
(【3月14日 テレ朝news】)
【再びテロ増加 「バルチスタン解放軍(BLA)」と「パキスタン・タリバン運動(TTP)」】
ベトナム旅行からの帰国時の事件で十分に情報をフォローしきれていませんが、パキスタン南西部で列車が武装集団に襲撃された事件で、パキスタン軍は12日、武装勢力側の33人を殺害して鎮圧作戦は終了したものの、乗客ら25人が死亡したと発表しています。
一方、反政府武装勢力「バルチスタン解放軍(BLA)」は12日に「人質50人を殺害した」「乗客の中にいた軍兵士ら100人以上を殺害した。さらに150人を拘束している」などと主張し、13日にも「戦闘は続いている」との声明を出しています。
その後の情報は目にしていません。
****「人質50人殺害」か…パキスタンで列車襲撃し200人以上人質の過激派が政治犯釈放求めるも決裂 治安部隊は乗客190人を救出し過激派30人殺害****
パキスタン南西部で列車が武装集団に襲撃された事件で、武装集団側は12日「人質50人を殺害した」と発表しました。
南西部バルチスタン州では11日、400人以上が乗った列車が州の独立を掲げる反政府系の武装集団に襲撃され、武装集団側は200人以上の乗客を人質に取ったと主張していました。
武装集団側は軍に拘束されている政治犯などの解放を求めていましたが、ロイター通信によりますと12日、要求が満たされなかったとして「人質50人を殺害した」とする声明を出したということです。
一方、現地当局はこれまでに列車の乗客190人を救助し、治安部隊が襲撃に関与した30人を殺害したことを明らかにしています。【3月13日 FNNプライムオンライン】
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かつてパキスタンは「テロ地獄」と称されるようなテロ頻発国でしたが、“パキスタンでのテロ関連事件の発生件数は、政府軍がテロリストの掃討に着手したため、2015年ごろから減少した。しかし、2021年以降は再び増加に転じた”【3月14日 テレ朝news】というように、近年再びテロが頻発しています。
パキスタンでのテロは、今回事件のおきた南西部バルチスタン州での事件とアフガニスタン・タリバンに忠誠を誓うイスラム武装勢力「パキスタン・タリバン運動(TTP)」による事件を国際ニュースでよく目にします。
両者は、一方の活動活発化が他方を活性化させるという形で連動しているとも言えます。
後者のTTPをめぐっては、もともとパキスタン情報機関が生み育てたタリバンが支配する隣国アフガニスタンとの関係が悪化していることを2024年12月29日ブログ“アフガニスタン 人権弾圧が続く中でタリバンに接近するロシア・中国 パキスタンとは武力衝突も”でも取り上げました。
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【イスラム過激派をめぐってアフガニスタン・パキスタンの間で衝突も】
イスラム過激派の活動・流入ということでは、タリバンに忠誠を誓うイスラム武装勢力「パキスタン・タリバン運動(TTP)」をめぐって、かつてのタリバンの生みの親・育ての親でもあるパキスタンと武力衝突も起きています。
****パキスタン軍が空爆、アフガンで46人死亡 タリバン暫定政権が声明****
アフガニスタンを支配するイスラム主義組織タリバン暫定政権は24日、この日の夜に東部パクティカ州が隣国パキスタン軍の空爆を受けたとする声明を出した。
暫定政権のムジャヒド報道官は25日、毎日新聞の取材に対して、子供や女性を含む46人が亡くなったと述べた。死傷したのは地元住民やパキスタン北西部から流入した難民だという。
タリバンの国防省は「卑劣な行為を見過ごすことはできない」との非難声明を出し、緊張が高まる恐れがある。パキスタン政府はコメントしていないが、パキスタン治安当局筋はテロ組織の拠点を狙った越境攻撃だったとしている。
パキスタン当局筋は各国メディアに対し、「テロリストの潜伏場所だけを狙った」と説明した。パキスタン軍は今年3月にもアフガン国内のテロ組織を標的にしたとする越境攻撃を実行している。
背景には、アフガンでタリバンが復権した2021年8月以降、タリバンに忠誠を誓うイスラム武装勢力「パキスタン・タリバン運動(TTP)」が勢力を拡大し、パキスタン当局を狙ったテロ事件を繰り返していることがある。
パキスタン側は、TTPなどのテロ組織がアフガン国内を拠点に自国への攻撃を仕掛けていると主張。タリバンは否定しており、テロ対策を巡って両国の関係が悪化している。【12月25日 毎日】
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****タリバンが報復攻撃 対パキスタン、応酬懸念****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権は28日、隣国パキスタンの複数地点を攻撃したと発表した。AP通信が伝えた。パキスタン軍が24日にアフガン東部のイスラム武装勢力の拠点を空爆したことへの報復としており、応酬の激化が懸念される。
タリバン暫定政権によると、アフガンへの攻撃を計画、調整する勢力の拠点や潜伏場所を標的にした。攻撃方法や死傷者の有無は明らかにしていないが、親タリバンとされるメディアはパキスタン軍の兵士19人とアフガンの民間人3人が死亡したと伝えた。【12月29日 共同】
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(以上、2024年12月29日ブログからの再録
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3月に入ってからも・・・
****パキスタン軍施設攻撃、9人死亡 テロ犯6人殺害で計画阻止****
パキスタン北西部カイバル・パクトゥンクワ州バンヌ地区の軍施設で4日、爆弾を積んだ車2台が施設の壁に激突して爆発し、巻き添えになった民間人9人が死亡、16人が負傷した。治安当局筋が明らかにした。軍は施設に侵入しようとしたテロリスト6人を殺害し、計画を食い止めたという。
地元メディアはイスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」の一派の犯行との見方を報じた。イスラム教が国教のパキスタンはラマダン中で、日中の断食を終えて家族らで取る夕食「イフタール」の後に攻撃が起きた。
爆発で周辺のモスクや住宅にも屋根が崩れるなどの被害が出たため、民間人が犠牲になった【3月5日 共同】。
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2月28日にはタリバンに関係していると思われる自爆テロも起きていますが、背後関係などの情報は目にしていません。
****「ジハード大」でテロ、4人死亡=タリバン幹部輩出―パキスタン****
パキスタン北西部カイバル・パクトゥンクワ州にあるマドラサ(イスラム神学校)で28日、自爆テロが起き、少なくとも4人が死亡、10人以上が負傷した。
同校は隣国アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンの幹部や戦闘員の多くが学び、「ジハード(聖戦)大学」とも呼ばれる。
地元メディアなどが報じた。敷地内のモスク(イスラム礼拝所)には金曜礼拝のため多くの人が集まっていた。犠牲者には同校幹部で、「タリバンの父」と称された著名な宗教指導者(故人)の息子も含まれている。この人物が標的だった可能性があるという。犯行声明は出ていない。【2月28日 時事】
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前者の南西部バルチスタン州における反政府過激派組織「バルチスタン解放軍(BLA)」の関係では、今回事件の他、1月、2月にも。
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2025/1/10(金)
パキスタン南西部・バルチスタン州カラト郡フズダル地区で、「バルチスタン解放軍」(BLA)が、町を一時的に制圧し、治安当局施設に放火したほか、銀行から約9,000万ルピー(約5,100万円)を強奪。【公安調査庁 世界のテロ発生状況】
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****武装集団、バス乗客7人射殺=パキスタン****
パキスタン南西部バルチスタン州で18日、武装集団がバスを襲撃し、乗客7人を射殺した。地元メディアが19日、伝えた。犯行声明は出ていない。
バスは同州から東部パンジャブ州に向かっていた。武装した約40人の男が幹線道路上でバスを含む複数の車両を停止させ、乗客らの身分証を確認。パンジャブ州出身だった7人をバスから降ろし、射殺したという。【2月19日 時事】
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【「一帯一路」による“中国による搾取と占領”対する批判から中国も標的に トランプ政権の関与低下も影響】
「一帯一路」事業で影響力・存在感が強まっている中国もテロの対象となっています。
****パキスタンでテロ相次ぐ 中国人も標的 巨大経済圏構想「一帯一路」と“搾取の構図”****
パキスタンで武装勢力が列車を襲撃した事件は、12日に救出作戦が行われたが、乗客ら25人が死亡した。パキスタンでは、これまでも武装勢力によるテロが相次いでおり、背景には、中国とアメリカの動向も関係しているとみられる。
■現地の中国人も新たなテロ標的に…
襲撃事件が発生したパキスタン南西部・バルチスタン州は、少数民族のバルーチ人が暮らす地域だ。今回、犯行声明を出したバルーチ人系・反政府過激派組織「バルチスタン解放軍」は、「バルチスタン州の分離独立」を主張している。
今回の事件では、軍人を含む民間人を人質にとり、活動家らの解放を要求していた。このような事件が起きた背景には、何があるのか。
国連開発計画(UNDP)の2018年の報告によると、バルチスタン州の貧困率は71%に上り、貧しい地域とされている。
また、バルチスタン・タイムリー(昨年9月)によると、十分な教育を受けられない人が多く、州全体の識字率は41%にとどまる。特に農村部の女性は25%と、読み書きができるのは4人に1人だけという状況だ。
バルチスタン州は、天然ガス田や世界最大規模の金・銅の鉱山など、天然資源が豊富な地域にもかかわらず、なぜ貧困率が高いのか。
就実大学の井上あえか教授は「資源開発の利益がバルチスタン州に還元されないためだ」と述べている。その結果、中央政府への不満が高まり、テロを起こしているとみられる。
就実大学の井上あえか教授は「資源開発の利益がバルチスタン州に還元されないためだ」と述べている。その結果、中央政府への不満が高まり、テロを起こしているとみられる。
巨大経済圏構想“一帯一路の要衝”
さらに、政府だけでなく、現地の中国人も標的になっているという。昨年3月、パキスタン北西部でテロ事件が発生し、中国人を含む6人が死亡した。
昨年10月、南部で発生したテロ事件でも、中国人を含む3人が死亡し、バルチスタン解放軍が犯行声明を出した。解放軍は以前から「中国が搾取と占領をやめなければ、今後も中国人を標的にした攻撃を行う」と表明していた。
バルチスタン解放軍が主張する“中国による搾取と占領”とは、何を指すのか。
現在、新疆ウイグル自治区からバルチスタン州・グワダル港を結ぶ「中国・パキスタン経済回廊」というインフラ整備が進められている。中国政府はこの事業に5兆5000億円という巨大投資を行っている。
中国にとって、グワダル港は南シナ海を通らず、インド洋にアクセスできるため、巨大経済圏構想“一帯一路の要衝”といえる。
一帯一路を巡り、パキスタンは中国から多額の融資を受け続けている。返済に行き詰まった場合、さまざまな権利を中国に渡さざるを得なくなる「債務の罠」も指摘されている。
「グワダル出身者は1人も雇用されていない」
現地メディア、パキスタン・ネーションは13日、経済回廊に関して、グワダルへの投資の対価として、中国が港湾収入の91%を受領する契約を結んでいると報じた。
今年1月、バルチスタン・アワミ党の地区会長は、この港湾について「グワダル出身者は、1人も雇用されていません。経済回廊のために建設されたこの港に、いったい何人のバルーチ人がいますか」と述べた。
こうした“搾取の構図”が中国人への不満につながり、テロの標的になっているとみられる。
■トランプ政権でパキスタンへの影響は?
パキスタンでのテロ関連事件の発生件数は、政府軍がテロリストの掃討に着手したため、2015年ごろから減少した。しかし、2021年以降は再び増加に転じた。
パキスタンの隣国・アフガニスタンでは2021年、イスラム主義勢力・タリバンが実権を握っていた。アフガニスタンや隣接するパキスタンの一部地域には、外務省の危険情報で「退避勧告」が出されている。
特に、パキスタンのカイバル・パクトゥンクワ州では2023年、タリバン系組織などによる174件のテロ事件が発生した。また、タリバンの活性化に触発されるかたちで、バルチスタン州でも同じ2023年、バルチスタン解放軍などによる事件が110件発生した。
さらに、CNNによると、パキスタン政府と軍が「アフガニスタンが武装勢力をかくまっている」とタリバン政権を批判したが、タリバン側はこれを否定している。
今後のパキスタン情勢は?
一方、アメリカの動きもテロ増加の背景にあるとされる。
2001年のアメリカ同時多発テロ以降、パキスタンはアメリカの対テロ戦争を支持し、アメリカが進めるテロ掃討作戦に協力してきた。
しかし、アメリカ軍は2021年、タリバンが実権を握ったアフガニスタンから完全撤退した。これによって、テロ事件が増加したとの見方もある。
さらに、現在は「米国第一主義」のトランプ大統領が政権に就いている。これを受けて、アメリカの軍事プレゼンスがさらに後退するとの見方もある。今後、パキスタンでもその影響が注目される。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年3月14日放送分より)【3月14日 テレ朝news】
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連日のトランプ大統領絡みの話題を避けたつもりでしたが、何かするにしても、何もしないにしても、結局はトランプ大統領の方針が国際情勢に影響してきますので、一見関係ないような事柄においても「トランプ大統領」の名前が出てきます。