(「酸攻撃」被害者 “flickr”より By Acid Survivors Trust... http://www.flickr.com/photos/35850662@N07/3318714321/in/photolist-64gh9r-6tMdn2-76vs5P-76CeC7-eBuhyx-f3scy5-dKCk9R-fhBfbA-fbjrxv-8qcoBa-8qcBXX-8qfvSE-8qfyaW-8qfkAQ-8qRB7v-8negEP-e42b76-e47NQw-e42bRv-e47NtE-e42bvc-e47NAW-e42brV-e42bpc-e47NHu-e47PuJ-9pWon7-8ocJZX-9pWo3q-9Fdprk-8RrVQS-8qgDxp-9Fgkhm-9Fdpm8-9FgkVb-9Fgk3j-9FdoTt-9FdoEg-9Fdoqp-9Zd2DL-9Zd1BA-9Za6nT-9Za3GX-9Za5K4-feioyV-dYbhaH-dYbha6-dYgZbY-dYbh8z-bitB84-cbC8mJ)
【「デリーの事件で状況が大きく変わった」】
インド・パキスタン・アフガニスタン・バングラデシュ、あるいはアフリカのウガンダなど世界の各地で、交際を断られた女性の顔に男性が腹いせに(アフガニスタンではタリバンによる女子学生へのいやがらせだったり、対象は女性に限らなかったり、いろいろなバリエーションはありますが)硫酸などの酸をかけるという、卑劣としか言いようのない犯罪が横行しています。
そうした薬剤の入手がほどんど規制されていなかっり、犯罪者の処罰も軽微だったりすることも多いようです。
2012年3月2日ブログ「硫酸をかけられた女性 パキスタン人女性監督オスカー獲得 イランでは同害報復刑回避」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120302)でも取り上げたことがあります。
こうした犯罪の多いインドで、ようやく薬剤入手を制限する法規制が実現することになりました。
遅きに失したことは言うまでもありませんが、前進が見られたことは歓迎すべきでしょう。
****女性への酸攻撃多発のインド、酸の売買規制へ*****
インドの最高裁判所は18日、女性が元交際相手などの男性から酸をかけられる事件が多発している状況を受け、政府に酸の販売規制措置をとるように命じた。
また最高裁判事らは、各州政府は酸攻撃の被害者全てに回復治療と賠償金を提供すべきだとの判断を示し、暫定的な判断として被害女性が受け取る金銭を賠償金30万ルピー(約50万円)と治療費と提案したが、最終決定は持ち越された。
女性に対する攻撃には多くの場合、薬局などで手軽に購入できるさび取り剤「テザーブ(Tezaab)」が用いられる。将来的には、酸性薬品の購入者には写真付き身分証明証の提示が求められ、販売側にも購入者の住所と氏名を記録することが義務付けられる。【7月19日 AFP】
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インドでようやくこうした規制が実現する運びとなったのは、昨年末に起きたバス車内での集団レイプ事件で、女性への犯罪が野放し状態となっている現状への強い批判が国内で起きたことが背景にあるそうです。
****インド女性の悪夢は終わるか****
ようやく、と言うべきだろう。
先週、インド政府が酸性薬品の販売規制に乗り出す方針を表明した。この国では、腹を立てた恋人や家族が若い女性の顔に酸性薬品を浴びせるという凄惨な事件が多発してきた。
規制が施行されれば、販売店は酸性薬品の購入者に、身分証明書の提示を求め、住所と電話番号、用途を尋ねることが義務付けられる見通しだ。また、大幅に希釈されたもの以外は酸性薬品の小売りが禁じられる。
被害に遭う女性は毎年何百人にも上ると、「インド酸被害者財団」のスブハスーチャクラボルティ事務局長は言う。命を失うことはほぼないが、顔に大きな傷が残る。失明したり、心に深い傷を負ったりする人も多い。
被害女性は、深刻な肉体的・精神的打撃を被り、社会的にも極めてつらい立場に立たされる。
隣国のバングラデシュは、既に対策を始めている。年間1000件以上の酸攻撃が起きていたバングラデシュは、02年に加害者に対する死刑制度を導入し、酸性薬品の販売規制も実施した。
こうした措置と市民社会の努力により、被害は大幅に減少し、今年はこれまで85件にとどまっている。
なぜ、インドでは対策が遅れていたのか。それは、女性の自由を制約する発想が社会に深く根を張っているからだ。
それでも最近変化が見え始めたのは、昨年12月にデリーのバスの車内で起きたおぞましい集団レイプ事件がきっかけだ。
「デリーの事件で状況が大きく変わった」と、チャクラボルティは言う。「国民の抗議とメディアの批判を受けて、政府も動かざるを得なくなった」
今年に入って、女性への暴力を罰するための刑法改正が行われ、酸攻撃が1つの独立した犯罪として位置付けられた。新しい法律では、酸攻撃の加害者は10年以上の刑を科される(裁判官の判断次第で終身刑の可能性もある)。未遂犯にも5~7年の刑を科せるようになった。
インドの女性たちが「酸攻撃」の悪夢から解放されるための第一歩だ。【7月30日号 Newsweek日本版】
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バングラデシュで法規制によって著しく犯罪が減少したということで、インドでも同様の効果が期待されます。
【「ビヤールの事件で何より嘆かわしいのは、こうした悲劇が目新しいものではないことだ」】
インドでは女性の人権が保護されていないだけでなく、多くの貧困層の子供たちも悲惨な状況に置かれています。
インド東部ビハール州の小学校では、16日に無料の学校給食を食べた子供たちが体調不良を訴え、23人もの死亡者が出ました。
無料給食は、貧しい家庭の子供たちを登校させるための方策として行われていますが、今回事件は単なる事故ではなく、政争の具として子供たちの命が使われた可能性も取りざたされています。
****インド:校長逮捕…給食で中毒、23人死亡で 政争に発展****
インド東部ビハール州の小学校で給食を食べた児童23人が死亡した事件で、警察は24日、小学校の女性校長を殺人などの容疑で逮捕した。
動機は不明だが、来年実施予定のインド総選挙に向け、連邦議会の野党指導者の一人であるクマール州政府首相をおとしめるため校長が給食に毒物を混ぜたとの見方を報じる地元メディアもあり、政治的な論争となっている。
現地からの報道によると、校長は事件発生当日、行方をくらましたが24日、裁判所に出頭し、そのまま逮捕された。児童は学校で調理され、無料で提供された給食のカレーを食べた直後、体調を崩し、搬送先の病院などで死亡した。
これまでの調べでは、カレーの調理に使われた食用油から猛毒の殺虫剤の成分が検出された。調理師は「食用油から異臭がする」と訴えたが、食材調達も担当している校長は、そのまま使うよう強要したという。
これについて、最大野党のインド人民党の政治家は「無能なクマール州政府首相がまともな給食を提供できないから子供たちが犠牲になった」と批判。
クマール氏は、連邦議会で人民党と協力し野党会派を組んでいたが、総選挙に向けた候補選定に反発し、この会派を離脱したばかりだった。
一方、クマール氏の支持者は「我々をおとしめるため、人民党支持者の校長を使い故意に事件を起こした」との「陰謀説」を主張。事件は野党同士の政治論争に発展している。逮捕された女性校長の支持政党は不明だ。
ただ、ビハール州のある校長は毎日新聞の取材に対し「事件には政治的背景はなく、食材管理に問題があったというのが真相だろう。だが、学校で問題が起きればわれわれが政争の具にされてしまう。校長はみな戦々恐々としている」と言う。
無料給食は、貧しい家庭の子供たちを登校させるための方策として、インド国内の多くの学校で提供している。しかし、事件以降、ビハール州では給食を取るのを拒否する子供が増えているという。【7月26日 毎日】
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インドではこの種の事故は多発しており、今回事件も犯罪ではなく、そうした事故のひとつである可能性もあります。
また、解毒剤の処方ミスを指摘する専門家もいるようです。
逮捕された女性校長は事件への関与を否定していますが、
“警察関係者によると、デビ容疑者は当局の取り調べに「子供たちの給食を調理させただけで、それ以外のことは何も知らない」と供述。同容疑者の夫が事件2日前、給食サンプルから検出されたものと同種の殺虫剤を購入していたことも判明しており、当局は事件の全容解明を進めている。
地元メディアによると、同校はデビ容疑者の夫が経営する食料品店から給食用食材を購入。野党支持者の夫が州政府の評判を失墜させるために同容疑者と共謀し、給食に殺虫剤を混入した疑いがあると報じている。”【7月31日 時事】とも報じられています。
****「毒入り給食」があぶり出すインドの絶望****
・・・・インドは飢餓対策と就学率上昇のため、年間20億ドル近くを投じて公立学校の1億人を超える児童に給食を無料提供している。
だが地方の学校ではいまだに、安全で健康的な食事を提供するインフラもノウハウもない。
子供の半数が栄養失調、未就学児童が167万人に上るインドで給食プログラムは不可欠だ。
問題は山積みでも、最も人気のある政府プログラムの1つであることに変わりはない。
しかしインドでは給食をめぐる汚職も珍しくない。公務員が給食用の食材をくすね、政治家の親戚や取り巻きが運営する怪しげなNGOが給食サービス契約をものにする。
二重の格差に苦しむ人々
ビハールの政治家の反応を見れば問題の元凶は明らかだ。政治家は本格的な調査も遺族に手を差し仲べることもそっちのけで、非難合戦に走る始末だった。
学校給食など福祉に頼る人々にとっては最悪の状況だ。彼らは貧困から抜け出せず、不満を訴えても無視されがちだ。ビハールの子供たちは給食のにおいや昧が変だと訴えたが残さず食べろと命じられたという。
「社会格差と経済格差が重なっている」と、シンパは言う。
「公立学校で最も貧しく社会的地位も低い層の児童が増えている。こうした層への無関心さが今では政府のどんなプログラムにも見受けられる」
実際、ビヤールの事件で何より嘆かわしいのは、こうした悲劇が目新しいものではないことだ。インドでは過去6ヵ月間に350人以上の子供が学校給食で中毒を起こしている。ビハールの悲劇の翌日には、別の州の寄宿学校で汚染された水を飲んだ児童34入が体調不良に。ビハールの別の地区では地元の医療機関で「ビタミンA」を与えら
れた8歳の子供が死亡した。
「ビハールの悲劇は衝撃的な規模だった」と、1日120万人の児童に給食を無料で提供しているNGOの責任者ラダークリシュナーダスは言う。「しかし同時に、今回発生したような悲劇につながる状況はいくらでもあるといえる」【7月30日号 Newsweek日本版】
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真相はまだわかりませんが、政争絡みの犯罪が囁かれること自体が、インド社会の現状をあらわしているとも言えます。
劣悪な食品管理か、政争絡みの犯罪か・・・いずれにしても、政治から見捨てられた多くの子供たちが犠牲になりました。