(ミャンマー東部カイン(カレン)州で空爆を受け、サルウィン川を越えタイ・メホンソンに避難した少数民族カレンら。カレンの難民キャンプ、エイトゥタの指導者提供(2021年3月29日撮影)【3月30日 AFP】)
【中国 「風よけのため」?】
個人の生活でも、国家間の関係でも「ウソ」はつきもの。
たわいもない、嘘も方便的な「white lie」もありますが、普通のウソは、相手に信じさせようとしていろいろつじつまを合わせ、悪意はあるものの一種「知的」な部分もあります。
ただ、なかには、どう考えても信じられない、言っている方も相手が信じるなんてはなから思っていない、それでも強引に強弁するようなウソも。
聞かされる方は、馬鹿にされたような感じがしますが、明確な証拠がなければ話はそれ以上進みません。
国内政治の場面でよく耳にする「記憶にございません」なんて類もそんなウソというか、強引な強弁。
最近、国際面で目にしたこの類。一つ目は中国。
****中国漁船220隻が南シナ海の紛争海域に =中国「風よけのため」、米国「数カ月ずっと停泊」****
2021年3月24日、米華字メディア・多維新聞は、南シナ海の紛争地域に中国漁船約220隻が停泊している問題でフィリピンを支持した米国に、中国政府が反発したと報じた。
記事によると、フィリピン政府は「牛軛礁(英語名Whitsum Reef)で3月7日に、中国漁船約220隻が停泊し、国防相が中国に帰還するよう呼び掛けた」とし、同国政府が漁船の乗組員について民兵との認識を示した。
この情報に対して中国の駐フィリピン大使館は22日、「牛軛礁は中国の南沙諸島の一部。中国漁船はこの海域で長期間操業を行っているが、海洋状況を理由に一部の漁船が牛軛礁で風よけをしていた。これは正常な行動であり、民兵船などではない。根拠のない推測は無益であり、理性的な姿勢を望む」と反論した。
一方、米国の駐フィリピン大使館も23日に「中国船がこの数カ月、当該地域に停泊し続けており、天候にかかわらずその数はますます増えている。われわれはアジアで最も古い盟友であるフィリピンとともにある」とする声明を発表するとともに、「中国が海上民兵を用いて他国を恐喝、挑発、威嚇し、地域の平和と安全を破壊している」と非難した。
中国大使館は程なくしてツイッターを更新し「米国は南シナ海問題の関係者ではない。当該地域にて対抗をあおり立てる行為は、一部の国の私利にメリットがあるばかりで、当該地域の平和と安定を破壊する」と反発している。【3月24日 レコードチャイナ】
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領有権に関しては、各国がその権利を主張してい地域ですから、中国がなにかしらの権利を主張するのも、まあ、それは「あり」でしょう。
****中国船220隻が集結、8つ目の人工島を建設か?****
武装海上民兵が乗船、完全に舐められたバイデン政権
フィリピン政府は、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内の環礁周辺海域に中国船220隻が集結している状況を国際社会に向けて発表し、ロレンザーナ国防相が中国側にただちに撤退するよう求めた。
フィリピン当局によると、蝟集(いしゅう)している中国船は漁業活動などは行っておらず、船の特徴などから明らかに武装海上民兵の船であるという。
各国が領有権を主張するユニオン堆
多数の中国海上民兵船が集結しているのは、南シナ海・南沙諸島を形成するユニオン堆(たい)と呼ばれている環礁群の中で最も大きい環礁(満潮時は水没する暗礁)のウィットサン礁である。
この環礁はフィリピン沿岸から200海里以内に位置しており、フィリピン政府によるとフィリピンの排他的経済水域内ということになる。
しかし、ウィットサン礁をはじめとするユニオン堆に対しては、フィリピン、中国、ベトナム、台湾がそれぞれ領有権を主張している。
ユニオン堆はたしかにフィリピン沿岸海域から200海里内に位置しているため、フィリピン政府は自国の排他的経済水域に位置していると主張している。だが、フィリピンはユニオン堆を形成している環礁を1つも実効支配していない。
一方、ベトナムはユニオン堆内のシンコウ島、コリンズ礁、ランズダウン礁、そしてグリアソン礁に小規模な守備隊を派遣したり定期的にパトロールすることによって実効支配態勢を維持している。
また、中国はジョンソンサウス礁(赤瓜礁)、ヒューズ礁(東門礁)そしてウィットサン礁(牛軛礁)を実効支配している。
ウィットサン礁に対しては、漁船群や巡視船が頻繁に姿を見せることによる実効支配であるが、ジョンソンサウス礁とヒューズ礁に対する実効支配は、本コラムでも繰り返し指摘しているとおり、人工島の建設による「誰の目にも明らかな形」での強力な実効支配態勢を確立している。(後略)【3月25日 北村 淳氏 JBpress】
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ただ、数か月も停泊しながら「風よけをしていた」という言いぐさは、国際社会を馬鹿にしたような感じも。
見え透いたウソは、太い二の腕の筋肉をちらつかせて「なんか文句あるのか?」とすごむならず者の言いぐさ。
こんなウソをつくようでは、信頼も、尊敬もされません。
中国は、これまで同様に、この地域での既成事実を作り上げようとしているのではないか・・・との懸念も。
****第4の軍事滑走路が誕生してしまうのか****
今回、220隻もの中国海上民兵船が集結しているウィットサン礁はユニオン堆最大の環礁である。大きな環礁とはいえ、人工島化しなければ陸上施設は建設できない。
だが、中国は南沙諸島ですでに7つもの環礁を人工島化して海洋基地群を生み出していることを忘れてはならない。ウィットサン礁を人工島に生まれ変わらせると、3000メートル級の滑走路を設置することができるのだ。
ウィットサン礁は、すでに滑走路が建設されているミスチーフ礁とファイアリークロス礁のほぼ中間に位置しており、それぞれの航空施設からおよそ150kmの距離だ。そして、やはり滑走路が設置されているスービ礁の南方およそ150kmに位置している。
そのため、もし中国がウィットサン礁を人工島に改造してしまい、南沙諸島にもう1つの航空拠点を設置したならば、中国による南シナ海の軍事的コントロールはますます強固なものとなるのである。【同上】
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これまでも親中国姿勢を見せているドゥテルテ大統領ですので、“フィリピン大統領府は同日、ドゥテルテ大統領が中国の大使とこの問題を協議すると発表。ロケ報道官は、大統領が「友人(である中国)と話し合えないことは何もない」と述べたと明かし、米国との温度差ものぞかせた。”【3月24日 時事】と及び腰ですが、ロレンザーノ国防相は強気の姿勢も見せています。
****フィリピン、南シナ海の中国船団監視に戦闘機派遣*****
フィリピンのロレンザーノ国防相は、同国が領有権を主張する南シナ海の海域に中国の海上民兵を乗せたとみられる200隻以上の中国船舶が停泊している問題で、状況を監視するため、軍の軽量戦闘機を毎日、同船団の上空に派遣していると明らかにした。
また、中国に対し、直ちに船団を撤退させるよう再度求めた。
中国船舶はフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内にあるウィットサン礁に停泊している。
ロレンザーノ氏は27日遅くに出した声明で、軍の戦闘機を毎日派遣していると表明。軍はまた、主権を守るためのパトロール活動とフィリピン人漁業者の保護のために南シナ海に配置している海軍部隊を増強するとした。【3月29日 ロイター】
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【タイ 「我々が銃を突き付けて(帰国を)強制したわけではない」】
もうひとつの強引な強弁は、タイのプラユット首相。
隣国ミャンマーの混乱、国軍による「暴力的」な鎮圧行動は周知のところ。
国軍と少数民族武装勢力の衝突にも発展し、軍は空爆も実施しています。
この混乱で3000人ほどのタイへの避難民が発生しているとのことでしたが、タイはこの避難民をミャンマーへ強制退去させているとも。
****ミャンマー避難民をタイが強制的に戻したか****
ミャンマーでは軍事クーデターに抗議する市民への弾圧が激しくなっていますが、隣国のタイに約3000人の住民が逃れたところ、強制的にミャンマー側に戻される事態が起きています。
ミャンマー東部のカイン州には、クーデターに反発する少数民族の武装勢力の拠点があり、軍が空爆を行いました。このため、約3000人の住民がタイ側に避難したということです。
タイのプラユット首相は29日、避難民を受け入れる準備をしていると話しましたが、ロイター通信は支援団体の話として、タイ当局が、逃れてきた人のうち約2000人をミャンマー側に強制的に戻したと報じています。
ミャンマー各地では29日も治安部隊が市民を銃撃したほか、バリケードを吹き飛ばすなどして多数の死傷者が出ています。【3月30日 日テレNEWS24】
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このことについて、タイのプラユット首相は「我々が銃を突き付けて(帰国を)強制したわけではない」と強弁しています。
****ミャンマー軍が空爆、越境避難の2千人をタイが強制退去の報道****
タイ・バンコク(CNN) ミャンマーで実権を握った国軍が南東部のカレン州で空爆を行い、住民が隣国タイに避難した。タイは入国を試みた2000人以上を退去させたと伝えられている。
活動家団体のカレン情報センターによると、タイとの国境を越えた避難民たちは、直後にミャンマーへ強制的に戻され、これまでに2009人が国内の密林に身を隠した。
カレン州ではカレン族の武装勢力が支配する村落に対してミャンマー軍機が空爆を実施、数千人の住民が自宅から避難した。ロイター通信の報道によると、タイとの国境地帯を支配するカレン民族同盟(KNU)は、国境に近い軍の拠点を制圧し、10人を殺害していた。
ミャンマーの政治犯を支援する団体AAPPによれば、軍が2月1日のクーデターで実権を握って以来、治安部隊に殺害された人は少なくとも510人に上る。29日には子どもや若者を含む14人が射殺された。
KNUによると、軍の空爆を逃れた3000人はサルウィン川を渡りタイに入ったが、2000人が押し戻されたという。
カレン州とタイの難民キャンプで活動するカレン女性機構(KWO)も、空爆によってカレン州の住民1万人が自宅からの避難を強いられ、3000人がタイとの国境を越えたことを確認した。
タイのプラユット・チャンオチャ首相は30日の記者会見でミャンマーからの難民について、「自分たちの国にどんな問題があるのかと尋ねたところ、『問題はない』という答えだった。問題がないのであれば、当面は帰国できるのではないか。我々が銃を突き付けて(帰国を)強制したわけではない」と述べ、当局が難民をミャンマーに強制退去させたわけではないと強調した。【3月31日 CNN】
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空爆から逃れてきた難民が「自分たちの国には“問題がない”」と言って、自主的に帰っていくとは到底思えません。もし、そう言ったのであれば、額に銃口を突きつけられていたからでしょう。
プラユット首相としては、そのように言わないと(難民条約署名国ではないものの)何かと国際的に問題になるということなんでしょうが、よくもぬけぬけとそんなことが言えるような・・・とあきれてしまいます。
タイ側も、多少はばつが悪い思いがあるのか、医療目的の入国は認めているとも。
****タイ、一部ミャンマー市民を医療目的で入国容認*****
治安部隊の暴力を逃れてきた10人以上のミャンマー人が30日、医療目的で国境を越えてタイ領内に入ることを許された。タイ外務省は、ミャンマーの避難民を門前払いする方針はないとしている。
メーサムレップ村の医療関係者によると、人々はミャンマー国軍のクーデターに抗議しているカレン州からサルウィーン川をボートで渡り、タイ側に入った。
ただ、村周辺の別の当局者はロイターに、タイ軍が今も国境周辺の治安維持のためとしてミャンマーから逃げてくる人々の大半を追い返していると話した。【3月30日ロイター】
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