孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国の南シナ海船団、タイの難民強制退去 ウソと言うより強引な強弁

2021-03-31 23:15:41 | 中国

(ミャンマー東部カイン(カレン)州で空爆を受け、サルウィン川を越えタイ・メホンソンに避難した少数民族カレンら。カレンの難民キャンプ、エイトゥタの指導者提供(2021年3月29日撮影)【3月30日 AFP】)

 

【中国 「風よけのため」?】

個人の生活でも、国家間の関係でも「ウソ」はつきもの。

 

たわいもない、嘘も方便的な「white lie」もありますが、普通のウソは、相手に信じさせようとしていろいろつじつまを合わせ、悪意はあるものの一種「知的」な部分もあります。

 

ただ、なかには、どう考えても信じられない、言っている方も相手が信じるなんてはなから思っていない、それでも強引に強弁するようなウソも。

聞かされる方は、馬鹿にされたような感じがしますが、明確な証拠がなければ話はそれ以上進みません。

 

国内政治の場面でよく耳にする「記憶にございません」なんて類もそんなウソというか、強引な強弁。

 

最近、国際面で目にしたこの類。一つ目は中国。

 

****中国漁船220隻が南シナ海の紛争海域に =中国「風よけのため」、米国「数カ月ずっと停泊」****

2021年3月24日、米華字メディア・多維新聞は、南シナ海の紛争地域に中国漁船約220隻が停泊している問題でフィリピンを支持した米国に、中国政府が反発したと報じた。


記事によると、フィリピン政府は「牛軛礁(英語名Whitsum Reef)で3月7日に、中国漁船約220隻が停泊し、国防相が中国に帰還するよう呼び掛けた」とし、同国政府が漁船の乗組員について民兵との認識を示した。

この情報に対して中国の駐フィリピン大使館は22日、「牛軛礁は中国の南沙諸島の一部。中国漁船はこの海域で長期間操業を行っているが、海洋状況を理由に一部の漁船が牛軛礁で風よけをしていた。これは正常な行動であり、民兵船などではない。根拠のない推測は無益であり、理性的な姿勢を望む」と反論した。

一方、米国の駐フィリピン大使館も23日に「中国船がこの数カ月、当該地域に停泊し続けており、天候にかかわらずその数はますます増えている。われわれはアジアで最も古い盟友であるフィリピンとともにある」とする声明を発表するとともに、「中国が海上民兵を用いて他国を恐喝、挑発、威嚇し、地域の平和と安全を破壊している」と非難した。

中国大使館は程なくしてツイッターを更新し「米国は南シナ海問題の関係者ではない。当該地域にて対抗をあおり立てる行為は、一部の国の私利にメリットがあるばかりで、当該地域の平和と安定を破壊する」と反発している。【3月24日 レコードチャイナ】

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領有権に関しては、各国がその権利を主張してい地域ですから、中国がなにかしらの権利を主張するのも、まあ、それは「あり」でしょう。

 

****中国船220隻が集結、8つ目の人工島を建設か?****

武装海上民兵が乗船、完全に舐められたバイデン政権

 

フィリピン政府は、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内の環礁周辺海域に中国船220隻が集結している状況を国際社会に向けて発表し、ロレンザーナ国防相が中国側にただちに撤退するよう求めた。

 

フィリピン当局によると、蝟集(いしゅう)している中国船は漁業活動などは行っておらず、船の特徴などから明らかに武装海上民兵の船であるという。

 

各国が領有権を主張するユニオン堆

多数の中国海上民兵船が集結しているのは、南シナ海・南沙諸島を形成するユニオン堆(たい)と呼ばれている環礁群の中で最も大きい環礁(満潮時は水没する暗礁)のウィットサン礁である。

 

この環礁はフィリピン沿岸から200海里以内に位置しており、フィリピン政府によるとフィリピンの排他的経済水域内ということになる。

 

しかし、ウィットサン礁をはじめとするユニオン堆に対しては、フィリピン、中国、ベトナム、台湾がそれぞれ領有権を主張している。

 

ユニオン堆はたしかにフィリピン沿岸海域から200海里内に位置しているため、フィリピン政府は自国の排他的経済水域に位置していると主張している。だが、フィリピンはユニオン堆を形成している環礁を1つも実効支配していない。

 

一方、ベトナムはユニオン堆内のシンコウ島、コリンズ礁、ランズダウン礁、そしてグリアソン礁に小規模な守備隊を派遣したり定期的にパトロールすることによって実効支配態勢を維持している。

 

また、中国はジョンソンサウス礁(赤瓜礁)、ヒューズ礁(東門礁)そしてウィットサン礁(牛軛礁)を実効支配している。

 

ウィットサン礁に対しては、漁船群や巡視船が頻繁に姿を見せることによる実効支配であるが、ジョンソンサウス礁とヒューズ礁に対する実効支配は、本コラムでも繰り返し指摘しているとおり、人工島の建設による「誰の目にも明らかな形」での強力な実効支配態勢を確立している。(後略)【3月25日 北村 淳氏 JBpress】

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ただ、数か月も停泊しながら「風よけをしていた」という言いぐさは、国際社会を馬鹿にしたような感じも。

見え透いたウソは、太い二の腕の筋肉をちらつかせて「なんか文句あるのか?」とすごむならず者の言いぐさ。

 

こんなウソをつくようでは、信頼も、尊敬もされません。

 

中国は、これまで同様に、この地域での既成事実を作り上げようとしているのではないか・・・との懸念も。

 

****第4の軍事滑走路が誕生してしまうのか****

今回、220隻もの中国海上民兵船が集結しているウィットサン礁はユニオン堆最大の環礁である。大きな環礁とはいえ、人工島化しなければ陸上施設は建設できない。

 

だが、中国は南沙諸島ですでに7つもの環礁を人工島化して海洋基地群を生み出していることを忘れてはならない。ウィットサン礁を人工島に生まれ変わらせると、3000メートル級の滑走路を設置することができるのだ。

 

ウィットサン礁は、すでに滑走路が建設されているミスチーフ礁とファイアリークロス礁のほぼ中間に位置しており、それぞれの航空施設からおよそ150kmの距離だ。そして、やはり滑走路が設置されているスービ礁の南方およそ150kmに位置している。

 

そのため、もし中国がウィットサン礁を人工島に改造してしまい、南沙諸島にもう1つの航空拠点を設置したならば、中国による南シナ海の軍事的コントロールはますます強固なものとなるのである。【同上】

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これまでも親中国姿勢を見せているドゥテルテ大統領ですので、“フィリピン大統領府は同日、ドゥテルテ大統領が中国の大使とこの問題を協議すると発表。ロケ報道官は、大統領が「友人(である中国)と話し合えないことは何もない」と述べたと明かし、米国との温度差ものぞかせた。”【3月24日 時事】と及び腰ですが、ロレンザーノ国防相は強気の姿勢も見せています。

 

****フィリピン、南シナ海の中国船団監視に戦闘機派遣*****

フィリピンのロレンザーノ国防相は、同国が領有権を主張する南シナ海の海域に中国の海上民兵を乗せたとみられる200隻以上の中国船舶が停泊している問題で、状況を監視するため、軍の軽量戦闘機を毎日、同船団の上空に派遣していると明らかにした。

また、中国に対し、直ちに船団を撤退させるよう再度求めた。

中国船舶はフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内にあるウィットサン礁に停泊している。

ロレンザーノ氏は27日遅くに出した声明で、軍の戦闘機を毎日派遣していると表明。軍はまた、主権を守るためのパトロール活動とフィリピン人漁業者の保護のために南シナ海に配置している海軍部隊を増強するとした。【3月29日 ロイター】

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【タイ 「我々が銃を突き付けて(帰国を)強制したわけではない」】

もうひとつの強引な強弁は、タイのプラユット首相。

 

隣国ミャンマーの混乱、国軍による「暴力的」な鎮圧行動は周知のところ。

国軍と少数民族武装勢力の衝突にも発展し、軍は空爆も実施しています。

 

この混乱で3000人ほどのタイへの避難民が発生しているとのことでしたが、タイはこの避難民をミャンマーへ強制退去させているとも。

 

****ミャンマー避難民をタイが強制的に戻したか****

ミャンマーでは軍事クーデターに抗議する市民への弾圧が激しくなっていますが、隣国のタイに約3000人の住民が逃れたところ、強制的にミャンマー側に戻される事態が起きています。

ミャンマー東部のカイン州には、クーデターに反発する少数民族の武装勢力の拠点があり、軍が空爆を行いました。このため、約3000人の住民がタイ側に避難したということです。

タイのプラユット首相は29日、避難民を受け入れる準備をしていると話しましたが、ロイター通信は支援団体の話として、タイ当局が、逃れてきた人のうち約2000人をミャンマー側に強制的に戻したと報じています。

ミャンマー各地では29日も治安部隊が市民を銃撃したほか、バリケードを吹き飛ばすなどして多数の死傷者が出ています。【3月30日 日テレNEWS24】

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このことについて、タイのプラユット首相は「我々が銃を突き付けて(帰国を)強制したわけではない」と強弁しています。

 

****ミャンマー軍が空爆、越境避難の2千人をタイが強制退去の報道****

タイ・バンコク(CNN) ミャンマーで実権を握った国軍が南東部のカレン州で空爆を行い、住民が隣国タイに避難した。タイは入国を試みた2000人以上を退去させたと伝えられている。

 

活動家団体のカレン情報センターによると、タイとの国境を越えた避難民たちは、直後にミャンマーへ強制的に戻され、これまでに2009人が国内の密林に身を隠した。

 

カレン州ではカレン族の武装勢力が支配する村落に対してミャンマー軍機が空爆を実施、数千人の住民が自宅から避難した。ロイター通信の報道によると、タイとの国境地帯を支配するカレン民族同盟(KNU)は、国境に近い軍の拠点を制圧し、10人を殺害していた。

 

ミャンマーの政治犯を支援する団体AAPPによれば、軍が2月1日のクーデターで実権を握って以来、治安部隊に殺害された人は少なくとも510人に上る。29日には子どもや若者を含む14人が射殺された。

 

KNUによると、軍の空爆を逃れた3000人はサルウィン川を渡りタイに入ったが、2000人が押し戻されたという。

 

カレン州とタイの難民キャンプで活動するカレン女性機構(KWO)も、空爆によってカレン州の住民1万人が自宅からの避難を強いられ、3000人がタイとの国境を越えたことを確認した。

 

タイのプラユット・チャンオチャ首相は30日の記者会見でミャンマーからの難民について、「自分たちの国にどんな問題があるのかと尋ねたところ、『問題はない』という答えだった。問題がないのであれば、当面は帰国できるのではないか。我々が銃を突き付けて(帰国を)強制したわけではない」と述べ、当局が難民をミャンマーに強制退去させたわけではないと強調した。【3月31日 CNN】

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空爆から逃れてきた難民が「自分たちの国には“問題がない”」と言って、自主的に帰っていくとは到底思えません。もし、そう言ったのであれば、額に銃口を突きつけられていたからでしょう。

 

プラユット首相としては、そのように言わないと(難民条約署名国ではないものの)何かと国際的に問題になるということなんでしょうが、よくもぬけぬけとそんなことが言えるような・・・とあきれてしまいます。

 

タイ側も、多少はばつが悪い思いがあるのか、医療目的の入国は認めているとも。

 

****タイ、一部ミャンマー市民を医療目的で入国容認*****

 治安部隊の暴力を逃れてきた10人以上のミャンマー人が30日、医療目的で国境を越えてタイ領内に入ることを許された。タイ外務省は、ミャンマーの避難民を門前払いする方針はないとしている。

メーサムレップ村の医療関係者によると、人々はミャンマー国軍のクーデターに抗議しているカレン州からサルウィーン川をボートで渡り、タイ側に入った。

ただ、村周辺の別の当局者はロイターに、タイ軍が今も国境周辺の治安維持のためとしてミャンマーから逃げてくる人々の大半を追い返していると話した。【3月30日ロイター】

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コロナ第3波の欧州 医療の限界近づくフランス メルケル首相も批判にさらされるドイツ

2021-03-30 22:02:38 | 欧州情勢

(欧州各国の2020年1月~2021年3月の1日当たりの新規感染者数の推移(7日間平均)【3月24日 BBC】)

 

【コロナ第3波に襲われる欧州】

周知のように欧州では新型コロナの感染拡大第3波が起きており、再び規制が強化されています。

 

冒頭の簡単なグラフは、欧州各国の2020年1月~2021年3月の1日当たりの新規感染者数の推移(7日間平均)ですが。フランス、ドイツ、オランダ・・・軒並み直近で増大しています。例外はUK(イギリス)とロシアでしょうか。

 

****ドイツがロックダウン延長、イースター中も制限強化 欧州で感染拡大****

ドイツ政府は23日、新型コロナウイルス対策のロックダウンを3週間延長すると発表した。流行の第3波に対応するため、イースター(復活祭)の休暇期間もロックダウンを実施する。

 

アンゲラ・メルケル首相は地方自治体のリーダーとの会議後、ドイツは現在「非常に深刻な」状況にあると説明した。

 

ロックダウンに伴う制限は、イースター休暇の4月1~5日にさらに厳しくなる予定。ほとんどの店舗が営業停止となるほか、集会も制限される。

 

欧州ではここ数週間で新型ウイルスの流行が再燃している。一方で、ワクチン接種事業には遅れが生じている。

フランスでは、エマニュエル・マクロン大統領がワクチン接種拡大を呼びかけている。

 

同国では、COVID-19が重症化して集中治療を受けている患者が増えている。マクロン大統領は入院患者の「爆発的増加」を警告した。

 

オランダもロックダウンを4月20日まで延長すると発表。ただし、1月から続けている夜間外出禁止は、3月31日から時間を短縮する。

こうした中、イギリスでは厳しいロックダウンと大規模なワクチン接種事業が奏功し、感染率が低下している。(中略)

 

フランスの対応は

フランスではワクチン接種事業が、ヨーロッパの他国に比べて進んでいない。これは英オックスフォード・アストラゼネカ製ワクチンの供給遅延や、このワクチンの安全性をめぐる混乱が原因の一部だという。

 

22日夜時点の報道では、過去24時間に新たに471人が集中治療室に入り、新規感染者は1万5792人に上っている。

 

マクロン大統領は、19日からワクチンの接種対象者を70~75歳の人々まで拡大したと発表。「ワクチン接種に週末も祝日もない」と、接種を急ぐよう呼びかけた。

 

フランスではこれまで、75歳以上の高齢者と、50~74歳の感染リスクの高い人々がワクチンの対象だった。4月下旬からは教師と、感染リスクの高い環境に置かれている社会的に重要な労働者も対象となる。同国は4月中旬までに1000万人、6月中旬までに3000万人に接種を完了する計画だ。

デンマークは「コロナ・パスポート」導入を模索

欧州各国で感染者が増える中、デンマークは制限の緩和計画を発表している。メッテ・フレデリクソン首相は、「我々は慎重にことを進めている。流行の第3波に見舞われている他国とは対照的に、さらに制限を緩和していく」と語った。

 

22日に発表された緩和策の中には、ワクチン接種完了者や過去にCOVID-19にかかった人、過去72時間に検査で陰性だった人などに発行する「コロナ・パスポート」も含まれている。

 

このパスポートは携帯電話でも書面でも取得でき、美容室やレストラン、映画館などへ行く際に提示するものになる予定。【3月24日 BBC】

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デンマークは2月以降、緩やかな微増傾向で日本と似たような推移です。

 

【フランス・パリ 医療の限界が近づく】

フランスではイギリス型変異株を中心にした感染拡大で、3月20日からパリなどでは24時間の外出禁止の措置がとられています。

 

****パリ首都圏で変異株猛威、外出禁止に 1日4万人弱感染****

フランスのカステックス首相は18日、新型コロナウイルスの変異株が猛威を振るっているとして、パリ首都圏を含む16県について、20日から少なくとも4週間の外出を禁じると発表した。24時間の外出禁止は、昨秋の第2波以来3カ月ぶりとなる。

 

カステックス氏は同日の記者会見で、新規感染者の72%を占める英国の変異株について「感染力が強く、より重症化させる可能性がある」と指摘。入院日数も長引き、集中治療用病床が限界に近づいているとの認識を示した。

 

パリ首都圏には1200万人が暮らす。外出禁止期間中は食料品店や書店などをのぞき、店舗は閉鎖する。自宅から10キロ以内の散歩や運動は認めるほか、学校は閉鎖しない。

 

フランスは昨年12月、1日の感染者数が1万人程度まで下がったため、24時間の外出禁止令を緩和し、日中に限って外出を認めていた。だが、同月末に英国型の変異株を初確認すると、変異株の割合が増えるにつれて1日の感染者数も増加。今月17日には3万8千人に達した。

 

カステックス氏は会見で「この危機から切り抜けさせてくれるのはワクチンだ」と強調した。1回目の接種を終えた人は575万人で人口の9%に満たないものの、優先接種した75歳以上に限れば45%がワクチンを受けたと指摘。1月下旬以降、75歳以上の高齢者の入院者数が下がる傾向にあるデータなどを示した。【3月19日 朝日】

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外出禁止となるのを前に、急きょパリから脱出する市民も多く、乗車券の価格が予約状況に応じて変わるため、中には通常の5倍近くに跳ね上がる路線もあったとか。

“フランス 外出禁止前日の街 乗車券の価格 5倍になる路線も”【3月20日 FNNプライムオンライン】

 

また、こうした規制に反発する人々も多いようです。下記はロックダウン(都市封鎖)対象地域ではないマルセイユでのもの。

“路上パーティーに6000人超、「許されない」と非難 仏”【3月22日 AFP】

 

医療は極めて厳しい状況に直面しています。

 

****迫られる命の選択 仏パリの病院、コロナ対応限界間近****

仏パリの病院は新型コロナウイルス患者の急増で満床に近づいており、受け入れを断らざるを得ない状況に陥る恐れがあると、医療関係者らが28日、警鐘を鳴らした。

 

パリ公立病院連合の幹部レミ・サロモン氏はニュース専門局BFMTVに対し、「今後10〜15日、または3週間以内で、対応しきれなくなる可能性がある」として、学校の休校を含む新たなロックダウン(都市封鎖)が必要だと訴えた。

 

同日、41病院の危機管理責任者が週刊紙ジュルナル・デュ・ディマンシュに公開書簡を発表。集中治療を受けられる患者を選定する準備に入ったと明らかにした。「沈黙を続ければ、われわれは医師倫理に背くことになる」

 

トリアージ(患者の優先順位付け)は成人患者が救急医療を受診する場合など、新型コロナへの感染の有無を問わずすべての患者に適用される。このような状況は「近年で最悪の(テロ)攻撃の際にもなかった」という。

 

夕刊紙ルモンドの論説記事では、救急医9人が「どの患者を生かし、どの患者を死なせるべきかを、明確な基準がないまま医療従事者に判断させることで、政府は偽善的にその責任を縮小させている。行政府は明確かつ公然とその政治的判断がもたらす健康上の結果に責任を負うべきだ」と主張した。

 

サロモン氏はBFMTVのインタビューで、ワクチン接種の進展によって5月か6月には医療機関の負担は軽減されると考えられ、フランスの新型コロナ流行は、第3波が「最もひどい」が「おそらく最後」になるとの見方を示した。 【3月29日 AFP】

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【ロシアのワクチン外交に揺れる欧州 EUは対応に苦慮】

いずれの記事でも「頼みの綱」として期待されているのがワクチンですが、そのワクチン接種が遅れているのは冒頭【BBC】にもあるとおり。

 

フランスなどワクチン接種が遅れている欧州に、ロシアがワクチン提供を申し出る「ワクチン外交」を展開しています。

 

フランスはこのロシアのワクチン外交に、「政治的」な攻勢だと強く反発しています。

 

****仏外相、中ロのワクチン援助は「侵略的な外交の手段」―米華字メディア*****

米国の中国語ニュースサイトの多維新聞は27日、フランスのジャンイブ・ルドリアン外相が、中国とロシアについて、新型コロナウイルスのワクチンを利用して他国に侵略的な外交を行っているとの認識を示したと報じた。

ロシアの通信社スプートニクの26日付報道として伝えたもので、ルドリアン外相はラジオ局フランス・アンフォとのインタビューで、ロシア製新型コロナウイルスワクチンのスプートニクVについて、「それがどのように管理されるかという点で、それ(スプートニクV)は連帯と健康協力の手段というよりも宣伝と侵略的な外交の手段だ」と述べた。

ルドリアン外相は、ロシアが北アフリカのチュニジアにワクチンを提供すると「多くのメディアの関心を集めて」発表したと述べた。

 

その上で、国連が支援するワクチンの公平な分配を目指す国際的な枠組み「COVAX」はすでにチュニジアに10万回分を提供しており、5月までにさらに40万回分の提供が予定されていると強調し、「これこそが本当の連帯であり、本当の健康協力だ」とした。

また、中国によるセネガルへのワクチン援助も同様に「国際的な影響力拡大」のためのメカニズムだと指摘。「ロシアと中国は自国民に予防接種をする前でさえ海外で影響力を得るためにワクチンを使用していた」と述べた。【3月29日 レコードチャイナ】

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しかし、ロシア製ワクチンへの対応は国によって異なり、“ドイツやイタリアなどはEU主導でスプートニクVを調達すべきだとの考えで、EUが承認しなければ独自に購入する可能性も否定していない。”とも。EUは対応に苦慮しています。

 

****露がワクチン販売攻勢 EU、対処に苦慮****

ロシアが自国産の新型コロナウイルスワクチン「スプートニクV」の欧州連合(EU)への売り込み攻勢を強めている。

 

人権問題などでロシアと対立するEU内には安全性への疑念とともにロシアの「ワクチン外交」を警戒する声もあるが、感染拡大が深刻な一部の加盟国は既に独自にロシアと供給契約を締結。EU内の足並みが乱れている。

 

スプートニクVの供給に携わる露直接投資基金(RDIF)は、接種1回当たりの価格が欧米系ワクチンに比べて安価な上、最終段階の臨床試験で91・6%の有効性があったと強調して販路を拡大。

 

29日現在、スプートニクVを承認したのは発展途上国を中心に世界57カ国・地域に上る。RDIFはEUの医薬品規制当局、欧州医薬品庁(EMA)にも承認を申請、EMAは今月から審査を開始した。

 

RDIFはスペインやイタリアなどの企業と既に生産契約を結んでいるとし、承認を受け次第、EUへの供給を開始する方針だ。

 

EUは複数のワクチンを承認しているものの、生産の遅れから供給が滞り、加盟国から不満が出ていた。実際、ハンガリーとスロバキアは独自にスプートニクVを調達。EUが承認済みの英アストラゼネカ製ワクチンに安全性への疑念が生じたことも追い風に、ロシアはスプートニクVの販路を拡大させる構えだ。

 

スプートニクVをめぐり、EU内では民主化活動を弾圧するロシアに依存してEUへの影響力を拡大させるのは望ましくないとする考えと、新型コロナの早期収束にはロシアとの協力は避けられないとする考えが対立している。

 

ロイター通信など複数の欧州メディアによると、EUのミシェル大統領は今月、ロシアと中国は他国へのワクチン供給を「プロパガンダ」(政治宣伝)として行っていると指摘。

 

マクロン仏大統領も先週、世界は中露のワクチン供給を通じた影響力拡大という「新たな形の世界戦争」に直面しており、EUはワクチン製造で主権を守るべきだとする認識を示した。

 

対照的に、ドイツやイタリアなどはEU主導でスプートニクVを調達すべきだとの考えで、EUが承認しなければ独自に購入する可能性も否定していない。

 

ロシアは「ワクチン供給は国際貢献で、政治利用しているとの批判は事実無根だ」と主張している。【3月29日 産経】

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【ドイツ “あの”メルケル首相も批判の矢面に】

ロシア製ワクチンに導入に前向きなドイツも、フランス同様に第3波に見舞われています。

 

****独コロナ第3波「最悪」の恐れ、新規感染1日に10万人も=RKI所長****

ドイツのロベルト・コッホ研究所(RKI)のヴィーラー所長は26日、同国を見舞っている新型コロナウイルス感染の第3波がこれまでで最悪となる「明白なシグナル」があるとし、1日当たりの新規感染者数が10万人に達する恐れもあると警鐘を鳴らした。

 

ヴィーラー所長は「今後数週間、非常に厳しい状況となるだろう」とし、イースター(復活祭)の休暇期間、外出を控えるよう呼び掛けた。

 

ドイツでは感染力の強い新型コロナ変異株が猛威を振るっているほか、ロックダウン(都市封鎖)措置の段階的な緩和が相まり、新規感染者数がここ数週間で急増。26日の新規感染者数は2万1500人強だった。

 

シュパーン保健相も、国内の医療システムが4月に限界に達する恐れがあると警告。29日午前0時から、航空便でドイツに入国する全ての乗客に新型コロナ検査の陰性証明書の提出を義務付ける方針を明らかにした。

 

こうした中、ドイツは国民に対し近隣のフランス、オーストリア、デンマーク、チェコへの不要不急の渡航を控えるよう呼び掛けた。RKIによると、これらの国からドイツに入国する際は、過去48時間以内に受けたコロナ検査の陰性証明を提出する必要がある。

 

ドイツではこれまでに人口の約10%が少なくとも1回目の新型コロナワクチン接種を終えている。シュパーン保健相は、未使用分のワクチンを接種対象年齢以外の人に利用するなど、地方当局に柔軟な対応を求めた。(後略)【3月27日 ロイター】

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日本では政府のコロナ対策に一貫性がないとか、後手にまわっているとかの批判がありますが、それはどこも一緒。

誰がやっても、そうそううまくいく妙手はありません。

昨年段階ではコロナ対策で支持率が回復した欧州政治の中核、メルケル首相ですら厳しい批判にさらされています。

 

****メルケル独首相「私の間違い」 コロナ規制を1日で撤回*****

ドイツのメルケル首相は24日、新型コロナウイルス対策として発表した新たな規制の一部を撤回すると発表した。州首相らとの11時間以上の会議を経て23日未明に発表したものだったが、各方面から批判を受けて1日余りで方針転換するどたばたぶりだ。

 

メルケル氏は「私の間違いだ。責任は全て私にある。市民の許しを請いたい」などと述べた。

 

23日の発表は、キリスト教のイースター(復活祭)の休日を2日増やし、4月1〜5日の5日間は市民に自宅待機を求めたうえでほとんどの店舗を閉鎖し、3日の土曜日だけ食料品を扱う小売店の営業を認めるというものだった。

 

これに対し、「直前に買いだめに走る人で店舗が混雑し感染リスクが高まる」「食料品の物流や生産現場などに混乱が起きる」といった批判が出た。

 

メルケル氏は24日午前、急きょ州首相らと電話会談を開き、方針の撤回を決定。会談後に声明を読み上げ、「最善を尽くして練られた案だが、性急なもので短期間で実行することはできなかった」と述べ、謝罪した。

 

ドイツでも新型コロナの変異ウイルスの感染が急拡大している。過去7日間の10万人当たりの新規感染者数は24日の時点で108人。2月半ば以降から増え続けている。このため、23日の決定のうち、マスクの着用義務や私的に集まれる人数の制限、感染者が多い地域での店舗の閉鎖といった規制を4月18日まで延長することは維持した。

 

医療専門家からは、感染を抑えるにはまだ対策が不十分だとの声が上がる一方で、小売店や旅行業界などからは、規制が昨年11月から5カ月以上も続いていることから、「倒産が多発する」との不満が強まっている。コロナ対策への不満もあり、メルケル政権の与党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の支持率は30%を割り込んだ。【3月24日 朝日】

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ある意味、1日で撤回するというのは「決断」でもありますが・・・。

 

****メルケル独首相のコロナ対策に批判高まる、「議会で明言を」****

ドイツのメルケル首相が新型コロナウイルス感染拡大抑制に適切に対応せず、対応が二転三転した責任を16州の州首相に転嫁したとして、野党などから批判が高まっている。

メルケル首相は24日、新型コロナ対策として導入を決めたイースター(復活祭)の追加的なロックダウン(都市封鎖)措置を撤回し、混乱を引き起こしたことを謝罪。(中略)


メルケル首相は28日、16州の州首相に抑制策の導入を義務付けられるよう規則を修正する可能性を示唆したが、その結果として何が得られるのか明確にせず、野党などから批判が高まっている。

自由民主党(FDP)のクリスチャン・リントナー党首は「メルケル氏は事態をどのように受け止め、何を提案しているのか、議会で明らかにする必要がある」と述べた。【3月30日 ロイター】

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みなが納得する対応策はなかなか・・・やはりワクチンを急ぐしかありません。

 

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スエズ運河座礁事故  27日の大潮が離礁のチャンスだが・・・ ロシアは北極海航路をPR

2021-03-26 22:38:54 | 北アフリカ

(スエズ運河で座礁したコンテナ船「エバーギブン」を捉えた衛星写真【3月26日 AFP】 見事に塞いでいますね・・・)

 

【世界貿易量の12%がストップ】

エジプトは2015年に並行新水路建設と既存水路拡張を含む「新スエズ運河」の運用を開始しています。

 

****新スエズ運河****

地中海紅海を結ぶ既存のスエズ運河を拡張する水路である。運河をくぐる6本の新しいトンネルの建設と、両岸の76,000平方キロメートルの土地を国際物流・商業・工業拠点とする計画と同時に打ち出された、当局が100万人の雇用を生み出すと見込んだ計画である。

 

プロジェクトには、既存の全長164キロメートルの運河に並行する新しい35キロメートルの運河と、既存の運河のうち37キロメートルに渡る区間の掘削と拡張が含まれる。

 

運河の拡張により、運河の大半の区間で船が同時に双方向に航行することができるようになる。【ウィキペディア】

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正栄汽船(愛媛県今治市)所有の大型コンテナ船がスエズ運河で座礁した事故は、水路が1本しかない箇所で起こったようです。

 

“座礁した船は正栄汽船が台湾の海運大手、長栄海運に貸し出し中の「エバーギブン」で、正栄汽船によると、満載に近い約1万8千個(20フィート換算)のコンテナを積んでいた。積み荷の総重量は約16万7600トンに達するという。”【3月26日 朝日】 オランダのロッテルダムへ向かう途中でした。

 

原因については、強風と砂嵐により視界不良となったこと、あおられてまっすぐな針路を保てなくなったことが主因とのこと。

 

****スエズ運河、コンテナ船座礁の経緯と離礁作業****

エジプト北東部のスエズ運河で巨大コンテナ船が座礁し、往来を遮断している。スエズ運河は世界で最も交通の激しい運河のひとつで、欧州とアジアを最短距離で結ぶ航路だ。

◎座礁の経緯
全長400メートルのコンテナ船「エバーギブン」は23日午前に座礁した。紅海から地中海へと北上する途上で方向がねじれ、運河の両岸の間を斜めにふさぐ形で動けなくなった。

スエズ運河庁によると、強風と砂嵐により視界不良となったこと、あおられてまっすぐな針路を保てなくなったことが主因とみられる。座礁当時、エジプトは強風に見舞われており、地中海と紅海で複数の港が閉鎖に追い込まれていた。

船舶はスエズ運河に入ると、通常は船団を組んで進む。航行は1、2隻のタグボートに補助される形になる。時に座礁が起こるが、通常はすぐに離礁し、他の船舶の運航にはほとんど影響を及ぼさない。

◎往来が遮断された理由
エバーギブンは、水路が1本しかない運河最南端部分をふさいだ。このため、他の船舶は一切通行できない。

エジプトは2015年、35キロメートル区間で第2水路を開通し、双方向の同時通行ができるようにした。ただこの対象区域は、グレートビター湖以北の、湖にかけて河幅が広がる区間。

運河庁は24日、エバーギブンがすぐに離礁すると見込んで運河北端のポート・サイドから船団が運河に入るのを許した。しかし、こうした船舶はグレートビター湖の待機水域で足止めとなり、いかりを下ろしている。

◎離礁のための作業
少なくともタグボート8隻が船を岸から引き離すためのけん引などを試みてきた。エバーギブンのウインチ(巻き揚げ機)も動かしている。このほか掘削機が、運河東岸にめりこんでいる船首付近の土の除去を行っている。運河庁は海底の土砂を浚渫(しゅんせつ)する船を2隻差し向けた。

船を浮かせようと、複数の地元海事当局筋によれば、船体を安定させる目的で積まれている「バラスト水」を抜く作業も行われた。

◎その他の選択肢
エバーギブンの船主会社は日本サルヴェージ社とオランダのシュミット・サルベージ社から2つの専門チームを呼んでいる。船体を浮かせるための「より有効な計画の立案」を仰ぐためだ。

シュミット・サルベージの親会社Boskalisの広報担当者は、タグボートに加えて複数の船舶を使う可能性があるが、コンテナ船にダメージを与えずにどれほどの力をかけられるかについては計算が必要だと述べた。

この他の選択肢としては、船底の下の海底から砂をすくい出すことや、貨物を降ろして重量を軽くすることが考えられる。ただ複数の海運筋は、コンテナ船の規模と位置を考えると、貨物を降ろすのは長期的かつ複雑な作業になる可能性があると話している。【3月26日 ロイター】

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“スエズ運河は世界の貿易量の12%が通過するとされ、1日に扱う貨物の総額は約100億ドル(約1兆1000億円)に上るという。”【3月26日 CNN】ということで、たった1隻のコンテナ船が世界貿易の12%を止めてしまったという、とんでもなく甚大な影響をもたらしています。

 

****スエズ運河の座礁、五輪プール最大8杯分の砂の除去必要****

世界の海上交通の要衝、エジプトのスエズ運河で大型のコンテナ船が座礁して運河をふさぎ、船舶が通行できなくなっている問題で、運河当局はコンテナ船を離礁させるのに最大で2万立方メートルの砂を除去する必要があると明らかにした。(中略)

 

運河当局が25日に発表したところによると、これらの浚渫船は1万5000〜2万立方メートルの泥や砂を除去し、12〜16メートルの深さを確保する必要がある。そうすれば船を離礁させることができる。オリンピックで使用する競泳プールの約8杯分の砂を除去する計算だ。

 

エバーギブンの船舶管理会社は声明で、すでに作業中の浚渫船に加え、特殊なポンプ浚渫船1隻も現場に到着し、間もなく作業を開始すると説明した。この浚渫船は1時間に2000立方メートルの砂や泥を除去できるという。

 

運河当局の関係者は24日、CNNの取材に対し、大型コンテナ船を再浮上させることは「技術的に非常に困難」で、数日かかる可能性があると述べた。

 

エバーギブンを運航する長栄海運によると、日本やオランダのサルベージ会社に所属する経験豊かな専門チームも支援に加わることになっている。

 

ただ航路再開まで日数がかかれば、貿易を止められる企業や国がその分損失を被ることになる。スエズ運河は世界の貿易量の12%が通過するとされ、1日に扱う貨物の総額は約100億ドル(約1兆1000億円)に上るという。

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一体この巨額の損失を誰が負担するのでしょうか?保険でしょうか?

 

****「賠償責任は船主に」 コンテナ船運航の台湾企業―スエズ運河座礁****

エジプトのスエズ運河で大型コンテナ船が座礁している問題で、この船を運航する台湾の長栄海運は25日、座礁により発生が予想される賠償責任は、船のオーナーが負うなどとする見解を表明した。

 

コンテナ船は愛媛県今治市の正栄汽船が所有しており、長栄海運は声明で「船の復旧作業や第三者に対する(賠償)責任に関する費用、船体の損傷などの責任は船主が負う」と強調した。【3月25日 時事】

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所有者の正栄汽船は記者会見で“世界の交通の要衝である運河の遮断で、船主が巨額の賠償責任を負う可能性については「国際法とエジプトの国内法の問題となる。法律にのっとって対応する」と答えた。”【3月26日 朝日】

 

下落傾向にあった原油先物価格にも影響が出ていますが、コロナ禍の需要減少で需給が軟弱なために、すぐに価格が暴騰するという状況でもないようです。

 

****原油先物は反発、スエズ運河遮断の長期化懸念で****

アジア時間の原油先物は反発している。世界の海上輸送の要衝であるエジプトのスエズ運河で座礁し、船舶の航行を妨げている大型コンテナ船の移動作業が数週間続き、供給を圧迫する可能性があるとの見方が出ていることが背景。(中略)

日産証券のアナリストは「スエズ運河の航行遮断が数週間続く可能性があるとの見方から、原油市場で供給逼迫懸念が高まっている」と指摘。その上で、「欧州などでのロックダウン(都市封鎖)により、燃料需要の回復が鈍化するとの懸念が残っており、上値は抑制される見込みだ」と語った。

欧州諸国では新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するための規制を延長する動きが出ており、燃料需要の低下につながるとみられる。【3月26日 ロイター】

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【27日の大潮が離礁のチャンス 長期化の可能性も】

いずれにしても、回復が1日遅れるごとに損失・影響は増え続けます。

明日27日が大潮で離礁のチャンスとか。

 

****巨船の離礁「緻密な計算の作業」 27日が大潮、荷のバランスも鍵****

エジプト・スエズ運河の航路をふさいだコンテナ船座礁は、400メートルある船の全長が運河の横幅を上回り、離礁を難しくさせている。当局は発生から3日となる26日も作業を継続。スエズ運河庁の元高官は地元メディアに「潮位や積み荷のバランスの緻密な計算が必要だ」と指摘した。(中略)

 

船舶ブローカーのアナリストは「現場は27日が大潮で、離礁の最大チャンス。航路を正常化できなければ長期化する」と予測した。【3月26日 共同】

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【ロシア 迂回ルートとして北極海航路をPR】

もっとも、離礁してすぐに正常復帰ということでもないようです。

 

****コンテナ船「27日離礁目指す」=運航正常化には時間か―スエズ運河****

エジプトのスエズ運河で起きた大型コンテナ船の座礁事故で、船を所有する正栄汽船(愛媛県今治市)は26日、「日本時間27日夜の離礁」を目指して作業を続けていることを明らかにした。

 

ただ、離礁後も船のえい航や航行に手間取る恐れがあり、全面的な運航正常化にはさらに時間を要する恐れがある。

 

当局は運河の通航を一時中断して再開を急いでいる。だが、一部の船舶は事態長期化を見越し、スエズ通航を断念してアフリカ南端の喜望峰を経由する迂回(うかい)ルートを取り始めたもようで、輸送網の混乱が広がっている。(後略)【3月26日 時事】

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面白いと言ったら怒られますが、喜望峰を経由する迂回ルートの他にも別ルートが。

 

****スエズ運河の「代替ルート」 ロシア、北極海航路をPR****

ロシアは25日、エジプトのスエズ運河で大型コンテナ船が座礁し、航路がふさがれている機会を捉えて、「代替ルート」として北極海航路をアピールした。

 

日本企業が所有するパナマ船籍のコンテナ船「エバーギブン」は23日、スエズ運河で砂嵐に巻き込まれて座礁。地中海と紅海を結び、世界の海上貿易の10%以上を占める航路が遮断された。

 

ロシア国営エネルギー企業ロスアトムは25日、スエズ運河航路の代替ルートとして北極海航路を検討すべきだと主張した。

 

ロシアは、北極海航路の開発に多額の投資を行ってきた。同航路を利用すれば、アジアまでの航海日数を従来のスエズ運河航路よりも短縮できる。

 

気候変動による氷の減少を受けて、ロシア政府は北極海航路を使って石油やガスの輸出を計画している。

 

ロシアの気象当局は25日、北極海航路の2020年の海氷量は「過去最低水準」だったと発表した。夏の終わりには海氷がほぼなくなる年もあるという。 【3月26日 AFP】AFPBB News

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そういう手もありましたね。

ただ、気を付けないと、北極海航路は氷に閉じ込められる危険もあるのでは。温暖化で利用が可能になったとは言え、北極海航路は原子力砕氷船に先導されて航行する必要があり、砕氷船なしでの航行は試験的でニュースになるほどでした。その分コストもかかります。

 

コペンハーゲン・ビジネス・スクールが2016年に発表した報告によると、現状と同じ速度で北極海の氷が解けていけば、北極海航路は2040年ごろに経済的に利用可能となる。”【2018年8月23日 BBC】

 

現状はどんな具合なんでしょうか?

 

そう言えば、スエズ運河と並ぶ大動脈のパナマ運河に対抗して、ニカラグアが中国資本によって新運河を建設するという話もありましたが・・・

 

2018年には資金不足で中止になったとか、2019年にはアメリカの外国資産管理局(OFAC)が運河計画に関わったニカラグア企業3社を、ニカラグア・オルテガ政権のマネーロンダリングと認定し経済制裁を行った・・・といった話も。

 

“ほとんど建設されぬまま計画は事実上放棄されている”【ウィキペディア】とも。

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イラン・アメリカ 核合意復帰をめぐる膠着状態 ハメネイ師は強硬姿勢 イラン原油輸入を増やす中国

2021-03-22 23:26:02 | イラン

(春分の日は、イランでは春の新年ノウルーズとして祝われます。画像は、イラン北部ギーラーン州でのノウルーズを迎える儀式祭礼【3月18日 ParsToday】 )

 

【バイデン政権 イランとの交渉再開に向けた姿勢も】

アメリカのイラン核合意への復帰をめぐっては、両国が互いに相手側の譲歩を先に求めるチキンレース状態が続いています。

 

****米国とイランのいがみ合い 核合意復活は実現するか****

米国とイランは、核合意を巡り、それぞれ相手がまず行動すべきであると主張して膠着状態にあるが、膠着状態は緩和に向かう兆候も見られる。

 

イランはIAEAによる抜き打ち検査を拒否し、査察の回数は削減されたものの、核合意で認められたIAEAの専門家による定期査察は今後3か月間継続されることとなった。

 

したがって、監視が完全にできなくなる状態は避けられたことになる。他方、米国はトランプの「最大限の圧力」を緩和し始めた。国連でのイランの外交官の旅行制限を緩和し、合意の他の当事国、ドイツ、フランス、英国、中国、ロシアと一緒にイランの政府当事者と会合することを提案した。

 

フィナンシャル・タイムズ紙の2月25日付け社説‘Joe Biden has a narrow window to save Iran deal’は、バイデン政権が制裁を解除することなくイランの要望を受け入れる一つの選択肢として、日本や韓国のようなイランの原油の輸入国が、保持する何十億ドルという石油代金へのイランのアクセスを認めることを提案している。

 

社説は、「イランは、その基金を食料や新型コロナウイルスのワクチンを含む医薬品といった制裁の対象でない『人道的な』物資の輸入に使える」と言うが、実現性はよく分からない。

 

社説は、米国はイランが過剰な濃縮ウランや重水の国外持ち出しを差し止めている制裁を解除すべきである、とも提案する。

 

しかし、そもそもこの制裁の解除を止めたのはトランプの理不尽な決定であったので、その制裁の解除は前進ではなく後退を元に戻すだけに過ぎず、イランが核合意に復帰するインセンティブにはならない。

 

イラン側は核活動を拡大するという挑発的な行動は止めるべきである。しかし、イランが20%濃縮を再開したり、新しい遠心分離機を開発したりしているのは、米国が制裁を解除しないためであるとしており、イランが一方的に核活動の拡大を止めることはないだろう。

 

イランの核合意を取り巻く状況は厳しい。2020年1月イラン革命防衛隊ゴドス部隊のソレイマニ司令官が米軍によって暗殺され、これに対する報復として今年1月イランによるイラク中西部の米国のアサド空軍基地などに対する攻撃が行われ、さらにこの攻撃に対する報復として2月26日、米国によるシリア東部のイラン支援民兵組織の空爆が行われた。このような状況の下で核合意への復帰に努めるのは容易ではない。

 

なお、イラン核合意の欠陥はイランのミサイル計画とイランの地域での活動が含まれていないことであることが夙に指摘されている。

 

これはこの二つの難問を取り込もうとするとどれほど時間がかかるか分からないので、取り敢えずイランの核活動の制約のみが取り上げられた経緯がある。

 

上記社説は「核合意ができれば二つの難問にとりかかる努力を始める場を作ることができる」と言っているが、ことはそれほど簡単なものではない。

 

イランのミサイル計画一つをとっても、イランはいまやドローンと精密兵器を攻撃の中心としている。2019年9月のイランによるサウジアラムコのアブカイク製油施設攻撃も、ドローンと精密兵器によるものであった。このように今やイランが得意としている兵器の規制の話にイランが乗ってくるとは考えにくい。【3月18日 WEDGE】

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上記“米国はトランプの「最大限の圧力」を緩和し始めた”という流れの一環でしょうか、バイデン大統領は交渉再開に向けてやや柔軟な姿勢も見せています。

 

****制裁緩和も選択肢とイランに伝達 米、交渉再開へ前進も****

イラン核合意の立て直しを目指すバイデン米政権は、イランが合意履行を段階的に再開する見返りとして、米国の制裁を部分的に緩和することも選択肢だとの立場をイラン側に伝えた。米政府当局者が12日、明らかにした。

 

合意履行には制裁解除が不可欠とするイランの主張に米国が耳を傾ける姿勢を示した形で、交渉再開に向けた動きが進む可能性もある。

 

イランのロウハニ政権は米国の制裁解除とイランの核開発制限を同時並行で進める案を欧州連合(EU)を通じて米側に示す方向で調整している。【3月13日 共同】

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【ハメネイ師は強硬姿勢「アメリカの約束は信頼できない」 6月の大統領選挙に向けて勢いを増す保守強硬派】

ただ、「イラン」と言っても、アメリカとの交渉を再開して制裁解除への道筋をつけたいロウハニ大統領など穏健派と、アメリカとの対決姿勢を好む保守強硬派では大きく異なります。

 

6月に予定されている大統領選挙を睨んだ両勢力の綱引きにもなっています。アメリカ・バイデン政権の柔軟姿勢も、ここでイランを追い詰めても、大統領選挙で保守強硬派を利し、反米政権を誕生させる結果になるとの判断があってのことと推測されます。

 

保守強硬派の意向を示しているのが、最高指導者ハメネイ師の「米の対イラン制裁は殺人」「対イラン制裁を解除するとの米国の約束は信頼できない」といった最近の言動です。

 

****イランのハーメネイー師 「米の対イラン制裁は殺人」****

イランの宗教的指導者アリー・ハーメネイー師はアメリカが同国に科している制裁は殺人であると発言した。

 

ノウルーズの祝祭にちなんで国営テレビで国民演説をしたハーメネイー師は、内政及び外交政策で発生している最新情勢に関して見解を述べた。

 

ハーメネイー師は、「アメリカがイラン及び一部諸国に科している経済制裁は大きな殺人である。彼らは制裁によってイランを弱体化させ、強制を受け入れさせることを目指している。しかしこの政策は無効になり、この状況は国産の強化につながった」と述べた。

 

イランの核合意復帰の条件は「アメリカが全制裁を解除し、これを実践すること」であると繰り返し述べたハーメネイー師は、「アメリカの愚かな前の統治者(ドナルド・トランプ前大統領)の最大限の圧力政策は無効になった。新政府も同様の政策を取ればそれも無効になるであろう」と述べた。【3月21日 TRT】

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****イラン、米国の制裁解除は信用できず=ハメネイ師****

イランの最高指導者ハメネイ師は21日、対イラン制裁を解除するとの米国の約束は信頼できないと表明、米国が対イラン制裁を全面解除するまで2015年の核合意には復帰しないと述べた。

ハメネイ師は国営テレビの演説で「オバマ政権時代は米国を信頼し、われわれの義務を履行していたが、向こうはそうではなかった。米国は書面上は制裁を解除すると表明していたが、実際には制裁を解除しなかった」とし「彼らの約束を信用することはできない」と発言。

「彼らは書面上は制裁を解除したと表明したが、われわれとの契約締結を望むすべての企業に対し、危険でリスクが高いと伝えていた。彼らは投資家を追い払った」と述べた。

その上で「米国はすべての制裁を解除すべきだ。われわれがそれを検証し、制裁が本当に解除されれば、何の問題なくわれわれの義務を再び履行する」とし「我々は忍耐力が強く、急いではいない」と述べた。

またハメネイ師は、国内の政策当局に対し、制裁が近く解除されないという最悪のケースに基づいて行動するよう指示。「制裁が継続されることを想定して、制裁に基づいた経済計画を策定すべきだ」と述べた。【3月22日 ロイター】

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また、ワシントンの米軍基地へのテロ攻撃といった不穏な動きも。

背後にいるのは保守強硬派の革命防衛隊だしょうか?

 

****イランが米首都の陸軍基地攻撃を計画か 米報道****

AP通信は21日、複数の米情報当局高官の話として、イランが米ワシントン市内にあるフォート・マクネアー陸軍基地の攻撃を計画している可能性があると伝えた。米軍は事態を受け、基地周辺の警戒態勢を強化したとしている。

 

米高官らによると、攻撃計画は1月、通信情報を専門とする米情報機関「国家安全保障局」(NSA)がイラン革命防衛隊による交信を傍受して判明した。

 

計画では、基地自体への攻撃に加え、基地内に公邸があるマーティン陸軍副参謀長の殺害も画策していたことが分かった。

 

イランは攻撃手法として、2000年10月に米兵17人が死亡した、国際テロ組織アルカーイダによる米駆逐艦コールへの自爆攻撃のような、船舶による水上からの攻撃を検討している可能性が高いという。

 

基地は、ポトマック川とアナコスティア川の合流点となる半島の先端にあり、米軍はワシントン市当局に対し、基地周辺の川に75〜150メートルの緩衝地帯を設け、ボートなどの接近を禁止するよう要請した。

 

ただ、一帯は水上タクシーや遊覧船などの往来が激しく、市当局が緩衝地帯の設置に難色を示し、基地側と対立しているという。【3月22日 産経】

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こうした攻撃が実施されれば、「交渉」機運など一気に吹き飛びます。

話がでるだけでも緊張をたかめますが、そうした攻撃を計画する側、その情報をリークする側、それぞれの政治的思惑も。

 

【イラン原油輸入を増やす中国 米のイラン包囲網の突破口?】

イラン経済がアメリカの制裁で石油輸出が止まり瀕死の状態にあることは周知のところですが、抜け穴もあるようです。

 

****中国がイラン原油大量輸入 米制裁対象、経済活発化で需要拡大****

米国が制裁対象としているイラン産原油を中国が大量に買い付けていることが明らかになった。他国が米国の怒りをかわすためイランからの輸入を控えるなか、3月の中国のイラン産原油の輸入量は前月比で2倍以上になるとみられている。

 

トレーダーやアナリストによると、今月に入り、中国の精製処理能力の約4分の1が集結する山東省へのイラン産原油の輸送が急増し、中国の港湾は混雑し、貯蔵タンクは満杯になっている。

 

2018年半ばに第1弾が発動された米国の対イラン経済制裁により、イラン産原油の割安感が目立っている。トレーダーによると、中国では国際指標の北海ブレント先物より1バレル=3~5ドル安い価格で取引されるのが一般的だ。

 

このため、新型コロナウイルス禍からの回復で春節(旧正月)休暇後の経済活発化でエネルギー需要が拡大するなか、一部の地場企業が世界的な原油価格高騰をにらみながら在庫積み増しに動いているという。

 

市況商品関連のデータ会社ケプラーのアナリスト、ケビン・ライト氏の試算によると、中国のイラン産原油の輸入量は3月に前月比129%増の日量85万6000バレルとなり、過去2年間で最多になる見通しだ。

 

同氏の試算には原産地をごまかすため、中東やシンガポール、マレーシア、インドネシアの沖で積み荷を船から別の船に移す「瀬取り」を経て取引された原油も含まれる。

 

石油精製業者やトレーダーの多くは米国で銀行取引が行えなくなったり貨物が押収されたりするなどの影響を恐れ、イラン産原油の輸入に消極的だ。こうした中、イラン政府は原油輸出による収入を拡大し、制裁で打撃を受ける経済を立て直すべく、積極的な販売活動を進めている。

 

米国のトランプ前政権がイランとの核合意から離脱したことにより、米イラン関係は急激に悪化した。イランの公式統計によると、同国の原油輸出量は米国による制裁前の日量約250万バレルからほぼゼロにまで激減した。しかし、イランはなお日量約200万バレルの生産を維持している。(後略)(Bloomberg News)【3月13日 SankeiBiz】

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こうした中国企業の動きの背後には、中国政府の対米政策があると思われます。

 

****中国、イラン産原油の輸入拡大 米政権に試練****

中国はイランとベネズエラからの石油輸入を急増させ、ジョー・バイデン米政権の外交政策における二つの優先課題に対抗している。米当局者によると、長らく滞っている交渉の再開へ向け、米政権の必要とする重要な外交手段がこれによって損なわれている。

 

商品(コモディティー)データ会社ケプラーによると、中国によるイランからの原油輸入は3月、日量91万8000バレルに上る見通しで、米国が2年前にイラン政府に原油禁輸措置を発動して以降最大となる。

 

他の輸送追跡情報でもこうした動向が確認されており、中には日量100万バレルとの推計もみられる。

 

バイデン政権は2015年の核合意への復帰を交渉するため、イランとの協議を探っているが、イラン政府はそうした申し出をはねつけている。米国はドナルド・トランプ前大統領の下で核合意から離脱した。

 

金融データ会社リフィニティブによると、中国はベネズエラ産原油の購入も増やしている。米国はベネズエラのマドゥロ政権に対し、信頼できる民主的な選挙を実施するよう圧力をかけるため、制裁措置の活用を試みてきた。

 

イランとベネズエラの当局者によると、イランによる国際的な核合意順守や、ベネズエラによる自由選挙の実施を交換条件とする制裁緩和をバイデン氏が提案した後に、中国への原油輸出が拡大した。トランプ氏は両国に対し制裁圧力を強める政策を取っていた。

 

中国はさらに、北朝鮮に対する国際的な制裁を軽視する姿勢を強め、北朝鮮を支援する一部の密輸活動を隠そうともしなくなっている。米当局者が最近明らかにした。

 

原油価格の上昇と相まって、こうした動きはイランとベネズエラに対米交渉を迫る圧力を弱めている、と米当局者は話す。

 

イラン担当の米当局者の1人は、「中国による非公式な購入により、石油制裁を巡る交渉の必要性が低下している」と述べた。(中略)

 

イランの石油業者は昨年11月以降、値引き価格に引き寄せられたアジアの買い手から新たな取引を打診されているという。バイデン政権下で制裁の圧力が弱まると買い手が考えているためだ。

 

イラン当局者や業者の制裁逃れは一段と巧みになっている。貨物の原産地を隠すため、ペルシャ湾や南アジアで瀬取りをしたり、仮想通貨など銀行以外のプラットフォームを使って支払いを受ける新たな手法を編み出したりしている。

 

イランのエシャク・ジャハンギリ第1副大統領は15日、ここ数カ月にイランの原油輸出量が増加したと述べたが、詳細には触れなかった。

 

イラン国営通信(IRNA)によると、ジャハンギリ氏は「送金で問題があった。このため原油輸出の収入を取り込む方法について一計を案じる必要があったが、最近になって突破口が開けた」と述べていた。(中略)

 

米中関係は既に、安全保障や経済を巡る多くの不一致で緊張が高まっている。米政府の二大敵対国と中国政府との原油貿易はさらなる大きな懸案となる。

 

米当局者は中国に対し、イランからの原油輸入を支援する企業は制裁のリスクを冒しているとし、中国政府はベネズエラとの貿易を巡り厳しい措置に直面する可能性があると指摘している。国務省は中国との連絡についてコメントすることは控えた。【3月22日 WSJ】

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(送金問題について)「最近になって突破口が開けた」というのは、デジタル人民元でしょうか?

 

****中国が狙うイランの原油と天然ガス~支払いはデジタル人民元で(中)**** 

デジタル人民元による支払い、アメリカにとっては悪夢

 

中国にとっては、アメリカに取って代わるまさに千載一遇のチャンス到来というわけだ。中国の習近平国家主席はイランの最高指導者ハメネイ師と直談判を繰り返し、「中国イラン総合戦略パートナーシップ」協定を結んだ。両国間の長期的な通商、軍事協力を加速させる内容である。この合意を受け、中国はイランに対し、今後25年の間に4,000億ドルの投資を行うと表明。

 

具体的には、イラン国内の銀行・通信・港湾・鉄道などの広範なインフラ整備に中国が全面的に支援体制を組むことになる。その見返りに、中国はイラン産の原油を国際価格と比較して大幅に下回る金額で調達できるという仕掛けである。

 

すでに、イランにとって中国は最大の貿易通商相手であり、とくにイラン産原油の最大のバイヤーになっている。しかも、支払いはデジタル人民元でOKという。

 

これらはアメリカにとって悪夢といっても過言ではないだろう。イラン封じ込めを意図していたアメリカの対中東政策を根底から覆す動きを中国が演じているからだ。(後略)【3月4日 浜田和幸氏 NET IB News】

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このあたりは、先のアラスカでの米中会談でも議論になったのではないでしょうか。

 

****米が中国に対し、対イラン石油制裁行使の継続を表明****

アメリカの政府関係者の一人が、「米政府は中国政府に対し、トランプ前大統領時代にイランの石油に対して行っていた制裁が継続されるだろうと伝えた」と語りました。

 

ファールス通信によりますと、匿名とされているこの米政府高官は、「対イラン石油制裁解除に向けたいかなる計画も存在しない」と述べました。(後略)【3月18日 ParsToday】

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イラン・アメリカのチキンレースは、イラン国内の大統領選挙などの政治状況、中国の動きなども加わって、不透明な状況が続いています。

 

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トルコ・エルドアン大統領  自らが制定に重要役割を果たした女性へのDV防止条約から脱退

2021-03-20 22:49:56 | 女性問題

(「女性への暴力およびDV防止条約」脱退検討への抗議デモに参加した女性たち【2020年8月28日 SankeiBiz】)

 

【DV防止条約は、家族の調和を傷つけて離婚を助長 また、LGBTに利用される】

たまたまですが、昨日に引き続きトルコの話題。

 

****トルコ、女性へのDV防止条約から脱退****

トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン政権は19日、女性に対する暴力の防止と撲滅を目的とした「イスタンブール条約」からの脱退を発表した。

 

イスタンブール条約は2011年に欧州評議会で採択され、ドメスティックバイオレンスや夫婦間レイプ、女性器切除の加害者の訴追に向けた法整備を批准国に求めている。

 

エルドアン氏率いる保守派与党は条約について、家族の調和を傷つけて離婚を助長するほか、LGBTコミュニティーが社会でさらに受容されることを目指して利用しているなどと主張していた。

 

一方、野党は条約脱退に強く反発。与党が脱退を提起した昨年以降、トルコ国内では条約に関する激しい議論が交わされ、イスタンブールなど各地で女性による抗議デモが行われている。

 

トルコでは、DVとフェミサイド(女性を標的とした殺人)が深刻な問題となっている。女性権利団体「We Will Stop Femicide Platform」によると、昨年は約300人の女性が殺害された。 【3月20日 AFP】

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【かつては条約制定に重要な役割を果たしたトルコ】

「イスタンブール条約」は正式には「女性に対する暴力及びドメスティッ ク・バイオレンス防止条約」という名称で、欧州評議会が定めた条約です。採択されたのがトルコ・イスタンブールであったことから「イスタンブール条約」と呼ばれています。

 

欧州評議会はEUと紛らわしいですが、EUとは別組織で、1949年に設立されたヨーロッパの統合に取り組む国際機関です。

 

トルコやロシアを含む、ほぼすべてのヨーロッパ諸国が加盟しており、未加盟は人権上の問題があるベラルーシのほかはコソボとバチカンぐらいです。

 

「イスタンブール条約」という通称が示すように、トルコはこのDV(ドメスティックバイオレンス)防止の女性保護条約制定において重要な役割を果たしました。

 

個人的想像ですが、トルコがDV防止でそうした役割を担ったのは、EU加盟を進めるために、トルコの人権問題を疑問視するEUに対し「女性の権利保護」をアピールする狙いがあったのではないでしょうか。

 

条約がイスタンブールで採択された2011年当時は、大統領はエルドアン氏の盟友だったギュル氏で、エルドアン氏は首相でした。(当時は首相が実権を持つ政治制度でしたから、当時から政治的実権はエルドアン氏にありました)

 

【かつても今も、トルコにおける深刻なDV】

当時から、DVに関し、トルコは深刻な問題があることが指摘されていました。

 

****トルコ:暴力にさらされる女性たち****

法の不備と警察の鈍い対応 緊急に必要な保護受けられず

 

(イスタンブール)-トルコにおける家庭内暴力からの保護制度の欠陥により、同国の女性と少女は、家庭内の人権侵害に晒されたまま放置されている、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日公表した報告書で述べた。

 

法の不備と執行制度の欠如のため、虐待を受けている被害者の多くは、裁判所の保護命令や緊急避難シェルターの設置を含む「生命を守るための保護策」を利用できていない。

 

報告書「ドメスティックバイオレンス:トルコでの家庭内暴力の実態と保護へのアクセス」(全58ページ)は、女性が夫やパートナー、そして他の家族から受ける、残虐で長期にわたる暴力の現実や、家庭内暴力から逃れて保護を求めて奮闘する実態を取りまとめている。

 

トルコには虐待の被害にあった女性向けの避難シェルターの設置や保護命令を出す事を義務付ける強力な保護法がある。しかしながら、法の隙間と警察・検察官・裁判官その他当局者の執行システムの欠如が、保護システムそのものを恣意的、さらに言えば非常に危険なものにしている。

 

ヒューマン・ライツ・ウォッチの女性の権利に関する調査兼アドボカシー担当者で本報告書の執筆者でもあるガウリ・ヴァン・グリ(Gauri van Gulik)は、「強力な法律が存在するのに、トルコ政府当局者が家庭内暴力の被害者から基本的な保護を受ける権利を剥奪している事態は、許しがたい。トルコ政府は女性の権利に関して称賛すべき改革を積み重ねてきたが、警察・検察官・裁判官そしてソーシャルワーカーは、法律を絵に描いた餅とするのではなく、実行に移さなければならない」と語った。

 

ヒューマン・ライツ・ウォッチが聞き取り調査を行った14歳から65歳までの女性や少女は虐待の様子を詳しく語ってくれた。

 

たとえば、レイプされたこと、刺されたこと、妊娠中に腹部を蹴られたこと、ハンマー・ムチ・枝・ホースで骨折するまで殴られ、頭がい骨を割られたこと、犬などの動物と一緒に閉じ込められたこと、食事を与えられなかったこと、スタンガンで撃たれたこと、毒を注射されたこと、屋根から突き落とされたこと、激しい心理的暴力にさらされたこと...。家庭内暴力は、調査員が聞き取り調査を行った全ての地域で、収入の多少や教育水準に関わらず発生していた。

 

「初めて虐待を受けた時、夫は私を殴り、お腹にいた赤ちゃんを蹴り、最後には屋根から私を放り投げたのよ。」とセルヴィ・T(仮名)は話した。彼女は12歳の時に強制結婚させられ、何年も夫から虐待を受けている。

 

今回の報告書は、欧州評議会が「女性への暴力と家庭内暴力に関する地域協定」を採択する矢先に公表された。トルコは閣僚委員会の現議長国として、当該協定の草案に重要な役割を果たしてきた。同協定は、2011年5月11日にイスタンブールで開かれる首脳会議の席上で署名される予定である。

 

2009年にトルコの主要な大学が行った調査によれば、15歳以上のトルコ女性の42%、そして地方に住む女性の47%が、人生のいずれかの時点で、夫或いはパートナーによる身体的或いは性的暴力を経験しているという。(後略)【2011年5月4日 Human Rights Watch】

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警察・検察官・裁判官その他当局者が本気で女性の権利を守ろうとする意思を持っていないことが問題でした。

 

その後も、トルコにおける女性に対する暴力は変わっていません。

 

****脅かされる、トルコの女性 夫らの暴力、年間500人が命絶たれる****

男女間の格差が今も根強く残るトルコで、女性の人権が脅かされている。夫や交際相手らによる暴力がやまず、最近では1年間に500人近い女性が命を絶たれている。何が起きているのか。

 

 ■母の死、理解できぬ3歳の子

「私たちが今も生きていられるのは、この子の存在があるからなんです」

 

最大都市イスタンブールにあるアパートの一室。犬のぬいぐるみが置かれた子ども部屋で、アフメット・ペリットさん(61)がつぶやいた。傍らには孫の3歳の男の子。その母で、そしてアフメットさんの娘のトゥーチェさんは2020年1月、27歳の若さで亡くなった。夫に殺されたのだ。

 

14年に結婚したが、3、4カ月もするとけんかが増え、夫から暴力を受けるようになった。顔を殴られ頬を骨折したこともあり、アフメットさんらは「家を売ってあの男から逃げよう」と説得した。だが、トゥーチェさんは「どんな家庭も問題はある。乗り越えればきっと幸せになれるから」と言うだけだった。

 

息子が生まれても暴力は一時的にやんだだけ。トゥーチェさんは定職のない夫に代わって学校給食作りの仕事をし、顔のあざは化粧で覆って出勤した。文句一つ言わずに働いたのは、息子を教育水準の高い私立学校に入れたい一心からだった。

 

一度は離婚を決意し、警察にも相談したトゥーチェさん。しかし、「子どものために、父親がそばにいることが大切」と夫の元に帰ることを決めた。新たな生活を始めようと新居を見に行った際、夫と何かのトラブルがあったとみられ、トゥーチェさんは首を絞められて殺害された。「助けられなかった自分が許せない」。アフメットさんは今も後悔の念が募るばかりだ。

 

トゥーチェさんが育った部屋は壁紙を張り替えて子ども用家具を置き、3歳の息子のものになった。母が死んだことは理解できておらず、墓参りに行くと「僕が出してあげる」と穴を掘ろうとする。アフメットさんは言う。「いたずらしても叱れない。この子が『ママ』と呼ぶのが、あまりに切ないからだ」

 

 ■「男らしさ」守る社会背景に

女性の権利擁護団体「We Will Stop Femicides Platform」の推計によると、トルコで家庭内暴力や交際のもつれなどにより男性によって殺された女性は11年に121人だったのが、18年には440人に、19年は474人に増えた。女性の社会進出が進むにつれ、男性とぶつかることが多くなったことなどが原因との見方がある。

 

夫や交際相手などが加害者であることが多く、離婚協議中に事件が起こることもしばしばだ。同団体のヌルシェン・イナルさん(58)は「トルコでは就職面接を受ける女性が『結婚するの?』『子どもは産むの?』などと平然と問われることもある。男女平等など存在しない」と訴える。

 

トルコは政教分離に基づく世俗主義が国是で、他の中東諸国より女性の社会進出が進んでいるとされてきた。だが世界経済フォーラムの男女格差(ジェンダーギャップ)ランキングでみると、153カ国中130位(日本は121位)に位置する。

 

バフチェシェヒル大のニルフェル・ナルル教授(社会学)は、背景の一つに男性が女性よりも強く優位に立つ「男らしさ」を守ろうとする社会構造があると指摘する。

 

社会での女性の活躍についても、男性によっては「優位」が脅かされると捉え、離婚などの重要な問題で女性が主導的になろうとすると、暴力に転じることがあるとみる。また、イスラム教保守層の影響を指摘する声もある。

 

ナルル教授は、幼いころから「男女は平等だ」という意識を持たせることが重要だとし、「日本のように家庭科の調理実習でともに料理を作って、同じ立場で生きていることを実感させるような体験も有効だ」と話す。(後略)【1月20日 朝日】

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女性が置かれた現実は変わっていませんが、変わったのは保守的イスラム主義を隠そうとしなくなった、また、EU加盟の現実味がなくなり、欧米との対決姿勢を隠そうとしなくなったエルドアン大統領です。

 

****トルコ、DV防止条約脱退も 大統領が検討指示 女性デモ相次ぐ****

トルコのエルドアン政権が「女性への暴力およびドメスティックバイオレンス(DV)防止条約」からの脱退を検討している。

 

イスラム色の強い保守層が「家族構造を崩壊させる」と反発しているためだ。条約はトルコの男性優位社会を見直す重要な契機をもたらしてきた。与党内でも意見は割れ、女性団体による抗議デモが相次いでいる。

 

条約は2011年に欧州評議会で採択された。女性に対する暴力の防止、被害者の保護、加害者の訴追の実現を目指し、批准国に制度整備を求める。トルコは真っ先に署名した国の一つで、同条約は「イスタンブール条約」とも呼ばれる。14年に発効し、現在は欧州中心に34カ国が批准する。

 

トルコでは男性による女性に対する暴力が深刻で、性犯罪や殺人が後を絶たない。トルコが条約署名に動いたのも、欧州人権裁判所が国内のDV事件を問題視したことが大きな要因だった。署名時はエルドアン大統領が首相。国会も承認し、法整備が進められてきた。

 

しかし与党幹部は7月、条約が家族の形を傷つける懸念があると表明した。条約が呼び掛ける「ジェンダー、性的指向」に基づく差別の禁止が、LGBTなど性的少数者を助長しているというのが主な理由だった。

 

地元紙ミリエトによると、保守化を進めるエルドアン氏は与党の会合で条約脱退の検討を指示した。野党は強く反発。与党の女性議員や、政権に近い女性団体も脱退反対を表明し、政権の足並みは乱れている。

 

今月5日、イスタンブールのデモに参加した女子大学生のセネム・カバクさんは「トルコは最初に署名した国として誇りを持つべきだ。条約は政府の数少ない実績なのに、消し去ろうとしている」と批判した。【2020年8月28日 SankeiBiz】

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【政権のLGBT対応を批判する学生を大量逮捕】

保守的イスラム主義を進めるエルドアン大統領ですが、女性問題以外でも、“条約が呼び掛ける「ジェンダー、性的指向」に基づく差別の禁止が、LGBTなど性的少数者を助長しているというのが主な理由だった。”とあるように、性的マイノリティに対しても厳しい対応を示しています。

 

****トルコ大統領、LGBTの若者を非難 学生集会で約160人逮捕****

トルコの学生による抗議集会で、イスラム教の聖地とLGBT(性的少数者)を象徴する虹色の旗「レインボーフラッグ」を並べて描いた絵が掲げられたことを受け、レジェプ・タイップ・エルドアン大統領は1日、トルコのLGBT運動は「破壊行為」だと非難した。

 

先週末、イスタンブールにあるボアジチ大学で行われた学生集会では、イスラム教の聖地とレインボーフラッグを一緒に描いたとして4人が逮捕された。

 

1日、これを非難するエルドアン大統領の演説が放送されて間もなく、同大学では再び抗議集会が行われた。

 

ソーシャルメディアに投稿された映像によると、警察は平和的に抗議していた学生らを引きずって連行した。現場にいたAFPの記者らも、何人かの学生が警察に引きずられる様子を目撃している。イスタンブール県知事によると、159人の逮捕が確認されている。

 

エルドアン氏は、「わが国の若者たちを、LGBTの若者としてではなく、わが国の輝かしい過去に生きた若者のように未来へと導いていく」と、与党・公正発展党の党員へ向けた動画メッセージで発言。

 

さらに「あなたたちはLGBTの若者でも、破壊行為をする若者でもない。それどころか、あなたたちは傷ついた心を修復する人たちだ」と述べた。

 

人権団体らはエルドアン氏が18年に及ぶ在任期間を通じ、大半の国民がイスラム教徒であるものの公式には世俗国家であるトルコの社会を、保守的な方向へ導いていると非難している。

 

トルコでは先月、エルドアン氏が自らに忠実な人物をボアジチ大学の学長に任命したことがきっかけで、学生による抗議行動が相次いでいた。 【2月2日 AFP】

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昨日ブログで、クルド系政党への解党命令に対し欧米とトルコの間の軋轢がまた激しくなりそうだということを取り上げましたが、欧米側のトルコ・エルドアン政権への反発は、エルドアン大統領の女性やLGBTに対する厳し姿勢に見られるイスラム主義・強権姿勢を危惧していることが背景にあります。

 

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トルコ・エルドアン大統領  「グローバル・パワー」目指す積極外交 国内強権支配で欧米と新たな火種も

2021-03-19 22:53:14 | 中東情勢

(【3月18日 TRT】テロとの戦いに言及し「セルジューク時代もオスマン時代も、外からの攻撃よりも内部の分裂により崩壊した。まだ100年にも満たない我が国が同じ結末に陥るのは認めない」と語るエルドアン大統領  クルド系政党解党を念頭に置いた発言でしょう。)

 

【イスラム世界と非西欧世界を代表する「グローバル・パワー」としての認知を求める】

2020年12月13日ブログ“トルコ 「新オスマン主義」の成果と負担 コロナ感染「世界第3位」 ワクチン早期接種に躍起”でも取り上げたように、トルコ・エルドアン大統領は「新オスマン主義」と警戒されるような積極的な外交・軍事戦略を展開しています。

 

そうした積極外交の一面でもあり、あまり知られていないのがアフリカにおけるトルコの存在感の拡大です。

 

****働き手も留学生もアフリカから積極受け入れ トルコの狙いはどこにある****

東地中海情勢やシリア難民を巡り、欧米との関係が話題になりがちなトルコだが、近年、アフリカでその影響力を強めていることはあまり知られていない。

 

今やアフリカ42か国に大使館を置き、50を超える地域に直行便を飛ばす。アフリカからトルコへの留学生や出稼ぎ労働者も増えている。なぜトルコはアフリカに着目したのか、なぜトルコが受け入れられるのか。あまり知られていないトルコの姿に迫った。

 

■首都のソマリア人コミュニティ

この1年ほど、近所のスーパーや路上で、アフリカ系の人々を目にする機会が増えた。首都アンカラの、歴史的に大使館の多い地域だが、近年はアフリカの大使館が急速に増えている。(中略)

 

アフリカ諸国との関係を深めてきたトルコのエルドアン政権は、アフリカ各国と二国間の商業協定も数多く締結している。それにより労働者の行き来も容易になっているという。(中略)

 

■深化するトルコ・アフリカ関係

トルコは1923年の建国以来、西欧化を掲げ、ヨーロッパに追いつくことを目標にしてきた。だが、エルドアン現政権は2002年に発足して以降、トルコがそれまであまり目を向けてこなかったアフリカに注目。エルドアン首相(当時)による2005年の「アフリカ年」の宣言を皮切りに、アフリカ支援に積極的に乗り出した。

 

今や、アフリカにおけるトルコ大使館の数は2002年の12か国から42か国に拡大。在トルコのアフリカ大使館も、10から36に増えた。二国間の経済協力団体数は50に迫る。さらに、トルコの航空最大手ターキッシュエアラインズは30か国、50以上の拠点に直行便を飛ばすなど存在感を増している。

 

2008年にはイスタンブールで「トルコ・アフリカ協力サミット」が開催され、16年からはトルコとアフリカ諸国との投資とビジネス拡大を目指す会合を定期開催するなど、トルコの積極的なイニシアチブが目立つ。

 

アフリカとの貿易額も年々拡大している。大統領府によると、2020年には、政権就任時と比べ4倍近い260億ドルに達した。エルドアン氏は、「近い将来、500億ドルを目指す」と意気込む。

 

■世界最大のソマリア支援国

(中略)トルコが最も注力しているのは、ソマリアだ。政府と反政府組織との間での対立が続くソマリアでは、テロも少なくない。

 

トルコと同じくスンニ派が多数を占めるソマリアを、エルドアン氏が初めて訪れたのは、東アフリカで深刻な干ばつが発生した2011年。ソマリアへの世界の関心が薄かった当時、アフリカ以外の首脳としては約20年ぶりの訪問を実現し歓迎を受けた。

 

トルコの支援は、当初の人道支援からやがて教育、医療、インフラ分野にも拡大。学校や病院が開設され、新たな道路が整備されるなど、支援額はこの10年間で10億ドルを超える。昨年11月には、ソマリアが国際通貨基金(IMF)に負っていた負債の一部、240万ドルをトルコが肩代わりした。

 

他国のソマリアへの支援は、治安上の理由で隣国から遠隔で行ったり、警備の厳しい首都モガディシオの国際空港内に設置した大使館を通して行われたりするケースが多い中、トルコは2016年にモガディシオ中心部に大規模な大使館を構えた。

 

イスタンブールからの直行便ももつ。17年には、インド洋に面するモガディシオ南部に、400ヘクタールに及ぶ軍事基地を建設。主にソマリア軍への軍事訓練を目的としており、基地内には3つの軍学校も備える。計1万人の兵士養成を目指しており、訓練にはトルコ産の武器が用いられている。

 

人道支援が発端だが、トルコは当初からその戦略的重要性にも目を向けていた。アフリカ屈指の約3,000㎞の海岸線を持ち、紅海とインド洋をつなぐ。さらに、スエズ運河を経由して、アジアとヨーロッパを結ぶ重要な海上輸送の玄関口となっている。

 

また、ソマリア沖はマグロをはじめとした豊富な漁場としても知られ、両国で漁業協定も締結している。こうした両国の結びつきの強さから、今年発表が予定されているソマリア沖海底油田・ガスの初めての採掘権は、トルコが獲得する可能性が高いと噂されている。(中略)

 

■なぜトルコが受け入れられるのか

トルコのアフリカ外交は、エルドアン氏自らがけん引する。訪問時には主要閣僚を携え、数百人規模のビジネス団を引き連れることも珍しくない。

 

首脳会談後の会見でエルドアン氏は、両国間の貿易額の目標数値を大々的に発表し、数々の二国間協定に署名する。

 

さらにヨーロッパの国々を意識し、トルコが植民地支配に加担していなかった歴史を強調。西欧が展開してきた「上から目線」の支援ではなく、また、中国による「中国のため」の天然資源開発目的の支援とも一線を画し、「Win-Winの関係づくりを目指す」と訴え、いわば「第三の選択肢」を提示している。

 

政府機関や企業、民間NGOなど官民が協力しながら人道支援からインフラ整備を手がける。病院や学校など、日常生活に直結する施設が、目に見えてわかりやすい形で作られるため、人々の目にトルコの成果がはっきり映りやすい。

 

さらに、テロなど不測の事態が起きても企業の撤退や投資の中止に至らないことが、「信頼できるパートナー」という印象を強める。

 

一方で、こうしたトルコ独自のやり方に、援助関係者からは懸念の声も上がっている。援助機関や他の支援国との間で、支援の重複を避け、優先順位や役割分担などを話し合う協調がなされないまま、トルコが独自のやり方で突き進んでいる、という指摘だ。

 

また、「受益国のニーズに応じて、長期的計画に基づく支援が大切だが、トルコの支援はトルコにとってやりやすい、場当たり的なものが多い」と指摘する人もいる。さらに、支援の透明性への疑問や、政権側に寄り過ぎているとの声もある。

 

■「グローバル・パワー」になりたい

今年1月には、アフリカ大陸自由貿易圏が始動した。アフリカの54ヵ国が署名し、5年以内に9割の関税を撤廃し、単一市場創設を目指す。将来的には域内移動の自由と域内統一通貨の実現も視野に入れており、世界最大規模の自由貿易協定となる。こうした中、アフリカの未来への各国の関心が高まっている。

 

かねてからエルドアン氏は「世界は5か国よりも大きい」と公言し、常任理事国が拒否権をもつ国連安全保障理事会の改革の必要性を訴えてきた。そこには、トルコが「ミドル・パワー」から脱却し、「グローバル・パワー」として、イスラム世界と非西欧世界を代表する国として認知されることへの期待がある。アフリカにおける影響力の拡大も、それを実現する布石の一つと言えるだろう。

 

一方で、トルコのアフリカでの動きが、同じイスラム世界からの警戒を呼んでいるのも事実だ。スーダンの例にみられるように、軍事クーデターで形勢が一気に逆転する場合もある。「親トルコ」を増やすとともに「反トルコ」をいかに減らしていくか、「グローバル・パワー」を目指すトルコの知恵が問われる。【2月17日 GLOBE+】

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【欧米との軋轢 国内クルド系政党解党といいう強権手法で新たな火種】

こうした積極外交は欧米との軋轢を生むことにもなっており、これまでも取り上げたように、東地中海の資源開発をめぐってキプロス・ギリシャ、そしてEUと制裁を伴う厳しい対立関係にありました。

 

ただ、そちらは緊張緩和に向かっているようです。

 

****EU、トルコ国営石油への制裁強化を停止 融和ムード浮上****

EU(欧州連合)が、トルコ国営石油会社(TPAO)幹部に対する制裁計画を凍結させたことが分かった。

 

EUは昨年末、東地中海の紛争海域でトルコが天然ガスを無許可で採掘しているとして、資産凍結や渡航禁止を示唆していた。これに対するトルコ側の外交攻勢が実を結んだ形となった。4人のEU外交官が明らかにした。

強硬姿勢を見せていたトルコのエルドアン大統領は今年に入り、発言が穏健なトーンとなり、ドイツのメルケル首相も融和的なアプローチを支持する立場となった。トルコが長年対立するギリシャと直接会談したことも、ムード一変に寄与した。

米バイデン政権も、北大西洋条約機構(NATO)に加盟し、EU加盟を望むトルコが歩み寄りに前向きな姿勢を見せる時に、制裁は回避すべきだとの立場を表明していた。

あるEU外交官は「トルコ人を個人としてブラックリストに入れる作業は止めた。経済制裁はすでに話題となっていない」と話した。 EUは昨年2月、TPAOに対して副社長を含む2人の幹部を制裁対象にした。別のEU外交官によれば、EU首脳による同年12月の会談後、会長などさらに多くの取締役会のメンバーが制裁対象入りすることになっていたという。【3月19日 ロイター】

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しかし、エルドアン大統領の積極外交と並ぶ、もうひとつの側面である反エルドアン勢力への国内強硬策が新たな国際緊張を生んでいます。

 

****トルコ最高検、クルド系政党の解党申し立て 米は批判****

トルコ最高検察庁は17日、少数民族クルド人系野党、国民民主主義党(HDP)の解党を憲法裁判所に申し立てた。国家の結束を崩す狙いで非合法武装組織のクルド労働者党(PKK)の傘下組織として活動していると主張した。

トルコでは政府が脅威と見なす政党を解散させることがこれまでにもあり、過去に解散を命じられたクルド系政党はいくつもある。

エルドアン大統領が率いる公正発展党(AKP)と協力関係にある政党はPKKとのつながりを理由にHDPの解党を呼び掛けてきた。エルドアン政権は新型コロナウイルス禍の景気落ち込みへの対応に苦戦しており、支持率は低下している。

HDPは、検察は政府の命令で行動していると批判し、解党の申し立ては「民主主義と法への大きな打撃」だと強調した。

通貨リラはHDP解党申し立ての政治的影響への懸念が重しとなり、下落した。

定数600の議会で55議席を有するHDPはPKKとのつながりを否定している。

PKKはトルコだけでなく米国と欧州連合(EU)がテロ組織に指定している。

米国務省は声明で、HDP解党を決定すれば「トルコの有権者の意思を不当に覆し、民主主義を一段と阻害し、何百万人もの市民が選出した代議士を排除することになる」と非難した。(後略)【3月18日 ロイター】

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上記のアメリカだけでなく、EUも。

“欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表(外相)も18日、「有権者数百万人の権利の侵害になる」と表明。25、26の両日に予定されるEU首脳会議でトルコへの批判が高まる可能性がある。”【3月19日 時事】

 

ただ、欧米のこうした反発はエルドアン大統領にとっては想定内であり、その動きを止めることにはならないようです。新型コロナウイルス禍の景気落ち込みへの国民不満をなんとか“そらしたい”思惑でしょう。

 

****トルコ警察、クルド系政党の幹部と人権団体トップを拘束****

トルコの警察は、少数民族クルド人系野党、国民民主主義党(HDP)の地区幹部3人を拘束した。国営メディアが19日報じた。

クルド系武装組織に対する捜査の一環で、計10人が拘束されたという。

これとは別に、トルコの人権協会(IHD)は、警察が19日午前にIHD会長の自宅を強制捜査し、会長を逮捕したことを明らかにした。現在、弁護士が情報を収集しているという。

トルコ最高検察庁は17日、HDPの解党を憲法裁判所に申し立てていた。HDPは「政治的なクーデター」と批判している。HDPは議会で第3位の政党。

国営アナドル通信によると、逮捕されたのはHDPのイスタンブールのキャーウトハーネ地区の代表とベシクタシュ地区の代表など。警察が4地区で同時に強制捜査を行った。15人に逮捕状が出ているという。

欧米は、最高検察庁の申し立てについて、民主主義を損なうものだと批判しているが、トルコのエルドアン大統領の報道官は、HDPが非合法武装組織のクルド労働者党(PKK)と関係があると主張している。【3月19日 ロイター】

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【利益優先のポピュリズム 中国のウイグル族弾圧批判も一転】

「中国の夢」のトルコ版とも言うべき「新オスマン主義」を推し進め、国内的にはイスラム主義を強化し、反エルドアン勢力を強権的に抑え込む・・・というコワモテのエルドアン大統領ですが、トルコ・イスラムの理念にこだわらず“長い物には巻かれる”現実主義の一面も。

 

****亡命ウイグル族に迫る中国強制送還の脅威 「第2の祖国」トルコ、対中関係を重視****

そろしい」。トルコで暮らす亡命ウイグル族が、中国に強制送還される懸念を深めている。

 

近年トルコは対中関係を重視。中国政府の情報に基づく警察のテロ捜査が増加していると指摘され、国会では中国との犯罪人引渡条約の批准手続きも進んでいる。

 

トルコ系イスラム教徒の少数民族にとって「第2の祖国」と呼ばれるほど安全な避難先だったはずのトルコに、中国の影響力が拡大している。

 

 ▽テロ捜査

今年1月、最大都市イスタンブールでウイグル族の住民少なくとも10人がテロ組織に関与した疑いで拘束された。支援団体「国際難民の権利協会」のイブラヒム・エルギン弁護士によると、警察に情報提供していたのは中国政府だった。

 

捜査記録を確認したところ、中国がウイグル独立派「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」のメンバーだとして送還を求めていたという。

 

ETIMは中国だけでなく、国連もテロ組織に認定しているが、エルギン弁護士は「確かな証拠は見つかっていない。中国はウイグル族の送還を求めるために中傷作戦を進めている」と指摘する。

 

今回の10人の一部は既に釈放され、2月半ばの時点で実際に送還された住民はいない。ただここ数カ月で同様の拘束が増えているという。

 

トルコは民族的にも宗教的にも近いウイグル族を擁護し、中国政府の弾圧を批判してきた。2009年の中国新疆ウイグル自治区で起きたウルムチ暴動の際にはエルドアン大統領(当時は首相)が中国の対応を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と非難し、19年にはトルコ外務省がウイグル族収容所の閉鎖を求める声明を発表した。

 

トルコのウイグル族受け入れは世界最多の約5万人に上ると指摘されている。トルコから自治区に戻ったり、残してきたりした家族と連絡が取れなくなるウイグル族の人々が相次ぎ、首都アンカラの中国大使館や、最大都市イスタンブールの中国総領事館前では抗議デモが繰り返されている。

 

 ▽経済連携を重視

近年トルコは経済連携を重視し、中国に対する批判は限定的になっている。中国はトルコの主要輸入相手国となり、トルコは中国の掲げる巨大経済圏構想「一帯一路」を支援する。

 

エルドアン大統領は中国の習近平国家主席と首脳会談を繰り返し、19年に北京を訪問した際には「(ウイグル族は)中国の発展繁栄の中で幸福な生活を送っている」と中国のウイグル政策を評価したほどだった。

 

新型コロナウイルスのワクチンを巡っては、中国の製薬大手、科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)が開発したワクチンに依存している。

 

連携は司法分野にも広がっている。両国は2017年5月に犯罪人引渡条約に署名し、昨年12月26日、中国が全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会で批准した。トルコ国会では批准手続きが棚上げされていたが、夏まで続く現在の国会会期中に審議される見通しだ。

 

エルドアン政権はウイグル族の権利を守ると強調するが、懸念は広がっている。中国からの新型コロナのワクチン供給が一時遅れたことがあり、野党議員の中には、ワクチン供給はトルコの条約批准の見返りではないか、と政権を追及する声も出ている。

 

 ▽「追い返されるのか」

条約批准に向け、エルドアン政権はジレンマにも直面している。現在、与党の公正発展党(AKP)は国会で単独過半数に届いていない。極右のトルコ民族主義政党と与党連合を組み、過半数を確保しているため、政権運営は民族主義に傾斜してきた。民族主義支持者は亡命ウイグル族に対する同胞意識が強く、支援する立場の人々が多い。

 

対中関係を重視してきたエルドアン政権だが、条約批准は国内支持層の反発をまねく可能性をはらんでいる。

 

2月上旬、トルコ首都アンカラの中国大使館前で、連絡が取れない家族の写真を掲げるウイグル族の人々十数人が抗議デモを行っていた。

 

妹の写真を持っていた女性のメディネ・ナジムさん(37)は「ウイグル族としてこの条約は私の名誉を傷つけるものだ。とても悲しく、おそろしい。国会で批准されないように望んでいる。私たちの安全と生活は条約に脅かされるだろう。中国の圧政を逃れてきたのに、追い返されるのだろうか。批准されれば、全てのウイグル族が悲しむことになるだろう」と訴えた。【3月1日 47リポーターズ

********************

 

中国に対するジェノサイド批判が一転、「(ウイグル族は)中国の発展繁栄の中で幸福な生活を送っている」

ワクチン欲しさとや経済関係重視とは言え、こうした「手のひら返し」は、理念軽視のポピュリズム政治家の特徴です。

 

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アフガニスタン  5月1日の米軍撤退期限迫る 米、アフガン政府にタリバンとの前提政権も提案

2021-03-18 23:19:13 | アフガン・パキスタン

(アフガニスタンのバーミヤン渓谷で、タリバンによって2001年に破壊された遺跡の跡地をパトロールする警官(2021年3月3日撮影)【3月17日 AFP】)

 

【ブリンケン国務長官 アフガニスタン・ガニ大統領にタリバンとの暫定政権を提案】

タリバンとアメリカ・トランプ前政権の合意で、(タリバンの支配地域でアルカイダなどの武装勢力の活動をやめさせ、和平交渉を進めるという約束をタリバンが守ることができれば)5月1日が米軍撤退期限となっているアフガニスタン。

 

アフガニスタン政府とタリバンの直接交渉は昨年9月にカタールの首都ドーハで始まりましたが、大きな進展はみられていません。

 

そのアフガニスタン政府にアメリカ国務長官がタリバンの「春の攻勢」を警告したという下記の記事、(タリバンの「春の攻勢」は例年のことではありますが)アメリカ側の意図が今一つわかりませんでした。

 

****タリバンの「春の攻勢」を警告 米国務長官がアフガン大統領に****

アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官が、同国と北大西洋条約機構(NATO)の軍隊がアフガニスタンから部隊を撤退した後に、武装勢力タリバンが急速に勢力を拡大する恐れがあると警告していたことが7日、明らかになった。

 

タリバンとトランプ前米政権の間の合意では、タリバンによる安全の保証と引き換えに、米軍が中心のNATO軍は5月1日までに、アフガニスタンから残りの部隊員1万人を完全撤退させることになっている。

 

しかしブリンケン国務長官は、アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領に書簡を送り、「春の攻勢」があるかもしれないとして警戒を呼びかけた。

 

米軍は2001年、米同時多発テロ事件を受けて、アフガニスタンを侵略。タリバンを政権の座から追放した。

今年1月に発足したバイデン米政権は、トランプ前政権とタリバンによる和平合意を見直す方針を示している。

 

バイデン政権はまた、タリバンが「約束を守る」のか見極めたいとしている。合意では、タリバンは米軍の撤退前に暴力を減らし、テロリストとの関係を断つとしている。

 

アフガニスタンでは、暴力事件の危険度が高い状態が続いている。ジャーナリストや活動家、政治家、女性裁判官などを狙った殺人事件が次々と起きている。

 

ブリンケン氏の書簡

BBCはブリンケン氏の書簡を7日に入手した。

その中でブリンケン氏は、アフガニスタンにおける90日間の暴力削減を要望。さらに、「永続的かつ全面的な停戦」を実現するためとして、国連が監督する新たな国際平和維持活動を提唱した。

 

そして、治安状態が一層悪化するのを防ぐためには、それらが今すぐ必要だとした。

 

また、関係国の外相や地域勢力の代表らを集めた会合を開くよう、国連に求めると説明。トルコが開催地になるとの考えを伝えた。

 

BBCのリーズ・ドゥセット国際問題編集委員長は、この書簡について、アメリカが同国史上最長となった戦争で平和的な解決を目指していることを強調するものだと解説。

 

アメリカは部隊撤退後にアフガニスタンが混乱と内戦に陥ったり、首都カブールが崩壊したりするのを防ぎたいと思っており、ブリンケン氏がガニ大統領とタリバンに圧力を強めた格好だと説明した。(後略)【3月8日 BBC】

**********************

 

アメリカの意図がイマイチわからない理由は、上記記事ではブリンケン国務長官の書簡の肝心な部分に触れられていないためです。(同一書簡なのか、別書簡なのかは知りませんが)

 

「肝心な部分」というのは、アフガニスタン政府に対し、タリバンと暫定的な権限分割の合意(選挙実施までの暫定政権樹立)を締結するよう提案しているというもの。(“提案”というか、“強要”というか・・・)

 

****米、アフガン政府にタリバーンとの暫定的合意を提案****

バイデン米政権は9日までに、アフガニスタン政府に対し、反政府勢力タリバーンと暫定的な権限分割の合意を締結するよう提案した。ブリンケン米国務長官からアフガニスタンのガニ大統領への書簡で述べた。

 

ブリンケン氏は合意をめぐり、イランなど周辺国の役割が大きくなると示唆。また、バイデン政権が同国からの米軍の撤退について引き続き検討すると警告した。アフガニスタンからの米軍撤退は、トランプ前政権が5月1日までに実施するとしていた。

 

書簡は米国のアフガニスタン和平担当特別代表を務めるザルメイ・ハリルザド氏を通じて送られた。バイデン政権によるアフガニスタンに関する考察を初めて示すもので、ブリンケン氏のいら立ちを反映した内容ともなっている。

 

同氏は書簡の中で、自身の論調からガニ大統領には状況が切迫していることを理解してもらいたいと記した。

 

アフガン政府とタリバーンの間では、米国とタリバーンとの昨年の合意以降協議が続いているものの、アフガン国内での暴力は着実に増加傾向にある。

 

米国務省のプライス報道官は、書簡や提案の内容が事実なのかどうかについてコメントを控えた。書簡はアフガンのメディアが7日に初めて公開。事情に詳しい米当局者1人と外交筋1人は、書簡が本物であると明らかにした。

 

バイデン氏はオバマ政権時代にアフガンでの米軍の増強に反対。過去にも20年近く続く紛争における米軍の関与を縮小したいと発言している。

 

撤退を成し遂げなくては国内での批判にさらされる可能性があるものの、現在のアフガン情勢は不安定で、タリバーンは国内での支配領域を拡大している。こうした地域では、女性たちがこれまで獲得してきた自由や権利が危機にさらされてもいる。【3月9日 CNN】

****************

 

“反政府勢力タリバーンと暫定的な権限分割の合意”というのは、選挙を実施するまでの間の暫定政権を意味するようです。

 

****米、アフガン和平計画で暫定政権の発足提案 選挙実施まで****

米国は、アフガニスタンの和平に向けた計画の中で、新たな憲法制定で合意して選挙を実施するまでの間、暫定政権を発足させることを提案している。また、合同委員会が停戦を監視することも提案している。

ただ、この案に対しては、当事者から反対の声が上がっている。(中略)

 

米国の提案によると、暫定政権下で国会は、タリバンの代表者も含めて拡大するか、もしくは選挙後まではそのままにするかが提示されている。

 

さらに、アフガニスタンは、他国を脅かす「国内でテロリストを支援したり、テロリストに関連した活動を容認したりしない」とし、タリバンは「安全な避難場所」や近隣諸国との軍事的な結びつきを放棄しなければならないとしている。

 

アフガニスタンの4人の政府関係者は、ロイターが入手した和平計画の草案の信ぴょう性を確認した。米国のこの計画は、アフガニスタンのメディアが報じている。

 

一方、ガニ大統領は、暫定政権のために退任することは受け入れない方針。大統領府高官は8日、「われわれは、協議や政治的取引を通じた暫定(政権)設立を決して受け入れない」とコメントした。

 

タリバン側は、停戦と選挙を拒否している。ただ、タリバンの指導者はロイターに対し、タリバンは暫定政権には参加しないが、暫定政府を発足させる案には反対していないと語った。【3月8日 ロイター】

*******************

 

これなら、冒頭記事にある「春の攻勢」云々の意味がよくわかります。

 

要するに、「このまま米軍が撤退したら、アフガニスタン政府単独ではタリバンの攻勢はしのげないだろう。カブールは陥落し、アフガニスタン政府は崩壊する。そうならないためには、アメリカの言うことをきいて、タリバンと権限分割合意し暫定政権をつくれ」という話のようです。

 

“ガニ大統領には状況が切迫していることを理解してもらいたい”という“ブリンケン氏のいら立ちを反映した内容”ですが、上記【ロイター】によれば、アフガニスタン政府側は抵抗しているようです。

 

【4月にトルコで和平会合】

その後の動きとしては、以下のような記事が。

 

冒頭【BBC】の“(ブリンケン国務長官は)関係国の外相や地域勢力の代表らを集めた会合を開くよう、国連に求めると説明。トルコが開催地になるとの考えを伝えた”という話の具体化でしょうか。

 

****4月にアフガン和平会合=トルコ外相表明****

トルコのチャブシオール外相は、アフガニスタン政府とアフガンの反政府勢力タリバンの双方が出席する和平会合をトルコで4月に開催する考えを示した。アナトリア通信が12日伝えた。アフガン駐留米軍の撤収期限が迫る中、トルコは米国とも協力して和平の進展を図る姿勢だ。

 

アフガン和平をめぐっては、これまでタリバンが事務所を置くカタールで接触が行われてきた。トルコとカタールは関係が深い。チャブシオール氏は、アフガン政府とタリバンの双方から開催の要請があったことを明らかにした上で、「兄弟国カタールと調整して実施したい」と述べた。【3月12日 時事】

******************

 

トルコは「兄弟国カタール」と呼んでいますが、アフガニスタン政府はカタールの対応には不満なようです。

 

****アフガニスタン、和平協議の場所変更希望 カタールの対応に不満****
 カタールで行われているアフガニスタン政府と反政府武装組織タリバンの和平協議について、駐アラブ首長国連邦(UAE)アフガニスタン大使は、カタールが主催国としての役割を十分果たしていないとして、協議を複数の場所で巡回させて行うべきだと主張した。

和平協議は、米国が軍の撤収で合意した後、昨年からカタールで行われている。しかしアフガニスタンでは爆弾などによる攻撃が後を絶たず、アフガニスタン政府はタリバンが攻撃を抑制するという義務を果たしていないと批判している。

アフマド大使はロイターに、和平協議は一カ所に固定するのでなく、欧州、アジア、中東、あるいはアフガニスタンと場所を移しながら行うべきだと主張。

「カタールはホスト国で、より積極的で決定的役割を担い、タリバンに暴力を抑制させたり停戦を宣言させたりすることもできた」と述べ、カタールは自身の立場を適切に活用できていないと指摘した。

カタール政府側にコメントを求めたが返答はない。

ロシアは今週、アフガニスタンに関する会合を開催する。トルコは来月、和平協議を主宰する。【3月15日 ロイター】

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5月1日まで、残された時間は僅かですが、ブリンケン国務長官が提案したとされるアフガニスタン政府とタリバンの権限分割・暫定政権の話がどうなったのか・・・は、よくわかりません。上記のトルコでの和平会合などで議論されるのでしょうか?

 

【バイデン大統領 撤退期限延期の可能性示唆】

アメリカの対応ですが、バイデン大統領は完全撤退期限を延期する可能性を示唆しています。

 

****アフガン駐留米軍の完全撤退、バイデン氏が延期を示唆****

バイデン米大統領は17日に放送されたABCテレビのインタビューで、アフガニスタンに駐留している米軍を5月1日までに完全撤退させる計画について「厳しい」と述べ、期限を延期する可能性を示唆した。ただ、「ずっと長くかかるわけではない」とも語り、引き続き撤退を目指す姿勢を強調した。

 

トランプ前政権は昨年2月、反政府勢力タリバーンとの間でアフガニスタンから米軍を段階的に撤退させる合意を結び、今年5月を完全撤退の目標としてきた。

 

インタビューでバイデン氏は「しっかりとした交渉がされた合意ではない」と非難。「同盟国などと協議中だ」としつつ、5月1日の期限までに完全撤退させるのは「できるかもしれないが、厳しい」との認識を初めて示した。

 

バイデン政権はこれまでも、タリバーンが暴力を減らし、国際テロ組織のアルカイダとの関係を絶つ約束を守っていないと批判。撤退の前提となっているタリバーンとの合意について検証を行う必要があるとして、慎重な姿勢を示していた。(後略)【3月18日 朝日】

*********************

 

いずれにしても、今後ひと月ほどの間で、アフガニスタン政府・タリバンにしても、アメリカにしても、更に動きが見られると思われます。

 

2001年3月、タリバンはバーミヤンの大仏2体に砲弾とロケット砲を浴びせ、最後はダイナマイトで爆破しました。

あれから20年、タリバンの考えは変わったのか、それとも同じなのか?

 

権限分割、暫定政権の可能性は、そのあたり次第です。

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ナイジェリア  頻発する学生らの集団拉致事件 身代金目的か 政府の支払いが事件誘発との批判も

2021-03-17 22:59:11 | アフリカ

(【3月2日 ロイター】ナイジェリア北西部ザムファラ州で武装集団に連れ去られ、その後解放された女子生徒)

 

【2050年には人口4億、世界第3位】

経済規模でアフリカ最大の国は、南アフリカではなくナイジェリア。

そのナイジェリアは現在人口約2億人ですが、2050年には4億人に倍増し、インド、中国に次ぐ世界第3位になる予想とか。

 

当然に、経済的にはその市場規模が注目されます。

 

****世界のなかで「ナイジェリア」ほど有望な国はないと言える理由*****

(中略)資産管理のサポートなどを行うBeograd Consulting Group(ベオグラード コンサルティング グループ)埜嵜雅治CEOは「世界を見渡してもナイジェリアほど魅力的な投資対象はない」という。その真意について伺った。

 

アフリカ54ヵ国で最もGDPが高い国、ナイジェリア

――資産管理のサポートなどを行っている御社は、最近ナイジェリアに注目していると伺いました。なぜなのでしょうか。

 

(中略)ここでナイジェリアのアフリカにおけるポジションを確認しておきましょう。アフリカで最もGDPの大きな国はナイジェリアです。多くの方は南アフリカだと想像するでしょうが、アフリカにある54ヵ国のなかで最も経済規模が大きいのはナイジェリアなのです。

 

またアフリカ西部の15ヵ国からなる「西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)」の中心国でもありますし、55ヵ国が加盟する「アフリカ連合(AU)」での存在感も増しています。ちなみにコロナ禍で導入が先送りになりましたが、ECOWASではEUにおけるユーロのように、共通通貨「ECO」の導入が予定されています。

 

このようにアフリカの中心国であるナイジェリアの経済成長率は、2016年のマイナス成長を経て、2017年からは年々、上昇しています。それにも関わらず、株価が低迷しているわけです。ナイジェリアという国に注目するには、十分すぎる条件ではないでしょうか。

 

30年後「ナイジェリアの人口」が4億人に達するワケ

――初めの着眼点は、「株式の割安感」ということですね。しかしいくら平均株価が安くても、値上がりが期待できないと投資対象としては難しいと思いますが、御社はどこに注目したのでしょうか。

 

現時点で人口が多く、この先も増え続ける可能性が高い、というのは大きな判断材料でした。内需が拡大し、経済成長が見込めますから。

 

ナイジェリアはアフリカで最も人口の多い国です。2000年に日本と同程度の約1億2000万人の人口だったのが、20年で7000万人ほど増えました。2050年には人口が4億人に達し、世界第3位になるといわれています。

 

なぜここまで人口が増えるのか。多くの方は「生まれてくる子どもの数が多いから」と思われるでしょうが、それだけでは大幅な人口増とはなりません。さらに注目すべきは「5歳未満の死亡率の低下」です。

 

元々ナイジェリアの出生率は高かったのですが、一方で5歳未満の死亡率も高い水準にありました。先進国では考えにくいですが、下痢が原因で多くの乳児が亡くなっていたのです。しかし経済成長と共にインフラが整備され、医療も進歩したことで、5歳未満の死亡率は2000年以前に比べて半分程度にまで低下しました。

 

経済成長が続けば、出生率も下がります。それは多くの先進国が経験したことで、ナイジェリアでも同じです。このまま経済成長が続けば、出生率は頭打ちになるでしょう。

 

しかし先進国に比べると死亡率はまだまだ低下の余地があります。それに伴い、人口も加速度的に増加していくというわけです。

 

ビジネス上でもナイジェリアのアドバンテージは大きい

――30年後には、ナイジェリアは中国やインドに続く、人口大国になるわけですね。

 

そうです。アフリカ全体の人口は30年後に25億人に達するといわれています。世界の4人に1人はアフリカの人という時代になるのです。さらにアフリカの人の5、6人に1人はナイジェリア人を占めるようになります。これだけでもナイジェリアの影響力は計り知れません。

 

さらに注目すべきは、ナイジェリアの公用語は英語だということです。これはイギリスによる植民地時代の影響によりますが、「公用語=英語」は、今後ナイジェリアが経済成長を続けていくために、大きな武器になると考えます。(後略)【2月25日  幻冬舎GOLD ONLINE】

*******************

 

もちろん、楽観的な話ばかりではありません。

2050年に向けて人口が増大するのは、ナイジェリアを含むアフリカ諸国。

そうなると、食糧不足が懸念されるという指摘もあります。

 

****ナイジェリア、世界第3位の人口大国に…アフリカの人口急増、世界的食糧不足で価格高騰****

今年の6月に国際連合広報センターが「世界人口推計 2019年版」を発表した。それによると、世界人口は現在の77億人から2050年には97億人と20億人も増加するという。それだけではなく、国別人口順位が次のように変わるとしている。

 

【2015年】

・1位:中国(13億7000万人) 2位:インド(13億1000万人) 3位:米国(3億2000万人)

 

【2050年】

・1位:インド(17億人) 2位:中国(13億人) 3位:ナイジェリア(3億9000万人)

 

なんとアフリカのナイジェリアが米国(3億8000万人/50年:4位)を抜いて世界第3位の人口大国になる。ナイジェリアは15年には人口1億8200万人で世界第7位だが、35年間で約2.2倍に急増する。

 

国連によると、2020年から2100年までの人口増減率で増加率上位10位はすべてアフリカ諸国となっている。

 

ニジェール:581% タンザニア:378% ザンビア:344% コンゴ民主共和国:304%

モザンビーク:296% ナイジェリア:256% スーダン:225% ウガンダ:199%

エチオピア:156% ケニア:133%

 

アフリカ諸国の人口が今後急増することによって、世界人口は2050年に97億人に膨れ上がる。人口増加による問題の一つは、食料供給が追いつくのかという問題である。

 

人口が急増するアフリカ諸国の農業は零細で、自給自足が主体の家族農業となっている。そこで、その家族農業を支援して市場に食料を供給できる農業経営にし、食料供給力を高めようと国連で決議されたのが、「家族農業10年」であった。

 

気候変動で穀物価格上昇

他方、地球温暖化問題に取り組んでいるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)も食料問題にアプローチをしている。今年の8月にIPCCは、「土地の利用状況と気候変動に関する特別報告書」を公表し、気候変動と食糧供給システムとの関係を解明し、私たちの食生活のあり方にまで警告を鳴らした。

 

報告書では、「工業化以前の期間より、陸域面気温は世界全体の平均気温に比べて2倍近く上昇している」として、それによる極端な気候変動が食料安全保障や生態系に悪い影響を及ぼし、砂漠化や土地劣化を進行させているとし、2050年には穀物価格が最大23%上がるとした。

 

さらに報告書は、食料生産から流通、消費による温室効果ガス排出量が、総排出量の4割弱であることを明らかにした。

 

温暖化の緩和を進めるために、「食品ロスおよび廃棄物を含む、生産から消費に至るまで食料システム全体にわたって対応の選択肢を導入」することを求めるとともに、「食生活の変化による総緩和ポテンシャルは2050年までに70~80億トン/年になると推定」としている。ここでいう「食生活の変化」とは、肉よりも米やトウモロコシなどの穀物を多く摂る食生活に変えることである。

 

このように、世界人口が急増する一方、地球温暖化によって穀物価格が上昇するなど、食料供給は楽観できない状態に追い込まれている。そして、それは私たちの肉食偏重の食生活の見直しを迫るものにもなっている。【2019年12月1日 Business Journal】

*************************

 

【頻発する武装勢力による学生らの集団拉致】

2050年の話はともかく、今現在に目を向けると、ナイジェリアに関してはイスラム武装組織ボコ・ハラムのテロ活動などによって治安状態が非常に悪いという大問題があります。

 

そうした治安の問題の背後にあるのは、貧困、格差、政治の腐敗・・・といった問題。これは多くのアフリカ諸国に共通する問題です。

 

ナイジェリアで特に目立つのが、武装勢力による学生らの集団拉致。

 

****ナイジェリアで学生39人拉致 武装勢力が大学を襲撃****

ナイジェリア北部カドゥナ州で11日夜、武装勢力が大学を襲撃し、学生39人を連れ去った。AFP通信などが伝えた。治安当局や軍が、武装勢力と拉致された学生の行方を追っている。

 

同通信や地元メディアによると、武装勢力は同日午後9時半ごろに学校に侵入し、無差別に銃撃を開始した後、学生たちを連れ去った。翌12日未明、駆けつけた軍が反撃して約180人の学生を救出したものの、学生39人の行方が分からなくなっているという。救出された学生の中には負傷者もおり、病院で治療を受けているという。

 

ナイジェリアでは昨年12月以降、北部を中心に学校が襲撃されて多数の生徒が拉致される事件が相次いでおり、今回で4件目。武装勢力は主に身代金を目的としているとされる。

 

これまでの3件とも拉致された生徒らは解放されたが、政府は身代金の支払いを否定している。【3月13日 朝日】

*******************

 

集団拉致自体が驚くべきことですが、尋常でないのはその頻度。

しかも、最近の事例では事件後解放されることが多く、メディア上では、頻繁に事件発生のニュースと解放のニュースが踊っています。

 

“ナイジェリアでまた学校襲撃 300人以上連れ去られる”【2月27日 朝日】

“拉致された女子生徒279人、全員解放 ナイジェリア”【3月2日 AFP】

 

“武装集団が学校襲撃 生徒1人殺害、42人拉致 ナイジェリア”【2月18日 AFP】

“学校襲撃で拉致された生徒ら42人、全員解放 ナイジェリア”【2月27日 AFP】

 

【政府の身代金支払いが事件を誘発?】

前出【朝日】には、“武装勢力は主に身代金を目的としているとされる。これまでの3件とも拉致された生徒らは解放されたが、政府は身代金の支払いを否定している。”とありますが、身代金は払っているとの指摘も。

 

そのことが事件を誘発する原因にもなっているとも。

 

****政府が身代金の支払いに応じたら誘拐事件が急増…ナイジェリアで学校襲撃相次ぐ****

ナイジェリアで武装集団が学校を襲撃し、生徒らを誘拐する事件が急増している。政府側が身代金の支払いに応じたことが事件を誘発したとの見方が広がり、政府の治安対応に批判が集まっている。

 

英BBCなどによると、15日に中北部カドゥナ州の小学校で教師3人が誘拐されたほか、11日にも同州の学生寮から女子生徒39人が連れ去られた。

 

誘拐事件は、隣接するカツィナ州で男子生徒300人以上が被害に遭った昨年12月以降急増し、被害者はこれまでに800人以上に上る。多くはその後、解放されたが、政府側はその都度、身代金を支払っているとされる。【3月16日 読売】

********************

 

拉致された学生らを取り戻さないと、国民からの批判にさらされる。

でも、武装集団を捕らえる力はない。カネでなんとか・・・・という話でしょうか。

 

前出【朝日】が伝える39人拉致の事件については、悲惨な映像が明らかになっていますが、こうした映像には身代金支払いを求める犯行組織側の狙いがあるように思われます。

 

****武装集団に拉致された学生、銃突きつけられた映像が浮上 ナイジェリア****

 西アフリカのナイジェリアで、北西部カドゥナ州の学校から連れ去られた学生たちが銃口を突き付けられたりむちで打たれたりする映像が浮上した。

 

映像は13日に浮上し、フェイスブックで広く共有された。一部の学生は見るからに苦しんでいる様子だった。男子学生の1人は背後の人物に銃口を突き付けられた状態で、政府に対して犯人に従ってほしいと訴えていた。

 

カドゥナ警察によると、同州マンドにある連邦カレッジが11日夜、武装集団に襲撃され、学生39人が拉致された。今回の映像に映っているのはこの学生たちの一部だった。同国北部で教育機関から学生や生徒が集団で拉致される事件は、今年に入って3回目になる。

 

銃を突き付けられた学生は、救出のための強行作戦を実行すれば犯行集団による重大な結果を招くと訴え、「ここにいる私たちの多くがけがをしている…ひどいけがを…時間が過ぎる…私たちのほとんどは健康問題を抱えている」と付け加えた。

 

犯行グループが身代金を要求しているのかどうか、現時点では分かっていない。

 

カドゥナ警察の広報は14日、CNNの取材に対し、「映像は本物だ。犯人は拉致した被害者の1人を使ってこの映像を録画した」と語った。犯行グループからの金銭的要求については認識していないとしながらも、身代金の要求

に応じる選択肢はないと強調している。

 

拉致されたのは、農業を研究する19〜25歳の学生だった。

カドゥナ州当局は12日、軍が武装集団と交戦し、学生や職員など180人を救出したと発表していた。

 

しかし警察は14日午前の時点で、カレッジから連れ去られた学生39人はまだ拘束されていると述べ、被害者全員を無事救出するため、他の治安機関と連携して合同作戦を展開すると説明した。【3月15日 CNN】

*********************

 

身代金支払いに関して、前出【読売】のような批判が高まると、政府側も支払いが出来ず、いたずらに時間が過ぎ、結果的に人質を持て余した犯行組織側が人質を・・・という最悪の可能性も考えられます。

 

ボコ・ハラムが「西洋の教育は罪」という意味であることが示すように、イスラム過激派にとって、学生は糾弾すべきものの象徴ともなってきましたが、営利目的の集団誘拐が繰り返される背景には、そうした宗教的な話ではなく、貧困のため教育機会が十分になかった者が生きるために犯罪組織に身を投じ、教育を享受する学生に憎悪の感情を抱いているのでは・・・・というのは私の妄想です。

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中国社会  中国人の自己分析 消費トレンドは「国潮」、シニアそして女性

2021-03-16 21:48:10 | 中国

(中国伝統の漢服を着ている女性 【3月14日 加藤 勇樹氏 JBpress】)

 

【中国人が考える中国人の特徴】

中国社会の在り様、日本との比較などに関する記事は多々ありますが、そのなかから、ここ数日目にとまった中国社会の現状に関する記事をいくつか。

 

最初は、日本人から見た中国人ではなく、中国人自身が自分たち中国人をどのように見ているのか・・・という中国人目線のもの。

その内容は、【1】「真面目で勤勉」【2】「言葉に裏表ない」【3】「将来よりも今が大切」ということです。

 

****俺たちってこんな奴!中国人が自己分析してみたら****

(中略)では、日本人の目線ではなく中国人の目線で中国人を見るとどうなるのか。

筆者は周りにいる中国人たちに「自分たち中国人はどんな性格だと思う?」と聞いてみました。今回はそうして聞いて回った情報をもとに「中国人が考える中国人の特徴」を紹介したいと思います。

 

なお「中国」と一口で言っても、地域によって行動習慣は大きく異なっており、気風も千差万別です。今回はその点を踏まえ、できるだけ中国人全体に当てはまる特徴、性格を教えてもらうようお願いしました。とはいえ、インタビュー相手の主観を完全に排除することはできません。この点については、あらかじめご了解ください。

 

【1】「真面目で勤勉」

おそくら多くの日本人は、「中国人は不真面目でサボり屋」だという認識を持っているのではないかと思います。しかし中国人に言わせると、「いや、俺たちは真面目で勤勉な民族だ」とのことでした。

 

この話をしてくれた中国人の知人は、「確かに日本人の真面目さと比べたら中国人は物足りなく思われるかもしれない。それでも他の国の人と比べたら、かなりマシな方だ」と主張します。

 

その知人によると、中国企業も今やタイやベトナムなど賃金が低い国へ進出していくことが珍しくありませんが、そうした進出先では、中国人経営者が現地従業員の管理に関して難儀することが多いそうです。

 

たとえば、仕事の指示を守らない、遅刻や欠勤が多い、勝手にいなくなる、といったトラブルが多く、中国国内よりも手を焼く傾向があるといいます。

 

筆者も以前、他の東南アジア諸国に駐在していた日本人経営者から似たような話を聞いたことがあります。その日本人経営者曰く、「中国人従業員は日本人より確かに扱いづらいが、他の国に比べればまだまともな方だ」とのことでした。(中略)

 

【2】「言葉に裏表ない」

さて、上記の「真面目で勤勉」のほか、比較的多くの知人から「中国人は本音をはっきり言う」「言葉に裏表がない」という自己評価が聞かれました。

 

ある知人によると、中国人は思ったことをすぐはっきりと口にする傾向が強く、これは中国全土でほぼ当てはまるそうです。逆に中国人からすると、日本人は「建前と本音が異なることが多く、真意を測るのが難しい」とのことでした。

 

この「本音をはっきり言う」という中国人の特徴については、筆者も大いに賛同します。以前、中国国内を旅行して土産物屋を訪れた際、店頭のお菓子を手に取って、おいしいかどうか店員に尋ねたところ、即座に「まずいよ」と言われました。また携帯電話ショップの店員に売れ行きはどうかと聞いたら、「全然売れてなくても上々だと答えなきゃいけない」と返答されたことがあります。

 

このような具合に、全員が全員というわけではありませんが、中国人はなぜか自分にとって不利なことでも馬鹿正直に言う人が多いようです。

 

もっとも、重要な情報を隠して他人をだまそうとする輩も多いので、一概に「心優しき正直者」とまでは言い切れません。あえて言うなら「無駄に正直者」といったところでしょうか。

 

なお、こうした特徴は仕事においてもはっきり見られます。中国人は昇給が見込めるなど意欲の持てる仕事であれば驚くほど熱心かつ積極的に取り組みます。

 

逆に、意に沿わない仕事を割り振ると、嫌々でもきちんと取り組む日本人とは異なり、露骨に適当に処理し始めます。良くも悪くも自分の感情をストレートに見せる傾向があるでしょう。

 

【3】「将来よりも今が大切」

「先のことより、今をどう幸せにするかを考える傾向がある」という特徴も、多くの中国人の知人が挙げていました。

 

ある知人によると、「老後のことを全く考えないわけじゃないけど、老後のためにお金を貯めるくらいなら、旅行などにお金を使って今を楽しみたい」とのことです。

 

人生設計に限らず、中国人の生き方や考え方は、概して刹那的です。仕事に関しても、今の自分に合わないと思ったら、あまり先のことは考えず、すぐに転職しようとします。また将来起こり得る問題についても、「その時になったら考えればいい」と割り切る人をよく見ます。

 

逆に、こうした中国人の価値観に影響されてきているのか、筆者は最近の日本人を見ていると、「将来のことばかり気にし過ぎじゃないか」と感じるようになりました。

 

日本の若者が年金など老後のことを心配しているなどという話を聞くと、老後になる前のことをもっと気にした方がいいのでは? と思ってしまいます。

 

筆者から見ると、中国人は確かにもう少し将来を見据えて行動した方がいいように思われます。一方、日本人はもう少し将来のことを気にせず生きた方がいいのではないでしょうか。将来のために今を犠牲にしなくても、今の生活を大事にすることで開ける将来もあるでしょう。

 

もっとも筆者の場合、刹那的な生き方をする中国人からも「君は勢いだけで生きている。もっとじっくり考えて行動してはどうか」などと耳の痛いことをよく言われます。【3月15日 花園 祐氏 JBpress】

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概ね妥当な内容ではないでしょうか。

 

【伝統回帰の「国潮」が消費トレンドの一つに】

次に、最近中国で流行るもの・・・・それは中国の伝統文化を現代に合わせてアレンジした「国潮」とのこと。

成長が著しい中国経済を考えれば、自国文化への自信ということで、当然の流れでしょう。

 

*****「まるでルネサンス」中国伝統文化復興の勢い****

「国潮」、中国の伝統文化を現代に合わせてアレンジしたものが、中国の消費トレンドの一つになっていることを、以前の記事でご紹介しました。

「直播、国潮、奶茶銭…変わる中国の消費トレンド」https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/62974

 

「国潮」はさらに広がりを見せていて、「中国文化のルネサンス」と言えるほどになっています。このトレンドがどういうもので、現在どういうことが起きているか。今後中国を見ていくうえで欠かせない、国潮の広がりを具体例とともにご紹介します。

 

ゲームが「国潮」の起爆剤に

中国では「外国的月亮比较园(外国の月は中国国内よりも丸く美しい)」という言葉があります。自国の伝統的なものよりも、国外のものの方が優れている、というような意味で、中国国内では舶来品や外国文化を高く評価する傾向が長く続いていました。

 

中国が経済力を増してきた2000年代以降も、中国の伝統文化とはどこか距離を置く風潮がありました。

 

2003年、チャイナドレスなどの比較的歴史の浅い衣装ではなく、本来の意味の伝統的な民族衣装(漢服)が中国国内のデザイナーの手によって再現されました(漢服復刻)。

 

そのことが中国国内外のメディアに大きく取り上げられたのですが、それがニュースになること自体、中国の伝統文化が日常生活と離れたものであることを示しています。

 

現代中国において伝統文化を再評価してそれを取り込む動き、「国潮」が本格化したのは、2010年代の後半からといえます。

 

国潮の起爆剤となった要素の一つは、若者を対象にしたサブカルチャー市場への進出です。例えば、中国テンセントグループが2015年に発売したゲームソフト「王者荣耀(Honour of Kings)」は、1億人以上の月間ユーザーを誇る最も成功を収めたゲームソフトの一つです

 

このゲームの特徴は、中国史の偉人をゲーム内に登場させたことや、青龍や白虎など伝統的な中国文化を意識したゲームデザインにあります。(中略)

 

現在では、アパレル、各種アミューズメント活動、コスメティクス、食品など多くの商品分野において、国潮は大きなアピール要素となっています。

 

国潮で急成長した中国ブランド

国潮をきっかけに大きく成長した企業も現れています。「李寧(Li-ning)」は中国の国潮トレンドにおいて最も成功した企業の一つと見なされており、2019年上半期においては、前年同期と比較して約3倍の利益を上げました。

 

同社は体操の元世界選手である「李寧」氏によって1990年に設立されたスポーツウェアを中心とするブランドです。

 

一時期同社は500億円もの赤字を抱えたこともありましたが、中国を印象付ける要素を加えることや、Design in Chinaをプロモーションの核に据えることによって、大きく成長を遂げました。2018年にはアメリカニューヨークのファッションショーにおいて、国潮デザインのファッションを披露したことが、中国国内でも高い評価を得ました。

 

李寧だけでなく、多くの企業や自治体が国潮を意識したプロモーション活動を行っており、社会全体で好意的に受け止められています。

 

中国青年報社が実施した18〜35歳の若い世代を対象にした意識調査によると、全体の88%が国潮を消費や選択の際に重要な要素と考えており、80%が国潮を意識した製品の購入やサービスの選択を経験しています。この数字は95年以降や00年以降に生まれた若い世代ほど高くなっており、各企業にとっては国潮を意識した経営戦略は必要不可欠といえるでしょう。

 

国潮関連で、消費者がどのような製品やサービスを購入したり選択したりしたかを示しているのが次のグラフ(略)です。アパレルだけでなく、飲食などの領域にも展開が広がっていることがわかります。

 

モノ消費だけでなくコト消費にも広がる

2021年現在、国潮は2つの系統に分かれて進化しつつあります。商品などの購入時に国産を選択する「国貨」といういわばモノ消費と、演劇などの古典文化に触れる「国粋」というコト消費です。(中略)

 

コンテンツの海外輸出に期待

国潮がモノ消費だけでなく、コト消費にも広がりつつある背後にはいくつかの要因が考えられます。

 

1つ目は中国国内の企業のブランド力の向上や技術力の進歩によって、若年層を中心に消費の傾向が変化したことです。Huaweiのスマートフォンなどのハイテク産業はもとより、「大白兎」などの老舗食品メーカーも、商品のブランディングを高めることに成功しています。

 

2つ目は動画プラットフォームが成長することで、スモールビジネスやネットアイドルなど多種多様なプレーヤーが業界に参加したことが挙げられます。熾烈な生存競争が繰り広げられる一方で、市場に受け入れられるための最適化が現在も継続しています。

 

3つ目の要因としては、現在の国際情勢が挙げられます。中国から国外への旅行が難しくなったことで、自国内の文化への再認識が進みました。2020年以降、自国への自信を持つ層が増えたことが、中国にいると感じられます。

 

これまで成長を遂げた国では、文化をコンテンツとして輸出してきました。アメリカのハリウッド映画や、日本のクールジャパンなどがその例です。国潮も同様のことを目指そうとしています。(中略)

 

国内でのさらなる拡大、国外への進出、国潮は中国における重要度がますます増していきそうです。【3月14日 加藤 勇樹氏 JBpress】

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【シニア産業が巨大な成長産業に】

消費構造で言えば、上記のような若い世代を中心とした「国潮」の様相のほか、中国でも高齢化が進行していることを考えれば、このシニア層をターゲットとした産業が今後のカギにもなります。

 

****中国の高齢者は2億6000万人、シニア産業が巨大な成長産業に―中国メディア****

中国の李克強首相は11日、第13期全国人民代表大会(全人代)第4回会議の総理記者会見に出席し、国内外の記者の質問に回答した。

李首相は、「中国の60歳以上のシニア人口はすでに2億6000万人に達しており、シニア産業もまた巨大な将来の成長が十分見込まれる産業と言え、多様化したニーズをもたらしている。

 

中国市場には多層化と多様化したニーズがあるため、このような巨大な市場は当然ながら、外国企業の製品やサービスひいては投資により多くのチャンスを生み出している。なぜならわれわれの市場は開放されているからだ」とした。【3月14日 レコードチャイナ】

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まあ、開放されているかどうかはともかく、日本も共通する高齢化社会に伴う当然の話でしょう。

 

【次世代消費者の中心となっている「女性」 「自分のため」の支出が大幅に増加】

若者の「国潮」重視、シニア産業の拡大とくれば、次は「女性」です。

 

****データが描く現代女性、自分のために消費、男性より高い投資の割合―中国****

ECプラットフォームの拼多多が8日、「新EC・新女性消費報告」を発表し、女性の消費の新しいトレンドを描き出した。

 

それによると、拼多多の受注のうち、90後(1990年代生まれ)と00後(2000年代生まれ)の女性によるものが半分以上を占め、女性は今や次世代消費者の中心となっている。

 

「自分のため」の支出が大幅に増加しており、レディースファッション、化粧品などの受注量の増加率が他の商品を大幅に上回った。

 

国潮(中国伝統の要素を取り入れたおしゃれな国産品のトレンド)を体験し、国産品を購入するのが、女性の消費の新しいトレンドだ。

 

若い女性たちは夜間に団体購入する習慣があり、「夜更かしすればするほど買い物も増える」という。北京日報アプリが伝えた。


女性の消費を引き寄せるものは何か。同報告によると、衣類・服飾品・靴類・帽子類、化粧品・スキンケア製品、ベビー・マタニティ・子ども用品が引き続き女性の消費の主流だ。バストアップブラ、化粧水、しわ改善アイクリームなどの商品は増加率が高い。

 

地域分布をみると、消費額の上位3都市は上海、広州、北京で一線都市が並んだが、三線以下の都市の女性と発達した一線都市の女性との間の購買力の差がさらに縮まったという。


ますます多くの若者が職場や社会に進出するにつれ、90後と00後の女性は次世代消費の中心になった。同報告によれば、2020年には拼多多の受注のうち、90後と00後の女性によるものが51%を占めた。うち00後の女性の年間消費額の増加率が最も高く、前年比61%増加したという。


女性向けインターネットプラットフォームの美柚も、多くのデータから現在の「若いお母さんたち」の消費習慣を明らかにした。

 

それによると、現在、中国の出産する予定の女性は20-35歳に集中している。この層の7割以上は服飾品関連の支出が最も多く、以下、スキンケア製品、家具・インテリア製品、化粧品が並んだ。

同報告はショート動画共有アプリの「TikTok(ティックトック)」の女性ユーザーの一部に関するECデータも公表した。(中略)

 

また、女性が誰のために買い物をするかについての優先度ランキングをみると、トップは自分のためで、以下、子どものため、夫・彼氏のため、ペットのためとなり、これまでの固定観念を打ち破った。

 

ティックトックの女性ユーザーの買い物かごで、彼氏・夫の「地位」がついにペットを上回ったということでもある。


■女性が投資する割合は男性より高い
女性は投資・資産運用の中心にもなった。「中国ビューティフルライフ大調査(2020-21)」のデータによると、女性は保険や銀行の資産運用などの堅実投資を男性よりも明らかに好んでいた。

投資の成功率をみると、こちらも女性に優位性がある。調査によると、投資を行う女性は全体として損失を出した割合が男性より低く、利益を出している、または利益も出ていないが損もしていないという女性は男性よりやや多かった。(後略)【3月14日 レコードチャイナ】

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“彼氏・夫の「地位」がついにペットを上回った”というのは笑えます。

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イスラエルが示すコロナワクチン普及後の社会  イランとの間で互いに船舶を爆破?

2021-03-15 23:05:07 | 疾病・保健衛生

(【2月24日 NHK】 イスラエル ジム入場時の「グリーンパスポート」チェックでしょうか?)

 

【ワクチン接種者に「グリーンパスポート」 施設入場や店内飲食が可能に】

新型コロナワクチンに関しては、その接種率で見ると、イスラエルが世界最速ペースで進んでいることは周知のところです。

 

その背景には、汚職疑惑の渦中にあるネタニヤフ首相が政治的生き残りをかけてワクチン確保に邁進したことに加え、多様な人種に関するデータが得られると言う製薬会社側の事情、保険制度・個人情報管理などイスラエル国内の事情などもあります。

 

****イスラエルで進む「巨大な実験」の行方 ワクチンでの集団免疫は実現する?****

ワクチン接種が世界最速レベルで進む中東の国、イスラエル。2月25日時点で人口約900万人の半数近くが少なくとも1回のワクチンを接種し、2回目をすませた人も300万人以上にのぼる。

接種が進む背景には政治的な状況がある。

イスラエルでは3月23日に総選挙投開票が予定され、ネタニヤフ首相が続投を目指す。ワクチン入手で各国が苦心するなかファイザーから買い付け、最高経営責任者(CEO)との個人的なパイプのおかげ、と宣伝した。

ファイザーにとってもイスラエルとの連携は渡りに船だ。人種の多様性とハイテクでは中東随一の国。デジタル化された各人種の医療データがタイムリーに提供されるのだから、巨大な「実験場」を確保したに等しい。

国民皆保険のイスラエルでは日本の健康保険組合のような非営利の「健康維持組織(HMO)」が4種ある。それぞれが医療機関やスタッフを擁し、サービスを競い合う。政府が昨年12月、60歳以上などへの接種を決めると各機構とも一斉に電話やメッセージで利用を呼びかけ、瞬く間に1~2カ月待ちになった。

一般に、ユダヤ人は迫害の歴史から危機に敏感だとされる。政府の対応に共感すれば即刻従うが、納得しないと動かない。

例えば接種の呼びかけに素早く応じた60歳以上。感染すると重症化しやすい世代だが、1948年の建国当初から国を守ってきた自負が強く、危機には「戦時メンタリティー」で臨むことで知られる。そのせいか政府も「接種で勝利」と戦時さながらのポスターを病院に張り巡らせている。

だが16歳以上の全住民に対象が拡大された2月初めごろから、こうした流れは鈍化を見せている。若い世代が慎重なのだ。イスラエルの平均年齢は30.5歳。感染しても重症化しにくい世代で、むしろ副反応を気にしている。加えて若年人口が特に多いアラブ系やユダヤ教超正統派は政治的にも反ネタニヤフで呼びかけを無視する構えだ。

新型コロナではワクチン接種が人口の6~7割まで進まないと集団免疫は実現しないとされる。イスラエルで実現するのか。今後も目が離せない。【3月15日 AERA,dot】
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そのイスラエルでは、「ポスト・コロナワクチン」とも言うべき、ワクチン接種が進んだ後の社会の在り様を示す動きも始まっています。

 

2月21日には、全2回の接種者に「グリーンパスポート」を発行し、スポーツジムや文化施設など感染リスクが高いとされる場所に入る際、提示を義務付ける制度が始まっています。飲食店でも「グリーンパスポート」保持者の店内飲食が可能に。

 

****イスラエル、店内飲食再開 「グリーンパス」保持者対象****

イスラエルは7日、新型コロナウイルスワクチン接種証明書「グリーンパス」の保持者を対象に、飲食店やバー、カフェの店内利用を再開した。国民の約40%が接種を完了する中、イスラエルは生活の正常化に向けて歩みを進めている。
 

ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、エルサレムのカフェで菓子にナイフを入れる自身の動画をフェイスブックに投稿し、「日常が戻りつつある」と宣言した。(中略)
 

イスラエルは先月、ワクチン接種を完了した人と感染から回復した人に証明書「グリーンパス」を発行し、ジムやプールなどの利用を認める取り組みを開始した。
 

飲食店では7日から、テーブル間隔を2メートル空け、入店可能人数を定員の最大75%、上限は100人とすることで、店内利用が可能となった。
 

グリーンパスの保持者はバーの利用も可能となったが、同居者以外とは1席ずつ空けて着席することが条件となる。【3月9日 AFP】

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【ワクチン外交 国内批判で凍結】

ワクチンが新型コロナ禍脱出の切り札であるのは言うまでもありませんが、外交上もいろいろと使い勝手の良い「有効」なカードとなっています。

 

よく取り沙汰されるのは中国の「ワクチン外交」ですが、イスラエルも負けていません。

多量の確保したワクチンを国民生命以外の外交目的で使用しています。

 

****イスラエル、「捕虜交換」見返りにシリアに露製ワクチン提供か****

イスラエルの有力紙イディオト・アハロノトなどは20日、シリアで拘束されたイスラエル人女性を解放してもらう見返りに、イスラエル政府がシリアに新型コロナウイルスのロシア製ワクチンを購入する密約を交わしたと報じた。事実ならワクチンが「身代金」代わりにされたことになる。

 

報道によると、購入するのは露ワクチン「スプートニクV」数十万回分で、費用は100万ドル(約1億円)超という。

 

女性は今月2日、徒歩でシリアに入り、拘束された。女性はスパイではないと判断され、両国がロシアの仲介で交渉した結果、イスラエルで拘束されていたシリア人羊飼い2人との「捕虜交換」の形式で19日に解放されたという。

 

ベンヤミン・ネタニヤフ首相は20日、疑惑を記者団に問われると、国民向けのワクチンは「一本も使われていない」と釈明した上で「ロシアの要求を尊重する」として詳細なコメントは避けた。シリア国営通信は20日、「捏造ねつぞうされた情報だ」と疑惑を否定した。【2月22日 読売】

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****イスラエルがワクチン外交へ 大使館のエルサレム移転後押し****

イスラエル政府は23日、諸外国に新型コロナウイルスワクチンを提供すると発表した。国名は挙げなかったが、複数のイスラエルメディアは外交筋の話として、チェコやホンジュラスが含まれると報道。

 

いずれも大使館のエルサレム移転に前向きで、イスラエルがワクチン外交を活発化させ移転の着実な実施を促す思惑があるとみられる。

 

これとは別に、パレスチナ自治政府の医療スタッフにも提供する。

 

チェコ通信などによると、5千回分の米モデルナ製ワクチンがこの日、イスラエルからチェコに到着。ホンジュラス政府はイスラエルから5千回分のワクチンを期待していると明らかにした。【2月24日 共同】

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しかし、こういう外交目的でのワクチン「ばらまき」は国内でも批判があり、凍結されたとか。ワクチンがまわらじイスラエル占領下のパレスチナからの批判も。

 

****イスラエル国防相が「ワクチン外交」凍結を表明、法的問題浮上で****

スラエルのガンツ国防相は25日、「ワクチン外交」として批判が集まっている新型コロナウイルスワクチンの海外向け提供計画を凍結する方針を明らかにした。

ネタニヤフ首相は友好関係にある諸外国にワクチンを贈与する方針を示しており、イスラエルが占領しているパレスチナ地域の住民からは、なぜこちらにもっと供給しないのかと不満の声が出ている。

ネタニヤフ氏は24日記者団に対して「これは外交的な友好姿勢を買うものだと思う」と認めた一方で、既に多くの見返りを得ている国家情報戦略上の判断だと説明して、詳細な内容の公表を拒否した。

こうした中で公共放送カンは、マンデルブリット検事総長が計画について法的な問題をクリアにするよう求めていると報じた。

右派のネタニヤフ氏と連立政権を組む中道連合を率いるガンツ氏は、ワクチン贈与は「適正な手続き」を経るべきで、ネタニヤフ氏が勝手に行える権限はないと指摘した。【2月26日 ロイター】

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チェコへのワクチン供与は凍結されたものの、事情はよくわかりませんが、外交事務所移転は予定どおり進んでいます。

 

****チェコがエルサレムに外交事務所、パレスチナ自治区が非難****

パレスチナ自治政府当局とアラブ連盟は13日、チェコ共和国がエルサレムに外交事務所を開設したのは国際法違反と非難した。

チェコは11日、テルアビブの在イスラエル大使館の支部をエルサレムに開設。開設式典にはチェコのバビシュ首相が出席した。

2週間前、イスラエルはチェコにモデルナ社の新型コロナウイルスワクチン5000回分を「ワクチン外交」の一環で送付した。このプログラムは後に法的に問題になり、凍結されている。

パレスチナ外務当局はチェコの動きを「パレスチナ人とその権利に対する露骨な攻撃であり、目に余る国際法違反」とし、和平の展望を損なうと表明した。

一方、アラブ連盟のアブルゲイト事務局長はカイロで声明を発表、「エルサレムの法的地位は、国の代表事務所開設決定により影響を受ける。東エルサレムは国際法上は入植地となっている」と指摘した。

チェコ外務省は、エルサレムの事務所は大使館ではないと強調した上で、事務所開設はチェコとイスラエルの戦略的パートナーシップ強化と当地のチェコ市民に対するサービス向上が目的と説明した。【3月15日 ロイター】

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【イランとの緊張関係 互いに船舶爆破?】

ワクチン以外のイスラエル関連のニュースでは、相変わらずイランとの関係が問題となっています。

 

****イスラエル船の爆発、イランの関与は「明らか」=ネタニヤフ首相****

スラエルのネタニヤフ首相は、同国所有の船舶が先週、オマーン湾を航行中に爆発したことについて、イランが関与したことは明らかだとの認識を示した。

ただ、報復するかどうかについては明言を避けた。

爆発を起こしたのは車両運搬船「MVヘリオス・レイ号」で、先月25日から26日午前にかけて爆発。米当局者によると、船体の両側に穴が開いた。

ネタニヤフ首相はイスラエル公共放送協会(KAN)ラジオに「確かにイランによる作戦だった。それは明らかだ」と発言。

イスラエルは報復するのかとの質問には、イランの核開発を防ぐ決意を改めて表明し「われわれは地域全体で(イランを)攻撃している」と述べた。

イランは爆発についてコメントしておらず、イランが関与した可能性があるとのイスラエル側の主張にも反応を示していない。

KANによると、ネタニヤフ首相のインタビューは先月28日夜に事前に録画された。その後、シリアは、イスラエルがシリアの首都ダマスカス近郊の標的をミサイルで攻撃したと非難した。

イスラエルは、シリアへの攻撃について事実確認を避けているが、同国は先に、シリア国内でのイランの配備や武器引き渡しに対して、頻繁に軍事攻撃を行っていることを明らかにしている。【3月1日 ロイター】

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やられて黙っているようなイスラエルではありません。

 

****船爆発、イスラエル関与か イラン、破壊工作と断定****

地中海を航行中のイランのコンテナ船で爆発があり、イラン捜査当局者は13日、敵対するイスラエルが関与した可能性が高いとの見方を示した。イラン外務省は「破壊工作」と断定した。イランメディアが伝えた。

 

報道によるとコンテナ船は10日、爆発物によって攻撃され、小規模な火災が発生、船体の一部が破損した。船員らにけがはなかった。

 

捜査当局者は、爆発物は航空機から発射された可能性があると述べた。同船は欧州に向かっていたという。【3月14日 共同】

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アメリカ・バイデン政権のイラン核合意復帰を阻止したいイスラエルとイランの緊張はしばらく続きそうです。

 

【パレスチナでの「戦争犯罪」容疑】

イスラエルのパレスチナに対する軍事行動が戦争犯罪に当たるのでは・・・という捜査も。

 

****イスラエル軍事作戦を捜査 戦争犯罪容疑で国際刑事裁判所*****

国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)のベンスダ主任検察官は3日、イスラエル占領下の東エルサレムやヨルダン川西岸などで2014年6月以降に行われた戦争犯罪などの容疑で本格捜査を始めたと発表した。イスラエルのパレスチナに対する軍事作戦が中心とみられる。

 

パレスチナ自治政府外務省は捜査開始を歓迎。一方、イスラエルのネタニヤフ首相は「反ユダヤ主義と偽善の極み」などとICCを非難する声明を発表した。米政権も捜査に懸念を示している。

 

ベンスダ氏はパレスチナ側による犯罪も捜査する考えを示した。【3月4日 共同】

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