孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

コンゴ  進攻する反政府軍と国連PKOが対峙 多数の難民 ルワンダは?

2008-10-31 21:52:31 | 国際情勢

(コンゴ・ゴマ郊外の難民キャンプ 1年前の様子です。
“flickr”より By cyclopsr
http://www.flickr.com/photos/endrevestvik/2374208984/)

【再び内乱 再びツチ・フツ対立 再び資源争奪】
コンゴでの戦闘が激化しています。

****コンゴ東部で戦闘激化、政府軍も退却 国際紛争化の懸念*****
アフリカ中部コンゴ(旧ザイール)東部で、政府軍と反政府勢力との戦闘が激化している。反政府側は中心都市ゴマに接近、政府軍は退却を始めている。ルワンダが関与している可能性があり、国際紛争化の懸念も出ている。
戦闘は8月に始まり、10月下旬から激化。08年1月に結ばれた停戦協定は破られた。国連は、この数カ月で20万人が家を追われたと推計する。

反政府勢力は元コンゴ軍の将軍ヌクンダ氏の「人民防衛国民会議(CNDP)」。94年のルワンダ虐殺の後、虐殺に関与したフツ族がコンゴに逃げて民兵化した。ヌクンダ氏は、このフツ族民兵から少数派ツチ族を守ることを名目にしている。
29日にはCNDPがゴマの北12キロの避難民キャンプ付近まで進攻したため、約4万5千人の避難民が逃げ出した。政府軍も退却し、住民の自動車やバイクを奪って逃げる兵士もいるという。 【10月30日 朝日】
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記事にあるようにCNDPとコンゴ政府は1月に停戦していますが、紛争の背景には、コンゴ東部地域から隣国ルワンダを舞台とするツチ人勢力とフツ人勢力の政治的対立があります。

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ルワンダで94年、フツ政権によるツチ人大虐殺が起き、報復を恐れたフツ人は国境を越えてコンゴに逃げ込んだ。その中の一部の強硬派フツ人は武装勢力「ルワンダ民主解放勢力(FDLR)」を結成し、コンゴ政府がこれを支援した。このためヌクンダ将軍ら政府軍内のツチ人兵士はこれに反発し、軍を離脱して政府とFDLRを相手に武装闘争を始めた。
 コンゴ東部地方には武装勢力が乱立し、ツチ、フツの両勢力ともこの地方で取れる各種鉱物資源を資金源にしているとみられている。各勢力とも住民虐殺などの残虐行為を働くことで知られ、ヌクンダ将軍には戦争犯罪を主導した疑いで国際刑事裁判所から逮捕状が出ている。【07年10月16日 毎日】
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遡ると、上記のフツ・ツチの対立とダイヤモンドなどの鉱物資源をめぐる争いが絡み合って、政府側を支援するアンゴラ、ナミビア、ジンバブエ、反政府側を支援するウガンダ、ルワンダ、ブルンジなど周辺国を巻き込んで“アフリカ史上初めての世界戦争”とも言われた内乱が98年から02年7月まで続きました。
更に遡ると、ルワンダのジェノサイドに行き着きます。

その意味では、今回の紛争は“またか・・・”という感じもします。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは9月29日、以前武装勢力に拉致されて少年兵に仕立てられた後、いったん解放されていた子供たちが再び戦闘に駆り出されている実態を訴える調査報告書を公表しています。

****元少年兵を「再徴集」****
報告書は、東部の北キブ州で、武装解除計画に基づき家族の元に戻った少年兵の半数近くが再徴集された恐れがあると指摘。過去の戦闘経験が生かせるとみられているためで、逃げ出そうとした者は、見せしめのために他の子供たちの前で拷問されたり、殴り殺されたりしているという。 【9月30日 時事】
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【ドス代表:「MONCは必要なあらゆる手段を講じる」】
今回の紛争で気になっているのは、政府軍が撤退し、ゴマの難民キャンプに迫る反政府軍の矢面に立っているのが国連PKO部隊であること、また、このツチ族を基盤とする反政府軍CNDPをルワンダが支援していると言われているという点です。

国連が展開している最大のPKOである国連コンゴ民主共和国ミッション(MONUC)のアラン・ドス代表は、28日段階で、「ゴマを防衛し人道危機を防ぐため、MONCは必要なあらゆる手段を講じる」と語っています。
難民が流入するゴマでは、市長が「人々は先を争い、市内はパニックだ」と話しているような事態となっています。
MONUCは反政府勢力の進攻を阻止するため武装ヘリコプターを出動させたとも報じられています。

【変わるPKOの武力行使】
もともと、PKOにおいては武力行使は限定されていましたが、ルワンダでのジェノサイドを国連PKOが防げなかったことから、その後は武力行使にも積極的になってきています。
そのことを現実に経験したのも、コンゴでのPKOであるMONUCでした。

2005年3月1日、ネパール、パキスタンなどのPKO部隊約240人が民兵の武装解除のため装甲車で移動中、突然攻撃を受け、これに攻撃用ヘリ3機も動員して反撃し、少なくとも民兵50人以上を殺害したという事件がありました。

国連本部定例記者会見では「このPKOに付与された権限が変わったのか」といった質問が相次ぎました。
報道官は「権限に変わりはない。地域を平静に戻すための断固とした取り組みの一環である」と説明、「任務の範囲内」という認識を示しました。

ただ、今回は、反政府軍CNDPと国連PKO・MONUCの出方次第では、これを数段上回る本格的な戦闘になる可能性もあります。
“MONUC代表ドス氏によると、北キブ州でCNDPの非正規戦闘員と対峙(たいじ)しているのは同国に駐留するMONUC部隊1万7000人のうち6000人足らず”【29日AFP】と報じられていますが、このMONUCの数字については“ゴマには800人しかおらず、増員には数日かかる”【30日朝日】との報道もあり、よくわかりません。

MONUC部隊はインド、パキスタン、バングラデシュ、南アフリカ軍などで構成されています。
潘基文国連事務総長は、「人道的な大惨事に至る可能性がある」と警告しています。

今回、国連PKOは大規模戦闘になっても住民を最後まで守るのでしょうか?
国連のPKO部隊が結果として住民を見殺しにした事例としては、ルワンダのジェノサイド以外にも、95年7月ボスニア・ヘルツェゴビナで起きた、第2次世界大戦後のヨーロッパ最大の惨劇といわれる「スレブレニツァの虐殺」もあります。

国連防護部隊(UNPROFOR)はスレブレニツァに「安全地帯」を設け、ムスリムをそこに避難させていましたが、守備していた400人の軽装オランダ軍は武力で勝るセルビア人武装勢力に強要されるかたちで、このムスリムをセルビア人側に引渡ことになりました。
この結果虐殺されたムスリムは8千人とも言われています。
この事件は、PKOを派遣したオランダにも深い傷跡を残すことになりました。

現在ところ、反政府勢力CNDPは、“ゴマ周辺の避難民を支援する人道支援団体に限り「人道的通行」を許可する”として、意図的な大惨事を起こす考えはないようにも行動していますが、進軍を阻むMONUCに対しては厳しい姿勢を崩していません。

【カガメ・ルワンダ大統領「わたしは人を守る側につく」】
更に、注目されるのは、かつて国連・国際社会に見捨てられたルワンダの対応です。
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コンゴ政府はルワンダ軍が国境を越えてコンゴ軍に攻撃したと非難、アンゴラに支援を求めている。ルワンダ政府は否定しているが、ゴマの北のMONUC拠点も29日、ルワンダ側から砲撃を受けた。【10月30日 朝日】
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当時ルワンダ愛国戦線(RPF)を率い、現在ルワンダ大統領の席にあるカガメ大統領は、目の前で虐殺が行われているときじっと動かなかったUNAMIR(PKOである国連ルワンダ支援団)司令官ダレール将軍のことを「人間的には尊敬しているが、かぶっているヘルメットには敬意を持たない。UNAMIRは武装してここにいた。装甲車や戦車やありとあらゆる武器があった。その目の前で、人が殺されていた。私だったら、絶対にそんなことは許さない。そうした状況下では、わたしはどちらの側につくかを決める。たとえ、国連の指揮下にあったとしてもだ。わたしは人を守る側につく。」と、語ったそうです。

そのルワンダがCNDPを支援して、国連PKO・MONUCと対決することになるのか?
かつてルワンダで何十万もの住民を見殺しにした国連・国際社会へ、“本当に住民を守る気があるのか?守れるのか?”という挑戦でしょうか。

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ロシア・イングーシ共和国  チェチェン化する“カフカスの火薬庫”

2008-10-30 16:34:25 | 国際情勢

(チェチェン関係の一連の事件での“ロシア政府の陰謀”を糾弾したロシアの女性ジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤ 2006年10月7日、ポリトコフスカヤはモスクワ市内の自宅アパート建物エレベーター内で射殺体で発見されました。
そのポリトコフスカヤを偲ぶフィンランドでの集会
彼女の主張の真偽はともかく、“ロシアでは1999年~2006年の間に126名のジャーナリストが死亡、もしくは行方不明となっている。”【ウィキペディア】というのは由々しい事態です。
“flickr”より By a/jau
http://www.flickr.com/photos/ajau/274914056/)

【チェチェンのプーチン大通り】
2度の紛争を経験し、強攻策を主導したプーチン首相の政治基盤を固めるのにも大きく貢献したとされる、ロシア南部カフカス地方のチェチェン共和国。
今では随分治安が好転したそうで、昨年のロシア下院選におけるプーチン首相率いる「統一ロシア」のチェチェンでの得票率は99%以上だった発表されています。

首都グロズヌイ中心部にある「勝利大通り」は、チェチェン共和国のカドイロフ大統領の命令で、「プーチン大通り」と改称されました。
“カドイロフ氏は、プーチン氏のチェチェンにおけるテロとの戦い、経済、社会の復興における功績をたたえるためだと説明。記念式典でのあいさつでは「プーチン氏のためなら死ぬ覚悟がある」とまで述べ、プーチン氏への忠誠を誓った。”【10月6日 朝日】・・・とのことです。

溜息が出そうな「プーチン翼賛体制」とも言うべきものですが、今年に入って警官約30人が殺害されたとのことで、必ずしも住民ひとりひとりがこの“プーチン翼賛体制”を喜んでいる訳でもないようです。

同じカフカス地方、チェチェンの西隣のイングーシ共和国は民族的にはチェチェンと同じです。
こちらは、政権側と抵抗勢力の緊張が高まっているようです。
“ロシア南部のイングーシ共和国で18日、内務省軍の車列が何者かの待ち伏せ攻撃を受け、19日までに明らかになったところでは、兵士ら3人が死亡した。一方、同共和国の野党系のウェブサイトは内務省筋や病院関係者の話として、この攻撃で兵士ら約50人が死亡したと伝えた。”【10月19日 時事】

****イングーシ「チェチェン化」の影 衝突続く“カフカスの火薬庫”**** 
ロシア南部イングーシ共和国の人々は、旧ソ連国家保安委員会(KGB)出身の独裁的な指導者の下、息を潜めるように暮らしていた。
武装勢力や反体制派住民と治安部隊の衝突で2002年以降、数百人の死者・行方不明者が出たとの推計もある。大量の血が流れた隣国チェチェン共和国の悲劇の再来を懸念する声も出るなか、イングーシを訪れ、「カフカスの火薬庫」の現状を探った。(イングーシ共和国マガス 佐藤貴生)

首都マガス近くの商業地ナズラニ。主要道路にはバリケードや検問所が置かれ、装甲車両の脇で自動小銃を携えた兵士が警戒に当たる。傍らでは女性たちが買い物をし、子供たちは談笑しながら帰宅する。
街の様子は午後7時を過ぎると一変し、人の姿が消えた。街灯もまばらな通りは不気味なほど静まり返った。
市場などの取材現場にはイングーシ大統領府職員が常に同行し、住民に政権批判を口にしないよう無言の圧力を加えていた。マガス郊外の野外市場で出会った男性(38)は当局の目を逃れたすきに、「夜になると住民が自宅から連行されていく。ジャジコフが(共和国の)大統領になって以来、治安は悪くなるばかりだ」と小声で訴えた。

 ◆強権統治が招く報復
イングーシでは02年、元KGB中将のムラト・ジャジコフ氏(51)が大統領に就任して以降、治安部隊など当局の関与が疑われる殺人・拉致事件が続発。正確な数は不明だが、現地の人権団体マシルは同政権成立以後、約500人が死亡、約160人が行方不明になったとし、詳細情報をインターネットサイト(http://www.mashr.org/)で公表している。
「殺人やテロを企てた容疑で当局に連行された末、裁判もなしに兄弟や親類を失った若者たちが復讐(ふくしゅう)心から武装勢力に加わっている」と地元記者はいう。失業率5割以上、平均月収1万ルーブル(約3万4000円)という社会状況や、経済格差も若者を武装勢力に向かわせる一因とみられ、かつてのチェチェンとも重なる。
 
検察当局によると、治安部隊員や警官への襲撃事件は今年だけで150件に上る。特に8月末、貴重な情報発信源だった反体制インターネットサイトの運営者が殺害されて以降、報復とみられる大統領の親類への襲撃事件が相次いだ。カフカスの武装勢力が“主戦場”をイングーシにシフトした可能性もうかがえる。 (中略)

 ◆ロシアのアキレス腱
 人権団体「メモリアル」チェチェン支部のシャフマン・アクブラトフ氏は、「ロシア政府はチェチェンに関しては『領土保全』を前面に掲げて武力行使したが、グルジアに属する南オセチア自治州とアブハジア自治共和国には独立を認めた。この二重基準が将来、北カフカス地方の住民の不満をより強める可能性がある」と指摘する。
 一般のロシア人とは異なる宗教や文化、言語を有するカフカスの人々には、「血には血をもって報復する」という気性が根強く残る。武力でねじ伏せようとする限り、この地域がロシアにとってのアキレス腱(けん)であり続けそうだ。 (以下、略)【10月30日 産経】
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【二重基準】
コソボの独立を認める欧米諸国は、オセチア自治州とアブハジア自治共和国独立を認めず、
オセチア自治州とアブハジア自治共和国独立を認めるロシアは、チェチェン・イングーシの独立運動を力で抑え込む・・・・
この事例に限らず、同じような二重基準が世界中に溢れています。

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アフガニスタン  止まらない麻薬生産 蝕まれる貧困層

2008-10-29 16:28:41 | 国際情勢

(Photographer: Anuj Chopra
Description: Addicted beggar in his Kabul 'pad.'
ISN Security Watch: Addicted in Afghanistan

カブールの街角の麻薬中毒患者 街で唯一の中毒リハビリ用の病院は10床しかなく、いつも空き待ち状態だそうです。
“flickr”より By ISN Security Watch
http://www.flickr.com/photos/securitywatch/2489629880/)

【DHL幹部殺人事件】
先日25日、アフガニスタン・カブールの中心部にある国際流通大手DHLのオフィス前で銃撃戦が発生し、外国人2人とアフガニスタン人1人の計3人が死亡する事件がありました。
この事件については、麻薬取引との関連が報じられています。

****カブールのDHL幹部殺人事件、麻薬対策への腹いせか
殺害されたのは同社アフガニスタン支店長だった南アフリカ国籍のジェイソン・ブレスラー氏と、副支店長だった英国籍のデービッド・ガイルズ氏で、両氏を射殺したのは護衛していたボディガードだった。犯人も直後に自殺した。
英フィナンシャル・タイムズ紙によると、現地治安当局は、アフガニスタンから国外へのヘロイン密輸に利用されないようDHL側が対策を立てていたことから、この動きに反発した密売人たちの関与を疑っている。
同紙は、ブレスラー氏が配送物の中にあったキルト布に縫いこまれていたヘロイン約3キロの廃棄に立ち会ったことがあったほか、現在使用している麻薬探知犬が配送物に隠されたドラッグを発見できなかったため、新しい麻薬探知犬を手配していたと報じた。DHLの広報担当者は、捜査中であるとして報道についてのコメントを拒否した。
国連の国際麻薬統制委員会によると現在、アフガニスタン産のアヘンは、全世界の流通量の93%を占める。【10月27日 AFP】
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“ヘロイン密輸に利用されないようDHL側が対策を立てていたことから”・・・実際の事件の背景がどうなっているのかは全く知りません。
これが映画・小説あるいは“ゴルゴ13”の世界の話なら、立場を利用して密輸に便宜を図っていた業者が何らかの事情で態度を変え、密売組織とトラブルが起こり・・・といったところでしょう。
繰り返しますが、現実の事件の背景は全く知りません。

【全世界の流通量の93%】
アフガニスタンではタリバンの攻勢の前で、和解交渉への期待が語られることが多くなっています。
今日も、“米政府がアフガニスタン戦略を大幅に見直し、アフガニスタン政府とタリバンの一部との協議に、参加を検討している”というニュースが報じられていました。

ただ、“タリバンの攻勢”と言っても、そのためには武器が、つまり資金が必要になります。
その資金源となり、タリバンの攻勢を支えているのが、ケシ栽培・麻薬(ヘロイン)製造・密輸によって生み出されるお金であることは周知のところです。

冒頭記事にも“アフガニスタン産のアヘンは、全世界の流通量の93%を占める”とありますが、今や麻薬ビジネスはアフガニスタン国内総生産の半分近い40億ドル(約4040億円)を稼ぎ出しているともいわれます。
考えてみるとこれはとんでもない数字で、アフガニスタンの麻薬を根絶できれば、タリバンの活動も抑えられますし、世界の麻薬汚染の状況もドラスティックに変わります。

アフガニスタンでのケシ栽培は90年代、軍閥が資金源として奨励。
2000年にタリバン政権が禁止し一時的に減少しましたが、タリバン政権崩壊後は再び増加。
かつてケシ栽培を禁止したタリバンは今では、ケシ栽培を認める代わりに農民に税金を課し、ヘロイン製造・密輸に絡んで利益を上げているといわれます。

アフガニスタン政府やアメリカ軍がケシ栽培根絶に躍起になっても事態は改善しません。
アフガニスタンでのケシ栽培が減らない理由は、乾燥し、灌漑施設が紛争で破壊された土地ではケシぐらいしか育たないこと、小麦などに比べケシ栽培から得られる利益がはるかに大きいこと、政府の転作補償が十分に機能していないこと・・・などがいつも挙げられます。

素人考えでは、これだけ影響の大きさがわかっていながら、いくら困難な事情があるとは言え、これを放置したままというのは理解できないところです。
タリバンとの戦闘に勝利しようと言うのであれば、まっさきに本腰を入れて対応すべき問題のように思えますが。
現実には、タリバン以外にも、政府関係者、地元部族勢力などが入り乱れ、国際犯罪組織と結託して麻薬ビジネスに群がっているのが実態のようです。

【ヘロイン中毒の母子】
そして、当然の帰結として、麻薬はタリバンの活動資金源となるだけでなく、生産国アフガニスタンの国民、戦争で生活の糧を失い、明日への希望を持てない人々の心と体を蝕みます。

***タリバン・ショック:第2部・アフガニスタンの現実/4 ヘロイン加工国へ変貌****
(国内の貧困層むしばみ)
戸別訪問で麻薬の害毒を説き続ける政府関連団体職員、ナウロジャーさん(30)は8月、カブール西部の自宅でヘロインを吸引していた母子4人を見つけた。4人は03年にイランから帰国した帰還難民だ。親類宅の一室を間借りしている。
母マフトップさん(25)は難民時代にヘロイン中毒となった夫に勧められた。「貧しく、苦しい生活を忘れることができた」。マフトップさんは言う。
「ある日、夜泣きする子供に与えたら泣きやんだ。むずかる子供に吸わせたら、機嫌を取り戻した」。以後、子供たちにも時折分け与え、一家で1日1グラムを消費する。害毒は知っているが、「やめたら体がばらばらになる」とやめられない。
1グラムの値段は、路上で靴を売る夫の1日の稼ぎと同じ3ドル。生活は借金まみれだ。
「教育の遅れが、麻薬のまん延につながった。国や国際社会は麻薬栽培の根絶に力を入れているようだが、消費や患者対策はほったらかしだ」。ナウロジャーさんはため息をつく。【10月21日 毎日】
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むずがる子供に麻薬の煙を吹きかけると泣き止むので・・・と言う話は、麻薬汚染の実態としてときどき聞く話です。
なんともやりきれない話ですが。
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シリア  イラク国境近い村を米軍が越境攻撃

2008-10-28 15:53:15 | 国際情勢

(シリアのベドウィン母子 flickrより By Hugo!
http://www.flickr.com/photos/hugo/17236206/)

【子供4人と女性1人を含む農民ら計8人が死亡】
アメリカ軍がイラク国境近いシリアの村を越境攻撃・・・という記事を見て、最初“また核施設関連のなにかか”と思いましたが、そうではないようです。

****シリア「空爆で8人死亡」 イラク駐留米軍は攻撃否定*****
シリア国営通信は26日、米軍のヘリコプターが同日、イラクの国境に近いシリアの村を襲撃し、民間人8人を死亡させたと報じた。シリア政府は直ちに「国際法に違反する侵略行為」と非難し、駐シリア米臨時代理大使に抗議した。米軍がシリア領内を攻撃するのは極めて異例だが、フランス通信(AFP)によると、イラク駐留米軍は27日、「攻撃について、いかなる情報もない」との声明を出した。

シリア側の報道によると、攻撃を受けたのはアブカマル国境検問所から約8キロ離れたスッカリーエという村で、26日夕、米軍ヘリ4機が飛来し、建設中の農家の住宅に向け攻撃を開始。2機は着陸し、米兵が地上からも銃撃した。攻撃で子供4人と女性1人を含む農民ら計8人が死亡した。

米軍は、反米武装勢力がシリア領からイラクに侵入しているとし、2003年のイラク戦争直後からシリアを非難してきた。ただ、イラク当局者は最近、シリア側が国境警備に力を入れているとの見方を示しており、タラバニ・イラク大統領も先月、「シリアとイランはもはやイラクに脅威を与えていない」と語った。
イラク駐留米軍は攻撃を否定しているが、AP通信によると、ワシントンの米軍当局者は、特殊部隊が国際テロ組織アルカーイダに関係する外国人武装組織のネットワークを狙って攻撃したと語ったという。

シリア政府は、イラク政府に対しても「イラクの領土が隣国に対する米軍の侵略拠点とならないよう求める」と強く抗議した。
シリアは今年春、トルコを仲介としてイスラエルとの間接的な和平交渉を再開したほか、ぎくしゃくしていたレバノンとの関係も、初めて大使館を設置して“正常化”するなど、米政府のシリア孤立化政策に対抗し、周辺国との関係改善の動きを強めている。【10月27日 産経】
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AFPによると、米政府高官は27日、米軍が26日にイラク国境を越えシリア領内の外国人戦闘員を攻撃したことを初めて認め、「作戦は成功した」と匿名を条件に語ったそうです。
攻撃の詳細は明らかにされていませんが、“この攻撃で、外国人戦闘員をイラクに潜入させていた仲介者が死亡したとみられる。死亡したとみられるのはAbu Ghadiyaと呼ばれる男で、この地域で主要な外国人戦闘員の仲介者だったという。”【10月27日 AFP】

【「シリアとイランはもはやイラクに脅威を与えていない」】
米軍司令部は、シリアがイラクに流入する外国人戦闘員の主要経由地だとしており、これまで、米政府はこの問題を十分に認識していないとしてシリア政府を非難していましたが、この種の越境攻撃は初めてとみられます。
冒頭産経記事にも“イラク当局者は最近、シリア側が国境警備に力を入れているとの見方を示しており、タラバニ・イラク大統領も先月、「シリアとイランはもはやイラクに脅威を与えていない」と語った。”とあるように、シリア・イラク国境の状況は以前より改善したと思われていました。

今年はじめには、アメリカ軍自体が、シリア側の国境警備強化を評価する発言をしています。

****イラク:シリアからの武装勢力の流入減少 駐留米軍指摘****
イラク駐留米軍のスミス報道官は20日、シリアからイラクへの武装勢力の流入が減少していると指摘した。シリア側の国境警備強化に一定の評価を与え、これまでのシリア非難を幾分緩和した。AFP通信が伝えた。
報道官は「07年初めに月(平均)110人だった武装勢力の流入が、現在は40~50人に減少している」と述べた。シリアからイラクへ流入する武装勢力メンバーの多くは、サウジアラビア出身者とみられる。報道官は流入減少の理由としてシリアの警備強化に加え、サウジがシリアへの入国規制を強化したことも挙げた。
シリアやイランなどを敵視する米国の政策により、シリアは国際社会のみならず中東地域でも孤立化を深めている。イラク問題での米国への協力は、閉塞(へいそく)状況の打開に向けた「外交カード」の一つとみられている。【1月21日 毎日】
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こうしたこともあって、バグダッドなどの治安が改善傾向を示し始めた今年4月以降、米国はシリア非難のトーンを弱めていたとも報じられています。
そのなかでの今回の越境攻撃、事情がわかりません。

【“越境”ということ】
当然、シリアは「国際法に違反する侵略行為」と反発しています。
死亡者とアルカイダ系武装勢力との関係はわかりませんが、事態改善を求めるシリアへの強い要求、場合によっては実力行使もありうる旨の警告、そういったものを省略してのいきなりの越境攻撃であるなら、また、産経記事の“子供4人と女性1人を含む農民ら計8人が死亡”という記事が正確なら、攻撃の正当性には首をかしげてしまいます。

ロシアのグルジア侵攻にしてもそうですが、やはり主権国家の国境を越えて行動を行うということは“戦争行為”であり、最後の手段であるべきです。
テロ支援国家のシリア相手なら、何をしてもいいというものでもないでしょう。

アメリカ軍は、パキスタンのアフガニスタン国境で越境攻撃を繰り返していますが、そうした“越境”に対する感覚が麻痺しているのではないか・・・と懸念されます。
こうした攻撃で得られる成果と、イスラエルやレバノンとの関係改善を進めるシリアを刺激して中東情勢を逆戻りさせる影響を比較すると、はなはだ益少ない行動のように思われます。

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経済危機で進む規制・管理への動きと多極化を反映する国際的枠組み模索

2008-10-27 16:18:57 | 国際情勢

(7月25日パリ サルコジ仏大統領とオバマ米大統領候補 11月以降、こうした絵が増えるのでしょうか。“flickr”より By Barack Obama
http://www.flickr.com/photos/barackobamadotcom/2701924041/)

【グリーンスパン氏「衝撃を受けている」】
東京株式市場は今日も続落で最安値更新、円は独歩高・・・。
不透明な金融危機、世界を覆う不況の不安に対する各国の懸命の対応が続いていますが、このなかでふたつの流れが感じられます。
ひとつは“自由・規制緩和”から“規制・管理”への動き。
これまでの規制緩和による市場重視の経済運営がマネーの暴走を止めることが出来ず、経済全体の枠組みを揺るがす結果になった・・・という反省です。

その象徴が、23日アメリカ議会の公聴会でのグリーンスパン連邦準備制度理事会(FRB)前議長の釈明というか、自信喪失ぶりです。
自由競争主義を重視する経済運営でながくアメリカ経済を牽引し、国民からは大統領以上の信頼を得ているとも言われてきたグリーンスパン氏ですが・・・。

****「自由競争主義に欠陥」前FRB議長、金融危機に釈明****
米議会の公聴会で23日、連邦準備制度理事会(FRB)前議長のグリーンスパン氏が集中砲火を受けた。議員らは現在の金融危機の原因をめぐって前議長の在任中の責任を詰問。前議長は、規制緩和や自由競争を推し進めたことに関し、一部に誤りがあったと認めざるをえなかった。
公聴会は下院の政府改革委員会が開いた。議会を主導する野党民主党は、危機の再発防止のため規制を大幅に強化する狙いがあり、06年までFRB議長を約18年半務め、米経済のかじ取り役として評判の高かったグリーンスパン氏を集中的に追及した。

ワックスマン委員長(民主)は、前議長が金融派生商品などの規制に消極的だったことを挙げながら「FRB史上最長の任期中、金融市場の規制緩和の支持でもっとも影響力があった。あなたは間違っていたか」と責め立てた。前議長は「部分的には」と認めたうえで「銀行などが利益を追求すれば、結果的に株主や会社の資産が守られると思っていたが、間違いだった」と話した。
さらに、自身が強調してきた自由競争主義の考えなどについても「欠陥をみつけた。それがどのぐらい深刻なものかは分からないが、非常に悩んでいる」と発言。金融業界が予想以上に危険な取引に走り、当局の対応が遅れたとの認識を示し、「私の経験では融資担当者は金融当局よりも、貸し出しリスクや借り手についてはるかによく知っていた。こうした決定的な支柱が崩れてしまい、衝撃を受けている。なぜそうなったのか、まだ十分理解できない」とショックをあらわにした。 (中略)

市場の力を重視する前議長の考え方は、米国型資本主義の象徴として、世界の金融業界や政策決定に大きな影響を与えてきた。その路線を修正するような今回の発言は、金融危機後の政策論議の中で強まっている規制強化の流れを、さらに加速させそうだ。 【10月25日 朝日】
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【早い再開が望まれるWTO交渉】
適正な(何が“適正”なのかが問題なのですが・・・)管理は必要でしょうが、一方で、規制・管理重視の動きに、今後の実体経済悪化が重なると、自国利益だけを考える“保護主義”的な傾向が強まることも危惧されます。
それは、世界経済収縮へ向かう後ろ向きの途であり、いつか来た途でもあります。

WTOのドーハ・ラウンドは7月に、主に先進国と中国・インドなど新興国の主張が対立したまま決裂しています。
「11月中旬~12月中旬には交渉を再開できる」との観測もありましたが、一連の経済混乱のなかで見通しが立たなくなっています。
「今年中に再開できなければ、おそらく閣僚会合は2010年まで持ち超されるだろう」(オサリバン欧州委員会通商総局長)との発言も出ています。

日本も食糧自給率や国内産業保護の問題は抱えていますが、その日本にしても、あるいは中国にしても、自由な世界貿易の拡大のなかで立国しているという基本的認識を見失うことなく、交渉に臨んでもらいたいものです。

【寂しげなブッシュ大統領】
金融危機への対応のなかで見えてきたもうひとつの流れは、従来のアメリカの1極支配的な体制を脱却し、多極的な国際協調を模索する動きです
国際関係の大きな流れは、グルジア紛争で“新冷戦”が危惧される状況になりましたが、その後の経済混乱のなかでまた流れが変化したように見えます。

経済不安への各国が足並みをそろえた対応が緊急に求められていますが、自由経済主義・市場重視で世界をリードしてきたアメリカの自信喪失、実体経済悪化によって精彩を欠いているようにも。
ロシアとの“新冷戦”を構える余裕もなさそうです。

とりわけ影が薄いのがブッシュ大統領。
ブッシュ政権との違いを強調したいマケイン陣営からは応援の声もかからず、ホワイトハウスにこもっているとか。
年内でのなんらかの結果を目指したパレスチナ問題も、イスラエルの総選挙突入で絶望的になったようですし。

【呪い人形もなんのその 元気なサルコジ大統領】
一方、25日まで北京で開かれたアジア欧州会議(ASEM)首脳会議でひときわ元気だったのがフランスのサルコジ大統領。
“ASEMはこれまではミャンマーの人権問題などが意思疎通を妨げる「トゲ」となり、十分な機能を発揮できなかった。だが、金融危機や環境問題など地球規模の緊急課題が浮上してきたことで、両地域が連携を強化する必要性が高まった。”【10月23日 毎日】

****ASEM:国際金融体制改革、目立ったサルコジ積極外交*****
欧州連合(EU)議長国のサルコジ仏大統領は期間中、米主導といわれる今の国際金融体制の改革を目指してアジア各国首脳と積極的に接触した。会議のメンバーではない米国が、足元で広がる危機への対応と大統領選で手を縛られる間隙(かんげき)を突く形で、アジアの囲い込みに布石を打った構図だ。(中略)
同大統領とEUのバローゾ欧州委員長がブッシュ米大統領と直談判して開催を決めた来月のG20金融サミットを、EUは国際的な金融機関を監督する機構創設など新しい国際金融体制を構築する端緒と位置づける。その議論を主導するためには、中国、インドなど今後の成長センターとなるアジア新興国の支援が欠かせないだけに、各国首脳がそろうASEMは地ならしをする格好の舞台になった。

サルコジ大統領は、議長国・中国との事前調整で、金融問題の討議に半分以上の時間を確保したうえで、開幕演説では「アジアの成長力と想像力を必要としている」と表明。金融討議を締めくくる特別声明には「国際通貨・金融システムの実効的かつ包括的な改革」「健全な金融規制政策の実施、監督の強化」など、EUの主張に沿う文言を盛り込むことに成功し、「国際通貨基金(IMF)改革への地ならしはできた」(バローゾ委員長)と評価した。
97年のアジア通貨危機でIMFの支援を仰いだタイ、インドネシア、韓国などには、支援の見返りに要求された過酷な財政緊縮政策が、不況をさらに深刻化させたとの認識がなお強い。その背後にいたのが米国と投資銀行を代表とする米金融界だったというわけだ。今回の金融危機をめぐって欧州とアジアが一定の共通認識を持った意味は小さくない。

ただ、今回の「布石」は第1段階に過ぎない。同特別声明に対しては、日本が現在の危機克服に向けた「IMFの重要性」を盛り込むよう強く主張したほか、会議と並行して開かれた日中首脳会談でも「ドル基軸体制の重要性」が確認され、「反『米主導』」の色彩が濃いサルコジ大統領と改革をめぐる温度差も表面化した。【10月25日 毎日】
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経済成長著しい中国・インドという世界多極化の「震源地」となっているアジアとの協調を確認し、対米発言力を高めたいとの意向とか。
サルコジ大統領は世界の多極化を反映する国際的な枠組みの構築を主張しており、基軸通貨のあり方を再検討する必要性も提起しています。

国内では、内務省情報総局(公安警察)のベルトラン元長官をプライバシー侵害や虚偽捏造(ねつぞう)の罪で告訴、ベルトラン元長官に指示したとされるシラク前大統領の東京スター銀行秘密口座疑惑に関係する機密書類公開決定・・・と、政敵蹴落としにも大車輪。
一方、サルコジ大統領の“呪い人形”が売れ行き絶好調とか。
よくもそんなものを売るものだとあきれます。
なかなか個性的でアクの強い政治家ですが、国民の方もなかなかアクが強そうです。

【麻生首相も・・・】
大筋で協調しながらも、サルコジ大統領のIMF改革やドル基軸体制に関する提案に対し、一定に釘をさした形の日本の麻生首相。
麻生首相も、国内で解散時期や連夜のバー通いを記者団に訊かれているときの仏頂面と言うか悪人面に比べると、随分元気そうな表情でした。

中国は“大人の対応”という話もありますが、長くなったのでその話はまた別の機会に。

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パキスタン  武力による掃討から「対話による解決」に方針転換

2008-10-26 13:18:19 | 国際情勢

(パキスタン北西辺境州の中心都市ペシャワルの街角 “flickr”より By gunpodo7
http://www.flickr.com/photos/taeyoon/509202260/)

【板ばさみのパキスタン】
アフガニスタンでの戦いにとって、パキスタンの部族支配地域の動向が重要であり、アメリカも越境攻撃を繰り返しているところです。
パキスタンは、こうした“テロとの戦い”遂行をせまるアメリカと、部族支配地域攻撃による国内治安悪化・テロの増加、また、アメリカに追随して同じムスリムを攻撃することを嫌う国民世論の間で板ばさみとなっています。

今年3月発足したギラニ内閣は国内世論を受けて一度はイスラム武装勢力との和平を試みましたが、結果的に武装組織側が勢力を拡大し、アフガニスタンでのタリバン側攻勢が激化することになり、アメリカからの強い要請もあって、政府は6月末に掃討作戦を再開した経緯があります。

板ばさみ状態で揺れるパキスタンの政府・軍の対応は、国軍自体がかつてタリバンを養成したようにもともとイスラム武装勢力とのつながりが強いこともあって、どちらを向いているのかよくわからないところがあります。
10月1日ブログでは、イスラム武装勢力との繋がりがかつてから指摘されていた情報機関「三軍統合情報部(ISI)」の長官ら上層部の交代があったことから、“テロとの戦い”の方向で本腰を入れるのか・・・とも書きました。

【「武力だけでは永久に勝てない」】
しかし、ここにきて主戦場であるアフガニスタンでの和解交渉の動きを受けて、パキスタンにおいても再度“対話”の方向に動き出したとの報道がありました。

****パキスタン:軍が対テロ戦転換 イスラム武装勢力と対話へ******
パキスタン軍がアフガニスタン国境付近で続けているイスラム武装勢力掃討作戦について、同軍が武力による掃討から「対話による解決」に方針転換を図っていることがわかった。これを受けてパキスタン国会も22日、対テロ戦の見直しを政府に求める決議を全会一致で採択。アフガンでもカルザイ政権が武装勢力タリバンとの和解を模索するなかで、パキスタンが対話路線にかじを切れば、米国がこの地域で進める対テロ戦戦略は大きな転換を迫られることになる。

関係者によると今月8日、掃討作戦を指揮する軍のパシャ中将が議会上下院に対し、極秘裏に国境地域の軍事情勢説明を開始。「武力だけでは永久に勝てない」として、武装組織との対話による政治的解決が必要との結論を伝えた。
中将は、軍が武装勢力を封じ込めることができない理由について、地元住民が武装組織を支援しているためと指摘。3カ月前からの掃討作戦で300万人の避難民が出ている部族支配地域バジョール管区を例に、「政治的対話がもはや不可欠」と強調した。
パキスタン国会は、軍や専門家の分析などを検討し、「アフガン政府が和解しているのに、わが国が戦闘に固執する必要はない」と結論。対テロ戦見直しを求める決議を採択した。

パキスタンは経済状況が極度に悪化。債務不履行(デフォルト)に陥る可能性があるとして、国際通貨基金(IMF)に緊急融資を求めている。経済悪化の背景には、国際的なエネルギーや食糧価格の急騰のほか、対テロ戦で国内の治安が悪化し、外国からの資金が流出していることがある。
軍や議会の判断の背景には、経済危機打開には、治安を改善して外資流出を食い止める必要があるとの判断もあるとみられる。

一方、米軍によるアフガン側からの越境攻撃は最近になって連日のように続き、地元住民が武装勢力支援に転じる原因になっていると指摘されている。パキスタン側は今後、治安改善を図るためにもさらに米国に、越境攻撃を止めるよう求めていくとみられる。
地元メディアによると、パキスタン国内では対テロ戦見直しを支持する世論が圧倒的。選挙で選ばれたザルダリ人民党政権は、世論を無視できないとみられる。【10月26日 毎日】
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“アフガニスタン自体が和解で動いている今、デフォルトの危機にありIMFに緊急支援を要請しているパキスタンがどうして国民世論を無視してまで戦闘行為の矢面に立つ必要があるのか”・・・もっともな話です。

【不透明な先行き】
ただ、この記事の前日には、まったく逆の戦闘遂行を伝える記事もありました。

*****武装勢力の死者1500人超=部族地域の対テロ戦-パキスタン*****
パキスタン軍高官は25日の記者会見で、アフガニスタンと国境を接する北西部の部族地域、バジョール地区で8月上旬に始まったイスラム武装勢力に対する過去最大規模の掃討戦で、武装勢力側の死者が1500人を超えたことを明らかにした。
逮捕者は950人に達し、パキスタン兵73人も死亡した。軍は武装勢力の支配下にあった主要な複数の町を制圧、優勢に立っていると強調した。作戦はさらに数カ月続く見通し。【10月25日 時事】
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アメリカも今後、経済支援強化を取引材料に再度パキスタンつなぎとめに動くとも思われます。
経済苦境にあるパキスタン側の狙いもそこにあるかも・・・とも邪推されないことありません。
これまでも、アメリカからの支援を引き出すために敢えてイスラム武装勢力との紛争を長引かせているのでは・・・との疑念も語られてきました。
また、アメリカ新大統領に近づいているオバマ候補は、かねてよりアフガニスタン・パキスタンでの戦闘に積極的だとも伝えられています。

しかし、ムシャラフ軍政と異なり、選挙に基盤があるザルダリ政権は、基本的にはこれ以上国民の支持を得られない戦いに協力することは難しいように思われます。
また、アフガニスタンでも参戦国の間でも、「武力だけでは永久に勝てない」という認識が定着しつつあります。

【誰のための戦争か】
肝心のアフガニスタンの和解交渉は全く先が見えません。
と言うより、それほど現実化しているように見えません。期待が一人歩きしている状態では。
今後もし和解がありうるとしたら、外国勢力撤退を条件に、近い将来にはタリバン政権が復活するような形しかないのでは・・・と思われます。

およそ人権とか民主化とは縁遠いタリバン政権の復活には、個人的には忸怩たるものがあります。
しかしながら、どのような大義名分を掲げようと、アフガニスタン・パキスタン当事国の住民にとって戦争は生活破壊であり、住民が望まない戦いを外国勢力が干渉してその戦いを正当化することには無理があります。

誤爆や空爆難民を生むような攻撃、越境攻撃という戦術が民心の離反を招いた結果と言えますが、そもそも、戦火にさらされる住民の生命・財産を尊重する立場にたてば戦争などあり得ない・・・という単純な理念に立ち戻る必要があるのかも。
もちろん、現実世界では一方に“武力”で攻勢をかけるタリバン勢力が実在する訳ですが、応戦して潰せばいい・・・というものでもなく、一体誰のために何をやっているのか、誰が犠牲を払うのかということを再度考える必要があります。
今日はそんな気がしています。明日はわかりませんが。

大岡裁きであれば、痛がる子供の手を思わず離す母親に、「それでこそ本当の母親だ」ということになるのですが、現実世界では、腕がもげようが引っ張り続ける方が勝つ・・・それだけなのかも。
いやな渡世だ。でも腕をもぎとる訳にもいかないし。


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張学良と蒋介石  “懐中時計”と“釣り竿”

2008-10-25 16:58:08 | 国際情勢

(張学良の写真が見つからなかったので、代わりに蒋介石と宋美齢 随分くつろいだ写真です。
宋美齢は西安事件とき蒋介石解放のために張学良と交渉したようですが、本文引用記事によると,その後も張学良をかばっていたとか。張学良も宋美齢に傾倒していたとも言われます。
“flickr”より By ComerZhao
http://www.flickr.com/photos/comer/151802752/ )

台湾では今年3月の総統選挙で勝利した国民党・馬英九政権が、台湾経済活性化を目指して中台融和を進めているところですが、昨年末の陳水扁政権による「台湾民主記念館」(中正記念堂)正門に掲げられた故蒋介石元総統の座右の銘「大中至正」の看板の撤去のニュースとか、今年5月訪中した呉伯雄・国民党主席と胡錦濤・共産党総書記による、1949年の中台分断後初めての国共トップ会談のニュース・・・などを見聞きするにつけ、教科書の中で止まっていたセピア色の歴史がぜんまいを巻かれて再び動き出したような不思議な感じがします。

今日目にした下記の記事もそんなひとつです。

【「釣りをしながら、ゆっくり待つべし」】
****張学良軟禁の地 台湾・清泉温泉を行く 隔絶、寡黙なる13年****
台湾北部に清泉温泉という所がある。中国現代史に謎を残す西安事件(1936年)の中心人物、故張学良氏が13年にわたり軟禁された場所だ。四方を山に囲まれた旧日本軍の要塞(ようさい)で、張氏はその一角にある日本家屋に“隔離”されていた。旧居は地元当局が復元し、事件から72周年となる今年12月に一般公開される。関係者はベールに包まれた張氏の幽閉生活の一端を語り始めた。(新竹県五峰郷清泉 長谷川周人)
 (中略)
「70歳の誕生日を迎えた蒋介石に張学良は懐中時計を贈った」。1958年から清泉で軟禁された張氏はこのころ、年2回、近くの湖などに行くことが許されたが、普段は外出できず、時計は新竹市内で食料を調達する使いの者に買わせた。幽閉生活も10年を超え、暗に解放を求める蒋氏に対するメッセージだった。
しかし、その返礼として蒋氏から届いたのは1本の釣り竿だった。「釣りをしながら、ゆっくり待つべし」。自由を懇願する思いは軽くあしらわれた。これらのエピソードは、馮寄台駐日代表(日本大使に相当)が仲介役となり、地元の新竹県当局が張氏の遺族から確認したもので、警察療養所だった日本家屋に住む張氏はその後も、ラジオでニュースを聞くことも蒋氏から禁じられた。訪問者もないまま孤独な日々が続いたという。(以下略)【10月25日 産経】
*********************

“懐中時計”に対して“釣り竿”・・・できすぎの感もある話ですが、あまりにも面白いので引用しました。
記事によると、張学良は李登輝政権下の90年代に名誉が回復されましたが、蒋介石解放を決める交渉の細部は語らぬまま、移り住んだハワイで2001年10月、100歳で死去したそうです。

ところで、中台融和と言いつつも、中台関係の改善で経済的な実利を期待する馬政権と、「祖国統一」への第一歩とみる中国側との間には、思惑に大きな隔たりがあるようです。
また、つい先日の21日にも、台湾を訪れている中国の対台湾窓口機関、海峡両岸関係協会(海協会)の張銘清副会長が、中国を批判する群衆に囲まれ、地面に突き倒される騒ぎがあったように、台湾の人々の間でも中国との関係については様々な思いがあります。

ただ台湾にとって、世界の新たな極になりつつある大陸・中国はあまりに大きな存在であり、中国ペースの展開は避けられないようにも思えます。

【香港の将来は?】
9月に行われた“一国ニ制度”の香港立法会選挙では、親中派が辛勝する一方で、中央政府に批判的な民主派も大敗を免れるという結果でした。
中国との一体化が進み、北京五輪に絡んだ“愛国宣伝”が繰り広げられる中で行われた選挙は、民主派の苦戦が予想されていましたが、3議席減らしながらも、親中派に有利な選挙制度改革案を否決できる3分の1超の21議席を上回る23議席を死守し、なんとか踏みとどまった・・・というところです。

ただ、“世論調査によれば、選挙で政治的問題に関心を示す市民は9・6%にとどまっていた。 ”【9月9日 産経】というように、民主化要求などの政治的問題は影が薄れています。
民主派が大敗を免れたのは、貧富の格差是正やインフレ対策の遅れなどで親中派の曽蔭権行政長官に対する批判が高まったことによるものだそうです。

民主派のカリスマ的存在だった陳方安生(アンソン・チャン)元政務官と、民主党初代主席だった李柱銘(マーチン・リー)氏がともに今回選挙には出馬せず、今後の求心力の低下が懸念されています。
もっとも、親中派に有利な職能代表枠30議席を除く、直接選挙枠30議席では民主派が改選前の19議席を守ったということですので、いまだ民意は離れてはいないようですが。

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アフガニスタン  復活タリバン“政府は和解したいのなら、米国か我々のどちらかを選ばなければならない”

2008-10-24 16:08:00 | 国際情勢

(アメリカ軍がよく使う無人飛行機プレデター ミサイル搭載も可能で、“The Predator has a wingspan of 48.4 feet, a lenght of 26.7 feet, weights approximatly 1500 pounds cost around 3.2 million USD and flies at an average speed of 70 knots.”だとか。また、12000メートル上空を30時間連続で飛行でき、人工衛星を経由することで、アメリカ本土から操作することも可能だとか。
1機320万ドル、約3億円は、自国兵士を危険に曝さずにすむことを考えると安いものでしょう。
ただ、不正確な情報による誤爆、民間人の巻き添えも絶えません。

もし、戦争がなければ、320万ドルでいろんな復興のための活動ができるはずなのですが。
どちら側がということではありませんが、人間とは愚かしい生き物のようです。
“flickr”より By one size fits all
http://www.flickr.com/photos/15211292@N04/1603385163/)

【サウジが仲介する和解交渉】
アフガニスタン政府のタリバンとの和解交渉については、16日ブログでハリリ副大統領の「戦闘だけでは永遠に勝てない。」という発言とともに取り上げたところで、泥沼にはまりつつあるアメリカも期待をよせています。
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20081016
この交渉について仲介しているとされていたサウジアラビアのサウド外相が21日、初めて公式に仲介を確認しました。
9月末にメッカで3日間にわたって協議がなされたそうで、サウド外相は、「カルザイ大統領の依頼を受けた」と話しています。【10月22日 毎日】

アメリカが期待を寄せていると書きましたが、カルザイ大統領がタリバンとの戦闘に非協力的であると不満を募らせている向きもアメリカにはあるとかで、アフガニスタンの大統領選で対立候補を擁立する動きもあるとかも報じられています。あまり現実的選択肢とは思えませんが。
また、和解交渉に反発している国もあります。

【敵の敵は友・・・か?】
****イラン:タリバンと対話、失敗避けられぬ…外相が米欧警告*****
アフガニスタン情勢を巡り、イランのモッタキ外相は19日の記者会見で、米欧が治安改善に向け、旧支配勢力タリバンとの直接対話に前向きなことに対し「失敗は避けられない」と警告した。
外相は「(へびの)一つの穴で二度(指を)かまれないよう気を付けるべきだ」とペルシャのことわざを引用。「アフガンでの外国部隊の戦略的失敗は世界中が知っている。新たな試みが失敗しないよう忠告する」と強調した。
イランはタリバンと敵対し、98年には当時、政権の座にあったタリバンとの全面戦争の危機に直面した。01年の同時多発テロ後はタリバン政権打倒に向け、米英軍の軍事攻撃を支援し、カルザイ政権誕生に大きな役割を果たした。
こうしたことから、米欧がタリバンに軟化し、穏健派であれタリバンが政権に参画するような事態になれば「安全保障上の脅威が復活する」と懸念しているのだ。【10月20日 毎日】
******************

もっとも、イランはタリバンに武器支援していると、アメリカはかねてより主張しています。
“敵の敵は友”ということなのか・・・。
シーア派イランにとっては、スン二派原理主義のタリバン政権も容認できないけど、アメリカが泥沼にはまるのは歓迎・・・ということで、タリバンとアメリカが戦い続ける今の状態がベスト、そのためには宿敵タリバンにも援助するということでしょうか。

イランとタリバンの関係については、上記記事にもありますが、最近のタリバンは麻薬ビジネスで軍資金を得ており、麻薬流出経路になっているイラン東部の国境地帯ではイラン治安部隊が麻薬マフィアとの「戦争」を続けている・・・という側面もるようです。

そのタリバンについて、毎日新聞が“タリバン・ショック”というリポートをここ数日連載していました。
そのなかから、印象に残ったトピックをひとつ、ふたつ取り上げます。

【空爆避難民】
****アフガニスタンの現実/1(その2止)急増する空爆難民******
◇◇1万人、都市部漂流 捨てた村、タリバンの手に◇◇
アフガニスタンの首都カブール北西部チャライカムバール。約2キロ四方に粗末なテント群がひしめく。
1年ほど前から自然発生的にテントが並び始め、今では約1000家族、1万人が暮らしている。
イスラム武装組織「タリバン」の拠点となり、米軍や北大西洋条約機構(NATO)軍の攻撃が続く南部カンダハル州やヘルマンド州からやってきた「空爆避難民」たちのキャンプだ。(中略)
彼ら(避難民)が「空爆をタリバンが巧みに誘導して支配域を広げている」「米軍はうその情報を信用して攻撃する」と主張していることがわかった。

半年前にサンギン地区で起きた米軍の空爆。村外から四輪駆動車で来たタリバンのメンバーが、アフガン軍の車列を攻撃した。その30分後に米軍のヘリが飛来して、空爆を始めた。しかし、ヘリが到着したのはタリバンが逃走した後。空爆された村はほぼ全滅し、生き残った人々はタリバンに参加したり、都市部に避難民として流出する。そうして米軍が壊滅させた村にタリバンが進出し、支配地域の拡大に利用しているというのだ。(後略)【10月18日 毎日 栗田慎一】
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【偽情報に踊る米軍】
対立する部族が、対立相手をタリバンと偽って米軍に報告し、その情報提供を信じて行われる空爆で多数の被害者がでている現状も報告されています。

****アフガニスタンの現実/1(その1) 偽情報に踊る米軍******
アフガン政府軍幹部によると、米軍は各地で地元住民を情報提供者として使い、敵対するタリバンの情報を集める。だがヘラート州の警察幹部は「米軍は地域の複雑な対立関係を知らない」と指摘。氏族間の争いが絶えないアフガンで、ナワバード村同様の誤認はいつでも起こりうる。

国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」によると、米軍などの空爆による民間人の死者は、06年116人▽07年321人▽08年7月までに119人に上る。
カルザイ・アフガン大統領は9月、ニューヨークでの国連総会での演説で「市民の犠牲が増えることで、テロとの戦いの正当性に傷が付く」と厳しく批判した。
誤爆事件は、米軍が正確な情報も得られないまま、住民を巻き込む恐れのある激しい攻撃をする、「対テロ戦」の危うい現状を浮き彫りにする。【10月18日 毎日】
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【「我々の側に付くか、それともアメリカの側に付くか」】
攻勢を強めるタリバンは、散発的な軍事行動だけではなく、その影響下にある地域に「影の政府」を置いて“面”的支配を広めています。

****アフガニスタンの現実/5止 幹部が「復活」を豪語*****
男(タリバン幹部)によると、最高指導者のオマル師は政権崩壊後の02年、軍事委員会と政治委員会を新設し、それぞれ10人のメンバーを選出した。軍事委は、パキスタンの武装勢力や中東、中国のイスラム勢力との関係を構築。政治委は、イスラム諸国との交渉窓口を築いた。
二つの委員会は、パキスタン南西部クエッタに拠点を置く。ただし「オマル師はアフガンにいる」という。

一方、国内では、カンダハル、ヘルマンドなど南部から東部にかけてのタリバンの影響力が強い各州に、「影の政府」とも呼べる独自の行政組織を整備している。州ごとに両委員会直属の知事を任命。その下に「地区委員会」が置かれ、地域の武装集団を統括する。
現在、北部などでも「影の政府」設置を進めており、「近くカブール以外の全土にタリバン政府が根を張る」と豪語する。

アフガン政府はいま、本格的にタリバンとの和解を模索し始めている。だが男は「(政府とタリバンの)妥協は困難だろう」との見通しを示した。
「オマル師は純粋なイスラム国家建設を目指しており、外国軍の駐留や現憲法は認めない。政府は和解したいのなら、米国か我々のどちらかを選ばなければならない」
   ◆  ◆
「我々の側に付くか、それともテロリストの側に付くか」。01年の米国同時多発テロ事件後、ブッシュ米大統領は世界にそう迫り、アフガンでの対テロ戦を開始した。だが目的の国際テロ組織アルカイダ壊滅は果たせず、タリバンは勢力を回復した。
いま、タリバンは、ブッシュ氏と逆の要求をアフガン政府と国民に突き付ける。出口を失い、出発点に逆戻りしつつある対テロ戦。間もなく選ばれる米国の新大統領は、この現実にどう向かい合うのか。【10月22日 毎日 栗田慎一】
****************

「影の政府」や「地区委員会」がどの程度の機能を持ったものなのかはわかりませんが、事態は想像を超えて進行しているように見えます。
一昨日も、誤爆だか同士討ちだかのニュースが。
“アフガニスタン国防省当局者によると、東部ホスト州で22日未明、米軍機が検問所のアフガン兵を誤って爆撃し、9人が死亡、3人が負傷した。米軍側は、別の戦闘から戻ってきた米軍車両と検問所のアフガン兵が互いを敵と見誤って交戦に発展したと説明している。”【10月22日 毎日】
なんだか現場は混乱しているようです。



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日豪共同イニシアティブで「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)」

2008-10-23 16:30:39 | 国際情勢

(オーストラリア・キャンベラ 戦争記念博物館の展示 原爆爆心地付近の時計 写真下部に垂れ下がったものがガラスカバー 広島か長崎かは不勉強でわかりません。 日本からの貸出し展示でしょうか、常設でしょうか。
“flickr”より By maebmij
http://www.flickr.com/photos/maebmij/5003022/)

【核戦争が起こらなかったのは奇跡】
19日ブログ「原子力ルネサンスの今、日本は何を主張するのか」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20081019)で取り上げたように、世界の核管理を行うNPT(核拡散防止条約)体制は、一部核保有国の特権を認め、それら保有国の軍縮義務を規定しながらも実際には進展していない・・・という、もともと問題の多いシステムではありましたが、先日のアメリカ・インドの原子力協力協定によって大きく揺らぎ、中国・パキスタンの原子力協力の動きなども生じています。
一方で、「原子力ルネサンス」と呼ばれるように、原子力利用の動きが途上国などに急速に拡大しています。

こうした状況にあって、10月19日から21日まで、オーストラリア・シドニーにおいて「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)」第1回会合が川口順子元外務大臣及びギャレス・エバンス元豪外相を両共同議長として開催されました。

ICNNDは、今年7月の日豪首脳会談において、福田前首相とラッド豪首相(6月に広島を訪問)の間で、日豪共同イニシアティブとして立ち上げることが合意されたもので、9月の国連総会の際、麻生首相とラッド豪首相がニューヨークにおいて共同記者会見を行い、ICNNDの委員が確定したことを発表しています。
5年に1度のNPT再検討会議が開かれる2010年までに、日米欧豪で少なくとも4回開催し、NPT体制を維持しながら最終的に核廃絶を目指すため、国際社会がどう対処すべきかについて報告書をまとめることになっています。

エバンス共同議長は会合で、核兵器問題について世界は数十年も目をつぶったまま進んできたとして各国の姿勢を非難。さらに、「全世界に1万3000から1万6000個の核弾頭が存在しながら、冷戦中もその後も核戦争が起こらなかったのは奇跡だ」、「熱意をもってハイレベルの政治的協議を重ね、行動を起こさなければ、核兵器は雪崩のように拡散していく」と現在の状況に警鐘を鳴らしたそうです。【10月21日 AFP】

【日本がイニシアティブ】
こうした動きで日本がイニシアティブをとることは大変喜ばしいことですが、あまり政府もマスコミも取り上げていないようにも思えますが、どうしてでしょうか。
日本外交の真価をかけて政府も強力なバックアップを行い、実りある結論を導いてほしいものです。

もちろん現状を1ミリですら動かすことは容易なことではありません。
ただ、だからと言って努力を放棄していいものでも、無駄な努力でもありません。
クラスター爆弾にあっても、大量保有国の不参加にもかかわらず成立した実質的全面禁止の流れは、保有国の実際の行動を大きく縛る効果を発揮しつつあります。
グルジアでもロシア・グルジア双方にクラスター爆弾使用の話がありますが、国際的非難に曝されることで、今後の使用が大きく制約されていくと思われます。
核についても、米ロや中国がたとえ同意しなくても削減にむけた国際世論が喚起できれば、それはそれで一定の効果をもつと思われます。

【ポストSTART I 米ロ対話の動き】
もちろん核軍縮については、保有国の意向がカギになることは言うまでもないことです。
現在、アメリカとロシア(旧ソ連各国を含む)の間には、冷戦崩壊を受けて成立した第1次戦略兵器削減条約(START I)があります。
START Iでは、戦略核の三本柱である大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)及び重爆撃機の総数を削減し、ロシアの保有している重ICBMの上限を規定、さらに、配備される戦略核弾頭数の総数を制限しています。

2001年には米ロ両国は、START Iに基づく義務の履行を完了したことを宣言。
この結果、2001年12月現在のSTART Iに基づく米ロの核弾頭保有数は、米国:5949発、ロシア:5518発(米国政府FACTSHEETによる)となっています。

その後、START Ⅱ、Ⅲの取組みも行われましたが実現にいたらず、START Iは来年09年12月5日に失効することになっています。
START Iは、失効1年前までに条約延長の是非などについて協議を始めることが取り決められており、この規定を踏まえて、11月中旬にジュネーブで核軍縮に関する米ロの政府間協議を行うことが予定されています。

これに先立ち、米国のマレン米統合参謀本部議長とロシアのマカロフ軍参謀総長が今月21日ヘルシンキで会談し、対話強化で一致したことが報じられています。
グルジア紛争発生後、米政府は既に調印していた原子力平和利用協力協定を凍結するなど、対ロ強硬姿勢を打ち出していました。
しかし、来年1月に迫った米政権の交代を踏まえ、上記ポストSTART I交渉など、ロシアとの対話再開に乗り出したものとも見られています。
この会談で、マカロフ総長は中断されているNATO・ロシア理事会の再開にも言及したそうです。

【経済環境悪化で軍縮へ・・・】
米ロ間の軍縮交渉が今後どのような展開をみせるかわかりませんが、また、米ロの核に関する本音にかかわらず、最近の金融危機による経済環境悪化は、両国とも“金食い虫”の軍備に金をかけている状況にない環境をもたらしつつあるのでは。

震源地アメリカの実体経済悪化、財政悪化は報じられているとおりですし、ロシアの株価下落は、グルジア侵攻を受けての外国資金流出もあって、欧米以上の“暴落状態”です。
更に、原油価格が70ドルを割ってくると、今後のロシア財政にも支障をきたしてきます。
こうした、“軍備に金はかけてなんかいられない”状況が、今後の軍縮交渉を前進させることもちょっと期待しているのですが、どうでしょうか。

【中国も巻き込んで・・・】
それはともかく、経済でも軍縮でも、台頭する中国抜きでは有効な世界秩序の構築はできない状況になってきています。
米ロだけでなく、中国も巻き込んだ体制が望ましいのですが、中国は米ロと同水準までの拡大を要求するでしょうから、なかなか・・・。

しかし、冷戦当時、米ソは東西別々の舟に乗っている状態でしたが、金融危機を受けて、いまやロシアも中国もひとつの舟に乗っているという意識はあるのではないでしょうか。
そうした意識があれば、なんらかの合意を引き出すこともできるのでは・・・とも思ったりもするのですが。

コメント

南アフリカ  黒人への土地再分配を与党要求 苦慮する植民地支配の残滓への対応

2008-10-22 14:37:31 | 国際情勢

(南アフリカ ヨハネスブルグのNelson Mandela Square ネルソン・マンデラが釈放されたのが1990年、大統領に就任したのは1994年 今なおアパルトヘイトの残滓もあれば、黒人による逆差別もあれば、ジンバブエ難民など外国人排斥もあったり・・・当然ながら現実は一直線には改善しません。 
“flickr”より By The Travelling Beaver
http://www.flickr.com/photos/travellingbeaver/62144545/)

【南ア:国土の87%を5万人の白人農場主が所有】
アフリカ各国にあっては、かつての植民地支配の残滓を今なお引きずっており、これにどのように対処するのかが大きな課題となっています。

****南アフリカ与党ANC、黒人への土地再分配加速を求める声明を採択****
南アフリカの与党アフリカ民族会議(ANC)は19日、土地改革の一環として、黒人への再分配にあたり農場主が土地の価格を設定できるとする法律を廃止すべきとの声明を採択した。
2009年の総選挙以降の経済政策を話し合う会議の席上、グウェデ・マンタシェ事務局長は「アパルトヘイトの撤廃から14年がたつが、依然として国土の87%が5万人の白人農場主に所有されている。受け入れ難いことだ」と遺憾の意を表明。「土地の再分配を、農場主の自発性に頼ることはできない。土地を評価し、それを基に没収するということもあってしかるべきだ」との考えを示した。

土地改革は、ジンバブエのロバート・ムガベ大統領が白人農場主4000人の土地を強制収用して以来、白人農場主が多数を占める南部アフリカでは激しい物議を呼んでいる。
南アフリカ政府は2014年までに白人所有地の30%を黒人に再分配するとしているが、1994年以降に実際に再分配された土地は4%に過ぎない。
こうしたことから、ANCは強制収容を通じて土地改革をスピードアップさせるための法律を今年中に施行したい考えだが、国会は8月、「協議が不充分であり、法案の一部は憲法違反にあたる」として採決を棚上げにしている。【10月20日 AFP】 
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“アパルトヘイトの撤廃から14年がたつが、依然として国土の87%が5万人の白人農場主に所有されている”現状を見過ごす出来ないとする心情は十分に理解できるところですし、改革に向けた取組みをペースアップすべきであるとも考えます。

ただ、記事にもあるように、白人農場主の土地を強制収用した結果、生産ノウハウがないまま農業生産が激減し、物価上昇率が年率2億3100万%という想像を絶する経済破綻に陥った隣国ジンバブエの例もあります。
心情だけではなく、将来を見据えた冷静かつタフな施策が求められます。

【ジンバブエ:食糧不足深刻】
そのジンバブエの情勢は相変わらずのようです。
政治が混乱を続けるなかで、人々の暮らしは困窮の度合いを深めています。

****ジンバブエの食糧不足深刻 WFP、140億円援助訴え****
世界食糧計画(WFP)はこのほど、深刻な食糧不足に苦しむジンバブエが09年4月までに1億4千万ドル(140億円)分の援助を必要としている、と発表した。
現地では猛烈なインフレが進んでおり、物価上昇率は年率2億3100万%にも達する。WFPは、ジンバブエ南部を中心に多くの農民が肥料や種すら買えず、家畜と交換でわずかな食糧を手に入れてしのぐ状態にあると警告。今後、500万人に援助が必要になるとみている。

ジンバブエでは、白人が所有する土地を強制収用する土地改革が本格化。農業知識のない新農場主らのために生産量が落ち、干ばつやエイズ患者の増加も相まって食糧不足が深刻化した。政府が6月から約3カ月間、NGOに対し「野党寄りだ」と批判して活動を禁じたことが、危機に拍車をかけたとされる。
3月の大統領選から政情不安も続き、連立政権作りで9月に与野党が合意したものの詰めの交渉が難航。経済立て直しは手つかずの状態だ。 【10月21日 朝日】
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“種すら買えず、家畜と交換でわずかな食糧を手に入れてしのぐ状態”というのは、なけなしの資産食い潰しであり、今を乗り切れたとしても、明日以降に深刻な影響が懸念されます。

【進まない連立政権協議】
ムガベ大統領と野党、民主変革運動(MDC)のツァンギライ議長の間で行われているツァンギライ議長を首相とする連立政権協議については、その停滞ぶりを14日ブログでもとりあげたばかりですが、主要閣僚をムガベ大統領の与党が独占するかたちに野党が反発、交渉は依然として停滞しています。
3月の大統領選挙からはすでに半年以上が経過しました。

****ジンバブエの連立政権協議、野党党首は欠席 スワジランド
アフリカ諸国首脳は20日、ジンバブエの連立政権をめぐる特別会議をスワジランドの首都ムババーネで開始したが、ジンバブエの野党、民主変革運動のモーガン・ツァンギライ議長は渡航書類の到着が遅れたことに抗議し欠席した。
ツァンギライ議長はロバート・ムガベ・ジンバブエ大統領ならびに各国首脳4人と会談する予定だった。ジンバブエの連立政権をめぐる交渉は5週間にわたり行き詰まっている。

MDCはツァンギライ議長が緊急渡航書類を受け取ったのは19日午後だったとし、これは連立合意で首相就任が予定されている人物に対する「侮辱だ」と述べた。
ツァンギライ氏に対しては、1年近く通常のパスポート取得が認められておらず、1回の渡航ごとに緊急渡航書類が必要となる。【10月21日 AFP】
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次回の会議は1週間後にジンバブエで開かれる予定です。
深刻化する食糧不足・暴力的な強権支配から多数の経済・政治難民を出している国民の苦難を思うと、遅々として進まない交渉は腹立たしくも思えます。
アフリカの現状の原因は植民地支配だけではなく、権力に固執して国民をないがしろにしてきた指導者の責任でもあるように思えます。
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