孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

増加するヘイトクライム 不寛容、異質なものへの憎悪をはぐくむものは

2019-06-10 22:44:02 | 人権 児童

(イスラム教徒の商店を狙った焼き打ちで一帯が黒こげとなった商店街(5月17日、スリランカ西部ミニワンゴダで)【5月21日 読売】)

 

【欧州で増加するヘイトクライム】

人種・宗教・性的指向などの違いにを理由とするヘイトクライム(憎悪犯罪)が近年増加傾向にあるという話を目にします。

 

互いの違いを容認しない不寛容、多様性の否定が広まっている傾向も。

 

****子どもを狙う憎悪犯罪が急増、肌白くしようとする10歳児も 英国****

英国で子どもを狙ったヘイトクライム(憎悪犯罪)の件数が急増している。学校でいじめに遭ったという10歳の子どもは、自衛のために肌の色を白くしようとしていると告白した。

 

児童保護団体のNSPCCによると、人種差別に根差すヘイトクライムで子どもが被害に遭った件数は、2017~18年の警察の統計で1万571件に上った。1日当たりの平均では29件になる。

 

発生件数は3年前に比べて5倍になり、年間およそ1000件のペースで増え続けている。

 

英国では欧州連合(EU)からの離脱を決めた2016年の国民投票以来、全土で人種差別主義が台頭している。被害者の中にはまだ1歳に満たない子どももいた。

 

NSPCCに証言を寄せた10歳の少女は、「友達は、どうして汚い肌のやつと一緒にいるんだと言われるようになって、私と遊んでくれなくなった」と打ち明ける。

 

「私は英国で生まれたのに、自分の国へ帰れと言っていじめられる。どうしてだか分からない。うまく溶け込めるよう、顔を白くしようとしたこともある。私はただ、楽しく学校へ行きたいだけなのに」

 

英国では国民投票以降、全般的にヘイトクライムが急増し、その傾向は今も収まらない。2017~18年にかけてイングランドとウェールズで起きた事件は合計で7万1251件と、前年に比べて14%増えた。

 

被害者の性別や性的指向、宗教、障害に根差すヘイトクライムも急増している。しかし人種に根差す犯罪は依然としてヘイトクライムの大多数を占め、平均すると1時間あたり8件の頻度で報告されている。【5月31日 CNN】

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性的指向という面ではLGBTが攻撃の対象ともなります。

同じくイギリスで・・・・。

 

****英レズビアンカップル暴行事件、被害者2人の危機感*****

<ロンドンの深夜バスに乗っていた10代の若者5人がレズビアンのカップルに暴行、被害者の血まみれの写真が世界に衝撃を与えている>

深夜バスに乗っていたレズビアンのカップルに暴行を加えた容疑で、10代の男5人がロンドン警察に逮捕された。男たちはカップルに互いにキスしてみせるよう要求し、拒否されると2人を殴り、持ち物を奪ったという。

ロンドン警視庁の発表によれば、6月7日に15歳から18歳までの4人の男を強盗と加重重傷暴行の容疑で逮捕、9日朝に16歳の男を同じ容疑で逮捕した。容疑者の氏名は公表されていない。

ウルグアイ人の被害者メラニア・ヘイナモト(28)が5月30日の事件の直後、暴行を受けて血まみれになった自分とアメリカ人の恋人クリス(29)の写真をフェイスブックに投稿したことから、世界的な注目が集まった。

写真に添えられた説明によれば、デートの後、深夜にロンドンのカムデン地区へ行くバスに乗っていたヘイナモトとクリスは、キスをしているところを男たちのグループに見られ、嫌がらせをされたという。

「バスのなかには少なくとも4人の男がいた」と、ヘイナモトは書いている。「チンピラみたいな態度で迫ってきて、自分たちを楽しませるためにキスをしろ、と要求した。私たちを『レズビアン』と呼び、セックスの体位についてしゃべっていた。全部は覚えていないけれど、『はさみ』という単語だけが頭に残っている」(中略)

先週末、2人はメディアのインタビューに応じ、「写真ばかりが注目されているのは不満」「ヘイトクライムによって人権と安全が脅かされている。私たちも立ち上がって戦わなければ。ヘイトクライムの増加を招いたのは自分自身と罪の意識を感じている」(いずれもクリス)などと訴えた。【6月10日 Newsweek】
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イギリスの話題が続きますが、下記のような事件も。

****同性愛女性を描く舞台の俳優、「同性愛嫌悪犯罪」の被害に 英南部****

英南部サウサンプトンの劇場で同性愛を描いた舞台に出演中の俳優2人が8日午後、劇場へ向かう途中に石のようなものを投げつけられ負傷した。劇場は「卑怯な同性愛嫌悪の憎悪犯罪」だと非難している。

 

同性愛者の若い女性を描いた芝居「ロッテルダム」に出演中のルーシー・ジェイン・パーキンソンさんとレベッカ・バナトヴァラさんが昼公演に出演するためNST劇場に徒歩で向かっていたところ、パーキンソンさんが物体を投げつけられた。警察は、通りがかった車から何者かが石を投げつけた可能性があるとして、調べている。

 

ロンドン在住の俳優2人はカップルで、事件によって「ひどくショックを受けた」と劇場は明らかにした。

事件を受けてNSTキャンパス劇場は、2回分の公演を休演にした。作品の製作会社ハートショーン・フックは、襲撃された俳優2人が「卑怯な同性愛嫌悪の憎悪犯罪に、とてつもなく衝撃を受けた」とコメントした。

 

ジョン・ブリテン作「ロッテルダム」は、両親に自分が同性愛者だとなかなか話せずに苦しんでいるアリスと、自分はいつでも自分のことを男性だと自認してきたというフィオーナの、レズビアンのカップルを描いた作品。2017年には、英演劇界で最高峰のオリヴィエ賞も受賞している。

 

パーキンソンさんによると、パートナーで共演者のバナトヴァラさんにキスしたとき、何かが当たり、その勢いで地面に倒れてしまったと話す。軽傷を負ったパーキンソンさんは、遠ざかる自動車から「若い少年たちの笑い声」が聞こえたという。

 

「私たちはただほかの人と同じように、2人して幸せになりたいだけです」とパーキンソンさんは話した。「どうして他人から暴力を振るわれるのか、本当に理解できない」。

バナトヴァラさんは「本当にショックで、動揺して怒っている」と話した。

 

「この芝居を初め、こうした物語がどれだけ大事なのか、あらためて気づいた。(同性愛は)正常で普通のことで、恐れたり攻撃したりするものではないと、認識を広めないと」(後略)【6月10日 BBC】

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もちろん、こうしたヘイトクライムの増加はイギリスだけではありません。

 

5月28日ブログ“ドイツ  反ユダヤ主義の拡大・顕在化 キッパ着用でユダヤ教徒への連帯を呼びかける”では、ドイツにおける反ユダヤ主義の拡大を取り上げました。

****ユダヤ人を狙った犯罪が急増****

(中略)ドイツでは昨年以来、反ユダヤ主義の影響とみられる犯罪が急増している。

政府の統計では、昨年1年間にユダヤ人を狙ったヘイトクライム(憎悪犯罪)は、前年比10%増の1646件に上った。

ユダヤ人に対する暴力行為も、2017年の37件から昨年は62件に急増した。(後略)【5月27日 BBC】
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ユダヤ人憎悪の一つの中核には、ドイツで増加するイスラム系移民が存在しますが、その移民もまた激しい憎悪の対象となります。

 

****ドイツで移民擁護派の政治家射殺される、ネットに歓迎ヘイト投稿殺到****

ドイツで今月、移民擁護派の地方政治家が自宅で射殺される事件があり、これを歓迎するヘイトスピーチ(憎悪表現)がインターネット上にあふれている。ドイツ政府は7日、ヘイト投稿を強く非難した。

 

ホルスト・ゼーホーファー内相は「もし誰かが、リベラルな見解を持っていたというだけで凄まじい憎悪の対象となるのなら、それは人間らしい道徳観が衰退しているということだ」と独日刊紙ターゲスシュピーゲルに語った。

 

殺害されたのは、独中部カッセル県のワルター・リュブケ県知事。アンゲラ・メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟に所属する政治家で、移民の擁護を公言していた。

 

リュブケ氏は2日午前0時半(日本時間同午前7時半)ごろ、フランクフルトから北東に約160キロ離れたカッセル市内の自宅テラスで、至近距離から頭を拳銃で撃たれて死亡しているのが見つかった。自殺を示す兆候はなく、警察は殺人事件として捜査している。

 

捜査当局によると、犯行の動機は不明だが、リュブケ氏は以前から殺害を予告する脅迫を受けており、政治的な動機による事件の可能性は排除できないという。

 

リュブケ氏の追悼記事や事件の報道を受け、ソーシャルメディア上には多くのコメントがあふれた。だが、同氏の殺害を歓迎する投稿が多くみられる事実に、フランクワルター・シュタインマイヤー大統領も強い不快感を示し、「公務員や行政トップに対する中傷や攻撃、ヘイト運動、肉体的暴力は正当化できない」と述べた。

 

リュブケ氏は、欧州に難民・移民が殺到して危機的状況となっていた2015年10月、難民らの保護施設を訪問し、助けを必要とする人々に手を差し伸べるのはキリスト教の基本的な価値観だと発言。

 

「こうした価値観に同意せず、身をもって示さない者は皆、いつでもこの国から出ていってもらって構わない。それは全てのドイツ人の自由だ」と述べ、極右主義者の激しい怒りを買っていた。 【6月10日 AFP】

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【世界では“日常的”な宗教・人種・民族に違いによる殺戮・紛争】

社会が成熟し、こうした差別に基づく憎悪は少ないと思われていた欧州におけるヘイトクライムということでイギリス・ドイツの最近の事例を取り上げましたが、世界的に見れば、宗教・人種・民族に違いによる殺戮・紛争がアフリカでも、中東でも、アジアでも、日常的現象として溢れています。

 

4月にキリスト教徒を狙ったイスラム過激派による連速大規模テロがあったスリランカでは、今度はイスラム教徒を狙ったテロが相次いでいます。

 

****スリランカのテロ1カ月 後絶たぬイスラム教徒襲撃**** 

スリランカの最大都市コロンボなどで4月21日に発生した連続テロから1カ月余りが経過した。国内では少数派のイスラム教徒への警戒感と敵意が拡大し、キリスト教徒らによる襲撃事件が相次ぐ。ザフラン・ハシム容疑者が率いた犯行グループの全容もいまだ不明で、再度のテロ発生への懸念もぬぐえない。

 

スリランカ国内ではテロ事件後、イスラム教徒が経営する店舗やモスク(礼拝施設)への襲撃事件が頻発。一部は暴徒化しており、北西部プッタラムでは13日、イスラム教徒の男性(45)が刃物を持った集団に襲われて死亡した。政府は夜間外出禁止令発出やSNSの遮断で事態の拡大を防ぎたい方針だ。(中略)

 

連続テロは4月21日にコロンボなど計6カ所で発生。日本人1人を含む250人以上が死亡、500人以上が負傷した。ハシム容疑者はテロ現場で自爆死した。【5月23日 産経】

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ハシム容疑者らによるテロへの報復というよりは、もともとイスラム教徒への不満・憎悪が社会にあった状況で、テロ事件によって(多数派仏教徒を中心とする、イスラム教徒への憎悪を抱く人々の間で)イスラム教徒への攻撃が正当化されたというように見えます。

 

****反イスラム暴動と中国債務に悩むスリランカ****

スリランカでは4月21日のキリスト教の復活祭に起きた、イスラム教過激派による爆弾テロを引き金として、すさまじい反イスラム暴動が引き起こされた。

 

爆弾テロの対象が主としてキリスト教徒や外国人であったことを考えると、爆弾テロに対する報復と言うよりは、爆弾テロをきっかけにして反イスラム感情が噴き出したものと言っていいであろう。

 

スリランカではこれまでも何度となく反イスラム暴動が起きており、反イスラム感情が根強いことが分かるが、今回はこれまでと異なって、イスラム教徒の財産やビジネスのみならず、イスラム教徒が攻撃されたと言う。

 

また暴動の規模も、2018年の暴動では3日で465件の物件が破壊されたのに対し、今回は一日で500か所が破壊されたとのことである。

 

現在、スリランカの人口の9.7%がイスラム教徒である。スリランカ人の約10人に一人がイスラム教徒という勘定になり、決して少ない数ではない。そのイスラム教徒が憎悪の対象にされれば、スリランカ社会の安定は脅かされざるを得ない。

 

スリランカでは1983年からスリランカ北・東部の分離独立を目指す「タミル・イーラム解放のトラ」(LTTE)が反乱を起こし、2002年に政府とLTTEとが停戦に合意その後和平交渉などを経て2009年にようやく内戦が終結、スリランカに平和と安定がもたらされたかに見えたのだが、今回の暴動でスリランカの平和と安定が危機にさらされていることが明らかになった。

 

根強い反イスラム感情の他に気がかりなのは、政府が反イスラム暴動の抑圧に及び腰であると見られる点である。政府がブルカなどの着用を禁止したことは、イスラム教徒に対する警戒感を表しているように思われる。

治安部隊の一部が攻撃に加わっていたとの情報もある。

 

スリランカ政府は、イスラム教徒に対する憎悪が暴力化しないよう、細心の対策を取ることが求められる。(後略)【6月6日 WEDE】

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【心に潜むネガティブな感情を育て、解き放ち、増殖させるものは】

人間の心の中には、異なる他者へのネガティブな感情が多かれ少なかれ存在します。

 

そうした感情を拡大させるのは、格差の存在とか、社会発展の恩恵にあずかれないといった社会への不満でしょう。

その不満のはけ口として、往々にして、「自分たちの不遇の原因は彼らの存在だ」という形で、異質な他者への攻撃性が増長されます。

 

しかし、そうしたネガティブな感情は「そうした攻撃性を表に出すことはよくないことだ」という理性的なブレーキもかかっていますが、スリランカのようなテロが起きると、攻撃性を表に出すことが正当化されるような事態にもなりがちです。

 

また、昨今の政治・社会の風潮も、そうしたネガティブな感情という“本音”を表に出すことを助長しているようにも思えます。

 

その点で、画期的な役割を果たしているのがアメリカ・トランプ大統領の存在でしょう。

 

攻撃的で、嘘も不正確情報を気にしない彼の言動は、理性的なブレーキを“ポリティカルコレクトネス”とか“きれいごと”とかいった形で葬り去ることにもなっています。

 

いったん表にでたネガティブな感情・憎悪は、SNSなどのインターネットを通じて急速に拡大・増殖します。

 

そうしたことを考えると、将来に関して暗澹たる気分にさせる指摘が。

 

****明らかにトランプ批判の潮目が変わった  名物パロディもネタ枯れで終了****

(中略)

世論調査「トランプ再選」が上昇

(中略)CNN放送が5日発表した世論調査で「トランプ大統領が再選されるか?」との問いに、54%が「再選されると思う」と回答し「再選されない」が41%、5%が無回答だった。

 

昨年12月に行った世論調査では「再選されると思う」は43%、「再選されない」は51%でこの半年間に大統領に対する信頼度が大幅に高まったことを示している。

 

ちなみに、オバマ大統領の再選選挙の際の同時期に「再選される」と答えたのは40%に過ぎず、それでも大勝したことを考えると2020年のトランプ大統領は「地滑り的勝利」が考えられると保守系のニュースサイト「ウェスタンジャーナル」8日の分析記事は予想している。(後略)【6月10日 木村太郎氏 FNN PRIME】

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正直なところ、なんだか、何かを言う気力も失せるような徒労感を感じます。

コメント

フランス  植物状態の患者の延命治療をめぐる大論争 更に長期化の様相

2019-05-25 22:32:46 | 人権 児童

(フランス・ランスの病院でベッドに横たわるバンサン・ランベールさん。家族提供(201563日撮影【521日 AFP】)

 

延命治療をいつまで続けるのかということは、表立っては軽々に口にし難い問題ですが、その一方で、実際の現場では多くの患者・家族・医療関係者が直面し対応を迫られる問題でもあります。

 

通常は、家族の意向を担当医が尊重して・・・というところですが、判断が分かれる場合も。

そうしたなかでも、担当医が延命打ち切りを決断し、家族の一部がこれに反対して裁判沙汰に・・・というのは、あまり多くはないと思いますが、フランスでそうした案件が問題になっています。

 

****植物状態の息子、延命続けさせて 両親ら大統領に公開書簡 フランス****

10年間植物状態となっているフランス人男性の延命医療を打ち切ると担当医が決断したことについて、この男性の両親らが18日、エマニュエル・マクロン大統領に延命医療の継続を求めた。担当医は20日に延命医療を打ち切るとしている。

 

バンサン・ランベールさんは2008年に自動車事故に遭い、脳に重度の損傷を負って四肢まひとなった。ランベールさんの延命医療は、家族を引き裂く法廷闘争に発展している。

 

フランス当局の公式な立場は、患者は「治癒が極めて困難」な状況による苦しみを受けない権利があるというもの。ランベールさんの担当医は今月10日、あらゆる延命医療を20日に打ち切る方針を家族に伝えた。

 

担当医らは2014年、フランスの消極的安楽死法に基づき、ランベールさんの妻ラシェルさんときょうだいのうち5人、おいのフランソワさん同意を得て栄養・水分の補給を中止すると決定した。

 

しかし、敬虔(けいけん)なカトリック教徒の両親と片親違いのきょうだいらは、より良い治療を受ければ病状が改善する可能性があると主張。延命治療の中止を差し止める裁判所命令を得た。

 

両親らの弁護団は18日、大統領に宛てた公開書簡を発表した。公開書簡には、「大統領閣下、あなたが何もしなければ、バンサン・ランベールは520日の週に水分不足で死去するでしょう。あなたは介入することができる最後で唯一の人なのです」と書かれていた。

 

さらに、ランベールさんがこのまま亡くなった場合、後世の人々はこの出来事を「国家犯罪」とみなすでしょうとも記されていた。

 

国連の「障害者の権利委員会」は今月、フランス政府に対し、ランベールさんの延命に関して、その法的問題を調査している間はいかなる決定も行わないよう要請。18日にも改めて同じ要請をした。両親はこの要請に従うようマクロン大統領に求めている。 【519日 AFP

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判断のポイントは、“「治癒が極めて困難」な状況による苦しみを受けない権利”です。

 

上記ケースでは、妻・兄弟と両親の判断が分かれていること、宗教的な背景もあることから、問題が複雑化しています。

 

上記のような状態で、担当医は延命措置打ち切りを実施しました。

 

****植物状態の仏男性、医師らが生命維持装置を停止****

フランスのランスの病院で、10年間植物状態となっている男性について、担当医らが20日、延命治療の中止に踏み切った。男性の両親の弁護士が明らかにした。この問題は同国内で大きな議論を巻き起こし、賛否をめぐって意見が二分している。

 

自動車事故で四肢まひとなったバンサン・ランベールさんの両親は、治療中止に断固反対している。両親の弁護士はAFPに対し、医師らが生命維持装置の停止を始めたと明かし、「恥ずべきことであり、(両親は)息子を抱き締めさせてももらえなかった」と語った。

 

他の親族も、装置の電源が落とされていることを認めている。 【520日 AFP

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これが正しい措置だったかどうかは別にして、一応このケースについての「結論」は出た・・・とも思ったのですが、事態は意外な展開に。

 

****植物状態の仏男性、延命治療再開 裁判所命令受け****

フランスのランスの病院で10年間植物状態となっているバンサン・ランベールさんに対し、担当医らは21日、裁判所命令に従って延命治療を再開した。弁護士らが明らかにした。

 

担当医らは前日20日午前、ランベールさんの妻や他の親族らの意向を踏まえて、水分補給や栄養の静脈投与を停止することを決定。生命維持装置の停止に踏み切っていた。

 

しかし首都パリの控訴院が同日、関係諸機関に対し、国連の「障害者の権利委員会」による判断を待つ間、ランベールさんの生命を維持するため「あらゆる措置を取る」よう命じていた。 【521日 AFP

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国連の「障害者の権利委員会」による判断が出るまで、延命措置が続けられるようです。

 

冒頭にも書いたように、非常に判断に悩む問題ですが、少なくとも自分自身がもしそういう状態になったら・・・ということを考えると、私自身は無理な延命は希望していません。

 

もちろん、それは自分自身に関しての判断であり、家族等のケーズに一般化できる話でもありません。

また、自分自身に関しても、今は上記のように思っていますが、実際にそういう状態になったとき、どのように考えるのかというは、なかなか確信がもてない話でもあります。

 

フランスのケースに話を戻すと、植物状態とはいいながらも、両親の主張によれば、相当な反応が可能な状況にあるとも。そうなると、更に判断は難しくなります。

 

このケースに関する国家レベル、国際機関レベルの判断も絡んだ争いは、今に始まったことではなく、以前から続いてきた問題のようです。

 

****仏で大論争、延命治療の是非****

 「今、私の息子を殺そうとしているわ!モンスター!」

 

520日の朝、フランスのラジオ「フランスインフォ」から悲痛の声が流れていた。10年間植物状態となっている元看護師バンサン・ランベール(42)さんの延命医療を打ち切ることを担当医が決断し、その処置が始まり、息子が回復する可能性を信じ支えてきた母親の嘆き悲しみの叫びが流れていたのだ。

 

同じニュースでは、延命医療を打ち切りを決めた病院の担当医師が、今までこういった事例の経験はないが、セオリー通りに行けば3日〜7日後にランベールさんは永遠の眠りにつくだろうとも伝えていた。

 

ランベールさんは、2008年に自動車事故にあった結果、脳に重度の損傷を負い四肢が麻痺しており、水分と栄養素の補給受ける延命治療にて生命を維持した、植物状態であると言われている。

 

実は、最初に延命医療停止の話が出たのは2013年末のことだ。それからランベールさんに対する延命医療の継続について、医師及び家族内で対立が続いてきたのだ。

 

フランスには、一連の終末期医療関連法による枠組みが存在しており、2005年発布のレオネッティ法では「常軌を逸する執拗な延命治療は、意思表示不可能な患者に対しても禁じる。薬剤などで命を短縮させる措置は患者と近親者に予告すべし」と示されている。

 

このため2012年末に主治医は、回復の見込みがないランベールさんについて、延命治療の停止を、ランベールさんと同じく看護師でもある妻のラシェルさんに相談し承諾を得たため、2014年の4月に実地する予定とした。

 

しかし、その判断にランベールさんの両親はまったく納得せず、行政裁判所に訴え出たのだ。その結果、延命治療を続ける旨の判決が下された。

 

家族内の意見は真っ向から対立している。ランベールさんの両親と妹・義弟は、息がある限りランベールさんに生きていて欲しいと言う一方、妻と弟、妹、3人の義弟、甥(おい)は、ランベールさんが言っていた「誰かに依存する生活はいやだ」と言う言葉と、脳幹が損傷し回復の見込みがないことを理由に、この植物状態と言う苦痛から解放し、安らかな眠りについて欲しいと願っている。

 

その後、2回にわたる家族と医師団・治療関係者の協議後、主治医は再び延命治療を停止した。ところがまた裁判所は「人工的水分、栄養補給は執拗(しつよう)な延命治療ではない」とし協議結果を無効にしたのだ。

 

そこで、妻と甥が提訴した国務院は新たな治療証明書を要求し、医師会、倫理委員会、医学アカデミーに意見を尋ね、コンセイユ・デタ(国務院)の判決を求めた。

 

結果624日、国務院は患者の人工的水分・栄養補給の停止を最終的に認めた。だが、その直前に両親が欧州人権裁判所に提訴しており、判定が下るまで「延命治療を続けるべし」と発表されたのである。

 

両親は、病院の近くにアパートを借り、長年ランベールさんの看病を行ってきた。そして付き添っている間に、植物状態だと言われながらも、なんらかの反応をする姿を何度も見てきているのだ。

 

昏睡状態であると思われているが、食事ができたり、発声したり、どちらかと言えば重度の障害者である。そういった様子を、次々と動画で流してアピールし続けた。

 

しかし、そのかいもむなしく、201565日、欧州人権裁判所も、植物状態にあるランベールさんの生命維持中止を認めたフランス裁判所の判決を支持する判断が下された。今後の欧州における指針となりうる判決でもあった。

 

その後、2016年に、レオネッティ法をさらに厳格化した、クレス・レオネッティ法が制定された。当時の大統領フランソワ・オランド氏の政権公約は「終末期患者の耐え難い苦痛を和らげる手段が無くなった場合に、明確で厳格な条件の下で、尊厳を保って命を終えるための医療手段を要求できるようにすることを提案する」としておりその公約を実現した形だ。

 

レオネッティ法では、延命医療を打ち切りには、医者の決定に重みがあったところを、クレス・レオネッティ法では、本人の意思が考慮されることとなり、事前指示書で延命医療を拒否することができるようになったのだ。

 

また事前指示書がなく、本人が意思を伝えられない場合は、家族からの証言を聞くなどの方法がとられ参考にされることになった。

 

そうした場合、ランベールさんの妻の本人が言ったと言う「誰かに依存する生活はいやだ」と言う証言は、判断する上で以前よりさらに考慮されるようになるだろう。

 

そして、ついに20191月、担当医はランベールさんの脳の損傷に回復の見込みはないとして生命維持装置を外すことを決めた。その後、フランスの裁判所がこの決定を認め、最高行政裁判所である国務院も、先月この決定を支持する判断を下したのだ。

 

両親は、延命治療を続けさせて欲しいと、エマニュエル・マクロン大統領に公開書簡を送ったが、「延命治療中止の決定は、法の下に医師らとランベールさんの法定代理人である妻の間で続けられてきた話し合いによって下されたものだ」と言う主旨を、Facebook上で述べ、介入を拒否する姿勢を示した。

 

延命治療を停止する前日には、両親が語り掛けると、ランベールさんが瞬きをし泣いているようにも見えるビデオが流された。瞬きをするなどの反応していることに多くの人たちが驚き、広く拡散されていった。

 

また、国連(UN)の「障害者の権利委員会」は今月、フランス政府に対し、法的問題を調査している間はいかなる決定も行わないよう求めていたが、その要求もむなしく、20日、延命治療を停止が決行されることになったのだ。

当日は、母親が涙ながらにインタビューに答え、一日中、ニュースが流れ続け、ものものしい雰囲気に包まれた。パリでは支援者によって、延命医療継続を訴え、マクロン大統領に介入を求めるデモも行われた。

 

しかし、その夜、驚きのニュースが入り一変に状況が変わった。なんと、最終的にフランス・パリの控訴院が、延命医療再開を決定したのだ。国連の「障害者の権利委員会」が法的問題を調査している間はいかなる決定も行わないよう求めていたことを尊重した形である。

 

支援者は喜びに沸いた。一方、ランベールさんの妻のラシェルさん、「あの状態でおくことはサディズム行為である」とし、「夫が逝くのを見届けることは、夫が自由の身になるのを見ることでもある。人にはそれぞれ異なった意見や信念を持つことができる。しかし何よりも、私たちをそっとしておいてほしい」と述べた。

 

そして涙を流したとされるビデオを公表したことを訴えると決めた。甥もまたインタビューに答え、「あの状態を見ているのは辛い。早く楽にしてあげてほしい」と語り続けた。

 

そして、最大の支援者である両親は、ほっと胸をなでおろし安堵し、今後も息子のために戦い続けること再度決意した。

 

今後は、ランベールさんをランス大学病院からストラスブール近くの病院に移し、身体障害者のための専門の病棟に移ることを望んでいる。

 

そこで、食事も口から食べるように切り替えていき、ランベールさんが生きることを後押し、適切なケアを受けてもらいたいと願っていると言う。

 

国連の判断は、最低6か月かかる。数年かかる可能性もある。それは、法、医学、倫理、哲学、宗教、愛情などが複雑に絡み合い、全ての人が納得する解答を見つけるには非常に困難な状況の中、最終ともいえる判断が下されると言えるかもしれない。

 

ここで出される結論は今後の議論にも大きな影響を与えることになるだろう。しかしながら、その結果が本当にランベールさん本人が望んでいることであったかどうかは、知る由はない。【523日 Japan In-depth

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何回も言うように、何とも言い難い問題なので、単に経過の紹介だけ。

 

人間の生死の話は難しすぎるので、最後にペットの話を。

亡くなった飼い主の遺言で、元気なペットが安楽死させられたという話題

 

****「愛犬と一緒に埋葬を」 元気だった犬、遺言に従って安楽死 米****

 米バージニア州で、自分が死んだら愛犬を一緒に埋葬してほしいという故人の遺言に従って、元気だった飼い犬が安楽死させられた。

 

シーズーのミックス犬「エマ」は、飼い主の女性が死去したことを受けて3月8日に同州チェスターフィールドの保護施設に預けられた。

 

同施設はそれから2週間の間、遺言執行者と交渉を続け、エマを譲り受けて里親を探したいと申し出ていた。この犬であれば里親は簡単に見つかると判断していたという。

 

しかしチェスターフィールド警察によると、遺言執行者が3月22日にエマを引き取るため同施設を訪れた。施設側は、エマを譲渡してほしいと再度持ちかけたが、遺言執行者は応じなかった。

 

エマは地元の動物病院へ連れて行かれて安楽死させる処置が行われ、バージニア州の施設で火葬された。骨壺(こつつぼ)に収められた遺灰は遺産管理人に返還された。

 

飼い主とペットを一緒に埋葬することが認められるかどうかは、州によって異なる。バージニア州では2014年に合法化され、人とペットの合同埋葬区画を設けることが可能になった。

 

ただし、合同埋葬区画は明示が義務付けられ、同じ空間に人とペットを埋葬することは認められていない。

 

州によっては、飼い主の遺骨をペットの墓に埋葬することや、ペットを飼い主と一緒に家族の墓に埋葬することを認めている。

 

米獣医師協会によれば、バージニア州の法律では、資格を持った獣医師などが動物を安楽死させることを認めている。ただし、健康に問題のないペットの安楽死に応じる獣医を見つけることは難しいかもしれない。【523日 CNN

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遺言執行者としては、法的に遺言をそのまま実行しなければならない・・・ということなのでしょう。

 

しかしながら、そもそも、元気なペットの安楽死・合葬を求める遺言自体に非常な違和感を感じます。

将来、ペットが死んだら・・・というのは、極めてノーマルな話ですが。

 

通常の契約であれば、公序良俗に反して無効とも判断されるような、そんな違和感です。

 

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国家による宗教弾圧あるいは宗教の政治利用 中国・パキスタン・インド・ウクライナ・ロシアなど

2019-01-17 23:29:48 | 人権 児童

(ウクライナ正教会の独立を承認する文書に署名するコンスタンチノープル総主教バルトロメオス1世【1月6日 AFP】 正教会の最高権威がイスラム国トルコ・イスタンブールのコンスタンチノープル総主教というのも「歴史」ですね)

【中国 宗教の「中国化」という宗教弾圧】
****アジアのキリスト教徒、3人に1人が迫害受ける****
アジアではキリスト教徒の3人に1人が頻繁に迫害に直面しているとのNGO報告書が16日、発表された。世界各地で宗教を理由とした脅迫や暴力が「衝撃的に増加」しており、中国とサハラ以南アフリカで特にその傾向が顕著だとしている。
 
キリスト教徒に対する迫害状況を監視している超宗派のキリスト教伝道団「オープン・ドアーズ」によると、中国では約1億人のキリスト教徒の約半数が迫害に遭ったことがある。「宗教上の表現の自由を制限する新法」が導入されたことで、「過去10年余りの期間で最悪」の状況となっているという。(中略)
 
報告書はまた、キリスト教を信仰していたために殺害された人は昨年、世界で4300人を超え、うち3700人以上がナイジェリアで犠牲になったと指摘している。

ナイジェリアのキリスト教徒の死者数は前年比で2倍近く増えたが、背景にはイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」による襲撃と、イスラム教を信仰する遊牧民フラニ人による襲撃が「ニ重の脅威」となっている現状があるという。

「アフリカはキリスト教徒に対する暴力の多発地帯となっている」と、オープン・ドアーズのフランス支部代表のミシェル・バルトン氏は述べた。
 
報告書に掲載された「最も迫害の度合が高い」50か国のリストでは、2002年から継続して北朝鮮が1位となっている。北朝鮮では宗教的抑圧が強まっている兆候があるが、「キリスト教が禁止され政治犯罪とされる」同国に関するデータの入手は困難だとオープン・ドアーズは指摘している。

2位以下はアフガニスタン、ソマリア、リビア、パキスタン、スーダンと続き、「ヒンズー教の過激派が処罰されないままキリスト教徒や教会を襲撃する事件が相次いでいる」インドが初めて10位に入った。 【1月17日 AFP】
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まず、中国について言えば、キリスト教徒以上に迫害を受けているのは、新疆ウイグル自治区のウイグル族などイスラム教徒とチベットの仏教徒です。

最近は、新疆・ウイグル族に限らず、「悪いイスラム教徒」ウイグル族に対比して「良いイスラム教徒」として政権と融和的関係にあって、全土に分散するイスラム教徒回族に対する締め付けも厳しくなっているようです。

共産党は、ウイグル族だろうが、回族だろうが、イスラムの宗教的独自性を否定する方針です。正確に言えば、イスラム教だろうが、キリスト教だろうが、宗教全般について共産党の指導・統制を強化する方針です。

****イスラム教を「中国化」 党が指導、5カ年計画を推進****
中国で、社会主義の価値観に合わせてイスラム教を「中国化」する5カ年計画が進められることになった。

習近平(シーチンピン)指導部の意向を受けた中国イスラム教協会が計画をつくり、各地に伝達した。近く概要を公表する見通しだ。7日付の環球時報(英語版)が伝えた。
 
習指導部は、共産党の指導よりも信仰を重視しがちな宗教への統制を強めてきた。イスラム教徒が多く、独立の動きもある新疆ウイグル自治区では再教育施設をつくり、国際的な批判を浴びている。協会側は「イスラムの信仰や習慣は変えない」としているが、宗教への新たな圧力として反発も出そうだ。
 
同紙や協会の発表によると、計画期間は昨年から2022年までの5年間。習指導部が提唱する「新時代の中国の特色ある社会主義思想」を徹底し、党の指導に従う内容となるという。
 
信者が集まるモスクで、中国の法律や社会主義の価値観を教える講座を開いたり、模範的なイスラム教徒の物語を伝えたりして、イスラム教徒を正しい方向に導くとしている。教材も使われるという。
 
(中略)キリスト教についても同様の動きが進んでいる。【1月7日 朝日】
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チベット仏教については、高齢のダライ・ラマ14世の後継者をどうするのかが次第に現実的問題となりつつあり、中国共産党は「輪廻転生」制度を利用して、後継者選定を党主導で行うことで、チベット問題の流れを大きく変えようと目論んでいます。

(チベット側から言えば、いかにして共産党の介入を排して、独自の後継者選定を実現するかが課題となっています。そのためには、「輪廻転生」制度の放棄も辞さない構えです。)

キリスト教に関しては、“キリスト教ローマ・カトリック教会の法王庁(バチカン)と中国政府が、司教の任命権で(2018年)9月に暫定合意したのを受け、独自に司教を任命していた教区で、司教の一本化の動きが本格化している。バチカンが過去に破門した中国公認司教の復帰を認め、非公認の地下教会司教を降格・退任させる形で調整が進む。バチカンの譲歩が目立ち、地下教会関係者は不安を募らせている。”【2018年12月15日 朝日】とも。

上記にもあるように、バチカンの譲歩によって、中国国内の非公認地下教会への弾圧が公然かつ厳しくなることことが懸念されています。

****中国当局、「地下教会」の牧師らを拘束 80人が行方不明 ****
中国南東部で、プロテスタントの有名な非公認教会の牧師や教会員が当局の家宅捜索を受けた後、数十人が行方不明になっている。信者らが10日、明らかにした。同国では宗教に対する締め付けが強まっている。
 
非公認のいわゆる「地下教会」の一つで、四川省成都市に拠点を置く「秋雨聖約教会」の発表によると、警察による一斉家宅捜索は9日夜に行われたという。
 
匿名でAFPの取材に応じた信者らの話によると、牧師を含めた教会指導者らが拘束され、少なくとも80人の行方が分からなくなっているという。ただこのうち実際に何人が拘束されているかは分かっていない。(中略)
 
公式には無神論の立場を取る中国政府は、宗教活動も含め、統制下にない組織的な活動を警戒している。【2018年12月10日 AFP】AFPBB News
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共産党は、宗教というフィールドで国家・党への不満が表面化・拡大することを強く警戒しています。
中国の宗教弾圧に関する話は多々ありますが、それらは別機会に譲るとして、他の国の状況を見ていきます。

【国家による宗教利用 パキスタンとインドのケース】
中国のように国家が宗教を厳しく弾圧するケース、ナイジェリアのように宗教と民族対立が絡んで、衝突に至るようなケース(2011年4月21日ブログ“ナイジェリア 大統領選挙後の暴動 南北対立を背景に、死者200人超の報道も”など)のほかに、国家と宗教の関係では、国家が宗教を利用するケースも多々見られます。

****シーク教の巡礼道、印パに新たな火種 パキスタン側へ4キロ、ビザ不要****
インドで暮らすシーク教徒がパキスタン側にある聖地を自由に巡礼できるようにしよう。そんな計画をパキスタンが発表した。これに対してインドは「隠れた狙いがある」と抗議。両国間の新たな火種となっている。

 ■着工式に独立派リーダー、インドは「策謀だ」
広大な田畑に野焼きの煙がたなびくパキスタン東部カルタールプル。インド国境から4キロしか離れていない農村の一角に、シーク教の開祖グル・ナーナクが死去したと伝わる純白の寺院がある。
 
ここで昨年11月28日、インドの信徒がビザ無しで通れる巡礼道の着工式があった。パキスタンのイムラン・カーン首相は出席者数千人を前に「インドとの対話や交易を進める機会にしたい」と語った。
 
巡礼道は国境から寺院まで、川に橋を架けながら結び、今年夏までの完成を目指す。ホテルや診療所、土産物店なども併設し、観光地として売り出すという。
 
インドだけで約2千万人いるとされるシーク教徒にとって、同寺院は開祖が教えを説き続けた拠点として神聖視される存在だ。ビザに制限があるため、巡礼を諦めたり国境から望遠鏡で眺めたりするだけの信徒も多かった。

(中略)今年は開祖生誕550年で、多くの巡礼者が見込まれる。開祖生誕を祝う巡礼者は例年4千人ほどだったが、道ができれば1日当たり4千人を受け入れる態勢が整う見通しだ。
 
着工式にはシーク教徒が多数を占めるインド・パンジャブ州のシドゥ観光相も出席した。巡礼道の構想をカーン首相に持ちかけた一人。両氏は元クリケット選手で親交があった。
 
国境を一部でも開き、インドへの歩み寄りを演出したかのように見えるパキスタンだが、真の狙いは別のところにある。
 
それは国営テレビの中継映像からうかがわれた。カーン首相とともに着工式に出席したパキスタン軍のバジュワ陸軍参謀長の傍らに、インドからの分離を唱えるシーク教徒の独立派リーダーの姿があったのだ。

式の最後にバジュワ氏とリーダーが固く握手する様子も数秒間、映った。協調を装いながら裏で独立派と関係を深めるパキスタンのしたたかな戦略を物語る。
 
この場面をインド側は見逃さなかった。インドのラワット陸軍参謀長は会見で「インドと仲良くしたいならパキスタンは宗教を使うな」と抗議。インドのメディアは「パキスタンの策謀」と一斉に批判した。
 
これに対し、パキスタンのクレシ外相はメディアを通じて「シーク教徒の悲願に応えたものだ」と反論し、インド側の見方を「ゆがんだ解釈」と非難。軍報道官はツイッターで「インドメディアは短絡的」と書き、1万件超の「いいね」を集めた。

双方とも国内に独立派を抱え、治安が脅かされてきた歴史がある。
インドではシーク教徒の独立派が1980年代から武装闘争し、84年にはインディラ・ガンジー首相を暗殺。その後の掃討作戦を経てなおテロが続くのは、パキスタン軍が陰で支援しているから、とインド側はみている。
 
パキスタンも独立問題に手を焼く。昨年11月23日、カラチの中国総領事館が襲撃された事件では、南西部バルチスタン州の独立派が犯行声明を出した。パキスタン軍は、この独立派をインド軍やインド軍と連携するアフガニスタン軍の別動隊とみて監視している。
 
12月25日には、独立派司令官ら数人が会議中に何者かに爆殺された。場所はアフガニスタン南部の新興住宅地。独立派がアフガニスタンを出撃拠点にしているというパキスタン軍の主張が裏付けられた形だ。
 
過去に3度交戦し、核兵器を突きつけ合う両国は、わずか4キロの巡礼道をめぐっても批判の矛先を向け合っている。(中略)【1月10日 朝日】
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インド・モディ首相も、総選挙の前哨戦となる地方選挙で敗北したことで、ヒンズー至上主義を前面に押し出すことで態勢立て直しを図っていることは、これまでも取り上げてきたところです。

****インド総選挙を前に高まる宗教問題****
インドでヒンズー至上主義者が活動を活発化させている。

(12月)9日にはかつて破壊されたモスク(イスラム教礼拝所)の跡地にヒンズー教寺院の建設を求めるデモに20万人以上(主催者発表)が参加。

背景には来春の総選挙を前に国民の関心が高い宗教問題を強調することで、モディ首相の与党でヒンズー至上主義政党の「インド人民党」(BJP)の支持拡大を図る思惑があるとみられる。(中略)

デリー大のスマン・クマル准教授は「ヒンズー至上主義者は、総選挙を前に宗教問題を強調することで、農民を中心に高まるモディ政権への批判の矛先を変えようとしている」と指摘。「イスラム教徒側は少数で弱い立場なので当面対抗せずに静観するだろう。ただ偶発的な衝突がきっかけで緊張が高まる可能性はある」と話す。【2018年12月13日 毎日】
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議会上院通過が現実的ではないイスラム差別法案をあえて提起することで、ヒンズー教徒支持者へアピールするような党利党略も。

****インド「イスラム差別」法案が波紋 他宗教の不法移民には国籍****
ヒンズー教徒が約8割を占めるインドで、イスラム教徒以外の不法移民にのみ国籍を与える法律改正案が下院で可決された。

ヒンズー至上主義を掲げるモディ首相の与党・インド人民党(BJP)の母体組織はイスラム教徒と対立してきた歴史があり、春に予定される総選挙に向け、保守層の支持固めを狙ったとみられる。

イスラム教徒や専門家らは「憲法の規定にある法の下の平等に反し、宗教間の対立をあおる」と批判している。
 
8日に下院で可決された改正案は、2014年末までにインドに不法入国したパキスタン、バングラデシュ、アフガニスタン出身者のうち、ヒンズー教▽シーク教▽仏教▽キリスト教――などイスラム教を除く6宗教の信者に国籍を付与するもの。バングラからの不法移民だけで2000万人に上るとの見方もあるが、宗教別の人数を含め詳細は不明だ。
 
この3カ国はいずれもイスラム教国で、それぞれ宗教的少数派への差別や迫害が度々問題になってきた。このことを踏まえ、BJP前総裁のシン内相は「(イスラム教徒でない)彼らはインド以外に行く場所がない」と改正の意義を強調する。
 
イスラム教徒からは反発の声が上がる。(中略)「イスラム教徒というだけで出て行けと言われるのはおかしい」と憤る。
 
ジャダプール大のオンプラカシュ・ミシュラ教授は「宗教で人々の権利を選別するのは明らかな憲法違反」と指摘。さらに「BJPは上院で過半数の議席を持っておらず、実際に改正案を施行できるとは考えていない。ヒンズー教徒のために取り組んでいるという姿勢を見せたいだけだ」と批判する。
 
インドでは、14年のモディ政権誕生以降、勢いを増したヒンズー過激主義者によるイスラム教徒への襲撃や嫌がらせが相次ぐ。BJPに詳しい地元紙の記者は「改正案の下院可決はBJPの反イスラム姿勢の最たる例だ。過激主義者の行動がさらにエスカレートしかねない」と懸念を示す。(後略)【1月14日 毎日】
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【国家による宗教利用 ウクライナとロシアのケース】
目を欧州に転じると、ロシアと対立するウクライナでのウクライナ正教会のロシア正教会からの独立も、政治絡みのようです。

****ウクライナ正教会が独立 ロシア影響下から離脱****
キリスト教東方正教会の最高権威とされるコンスタンチノープル総主教庁(トルコ・イスタンブール)の総主教バルソロメオス1世は5日、ロシア正教会の管轄下にあったウクライナ正教会を独立させることを最終的に決定、文書に署名した。タス通信などが伝えた。
 
これで昨春から続いていたウクライナ正教会のロシアからの「分離独立」問題は決着。14年のロシアによるウクライナ南部クリミア半島の編入以降、悪化した両国の関係は教会の分断にまで至った。

ウクライナ国内では、ロシア正教会の教会や修道院などをウクライナ正教会が接収する動きが出ており、信徒らの対立が懸念される。【1月5日 共同】
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これだけではウクライナ政府・ポロシェンコ大統領の意図ははっきりしませんが、下記を読めばその意図が明確です。

****ウクライナ、教会「統一」で攻勢 ロシアの影響力削減狙う****
ウクライナのポロシェンコ大統領は今月、自国のキリスト教界からのロシアの影響力削減に力を入れ始めた。ロシアはこの動きを非難しており、11月にウクライナ艦船が拿捕(だほ)された事件に加え、火種が広がっている。
 
ロシア正教会は1686年からウクライナ正教会を傘下に入れてきた。1920年代になると「自治独立派」がロシア正教会からの独立を宣言し、ソ連崩壊の翌92年にはキエフ聖庁と呼ばれる一派も独立を表明。キエフ聖庁と自治独立派は今月15日、ポロシェンコ政権の後押しを受け、「統一教会」を結成した。
 
◇モスクワ聖庁の弱体化狙うポロシェンコ氏
現在もロシア正教会の傘下に残る一派はモスクワ聖庁と呼ばれている。ポロシェンコ氏は22日、この一派に改名を義務づけ、新しい名前にロシアの呼称を入れるように求める法案に署名した。

ウクライナ正教会ではモスクワ聖庁が最大宗派だったが、ロシアが2014年にウクライナへの軍事介入を始めたことを受け、くら替えする信徒が相次ぐ。

ポロシェンコ政権はモスクワ聖庁がロシアと深い関係を持つ点を明示させて、この流れを加速させる狙いだとみられる。米中央情報局(CIA)などの分析では、モスクワ聖庁と統一教会は、それぞれ人口の2割程度と拮抗(きっこう)している模様だ。
 
またウクライナ国内では今月上旬、モスクワ聖庁系の聖職者が憎悪をあおる発言をしたとの疑いをかけられ、家宅捜索を受ける案件が続出した。政権は司法当局も動員し、モスクワ聖庁への圧力を強めている模様だ。
 
インタファクス通信によると、ロシア正教会の報道担当者は22日、改名を義務づけられた法律に言及。「ウクライナの大統領が自らの政治的な構想に沿い、正教会を分裂させていることが再び明らかにされた」と非難した。

ロシア正教会は全体の教区のうち、3〜4割をウクライナ国内に置いている。傘下にあるモスクワ聖庁系の教会が減ることは経済的な打撃となるため、つなぎ留めに必死だ。
 
両国の関係を巡っては、ロシア国境警備隊が11月下旬、黒海でウクライナ艦船に発砲し拿捕、今も乗組員の解放に応じていない。ウクライナが新たに艦船を派遣する方針を示す一方で、ロイター通信は今月22日、ロシアに強制編入されたクリミアの基地に戦闘機が増派されたと報道。緊張の高まりが伝えられている。【2018年12月25日 毎日】
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一方、ロシアも、ギリシャ正教会に近いロシア正教会を通じて、マケドニア国名改正・NATO加盟問題でギリシャ世論を教会の影響力を利用する形で動かそうとしています。

こういう国家と宗教の関係は数え上げればきりがありません。

日本では、弾圧も利用もない政治と独立した宗教を目指していますが、その日本でもいろいろな問題が指摘されているのは周知のところです。
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バチカン  教会内部の聖職者による性的虐待が相次いで発覚 教会に内在する制度的問題では?

2018-09-16 22:49:34 | 人権 児童

(8月25日、訪問先のアイルランドで、性的虐待の犠牲者に祈りを捧げるローマ法王【8月28日 WSJ】)

【「法王は小児性愛者を守っている」】
カトリック教会内における聖職者による少年らへの性的虐待が横行していることは、以前からもしばしば問題になっていましたが、最近は特にその種の報道が頻繁になされています。

更に、ローマ法王がそうした案件の報告を受けながら、これを放置・隠ぺいしたのことで、教会内部から辞任を求められるという異例に事態にもなったことも話題になりました。

****法王に批判、異例の辞任要求 カトリック聖職者、性的虐待問題****
ローマ・カトリック教会の聖職者による子どもへの性的虐待問題をめぐり、フランシスコ法王が批判の矢面に立たされている。

長年隠蔽(いんぺい)された問題に厳しく対応する姿勢を示してきたが、25、26日に訪れたアイルランドでは抗議デモが起きた。教会内から法王の辞任を求める書簡も公表された。すべての権力が法王に集中するカトリック教会では、極めて異例の事態だ。

 ■アイルランドで謝罪
26日、ダブリン。フランシスコ法王はミサで「真実の追求のために確固たる行動を取らず、教会内で沈黙してきたことへの許しを請う」と述べ、性的虐待問題への教会の対応の不十分さを謝罪した。
 
アイルランドはこれまで、カトリック教徒が約8割を占める保守的な国柄だった。だが聖職者が神学校の男子生徒に性的虐待を繰り返していたことなどが発覚。

同国政府が2009年に公表した調査報告書は、こうした性的虐待が1970年代から行われながら、教会が組織的に隠蔽していたと指摘した。(中略)
 
フランシスコ法王の、ヨハネ・パウロ2世以来39年ぶりとなる同国訪問は、カトリック教会の存在感を再び高めることをめざしたものだった。
 
だがミサ会場の外では、法王の訪問に抗議する数千人が集結。プラカードを手に、「法王は小児性愛者を守っている」と批判し、「真相を解明し犯罪者を処罰せよ」と訴えた。

バチカンは、この日のミサに約30万人が集まったと発表したが、実際にはもっと少なかったと指摘するメディアもある。

 ■「報告を放置」と告発
逆風下の法王のアイルランド訪問にぶつけるかのように、26日に衝撃的な書簡が公表された。
 
元駐米バチカン大使のカルロ・マリア・ビガノ大司教によるもので、「法王が性的虐待の疑惑について報告を受けながら放置した」と告発し、法王の辞任を要求する内容だ。
 
伊メディアによるとビガノ氏は、米国のマカーリック元枢機卿による性的虐待疑惑の告発について、法王が就任直後の2013年に報告を受けながら、対応せずに放置したと指摘。マカーリック氏が同年の法王選挙(コンクラーベ)で法王を支持していたからだと主張している。

マカーリック氏は今年7月になって法王に辞職を申し出て、枢機卿の地位を解かれている。
 
フランシスコ法王は、性的虐待問題について厳しく取り組む姿勢を示してきた。その法王への批判が公然と起きたのはなぜか。
 
ビガノ氏を知るバチカン関係者は、同氏の書簡について「自分に近い者は処分を見送るなどしてきた法王の対応を、命がけで告発したのだろう」とみる。

一方で、ビガノ氏は教会内で保守派の中心人物とされる。バチカンの官僚主義打破を掲げる「改革派」の法王に批判的な勢力が反旗を翻した、との見方も出ている。
 
法王は26日、アイルランドからローマに戻る機内での記者会見で、この書簡について「これについて私は何も言わない」と発言。書簡の真偽について「注意深く読んで、あなた方で判断してほしい」とだけ述べた。

 ■被害者、世界で数万人
聖職者による性的虐待問題は、ヨハネ・パウロ2世の時代の02年、米マサチューセッツ州での神父による130人以上の被害をボストン・グローブ紙が報じて以来、世界各国で相次いで明るみに出た。
 
バチカンが性的虐待を犯した者を罰することなく、ほかの教区に移すなどして問題を長年、組織的に隠してきた実態も白日の下にさらされた。

国連「子どもの権利委員会」は14年、世界中で被害者は数万人にのぼると指摘した。
 
05年就任のベネディクト16世は、問題への対応の遅れがしばしば指摘された。生前退位の決断につながった一因と指摘される。
 
フランシスコ法王は13年の就任直後、この問題に断固たる対応をとると表明した。しかし、その後もオーストラリア政府の独立調査委員会や米ペンシルベニア州の最高裁による報告書で、長年の被害が明らかになった。豪政府の独立調査委員会は「カトリック聖職者の独身主義」を問題の一因と指摘した。
 
弱者に寄り添う姿勢で広く支持を集めてきたフランシスコ法王だが、性的虐待問題で大半の司教が辞任したチリを今年1月に訪れた際には、「教会の対応が不十分だ」とする市民の抗議を浴びた。【8月30日 朝日】
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ドイツでは聖職者1670人が未成年者3677人に性的虐待
上記記事にもあるように、法王への辞任要求はバチカン内部の権力闘争的な側面もあるようですが、昨今の聖職者による性的虐待及びその隠ぺいに関する事案の発覚は尋常ではありません。

9月に入ってからだけでも、以下のような報道が。

チリのカトリック教会、性的虐待疑惑の捜査対象者167人に 同国最高位の聖職者も【9月1日 AFP】
ドイツでも聖職者の児童性的虐待が発覚、被害者3600人超【9月13日 AFP】

そして今日も。

****オランダのカトリック教会、聖職者の性的虐待を65年間隠ぺい 報道****
世界各地でカトリック教会をめぐる不祥事が相次ぐ中、15日のオランダ日刊紙「NRCハンデルスブラット」は、国内のカトリック教会について1945年から65年間、聖職者らによる子どもへの性的虐待事実の隠ぺいに上位聖職者の半数以上が関与していたと伝えた。
 
NRCによると、オランダ人枢機卿、司教、補佐司教39人のうち20人が、1945年から2010年まで聖職者らによる性的虐待の事実を隠ぺいしていた。このため、同じ聖職者らが性的虐待を続け、さらに多くの被害者を生む結果になったという。
 
オランダ・カトリック教会広報のダフネ・ファンローゼンダール氏はAFPに対し、報道の一部は事実と認めてもよいと述べた上で、性的虐待を指摘された聖職者の多くは既に死去しており、全ての事件は時効が成立していると付け加えた。
 
NRCは、現在も存命している聖職者たちはコメントを拒否していると伝えている。
 
一方、フランスでも新たに聖職者による子どもへの性的虐待が明らかになった。
 
仏中部カンタルのカトリック教会の神父が、3歳から17歳までの兄弟4人に性的虐待を加えたとして、兄弟の家族に告訴された。兄弟の弁護士が15日、明らかにした。4人の兄弟は教会の聖歌隊に所属していたという。虐待があった時期は不明。
 
カトリック教会をめぐる性的虐待被害の申し立ては、オーストラリアや欧州、北米、南米など世界全域に広がっている。【9月16日 AFP】
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教会内部の異常な人物による事件ではなく、例えば“ドイツで1946〜2014年にローマ・カトリック教会の聖職者1670人が未成年者3677人に性的虐待を働いていたことが、リークされた調査報告書で明らかになった。”【9月13日 AFP】というように、カトリック教会という“制度”が内在する問題と思われます。

また、その隠ぺいも組織ぐるみで(法王が関与していたかどうかは別にしても)行われてきました。

ダライ・ラマ14世「目新しいことではない」】
もっとも、カトリック教会の名誉のために言えば(“名誉回復”になるかどうかは知りませんが)、この種の問題は仏教界にあっても存在することを、あのダライ・ラマ14世が認めています。

****ダライ・ラマ、仏教指導者による性的虐待 「90年代から知っていた****
チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は15日、訪問先のオランダで、仏教指導者らによる性的虐待があったことは1990年代から知っており「目新しいことではない」と語った。
 
世界の仏教徒ら数億人の尊敬を集めるダライ・ラマは、欧州歴訪の一環で4日間の日程でオランダを訪れている。

14日には仏教指導者からの性的虐待被害を主張する人々の請願に応じ、十数人ほどの被害者と面会。「心と精神を開いて仏教に救いを見出だしたのに、仏教の名の下にレイプされた」と請願書で訴えていた被害者たちに対し、虐待を知っていたと認めた。
 
ダライ・ラマはオランダ放送協会が15日夜に放映した番組でも、仏教指導者による性的虐待について「そういうことは既に知っていた。目新しいことではない」と述べた。

25年前にインド北部ダラムサラで開かれた西側諸国の仏教指導者会議で、性的虐待の問題を提起した人がいたという。ダライ・ラマは、性的虐待を犯すような者はブッダの教えを尊重していないと批判し、宗教指導者たちが性的虐待問題により強い関心を払うよう、11月にダラムサラで開催されるチベット仏教指導者の会合で協議する意向を示した。
 
また、欧州でダライ・ラマの代理人を務めるツェテン・サムドゥプ氏は14日、「ダライ・ラマはこうした無責任かつ非倫理的な行為を、一貫して非難してきた」と説明している。【9月16日 AFP】
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「目新しいことではない」との言い様は、他人事のようと言うか、あまり問題意識がないようにも見えます。
もちろん、“一貫して非難してきた”のでしょうが、明確・効果的な対応をとってこなかった点では、放置・隠ぺいの責任を問われているローマ法王とそれほどの大差はないようにも。

こうして見てくると、信仰心のない俗人からすると、異性に対する欲求が抑圧された結果、関心が小児に・・・というような、教会・宗教界の“独身主義”に無理があるのでは・・・と思えてしまいます。

あるいは教会という閉ざされた世界が、小児性愛者に都合にいい場所として彼らを惹きつけるのか?

宗教界における“独身主義”の意味・必要性などは教義に基づく深淵なものがあるところでしょうから、私など俗人がとやかく言う話でもありませんが。

我が身の危険を顧みない行いも
一方で、当然ながら、カトリック教会は何も性的虐待に励む聖職者だけでなく、“聖人”に例えられるような立派な行いを残す方もいます。

****フランシスコ法王、マフィアは「神を冒涜」と批判 殉教神父の追悼ミサで****
ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は15日、イタリアのシチリア島の貧困地区で若者たちをマフィアの影響下から救う活動に取り組んでいた神父が殺害されて25年となるのに合わせて同島を訪問し、マフィアは「神を冒涜(ぼうとく)」する存在だと非難した。

法王は自身が進める広範な反組織犯罪運動の一環として、日帰りでシチリアを訪れていた。
 
シチリアのパレルモで治安の悪いブランカッチョ地区の主任司祭だったジュゼッペ・プリージ(通称ピノ)神父は、違法薬物やマフィアの密売業者らの影響から地元の若者たちを救い出す活動を行っていたが、自身の56歳の誕生日に当たる1993年9月15日、つましい自宅の玄関前で至近距離から銃で撃たれて殺害された。

神父は死の間際、犯人に向かってほほ笑み「あなたを待っていた」と言い残したとされる。
 
フランシスコ法王も出席して15日にパレルモの港で行われたピノ神父の殉教25年追悼ミサには、公式発表で約10万人が出席した。

法王は追悼ミサで、「神を信じないからマフィアの一員となる。マフィアに属する者はキリスト教徒として生きることはできない。なぜなら彼らの人生は神を冒涜するものだからだ」と説き、「変わりなさい。 自分自身やお金のことを考えるのを止め、悔い改めなさい」と促した。
 
フランシスコ法王の情熱的な説教は、故ヨハネ・パウロ2世が1993年5月にやはりシチリア島を訪れた時に、犯罪から足を洗うようマフィアの構成員に呼び掛け、マフィア撲滅に立ち上がるよう島民たちを励ました言葉を用いたものだ。
 
1993年のヨハネ・パウロ2世訪問から2か月後、シチリアのマフィアは法王への返答として島内のカトリック教会2軒を襲撃した。
 
同じ1993年に殺害されたピノ神父は2012年に殉教者と認定され、翌年に列福されている。
 
フランシスコ法王は15日の追悼ミサで、ピノ神父について「何よりも、人生における真の危機は危険にまったく手を出さないことではなく、困窮する事態をただやり過ごすことだと知っていた」と語った。【9月16日 AFP】
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“犯人に向かってほほ笑み「あなたを待っていた」”云々は、やや出来過ぎの感もありますが、我が身の危険を顧みず信仰に基づく行いに没頭できるのは、やはりひとつには、配偶者や子供がいないということが大きく影響するでしょう。

妻子があれば、どうしても“万一のとき”“妻子に危害が及ぶ事態”を考え、決心が鈍ることがあるでしょう。

ですから“独身主義”が無意味だと言うつもりもありませんが、各国で発覚している事態を見ると、やはり制度的に無理があるのでは・・・と考えます。

もちろん妻帯していても、性的虐待に関心を示す輩は存在するのでしょうが・・・。

同性愛は「精神疾患」?】
バチカンに関する興味深い話としては、もっと生臭い中国との国交樹立問題に関するものもありますが、それはまた別機会に。

ローマ法王の発言で、「これは、ちょっと・・・」と思われた事案を最後にひとつだけ。

****バチカン、法王の発言を削除 同性愛の子に「精神医学」推奨*****
ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王が、同性愛傾向を示す子どもの親たちに向け、精神医学の支援を受けるよう推奨する発言を行ったことを受け、バチカン(ローマ法王庁)は27日、この発言を公式記録から削除した。
 
問題の発言は、法王が訪問先のアイルランドからイタリア・ローマに戻る専用機内で開いた記者会見で発したもの。
 
同性愛の傾向がある子どもの親に何と声を掛けるかと聞かれた法王は、「幼少期からそれが現れるなら、どういう状況なのかを知るために、精神医学を通してなせることはたくさんある」と述べるとともに、同性愛傾向がある子を無視すれば「父として母としての過ちになる」と諭していた。
 
この発言についてフランスのマルレーヌ・シアパ男女平等担当副大臣は、「理解不能で弁解の余地もない」と批判していた。
 
バチカンはその後、法王の返答を書面で公開した際、精神医学への言及は削除した。その理由についてバチカン報道官はAFPに対し、「法王の見解を曲げる」ことがないようにとの配慮からだと説明。

「『精神医学』への言及は、『なせること』の例を示すためだったのは明らか。ただ、その語を用いることで、(同性愛が)『精神疾患』だと述べる意図はなかった」と述べた。【翻訳編集】
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“(同性愛が)『精神疾患』だと述べる意図はなかった”とのことですが、素直に解釈すると、法王は同性愛を「精神疾患」と考えているとしか思えません。(その方が教義体系としてはすっきりするでしょう。「精神疾患」ではないとするなら、どのように位置づけるのかという問題につながります)

現代の意識の多様化に教会がどのように向き合うのか?・・・という問題でもあります。
コメント

サウジアラビア  カナダの人権批判に怒りの対応エスカレート

2018-08-09 23:00:58 | 人権 児童

(サウジの青年団体、インフォグラフィックKSAがツイッターに投稿した画像は現在は削除されていますが、ネット検索するとこんな画像が見つかりました。このことでしょうか。
トロントの風景にエア・カナダ機を重ねた画像で、カナダの動きを「余計なお世話」と批判するコメントが添えられています。どう見ても“9.11”を連想させる画像です。)

改革を指示できるのはムハンマド皇太子だけ 人権活動家への厳しい弾圧
サウジラビアの実権を握るムハンマド皇太子は、女性の自動車運転を解禁するなど“上からの社会改革”を行っていますが、同時に、現支配体制になじまない“下からの改革の要求”については、活動家を拘束するなど厳しい弾圧姿勢を崩していません。

****サウジ皇太子、一連の拘束劇が示すメッセージとは****
サウジアラビアでは数十人の著名な人物が投獄されたままで、その多くが反逆者だと糾弾されている。数百人、もしくはそれ以上の人が出国禁止になっている。そして、祖国をひそかに離れ、帰国の予定もなく、反政府コミュニティーを海外で作り始めている人もいる。

サウジの事実上の支配者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、どの前任者よりも踏み込んで、厳格な社会規範を緩めようとする姿勢を示してきた。だが同時に、反体制分子とみなされた人々に対しては、過去数十年間で最も容赦なく締め付けている。

サウジ当局は昨秋、汚職容疑で反体制派聖職者やビジネスマンを大量に拘束した。先月の一連の拘束劇は、これに続くもので、主に女性による自動車運転の権利獲得を推進していた活動家も標的となった。サウジ政府が女性の運転の権利を今月24日から正式に認める予定であるにもかかわらずだ。

この締め付けは、反政府活動の証拠がほとんどないにもかかわらず行われた。その裏には、サウジにおける変革のペースとその範囲をムハンマド皇太子だけが指示しようとする意図が隠されているとの見方がある。

政府から圧力を受けている人権活動家の1人は「われわれはもっとバランスのとれた社会と、より多くの権利を求めていた」としたうえで、「だが実際に起こっているのは、別のイデオロギーに基づくさらなる弾圧だ」と述べる。
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この動きに対する政府支持派の見方は異なる。サウジ政府と近い人物で、ワシントンに本拠を置くシンクタンク「アラビア財団」の代表を務めるアリ・シハビ氏は、「この国は大きな破壊的変化を遂げている最中で、幅広い政治的意見が存在する。宗教保守派から欧米型のリベラル派に至るまで、さまざまだ」と述べる。

その上で同氏は、「長年の懸案だった変革を成し遂げたいと思うなら、これら全ての層を一つにまとめることはできない。そのために独裁的アプローチが必要になる。それは当面、自由を制限するという意味だ」と付け加えた。

父親のサルマン国王が即位した2015年初め以降、ムハンマド皇太子は同国経済を石油依存から脱却させ、宗教的保守主義による支配に終止符を打つべく努めた。この結果、サウジは外国人投資家にとって魅力が増し、映画館の開設や音楽コンサートの開催といった国内の社会改革も進んだ。

しかし、一連の拘束劇は、「新しい」サウジが社会的自由と政治的抑圧との間で緊張していることの証左だ。多くのサウジ国民はそれを、政府の許容度については一歩後退だと考えている。

先月拘束されたのが明らかになっている17人の人権活動家のうち9人は、まだ釈放されていない。サウジ検察当局が3日に公表した声明によれば、この9人は「海外の敵対分子」に協力し、資金を提供したと自供したという。

これに対し拘束者の同志たちは、このような容疑内容は虚偽であり、拘束者が自ら進んで自白したか疑問だとしている。(中略)
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政府の考えに詳しい関係者によれば、サウジ指導部はメッセージを送りたいと考えているようだ。

それは、自分たちの要求を公にすることによって政府をねじ伏せ、しかも罪に問われないといった状況は誰であっても容認しないというメッセージだ。政府の改革目標と概ね足並みをそろえる活動家であっても、それは例外ではないという。

欧州連合(EU)は先週、異例に強い調子の決議で、サウジでの「人権活動家に対して行われている抑圧」を糾弾し、「(こうした抑圧は)この国の改革プロセスの信頼性を損なう」と述べた。そして逮捕者を釈放するようサウジ当局に呼び掛けた。

昨秋以降の3回の拘束劇は、サウジ社会の著名な人物が標的となった。その多くは積極的に発言する国際的に評価の高い人たちだった。正式に起訴された者はほとんどいない。 

拘束された人々の縁故者は、国外に出るのが禁止された。拘束者に近い人々や活動家によれば、亡命している反政府活動家の親類は旅行も禁止されたという。

依然として釈放されていない人のなかには、汚職とほとんど関係ない罪状に直面しているケースもある。関係筋によれば、彼らは王制反対を唱えた罪に問われている。拘束された人々はでっち上げだと否定しているが、テロ罪による起訴につながる可能性もあるとサウジ当局者は言う。

サウジのジャーナリスト兼評論家で、現在ワシントンに住んでいるヤマル・カショギ氏は「ムハンマド・ビン・サルマン(皇太子)は、それまで直面していなかったし必要でもなかった反対派を作り出している」と指摘。(後略)【6月6日 WSJ】
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改革を行うのは、あくまでも賢明で慈悲深いムハンマド皇太子ただ一人であって、たとえ求める方向が同じであっても、一般民衆の勝手な要求は認めない・・・ということのようです。

カナダの人権批判に激高するサウジ 対応を一気にエスカレート
こうしたサウジアラビア当局による活動家拘束はその後も続いており、女性の権利拡大を求める活動家サマル・バダウィ氏などが拘束されたようです。

この件が、釈放を求めるカナダと内政干渉とするサウジの間の異常なまでの対立を呼んでいます。

****サウジ、カナダとの新たな貿易を凍結 人権活動家解放の要求受け****
サウジ外務省は声明で「カナダとの新たな貿易および投資取引を全て凍結するとともに、一段の措置を講じる権利を保持する」とした。

また、カナダ大使に24時間以内に国外退去するよう求めたほか、カナダに駐在するサウジ大使を召還したことも明らかにした。

カナダ政府は3日、サウジ当局が女性の権利を主張する著名活動家であるサマル・バダウィ氏を含む人権活動家を逮捕したことに懸念を表明し、解放を訴えていた。

これについて、サウジ政府は「あからさまな内政干渉で、国際的な規範と全ての国際協定に違反している」と非難した。【8月6日 ロイター】
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カナダのフリーランド外相や在リヤドのカナダ大使館は先週、サマル・バダウィ氏を含む女性の人権活動家をサウジ当局が逮捕したことを批判していました。

バダウィ氏はカナダ国籍を持ち、弟のライフ・バダウィ氏はサウジ政府に批判的なブロガーで既に同国で投獄されています。

カナダ側がサウジアラビアに対し活動家らの「即時解放」を強く求めるツイートを相次いで投稿していたことが、サウジアラビア側を激怒させたようです。

“サウジ外務省は声明でこれらの逮捕者について「刑罰の対象となる罪を犯したため、検察によって合法的に拘束されている。拘束中の人権は保障され、捜査や裁判の間も正当な法的保護を受けられる」と説明した。

そのうえでカナダ側が「即時解放」を求めてきたことに言及し、主権国家間のやりとりでこのような言葉の使用は受け入れられず、非難されてしかるべきとの認識を示した。”【8月6日 CNN】

人権活動家拘束への批判は、冒頭記事にもあるように、これまでもEUなどが行ってきました。

カナダ側のツイート内容は知りませんが、“上から目線”のもの言いが、サウジ・ムハンマド皇太子を怒らせたのでしょうか。それとも、そうしたツイート云々以外に、表には出ていないやり取りが両国間であったのでしょうか。
サウジアラビア側のカナダへの怒りは尋常ではありません。

カナダ側に撤回の意思はなく、サウジアラビアの対応は、カナダ留学生への奨学金を停止し、カナダ国外の大学等に移すことを決定、更にカナダへの航空機の飛行停止など拡大する一方ですが、サウジアラビア人が多く関わった“9.11”を連想させる画像投稿もあり、さすがにこれにはサウジ側も“他意はなかった”と謝罪しています。

****サウジ国営航空、トロント便を停止へ 人権問題めぐる応酬で****
サウジアラビアの人権問題をカナダが批判し、両国間の緊張が高まっている問題で、サウジの国営航空は6日、トロント便を来週から停止すると発表した。
カナダ政府が人権批判の撤回を拒否したことへの報復措置とみられる。

カナダのフリーランド外相は6日、この問題をめぐり初めて公の場で発言。「カナダは常に、世界各地で女性の権利や表現の自由を含めた人権擁護を支持する」と述べた。

サウジは5日、カナダ大使に国外退去を求め、貿易、投資分野で同国との新たな取引を凍結すると発表していた。実際には両国間の経済関係にどの程度の影響が及ぶのか、その規模は明らかになっていない。

サウジはさらに6日、カナダに留学している自国の奨学生を他国へ移す方針を示した。

この対立に関連してサウジの青年団体、インフォグラフィックKSAがツイッターに投稿した画像も波紋を呼んだ。
問題になったのは、トロントの風景にエア・カナダ機を重ねた画像。カナダの動きを「余計なお世話」と批判するコメントが添えられていた。

この機体がトロントのシンボル、CNタワーに向かって飛んでいるように見え、2001年の米同時多発テロで世界貿易センタービルに突っ込んだハイジャック機を連想させるとの声が相次いだ。同時テロの実行犯19人のうち、15人はサウジ人だった。

サウジ当局はインフォグラフィックのアカウント削除を命じ、同団体は「機体はカナダ大使の退去を象徴していただけで、他意はなかった」と謝罪した。【8月7日 CNN】
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トランプ大統領をも激怒させたトルドー首相 人権問題では譲らない構え
カナダ側は、アラブ首長国連邦(UAE)と英国に支援を求める方針とも。
カナダ・トルドー首相よりサウジ・ムハンマド皇太子と親密なアメリカ・トランプ大統領ですが、アメリカは“関与せず”の方針です。

****カナダ、サウジとの対立でUEA・英国に支援要請へ=関係筋****
サウジアラビア当局が逮捕した人権活動家の解放を要求したカナダに対してサウジが内政干渉だと反発し、両国の緊張が高まっている問題で、カナダはアラブ首長国連邦(UAE)と英国に支援を求める方針。関係筋が明らかにした。

一方、米国は関与しない方針を示している。(中略)

ある関係筋は、人権を重視するカナダのトルドー政権は、問題解決に向けUAEに協力を求める計画。別の関係筋によると、英国に支援を求める可能性もある。英国は7日、両国に対して自制するよう求めた。

また、米国務省のナウアート報道官は記者会見で「双方がともに外交的にこの問題を解決すべきだ。米国が両国のために行うことはできない」と語った。
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しかしサウジ側の対応はエスカレートするばかり。仲裁も必要ないとしています。カナダ資産売却も初めているとか。

****サウジ、カナダへの追加措置検討 「仲裁は不要****
サウジアラビアは8日、カナダとの外交的対立に仲裁の余地はないとし、カナダは「大きな過ちを修正する」ために何をする必要があるかを認識しているはずだと指摘した。サウジのジュベイル外相は記者会見で「仲裁は不要だ。過ちが犯された。それが修正されるべきだ」と指摘。その上で、カナダへの追加措置を検討していると述べた。(中略)

英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙が関係筋の話として伝えたところによると、サウジの中央銀行と国営年金基金は、それぞれの海外資産運用担当者に対して、カナダの株式や債券、通貨を売却するよう指示した。(後略)【8月9日 ロイター】
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これに対し、カナダ・トルドー首相も引かない構えです。

****カナダとサウジ、人権問題めぐり緊張高まる トルドー首相は謝罪拒否****
カナダとサウジアラビアの間でにわかに緊張が高まっている。

人権活動家の拘束をカナダ政府が批判したことに反発するサウジ政府は、大使追放や新規の取引停止に続き、学生の留学先振り替えやカナダ資産の売却など追加の報復を続々と準備。

カナダのジャスティン・トルドー首相は8日、「サウジとの関係悪化は望んでいない」としながらも、自身これまでに行った批判について謝罪を拒否し、人権問題では一歩も譲らない姿勢を示している。
 
(中略)だがトルドー首相の立場は揺るがない。8日には「カナダは人権問題について、私的な場でも公的な場でも強くはっきり主張していく」と言明した。
 
一方で「サウジアラビアとの関係悪化は望んでいない」とも述べ、カナダ政府はサウジ政府が「人権問題に関して進展している」ことを認識しているとも言及した。
 
トルドー首相によると、カナダのクリスティア・フリーランド外相が7日、この問題の解決を目指してサウジのアデル・ジュベイル外相と長時間にわたって会談した。「外交交渉は続いている」という。【8月9日 AFP】
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トルドー首相は先のG7でもアメリカ・トランプ大統領を激怒させているように、言うべきことは言う人物ですから、簡単には引き下がらないでしょう。

****カナダのトルドー首相、西側代表としてトランプを攻撃 返ってきたのは八つ当たり****
<トランプは仕返しにトルドーが主催したG7の首脳宣言の承認をやめたとツイート、政権幹部は北朝鮮との首脳会談が失敗したらトルドーのせいだとまで>

マクロン仏大統領、メルケル独首相など最近トランプを会ったどの西側首脳より、トランプを恐れない男がカナダのジャスティン・トルドー首相だった。

小国の若い指導者ながら原理原則の人であり、G7が始まるずっと前から、安全保障上の理由からカナダに輸入制限をかけるというアメリカの論理は共に戦ってきたカナダに対する侮辱で容認できない、と言ってきた。

ところがドナルド・トランプ政権の経済顧問であるラリー・クドロー国家経済会議院長は6月10日の朝、カナダのジャスティン・トルドー首相に対し、来るべき「米朝首脳会談が失敗したらトルドーのせいだ」と言い放った。トルドーは、G7でトランプを「裏切り、後ろから刺した裏切り者だ」というのだ。

トランプ政権とトルドーとの仲が決定的にこじれたのは、前日の9日に閉幕した先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)の首脳宣言を、既に大統領専用機でシンガポールに向かっていたトランプが、やっぱり承認しないとツイートしたからだ。

さらに、もしアメリカに対する「不公平な」貿易慣行が是正されなければ、6カ国とのあらゆる貿易を停止すると脅迫し、各国首脳の激しい反発を招いた。

トランプが激怒したトルドーの記者会見
サミットを締めくくる記者会見でトルドーは、鉄鋼・アルミ製品などへの「アメリカの関税押しつけは侮辱的だ」と批判。「アメリカがカナダに課したのと同等の報復関税を7月1日に必ず発動する」と語った。

機上でこれを聞いたトランプは、首脳宣言の承認を取り消した。「ジャスティンが記者会見で放った虚言や、カナダがアメリカの農家や労働者や企業に莫大な関税を課しているという事実に基づき、米政府代表に首脳宣言を承認しないよう指示した。アメリカ市場にあふれる自動車の関税措置を検討しなければならない!」、とツイートした。

トルドーは「控え目で大人しい」が「不誠実で弱虫」だと名指しで批判した。(後略)【6月11日  Newsweek】
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それとカナダには、日本のように石油のためにサウジ側の鼻息をうかがう必要もありません。
豊富なオイルサンドを有するカナダは、原油確認埋蔵量ではベネズエラ、サウジアラビアに次いで世界3位、原油産出量は、米国、サウジアラビア、ロシアに次いで世界第4位という“石油大国”です。

今回のサウジアラビアの尋常ならざる対応の背景には、石油をめぐる何かがあったのでしょうか?単に、人権問題への認識の違いというだけでしょうか?

それにしても、サウジアラビアのムハンマド皇太子も、イエメン介入、カタール断行、そしてカナダとのバトルと、次々に外交問題を作り出しています。これまでのところは問題を大きくするばかりで、うまく事態をコントロールできていません。

後先考えずに突っ走るタイプのようです。周囲にいさめるスタッフもいないのでしょう。
コメント

“白い肌”を求めるブラジル 黒人以外に市民権を認めないリベリア そして“同質社会”日本では

2018-03-26 21:45:33 | 人権 児童

(日本で黒人ハーフの子供を育てるのを諦め米国に帰る決意をした黒人と日本人の親子【本文参照】)

ブラジル:肌の色で社会階級がほぼ完全に決まる
ブラジルと言うと、リオのカーニバルで躍動する黒褐色の肌・・・というイメージもあるのですが、ブラジル社会では「白い肌」が求められているとか。美しさ云々の話ではなく、“肌の色で社会階級がほぼ完全に決まる”という現実があるそうです。

****ブラジルで米白人男性の精子需要が急増****
「青い目の子供が欲しい」
黒人や混血人種が大半を占めるブラジルで、白人米国人男性ドナーからの精子輸入が急増している

「宝石のような目」に金髪、そして「少しばかりの淡いそばかす」。オセロは、黒人か混血が大半を占めるブラジル人とは見かけが全く異なる。

だが、シアトル精子バンクが「白色人種」と表現するこの米国人のレジ係は別名「ドナー9601」。異例のペースで、若い米国人男性のDNAを輸入する裕福なブラジル女性から、最も多くのリクエストを受ける精子提供者の1人だ。
 
米国からブラジルへの精子輸入は、過去7年に急増した。裕福な独身女性やレズビアンのカップルが、肌の色が薄く、出来れば青い目をした子供の誕生を手助けしてくれるような精子ドナーをインターネット上で選んでいるためだ。
 
米バージニアのフェアファクス精子バンクの研究所長、ミッシェル・オッテイ氏は、ブラジルは精子の輸出先として急拡大している市場の1つだと話す。

同バンクはブラジル向けの精子輸出で最大手だ。当局者や精子バンク関係者によると、昨年、ブラジルの空港には、液化窒素で冷凍された外国人男性の精子を入れた500本以上の試験管が到着した。2011年の16本から急増している。ブラジル保健当局による2017年の公式データはまだ発表されていない。
 
米国の精子バンクの責任者らは、ブラジル人が求める精子の傾向は、全世界で共通すると指摘する。シアトル精子バンクのフレデリック・アンドレアッソン最高財務責任者(CFO)は、「われわれが保有、そして販売する精子の大半は白人、金髪、青い目の男性ドナーによるものだ」と述べる。
 
サンパウロ在住のデータアナリスト、スージー・ポマーさん(28)は、誰もが「可愛い子供」が欲しいと願うが、偏見が今も根深いブラジルでは、両親の多くにとって、これは「白人系、つまり目や肌の色が薄い」ことを指すと語る。

彼女は過去に乳がんの症状が疑われたことがきっかけで、パートナーであるプリシラさんとすぐにでも子供が欲しいと考えるようになり、昨年妊娠することを決めたという。
 
白人男性ドナーが好まれる背景には、肌の色で社会階級がほぼ完全に決まるブラジル社会で、人種への執着が今でも根強く残ってることを反映している。

ブラジル国民の50%以上は、黒人かまたは混血が占める。西側諸国で奴隷制度の廃止が最も遅かった米国の10倍以上もの黒人奴隷がアフリカからブラジルに連れてこられた歴史の名残だ。

白人の開拓者と移民――その多くは支配層エリートが「白人化」を目指した19世紀終盤から20世紀初頭にかけてブラジルにやって来た――の子孫は、ブラジルの政治的権力と富の大半を支配する。
 
このように人種的に分断されたブラジル社会では、色素の薄い子供を持つことは、高水準の給与から警察による公正な扱いまで、子供に明るい人生を提供する手段だと考えられている。
 
またこうしたトレンドは、ブラジル社会の変化も映す。男女格差の解消で一定の成果が出ていることで、キャリアを積み、出産を遅らせる女性が増えた。

一部の女性は夫を探す時間も意欲もなく、また多くの女性は単身でも子供を育てる経済的な余裕がある。

一方で、レズビアンのカップルの間では、最近の規制改定により、両方の名前で子供を登録することが容易になったことで、男性の精子ドナーを求める動きが増えている。
 
2016年のデータによると、輸入精子の購入者のうち、41%は異性同士のカップル、38%は単身女性、21%はレズビアンのカップルだった。だがとりわけ、単身女性とレズビアンのカップルの需要が急増しているという。
 
一方、輸入精子には手が出ないものの、青い目の赤ちゃんが欲しいブラジル女性の多くにとって、 フェイスブック は常に頼れる存在だ。性関係を持つか、無針注射器を使って、無料で妊娠の手伝いをするとの投稿が毎月後を絶たない。(後略)【3月25日 WSJ】
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リベリア:「白人は黒人リベリア人を絶対に奴隷化するだろう」】
“白人の開拓者と移民の子孫は、ブラジルの政治的権力と富の大半を支配する”ブラジル社会に対し、アフリカでは植民地支配の結果として類似の社会構造があります。

南アフリカではアパルトヘイトの名残と今も闘いが続いていますが、解放奴隷の国リベリアでは、白人支配を警戒して、アフリカの血統を持つ人のみに市民権を制限する条項が憲法に規定されているそうです。

元サッカー選手の新大統領は、この差別的条項を撤廃しようとしていますが、国民からは反発も。

****リベリア――肌の色で市民権が決まる国****
トニー・ヘイジさんは50年以上リベリアで暮らしている。
リベリアは、彼が大学に通った地だ。彼が妻となる人に出会った地だ。彼がビジネスで成功を収めた地だ。


たくさんの人々がこの国の不安定な日々から逃げ出しても、彼はとどまり続けた。彼は、自身が愛し、ふるさとと呼ぶ国の成功を見届けようと固く決意していた。

しかしヘイジさんは、リベリアでは二級市民だとされている。実際、彼は市民ですらないのだ。肌の色と、家族のルーツがレバノンにあるという理由で、リベリア社会の正式な一員となることを妨げられている。

「彼らは私たちを奴隷にするだろう」
アフリカ西岸にあるリベリアは、米国での想像もできないような苦境から脱出し、アフリカ大陸に戻ってきた解放奴隷の居住地として建国された。

だから、もしかすると、「解放された有色人種の避難所かつ安息の地」に憲法がつくられたとき、アフリカの血統を持つ人のみに市民権を制限する条項が加えられたのは驚くにはあたらないのかもしれない。

数百年後、リベリアの新しい大統領、元サッカー選手のジョージ・ウェア氏は、この規則を「不必要で、人種差別的で、不適切だ」と表現した。

その上ウェア大統領は、人種による差別は、「自由」を意味するラテン語「liber」に由来する「リベリアのそもそもの定義に矛盾する」とも述べた。

この表明は、リベリアの一部に衝撃を与えた。
「白人は黒人リベリア人を絶対に奴隷化するだろう」と、実業家のルーファス・ウラグボさんはBBCにはっきりと語った。

ウラグボさんは、黒人だけに認めている市民権をいかなる形で拡大することも、リベリア人が自ら自国を成長させる機会を損なうのではと恐れている。特に、他国から来た人に私有財産を認めるのは危険だろう、とウラグボさんは言う。

このような恐怖を公に語るのは、ウラグボさんだけではない。新たな権利団体「非黒人の市民権と土地所有権に反対する市民活動」が、大統領の計画に抗うべく設立された。

「全ての国に、建国の土台となった基盤がある。その基盤を弱体化してしまったら、国は絶対に崩壊する」と団体のリーダー、フッビ・ヘンリースさんはBBCに語った。

ヘンリースさんは、ウェア大統領は「リベリア人のための正しい政策に心を注ぐべきだ」 とした。
「いま最優先で注力すべきことは、リベリアの商業や農業、教育を軌道に乗せることであって、非黒人に対する市民権や土地所有権についてではない」とヘンリースさんは語った。

ウェア大統領が憲法を変える以外にも困難な仕事を抱えているのは事実だ。

豊富な天然資源を抱えているにもかかわらず、リベリアの2017年の1人当たり平均年収はわずか900ドル(約9万4500円)で、228カ国中225位だった。
比較すると、1人当たり平均年収はアメリカが5万9500ドル、イギリスが4万3600ドルとなっている。

実際、リベリアの国内総生産(GDP)の3分の1は国外在住のリベリア人から納められたものだ。いくつもの家族が、米国からの送金に完全に依存している。

ウェア新大統領は、この状況に対する評価を率直に述べている。「リベリアは破産状態にあり、私はそれを修復する」。
長年続いた内戦や、2014年に起きたエボラ出血熱の大流行が引き起こした壊滅的な影響の後にもたらされたこの約束は、ほとんどのリベリア人の耳に心地よく響いている。

しかしヘンリースさんは、今法律を変えることは、2歳の少年(リベリア人)と45歳の大人(外国人)にボクシングをさせ、フェアな戦いが行われるかどうか見守るようなものだと言う。

「大人は小さな子供を不当に扱うだろう」とヘンリースさんは語った。「リベリア人のビジネスは外国人のそれと同じレベルにないのだ」。(後略)【3月6日 BBC】
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日本:枠組みに収まらない人間は虐げられるか弾き出されるか収まるよう強いられる
“同質社会”日本では、肌の色の違い、特に“黒い肌”には様々な“視線”が向けられます。

下記に対する日本人ネットユーザーの反応は、黒人男性の“被害妄想”、日本の常識に否定的な日本人妻への嫌悪・バッシングであふれています。

確かに、指摘されるような点も見受けられますが、“差別”を感じている側への反応として、“被害妄想”、“とっとと出ていって”といったものしかないのも・・・・。


****差別を受け日本で黒人ハーフの子供を育てるのを諦め米国に帰る決意をした黒人と日本人の親子****
私は日本で黒人と日本人との間で生まれた子供を育てている、このブラックフェイスに囲まれた国で

黒人である私は日本の東京、人口の98.5%が日本人であるこの同質社会の国に住んでいる。妻のハルキは日本人であり、私の4歳の娘カントラは幼稚園のクラスで唯一の黒人の女の子だ。

私は妻が娘を産んだ直後に、日本の産婦人科で働く看護師が娘をハル・ベリーと呼んだことをよく覚えている。それは私の娘が聞いた最初の言葉だった。それを聞き混乱している私の様子を見てその看護師は「違った、ナオミ・キャンベルかな?」ととんちんかんなフォローをした。

娘のカントラは2013年の夏に生まれた。専業主夫の父として私はインターネットを通じてセサミーストリートを見せて娘にアルファベットや色、形、数字を英語で教えた。

私は日本のテレビを見せることを考えたが、妻は私に日本のテレビ番組は定期的にブラックフェイスを使っていると説明しそれを止めた。(中略)

私が日本に住み始めたのは2011年の頃だった。最初の2年間は混乱した、私が狂っているのか、それとも日本はアメリカと同じなのかと。黒人として、私は "White Fear" と自分が襲われる可能性を感じ取ることに慣れていた。

(White Fear:白人が潜在的に黒人を恐れること。アメリカで相次いだ警察官による黒人射殺事件やKKKによる人種差別運動もアメリカの白人が潜在的に持つ黒人への恐怖が引き起こしたと説明されたりします。)

東京の地下鉄では通勤者は私の近くに座ったり立ったりしようとしなかった。私はそれが過度に不安に感じているだけの思い過ごしなのか、それとも知らず知らず彼らを不快にさせていたのかわからなかった。人々は私と距離を保ったが私を奇妙な物でも見るかのようにじっと見つめてきた。

エスカレーターを利用したり食料雑貨店やバス停で列に並んで待ったりしていると、近くにいた女性がそわそわしだし自分のハンドバックをギュッと抱きかかえたり振り返って何度も私の顔を見たり、まるで私から身を守るかのような動きを見せた。

定期的に英語の教師としても働いているのだが、学校の子供たちは私がボブ・サップのように見えると言ってくる。ボブ・サップとは格闘家であり日本のバラエティ番組で活躍したアメリカ出身の黒人だ、彼はよく凶暴なキャラクターを演じていた。

私が妻のハルキに子供たちからサップみたいだと言われると伝えると彼女はこう言った。「それよ、だからうちにはテレビを置きたくないの。彼らはあなたが黒人だからそう言ってるの、ただ黒人であるというだけで。」

地下鉄や鉄道の駅構内では黒人の顔をまねて顔を黒く塗ったブラックフェイスの日本人が写った広告が目に入る、それはキツネに化かされたような光景だった。

「娘のカントラが毎日日本のテレビを見るのを想像してみなさいよ、あの子はきっと怯えるわ」と妻は言った。だがテレビを娘から遠ざけるだけでは彼女にブラックフェイスを見せないのに十分ではなかった。

「パパ、あれは何?」私の4歳の娘は昨年11月に私に尋ねてきた。私たちは地下鉄に乗っていた。そこには顔を黒く塗った日本人男性の広告が壁に貼ってあった。

「ごめんね。」妻は娘をその広告から引き離しそう言った。「これはイジメよ」と妻が言った。 「それ怖いね」と娘は答えた。

その広告は『陸海空地球征服するなんて』という日本のテレビ番組を宣伝していた。それはブラックフェイスの日本人がアマゾンに行き地元の部族の中に入り混じり野蛮な感じで肉にかぶりつくというものだった。

これらの日本のメディアが伝えるイメージが日本の子供たちの黒人に対する視点を形作っているのだ。

ブラックフェイスはカントラにこう教えるだろう、お前は醜く笑われる存在だと。私たちの愛する娘は "恐れられる対象" であり、彼女の縮れた髪の毛は "笑える特徴" なのだ。

私は娘の美しい褐色の肌と茶色のアフロを誇りに思ってくれるように彼女を育てようとしているが、それ自体が日本のモノカルチャー、単一的な文化への挑戦となった。

日本に暮らす日本人とのハーフの子供たち、あるいは日本人以外の子供たちは自分自身を憎むように強いられる危険性が常にある。集団主義的な日本ではその枠組みに収まらない人間は虐げられるか弾き出されるか収まるよう強いられる、たとえそれが日本人であってもだ。

それはアメリカの白人が大多数の地域で育ち黒人の両親を持つことによって葛藤した私の子供時代を思い出させた。"自分たちはお前よりも優れている、なぜなら自分は白人だからだ"、そう言い放ってくる白人の同級生の中で育った私は家族から黒人としての誇りを失ってはいけないと教えられてきた、それは今でもだ。

両親が私にそうしてきたように私も娘のカントラにそれを教えてきたが、私たちの家の外にあるすべてのものが物事を複雑にした。

娘は日本で生まれ日本で育ったが彼女は日本人とはみなされない、なぜなら日本人らしくない容姿だからだ。

最初、娘は他の子供たちがなぜ遊んでくれないのかを理解していなかった。幼い我が子に人種差別を説明することはできなかった。私はそれができないことに、そんなことをしなければいけないことに憤りを感じた。

「あんな子供達のことは忘れてしまうんだ。カントラはあんな子たちとは違う。」私は自分の子供時代を思い出しながらそう言った。「パパはカントラを愛している。お前は恐れを知らない強い子だ。強くあることを忘れてはいけないよ。」

私が娘を学校に送り迎えに行くときには、私は日本の主婦たちに "私がここに属していない" ことを強く認識させられる。彼女たちは睨みつけるように私を見る、そして私の存在を認めることはめったにない。

彼女たちにとって私は "存在しない" か "不愉快/厄介な存在" なのだ。 外国人であり、さらにこの時間に仕事をしていない専業主夫の父である私は彼女たちからすると極めて "間違った存在" に映っていた。

そして私の存在は、私の子供のさまざまな特徴や育ちを余計に際立たせた。

公園などの遊び場に集まる母親たちも同じだった。またその母親たちの子供らは彼女たちのアバターであり分身だ、そして彼らは母親たちがそうするように外国人に接した、そう、私の子供に。日本では子供たちは日本のことわざを学ぶが「出る杭は打たれる」ということわざはまさに娘に対する扱いを象徴していた。

カントラが2歳のとき、彼女は公園の遊び場でそこで遊んでいた少年に向かって一緒に遊ぼうと頼んだ。すると少年はボクサーのように身を構え娘に向かって腕を振り回した、その拳は娘の笑顔からほんの数インチ前で止まった。

子供たちは娘がまるでキングコングであるかのように彼女から逃げだした。その場にいた少女は 「Kowai (怖い)」と言いながら、溺れかけた人のように必死に母親にすがりついた。

カントラはその女の子の腕を引っ張りながら 「ねぇ、遊ぼうよ」と言っていた。彼女の純真さが否定される所を目の当たりにするのはただただ悲しかった。

ほぼ毎日、カントラが受け取る答えは同じだった。「どこかにいって!」

そんな日々を通してカントラは、子供たちと遊ぶための道筋としてまずその母親と仲良くなることを学んだ。

今、娘は幼稚園の初年度を終えようとしている。 彼女はじっとしていることができず、いつも歌を歌う、生命感を体中からほとばしらせるような活発な子に育った。時にはその元気さに疲れることもあるが、私は彼女がそれを失うことを望んでいない。(中略)

カントラが成長するにつれて見せてくる変化は、この国との私との関係をさらに複雑にしていった。

最近カントラは「パパ、私は学校に行きたくない」と言うようになった。「パパとママと一緒に家にいたい」

私が娘を学校に迎えに行った後の帰り道では、彼女がその日の出来事を話そうとはしなくなった。

以来私は毎朝娘を鏡の前に立たせ、彼女と一緒に鏡に映る自分に向かって「私は自分が好きだ。私は賢い人間だ。私は美しい。私は強い。」というようになった。逆境に立ち向かうために、カントラは私の行動を模倣した。

それは私にある決意をさせるに十分な光景だった。

日本に住み始めてからほぼ7年、私はこの国に慣れた。それまで不快に思えたものにも慣れた。私は家族を与えてくれた日本が大好きだ。私たちはこの国で良い人生を送ってきたし、この国は美しい。だがしかし、カントラのために、私たちは妻がビザを取得した後にアメリカに戻ることに決めた。

娘は彼女のように見える人がたくさんいる環境にいるべきだ。娘はもっと自分自身に誇りを持つべきであり誇りに思えることがたくさんある子だ、だがここにいてはそれに気づくことができない、日本人の価値観を通して黒人である自身を見ることはそれを妨げる。(中略)

私は娘が自分の生まれた国を、母親が生まれた国を受け入れつつも黒人女性として強くあれるように育てるにはどうしたらいいのか悩みに悩んだ。日本では、カントラは常に "よそ者" のように扱われてしまう。彼女がどれだけ日本語をうまく喋れるかは関係ない、日本で生まれようとも日本で育とうとも。

私の娘の話に最も近いのは、2015年にミス・ユニバース・ジャパンとして選ばれた 宮本エリアナ だろう。

彼女はアフリカ系アメリカ人の父親と日本人の母親との間に産まれ日本で育った。後にモデルとなりミス・ユニバース日本代表として選ばれたのだがこれが大きな物議を呼んだ。ほとんどの日本の人々は彼女が日本を代表することを望んでいなかった。宮本エリアナは "日本人に見えなかった" からだ。仮に彼女がガングロ、肌を黒く焼き黒人の真似をする日本人だったとしたら人々から容認されたかもしれない。

最近では娘は、遊び場に飛び込んでいく前にその淵にまず立ち、混血か外国人あるいは純粋な日本人に見えない子供を探すようになった。彼らを見つけてから彼女は駆け出し遊ぶようになった。

娘は同じ世代の子供たちとは違って見えるが、それでも日本は彼女の母国でもある。この島国にはカントラのような少数の子供たちが散在している。

娘のカントラは強い子だ、私と妻はいつも彼女のたくましさに圧倒される。そしてそんな彼女が私たちから何かを学ぶなら、それは共感の心であってほしいと思う。私たちは誰かが誰かよりも上だとか下だとかそういったことは彼女に教えていないしこれからもそうだろう。

娘が学校から帰ってきて「パパ、黒人って他の人と違うの」と言った時も私はこう答えた「そうじゃないよ、皆それぞれ違っているんだ」 【https://kaikore.blogspot.jp/2018/03/raising-black-daughter-japan.html
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イラン  自由を求め、アメリカ文化大好きな国民の声を制約する内外の政治環境

2017-07-29 10:44:19 | 人権 児童
(イランではgooはアクセスできませんでした。帰国フライトの乗継地バンコクでようやく更新できるようになりましたので、遡ってアップしています)

(イラン北部ラシュト出身の3人組【2016年8月31日 神田大介氏 withnews】)

ギャル系・おしゃれ女子
7月28日 イラン観光5日目  イスファハーン観光
7月29日 イラン観光6日目  イスファハーンからテヘランへ移動 途中カシャーン観光

イスラム教の制約が重視されるイランでは周知のようにファッションにもいろいろ制約があります。

男性の場合は、欧米文化を象徴するネクタイは着用しない、肌を露出する半ズボンは避けるといった程度ですが、常に国内外で問題になるのが女性のファッションです。

女性の美しさの象徴である髪はスカーフで覆うこと以外にも、「首元(胸元)は露出させない」「ヒップラインを出さない」という不文律もあるようです。違反すれば、むち打ちの刑を科されることもあるとか。

こうしたドレスコードを厳格に守る場合、頭からすっぽりと体全体を覆う黒い布(チャドル)を着用する形となり、その黒ずくめのファッションを私は「カラス・ファッション」と呼んでいます。

日差しのきついこの時期、サンバイザーのようなつばを着用する女性もいて、横から見ると、そのつばが嘴のようにも見えて、ゆったりしたチャドルと併せて「ペンギン・ファッション」と呼んだ方がいいかも・・・・とも感じます。

ただ、自由で個性的なファッションを求める女性がこれで満足するはずもなく、上記のような「カラス」あるいは「ペンギン」は、首都テヘランの若い女性について言えば、むしろ少数派のように思えます。

もちろんスカーフは着用しますが、前髪を意識的に露出する(髪も、イラン女性は黒髪がおおいのですが、金髪・茶髪に染めている女性も多くいます)、あるいはスカーフは髪の後ろに引っ掛ける形で、髪のほとんどを露出するいった具合です。

服の色も黒ではなく、カラフルな色使い。

結果的に、黒ずくめの伝統的ファッションと、鮮やか・個性的なファッションが同居する形にもなりますが、後者は当局の取り締まりとも“駆け引き”のリスクを負うことにもなります。
(当局の取り締まり姿勢は、厳しくなったり緩くなったり、変化するようです)

そのあたりの女性ファッションについては「イランにもいるギャル系・おしゃれ女子 風紀警察と駆け引き」【2016年8月31日 神田大介氏 withnews】https://withnews.jp/article/f0160831004qq000000000000000W03510801qq000013913Aに画像とともに詳しく紹介されています。

実際、思わず視線が釘付けになるような思い切ったファッションの女性も少なくありません。
もちろん、伝統的なチャドルも、それはそれでエキゾチックな印象も・・・・セクハラ発言になりそうなので、この話題はこのあたりで。

街にあふれるアメリカ製品のコピー商品
先日、水タバコ抑制策によって、チャイハーネで楽しむことが難しくなっている・・・という話を紹介しましたが、当局が抑制したいのは水タバコといいより、チャイハーネ(茶店)自体であるとも。

それは、チャイハーネのようなところに大勢が集まって、政治を含むいろんな話をすることを嫌っているから・・・という指摘も。

確かに、戒厳令が出されるような国では、一定人数以上が集まることが禁止されますが、それと同じ発想でしょう。

イランは国際的にはアメリカと厳しく対峙する関係にあり、アメリカ製品を国内で手にするのは難しいのですが、実はイラン国民は“アメリカ文化が大好き”で、アメリカ製をパクったような商品が氾濫している、ただし、そういうなかにあってどこのレストランでも目にするコカ・コーラは本物で、その背景は・・・・という話も。

****@テヘラン)イラン人は実は米国文化好き? あの手この手で****
4月にイランの首都テヘランに赴任して、3カ月あまりが経った。反米国家として知られるイラン。だが、実際にテヘランで暮らしてみると、驚くほど米国製品やコピー製品と思われる商品を多く見かける。

電器店では米アップルのロゴマークが至る所に飾られ、携帯電話のiPhoneやアップル製のラップトップコンピューターが売られている。

スーパーにはコカ・コーラの製品があふれかえる。実はイラン人は米国文化や米国製品が大好きなのではないだろうか。
 
それでも、イランで米国製品を手に入れるのはハードルが高い。イランが核開発を大幅に制限する見返りに国際社会からの経済制裁を解除させた2015年7月の核合意後も、イランは依然として米国からテロ支援国家に指定され、経済制裁の対象。そのため特別な場合を除いては、米国企業はイランとの取引はいまだに禁じられているからだ。(中略)

米国文化の象徴ともいえるコカ・コーラも、イラン滞在中はお預けかなと思っていたが、こちらもスーパーなどで買い求めることができる。

調べてみると、こちらは輸入品ではなく、イラン北部の第2の都市マシュハドにある工場で生産された純正品だというのだ。79年のイスラム革命以後、米国企業が締め出されたのに、現在コカ・コーラをイランで生産できるのはなぜなのか。(中略)

イスラム革命の機運が高まりつつあった78年ごろ、コカ・コーラはイランから撤退。だが、イラン人からのニーズが強かったこともあり、1990年代、アイルランドにあるコカ・コーラの子会社から、コーラの濃縮原料を輸入し、イラン国内で製造するという「抜け道」を使ってコカ・コーラのライセンスがイラン企業に付与されたのだという。(中略)

コカ・コーラは生き残った一方で、マクドナルドやケンタッキーフライドチキン(KFC)といった米国の飲食店は今も出店ができていない。

明確に禁止する法律はないというが、高位の宗教指導者が最高指導者となる「イスラム法学者による統治」を採用するイランのイスラム体制では、マクドナルドやKFCといった米国企業のイラン進出は、宗教指導者が忌み嫌う西洋文化の浸透となり「米国支配の象徴」と見なされるからだ。

テヘラン中心部の高速道路沿いに立つ1軒のハンバーガーショップ。一見すると、ニューヨークに本店がある「SHAKE SHACK」(シェイク・シャック)そっくりだ。でも、よく見ると「SHEAK SHACK」(シーク・シャック)とある。

(中略)友達3人と一緒に来ていた医療系企業インターンのエラヘーさん(25)は「コピーした偽物の店でも、米国の雰囲気があるだけで私たちには魅力的よ。イラン政府は米国政府のことは嫌いだけど、私たちは米国文化が大好きだから」と笑顔で話し、おいしそうにハンバーガーをほおばっていた。
 
(中略)これだけではない。テヘラン市内でいわゆる米国ブランドをまねした店は枚挙にいとまがない。(中略)数え切れないほどだ。
 
大学生のハメッドさん(20)は「政治と文化は別だよ。本心ではみんな米国に旅行したいし、米国の文化に憧れている。いつか堂々と、米国企業がイランに来られるようになればいいのにな」と話す。

2年前の核合意後、テヘランにマクドナルドが進出するかもしれないとのうわさが流れただけで、ネット上の検索ワードで「マクドナルド」がトップになるほどの人気ぶりだ。

私も、日本では1カ月に数回はマクドナルドやサブウェイに行っていた。任期中にテヘランでビッグマックやサブウェイクラブを楽しめる日を心待ちにしている。【7月22日 朝日】
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ハメネイ師のロウハニ大統領への恫喝
イランは、宗教的価値観を重視する聖職者、現体制における経済的既得権益を享受する革命防衛隊などの勢力と、穏健派とされるロウハニ大統領を支持してより自由な体制を求める人々の間の綱引きが展開されています。

今日、イスファハーンからテヘランに戻る際に、聖職者の街で、保守強硬派の牙城でもあるゴム周辺を通りました。

ゴム一体は非常に狭いながら行政区画が独立し、国からのいろんな資金が流れている、国の補助金によって物価が非常に安く抑えられている、イスファハーン方面からおいしい水を送るため、周辺では水は枯渇している、現在は聖廟にいたるモノレールが建設されている・・・等々、特別な権益を得ているようおです。

大統領職奪還に失敗した保守強硬派と自由を求める国民を基盤とするロウハニ大統領の間の関係は厳しさを増しているとの指摘も。

****イランで大統領と保守派が権力闘争、サウジでも前皇太子を軟禁に****
ペルシャ湾をはさんで対立するイランとサウジアラビアの石油大国同士の関係は悪化の一途を辿っているが、両国の内部ではそれぞれ権力闘争が激化し、中東情勢に暗雲を投げ掛けている。とりわけ、イランではロウハニ大統領の弟が逮捕されるなど深刻で、最高指導者を巻き込む対立に発展している。

ロウハニ大統領の実弟で、大統領特別補佐官のホセイン・フェレイドウン氏が司法当局に逮捕されたのは7月16日。同氏は逮捕後、体調を崩し、病院に搬送され、17日になって保釈された。同氏の容疑は「金銭をめぐる犯罪」に関与したというものだが、詳しくは明らかにされていない。
 
同氏は2015年のイラン核合意の交渉で重要な役割を担ったことで知られるが、警察や治安機関、司法当局を牛耳る保守強硬派が改革穏健派のロウハニ大統領にダメージを与えるため、かねてから目を付けていた人物でもある。「大統領を直接狙うという露骨なやり方をせずに、大統領に痛手を与える巧妙なやり方」(イラン専門家)だった。
 
保守強硬派はなぜ今、ロウハニ大統領に対して攻勢に出たのか。それは大統領が5月の大統領選挙の圧勝の勢いに乗り、保守強硬派の牙城である司法当局に対する非難を強め、これに同派が危機感を深めたことにありそうだ。

大統領は司法当局が恣意的な逮捕と残虐行為の歴史を繰り返してきたと批判し、同国で最強の治安機関であり、聖域とされてきた革命防衛隊の経済的な不正にさえ、言及した。
 
「国内の自由度を拡大し、西側への開放政策を推進する」という大統領の姿勢は最高指導者ハメネイ師の反発も呼んだ。ハメネイ師は6月、政治家らの集会の席で、ロウハニ大統領に対し、イラン最初の大統領バニサドルと同じ運命をたどることにならないよう警告した。
 
バニサドルは革命直後の大統領だったが、保守派聖職者らと対立して弾劾され、女装して空路脱出し、フランスに亡命した。ハメネイ師はこれまで、ロウハニ師に時折歯止めを掛けながらも、イラン核合意などを支持してきたが、亡命した大統領を引き合いに出しての叱責は初めてだ。(中略)

つまりは大統領の実弟の逮捕と、米研究者の有罪判決はロウハニ大統領と保守強硬派との権力闘争が激化していることを明るみに出したもので、革命防衛隊や司法当局の逆襲が始まったと見ていいのでないか。

重要なのは、大統領の言動を結果的に容認してきたハメネイ師が“ロウハニ離れ”を明確にし始めたことだ。
 
イラン核合意を非難してきたトランプ大統領はイランが合意を順守していることを渋々認める一方で、イランの弾道ミサイル発射実験に対してこのほど、新たな制裁措置を科し、イランへの圧力を強化。

だましだましイランの自由化を進めてきたロウハニ大統領にとっては、こうした米国の動きは自らの立場を弱め、保守強硬派を勢いづかせるものに他ならない。(後略)【7月28日 佐々木伸氏 WEDGE】
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【危機を助長・加速するイラン保守強硬派とアメリカ・トランプ大統領】
イラン嫌いのトランプ大統領はサウジアラビアに肩入れして、中東での両国の対立を煽っていいます。

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トランプ政権の対中東政策は一言で言うと、バランスを欠いています。

サウジを、「価値を共有する同盟国」などと持ち上げています。サウジは基本的人権を尊重するよりも、イスラム原理主義に基づく国であり、トランプのこういう発言がどこから来るのか、理解に苦しみます。あえて比較すればということですが、サウジよりもイランの方がまだ民主主義的です。
 
トランプのサウジ贔屓がサウジのイラン嫌いと共鳴し、イランを敵視することにつながっているのですが、これは感心しません。カタール孤立化をサウジなどがやっていますが、これもトランプの支持を得た上でということのようです。
 
中東は複雑に諸勢力が入り混じってそれぞれの利益を追求している地域です。紛争は数多く起こっています。米国は、紛争当事国より少し距離を置いて、中東安定化を進める仲介役になる方が中東の安定に資するのではないかと思われます。

ところが、トランプは中東の諸勢力を敵味方に二分する単純な思考で複雑な情勢に対処しようとしています。これでは失敗の可能性が高いです。失敗した時に、さらなる介入になるのか、あるいは「あとは野となれ山となれ」の介入縮小になるのか、今の時点で判断できません。【7月28日 WEDGE 「バランス欠くトランプの中東政策」】
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イラン内部の保守強硬派もアメリカとの緊張激化は望むところです。
ペルシャ湾では、危機を望む両者の危険なゲームが繰り広げられています。

****米海軍がイラン艦船に接近し警告射撃、革命防衛隊****
イランの革命防衛隊は29日、中東のペルシャ湾を航行していた同隊の巡視船が、接近してきた米海軍に警告射撃をされたと発表し、挑発的な行動だと非難した。
 
革命防衛隊によると、28日午後4時(日本時間同日午後8時30分)、防衛隊の艦船がペルシャ湾で米海軍の原子力空母ニミッツと護衛艦の艦隊を監視していたところ、米海軍は付近の油田・ガス田近くにヘリコプターを飛行させ、防衛隊の艦船に接近し、警告を発して照明弾を発射したという。防衛隊はこれを「米国による挑発的かつ非プロフェッショナルな行動」と非難している。
 
革命防衛隊は、米艦艇がとった「異例の行動を無視」して任務を続け、その後、米空母艦隊は現場海域を離れたという。
 
ペルシャ湾では数か月前から、米軍とイラン革命防衛隊との異常接近が頻発している。25日にも、革命防衛隊の艦船が米海軍に急接近したとして米海軍の艦艇が警告射撃を行う事態が発生した。【7月29日 AFP】
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自由を望むイラン国民の声を押しつぶしかねない国際関係悪化は憂慮すべき状況です。
コメント

イギリス つい最近までタブーだった「EU残留」が公然と語られ始めた

2017-07-22 21:40:52 | 人権 児童

(ロンドンの国会議事堂前で行われた抗議活動に参加した配達員ら(2017年7月18日撮影)【7月19日 AFP】)

難航必至のブレグジット 政権内部に不協和音も
イギリスのEU離脱(ブレグジット)の交渉は行われてはいますが、難航は必至の情勢です。

****英は「明確な説明を」=離脱交渉でEU責任者****
ブリュッセルで開かれていた英国の欧州連合(EU)離脱に向けた第2回交渉の会合は20日、4日間の日程を終えた。

会合は互いの主張内容の確認にとどまり、EUのバルニエ首席交渉官は記者会見で、英国に対し次回8月の会合での「明確な説明」を要求した。
 
バルニエ氏は「今週の会合は(互いの主張を)提示しただけだ」と指摘。離脱交渉の優先分野の一つであるEU市民の権利保障の問題は、EU司法裁判所が管轄すべきだとの考えを改めて強調し、これを否定する英国との溝の深さをうかがわせた。
 
会見に同席した英国のデービスEU離脱担当相は「建設的な交渉だった」と評価する一方、「協議すべきことが多く残されている」と認めた。【7月20日 時事】 
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イギリスとしては離脱後の通商協定の交渉に早く入りたいところですが、それ以前に上記のEU市民の権利保障の問題とか、「手切れ金」問題など厄介な問題が山積しており、それらをクリアしないと通商協定の交渉も始まらない状況です。

先の総選挙で“大失敗”したメイ首相の求心力は弱まり、ブレグジットの方向をめぐるイギリス側内部の対立もあらわになっています。

****<EU離脱交渉>英、閣内に温度差「手切れ金」などでズレ****
英国の欧州連合(EU)離脱を巡り、実質交渉が始まっているにもかかわらず、英国側の閣内で交渉方針を巡って意見の相違が解消されていない。EU側との溝も埋まっておらず、離脱交渉の長期化を懸念する声も上がっている。
 
「根本的な隔たりがある」。EU側のバルニエ首席交渉官は20日、第2回離脱交渉終了後の記者会見で、交渉の状況についてこう説明した。「手切れ金」と言われる離脱で生じる費用を英国がどこまで負担するかや、英国に住むEU出身者の権利などについて、議論が平行線をたどっているとみられる。
 
一方、英国の閣内でも、交渉方針などを巡り足並みが乱れている。1000億ユーロ(約13兆円)とも報じられている「手切れ金」について、バルニエ氏と一緒に会見を行ったデービス離脱担当相は「国際的な責任を認識している」と話し、妥協点を探る姿勢を示した。

だが、ジョンソン外相は今月11日の下院で「法外だ」と巨額の支払いを拒絶する姿勢を示していた。
 
交渉に臨む姿勢についても、温度差がある。EU以外の国との貿易・通商協定を管轄するフォックス国際貿易相は20日、「EUと離脱交渉が合意に達しなくとも英国は生き残れる」と妥協を望まない意向を示した。

一方、ハモンド財務相は先月18日、英BBCのインタビュー番組で「合意に達しなければ(英国にとって)非常に悪い結果をもたらす」と話し、一定程度、妥協してでも合意する必要性を示していた。
 
また、離脱交渉とは別の英国とEUとの通商協定に関する交渉期間について、フォックス氏は「2年間」との見方を示したのに対し、ハモンド氏は「3、4年」としており、意見の違いが表面化している。
 
地元メディアの記者によると、昨年7月に首相に就任したメイ氏は、6月の総選挙で少数与党になるまでは、閣僚らに対して、離脱交渉に関して勝手な発言をしないようにクギを刺していたという。

しかし、総選挙で大きく議席を減らしてメイ氏の求心力が弱まった結果、次期首相の座を巡る思惑も交錯して、政権内での不協和音が表面化しているという。【7月21日 毎日】
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EUとの交渉以外に、イギリス内部の法整備が必要になります。
1972年にEUの前身である欧州共同体(EC)に加盟するため設けたEC法を廃止するとともに、加盟後40年以上の間に導入されたEU関連法を自国法に置き換える措置で、関連法律は膨大な数になるようです。

****英議会、EU法「廃止法案」を9月7日に審議へ=下院議長****
英下院のアンドレア・レッドサム議長は20日、欧州連合(EU)離脱に絡むEU関連法「廃止法案」の初の議会審議が9月7日に実施されると明らかにした。

英政府は今月、同法案を公表。レッドサム氏によると、議会は9月7、11の両日に審議を行ったうえで次の段階に進むことを認めるかどうかについて採決する。【7月21日 ロイター】
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先は長く、残された時間はあまりにも少ない・・・状況ですが、合意ができないまま離脱した場合、その後のイギリスはどうなるのか?という根本的疑問も。

もちろん、EUとの関係がどうなろうが“世界の終わりではない”という強気の見方もあります。

****英EU離脱、貿易協定なしでも世界の終わりではない=英貿易相****
7月英国のフォックス国際貿易相は20日、インタビューに応じ、新たな貿易協定を結ばないまま英国が欧州連合(EU)を離脱したとしても世界の終わりではないとしつつ、現在の開かれた関係を維持できなければ世界的に大きな影響を及ぼすだろうと述べた。

20日の外国為替市場でポンドが下落。英国のEU離脱(ブレグジット)を巡る交渉が協定なしに終了すれば、世界貿易機関(WTO)ルールに基づいて貿易を行うことになるとの懸念が広がった。優遇アクセスがなくなることになり、多くのエコノミストは企業活動が損なわれると警告している。

フォックス氏は「人々はWTOシナリオを世界の終わりのように話しているが、WTOルールに基づいて米国や中国、日本、インド、湾岸諸国と現在貿易を行っていることを忘れており、われわれの通商関係は強固で健全だ」と指摘。「どんな後ろ向きのシナリオ、最悪のシナリオでも描くことは可能だ。われわれはそれよりもはるかに良い結末を目指している」と述べた。

その上で「欧州での貿易や投資に現在はない障壁を設ければ、欧州が開放的な貿易の案内役になることはなく、欧州大陸を越えて世界経済に影響を及ぼすだろう」と述べた。【7月21日 ロイター】
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まあ、それはそうかもしれませんが、何を好き好んで多くの難題に立ち向かい、不透明な未来に突き進む必要があるのか?・・・という素朴な疑問を改めて感じます。

国民の間にはブレグジットに対する疑いも
そうした“疑問”はイギリス内部でも改めて表面化しつつあるようです。

****ブレグジットを撤回したくなってきたイギリス人。果たして可能****
<つい最近までタブーだった「EU残留」が、イギリスで公然と語られ始めた。EU離脱に伴う痛みが明らかになるにつれて国民の間にはブレグジットに対する疑いが広がっている>

イギリスのテリーザ・メイ政権は今週、ブレグジット(イギリスのEU離脱)に向けた本格交渉を開始した。もっとも、交渉によってどんな結果を求めているのか、イギリスで知る者は誰一人としていない。

ブレグジットをめぐってメイ政権が混乱に陥り、閣僚たちの内紛が勃発する中、結局イギリスはEUに残留すべきだし、きっと可能だ、と信じる声が一部で高まっている。

残留に言及することは、つい最近まで政治的社会的タブーだったのが嘘のようだ。昨年6月の国民投票で52%対48%の僅差でEU離脱派が勝利した後、離脱はイギリス全体が従うべき「国民の意思」で、反対や逸脱は一切許されないと国全体が信じ込まされた。

それが今では、一部の政治家たちがブレグジットをやめる、つまりEUに残留する可能性を公然と語り始めている。親EUの少数野党、自由民主党の新党首で人気の高いビンス・ケーブル下院議員や、非常に人気のないトニー・ブレア元首相などがその例だ。

EU離脱「間違い」が初めて上回る
そもそも今更イギリスがEUに残留することは可能なのかを問いかける記事も出始めた。「ブレグジットを阻止する運動が加速している」と、英紙フィナンシャル・タイムズのコラムニスト、ゴードン・ラックマンはと書く。

イギリス世論が残留に傾いたとする決定的な世論調査はまだないが、世論の風向きが変化してきたのは確かだ。英世論調査会社YouGovが6月に実施した世論調査では、イギリスのEU離脱が間違いだと回答した割合が、45%対44%という僅差とはいえ、初めて正しいという回答を上回った。

ほんの1年前、メイは「ブレグジットはブレグジットだ」と宣言し、英首相に就任した。そのスローガンは、何があっても国民投票の結果を実行するという確固たる決意を表していた。

今年1月には「悪いディールを結ぶくらいならノーディール(合意なし)の方がいい」と言ってEU単一市場へのアクセスも断念する「ハードブレグジット」路線を打ち出し、3月にはEUに対し2年後の離脱を正式に通告した。

その後、すべてがくるい出した。メイはやらなくてもよかった解散・総選挙を6月9日に前倒しして実施すると発表。ブレグジット交渉を始めるにあたり政権基盤を盤石にしようと狙ったからだが、賭けは裏目に出た。与党・保守党は過半数割れの惨敗となり、メイはたった10議席のために北アイルランドの保守政党「民主統一党(DUP)」と連立を組まざるを得なくなった。

メイは求心力を強めるどころか、ほぼすべての権威を失った。それでも首相の座に留まるのは、与党・保守党が後任争いで分裂しかねないのと、さらなる総選挙を何としても避けたいからだ。

政権内の対立は激しさを増すばかりだ。フィリップ・ハモンド財務相は、EUの27カ国と親密な関係を維持しようと企て、「ブレグジットを妨害」しようとしていると非難されている。

こうした衝突や混乱には3つの理由がある。

第1に、昨年の国民投票は、EU離脱という選択で将来のイギリスとEUの関係がどう変わるのかを一切示さなかった。

国民投票で残留か離脱かの議論は一旦収まったが、ハードブレグジットかソフトブレグジットか、ノルウェー型かスイス型か、という議論はそこから始まった。

第2に、残留派の一部が離脱派の勝利後すぐにも起きると予測した経済の崩壊は現実にならなかったものの、離脱の影響は少しずつ目に見え始めた。

法律上はおそらく可能
英通貨ポンドは下落し、成長率は鈍り、投資は減速、物価も上昇し始めた。EUからの移民が大挙して本国に戻るにつれ、熟練労働者も不足する。

第3に、メイが総選挙で大敗を喫したことで、国民はもはやハードブレグジットを求めていないことがはっきりした。そこに、他の様々な離脱の選択肢が出てくる余地ができた。

しかし、多様な選択肢とそれに伴う困難を知れば知るほど、ブレグジットそのものへの疑問も強まっている。

保守党ほどではないが、最大野党の労働党も党内の意見が分裂している。ブレグジットに必要な膨大な数の法律を通過させるのは、途方もない悪夢になることが明白になってきた。

ブレグジットの撤回は、少なくともイギリスがEUを離脱する期限とされる2019年3月までなら、恐らく手続き上も法律的にも可能と思われる。

だが、現時点では撤回を訴える政治家はわずか数人。問題は、ブレグジットがもたらす試練が、離脱の期限までに世論を残留へと心変わりさせるのに十分な影響力を持つかどうかだ。【7月21日 Newsweek】
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“YouGovが6月に実施した世論調査では、イギリスのEU離脱が間違いだと回答した割合が、45%対44%という僅差とはいえ、初めて正しいという回答を上回った。”とのことですが、4月末〜5月上旬の調査については以下のようにも。

*****深まる分断と格差 「英国病」再燃も 離脱意識に変化****
・・・・世論調査会社ユーガブが4月末〜5月上旬に実施した調査によると、「EU離脱に賛成。政府は離脱実行に力を入れるべき」が45%、「離脱に投票しなかったが、政府は実行すべき」が23%となった。

「離脱に反対。政府は投票結果を無視するか覆すべき」は22%。68%の国民が「離脱を実行してほしい」と望んでいることになる。
 
一方、キングス・カレッジ・ロンドンのアナン・メノン教授の最近の調査では離脱支持が38%、残留希望も35%と拮抗(きっこう)している。

メノン教授は「2大政党という英国の伝統から、離脱と残留という対立軸が政治的アイデンティティーとして生まれている」と分析する。(後略)【6月22日 産経】
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どのように判断すべきかは迷うところですが、賛否が拮抗しているのは間違いないようです。

“国民投票の結果に従って進むべき”というのはわかりますが、“間違ったかも・・・・”という思いがあるようなら、離脱に関する理解が深まったところでもう1回民意を確認することも必要でしょう。

白紙に戻すことはいつでも可能でしょう。ことは自国の将来にとって重大なだけに“引き返す勇気”も状況次第では必要です。

イギリスで“酸攻撃” その背景は?】
ブレグジットの話題を離れて、最近のイギリスの話題で意外な感を持ったのは、下記の“酸攻撃”のニュース。

****デリバリー配達員への酸攻撃相次ぐ、国会前で抗議活動 英ロンドン****
英ロンドンで料理の宅配サービスの配達員らに対する、酸を使った襲撃事件がここ数年相次いでいる。こうした状況を受け、英国の国会議事堂前で18日、配達員200人余りが政府に対策を講じるよう要求する抗議活動を行った。
 
料理の配達サービス「ウーバーイーツ(UberEATS)」の配達員の1人はAFPに対し、「襲撃されたり、バイクを盗まれたりすることが大半だ。働いている時は安全だと感じない。昨日は複数の少年が自分に攻撃を加えようとして危険を感じた」と述べた。
 
13日夜にはわずか90分の間に5人の配達員が酸で攻撃され、その後、15歳と16歳の容疑者2人が逮捕されている。
 
英BBCは3月、警察がまとめたデータとして2010年以降にロンドンで腐食性の液体を使った攻撃が1800件以上報告されていると報じた。腐食性の液体を使った犯罪は2016年に454件に上り、2015年の261件から急増している。
 
一部専門家は、犯罪グループがナイフの代わりに酸を所持するようになったのは、訴追リスクが軽減される可能性があるためだと指摘している。
 
国会では17日、この問題への対応策が議論され、厳罰化と特定の物品を購入できる最低年齢制限の導入について多くの議員が支持を示した。【7月19日 AFP】
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卑劣な酸攻撃は、パキスタンやアフガニスタン、あるいはアフリカなどではよく目にする話題です。
しかし、イギリスのような国でも・・・・ということで驚いた次第です。

更に、政府に抗議する人々の写真を見て、先のロンドン高住宅火災のときと同じような、“イギリスのイメージ”とは異なるものを感じました。

数枚の写真を見ての憶測にすぎませんが、酸攻撃を受けいる宅配サービスの配達員らというのは、いわゆる白人よりは移民が多いのではないでしょうか。

酸攻撃をしかけている側の情報はまったくありませんが、もし、移民に対するいやがらせみたいな側面があるとしたら、イギリス社会の分断も深刻です。

そうした“どす黒いもの”がブレグジットの議論の底流にもあるとしたら・・・慎重に考えるべき問題です。
憶測の上に憶測を重ねた話にすぎませんが。

イランに行ってきます
明日からイラン観光に出発するということで、現在鹿児島から羽田に向かう飛行機の中です。
最近はフライト中でも無料WiFiが使えるということで、便利になりました。

深夜0時過ぎのフライトでバンコク経由でテヘランに向かいますが、バンコクで10時間ほどの乗り継ぎ時間があります。

バンコクも久しぶりなので、市内に出て、水上マーケットとか王宮といったベタな観光でもしてみようか・・・とも考えています。(時間が限られていますので、空港のトランジットツアーサービスが使えれば助かるのですが・・・・)

イランのネット状況は分かりませんが、海外レンタルWiFiもイランは対象外ということなどもあって、厳しい条件が予想されます。旅行中どれだけブログ更新できるかわかりません。
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女性ファッションをめぐる軋轢 ドイツの「顔を覆うベール」 サウジの「ミニスカート」 ケニアでも

2017-07-20 22:43:12 | 人権 児童

(ケニアの首都ナイロビで、「私の服装は私の選択」などのプラカードを掲げて女性暴行事件に抗議する女性たち(2014年11月17日撮影)【7月20日 AFP】)

ドイツ 右派AfDへの実験的対策として、バイエルン州で顔を覆うベールの着用が禁止
欧州ではイスラム系移民の増加に伴う様々な軋轢もあって、フランス、ベルギー、ブルガリア、オランダでは公の場でイスラム教徒の女性の衣装「ブルカ」「二カブ」着用を含め、顔をベールやマスクで覆うことが法的に禁止されています。(どのような場で禁止されるのかは、国によって差もあるようですが)

ドイツでも右派勢力からのそうした法律を求める声があり、メルケル首相も一定にそうした声に対応する措置をとっています。

****ドイツ、顔覆うベールの着用を一部禁止 勤務中の公務員対象****
ドイツ議会は27日、イスラム教徒の女性らが顔全体を覆うベールについて、着用を一部禁止する法案を可決した。対象となるのは勤務中の公務員のみ。
 
隣国フランスでは2011年から、公共の場所でのベール着用が全面禁止されている。ドイツの右派政党は同様の措置を要求していたが、部分的な禁止にとどまった。
 
トマス・デメジエール内相は、移民の社会的統合には「われわれの価値観を、そして他文化に対する寛容には限界があるということを、明確にした上で伝えていく」必要があると指摘した。【4月28日 AFP】
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「固有の民族伝統」を禁圧するようなナチスの誤りを繰り返さない、差別主義・排外主義に走るポピュリズムには屈しない・・・という基本的スタンスのメルケル首相としては、あくまでも“限定的”なものに止めたというところです。

一方で、“限定的”ながらも禁止措置を導入した意味合いとしては、“「女性解放の政策」として、「女の顔を隠させる、いかなる性的不均衡の暴力にも、ドイツは、またEUは、断固抗議し、明確な反対行動を取っていく」という、旧東ドイツ出身の物理学者であるアンゲラ・メルケル首相の、極めて原則的なリベラリズム”があるとの指摘も。【2016年12月9日 JB Press 伊東 乾氏“爺だが乳幼児のトランプを諭すEUの母メルケル”より】

上記措置に加え、南部バイエルン州では、8月から公共施設では顔を覆うベールの着用が禁止となります。

現実問題としては街中でそうした女性をみかけることはほとんどないにもかかわらず、こうした禁止措置を実施する背景としては、“極右政党である「ドイツのための選択肢(AfD)」の動きを牽制するために、 保守的なバイエルン州での妥協案導入に実験的に踏み切ったのではないか”との指摘もあります。

イスラム教徒というより、イスラムフォビアな右派への対策としての選挙対策的な禁止措置に対しては、批判もあるようです。

****ドイツのバイエルン州でもブルカ禁止に その目論見は****
欧州全体が、「ニカブ」や「ブルカ」など、一部のイスラム教徒の女性の頭部や体の大部分または全体を覆うベールの着用を禁じる方向に動いている。総称して「ブルカ禁止」や「ブルカ討論」などと言及されることが多い。

フランスやオーストリアなどですでに特定の公共施設でのこれらのベール着用が禁止されているほか、審議中または地域的に施行されている国もある。今月11日には、欧州人権裁判所がベルギーでこれを禁ずる法律を支持する判断を下した。

南ドイツのバイエルン州でも来る8月1日より、公務員をはじめ、大学、幼稚園、あるいは選挙会場などの多くの公共施設で、顔を覆うベールの着用が禁止となる。ドイツで公式に禁止となるのは同州が第一号だ。

政治的駆け引き?
根拠としては、社会にとって人々がお互いの顔を見ることができるのは重要で、顔を向かい合わせることは「我々の対人関係の共存の基礎をなし、また我々の社会と自由な民主的秩序の基盤である」ことがあげられているが、これは今年初めの汎ヨーロッパ保守政党である欧州人民党の見解を引き継ぐものだ。

だが、2年前にはドイツの憲法裁判所が、教員の頭部ベールの着用を一律に禁ずるノルトライン=ヴェストファーレン州の法律を無効としているなど、宗教的寛容を目指す風潮があった。なぜ今、バイエルンでこの動きなのか。ニューズウィーク米国版によると、9月に行われるドイツ総選挙と無関係ではないようだ。

バイエルン州を率いる保守、中道右派のキリスト教社会同盟(CSU)と、その姉妹政党であるアンゲラ・メルケルのドイツキリスト教民主同盟(CDU)は、極右政党であるドイツのための選択肢(AfD)の動きを牽制するために、 保守的なバイエルン州での妥協案導入に実験的に踏み切ったのではないかと分析している。

AfDは早くから移民排斥や、衣服だけではなく宗教的建築(たとえば、イスラム教宗教施設の、ミナレットと呼ばれる尖塔など)のような象徴の禁止を主張している。

AfDにはもともと他国の極右政党ほどの勢いはなかったが、今回CDUとCSUが安全、移民、イスラム問題などで右派の主張に歩み寄ることにより、AfDの支持率は昨年15%ほどだったのが現在は10%以下に落ち込んでいる。

「問題ではないことを問題に」
しかし、南ドイツ新聞やツァイト誌などは今回の措置に、「存在しない問題を問題にしている」と懐疑的な見解を示している。すなわち、火のないところに煙を立てているだけということだ。

バイエルン州の州都ミュンヘンに本社を置く南ドイツ新聞は、ベールで顔を隠した女性をたくさん見かけるとすれば「夏のマキシミリアン通りだけだ」と揶揄している。マキシミリアン通りはミュンヘンの高級ショッピング街で、おそらく旅行者ということだろう。

2016年の時点でバイエルン州のイスラム教徒は人口のわずか4%とされ、そのほとんどはトルコ人だ。すでに何世代もドイツで暮らしているトルコ人たちはせいぜい髪をスカーフで覆うくらいで、まったく何もつけない女性も多い。

南ドイツ新聞はまた、 顔を隠すことはコミュニケーションの障害になるというCSUのヨアヒム・ヘルマン州内務大臣の意見を肯定し、また顔を隠すことが、とくに女性たちが強制されている場合は賛成できないとしながらも、「禁止」という政治的行為は不必要だとしている。

また、「バイエルンを最も安全な州のように思わせ、CSUを最も強力な党にするために」州政府はこのような不毛な議論も厭わないと分析。一方ツァイトも、「CSUは人権保護に真剣に取り組みながらもそれと相反する行為をする唯一の党だ」と指摘している。

バイエルン州での今回のブルカ禁止はやはり、実際的な影響を狙ってのものではないようだ。ドイツ全土でも、ブルカ着用者は通説で300人と言われている(ただし、この説にはあまり根拠がないことをツァイトが検証している)。結局、禁止によって目に見える大きな変化があるとは考えづらく、象徴的な意味しかないように思われる。また、憲法で宗教の自由が保障されているので、フランスのように禁止が連邦レベルで起こることもなさそうだ。

フランスでは2011年より特定の公共施設でのブルカ着用が禁止されているが、結果は統合どころか、ムスリムに疎外感を与え孤立させてしまっていると、キングス・カレッジ・ロンドンの政治思想学者アラン・コーフィーは語っている。【7月20日 モーゲンスタン陽子氏 Newsweek】
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なお、欧州人権裁判所(ECHR)は7月11日、イスラム教徒の女性の顔全体を覆うベール「ニカブ」を公共の場所で着用するのを禁じるベルギーの法律について、支持する判断を下しています。

サウジアラビア ミニスカート女性を一時拘束
欧州でイスラムファッションが問題になっているのに対し、厳格な戒律が重視されるサウジアラビアでは西洋風のファッション「ミニスカート」が問題になっています。

****<サウジアラビア>ミニスカート女性「わいせつ」と一時拘束****
イスラム教の厳格な習慣・戒律を重視する体制の下、女性の肌の露出が控えられているサウジアラビアで、Tシャツにミニスカート姿で歩く映像を動画サイトに投稿したとして女性が一時身柄を拘束される騒動になり、波紋を呼んでいる。
 
英BBCなどによると、動画には首都リヤドから約150キロ北のナジド地方にある要塞(ようさい)を女性がミニスカートで歩く姿が映っている。ナジド地方は特に保守的な地域として知られる。

16日ごろにインターネット上で話題になり、その後、警察はこの女性を「わいせつだ」との理由で拘束。だが女性は「映像は別の人物が撮影した。投稿されたとは知らなかった」と意図的な投稿を否定し、18日に釈放された。
 
サウジでは女性が外出する際には全身を覆う黒布(アバヤ)で体の線を隠し、頭部にはスカーフを巻く姿が一般的だ。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上では「厳しく罰すべきだ」「何を着ようが自由だ」と賛否が分かれている。

イスラム教の聖典コーランは女性の肌について「外に出ている部分は仕方ないが、その他の美しい所は人に見せぬように」と述べている。
 
最近はサウジを訪問する外国人女性の服装も話題になり、トランプ米大統領の5月の訪問時には同行した妻メラニアさんと長女イバンカさんは髪を隠さないままだった。メルケル独首相やメイ英首相も最近の訪問時にはスカーフを着用していない。【7月20日 毎日】
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女性の車運転が認められていないなど、女性への抑圧的な対応では“悪名高い”サウジアラビアですので、今回騒動も驚きはありませんが、「やれやれ・・・」といった感も。

何をもって「わいせつ」とみるかは文化によって異なるのは当然ですが・・・。

そんなサウジアラビアでも、女性問題に関する改革の動きはないことなない・・・ようです。

****<サウジアラビア>公立学校で女子の体育授業解禁へ****
イスラム教の厳格な習慣・戒律を重視する体制の下、女性の肌の露出が控えられているサウジアラビアで、公立学校での女子生徒の体育の授業が認められることが決まった。ロイター通信が伝えた。
 
サウジでは現在、女子生徒の体育は一部の私立学校のみで実施され、「適切な服装」で行うことなどの制約がある。大半の公立学校では導入されておらず、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は「公教育で女子の体育を禁じている唯一の国だ」と批判していた。
 
だが近年、サウジ国民には肥満が増え、今後は医療費が増大する懸念も出ていることから、政府は国民の健康向上を実現する方策を検討していた。
 
国政助言機関の諮問評議会は2014年、女子体育の導入を認めたが、宗教界から「西洋化しすぎだ」と反発の声が上がり、実施されていなかった。こうした中、サウジ教育省は今月11日、公立学校での導入を認めると発表した。導入時期は未定。
 
サウジでは女性の五輪参加も長く認められていなかったが、12年のロンドン五輪で初めて柔道と陸上800メートルで2選手の参加が認められた。【7月13日 毎日】
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サウジアラビアは宗教支配が云々されるイラン以上に“異質”な宗教・文化の国ですが、アメリカにとっては重要な同盟国です。

女性のファッションだけが問題となり、男性の服装は問題にならないところに、女性に対する不均等な性的圧力がある・・・とも思われます。

ケニア 「挑発的服装」の女性への暴行
イスラムを離れて、住民の8割以上がキリスト教系のアフリカ・ケニアでも、女性の“挑発的服装”に関する話題が。

****挑発的な服装」理由に女性暴行、男3人に実質的な終身刑 ケニア****
服装が挑発的すぎることを理由に女性を脱がせて性的暴行を加えた男3人に対し、ケニアの裁判所は19日、実質的な終身刑を言い渡した。
 
事件は、首都ナイロビ郊外のガソリンスタンドで女性が通りがかりの暴漢に衣服をはぎ取られ、性的暴行されたうえ携帯電話と現金を強奪されたもの。暴行の様子はカメラで撮影され、ソーシャルメディアに投稿されて広く拡散された。
 
ケニアではこうした女性暴行事件が頻発している。この事件をきっかけに、ハッシュタグ「#MyDressMyChoice」(私の服装は私の選択)を共有して抗議活動が展開され、2014年にはナイロビで、体のラインが出やすく丈の短い服を着た数百人が女性に対する暴力の撲滅を訴えてデモ行進した。
 
19日の判決言い渡しに当たり、判事は「われわれは平等だが、女性の尊厳を尊重することも等しく重要だ」と指摘。「世の中では多くの無教養な男たちが、こうした行為をしている」と非難した。
 
被告3人に言い渡された量刑は判決文上では死刑だが、ケニアは現在死刑の執行を禁止しているため、実質的には終身刑となる。【7月20日 AFP】
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先述のように、「わいせつ」「挑発的すぎる服装」の基準は文化によって異なりますが、暴行云々は論外です。
単に男性側が性的欲求に突き動かされたにすぎず、無期懲役なり去勢措置が妥当でしょう。

確か、タリバンが支配していたかつてのアフガニスタンでは、女性のハイヒールも“靴音が男性をその気にさせる”と言う理由で禁止されていたように思います。

こうなると、女性側の問題ではなく、わいせつな妄想にとらわれる男性側の問題であり、屈折した性的欲求を蓄積させる宗教・文化の問題です。
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性・ジェンダーの多様化を容認する流れ

2017-07-01 22:13:55 | 人権 児童

(独ベルリンのブランデンブルク門前で開かれた同性婚容認を支持する集会に参加した人々(2017年6月30日撮影)【6月30日 AFP】)

珍しくなくなった同性愛を公言する政治指導者
最近は同性愛者を公言する政治指導者は、さほど珍しくなくなりました。

セルビア人のほとんどがセルビア正教会で、政治的にも民族主義的傾向が強い右派が政権を握っていることで保守的なイメージもあるセルビアでも、女性同性愛者の首相が誕生しています。

****同性愛公言の女性首相誕生=セルビア****
セルビア議会は29日、女性で同性愛者のアナ・ブルナビッチ首相(41)の就任を賛成多数で承認した。セルビア初の女性首相となり、AFP通信によれば、保守的なバルカン半島諸国で初めて同性愛者を公言する首相が誕生した。
 
ブルナビッチ氏はこれまで行政・地方自治相を務め、ブチッチ大統領から首相指名を受けていた。ブルナビッチ氏は議会演説で「ロシアとの関係を強化しつつ、欧州連合(EU)加盟交渉を加速させる」と訴えた。【6月30日 時事】 
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6月14日には、アイルランドでも14日、少数与党の統一アイルランド党の党首で同性愛を公言しているレオ・バラッカー氏(38)がアイルランド史上最年少の首相に選ばれています。

5月25日にベルギーのブリュッセルで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席した首脳陣の“パートナー”(いわゆる“ファースト・レディ)の記念撮影写真を紹介したアメリカ・ホワイトハウスが、同性愛者でもあるルクセンブルク首相のパートナー“ファースト・ジェントルマン”を無視した件は、トランプ政権の同性愛に対する批判的見解を示すものか・・・と、世界中で話題にもなりました。

ドイツ・メルケル首相も同性婚容認の方向へ舵を切る アジアでは台湾が
同性婚を法的に認める国も増えています。

ドイツ・メルケル首相は、これまで同性婚は認めない立場でしたが、国民世論が容認方向に傾いていることから、9月の総選挙対策もあって、同性婚に反対する党議拘束を解除する形で、同性婚容認への道を開いています。
ただし、メルケル首相個人としては、あくまでも反対の姿勢ではありますが。

****同性婚法可決…賛成多数で 今秋にも施行****
ドイツ連邦議会は6月30日、同性間の結婚を認める法案について審議し、与野党の賛成多数で可決した。法案は連邦参議院でも可決される見通しで、今秋にも施行される。

メルケル独首相の保守系与党会派キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は長年、同性婚に強く反対してきたが、今回の「歴史的決着」は9月の連邦議会総選挙だけでなく、独政界の今後にも影響するとみられている。
 
DPA通信によると、投票総数は623票。左派系野党・緑の党などから393票が賛成に投じられ、CDU・CSUからも少なくとも73人が賛成に回った。メルケル氏は議決後、「私にとって憲法に定められた結婚とは男女間によるもの」と述べ、反対票を投じたことを明らかにした。
 
ただメルケル氏は26日のイベントで、参加者から同性婚について問われ「良心に基づいた判断がなされるような議論を望む」と発言。特段の政治的意図はなかったとみられるが、与党・社会民主党はこれを党議拘束がない採決を容認したものと解釈。野党と共闘して委員会採決を行い、本会議に法案を提出した。
 
ドイツでは社民党政権時代の2001年、同性カップルを「パートナー」として法的に登録する制度が導入され、社会保障や税制面での優遇が受けられるようになった。同性婚の導入により、今後は同性カップルが第三者を養子にできるなど、男女間の結婚と同じ権利が認められる。
 
独総選挙ではCDU・CSUを除く全国政党が同性婚容認を政策に掲げる。「最後の保守的価値」とされる同性婚問題の決着で、総選挙の争点の一つが消えることになる。将来的には保守と左派政党が近づき、新たな連立政権の枠組みにもつながる可能性がある。
 
欧州では既に13カ国で同性婚が認められている。【6月30日 毎日】
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“欧州では既に13カ国で同性婚が認められている”ということで、ドイツは“遅ればせながら”というところですが、アジアではまだ例外的で、先日台湾の憲法法廷が同性婚を認める決定を行い、アジア初の同性婚の法的容認へ動き出しています。

****台湾、同性婚を合法化へ アジア初 憲法法廷が判断 *****
台湾で、アジアで初めて同性婚が合法化される見通しになった。

司法院大法官会議(憲法法廷)は24日、結婚の前提を男女間と定めた民法の規定が、婚姻の自由と平等という憲法の趣旨に反するとの解釈を公表し、2年以内に立法措置をとるよう明確に求めた。
一方、その形式については柔軟な姿勢を示し、反対派にも一定の配慮をした。(中略)

「同性間の結婚を排除する民法には、立法上の重大な瑕疵(かし)がある」。司法院の呂太郎秘書長が同日台北市内で記者会見し、憲法法廷の判断を解説した。「社会倫理の維持を理由に同性婚ができないのは非合理で差別的。法の下の平等に反する」とも述べた。
 
合法化は蔡英文政権の公約で、昨年末にも実現が見込まれていた。ただ昨年11月に立法院(国会)で本格審議が始まると、保守派から「同性愛は異常で認めるべきではない」「父母のいる家庭のあり方や社会秩序を崩壊させる」との反発が表面化。審議の停滞を招いたが、今後は法制化への作業が本格化する。
 
立法院では結婚に関する民法の条文から男女の区別を消去することで合法化を実現する「民法改正」と、同性パートナーに結婚と同等の権利を保障する「特別法」を作る2つの方法が検討されている。
 
結婚は男女間のものという原則を守りたい反対派の間では、特別法なら容認できるとの意見が増えている。形式について憲法法廷は、民法には手を入れず、「特別法」を作るのも可能だと示唆。反対派にも一定の配慮をにじませた。実際に法制化が実現するのは、早くとも夏以降になるとの見方がある。【5月24日 日経】
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「民法改正」は認められないが、「特別法」なら・・・・日本の天皇退位の議論のようです。

フランスでは、女性同性婚者の生殖医療を認める方向の検討も
同性婚に関しては様々な問題・考慮すべきものがあるのでしょうが、誰しも思うのは「子供は?」という話。

一般的には、子供を育てたい同性婚夫婦は養子縁組をするというところでしょうが、生殖医療を用いれば、女性なら同性婚パートナーが妊娠することも可能です。
男性同性婚の場合は、代理母出産という方法も考えられます。

フランスでは、女性同性婚者の生殖医療を認める方向の検討が始まっているそうです。

****生殖医療、全女性に解禁へ=同性カップル出産可能に―フランス****
フランス政府は、自然な方法では出産できない女性同士のカップルや独身女性に対しても生殖医療を認める方向で検討を始めた。

国家倫理諮問委員会が6月下旬、「生殖医療をすべての女性に解禁すべきだ」と提言する答申を発表し、マクロン大統領も賛成の構え。ただ、同性カップルに厳しい姿勢を取るキリスト教団体など保守層は反発しており、調整は難航が予想される。
 
フランスでは現在、不妊に悩む男女のカップルにのみ、体外受精や第三者の男性による精子提供といった生殖医療を容認している。

倫理委の答申によると、近年では規制を逃れて隣国のスペインやベルギーで生殖医療を受け、妊娠する仏女性が毎年2000〜3000人に上るとみられる。
 
こうした事態を踏まえ、答申は「家族の在り方は変化している。独身女性や女性カップルに生殖医療を禁じることは問題だ」と結論付けた。

ベルギーで生殖医療を受け、女性のパートナーと生後3カ月の女児を育てる女性(29)は地元メディアに「解禁されたら2人目も考えたい」と話し、倫理委の判断を歓迎する。
 
ただ、女性が他人に子供を引き渡す目的で出産する「代理母」については、代理母となる女性の心身に悪影響を及ぼす懸念があるとして答申は容認しなかった。このため、男性同士のカップルが子供を得る権利は依然制限される。【7月1日 時事】
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トランスジェンダー アメリカのトイレ論争 日本では女子大が門戸開放?】
性的マイノリティに関する議論のなかで、最近話題になることが多いのが自分の生物学的性と内面的性が一致しない“トランスジェンダー”です。

アメリカでは、学校のトイレについてトランスジェンダーはどちらを使用すべきかに関する州当局の判断が、中絶や同性婚同様に、保守・リベラルの試金石ともなる非常に大きな政治問題ともなっています。

****学校でトイレに行けないトランスジェンダーたち 米国の教育現場が抱える問題****
◆トランスジェンダーの青少年が学校で抱える不安と不快
まず、トランスジェンダーの人々は直面する課題の類似からLGB(Lesbian, Gay, Bisexual)という人々とひとくくりにされているが、根本的性質は少し異なる。

LGBの人々は性的嗜好に基づいたマイノリティであるが、トランスジェンダーは自分の生物学的性と内面的性が一致しなかった人々である。
 
アメリカの青少年(13~17歳)のうちトランスジェンダーは総勢15万人以上いるとされている。そうした多くのトランスジェンダーの青少年は、70%が学校の公共トイレを利用するのを避けており、また時に水分の摂取も意識的に減らしていることが調査で明らかになった。

他にも、学校で自分の内的性別に沿わない更衣室やトイレの利用を強要されているケースが60%と半分を上回った。

◆法的サポートの必要性
トランスジェンダーの学生たちは、学校の公共トイレを利用する際に不安と不快も感じており、極端な場合には不登校になるケースもあり、教育を受ける権利に影響を及ぼしているという。(中略)

更衣室やトイレの使用は他の生徒の安全やプライバシーの問題と矛盾する、という反対意見もたびたび主張されてきた。つまり、制度を悪用する人の可能性が指摘されているのである。

しかし、長期間同じコミュニティにいる学生たちは「”一日だけトランスジェンダーのふりをする”ことはできないし、制度を整えた学校で学生が悪さをする回数が増えたという報告はない」、とレポート内で説明している。
 
これらの調査は、自分からトランスジェンダーであることを公表し主張をしているのにその権利が守られないことを前提としているような記述が多い。

日本では、そもそも自分がトランスジェンダーであることをカミングアウトしていない人も多いだろう。そのためトイレなどの設備のみを整えても、周りの目を意識して結局活用できないのではないだろうか。

物理的環境の整備も必要だが、同時に周りの人々の理解と許容という社会環境の整備もあって初めて成り立つのではないかと考えさせられる。【6月11日 大西くみこ氏 NewSphere】
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カミングアウトした者の扱いが問題となっているアメリカに比べ、日本ではそもそもカミングアウトができない社会的雰囲気がある・・・という状況ですが、少しずつではありますが、教育界でもトランスジェンダーに対する配慮の検討が始まってはいるようです。

****心は女性」女子大も門戸? 8校が検討前向き****
生まれた時の性別が男性だが、心の性別が女性のトランスジェンダーの学生の受け入れについて、国立2校、私立6校の8女子大が、検討を始めたか、検討を始める予定であることが朝日新聞の調べでわかった。

現時点で動きはないが、将来「検討するべき課題」と考える女子大も6割強の41あり、女子大が「多様な女子」にどう門戸を開いていくのかが注目される。(後略)【6月19日 朝日】
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南アジアで認められている「第3の性」】
アジアにあっては、トランスジェンダーについて、男性でも女性でもない「第3の性」という扱いもなされています。

タイでは軍事政権が主導した新憲法において“「第3の性」を認める公算が強まっている”という報道も以前ありました。

****タイの新憲法、「第3の性」認める方向****
タイが同国史上初めて、憲法で男性でも女性でもない「第3の性」を認める公算が強まっている。

新憲法案を作成している憲法起草委員会の広報担当者は、「男性または女性として生まれた人が、性別を変更したり、違う性別で生きたいと思うことは人権に当たる」と指摘。「国民は性別変更の自由を認められるべきであり、憲法や法によって平等に保護され、公平に扱われなければならない」との見解を示した。

第3の性では、個人が男性または女性のいずれかである必要がなくなり、自分の性別を自分で決められるようになる。

広報担当者は「今こそタイの社会における第3の性の存在を認め、保護する範囲を広げるべき時だ。第3の性が導入されれば、社会でも差別を減らす助けになる」と力を込めた。(中略)

アジアでは既に、インド、パキスタン、ネパールなどが第3の性を認めている。【2015年1月19日 CNN】
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しかし、その後公布された新憲法に関して、「第3の性」が認められたという話は聞きません。立ち消えになったのでしょうか?新憲法でどのように扱われたのかよくわかりません。

お堅い軍事政権ですから、認めなかったという方が納得はできます。あのプラユット首相が「第3の性」を許容するとはなかなか思えませんので。

タイを旅行された方なら、トランスジェンダーというか、いわゆる“ニューハーフ”が多いことはご承知だと思います。

タイでは徴兵検査がありますので、その際に“ニューハーフ”が話題になることもしばしばあります。
比較的、タイでは人々がLGBTに寛容であると言われることもありますが、当然ながら差別・偏見もあります。

“アジアでは既に、インド、パキスタン、ネパールなどが第3の性を認めている”とのことですが、パキスタンのように同性愛を禁止しているいるイスラム教の国で「第3の性」というのも不思議な感じもします。

****パキスタン、パスポート性別欄に「第3の性」を認める****
性別欄の記載が男性でも女性でもない「第3の性」のパスポートを、パキスタン政府が初めて発給したことが明らかになった。

第3の性のパスポートを発給されたのは、トランスジェンダーの権利保護を求める活動家で、北西部ペシャワル在住のファルザナ・リアズさん。極めて保守的なパキスタンで疎外されているトランスジェンダー社会にとって、一歩前進だと歓迎している。
 
リアズさんはAFPの取材に対し「前のパスポートでは性別欄に男性と書いてあったが、新しいパスポートでは男性でも女性でもなく『X』と記されている」と述べた。さらに「これまでは外見とパスポートの性別が違うために海外の空港で問題が生じていたが、今後は旅行がしやすくなる」と語った。
 
パキスタンのトランスジェンダーたちは近年、自分たちは宦官(かんがん)文化の継承者だと主張している。宦官はインド亜大陸を2世紀にわたり支配したムガール帝国時代に重用されたが、19世紀、同大陸に進出してきた大英帝国によって禁止された。
 
複数の調査によると、パキスタンには少なくとも50万人のトランスジェンダーがいるとされる。2009年には他国に先がけて第3の性を合法的に認め、身分証明書も取得可能になった。トランスジェンダーの候補が選挙に出馬した例もこれまでに複数ある。
 
一方、イスラム教で禁止されている同性愛は10年の禁錮刑、または、むち打ち100回の刑に処される可能性がある。【6月26日 AFP】
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“宦官文化”云々はわかりませんが、南アジアには“ヒジュラー”と呼ばれる「第3の性」が社会的に存在していることはよく知られるところです。

****ヒジュラー*****
インド、パキスタン、バングラデシュなど南アジアにおける、男性でも女性でもない第三の性である。ヒジュラ、ヒジュダとも呼ばれ、ヒンディー語・ウルドゥー語で「半陰陽、両性具有者」を意味する。

ヒジュラーは通常女装しており、女性のように振舞っているが、肉体的には男性、もしくは半陰陽のいずれかであることが大部分である。宦官として言及されることもあるが、男性が去勢している例は必ずしも多くない。

歴史的には、古くはヴェーダにも登場し、ヒンドゥー教の歴史にもイスラームの宮廷にも認められる。その総数はインドだけでも5万人とも500万人とも言われるが、実数は不明である。

アウトカーストな存在であり、聖者としてヒンドゥー教の寺院で宗教的な儀礼に携わったり、一般人の家庭での新生児の誕生の祝福のために招かれたりする一方、カルカッタ(コルカタ)やニューデリーなどの大都会では、男娼として売春を生活の糧にし、不浄のものと軽蔑されている例もある。【ウィキペディア】
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この話に入ると長くなりますので、今日はやめておきます。
“インド、パキスタン、ネパールなどが第3の性を認めている”のは、こうした社会的背景によるものでしょう。

ただし、差別・偏見がないという話ではないでしょう。

いろんな国のそれぞれの動きを以上のように見てくると、日本は世界でも性・ジェンダーに関して“保守的”な国であることがわかります。同質性を前提とした社会の少数派への無関心・拒否感でしょうか。
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