
(現在建設中の新行政首都は、現在のカイロから 東へ60キロのところに位置。すでに一部機能の移管も進んでおり、カイロ中心部からアクセスするLRTの運行が開始されています。【JICA】)
【見かけの民主主義】
停戦に向けて大きく動いたイラン情勢は「現在進行形」なので、もう少し様子をみてから・・・。
パレスチナやイラン、更にはシリア、レバノン、イエメン・・・と「火種」に事欠かない中東にあって、最近あまり人目を引くような報道がないのが、以前は中東地域をリードする立場にあったエジプト。今でも「地域大国」の一つではありますが、イラン・サウジアラビアがリードする最近の中東情勢にあっては影が薄い感じも。
目立った話題がないのは、強権的な色合いを濃くするシシ大統領のもとで、「力による安定(不満の封じ込め?)」が続いているせいかも。国民の一定数も、そうした「安定」を受入れているのでしょう。(自分たちの生活が曲りなりにも続けられるなら・・・の話ですが)
****シシ政権下の政治的抑圧と自由の欠如について****
エジプトのシシ政権下における政治的抑圧と自由の欠如は、アラブ諸国の中でも際立って深刻で、表面的な安定の裏で広範な監視・弾圧体制が敷かれています。以下に、主要な点を詳しく説明します。
◆ 1. シシ政権の政治体制:「見かけの民主主義」
2013年、シシ将軍(当時)は軍によるクーデターでムルシー大統領(民選)を追放
その後、大統領選(2014・2018年)でいずれも90%以上の得票で当選
選挙は行われるが、実質的な対抗馬が排除されており、競争性なし
国会は親政権派で固められ、制度的には民主主義的装いだが、実態は強権体制
◆ 2. 言論・報道の自由の制限
● 報道機関の統制
国営メディアに加えて、主要な私営テレビ・新聞も政府系企業や軍が実質支配
国外メディア(BBC、Al Jazeeraなど)に対する敵視も強く、記者の逮捕・拘束例が多い
● インターネット検閲・SNS監視
5,000以上のサイトがブロック対象(人権団体、ニュースサイトなど)
SNS投稿で政府を批判しただけで、「フェイクニュースの拡散」などの名目で逮捕
例:2022年、パン価格高騰に抗議した若者が逮捕・懲役刑
◆ 3. 市民社会・NGOへの弾圧
● NGO法の制定(2019年)
NGOの活動・資金調達を内務省と諜報機関が事前許可・監視
海外から資金を得たNGOは「外国の手先」とされ、活動停止命令
● 著名人・活動家の弾圧
例:アーラ・アブデルファッターフ(アラブの春の象徴的活動家)は2022年も獄中
女性の権利活動家、LGBTQ支援者なども多数拘束
国連や欧州人権機関から非難されても釈放されず
◆ 4. 拘束・拷問・超法規的措置の横行
● 事例
国連の報告によると、政治犯は6万人以上と推定(ただし正確な数は不明)
政治活動家、学生、記者、SNSユーザーなどが正規裁判を経ずに長期拘束
「失踪」扱いの例もあり、家族にすら行方が知らされない
● 刑務所の実態
国際人権団体(アムネスティ、ヒューマン・ライツ・ウォッチ)によると、
過密収容・医療放置・拷問・性的虐待が蔓延
2021年には有名な「スコルピオ刑務所」での虐待が告発され、国内外で波紋
◆ 5. 軍と情報機関の支配構造
情報機関(特にGIS=General Intelligence Service)はメディア・選挙・投資・宗教活動まで監視
軍は経済にも深く関与しており、軍批判は「国家反逆」とされる
軍出身のシシ大統領は、「軍を非政治化するどころか、国家の中心に据え直した」
◆ 6. 国際社会の反応と限界
● 欧米諸国の態度
アメリカは年間約13億ドルの軍事支援を続けている(戦略的同盟国)
EU諸国は人権問題を非難しつつも、移民抑止や安定維持を優先
❗その結果、「抑圧体制であっても地域の安定を保てば黙認される」構図ができてしまっている。
シシ政権は、「秩序・安定の代わりに、自由と多様性を放棄する」というモデルを事実上採用しており、国民の沈黙は必ずしも支持を意味しないというのが実情です。【ChatGPT】
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【相次ぐ巨大プロジェクト】
そのシシ大統領はかつての「中東の盟主」として復活したいという思いがあってのことでしょうが、エジプト政府は派手な巨大プロジェクトをいくつも打ち上げています。
カイロ東部の新行政首都建設に続いて、カイロ西部の砂漠地帯に人工水路を引き、総面積6.8平方キロの新都市「ジリアン」を開発する計画が発表されています。
問題は、軍と関係のある企業の利権拡大に利用されていること、財政状況を悪化させていること、一般庶民とは縁んのない話であること・・・等々。
****エジプトがまた新都市構想を発表、カイロ西部に人工水路を引く...得をするのは一体誰?****
<「ジリアン」と呼ばれる新都市の建設は、シシ大統領の巨大プロジェクトの一環とされており、他にも回路東部に新行政首都建設の計画もあるが...>
カイロ西部の砂漠地帯に人工水路を引き、総面積6.8平方キロの新都市「ジリアン」を開発する──エジプト政府が今月初めに発表した構想が物議を醸している。
これはシシ大統領が進める巨大プロジェクトの一環で、ほかにカイロ東部での590億ドル規模の新行政首都建設、モノレール計画、高速鉄道、複数の高級都市開発計画などが進行している。
エジプト政府はこうした事業が長期的な経済成長を牽引すると主張するが、財源となる対外債務は膨れ上がる一方だ。また、政権による統制力の強化や、軍と関係のある企業の利権拡大に利用されているとの批判もある。
エジプト経済はIMF主導の改革によって上昇傾向にあるが、シシ政権が派手なプロジェクトへの支出を抑制できなければ成長の足かせとなりかねない。実際、エジプトの債務返済負担は既に国家支出の50%を超えており、今後さらなる財政悪化を招く恐れも指摘されている。【6月17日 Newsweek】
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****シシ政権が進める巨大プロジェクト****
① 新行政首都(New Administrative Capital)
● 概要
建設場所:カイロの東方約45km、スエズ運河に近い砂漠地帯
面積:約700平方キロ(シンガポールとほぼ同規模)
総事業費:当初は約450億ドル→現在では590億ドル以上
計画内容:
官庁街(大統領府・国会・省庁など) 高層ビル群(アフリカ一の超高層ビル「アイコニックタワー」) モスク、教会、ビジネス街、大型ショッピングセンターなど
高速鉄道・モノレールでカイロと接続
● 問題点・リスク
カイロの人口集中・老朽化対策という「大義」がある一方、富裕層・エリート官僚中心の都市
水資源やエネルギー供給への圧力
一般国民が恩恵を受けにくく、社会格差をむしろ拡大する恐れ
国債増発や為替リスクに直結
● 現在の進捗(2024年末〜2025年)
国会議事堂や一部省庁はすでに完成・移転済み だし全体の入居率・商業稼働率は低く、「見せかけの開発」とも批判されている
② 新都市「ジリアン(Gillian)」計画
● 概要
建設場所:カイロ西方の砂漠地帯
面積:6.8平方キロ(東京都文京区より少し小さい)
計画内容:
高級住宅地、商業・娯楽施設、人工湖、観光リゾートなどを併設 中東版「スマートシティ」を標榜
● 問題点
水資源の確保が非常に困難。ナイル川から長大な人工水路を建設予定だがコストは不明
一部では「富裕層の隔離都市」として、貧富の分断を強めるとの懸念
● 現在の状況
計画発表は2023年末~2024年ごろ、まだ着工の段階に入っていない
国家財政の悪化により、計画凍結や延期の可能性も示唆されている
③ スエズ運河経済特区(SCZone)
● 概要
スエズ運河周辺に物流拠点・工業団地・港湾施設などを整備
中国・湾岸諸国・欧州諸国の直接投資を呼び込む輸出型経済圏
● 目的
エジプト経済の多角化(観光・農業依存からの脱却) 雇用創出と外貨獲得 地政学的ポジション(アジア〜欧州の中継地)を活用
● 資金
各国の企業による官民パートナーシップ 中国の一帯一路政策との連携(例:中国天辰公司が化学プラント建設)
日本や韓国の進出も報道されている
● リスク
エジプトの行政手続き・汚職・通貨不安定性が外資誘致の障害
地域インフラ整備の遅れ、港湾機能の競合(ドバイ、ジブチなど)
これらのプロジェクトは、国家の将来を賭けた「賭け」とも言えますが、エジプト経済の根本的な構造改革(農業依存・軍経済の脱却)を伴わないままの拡張は、極めて危ういバランスの上にあるともいえます。【ChatGPT】
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【巨大プロジェクトの資金調達】
計画実現の上での問題は資金。
****巨大プロジェクトの資金調達源****
エジプトのシシ政権が進める一連の巨大インフラプロジェクト――特に新行政首都や**「ジリアン」などの新都市開発計画**――は、非常に野心的で、その総額は数十兆円規模にも及びます。こうしたプロジェクトの資金調達源については、以下のような仕組みとリスクが混在しています。
【1】主な資金調達手段
■ 海外からの融資・支援(特に湾岸諸国)
UAE、サウジアラビア、クウェートなどの湾岸諸国からの直接支援や投資が柱。
例:新行政首都プロジェクトは、UAEの不動産大手「キャピタル・シティ・パートナーズ」との協力で進められていた(ただし後に契約は見直される)。
シシ政権は湾岸諸国との関係を戦略的に強化し、政治的見返りと引き換えに資金を得ている。
中国からの融資やインフラ投資も一部活用(特に鉄道・電力インフラなど)。
■ エジプト国内での土地転売・不動産収入
新首都や新都市開発に伴い、「国家所有の土地を民間企業や富裕層に高額で売却」し、それを財源に。
これにより「資産の現金化」が進むが、実需が伴わない場合はバブル的リスクが高い。
■ 国家開発公社・軍系企業による自己資金投入
エジプトでは国軍が経済の広範囲を握っており、軍系企業(例えばアラブ建設社など)が半官半民的に投資・開発している。 軍による主導で土地収用やインフラ整備が迅速に行われ、国家予算以外の資金が動員されている。
【2】なぜ強行するのか?
シシ政権はこのような**「見栄えの良い巨大事業」**を通じて、
国内の雇用創出・経済成長の演出
軍の利権確保・体制基盤の安定
政治的レガシー(ナセル、ムバラクに並ぶ国づくり)
を狙っている。
を狙っている。
【3】しかしリスクは極めて高い
● 財政悪化と債務膨張
エジプトの対外債務は2024年時点で1,650億ドルを超える。
通貨価値の急落(2022年以降でエジプトポンドは大幅下落)により、返済圧力が深刻化。
● 実需の乏しさ・ゴーストタウン化懸念
新行政首都の住宅は富裕層・官僚向けで、一般庶民は手が出せない。
こうしたプロジェクトが国民全体に波及するには時間がかかり、「砂漠の中の空都市」化の懸念も強い。
● IMF・世界銀行との緊張
エジプトはIMF支援を受けているが、その条件として国家支出の見直し・補助金削減・通貨の自由化が課されており、
「新都市開発のような支出が矛盾している」との批判も。
【まとめ】
エジプトの巨大プロジェクトの資金源は、「湾岸諸国からの支援+土地売却+軍主導の事業収益+国際金融支援」の組み合わせです。しかし、それは持続的な内需や生産力に裏打ちされたものではなく、政治的・財政的なリスクを抱えた「見せかけの繁栄」とも言われています。【ChatGPT】
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【外国との関係・地政学的背景、IMF評価】
****エジプト・シシ政権の巨大インフラ計画に対する外国との関係・地政学的背景と、それに対するIMF・世銀などの国際金融機関の評価・批判****
【1】湾岸諸国との関係 〜「経済支援と地政学の取引」〜
湾岸諸国(サウジアラビア、UAE、クウェートなど)は、2013年のシシ政権発足以降、エジプトを戦略的に支援してきました。その理由は、シシ政権のムスリム同胞団排除を支持(湾岸君主制(特にサウジ、UAE)はイスラム主義の台頭を敵視)など。
ただし2022年以降、湾岸諸国は支援のスタイルを「無条件な援助」から「投資重視」に転換、現在は、「エジプトが資産を売り、湾岸諸国が買い叩く」構図も批判されつつあります。
【2】中国との関係:一帯一路構想(BRI)との連動
エジプトは中国の「一帯一路(BRI)」におけるアフリカ北岸の要衝 スエズ運河周辺を含むインフラ・製造業プロジェクトで中国の存在感が拡大
【3】IMF・世界銀行の評価と批判
● IMFの立場
エジプトは2016年以降、複数回にわたりIMFの融資プログラムを受けており、その条件として、補助金削減(特に燃料・パン)、エジプトポンドの変動相場制への移行、国家主導経済から民間主導経済への転換、系企業の透明性向上と経済支配縮小を求められています。
● IMFの批判点
IMFは新首都建設やジリアンのような「エリート向け巨大都市開発」を、明示的には支持していません。
むしろ「これらは短期的な成長の演出であり、債務を拡大させるだけで国民の貧困には寄与しない」と懸念。
IMFの内部文書でも、軍経済(military economy)を温存したままの構造改革では持続可能な成長は困難という立場です。
【4】「見せかけの繁栄」 vs 「国家の生き残り戦略」
● シシ政権の立場
巨大プロジェクトは「人口爆発への備え」「観光・不動産主導の成長」を目的としており、一種の「国家ブランディング」ともいえる
軍や官僚機構の利益構造とも密接に連動しており、政権支持基盤の維持に不可欠
● 国際社会の懸念
IMFや国際金融筋は「エジプトは構造改革よりもプロジェクト主義に偏りすぎている」と批判
世界銀行も、公共支出の不透明性や不平等の拡大を問題視
【結論】エジプトは何を賭けているのか?
シシ政権の巨大プロジェクト群は、単なる経済開発ではなく、「人口1億超の巨大国が、軍と国家エリートを温存しつつ体制維持を図る、最後の大勝負」という面があります。
しかし、国内の貧困率上昇、食糧・水・外貨の逼迫、外国依存度の増大(湾岸・中国・IMF)という状況では、「砂上の楼閣」になりかねないリスクもはらんでいます。【ChatGPT】
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