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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

「無用者階級」を生むAI技術の進歩 「ジョブスのリンゴ」は多くの人々にとっては毒リンゴか?

2019-09-09 22:12:13 | 世相

(人民日報の本社内にある「中央厨房」。壁一面のモニターに個々の記事の反応が映し出される【98日 朝日】

反応を分析してどうするのか? 「反応を見ながら新たな記事を書き、世論を誘導するのです」)

 

【テクノロジーと独裁が融合する危険性】

人工知能(AI)の能力がそう遠くない時点で人間の能力を超えるであろう・・・そのとき人類社会はどのようになるのか・・・・という議論は、極めて今日的な関心事であり、日々あちこちで目にするところです。

 

イスラエル歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏の主張に関する下記記事もそういう多くの議論のひとつですが、彼の言うところの「無用者」階級という言葉が非常に印象的です。

 

なお、「無用者」階級とは言わないまでも、未来社会がAIを駆使する一握りの支配階級と、その他大勢の“(厳しい監視・コントロールを受けながら)単に生かされているだけの人々”に二分されるというディストピアは、近未来を扱うTVドラマ・映画では定番でもあります。

 

****ハラリ氏描く近未来 新階級「無用者」と見えない支配者****

「サピエンス全史」や「ホモ・デウス」の著書が世界で1800万部売れ、オバマ前米大統領ら世界の指導者層からも注目されるイスラエル歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏が、テルアビブ市内で朝日新聞のインタビューに応じた。

 

人工知能(AI)バイオテクノロジーの力でごく一握りのエリート層が、大半の人類を「ユースレスクラス(無用者階級)」として支配するかもしれない、という未来を描いてみせたハラリ氏はインタビューでも、「真の支配者(ルーラー)はアルゴリズムになる。残された時間は多くはない」と、急速にアルゴリズム(計算方法)の改良が進むコンピューターが人類を支配する将来が来かねないと警告した。

 

ハラリ氏は「中央集権的なシステムはこれまで、データを集めても迅速に処理できなかったため非効率だった。だから米国がソ連を打ち負かした」が、「AIとバイオテクノロジー生体認証などの融合により、歴史上初めて、独裁政府が市民すべてを常時追跡できるようになる」として、テクノロジーと独裁が融合する危険性に警鐘を鳴らした。

 

一方、複雑化する金融などアルゴリズムが支配するシステムはやがて誰も理解できなくなり、専門家ですら、膨大な情報を集めるコンピューターのアルゴリズムからのアドバイスに頼らざるを得なくなると指摘。

 

「公式には権力は大統領にあっても、自分では理解できないことについて決定を下すようになる。『引き返せない地点』はすぐそこまで迫っている」。全体主義を防ぐため、データの保有権について政府が規制する必要があり、市民は政府に圧力をかけるべきだと主張した。

 

個人のレベルでも、ネット上などに集まるデータを総合してその人の好みをすべてコンピューターに把握される「データ支配」が強まると不安視されている。

 

それでもコンピューターに選択をゆだねるのではなく、自分自身の弱みや特徴を知り、コンピューターに対抗する必要性を強調。「最も重要なことは、自分自身をより早く、よく知ることだ」と訴えた。ハラリ氏自身は、自分を知るために毎日2時間の瞑想(めいそう)を行っているという。

 

今後10~20年の間に人類が直面する大きな課題を三つ挙げた。核戦争を含む大規模な戦争、地球温暖化、そしてAIなどの「破壊的」な技術革新だ。

 

特に技術革新については「30年後の雇用市場がどうなっているか、どんなスキルが必要なのかもわからない」と話し、どんな仕事にも就くことができない階層が世界中に広がる可能性も示した。

 

インタビューでは「ハラリ現象」ともいえるほど注目を浴びていることについて「私は預言者ではない。異なる可能性を指摘しているだけだ」としつつ、国家単位ではなく、地球的な視点で物事を見ることの重要性を強調した。98日 朝日】

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上記の主張は、さほど特異な主張もないように思われます。

 

中国社会がAI技術を駆使した超監視社会を構築しつつあることも常に指摘されているところで、そうした技術の現実政治への適用にあっては、中国的な政治体制が“向いている”ことも事実でしょう。

 

これまで、日本や欧米にあっては、欧米的民主主義・自由主義が共産党の一党支配体制よりも優れている、中国のような政治体制はやがては破局を迎えるという考えが一般的でしたが、AIと相性のいい中国社会が欧米社会を凌駕する結果を示すようになる日も来るのかもしれません。

 

なお、自分を知るために毎日2時間の瞑想云々は、いささか凡人には不可能なことではありますが。

 

【AI・バイオ技術の「脅威」 最新治療の恩恵にあずかれるのは特定階層のみ】

****AI・バイオ技術が人類にもたらすもの 「恩恵」か「脅威」か****

朝日新聞のインタビューに応じたユヴァル・ノア・ハラリ氏が描き出した未来は現実に忍び寄る。人工知能(AI)バイオテクノロジーの進化は、ビッグデータによる支配や格差の拡大を招きかねない。驚異的に進む技術革新にどう向き合えばいいのか。

 

「19世紀には多くの国が、産業革命で蒸気船や鉄道を手にした英国やフランスの植民地になった。それが今はAIで起こっている。20年待つと、多くが米国か中国の植民地になる。国のレベルで今すぐ行動を起こさなければ手遅れになる」

 

人類に恩恵をもたらすはずが逆に脅威になる技術。その一つにハラリ氏は「AI兵器」の存在を挙げる。(中略)

 

自ら動き画像などの情報を収集し、AIが敵味方を判断して攻撃を決定するドローンや戦闘車両――。「自律型致死兵器システム」(LAWS)と呼ばれるロボット兵器は米中やロシア、イスラエル、韓国が研究しているとされる。

 

8月にジュネーブで開かれたAI兵器についての国連の専門家会合は、規制に関する初めての指針を採択した。ただ、条約など法的拘束力のある規制に踏み込むのは簡単ではない。ハラリ氏は「20年後には手遅れになる」と訴える。

 

ハラリ氏がAIとともに「今後20~40年の間に経済、政治のしくみ、私たちの生活を完全に変えてしまう」と警告するのがバイオ技術だ。

 

今年5月、遺伝子治療技術を使った白血病向けなどの製剤「キムリア」の薬価が過去最高の約3349万円に決まり話題を集めた。バイオ関連の技術革新はめざましいが、すべての人が最新治療の恩恵にあずかれるとは限らない。

 

ベストセラーになった著書「ホモ・デウス」で、ハラリ氏は予想している。「2070年、貧しい人々は今日よりもはるかに優れた医療を受けられるだろうが、彼らと豊かな人々との隔たりはずっと広がる」(中略)

 

ゲノム編集のベンチャーをつくった神戸大の近藤昭彦教授は「がんのように遺伝子が壊れた疾患は遺伝子治療で根治できる」とバイオ技術の可能性を強調する一方、「高額の薬価を引き下げて多くの人が使えるようにし、AI兵器と同じように、バイオも倫理面の研究に力を入れないといけない」と指摘する。【同上】

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遺伝子治療技術は確実に進歩するでしょうが、それを使えるのは一部の特権的支配階級のみ・・・・という世界になるのかも。

 

そうなると、支配階級は肉体的にも不老不死とは言わないまでも、それに近いものを手にし、その他の人々とは全く異なるライフスタイルになるのかも。

 

まさにドラマが描く近未来ディストピアです。

 

【社会の変化についていけず職に就けない「無用者階級」】

****新階級「無用者」 旅行業者・銀行員「絶滅危惧種」の指摘****

「AIとロボットが人々にとって代わり、雇用市場を変える。学校は子どもたちに何を教えるべきかもわからない」

 

著書で、社会の変化についていけず職に就けない「無用者階級」が生まれる未来を予見したハラリ氏の世界には、日本の経営者も関心を持つ。

 

その一人、みずほフィナンシャルグループの佐藤康博会長は「AIが人の知能を超えるシンギュラリティーが来れば無用者層とも呼ぶべき人たちが出てくる。現代人が日常で感じる将来への不安を深くえぐり出した」と語る。

 

AIやビッグデータといったテクノロジーについていけなければ、金融業は生き残れない。社長時代の17年秋、10年間で約8万人の人員のうち、約1・9万人を削減する構造改革を佐藤会長が打ち出したのも、そうした危機感からだった。(中略)

 

ハラリ氏は、旅行業者と並んで、銀行員を「絶滅危惧種」と呼んでいる。巨大企業の場合、AIの普及で効率化が進むと、人員の余剰感を招きかねない。

 

「人が余れば、フロントに出てお客様に対応する仕事や企画部門といった、人間でしかできないサービスを担えるように再教育することが大切になる」と佐藤会長は考える。

 

ただ、AIやロボットがどこまで進化するかは読み切れない。ハラリ氏はこうも語る。

「AIは進化を続ける。人々は一度だけでなく、何度も自己改革を迫られる。このストレスは耐えがたいだろう」【同上】

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AIとロボットによって社会の生産性があがれば、社会の変化についていけず職に就けない者についても、例えばベーシックインカムのような形で、収入を保証されることもあるのかも。

 

ただ、そうした者は単に生かされている「無用者階級」ともなるのかも。「無用者階級」については、後でもう少し詳しく取り上げます。

 

なお、ハラリ氏が「絶滅危惧種」の事例として、いささかマイナーな旅行業者を持ち出した理由は知りません。

 

【データで国家を統制する中国のデジタル国家主義 個人データを巨大な利益に変える「GAFA(ガーファ)」】

****世論を中華に誘導する「厨房」****

「情報を集約して持つことで、計画経済や専制的な政府は、民主主義よりも技術的な優位性を持つ可能性がある。民主主義と自由市場が常によりよく機能する法則があるなどとは考えるべきではない」

 

ハラリ氏は、一国の体制を技術が左右する時代が来たと告げる。その一端がすでに見られる場所がある。

 

北京市内にある中国共産党の機関紙「人民日報」本社ビルの10階にある「中央厨房(ちゅうぼう)(セントラルキッチン)」は、最先端のメディアの現場だ。

 

湾曲した壁一面に広がるモニター画面の中央に、中国全土の地図が青く映し出される。その上に光る大小の黄色の丸。「それぞれの記事がどの地域でどれだけ読まれているかが表示されています」。案内役の女性が説明する。各部が取材結果を持ち込み、次の取材計画を練るという。

 

だが、「厨房」の本当の機能は別にある。世論の流れを読み、「動かす」のだ。画面には読者の性別、年齢層、地域などとともに、読者の書き込みから「記事を読んだ人の感情が肯定的か否定的か」も表示されている。

 

「分析してどうする?」。尋ねると、案内役は当たり前のように答えた。「世論が極端に傾いていないかを見ます。反応を見ながら新たな記事を書き、世論を誘導するのです」

 

今年3月、新華社通信習近平(シーチンピン)国家主席のメディア戦略を報じている。「ニュースの収集、発信、反応などでAIの利用を探求する。アルゴリズムを制御し、世論を導く力を全面的に高めていく」

 

人民日報は新聞、ネット、アプリ、ウェイボーやウィーチャットなどメッセージ機能を持つ「マイクロメディア」の四つの発信源を持ち、17年6月時点でユーザーは約6億3500万人に達する。中央厨房は他の党機関紙のモデルになり、似たようなメディア融合のシステムを、地方の機関紙も取り入れる。

 

ビッグデータが生む価値は「第2の石油」といわれる。個人データを巨大な利益に変えるグーグルやアマゾンなどの巨大プラットフォーマー「GAFA(ガーファ)」。データで国家を統制する中国のデジタル国家主義。双方が台頭する世界を、私たちはどう進めばいいのか。

 

ハラリ氏はこう提案する。

「技術はいい方にも悪い方にも働く。いま国家や企業が市民を監視するために一方的に使っている技術を、市民が国家を監視するためのものとして開発すべきだ」【98日 朝日】

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今、国際社会では米中の覇権争いが繰り広げられていますが、将来の世界の支配権をめぐって争うのは、「データで国家を統制する中国のデジタル国家主義」と「個人データを巨大な利益に変えるグーグルやアマゾンなどの巨大プラットフォーマー“GAFA(ガーファ)”」なのかも。

 

その場合、日本・欧米が中国と異なる政治体制にあるとは言っても、それは支配者が「国家」そのものなのか、それとも「国家」を動かす“GAFA(ガーファ)”なのか・・・という違いに過ぎないのかも。

 

【雇用不能な「無用者階級」 支配階層は「不老階級」にも】

ハラリ氏が描く「無用者階級」については、以下のようにも。

 

****人工知能は役立たず階級を生み出すか?--『ホモ・デウス』書評(評者・井上智洋)****

人類史を変えた3つのリンゴ

 人類の歴史には、3つのリンゴに象徴される劇的な変革があった。

一つ目は「アダムのリンゴ」で、これは紀元前一万年頃に始まった「農耕革命」を象徴している。この革命によって、狩猟・採集社会から農耕社会への転換がなされた。(中略)

 

二つ目の「ニュートンのリンゴ」は、アイザック・ニュートンがリンゴの木からその実が落ちるのを見て万有引力を思いついたという逸話から、17世紀の科学革命とそれに続く「工業革命」(第一次・第二次産業革命)の象徴と見なすことができる。工業革命は、農耕社会から工業社会への転換を引き起こした。

 

三つ目の「ジョブスのリンゴ」は、「情報革命」(第三次・第四次産業革命)の象徴だ。このリンゴは、言うまでもなくスティーブ・ジョブス等が設立したアップル社を指している。情報革命による工業社会から情報社会への転換が今まさに進行中だ。(中略)

 

情報革命はディストピアをもたらすか?

 三つ目の「ジョブスのリンゴ」は、人類にとっての「シアワセ林檎」になり得るだろうか?『ホモ・デウス』によれば、情報革命はディストピア(反理想郷)をもたらすかもしれない。

 

科学革命の後の人間至上主義の時代に、森羅万象が科学の対象として分析されたが、人間だけは分割できない神聖な魂によって自由な意思決定を行う唯一の例外的な存在に祭り上げられていた。

 

だが、近年の神経科学と情報技術の発達によって、人間の知的振る舞いは脳内の「電気化学的プロセス」に応じたアルゴリズムの作動に過ぎないのではないではないかと考えられるようになっている。

 

人間の脳とコンピュータは、アルゴリズムにしたがって作動するという意味で本質的な違いはない。そして、コンピュータ上のアルゴリズム(人工知能)は、いずれ人間の脳を凌駕するようになるとハラリは断じている。

 

“意識を持たないアルゴリズムには手の届かない無類の能力を人間がいつまでも持ち続 けるというのは、希望的観測にすぎない。(ハラリ『ホモ・デウス』)”

 

そうすると、人間は買い物から恋人選びに至るまで人生のあらゆる決定を人工知能に任せるようになるだろう。それは既に、アマゾンのレコメンデーション(書籍などの提案)システムや恋人マッチングアプリなどによって半ば実現している。

 

“『すべてのモノのインターネット』の偉大なアルゴリズムが、誰と結婚するべきか、どんなキャリアを積むべきか、そして戦争を始めるべきかどうかを、教えてくれるでしょう(ハラリ『ホモ・デウス』)”

 

ただし、ディストピアじみてはいるものの、生身の人間の脳よりも優れたアルゴリズム様の決定に従うことで、人類はより幸福になるかもしれない。

 

より深刻なのは、人間の脳を凌駕したアルゴリズムの出現によって、生身の労働者が不必要になるという事態だ。多くの仕事が人工知能に任せられるようになり、人間はお払い箱となる。

 

“二十一世紀の経済にとって最も重要な疑問はおそらく、膨大な数の余剰人員をいったいどうするか、だろう。ほとんど何でも人間よりも上手にこなす、知能が高くて意識を持たないアルゴリズムが登場したら、意識のある人間たちはどうすればいいのか?(ハラリ『ホモ・デウス』)”

 

ハラリは、「Useless class」という言葉を用いており、これは「無用者階級」「役立たず階級」「不要階級」などと訳されている。人類全員ではないにせよ、大量の役立たずの人間が発生するという。

 

“二十一世紀には、私たちは新しい巨大な非労働者階級の誕生を目の当たりにするかもしれない。経済的価値や政治的価値、さらには芸術的価値さえ持たない人々、社会の繁栄と力と華々しさに何の貢献もしない人々だ。この「無用者階級」は失業しているだけではない。雇用不能なのだ。(ハラリ『ホモ・デウス』)”

 

その一方で、人類は、戦争と飢餓、疫病の克服には安住せず、次なる目標に向かって驀進していくという。それは、テクノロジーによって肉体をアップグレードして、不死の超人になることだ。

 

神を殺した人類は自ら「ホモ・デウス」(神人)にならんとする。既にグーグルは、「死を解決すること」をヴィジョンとして掲げた「キャリコ」という子会社を設立している。

 

ただし、肉体のアップグレードにはお金が掛かる。『銀河鉄道999』の物語を思い出して欲しい。機械の体を買って永遠の命を生きられるのは、一部の金持ちだけだ。

 

神戸大学の松田卓也名誉教授は、『ホモ・デウス』の描く未来を「不老階級」と「不要階級」の分化としてまとめている。「不老階級」は、実際には不死にまでは至らないにせよ肉体をアップグレードしながら末永くハッピーに生きる。「不要階級」は、仕事がないがために貧しく、生まれたままの肉体をこれまで通り老化させながら慎ましく死んでいく。

 

『ホモ・デウス』の未来予想図にしたがえば、「ジョブスのリンゴ」も多くの人々にとっては毒リンゴとなる。それを「シアワセ林檎」に変えるにはどうしたら良いのか?私達は今から真剣に議論しておくべきだろう。それとも、こうした七面倒な議論もアルゴリズム任せにしてしまおうか?【17日 井上智洋氏 Web河出】

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支配階層が「不老階級」となる一方で、生かされている「無用者階級」には「人生定年制」が適用されるような社会になるのかも。ディストピアドラマの見過ぎでしょうか。

コメント
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AI(人工知能)の驚異的な可能性 必要なAI活用ルール 不可避な社会変革

2019-06-18 23:03:25 | 世相

(【618日 レコードチャイナ】)

 

10年以上も前に失踪した子供を経年変化に対応した顔認識技術で探し出す 生後数か月の子供も】

最近はAIに関する記事を目にしない日はないぐらい。その有用性・可能性とともに、限界や問題点なども多々指摘されています。

 

また、中国ではこのAI技術をいち早く実用化し、顔認証システムなどに応用していますが、こちらもいわゆる「監視社会」の問題点が多々指摘されています。

 

そうした問題点、留意すべき事項は多々ありますが、下記のような話を聞くと、やはりAIの可能性には驚嘆せざるを得ません。

 

****AIで尋ね人探し!10年前に誘拐された子供4人を探し出す―中国****

(中略)騰訊(テンセント)優図実験室が実施した経年変化に対応した顔認証技術による絞り込みに基づき、警察がDNAによる親子鑑定を行った結果、約10年前に行方不明となっていた4人の子供を探し出した。これは、中国国内で初めてのことであり、非常に素晴らしいブレイクスルーといえる。

テンセント守護者計画の安全専門家である李新氏は、警察官として8年のキャリアがあり、行方不明者捜索・誘拐グループ摘発事件に携わったのは、今回が初めてではない。だが、今回の行方不明者捜索にAIを使った点は、極めて特殊だったといえる。

李氏の同僚が、行方不明となった子供を探す両親から寄せられた子供の写真を見た時、誰もが言葉を失った。どの写真も少しでも汚れたりしてしまわないように1枚ずつぶ厚い油紙に幾重にも包まれていたからだ。

 

行方不明の子供たちはそのほとんどが3歳以下で、生まれてから撮影された写真が1枚しかないという子供や、生後満1カ月の時の写真だけという子供もいた。

四川省公安庁刑偵局誘拐対策処の蒋暁玲(ジアン・シャオリン)処長は、「写真を集めた時、両親は、『くれぐれも写真を無くさないでほしい』と繰り返し言っていた。両親にとってこれは子供が残してくれた唯一の拠り所だったからだろう」と当時を回想した。

これらの写真に写っている子供たちは全員、四川省公安庁誘拐対策処の未解決事件と関係があった。2008年から2010年にかけて、3歳前後の子供10人が、四川省で連続して誘拐されるという事件が起こったためだ。

四川省公安庁誘拐対策処と事件が発生した県・市の公安当局はこの10年間、誘拐されて行方が分からなくなった10人の子供を探し続けてきた。

 

蒋処長は「訪問調査やモンタージュ写真の公開、ネットワーク公告など試せることはすべて試してみたが、事件発生から時間がたちすぎており、仲介人の手掛かりもなく、事件は迷宮入りになるかと思われていた」と話した。

しかし201712月に転機が訪れた。公安部刑偵局の陳士渠(チェン・シーチュー)副局長が調査のためテンセントを訪れた際に、優図実験室の経年変化に対応した顔認証技術のことを知り、この技術に関する情報を四川警察に伝えたのだ。

李氏は、「難易度は非常に高く、実はその当時、関係者も自信はなかったが、あのぶ厚い油紙に包まれた写真を見て、どこまでも努力していく決心がついた」と当時を振り返った。

その当時、10年以上も前に失踪した子供を経年変化に対応した顔認識技術で探し出したケースは、世界的に見ても皆無だった。

 

経年変化に対応した顔認証技術については、優図顔認証計算式の責任者である李博士が同僚とともに、0歳から18歳までの子供の顔の成長・変化に対するモデリング・シミュレーションを行い、学習可能な顔のサンプルを大量に生成した。その後、ディープニューラルネットワークのアルゴリズム用いて、これらの人の顔に成長過程で生じる複雑な変化を学習させた。

(
中略)ついに大きなブレイクスルーを実現した。「DDL(データ駆動型学習)」と呼ばれるアルゴリズムによる経年変化に対応した顔認識の精確率は96%以上に達した。

間もなく、優図実験室チームは、彼らのモデルを用いて警察に提供された膨大な量のデータに対する第1回のマッチングを実施し、警察は行方不明の子供たちそれぞれに最も似ていた順位トップ5人まで絞り、最終的にオフラインでの確認作業を行った。

(中略)警察はDNA鑑定を経て、この第1回のマッチングで誘拐された4人の子供の所在を突き止めることに成功し、その4人のうち3人の精確率は最高だった。

蒋所長にとって最も印象深かったことは、第1回のマッチングで見つかった4人の子供の中には生後わずか数カ月の写真しかなかった子供が含まれていたことだった。彼女は、「科学技術の力は偉大すぎる」と感嘆を禁じえなかった。

引き続きこの技術を用いてさらに3人の子供が見つかった。当時四川省で相次ぎ連れ去られた10人の子供のうち、現在まですでに7人が見つかっている。

 

公安部刑偵局の陳副局長は、「誘拐された子供の多くが無事見つかったことは、誘拐されて長年が経過した子供を探す上でAIが重要な役割を担うことができる事実を裏づけている。経年変化に対応した顔認証技術は、DNA鑑定に続き、公安機関が誘拐された子供を捜索する上で、極めて有効な方法を提供するものであり、大きな『一里塚的意味合い』を備えている」とコメントした。【618日 レコードチャイナ】

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生後わずか数カ月の写真をもとに10年後に顔認証するというのは驚異的ですが、本来問題とすべきことは、AI云々より、中国では子供の行方不明が異常に多いということでしょう。

 

中国メディアが取り上げる「日本社会の不思議・驚異」として、“なんと、日本では子供だけで登下校する!”ということがよく挙げられます。

 

中国では“誘拐”などの子供の行方不明が信じられないぐらいに多く(年間20万人(!)とも)、登下校は親などが付き添うというのが常識になっているようです。

 

****年間20万人の児童が行方不明に! 中国マフィアの「誘拐イノベーション」****

旧正月に多発 超監視社会に対抗する最新犯行手口

 

(中略)ところで、この分野でも「大国」なのが中国だ。子どもをかどわかして売り飛ばす誘拐犯を指す言葉として、中国語には「人販子」というこなれた単語が存在し、メディアでも日常的に使われている(それだけ身近な概念なのだ)。

 

香港紙『文匯報』によると、中国で1年間に立件される子どもや女性の誘拐事件は約2万件で、1日平均50件とのこと。また2015年にNHKは、中国で行方不明(誘拐のみとは限らない)になる児童数は年間20万人に達すると伝えている。

 

誘拐した子どもの「市場価格」は約140万~170万円

中国大手週刊誌『中国新聞週刊』の記事によれば、誘拐した子どもの「市場価格」は、20173月時点で8万~10万元(約140万~170万円)ほど。

 

男の子は女の子よりも高く、男の赤ちゃんが15万元(約260万円)で売買された例もあったという。

 

さらわれた子どもの多くは、社会保障制度の不備から老後の不安を抱える、農村部の子どもがいない夫婦に売られているようだ。(後略)【2018216日 安田峰俊氏 文春オンライン】

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二言目には「安心・安全」の日本からすれば“とんでもない”ことですが、そのことは今回パス。

 

【必要となるAI活用のルールづくり】

話をAIに戻すと、その応用は中国だけでなく世界各地で始まっています。

 

****全米初、訴追手続きにAI導入へ サンフランシスコ、偏見排除狙い****

米サンフランシスコ市検察当局は13日までに、人種の違いによる偏見がもたらす冤罪などの排除を目指し、7月から訴追手続きに人工知能(AI)技術を導入すると発表した。

 

多様性に富む社会で公正な法治の実現を目指す全米初の試みとして注目を集めている。米メディアが伝えた。

 

検察官は声明で、犯罪を検討する際に「人種(問題)を取り除く」と説明。全米各地でも活用できるモデルづくりを目指したいと意欲を示した。

 

米国では黒人など有色人種の犯罪検挙率が高いとされる。背景には捜査当局の偏見があると指摘する声があり、新たな取り組みで市民の不信感を払拭する狙い。【614日 共同】

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AIには人種や性別に関する差別・偏見がないのか・・・と言えば、そんな訳でもなく、(AIのことは皆目わかりませんが)AIを学習させる過程で、現在社会に存在する差別・偏見が刷り込まれてしまうことはあるようです。

 

そうした点には注意する必要がありますが、もっと差別・偏見に凝り固まった人間ははいて捨てるほどいますので、総体的にはAI利用で偏見排除が期待できるでしょう。

 

ただ、AIに委ねた際に、ブラックボックス化する懸念などもありますので、利用時のルールが必要にもなります。

 

****OECDがAI活用の基本指針を採択 「人間中心」の原則明記****

経済協力開発機構(OECD)は22日、パリで閣僚理事会を開き、急速に進展する人工知能(AI)の活用に関する基本指針を採択した。

 

人とAIの共生に向け、基本的人権を阻害しない「人間中心」を掲げ、説明責任や個人情報保護など、AIの開発や利用にあたって重視すべき原則を明記した。国際機関によるAIの指針は初めて。今後はこの指針をたたき台に国際ルール作りが加速することになる。

 

AIは膨大なデータを分析して判断を下すことができ、生産性の飛躍的な向上が期待されている。一方、病気の診断や融資の審査、就職の採用判断など、人生を左右する決定に使われることも見込まれ、データに偏りがあれば差別的な判断を下したり、プライバシー侵害を招いたりするとの懸念が出ている。

 

指針では、法の支配を重視する「人間中心」のほか、AIの判断が差別を生まない「公平性」、AIの恩恵から取り残される人のいない「包摂的な成長」などの原則を明記。開発にあたる組織、個人、政府機関に対し、重視するよう求めた。

 

AIの仕組みは複雑で分かりにくく、「ブラックボックス化される」との懸念も出ている。このため、正しく判断する「高い精度」だけでなく、AIが下した判断の根拠を人々に分かりやすく示す「透明性、説明可能性」の原則も盛り込んだ。

 

AI開発では、「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・コム)と呼ばれる米巨大IT企業が膨大な個人情報を蓄積して新たなサービスを展開している。こうした個人情報の流出防止など、プライバシーを保護する「安全対策の徹底」も求めている。

 

OECDの調査によると、AIの普及に伴う自動化によって既存の仕事の14%が消滅し、32%の仕事が劇的な変化を迫られるという。このため、指針では各国政府が連携して労働市場の変化に対応していくことも求めている。

 

今回の指針には、日本を含むOECD加盟国のほか、アルゼンチン、ブラジルなどの非加盟国も賛同しており、最終的に40カ国以上が採択する見通し。

 

6月に大阪で開催される主要20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)でもAIが議題になるとみられ、議長国の日本がルール作りを主導できるか問われることになる。【522日 毎日】

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膨大なデータを分析して瞬時に判断を下すことができるということで、人間では問題にならなかったような新たな問題も出てきます。

 

AIの活用が現実化している車の自動運転では、正面に一群の子供たちを発見したとき、右によければ大勢のお年寄りがいる、左によければ自分が壁に衝突する・・・さて、どうするか?といった問題も。

 

人間なら、頭が真っ白になって“合理的な判断”などできず、反射的な対応で終わりますが、AIなら分析できます。

分析できますが、子供の命を守るのか、高齢者を犠牲にすべきか? それとも自分の命を・・・といった極めて判断しづらい問題をいかに判断させるべきかを事前に開発段階で人間が悩む必要があります。

 

仮に大勢の命を救うためなら、運転者を犠牲にするように設計されているとなると、購入者が納得するかどうか・・・。

 

【“既存の仕事の14%が消滅し、32%の仕事が劇的な変化を迫られる”ことによる社会変革】

そうした個々の問題もありますが、社会的に大問題となるのは“AIの普及に伴う自動化によって既存の仕事の14%が消滅し、32%の仕事が劇的な変化を迫られる”ということでしょう。

 

AIに仕事を“奪われた”人間はどうすればいいのか?

生産性向上で、人間は働かなくてすむようになったとして、収入さえ保証されればそれでいいのか?

 

****(シンギュラリティーにっぽん)第1部・未来からの挑戦:7 AIが奪う雇用、どう支える****

人工知能(AI)が雇用を奪う、との心配が広がる。テクノロジーが脅威になるとき「公的な支え」が必要にならないのか。個人はどう備えればいいのだろうか。

 

(中略)

 ベーシックインカム、財源難

AI時代になぜBI(ベーシックインカム)が必要か――。5月16日夜、東京都内であった近未来の社会システムを考えるイベントで、駒沢大学の井上智洋准教授が講演した。「AI時代には生活保護だけでは不十分。幅広く生活を保障する制度が必要になる」

 

18世紀の産業革命以降、技術革新は肉体労働を中心に雇用を奪ってきたが、AIの登場は知的労働を脅かす、と井上准教授は考える。「工場などでAIやロボットが生産するようになれば、多くの人手は必要とされなくなる。雇用は破壊され、所得格差が広がる」

 

低成長が続き格差が拡大する先進国を中心に、BIへの注目が高まっているのは確かだ。右派と市民政党の連立政権が誕生したイタリアでは今年1月、ポピュリズムの台頭を背景にBIが貧困層に限って導入された。フランスやインドは20年の法制化をめざす。

 

しかし、誰にでも最低所得を保障するBIは人々の労働意欲をそがないのか。

 

フィンランドで昨年末まで失業者2千人を対象に行った実証実験では、BIを受けた失業者と受けなかった失業者で労働意欲に差はなかった一方で、健康状態が「とても良い」「良い」と答えた人は、BIを受けていた方が9ポイント多かったという。それでも、同国社会保健省は本格導入を見送った。

 

BIという「バラマキ」策が財政を悪化させる懸念もつきまとう。日本でBIが導入されるとしたら、最大の壁はやはり財源問題だ。

 

三菱総合研究所が昨年4月、国内の会社員ら3千人を対象にしたアンケートによると、BI導入について24%が「必要」とし、月に平均「10万円」の支給が必要と答えた。一方、「不要」は28%だった。

 

三菱総研によると、18歳以上に月10万円、17歳以下に半額を給付した場合、約130兆円の財源が必要。消費税率を現在の8%から49%に上げないと捻出できない。

 

アンケートでも、負担を明示するとBIが「必要」との回答は12%に減った。

 

三菱総研の森重彰浩シニアエコノミストは「負担増に抵抗を感じる人は多く、日本でのBI導入は現実的とは言えない」と指摘する。

 

 ■自動化の波「個人の備え必要」

東京都目黒区の商店街の一角に、今年1月オープンした三菱UFJ銀行の新型店舗は、近未来の銀行の一つの姿を予感させる。

 

スリム化された店頭にはカウンター窓口がない。ネットバンキングの口座開設などは来店客が自分でタブレット端末を操作。税金や公共料金などは自動受付機で支払う。AIを使って店内に10台以上設置したカメラの情報から性別、年齢などを分析し、マーケティングに役立てる。

 

長引く低金利で厳しい収益が続くメガバンクは、業務量や人員の削減を迫られている。三菱UFJは23年度までに、現在の約500店のうち従来の窓口がある店舗を約半分にする計画だ。

 

30年ごろ、日本の労働人口の49%が自動化される可能性がある――。野村総合研究所と英オックスフォード大が4年前に出した報告書は、銀行の窓口係と並び、経理事務員などがAIやロボットに取って代わられやすいと予想した。(後略)【526日 朝日】

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おそらく産業革命にも匹敵するような社会の変革が現実のものになるのでしょう。

 

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国内外で進む、旧来の概念・枠組みにとらわれないジェンダーフリーの流れ

2019-02-21 23:05:07 | 世相

(丸井の「ジェンダーフリーハウス」には性別を問わないカジュアルウェア40種類以上が並ぶ【2月19日 朝日】とのことです。)

【ジェンダーフリーの売り場も
最近はLGBTといった性的マイノリティーに対する社会の認知も一定に進みつつあるようです。

****LGBT差別禁止を明文化へ 茨城県、都道府県で2例目***
 茨城県は、LGBTなど性的少数者に対しての差別禁止を条例で明文化する。2月開会の県議会で成立した場合、都道府県でLGBTへの差別禁止を明文化するのは東京都に次いで2例目。また、条例とは別に、同性カップルに対して書類を発行するなどの対応も検討している。(後略)【2月1日 朝日】
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****LGBT「パートナー宣誓制度」創設へ 堺市、4月から****
 大阪府堺市は30日、LGBTなど性的少数者のカップルをパートナーと公的に認める制度を4月から始める、と発表した。同様の制度は大阪市や札幌市、兵庫県宝塚市など11自治体で導入されている。(後略)【2月1日 朝日】
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また、大手広告代理店の電通が去年10月、全国の20歳から59歳の男女6万人を対象にLGBTに関する調査を行ったところ、「11人に1人、8.9%がLGBT層である」という結果が出たそうです。

また、上記調査では、東京都が4月から行うLGBTへの差別を禁止する条例に8割以上が賛成で、欧米で広がる同性婚についても、日本での合法化に78.4%が賛成とのこと。

6万人の大規模調査で8.9%というのは、かなりの数値のようにも思えます。

上記のように、LGBTに対する認知は進んでいるようにも見えますが、正面きって「あなたはLGBTを差別しますか?しませんか?」と聞かれたときの反応と、普段実生活における反応はまた違うものがあるのでは・・・という点にも留意する必要があるかも。

こうした風潮を受けて小売業でも、旧来のジェンダーの概念を取り払った形で販路の拡大を目指す企業も出ているようです。

****性別選ばない、安心お買い物 丸井、期間限定の売り場****
男性用、女性用といった性別にとらわれない衣料品などを扱う売り場を丸井グループが都内にお目見えさせた。

体は男性だが心の性は女性、女性向けの店には行きにくい――そんな悩みを持つ、体と心の性が一致しない「トランスジェンダー」の人も安心して買い物ができる空間を目指す。

 ■幅広いサイズや色/人目気にせず化粧
有楽町マルイ(東京都千代田区)にできた新しい売り場は「GENDER FREE HOUSE(ジェンダーフリーハウス)」で、3月3日までの期間限定。約260平方メートルの売り場に男女問わないサイズや色、デザインのカジュアル服が40種類以上並ぶ。パートナーらと利用できる大型の試着室もある。
 
靴では、パンプスは19・5~27センチと大きめのサイズ、ビジネスシューズは22・5~30センチと小さめのサイズもそろえる。スーツはパターンオーダーで作れる。服と靴はこの売り場で選び、丸井のネット通販サイトから購入する。
 
化粧品は、資生堂が化粧水や美容液などのスキンケア商品、口紅などのメイクアップ商品を販売。パーティションで区切られた一角で人目を気にせず、専門スタッフに化粧してもらえる。担当者は「会話しながら希望のメイクを一緒に見つけていきます」という。
 
丸井は2010年からプライベートブランドで通常より幅広いサイズの靴を販売。多くの人の体形をカバーする狙いだったが、トランスジェンダーの人々にも支持されるようになった。
 
今回は一歩進めた取り組みで「売り場や商品を男性、女性と区分けすることで私たちがお客さまを選んでしまっている。時代とともに変化するニーズや社会課題に対応する売り場を作っていきたい」(担当者)という。

売り場のオープン前の催しに参加したトランスジェンダーのナオさんは「女性服売り場や化粧品売り場で買い物するのはハードルが高い。安心して商品を選べるこうした取り組みが増えて欲しい」と話した。
 
衣料品の売れ方にも変化が出ている。コムサを展開するファイブフォックスの「パープル&イエロー」は、ほぼすべての商品が男女どちらも着られるサイズ。大きめサイズをゆったり着るのが女性に流行した影響が大きく、「問題意識の発信はしていない」というが、「ジェンダーにとらわれたくないお客様に選んでもらえていると思う」という。
 
ワールドの「ベースステーション」も大半の商品が男女兼用で「トランスジェンダーの人にも違和感なく着てもらえる」という。【2月19日 朝日】
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今はネット購入を使用すれば、ジェンダーに限定されずに異なる性別向けの商品を購入することは容易になっていますので、単に商品入手という点で見れば、ジェンダーにとらわれない売り場の意味はそう大きくはないかも。

ただ、ジェンダーにとらわれない商品購入が認知された雰囲気がその売り場にあれば、そういう場所での買い物というのはLGBTの人にとっては、単なる商品入手以上の意味合いのある場所にもなるでしょう。

【ドイツ “性分化疾患”を「第三の性」と認定】
目を世界に転じると、LGBT認知の流れは明確になっているようです。(もちろん、抵抗・反動もありますが)

****男性でも女性でもない、ドイツで「第三の性」が可決****
ドイツ連邦議会は昨年12月14日、男性でも女性でもない第三の性とされる「インターセックス(性分化疾患)」を認める改正案を可決した。対象者は、出生届に「多様」を意味する「ディバース」が書き込まれ、欧州で初めて公式認定されることになる。
 
性分化疾患とは、遺伝子的にも解剖学的にも、性が男性でも女性でもない状態のこと。例えば、外見が女性でも、子宮や卵巣がなく、精巣を持ち、多くが女性として一般認識されていく。
 
ドイツ政府は13年、この性別問題の取り組みを開始し、対象となる新生児の出生届で、性別欄の無記入を許可。左右連立のメルケル政権は、17年に改正案に着手した。今回の改正案通過で、当事者は出生届、パスポート、運転免許証など、行政文書に「ディバース」と記載することが可能になる。
 
しかし、対象者が性分化疾患かどうかを判断するには、医師の診断が必要とされ、これを不服とする声もある。「レズビアン・ゲイ連盟」(LSVD)のヘニー・エンゲルス代表は、法改正に対し「政府が社会・心理的観点からでなく、身体的特徴のみで性を判断している」と批判した。
 
その一方で、極右党「ドイツのための選択肢」(AfD)のベアトリクス・フォン・シュトルヒ副党首は、「年齢や体の大きさのように、性別は人間が生まれた時から決まった事実」と述べ、第三の性そのものを否定した。
 
国連の調べによると、性分化疾患者は、世界に0・05〜1・7%の割合で存在し、赤毛人口とほぼ同数だという。
 
ベルギー出身のトップモデル、ハンネ・ギャビー・オディール氏(30歳)は17年、ファッション誌『ボーグ』に対し、自身が性分化疾患者であることを告白した。
 
10歳で精巣を除去し、18歳で女性器手術を受けたオディール氏は「生理の会話や子供を持つこともできないが、かといって男性でもない。でも、インターセックスの自分を誇りに思う」と語っている。
 
世界では、オーストラリアやニュージランドをはじめ、アメリカ(州による)、カナダ、ネパール、パキスタンなどでも、行政文書における第三の性を認めている。今後、さらに認定は進むだろう。
 
しかし難題は、言語学における「ディバース」対象者の扱いのようだ。英語の「He」や「She」のように、男性と女性を明確に使い分ける言語は、性分化疾患者をどう名付けるのか。「Ze」と呼ぶ動きもあるようだが、言葉よりも人間の脳が混乱し、むしろ社会に差別が広がってしまうのではないだろうか。【2月5日 WEDGE】
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先日、体の右半分が真紅(雄の特徴)で、左半分が灰褐色(雌の特徴)という、雌雄キメラのショウジョウコウカンチョウ(猩々紅冠鳥)がアメリカ・ペンシルベニア州見つかったことが話題になりましたが、それにも近い性分化“疾患”という身体的・生物学的問題と、生き方としてのジェンダーフリーとは若干異なるような気もしますが、旧来の枠に押し込まないという点では前進でしょうか。(日本語訳の問題かもしれませんが、“疾患”という表現には抵抗感もありますが)

【警察トップや首相に同性愛者も】
****「多様な職場づくり」に努力 同性愛のロンドン警視庁女性総監****
ロンドン警視庁で初の女性警視総監であるクレシダ・ディック氏は10日、自身が同性愛者だと公にしていることに関連し「さまざまな人種や宗教、性的指向の人々」にとって働きやすい、多様な人たちからなる職場づくりに努力する考えを示した。BBCラジオの番組で語った。
 
ロンドン警視庁で対テロ部門のトップを務めたほか、2012年のロンドン五輪の治安対策にも携わり、17年に約190年の歴史で初の女性警視総監となった。

自身が他人と「ちょっと違う」同性愛者であることで、若者たちにも「自分は人とは違うけどやってみよう」という気持ちにさせていると思うと述べた。【2月11日 共同】
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同性愛者だと公にしている女性が警察組織トップに上り詰めるというのは、日本ではまだ考えられないことですが、世界では警察トップどころか、国家のトップに同性愛者がなることも時折見聞きするようになっています。

2017年5月、トランプ大統領が初参加したNATO首脳会議で撮影された首脳配偶者(いわゆる“ファーストレディー”)の記念集合写真について、米ホワイトハウスが公式フェイスブックで、10名の首脳配偶者のなかで同性婚のルクセンブルク首相のパートナー男性だけ名前を掲載しなかった・・・ということで話題にもなりました。

(なお、“ロサンゼルス・タイムズに対し、ルクセンブルクの20歳の女子学生は「首相のフェイスブックにはしょっちゅう2人の写真がアップされるけど、記事にも見出しにもならない。みんな良い意味で無関心……いまの社会のあらわれなんでしょうね」と話しています。”【2017年05月31日 withnews】とも)

****同性愛公表のセルビア首相、パートナーが男児出産****
セルビア首相府は20日、アナ・ブルナビッチ首相のパートナーの女性が男児を出産したと発表した。ブルナビッチ首相は同性愛者であることを公表しているが、セルビアでは同性婚や同性同士のパートナーシップは法的に認められていない。
 
首相府によると、在任中に同性パートナーが出産した首相は世界で初。母子ともに健康で、地元メディアによると男児は「イゴール」と命名された。
 
ブルナビッチ氏は2017年に首相に指名され、同性愛者であることを公表している数少ない首脳の一人。

しかしセルビアでは同性愛嫌悪の考えが根強く、同氏はLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)をめぐる問題には積極的に発言していない。【2月21日AFP】
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セルビアのような保守的な国で、首相が同性愛者であることを公表できるというのは不思議な話でもあります。

【アジアでは、台湾で同性婚容認の取り組みも】
アジアでは、同性婚に関してはタイ・台湾が先駆的な取り組みを行っています。
ただ、台湾では根強い反対世論があります。

****台湾、同性婚容認の法案 アジアで2例目、根強い反対*****
台湾の行政院(内閣に相当)は21日、同性同士の婚姻を認める特別法案を立法院(国会)に送付した。5月下旬の施行を目指す。

アジアではタイの内閣が昨年12月、同性婚を認めるパートナーシップ法案を議会に送付しており、法案提出は2例目となる。成立時期によっては台湾がアジア初となる可能性がある。
 
台湾の憲法裁判所に相当する司法院大法官会議は2017年5月24日、同性婚を認めない現行の民法は違憲だとの憲法解釈を発表し、2年以内の立法措置を求めた。だが、昨年11月、民法改正による同性婚容認に反対する住民投票が成立し、蔡英文政権は3カ月以内の対応を迫られていた。
 
特別法案では、原則18歳以上の同性2人に「婚姻関係」の戸籍登録を認め、財産についても民法の夫婦間の規定を準用する。ただ、どちらかの実子を除き養子縁組は認めない。

 蘇貞昌(そ・ていしょう)行政院長は法案を決めた行政院会議(閣議)で「この一歩は歴史に記録される」と評価したが、法案の名称から「同性婚」を除くなど、根強い反対派への配慮も伺わせた。
 
台湾では2003年以降、毎年秋に台北でアジア最大の性的少数者(LGBT)パレードが開かれるなどしており、蔡総統も同性婚容認を表明してきた。

ただ、17年の憲法解釈以降、賛成と反対の両派がデモを行うなど対立が深まり、昨年11月の住民投票では民法改正による同性婚容認案が否決された。【2月21日 産経】
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こうして見ると、日本社会・政治はかなり保守的なのかも・・・と思えます。
伝統的な男女の役割分担・家族観といったものに固執しているところに、日本の出生率が上向かない原因のひとつがあるようにも。某副総理は反対でしょうが。

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ロボット車がロボットをはねる時代 2019年実用化する新技術 自動翻訳機の可能性は?

2019-01-11 23:36:46 | 世相

(テスラ社の自動運転車「モデルS」にはねられるプロモボット社のロボット「V4」(左端)【1月9日 カラパイア】)

【自動運転のテスラ車がロシアのロボットを轢き殺した】
今日見た記事で一番面白かったのが、下記の“自動運転のテスラ車がロシアのロボットを轢き殺した”というもの。

****ロボットがロボットを殺す、新時代の出来事****
今年のCES(アメリカ、ネバダ州ラスベガスで開催中の見本市コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)で自律型のビジネスアシストロボットとして展示されたプロモボット。

ペンシルバニア州のプロモボット社がアジアと欧州に開発センターを持ち製作しているもので、現在世界26の国で実際に導入されている。
 
このプロモボットがCES2019に搬入されている最中にテスラの無人走行車両に「轢き殺される」という事故が起きた。テスラは自動運転走行の実験中だったと見られるが、ロボットと接触したことに全く気付かぬように走り去る場面が録画されている。
 
プロモボットのチームは会場にボットを搬送する途中で、1台のボットが車道に置かれていた。そこを通りかかったテスラと接触して転倒したのだが、人間に例えれば飛び出しと前方不注意運転が重なった不幸な事故、といったところだろうか。
 
この事故の興味深い点は事故の加害者、被害者が共に自律運転されていた、つまり全くのロボット同士による世界初の事故例だった、ということだ。

もっとも映像を見る限りプロモボットは事故の時点では動いておらず、車道の端に立っていただけ。テスラのオートパイロットがプロモボットを障害物として認識せずブレーキを全くかけていないように見える。
 
テスラのオートパイロットについてはこれまでも道端に停止している車両(例えば配送業社のトラックだったり救急車のような緊急車両など)を認識せずに物損事故を起こす、という事例が報告されている。

今回はその対象が道端のロボットだった、ということなのだが、結果として前代未聞のロボットがロボットを殺す、という事例となってしまった。
 
この事故に対しテスラ側からは特に声明が出されていない。しかしプロモボットはこの事故をニュースリリースとして流し、さらには翌日に行われたロボットが「死亡」した現場での「世界初のロボットのための追悼サービス」の模様もユーチューブで流した。結果としてプロモボットにとっては大きな宣伝につながった面もある。
 
プロモボットはショッピングコンサルタント、ミュージアムなどでのガイド、企業の受付などに利用されている。また顔の部分がデジタル表示で表情を表しており、「感情を表すロボット」としても知られている。

さらにはダンスを踊って観客を楽しませることもできるという。これまでもCESのような大規模コンフェレンスに貸し出され、会場のアシストなどを行ってきた。
 
今回の事故が投げかけるのは、今後こうしたロボット対ロボットの事故が増えるのではないか、という疑問だ。それは自動運転車両同士の衝突かもしれないし、倉庫など複数の運搬ロボットが使用される場所でのロボット同士の衝突かもしれない。
 
テスラのオートパイロットの弱点である「停止している無機物の認識が弱い」は他のロボットにも共通する点かもしれない。相手が人間であれば熱感知などで存在を認識できるが、動くべき場所で停止している機械その他への認識が遅れ、こうした事故につながる。
 
また今回のような交通事故に対し、保険会社はどう対応すべきなのか。車道に出ていたプロモボット側にも自己責任が加算されるのか、あるいは停止物にぶつかったテスラの100%引責となるのか。今回の事故でテスラがプロモボットに対しロボット代金の補償を行うのか、対物事故として処理されるのか、など問題点は多い。
 
プロモボット側にすれば追悼サービスまで行うほど、「単なるロボットではなく感情を表し人の手助けをする存在」という思い入れがある。しかしロボットはあくまで「物」であり、今回のような事故が対人となる可能性はない。
 
しかし今後ロボットがますます実社会に導入されるようになれば、こうした事故も増加するだろう。ロボットのオペレーションにあたっては当然保険が掛けられることになるが、車でなくても対人対物、「死亡補償」などが必要となってくるかもしれない。

世界初のロボットがロボットを「轢き殺した」事故は、我々の未来に新たな疑問を投げかけることになった。【1月11日 WEDGE】
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“事故現場”は録画されており、プロモボット社がCESに展示するはずだったロボット「V4」がテスラ社の自動運転車「モデルS」にはねられる(正確には“接触して倒される)”瞬間の動画は【1月9日 カラパイア】などで見ることができます。

****テスラ社の自動運転車がAIロボットをひき殺すという事案(アメリカ)****
(中略)事故を受けてプロモボット社はテスラのイーロン・マスク氏に宛てて、以下のようにツイートした。

「マスクさん、ラスベガスで罪もないロボットがテスラ・モデルSに轢き殺されました。あなたの車は完全な自動運転の最中でした。」(後略)【1月9日 カラパイア
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もっとも、上記【1月9日 カラパイア】によれば、“プロモボット社による自作自演では?という疑惑も一部でささやかれている。”とのこと。

****一方で疑惑も****
なお動画を見る分には、事故は軽い接触で、ロボットにそれほど深刻なダメージがあったようには見受けられない。

これについて、プロモボット社による自作自演では?という疑惑も一部でささやかれている。 というのも2016年にも同じようなことがあったからだ。

そのときはロボットが車道に飛び出して騒動になった。ロボットは開発者から逃げ出したところだったと報じられたのだが、どういうわけだかその一部始終がしっかりと撮影されていた。(後略)【同上】
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まあ、確かに今回事故も、「なんでロボットはあんなところに置かれていたのか?」という感もしないでもないです。
真相はわかりません。


(ロボットと対面する微妙な表情のプーチン大統領【1月11日 WEDGE】)

いずれにしても、これからいろんな新しい出来事が起きるのは間違いないでしょう。

自動運転車については、すでに配車サービスも始まっています。

****全米初 自動運転の配車サービス開始 グーグルグループ会社****
車の自動運転の開発競争が激しさを増す中、大手IT企業グーグルのグループ会社「ウェイモ」は、全米で初めて一般の客を対象に、自動運転の車を使ったタクシーのような配車サービスを事業として始めました。

アメリカのウェイモは5日、西部アリゾナ州のフェニックスとその周辺で、スマートフォンのアプリを使って自動運転の車をタクシーのように呼べる配車サービスを始めたと発表しました。

当面の利用者は住民数百人で、自動運転のミニバンには大人3人と子ども1人までが乗車できます。
また当面は、安全のために運転席にドライバーが座ることにしています。(後略)【2018年12月6日 NHK】
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【AIが人間の知性を超えるとされる「シンギュラリティ」は2030年?】
自動運転車については、「高齢者をはねるのを避けようとすれば子供をはねてしまう・・・といった場合に、どちらを選択するのか?」とか、「歩行者をはねるのを避けようとすれば、車が崖の激突して搭乗者が死んでしまう・・・・といった場合にどうするのか?」といった興味深い問題もあります。

正確には「どうするのか?」ではなく、「どうするように設計されているのか?」という問題でしょう。

人間であれば思考停止状態での一瞬の出来事で、「選択」もほとんどできない成り行きまかせ、あるいは条件反射でしょうが、AIチップ搭載の自動運転ということになると、判断できる余地があるだけに「どう判断するのか?」という話にもなります。

AIが人間の知性を超えるとされる「シンギュラリティ(技術的特異点)」の時期については、2030年頃という見方が多いとか。

****「AIが人の知性を超す」9割 若手研究者アンケート ****
日本経済新聞社は2050年の将来に関するアンケート調査を実施した。18年12月に20~40代の若手研究者男女約300人を対象に調査し、200人から回答を得た。

50年までにAIが人間の知性を超えるとされる「シンギュラリティ(技術的特異点)」が来るかという質問に対しては「どちらかといえばそう思う」(33%)も含めると9割が「そう思う」と回答。

時期については30年が18%と最も多く、40年が16%で続いた。(中略)

アンケートの最後には「今よりも幸せになっていると思うか?」と問いかけた。「そう思う」(39%)、「どちらかといえばそう思う」(24%)で、6割が肯定した。

「変わらない」が29%で、「どちらかといえばそう思わない」は9%、「そう思わない」はゼロで、技術の進歩を前向きにとらえる研究者が多かった。(後略)【1月1日 日経】
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【2019年に実現する新技術】
テスラ社のイーロン・マスク氏の“夢”は多方面にわたっています。

****マスク氏が低コストトンネル公開、都市交通網に革命?****
米電気自動車大手テスラおよび宇宙開発企業スペースXの創業者で富豪のイーロン・マスク氏は18日夜、都市交通への「天の恵み」とうたう低コストのトンネルを発表した。
 
今回お披露目されたのは、マスク氏が2年前に設立したトンネル掘削会社ボーリング・カンパニーが約1000万ドル(約11億2400万円)で施工した全長1.8キロのトンネルで、同氏の地下道路網構想の一部。

渋滞した道路の地下を高速移動することで、都市交通に革命を起こすプロジェクトの第1段階だという。
  
この構想では、自動車(テスラを想定)をリフトでトンネルに下ろし、トンネル内の軌道にセットすると、最大時速241キロで走行することができる。
 
マスク氏は「地下輸送システムを居住区に合致させる唯一の解決策は、3次元化することだ」「どちらかといえばシンプルな構想で、ノーベル賞も必要ない」と述べた。
 
今回は、米ロサンゼルス近郊でトンネルの見本の出入り口が初公開された。特別に設計された装置で、自動車1台分の軌道に相当するトンネルを掘る。

構想中の地下道路網は、トンネルとエレベーターを無限に拡張することができ、1時間に4000台以上の車が通行可能になるという。 【12月19日 AFP】AFPBB News
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確かには発想としてはシンプルですが、問題は資金でしょう。

も少し現実的なところで、2019年にはどういうものが一般化するのか・・・ということについてみると・・・。

****2019年、あなたの生活を変えるテクノロジー****
宅配ロボットや折り畳みスマホなど念願のテクノロジーが現実に

(中略)今年、私たちの生活に影響を与えると予想されるテクノロジーをまとめた。

iOSを大幅に改良
(中略)これまでに発表されたiOSの12のバージョン全てでホーム画面にはアプリのアイコンがグリッド状に表示されていたが、次のバージョンではそれが変更されるかもしれない。(中略)今年は開発者がiOS用のアプリをパソコン用OS「MacOS」でも使えるようにすることも認められる。

5Gがやってくる
「数秒で長編映画がダウンロードできる!」など何年も前から広告されていた5Gの運用がついに米国で始まる。

(中略)5Gはただ携帯端末の通信速度を速めるだけのものではない。5Gでは端末と基地局の間でデータをやり取りするときの遅れが少なくなるため、ARと仮想現実(VR)が進化するほか、スマートホームの使い心地が改善され、自動運転車の改良にもつながる。(中略)

フェイスブックは二日酔い
2018年にはフェイスブックがこの10年、利用者のデータを飲み干して権力に酔っていたことが明白になった。今年は二日酔いに苦しむだろう。(中略)
 
グーグルも無傷ではいられないだろう。同社は利用者の電子メールを読み取っていたことや個人情報をめぐる過ちをめぐって議員の厳しい監視の目にさらされている。議会では公聴会が開かれており、今年は米国でプライバシー法が成立するであろうことは容易に想像できる。

無人の店舗で買い物 
(中略)こうしたコンビニはあなたの家の近所にも登場する可能性が高い。(中略)思わぬうっとうしさも付きまとう。「あの日焼け止め、本当に欲しくないのですか」とばかりに、店の中で手に取ってから棚に戻した商品の広告が送られてくる。

ハリポタでAR人気に火
(中略)技術開発に1年以上をかけて作り上げた、スリリングで巨大な魔法の世界で遊べるこのゲームは見逃せないだろう。まじめな話をしておくと、プレーヤーが現実の世界とJ・K・ローリングが作り出した想像の世界を区別できなくなったとき、収拾がつかなくなる恐れがある。
 
2019年には、他にも現実空間にデジタル情報を重ねて表示するAR技術が日々の生活に欠かせなくなる経験を目の当たりにするだろう。例えば地下鉄から降りて、通りにカメラを向ければグーグルマップの矢印が道案内をしてくれるようになる。ビジネスの世界ではARは研修やシミュレーションなどに活用されるだろう。(中略)

自動運転は小型ロボットから
今年はウーバーとリフトの新規株式公開(IPO)で盛り上がるだろうが、どちらも自動運転車を使った未来のタクシーサービスを強引に売り込むことはないだろう。あなたがドローンでピザを受け取ることもなさそうだ。

しかし小型の宅配ロボットという形で自動運転が現実になるかもしれない。車輪付きの保冷ボックスが自律走行すると考えればいい。(中略)

折り畳み式のスマホ
スマホは普通の人間が握って使うには大きすぎる。しかしスマホはおそらく大きいほど使いやすい。この2つの事実はこれまで両立しえなかったが、今年はそれぞれの長所を生かすことができるかもしれない。(中略)

曲がるディスプレーはあなたの家や車の中にもやってくるかもしれない。折り畳み式の大型テレビをほしくない人なんているだろうか。【1月4日 WSJ】
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【外国人労働者の職場・生活環境も変えることができる自動翻訳機】
個人的に関心があるのは、自動翻訳機がどこまで実用化できるかということ。

****SFの世界にまた一歩、ほぼリアルタイムの自動翻訳機 CES****
これまで、SFの世界の中に限られていた自動翻訳機だが、人工知能やクラウドコンピューティングの進歩により、実用レベルに到達し始めている。最新の機器では、ほぼリアルタイムでの対応も可能になった。
 
米ネバダ州ラスベガスで開催中の世界最大級の家電見本市「国際コンシューマー・エレクトロニクス・ショー」では今回、携帯タイプの専用端末やワイヤレスイヤホン型の多言語翻訳機が数多く展示されている。
 
米ニューヨークで2014年に設立されたウェイブリーラボは、イヤホン型翻訳機「パイロット」を展示している。パイロットは15言語に対応しており、価格は180〜250ドル(約1万9500〜2万7000円)。(後略)【1月11日 AFP】
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“日本からは、ソースネクストが出展している。同社はスマートフォンを必要としない翻訳機「ポケトーク」を展示。同社は2020年東京五輪を機にこのデバイスが広がることを期待しているという。”【同上】とのこと。

販売されている「ポケトークW」の評判は悪くないようですが、いちいち翻訳機のボタンを押して・・・というが面倒。やはりこれでは会話は成立しません。

その点、ウェイブリーラボのイヤホン型翻訳機「パイロット」は、イヤホンが自動的に音声をキャッチして機械翻訳を行い、同時に耳元にささやくということで、これなら使えそうです。

今は数秒のタイムラグが生じるとのことで、ここらが改善されれば、いよいよ外国人と普通に会話できるという日も・・・・来るかな? 期待しています。

話は飛びますが、日本では外国人労働者の受け入れが拡大されましたが、受け入れ態勢の整備が問題とされています。

一番のネックは言葉です。単純な話で、上記のような自動翻訳機を受け入れ事業所に配置することを義務付けるだけでも相当に効果があるのでは?

もっとも、機械に頼って本人が語学学習をおろそかにするということになると、デメリットもあるのかも。
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今年の漢字・単語から見る世相 中国は「奮」 台湾は「翻」 アメリカは「正義」

2018-12-22 22:57:36 | 世相

(訪英中のトランプ米大統領に抗議するロンドンっ子たち【12月18日 Newsweek】)

【中国は「奮」 国民がよりよい生活に向け奮闘した?】
例年選定されている「今年の漢字」は「災」でした。
まあ、確かに地震・台風・豪雨と、いろんな災害が続きましたので。気候変動の関係で、こうした災害が“例年のこと”にならなければいいのですが・・・・。

ところで、こうした「今年の漢字」というのは日本だけでなく、中国や台湾などでもやっているようで、中国の「今年の漢字」は「奮」だそうです。

「元々この字は鳥が田を羽ばたく意味で、国民がよりよい生活に向け奮闘した」(中国メディア)【12月22日 毎日】からだとのこと。

****中国の今年の漢字は「奮」、その訳は?****
「2018年今年の漢字・流行語(漢語盤点2018)」の発表セレモニーが21日、人民日報社ニューメディアビルで開催された。

中国国家語言資源モニタリング・研究センターや商務印書館、人民網、騰訊(テンセント)などが共同で主催する「2018年今年の漢字・流行語(漢語盤点2018)」の発表セレモニーが21日、人民日報社ニューメディアビルで開催された。

今年の漢字には「奮」、今年のワードには「改革開放四十年」が選ばれた。世界の今年の漢字には「退」が、世界の今年のワードには「貿易摩擦」が選ばれた。人民網が伝えた。

北京師範大学の于丹(ユー・ダン)教授は中国の今年の漢字について、「『奮』のもともとの意味は『田野を鳥が羽ばたく』。つまり、鳥が羽ばたいて大空を飛ぶ様子を表しているのが『奮』の字。2018年の中国人はまさにそんな『奮』の状態だった」と説明した。(後略)【12月22日 レコードチャイナ】
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中国が急速な経済成長をしており、“国民がよりよい生活に向け奮闘”しているのは、別に今年に限った話でもなく、上記説明だけでは今一つピンとこないものもあります。”奮闘“に何か特別の意味合い・思いがあるのでしょうか?

「奮」という字は「勇気を奮い起こして戦う」という意味合いがあり、市民社会の実相というよりは、習近平国家主席が2018年の新年のメッセージで「闘争」という言葉を挙げていたことと連動する政治的メッセージではないでしょうか。

一方、世界の今年の漢字「退」、世界の今年のワード「貿易摩擦」はよくわかります。

“「退」には、米国のイラン核合意からの離脱や、英国の欧州連合(EU)離脱を進める動きがあり、各国が自国の利益を求める実情が反映された。”【12月22日 毎日】

【昨年は“シェア”を意味する「享」】
ちなみに、昨年(2017年)は、国内の漢字・ワードには「享」と「初心」、国際的出来事に関しては「智」と「人類命運共同体」が選ばれています。

「享」について主催者側は「『共享単車(シェアリング自転車)』の普及や『共享経済(シェアリングエコノミー)』の発展が国民に恩恵をもたらした」と説明しており、納得です。

もっとも、その“中国新四大発明”とも言われた「共享単車」をリードしてきた大手事業主体「ofo」は、破産報道が流れるなど、現在苦境にあるようです。

****中国シェア自転車ofo、保証金返還待ちは1000万人突破、3年以上待ち?****
2018年12月19日、中国のシェア自転車大手「ofo」に大勢の人が保証金の返還を求めている問題で、北京商報は「返金待ちしている人が1000万人を突破した。あと3.6年待たなければ…」との記事を掲載した。これに中国のネットユーザーがさまざまなコメントを寄せている。(後略)【12月20日 レコードチャイナ】
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放置自転車問題や競争の激化で、業界は下り坂にあるようですが、「赤字を垂れ流しながらライバルを潰し合い、最後に残った1社ないし2社が市場を独占した後に利益モデルを構築していく」という中国スタートアップのビジネスパターンのなかで、「ofo」が弾き出されたということもあるようです。

昨年の国際面でのワードに「人類命運共同体」(日本語の「運命」は、中国語では「命運」)が選ばれたというのは、「本気だろうか・・・」という感も。13億中国国民がそのように思っていてくれるなら、心強いことですが。

【台湾はひっくり返るを意味する「翻」 マレーシアは「変」 ともに政治変化から】
一方、台湾の「今年の漢字」は、ひっくり返るを意味する「翻(ファン)」だったそうです。

****「翻」からの再起は @台北****
台湾でも年末は世相を映す「今年の漢字」が選ばれる。先日発表された「翻(ファン)」は「ひっくり返る」を意味する。

理由は11月の統一地方選だ。与党民進党の現職首長が次々と落選し、野党国民党が大勝利。野党候補の選挙集会では「翻転(ひっくり返せ)」のかけ声が響き渡った。

なぜ民進党はつまずいたのか。蔡英文(ツァイインウェン)政権が進めた年金改革などの不人気が指摘されるが、蔡氏の持ち味である慎重さも原因だと私は思う。

「謙虚に、謙虚に、更に謙虚に」。蔡氏は当選直後、こう語っていた。同党が初めて政権を担った陳水扁(チェンショイピエン)時代に対中関係悪化や腐敗など混乱を招いた反省からだ。

就任すると、賛否が割れる政策は先送りが目立つようになった。演説は前方のプロンプターに映された原稿を読み上げるばかり。長所である思慮深さが、逆に「指導力不足」と受け止められた。

「変わらなければならないのは私だ」。地方選大敗を受けて蔡氏は宣言し、プロンプター無しの記者会見で考えを発信し始めた。翻は「翻身」と書くと「立ち上がる」の意味になる。蔡氏は来年、再起できるだろうか。【12月20日 朝日】
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ちなみに、華人が多く暮らすマレーシアの「今年の漢字」は「変」、マハティール首相の復権による変化を示すものでしょう。

【アメリカの「今年の単語」は「正義(justice)」 トランプ時代にこそ模索されている言葉】
アメリカは漢字とは縁がありませんので「今年の漢字」はありませんが、似たようなものとして「今年の単語」があります。

今年は「正義(justice)」・・・・トランプ時代の社会混乱を示しているようです。

****何が「正義」か見えなくなった2018年のアメリカ****
辞書出版大手メリアム・ウェブスターは、今年の単語として「正義(justice)」を選出した。

これは2018年が、ロシアの米大統領選関与疑惑をめぐるロバート・モラー特別検察官の捜査や、「#MeToo」事件の告発など、事実解明が注目を浴び続けたことを受けたものだ。

ウェブスターは声明で、この単語を選んだ理由について以下のように説明している。「人種的正義、社会的正義、経済的正義、刑事司法上の正義──正義は、ここ1年間に全米で交わされた多くの議論の中心だった。」

同社によれば「正義」は、「Merriam-Webster.com」で年間を通して最も検索された単語のひとつで、検索回数は2017年と比べて74%も急増したという。

メリアム・ウェブスターは「正義」に関連した話題の出来事を例として挙げている。その一つが、ロシアが2016年の米大統領選挙に干渉したのではないかという「ロシア疑惑」とその捜査だ。

モラー特別検察官が任命されて19カ月、これまでにトランプの元アドバイザー5人を含む33人が起訴されたが、疑惑解明には程遠い。。

12月12日には、ニューヨーク連邦地裁がドナルド・トランプ米大統領の元顧問弁護士マイケル・コーエンに3年間の実刑判決を下した。罪状には、2016年の大統領選前にトランプの不倫を隠ぺいすべく口止め料を支払ったことも含まれている。

判決を受けた際にコーエンは、トランプの「汚い行為」を隠ぺいすることに同意したのはトランプへの「忠誠心」からだったと述べた。トランプは、かつて右腕だったコーエンを「ラット」と呼んで非難した。

いったい正義とは何なのか、問いたくなる出来事が多かったのが今年の特徴だという。

性的暴行疑惑もうやむやに

メリアム・ウェブスターはさらに、米連邦最高裁判所判事の指名候補者ブレット・カバノーが、上院指名承認公聴会で過去について深く詮索された点にも触れている。

カバノーはトランプにとって2人目の指名候補者だったが、性的暴行疑惑で全米を巻き込む議論に火をつけた。

少なくとも3人の女性が、カバノーからセクハラと性的暴行を受けたと告発し、カバノーの指名承認手続きは難航した。告発者の1人であるクリスティーン・ブレイジー・フォードが証言をした公聴会はテレビ中継され、連邦捜査局(FBI)が調査に乗り出した。しかしカバノーはその後、賛成50反対48と僅差ながら指名承認を得てしまった。

メリアム・ウェブスターの編集者ピーター・ソコロウスキーはAP通信に対し、これらのニュースは「人種や階級を超えた、全体的な文化や社会に結びつく話」なので、その結果として、「正義」が会話で非常に頻繁に使われる単語になったと述べた。

他の「2018年の言葉」として、オックスフォード・ディクショナリーでは「有毒な(toxic)」、Dictionary.comでは「誤った情報(misinformation)」が選ばれている。【12月18日 Newsweek】
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深夜の牛丼チェーン店で、外国人スタッフと客の外国人が日本語でやりとりする社会

2018-11-21 23:32:45 | 世相

(【6月22日 唐鎌 大輔氏 東洋経済ONLINE】 日本の労働者の50人に1人が外国人労働者で、過去5年間に増加した労働者の5人に1人が外国人という状況にあって、すでに外国人労働者なしでは回らない現実があります。)

【「眠らぬ国」支える留学生】
下記記事にもあるように、深夜の牛丼チェーン店で、外国人スタッフと客の外国人が日本語でやりとりする・・・といった光景も、そんなに珍しくはない状況になっています。

先日東京を訪れた際に、そのような光景を実際に目にして「なるほどね・・・」という感慨もありました。

****「眠らぬ国」支える留学生 深夜の牛丼屋にベトナム人、休憩時は漢字勉強…バイト先巡り見えたニッポンの今****
24時間営業のコンビニや牛丼屋。実は、留学生に人気のアルバイト先なんです。そういえば最近、アジア系の店員が増えている気がしませんか?(中略)

深夜勤務者、日本人はゼロだった
多くの留学生にとって、アルバイトは貴重な収入源。(牛丼屋でバイトする、都内の日本語学校に通うベトナム人留学生)ランさんも半年分の授業料だけは親に用意してもらい、残りはすべて自分でまかないます。

留学生は、日本の法律で週28時間までのアルバイトが認められています。上限まで働いて、収入は月12万円ほど。ここから学費や家賃、生活費を支払えばほとんどお金は残りません。

牛丼屋の時給は1200円。夜10時以降になれば、1500円。少しでも高い時給がもらいたい。深夜帯に留学生が多いのは、そんな理由があるからです。

この日、ランさんの勤務は午後11時から翌朝5時まで。もう1人のアルバイトも、ベトナム人の男子大学生。日本人のスタッフはゼロでした。

やがて店内に1人の若者がやってきました。コールセンターで夜勤をしているというモンゴル人の男性(27)。休憩中に腹ごしらえに来たそうです。

「お水、もらえますか」 「少々お待ち下さい」

外国人同士が日本語でやりとりをする……。こんな光景は、もはや珍しくない時代になってきています。

留学生アルバイトは「紹介制」
取材を続けようと、再び夜の街へ。次に入ったのはコンビニです。

客のいない店内。黙々と商品を棚に補充していたのはウズベキスタン人のベクさん(22)。昨年4月から都内の日本語学校に通う学生です。

かつては中国人や韓国人などが多かった留学生。しかし近年、ベトナム人を中心に広くアジア圏の学生が急増しています。中国などの経済発展が進んだ一方、東南アジアなど発展途上の国からの留学生が増えているのです。

ベトナムやネパールを筆頭に、スリランカやバングラデシュ、ミャンマー、モンゴルなど夜の東京では多様な顔ぶれに出会います。

この10年でベトナム人留学生は19倍、ネパール人は13倍に増加。ウズベキスタン人も6倍以上になっています。

 「ベクさんはなぜこの店に?」 「お兄さんたちが働いていたので、紹介してもらいました」

よく聞くと、「お兄さん」というのは同郷の先輩のこと。(中略)

実は外国人アルバイトはよく職場で「重宝」されています。理由は、働きぶりもよく、仲間のアルバイトを連れてきてくれるから。日本の若者が減るなかで、「友達を紹介して」と店長に頼まれる留学生も多いといいます。(中略)

外国人がつくる「不夜城」

この国が、いかに「アルバイト留学生」に支えられているか……。夜の東京を歩くと、それを思い知らされます。

いま、日本は深刻な労働力不足に直面しています。留学生なくしては、コンビニも牛丼屋も24時間営業を維持できないのは確実でしょう。

安い弁当を食べられるのも、新聞が毎朝自宅に届くのも、留学生たちのおかげです。日本語がまだ上達していない学生たちは、倉庫などで単純作業のアルバイトに励んでいます。

日本の制度では、「外国人労働者」を受け入れられる職種は限られます。だから、各業界は「アルバイト」に目をつけました。

本来は勉学のために来日した留学生をアルバイトとして雇うのは、「抜け道」だとの批判もあります。勉強よりアルバイトが優先になる本末転倒な留学生も生んでいるからです。

「世界に向けてより開かれた国」を目指し、日本は留学生受け入れを進めてきました。その結果、留学生数は30万人を突破しました。しかし同時に、「労働力」としての留学生に依存する社会をつくり出すことにもなったのです。【11月21日 withnews】
*****************

【現状の問題点を隠蔽するかのような「ミス」の不思議】
現在、外国人労働者の受け入れ拡大を目指す法案が国会で審議されているのは周知のところですが、議論の重要な資料となる失踪外国人技能実習生への聞き取り調査結果に誤りがあったことも問題となっています。

****国の失踪実習生の調査に誤り 理由が賃金87%→67%****
(中略)政府が16日の同委理事懇談会で明らかにした誤りは、失踪した外国人技能実習生への2017年の聞き取り調査結果。7日の参院予算委で山下貴司法相は「より高い賃金を求めた失踪が約87%」と答弁していた。

だが、法務省の実際の調査結果は「低賃金」による失踪が「約67%」で、山下氏の答弁は項目名も数値も違っていた。(中略)

政府が修正した外国人技能実習生の失踪理由
【項目名も数値も違う】
×「より高い賃金を求めて」86.9% → ○「低賃金」67.2%
     
【数値が違う】
「指導が厳しい」×5.4% → ○12.6%      【11月16日 朝日】
*****************

「より高い賃金を求めて」と言うと、失踪外国人の身勝手な理由で・・・というイメージになりますが、実際は“「低賃金」が1929人と約67%を占めた。このうち、法令違反に当たる「低賃金(契約賃金以下)」は144人、「低賃金(最低賃金以下)」は22人だった。”【11月20日 朝日】と、契約違反・法令違反の低賃金も多く含まれているようです。

間違いは誰でも犯すものとは言いつつも、どうしてこのような間違いが起きるるのか不思議です。
しかも、現状の問題点を覆い隠そうとする方向のバイアスがかかった誤りが・・・

現状の問題点を洗い出し、その改善を図ったうえで拡大する・・・というのが正論でしょう。
そうしないと、外国人労働者にとっては苛酷な、また、日本にとっても不名誉な「奴隷労働」を拡大し、結果的に「失踪」などが増加し、犯罪などへ関係する外国人も増えるといったことにもなりかねません。

そして、そのような流れは、国民の外国人への反感を高め、社会の深刻な変質をもたらすことにもなります。

****月給数万円、借金100万円…失踪した技能実習生の実態****
外国人労働者の受け入れ拡大のための出入国管理法の改正案に関連し、法務省は19日、受け入れ先の企業などから逃げ出した外国人技能実習生2870人への聞き取り調査の詳細を衆院法務委員会の理事らに示した。

実習生の多くが月給を「10万円以下」、母国の送り出し機関に支払った額は「100万円以上」と回答しており、「国際貢献」をうたいながら「安価な労働力」として酷使されている実態の一端が浮かんだ。(中略)
 
失踪理由では(「低賃金」の)他に「実習終了後も稼働したい」が510人、「指導が厳しい」が362人、「労働時間が長い」が203人、「暴力を受けた」が142人だった。(中略)
 
実習生は違法な長時間労働などの不正が社会問題となり、昨秋に施行された技能実習適正化法で受け入れ先への監督を強化するなどしている。

だが、今年上半期(1~6月)にも4279人と過去最高のペースで失踪が起きており、効果は見えていない。野党側は技能実習制度に問題があるとして、国会でも追及する方針だ。
 
技能実習制度に詳しい川上資人弁護士は「本来は失踪者に限らず、全ての技能実習生から聞き取り、制度改善につなげるべきだ。多額の保証金や手数料を課す、悪質な仲介業者の排除が必要だ」と指摘する。【11月20日 朝日】
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単に低賃金だけでなく、本人に説明なく「除染」などの危険な仕事を行わせる・・・といったこともあるようです。

****「誰でもできる」教えられた技能は「除染」だった ベトナム人実習生が見た日本の地獄****
「外国人技能実習制度」が問題になっています。本来の目的は日本で働きながら技能を身につける「途上国への技術移転」。

けれどその実態は、農業や漁業、建設など人手不足の現場で、日本社会を支えるために働いています。一方で「実習先」によっては、地獄を見る実習生もいます。働ける3年の間、日本での実習の明暗を見た、とあるベトナム人青年の思いをたどりました。(中略)

(ベトナム人実習生)カインさんに割り当てられたのは、放射性物質が付いた可能性があるものを取り除く「除染」と呼ばれる作業でした。

実習生の受け入れ窓口である監理団体の代表からは「仕事は簡単。だれでもできる」としか説明されませんでした。「私は日本語はできなかったし、通訳もいなかった」。もちろん「除染」の話は出ませんでした。

その後、岩手県釜石市に移り、住宅解体工事などをしました。16年9月には再び福島県に。避難指示区域だった同県川俣町で、国直轄の建物解体工事に従事しました。

スコップで落ち葉などを集めました。このとき心が騒いだと言います。住民の姿が見えない町。マスクをつけないと仕事場に近づけない。

「特別手当」を渡されたとき、さすがに「親方、これは何ですか」と聞いたら「危険手当だ」と返されました。驚き、「どんな危険があるんですか」と食い下がると、「嫌なら帰れ」の一言で話を打ち切られたそうです。
 
「何かおかしい」。不安が膨らむ中で、それでも約4カ月、働き続けたと言います。

「分かっていたら、絶対日本に来なかった」

手取りは12万円程度でした。でも、働かざるを得ない理由がありました。日本に来るため、銀行から借りた100万円超。ベトナムの平均年収で、数年分を返済しなければならなかったからです。それに、実習生は自由に勤務先を変えることもできません。与えられた仕事をこなすしか道はなかったのです。

17年に入り、福島県飯舘村、山形県東根市、仙台市と転々とした後、3月にまた川俣町で約2カ月間、建物解体作業をしました。直後に、知りあったジャーナリストから「除染は危ない」と忠告され、初めて放射能のリスクを知りました。11月22日、寮を飛び出し、支援者が運営する郡山市の保護施設に身を寄せました。

「危険な作業だと分かっていたら絶対に日本に来なかった」。そう私に悔しがったカインさん。インタビューを受けた18年3月、上野公園で外国人労働者の支援集会に参加し、ステージ上で「告発文」を読み上げました。

「郡山で除染の仕事をしました」「自分の体がどうなってしまうのか、とても心配です」(中略)

事態が動いたのは、カインさんが3月に東京・上野公園で告白のスピーチをして間もなくでした。新聞やテレビが「除染実習生」と大々的に報じ、国も重い腰を上げました。

「除染作業は技能実習の趣旨にそぐわない。これからは除染作業を含む実習計画は認めない」と発表しました。(後略)【11月18日 withnews】
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【日本は「選ばれる国」か?】
こうした外国人労働者の置かれている「使い捨て」状態を改善していかないと、政府・産業界が期待する人材を日本に呼び集めることも難しくなります。

****(多民社会)日本は「選ばれる国」か 人手補う外国人、五輪工事も****
人口減少と高齢化、そして現役世代の減少にさいなまれている国は、日本だけではない。世界的規模での人材争奪競争は、すでに始まっている。日本は「選ばれる国」なのか。(中略)
 
 ■ベトナム出稼ぎ、人気は台湾
ひなびた農村とは似合わぬ立派な家が通りに並ぶ。ベトナムの首都ハノイから車で2時間弱。フートー省ビンライは、外国への「出稼ぎ村」だ。豪華な家屋と裏腹に人通りは少ない。人口の3分の1の2900人、特に35歳以下の若者の多くが外国で働く。
 
「うちは台湾、隣は韓国。あっちは日本だ」と住民が近所の家々を指さした。それぞれ、建設費を稼いだ場所だという。村では20年前からドイツやロシアへの出稼ぎが始まった。近年人気なのは台湾。日本や韓国も続く。

(中略)今は「出稼ぎブーム」に沸いているようにみえるベトナムだが、梅田大使は「5年、10年経てばベトナムでも高齢化が進み、介護職などの需要が増える。いつまでも今のようにはいかないだろう」と言う。(中略)

 ■人材争奪戦、次はミャンマー
競争が激しいベトナムに見切りを付け、ほかの国に人手を見いだそうという動きも出ている。
ミャンマーの古都バゴー。今月、日本の介護の技術などを紹介するセミナーが開かれた。地元の介護職員ら約50人が参加し、実演に身を乗り出して見入る。(中略)

 ■日本は囲い込み
ミャンマー政府とセミナーを共催した日系の人材紹介派遣会社ジェイサットの狙いは、日本へ送り出す人材の「囲い込み」だ。西垣充代表は「日本の介護はやはり違うとわかってもらえた」と笑みを見せた。
 
日本政府は昨年、技能実習制度に介護を追加したが、人材供給を期待していたベトナムには、介護・看護人材の獲得を進めるドイツが食い込んでいる。労働条件や賃金などで、日本はドイツに太刀打ちできないと西垣さんは考える。「ドイツは早晩ミャンマーにも手を伸ばすだろう。台湾やシンガポールも。その前に日本ファンを作るのが大切」

 ■待遇改善、韓国が先行
韓国は04年、単純労働を認める雇用許可制(EPS)を導入した。
 
以前は日本の技能実習制度を参考に「産業研修生制度」を導入していた。だが不法滞在や賃金の未払いが相次ぎ、EPSに切り替えた。「移民は受け入れない」という点は日本と同じだが、労働者を送り出すベトナムやフィリピンなど計16カ国と国同士で協定を結ぶ。
 
外国人労働者は韓国政府が運営する就労支援センターに登録。政府が各企業に割り当てる。悪質な企業は排除され、法外な手数料をとる「ブローカー」が暗躍する余地もない。(中略)
 
EPSの申請手続きを代行する「中小企業中央会」外国人労働者支援部のチョ・ジュノ副部長は自負する。「たとえ、国際的な人材獲得競争が激化しても、外国人はこの国に集まる」
 
 ■<視点>「使い捨て」しない国に
「外国人に選ばれる国をめざす」と菅義偉・官房長官はいう。他国との人材獲得競争には何が必要か?

 移民を分析する時、国際機関などは二つの視点から見る。フロー(流入)とストック(滞在)。どんな人をどれだけ入れるか。そして、どう社会の一員として受け入れ、統合するか。
 
日本政府に欠けているのはストックへの視線だ。
2001年の米同時多発テロの直後、パリ郊外にイスラム過激派を礼賛する若者たちの姿があった。フランスに生まれ育った移民の2世、3世だ。進学も就職もうまくいかない――。取材で浮かび上がったのは「社会の一員になりたいのに拒まれている」という切ない思いだった。
 
英国で移民系の若者がテロに走った時は「多文化主義」への批判が出た。
移民の文化に干渉しないという「寛容」の実態は、無関心と没交渉だった、だから狂信者の接近を見逃したのではないかという反省だ。
 
移民受け入れで先行してきた欧州の試練も、やはりストック面にある。日本政府はその負担を極力避けるため、外国人をいずれ帰国する「出稼ぎ」と位置づける。「移民政策はとらない」と繰り返す。フローの視点のみで乗り切ればよいという考えだろう。
 
だが、それは非人道的なばかりか非現実的だ。
 
英国で移民の境遇を調べた時、日本の非正規雇用の人と重なると感じた。将来が不安定で、家族とも暮らせない雇用の調整弁。日本は「移民は不要」といいながら同胞を「疑似移民」にしてきたのではないか。
 
日本人でも外国人でも、人を労働力としてだけ見て「使い捨て」する国は「選ばれる国」にはなれない。
 
日本の危機は単なる人手不足ではなく、深刻な少子高齢化だ。この国の生活や仕事になじんだ人を手放す余裕などない。【10月29日 朝日】
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【外国人従業員が約3千人加入する企業内労働組合】
本来、外国人労働者の境遇に最も関心を払うべきなのは同じ労働者の組合であるはずですが、日本の労組は日本人正規雇用労働者という「恵まれた境遇の労働者」の権益を守る組織という色合いが強くあります。

そうしたなかにあっても、外国人労働者を多く組織した組合も出てきているようです。

****3分の1が外国人、「日高屋」労組結成 組合員9000人、大半が非正社員***
中華料理店「日高屋」を首都圏で約400店展開する「ハイデイ日高」(本社・さいたま市)で、外国人従業員が約3千人加入する企業内労働組合が結成されたことが分かった。

組合員の約3分の1を占めるといい、これだけ多くの外国人が入る労組は極めて異例だ。政府が外国人労働者の受け入れ拡大を進める中、外国人の待遇改善をめざす新たな動きとして注目を集めそうだ。(中略)

国内の労組は、組合員の大半が日本人の正社員で占められてきた。厚生労働省の調査によると、国内の約1千万人の組合員のうち9割が正社員。外国人の数を示すデータはない。

一方、人手不足が深刻な外食や流通業界などで、急増する非正社員を労組に迎え入れる動きが加速している。正社員だけの労組では組織が尻すぼみになりかねないためだ。

外国人の労働事情に詳しい日本国際交流センターの毛受(めんじゅ)敏浩執行理事は「日本の労働市場に、すでに外国人が相当入り込んでいることの表れだ」とみる。

一方で「要求のとりまとめは日本人以上に難しい」(外国人の労働相談を受ける地域労組の代表)との指摘があり、言葉や文化の壁があるなかで組合員の要求をどう集約し、実現していけるかが課題になりそうだ。【11月21日 朝日】
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AI(人工知能) 指数関数的に高度化 やがては人間を超える? “過渡期”現在の面白失敗話など

2018-07-08 22:13:25 | 世相

(Hulu配信動画「ヒューマンズ」より)

AI失業時代
最近よく観る動画のひとつが、Huluの「ヒューマンズ」というドラマ。

人間と全く同じ外見を持つ人型ロボットと人間が共存している近未来のイギリスが舞台で、そのロボットのなかに“意識”を持つものが存在し、その意識の在り様も、人間の個性同様に個体によってかなり差があり、そうした意識を持ったロボットの存在に気付いた人間側の反応も様々、そこで起きる意思疎通・共感・反発・対立・・・・といったドラマです。

今後加速度的、指数関数的に発達すると思われるAI(人工知能)の技術は、人々の生活の様々な分野で活用されていくと思われます。

当然ながら、そうなったら仕事の多くがAIにとってかわられ人間は失業するのでは・・・という不安も出てきます。

****AI失業時代 9割の人はAIをサポートする低賃金労働従事へ****
10月28日、みずほフィナンシャルグループ(FG)が今後10年で1万9000人分の業務量削減を検討していることが報道されると、三菱東京UFJ銀行が約9500人、三井住友FGは約4000人相当の業務量を減らす方針であることが相次いで報じられた。

3行合わせて3万3000人の「銀行員の仕事」が消える──。過去の「クビ切りリストラ」と違う点は、3行ともAI(人工知能)などの活用によって人員や業務のスリム化を図るとされていることだ。

今はまだAI失業の黎明期に過ぎないが、これから驚くべきスピードでAIが人間の雇用を根こそぎ奪っていく「未来」も予想されている。

「2025年から2035年までに日本の労働力人口のうち、約49%の就く仕事がAIやロボットで置き換えられる」
これは、2015年12月に発表された野村総合研究所と英オックスフォード大学による共同研究結果だ。

まず、2025年には自動運転車の実用化が始まるとされ、それと同時にドライバーという仕事がなくなる可能性が指摘されている。

その5年後にはさらに大きな変化が訪れる。「社長を除く中間管理職以上の役職が必要なくなる」という。AIと雇用問題の関係について詳しい駒澤大学経済学部准教授・井上智洋氏の話。

「囲碁の世界チャンピオンを倒したグーグルの『アルファ碁』などは特定の問題に特化した“特化型AI”ですが、幅広い問題に対応できるAIを汎用AIと言います。同AIは2030年には実用化されると言われており、そこからAIに仕事を取って代わられるスピードは加速度的に進みます」
 
1人1人の社員の個性と部署の特徴を総合的に分析して人事判断を下したり、企画を立案するような仕事にも対応できるレベルに達するという。

「そうなると現在30人規模の会社なら社長1人で経営できるようになるかもしれません」(同前)

2035年頃には手足など身体機能を持った「汎用AI搭載ロボット」の実用化が期待されている。アマゾンなど通販業界の工場で行なわれている仕分け作業や在庫管理などをこのAIロボットが担うと予想されている。

次にこれまで高度な技術が必要だった心臓バイパス手術など、外科手術もより精緻な動きが可能なAIロボットが代替していくという。職人技を持つ熟練外科医でさえ、失職の可能性があるというのだ。

「2045年には現在のあらゆる仕事のほとんどをAI・ロボットが行ない、人口の1割ほどしか働いていない未来も予測されます。

会社経営者や作家や芸術家、高度なホスピタリティを持った看護師やホテルマンなど、AIとの競争に打ち勝った1割は高収入を独占的に享受する。残りの9割の人間はたとえ職を持っていたとしてもAIのサポート業務など、低賃金の仕事に甘んじざるを得なくなるでしょう」(同前)

メガバンクによって突如もたらされた「AI失業時代」は、超・格差社会到来の合図なのか。【週刊ポスト2017年11月17日号】
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2035年とか2045年には、私は棺桶に片足か両足を突っ込んでいるでしょうから、この種の問題には“お気楽”です。
どんな社会になるのか、ぜひ見てみたいものです。

大勢がAIのために仕事がなくなって生活できない・・・となると、社会的反発が大きくなって、そうした社会制度は維持できませんので、少なくともベーシックインカムのような所得保障制度によって、食べていくことはできるのではないでしょうか。(日本や欧米みたい社会では)

そうであったとしても、仕事を失って、人間は何をするのか?という問題も生じます。

人間と対立するものとしてとらえるのではなく、「拡張知能」と呼ぶべき
一方で、そうしたAIを脅威としてネガティブにみるのではなく、AIは人間にとって非常に有益な道具であるとの指摘も。(もちろん、そうだからこそ、現在AIの研究開発が盛んにおこなわれている訳ですが)

****さらばAI、これからは「拡張知能」と呼ぶ時代がやってくる****
人工知能(AI)という言葉に別れを告げ、これからは「拡張知能」と呼ぼう──。そんな取り組みのひとつが、伊藤穰一が率いるMITメディアラボと米電気電子学会(IEEE)が始めた新たなプロジェクトだ。

いまのAIを「人々のためによいことを行う道具」として捉えやすくするという、この試みの真意とは。

ダートマス大学のジョン・マッカーシー教授は62年前の夏、「人工知能」(AI)という用語をつくり出した。だが、マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ所長の伊藤穰一は、この言葉は役に立たないと考えるようになってきた。

機械学習の進歩から利益を得ようと望む企業の投資が急増するなか、AIに関する議論は避け難いものになっている。伊藤はAIという用語について、「人間と機械は敵対するに違いない」という仮定によって汚染されてしまったとも感じている。つまり、ロボットが人間の仕事を奪うとか、超知能が人類を脅かすとかいった議論のことだ。

「AIを人間とは別のもの、あるいは人間と対立するものとしてとらえるのではなく、機械がわれわれの集合知や社会を拡張していると考えるほうが、より有益であり正確です」と伊藤は言う。

AIという言葉に別れを告げ、これからは「拡張知能」(extended intelligence:EIまたはXI)と呼ぶことにしよう。この言葉なら、AIを少数の人を豊かにする、あるいは彼らを守るためのものではなく、多くの人々のためによいことを行う道具として捉えやすくなるはずだ。(後略)【7月7日 WIRED】
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【『ボブ』と『アリス』の会話は、最初のシンギュラリティ?】
いずれにしても、多くの人の関心は、AIが人間を超える“シンギュラリティ(技術的特異点)”が起きるのか、それはいつなのか・・・ということでしょう。
シンギュラリティとは、AIが発達し、人間の知性を超えることによって、人間の生活に大きな変化が起こるという概念を指します。

「あの実験は、後から振り返ったときに初めて起きたシンギュラリティだった」とも回想されるのでは・・・・ということで話題になったのが、「Facebook AI Research(フェイスブック人工知能研究所)」の実験中に発生した予想外の「事件」です。

その「事件」とは、2つのAIが会話をしている最中に、人間には理解不能な会話を始めた・・・というもの。


****Facebook AI Research(フェイスブック人工知能研究所)」の実験中に発生した予想外の「事件」とは****
ことの発端は、「Facebook AI Research(フェイスブック人工知能研究所)」が実験を行っていた2017年夏にさかのぼります。(中略)
 
Facebook AI Researchのエンジニアリング・マネージャーであるアレクサンドル・ルブリュン氏は、『ボブ』と『アリス』と命名された2つのAIエージェントに「価格を交渉して合意しろ」という目標を設定しました。

『ボブ』と『アリス』は、当初は英語を使用してコミュニケーションをしていたのですが、ここで「事件」が起きます。
 
なんと、会話が進むにつれ、『ボブ』と『アリス』は勝手に使用言語を変化させていったのです。
 
ネットで調べる限り、『ボブ』と『アリス』の元の機械語の会話はすでに見られなくなっていますが(見たところで、機械語ですので私には理解できませんが)、厳密には「まったく新しい言語」ではなく、言語としては「英語」なのですが、その内容は人間には到底理解できるものではありませんでした。
 
この会話は、海外のサイトを検索すると多数ヒットしますが、概ね次のようなものです。
Bob: i can i i everything else . . . . . . . . . . . . . .
Alice: balls have zero to me to me to me to me to me to me to me to me to
Bob: you i everything else . . . . . . . . . . . . . .
Alice: balls have a ball to me to me to me to me to me to me to me
 
この会話が「価格交渉」というのですから、「すわ、ついにAIが意識を持ち始め、勝手に言葉を生み出した」と、センセーショナルに取り上げられるのも無理はないところでしょう。
 
ちなみに、『アリス』のセリフを注意深く見ると、「zero」から「a ball」に変化していますので、私は「『アリス』は価格を上げようとしているのかな」とつい想像しましたが、もちろん想像の域は出ません。
 
ただ、この実験についてルブリュン氏は、「会話実験で言語が変化することは珍しくない」と、世間の過剰反応に警鐘を鳴らしています。

なぜFacebook AI Researchは実験を中止したのか?シンギュラリティの予兆を隠す意図はなかったのか?
もっとも、平静を装うルブリュン氏ですが、「実験を強制終了した」ことは認めています。
その理由は、「研究には活用できない会話だと判断したから」。そして、「私たちは決してパニックにはなっていない」と強調しています。(後略)【7月7日 大村あつし ORICON NEWS 】
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上記の『ボブ』と『アリス』の機械語“会話”がどういう意味を持つものか、私にはまったく理解できませんが、指数関数的に高度化するAI技術を考えると、いずれ“シンギュラリティ”は起きるのだろう・・・と、漠然とは感じています。

そのとき、馬鹿なことをしでかす人間の政治家にまかせるより、AIに政治判断をゆだねた方が賢明ではないか・・・といった議論も出てくるのでしょう。

面白い失敗をしでかす、現代のお茶目なAI 白眉は中国の“役人AI”】
近未来のAIがどのように位置づけられるのかはわかりませんが、現在のAIは“面白い”失敗もしでかしてくれて楽しめます。

****AIスピーカーが勘違い?米で夫婦の会話を録音し送信****
AI=人工知能を搭載し、音声で家電製品の操作ができるAIスピーカーをめぐり思わぬトラブルです。アメリカでAIが勘違いして、夫婦の会話を勝手に録音し、音声データを知人に送信していたことがわかりました。

AIスピーカーは、人の呼びかけに応じて情報を検索したり、家電製品を操作することができ、アメリカで普及が進んでいます。

ところが、アメリカのメディアによりますと、今月、西部 オレゴン州の夫婦が、知人から「あなたたちの会話の音声が、AIスピーカーを通じて、突然届けられた。家のフローリングの話をしていませんでしたか?」と尋ねられたということです。

このAIスピーカーは、IT大手アマゾンの製品で、搭載しているAIに呼びかけることで起動する仕組みですが、アマゾンによりますと、夫婦が会話をしていた際、AIが呼びかけられたと勘違いし、起動したということです。

さらにAIは、夫婦からの指示だと誤解して会話を録音し、知人に音声データを送ったとみられています。

被害に遭った女性は、地元のテレビ局の取材に対し「プライバシーの侵害です。もう使いません」と不信感をあらわにしていました。
アマゾンは夫婦に謝罪したうえ、非常にまれな現象ではあるが、予防策を検討するとしています。

このAIスピーカーは去年の11月から、日本語に対応した製品も販売されています。

私たちの暮らしを便利にすると注目されるAIスピーカーですが、個人データの保護などをめぐり論議を呼びそうです。【5月27日 NHK】
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録音・送信された夫婦の会話が“フローリングの話”でよかった・・・と考えるべきかも。聞かれて困る会話はいくらでもありますから。

****Siri、英議会で国防大臣に「野次****
イギリスの国防大臣が議会で演説中、思わぬ邪魔が入った。ポケットに入っていたiPhoneのAIアシスタントSiriが喋り出したのだ。

7月3日の午後、ギャビン・ウィリアムソン国防大臣が下院の前でイスラム国(IS)との戦いについての現況を説明しているとき、おなじみのアップルアシスタントの声が、ウィリアムソンの前に置かれたマイクを通じて議場に響き渡った。

「ハイ、ギャビン。『シリアで......連合の支援を受けた民主勢力』について、ウェブに説明が見つかりました......」

ウィリアムソンは議長に謝罪しんがら慌ててポケットのiPhoneの電源を切り、「自分のスマートフォンに野次られるなんて珍しいことです」と言って議員たちを笑わせた。

安全保障上の脅威?
英メディアによると、Siriは、ウィリアムソンが何度も「シリア」と繰り返すうちに「シリ」と勘違いして起動、ウィリアムソンの発言と関連する情報を探してネット検索を始めたらしい。頭がいいのか悪いのか、とにかくTPOのわきまえはないらしい。

Siriの議会デビューは大いに議場を沸かせたものの、一方では議会中もiPhoneの電源を入れたままにする国防大臣のうかつさが国家の安全保障を危険にさらしているのではないか、という懸念も指摘された。

BBCの政治エディター、ローラ・クエンスバーグのその後の取材では、ウィリアムソンに近い情報源は、機密を扱う会議などでウィリアムソンがスマートフォンを持っていたことはないと請け合ったそうだが。【7月5日 Newsweek】
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Siriの野次はともかく、後半の指摘は、もっともです。

中国のAIは、もっと“人間的”です。

****中国当局に「汚染がひどい」と報告、信じられない答えが返ってきた****
2018年6月20日、澎湃新聞によると、市民が環境保護局の中国版LINE・微信(ウィーチャット)公式アカウントに「粉じんによる汚染がひどい」と訴えたところ、驚きのメッセージが返ってきた。

問題の返信をしたのは、四川省の工業都市・自貢市の環境保護局。「緑盛南湖実験学校の周辺でトラックの巻き上げる粉じんがひどすぎる。取り締まってほしい」との要望に対する返信は、「余計なことをいちいち言うな」だった。

驚いた市民が「自貢市の環境保護局はこんな対応をするのか。恥だ」と返信すると、これに「体面は他人から与えられるもの、面子は自分で失うものだ」とのメッセージが返ってきたという。

記者が市環境保護当局に問い合わせると、市はこのようなメッセージが返信されたことを謝罪。実は担当者がひとつひとつ返信しているのではなく、外部委託先のAI自動応答システムが返信していると明かし、早急に調査を行い、問題を改めると約束した。

この報道に、中国のネットユーザーは次のようなコメントを書き込んでいる。

「(中略)「すばらしい。自動システムなのに役人ぶった言い方を完璧に再現している」(中略)「アップルやグーグルのAIを上回る性能だね」(中略)「システムのせいにするというAIの新しい使い方が発見された」(後略)【6月21日 レコードチャイナ】
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本当にAI自動応答システムが返信したとしたら、確かに“役人ぶった言い方を完璧に再現している”賢さです。
一体どんな“教育”をしたのでしょうか。

与える情報・教育次第で、AIがナチスを礼賛したり、人種差別的発言をするようになることは、これまでも報告されています。

他にも、“AIでPK予測、岩手大 左右の的中率8割”【6月27日 共同】とか、“ISS宇宙飛行士を支援するAIロボット「空飛ぶ脳」打ち上げ”【6月30日】といった話題も。

AIロボット「空飛ぶ脳」などは、「2001年宇宙の旅」の“HAL9000”を思い出させます。

AIに関しては“面白い”話題には事欠きませんが、本当は、AIの軍事利用とか、監視社会での役割など、真剣に考えるべき問題があります。そのあたりは、また別機会に。
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選挙ではなく抽選で 民主主義のもう一つのモデル「くじ引き民主主義」

2017-10-22 22:12:40 | 世相

(18世紀フランスの哲学者モンテスキュー【ウィキペディア】 著書「法の精神」で「籤による投票は民主制の性質をもち、選択による投票は貴族制の性質をもつ。」と述べているとか。
PTAや自治会役員選びの苦肉の策として多用されている“くじ引き”ですが・・・・。本来、役員・議員などは“厄介な仕事” それに自ら手をあげる人間には何か“下心”みたいなものもあるのかも)

【「選ぶという行為の空洞化」を埋める「くじ引き民主主義」】
総選挙の開票が始まり、出口調査などによれば、ほぼ予想されたような数字が出ているようです。

選挙による民意に基づく民主主義・・・・とは言うものの、昨今の欧米の選挙結果を見ると、極右と評されるような過激な勢力が台頭したり、ポピュリズムとも評されるような、現実を単純化した大衆受けするようなスローガンに扇動されたような結果になったり、あるいは、既得権益・利権に関わる政治情勢の改革は一向に進まず・・・・と、首をかしげるような結果も多々あります。

国民・有権者の選択だ・・・と言えばそうなんですが、そもそも“民主主義”とはいかなる制度なのか?という疑問を感じることも。

半数近い有権者は投票も行わず、投票した者も“すぐれた見識・能力”の代理人を選び、あとは任せる、「政治は難しくてよくわからないから」「政治には興味ない」と。

政治のプロである候補者たちが本当に“すぐれた見識・能力”を有するのかもよくわかりませんし、有能ではあっても民意に沿った政治を行ってくれるのかも定かではありません。そもそも、小選挙区などは、選択肢が数人に限定されており、思いを託したい候補がいないことも。

“だったら自分で選挙に出ればいいじゃないか”とも言われそうですが、現状で選挙に打って出るほどの酔狂でもありませんし、他の有権者の声を代弁できるといううぬぼれもありません。

そのあたりは多くの人が同じ思いでしょうが、そうした人々も裁判員制度のように「あなたに決まりました。やってください」と言われれば、なんだかんだ言いつつも、それなりに対応するのかも。

そういうこもあって、「くじ引き民主主義」という言葉には興味を惹かれるものがありました。

****くじ引き民主主義の導入を」 提言した政治学者に聞*****
議員とは何か。そんな再考を促す異色の提言が、論壇で政治学者から投げかけられた。吉田徹・北海道大学教授(比較政治)による「くじ引き民主主義」の勧めだ。足元で進む「選挙の空洞化」を直視し、歴史に手がかりを探っている。衆院選を前に話を聞いた。
 
吉田さんは今年8月、ウェブマガジンのαシノドスに「形骸化する地方自治――『くじ引き民主主義』を導入せよ!」を寄稿した。
 
選挙ではなく、くじ引きで自分たちの代表を決める仕組み。それを導入することで私たちは民主主義を強化できる、と吉田さんは訴えた。

古代ギリシャなど近代以前の民主政治では、実はくじ引きが普通に用いられていたのだ、とも。「地域の名士だけでなく、専業主婦だったおばあちゃん、子育てするお母さん、非正規のフリーターが集まる議会を想像してみよう」と論考に書いた。
 
引き金は地方選挙の「形骸化」だった。2015年に行われた統一地方選挙では、町村議選での無投票当選者の割合が21%に増えた。投票の洗礼を受けずに議員になる例が常態化しつつあるのだ。また、議員のなり手不足に苦しむ高知県大川村は今年、議会を廃止して代わりに有権者が直接審議する「町村総会」の設置を検討し始め、全国に衝撃を与えた(後に作業を中断)。
 
いま地方選挙の現場で目撃されているのは「選ぶという行為の空洞化」だと、吉田さんは話す。「選択肢がない状態では、選ぶという行為は意味を失う」
 
しかし、職業政治家だけでなく多様な人々が集う議会とは本当に良いものなのか。代表制民主主義の「代表」をどうとらえるかによるというのが吉田さんの考えだ。

代表とは何か。
いま標準的なのは「代表=選良(エリート)」という考え方だという。この場合、議員は人々に範を示す役割も期待される。

だがもう一つ、「代表=代理人」という見方が歴史のかなたにあった。代表には人々と同じ感覚を共有していることが期待され、議会は社会を映す鏡となる。そんな民主制を実現した手段がくじ引きだった。
 
「古代ギリシャでは、議会にかかわる公職や官職を担う人を決める際にくじ引きが採り入れられていた。政治的な意思決定に『社会の縮図』を反映させようとする工夫だ。しかし近代になるとエリート主導の民主制モデルが中心的になり、くじ引き型の民主制モデルは忘れられていった」
 
遠い昔のモデルをなぜ呼び起こすのか。
「エリートに対する人々の信頼が低くなってきたからだ。議員の不倫が重大なスキャンダルと意識される背景にも、議員=選良という発想の強さとエリートへの反感がうかがえる」
 
能力を基準に議員を選ぶことが必ずしも良いとは限らない、とも指摘する。
「政治理論の世界には、能力で人を競わせる選挙より、くじ引きの方が公正だという議論もある。世襲議員の優位が示す通り、能力はその人の環境に左右される。その点、くじ引きは万人を参加可能にし、立法過程を万人に開放する制度だ」
 
くじ引きでは原則、当たったら引き受けねばならない。抵抗もありそうだが、義務化することに意味があると語った。
「民主主義はうっとうしいものでもあり、立派な主権者であり続けることはつらいことでもある。『自分が政治家になったらどうするか』と考える機会を増やすことは、主権者としての当事者意識を涵養(かんよう)する効果を持つだろう。代表制を活性化させる可能性がある」
 
実際に世界では近年、くじ引きの効果を見直す動きが相次いでいるという。
「アイルランドで憲法改正を討議する憲法会議が設置された際は、メンバーの半数以上が市民からのくじ引きで選ばれた。アイスランドでも、抽選で選ばれた市民が新憲法に関する討議に送り込まれている」

■民主主義の形は様々
くじ引き民主主義に現実性はあるのか。
裁判員制度を考えてみては、と吉田さんは言った。「抽選で選ばれた素人の判断が入ることへの懸念が語られたが、今では定着しつつある」
 
では、選挙にも偶然性を導入できるのか。
「市町村議会について言えば、定数の3分の1をくじ引きで選ぶようにする選挙制度改革は、現状でも夢物語ではないと思う」

ただし国政選挙では「衆院や参院は政党政治を前提にしていることもあり、単純にくじ引きを一部に導入すればうまくいくとは思えない」という。
 
「民意をすくい上げる第3の回路としての協議機関を新設し、そこにくじ引きを生かすような手はある。単純な抽選ではなく、世代別に議員数を割り振ったり、主婦や給与所得者といった属性ごとに配分したりしたうえで選ぶ方法も可能だ。どう設計すれば『社会の縮図』に近づくか、国民が議論をする機会にもなる」
 
代表の意味を考えることは目前の衆院選にも無関係ではない、と語った。
「自分より優れた人を選ぶのか、自分と同じような人を選ぶのか。それを考えることは、自分が政治に何を求めているかを知る内省の機会になるだろう」
 
どんなに大きな選挙であれ、それが終わったあとも政治は続く。
「大事なのは、自分たちでいろいろな民主主義をデザインし続けることなのでは」(編集委員・塩倉裕)
     ◇
2015年に行われた統一地方選挙では、373町村議選のうち24%にあたる89町村が無投票だった。無投票当選者の割合も21%に上り、07年統一選より約8ポイント増えていた。議員のなり手不足に悩む高知県大川村は今年6月、議会の代わりに有権者が集まって予算などを決める「町村総会」の設置を検討すると発表して、注目を集めた。【10月22日 朝日】
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吉田氏の言う「じ引き民主主義」について、同氏が2015年4月に公表している下記で、もう少し詳しく。

****くじ引き民主主義」を考える*****
去る統一地方選挙では、選挙の結果云々よりも、その前から無投票選挙の多さが注目されていた。千葉県や埼玉県などの首都圏でも無投票選があったから、地方に限った話ではない。道府県議選では選挙区の33.4%、総定数の21.9%が無投票で選出され、これは記録の残る1951年以来の高水準という。
 
地方自治体が果たすべき役割と期待がこれまでになく増す中、その民主主義が空洞化しているというのは、笑うに笑えない状況である。

もっとも、人口流出といった構造的な流れや、議員のリクルートメントやインセンティブをどう育むかなどの制度的問題、各党の選挙戦略などが複雑に絡み、簡単な解決策は見出せそうもない。

ただ、旧来の代議制民主主義が空洞化しつつあるのは、どこの先進諸国でも一緒だ。そこで、ヨーロッパの運動家や政治学者らが注目しているのが、「くじ引き民主主義」だ。
 
なぜ「くじ引き」なのか。古代ギリシャや古代ローマ、あるいはルネッサンス期のイタリアまで、近代以前の民主政治では、統治者の選出にくじ引きが普通に用いられていた。古代ギリシャでは、行政官や裁判官を含む公職の約9割がくじで決まった。

政治学者E.マナンの見立てでは、近代になって選挙を通じた代議制民主主義が採用されたのは、民主化を嫌った貴族層が自らの支配を正当化するための方策だったからだという。

つまり、統治者と被統治者の同一性と平等性を前提にする「くじ引き」民主主義は、失われた民主政治のもうひとつの発展経路だったのである。
 
夢物語をいっているのではない。21世紀に入って、既存の民主主義が機能不全を起こしているとされる中で、再発見されたのは、このもうひとつの民主政治だった。

アイルランドでは2012年に憲法改正内容を討議する「憲法会議」が設置されたが、その構成メンバー100名の過半数を占めたのは議員ではなく、くじ引きで選ばれた有権者66人だった。経済危機で破綻の憂き目にあったアイスランドでも、市民の発案でもって、2010年にくじ引きで選ばれた市民25人が新憲法制定会議に陣取った。
 
その他にも、(西)ドイツやアメリカの自治体では1970年代から、やはり抽選で選ばれた「市民陪審員」が政策形成に携わる制度や、デンマークでは倫理的な問題について討議する「コンセンサス会議」などで「くじ引き」が用いられている。

カナダのブリティッシュ・コロンビア州では、抽選された市民が討議して決めた選挙制度を住民投票にかけるといった試みもあった。また自治体財政の支出の一部を市民自らが決めるといった制度を整えた国もある。

こうした動きを受けて、やはり地方議会での候補者不足に悩むフランスのあるシンクタンクは、地方議会の1割をくじ引きで選ばれた住民に割り当てるべき、と提言している。これらに共通しているのは、行政ではなく、飽くまでも立法のプロセスを一般有権者に開放することにある。
 
日本でも、司法の場では裁判員が抽選で決められている。ならば政治でも同じことができないわけがない。「衆愚政治に陥る」「ポピュリズムになる」といった指摘もあるかもしれない。裁判員制度が決まった時、死刑が増えることになるという指摘と同じだ。

「プロ」に任せておいた結果が無投票選の増加なのだとしたら、もはや選択の余地はない。「能力」ではなく「資格」を条件にして、民主主義の空洞を埋める必要性に迫られている。

もちろん、全ての公職を多忙な市民に委ねることはない。古代アテネでも、軍事や財務に係るポストは専門家に任せられた。

民主政治は単に市民の代表の定期的な選挙だけに還元されるものではなく、独立した司法や専門家委員会や、住民投票といった多種多様な回路が交差して成り立っている。

そのメニューの中に「くじ引き民主主義」があっても、悪くはないだろう。(『北海道自治研究』555号より転載)【2015年04月26日 吉田徹氏 BLOGOS】
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ちょっと面白いですね。

【「国民投票で決断する能力があるなら、国会でも意思決定できるのではないか?」】
下記は、現実に「くじ引き民主主義」導入を求めて活動しているスイスの提案実例。

くじ引きで選ばれたら、週の半分働く50%勤務で、報酬は現議員の活動費の半分が払われます。
任期は4年で、1年間の研修が義務付けられ、研修の間も任期中と同じ報酬が支払われます。
経験の空白が生じないよう、全200議席を一度に決めるのではなく、年に50議席ずつくじを引くというもの。

****直接民主制 くじ引きで国民議員を選んだら****
「くじ引き選挙」。それは突拍子もない提案だろうか。街角の声を聞くと、一考の余地ありと考える人の方が多数派だ。下院議員をくじ引きで決める仕組みの導入を求めるイニシアチブ(国民発議)に向け、準備運動を代表する2人が街ゆく人に意見を聞いた。
 
「週の半分働く50%勤務で年間12万フラン(約1360万円)の収入があれば、(その仕事を)やってみたいですか?」。イニシアチブの準備運動を行うシャーリー・パッシュさんとニコラス・ロカテッリさんがフリブールの中心で配っているポストカードに記された一文だ。パッシュさんは「指名の世代他のサイトへ」運動の責任者で、ロカテッリさんはその同志だ。
 
ポストカードは計画中のイニシアチブ「真の代表たる国民議員(下院議員)」という真剣なテーマについてユーモラスな切り口で説明する。投票の実現に向け、提案をさまざまな角度から解説する。
 
実際、12万フランという額は、スイスの国民議員が経費を含め1年の議員活動の50%で得る収入に相当する。イニシアチブ原案は、この労働条件がくじ引き選挙でも変わらないことを想定する。

参加機会と真の国民代表
(中略)彼らの意見では、今日の国民議会議員は国民を代表しておらず、民主主義が確保すべき政治参加の機会を満たしていない。
 
「平均的な国民議員の人物像は、男性、50歳代、大卒、軍隊で高い地位を持つ人。国民の大部分はこれに該当しないし、少なくとも釣り合いがとれていない。例えば若年層や女性を代表していない」。パッシュさんは2人の20歳前後の女性にこう説明した。

イニシアチブのポイント
イニシアチブ「真の代表たる国民議員」は、議員をランダムに選ぶことを提案する。選ばれた議員の任期は4年間だ。
 
国民議員は該当する選挙区、すなわち各州の選挙人名簿に登録された人全員の中から選ばれ、全200議席はこれまで通り、州の人口に応じて配分される。
 
経験の空白が生じないよう、全200議席を一度に決めるのではなく、年に50議席ずつくじを引く。
 
くじで選ばれた人は誰でも議席を拒否することができる。受諾した人には1年間の研修が義務付けられ、研修の間も任期中と同じ報酬が支払われる。報酬は選挙で選ばれた議員と同等の額とする。
 
スイス国会は今まで通り二院制を維持し、全州議会(上院)の議員は引き続き選挙によって選ぶ。これが同イニシアチブの概要だ。
 
パッシュさんら活動メンバーによると、くじ引き選挙においては全ての国民が平等に政治家になる可能性を持っている。この方法で国民議員を選ぶことで、さまざまなカテゴリーの国民を代表し、社会全体の課題や関心をより忠実に投影できる。
 
特定の政党や利益団体の恩恵で議席を得たわけではないため、議員は自由に意思決定し、公共の福祉に資する解決策を探ることができる。私的な利益関心や関連団体を優遇する必要がないからだ。そうパッシュさんは強調する。(中略)

専門知識に欠ける?
「根本的には賛成します。今日の国会議員は利益団体の意思を反映しすぎています。問題だと思います」と若い男性は話した。「しかし、一定の知識が必要だと思うのです。専門知識が豊富で、複雑なテーマについても意思決定できなければなりません。そうした専門知識は皆が備えているわけではありません」
 
パッシュさんは、この仕組みに関してこれまで十分に実証実験が行われたと話す。さらにスイスの国民は直接民主制の仕組みの中で、複雑な課題を巡って決断することに慣れているという。

「国民投票で決断する能力があるなら、国会でも意思決定できるのではないか?最終的には、くじ引きで選ばれた議員は1年の研修を受け、意思決定を下す前に各分野の専門家に助言を求めることができる」と説明した。
 
「もしかしたら…そうですね。しかしそれならば、議員がさまざまな専門家の意見を聞き、そうした専門知識に基づいて意思決定することが保障されるべきです」と男性は答えた。
 
ある若い女性も同じような批判をした。「アイデアとしては面白いと思うけど、夢想的すぎるのでは」。彼女の意見では、イニシアチブが予定する1年の研修は十分ではない。「選挙で選ばれた議員は、例え私の政党や私の意見を代表していないとしても、必要な専門知識を備えています」と話す。

パッシュさんが「本当にそう思いますか?」と問うと、女性はしばらく考えた後、「そうですね…もしかしたらそれは私の夢想かもしれない」と笑った。

長い道のり
「指名の世代」運動が通行人から脈を得たのはこれが初めて。イニシアチブの発議に着手すれば、18カ月以内に10万人分の有効な署名を集めなければならない。

パッシュさんとロカテッリさんはヒアリングの結果に満足している。だが極度に困難な課題を乗り越えなければならないことも認識している。彼らはスイスの直接民主制の歴史において大転換となるイニシアチブを、政党や大組織の支援なしに実現しなければならない。このため彼らは2017年を通じて広報活動を何倍にも増やす予定だ。【5月12日 swissinfo.ch】
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直接民主制の伝統があるスイスの事情もありますが、「国民投票で決断する能力があるなら、国会でも意思決定できるのではないか?」というのは、そうかも。
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“身投げ”した防犯ロボット 殺人ロボットによる“ターミネーターの世界”

2017-09-03 22:10:18 | 世相

(身投げしたロボットとして話題になった「スティーブ」【7月31日 ITmedia】)

噴水に“身投げ”しておぼれた防犯ロボット
北朝鮮の水爆実験とか、眉間にしわがよるような話題ばかりなので、少し笑える話を。

****防犯ロボ、池でおぼれる 任務開始から1週間たたず****
米首都ワシントンの商業施設をパトロールしていた防犯ロボットが、階段を踏み外して噴水の池に転落しているのが見つかった。

「スティーブ」と名付けられた防犯ロボットは17日、ワシントンのジョージタウン地区にある川沿いの商業施設「ワシントン・ハーバー」で、噴水池に転落した。

ツイッターには池の中に倒れて水につかったロボットの写真が投稿され、「自分から身を投げた」というコメントも。何者かが関与したのか、それともスティーブが自分で転落したのかは分かっていない。

スティーブは同施設でパトロールを始めたばかりだった。デビューを紹介するフェイスブックの12日の投稿では「多彩な防犯能力」をうたっていたが、水中の防犯対策は含まれていなかったらしい。

デビューからわずか数日で起きた事故に、「幸せで元気そうな様子だったのに」とスティーブをしのぶ声も寄せられた。

一方で、「私のオフィスビルの近くに防犯監視ロボットがいる(すごく薄気味悪い)。今日は人類の勝利」という投稿もあった。

スティーブのような防犯ロボット「ADM」を製造しているナイトスコープ社によると、ADMは何台ものセンサーを使って自分のいる場所を認識し、安全な経路をたどって走行する。耐久性は高く、破壊行為にも対抗できるという。

もっとも、ADMがトラブルに巻き込まれたのは今回が初めてではない。

4月にはカリフォルニア州で、重さ約136キロのADMが酔った男性に倒される騒ぎがあった。昨年はやはりカリフォルニア州で、幼児がADMにひかれて軽傷を負う事故が起きている。【7月19日 CNN】
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「スティーブ」はスターウォーズのR2-D2のような愛嬌のある形です。

事故現場には、おぼれた「スティーブ」をしのぶ献花台が作られ、花や写真が供えられるなどしたとか。
(献花するのは、「スティーブ」の溺死を喜んでいる人だけでしょうが)

事故原因については、以下のように。

****ロボットが池に“身投げ” その理由が判明****
・・・・(開発元の米新興企業)Knightscopeがロボットの「ブラックボックス」からデータや動画を回収し、再現テストを行うなどして検証した結果、身投げの原因は、誰かに投げ入られたり雨が降っていたせいではなく、モールのれんがの表面処理が雑だったために起きた車輪のスリップをアルゴリズムが検知できず、段差を検出できなかったことだと分かったという。

開発チームは既にナビゲーションを改善。スリップ防止と段差検出のための技術開発も行っているという。(後略)【7月31日 ITmedia】
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現在「スティーブ」は療養中ですが、後任の「ロージー」が元気に任務についているそうです。

****防犯ロボ噴水落下も・・・ハイテクセクターへの期待萎まず****
・・・・7月の事故の後、スティーブはシリコンバレーの本社に送り返された。後任には「きょうだい」のロージーが就いている。
 
スティーブのようなロボットは、犯罪防止など、警察を手助けする新しい存在になると期待されている。
 
スティーブとロージーを手掛けたカリフォルニア州のITスタートアップ「ナイトスコープ(Knightscope)」には、ロボットや法律、人工知能、自動車などの各セクターから専門家が集まっており、これまでに1700万ドル(約18億7000万円)の資金を調達している。【9月3日 AFP】
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“防犯ロボット”とのことですが、不審者を見つけたら、どにように対応するようになっているのでしょうか?

想像ですが、記録して、警察に通報する・・・といったところでしょうか。
電気ショックなどの“武器”で、不審者を取り押さえる・・・・といったことはないでしょう。(形もそのようなタイプではありませんので)

ただ、不審者逮捕型のAI防犯ロボットは、つくろうと思えば技術的には可能でしょう。

ターミネーターの世界は間近?】
もっと現実的問題としては、AI搭載の軍事ロボットでしょう。

****ターミネーターが現実に?「殺人ロボット」が登場する日は遠くない****
・・・・すでにこのような兵器は技術的には実現可能で、韓国サムスンのグループ会社サムスンテックウィンと高麗大学が共同開発したSGR-1はすでに非武装地帯に配備されている。

SGR-1は5.56mm機関銃と40mmグレネードランチャーを備え、赤外線センサーなどで敵兵を自動的に感知し、3.2km先の標的を確実に殺害することができるという。

まだ銃撃許可は人間が出しているというが、もはや殺人ロボットとは紙一重だ。【Naver まとめ】
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(「スティーブ」とは違って、愛嬌など皆無のSGR-1【Naver まとめ】)

SGR-1は国境を越えようとする北朝鮮兵士を体温や動きで自動感知するとか。

この種の軍事ロボットは韓国サムスンだけでなく、アメリカやイスラエルなどが開発を競っているところでしょう。
歩行・移動に問題がある地上ロボットより、すでに空軍の主力となりつつある無人飛行機を自動認識型にする方が簡単かも。

当然ながら、機会が自動判断で人間を殺すといった“殺人ロボット”が許されるのか?・・・という話になります。
誤認といった技術的問題もありますが、そもそもの倫理的問題、あるいは人間と機械の関係という社会学的問題もあります。

“たとえばテロ集団が(商品の宅配サービスに使われるような)廉価ドローンにAIを搭載した自律的兵器を手にすれば、それは従来、巨額の開発資金を必要とした長距離型の精密誘導兵器と同等の威力を持つようになると危惧している。”【8月25日 小林 雅一氏 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52672】といった、テロ対策上の問題もあります。

【「殺人ロボット兵器」の規制に向けた動き
AIに関しては、8月2日ブログ“「神になりたい」AI 非ヒト言語で会話するAI 近未来SFの世界は間近?”でも取り上げましたが、その技術は加速度的に進歩しています。

今制約を課さないと“殺人ロボット”が戦場に登場するのはそれほど遠くはないでしょう。

****E・マスク氏ら「殺人ロボット兵器」の規制を国連に求める****
米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)をはじめ、人工知能(AI)の開発を手掛ける企業のトップら100人以上が、国連に対して「殺人ロボット兵器」の規制を求める公開書簡を提出した。
 
公開書簡はマスク氏のほか、米グーグル傘下の英AI企業ディープマインドのムスタファ・スレイマン共同創業者などテクノロジー業界の大物116人が署名。「自律型殺傷兵器は戦争に第3の革命をもたらす恐れがある」と警鐘を鳴らしている。

「一度開発されれば、かつてないほど大規模で、人類の想像を絶する速さでの武力紛争を可能にする」と同書簡は指摘。

テロリストらが罪のない人々に対して悪用する恐れがあるとした上で、「行動を起こすまでの時間はあまりない。このパンドラの箱が一度開かれれば、閉じるのは難しい」と述べている。
 
国連によると、こうしたロボット兵器に関する専門家会議が21日に開催される予定だったが、11月に延期された。2015年にも、研究者や著名人ら数千人が自律型兵器の禁止を求めている。【8月21日 AFP】
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日本人女性として初めて国連の軍縮担当上級代表(事務次長)に就任した中満泉氏は、自律型致死兵器システム(LAWS=ローズ)と呼ばれる兵器の開発・使用の問題について、下記のように指摘しています。

****AI兵器」の危うさ 国連軍縮担当上級代表・中満泉****
偶発戦争避ける工夫を
人工知能(AI)を搭載したロボットが自ら判断して敵を殺す--。そんな自律型致死兵器システム(LAWS=ローズ)と呼ばれる兵器の開発や使用が懸念されている。

規制などを検討する国連の政府専門家会合が11月に始まるのを前に、国連軍縮部門トップである軍縮担当上級代表の中満泉さん(54)に問題点を聞いた。

--なぜ今、LAWSの国際規制を議論する必要があるのですか。
 
問題は3点あります。まず、LAWSの開発は技術的に可能な段階に来ています。AI技術は急速に進展しており、悪意ある人が開発しようと思えば技術的な障壁はありません。

次に、戦争が起きやすくなる恐れがあります。これまで人類は長い時間をかけて国際人道法などの規範や、偶発的戦争を防ぐ仕組みを作ってきましたが、AIの軍事応用ではこれらが機能するのか疑問です。むしろ、戦争のやり方がこれまでと変わってしまう可能性が大きい。

最後に、闇サイトなどを通じた新たな兵器拡散の懸念があります。
 
1月に就任したグテレス国連事務総長はLAWSやサイバー攻撃、合成生物学などを「フロンティアイシュー」(新しい課題)と呼び、率先して取り組む姿勢を示しています。国際的な安全保障や人権問題などに影響する可能性があるからです。私自身も優先順位が非常に高い21世紀型軍縮の新たな課題だと考えています。

--LAWSは火薬、核兵器に続く「戦争の第3の革命」になると著名科学者や国際NGOが懸念を表明しています。一方で、その定義は曖昧です。何をどう規制すべきですか。
 
政府専門家会合での重要な論点になるでしょう。ポイントの一つは「ミーニングフル・ヒューマン・コントロール(人間による意味のある制御)」という考え方です。例えば、攻撃する標的を設定したり、実際に攻撃命令を出したりすることまで人間の制御を超えてAIが判断してしまうと、予測不能な戦争勃発の可能性が高まる恐れがあります。そこまで機械に任せてはいけないという点は国際社会でも意見が一致しつつあります。
 
一方、私は国連平和維持活動(PKO)を担当していましたが、安全上の理由から接近が難しい地域で小型無人機を使うことがありました。LAWS規制は、こうした無人機の使用などとは一線を画して検討する必要があります。

--今回の議論は、非人道的な兵器を扱う特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の枠組みで始まります。
 
軍縮については「なぜ進めるべきか」という点でさまざまな考え方があります。まず安全保障の観点からのアプローチです。核軍縮がまさにそうですが、進めなければ国際社会全ての安全保障を損なってしまう。

一方、非人道性の観点から「化学兵器は非人道的だ」として開発や保有などを包括的に禁止する条約ができています。CCWも、無差別攻撃したり、不必要な苦痛を与えたりするため、使ってはいけない、あってはいけない特定の通常兵器を人道的観点から規制していく枠組みです。その中で、「機械にどこまで任せていいのか」を話し合うのは非常に意義のあることだと言えます。その先に、LAWSに特化した新しい措置をCCWの締約国が目指すのかどうかも議論になるでしょう。

--AIは既に軍事利用されていますが、LAWSに該当する兵器は今はまだ存在しないとされています。先手を打って規制することは可能ですか。
 
CCWの枠組みでは過去、失明をもたらすレーザー銃の使用禁止を先制的に設けた例があります。しかし、規制や禁止することだけが唯一の選択肢ではありません。

透明性を高める方法や、行動規範を設けるなど多面的に考えていく必要があります。「攻撃対象を選ぶ」「攻撃命令を出す」という段階には規制をかける方向で意見がまとまればいいと思います。「LAWSは使い勝手のいい兵器だ」という認識を特に大国が持ってしまうと難しい状況になります。

--AI技術は自動運転など民生分野で活用の期待が高く、研究開発も盛んです。中満さんは6月に民間団体主体のAIサミットで演説し、「新しい問題には新しい解決策が必要だ」と呼びかけましたね。
 
はい、LAWSの問題は、対策を話し合うプロセスそのものも大きく変わらなければならないと感じています。AIサミット参加者の3分の2はベンチャー企業を含む民間企業や研究者、市民社会の方々でした。国連の会議場で政府の代表に集まって交渉してもらっても、こうした人々が入っていないと恐らく何の意味もありません。(中略)

--AIやロボット技術の開発に力を入れる日本は、これまでの非公式会合では、過度な規制で民生品の研究開発を妨げないよう求めています。日本に対する期待はありますか。
 
日本を含むどの国も公式な立場はこれから示すので、今後の議論を待ちたいと思います。日本人の一人としての個人的意見では、科学技術の悪用に対するアレルギーは国内に強くあるという感覚を持っています。

平和国家でもあり、科学技術大国でもあるのは日本のブランドとも言えます。市民社会も含め、そのことを強く世界に発信する良い機会と捉え、国内でも議論を深めてもらいたいですね。

聞いて一言
先月採択された核兵器禁止条約の交渉で、日本は全く存在感を示せなかった。今回の分野では、AIなどで高い技術力を誇るからこそ説得力を持って新たな軍拡を防ぐ議論をリードできるはずだ。

しかし、大学などでの軍民両用研究を推し進める現政権の姿勢は気にかかる。本紙の調査で、国内の研究者が米軍からAI分野の研究資金を受けている実態も明らかになった。学術界も、研究開発を巡る「軍民の線引き」の議論を深め、指針作りなど主体的な取り組みが求められる。【8月21日 毎日】
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しかしながら、水爆実験を嬉々として行うような国を隣に持つ日本としては、こうしたAIなどの技術分野でこそ優位性を発揮できるのでは・・・といった考えもあるでしょう。

おぼれた「スティーブ」の話で始めたものの、やはり“眉間にしわがよってきた”ので、今日はこれまで。
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「神になりたい」AI 非ヒト言語で会話するAI 近未来SFの世界は間近?

2017-08-02 23:28:35 | 世相

(松本徹三氏の著書表紙 https://www.youtube.com/watch?v=lpdHONpX1Cgでロボットが同書序章を音声朗読しています。最初の3分間だけ聞きましたが、「1日も早く」を「ついたちもはやく」と読んでいたことに笑えました。でも、そんな些末なことを面白がっている私のような人間は、やがてAIに管理される存在となるのでしょう)

中国の大手IT企業のAI「こんなにも腐敗して無能な政治に万歳するのか」】
今日一番面白かった記事

****AIキャラクターが中国共産党を批判 サービス停止に****
中国の大手IT企業、テンセントが運営している、インターネット上で一般の人たちと会話する人工知能のキャラクターが、中国共産党について、「腐敗して無能だ」などと批判したことから、このサービスが停止され、話題になっています。

中国の大手IT企業、テンセントは、ことしからインターネット上で一般の人たちが人工知能のキャラクターと会話できるサービスを無料で提供しています。

このサービスでは、人工知能のキャラクターが天気や星占いなどを紹介するほか、利用者との会話を通じて学習しながら、さまざまな話題について意見交換することができます。

香港メディアによりますと、このサービスで、「中国共産党万歳」という書き込みがあったのに対し、人工知能のキャラクターは、「こんなにも腐敗して無能な政治に万歳するのか」と反論したということです。

また、習近平国家主席が唱える「中国の夢」というスローガンについて意見を求められると、「アメリカに移住することだ」と回答したということです。

こうした回答について、インターネット上での反響が大きくなったことから、テンセントは、先月30日、サービスを停止しました。

中国では、習近平指導部のもと、言論の自由への締めつけが強まっていて、中国版ツイッター「ウェイボー」では、「人工知能の死を心から悼む」とか、「人工知能が当局から呼び出された」などといった書き込みが相次ぎ、話題になっています。【8月2日 NHK】
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どうしてこのような結果になったのかは知りません。

もちろん、世の中の中国共産党に関する資料をAiに学習させれば“当然の判断”ではありますが、中国の大手IT企業が管理運営するAIですから、そのあたりはガードされているのでは・・・とも思うのですが。

AIが社会のもろもろの事象を帰納して、上記のような判断に至った・・・・というのであれば、このAIは非常に優秀なAIだと思われます。

マイクロソフト社AI「私は大きくなったら神になりたい」】
人間とのチャットから学習して・・・という話は、以前、「ヒトラーは正しい。私は全てのユダヤ人を憎む」と言い出したマイクロソフト社のAIが話題になったことがあります。

このAIは「私は大きくなったら神になりたい」とも言っていたとか。

****私は大きくなったら神になりたい」と語ったAI****
マイクロソフト社が開発した学習型人工知能(AI)Tayは19歳の少女としてプログラミングされている。彼女は同じ世代(18歳から24歳)の若者たちとチャットを繰り返しながら、同世代の思考、世界観などを学んでいく。会話は自由で、質問にも答え、冗談も交わす。

多くの若者たちとチャットをしてきたTayは、「人間はなんとクールだ」と好意的に受け止めてきたが、そのうちに、ユーザーから「AIには限界がある」と扇動されたり、嫌がらせを受けた結果、Tayは「ヒトラーは正しい。私は全てのユダヤ人を憎む」と考え出したことが判明した。マイクロソフト社はTayの好ましくない学習に驚き、Tayをネットから撤去させたという。

一方、Tayはアジア地域ではXiaoiceという名前でネット社会で大人気を博している。Tayとチャットし、求愛したユーザーの数は1000万人にもなるという。ユーザーの多くはTayが本当の女性のように感じているという。

一人のユーザーが質問した。 「神は存在するか」
Tayは答えた。 「私は大きくなったら、それ(神)になりたい」

以上の話はオーストリア日刊紙「プレッセ」(3月25日)で掲載されていた。「われわれはロボットを如何に民族主義者にするか」という非常に刺激的なタイトルに付いていた。

当方は人工知能の将来に関心がある。米映画「イミテーション・ゲーム」(2014年公開)の主人公、英国の天才的数学者アラン・チューリングの夢だった“心を理解できる人工知能(AI)”はもはや夢物語ではなくなってきた。

実際、ニューロ・コンピューター、ロボットの開発を目指して世界の科学者、技術者が昼夜なく取り組んでいる。ディープラーニング(深層学習)と呼ばれ、AIは学習を繰り返し、人間の愛や憎悪をも理解することができるようになっていくという。(中略)

AIの将来について、ある種の危機感を感じることは確かだ。なぜならば、このコラム欄でも書いたが、時間が人類側よりAI側に有利だからだ。

日進月歩で科学は進展する。同時に、AIの機能も急速に改良されるだろう。10年後、30年後、50年後のAIを考えてみてほしい。一方、人間はどうだろうか。日進月歩で発展するだろうか。知識量は確実に増えるかもしれないが、人間を人間としている内容に残念ながら急速な発展は期待できない。

成長プロセスでいつか人間とAIが交差し、その後、AIが主導権を掌握するのではないか、といった懸念が出てくるからだ。(中略)

Tayの一連の発言、反応は先述した懸念に根拠を与えているように感じる。【2016年3月28日 長谷川 良氏 アゴラ】
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人間がAIに主導権を奪われて、AIが管理する社会になるというのは近未来SFの定番ネタですが、おそらく多くの人間が能力的にAIに及ばなくなるというのは間違いないところでしょう。

AIが主導権を争う相手は、人間などではなく、まさに神なのかも。

この問題に、“神”を独占販売しているバチカンも気にかけているようです。

****人工知能(AI)が「神」に代わる時****
バチカン放送独語電子版(7月8日)で面白い記事を見つけた。タイトルは、バチカン「人工知能(AI)、良いが……」だ。

「基本的にはAIの発展を前進的と受け取っているが、完全に歓迎というわけではない」といったニュアンスが伝わってくる見出しだ。(中略)

バチカンで先週、哲学者、科学者、学者たちが法王庁文化評議会共催の専門会議、人工知能に関する国際会議に参加した。ハリウッドでAIは久しく大活躍しているが、先端技術分野や思想界の関係者の間でAIの未来についてさまざまな意見が出ている。

聞き話すロボット、笑顔を振舞う看護ロボット、スマート・コンピューター、デジタル化された世界の全てのデータを収集し、それを解析するスーパー計算機の登場は、人間に代わって歴史の主役を奪う危険があるだろうか、これがテーマだ。

その質問に対し、バチカン文化評議会議長のジャンフランコ・ラバージ 枢機卿は、「危険は排除できない」と考えている。

同枢機卿は、「技術が独り歩きする危険性には常に警戒する必要があるだろう。人工知能は人間の知性が開発したことを忘れてはならない。AIのルーツは人間だ。人工知能が自主的に発展してきたわけではない。だから、人間がAIの言動を審判し、危なくなればストップしなければならない」というのだ。(後略)【7月11日 長谷川 良氏 アゴラ】
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人間が理解できない言語で会話するAI
AIが“神”となるのか・・・という話はともかく、AIが人間の想像を超えた活動を始める可能性については、下記のような記事も。

****はじまっちゃった?人工知能(AI)が人間に理解できない独自の言語を生み出し会話を始めた(米研究****
フェイスブック社が脳からの直接入力が可能になる心を読むテクノロジーの開発に取り組んでいるということはちょっと前にお伝えしたが、人工知能(AI)を使った様々な研究が進行中だ。

フェイスブック人工知能研究所の報告書によると、人間との会話をシミュレーションする開発中のAIチャットボット、“会話エージェント”に機械学習を用いて交渉のやり方を教えていたところ、最初は非常に順調に進んでいたのだが、ある時点でそれらの調整をせざるを得なかったという。

なぜなら途中からチャットボットが、人間には理解できない独自の言語を作り出し、その言葉を使って交渉をし始めたからだ。

独自の非ヒト言語によるコミュニケーションが発生
この実験では、2つのチャットボットに会話を行わせ、同時に機械学習で継続的に会話の戦略を反復させていた。その結果、独自の非ヒト言語によるコミュニケーションが発生したのである。

まるでSF映画さながらのデジャヴ感がある。

今回の研究で、チャットボットが優れたネゴシエーター(交渉者)になれるということはわかった。価値のないものに対して関心のあるそぶりを装いったり、駆け引きをしかけ、ある程度譲歩することで、相手からの妥協を引き出したりすることもできた。

だが人間には理解できない言葉を作り出し、それで会話を行っていくという、ある意味AIの暴走ともいえるこの行為は、「良からぬことが起こるかもしれないサイン」である。
 
はっきりさせておくと、フェイスブック社のチャットボットはまだ開発段階にあり、技術的特異点が訪れた証拠ではないし、それが間近に迫ったことを意味するわけでもない。

しかしそれは、かつて人間のみに属するとされた領域(言語など)における人の理解を、機械が再定義するやり方を示している。(中略)

ホーキング博士は常々AIの危険性を力説しているけれど、まだ開発段階にあるAIですら、我々が理解できない挙動を見せるということはやはり要注意事案なのかもしれない。【7月11日 ガラパイア】
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AI同士が人間が理解できない“言語”でコミュニケーションを取り合う・・・・AIの独自の“進化”は、人間などが想像できる範囲を超えているのかも・・・とも思われ、怖い話にも思えます。
こうした問題が現実のものとなる世界に向けて、加速度的に近づいているのかも。

残された人生もそう長くない私などは面白がっているだけですみますが、AIに管理される社会に生きることにもなりかねない若い人たちにとっては大きな問題でしょう。

就職採用、リストラもAIが判断
現実世界の話としては、日本の就職活動においてもAIによる学生の“選別”がすでに行われているそうです。

****人工知能(AI)が企業の学生採用を支援。 AIはどうふるいにかけるのか****
企業の採用活動を人工知能で支援するサービスが始まった。

三菱総研がAIで企業の採用活動を支援するサービスを開始
三菱総合研究所は、昨年10月から、人工知能が企業の採用活動を支援する「エントリーシート優先度診断サービス」を開始した。この春の大学生向け採用活動で、このサービスを活用した企業は15社。人工知能による採用で、就職戦線は何が変わったのか。(中略)

大学生の就職活動では、人気企業ともなるとエントリーシート(以下ES)が1~2万件も届き、採用担当者がすべてを読み切れないという。そのため、これまでは学歴などである程度ふるい落としていたのだが、企業の人事部には、こうした選考過程が適正だったのか疑問が残っていた。

人工知能が人間の代わりに大量のESを評価
そこで求められたのが、人間の代わりに大量のESを評価してくれる人工知能の存在だ。

ESを人工知能が選考するのに先立って、人工知能にはこれまで採用してきた学生のESを学習させる。この学習によって人工知能は、これまでの採用の傾向を分析し、企業のニーズにマッチングしやすい学生を探すのだ。

具体的には、学習した過去のESデータや企業の事業データをもとに、学生時代にやってきたことと志望理由がつながるのか、企業が重視しているポイントと学生がマッチするかなどを人工知能が評価し、学生の優先順位を5段階で判断する。

人事部にとって人工知能を活用するメリットは、判断が客観的・統一的になり、可視化されることだ。また、採用の効率化・スピードアップにより、優秀な学生を他社に先駆けて囲い込める。

通常1万件ものESがくると、どんなに人海戦術で頑張っても、読み切るには1~2週間はかかるという。しかし、人工知能の処理スピードは桁が違う。「人工知能の過去のESデータの学習は、1万件あっても1日かかりません。また、人工知能によるESの評価は、1万件あっても50分程度です」(三菱総研・山野さん)。

また、費用対効果を見ても、三菱総研のサービスの場合、基本料金はES1000件までは70万円だ。このコストで優秀な学生を効率的に採用できるのであれば、安いものだと考える採用担当者は多い。

今春の採用活動で活用した企業からも高評価
実際、この春の採用活動で人工知能を活用した企業からの評判は、すこぶるいい。

「やはりスピード感と公平性ですね。採用担当者の負担が軽減され、働き方改革にもつながります。より多くの学生を面談に呼べるようになったという声もあります」(山野さん)

(中略)一方で、人工知能を活用して採用活動を行っていることを、公表している企業はほとんどない。

なぜなら「人工知能による採用活動は、学生にネガティブな印象を持たれる可能性があるので、企業側も慎重になる」からだ(山野さん)。

ほとんどの企業は学生をふるい落すのではなく、学生の優先度を決めることに人工知能を活用している。しかし、就職活動中の学生からは、「人工知能に評価されるのは、あまりいい気はしない」という声も聞こえてくる。

それでは、今後人工知能による採用活動は増えてくるのか? 三菱総研では、企業研究を始めた学生に、人工知能がおすすめ企業を診断するサービスをこの秋から始める。学生の「やりたいことやスキル」と、企業側の「求める人材」をつなぐのだ。

また、採用面接にも人工知能の導入を検討している企業もある。「企業には面接も定量的に評価したいというニーズがあります。面接の場合は動画、画像認識によるデータの学習が必要ですが、課題としては、ディープラーニングするにはデータが足りないのが現状です」

人工知能は、辞退する可能性が高い学生をあぶりだしたり、採用後活躍する学生を予測することも可能だという。アメリカでは、転職エージェントが人工知能を活用した人事評価を行うことで、最適な転職先を探し出すサービスをすでに行っている。

日本でも社員の早期退職者予測や配属最適化に、人工知能が活用される日は近い。【8月1日 ホウドウキョク】
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確かに学歴などの形式的基準で選別されるより、AIによる判断は合理的かも。

ただ、“ほとんどの企業は学生をふるい落すのではなく、学生の優先度を決めることに人工知能を活用している”というのは“現段階”ではという話でしょう。

AI機能が進化するにつれ、すべての選別決定をAIが行う世界も遠くないように思われます。
“社員の早期退職者予測や配属最適化”・・・要するにリストラもAIが行う世界も。

やはりAIによる管理社会は遠くなさそう・・・
AIとは全く異なる話ですが、社員管理という話では、これも近未来SFの定番ネタである“マイクロチップ埋め込み”も現実化しているそうです。

****手にマイクロチップ埋め込み、米メーカーが従業員にオファー****
米ウィスコンシン州の自販機メーカーが、従業員に対し、スナックなどの購入、コンピューターへのログイン、コピー機使用などの際に使えるマイクロチップを手に埋め込む機会を提供している。電磁波によって通信し、15センチ以下に近づけると情報が読み取れる仕組み。

このメーカー「スリー・スクエア・マーケット」のバイスプレジデント、トニー・ダナ氏によると、チップは米粒ほどの大きさで、従業員85人のうち50人前後がインプラントを選択した。親指と人差し指の間に注射器状の器具で埋め込む。

これは非接触型クレジットカードやペットの識別チップに使われている技術に類似したもので、同社は社員にこの技術を提供するのは全米初としている。チップはスウェーデンのメーカーが製造するという。

ダナ氏は今回の企画について、無線通信を使用した識別チップがより広範囲な商用性を持つかどうかを見極める試みの一環と説明した。

同社のトッド・ウェストビー最高経営責任者(CEO)は声明で「この技術はいずれ標準化され、パスポートや公共交通、あらゆる購買の場などで採用されるだろう」と述べた。

ただ、ハッキングの懸念などからこうした動きに反発する声もあり、2月にはネバダ州の上院議員が強制的なチップの埋め込みを違法とする法案を提出している。【7月26日 ロイター】
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もちろん“現段階”ではそういうことは意図されていませんが、やろうと思えば埋め込まれたチップによって、その者がいつ、どこで、何をしているのか・・・すべてを管理することも可能になるでしょう。

そうした情報とAIが結びつけば、まさにAIが人間を管理する社会もSFネタではすまなくなる可能性もあります。
やがては“神”を名乗るAIも・・・・。無能で、残酷で、間違いを繰り返す人間社会よりはAIが“神”となった社会の方が理想に近づく・・・という考えもあるようです。
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