
(避難所で栄養失調により痩せ細った息子を抱くパレスチナ人の母親=パレスチナ自治区ガザ地区北部ガザ市で2025年7月24日【7月30日 毎日】)
****飢えに苦しむガザの乳幼児、ミルク代わりの水受け付けず 「どうか助けて」母親が訴え****
パレスチナ自治区ガザ地区で飢えに苦しむ乳幼児の母親たちが、必死になってミルクや食事を手に入れようとして絶望的な状況に追い込まれている。 複数の母親は29日、CNNの取材に対し、子どもたちが生き続けるためにどうしても必要なミルクが手に入らないと訴えた。
ディアナ・アブ・ジャセムさんの息子は生後1年2カ月で、重度の栄養失調の末期状態にあり、体重は5.4キロしかない。息子のための食事もミルクも手に入らず、ボトルを使って水を飲ませているという。
生後4カ月の娘がいるアズハル・イマド・アブドゥル・ラーマン・マクダッドさんは、ミルクの代わりにゴマを混ぜた水を飲ませようとしていた。
「娘に飲ませようとしたけれど、受け付けてくれなかった。この子にあげられるものが何もない。ミルクも、おむつも、ベビーフードもない。仕方なくこうしている。初めて試したけれど、飲んでくれない。何もかも娘の害になっている」
娘のジョウリ・アブ・ハジャルちゃんは体重わずか3.3キロ。出生時から1キロも増えていない。 「この子が良くなるためにはミルクがいる。娘の発達が著しく阻害されている。海外の国々に訴える。どうか私たちを助けて。子どもたちが必要としている食料を届けて」【7月3日 時事】
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****ガザの集団飢餓 食料を「武器」に使う非道****
母親に抱かれた子は、背中の骨が浮き出るほど痩せ細っている。パレスチナ自治区ガザ地区での飢餓を伝える写真である。
イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続くガザの食料不足は極限状態にある。悲劇を止めるため、イスラエルは直ちに全面的な配給を可能にすべきだ。
パレスチナ保健当局によると、餓死者は100人を超えた。世界保健機関(WHO)は、全人口の4分の1が飢餓に近い状態にあるとの見方を示す。
イスラエルがガザを封鎖し、食料搬入を停止したのが原因だ。「兵糧攻め」にすることで、ハマスに対して人質解放の圧力をかける意図があると見られている。
国際社会の批判を受け、イスラエルと米国が後押しするガザ人道財団(GHF)が配給を始めたが、状況改善にはほど遠い。
国際人道法は紛争当事者が、民間人への生活物資配給を妨害することを禁じている。
WHOのテドロス事務局長は「封鎖による人為的な集団飢餓だ」と懸念を表明した。 日本や英仏など30カ国以上が「人間の尊厳を奪っている」とイスラエルを非難したのは当然だ。(中略)
物資搬入の制限解除を求める国際社会の声を踏まえ、イスラエルは戦闘を一時停止し、食料などを運ぶ車両が安全に通行できるルートも設けた。
国連の担当者は決定を歓迎しながらも、「大規模かつ継続的な援助が必要だ」と述べ、搬入の全面再開を求めた。
配給を巡っても悲劇は続く。支援物資を求めてGHFの拠点に集まった住民が相次いで銃撃され、800人以上が死亡した。
イスラエル軍は「警告射撃しかしていない」と民間人への攻撃を否定するが、地区を事実上掌握している以上、安全を確保する責任があるはずだ。
ガザ住民を飢えから救うために残された時間は少ない。イスラエルは食料を「武器」に使ってはならない。国際社会は人道危機回避へ圧力を強化する必要がある。【7月30日 毎日】
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単に「兵糧攻め」にとどまらず、食料を求めて集まる住民に銃弾・砲弾を浴びせて連日大量の死傷者を出している状況は全く理解できません。1,2回ならともかく、連日の状況で「警告射撃」云々では到底説明できません。百歩譲ってイスラエル側の意図したものでなかったとしても、“地区を事実上掌握している以上、安全を確保する責任がある”のは避けられません。
事態の深刻化を受けて、これまで一体となってイスラエルを支援してきたアメリカ・トランプ大統領がガザの飢餓を認める形でネタニヤフ首相と異なる見解を表明し、支援強化に向けた動きも出ていることは昨日ブログでも取り上げたところです。
****トランプ氏、ガザには「本当の飢餓」があると発言 イスラエル首相と食い違い****
パレスチナ・ガザ地区の状況について、ドナルド・トランプ米大統領は28日、「本当の飢餓」があると述べた。そうしたものはないとする、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の主張と食い違いを見せた。
訪英中のトランプ氏はこの日、キア・スターマー英首相とスコットランドで会談した際に、記者団の質問を受けた。
ガザでの飢餓をイスラエルが悪化させているというのは「あからさまなうそ」だとするネタニヤフ氏の主張に同意するかと問われると、トランプ氏は、「わからない。(中略)子どもたちはとても腹を空かせているように見える。(中略)あれは本当の飢餓だ」と述べた。
また、「誰もあそこで素晴らしいことはしていない。全体がめちゃくちゃだ。(中略)私はイスラエルに、違う方法でやる必要があるんじゃないかと伝えた」と話した。
ガザの状況をめぐっては、国連のトム・フレッチャー事務次長(人道問題担当)が前日、飢餓を食い止めるには「膨大な量の」食料が必要だと警告した。
パレスチナ・ガザ地区の状況について、ドナルド・トランプ米大統領は28日、「本当の飢餓」があると述べた。そうしたものはないとする、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の主張と食い違いを見せた。
訪英中のトランプ氏はこの日、キア・スターマー英首相とスコットランドで会談した際に、記者団の質問を受けた。
ガザでの飢餓をイスラエルが悪化させているというのは「あからさまなうそ」だとするネタニヤフ氏の主張に同意するかと問われると、トランプ氏は、「わからない。(中略)子どもたちはとても腹を空かせているように見える。(中略)あれは本当の飢餓だ」と述べた。
また、「誰もあそこで素晴らしいことはしていない。全体がめちゃくちゃだ。(中略)私はイスラエルに、違う方法でやる必要があるんじゃないかと伝えた」と話した。
ガザの状況をめぐっては、国連のトム・フレッチャー事務次長(人道問題担当)が前日、飢餓を食い止めるには「膨大な量の」食料が必要だと警告した。【7月29日 BBC】
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こうしたトランプ大統領の変化の背景には、イスラエルを無条件に支援してきた従来のアメリカの外交姿勢に対する大統領支持基盤である「MAGA」若年層の批判があるようです。
****トランプ氏の支持基盤MAGA派、イスラエル無条件支持に反発****
イスラエルへの無条件支持は長年、米共和党政治の必須条件となってきたが、ドナルド・トランプ米大統領の支持基盤である「米国を再び偉大に(MAGA)」派によって正統性が揺らいでいる。「特別な関係」をいくら唱えようと、聞く耳を持たないからだ。
パレスチナ自治区ガザ地区における飢餓と苦しみの映像は、米国の中東介入はトランプ氏の「米国第一主義」と一致するのかどうかという、MAGA派の中でくすぶっていた議論に弾みをつけた。
トランプ氏が初めてイスラエルと大きく対立したのは28日だった。ガザで「現実の飢餓」が起きていることを認め、イスラエルとイスラム組織ハマスとの紛争で壊滅的な被害を受けたガザに食料センターを設置すると表明した。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がガザの飢餓危機を否定していることに同意するかと問われると、トランプ氏は「テレビを見る限り、あまり同意できない。ガザの子どもたちは本当に飢えているように見えるからだ」と答えた。
これは注目すべき回答で、米国の揺るぎないイスラエル支持も他の保守派の聖域と同様、MAGA派によって破られるのではないかとの臆測が専門家の間で飛び交った。
J・D・バンス副大統領はオハイオ州でのイベントでさらに踏み込み、「明らかに飢え死にしそうな幼い子どもたち」の「胸が張り裂けるような」映像について語り、イスラエルにさらなる人道支援物資の搬入を認めるよう求めた。
政治学者で元米外交官のマイケル・モンゴメリー氏は、このトーンの変化は感情的な側面もあるかもしれないとの見方を示した。飢えに苦しむ子どもたちの映像は、空爆を受けた街の惨状よりも人々の心に深く響くからだ。
モンゴメリー氏は「おそらく、飢餓を正当な戦争の手段と見なす文明人はいないからだろう」と語った。
イスラエルは常に米議会で超党派の幅広い支持を得てきたが、トランプ政権下での孤立主義的なMAGA派の台頭は、「特別な関係」のイデオロギー基盤に疑問を投げかけている。
MAGAの現実政策は外国の戦争への関与について、国益、特にトランプ氏の支持基盤を構成する「取り残された」労働者階級の利益に直接影響を与えるものに限定することを目指している。
■「ほぼ支持なし」
トランプ氏寄りで知られる保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」は3月、米政府に対し、イスラエルとの関係を見直し、「特別な関係」から「対等な戦略的パートナーシップ」に変更するよう求めた。
一部のアナリストによると、イスラエルに対する強い不満の表明は、特に2024年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃以降、共和党の考えに反するとの認識から抑制されてきた。
だが、主要NGOからの厳しい警告や、国連世界食糧計画(WFP)によるガザ住民約200万人の約3分の1が「何日も食べていない」との指摘を受けて、MAGA内の議論は緊迫感を帯びている。
新しい考え方の兆候は、極右扇動化のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員のX(旧ツイッター)投稿に見られる。グリーン氏はイスラエルのロケット防衛システムへの5億ドル(約742億円)の資金提供を取り消すよう呼び掛けている。
グリーン氏は今週、イスラエルの行為を「ジェノサイド(集団殺害)」と呼び、「ガザで罪のない人々や子どもたちが飢えている」と非難するなど、これまでのどの共和党議員よりも踏み込んだ発言した。
数多くの陰謀論的なソーシャルメディア投稿をしてきたグリーン氏は信用できない人間かもしれないが、彼女がMAGA派の心情をよく理解していることは否定できない。
CNNの最新世論調査によると、イスラエルの行動は完全に正当化されると考える共和党支持者の割合は、2023年の68%から52%に低下した。
食料不足がまだ人道的大惨事に発展していなかった4月に実施された米調査機関ピュー・リサーチ・センターの世論調査によると、この動きをけん引しているのは若年層のようだ。
50歳以上の共和党支持者の親イスラエル的な見解は2022年以降、ほとんど変わっていないが、若年層における同盟国イスラエルへの不支持率は35%から50%に上昇している。
第1次トランプ政権で大統領首席戦略官を務めたスティーブ・バノン氏はポリティコに対し、「イスラエルは30歳未満のMAGA派にほとんど支持されていないようだ」と語り、トランプ氏のイスラエル非難により支持者たちはイスラエルへの敵意を強固にするだろうと付け加えた。
民主党の戦略家マイク・ネリス氏は、ガザの食糧危機を「危機が通常の党派的な行き詰まりを打破するまれな瞬間の一つ」と表現。 「政治的立場を問わず、人々がもはや我慢できないと感じているのが分かる」と語った。【7月30日 AFP】
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また、イスラエル国内にあってもガザの現状に対し「道徳の崩壊であると認めるときが来たのではないだろうか」との自問がなされるようにもなっています。
****「道徳は崩壊したか」と視聴者に問いかけ、ガザ飢餓でイスラエル人動揺****
イスラエルの主要テレビ局はパレスチナ自治区ガザで飢餓に苦しむ住民の様子を放映した後、アンカーはカメラを見つめて「これは広報の失態ではなく、道徳の崩壊であると認めるときが来たのではないだろうか」と視聴者に問いかけた。
1968年に米CBSのウォルター・クロンカイト氏は、ベトナム戦争は米国に勝利をもたらさないとの見解を戦地から視聴者に示した。イスラエル・テレビ局のアンカーによるコメントが、そうした分岐点になるかどうかは不明だが、過去1年10カ月近くにわたりイスラム組織ハマスとの戦争を一貫して支持してきたイスラエルに、重要な転機となり得る発言だった。
メッセージアプリ「ワッツアップ」のグループチャットや、人権団体の報告からは、世論が戦争支持から離れつつある兆候が見られる。2023年10月7日にハマスがイスラエルを急襲し、1200人を殺害した上で250人を拉致したことに端を発した戦争で、ガザでは6万人近くが死亡した。国連世界食糧計画(WFP)は200万人余りが「深刻な食料危機」に直面しており、飢餓が広がっていると警告した。
「虐殺の後、ハマスを全力でたたくのは不可避だったし、民間人の犠牲は仕方なかった」と中道派新聞イエディオト・アロハノトのコラムニスト、ナフム・バルネア氏は振り返る。
しかし「軍事的な犠牲と国際社会におけるイスラエルの立場、そして民間人の犠牲というダメージは悪化の一途をたどっている。ハマスが原因ではあるが、イスラエルにも責任がある」と主張した。
コンサルティンググループを経営するシャーウィン・ポメランツ氏は、保守系新聞エルサレム・ポストに寄稿し「2年前に正義の戦争だったものが、今や不正義の戦争になった。終わらせなくてはならない」と述べた。
センチメントの変化は膨大な量の悪いニュースに表れている。イスラエル人留学生の排斥や兵士の戦死を伝える報道に、最近では飢えた子どもの映像も加わった。「ガザに飢餓はない」と言い切るネタニヤフ首相の発言には、熱心なイスラエル支持で知られるトランプ米大統領でさえも「あれは本物の飢餓だ。ごまかしようがない」と発言した。
5月の世論調査では、65%のイスラエル人がガザの人道状況を懸念していないと回答していたが、最近になってイスラエルのメディアでは飢餓問題が大きく扱われるようになった。外国の人権団体は戦争開始時から、イスラエルの対応を非難してきたが、今では国内の人権団体が「ジェノサイド(民族大量虐殺)」という言葉を用いて自国を批判するようになった。
イスラエル5大学の学長は28日、ネタニヤフ首相に宛てた連名の公開書簡で「ガザの飢餓危機に対する真剣な対応」を訴えた。「ホロコーストの恐怖を経験した民族として、われわれは罪のない男女や子どもたちに残酷な危害が無差別に及ぶのを、何としても防ぐ責任を負う」と記した。
野党指導者のラピド前首相は今週、ハマスとの戦争は災害であり、政府の失策だと演説で非難。ネタニヤフ首相に戦闘停止を訴え、中東諸国との協力を通じてハマスを排除するよう求めた。(中略)
世界中のメディアが掲載した写真について、ネタニヤフ政権はこの子どもがやせているのは遺伝子の病気を患っているせいであり、1カ月余りも前にガザからは退避済みだと主張した。証拠は示していない。イスラエル軍はまた、豊富な食料に囲まれて健康そうに見えるハマス戦闘員の写真を配布した。
今のところ、ネタニヤフ首相の言動に方針転換の兆しはない。首相は28日、「これは正義の戦争であり、倫理の戦争、われわれが生存するための戦争だ」との声明を出した。「これまで通り、われわれは責任ある対応を続けていく。人質の返還とハマスの打倒をこれからも求めていく。イスラエル人にとっても、パレスチナ人にとっても、それが唯一、平和を確実にする手段だ」と述べた。【7月30日 Bloomberg】
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国際社会にあってもイスラエルへの圧力が強まっています。 フランスはパレスチナ国家承認を表明し、イスラエルに「2国家共存」の枠組みを迫っていますが、イギリスはアメリカとの違いを鮮明化したくない意向もあってフランスに追随しない姿勢を表明しました。
しかし“労働党内で失望の声が広がった。(中略)25日に同党を含む約220人の国会議員が、首相に国家承認を要求する書簡を発表。スターマー氏は今週に入り、ガザが「破滅的状況」にあると危機を強調するようになった。”【7月30日 時事】ということで、条件付きながらパレスチナ国家承認へ。
****英首相 “イスラエル次第でパレスチナを国家として承認” 表明****
イギリスのスターマー首相は、イスラエルがパレスチナのガザ地区の深刻な状況を終わらせるための措置を取らなければ、ことし9月に行われる国連総会までにパレスチナを国家として承認すると発表しました。G7=主要7か国でパレスチナを国家承認する方針を表明したのは、フランスに続き、2か国目となります。
イギリスの首相官邸は29日、声明で、イスラエルがガザ地区の深刻な状況を終わらせるための措置を取らず、長期的で持続可能な平和に向けて取り組まなければことし9月に行われる国連総会までにパレスチナを国家として承認すると発表しました。痩せ細った子どもの
具体的には国連による人道支援の再開や、停戦に合意すること、それにヨルダン川西岸を併合しないことを明確にすることなどが含まれるとしています。(中略)
理由についてスターマー首相は会見で、「現地の状況を変える一助となり、支援が確実に届けられ、将来的な2国家解決の希望を持つためだ」と強調しました。
イギリスはこれまでパレスチナの国家承認に慎重な姿勢を見せていましたが、ガザ地区の人道危機が深まる中、イスラエルに圧力をかけるねらいがあるものとみられます。(後略)【7月30日 NHK】
具体的には国連による人道支援の再開や、停戦に合意すること、それにヨルダン川西岸を併合しないことを明確にすることなどが含まれるとしています。(中略)
理由についてスターマー首相は会見で、「現地の状況を変える一助となり、支援が確実に届けられ、将来的な2国家解決の希望を持つためだ」と強調しました。
イギリスはこれまでパレスチナの国家承認に慎重な姿勢を見せていましたが、ガザ地区の人道危機が深まる中、イスラエルに圧力をかけるねらいがあるものとみられます。(後略)【7月30日 NHK】
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ネタニヤフ首相とトランプ大統領は、イスラム主義組織ハマスに利する行為になるとして批判していますが、マルタも。マルタのアベラ首相は29日、9月にニューヨークで開かれる国連総会でパレスチナを国家として承認すると表明しました。
ロシアはウクライナでの軍事的攻勢で戦局における戦術的優位姓と引きかえに、スウェーデンとフィンランドをNATO加盟に動かすなど、戦略的失敗を犯しています。イスラエルもガザでのハマスに対する激しい攻撃の一方で、国際世論と対立・孤立するという失敗を犯しつつあるようです。
****イスラエルに強まる「2国家共存」圧力 トランプ氏も「飢餓」認め、責任回避も限界に****
パレスチナ自治区ガザの人道危機拡大を受け、フランスに続いて英国がパレスチナ国家承認へと傾き、イスラエルに「2国家共存」を迫る国際的な圧力が強まった。支援物資の搬入を制限してきたネタニヤフ政権は、厳しい立場に置かれている。
トランプ氏も飢餓「深刻」
イスラム原理主義組織ハマスを標的にガザへの攻撃を続けるネタニヤフ政権は、ガザの「飢餓」はハマスが停戦協議などを有利に進めるために作り出した虚構だと主張してきた。しかし、イスラエルの後ろ盾であるトランプ米大統領でさえ、ガザでは「多くの人が深刻に飢えている」と認める事態となった。
仏英が支持を表明した「2国家共存」は、パレスチナがガザとヨルダン川西岸を領土とする独立国家を樹立し、イスラエルとの共存を図る案だ。一般的には1993年のオスロ合意が起点だと解釈される。
対パレスチナ強硬派のネタニヤフ首相は2014年にパレスチナ自治政府との交渉を中断し、2国家共存案は形骸化した。同氏にすれば、棚上げしたはずの構想が人道危機で再び注目を集めている格好だ。
相次ぐ「戦闘継続」論
こうしたなか、ネタニヤフ政権の閣僚からは戦闘と飢餓の問題を区別し、ハマスとの戦闘を続けると強調する声が相次いでいる。ニュースサイトのタイムズ・オブ・イスラエルは今月29日、イスラエルのサール外相が「(国際的な圧力が)どれほど強まっても、(戦闘終結は)あり得ない」と述べたと伝えた。
自衛権に基づく戦いだと改めて主張し、国際的に正当性を求める狙いとみられる。ただ、イスラエルが今年3月以降、戦闘と並行してガザへの物資搬入を厳しく制限してきたことは事実で、飢餓を巡る責任回避には限界がみえる。【7月30日 産経】
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