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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ギクシャクする中国と北朝鮮の関係 露朝共闘への中国の不快感 北朝鮮の経済国家統制の思惑

2025-05-09 23:13:21 | 東アジア

(対独戦勝80年記念の軍事パレードを並んで観覧する中国の習近平国家主席(左)とロシアのプーチン大統領=モスクワで5月9日【5月9日 毎日】 北朝鮮の軍事パレード参加はなく、金正恩氏も訪ロせず)

【「蜜月」を演出する中ロ しかし、中国はウクライナ和平でのロシアの米接近を牽制】
ロシアを訪問した中国・習近平国家主席はプーチン大統領との親密な会談を行い、翌日には対ドイツ戦勝80年を祝う軍事パレードを両者が並んで見守るなど「蜜月」をアピールしています。

****プーチン大統領と習近平国家主席が隣り合わせに座りドイツ戦勝80年を祝う軍事パレード見守る 20カ国以上の首脳が参列、結束アピール****
プーチン大統領と習近平国家主席が蜜月ぶりをアピールしました。

快晴の中、ロシアの首都・モスクワの中心部では第2次世界大戦での対ドイツ戦勝80年を祝う軍事パレードが大々的に開催されました。観覧席には、前日に中ロ首脳会談を行ったばかりのプーチン大統領と習主席が隣り合わせに座ってパレードを見守りました。(中略)

プーチン大統領がパレード後、観覧した北朝鮮の軍高官と会話を交わす姿も確認され、プロパガンダ色の強いパレードとなりました。【5月9日 FNNプライムオンライン】
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ただ、アメリカ・トランプ大統領が仲介するウクライナの停戦・和平の動きがあるなかで、関税戦争などでアメリカと厳しく対立し、また、これまで経済的にロシアを支えてきた中国としては、ロシアがアメリカのペースで和平に向けて動けば、梯子をはずされたような状況にもなりかねない・・・ということにも。

そのため、習近平主席の今回訪ロはそのあたりについてロシア・プーチン大統領を牽制する狙いもあるとの指摘もあります。

****訪露した習主席、米との接近試みるプーチン政権をけん制…「中国抜き」ウクライナ和平交渉に焦りか****
ロシアを訪問中の中国の 習近平(シージンピン) 国家主席は8日、プーチン露大統領との約7か月ぶりの対面会談で中露の結束を再び打ち出した。習氏は今回の訪問で、ウクライナの和平交渉を機に米国との接近を試みるプーチン政権をけん制し、中国との関係の重要性を再認識させる狙いとみられる。

露大統領府によると、両首脳は会談で、第2次世界大戦に「勝利」した共通の歴史認識を前面に打ち出した。習氏は、戦後80年の両国関係について「血と火で鍛えられた友情が、世代から世代へと受け継がれてきた」と述べ、揺るぎない結束をアピールした。プーチン氏は今回、習氏のために1対1形式を含む3回の首脳会談を準備しており、厚遇ぶりは際立つ。

ただ、中国側には中露関係への不安もある。
習氏は7日、露政府紙ロシア新聞への寄稿で「一時の出来事に惑わされず、中露の相互信頼を破壊するたくらみに共同で対抗する必要がある」と呼びかけた。盟友のロシアに対して引き締めを図るような異例の発信には、ウクライナ和平交渉が中国抜きで進められていることへの焦りがあるとみられる。

中国は、米欧の制裁下にあるロシアから原油や天然ガスを大量に輸入し、当初からロシアのウクライナ侵略を事実上支援してきた。ただ、表向きは「中立」の立場で、ウクライナ側にも配慮しつつ、対話による解決を訴えてきた。

ロシアは中国の役割には謝意を示すものの、対話にはかじを切らず、北朝鮮軍を参戦させて戦局を複雑にした。東アジアの不安定化を誘発しかねない露朝共闘の動きに対し、「中国は不快感を持っていた」(北京の外交筋)という。

そうした中、今年1月に就任したトランプ米大統領は露寄りの立場で和平交渉を推進し、プーチン氏の態度も軟化した。ウクライナ問題を機に米露間の雪解けが進めば、中国が置き去りにされる可能性もある。

中露の発表によると、習氏は今回の会談で、トランプ政権の関税政策を意味する「いじめ行為」という言葉を使って対米でロシアと足並みをそろえたい意向を示したが、プーチン氏は米国批判に踏み込まなかった。プーチン氏に理解を示すトランプ氏の反発を懸念した可能性がある。

中国は和平交渉に参加できないだけでなく、ウクライナ側から批判を浴びている。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は4月、戦闘中に中国人が拘束されたと公表し、「少なくとも数百人の中国人が露軍に参加している」と中国の「中立性」に疑問を投げかけた。

対米貿易問題で欧州との連携を探る中国としては、ウクライナとの関係悪化は避けたい考えだ。中国政府関係者は「中国はウクライナ問題で欧州側と協議を始めている」としており、米露主導の和平交渉への関与を模索するとみられる。【5月9日 】
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【露朝共闘が進むなかでの北朝鮮の軍事パレード不参加 背景にギクシャクする中朝関係】
今回の軍事パレードにはウクライナでロシアとともに戦う北朝鮮は参加しておらず、金正恩朝鮮労働党総書記も訪ロしていません。

****北朝鮮がロシア軍事パレード不参加 金正恩氏の不慣れ、対中関係悪化背景か****
ロシアのウシャコフ大統領補佐官は6日、首都モスクワの「赤の広場」で9日に行う第二次大戦の対ドイツ戦勝80周年記念式典と軍事パレードに、中国や旧ソ連構成国など約30の国・地域の首脳や高官が出席すると発表した。また、中国など13カ国がパレードに自国軍を派遣するとした。タス通信が伝えた。

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記や朝鮮人民軍は発表に含まれておらず、参加は見送られたもようだ。

これに先立ち、ロシアは北朝鮮軍をパレードに招待。パレードに合わせて金氏が訪露する可能性も指摘されていた。ウシャコフ氏によると、北朝鮮からは駐ロシア大使が出席を予定。また、インドからはモディ首相ではなく高官が出席する。

北朝鮮が参加を見送った理由は不明だが、多数の首脳陣が集まる行事への出席に金氏が慣れていないことや、北朝鮮と中国との関係がぎくしゃくしていることが要因となった可能性がある。

北朝鮮の宗主国的立場を自任してきた中国は、北朝鮮がロシアと事実上の軍事同盟条約を昨年締結するなど対露傾斜を強めていることに不満を抱いているとされる。北朝鮮も、朝鮮半島の非核化に言及した昨年5月の日中韓首脳会談の共同宣言を「内政干渉だ」と批判するなど、対中姿勢の変化が指摘されていた。【5月7日 産経】
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露朝共闘に不快感を持つ習近平氏がプーチン大統領と一緒に見守る前で北朝鮮の朝鮮人民軍が行進する・・・また、それを金正恩氏が一緒に眺める(習氏と金氏のどちらがプーチン大統領のより近くに座るのか知りませんが)・・・というのは、いかにも気まずい。

この手の外交に不慣れな金正恩氏ならずとも、胃が痛くなるような避けたい場面ではないでしょうか。

中国からすると、北朝鮮とロシアの軍事的な接近は、朝鮮半島の安定が揺らぎ、米日韓の軍事的結束が強化される可能性があること、また、北朝鮮が中国を経由せずにロシアと直接的な軍事協力を進めることで、中国の地域における影響力が相対的に低下する恐れがあることなどのリスクがあります。

中国外務省の林剣報道官は、2024年10月の記者会見で「北朝鮮とロシアは独立した主権国家であり、両国間の協力については把握していない」と述べました。 これは、北朝鮮の行動に対する直接的な非難を避けつつ、関与を否定する立場を示しています。【2024年11月5日 JBpressより】

しかし、北朝鮮がロシアに兵士を派遣し、ウクライナ戦争に関与していることが明らかになると、中国は北朝鮮を「友好隣国」と呼ぶことを控えるなど、外交的な距離を示すようになりました。

こうした中国側の不快感もあって、最近の中朝関係はギクシャクした感じが垣間見えます。

****北朝鮮、無線巡り中国に異例反発 局設置計画「違反」と国連へ通告****
中国が北朝鮮との国境近くにFMラジオ放送などに使う無線局の設置を計画していることに対し、北朝鮮が国内の周波数に深刻な干渉を及ぼす恐れがあるとして反対していることが25日分かった。

北朝鮮は事前調整の要請がないとして、国連専門機関に国際規則違反だと通告した。複数の外交筋が明らかにした。中朝間の意見対立が表面化するのは異例。 

中朝は今年、国交樹立75年の節目に当たるが、外交筋の間では関係冷え込みが指摘されており、今回の問題にも影響した可能性がある。中国が安全保障分野を含めてロシアに急接近する北朝鮮を快く思っていないとの見方もある。 (後略)【2024年8月25日 共同】
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****習近平氏が金正恩氏に答電、「親善的な隣国」欠落****
中国の習近平国家主席が、中国の75周年「国慶節」(建国記念日)に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記が送った祝電に対し、15日ぶりに答電を寄せ、「地域と世界の平和と安定、発展と繁栄を守るためにより大きな貢献をする用意がある」とした。

「兄弟」などの表現は昨年の内容と全体的に似ているが、「親善的な隣国」などの表現はなかった。北朝鮮がロシアに派兵までするほど北朝鮮とロシアの関係が血盟関係のレベルに近づいている中、このような朝ロの緊密な関係を不快に思う中国の本音が表れたとみられている。(中略)

地域情勢の安定を優先する中国の立場では、朝ロの軍事協力が好ましくない可能性が高い。北朝鮮の最友好国だった中国の北朝鮮に対する影響力が弱まりかねないからだ。

中国外務省は、韓国情報当局の北朝鮮派兵の発表に、「すべての当事者が緊張緩和のために努力しなければならない」とだけ述べた。韓国政府消息筋は、「西側が注目するウクライナ戦争に北朝鮮が派兵を決定した状況は、中国の立場から見れば非常に不快なこと」と指摘した。

今年は中朝国交樹立75周年だが、両国間の交流や親善は低調だ。中国に派遣された北朝鮮労働者の帰国問題をめぐっても、両国間で神経戦が続いている。【2024年10月21日 東亜日報】
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****中国で北朝鮮スパイが逮捕されていた! 容疑は何か、「血盟」の両国関係に何があったのか****
<驚きのニュースが伝えられた。習近平にとって北朝鮮は重要な友好国ではあるが、頭痛の種でもあるようだ>
北朝鮮のスパイとされる人物が、中国当局により、中国の軍事技術を盗んだ容疑で逮捕された。韓国の聯合ニュースが4月29日に報じた。(中略)

逮捕されたのは、朝鮮労働党軍需工業部の下部組織から中国東北部の遼寧省に派遣されていた複数のIT部隊員の一人。

北朝鮮事情に詳しい情報筋によれば、この容疑者は先月、現地の宿泊施設からノートパソコンを持って逃走。その後行方不明になっていたが、中国の公安当局によって逮捕された。

調査の過程で、容疑者のノートパソコンから中国の兵器や軍事技術に関連する多数の情報が発見された。ハッキングによって得たとみられている。本人は取り調べで容疑を認めているという。

情報筋によれば、北朝鮮はこの逮捕を把握すると、同じ場所で活動していた他の全IT部隊員を呼び戻した。情報収集活動が露見することを恐れたためとみられる。

軍需工業部は、北朝鮮の兵器製造および研究開発計画を監督しており、国連制裁対象の組織となっている。同部や偵察総局が派遣するIT部隊員は、中国や東南アジアなどの地域で、寮生活を送りながら偽名でハッキングを行うことが広く知られている。(中略)

厳しい検閲の下にある中国のメディアでこの事件が報じられたという事実は、当局の黙認、あるいは明示的な承認があったことを示唆している。

友好的と思われていた中朝関係の緊張が露呈した?
「今回の事件は、北朝鮮が軍事力強化のため、ハッキング活動の対象を中国にまで拡大していることを示している」と北朝鮮の情報筋は聯合ニュースに語った。(中略)

この逮捕は、中国と北朝鮮という条約上の唯一の同盟国同士の間にある緊張を垣間見せるレアケースとなった。
中国は、孤立した北朝鮮の経済を支えることで難民危機を防ぎ、北朝鮮が中国とアメリカの同盟国である韓国との間の緩衝地帯として機能することを期待している。

武器の供与やウクライナ前線への兵士派遣など、北朝鮮がロシアと関係を強化していることは中国にとって頭痛の種だ。習近平(シー・チンピン)国家主席はこの関係を容認しているが、中国周辺地域にアメリカとその同盟国による軍事関与を招き、衝突のリスクを高める可能性がある。

なお、聯合ニュースによると、この容疑者は現在も拘束中だ。どのような罪に問われるのか、あるいは中国当局が事件の詳細を公にするのかは明らかになっていない。【5月9日 Newsweek】
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【北朝鮮には中国依存度を下げて、ロシアからの物資で経済の国家統制を進めたい思惑も】
経済的な中朝関係も低調になっているようですが、北朝鮮側が中国からの物資流入による市場経済より、ロシアとの関係を重視した国家管理された中央集権的経済を指向していることも背景にあるとも。しかしそれは北朝鮮経済にとっては“崩壊リスク”をはらんでいるとも。

****「中国離れ」「ロシア接近」の代償 北朝鮮経済が直面する崩壊リスク****
北朝鮮の非公式経済(市場経済)の要衝と言えば、北東部の清津(チョンジン)と首都・平壌郊外の平城(ピョンソン)である。前者は全国最大と言われる巨大市場を擁し、後者は国内外から集まった物資を大消費地の平壌や全国各地に送り出す機能を果たしている。

平城市場に次ぐ規模を誇る玉田(オクチョン)市場は、独特の流通ネットワークを形成していることで知られるが、韓国のサンドタイムズによると、この機能が今年3月初旬から麻痺状態に陥っているという。

北朝鮮全域の価格基準を定めてきたこの市場の機能停止は、単なる地域経済の問題にとどまらず、崩壊した中央集権的な計画経済に代わって30年にわたり機能してきた市場経済システムそのものが根本から揺らいでいる兆候であるとの見方が出ている。

北朝鮮経済に詳しい情報筋がサンドタイムズに語ったところによると、当局が貿易に対する統制を強化したことで、中国との国境に面する新義州(シニジュ)と恵山(ヘサン)からの物資の流入が遮断され、玉田市場への入荷が途絶え、機能が事実上停止した。

約1万人の商人が集まる玉田市場は、全国の商人が商品を仕入れる卸売流通の中心地であり、中国から輸入された工業製品、食料品、衣類用原材料などが列車で平城まで運ばれ、その後、オートバイや担ぎ屋の手で市場に持ち込まれる。そして「タルリギ」と呼ばれる卸売業者を通じて全国に送り出される。

平城玉田市場はまた、超短期衣類生産体制を備えていた。原材料が入荷すると、裁断、縫製、アイロンがけを経て半日で製品ができる家内工業システムが形成されていた。一家に一人は縫製技術者であり、関連産業まで含めると約8万人が従事していたとされる。

北朝鮮経済を研究するクァク・イノク教授は「平城で卸売される衣類加工品は中国から原材料(布地)を持ち込み、コンピューターを利用して作られる」「韓国のドラマや映画をモニタリングし、芸能人が着用する服と同じように裁断・設計し、サンプルを作って大量生産する」と述べた。

このシステムには平城理科大学、国家科学院のエリートや被服専門大学出身のデザイナーが関わり、新製品を生み出していた。しかし、この巨大なアパレル産業全体が機能停止に追い込まれた。

玉田市場は、全国のコメ、トウモロコシ、砂糖、食用油といった食料品や生活必需品の価格、さらに外為レートの基準となる「平城基準」を決める場でもあった。しかし市場の機能停止に伴い、この基準が出されなくなり、価格決定に混乱が生じている。

デイリーNKの内部情報筋によると、3月27日時点で貧困層の主食であるトウモロコシ1キロの価格は4500北朝鮮ウォン(約32円)と、2009年の調査開始以来最高値を更新した。コメ1キロの価格は平壌で9500北朝鮮ウォン(約67円)、恵山で9700北朝鮮ウォン(約68円)と史上最高値に近づきつつある。

問題は、この物価上昇が短期的なものではないことである。北朝鮮は現在、前年の収穫時に得た食糧が底をつく端境期を迎え、麦の収穫が始まる初夏まで穀物の高値が続くとみられている。価格安定に寄与してきた輸入穀物も入荷が途絶え、燃料価格も急騰し、北朝鮮ウォンの下落も続いている。

こうした背景については、中国との関係悪化とロシアへの接近という外交的要因が作用したとする分析がある。

北朝鮮は昨年6月、ロシアと「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結し、自国の兵力をウクライナ侵攻の最前線に派遣するなど、経済・軍事の両面で関係を強化した。またロシアとの間で自動車専用橋の建設が始まり、羅先(ラソン)の経済特区の開発もロシアの協力の下で進められている。

「羅先は数十年にわたり中国が独占的に事業を行ってきた地域だが、ロシアが参入することで経済主導権争いが本格化している」と情報筋は述べた。これが中国の逆鱗に触れたということである。

中国は北朝鮮貿易の98.3%を占めており、食糧やエネルギー供給、人材派遣による外貨獲得など、北朝鮮のライフラインを事実上掌握している。北朝鮮はこの高すぎる対中依存度を下げようとしていたとみられる。

情報筋によれば、北朝鮮当局は最近、商人と手工業者への統制を強化し、代わりに国の流通網、店舗網、アパレル工場に原材料の供給を増やしている。中国から流入した商品は市場経済システムに乗って流通するが、ロシアからの物資は国家の流通網に乗せて掌握できるという違いがある。

金正恩総書記は、昨年末の朝鮮労働党中央委員会第8期第11回総会で「経済全般を統一的に管理することのできるシステムと方法、計画化事業と価格事業を改善することをはじめ切実な方法論的問題の解決に力を入れる」と述べ、市場経済を抑制し中央集権的な計画経済体制への回帰を示唆した。

しかし市場を潰そうとすることは非常にリスクの高い行為である。故金正日総書記は市場経済の発展を嫌い、2009年11月に貨幣改革を通じて市場を潰そうとした。旧紙幣を銀行に預けさせ、交換限度額を定めて新紙幣に交換し、民間に蓄積された富を蒸発させ、市場も閉鎖した。

経済と社会は大混乱に陥り、激しいインフレが発生した。政策責任者を銃殺することで混乱の収拾を図ったが、その影響は長年残った。その後10年を経て市場経済の進展によりようやく生活が安定しつつあった矢先に、金正恩氏は再び市場を取り潰しにかかっている。

北朝鮮には現在、500以上の市場が存在し、人々の生活の中心であるだけでなく、商人から徴収される市場使用料が地方政府の予算や教師の給与などに割り当てられている。この財源が失われれば行政サービスは停止する。

当局は、その穴を埋めるために、「税金外の負担」と呼ばれる法的裏付けのない金品を住民から取り立て、生活をさらに困難に追い込んでいる。【5月6日 デイリーNKジャパン】
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ただ、中国が北朝鮮に不快感を持っており、関係がギクシャクしたものになっているにしても、地政学的に北朝鮮を緩衝地帯として利用するという中国の基本方針自体は変わっていませんので、中朝が表だって激しく対立するようなことにはならないと推測されます。
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台湾  現役・退役軍人の中国のスパイ事件への関与 米国防省流失文書が示す米の“意外な”本気度?

2025-04-26 23:21:49 | 東アジア

(中国軍で台湾を管轄する東部戦区の報道官は24日、アメリカ海軍のミサイル駆逐艦「ローレンス」が23日に台湾海峡を通過したと発表しました。【4月24日 TBS NEWS DIG】)

【“中国のスパイ事件で起訴された人のうち、現役・退役軍人が約6割に達している”】
以前も取り上げたことがありますが、2年以上前に日経が台湾軍について「軍幹部の9割ほどは退役後、中国に渡る。軍の情報提供を見返りに金稼ぎし、腐敗が常態化している」という関係者の発言を紹介するなど、台湾軍の台湾防衛に関する本気度を疑問視するような記事を掲載したことがあります。記事タイトルも「それでも中国が好きだ」とセンセーショナル。

****「それでも中国が好きだ」 台湾軍に潜む死角****
台湾、知られざる素顔①

「おかげで中国での商売が駄目になった。レストランは閉め、台湾に帰って出直しだ」
台湾人の50代男性、鄭宗賢(仮名)は最近まで中国に脅されていた。2010年代、台湾軍で幹部を務めた鄭。退役後は「軍幹部OBのお決まりのルート」(軍関係者)に乗り、中国で商売を得た。台湾軍の情報を中国側に提供できるうちは商売は順調だった。

だが次第に行き詰まる。軍を離れ、中国に提供できる情報が減ったからだ。同じ台湾軍に入隊した息子に情報を頼ったが、息子は応じなかった。

「用無し」となった鄭に、中国は容赦しない。レストランは当局の嫌がらせで閉鎖に追い込まれた。だが鄭は「それでも中国が好きだ。恨みはない」と振り返る。

台湾統一を掲げる中国が実際に軍事侵攻したら――。向き合う台湾軍の事情は複雑だ。
もともと中国がルーツ。49年、国民党軍は共産党軍に敗れ、台湾に逃れた。中国大陸の奪還を誓ったが、夢に終わる。国民党軍は結局、台湾を守る「台湾軍」として衣替えを余儀なくされた。

その屈辱が軍内に強く残る。「我々こそ中国だと、今なお台湾独立に反対する教育が軍内で盛んだ」(軍事専門家)
17万人を抱える台湾軍では将校などの幹部も依然、中国人を親などに持つ中国ルーツの「外省人」が牛耳る旧習が続く。歴代国防部長(大臣)も外省人がほぼ独占する。

「そんな軍が有事で中国と戦えるはずがない。軍幹部の9割ほどは退役後、中国に渡る。軍の情報提供を見返りに金稼ぎし、腐敗が常態化している」(関係者)。鄭もそんな一人だった。

1月初旬。台湾高等検察署(高検)高雄分署は台湾軍の機密情報を中国側に漏らしたとして、元上校(大佐)と現役将校の計4人を拘束した。

2週間後には元立法委員(国会議員)の羅志明と海軍元少将が、台湾高雄地方検察署(地検)に取り調べを受けたことが判明。中国の統一工作などに便宜を図ったとされた。2021年には国防部ナンバー3の副部長(国防次官)の張哲平まで捜査対象となった。

「いまだに中国に協力するスパイが軍に多いことが台湾最大の問題だ」。ある陸軍OBはこう明かす。米国が長年、台湾への武器売却や支援に慎重だったのも中国への情報流出を恐れたためだ。(中略)

かつて台湾軍は国民党軍として中国で日本と戦った。有事を見据え今後、日台連携で中国対抗の絵を描いても「日本と距離を置くあの台湾軍が、いまさら日本と領土防衛で本当に協力できるのか」(軍事専門家)。多くの課題を残す台湾。緊張は日に日に高まっている。【2023年2月28日 日経】
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「軍幹部の9割ほどは退役後、中国に渡る。軍の情報提供を見返りに金稼ぎし、腐敗が常態化している」・・・非常にショッキングな内容で、当時ブログでも取り上げました。

しかし、台湾当局はこの日経記事に猛抗議。日経は3月2日には「釈明」を掲載する事態に。

****日経の連載はなぜ台湾から抗議と批判を受けたか****
台湾を対立イメージで描くのは時代錯誤なやり方

日経新聞の台湾に関する連載が現地で大きな抗議と批判を浴びた。その原因は報道方法の問題だけでなく、記事全体で台湾についての時代錯誤な見方が色濃く残っているためだ。(中略)

連載は「台湾、知られざる素顔」と題され、4本の記事が配信された。とくに1本目の記事では匿名の人物のコメントを引用する形で台湾軍幹部の9割が退役後に中国に渡り、情報提供の見返りに金銭を得るなど腐敗が蔓延していると報道した。

台湾社会で批判が広がる中、3月2日には台湾政府が公に反応。この「9割」という数字の根拠が不明であることを念頭に国防部(国防省)は事実無根と反論し、外交部(外務省)は台北駐日経済文化代表処(駐日大使館相当)を通じて日経に検証不足だと抗議して訂正を求めた。

台湾総統府も「深い遺憾」を表明した。連載のほかの3本の記事も台湾研究者や現地から現在の台湾の実態を示していないなど批判を浴びている。

否定できない報道の基本動作不足
台湾で広がる抗議や反発を受けて、日経新聞は3月7日の朝刊で連載1本目の記事に関する「お知らせ」を掲載。記事中のコメントは日経の見解でなく、あくまで「取材対象者の見解や意見を紹介したもの」として、「混乱を招いたことは遺憾」と釈明した。

(中略)台湾国内では日経の支局に汚物がまかれる騒ぎが起きたほか、一部台湾の立法委員(国会議員)からは日台間で行われていた軍事関連の交流中止を求めるなど日台関係の問題にまで波及している。

日経の連載に対する抗議や批判が広がった背景には大きく2つの問題がある。1つは記事内容の検証不足や記事の書き方など報道上の基本動作の問題だ。たとえば今回、台湾当局が直接的に問題視した匿名の人物が発言したとされる「9割」という数値は、現在の台湾に一定程度の理解のある人ならばあまりにも割合が高いと気づき、まず疑う。

一般的に匿名のコメントを根拠として提示する際にも、そのコメントの内容が妥当であるかの確認(裏取り)は最低限必要である。そもそも記事中ではいつの時点から数えて「9割」かなど数字の詳細も触れられていない。

台湾の高級将校は退役後の一定期間内に出国する際は当局に申請する必要がある。当局側もどれくらいの人物が中国に渡ったかの最近の概算を有しているだろう。台湾政府としては明らかに誤りを含んでいる部分に抗議の焦点を合わせている。

台湾政府の抗議内容は数字の裏取りなど報道における基本動作を怠っているのではないかという部分に集中して抑制的だ。台湾の国防について日本人読者の印象に大きな影響を与えた可能性がある以上、検証を求めるのは正当である。一方で、そのほかの見解や論評について抗議しないことで報道の自由に配慮しているともみられる。

過去30年間の台湾の変化を無視
もう1つの問題は過去30年間で台湾社会に起きた変化を踏まえずに、時代錯誤な古い認識で台湾社会を描いたことだ。1本目の記事は「外省人」と呼ばれる第二次大戦後に台湾に渡った人たちやその子孫について言及。彼らが台湾軍上層に多く含まれ、中国ルーツの意識が強い彼らを中心に台湾軍には中国への協力者が多いために、中国が台湾に侵攻してきても軍が機能しない印象を与えた。

これらの言説は、約30年前に台湾が民主化した直後に盛んに流布されたものの1つだ。実際、台湾軍将校や退役将校らの中国との関係がかつてはたびたび問題とされた。現在でもスパイ容疑での摘発がニュースになることはある。しかし、これらの問題は制度改革もあり、この30年間で大きく改善された。

改善の背景には世代交代もある。現在の台湾軍の実働を担う世代の間では、台湾と中国を別だとする台湾アイデンティティの意識が広く浸透している。日経の記事中でも、退役した軍人が現役である息子に情報提供を求めたが、その息子は断ったとの記述がある。それはまさしく世代が変わりつつあることの証しであるが、その事実を記事では軽視してしまっている。

また、中国ルーツへの意識が強い台湾軍人が指す中国とは、必ずしも中華人民共和国ではない。台湾を統治している中華民国を指すことも多い。彼らの中には反共意識をもつ者も多く、一概に中国人意識が強ければ中国と内通するという単純な理解で割り切れるものでもない。

これらの台湾の歴史や変化を記事中で触れたりすることなく、外省人や中国ルーツという使い古された言説を前面に打ち出したのが問題だった。(後略)【3月11日 東洋経済オンライン】
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確かに「9割」というのは異様に大きな数値であり、信ぴょう性に欠けます・・・・が、“現在でもスパイ容疑での摘発がニュースになることはある。しかし、これらの問題は制度改革もあり、この30年間で大きく改善された。”ということにあついては、それでもやはりその種の事件が多いことは憂慮すべきかも。

****台湾で「最高位の中国スパイ」摘発 退役中将、中国侵攻に合わせて政府転覆を計画****
台湾で、中国と呼応して台湾政府の転覆を計画したとして、相次いで退役将校が摘発された。

今月20日には台湾北部の防衛を担う陸軍第6軍団を率いた元副指揮官の退役中将が国家安全法違反罪で起訴され、「中国のスパイとしては最高位の将校」(台湾メディア)と注目を集めた。

国家安全にかかわる事件の8割超は退役した軍人や警察官が関与しているとされ、頼清徳政権は中国の浸透工作への対応が急務となっている。

検察当局によると、退役中将の高安国被告ら6人は2018~24年、中国に渡航して中国軍の諜報機関関係者と接触。その指示や資金援助を受けて台湾に武装組織を立ち上げ、中国による台湾侵攻の際に武装蜂起することを計画したとされる。主犯の高被告については懲役10年以上の判決を求める意見が付けられた。

台湾紙の自由時報によると、高被告は台湾の官公庁への攻撃のほか、政府要人や軍、警察関係者の殺害、軍事拠点の破壊などを具体的に計画。6人は中国側から計962万台湾元(約4600万円)を受けとっていたという。

台湾では中国の侵攻に合わせた武装蜂起計画が相次いで発覚している。今月には、台湾陸軍を佐官級で退役した元軍人ら7人が中国側の資金提供を受けて武装組織の育成を図ったなどとして、昨年8月に起訴されたことも判明した。

このグループは「中国人民解放軍の10万人を台湾に引き入れる」ことを画策していたほか、秘密裏に台湾独立派の人物を殺害する「狙撃隊」を結成していたとされる。

台湾の対中政策を主管する大陸委員会の報道官は23日の記者会見で、2つの事件について「非常に似ている。中国共産党は計画的かつ組織的にこうした(武装)勢力を育成している」と警戒感をあらわにした。国家安全に関わる事件の85%以上は退役した軍人や警察官が関与していることも明らかにした。【1月24日 産経】
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****台湾、中国スパイで起訴の6割が現役・退役軍人、空軍の夫婦には懲役47〜57年****
台湾の情報機関が立法院(国会)に提出した報告書で、2020年から現在までに中国のスパイ事件で起訴された人のうち、現役・退役軍人が約6割に達していることが分かった。

台湾高等法院(高裁)は10日、国防上の機密情報を中国に提供したとして、空軍の中佐と少佐の夫婦に懲役47年と57年の判決を言い渡した。

台湾・中央通信社が紹介した情報機関・国家安全局のデータによれば、20年から現在までに中国のスパイ事件で起訴された人は159人。このうち95人が現役・退役軍人だった。

内訳は士官46人、下士官27人、兵士22人。国家安全局は中国の狙いは高級士官に限定されていないとし、台湾への浸透の手口が多様化し、全面的になっていることが浮き彫りになったと指摘した。

台湾・国防部(国防省)の顧立雄部長は情報の漏えいを防ぐため、機密情報にアクセスする際の検査を強化する方針を強調。「中国はあらゆる手段を用いて必要な情報を得ている」と述べ、台湾軍は中国が重点を置くターゲットの一つだと説明した。

一方で顧部長は「軍は安全を守るための教育を進めており、スパイ事件の約87%が軍人の通報によって摘発されたものだ」と言明。さらに「現在は機密情報にアクセスする際の検査を重視している」と言及し、「階級を問わず、ある程度の機密情報に触れる際には関連の検査を済ませる必要がある」とした。

台湾高等法院高雄分院で実刑となった夫婦は中国の情報機関に協力していた退役大佐に抱き込まれていた。2人を抱き込んだ退役大佐には一審で懲役20年が言い渡されている。

退役大佐は01年以降の在職期間に義理の父の紹介で中国の情報機関職員とつながりを持った。13年に退役した後も軍での人脈を活用し、金銭を必要とする現役軍人らにターゲットを絞って情報収集に協力させていた。

空軍中佐は野球賭博にのめり込んで困窮していたところ、16年に退役大佐に抱き込まれた。空軍少佐も金に目がくらみ、22年に録音データを作成して中国側に提供したという。

高裁高雄分院は空軍中佐が陸海空軍刑法の軍事機密を敵に渡した罪など四つの罪を犯したと判示し、各罪に懲役6〜14年を言い渡した。空軍少佐も四つの罪で、懲役8〜17年とされた。【4月19日 レコードチャイナ】
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“国家安全に関わる事件の85%以上は退役した軍人や警察官が関与している”“中国のスパイ事件で起訴された人のうち、現役・退役軍人が約6割に達している”ということからは、台湾防衛のための機密情報の相当部分が中国側に漏れている状況を想像させます。

【国防省の内部文書流出が示すトランプ政権の中国による台湾併合抑止戦略の“意外な”本気度 ただし、大統領の本心は?】
中国側の働きかけを受けて台湾軍・台湾内部から崩れていくことも懸念されますが、有事の際に米軍がどこまで「本気」で中国の軍事進攻を阻止するのか・・・は、昔からの「大問題」で、アメリカは敢えてそこらを明確にしない曖昧戦略をとってきました。

台湾防衛を明確にすれば、中国との緊張をことさらに高めることにもなりかねないので。また、台湾を「独立」に向けて暴走させる危険もあります。

ただ、バイデン前大統領は何度も米軍の台湾防衛への関与を明言し、高齢ということもあって“失言”したのか?とも疑われました。

アメリカ第一主義という点でも、同盟国を容易に切り捨てるような言動が多い点でも、トランプ大統領は台湾有事に米軍がかかわることには消極的ではないか・・・とも推測されていますが、中国の台湾併合抑止を米軍の優先事項とする国防相の内部戦略メモが流失し、逆に関係者を驚かせています。

****国防省の内部文書流出で分かったトランプ政権の対中抑止の本気度…安心し驚いた台湾****
トランプの台湾支援停止への懸念が高まる中、台湾は、中国の台湾侵攻抑止がトランプ政権の軍事的優先事項であることが分かり安心した。

中国との戦争に対するトランプ政権の立場を示す秘密メモは、大統領の米国第一主義的行動と対ウクライナ軍事支援停止を懸念してきた台湾の分析家達を驚かせた。

台湾は米国のここまで明確な意思表明を見たことが無い。ウクライナと同様台湾は大きな隣国を恐れながらその領土的野心を止める上で米国の支援に頼ってきたが、その地位は、習近平が台湾周辺で威嚇を強める中、益々不安定になっていた。

中国は、世界一先進的半導体製造業を持つ人口2300万人の台湾を自国の一部と主張し必要なら武力を使うとしている。米国は台湾防衛を約しているが、中国侵攻に際し軍事介入するかを意図的に曖昧にしてきた。

トランプ大統領が台湾に自身の防衛のためより多く行動し支出するよう求める中、不確実性は一層高まっていた。

トランプは習近平を「良い友人」と呼び何時でも会談すると言ってきたが、ヘグセス長官が署名し国防省内で広く配布されたメモでは米軍の優先事項は中国の台湾併合抑止だ。中国の台湾併合の既成事実化を防ぎ米国本土を防衛するのは国防省の唯一の基調的シナリオだとヘグセスは言う。

台湾の国防省系シンクタンクINDSRのチャン曰く、「驚いた、このメモは最も明確に台湾を米国の世界的防衛戦略の中心に据えるものだ、我々はトランプ政権が台湾を無視し中国と取引することを恐れていたが、現時点ではそれは無さそうだ」。

(中略)ヘグセスのメモは軍事侵攻の形態と米国の対中戦闘形態を詳述し、バイデンよりも先を行っている。このメモは潜水艦、海上ドローン、陸軍海兵隊合同部隊増強を求め、台湾の重要性を最高位に位置づけていると言われる。  

分析家は、米国の対中姿勢強硬化は、経済制裁や偽情報、グレーゾーン戦略等の本格的紛争一歩手前の敵対行動に晒されている台湾の状況を悪化させると指摘する。もし人民解放軍が米国の行動強化を認識すれば、PLA(中国人民解放軍)も強硬な反応をする。具体的には、軍事訓練を一層激化し台湾海峡や南シナ海での軍事プレゼンスを増大する可能性があると言う。そうなれば最終的に傷つくのは台湾だ。

政治的意図も
(中略)ただ、このリークは政治的意図に基づくものだ。すなわち、台湾および周辺諸国に対し台湾の防衛・侵攻抑止を米国が優先事項としていることを示すためで、実質的には米国の長年にわたる「曖昧戦略(台湾が武力侵攻された時に、米国が軍事支援に駆け付けるかどうかを明言しない政策)」の放棄に等しい

両面がある。プラスは、台湾を「安心」させることだが、余り安心させすぎると、防衛努力が減速し、逆に独立宣言といった無謀な政策をとる可能性が出てくる。だからこそ、米国は曖昧政策を維持してきたわけだが、その放棄は、中国侵攻の抑止の方が数倍喫緊の課題になったことを示すものだろう。  

マイナス面は、この9ページの文書が中国の目にも触れることだ。この記事によれば、それには中国の台湾侵攻方法と具体的対応が記されているとのことで、だからこそ台湾は米国の「本気」を感じたのだろうが、同時に中国に手の内を晒したことにもなる。

ただ、言われているのは、この文書はヘリテージ財団の2024年の報告書と酷似し、それを写した個所もあるようで、中国にとり完全に新しいものではないかもしれない。
(中略)
このメモにはヘグセス長官はサインしているがトランプ大統領はサインしていない。要は、紙で何が書いてあろうが、人間は最後には人や国が信頼できるかどうかで行動する。【4月25日 WEDGE】
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おそらく、台湾侵攻をチラつかせる中国を牽制し、台湾を安心させるために“意図的に”リークされたものでしょう。そのプラス・マイナスは上記記事にあるとおりですが、ただ、これがトランプ大統領の本心か? 本当にトランプ大統領は有事の際に米軍を参戦させるのか?・・・と言えば、誰もわかりません。(大統領自身もその時の雰囲気で大きくぶれるかも)
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韓国  政治世界における日本の植民統治へのこだわり 「日本の植民統治を称賛したら処罰」法案発議

2025-02-14 23:45:46 | 東アジア

(2024年1〜11月に最も多く訪日した外国人観光客は韓国で、その数は795万300人・・・とのことですから、2024年の年間では800万人を大きく超える過去最高になっていると思われます。)

【特に若年層で薄れたようにも見える「反日」感情】
経済的には1人当たりGDPで日本を追い越した韓国

****日本を大きく上回る結果に…IMFの推定に続き、政府の推定でも韓国の1人当たりGDPが3万6000ドル台に****
韓国の1人当たりの国内総生産(GDP)が3万6000ドル台に達したと推定された。(中略)

昨年の日本の1人当たりGDPは3万2859ドル、台湾は3万3234ドルと推定されており、政府の見通しとIMFの基準のいずれでも韓国が日本と台湾を大きく上回る結果となった。【2月3日 サーチコリア】
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言うまでもなく、竹島の問題、慰安婦や徴用工など歴史問題で韓国と日本の間には容易に克服できない問題があります。

韓国側には半導体素材3品目に対する日本政府の対韓輸出規制強化をきっかけに韓国で爆発的に盛り上がった「ノージャパン運動」のように根深い反日感情がある一方で、事あるたびに大きく叫ばれる「反日」に多くの日本人がいささかうんざりしている実情もあります。

一方で、特に歴史や外交上の問題より自身の満足感を重視する若年層においては、日本料理やアニメ、あるいはKPOPとあいった相手国文化を受け入れている現象も目立ちます。

この世代が嫌っているのは日本より中国。キムチ起源論争のような「中国が韓国の歴史と文化を歪曲している」という不満が背景にあります。

****18-39歳韓国人男女の57%が「日本に好感」 東北アジア歴史財団世論調査****
25-29歳の韓国人男性の74.8%が日本に好感を持っていることが分かった。また、18-24歳の韓国人男性では71.1%が日本に好感を持っていることも分かった。

18-39歳の韓国人男女の57.3%が日本に対して好感を持っている反面、中国に対して好感を持っている割合は10.1%にとどまった。日本に対する好感度は中国に対する好感度の5倍以上に達しているということだ。(後略)【2024年8月15日 朝鮮日報】
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また、韓国においては海外旅行の旅行先としては日本が圧倒的に人気があるという現象も。

****「大型連休だ、日本へ行こう」今年も大量の韓国人観光客が押し寄せる…旧正月の旅行予約で日本がトップ3独占****
再び多くの韓国人観光客が日本を訪れる見通しだ。
韓国では旧正月(旧暦1月1日、今年は1月29日)を前後して6連休となるため、その連休を利用して海外へ出かける韓国人観光客が増加すると見られる。

1月15日、旅行プラットフォーム「トリップドットコム」が予約状況を分析した結果、2024年の旧正月期間(2024年2月9日〜12日)に比べ、今年の旧正月連休期間(1月25日〜30日)の韓国人の海外旅行需要は73.15%増加していることがわかった。(中略)

韓国人観光客が最も多く訪れる国・地域は、日本だ。
日本政府観光局によると、2024年1〜11月に最も多く訪日した外国人観光客は韓国で、その数は795万300人に上る。これは、外国人観光客全体(3337万9900人)の23.8%に当たる数字で、断トツの第1位だ。

そんな世界一の“日本旅行好き”である韓国人観光客が、旧正月の連休を利用して今年も多く訪日する見通しだ。

再び「トリップドットコム」の予約状況を見ると、東京、大阪、福岡の順で予約が多く、バンコク、上海、香港がそれに続いた。さらに、札幌、ニャチャン(ナトラン)、ホーチミン、ダナンがランクインした。

日本がトップ3を独占し、トップ10に4都市が入るという人気ぶりだ。

この結果に、オンライン上では「身近な海外旅行は日本が一番」「あれだけ日本に文句を言っておいて、旅行するのは日本という矛盾」「ノー・ジャパンや福島汚染水の話題はどこにいった」「旧正月の連休も内需は伸びそうにない」といった反応が寄せられた。

年始からこの勢いであれば、昨年に続き、今年も最も日本を訪れる外国人観光客は韓国人かもしれない。【1月15日 サーチコリア】
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【「日本の植民統治を称賛したら処罰」法案の意味】
ただ、政治の世界は相変わらず・・・・保守派尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の日本重視で改善傾向も見られた日韓関係ですが、彼の失脚、反日的言動の目立つ野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表が次期大統領候補1位ということで、再び懸念される状況にもなっています。

(もっとも、李在明代表については次期大統領を意識してか“日本に関する発言を「180度転換」”といった変身ぶりもあるようです。また韓国政局は伊大統領弾劾にもかかわらず、野党・李在明代表の支持が伸びないという状況で、この先は不透明になっています。)

そうしたなかで、野党議員から「日本の植民地時代を称賛したら処罰」法案が発議されたとのこと。

****韓国議員が「日本の植民統治を称賛したら処罰」法案発議=韓国ネットには賛成の声「絶対に必要」****
2025年2月12日、韓国・オーマイニュースは「最大野党『共に民主党』のホ・ソンム議員が、正しい歴史認識を確立するための『日帝植民地支配称賛等の処罰に関する特例法案』を発議した」と伝えた。

記事によると、今回の法案には、日本植民地時代の歴史的事実を否定したり、日本の植民統治を擁護・美化したりする行為を処罰する内容が盛り込まれている。

ホ議員は「過去に日本は大韓帝国の国権を強制的に侵奪し、軍人・軍属・労務者を強制徴用したり、女性を強制動員して慰安婦としての生活を強いたりするなど、われわれ民族を抑圧して反人倫的な戦争犯罪を行った。それにもかかわらず一部で歴史的事実を歪曲(わいきょく)し、日本の統治を称賛する行為が続いており、これを正すための法的措置が必要だ」と訴えた。

また「歴史を否定することは、独立有功者とその遺族の名誉を傷つけるだけでなく、憲法と国のアイデンティティを否定する深刻な問題」とし、「この法案が韓国の伝統性と民族の精気を守り、後世に正しい歴史認識を植えつけるきっかけになってほしい」と強調したという。

この記事を見た韓国のネットユーザーからは「歓迎する。むしろ遅いくらい。早く成立させてほしい」「この法律は絶対に必要。もっと早くにつくっておくべきだった」「賛成します。大韓民国の国民なら当然同意する」「これに反対する人は親日売国奴」「良いね。法が変われば認識も変わる」「三一節(独立運動記念日)にマンションの外壁に旭日旗を掲げた人を処罰できず、とてももどかしかった」「罰として無期懲役、もしくは日本に奴隷として送ってほしい」など賛成の声が多数寄せられている。【2月12日 レコードチャイナ】
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日本の植民統治への反発があるのは当然と言えば当然ですが、日本人的には「どうしてそんなにこだわるのか?」と感じてしまう部分も。

しかし、韓国国内の政治事情からすると、日本の植民統治への評価は単に歴史認識だけですまず、韓国の国家アイデンティティそのもの、現在の韓国政治の分断にも関係するものとなるようです。

****「日本の植民地時代を称賛したら処罰」法案が発議…韓国が“その時代”に異常なこだわりを見せる理由***
韓国の国会議員が「日本の植民地支配称賛等の処罰に関する特例法案」を発議し、注目を集めている。代表発議したのは韓国最大野党「共に民主党」のホ・ソンム議員だ。(中略)

歴史的な事実を見ると、1910年8月の「韓国併合に関する条約」によって、大日本帝国が大韓帝国を併合して統治下に置いた。その結果、韓国は1945年まで日本の一部となった。

一言でいえば、その時代の美化を禁止する法律といえる。

日本統治時代の“見方”が重要なワケ
この法案の念頭にあるのは、「日本の植民地時代が韓国の発展に貢献した」という歴史観を持つ「ニューライト」と呼ばれる勢力だろう。ニューライトは韓国の保守派のなかでも、植民地時代の近代化を肯定的に評価する立場を取る勢力を指す。

韓国の独立運動家やその遺族らで構成された「光復会」がホームページに掲載した「9大ニューライト定義」を見ると、ニューライトは「日本政府の主張通り『植民支配合法化』を図る一連の知識人や団体」となる。「日帝強占期の朝鮮人の国籍を日本だと強弁する」「慰安婦や徴用を『自発的だった』と強弁する」などが“ニューライト判別法”とのことだ。

次期大統領に最も近い人物とされている「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は、昨年10月の国会で開かれた最高委員会議で「国家の正統性を毀損する“親日ニューライト”ウイルスを公職から根絶すべきだ」と激しく批判している。

これは、雇用労働部のキム・ムンス長官が「日帝時代、私たちの先祖の国籍は日本だった」と発言したことに対しての批判だった。キム長官は、与党「国民の力」の次期大統領候補の筆頭だ。

つまり、韓国では日本統治時代を美化するのが保守層=与党「国民の力」、否定するのが進歩層=最大野党「共に民主党」となる。

この対立は根深い。李代表が「国家の正統性を毀損する」と指摘しているように、その時代をどうとらえるかは、韓国という国家の成り立ちそのものに関わる問題だからだ。

韓国では、韓国を「大韓民国臨時政府」(1919年)の正統な継承国家であるとする立場と、日本統治時代を経て1948年8月15日の大韓民国政府樹立で初めて誕生したという立場が対立している。

キム長官のように日本の統治時代を肯定的に捉える立場では、当時の朝鮮半島は日本の一部であり、国家としての韓国は存在しなかったと考える。そのため、親日的な活動をしていた人々も「祖国を裏切った」のではなく、合法的な統治のもとで生きていただけだと主張する。

一方、李代表のように日本の統治時代を否定する立場では、韓国の独立運動家たちこそが正統な国家の担い手であり、日本に協力した親日派は民族の裏切り者であると見なす。この立場では、日本統治を美化することは、独立運動の正当性を否定し、韓国の国家アイデンティティそのものを揺るがす行為とされる。

1910年から始まった日本の統治時代をどう評価するかは、単なる歴史認識の違いにとどまらず、韓国社会における保守と進歩の対立を鮮明にする要因の一つとなっているといえるだろう。

今回、ホ議員が代表発議した法案は、特定の歴史観を否定する立場を法的に保護し、それに反する主張を処罰の対象とする内容であるため、オンライン上では賛否が巻き起こっている。

ホ議員を支持する側は「歓迎する。ドイツではナチスを称賛すれば処罰される」「もっと早くから必要だった法案だ」「法が変われば認識も変わる」「これに反対するのは売国奴ではないか」といった反応を寄せた。

一方、反対側は「国民の口をふさぐ独裁を目指しているとしか思えない」「日本旅行に行く人も処罰されそう」「共産主義の称賛を禁止するほうが先では?」といった声を上げている。

なお、韓国では過去にも「日本の植民地支配擁護行為者処罰法案」「日本帝国主義の植民統治および侵略戦争などを否定する個人または団体の処罰に関する法律案」「日帝強占下における民族差別擁護行為者処罰法案」などが発議されたことがあるが、いずれも制定には至らず廃案となっている。【2月13日 サーチコリア】
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【「慰安婦は自発的に売春」と発言した韓国元教授、無罪が確定】
最近の司法判断については、下記のようなものも。

****大学の講義中に「慰安婦は自発的に売春」と発言した韓国元教授、無罪が確定…支援団体は不満爆発****
大学の講義中に日本軍慰安婦について「売春」と発言し、名誉毀損の容疑で裁判を受けていたリュ・ソクチュン元延世大学教授の無罪が確定した。

2月13日、韓国最高裁(オ・ソクジュン大法官)は「原審の無罪判決には、論理や経験の法則に反し、自由心証主義の限界を超えたり、名誉毀損罪の成立に関する法理を誤認したりした誤りはない」として、名誉毀損の部分について無罪を宣告し、原審判決を確定した。

リュ元教授は2019年9月19日、延世大学の専攻科目『発展社会学』の講義中に、学生約50人の前で「日本軍慰安婦の女性たちは、売春に従事するために自発的に慰安婦になった」と発言した。

また、「挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会=慰安婦支援団体)が、慰安婦の女性たちに強制動員されたと証言するよう指導していた」とする趣旨の発言をし、論争を巻き起こした。

先に行われた1審と2審の裁判では、リュ元教授の慰安婦に関する「売春」発言については無罪と判断されたが、挺対協に関する発言の一部については有罪判決が下された。

裁判部は、慰安婦に関する「売春」発言を無罪とした理由について、「被害者個々に関する具体的な事実の陳述とは見なしがたく、表現の自由を尊重すべきだ」と説明した。

また、挺対協が北朝鮮と連携しているとする発言については、「挺対協の政治的理念や活動に関する意見の表明、もしくは評価に過ぎない」と判断した。

しかし、「証言の強要」に関する発言については、「被告の発言は『挺対協が強制動員に関する虚偽の証言をするよう慰安婦たちを教育し、慰安婦たちが事実と異なる証言をしている』とするものであり、名誉毀損罪における『事実の適示』に該当する」と認定した。

さらに「被告の立場や発言の経緯、内容、それによって侵害された挺対協の社会的名誉の程度などを考慮すると、その罪質は悪質である」とし、罰金200万ウォン(約21万3000円)を言い渡した。

リュ元教授と検察の双方が上告したが、最高裁は原審の判断を支持した。

この最高裁の判断を受けて、「正義記憶連帯」(旧・挺対協)が声明を発表し、「今回の判決は結果的に、リュ・ソクチュンの日本軍『慰安婦』被害事実否定行為に免罪符を与えたものだ」と指摘した。

また、「ドイツをはじめとするヨーロッパのほとんどの国では、ホロコーストや反人道的犯罪を否定する行為が人間の尊厳を侵害し、集団への憎悪を引き起こすものと判断され、表現の自由の保護対象から除外され、厳しく刑事処罰されている」と述べ、「今回の判決によって裁判所は被害者の人権を守り、法的正義を確立する機会を自ら放棄した」と批判した。

そして「歴史的真実を否定し、歪曲する者たちを阻止し、被害者の名誉を毀損する行為を厳しく処罰できるよう、『日本軍“慰安婦”被害者保護法』の改正が必要だ」と主張した。

なお、韓国では最近、著書の中で慰安婦被害者を「自発的な売春婦」と表現したパク・ユハ世宗大学名誉教授に対し、慰安婦被害者9人が提起した損害賠償訴訟の控訴審でも、原告敗訴の判決が言い渡されている。【2月13日 サーチコリア】
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なお、韓国司法については、国民世論次第で司法判断が決まるなど罪刑法定主義・法治主義・法の支配が崩れがちな政治・社会体質を皮肉った「国民情緒法」、または「国民感情法」といった言葉もありますが、そのあたりは日本でも「大岡裁き」が人気があるように、法の世界に情を持ち込むことが期待されるのは韓国だけではないかも。

2013年にヒットした法廷を舞台にした韓国ドラマ「君の声が聞こえる」をつい最近動画配信で観ていて、韓国の法廷でもいろいろな葛藤があるみたいと思った次第。
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韓国  大統領・与党支持が意外に少なくないとの世論調査結果 北朝鮮スパイ疑惑も

2025-01-09 22:53:31 | 東アジア

(弾劾訴追され職務停止となった韓国の尹錫悦大統領の拘束が実現せず、先行き不透明感が増していることで、尹氏の支持者が勇気づけられ、与党「国民の力」の支持に回復の兆しが見られている。大統領支持派のデモ、ソウルの大統領官邸近くで9日撮影。【1月9日 ロイター】)

【大統領公邸を「要塞化」 国家権力同士のにらみあい】
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が12月3日夜に一時宣布した「非常戒厳」を巡る大混乱と弾劾決議などに関しては周知のところ。

現在は、伊大統領の拘束をめぐって、抵抗する大統領側が大統領公邸を「要塞化」、大統領警護処と警察等の国家権力同士がにらみ合うという異例の事態となっています。

****尹氏の拘束令状再着手へ調整続く 韓国、対応強化で衝突懸念****
韓国の高官犯罪捜査庁や警察などによる合同捜査本部は9日、尹錫悦大統領の拘束令状執行に再び着手する時期や方法を巡り検討を続けた。

3日の執行失敗を受け、より強力な警察部隊の投入が取り沙汰され、抵抗する大統領警護庁も鉄条網などで公邸を「要塞化」(韓国メディア)。衝突への懸念と緊張が高まる中、尹氏側は正式に逮捕状を取った場合の捜査には応じる考えも示した。

韓国メディアによると、警察は暴力団など犯罪組織の制圧にも当たる「刑事機動隊」の展開を検討。捜査員も前回の倍に当たる約300人を動員する構えだという。対する警護庁は、公邸に通じる道の門に鎖を絡めたり、捜査員の行く手を阻む大型車両の数を増やしたりと防備を固める。

8日にはインターネットメディアが、尹氏とみられる人物が同日午後(日本時間同)、関係者らと公邸敷地内を点検するような場面を捉えたとする映像を公開。尹氏が直々に警護強化を指示するような姿に注目が集まった。大統領府は「軍事上の保護区域を無断で撮影した」として同メディアを告発した。【1月9日 共同】
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【大統領・与党を支持する者も少なくない世論調査結果】
「非常戒厳」宣布からの一連の動向で、伊大統領は国民の信頼を完全に失って孤立し、巷には大統領への怒り・批判の声が溢れている・・・・というイメージも持ちがちですが、最近発表された世論調査をみると、必ずしもそういう話でもなさそうです。

尹大統領の支持率は40%台回復したという調査も。もっとも野党側は調査手法に問題があるとして調査機関を公選法違反の疑いで告発する方針とか。

****韓国・尹大統領の支持率は40%台回復か 一部世論調査報道、野党は手法を問題視し告発へ****
韓国で弾劾訴追された尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の支持率を巡り、一部の世論調査で昨年12月3日の「非常戒厳」宣布以降、初めて40%台に達したと、地元メディアが報じた。

保守的な論調で知られる朝鮮日報(電子版)は「1カ月でV字回復」と強調している。一方、革新系最大野党「共に民主党」は、この調査を行った機関を公選法違反の疑いで告発する方針を明らかにした。

朝鮮日報などによると、韓国世論評判研究所(KOPRA)が18歳以上の男女1000人を対象に1月3、4両日行った世論調査で、尹氏を「強く支持する」との答えが31%、「支持する」も9%あった。一方、「全く支持しない」は56%、「支持しない」は4%だった。

一方、政党支持率では「共に民主党」が39%、尹氏が所属する保守系与党「国民の力」は36%で拮抗(きっこう)した。

この調査結果を、共に民主党などは問題視する。
「質問項目の設計などが特定の回答を誘導する形で進められた」 共に民主党の趙承来(チョスンレ)首席報道官は6日、記者団にこう述べ、KOPRAに対し、公選法違反の疑いで告発する方針を明らかにした。

具体的には、捜査機関「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」が執行を目指す尹氏の拘束令状について、違法性が指摘されていることを前置きした上で質問している点などを疑問視しているという。

左派系のハンギョレ新聞は7日配信の記事で、KOPRAの調査結果について「極右勢力と与党『国民の力』の支持層で共有され、世論の流れを歪曲(わいきょく)している」と非難した。

共に民主党の対応に対し、「国民の力」のメディア特別委員会は「『告発脅迫』で世論調査まで手なずけようとする奸悪な試みと見るほかはない」と反論している。【1月7日 産経】
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この調査だけの話なら“特定の回答を誘導する形”云々も「そうなんだ・・・」という話になりますが、大統領・与党側が意を強くするような調査が他にも。

別の調査では、大統領に対する逮捕状執行について、44.5%が反対しているとの結果も・

****4割超が尹大統領逮捕に反対 分断あらわに 韓国世論調査****
韓国の世論調査会社「リアルメーター」は8日、戒厳令を宣布した尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する逮捕状執行について、54・4%が賛成する一方、44・5%が反対しているとの調査結果を発表した。

高官犯罪捜査庁(高捜庁)や警察などで作る合同捜査本部は内乱などの容疑で尹氏に対する2度目の逮捕状執行を試みようとしているが、世論の分裂は捜査当局の判断にも一定の影響を与えそうだ。

調査は7日に18歳以上の男女約500人を対象に行った。逮捕に反対する44・5%には「拘束せずに捜査」を求める12・5%と、「戒厳令は正当だったので逮捕すべきでない」とする31・9%が含まれている。

年代別には40〜50代の約7割が逮捕を支持。一方、60〜70代の半数以上が反対した。男女別で見ると、女性は約6割が逮捕に賛成し、男性は賛成が48・8%、反対が49・2%と拮抗(きっこう)した。

逮捕について賛否が二分する背景には、戒厳令以降の政治的混乱について、尹氏だけでなく、安定化に積極的な役割を果たさない野党にも責任があるとの見方が広がっていることとの関連もありそうだ。政治混乱について「尹氏や与党の責任だ」と回答した人は51・3%で、「野党の責任だ」と答えた人は39・1%だった。【1月9日 毎日】
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「戒厳令は正当だったので逮捕すべきでない」が31・9%・・・保守の岩盤支持層は崩れていないようです。更に政治的混乱への野党責任も加わって・・・といったところ。

また、別調査では与党「国民の力」の支持率が3週間ぶりに6ポイント上昇し、30%台を回復したとのこと。

****大統領が弾劾される政局で韓国与党の支持率が上昇も…“次期大統領”にふさわしい人物は圧倒的に野党・李在明****
韓国の世論調査で与党「国民の力」の支持率が3週間ぶりに6ポイント上昇し、30%台に回復したことが明らかになった。これにより最大野党「共に民主党」との支持率の差が4ポイントまで縮まった。

エンブレインパブリック、KSTATリサーチ、コリアリサーチ、韓国リサーチが1月6日から8日にかけて、全国18歳以上の男女1000人を対象に実施した全国指標調査(NBS)の結果を1月9日に発表した。

それによると、1月第2週の「国民の力」の支持率は32%、「共に民主党」の支持率は36%で、その差は4ポイントだった。「共に民主党」の支持率は前回調査(2024年12月19日実施)より3ポイント低下した。
「祖国革新党」は7%、「改革新党」は3%の支持を得た。

次期大統領にふさわしい人物は?
大統領選挙が今年行われた場合、どの政党の候補に投票するかという質問には、「共に民主党」の候補を選ぶとした回答が41%、「国民の力」の候補を選ぶとした回答が29%だった。

次期大統領として最も適任だと思う人物について尋ねたところ、「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表を選んだ回答者が31%だった。(中略) 「該当者なし」「わからない」、または回答を拒否した人は32%だった。(中略)

また、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾審判について「弾劾を認めて尹大統領を罷免すべきだ」との回答が62%に上った。「弾劾を棄却し、職務に復帰させるべきだ」との回答は33%だった。

尹大統領の弾劾審判に対する対応については、「非常に誤っている」(53%)を含め、「誤っている」と答えた人は65%だった。一方、「うまくやっている」との回答は30%だった。

NBS調査は、携帯電話の仮想番号(100%)を用いた電話インタビューで行われた。標本誤差は95%信頼水準で±3.1ポイント、回答率は22.8%だ。【1月9日 サーチコリア】
*********************

これだけの政治混乱のあとで与野党の支持率の差が4ポイントしかないというのも極めて意外。

また、3人に一人が「弾劾を棄却し、職務に復帰させるべきだ」と考えているのは、前述のように保守岩盤支持層健在(復調)を示すものでしょう。

【大統領拘束失敗で勢いづく保守勢力】
また、大統領拘束の失敗で保守勢力の意気は上がっているようです。

****韓国与党に支持回復の兆し、尹氏拘束失敗で保守層勢いづく****
弾劾訴追され職務停止となった韓国の尹錫悦大統領の拘束が実現せず、先行き不透明感が増していることで、尹氏の支持者が勇気づけられ、与党「国民の力」の支持に回復の兆しが見られている。

9日に発表された全国指標調査(NBS)によれば、回答者の59%が尹氏の拘束を望んでおり、37%は拘束は行き過ぎと答えた。

尹氏の弾劾訴追から数週間を経て、国民の力の支持率が回復している。一部のアナリストは、年内に大統領選が行われる可能性を見据えて保守派が団結する兆候を示していると分析している。

韓国外国語大学のメイソン・リチー教授は、「尹氏を拘束しようとしたことで、保守派が再び活気づいたようだ」と述べた。

与党の支持率回復の背景には、尹氏の戒厳令布告に賛同する岩盤支持層に加え、野党「共に民主党」の李在明代表が大統領になることを懸念する消極的な支持層の存在があるとの見方を示した。

「尹氏が拘束されていたら、保守派は弾劾訴追に続いて2度目の敗北を喫し、復活の勢いはすぐに失われていただろう。拘束の試みが失敗すればするほど、保守派は復活を強く感じるだろう」と語った。

6日に発表されたリアルメーターの世論調査によると、国民の力の支持率は34.4%で、3週連続で上昇した。一方、最大野党の共に民主党の支持率は45.2%だった。

韓国の世論調査機関の大半は、尹氏の弾劾訴追以降、同氏の支持率を公表していないが、一部の調査ではここ数日、尹氏個人の支持率が上昇している。

ユーラシア・グループの北東アジア担当シニアアナリスト、ジェレミー・チャン氏は、尹氏の拘束に向けたさらなる試みは、同氏と与党の支持を「活気づける」だけだろうと述べた。

仁川大学のイ・ジュンハン教授(政治学)は国民の力の復調について、2017年に朴槿恵元大統領が弾劾された後の選挙で保守政党が大敗した経験があるため、保守層の間で危機感が高まっているとの見方を示した。【1月9日 ロイター】
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【「共に民主党」の李在明代表も崖っぷち】
“次期大統領にふさわしい人物”の筆頭にあがっている「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表ですが、伊大統領の罷免・次期大統領選挙を急がないと、自身の事件で大統領選挙にも出馬できない“時間的”事情があるのも周知のところ。

****すでに“大統領気取り”だが、大統領選に出馬さえできない可能性も…李在明代表、側近が控訴審でも有罪****
12月3日の非常戒厳事態を契機に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾審判が開始され、次期大統領選に向けた青信号が灯るかに見えた「共に民主党」李在明(イ・ジェミョン)代表だが、再び暗礁に乗り上げた。

偽証教唆容疑の無罪判決で一息ついた李代表の“司法リスク”が再び浮上してきたからだ。
サンバンウルグループと絡んだ裁判で起訴された李代表の側近であるイ・ファヨン元京畿道平和副知事が、控訴審でも有罪を免れなかった。李代表にも直結するサンバンウルによる違法な北朝鮮への送金の事実関係が、今回も認定された。

目前に迫った公職選挙法違反事件もある。李代表が今年11月、1審で懲役1年、執行猶予2年の判決を受けた事件だ。今後10年間、選挙に出馬できない重い判決だ。

選挙法違反事件では、控訴審が3カ月以内に結論を出すことが義務付けられている。尹大統領の弾劾審判とは別に、李代表が直面する危機の火種は消えていないように見える。【12月20日 サーチコリア】
******************

【「戒厳令は正当だった」という主張を更に強めそうな北朝鮮スパイ疑惑】
伊大統領及び保守岩盤支持層の「戒厳令は正当だった」という主張を更に強めそうな北朝鮮の介入疑惑に関する情報も明らかになっています。

****韓国最大規模の労組幹部は北朝鮮のスパイ、報告文で「総会長」金正恩氏に忠誠示す****
北朝鮮の対韓国工作機関「文化交流局」が、韓国最大規模の労組幹部だった男らによって秘密裏に結成されたスパイ組織に対して多数の指令文を送っていたことが、韓国・水原地裁の判決で認定された。韓国の労組を通じ、日米韓3か国協力の弱体化を狙う北朝鮮の思惑が見てとれる。

日米韓揺さぶり
「韓国と日本の関係は最悪だ。高揚した反日世論の流れに乗り、『韓米日三角同盟』を破裂させるための活動が必要だ」

北朝鮮は2019年7月から8月に3回にわたって指令文を送った。これに先立ち、日本政府は元徴用工訴訟問題への対応を巡り当時の文在寅ムンジェイン政権が解決に向けた対応を見せない中、対韓輸出管理強化に踏み切っていた。

指令文では「民族の利益を侵害する冒涜ぼうとく行為だと社会に認識させ、文政府が日本に妥協案を出さないよう力を与えろ」と求め、日本大使館を包囲したり、日の丸を破ったりするような過激な反日闘争の強化を促した。この後、韓国内では市民団体などによる日本製品の不買運動が広がった。

また保守の尹錫悦ユンソンニョル政権が発足した直後の22年5月の指令文は、「(尹政権が)従属的な韓米同盟にしがみつき、反北朝鮮対決策動に狂っている」と対北強硬路線への転換に危機感を示し、韓国内での「大衆闘争」で糾弾する必要があると主張した。

米軍基地画像も
スパイ組織に対しては、日米韓の協力強化が「平和と安定を害する」というメッセージの発信につながる記者会見や署名運動、抗議デモを指示。リーダー格の男が局長を務めていた労組「民主労総」は、尹政権発足後、3か国協力反対の活動を積極的に展開している。

水原地裁の判決で「北朝鮮に渡れば攻撃対象になり得るなど、韓国に不利益をもたらす危険性が明白」と強く非難したのが、この男が所持していたデータだ。ソウル南方の京畿道キョンギド平沢ピョンテクの米軍基地のヘリコプターや車両、ミサイル砲台の画像などが収められていた。

北朝鮮の工作機関は19年1月の指令文で「有事に備えた準備を整える」とし、平沢の軍基地や軍港の配置図、「大統領府や主要統治機関をマヒさせるため」として、送電網システムの資料について入手を求めており、判決は北朝鮮の指示に従い、男がこうした情報を収集したと認定した。

「本社」「支社長」
指令文は、北朝鮮の文化交流局を「本社」、韓国のスパイ組織のリーダー格の男を「支社長」、民主労総を「営業1部」と表現。19年8月には「『本社』の指示に従い、『支社長』が『営業1部』を通じ反日感情を高めるための闘争を戦術的によく練っていると評価する」との指令文もあった。流出した場合でも、実態解明を防ぐ隠蔽いんぺい工作とみられる。

メールなどで送られた指令文は、別の文字や画像に内容が埋め込まれる「ステガノグラフィー」と呼ばれる暗号化手法で隠されていた。捜査機関の捜索や押収があってもやりとりが発覚しないよう備えていた。

リーダー格の男は北朝鮮に報告文を送るたび、金正恩キムジョンウン朝鮮労働党総書記を「総会長」との隠語で表現し、「いつも忠実な息子として闘争しています」(20年5月)、「我が民族の自主と平和のために努力されている総会長の領導に感服します」(同6月)とつづるなど、忠誠を示していた。

今回の事件について、韓国に亡命した北朝鮮元工作員の一人は「スパイ活動の氷山の一角が明らかになっただけ」と指摘する。韓国の裁判所では今回の事件以外にも、北朝鮮からの指令文を受け取っていたなどとして国家保安法違反に問われているスパイ事件の公判が3件行われている。【1月9日 読売】
*****************

この事件は韓国メディアは直接には報じておらず、上記【読売】報道を引用する形で多くの韓国メディアが取り上げているとのこと。

そのあたりについても、“「なぜこんな重大なスパイ事件を国内メディアは報道せず、日本のメディアを引用しなければならないのか。一体どれだけ北朝鮮や中国のスパイがメディアに浸透しているのか」といった疑心の反応も少なくなかった。”【1月9日 サーチコリア】という反響も。

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北朝鮮  貨幣改革の噂で混乱する経済 当局はロシア派兵兵士の生還を望んでいない?

2024-12-30 23:03:33 | 東アジア

(ウクライナ軍が公開したドローン映像に捉えられた北朝鮮兵士。【12月27日 中央日報】)

【経済を混乱させている貨幣改革の噂】
北朝鮮については極端な秘密主義のために詳細がわかりませんが、ミサイル・核兵器開発に必死の一方で、経済はガタガタで「餓死」も珍しくない、社会的にも滅茶苦茶で、韓国ドラマを見ただけで処刑というように体制維持に躍起になっている・・・そんな様子も報じられています。(ただ、伝えられるものが“極端なケース”に過ぎないのかどうか、国民一般の生活状況がどんなものかはよくわかりません。)

*****金正恩政権はなぜ崩壊しないのか?*****
(中略)
ちなみに、社会主義経済は、破綻状態になっても経済的問題で体制が崩壊することはなかなかない。北朝鮮でかつて大量餓死者が出ても政権は維持された。

国民が少々飢えた状態にあっても、生きるための最低の条件を満たせば、むしろ政治的統制がしやすい面もある。

北朝鮮の場合は、住民が他の国との比較ができないために、自分たちの生活を普通だと思っていることがある。

また住民たちは朝から晩まで食べ物の事だけしか頭にない状況もあり、国を転覆するなどと言った考えにまで及ばない。むしろそれを政権が狙っている可能性もある。それが北朝鮮の現状だ。(後略)
【6月12日 “北朝鮮の新たな動きをどう読み解くか ―朝鮮半島情勢の行方と日本の対応―” 李 相哲氏(龍谷大学教授) 平和政策研究所】
**********************

そんな北朝鮮の経済問題で甚大な影響をもたらすのが貨幣改革(デノミネーション)。2009年11月にも大混乱を招きましたが、今再びその悪夢の噂が国民にひろがり、経済全般を揺るがしているようです。

****「いまのうちにカネを使い果たせ」混乱深まる北朝鮮経済****
通貨安が恐ろしい勢いで進んでいる。

北朝鮮の平安北道(ピョンアンブクト)の成川(ソンチョン)と殷山(ウンサン)では今月10日、1ドル(約157円)が3万3000北朝鮮ウォンから4万北朝鮮ウォンに達したと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の情報筋が伝えた。今年5月末に8000北朝鮮ウォン台だったので、わずか半年で通貨の価値が4分の1になった計算になる。別の情報筋は、今月1日に2万8000北朝鮮ウォンだったのが、8日には4万1000北朝鮮ウォンになったと伝えた。

レートには地域差があるため、全国的な現象かどうかはわからない。デイリーNKが7日に行った調査では、今月7日の時点で平壌では1ドルが2万1000北朝鮮ウォン、新義州(シニジュ)では2万1300北朝鮮ウォン、恵山(ヘサン)では2万1400北朝鮮ウォンだった。いずれも、先月24日と比べて、3000北朝鮮ウォンくらいウォンが安くなっていることから、通貨安の傾向にあることは間違いない。

そんな中で「再び貨幣改革(デノミネーション)が行われるかもしれない」という噂が駆け巡っている。

多くの人が財産を失い、国中が大混乱に陥った2009年11月の貨幣改革は、北朝鮮の人びとにとってはトラウマだ。資産を持っている人たちは、手持ちの北朝鮮ウォンを使い果たすため、品物を買い占め、品物を持っている人たちは売り惜しみしている。

RFAの咸鏡南道(ハムギョンナムド)端川(タンチョン)の情報筋によると、現地では貨幣改革が行われるとの噂が飛び交い、人々は通貨安と物価高騰の話で持ちきりだという。

資産を持ったトンジュ(金主、ニューリッチ)は、一夜にして全財産が紙くずになった貨幣改革のときのことを思い起こし、手当たり次第に物を買い漁っている。

ナマコを売って一財産築いた情報筋の友人は、あちこちを回って液晶テレビとパソコンを大量に購入している。手元に残す現金はコメ代くらいで、後はすべて物を買うのに注ぎ込んでいる。

自動車に詳しい友人は変速機やタイヤなど、使えそうな自動車部品を買い漁っている。別の商人は、物価高騰が収まるまで、市場には出ないつもりだといって引きこもっているという。

当局もじっとしているわけではない。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、地元当局は「貨幣改革の噂はデタラメ」だと発表して、恐慌状態を収拾しようとしていると伝えた。しかし、お上の言うことを信じる人はいない。

「市場を資本主義の苗場、個人主義(エゴイズム)の温床と考える当局が、市場で収入を得ている人のことを考えてくれるわけがない」(情報筋)

故金正日総書記は、力を持ちすぎた市場を潰す目的で貨幣改革を実施した。民間人が財力を持つと、余計なことをしだすと考えていたようだ。しかし大失敗に終わり、担当幹部を処刑するなどして収拾を図ったが、北朝鮮の人々は今もこのことで金正日氏を深く恨んでいる。

一部の商人は、万が一の事態に備えて、在庫を売り惜しんでいる。
「2009年の貨幣改革の初期、新紙幣は価値があったが、1カ月も経たずに価値が急落し、当局の統制のせいで、対ドルレートは当初の半分以下になった」(情報筋)

当時の記憶がまだ生々しく残っているため、恐怖に襲われた商人たちは、在庫の食用油、砂糖などの食品、木材、ペンキ、自動車やオートバイの部品など、様々な商品を自宅にしまい込んでしまった。

たとえ貨幣改革の噂が、単なる噂に過ぎないと後日わかったとしても、今はともかく何も売らないのがいい方が得と考えているとのことだ。【12月30日 デイリーNKジャパン】
********************

経済は当局にその気がなくても、多くの国民が不安から一方向に走り出すと、悪循環のスパイラルに陥り、実体経済が麻痺状態になってしまうものです。

2009年11月の貨幣改革がどんなものだったのか・・・「改革」というより国家が国民の資金を収奪し、経済は崩壊・・・といったものでした。

****デノミ失敗で大混乱の北朝鮮経済 「国家による強盗」に高まる不満****
2009年11月、北朝鮮政府は突如としてデノミネーション(貨幣交換)を断行した。その結果、北朝鮮庶民の生活は今、大混乱をきたしている。金正日政権の思惑はどこにあるのか。そして、不安定化する北朝鮮社会はどこへ向かうのだろうか。

ため込んできた財産が一瞬で消失
北朝鮮経済が大混乱に陥っている。結論から述べると、現状はこの10年で最悪、餓死者まで発生している有り様である。原因は、2009年11月30日に電撃的に断行されたデノミ=「貨幣交換」(新ウォンへの通貨切り下げ)措置のためである。あまりに唐突、無茶なデノミ実施によって、北朝鮮国内では物流の麻痺(まひ)、超インフレが起こっているのだ。

金正日政権が断行したデノミの概要は次のとおりだ。(1)旧ウォンを新ウォンに100対1で交換する、(2)交換額の上限を1世帯あたり旧ウォンの現金10万ウォンとする、(3)交換期限は同年12月6日まで、(4)外貨の国内での使用を一切禁ずる、(5)配慮金として新ウォンを1人当たり500ウォン支給する。

この突然のデノミは、一般国民に事前にまったく知らされなかった。また、交換上限の10万ウォンというのは、実勢レートで約2500円程度で、地方都市の中間層のざっと1カ月の生活費に過ぎない(首都平壌はこの2倍程度)。

交換上限以上の金は紙くずになってしまうわけで、庶民から小金をため込んだ比較的余裕のある層まで、大なり小なり打撃を被った。

筆者は長く北朝鮮内部に住む人たちと一緒に取材を続けてきた。彼らが伝えるところによると、何年間もため込んできた財産が一瞬にしてパーになったり、商売の元手にしようと貨幣交換直前に多額の借金をした人が、新ウォンでの返済を求められて借金のかたに家を明け渡す羽目になってホームレスになったり、商品代金や借金の清算を旧ウォンでやるのか新ウォンでやるのかでいさかいが起こったりして、殺人事件や自殺まで発生したという。

一方、最貧層の人たちの中には、この十数年の間に貧富の格差が急に進んで不公平感が募っていたため、金を持っている者たちが途方に暮れている様子を見て、「これであいつら金持ちも私たちも同じ立場だ」と歓迎する人もいたようだ。

しかし、後に触れるが、デノミ実施から間もなくして超インフレが発生し、貧困層は、さらに窮してしまうことになった。

デノミの本当の狙いは何か
では金正日政権は、なぜこの時期にデノミ断行に踏み切ったのだろうか? 北朝鮮当局は、デノミは人民生活向上のためであり、(1)インフレ退治、(2)社会主義原則と秩序に基づく経済管理強化が目的だと説明している(09年12月7日付朝鮮新報など)。

北朝鮮は、国家による計画経済体制と消費物資の国定価格による配給制度を、建前上は放棄していない。だが農業不振が続き、工業生産も、軍需品などの一部工場を除いて、稼働率はざっと20~30%程度。

統制経済がぼろぼろになっていく一方で、一般民衆は生きていくために、違法と知りつつ商売行為を活発化させていった。

こうして1990年代後半からどんどん急拡大していった市場経済は、中国とリンクしつつ、国の実体経済を牛耳るほどに膨張していった。

その半面、インフレもひどく、この10年で消費者物価は20~25倍も上昇していた。北朝鮮当局は、コントロールの利かなくなった市場経済を抑え込んで統制することと、物価の安定を図ることが、デノミ断行の目的だというのである。

それではその結果はどうか? 2010年3月中旬になっても混乱は収まっていないようである。まずは、大変な超インフレの発生である。デノミ実施直後、白米は40ウォン、トウモロコシは20ウォン程度だったのが、3月後半の時点で白米は1000ウォン、トウモロコシは400~500ウォン(いずれも1キロ)に急騰した。

3カ月あまりで約25倍に値上がりしたことになる。中国の人民元の闇交換レートも、1元が15ウォンだったのが約200ウォンに下落した。金正日政権によるデノミは、インフレ退治どころか超インフレを招いてしまったのだ。

新ウォンへの信頼低下がその原因である。
「毎日あれよあれよという間に物価が上がる。売り惜しみが横行して市場にも十分に物が出てこない」
北朝鮮内部の取材パートナーたちの弁だ。

小さな商売や非合法の日雇い労働(北朝鮮では個人が人を雇うことは禁止)で日銭を稼いで暮らしてきた人は、経済が委縮したため、現金収入を大幅に減らしてしまった。

食糧配給もない中、このような貧困層の人たちは金がなくて食べ物にアクセスできなくなり、一部で餓死者が出るような惨状が現れている。

今回のデノミ断行の本当の狙いは何か。筆者の見立ては次のようなものだ。(1)政治的には、増殖する一方の市場経済を縮小再編させ、社会全般の国家統制を立て直すこと、(2)経済的には、国民から資金を強奪すること。

北朝鮮社会は不安定化する
市場経済の増殖は、国民が経済活動の自由領域をどんどん広げていることを意味する。それは、金正日政権の独裁維持の要である人民統制が弱体化するということに他ならない。

実際、この10年ほどの間に、「食べていけるのは政府のおかけでも金正日将軍のおかげでもなく、市場で商売しているから」という意識が当たり前になった。

商売のために人は移動し情報も交換しなければならない。市場経済のこれ以上の増殖は、体制維持にとって脅威だとの判断があって、デノミによって市場に一定の打撃を加える政治的意図があったものと思われる。

だが付言するならば、金正日政権の狙いは単純な「市場つぶし」そのものではないだろう。

経済不振の北朝鮮にあって、今や特権層にとっても、富を手に入れられるのは市場しかない。市場そのものをまったくつぶしてしまっては元も子もないわけだ。市場は「たたいて縮小させ、あらためて権力の都合のいいように再編して復活させる」ということではないか。政府の後続措置を見ないと判断は難しいが、現時点で筆者はそう推測している。(後略)【2010年4月2日 石丸次郎氏 Imidas】
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政権がコントロール出来ない市場経済領域を圧迫し、人民統制の復活強化を目指すというのは現在の金正恩政権が目指しているものでもあります。

【当局はロシア派兵兵士の生還を望んでいない?】
最近北朝鮮関連で多く報じられているのはウクライナとの戦争のためにロシアに派兵された兵士の話題。多大な犠牲者が出ていると報じられています。

****ウクライナ「最前線の北朝鮮軍打撃、水不足が深刻」…3000人死傷説も****
ロシアを支援するために派兵された北朝鮮軍がクルスク戦線で莫大な損失を出し、補給にも困難が生じていると、ウクライナ側が26日(現地時間)主張した。 

AP通信によると、ウクライナ国防省傘下の情報総局(GUR)はこの日、自国軍がロシア西部クルスク州ノボイバノフカ付近で北朝鮮軍の部隊を攻撃し、大きな被害を与えたと明らかにした。

情報総局はその結果、最前線にいる北朝鮮軍は補給問題に直面し、飲み水不足事態が生じていると伝えた。 

ウクライナのゼレンスキー大統領は23日、クルスク地域の戦闘で死亡または負傷した北朝鮮軍の数がすでに3000人を超えたと明らかにした。

北朝鮮はロシアを支援するためクルスク地域に1万-1万2000人を派兵したと推算される。ゼレンスキー大統領の主張通りなら、派兵された北朝鮮兵力の4分の1以上が死傷したということだ。(後略)【12月27日 中央日報】
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****ゼレンスキー氏、ロシアと北朝鮮を批判「北朝鮮兵の生死に全く関心がない」****
米国のジョン・カービー大統領補佐官は27日、ロシア西部クルスク州でウクライナ軍との戦闘に参加している北朝鮮軍の死傷者数が、過去1週間だけで1000人以上に上るとの分析を明らかにした。歩兵による人海戦術に多数が投入され、死傷者が増えているという。

カービー氏は記者団に、「北朝鮮軍は、クルスク州のウクライナ軍陣地に対して大規模な攻撃を仕掛けているが、人海戦術は効果を上げておらず、多大な犠牲が出ている」との見方を示した。

複数の北朝鮮兵が捕虜になることを拒み、自殺したという報告があることも明らかにし、「捕らわれた場合、北朝鮮にいる家族に対する報復を恐れたためだろう」と述べた。

ロシア軍は、ウクライナ軍の越境攻撃で占領された地域の奪還に向けて、北朝鮮兵を投入した攻撃を強めているとみられる。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は27日のビデオ演説で、「露軍と北朝鮮の指揮官は北朝鮮兵の生死に全く関心がない」と指摘した。その上で、「戦争を拡大させるべきではないという言葉に誠実であるならば、中国は北朝鮮に適切な圧力をかけなければならない」と訴え、中国に対して北朝鮮に影響力を行使するよう求めた。【12月28日 読売】
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自殺した北朝鮮兵・・・「捕らわれた場合、北朝鮮にいる家族に対する報復を恐れたためだろう」ということなのか、あるいは旧日本軍兵士のように「生きて虜囚の辱めを受けず」と洗脳されている結果なのか・・・

ロシアが北朝鮮兵士を弾除け代わりに“消費”しているという話は以前からあります。

更に言えば、金正恩政権自体が派兵した兵士の帰国を望んでいないとも。

****「1人の生還も望まない」ロシア派兵軍人に金正恩の残忍な仕打ち****
(中略)北朝鮮のロシア派兵が明らかになって間もなく、韓国在住の脱北男性であるチョン氏(仮名)は、韓国デイリーNKに対し次のように語っていた。なお、チョン氏は兵士の身分のままロシアの建設現場に派遣され、労働者として働いた経験がある。

「北朝鮮は、ロシアに派兵した軍人が戦場から1人でも生きて帰ってくることを望まないだろう。彼らが戻ってきて、国民に自分が経験した事実を伝えた場合、体制に対する否定的な世論が生じかねず、体制維持に役立たないからだ」と主張した。

我々はいま、チョン氏が予想したことを現実として目撃しているわけだ。
たしかに、韓流コンテンツを流布した人々に対する極刑執行が繰り返されている中、外国の情報に染まった多数の兵士を迎えるのは、北朝鮮当局にとって負担だろう。

しかし、ロシアで実戦経験を積み生還した兵士を「英雄」として称えれば、国民の中に対ロシア協力に賛成する世論を醸成する余地もあるはずだ。
北朝鮮当局が今後、そのような行動を取る可能性は残されている。

しかし、自軍兵士の処刑などという残忍な行いを経験したり目撃したりした兵士たちは、国家に対する反感を募らせる可能性が高い。北朝鮮当局がそれを警戒するなら、チョン氏の語った通り、生還者を完全に拒絶する行動を強めるかもしれない。

北朝鮮の恐怖政治が、いかに徹底したものであるかを改めて知り、今さらながら戦慄を覚えている。【12月30日 デイリーNKジャパン】
**********************

実際のところ、金正恩政権がどのように考えているのかは知る由もありません。ただ、当局は「生還を望んでいない」といったことが囁かれるのは政権が国民からまったく信頼されていない証でもあります。
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韓国の「非常戒厳」騒動からの印象  「これが同じ分断国家アメリカで起きたら怖いな・・・」

2024-12-04 22:40:07 | 東アジア

(【12月4日 YouTube日テレNEWS】 兵士の銃に掴みかかる女性)

韓国・尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が突然に「非常戒厳」を宣言したものの、6時間でこれを解除せざるを得ないことになった一連の動き、背景については、あまたの記事がありますので、そちらに任せます。

個人的な印象を少し書くと、革新勢力と保守派の分断が続き、相手側の執拗な攻勢に対し、ついに「非常戒厳」を宣言して一切の活動を停止に追い込もうとした・・・この韓国で起きた出来事が、同じような分断社会となっているアメリカで起きると怖いな・・・と感じた次第。

今回の韓国の動きを伝えるニュースで一番興味深かったのは、国会に配置された自動小銃をもって完全武装した兵士に対し、激しく抗議する女性が兵士の銃の銃身に掴みかかる動きに対し、兵士は後ずさって振りほどく・・・という場面。

これでは「非常戒厳」は実現しないでしょう。発砲しろとは言いませんが(おそらく今回配備された兵士は絶対に発砲しないように命じられているでしょう)、抗議の女性を押し返すぐらいの威圧感がないと・・・もし、やるのであれば。

これが銃社会アメリカ、不審な動きがあればすぐに射殺すべし、そうしないと自分がやられるというアメリカなら、全く違った話になるでしょう。

(韓国ドラマを観ていて思ったのですが、韓国では、日本同様に警官ですら発砲には規制があり、発砲した警官はいろいろ書類を書かないといけないようです。不確かですが、ドラマの会話では、そんな感じでした)

各州には州知事の指揮下にある州兵が存在しますが、分断された各知事がどのような判断をするのか。

分断した国民も、多くが、特に銃規制に反対する保守派の側は、銃を保有しています。直ちに武装自警団みたいな民兵組織がつくられるでしょう。

そうした韓国とアメリカの違いもあって、いったん「非常戒厳」に打って出たアメリカにあっては「内戦」も現実のものとなるかも。決して6時間でおわる茶番劇ではすまないでしょう。

そんなこんなの思いから「これが分断社会となっているトランプ政権下のアメリカで起きたらこわいな・・・でも、起きないとは言いきれいよね・・・」って感じました。

(なお、韓国も民主化以前、例えば朴(お父さんの方)政権の頃は、国内も、対北朝鮮もピリピリした緊張社会で、今回のような動きがあれば決して茶番では済まない社会でした)

ついでにトランプ政権下のアメリカに関して、もうひとつ怖いな・・・と感じたのはトランプ氏とカナダ・トルドー首相の会談。トランプ氏は不法移民の流入などへの対抗措置としてカナダからの輸入品に25%の関税を課すと宣言しています。

****トランプ氏「カナダは米国の51番目の州になるべきだ」 トルドー首相に会談で揺さぶり****
米FOXニュース(電子版)は2日、トランプ次期米大統領が11月29日に会談したカナダのトルドー首相に対し、米国の移民問題や貿易赤字にカナダが対応できないなら米国の新たな州になるべきだと述べたと報じた。

発言は同席者に冗談として受け止められたものの、カナダに揺さぶりをかけているのは明らかだ。トランプ氏は3日、自身の交流サイトにカナダ国旗が掲げられた崖に自身が立つイラストを掲載し「Oh Canada(オーカナダ)!」と書き込み、カナダを巡る世論を喚起した。

トランプ氏は米南部フロリダ州の私邸にトルドー氏を招き、次期政権の閣僚候補らと約3時間にわたる夕食会形式の会談に臨んだ。

トランプ氏は歓迎姿勢を示す一方で、大量の薬物や不法移民がカナダから流入していると指摘。国境問題や貿易赤字を解決できなければ、来年1月の就任初日にカナダからの輸入品に25%の関税を課すと述べた。

トルドー氏は、関税によってカナダ経済が完全に破綻すると再考を求めた。

これにトランプ氏は、米国から巨額の利益をむしり取らなければ生き残れないのかと反論。カナダが「米国の51番目の州」になるべきだと畳み掛けた。

苦笑いのトルドー氏に対し、新しい州の知事よりも「首相」という肩書の方がよいと持ち上げ、対応を促した。カナダ側の同席者はトランプ氏の発言について「冗談」と話している。

ただ、トランプ氏は日本製鉄による米鉄鋼大手USスチール買収の阻止や中東問題などで強硬姿勢を示していて、カナダにも圧力を強めていくとみられる。【12月4日 産経】
****************

もちろん今は「冗談」でしょう。
ただ、いくら冗談にしても、一国の首相に対し、自国の新たな州になれなんて普通は言わないですけどね。
トランプ氏の「普通」ではない一面でしょう。

「取引」(ディール)とは言っていますが、弱い立場の相手は容赦なく力でねじふせるという交渉スタイルです。

でもって、今は「(悪い)冗談」ですが、前述の分断社会の末に「非常戒厳」を宣言し、反対派を力で一掃する・・・・という場面の関連で、もしそういう事態になれば外交面では、カナダようなアメリカに依存する国には本当に「51番目の州」になるように力の行使がなされるかも。

「(悪い)冗談」を楽しむトランプ氏の頭の片隅には、そんな将来の展開もあるのかも。

今回は、ミャンマーの話を書く予定でしたが、前置きの話が長くなってしまったので、今回はここまで。ミャンマーの話はまた明日にでも。

最近のSNS社会の基準からすれば、毎回異常に長い記事を書いていますので、たまには印象・感想だけの短い記事で。
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台湾  トランプ氏復権で「見捨てられないか心配」 米の防衛協力「信じない」57.2%

2024-11-19 22:47:38 | 東アジア

(「台湾有事」が現実となった場合、日本政府は与那国島など先島諸島5市町村の住民を民間機やフェリーなどで九州・山口の8県に避難させる計画です。その数は12万人 【10月23日 読売】)

【台湾市民 「トランプ氏に見捨てられないか心配です。中国は台湾よりも経済とマーケットの力があるので」】
に続き、トランプ氏復権がもたらしている変化について、今回は台湾。

台湾は政治・経済・軍事の面で中国の「統一」に向けた圧力にさらされていますが、一方で経済的な中台の関係も深く、多くの台湾企業が中国に生産拠点を有しています。

しかしトランプ氏復権で中国製品への60%関税の課税が取り沙汰される状況で、台湾当局は台湾企業が中国から台湾に生産拠点を移すことへの支援を表明しています。

また、アリゾナ州では半導体ファウンドリー(受託製造)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が650億ドル以上の投資を行うとしており、同社に最大66億ドルの助成が発表されていいます。しかし、トランプ氏は選挙期間中、台湾が米国の半導体ビジネスを盗んでいると非難しており、復権に伴って補助金が取り消されるなどの変更も想定されています。【11月13日 JETROより】

****台湾、中国からの生産移転を支援へ トランプ氏の関税公約巡り****
台湾の郭智輝経済部長(経済相)は7日、トランプ次期米大統領が中国に関税を課すと公約していることに絡み、影響を受ける可能性がある企業が中国から生産拠点を移転するのを支援すると表明した。

来年1月に就任するトランプ次期大統領は、米国に輸入される中国製品に60%の関税を課すとしている。

台湾企業は過去40年間、低コスト化のため中国に多額の投資を行ってきた。一方で台湾当局は中国からの統一圧力が高まることを警戒し、台湾企業に中国以外への投資を促している。

郭氏は議会で、トランプ氏が中国に関税を課した場合、中国で生産活動を行う台湾企業への影響は「かなり大きい」と指摘。「できるだけ早期に台湾企業が生産拠点を移転できるような支援策を打ち出す」と述べた。詳細には触れなかった。

また、トランプ氏が半導体受託生産世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)に対する補助金を取り消す懸念について議員から質問されると、不測の事態に備えた計画はあり、「TSMCが対米投資を拡大し続けるのはトレンドだ」と答えた。

TSMCは米アリゾナ州の新工場向けに650億ドルを投じている。同社は補助金に関する懸念について今のところコメントしていない。【11月7日 ロイター】
*********************

上記のような経済問題も当面の話としてありますが、台湾の最大の懸念は、もし中国が武力による併合に乗り出したときトランプ政権は台湾を守ってくれるのか?という安全保障上の不安でしょう。

****「トランプに見捨てられないか心配」“アメリカ頼り”の台湾で心配の声 半導体業界からも「台湾企業の宿命」****
台湾では、アメリカ大統領選挙に勝利したトランプ氏が、どのような政策を行うのか注目されています。中国との緊張が高まり、アメリカを頼ってきた台湾だけに、今後を不安視する声も上がっています。

台湾の中心都市・台北市の飲食店。6日、アメリカ大統領選の開票状況を気にする人たちの姿がみられました。

中国との関係が緊張する中、台湾は軍事面などでアメリカを頼りとしてきましたが、市民からはトランプ氏が台湾への関与を弱めるのでは、と心配する声も聞かれます。

市民 「トランプ氏に見捨てられないか心配です。中国は台湾よりも経済とマーケットの力があるので」「驚きと恐れがあります。トランプさんはコントロールできないでしょう?」

半導体業界からも不安の声が。スマートフォンから生成AIまで幅広い用途で使用される半導体ですが、より性能の高い先端半導体の製造については、台湾が国・地域別シェアで68%と世界のトップです。

バイデン政権は国内製造を促進するため、受託製造世界トップシェアの「TSMC」をはじめ、台湾企業がアメリカに工場を建設する場合は、巨額の補助金を支給するとしていますが、台湾のエンジニアは。

台湾の半導体業界で働くエンジニア
「トランプ氏はバイデン政権のように(台湾の半導体産業が)アメリカへ移転するために補助金を使うのではなく、より政治的手段を使ってアメリカへの移転を加速させるだろうと思います」

ブルームバーグ通信などによると、トランプ氏は補助金には否定的で、「我々から半導体事業を奪った」と台湾をけん制。高い関税を課すことを示唆したといいます。

台湾の半導体業界で働くエンジニア
「これは台湾企業の宿命だと思うので(トランプ氏の方針に)協力せざるを得ないと思いますが、私自身はうまくいくとは思っていません」

不安も渦巻く中、トランプ氏はどのような台湾政策を進めるのでしょうか。【11月8日 TBS NEWS DIG】
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“中国は台湾よりも経済とマーケットの力がある”・・・・理念よりも実利的な「ディール(取引)」を好み、常に「自国第一」をアピールしているトランプ氏ですから、仮に関税問題で中国との厳しい対立が起きたとしても、最後は(アメリカと中国にとっての)「ウィン・ウィン」のディールがなされ、そこでは台湾への配慮は捨てさられる・・・・そんなことも十分に想定されます。

【トランプ氏 台湾有事にも関税対応 「台湾は防衛費を払うべきだ。われわれは保険会社のようなもの」】
ましてや、台湾有事の際の軍事介入となると、そんなアメリカにとって“一文の得にもならない”ことへトランプ氏が乗り出すことは考えにくいようにも思えます。

トランプ氏本人が「私が(軍事力を使う)必要はないだろう」と語っています。

****トランプ氏、台湾有事なら「中国に最大200%の関税」 軍事力は使用せず=WSJ****
 米大統領選共和党候補のトランプ前大統領は、中国が「台湾に侵攻」した場合、中国に追加関税を課す意向を示した。18日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じた。

WSJのインタビューでトランプ氏は「もしあなたが台湾に侵攻するなら、申し訳ないが、150―200%の関税を課すつもりだと言うだろう」と述べた。

中国による台湾包囲に対して軍事力を使用するかとの質問に対しては、習近平国家主席は自分に敬意を抱いており、そのような事態にはならないと回答。

「私は彼と非常に強い関係を築いていた」と述べ、「彼は私を尊敬しており、私が著しくクレイジーであることも知っているので、私が(軍事力を使う)必要はないだろう」との見方を示した。(後略)【10月20日 ロイター】
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さすが自称「タリフマン(関税男)」、ここでも関税です。
またトランプ氏は、「台湾は防衛費を払うべきだ。われわれは保険会社のようなもの」とも。「保険会社」というよりカネで動く「用心棒」でしょう。

【台湾有事の際の米国の防衛協力を「信じる」:29.8%と過去最適に急落 「信じない」:57.2%】
ただ、中国にとって核心中の核心である台湾問題は、利害損得の範囲外のところがあります。また、習近平国家主席が「仮に台湾侵攻でアメリカとの経済関係が崩壊して経済混乱が起きても、国民は「統一」の方を評価する。トランプ氏もやがては中国の巨大市場を考えて関係修復に動く」と踏んで、武力統一に動く・・・というシナリオもあるでしょう。

台湾世論もトランプ氏の防衛強力をあまり信用していません。

****台湾世論の対米信頼低下=防衛協力「信じる」13ポイント減****
台湾の民間シンクタンク「台湾民意基金会」は19日、トランプ次期米大統領の当選を受けた世論調査結果を公表した。

中国が台湾を侵攻した場合、米国の防衛協力を「信じる」と答えた人の割合は前回の昨年2月調査比で13ポイント減となる29.8%に落ち込んだ。

「信じる」人の割合は2020年9月調査以降で最低。逆に「信じない」と回答した人は10.7ポイント増の57.2%と過半数を占めた。

米歴代政権は台湾防衛を明確にしない「曖昧戦略」を取ってきたが、バイデン大統領は台湾有事に対する軍事介入を繰り返し明言。

一方、トランプ氏は米台の地理的な遠さを指摘し、「台湾は防衛費を払うべきだ。われわれは保険会社のようなもの」などと発言した。台湾社会では米依存への懐疑論や動揺が広がり、米台離間を図る中国に好都合な展開となっている。

調査は20歳以上の約1000人を対象に、米大統領選後の今月11〜13日に実施した。【11月19日 時事】 
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【中国による“日頃から偽情報の流布や選挙介入、台湾軍兵士への接近などの浸透工作” 台湾軍の情報セキュリティーに問題も】
台湾においては、これまで避けてきたような中国の台湾侵攻という問題が映画・ドラマでも真正面から取り上げらるようになってきたことは10月10日ブログ“台湾  中国の圧力・脅威が強まるなかでの変化 中国の台湾侵攻を題材にしたドラマも”でも取り上げました。

****中国の「台湾侵攻」描くドラマ「零日攻撃」、台湾有事に警鐘…中国の浸透工作シナリオに「予告編を見て緊張した」****
台湾で中国による侵攻と浸透工作を描く初のドラマ「零日攻撃(ゼロ・デイ)」(全10話)の撮影が進み、話題を呼んでいる。中国による軍事的威圧が常態化する中、重苦しいテーマに正面から挑む作品で、制作関係者は台湾有事に警鐘を鳴らしたいとしている。

公開中の予告編動画によれば、中国が消息不明になった自軍機を捜索救助する名目で、台湾周辺の海域を封鎖する設定だ。ドラマでは、中国ハッカーによるサイバー攻撃や台湾に潜伏する内通者の反乱が起こるほか、半導体関連の株価は暴落し、在留外国人は脱出を図る。

中国が日頃から偽情報の流布や選挙介入、台湾軍兵士への接近などの浸透工作を図る中で描く有事のシナリオに、制作で助言した台湾の国防安全研究院の蘇紫雲スウズーユン・国防戦略資源研究所長は「予告編を見て私も緊張した」と話す。

制作を手がけるプロデューサー兼脚本総括の鄭心媚さんは、中国の侵攻を「デリケートな話題であり、私たちはいつもその話を避けてきた」と語る。制作の意図について「中台間で戦争が起きたり、台湾が中国の一部になったりすれば、話す機会がなくなるため、今こそ話すべきだ」と訴える。

危機に際して台湾の人びとがどう選択するのか、様々な意見を取り入れようと30〜60歳代の監督9人を起用した。脚本作りには軍事などの専門家が協力した。

制作費2億3000万台湾ドル(約10億9600万円)のうち3割を台湾当局が補助し、軍も制作に協力する。野党は、中国と距離を置く民進党政権のプロパガンダだと批判するが、予告編の動画の再生回数は196万回を超え、反応は上々だ。【11月8日 読売】
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中国による“日頃から偽情報の流布や選挙介入、台湾軍兵士への接近などの浸透工作”については、下記のような話も。

****台湾の親中国政党「中華統一促進党」、当局が解散請求へ…中国から3億5300万円受領し世論工作か****
台湾内政部(内政省)は6日、中国とのつながりが深いとされる政党「中華統一促進党」が組織的に中国のために働き、台湾の治安や社会秩序を破壊しようとしているとして、憲法裁判所にあたる司法院の法廷に解散を請求すると発表した。

2005年成立の同党は、台湾の歴代政権が受け入れを拒んできた「一国二制度」下での中台の統一を目指している。

同党幹部の男と妻は4日、中国から約7400万台湾ドル(約3億5300万円)を受領し、1月の総統選や立法委員(国会議員)選などで世論工作をしようとしたとして台湾の検察に起訴されていた。

内政部によると、同党は選挙妨害や組織暴力など、幅広い犯罪にも関わっているという。10年から今年までに殺人や強盗、国際的な人身売買などの犯罪に関与したとして、党員計134人が摘発された。【11月7日 読売】
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台湾軍及び台湾市民の防衛意識の問題もありそう。台湾住民のスマホ投稿で軍事情報が中国側に筒抜けになっている実態も。

****「スマホ投稿」が暴露した秘密...台湾防衛が中国に筒抜けとなる理由****
<市民がスマホで撮影した画像がネット上にあふれ、対艦ミサイルの位置情報が中国軍に筒抜けに>
それは台湾ではありふれた一日だった。中国がまたもや軍事演習を行ったのだ。

中国軍の艦船と軍用機が台湾周辺を威嚇的に旋回するのは毎度のこと。台湾軍も心得たもので、いつものように各部隊に緊急出動を命じた。

とりわけ重要な任務を担うのは、移動式の地上発射型対艦ミサイルを運用する機動部隊だ。実戦では、これらの部隊が本島各地の秘密の地点からミサイルを発射し、台湾上陸部隊を乗せた中国の艦船を撃沈することになる。

ところが、台湾側が知らないうちに機動部隊の動きはインターネット上にさらされ、秘密のはずのミサイル発射地点を、中国側がピンボイントで狙える状態になっていた。実戦であれば、機動部隊は装備もろともあっという間に吹き飛んでいたところだ。

これは台湾の頼清徳(ライ・チントー)総統の就任式が行われた今年5月20日の数日後に実際に起きた出来事である。(中略)

5月23日の演習では、いつもどおり台湾側もそれに対抗して周辺海域と空域に部隊を派遣したが、実弾は1発も発射されず、程なく中国は演習を終了。台湾政府はあたかも勝利宣言のように防衛体制は万全であり、何の心配もないと市民に保証した。

だがその後6月に中国最大のソーシャルメディアアプリ微信(ウェイシン)に、ある記事が載った。これは中国の防衛関連企業「北京藍徳信息科技」が投稿した記事で、一般公開されている。

記事が主に扱っているのは、地対艦ミサイルを運用する台湾軍の機動部隊が5月の演習時にどう動いたか。これらの機動部隊は「海鋒大隊」に所属している。(中略)

問題の記事は、海鋒大隊の12の基地の地理的位置を正確に伝えている。恒久的なミサイル発射基地は敵に見つかりやすい。台湾軍も自軍の基地が中国軍に知られていることを想定して、機動部隊を使うことにしたのだ。機動部隊は台湾各地に散らばり中国軍の上陸部隊を壊滅させつつ、飛来するミサイルを巧みにかわして任務を全うするはずだ。少なくとも理論上は。

海鋒大隊所属の機動部隊は通常、3〜4台のミサイル発射台と護衛のための数台の支援車両で構成される。台湾島内を自在に動き回り、発射地点で素早く準備し、中国軍の艦隊にミサイルを撃ち込み、反撃されないうちにさっさとその場を去る。「シュート・アンド・スクート(撃って逃げる)」と呼ばれる戦術だ。

政府と軍の「自殺行為」
だが問題の記事を投稿した企業は5月23日、台湾の機動部隊の数カ所の発射地点を正確に突き止めていた。(中略)

この中国企業は台湾軍にスパイを潜入させていたわけでも、最先端のハッキング技術を使ったわけでもない。台湾の人々(ジャーナリストもいるが、多くは一般市民)が移動中の機動部隊を見つけ、スマホなどで撮影し、ソーシャルメディアに投稿したのだ。(中略)

台湾のメディアやネット民は正確な場所までは示していないが、中国側が入手した画像を基にグーグル・マップなどを使って調べれば、簡単に発射地点が分かる。この中国企業は機動部隊の移動ルートや移動にかかった時間まで割り出していた。

ここ数年、スマホとソーシャルメディアの普及に伴い、一般の人たちが目撃した場面を撮影してネットに投稿するようになった。この手のOSINT(オープンソース・インテリジェンス)が軍事的にも利用されることはウクライナ戦争を見れば明らかだ。

ところが、台湾軍の上層部は自軍の機動部隊を中国のミサイルから守るために必要な情報セキュリティーをいまだ採用していない。(中略)

中国の商用リモートセンシング衛星システム・吉林1号は、報道によると昨年には既に138基が軌道上にあり、地球上の任意の地点の最新画像を宇宙から10分おきに撮影できる。軍と国の情報機関は数百基の強力なスパイ衛星群を利用している。

中国は既に台湾のあらゆる場所を常時追跡できる、というのは大げさかもしれない。しかし、今回の微信の投稿が示すとおり、中国の情報関連能力は急速に進化しており、ソーシャルメディア時代に台湾が機密を隠し切れないという現実がそれを助けている。

台湾軍はより慎重かつ柔軟な戦術で活動しなければ、戦争の初期段階で、最も重要な防衛資産を中国にたやすく破壊されかねない。(後略)【11月7日 Newsweek】
********************

“台湾国防部(国防省に相当)は【8月)30日、中国軍に関する年次報告書を議会に提出した。中国は装備を保有していないため台湾を「完全に」侵攻する能力はないが、先進的な新兵器を投入していると指摘した。また外国の貨物船に対する検査など、台湾を脅かす他の選択肢もあるとの認識を示した。”【8月30日 ロイター】

それならいいけど、台湾軍の防衛能力は?

以前のブログでも触れたように、台湾有事となれば日本も厳しい対応を迫られます。
もしアメリカが軍事的に動くとすれば、その最前線基地は日本にある米軍基地です。日本政府がこの米軍基地使用を認めないように中国は日本に圧力をかけてくる可能性もあります。

台湾周辺の沖縄県先島諸島からは12万人の住民を避難させる計画とか。どうやって?
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緊迫する朝鮮半島情勢  平壌上空で独裁批判ビラが無人機で撒かれたと北朝鮮主張 韓国から飛来か?

2024-10-13 22:29:57 | 東アジア

(6月6日未明、金正恩政権の体制批判ビラを北朝鮮に向けて飛ばす「自由北韓運動連合」のメンバーら【6月6日 東京】)

【緊迫する南北関係】
韓国で北朝鮮に宥和的な文在寅政権から、北朝鮮に強硬な保守・尹錫悦政権に変わって、南北関係はゴミをぶら下げた風船に象徴されるような敵対的な緊張状態にあることは周知のところです。

北朝鮮は憲法上で韓国を統一の対象ではなく「第1の敵対国」と位置付けるとの金正恩総書記の指示もありました。

****北朝鮮 憲法改正議論へ 韓国を「第1の敵対国」と明記の方針****
北朝鮮は来月(10月)7日に最高人民会議を開催し、憲法の改正について議論すると発表しました。韓国を「第1の敵対国」と憲法に明記する方針について話し合うとみられます。

16日付けの北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、各地の代表を首都ピョンヤンに招集して、来月7日に最高人民会議を開催することが15日決定されたと伝えました。

このなかでは憲法の改正や外国との貿易などに関する法律について議論するとしています。

最高人民会議は国の予算や法律の改正、国家機関の人事などを決定するため、年に1、2回開かれていて、ことし1月以来の開催となります。

前回の会議で演説したキム・ジョンウン(金正恩)総書記は、韓国を「第1の敵対国」と明記するよう憲法の改正を指示し、「平和統一」などの表現を削除すべきだとしていました。

北朝鮮はその後、国歌の歌詞から、朝鮮半島全体を指す「三千里」という単語を削除するなど、韓国を「敵対国」とみなす措置をとっていて、来月の最高人民会議では、キム総書記の方針に沿って憲法の改正について議論されるとみられます。【9月16日 NHK】
**********************

最高人民会議は今月7日、8日に開催されましたが、韓国を「敵対国」と明記する改憲については、今のところ報道はないようです。

秘密主義の北朝鮮のことですので、敢えて公表していないのか、南北関係や国際情勢などを勘案して今回は改憲を見送ったのか・・・そのあたりはわかりません。

“朝鮮中央通信は9日、国会に当たる最高人民会議が7〜8日に平壌で開かれたとも報じたが、2国家論に基づく憲法改正への言及はなかった。金氏も出席しなかった。金氏は1月に韓国を敵国とみなし南北政策を放棄する方針を憲法に反映させるよう、領土に関する条項の追加や「平和統一」といった表現の削除を指示していた。改憲は先送りされた可能性がある。【10月9日 産経】

いずれにしても、極めて緊張した状況にあることは変わりありません。(もっとも、私などの年代は南北関係については朴正熙・韓国大統領時代のピリピリした関係のイメージがありますので、「緊張状態」というのは普通のことのようにも思えますが)

****南も北も互いに首脳を名指し批判、しかも呼び捨て。一触即発の朝鮮半島****
(中略)
韓国・北朝鮮の南北でそれぞれの首脳を名指しで批判し、より緊迫な状況になった。

まずは、北朝鮮からである。2024年10月4日の朝鮮中央通信は、金正恩朝鮮労働党総書記が、北朝鮮は核強国の絶対的力を確保したとし、韓米が北朝鮮の主権を侵害しようとするなら「核兵器を含むあらゆる攻撃力を動員する」と威嚇した。

また、韓国の「国軍の日」(10月1日)記念式典の演説で北朝鮮の核に対し強い警告を発した尹錫悦大統領を「尹錫悦傀儡(かいらい)」と呼び、「核を保有している国の前で軍事力による圧倒的な対応に言及したが、何かまともでない人ではないかという疑いをかけられざるを得ないありさま」と強く非難した。

金正恩氏が尹大統領を名指しで非難したのは2022年7月の「戦勝節」(朝鮮戦争休戦協定の締結日)の演説以来約2年ぶりのことである。当時の演説では、尹大統領を呼び捨てにして「就任前後のさまざまな機会に吐いた妄言と醜態を正確に記憶している」と罵倒していた。

今回のこの金正恩国務委員長の発言は、同月2日に西部地区にある朝鮮人民軍の特殊作戦部隊訓練基地を訪問した際にされたものである。

国軍の日の演説については、傀儡が抱えている安全保障への不安と焦りを表したものとし、「極度の愚鈍さと無謀さに陥った敵が、われわれの度重なる警告を無視して韓米同盟に対する過度な信心にあふれ、ひいては共和国の主権を侵害する武力使用を企めば、容赦なく核兵器を含むあらゆる攻撃力を使用する」と断言した。これまでにない強い警告メッセージである。

一方、この発言を受けて韓国軍合同参謀本部は同日の4日深夜、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が尹錫悦大統領を名指し非難したことに反発し、記者団に「われわれの戦略的、軍事的目標は北の同胞でなく、ただ金正恩一人に全てが合わされている」とするコメントを表明した。

軍事作戦を遂行する合同参謀本部が北朝鮮の最高指導者を呼び捨てにし、攻撃目標だと明言するのは異例のことである。

北朝鮮は米韓が金氏の排除を狙う「斬首作戦」を準備していると神経をとがらせてきた経緯があり、南北間の緊張が一層高まってきている。一触即発な状況である。【10月8日 宮塚寿美子氏 MAG2NEWS】
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北朝鮮は、韓国とつながる道路と鉄道を遮断し、防御用の構造物を建設して「要塞)化する」と表明しています。

****北朝鮮、韓国との軍事境界線付近を「要塞化」 道路・鉄道を遮断****
北朝鮮の朝鮮人民軍総参謀部は9日、韓国とつながる道路と鉄道を同日から遮断し、防御用の構造物を建設して「要塞(ようさい)化する」と表明した。朝鮮中央通信が伝えた。

北朝鮮は長年にわたる「朝鮮半島統一」の方針を完全に放棄し、北朝鮮と韓国の「2国家」論を主張している。今回の発表でも韓国との「国境を永久に遮断する」としており、壁を建設する動きとみられる。
 
総参謀部は「わが共和国の主権行使の領域と大韓民国の領土を徹底的に分離させるための実質的な軍事的措置を取る」と表明。「第一の敵対国、不変の主敵である大韓民国とつながる南側国境を永久に遮断、封鎖するのは、戦争抑止と(北朝鮮の)安全を守るための自衛的措置だ」と正当化した。「偶発的衝突を避けるため」として9日、米軍に要塞化工事について通知したという。

韓国と北朝鮮を結ぶ鉄道路線や道路は現在、寸断されている。韓国軍合同参謀本部は6月、北朝鮮側でレールの撤去や地雷の埋設などの動きがあると指摘。北朝鮮と韓国の軍事境界線から北に約2キロの4カ所では、防壁とみられるコンクリート製の構造物を確認したと説明していた。【10月9日 毎日】
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【北朝鮮首都に独裁批判ビラが無人機で撒かれる 神経を尖らせる北朝鮮】
こうした緊迫した状況下で、首都平壌ピョンヤン上空に無人機が飛来し、北朝鮮の独裁体制を批判するビラがまかれたと北朝鮮側は主張し、激怒しています。

****北朝鮮首都に独裁批判ビラ、無人機でまかれる…金与正氏「必ず恐ろしい惨事が起きる」と報復示唆****
北朝鮮の首都平壌ピョンヤン上空に3、9、10日に飛来した無人機から北朝鮮の独裁体制を批判するビラがまかれたと北朝鮮が主張する事件を巡り、金与正(キムヨジョン)朝鮮労働党副部長は12日、「再び発見されたら必ず恐ろしい惨事が起きる」と韓国への報復を示唆する談話を出した。

誰が無人機を飛ばしたのか不明な中、南北の摩擦が深まっている。

北朝鮮外務省が無人機の飛来を非難した11日、韓国軍合同参謀本部関係者は「無人機を送ったことはない」としたが、その日のうちに「事実かどうか確認できない」と説明を変えた。

与正氏は12日の声明で韓国の民間団体が無人機を飛ばした可能性にも触れ「(韓国)軍が傍観したのならそれは故意的な黙認、共謀だ」と非難した。

韓国大統領府の申源湜シンウォンシク国家安保室長は13日に出演したKBSテレビの番組で「北朝鮮の話について事実をいちいち話す必要はない」と語った。

この対応ぶりを巡っては「北朝鮮の探りに応じない」(中央日報電子版)、「曖昧にすることで北朝鮮側に混乱をもたらす」(聯合ニュース)との見方がある。北朝鮮もゴミをぶら下げた風船を韓国に飛ばしており、非難する立場にないとの考えもある。

保守、尹錫悦ユンソンニョル政権が民間団体のビラまきを「表現の自由」として容認していることもあり、活動に参加する民間団体は多様化し、使用する機材も高度化している。

韓国の脱北者団体「自由北韓運動連合」や「北韓同胞直接支援運動」は、読売新聞や韓国メディアに対し、今回の無人機に関与していないと語ったが、尹政権が全ての活動を把握しているかどうかは不明だ。

金正恩 キムジョンウン 党総書記や与正氏が、ビラまきや韓国軍による軍事境界線での拡声機放送に神経をとがらせているのは間違いない。韓国に憧れを抱く若い世代の体制離反を招きかねないためだ。特に、権力中枢に近い幹部が集まる平壌が今後も狙われれば何らかの実力行使に出るシナリオも否定できない。【10月13日 読売】
********************

従来から韓国の脱北者団体は北朝鮮に向けて風船を使ったビラまきをしていますが、最高指導者・国内体制・韓国関する情報などに関して徹底した秘密主義を貫き、強権的な国内統治を行っている北朝鮮権力にすると、金一族に関する情報に関する情報などを含むこうしたビラは極めて厄介で神経を逆撫でするもので、これまでも神経を尖らせてきました。

逆に言えば、脱北者団体や北朝鮮に敵対しようする勢力にとっては、この紙爆弾は極めて有効な手段となります。

****北朝鮮向けビラ****
(中略)
ビラの内容は朝鮮戦争は北朝鮮の南侵だったことなどの真実や金一家の私生活など北朝鮮体制批判、韓国の発展した状況やいわゆるアラブの春で独裁政権が倒れたことなどを文・絵で暴露するものなどが多く、2008年4月からはアメリカドルや人民元や朝鮮民主主義人民共和国ウォン(5000ウォン紙幣)などの現金や、韓国ドラマやK-POPなどの音楽が収録されているUSBメモリやDVDなどを同封している。

団体によってはGPS・ラジオ・靴下・手袋・ボールペンといった生活必需品や、アスピリン・バンドエイドなどの医薬品、やマスクにラーメン、ストッキング、コンドーム、聖書、チョコパイ]を送ることもあるという。

風船を利用する場合、一般的にはタイマー付きのビラを入れた袋を飛ばして設定時間になると袋が破れて一気に放出する装置を使用している。

しかし脱北者などで構成される朝鮮改革解放委員会では幅広い地域にビラをまくため、2023年からコピー機の紙の排出装置と同様の装置を利用し、飛行しながら数分から数時間ごとに約20枚ずつ排出する装置を使用している。

別の団体では風船ではなく米、聖書、紙幣、USBメモリをペットボトル入れ北朝鮮に向けて流すこともある。脱北者団体「社団法人クンセム」によれば2024年に江華島から北朝鮮の黄海道へ向けて500個流したと主張した。

音声メッセージを発信する装置を飛ばしている団体もある。

また、将来的には風の流れで浮遊する従来型の風船に代わりGPSトラッカーや労働党を批判などができる小さな拡声器を搭載した「スマート」風船の開発が進められている。

これにより特定の地域向けにビラをまくことができるほか、飛行距離が数百キロに及び、試験飛行した際には中国まで飛ばすことに成功したと主張している。【ウィキペディア】
*******************

今回の北朝鮮側の主張が正しければ、従来の「風船」が無人機に進化したことになり、そうなると、狙った都市・地域にビラを撒くことができるようになり、北朝鮮にとっては看過できない問題です。

韓国側から無人機を飛ばしたとすると、その無人機が首都平壌上空に到達できたというのは、北朝鮮の防空体制にとっても問題かも。

本当に無人機でのビラ撒きがあったのか? 誰が飛ばしたのか? ・・・そのあたりは分かりませんが、もし韓国側から飛ばしたものであれば、前述のような南北間の緊張状態を考えると、極めてハイリスクな行為でもあります。

なお、韓国にあっては、北朝鮮に対するビラ撒きは表現の自由と北朝鮮刺激の兼ね合いで問題となっており、文在寅政権法律で禁止されていましたが、昨年、最高裁は禁止法を違憲と判断しています。

****北朝鮮への宣伝ビラ散布禁止法は違憲、韓国憲法裁が判断****
 韓国憲法裁判所は26日、北朝鮮への宣伝ビラ散布禁止は違憲とする判断を示し、同国との関係改善に前向きだった文在寅政権時の2020年に可決された法律を無効化した。

同法は言論の自由を侵害しているとして、保守派議員などから激しい批判を浴びていた。

7対2で下された今回の判断は、「南北関係発展法」のビラ散布禁止条項が言論の自由を過度に制限していると認めた。【2023年9月26日 ロイター】
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台湾  中国の圧力・脅威が強まるなかでの変化 中国の台湾侵攻を題材にしたドラマも

2024-10-10 23:15:03 | 東アジア

(【7月27日 阿猴新聞網】 中国の台湾侵攻を題材にした映画「零日攻擊 ZERO DAY」)

【頼清徳総統 敢えて踏み込む「中華民国」の歴史】
台湾と中国の間の緊張関係は相変わらずですが、台湾の建国記念日に相当する「双十節」を前に行われた関連行事での「中華民国」の歴史に言及した頼清徳総統のあいさつが注目されています。

*****「中国は台湾の祖国になり得ない」、記念日行事で頼総統*****
台湾の頼清徳総統は5日、中華人民共和国よりも台湾の方が歴史が長いため、中華人民共和国は台湾の人々の祖国にはなり得ないと述べた。

10月10日の台湾の建国記念日に相当する「双十節」を前に行われた関連行事で頼氏はあいさつし、中華人民共和国が10月1日に建国75周年を迎え、数日後には中華民国(台湾)が建国113周年を迎えることに言及した。

「年数という観点で言えば、中華人民共和国が中華民国の人々の『祖国』になることは絶対に不可能だ」とした上で、「中華人民共和国の75歳以上の人々にとっては、むしろ中華民国が祖国になるかもしれない」と述べた。【10月7日 ロイター】
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上記記事にあるような単なる「年数」の問題にとどまらず、そもそも「中華民国」は大陸における国民党・蒋介石が主導してきたもので、そうした歴史とは距離を置き台湾の独自性を主張する民進党にとってはやや馴染めない概念でもありました。

頼清徳総統が敢えて「中華民国」の歴史に言及したのは、「台湾独立論」にとってのタブーに踏み込んだ、世論統合に向けた現実的な対応とも見られています。

また、野党・国民党の歴史観に敢えて踏み込んだ「変化球」とも評されています。

****台湾の頼総統、あえて「中華民国」前面に 中国の統一圧力に対抗、注目集める「祖国論」****
台湾の頼清徳総統が「中華人民共和国(中国)は、中華民国(台湾)の人々の祖国には絶対になり得ない」と発言し注目を集めている。

与党、民主進歩党の支持層が距離を置く「中華民国」という概念をあえて前面に出し、中国による台湾統一の主張に反論しているのが特徴だ。「台湾独立」論に否定的な中間層を取り込み、世論を団結させて習近平政権の統一圧力に対抗する狙いがあるとみられる。

頼氏は5日の「双十節」(建国記念日に相当)の祝賀イベントで演説。1911年に始まった辛亥革命で誕生した中華民国は、49年に成立した中国共産党の中華人民共和国よりも歴史が長いと指摘し、同国発足以前に生まれた75歳以上の中国人は「中華民国が祖国になり得る」とも述べた。

頼氏の主張は「台湾は祖国の懐にかえるべきだ」と訴える中国側の論理破綻を突いたものだ。一方、中国側が「頑固な台湾独立派」と敵視する頼氏が自ら、旧来の「台湾独立」論を否定した側面もある。

中国共産党と台湾の最大野党、中国国民党に共通する「国共内戦が完全には終結していない」という歴史観は、一つの中国という理念の根拠になっている。

これに対して「台湾独立」派は従来、49年に台湾に逃れてきた外来政権の中華民国を消滅させて台湾共和国を建国し、「一つの中国」という枠組みから明確に離脱する理想を掲げていた。

しかし現実的には、「台湾独立」に向けた憲法改正に必要な有権者の過半数の支持を得るのは困難だ。

台湾の清華大栄誉講座教授、小笠原欣幸氏は「頼氏の現状認識は中国との統一か独立かではなく、台湾の現状を守り切れるか、圧力を強める中国に統一されてしまうかだ」と指摘。

「台湾の世論が割れたままでは中国に隙をつかれるので、国民党の看板である中華民国を利用して統一反対という多数派の世論をまとめ、中国からの圧力をかわすというのが頼政権の狙いではないか」と分析する。

国民党からは批判の声も出ている。同党の馬英九元政権下で対外政策の立案に関わった政治大教授の黄奎博氏は、「中華人民共和国が中華民国の人々の祖国にはなり得ない」という頼氏の主張は「歴史的事実」と認める一方、頼氏が「中華民国と中国大陸との民族、法理、歴史的関係」を切り捨てていると批判した。

国民党は頼氏の発言を全面否定するわけにもいかず、対応に苦慮しているもようだ。小笠原氏は「頼氏の『変化球』が狙い通りに中間層の有権者の支持を広げることにつながるのか注目したい」と指摘する。【10月9日 産経】
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10日の双十節の式典では、頼清徳総統は「中華人民共和国(中国)には台湾を代表する権利がない」と表明、蔡英文前総統の「現状維持」路線継続を明言する一方で、蔡氏より強い表現で中台は対等だと主張しています。

****頼総統「中国は台湾代表せず」=併合反対と強調―双十節で演説****
台湾の頼清徳総統は10日、辛亥革命を記念する「双十節」(建国記念日)の式典で演説し、中台関係について「中華人民共和国(中国)には台湾を代表する権利がない」と表明した。また「国家主権を堅持し、侵犯と併合を許さない」と強調した。

「祖国統一」を掲げる中国は頼氏を「台湾独立派」と敵視しており、演説に反発し軍事的威嚇を強める可能性がある。

今年5月に就任した頼氏が双十節で演説するのは初めて。頼氏は、台湾と中国は「互いに隷属しない」と重ねて強調した。

台湾国防部(国防省)によると、中国は10日にロケットを発射し、台湾の防空識別圏(ADIZ)上空を通過する見通し。台湾メディアによれば、頼政権は、演説を受けて中国が台湾周辺で大規模軍事演習を実施することを警戒している。

頼氏は中台関係に関し、蔡英文前総統の「現状維持」路線継続を明言する一方で、蔡氏より強い表現で中台は対等だと主張している。今月5日には「中国は絶対に台湾の祖国になり得ない」と強調。これに対し、中国政府は「対立を激化させようとする邪悪な意図を再び露呈させた」と強く反発した。

式典への出席を予定していた野党・国民党の馬英九元総統は10日朝、「頼総統は台湾独立を追求している」として突如欠席を表明した。【10月10日 時事】
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これに対し、中国外務省の毛寧(もう・ねい)報道官は10日の記者会見で、「頑固で無知な『台湾独立』の立場を再びさらけ出した」と反発、「台湾は中国の領土の不可分の一部だ」と主張して「独立を画策して挑発するのは破滅への道だ」と威圧しています。

【中国の台湾侵攻の話題に踏み込む台湾エンターテインメント】
「タブー」に踏み込んだ現実対応ということでは、台湾のエンターテインメントにもそうした兆しが。
これまで台湾エンターテインメントは中国の台湾侵攻の話題を意図的に避けていた感がありますが、最近、そこに踏み込んだ作品が登場するようになっているようです。

****台湾ではドラマなどでの「タブー破り」が次々に、武力統一への恐怖を反映―香港メディア****
香港メディアの香港01は5日、2025年に放送予定のテレビドラマ「零日攻擊 ZERO DAY」を紹介する記事を発表した。同ドラマは台湾で初めて放送される、中国人民解放軍の台湾侵攻を想定して創作されたフィクションで、米国メディアは「悪夢が業界を刺激してタブーが打破された」と評したという。

「零日攻擊 ZERO DAY」は11月に撮影が終了し、25年に放送される予定だ。出演は高橋一生、連俞涵、杜汶沢など。中国人民解放軍が台湾を軍事攻撃して戦争状態になった場合に、台湾社会が直面する可能性のある事態を描く。

総統選を経て新たな総統の就任日が近づく時期に、中国軍が台湾南東の海域で対潜哨戒機が撃墜されたとして、捜索および救助が必要だという名目で台湾を海上封鎖し、さらに上陸作戦を開始する。台湾の対外航運は完全に途絶し、株価暴落と銀行の取り付け騒ぎが発生する。

ネット配信された「零日攻擊 ZERO DAY」の予告編の再生回数は、すでに100万回を突破した。

香港01記事は、長期にわたり、台湾を訪れる観光客は台湾について、大陸側の脅威に直面していても驚くほど楽観的という印象を持ち続けてきたとする見方を紹介。

さらに、中国政府は台湾に対する主権を主張し、武力行使の可能性を放棄していないにもかかわらず、台湾の娯楽業界は大陸側の台湾侵攻の話題を意図的に避けてきたと主張した。

米紙ウォールストリート・ジャーナルは同作品を、「中国大陸の台湾武力統一の悪夢が、台湾の娯楽産業にタブーを破る作品を作らせた」と評した。

「零日攻擊 ZERO DAY」は制作にあたり、総統府内での撮影を許可され、台湾政府・文化部の資金援助も受けた。そのため、政権党である民進党の支持を獲得するための政治宣伝の作品との批判が出た。しかし李遠文化部長は、政治宣伝映画はこのような恐ろしい光景を描くことはできないと述べて否定した。

李部長はさらに、「自らの最大の恐怖に立ち向かうことができる社会こそ、健全な社会だ」と述べて、台湾の文化産業が論争のあるテーマに触れ始めたことを歓迎する考えを示した。

台湾ではドラマの「零日攻擊 ZERO DAY」以外に、大陸側の台湾侵攻を扱う劇画やゲームも注目されるようになった。例えば劇画「燃える西太平洋」は、在任中のトランプ米大統領が、米軍を派遣して台湾に侵攻した中国軍の撃退を支援する物語だ。

同作品作者の梁紹先氏によると、18年にネット上で連載を開始した際には、反応はあまりなかった。しかし、22年に当時のペロシ米下院議長が台湾を訪問したことを受けて中国軍が台湾を包囲するような方式で軍事演習を行ったことで、状況は一転した。販売数はそれ以前の7倍に達したという。

また、作家の朱悠勲氏は、最近になり自分が審査員を務める一部の作文コンテストでは、応募者である若者が戦争に関する作品を提出することが増えていると説明し、「かつては見たことがなかった」と表現した。朱氏によると、台湾で発表される文学作品でも同様な傾向があり、今後も続くと考えられるという。

「零日攻擊 ZERO DAY」の脚本家兼統括プロデューサーの鄭心媚氏は、大陸による侵攻に関連する新たな創作ブームは台湾の民衆の心理の変化が関係していると述べた。

鄭氏は、台湾の人々は表面上は脅威を感じていないように見えるが、実際には恐怖が存在しているとの見方を示した。

鄭氏はさらに、台湾がますます米国寄りになるにつれて、中国大陸側の北京の台湾に対する態度は一層強硬になっていると指摘。大陸側と台湾の経済の絆はすでに断裂しており、かつては多くの台湾人が中国大陸側との経済の提携に期待を寄せていたが、すでにそのような気持ちはそれほど強くないという。【10月6日 レコードチャイナ】
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頼清徳総統が敢えて「中華民国」の歴史に言及したのも、エンターテインメントが中国の台湾侵攻の話題を正面から取り上げるようになったのも、中国の圧力・脅威が強まるなかでの現実直視の姿勢のあらわれかも。

【今後5年間に中国が台湾を侵攻する可能性は「低い・非常に低い」と回答した人が6割】
なお、最新の世論調査によれば、今後5年間に中国が台湾を侵攻する可能性は「低い・非常に低い」と回答した人が6割に上っています。

この数字が“驚くほど楽観的”なものかどうか、その裏で実際には恐怖が存在しているのかどうか・・・・

****台湾人の6割、今後5年で中国侵攻受ける可能性低いと回答=調査****
台湾国防部傘下のシンクタンク、国防安全研究院(INDSR)が9日公表した世論調査で、今後5年間に中国が台湾を侵攻する可能性は「低い・非常に低い」と回答した人が6割に上った。 調査は先月、約1200人を対象に実施。

INDSRのクリスティーナ・チェン研究員は大半の台湾人が中国の領土的野心を深刻な脅威と見なしているが、これが台湾侵攻につながるとは考えていないと指摘した。

INDSRは、台湾人が脅威を認識しながらも冷静で理性的であり続けていると分析した。

回答者の67%以上は中国が攻めてきたら反撃すると回答。台湾軍に自衛能力があるかにどうかについては意見が二分された。

INDSRの李冠成研究員は、台湾軍が世論の信頼を高めるために防衛能力を強化し続けるべきだと指摘。

世論調査では、米国が台湾の防衛に協力するかどうかについても意見が分かれた。

回答者の約74%が米政府が食料や医療品、兵器を提供することで「間接的に」台湾を助けるだろうとし、米軍が部隊を派遣して介入するとの回答は52%にとどまった。【10月9日 ロイター】
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韓国  研修医職場離脱のその後 政府は秋夕(チュソク)を迎え緊急対応

2024-09-13 23:17:12 | 東アジア


(「秋夕(チュソク=中秋節、今年は9月17日)連休非常救急対応週間」の運営が始まった11日午前、ソウル市内のある大学病院救急医療センター【9月11日 chosun Online】)

【2月に始まった研修医スト 双方譲らず未だ継続】
韓国の主要病院では2月20日、医師不足に対処するため医学部の入学定員を増やす方針(2000人増やし、約5000人にする)を打ち出した政府に反発した研修医らが何千人と職場を放棄し、医療現場に混乱が広がりました。

****************
約1万3000人の研修医が全国221の病院で指導教授のもと医療に従事していたが、4分の3に相当する9900人が退職届を提出し、最終的に7600人余が医療現場を離れた。

研修医は専攻医指導病院で1年間のインターンと3〜4年のレジデントを経て専門医資格を取得する。労働6割、研修4割といわれている研修医は指導病院にとって欠かせない人材だ。

ビッグ5と呼ばれるソウルの5大病院をみるとソウル大学病院は全医師の46.2%を研修医が占めており、セブランス病院も40.2パーセント、サムスンソウル病院は38.0パーセント、ソウル峨山(アサン)病院は34.5パーセント、ソウル聖母病院は33.8パーセントが研修医だ。

彼らの大量離脱でそれまで研修医が補助を担っていた手術や入院患者の受け入れに支障をきたすようになった。【9月12日 佐々木和義氏 Newsweek】
********************

歴代政権にとって、医学部定員増は医療サイドの激しい抵抗で対応に苦慮する問題となってきました。

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2006年から基本的に変わっていない医学部の定員を増やすことは、国民から広く支持されている。韓国の人口1000人当たりの医師数は約2.6人で、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の3.7人を下回る。

入学定員を増やさなければ1万人以上の医師不足に
尹大統領の計画では、医学部入学定員は年間3000人から約5000人に引き上げられることになる。入学定員を増やさなければ、2035年までに韓国の医師数は医療需要に対して1万人以上足りなくなると当局は予測している。

ここ何年かで韓国政府が医師を増やす政策を推進するのは、今回が初めてではない。2020年には文在寅(ムン・ジェイン)政権が、10年間で医学部入学定員を4000人増やす計画を掲げたが、今回と同様の懸念を軸とした医療界からの反発と、医師らによる1カ月にわたるストライキを受けて、計画はお蔵入りとなった。【2月25日 The NewsYork Times 東洋経済online】
********************

離脱研修医側の言い分は・・・

****韓国で「若手研修医の半分以上が辞職」した裏側****
(中略)
足りないのは救急医療の医師
手頃な価格の医療制度を誇る韓国だが、人口当たりの医師数は先進国の中でも最も少ない部類に属する。急速に進む高齢化に伴い、とくに地方と救急医療分野の医師不足が深刻化していると韓国政府は指摘している。

抗議行動を展開しているのは病院の運営に不可欠な研修医らで、彼らによると、医師不足は医療業界全体ではなく、救急医療など特定の専門分野に限ったものだという。こうした専門分野で働く魅力を失わせている、研修医の過酷な労働条件や低賃金といった問題を政府は無視していると、彼らは主張する。

調査によると、研修医は日常的に24時間を超えるシフトを複数こなしており、勤務時間が週に80時間を超える研修医は多い。

ソウルにあるセブランス病院の救急病棟の職を辞した大韓専攻医(研修医)協議会のパク・ダン会長は19日、「医療制度は崩壊して久しい」と語った。「この先5年も10年も、自分が救急で働くことは考えられなかった」。

パク・ダン会長はさらに、現在の保険と政府の支払いシステムでまともに暮らしていけるのは、美容外科など一部の診療科の医師だけだと語った。

抗議している医師らはまた、政府が医師の数を増やして競争を激化させれば、患者の過剰治療につながる危険性があるとも主張している。【同上】
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ただ、少なくとも問題発生当時、世論は研修医や、彼らを煽る医療界の対応には「自分たちの待遇改善のために患者の命を人質にしている」と批判的で、日頃厳しく保守派政府を批判する左派メディア「ハンギョレ」も研修医を批判しています。

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研修医の動きへの国民の支持は広がっていない。韓国ギャラップが16日に発表した世論調査によると、尹政権の医学部定員増加の方針については76%が肯定的な評価を示した。尹政権に厳しい論調の左派系のハンギョレ新聞は社説で「正当な理由なく、国民を人質に脅迫している」と研修医らを批判した。【2月22日 読売】
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前出の表向きの理由はともかく、厳しい受験戦争を勝ち抜いてようやく手にした医師への道が、定員増となれば医療現場の競争も激しくなり、報酬も下がることにもなってしまう・・・・というのが本音ではないか・・・とも勘ぐられます。

また医療界全体が立場の弱い研修医を煽り、自分たちの権益を守ろうとしている・・・とも。

その後も、尹大統領も研修医側も基本線では譲らず、半年以上経過した現在に至っています。(このあたり、伊大統領は世論の批判が強い日韓関係重視でもそうですが、なかなか信念を曲げず強気です。 良くも悪くも、周囲の声を聞いて妥協する“政治家”タイプではありません。)

なお、政府は一時、離脱した研修医の医師免許停止処分とする強硬な計画を示しましたが、これについては現在の医療サービス不足を解消することが「より緊急」だとして、7月8日に取下げています。

【救命救急センターを訪れる患者が増加する秋夕(チュソク)への対応】
そうこうしている間に韓国は、秋夕(チュソク)を迎えます。

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秋夕は旧歴8月15日とその前後に祖先を祀り、墓参りなどをする韓国国民にとってもっとも重要な祝日で、今年は9月14日から18日まで5連休となっている。この時期は多くの企業が休業となり、病院でも外来は休診となることから救命救急センターを訪れる患者が増えると予想されている。【9月12日 佐々木和義氏 Newsweek】
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政府も秋夕に向けて緊急体制を指示しています。

****研修医スト続く韓国、来週の祝日前後を特別医療対応期間に****
韓国政府は12日、来週の「秋夕」の祝日に合わせ、2週間を緊急医療特別対応期間とし、あらゆる資源を活用して医療サービスを確保すると発表した。

韓国では政府の医療制度改革に盛り込まれた医学部増員に反対する研修医らが職場離脱する状態が2月から続いている。

韓悳洙首相はブリーフィングで「医療関係者の献身に少しでも報いる」ため、特別対応期間は医療保険から医療機関に支払う診療報酬を一時的に引き上げると述べた。全国約8000の診療所や病院が祝日期間も診療を行うとした。これは今年の旧正月期間(約3600)を上回るという。

国民には、症状の程度に応じて、大病院でなく地元の診療所の受診を検討するよう呼びかけた。

聯合ニュースは12日、医学教授会の発表として、全国53の病院を調査したところ救急外来の医師数が42%減少しており、7病院が救急外来の一部閉鎖を検討していると報じた。【9月12日 ロイター】
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緊急対応として軍医を投入。

****ストで救急センター運営に支障 政府が軍医ら投入へ****
政府が進める大学医学部の定員拡大に反発して、研修医が集団で退職するなど医療界のストライキが続いている影響により、全国の救命救急センターの運営が支障をきたしていることを受け、政府は軍医や、兵役の代わりに保健所などに勤務する公衆保健医師を救急センターに緊急配置することにしました。

保健福祉部は、2日に行ったブリーフィングで、救急センターの運営を円滑化するため、軍医と公衆保健医師など230人あまりを順次、投入すると明らかにしました。(中略)

さらに、今月中旬の中秋の名月にあたる、秋夕(チュソク)の連休中、病院の休業により救急センターに患者が集中し、混乱が増す場合に備え、11日から25日を非常救急対応期間に指定し、救急医療を支援することに決めました。

一方、政府は、「救急センターの99%にあたる406か所は24時間運営中だ」として、救急センターの運営が支障をきたしているのは、一部に過ぎないとしています。

政府によりますと、病床を縮小し運営している救急センターは27か所で、全体の6.6%だということです。

しかし、政府が発表したとおり、ほとんどの救急センターが24時間体制で運営されているのは事実ですが、研修医が医療現場を離れた影響で、救急センターで勤務中の医師は、平時の7割ほどとなっていて、搬送先の見つからない救急患者が増えています。

消防庁の資料によりますと、ことし上半期に発生した救急車の再搬送件数は2645件でしたが、このうちおよそ4割が「医師不足」によるものだったということです。

全国医科大学教授非常対策委員会は2日、声明を発表し、政府の発表とは異なり、すでに多くの救急センターが医師不足により、正常な診療ができておらず、秋夕の連休を起点に診療が制限されたり、運営を中断するところも出てくるだろうと懸念を示しています。【9月3日 KBS News】
******************

ただ、いきなり救急センターに投入された「軍医」は、うまく対応できなかったとの評価も。

****大型連休控え医療混乱ピークの韓国 病院・研修医・患者が苦境のなか、漁夫の利を得たのは?****
<年に1度の大型連休を控え韓国の医療は危機的状況に陥っているが──>

(中略)
秋夕に向け軍医を病院へ派遣したが......
韓国保健福祉部は、軍医官と公衆保健医を公立病院や民間病院に派遣してきたが、秋夕前後に250人を救命救急センターに派遣することにした。公衆保健医は兵役に代えて公衆衛生にあたる医師免許保持者である。

同部は9月4日、軍医官15人を運営に支障が出ている救命救急センターに派遣し、9日以降、235人の軍医官と公衆保健医を緊急度の高い医療機関に派遣すると明らかにした。

ところがだ。軍医官や公衆保健医の評判はお世辞にも良いとはいえない。ソウル大学病院が行ったアンケート調査で、軍医が「役立った」と答えた教授は30.9パーセントにとどまる一方、31.8%が「役に立たない」と回答した。

未回答者は軍医等が派遣されなかった科目の教授で、派遣を受けた教授の半数以上が「軍医は役に立たない」と回答したのである。「軍医らを救急室に配置すれば、患者未収容がなくなるか」という質問にも教授らは「彼らは重症患者の診療に参加して、責任を負わなければならない状況となることを恐れている」と回答した。

軍医官3人が派遣された梨花女子大学木洞病院は、救急室勤務は適していないとして帰るよう通知した。江原大学病院では派遣された5人のうち実際に勤務できたのは1人だけだった。

保険福祉部が派遣する250人の軍医官と公衆保健医には救急医学の専門医が8人いるが、その専門医でさえ役に立たないという。救急専門医が2人派遣された世宗忠南大学病院は、軍医は診療できないと判断している。【9月12日 佐々木和義氏 Newsweek】
***********************

一方、大韓医師協会のイム・ヒョンデク会長が政府への抗議のハンストを行いましたが、6日目で体調を崩し断念しています。 韓国でよくある政治パフォーマンスですが、対政府というより、医療界の都合に踊らされて人生の岐路にたたされている離脱研修医向けのエクスキューズでしょうか。

****韓国、医学部定員増めぐる問題の混乱続く=韓国医師協会長がハンストに踏み切るも6日目で断念****
(中略)
医師協会の林会長は先月26日、記者会見を開き、「韓国の医療は死の直前まで来ており、国民の命が脅かされている」と訴えた。林会長は、現場ではこれまで離脱せずに踏みとどまっていた医学部教授たちが「燃え尽き症候群」となり、相次いで辞職していると指摘。医療危機を収拾するには大統領と国会が決断するほかないとして、定員増の撤回を求め、この日からハンストを開始した。

今年5月に医師協会長に就任した林会長は、協会内でも激しく政府と対立してきた人物として知られる。今年3月に会長選に当選した際は、政府の医学部定員増員の方針に端を発した医療現場の混乱について「今の状況は研修医や医大生、医大教授らがつくった危機ではなく、政府がつくった危機だ。事態の責任は政府と与党にある」と批判。翌月に控えた韓国総選挙で、議員の落選運動を行うこともちらつかせた。

一方、尹大統領は先月29日に行った国政に関する記者会見で医療改革に言及し「もう医学部の増員が終わった(決まった)ため、改革の本質である地域・必須医療の再生に政策の力量を集中する。2025年度の医学部の定員募集は現在、滞りなく進んでいる」と強調した。(中略)

ハンストを続けていた林会長は、6日目の31日に体調を崩し、病院に搬送された。ハンストは、韓国では政治家らがしばしば行うパフォーマンスだ。昨年8~9月にかけては「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表が、福島第一原発の処理水海洋放出に抗議することなどを目的にハンストを行った。

しかし、国民から多くの支持を得ることはできなかった。今回の林会長によるハンストについて、韓国メディアのマネートゥデイは「今回の断食は、大きな世論化を形成できず、医療界内では『得るものがなかった』との雰囲気が漂っている」と伝えた。【9月3日 WoW!Korea】
*****************

【離脱した研修医の厳しい現実 戻りたくても「裏切り者」扱いが怖い】
すでに来年の医学部定員増員も当初計画よりやや縮小はしたものの実施に移されており、離脱した研修医はこの現実をどのように見ているのか、なぜあきらめて職場復帰しないのか・・・彼らは厳しい状況に置かれています。

****漁夫の利を得たのは......*****
一方で辞職した研修医たちは就職難に直面している。兵役未了者は公衆衛生医を目指すが、服務期間は3月からで、志願者が多いと翌年以降に延ばされる。軍服務が終わった研修医や女性専攻医は一般医として勤務できるが、離脱研修医の急増で給与水準が下がっている。

専門医資格を得た後、専攻医指導病院に残って勤務するフェローの給与は700万ウォン、中小病院で週5日勤務する契約医師は1200万ウォンから2000万ウォンが一般的だが、離脱研修医は300〜400万ウォンでも仕事がないという。

患者と病院、離脱研修医のいずれも良い結果を生まないなか、この状況を歓迎する医療機関もある。美容整形外科と療養型病院だ。ソウルのある美容整形外科が月400万ウォンで求人を出したところ応募が殺到したという。手術は任せられないが看護師並みの給与で医師を採用できるとして「営業拡大」を図る動きもある。

療養型病院は「専門医資格がなければ昼に勤務できる病院が少ないため、夜間の当直を一般医に任せているが、確保が難しい状況だった」といい、「離脱研修医は恵みのようだ」と歓迎する。

一般医は専門医と比べて勤務先が限られるうえ、給与水準も低いが、離脱研修医に対する目は冷ややかで、政府も手を差し伸べる考えはないようだ。【9月12日 佐々木和義氏 Newsweek】
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現場に戻りたくても、戻ると「裏切り者」扱いされ、実名をさらされるという恐怖もあるようです。
救急救命室の医師たちの実名が「医療の混乱を防ぐために努力している方々に感謝」などと揶揄する形で公開されています。

****医療大乱の韓国。救急救命室の医師が「悪意あるリスト」で実名を晒される異常事態****
(中略)
救急救命室のブラックリスト
救急救命室の緊急事態でバーンアウトに耐えながら耐えている救急救命室の医師たちの実名を公開した「ブラックリスト」が出てきて国民の公憤を買っている。救急救命室の危機警報が鳴り、重症患者が救急救命室の「たらい回し」によって死亡する事態まで起きている現実の中で、医師倫理を破った反生命体・反社会的の行動の極致だ。

(中略)医療現場に戻ろうとする心ある専攻医も多いのだろうが、こういう「ブラックリスト攻撃」があるために現場に戻れないでいる医師の卵たちも多いのだ。

医師でありながらこのような反生命・反倫理犯罪を犯すとは。開いた口が塞がらない。自分の稼ぎ(儲け)がn分の一になるからという極めて利己的な理由で政府の医療政策に反対している反社会的医師ら。(後略)【9月13日 MAG2NEWS】
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医師会の対応は相変わらずです。

*****韓国医師協会「政府の態度変化が必要」 医療混乱巡る協議不参加を表明*****
韓国の大韓医師協会(医協)は13日に開いた記者会見で、研修医らの職場離脱による人手不足など医療現場で生じている混乱などについて協議する与野党と政府、医療界の4者による協議体について、政府の態度に変化がない現時点では医療界側は参加しないとの立場を表明した。(後略)【9月13日 聯合ニュース】
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一方、伊大統領は・・・

****尹大統領が国民にメッセージ 「連休中も病院で働く医師らに感謝」****
韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は秋夕(チュソク、旧暦8月15日)を控えた13日、映像メッセージで国民へのあいさつを伝えた。

尹大統領は韓国伝統衣装の韓服姿で、中秋の名月のように豊かな時間を過ごすことを願うとし、「連休中も国民のために働いている国軍将兵、警察官、消防官、そして救命救急センターを維持している医療関係者の皆さまに深く感謝する」と述べた。(後略)【9月13日 聯合ニュース】
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日本でもコロナ禍の頃「エッセンシャルワーカーの皆様、ご苦労様です」ってありましたね・・・。
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