孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ベネズエラ  「超法規的処刑」にも支えられるマドゥロ政権 グアイド氏側との交渉はあるものの・・・

2019-07-10 22:43:06 | ラテンアメリカ

(国境を越えたコロンビア・ククタの街で、客から声がかかるのを待つベネズエラ女性【625日 朝日】)

 

【“しぶとい”マドゥロ政権を支える「超法規的処刑」 5千人超を殺害】

アメリカの支援を受けるグアイド国会議長らの野党勢力の活動が活発化し、一時はいよいよ追い詰められるのか・・・という感もあった南米ベネズエラのマドゥロ大統領ですが、最近は大きな動きもなく、再び膠着状態に陥ったように見えます。

 

すさまじいハイパーインフレーション・経済崩壊でも潰れないマドゥロ政権、いつも言うように非常にしぶといです。

 

****ベネズエラ大統領、野党のクーデター計画阻止したと主張****

ベネズエラのマドゥロ大統領は26日、野党によるクーデター計画を治安部隊が阻止したと明らかにし、大統領ら要人の暗殺や服役中の元軍人を大統領に就任させることなどが計画されていたと主張した。

マドゥロ大統領はテレビで「ベネズエラの社会と民主主義に対するクーデターを計画したファシストのテロリスト一味を暴き、排除、拘束した」と述べた。

また「この犯罪者、ファシストグループを監視してきた結果、明確な証拠の下に捕らえ、投獄した」とした。

2009年に汚職で逮捕されたバドゥエル元国防相の解放を狙った情報機関本部への攻撃も計画されていたという。

マドゥロ大統領は、野党指導者のグアイド国会議長のほか、米国、チリ、コロンビアの政治指導者も計画に関与していたと主張した。

グアイド氏はこれを否定。マドゥロ氏に批判的な向きは、容疑者に強要した証言を根拠に大統領が政治目的でクーデター計画をでっちあげたと非難している。【627日 ロイター】

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この“クーデター計画”なるものの真相は定かではありませんが、これに付随して、関係者の「拷問死」というおぞましい報道も。

 

****ベネズエラ、クーデター関与疑いの海軍将校が「拷問死」 内外から非難****

米政府とベネズエラの野党勢力は630日、ニコラス・マドゥロ大統領に対するクーデター計画に関与した疑いで拘束されていた海軍将校が「拷問」を受けて死亡したとして、マドゥロ政権を激しく非難した。

 

ベネズエラの野党指導者フアン・グアイド国会議長とマドゥロ大統領の対立によるこう着状態が5か月以上も続く中、米国務省は海軍将校ラファエル・アコスタ・アレバロ氏の死の責任があるとしてマドゥロ大統領を非難した。

 

米国務省は声明で、アコスタ氏は「マドゥロ大統領が差し向けた暴漢とキューバ人顧問らによって拘束されている間に死亡した」とし、「米国は、アコスタ氏の殺害と拷問を激しく非難する」と述べた。

 

一方、米国など約50か国から暫定大統領として承認されているグアイド氏は629日夕、アコスタ氏は「拷問を受けた末に」死亡したと発表していた。

 

アコスタ氏はマドゥロ大統領に対するクーデター計画に関与した疑いで逮捕された13人のうちの一人。ベネズエラ政府は、クーデター計画にはグアイド氏も関係していたとみている。

 

ベネズエラ政府は先月26日、将校らによるクーデターの試みを阻止したと発表していた。これによると、計画されていたクーデターは先月23日から24日の間に実行される予定で、大統領および複数の高官の暗殺も企てられていたという。

 

中南米諸国とカナダでつくる「リマ・グループ」はアコスタ氏の「暗殺」を強く非難するとともに、ミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官に介入を要請した。 【71日 AFP】AFPBB News

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海軍将校ラファエル・アコスタ・アレバロ氏の「拷問死」が疑われるのは、マドゥロ政権の政権維持のためには暴力を厭わない強権体質のためです。

 

もっとも、問題とされるべきはアレバロ氏ひとりではなく、何千人にも及ぶとされる犠牲者です。

政権の暴力装置となって「超法規的処刑」を行っているのが、政権配下の民兵組織です。

 

****ベネズエラ「重大な人権侵害」 5千人殺害と国連報告書****

政情不安が続く南米ベネズエラの人権状況について、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が4日、報告書を公表した。独裁的なマドゥロ政権により、2018年だけで「政権に反対する者」が5287人殺害されているなどとし、「重大な人権侵害がある」と結論づけた。マドゥロ政権は「誤りばかりだ」と反発した。

 

報告書では、政権を支持する武装民兵「コレクティーボ」が市民の殺害に関与しているとし、民兵の武装解除と関与した犯罪への捜査を求めた。また、野党議員や人権活動家、記者など政府に批判的な人物に対する不当な逮捕や拷問がなされているとも指摘した。

 

経済状況については、配給制度が機能しておらず、国民の多くが食料や医薬品の不足に直面。18年11月から今年2月に1557人が薬不足で死亡したとした。

 

マドゥロ政権は「米国の経済制裁が危機の原因だ」と主張。報告書は、制裁が危機を深めているとしながらも、「制裁前からベネズエラ経済は危機にあった」と指摘した。

 

報告書は、マドゥロ政権のほか、人権侵害の被害者や目撃者など558人へのインタビューを元に作成された。【75日 朝日】

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国民生活を破綻に追いやっているマドゥロ政権が今も維持されている理由のひとつに、政権批判を許さない上記のような「超法規的処刑」を含めた暴力支配があげられます。

 

【失脚工作がうまくいかないアメリカ 関与を続けるロシア】

関係国の動きの面で言えば、反米マドゥロ政権を倒したいアメリカの目論見は、これまでのところ失敗続きの状況です。トランプ大統領は中国、北朝鮮、イランとけんか相手が多すぎて、国際的注目度では劣後するベネズエラどころではないのでは・・・とも推察されます。

 

****トランプ氏、ベネズエラ大統領の失脚目指す取り組み継続=特使****

米国のベネズエラ担当特使、エリオット・エイブラムス氏は25日、トランプ大統領は依然、ベネズエラのマドゥロ大統領を失脚させ、米国など西側諸国の支援を得て暫定大統領就任を宣言した野党指導者、フアン・グアイド国会議長を大統領に就任させるため圧力をかける政策にコミットしていると述べた。

 

マドゥロ大統領はロシアと中国の支援を受けており、これまでのところ、トランプ大統領が進める失脚工作は成功していない。

 

エイブラムス氏は、イランとの緊張の高まりや中国との貿易交渉など他の緊急課題により米国がベネズエラに対する関心を失ったのか、との疑問を一蹴。

 

また、マドゥロ氏がベネズエラの挙国一致内閣に参加する可能性を断固否定し、記者団に、「(マドゥロ氏が)解決の一端を担ったり、暫定政権に参加したりする可能性は考えにくい」と述べた。(後略)【626日 ロイター】

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一方、マドゥロ政権を支えるのがロシア・中国。

 

そのロシアに関して、トランプ米大統領は6月3日、「ロシアがベネズエラから、大部分の人員を引き揚げたと我々に伝えてきた」とツイートし、ロシアがベネズエラから手を引くとの情報を流していましたが、ロシアはこれを否定。最近はむしろ軍事的関与を強めているようにも見えます。

 

****ベネズエラに再びロシア空軍機、首都空港に着陸****

ベネズエラ首都カラカス北方のバルガス州マイケティアにあり、カラカスの空の玄関口となっているシモン・ボリバル国際空港に24日、ロシア空軍機が着陸した。ロイターの記者が目撃し、軍用機の行動を追跡する専門ウェブサイトでも確認された。(後略)【625日 ロイター】

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****ロシア、ベネズエラ軍増強を支援する用意─外務次官=RIA****

ロシアのリャブコフ外務次官は5日、ベネズエラ軍の増強を支援する用意があると表明した。ロシア通信(RIA)が伝えた。

西側諸国の大半が、ベネズエラ暫定大統領就任を宣言した野党指導者のグアイド国会議長を後押しする中、ロシアは中国とともにマドゥロ大統領を支持している。【75日 ロイター】

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【国外で直接対話も ただ、政権側に譲歩の必要性もなく、期待がしづらい交渉の行方】

国内で対立が続く状況を打開すべく、政権側とグアイド氏らの反政権側の直接交渉も断続的に国外で行われてはいます。ただ、マドゥロ大統領側に譲歩の気配がない状況で、どのような交渉が成立するのか疑問も感じますが。

 

****混迷のベネズエラで直接対話が再開**** 

南米ベネズエラの独裁的なマドゥロ政権と、米国の支持を受け「暫定大統領」を名乗る野党連合のグアイド国会議長の双方の代表団による直接会談が、カリブ海の島国バルバドスで9日までに始まった。

 

ベネズエラでは、それぞれが正当性を主張する「2人の大統領」の対立が膠着(こうちゃく)状態にあり、野党連合側が求める大統領選のやり直しにマドゥロ政権側が応じるかが焦点となる。

 

双方の直接対話はノルウェー政府が仲介。今年5月にも同国の首都オスロで開かれたが、物別れに終わった。バルバドスでの直接対話は今月8日に始まり、マドゥロ氏は同日、初日の協議は5時間行われたとし「平和的解決に向けて楽観的だ」と表明した。

 

米紙ワシントン・ポストは、これまで即時退陣を求めてきた野党連合側が、マドゥロ氏に一時的な大統領職を認めた上で、大統領選のやり直しを求めるという「譲歩案」を模索していると報道。深刻な経済危機でマドゥロ政権の支持率が急落しているため、政権奪還できる見込みが高いとみているという。ただ政権側はこれまで大統領選のやり直しを拒否しており、合意に達するかは不透明だ。

 

ベネズエラでは先月末、政権に対するクーデター計画に関与したとして身柄を拘束された海軍少佐が死亡する事件が起きた。これを受け、グアイド氏はマドゥロ政権側との直接対話を拒否する意向を示したが、今月7日になって「独裁体制からの脱却を目指し、権力を強奪した政権の代表者と話し合う」と表明した。【710日 産経】

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暴力支配であるにしても、これまでのところ軍部に大きな離反の動きもなく、マドゥロ大統領に徐穂する必要性はあまり見当たりませんので、交渉の成り行きには大きな期待はできないように思えます。

 

【避難先コロンビアでの厳しい生活 それでも国を出ざるを得ない窮状】

こうした状況で苦しむのは一般国民です。

国内に食糧・医療が乏しく、国外に逃れる人々も400万人を超えているといわれますが、国外に出ても厳しい現実が待ち受けています。

 

****ベネズエラ、我が子のため国境越える コロンビアへ食料・医療求め続々****

経済が破綻(はたん)し、政情不安が続く南米ベネズエラの人々が、食べ物も薬も手に入らない深刻な人道危機に見舞われている。幼子を抱えた母親や妊婦は、国境を越えてコロンビアに続々と入っていた。

 

 ■ほとんどが不法

4月15日午前10時、コロンビア北部ククタのエラスモ・メオス大学病院。産科待合室の妊婦18人のうち15人がベネズエラ人だ。ほとんどが不法に国境を越えて来た。

 

妊娠8カ月のおなかをさするマリアニ・キンテロさん(20)はベネズエラ中西部バレンシア出身。昨年夏に妊娠がわかり、母親と家を出た。「近所では出産で亡くなった人がいた。食べ物も薬もなく、安心して産めるとは思えなかった」

 

パスポートの入手に700米ドル(7万8千円)が必要と言われた。売り物の肉がほとんどない肉屋で働く夫の収入10年分に当たる。そんな金はなかった。

 

バスを乗り継ぎ、国境で民兵に2万8千ボリバル(600円)を渡し、抜け道を通らせてもらった。命の宿るおなかを気にしながら山道を慎重に歩いた。「国境の川の水が少なかったのが幸運だった」。コロンビアに入り、すぐ向かったのがこの病院だ。

 

生後1カ月の女の子エメルリスちゃんを抱くマリア・グスマンさん(30)はこの病院で出産後、バレンシアの実家へ家族の看病に戻り、また不法入国したばかり。実家は停電が続き、水もガスも使えない。周囲の家からは、まきを燃やす煙が立ち上っていた。

 

エメルリスちゃんが生まれた3月12日はベネズエラで最初の大規模停電が起きたころだ。「この子のために国を出ることを選んだ」と言って、抱きしめた。(中略)

 

 ■一度は逃げたが

午後7時すぎ。ククタの繁華街の街灯の下に女性たちが立ち始めた。

ベネズエラ西部メリダ出身のパオラ・アルバレスさん(21)は昨年4月から売春をしている。

 

医師になることを夢見ていたが、高校卒業のころ経済危機が深刻になり、進学できなかった。「大学を出ても月に5ドル(600円)ぐらいしか稼げない。あの国で学ぶことに意味はない」。食堂で働くなどしたが、1カ月の給料は卵30個、米1キロを買えばなくなった。2年前、子供が生まれ、生活は行き詰まった。

 

近所の友人から「コロンビアでいい仕事がある」と誘われた。交通費や宿泊費を支払ってくれ、国境を越えて来た。待っていた男に交通費などを返すまで働けと命じられ、売春宿に監禁された。人身売買の被害に遭ったと気づいた。1時間3万5千ペソ(1200円)で客を取り、大半は宿の男に持っていかれた。

 

逃げ出したが仕事はなく、街頭に立つ。夕方6時から午前4時まで。今は1時間当たり5万ペソ(1700円)が手元に残る。

 

多くの売春婦が客に暴力をふるわれている。怖いが、これしか仕事がない。2、3カ月に1度、メリダに戻って生活費を渡す。「洋服屋の店員をしている」と家族にうそをついている。

 

アルバレスさんと一緒に街頭に立つニコラ・ペレスさん(23)は、3人の子を親戚に預けてカラカスから出てきた。「送金を受け取る家族は私の仕事に感づいているはず」と話す。

薄暗い連れ込み宿の硬いベッドの上で考える。「すべては子供たちのため。そう思わないと耐えられない」

 

 ■大学出たけれど

コロンビアの首都ボゴタで売春をするアンドレア・ゲラさん(23)はカラカスの高級住宅地で育った。大学を卒業し、企業の会計担当をしていたが、インフレで食べるにも事欠くようになった。父の会社も経営が傾き、母、3歳の娘と一緒にコロンビアに来た。

 

3カ月前、母が病気になり、追い込まれた。新聞広告で見つけた売春あっせん所に登録した。「顔を見せる方が客は見つかる」と言われ、赤い下着姿の写真をウェブサイトに載せた。「娘には自分と同じ人生は歩ませたくない」

 

ベネズエラ経済は石油に依存してきた。貧困層を救済するとして1999年に大統領に就任したチャベス氏は工場や農地を国有化した。生産が落ち込んだ分、石油収入を元手に輸入で不足を補った。2013年からはマドゥロ政権がこの路線を引き継いだ。

 

だが14年に石油価格が急落、米国の経済制裁も相まってインフレが加速した。食料や医薬品がない人道危機に直面し、国連によれば、ベネズエラを脱出した人々は今年6月には400万人に達した。このうちコロンビアにいる130万人の半数は不法入国を含む非正規の滞在とみられる。

 

女性への支援活動をしているコロンビアのNGOによると、ベネズエラ人の女性の多くが何らかの形で売春を余儀なくされている。ククタの女性問題担当局は、市内の売春婦の3分の2がベネズエラ人で、17年以降に倍増したと推計している。【625日 朝日】

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避難先コロンビアでの生活は悲惨ではありますが、それでも収入も、食料・医療もないベネズエラ国内にとどまるよりは・・・という究極の選択です。

 

なお、コロンビアで医療を求めるベネズエラ人の9割は未払いとのことで、今のところはコロンビアの病院はそれがわかっていても受け入れています。しかし、何らかの対応がないと持続できないでしょう。

コメント

ブラジル  いろいろあって極右大統領への国民支持は低下傾向

2019-07-01 23:01:16 | ラテンアメリカ

(大阪市で628日、会談するトランプ米大統領(左)とブラジルのボルソナーロ大統領【629日 朝日】)

 

【経済不調で支持率もじり貧傾向】

「ブラジルのトランプ」とも称される極右・元軍人のブラジル・ボルソナロ大統領への国民支持は大統領選挙当時の熱狂から冷めて低下しているようです。

 

****ブラジル世論調査、ボルソナロ政権発足後初めて不支持が支持上回る****

24日に発表されたXPインベストメントスとイペスペの世論調査で、ブラジルのボルソナロ大統領率いる現政権の不支持率が、1月1日の大統領就任以来初めて支持率を上回った。

政権発足以来の5カ月は、第1・四半期の経済がマイナス成長となる公算が大きいなど経済の低迷に加え、改革課題に対する政治的な支持獲得の失敗などが目立った。

調査は20─21日、1000人のブラジル人を対象に実施。その結果、36%がボルソナロ政権は悪いまたはひどいと回答。今月行われた前回調査を5%ポイント上回った。

政権が良いまたは素晴らしいとの回答の割合は、前回の35%から34%に低下した。調査の誤差は3.2%ポイント。

経済の現状については前政権と「外的要因」が原因と考えているブラジル人が大半だが、現政権のせいと考えるブラジル人が、わずか3週間前に比べて2倍の10%となった。

将来の見通しも悪化しており、ボルソナロ大統領の残りの任期が良いまたは素晴らしいと見ている人の割合は47%と、前回調査の51%から低下。悪くなる、またはひどくなると見ている人は、同27%から31%に上昇し、楽観的な見方と悲観的な見方の差がこれまでで最も小さくなった。【527日 ロイター】

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どこの国においても、支持率を左右する最大要素は「経済」ですが、ブラジルの場合、あまり芳しくありません。

 

****世銀によるブラジルの成長予想 1.5%に悪化****

世界銀行(WB)がブラジルの経済成長見通しを悪化させた。

 

4日付伯メディアによると、世界銀行は同日発表した世界経済の見通しについての報告書の中で、ブラジルの2019年の国内総生産(GDP)の成長予想をプラス1.5%とした。今年1月の発表ではプラス2.2%としていたが、一気に0.7ポイント引き下げた。

 

ただし、悪化はしたものの、プラス1.5%という予想はブラジルの金融市場による見方に比べてまだ楽観的だ。国内の100を超える金融機関のアナリストらの見方をまとめてブラジル中央銀行(BCB)が毎週発表する週次レポートの最新版によると、ブラジルの金融市場は同国経済の19年の成長率をプラス1.13%とみている。(後略)【66日 サンパウロ新聞】

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世界銀行(WB)が経済成長見通しを低くしたこと自体は、ブラジルに限った話ではなく、世界銀行は、アメリカと中国の間で緊迫している貿易紛争、投資を冷え込ませる構造的な諸問題、そして様々な国々、特にユーロ圏内における予想以上の減速といったリスクを背景に、世界経済全体およびラテンアメリカ経済の成長見通しも低く見直しています。

 

ただ、かつて「BRICs」ともてはやされたブラジルとしては1.5%という水準は不本意なレベルでしょう。

ラテンアメリカにおける経済的主導国という地位も、経済好調なメキシコに奪われつつあります。

 

人口動態の面から長期的にみても、ブラジルの生産年齢人口の伸びは低下しており、2030年にはマイナスに転じるということで、先行きの見通しはよくありません。【611日 森川央氏 「ブラジル経済の先行きに暗雲」より】

 

【課題の年金改革も難航】

経済界からボルソナロ大統領に期待されていたのは年金改革ですが、年金制度の改革というのは、あのプーチン大統領の支持率さえ急低下させたように、どこの国でも極めて困難な課題です。

 

日本でも、年金問題が焦点となっているように、政権にとって年金問題は鬼門です。ただ、将来を考えると避けて通れない問題でもあります。

 

****もたつく年金制度改革****

 期待感がしぼんできている原因の一つが、ボルソナーロ政権への失望である。政権発足時(1 月)のボルソナーロ政権への支持率は 651と高かったが、4 月には 32%に低下している。

 

家族の汚職疑惑や社会政策、銃規制緩和への警戒に加え、大統領の指導力への失望が人気低下に拍車をかけている。

 

そして特に、ビジネス界や投資業界で支持率低下が顕著である。ファンドマネジャーやエコノミスト約 80 人に対するアンケート調査によると、ボルソナーロ政権への支持率は86%(1 月)から 14%(5 月)に低下している

 

低下の理由は年金制度改革の遅れである。ビジネス界では年金改革への期待が大きかったので、新政権が国会内での多数派工作に手間取り、ほぼ 3 か月を空費したことが失望を招いたのであろう。

 

もっとも年金制度改革の見込みが消えたわけではない。(中略)

 

年金改革は今後の連邦政府の財政負担の軽減となるだけでなく、企業にとっても負担軽減が期待できる。また年金改革は経済構造改革のための大事なステップと考えられており、年金改革が成立すれば税制改革にも弾みがつくと期待されている。

 

従って、年金改革が実現すればブラジルの中長期的な成長率も上昇するというストーリーが描けるが、実際の効果については吟味する必要がある。【611日 森川央氏 「ブラジル経済の先行きに暗雲」

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【銃規制緩和で治安回復?】

ブラジルの抱えるもうひとつの問題が治安の悪化。

 

****17年の殺人被害者、6万5602人と過去最悪=ブラジル****

ブラジルの政府系機関「応用経済研究所」などは5日、2017年の同国の殺人被害者数が前年に比べ4.9%増加し、6万5602人に達したと発表した。殺人発生率は過去最悪の人口10万人当たり31.6人。世界銀行によると、16年の日本の発生率は0.3人、米国は5.4人。麻薬戦争が続くメキシコは19.3人だった。

 

銃器が使用された割合は72.4%に達した。ボルソナロ政権は治安対策として銃器をめぐる規制緩和を急いでいる。

 

犠牲者の9割は男性で、5割以上は若者、4分の3は黒人だった。15〜19歳の男性の死因で「殺人」は6割を占め、ファベーラ(貧困街)を牛耳る麻薬密売組織絡みの暴力が年々深刻化していることが浮き彫りとなった。【66日 時事】

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日本的発想では、治安を改善するためには銃規制を強化ということになりますが、「ブラジルのトランプ」ことボルソナロ大統領の発想は逆です。

 

****1人4丁まで所持可能 ブラジル、市民の銃規制を緩和****

南米ブラジルのボルソナーロ大統領は15日、市民の銃所持の規制を緩和する大統領令に署名した。警察による審査が簡素化され、25歳以上なら条件を満たせば銃を所持できる。ブラジルでは治安悪化が社会問題になっており、ボルソナーロ氏は大統領選で治安回復を公約に掲げ、市民が銃で武装すべきだと訴えていた。

 

ブラジルでは市民の銃所持は法律上認められてきたが、警察による厳しい審査があり、事実上、銃は買えなかった。今回の規制緩和で、犯罪歴や精神疾患がないなどの条件を満たせば、25歳以上なら1人4丁まで銃を所持できる。

 

ボルソナーロ氏は署名後、「これで善良な市民が家庭で平和を手に入れることができる」と演説した。ただし、銃所持が治安回復につながることを疑問視する市民も多く、直近の世論調査では61%が銃所持に反対だった。【116日 朝日】

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市民が銃で武装して治安回復・・・・どう考えても「逆効果」にしか思えませんが、「銃保持は個人の権利」と考える大統領ですから・・・。

 

なお、ブラジルでは刑務所内での受刑者同士の衝突が頻発しています。

 

****刑務所内での殺人事件が相次ぐブラジル、また1日に40人死亡****

ブラジル北部アマゾナス州の刑務所4か所で27日、受刑者が合わせて40人以上殺害された。当局が発表した。ギャング同士の抗争とみられている。

 

同国の刑務所は深刻な過密状態にあり、受刑者が施設内で死亡する事例が相次いでいる。アマゾナス州では前日26日にも、刑務所1か所で15人が死亡する事件が発生したばかり。

 

銃やナイフなどの凶器は使用されておらず、同州の発表によると、27日に殺害された受刑者らは「窒息死」したとみられるとしている。

 

刑務所関係者らの話では、事件は同じ犯罪組織に所属し、州内での麻薬取引に関わっていた受刑者らの衝突が原因で発生したと考えられるという。

 

政府は刑務所内の安全対策強化を目指し、職員を追加派遣した。【528日 AFP】

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ひょっとして、ギャングは刑務所内で殺し合いをさせとけばいい・・・・という、大統領の施策でしょうか?

 

【アマゾン開発の加速、政敵少数者への厳しい対応では“面目躍如”】

それはともかく、銃規制緩和は型破りな極右・元軍人大統領の面目躍如と言ってしまえばそれまでですが・・・ボルソナーロ大統領はこれまで、性的少数者の公民権上の権利はく奪につながりかねない大統領令にも署名。アマゾン地域の熱帯雨林での商業活動も認めています。

 

アマゾン地域の熱帯雨林での商業活動ということでは、アメリカに続いて日本も誘いを受けているようです。

 

“ブラジル大統領、アマゾン地域で「米国と共同開発望む」”【48日 ロイター】

 

****日本はアマゾン共同開発を=ブラジル大統領、首脳会談で提案へ****

ブラジルのボルソナロ大統領は20日、今月末の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)に出席する際に安倍晋三首相と首脳会談を行い、アマゾン熱帯雨林地帯の共同開発を提案する意向を明らかにした。経済発展を重視するボルソナロ氏は、NGOなどから、環境保護に後ろ向きだと批判されている。

 

ボルソナロ氏はフェイスブックに投稿した動画で「われわれは25日夜にサミットのため日本にたつ。日本の首相と個別会談を持ち、手を携えてアマゾン地域の生物多様性を(共同開発により)活用する協定を提案する」と述べた。具体的内容については明かさなかったが、「誰もアマゾンを破壊したいとは思っていない」と強調した。【622日 時事】

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この話がどうなったのかは知りません。

 

性的少数者への厳しい姿勢に関しては、性的少数者差別を禁じる最高裁判断をも強く批判しています。

 

****同性愛者差別違法化は「誤り」=最高裁判断に保守派大統領―ブラジル****

ブラジルで、連邦最高裁が同性愛者差別を犯罪と判断したことに、強硬保守派のボルソナロ大統領が「完全な誤りだ」とかみついた。同氏は過激な物言いで物議を醸すことが多く、最近では日本人を「ペキニニーニョ(ちっこい)」とやゆし、「差別的だ」と批判されている。

 

最高裁は13日、同性愛者や性転換者らへの差別は犯罪とする見解を8対3の賛成多数で決めた。同国では同性婚も認められているが、差別を禁ずる法的根拠はなかった。最高裁は、禁止法が制定されるまで、違反者には人種差別禁止法違反に準じて1〜3年の禁錮刑か罰金を科すとした。

 

これに不満を唱えたのは、かつて「息子がひげ面の男と現れるくらいなら、事故で死んでくれた方がまし」と発言するなど同性愛者への嫌悪を隠さなかったボルソナロ氏。

 

14日、記者団に「最高裁は尊重するが、決定は完全な誤りだ」と強調。経営者らが訴訟沙汰を恐れて同性愛者の雇用に慎重になるとして、かえって「同性愛者が損をする」と持論を展開した。【615日 時事】 

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【身内の犯罪関与疑惑も ガタつく政権内部】

“息子がひげ面の男と・・・”云々はともかく、息子の「犯罪」についてはどうなんでしょうか?

大統領の息子の犯罪関与についても問題となっています。

 

****ブラジル検察、資金洗浄疑惑で大統領の息子の銀行取引記録を捜査へ****

ブラジルの裁判所は、資金洗浄(マネーロンダリング)の疑いを巡り、ボルソナロ大統領の息子であるフラビオ・ボルソナロ上院議員と同議員の元運転手の銀行取引記録を捜査することを検察に認める方針だ。2人の関係筋が13日、ロイターに明らかにした。(後略)【514日 ロイター】

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政権内部もガタついています。

 

****ブラジル大統領がまた閣僚解任、政権発足半年で3人目****

ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領が13日、カルロス・アルベルト・ドス・サントス・クルス大統領府・政府調整庁長官を解任した。政権発足後の半年間で、閣僚の解任はサントス・クルス氏が3人目。

 

発足以来、ボルソナロ政権内部では軍出身者と極右イデオロギーグループとの対立が続いている。今回解任されたサントス・クルス氏は元軍司令官で、ボルソナロ氏の息子たちや、ボルソナロ氏の「師」と評され軍出身者に批判的な右派言論人のオラーボ・デ・カルバーリョ氏とも衝突していた。

 

ただ、サントス・クルス氏の後任に決まったルイス・エドゥアルド・ラモス・バプティスタ・ペレイラ氏は陸軍大将で、閣僚22人中の8人が軍出身者という構成は変わらない。

 

ボルソナロ氏は大統領就任以来、これまでにも2月にグスタボ・ベビアノ大統領府・事務総局長官を、4月にリカルド・ロドリゲス教育相を解任している。

 

ボルソナロ政権は公約としていた年金改革が発足直後から難航し、経済も悪化。政権への抗議デモが相次いでおり、14日にも労働組合が全国規模でのストライキとデモを呼び掛けている。【614日 AFP】

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【「本家トランプ」とは相思相愛】

これだけいろいろあれば、支持率低下もやむを得ないところでしょう。

ただ、「本家トランプ」との関係は“相思相愛”とか。

 

****「ブラジルのトランプ」と本家、相思相愛 G20で会談****

SNSを駆使した過激な発言から「ブラジルのトランプ」の異名を持つブラジルのボルソナーロ大統領が28日、大阪市で開幕した主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の会場で、「本家」のトランプ米大統領と会談した。

 

互いをたたえ合い、経済協力の強化などを話し合った一方、トランプ氏は注目が集まる米中首脳会談のアピールも忘れなかった。

 

ボルソナーロ氏は極右の元軍人で、かつての軍事独裁政権を礼賛し、拷問を正当化する発言などで物議を醸してきた。既存メディアからの批判を「フェイク(偽)ニュース」と決めつけ、言いたいことはSNSで一方的に流すなどの言動がトランプ氏に似ているとされる。トランプ氏をブログで礼賛する外交官を外相に据えるなどし、米国とは良好な関係づくりを目指してきた。

 

この日の会談で、トランプ氏は「彼は特別な男だ。よくやっている。ブラジルの人々にとても愛されている」とボルソナーロ氏を持ち上げた。ボルソナーロ氏も「(トランプ氏が)大統領選に出る前からファンだった」と応じ、次の米大統領選での再選を応援すると公言した。

 

ログイン前の続き米ホワイトハウスによると、トランプ氏はボルソナーロ氏の経済改革を支持し、ブラジルの経済協力開発機構(OECD)加盟が改革の後押しとなることを、ボルソナーロ氏と確認したという。(後略)【629日 朝日】

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「ブラジルのトランプ」が支持率を下げているのに対し、「本家トランプ」は岩盤支持層を維持し、再選をうかがう勢い・・・ということで、さすが「本家」は違うといったところでしょうか。

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コロンビア  左翼ゲリラとの和平合意後もコカ栽培から抜け出せない現状

2019-06-26 23:23:04 | ラテンアメリカ

(コカの葉の収穫を終えて家路につく母子たち。山岳地帯でコカを頼りに暮らしている【618日 WEDGE

 

【内戦終結でいったんは減少したコカ栽培が再び増加】

下記は1週間ほど前に目にした記事。

 

****米の港でコカイン15トン押収 末端価格は1千億円超****

米ペンシルベニア州のフィラデルフィア港に停泊したコンテナ船から18日、15トンのコカインが押収された。末端価格で10億ドル(約1090億円)を超えるという。現地の検察当局がツイッターで明らかにした。米メディアによると、米国史上3番目の多さという。

 

AP通信によると、このコンテナ船は西アフリカのリベリア船籍。5月19日に南米コロンビアを出て、南米ペルー、中米パナマ、カリブ海のバハマに寄港。(後略)【619日 朝日】

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15トン、末端価格1千億円超のコカイン・・・「すごいね!」と言うしかないですが、真っ先に思ったのは、このコカイン密輸を指揮した組織の人間は今頃失敗の責任を取らされて・・・・というあたりのことです。

 

ただ、“末端価格1千億円超”とはいっても、こうした密輸失敗のロスを織り込んだ商品価格であり、実際にコカ栽培農家が手にする金額は、はるかに少ない金額でしょう。

 

コカインの原料となるコカ栽培やアヘンの原料となるケシ栽培の状況は、その生産地たるコロンビアやアフガニスタンの統治がうまくいっているのかどうかを知り得るバロメーターでもあります。

 

ガバナンスがうまくいっていれば、誰も危険で厄介な(こうした作物栽培には往々にして武装勢力が絡んできます)違法作物には手は出しません。しかし、生きるために他に道がないのであれば・・・。

 

そうした点からすると、コカ栽培の中心地、コロンビアの状況はあまりよろしくないようです。

 

****17年のコカイン生産量、過去最高に 内戦終結のコロンビアで増産****

2017年の世界のコカイン生産量が前年比25%増の1976トンで過去最高だったことが、26日に発表された国連薬物犯罪事務所の年次報告書で明らかになった。

 

内戦の終結したコロンビアでの生産量が急増したことが、理由の一端にあるという。

 

報告書は、世界生産量の急増は「世界のコカインの70%を生産していると推定されるコロンビアでの増加が要因」だと指摘している。

 

コロンビアでは2016年に政府と左翼ゲリラ「コロンビア革命軍」が和平合意を結び、内戦が終結。コカを栽培していた農家らには別の作物への乗り換えが促され、コロンビア中部の一部ではいったんはコカインの生産が落ち込んだ。

 

しかし報告書によるとその後、コカ栽培は再び増加に転じている。これは、以前はFARCが支配していた主に都市部から離れた地域に犯罪組織が入り込み、新たな畑でのコカ栽培が増えているためだという。 【626日 AFP】

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【和平合意に従わないFARC残党も】

コロンビアの治安状況全般はよくありません。

 

****1日当たり33人が殺された 2018年コロンビア****

コロンビア法医学協会はコロンビアの治安に関する年次報告を火曜日に発表しています。法医学協会の会長クラウディア アドリアナ デル ピラールは、2018年は1日当たり33人が殺害されていると語っています。

 

報告によれば、2018年にコロンビア国内で殺害された人数は前年2017年の1万1373人より6,7%増えて1万2130人となっています。(後略)【626日 音の谷ラテンアメリカニュース】

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また、上記によれば、「2019年世界平和度指数」(どんなものかは知りません)で、コロンビアは163カ国中143位で、144位の破綻国家ベネズエラと(平和度では問題が多い国がひしめく)ラテンアメリカ諸国の最下位を争っている状況のようです。

 

コロンビアに関して特に関心が持たれるのは、和平合意した左翼ゲリラ「コロンビア革命軍」(FARC)の状況がどうなっているのか?という点ですが、大手メディアの報道では最近そのあたりの記事は目にしていませんので、よくわかりません。

 

昨日の【音の谷ラテンアメリカニュース】では、以下のような情報が。

 

****Farcゲリラ724人が行方をくらます コロンビア****

ここ数週間にわたりコロンビア政府・国連・人民革命代替勢力(Farc)は、行方をくらました724人の元Farcゲリラの捜索を行っています。

 

コロンビア政府高等平和委員ミゲル アントニオ セバジョスは逃亡者の名簿を受け取っています。

 

政府関係者はEL TIEMPO紙の取材に対し、行方をくらましているのは下士官クラスと平ゲリラで、その行方は和平合意後に合法政党に生まれ変わったFarcも把握していないと語っています。

 

彼らは戦闘訓練を受けた武器の取り扱いにたけた者たちであり、犯罪組織に加わると非常に危険な存在になると懸念されています。【625日 音の谷ラテンアメリカニュース】

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FARC内部に和平方針に反対する勢力があることは以前から指摘されているところですが、なかなか厄介な状況でもあるようです。

 

5月には、下記のような事件も。

 

****FARC残党か、映像作家殺害=ドキュメンタリー制作中―コロンビア****

コロンビア北東部アラウカ州にある対ベネズエラ国境の町アラウキタで9日、半世紀に及んだ内戦のドキュメンタリーを制作中の映像作家が何者かに撃たれて死亡した。州知事は、最大のゲリラ組織だったコロンビア革命軍(FARC)の残党の犯行と非難している。(後略)【511日 時事】 

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【コカに代わるコーヒー栽培も不振】

一方、FARCが合法政党に衣替えしても、“以前はFARCが支配していた主に都市部から離れた地域に犯罪組織が入り込み、新たな畑でのコカ栽培が増えている”という状況で、コカ栽培は減らないようです。

 

また、コカに代わって農業を支えることが期待されているコーヒー栽培も価格暴落で困難になっており、農家をコカ栽培に走らせることにもなっています。

 

****最高級コーヒー豆、利益は12円以下 価格暴落に苦しむ農家 コロンビア****

コロンビア西部の緑豊かな山岳地帯では最高級のコーヒー豆が栽培されているが、地元の生産者は不公正な価格にいら立ちを募らせている。

 

コーヒー豆の価格を決めるのは、ここから遠く離れた米ニューヨーク証券取引所。業界に打撃を与える値崩れが起きているのは、市場最安値にまで価格を押し下げている投機家のせいだと農家は非難する。

 

生産者の一人であるグスタボ・エチェベリさんは、コーヒー豆農園が集まるこの山の住民約15000人の多くは不満を抱いていると話す。

 

「フェアトレード」認証されたコーヒーとは程遠いと地元の農家は言う。フェアトレード認証を受けているコーヒーは、公正な条件の下で栽培され、農家が搾取されていないことを保証する商品として国際的に認証されている。

 

サントゥアリオ村周辺では、別の作物への切り替えを余儀なくされた生産者もいる。

 

昨年は国際取引価格の暴落に加え、害虫被害による品質低下にも見舞われ、栽培者らは生産コストを下回る価格で販売せざるを得なかった。

 

112.5キロのコーヒー豆を生産するには22ドル(約2400円)のコストがかかるが、エチェベリさんのコーヒー豆の卸値は1袋当たり平均21ドル(約2300円)だ。

 

ラモン・ヒメネスさん一家も、近くのサンアントニオ農園で3世代にわたりコーヒー豆を栽培しているが、孫のハビエルさんは、「父や祖父の後継ぎとして農場を経営しようと思っていたが、こんな状況が続くようなら他の仕事に目を向けないと。米国に行く方がいいのかも」と語った。

 

コロンビアは、コーヒー豆の生産量がブラジルとベトナムに次いで世界3位となっている。高品質の生豆の生産においては首位を誇る。また54万世帯がコーヒーに関わる仕事で生計を立てており、輸出に占めるコーヒー豆の割合は石油や鉱物を抜いてトップとなっている。

 

■「コーヒー農園売ります」の広告に震え上がる地元

だがサントゥアリオでは、コロンビアコーヒー生産者連合会の事務所に掲示された「コーヒー農園売ります」という広告に、地元生産者らは震え上がっている。

 

経営を続けるため、エチェベリさんのように観光客に農場を開放した経営者もいる。

コロンビアで半世紀にわたって続いた内戦で、大勢の住民がこの山岳地帯を去った。サントゥアリオのエベラルド・オチョア市長は、コーヒー栽培が危機に陥るたびに人口が流出すると嘆く。

 

2016年、コーヒーの国際基準価格は、1ポンド(約450グラム)当たり1.5ドル(約162円)から1ドル(約108円)未満に急落。史上最も大きい下げ幅を記録した。

 

国際コーヒー機関によると、20182019年のコーヒー豆の生産量は、160キロで換算した場合、16700万袋になる見通しで、世界全体の消費量16500万袋を上回る。(後略)【68日 AFP】

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一次産品価格が相対的に下落傾向にあるのはコーヒーに限った話、現在に限った話でもなく、昔から多くの発展途上国のテイクオフの足かせとなっている経済要因です。

 

“高級店では1ポンドの生豆から55杯分のコーヒーを作れるが、豆の買い取りを行うグローバル企業が生産者に支払う額はわずか90セント(約97円)だという。つまり生産者の利益は、1杯当たり1.6セント(約1.7円)ということになる。「1983年に比べると4分の1だ」”【同上】とも。

 

消費者としては複雑なところもありますが、市場原理というのはそういうものでもあります。

そこを改善しようというのが「フェアトレード」という発想ですが、どうでしょうか?よく知りませんのでパス。

 

【武装組織と政府軍に分かれて銃口を向けあう農村貧困層の若者 「またコカを摘むしかない」という現実】

結果的に、農家はなかなか違法なコカ栽培から抜け出せないという状況にもなります。

 

****コカイン栽培へと流されるコロンビアの住民たち****

コカインの原料となるコカの葉は南米原産の植物でアンデス山脈に暮らす先住民族は医療や儀式に用いてきた。(中略)

 

コカはその民族にとって、肉体や精神、空間を「良い」状態に保つための大切な植物だ。コロンビアで違法とされるコカ栽培は「先住民族居住区」内に限り、伝統活動として一定量の栽培が認められている。

 

しかし、近年蔓延する貧困から、栽培が認められていない地域でも違法的な形で麻薬産業が広まった。貧困と麻薬産業に振り回される先住民族の青年の話をしたい。

 

届いた1通のメール

「日本で働きたい」 昨年、コロンビアに暮らす友人からメールが届く。彼はマウロという26歳の青年だ。(中略)「元気かい?オレ、どうしても日本で働きたいんだ。どんな仕事でもする。面倒なこと言ってごめんな。でも、こっちには仕事がないんだ」

 

コーヒー生産地でのコカ栽培

マウロが暮らすのはコロンビア南西部カウカ県の山岳地帯で、コーヒー産地として知られている。家族単位でコーヒー栽培を営む住民が多い。

 

コーヒーは住民の貴重な収入源だ。マウロの家では曽祖父の世代に始まった。(中略)

 

近年、トウモロコシや豆類の価格が安い輸入作物の影響もあって下がり、収入の柱であるコーヒーも価格変動や病害のため不安定になった。その中でコカがより安定した収入源として生活に結びついた。

 

コーヒーの農閑期に近隣のコカ栽培地へ収穫の出稼ぎに出る人が増え、自家消費向けの作物からコカに転作する人も現れた。

 

将来の夢を描けずにいる若者がいる

マウロは都市の大学進学を夢見ていた。彼が暮らす山は反政府ゲリラが強く、政府軍との衝突が頻発し、日常的な銃声と暴力に恐怖を感じながら彼は育った。広まるコカが暴力と繋がることも知っていた。

 

この集落では過去に、麻薬組織から地域の自立を目指した住民運動の中心人物が暗殺されている。コカに頼る現状に後ろめたさを感じる人は多い。

 

深い山に閉ざされた土地で、暴力の恐怖を感じながらコカを摘む。マウロにとって都会での生活は、閉塞感を抱える故郷から飛び出し、世界の広さを実感するための一歩だった。マウロは努力の甲斐あり国内第2の都市メデジンの大学に入学する。この時彼は「心理学を勉強するんだ」と生き生きと希望を語っていた。

 

大学生活はマウロの姉が学費と生活費を支援した。彼女は住民によるコーヒー生産者組合で事務職に就き、毎月の一定の収入を得ていた。(中略)だが無理をしていたのだろう。入学から1年後に仕送りは止まってしまう。費用を賄えずマウロは大学を休学し実家に帰る。日本にいた私はマウロからのメールで休学の話を知った。

 

「コカを摘むしかない。それでお金を貯めてまた大学に戻れたら」投げやりとも感じた彼の言葉から苛立ちが伝わってきた。

 

その後、マウロは大学を中退したと彼の姉の知らせがあった。(中略)

 

「私の村には将来の選択肢がなかった」 農村の若者を取り込む武装組織

マウロのように、経済的な理由などで進路を閉ざされた農村の若者を武装組織は取り込んだ。2017年、反政府ゲリラFARCを取材した際、戦闘員は農村出身者が多数を占め、先住民族、アフリカ系も多かった。彼らにFARC入隊の動機を聞くと、ある男性戦闘員は「私の村には将来の選択肢がなかった」と話す。

 

彼は幼い頃、家のジャガイモ畑を手伝うため小学校を卒業できなかった。いくら働いても生活は良くならない。何かを変えたくても勉強もできずお金もない。

 

彼が19歳のときFARCが村に現れた。彼らは住民に、農村の貧困はコロンビアの差別的な社会構造に原因があると説明し、不平等な社会を変えるには革命が必要だと説いた。「革命を起こし社会を変える」という物語は、くすぶる青年の心に響いた。身体の奥から湧き上がる衝動のままに彼はFARCへ入った。

 

また先住民族である別の青年は、幼い頃に受けた町での差別が動機となった。町では山に暮らす先住民族に対し、言語や習慣の違いを嘲笑う場面が日常的にあったという。幼い彼の心に悔しさと羞恥が焼き付いた。彼はゲリラになることで「違う自分になれる気がした」と振り返る。

 

農村出身者の就職先として政府軍がある。お金を稼ぎたい、未来を切り開きたいという若者が持つエネルギーの受け皿として武装組織が役割を果たした面がある。

 

この両組織に関する2つの統計がある。

1つは2017年にFARC構成員約1万人の出身地域をコロンビア国立大学の調査したもの。構成員の66%が農村出身者だ。(中略)

 

もう1つは政府軍兵士の出身階層だ。コロンビアの情報サイト「Los 2 Orillas」によれば、政府軍兵士の80%が貧困層出身であり、中流階層19.5%、上流階層0.5%となる。貧困層の割合が圧倒的に高い。

 

コロンビアの貧困は年々改善されているが、今も農村の3割以上が、ひと家族が生きるために必要とする最低限の食料、教育、医療などを賄える収入以下で生活する「金銭的貧困(Pobreza Monetaria)」状態にあるという。

 

特に開発から取り残される傾向が強い先住民族やアフリカ系住民が暮らす地域でその数字が高い。(中略)

 

貧しい農村の若者が、選択肢のない中で新しい未来を切り開こうと麻薬産業に加担する。そこで銃口を向け殺し合うのも同じく周縁化された社会に属する若者だ。麻薬・紛争という社会が抱え続ける問題を彼らが一身に引き受けている。

 

再び閉ざされる未来、青年のその後

ウロが実家に戻り1年後に再び彼を訪ねると実家のコーヒー畑を手伝っていた。そこで私は嬉しい知らせを聞く。ある農業学校の奨学生に彼が合格したのだ。(中略)

 

夢を語る彼の姿は自信に満ちていた。

だが、その夢も閉ざされようとしていた。20181月にコロンビアで彼を訪ねると、やっと得た仕事が期間を延長されずに終了したという。次の仕事はその土地にはもうなかった。「またコカを摘むしかない」。ようやく差しかけた光を見失いかけていた。

 

「日本で仕事を探したい」という彼のメールが届いたのは、20182月に私が帰国して間もなくだった。(中略)

 

コロンビアから日本へ

(中略) 日本での1グラムあたりの末端価格が2万円以上とされるコカインは、その高額さから「セレブのドラッグ」と呼ばれているという。一方で、山岳部のわずかな土地を切り開きコカ栽培をする零細農家のひと月分の収入は、コロンビアの最低賃金と同程度の3万円前後。末端の生産者が必死に働きようやく手にすることができるのが、1グラムのコカインをわずかに上回る金額なのだ。

 

日本の薬物問題はコロンビアと直接関係はない。(中略)だが、両者は生産者と消費者という密接な関係で繋がっている。

 

テレビやインターネットでは、次々と話題にあがる薬物使用のニュースが日々消費されていく。だが、そんなこととは関係なく、コロンビアのある地域では今日も、明日の糧を得るためにコカの葉を摘む人々が汗を流している。【618日 WEDGE

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トランプ大統領の対メキシコ関税 両国間でぎりぎりの交渉 与党・政権内部にも異論

2019-06-07 23:42:04 | ラテンアメリカ

(国境を越え米国に入国したテキサス州エルパソで、息子を抱きしめる男性(2019516日撮影)【527日 AFP】 親子は、ひと月かけてグアテマラからメキシコを移動しこの地にたどり着いたそうです。)

 

【ぎりぎりの交渉が続く】

あちこちにケンカを売りまくっているトランプ大統領、中国・イラン・北朝鮮だけでは物足りないのか(あるいは、国民の注意を外にむけさせたい事情があるのか)、今度の相手はメキシコ。その影響は日本企業にも。

 

****不法移民対策でメキシコに関税 米政権、最大25%まで上乗せも****

トランプ米政権は30日、メキシコ国境から流入する不法移民を抑制する対策をメキシコに促すため、同国からの全ての輸入品に610日から5%の関税を課すと表明した。メキシコが有効な対策を取らなければ10月までに最大25%まで引き上げるとしている。

 

国境の管理についてトランプ政権はメキシコ側の対応に不満を募らせているが、不法移民対策として通商面で制裁的な関税を課すのは極めて異例。

 

導入されれば、両国経済だけでなく、メキシコで事業展開するトヨタ自動車や日産自動車など自動車大手を中心に日本企業にも大きな影響がありそうだ。【531日 共同】

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「タリフ(関税)マン」を自称するトランプ氏は531日、不法移民と麻薬の流入について「関税が止めてくれる!」とツイッターに投稿し、自信を示しています。

 

両国間で交渉は行われていますが、その進捗についてトランプ大統領は強い不満を表明しています。

 

****米メキシコ、移民巡る協議を6日続行へ トランプ氏「進展は不十分」****

トランプ米大統領は5日、移民や制裁関税の問題を巡りこの日行われたメキシコとの高官協議について、不法移民対策に関して十分な進展が得られなかったとの認識を示した。6日もワシントンで協議を続行する見通し。(中略)

欧州訪問中のトランプ大統領はツイッターに「移民問題を巡るメキシコ代表団とのきょうの協議は終了した。進展しているが、十分と言うには程遠い!」と投稿した。(後略)【66日 ロイター】

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トランプ大統領はフランス訪問中に「われわれは関税を発動するとメキシコに伝えたし、私は本気だ」とも。

 

最大の貿易相手国アメリカが関税を・・・・というのはメキシコ経済にとって死活問題にもなりますので、610日のタイムリミットを控えて、6日には移民流入防止のための2件の対応策が発表されています。

 

****メキシコ、米への不法移民支援した疑いで26人の銀行口座凍結****

メキシコは6日、対米国境で移民集団を組織した疑いのあるグループの銀行口座を凍結したと発表した。対象となったのは26人で、移民らの米国不法入国を支援した疑いがかけられている。(後略)【67日 AFP】

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****メキシコ、米との協議でグアテマラ国境に治安部隊派遣提案=関係筋****

メキシコは米国との協議で、移民流入阻止に向けてグアテマラとの国境に最大6000人の治安部隊を派遣することを提案した。関係筋が明らかにした。この情報は最初に米紙ワシントン・ポストが報じていた。(後略)【67日 ロイター】

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6日時点で、メキシコのロペスオブラドール大統領は「米国側の対応は非常に良い。彼らは対話を閉ざしていない。今日にも合意に達すると望んでいる」と、関税を回避できることを期待していると語っています。

 

ただ、今現在は何らかの合意が得られたという報道はまだ目にしていません。

 

アメリカ側の対応についても、異なる報道が。

 

****米国、メキシコ輸入品への関税適用の先送りを検討=通信社****

米国は、トランプ大統領が表明したメキシコからの輸入品への関税適用を先送りすることを検討している。ブルームバーグが6日、匿名の関係者の話として報じた。メキシコとの協議に時間をかけるためという。(後略)【67日 ロイター】
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また、“ホワイトハウスのナバロ大統領補佐官(通商製造政策局長)はCNNに対し、対メキシコ関税の予告だけで「メキシコの注意を引きつける」のに十分だったため、関税は発動されない可能性があるとの認識を示した。”【66日 ロイター】とも。

 

ホワイトハウスはこうした動きを否定しています。

 

*****対メキシコ関税、10日から適用という立場に変更ない=米報道官****

米ホワイトハウスのサンダース報道官は6日、メキシコが中米から米国に向かう移民を抑制するための措置を講じなければ10日から関税を適用するという米政権の立場は変わっていないと明らかにした。

サンダース氏は声明を発表し「現時点では、われわれは関税(の発動)に向かっている」と説明した。(後略)【67日 ロイター】
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両国とも、ぎりぎりの交渉中というところです。

 

【与党共和党・政権内部からも強い異論】

この問題が興味深いのは、対メキシコ関税が発動されればアメリカ経済に大きな影響を及ぼす「もろ刃の剣」になるとみられ、与党共和党でも異論が広がっていることです。

 

****トランプの対メキシコ関税、共和党「我慢の限界」****

<関税という警棒をむやみやたらと振り回す大統領に見識を示す時だ。今なら大統領の拒否権を覆すのに十分な票が集まるだろう>

ドナルド・トランプ米大統領が、メキシコ国境から不法移民が流入し続けていることに対する制裁として打ち出した対メキシコ関税は、議会共和党にとって「我慢の限界」になると、民主党のクリス・クーンズ上院議員は65日の朝、CNNで語った。大統領の言動については、以前から共和党議員も公式・非公式に懸念を表明していたという。

「共和党の多くの上院議員が内々に重大な懸念を表明している。大統領の行動、ロシア疑惑に関する特別検察官の報告書でわかった疑惑、大統領の司法妨害、などに関してだ」

クーンズによれば、共和党議員が「公然と」危機感を露わにした事件もある。昨年、サウジアラビアの反体制ジャーナリストだったジャマル・カショギが惨殺された事件でトランプがサウジアラビア政府の肩を持ったときは、共和党内からも批判の声が上がった。

 

また密接な関係にある同盟国の鉄鋼製品に関税をかけたことや環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を表明したことにも、十数人の共和党議員が「懸念なり疑念を表明した」という。

だが残念ながら、これまではトランプの暴走を「減速させることも、止めることも」できなかった、とクーンズは言う。

共和党は見識を示すべきだ
批判の多い対メキシコ関税の発動が「我慢の限界」となり、「関税という警棒をむやみやたらと振り回し、親密な同盟国さえ殴ってしまう大統領に、上院共和党が何らかの見識を示し、落ち着かせる」ことを期待していると、クーンズは述べた。

共和党の有力議員は、メキシコに関税の脅しをかけるトランプを強く批判している。(中略)


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日付けのニューヨーク・タイムズによれば、メキシコへの制裁関税の発動について、ホワイトハウスから説明を受けた共和党の上院議員はほぼ全員、反対を表明した。

テッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出・共和党)はホワイトハウスの弁護士チームに「賛成の声は1つもないと、(大統領に)伝えてほしい」と言ったという。メキシコへの関税は、実質的にテキサス州の企業と消費者に300億ドルの税負担を強いるに等しいと、クルーズは訴えた。

共和党のランド・ポール上院議員(ケンタッキー州選出)は4日、CNNに対し、関税発動を阻止するのに必要な共和党議員の票が集まる見込みだと語った。「たった1人の人間にこんな決定をさせてはならないと多くの議員が考えており、この件では大統領の拒否権をくつがえすのに十分な票が集まるだろう」

アイオワ州選出の共和党上院議員で、上院財政委員長を務めるチャールズ・グラスリーは先週、いち早く関税発動に異議を唱えた1人だ。「貿易政策と国境警備は別個の問題だ」と、グラスリーは述べた。「これは大統領の関税権限の乱用であり、議会の意思を踏みにじる暴挙だ」

こうした批判にもかかわらず、トランプは4日、関税発動を阻止しようとする共和党議員の動きは「ばかげている」と語った。

移民と貿易をごっちゃにするな
反対派は、関税を課せば輸入企業はコスト増に耐えきれず、製品の値上げに踏み切り、結局はアメリカの消費者にツケが回ることになる、と警告している。

 

NAFTA(北米自由貿易協定)の下で、多くの米企業がメキシコとの国境をまたいでサプライチェーンを構築した。そのため製品によっては、消費者の手に渡るまでに、何回も国境を行き来し、そのたびに関税がかかることになりかねない。

トランプ政権は目下、NAFTAに代わる新協定「米国・メキシコ・カナダ協定」の批准手続きを進めている。新しい自由貿易協定の成立を目指す一方で、関税を課すのは矛盾した決定であり、非生産的だと指摘されている。

 

トランプの脅しは協定を傷つけ、議会での批准をさらに難航させかねないと、共和党議員は警告している。

グラスリーとポールらは、大統領の職権乱用も問題にしている。貿易と移民政策は切り離して考えるべきで、トランプが国境における「危機」とみなす状況に対して関税カードを切るのは誤りだ、というのだ。

 

大半の共和党議員は、トランプの強硬な移民政策の多くを支持しているが、まったく異なる問題で制裁関税を課すことには強く反発している。【66日 Newsweek

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異論は政権内部にあるとも報じられています。

 

****トランプ氏の対メキシコ関税、主要2閣僚「蚊帳の外」=関係筋****

トランプ米大統領の対メキシコ関税は、ライトハイザー通商代表とムニューシン財務長官の主要閣僚2人が導入に難色を示したが、トランプ氏が両者のアドバイスを無視する形で計画を発表していたことが分かった。事情に詳しい複数の関係者が31日明らかにした。

ライトハイザー氏は、メキシコとカナダとの新協定について議会で承認を得るのが難しくなるとして、対メキシコ関税の導入に懸念を示していた。

 

しかし関係筋の1人よると、ライトハイザー氏とムニューシン氏はトランプ氏が関税導入を決めた際に「蚊帳の外」に置かれていた。

関係者2人によると、トランプ氏は過去にも対メキシコ関税に言及し、側近が思いとどまらせてきた。しかし今回はトランプ氏が側近の声を受け入れずに関税導入を決めたという。(後略)【63日 ロイター】

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交渉がうまくいかず関税を実施するとなると、経済面だけでなく、アメリカ国内政治においても大きな問題を惹起しそうです。

 

もっとも、与党共和党はこれまでも大統領に対する異論があった問題で、結局は「トランプ人気」に屈する形で黙ってしまった経緯もありますので、今回の問題でどこまで主張を貫けるのかは定かではありません。

 

【移民・難民発生をもたらしている根源的問題に関する議論は深まらず】

アメリカ入国を目指す移民は、問題となっているメキシコではなく、中南米出身者が中心になっているのは周知のとおりで、メキシコはその移民らの国内通行を許しているとトランプ大統領の怒りを買っています。

 

****米国境で拘束の移民、5月は10年超ぶり高水準 中米出身家族が多数****

米税関国境警備局(CBP)によると、メキシコから米国への入国を試みて拘束された移民の数は5月に13万2887人に達した。前月から約30%増加し、2006年3月以来の高水準となった。当局は移民の数は「危機的な」水準にあると懸念を示している。

これまで不法入国者は単身のメキシコ人が多かったが、現在は、すぐに本国に送還できないグアテマラやエルサルバドル、ホンジュラスなど中米出身の家族連れが多く、当局は対応に苦慮しているという。

5月に拘束された人のうち63%以上は子供や家族連れだった。

入国に必要な書類を準備していたが却下された人や、亡命を希望していたが入国が許可されなかった人の数は1万1391人で、前月から12%増加した。

5月に拘束された子供の数は5万5000人を超えた。収容施設は不足しており、テキサス州エルパソの収容施設は定員オーバーで「危険な」状態にあるという。【66日 ロイター】

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アメリカ側は中南米からの移民をメキシコ国内にとどめることを求めていますが、メキシコからすれば中南米とアメリカの間の問題の“とばっちり”を受けるようにも思えるところでしょう。

 

****米、移民希望者をメキシコ国内にとどめるよう要請=関係筋****

米国がメキシコとの移民対策に関して行っている協議で、メキシコに対し、米国への移民希望者を自国内にとどめると同時に、人身売買に対する監視強化などを求めていることが複数のメキシコ側の関係筋の話で明らかになった。(中略)

関係筋によると、米政府は関税措置の発動回避に向け、メキシコに対し中南米諸国からの米移民希望者に対するプログラムを迅速に拡大させるよう要請。このほか、中南米諸国からのすべての移民希望者に米国内ではなく、メキシコ国内で移民申請を行うよう求めている。

ただメキシコのエブラルド外相はこれまでに、米国がメキシコを「安全な第三国」に指定し、米国への難民申請者を移送してメキシコで保護するという案を米国側が提示しても拒否する考えを示している。(後略)【66日 ロイター】

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なお、実際に関税がかけられると、メキシコ経済が景気後退を起こすことも考えられ、そうなるとメキシコからの移民も発生する事態ともなります。

 

そうこうしている間にも、あらたなキャラバンの動きも出ているようです。

 

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中米各国から米田を目指す新たな「キャラバン隊」が発生しそうな雲行きになっている。

 

国連が五月に発表したところによると、豪雨と口照りが交互に各国を襲ったことでグアテマラなど中米四力国では農作物収穫量が例年の半分に落ち込んだ。そのため困窮した農民などが各国に溢れている。

 

トランプ大統領はキャラバン隊を批判することで支持率に結びつけており、今回も追い風となりそうだ。【「選択」6月号】

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ぎりぎりの交渉は続いていますが、難民発生を引き起こしている中南米諸国の問題をどうするのかという本筋の議論は深まっていない(と言うか、アメリカ側があまり関心を払っていない)ようです。

 

“メキシコ政府筋によると、米国との協議でメキシコ側は、安全保障関連対策のために米国がメキシコに供与している資金をメキシコ南部やグアテマラの経済発展を推進するために使い、移民の根本的な原因の解決に取り組むことを提案している。”【66日 ロイター】といった話はあるようですが。

 

ついでに「壁」建設のための資金もその方向で使えば、もっと効果的かも。

 

単に壁やメキシコ側の対応で移民・難民を押しとどめればそれで問題解決という訳でもないでしょう。

その結果、行き場を失う大勢の人々が発生します。自国に戻っても職はなく、あるのはギャング支配だけ。

 

壁に囲まれた自分たちの楽園を守れれば、それでいいのか?という話も。

無秩序な大量流入は困るものの、アメリカ経済も移民労働を必要としている側面もあります。そのあたりで、折り合いがつく方策はないのでしょうか?

 

移民・難民にならざるを得ない人々の窮状にはあまり目が向けられることなく、単に移民の流れを押しとどめるという観点だけで議論が進んでいるようにも見えるのは残念です。

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ベネズエラ  しぶといマドゥロ政権 クーデター失敗でアメリカの介入にすがる反政府勢力 

2019-05-14 23:05:54 | ラテンアメリカ

(ベネズエラ北西部コヘデス州エルパオの軍施設で、兵士らと行進するニコラス・マドゥロ大統領(中央)とブラディミル・パドリノ国防相(中央右)。大統領府提供写真(201954日撮影)【55日 AFP】)

 

【クーデター失敗で圧力を強めるマドゥロ政権】

べネズエラでは430日、暫定大統領就任を宣言した野党指導者のグアイド国民議会議長が、マドゥロ大統領政権の打倒を掲げ、軍に決起を促すとともに国民にも抗議行動を呼びかけ、国内各地で治安部隊と市民らの衝突がありましたが、大規模な軍の政権離反は起きず、“クーデターは失敗した”との評価が一般的です。

 

その後の流れを記事見出しで見ると以下のようにも。

総じて、マドゥロ大統領側が事態を掌握し、反政府勢力に対する圧力を強めている状況がうかがえます。

 

“マドゥロ大統領が空軍基地視察 軍掌握をアピール ベネズエラ”【53日 毎日】

“ベネズエラ、蜂起の市民ら18人に逮捕状請求”【55日 読売】

“ベネズエラ大統領、「米国の軍事介入に備えよ」 兵士らに指示”【55日 AFP】

“ベネズエラ、野党議員の逮捕状を請求中 特権取り消しへ”【56日 朝日】

“ベネズエラ、元国会議長ら捜査へ 反逆容疑で、米は圧力”【58日 共同】

“反体制派の国会副議長拘束=「クーデター未遂」関与で―ベネズエラ”【59日 時事】

“ベネズエラ、対ブラジル国境再開”【511日 時事】

“グアイド氏派の副議長を軍事刑務所に収容 ベネズエラ”【511日 AFP】

 

国民に多大な犠牲を強いる失政を続けるマドゥロ政権ですが、軍部の支持のものとで、これまでも“じぶとく”権力を掌握してきました。

 

これまでも何回も取り上げたように、単に失政がある、国民不満が大きいというだけでは強権的支配はなかなか覆らないという見本のようでもあります。

 

【マドゥロ氏の力を過小評価していたグアイド氏とアメリカ】

そして、1月以来のグアイド氏の“決起”は、アメリカ・トランプ政権の後押しを受けてのものでしたが、今までのところ、“しぶといマドゥロ政権”という構図を変えるには至っていません。

 

「野党指導者の力量を米国が過大評価している」「反対勢力がマドゥロ氏の力を過小評価していた」との指摘も。

 

****こう着状態のベネズエラ、打開策は限定的 米軍事介入の可能性は?****

南米ベネズエラの首都カラカスで430日に発生した軍の蜂起は、瞬く間に終息に向かった。

だが、ニコラス・マドゥロ大統領に残された時間はごくわずかだと米国は主張する──。

 

こうした状況について専門家らは、野党指導者の力量を米国が過大評価しているとしながら、長期化したこう着状態を打開するための選択肢は限られていると指摘する。

 

米国を含む50か国以上から、暫定大統領就任への承認を得ている野党指導者のフアン・グアイド国会議長は430日、カラカスの空軍基地で「勇敢な兵士」の一団から支持を得たと声を挙げた。この直後、政権に対する抗議デモが発生したが、マドゥロ氏がこれを鎮圧するまでにはそう時間はかからなかった。

 

これを受ける形で、マイク・ポンペオ米国務長官は1日、「軍事行動もあり得る」とベネズエラ政府をけん制した。

 

しかし、米国は過去3か月にわたってすでに、広い範囲を対象とした経済制裁を同国に科している。ベネズエラ政府にとって命綱である国営石油会社もその対象だ。

 

中南米地域における民主主義を後押しする「インターアメリカン・ダイアログ」のマイケル・シフター会長は、「反対勢力がマドゥロ氏の力を過小評価していたのは明らかだ。マドゥロ氏は抗議活動による相当な圧力に持ちこたえる能力がある」と述べた。(後略)【53日 AFP】

 

【トランプ政権の思い描くシナリオどおりには進まない現実】

グアイド氏は暫定大統領就任を宣言する以前から米トランプ政権と連絡をとっていたとの報道もありますので、同氏の決起、その後の展開はアメリカ・トランプ政権の描くシナリオに沿ったものでもあるでしょう。

 

あわよくばベネズエラらと結託するキューバも巻き込んで一網打尽に・・・という思惑もあるのでしょう。

 

ただ、状況は思い描いたようには進んでいません。

「軍事行動もあり得る」とのトランプ政権ですが、今は対外的問題だけでも中国、イラン、さらに北朝鮮の問題を抱えており、それらに比べてアメリカにとってのベネズエラの重要性・緊急性は劣後するでしょう。

 

また、仮に軍事介入すれば、アメリカの軍事行動に強いアレルギーを有する南米諸国の強い反発を招くという問題もあります。

 

そこらを考えると、アメリカが自らの血を流す覚悟でベネズエラに関与するとも思えません。

 

****ベネズエラ危機、独裁打倒の失敗とアメリカの無責任****

<グアイドの反政府デモは今回も不発 軍事介入をにおわせつつ何もしない米政府の罪>

始まりはサプライズだったが、終わりは今までどおりの尻すぼみ。ベネズエラの独裁政権打倒はならず、例によってトランプ米政権は、全てはキューバとロシアのせいだとかみついた。

それは430日の早朝だった。野党指導者で国会議長のフアン・グアイド(1月に暫定大統領への就任を宣言している)は、軍人や有力な野党政治家レオポルド・ロペスらを従えて軍隊に決起を呼び掛け、共にマドゥロ政権と戦おうと訴えた。

(中略)市民による大規模なデモ行進も、軍幹部の離反も現実には起こらなかった。

そしてグアイドによる動画公開から半日もたたないうちに、今回の「決起」は急速に勢いを失っていった。その後はさまざまな臆測が飛び交い、非難の応酬があり、ホワイトハウスは強硬姿勢を取り、ロペスとその家族はスペイン大使館に保護を求める羽目になった。

マドゥロ政権打倒を目指してグアイドが決起を促したのはこれが3回目。そして反政府運動自体はウゴ・チャベスが大統領選に勝利した98年直後から続いている。(中略)


今年1月に暫定大統領に就任すると宣言し、多くの外国政府から支持を受けているグアイドも、(街頭行動で軍の政権離反を促すというチャベス時代の反政府行動と)同じシナリオを描いて行動した。

 

まず、暫定大統領就任でマドゥロ政権の分断を狙った。それが失敗に終わると222日には人道支援を呼び掛け、コロンビアからの支援物資の搬入を試みた。いずれも、軍上層部や政権内部からの離反を期待したものだった。

この数年でベネズエラで最も信頼され、動員力のある民主的な指導者による政権打倒の挑戦は、果たして失敗だったのだろうか。

 

これまでも多くの反政府指導者が、市民の期待を膨らませるだけで成果を上げられず、揚げ句に戦略や指導力をめぐる内紛を起こして消えていった。グアイドも現時点では、彼らの失敗例と何ら変わるところがないように見える。

そこで背景に浮かび上がってくるのが、アメリカの政策だ。トランプ政権は、腐敗や不正、人権侵害などを理由に、マドゥロ政権の圧政への関与が疑われる個人を対象にした国際的な制裁を主導している。

 

今のところ約500600人が対象とみられており、アメリカ入国に必要なビザの発行禁止や、資産凍結などを行っている。

 

グアイドの暫定大統領就任による政権打倒が失敗に終わると、石油の禁輸を行い、ベネズエラ中央銀行を制裁対象に加え、マドゥロ政権を支援するキューバへの渡航制限強化を発表した。

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カ国封じ込めの一環
ジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、中間選挙を翌週に控えた昨年111日に、フロリダ州マイアミで演説を行った。そこはベネズエラやキューバからの移民が多い場所だった。

このとき以来、トランプ政権は対ベネズエラ政策と対キューバ制裁強化を関連付けるようになった。これは、ボルトンが「暴政のトロイカ」と呼ぶキューバとベネズエラ、ニカラグアの3カ国に対する広範な封じ込め政策の一環だ。

キューバとベネズエラを同時に締め付ければ、キューバはマドゥロ政権への支援をやめるだろう、そしてベネズエラの政権が代わればキューバへの石油供給は止まり、宿敵キューバの政権は沈没する。ボルトンらはそんなシナリオを描いていた。

だが、それは願望にすぎない。両国に圧力をかけることと、それぞれの国で政治的な変化が起きることの論理的なつながりはどこにも明示されていない。

キューバ経済を痛めつけ、革命後に接収された米企業の資産に投資する第三国企業への訴訟提起をちらつかせるといった制裁を強化すれば、苦しくなったキューバは一段とベネズエラにすり寄るかもしれない。

一方でベネズエラに対する原油の禁輸や腐敗官僚の資産凍結などを進めれば、困ったマドゥロ政権はキューバの軍事顧問団への依存を強めるだけだ。

 

キューバ以外の、やはり強権的な体制の国々にもすがるだろう。現に中国からは50億ドルの融資を受けた。ロシアからは軍事顧問100人を受け入れている。トルコはマドゥロ政権の金資産売却に手を貸している。イランの支援もあるはずだ。

制裁は切り札にならない
一方で、制裁がアメリカ政府の強力な切り札となったためしはない。制裁強化が政権転覆につながる理屈は示されていない。相手国を経済的に苦しめれば市民が一斉に蜂起し、エリート層が寝返って政権交代を促すという保証はどこにもない。

過去の例を見ても、制裁の強化で政権交代が実現した例はない。制裁強化を通じてベネズエラで平和的な民主化を実現するというシナリオは、論理的にも歴史的にも信憑性を欠く。

それでも4月末の蜂起が失敗に終わると、ボルトンはまたぞろマドゥロ政権を非難した。トランプはベネズエラ国内にいるキューバ顧問団を悪役に仕立て、対キューバ制裁のさらなる強化をちらつかせた。顧問団が残虐かつ無能なマドゥロ政権の存続に絶大な役割を果たしていると言いたいらしい。

 

一方で国務長官のポンペオは、追い詰められたマドゥロの国外脱出をロシアが制止したと語ったが、そうした形跡は確認されていない。

この間、トランプ政権は一貫して政権転覆を支持する姿勢を強調し、「あらゆる選択肢」を検討していると繰り返し、ベネズエラ国民の期待を高めてきた。

 

マドゥロ政権がまだ健在なことを認めた430日の記者会見でも、ボルトンは同じせりふを繰り返した。しかし、これでは「アメリカが助けに来てくれる」という期待をいたずらに膨らませるだけだ。

数々の専門家や関係者が指摘していることだが、アメリカが軍事介入することは政治的にも戦略的にも無謀過ぎる。米軍の幹部でさえ、軍事的選択肢は現実的でないとみている。

ホワイトハウスが強硬なのは口先だけだ。反政府勢力を軍事的に支援する具体的な計画は存在しない。それでもトランプ政権は威嚇を続け、反政府勢力に「いつかアメリカが助けに来る」という非現実的な希望を抱かせる一方、マドゥロ政権には「アメリカの軍事介入は近い」と内外の支援者に訴える口実を与えてしまっている。

中南米の現代史上最悪の人道危機を招いたマドゥロは、依然として権力の座にあるが、民衆の抗議と一部兵士の離反で足元が揺らいでいる。(中略)

こうして政権基盤が揺らいできても、あいにく政権交代には至っていない。とはいえマドゥロ政権の不確実性ともろさが露呈したのも事実。幹部の更迭や粛清もあり得る。同じことは、蜂起に失敗した反政府側にも言える。

 

しかし悲しいかな、アメリカの姿勢だけは変わりそうもない。失敗は明白なのに。【59日 Newsweek
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トランプ政権が“都合のいい”シナリオを思い描いて動いているというのは事実でしょう。(対イラン、対中国でも同様ですが)

 

“制裁の強化で政権交代が実現した例はない”・・・・そうかも。

ただ、ではどうすればいいのか? 軍事介入しかないのか?・・・という話にもなり、答えのわからないところです。

 

【“アメリカ頼み”を強めるグアイド氏だが・・・・】

“「アメリカが助けに来てくれる」という期待をいたずらに膨らませる”・・・“期待”というより、もはやアメリカに頼るしかないという“追い詰められた状況”がグアイド氏側の実情のようにも。

 

****ベネズエラ野党、米軍に協力を要請へ ****

政情混乱が続く南米ベネズエラの野党陣営は11日、米軍に協力を要請すると発表した。野党指導者のグアイド国会議長はこれまで米国の軍事介入を受け入れると発言しており、さらに一歩踏み込んだ。

 

軍人への蜂起呼びかけが不発に終わったことで追い詰められつつある中、米国の軍事力に頼ることで事態打開を狙うが、国内外の反発も大きく、実現は不透明だ。

 

11日、カラカスで開いた反政府デモでグアイド氏が演説し、自身が米国に送り込んだ「大使」に対し、米軍の中南米を管轄する米南方軍司令官と会談するよう指示したと明らかにした。「直接的で、広範囲に及ぶ協力関係を設立する」と説明している。

 

グアイド氏は既にメディアを通じ、「もし米国が軍事介入を提案したら私は受け入れるだろう」と発言している。足元でマドゥロ政権が野党議員の不逮捕特権剥奪や身柄拘束で攻勢を強めており、野党陣営は厳しい状況に立たされている。後ろ盾となっている米国の軍事力を盾に、政権をけん制する狙いとみられる。

 

もっとも、グアイド氏はこれまでマドゥロ政権の命令に従い国民を弾圧するベネズエラ軍に対し「政権の犠牲者だ」と説明してきた。仮に軍事介入を要請することになれば米軍に自国の軍を攻撃するよう求めることになるため、これまでの発言との整合性を問われることとなる。

 

軍事介入の実現には高いハードルが残る。トランプ米大統領はこれまで「全ての選択肢はテーブルの上にある」と述べ軍事介入を排除しないとしてきたが、米国内にも反対する声は大きい。グアイド氏を支持する欧州や中南米の周辺国も軍事介入には明確に反対する。【512日 日経】

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****グアイド国会議長、米軍からの支援を模索か 米南方軍との協議要請****

 政情不安が続く南米ベネズエラの反マドゥロ派のグアイド国会議長は13日、これまで以上に米国からの支援を求める姿勢を明らかにした。

 

グアイド議長が駐米大使に指名したカルロス・ベッキオ氏は13日に公開された書簡の中で、米南方軍とグアイド議長側の代表者との間での協議を要請した。書簡は米南方軍のファラー司令官にあてたものとなっている。同司令官はかねてグアイド議長の行動を支持する考えを明らかにしていた。

 

ベッキオ氏は書簡の中で、「戦略的な計画立案を歓迎する」と指摘。そうすることで、ベネズエラ国民への憲法上の義務を果たすことができるようになるとしている。ただ、軍事行動を明確に求めることはなかった。

 

米国はここ数カ月、グアイド議長支持に向けた軍事行動の可能性について排除していない。

グアイド議長については、米国をはじめとする50カ国以上が正統な大統領と認めている。

 

ベネズエラ国内で定期的に開催される全国規模の抗議活動にも停滞の動きが見えており、グアイド議長は変革に向けた新しい戦略を模索し始めている。

 

マドゥロ政権側は今回の書簡を一蹴。ロドリゲス副大統領は「ベネズエラへの軍事介入を要請すること」は国の不安定化を目指す試みだと指摘した。【514日 CNN】

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こういう「小国」の助けを求める声に「大国」が動くというのは、非情な国際関係にあってはあまり現実性はないように思えます。ましてや損得勘定で動くトランプ大統領は・・・(国内選挙対策として、中国・イラン・北朝鮮はどうにもならいけどべネズエラなら・・・という話なら別ですが)

 

一方、マドゥロ政権側には弾圧の格好の口実を提供することにもなります。

 

カリスマ性のある反政府指導者として期待したグアイド氏ですが、状況は次第に厳しさを増しています。

 

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ブラジル  極右ボルソナロ大統領のもとで“どうなる、ブラジル?”

2019-04-27 21:58:59 | ラテンアメリカ

(米ホワイトハウスのローズガーデンで共同記者会見を行ったドナルド・トランプ米大統領(右)とブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領(2019319日撮影)【320日 AFP】 似た者同士の二人です)

 

【多様性強調がお気に召さなかった?】

「ブラジルのトランプ」「ブラジルのドゥテルテ」とも称されるブラジルの極右・元軍人のボルソナロ大統領ですが、就任前から懸念されたように、下記の報道が示すものは今後のブラジルにとって深刻な問題となるように思えます。

 

****ブラジルの多様性を強調したCM、極右大統領の要請で放映中止に****

ブラジルで今月1日から放映されていた多様性を強調したブラジル銀行のCMが、極右のジャイル・ボルソナロ大統領の要請を受けて14日に放映中止になっていたことが分かった。ブラジル銀行が26日、明らかにした。

 

このCMは若い顧客を呼び込むことを意図したもので、黒人と白人、心と体の性別が一致しないトランスジェンダー(性別越境者)、タトゥーを入れたり、髪を染めたりしている俳優らが、陽気な音楽に合わせてセルフィー(自撮り写真)を撮る中、ナレーションでオンライン口座の開設方法を説明する内容だった。

 

有色人種はブラジル人口の大多数を占めているにもかかわらず、広告に起用される例は少ない。

ブラジル銀行のルベン・ノバエス頭取は、「大統領と、このCMを放映中止にすることで合意した」ことを発表したが、理由については詳細を明らかにしていない。また、同銀行のマーケティング部長が辞任した件については、双方で話し合った上でのことだと説明している。

日刊紙グロボによると、ボルソナロ氏はノバエス氏に直接連絡し、CMの放映中止を求めたという。

大統領による今回の干渉をめぐっては、多方面から批判の声が上がっている。 【427日 AFP】

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ボルソナロ大統領はCMのどこが気にいらなかったのでしょうか?

ブラジルは、LGBTなどは否定するキリスト教徒白人の国家だ・・・ということでしょうか?

 

【「あの人にレイプする価値がないのは、あの人がとても醜いからです」】

ボルソナロ大統領の“過激な”あるいは“偏向した”発言は大統領選挙戦の間も話題になっていましたが、そうした考えは就任後も変わらないようです。

 

****「ご存知の通り、私は拷問賛成派です」“ブラジルのトランプ”語録が過激すぎる****

(中略)一方、ボルソナロは軍政時代を肯定する言動や女性蔑視・同性愛嫌悪・人種差別の発言が問題視されてきた。以下は物議をかもした彼の語録である。


拷問

「ご存じのとおり、私は拷問賛成派です。国民も拷問賛成派です。この国では投票で何かを変えることなどできません。投票では何一つ変えられません。変えられるとしたら残念ながら内戦が始まってからです。

軍事政権がやらなかったことをやらなければなりません。3万人くらい殺してね。手始めにフェルナンド・エンリケ・カルドーゾ大統領(当時)からです。無実の人が死ぬこともあるでしょうが、それはやむをえません」(1999年テレビ局「バンデランテス」のインタビュー)(中略)


同性愛

「同性愛の子供を愛するなんて無理です。偽善者にはなりたくありません。自分の息子が口髭をたくわえたムキムキの男と一緒に現れるくらいなら息子に事故死してほしいです。どちらの場合でも私にとって息子が死ぬことに変わりありませんからね」(2011年の『プレイボーイ』誌のインタビュー)

 

レイプ

「私はあなたをレイプしません。あなたにはその価値もありませんから」

2014年、左派の議員マリア・ド・ロザリオに対するブラジル下院での発言。ボルソナロはその後、「ゼロ・オラ」紙の取材を受けて、自分の発言をこう説明した。「あの人にレイプする価値がないのは、あの人がとても醜いからです。タイプではないんです。私があの人をレイプすることは絶対にありえません。私はレイプをするような人間ではありませんが、仮にそうだったとしても、あの人にはその価値がないんです」)

 

女性

「ブラジルの起業家の世界を見ると悲しくなります。労働関連の法律が多すぎるこの国では、会社経営者になると災難なのです。起業家が若い女性従業員を見て、何を思うか知っていますか。『なんてことだ。この女性は指輪をしているぞ。どうせ妊娠して6ヵ月の産休だ』と思うわけです。産休の費用を払うのは誰ですか。雇用者ですよね。

最終的には社会保障から出ますが、それでも仕事のリズムが崩れてしまうわけです。その女性がようやく職場に復帰したと思ったら、またすぐに1ヵ月のバカンスをとるわけです。結局、その年は5ヵ月しか働かないのです」(201412月の「ゼロ・オラ」紙のインタビュー)

 

宗教

「神は万物の上におられます。この国に世俗的国家の歴史などありません。この国はキリスト教の国家です。嫌なら出ていけばいいのです。少数派は多数派に従わなければなりません」(2017年、パライバ州の集会での発言)

 

人種

「この前、キロンボ(アフリカ系逃亡奴隷が作ったコミュニティ)に行ってきました。そこに住むアフリカ系の子孫たちは、体重がいちばん軽い人でも7アローバ(約100㎏)ありました。そんな人たちが、何もせずにダラダラしているんです。子孫を残す役にも立たないと思ってしまいました。

そんな人たちに年間10億レアルを超える額が使われているんです。(私に権限があったら)先住民やキロンボのための土地は1センチも与えません」(2017年、リオデジャネイロのユダヤ系団体のイベントでの発言)

 

どうなる、ブラジル?【20181027日 クーリエジャポン】
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“どうなる、ブラジル?”・・・・どうなるのでしょう。

 

【支持率35%は“岩盤支持層”?】

確かに人には自分と異なるタイプのものに対する拒否感・嫌悪感といったものはあります。

しかし一方で、そうした感情が自分勝手なもので、他人・相手にはまた別の立場・考え・価値観もあり、それは尊重しなければならないという理性的判断もあります。

 

ボルソナロ大統領のような人の場合は、そうした理性によるブレーキが外れており(そうしたブレーキは“ポリティカル・コレクトネス”として軽蔑の対象となります)、感情のおもむくままに発言・行動することになります。

 

そして、これまで政治・社会から多くの恩恵を受けてこなかったと感じる多くの国民がそうした“正直な発言・行動”に共感を抱き、政治的に支持することになります。

 

かつては、そうした共感は酒を飲みながらの与太話や、ネット上の匿名のうっぷん晴らしに限られていたのが、今は大ぴらにその共感を表明してかまわない・・・という空気になっています。(そうした空気の変化を大きく推し進めたのがトランプ大統領でしょう)

 

ボルソナロ大統領の国民支持については、以下のようにも。

 

****ボルソナロ政権 支持35%、不支持27****

ブラジル世論調査・統計機関(Ibope)は24日、ジャイル・ボルソナロ氏(PSL=社会自由党)が今年11日に大統領に就任してから初めて、全国工業連合(CNI)の要請によって同機関が実施した世論調査の結果を公表した。

 

同日付で伝えた伯メディアによると、201941215日に全国の126の自治体で実施、市民2000人から話を聞いた同調査では、回答者全体の35%がボルソナロ政権について「非常に良い/良い」と評価した。「普通」と答えたのは31%、「非常に悪い/悪い」との回答は27%、「分からない」および無回答は7%だった。

同機関は今年3月、全国工業連合の依頼を受けずに行った大統領の支持・不支持に関する調査の結果を発表した。その調査では回答者全体の34%が「非常に良い/良い」と回答、「普通」は34%、「非常に悪い/悪い」は24%、「分からない」および無回答は8%だった。

同機関によると、ボルソナロ大統領に対する市民の評価は、大統領就任(1期目)後の最初の3月のものとしてはフェルナンド・コロル氏以降の歴代大統領の中で最も低い。

 

歴代大統領の就任3カ月目の支持率は、19903月に大統領に就いたコロル氏は45%、951月に就任したフェルナンド・エンリケ・カルドゾ氏は41%、031月就任のルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ氏は51%、そして111月就任のジルマ・ルセフ氏は56%だった。

今回の調査ではどれだけの市民がボルソナロ大統領に信頼感を抱いているかについても探った。結果は「信頼している」が51%、「信頼していない」が45%、「分からない」および無回答が4%だった。【425日 サンパウロ新聞】

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歴代大統領の中で最も低い”ということではありますが、3月調査でも4月調査と同じような数字であり、このあたりの数字がボルソナロ氏の“岩盤支持層”を示すものなのかも。

 

アメリカ・トランプ大統領でもわかるように、“岩盤支持層”の支持は、個々の政策の評価やスキャンダルなどではほとんど動きません。

 

【“ウマが合う”トランプ大統領】

当然のように、ボルソナロ大統領とトランプ大統領は“ウマが合う”ようです。

 

****米ブラジル首脳、協力強化で合意=将来のNATO加盟も****

トランプ米大統領は(3月)19日、ブラジルのボルソナロ大統領とホワイトハウスで会談し、外交や経済分野の関係強化で合意した。トランプ氏は会談後の共同記者会見で、安全保障面の協力拡大に向け、ブラジルが将来、北大西洋条約機構(NATO)に加盟する可能性に言及した。

 

トランプ氏は会見で、ブラジルを「NATO非加盟の主要同盟国」に位置付けると表明した上で「NATO同盟国となる可能性も考えられるかもしれない」と付け加えた。中南米諸国はNATOに加盟しておらず、どういう形の同盟関係を想定しているかは明らかでない。

 

会談冒頭、両首脳は互いの名前を記したサッカーのユニホームを交換。ブラジルで左派政権が続き、長く疎遠だった米ブラジル関係の再構築を目指す姿勢をアピールした。

 

極右のボルソナロ氏は昨年の大統領選で、インターネット交流サイト(SNS)を駆使する発信手法や攻撃的発言で、トランプ氏になぞらえられた。【320日 時事】

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フランス外務省副報道官は“NATO設立を定めた北大西洋条約は「地理的な適用範囲を(北大西洋地域に)明確に定めている」と指摘し、可能性を否定した。”【320日 時事】とのこと。「冗談じゃない!」といったところでしょう。

 

アマゾンに関しては、環境保護とか先住民権利とかいいたものの制約を外して開発を推し進めるというのが、ボルソナロ大統領の考え方ですが、このあたりでもトランプ大統領と共鳴しています。

 

****ブラジル大統領、アマゾン地域で「米国と共同開発望む」****

ブラジルのボルソナロ大統領は8日、トランプ米大統領に対し、ブラジルのアマゾン地域の共同開発プログラムへの米国の参加を望んでいると伝えたことを明らかにした。詳細には言及しなかった。

 

ボルソナロ氏はラジオ局Jovem Panのインタビューで、アマゾン地域の先住民族保護区の画定を改めて批判し、地域の開発を妨げるとして法的に無効にする可能性を示唆した。

ボルソナロ氏は3月にワシントンを公式訪問している。

 

同氏はアマゾン地域などで鉱業への土地開放を進めるべきとの考えで、道路整備などインフラ改善を支持しているが、環境保護団体は、一段の森林破壊を招く恐れがあるとして反対している。【49日 ロイター】

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ボルソナロ大統領とトランプ大統領のタッグというのは、怖いものがあります。

 

「悪い奴らはどんどん殺せ!」といった考え方もトランプ大統領やフィリピン・ドゥテルテ大統領と共通するものです。

 

****ブラジル警察、窃盗団11人を射殺=大統領「いい仕事した」****

ブラジル・サンパウロ市東方のグアラレマで4日未明、銀行の現金自動預払機(ATM)を爆弾で破壊して現金を奪おうとした武装窃盗団と警官隊の間で激しい銃撃戦が発生し、窃盗団11人が死亡した。

 

容疑者は少なくとも25人。自動小銃で武装し、警察署に隣接した銀行と、約300メートル離れた別の銀行の襲撃を計画していた。事前に察知していた州警察が特殊部隊で迎え撃ったという。
 

ボルソナロ大統領は「11人の悪党が死に、罪のない人は誰一人傷つかなかった。いい仕事だった」と警察をたたえた。【45日 時事】

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また、極右と言われるだけに“左翼”嫌いで、独自の考えを有しているようです。

 

****ブラジル大統領「ナチスは左翼」=訪問のイスラエル側と別見解****

イスラエルを訪問したブラジルのボルソナロ大統領は2日、ヒトラーが率いたナチス党について正式名(国家社会主義ドイツ労働者党)を根拠に、左翼運動だったことは「間違いない」と述べた。

 

エルサレムのホロコースト記念館(ヤド・バシェム)を視察後、記者団に語った。軍人出身で極右の大統領は強硬な反共・反社会主義者として知られる。

 

記念館側はナチスの勃興について「ドイツでは(第1次大戦敗戦の)不満と共産主義の脅威が急進的右翼集団台頭の温床となり、ナチス党などを生んだ」と説明。「人種的な反ユダヤ主義などと反共産主義が結びついた」としており、左翼とする大統領の考えとは相いれない。【44日 時事】 

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思いがけず日本が引き合いに出される発言も。

 

****「大統領と大臣は無知」 ブラジルで教育改革巡り論争****

南米ブラジルのボルソナーロ大統領は26日、自身のツイッターで、国公立大学での哲学や社会科学分野への予算削減の計画を明らかにした。教育相は、日本を例に挙げ、「役に立つ学問」への資金投入の必要性を説明。

 

研究者らは「大統領と大臣の無知が明らかになった」と反発している。

 

ボルソナーロ氏は計画について、「獣医学、工学、医学のような社会にすぐに還元される分野に予算を集中させるのが目的だ」とし、「政府の役割は、納税者のお金を大事にすることだ」とツイートした。

 

「社会を改善し、家族がよい生活を送れるように、若者には読み書き計算を教え、その後に収入につながることを教えるべきだ」ともつづった。削減額は決まっていない。(中略)

 

日本では2015年、国立大学の人文社会科学系学部について「廃止や社会的要請の高い分野への転換」をうながす文科相通知が出され、強い批判を招いた。(中略)

 

ボルソナーロ氏は大統領就任前、「ブラジルの教育機関に浸透したマルクス主義のゴミと闘う」などと述べ、教育改革を進めると表明していた。【427日 朝日】

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このあたりは、日本政府の本音をストレートに表現したものでしょう。

 

【無責任な言動の犠牲になるキューバ人医師2500人】

思いつきで発言するボルソナロ大統領の無責任さを示すものとしては、下記のような話も。

 

****「ブラジルのトランプ」に騙された2500人のキューバ人医師****

昨年大統領選に立候補し、「ブラジルのトランプ」の異名をとったジャイル・ボルソナロはブラジルに派遣されているキューバ人医師が報酬の25%しか受け取れず、75%はキューバ政府の歳入になっていることを批判。

 

それはあたかもキューバの独裁者の奴隷のようなものだと指摘。彼が大統領になった暁には、キューバ人医師がブラジルの医師試験をパスすれば同国で医師として働くことができて、しかも報酬はすべて医師に支払われると公約していた。(中略)

 

ボルソナロのキューバの政治体制と医師派遣制度を痛烈に批判した姿勢を前に、キューバ政府は自国のプライドを傷つけられたと感じて、即刻ブラジルから医師団の撤退を決定。

 

ボルソナロが大統領に就任する今年11日までにブラジルで医療活動をしている全ての医師に対しキューバに引き揚げることを指示。その為にキューバ政府は帰国させる為の飛行機も手配した。

 

キューバ人医師の間では、ボルソナロが公約していた報酬の全額を稼ぐことが出来るということと、更に自由のないキューバに戻るよりもブラジルに残った方が生活の向上も図ることができると考えて、ブラジルに在住していた8332人のキューバ人医師の内の凡そ2500人がキューバ政府の指示を無視してブラジルに留まることを決定したのである。その一部の医師は家族も呼び寄せた。(参照:efe.com

 

ところが、3か月が経過した現在、ボルソナロが公約したことは全く守られておらず、残留したキューバ人医師の大半が職場を失い収入がなく生活に困っているという状態に陥っているのである。(参照:elnuevoherald.com

 

キューバ人医師が抜けたこともあって、ブラジル政府は新たに8517人の医師を募った。ところが、採用されたのはブラジル人医師だけであったという。

 

まだ、過疎地の800のポストが埋まっていないが、キューバ人医師がそれに応募しようとしても、医者の資格などを証明する書類をキューバから取り寄せねばならないことになっている。キューバを脱出した彼らがそれをキューバの関係当局に申請してもそれを手に入れることは困難である。

 

当初、ボルソナロはブラジルの医師の試験をパスするだけで医療活動をすることが出来ると言っていたのだ。キューバから医師の資格証明書などを取り寄せる必要性などには全く触れなかった。(後略)【415日 白石和幸氏 アゴラ】

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ボルソナロ大統領としては単にキューバを批判したかっただけで、その後左翼国家キューバの人々がどうなろうが知ったことではないのでしょう。

 

上記のような言動にかかわらず、おそらく今後のボルソナロ大統領の支持を左右するのは、経済動向でしょう。

景気さえよくなれば、多くの国民は上記のような言動にはあまり関心を払わない・・・というのも現実です。

 

 

 

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ブラジル  “ブラジルのトランプ”と評されるボルソナロ大統領 正念場は年金改革

2019-03-13 23:21:52 | ラテンアメリカ

(下院議長に年金改革法案を手渡すボルソナロ大統領(左)【2月21日 日経】)

【泡沫候補から一転、大統領に 背景には「今までの通りではだめだ」との国民の不満】
昨年10月のブラジル大統領選挙で、女性・黒人・同性愛者への差別的発言を繰り返し、軍事政権時代を評価する発言もする“ブラジルのトランプ”とも呼ばれるジャイル・ボルソナロ氏が、当初の泡沫候補扱いから一転、勝利に至ったことは周知のところです。

****ジャイール・ボルソナーロ****
2017年、連邦裁判所はボルソナーロにリオデジャネイロでのイベントでのアフリカ系民族に対する人種差別的な発言の咎で50,000レアルの罰金(16,000ドルを超える)の支払いを命じる判決を下した。
しかし、数日後、彼は 「黒人は繁殖する役割ではない」と述べた。

その年の8月、同じように左派労働党(PT)のマリア・ドゥ・ロザリオ下院議員に10,000レアルの支払いを命じる判決が下された。この女性はボルソナーロの様々なメディアのインタビューに飛び入り、若い夫婦を誘拐し、レイプして殺した16歳の少年、 "シャンピニャ"の行動を非難した。

インタビューが中断している間、マリア・ドゥ・ロサリオは、ボルソナーロが強姦擁護派であると非難した。それに対し、ボルソナーロは「彼女(マリア・ドゥ・ロザリオ)はレイプされるに値しない。なぜなら彼女は醜いからだ。私のタイプじゃない。私は強姦魔ではない。強姦魔だったとしても彼女をレイプしない。それに値しないからだ」と述べた。

外交面では、在イスラエル・ブラジル大使館をエルサレムに移転すると発表している。【ウィキペディア】
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まあ、売り言葉に買い言葉的なところがありますから、一言一句をあげつらう気もありませんが、基本的な姿勢・考えはうかがえるかと思います。

****SNS活用 “泡沫”一転、勝利に****
(2018年10月)28日投開票のブラジル大統領選で当選した極右、社会自由党のジャイル・ボルソナロ下院議員(63)は勝利宣言で、トランプ米大統領の決まり文句を意識しながら「ブラジルを偉大で栄える国にする」と誓った。

自分に不都合なニュースを「フェイクニュース」と決めつけ、「ブラジルのトランプ」と呼ばれるボルソナロ氏は、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を有効に活用し、泡沫(ほうまつ)候補とみなされていた序盤から一転、勝利につなげた。
 
党の資金や組織力が乏しく、知名度が低かったボルソナロ氏の選挙戦は、有力政治家の応援もなく、政党議席数に応じて配分されるテレビの政見放送時間も短かった。

だがSNSで汚職非難のメッセージや動画を繰り返し投稿し、直接有権者に訴えると、熱心な支持者が勝手連的に増え、メッセージが拡散していった。

フォロワー数は9月時点で約1000万人に上り1月から4割増加。陣営は否定するが、企業を使った違法な大量メッセージ送信やフォロワー数の水増しなどの疑惑が浮上した。
 
またボルソナロ氏は9月、遊説中に自身に反発する元左派政党党員にナイフで刺され重傷を負い、「同情票」でも支持を集めた。

医師から討論会参加の許可が出た後も体調不良を理由に公開の討論会には出席せず、最後までSNS中心の選挙戦を続けた。勝利宣言もフェイスブックの動画中継で済ませ、街頭に出ることはなかった。
 
代わりに28日夜、南東部リオデジャネイロの自宅前でテレビのインタビューに応じ、「政府の財政赤字を減らして経済成長を促し、雇用を増やす」と語った。自宅周辺には数万人の支持者が集まり、花火を打ち上げて当選を祝った。
 
サンパウロ市内でボルソナロ氏に投票した技師のファビオ・マッシャードさん(24)は「彼が掲げる汚職一掃と治安対策を進めてほしい」と望み、「軍事独裁に戻る不安はない」と話す。

一方、対立候補のフェルナンド・アダジ元教育相(55)=労働党=に投票した学校職員のジュリアナさん(36)は「黒人や性的少数者、女性へのひどい発言は人間として信用できない。政権に軍人ばかりが増え、民主主義がどうなるのか不安だ」と危機感を吐露した。【2018年10月29日】
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上記のような「ボルソナロ旋風」が吹き荒れた背景には、汚職にまみれた既成政治への国民の反発、「麻薬戦争」とも呼ばれるメキシコ以上に劣悪な治安に対する秩序回復への期待、総じていえば「今までの通りではだめだ」という国民の思いが、“型破り”な言動のアウトサイダーへの人気に火を着け、また、停滞する経済状況の回復への期待にもつながったと思われます。

【銃規制緩和 相変わらずの奔放な発言も 軍賞賛発言には懸念も】
今年1月に就任したボルソナロ大統領は、“ブラジル北部フォルタレザで犯罪組織の襲撃激化、政府が軍展開へ”【1月6日 AFP】“ブラジル新政権、公営100社を民営化・閉鎖へ 債務削減の一環”【1月9日 AFP】と、治安回復・経済改革への取り組みを始めました。

いかにも“彼らしい”施策としては、銃規制緩和も。

****1人4丁まで所持可能 ブラジル、市民の銃規制を緩和****
南米ブラジルのボルソナーロ大統領は15日、市民の銃所持の規制を緩和する大統領令に署名した。警察による審査が簡素化され、25歳以上なら条件を満たせば銃を所持できる。

ブラジルでは治安悪化が社会問題になっており、ボルソナーロ氏は大統領選で治安回復を公約に掲げ、市民が銃で武装すべきだと訴えていた。
 
ブラジルでは市民の銃所持は法律上認められてきたが、警察による厳しい審査があり、事実上、銃は買えなかった。今回の規制緩和で、犯罪歴や精神疾患がないなどの条件を満たせば、25歳以上なら1人4丁まで銃を所持できる。
 
ボルソナーロ氏は署名後、「これで善良な市民が家庭で平和を手に入れることができる」と演説した。

ただし、銃所持が治安回復につながることを疑問視する市民も多く、直近の世論調査では61%が銃所持に反対だった。【1月16日 朝日】
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どうして4Tも必要なのかは知りませんが、犯罪歴がある者でも容易に“犯罪歴のない者”を介して銃を入手できるようにもなりますので、“火に油を注ぐ”ようなことになるのではと危惧します。

“型破り”は相変わらずで、トランプ大統領と確かに似ています。

****ブラジル大統領、カーニバルの「放尿動画」投稿が炎上 ****
ブラジルのボルソナロ大統領がツイッターに第三者の「放尿動画」を投稿し、波紋を広げている。

カーニバルに乗じ羽目を外す国民に苦言を呈する目的だったが、性的な内容を含んでおり、批判が相次いだ。

奔放な発言や交流サイト(SNS)の活用で泡沫(ほうまつ)候補から一躍大統領に上り詰めたボルソナロ氏だが、就任後も自粛する気配はみられない。(後略)【3月7日 日経】
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まあ、このあたりは“ご愛敬”的な部分もあります。

下記の軍を賞賛する発言は、過去の軍事政権を評価する人物の発言という前提で聞くと、やや不気味なところもあります。

****国軍は自由と民主主義の最後の砦=ブラジル大統領****
ブラジルのボルソナロ大統領は7日、同国の軍は民主主義の最後の砦だと述べた。

自らも軍人出身の大統領は、当地で行われた海軍の行事で演説し、軍を賞賛したうえで、「自由と民主主義は、軍が望まなければ存在し得ない」と述べた。

ブラジルは、1964─85年に軍政の独裁時代を経験、大統領は長年これを擁護する立場を取っている。反ボルソナロ派は、政権内で軍幹部出身者の役割が増していることに懸念を示している。

アミウトン・モウロン副大統領はブラジリアで記者団に、大統領の発言に脅迫の意図はないとして擁護し、「大統領は、もし軍が自由と民主主義にコミットしなければ、その価値観は死滅すると言ったもの。それはベネズエラで起きていることで、同国軍はこの価値観を破壊した」と語った。(後略)【3月8日 ロイター】
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軍は自由と民主主義の擁護者である・・・ということなのでしょうが、軍事政権への評価などを加味すると、自由と民主主義の在り様を決めるのは軍の力だ、軍が望まない自由と民主主義は存在しえない・・・というようにも聞こえます。

【類が友を呼ぶ? 人権派市議殺害容疑者との関係】
更に気になる“疑惑の関係”に関する報道も。

****人権派市議殺害の容疑者ら、大統領との接触は「偶然」 警察見解 ブラジル****
ブラジルの人権派市議マリエル・フランコ氏が昨年殺害された事件で、容疑者の2人がジャイル・ボウソナロ大統領と接触していたとされる指摘について、警察当局は12日、偶然だとする見解を示した。事件への関与の有無をめぐり、ボウソナロ大統領には厳しい目が向けられている。
 
容疑者は2人とも軍警察の元警官。1人は過去に軍警察を解雇されたエルシオ・ビエイラ・デ・ケイロス容疑者で、フェイスブックのアカウントにボウソナロ大統領と一緒に撮影した写真を投稿していた。

問題の写真はすでに削除されているが、ソーシャルメディア上で広く拡散された。ボウソナロ大統領はこの写真について、軍警らと撮ったたくさんの写真の一枚にすぎないとしている。
 
また軍警を退役したロニー・レッサ容疑者には、銃弾13発を撃ってフランコ氏と運転手のアンデルソン・ゴメス氏を殺害した疑いが持たれている。
 
レッサ容疑者はボウソナロ大統領がリオデジャネイロに滞在する際に使用している共同住宅に同じく住んでいたが、警察はこれについて単なる偶然だと述べた。
 
ボウソナロ氏は昨年10月、大統領選に当選した際、この共同住宅の前に集まった大勢の支持者と勝利を祝っている。
 
また警察幹部は、レッサ容疑者の娘とボウソナロ氏の息子が交際関係にあるとの情報について記者から問われると、事実だが現時点で警察は重視していないと答えた。
 
昨年3月14日に銃殺されたフランコ氏はレズビアンの黒人女性で、黒人や同性愛者の権利を推進する活動家だった。警察の残虐行為を真っ向から批判し、貧困層の保護に尽力していた。
 
12日に容疑者2人が逮捕されるまでのほぼ1年間、捜査には進展がみられていなかった。 【3月13日 AFP】*******************

人権派市議殺害容疑者と大統領が“共謀”していたということはないでしょうが、「偶然」の接触であるにしても、類が友を呼ぶと言うか、体質的に共通するものが関係を呼び寄せるのでは・・・とも。

【ブラジルの今後を左右する年金改革 中道政党の協力に期待も】
今後のボウソナロ大統領の正念場は年金改革であるとされています。年金改革の成否がブラジル経済の今後の成長を左右するとも言われています。

****ブラジル政府、年金改革法案を提出 財政負担30兆円抑制 *****
ブラジルのボルソナロ大統領は20日、年金受給開始年齢の引き上げを柱とする年金改革法案を議会に提出した。

ブラジルの年金制度は50代から受給できるなど過度に手厚く、財政赤字の要因となっていた。政府の試算では今後10年間で財政負担を総額1兆レアル(約30兆円)抑えられるという。ただ法案成立には上下両院で5分の3の賛成が必要で、改革の実現は予断を許さない状況だ。

現在、ブラジルでは原則、女性は55歳、男性は60歳で年金の受給資格を得ることができる。現役世代が退職世代を支える賦課方式で、2017年は民間と公務員(軍人除く)を合わせた年金支給額の約4割が国庫負担だった。

今回の改革案では今後12年かけ受給開始年齢を女性を62歳、男性を65歳まで段階的に引き上げ、財政支出を抑制する。

ボルソナロ氏は20日、経済政策を担当するゲジス経済相とともに議会に姿を現し、マイア下院議長に法案を手渡した。今後、議会での議論や採決を経て、年内の成立を目指す。

ブラジルでは16年まで続いた左派政権が年金改革に踏み出さなかったことで財政赤字が深刻化し、治安対策やインフラ投資などに資金が回らない状況が続く。経済再生や治安回復を掲げ1月に発足したボルソナロ政権にとり、年金改革は避けては通れないテーマだ。

今後、焦点となるのは議会の対応だ。17年に就任したテメル前大統領も受給年齢の引き上げに取り組んだが、国民の反発を恐れた議会の抵抗に遭い、頓挫した。

今回の改革案は移行期間をテメル氏の案から短縮しており、国民負担はより大きい。20日には労働組合がサンパウロで反対デモを開催するなど、左派陣営は改革反対の論陣を張る。

ボルソナロ氏は上下院で少数与党のため、中道政党の協力が不可欠だ。テメル政権下で与党だった複数の中道政党は改革そのものには前向きだとされるが、強権的なボルソナロ氏の姿勢には反発も強く、曲折が予想される。

また、ボルソナロ陣営の「お家騒動」も改革機運に影を落とす。ボルソナロ氏が所属する与党社会自由党(PSL)の副党首だったベビアノ大統領府長官は18日、自身の汚職疑惑の責任をとらされる形で解任された。

地元メディアはボルソナロ氏の息子とベビアノ氏の間の確執が要因だと報じており、与党内ですら一枚岩になれていない。今後、他党との協議に水を差すリスクがある。

ブラジルの大手銀イタウ・ウニバンコのチーフエコノミスト、マリオ・メスキタ氏は今回の年金改革法案について「必要な改革ではあるが、十分ではない」と指摘する。また、ボルソナロ氏の支持母体である軍人向けの年金改革案は含まれていない。【2月21日 日経】
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2月25日時点の世論調査では大統領の支持率は57.5%と、大統領選挙決選投票の得票率55.1%を上回っており、高い支持率を維持しています。

この高支持率を背景に年金改革に取り組む訳ですが、国民の大きな痛みを伴う年金改革は、“ブラジルのトランプ”であろうがなかろうが、極右であろうがなかろうが、どの政権・指導者にとっても高いハードルです。

あのプーチン大統領ですら、支持率を急落させています。

大統領の“体質”が、年金改革を支持する中道政党との協力関係にどう影響するか・・・というところです。
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ベネズエラ  野党勢力は明日23日に人道支援物資を搬入 政権側は実力阻止の構え 軍の動向は?

2019-02-22 22:57:59 | ラテンアメリカ

(ベネズエラの首都カラカスで演説する、暫定大統領を宣言した野党指導者フアン・グアイド氏(2019年2月16日撮影)【2月17日 AFP】 マドゥロ大統領よりはカリスマ性があるようにも)

【インフレ率1000万%、難民500万人】
南米・ベネズエラで反米・左派のマドゥロ政権とアメリカの後押しも受けて野党勢力を代表する形で暫定大統領就任を宣言した35歳の若手政治家グアイド氏が激しく対立する状況については、簡単にまとめると以下記事のようにも。

****原油価格の下落で経済混乱、周辺各国に難民続々 ベネズエラ****
ベネズエラの野党指導者、グアイド国会議長が、独裁色を強めるマドゥロ大統領の退陣を狙い暫定大統領就任を宣言して、23日で1カ月となる。

米国や近隣国、欧州の主要国などがグアイド氏を承認し、中露などがマドゥロ政権を支援する構図が続くが、グアイド氏を支持する国が増えつつあり国際社会ではグアイド氏に追い風が吹いている。
 
グアイド氏の暫定大統領就任を承認、支持する国は、すぐ承認した米国を皮切りに現在は約60カ国に増えている。一方、内政干渉を禁ずる国連憲章を守るとして14日に会合を開いたマドゥロ政権寄りのグループは、参加した外交官は中露など16カ国にとどまり、国の数ではグアイド氏側を大きく下回る。
 
しかもロシアのリャブコフ外務次官は12日、「状況打開に向け努力する準備がある」と双方の対話を促す認識を示し、当初、グアイド氏側と接触する予定はないとしていた姿勢を微妙に変えた。

13日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、中国外交官が米ワシントンでグアイド氏側とベネズエラの債務問題に関し協議したと伝えた。中国外務省は直後に報道内容を否定したが、水面下で接触している可能性がある。
 
背景にはベネズエラの経済混乱の深刻さがある。世界一の石油埋蔵量を誇るベネズエラの国民生活はかつて安定していた。しかし反米左派の社会主義政策を進めたチャベス前大統領の死去後、2013年にマドゥロ氏が就任すると、原油価格が大幅に下落して経済危機が深まり、物資不足やハイパーインフレなどのため大勢が国外へ逃げた。
 
ベネズエラと国境を接するコロンビア北部ククタでは、送金業者にベネズエラからの難民たちが行列を作る。並んでいたベネズエラの主産業である石油の供給会社に勤めていたヒルマイン・ピニャさん(40)は「食糧があっても、ベネズエラではとても高くて買えない」と険しい表情で嘆いた。(中略)
 
そばには、難民女性の髪を切り、カツラ用に買い取る業者もいる。
 
スーツケースいっぱいに荷物を詰めたマリア・ピニェイロスさん(28)は20日に国境の橋を渡ってきた。(中略)ベネズエラでの生活を「1日1食で切り詰める日もあった。2人を育てるのは限界だった」と振り返り、疲れた表情を見せた。
 
ベネズエラの3大学の共同調査では、食料や医薬品が慢性的に不足するようになったため、市民約6000人の平均体重が17年の1年間だけで11キロ減少した。感染症が広がり、栄養失調患者も増えている。
 
国際通貨基金(IMF)によると、18年のインフレ率は137万%で、19年は1000万%と見積もり、紙幣のボリバルはすぐに紙くずのように価値が下がる。13〜18年で経済規模は4割以上、縮んだとの試算もある。
 
こうした経済危機の結果、15年以降に300万人が国外に逃れたとされる。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の昨年11月の調査では、難民らはコロンビアに100万人超、ペルーに50万人超、エクアドルに22万人超が滞在。19年中には500万人に達すると予測され、周辺国は対応に苦慮している。
 
一方で、マドゥロ政権側は経済危機の主因は米国の経済制裁で、仕掛けられた「経済戦争」だと主張している。【2月21日 毎日】
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“原油価格の下落で経済混乱”とありますが、確かに原油価格下落が大きく影響してるものの、基本的には石油収入のバラマキに終始し、経済原則を無視した無理な価格・市場統制などで生産活動を停滞させてきた、マドゥロ政権の経済失政が混乱の原因でしょう。

【国際情勢は反政権派支援の流れ 日本政府も】
マドゥロ政権を支持しているロシア・中国も、不利な形勢を受けて、微妙に立ち位置を変えつつあるようです。
いつもにように“慎重”な対応の日本外交ですが、ようやく旗色を明らかにしています。

****日本政府、反政権派の暫定大統領を支持 ベネズエラ****
河野太郎外相は19日の記者会見で、南米ベネズエラの暫定大統領就任を宣言したグアイド国会議長について「我が国としてグアイド暫定大統領を明確に支持する」と表明した。

日本政府はマドゥロ政権について「昨年5月の大統領選の正統性に対する国際社会の疑念に答えていない」としつつも、どちらを支持するか明らかにしていなかった。(後略)【2月19日 朝日】
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【人道支援物資で政権を揺さぶるアメリカ 反政権派は23日を支援物資搬入の日に】
アメリカ・トランプ政権は、アメリカの裏庭にあってキューバと並んで目障りな反米マドゥロ政権を潰す絶好のチャンスと見て、軍事介入も敢えて否定しないような積極的関与の姿勢を見せていますが、まずはグアイド氏の要請を受ける形で食糧・薬品・日用品に困窮しているベネズエラに対する人道支援物資の搬入という形でマドゥロ政権を揺さぶっています。

マドゥロ政権にすれば、アメリカからの支援を受け入れることは自らの失政を認めることにもなり、国境の橋を封鎖してでも搬入を阻止する構えです。

****ベネズエラへの援助物資、第2弾がコロンビア到着 米国際開発局****
米国際開発局(USAID)は16日、政情不安が続き人道危機の悪化が懸念されるベネズエラへ向けた援助物資の第2弾が同日、コロンビア、ベネズエラの国境地点に到着したと発表した。

声明によると、米マイアミ州の空港を離陸した米空軍輸送機C17がコロンビアのククタに運んだ。約2万5000人分の衛生製品の一式や子ども約3500人分の栄養食品などが含まれる。

医薬品や補助食など援助物資の第1陣は今月8日に輸送されたが、マドゥロ大統領はベネズエラとコロンビアを結ぶ橋を封鎖し搬入を阻止した。反米左派政権率いる同大統領は「我々は物乞いではない」と国際援助を拒絶している。

CNN記者によると、第1陣の物資はベネズエラ内への輸送を待ち、倉庫内に保管されている。第2陣の物資も同様の措置となる。(後略)【2月17日 CNN】
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グアイド氏は人道支援をも拒否するマドゥロ政権の国民の生命・生活を無視した対応を鮮明にすることで、反政府運動を加速・拡大し、今後のカギを握る軍部の支援をも取り付けようとしています。

グアイド氏側は明日はん定め、政権との対立が先鋭化しています。

****米からの支援物資搬入にボランティアを動員、ベネズエラ野党指導者****
政情不安が続くベネズエラで、暫定大統領就任を宣言した野党指導者フアン・グアイド国会議長は16日、米国による人道支援物資搬入を手伝うために数十万人規模のボランティアを来週動員すると発表した。
 
ベネズエラへの人道支援をめぐっては、米国から食料など大量の支援物資がコロンビア側の国境に到着しているが、ニコラス・マドゥロ大統領はこれを米国の侵略と呼び、国境警備強化を言明。ベネズエラへの支援物資搬入が積み上げられたままとなっており、国内における政治対立の新たな火種となっている。
 
ベネズエラ暫定大統領として50か国超から承認されているグアイド氏が首都カラカスで行った集会には、白いTシャツに国旗のカラーをあしらった帽子をかぶる支持者らが多数集結。グアイド氏は演説で、国内の各国境ポイントにおける搬入物資を手伝うボランティアにこれまでに約60万人が申し込んだと明かした。
 
さらに、支援物資搬入のボランティア活動は国境だけでなく、国内全域の各都市で23日に行われると述べた。
 
グアイド氏によると、支援物資はコロンビアに届いているだけでなく、さらに多くの物資がブラジルやベネズエラ北方沖のオランダ領キュラソーから搬入されるという。
 
すでに米国からの物資数トンがコロンビア側の国境沿いの都市、ククタに到着している。(後略) 【2月17日 AFP】
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【政権側は軍を配置して実力阻止の構え】
マドゥロ政権側は、物資が集積しているククタに通じる橋を封鎖しただけでなく、ブラジルやコロンビアとの国境を閉鎖し、海上輸送も阻止する構えです。

****ベネズエラ海上も封鎖 支援物資搬入を阻止****
独裁色を強める南米ベネズエラのマドゥロ政権は19日、カリブ海のオランダ自治領キュラソーなどとの海域を封鎖したと明らかにした。暫定大統領就任を宣言した野党指導者、グアイド国会議長が準備を進める人道援助物資搬入を防ぐのが狙い。(後略)【2月20日 毎日】
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****ベネズエラ政権、ブラジル国境閉鎖を発表 人道支援物資搬入阻止狙う****
独裁色を強める南米ベネズエラのマドゥロ大統領は21日、ブラジルとの国境を閉鎖すると発表した。またコロンビアとの国境の全面的な閉鎖を検討していると明かした。

暫定大統領就任を宣言した野党指導者のグアイド国会議長が人道支援物資の搬入を予告している23日を前に、搬入阻止の動きを強めている。
 
グアイド氏は援助物資を、コロンビア北部ククタ▽ブラジル北部パカライマ▽カリブ海のオランダ自治領キュラソー――の3カ所から陸路や海路で一斉搬入する準備を進めている。

マドゥロ政権側は既にククタ・ルートとキュラソー・ルートを封鎖しており、今回残り一つも閉鎖することで、3方面からの搬入を阻止する形になる。地元メディアによると、パカライマと接するベネズエラの町に軍が派遣された。
 
ブラジルは19日に、グアイド氏の呼びかけに応じ、米国と協力して国境に支援物資を移送すると発表したばかり。マドゥロ氏は21日の国営放送で「米帝国がその操り人形と共にやっていることは挑発だ」と非難し、ブラジルとの国境を「完全に閉鎖する」と述べた。

また「このような決定をしたくないが、コロンビアとの国境の全面閉鎖を検討している」と述べた。軍司令官に囲まれて放送に現れ、軍を掌握していると強調した。(後略)【2月22日 毎日】
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【23日に向けて高まる緊張】
一方のグアイド氏は23日の搬入日に備え、物資が滞留するククタに通じる国境の町に野党議員らと到着しています。
また、両勢力の間の緊張が高まる中で、グアイド氏の呼びかけに応じ、在外高官らが政権から離反する動きが続いています。

****ベネズエラ政権、コロンビア国境の封鎖も検討 野党側、23日に支援物資搬入予告****
(中略)一方、21日にククタで記者会見した野党国会議員のガビ・アレヤーノ氏はククタや周辺の四つの橋から23日に同時に支援物資の搬入を始めると明かし、「援助は国境近くの州だけでなく、ベネズエラ全土に届く」と自信をみせた。

地元メディアによると、グアイド氏や野党議員約80人は21日、支援物資受け取りのため、ククタとの国境の町に到着した。
 
また、ベネズエラ軍情報機関トップを長く務めた退役将軍の与党国会議員カルバハル氏が21日、グアイド氏支持を表明した。野党側は21日、米国駐在の外交官11人がグアイド氏を承認したと発表。国連駐在武官の大佐も20日、ネットに投稿したビデオでグアイド氏支持を打ち出した。グアイド氏側による切り崩しが進んでいる。
 
ククタでは22日、グアイド氏を支援する英大富豪リチャード・ブランソン氏が企画し、人道支援資金を募るコンサートが開かれる。一方、ククタと国境を挟んだベネズエラ側では22、23両日、政権側による外国の介入排除を訴えるコンサートが予定されている。【2月22日 毎日】
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人道支援物資搬入については、“バスを連ねてボランティアを国境に送り込み、到着する支援物資を受け取る計画だが、マドゥロ大統領の命令で軍が国境沿いに設置したフェンスをどのように突破するのかについてグアイド氏は明かしていない。”【2月18日 AFP】とも。

国境・海上を封鎖する政権側、明日23日搬入を決行しようとする反政権側・・・まさに決戦前夜の様相を呈していますが、軍部の動向が今後のカギを握っています。

これまでのところマドゥロ政権側は、野党側の動きを実力行使で潰す姿勢を見せており、一歩も引かない構えです。

****治安部隊、5日間で41人殺害=ベネズエラ政権を非難―国際人権団体****
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは20日、政情不安が続く南米ベネズエラで反政府デモが活発化した1月21日から25日までの5日間で、治安部隊が市民少なくとも41人を殺害したとの報告書を公表した。この間、900人以上が不当に身柄を拘束され、拷問などを受けたという。
 
アムネスティのゲバラロサス米州担当責任者は「マドゥロ(大統領)の配下にある治安当局は、変革を求める人々をコントロールする手段として恐怖と罰を用いている」と独裁的なマドゥロ大統領を強く非難した。
 
報告書は特に警察特殊部隊FAESの行動を問題視。同部隊による「処刑」が主に貧困地域で6件あり、いずれも若者が犠牲になったと指摘した。

同国西部のカロラでは1月24日、前日にデモを主導した29歳の青年の家にFAES隊員20人以上が押し入り、青年を拷問。居合わせた家族を連れ出した後に射殺し、銃撃戦があったかのように偽装工作した。【2月21日 時事】 
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【注目される軍の動向 今後の流れを大きく左右】
こうした状況で、物資搬入を決行しようとする野党勢力を、国境に配置された軍が実力で阻止するという展開になると、大量の流血も危惧されます。

また、そのような混乱状態になった場合、アメリカ・ブラジル・コロンビアなど関係国・周辺国の動向も注目されます。

*****トランプ氏、マドゥロ支持に警告 ベネズエラ軍に、「全てを失う」****
トランプ米大統領は18日、ベネズエラ軍に対し、反米左翼マドゥロ大統領を支持するなら「あなたたちは全てを失うだろう」と警告、暫定大統領就任を宣言した野党出身のグアイド国会議長を支持するよう求めた。

「米国は平和的な権力移行を模索しているが、全ての選択肢がテーブルにある」と述べ、軍事介入を辞さない構えを改めて示した。(後略)【2月19日 共同】
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一方で、もし軍が実力で阻止することを控えるという展開になれば、強権支配を続けてきたマドゥロ大統領の命運も尽きたということにもなり、海外亡命なども現実の問題になってきます。

軍部高官は政権と利害を共通する関係にありますが、一般兵士の動向は?

“反政権派の集会に参加を訴えるビラの文句は「軍に呼びかける。人道支援物資の搬入を勝ち取ろう」だった。物資搬入をてこに、政権を支え続ける軍を切り崩す狙いがうかがわれる。兵士やその家族も食料不足に直面しているとされる。”【2月13日 朝日】

明日が支援物資搬入の日とされる23日です。

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ベネズエラ  政権による人道物資搬入阻止で、臨界点に近づく政権維持 中ロの立ち位置に差も

2019-02-14 22:49:31 | ラテンアメリカ

(ベネズエラ軍が対コロンビア国境のティエンディタス橋を封鎖するため設置したコンテナとタンク(2019年2月6日撮影)【2月7日 AFP】)

【昨日書いたものの、「投稿する」をクリックし忘れていたようです。ですから、内容は昨日時点のものです】

【政権・反政権派のせめぎあいの最前線となった人道物資搬入阻止】
失政・弾圧を続ける反米・左派のマドゥロ大統領に対し、これまでまとまりのなかった野党勢力を代表する形でカリスマ性のある若手政治家グアイド国会議長が暫定大統領就任を発表、二人の指導者が並立する状態となっている南米ベネズエラの混乱については、
1月26日ブログ“ベネズエラ 若手政治家グアイド氏の暫定大統領就任で反政府運動拡大 政局は流動化
2月2日ブログ“アメリカ キューバ政権転覆まで見据えたベネズエラの反政府運動支援戦略 軍事介入の可能性もちらつかせる
でも取り上げたところです。

弱冠35歳のグアイド氏が今前面に躍り出ているのは、氏の意思もさることながら、ベテラン大物政治家が海外に逃亡したり、当局に拘束・監視されて身動きがとれない・・・といった政治状況がもたらしたものです。(2月2日ブログでも取り上げたように、アメリカの“後押し”もあるのでしょう)

新しい指導者が生まれるとき、時代が動くときというのは、そういうものでしょうか。
もっとも、今のベネズエラで反政府行動の先頭に立つということは、自分および家族の生命・安全を重大なリスクにさらす行為でもあります。

今、マドゥロ政権はコロンビアとの国境の橋を封鎖して、「われわれは物乞いではない」「アメリカによる侵略、混乱助長は許さない」として、反政権派がアメリカに要請した人道支援物資の搬入を阻止しています。

一方、グアイド氏らは物資搬入を求めて、抗議行動を拡大させる意向です。

****支援物資の搬入阻止は「人道に対する罪」 ベネズエラ野党指導者が批判****
ベネズエラ暫定大統領として約50か国が承認している野党指導者のフアン・グアイド国会議長は10日、ベネズエラ軍が人道支援物資の搬入を阻止しているのは「人道に対する罪」だと厳しく批判した。
 
ベネズエラでは先週、コロンビアとの国境に架かる橋を兵士らが封鎖。米国から送られた医薬品や食品が現地に到着したものの、コロンビア側の国境の町ククタに3日にわたって留め置かれている。
 
ベネズエラ側では10日、数十人の医師らが支援物資の国境通過を求めて抗議デモを行った。参加した医師の一人は、ニコラス・マドゥロ大統領はベネズエラの医療を「中世」の水準まで落としたと声を荒げた。
 
グアイド氏は首都カラカスで妻と1歳8か月の娘を連れて教会の日曜礼拝に参加した後、記者団に「この状況に責任がある者たちがいる。(マドゥロ)政権はそれが誰かを知っているはずだ」と強調。「兵士たちよ、これは人道に対する罪だ」と述べ、「ジェノサイド(民族虐殺)も同然だ」と批判した。 【2月11日 AFP】AFPBB News
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もちろん、アメリカ側は単に人道目的だけでなく、政治的効果を狙っての支援でしょうが、国内では多くの国民が食べるものを欠き、薬が手に入らない病人があふれ、500万人にも及ぶ国外難民が発生しようというときに、支援物資を止めるという政権側の行為は一般兵士を含む人々の怒りに火をつけ、政権の存続を危うくすることになるかも。

****人道支援物資の搬入どうする? ベネズエラ、深まる対立****
マドゥロ大統領の独裁的な支配への反発が広がる南米ベネズエラで12日、マドゥロ政権の支持派と反政権派がそれぞれ首都カラカスなどで集会を開いた。

反政権派が米国に要請した人道支援物資の搬入を政権は認めておらず、反政権派は集会で「23日を搬入日とする」と宣言。双方のせめぎ合いは今後、さらに激しさを増しそうだ。

反政権派の集会は各地で開かれ、現地報道によると少なくとも10万人以上が参加した。12日はベネズエラの独立戦争で若者が戦ったことを顕彰する「青年の日」。参加者はマドゥロ政権の弾圧で亡くなった学生らを追悼し、政権交代の必要を訴えた。(中略)

反政権派の集会に参加を訴えるビラの文句は「軍に呼びかける。人道支援物資の搬入を勝ち取ろう」だった。物資搬入をてこに、政権を支え続ける軍を切り崩す狙いがうかがわれる。兵士やその家族も食料不足に直面しているとされる。

政権派は集会で、この日が独立戦争にちなむ記念日のため、「人道支援を装った米国の侵略を許さない」と愛国心に訴えた。マドゥロ氏は演説で「我々は偉大な独立運動の指導者シモン・ボリバルの子孫だ。私たちが求めるのは平和だ。軍事侵攻は追い払おう」と語った。

参加者らは「必要なのは支援物資ではなく、経済制裁の解除だ」などと記したプラカードを掲げた。

ベネズエラの会計検査当局は11日、グアイド氏が国内外から不正な資金を受け取ったとして捜査を始めたと明らかにした。違法とされれば、グアイド氏は最長15年間、政治的権利が停止されるという。

検察も「外国勢力の介入に加担した」などとしてグアイド氏の捜査を始め、裁判所は資産凍結や出国禁止を命じた。検察や裁判所は政権派だ。

マドゥロ政権は、これまでも野党政治家を勾留するなどして反政府活動を抑え込んできた。ただ、今回は米国や欧州などがグアイド氏を支持。政権の思惑通りにグアイド氏の動きを止められるかは微妙な情勢だ。

一方、軍の士官による離反表明が続いており、マドゥロ氏の苦境は深まっているとの見方もある。スペイン語メディアでは、マドゥロ氏がキューバやロシアへの亡命を検討しているとの報道が相次いでいる。

米メディアの取材にホワイトハウス高官は「(マドゥロ氏や側近が)どのように、いつ国を去るか話し合う用意はできている」と語った。【2月13日 朝日】
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【地裁学的しがらみもあるロシア 経済重視の中国】
これまでのところ国際社会も政権支持と反政権派支持で二つに割れていますが、政権を支持する国中心は、資金面でマドゥロ政権を支えてきたロシアと中国です。両国以外にも、キューバ、シリア、イランなど反米諸国以外に
、トルコ・ギリシャといった国が政権側を支援しています。

トルコはベネズエラとの経済関係・アメリカ牽制といった事情があるようですが、エルドアン氏の“クーデターへのアレルギー”もあるのでは。ギリシャは中国との強い関係があるようです。

EU主要国はグアイド氏承認の流れにありますが、イタリアのポピュリスト政党「五つ星」は、EUが介入すべき問題ではなく、ベネズエラ国民が決めるべき問題として、連立政権の意見が割れているようです。

いずれにしても政権支持国の中心はロシア・中国ですが、両国の事情は異なるようにも思えます。

ロシアは、かつてのキューバ危機に代表されるように、アメリカの裏庭である中南米になんとかくさびを打ち込もうとしてきました。ベネズエラ支援もその流れにある対応です。

経済的な権益もあるでしょうが、そうした地政学的な「対アメリカ」戦略の一環として、なんとかベネズエラ・マドゥロ政権を維持してアメリカをけん制する足場を保持したいという思いが強いのではないでしょうか。

****ロシア、ベネズエラ政府・野党間の対話促進に向け準備****
ロシアは12日、ベネズエラの政府・野党間の対話を促す準備があるとの認識を示した。

ロシアはマドゥロ現職大統領を支持している。マドゥロ大統領はベネズエラ軍を含む国家機関への支配を維持しているが、米国などほとんどの西洋諸国は暫定大統領就任を宣言したグアイド国会議長を承認している。

タス通信によると、ロシアのリャブコフ外務次官は「ベネズエラ政府との交流を維持しており、状況打開に向けたプロセスを容易にするために尽力する準備がある」と述べた。

またロシアがベネズエラに対し危機解決に向けた提案を行ったとしたが、詳細は明らかにしなかった。

ロシアのラブロフ外相は12日、ポンペオ米国務長官との電話会談で、米政府はベネズエラへの内政干渉を避けるべきと伝えた。またベネズエラの状況に関し、国連憲章に沿った協議を行う準備があるとした。【2月13日 ロイター】
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「対アメリカ」の地政学的しがらみのあるロシアに対し、中国は多額の融資がどうなるのかという経済的な問題優先でしょう。もし野党側が引き続き返済を保証するなら、それはそれで・・・といった感もあるのでは。

アメリカと激しくぶつかる場面が多いこの時期に、敢えてベネズエラでアメリカと対立するのはむしろ避けたいのでは。

****中国がベネズエラ野党と協議、マドゥロ氏退陣にらみ****
中国はこれまでのベネズエラへの投資を守るため、野党党首のフアン・グアイド氏側と協議を行っている。中国が関係を重視していたニコラス・マドゥロ大統領への退陣圧力が強まる中、政権交代に伴うリスクを低減する狙いがある。関係筋が明らかにした。
 
中国の外交官はここ数週間に、ワシントンでグアイド氏の複数の代理人と協議を行った。背景には、中国がベネズエラにおける石油開発案件の先行きに加え、未返済となっている200億ドル近い債務について懸念していることがある。(中略)

米陸軍士官学校のR・エバン・エリス氏(中国の中南米戦略の専門家)は「中国は政権交代のリスクが高まっているのを認識しており、新政権との関係を悪化させたくないと考えている」と指摘。「中国は安定を望むものの、卵を他のかごにも分散する必要性に気付いている」と述べる。
 
今回の動きは、ベネズエラの債権者の間で不安が広がっている兆候を浮き彫りにする。ベネズエラは過去20年近くにわたり、石油供給と引き替えに中国やロシアから融資を受けることで、重要な支援を得てきた。

ベネズエラの対外関係は、マドゥロ氏の前任、故ウゴ・チャベス元大統領の時代に花開いた。チャベス氏は反米路線を掲げ、キューバやイランに加え、インドとも関係を強化した。
 
だがこうした国々とベネズエラとの関係は、マドゥロ氏が大統領に就任した2013年以降、冷え込んでいく。マドゥロ政権下で同国経済は縮小に向かい、数年にわたる汚職の横行や誤った管理が響き、石油生産は半分未満に急減した。
 
そこに米国が先月、ベネズエラの石油業界に制裁を発動。ほぼ唯一の資金源を絶たれたマドゥロ氏の苦境が一段と鮮明になり、石油生産はさらに落ち込んだ。(中略)
 
グアイド氏も公の場で、中国やロシアに歩み寄る姿勢を表明。政権交代が安定回復に向けた経済改革の先駆けとなるとの考えを示しているほか、ベネズエラは世界最大の石油輸入国である中国との関係を維持すべきと述べている。
 
前出のエリス氏は、マドゥロ政権の崩壊は中国にとってもプラスになると指摘する。「グアイド氏は米国の制裁解除を促し、石油供給も再開される可能性があり、最終的には、中国にとってグアイド氏はメリットばかりだ」という。【2月13日 WSJ】
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上記【WSJ】は記事のなかで“グアイド氏側との接触について、中国外務省はコメントの要請に応じていない。だが中国は足元、グアイド氏側との協議が行われていることを示唆しており、中国の利益が尊重されることを望むとの立場を示している。中国外務省の耿爽報道官は今月1日、グアイド氏側との接触に関するうわさについて、中国政府は「関係者すべてと、さまざまな手段を通じて緊密な接触を続けている」と説明。その上で「今後の状況にかかわらず、われわれの協力が損なわれることはない」と述べている。”としていますが、中国は、上記報道を否定しています。

****中国、ベネズエラ野党と協議との報道を否定****
中国外務省の華春瑩報道官は13日、中国の外交官がベネズエラでの投資を守るために同国の野党と協議を行ったとの報道について、「偽ニュース」だと述べた。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、中国の外交官が、ベネズエラでの石油プロジェクトや200億ドル近い債務について懸念を持ち、米ワシントンでグアイド国会議長の代理人と協議を行ったと報道。グアイド氏はベネズエラの野党指導者で、暫定大統領を宣言した。

華報道官は記者団に対し「報道内容は誤っている。偽ニュースだ」と述べた。(後略)【2月13日 ロイター】
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ただ、多額の債権の行方がわからないというこの時期に、野党側と協議しないという方が奇妙なようにも思えますが。

いずれにしても、こうした話が出てくること自体、強権支配を維持してきたマドゥロ政権もいよいよ最終局面に近づいているのかな・・・という感があります。

【軍事介入も否定しないトランプ大統領】
アメリカは、“米下院外交委員会のエンゲル委員長(民主党)は13日、ベネズエラへの軍事介入は選択肢にないとした上で、議会は同国への軍事介入を支持しないとの考えを強調した。”【2月14日 ロイター】とのことですが、トランプ大統領は“「すべての選択肢を検討中だ」と警告した。「わが国の軍も注目し、協力している」と語ったが、具体的な部隊派遣に関しては「そのうち分かる」と述べるにとどめた。”【2月14日 時事】ということで、例によって、よくわかりません。

“トランプ流ディール”なのでしょうが、アメリカの軍事介入については中南米では強い拒否感がありますので、下手な動きは南米諸国の反政権派支持の流れに水を差すことにもなります。

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ベネズエラ  若手政治家グアイド氏の暫定大統領就任で反政府運動拡大 政局は流動化

2019-01-26 22:36:23 | ラテンアメリカ

(【1月24日 BBC】 中央でこぶしを突き上げているのが35歳、フアン・グアイド暫定大統領 国民を引き付けるカリスマ性はありそうにも見えます。)

【「二人の大統領」で政局は流動化】
経済崩壊を招きながらも強権的に権力を維持する南米・ベネズエラの反米・左派マドゥロ大統領の動向については、1月14日ブログ“ベネズエラ  批判を受けつつも2期目に入ったマドゥロ大統領 野党・国会議長の一時拘束も”でも取り上げました。

国民が満足に食事がとれずにやせ細り、300万人近いともいわれる大量の難民が発生している状況で、マドゥロ政権への強い国民批判はあります。しかし、これまでも再三論じてきたように、それだけでは強権的に権力を維持する政権は容易には倒れません。

14日ブログでも、これだけの失政を続けながらもマドゥロ政権が倒れないことについて、“野党勢力のまとまりのなさ、核となるリーダーの不在が、前述のようにマドゥロ政権の延命を助けていると言えます。”とも。

しかし、ここ10日あまりで状況は大きく変化する様相も見せています。
その原因は、14日ブログでも取り上げた、暫定大統領を宣言した若手政治家フアン・グアイド氏が、“核となるリーダー”として機能し始めているからです。

****ベネズエラの反乱と民主主義の再生****
国民議会議長のグアイド氏、暫定大統領に就任

ベネズエラはついに民主主義を取り戻す瞬間を迎えたのだろうか。
23日、何百万人もの市民が首都カラカスなどの市街に繰り出し、独裁者のニコラス・マドゥロ大統領の辞任と、国民議会議長のフアン・グアイド氏(35)がマドゥロ氏に取って代わることを求めた。
 
グアイド氏は、昼間に屋外で行われた式典で支持者らに囲まれ、暫定大統領への就任を宣言した。同氏は新たな選挙が行われるまでの間、暫定的な国家元首として行動する権限を得ることになった。航空写真は、権力の移行を祝ってカラカスの幅広い大通りを埋め尽くした民衆の姿を写し出している。
 
貧富を問わずベネズエラ全土の人々は、軍出身の独裁者マルコスペレス・ヒメネス氏が1958年に失脚した記念日のこの日を、民主主義復活を求めるタイミングとして活用した。

1986年にフィリピンで起きた「ピープルパワー」革命や中・東欧諸国の「カラー」革命と同様に、この反乱にはマドゥロ氏の政権よりも民主的正当性がある。マドゥロ氏は昨年の選挙で、キューバの情報機関の支援を得て勝利をかすめ取った。
 
グアイド氏を現在の地位に引き上げた国民議会の議員は、2015年の選挙で選ばれた。しかし、マドゥロ氏は2017年に別の不正な選挙を行い、自らの意に沿う「憲政議会」を立ち上げ、国民議会の機能を失わせた。

マドゥロ氏はその後、2018年に大統領選挙を行い、国内の大半の勢力が選挙をボイコットする中で、68%の票を獲得して当選した。
 
マドゥロ氏が新たな6年間の任期に向け大統領就任の宣誓を行う前の週の1月4日、西半球の米州14カ国で構成する「リマ・グループ(米国はメンバーではない)」は、彼を正当な大統領と認めないとの声明を出した。

同グループは、マドゥロ氏に対し「国民議会の権限を尊重し、新しい大統領選と民主的選挙が行われるまでの間、暫定的に国政の権限を国民議会に委譲すべきだ」と要求した。(メキシコの左派系新大統領アンドレス・ロペスオブラドール氏はこの声明への調印を拒否した)
 
マドゥロ氏は23日、「私がベネズエラ唯一の大統領だ」と述べた。同氏が戦わずして職を離れる可能性は低い。

同氏の前任者であるウゴ・チャベス氏は2002年、独裁的な政治手法を理由に一時的に職を追われた。しかし、その後17年にわたる司法への介入、反対派の拘束、報道の自由抑制と社会主義的経済政策の失敗を経て、ベネズエラ国民は現在、絶望的な状況にある。

やせこけた子どもたちの写真は栄養失調のまん延を物語る。治療できる病気も治療されないまま放置されている。
 
疑問なのは、軍がマドゥロ氏を支持し続けるかだ。最近の小規模な民衆蜂起は即座に鎮圧された。しかし、グアイド氏は国民の味方になるよう軍に要請し、味方についた者は罪に問わないと約束している。若い軍人らの部隊が権力を持つ将軍のもとを離れる可能性もある。
 
しかしまた一方で、マドゥロ氏はグアイド氏の逮捕を命じたと報じられており、軍に対して民間人への攻撃を指示する用意があることを示唆したとされる。それは反政府デモでさらに血が流れる引き金になる可能性があるほか、テロやゲリラ戦につながる恐れもある。

このほかに、権力の維持をキューバに依存しているマドゥロ氏が、どれほどの独立性を維持しているのかという疑問もある。キューバ政府は石油を産出する事実上の「属国」を手放したくないだろう。
 
米州にあるその他の国はほぼ全て、グアイド氏の側に付いている。近くの国も遠くの国も、ベネズエラの犯罪と食糧不足から逃れてきた300万人近くの難民を受け入れてきた。
 
トランプ大統領もいち早くツイッターでグアイド氏を「ベネズエラの暫定大統領」として認めると表明し、「ベネズエラ市民は非合法なマドゥロ体制の支配下であまりにも長期間苦しんできた」と指摘した。

またコロンビア、ブラジル、ペルー、カナダ、アルゼンチン、パラグアイ、グアテマラ、エクアドル、チリも23日、米州機構(OAS)のルイス・アルマグロ事務総長とともにグアイド氏を承認した。

マドゥロ氏は直ちに米国と断交し、米外交官に対し72時間以内に国外退去するよう命じた。マドゥロ氏が従来のパターンを繰り返すとすれば、ベネズエラでの抗議行動の責任が米国にあると非難する一方、グアイド氏の忠誠心に対する疑惑を拡散しようとしてキューバの影響力を利用するだろう。
 
しかし、実際にはこの反乱は、20年間にわたる社会主義者の失敗と腐敗を経て、ベネズエラの中から生まれたものだ。(中略)

「国富論」の著者アダム・スミスが指摘したように、国家には多くの腐敗が存在するが、ベネズエラは現在、腐敗の中に横たわっている。

ベネズエラでの反マドゥロ派を支援するため、1989年の米軍によるパナマ侵攻と同様のやり方で米国は駐留部隊を派遣すべきだと考えたくなるかもしれない。

しかし、ベネズエラ国民は自分たちの自由を自ら勝ち取らなければならない。もしそれができれば、勝ち得た自由をより一層大切にすることだろう。【1月24日 WSJ】
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【“協調体制の構築力は評価されている” グアイド氏 政権側は「グアイド氏を入れる独房は、すでに確保してある」とも】
野党弾圧が横行するベネズエラのような国で反政府行動を率いることは“命がけ”になります。そのため、これまで多くの野党政治家が国外に亡命しています。も、14日ブログでも取り上げたように、一時拘束される形で“警告”を受けています。

そういう中で、反政府勢力の中核に自ら名乗りをあげ、にわかに注目を集めるようになったフアン・グアイド氏(35歳)については、以下のようにも。

単なる“目立ったがり屋”ではないようです。“演説はあまり得意ではない。だが、協調体制の構築力は評価されている。”というあたりは、今後に期待できる脂質です。

****ベネズエラの「生き残り」 暫定大統領宣言のグアイド氏とは?****
ベネズエラ暫定大統領への就任を宣言したフアン・グアイド氏は、誇りを込めて自らのことを「サバイバー(生き残り)」と呼ぶ。
 
グアイド氏はこれからも生き残っていかなければならない。勇気ある若手政治家で、野党が多数派を占める国会の議長を務めるグアイド氏は、追い詰められたニコラス・マドゥロ大統領に対抗して自ら、暫定大統領として名乗りを上げたことで、マドゥロ政権にとって不倶戴天の敵となった。
 
グアイド氏は、政治的、経済的危機の連鎖に陥っているベネズエラを支配する社会主義者のマドゥロ氏から大統領の座を奪い取ろうとしたわけではない。

年長の野党指導者たちが、身柄拘束や政治活動の禁止、亡命などにより政治の舞台から追われたため、後ろに控えていたグアイド氏が前面に押し出されたのだ。
 
(中略)ドナルド・トランプ米大統領は直後にグアイド氏を暫定大統領として認める声明を発表し、南米各国もこれに続いた。

■野党連合まとめ役として実力発揮
扇動的な左派指導者だった故ウゴ・チャベス元大統領が自ら指名した後継者であるマドゥロ氏は、グアイド氏のことを「政治で遊ぶ子ども」と呼んでいる。
 
だが、グアイド氏は恐れることなく、マドゥロ氏の2期目就任を阻もうとしている。(中略)

グアイド氏は今月5日、史上最年少で国会議長に就任したが、演説はあまり得意ではない。だが、協調体制の構築力は評価されている。これは、分断しがちでまとまりがないベネズエラの野党勢力に非常に求められている能力だ。
 
グアイド氏は議長就任後、短期間で野党連合をまとめ上げ、マドゥロ氏は政権の「強奪者」であり、同氏の再選は不当だと正式に宣言させた。

一方で、マドゥロ氏に反対したために拘束されたすべての軍および政府関係者に恩赦を与えることも約束した。その過程でグアイド氏は徐々に自信を深め、集会では笑顔を見せ、演説もうまくなっていった。
 
軍最高司令部と最高裁の支持を堅持しているマドゥロ政権に対して、無力であることの解決策はまだ見いだせていない。

だがグアイド氏は、政権を掌握するために最終的に必須となる軍の支持を取り付けるために、臆することなく呼び掛けている。

■「犠牲者ではなく生き残り」
ベネズエラ最悪とされた自然災害を生き延びた経験を持つグアイド氏は、「私は犠牲者ではなく、生き残りだ」と言う。
 
1999年12月に数万人が亡くなった集中豪雨と土砂災害。当時10代だったグアイド氏は、母親と5人のきょうだいと共に被災地のバルガス州に住んでいた。この被災について 「飢えとは何か、私は知っている」と語っている。
 
(中略)グアイド氏は13日、政治集会に車で向かう途中で諜報(ちょうほう)機関に一時拘束されたが、1時間もたたないうちに釈放された。政府は後に一部の諜報要員の勝手な行動だとして非難し、12人を逮捕した。
 
だが、グアイド氏は警戒を緩めることはできない。イリス・バレラ刑務所相はこう言っている。「グアイド氏を入れる独房は、すでに確保してある」【1月24日 AFP】
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【「見せかけの協議」を拒否、「大規模なデモ」の実施を呼び掛ける】
アメリカや多くの南米諸国がグアイド氏を支持するなかで、左派政権のメキシコやボリビアはマドゥロ氏を支持すると表明しています。

そのメキシコが仲介を申し出ていますが、グアイド氏はこれを拒否してマドゥロ政権との対決姿勢を明らかにしています。

****ベネズエラ野党指導者、マドゥロ氏との協議拒否 大規模デモ呼び掛け****
ベネズエラの「暫定大統領」就任を宣言した野党指導者のフアン・グアイド国会議長は25日、ニコラス・マドゥロ大統領の退陣を求める運動を強化し、「大規模なデモ」の実施を呼び掛ける一方で、メキシコが仲介役を申し出たマドゥロ氏との協議には応じない意向を示した。
 
ベネズエラでは今週、マドゥロ政権に抗議するデモ隊と治安部隊との衝突で26人が死亡する事態となっているが、米国と一部の中南米諸国から支持を得ているグアイド氏はこの日、そうした危機的状態についての「見せ掛けの協議」には出席しないと明言。

首都カラカスで支持者らを前に、「(マドゥロ氏の政権)強奪を止め、政権移行と自由選挙を実現するまで」市民の抗議運動は続くと訴えた。
 
一方のマドゥロ氏は、メキシコが仲介役を申し出ているグアイド氏との協議について、「必要ならどこへでも」出向く用意があると述べていた。
 
欧州連合と米国はマドゥロ氏に対し、再選挙の実施に同意するよう圧力を強めている。EUの外交官はAFPに、EUとしては「近い将来に選挙を実施するよう即時要請」を行いたいとの認識を示した。
 
米国務省は、マイク・ポンペオ国務長官が26日に開催される国連安全保障理事会の会合でベネズエラ国民への支援を示すとともに、グアイド氏を暫定大統領として承認するよう理事国に求める考えを明らかにした。 【翻訳編集】AFPBB News
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【ロシア 民間軍事会社の傭兵派遣でマドゥロ政権延命を画策との報道も】
こうした状況で注目されるのは、これまで経済的に困窮するマドゥロ政権を支えてきた中国・ロシアの動向です。

“エネルギー分野でベネズエラとの協力を強化している中国とロシアもマドゥロ氏を支持する。中国外務省の華春瑩(かしゅんえい)副報道局長は24日、「外部の制裁や干渉は往々にして事態を更に複雑にし、解決の助けにならない」と述べ、米国をけん制した。”【1月24日 毎日】

今のところ、べネズエラに資金援助している中国に関しては目立った動きはありませんが、ロシアはあくまでもマドゥロ政権を支持する方向のようです。

****ロ、ベネズエラに雇い兵派遣か マドゥロ氏保護と報道****
ロイター通信は25日、南米ベネズエラの反米左翼マドゥロ大統領の安全を確保するため、ロシアが民間会社を使って過去数日間に、ひそかに雇い兵部隊を送り込んだと報じた。

ロシアはベネズエラで暫定大統領就任を宣言したグアイド国会議長の背後に米国がいるとみて批判を強めている。報道が事実なら、ロシアに友好的なマドゥロ政権を守るため軍事支援に乗り出した可能性がある。

ペスコフ・ロシア大統領報道官はロイターに対し、「そうした情報は知らない」と回答した。プーチン大統領は24日、マドゥロ氏と電話会談し支持を表明していた。【1月26日 共同】
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報道の真偽はわかりませんが、ロシアが対外的に説明責任がない民間軍事会社を使うのは、シリアなどでもみられる最近の傾向です。ロシアとしてはベネズエラに巨額投資していますので、マドゥロ大統領には踏ん張ってもらう必要があります。

****ロシアの巨額投資が危機 ベネズエラ情勢混迷で****
ベネズエラに多額の投資を行っているロシアは、トランプ米政権がベネズエラの野党党首を暫定大統領として正式に認めたことを巡り、政治危機をあおっているとして非難した。
 
ロシア政府の報道官、ディミトリ・ペスコフ氏は記者団に対し「そのような介入は許容できず、一層の悪影響をもたらす」と述べた。(中略)
 
ベネズエラはロシアの主要パートナー国だ。ロシアは同国に巨額の投資を行い、マドゥロ政権を支えてきた。マドゥロ氏が昨年12月にロシアを訪問した際も、ウラジーミル・プーチン大統領は全面的に支援する旨をマドゥロ氏に伝えている。
 
1857年から国交があるロシアとベネズエラだが、近年では石油・ガス田を中心に、貿易・経済の投資案件を共同で手掛けている。

ロシア国営石油大手のロスネフチとベネズエラ国営石油会社PDVSAは、ベネズエラで5件の石油プロジェクトを進めており、ロシアのタス通信が連邦税関サービスのデータを基に報じたところによると、総生産量は年間900万トンと、ベネズエラの産油量全体の7%に相当する規模だ。

税関サービスの統計によると、2018年1-9月における両国の貿易は7940万ドルと、前年同期比でおよそ2倍に増えている。

ロシアの対ベネズエラへ投資額は合計で41億ドル(約4500億円)以上に上る。だがベネズエラ情勢が混迷を深めていることで、ロシアは巨額の投資が報われないリスクに直面している。
 
マドゥロ政権が失脚し、グアイド政権が正式に発足した場合、ロシアがベネズエラとの関係を絶つかは不明。ペスコフ報道官は、ロシアは「ベネズエラとの良好な関係を維持し、改善していくことに関心がある」とコメントしている。【1月25日 WSJ】
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ただ、マドゥロ政権が危険な“ドロ船”状態だったのは周知のところでしたので、ロシアもこういう事態は十分想定はしていたはずですが・・・。

【今後のカギを握る軍部の動向】
二人の大統領が並び立つ状況で、今後の動きは全く不透明ですが、どの国も政治混乱でもそうであるように、軍の動向がひとつの大きなカギとなります。チャベス氏以来、軍幹部と政権は密接な関係にありますが、若手には政権への不満もあるとの指摘もあるあところで、どうでしょうか・・・?


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