の英中共同声明以前の段階における運動が唯一の機会であったはずです。

その時点で「香港人」が「自由・香港」を求めて運動すれば、イギリスとしても「イギリスの永久領土である香港島や九龍半島の返還も求める猛烈な鄧小平に押されてサッチャーは折れた恰好となった」というようなこともなかったかも。

逆に言えば、そこで出口を求める強い運動が起きなかった以上、その後の展開は所詮決定してしまった枠組みの中でのかすかな抵抗にしかならないとも思えました。

*****香港国家安全維持法(国安法)施行5年を迎えた香港の変貌が連日報じられていますが、香港の運命を決めたのは1984年12月19日に中国・イギリスが署名した英中共同声明であり、その後の出来事は“時間の問題、程度の問題”に過ぎないように思えます。英中共同声明当時、香港住民の多くは香港の未来についてどのように考えていたのか?****

おっしゃる通り、香港の「変貌」は1984年の英中共同声明により方向づけられたと見ることができます。そして当時の香港住民の反応には、不安と諦め、そして現実的な適応が交錯していました。
以下に、英中共同声明(1984年12月19日)発表当時の香港社会の空気と住民の反応を整理してお答えします。

1. 英中共同声明の概要(おさらい)
1997年にイギリスが香港を中国に返還することを確認
「一国二制度」により、香港は50年間(2047年まで)、資本主義体制と生活様式を維持
高度な自治、司法の独立、言論の自由などを保障

2.香港市民の主な反応(1984年当時)
✅【1】強い不安と将来への恐れ
中国への返還により、共産主義体制・文化大革命・政治弾圧(天安門事件前だが既に意識されていた)への懸念が強かった。
「一国二制度」という未経験の制度に対する不信感。
「中国は本当に約束を守るのか?」という疑問が多く語られた。

✅【2】大量の海外移民申請
英中声明発表の1984年から1997年にかけて、数十万人規模の香港人がカナダ・オーストラリア・イギリスなどに移住・市民権取得を目指した。
特に中産層・教育水準の高い層に不安が強く、「移民保険(insurance migration)」と呼ばれる現象が起きた。

✅【3】「仕方がない」という現実主義
香港はイギリスの植民地であり、そもそも住民が選んだ体制ではなかった。
「自分たちには交渉権も発言権もない」「いずれ中国に返されるのは既定路線」と、冷めた現実的受け止め方も広まった。

✅【4】香港アイデンティティの芽生え
この時期から「香港人」としての独自意識が急速に育ち始める。
自分たちは「中国人」ではなく、「香港人」であるという意識が特に若者を中心に拡大した。

3. 報道・世論の反応
当時の香港メディアでは以下のような論調がありました:
「イギリスは我々を中国に売った」
「中国の保証は信用できない。共産党は過去に何度も約束を破った」
「せめて香港の制度を守れるよう声を上げ続けるべきだ」

また、香港中文大学の世論調査(1980年代後半)では、約6割の市民が「中国の統治を信用していない」と回答。
一方で、「1997年までは平和に暮らしたい」という諦観的な声も多かった。

4. 結論として
あなたの見方は歴史的にも妥当であり、「英中共同声明」で定められた枠組みの中で、国安法の施行や民主活動家への弾圧も「時間の問題・程度の問題」であったという解釈には説得力があります。
1984年当時の香港市民も、多くは不安と現実主義の間で揺れながら未来を見つめていたのです。そしてそれが、今日の香港に繋がっているのは確かです。【ChatGPT】
***************************

【50万人が香港から脱出も…“新香港人”中国本土から香港へ渡来する「新香港人」】
中国との一体化は単に政治制度だけでなく、人や経済の面でも。

****香港民主化デモから6年 急増する中国本土から移住した「新香港人」。「中国との一体化」が進む香港の今【news23】****
2019年、香港民主化デモが起きて以降、自由が失われることをおそれ、約50万人の香港人が海外へ逃れました。一方、今、中国本土から香港への移住が急増。彼らは「新香港人」と呼ばれています。

こうした人の流れの変化、さらには中国政府が推し進める香港を中心とした巨大経済圏構想による経済の変化により、香港と中国の関係は今、大きな変革期を迎えています。「中国化する香港」に対して、香港の人々は何を想うのか。現場を取材しました。

民主化デモから6年 香港の今
3年前、北京から香港に移住したアレンさん。香港のIT企業に勤務しています。
北京出身 アレンさん(33) 「香港は働く人にとっての天国だという言葉があります。税金が安い上に給料が高いですから」 

今、彼のように中国本土から香港に移住する人が急増しています。きっかけは2019年、香港市民が民主化を求め起こしたデモでした。警察は催涙ガスを使い、市民を抑え込もうとするなど香港の混乱は約半年間続きました。

翌年、中国政府が主導し「香港国家安全維持法」を施行。その後の5年間、この法律によって民主化デモの参加者ら約300人を逮捕するなど、市民の反政府的な言動を徹底的に取り締まりました。

50万人が脱出も…“新香港人”中国本土から香港へ
そして今、街は日常を取り戻したかに見えますが、自由が失われることを恐れた約50万人の香港の人々がイギリスやカナダなど海外へ逃れているのです。

香港で移民手続きのサポートをしてきた羅さんは…
N香港移民サポート会社 羅立光 社長
「私の友人の会社では社員200人のうち、50人が海外へ移住してしまいました」

香港から逃れたのはITや金融関係などの仕事につく高い専門性を持つ人々。
危機感を強めた香港政府は、ビザの緩和によって世界中から人材を呼び込む制度を始めました。

その後、2年間で約7万人が香港にやってきましたが、そのほとんどが中国本土からの人々でした。

北京出身 アレンさん(33)「香港は中国の一部ですし、中国と文化も似ているのであらゆる面で便利です」
「香港は中国の一部」と言い切るアレンさん。彼のように香港民主化デモ以降、増え続ける中国本土からの移住者たちは「新香港人」と呼ばれます。

中国政府が主導 NY、東京に次ぐ“経済圏構想”
人の動きだけではなく、経済面でも中国と香港の一体化は進んでいます。

香港・マカオ・中国本土を繋ぐ55キロにも及ぶ橋。かつて車で4時間かかった香港・中国間をわずか45分で結びます。主導しているのは中国政府。習近平政権は香港を含めた中国南部をニューヨーク、東京に次ぐ経済圏に育て上げようという構想を打ち出し、橋や鉄道などの建設を次々に進めています。(中略)

香港住民(30代) 「中国と一体化することはしょうがないです。97年に返還されたのですから。嫌なら香港を出ていくしかありません」(後略)【7月5日 TBS NEWS DIG】
********************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

台湾  政権と立法院の「ねじれ」 解消すべくリコール運動 中国の浸透工作、政権は軍人・公務員を調査

2025-06-22 23:30:19 | 東アジア
【6月21日 NHK】 該当でのリコール署名を集める与党系市民団体の活動のようです)

2024年1月13日、台湾では総統選挙が実施され、蔡英文総統の後継者として民進党の頼清徳副総統が票率40%を獲得、候友宜氏(国民党)33% 柯文哲氏(民衆党)26%を抑えて新総統に選出されました。

この総統選挙と合わせて国会にあたる立法委員選挙も行われましたが、そこでは中国との関係をより重視する野党・国民党が51議席を獲得し、50議席の与党・民進党を上回る結果となりました。

また、党代表・柯文哲氏が総統選挙にも出馬して民進・国民両党にくわえて三つ巴状態の争いを繰り広げた民衆党が8議席を獲得して、民進・国民の与野党が対立する議会運営において“キャスティングボード”を握る形にもなりました。

****台湾の頼清徳新総統は民主主義の戦いを続けられるか?立法院で8議席獲得の民衆党の動きにも注目****
2024年1月13日付のウォールストリート・ジャーナル紙社説は、1月13日に行われた台湾の総統選挙の結果について、「民主主義の勝利」と讃えるとともに、米国が西太平洋と台湾の防衛力強化に一層コミットするよう求めている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(中略)今回の総統選挙の結果、台湾国民の多数が中国からの「台湾統一」への圧力に屈しないことをはっきりと示した。このことをウォールストリート・ジャーナル紙の社説は「台湾の民主主義の勝利」と述べている。  

得票率を見れば、頼清徳(民進党)40%、候友宜(国民党)33% 柯文哲(民衆党)26%であり、頼清徳の圧勝とまでは言えないが、一般の予想を上回る得票率を獲得したと評することが可能であろう。(中略)

他方、総統選挙と同時に行われた立法院選挙を見れば、民意の大勢が総統に頼清徳を選びながらも、立法院においては、民進党に白紙委任をしたわけではない。

民進党50議席、国民党51議席、民衆党8議席に示されるように、議会との関係において、民進党・頼政権は、難しい運営を迫られる可能性がある。

民衆党の動きに今後も注目
今回の総統選挙をめぐり、野党国民党の打った手がむしろ、民進党・頼清徳に有利に働いたと見られる点はいくつかあった。一時国民党と民衆党の野党連合が成立する直前まで行ったが、最終的には、民衆党がこの野党連合を不満として、かかる連合に反対したため、連合は成立しなかった。  

さらに、国民党・元総統の馬英九が、中国共産党について「習近平主席の言うことは信頼できる」との趣旨の発言をし、国民党支持者も含め多くの台湾人からひんしゅくを買ったことがある。  

今年5月より発足する頼清徳政権にとっては、議会の「ねじれ現象」の中で、いかに民意を取りまとめていくか、容易ではないであろう。頼清徳としては、8議席という、予想以上の議席を獲得した民衆党が議会でキャスティング・ボートを握るケースが増えることを想定しておかねばならないと思われる。【2024年2月1日 WEDGE】
*********************

****台湾の国会に相当する立法院 野党・国民党の「立法院長」誕生へ 与党・民進党は難しい政権運営に****
台湾の国会に相当する立法院で、日本時間の午後、議長に当たる院長が選出されます。先月の選挙で多数派となった野党・国民党から選出される見通しで、与党・民進党は、難しい政権運営を迫られそうです。

台湾では先月の総統選と同時に、国会議員に相当する立法委員の選挙も行われ、中国と距離を置く与党・民進党の議席が過半数を割り、中国に融和的な野党・国民党が多数派となりました。(中略)多数派となった国民党は、4年前の総統選にも出馬した韓国瑜氏を推す方針を固めています。

一方で国民党の議席は単独過半数には届いておらず、第三勢力の民衆党の出方に注目が集まっています。ただ、民衆党は党内の委員を推す方針を明らかにしたため、多数派の国民党の韓氏が院長に選出される見通しです。

これまで蔡英文政権は立法院で過半数の議席を維持していましたが、国民党の院長の下、5月に就任する頼清徳次期総統は、難しい政権運営を迫られることになりそうです。【2024年2月1日 TBS NEWS DIG】
********************

院長(議長)の選出では民進、国民の2大政党が過半数に届かない中でキャスティングボートを握る新興の民衆党は棄権。5月に次期総統に就く民進党・頼清徳氏の政権運営にとって、今後の波乱をうかがわせる幕開けになりました。

その後の議会運営を見ると、職権強化法(立法院改革法)などをめぐって、想定されたように民進・国民与野党の対立が激化しています。

2024年5月、議会を主導する野党・国民党が提出した法案は、行政機関への情報提供や証人招致を強化、違反には罰則も規定。

与党・民進党は「行政機能を阻害し、国家安全に懸念あり」と反発。国会では野党による乱闘事件、抗議デモが発生 

この改革をめぐり、立法院と首相・行政部門との軋轢が表面化。民進党政権と立法院の対立が「ねじれ状態」を深化させています。

こうした与野党対立の中で、キャスティングボードを握る民衆党は法案ごとに立場を変え、与野党のどちらと組むかが注目。議会運営の方向性を象徴する要因となっています。

【「ねじれ議会」解消へ、与党系市民団体が野党議員を集団リコール運動】
こうした困難な議会運営状況を打開すべく与党系市民団体が繰り出したのが“リコール戦術”

****台湾「親中派」議員24人に一斉リコール投票 7月下旬、「ねじれ議会」解消へ勢い****
台湾の中央選挙委員会は20日、最大野党・中国国民党の立法委員(国会議員に相当)24人に対する市民団体のリコール(解職請求)案について、必要署名数を満たし有効と認定した。7月26日に各選挙区で解職の是非を問う投票が行われる。

市民団体は「親中派」とみなす野党立法委員を大量リコールの標的にしており、投票結果は頼清徳政権の対中政策にも影響を与えそうだ。

リコール投票実施が決まった24人のほか、国民党立法委員5人に対する署名の審査も続いており、投票の対象者は増える可能性がある。一方、国民党系の市民団体が対抗措置として民進党の立法委員15人に対し提起したリコール案は署名不足で不成立が相次いだ。

立法院(国会、定数113)で少数与党の民進党は、解職成立後の補欠選挙で6議席を上積みすれば「ねじれ議会」を解消できる。国民党側にとって厳しい状況になるとともに、民進党系市民団体の勢いが増しそうだ。

昨年5月に発足した頼政権に対抗して国民党と第2野党の台湾民衆党は共同歩調を強め、過半数を占める立法院で頼政権の行政権を弱める法案や予算案を次々と可決。外交防衛政策にも支障をきたすなど、頼総統は苦しい政権運営を強いられてきた。

与党系市民団体は、こうした野党の攻勢の背後に中国の存在があると主張し、起死回生を狙うリコール運動を1月から本格化。これに対して国民党系の市民団体も民進党立法委員へのリコール案で応戦していた。【6月20日 産経】
**********************

住民投票は対象となる議員のそれぞれの選挙区で行われ、リコールへの賛成票が反対票を上回り、かつ有権者数の4分の1以上になれば、罷免が成立します。リコールが成立した場合、その後に補欠選挙が行われます。

その補欠選挙で6議席以上を獲得出来れば・・・という狙いです。
ただ、2024年1月の総選挙では野党陣営が勝利している訳で、改めて補欠選挙を行って逆転できるのか?という疑問も。

****前回敗れた総選挙に比べ、今回のようなリコールを使った戦術は与党にとって勝機が増えるのでしょうか?****

とても重要なご質問です。台湾におけるリコール制度を活用した与党(民進党やそれに近い市民団体など)の戦術が、通常の総選挙よりも有利に働くかどうかについては、次のような点から分析できます。

1. リコール戦術の特徴と利点(与党にとっての「勝機」)
✅ 投票率の低さを利用しやすい
リコールは、成立のハードルとして「有権者の25%以上の賛成票」が必要ですが、総選挙と比べて有権者全体の関心が低いことが多く、組織力の強い陣営(今回は与党寄りの市民団体)がターゲットを絞って効率的に運動できれば、少人数でも成立させやすいです。

✅ 特定の議員を標的にできる
総選挙では選挙区全体の民意が問われますが、リコールでは特定の議員の言動や評判に絞って攻撃できるため、ネガティブキャンペーンの効果が大きいです。国民党の議員が議会運営で強引な姿勢を見せたりした場合、その一点を集中攻撃されやすくなります。

✅ 補欠選挙は与党に有利な地盤で行われやすい
リコールが成功した場合の補欠選挙は、その地盤において与党支持者の動員がしやすく、また国政全体の流れに左右されにくいため、与党が勝ちやすい傾向にあります。

2. 逆にリスクや限界もある
⚠️ リコールの乱用は反感を買う
市民の一部は「制度の私物化」と感じる可能性があります。あまりに短期的な政治的目的でリコールを繰り返すと、与党にとってもブーメランになりかねません。

⚠️ 与党支持層の疲弊
複数のリコール・補選を繰り返せば、動員コストが高まり、支持層が疲弊します。これは2021年頃の高雄市長罷免戦(韓国瑜市長)などで見られた傾向です。


3. 前回の総選挙との比較での「勝機」
総選挙では全国的な争点が重視され、与党への政権評価がそのまま議席に反映されます。2024年の総選挙では与党・民進党が議席数で劣勢となった背景には、物価高・エネルギー政策・中国との関係などの広範な課題が影響しています。

一方、リコール戦術では個別議員の振る舞いや選挙区の局所的問題にフォーカスでき、国全体の雰囲気に左右されにくい。つまり、与党が巻き返すには短期的・局所的な「逆転の道具」としてリコールが有効であるといえます。


【結論】
リコール制度を用いた戦術は、
▶ 総選挙では勝てなかった与党にとって、限定的ながら勝機をもたらす可能性があります。
とくに組織力があり、特定議員に対する市民の不満を効果的に煽れる場合には有効です。

ただし、これは持続的な政治基盤の回復にはならず、あくまで数議席を取り戻すための補助的な戦術にすぎません。【ChatGPT:】
************************

現実問題としては、リコール成立後の補欠選挙は、全国的・全政策的枠組みのもとで行われる総選挙と異なり、特定候補に絞った賛否の方向に持って行けば、総選挙とは異なる結果も出せる・・・もののようです。

【中国側の圧力 軍事進攻だけでなく、普段から情報提供を求めるスパイ・浸透工作 政権側は軍人・公務員の調査を実施】
台湾は半導体産業を中心に国際的に非常に強い競争力を有しています。

****「世界競争力ランキング」で台湾6位、日米中韓を上回る―台湾メディア****
2025年版の「世界競争力ランキング」で台湾が6位となり、日米中韓を上回った。台湾版Yahoo!の財経特約記者が伝えた。

同ランキングはスイスのローザンヌに拠点を置くビジネススクール・国際経営開発研究所(IMD)が69の国と地域を対象に調査し、発表したもの。ランキング1位はスイス、2位はシンガポール、3位は香港、4位はデンマーク、5位はアラブ首長国連邦(UAE)、6位は台湾、7位はアイルランド、8位はスウェーデン、9位はカタール、10位はオランダだった。

その他の国では、カナダが11位、米国が13位、中国が16位、オーストラリアが18位、ドイツが19位、マレーシアが23位、韓国が27位、英国が29位、タイが30位、フランスが32位、日本が35位、インドが41位、イタリアが43位、ブラジルが58位などとなった。

評価は「経済状況(経済パフォーマンス)」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラ」の4大指標に基づいて行われる。台湾の政府機関・国家発展委員会によると、台湾はそれぞれ10位、8位、4位、10位だった。中でも「経済パフォーマンス」が前回から16ランク上昇したことが、総合順位を押し上げた主な要因だとしている。また、詳細な評価項目では台湾は24項目で世界トップ3に入ったという。【6月18日 レコードチャイナ】
**********************

しかしながら、中国の台湾侵攻というリスクも厳然として存在し、「世界競争力ランキング」6位の実力が一夜で消えるリスクも存在しています。

純粋に軍事的圧力だけでなく、普段から中国の浸透工作により圧力にさらされています。中国側の働きかけは政権中枢に及んでいます。

****台湾、前外交部長の元秘書らを起訴 中国側に機密情報漏らしたか****
台湾の前外交部長の元秘書らが、中国当局からの働きかけを受け、中国側に機密情報を漏らしたなどとして起訴されました。

台湾の検察当局によりますと、蔡英文政権で外交部長を務めていた呉釗燮氏の元秘書や総統府の元顧問ら4人は、中国側に機密情報を漏らしたなどとして10日、起訴されました。当時、副総統だった頼清徳総統の外国訪問の日程や、総統選挙での活動の日程なども中国側に提供されていたということです。

台湾メディアによると、4人のうちの1人で民進党市議の元助手が、中国で事業をしていた際に取りこまれ、2017年からあわせて607万台湾ドル(約2900万円)の報酬を得ていたということです。検察当局はこの元助手が主犯とみて、4人の中で最も重い懲役30年6か月以上を求める意見をつけています。

台湾では去年、中国が関与するスパイ事件で64人が起訴されるなど頼政権は警戒を強めていますが、中国による浸透工作が政権中枢に及んでいたとして懸念が広がっています。【6月11日 日テレNEWS】
*********************

政権側は潜在的な中国シンパ(支持者)を一掃するため、数十万人の軍人、公立学校の教師ら公務員を対象に調査を実施しています。

****台湾、中国のスパイ・浸透工作への対応強化 軍人・公務員を調査****
中国政府が台湾におけるスパイ活動を強化する中、台湾は潜在的な中国シンパ(支持者)を一掃するため、数十万人の軍人、公立学校の教師ら公務員を対象に調査を実施している。

中国は台湾を領土の一部だと主張し、武力による併合も辞さない構えを見せており、台湾では中国による浸透工作の規模に対する懸念が高まっている。
検察は先週、与党・民主進歩党(民進党)を最近除名された元党員4人(総統府の元職員1人を含む)を、国家機密を中国政府に漏洩(ろうえい)した罪で起訴した。

台湾と中国は数十年にわたりスパイ合戦を繰り広げてきたが、アナリストたちは、中国による攻撃のリスクを考えると、台湾への脅威はより深刻だと警告している。

中国による浸透工作の主な標的は、退役軍人や現役軍人で、金銭、脅迫、あるいは親中国思想によって屈服させている。

台湾の主権を公然と訴え、中国政府に嫌悪されている頼清徳総統は、中国を「境外敵対勢力」と位置づけ、国家安全保障を脅かすとされる中国の活動について、台湾人の意識を高めようと努めている。

近年、中国スパイとして起訴される人の数が急増していることを受け、台湾政府は省庁、軍、公立学校の内部において、中国政府に忠誠を誓っている疑いのある人物を特定しようとしている。

公務員が中国の居住許可証などの身分証明書を所持していることが判明した場合、台湾の戸籍、つまり事実上の国籍(市民権)を失うリスクがある。

民進党の王定宇議員はAFPに対し、「中国がこうした手段を使って台湾国民を強制的に従わせ、公務員制度を中心とする台湾の制度に浸透しようとしているため、(中国の身分証明書の)調査を開始した」「脅威はますます深刻化しており、われわれはこれに対処しなければならない」と語った。

■一般市民は調査の対象外
最近行われた1回目の調査では、調査対象者のほぼ全員に当たる37万1203人が、台湾の法律で禁止されている中国の身分証明書を所持していないことを宣誓する旨を示した文書に署名した。(中略)

現在2回目の調査が行われているが、台湾政府は一般市民を対象とすることはないとしている。
昨年、ユーチューブ動画で台湾人が中国の身分証明書を所持している事例が数万件報告されたのを受け、懸念が高まっていた。

台湾治安当局の高官は、中国が台湾出身者に発行する身分証明書の数が最近増加しているが、中国政府の協力なしにその数を推定したり、違反者を追跡したりすることは「困難」だと説明。

中国の狙いは、「台湾国民を自国の法的枠組みの下で中国国民として定義すること」だという。(中略)

台湾はまた、中国人配偶者とその中国生まれの子ども約1万人対し、中国の戸籍を放棄したことの証明を求めている。これは台湾法で数十年前から義務付けられているものだ。

これらの通知は政府の強引さを批判する声を呼んだが、王議員は、中国からの「新移民」の一部は中国政府のためにスパイ活動を行い、台湾の選挙に干渉しているため、より厳格な執行が必要だと強調した。   【6月19日 AFP】
*********************

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国  “中国嫌い”は危険水域に 「監視団」が中国人摘発のため投票所を訪れる者に「韓国語テスト」

2025-06-03 22:48:58 | 東アジア
(韓国の20–30代は10人中7人が中国を否定的に認識しているという調査結果が明らかになった。20–30代の反中感情は全ての年齢層を通じて最も強く、4人に1人は中国を「敵対対象」と考えていることが分かった。【3月13日 chosun Online】

【李在明候補の勝利なら反日再開も懸念されるが、韓国世論、特に若年層は日本より中国が嫌い】
韓国では大統領選挙の投開票が行われています。 これまでの世論調査等では最大野党「共に民主党」の李在明候補がおそらく勝利するのでしょう。(早ければブログ更新時には決まっているかも)

ただ、選挙期間中は従来姿勢から一転して日本への融和姿勢も見せている李在明候補ですが、もともと信念というより、その時々の風向きで姿勢が変わるポピュリストとも見られており、当選後の対日姿勢が再びかつての厳しく偏ったものになるのでは・・・との懸念もあります。

*****日本人への好感度は過去最高に…日韓関係の行方は あす韓国大統領選*****
(中略)
去年12月に非常戒厳を宣言し、その後、罷免された尹前大統領。在任期間中の大きな成果が日韓関係の改善でした。

記者 「日本のアニメ、東京リベンジャーズは韓国でも人気を集めていて、展示会も開かれています」

若者の街「ホンデ」。こちら、日本のアニメを扱うイベント会場の去年の売り上げは、前の年に比べて倍増しました。(中略) 
日本の植民地時代に作られた建物が並ぶソウル近郊の街にも、大勢の人が訪れるようになりました。

長い間、自主規制されてきた日本語の歌は去年から放送されるようになり、「韓日トップテンショー」はバラエティー番組の中で、視聴率は10週連続でトップでした。

街は6年前に日本製品の不買運動が起きた時から大きく様変わりし、レクサスの販売台数は5割アップ。互いの国を訪れる旅行者は増え、両国の連携は首脳外交で固められました。

韓国で日本人に対する好感度は過去最高を更新しています。 「民間の交流が活発になり、お互いの好感度が高まった」

こうした流れに変化を与えかねないのが、あすの大統領選挙。

共に民主党 李在明 候補  「大韓民国を以前とは確実に違う新しい国にして、しっかりとお返しします、皆さん」

他の候補を支持率で圧倒する革新系・最大野党「共に民主党」の李在明候補。かつては日本を「敵性国家」だと表現し、対日強硬派として知らていましたが、ここに来て変化が…。

共に民主党 李在明 候補 「日本は重要な協力パートナーだ」

日本政府関係者 「中・ロ・北朝鮮の権威主義国家が結束を固め、アメリカが態度を変化させる中、韓国に反日をする余裕はない」

李候補の外交ブレーンも「日韓関係は継続性を土台にしなければならい」と説明しています。

どの候補が勝っても、しばらくの間は大きな変化がないとの見方が優勢です。ただ、ポピュリストとされる李在明氏だけに、何かのきっかけがあれば、反日に転じる可能性があり、警戒が必要との指摘も出ています。【6月2日 TBS NEWS DIG】
******************

もっとも、最近よく話題になるのが、韓国では日本より中国の方がより嫌われているという話。

****「中国に好感」はわずか10%****
8月中旬に興味深い統計が発表された。「北東アジア歴史財団」が、韓国の若年層が抱く国別の好感度を調べたデータである。7月22日から30日までの期間、全国の18~39歳の男女1000人を対象に調査した。

これによると、57.3%が「日本に好感を持てる」と答えた反面、「中国に好感を持てる」と答えたのは10.1%にすぎなかった。「中国を信頼できない理由」を尋ねた質問には「韓国の歴史と文化を歪曲しているため」が29.4%で最も高く、「中国国民自体を信頼できないため」が22.5%と続いた。

過去の植民地支配と従軍慰安婦、徴用工問題などで、日本に反感を抱く韓国の中高年層は少なくない。一方、若年層はそうではないようだ。同時に彼らは、中国があまり好きではないらしい。先の好感に関する問いの回答をみると、“嫌い”と言ってもいいのかもしれない。(後略)【2024年09月24日 デイリー新潮 「国を汚すのか」子供に路上で“大”をさせた中国人に韓国社会のドン引き 若年層で“嫌中”高まる】
******************

【在韓米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)配備を契機とする中国の長期に及ぶ、経済・文化・観光まで幅広い露骨な圧力】
長い歴史のなかではぐくまれた国民感情は別として、韓国において中国への反発・不満が急速に拡大したのは在韓米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)配備を契機とする中国の長期に及ぶ、経済・文化・観光まで幅広い露骨な圧力があった頃からでしょうか。

****中国,「韓流」を国内番組から締め出しか****
中国国内の番組から韓国の芸能人が姿を消すようになり,アメリカの迎撃ミサイルシステム「THAAD(サード)」の韓国配備決定に対する中国政府の報復ではないかとの懸念が韓国で広まっている。

香港の『りんご日報』は8月1日,芸能界の消息筋の情報として,最近,中国のメディア行政を管轄するSAPPRFT(国家新聞出版ラジオ映画テレビ総局)が,韓国人の芸能人をテレビのドラマ,バラエティーなどの番組や広告に出演させないようにとの指示を各放送局に出したと報道した。

このニュースを受け,韓国のメディア各社は一斉に,THAADへの報復として,韓流スターが放送出演を禁止されていると伝えた。(後略)【NHK 『放送研究と調査』2016年10月号 】 
********************

****中国のTHAAD報復長期化 韓国企業にダメージ****
在韓米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)配備を巡る韓国企業に対する中国の経済報復が長期化している。

韓国現代自動車は26日、2017年4~6月の中国販売が前年同期比4割減ったと発表した。韓国大手のスーパーも中国で展開する店舗の8割が休業に追い込まれたままだ。

THAAD配備による中韓関係のこじれが表面化して5カ月近くがたつが、両国間での解決の糸口は見えない。(後略)【2017年7月27日 日経】
*****************

****中国からの観光客激減で韓国経済が大打撃 終わらない「THAAD」報復****
中国が禁韓令の一環で韓国への団体旅行を禁じてから2年が経過した。一部で再開されたものの、中国人観光客は戻っておらず、不振が続く。

韓国の同盟国米国との貿易戦争まっただ中の中国は解除に動く気配がない上、中国人の韓国離れも進み、韓国観光業の先行きが見通せない。(後略)【2019年4月10日 産経】
*****************

更には、キムチ起源論争のような現象も嫌悪感に拍車をかけることにも。

****「中国がキムチ文化を盗もうとしている」韓国が猛反発 「単なる食物論争ではない」という訳は?****
韓国が「国民食」と誇るキムチを、近年、中国が自国文化のように扱う動きが目立つ。韓国では、朝鮮半島の歴史を中国史の一部とみる「文化侵略」だと反発し、対中感情も悪化している。(後略)【2021年6月7日 東京】
****************

それにしても中国の対応も“しつこい”
2023年にはようやく中国政府は韓国を含む海外への団体旅行を再開し、11月から済州島行きのチャーター機が運航されるなど、観光分野での交流が再開されました。

今年5月には中国中央テレビ(CCTV)がK-POPコンサートの開催を計画していることが報じられ、限韓令(韓国の芸能、ドラマ、映画などの文化コンテンツの流入を制限した措置)の解除が現実味を帯びています。

逆に言えば、限韓令は完全な解除には至っていない状況です。一部のK-POPグループの公演が延期されるなど、慎重な対応が続いています。

****中国の限韓令がこれほど長期に及ぶ背景****
中国の「限韓令(または禁韓令)」がこれほど長期に及んだ背景には、単なる軍事的報復以上の政治的・経済的・文化的な要因が複雑に絡んでいます。

【1】THAAD問題を超えた国家主権と安全保障の問題
中国政府は、米国主導のTHAADシステムが中国内の軍事動向を監視できると主張し、「国家主権と安全保障への脅威」と位置づけました。
単なる対韓報復というより、「米中の戦略的対立の一環」として韓国への圧力が長期化。

【2】韓流の影響力に対する文化的な警戒感
2010年代以降、K-POP・韓国ドラマ・映画など「韓流文化」は中国若年層に大きな影響を与えました。
中国政府は「西側文化の拡散」や「自国文化の脅威」と捉え、韓流を牽制する目的もあったとされます(いわば“文化統制”の一環)。
つまり限韓令は文化的ナショナリズムと情報統制の延長線上にもあった。

【3】中国国内の政治的事情と対外メッセージ
習近平政権下では、「外圧に屈しない中国」の姿勢を内外に示すことが重視されています。
韓国への「見せしめ」的意味合いを込めて、長期にわたり圧力をかけ続けたと見る専門家もいます。

【4】経済的な“てこの作用”としての韓流制限
中国にとって韓国は重要な経済パートナーですが、文化・観光など「ソフト分野」は制限しても自国経済への打撃が小さい。
経済制裁の中でも「比較的低コストで効果が高い手段」として文化制限が選ばれたとも分析されています。

【5】米中対立の長期化と日米韓協力への牽制
韓国が米国や日本との安全保障協力を強める中で、中国は韓国に「距離を取る」よう圧力を継続。
近年の日米韓の三国協力の強化が、限韓令の解除を遅らせる一因になっている可能性もあります。

総括
限韓令の長期化は、単なる報復措置ではなく、中国の対外戦略・文化政策・内政上のメッセージが複雑に絡んだ「統合的な圧力手段」として機能していたことが背景にあります。
現在は中韓関係の改善や経済協力の必要性から解除の動きが出ていますが、再発のリスクも依然存在しています。【ChatGPT】
*********************

【韓国人の“中国嫌い”は危険水域に 今回選挙でも中国人関与を信じる「監視団」が投票所を訪れる人々に「韓国語テスト」】
そうした韓国・中国の関係という事情もあって、大統領選挙投票に関して、日本が抱える関東大震災時の朝鮮人殺害という“嫌な”記憶を彷彿とさせる状況が生じているようです。

****投票所で「韓国語テスト」も 中国人関与信じる「監視団」 大統領選****
6月3日投開票の韓国大統領選を巡り、中国人が投票を行っているなどとする虚偽情報が拡散している。事前投票では「不正選挙監視団」を自称するグループが、投票所を訪れる人々に「韓国語テスト」を行っていたことが確認され、中国人差別を助長するヘイト行為として専門家は警鐘を鳴らしている。

韓国メディアによると、5月29〜30日の事前投票の際、複数の投票所前で男性らが無断でライブ配信したり、投票所から出てきた人に話しかけたりしていた。韓国語で数字を数えるよう求めるなどしていた。「市民団体として監視しているだけだ」と説明したという。

男性らの中には、罷免された尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の支持を意味する「ユン・アゲイン」と書かれた帽子をかぶった人もいた。

また、KBSテレビによると、南東部・蔚山(ウルサン)の警察署に「中国人が投票している」との通報があった。しかし、警察が確認したところ、中国人ではなかったという。

尹氏は選挙で不正が行われた疑いがあるとして、昨年12月の戒厳令宣布を正当化した。この主張に呼応するかのように、極右メディアや右派系ユーチューバーが「戒厳軍が中央選挙管理委員会にいた中国人スパイ99人を逮捕して在沖縄米軍基地に移送した」などのフェイクニュースを伝えた。さらに、中国人の関与を指摘する情報が拡散されたが、中央選挙管理委員会はいずれも否定している。

だが、ネットでは「事前投票を監視しに行こう」「中国人を捜し出そう」といった書き込みが相次いでいる。インスタグラムには「2030不正選挙ファイターズ」という名のアカウントも存在し、「不正選挙腐敗防止隊」を募るサイトのリンクが記載されていた。

防止隊に入るためには、氏名、生年月日、電話番号、住所などを記入する必要があった。「活動希望分野」の欄には「投票参観または監視」「広報」「集会参加」といった選択肢が並んでいた。

3日の投票開始後にアカウントを確認すると、各地から寄せられる投票所の情報を掲載していた。「身分確認の際、マスクを取るようにと言われなかった」「監視カメラが投票所内にない」などと不正を疑う内容だった。

この日、記者が訪れたソウル市内の投票所では、入り口から10メートルほど離れた場所に一人の男性が立っていた。投票所から出てくる人を見ているようで、記者が近づくと立ち去った。

全北大学社会学科のソル・ドンフン教授は聯合ニュースに、関東大震災の際に日本人の自警団が、日本人と朝鮮人を発音で区別して虐殺したことに触れ「根拠なく犠牲者を探す、魔女狩りになり得ることに留意しなければならない」と批判した。【6月3日 毎日】
********************

“韓国語で数字を数えるよう求めるなどしていた”・・・・かつての日本と同じようなことやっています。

****大火災の遺族にありえないバッシング…韓国人の“中国嫌い”は危険水域に それでも依存し続けるジレンマが*****
「中国人遺族にこれ以上支援するな」
韓国人が抱く“中国嫌い”の傾向が、危険なレベルまで達していると思わせたのが、今年6月に京畿道(キョンギド)華城(ファソン)市で起きた、リチウム電池メーカー「アリセル」の工場火災事故だった。

原因は、工場内で保管していたリチウムバッテリーに火がつき、爆発が相次いで発生したことだった。出動した救急隊員も手の打ちようがなく、全焼するのを見つめるしかなかったという。...

この事故では23人が亡くなったが、このうち韓国人は5人、17人が中国人だった(残る1名はラオス人)。韓国政府と華城市は、事故対応をとると同時に、中国人遺族のための迅速な入国および滞在への便宜を図った。弔問客が訪れるための追悼焼香所を設置し、葬儀期間中に利用できる宿舎も提供した。

ところが、マスコミは意外なほど冷淡だった。彼らは、事故そのものより、犠牲者の滞在資格や保険金に注目。亡くなった中国人には不法就労者の可能性があるとし、その場合の労災保険はどうなるのか、といった点を中心に話題にしたのだ。

韓国世論も冷ややかだった。中国人犠牲者に同情するどころか、「不法滞在者に保険金や補償金を支給するな」というコメントがネット上では多く寄せられ、「政府と華城市は、中国人遺族に対してこれ以上支援はしてはならない」という声まであがった。

「弔問者が少ない」との報道も
こんな空気では、追悼の気持ちも冷めていく。「京畿新聞」は7月8日、焼香所の弔問者は他の事故に比べて顕著に少ないと指摘し、死亡者の大半が外国人であるためだと報じた。華城市も、中国人遺族に対する寝食等の提供を、7月末に中断すると発表した。

遺族らは反発したが、それでも「いい加減にしろ」「逆に中国でこのような事故が発生したら、政府が韓国人遺族を招待して積極的に助けるのか」といった意見がネットには相次いだ。

犠牲者への同情どころか、中国に対する悪意を持った世論が、自然に形成されていた格好だ。それほどまでに、中国への嫌悪は根強かったのだろうか。こうした感情は簡単には改善しないと思われる。

無視できない「中国」の恩恵
とはいえ、韓国にとって、中国との貿易、そして中国人観光客による恩恵は無視できない。前編で紹介した排泄写真の撮影現場となった済州道は、特に観光が盛んな地域であり、中国人に経済を支えてもらっているといっても過言でない。

済州道観光協会の発表によると、2024年9月初めまでの済州の内国人(韓国人)観光客は前年比で減少したが、外国人観光客は前年比237%も増え、そのうちの75%が中国人だという。心の中では中国が大嫌いでも、表では妥協しなければならない、という現実がある。

外交分野の公務員だった筆者の知人はこう見ている。
「過去にも韓国人が中国人に対して持つ否定的なイメージがあったが、コロナ禍の後に、そのイメージはより悪い方向に進んでいる。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権がとる中国に対しての強硬姿勢の影響もあるのでは。政府に呼応して、若い人たちはSNSやYouTubeなどを通じてアメリカと日本に親しみを抱く。一方で、中国に良い印象を持つ機はない。今後、韓国人が中国に抱く印象は、さらに悪化する気がする」【2024年09月24日 デイリー新潮】
****************

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ギクシャクする中国と北朝鮮の関係 露朝共闘への中国の不快感 北朝鮮の経済国家統制の思惑

2025-05-09 23:13:21 | 東アジア

(対独戦勝80年記念の軍事パレードを並んで観覧する中国の習近平国家主席(左)とロシアのプーチン大統領=モスクワで5月9日【5月9日 毎日】 北朝鮮の軍事パレード参加はなく、金正恩氏も訪ロせず)

【「蜜月」を演出する中ロ しかし、中国はウクライナ和平でのロシアの米接近を牽制】
ロシアを訪問した中国・習近平国家主席はプーチン大統領との親密な会談を行い、翌日には対ドイツ戦勝80年を祝う軍事パレードを両者が並んで見守るなど「蜜月」をアピールしています。

****プーチン大統領と習近平国家主席が隣り合わせに座りドイツ戦勝80年を祝う軍事パレード見守る 20カ国以上の首脳が参列、結束アピール****
プーチン大統領と習近平国家主席が蜜月ぶりをアピールしました。

快晴の中、ロシアの首都・モスクワの中心部では第2次世界大戦での対ドイツ戦勝80年を祝う軍事パレードが大々的に開催されました。観覧席には、前日に中ロ首脳会談を行ったばかりのプーチン大統領と習主席が隣り合わせに座ってパレードを見守りました。(中略)

プーチン大統領がパレード後、観覧した北朝鮮の軍高官と会話を交わす姿も確認され、プロパガンダ色の強いパレードとなりました。【5月9日 FNNプライムオンライン】
*******************

ただ、アメリカ・トランプ大統領が仲介するウクライナの停戦・和平の動きがあるなかで、関税戦争などでアメリカと厳しく対立し、また、これまで経済的にロシアを支えてきた中国としては、ロシアがアメリカのペースで和平に向けて動けば、梯子をはずされたような状況にもなりかねない・・・ということにも。

そのため、習近平主席の今回訪ロはそのあたりについてロシア・プーチン大統領を牽制する狙いもあるとの指摘もあります。

****訪露した習主席、米との接近試みるプーチン政権をけん制…「中国抜き」ウクライナ和平交渉に焦りか****
ロシアを訪問中の中国の 習近平(シージンピン) 国家主席は8日、プーチン露大統領との約7か月ぶりの対面会談で中露の結束を再び打ち出した。習氏は今回の訪問で、ウクライナの和平交渉を機に米国との接近を試みるプーチン政権をけん制し、中国との関係の重要性を再認識させる狙いとみられる。

露大統領府によると、両首脳は会談で、第2次世界大戦に「勝利」した共通の歴史認識を前面に打ち出した。習氏は、戦後80年の両国関係について「血と火で鍛えられた友情が、世代から世代へと受け継がれてきた」と述べ、揺るぎない結束をアピールした。プーチン氏は今回、習氏のために1対1形式を含む3回の首脳会談を準備しており、厚遇ぶりは際立つ。

ただ、中国側には中露関係への不安もある。
習氏は7日、露政府紙ロシア新聞への寄稿で「一時の出来事に惑わされず、中露の相互信頼を破壊するたくらみに共同で対抗する必要がある」と呼びかけた。盟友のロシアに対して引き締めを図るような異例の発信には、ウクライナ和平交渉が中国抜きで進められていることへの焦りがあるとみられる。

中国は、米欧の制裁下にあるロシアから原油や天然ガスを大量に輸入し、当初からロシアのウクライナ侵略を事実上支援してきた。ただ、表向きは「中立」の立場で、ウクライナ側にも配慮しつつ、対話による解決を訴えてきた。

ロシアは中国の役割には謝意を示すものの、対話にはかじを切らず、北朝鮮軍を参戦させて戦局を複雑にした。東アジアの不安定化を誘発しかねない露朝共闘の動きに対し、「中国は不快感を持っていた」(北京の外交筋)という。

そうした中、今年1月に就任したトランプ米大統領は露寄りの立場で和平交渉を推進し、プーチン氏の態度も軟化した。ウクライナ問題を機に米露間の雪解けが進めば、中国が置き去りにされる可能性もある。

中露の発表によると、習氏は今回の会談で、トランプ政権の関税政策を意味する「いじめ行為」という言葉を使って対米でロシアと足並みをそろえたい意向を示したが、プーチン氏は米国批判に踏み込まなかった。プーチン氏に理解を示すトランプ氏の反発を懸念した可能性がある。

中国は和平交渉に参加できないだけでなく、ウクライナ側から批判を浴びている。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は4月、戦闘中に中国人が拘束されたと公表し、「少なくとも数百人の中国人が露軍に参加している」と中国の「中立性」に疑問を投げかけた。

対米貿易問題で欧州との連携を探る中国としては、ウクライナとの関係悪化は避けたい考えだ。中国政府関係者は「中国はウクライナ問題で欧州側と協議を始めている」としており、米露主導の和平交渉への関与を模索するとみられる。【5月9日 】
********************

【露朝共闘が進むなかでの北朝鮮の軍事パレード不参加 背景にギクシャクする中朝関係】
今回の軍事パレードにはウクライナでロシアとともに戦う北朝鮮は参加しておらず、金正恩朝鮮労働党総書記も訪ロしていません。

****北朝鮮がロシア軍事パレード不参加 金正恩氏の不慣れ、対中関係悪化背景か****
ロシアのウシャコフ大統領補佐官は6日、首都モスクワの「赤の広場」で9日に行う第二次大戦の対ドイツ戦勝80周年記念式典と軍事パレードに、中国や旧ソ連構成国など約30の国・地域の首脳や高官が出席すると発表した。また、中国など13カ国がパレードに自国軍を派遣するとした。タス通信が伝えた。

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記や朝鮮人民軍は発表に含まれておらず、参加は見送られたもようだ。

これに先立ち、ロシアは北朝鮮軍をパレードに招待。パレードに合わせて金氏が訪露する可能性も指摘されていた。ウシャコフ氏によると、北朝鮮からは駐ロシア大使が出席を予定。また、インドからはモディ首相ではなく高官が出席する。

北朝鮮が参加を見送った理由は不明だが、多数の首脳陣が集まる行事への出席に金氏が慣れていないことや、北朝鮮と中国との関係がぎくしゃくしていることが要因となった可能性がある。

北朝鮮の宗主国的立場を自任してきた中国は、北朝鮮がロシアと事実上の軍事同盟条約を昨年締結するなど対露傾斜を強めていることに不満を抱いているとされる。北朝鮮も、朝鮮半島の非核化に言及した昨年5月の日中韓首脳会談の共同宣言を「内政干渉だ」と批判するなど、対中姿勢の変化が指摘されていた。【5月7日 産経】
****************

露朝共闘に不快感を持つ習近平氏がプーチン大統領と一緒に見守る前で北朝鮮の朝鮮人民軍が行進する・・・また、それを金正恩氏が一緒に眺める(習氏と金氏のどちらがプーチン大統領のより近くに座るのか知りませんが)・・・というのは、いかにも気まずい。

この手の外交に不慣れな金正恩氏ならずとも、胃が痛くなるような避けたい場面ではないでしょうか。

中国からすると、北朝鮮とロシアの軍事的な接近は、朝鮮半島の安定が揺らぎ、米日韓の軍事的結束が強化される可能性があること、また、北朝鮮が中国を経由せずにロシアと直接的な軍事協力を進めることで、中国の地域における影響力が相対的に低下する恐れがあることなどのリスクがあります。

中国外務省の林剣報道官は、2024年10月の記者会見で「北朝鮮とロシアは独立した主権国家であり、両国間の協力については把握していない」と述べました。 これは、北朝鮮の行動に対する直接的な非難を避けつつ、関与を否定する立場を示しています。【2024年11月5日 JBpressより】

しかし、北朝鮮がロシアに兵士を派遣し、ウクライナ戦争に関与していることが明らかになると、中国は北朝鮮を「友好隣国」と呼ぶことを控えるなど、外交的な距離を示すようになりました。

こうした中国側の不快感もあって、最近の中朝関係はギクシャクした感じが垣間見えます。

****北朝鮮、無線巡り中国に異例反発 局設置計画「違反」と国連へ通告****
中国が北朝鮮との国境近くにFMラジオ放送などに使う無線局の設置を計画していることに対し、北朝鮮が国内の周波数に深刻な干渉を及ぼす恐れがあるとして反対していることが25日分かった。

北朝鮮は事前調整の要請がないとして、国連専門機関に国際規則違反だと通告した。複数の外交筋が明らかにした。中朝間の意見対立が表面化するのは異例。 

中朝は今年、国交樹立75年の節目に当たるが、外交筋の間では関係冷え込みが指摘されており、今回の問題にも影響した可能性がある。中国が安全保障分野を含めてロシアに急接近する北朝鮮を快く思っていないとの見方もある。 (後略)【2024年8月25日 共同】
*********************

****習近平氏が金正恩氏に答電、「親善的な隣国」欠落****
中国の習近平国家主席が、中国の75周年「国慶節」(建国記念日)に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記が送った祝電に対し、15日ぶりに答電を寄せ、「地域と世界の平和と安定、発展と繁栄を守るためにより大きな貢献をする用意がある」とした。

「兄弟」などの表現は昨年の内容と全体的に似ているが、「親善的な隣国」などの表現はなかった。北朝鮮がロシアに派兵までするほど北朝鮮とロシアの関係が血盟関係のレベルに近づいている中、このような朝ロの緊密な関係を不快に思う中国の本音が表れたとみられている。(中略)

地域情勢の安定を優先する中国の立場では、朝ロの軍事協力が好ましくない可能性が高い。北朝鮮の最友好国だった中国の北朝鮮に対する影響力が弱まりかねないからだ。

中国外務省は、韓国情報当局の北朝鮮派兵の発表に、「すべての当事者が緊張緩和のために努力しなければならない」とだけ述べた。韓国政府消息筋は、「西側が注目するウクライナ戦争に北朝鮮が派兵を決定した状況は、中国の立場から見れば非常に不快なこと」と指摘した。

今年は中朝国交樹立75周年だが、両国間の交流や親善は低調だ。中国に派遣された北朝鮮労働者の帰国問題をめぐっても、両国間で神経戦が続いている。【2024年10月21日 東亜日報】
*******************

****中国で北朝鮮スパイが逮捕されていた! 容疑は何か、「血盟」の両国関係に何があったのか****
<驚きのニュースが伝えられた。習近平にとって北朝鮮は重要な友好国ではあるが、頭痛の種でもあるようだ>
北朝鮮のスパイとされる人物が、中国当局により、中国の軍事技術を盗んだ容疑で逮捕された。韓国の聯合ニュースが4月29日に報じた。(中略)

逮捕されたのは、朝鮮労働党軍需工業部の下部組織から中国東北部の遼寧省に派遣されていた複数のIT部隊員の一人。

北朝鮮事情に詳しい情報筋によれば、この容疑者は先月、現地の宿泊施設からノートパソコンを持って逃走。その後行方不明になっていたが、中国の公安当局によって逮捕された。

調査の過程で、容疑者のノートパソコンから中国の兵器や軍事技術に関連する多数の情報が発見された。ハッキングによって得たとみられている。本人は取り調べで容疑を認めているという。

情報筋によれば、北朝鮮はこの逮捕を把握すると、同じ場所で活動していた他の全IT部隊員を呼び戻した。情報収集活動が露見することを恐れたためとみられる。

軍需工業部は、北朝鮮の兵器製造および研究開発計画を監督しており、国連制裁対象の組織となっている。同部や偵察総局が派遣するIT部隊員は、中国や東南アジアなどの地域で、寮生活を送りながら偽名でハッキングを行うことが広く知られている。(中略)

厳しい検閲の下にある中国のメディアでこの事件が報じられたという事実は、当局の黙認、あるいは明示的な承認があったことを示唆している。

友好的と思われていた中朝関係の緊張が露呈した?
「今回の事件は、北朝鮮が軍事力強化のため、ハッキング活動の対象を中国にまで拡大していることを示している」と北朝鮮の情報筋は聯合ニュースに語った。(中略)

この逮捕は、中国と北朝鮮という条約上の唯一の同盟国同士の間にある緊張を垣間見せるレアケースとなった。
中国は、孤立した北朝鮮の経済を支えることで難民危機を防ぎ、北朝鮮が中国とアメリカの同盟国である韓国との間の緩衝地帯として機能することを期待している。

武器の供与やウクライナ前線への兵士派遣など、北朝鮮がロシアと関係を強化していることは中国にとって頭痛の種だ。習近平(シー・チンピン)国家主席はこの関係を容認しているが、中国周辺地域にアメリカとその同盟国による軍事関与を招き、衝突のリスクを高める可能性がある。

なお、聯合ニュースによると、この容疑者は現在も拘束中だ。どのような罪に問われるのか、あるいは中国当局が事件の詳細を公にするのかは明らかになっていない。【5月9日 Newsweek】
********************

【北朝鮮には中国依存度を下げて、ロシアからの物資で経済の国家統制を進めたい思惑も】
経済的な中朝関係も低調になっているようですが、北朝鮮側が中国からの物資流入による市場経済より、ロシアとの関係を重視した国家管理された中央集権的経済を指向していることも背景にあるとも。しかしそれは北朝鮮経済にとっては“崩壊リスク”をはらんでいるとも。

****「中国離れ」「ロシア接近」の代償 北朝鮮経済が直面する崩壊リスク****
北朝鮮の非公式経済(市場経済)の要衝と言えば、北東部の清津(チョンジン)と首都・平壌郊外の平城(ピョンソン)である。前者は全国最大と言われる巨大市場を擁し、後者は国内外から集まった物資を大消費地の平壌や全国各地に送り出す機能を果たしている。

平城市場に次ぐ規模を誇る玉田(オクチョン)市場は、独特の流通ネットワークを形成していることで知られるが、韓国のサンドタイムズによると、この機能が今年3月初旬から麻痺状態に陥っているという。

北朝鮮全域の価格基準を定めてきたこの市場の機能停止は、単なる地域経済の問題にとどまらず、崩壊した中央集権的な計画経済に代わって30年にわたり機能してきた市場経済システムそのものが根本から揺らいでいる兆候であるとの見方が出ている。

北朝鮮経済に詳しい情報筋がサンドタイムズに語ったところによると、当局が貿易に対する統制を強化したことで、中国との国境に面する新義州(シニジュ)と恵山(ヘサン)からの物資の流入が遮断され、玉田市場への入荷が途絶え、機能が事実上停止した。

約1万人の商人が集まる玉田市場は、全国の商人が商品を仕入れる卸売流通の中心地であり、中国から輸入された工業製品、食料品、衣類用原材料などが列車で平城まで運ばれ、その後、オートバイや担ぎ屋の手で市場に持ち込まれる。そして「タルリギ」と呼ばれる卸売業者を通じて全国に送り出される。

平城玉田市場はまた、超短期衣類生産体制を備えていた。原材料が入荷すると、裁断、縫製、アイロンがけを経て半日で製品ができる家内工業システムが形成されていた。一家に一人は縫製技術者であり、関連産業まで含めると約8万人が従事していたとされる。

北朝鮮経済を研究するクァク・イノク教授は「平城で卸売される衣類加工品は中国から原材料(布地)を持ち込み、コンピューターを利用して作られる」「韓国のドラマや映画をモニタリングし、芸能人が着用する服と同じように裁断・設計し、サンプルを作って大量生産する」と述べた。

このシステムには平城理科大学、国家科学院のエリートや被服専門大学出身のデザイナーが関わり、新製品を生み出していた。しかし、この巨大なアパレル産業全体が機能停止に追い込まれた。

玉田市場は、全国のコメ、トウモロコシ、砂糖、食用油といった食料品や生活必需品の価格、さらに外為レートの基準となる「平城基準」を決める場でもあった。しかし市場の機能停止に伴い、この基準が出されなくなり、価格決定に混乱が生じている。

デイリーNKの内部情報筋によると、3月27日時点で貧困層の主食であるトウモロコシ1キロの価格は4500北朝鮮ウォン(約32円)と、2009年の調査開始以来最高値を更新した。コメ1キロの価格は平壌で9500北朝鮮ウォン(約67円)、恵山で9700北朝鮮ウォン(約68円)と史上最高値に近づきつつある。

問題は、この物価上昇が短期的なものではないことである。北朝鮮は現在、前年の収穫時に得た食糧が底をつく端境期を迎え、麦の収穫が始まる初夏まで穀物の高値が続くとみられている。価格安定に寄与してきた輸入穀物も入荷が途絶え、燃料価格も急騰し、北朝鮮ウォンの下落も続いている。

こうした背景については、中国との関係悪化とロシアへの接近という外交的要因が作用したとする分析がある。

北朝鮮は昨年6月、ロシアと「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結し、自国の兵力をウクライナ侵攻の最前線に派遣するなど、経済・軍事の両面で関係を強化した。またロシアとの間で自動車専用橋の建設が始まり、羅先(ラソン)の経済特区の開発もロシアの協力の下で進められている。

「羅先は数十年にわたり中国が独占的に事業を行ってきた地域だが、ロシアが参入することで経済主導権争いが本格化している」と情報筋は述べた。これが中国の逆鱗に触れたということである。

中国は北朝鮮貿易の98.3%を占めており、食糧やエネルギー供給、人材派遣による外貨獲得など、北朝鮮のライフラインを事実上掌握している。北朝鮮はこの高すぎる対中依存度を下げようとしていたとみられる。

情報筋によれば、北朝鮮当局は最近、商人と手工業者への統制を強化し、代わりに国の流通網、店舗網、アパレル工場に原材料の供給を増やしている。中国から流入した商品は市場経済システムに乗って流通するが、ロシアからの物資は国家の流通網に乗せて掌握できるという違いがある。

金正恩総書記は、昨年末の朝鮮労働党中央委員会第8期第11回総会で「経済全般を統一的に管理することのできるシステムと方法、計画化事業と価格事業を改善することをはじめ切実な方法論的問題の解決に力を入れる」と述べ、市場経済を抑制し中央集権的な計画経済体制への回帰を示唆した。

しかし市場を潰そうとすることは非常にリスクの高い行為である。故金正日総書記は市場経済の発展を嫌い、2009年11月に貨幣改革を通じて市場を潰そうとした。旧紙幣を銀行に預けさせ、交換限度額を定めて新紙幣に交換し、民間に蓄積された富を蒸発させ、市場も閉鎖した。

経済と社会は大混乱に陥り、激しいインフレが発生した。政策責任者を銃殺することで混乱の収拾を図ったが、その影響は長年残った。その後10年を経て市場経済の進展によりようやく生活が安定しつつあった矢先に、金正恩氏は再び市場を取り潰しにかかっている。

北朝鮮には現在、500以上の市場が存在し、人々の生活の中心であるだけでなく、商人から徴収される市場使用料が地方政府の予算や教師の給与などに割り当てられている。この財源が失われれば行政サービスは停止する。

当局は、その穴を埋めるために、「税金外の負担」と呼ばれる法的裏付けのない金品を住民から取り立て、生活をさらに困難に追い込んでいる。【5月6日 デイリーNKジャパン】
************************

ただ、中国が北朝鮮に不快感を持っており、関係がギクシャクしたものになっているにしても、地政学的に北朝鮮を緩衝地帯として利用するという中国の基本方針自体は変わっていませんので、中朝が表だって激しく対立するようなことにはならないと推測されます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

台湾  現役・退役軍人の中国のスパイ事件への関与 米国防省流失文書が示す米の“意外な”本気度?

2025-04-26 23:21:49 | 東アジア

(中国軍で台湾を管轄する東部戦区の報道官は24日、アメリカ海軍のミサイル駆逐艦「ローレンス」が23日に台湾海峡を通過したと発表しました。【4月24日 TBS NEWS DIG】)

【“中国のスパイ事件で起訴された人のうち、現役・退役軍人が約6割に達している”】
以前も取り上げたことがありますが、2年以上前に日経が台湾軍について「軍幹部の9割ほどは退役後、中国に渡る。軍の情報提供を見返りに金稼ぎし、腐敗が常態化している」という関係者の発言を紹介するなど、台湾軍の台湾防衛に関する本気度を疑問視するような記事を掲載したことがあります。記事タイトルも「それでも中国が好きだ」とセンセーショナル。

****「それでも中国が好きだ」 台湾軍に潜む死角****
台湾、知られざる素顔①

「おかげで中国での商売が駄目になった。レストランは閉め、台湾に帰って出直しだ」
台湾人の50代男性、鄭宗賢(仮名)は最近まで中国に脅されていた。2010年代、台湾軍で幹部を務めた鄭。退役後は「軍幹部OBのお決まりのルート」(軍関係者)に乗り、中国で商売を得た。台湾軍の情報を中国側に提供できるうちは商売は順調だった。

だが次第に行き詰まる。軍を離れ、中国に提供できる情報が減ったからだ。同じ台湾軍に入隊した息子に情報を頼ったが、息子は応じなかった。

「用無し」となった鄭に、中国は容赦しない。レストランは当局の嫌がらせで閉鎖に追い込まれた。だが鄭は「それでも中国が好きだ。恨みはない」と振り返る。

台湾統一を掲げる中国が実際に軍事侵攻したら――。向き合う台湾軍の事情は複雑だ。
もともと中国がルーツ。49年、国民党軍は共産党軍に敗れ、台湾に逃れた。中国大陸の奪還を誓ったが、夢に終わる。国民党軍は結局、台湾を守る「台湾軍」として衣替えを余儀なくされた。

その屈辱が軍内に強く残る。「我々こそ中国だと、今なお台湾独立に反対する教育が軍内で盛んだ」(軍事専門家)
17万人を抱える台湾軍では将校などの幹部も依然、中国人を親などに持つ中国ルーツの「外省人」が牛耳る旧習が続く。歴代国防部長(大臣)も外省人がほぼ独占する。

「そんな軍が有事で中国と戦えるはずがない。軍幹部の9割ほどは退役後、中国に渡る。軍の情報提供を見返りに金稼ぎし、腐敗が常態化している」(関係者)。鄭もそんな一人だった。

1月初旬。台湾高等検察署(高検)高雄分署は台湾軍の機密情報を中国側に漏らしたとして、元上校(大佐)と現役将校の計4人を拘束した。

2週間後には元立法委員(国会議員)の羅志明と海軍元少将が、台湾高雄地方検察署(地検)に取り調べを受けたことが判明。中国の統一工作などに便宜を図ったとされた。2021年には国防部ナンバー3の副部長(国防次官)の張哲平まで捜査対象となった。

「いまだに中国に協力するスパイが軍に多いことが台湾最大の問題だ」。ある陸軍OBはこう明かす。米国が長年、台湾への武器売却や支援に慎重だったのも中国への情報流出を恐れたためだ。(中略)

かつて台湾軍は国民党軍として中国で日本と戦った。有事を見据え今後、日台連携で中国対抗の絵を描いても「日本と距離を置くあの台湾軍が、いまさら日本と領土防衛で本当に協力できるのか」(軍事専門家)。多くの課題を残す台湾。緊張は日に日に高まっている。【2023年2月28日 日経】
********************

「軍幹部の9割ほどは退役後、中国に渡る。軍の情報提供を見返りに金稼ぎし、腐敗が常態化している」・・・非常にショッキングな内容で、当時ブログでも取り上げました。

しかし、台湾当局はこの日経記事に猛抗議。日経は3月2日には「釈明」を掲載する事態に。

****日経の連載はなぜ台湾から抗議と批判を受けたか****
台湾を対立イメージで描くのは時代錯誤なやり方

日経新聞の台湾に関する連載が現地で大きな抗議と批判を浴びた。その原因は報道方法の問題だけでなく、記事全体で台湾についての時代錯誤な見方が色濃く残っているためだ。(中略)

連載は「台湾、知られざる素顔」と題され、4本の記事が配信された。とくに1本目の記事では匿名の人物のコメントを引用する形で台湾軍幹部の9割が退役後に中国に渡り、情報提供の見返りに金銭を得るなど腐敗が蔓延していると報道した。

台湾社会で批判が広がる中、3月2日には台湾政府が公に反応。この「9割」という数字の根拠が不明であることを念頭に国防部(国防省)は事実無根と反論し、外交部(外務省)は台北駐日経済文化代表処(駐日大使館相当)を通じて日経に検証不足だと抗議して訂正を求めた。

台湾総統府も「深い遺憾」を表明した。連載のほかの3本の記事も台湾研究者や現地から現在の台湾の実態を示していないなど批判を浴びている。

否定できない報道の基本動作不足
台湾で広がる抗議や反発を受けて、日経新聞は3月7日の朝刊で連載1本目の記事に関する「お知らせ」を掲載。記事中のコメントは日経の見解でなく、あくまで「取材対象者の見解や意見を紹介したもの」として、「混乱を招いたことは遺憾」と釈明した。

(中略)台湾国内では日経の支局に汚物がまかれる騒ぎが起きたほか、一部台湾の立法委員(国会議員)からは日台間で行われていた軍事関連の交流中止を求めるなど日台関係の問題にまで波及している。

日経の連載に対する抗議や批判が広がった背景には大きく2つの問題がある。1つは記事内容の検証不足や記事の書き方など報道上の基本動作の問題だ。たとえば今回、台湾当局が直接的に問題視した匿名の人物が発言したとされる「9割」という数値は、現在の台湾に一定程度の理解のある人ならばあまりにも割合が高いと気づき、まず疑う。

一般的に匿名のコメントを根拠として提示する際にも、そのコメントの内容が妥当であるかの確認(裏取り)は最低限必要である。そもそも記事中ではいつの時点から数えて「9割」かなど数字の詳細も触れられていない。

台湾の高級将校は退役後の一定期間内に出国する際は当局に申請する必要がある。当局側もどれくらいの人物が中国に渡ったかの最近の概算を有しているだろう。台湾政府としては明らかに誤りを含んでいる部分に抗議の焦点を合わせている。

台湾政府の抗議内容は数字の裏取りなど報道における基本動作を怠っているのではないかという部分に集中して抑制的だ。台湾の国防について日本人読者の印象に大きな影響を与えた可能性がある以上、検証を求めるのは正当である。一方で、そのほかの見解や論評について抗議しないことで報道の自由に配慮しているともみられる。

過去30年間の台湾の変化を無視
もう1つの問題は過去30年間で台湾社会に起きた変化を踏まえずに、時代錯誤な古い認識で台湾社会を描いたことだ。1本目の記事は「外省人」と呼ばれる第二次大戦後に台湾に渡った人たちやその子孫について言及。彼らが台湾軍上層に多く含まれ、中国ルーツの意識が強い彼らを中心に台湾軍には中国への協力者が多いために、中国が台湾に侵攻してきても軍が機能しない印象を与えた。

これらの言説は、約30年前に台湾が民主化した直後に盛んに流布されたものの1つだ。実際、台湾軍将校や退役将校らの中国との関係がかつてはたびたび問題とされた。現在でもスパイ容疑での摘発がニュースになることはある。しかし、これらの問題は制度改革もあり、この30年間で大きく改善された。

改善の背景には世代交代もある。現在の台湾軍の実働を担う世代の間では、台湾と中国を別だとする台湾アイデンティティの意識が広く浸透している。日経の記事中でも、退役した軍人が現役である息子に情報提供を求めたが、その息子は断ったとの記述がある。それはまさしく世代が変わりつつあることの証しであるが、その事実を記事では軽視してしまっている。

また、中国ルーツへの意識が強い台湾軍人が指す中国とは、必ずしも中華人民共和国ではない。台湾を統治している中華民国を指すことも多い。彼らの中には反共意識をもつ者も多く、一概に中国人意識が強ければ中国と内通するという単純な理解で割り切れるものでもない。

これらの台湾の歴史や変化を記事中で触れたりすることなく、外省人や中国ルーツという使い古された言説を前面に打ち出したのが問題だった。(後略)【3月11日 東洋経済オンライン】
*******************

確かに「9割」というのは異様に大きな数値であり、信ぴょう性に欠けます・・・・が、“現在でもスパイ容疑での摘発がニュースになることはある。しかし、これらの問題は制度改革もあり、この30年間で大きく改善された。”ということにあついては、それでもやはりその種の事件が多いことは憂慮すべきかも。

****台湾で「最高位の中国スパイ」摘発 退役中将、中国侵攻に合わせて政府転覆を計画****
台湾で、中国と呼応して台湾政府の転覆を計画したとして、相次いで退役将校が摘発された。

今月20日には台湾北部の防衛を担う陸軍第6軍団を率いた元副指揮官の退役中将が国家安全法違反罪で起訴され、「中国のスパイとしては最高位の将校」(台湾メディア)と注目を集めた。

国家安全にかかわる事件の8割超は退役した軍人や警察官が関与しているとされ、頼清徳政権は中国の浸透工作への対応が急務となっている。

検察当局によると、退役中将の高安国被告ら6人は2018~24年、中国に渡航して中国軍の諜報機関関係者と接触。その指示や資金援助を受けて台湾に武装組織を立ち上げ、中国による台湾侵攻の際に武装蜂起することを計画したとされる。主犯の高被告については懲役10年以上の判決を求める意見が付けられた。

台湾紙の自由時報によると、高被告は台湾の官公庁への攻撃のほか、政府要人や軍、警察関係者の殺害、軍事拠点の破壊などを具体的に計画。6人は中国側から計962万台湾元(約4600万円)を受けとっていたという。

台湾では中国の侵攻に合わせた武装蜂起計画が相次いで発覚している。今月には、台湾陸軍を佐官級で退役した元軍人ら7人が中国側の資金提供を受けて武装組織の育成を図ったなどとして、昨年8月に起訴されたことも判明した。

このグループは「中国人民解放軍の10万人を台湾に引き入れる」ことを画策していたほか、秘密裏に台湾独立派の人物を殺害する「狙撃隊」を結成していたとされる。

台湾の対中政策を主管する大陸委員会の報道官は23日の記者会見で、2つの事件について「非常に似ている。中国共産党は計画的かつ組織的にこうした(武装)勢力を育成している」と警戒感をあらわにした。国家安全に関わる事件の85%以上は退役した軍人や警察官が関与していることも明らかにした。【1月24日 産経】
*****************

****台湾、中国スパイで起訴の6割が現役・退役軍人、空軍の夫婦には懲役47〜57年****
台湾の情報機関が立法院(国会)に提出した報告書で、2020年から現在までに中国のスパイ事件で起訴された人のうち、現役・退役軍人が約6割に達していることが分かった。

台湾高等法院(高裁)は10日、国防上の機密情報を中国に提供したとして、空軍の中佐と少佐の夫婦に懲役47年と57年の判決を言い渡した。

台湾・中央通信社が紹介した情報機関・国家安全局のデータによれば、20年から現在までに中国のスパイ事件で起訴された人は159人。このうち95人が現役・退役軍人だった。

内訳は士官46人、下士官27人、兵士22人。国家安全局は中国の狙いは高級士官に限定されていないとし、台湾への浸透の手口が多様化し、全面的になっていることが浮き彫りになったと指摘した。

台湾・国防部(国防省)の顧立雄部長は情報の漏えいを防ぐため、機密情報にアクセスする際の検査を強化する方針を強調。「中国はあらゆる手段を用いて必要な情報を得ている」と述べ、台湾軍は中国が重点を置くターゲットの一つだと説明した。

一方で顧部長は「軍は安全を守るための教育を進めており、スパイ事件の約87%が軍人の通報によって摘発されたものだ」と言明。さらに「現在は機密情報にアクセスする際の検査を重視している」と言及し、「階級を問わず、ある程度の機密情報に触れる際には関連の検査を済ませる必要がある」とした。

台湾高等法院高雄分院で実刑となった夫婦は中国の情報機関に協力していた退役大佐に抱き込まれていた。2人を抱き込んだ退役大佐には一審で懲役20年が言い渡されている。

退役大佐は01年以降の在職期間に義理の父の紹介で中国の情報機関職員とつながりを持った。13年に退役した後も軍での人脈を活用し、金銭を必要とする現役軍人らにターゲットを絞って情報収集に協力させていた。

空軍中佐は野球賭博にのめり込んで困窮していたところ、16年に退役大佐に抱き込まれた。空軍少佐も金に目がくらみ、22年に録音データを作成して中国側に提供したという。

高裁高雄分院は空軍中佐が陸海空軍刑法の軍事機密を敵に渡した罪など四つの罪を犯したと判示し、各罪に懲役6〜14年を言い渡した。空軍少佐も四つの罪で、懲役8〜17年とされた。【4月19日 レコードチャイナ】
**********************

“国家安全に関わる事件の85%以上は退役した軍人や警察官が関与している”“中国のスパイ事件で起訴された人のうち、現役・退役軍人が約6割に達している”ということからは、台湾防衛のための機密情報の相当部分が中国側に漏れている状況を想像させます。

【国防省の内部文書流出が示すトランプ政権の中国による台湾併合抑止戦略の“意外な”本気度 ただし、大統領の本心は?】
中国側の働きかけを受けて台湾軍・台湾内部から崩れていくことも懸念されますが、有事の際に米軍がどこまで「本気」で中国の軍事進攻を阻止するのか・・・は、昔からの「大問題」で、アメリカは敢えてそこらを明確にしない曖昧戦略をとってきました。

台湾防衛を明確にすれば、中国との緊張をことさらに高めることにもなりかねないので。また、台湾を「独立」に向けて暴走させる危険もあります。

ただ、バイデン前大統領は何度も米軍の台湾防衛への関与を明言し、高齢ということもあって“失言”したのか?とも疑われました。

アメリカ第一主義という点でも、同盟国を容易に切り捨てるような言動が多い点でも、トランプ大統領は台湾有事に米軍がかかわることには消極的ではないか・・・とも推測されていますが、中国の台湾併合抑止を米軍の優先事項とする国防相の内部戦略メモが流失し、逆に関係者を驚かせています。

****国防省の内部文書流出で分かったトランプ政権の対中抑止の本気度…安心し驚いた台湾****
トランプの台湾支援停止への懸念が高まる中、台湾は、中国の台湾侵攻抑止がトランプ政権の軍事的優先事項であることが分かり安心した。

中国との戦争に対するトランプ政権の立場を示す秘密メモは、大統領の米国第一主義的行動と対ウクライナ軍事支援停止を懸念してきた台湾の分析家達を驚かせた。

台湾は米国のここまで明確な意思表明を見たことが無い。ウクライナと同様台湾は大きな隣国を恐れながらその領土的野心を止める上で米国の支援に頼ってきたが、その地位は、習近平が台湾周辺で威嚇を強める中、益々不安定になっていた。

中国は、世界一先進的半導体製造業を持つ人口2300万人の台湾を自国の一部と主張し必要なら武力を使うとしている。米国は台湾防衛を約しているが、中国侵攻に際し軍事介入するかを意図的に曖昧にしてきた。

トランプ大統領が台湾に自身の防衛のためより多く行動し支出するよう求める中、不確実性は一層高まっていた。

トランプは習近平を「良い友人」と呼び何時でも会談すると言ってきたが、ヘグセス長官が署名し国防省内で広く配布されたメモでは米軍の優先事項は中国の台湾併合抑止だ。中国の台湾併合の既成事実化を防ぎ米国本土を防衛するのは国防省の唯一の基調的シナリオだとヘグセスは言う。

台湾の国防省系シンクタンクINDSRのチャン曰く、「驚いた、このメモは最も明確に台湾を米国の世界的防衛戦略の中心に据えるものだ、我々はトランプ政権が台湾を無視し中国と取引することを恐れていたが、現時点ではそれは無さそうだ」。

(中略)ヘグセスのメモは軍事侵攻の形態と米国の対中戦闘形態を詳述し、バイデンよりも先を行っている。このメモは潜水艦、海上ドローン、陸軍海兵隊合同部隊増強を求め、台湾の重要性を最高位に位置づけていると言われる。  

分析家は、米国の対中姿勢強硬化は、経済制裁や偽情報、グレーゾーン戦略等の本格的紛争一歩手前の敵対行動に晒されている台湾の状況を悪化させると指摘する。もし人民解放軍が米国の行動強化を認識すれば、PLA(中国人民解放軍)も強硬な反応をする。具体的には、軍事訓練を一層激化し台湾海峡や南シナ海での軍事プレゼンスを増大する可能性があると言う。そうなれば最終的に傷つくのは台湾だ。

政治的意図も
(中略)ただ、このリークは政治的意図に基づくものだ。すなわち、台湾および周辺諸国に対し台湾の防衛・侵攻抑止を米国が優先事項としていることを示すためで、実質的には米国の長年にわたる「曖昧戦略(台湾が武力侵攻された時に、米国が軍事支援に駆け付けるかどうかを明言しない政策)」の放棄に等しい

両面がある。プラスは、台湾を「安心」させることだが、余り安心させすぎると、防衛努力が減速し、逆に独立宣言といった無謀な政策をとる可能性が出てくる。だからこそ、米国は曖昧政策を維持してきたわけだが、その放棄は、中国侵攻の抑止の方が数倍喫緊の課題になったことを示すものだろう。  

マイナス面は、この9ページの文書が中国の目にも触れることだ。この記事によれば、それには中国の台湾侵攻方法と具体的対応が記されているとのことで、だからこそ台湾は米国の「本気」を感じたのだろうが、同時に中国に手の内を晒したことにもなる。

ただ、言われているのは、この文書はヘリテージ財団の2024年の報告書と酷似し、それを写した個所もあるようで、中国にとり完全に新しいものではないかもしれない。
(中略)
このメモにはヘグセス長官はサインしているがトランプ大統領はサインしていない。要は、紙で何が書いてあろうが、人間は最後には人や国が信頼できるかどうかで行動する。【4月25日 WEDGE】
********************

おそらく、台湾侵攻をチラつかせる中国を牽制し、台湾を安心させるために“意図的に”リークされたものでしょう。そのプラス・マイナスは上記記事にあるとおりですが、ただ、これがトランプ大統領の本心か? 本当にトランプ大統領は有事の際に米軍を参戦させるのか?・・・と言えば、誰もわかりません。(大統領自身もその時の雰囲気で大きくぶれるかも)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする