孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ “壁”を越えて

2007-08-31 14:18:25 | 国際情勢


(写真はイスラエルによって築かれたイスラエル入植地とパレスチナ人居住区を隔てる“壁”
“flickr”より By Mario theBoom )




(その壁に描かれた風船で壁を乗り越える少女の絵が印象的です。
“flickr”より By Shandinova )

パレスチナは相変わらず“穏健派”ファタハ支配のヨルダン川西岸と“過激派”ハマスが支配するガザ地区に分断された状態ですが、先日こんなニュースも。
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【8月28日 朝日】  パレスチナ治安部隊がイスラエル将校を救出
イスラエル軍の少佐が道を間違えてパレスチナ自治区ヨルダン川西岸のジェニン市内に入り、イスラム過激派に襲われた。通りかかったパレスチナ治安部隊が少佐を救出し、「和平機運を後押しする出来事だ」と話題になっている。
 少佐は27日、軍の乗用車を運転してジェニン近郊の基地に向かい、近道を通ろうとして同市内に入ってしまった。イスラム聖戦などの活動家や住民らが車を取り囲み、少佐を拉致しようとした。
 パレスチナ治安部隊が空に威嚇発砲して少佐を保護し、別の車に乗せた。隊員たちが少佐に覆いかぶさって弾よけになりながら、自分たちの本部まで無事に運んだ。
 イスラエル軍は西岸で過激派の掃討作戦を繰り返し、関係のない住民らも巻き添えで殺されるため、反感は根強い。道に迷った将兵が無防備で西岸の町中に入った時、リンチを受けて殺されたこともある。パレスチナ治安部隊がリンチに協力していたこともあった。
 しかし、西岸が6月に穏健派のファイヤド首相の内閣に統治され始めてから、治安部隊は過激派武装集団に対する取り締まりを強めている。イスラエルのリブニ外相は27日夜、ファイヤド首相に謝意を伝えた。
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この話をどのように見るかは立場によります。
現在のファタハの姿勢をアメリカ・イスラエルへの擦り寄り路線にすぎないと見るならば、この話もその類の不快な出来事にすぎないでしょう。

しかし、イスラエルという国家が厳然として存在し、生活に苦しむ多数のパレスチナの人々がまた存在するという現実において、何らかの解決の道筋を探すためには、イスラエル、パレスチナの両者が歩み寄るしかない・・・と考えるなら、非常にささやかではありますが、ほっとする話です。

アッバス議長、ファイヤド首相の率いるファタハのパレスチナ自治政府には欧米の支持が集まっており、ハマスが圧勝して与党となって以降パレスチナに対する直接援助を停止していた日本も、今月15日当時の麻生外相がパレスチナを訪問し、約14億円の直接援助を再開する協定に調印しました。
更に10億円弱の人道支援も提供する予定だと伝えられています。【8月15日 AFP】

一方のハマスが実効支配するガザ地区へは締め付けが続いており、今月中旬5日間ほど停電になりました。
発電所の燃料となるディーゼルの代金はEUが負担しているそうで、「ハマスが電力に課税して、電力料金の一部をハマスの活動資金にしている」として、EUが代金の支払を拒否したことによるものです。
この騒動はハマスが「発電所の運営にハマスが介入しない」と明言したこともあって、電力供給再開に至ったようです。【8月22日 AFP】

このような“分断”の状態に住民の不満も大きくなっており、世論調査によると、ガザ住民の44%が「ハマスによる武力制圧以降、治安は改善した」としながらも、47%は「状況は悪化した」と答えています。
また、47%がアッバス自治政府議長の後押しで発足したファイヤド首相率いる暫定内閣の実績を評価、「ハマス内閣」への支持は24%にとどまったそうです。【8月25日 毎日】

ブッシュ米大統領が呼びかける今秋の和平会議にむけて、イスラエルのオルメルト首相とパレスチナのアッバス議長は今月28日エルサレムで会談し、和平実現に向けた根本的課題やそれに伴う問題の解決策などについて意見を交換しました。
“パレスチナ側は、エルサレムの地位や国境線、難民などの問題に関して、詳細で包括的な合意を目指しているのに対し、イスラエルはそれら問題の詳細については先送りしたい考え”とも伝えられています。【8月29日 AFP】


来週に次回会談が予定されていますが、両者の歩み寄りで和平への道筋が切り開かれることを願います。




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イラク  サドル師、マハディ軍に活動停止命令

2007-08-30 17:18:51 | 国際情勢

(写真はマハディ軍民兵 “flickr”より By Baghdad Chris )


イラクからのニュース
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【8月30日 AFP】  サドル師、マハディ軍に活動停止命令
イスラム教シーア派の反米指導者ムクタダ・サドル師は29日、サドル師派の民兵組織マハディ軍の立て直しを図るため、同軍の活動を6か月間停止すると発表した。
またサドル師の側近は同日、AFPに対し「活動停止期間中、マハディ軍は米軍主導の部隊に対する攻撃を行わない」と語った。
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(写真はカルバラ “”より By high cout )

前日28日には、イラクのシーア派聖地カルバラで、同派の聖人イマーム・マフディ生誕800年の祝祭中に警官隊と武装グループの銃撃戦が発生しました。
この衝突による死者は52人、負傷者は300人に達したようです。
これを受け、マリキ首相は29日、同市に外出禁止令を発令しました。

マリキ首相は、武装グループはサダム・フセイン独裁政権の残存勢力だと非難しているようですが、カルバラは反米主義のシーア派強硬派指導者、サドル師率いる民兵組織マハディ軍の拠点として知られているところです。
また、旧市街の広場では、シーア派の民兵が野営していたのが目撃されているそうです。【8月29日 AFP】
「マハディ軍の兵士と見られる集団が警官隊と衝突した」という目撃者の話も伝えられています。【8月30日 AFP】

警察組織はシーア派政党、イラク・イスラム最高評議会(SIIC)寄りとされており、マハディ軍とSIIC派は、シーア派が多数を占めるイラク南部の都市などの覇権をめぐり衝突を繰り返しています。
同様の武力衝突は27日遅くにも発生し、5人が死亡しているそうです。

このようなシーア派同士の勢力抗争が、反政府勢力と米軍の衝突に加わるかたちでイラクの混迷を深くしています。

サドル師の側近らは、シーア派の重要な宗教行事の最中に発生した今回の衝突について、一切の関与を否定しており、サドル師は29日、衝突による犠牲者のために3日間喪に服すことを命じるとともに、イラクの関係当局に対し、捜査の開始を依頼したとのことです。

シーア派の聖地でシーア派の祝祭の最中に起こったシーア派同士の衝突を疑わせるような事件、その後の“マハディ軍の活動停止命令”・・・どういう事情かはよくわかりません。
わかりませんが、イラク情勢を混沌とさせていたひとつのファクターであるシーア派内の抗争がこれでやや落ち着く可能性が期待できるのではないでしょうか。

また、8月24日のこのブログでも触れたように、かつてアルカイダ勢力と共闘していたスンニ派武装勢力が、ここ数ヶ月米軍と協力しアルカイダ系武装勢力に攻勢をかける動きが目立ってきているといわれています。
今回のことと併せて、うまくやれば複雑にもつれた糸がほどける可能性があるような・・・そんな気もするのですが、どうでしょうか。

それはともかく、聖人イマーム・マフディ生誕800年の祝祭にはイラク中から数十万人のシーア派信者が集結します。
格好の“テロの標的”なるのは承知のうえの行為です。
宗教的情熱は信心薄い者には理解できません。


(写真はカルバラのイマーム・フセイン廟で祈る信者 手前右が女性コーナーのようです 2007.3.7 “flickr”より By crazymaq )

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パキスタン 解放されたもう一組の19名

2007-08-29 15:57:51 | 国際情勢

(写真はパキスタンのアフガニスタン国境部族地域も近いペシャワールの街 
“flickr”より By Laurent Dufy )


住んでいる奄美は旧盆が明けて街の表情も普段のものに戻ってきましたが、イスラム諸国では来月13日からラマダン(断食の月)に入るため、いろいろと慌しい動きもあるようです。

アフガニスタンのタリバンによる韓国人拉致事件は、報道されているようにようやく解放で合意。
神聖なラマダンに入る前にけりをつけたいタリバン側の思惑もあったとか。
それと、女性を拘束することに対する地元ムスリムからの批判、19名を数グループに分けて毎日移動を繰り返す作業へのタリバン内部からの不満・疲労感もあったようです。
今後数人ずつ段階的に解放されると言うことで、具体的な移送方法などの手続き交渉に入っていると伝えられています。

昨日タリバン関連で別の19人の拉致グループが解放されました。
今月9日パキスタン内部のアフガニスタン国境付近の部族地域で、親タリバン派武装勢力により拉致されたパキスタン軍兵士19人です。
武装勢力は、9日に部族地域の南ワジリスタン地区でパキスタン軍兵士16人を拉致、その後、大佐を含む4人の兵士を拉致していました。
そして、14日には人質となった兵士のうち1人が10代と見られる少年によって首を切断され、斬首のもようを記録したビデオ映像が公開されていました。

今回のパキスタン軍兵士の解放は、地元の長老などで構成される合議体「ジルガ」での交渉により実現したそうです。
政府当局によれば、ジルガは無条件での人質解放を保証していたそうです。【8月29日 AFP】


(写真はパキスタンのアフガン国境近い部族地域の人々 “flickr”より By PimpDaddy Playa )

パキスタンのアフガニスタン国境付近の部族地域は、従来からアフガニスタンのタリバンやアルカイダ勢力の温床となっているとのアメリカの批判があります。

今月25日には、米軍を主体とする部隊とアフガニスタン軍の連合軍がパキスタン領内にあるタリバンの拠点に越境攻撃を行い、タリバン勢力30人以上を殺害したことが報じられました。
米軍主体の連合軍はパキスタンから越境攻撃の許可を得て実行したと発表しましたが、パキスタン軍は「許可の要請はなかったし、われわれが許可したこともない」と否定しています。
【8月26日 時事】

許可があったのか、なかったのかもさることながら、素人にわからないのは“なぜパキスタン軍に連絡してパキスタン軍が自分たちで攻撃するというかたちをとらず、米・アフガン軍の越境攻撃というかたちをとったのか?”ということです。

パキスタン内のタリバンやアルカイダ勢力とパキスタン国軍の“つながり”は以前から言われているところで、もともとタリバンはパキスタン国軍によって指導されアフガンに送り込まれたとも言われています。
ただ、現在はパキスタン政府もアメリカの要請に従って国境付近のイスラム過激派勢力には厳しく臨むこととしていました。
特に、ムシャラフ政権がイスラム過激派を武力鎮圧した“赤いモスク事件”以後は、この地域ではパキスタン治安組織にたいするイスラム過激派の自爆テロ攻撃などが繰り返されていました。
そして、親タリバン勢力にパキスタン兵士19名が拉致され、1名が首を切断されるといったこともあった訳です。

それでも米軍が越境攻撃というかたちをとったのは、パキスタン軍の“やる気”・能力を信用していないということなのでしょうか?
それとも、19名の拉致があってパキスタン軍が表立って動けない・・・といった事情だったのでしょうか。

アメリカはこの地域でのパキスタンの取組みに不満を持っており、「パキスタン領内のアルカイダ系組織を空爆する意向」を持っていると言われています。
この問題について今月15日、アメリカとパキスタンの高官協議があったと報じられています。

パキスタンのカスリ外相はアメリカのバウチャー国務次官補に対し、米国政府が最近の声明でパキスタン領内のアルカイダ系組織を空爆する可能性に言及したことについて懸念を表明し、もし一方的にパキスタンを空爆すれば、両国間の緊密な協力関係にとって「逆効果」になると伝えたそうです。
【8月16日 AFP】

許可の有無については、本当に無許可で越境攻撃することは考えられませんので、パキスタン側として、表向き“関知していない”としていたほうが何かと都合がいいということでしょう。
国民の間には反米の感情も強いので、越境攻撃を認めたということになるとムシャラフ政権への批判が高まるとの配慮ではないでしょうか。

アフガニスタン国境のパキスタン領内にはタリバン最高指導者のオマル師が潜伏しているとか、パキスタン国軍の保護下にあるといった話もあって、この地域の実情、パキスタン国軍とイスラム過激派勢力の関係はどうなっているのかよくわかりません。


(写真はパキスタンで行われた、イスラム過激派組織ヒズブ・タフリールによって組織された反米デモ 
“flickr”より By nablus_kh )


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中国  生命、人権そして環境

2007-08-28 15:05:47 | 国際情勢

(工場進出が進む内モンゴル自治区烏海の様子 “flckr”より By Uschools.com )

最近数日目にした中国関連のニュース。
最初は山東省新泰で今月17日に発生し、作業員181人の生存が絶望視されている炭鉱2か所の浸水事故について。
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【8月23日 AFP】  中国政府、「炭鉱浸水は自然災害」と発表
李学挙民政相は記者会見で、専門家による分析の結果、炭鉱の浸水は安全基準の不備によるものではなく、むしろ自然災害によるものだったとの見解を示した。さらに、同国には自然災害による死者・負傷者への補償制度がないと強調した上で、遺族には政府および炭鉱会社から見舞金が支払われるかもしれないと語った。
これに対し、管理体制のずさんさを指摘している被害者遺族らは怒りをあらわにした。
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事故は大雨による洪水で近くを流れる川の堤防が決壊し、鉄砲水が発生。炭鉱の古い立て坑から、地下坑内に大量の水が流れ込んだことで発生しました。
「救出作業の状況について十分な説明がなされない」と、事故発生当初から被害者家族の強い批判があり、家族と関係者との小競り合いも伝えられていました。

川の水位が警戒線を越えたとき、会社は鉱夫の保護措置をとるべきだったのでは・・・等々、詳しい事情がわからないのでなんとも言いようがないですが、181人の遺体が発見されたわけでもないこの段階で早々と「自然災害です。(国には責任はありません。)」と言う感覚は、日本的には馴染めないものがあります。
もっとも、日本でも災害、公害、薬害で公的責任をなかなか認めず長期の裁判になる事例は多々ある訳で、ひとり中国の問題でもないでしょうが。

また、トラブルが発生したとき、国民が当局を批判する、その様子がまがりなりにも報道されるというのは、一昔前の「政府・党の決定が絶対で“竹のカーテン”に隠されて何も見えなかった状態」からすれば、それなりの変化はあるように思います。

なお、中国の炭鉱は世界中で最も危険性が高い業界となっています。
中国政府筋の報道によると、去年4746人が炭鉱爆発事故、浸水事故と他の事故で死亡し、毎日平均13人の鉱夫が死亡しています。
こういう事態が是正されずにまかりとおることが、人命に対する感覚の違いに思われます。


次は女性の権利・地位に関するニュース。
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【8月22日 毎日】 嫁不足深刻 適齢期男性は女性より1800万人多く 
中国共産党機関紙「人民日報」は22日、中国では現在、20~45歳の結婚適齢期の男性が女性より1800万人多く、2020年にはこの差が3000万人に拡大すると報じた。
嫁不足は既に深刻化しており、誘拐などの犯罪への警戒が高まっている。
中国政府は出生計画において「厳しい情勢と任務に直面している」として、不均衡を是正するため「女児愛護行動」キャンペーンを展開したり、胎児の性別を理由にした中絶を禁止している。
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中国農村では男尊女卑の考えが根強く、男子の跡取りを求めることから、一人っ子政策の影響もあって“女子とわかると中絶する、または、生まれたあと捨てる”等の問題が生じています。
その結果、05年の出生比率は女児を100とすると男児は118.88といびつになっており、この差は農村部では更に大きな数字になっています。
江蘇省連雲港においては、女児100人に対し男児163.5人という結果が出たそうです。
上記ニュースにもあるように、結果として生じた嫁不足のため、女性を無理やり誘拐してくるというような犯罪行為も地方では多く見られるそうです。

産み分けを目的とした中絶は現在においても違法ですが、現行法上は処罰の具体的な内容が規定されていません。
中国国務院は、妊娠初期に女児と判明した時点で中絶を行った親や医師を処罰する新しい法律の制定を検討していると伝えられています。【8月26日 AFP】

このような風潮が女性の権利・地位を厳しいものにしていることは想像にかたくないところですが、その表れのニュース。
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【8月25日 共同】  3割で家庭内暴力 女性団体への訴え増加
中国の家庭の約30%に家庭内暴力があると推定されることが、女性団体、中華全国婦女連合の調査で分かった。中国紙、法制日報が25日までに伝えた。同連合への家庭内暴力の訴えも毎年70%増加、過去2年間で5万件に達している。公安省は事態を重視、これまで家族間トラブルや傷害事件などとしてその都度対応してきた家庭内暴力について、独立した事件項目として処理することを検討し始めた。
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故毛沢東主席の有名な言葉に「婦女半辺天」(天の半分は女性が支える)というものがありますが、単に女性を生産現場に駆り出すための言葉だったのでしょうか。
もちろん、日本にもDV男が大勢いることは言うまでもないことです。


続いては環境汚染のニュース。
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【8月27日 ロイター】 中国の主要河川における水汚染、依然高い水準
中国の主要河川である淮河と遼河では、14年間にわたる水質改善努力にもかかわらず、依然として水の大部分が人体への接触や飲用に適さず、人口13億人の6分の1に相当する人が危険にさらされていることが分かった。地元メディアが27日に伝えた。
今回の調査報告を行った全国人民代表大会資源・環境保護委員会の毛如柏主任委員は、「廃棄物の上限規制を遵守している工場でも、川を救うためには排出量が多すぎる」と主張。
中国の水汚染に対する規制が緩いとの見方を示した。
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北京オリピックを控えて環境問題にはこのところ中国政府も敏感になってきているようで、こんなニュースも。
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【8月26日 AFP】  環境改善のため200億円拠出へ
中国国営チャイナ・デーリー紙は25日、Zhang Hongli副財政相の話として、数十年にわたる経済成長で悪化した環境の改善を図るため、同国政府が13億3000万元(約204億6000万円)以上の資金を投じると報じた。
同紙によれば、資金の大半は、汚染物質の排出削減・監視のほか、新たな排出権取引制度のために使用されるという。
排出権取引によって、汚染物質の排出量が許容値を超える企業は、排出量が許容値未満の企業から排出権を買い取り、許容値を超えた部分の汚染物質を排出することが可能となる。
活況な中国経済は、環境を大きく犠牲にすることで達成されたもので、現在同国内の水路の最大70%が汚染され、大都市の大気環境は世界でも最悪レベルという状態になっている。
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広い中国に対して200億あまりではまだまだ不足でしょうが、改善へ向けての一歩ではあると思います。
排出権取引制度など、軌道に乗れば京都議定書など国際規制の枠組み参加への道筋も見えてくるのではないでしょか。
日本が協力する余地のある分野かと思います。

最近の中国批判に対する苛立ちでしょうか、こんなニュースも。
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【8月26日 産経】  中国各紙、外資100社を批判
中国共産党機関紙、人民日報など中国各紙は25日までに、北京の環境NGO(民間活動団体)「公衆環境研究センター」が公表した「環境汚染企業ブラックリスト」をもとに、外資系企業が汚染物質を垂れ流しており、道徳心が欠如しているなどとする批判記事を掲載した。同リストの「汚染企業」には、日系も含む外資系企業100社が列挙されている。
24日付の人民日報は、「多国籍企業の環境責任はどこに行った」と題し、「これら企業は、自国では環境基準を守っているのに、中国に進出したとたん、環境基準を守る能力があるのに(故意に)守らず、二重基準だ」などと批判した。
上海紙の解放日報も同じく、「中国の環境保護水準が低いのは認める。国内企業の環境意識も低い。しかし、多国籍企業が、環境基準を守らない理由にはならない」などと非難、他紙も「中国は世界の工場のゴミ処理場ではない」と批判している。
日系では、「花王」「吉野家」、「松下」「日清」系列などの企業が明記されている。
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中国の苛立ちが背景にあっての記事であり、日系企業関係者の「問題があっても、数値の問題で(中国企業に比べると)小さな問題ではないか」との反論もあります。
ただ、民間企業のモラルという点で一定に耳を傾むけるべき批判かと思います。
コムスンにしろ、ミートホープにしろ、白い恋人にしろ、“民間活力”“民間の知恵と工夫”ということの反面はこういうことです。
野放しではなく、社会規範に従わせる枠組み・方策が必要でしょう。

国民の生命の尊重、女性などの基本的人権、環境汚染・・・まだまだ中国がこれから克服していくべき課題は多いように思われます。
しかし、その改善に向けての自助努力が全くなされていない訳でもなく、旧態依然の非公開社会でもなくなってきています。
隣国日本としては、進んでもらいたい方向へ中国が進めるような協力をしていく対応が必要かと思います。

日本にとって中国は無視できる相手ではありません。
下のような画像も。
2002年7月11日のものだそうですが、北京など中国東部を厚く覆う“aerosol concentrations”が黄海を越えて日本方向にたなびいています。


(2002年7月11日 “flickr”より By pingnews.com )
Image courtesy the SeaWiFS Project, NASA/Goddard Space Flight Center, and ORBIMAGE
ID: GL-2002-001716
Credit: NASA Goddard Space Flight Center (NASA-GSFC)


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インド 同時多発爆弾テロの恐怖

2007-08-27 11:22:44 | 国際情勢

インドで悲惨な爆弾テロのニュース。
写真は最初の爆発のあった遊園施設ルンビニパークのレーザー光線ショー会場の様子。
“flickr”より By adieas

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【毎日 8月26日】
インド南部アンドラプラデシュ州の州都ハイデラバードの2カ所で25日夜、爆発があり家族連れなど多数が死傷した事件で、治安当局は爆弾によるテロと断定した。PTI通信は死者が42人に達し、約50人が負傷したと報じた。
 警察当局の調べでは、爆弾には多数の金属片が埋め込まれ、携帯電話をタイマーとして使用したとみられる。
土曜の夕方に多数の市民でにぎわう場所を狙っており、AP通信によると、バングラデシュに拠点を置くイスラム過激派が関与した可能性がある。
 PTI通信によると、最初の爆発は中心部の州政府施設前にある公園内の観客席で、約500人がレーザー光線のショーを見ていた際に発生し10人が死亡。
2カ所目の爆発は約五分後に約5キロ離れた商店街の市民に人気がある軽食店前で起き、32人が死亡した。
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これらの爆発の後、警察により19個の爆弾が発見され未然に処理されたとのことです。
19個の不発爆弾は映画館、バス停留所や交差点などで発見されており、市警察はこれらが爆発した場合、「数百人が犠牲になっただろう」と話しています。
なお、レディ州首相は州政府の緊急閣議を招集し、犠牲者の遺族に50万ルピー(約140万円)の補償金を支給すると発表しました。

IT大国インドのIT関連産業の中核都市であるハイデラバードの人口は650万人、うち約4割をイスラム教徒が占めています。
イスラム教徒の割合が大きく、多数派ヒンドゥー教徒との緊張関係が続いている地域です。

この街にはインド最大級のモスク、メッカ・マスジッドがあります。
今年5月18日、このモスク前で金曜礼拝の際に爆弾テロが発生、10人が死亡、35人が負傷する事件がありました。
現場では不発弾2個も発見されたそうです。
信徒らは爆発後、警備が手薄だったことに怒って警察に投石などを行ったため、警察が催涙ガスなどで対抗する騒ぎになり、この騒ぎで更に3人の死亡者が出ています。
この事件はイスラム教徒とヒンズー教徒の宗教対立をあおった犯行と推測されていました。

写真はメッカ・マスジッドの爆弾事件後、州首相の人形を燃やして抗議するイスラム教徒
“flickr”より By anand07447


19個もの不発弾が未然に発見されるというのもやや奇異な感じはしますが、仮にこれら情報に誤りがなければ、そしてこれら爆弾が実際に爆発していたら・・・と思うと、実に恐ろしい事件です。
家族連れなどで賑わう遊戯施設、映画館、公園、交差点・・・次々に爆発する20個前後の爆弾。
いつもとかわらない平穏な市街は、瞬時に肉片が飛び散る血の海と化していたことでしょう。

【修正】その後の情報で、“不発弾19個”という情報は否定されました。回収された不発弾は映画館の1個のようです。
なお、政府に対し「国内の治安が確保できない原因は政府にある」、「テロ対策が生ぬるい」と、ヒンズー至上主義のインド人民党が27日抗議ストライキを呼びかけ、多くの職場や学校が閉鎖されたそうです。(8月27日22時54分追加)

9.11のテロについては、正直なところ“恐怖”とか“怒り”といったものはあまり感じませんでした。
あまりにもシュールな画像に見とれてしまい、また攻撃の対象についても生身の人間というより、世界貿易センタービルが象徴する抽象的な“アメリカ”というもののように感じられたせいでしょう。

一方、今回の事件には想像可能な恐怖をリアルに感じました。
世界的に見れば、イスラムにしてもヒンドゥーにしても決して恵まれた条件にあるとは言えません。
その両者の間で燃える消えることのない憎しみの炎。
あるいは誰かがその炎を煽ろうとしているのか。

もとより、テロを仕掛ける側にとっては被害が大きければ大きい方が良い訳で、単に機会・能力が制約されている都合で現実の規模の事件に収まっていると言えます。
もし可能なら数千人でも、数万人でも、核兵器などが使えれば街ごと、国ごと吹き飛ばしてしまいたい・・・というのが彼らの思考でしょう。

ですから、「どうしてこんなことを・・・」とか「ここまでやる必要があるのか?」とかい問いは無意味ですが、そうは思いつつも、今回の市民で賑わう場所に仕掛けられた20個あまりの金属片を埋め込んだ爆弾には「どうしてこんなことを・・・」と思わずにはいられません。
“人間性”に対するかすかな信頼をも揺るがす衝撃を感じました。

しかし、冷静に考えれば、これまで人類が行ってきた無数の戦争、大量虐殺、ホロコースト、原爆・・・これらはすべて今回の事件をはるかに上回る非道であり、その歴史の結果として今の世界、今の自分の生活があるという・・・なんともやりきれない現実です。

せめて、この事件への報復といった宗教衝突の事態にならないことを願うだけです。

写真は今回のテロによる犠牲者、18歳の女性 泣き崩れる母親
“flickr”より By atrip

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アフガニスタン 韓国人拉致事件と英兵誤爆

2007-08-26 12:26:49 | 国際情勢

(写真は英兵とアフガニスタン女性 カブール市街
“flickr”より By nataliebehring.com )

7月19日の事件発生から1ヶ月以上が経過、2名の解放以後は大きな動きがなく膠着状態にあるアフガニスタン・タリバンによる韓国人拉致事件。

昨日25日、アフガン・イスラム通信は「アフガニスタンに駐留する韓国軍を数週間以内に撤退させることと韓国のキリスト教団体を帰国させることを条件に、26日にも残る人質19人全員を解放することで韓国政府・タリバンが合意した。」と報じました。
しかし、この報道についてはタリバン報道官と現地司令官はともに否定しているようです。

一方、朝日新聞は今日未明「タリバンが人質1人につき10万ドルの身代金を要求してきた。」と身代金による解決へタリバンが戦術転換したのではないかと報じています。
これが本当なら、金額的には無理のない額ですから解決も早いと思われます。

今のところ情報の真偽はよくわかりませんが、こういう報道が流れ始めたこと自体が何らかの動きが出てきたことの反映ではないでしょうか。
この文章を書いている今にでも大きな動きがあるのでは・・・という期待も抱かせます。

素人考えでも、タリバンにとって19名もの人間を居場所を悟られないように、かつ、健康問題などがおきないように対応し続けるのは相当な負担になっているのでは・・・と思えます。
人質交換についてアメリカは全く軟化しないし、もし多数の女性を殺害したら国際世論はもちろん、アフガニスタン国内でのイスラム社会からの批判も厳しいものが予想されます。
“そろそろなんとかしないと・・・”という考えがタリバン側に出てきても不思議でないような気がします。

アフガニスタン関連で注目される事件がもうひとつ昨日報じられています。
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【8月25日 AFP】
NATOの下で活動する英国軍兵士3人がタリバンとの戦闘中、米軍戦闘機の誤爆により死亡した。
英国防省が24日、明らかにした。
誤爆事件は23日夜、南部ヘルマンド州のKajakiで発生。
パトロール中の英国軍をタリバンの戦闘員が急襲されたところへ支援に駆けつけた米軍のF15戦闘機2機によるものであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この米軍による英兵誤爆では死亡した3名のほか、負傷者も2名でています。
アメリカも誤爆を認め、調査開始を明らかにしています。
これで、タリバン政権が崩壊して以来、アフガニスタンでの英軍の死者は73人となったそうです。

イギリスでは“ブッシュのプードル”とまで揶揄されたブレア前首相からブラウン首相にかわり、アメリカとの距離を変えようとしているとも言われています。
そんななかでの今回の米軍による英兵誤爆事件は、イギリス国内の厭戦気分を高めることになるかも。

韓国は“無理してアメリカに協力しても、何かあったら面倒はみてくれない。アフガンはもうこりごり”というところでしょうし、頼みのイギリスもこれまでのようにはいかないかも。
日本はテロ特措法で対応が変わる可能性も。
日本が引いて“イスラム教対キリスト教”みたいな図式になると、パキスタンも居心地が悪くなる・・・

22日ブッシュ大統領は、過去の日本をアルカイダになぞらえ、アメリカの勝利がこの地で誰も予想できなかった民主化を実現した、また、ベトナムからのアメリカの撤退が大量殺戮を招いたとの認識で、現在の“テロとの戦い”も同様な意義がある・・・とスピーチ。
“自分達が民主主義を実現してあげた”と声高に叫ぶ不遜さ、現在の同盟国に対する配慮のなさ・無神経さなど、考え方が多々ある個々の歴史認識そのものは別にしても不快な印象が残りました。

ベトナム戦争に従軍した退役軍人のジョン・ジョンズ元陸軍准将は、「ベトナム戦争から得た教訓は、米軍は他国の内乱に関与できないし、駐留が長引くほど事態は悪化するということだ」と話し、「大統領はイラク駐留を継続するため歴史の都合のいいところだけを取っている」と批判したそうです。

アフガニスタンもタリバンの復活で戦乱が長引き、出口が見えない状況になっています。
外国の支援がなければ今のアフガニスタン政府は長く持たないのでは。
タリバンがアフガニスタンを力で支配するというのも、アフガニスタンの人々にとって望ましいこととも思えません。
こういう発想も“ブッシュ演説”同様の不遜な考えでしょうか。
アフガンの人々がタリバンを望んでいるなら仕方ないことでしょうが。
人権意識の点では北部の軍閥勢力も五十歩百歩でしょう。
(タリバンよりたちが悪いとの声も聞きます。)

「あとは自分達で勝手にやって」と言うのも無責任です。
内戦状態の拡大・激化で被害を蒙るのは多数の一般国民です。

「やはり世界各地にテロをばら撒くアルカイダ、それと一体となったタリバン支配は容認できない。」というのであれば、現在のアメリカ主導の形でなく、現状を踏まえてもう1回国際社会の意思を確認して、全世界的な枠組みを再構築する必要があるのでは。
戦いが続くのは武器を援助している国があるからでしょう。
隣国イラン・パキスタンの協力を実効あるかたちで確約させ(そのためには多少の取引、アメリカの譲歩も必要でしょう。)、国連として仏・独だけでなく、ロシア・中国も一致して対応できれば、そう戦闘は続かないのではないでしょうか。
北部に残る武装勢力もこの際武装解除させないと将来の火種になります。

いかにも長い困難な道のりにも思えますが、「テロをなくす」という共通認識があれば(あるいは“反対しにくい”大義名分があれば)、できないことではないようにも思えます。
フランスもアメリカに協力的なサルコジ政権に変わっていますし、中国もオリンピックを控えて国際世論に敏感になっています。

テロ特措法の議論も、単に日米関係云々ではなく、この地がどうあるのがいいのか、どういう出口が見込めるのか、そのために日本が協力できることは何か・・・そういう視点から議論したいものです。

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コロンビア コカ栽培からの脱却

2007-08-25 14:34:24 | 国際情勢

(写真はコロンビアのコカ栽培農家 “flickr”より By Myles Mellor )

南米コロンビアは治安の悪い国として旅行者には有名です。
年間に誘拐事件が約3000件、殺人事件は約1万7000件発生していると言われていますので、1日に換算すると誘拐が8件、殺人が46件ということになります。
この国で働く外国人は万一に備えて、高額の誘拐保険加入が必要となるとか。
5月27日のこのブログでも取り上げた誘拐をテーマにした映画「プルーフ・オブ・ライフ」、その中の誘拐された人質の環境、誘拐ビジネスの話もコロンビアで発生した実在の事件がモデルです。

8月23日のAFPにこの国の人々の暮らしを紹介したものがありました。
http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2270996/2038970
「絶えず身の危険と隣り合わせで生活するコロンビアの人々は、そのストレスを発散させるため、毎週末夜になると街へ繰り出し、パーティに参加する。この国ではパーティを楽しむことが、生きていく上で欠くことの出来ない「方法」なのだ。・・・」とのことです。
パーティ参加者の発言「一分一秒も無駄にできません。明日ここにいられるかわかりませんから。」

外国を紹介した情報はどの程度全体像をあきらかにしたものかわからないのが常ですが、コロンビアで暮す危険についてもよくわかりません。
日本からの観光旅行者もいる訳で、彼らの感想などは「言われているような危険な国ではなかった・・・」といったものが多いようです。
もちろん1週間やそこらの観光と毎日の暮らしはまた別物でしょう。

この国の治安が悪いのは左翼ゲリラ組織、右翼民兵組織の活動が止まないことにありますが、これら組織はコカ栽培農家とつながりコカイン密売を資金源にしていると言われています。
このコカイン密売は大規模な犯罪組織を生み、治安を更に悪化させます。

このコカ栽培・コカイン製造を撲滅するための取組み「コロンビア計画」(農薬・除草剤によるコカ畑の撲滅)と合法作物への転換誘導プログラムについて、“まだまだ小さな一歩ではあるが成果をあげている”という紹介が8月20日AFPでなされています。
http://www.afpbb.com/article/economy/2269680/2033680

「このプログラムに53000世帯が参加している。
コカからの転作に応じると18ヶ月間、月100ユーロが支給される。
転作によって収入は大幅に減るが、武装勢力や軍に怯えることなく安心して生活できると農民は語っている。
これによって、コカインを収入源とするこの地域の右翼民兵組織や左翼ゲリラ組織の力が低下している。
この地域のコカ栽培は6ヵ年で半減した。
しかし、今なお世界のコカイン生産の半分をコロンビアが占めている。」

これだけを見ると将来に希望がもてるような気持ちにもなりますが・・・。
これも“全体像がわからない情報”のひとつです。

特に、コカイン大量消費国のアメリカが強力にバックアップしている「コロンビア計画」による除草剤空中散布は、コカだけでなく他の作物・豚などの家畜までをも壊滅させ、更に人体にも健康被害が及ぶと強い批判があります。
(コロンビア大統領は「人の健康には無害である」と主張していますが。)

その効果についても疑問が投げかけられています。
アメリカの国家麻薬取締り局(ONDCP)は今年6月5日、2006年度報告書を発表。
それによると、「コロンビア計画」による大量の除草剤散布にも拘らず、コロンビアのコカ栽培は、前年比で8%増加、耕作面積は、1万3千ヘクタール増加し全体で15万7千2百ヘクタールとなったそうです。
結局、除草剤散布は「麻薬撲滅にこれだけ力をいれています」というアメリカ国内向けのアピールに過ぎないのではないか・・・という意見もあるようです。

隣国エクアドルは除草剤散布によって、自国内においても農作物・家畜の被害、更に人体への被害が出ていると強く抗議しています。
両国関係は悪化し、エクアドルは米州人権裁判所に告訴する意向であるとも報じられています。


(写真は森の中に切り開かれたコカ栽培のプランテーション
“flickr”より By Mikael Hook )

転作プログラムはしっかり対応すればその効果もあがるかと思います。
どんなに収入が減っても、基本的に人間はrisk loverよりrisk averterの方が多いと思いますので、“安心して暮れせる”ことは収入以上の魅力になります。

しかし、コカ栽培がどうか知りませんが、ケシなどは他の作物が育たない土壌でも栽培できると聞きます。
水利などの他の作物が栽培可能な条件を整えることが必要になります。
また、コロンビアのコカでも、他の作物に転換した場合輸送が問題になるようです。
コカなら密売業者がジャングルの奥でも取りにきてくれますが、バナナなどは運ぶ手段・道路が必要です。

更に、転作した場合の補償金がきちんと払われない・・・というのは論外です。
コロンビアでも「政府にだまされた!」という声を聞くとも言われています。
アフガニスタンでも、ケシ栽培転作のための政府の補償(インフラ整備、種籾の供与など)が実行されず農民の怒りを買い、結局タリバンの支持層を増加させる結果になったとも言われています。
(ケシ栽培中止に報奨金を出したところ、報奨金目当てに大急ぎでケシ栽培を開始した農民も大勢いたそうで、実施方法には十分な配慮が必要です。)

ついでに言えば、左翼ゲリラ等による内戦が絶えないことも、農民が危険なコカ栽培に手を染めることも、コロンビア社会の基本的な構造にその原因があるのではないか・・・と勘ぐってしまいます。

コカインに関しては、406億円相当のコカインを密輸しようとしていた“半潜水艇”(4名が乗船)を米税関国境警備局が発見・拿捕したとのニュースも今月23日にありました。
密輸組織もあの手この手のようです。


(写真はコロンビアのSierra Nevada de Santa Marta国立公園の夜明け 
“flickr”より By Mikael Hook )
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イラク アメリカで噴出すマリキ首相批判

2007-08-24 14:48:41 | 国際情勢


写真は06年6月、首相就任当時のマリキ首相とブッシュ大統領。
お互い今より楽観的だったのかも。
“flickr”より By Shloma Shamos

イラクは相変わらずの泥沼・混迷状態です。
・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【8月24日 AFP】
イラク北東部ディヤラ州バクバ近郊の村で23日、国際テロ組織アルカイダ系組織の戦闘員が、警察・米軍に協力する部族の長老宅などを襲撃し、23人が死亡し15人が拉致された。
これに対し、警察とスンニ派武装勢力が応戦する事態となった。
応戦したスンニ派武装勢力は、以前はアルカイダと同盟関係にあったが、現在は激しく敵対している。 
イラク駐留米軍は、イラク国内の暴力事件の多くはアルカイダ系武装勢力によるものだとしている。
また、最近数か月間で、米軍などに協力する地元のスンニ派アラブ人などに対するアルカイダの攻撃が急増している。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
同じ宗派間の衝突という意味では“泥沼”そのものですが、外国人主導のアルカイダに対して武装組織が米軍・警察に協力して戦うという図式は、イラク政府・米軍にとって悪くない構図かも・・・。
そんな感想を持ったのですが、23日公表された米情報機関の報告書「国家情報評価」(NIE)にも同様の考えが示されていることを知りました。

同報告書の趣旨は、TVのニュースでも報じられていましたが、「イラクの政治指導者は効率的な統治ができずにいる」とマリキ政権を厳しく評価し、「今後6~12カ月でイラク政府はより不安定化する」という悲観的な見通しです。
一方で、イラクのスンニ派の間で米軍と協力しアルカイダ系武装勢力に攻勢をかける動きが出ていることに注目。
この動きを「治安改善の最大のチャンス」とする一方で、「(シーア派主体の)イラク政府の支持があってこそ、より幅広い政治的解決につながる」と指摘しているとのことです。

その肝心のイラク・マリキ政権ですが、最近“ぼろくそ”に言われています。
クロッカー駐イラク米大使はバグダッドで21日、国民融和に向けた政治プロセスの停滞について、「国家的問題での進展(のなさ)に非常に失望している」と不満をあらわにしています。
また、イラクを現地視察したレビン米上院軍事委員長は20日、「イラク議会がマリキ政権を不信任で更迭し、宗派性のより薄い首相に交代させることを望む」と異例の要請を行ったそうです。【毎日8月22日】

“宗派性のより薄い”とは言っても、イラク政府首相を選ぶ際に、当初はシーア派のダアワ党指導者でもあるジャファリ移行政府首相が最有力候補と見られていましたが、シーア派の利益を優先するジャファリ氏にスンニ派とクルド人勢力が反発、アメリカもサドル派とイランに近いジャファリ氏への警戒を強めるなどの事情があって、より宗派性の薄いマリキ氏(当時ダアワ党幹部)をアメリカが首相に据えたはずでしたが・・・。

ヒラリー・クリントン上院議員も22日、イラク議会がマリキ首相を更迭するよう求める声明を出し、「イラクの指導者らは(国民融和への)政治的な目標を達成していない」と批判し、イラク議会が首相をマリキ氏から「より国民統一を図れる人物」へ代えるよう求めたそうです。【毎日新聞 8月23日】

ブッシュ米大統領も21日、米政府内にマリキ・イラク首相の国民融和に向けた指導力への懐疑的な見方があることを認め、「指導体制に一定の不満がある」と述べたそうです。
大統領は、石油収入の公平分配を規定する法律の制定や地方選挙を実施できないマリキ政権の「無力」度に言及し、「政府が国民の要求に応えなければ、イラク国民が政権を代える。それは米国の政治家が決めることではない」と語っています。
しかし、早期撤退論に火がついた時間的制約の中で、ブッシュ政権は「マリキ支持」の看板を下ろせないのが現実とのこと。【毎日8月22日】

いくらアメリカの傀儡政権とは言え、ブッシュ大統領の言うように“米国の政治家が決めることではない”のですが、その割にはみんな言いたい放題言っています。
軍隊を派兵し、泥沼にはまってしまった焦りでしょうか。
それと、アメリカの“自分たちの価値観・行動の正しさを信じて疑わない”独善性・傲慢さのあらわれかも。

このような批判に対し、マリキ首相は「イラク政府にスケジュールを押し付ける権限は誰にもない」と語り、関係改善に向けた取り組みをより緊急的に実施すべきとの圧力をはねつけたそうです。【AFP 8月23日】
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ミャンマー 軍事政権への抗議デモ

2007-08-23 14:01:51 | 国際情勢

(写真はミャンマーの古都マンダレー郊外にあるウーベイン橋 世界最長の木橋とも言われ、夕暮れ時、橋を行きかう地元の人々、僧侶のシルエットが印象的な光景です。“flickr”より By Tranuf )

軍事政権が続くミャンマーで、ガソリン価格引上げに抗議するデモが行われたことが報じられています。

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【8月15日 共同】
ミャンマー政府は15日、ガソリンなどの小売価格を最大5倍に引き上げた。
事前通告なしの値上げに、大都市ヤンゴンでは一部のバスが運行を取りやめるなど市民生活に混乱が出ている。
同市民によると、ガソリンは約1・6倍に、ディーゼル油は約2倍に値上がり。
バスなどの燃料となる圧縮天然ガスは約5倍に跳ね上がった。
ガソリン類は過去2年間で既に9倍以上に高騰していたという。
・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今年1月にミャンマーを旅行しましたが、そのときすでに「ガソリンが高くなった。」という声はあちこちで聞きました。
詳しい状況はわかりませんでしたが、値上げになった政府からの割当分と民間価格は更に数倍の開きがあること、古い自動車を所有して安い政府からのガソリンを入手して高く転売するようなことが行われていることなども聞きました。
統制をかけるとどうしてもヤミ市場が生じ、一部のコネや資力のある者だけが利益を得るような“ゆがみ”が発生します。
なお、ミャンマーでは電気が使える時間より停電している時間のほうが長いような実態で、経済はかなり行き詰っているように見えました。
・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【8月22日 時事】
ミャンマーの最大野党、国民民主連盟(NLD)と反体制組織「88年学生運動グループ」のメンバーら約150人が22日、軍事政権によるガソリン代値上げへの反対を訴えながら旧首都ヤンゴンの郊外をデモ行進した。
現地では、参加者6人が治安当局か軍政を支持するグループに連行されたとの情報が出ている。

ヤンゴンでは、民主化運動活動家ら約500人が19日、大規模なデモを実施。
これに対し、治安当局は21日以降、このデモを主導した13人を相次いで拘束しました。
軍政の統制下にある国営メディアは拘束理由について「国家の治安を損なったため」と報じている。 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
19日のデモは約9年振りとなる大規模な反政府デモとなりました。
軍事独裁下のミャンマーでは街頭での政治的活動が禁止されています。
このため、一連のデモは「物価高騰への抗議」との体裁をとりながら、軍事政権への不満を表明する狙いがあると伝えられています。

22日のデモでは、抗議デモを阻止するため約200人の兵士らが出動し、6人(別報道では8人)の活動家らが身柄を拘束されました。
彼らは数時間後に解放されましたが、再度の抗議デモに参加しないよう軍当局から署名させられたと言います。
AFPによると、抗議デモの最中には、道端や家々の窓から抗議に賛同する声も聞こえ、軍事政権下にある同国ではいたって異例な出来事となったそうです。

ミャンマーでは88年に民主化運動が広がりましたが、国軍がこの運動を鎮圧しました。
その2年後の総選挙で、スー・チー率いる国民民主連盟(NLD)が圧勝したが、軍事政権は政権委譲を拒み、スー・チーの軟禁を断続的に継続しています。
アムネスティ・インターナショナルは、ミャンマーには千百人を超える政治囚がいると指摘しているそうです。

軍政は、新憲法制定に向けた国民会議を7月18日に再開し、新憲法に関する審議を今月8月中にも終えて、年内にも国民投票にかけるのではとの観測もあります。
この流れで“スー・チー抜き”の政治的枠組みをつくることを意図していると見られています。
スー・チー軟禁の解決への出口が見えないなかで、NLDの一部にもこの流れに乗る動きも出ていると伝えられています。
今回のデモは、この“大政翼賛会”的な流れに反対する勢力によるものではないかと思います。

ミャンマー軍事政権の人権抑圧に対する国際的な批判は増しており、アジア各国からも“お荷物”的に見られるようにもなっているようです。
先月末に開催されたASEAN外相会議では、ミャンマーの反対で一時危ぶまれましたが、結局「ASEAN憲章」草案に“人権監視機関の設置”を盛り込むことが決定されました。
ただし、その詳細については、ミャンマーの反対や各国の思惑(ベトナム、カンボジアなど各国とも“すねに傷を持つ身”ですから・・・)もあって先送りされました。

このような国際世論が功を奏すかは、最近経済的関係を強めている中国がどの程度本気で働きかけるかにもよると思われます。
そして、昔から関係の深い日本も。

こうしたなか、ミャンマーは同じくアジアの“お荷物”となっている北朝鮮との外交関係を深めており、4月には国交を回復、今月18日には「北朝鮮がミャンマー大使館の開設準備に入った」ことが報道されています。
大使館が開設されれば、83年のラングーン事件(ミャンマー訪問中の韓国首脳を北朝鮮工作員が爆殺した事件)で国交を断絶して以来24年ぶりとなります。

ASEANからの批判の高まり、“後ろ盾”中国も北京オリンピックを控えて国際的に批判される行動はとりたくないという事情、そういったなかで今回の抗議活動がどう推移するか注目されます。

追伸
アップロードした後に確認すると、アメリカが早速今回の活動家拘束を非難して、身柄を解放するように要求しています。
この対応の早さはさすがです。
22日のデモについては、本文にも記載したように、【23日 06:02】のAFPは“拘束された活動家はその後解放された”旨報じていましたが・・・詳細はわかりません。
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ケニア 大規模スラム“キベラ”での支援活動

2007-08-22 16:55:23 | 国際情勢

(写真はケニアのスラム“キベラ”の家々 “flickr”より By Chrissy Olson )

アジアの国々を旅行する際に、日本の支援・融資で建設・運営されているものをしばしば目にします。
昨年バングラデシュでは国を二分するジョナム川にかかるジョナム橋を利用しました。
1998年に日本からの融資などで作られたこの橋によって、それまでのフェリー乗換えからダイレクトに北西部が首都圏につながり、所要時間が大幅に短縮されました。
人と物の流れを大きく変えたジョムナ橋は人々からは“夢の橋”と呼ばれているそうで、同行した現地の青年が旅行中一番関心を示して写真をとろうとしていたのもこの橋でした。

復興が進むカンボジアでも、波打つような悪路が一転して完璧な舗装道路に変わったことを尋ねると日本の援助による工事だとか。
遺跡の修復も何カ国かやっていますが、日本の技術が一番だと聞くと悪い気はしません。

一方で、援助のありかたに対する批判も見聞きします。
援助で行われる大型プロジェクトが現地住民の生活向上に寄与しておらず、逆に困窮させる場合もある。結局もうかっているのは工事を受注した援助国の大企業ではないか・・・云々。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【8月19日 AFP】・・・・ケニアで一石三鳥のゴミ焼却システム開始・・・・
アフリカ最大級のスラム街で、これまで放置され公衆衛生上の危険をもたらしていたゴミが、新しい焼却システムによって住民に熱を供給するエネルギー源に生まれ変わった。さらに、ゴミの収集により公害の抑制にも威力を発揮するようになった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

上のニュースはケニアの首都ナイロビの郊外に広がるスラム、キベラに関するものです。
イギリス統治時代に鉄道建設労働者のためのキャンプ地がつくられましたが、それが鉄道完成後も放置され、職を失った人々が住み続け、今のキベラになったそうです。

人口は80万人とも100万人とも言われています。
アフリカ大都市の周辺に数多く存在するスラム街と同様に、キベラにもこれまでゴミ収集サービスは存在しませんでした。
上記AFPニュースでは“住民はくるぶしまで汚物に埋もれて街を歩き回っていた。”との表現がありますが、まあ、全面そういう状態ではないでしょうが、収集システムがない訳ですからゴミは溜まる一方です。

国連環境計画(UNEP)が1万ドルを拠出してキベラで始めたゴミ収集プロジェクトの概要は次のようなものです。
・ 失業中の若者が職員として登録され、週2回ゴミを集める。
(報酬は1回につき幾らという形で、比較的めぐまれた額だそうです。)
・ 分別してリサクルできるものは売却、可燃性のものは地域の焼却炉で焼却する。
・ 焼却炉の熱は地域住民が調理に使う“かまど”として利用される。
・ 焼却炉の熱を利用したお湯で地域住民の公衆浴場を近くにつくる。

このプロジェクトによって、街中のゴミが目に見えて減少したそうです。
これは美観だけの問題ではなく、カドミウムや水銀など健康を害する毒性のものが減ることや、伝染病の発生を予防するなど、スラム住民の健康改善に大きく寄与します。
更に、これまで口にできなかった温かい食事が可能になり、お風呂も使えるようになります。
また、雇用も新たに発生します。

なんだか“いいこと尽くめ”のプロジェクトにも聞こえます。
課題としては、毒性の煙の排出を抑えるため焼却温度を上げることなどもあるようです。
恐らく実際運用しているなかでは、そうそう“いいこと尽くめ”とはいかない問題もあることでしょう。
また、どこのスラムでも、ゴミの山の中から“金目のもの”を拾い出して何がしかのお金を得るような子供達がいますが、“キベラの場合、プロジェクト後は彼らはどうなるのだろうか?”といった心配もあります。

しかし、地域事情にあった素晴らしいプロジェクトのように思えます。
UNEPではこのプロジェクトをアフリカの他の地域にも広げていく予定だそうです。
是非、うまくいって欲しいものです。

キベラというスラムは、単に貧しい人々が暮す場所というだけでなく、生活の活気に満ちており、人々が助け合って行ういろんな事業も行われている街のようです。
この街のそんな活気に魅了されるファンも少なくないようです。
ケニアでは、人々が助け合うことを“ハランベー”と呼び、ケニアの社会・文化に特徴的なものだそうです。

キベラで今回のプロジェクトがうまく機能したとしたら、その背景としては“ハランベー”の精神といった地域住民のつながりが存在していることがあるのではないでしょうか。
逆に言えば、内戦に疲弊した難民キャンプのような場所でもうまく機能するのか・・・という懸念は残ります。

最初の疑問、「どんな支援・援助のかたちが望ましいのか?」、あるいは「なぜアフリカの国々は貧困から抜け出せないのか?貧困からの脱出に寄与できる援助とはどういうものか?」というテーマに戻ります。

これまでの国際援助は基本的には、「先進国の市場経済と同じ理念・制度を途上国においても確立し、外国からの資本が導入されやすい環境を作り、経済全体の成長を実現することで貧困から脱却できるはずだ・・・」というグローバリゼーションの考え方のように思えます。

実際、ケニアはこの線で順調に経済背長を実現しているアフリカにおいては数少ない国のように見えます。
ジェトロの報告によれば、「2006年の実質GDP成長率は05年(5.0%,推定値)と同水準の見通し。
キバキ大統領は、携帯電話会社のサファリコムの株式9%をボーダフォンに譲渡することに合意。
国営テレコム・ケニアの株式の6割を手放す考えも明らかにした。
電力セクターでも今月からケニア発電公社の株式新規公開により、株式の30%が売却される。
国営鉄道公社の営業権譲渡に続き、民営化や民間資本活用が動き出している。」とのことで、市場経済化、民営化の路線を走っているようです。
今後、隣国スーダンのダルフールの政情が落ち着けば、スーダン貿易が拡大して更に経済を引っ張ることも期待できます。

一方で、「このような経済成長路線では住民の暮らしは改善しない。グローバリゼーションの流れにそった制度改革で零細な農民・事業者はそれまでの権益を奪われ、結果、一部の成功者と多数の貧困者を生み出すだけに過ぎないのでは・・・」という考え方もあります。
日本の社会における「構造改革・規制緩和・市場経済の徹底によって格差・ワーキングプアが生まれているのではないか・・・」との考え方と一致するものでしょう。
ケニアの経済成長が持続すれば、キベラの人々はそこから抜け出せるのでしょうか?

日本社会の現状をみつめると、確かに市場原理主義では大きな痛みをこうむる弱者が発生するかのように見えます。
国際的なグローバリゼーションは、途上国内の社会システムの欠陥・不備と相まって、成長から取り残される多くの貧困者を生み出しているようにも思えます。
不正・汚職・賄賂がはびこる国内の社会システムの問題にすぎないのでしょうか。

また、例えば、グローバリゼーションの一環としての先進国からの知的財産権の保護の要求は、途上国におけるエイズ治療薬のコピー製造・販売を禁止し、結果的に途上国の患者の大多数が治療を受けられずに死んでいくという“痛み”を要求することにもなります。

しかし、ではどういった方法で貧困から脱却ができるのか?そもそも“貧困からの脱却”という考え方から改めるべきなのか?“ハランベー”の精神で国内経済全体がうまくまわるのか?
また、ケニア市場経済の拡大がキベラの人々の暮らしにも何らかの恩恵を与えているのも事実ではないかと思えます。
経済全体がスローダウンすれば、その影響を真っ先に受けるのは恐らくキベラのような周辺部分でしょう。

いつものことですが、ひろげるだけひろげておいてとてもまとめきれない問題ですので、今後の宿題ということで。

(写真は“キベラ”の子供達 “flickr”より By Outreach at Word of Grace )


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