孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

香港  中国側譲歩の背景 SNSを駆使した「リーダー不在」の戦いの成果と限界

2019-06-17 22:53:58 | 東アジア

(【6月17日 朝日】 幹線道路を埋め尽くす16日の「200万人デモ」)

 

【本人が望んでも中国は林鄭行政長官の辞任を認めない】

香港の「逃亡犯条例」改正案をめぐる問題については、決定権を持つ中国指導部は最後まで譲らないのでは・・・と、個人的には考えていました。

 

12日段階では、香港政府トップの林鄭月娥行政長官が声明を発表し、若者らのデモについて「公然と暴動を起こした」と非難していましたので、「動乱」と位置付けられた天安門事件も想起される状況で、譲歩はないのだろう・・・と。

 

その後の展開は、報道のとおり。

林鄭長官は15日、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案の審議を無期限で延期すると表明したうえで、市民への謝罪も。

 

“香港政府の報道官は16日夜に声明を発表し「政府は条例改正の作業を再開する予定がない」と強調した。声明で林鄭氏は「政府の仕事ぶりで社会に大きな紛争を巻き起こした」としたうえで「市民に謝罪し、謙虚に批判を受け入れることを約束する」と述べた。”【6月16日 日経】

 

しかし、撤回はしていないこと、およびゴム弾や催涙ガスを使用した警官隊の対応に関して、市民の間では長官の辞任を求める声が高まり、16日には過去最大の「200万人デモ」に。

****香港トップ、大規模デモに衝撃 辞任圧力強まる可能性も****

香港で中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案の撤回や林鄭月娥行政長官の辞任を求める16日のデモの参加者が1997年の香港返還以降で最多の「200万人近く」(主催者発表)になった。

 

15日の改正案延期の発表で事態の沈静化を図れると踏んでいた林鄭氏にとっては衝撃の規模で、今後辞任圧力が強まる可能性もある。(後略)【6月16日 共同】

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市民の大規模抗議行動は17日朝までにほぼ収束し、衝突は起きていませんが、一部若者らは抗議行動を続けています。

 

****香港200万人デモから一夜 「対話と辞任」求め行進****

一夜明けた17日も、若者らが抗議を続けている。(中略)

 

デモ開始から丸一日が過ぎた17日夕方、若者らが、香港政府トップの林鄭月娥行政長官の事務所までデモ行進し、対話を求めた。

 

林鄭行政長官は、一連の対応を謝罪する声明を出したが、デモ主催者側は、長官辞任も求めていて、抗議活動が収まるかは不透明。【6月17日 FNN PRIME】

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法案の撤回、および長官辞任に関しては「香港政府の高官」の話として、以下のようにも。

 

****行政長官の辞任、中国は容認せず 条例は事実上廃案=香港高官****

香港政府の高官は17日、たとえ林鄭月娥行政長官自身が望んでも中国は林行政長官の辞任を認めないとの見方を示した。一方、無期限の審議延期となった中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案については、事実上廃案との認識を示した。

「逃亡犯条例」改正案の審議は無期限延期となったものの、抗議デモは収まる気配はなく、林行政長官に対する辞任要求が強まっている。

政治危機について協議する会議のメンバーとなっているこの高官は、「それ(辞任)はない」とし、「林行政長官は中央政府に指名された。したがって辞任するには本土でのハイレベルの検討を必要とする」と述べた。

また、いま辞任すれば、事態を悪化させるだけだと指摘した。

中国外務省の陸慷報道官は17日の定例会見で、同国が引き続き香港の林鄭月娥行政長官を支持すると述べた。

高官は、「逃亡犯条例」改正案について「中断というのは実質的廃案を意味する。再度持ち出せば政治的自殺だ」と述べた。【6月17日 ロイター】

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“たとえ林鄭月娥行政長官自身が望んでも中国は林鄭行政長官の辞任を認めない”・・・・林鄭長官もつらい立場です。

 

【中国側の予想を超えた香港市民の反発 G20での国際批判も考慮】

予想に反して、中国指導部が“無期限延期”という譲歩を示した背景には、雨傘運動挫折以降の香港民主化運動の低迷もあって、香港市民の激しい抵抗を中国側も予測できなかったということがあります。

 

6月12日ブログ“香港 若者たちの抵抗 「今回が最後のデモ活動だ」 台湾では、中国批判を避ける国民党候補”でも取り上げたように、改正案が成立すれば、デモに参加したことが罪に問われて中国に引き渡される恐れもあることから、「今回が最後のデモ活動だ」という切羽詰まった思い、「改正案が成立すれば香港の一国二制度は実質的に終わる」という思いが市民を激しい抗議に駆り立てました。

 

また、警官隊の強硬な排除策も、市民の怒りの火に油を注ぐ結果にも。

雨傘運動の「女神」・周庭(アグネス・チョウ)氏は、ゴム弾は雨傘運動のときは使用していないとも、また今回は催涙弾を至近距離から発射しているとして、「香港人として暴力を許せない。警察は(デモ参加者を)殺す気ではないでしょうか」と警官隊の対応を批判しています。【6月17日 Newsweekより】

 

****「私たちの子供を撃たないで」 逃亡犯条例反対集会に母親数百人 香港****

香港中心部の公園で14日夜、刑事事件の容疑者を中国本土に引き渡せるようにする「逃亡犯条例」改正に反対する母親たちの集会があった。数百人の母親らが集まり、改正案の撤回や林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官の辞任を求めて気勢をあげた。

 

母親らが次々と前に出て、政府批判を展開した。ある母親は「催涙弾やゴム弾で、平和的なデモをする若者たちを攻撃するよう指示した行政長官は決して許せない」と憤った。別の母親は「若者たちよ、あなたたちは孤独じゃない。私たちが共にいる」と叫んだ。(後略)【6月15日 毎日】

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中国指導部は、こうした香港市民の激しい抗議を受けて、これ以上強行して犠牲者を出すような事態ともなれば、今月末に予定されているG20で強い国際批判にさらされるというリスクを考慮したと推察されます。

 

そうでなくても激しい米中対立のなかで行われるG20ですから、アメリカ側に絶好のカードを提供することにもなります。

 

“審議を続けて衝突が起き、けが人や死者が出れば、「第二の天安門事件」として国際社会が非難するのは必至だ。月末に大阪で開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議が習近平国家主席への批判の場となるのを避けるため、中国政府も香港政府の判断を受け入れざるを得なかったのだろう。”【6月16日 倉田徹氏 朝日】

 

なお、香港で大規模な抗議行動が繰り返されるのは、民意を反映する手段として選挙・議会が大きな制約を受けている事情があります。

 

****香港で続く「抗議の歴史」 選挙で反映できぬ民意を示すデモ****

中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」の改正案は、デモで示された民意を香港政府も無視できなくなり一時断念を余儀なくされた。

 

限定的な選挙制度が取られている香港では、選挙では反映しにくい民意を表明する手段としてデモの文化が息づいている。

 

英BBC放送(電子版)は「香港には豊かな抗議の歴史がある」と指摘する。1966年には香港島と九竜半島を結ぶ「スターフェリー」の値上げをめぐり激しい抗議が起きるなど、英国統治下でも度々デモが行われてきた。89年5月には中国の民主化運動を支援するため150万人規模のデモも開かれている。

 

英国から中国への返還後の2003年には、国家分裂行為などを禁じる「国家安全条例」案に反対する50万人規模のデモが発生。最終的に香港政府は白紙撤回に追い込まれた。

 

記憶に新しいのは、香港政府トップの行政長官の民主的な選挙を求めた14年の「雨傘運動」だ。学生らが79日間にわたって街頭を占拠したが、政府側から譲歩を引き出すことができず、当局により強制排除されて終わった。

 

香港は1997年の中国返還後も「一国二制度」で高度な自治が50年間認められているものの、民意がそのまま政治に反映されているとは言い難い。

 

行政長官は、政財界などの代表で構成する選挙委員会による間接選挙で選ばれ、立法会(議会)の議員選挙では親中派に有利とされる制度が一部採用されている。

 

そうした環境下で、民意を直接示す方法とされるのがデモだ。BBCは「香港人は一定の自治は持っているが、投票における自由は少ない。抗議には自分たちの意見を聞いてもらう数少ない手段という意味がある」と指摘する。【6月16日 産経】

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【「親中派」内部にも足並みの乱れ】

中国側の誤算は、本来「親中派」であるはずの香港経済界からも改正に反対の声が強かったこともあります。

 

****香港財界、条例改正で苦境 親中だけど…ビジネスに影響 報復関税対象外、米見直しも****

香港で中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」の改正案をめぐり混乱が続く中、香港の経済界が苦境に直面している。

 

今後のビジネスを考えれば、改正を支持する中国側の意向を無視できない。しかし改正されれば、国際社会から香港のビジネス環境が悪化したとみなされる−。こうした経済界の足並みの乱れも、改正反対デモが勢いづいている背景にある。

 

香港の有力経済団体、香港総商会のハリレラ会長は13日、改正案の原則には同意するとしながらも、「市民の声に耳を傾け、有意義な対話を行うよう政府に求める」とコメント。同会の袁莎●(=女へんに尼)総裁も「香港の国際的な評判に影響を与えないよう関係者に自制を促したい」と述べた。

 

香港の経済界では、中国本土との経済的な結び付きが年々強まる中で、親中派財界人の影響力が増している。中国の習近平政権が最近、香港を核とした国家プロジェクト「粤港澳(えつこうおう)(広東省・香港・マカオ)大湾区」を推進している折だけになおさらだ。

 

しかし今回、逃亡犯条例が改正されれば、「香港を支えてきた良好なビジネス環境が崩壊する」(メディア関係者)恐れがあり、事情が異なる。たとえば、香港を訪れた外国人も中国本土へ引き渡される可能性が出てくる。「香港が中国の司法制度の支配下に置かれる」(同)ことを意味し、本来、高度な自治が保障された香港の「一国二制度」は有名無実と化す。

 

実際に米国では、一国二制度を前提に通商面などで香港を優遇してきた「米・香港政策法」の見直しを求める動きが出ている。香港は同法に基づき、トランプ米政権による対中報復関税の対象外となっているが、その特別な地位が脅かされているのが現状だ。

 

経済界の足並みの乱れを受けて、習政権は「香港財界の有力者たちを北京に呼んで支持固めを図った」(外交筋)ものの、まとまりきれないもようだ。

 

中国との結び付きが特に強い経済団体、香港中華総商会は14日、産経新聞などに対し、「われわれは改正案を支持している」とコメントした。【6月15日 産経】

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香港富裕層には資産をライバル・シンガポールなどに移す動きも出ているとも。

 

****香港の富裕実業家が海外に資産逃避、逃亡犯条例を懸念****

銀行家や法律専門家によると、香港の富裕な実業家が中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案への懸念を強め、個人資産を海外に移す動きが始まっている。

こうした動きに関与した助言サービス関係者によると、ある大物実業家は法改正で政治的リスクが自らに及び得ると考え、1億ドル余りを香港のシティバンクの口座からシンガポールのシティバンクの口座に移し始めた。同様の例をほかにも耳にしているが、いずれも目立たないように行われているという。

逃亡犯条例は、香港市民だけでなく香港に居住したり旅行で通過したりする外国人や中国籍の人間を対象にしており、香港の金融センターの地位を支える法の支配を脅かしかねないとの懸念が異例な広がりを見せている。条例が成立すれば、中国本土の裁判所が香港の裁判所に要請して、中国本土での「犯罪」に関連したと見なす資産を凍結したり押収したりできるようになる。

国際展開している香港の銀行のプライベートバンキング部門トップも、顧客が資金を香港からシンガポールに移していると指摘。「彼らは中国本土の顧客ではなく、香港の富裕な顧客だ。香港の情勢は混乱している」と述べた。「香港の富裕層は、林鄭月娥行政長官や中国の指導部が逃亡犯条例による経済的損失を理解できないほど愚かなことを見過ごせないのだ」

香港とシンガポールはアジア随一の金融センターとしての地位を巡って激しく争っている。クレディ・スイスの2018年のリポートによると、香港は個人資産1億ドル以上の資産家が853人と、シンガポールの2倍以上だった。【6月17日 ロイター】

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「親中派」内部の足並みの乱れもあって、これ以上の強硬策を思いとどまる中国指導部の判断にもなったのでしょう。

 

【SNSを駆使した「リーダー不在」の戦い 長期的目標達成には限界も】

今回の抗議行動の特徴は「リーダー不在」という点です。

 

****香港、リーダーなき反政府デモの「勝利」 テレグラム利用で情報共有****

中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」の改正案をめぐり、多くの香港市民が参加して繰り広げた反対運動はひとまず、立法会(議会)審議の無期限延期という譲歩を当局から勝ち取った。一連のデモは「リーダーなき反対運動の勝利」だったとの見方が広がっている。(中略)

 

民主派の区諾軒・立法会議員は今回の改正反対運動について「これまでのデモとの違いは、リーダーが存在しないことだ」と指摘する。地元ジャーナリストも「香港政府は今回、誰と交渉したらいいのか分からなかった」という。

 

区氏によると、改正反対運動で多くの参加者が利用したのが、携帯電話用の通信アプリ「テレグラム」だ。ロシア人が創設したアプリで、最大20万人のグループを作ることができるという。メッセージが暗号化されて送られるため、保秘性が高いことでも知られる。

 

実際、改正反対運動に関するグループの一つには約2万9千人が参加していた。こうしたグループが多数存在し、反対デモに関する情報を共有していた。あるグループでは「犬に注意」などの隠語を使って、警察などの治安部隊がどこにどれだけ配置されているか−といった情報を知らせるものもあった。

 

地元ジャーナリストによると、こうしたアプリを通じて情報を得た多くの学生らは今回、当局の追跡をかわすため共通の対策をとっていたという。

 

マスクやヘルメット、ゴーグルを多用し、いつも以上に身元を特定しにくくしていたのもその一つ。また、地下鉄やバスを利用してデモに参加する際、当局による追跡が容易なICカードではなく、現金を使っていたようだ。

 

9日のデモには主催者発表で103万人が参加し、反対運動に弾みがついた。こうした中、テレグラムは12日、大量のデータを送りつける「DDoS(ディードス)攻撃」を受けていると公表。運営会社は13日、攻撃の大半は中国からだったと明らかにしている。【6月15日 産経】

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SNSが重要な役割を果たすのは、近年の抗議行動に共通していますが、香港では当局の追跡をかわすための対策にも大きな配慮がなされたとのことのようです。

 

ただ、一般論で言えば、こうしたSNSを駆使した「リーダー不在」の抗議行動というのは“しりすぼみ”に終わる傾向もあります。

 

****SNS発の抗議デモ、なぜしりすぼみに ソーシャル上の怒りがぶつかる壁の正体****

ソーシャルメディアで拡散した市民の怒りが大きなデモに発展する光景が、世界各地で見られるようになった。現在進行形なのが東欧のセルビアだ。

 

昨年12月から、大統領の辞任を求めて若者らを中心としたデモが続き、一時は国の全土に抗議が広がった。デモのスタートから5カ月。抗議運動を急速に広げたSNSの力が若者たちに何をもたらしたのかを確かめるため、現地を訪れた。

 

(中略)ソーシャルメディアを使って抗議を広め、人々を動員する手法は、セルビアに限らず今や世界で共通している。最近ではフランスの「黄色いベスト運動」でも使われた。日本でも2015年に安保法制反対の中心的な存在になった学生団体「SEALDs(シールズ)」が駆使したことで注目された。

 

SNSと社会運動の関係を研究する米ノースカロライナ大学准教授のゼイナップ・トゥフェックチーは「ある問題について自分がどう感じるかが運動の始まり。だから、感情を拡散するのに有効なソーシャルメディアは国全体のムードをがらりと変えるほどの力を持つ」と話す。

 

しかし、ソーシャルメディアの登場から10年以上がたち、明らかになりつつあるのは「力」よりもむしろ「限界」だ。

 

「アラブの春」は中東と北アフリカで独裁的な政権を崩壊させたが、発端となったチュニジア以外は独裁政権に後戻りするか内戦に陥った。貧富の格差を社会の不正義として訴えた「オキュパイ・ウォールストリート」は、短期間のうちに世界中に広まったもののほどなく消え去り、経済格差はむしろ広がっている。

 

トゥフェックチーはその限界をこう説明する。「ソーシャルメディアは、本来は広告のための道具であって、社会問題を解決するためのプラットフォームとしては設計されていない。急速に怒りを拡散できたとしても、それだけでは社会を変えるのに必要な政治的組織の構築にはつながらず、壁にぶつかってしまう」(後略)【6月2日 GLOBE+】

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香港では、SNSによって「一国二制度を守るための最後の戦い」という強いメッセージを発信することで“怒りを共有”し、当局からの譲歩を勝ち取ることができましたが、今後の撤回に向けた戦いを続けていくためには、SNSで集まる「リーダー不在」というだけでは難しいかも。

コメント

香港 若者たちの抵抗 「今回が最後のデモ活動だ」 台湾では、中国批判を避ける国民党候補

2019-06-12 22:40:27 | 東アジア

(立法会の敷地に突入し、警官隊(左側)と衝突する若者ら【612日 共同】)

 

【「今回が最後のデモ活動だ」】

香港の「逃亡犯条例」改正案に関しては、519日ブログ“香港 「逃亡犯条例」改正案で岐路に立つ「一国二制度」・高度な自治”でも取り上げたところです。

 

香港では2014年「雨傘運動」の挫折以来、香港政府および中国に対する抗議行動・民主化運動は低調になっていましたが、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案をめぐる市民の抗議行動がこれまでになく拡大し、9日に主催者発表で100万人を超える抗議デモが起きたこと、一部若者らと警察との間で衝突が生じていることは報道のとおりです。

 

****香港デモ、帰ってきた若者たち 雨傘運動思わせる光景****

香港で9日にあった「逃亡犯条例」改正案に反対する大規模なデモでは、学生をはじめ若者の参加が目立った。2014年の民主化デモ「雨傘運動」が挫折した後、民主化運動から遠ざかっていた世代が再び政治意識を高めつつあるようだ。

 

デモ行進のゴール地点となった立法会(議会)。9日夜になっても多くの若者が立ち去ろうとせず、路上に座り込んで友人たちと雑談していた。雨傘運動の再現を思わせる光景だった。

 

ある男子学生(22)は、デモに加わった理由について「こんな悪法は撤回させないといけない。みんなで力を合わせて立ち上がる必要がある」と話した。

 

香港では雨傘運動の2年前の12年、学校現場で愛国心を育てる「国民教育科」導入が撤回された。そのとき、反対運動の一角を担ったのは中高校生だった。

 

今回、初めてデモに加わったという中学3年生の男子生徒(15)は、同級生4人と参加。「改正案に不満を持っている人が多いという事実を政府に伝えることが大事だ」と語った。

 

雨傘運動で活動した元学生団体幹部の羅冠聡氏は「社会の雰囲気が雨傘運動の前の状況に似てきた」と指摘する。

香港政府トップの行政長官を民主的な選挙で選べるよう若者らが求めた雨傘運動は、結局、要求が何も実現されないまま封じ込まれた。

 

1989年の天安門事件などを経て、香港の民主派は長年、中国本土の民主化を掲げて活動してきた。しかし、雨傘運動を経験した若者たちは香港の民主化が優先だと主張。民主派の中核を担っていた中高年層との溝や対立が深まり、民主化運動が勢いを失う要因になっていた。

 

しかし、今回の条例改正を座視すれば、民主化の進展どころか、香港の高度な自治を保障する「一国二制度」が骨抜きにされるとの危機感が若者たちを動かしたとみられる。

 

雨傘運動の中心メンバーの一人、周庭(アグネス・チョウ)さんは10日、都内の日本記者クラブでの会見で、条例が改正されれば「香港が完全に中国になってしまう」と訴えた。

 

「日本政府、意見表明して」雨傘運動メンバー周庭さん

2014年に香港であった民主化デモ「雨傘運動」の中心メンバーの一人、周庭(アグネス・チョウ)さんが10日、東京都日本記者クラブで会見した。刑事事件の容疑者を香港から中国本土に引き渡すことを可能にする「逃亡犯条例」改正案をめぐり、成立すれば「香港が完全に中国(の一部)になってしまう」と危機感を表明した。

 

周さんは会見で、中国の司法制度について「恣意(しい)的で不透明」などと批判。条例改正は事実上、中国の法律が香港市民に適用されることにつながるとして、「(高度な自治を保障した『一国二制度』ではなく)一国一制度に近づく」と懸念を示した。

 

周さんは9日に香港であった大規模デモにも参加。若い人々が多く参加していたといい、「(条例改正への)関心が広がっている」と話した。

 

その一方、改正案が成立すれば、デモに参加したことが罪に問われて中国に引き渡される恐れもあることから、「今回が最後のデモ活動だ」と話す参加者もいたという。

 

条例は香港に滞在する外国人にも適用される。周さんは「日本も無関係ではない。日本政府は国民の安全を考え、意見を表明して欲しい」と訴えた。【611日 朝日】

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“改正案が成立すれば、デモに参加したことが罪に問われて中国に引き渡される恐れもあることから、「今回が最後のデモ活動だ」と話す参加者もいた”・・・・この言葉が、今回の「逃亡犯条例」改正案の重要性を物語っているように思われます。

 

香港政府は条例が改正されても、中国からの「政治犯」移送の要請は拒否するとしているようですが、中国が気に入らいない人物に関して“あること、ないこと”言い立てて、非政治犯として引き渡しを求めるという懸念、そうした中国の要請に香港当局は唯々諾々と従うであろうとの懸念は当然のことのように思われます。

 

そうなると、香港において反中国的な活動はもはやできなくなります。まさに「今回が最後のデモ活動だ」ということにも。

 

今日(12日)午後には警官隊がデモ隊の排除に動き、双方に負傷者が出ています。今日現在の状況は以下のようにも。

 

****香港デモ、数万人道路占拠 警察は催涙弾発射、けが人も****

刑事事件の容疑者を香港から中国本土に引き渡すことに道を開く「逃亡犯条例」改正案に反対する若者らが12日、香港中心部にある立法会(議会)周辺の道路を占拠した。

 

警察とデモ隊が衝突し、負傷者が出た模様だ。若者が道路を封鎖する大規模な抗議は、2014年の民主化デモ「雨傘運動」以来となる。

 

12日予定されていた条例案の審議を阻止しようと、立法会には11日夜から数千人の若者が集結。12日朝には数万人規模に達し、近くの幹線道路を数百メートルにわたって占拠。この日の審議は延期に追い込まれた。

 

午後には警官隊が催涙弾を相次いで発射するなどしてデモ隊の排除に動き、双方に負傷者が出た模様だ。同日夕現在、数百人規模の若者が現場にとどまり、警官隊とのにらみ合いが続いている。

 

条例改正案をめぐっては9日に主催者発表で100万人を超える抗議デモが起きたが、政府はあくまで改正案の成立を目指す考えを強調。立法会も20日に採決する構えで、緊張と混乱が今後も続きそうだ。【612日 朝日】

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香港政府トップの林鄭月娥行政長官は声明を発表し、若者らのデモについて「公然と暴動を起こした」と非難しています。

 

【「(中国の)狙いは、香港市民にとって誰が『大ボス』なのかを知らしめることだ」】

若者らの香港の将来に対する悲壮な思いも伝わりますが、政治的には香港は中国の主権下にあって、「高度な自治」を“認めてもらっている”立場にすぎないこと、何より経済的には完全に中国経済に取り込まれており、長期的な抵抗運動で中国側の締め付けが強まると、抵抗運動への風当たりが香港でも強まることなどからして、今後の見通しは非常に暗い・・・としか思えません。

 

中国指導部にとって思いのほか激しい抵抗運動が起きたことで、“香港の人権団体・中国人権民主化運動情報センターによると、中国政府の高官が12日、香港に隣接する広東省を訪問。香港側に改正案の撤廃を指示したという情報も香港では流れたが、真偽は分かっていない。”【612日 時事】といった情報もあるようですが、この状況で習近平指導部が譲歩することはあまりありそうにも思えません。

 

****香港デモへの「譲歩」あり得ず、習氏の狙いは?****

中国は、香港で9日に大規模な市民デモが発生したにもかかわらず、犯罪容疑者の本土送還を可能にする「逃亡犯条例」の改正を断固として進める方針だ。

 

中国の国営メディアや当局者は10日、香港特別行政区政府による条約改正の取り組みを引き続き支持するとの立場を表明。デモは、地元の反体制派が外国勢力と共謀して市民の怒りをあおっていることが要因との見方を示した。

 

中国外務省の耿爽報道官は定例会見で、条例改正への政府の支持を改めて表明した上で、「一部が無責任な発言を行っている」と指摘。「香港の立法への外部介入に断固として反対する」と述べ、名指しは避けながらも、中国に批判的な海外勢力による介入の可能性をほのめかした。

 

香港のデモに対する中国当局の強硬姿勢を踏まえると、香港を含め、中国内の反体制派を容赦しない習近平国家主席の方針が揺らぐことはなさそうだ。

 

香港中文大学のウィリー・ラム非常勤教授は「中国当局が折れることはない」とし、「狙いは、香港市民にとって誰が『大ボス』なのかを知らしめることだ」と述べた。

 

習氏にとっては、中国内の反体制派をいったん黙認すれば、他でも反政府の動きを促しかねないリスクがある。また、同氏が進める徹底した腐敗撲滅運動や中国景気の減速、米中貿易摩擦の激化に不満を強めている向きから批判にさらされかねない。

 

ラム氏は、海外の勢力が香港のデモをあおったとする中国当局の主張は米国を念頭においたもので、反米感情を利用する狙いがあると指摘する。

 

とりわけマイク・ポンペオ米国務長官が先月、条例改定案について、香港の「法の支配への脅威」と批判したことを踏まえると、「習氏には(香港について)譲歩できないもっともな理由がある」(ラム氏)という。(中略)

 

香港では返還以来、中国当局との間で多くの摩擦が生じている。学歴も職務能力も備えた香港中間層の多くは、行政長官や議員の大部分を直接選挙で選ぶべきだと主張し、自治権拡大を訴えている。2003年には「国家安全条例」に反対する大規模なデモが発生。中国当局は計画を断念し、最終的には行政長官を交代させた。

 

だが、中国当局が今回、譲歩する公算は小さいもようだ。習氏の許容度は下がっている。中国当局者は2014年の民主化デモ以降、香港議会から野党政治家を排除するとともに独立支持派の政党を違法とし、デモ参加者を投獄した。

 

.香港のキャリー・ラム行政長官は10日、条例改正案を進める方針を改めて表明した。改正案の審議は12日に再開される予定。

 

ただ、中国の専門家は、ラム長官が改正案の成立に失敗したとしても、中国当局が直接介入できると話している。深圳大学の香港・マカオ基本法センターのソン・シャオズアング教授によると、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は香港の基本法について解釈を発行することが可能で、身柄引き渡しに関して香港の議会や司法の決定を覆すことができるという。

 

そのような強硬措置を講じれば、本土支配に反対する香港市民の反発を強める恐れがあるが、習氏にとって譲歩する代償はこれを上回るかもしれない。

 

ソン氏は、2003年のデモを巡る動向は、政府の信用を傷つけた「過ちだった」と指摘。「中国当局は同じ轍(てつ)は踏まないだろう」と述べる。【611日 WSJ】

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もっとも、今回の香港側の激しい反発は、中国指導部にとっては予想外だったとの指摘も。

 

****中国の「指示」誤算か 建国70周年に香港混乱****

香港で中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」の改正について、中国政府は「揺るぎない支持」(外務省報道官)を表明している。ただ実際は習近平指導部が香港政府に改正を「指示」したとの見方が支配的だ。

 

建国70周年の祝賀式典を10月に控える中、香港の混乱が長期化すれば、米中貿易戦争に加えて「内憂外患」のタネをまた一つ抱えることになる。

 

北京の政治学者は「香港を厳しく統制するのが現指導部の方針だが、誤算があった」と指摘する。

 

2014年に香港行政長官選挙の民主化を求めた大規模デモ「雨傘運動」は、政府側の譲歩を得られないまま強制排除され、以降は民主派の動きが低調になった。「こうした状況の中で条例改正も問題ないと判断したが、これほど大きな反響があるとは予想していなかった」(政治学者)という。

 

中国政府は2月、広東省沿岸部と香港、マカオに一体的な経済圏を築く「ビッグベイエリア(大湾区)構想」を正式に始動させた。北京の外交筋は「香港の一国二制度を骨抜きにする動きが強まっている」とし、条例改正が強行されれば中国が同制度の受け入れを求めている台湾でも反発が強まるとの見方を示した。【612日 産経】 

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そうした“予想外”だったことを踏まえて、なんらかの譲歩がなされる可能性もない訳でもないでしょうが、どうでしょうか・・・・難しいようにも。

 

【台湾 国民党で総統候補を目指す韓国瑜高雄市長は香港のデモについて「よく知らない」】

一方、上記記事にもあるように、総統選挙の予備選挙段階にある台湾も香港の動きを注視しています。

 

****台湾政界、香港デモに敏感反応 総統予備選意識****

香港で起きている「逃亡犯条例」改正案への大規模な抗議活動に、台湾でも関心が高まっている。主要メディアが大きく報道し、台北市内では抗議活動に同調する街頭運動も始まった。

 

一方、与野党の有力者は香港情勢に言及する際、現在行われている総統選の党内予備選を意識しており、デモの行方が総統選に影響を及ぼす可能性もある。

 

台北市内で香港政府の領事事務などを行う香港経済貿易文化弁事処が入る商業ビルの前では12日、香港からの留学生らが座り込みを始めた。200〜300人が雨の中、プラカードを掲げ、改正案に反対する演説を次々に行った。

 

発起人の大学4年生、何泳●(=杉の木へんを丹に)(か・えいとう)さん(21)は「改正案が通れば香港の国際的地位は急速に低下し、中国の地方都市と変わらなくなる。台湾に『お金のために中国に接近しよう』という人がいるのは恐ろしいことだ」と話した。

 

台湾の与党、民主進歩党の蔡英文総統は香港の「100万人デモ」にフェイスブックなどで支持を表明。翌10日には「蔡英文が総統でいる限り、一国二制度は受け入れない」と予備選での支持を呼びかけた。

 

これに対し、予備選の対抗馬、頼清徳(らい・せいとく)前行政院長(首相に相当)は「中国は暴行をやめるべきだ」と反中姿勢を強調、「台湾は第2の香港にならない。頼清徳だけが台湾を守れる」と訴えた。

 

野党、中国国民党で総統候補を目指す韓国瑜(かん・こくゆ)高雄市長は10日、記者団からデモの感想を問われ「よく知らない」と回答。批判を受けると11日に声明を発表したが、「香港政府は民衆を安心させる決定をすべきだ」などと中国への批判を避けた。

 

一方、国民党のもう一人の有力候補で中国当局との近さが指摘される鴻海精密工業の郭台銘(かく・たいめい)会長は「香港の一国二制度は失敗だ」と中国を批判してみせた。【612日 産経】

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注目されるのは国民党候補として最有力視されている韓国瑜高雄市長の対中国宥和姿勢です。

 

台湾の選挙状況は69日ブログ“台湾総統選挙・予備選  民進党は現職と前首相が接戦 10~14日の世論調査で決定”でも取り上げましたが、「民主主義で飯は食えない」といった趣旨の発言に見られる、中国とズブズブの関係にある郭台銘氏と対中国姿勢では大差ないようです。

 

国民党も、以前に比べると随分“本音”が前面に出てきた感もあります。最近のポピュリズム全盛の世界的流れの影響でしょうか。

 

「飯が腹いっぱい食えるなら、中国でも台湾でもどっちでもいいじゃないか。どうせ同じ中華民族なんだから」と言い出すのも時間の問題のようにも。

 

今の状況で中国に宥和的な姿勢を批判するのは簡単ですが、実際に中国による締め付けがきつくなったとき、パンをとるのか、自由をとるのか・・・という問題は簡単ではありません。

 

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台湾総統選挙・予備選  民進党は現職と前首相が接戦 10~14日の世論調査で決定

2019-06-09 23:41:30 | 東アジア

(台湾の民主進歩党の政見発表会の開始前、握手する蔡英文総統(右)と頼清徳前行政院長。中央は卓栄泰・党主席=8日【6月8日 共同】)


【各候補とも、中国との距離の取り方が軸】

連日のように台湾総統選挙に関する与党・民進党および野党・国民党の動きに関する報道を目にしますが、総統選挙自体は、まだしばらく先の来年1月で、現在進行しているのは両党内における予備選挙に向けた動きです。

 

アメリカ大統領選挙ほどではないにしても、かなりの長期戦です。

 

****台湾の行く末占う総統選が早くも激化****

台湾では、来年1月に予定されている総統選挙に向けた動きが激しくなっている。

与党民進党は、蔡英文が現職の総統であるが、同氏の不人気ぶりに、頼清徳・前行政院長(首相)も出馬を表明、両者の調整がつかず、候補者決定が当初予定されていた4月から、5月、6月へと延期される事態となっている。

 

民進党の候補者選出は世論調査によって決めることになっているが、蔡英文は頼清徳の後塵を拝しているようである。

さらに大きな話題となっているのは国民党の予備選挙の行方である。朱立倫・元党主席や王金平・元立法院長も出馬の意向を持っているようだが、目下のところ、昨年11月の統一地方選挙で民進党の牙城である高雄市で市長に当選した韓国瑜、4月に出馬を表明した鴻海(ホンハイ)精密工業会長の郭台銘が有力のようである。

 

韓国瑜は「韓流」と呼ばれるブームを起こした人物であり、郭台銘は著名で力のある経済人である。

ただ、郭台銘は、中国との関係で懸念が高まっており、支持率を下げている。鴻海工業は日本のシャープを買収するなどしている世界的なIT企業であるが、中国本土に多くの工場を擁している。中国本土に半導体工場を作る動きもある。

 

そこで、郭の立候補によって生じるかもしれない中国からの干渉・圧力の可能性が問題となる。郭が台湾の総統になるようなことがあれば、同氏は中国の意向に従わざるを得ないだろう。台湾の有権者は、そのことを理解しつつあるように見える。

 

なお、郭は、2014年の「ひまわり学生運動」(馬英九総統(当時)の親中政策に異を唱える学生、市民らが立法院を占拠するなどした)に際し、「民主主義で飯は食えない」「民主主義はGDP拡大の助けにならない」などと述べた。

韓国瑜は高い支持率を保っている一方、高雄市長に当選したばかりで総統に転身するのは裏切りではないかとの批判が強まっている。これに対し「当選したら高雄で総統としての執務をする」などと言っている。選挙戦が進むに従って、こうした素人的な言動が問題となる可能性はあると思われる。

次期総統選に向けて、各候補にとり、中国との距離を如何にとり、如何なる関係を保つか、また、米国、日本との間でいかなる方策を取り、関係を強化するかなどが、喫緊の課題である。

民進党の両名の対中政策は、その時その時で表現の違いはあるが、基本的に、92コンセンサス(1992年に「一つの中国」で中台が合意しているとされる)を認めず、「独立」という現状を維持するというものである。

これに対し、国民党側は92コンセンサスを認め、中国との「平和条約」に前向きである。郭台銘については、上述の通り、中国との近さが懸念材料となっており、中国寄りであるとの印象を払拭しようと躍起になっている。

 

郭は5月初めに92コンセンサスについて、「一中各表」(一つの中国。その内容は中台がそれぞれ解釈する)でなければならず「中華人民共和国と中華民国の二つの国を意味すると考えている」と述べた。

 

国民党はかつて「92コンセンサス、一中各表」を両岸政策の基礎としてきたが、中国側は「一中各表」を認めたことはなく、国民党は最近「一中各表」をあまり言わなくなっている。

 

韓国瑜は、安全保障を米国に、技術を日本に、市場を中国に頼りたい旨、述べたことがある。韓は3月下旬に訪中し、中国の国務院台湾事務弁公室主任(閣僚級)との会談をするなどしている。中国は、台湾の中央政府の頭越しに台湾の地方のリーダーへの接触を強めている。それに乗るような行動は、中国への警戒が弱いことをよく示していると言えよう。

いずれにせよ、中国側が総統選挙にネット等を通じた厳しい情報戦を従来以上の規模と強さで仕掛けることは間違いないであろう。

 

今年1月には習近平が、台湾を「一国二制度」の枠組みで統一すること、台湾の統一には武力行使を辞さないこと、などを明言した。次期総統選挙は今後の中台関係、ひいては地域の安定と平和をも大きく左右する重要な選挙である。もちろん現段階で帰趨を言うことは不可能であるが、ますます目が離せなくなってきている。【531日 WEDGE

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(王金平・元立法院長はその後予備選撤退を表明しています)

 

【「私は台湾独立を主張する政治家だ」との発言もある頼氏 対中姿勢明確化で追い上げる蔡氏】

ほぼ上記記事で現状は網羅されていますが、若干の補足・追加を。

 

まず、現職・蔡英文総統と頼清徳・前行政院長(首相)の一騎打ちとなっている与党・民進党の情勢。

 

民進党は昨年11月の統一地方選で大敗し、支持率が低迷する蔡英文氏の苦戦が続いています。

 

予備選挙は世論調査の数字で決まる仕組みですが、従前は中国対応を含めて何かと煮え切らない(よく言えば現実的)不人気な蔡英文総統に対し、対中国でより独立色を強く打ち出す頼清徳氏が大きくリードしていました。

 

****台湾、民進党の頼氏が中国批判 6月総統選予備選に名乗り****

台湾で来年1月の総統選に向けて与党、民主進歩党(民進党)の公認候補に名乗りを上げている頼清徳前行政院長(首相)が2日、中国当局が1989年に民主化運動を武力弾圧した天安門事件を批判するシンポジウムに出席し「台湾が中国にのみ込まれることを許さない」と述べ、中国の習近平指導部に対抗していく姿勢を表明した。

頼氏は台湾独立志向が強く、中国との対話姿勢を示す最大野党、国民党の候補者をけん制した形だ。民進党の候補者を決定する今年6月の予備選を控え、世論調査などで、頼氏は蔡英文総統より高い支持率を維持している。【62日 共同】

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頼氏は行政院長在任中に、立法院での答弁で「私は台湾独立を主張する政治家だ」と明言し、話題になりました。

(当然、中国は反発)

 

もちろん当選した場合、現在の中台情勢にあって、いきなり台湾独立を宣言するということもないとは思いますが、学者肌で波風立てる言動は避ける蔡氏よりは、中国との対立は鮮明化するでしょう。

 

****中国との「平和協定」は災難 台湾・頼清徳前行政院長インタビュー****

来年の台湾総統選挙への出馬を表明している与党・民進党の頼清徳、前行政院長(首相に相当)が東京都内で産経新聞のインタビューに応じ、「中国による統一攻勢が強化され、台湾の主権と民主主義は危機的な状況にある」との認識を示した。

 

その上で、野党・中国国民党が意欲を見せている中国との平和協定締結は「大きな災難をもたらす」と一蹴し、反対する立場を強調した。(中略)

 

来年1月に投票が行われる総統選については、民進党と国民党の対中政策が真っ向から対立しており、「中国の統一工作を受け入れるか否かを決める最も重要な選挙だ」と危機感を見せた。

国民党の有力候補は相次いで中国と「平和協定」を締結する意向を示している。頼氏は、中国が1951年にチベット政府と締結した協定を守らず、チベット人が弾圧されている現状を指摘。「平和協定は台湾にとって災難にほかならない」と力説した。

頼氏は自身の対中政策について、「国家の安全を守る態勢を増強したい」と述べ、対中国の「反浸透法」や「反併呑(へいどん)法」の立法を推進していく考えを明らかにした。

頼氏は行政院長に在任中、立法院(国会)で「私は台湾独立を主張する政治家だ」と答弁したことがあり、その主張が中国の武力行使を招くと警戒する声もある。これに対し、頼氏は「私が言う台湾独立とは、中国による浸透と併呑を阻止することだ」とし、総統選で当選しても「台湾の独立を(新たに)宣言することはない」と説明した。(後略)【512日 産経】

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蔡英文氏側は頼氏に、現職を優先して出馬を辞退するよう要請していましたが頼氏は拒否。

そこで、予備選挙の時期を延期して時間を稼ぎ、現職の強みを生かして露出を高め、何とか支持率を高める作戦に。

また、世論調査方法についても、蔡氏に有利となる方向で変更するなど、なりふり構わぬようにも見えます。

 

一定に蔡英文氏側の作戦が奏功して、現在は蔡氏の支持率が頼氏に並んだ、あるいは調査によってはリードしたとの報道も。ただ、全体としてはまだ頼氏がリードしているとも。いずれにしても接戦となっています。

 

蔡英文氏の支持率は、中国への対応を明確化し、同性婚などでの指導力を発揮する形で、反転上昇傾向にあります。ただ、先行する頼氏に届くかどうかは微妙な情勢です。

 

****台湾総統選は「米中代理戦争」の様相****

(中略)

反中を競い合う民進党二候補

蔡氏の支持率は、二〇一八年十二月に就任以降最低の二四%を記録した後、上昇に転じた。きっかけは、今年一月一一目に発表した対中政策に関する談話。

 

同日に中国の習近平国家王席が演説で、台湾に「一国二制度」の導入を呼びかけ、これに蔡氏が反論した。

 

一国二制度は「台湾の絶対的多数の民意が断固として反対」と表明し、中国との対話は「圧力や威嚇を用いて台湾人民を屈服させる企てであってはならない」と牽制した。

学者出身の蔡氏はそれまで摩擦やトラブルを避ける穏当な姿勢を貫いてきた。対中政策も「相手を刺激しない」ことを優先し、談話や演説で激しい言葉を避けた。これに対し、民進党の支持者から「顔の見えない政権」「中国に弱腰だ」と不満がくすぶっていた。

 

蔡氏は昨年十一月の統一地方選挙での民進党惨敗を受け「このままでは再選は厳しい」と周辺に説得され、従来の姿勢を転換。中国や政敵を厳しく批判するように変貌した。

 

自ら実現したい政策も周りの意見を気にせず、積極的に取り組み始めたことも奏功している。

 

蔡氏は今年四月に訪米した際、米国の要人らに中国の脅威を訴えた。トランプ政権が掲げるインド太平洋戦略について「台湾も積極的な役割を果としたい」と呼応し、中国当局を激怒させた。

五月に成立した法律で認められた同性婚も、長年、台湾の世論を二分する争点だった。

 

昨年十一月に実施した野党主導の住民投票では、反対多数の結果だったが、蔡氏は強いリーダーシップを発揮する。「国際社会の先進的な価値観を積極的に受け入れるべきだ」と力説し、迷う民進党所属議員の背中を押して立法を主導した。

法案に反対した国民党は、中国の伝統的な儒教にある「子孫の繁栄」「家庭の安定」を理由に挙げた。同性婚をめぐる攻防の根底にも、欧米と中国の価値観の対立があり、米中対立の断層が内政に投影されたと見ていい。(後略)【「選択」6月号】

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8日はレビ演説会も開かれたようですが、“2人が公開の場で顔をそろえるのは、3月に予備選への参加を届け出て以来、初めて”とのこと。10~14日には世論調査が行われますので、“初めてで、最後”でしょう。

 

****蔡氏・頼氏、公認争い接戦 民進党、近く決定へ 台湾総統選予備選****

来年1月の台湾総統選に向け、与党民進党は8日、党予備選への参加を届け出た現職の蔡英文(ツァイインウェン)総統(62)と、前行政院長(首相)の頼清徳氏(59)によるテレビ演説会を開いた。

 

党は10~14日に世論調査を行い、その数字をもとに今月半ばにも公認を決める。事前調査では、2人が激しく競り合っているという。2人が公開の場で顔をそろえるのは、3月に予備選への参加を届け出て以来、初めて。

蔡氏は政権を担った3年間について、「目指してきた政策の方向性に誤りはない。成果は徐々に出ている」と述べ、再選への支持を訴えた。こ

 

れに対し、頼氏は昨秋の統一地方選で民進党が敗れたことを挙げ、「人民はすでに結論を出している。再び失敗を繰り返すのか」と突き放した。

焦点になる対中政策をめぐっても、2人の主張はぶつかった。国際法学者だった蔡氏は中台関係の「現状維持」を訴える穏健派だ。一方の頼氏はより独立派色が強いとみられている。

蔡氏はこの日、「国際的な視野を持ち、情勢を把握して、交渉できるリーダーが必要だ」と主張。頼氏は「台湾が中国にのみ込まれて、第二の香港、第二のチベットになるわけにはいかない」と訴えた。

台湾メディアなどの支持率調査で、蔡氏は当初、頼氏にリードを許していたが、最近は積極的なテレビ出演や視察が奏功し、一部調査では頼氏を上回っている。蔡政権下で導入した所得税の減税効果が、有権者に実感され始めていることも影響している。

頼氏は今年1月まで政権ナンバー2の行政院長を務め、蔡氏を支える立場だった。しかし、3月になって突然、出馬を表明。党本部や蔡氏に出馬を取り下げて副総統候補になるよう説得されたが、応じなかった。

総統選は有権者の直接投票だ。2大政党に位置づけられる野党国民党の予備選には、昨年の統一地方選で同党大勝の立役者となった韓国瑜・高雄市長(61)や、鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘会長(68)が参加。国民党の公認候補は7月中旬ごろに決まる。【69日 朝日】

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【国民党 人気の韓国喩氏は日本の戦争責任を追及する立場】

長くなるので、国民党の方は簡単に。

 

出馬表明時、一時的に人気を博した鴻海(ホンハイ)精密工業会長の郭台銘氏ですが、さすがに中国本土の関係が強すぎて、支持も低迷しているようです。

 

“中国全土に工場を展開している郭台銘氏は、中国側の「一つの中国」の方針の受け入札を表明。米中貿易戦争による中国国内の景気後退は「台湾企業にとって、中国進出のチャンスだ」とく。”【「選択」6月号】

 

中国全土に工場を展開している郭台銘氏が、中国政府の意向に逆らえるとも思えません。万一、郭台銘氏が台湾総統になれば、台湾は「第二の香港」になるでしょう。

“「郭台銘総統」誕生が世界にもたらす“嫌な結末””【520日 加谷 珪一氏 JB Press

“ホンハイ・郭台銘が「台湾版トランプ」になり得ない理由”【510日 立花 聡氏 WEDGE Infinity

 

現在、有利な立場にある高雄市長・韓国瑜氏については、以下のようにも。

 

****人気の韓国喩氏は「反日」****

(中略)一八年、民巡党の牙城だった高雄市の市長選に立候補した時は「落選確実」と熔印を押された。

それでも「八百屋のおやじ」と自称し、お笑い芸人のような軽妙な話し方がネットで話題に。瞬く問に人気が沸騰し「韓国喩現象」と言われるほどブレークした。

韓氏はエリートではなく、同じく国民党の馬美九氏が総統を務めていた時期も冷遇された。にわかに人気を博したことは、米国のトランプ大統領の当選と同じように、世界各国で見られる右寄りのポピュリスムの流れに乗っただけとの見方もあり、その人気がいつまで続くのか予断を許さない。

中国の李克強首相の母校、北京大学の大学院に留学した経験をもつ韓氏は、習政権による台湾への外交、軍事的な圧力について「対話で解決すべきだ」と繰り返してきた。今年三月に訪中し、中国政府の台湾政策部門トップと会談。

 

中国各地に高雄産の果物などを売り込む「台湾のトップセールスマン」を自任し「政治より経済が大事」との持論を前面に掲げて挑む。

ただ韓氏は、民進党候補と異なり、日本にはやっかいだ。日本の戦争責任を追及する立場で、若い時から対日戦争賠償を求める運動に関わってきた。(後略)【「選択」6月号】

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【第三の候補をうかがう台北市の柯文哲市長】

1月の本選に向けては、上記の民進党・国民党候補以外に、台北市の柯文哲市長も出馬の意向を示しています。

 

外科医から市長に転じ、無所属政治家として支持を集める柯氏は「私の目的は2大政党に不満を抱く人々の受け皿になることだ」と述べています。

 

中国との関係については、民進・国民の中間路線。

 

“米中どちらにも与せず、台湾独白の道を歩むべきだという何氏の主張には「現実的ではない」との批判も聞かれる。だが、民巡党と国民党の長年の対立に飽きた有権者の間から、高い支持が集まっていることも事実だ。”【「選択」6月号】

 

最大の「親日国」である台湾、中台関係の動向は日本を含めた東アジア全体に大きく影響しますので、台湾総統選挙の今後の動きが注目されます。

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日韓関係 凍り付く政治のなかで、韓国の“日本ブーム”日本の“第3次韓流ブーム”

2019-05-30 23:25:12 | 東アジア

(日本最大のコリアンタウンである新大久保がいま、平日でも歩道が歩けないほど、韓流ファンや観光客でにぎわっており、駅のホームから改札口に出るまで混雑で30分近く掛かることもあるとか。【2018825日 桐島 クジャク氏】より)

  

【凍り付いた日韓関係】

日本と韓国の関係が、慰安婦や徴用工訴訟、水産物輸入制限などをめぐって対立し、これまでになく険悪な状況にある・・・という話は、山ほど、掃いて捨てるほどの記事がありますります。

 

また、韓国内における、日本統治時代を想起させる事物、芸能人などの言動、旭日旗等々に対する(日本からすれば)理不尽とも思える、あるいは、ため息のでるような反日的な反応についても、これまた掃いて捨てるほどの記事があります

 

同様に、日本国内のネットには嫌韓的なものが溢れかえっているのでしょう。

 

政治的にも、両国間は極めて“冷たい”対応ともなります。

 

****日韓外相会談 「凍り付いた雰囲気」と韓国紙****

日韓外相会談では、いわゆる徴用工訴訟問題をめぐる対立が鮮明となった。韓国メディアは24日、河野太郎外相と康京和(カン・ギョンファ)外相による会談の場が「終始、重く凍りついた雰囲気」(朝鮮日報)だったと報じた。

 

(中略)会談冒頭、河野氏が「(徴用工問題への対応に関する韓国外務省報道官発言に関して)事の重大性を理解していない大変な発言だ」と批判したのは当然のことだ。

しかし、韓国では各メディアが河野氏の発言を「外交的欠礼」と批判している。(後略)524日 産経】

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****日本の「韓国バッシング」が深刻 訪日の野党議員****

韓国国会外交統一委員会の尹相現(ユン・サンヒョン)委員長(最大野党・自由韓国党所属)は29日、東京で韓国人特派員と懇談し、自民党の渡辺美樹参院議員(参院外交防衛委員長)と会談した内容などを伝えた。(中略)

また、渡辺氏との会談について、日本側から3〜4人が同席すると聞いていたが「1人で現れた」と述べ、外交の現場で日本側の「韓国バッシング」を痛感したと語った。懇談に同席した自由韓国党の兪奇濬(ユ・ギジュン)議員は、日本でこれほどの冷遇は初めてだと伝えた。【529日 聯合ニュース

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【韓国内での“日本ブーム” 反日とは異なる雰囲気も】

そうした冷え切ってきるようにも見える日韓関係ですから、日本の飲食店を集めた“ジャパンタウン”を韓国につくろうという計画が“反日”的な反対にあってとん挫しているというのは極めて“当然”の話にも思えます。

 

****「昭和の東京」はあるのに…韓国で物議を呼んだ「ジャパンタウン」はその後どうなったのか****

韓国・京畿道(キョンギド)のべゴッ新都市に「ジャパンタウン」が作られるという情報を受けて、韓国のネット上を賛否が起きたニュースのことを覚えているだろうか。

 

大阪の有名飲食店50店ほどが上陸し、日本の味や文化などを堪能できるというのがジャパンタウンの売り文句にしてコンセプト。ここ数年、大阪・福岡・東京を中心に日本を訪れる韓国観光客は増え続けており、日本商品への関心も高まっていることを受けてのプロジェクトでもある。

 

それだけにそのニュースに触れたとき、「ジャパンタウンの造成は歓迎されてもおかしくなさそうだな」と思っていたが、そのことが韓国メディアで多く報じられるとネット上では当然というべきか、激しい賛否両論が巻き起こった。

 

韓国の「ジャパンタウン」はどうなった?(中略)

 

こうした状況を受けて(計画を主導する)キム社長は4月の時点で韓国メディアに「ジャパンタウンという名前を変える予定」とも話しているが、それ以降、パッタリ情報は途絶えてしまっている状況だ。もしかしたら、すでに計画は頓挫してしまったのかもしれない。(中略)

 

キム社長は「毎年150万人以上の韓国人が日本旅行に出かけ、すでに韓国には数多くの日本料理店が存在するにも関わらず、このような反応が出るとは知らなかった」と明かしているが、筆者も同じ思いだ。

 

“ジャパンタウン”という名称は使われなくとも、多くの日本飲食店が韓国に上陸し、日韓の食文化の交流を深めてほしいと思うのだが……。【530日 S-KOREA

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韓国側のステレオタイプな反日的反応、それを警戒する日本側・・・・というのは今更の話なのでパス。

 

この記事でむしろ注目すべきは、“ジャパンタウン”が計画されるほど、韓国内において日本食文化への関心が高いという点、それと、“このような反応が出るとは知らなかった”というキム社長の言葉です。

 

一点目の韓国内での“日本ブーム”とそれへの批判という点では、下記記事も似たような話でしょう。

 

****「日本大好き」の自国民を「売国奴」と罵る韓国社会****

515日、韓国の渋谷とも言われる「若者たちの街」、弘大前(ホンデアップ=弘益大学の前のショッピングタウン)は、朝早くから午後遅くまで前代未聞の長い行列が作られた。幅23メートルほどの狭い歩道に2列に並んだ行列は、周辺の地下鉄駅まで約900メートルも続き、一帯は大混雑となった。(中略)

 

韓国のファッションタウンを熱狂させた日本人デザイナー

この前代未聞の長い行列を作った主人公は、日本の有名デザイナー阿部千登勢だ。阿部千登勢のファッションブランド「sacai」と、グローバルスポーツブランドのナイキとのコラボ商品「ナイキ・sacai」の発売イベントが、この日、弘大前のナイキストアで行われたのだ。(中略)

 

韓国人に愛される日本ファッションブランドは、阿部千登勢の「sacai」だけではない。パリを拠点とする世界的なデザイナー「イッセイミヤケ」は、韓国女性が最も愛するデザイナーであり、ファッションブランドである。(中略)

 

韓国で人気を呼んでいる日本ブランドはハイファッションの分野だけではない。日本のファーストファッションブランドの「ユニクロ」は、韓国人の「国民服」というニックネームを持っている。(中略)

 

他にも、日本料理や日本酒、日本食品、日本生活用品など、生活に密接した製品を中心に多くの日本文化や日本製品が韓国の消費者を魅了している。最近では、韓国の富裕層の間で日本の不動産投資がブームだというニュースも聞こえてくる。

 

その一方で、韓国社会では日本製品が人気を呼んでいる現象を批判する声も少なくない。

 

インターネット新聞「I」紙は、「日本なのか、韓国なのか? 日本産食品に占領された新世界百貨店食品館」というタイトルで、江南の人気百貨店のテパ地下を訪れた記者のルポを掲載した。(中略)

 

また日刊紙「M」紙のインターネット版は、「日本よりイルパ(日本文化愛好家)がもっと嫌いです」というタイトルで、日本製品と日本文化に陥った韓国人を非難した。(中略)

 

最近、世界的に流行っている韓流ブームは、韓国人と韓国メディアを大きく盛り上げている。特に、多くの韓国メディアが、日本の若者の間で韓流が大きな人気を博している現状を大々的に報じ、「悪化した韓日関係修復の糸口になるもの」と期待を寄せている。

 

しかし一方で、韓国社会に浸透する日本文化に対しては、清算すべき対象とみなし、これを享受する人々を「売国奴」「親日派」と非難しているメディアや韓国人が存在する。(後略)【524日 李 正宣氏 JB Press

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反日的な批判に眉を顰めるだけでなく、一部の者が反日的批判を振りかざさなければいけないほど、日本由来の商品が韓国社会で人気を得ているという現実にも注目する必要があります。

 

そうした日本商品が人気を博する現実があるので、二点目の“このような反応が出るとは知らなかった”というキム社長の言葉にもなる訳ですが、キム社長のような言葉が出るということは、メディアにあふれている反日的な言動と、一般市民の感覚には大きな隔たりがあること、韓国一般市民・消費者は日常的には“日本”のことをさほど否定的に意識していないのではないか・・・とも推察されます。(もちろん、「日本を、慰安婦を、徴用工をどう思うか?」と聞かれれば、予想される答えが返ってくるのでしょうが)

 

韓国における“日本ブーム”の背景には、好転する日中関係同様に、旅行者の増大があると指摘されています。

 

****「韓国で日本ブーム拡大」と韓国紙、背景に若者の日本旅行増加****

歴史問題などをめぐる日本と韓国の対立が先鋭化する中、朝鮮日報は「韓国で日本ブームが拡大」と報じた。背景にあるのは最近の若者を中心とした日本旅行の急増。「若者たちは日本で経験した日本のブランド、食べ物などを韓国でも消費している」とみている。

朝鮮日報によると、ソウル市麻浦区の地下鉄合井駅から弘益大学方面に向かう通りには日本語が書かれた看板が並んでいる。すし屋から居酒屋、ラーメン店までジャンルも多彩だ。周辺の軽食店の経営者は「45年前からテント式の屋台やクラブがあった場所に日本の飲食店ができ始めた。ここは日本なのか韓国なのか戸惑うほどだ」と話した。(中略)

日本スタイルの流行の背景として朝鮮日報は「最近の日本旅行急増と密接に関係している」と指摘する。昨年日本を訪れた韓国人観光客は754万人で16年の509万人に比べ、2年間で48%も増えた。

特に2030代の若者を中心に格安航空会社(LCC)で日本に出掛ける人が増加し、悪化する一方の日韓関係をよそに日本ブランドの食べ物や服などは韓国の消費生活に深く食い込んでいる。

 

専門家は「実用性を強調する日本スタイルに韓国の消費者が引き寄せられている。韓国企業の対応が遅れれば、韓国の消費市場で日本ブームはさらに強まるのではないか」と分析している。【511日 レコードチャイナ】

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ネット情報より、自分の目で確かめるのが一番。最近は本当に手軽に日韓を行き来できるようになったようです。

 

****日本往復便が乗り放題で28000円!!韓国LCC激安チケット販売の背景****

「日本11都市往復の無制限搭乗チケットがなんと299000ウォン(約28000円)!

 

今月、韓国の格安航空会社(LCC)エアソウルが発売した破格の激安チケットだ。韓国の仁川(インチョン)空港から成田・大阪・福岡・沖縄・札幌・静岡・高松・広島・米子・富山・熊本の11都市を、何度でも自由に往復できるという。期間は61日から719日までの49日間だ。(後略)【529日 FNN】

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【日本では、政治に関心がない10代〜20代がけん引する第3次韓流ブーム】

一方、嫌韓的な雰囲気が溢れているようにも思える日本から韓国を訪れる観光客も増大しています。

 

****訪韓外国人観光客数が好調、日中の観光客が大きく増加=ネットから喜ぶ声****

2019522日、韓国・朝鮮日報によると、韓国観光公社は同日、先月の訪韓外国人観光客の数が昨年同月比228%増の1635066人を記録したと発表した。

韓国観光公社の発表によると、国別では中国が493250人で最も多く、日本(2992人)、台湾(113072人)、米国(102524人)が後に続いた。

中国人観光客は昨年同月比345%増加、日本人観光客は357%増加した。日本人観光客の増加は、最大10連休となったゴールデンウイークの影響が大きいとみられている。(後略)【524日 レコードチャイナ】

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単に“10連休の影響”だけでなく、日本国内にあっては“第3次韓流ブーム”が起きているそうです。

 

****韓国でも話題に 政治に関心が薄い10代〜20代が第3次韓流ブームを牽引****

<日本と韓国の往来は1000万人を突破。政治に関心が薄い10代から20代がグルメ主体の第3次韓流ブームを牽引している>

韓国マスコミ各社が日本の第3次韓流ブームを取材している。第1次韓流ブームは日韓サッカーワールドカップの直後で、韓国ドラマ「冬のソナタ」の放映がきっかけだった。続いてK-POPが人気となり、韓流ドラマやK-POPで育った世代が、グルメ主体の第3次韓流ブームを牽引している。

「嫌韓は、心配していたほどではなかった」

東京・四谷の韓国文化院で、201959日、同院開院40周年記念特別企画展「2019韓国工芸の法古創新〜水墨の独白」の開幕式が行われた。黄星雲(ファン・ソンウン)院長は、聯合ニュースの取材に、着任前は日本国内の嫌韓に対する懸念があったが、心配していたほどではなかったと答えている。

 

黄院長は前年10月の着任直後に新大久保を訪れ、K-POP関連商品の販売店や韓国料理店に大勢の人が訪れるのを見て驚いたという。(中略)

韓国食ブームを牽引する10代から20
韓国ドラマやK-POPは下火になったが、近年、韓国グルメが浮上した。定番とされていた焼肉やキムチなどではなく、韓国で人気が出はじめた料理がリアルタイムで広がりはじめたのだ。(中略)

韓国食ブームを牽引しているのは、主に10代から20代の若い世代である。数年前まで中国人が占領していたソウルの繁華街・明洞は日本人で溢れかえり、日本のテレビや雑誌で紹介された飲食店など、韓国人客より日本人客の方が多い店すらある。(中略)

1次・第2次韓流ブームを牽引したのは30代以上で、政治に関心が高い世代でもあり、ブームは政治情勢に作用される。

 

一方、新たな韓流ファンは、第1次韓流ブームを牽引した祖母・母親世代の影響を受けながら成長した世代で、政治への関心が薄い世代でもある。【530日 Newsweek
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同様の内容を取り上げた記事も。

“グルメが火を付けた日本の新韓流 中心は1020代の若者”【515日 聯合ニュース

“日本に巻き起こる新韓流ブーム 10〜20代が主導”【5153日 聯合ニュース

 

一方、日本国内高齢者には、相変わらず根強い嫌韓感情があります。

 

****「なぜ嫌韓は高齢者に多いのだろうか」を改めて考える****

肌感覚で感じていた「嫌韓は若者より高齢者に多い」ということをコラムで取り上げたところ、異論が続出しているという批判的な記事がネット上に出た(「毎日新聞『なぜ嫌韓は高齢者に多い?』の記事に異論でまくり」)。(中略)

 

否定しがたい世代間の温度差

ただし、内閣府の世論調査を見る限り、現在の対韓意識には世代間の温度差が確実に存在する。(中略)

 

「親しみを感じる」と答えた人が5割を記録した2000年以降の調査を見てみよう。興味深いのは、いつも大きな世代差があるわけではないことだ。

 

常に若者の方が韓国を好意的に見ているのだが、好感度が過去最高だった09年には20代と70歳以上の差は5ポイントしかなかった。

 

ところが、日韓関係が暗転した12年にはこの差が30ポイントに拡大し、13年も24.2ポイント、好感度が最悪となった14年に31.8ポイントとなった。

 

1517年にはいったん格差が縮小したが、18年は再び27.8ポイントに広がった。好感度の低下を主導したのが高齢層であることがうかがえる。(中略)

 

弁護士への懲戒請求は平均年齢55

コラムでも取り上げたのが、朝鮮学校への補助金支出を批判するブログにあおられて約1000人が弁護士への懲戒請求を行った問題だ。匿名でできるというブログのウソを信じて署名なつ印した書類を弁護士会に送り、逆に弁護士から損害賠償を求められているというお粗末な話である。

 

NHKの「クローズアップ現代+」が昨年1029日に放送した「なぜ起きた? 弁護士への大量懲戒請求」の番組内容を紹介している公式サイトによると、懲戒請求を送った人のうちNHKの調べで住所などが判明したのは470人。平均年齢は55歳で、およそ6割が男性。職業は、公務員や医師、主婦や会社経営者など幅広かった。

 

接触に成功した91人に聞いた動機として最も多かったのは、「日本をよくしたいという正義感から」だったという。

 

この番組では背景として、自分が好む情報ばかり表示される「フィルターバブル」や同じ情報ばかりが行き交う「エコーチェンバー(共鳴室)」と呼ばれる現象がネット上では起きやすいと指摘。

 

さらに、匿名性の中で意見が過激化しやすい「脱抑制」や、より強い意見に引きずられる「集団極性」という現象もネット上に見られ、結果として極端な行動に出やすくなるという見方が示された。(中略)

 

冒頭に述べたように、きちんとした根拠のある批判はなんら問題とされるものではない。そして近年における韓国の対日外交には批判されるべき点が多いのも事実だ。

 

実際には、日韓両国を取り巻く過去30年の環境変化を見れば、韓国側の理屈はそれなりに理解できるものだ。そう考える私にしても近年の韓国外交には批判的な見方をせざるをえないのだから、不快に感じる人がいても不思議ではない。

 

しかし、だからといって根拠のない決め付けが許されるわけではないし、排外主義など論外である。感情的な議論は、自らの国益を害することにもなる。

 

在韓日本大使館に勤務した経験のある友人と「韓国に対してうんざりするのと、根拠のない決め付けに基づく嫌韓やヘイトスピーチは区別する必要がある」と話しているのだが、その区分があいまいにされがちなのも現在の日本における大きな問題だろう。【521日 WEDGE

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政治には関心がない(“関心がないゆえの”と言うべきか)若者層がけん引する韓国の日本ブーム、日本の第3次韓流ブームですが、こうした人々が増えれば政治の流れに変化も期待できる・・・・でしょうか?

 

いずれにしても、メディアやネットにあふれるステレオタイプな反日・嫌韓だけでない現実もあることは注視する必要があるでしょう。

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香港  「逃亡犯条例」改正案で岐路に立つ「一国二制度」・高度な自治

2019-05-19 22:00:02 | 東アジア

11日、香港立法会でつかみ合う民主派議員と親中派議員【511日 共同】)

 

【形骸化が進行する「一国二制度」】

香港の「一国二制度」が形骸化し、中国本土に取り込まれつつあることは今更の話です。

 

2014年の雨傘運動のような香港側の反対運動がときに盛り上がりますが、社会・政治の基盤となる経済面において、外堀を埋めるかのように本土経済との一体化が進展しています。

 

****中国「大湾区」構想が注目 広東、香港、マカオ一体化 1国2制度形骸化も****

北京で開会中の全国人民代表大会(全人代=国会)で、習近平指導部が広東省と「1国2制度」下にある香港、マカオを一体化させて大経済圏を築く「ビッグベイエリア(大湾区)構想」が注目されている。

 

香港の分科会では構想を支持する声が相次いだ一方で、香港の民主派からは高度な自治を保障する「1国2制度」の形骸化を懸念する声もある。

 

構想は2月に本格始動。中国の先端都市である広東省深センや広州などの9都市に加え、国際金融都市の香港、カジノで知られるマカオを中心に経済交流を活性化させ、2035年までにハイテクや新産業の重要な発信地にする内容。

 

中国メディアによると、18年の域内総生産(GDP)は約1兆6500億ドル(約185兆円)で、米ニューヨーク周辺一帯25郡の規模に並ぶ。現代版シルクロード構想「一帯一路」とも連動し、往来やビジネス、物流、教育分野などの交流を盛んにする。

 

これに先立ち中国政府は大湾区構想の中核となるインフラ整備を進め、昨年9月に広東省と香港を結ぶ高速鉄道が開業。同10月には広東省と香港、マカオを結ぶ世界最長(約55キロ)の「港珠澳大橋」が開通した。

 

ただ、中国との一体化が進むことに、香港の民主派からは「大湾区構想によって中国と香港の融合がさらに進めば、香港の『1国2制度』は消滅してしまう」(毛孟静立法会議員)といった見方も出ている。

 

7日に開かれた分科会中、香港代表団の馬逢国団長は毎日新聞に、民主派側の懸念について「『1国2制度』を脅かすことはあり得ない。それぞれの地域の特徴を十分に生かすものだ」と語った。【39日 毎日】

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政治的にも、「一国二制度」・高度な自治を形骸化する“中国寄り”の姿勢が加速しています。

 

****香港、「雨傘運動」デモ発起人2人に禁錮16月の実刑判決****

香港の選挙制度の民主化を求めた2014年の大規模デモ「雨傘運動」をめぐる裁判で、香港の裁判所は24日、デモの発起人であるとして有罪判決を受けていた大学教授2人に禁錮16月の実刑判決を言い渡した。

 

禁錮16月の実刑判決を受けたのは香港大学の社会学教授、陳健民氏と同法学准教授の戴耀廷(ベニー・タイ)氏で、2人は公的不法妨害などの罪に問われ有罪判決を受けていた。 【424日 AFP】AFPBB News

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今回量刑が言い渡された二名を含め、「雨傘運動」を主導したとされる活動家リーダーら9人は48日に有罪判決が言い渡されていました。

 

9人はまれにしか使われない英植民地時代の法律に基づき公的不法妨害などの罪に問われ、全員少なくとも1つの罪状で有罪となった。”【49日 AFP】

 

また、、元学生リーダーで民主活動家の黄之鋒氏も。

 

****香港「雨傘運動」主導の民主活動家、二審も実刑判決****

香港の若者らが民主的な行政長官選挙の実現を求めて中心部を占拠した2014年のデモ「雨傘運動」で、裁判所の命令に反して当局によるデモ隊の排除を妨害したとして法廷侮辱罪に問われた、元学生リーダーで民主活動家の黄之鋒氏(22)に対し、香港の裁判所は16日、禁錮2カ月の実刑判決を言い渡した。黄氏は判決後、収監された。

 

黄氏は昨年1月の一審で禁錮3カ月の実刑判決を受け、上訴していた。二審となる今回の判決は、黄氏が犯行当時、未成年だったことを考慮して、1カ月短い禁錮2カ月とした。

 

雨傘運動をめぐっては、民主的な行政長官選挙の実現に後ろ向きな中国政府に圧力をかけるため、道路など公共の場所の占拠を提唱した香港大の副教授らに対し、香港の別の裁判所が4月、禁錮1年4カ月の実刑判決を言い渡し、副教授らは収監された。【516日 朝日】

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今後再び「雨傘運動」ような“不祥事”が起きないように、中国本土政府の意を受けて、香港当局は徹底した責任追及を行う構えのようです。

 

【「高度な自治」を捨て去る自殺行為ともなりかねない「逃亡犯条例」改正案】

その香港で、「一国二制度」・高度な自治を形骸化をめぐりホットな論争となっているのが、香港から中国本土への犯罪容疑者の引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」の改正案審議です。

 

****香港で「13万人」がデモ 犯罪人移送の条例改正反対****

香港民主派は28日、中国本土への容疑者引き渡しが可能になる条例改正に反対するデモを行った。

 

主催者発表で約13万人(警察発表は22800人)が参加。大規模デモは3月末に続き2回目で、前回の12千人(同5200人)より大幅に増加、市民の反発が強まっている。

 

香港立法会(議会)では、香港当局が拘束した容疑者の中国本土への引き渡しが可能となる「逃亡犯条例」改正案を審議中で、政府は7月の休会前に可決させたい考え。デモ参加者らは条例改正方針の撤回を求め、立法会まで行進した。【428日 共同】

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****香港議会で衝突、議員ら負傷 犯罪人移送条例巡り対立****

香港立法会(議会)で11日、中国本土への容疑者引き渡しが可能になる「逃亡犯条例」改正案の審議を巡り、民主派と親中派の議員がもみ合いとなり、議員ら数人が床に倒れるなどして負傷した。

 

民主派は、条例が改正されれば、中国共産党に批判的な活動家らが本土に引き渡される恐れがあるとして猛反発しており、混乱が深まっている。

 

11日は法案委員会が開催される予定だったが、中止となった。香港メディアによると、民主派と親中派は法案委員長選出などを巡り対立。前日から議場に泊まり込んでいた民主派議員らと、親中派議員らが複数回、激しくもみ合った。【511日 共同】

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いわゆる「民主派」だけでなく、「親中派」の議員・経済界にも異論があるようです。

 

****「中国へ容疑者移送」香港紛糾 条例審議入れず、親中派からも異論****

中国本土から逃げてきた刑事事件の容疑者を中国側に引き渡せるようにする香港の「逃亡犯条例」改正案に反対する動きが、勢いを増している。

 

市民の自由の制約につながるとして、中国に批判的な民主派に加え、親中派や外国からも異論が噴出。中国政府は譲歩を認めない方針とされ、板挟みの中で立案した香港政府の基盤が大きく揺らぐ事態となった。

 

14日早朝、香港立法会(議会)。逃亡犯条例改正案を審議する委員会の会議室には、普段はスーツを着ている民主派議員がTシャツ姿などのラフな格好で集合した。親中派議員が入室すると「違法開催だ」と叫び、激しいもみ合いに。委員会はわずか10分ほどで中止された。

 

香港政府の改正案提出から約40日が経つが、民主派の反対で委員長さえ選べず実質審議に入れていない。

 

親中派が多数を占める立法会で民主派が勢いづく背景には、「中国当局が事件をでっちあげ、香港の民主活動家が中国本土に引き渡される」との主張が市民の間に浸透しつつあるからだ。

 

4月末のデモ行進には主催者発表で約13万人(警察発表は約2万3千人)が参加し、2014年の民主化デモ「雨傘運動」以降、最大級のデモとなった。

 

親中派も一枚岩ではない。「中国とのビジネス上のトラブルが刑事事件として立件される」と警戒する経済界を支持基盤とする一部政党は、審議の先送りを公然と主張している。

 

14日に発表された香港大の世論調査によると、林鄭月娥行政長官の支持率は44・3%に急落。17年7月の就任後、最低の水準で、政権運営は試練を迎えている。

 

米国議会が今月、「香港にいる米国人のリスクが高まる」とする報告書を発表するなど、国際的な懸念も高まっている。

 

香港政府が掲げてきた条例改正の必要性にも、疑義が向けられた。昨年、台湾で起きた殺人事件で容疑者の香港人が香港に戻り、台湾当局の訴追を免れたことが改正の理由だが、台湾当局は今月9日、「香港から台湾人が中国本土に引き渡される」として、改正案に反対の立場を表明した。

 

 成立へ中国政府圧力

各方面から「集中砲火」を浴びる香港政府だが、今年7月までの成立をめざす方針を変えていない。中国と香港の関係に詳しい香港の外交筋によると、中国政府から民主派に譲歩しないよう圧力を受けているという。政府の方針が民意に振り回される事態が本土に飛び火することを警戒しているためとみられる。

 

実際、香港では03年、国家の分裂や政権転覆につながる動きを禁じた「国家安全条例」の立法に反対する大規模なデモが発生し、撤回に追い込まれた。

 

香港で最も市民の対立が大きい政治テーマになり、香港政府は中国政府から繰り返し立法化を要求されても慎重な対応を続けてきた。

 

民主派の活動家の一人は漏らす。「国家安全条例で摘発されても香港の刑務所に収監されるだけだが、逃亡犯条例改正案が成立すれば身柄が中国に引き渡されることもある。逃亡犯条例の方がはるかに脅威だ」

 

中国本土と香港の司法制度の違いは大きい。中国では司法機関共産党の指導下にあり、最高裁長官にあたる最高人民法院の院長は17年、「司法の独立など西側の誤った思想は断固拒否する」と発言した。中国は死刑の執行数が世界で最も多いとされるが、香港は93年に死刑制度を廃止している。【515日 朝日】

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香港政府は条例が改正されても、中国からの「政治犯」移送の要請は拒否するとしているようですが、香港政府の意向など中国本土政府の前では何の意味もなさないでしょう。

 

****逃亡犯条例 香港の自由守りぬけ****

香港立法会(議会)が、犯罪人の中国本土への引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正審議で紛糾している。改正されれば、香港で中国批判の言論は影を潜め、政治的自由は形骸化しかねない。

 

(中略)香港政府は条例が改正されても、中国からの「政治犯」移送の要請は拒否するとしている。だが、中国本土では多くの民主、人権活動家が政治犯罪とは別件で勾留・逮捕されており、香港政府の説明は説得力を欠く。

 

さらに、外国人の香港への旅行者やビジネスマンらも中国本土への引き渡し対象となり、ことは中国と香港だけの問題にはとどまらない。

 

米国政府は五月、条例改正について「米国と国際企業にとって、安全なビジネス環境としての香港の優位性が失われる」とする報告書を発表した。中国に批判的な外国人にとっても、香港は安全な場所とはいえなくなる。

 

国際社会が、香港に対する中国の政治的干渉に疑心暗鬼になるのは、香港返還の際に国際公約したはずの「一国二制度」を骨抜きにする振る舞いをだんだんと露骨にしているからである。

 

二〇一七年の共産党大会の演説では、中国の習近平国家主席は「香港の全面的な管轄権を握り締める」とまで言い切った。

 

香港住民の動きに目を移せば、挫折はしたものの、香港住民は一四年、行政長官選挙の民主化を求める七十九日間の「雨傘運動」を闘い抜いた。

 

抗議デモに続き、立法会占拠の動きもある。暴力は避けねばならぬが、香港の民主的な自由を守ろうとする住民の気持ちが失われていないのは心強い。

 

条例改正は、香港自身が「高度な自治」を捨て去る自殺行為に近いように映る。立法会には丁寧で真剣な議論を望みたい。【518日 東京】

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【朝日】にある改正案に反対する親中派というのがどの程度の数なのか知りませんが、全体的には立法会は親中派が多数を占めていますので、数の力で押し切る可能性が大きいようにも思えます。

 

ここまで問題が大きくなった以上、習近平指導部も今更後には引けないでしょう。

 

そうなると、いよいよ香港の政治的独自性は・・・ということです。

現状でも香港当局は中国本土の意向で動いており、「高度な自治」は形骸化しています。

 

****天安門事件30年、陰る香港 国際会議断念、会場を台湾に変更 民主派団体、入境拒否を懸念****

1989年6月に起きた中国の天安門事件から30年を迎えるのを前に、中国の民主化の現状などを話し合う国際フォーラムが18日、台北で始まった。

 

主催者側は香港での開催を希望していたが、中国に批判的な人物に対する香港当局の入境拒否が近年相次いでいることを考慮し、断念した。

 

主催は香港の民主派団体「香港市民支援愛国民主運動連合会」など。この日は、当時の学生リーダーで、事件後に出国した王丹氏らが登壇し、明らかになっていない事件の死傷者数などについて議論した。同会によると、登壇者で現在も中国に住む人はいないという。

 

香港は高度な自治が保障される「一国二制度」が適用されている。しかし、中国の習近平(シーチンピン)政権は香港と台湾が独立運動で連携するのを警戒し、香港当局への圧力を強化。近年は、政治的な理由とみられる入境の拒否が相次いでいる。

 

王氏も過去に香港当局から入境を拒まれた経験がある。このため、主催者側は、フォーラムの他の出席者も香港入りできないことを危惧し、香港での開催をあきらめたという。台湾側の共催団体「華人民主書院」の曽建元・主席は取材に、「中華圏において民主化を果たした台湾は、中国の将来や変革を議論するのに適した場所だ」とアピールした。

 

香港政治に詳しい立教大の倉田徹教授はフォーラムが台湾で開催された経緯について、「欧米の人権団体が拠点を置き、中国の人権や民主化の情報を国際社会に英語で発信できる香港で、言論や研究活動が不自由になることは非常に問題だ」と懸念を示した。【519日 朝日】

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「逃亡犯条例」改正案が成立すれば、中国に批判的な人物は入境拒否ではなく、拘束され「中国当局が事件をでっちあげ、中国本土に引き渡される」危険性も。

 

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韓国  ベトナム戦争参戦の残した傷跡 歴史に向き合うこと難しさ

2019-04-17 23:01:39 | 東アジア

(サッカー・ベトナム代表監督の朴恒緒。20179月に就任後、ベトナム国内で英雄となっている【124日 YAHOO!ニュース】)

 

【ベトナム戦争参戦の“落とし子” ライダイハン】

朴正煕政権下の韓国がアメリカに追随してベトナム戦争に参戦し、住民に対する多くの虐殺・暴行や女性への性的暴力に及んだことは周知のところで、その象徴的な存在が、下記の「ライダイハン」と呼ばれる韓国人兵士と現地ベトナム人女性の間に生まれた子供たち(今では50歳前後になっていますが)です。

 

今回、この種の問題を取り上げたのは、当時および現在の韓国の対応を非難するためではなく、人権などに対する意識が希薄な時代の戦争・支配といった環境下における自国の歴史に向き合うことの難しさをくみ取るためです。

 

韓国政府や現在の韓国内ネットのこの種の問題に対する反応に「身勝手さ」を感じるとすれば、韓国・中国との間に同種の歴史を有する自分たち日本の反応についても、同種のものが潜んでいないのか・・・ということの参考にするためです。

 

****ライダイハン****

ライダイハンとは、大韓民国(以下、韓国)がベトナム戦争に派兵した韓国人兵士と現地ベトナム人女性の間に生まれた子供、あるいはパリ協定による韓国軍の撤退と、その後のベトナム共和国(南ベトナム)政府の崩壊により取り残された子供のことである。

 

郷新聞によれば、ベトナム戦争が終わって残された子供は少なくとも3000人以上、23万人との推算もある。ベトナム人女性が韓国兵や会社員などと結婚し生まれた子どももいるとされるが、韓国兵による強姦によって生まれた子どもも多数存在し、国際問題となっている。(中略)

 

ライダイハンの正確な数は、諸説ありはっきりしない。1500人(朝日新聞199552日)、2千人(野村進)、500万人(産経新)、最小5千人・最大3万人(釜山日)、7千人、1万人以上(名越二荒之助など)などの説がある。

 

出産者数だけでもこの人数であり、実際の強姦の被害者数はこの数倍だと考えられる。

 

彼らの中には父親の記憶を持たず、朝鮮語を話せず、写真だけが唯一残された思い出という者がいる。韓国との混血児は名乗りでないとの主張もある。正確な調査が行われないまま、援助団体が支援を主張したため、数が膨れ上がったとの批判もある。

 

ライダイハンの原因

原因については韓国軍兵士による強姦、兵士や民間人が「『妻』と子供を捨てて無責任にも韓国に帰国したこと」とする現地婚、「ベトナム人には美人が多いので、女は皆、慰安婦にさせられた。」とする慰安婦(非管理売春)などと複数のことが言われている。

 

ただし、南ベトナム解放民族戦線が放送によって、韓国軍による拷問や虐殺事件、あるいは婦女子への暴行事件を連日報じていたことは事実であり、各地の韓国軍による虐殺、暴行事件の生存者の証言に共通する点としても婦女に対する強姦が挙げられている。

 

戦闘終了後の治安維持期に入って、ようやく韓国軍は表向きに兵士の行動を律したが、その後も猛虎師団青龍旅団白馬師団などの兵士が、村の娘を強姦して軍法会議にかけられる事件が頻発している。

 

他方、韓国軍の兵士がベトナム人の母と子を置き捨てて帰国したため、軍司令部が再志願させてベトナムに戻し、結婚式を挙げさせた旨が伝えられている。

 

背景

当時、韓国の朴正煕政権は反共を国是とし、分断国家としての共感を訴えて派兵を推進した。安聖基は「参加する方では『男に生まれたからには、一度は戦場に赴かねば』という気風がありました」とも指摘している。

 

南ベトナムに派兵された韓国軍は、2個師団プラス1個旅団の延べ3.1万名。最盛期には5万名を数えた。また、「ベトナム特需」を当てこんだ産業資本や出稼ぎの民間人も進出し、これも最盛期には2万人近くがベトナムに赴いた。(中略)

 

兵士や出稼ぎの民間人による本国への送金は、年に12千万ドルを数え、1969年の韓国の外貨収入の2割に達した。65年から72年までのベトナム特需の総額は102200万ドルにのぼる。これはアメリカによる軍事・経済援助、日韓基本条約による莫大な援助と合わせて、漢江の奇跡の基礎となった。

 

韓国政府の対応

韓国の民間団体や韓国のキリスト教団体とベトナム政府の支援により、支援施設(職業訓練学校)が設立され、無償での職業訓練と朝鮮語の教育が行われた。(中略)

 

ライダイハン自身が、韓国人である父親に対して実子であることの認知訴訟を起こし、判決により韓国国籍を取得する動きもある。盧武鉉政権は2006年に、写真など客観的に立証できる手段があれば韓国の国籍を付与する法案を検討するとした。

 

なお、韓国政府は2009年にベトナム戦争の解釈をめぐってベトナム政府と衝突するという事件があった。

 

2009年に韓国の国家報勲処が国家報勲制度の改定作業を行い、国会に法案改正の趣旨説明文書を提出した。この文書でベトナム戦争参戦者を「世界平和の維持に貢献したベトナム戦争参戦勇士」と表現したことにベトナムが、「我々は被害者。ベトナム戦争の目的が、なぜ世界平和の維持なのか」と猛反発し、予定された李明博大統領のベトナム訪問も拒否する方針を伝えた。

 

韓国側は、柳明桓外交通商相をベトナムに派遣し、外相会談で「世界平和の維持に貢献」の文言を削除することを約束し、李のベトナム訪問を予定通り実現させた。

 

一連の外交交渉で、ベトナム政府は「侵略者は未来志向といった言葉を使いたがり、過去を忘れようとする」と批判した。

 

韓国兵の行為にはメディアも人権活動家も目を向けなかった。その根底には、韓国人の、ベトナム人に対する人種差別意識が原因との見方もある。

 

韓国マスメディアの反応

後の韓国大統領である全斗煥は白馬師団第29連隊長として、と同様にベトナム派兵で活躍した指揮官だった。最大の圧力団体である軍部の存在もあって、韓国ではベトナム戦争を批判的に取り上げることをタブー視する雰囲気が存在した。

 

しかし後年、徐々に国民の意識が変わり、SBSでライダイハンをテーマとしたドキュメンタリー『大韓の涙』が放送された。

 

リベラル紙を発行するハンギョレ社は、19995月に自社の週刊誌『ハンギョレ21』にて掲載した記事を皮切りに、ベトナムでの韓国の戦争犯罪やライダイハン問題をたびたび取り上げ、韓国の世論に衝撃を与えた。

 

これに対し、韓国の海兵隊の退役軍人にて組織される「枯葉剤戦友会」などの団体は、2000627日に2400名という大集団を率いてハンギョレ社を襲撃した。彼らは同社内のあらゆる事務機器を破壊し、同社幹部を監禁し、同社の従業員十数名を負傷させた。(後略)【ウィキペディア】

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1975年にベトナム戦争終結後、南ベトナム政府の崩壊により、共産党政権下でライダイハンは「敵国の子」として迫害され、差別されてきたとされています。

 

「ライダイハン」の問題を追及する英民間団体「ライダイハンのための正義」は韓国政府に公式な謝罪を求めています。【110日 zakzakより】

 

【「十分反省した」「ベトナム経済を発展させたのは韓国企業ということを忘れないで」】

「ライダイハン」の問題に代表されるように、韓国とベトナムの間には国民感情のわだかまりがありますが、最近では韓国人・朴恒緒氏がベトナムサッカーチームの監督に就任して、チームが活躍したことで、多少の改善も見られているとも。それでも・・・

 

****ベトナムに深く残る「韓国軍のベトナム戦争参戦」の傷、韓国ネットはどう考える?****

2019214日、韓国メディア・韓国日報は、いわゆる「朴恒緒(パク・ハンソ)マジック」によりベトナム国民の韓国に対する認識は大きく改善したものの、ベトナム戦争など不幸な歴史に根差す感情のわだかまりはいまだ残っていると伝えた。

韓国の朴恒緒監督は昨年、東南アジア選手権(スズキ杯)でベトナム代表を10年ぶりの優勝に導いた。AFCアジアカップ2019UAEでもベスト8に入る活躍を見せ、ベトナムでは「朴恒緒ブーム」が起きていた。

これを受け韓国日報とコリアタイムスは、ベトナムの韓国に対する意識の変化を分析するため、ベトナム国民1000人を対象に調査を行った。

 

その結果、ベトナム国民の985%が朴監督を知っており、738%が「朴監督のおかげで韓国の印象が良くなった」と回答したという。

 

韓国日報は「201712月の第1次調査で『韓国文化に共感する』と回答したのが61%だったことを考慮すると、朴恒緒マジックは韓国に対する認識の改善に大きな効果をもたらした」と説明している。

 

また、「韓国人とは友達になれない」と考える割合も184%から136%に減少。韓国人との国際結婚に反対する割合も213%から72%に減少したという。

ベトナム国立大学ハノイ校のジャーナリズムコミュニケーション学科教授は「ベトナム人の韓国に対する認識は朴監督の登場前と後で変化した」とし、「音楽やドラマ、映画、グルメ中心のベトナムの韓流がスポーツにまで広がった」と分析したという。

一方で、韓国軍のベトナム戦争参戦による不幸な歴史と韓国・ベトナム間の非対称的な経済関係に基づく否定的な認識には「変化が見られなかった」という。

 

中でも、「韓国軍のベトナム戦参戦の事実が韓国に対する否定的な認識に影響を与えているか」との質問に対して「はい」と答えた割合は50代以上(150人)で32%を占め、第1次調査(206%)より大幅に増加したという。

 

これについてユ・テヒョン元駐ベトナム大使は「朴監督の一時的かつ大衆的な人気では、彼らの脳裏に深く刻まれた傷を癒すのは難しい」と指摘したという。

これに、韓国のネットユーザーからは「当然では?韓国が日本を好きになれないのと一緒」「韓国も被害者だから理解できる」「朴監督とベトナム戦争は全く別物。朴監督の活躍で過去を消そうだなんて、多くを望み過ぎ」など、理解を示す声が数多く寄せられている。

また「解決法は心からの謝罪のみだ」「韓国が許しを請うべき」「文大統領が現地に行って謝罪しないと」「韓国が公式に謝罪しなければならない。日本のようにならず、韓国によって被害を受けた人たちに補償し、慰霊碑も建てよう。わだかまりが消える日まで謝罪し続けるんだ。そうしなければ、世界の前で日本の態度を批判できない」など、ベトナムに対する韓国政府の謝罪や補償を求める声も多い。

一方、これに対し「韓国は歴史を歪曲(わいきょく)していない。十分反省した」「ベトナムは過去を忘れたがっているのに、文大統領が無理に蒸し返そうとして反感を買っているといううわさもあるよ」「ベトナム経済を発展させたのは韓国企業ということを忘れないで」「韓国は参戦させられたんだ。むしろ被害者。謝罪する必要はない」と反論する声も見られた。【25日 Record china

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ベトナム側からの韓国政府への訴えも続いています。

 

****「日本の前に韓国が謝罪を」ベトナム戦争被害者らが韓国に初の請願書****

201944日、韓国・聯合ニュースによると、ベトナム戦争当時に韓国軍から被害を受けたと主張するベトナム人らが、文在寅(ムン・ジェイン)大統領に真相究明を求める請願書を出した。

記事によると、民主社会のための弁護士会(民弁)と韓ベ平和財団は同日午後、ベトナム・フォンニィ村虐殺の生存者とハミ村虐殺の生存者とともに、韓国大統領府の噴水前で記者会見を開いた。請願書は民間人虐殺の真相調査と公式謝罪、被害復旧措置などを要求している。

会見に出席したイム・ジェソン弁護士は「これまで韓国軍の民間人虐殺に対する真相究明や被害復旧などいかなる手続きも行われていない。情報公開請求を通じて、国家情報院にベトナム戦争当時の民間人虐殺に加わった軍人らを調査した文書の公開を数回要求して勝訴までしたが、依然として(文書を)隠している。国家情報院は必ずこの文書を公開すべきだ」と話したという。

生存者らは「韓国政府は日本政府に謝罪を要求している。韓国とわれわれが経験した苦しみは同じ。日本に謝罪を要求するなら、まずわれわれに謝罪するべき」などと主張したという。

民弁と韓ベ平和財団は先月115日、ベトナム戦争当時に韓国軍が駐留した中部地方を回り、請願への署名を集めた。16の村から103人のベトナム人が参加したという。

なお、ベトナム戦争の民間人虐殺被害者とその遺族が、韓国政府に対し公式に真相調査などを要求する書面を提出したのは今回が初めて。

これを受け、韓国のネット上では「これはわれわれの過ち。他国の内戦になぜ韓国が参戦したのだろう。恥ずべき歴史」「痛ましい過去。解決して前を向いていこう」と過去史を受け止める声が上がっている。

一方で「ベトナム政府が真相調査をもみ消したって聞いたが?だから韓国に要求したわけであって。それに韓国は何度も(ベトナムに)謝罪している」

「ベトナム政府は謝罪を求めてないのに、どうやって韓国が個人に謝罪したらいいの?」

「それなら米国は?米国は相当なものだと思うけど、なんで韓国?」

「日本に謝罪を要求したいのなら、まずはわれわれがベトナムに謝罪しなければならないって?韓国はかつて軍がベトナムの虐殺を認めて謝罪して反省もした。でも日本は韓国人を虐殺したり侵略したことを否定し、謝罪や反省もない」など反論コメントが多く寄せられている。【45日 Record china

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*****「ベトナム戦争まだ終わってない」地雷被害者の訴えに、韓国ネット「なぜ」****

2019410日、韓国・KBSは「特派員レポート」として、ベトナム戦争の地雷被害者たちの現在を伝えた。

ベトナム戦争は1975年に終結したが、その後もベトナムでは地雷と不発弾により少なくとも4万人が死亡、6万人が負傷したとされている。まだ把握されていない被害も多く、実際の規模はこれよりもはるかに大きいと見られているという。

KBS
の記者は、かつての激戦地だった中部クアンビン省を訪れ、地雷被害者の男性を取材。男性は、9歳の時に地雷事故に遭い破片が脊椎に刺さったが、貧しさから満足に治療を受けられず、「骨の成長とともに苦しみを味わった」と話している。(中略)

専門家によると、ベトナム戦争当時、米軍が投下した砲弾・地雷は合計1500万トンに及ぶと推定される。このうち80万トンほどが今も不発弾として地中に存在するという。ベトナム国防省は、このうち除去できたのは32%とみている。記事は「ベトナム国土の1882%が、今も地雷や不発弾に汚染されている」と指摘している。

記事によると、韓国政府は来年まで2000万ドル(約22億円)の予算を投じる計画で、国連開発計画(UNDP)、ベトナム国家地雷対策センター(VNMAC)とともに不発弾、地雷除去事業を進めている。

 

先月にはクアンビン省に、地雷探知機200個を追加支援した。キム・ドヒョン駐ベトナム韓国大使は「ベトナムと韓国はどちらも戦争を経験し、その後に発展を遂げてきたという共通点がある。この地域の発展のために、安全問題の解決が必要だ」とコメントしている。

記事は「19年続いたベトナム戦争は44年前に終わったが、住民たちはまだ地面に埋まった地雷におびえている。彼らは戦争の破片が安全に取り除かれることを願っている」と伝えている。

この記事に、韓国のネットユーザーからは「過去の過ちを謝罪し、ベトナムとの友好のために支援を」との声が寄せられ、多くの共感を得ている。

しかし、一方で「ベトナム戦争に対する謝罪と補償、そして復興支援は、反戦と平和を目指す広い意味でも必ず必要なこと。しかし、参戦した国は韓国以外にも多数あるのに、まるで韓国がベトナムを侵略でもしたかのような報じ方をしている」

「ベトナムの地雷は全部、韓国が設置したとでも?」

「韓国は参戦したが、米軍が主だった。なのに韓国に全てをかぶせるのか?」

というような反対意見や、

「韓国にも地雷被害者はたくさんいるのに、彼らには見向きもせず、何をしているのか」

「朝鮮戦争の虐殺と地雷被害者たちは米国、北朝鮮、中国、そして韓国に謝罪を求めろという報道はなぜ出ないのか?」などの声も多く見られた。【411日 Record china

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繰り返しますが、今回、この種の問題を取り上げたのは、当時および現在の韓国の対応を非難するためではなく、人権などに対する意識が希薄な時代の戦争・支配といった環境下における自国の歴史に向き合うことの難しさをくみ取るためです。

 

もし、韓国側の対応・反応に違和感を感じるものがあるとすれば、同種のものが自分たちの中にもないのか・・・と、自らを省みるためです。

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台湾  独立志向の頼氏が民進党総統選予備選挙に出馬の意向 「一つの中国」清算の可能性も

2019-04-16 23:17:00 | 東アジア

(総統選の民進党公認候補を決める党内予備選に立候補を届け出た頼清徳前行政院長(首相)は19日、李登輝元総統の台北市内の自宅を訪れ、総統選に向けて教えを請うた。【320日 フォーカス台湾】

李登輝元総統はもともとは国民党ですが、独立志向を強め、国民党を離れています。中国に対する歯に衣を着せぬ批判でも知られている独立派長老です。現在は96歳。)

 

【台湾をめぐる米中の綱引き】

今も昔も台湾をめぐる問題は国際的な大問題であり続けていますが、近年は米中対立、中国経済の減速に伴う習近平主席の台湾問題への傾斜などの流れの中で、これまで同様の曖昧な「一つの中国政策」が維持できるか危ぶむ声も出ています。

 

****迫りくる台湾をめぐる米中危機****

台湾をめぐる米中の対立は、本欄でも何度も指摘してきた通り、高まる一方である。

こうした事態に懸念を示す、最近の論説、社説の中から、米外交問題評議会のリチャード・ハースによる215日付け論説を中心にご紹介する。同論説の要旨は、以下の通り。

 

米中外交は、米国は「中国は一つであり台湾は中国の一部であるという中国の立場」を認識する(acknowledge)とする、3つのコミュニケ(1972年、1978年、1982年)を基礎としている。

 

1979年の台湾関係法には、米国の台湾へのコミットメントが明記されている。3つのコミュニケと台湾関係法が相まって、米国の「一つの中国政策」の基礎をなしている。

 

この構造は、勝利の方程式となってきた。中国は世界第二の経済大国にまで発展し、台湾も経済発展と民主化を遂げた。米国は、地域の安定、中台双方との緊密な経済関係により利益を得ている。

 

問題は、時間が尽きつつあるのではないかということだ。長年、米国の政策立案者は、台湾が独立その他、中国に受け入れられないことをしないか、懸念してきた。台湾の指導者は理解しているように見える。ただ、彼らは「一国二制度」による統一を拒否している。

 

しかし、今や、安定は米中双方により危機にさらされている。

 

中国経済の鈍化は習近平を脆弱な立場に置き得る。習が、国民の目を経済成長の鈍化から逸らすために外交政策、とりわけ台湾問題を使うことが懸念される。

習は今年1月、台湾併合を目指す考えを繰り返し、そのために武力行使を排除しないと述べた。

 

米国も、過去40年間機能し続けた外交的枠組みを守らないようになってきている。ジョン・ボルトン安全保障担当補佐官は、就任前、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に、「一つの中国政策を見直す時だ」とする論説を寄稿している。トランプも、米大統領(あるいは同当選者)として、1979年以来初めて台湾の総統と直接話をした。

 

最近、5人の共和党上院議員が、ナンシー・ペロシ下院議長に、蔡英文総統を米議会に招くよう求める書簡を送った。そんなことをすれば、米台間の非公式の関係と矛盾し、中国の強い反応を招く。

 

政府内外の多くの米国人が中国に強いメッセージを送ることを望み、そうすることで失われるものはほとんどない、と信じている。

 

この計算が正しいかどうか、全く明確ではない。中国の経済制裁、軍事力行使が行われるような危機が起これば、2300万の台湾人の自治、安全、経済的繁栄が危機に瀕する。中国にとり、台湾危機は米国および多くの近隣諸国との関係を破壊し、中国経済にダメージを与えるだろう。

 

危機により、米国は台湾への支援を求められ、それは新冷戦あるいは中国との紛争に繋がり得る。といって、台湾の自助努力に全て任せるという判断は、米国の信用を損ね、日本の核武装、日米同盟の再考に繋がりかねない。

 

関係者全てにとり、リスクが高くなっている。相手にとって受け入れられないような象徴的な一歩を避けるのが最善だ。現状維持には欠点があるが、一方的な行動、きちんとした解決策の伴わない状況打破の企てよりは、はるかにマシである。

 

(論評)

上記論説でハースが言っていることは、3つのコミュニケと台湾関係法に基づく「一つの中国政策」が40年間機能してきたのだから、今後ともそれに従って各当事者が自制すべきである、ということである。(中略)

 

自制は重要だが、米国の「一つの中国政策」の枠組みが今後も有効であるのかは、検討を要する。中国が台湾を併合する意思は一貫しているが、今や、中国は軍事大国であり、台湾併合のために武力行使を排除しない、と明言している。

 

米中双方が危機を作り出しているというが、やはり中国の責任が重いのではないか。米国が強い態度をとり中国を抑止することの方が「現状維持」に資すると思われる。米国の最近の対中強硬姿勢は止むを得ないと言うべきであろう。(中略)

 

米国の対応で、むしろ最も心配すべき点は、トランプ大統領が、台湾問題が米中の間でカードとなり得ると解釈され得るような発言をしてしまうことであろう。トランプは、そういう不用意な発言をする傾向があるので、注意を要する。【312日 WEDGE

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経済失速から目をそらすために、ことさらに台湾併合をアピールする習近平主席、安易に台湾を「取引」のカードに使うことが懸念されるトランプ大統領・・・・二人の政治指導者のもとで台湾問題の危険性が増しているという状況です。

 

アメリカの台湾支援は、常に中国を刺激する側面があり、上記記事にもある蔡英文総統の米議会招へいも、もし実現すれば中国の激しい反発は避けられないでしょう。

 

また、台湾へのアメリカの軍事支援についても、中国は常々問題視しています。

 

****米国、台湾に軍事訓練提供 中国軍をけん制****

米トランプ政権は15日、台湾軍のパイロットの訓練プログラムなど総額約5億ドル(約560億円)分を台湾に売却することを決め、議会に通知した。台湾海峡で活動を活発化させる中国軍をけん制する狙いがあるとみられる。

 

訓練はF16戦闘機のパイロットが対象で、米西部アリゾナ州の基地で行う。F16関連の装備や修理なども含まれている。

 

米国務省高官は米CNNに対し「台湾が十分な防衛力を維持するためのものだ」と述べた。台湾国防部は16日、「台湾の防衛力強化につながり、米国の決定に感謝する」との声明を出した。

 

中国軍は台湾への軍事的圧力を強めており、3月末には中国軍の戦闘機2機が台湾海峡の中台の中間線を越えて台湾側に侵入。15日も多数の爆撃機などが台湾を周回飛行した。

 

トランプ政権は台湾支援の姿勢を強めており、これまでに計2000億円規模の武器売却を決定している。台湾はF16戦闘機の新型機売却を米側に求めているが、まだ実現していない。【416日 毎日】

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アメリカとしても、中国を刺激しすぎるF16戦闘機の新型機売却までは認めないが、台湾への軍事訓練提供は認める形で中国の最近の台湾周辺での活動活発化をけん制する・・・・という、微妙なバランスを意識した対応です。

 

【中国軍事演習に台湾「ひるまない」、中国「見くびってはならない」】

中国の台湾周辺での軍事演習というけん制に対しては、台湾・蔡英文総が「台湾はひるむことはない」と反発、一方、台湾の反発に対して中国が更に「(中国の意思と能力を)見くびってはならない」と批判・・・と、いつものことながら緊張したやり取りが続いています。

 

****台湾、中国の軍事演習にひるむことない=蔡総統****

台湾の蔡英文総統は16日、中国が今週行った軍事演習について、台湾がひるむことはないと述べた。台北で開催された米台関係に関するフォーラムで記者団に述べた。

中国人民解放軍は、軍艦、爆撃機、偵察機が15日に台湾周辺で「必要な演習」を行ったと発表した。ただ定例の演習だったと説明した。

蔡総統は「われわれの領域に対して一切妥協しない。常に民主主義と自由を堅持する」と述べた。また、米国による台湾への武器売却は台湾空軍の能力強化につながると付け加えた。

台湾の国防部(国防省)は、中国軍の行動を監視するため、15日に軍用機と軍艦を緊急出動させたと発表。中国政府が「台湾海峡の現状を変えようとしている」と非難した。

ポール・ライアン前米下院議長が率いる代表団は、米国と台湾の関係を定めた台湾関係法の成立から40年を迎えるのに合わせて台北を訪問した。フォーラムは台湾の外交部が共催した。

ライアン氏は、米国は台湾に対するいかなる軍事的脅威も懸念事項と考えているとし、非生産的だとして中国に中止を求めた。【416日 ロイター】

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****中国が台湾に警告 「主権守る決意見くびるな」****

中国人民解放軍の軍機などによる台湾周辺の「巡航」を台湾の蔡英文政権が批判したことに対し、中国国務院(政府)台湾事務弁公室は16日に発表した報道官談話で「国家主権と領土を守るわれわれの堅い決意と強靱(きょうじん)な能力を見くびってはならない」と警告した。談話は、蔡政権が「民衆をだまし、機に乗じて両岸(中台)の対立をあおっている」と非難した。

 

中国国防省は15日、東部戦区の艦艇や爆撃機、偵察機などの海空戦力が台湾東方の海域で合同訓練を実施したと発表。「敵」に対して爆撃機や駆逐艦などによる打撃を加える訓練だったとした。

 

一方で訓練について「主権国家の正当で合法的な権利であり、台湾海峡の安定と平和に資する」と主張した。【416日 産経】

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【今後の台湾情勢を左右する民進党内の争い 独立志向の頼氏、総統選出馬の意向】

こうした微妙な台湾をめぐる緊張を大きく左右するのが、来年1月に行われる台湾の次期総統選挙です。

 

昨年11月に行われた統一地方選では、中国に距離を置く与党・民進党が惨敗、中国との協調姿勢を見せる野党・国民党が躍進し、次期総統選挙では国民党による政権奪還の可能性も言及される状況となっています。

 

そうなれば、現在の中台緊張は、中国側のペースで一気に緩和することが予想されます。(そのことは、台湾が中国に飲み込まれる危険性と裏腹ですが)

 

そうした政治状況に、台湾独立派は危機感を強めています。

 

****台湾独立派が中部で反中国集会 総統選に危機感****

台湾の独立を主張する複数のグループが13日、台湾中部の台中市の駅前で中国による統一に反対する集会を開き「中国に抵抗し台湾を守ろう」と訴えた。

 

来年1月の総統選で対中融和路線の野党、国民党が勝利すれば、統一への流れが加速するとの危機感が背景にある。

 

主催者側は「昨年11月の統一地方選後、中国の勢力が台湾に入り込んでいる」「来年の総統選で台湾の主権を守らなければならない」と、中国にのみ込まれることへの警戒を訴えた。

 

統一地方選では台湾独立志向の与党、民主進歩党(民進党)が大敗。台中市でも市長が民進党から国民党に交代した。【413日 共同】

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なお、316日に行われた補欠選挙では、与党・民進党は低迷に一定に歯止めをかけた結果ともなっています。

 

****台湾・与党、党勢低迷に歯止め 立法委員補選***

台湾で(3月)16日、立法委員(国会議員に相当)4議席の補欠選挙が行われた。与党、民主進歩党は改選前の2議席を維持し、昨年11月の統一地方選で惨敗した党勢の低迷に歯止めをかけた。

 

台湾では来年1月の総統選まで選挙がなく、二大政党が前哨戦と位置付けた。

 

民進党は地盤の南部・台南市の選挙区で、総統選への出馬の呼び声がある頼清徳(らい・せいとく)前行政院長(首相)の側近が出馬。党員の女性が予備選を不服として離党して出馬し基盤票の流出が指摘されたが、元台南市長の頼氏が支援し当選を果たした。頼氏自身も総統選への出馬の可能性をつないだ形だ。

 

一方、野党、中国国民党は改選前2議席から1議席減らした。国民党はメディアが注目する高雄市の韓国瑜(かん・こくゆ)市長が応援に入ったが、民進党から議席を奪うことはできなかった。韓氏人気の限界を指摘する声が出そうだ。【316日 産経】

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民進党・蔡英文総統にとって問題なのは、野党・国民党よりは、身内の民進党内における頼清徳(らい・せいとく)前行政院長(首相)の総統選出馬でしょう。

 

過度の中国刺激をさけて台湾独立などには曖昧な姿勢を続けるのに対し、頼清徳氏はストレートな独立志向を隠さず、国民的人気は蔡英文総統を上回っています。

 

その頼清徳氏が総統選に出馬するとなると、予備選挙が実施され、現在の支持率では蔡英文総統は予備選の段階で敗北するということにもなります。

 

****総統選、前行政院長が名乗り 蔡総統と与党指名争い 台湾**** 

台湾で来年1月にも行われる総統選で、与党民進党の前行政院長(首相に相当)、頼清徳(ライチントー)氏(59)が18日、党内の予備選への立候補を届け出た。

 

現職の蔡英文(ツァイインウェン)総統(62)に比べ、頼氏は台湾独立志向が強い。一般党員や有権者の人気は蔡氏を上回るとされ、候補者選びは混迷しそうだ。

 

頼氏は18日、党本部で立候補を届け出た後、報道陣に「台湾を第二の香港、第二のチベットにしてはならない」と、中国の圧力への危機感を訴え、「台湾を守る責任を負う」と、総統選への意欲を語った。

 

頼氏は元医師で、立法委員(国会議員)や南部の台南市長を経て、2017年9月に蔡政権の行政院長に就任。「ポスト蔡氏」の有力候補とみなされてきた。昨年11月の統一地方選で民進党が大敗した責任を取り、今年1月に行政院長を辞任。動向が注目されていた。

 

蔡氏は支持率で野党国民党の候補者にリードを許している。頼氏の立候補の背景には、独立派を中心に党内で残る「蔡氏では中国とも野党とも戦えない」との懸念や不満がある。 

 

民進党は討論会や世論調査などを経て、4月中旬に総統選候補者を決定する。【319日 朝日】

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民進党執行部は蔡氏に一本化する方向で調整を進めてきましたが、頼氏は一歩も引かない構えです。

蔡氏は予備選に敗れれば1期目の任期満了(来年5月)での退任を余儀なくされるため、危機感を強めています。

 

****台湾・与党、予備選混迷 蔡氏VS頼氏 深まる対立****

台湾の与党、民主進歩党で、2020年1月の総統選の候補者を選ぶ党内予備選が混迷を深めている。

 

再選を目指す蔡英文総統(62)と頼(らい)清徳(せいとく)前行政院長(首相に相当)=(59)=の対立が深まり、党の分裂を避けたい党執行部は予備選を今月下旬から5月22日以降に先送りした。話し合いによる候補者の一本化を目指すが、頼氏は反発しており先行きは見通せない。(中略)

 

中台関係の「現状維持」を掲げる蔡氏と異なり、頼氏は「台湾独立」を公言し党の伝統的な支持者の受けが良い。清新な印象もあって世論調査の支持率は蔡氏を上回る。

 

ただ、現在の党執行部は頼氏が3月18日に出馬を突如、表明して以降、蔡氏への配慮と映る行動を繰り返している。蔡氏が同21〜28日に外遊した際には頼氏に選挙運動の自粛を要請。両氏に近い総統府の陳菊秘書長ら5人の調整役を任命し事実上、頼氏の出馬撤回を模索してきた。

 

今月8日に両氏の直接会談が平行線に終わると、蔡氏は翌9日に総統府で臨時の記者会見を開き、「大切なのは誰が予備選に勝つかではなく、どうやって本選に勝つかだ」と主張。08年と12年の総統選は予備選の“後遺症”で敗れたとして、予備選実施に否定的な見方を示した。

 

予備選は世論調査だけで行うため、現状で突入すれば蔡氏が敗れる可能性が高い。蔡氏はその一方で「私は現職。再選を目指すのは総統としての責務だ」と自身は譲らない姿勢を強調している。

 

台湾各紙によると、10日の党会合では、蔡氏の支持派が予備選延期を強硬に主張した。調整役の5人は今後も頼氏の説得を続けるとみられるが、頼氏が応じる気配はない。

 

12日には延期に反発した蔡(さい)明憲(めいけん)元国防部長(国防相)が離党を表明。蔡、頼両氏もお互いに批判を続けており、確執が深まっている。【415日 産経】

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中道的なスタンスが国民支持を失い、与野党ともに、より急進的なスタンスの方が国民に好まれる、結果的に世論が両極に分断されるという現象は、アメリカをはじめとして各国で見られる現象ですが、台湾でも同様のようです。

 

もし、このまま頼氏が引かずに予備選に突入し、蔡氏が敗れるということになれば、来年1月の総統選は、中国との協調を重視する国民党候補と、独立志向を鮮明にする頼氏の争いということにもなります。

 

仮定の上に仮定を重ねた話ですが、そうした総統選で頼氏が勝利すれば、独立志向を鮮明にする台湾・頼氏に対し中国の軍事オプションの可能性も一気に高まる(日本も対応を迫られる)ということにもなります。

 

まずは、民進党内の調整がどうなるかが注目されます。

 

 

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北朝鮮臨時政府を宣言した謎の反体制組織「自由朝鮮」

2019-03-12 22:59:50 | 東アジア

(クアラルンプールにある北朝鮮大使館の写真。外壁には青いスプレーで「金正恩打倒 連帯革命」「自由朝鮮」「我々は立ち上がる」といったハングルが描かれている。【FNN「プライムニュース イブニング」3月12日放送分】)

【突然のアイシャ被告の釈放 インドネシア・ジョコ大統領には追い風】
マレーシアの空港での金正男(ジョンナム)氏殺害の実行犯とされて裁判が進行していたインドネシア国籍のシティ・アイシャ被告が突然に起訴取り下げとなり釈放された件、これまでそうした動きに関する情報を全く目にしていなかったため「そんな、あっさりいくものか?」と驚きました。

****インドネシア人女性の起訴取り下げ、ベトナム人被告の供述行われず 金正男氏殺害事件****
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(ジョンナム)氏が2017年2月にマレーシアの空港で殺害された事件で、実行犯として殺人罪に問われた女2被告の公判が11日、クアラルンプール近郊の高裁で再開された。検察は、2被告のうち、インドネシア国籍のシティ・アイシャ被告(27)の起訴を取り下げた。
 
アイシャ被告の弁護士によると、取り下げ理由は、検察から示されなかった。(中略)
 
一方、ベトナム国籍のドアン・ティ・フオン被告(30)の殺人罪での審理は継続されるという。この日は、弁護側の被告人質問が始まり、ドアン被告が法廷で初めて供述する予定だった。
 
2被告は、いずれも捜査段階から「いたずら番組の撮影だと思っていた。毒物とは知らなかった」と無罪を主張している。マレーシアでは殺人罪で有罪になれば死刑が適用される。
 
検察側は公判で、2被告が殺害に使われた猛毒の神経剤VXの毒性を認識していたとして「訓練された殺人者」と主張。高裁は昨年8月、2被告に「殺意があったと推定される」として、弁護側に被告人質問や証人尋問などを行うよう求めていた。
 
起訴状などによると、2被告は17年2月13日、北朝鮮国籍の男4人と共謀し、クアラルンプール国際空港で金正男氏の顔にVXを塗り、殺害したとされる。男4人は直後に出国、北朝鮮に帰国したとみられる。【3月11日 産経】
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当然にインドネシア政府との交渉を背景にした“政治的判断”です。(北朝鮮が関与しているのかは知りません)

一人だけという訳にもいきませんから、もう一人のベトナム国籍の女性も近日中に同様の扱いになるのでしょう。(インドネシア人女性だけとなったら、それこそベトナムとの国際問題になります)

****元被告の女性帰国 家族と再会 背景には政治的判断か****
2年前、マレーシアで起きた北朝鮮の金正男(キム・ジョンナム)氏殺害事件で釈放された元被告の女性が、11日、インドネシアに帰国し、家族と再会した。

金正男氏殺害事件で殺人罪の起訴を取り下げられ、釈放された元被告のシティ・アイシャさん(27)は、11日、マレーシアからインドネシアに帰国し、首都ジャカルタでおよそ2年ぶりに両親と再会した。シティ・アイシャさんは「きょう、2年ぶりに家族と会えて、とても幸せです」と話した。

アイシャさんをめぐっては、インドネシア政府が、マレーシア政府に対して釈放を要請していたことがわかっていて、今回、政治的判断があったとみられている。

一方、裁判が続くベトナム国籍のドアン・ティ・フオン被告(30)についても、ベトナム外務省が動き始めていて、14日に予定されている裁判で同じように起訴が取り下げられる可能性が出ている。【3月12日 FNN PRIME】
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アシシャさん釈放は、大統領選挙を控えたインドネシア・ジョコ大統領にとっては“大きな得点”でしょう。

****インドネシア大統領、「釈放」の成果アピール アイシャ元被告が面会****

(ジョコ大統領(手前左)と面会したシティ・アイシャ氏(中央)=ジャカルタの大統領官邸で12日)

(中略)シティ・アイシャ元被告(27)が12日、ジャカルタの大統領府でジョコ大統領と面会した。面会後の記者会見には、ルトノ外相やラオリ法務・人権相も同席し、釈放がジョコ政権の成果であることをアピールした。
 
突然の釈放、帰国から一夜明け、アイシャ氏は警察官に警護されながら両親と大統領府に入った。3人はジョコ氏の両手を握って支援に感謝したが、面会後は記者団の質問に一切答えないまま車に乗り込んだ。一方、ジョコ氏は「政府が国民を守るというのはこういうことだ」と話した。
 
大統領選を来月に控えるジョコ氏にとって、国内で同情的に見られているアイシャ氏の帰国は追い風になるとみられる。

政府は釈放直後、ジョコ氏が昨年6月のマハティール・マレーシア首相との首脳会談で釈放を要請していたことを明らかにし、司法判断の背景に政権の後押しがあったことを強調した。【3月12日 毎日】
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【在マレーシア北朝鮮大使館の壁に反体制メッセージの落書き】
アイシャさんが釈放されたマレーシアでは、北朝鮮をめぐって“別の事件”が起きています。

****元被告釈放の直後に、北朝鮮大使館の壁に謎の落書き…背後に民間団体「自由朝鮮」関与か?****
(中略)
釈放の裏では衝撃的な事件が
一方、アイシャさん釈放の裏では衝撃的な事件が起きている。

こちら(冒頭写真)は11日朝に撮影された、クアラルンプールにある北朝鮮大使館の写真。
外壁には青いスプレーで「金正恩打倒 連帯革命」「自由朝鮮」「我々は立ち上がる」といったハングルが描かれている。

北朝鮮の金正恩体制打倒を呼びかけるメッセージと、北朝鮮の独裁体制打倒を宣言する民間団体「自由朝鮮」のロゴマークが合わせて落書きされたのだ。

地元メディアによると、この事件の犯行時刻は10日夜から11日未明までの間。
犯行グループは背の高い男4人組で野球帽をかぶり、覆面をしていたといい、地元警察が「器物損壊の疑い」で行方を追っている。

ネットでは映像も公開
この事件を巡っては、落書きされた大使館の映像が、フリージャーナリストによってネットで公開されている。映像では、落書きの一部が毛布などで隠され、大使館の関係者が撮影を止めさせようと注意する様子も映っていた。

現在は壁は全て塗り直され、落書きや青いスプレーで塗られた大使館の看板も元通りになっている。

この事件の衝撃を、北朝鮮に詳しい、龍谷大学社会学部の李相哲教授はこう分析する。

正男氏の息子を保護した団体が関与か
非常に驚きました。今までは北朝鮮の在外公館に対して、このようなある意味“攻撃”ということはなかった。(犯行は)金正男氏の息子を保護した団体に間違いないと思う。

金正男氏の息子、キム・ハンソル氏は正男氏が殺害された後、自由朝鮮の前身団体「千里馬(チョルリマ)民防衛」が保護している。「千里馬民防衛」は3月1日、「自由朝鮮」に名称を変更しており、李教授は今回の落書きも「自由朝鮮によるアピール行為とみられる」としている

2月には、スペインの首都・マドリードにある北朝鮮大使館も暴漢に襲撃されている。
地元紙は北朝鮮大使館員の話として、犯行グループの中に韓国語を話す人たちがいたと伝えている。

李教授はこの事件も自由朝鮮と関係が可能性が高いと指摘しており、「両方とも自由朝鮮がやったとすれば、こういう事件が活発化するのでは...」と話す。【FNN「プライムニュース イブニング」3月12日放送分より】
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これまで北朝鮮に関する反体制運については見聞きしていなかったので、2月のマドリードでの北朝鮮大使館襲撃事件にも驚きました。

****スペインの北朝鮮大使館で襲撃事件 情報機器奪われる****
スペインの首都マドリードにある北朝鮮大使館が先週、襲撃を受け、スペイン警察が捜査を開始したことが分かった。27日、スペイン各紙が報じた。館内のコンピューター機器が奪われた可能性があるという。
 
コンフィデンシャル紙(電子版)によると、事件が起きたのは22日。数人の男が大使館に押し入り、少なくとも4時間にわたって館員を縛り、館内を荒らした。女性の1人が外に逃げ出し、叫び声に気づいた住民が警察に通報した。
 
女性は北朝鮮籍で軽傷を負っており、通訳を介して警察の聴取を受けた。大使館は被害届を出していないという。
 
駐スペイン北朝鮮大使は2017年、北朝鮮によるミサイル発射や核実験の後、スペイン政府に国外退去を命じられている。【2月28日 産経】
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事件は2月22日に起きており、韓国の報道では前出「自由朝鮮」の関与が疑われています。

トランプ大統領との会談に臨んだ金正恩委員長も、こうした表立った反体制派の行動に相当に衝撃を受けていたのではないでしょうか。(一方のトランプ大統領は、アメリカ国内でのマイケル・コーエン氏の米下院監視委員会での証言が気が気ではなかったようですが)

“コンピューター機器が奪われた”ということが興味深いところで、今後、保存されていた非公開情報が暴露される・・・ということもあるのでは。

【謎の反体制組織「自由朝鮮」】
金正男(キム・ジョンナム)氏の息子・ハンソル氏ら家族3人をマカオから安全な場所に移したとして注目された「自由朝鮮」という組織は、多くはわかっていない“謎の組織”のようです。

*****「自由朝鮮」****
自由朝鮮は、北朝鮮の第2代最高指導者金正日の孫である金漢率の身柄を保護していると主張し、また同国からの密出国(脱北)を支援していると推定されている団体。

2019年3月に現最高指導者金正恩体制に抵抗するため臨時政府の樹立を宣言したが、全容は謎に包まれている。
かつては千里馬民防衛と名乗っており、報道機関によっては千里馬民間防衛の表記も見られた。(中略)

臨時政府の樹立
2019年2月25日、公式サイトにて今週中に重大発表があると宣言。三・一運動から100周年にあたる3月1日、公式サイトにて自由朝鮮と題した声明文を朝鮮語と英語で掲載し、『自由朝鮮のための宣言』と題した動画を公開。

団体名称を自由朝鮮と改めたことを明らかとするとともに、北朝鮮人民の唯一にして正当な代表者であるとして金正恩独裁体制の打倒を訴え、臨時政府の樹立を宣言した。

前日に金正恩とアメリカのドナルド・トランプ大統領がベトナムのハノイにて米朝首脳会談を行ったが物別れに終わり、アメリカによる経済制裁が解除されなかったことで金正恩の立場が苦しくなったタイミングを見越しての宣言だったとも推測されている。

組織の正体
脱北支援団体と見られているが公開されている情報が少なく、背後にある人物、組織も不明で、詳細な正体は明らかになっていない。

2019年には「我々は組織の一部分に過ぎない」というメッセージを発信している。

旧名称に使われていた千里馬という言葉は北朝鮮体制を象徴する言葉の一つであるが、団体が"Cheollima"との綴りを使っているのに対し、北朝鮮の朝鮮中央通信では"Chollima"と綴っているため、西側諸国が主導した団体か、別の目的で作られた団体ではないかとも指摘される。

このほか、韓国情報機関とのつながりがあるという憶測や、脱北を誘導する北朝鮮の団体という主張もある。韓国の民間団体と断言するメディアも存在する。欧州で活動する人権活動家は、メンバーは北朝鮮人であると証言している。(後略)【ウィキペディア】
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「臨時政府」の発足をウェブサイトで表明した「自由朝鮮」が発表した「自由朝鮮のための宣言文」は以下のとおりです。

****反金正恩体制の臨時政府を名乗り発表「自由朝鮮のための宣言文」****
(中略)
ここに朝鮮人民は、不道徳で違法な体制を次のように告発する。
食べさせる能力がありながら、数百万人を飢餓で苦しませた罪
政府主導の殺人と拷問、監禁の罪
息の根を締め上げる監視と思想統制の罪
階級による強姦と奴隷化、強制堕胎の罪
全世界で犯した政治的暗殺とテロ行為の罪
わが子供たちの強制労働と可能性抑圧の罪
殺傷破壊の目的による巨大な破壊力の現代兵器開発と流通、残虐行為に使用しようとする者たちと取引した罪
その他、混在した不法行為を犯した罪

半世紀が過ぎても、家族を人質として囚われている間、われわれはただ救いのみを渇望した。力があり裕福な国がわれわれの願いを無視したまま、むしろ苦しめる者どもの私利を満たし、彼らをより大胆にするのを目撃した。

南朝鮮の繁栄と発展の顕著な業績を見て、彼らが富国強盛の歴史を興す間、その裏に取り残された兄弟姉妹を忘れずにいることを願った。

しかし、解放はやって来なかった。

先祖と子孫の両方の要求を掲げよう。われわれの魂は、もはや待ってはならないと断言する。われわれも喜びと人間の尊厳、教育と健康そして安全を享受して当然ではないか?自由を要求する。ここに、われわれが耐え忍ぶべき運命と義務を自らに課す。(中略)

自由朝鮮の建立を宣言する。この臨時政府は、人権と人道主義を尊重する国家を建設するための根幹を立て、すべての女性と男性、児童の尊貴で明確な尊厳を尊重する。

この政府が北朝鮮の人民を代表する唯一の正当な組織であることを宣言する。(中略)

体制の中で、この宣言を聞く者よ、抑圧者に抵抗せよ。公然と挑んだり、静かに抵抗したりせよ。多くの者が加害者であり、被害者でもある。共に身を投じて、われわれを蝕み、われわれの子どもたちまでをも脅かす野蛮な体制を崩壊させなければならない。

この体制内での共謀は、おそらく抗い得ないものであっただろう。今だけが、国と(自分の)名前を取り戻す唯一の機会である。今まで行使した腐敗した権力に対する、愚かな首領神格化集団に対する、独創性と人間性を縛る広範かつ異常な束縛に対する、このすべての忠誠について、免罪されるだろう。われわれはもはや、被害者ではなく勝利者だ。

志を同じくするディアスポラ同志よ、革命に参加せよ。数千年の歴史、先祖の犠牲と数千万同胞の共有された遺産は、元いたところを取り戻せと泣き叫ぶ。偶然によらなければ、自由に生まれた同胞たちも奴隷となっていただろう。(中略)

この体制を正当化し、維持しようとする者どもよ、歴史は、選択が与えられたときにあなたがどの側に立っていたか記憶するだろう。

過去の独裁と抑圧の傷を持った国々よ、われわれと連帯することを要請する。われわれとあなたの自由のために。

理想を共にする全世界の仲間たちよ、過去にわれわれの痛みを知らなかったとしても、今日にでも知れば良いのだ。いかに助けるかを知らずに来たとしても、今日そのすべを知れば良いのだ。共に戦うことを求められたことがなかったのならば、今、人類のためにともに戦うことを求める。

愛する子どもたちが、さらに一世代も暗黒の中で生まれることを許さないだろう。朝鮮は自由でなければならず、自由になるだろう。立ち上がれ!立ち上がれ、奴隷になることを望まぬ人々よ!

恨(ハン)に満ちた歴史の輪を断ち切り、そこから新しい時代を宣言し、新らたな朝鮮のための道を準備する。だからこそ、わが民族の真の情で交わる、より公正で平等な社会を建設する目的と革命の誕生を宣言する。

自由朝鮮のために!【3月1日 デイリーNKジャパン】
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こういう檄文は人の心を高揚させますが、もちろん北朝鮮国内で保持が見つかれば即刻処刑でしょう。
ただ、現代情報化社会にあっては、完全に封じ込めるのも難しいかも。

米朝交渉が始まる前は、「斬首作戦」「半島有事」といった言葉が飛び交い、中朝関係も冷え込み、北朝鮮をめぐる情勢は極度に緊張していました。

金正恩委員長を排除したあとの新たな体制のリーダーとして、中国が実質的に保護しているとされたマレーシアで殺害された金正男氏の名前も挙がっていました。

米朝交渉がとん挫し、北朝鮮の核施設やミサイル発射に新たな動きも報じられるなかで、「斬首作戦」といった言葉も一部では復活しているようです。

そうした緊張が高まる方向に進んだ場合、上記「自由朝鮮」という反体制組織及び保護しているハンソル氏は改めてその存在が注目されることになるかも。

コメント

「史上最悪」・・・だけでもない日韓関係 罵りあいに終始せず、新たな協力関係を構築するには?

2019-03-01 22:23:52 | 東アジア

(【2月28日 AERAdot.】 韓国側の顕著な変化は、日韓の将来を考えるうえで非常に重要に思われます。一方、日本の傾向には、韓国が嫌い・中国も嫌い・・・といった閉鎖性・内向きも懸念されます)

【韓国の「反日感情」の実態は?】
領土問題、慰安婦問題、徴用工問題、レーダー照射問題、天皇に言及した韓国国会議長の発言等々、昨今の日韓の関係悪化を示す問題は山積しています。

当然の結果として、日本側には韓国に対する不満・批判が溢れています。

韓国側の反日感情も相変わらずのようで、“日本名の樹木、韓国で植え替え 「日帝時代の残滓」指摘”【2月20日 朝日】といった、罪もない植物までも標的になっています。

ただ、植物について言えば、“朝鮮半島の特産植物527種のうち327種の学名に「ナカイ」という日本の植物学者の名前が入っているという。記事は「韓国の特産植物の名前の多くが日本植民地時代に中井猛之進によって付けられた」と説明し、「そのため世界中で朝鮮半島だけにある植物ですら、今も日本人学者の名前や日本式の名前で呼ばれている」と指摘している。”【2月28日 レコードチャイナ】ということですが、学名は国際的に承認されているため、いかな韓国でもどうにもならないとか。

この話題を別の角度から眺めれば、「日帝時代の残滓」がいかに現在の韓国に根深く残存しているか、日本がどれだけ韓国社会を変容させたという、ひとつの事例でもあるでしょう。

国家間で締結した条約ひとつで清算するにはあまりにも重いものが社会全体、人々の心に深く食い込んでいるとも言えます。

関係悪化を報じる報道、双方の批判の応酬・罵りあいは、はいて捨てるほどありますが、そうした状況にあっても必ずしも“最悪の関係”とばかりはいえない側面をうかがわせる記事もあります。

今日は、最近の報道のなかから、そうしたものをいくつか拾い上げてみます。

****韓国の日本旅行人気は本物!関係悪化も影響なし=韓国ネットは複雑?****
2019年2月21日、韓国・聯合ニュースは、先月の訪日外国人観光客のうち韓国人が最も多かったとの集計結果を報じた。

観光庁によると、1月に日本を訪れた外国人観光客は昨年同期比7.5%増の268万9400人で過去最高を記録した。

国籍別では韓国が77万9400人で最も多かった。昨年同期比は3.0%減少したものの、記事は「哨戒機レーダー問題や慰安婦問題などで日韓関係が冷え切っている中でも、韓国人の日本旅行人気が相変わらず高いことを証明している」と説明している。

韓国の次に多かったのは、昨年同期比19.3%増の75万4400人を記録した中国。後には台湾(38万7500人)、香港(15万4300人)が続いた。

記事によると、日韓両国の対立は訪韓日本人観光客にも大した影響を与えていないとみられる。先月1〜20日のロッテ免税店明洞店の日本人対象の売り上げは昨年同期比31%増加、新世界免税店の明洞店も53%増加したという。

これに、韓国のネットユーザーからは「こんな時期に…。情けない」「プライドはないの?」「嫌韓デモをする国になぜ行くのか」「日本政府に笑われているよ」と嘆く声が多数上がっている。

一方で「日本はきれいだから何度も行きたくなる。気持ちは分かるよ」「日本は嫌いでも日本のものは好き」「何時代の話?日本に旅行に行くことが罪になるの?」「両国の対立は政治家がつくったもの。嫌っているのは少数の人たちだけ」など理解を示す声も上がっている。【2月21日 レコードチャイナ】
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本当に「反日」一辺倒であれば、これだけ多くの訪日韓国人観光客がいるとも思えません。
韓国の「反日」には微妙な感情も潜んでいるようです。

メディアはこぞって韓国内の反日的行動、反日感情を取り上げますので、韓国全体がそうした空気一色に覆われているようにも感じてしまいますが、世代間で見ると、若い世代には、日本側がやっきになって反応するほどには「反日」を意識していない面もあるようです。

****国民の半数「日本嫌い」の韓国 一方で若い世代は特別視せず?****
(中略)韓国の人々の対日感情は、世代によって大きく異なっているようだ。特に若い世代は、日本を特別視はしていないという。

日本への感じ方は、世代による差も大きい。

日本と韓国の両国でアーティスト活動をしている韓国人女性(36)は、小学生の頃から「ドラゴンボール」や「Dr.スランプ」などの漫画、「風の谷のナウシカ」などジブリに代表されるアニメを見て育った。そして、高校生になって憧れたのが東京・原宿を震源地とする「KAWAII」文化だった。

女性によると、若い世代ほど日本に親しみを持っている一方、日本を特別な国だとは思っていないと語る。

「若い世代にとって日本はLCCもあるので手頃な旅行先なんです。食べ物はおいしいし店員も親切。日本製の化粧品は安くて品質がいいので人気が高い。格差と競争が厳しい韓国社会に比べると、日本は物価も安く暮らしやすい。韓国では若者が夢を追いながらアルバイトで稼いで生活することは不可能。その意味ではバイトの職種も時給もいい日本がうらやましく思います。ただ特別な国では決してないんです。私より下の子は生まれた時から、韓国も日本と同じ先進国でしたから」

周囲に「日本嫌い」の友人はいないのだろうか。

「サッカーと政治については日本に敵対心を燃やす人もいる。けれども、それは30代以上の世代に多い。10代、20代の情報源は全てネット。中学生になるとユーチューブなどの動画メディアでタイやインドネシアなどアジア各国のアーティストの音楽を聴いている。もはや日韓という二国間関係だけに収まりきらない。そんなグローバルな世界観で育った若者にとって、両国の難しい政治問題はどうでもいいんです」

日本のシンクタンク「言論NPO」と韓国の「東アジア研究院」の共同調査によると、日本では13年からの5年間で韓国への印象が「良くない」または「どちらかと言えば良くない」と答えた人の割合が37.3%から46.3%に増えたのに対し、韓国では日本への印象が「良くない」または「どちらかと言えば良くない」と答えた人が、76.6%から50.6%に急減したという。

若年層の多くが日本に抱く好印象を背景に、韓国の対日感情は改善傾向にある。とはいえ、全体では半数が「日本嫌い」なのも事実だ。

対日感情の厳しい一面が表れた調査もある。
韓国の世論調査専門機関「リアルメーター」が1月14日に行った最新の調査によると、文在寅政権の日本政府への対応について「より強く対応を」と答えた人が45.6%、「現在の対応が適切」が37.6%、「対応自制を」が12.5%だった。

ほとんどの地域、年齢層で「より強く対応を」と答えた人が最も多かった。一方、文在寅政権を支持する層では「現在の対応が適切」との認識が多かったという。(編集部・中原一歩)※AERA 2019年3月4日号より抜粋【2月28日 AERAdot.】
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【文化面では「史上稀に見る蜜月」】
文化的な面で言えば、日本側にも韓国文化を受容・評価している面があります。文化面では「史上稀に見る蜜月」とも。

****日本と韓国、実は文化面では「史上稀に見る蜜月」****
(中略)だが、私が今回、このコラムであえて強調したいのは、日韓関係には、政治的対立とは別の「友好的側面」も存在するということである。特に、文化交流の面では現在、あの15年前の「ヨン様ブーム」以来の韓流ブームが到来している。言ってみれば、いまの日韓関係は「政冷文熱」なのである。

「そんなバカな」と思われる方に、いくつか実例を示したい。
 
観光庁の発表によれば、昨年日本を訪れた韓国人観光客は、前年比5.6%増の752万6000人と、過去最高を記録した。消費額も5842億円と、「爆買い」の中国人に次ぐ額を、多くの消費を日本でしてくれている。
 
同様に、韓国観光公社の発表によれば、昨年韓国を訪れた日本人観光客も、295万人に達した。これは前年比28%増である。こうした日韓交流の増加は、政治問題と関係なく、文化的関係が熱を帯びていることを意味している。
 
また、この原稿を執筆している2月17日現在、日本のアマゾンの和書で「文芸作品」単行本の第1位は、日本の有名作家の作品ではなくて、韓国人女流作家のチョ・ナムジュが書いた小説『82年生まれ、キム・ジヨン』である。(中略)

原爆Tシャツ騒動のBTSもドーム公演で38万人動員
(中略)K-pop部門でも、「防弾少年団」(BTS)をご存じだろうか?(中略)彼らは2014年6月に日本デビューを果たし、「日本中の女性を虜にした」という意味では、あのヨン様以来の存在感を見せている。

これまでオリコン週刊ランキングで1位になったシングル曲が4曲もあり、2017年6月には雑誌『an・an』の表紙を飾った。日本語バージョンのオフィシャル・ミュージックビデオのユーチューブでの再生回数は、3331万850回にも上っている(2月17日現在)。

「防弾少年団」は、昨年11月9日の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に生出演する予定だったが、メンバーの一人(ジミン)が過去に着ていたTシャツに、原爆投下後のキノコ雲の写真と韓国人の万歳写真が印刷されていたことが発覚し、急遽出演を取りやめた(後に事務所が謝罪)。

それでも同月から本日(2月17日)にかけて、東京ドーム、大阪京セラドーム、ナゴヤドーム、福岡ヤフオク! ドームと、4都市9公演を行い、計38万人を動員したのである。
 
韓流ドラマも、日本ではすっかり人気が定着した感がある。これだけ日韓関係が悪化している現在も、例えばNHK総合チャンネルでは、夜11時から1時間、『オクニョ 運命の女』(全51回)を放映している。

「嫌韓」ムードの影響は皆無、絶好調の韓流ドラマ市場
多くの韓国ドラマの買い付けを行っている日本企業のバイヤーが証言する。
「この業界には『嫌韓』なんてありませんよ。逆に、ますます韓流ドラマの『爆買い』に拍車がかかっています。2015年には、1話あたり3万ドルが相場だったのですが、昨年から1話あたり20万ドルのドラマが続出するようになったのです。(中略)

韓国側も、一時期は中国が最大の輸出市場でしたが、(2016年にTHAAD=終末高高度防衛ミサイルの配備を巡って)中国との関係が悪化してからは、日本が最大の輸出市場になっています。韓国側も、誰をキャスティングし、どんなストーリーに仕立てれば日本で人気が出るかを吟味して、ドラマ作りを行っているのです。その意味では、韓国のエンタメ業界にも、『反日』なんてありません」
 
このように現在の日韓関係は、あくまでも「政冷文熱」なのである。
 
日本から見ると、文在寅政権は看過できない面が多いのは確かだ。だがそうだからと言って、それが日韓関係のすべてではないことも知っておくべきである。【2月19日 右田早希 JB Press】
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【冷戦終結で劇的に変化した政治的・経済的日韓関係】
一方、今後の日韓関係を考えるうえでは、両国の政治・経済関係が大きく変わってきていることを認識しておく必要があります。

****「日本は韓国にとって”特別な国“」は冷戦終結で終わった****
(中略)この30年の間に、韓国における日本の存在感は驚くほど低下した。韓国側からあまりにも「軽い」発言が出てくる背景には、この日本の存在感低下がある。

こうした韓国側による認識の「軽さ」は極めて問題だが、一方で冷戦終結という世界史的な出来事の影響を考えると日本の存在感低下という現象は必然のものだった。

東アジア情勢を激変させた冷戦終結
(中略)冷戦下の韓国は、朝鮮戦争で戦火を交えた北朝鮮とともに東西両陣営がにらみあう最前線だった。(中略)

冷戦終結後の世界情勢は日本を取り巻く安全保障環境に大きな影響を与えたと語られるが、それは他国にとっても同じことである。特に冷戦下で「最前線国家」という窮屈な位置に押し込められていた韓国は、日本とは比べ物にならないほど大きな変化に見舞われた。それを忘れてはならない。

韓国の立場から見たポスト冷戦の世界
韓国に駐在していた日本の外交官と20年近く前、酒を飲みながら交わした会話が忘れられない。打ち解けた雰囲気で話していた時、彼は「冷戦時代の韓国にとって世界というのは日本と米国だった」と言ったのだ。韓国の人たちには怒られるかもしれないが、それは真実を言い当てていた。(中略)

植民地支配の記憶が新しかった時代に反日世論が高まったとしても、政権としては野放図な反日を放置する余裕などなかった。象徴的なのが、植民地支配への謝罪なしでの日本との関係正常化に「屈辱外交」だと反発する世論を戒厳令で押しつぶした朴正煕政権の選択だろう。(中略)

だが、前述したように1980年代の世界情勢を受けて「韓国にとっての世界」は大きく変容する。(中略)「韓国にとっての世界」は日米だけではなくなった。(中略)日米との関係が国家としての生命線という時代はとっくの昔に終わった。

経済でも日本への依存度は大きく低下
(中略)韓国が日本に頼ったのは資金と技術だけではない。貿易相手としても、日本は米国と並んで重要な相手国だった。日韓国交正常化から5年たった

70年を見ると、韓国の貿易相手国としてのシェアは日本が37%、米国が34.8%で合計すると7割に達した。日米の比率は徐々に落ちていくが、(中略)(日米合計の比率は)96年には30%台となり、04年には20%台、11年にはついに10%台となった。昨年(18年)は日本7.5%、米国11.5%で計19%である。
 
80年代から細々とした交易が始まった中国のシェアは90年に2.1%だったが、(中略)昨年は23.6%に達している。
 
注目すべきは、日米中3カ国のシェア変動だけではない。3カ国を足しても昨年のシェアは4割強だ。かなり大きな数字ではあるものの、日米の2カ国で7割だったほどの寡占状態ではない。韓国は既にGDP規模で世界10位前後の経済力を誇るようになっており、それに伴って貿易相手も多角化が進んでいるのだ。
 
結局、政治と経済の両面で韓国にとって特別な国だった日本の位置づけは、冷戦終結を前後して大きく変わらざるをえなかった。どちらも不可逆的な変化だから、かつてのような状況に戻ることはありえない。

これからの日韓関係はそれを前提にしたうえで考えていかねばならないのに、こうした変化に対する認識が両国ともに不十分というのが現状だ。この点にもっと注目すべきだろう。【2月16日 WEDGE】
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【限界を迎えた「65年体制」を清算して、将来の協力関係を目指す「日韓平和友好条約」を】
上記のような微妙な、世代間でも差がある反日感情、文化的蜜月関係、政治・経済関係の劇的変化といったものを前提に、今後の日韓関係をどのように再構築していくべきか。

****「史上最悪」日韓関係への処方箋****
<一方的な主張をぶつけ合い建設的な議論ができない――根本的な原因は限界を迎えた「65年体制」にある>

(中略)最近の日韓は、相手を否定し、売り言葉に買い言葉で本筋からずれた言い争いがエスカレートした状態だ。葛藤の背景には北朝鮮問題がある。

例えば日本政府は、南北融和で従来の日米韓の枠組みが崩れ中国の影響力が増大し、日本の存在感が相対的に下がることを懸念している。拉致問題と日本の安全保障上の懸案がないがしろにされることにも反対だ。

だが韓国からすれば、分断体制を何としても克服したい。かつての独裁政権も現在の左右の政治対立も周辺大国からの「軽視」も、根源には分断体制があるとされる。そして、分断の淵源には植民地支配があり、ドイツと違って日本の代わりに分断されたという強い意識がある。よって、南北融和に非協力的な今の日本に失望している。

問題の根源には、これまでの日韓関係を支えてきた「65年体制」が限界に達したことがある。1965年の日韓国交正常化は、ベトナム戦争の最中、米国の冷戦戦略の下に日韓両政府の妥協の産物として、両国民のコンセンサスを得ないまま実現した。

それは日韓の圧倒的な力の差、冷戦という接着剤と米国という仲介者、歴史問題の棚上げ、ポストコロニアルな人脈、そして日本の一定の贖罪意識によって成り立っていた。

それから時代は大きく変わった。韓国は民主化され国力は増大し、南北・米朝が対話を始めた。日本では植民地期の記憶は風化し、韓国に一片の贖罪意識も持たない人が発言力を増した。

炎上覚悟で本音の議論を
家も50年たてばリフォームが必要となるように、日韓関係もリビルディング――時代に合った関係の再定義が必要だ。(中略)

65年体制の最たる限界は、棚上げにした歴史問題がほこりをかぶり、棚下ろしの必要が生じた点にある。日韓基本条約および請求権協定には、日中共同声明にはある反省の表現もなく、署名したのも外相で和解には程遠い内容だ。これを今後も日韓関係の「基本」にすべきかは大いに議論の余地があるだろう。

最大の争点は韓国併合の法的性格だ。65年体制では、両国は国内向けに別の解釈をすることを暗黙の了解とした。韓国では当然不法とされ、植民地期は「日帝強占期」と呼ばれた。一方、日本では合法で「解決済み」に傍点が置かれた。

日本では韓国がゴールポストを動かしているとの議論があるが、そもそも2つのゴールポストの存在を認めることが65年体制の精神だった。

こうした経緯は忘れられがちだ。韓国を「甘やかしてきた」という自民党議員がいる一方、韓国では日本は謝罪・反省していないとの意見が根強い。

自分たちの論理を原理主義的にぶつけていても、打開への道は見込めない。この際、本音をぶつけて議論をすべきだ。さらなる葛藤が広がるかもしれないが、同じ問題でケンカを繰り返す陳腐な関係を脱却するには、避けて通れないだろう。その結論としては、現時点でおおむね次の3つが考えられる。

第1は、韓国併合は国際法上、合法だったと両国が認めることだ。その上で、日本統治と戦争の過程での人道的な罪については率直に認め反省し、必要あれば追加措置を講じる。(中略)

第2は韓国併合を不法として、日本政府は正式の謝罪を表明する。だが、賠償・補償については65年の請求権協定、その後の経済協力や日本側の措置などにより、清算は終わったとする。(中略)

第3は、合法性についてコンセンサスを得られなかったことを再確認する。つまり棚上げあるいは両論併記にすることを国民的に合意する。その上でどうするかを議論する。(中略)

新たな文化的つながり

とはいえ、合法・不法という法律論が本当に重要なことだろうか? 日韓関係は法解釈で白黒つけていいものだろうか? 植民地支配は戦争と違い、複雑な様相を呈している。ジョン・ダワーは歴史を一言で言えば「複雑」だといったが、まさに日韓の歴史は複雑さそのものだ。

いずれにせよ、隣国を相手の国民の意に反して植民地化したことは無理があった。過去の悲劇を二度と繰り返さないことを誓い、将来の協力関係を標榜する(第二次大戦後に独仏が和解のため結んだ)エリゼ条約に匹敵する「日韓平和友好条約」を結ぶことを提言したい。

韓国側にも日本側の立場や論理にも耳を傾ける寛容さが欲しい。具体的には、天皇や原爆などについて史実と実態に基づく理解を持つ。できれば、天皇を「日王」でなく天皇と呼ぶ。80年代までと、金大中、盧武鉉政権はそう呼んでいた。また、戦前と戦後の日本を区別し、「旭日旗」も認める雅量が欲しい。

「史上最悪」といわれる日韓関係だが、必ずしもそうとも言えない。政府関係とメディア・ネットの雰囲気は最悪だが、昨年の日韓往来者数は史上初めて1000万人を突破した。村上春樹や東野圭吾を読み、BTSやTWICEに熱狂する、スピードスケートの小平奈緒と李相花(イ・サンファ)の抱擁に感動する日韓の新たな「文化人」に期待を寄せたい。

それでも納得がいかずケンカしたければ仕方ない。だが、日韓葛藤を喜ぶ習近平(シー・チンピン)の慇懃なほほ笑みと、日韓が慕うアメリカの碩学ジャレド・ダイアモンドの忠言を想起してからでも遅くはない。

「韓国人と日本人は同じ血を分けているのに長年互いに敵意を抱いてきた......彼らは成長期を共に過ごした双子兄弟に似ている。東アジアの政治的未来は、両国が古代に築いた紐帯を成功的に再発見できるかどうかに懸かっている」【2月26日号 Newsweek日本語版】
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コメント

台湾  地政学的力学と経済力と巧妙な情報戦術で台湾人の意識変革を狙う中国・習近平政権

2018-12-09 23:05:23 | 東アジア

(金馬奨での受賞スピーチで台湾独立の夢を語った傅楡(フー・ユー)監督

審査委員長を務めた中国本土出身の大女優・鞏俐(コン・リー)【12月4日号 Newsweek日本語版】 迫力・貫禄は圧倒的です。)

【与党大敗に、台湾政策の自信を深める中国・習近平政権】
****中国が仕掛ける台湾人「転向」作戦****
・・・・11月24日に実施された台湾の統一地方選挙は事実上、中国の対台湾政策の勝利となった。22県市の首長ポストは、親中とされる野党陣営が改選前の6から15まで増やしたのに対し、与党は13から6に減らした。
 
世界中の専門家が、今回の選挙を「台湾の香港化の始まり」とみる。香港に続いて台湾でも、歴史の針は中国に向かいつつある。むしろ台湾のほうが、その変化は顕著かもしれない。・・・・【12月11日号 Newsweek日本語版】
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今回の選挙は、地方選挙ということもあって、中国との関係が直接的論点となった訳ではありません。
与党側の大敗の原因は、蔡英文総統の結果を出せない政治に対する有権者の失望にあると見られています。

****民意の津波が蔡政権に投じた不信任票****
・・・・台湾紙、聯合報は統一地方選の投票翌日の11月25日付社説で、選挙結果は「民意の津波が蔡政権に投じた不信任票だ」と断じた。

記事は、民主進歩党の蔡英文総統が2年前に当選した際に人々に約束した「新時代」が一向に訪れないばかりか、「民進党政権の傲慢さと職権乱用は人々の我慢の限界に到達し、蔡氏の民意に対する冷淡さと鈍感さは彼女の指導者としての正当性を失わせた」と筆鋒(ひっぽう)鋭く批判した。

その上で、民進党が謙虚に反省をしなければ、「2020年にさらに大きな挫折を迎える準備をした方がいい」と記し、20年の総統選で民進党が政権を失う可能性に言及した。
 
聯合報は、野党である中国国民党寄りの論調で知られるが、民進党寄りの自由時報も同様に蔡政権を厳しく批判している。

自由時報は同25日付と26日付の2回の社説で、与党大敗の原因を分析し、「民進党はわずか2年で民心を失った」と指摘した。

社説によると、蔡氏は経済、社会、安全保障などさまざまな施策を講じてきたが、「改革の歩みと(影響への)手当ては不十分で、公約の実現も足りず、人事には偏りがあり、民衆の期待とは大きな落差があった」。改革の対象となった人々からは恨まれ、改革を期待した支持者からも失望されたという。
 
また自由時報は、地方選と同日に行われた住民投票10件のうち、成立した7件が「いずれも蔡政権の重要な理念や政策から乖離(かいり)している」と指摘。

住民投票も「蔡氏の諸改革への不信任投票となった」と断じた。記事は、蔡氏が改革の過程で「困難を恐れない決心と決断力を欠き、ひたすら妥協を探った」と分析し、改革の意義を無くしてしまったとも批判した。

蔡氏が選挙後に「正しいことをし続ける」と宣言したことには「その勇気は称賛すべきだ」としながらも、「正しいことを行うには、十分な手当てと実務的な施策が必要だ」とクギを刺した。(後略)【12月3日 産経】
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ただ、外交的に中国によって次々に関係国を奪われていく現実、中国との軋轢が強まったことで中国からの経済的圧力にさらされて経済的に困難な状況にあることなど、中国との関係、台湾の閉塞感が一定に背景にあっての選挙結果でもあります。

特に、民進党の牙城、あるいは民進党発祥の“聖地”ともいわれる南部・高雄を、「対中関係を修復して商機を取り戻す」という国民党・韓氏に奪われたことには、中国との関係が強く影響しています。

*****民進党“聖地”で敗北 蔡氏「支持者を失望させた」****
・・・・・対中関係が悪化したことも蔡政権にダメージとなった。中国は、独立志向がある民進党政権に揺さぶりを続け、中国人観光客は激減。また中国当局は、台湾の農産物買い付けを減らすなどした。観光業の比重が大きい台湾東部や農村地帯では、蔡政権への反発が強まっていた。・・・・【11月24日 毎日】
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また、中国になびかない民進党・蔡政権が大敗し、結果として、中国との関係を重視する国民党が復調し、次期総統選での復権も視野に入ってきたこともあって、中国は今後について自信を深めるところとなっています。

****台湾地方選で中国が“勝利宣言”「平和な関係望む民意の表れ」と****  
台湾の統一地方選で与党、民主進歩党が惨敗した結果を受け、中国国務院(政府)台湾事務弁公室の馬暁光報道官は25日、「広範な台湾の民衆が両岸(中台)関係の平和的な発展がもたらす利益を望んでいることの表れだ」と声明を発表した。
 
馬氏は、「われわれは引き続き(『一つの中国』原則に基づく)1992年コンセンサスを堅持し、台独(台湾独立)勢力の活動に断固として反対」と強調した。
 
中国は「一つの中国」原則を認めない蔡英文政権への圧力を強めており、蔡政権の対中姿勢が支持を得られなかったとする“勝利宣言”ともいえそうだ。
 
また馬氏は、東京五輪への「台湾」名義での参加申請を問う住民投票が否決されたことに触れ「台湾のスポーツ選手の利益を“賭け金”として利用することは人心を得られなかった。台独のたくらみは失敗する運命にある」と言及した。【11月25日 産経】
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こうした中国にとって有利な流れを受けて、中国は(武力行使の必要性は遠のき)これまでのアメとムチの組み合わせを更に強化・継続していくものと思われます。

****台湾・民進党の「自滅」にほくそ笑む習近平****
与党・民進党の歴史的惨敗に終わった台湾の統一地方選。にっくき蔡英文総統と民進党がたった2年半で自ら転んでくれた。その光景に、ほくそ笑んでいた人間が北京の中南海にいたはずだ。習近平・中国国家主席である。
 
(中略)しかし、習近平は就任から6年以上がすぎているのに、なお、独自の台湾政策の公表を控えている。そこには、2014年のひまわり運動と、その影響をうけた台湾政治の大変化が響いていると見るべきだろう。

台湾独立を綱領に掲げる民進党の勝利が続くなかで、台湾政策を定めることを控えてきたと思われる。

「統一地方選後」の中台関係の行方
そのなかで展開されてきた習近平の台湾政策は、原則主義とソフトな圧力を組み合わせるものだった。蔡英文政権は発足当初から中国との対話継続を実現するために、就任演説で、中華民国体制の維持や「(一つの中国を含んだ)92年コンセンサスを歴史的事実」と述べるなど、多くの譲歩を行っている。

しかし、中国はそれらを評価せず、「92年コンセンサス」を明確に受け入れない限り、台湾との対話を行わないと表明。

馬英九時代は停止していた台湾の友好国の寝返りを認め、観光客の人数も絞り込み、台湾農産物の購入なども控える一方、中国に留学する台湾の若者には大きな優遇を与えるなど、硬軟織り交ぜた慎重な台湾政策を進めてきた。
 
これは習近平政権にとっては、あくまでも台湾政治の展開の様子見を兼ねた暫定的な政策であった。2020年の総統選でも民進党が勝利してさらに民進党の天下が続くときは、中国は「台湾独立の阻止」を理由に武力行使を含めた強硬手段というハードなオプションも検討してきたと言われている。
 
しかし、「友党」とみなす国民党の復調が目に見えるようになったことで、中国は当面、真綿で台湾の首を絞めていくような現状の路線を続ける可能性が高い。【11月27日 WEDGE】
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【相手を説得するのではなく、相手の考えをひそかに変えることによって勝つのが上策】
早速、今回選挙で象徴的な役割を担った高雄に対し、“ご褒美”をふるまうようです。

****中国が褒美?「台湾・高雄に客向かう」 新市長の登場で****
台湾の統一地方選で南部・高雄市長に中台関係の改善を訴えた野党・国民党の韓国瑜氏が当選したことを受け、中国側がさっそく、国民党系の首長が当選した自治体を取り込む姿勢を見せている。

中国政府で台湾政策を担う国務院台湾事務弁公室の報道官は28日の記者会見で「既に高雄に団体客が向かっている。良い知らせの始まりだ」と述べ、経済的な優遇を図る考えを示した。
 
報道官は「(与党の)民進党当局が設けた障壁を早く排除すれば、台湾同胞の得る利益も大きくなる」と述べ、利益誘導を通じて、台湾政治に介入する姿勢を示した。(後略)【11月28日 朝日】
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ただ、露骨に選択を迫るような手法は、警戒心を招き逆効果ともなりますので、中国にとっては“慎重さ”が必要になります。

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中国が長期的に最も恐れているのは、台湾がこのまま台湾本土意識をずっと強めていき、「台湾は台湾」であることをすべての人々が当たり前の事実として受け止めてしまうことだ。

そうなると、中国にとっては統一をいくら叫んでも、台湾の民意が一致していれば、武力行使による「台湾解放」以外に何も打つ手はなくなってしまう。だがそれは米国と国際世論が容易に許すところではない。
 
今回の台湾の統一地方選で民進党から国民党にトップが交替した高雄市や台中市には、その農・水産物を優遇したり、観光客を送り込んだりするなど目に見える「配当」を与えて、台湾社会に「親中・反中」の間で分断を作り出し、台湾人に選択を迫るような方向にもっていこうとするに違いない。
 
ただ、台湾の人々にとって中国はあくまで遠い存在であり、台湾が独自の存在であることを脅かそうという行動が見えたときは、中国への警戒心が一気に高まるだろう。

馬英九政権の時代も、台湾に「善意」の名のもとに多くのメリットを与えたが、結果として台湾本土意識はかえって強まり、中国への反発をもとに「ひまわり運動」を招いて民進党の勝利という悪循環を招いた。

そうした「悪夢」の記憶があるだけに、中国は目下のところ好ましい方向に推移している台湾問題に対し、当面はなおさら慎重な姿勢を崩さないと見られる。【11月27日 WEDGE】
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中国にとっては、台湾に選択を迫る、あるいは、説得するのではなく、台湾の人々の意識を変えることが重要になります。

****中国が仕掛ける台湾人「転向」作戦****
地政学的力学と経済力と巧妙な情報戦術で、共産党は親中派の市民を着実に増やそうとしている

・・・・・優秀な情報機関は、「標的」や敵対する政府、社会の認識を変えようとする。相手を説得するのではなく、相手の考えをひそかに変えることによって、議論に勝つのだ。
 
1939~41年にイギリスの情報機関はアメリカで大規模な秘密工作を行い、第二次大戦にイギリス側に付いて参戦したいと世論に思わせた。
 
2016年の米大統領選でロシアの情報機関は、ヒラリー・クリントン元米国務長官の信用を落とす大規模な秘密工作を展開。米社会のアメリカの制度と慣習に対する信頼を失わせた。
 
現在、台湾を取り巻く力の客観的相関性が変わりっっある。中国は覇権を広げ、アジアに君臨する大国となった。アメリカはドナルド・トランプ大統領の下で混乱を極め、アジアから遠ざかりつつある。これを受けて、台湾の政治家と社会はこれまで以上に中国に関心を向け、共感を示し始めている。
 
ただし、中国はそこで満足しない。台湾の人々が現実をどのように理解するかという根っこから、変えようとしているのだ。これはレーニンにさかのぼる手法でもあり、ソ連も大きな成功を収めた。

フェイクも百回唱えれ
心理学者にょると人間は、最初は自分が見聞きしたことに反対したり虚偽情報だと分かっている場合でも、繰り返し経験して慣れてくると次第に受け入れるという。
 
トランプはものを知らないが、1つ重要な心理学のルールを知っている。どんな意見も十分に繰り返せば、たとえ嘘でも、人々は信じ始めるのだ。慣れは、軽蔑ではなく受容と同意を助長する(レーニンも、ナチスドイツの宣伝相たったヨーゼフ・ゲッベルスも、このルールを熟知していた)。
 
実際、台湾の論説や文学、ビラ、報道では、政治や社会の問題について、中国政府の立場をさりげなく主張する傾向が強まっている。

例えばニューヨークータイムズ紙によると、海軍士官候補生も学ぶ国立台湾海洋大学には、中国寄りの主張を巧妙に組み入れたパンフレットが堂々と置かれている。
 
台湾の有力メディアが中国寄りの姿勢を強めているのも、偶然ではない。最近も、台湾公共広播電視集団が放映した米国在台協会幹部のインタビューが、アーカイブなどから削除された。「外国勢力」が先の統一地方選の前に、国民を欺きかねない虚偽の情報を伝えていたと、警鐘を鳴らす内容だった。
 
今回の選挙は台湾入の意識にとって歴史的な転換点になった。70年に及び中国と対立関係を続けてきた台湾は、人々の心理と、力の相関関係と、政治的な現実について自ら中国の思惑に合わせて軌道修正しているようだ。
 
(香港を本土と結び付けた「港珠漢大橋」のように)全ての橋は北京に通じる。それだけでなく、台湾入の考えも北京を目指し始めている。【12月11日号 Newsweek日本語版】
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(蛇足ながら、“どんな意見も十分に繰り返せば、たとえ嘘でも、人々は信じ始める”ということに関し、「ロシア疑惑」の捜査中にトランプ大統領から解任された米連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コミー前長官が7日、米下院司法委員会の非公開の公聴会で証言し、「大統領のウソや司法への攻撃に無感覚になってはいけない」と強い懸念を表明しています。【12月9日 朝日より】)

ただ、そうした中国による意識変化を促すような働きかけが強まる中では、台湾の独自性を重視する立場からすると、沈黙していては中国に取り込まれるということにもなります。

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だが近年、台湾の人々にとって、独立問題で沈黙を守ることは、台湾が存続する政治的余地をことごとくつぶそうとする中国政府のたくらみに迎合する行為と見なされるようになってきた。

今年の金馬奨は、文化の世界では台湾も香港も中国も対等だという前提が寓話にすぎなかったことを露呈した。【12月4日号 Newsweek日本語版】
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上記“金馬奨”は、中華圏のアカデミー賞と言われる映画賞で、これまでは中華系の映画人が、出自や政治的立場を忘れて共通の文化を祝う機会となっていました。

今年は、14年に台湾独立を支持する学生が立法院を占拠した「ひまわり学生運動」を追った『我椚的青春、在台湾(私たちの青春、台湾)』がドキュメンタリー賞を受賞。

傅楡(フー・ユー)監督が、いつか台湾が「真に独立した存在」として認められることが、「台湾人として最大の願いだ」と異例の受賞スピーチを行ったことや、主演女優賞のプレゼンターとして登壇した中国の俳優、涂們(トゥー・メン)が「また中国台湾に来られてうれしい」と、強烈にやり返したこと。

さらに、作品賞発表では、審査員長で、プレゼンテーターでもある中国人大女優・鞏俐(コン・リー)が着席したまま舞台に上がらなかったことで話題になりました。

中国と距離を置く民進党・蔡英文政権の不人気、中国との関係を重視する国民党の復調という流れの中で、中国が展開する台湾人の意識「転向」作戦、それに反発する台湾の独自性を重視する人々の自己主張が、どのような展開となるか注目されます。

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