孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パキスタン  拘束タリバン幹部の国外移送拒否 根深い対米不信

2010-02-28 12:33:46 | 国際情勢


(アフガニスタン・ヘルマンド州マルジャでの対タリバン大規模作戦によって被害を受けた商店主と、損害補償について交渉するアフガニスタン軍兵士 “flickr”より By isafmedia
http://www.flickr.com/photos/isafmedia/4391765814/)

【「たまたまいた」】
オマル師の側近で、タリバンのナンバー2とも言われるバラダル師がパキスタン最大都市カラチで拘束された件について、パキスタンとアメリカの思惑・事情の違いが表面化しています。
先ず、拘束の経緯については、パキスタン側はアメリカとの合同作戦を否定しています。

****パキスタン:タリバンのナンバー2拘束は「偶然」*****
パキスタン軍の17日の声明で確認されたアフガニスタンの旧支配勢力タリバンのナンバー2とされるバラダル師の拘束は、「偶然だった」と軍が説明していることがわかった。同師の拘束を巡っては、米紙が15日、「パキスタン南部カラチでパキスタン軍情報機関(ISI)と米中央情報局(CIA)の合同作戦で捕らえた」と報じ、パキスタン政府が合同作戦の存在を否定したものの、拘束の有無については確認中としていた。
軍によると、バラダル師はパキスタン当局が拘束した数人の中に「たまたまいた」という。拘束場所は明らかにしておらず、現在は「ISIの拘置下」としている。
パキスタン軍部は安全保障上の理由でアフガンのタリバンとの関係を維持しているとされる。「たまたま」とは、バラダル師を狙って拘束したわけではないとあえて主張しているわけで、その真意に関心が集まりそうだ。
アフガンを訪問中のホルブルック米特別代表は17日、「意義深い成果だ」と強調した。【2月18日 毎日】
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「たまたま」というのは、タリバンへの配慮でしょうか?パキスタン国内にある反米感情への配慮でしょうか?
タリバンは、国際社会の批判に抗しながら、アフガニスタンでの影響力を確保すべくパキスタンがISIを中心に資金・人員を注ぎ込んで育てた組織であり、今なお軍、特にISIとの関係が切れていないことがしばしば指摘されています。

アメリカは、タリバン・アルカイダの聖域となっているパキスタン国境地帯の制圧がアフガニスタン情勢のカギを握るとみて、パキスタン側に協力を求めていますが、パキスタン側の対応はタリバンなどとの繋がりや国内反米感情への配慮からストレートではありません。

【「武装勢力の越境をうながし、国内に過激派を増やす」】
そのバラダル師について、“パキスタンとアフガニスタン両国の内相は24日、パキスタンの首都イスラマバードで会談して身柄をアフガン政府に引き渡す方針で一致した。会談には米連邦捜査局(FBI)も参加した。アフガン治安・情報機関には米国のアドバイザーがおり、引き渡し後は米国によるバラダル師の直接尋問が可能になるとみられる。”【2月25日 朝日】と報じられましたが、翌日にはパキスタン司法当局が国外移送を禁じる命令を出したことが伝えられています。

*****パキスタン:タリバン幹部を国外移送禁止に 対米不信反映*****
パキスタンのラホール高等裁判所は26日、パキスタン当局が2月中旬に拘束したアフガニスタンの旧支配勢力タリバンのナンバー2とされるバラダル師らの審理を3月中旬に始めると決定、政府に対してバラダル師らの国外移送を禁じる命令を出した。米国は、バラダル師の身柄を米国かアフガンに移すよう圧力をかけていたが、司法が阻む格好となった。
パキスタンには、アフガン南部ヘルマンド州などパキスタンとの国境沿いで軍事作戦を強化する米国への強い不信感がある。今回の命令も、対米協調路線の見直しを進めるパキスタン政府の思惑を色濃く反映したものだ。

バラダル師とともにパキスタン国内で拘束されたタリバン幹部ら計5人が対象。パキスタンの人権保護団体が、国外移送の是非についての判断を同高裁に求めていた。今後の審理では、密入国や国内でのテロ活動への関与が問われる。実刑判決が下された場合、パキスタンで服役する。
バラダル師拘束は、15日の米紙報道で表面化。「米国とパキスタンの情報機関による合同作戦」「両国の対テロ関係の成功例」と米国で報じられる一方、米当局は、身柄引き渡しや取り調べへの参加を迫った。
しかし、パキスタン政府は「合同作戦の報道は根拠のない宣伝」(マリク内相)と否定し、身柄引き渡し要求もはねつけた。

米国に対するパキスタンの不信感は、アフガン南部ヘルマンド州で13日に始まった米軍主導の大規模軍事作戦でますます強まったとされる。
パキスタンのマリク内相は「武装勢力のパキスタンへの越境をうながし、国内に過激派を増やす」と作戦に反発。キヤニ陸軍参謀長も北大西洋条約機構(NATO)本部を訪ねて「重大な懸念」を伝えていた。
しかし、米国はパキスタン側の懸念を無視。ヘルマンド州の次は、やはりパキスタンと接するカンダハル州へと作戦を拡大する見込みだ。このためパキスタンでは「米国は過激派をパキスタンへ追いやってアフガン安定化を演出したがっている」(政府幹部)という見方が強くなっている。
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今回のラホール高等裁判所の判断の背景には、かねてからのザルダリ大統領とチョードリー最高裁長官を頂点とする司法当局との対立もあるのではないでしょうか。
ムシャラフ前大統領によってその地位を追われていたチョードリー最高裁長官の復職について、ザルダリ大統領は強く抵抗していましたが、司法・野党に追い詰められる形で認めざるを得なくなり、結果、パキスタン最高裁判所は、大統領と政府高官らの訴追を免除してきた国民和解令(NRO)を無効とする決定を下し、7件の汚職罪で訴追されながらNROによって「無罪」とされたザルダリ大統領への審理再開が可能となっています。

【「年内にカンダハルで勝利」】
記事にある“アフガン南部ヘルマンド州で13日に始まった米軍主導の大規模軍事作戦”「オペレーション・ムシュタラク」については、民間人犠牲やタリバン側の住民を“人間の盾”にするような抵抗もあって難航も報じられましたが、ここにきてアメリカ側の強気の見通しが報じられています。

****タリバン牙城の町制圧=年内に大都市カンダハル掃討-アフガン南部*****
米軍と国際治安支援部隊(ISAF)は26日までに、アフガニスタン南部ヘルマンド州で行っていた大規模な掃討作戦で、反政府勢力タリバンの牙城マルジャの町をほぼ制圧した。AFP通信などが報じた。
米軍とISAFは今月13日からヘルマンド州で掃討を開始。一部で激しい抵抗があったものの、タリバンはマルジャの町から逃走したという。25日に米軍とアフガン軍などが見守る中、州知事が町にアフガン国旗を掲げた。今後数週間、戦闘は続くとみられるものの、主要な戦闘は終了した。
掃討には過去最大規模の1万5000人の兵力が投入され、オバマ米大統領の出口戦略の成否を占うものとして注視されていた。今後はマルジャの治安維持と統治機能確立が焦点となる。
米政府高官は26日、「マルジャの掃討は、カンダハルでさらに包括的かつ大規模な掃討を行う前哨戦だ」と位置付けた上で、「アフガン全土でタリバンの勢いをそぐには、年内にカンダハルで勝利しなければならない」と述べた。【2月27日 時事】 
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タリバンの本拠地カンダハルに作戦が及べば、タリバンの攻勢が続いていたアフガニスタン情勢も変化する可能性があります。
ただ、マルジャでもまだ一部タリバンが残存して抵抗しているとも報じられていますし、問題は支配を回復した地域で住民の支持を得た長期的な統治が可能かどうかという点です。
今回作戦は、制圧後も多くの兵力を残し、治安を維持して復興を進めることで、統治を維持することがその特徴となっています。
アフガニスタンでは長年の内戦で民族・地域対立が激しく、今回任命された他地域出身の行政責任者が地域住民に受け入れられるか不安視する見方もあります。

【自業自得】
こうした情勢を受けての「米国は過激派をパキスタンへ追いやってアフガン安定化を演出したがっている」というパキスタン政府幹部の発言になる訳ですが、これはいささか筋の通らないものにも思えます。
そもそも、先述したようにイスラム過激組織タリバンを育て維持してきたのはパキスタンです。
アルカイダにしても、当時アフガニスタンを支配していたソ連に対する“ジハード”を押しすすめるため、パキスタンISIが、世界各地のイスラム諸国からイスラム急進派をパキスタンに招いて“イスラム国際旅団”に仕立て上げたものです。(アメリカCIAも、このアルカイダ形成に協力することになります。)

こうした組織との関係を明確に整理しないまま、自分達の都合で作りあげた過激派組織が自国内に流入してくるからといってとやかく言うのは、筋違いのように思えます。
パキスタンが行うべきことは、先ずタリバン・アルカイダなどイスラム過激派との関係を断つことを明確にすることであり、それができないなら、過激派流入によって自国内社会が揺さぶられるということで、そのつけを払うしかありません。
アフガニスタンについても、インドとの関係についても、ISIが主導するような目先の利害・影響ではなく、長期的・恒久的な和平・安定の枠組み構築が結果的に自国の安全保障を利することを、パキスタン軍・政府は理解すべきではないでしょうか。

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スーダン  ダルフール紛争で停戦合意 南部独立を問う住民投票は?

2010-02-27 15:32:12 | 国際情勢

(右がバシル大統領 左がキールSPLM議長・スーダン第1副大統領 キール氏が副大統領に就任したときの写真でしょうか。 “flickr”より By Ethio Sudanese Nations
http://www.flickr.com/photos/ethiosudanese/2310250586/)

【「紛争終結に向けた大きな一歩だ」】
スーダン西部ダルフール地方で03年、開発の遅れに反発する黒人住民らがアラブ系の中央政府に対して武装蜂起して始まった“ダルフール紛争”は、政府系民兵による住民への無差別殺害が繰り返されたとされ、国連推計によると、死者数は紛争による食糧不足の影響なども含めると約30万人、避難民は約270万人という「史上最悪の人道危機」となりました。

黒人系住民とアラブ系住民・中央政府の対立に加え、スーダンと隣国チャドがそれぞれ相手国内の反政府勢力を支援しあうという側面もあって紛争が激化・長期化しましたが、今年に入り、主要反政府組織「正義と平等運動(JEM)」を支援していたとされる隣国チャドとスーダン政府が関係改善で合意し、和平に向けた動きが始まっています。

****ダルフール紛争:停戦へ枠組み合意 政府と反政府組織調印*****
「史上最悪の人道危機」とされるスーダン西部ダルフール地方の紛争で、バシル大統領と主要反政府組織「正義と平等運動(JEM)」指導者のイブラヒム氏が23日、カタールの首都ドーハで和平実現に向けた枠組み合意に調印した。全面停戦が盛り込まれ、3月15日までに最終合意を目指す。
AP通信などによると、バシル大統領は合意について「紛争終結に向けた大きな一歩だ」と語り、和平プロセスに関与してきた国連や米国も評価した。

一方、イブラヒム氏は「平和の実現には、相当の忍耐と妥協が必要」と述べて条件面での隔たりも示唆しており、最終和平合意の期限通りの実現が可能かは不透明だ。ダルフール地方にはJEM以外の反政府勢力もおり、包括和平の実現に向けた交渉への取り込みも課題となる。
今後の交渉では、JEMの合法政党化や閣内参加、兵員の国軍への編入、拘束中兵士の恩赦、資源の配分などが協議される予定だ。
枠組み合意を受け、潘基文(バン・ギムン)国連事務総長は「すべての当事者が柔軟性をもってドーハ・プロセスに参加するよう促したい」と述べた。

ダルフール紛争を巡り、国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪などの容疑で逮捕状が出ているバシル大統領にとり、最終合意が実現すれば、国際的批判をかわし、4月に予定される総選挙への注力を容易にする。
さらに、西部地域での緊張緩和は、分離独立の可否に関する住民投票が来年に予定されている南部への対処に集中するためにも望ましい条件だと言える。南部には石油資源が集中しており、その配分は過去の南北内戦の一因にもなっている。
ただし、JEM関係者からは、最終合意には6月までかかるとの声も出ており、停戦が維持されるかも含め、予断を許さない情勢が続くとみられる。【2月24日 毎日】
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上記記事にも“最終和平合意の期限通りの実現が可能かは不透明だ”とあるように、問題も多く残されています。
JEMはダルフール地方の反政府勢力のなかでは最大ですが、反政府勢力は約20あり、別の有力反政府組織「スーダン解放軍(SLA)」は和平に応じる構えを見せておらず、ダルフール紛争の包括和平への取り組みは難航しています。
スーダンのバシル大統領が「紛争終結」を宣言した24日夜にも、政府軍がSLAの拠点を襲撃したとも報じられています。政府軍側はこの攻撃を否定しています。 【2月26日 時事より】

ただ、「紛争終結に向けた大きな一歩」であることには間違いなく、「史上最悪の人道危機」終結に向けて、包括的和平への取り組みが進展することを、バシル大統領が言うように「ダルフール紛争の終わりの始まり」となることを望みます。
そうしたなかで、少し気になる報道も。

【来年1月住民投票 「新たな紛争」か?】
“ただしJEMは、4月に予定される大統領選や議会選のための有権者登録をこれまで拒んできたため、選挙の延期を求めている。最終合意に向けた大きな障害となりうる。
スーダン政府は現段階で選挙延期の可能性を否定しているが、仮に先延ばしする場合は、移動が困難になる雨期を避けるため、早くても11月と言われる。その場合、南部スーダンの独立を問う2011年1月の住民投票の日程に影響が出るのは必至だ。”【2月24日 朝日】

ダルフール紛争と並んで、スーダンが抱える大きなもうひとつの問題が南北間の対立であり、来年1月に予定されている住民投票によって南部スーダンの分離独立が問われることになっていることは、これまでも取り上げてきました。
すでに南部スーダンでは、部族間の衝突を中央政府が煽って独立を阻止する試みに出ていると言われるような混乱も起きており、ただでさえ波乱含みの住民投票が延期云々といったことになると、それだけで混乱が激化しそうです。

その住民投票前に、大統領選挙があります。今回停戦もダルフール問題で国際刑事裁判所の逮捕状が出ているバシル大統領が、4月の大統領選を控えて指導者としての正統性をアピールする狙いがあるとみられています。

****スーダン:分離独立巡り過熱…大統領選向け集会*****
南北内戦終結後、初めてとなる4月の大統領選に向け、アフリカ・スーダン南部で南部を掌握する「スーダン人民解放運動」(SPLM)が大規模集会を開くなど、選挙戦を過熱させている。大統領選にあおられる形で南部独立を求める声が高まっており、来年1月にも予定される分離独立の是非を問う南部の住民投票に大きな影響を与えるとみられている。
SPLM議長でスーダン第1副大統領のキール氏は24日、南部ジュバで約5万人を集めた集会を開いた。今月半ばには、北部を拠点とする与党「国民会議」(NC)議長の現職バシル氏が首都ハルツームで立候補を表明しており、両者の事実上の一騎打ちが予想されている。
ジュバ大に通うイエル・マリルさん(23)は「北部のスーダン政府は南部で産出される石油収入を均等に配分していない。分離独立を経て、初めて南部に向き合うだろう」と独立を支持。建設作業員のキング・デービッドさん(24)は「新たな紛争に突入する可能性がある」と心配する。【2月26日 毎日】
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上記記事では、バシル大統領と南部を代表するSPLM議長でスーダン第1副大統領のキール氏の一騎打ち・・・ということになっています。しかし、以前の報道では、南部・SPLM側は大統領選挙を軽視する形で、キール氏ではなく知名度の低いアルマン副事務局長を擁立し、キール氏は住民投票後の独立をにらんで南部スーダン自治政府の大統領選に立候補するとされていました。【1月22日 朝日より】
どちらが正しいのかはわかりません。

【「良い隣人」か?】
いずれにしても、大統領選挙でバシル大統領が再選されたとき、石油資源のある南部独立を問う住民投票がスムーズに実施されるのかは大きな疑問です。
バシル大統領は「住民が選択した場合にはスーダン政府は南部の独立を承認する」と発言しているようですが・・・。

****スーダン大統領、「南部スーダンの独立を承認する用意がある」*****
スーダンのオマル・バシル大統領は19日、2011年1月に予定されている南部の分離独立を問う住民投票について、「住民が選択した場合にはスーダン政府は南部の独立を承認する」と発言した。
大統領は、西赤道州の州都ヤンビオで、南北間の内戦終結5周年を記念する式典に出席し、「(与党)国民会議は統一の方が望ましいとの立場だが、住民投票で分離独立の結果が出た場合はそれを配慮し、支持する。北部と南部は良い隣人になるだろう」と演説した。

スーダンでは2005年1月9日、22年にわたる南北間の内戦に終止符を打った「南北包括和平合意(CPA)」が署名された。この合意は、今年4月の複数政党による総選挙と来年1月の住民投票への道筋を付けることとなった。住民投票は、南北間の対立の再燃で実現が危ぶまれていたが、前年12月になって議会は「南部の分離独立を問う住民投票案」を承認した。
なお、バシル大統領は、再選を目指して総選挙に再出馬すると言明している。

式典に同席した、南部スーダンの大統領を務めるサルバ・キール・マヤルディ スーダン第1副大統領は、住民投票の結果のいかんに関わらず、平和を維持することが重要だと強調し、「結果がどうであれ北部と南部は政治的・経済的な相互関係を維持していく」と述べた。
また、南部が独立した場合でも、南部スーダンの収入の98%を占める石油は、精製と輸出のために北部へ供給すると語った。
北部の収入源の約60%は石油から来ているとされている。【1月20日 AFP】
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証拠もなく人を疑うのはよくないことですが、石油資源のある南部独立を、ICCから逮捕状も出ているダルフール紛争を主導したあのバシル大統領がすんなり認めるというのは・・・本当でしょうか?

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フランス・サルコジ大統領  ルワンダ訪問「甚だしい判断の誤りを犯した」

2010-02-26 23:17:51 | 国際情勢

(空港にサルコジ仏大統領(左)を迎えたルワンダ・カガメ大統領(右)
“flickr”より By Paul Kagame
http://www.flickr.com/photos/paulkagame/4387843900/)

【「忌まわしい犯罪を防ぎ、止めることができなかったという過ち」】
虐殺当時の政権を支援していたフランスに大虐殺の責任があるとするルワンダと、虐殺のきっかけとなった当時の大統領搭乗飛行機撃墜事件は、現在のカガメ大統領サイドの犯行であるとするフランスは激しく対立、国交を断絶していましたが、昨年11月、ルワンダ・ブルンジ両国はフランスとの国交正常化を表明。
そいて、今年1月には、クシュネル仏外相が、国交再開後初めて、ルワンダの首都キガリを訪問。
こうしたフランス・ルワンダの関係改善を更に推し進めるべく、サルコジ仏大統領がルワンダを訪問しています。

****サルコジ仏大統領、ルワンダ訪問 1994年の虐殺後初*****
フランスのニコラ・サルコジ大統領は25日、1994年に起きたルワンダのジェノサイド(大量虐殺)後、仏大統領としては初めて同国を訪問し、この虐殺におけるフランスの「過ち」を認めた。しかし、謝罪の言葉までは至らなかった。

サルコジ大統領は、フランス政府が虐殺を後押ししたと非難を続けてきたポール・カガメ大統領と行った共同会見の席で「ここで起こった忌まわしい犯罪を防ぎ、止めることができなかったという過ちについて、フランスを含む国際社会は反省をまぬがれない」と語った。
ジェノサイド当時はフランスの要職にはなかったサルコジ氏だが、カガメ大統領の出自であるツチ人を中心とする80万人が殺害された惨劇に至る状況で、虐殺前のルワンダに大きな影響力を持っていたフランスが「甚だしい判断の誤りを犯した」ことを認め、世界は「(当時のルワンダ)政府の虐殺的側面に盲目だった」と述べた。
またサルコジ氏はルワンダの首都キガリの虐殺記念館にある約25万人の犠牲者が眠る共同墓地のひとつを訪れ、ツチの犠牲者を追悼し献花した。【2月25日 AFP】
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ルワンダで「誤り」を犯したことは認めるが、虐殺に対する責任は一切否定するというのが従来からのフランスの姿勢ですが、「誤り」を口にする今回のサルコジ訪問が、この線から踏み込んだものかどうかはよくわかりません。
“サルコジ大統領は会談後の記者会見で、大虐殺のきっかけとなった94年4月のハビャリマナ大統領機撃墜事件後の仏の対応について「大きな間違いがあった。虐殺の規模を見抜けなかった」と述べ、仏が大規模な軍事介入をしていれば大虐殺を防げた可能性があるとの見方を示した。「虐殺にかかわったすべての人は捜索され、罰せられる」とも述べ、亡命して仏国内に暮らしている大虐殺の容疑者への対応を約束した。
一方、カガメ大統領は「過去にとらわれず、新たな関係に踏み出す時代になった」と語り、両国の連携緊密化を進める意向を表明した。”【2月26日 朝日】

【大虐殺の背景】
94年に“大虐殺”が起きたルワンダでは、一般的にツチ系は背が高い牧畜民族、フツ系は背が低い農耕民族と言われていましたが、両系間の結婚も多く、その区分は不明確とされています。
植民地時代、ベルギーは身分証明書を導入してツチ、フツ系を明記させ、“ヨーロッパ起源の「優等人種」ツチ族(少数派)がネグロイドのフツ族(多数派)を支配するという社会構造”をつくり分断統治を行いました。このことがツチ・フツ間の対立を激化させた背景にあります。
ジェノサイド後のルワンダにおいては、虐殺の原因となった「ツチ」や「フツ」を公の場で語ることは禁じられています。

1994年4月にルワンダのハビャリマナル大統領(フツ系)とブルンジのヌタリャミラ大統領を乗せた航空機が撃墜された事件が引き金となり、多数派(人口の85%)のフツ系住民による少数派のツチ系住民や穏健派フツ系住民の虐殺が100日間あまりにわたって続き、国民の10人に1人、80万~100万人が犠牲となる“ジェノサイド”(虐殺)が起きました。
PKOとして国連ルワンダ支援団(UNAMIR)を派遣していた国連など国際社会もこの虐殺を阻止できず、事実上ツチ系住民らを見殺しにしたと批判されています。
ソマリアで失敗したアメリカが“二の舞”を恐れて消極的だったことも、国連などの動きが遅れたことにつながりました。

【フランス・ルワンダの対立】
また、ルワンダと関わりが深かったフランス政府は90年からのルワンダ内戦で、自国民保護による派兵やフツ族中心のルワンダ政府への武器供与などを行っていました。
ジェノサイド後のルワンダ政府や虐殺を免れた人々の組織は、フランスが虐殺を主導したフツ族強硬派民兵組織や当時の政府軍を訓練し、武器を提供したとして、これまでにも度々フランス政府を批判しています。

08年6月には、ルワンダ大虐殺にフランスが積極的に加担したとする報告書を ルワンダ政府が発表。
500ページにも及ぶ報告書は、フランス政府が大虐殺への準備が進んでいることを事前に察知し、虐殺の計画に加担し、虐殺に積極的に参加したと主張しています。
また、報告書は、虐殺にかかわった人物として、当時首相だったフランスのエドゥアール・バラデュール氏、当時外相だったアラン・ジュペ氏、当時ジュペ外相の側近を務めのちに首相となったドミニク・ドビルパン氏、当時大統領だったフランソワ・ミッテラン氏(1996年に死去)ら13人の政治家、20人の軍幹部の氏名を挙げ、彼らは訴追されるべきとしています。

一方、虐殺発生のきっかけとなった、ルワンダとブルンジの大統領が乗った飛行機が撃墜された事件は、当時反政府軍事行動を強めていた、現在のカガメ大統領が率いていた反政府勢力によるものだとするフランス側は、06年にはカガメ現大統領の側近9人を国際手配し、反発するルワンダはフランスとの国交を断絶しました。
また、08年11月には、大統領暗殺事件に関与したとして、カガメ大統領の長年の側近で、カガメ政権で儀典長を務めているカブイエ容疑者を、ドイツ警察がフランス当局の逮捕状に基づきフランクフルトの空港で拘束。その後、カブイエ容疑者の身柄はフランス当局者に引き渡され、パリへ移送されました。

【「過去にとらわれず、新たな関係に踏み出す時代になった」】
大統領搭乗飛行機撃墜事件は、反政府勢力との和解姿勢を取り始めた大統領に対して不満を持つ、フツ系政権内部のフツ至上主義強硬派によるものだと言うのが、かねてからのルワンダ・カガメ政権側の主張です。
今年1月には、そうした内容の報告書がルワンダの調査委員会からだされましたが、すでに始まっているフランスとの国交回復・関係改善の動きを反映して、フランスの責任については曖昧にされています。

****ルワンダ虐殺きっかけの大統領機撃墜、国軍幹部が首謀 報告書*****
1994年に起きた「ルワンダ大虐殺」のきっかけとなった同国大統領の乗った航空機が撃墜された事件について、ルワンダの調査委員会がこのほど、事件の首謀者はルワンダのフツ人政権内の過激派だったとする報告書をまとめたことがわかった。
AFPが6日に入手した報告書の写しによると、事件は当時の政府と、ツチ人反政府勢力「ルワンダ愛国戦線(RPF)」との連立政権の成立を阻止するため、ルワンダ国軍(FAR)上層部がクーデターの一環として首謀したものだったという。(中略)

■フランスの関与はグレーゾーン
大統領機撃墜事件については、大虐殺に関与したとルワンダ政府が批判するフランス側も、独自の調査を行っている。
前年11月9日には、事件に関して「テロリズムに関連した殺人に共謀」した容疑で、元ゲリラ兵で当時ルワンダのポール・カガメ大統領の側近として儀典長を務めていたローズ・カブイエ容疑者をドイツで逮捕、裁判が行われるパリに身柄が移送された。
今回のルワンダの報告書は、ハビャリマナ大統領暗殺へのフランスの関与は見られないとしているが、当時の軍事合意の一環でルワンダに駐在していた仏軍当局者らが墜落現場に入り、フライトレコーダーとミサイルの残がいを持ち去ったと指摘している。
フランス政府は、大虐殺への加担を否定し続けている。
なお、撃墜事件をめぐりフランスと断交していたルワンダ・ブルンジ両国は前年11月、国交正常化を表明。ベルナール・クシュネル仏外相は6日、国交再開後初めて、キガリを訪問した。【1月7日 AFP】
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フランスがルワンダとの関係改善を進める背景には、“仏語圏だったルワンダでは近年、仏語離れが著しく、英語圏に取り込まれかねない状況にある。今回を機に、仏は休止状態のキガリの仏文化センターや仏語学校を再開させる方針だ。ルワンダ側には、関係改善による経済協力、仏との情報交換に基づく虐殺の原因究明や責任者の訴追、被害者のケアなどが進むことへの期待感がある。”【2月26日 朝日】といった事情があるようです。
フランスの変わり身の早さはさすがです。外交というのはそういうものなのでしょう。
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ギリシャ 財政再建策にゼネストで抗議 イギリス、日本は?

2010-02-25 23:22:21 | 国際情勢

(ギリシャ ジャーナリスト組合のデモ “flickr”より By 0neiros
http://www.flickr.com/photos/asterios/4385533267/in/set-72157607142636428/)

【不十分だが、それでも実現困難】
単一通貨ユーロ圏のひとつギリシャの財政悪化(GDP比で公的債務残高が113%、09年度財政赤字が12.7%)が、債務不履行(デフォルト)たユーロからの離脱の可能性といった信用不安を増大させていること、また、ギリシャの信用不安は同様に財政状態が悪いポルトガルやスペインなどへ飛び火しかねないことから、ギリシャ当局及びEU各国は対応に苦慮していることは、以前も取り上げました。
(2月5日ブログ「ギリシャ財政危機  EU内連鎖反応も危惧」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20100205

12年までに財政赤字をユーロ加盟基準の3%まで引き下げることを宣言しているギリシャのパパンドレウ首相は、ブリュッセルで11日に開催されたEU臨時首脳会議財において、公共部門の賃金凍結の対象拡大や、燃料および海外企業に対する増税、年金受給年齢引き上げなど社会保障の見直しなどの対策で、政赤字を2010年中に4%削減して8・7%に引き下げる再建計画を提示しました。

各国首脳はこれを「意欲的」と評価して受け入れ、「必要があれば協調して確固とした行動をとる」と、ギリシャの再建計画を支持し支援することで一致しました。しかし、EUまたは加盟各国による財政支援は見送られました。
16日のEU財務相理事会でも、当面は金融支援を実施せず、ギリシャの財政再建努力を促すこととされています。具体的な支援策については今後の市場の動向を見極めながら調整を続ける方針です。

しかし、これでも不十分とも見られています。
“スウェーデンのボリ財務相は16日、財務相理事会後、ギリシャの財政赤字削減に向けたこれまでの対策は不十分とし、市場での信頼を築くためには赤字削減に向け予想以上の措置を講じていく必要があるとの見方を示した。”【2月17日 ロイター】

一方で、これすら難しいとも見られています。
“経済減速で、税収減が加速し目標達成は難しいとの見方が市場で広がっている。”【2月16日 毎日】

【「暮らしの実情を無視している」】
確かなことは、国民生活に及ぼす“痛み”は、これでも“激痛”となることです。
ギリシャでは社会不安が広がっています。
****ギリシャでゼネスト、全土に混乱…250万人参加****
ギリシャで24日、政府の財政再建計画に反対する労働組合が、24時間の大規模ストライキ(ゼネスト)を実施した。
政府が先月発表した再建計画は、公務員の社会保障費にメスを入れると同時に歳入増のため増税を盛り込んだ内容。この撤回を求めるスト参加者は、主催者推計で約250万人以上となり、国内交通網がマヒするなど混乱は全土に広がった。
ゼネストには、官公庁職員の「公務員連合」と、民間労組を束ねる「労働総同盟」が参加。首都アテネでは国会議事堂前などでデモが行われ、機動隊が警備する中、横断幕を掲げた労働者が大通りを埋め尽くした。大手通信会社勤務のディミトリオス・チョカスさん(43)は「政府は金融システムばかり重視して我々の暮らしの実情を無視している」と声を荒らげた。警察は催涙ガスを使って対応しているが、デモ参加者と衝突したとの情報もある。
アテネ国際空港は終日、全面閉鎖となった。管制官らがストに参加し、国際線を含む全便が発着できなくなったためだ。国内交通網や銀行、テレビ局も業務を停止している。

ギリシャでは昨年12月、前政権による財政赤字の過少計上が表面化し、単一通貨ユーロ圏最悪の実態が明らかになった。財政赤字の背景には、基幹産業の海運、観光の不振のほか、手厚い社会保障や脱税の横行といった事情がある。
これがユーロの価値の急落を招き、信用不安がほかのユーロ圏諸国に飛び火するほどの事態を招いている。政府が先月、財政再建計画を発表したのも、欧州連合(EU)からの厳しい要請を反映させたものだが、計画を実施する立場の財務省職員までストに参加する始末で、財政再建の前途は険しい。
社会騒乱に拡大する懸念もないわけではない。2008年末には、少数の若者集団の暴動が、政府に不満を持つ失業者や学生、左右両極の過激団体や各種労組を巻き込む騒乱に発展している。【2月24日 読売】
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当然に予想された反応ですが、これでは経済悪化・財政悪化はますますひどくなるだけです。
国民全体が、ギリシャ経済・財政のおかれた状況を理解して、相当の痛みを覚悟して対処するしか、デフォルトといった最悪のシナリオを免れる道はないように思われます。

【4割が公務員 拡大する闇経済 粉飾】
ギリシャの財政問題は、単にGDP比でみた数字上の問題だけではなく、より根深いものがあります。
ギリシャでは左派勢力が政権を担う期間が長く、公的部門が拡充され、就労人口の4割近くを占めるほど公務員が多くなっています。この非効率で社会保障制度が手厚い公的部門の拡大が財政悪化の原因になっています。
また、社会全体に課税逃れが横行し、政府が把握できていない闇経済がGDPの30%以上に達するとも言われています。

これまでの政権が、こうした放漫財政を放置してきたうえに、意図的に赤字を過少評価する“粉飾”を行ってきたのではないかとの疑惑も、市場のギリシャ経済への不信感を強めています。

【単一通貨ユーロ圏の問題】
上記のような国内事情のほか、今回の問題は、経済競争力の異なる国々が単一通貨を採用する単一通貨ユーロ圏というシステムの問題も浮き彫りにしています。
通常は競争力は為替レートの変動で調整されますが、単一通貨をとっているため、そうした調整が機能しません。

また、通貨主権をECB(欧州中央銀行)に委ねた結果、加盟各国はECBが単一通貨ユーロのために行う金融政策決定に従うことになり、単独での金融の量的緩和政策による景気刺激策もとれません。
国家のとりうる方策は制限されます。

更に、今回のように問題が明らかになったとき、EUとしてどのような救済をとるのか不明瞭です。
ECBには「非救済条項」があって、支援に踏み切ることはできないそうです。
一方、EU加盟国は、自国の税金を使って他国を救済することにもなる大規模な支援には、国内事情を考えるとなかなか踏み切れません。
いったい誰が最終的にこの制度を守るのかという、システムの安全性に問題があるように思われます。

【イギリスも?】
一般に、EU内の財政事情が悪い国として、「PIIGS」(豚)という呼称でポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペインが挙げられます。
ところが、EU主要国のイギリスの財政悪化も報じられています。

****英国:財政赤字、急拡大 国債利回り高騰*****
英国の財政赤字が急拡大している。金融危機対策の歳出増に加え、景気低迷による税収減に歯止めがかからず、増税などで黒字が見込まれた1月の財政収支も43億ポンド(約6000億円)の赤字と1月として最大の赤字を記録。これを懸念して、長期金利の指標である10年物英国債の利回りが高騰し、巨額の財政赤字を抱えるスペインやイタリアの金利水準を上回る事態に陥った。(中略)

09年度の累計赤字額は、09年12月末時点で1181億ポンドに上っていたが、黒字が見込まれた10年1月まで赤字に転落し、市場では、09年度末の財政赤字の国内総生産(GDP)比率が、政府予想の12.6%を上回ると予測。深刻な財政危機に直面しているギリシャの12.7%を上回る可能性が高まっている。
このため、市場では英国債を売る動きが広がって、英国債10年物の利回りは上昇(価格は下落)を続け、19日には4.276%と、イタリアの4.081%、スペインの4.041%を上回った。ギリシャ(6.446%)よりは低いが、財政不安が英国に本格的に波及すれば、世界経済にも悪影響を与える。【2月20日 毎日】
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信用不安がイギリスまで拡大したら、日本経済を含めた世界経済全体が大きく動揺します。
ただ、信用不安につながるかどうかは単にGDP比といった数字だけの問題ではないことは、ギリシャの例でも触れたところです。
また、その国の競争力が強ければ、外資が流入して借金を返すことができます。(金融危機以降のイギリスに、そうした競争力があるかどうかは問題ですが)
別の例をあげれば、日本のようにEU各国をはるかにしのぐ借金まみれ状態でも、問題をおこすことなくきている国もあります。

【日本はどうなるのか?】
しかし、その日本の財政状況はいよいよ末期的(公的債務残高はGDP比で192% 日本を上回るのは、あのハイパーインフレのジンバブエぐらいです。2010年度予算の財政赤字はGDP比9.3%)であり、相当の金利上昇、インフレ、財政立て直しのための増税、支出カットは、ここ数年以内に不可避の状態だとも言われています。
****国債依存度、11年度に50%超に上昇 財務省が試算****
国債への依存度が、2011年度にも50%を上回る。財務省の試算で、10年2月4日に明らかになった。国債費や社会保障費の増加が見込まれるなか、歳入に占める国債発行の割合(公債依存度)は10年度が48.0%に上り、すでに当初予算ベースで過去最悪となっている。これが11年度は54.6%に上昇する。
政府がマニフェストに掲げている、子ども手当(10年度予算2兆2544億円)や農業の戸別所得補償(同5618億円)などは試算に含まれていないため、歳出削減や増税などの税制改革を行わないと、12年度、13年度も50%超の状態が続くとみている。
一般会計の歳出総額は、10年度予算案が92兆3000億円。その後、毎年増加して13年度には100兆円の大台に達する。 なお、09年度の国の予算(補正予算後)では新規国債の発行額が税収を上回る「逆転現象」が生じている。【2月5日 J-CAST ニュース】
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いったいどうなるのでしょうか。

コメント

中国の北朝鮮への“圧力”報道、中国は否定

2010-02-24 21:44:09 | 国際情勢

(中国遼寧省丹東市と北朝鮮新義州市を結ぶ、鴨緑江に架かる中朝友誼橋。
使用されているのは左側の橋で、“断橋”と呼ばれる右側は、朝鮮戦争時の米軍爆撃によって、北朝鮮側が崩壊しています。“flickr”より By Prince Roy
http://www.flickr.com/photos/princeroy/1790287894/)

【「これ以上危険な火遊びをするな」】
国際社会のルールに乗ってこない北朝鮮を動かせるの国が、その政治的・経済的関係からして中国であるというのは衆目の一致するところであり、日本やアメリカも、中国の北朝鮮に対する影響力行使を期待してはいます。
ただ、これまで期待するほどにはその成果は出ていないようにも見られていましたが、中国が北朝鮮に相当の圧力をかけているとの報道がありました。

****世襲反対・核放棄…核実験後、中国が北朝鮮に圧力*****
北朝鮮が昨年5月に核実験を強行した直後、中国共産党が北朝鮮側に対し「改革開放の推進、世襲反対、核放棄」を要請していたことがわかった。複数の共産党関係者が明らかにした。友好関係にある北朝鮮に対し、内政干渉につながる要求をするのは異例で、北朝鮮の核保有や、悪化する経済への中国側の強い危機感を示したものとみられる。

北朝鮮は昨年6月に金正日(キム・ジョンイル)総書記の三男ジョンウン氏を極秘訪中させ、北朝鮮の核問題をめぐる6者協議への復帰を示唆し、外資誘致に積極姿勢をみせるなど、態度を軟化させていった。これらの動きのきっかけが、最大の貿易相手国、援助国である中国の圧力だった可能性がある。
北朝鮮関係者によると、北朝鮮は5月上旬、ジョンウン氏を後継者に指名したことを説明するため、金総書記の義弟、張成沢(チャン・ソンテク)・国防委員を中国に派遣した。核実験後の5月末、事情説明のため再度訪中したが、このとき応じたのは共産党対外連絡部の王家瑞部長だけで、張氏に対し3項目の要請を伝えた。
北京の外交筋によると、中国側は政府高官や代表団の派遣を取りやめ、企業や大学が受け入れていた北朝鮮の研究者や職員の一部を退去させた。中国メディアには「これ以上危険な火遊びをするな」(人民日報系の環球時報)などと批判的な記事が出てきた。北京の北朝鮮関係者は「これまでにない中国側の強い反発だった」と明かす。

北朝鮮は、中国の理解を求めるためジョンウン氏を訪中させることを決定。6月10日に張氏を中心とした軍訪問団に同行させた。共産党関係者は「ジョンウン氏自身が訪中することで、世襲に反対する中国側に後継者として認知してもらい、核実験にも理解を求めたかったのだろう」とみる。
その後、高官の往来が復活する。中国側は戴秉国(タイ・ピンクオ)・国務委員や温家宝(ウェン・チアパオ)首相らが相次いで訪朝して金総書記と会談。戴氏の訪朝の際は、中国から北朝鮮への石油パイプラインを止めて圧力をかけた結果、「6者協議を含む多国間協議を行う用意がある」との言葉を引き出した。

改革開放政策に対する北朝鮮の姿勢にも、否定的だった従来と比べ変化がみられるようになった。昨年12月、経済特区がある中ロ国境に近い羅先市を視察した金総書記が対外貿易の積極拡大を指示。今年1月20日には外資誘致のため国家開発銀行の設立を発表した。
中国が要請している金総書記の訪中が実現した場合、核放棄や改革開放政策にどう言及するかが注目される。 【2月23日 朝日】
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【「本当にない」】
中国外務省の秦剛副報道局長は23日の定例会見で、この朝日新聞の報道について、「まったく事実ではない」「中国は内政不干渉の原則を遂行している」と否定しています。
金正日(キムジョンイル)総書記の三男ジョンウン氏が極秘訪中したとされる件についても、「本当にない」と重ねて否定しています。

朝日とはかねてより不仲の産経が、この中国側の主張を詳しく報じていますが、秦剛副報道局長の「本当にない」という表現は、春節(旧正月)のテレビ番組で話題となったコント(芸能界に孫娘を売り込むため関係者を接待しようとした祖父と店員が注文シーンで交わした「これはあってもいいはずだ」「本当にない」との会話)からの引用だそうで、中国メディアの笑いを誘ったとか。 【2月24日 産経より】

【「生命線を断って圧力」】
朝日報道を読んで目を引いたのは、“戴氏の訪朝の際は、中国から北朝鮮への石油パイプラインを止めて圧力をかけた結果、「6者協議を含む多国間協議を行う用意がある」との言葉を引き出した。”という部分で、同紙2面にこの経緯が報じられています。

それによると、北朝鮮の石油の9割以上をまかなっている中国から北朝鮮へのパイプラインについて、これを管理する中国軍系企業が突然昨年9月中旬、供給を停止。北朝鮮側には「故障による修理」とだけ通知したとか。
この直後の9月16日に戴秉国国務委員が訪朝しています。
共産党関係者の話として、「生命線を断って圧力をかけることで、訪朝を成功させることが目的だった」というコメントが報じられています。【2月23日 朝日より】

石油供給の9割以上をまかなうパイプラインを「故障中」という通知だけで止められたら、北朝鮮も従わざるを得ないでしょう。その後の付き合い方は再検討しますが。
文字通り“生命線を断つ”強硬手段ですが、本当なら怖い話でもあります。

【北朝鮮崩壊時の混乱】
朝日報道の真偽のほどは全くわかりませんが、北朝鮮政権が行き詰まり破局的に“崩壊”することを、中国が強く懸念していることは間違いないところです。
大量の難民流入も困りますし、アメリカの影響下にある統一朝鮮国家と国境を接するのも困ります。
破局を避けるため、北朝鮮の「改革開放の推進、世襲反対、核放棄」も中国側の望むところでしょう。

もし、中国が北朝鮮へ圧力をかけていないのなら、“内政不干渉の原則”などとは言はずに、これからでも影響力を行使して、北朝鮮に国際社会ルールに従った行動をとるように促してもらいたいものです。
中国の行動自体が、国際社会ルールに則っているか・・・という問題もありますが。

頑迷な北朝鮮の対応に、その政権崩壊を期待するところもあります。
北朝鮮国民のためにもそのほうが・・・。
ただ、そうなると東アジア情勢は劇的に変化することにもなります。
その妥当性はわかりませんが、北朝鮮有事の際に中国・ロシアが共同で北を占領する、あるいは、ロシア単独で占領することを中国が容認する・・・といった可能性も論じられています。

****北崩壊時中ロ共同で北朝鮮占領の可能性も、米研究者*****
米ハドソン研究所のリチャード・ワイツ上席研究員は18日、韓米経済研究所主催の討論会に出席し、「ロシアと南北韓:過去の政策と未来の可能性」と題した研究論文を発表。北朝鮮が崩壊した場合、中国軍とロシア軍が共同で占領するシナリオが考えられると述べた。
北朝鮮が崩壊すると、人道的次元の災害が生じるのを防ぐと同時に、北朝鮮の核爆発装置や武器がテロリストや犯罪者、不良政権の手中に渡る前にこれらを確保するため、他国も軍隊を北朝鮮に送ることを考慮する可能性があると見通した。
その上で、「中国とロシアが、米軍が自分たちの国境に近付くことを許す前に、その地域(北朝鮮)を占領することを望むことが考えられる」と分析した。中ロはすでにこうした共同占領の総練習となり得るウォー・ゲームを実施していると述べ、2005年8月に北朝鮮に近い地域で重要な軍事訓練を行ったことなどを指摘した。

また、中国指導部は北朝鮮の大量破壊兵器(WMD)資産封鎖や人道的支援提供に向け、中国軍が直接動いたり米軍の北側への配置を受け入れるよりも、ロシア軍が北朝鮮を占領することを望む可能性もあるとした。
大半の米官僚は北朝鮮が核保有国になることを防ぐため、朝鮮半島の統一や北朝鮮の崩壊を含む一部不安定を受け入れるだろうが、ロシアは北朝鮮の政権交代に伴う無秩序よりも現状を望むのではないかとし、「そこが米国とロシアの最大の違い」だと説明した。
このほか、北朝鮮が核を放棄するなど温和な立場にシフトする場合はロシアによる原子力発電プログラムへの転換支援、ミサイル発射を中断する場合は同じく宇宙探査プログラムの支援が考えられると予想した。【2月19日 聯合ニュース】
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ロシアがそうした国際社会の批判の的になるような行動を敢えて行うか・・・ははなはだ疑問ですが、何が飛び出すかわからない怖さはあります。

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トルコ  クーデター計画で軍幹部拘束 イスラム主義と世俗主義の暗闘

2010-02-23 22:54:12 | 国際情勢

(08年2月、従来禁止されていたイスラム女性の大学でのスカーフ着用について、AKP・エルドアン政権はこれを認める憲法修正を国会で可決。しかし、憲法裁判所は6月、この憲法改正について国の世俗主義に反するため無効だとの判断を下しました。
イスラム主義と世俗主義の対立を象徴する出来事でした。
“flickr”より By Vince Millett
http://www.flickr.com/photos/brokendrumphotography/2329842272/)

【「スレッジハンマー(大打撃)」】
トルコ・エルドアン政権は、イラクとシリア、また、イスラエルとシリアの間の仲介外交、イラクとの経済関係などで、中東における地域大国としての存在感を増しています。
アメリカ・オバマ大統領も、国民の大半がイスラム教徒でありながら世俗主義を貫くトルコに西洋とイスラム世界の橋渡し役を期待しており、トルコの悲願であるEU加盟についても、「トルコは欧州の重要な部分だ。米国はEU加盟を強く支持する」と、トルコ支持を明らかにしています。

そのトルコで、2003年当時の軍によるクーデター計画があったとして、軍幹部が拘束されています。
****クーデターを計画、トルコ軍幹部ら40人以上拘束****
トルコ警察は22日、親イスラム与党の公正発展党(AKP)政権打倒のクーデター計画に関与したとして、海軍と空軍の元トップを含む現役・退役の軍幹部ら40人以上を拘束した。国内主要メディアが報じた。宗教色の強い現政権と、トルコの国是である世俗主義の擁護者を自任する軍の間では対立が激化しており、今回の大量拘束で軍が強硬手段に出る可能性も指摘されている。
捜査の対象とされたのは「スレッジハンマー(大打撃)」と呼ばれるクーデター計画。トルコ軍機が隣国ギリシャ軍を挑発、撃墜させて一触即発の状態を作るなどして、軍が超法規的な形で実権を握ることを企てたといい、時期はAKP政権発足直後の2003年とされる。
リベラル派で反軍的なキャンペーン報道を続ける日刊紙「タラフ」が、計画文書をすっぱ抜き、明るみに出た。軍はクーデター計画の存在を否定したが、エルドアン首相率いるAKP政権は大量拘束に踏み切った。
トルコは国民の大部分がイスラム教徒でありながら、厳格な世俗主義を国是に掲げる。軍は世俗エリートとして、経済など多くの分野で影響力を保ってきた。軍は1960年以来4度、クーデターなどで当時の政権を崩壊させたことがある。軍幹部が政治介入する傾向は近年も見られ、悲願である欧州連合(EU)加盟の障害となっている。
07年には、軍・世俗派知識人による大規模な反イスラム地下組織の存在が発覚。200人以上が逮捕され、現在も裁判が続いている。【2月23日 朝日】
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【AKP解党訴訟】
事実関係はわかりませんが、こうした動きの背景には、07年総選挙での圧勝によりイスラム色の強いギュル大統領を誕生させるなど、社会のイスラム化を進めている親イスラム与党の公正発展党(AKP)と、建国以来、政教分離の国是の守護者を自任してきた世俗主義・軍部との激しい対立があります。
軍幹部はトルコ社会におけるエリートであり、社会の指導層の中核にあります。

与党AKPのイスラム主義と軍を中心とする既存指導層の世俗主義の対立は、08年、トルコ検察当局が憲法裁判所に対し、国是の政教分離を侵しているとしてイスラム系与党・公正発展党(AKP)の解党などを求めて提訴したことで激化しました。
実際これまでも、世俗主義に反したとして、軍によるクーデターや、AKP前身政党への解党命令が行われてきた経緯もあります。

08年の提訴については、トルコ憲法裁判所は08年7月30日、AKPへの政党助成金を半減する「制裁」を科すという形をとりながらも、解党についてはこれを見送る判断を下しました。
総選挙圧勝という民意に配慮し、社会の混乱を避けた判断と見られています。

【「エルゲネコン」摘発】
一方、与党AKP側は、解党訴訟が最終審議されていた08年7月、クーデターをもくろむ反イスラム秘密集団「エルゲネコン」に関与したとして、多数の退役軍人や有力実業家ら逮捕する反撃に出ました。

****トルコ政情 不安定 与党に疑念、続く暗闇*****
トルコの憲法裁判所は30日、イスラム系の与党、公正発展党(AKP)が国是の政教分離(世俗主義)を侵しているとして解党を求めた検察官の訴えを退け、与党の解党という異例の事態で予想されたトルコ経済や社会の混乱はとりあえず回避された。ただ、憲法裁はAKPに対して政党助成金の削減という制裁を科す決定も下し、AKPの政策が事実上、違憲であるとクギを刺したことも意味する。AKPは世俗主義派との妥協も図りながら慎重な政策運営を迫られることになるが、トルコ政情の緊張は今後も続くことになろう。(中略)
 
トルコでは、急進派の世俗主義者たちが「エルゲネコン」という秘密地下組織を結成してAKP打倒の陰謀を計画したとして、世俗主義派の政党やメディア関係者、民間団体幹部など100人近い知識人らを逮捕する“エルゲネコン疑惑”が持ち上がっている。この摘発の中心にいるのがAKPを背後で支持するトルコ最大のイスラム教宗派に所属する検事グループだと指摘されている。
AKP政権下では、世俗主義の牙城だった司法関係者や官僚幹部を親イスラム系の人物に置き換える動きも静かに進んでおり、世俗主義の守護者を自任するトルコ軍は強く警戒している。AKP解党をめぐる当面の政治危機が回避されたとしても、世俗主義派と親イスラム勢力の水面下での暗闘が今後も形を変えて続くことは間違いない。【08年8月1日 産経】
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「エルゲネコン」については、これを批判する立場から、次のような見方もありますが、その実態はあきらかではありません。
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いま、トルコ国内ではこれまでとは、全く異なる種類の明るさが出始めている。それは、エルゲネコンがマスコミ批判の対象になり、政府がエルゲネコン問題の追及に、本格的に乗り出してきたからだ。
この欄で既に、何度となくご紹介したが、エルゲネコンとは、政治家、弁護士、裁判官、警察、軍人、ジャーナリスト、企業経営者、学者、マフィアなど、あらいる層のエリート(?)たちを集めた、トルコ社会の影の権力集団だ。
したがって、これまでこのエルゲネコンを、白日の下にさらせる政権は、過去には存在しなかった。もし与党がそのような動きに出れば、エルゲネコンは軍を動かしてクーデターを起こし、体制を打倒していたからだ。もちろん、過去に軍が行ったクーデターは、全てがエルゲネコンがらみだ、と言っているわけではないが。
野党も同様であり、エルゲネコン追求の動きに出れば、簡単に暗殺される状態になっていたのだ。ジャーナリストもしかりで、何人ものジャーナリストが、過去にエルゲネコン追求を試み、暗殺されているのだ。したがって、まさにトルコ社会におけるアンタッチャブルな組織が、このエルゲネコンだったのだ。

しかし、現在のトルコの与党AKPは、国民の広い支持と、欧米の支持を受け、遂に、エルゲネコン退治に乗り出したのだ。そして、エルゲネコンのメンバーの多くが、既にリスト・アップされ、公表されるにいたっている。
この結果、これまでまかり通ってきた、不正な取引や公金横領のシステムは、崩壊の方向に向かい始めている。既に、エルゲネコンのメンバーが裏で結託しあって、利益を得えることは、不可能になっているのだ。
この大きな変化を、一番喜んだのはトルコの大衆だった。彼らは、エルゲネコンの存在を知っていても、エルゲネコンが悪辣なことをしていることを知っていても、これまで何も出来なかったのだ。【中東TODAY 08年8月17日 佐々木良昭】
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「エルゲネコン」がアンタッチャブルな影の権力集団でクーデターを画策しているのか、親イスラム与党AKP側がその噂を借りて反対勢力を一掃しようとしている、あるいはメディア管理・社会弾圧を強めようとしているのか・・・。
今回のクーデター計画事件も、こうした親イスラム与党AKPと世俗主義あるいは既存指導層の間の激しい暗闘のひとつでしょう。

これまでのところは、選挙での国民支持を背景にした与党AKP側が有利にことをはこんでいるようにも見えます。
冒頭記事では“軍が強硬手段に出る可能性”も指摘されていますが、昔とは違って、そうした手荒な手段は今ではなかなか難しいのではないでしょうか。

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アフガニスタン  増大する民間人犠牲と過去の虐殺の歴史

2010-02-22 23:12:08 | 国際情勢

(ブズカシ(Buzkashi)は2組の騎馬隊がヤギをボール代わりにして奪い合う競技で、アフガニスタンの国技ですが、あまり細かいルールなどはない競技だそうです。
“”より By maiaibing2000
http://www.flickr.com/photos/maiaibing/4334198472/

【「NATO軍は市民の安全を十分に守っていない」】
アメリカ・オバマ政権が、今後のアフガニスタン情勢を決めるという覚悟で臨んでいる、アフガニスタン南部のヘルマンド州マルジャで米軍中心のISAFとアフガニスタン軍が進めているタリバンに対する大規模掃討作戦「モシュタラク」については、数日前にも取り上げました。
2月18日ブログ「アフガニスタン オマル師側近を拘束 大規模掃討作戦「モシュタラク」の情勢」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20100218

単に、攻勢を強めるタリバンへの大規模掃討作戦であるだけでなく、作戦を事前に告知して住民の避難を可能にするとか、アメリカ撤退後のアフガニスタン治安の要となるアフガニスタン軍との共同作戦であり、その能力が試されることになるとか、タリバンを掃討した後もその地にアフガニスタン軍・警察に加え、米英軍も支援のために残り、医療機関や電気など公共サービスの復旧や統治機構の整備に乗り出し、中央政府の支配の確立までを目指すことなど、いくつかの点で注目され、アフガニスタンの戦況の今後を占うともされる作戦です。

ただ、作戦開始後、誤爆などにより16日時点までで20人の民間人犠牲者が出ており、作戦への批判も高まっていることや、タリバン側がISAF側のそうした制約を利用して、住民を“人間の盾”として使うことで、抵抗を強めていることも前期ブログで書いたところです。

そうしたなかで、更に大規模な民間人犠牲が伝えられています。
****アフガン:米軍誤爆、市民33人死亡 活動停止求める声*****
アフガニスタン南部ウルズガン州で21日、北大西洋条約機構(NATO)軍の空爆で市民少なくとも33人が死亡、十数人が負傷した。アフガン内務省によると、空爆したのは米軍機で、3台の車が次々と爆撃され、乗っていた多数の女性や子供らが犠牲になった。空爆による終わらない市民の犠牲に、アフガン国内では「米軍の活動停止」を求める声が高まっている。
南隣のヘルマンド州でも、米軍主導の大規模軍事作戦で市民の犠牲が相次いでいる。21日はカルザイ大統領が国会で「NATO軍は市民の安全を十分に守っていない」と非難。議員の間から、「市民の安全が確保されない限り、軍事作戦をやめさせるべきだ」との意見も出された。
NATO軍側は今回の空爆について、「武装勢力への応戦」としている。州警察によると、空爆後、現場付近の市民らが反米、反政府デモを行うなど、治安当局との間で極度の緊張が続いている。
ウルズガン州を巡っては、同州に駐留部隊を派遣しているオランダが、連立政権崩壊を背景に予定通り8月に撤退を開始する見通し。【2月22日 毎日】
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【97年マザルでのタリバン敗北】
アフガニスタン国内での批判はもっともなことです。
ただ、今ちょうどアハメド・ラシッド著「タリバン」を読み始めているところですが、この本で明らかにされている、ソ連支配崩壊後の各部族・軍閥の内戦状況、そこに登場するタリバンがパキスタン・サウジアラビアの支援のもとで勢力を急拡大して政権を奪取するに至る経緯はあまりにも凄惨で、昨今アフガニスタンに関して言われている“民間人犠牲云々の議論”とは全く異質・異次元の世界であるように感じられます。

1997年5月28日、北部都市マザル(マザリシャリフ)に侵攻したパシュトゥン人のタリバンに対し、シーア派ハザラ人や、ドスタム将軍を裏切ったウズベク人のマリクの一派が、反攻に出ます。
“市街戦の訓練がなく、市内の迷路のような路地を知らないタリバンは、行きどまりの道路に小型トラックを乗り入れて餌食となり、家々の中や屋根から銃火を浴びせられ、必死に逃げまどった。”
“15時間の激しい戦闘の末、600人のタリバンが街頭で殺され、1000人ほどが逃げ出そうとした飛行場で捕虜になった。” 
この戦いで、タリバン数千人とパキスタン人学生数百人が捕らえられ、射殺され、集団で埋められたとも。

のちに国連が明らかにしたところでは、マリク一派によるタリバン虐殺は、“捕虜たちは拘置場所から引き出され、捕虜交換されと告げられ、羊飼いたちが使う井戸に車で連れて行かれた。井戸の深さは10~15mで、生きたまま投げ込まれた。抵抗すればまず撃たれた。井戸の底に向けて発砲され、手投げ弾が投下され、そのあとブルドーザーが井戸を埋めた”というようなものだったとも。

また、「目隠しし、後ろ手に縛ったタリバン捕虜をトラックのコンテナに押し込んで砂漠へ連れて行く。砂漠に掘った穴の前に10人ずつ立たせて撃つ。処刑は6夜ほど続いた」とか、コンテナそのものが殺害手段となり、「コンテナから死体を引き出すと、皮膚が熱で焼け焦げていた」・・・といった発言もあります。

【98年、タリバンの復讐】
これに対し、1998年8月8日、パキスタンの支援などで態勢を立て直したタリバンはマザルを急襲し、ハザラ人に対する1年前の復讐を実行します。
このときオマル師は“2時間だけ殺してもよい”との許可を戦闘部隊に与えとも。
しかし、マザルでのタリバンによるハザラ人虐殺は2日間続きます。

“タリバンは狂ったように殺し続け、(こんどは市内をよく知る現地案内人を使って)小型トラックでマザルの狭い道を走り回り、店主たち、二輪馬車ひき、買いものに出た女性や子供たち、そして山羊や羊まで、動くものはなんでも殺した。死者を直ちに葬るように命じているイスラムの教えに反して、遺体は路上に放置され腐るにまかされた。”“人々はその場で3回撃たれた。1発は頭に、1発は胸に、1発は睾丸に。女性はレイプされた。”
ここでもコンテナが復讐として使われます。“コンテナを開けたとき3人だけ生きていた。約300人が死んでいた。”
国連と赤十字国際委員会は後に、5000人ないし6000人が殺されたと推定しています。

なお、マザルは2001年、ドスタム将軍によって奪還されますが、このときもタリバン虐殺がマザル近郊で行われています。

【タリバンの本質は変わったのか?】
この種の話の数字はそのまま信用できないこともままありますが、それにしても凄惨な虐殺が双方で行われたことは推察されます。
このときから、まだ12年ほどしか経過していません。

98年、カブールを支配するタリバンは、国際援助団体をカブールから追放します。120万人市民の半数以上がNGO援助受けていたカブールはすぐに食糧・水・医療で困窮します。
窮状を訴える市民にタリバン幹部は、「われわれムスリムは、全能の神がすべての人々を食べさせてくれると信じている。外国NGOが去るなら、それは彼らが決めたことだ。われわれが彼らを追放したのではない」と、住民の社会生活への関心のなさを明らかにしています。

近年の戦いで、タリバン側からも“米軍による民間人殺害”を非難する言い分も聞かれますが、ほんの十数年前この地で、当のタリバンが行っていた戦闘は、そんな生半可なものではありませんでした。
別に、戦闘だから民間人犠牲は仕方がないとか、そんなことを言うつもりはありませんが、民間人犠牲を云々するとき、この地で繰り広げられてきた虐殺の歴史とどのように整理するのか、とまどいを感じます。

また、もしタリバンが当時と本質的に変わっていないのであれば、そういう価値観の全く異なるタリバンを相手に、民間人犠牲を抑えるという制約のもとで戦う米軍・ISAFに勝利の見込みがあるのか・・・非常に疑問にも思えます。

なお、著者アハメド・ラシッドはパキスタン人イスラム教徒で、アフガニスタン、パキスタン、中央アジアを対象に約30年間、国際的な報道を続けてきたジャーナリストですが、09年、パキスタンのイスラム過激派組織「パキスタン・タリバン運動」が欠席裁判で彼の死刑を宣告したと報じらています。

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マレーシア  多民族・多宗教共存社会の軋み

2010-02-21 11:41:22 | 世相

(1月8日未明に焼き打ちにあったクアラルンプールの教会を背に、マスコミ取材を受ける与党幹部
“flickr”より By WordsManifest
http://www.flickr.com/photos/wordsmanifest/4257005085/

【女性へのムチ打ち刑】
****マレーシア、女性に初のムチ打ち 婚外交渉した3人*****
マレーシア内務省当局者は18日、3人のイスラム教徒の女性に対し、イスラム教で禁じられた婚外交渉を行ったとしてムチ打ち刑を執行したことを明らかにした。女性に対するムチ打ち刑の執行は同国では初めてとしている。国際人権団体が同国の対応を批判、波紋を呼びつつある。
当局者の話や地元メディアの報道では、ムチ打ちは2月9日、クアラルンプール郊外の女性刑務所内で執行された。衣服を着たままの状態で背中を打たれたが、外傷は負わなかったとしている。うち1人は刑の執行後に釈放された。
3人は結婚後に別の男性と性交渉を持ったことがイスラム教の教えに反するとされ、宗教裁判所が昨年12月から今年1月にかけて、それぞれにむち打ち刑の判決を下した。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、執行が明らかになった直後、マレーシア政府に女性へのムチ打ちをやめるように求めた。【2月19日 朝日】
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昨年7月にも、同様のイスラム法廷による、ビール飲酒の女性に対するムチ打ち刑判決のニュースがありました。
****ビール飲んだ女性モデル、ムチ打ち6回の刑 マレーシア*****
マレーシア東部のパハン州の宗教裁判所は、公の場で飲酒したイスラム教徒の女性モデル(32)に6回のムチ打ち刑と罰金5千リンギ(約13万円)の判決を出した。地元メディアによると、上訴しない意向で刑を受ける同国初の女性になりそうだが、女性に対するムチ打ち刑への抵抗も根強く、議論を呼んでいる。
女性は昨年7月、ホテル内のナイトクラブでビールを飲んでいて宗教局に逮捕され、20日に判決を受けた。女性へのムチ打ち刑判決は2例目。1月にも別の女性が飲酒を理由に判決を受けたが、上訴したため執行されていない。

シャリザット女性・家族・社会開発相は「一般の裁判(の結果)でムチで打たれることはない」と判決を批判。イスラム裁判所と一般の裁判所が併存する現状を踏まえて「懲罰も公平であるべきだ」と指摘した。別の野党議員の女性も「刑罰は教育的なものであるはずで、肉体を傷つけてはいけない」と強調する。
一方、イスラム教徒の弁護士は、判決への批判はイスラム法廷への侮辱だとし、「イスラム法に基づいて裁判官が下した判決に不満があれば、法にのっとり上訴すべきだ」と反発する。【09年7月29日】
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冒頭記事の婚外交渉女性が初めてのムチ打ち刑ということは、上記ビール飲酒女性は結局上訴して刑を免れたのでしょうか。

【共存社会】
マレーシアはマレー人によるイスラム教を国教とする国ですが、民族的には、マレー系(約65%)の他、華人(中華)系(約25%)、インド系(印僑)(約7%)が存在します。
このマレー系の中にはボルネオ島のサラワク州・サバ州の少数原住民族も含まれています。

宗教的にはマレー人(憲法で「日常的にマレー語を話し、イスラムを信仰し、マレーの習慣に従う者である」と定義されています)はイスラム教、中華系は仏教、インド系はヒンドゥー教徒が多数を占めますが、イギリス植民地時代の影響もあって、キリスト教徒も8~9%います。
キリスト教徒は、サバ、サラワク州の少数民族に多く、西マレーシアでは、両州出身者のほか、インド系、中華系にもキリスト教徒が存在します。しかし、マレーシア政府は、民族融和のため少数民族のイスラム化を進め、彼らにイスラム以外の布教をすることを認めていないそうです。

なお、東マレーシアは、ほとんどマレー人イスラム社会です。
東マレーシアでもイスラムの影響が強いコタバルを旅行したことがありますが、西の首都クアラルンプールなどとは全く様相が異なり、街の女性はみなスカーフ姿で、完全なイスラム社会の雰囲気でした。

従来、マレーシアは各民族がそれぞれの文化、風習、宗教を生かしたまま、互いにあまり干渉することなく暮らしていると言われてきました。(たとえば、飲酒についても、非イスラム教徒の中華系・インド系は許されています。)
政治的には、各民族がそれぞれの政党を支持し、民族別の政党がマレー系政党を中心に与党連合を形成する形がとられています。
政策的には、経済的に劣後するマレー系の引き上げを図るため、マレー系優遇策(ブミプトラ政策)がとられてきました。

02年に旅行した際も、異なる民族の人々が職場では共通語の英語でコミュニケーションをとるとか、TVでは民族融和を促すような映像が流されるなど、共存のイメージは感じられました。

【ブミプトラから新政策へ】
ただ、この多民族・多宗教共存社会が軋み始めていることは、これまでも取り上げたことがあります。
ブミプトラ政策によって当然、マレー系以外は不利になりますが、特にインド系貧困層から強い不満が出て社会問題化したこともあります。
マレー系のなかでも、一部既得権益グループとその他の格差、制度への“甘え”による非効率、成長したマレー系からむしろ“束縛・制約”と捉え自由を求める声も高まる・・・などの動きも出て、これまでの与党に対する批判も強くなり、前首相が退任、昨年4月に就任したナジブ首相はこれまで優遇されていたマレー人の特権を一部縮小する新政策を発表しています。
昨年夏段階では、新政策は世論調査では6割強の支持を得ていました。当然、マレー系からの反発もあります。

イスラム法に反する女性へのムチ打ち刑という、イスラム法の厳格な運用を支持する流れも、こうした軋み始めた共存社会のなかで出てきたものか・・・という感じがあります。

【教会焼き打ち】
もっと明確な軋みも表面化しています。
昨年末の「アラー」という言葉の使用をめぐる高裁判決を受けて、宗教対立とも言える緊張が高まっています。
“マレーシア憲法は、イスラム教の唯一神「アラー」という言葉をイスラム教徒以外が使用することを禁じている。異教徒が「アラー」を使う時、改宗の試みを意図していることがある、との理由からだ。
だが、数年前にキリスト教系の週刊誌が「アラー」という言葉を使用。政府の「指導」に反して抵抗し、結局、昨年2月には裁判にまで発展した。高裁は先月(09年12月)末、「キリスト教徒への教育目的の場合」に限定して「アラー」の使用を認める判決を出した。”【1月8日 毎日】

判決へ不満を示す一部イスラム教徒によって、キリスト教会焼き打ちという事態にもなっています。
****キリスト教会数カ所に火炎瓶、「アラー」容認判決に不満のイスラム過激派か*****
首都圏クランバレー、ペラ州、マラッカ州、サラワク州で8日から10日にかけ、キリスト教会やキリスト教系中学校などが火炎瓶などで攻撃を受ける事件が続発、カトリック系週刊誌「ヘラルド」に対し神を意味する言葉として「アラー」を用いることを認めた先の高裁判決に反発する、イスラム過激派のしわざとみられている。(中略)
いずれの事件でもけが人は報告されていない。ムサ・ハッサン警察長官は、計画的な犯行ではなく衝動的な犯行であるとの見方を示した。
民族対立がエスカレートするのを避けたいナジブ・ラザク首相は、警察当局に全国の教会周辺の警備強化を指示したほか、過激派に対しては厳しい態度で臨む姿勢を表明。「マレーシア人のほとんどが過激派ではない」と述べ、一部の跳ね上がり者の犯行であるとの見方を示した。9日には、大きな被害に遭ったKLの教会を視察、再建資金として50万リンギの公費を支出する方針を明らかにし、キリスト教側への配慮を示した。政府は高裁判決を不服として控訴しており、ナジブ首相はあくまで法廷で争う構えを示した上で、暴力的な抗議活動を行なわないよう呼びかけている。
教会焼き打ちという過激な行動には、穏健派のイスラム社会も反発を強めており、125の非政府組織(NGO)が非難の声明を発表。130のNGOと「レラ」(自警団)は、キリスト教会周辺でのパトロールなどで協力を申し出ている。【1月12日 JST】
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キリスト教徒側からの反発として、首都クアラルンプール郊外のモスク2か所の庭で、イスラム教徒が「不浄な動物」とみなすブタ4頭分の頭が切断された状態で置かれているのが発見される事件も起きています。

【不明瞭な政府対応】
暴力的な抗議活動を行なわないよう呼びかけ“民族対立がエスカレートするのを避けたい”というナジブ首相ですが、一方で、“政府は高裁判決を不服として控訴しておりあくまで法廷で争う構えを示している”というように、イスラム教徒の不満を煽るような形になっているのも、理解しがたいものがあります。

マレーシア社会の不安定化に伴い、頭脳流出や海外投資家の動揺もおきているとも。
今回の宗教対立収拾のため、政府は1月末に、キリスト教徒の多いペナン・サラワク・サバ3州と首都クアラルンプールを含む連邦直轄区ではキリスト教徒の「アラー」使用を認めることを発表しています。【2月17日号 Newsweek日本版】

その後、衝突などを報じる記事は目にしていませんので、とりあえずは沈静化したのかもしれませんが、共存社会の軋み、それに伴う緊張の高まりは、マレーシア社会に底流に残っているように思われます。

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「アフリカの年」から50年  ニジェールでクーデター

2010-02-20 14:38:13 | 世相

(ニジェールでのクーデターの指導者サルー・ジボ少佐 “flickr”より By Pan-African News Wire File Photos
http://www.flickr.com/photos/53911892@N00/4368544667/)

【「アフリカの年」から半世紀】
今年2010年は、「アフリカの年」1960年から50年の節目にあたります。

****2010年、アフリカ17か国が独立50周年 植民地主義とは何だったのか****
アフリカの17か国は今年、独立50周年を迎える。それぞれの国の人びとが国民アイデンティティーへの誇りをかみしめながら、植民地主義以後の過ちや失敗、そして成功を振り返る年でもある。
アフリカで仏植民地14か国を含む17か国が一斉に独立した1960年は、「アフリカの年(Year of Africa)」とも呼ばれた。それから半世紀。カメルーン、セネガル、マリなど政治的に安定した国がある一方で、コンゴ民主共和国やソマリアなど、独立時の熱狂が内戦や貧困、政情不安に道を譲った国も数多い。 

独立前夜のコートジボワール南部アビジャン(Abidjan)に生まれたというジャーナリスト、ベナンス・コナン(Venance Konan)氏は、「現在も、北部の反政府武装勢力に国が牛耳られ、人民が貧困にあえぐなかで豪華絢爛(けんらん)な独立記念式典を行うなど、神経を逆なでされるようなもの」だと感じている。
コナン氏は、コートジボワールの現状を「植民地主義というくびきから逃れたのに、その先にあったものは一党独裁・軍事独裁政権という別のくびきだった」と描写し、「われわれアフリカ人は、どこで間違ってしまったのかを時間をかけて理解していく必要がある」と述べた。(後略)【2月19日 AFP】
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【改憲で再選を画策する大統領に、クーデター】
「アフリカの年」1960年に独立をはたした17カ国のひとつ、ニジェールで18日、クーデターが起きています。

****ニジェールのクーデターに国際社会の非難強まる、国民はクーデターを歓迎*****
アフリカ中西部ニジェールで18日に軍事クーデターが発生したことに対し、国際社会は非難を強めている。
アフリカ連合(AU)は19日、暴力による権力の奪取は容認できないとして、ニジェールの加盟資格を停止するとともに、クーデターで失脚したママドゥ・タンジャ大統領の任期の延長を認めた前年8月の国民投票前に施行されていた憲法に復帰するよう求めた。
欧州連合(EU)のキャサリン・アシュトン外交安全保障上級代表がクーデターを非難したほか、米国は民主主義への速やかな復帰を求めた。旧宗主国のフランスは数か月以内に選挙を実施するよう求めている。

一方、軍事政権は着々と権力を掌握している。政府を解散させた後、国境封鎖と夜間外出禁止令を解いた。また軍事政権は首都ニアメーの軍の施設でタンジャ大統領を拘束していることを確認した。大統領の健康に問題はないという。
ニアメーにいるAFP記者によると、クーデターを歓迎する数千人の市民が軍の兵舎の周囲に集まり、「軍万歳」などと叫びながら軍事政権への支持を示した。西部の都市ドッソでも同様に市民数百人が集まった。野党連合は支持者に、20日にニアメーで開催される軍事政権を支持する集会への大量動員を呼びかけた。

ニジェールでは任期延長を画策するタンジャ大統領とこれに反対する野党勢力が対立し、この1年近く政治的混乱が続いていた。状況打開を目指して前年12月21日に始まった双方の対話はしばしば行き詰まり、前週になって停止されていた。【2月20日 AFP】
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【豊富なウランを持つ最貧国】
ニジェールと言っても、なかなか馴染みがありませんが、西アフリカの内陸国で、北のサハラ砂漠と南のナイジェリアにはさまれた位置にあります。

近年の政治混乱については、“ママドゥ・タンジャ大統領は2009年8月4日に新憲法制定に関する国民投票を行うと表明。憲法裁判所は違法な決定と判断したが、ママドゥは憲法裁判所を解散させ、投票を強行する構えを見せた。この国民投票は予定通り実施され、新憲法は採択された。これにより、2012年の新憲法施行までの3年間、ママドゥが現行憲法のもとで引き続き政権を率いることになり、更に現行憲法に存在した3選禁止規定が新憲法では削除されたことで、2012年以降もママドゥが大統領職に留まり続ける可能性が出てきた。”【ウィキペディア】といった経緯で、憲法で規定された再選禁止規定を強引に変更して権力掌握継続をはかる・・・という、よく見られるパターンです。

国際社会は“クーデター”という暴力的手段に対して非難していますが、AUが“暴力による権力の奪取は容認できない”と反発するのは、自国で強権的に国民を抑えつけており、自らもクーデターの危険があるような国が多いせいではないか・・・とも勘ぐってしまいます。

ニジェールの国情はまったく知りませんが、およそ、憲法を変更して権力に居座り続けようとする権力者の政治は想像できるものがあります。
ニジェールの経済についてはウィキペディアでは、次のように記しています。

“農業は自給農業が中心で、南部に限られる。降雨量は少なく灌漑も発達しておらず、水源も乏しいため、ほとんどは天水農業である。そのため降雨量に収量は大きく左右され、しばしば旱魃が起こる。
鉱業の主力であるウランは確認できるだけで世界第3位の埋蔵量を誇る。アクータ鉱山など、日本にもゆかりのある鉱山があり、ウラン関連産業が全雇用の約20%を占める。
1997年の旱魃で国民の4分の1が飢餓の危機に陥った。さらにウラン価格の低下、度重なる政情不安による海外援助の途絶により、1999年末には国家経済が事実上の破産状態に。しかし2000年12月、国際通貨基金(IMF)などは貧困削減対策として、ニジェール政府が背負う8億9,000万ドルの債務免除を発表し、7,600万ドルの融資を決定するなど明るい兆しも見えてきている。国民総所得:48億ドル(1人当たり330ドル、2008年)”

世界第3位のウラン埋蔵量がありながら、国民所得は1人当たり330ドル、飢餓に脅かされながら1日1ドル以下の生活を強いられています。
資源があるが故に、利権絡みで政治が腐敗し・・・と、言うべきでしょうか。

【「どこで間違ってしまったのか・・・」】
今後については、旧宗主国フランスが言うように、国際的選挙監視団のもとでの速やかな選挙で国民の意思を問い、民政復帰をはかる・・・というのが、妥当な策ではないでしょうか。
権力を掌握した軍事政権側も、すみやかな総選挙実施を公表しているようです。

もっとも、アフリカには旧宗主国フランスへの根強い批判もあります。
それは、単に“人種差別と狂乱的な経済的搾取に基づいた”過去の植民地支配だけではなく、独立後も利権を維持するために、アフリカに深く関与してきたフランスの施策への批判です。

冒頭の「アフリカの年」を扱ったAFP記事においても、カメルーンの人権活動家は、「カメルーン国民の生活向上よりも、政治家たちが自らの特権やフランスの利益確保を重視するような国をフランスは支援してきた」と批判しています。
サルコジ大統領はおそらく、いつまでも植民地支配など他人のせいにするんじゃない。アフリカの現状は自らの統治能力のあらわれだ・・・と言うでしょうが。

「植民地主義というくびきから逃れたのに、その先にあったものは一党独裁・軍事独裁政権という別のくびきだった」「われわれアフリカ人は、どこで間違ってしまったのかを時間をかけて理解していく必要がある」・・・まさに、そのとおりです。
ただ、時間をかける間にも国民の苦しい生活が続きます。できるだけ速やかに・・・改善できればと思います。
一方で、そうした焦る気持ちが、クーデターの頻発にもなるのでしょうが。

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パレスチナ  モサドによるハマス幹部暗殺か 政治対立に見捨てられた住民の暮らし

2010-02-19 11:50:05 | 国際情勢

エリコ(旧約聖書にもその名前が繰り返し登場する世界最古の町とも言われる、ヨルダン川西岸地区の死海北西部の町)の少女 07年9月撮影 “flickr”より By Ucodep
http://www.flickr.com/photos/ucodep/4095669114/

【停滞する和平交渉】
パレスチナをめぐる中東和平については、ヨルダン川西岸での新規の入植住宅に限って、その建設を10カ月凍結するという、イスラエル側の“一時的・部分的”凍結提案に、“完全凍結”を求めるパレスチナ側が反発、仲介するアメリカのイスラエル案容認とも思われる方針変更などもあって、交渉が全く動いていません。

****パレスチナ:アッバス議長 交渉拒否方針、米特使に強調****
ミッチェル米中東特使は22日、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ラマラで、アッバス自治政府議長と会談した。特使はイスラエルとの和平交渉の再開を促したが、議長は改めて、イスラエルが占領地での入植活動を「完全凍結」しない限り、再開に応じない方針を強調した。
入植地問題を巡っては、イスラエルは昨年11月、西岸での新規の入植住宅建設を10カ月凍結すると発表。交渉再開のため「既に十分譲歩した」(外交筋)との認識を示している。
これに対し、パレスチナは、入植の完全凍結こそ和平交渉の土台「新中東和平案」(ロードマップ)に基づくイスラエル側の義務だと主張し、その履行を迫っている。
イスラエル首相府は特使と議長の会談を受けて声明を発表、「前提条件を付けて交渉再開を阻害しているのはパレスチナ側だ」と非難した。【1月24日 毎日】
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【「99%、モサドの仕業だ」】
更に、最近話題となっているのは、イスラエルの諜報機関モサドがハマス幹部暗殺を実行したのではないかという問題での、イギリスなど欧州諸国やドバイを巻き込んだ事件です。

****ドバイのハマス幹部殺害 欧州と外交摩擦に モサドが関与か*****
パレスチナのイスラム原理主義組織ハマス幹部が今年1月にペルシャ湾岸のアラブ首長国連邦(UAE)ドバイで殺害された事件は、イスラエルの対外諜報(ちょうほう)機関モサドが実行したとの見方が強まり、波紋を広げている。ドバイ当局が特定した実行犯11人は英国など欧州諸国の旅券を所持していたことが判明、英外務省が18日、駐英イスラエル大使を呼び説明を求めるなど外交問題にも発展しそうな気配だ。ハマスはイスラエルへの報復を叫んでいる。
殺害されたのは、ハマス軍事部門のマフムード・マブフーフ司令官。先月20日、ドバイ市内の高級ホテルの一室で、感電させられた上に、首を絞められて殺害された。
同司令官はハマス軍事部門創設者の一人で、1988年にパレスチナ自治区ガザ地区でイスラエル兵2人を誘拐・殺害した作戦を指揮し、89年からはシリアを拠点に活動。最近は、ガザへの武器密輸で中心的な役割を果たしていた。今回のドバイ訪問も武器買い付けが目的だったとみられている。

ドバイ警察のタミーム長官は今月15日、空港やホテルの監視カメラなどから実行犯を特定したとした上で、11人のうち英国の旅券保持者が6人、アイルランドが3人、フランスとドイツが各1人だったと発表。18日付のドバイ紙によると、同長官は「99%、モサドの仕業だ」との見方を示した。
英国やアイルランドによる調査の結果、犯行に使われたパスポートには、自国の国籍を保持したままイスラエルに移住し、イスラエル国籍も取得した人たちの情報が使われていることが判明。名前が挙げられた人たちは写真などから実行犯とは別人と判明したものの、一気にイスラエル関与への“疑惑”が強まった。
イスラエルのリーベルマン外相は「イスラエルがやったとする証拠はない」と述べ、“関与”について否定も肯定もしていない。しかし、自国の旅券をこうした形で“悪用”されたことがわかった英国では、「イスラエルから明確な説明を求めたい」(政府報道官)といった声が出ている。

イスラエル国内では、すでにモサドが実行したかのような前提で議論が展開。マブフーフ司令官の暗殺行為そのものを否定する論調はないものの、対外工作のあり方について、「欧州との摩擦は残ったとしても、マブフーフ殺害は重要な成果」(有力紙イディオト・アハロノト)、「戦術的な成果よりも、長期的な戦略を考えると外交問題に発展するようなやり方を続けることが賢明だろうか」(ハアレツ紙)といった議論が出ている。
一方、ガザ地区では17日、多数のハマス支持者が集会を開き、イスラエルへの報復を叫んだ。【2月19日 産経】
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国際刑事警察機構(ICPO)は、容疑者とされる「暗殺部隊」11人の国際逮捕手配書を出していますが、ドバイ警察幹部は地元テレビのインタビューで、イスラエルの対外情報機関モサドの関与が証明されれば、ダガン長官を逮捕すべきだと語っています。

【古タイヤと泥で建てた小学校ですら・・・】
すでに、ハマスは抗議集会などでイスラエルへの姿勢を硬化させていますので、イスラエル・パレスチナ間の交渉はますます難しくなった情勢です。
そうした政治的対立に置き去りにされた、パレスチナ住民の暮らしを伝える記事が印象に残りました。

****パレスチナ:泥固めて建てた念願の小学校 壁には古タイヤ*****
古タイヤと泥で建てた小学校が、エルサレム近郊のパレスチナ人集落にある。暖房器具も、電話さえもない学びやだが、地元の人々には念願の「母校」だ。中東和平交渉が停滞する中、イスラエル占領下のヨルダン川西岸にあるこの集落は、イスラエルとパレスチナ自治政府の「はざま」に陥り、社会基盤整備から取り残されてきた。

エルサレムから死海方面へ向かう幹線道路沿い。砂漠が広がるこの一帯に、パレスチナ人のベドウィン(遊牧民)、ジャハリン部族の集落が散在する。そのうちの1カ所に昨年9月、小学校が開校した。イタリアの非政府組織(NGO)の支援・指導で、地元の人々がゴミ集積場などから集めた約2000本の古タイヤを積み上げ、泥で塗り固めた校舎だ。
全児童は6~11歳の54人。この学校ができる以前は、約20キロ離れたパレスチナ自治区エリコの学校までヒッチハイクして通っていた。保護者の一人、イド・ジャハリンさん(40)は「登校中に事故で命を落とした子供もいる。地元に学校ができて本当にうれしい」と喜んだ。

しかし、今年に入ってようやく、太陽光発電装置で電気が使えるようになるなど、施設整備は進んでいない。パレスチナ自治政府に電力供給などを求めたが、集落のある一帯がイスラエル軍の完全占領地域であることを理由に、イスラエルに要請するよう言われた。一方、イスラエルは「パレスチナ人なのだから自治政府に頼むのが筋」と取りつく島もない。付近のユダヤ人入植地の団体は、学校を無許可の「違法建築」と問題視し、イスラエルの裁判所に取り壊しを求めて訴えた。
ハナン・アワド校長は「もっと学校を充実させたいが、課題が多過ぎる」と頭を抱える。取材中、子供を入学させたいと母親が訪ねてきた。校長は「受け入れる余裕がない」と断らざるを得なかった。「それなら子供を学校には通わせない」。母親はそう言い残して帰っていった。【2月18日 毎日】
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やっとの思いでできた古タイヤと泥で建てた小学校、それすら、パレスチナ自治政府からもイスラエルからも支援が得られず、イスラエル入植者からは取り壊しの訴訟を起こされ、入学を希望する母親を断らざるを得ない状況・・・なんとも切ない、やりきれない現実です。
それぞれの大義を掲げて対立に明け暮れる政治から見捨てられた住民の生活・・・パレスチナだけではない、世界中で見られる現実です。

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