孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

台湾  馬英九候補圧勝、住民投票不成立

2008-03-24 18:21:55 | 国際情勢
台湾総統選挙については、多くの報道で伝えられているとおりで、敢えてここで書くほどのものもないのですが、印象としては、予想以上に大差がついたな・・・というところでしょうか。

1月の立法院選挙での国民党圧勝を受けて、大幅に馬英九候補がリードしていた訳ではありますが、選挙終盤でのチベット騒乱・中国の弾圧が、対中融和を掲げる国民党・馬候補陣営にかなり逆風となり、民進党・謝候補の激しい追い上げがあるのでは・・とも見えました。

“とも見えました”というはっきりしない表現をしているのは、台湾では選挙直前の世論調査が禁じられているので、直前の支持動向が分からないからです。
ただ、そのように思ったのは素人の私だけでなく、大方の予想もそのようなものでした。

選挙著前の世論調査の不在を補っているものにギャンブルがあるそうです。
台湾では賭博業者の闇のネットワークが私営カジノ、鳩レース、香港競馬といった賭博を幅広く手がけおり、総統選挙もその賭けの対象になっています。
賭博業者の多くは馬英九候補が50万から70万票の差をつけて謝長廷候補に勝利するとみていたそうです。
台南の賭博シンジケートに近い人物の話では、馬候補が50万票の差をつけて勝利するとの予測が最も多かったそうです。【3月21日 AFP】
賭博業者らが集めた賭け金は、100億台湾ドル(約330億円)に上ったそうで、結果予測はどんな政治関連機関の予測よりも真剣です。

結果は、220万票以上の大差。
中央選挙委員会の発表(開票率100%)で、得票数は馬氏が765万8724票(得票率は過去最高の58・45%)、謝氏は544万5239票(得票率41・55%)。
もし賭博業者内部で本当に50~70万票差という予測をしていたのであれば、そして票差が賭けに関係してくるのであれば、予測に関連した人物は今頃どうなっているのか・・・・。

思いのほか、チベット騒乱の影響での票の動きがなかったようです。
邪推すれば、チベットの問題は漢族支配に対するチベット族の抵抗運動ですから、漢族の一員としての台湾住民はチベット族に対するシンパシーがさほど大きくなかったということでしょうか?
あるいは、馬候補のオリピックボイコット発言に、“せっかく野球でオリンピック出場できたのに、台無しにするようなことを・・・”との世間からの反発が強かったそうですが、中台間の緊張とは言っても、一般住民にとってはそのくらいの関心しかない問題なのでしょうか。

今回の選挙結果の意味するところは、いろんな報道で言っているように、“台湾人”としてのアイデンティーは前提にするものの、“台湾独立”で中台間の緊張を高めたり、チベット問題で中国の脅威を強調したり、そういういたずらに政治的に問題を先鋭化させる手法には背を向け、“現状維持”と、共同市場・直行便といった“経済的実利”を求めた・・・ということでしょう。

中国本土への台湾からの進出企業はすでに7万社を超すなど、対中依存度が高まっている現実があります。
中国の温家宝首相は18日の記者会見で、「台湾同胞の利益のためなら、中国の利益を犠牲にすることもいとわない」と述べているとか。
中国との通商拡大、政治的現状維持という点では、おそらく謝候補が総統になったとしても、現実政策的には同じようなものだったとも思われます。
そういう意味で総統選挙以上に中国、ひいてはアメリカの関心を引いたのが、国連加盟に関する住民投票でした。
結果は、これも報道のとおり、与党案も野党案もともに投票率が35%台と過半数に達せず成立しませんでした。

この住民投票の文案は、与党・民進党提出が
「1971年に中華人民共和国が中華民国に代わって国連に加盟し、台湾は国際社会の孤児となりました。台湾の国民意志を強烈に表明し、台湾の国際社会での地位および参加を高めるため、政府が『台湾』の名義で国連に加盟することに同意しますか?」
野党・国民党提出が
「わが国の国連への復帰およびその他国際組織の加盟申請の際、実務的、弾力的な戦術で、中華民国名義または台湾名義、あるいはその他の参加可能かつ尊厳ある名称で、国連の復帰およびその他国際組織の加盟を申請することに同意しますか?」
というものでした。

特に、与党提案の“台湾名義の国連加盟”が実質的に“台湾独立”を国際的に主張することになり、“ひとつの中国”の立場をとる中国が激しく反発していました。
アメリカも“東アジア地域の秩序を混乱させるもの”として強く実施に反対していました。
この提案は陳水扁総統がこだわっており、自身の不人気で選挙応援活動も自粛していることもあって、陳総統はもっぱらこの住民投票にかかわっていたそうですが。

国民の判断は“現状維持”ということで、中国や、万一の場合に備えてキティホーク、ニミッツの空母2隻を派遣したと言われるアメリカも、“やれやれ”というところでしょう。

コメント
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