孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  金融安定化法案、米下院で否決 混迷を深める世界経済

2008-09-30 14:08:48 | 国際情勢

(金融安定化法案、米下院否決を伝えるワシントンポストのサイト 株価折れ線は投稿者による合成です。“flickr”より By MotherPie
http://www.flickr.com/photos/myeye/2900540902/)

【米下院 公的資金大量投入を躊躇う】
金融危機を収束するための金融安定化法案が米下院で否決され、世界中に動揺が広まっています。
28日段階では、政府が金融機関から最大7千億ドル(約75兆円)の不良資産を買い取る制度の創設を柱とする金融安定化法案について、政府と米議会と大筋で合意したことを、ポールソン財務長官やペロシ下院議長(民主)ら議会指導者が記者会見して明らかにしていました。
しかし、ふたを開けると賛成205、反対228の反対多数。

国民の間には、「高い給与をもらってきた大手金融機関が破綻するからと言って、税金を使って救済するのはおかしい」との感情が根強く残っており、11月に上下両院の議員を控え、そうした国民世論を意識して、特に共和党内での反発が強いようです。
オバマ、マケイン両大統領候補とも、慎重な姿勢ながらも大筋で法案を了解していました。
法案否決について、マケイン氏の陣営は、指導力を発揮できなかったとしてオバマ氏を批判していますが、指導力を発揮できなかったのは共和党(賛成65、反対133)をまとめきれなかったブッシュ大統領でしょう。

【ヨーロッパで“ドミノ倒し”】
イギリス政府は29日、経営難に陥っていた英中堅銀行ブラッドフォード・アンド・ビングレー(B&B)を一時国有化すると発表、オランダ・ベルギー金融大手のフォルティスが公的管理化に置かれ、ドイツ政府も不動産が中心の中堅銀行、ハイポ・リアルエステートへの緊急支援を発表、アイスランド政府も大手グリトニル銀行の一時国有化を発表、またフランスとベルギー両政府も29日、地方公共団体向け融資で世界最大のフランス・ベルギー金融大手デクシアの公的支援の検討に入る・・・と、アメリカの金融不安はすでにヨーロッパに飛び火し、「ドミノ倒しの様相」(欧州系銀行)をみせています。

震源地アメリカでのこの時期の躊躇は、世界経済への大きな影響があります。
すでにアジア各国の株式市場も大幅下げの動揺を見せています。
一刻も早い、修正案による仕切りなおしが求められていますが、ペロシ下院議長は再採決について「超党派で行動する必要がある」と述べただけで時期については明言を避けており、下院での採決見通しは立っていない状況だそうです。困ったものです。

【ファイナンスを基礎にしたビジネスモデルの限界】
“今までアメリカは、ファイナンスビジネスによって得た儲けによって、世界中からものを買い集め、国民の高い生活水準を維持してきた。今回の金融危機は、そうしたアメリカのファイナンスを基礎にしたビジネスモデルの限界をさらけ出したのである。従来の米国のビジネスモデルが崩れつつあることも確かである。”との指摘があります。
(「戦後最大の危機到来」で賛否分かれるポールソン財務長官の“実力” 真壁昭夫 DIAMOND online 9月30日)

「“モノ作り”には向かない」、「最終的に農業と軍需産業と金融だけの国になる」と言われていたアメリカが活路を求めたのがファイナンスで、真壁氏によると、“ファイナンス部門は、典型的な知識集約性の高い分野だ。有体に言えば、「頭が良く知識を持っている人が、合法的に、知識の少ない人から収益を得ることが許される分野」ということができる。”とのこと。
また、同氏は“問題は、覇権国である米国の最も得意な金融で、米国自身がこけてしまったことだ。今後、米国は厳しい時期を迎えることになるだろう。長い目で見ると、米国の優位性が失われ、覇権国としての力を遺失する過程が始まったとも考えられる。”とも指摘しています。

【最後の貸し手】
日本の“モノ作り”衰退もよく言われていますが、その“モノ作り”を一手に引き受けているのが中国。
最近ではベトナムなどアジア新興国も活発化しています。
しかし、中国がカバーしているのは“モノ作り”だけではないようです。

*****「最後の貸し手」は中国*****
米財務省統計から推計すると、中国政府はこの6月末時点で約6500億ドルの両住宅金融2社関連を中心とする米政府機関債を保有し、第2位の日本2600億ドルを大きく上回っている。豊富な石油収入を持つ中東産油国でも240億ドルに過ぎない。(中略)
米ウォールストリート・ジャーナル紙は「(アメリカの公的資金による金融)救済の成否は中国と中東次第」と報じた。財源不足の米国は国債を発行し、外国に買ってもらうしかないからだ。しかし、産油国の政府系ファンドは高利回りでなければ買わない。残るは半年間で2800億ドルを積み上げ、この6月末で1兆8088億ドルの外貨準備を持つ中国しかない。
金融恐慌研究で知られる故キンドルバーガー教授は「1929年の大恐慌は最後の貸し手がいなかったために起きた」と断じている。中国共産党という異質で巨大な政治機構を「最後の貸し手」として頼まなければならないという現実が大統領選挙にまで影を落とし始めた。【9月30日 産経】
****************

中国に借りをつくりたくない・・・ということになると、“頼り”にされるのは日本政府かも。

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中国  宇宙遊泳成功とメラミン入り乳製品

2008-09-29 18:14:15 | 世相

(交通規制が解除された9月21日の北京・趙登禹路 天候雲り、午後から雨)

【写真は真実か?】
急速な車社会の進展、遅れる環境対策のため大気汚染が深刻化している中国・北京では、オリンピック期間中の偶数・奇数ナンバーによる走行規制に引き続き、新たな交通規制を行うことが発表されました。

“市当局がウェブサイト上で発表した通知によると、10月1日から、市当局の公用車の30%が走行を禁止されるという。また、10月11日からは、残りの公用車とすべての一般車両は、ナンバープレートの番号によって、同市内での走行が1週間に1日禁止されるという。”【9月29日 AFP】

このこと自体については何もないのですが、上記記事と一緒に掲載されていた写真に少しひっかかるものがありました。
北京では偶数・奇数ナンバーによる走行規制が今月20日で終わりましたが、記事に使われている写真は翌21日の北京の大通りで、渋滞する車列とどんより霞む街並みを写したものです。

いかにも北京の汚染を物語るようなこの写真はウソではありません。
25日のブログで書いたように、私はちょうどそのとき観光で北京にいました。
私自身も21日の“かすみ具合”には「なるほどね・・・やっぱり汚染は深刻なんだ・・・」と思ったのですが(冒頭の写真は私が21日撮影したものです。)、この21日は午後から強い雨になる天気で、翌22日に天気が晴れると街並みは下の写真のようにすっきりしたものに変わりました。


(翌22日の同じ北京・趙登禹路 天候晴れ)

21日の“かすみ具合”には多分に天候の影響もあったようです。
もちろん北京の汚染がないとか軽いとか言うつもりもありませんし、交通規制が解除されたばかりで今後のこともわかりません。
ただ、自分の主張に都合のいいものだけを集めていては、ミスリードに繋がりやすいという自戒の思いを感じた次第です。

【月面を目指して】
前置きが長くなってしまいましたが、中国と言えば最近の話題は、神船7号とメラミンの話です。
ロシアのものを参考にした中国宇宙船の帰還カプセルには問題があるとの評価もありましたが、神船7号は無事帰還しました。

船外活動を成功させた中国政府は28日、2020年には軌道を周回する長期滞在型宇宙施設の建設を、続いて月への有人飛行を目指していると発表しています。【9月29日 AFP】
また、大型宇宙ステーション建設に必要な次世代ロケット「長征5号」を打ち上げるため、中国国内4か所目の衛星発射センターが2014年の運用開始をめどに海南省・文昌市に建設されるそうで、12月の本格着工に向けてすでに準備作業が始まっているとか。【9月28日 読売】

スペースシャトルの10年退役を決めているアメリカは次世代の有人ロケットの打ち上げまで、少なくとも5年間はロシアのソユーズ宇宙船に乗せてもらうしかなく、対ロ関係の悪化で、米国が中国をもう一つのパートナーにしようと検討している・・・といった記事もあります。(本気でしょうか?)【9月28日 朝日】
それは結構なことですが、衛星破壊実験のような宇宙軍事開発競争の激化・対立のシナリオのほうがありそうな感じはしますが。

いずれにしても、率直なところ、宇宙の面でも中国の進歩のスピードには驚きます。
いろんな点で専門的には問題も多いのでしょうが、月面着陸まで一気に駆け抜けようとする“勢い”みたいなものを感じます。

もちろん“勢い”で宇宙船は飛ばせませんので、今回の宇宙遊泳にしても、宇宙服はロシア製を参考に3千万元(約4億8千万円)をかけ材料から開発したとかで、そういった技術の積み上げの成果が今回の成功に繋がっています。
経済全般についても、“世界の工場”の地位はもはや低賃金だけをよりどころにしたものではなくなっている、急速に進化しているのでは・・・とも思われます。

中国経済については、人民元切り上げによる輸出抑制、労働コスト上昇、省エネ技術の遅れ、環境対策の不備などの大きな問題がありますが、大きな政治的な混乱がない限り、こうしたハードルは今後クリアしてますますそのプレゼンスを高めていくのではないか・・・、豊かさを求めて走り始めた巨大なエネルギーをもはや止めることはできないのでは・・・“勢い”を感じさせる北京の街角に立ってそのような思いを感じました。

いささか停滞期に入ったようにも見える日本も、隣国で爆発するエネルギーをどうしたらうまく利用できるかという観点から見直すことが重要ではないでしょうか。

【利益のためなら・・・】
一方、“中国ではテレビのほか新聞各紙も3人の宇宙飛行士を英雄扱いで連日報じ、メラミン入り乳製品事件の報道は、ほとんど姿を消した。船外活動終了後、胡錦濤国家主席は北京の管制センターからテレビ電話で「政府と人民を代表して船外活動の成功をお祝いします」と飛行士に語りかけた。北京五輪を終え、10月1日に国慶節(建国記念日)を迎える中国で、神舟7号は国威発揚の格好の手段となった。”【9月28日 朝日】との記事も。

国威発揚はともかく、メラミン入り乳製品の問題がうやむやにされては困ります。
昨年アメリカに輸出されたメラミン入りペットフードでたくさんの動物が死んだことから、メラミンの生体への影響はわかっていたはずです。
なおかつ、そのメラミンを混入して利益を得ようとするのは単に“(大丈夫だろうと)軽く考えていた”というレベルではなく、経済的利益のためなら他人の健康被害もいとわないという根本的なモラルの欠如にほかなりません。

【落差を埋めて】
華やかな宇宙開発技術進展とはあまりにも落差が大きすぎます。
この落差が中国に対する評価を難しくします。
社会生活を営むうえでの最低限のモラルをどのように確かなものにしていくかということが、民族対立、地方との格差、役人の腐敗・汚職、人権侵害・・・などの社会的諸問題を改善していくうえでの基盤になります。
改善の方向で進むのでしょうか?

北京の街角は随分きれいになりました。
“並ばない”と言われていた中国の人も、きちんと並んでいる光景を目にするようになりました。
困っている外国人がいれば手助けしてくれるような人も大勢います。
北京、ソウル、福岡と乗り継いだ今回の旅行で、同じような顔立ちの人々、共通する文化的基盤などを目にしながら、日本、中国、韓国という国が今まで以上に親しく付き合える関係になってもらいたい・・・と感じました。




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ソマリア  戦車輸送の貨物船が海賊に乗っ取られる

2008-09-28 13:18:30 | 国際情勢

(ソマリアの首都モガディシュの街を行く武装勢力 トラックを小型ボートに乗り換えると海賊になります。 “flickr”より By ctsnow
http://www.flickr.com/photos/ctsnow/851684097/)

【ロシア フリゲート艦派遣】
今日の国際ニュースで一番関心を引いたのは中国の有人宇宙船「神船7号」による宇宙遊泳成功の話題ですが、中国宇宙船の帰還カプセルには問題があるとの報道もあるようですので、この話題を取り上げるのは今夕の無事帰還を確認してからにします。

他に目についた話題は、ソマリア沖の海賊の件。
今月21日、ソマリア沖で日本が運航するタンカーとイランのばら積み船が海賊に乗っ取られました。
この船の乗組員19人で、乗組員に日本人はいないそうです。

一方、同海域で7月20日に乗っ取られていた日本の「ステラ・マリス」号は27日、200万ドル(約2億1200万円)の身代金と引き換えに解放されました。
この船は鉛とスズを積んでおり、フィリピン人乗組員約20人が乗船していました。

更に驚いたのが、ケニア軍向けのT72型戦車33両などの兵器を輸送中のウクライナの貨物船が26日に乗っ取られたとのニュース。
海賊は貨物船と乗組員を解放する見返りとして3500万ドル(約37億円)の身代金を要求したと伝えられています。

これに対し、ロシアがバルト艦隊所属のミサイルフリゲート艦をソマリア沖に派遣したそうです。
ウクライナとロシアというと、グルジア問題でウクライナ領セバストポリを基地とするロシア黒海艦隊に艦船移動の事前通報を命じるなど対立、国内においては親欧米的な大統領と親ロ勢力の確執などが注目されている微妙な関係です。
「なぜ、ウクライナ船拉致でロシア海軍が出張ってくるのだろうか?」と疑問に思っていたのですが、産経の記事によると、同船にはウクライナ人17人、ロシア人3人、ラトビア人1人が乗っていたそうです。

*****ウクライナから戦車33両を輸送中、貨物船乗っ取られる 露バルト艦隊、ソマリア沖へ****
10年以上も無政府状態が続くソマリアでは、特に今年に入ってから、イスラム原理主義勢力「イスラム法廷」とエチオピアが後押しする暫定政府の軍による戦闘が激化、治安は悪化の一途をたどっている。乗っ取られた船の解放交渉が頓挫すれば、積み荷の兵器・弾薬類がソマリアや他のアフリカ周辺の戦闘地域に流出する事態も想定される。
 イタル・タス通信によると、貨物船は多くの海賊が拠点とするソマリア北東部プントランド地方の港エイルに向かっている。海賊は通常、エイルから船主らと連絡を取り、身代金交渉を行っているという。
 英BBCによると、エイルには現在も乗っ取られた船10隻以上が停泊している。現地は乗っ取った船の解放交渉のさいに多額の身代金をかすめ取る「海賊ビジネス」で好況に沸いており、邸宅が立ち並び高級車も売れているという。乗っ取りで年1億ドル以上を稼いでいるとの推計もある。
 ソマリアとイエメンの間に位置するアデン湾は、世界の石油の全輸送量の3割以上が通過するエネルギーの大動脈だが、昨年は海賊の襲撃急増で保険料も10倍に跳ね上がったとされる。
 こうしたなか、イタル・タス通信は27日、プントランド地方政府高官の話として、今年7月に乗っ取られた日本企業所有の貨物船「ステラ・マリス号」が、身代金200万ドルを支払い解放されたと報じた。
 ソマリア沖では、4月にタンカー「高山」が、8月に貨物船「AIZU(あいづ)」が相次ぎ襲われるなど、日本がかかわる船舶への襲撃も後を絶たないのが実態で、日本としても対岸の火事として傍観できる事態ではなさそうだ。【9月27日 産経】
**************************

【無法への対応は】
ソマリアの無政府状態、果てることのない紛争については、これまでも何回か取り上げてきました。
こういう紛争地域で生活せざるを得ない人々の苦しみを考えると、世の中は理不尽としか言い様がありません。

それにしても“エイルには現在も乗っ取られた船10隻以上が停泊している”とか“海賊ビジネスによる好況”というのは凄いというのか、なんと言うか・・・・。
そこまでわかっていて解決ができないものなのでしょうか?

こうした“エネルギー大動脈”での無法は日本にとっても世界経済にとっても看過できない問題です。
保険で払えばいいと言う問題でもありません。
ソマリアについては、アメリカも過去のいきさつ・トラウマから現在は直接的には関与したがらないエリアになっています。
(その意を受けてエチオピアが介入している面がある訳ですが)

対処できる能力のある現地政府が存在しないことが問題の根底にありますが、これまでも被害にあっているフランスは、この地域での海賊行為を防止するために海軍船と航空機を配備するよう主張する草案を国連決議に付しているとも聞きます。
ロシアがミサイルフリゲート艦を派遣してどのような交渉をおこなうのか注目されます。
今回のウクライナ船については、積荷が戦車だけに、記事にあるような紛争地域への流出といった事態だけはなんとか食い止めてもらいたいものです。


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イラン  モシャイ副大統領の「イスラエルは友人」発言

2008-09-27 13:31:42 | 国際情勢

(今月23日 国連の記者会見でのにこやかなアフマディネジャド大統領(右) “flickr”より By talkradionews
http://www.flickr.com/photos/talkradionews/2885140974/)

【足並み乱れるイラン制裁】
イランのアハマディネジャド大統領は23日、国連総会の演説で、イランの核開発はあくまで平和目的であると主張し、今後も“権利”として核開発を推進していく姿勢を改めて示しました。
そして、米国やその同盟国を指し示し、「これらの国は他国の進歩に反対し、他国に自分の意思を押し付けるために技術を占有し、利用している」と批判。また、イスラエルは崩壊の道をたどっているとし、自らが作ったぬかるみから抜け出す方策はないと主張しています。

これまでどおりの言い様です。
一方、25日に予定されていたイランの核問題をめぐる安保理常任理事国とドイツによる6カ国の外相会合は中止になりました。
ロシアはライス米国務長官が18日に行った演説で「ロシアの国際的立場は1991年以来最悪」とロシアを強く批判したことに激しく反発しており、ロシアと他国の足並みの乱れがあると報じられています。【9月24日 産経】
ロシア外務省は「外相会合を開く緊急性がない」と冷淡な姿勢をみせ、「米政府はロシアとの関係をどうしたいのか決めたほうがいい」とロシアに対する姿勢を転換するよう迫っているとか。
今後、イランや中東・アフガンなどの問題でロシアがどのような対応をとるのかが注目されます。

そんなイランに関しての記事。
ひとつはイスラエルによるイラン攻撃に関するもの。

【イスラエルのイラン攻撃】
****米大統領、イスラエルのイラン攻撃承認せず 5月にと英紙****
26日付の英紙ガーディアンは、イスラエルのオルメルト首相が5月にイラン核施設攻撃への承認をブッシュ米大統領に要請、大統領は拒否し、自らの任期中に承認することはないとの意向を示していたと報じた。イスラエルはイラン攻撃の可能性に繰り返し言及しているが、攻撃実施にはイラク領空を実質管理する米国の承認が不可欠。報道が事実なら年内攻撃説が否定されることになる。【9月26日 共同】
**********************

こういう記事をみると、現在の世界情勢が薄氷の上にあるとの思いが改めてします。
もうひとつ「???」と感じたのはイラン副大統領の“イスラエル友人発言”に関するもの。

【「イスラエルは友人」】
*****モシャイ・イラン副大統領:「イスラエルは友人」発言 ハメネイ師が苦言*****
イランのモシャイ副大統領が7月、「(対立する)イスラエルの国民は友人」と発言した問題で、イラン最高指導者のハメネイ師は「イスラエル国民は友人でない。誤った発言が混乱を招いている」と懸念を示し、論争に終止符を打つよう求めた。
ハメネイ師の発言は19日。一方、アフマディネジャド大統領は18日の会見で「副大統領の言うイスラエル国民は、だまされてパレスチナの地に連れてこられた人たちを指す」と指摘。「パレスチナの地を略奪したシオニスト政権(イスラエル)」とその国民を区別しているとして副大統領を擁護した。だが、ハメネイ師は翌19日の演説で「パレスチナの地を略奪しているのはシオニスト政権だけではない」と裁断を下した。【9月22日 毎日】
***********************

モシャイ副大統領(文化遺産・観光担当)は今年7月のテヘランでの観光関連の催しで「米国とイスラエルの人々はイランの友人だ。敵対する国民は世界に存在しない」と発言しました。
この発言に対し、「(パレスチナを不法に)占領しているイスラエルを国家として認めるべきではない」など強硬派が強く反発。モシャイ氏は「発言はイスラエル市民についてのもので、国家として認めてはいない」と釈明しています。

その後8月に副大統領は新聞インタビューにおいて
「イラン人はアメリカ人と何ら違いはない。我々は世界のすべての人々が好きだ。アメリカ人であれ、イスラエル人であれ〔、そのことに変わりはない〕」
「私は自分の発言に誇りを持っており、訂正するつもりはない。それどころか、我々はアメリカやイスラエルの人々を含めた世界中の人々の友人であることを、何回でも、そしてこれまで以上に力を込めて言おう」
「我々は世界中の人々が好きであり、これは我々の誇りである。なぜなら我々の信念と理想は人道的なものであり、世界の人々に敵は存在しないと考えているからである」
「私は以前にも、アメリカの人々は〔世界の人々との〕交流という点で世界で最も優れた国民であると考えている、と話したことがある。誇りを持って言おう、この発言を千倍に〔誇張〕してくれても構わない。この発言には一つも間違ったところがない」と再度発言しています。
その上で、「我々はかの地に住む人々の解放のために努力しているのであり、イスラエル体制には反対している」と付け加えたそうです。【「日本語で読む中東メディア」】

こうした発言に対し、50名以上の最高指導者専門家会議議員が自らの署名入りの書簡を最高指導者に送付し、その中でモシャイ副大統領が政権にいることは原理主義を標榜するアフマディネジャド政権にとってふさわしくないと辞任を要求する動きも出ていました。【同上】

アフマディネジャド大統領はかねてから「イスラエルは地図から抹消されるべき」との発言で知られており、副大統領発言を擁護していているのも不思議な感じはしますが、大統領の「イスラエルは地図から抹消されるべき」との発言自体について、誤訳であり真意を表していないとも言われています。
【ヒロさんの日記】(http://www.mypress.jp/v2_writers/hirosan/story/?story_id=1620136)によれば、アフマディネジャド大統領はホメイニ師の言葉を引用し、「エルサレムを占拠している体制は歴史のページから削除されなければならない」と言ったのであり、「歴史のページ」であって「地図」ではない、削除されるべきは「シオニスト政体」であって「イスラエルという国家」ではない、ということだそうです。

そいうことであれば副大統領発言とも矛盾しないのかも。
もっとも、強硬派からの批判をかわすためか、大統領は「イスラエルは病原菌であり取り除くべき」とも発言しているそうですが。
イスラエルにとっては、「シオニスト政体」だろうが「イスラエルという国家」だろうが大差はない・・・ということでしょう。
それにしても、副大統領の8月インタビューのような発言が国際的に広く発信されれば、イランとアメリカなどとの対立ももっと変わった展開になるのではないかとも思われます。
最高指導者ハメネイ師が否定してしまった今となっては、それも難しいでしょうが。


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国際支援  妊産婦・乳幼児、マラリア そしてビル・ゲイツ

2008-09-26 15:53:30 | 世相

(06年トロントで開催されたエイズ関連の催しでのゲイツ夫妻 “flickr”より By Reza Vaziri )

【金融危機と日本の貢献】
麻生首相(自民党総裁選挙前に中国旅行に出かけ、帰国すると麻生内閣が誕生していた・・・ということで、“麻生首相”にも、まだいまひとつピンとこない感じもありますが)は就任早々の国際デビューということで、25日、ニューヨークの国連本部で開かれた国連総会で一般討論演説を行い、米金融危機にあたって世界経済の安定化の必要性を強調し、日本の貢献を約束したそうです。

通訳機械不調で演説をやりなおすハプニングも、「日本の機械じゃないだろうね」と会場の笑いをさそうなど、彼らしいお披露目だったようです。
それはともかく、先日のブログでも書いたように、現在の金融不安によって世界経済が混乱した場合、その被害が一番重くのしかかるのは体力のない途上国であり、その国々の最貧層の人々です。
日本国内のためだけでなく、そういう意味においても、麻生首相の言う“日本の貢献”を大いに期待したいところです。
(旅行中に、久々にジャパンマネーの出動が世間の耳目を集めたようですが、それも“貢献”のひとつのありようでしょう。)

国連では、2015年までに達成すべき8つの目標を掲げた「ミレニアム開発目標(MDGs)」への取り組みを協議するハイレベル会合が25日開催されましたが、会合に出席した世界銀行のゼーリック総裁は、世界各国を次々に襲っている金融不安がMDGsに大きな影響を与えるだろうとの懸念を表明しています。
そのMDSs達成はなかなか困難な状況です。

【支援の確約履行】
****妊産婦や乳幼児の死亡率の低下、国際社会は成果上げられず*****
【9月26日 AFP】「ミレニアム開発目標(MDGs)」への取り組みを協議するハイレベル会合で25日、目標の1つである出産時の妊産婦や乳幼児の死亡率の低下で成果が上がっていないことが明らかになった。
 ハイレベル会合に出席した、世界保健機関(WHO)のマーガレット・チャン事務局長は「20年にわたる取り組みにもかかわらず、国際社会は少しの成果も上げていない」と指摘した。
 チャン事務局長は、成果が上がっていない原因として、助産師の育成や病院への搬送など安全な出産のために必要なインフラに対する投資が数十年間行われていなかったことを挙げ、「多くの女性が病院へ行くすべがないために、自宅で死亡している」と強調した。
 ハイレベル会合の声明によると「300万人の妊産婦と700万人の乳幼児を救うために、そしてMDGsの目標を達成するために、2009年は24億ドル(約2600億円)の追加資金が、2015年には70億ドル(約7400億円)が必要になる」という。
*************************

また、この会合では、各国政府や民間団体などが新規開発資金として、教育分野45億ドル、マラリア対策30億ドルなど総額160億ドル(約1兆7000億円)の拠出を表明しています。
潘基文事務総長は会見で「金融危機のさなかであることを考えれば、世界的な拠出表明は注目に値する」と評価していますが、口約束でなくきちんと実行されることが必要です。

22日には、経済発展が特に遅れているアフリカ開発のためのハイレベル会合も開かれています。
この会合で潘基文事務総長は地球温暖化や食料価格の高騰、世界的な経済悪化により開発が厳しくなっている現状を説明、アフリカ向け支援の“確約履行”を国際社会に求めました。
先進各国は05年のグレンイーグルズ・サミットで、アフリカ向けODA倍増を確約しています。

【マラリア対策とビル・ゲイツ】
マラリアに関しては、全世界で109か国、33億人がマラリア感染の危険にさらされており、1年間で約100万人が死亡しています。
マラリア対策30億ドルのうち11億ドルを世界銀行が負担しますが、今回のマラリア対策行動計画は2008-2015年に420万人以上の生命を救い、マラリア撲滅に向けた長期的な取り組みが可能にすることを見込んでいます。

なお、マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏とその慈善財団ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団は、次世代のマラリアワクチンの研究のため、マラリアワクチン・イニシアチブに1億6870万ドル(約180億円)を寄付する意向だそうです。
コンピュータ業界におけるビル・ゲイツでなければ果たしえなかった功績についてはよく知りませんが、私財を投じた団体によってマラリアワクチンが実現し、大勢の命が救われるのであれば、そちらはたいした偉業と思われます。

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中国  北京今昔

2008-09-25 21:47:56 | 世相

金山嶺から司馬台にかけて約10kmぐらいでしょうか。
数ある世界遺産の中でも際立つ“万里の長城”をミニトレッキング。
有名な八達嶺方面とは異なり、観光客もほどほどで、長城もあまり修復されておらず、歴史を感じられる雄大な景色の中をゆっくり歩けます。
このコースはお勧めです。

【地下鉄で・・・】
中国から帰りました。
実質3日余りという超短期の弾丸トラベルでしたが、万里の長城(金山嶺~司馬台)をハイキングしたり、京劇・雑技を観劇したりと、北京を観光して今朝奄美へ帰島しました。
北京は日によって寒暖の差が激しく、帰国した日は小雨模様で急に寒くなったため、夏空の奄美の空港から海沿いを強い日差しを受けて走っていると、どこかリゾート地に観光に来たような気分にもなりましたが、現実には、仕事場に直帰してそのままお仕事というハードスケジュールです。

そんな訳で、まだ少し頭がクラクラしていますので、今日は北京の街を歩いていて思ったことなどをアトランダムに並べます。

空港から北京市内への移動は、オリンピックに向けてつくられた空港快速が地下鉄に乗り入れていますので、非常に便利です。空港快速は15分程度で市内地下鉄のターミナル駅東直門に着いたような気がします。
新しい空港快速はもちろん最新式ですが、地下鉄車両もきれいで、次の駅を車内の路線図上のランプで表示してくれるなど親切です。
(昔の中国旅行で、列車の席がとれず、汚物とゴミに溢れたデッキで一晩うずくまり移動し、「邪魔!」と女性の車掌に背中を蹴られた・・・そんな思い出とは隔世の感があります。もちろん、当時も親切な人は親切で、腹痛で動けなくなったとき病院へ連れていってくれたのもやはり女性駅員でした。ゴミ溜めのような所にうずくまっていたときも、場所を譲ってくれたおじいさんもいました。)
駅の出口の案内・表示は日本の地下鉄のそれと全く同じで、違和感がありません。

地下鉄に乗っていて少々驚いたのは、車内で人目を憚らず抱き合う若い男女、男性の膝の上に腰掛ける女性など、一昔前の中国では想像できない光景です。
もちろん、北京・上海など先端都市と地方では格段の開きがありますが、少なくとも北京における若者の風俗は、政治体制の違いを超えて、日本などと同じような方向に、それも経済背長と同じように急速なスピードで進んでいるようです。
(他の事柄でも同じですが、北京・上海と地方で大きな差があるということは、言い換えると、今後地方部においても、北京などのような現象が急速に広まっていくだろう・・・ということかと思います。)

中国と言うと“並ばない”ということが以前から言われています。
実際、昔中国を旅行していると、バス停でまだ止まりきらないバスに我先に群がる乗客、駅の切符売り場で先を争って窓口に手を突っ込む購入客(私も中国人民に負けじと一生懸命手を突っ込んで、腕を擦りむいたこともあります)、平気で列に割り込む連中・・・などごく普通の光景で、中国旅行経験者同士だとこの種の話題で盛り上がったものです。

少なくとも今回の旅行では、そんな光景は目にしませんでした。
駅でも、食堂でも、荷物預け所でもきちんと整列していました。
(まれに、スッと列の隙間に割り込む人がいない訳ではありませんでしたが。)
地下鉄を乗り降りする人達を眺めていると、まあまあ降りる人が優先という感じではありました。
(なかには猛然と駆け込んで来て、降りる人とぶつかり悪態をつくような女性もいるにはいましたが。)
このあたり、比較的乗客は少ない時間帯でしたので、ラッシュ時にどうなっているのかはわかりません。

オリンピックの関係でしょうか、セキュリティーには厳しく、地下鉄に乗る際も手荷物のX線検査があります。
道路を渡るために通り抜けで地下鉄用の通路を利用するときも、検査が必要です。
改札を通るつもりがなかったので全く検査のことが頭になく、係りの女性から注意されても最初何を言われているのかまったくわかりませんでした。
(日本人は外国人に見えないため中国語でまくし立てられるので、言葉が分からない私は戸惑うことが多々ありました。)

地下鉄ついでに、もうひとつ。
地下鉄の駅では時折、車椅子の人を補助する駅員さん達を見かけました。
ある駅では、キャタピラみたいな装置を車椅子につけて階段をおりていました。
別の駅では階段に備え付けられた壁に沿って椅子ごと運び上げるリフトで対応していました。
もちろん、日本でも駅などで駅員さんや付き添いの人達が運びあげる様子はときおり目にしますが、北京ではその頻度が随分多いように感じられました。
日本では、専用エレベーターなどの設備が充実しているので、特段人目につかないせいでしょうか?

【街は・・・、トイレは・・・】
オリンピックに向けて、北京の街の大気汚染がよく報じられていました。
丁度20日まで、オリンピック対策の車のナンバーによる奇数・偶数別の走行とか工場・建設現場の休止が行われており、街を歩き始めた21日からは通常状態へ復帰していました。
21日は午後から雨が降り出す天気で、朝からどんよりしており、街も少し先は霞がかかったようにかすんでいます。
泊まったゲストハウスのオーナーに聞くと、これは天気のせいで汚染ではないとのこと。
「本当だろうか?」と疑っていたのですが、確かに翌日以降天気が回復すると、目に見えるような“汚染”“かすみ”は感じなくなりました。
もっとも、これも工場・交通等が本格稼動し始めてしばらくたつとどうなのかはわかりません。

一般に北京の通りは綺麗です。
昔はどこでもみんな痰は吐くし、ゴミは散らかし放題だし、お世辞にも綺麗とは言いがたかったのですが、通りはきれいに清掃されています。
(昔はよく列車の窓からポンポンものを投げ捨てていましたが、今はどうでしょうか?)
バス停などところどころに灰皿なども用意されています。
オレンジの服を羽織った清掃作業の人たちが道のあそこそこで働いています。
レストランの中でも、昔は床に食べかすを捨てるのが中国式らしく足の踏み場がない状態でしたが、今ではどこも小奇麗にしています。
禁煙の店も多く、ちょっと困ったぐらいです。

以前は中国と言うと、通りを覆う“自転車の波”が有名でしたが、今はすっかり車社会です。
そのため渋滞もひどく、雑技を観に行くのに普通なら30分かからないぐらいのところに1時間もかかり、すっかり遅刻してしまいました。
車の排ガス規制も、少なくとも北京はヨーロッパ基準にならって随分厳しくなったそうです。
確かに、黒煙を吐き出して走っているような車は目にしません。
あくまでも北京の話ですが。

もうひとつの中国の代名詞が、壁・ドアのないトイレ。
もちろん地方ではまだまだでしょうが、北京ではそのようなタイプは目にすることがなくなったそうです。
通りでは公共トイレがやけに目につきます。
住宅のトイレ事情が悪いせいでしょうか?
そうした公共トイレも一応小奇麗にはなっています。
ただ、便器の中の泡で排泄物を覆い隠すだけで、水が流せない(私にはそのように見えたのですが・・・)タイプもあるようです。
(昔話をすれば、トルファンの駅だったか、便器の周囲まで汚物で汚れたトイレで重い荷物を背負ったまま用をたそうとしたころ、汚物で足がすべりバランスを崩してあやうく落ちそうになったことがあります。恐い話です。)

【民族感情】
ゲストハウスのオーナー夫妻は留学等で日本に7年間住んでいたとかで、日本語は殆ど不自由なく話せます。
そんなオーナーに、以前新疆を旅行していてウルムチでパスポートや現金・カードの入ったバッグを置き引きされたことがあるという話をしたところ、「あのあたりは少数民族が多いからね・・・」との反応。
漢族が少数民族をどう評価しているか興味はあるところですが、微妙な問題なので深入りは止めました。
まあ、他民族に関して「あの連中は・・・」というのは、日本を含め欧米でもどこでも世界中いたるところでみられる反応ですから、漢族の反応だけを云々することもないでしょう。
問題はそのような民族感情を政府がどうコントロールして調和のとれた社会をつくるか・・・という問題でしょう。

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中国  汚染粉ミルク被害拡大 行政が隠蔽 そんな中国に行ってきます

2008-09-19 19:20:34 | 世相

(中国の牛乳配達三輪車 本文とは一切関係ありません。 “flickr”より By arthritic_old_man
http://www.flickr.com/photos/51379696@N00/2520481033/)

【緊急放出MA米は?】
日本国内では汚染米の不正転売、中国では汚染粉ミルクによる腎臓結石発症という“食の安全”が脅かされる問題が起きています。

日本では、金儲けのためなら国民の健康をも犠牲にしかねない業者の安全に関する意識の希薄さと同時に、恐らく事故米を処分してくれる業者は農水省にとって非常にありがたい存在で、その不正を暴くような監督指導は敢えて行ってこなかったという、政府・監督機関のルーズな管理体制に批判が集まっています。
今日、事務次官だけでなく、農水相自身が引責辞任したようです。
日本の事故米に関しては、ここでは1点だけ。

事故米が発生しているミニマムアクセス(MA)米について、世界の食糧価格高騰が焦眉の問題になっていた6月頃(今でも大問題ですが)、政府は20万トンを有償でフィリピンに緊急放出することを決定しました。
スリランカにも10万トンほど輸出することを検討しているとも当時報じられていました。

このMA米緊急放出は実行されたのでしょうか?
もし、実行されたのであれば、その際汚染米はどうなったのでしょうか?
MA米として他国から買わされたコメなので、ババ抜きのように、これ幸いと緊急放出米に混ぜて輸出した・・・なんてことはないのでしょうか?

【地方行政組織の隠蔽体質】
さて、中国の汚染粉ミルク問題のほうもますます拡大してきています。
死者が4名、6200人以上の健康被害が報告される事態となっており、被害者や弁護士が製造業者と政府機関を相手取った集団訴訟を準備しているそうです。
また、汚染製品も粉ミルクだけでなく、店頭で販売されている国内の乳製品大手3社の牛乳からもメラミンの痕跡が発見されています。
アイスクリーム、ヨーグルトからもメラミンが検出されたとの報道もあります。

汚染粉ミルクによる乳児の腎結石が最初に判明した乳製品メーカー「三鹿集団」(河北省石家荘市)の事件で、同省の楊崇勇副省長は17日、水で薄めた牛乳に有害物質メラミンを混ぜてたんぱく質含有量を高める不正が2005年4月から行われていたことを明らかにしました。
「不正の張本人は酪農家から牛乳を買い集めて、乳製品メーカーに売る業者。酪農家はむしろ被害者だ」と語っているそうです。
また、楊副省長は市政府の隠蔽も問題にしています。

****中国の汚染ミルク、行政が隠ぺいか 1カ月報告せず*****
18日付の中国紙、新京報によると、石家荘市政府が三鹿集団から混入の連絡を受けていたにもかかわらず、1カ月以上にわたって河北省政府に報告していなかったことがわかった。市政府の隠匿が被害拡大を招いた可能性が出てきた。
 河北省の楊崇勇副省長が明らかにした。河北省は石家荘市と三鹿集団との間で何らかの癒着があった可能性があるとみて調査に乗り出した。
 三鹿集団は北京五輪開幕直前の8月2日、石家荘市政府に汚染の事実を伝えていたが、市が省政府に報告したのは9月9日だった。国の規定では、食品安全にかかわる重大事故の場合は2時間以内に省に報告することになっている。 【9月18日 朝日】
*********************

これまであちこちで発生した暴動でもそうでしたが、中国地方行政組織の不正・癒着・隠蔽体質は社会の信頼・安定を揺るがす諸問題を惹起しています。

【根本的なモラルの欠如】
日本の汚染米でもそうでしょうが、消費者の健康被害に関する具体的なイメージが認識されず、“これくらいは大丈夫だろう・・・”といった製造業者の曖昧な意識が、こうした食の安全を脅かす事件をおこすのでしょう。
しかし、今回の粉ミルク事件のメラミンについては、中国産原料を使ったペットフードで犬や猫が米国内で相次いで中毒死した問題が昨年起きたばかりです。
中国政府も07年5月9日、自国企業が生産・輸出した原料に添加されたメラミンが原因であることを認め、さらに広範な調査を約束した経緯があります。

メラミンなんて、そこらで購入できるものではありません。
特定の者しか扱わないようなものです。
売り買いする者は、メラミンが昨年ペットの大量死を招いたことを知らなかったのでしょうか?
まあ、中国国内の情報に関する“風通しの悪さ”からすればありえないことではないでしょうが・・・あまり考えられません。

もし、知っていながらミルクの混入したとすれば、殆ど殺人行為です。
消費者の健康被害に関する具体的なイメージが認識できたはずです。
現在14名逮捕されているそうです。
こうした基本的なモラルの欠如は、この国が準備が整わないまま世界の工場の地位に押し上げらてしまっている現実の歪でしょう。

【北京旅行のため、数日間ブログは休みます】
そんな中国を明日から弾丸トラベルで観光してきます。
今回は北京近郊の長城でのトレッキングのほか、川底下村の民家見学などを考えています。
北京はトランジットでちょっと立ち寄ったのを除けば、二十数年ぶりです。
そのときはツアーで、しかもスケジュールが押してきて北京滞在が短縮されたあげく、ホテルが郊外で夜街にでることもできず、殆ど記憶に残っていません。
仕事を無理やり休んでの旅行ですので、僅か数日というのが悲しいところですが・・・。

そんな訳でブログのほうも数日お休みです。
来週の金曜ぐらいから再開を考えています。
また、よろしくお願いいたします。
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ロシア  全金融商品の取引中止 「孤立も軍拡競争も不要だ。それは袋小路への道だ」

2008-09-18 15:00:09 | 国際情勢

(“flickr”より By aussiegall
http://www.flickr.com/photos/aussiegall/759309122/)

【消えない不安】
米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻の連鎖を防止すべく、各国中央銀行による積極的な市場への資金供給にあわせて、米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)に対する米金融当局による救済策や英金融大手のロイズTSBによる英住宅金融最大手HBOSの救済合併の見通しなどの対応策も講じられてはいますが、世界的な金融不安はまだ静まっていません。

アメリカの8月の住宅着工件数が前月比6.2%減の89万5000戸と大幅に落ち込み、91年1月以来17年7カ月ぶりの低水準となったようにサブプライムローン問題に伴う住宅市場低迷も歯止めがかかっていません。
こうしたなかで、各国の株式市場も不安を反映して一段と下げる展開となっています。

世界の金融不安を伝える記事のなかで、特に目を引いたのがロシアの状況。
ロシアでは、株価下落に歯止めがきかなくなったため、国内の証券などすべての金融商品の取引が中止されたそうです。

*****ロシア:全金融商品の取引中止を命じる 株下落止まらず*****
ロシア連邦金融市場監督局は17日正午(日本時間同午後5時)すぎ、国内の証券などすべての金融商品の取引の中止を命じた。16日に引き続き、株価下落に歯止めがきかなくなったため。うち、ルーブル建ての証券取引所MICEXは同日午後5時42分に取引を再開したが、同45分の終値は前日比マイナス18%で、05年11月以降の最低値を更新した。ドル建てのRTSは取引停止のまま、前日終値のマイナス6.39%で終了した。
 MICEXとRTSは16日にも取引を一時停止していた。
 タス通信によると、ロシア財務省は17日、政府系銀行のロシア貯蓄銀行(ズベルバンク)、対外貿易銀行(VTB)、ガスプロムバンクの準備金積み増しのため、初の特別入札を行うと発表した。17日までにロシア政府が国内銀行の準備金に投入した資金は、金融不安を背景に3500億ルーブル(約1兆4400億円)に達した。【9月18日 毎日】
***************

主要企業では、政府系天然ガス「ガスプロム」、国営石油「ロスネフチ」、対外貿易銀行、預金者数でロシア最大の貯蓄銀行(ズベルバンク)などの株価下落が目立っているとか。
ロシアの株式市場は6月から下落を始め、8月のグルジア紛争で下落傾向がさらに強まっていました。
これに世界同時株安が追い打ちをかけた形で、98年の金融危機の再来を懸念する声も上がっているそうです。

【ワンワールド】
また、こうしたロシア経済の混乱はアメリカとの対決姿勢を強めてきた政治面にも影響しつつあるとも伝えられています。

****露大統領:「我々に孤立は不要」国内株価急落で弱気に?
ロシアのメドベージェフ大統領はこのほど、「我々には(国際的な)孤立も軍拡競争も不要だ。それは袋小路への道だ」と述べた。8月8日のグルジア侵攻以降「新たな冷戦が起きても恐れない」と西側諸国に挑戦的な態度を取ってきた大統領だが、ロシア企業の株価低下や国外への投資流出に歯止めがかからないことから、弱気な本音がポロリと出たようだ。【9月17日 毎日】
****************

株価下落が続いているのは中国も同様です。
先進国であろうが、新興国であろうが、途上国であろうが、いまや世界各国は“世界経済”というひとつのボートに一緒に乗り込んでいます。
ボートを揺らすような行為は、結局自国の混乱に繋がってきます。
北京オリンピックのスローガンは「ワン ワールド、ワン ドリーム」でしたが、今回の金融不安はまさに世界が“ワンワールド”であることを如実に示しています。

世界の指導者、国民が“世界がひとつのボートに乗っている”という認識をあらたにして、孤立や対立が不毛の選択であることを確認してくれれば、明日に向かっての大きな一歩になるのですが。

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アジアをつなぐアジア横断鉄道「鉄のシルクロード」プロジェクト

2008-09-17 15:54:13 | 身辺雑記・その他

(カンボジアの鉄道の車内 列車の旅はリニアとか新幹線ではなく、やはりローカルな列車を乗り継いで・・・というのが正しい道でしょう。
とは言うものの、このカンボジア鉄道は気合と体力を必要としそうです。
短い区間ならなんとか・・・・  “flickr  By magical-world
http://www.flickr.com/photos/magical-world/2257051193/)

【鉄のシルクロード】
もう1年以上前になりますが、アジア各国をつなぐ列車“アジア・エクスプレス”について書いたことがあります。
(07年7月10日「アジア・エクスプレスの夢をのせて」 http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20070710
あのときは、インド-バングラデシュ間をつなぐ特別臨時列車の話題から、私が勝手に妄想したものでしたが、アジア大陸を鉄道で結ぶ“アジア横断鉄道(Trans-Asian Railway、TAR)”の計画が実際にあるそうです。

06年11月に開催された国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)で、中国やロシアを含む18か国がアジア大陸を横断するTAR建設に向けた政府間協定を締結し、アジア横断鉄道による「鉄のシルクロード(Iron Silk Road)」が、2007年度より国連プロジェクトとして正式に認可されました。

*****夢のアジア大陸横断鉄道、実現の動きが活発化******
現在までに西はトルコ、ロシア、東はベトナム、韓国まで、29か国の一部の路線、総距離7万4700キロが敷設を終えた。全路線の連結までには、さらに約6200キロの敷設が必要で、UNESCAPはその費用を150億ドル(約1兆6000億円)程度と見積もっている。
完成すれば、かつて東西を結んだ交易路シルクロードのように、シンガポールからロシアのサンクトペテルブルクへ、カンボジアのプノンペンから北朝鮮の平壌へと、広大なアジア大陸を横断する路線を人々や物資を載せた鉄道が往来することとなる。

インドシナ半島の内陸国ラオスは、これまで国内に鉄道路線を持たなかったが、メコン川をはさんでタイ北東部とラオスを結ぶ友好橋上を走行する鉄道路線が2009年3月に完成する予定だ。(中略)
しかし、路線が欠けている部分の大半は東南アジアで、国境をまたいで乗り入れのあるのはシンガポール、マレーシア、タイだけだ。タイ-カンボジア間には線路は敷設されているが、90年代まで続いたカンボジア内戦で荒廃してしまった。
カンボジア公共事業・運輸省によると、アジア開発銀行が資金援助に乗り出しており、修復は3年以内に完了するというが、国境紛争のあるタイ間との再連結に関して合意は何もない状態だ。(中略)
一方、軍事政権が支配し貧困に苦しむミャンマーで、アジア各地とつながる鉄道の建設が実現する可能性はほとんどない。(中略)

(UNESCAP輸送部門で経済問題を担当する)ピエール・シャルティエ氏は、敵対関係にあった韓国と北朝鮮間で前年12月、朝鮮戦争以来はじめて軍事境界線を越えて貨物列車が走行したように、障害が取り除かれれば不可能と思われていた事業も実現できると期待する。
TARの構想についてシャルティエ氏は、陸上の駅間を結び人や物資を輸送する大陸横断鉄道の敷設により、道路輸送への過剰な依存が軽減され、開発や雇用の創出、貿易や産業の繁栄がもたらされるとの見方を示した。また、昨今の地球温暖化への懸念から鉄道利用の見直しが重要と述べ、飛行機よりも鉄道での移動を選択する人々も増加するとみている。(以下略)
【9月15日 AFP】
**************

「鉄のシルクロード」ことアジア横断鉄道の路線図は下記のとおりです。
9月12日 AFP 【図解】「アジア横断鉄道」計画  http://www.afpbb.com/article/economy/2516919/3329885

【TARを阻むミャンマーの壁】
この路線図をよく見ると確かに東南アジアのあちこちでまだ途切れています。
タイ-カンボジア間については最近のヒンズー教寺院遺跡「プレアビヒア」問題でまたこじれてしまいましたが、国連では2年以内にこの路線は開通すると見込んでいるそうです。

最大のネックはミャンマーです。
冒頭で触れた1年前の私の妄想でもさすがにミャンマーは空路でパスする形を取らざるを得ませんでした。
上記記事によると、かつて韓国国際協力団が出資してタイとミャンマーをつなぐ鉄道路線の実現可能性が検討されたそうですが、コスト効果から見て好ましい結果が出なかったとか。
ミャンマーの山がちな地形と軍事政権による鎖国的政策が、東南アジアからインドを抜け、イラン、トルコへと通じる「鉄のシルクロード」の広がりを阻んでいます。
今後の軍事政権の動向如何というところです。

非常にロマンを感じるプロジェクトですが、将来の物流という点ではどうでしょうか?
国内でも物流は鉄道からトラックへ完全に切り替わった歴史がありますが、東南アジアにおいても同様ではないでしょうか?
これも以前とりあげた「メコン川流域開発計画(GMSプログラム)」(3月31日
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080331)で進められている道路プロジェクト・・・ベトナム中部・ダナンからラオス・タイを横断してミャンマー・モーラメインに至る“東西回廊”、中国・昆明から南下しラオスを通過してタイ・バンコクに至る“南北回廊”(昆明からベトナム北部・ハノイにまで連結します。)、バンコクからカンボジア・プノンペンを経由してベトナム南部・ホーチミンに至る“第二東西回廊”(南部回廊)・・・が物流の主役になるのではないでしょうか。

東南アジアを抜けて更に遠方とつなぐという点ではゲージの問題もあるのでは。
上記AFPの路線図に見るように、中国、ロシアから中央アジア、東南アジア、インド、イランからトルコの各ブロックで軌道(ゲージ)が異なります。各ブロックを超えるときは車体の変更が必要になると思われます。

【夢のアジア・エクスプレス】
まあ、なんだかんだの問題もありますが、ロマンあふれるプロジェクトであり、このプロジェクトが実現するということ自体が世界の平和と安定の象徴でもあります。
幾多の困難を乗り越えて是非実現してもらいたい企画です。

10年、15年後、リタイアして時間がたっぷりとれるようになったら、アジア・エクスプレス(東京発→福岡・・・フェリー乗換え・・・釜山→ソウル→ピョンヤン→北京→上海→香港→ハノイ→ホーチミン→プノンペン→バンコク→ヤンゴン→ダッカ→ニューデリー→テヘラン→イスタンブール着)の旅なんてできるかも。

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アメリカ  “世紀に一度の金融危機”

2008-09-16 19:09:14 | 国際情勢

(9月15日夜のリーマン・ブラザーズ(正面の建物)前 TV中継のリポーターらしき人物は東洋系の顔立ちです。“flickr”より By Robert Scoble
http://www.flickr.com/photos/scobleizer/2861707320/

【連鎖破綻か・・・】
昨年8月から深刻化したサブプライムローン(低所得者向け高金利住宅ローン)問題は、リーマン・ブラザーズの破産法申請(負債総額は6130億ドル(約64兆3600億円)で米史上最大)、メリル・リンチの買収(実質的な救済合併)と、今年3月のベア・スターンズ救済からわずか半年間で米証券大手3社が淘汰される事態になっています。

米金融業界では連鎖破綻の可能性が高まっており、戦後最悪の金融危機に直面しているとも見られています。
普段経済面には全く目を通さない私も、“戦後最悪の金融危機”となると、自分自身に降りかかってくる問題ですので気になります。

リーマンに次いで、経営難が伝えられているのが米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)。
米紙ニューヨーク・タイムズは、AIGが米連邦準備理事会(FRB)に対し、400億ドル(約4兆2000億円)のつなぎ融資を求めていると伝えています。
そのFRBは15日、JPモルガン・チェースとゴールドマン・サックスによるAIGへの救済融資に向けた努力を支援する意向を明らかにしています。
また、米ニューヨーク連銀は15日、AIGをめぐり、財務省当局者や金融機関幹部らとの会合を開いていることを明らかにしています。
一方、大手格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)とフィッチ・レーティングスは15日、AIGの格付けを引き下げたと発表し、AIGの保険金支払い能力に懸念を表明した形になっています。

S&Pによる格付けに関しては、米最大の貯蓄貸付組合(S&L)ワシントン・ミューチュアルの財務格付けを、投資不適格級の「BBマイナス」に引き下げたとも報じられています。ムーディーズ・インベスターズ・サービスも先週、S&Pと同様の対応を取っています。

金融関係以外では、販売不振や市場シェアの低下、信用格付けの引き下げなどに苦しむGM、フォード、クライスラーの米自動車大手3社が米政府に250億ドル(約2兆7000億円)の融資を要請するとの記事もありました。
なお融資枠に関しては、すでに昨年12月のエネルギー法案で決定しています。
実体経済も芳しくなさそうです。


【世紀に一度の金融危機】
今回の金融不安について、アメリカ国民が大統領以上に信頼していたグリーンスパンFRB前議長が13日、米国は「世紀に一度の金融危機」に陥っており、大不況を引き起こす可能性が高いと語っています。

****グリーンスパンFRB前議長、「米国は世紀に一度の金融危機」*****
米国の中央銀行にあたるFRBを巧みな手腕で率いたグリーンスパン氏は、現在の米国の経済状況は自らのキャリアで目にしたうちで最悪と評し、回復までにはまだ長い過程がかかり、国内住宅価格への打撃も今後続くだろうと述べた。
米ABCテレビの番組「This Week」に出演したグリーンスパン氏は、現在の状況は「まず第1に、おそらく世紀に一度の類の大事態だという点を認識すべきだ」と強調した。また米国が景気後退を回避する可能性は50%以上あるかと問われ「50%以下だ」と応じた。
グリーンスパン氏は「世紀に一度の種類の金融危機が、グローバルな実体経済に甚大な影響をもたらさずに起こりうるとは信じがたい。それが今後生じる事態だと思う」と述べた。

 また、破産法申請を決定した米証券大手リーマン・ブラザーズの資産売却先交渉が進まない中、大規模な金融機関の破たんはさらに続くだろうとグリーンスパン氏は予測した上で、「それ自体を問題とする必要はないが、その処理方法、清算方法が問題。実際、すべての金融機関を保護しようとすべきではない」と忠告した。【9月15日 AFP】
********************

ありがたくないご宣託ですが、アメリカの金融危機は米国内輸出市場の低迷、日本国内金融機関の抱える債権の不良化とそれに伴う日本国内の信用縮小といった“津波”となって、日本にも確実に押し寄せます。

【中央銀行等の防戦】
その“津波”を防ぐべく、各国政府・中央銀行も対応に追われています。
米財務長官は、リーマン・ブラザーズの破たんを受け、米当局は市場の安定性を維持するためにあらゆる措置をとると強調しています。
また、FRBも、急激な信用収縮による金融市場の混乱を避けるため、金融機関に対する資金供給条件緩和などの措置を発表しています。

欧州中央銀行も15日、300億ユーロ(約4兆5000億円)の翌日物資金を緊急供給したほか、英中央銀行のイングランド銀行も50億ポンド(約9500億円)の資金供給を発表しました。
日本銀行も16日、市場の混乱を抑えるため、金融市場に1兆5000億円の資金を供給しました。
また、欧米の大手金融機関10社は15日までに、リーマン経営破綻などに伴う金融市場の混乱で資金繰りが悪化した場合に備え、総額700億ドル(約7兆4000億円)の共同基金を設定したと発表しています。

【痛みは最も弱い部分に・・・】
これで、米国発の金融危機という“大津波”がくい止められるでしょうか?
仮に世界経済が混乱する事態となった場合、恐らく経済的に体力のある日本や欧米はなんだかんだ言っても、そこそこの対応は可能でしょう。

津波は狭い湾の奥になるほどその高さを増していきますが、経済危機は体力の弱い途上国、その中でも貧困層という弱者に一番厳しい試練をもたらします。
世界貿易の縮小だけでなく、資金ドナーである先進国が自国内の対応で手一杯になるなかで、国際援助に大きく依存している国、人々はセーフティ・ネットをはずされる事態も予想されます。

また、こうした地域は多くの紛争を抱える地域でもあります。
経済的困難は“生き残り”をかけた紛争の激化をまねくものと思われます。
また、限られたパイの奪い合い、囲い込みは、紛争解決に向けた妥協のための余裕を失わせ、紛争の長期化をまねくでしょう。

なんだか、気分が滅入ってきたので止めましょう。
まだ混乱が勃発した訳でもありませんから。
これから国内的にきちんと対応すれば・・・・総裁選挙に総選挙でそれどころじゃなさそうですね・・・・。

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