孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インド  ようやく「酸攻撃」規制の動き 給食中毒事件にみるインド社会の闇

2013-07-31 23:24:34 | 南アジア(インド)

(「酸攻撃」被害者 “flickr”より By Acid Survivors Trust...  http://www.flickr.com/photos/35850662@N07/3318714321/in/photolist-64gh9r-6tMdn2-76vs5P-76CeC7-eBuhyx-f3scy5-dKCk9R-fhBfbA-fbjrxv-8qcoBa-8qcBXX-8qfvSE-8qfyaW-8qfkAQ-8qRB7v-8negEP-e42b76-e47NQw-e42bRv-e47NtE-e42bvc-e47NAW-e42brV-e42bpc-e47NHu-e47PuJ-9pWon7-8ocJZX-9pWo3q-9Fdprk-8RrVQS-8qgDxp-9Fgkhm-9Fdpm8-9FgkVb-9Fgk3j-9FdoTt-9FdoEg-9Fdoqp-9Zd2DL-9Zd1BA-9Za6nT-9Za3GX-9Za5K4-feioyV-dYbhaH-dYbha6-dYgZbY-dYbh8z-bitB84-cbC8mJ)

【「デリーの事件で状況が大きく変わった」】
インド・パキスタン・アフガニスタン・バングラデシュ、あるいはアフリカのウガンダなど世界の各地で、交際を断られた女性の顔に男性が腹いせに(アフガニスタンではタリバンによる女子学生へのいやがらせだったり、対象は女性に限らなかったり、いろいろなバリエーションはありますが)硫酸などの酸をかけるという、卑劣としか言いようのない犯罪が横行しています。

そうした薬剤の入手がほどんど規制されていなかっり、犯罪者の処罰も軽微だったりすることも多いようです。
2012年3月2日ブログ「硫酸をかけられた女性  パキスタン人女性監督オスカー獲得 イランでは同害報復刑回避」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120302)でも取り上げたことがあります。

こうした犯罪の多いインドで、ようやく薬剤入手を制限する法規制が実現することになりました。
遅きに失したことは言うまでもありませんが、前進が見られたことは歓迎すべきでしょう。

****女性への酸攻撃多発のインド、酸の売買規制へ*****
インドの最高裁判所は18日、女性が元交際相手などの男性から酸をかけられる事件が多発している状況を受け、政府に酸の販売規制措置をとるように命じた。

また最高裁判事らは、各州政府は酸攻撃の被害者全てに回復治療と賠償金を提供すべきだとの判断を示し、暫定的な判断として被害女性が受け取る金銭を賠償金30万ルピー(約50万円)と治療費と提案したが、最終決定は持ち越された。

女性に対する攻撃には多くの場合、薬局などで手軽に購入できるさび取り剤「テザーブ(Tezaab)」が用いられる。将来的には、酸性薬品の購入者には写真付き身分証明証の提示が求められ、販売側にも購入者の住所と氏名を記録することが義務付けられる。【7月19日 AFP】
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インドでようやくこうした規制が実現する運びとなったのは、昨年末に起きたバス車内での集団レイプ事件で、女性への犯罪が野放し状態となっている現状への強い批判が国内で起きたことが背景にあるそうです。

****インド女性の悪夢は終わるか****
ようやく、と言うべきだろう。
先週、インド政府が酸性薬品の販売規制に乗り出す方針を表明した。この国では、腹を立てた恋人や家族が若い女性の顔に酸性薬品を浴びせるという凄惨な事件が多発してきた。

規制が施行されれば、販売店は酸性薬品の購入者に、身分証明書の提示を求め、住所と電話番号、用途を尋ねることが義務付けられる見通しだ。また、大幅に希釈されたもの以外は酸性薬品の小売りが禁じられる。

被害に遭う女性は毎年何百人にも上ると、「インド酸被害者財団」のスブハスーチャクラボルティ事務局長は言う。命を失うことはほぼないが、顔に大きな傷が残る。失明したり、心に深い傷を負ったりする人も多い。
被害女性は、深刻な肉体的・精神的打撃を被り、社会的にも極めてつらい立場に立たされる。

隣国のバングラデシュは、既に対策を始めている。年間1000件以上の酸攻撃が起きていたバングラデシュは、02年に加害者に対する死刑制度を導入し、酸性薬品の販売規制も実施した。
こうした措置と市民社会の努力により、被害は大幅に減少し、今年はこれまで85件にとどまっている。

なぜ、インドでは対策が遅れていたのか。それは、女性の自由を制約する発想が社会に深く根を張っているからだ。
それでも最近変化が見え始めたのは、昨年12月にデリーのバスの車内で起きたおぞましい集団レイプ事件がきっかけだ。

「デリーの事件で状況が大きく変わった」と、チャクラボルティは言う。「国民の抗議とメディアの批判を受けて、政府も動かざるを得なくなった」

今年に入って、女性への暴力を罰するための刑法改正が行われ、酸攻撃が1つの独立した犯罪として位置付けられた。新しい法律では、酸攻撃の加害者は10年以上の刑を科される(裁判官の判断次第で終身刑の可能性もある)。未遂犯にも5~7年の刑を科せるようになった。

インドの女性たちが「酸攻撃」の悪夢から解放されるための第一歩だ。【7月30日号 Newsweek日本版】
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バングラデシュで法規制によって著しく犯罪が減少したということで、インドでも同様の効果が期待されます。

【「ビヤールの事件で何より嘆かわしいのは、こうした悲劇が目新しいものではないことだ」】
インドでは女性の人権が保護されていないだけでなく、多くの貧困層の子供たちも悲惨な状況に置かれています。
インド東部ビハール州の小学校では、16日に無料の学校給食を食べた子供たちが体調不良を訴え、23人もの死亡者が出ました。

無料給食は、貧しい家庭の子供たちを登校させるための方策として行われていますが、今回事件は単なる事故ではなく、政争の具として子供たちの命が使われた可能性も取りざたされています。

****インド:校長逮捕…給食で中毒、23人死亡で 政争に発展****
インド東部ビハール州の小学校で給食を食べた児童23人が死亡した事件で、警察は24日、小学校の女性校長を殺人などの容疑で逮捕した。

動機は不明だが、来年実施予定のインド総選挙に向け、連邦議会の野党指導者の一人であるクマール州政府首相をおとしめるため校長が給食に毒物を混ぜたとの見方を報じる地元メディアもあり、政治的な論争となっている。

現地からの報道によると、校長は事件発生当日、行方をくらましたが24日、裁判所に出頭し、そのまま逮捕された。児童は学校で調理され、無料で提供された給食のカレーを食べた直後、体調を崩し、搬送先の病院などで死亡した。

これまでの調べでは、カレーの調理に使われた食用油から猛毒の殺虫剤の成分が検出された。調理師は「食用油から異臭がする」と訴えたが、食材調達も担当している校長は、そのまま使うよう強要したという。

これについて、最大野党のインド人民党の政治家は「無能なクマール州政府首相がまともな給食を提供できないから子供たちが犠牲になった」と批判。
クマール氏は、連邦議会で人民党と協力し野党会派を組んでいたが、総選挙に向けた候補選定に反発し、この会派を離脱したばかりだった。

一方、クマール氏の支持者は「我々をおとしめるため、人民党支持者の校長を使い故意に事件を起こした」との「陰謀説」を主張。事件は野党同士の政治論争に発展している。逮捕された女性校長の支持政党は不明だ。

ただ、ビハール州のある校長は毎日新聞の取材に対し「事件には政治的背景はなく、食材管理に問題があったというのが真相だろう。だが、学校で問題が起きればわれわれが政争の具にされてしまう。校長はみな戦々恐々としている」と言う。

無料給食は、貧しい家庭の子供たちを登校させるための方策として、インド国内の多くの学校で提供している。しかし、事件以降、ビハール州では給食を取るのを拒否する子供が増えているという。【7月26日 毎日】
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インドではこの種の事故は多発しており、今回事件も犯罪ではなく、そうした事故のひとつである可能性もあります。
また、解毒剤の処方ミスを指摘する専門家もいるようです。

逮捕された女性校長は事件への関与を否定していますが、
“警察関係者によると、デビ容疑者は当局の取り調べに「子供たちの給食を調理させただけで、それ以外のことは何も知らない」と供述。同容疑者の夫が事件2日前、給食サンプルから検出されたものと同種の殺虫剤を購入していたことも判明しており、当局は事件の全容解明を進めている。
地元メディアによると、同校はデビ容疑者の夫が経営する食料品店から給食用食材を購入。野党支持者の夫が州政府の評判を失墜させるために同容疑者と共謀し、給食に殺虫剤を混入した疑いがあると報じている。”【7月31日 時事】とも報じられています。

****毒入り給食」があぶり出すインドの絶望****
・・・・インドは飢餓対策と就学率上昇のため、年間20億ドル近くを投じて公立学校の1億人を超える児童に給食を無料提供している。

だが地方の学校ではいまだに、安全で健康的な食事を提供するインフラもノウハウもない。
子供の半数が栄養失調、未就学児童が167万人に上るインドで給食プログラムは不可欠だ。
問題は山積みでも、最も人気のある政府プログラムの1つであることに変わりはない。

しかしインドでは給食をめぐる汚職も珍しくない。公務員が給食用の食材をくすね、政治家の親戚や取り巻きが運営する怪しげなNGOが給食サービス契約をものにする。

二重の格差に苦しむ人々
ビハールの政治家の反応を見れば問題の元凶は明らかだ。政治家は本格的な調査も遺族に手を差し仲べることもそっちのけで、非難合戦に走る始末だった。 

学校給食など福祉に頼る人々にとっては最悪の状況だ。彼らは貧困から抜け出せず、不満を訴えても無視されがちだ。ビハールの子供たちは給食のにおいや昧が変だと訴えたが残さず食べろと命じられたという。

「社会格差と経済格差が重なっている」と、シンパは言う。
「公立学校で最も貧しく社会的地位も低い層の児童が増えている。こうした層への無関心さが今では政府のどんなプログラムにも見受けられる」

実際、ビヤールの事件で何より嘆かわしいのは、こうした悲劇が目新しいものではないことだ。インドでは過去6ヵ月間に350人以上の子供が学校給食で中毒を起こしている。ビハールの悲劇の翌日には、別の州の寄宿学校で汚染された水を飲んだ児童34入が体調不良に。ビハールの別の地区では地元の医療機関で「ビタミンA」を与えら
れた8歳の子供が死亡した。

「ビハールの悲劇は衝撃的な規模だった」と、1日120万人の児童に給食を無料で提供しているNGOの責任者ラダークリシュナーダスは言う。「しかし同時に、今回発生したような悲劇につながる状況はいくらでもあるといえる」【7月30日号 Newsweek日本版】
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真相はまだわかりませんが、政争絡みの犯罪が囁かれること自体が、インド社会の現状をあらわしているとも言えます。
劣悪な食品管理か、政争絡みの犯罪か・・・いずれにしても、政治から見捨てられた多くの子供たちが犠牲になりました。
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ミャンマー  圧倒的な中国の存在感と脱中国の動き 住民利益につながる成長に向けて

2013-07-30 22:58:15 | ミャンマー

(ミャンマーのベンガル湾沿岸と中国雲南省を結ぶパイプライン “flickr”より By nancy http://www.flickr.com/photos/10039214@N07/7314389254/in/photolist-c9ma6y-aNAjEr-dYSm9z-eK18P4-c6TbvE-dnjvJp-aNAjMr-aNAkmZ-aNAjXn-aNAkii-aNAk7x-aNAkq2-aNAju2-aNAkoF-aNAjHa-d1W29U-9ZH2X2-aNAkv2-aNAjJx-aNAk66-aNAjx8-aNAkA6-aNAkse-aNAkt8-aNAjBt-aNAkxR-aNAkgt-aNAkdV-aNAjRi-aNAk14-aNAk2e-aNAjvn-aNAkwp-aNAjNK-aNAjSt-aNAjYH-aNAkDB-aNAkfc-aNAkaD-aNAjyn-aNAjL4-aNAjTZ-aNAkbR-aNAjCB-aNAjVt-aNAk9e-aNAjPT-aNAkk2-aNAkCn-aNAjA8-d3L6zG)

ミャンマーから中国へ、パイプラインで天然ガス
民主化を進めるミャンマーに対して、欧米・日本は経済制裁を緩和するなどで経済進出を急いでいますが、国際的に孤立していたミャンマー軍事政権を支えた中国のミャンマーにおける存在は、今も圧倒的なものがあります。
市場や店のショーウインドーに並ぶ電化製品などの多くが中国製です。

そんなミャンマーのベンガル湾沿岸と中国雲南省を結ぶパイプラインの一部区間で28日、中国向けの天然ガスの供給が始まりました。

****中国向けガス供給開始=ミャンマーからパイプラインで*****
ミャンマーからガスパイプラインを通じた中国向けの天然ガス供給がこのほど始まった。ミャンマー国営メディアが30日伝えた。

この事業は中国石油天然ガス集団(CNPC)、ミャンマー石油ガス公社、韓国の大宇インターナショナルなどの合弁。ミャンマー西部ラカイン州沖のシュエ海洋ガス田で採掘された天然ガスを同州チャウピューと中国雲南省を結ぶパイプラインで輸送する。

パイプラインは2010年に建設が始まり、約3年かけて完成。28日にミャンマー第2の都市マンダレーでニャン・トゥン副大統領ら関係者が出席して式典が開かれ、中国への天然ガス輸送がスタートした。国営メディアによると、中国向けに日量約1100万立方メートル、ミャンマー国内向けに同約280万立方メートルの天然ガスを供給する計画という。【7月30日 時事】 
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天然ガスのパイプラインに並行する原油パイプラインも近く完成する見通しで、中東原油などを中国に送りこむルートになる予定です。

中国は、パキスタンとも連携してインド洋に通じるルートを確保しようとしています。

****中パ経済回廊で合同委 グワダル港を開発特区に****
パキスタン首相府などによると、中国を訪れたパキスタンのシャリフ首相は5日、北京で李克強首相と会談し、中国北西部からパキスタン南西部グワダル港までの中パ経済回廊を整備し周辺地域を開発するため、合同委員会を発足させることで合意した。

シャリフ氏はこの日、グワダル港を開発特区に指定する方針も表明した。港の運営権は中国国有企業に委ねられており、合意は中国海軍艦艇が将来、同港に派遣されることを警戒するインドを一層刺激しそうだ。

経済回廊は中国カシュガルからグワダル港までの2千キロ。長期計画と位置づけ、総延長200キロのトンネルを建設し、整備には180億ドル(約1兆8千億円)を見込む。李氏は回廊を「中国の戦略的利益」とし、作業グループを近く、パキスタンに派遣する。

計画には、光ファイバー・ケーブル敷設やカラコルム・ハイウエーの改良が盛り込まれ、グワダル工業地帯の建設で両国企業が協力する。

シャリフ氏は特区となる見通しのグワダル港は香港を見本とし、国際空港の整備も目指すとした。中国はインド洋周辺での港湾建設で各国を支援し、インドが警戒している。【7月6日 産経】
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中国との共同事業ではいつも不利な立場に置かれてきた
しかし、中国との関係強化に関しては、地元住民の利益につながらないことや、利益を独占する中国側への反発から厳しい目が向けられつつあります。
2012年11月には、ミャンマー中部モンユワで国軍関連企業が中国と進める銅山開発を巡り、ミャンマーの治安当局が土地収用などに抗議していた住民や僧侶らを強制排除し、数十人が負傷する事件が起きています。

****脱中国を目指すミャンマーの道****
・・・・それでも、今のミャンマーで中国の存在感はずばぬけている。
停電が起きるたびに、ミャンマー人はそれを痛感させられる。エネルギー資源が豊富なのに、停電は日常茶飯事だ。どこにいっても、ブンブンと鳴る自家発電機の音が聞こえてくる。

その原因の1つは、孤立した軍事政権が中国に自国の自然の富を売り払ってしまったことにある。ミャンマー国内のダムで発電した電力は、およそ9割が中国に送られている。だから国民は、中国からビルマロード経由で運ばれてきた効率の悪い自家発電機に頼らざるを得ない。
天然ガスと中東産の原油を中国に送る2本のパイプラインも完成に近づいている。

マンダレーから約60キロの山腹に住む農民ティンーマーの家には電気が来ていない。イェイワーダムにできた790メガワットの発電所までは10キロほどの距離ながら、彼女の暮らす小さな村落には送電線を引いてもらえないのだ。

イェイワ・ダムの建設は、中国の国有企業が中心となった。完成後に発電した電力の大半は、マンダレーを素通りして中国の雲南省に送られている。
工事の大部分を完成させ、その後ダムの管理を続けているのも中国人労働者だ。

地元住民の一部は発電所関連の単純労働にありつけたが、代わりに多くの人が上地を失った。
ミャンマーでは住む場所や農地の公的な所有権を持たない人が多いため、政府が一方的に土地を収用してしまった
のだ。

ティンーマーの持っていたバナナ園も、発電所を運営する中国人たちの専用ゴルフ場を造るために取り上げられた。彼女は今、残された狭い土地で細々とニワトリを育てている。
ダムからの送電線は、彼女の家の上を通っている。それでも彼女はろうそくと薪ストーブで暮らすしかない。

今ではミャンマーの軍事政権も、中国との共同事業ではいつも不利な立場に置かれてきたことに気付き始めた。遅ればせながら民主主義への転換に乗り出したのも、欧米諸国を味方に付けることによって中国を牽制し、中国資本に対抗したいがためだ。(後略)【7月23日号 Newsweek日本版】
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上記記事にもあるように、ミャンマー政府も過度の中国依存を警戒し、民主化を進めることで欧米、特にアメリカとの関係強化を図ることでバランスを取ろうとしています。
ミャンマー国民の視線もアメリカなど欧米に向けれています。

潤ったのは上(政治家と政府)だけ。庶民は貧乏のまま
ただ、中国との関係強化が住民利益にならなかったのは、中国側の問題だけでなく、中国資本と結託して利益を得ようとするミャンマー内の勢力の、土地収用などにおける住民無視の姿勢によるところも大きいように思えます。
その点が改善されない限り、相手が中国だろうがアメリカだろうが、開発の利益が一部に独占され、住民が取り残される問題は変わりません。

****外資で発展する「ヤンゴン」 変わる街並み…庶民に恩恵は届かず****
ミャンマーの最大都市ヤンゴンでは、経済改革に伴う海外からの投資が街並みを変えつつある。通信事情も良くなった。

ただ、インフラ整備が徐々に進む一方で、「改革の恩恵」はまだ、庶民の暮らしにまで届いてはいないと、多くの市民が口にする。地方の住民からは、都市との経済、生活格差が拡大することを懸念する声が聞かれる。

 ◆外資による整備進む
ヤンゴン市内の中心部、インヤー湖公園の近くにある広大な敷地から、大型クレーンが伸びていた。オフィスビルやアパート、高級ホテル、ショッピングセンターから成る大型複合施設の建設現場だ。ベトナムの投資によるもので、投資総額は4億ドル(約400億円)を超える。2016年までの完成を目指している。

ひと頃に比べ自動車はめっきり増え、主要道路では渋滞に出くわす。4月に完成した高架道路が目新しい。建設中の高架道路もあり、太いコンクリートの柱が突き出ている。
街には、しゃれたショッピングセンターやレストラン、カフェが増えた。オープンを間近に控えたショッピングセンターもある。
1年ほど前までは、つながらなかったり、断続的に切れたりしていた国際電話やインターネットも、かなり安定した。(中略)

 ◆地方は格差拡大懸念
政府によると、12年1月から今年3月までの投資は32カ国、561案件、総額約421億ドル(約4兆2千億円)。投資は着実に増えている。だが、政府関係者は「執行待ちの案件が多いうえ、権限が中央政府に集中し州にないことや、汚職により改革が遅れている」と打ち明ける。

「『潤ったのは上(政治家と政府)だけ。庶民は貧乏のまま』とよく言われる。これはジョークにしてジョークじゃない」
そう苦笑するのは、外国人が持ち込む傷んだ古い米ドル札を、ピン札に交換し手数料を稼ぐ“換札屋”の男性店主だ。政府の指示で、ホテルなどでは傷んだドル札を受け付けず、それでこの商売も成り立っている。

「停電が少なくなり電話も良くなったが暮らしぶりは前と変わらない。中間層や下層に改革の影響が及ぶまで、まだ時間がかかる。待つしかない」
「売り上げと収入? 庶民の生活が良くなっているわけじゃないから、前と同じさ。逆に物価が高くなっているからねぇ」とは、衣類店の主人だ。

ヤンゴンから西部ラカイン州の州都シットウェへ行くと、風景が一変する。貧しげな街並みと人々の暮らし…。教師の女性は言う。
「ここは貧しい。ヤンゴンとネピドー(首都)だけにカネが回って、ここにはこない。どんどん格差が広がるでしょう。それが住民たちの共通した思いです」【7月20日 産経】
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高齢化が進展する間に生活水準を引き上げる必要
ただ、難しいことに、人口構成の面からはミャンマーに与えられた時間的余裕はあまり有利ではなく、開発の勢いを鈍らせることもできない事情もあります。
ミャンマーと“高齢化”はイメージ的にあまり結びつきませんが、ミャンマーは東南アジアの他の国より早く高齢化に直面するそうです。

****ミャンマー、高齢化に直面 ****
経済協力開発機構(OECD)は18日発表した報告で、2017年に重要な人口の転換点を迎える前に、経済の総点検を急ぎ、疲弊した経済を急速に拡大させる必要があるとの見解を示した。

長年にわたる孤立した軍事政権の影響がまだ残っているミャンマーの人口は約6000万。人口は今後数十年間増え続けるが、OECD報告によると、ラオスやカンボジアなどの近隣諸国に比べて早い段階で高齢化が始まり、ミャンマーへの投資を増やしている外国投資家・企業にとっての相対的な有利性が低下すると予想される。

報告は「喫緊の問題だ」とし、「開発の勢いを今つかんでおかないと、国民の所得と生活水準が大幅に改善する前に、高齢化のリスクを抱えることになる」と警告した。

報告が引用した国連のデータによると、ミャンマーでは10―64歳の層の比率は17年に低下し始める。ベトナムやインドネシアなど、東南アジア地域でさらに開発が進んでいる、ミャンマーより経済規模の大きい国ではこうした変化はもっと遅く、ベトナムでは20年、インドネシアでは21年になると予想されている。

同様の変化は中国がここ数年経験しているもので、同国はゆっくりとした人口の高齢化に直面しており、繁栄してきた製造業部門の成長が鈍る恐れがある。(後略)【7月22日 WSJ】
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開発の勢いを保ちつつ、住民の利益につながる形で成長を実現するためには、土地収用などの強権的手法の是正、腐敗と非効率の温床となっている旧体制から引きずっている官僚主義的構造の改善、中小企業経営者が容易に資本調達できるようなシステムの構築などが求められています。
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インドネシアたばこ事情

2013-07-29 23:27:44 | 東南アジア

倍速ビデオ
インドネシア旅行を終えて、今朝自宅に帰りました。
昨夜、福岡に到着したのですが、飛行機の遅れのため最終の新幹線に間に合わず、熊本で1泊することになりました。

まだ、旅行中のニュース等の整理ができませんので、今日もインドネシアでの話を。

上の写真は、27日、インドネシア第2の都市、スラバヤ市内を散策した際に訪れた「サンプルナの家 House of Sampoerna」で撮影したものです。

「サンプルナの家」は、インドネシアの大手たばこ会社の博物館ですが、たばこ工場を併設しており、その様子を博物館内から見学できます。

写真のように、大勢の整列した女性たちが紙巻たばこをつくっています。
(撮影禁止だったのですが、気づかず撮ってしまいました。)
台の上に1本分の刻みたばこを置いて、紙をセットして巻きます。
それで1本の紙巻たばこができるわけですが、それを延々と繰り返します。

よく見ていると、熟練者も初心者もいるようで、そのスピードは様々です。
なかには、驚くようなハイペースで作業している女性もいます。体全体でリズムをとりながら超高速で手を動かす様子は、倍速あるいは3倍速ビデオを観ているようです。完全にたばこ製造マシンと化しています。
ある意味、ブロモ山やイジェン火口などより興味深い光景でした。

おそらく、給与は出来高制なのでしょう。
そのスピードも驚異的ですが、この超高速ペースを1日続けられるとしたら、それはもっと驚異です。

素人考えでは、紙巻たばこの製造は、一番機械化になじみやすい簡単な単純作業に思われますが、ここでは昔ながらの手作りでやっています。

賃金が安く、大量の労働者を潤沢に雇用できる・・・というのは、東南アジアにあっても、もはや過去の話になりつつあります。
周辺国から合法・違法の大量の労働者が流入しているタイなどは、そうした海外からの労働者をいかに今後とも確保できるかという、労働者不足が成長のネックになる懸念が現実のものとなっています。

このたばこ会社、あるいはインドネシア全体のたばこ会社では、すべてこのような手作りを行っているのか、観光用に敢えて手作りでやっているのかは訊きそびれました。(訊こうとしても、私の英語力では難しいところですが)

【「たばこ天国」】
世界的な“たばこ迫害”の波によって、私のような喫煙党の残党はその行き場を失いつつありますが、インドネシアは世界最高の喫煙率を“誇る”「たばこ天国」です。

最近の大規模ハブ空港で喫煙室を探すには、ものすごい距離を歩き回る必要があります。やっと見つけても、建物から隔離されて、エアコンの効かない外界につながった部屋だったり、換気が恐ろしく悪かったり・・・。そもそも喫煙スペースが一切ない空港もあります。

スラバヤで一番大きいショッピングセンター内のフードコートに併設された喫煙室は感激でした。
冷房はフードコート内より効いており、換気もよく、吸い終わってもしばらくそこにいたいような部屋でした。

欧米の旅行者はほとんど吸いませんが、そのなかで地元インドネシア人だけが手にたばこを持っているという光景はしばしば目にします。

****喫煙率世界一はインドネシア男性、67%****
11日公表された調査報告で、世界の国別、男女別で喫煙率が最も高いのはインドネシアの男性であることが分かった。同国の15歳以上の男性の喫煙率は67%に上る。

調査は世界保健機関(WHO)と米疾病予防管理センター(CDC)の支援によって昨年、行われたもので、インドネシアの8000人が参加した。国別ではインドネシアの喫煙率は35%と、ロシアの39%に続く世界2位。また、80%の人が自宅で副流煙の影響を受けていることも分かった。

インドネシア保健省の幹部によると、同国男性の喫煙率は1995年の53%から67%に上昇した。同氏は「たばこ産業に負けた形だが、われわれはこの事実を受け入れることができない。われわれの仕事が国民をたばこの害から守ることだからだ」と話した。

AP通信によると、インドネシアではたばこが割安で広告が多数あり、毎年少なくとも20万人がたばこに関連する疾患で死亡している。「たばこ業界への管理が徹底していない」と、政府を非難する声も大きい。【2012年9月12日 livedoor News】
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経済成長が喫煙を助長
保健衛生関係者の嘆きにもかかわらず、インドネシアでは経済成長で所得が向上したため、かえって喫煙率が上昇するという現象があるとか。

****インドネシア所得増 喫煙を助長 医療費軽減へ規制・増税も効果薄****
インドネシアは政府による規制や増税にもかかわらず喫煙者が増加している。皮肉にも経済成長が喫煙を助長している格好だ。現地紙ジャカルタ・ポストなどが報じた。

国立インドネシア大学は、政府が規制強化などの対策を講じない場合、同国の喫煙者数は現在の7400万人から2020年に1億4000万人に増加すると予想。将来的に医療費が増加する恐れなどがあり、専門家の間で懸念が広がっている。

国際非政府組織(NGO)の東南アジア・たばこ規制連盟(SEATC)によると、01年にインドネシアでたばこが原因とみられる疾病による死亡者数は2万人。同様の疾病に対する国の医療費支出は125兆9000億ルピア(当時のレートで約1兆4980億円)で、たばこ税収の7.5倍だった。

こうした状況に加えて、若年層の喫煙が野放しだとする国際的な批判もあり、インドネシア政府は昨年12月、たばこ規制策を講じると発表した。18歳未満や妊婦への販売を禁じ、製品外装の40%のスペースを使った警告表示を命じるほか、たばこ製品のメディアでの広告に制限を設けるなどの内容だ。

しかし、同規制は違反した場合の罰則規定がないことなどから、効果を疑問視する声が多い。さらにインドネシア政界はたばこ業界から献金を受けている政治家が多く、たばこ業者が「順応するため」として同規制の適用に対して18カ月の猶予期間が設けられたこともあり、政府の姿勢を疑う声も後を絶たない状況が続いている。

またSEATCは、経済成長による所得上昇と中所得層の増加もインドネシアの喫煙者増の一因だと指摘している。同国で平均的な20本入りのたばこ製品100箱の購入に必要な金額は、1人当たり国内総生産(GDP)比で01年の0.06%から10年には0.03%に低下し、消費者がたばこを買いやすくなった形だ。

同国政府は税収増を目指して12年にたばこ製品に15.5%の増税を実施。今年も8.5%の増税を実施したが、所得上昇などで吸収され、喫煙者減の効果は上がっていないという。インドネシア大学は、同国のたばこ消費量が09年の2510億本から12年には3020億本に増加したとし、今年も増加傾向が続いていると分析する。

同大の研究者は、インドネシアのたばこ製品にかかる税率は小売価格に対して46%と、タイの70%やシンガポールの69%に比べて低いと指摘、「政府は税率を70%に引き上げるとともに、国民の喫煙に対する意識を変える努力をすべきだ」と主張した。

「たばこ天国」とも言われるインドネシアで喫煙者を減らすことができるか、取り組みをはじめた同国政府の今後の動向が注目される。【7月3日 Sankei Biz】
*****************

インドネシアの一般的なたばこの価格がどれほどかは知りませんが、マールボロを買ったところ15,000ルピアでした。日本円で150円です。
なお、一番ポピュラーな食事であるナシゴレンやミーゴレンは安い食堂ワルンで10,000ルピア、ショッピングセンター内のフードコートの食事は多くは30.000ルピア前後です。
人力で漕ぐリキシャ(ベチャ)に乗れば、1~2kmの距離で10,000ルピア程度といったところでしょうか。
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インドネシア  イジェン火口は遠く、夜のスラバヤに惑う

2013-07-28 17:22:56 | 東南アジア

(霧島・新燃岳火口・・・・ではなく、インドネシア・イジェン火口)

旅行業者にキャッチされて・・・
21日からインドネシア・ジャワ東部を旅行中です。
持参したノートPCが随分古い機種のせいか、WiFiが使えるはずのホテルでも接続ができないことが多く、ブログ更新はもちろん、ニュースの確認もできない日が続いていました。

せっかく重いPCを持ってきたのに・・・とも思いますが、「旅行中ぐらいはネット・ブログのことを忘れろ」との神の思し召しでしょうか。
今回は、インドネシアからの帰国の際の乗り継ぎで立ち寄った台北の空港でアップロードしています。

そんな事情で、世の中でどんなことが起きているのか全くわかりません。
そこで、旅行の話を少し。

23,24日にブロモ山を観光した後、25日はイジェン火口に近いセンポールという村のホテルに移動。

当初の予定では、今回旅行はガイドや“おまかせツアー”を使わず、一人でバスなどを乗り継いでまわるつもりでした。
実際、23日にマランからブロモ山入り口のプロボリンゴにバス移動するところまでは一人でやってきて、その後についても「何とかなりそう・・・」とも思っていました。

プロボリンゴ行きのバス車内で代金を払う際、「プロボリンゴまで1人」「ブロモ山に行くのか?」「はい」「おー・・・・」
というやり取りがあり、車掌はドライバーに「ブロモ」と告げ、ドライバーも「了解、ブロモ」ってな感じでした。

何が「おー・・・・」なのか・・・・「おー、いいね!」なのか、「おー、馬鹿じゃないか!」なのか(マランからプロボリンゴに迂回せずに、ダイレクトにブロモへ行くルートがあるのか・・・)そのときはわかりませんでした。

2時間ほどでプロボリンゴの街に入りましたが、終点のバスターミナル(そこからミニバスに乗り換えブロモへ向かう予定でした)ではなく、手前で降りるように突然言われました。なんのことかわからずと惑いましたが、車掌から「ブロモだろ?ここで降りて」と指示されます。
そこがブロモ行きのミニバスへの乗り継ぎ地点なのか・・・とも思い、とにかく降ります。

するとそこはある旅行代理店のオフィス前で、オフィス内に入るように促されます。
どうも、ブロモ周辺のツアーを扱う業者とバス側がつるんでおり、ブロモ方面に行く外国人旅行者は、バスからその業者に引き渡される仕組みのようです。それが「おー・・・・」の意味合いだったようです。

思わぬ展開のため、業者ペースで話が進み、結局、ブロモ山、イジェン火口のツアーを含めて、4日後にスラバヤに戻るまでをすべて含んだ形で任せることになりました。

価格は、この種のツアーとしては、かなり高めで手を打ってしまった感もあります。
ただ、一人で車をチャーターする場合に比べれば遥かに格安です。

センポールのホテルでは、部屋が足りないということで、やはり一人旅のノルウェー人のT氏と相部屋を頼まれました。相部屋は二十数年間の中国旅行以来です。そのときはドミトリーや相部屋前提の貧乏旅行でしたが。

T氏もやはりスラバヤからのバスで同じような経験をし、一人でまわるつもりが急遽業者手配に変更になったそうです。
英語が苦手な私ですが、翌日のイジェン火口ツアーが早朝3時起き、4時出発というスケジュールのため、チェックイン後、食事してシャワーを浴びたらすぐに就寝ということで、さほどの気詰まりはありません。
ただ、やはり何かと不便です。

ホテルはツアー業者と同系列のようですが、ドアのカギを閉めるときも、開けるときも一人ではどうにもならずスタッフを呼ばないといけない、夕食メニューはセットメニュー1種類のみ、シャワー途中に停電でお湯が止まってしまう、そうでなくてもお湯の温度調節がままならない・・・という有様でしたが、山奥の寒村の宿泊施設ですから贅沢も言えません。

イジェン火口、一応見ました
インドネシアといっても高地ですから、夜は毛布1枚では寒くて困りました。なお、ブロモ山のホテルのドアには「毛布を持ち出さないように」との注意書きがあります。早朝の日の出ツアーの際、寒さのあまり毛布を羽織って出かける客がいるようです。

朝4時出発で、5時前にイジェン火口登山口に到着。ガイドブックでは1時間ほどのややきつい上りとあります。
真っ暗な中を歩きはじめましたが、10mも上っただけで息があがってくる超虚弱体質のため、すぐにツアーメンバーの姿は見えなくなってしまいました。

8時までに車のところに戻るように言われています。
息も絶え絶え、“火口までは行けないかも・・・”と考えながら上ります。
この山道を地元の硫黄採取人は、火口で採取した60kgから100kg近い硫黄を天秤に担いで行き来しています。

持ち時間の半分を使った6時半時点で火口にたどり着けず、あきらめて下山しようと心を決めました。
そんなとき右手前方に噴煙のようなものが見えます。どうやら火口は近いようです。
もう15分ほど進んでみようと歩きだし、ようやく火口壁の一端にたどり着きました。

素敵な眺めではありますが、火山国日本でも見られる景色でもあります。
本当は火口壁を少し進み、硫黄採取が眺められるポイントまで行く(元気な人は火口の中へ降ります)のですが、時間が残り少なくなっています。

とりあえず写真を撮って、数分その場にとどまっただけで、「OK。火口湖も噴煙も見た。さあ、帰ろう」と引き返しました。
7時45分帰着。

今回は何とかなりましたが、体力を必要とするコースのツアーに健常者と一緒に参加するのは、虚弱な私には無理なようです。
費用的には4~5倍になっても一人用にアレンジしてもらわないと・・・と反省。

もっとも、8時になっても動く気配なく、8時半頃、中国系3人娘が戻るのを待って、何事もなかったように出発。
それなら、私も噴煙などよく見えるもっと奥の方まで行けたのに・・・という思いも。

私のホテルはどこ?】
昼食時間を含め6時間半のロングドライブでプロモボリンゴに戻り、例の業者のオフィスで下車。ここから通常のバスに乗り換え、スラバヤまで向かいます。

当日のスラバヤでのホテルを予約していなかったので、あの業者に頼んで手配してもらい、ホテル名を書きなぐったチケットと引き換えにホテル代約4000円ほどを渡したのですが、これが大失敗。

スラバヤ行きのバスが来る時刻で、急かされながらホテルのアドレスなど確認するのですが、タクシーのドライーにチケットを見せれば分かるから・・・とのこと。なんとかホテルの電話番号だけは書いてもらいましたが・・・。

ひどい交通渋滞で通常2時間のところを3時間半ほどかけてスラバヤに到着。6時半頃ですっかり暗くなっています。
ドライバーに例のチケットを見せても読めない様子。
聞いていた「ホテル・スラバヤ」とういう名前を伝えると、立派な「スラバヤ・プラザホテル」に連れていかれました。

「こんな立派なホテルじゃない」「でもスラバヤなんて知らない」と言ったやり取りを、言葉が通じないなかでやり、なんとか電話もしてもらいますが、これが通じません。

しかたなく、下車して「スラバヤ・プラザホテル」で同様のやり取りを。
忙しいなかを、数名のスタッフが電話で問い合わせたり、ネットで調べたりしてくれましたが、ホテル名が読めない、電話はつながらないということでお手上げ。

私も最初はパニックっていましたが、いろいろやってもらううちに落ち着き、別の安宿を探すことにしました。
金額的にはたいした額ではありませんが、だまされたのか・・・という思いで後味がよくありません。(悪意ではなく、何かの手違いだったのかもしれませんが・・・)
数日間のツアーをアレンジしてもらったことで、また、時間もあまりなかったことで、信用して先払いしてしまった私のミスです。

ただ、どうせ戻ってこない外国人相手ならなにをしても・・・という感覚に寒い思いがします。
もちろん、旅行中多くのインドネシアの方の親切に触れたことは言うまでもありません。

いろいろ思うこと、その後の話もありますが、搭乗時間が迫っており、バッテリー残量もないので、とりあえずここまで。(帰国途中、乗り継ぎの台北の空港で)
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インドネシア  ブロモ山は霧の中

2013-07-24 21:12:26 | 東南アジア

(到着した昨日は天気もよく、ホテル敷地からも雄大な景色が眺められました。 緑色の独特な形の山がバトッ山(2440m)、その左がブロモ山(2393m)で、ときおり噴煙を上げています)

霧の中で朝日を待つ
昨日の昼過ぎジャワ東部の観光スポット・ブロモ山のホテルに到着。昨夜と今晩、2泊して、明日イジェン火口に向かいます。

ブロモ山(2393m)は、日本で言えば阿蘇山みたいな感じです
外輪山の中に広い砂地(阿蘇で言えば草千里)が広がり、その中央に現在も噴煙を上げるブロモ山(阿蘇五岳)と、そこだけ草木に覆われた、すり鉢をひっくり返したようなバトッ山(2440m 阿蘇にも米塚だか何とか言う、規模は小さいですが、似たようなものがあります。ネットが自由に使えないので名前が調べられませんが)が鎮座する雄大な景色です。

インドネシアはバリ島など一部を除きイスラムですが、この付近のテングル人はヒンズー信仰を守っており、ブロモ山は火の神が住む聖なる山です。

今朝は、ブロモ山の日の出を拝みに、ジープでカルデラ内に入りました。
3時過ぎに起床、4時出発。

早朝は気温が数℃まで下がるとのことでしたが、今朝はホテル付近では15℃ぐらいはありそうです。
気温が下がらないということは、雲で覆われているということで、日の出見物にはよくない兆候です。
月も雲で覆われています。

とにかく出発。カルデラ内の砂地をジープで走り、ブロモ山対面のプナンジャカン山のビューポイント(2770m)までガンガン上ります。
当然、周辺ホテルや近郊の都市(マランやプロボリンゴ)からも、同様に観光客が集まりますので、夜明け前のカルデラには無数のジープ・バイクが溢れ、轟音をたてています。

下ってくる車・バイクや歩いている人もいるのがちょっと不思議。
まあ、これだけ観光客が集まりますので、出店への配達とか、いろんな仕事があるのでしょう。

ジープに同乗したのは、フランス語を話すカップルと、国籍不明のヨーロピアン男性。
ホテルから1時間弱でしょうか、プナンジャカン山のビューポイント付近に到着。

駐車場なんて洒落たものはありません。ジープは狭い道路に路駐する形で、展望台まで歩きます。
道路は同じような無数のジープで溢れています。
真っ暗な中、ジープのナンバーを記憶しておきます。はたして帰りに自分のジープがわかるでしょうか?
とても不安。同乗したヨーロピアンを見失わないように・・・と思っていたのですが、あまりの人出で、すぐにわからなくなってしまいました。

ときおり雨粒が落ちてくることもあります。どう考えても日の出など無理です。
ビューポイントではすでに、200人以上の観光客が日の出を待っています。
しかし、案の定視界ゼロ。真っ白な世界が広がっているだけです。

それでも一応待ちます。
やがて空が白み始めて、日が昇ったことがわかりますが、あいかわらず視界ゼロ。
天気がよければ、ブロマモ山を正面に眺めて、カルデラ内に溢れる朝霧が外輪山を越えて流れ出る・・・という、非常に幻想的な世界が広がるはずなのですが。

“西側にはマランの夜景が広がり、流れ星を数えているうちに空が蒼くなっていく。ここからの朝景はまさに天の配材による色彩と構図のバランスだ”【地球の歩き方】
残念でした。

カオスのなかの秩序
山の観光は、こういう天候に左右されます。四の五の言っても仕方がありません。
特に何時に下りてこい・・・といった細かい指示はなく、適当なところで切り上げて下ります。
まだ、ジープにたどりつくという難題が残っています。

来るときは真っ暗で気付きませんでしたが、途中で道が二股に分かれており、どちらの道にもジープが並んでいます。
右か、左か・・・ここで間違えて時間をロスすると、本当に置いていかれてしまいます。

しばらく歩いても見つからず、“やっぱり右の道だったのかな・・・”と不安が高まる頃、やっと記憶のナンバーを発見。まだ、フランス語カップルは戻っていないようです。

狭い道路の両側にジープがぎっしり並んでおり、それぞれの車が似たような状況で客の帰りを待っており、動けない車も多々あります。当然大渋滞です。
この状況で、どうやって車の向きを変えて、下山できるのだろうか・・・・とも思っていましたが、まあ、なんとかなるもので、しばらく待っていると車を動かせるようになりました。
部外者にはカオスのように見えるなかにも、それなりのルールとか習慣・秩序とかあるのでしょう。

火口内部で網を持って立つ人々
プナンジャカン山を下りきってカデラ内の砂地に戻ると、今度はブロモ山火口まで歩いて登ります。
馬もいますが、殆どの人は歩きます。私も。

でも、少し歩いただけで、“馬に乗ればよかったかな・・・”
軟弱な足には上り坂がこたえます。きっと2000mほどの高地のせいもあるでしょう。でも、周囲の人は平気そうです。

30分ほども歩くと火口に向かう階段にとりつきます。
痛みに悲鳴をあげる足で上れるだろうか・・・とも思ったのですが、杞憂でした。
同じ時間帯に人が集中していますので、階段は大渋滞で1歩上っては2~3分止まり、2歩上っては・・・という状態です。

おかげで元気は回復しましたが、これではいつまでたっても火口に着きません。
体力のある人は階段からはずれて、火山灰の急勾配を這い登っています。
比較的すいている下り用階段を、ひとをかきわけて上る人も。インドネシア人に多いようです。

どうして上り階段の列が動かないのか不思議だったのですが、どうやら火口到着地点付近が、火口を見物する人、階段を下りる人などで身動きできない状態のためのようです。
後から来る人のことを考えて、階段付近はあける配慮がほしいものです。そうした指導を行う係員がいてよさそうですが、ここはインドネシアです。

なんだかんだで、ようやく火口に到着。
でも、火口はやはり白一色。下りる頃に風で霧が流れ、かすかに火口らしきものが見えたぐらいです。
まあ、火口なんて阿蘇もブロモ山も同じです・・・なんてね。

そんな白一色の世界の中で面白かったのは、火口内部の急坂に大勢の人がいて、火口壁の観光客をじっと見上げていることです。網を手にしている人もいます。
なんだか、檻の外の見物客が投げる餌を待つ動物園のクマ・・・といった感じもします。

しばらく眺めていてわかったのですが、観光客というか、“聖なる山”参拝客が火口に向かって投げるお供え物をキャッチしようと待っているようです。
投げられるものは芋とかカボチャとか野菜系のものが多いようです。

投げる方も、バラけずに受け取りやすいようにビニール袋に包んで投げることが多いようです。
キャッチできなかったものは、火口に向かってころがっていきます。
“動物園のクマ”なんて失礼な言い方をしましたが、きっと土着信仰に根ざした行為なのでしょう。
なお、カルデラ内にはちょっとした規模のヒンズー寺院があります。

ブロモ山観光を終えてホテル帰着は8時過ぎ。
雨粒と霧に濡れた髪に、火山灰・砂がこびりつき、ゴワゴワ・ジャリジャリ状態です。
朝食を終えた頃、雨が降り始めました。
観光の間、殆ど雨は降らなかったのは不幸中の幸いでしょうか。

期待した幻想的な光景には出会えませんでしたが、旅の楽しみは綺麗なもの、珍しいもの、壮大なものを見るだけじゃないよ・・・という話は、また明日にでも。
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インドネシア  出稼ぎメイド、成長と社会腐敗、日本絡みの事業への住民反対運動

2013-07-23 22:13:35 | 東南アジア

(シンガポール空港での途中給油を待つ乗客)

帰国する出稼ぎメイド・・・多分
7月21日からインドネシア・ジャワ東部を旅行中です。
日本企業の進出も多いインドネシア第2の大都市スラバヤから入国し、22日には13世紀頃に建国されたシンゴサリ王国の遺跡も点在する高原都市マランへ、そして今日23日は阿蘇カルデラを思わせるブロモ山(2392m)の山頂近いホテルに来ています。

赤道も近いインドネシアですが、2000m近い高所となると、晴れた日中でも20℃ぐらい。明日、日の出の頃に火口見物に行きますが、そのときは数℃と冬支度が必要になります。

今回、台北乗り継ぎのチャイナエアラインを使ったのですが、台北を発った機内はいつもと雰囲気が違います。
少なくとも後部座席付近は、殆どが女性。30代、40代の女性もいますが、二十歳前後の若い女性が多いように見えます。普段飛行機を利用するような感じもありません。

推測ですが、インドネシアから台湾へメイドとして出稼ぎに出ている女性達ではないでしょうか。
インドネシアやフィリピンは女性の出稼ぎが外貨獲得においても大きなウェイトを占める国ですが、このブログでも何回か取り上げたように、メイドとして働くマレーシアやサウジアラビアなどでは虐待・暴行も多発しており、大きな問題となっています。

メイドの場合、仕事場が家庭内という閉ざされた環境にありますので、そうした虐待・暴行がおきやすいといえます。事件化したときなど、インドネシア社会の反発・批判を受けて、インドネシア政府もしばしば出稼ぎ禁止措置を採っています。

マレーシアの場合は、インドネシアと民族・文化的に近いだけに、経済成長でリードするマレーシア側の優越感も背景にあるようです。
サウジアラビアの場合は、アジア人蔑視の風潮もあるようです。

インドネシアの光と影
比較的最近のインドネシア社会に関する記事から2件。
最初は、明るい“光”の部分。

****インドネシア 中間層が倍増 20年までに1億4000万人見込み***
インドネシアで所得水準の上昇が進み、全国的に消費活動が活発化する見込みだ。

米国のボストン・コンサルティング・グループによると、インドネシアでは家賃を除く月間消費額が200万~700万ルピア(約2万200~約7万700円)の人々で構成される中間層が現在の7000万人から2020年までに1億4000万人に倍増するという。現地紙、ジャカルタ・グローブなどが報じた。

同グループは、安定した政治状況などから、インドネシアの堅調な経済成長は今後も続き、内需拡大と所得増が同時に進行すると予想。中間層が50万人以上暮らす生活圏も、現在の24地区から20年には54地区まで増加するとしている。地域も現在のジャワ島に集中した状態からスマトラ島、カリマンタン島、スラウェシ島などに拡大していく見込みだ。

また、同グループ幹部は、4000世帯を対象とした調査で自分よりも家族のための消費を重視すると回答したインドネシア人の割合が全体の63%にのぼったと指摘。今後は、教育、家電などの耐久消費財、保険といった「家族・家庭」をキーワードとする分野で消費拡大が期待できるとの見解を示した。【4月18日 SankeiBiz】 
**************

もう1件は、インドネシア社会の抱える“影”のひとつ。

****インドネシア:軍と警察が対立 暴力団さながらの利権争い****
経済成長が続くインドネシアで、国軍と国家警察の対立が顕在化している。背景には、軍と警察の間で繰り広げられる、日本の暴力団さながらの利権争いがあるとされる。
欧米諸国から「民主化の成功例」と称賛されるインドネシアだが、民主主義の基盤である文民統治のひ弱さを露呈している。
 
国民はまもなく開廷する、殺人容疑などで逮捕された国軍特殊部隊隊員11人の軍事法廷の行方に注目している。隊員は3月23日、ジャワ島ジョクジャカルタ特別州の刑務所を急襲し収容者4人を射殺。4人は警察とつながりの深い地元犯罪組織のメンバーで、うち1人は元警官だった。襲撃事件の4日前、同島ソロで特殊部隊隊員を殺害した容疑で逮捕されたばかりだった。
「組織を守るためだった」。身柄を拘束された特殊部隊隊員は調べに対し容疑を認め、報復を示唆した。

同7日には国軍兵士約100人が、南スマトラ州の警察署を襲撃し警官と兵士、民間人の計8人が負傷した。この事件も国軍の警察への報復とされる。今年1月、同州で国軍兵士が、交通違反を巡り口論となった警官に射殺されていた。

国軍と警察への国民の見方は割れる。国軍の横暴に国民から批判の声が上がる一方、汚職が絶えない警察を非難する動きもある。国軍による刑務所襲撃を巡っては、市民グループが「英雄的行為」とたたえ、刑の減軽などを求める署名活動が進んでいる。

対立の原因は、日本の暴力団同士の抗争にみられるような、繁華街での“みかじめ料”など利権争いがあるとされる。人権団体「行方不明者と暴力被害者のための委員会」によると、2005〜12年に国軍と警察が衝突した事件は26件に上り、計11人が死亡している。

1998年のスハルト政権崩壊後の民主化の過程で、国内の治安維持は2000年に、国軍から分離した国家警察に移管された。

国軍と警察の内部事情に詳しい関係者は「警察への治安権限移譲で、国軍が主な裏金収入源としていた犯罪組織と結びついた繁華街の警備や麻薬販売などの利権を巡り、各地で警察との間で争奪戦が始まり、今も後を絶たない」と話す。
特殊部隊の隊員が元警官らに殺害されたソロでも、警察、国軍とそれぞれ結びついた犯罪組織同士の抗争が激化していた。【5月14日 毎日】
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“みかじめ料”をめぐり、軍と警察が衝突・・・・なんともあきれた話です。

【「日本は昔は武力で、今度はカネで我々の土地を奪おうとしている」】
日本絡みで目下問題になっているのが、日本が官民一体で進める中ジャワ州バタン県の石炭火力発電所建設に反対する

****インドネシア:日本大使館前で抗議 発電所計画撤回求め****
インドネシアの首都ジャカルタの日本大使館前で22日、日本が官民一体で進める中ジャワ州バタン県の石炭火力発電所建設に反対する地元住民ら約120人が抗議デモを行った。

「発電所はいらない」。建設予定地や周辺5村の住民らは約2時間、横断幕や旗を掲げ、声を張り上げて計画への反対を訴えた。住民代表のリヨノさんは「日本政府に日本企業による発電所への投資の撤回を要請する。発電所は我々の土地や仕事、若者の将来への希望を奪う」と訴えた。

「中部ジャワ発電所計画」は総発電量200万キロワットで、完成すれば発電量がアジア最大級となる巨大プロジェクト。日本の伊藤忠商事とJパワー(電源開発)が出資する事業会社は今年10月の着工を目指すが、環境破壊などを懸念する一部住民が強く反発している。【7月23日 毎日】
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中部ジャワ発電所を巡っては、地元の環境管理局長が今月1日、「8月にも計画書が承認される」と発言。反対派住民や環境保護団体は「環境管理局は中立ではない」と反発している。
 
事業会社は5月、建設用地の8割の買収が完了したと発表。今年10月の着工に向け、現地で地質調査や周辺道路の整備などを進めている。これに対し反対派は「事業許可の取得前に作業を開始し、明らかな違法行為」と非難。売却に反対する地主の土地も含まれているとして警察に通報するとしている。一方、事業会社の現地責任者は毎日新聞の電話取材に、「取得済みの土地のみで作業しており合法」と反論した。
 
完成後は発電量がアジア最大級となるこの石炭火力発電所計画を巡っては、環境破壊を懸念する住民の一部が強く反発。今も事業会社との交渉を拒否している。一方、事業会社や政府は10月着工を厳守するとしており、反対派との対立が更に先鋭化する恐れがある。【7月6日 毎日】
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“住民は賛成・反対に分かれて鋭く対立。事業主体に日本企業も加わっており、反日感情も高まっている。”【6月28日 毎日】とのことで、
“カラングヌン村には第二次大戦中、日本軍が侵攻した。リヨノさんは「日本は昔は武力で、今度はカネで我々の土地を奪おうとしている」と話し、反日感情も高まっている。”
“一方の賛成派。2500平方メートルの農地を事業会社「ビマセナ・パワー・インドネシア」(BPI)に売却したヘルさん(43)は「発電所ができれば、若者が働く場所も増える。貧しい村が豊かになる」と話す。BPIは病院建設や高速道路整備の計画も進め、住民子弟の進学のための奨学金制度の創設も約束している。”【同上】とも。
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インドネシア・ジャワ東部へ向かっています

2013-07-21 16:25:38 | 身辺雑記・その他
今日からインドネシア・ジャワ東部を旅行します。
お昼にチャイナ・エアラインで鹿児島空港を出発し、現在台北の空港。インドネシア・スラバヤには深夜到着予定です。

今回の旅行でひとつ問題が。
インドネシアは世界最大のイスラム国家ですが、今月初旬からラマダン(断食月)に入っています。
もちろん、異教徒である観光客は断食の必要はありませんが、日中現地の人々が食事しないということは、たいていの食事をする店が閉まってしまうということになります。

数年前にエジプトを旅行した際もラマダンにぶつかりました。
そのときは現地ガイドがいたのですが、それでも食事場所を探すのに苦労する場面もありました。

今回はガイドなしの予定。苦戦は必死。
そこで、日本から、長持ちするパン、缶詰、ソーセージなどを持参。
はたして、これらの活躍の場面があるでしょうか。

ラマダンなど異教徒にとっては風変わりな習慣は多々ありますが、下記の“喜捨(ザカート)”の習慣などは、現地のイスラム教徒も困っているようです。

****(特派員メモ イスラマバード)断食前の預金引き出し****
イスラム教の断食月が始まる前日のこと。口座を開きに銀行へ行くと、窓口が異様に混み合っていた。みんな大量の現金を引き出している。「この銀行、やばいかも」と思ったが、事情は違った。

イスラム教では貧しい人への喜捨(ザカート)が義務だ。それにちなんでパキスタンでは、断食月の初日、すべての普通預金口座から預金残高の2・5%を喜捨として徴収する法律があるのだそうだ。それを嫌う人々が預金を引き出しているという。

銀行は資金ショートしないのかと心配になるが、窓口の人は「大丈夫。預金はすぐに戻って来る。抜け道も色々ある。不払いを宣言する書類を裁判所で作るとか、当座預金に換えておくとか」。

結局、口座から喜捨を徴収される人は年々減り、今では全預金者の1%程度という推計さえある。預金者の男性は「集めた喜捨を活用するのは政府。どう使われるかわかったものじゃない」と言った。

断食月の間、中流層以上のほとんどが貧困家庭に寄付したり、路上で炊き出しをしたりする。政府への信頼は失われても、宗教心は揺らいでいないようだ。(武石英史郎)【7月19日 朝日】
****************

エジプトではこんな話題も。
こちらは募金でも、イスラムとは関係ないようです。

****エジプト:経済危機克服へ銀行が募金活動****
軍事クーデターでモルシ前大統領が解任されたエジプトで、中央銀行や国内銀行が連携し、経済危機を克服するために募金活動を始めた。募金の使途は中央銀行が決める。銀行関係者は「国民が一致団結して危機に立ち向かう雰囲気を作りたい」と意気込む。銀行による「救国募金」は今の日本でなじみはないが、エジプトではイスラエルと戦った1973年の第4次中東戦争や、92年のエジプト地震、2011年の革命の際にも行われた。

募金活動は、クーデター後に放映された民放テレビ局のトーク番組の出演者が発案し、中央銀行が実施を決めた。クーデターの契機となる大規模な反モルシ政権デモが行われた6月30日にちなみ、中央銀行が「306 306」という番号の口座を国内の39銀行に開設。賛同者が振り込む。

政府系紙アルアハラムなどによると、内務省は、人気のある組み合わせの文字や数字が入った車のナンバープレートをオークションにかけ、売り上げを寄付することを決めた。モルシ前政権に反発してきた裁判官らも協力を表明。7〜11日に1億エジプトポンド(約14億1700万円)以上集まったという。

エジプト最大の民間銀行「バンク・ミスル」によると、5エジプトポンド(約72円)といった少額の寄付も多い。海外支店や外国人の寄付も受け付けており、アラブ首長国連邦(UAE)では1000万ディルハム(約2億7000万円)を寄付した人もいたという。同銀行のエファト・イシャク氏は「金額ではなく、危機を共に乗り越えようというメッセージが大切だ」と語る。

エジプトでは11年の革命後に治安が混乱。主要産業の観光や海外からの投資が低迷し、財政難が深刻化した。輸入決済の信用度の指標となる外貨準備高も減少し、小麦や石油など生活必需品の輸入に支障が出ることが懸念されている。財務省によると、12予算年度(12年7月〜今年6月)の財政赤字は200億エジプトポンド(約2835億円)を超える見通しだ。【7月19日 毎日】
* **********

もうすぐ、搭乗時間なので、これまで
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ロシア  反政権運動の指導者に有罪判決、しかし、釈放してモスクワ市長選立候補を認める

2013-07-20 23:07:35 | ロシア

(ロシア中部キーロフの裁判所で、釈放された直後に妻と抱き合うアレクセイ・ナワリヌイ被告(2013年7月19日撮影)【7月20日 AFP】)

誰がボスであるかを明らかにする
権力者が政敵をいろんな罪状で拘束し、その影響力をそぐというのは世界の多くの国でみられることであり、特に珍しい話ではありません。
ただ、国際社会で重きをなそうという国であれば、その資格が問われる話にもなります。

ロシア・プーチン大統領の政敵排除の強権手法は今に始まったことではありませんが、大統領に復帰した最近は特にそうした傾向が強まっているようにも見えます。

****プーチン露大統領の政敵、次々裁判に****
ロシアではウラジーミル・プーチン大統領の政敵が次々に裁判にかけられ、長期の禁錮刑に処される可能性に直面している──18日には、反政権運動の指導者アレクセイ・ナバルニー被告が、横領の罪に問われた裁判で評決を下される。

ロシア西部キーロフの裁判所は18日、材木取引をめぐり横領の罪に問われている反政治腐敗運動のカリスマ的な指導者、ナバルニー被告に対する評決を言い渡す。検察側は禁錮6年を求刑。ナバルニー被告側は、クレムリンの命令で「白い糸で縫われた(あからさまにでっち上げられた、の意味)」罪状だと主張している。

だが、活動家らが旧ソ連時代の弾圧の再来だと非難の声を上げる対象は、ナバルニー被告の裁判に限ったことではない。プーチン大統領の政敵らは、任意の口実で次々と投獄されている。

2012年5月のプーチン氏の3回目の大統領就任の前に起きた反政権デモで暴動を起こしたとされている人物らに対しても、犯罪捜査や刑事裁判はすでに始まっている。

またこれまでにも、反プーチン派の実業家で富豪のミハイル・ホドルコフスキー氏や過激なアート集団プッシー・ライオットのメンバーらに実刑判決が言い渡され、大きな注目を集めた。反プーチン派は、これらが「政府の高いレベル」から命令されたものだと主張する。

「これら一連の裁判の目的は、誰がボスであるかを明らかにすること…社会の中の行動的な人々を怖がらせ、反対運動が時間の無駄でしかないことをはっきりさせることだ」と、反対運動を支持する政治アナリストのドミトリー・オレシュキン氏はAFPに語った。

7月初頭には、モスクワの北東約300キロメートルにあるヤロスラブリの野党系の市長が、ある実業家から42万ドル(約4200億円)を奪い取ったとして部下らとともに逮捕された。

ヤロスラブリ市長のエフゲニー・ウラショフ氏は、与党の統一ロシアを離党して野党勢力に加わった人物。ウラショフ氏は容疑を否認し、立候補を計画していた地元での選挙を前に、圧力をかけられたと非難している。

「どのような手段かを問わず、私のことを排除するつもりだと警告された」と、ウラショフ市長はテレビ番組で語った。市長によると、金を奪い取られたと訴えた実業家は統一ロシアの党員だったという。【7月16日 AFP】
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【「今起きていることは、ロシア司法制度の全くユニークな現象だ」】
ここ数日注目を集めているのは、上記記事にもある反政権運動の指導者アレクセイ・ナバルニー氏に関する動きです。

****反プーチン・ブロガーに禁錮5年=モスクワ市長選候補、上訴方針****
ロシアのプーチン政権を批判する著名ブロガーのアレクセイ・ナワリヌイ氏(37)が横領罪に問われた事件で、中部キーロフ州の裁判所は18日、禁錮5年(求刑禁錮6年)の実刑判決を言い渡した。同氏は「プーチン大統領が指示した政治裁判」だと無罪を主張。弁護士は上訴する方針を示した。

ナワリヌイ氏は一連の大規模な反政権デモの火付け役。統一地方選に合わせて9月8日に前倒し実施されるモスクワ市長選に出馬表明し、今月17日に立候補が認められたばかり。有罪が確定すれば、立候補は取り消される見通し。

判決によると、同氏はキーロフ州知事の顧問だった2009年、木材加工品を横領し、州当局に1600万ルーブル(約5000万円)の損害を与えたとされた。

ナワリヌイ氏はプーチン政権与党・統一ロシアを「詐欺師と泥棒の党」とやゆし、汚職や政権長期化に反発する都市中間層から支持を得た。ただ、プーチン大統領復帰後の野党勢力締め付けの中、12年7月に起訴。今月10日にはモスクワ市長選立候補に必要な署名を選管に提出後、一時拘束される騒動もあった。【7月18日 時事】 
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露骨な政敵排除とみられるこの判決を受けて、このところ沈静化していた反プーチン勢力の抗議行動が活発化しています。

****ロシア:各地で抗議行動 反プーチンブロガー有罪判決で****
ロシアの野党勢力指導者、ナバリヌイ氏への実刑判決に抗議する支持者らが18日夜、ロシア各地で集会を開き、多数が警察に拘束される事態となった。ロシア国内でプーチン政権に反対するデモは最近沈静化していたが、今回の判決を契機に再燃する可能性もある。

首都モスクワでは中心部のクレムリン近くに約3000人が参加。ナバリヌイ氏の写真を掲げて支持を表明した。集会は無許可で行われ、警察発表によると約50人が拘束された。野党勢力側によると拘束者は170人近くに達したという。

北西部のサンクトペテルブルクでの抗議集会には少なくとも1000人が参加、約40人が拘束された。ナバリヌイ氏の裁判が行われた中部キーロフ市でもデモがあった。【7月19日 毎日】
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ゴルバチョフ元ソ連大統領も、「ロシアに独立した司法制度がないことを裏付けた」「政敵との争いのために司法を利用するのは容認できない」と批判しています。【7月19日 毎日より】

欧米諸国も今回の判決に相次いで懸念を表明していますが、ロシアの強権支配に対して沈黙しているとの国内批判もあるアメリカ・オバマ政権も、国務省ハーフ副報道官が「非常に失望している」と表明し、ロシア当局が市民による政府批判を抑圧している「最新の例」だと批判しています。【7月19日 時事より】
更に、オバマ米大統領が予定されている9月のモスクワ訪問を「再考している」とも報じられました。

こうした国内外の批判を受けて、裁判所は19日、横領罪で18日に禁錮5年の実刑判決を受け収監された野党勢力指導者のアレクセイ・ナバリヌイ氏(37)に対し、判決が確定するまで居住先のモスクワを離れないという条件付きで釈放するという異例の措置をとっています。

****露裁判所、ナワリヌイ被告を予想外の釈放 モスクワ市長選出馬認める****
ロシア中部キーロフの裁判所は19日、横領罪で18日に禁錮5年の実刑判決を下した反体制運動の指導者アレクセイ・ナワリヌイ被告(37)について、上訴ができる間は収監しない決定を下した。 この予想外の決定を受け、ナワリヌイ被告は直ちに釈放された。

判事は、ウラジーミル・プーチン)大統領の最大の政敵の1人であるナワリヌイ被告を収監することは、9月8日のモスクワ市長選への立候補の権利を同被告から奪うことになるとの判断を下した。

ナワリヌイ被告に対する実刑判決は多方面からの非難を呼んでおり、バラク・オバマ米大統領が予定されている9月のモスクワ訪問を「再考している」とも報じられていた。

ガラスで仕切られた被告席から即時釈放されたナワリヌイ被告は、「今起きていることは、ロシア司法制度の全くユニークな現象だ」と述べた。
法律の専門家らによると、同被告釈放の決定は前例のないもので、政治的動機に基づいていることは明らかだという。

一方のドミトリー・ペスコフ大統領報道官は19日、この件に関して不正が行われた事実はないと強調。実刑判決と釈放の決定はともに「法律にのっとって下された」のであり、「順守されなければならない」と述べた。

今回の有罪判決はナワリヌイ被告が政界入りするための資格を剥奪するものだが、この規制は刑が確定して初めて適用される。よって、同被告にとっては、モスクワ市長という強力な地位を目指す選挙運動のための時間が確保されたことになる。

同被告は、市長選へ出馬するか否かは、モスクワに戻ってから決めたいと話している。【7月20日 AFP】
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ナバリヌイ氏は20日、9月8日に行われるモスクワ市長選への立候補を継続する考えを示したており、“市長選には6人が立候補しており、最新の世論調査によると支持率はプーチン大統領に近い現職のソビャーニン氏が34%と優勢で、2位のナバリヌイ氏は4%にとどまる。だが、有罪判決への批判票がナバリヌイ氏に流れるとの観測もある”【7月20日 毎日】との情勢です。

【「政敵排除」との批判をかわし、反政権派の動向を注視する構え
政権側にすれば、どうせプーチン系列の現職が勝利するのだから、あえてナバリヌイ氏を立候補させて、選挙結果の正当性をアピールした方が得策との判断のようです。

****露反政権ブロガーに実刑判決→抗議デモで保釈 「政敵排除」の批判回避****
ロシア西部キーロフの地方裁判所は19日、横領罪で禁錮5年の1審判決を言い渡された反プーチン政権の有力ブロガー、ナワリヌイ弁護士(37)を判決確定まで保釈する異例の決定を下した。

ナワリヌイ弁護士の実刑判決に抗議する無許可デモが18日夜、首都モスクワなどで行われ、約260人が一時拘束される事態となったのを受けた措置。当局側は「政敵排除」との批判をかわし、反政権派の動向を注視する構えとみられる。(中略)
 
 ◆指導部内で意見対立
ナワリヌイ弁護士は9月8日のモスクワ市長選に立候補しているため、同弁護士の保釈によって出馬を可能にし、当選の予想される政権派候補の正統性を強調しようとの政権側の思惑が指摘されている。

また、同弁護士の処遇をめぐり、露指導部内で意見が対立しているとの見方も出ている。

通算3期目のプーチン政権は反政権派や非政府組織(NGO)を標的とした抑圧路線を推し進めており、今回の裁判もその延長線上に位置づけられている。実刑判決によって反政権派が勢いを得る可能性もあるが、地方部ではプーチン政権への支持がなお厚い。【7月20日 産経】
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“露指導部内で意見が対立”というのがどのようなものなのかわかりませんが、最近影響力を失い、解任の話すらあるメドベージェフ首相の意向もわかりません。

モスクワ市長選でのナバリヌイ氏の得票がどうなるか注目されます。
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カンボジア 総選挙を前にリベラル派の亡命政治家帰国 批判もあるフン・セン首相が支持される背景

2013-07-19 23:43:56 | 東南アジア

(帰国して支持者の歓迎を受けるサム・レンシー氏(中央、メガネの男性) “flickr”より By Prachatai http://www.flickr.com/photos/39515458@N02/9321608554/in/photolist-fcHFsS)

フン・セン首相の最大のライバルと目されているサム・レンシー氏の亡命人生
和平後のカンボジアの政治家と言えば、強権的との批判があるものの、絶対的権力を手中にして安定政権を率いるフン・セン首相と、シアヌーク前国王の次男で、かつてはフン・セン首相と主導権を争ったラナリット殿下(現在は影響力を失い政界を引退)ぐらいしか知らなかったのですが、現在の野党第1党であるカンボジア救国党を率いるサム・レンシーという政治家がいるそうです。

****仏亡命のカンボジア野党党首、総選挙前に帰国*****
今月末に総選挙を控えたカンボジアで19日、最大野党カンボジア救国党(CNRP)のサム・レンシー党首(64)が事実上の亡命生活を送っていたフランスから帰国した。

サム・レンシー氏が率いるCNRPは、30年近くにおよぶフン・セン首相の支配体制を終わらせるべく、総選挙での勝利を目指している。

フランスから到着したサム・レンシー氏は、首都プノンペンの空港に降り立つと祖国の地面に口づけをし、空港周辺を埋め尽くした支持者らに「とても嬉しい。皆さんと共に国を救うために帰って来た」と語り掛けた。空港から市中心に通じる沿道にはCNRPの党旗を手にした数万人が集まり、「変化を!」と連呼しながらサム・レンシー氏の帰国を歓迎した。

その中の1人、サム・レンシー氏と同年の64歳の支持者は「すごく喜んでいる。民主主義の指導者の帰国を目にできて、とても興奮している」と語った。

サム・レンシー氏は2009年、人種差別を扇動し虚偽の風説を流布したなどとして起訴され、収監される恐れが出たため、フランスに出国した。同氏は政治的な策略による起訴だと主張しているが、欠席裁判で11年の禁錮刑判決が下された。だが、フン・セン(Hun Sen)首相の要請により、ノロドム・シハモニ国王が前週、サム・レンシー氏に恩赦を与え、28日の総選挙を前に帰国がかなった。

■選挙名簿に名前はなし
カンボジアへの帰国前にAFPの取材に応じたサム・レンシー氏は、恩赦を「民主主義の小さな勝利」と評価した上で、「やるべきことは、まだたくさん残っている」と語った。

フン・セン首相の最大のライバルと目されているサム・レンシー氏だが、選挙名簿から名前が削除されているため、議会による法改正がない限り今月末の選挙に出馬することはできない。

それでも同氏は、自らが党首を務めるCNRPへの支持を強化するため、帰国後はすぐに各地で遊説を行うと語った。

国連のスーリヤー・スベディ人権特別報告官は15日、カンボジア政府に対し、サム・レンシー氏の完全な政治活動を認めるよう求める声明を発表している。

■フランスと祖国を行き来する生活
サム・レンシー氏は、政治家だった父親が行方不明となった後に16歳でカンボジアを離れ、仏パリに渡った。同氏の父親は失敗したクーデターに絡み、政府機関に暗殺されたとみられている。

その後、フランスにある欧州経営大学院(INSEAD)でMBA(経営学修士)を取得したサム・レンシー氏は、パリで複数の銀行に勤務した後、自身の会計事務所を設立。内戦終結後の1992年、カンボジアに帰国し、新政府で一時、財政経済相を務めた。

フン・セン首相と対立したサム・レンシー氏は2005年にも、名誉棄損の罪で有罪となった際に国外に逃れているが、この時は翌年に国王から恩赦が出されカンボジアに帰国している。【7月19日 AFP】
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サム・レンシー氏はカンボジアとフランスの間で亡命・帰国を繰り返す人生ですが、2009年の亡命については、以下のような事情だそうです。

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2009年10月25日、ベトナムとの国境線が本来のカンボジア領よりも内側になっているとしてサム・ランシー党首が村人と共にスヴァーイリアン州チャントリア郡に設置された国境杭を引き抜いたことに対し、国民議会はランシー党首の不逮捕特権剥奪を決定、2010年1月27日に欠席裁判のまま有罪判決(禁固2年)が下された。

その後、2010年2月にランシー党首が「政府がベトナムの侵入を容認した証拠がある」として政府批判を行ったことに対し、2010年9月に禁固10年と罰金500万リエル、国家への賠償6000万リエルの支払いを命じる判決が裁判所によって下されている。【ウィキペディア】
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最初はクメール・ルージュの一員だったフン・セン首相は、カンボジア内戦時にベトナムに逃れ、ベトナムの後押しでクメール・ルージュを追い落とし、カンボジア政界を取り仕切る立場になっています。

ポル・ポトのクメール・ルージュが狂信的集団と化した原因のひとつに、極度のベトナムへの警戒心がありますが、クメール・ルージュに限らず、カンボジア国民全体にベトナムへの不信感があります。
そのあたりは、カンボジアを旅行すると実際に感じることができます。

そうした空気を背景にしたサム・レンシー氏による2009年の行動(どこまで事実化は知りませんが)でしょうが、表立ってのベトナム批判は、ベトナムの後押しを受けているフン・セン首相への批判にもなりますので、弾圧・亡命という話にもなるのでしょう。

【「フンセンは自分たちと一緒に、厳しいポルポト時代を生き抜いてきた」】
カンボジアでは今月28日に総選挙が行われるそうで、それに合わせた帰国ですが、政敵フン・セン首相が帰国を認めたということは、総選挙勝利に絶対の自信を持っているということでしょう。
そのうえで、国際的批判をかわすために、選挙戦終盤での帰国を認めたということかと憶測します。

サム・レンシー氏は、“1993年の選挙でフンシンペック党から選出された彼(サム・レンシー氏)は、経済財政大臣として政府の腐敗を厳しく追及したが、ラナリット第一首相(当時)の逆鱗に触れ、大臣の座を追放された。また国会議員資格も剥奪され、何度も命を狙われながら政府との対決姿勢を鮮明にして活動を続けてきた。不正や悪と闘う政治家とのイメージに多くの人々が改革への期待を託していることが感じられた。積極的に政治について語る人に限って言えば、サム・レンシー党の人気は圧倒的だった。”【阪口 直人氏 http://homepage2.nifty.com/naoto1016/garally/cambodia%20election%200307.htm】という、人権を重視し、不正と戦うというリベラルなイメージで人気のある政治家だそうです。

前回総選挙(2008年)では、フン・セン首相の人民党90議席に対し、サム・ランシー党は26議席を獲得し、その後、人権党(3議席)と合併しカンボジア救国党(CNRP)を結成しています。
今回選挙も、盤石の与党・人民党にある程度対抗できるのはサム・レンシー氏のカンボジア救国党しかないと見られています。

強権支配・汚職腐敗のフン・セン政権ですから、リベラルなサム・レンシー氏への支持・期待も一定にある訳ですが、フン・セン首相を政治的に追い込むような存在には至っていないようです。

その背景には、あまりにも過酷なカンボジアの内戦の記憶があるようです。
確かにサム・レンシー氏の主張は耳あたりはいいが、地獄のような内戦を終結し、現在の政治的安定をもたらしたのはやはりフン・セン首相にほかならず、実際の政治をサム・レンシー氏に委ねるのは不安だ・・・といった思いがカンボジア国民にはあるようです。
(フン・セン首相が選挙に強いのは、それ以外に、不正選挙とか、選挙対策のバラマキといった理由もあります)

下記は、2002年2月に行われた和平後初めての地方選挙のときの、あるカンボジア人の意見です。
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「フンセンは自分たちと一緒に、厳しいポルポト時代を生き抜いてきた。サムレンシーはその時、フランスでエアコンのきいた部屋にいた。ベトナムの力を借りたかもしれないが、実際にポルポト政権を倒したのは人民党だ」

「誰もが腐敗している。どれが、いちばんマシかで選ぶ。確かに汚職は深刻な問題だが、フンセン首相率いる人民党は、例えば政府予算の半分ぐらいを自分達のポケットマネーにしてしまっていても、残りの半分は実際に道路を造ったりするのに使っている。自分たち公務員の給料は8万リエル(約20US$)だが、一ヶ月一家4人で暮してゆくには300US$ぐらいかかる。今現在の給料はとても十分とはいえないが、生活を切りつめ、副業で何とかやりくりしている。もし、サムレンシーの言うように、カンボジア政府は腐敗しているので、一切の外国援助を止めてくれというような事になったら、外国援助で成り立っているカンボジア政府は、その8万リエルという給料すら人々に払えなくなってしまうじゃないか。そうしたら、どうやって生活してゆけばいいのか」
【山中ひとみ氏 http://bekkoame.ne.jp/~shida-a/gaien/kanbojia/kanbojia2.htm
*****************

もっとも、カンボジアも内戦終結から時間が経過し、人民党が敗北することでの政治的混乱への不安が薄れてくれば、フン・セン首相の強権的政治手法、汚職・腐敗の蔓延に対する国民の不満も顕在化してくることも考えられます。それが、今回選挙なのか、次回なのかはわかりませんが。

なお、今回総選挙では、フン・セン首相の三男、フン・マニ氏が初出馬するそうです。カンボジアでも政権世襲化でしょうか。
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中国の強硬な外交姿勢に対し、インドは国境軍事力増強、南シナ海の仲裁審理開始

2013-07-18 23:34:53 | 中国

(4~5月の中国の侵入に対するインドの抗議行動 “flickr”より By Once upon a time http://www.flickr.com/photos/88925006@N00/8702202961/in/photolist-efZ4L6-9Wy1ED-ehHDKc-dkJHma-7TwZm9-ekL9Qh-9m6Cua-e8CQo7-8SZtCb-9zefyh-8qFCq2-7TwZcJ-7TwZtA-7TtHMk-7TtHHr-7TwZpE-7TtJhx-7TwZ9m-7TtHWn-935S42-8dbT4t-auAmjc-ef5FNV-9qyJfc-9zoa6J-7TwZwN-7zoWh1-eKe9qa-978zAC-83Gz1S-978E1s-asrd4p-bCxnGw-837WVN-83Dr7k-9c2B1T-94YFpT-94YF7g-dEFSaw-7yRTZq-8UMXYj-daR5jB-edT92J)

警戒感が強まるインド、対中防衛力を強化
インドと中国はカシミール地方の国境線をめぐって長年対立を続けており、今年4~5月にも中国側がインド側へ侵入(インド側からすれば“実効支配線を越えた侵入”、中国側すれば“自国領域内の正常なパトロール”)して兵士を野営させ、中印両軍が3週間にわたってにらみあいを続ける場面もありました。

このときは“インドが中国の要求を受け入れ、両国の実効支配線のインド側領域からインド軍拠点の一部撤去に合意”(インド有力紙タイムズ・オブ・インディア報道)と、インド側が譲歩する形で、中国も撤退しています。

その後も、中国の活発な動きが報じられています。

****中国軍、インド軍のシェルターを破壊****
インドのPTI通信は9日、印当局者の話として、カシミール地方のインドと中国の実効支配線付近で6月17日、中国人民解放軍がインド支配地域に侵入し、監視用のシェルターを破壊してカメラの線を切断したと報じた。現場は今年4~5月、中国軍がテントを設置して駐留したインド支配地域と同じ場所。【7月10日 産経】
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****中国ヘリが領空侵犯か=カシミール地方、インド軍は否定****
インドのPTI通信は14日、中国人民解放軍のヘリコプター2機が北部カシミール地方のインド領空を侵犯したと報じた。
消息筋によると、2機は11日午前8時ごろ、ジャム・カシミール州ラダック地方の領空を侵犯し、しばらく飛行した後に戻っていった。偵察活動を行ったとみられる。
一方、インド軍は領空付近を飛行しただけで、侵犯はなかったと否定した。【7月14日 時事】 
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こうした一連の中国側の挑発的とも言える“活発な動き”に対しインド側も警戒を強めており、中印国境付近の軍事力を増強する計画を発表しています。中国軍によるインド側への侵略があれば、チベット自治区への報復攻撃を想定しているとも言われています。

*****インド 中印国境沿いに5万人部隊新設へ***** 
インドのPTI通信によると、インド政府は17日開いた内閣安全保障委員会で、対中防衛力を強化するため、中国との国境付近を中心に約5万人の兵力からなる新たな軍部隊を創設することを決めた。

北部ジャム・カシミール州では今年、中国人民解放軍のインド支配地域への侵入が相次ぎ、インドは中国軍の挑発行為に神経をとがらせていた。

情報筋がPTIに明らかにしたところでは、創設費用は6500億ルピー(約1兆900億円)。東部の西ベンガル州パナガルに本部を置き、東部ビハール州と北東部アッサム州に師団、中国が一部地域の領有権を主張する北部ジャム・カシミール州のラダクと北東部アルナチャルプラデシュ州にも部隊を置く。

パナガルには空軍が空中注油機やC130輸送機を配備。陸軍は7年間かけて、北東部に新たな砲兵部隊と機甲師団などを配置する。ジャム・カシミール州の中印実効支配線付近で軽戦車やヘリコプターの戦力を増強し、北東部には大陸間弾道ミサイル・巡航ミサイル部隊を配備することも計画しているという。【7月18日 産経】
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4~5月の中国側の“侵入”については、“北京の威圧外交の勝利”とも評されており、インド国内には中国への警戒感が強まり、対中政策の見直しが論じられています。
今回の国境付近の軍備増強は、そうした警戒感・不満を背景にしたもです。

****中国の強制外交とインドの無気力さ 中印国境をめぐる対立****
ブラーマ・チェラニー(ニューデリーの政策研究センター教授)が5月9日付WSJに、「北京の威圧外交の勝利;インド自身の領土からの撤退と交換に、中国はニューデリーから多くの軍事的な譲歩を勝ち取る」と題する論説を寄稿し、シン政権の対中弱腰外交を厳しく批判しています。

すなわち、5月6日にインドは、中国部隊がヒマラヤの国境地帯から撤退すると発表した。インドの政治家は関係正常化を祝い、静かな外交の勝利だとした。
しかし、実際は、今回のデサン高原(チベットと新彊へのアクセス・ルートで、中国・パキスタン間のルートにあたる)での対立は、インドの戦略的立場を深刻に弱体化した。中国は何も価値ある譲歩はしていない。

この紛争は、中国の強制外交とインドの無気力さの、よい研究材料となる。中国は4月中旬、ヒマラヤの事実上の境界を20km越えた。奇襲や軍事的エスカレーションのリスク無視など、中国の瀬戸際政策の特徴がみられる。何よりも、タイミングが良く選ばれている。インド政府は国内的にかつてないほど弱く、危機への対応はふらついていた。

50人の小隊の配備で、北京は交渉ではとても得られない軍事譲歩を得た。撤退の見返りに、インドは前進監視所を廃止し、塹壕やその他の防衛要塞を破壊した。他方、中国は国境での攻撃力を引き続き強化し、警告なしに攻撃し得るようになった。

過去10年間、自己主張する中国は「核心的利益」の名のもとに、インドのヒマラヤ領土を着実に侵犯してきた。この戦術は日本、ベトナム、フィリピンとの領土・海洋紛争にも適用されている。インドのしっかりしない対応は、これらの国にとって、中国にはどういう対応をすべきではないかの教訓となるべきである。

インドの失策は、3年前に国境警備を軍から国境警察に移したことに始まった。最近の侵犯について、政府は1週間沈黙し、その後、愚劣な措置とともに、それを明らかにした。

シン首相は「局地的な問題」と呼び、フルシド外相は中印関係という美しい顔にでてきたニキビの様なもので、軟膏をつければよい、「事件はおこるものだ」と述べた。

北京が対決を続けたら、中国の李克強首相の5月20日の訪印はキャンセルになっただろう。中国に外交上のコストを支払わせることがインドの利益になる。しかるに腐敗にまみれたインド政府は、強硬に出ることや降伏が敵を増長させることを考える余裕がない。

その結果、中国が挑発について国際的逆風の中に置かれそうになりつつある時に、インドが弱い対応をしてしまった。兵力を増強し、中国に考えさせるのではなく、侵略者に報償を与えている。多分、李の訪問準備として、フルシド外相が訪中するために、決着を急いだのではないか。

皮肉なことに、最近の中国の指導者のすべての訪印の前には、中国の新しい攻撃的な動きがある。胡錦涛の2006年訪印の前には、オーストリアの大きさのアルナチャール・プラデッシュへの領土要求が出されたし、温家宝の2010年の訪問の前には、カシミールへのインド主権が新しい査証政策で挑戦された。そして今回の侵犯である。

これで2005年の中印国境合意(実際の支配線である事実上の国境を尊重し守るという合意)が害された。中国は公然とこの合意を破り、インドが統治する地域にテントを張り、ここは中国領と書いた旗を立てた。インドの臆病さはそれを現実にしかねない。(後略)【6月13日 WEDGE】
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多くの国が関与する南シナ・東シナ海での領有権問題の先行きに影響
一方、カシミール地方同様に中国が強行に領有権を主張し、実際に拡張的な行動に出ている南シナ海の問題では、中国に反発するフィリピンが提訴した仲裁裁判所での審理が始まっています。

****南シナ海領有権:中・比の仲裁審理開始 判決まで数年か****
南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)を巡る中国との領有権争いに絡み、国連海洋法条約に基づく仲裁を求めているフィリピンは16日、オランダ・ハーグの仲裁裁判所で審理が始まったと発表した。

フィリピンは南シナ海のほぼ全域に領有権があるとする中国の主張は同条約違反だとして無効判定を求めている。中国の領有権主張の法的論拠が国際的な司法の場で判断されることから、多くの国が関与する南シナ・東シナ海での領有権問題の先行きに、影響を与えそうだ。

フィリピン政府によると、11日に第1回の審理が開かれた。審理の進め方などが承認され、フィリピンと中国に8月5日までに具体的な意見を提出するよう求めている。審理には数年かかると見られる。

仲裁の判決に法的拘束力はあるが、執行機関はなく、判決の反映は困難だ。中国は06年、国連海洋法条約の規定に基づき、国連事務総長あてに「強制的仲裁の制約を受けない」との声明を提出。「仲裁裁判所が示した判断に拘束されない法的権利がある」との立場で、2国間対話での問題解決を求めている。

中国外務省の華春瑩(か・しゅんえい)副報道局長は16日付声明で「中国側の合法的な権利と正当な関心を顧みず、独断専行で国際的な仲裁を求めることには一貫して反対する」と反発した。

フィリピン外務省のヘルナンデス報道官は15日、「過去の協議での中国の主張は『南シナ海は中国の領海だということをまず認めなければならない』だった」と指摘し、今後は2国間協議を行わないと表明。デルロサリオ外相も「あらゆる政治的手段と外交手段を尽くした。国際仲裁裁判に解決を求めるしかない」と述べた。

中国は92年制定の領海法で沖縄県・尖閣諸島や南シナ海の領有権を明記。09年に国連に提出した口上書には、南シナ海のほぼ全域を領有していることを示す線を設定した地図を添付した。

今月17日には、南沙、西沙など3諸島を管轄する海南省三沙市が漁民や軍人家族ら計10人に市常駐を認める身分証を発行。ベトナム、フィリピンの漁民を拿捕(だほ)し、艦船が対峙(たいじ)するなど周辺国との緊張が高まっている。

9月には北京で、中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)が、法的拘束力を持つ「南シナ海行動規範」の策定に向けた初の公式協議を開催する。

 【ことば】中比領有権紛争の仲裁
国連海洋法条約は紛争解決の手段として(1)国際海洋法裁判所(2)国際司法裁判所(3)仲裁裁判所(4)特別仲裁裁判所−−のいずれかへの訴えを選択できると規定。

仲裁裁判所は相手国の同意がなくとも一方の書面通告で訴えが可能で、フィリピンは1月に申し立てた。仲裁人(判事)5人のうち、当事国が1人ずつ選任するが、中国側は拒否。国際海洋法裁判所が仲裁人を任命し、手続きが進んでいた。【7月18日 毎日】
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「強制的仲裁の制約を受けない」とは言っても、何らかの中国側に不利な仲裁が出されれば、中国の立場には著しく不利益になります。

中国の強硬な領有権主張と行動は、結局のところ周辺国の警戒心・敵意を高めることになり、短期的には“北京の威圧外交の勝利”といったものをもたらし、民族主義的な高揚感を得ることができても、長期的には自国の活動範囲を狭め、安全保障上の脅威ももたらす愚策でしかないように思えます。
自国の発展と安全は、周辺国との信頼関係によってしか確実なものにできません。

中国が自明の理とも言えるそうした事実から目をそらし、いつまで愚策に固執するのか、不思議なところでもあります。
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