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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ・ガザ地区 惨状への国際批判の高まりを受け、イスラエル・米、支援物資搬入再開を検討

2025-05-03 22:27:37 | パレスチナ

(4月26日、ガザ市近郊の避難民キャンプで、国連機関から配布された食料を受け取るために集まったパレスチナ人【4月27日 産経】)

【イスラエルと米国 ハマスが関与しない形で搬入を再開させることを検討】
「やっと・・・」と言うべきでしょう。遅きに失してはいますが、これまでの対応を続けるよりは格段にましでしょう。

****ガザ支援物資 イスラエルと米国、近く搬入再開を合意か 米報道****
米ニュースサイト「アクシオス」は2日、イスラエルと米国が、パレスチナ自治区ガザ地区の支援物資の搬入の再開の合意に近づいていると報じた。新たな財団を設立し、イスラム組織ハマスが関与しない形で搬入を再開させることを検討しているという。

ガザ地区ではイスラエルが3月2日から、ハマスに圧力をかけるためだとして、すべての物資の搬入を停止。国連世界食糧計画(WFP)は、ガザ地区の食料備蓄が底をついたと発表するなど人道状況は深刻になっている。

アクシオスによると、物資の搬入は、各国などからの支援を受けた財団を通じて行われる。ガザ地区に食料を配布する施設を建設し、米国の民間企業が物資の配布と周囲の警備を担当する。イスラエル軍は物資の配布などには関与しないが、より広範囲の地域の警戒にあたるという。

イスラエル軍は、ハマスにさらに圧力をかけるため、近く地上作戦を拡大する予定で、4日の治安閣議で計画を承認する見込みだ。イスラエル当局者は、戦闘を拡大させる前に新たな仕組みを構築し、支援物資の搬入を再開させたい意向だという。

ロイター通信によると、イスラエル軍は2日もガザ各地を攻撃し、少なくとも25人が死亡した。2023年10月の戦闘開始以来のガザ側の死者は、5万2000人を超えている。【エルサレム松岡大地】
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【「水を巡る殺し合い」「多くの子どもや女性が静かに殺される」 ガザ住民への集団懲罰】
イスラエル軍の人道支援を含む支援物資の搬入停止によるガザの「飢餓」の惨状は連日報じられているところ。

****ガザ封鎖2カ月、食料ほぼ払底 国連「水を巡る殺し合い」と窮状訴え****
国連の援助当局者は2日、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの物資の全面封鎖が2カ月の節目を迎え、減少する物資を巡って争いが勃発していると述べた。

イスラエルは3月2日以降、ガザ地区の住民230万人へのあらゆる物資供給を完全に遮断しており、停戦中に備蓄した食糧はほぼ底をついている。これはガザ地区史上最長の封鎖となる。パレスチナ住民と援助関係者によると、30日にはガザ地区全域で少なくとも5件の略奪事件が発生した。

ガザの国連人道問題調整事務所(OCHA)のオルガ・チェレフコ氏はビデオ会見で、物資を巡る暴力が激化しているとし、「水の入手がほぼ不可能になっている。給水車が到着したばかりなのに、水を巡って殺し合いが繰り広げられている」と窮状を訴えた。

他の援助団体でも、この1週間ですでに食料が底をつき、支援活動が閉鎖の危機に瀕しているというところもある。赤十字はガザにおける人道支援は「完全崩壊」の瀬戸際にあると述べた。

イスラエルはこれまで、ガザが飢餓危機に直面しているという説を否定しており、十分な援助物資がまだあると主張している。【5月3日 ロイター】
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****「子どもや女性が静かに殺される」ガザへの支援物資搬入停止から2か月 国連がイスラエルに搬入再開求める****
パレスチナ自治区ガザへの攻撃を続けるイスラエルが支援物資の搬入を停止してから2か月となるなか、国連機関のトップは「住民が静かに殺される」などと搬入再開を訴えました。

UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関のラザリーニ事務局長は2日、イスラエルがガザへの支援物資の搬入を停止してから2か月となるのにあわせて、「ガザで生まれ、暮らしているというだけで、集団的に罰せられている」などとSNSに投稿しました。

ガザではイスラエルが食料や医薬品といった支援物資の搬入を停止して以降、人道状況が著しく悪化していて、ラザリーニ氏は「多くの子どもや女性が静かに殺される」などと搬入の再開を強く訴えました。

こうしたなか、ロイター通信は2日、地中海のマルタ沖で、ガザに支援物資を届けようとしていた民間団体の船が無人機による攻撃を受けたと報じました。船には16人が乗っていましたが、いずれもけがはないということです。

攻撃は2度あったということですが、攻撃を行った主体は分かっておらず、団体は徹底した調査を求めています。【5月3日 TBS NEWS DIG】
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マルタ沖での民間団体支援船への無人機による攻撃については以下のようにも。

****イスラエル軍ドローン、ガザ行き支援船を攻撃 活動家発表****
パレスチナ自治区ガザ地区へ向かっていた支援船を組織している活動家団体は2日、マルタ沖の国際水域でイスラエル軍のドローンによる攻撃を受けたと発表した。

同団体によれば、マルタ時間の午前0時23分、「フリーダム・フロティーラ連合」の支援船「コンシエンス号」が国際水域で攻撃を受けたという。

「武装したイスラエル軍のドローンが、非武装の民間船の船首部分を2度にわたって攻撃し、火災が発生した。船体には大きな穴が開いた」と声明は述べている。

団体はさらに、「イスラエルの大使らは各国で召喚され、国際法違反について説明責任を負うべきだ」と非難。これには、継続中のガザ封鎖と、国際水域での民間船への爆撃も含まれるとしている。

イスラエル政府からはこの主張に対する公式な発表は出ていない。

フロティーラ連合は、今回の攻撃は船の発電機を標的にした可能性があるとしており、その結果、船は電力を失って沈没の危険にさらされたという。船は遭難信号を発し、キプロスおよびイタリアから救援船が派遣された。犠牲者は報告されていない。

団体によれば、当時船には21か国からの活動家が乗船していた。活動家らは「イスラエルによる違法かつ致命的なガザ封鎖に抗議し、緊急の人道支援物資を届ける任務にあたっていた」と述べている。

イスラエルは3月2日以降、ガザへのすべての支援物資搬入を停止しており、同月中旬にはガザでの軍事作戦を再開。イスラエルとイスラム組織ハマスの紛争における2か月間の停戦は、もはや実質的に崩壊している。 【5月2日 AFP】
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“この船はマルタ島で環境活動家のグレタさんらが乗船しガザに向かう予定だった”【5月2日 日テレNEWS】とも。

こうした事態に多くの国際機関が危機的状況への警告を発しています。

****ガザ地区 支援の民間船に無人機攻撃 赤十字国際委員会は「完全崩壊の危機に直面している」人道支援に警告****
(中略)こうした中、赤十字国際委員会は2日、人道支援が「完全崩壊の危機に直面している」と警告しました。イスラエルはイスラム組織ハマスに人質解放を迫るため、3月2日以降、ガザ地区への医薬品や食料などの供給を阻止しています。

WHO=世界保健機関の幹部は1日、ガザ地区の子供たちの心身が破壊されていると述べ、栄養失調によって免疫力の崩壊が起きていると警告しました。

地元紙はイスラエル当局の話として、今週中に物資の搬入再開を検討していると伝えています。ハマスが配給に関与できない方法を検討するとしていますが、実現は難しいとの声も上がっています。【5月3日 日テレNEWS】
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上記記事最後のイスラエルの“ハマスが配給に関与できない方法を検討”ということが、冒頭記事内容になると思われます。

かつてホロコーストを経験したイスラエルによる、食料・水・医薬品も遮断するというガザ住民を230万人をガス室送りにするかのようなこれまでの対応に対し、国際的にも厳しい批判が高まっています。

****ガザ物資遮断2カ月、募る飢餓の懸念 イスラエルの対応に高まる非難 ICJ公聴会****
イスラエルがパレスチナ自治区ガザへの支援物資の搬入を全面停止していることなどを巡り、オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)で公聴会が開かれている。ガザでは食料も燃料もなくなりつつあり、多くの国が飢餓の深刻化への懸念を表明している。

イスラエルは3月2日、イスラム原理主義組織ハマスがガザで拘束する人質解放の継続を拒否したとして、支援物資のガザ搬入を完全に停止した。

公聴会は4月28日から5月2日までの日程で、約40カ国が意見を陳述。パレスチナの代表は、イスラエルが人道支援を「兵器」として使っていると非難した。国連の法律顧問はパレスチナはイスラエルの占領下にあると指摘し、イスラエルについて「住民の利益になる国連の活動を認める義務がある」と述べた。
これに対し米国は、治安を脅かしかねない組織の支援活動を受け入れる義務はないと主張し、同盟国イスラエルを擁護した。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の一部職員が約1年半前、ハマスのイスラエル奇襲に関与した疑いが浮上したことを念頭に置いた発言とみられる。

中東の衛星テレビ局アルジャジーラによると、米国とハンガリー以外の国々はほぼイスラエル批判を展開。イスラエルはICJについて「自衛権という最も基本的な権利を否定する狙いだ」(サール外相)と反発し、公聴会への出席を拒否した。

ガザへの物資搬入が遮断されて約2カ月となり、現地からの映像では食料の配給所で住民が食べ物を得ようと押し合う事態が日常化している。世界食糧計画(WFP)はガザの備蓄食料が底を突いたとし、国連は「全面的な飢餓」の懸念があると指摘する。

ガザ当局によると、飢えや栄養失調で子供ら50人以上が死亡し、少なくとも6万人に栄養失調の兆候がみられる。
カタールやエジプトが仲介するイスラエルとハマスの停戦が実現するかどうかは不明で、双方の駆け引きが続くなかでガザ住民の生存が厳しさを増している形だ。

ICJは国連の主要な司法機関で、公聴会は昨年12月、国連総会がイスラエルの対応に関して法的見解を求める決議を採択したのを受けて開かれた。【5月1日 産経】
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****イスラエルのガザ完全封鎖、「全く受け入れられない」とアイルランド外相。飢餓に襲われるパレスチナの子どもたち****
ガザ市内の慈善団体の炊き出し所で、温かい食事を求めて集まるパレスチナ人の子どもたち(2025年4月30日)
イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの支援物資の全面封鎖が2カ月以上続き、子どもたちが飢餓の脅威にさらされている。

国連児童基金(UNICEF)のキャサリン・ラッセル事務局長は、5月2日に声明を発表。ガザでは人々の生存に必要なあらゆる物資が不足し、子どもたちの間で栄養失調が深刻化している現状を報告した。

ラッセル氏は「ガザの子どもたちは容赦ない爆撃にさらされる一方で、2カ月にわたって必要不可欠な物資、サービス、そして命を救う医療を奪われてきました。支援の封鎖が続く中、子どもたちは飢餓、病気、そして死のリスクにますますさらされています。これを正当化できる理由は何一つありません」と訴えた。

支援物資は底をつきかけており、ワクチンも急激に不足している。UNICEFによると、ガザで報告される病気の4件中1件は急性水様性下痢症で、その大半は5歳未満の子どもであり、「命に関わる恐れがある」としている。

栄養失調も深刻化し、2025年の初めからすでに9000人以上の子どもが急性栄養失調の治療を受けている。このほか治療の必要な何百人もの子どもたちが、治安の悪化や避難のために治療を受けられずにいるという。

ラッセル氏は「全ての紛争当事国は、人道支援の迅速かつ妨害のない通過を認めなければいけません。また、現地住民のために国連機関が活動を行うことを許可・支援しなければなりません」と指摘している。
イスラエルは3月2日以降、ガザ住民へのあらゆる物資供給を完全に遮断している。

アイルランドのサイモン・ハリス外相は5月2日の声明で、イスラエルが2カ月以上もガザへの物資援助を封鎖していることについて、「現在の苦しみが続いていることは全く受け入れられない」と批判。

「このような状況下で命を救う支援を妨げることは、イスラエルが国際的に負っている義務に違反するものだ」とし、イスラエルに対して封鎖の即時解除を求めた。【5月3日 HUFFPOST】
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【アメリカ イスラエル擁護は変えていないものの、国際批判に配慮か】
前出【5月1日 産経】にもあるように、アメリカはイスラエル擁護の姿勢を変えていませんが、さすがに上記のような国際批判の高まりは意識せざるをえなくなっているようです。

****ガザ支援搬入認めるようイスラエル首相に要請=トランプ氏*****
トランプ米大統領は25日、今週行ったイスラエルのネタニヤフ首相との電話会談で、パレスチナ地区ガザへの食料や医薬品の搬入を認めるよう求めたと明らかにした。

ネタニヤフ氏の反応について記者団から問われると、「良い反応だった」と答えた。

イスラエルは、イスラム組織ハマスが残る全ての人質を解放するまで人道支援物資の搬入を認めておらず、ガザには3月2日以降、支援物資は届けられていない。

世界食糧計画(WFP)はこの日、ガザの食料備蓄が底を尽いたと発表した。【4月26日 ロイター】
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その結果として、冒頭記事のような対応が。

ただ事は急を要します。“ガザ地区に食料を配布する施設を建設し、米国の民間企業が物資の配布と周囲の警備を担当する。イスラエル軍は物資の配布などには関与しないが、より広範囲の地域の警戒にあたるという。ガザ地区に食料を配布する施設を建設し、米国の民間企業が物資の配布と周囲の警備を担当する。イスラエル軍は物資の配布などには関与しないが、より広範囲の地域の警戒にあたるという。”とのことですが、実際に人々の手に水・食料が届くようになるまでにはあとどのくらいの日数がかかるのでしょうか?

その間にもガザ住民の飢餓が進行し、人々の生命と健康が蝕まれていきます。

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パレスチナ・ガザ地区で進む住民排除 人道危機は制御不能 赤新月社救急隊員らの殺害

2025-04-07 23:04:06 | パレスチナ

(【4月7日 BBC】 イスラエルは当初、車列が暗闇の中でヘッドライトも緊急警光灯も点灯させず「不審に」接近してきたため、兵士らが発砲したと主張。しかし、残された動画で救急車のライトは点灯しており、救急隊員と認識しながら発砲殺害したことが判明 イスラエル側は説明を変更)

【イスラエル軍によって進む住民排除のトランプ計画】
世界がトランプ関税の衝撃で世界同時株安などに揺れ動く間も、ウクライナでも、パレスチナでも、その他の地域でも従来からの戦闘はこれまでどおり続いています。

パレスチナ・ガザ地区では“これまでどおり”と言うより“これまで以上に”といった感があり、イスラエルは攻撃を強化しています。

*****「ガザに新たな軍事区域」イスラエル首相表明 住民、物資移動さらに困難に****
イスラエルのネタニヤフ首相は2日、イスラム原理主義組織ハマスを標的に攻撃を続けるパレスチナ自治区ガザで、新たな軍事区域を設けると表明した。住民の移動や物資の輸送がさらに制限される可能性がある。

イスラエルメディアによると、軍事区域はエジプトとの境界にあるガザ最南部ラファと南部ハンユニスの間に設置される見通し。ハンユニスやラファにはイスラエル軍が退避勧告を発令しており、ラファ周辺はほぼ無人になったとする報道もある。

ネタニヤフ氏は同日、ハマスに人質を解放させるため、ガザを地域ごとに分割して圧力を強めているとも述べた。

イスラエルはハマスとの人質解放交渉が暗礁に乗り上げたのを受け、3月2日からガザへの食料などの物資流入を全面停止した。同月18日にはガザで大規模空爆を実施。ガザを南北に分断する「ネツァリム回廊」を再び占拠したほか、ラファとエジプトの間にある「フィラデルフィ回廊」も掌握している。

イスラエル軍は4月1日、ガザには1月中旬から1カ月超続いた停戦期間中に搬入された食料が残っているはずだと主張したが、国連のドゥジャリク事務総長報道官は同日、「ばかげている」と述べ、人道危機の深刻さを訴えた。

ガザ当局はイスラエル軍の爆撃による4月2日の死者は少なくとも60人に上ったと発表した。国連によると、停戦崩壊後のガザでの死者は千人を超えたもようだ。【4月3日 産経】
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下記記事の「安全地帯」という言葉、最初私は戦闘に巻き込まれているガザ住民のための安全地帯のことかと思ったのですが、どうも話の辻褄が合わない・・・ガザ住民のための安全地帯ではなく、ガザ住民を追い出して無人化し、イスラエル軍が占領するイスラエルのための安全地帯のことだったようです。

****イスラエル軍、ガザ北部に進入し「安全地帯」拡大 学校空爆*****
イスラエル軍は4日、パレスチナ自治区ガザ北部に進入し、ガザ周辺の「安全地帯」を拡大したと発表した。

北部ガザ市の東にあるシェジャイア地区で作戦を遂行しているイスラエル軍兵士らは、組織化されたルートで市民を避難させているという。イスラエルは3日にこの地域に避難勧告を出し、数百人の住民が避難していた。

一方、ガザ保健当局によると、イスラエル軍は住民が避難していたガザ市タッファ地区の学校を空爆し、女性や子どもを含む少なくとも27人が死亡した。

軍はこの校舎がイスラム組織ハマスの司令部として使用されていたとし、民間インフラを意図的に悪用しているとハマスを非難した。ハマスは民間人の中での活動を否定している。

ここ数日、イスラエル軍の支配地域拡大に向けた動きを受け、何十万人ものパレスチナ人が集団避難を始めている。

ガザ最南部のラファでは、イスラエル軍が廃墟となった町を包囲し、「安全地帯」として占領している。イスラエルは「安全地帯」として占領している地域の長期的な目的を十分に説明していない。【4月4日 ロイター】
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OCHA=国連人道問題調整事務所は4日、イスラエル軍の攻撃により、2週間で28万人を超えるガザの住民が避難を余儀なくされたと発表しました。また、ガザ地区の65パーセントが立ち入り禁止になっているか、退避命令が出ているとしています。

****ガザ、立ち入り禁止や避難対象が全体の65%に 新たに28万人が避難*****
イスラエル軍は4日も、イスラム原理主義組織ハマスを標的にパレスチナ自治区ガザ各地で攻撃を続けた。

国連によると、攻撃再開により停戦が崩壊した3月18日以降、ガザでは推計28万人が避難を余儀なくされた。域内各地で軍の避難勧告が相次いでおり、国連はガザ全体の65%が立ち入り禁止か避難対象の地域になったとした。

ガザ保健当局は4日、イスラエル軍の爆撃などにより南部を中心に少なくとも35人が死亡したと発表した。軍は同日、北部のガザ市周辺でも支配地域を拡大した。

ロイター通信によると、イスラエル政府当局者は軍事作戦について、ガザの住民を域外に移住させるとしたトランプ米大統領の2月発表の構想に沿うものだと述べた。イスラエル政府は住民の自主的な域外への退去を支援する政策も打ち出した。

イスラエルとハマスの停戦協議は双方の隔たりが埋まらず停滞しており、パレスチナの協議筋はロイターに「現在は(両者の)接触はない」と述べた。イスラエル軍は最近、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区やレバノン、シリアへの攻撃も強化している。【4月5日 産経】
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“トランプ米大統領の2月発表の構想”・・・例のガザ住民を強制移住させて、中東のリビエラに再開発するというものでしょうか。

てっきりトランプ大統領の妄想世界の話と思っていたのですが、イスラエルによってそのプランに沿う形で現実世界が変化しているようです。

【人道危機は制御不能】
事実上の停戦崩壊により、「人道危機は文字通り制御不能になっている」(OCHAのガザ担当者)といった状況に陥っています。一方、停戦交渉は進展していません。

****ガザ人道危機「制御不能」 子供1.7万人が孤児に 栄養失調も深刻****
パレスチナ自治区ガザ地区でイスラエル軍による攻撃が激化している。軍は北部や南部で一定の領土を「安全地帯」として確保する方針を示し、地上作戦を拡大。

ガザの封鎖も解除の見通しが立たず、住民は度重なる避難や物資不足にあえいでいる。イスラム組織ハマスとの戦闘開始から7日で1年半を迎える中、人道危機はもはや「制御不能」との声も出ている。

ガザ地区では1月19日に一時停戦が発効したが、イスラエルは3月18日、ハマスが要求を受け入れないとして空爆などの大規模攻撃を再開。約3週間で死者は1000人を超え、停戦合意は事実上崩壊した。(中略)

ガザ保健当局やパレスチナ中央統計局(PCBS)によると、これまでの戦闘によるガザ側の死者は3日時点で5万523人に達し、このうち約1万8000人は子供だった。子供だけで凍死者は17人、餓死者は52人に上る。また、少なくとも片方の親を亡くした子供は3万9384人で、うち約1万7000人は両親を失い孤児となった。

一時停戦後、南部へ避難していた住民は北部への帰還が認められたが、攻撃再開後は再び各地で退避を迫られている。国連人道問題調整事務所(OCHA)などによると、ガザの65%が立ち入り禁止となり、少なくとも28万人が新たに避難を余儀なくされた。

水や食料、医薬品などの不足も悪化の一途をたどっている。検問所を支配するイスラエルは3月2日、ガザ封鎖を再開して支援物資の搬入を停止。9日には電力の供給も止めた。これにより、住民の主要な「水源」である海水の淡水化装置を稼働できず、ガザの水供給量は通常の3分の1まで落ち込んだ。

小麦粉や燃料も枯渇しており、今月1日にはガザにある製パン店がすべて閉鎖に追い込まれた。OCHAのまとめでは、人口約210万人の9割にあたる195万人が食料不足に直面。妊婦と2歳未満の子供の92%は栄養不足で、6万人以上の子供が急性栄養失調で治療を必要としている。

インフラの被害も甚大だ。すでに建物の約7割と主要道路の約8割が破壊され、家屋の約9割が損壊した。187万5000人が緊急でシェルターを必要とし、「人道危機は文字通り制御不能になっている」(OCHAのガザ担当者)。

一方、停戦に向けた交渉は難航している。ロイター通信などによると、仲介国のエジプトやカタールは3月、ハマスが人質5人を解放する代わりに50日間停戦する案を提示し、ハマスは受け入れを表明した。

ところが、イスラエルは別の停戦案をハマス側に提示。さらに多くの人質解放を求めたとみられるが、ハマス幹部は今月2日、ロイター通信に「イスラエルの対案には返答しないことを決めた」と明らかにした。

双方の妥協が見えない中、ガザの人道状況は日に日に悪化している。国際社会も有効な手立てを打ち出せないのが現状だ。【4月6日 毎日】
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2か月間の停戦が終わって以来、パレスチナ人数十人がほぼ毎日殺害されています。製パン所の近くに集まっていた子供を含む住民も。

****イスラエルの空爆で44人死亡 ガザ当局発表****
パレスチナ自治区ガザの民間防衛機関は、イスラエル軍の空爆により6日に少なくとも44人が死亡したと発表した。一方、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ハマスが支配するガザからロケット弾が一斉発射されたのを受け、「強力な対応」を命じた。

イスラエルが3月18日にガザでの軍事攻撃を再開し、2か月間の停戦が終わって以来、パレスチナ人数十人がほぼ毎日殺害されている。

民間防衛機関のマフムード・バッサル報道官は「きょうの夜明け以降のイスラエルの空爆により、少なくとも44人が死亡した。そのうち21人は(南部)ハンユニスで死亡した」とAFPに語った。

バッサル氏によると、ガザ市アルトゥファ地区のアルナキール通りへの攻撃では、製パン所の近くに集まっていた6人が死亡した。その中には子ども3人が含まれていた。

ハマスは声明で、この攻撃について「意図的な子どもの殺害行為」だとし、「占領軍とそのファシスト指導者らの残忍かつ野蛮な性質を裏付けるもの」だと非難した。

一方、イスラエル軍は6日、ガザから数分間に約10発の「発射物」が発射されたと報告。そのほとんどを迎撃したとしている。これを受けて首相府は、ネタニヤフ首相が「強力な対応」を命じたと発表した。

イスラエル警察は、ガザとの境界に近いアシュケロンに破片が落ちたと指摘。救急隊員は、男性1人が負傷したと明らかにした。

ガザの保健当局によると、イスラエル軍が先月攻撃を再開して以来、ガザでは1330人以上が死亡した。 【4月7日 AFP】
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“トランプ米政権はバイデン前政権が凍結したイスラエル向けの大型爆弾などの兵器供与を再開するなど、同国支援の政策を続ける。イスラエル軍の攻撃に歯止めがかからず、さらに長期化する恐れもある。”【4月7日 産経】

【赤新月社の救急隊や国連職員ら15人が殺害され、埋められた遺体が1週間後に発見された事件 残された動画と矛盾するイスラエル軍の説明】
こうした状況で起きたのが救急車に対するイスラエル軍による救急隊員らの殺害。パレスチナ赤新月社の救急隊や国連職員ら15人が3月23日に銃撃を受け、埋められた遺体が1週間後に発見されました。

この事件に関するイスラエル軍側の説明は死亡した隊員の携帯に残された動画で否定される形にもなっています。

****ガザ救急隊員殺害、イスラエル主張に矛盾 「最後の瞬間」捉えた動画、赤新月社が公開****
パレスチナ赤新月社は5日、ガザでイスラエル軍に殺害された援助活動家リファト・ラドワン氏の携帯電話から回収した、同氏や他の救助隊員らの最期の瞬間を捉えた動画を公開した。

動画では、救急車両であることを示すマークが付いていることや、警光灯が点滅する様子がはっきりと確認できる。

国連とパレスチナ赤新月社によると、ラドワン氏は3月23日にイスラエル軍の攻撃で殺害された15人の人道支援要員の一人。

イスラエル軍は、兵士は「テロリストら」が「不審な車両」で接近してきたため発砲したとし、救急車を「無差別に攻撃したわけではない」と主張している。

軍報道官のナダブ・ショシャニ中佐は車両について、イスラエル当局から事前の許可を得ておらず、ライトを消していたと語っていた。

しかし、赤新月社が公開した動画は、イスラエル軍の主張と矛盾しているようだ。動画の中で救急車はヘッドライトをつけ、警光灯を点滅させながら走行している。

移動中の車内から撮影されたとみられる6分42秒の動画には、夜間に自動小銃の発砲が続く中、赤い消防車1台と複数の救急車が走行する様子が映っている。

車両は道路脇で別の車両の横に止まり、制服を着た男性2人が降りてくる。
動画では2人の救急隊員の声が聞こえ、1人が「車両、車両」と言い、もう1人が「事故のようだ」と応えている。数秒後、一斉射撃が始まり、画面は真っ黒になった。

赤新月社は声明で「この動画は、救急車を無差別に狙ったわけではなく、一部の車両はライトや緊急時のサインなしに不審に接近したとする占領軍の主張に対する明確な反証だ」と指摘した。 【4月6日 AFP】
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さすがにイスラエル側も当初説明を修正していますが、あくまで「ハマスに全責任がある」としています。

****イスラエル軍、ガザ救急隊員殺害で当初の説明を修正 調査は継続****
イスラエル軍は、パレスチナ自治区ガザ南部のラファ近郊で国連職員らが死亡した救急車への攻撃について、新たな詳細を明らかにし、当初の説明を修正した。ただ、現在も調査中としている。

パレスチナ赤新月社の救急隊や国連職員ら15人が3月23日に銃撃を受け、埋められた遺体が1週間後に発見された。

イスラエル軍は当初、無灯火で標識もない「不審な」車両が陣地に接近してきたため発砲したと発表していた。また、パレスチナ赤新月の車両に乗っていたイスラム組織ハマスとイスラム聖戦の戦闘員9人を殺害したと主張していた。

しかし、死亡した男性の携帯電話から回収された動画には、ライトを点灯した救急車と消防車であることが明確に示されており、制服を着た救急隊員が銃撃される様子が映っていた。

事件の唯一の生存者とされるパレスチナ赤新月の救急医療隊員も、明確な標識を付けた緊急対応車両に兵士らが発砲するのを目撃したと証言している。

イスラエル軍当局者は5日、記者団に対し、現場からの最初の報告書には灯火に関する記述がなかったと釈明した。「現時点で分かっているのは、最初の説明をした人物が誤っていたということだ。その理由を究明している」と語った。

「われわれの情報によれば、現場にはテロリストがいた。だが捜査はまだ完了していない」と述べた。過激派だと特定した根拠や証拠については、機密情報であることを理由に説明を拒否した。

また、兵士らが救急隊員に手錠をかけ、至近距離から発砲したとの報道を否定した。

「イスラエル軍が事件を隠蔽しようとした事実は一切なく、直ちに国連に通知した」と述べた。国連がすぐに遺体の回収に来なかったため、兵士は動物が近寄らないように遺体を砂で覆ったという。

道路の通行を確保するために現場にあった車両を重機で移動させたと述べたが、なぜ車両が押しつぶされ、埋められたのかは説明できなかった。

国連は先週、遺体の所在について知らされていたものの、イスラエルにより数日間現場への立ち入りを拒否されていたと指摘した。

米国家安全保障会議のヒューズ報道官は「ハマスは救急車や民間人を人間の盾としてテロに利用している」と述べ、ハマス側に責任があるとの見解を示した。

「トランプ大統領は、この戦術がイスラエルにとって対応が困難な状況を生み出していることを理解しており、ハマスに全責任があると考えている」と述べた。【4月7日 ロイター】
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救急車と消防車であることを認識し15人を殺害、遺体と押し潰した車両を埋める・・・・明確な説明をしてもらいたいものです。
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パレスチナ・ガザ地区  停戦合意破綻 攻撃を強めるイスラエル 西岸地区でも進む土地収奪

2025-03-26 23:41:22 | パレスチナ

(パレスチナ自治区ガザ南部ハンユニスで、イスラエルの攻撃で破壊された建物と子ども=20日(ロイター=共同)【3月25日 共同】)

【破綻した停戦合意 攻撃を強めるイスラエル 増加する住民犠牲】
周知のようにパレスチナ・ガザ地区では、停戦合意の第1段階を終了したものの、ハマスの人質全員解放、イスラエルの完全撤退、恒久的和平という第2段階に進めず、イスラエル・アメリカがハマスに人質全員解放を迫るなか、イスラエル軍の空爆が18日から再開、それに続いて地上作戦も再開されています。

****イスラエル、地上作戦を再開 ガザ住民に「最後通告」****
イスラエルは19日、パレスチナ自治区ガザ地区で地上作戦を再開したと発表した。ガザの住民に対しては、人質を返還し、イスラム組織ハマスを権力から排除するよう求める「最後の警告」を発した。

イスラエル軍は今週、1月の停戦開始以来最も激しい空爆を実施。ガザ民間防衛隊のマフムード・バッサル報道官は19日夜、イスラエルが空爆を再開して以来、ガザ地区で少なくとも470人が死亡したと述べた。

イスラエル軍は「安全地域を拡大し、北部と南部の間に部分的な緩衝地帯を作るために、ガザ地区の中部と南部で標的を絞った地上作戦を開始した」と発表した。

停戦維持を求める外国政府の一斉の呼び掛けにもかかわらずイスラエルが新たな爆撃を続ける中、19日には逃げる民間人の長い列がガザ地区の道路を埋め尽くした。

イスラエルのイスラエル・カッツ国防相はビデオ声明で、2007年以来ハマスが支配している「ガザ地区の住民」に「これが最後の警告だ」と述べ、「米国大統領の助言に従い、人質を返し、ハマスを排除すれば、他の選択肢が開かれるだろう。世界の他の場所に行きたい人々にはその可能性も含まれる」と語った。

ドナルド・トランプ大統領は今月、「ガザの人々へ。美しい未来が待っているが、人質がこのままならそれはない。このままなら、あなた方の命はない!」と発言していた。

2023年10月7日のハマスの攻撃で拘束された251人の人質のうち、58人が依然として拘束されている。そのうち34人については、イスラエル軍が死亡を確認している。

これまでのところ、ハマスはイスラエルの空爆に対して軍事的に反撃しておらず、ハマスの幹部は停戦合意を軌道に戻すための協議に応じる用意があると述べた。しかし、3段階から成る停戦合意を再交渉するというイスラエルの要求は拒否している。

幹部は「ハマスは交渉の扉を閉ざしていないが、新しい合意は必要ないと主張している」とAFPに説明し、イスラエルに「交渉の第2段階を開始するよう」求めた。

停戦合意の第1段階は3月初めに期限切れとなり、その後の進め方を巡る協議は行き詰まっている。 【3月20日 AFP】
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イスラエルの完全撤退を要求するハマスと、ハマスの壊滅を目指すイスラエルの間の溝はまったく埋まっておらず、第2段階のハードルは極めて高く、停戦合意が破綻するのは予想されたことでもありますが、第1段階の間にその溝を埋める何らの動きも策も知恵もなく、予どおり破綻した・・・という感があります。

「とりあえず止めればいい。あとのことは・・・・」というトランプ仲介外交の帰結でもあります。

ガザ住民は「どこへでも好きな所へ行け」と「最後の警告」をされても、住民が人質をとっている訳でもなく、他に行き場もなく、どうしようもありません。ただ攻撃の激しい場所を避けて逃げまどうだけです。

その後もイスラエル軍の攻撃は激しさを増しています。
“イスラエル軍がガザ最南部ラファを攻撃、地上作戦の範囲を拡大…停戦合意は崩壊の様相”【3月21日 読売】

イスラエル軍が包囲するラファでは住民5万人が孤立しています。

****イスラエル軍のガザ攻撃で21人死亡、ラファで住民5万人孤立****
パレスチナ自治区ガザの保健当局は24日、イスラエル軍によるガザ全域への空爆で、少なくとも21人が死亡したと発表した。イスラエル軍はエジプトとの国境に近いラファで作戦を展開し、空爆と地上攻撃を激化させている。

保健当局はイスラエルが18日にガザへの攻撃を再開して以来、約700人のパレスチナ人が死亡したと報告した。少なくとも400人の女性と子どもが含まれているという。

ラファでは、イスラエル軍が部隊を派遣したテル・アル・スルタン地区に数千人が閉じ込められていると地元当局が発表した。

声明で「近隣地域との連絡は完全に途絶えており、住民の安否は不明だ。家族はがれきの中に閉じ込められ、水も食料も医薬品もなく、医療サービスは完全に崩壊している」と訴えた。

パレスチナ民間緊急サービスは、5万人の住民がラファ地区に取り残されていると発表した。

イスラエル軍は、テル・アル・スルタンを包囲し、「テロのインフラ拠点を解体し、地域のテロリストを排除する」と表明した。【3月24日 ロイター】
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ガザ住民の犠牲者は増え続けています。
食糧も医薬品も途絶えています。

“「遺体がいたるところに」ガザの医師たち、イスラエルが数百人のパレスチナ人を殺した夜を語る”【3月22日 HUFFPOST】

****ガザ情勢「悪化の一途」=イスラエル軍猛攻、物資欠乏―レバノン側でも応酬****
イスラエル軍は、21日夜から22日にかけてもパレスチナ自治区ガザの北部などに対する激しい攻撃を続けた。中東の衛星テレビ局アルジャジーラは、猛攻で住民が行き場を失う中、空爆、砲撃と同時に地上侵攻が行われていると報道。食料や医薬品も欠乏しており、「状況は悪化の一途をたどっている」と伝えた。

地元保健当局によると、18日の大規模軍事作戦開始以降の死者は630人を超えた。過去48時間の死者は130人に達した。

イスラエルは今月2日、イスラム組織ハマスに人質を解放するよう圧力をかけることなどを目的に、ガザへの人道支援物資搬入を停止した。食糧供給の不足が次第に深刻化し、現在は「子供に1回分の食事を確保することさえできない」(アルジャジーラ)状況だ。

国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、ガザで満足に機能している病院は皆無だ。攻撃が続く中で、かろうじて一部の機能を維持している病院や仮設診療所に負傷者が次々運び込まれるが、医薬品が足りず、対応しきれない状態だ。(後略)【3月22日 時事】 
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“誤って”かどうかはわかりませんが、赤十字すら攻撃対象に
“イスラエル軍、ガザ地区の赤十字事務所を誤って攻撃”【3月25日 日テレNEWS】

最後の頼みの綱である国連も支援活動を縮小せざるを得ない状況です。

****国連、ガザ人道支援縮小 イスラエルの攻撃再開で****
国連は24日、イスラエル軍によるガザへの攻撃再開を受け、職員の安全を考慮してガザ住民に対する人道支援活動を縮小すると発表した。グテレス事務総長は「去るわけではない。住民の生存と保護に欠かせない支援は継続する」と強調した。

国連によると、ガザでは現地職員以外に国際職員約100人が活動中。縮小により国際職員の約3分の1に当たる30〜35人がガザから退去する。

ガザ停戦合意は1月19日に発効したが、今月18日のイスラエル軍の大規模空爆実施を受け停戦は事実上崩壊。19日には中部デールバラハで国連職員が利用していた施設がイスラエル軍の攻撃を受け、1人が死亡、6人が負傷した。【3月25日 共同】
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こうしたなか、この事態を招いた一方の当事者でもあるハマスに対する抗議の声もガザでは上がっているようです。当然でしょう。

****ガザで反ハマスの抗議デモ 事態収束要求、数百人参加****
中東の衛星テレビ、アルジャジーラは26日、パレスチナ自治区ガザ北部で25日にイスラム組織ハマスに対する抗議デモがあり、数百人の住民が参加したと報じた。

ガザでハマスへの抗議活動が起きるのは珍しい。住民は「戦争をやめろ」と書かれた横断幕を掲げ、イスラエル軍の攻撃激化で悪化する事態の収束を求めた。

デモでは、「食べ物がない。安全がない。水もない。もう十分だ」「ハマスは出て行け」と叫ぶ参加者もいた。

一方、パレスチナ通信によると、イスラエル軍は26日もガザ各地で攻撃を続けた。北部ジャバリヤやベイトラヒヤでは計9人が死亡。南部ハンユニスでも無人機攻撃で死傷者が出た。【3月26日 共同】
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アメリカは「4月下旬ごろまで暫定的に停戦し、その間に人質を解放する」という停戦案を提示しており、ハマスは検討中とのこと。

****「4月下旬まで」の停戦案検討か ハマス、米提示****
イスラム組織ハマスは21日、パレスチナ自治区ガザで4月下旬ごろまで暫定的に停戦し、その間に人質を解放するとした米国の提案を検討中だと明らかにした。ロイター通信が伝えた。

イスラエル軍は21日もガザ各地で空爆や地上侵攻を継続。ハマスが米国案を受け入れるまで攻撃を続ける構えで、ハマスの対応が焦点となっている。

一方、国連はイスラエル軍による18日の大規模空爆以降、ガザで200人以上の子どもが死亡したと表明した。中東メディアによると、18日以降のガザ全体の死者は600人近くに達している。

ロイターによると、停戦交渉を仲介するエジプトはハマスに対し、拘束する人質全員の解放とイスラエル軍のガザ完全撤収に関して期限を設定することを提案したという。ハマスは仲介国を通じて、イスラエル軍の攻撃停止を模索している。【3月22日 共同】
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【ネタニヤフ首相は政権維持で「大成功」】
イスラエル側は強硬な姿勢で、ハマスが人質解放に応じない場合、ガザの制圧地域を拡大して一部を併合するなどと警告しました。

****「人質解放しなければガザ一部を併合」イスラエル国防相が警告 ハマスはアメリカの提案含め協議を通じた停戦再開に前向き姿勢****
パレスチナ自治区ガザへの攻撃を再開したイスラエルの国防相は、イスラム組織ハマスが人質解放に応じない場合、ガザの制圧地域を拡大して、一部を併合するなどと警告しました。(中略)

イスラエル軍は地上作戦を再開していますが、カッツ国防相は21日、ガザの制圧地域を拡大するよう軍に指示したとの声明を出しました。「ハマスが人質解放を拒めば拒むほど、より多くの土地を失い、イスラエルによって併合されるだろう」などとして、ガザの一部を併合すると警告しています。

こうした中、ハマスは前日に続いて21日もイスラエルに向けてロケット弾2発を発射しました。

一方で、ハマスは来月下旬まで暫定的に停戦を延長し、その間に人質を解放するというアメリカの提案を含め「様々な案の検討を続けている」とし、協議を通じて停戦の再開を目指す姿勢も示しています。【3月22日 TBS NEWS DIG】
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しかし、イスラエルも非ユダヤ人が居住するガザを併合してどうするのでしょうか?
非ユダヤ人がますます増加することになりユダヤ人国家を危うくすることになります。また、パレスチナ人に選挙権などの権利を与えなかったり、追放したりすれば「人種差別国家」として国際批判を強めるだけです。 
だからこそパレスチナ人国家を樹立して「2国家共存」しかない・・・・と、イスラエル・トランプ政権以外は考えているのですが。

当面の話としては、ネタニヤフ首相はガザ攻撃再開で極右政党の協力を取り付けることで、予算案を成立させる事が出来、とりあえず自身の政治生命をつないだ形になっています。ガザ住民の多くの犠牲と引きかえに。

****イスラエル、政権維持へ「終わりなき戦闘」=ハマス壊滅は非現実的―ガザ攻撃再開から1週間****
イスラエルのネタニヤフ政権が、パレスチナ自治区ガザへの大規模攻撃を再開してから25日で1週間が経過した。政権維持のためネタニヤフ首相がイスラム組織ハマスとの停戦合意を無視し、「終わりなき戦闘」(地元紙ハーレツ)を始めたという批判が、イスラエル国内でも高まっている。

ネタニヤフ氏は戦闘再開に当たり、2023年10月のハマスによるイスラエル奇襲で拉致された人質の奪還と、ハマスの壊滅が目標だと強調した。しかし、奇襲以降ガザで長期にわたり続いた戦闘でもハマスを無力化できなかったことから、今回の大規模攻撃で組織根絶に追い込めると見込むのは非現実的だ。

元イスラエル軍情報機関トップのアモス・ヤドリン氏は、「二つの目標は段階的にしか達成できない」と指摘。それでも政権が戦闘再開を決断したのは、25年予算の議会可決を図るためだったとの見方を示す。

ネタニヤフ政権は、今年1月の停戦発効に反発して極右政党「ユダヤの力」が連立を離脱して以降、苦しい議会運営を強いられていた。今月31日までに予算を可決できなければ、憲法規定により議会は自動的に解散となり、ネタニヤフ氏は総選挙で政権の座から引きずり降ろされる可能性があった。

しかし、大規模攻撃が再開された18日、ユダヤの力はこれを評価して連立復帰を決定。予算は25日可決され、選挙は当面回避された。

ヤドリン氏はこうした政局を踏まえ、ハマスとの交渉で人質解放の道筋が付いたとしても、ネタニヤフ氏が停戦を継続させる可能性は低かったと解説。「予算可決後に首相が人質救出を優先してくれるよう願う」と述べた。【3月25日 時事】
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こうしたネタニヤフ首相の「ガザ攻撃再開」による政権維持について、その目論見は「大成功」したと伝えています。

【ヨルダン川西岸地区で進む土地収奪】
一方、ヨルダン川西岸地区でもイスラエル人入植者による土地収奪が加速しています。

****イスラエル人入植者、牧羊装いヨルダン川西岸の土地強奪 報告書****
イスラエルの入植活動を監視するNGO「ピース・ナウ」と「ケレム・ナボット」は、イスラエル人入植者は近年、牧羊拠点の設置を通じてパレスチナ自治区ヨルダン川西岸の土地の14%を奪っているとの報告書を発表した。

「悪しきサマリア人」と題する報告書は、入植者が過去3年間に奪った全ての土地の70%は「牧羊活動を装って」奪ったものだと指摘。

イスラエルが1967年から占領している西岸の入植者について、牧畜を通じてパレスチナ人の農地に進出し、パレスチナ人に対して徐々に土地への立ち入りを禁じているとしている。

また、入植者はパレスチナ人を追い出すため、「イスラエルの政府と軍の支援を受けて」嫌がらせや脅迫、暴力などを行っているとし、2022年以降、西岸全域でパレスチナ人の牧羊コミュニティー60以上がこのような方法で土地を追われたと報告している。

こうした被害の圧倒的多数は、1990年のオスロ合意でイスラエルの完全支配下となったC地区に集中している。

イスラエルの閣僚を含む極右政治家らはここ数か月、友好的なドナルド・トランプ米政権を利用して、2025年内にヨルダン川西岸の一部または全部を併合することを提案している。 【3月22日 AFP】
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ヨルダン川西岸の一部または全部を併合がイスラエルにとって良いことではないのは、ガザ併合の話と同じです。しかし、極右勢力の動きは止まりません。

こうしたなか、『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』でアカデミー賞のドキュメンタリー長編賞を受賞したヨルダン川西岸出身のハムダーン・バラール監督が入植者に襲撃された後、イスラエル軍に身柄を拘束される事態も。

****オスカー受賞のパレスチナ人監督、イスラエル軍が拘束 共同監督明らかに****
占領下のヨルダン川西岸におけるイスラエル人の入植の実態を描き、アカデミー賞のドキュメンタリー長編賞を受賞した映画『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』の共同監督の一人、パレスチナ人のハムダーン・バラール氏が24日、西岸で入植者に襲撃された後、イスラエル軍に身柄を拘束された。同じく監督を務めたイスラエル人のユヴァル・アブラハーム氏が明らかにした。

アブラハーム氏はX(旧ツイッター)に、バラール氏が「入植者の集団」に襲撃されたと投稿。「殴られて頭と腹部を負傷し、出血していた。自ら呼んだ救急車に(イスラエルの)兵士が乗り込んで来て、連行された。その後、どこにいるか分からない」とつづった。

イスラエル軍の占領に反対するNGO「ユダヤ非暴力センター」は、事件が起きたのは西岸南部の集落スシヤで、メンバーが襲撃の様子を撮影したとしている。

イスラエル軍はAFPに対し、情報の真偽を確認中だと回答した。 【3月25日 AFP】AFPBB News
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「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」は、イスラエル軍による村の破壊を阻止しようとしたマサーフェル・ヤッタ地域の住民たちの闘いを記録した映画で、第97回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画賞を受賞し、バラールさんらは3月2日の授賞式に出席していました。

その後、同氏は解放されたようです。激しい暴行を受けたようですが。

****「ノー・アザー・ランド」パレスチナ人監督、イスラエル軍から解放される。兵士からの暴行を証言「特に攻撃された」****
(中略)「ノー・アザー・ランド」で共同監督を務めたパレスチナ人のバーセル・アドラーさんはSNSで、ハムダーンさんが治療を受けている写真を添え、軍から解放されたことを報告。「彼は兵士や入植者から全身を殴打されました」と訴えた。写真からは、バラールさんの服に血がついていることがわかる。

バラールさんは、イスラエル人入植者たちが村を襲撃したとき、入植者たちはバラールさんの頭を「サッカーボールのように」蹴ったとAP通信に述べている。軍に拘束された後も目隠しをされ、イスラエルの兵士らが交代で見張りに来るたびにバラールさんを蹴ったり棒で殴ったりしたとも証言している。(後略)【3月26日 HUFFPOST】
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パレスチナ・ガザ地区  イスラエルの大規模空爆再開で死者400人超 ネタニヤフ首相の政治事情も

2025-03-19 22:13:52 | パレスチナ

(【3月18日 ARAB NEWS】遺体を収めた袋の小ささが痛ましい)

【「地獄の門」が開いたガザ地区 死者400人超 トランプ政権、イスラエルの攻撃を容認】
停戦合意の第1段階が終了し、イスラエルの完全撤退、ハマスの人質全員解放、恒久的停戦の実現の第2段階への進展が見られなかったパレスチナ・ガザ地区をめぐっては、アメリカが12日、第1段階停戦延長に向けた新提案を提示

****ガザ停戦で数週間延長案=ハマスに提示、人質解放迫る―米特使****
米国のウィトコフ中東担当特使は14日、パレスチナ自治区ガザの停戦延長に向けた新提案を12日に行ったと正式発表した。ただ、イスラム組織ハマスが水面下で「実現不可能な要求」を突き付けていると主張。拘束中の人質を解放しなければ必要な措置を講じるとハマスに警告した。

ウィトコフ氏はイスラエルとハマスの停戦について、3月末に終わるイスラム教のラマダン(断食月)を超え、数週間の延長を提案したと説明。期間中にハマスが拘束する人質を解放し、恒久停戦に向けた枠組みを話し合うという内容で、イスラエルが現在停止しているガザへの支援物資搬入の再開も盛り込んでいる。【3月15日 時事】 
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トランプ大統領は5日、自身のSNSに「今すぐ人質を解放しなければ、地獄を見ることになる」と書き込み、ハマスに「最後の警告」を行っていましたが、ハマスはこの提案受入れを拒否。

ハマス側の拒否姿勢に対し、イスラエルは18日、大規模空爆を再開。
イスラエル首相府は「イスラム組織ハマスが停戦を巡る米国による提案を全て拒否したためネタニヤフ首相が攻撃を指示した」との声明を発表しています。

パレスチナ保健当局によると、空爆で多くの子どもを含む404人が死亡したとされています。

****イスラエルがガザ大規模攻撃、死者400人超 ハマス「停戦合意違反」*****
イスラエル軍は、18日未明にパレスチナ自治区ガザの数十の標的を攻撃、400人以上が死亡した。イスラム組織ハマスと1月に合意した停戦の延長交渉が膠着する中、大規模な攻撃に踏み切った。ハマスは停戦合意違反だと非難した。

パレスチナ保健当局によると、空爆で多くの子どもを含む404人が死亡、562人が負傷した。ハマスの幹部も複数死亡したもようだ。

イスラエル軍は、ハマスによる攻撃を阻止するための「先制攻撃」とし、ハマスの中級司令官や幹部を標的にしたと明らかにした。

イスラエル首相府は「ハマスが人質解放を繰り返し拒否し、ウィットコフ米大統領特使や仲介者から受け取った提案を全て拒否した」ことを受けた措置と説明。「イスラエルは今後、軍事力を強めてハマスに対し行動する」と表明した。
ハマスはイスラエルが停戦合意を破棄したと非難する声明を出した。ガザではなお59人の人質が解放されずにいる。

米ホワイトハウスのヒューズ報道官は、今回の攻撃について、事前にイスラエルから話があったと明らかにした。その上で「ハマスは、人質を解放して停戦を延長することもできたが、拒否と戦争を選択した」と述べた。【3月18日 ロイター】
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上記記事にもあるようにイスラエルの攻撃再開は事前に連絡を受けたアメリカが容認する形で行われています。

****トランプ大統領、ハマスに業煮やし攻撃容認か…イスラエルから事前に説明****
米国のトランプ大統領は、人質解放に応じないイスラム主義組織ハマスに業を煮やし、イスラエルの攻撃再開を容認したとみられる。ただ、自らパレスチナ自治区ガザの復興案を示すなど、トランプ氏が意欲を示していた中東和平の実現は遠のきかねない状況だ。

ホワイトハウスのキャロライン・レビット大統領報道官は米東部時間17日夜、イスラエルによるガザへの攻撃を受け、米FOXニュースの番組で、イスラエル側から事前に説明があったと明らかにした。米国家安全保障会議(NSC)の報道官は読売新聞の取材に対し、「ハマスは停戦を延長するために人質を解放することもできたが、拒否し、戦争を選んだ」と非難した。

トランプ政権は、「外国テロ組織」に指定したハマスと異例の直接交渉に乗り出すなど、イスラエルの反発を招きながらも人質の解放に力を注いできた。

こうした動きに関連し、トランプ氏は5日、自身のSNSに「今すぐ人質を解放しなければ、地獄を見ることになる」と書き込み、ハマスに「最後の警告」を行った。スティーブン・ウィトコフ中東担当特使も14日の声明で、ハマスが交渉を巡って時間稼ぎをしていると批判し、「相応の対応」をとると強調していた。

トランプ政権としては今回、イスラエルに攻撃を認めることでこうした警告を実行に移した形だ。一方で、ハマスが態度を硬化させれば停戦交渉への影響は避けられない。自身が「成果」として誇りたい中東和平の実現に向け、トランプ氏がハマスへの圧力をどこまで強めるのか注目される。【3月19日 読売】
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束の間の停戦から再び「地獄を見る」ような激しい空爆・・・ガザ住民は恐怖におののいています。

****ガザ平穏一転、爆撃の恐怖 「父さん一緒に死にたい」****
イスラム教で最も神聖な月、ラマダン(断食月)の平穏が突然、破られた。イスラエル軍が18日に攻撃を再開したパレスチナ自治区ガザ。

絶え間ない爆撃に住民は恐怖に陥った。「お父さん、一緒に死にたい」と泣いて懇願する子ども。疲れ果てた住民は「地獄への扉がまた開いた」と絶望した。

「表現できないくらいの恐怖を感じている」。北部ガザ市のハメド・マフディさん(38)は電話取材に訴えた。18日午前2時ごろ、砲撃と爆発の音で目覚めた。「悪夢がまた始まった」

4人の子どもは震えているという。マフディさんが子どもたちに「死ぬかもしれない」と伝えると、長男(8)はこう返した。「お父さん、離ればなれになるより、一緒に死にたい」
マフディさんは「今、子どもたちと妻を抱きしめている。死ぬ瞬間までお互い顔を見合わせる」と話した。

住民によると、イスラエル軍の戦闘機やヘリコプターが飛来する音が鳴り続け、火災も発生。砲撃で吹き飛んだ子どもを探す親の姿も。【3月18日 共同】
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ネタニヤフ首相は今回の攻撃について「始まりにすぎない」とも。

****イスラエル首相、ガザ攻撃「始まりにすぎない」=停戦交渉と同時並行****
イスラエルのネタニヤフ首相は18日の演説で、同日未明に行ったパレスチナ自治区ガザへの大規模軍事作戦について「始まりにすぎない」と述べた。

多数の民間人が空爆の巻き添えになったことに国際社会から批判が強まる中、あくまでイスラム組織ハマスの壊滅まで軍事行動を継続する方針を示した。

ネタニヤフ氏は停滞中のハマスとの停戦交渉に関し「これからは、協議は砲火の下でのみ行われる」として戦闘と並行して進める考えを強調。「さらなる人質解放には軍事的圧力が不可欠だ」とも述べた。また、サール外相も「(作戦は)1日限りではない」と指摘した。

中東の衛星テレビ局アルジャジーラは、イスラエル軍が18日夜から19日にかけてガザ各地を空爆し、少なくとも24人が死亡したと伝えた。ロイター通信によれば、戦車による砲撃も行われた。【3月19日 時事】 
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【ネタニヤフ首相 攻撃再開で極右政党の協力を得るも、ユダヤ教超正統派の宗教学生の徴兵免除をめぐる問題も】
イスラエル・ネタニヤフ首相には人質解放・ハマス壊滅を実現するという表の目的以外に、戦闘再開が都合がよい政治的事情もあります。

戦闘再開を求める極右政党の協力がないと予算案が通らないかも・・・そうなると解散・総選挙・・・支持率が極めて低いネタニヤフ首相は選挙に敗北して政権を失い、政治的・司法的責任を追及される・・・という自身の政治生命がかかっています。

****極右政党が政権復帰表明 イスラエル、ガザ空爆歓迎****
イスラエルの極右政党「ユダヤの力」は18日、ネタニヤフ連立政権に復帰すると発表した。

パレスチナ自治区ガザでの戦闘を巡り、同党は1月、イスラム組織ハマスとの停戦に合意したネタニヤフ首相を非難し政権から離脱。

同党党首で、対パレスチナ強硬派のベングビール前国家治安相はこの日、イスラエル軍によるガザ大規模空爆を歓迎した。空爆が政権復帰を後押ししたとみられる。(中略)

イスラエルでは現在、国会が予算案を審議中。今月末までに承認されなければ、解散・総選挙になる可能性が強まる中、政権は内部に予算案反対の勢力も抱えており、「ユダヤの力」の協力を仰いでいた。【3月18日 共同】
********************

極右政党「ユダヤの力」の政権復帰でネタニヤフ首相は安泰か・・・と言えば、そうでもないようで、別の問題も。
ユダヤ教超正統派の宗教学生の徴兵免除をめぐる問題です。

これまでユダヤ教超正統派の宗教学生の徴兵が免除されてきたことに、世論の反発が高まっています。ただ、ネタニヤフ首相は連立を組むユダヤ教超正統派の政党の協力も必要としています。

****イスラエル連立政権、超正統派学生の徴兵免除巡り不和****
イスラエル連立政権に加わるユダヤ教超正統派の政党が、ネタニヤフ首相に倒閣をちらつかせて超正統派の宗教学生の徴兵免除を迫っている。

連立政権を構成する超正統派政党2つのうち、「ユダヤ教トーラ連合」の一部議員は6日付の書簡で、政府が超正統派学生の徴兵免除を正式に認める新法を成立させなければ、予算案に反対票を投じると表明した。

政府は月末までに予算案を通せない場合、解散総選挙を行う必要がある。ユダヤ教トーラ連合は議会で7議席を持つ。

ネタニヤフ首相はこれまでも連立内の不和を収めてきた実績があり、今後の成り行きを予想するのは時期尚早だ。ただ専門家は、超正統派議員らは今回一歩も引かない構えであり、首相は予算を通すため連立外に協力を仰ぐという異例の対応を迫られるかもしれないと述べた。

首相府はコメントを控えた。【3月19日 ロイター】
*********************

これまでもこの種の危機をいくつも乗り切ってきた海千山千のネタニヤフ首相ですから何とかするのでしょう。
ただ、綱渡り状態の政権運営が続きます。

そのかげで、ガザ住民の犠牲者は膨れ上がっていきます。

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パレスチナ・ガザ地区の停戦合意第1段階が終了するも、見えないその先 戦闘再開の可能性も

2025-03-03 23:49:21 | パレスチナ
(ガザの「将来」とされる「中東のリビエラ」でくつろぐトランプ大統領とネタニヤフ首相【2月26日 毎日】)

【第1段階の期間が終了 これからどうする? 見えない第2段階】
ウクライナはトランプ・セレンスキー両大統領の公開バトルで近日中の停戦は難しくなり、アメリカの武器支援停止も現実味を帯びる中で欧州がどこまでウクライナを支えられるのか、ウクライナとアメリカの関係修復は実現するのか・・・といった混迷が深まっています。

パレスチナ・ガザ地区の戦闘も、ハマスの人質33人解放、イスラエルはパレスチナ人週百人を解放、その他、駐留イスラエル軍は東に移動、ガザ住民の帰還、救援物資輸送トランクの通行許可を内容とす1月19日に始まった6週間の第一段階が3月1日に終了しました。

予定では、ハマスは残りの人質全員を解放、イスラエル軍は完全撤退し、恒久的戦闘停止を宣言するという第2段階に入ることとされていましたが、その高いハードルを超える交渉はほとんど進まず、先行きはまったく不透明、戦闘再開も視野に・・・といった状況になっています。

なお、第3段階はガザの復興です。

イスラエルは第2段階へ進む道筋が見えないなか、とりあえず第1段階の一時停戦を延長するとしているのに対し、ハマスは第1段階延長を拒否し、イスラエル軍完全撤退・恒久的戦闘停止の第2段階にすみやかに以降することを求めています。

****ハマス、停戦第1段階延長を拒否=1日期限、イスラエル案に反発****
イスラム組織ハマス幹部は1日、パレスチナ自治区ガザでの停戦について、イスラエル側が「第1段階延長を提案した」と述べた上で、これを拒否する考えを示した。中東のテレビ局アルアラビーヤのインタビューで語った。

イスラエルは残る人質の奪還に関し、軍完全撤退を含む第2段階移行ではなく、第1段階延長を模索している。

第1段階は1日が期限で、これまで停戦はおおむね維持されてきた。双方とも期限切れによる戦闘再開は望んでいないとみられるが、ハマス側は予定通り2日に恒久停戦を見据えた第2段階に入るよう求めており、協議は難航。ガザで4万8000人以上が死亡した戦闘が再燃する恐れもあり、先行きは不透明だ。【3月1日 時事】
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これに対しイスラエルは第1段階延長としての人質解放をハマスに求め、ガザへの援助物資の搬入を停止してハマスへの圧力を強めています。 第1段階延長はアメリカ・トランプ政権の提案とのことで、イスラエルはこのアメリカ提案を受け入れるとしています。

****イスラエル、ガザへの物資搬入停止 ハマスは「停戦合意違反」と反発****
パレスチナ自治区ガザ地区の停戦を巡り、イスラエル首相府は2日、米国が提案した停戦の「第1段階」の延長案を受け入れたと発表した。

イスラム教の断食月「ラマダン」とユダヤ教の祝祭「過越祭」の期間中は停戦を維持するという案。ただ、イスラム組織ハマスは恒久的停戦につながる「第2段階」への移行を求めており、第1段階の延長案を拒否しているという。

1月19日に発効した第1段階は42日間で、3月1日に期限を迎えた。この期間中にイスラエルとハマスは第2段階に向けた協議を始めるとされていたが、第1段階の継続に力点が置かれ、停戦を維持しながらの交渉が続いている。

ラマダンは2月28日ごろに始まっており、3月29日ごろまで。過越祭は4月12日ごろから20日ごろ。第1段階の延長案はトランプ米政権の中東担当特使、ウィットコフ氏が提案したという。

イスラエル首相府によると、延長案の期間は42日間で、初日にハマスが拘束している人質の半数を解放する。その後、恒久的停戦で合意すれば、ハマスは残りの人質も解放する。イスラエルは42日間の延長後、交渉が効果的ではないとの印象を受けた場合は戦闘を再開できるという。

イスラエル首相府は、ハマスがこの延長案を拒否しているとして、ハマスが態度を変えるなら直ちに交渉に入ると主張している。

また、イスラエルのネタニヤフ首相は2日、ガザ地区への人道支援物資を含むすべての物資の搬入の停止を決定したと発表した。停戦の第1段階が終了したことに加え、ハマスが米国の提案を拒否したためだと主張している。イスラエル軍はガザ地区のすべての検問所を閉鎖した。

これに対してハマスは、ネタニヤフ氏の人道支援物資の搬入停止の決定を、停戦合意違反だと反発。イスラエルが米国の停戦延長案を受け入れたことについては「停戦の第2段階の交渉に入ることから逃れようとする露骨な試みだ」と非難。人質の解放の唯一の方法は、合意を守り、第2段階に向けた交渉に入ることだと主張した。【3月2日 毎日】
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イスラエルのネタニヤフ首相は「イスラエルは人質の解放なくして停戦を認めない」とし、「もしもハマスが拒否を続ければ、さらに重大な結果を招くだろう」とけん制しています。

これに対してハマスは「脅迫だ」と反発し、「合意に対するあからさまなクーデターだ」と非難。エジプトとカタールによる仲介を求めています。【3月3日 ロイターより】

【イスラエルはガザへの人道支援物資の搬入をすべて遮断してハマスに圧力 高まる戦闘再開の懸念】
イスラエルがガザへの援助物資の搬入を停止していることで、結果的にガザ住民全員を人質にとったような形にもなっていますが、アメリカは「理解している」とのこと。

****「食料を武器に使うな」アラブ諸国がイスラエル非難 ガザ停戦、対立先鋭化で継続見通せず****
イスラエルが2日、パレスチナ自治区ガザへの人道支援物資の搬入をすべて遮断したことを受け、アラブ諸国から非難が相次いだ。

イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスのガザの停戦合意は第1段階が1日に期限を迎え、停戦維持に向けた交渉は続く可能性があるが対立は先鋭化しており、波乱含みの情勢だ。

物資搬入の停止を受け、両者の協議を仲介するカタールの外務省は「食料を武器として使っている」とし、停戦合意や国際人道法に違反していると非難した。地域大国サウジアラビアの外務省も、住民が人道危機に直面するなかでの搬入停止は「集団的懲罰」だと批判する声明を出した。

イスラエル首相府は2日、トランプ米政権のウィットコフ中東担当特使が提示したとされる一時停戦案に同意すると表明した。しかし、ハマスは合意に従い第2段階に移行すべきだとしてこの案の受け入れを拒否し、イスラエルが物資搬入を止めた。ネタニヤフ首相は「ハマスが物資を盗む」のを防ぐためだと理由を述べた。

第2段階では双方が停戦恒久化に向けた措置を行う見通し。ただ、ハマス壊滅を目標とするネタニヤフ氏は「停戦は一時的だ」と述べ、戦闘再開に含みを残してきた。サール外相は物資搬入を停止したイスラエルの決定について、米国は「理解している」とした。

ハマスは物資の搬入停止は「脅迫」だとし、第2段階に向けた協議を始めない限り、拘束する人質は解放しないと表明している。【3月3日 産経】
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そもそも、イスラエルはハマス壊滅を目指しており、ハマスが残存する形での完全撤退・恒久的停戦はあり得ないでしょう。 その点で、もともとこの停戦合意は実効性をもたない、とりあえずの一時停戦・人質解放のための「方便」にすぎないものだったと考えられます。

ハマスが圧力に屈して第1段階がアメリカ案に沿って延長されても、その延長期限が切れたらまた同じ問題が起きるでしょう。

イスラエル極右勢力は早期の戦闘再開を求めており、いずれ何らかの理由をつけて戦闘が再開される可能性が高いと思っています。

【ガザの将来は「中東のリビエラ」か、さもなくば・・・?】
上述のように停戦すら危うい状況で、ガザの復興云々を語る状況でもないように思われますが、例のトランプ大統領のガザ再開発プラン動画・・・・もうガザ住民のことなどまったく視野になく、振り切れています。

****ガザを金ぴかリゾートに? トランプ氏がAI生成動画を投稿 「ガザ所有」構想を拡散****
トランプ米大統領は26日、自身の交流サイト(SNS)アカウントに、パレスチナ自治区ガザが豪華なビーチリゾートに変貌した様子を描いたイメージ動画を投稿した。

ガザを米国が「所有」するとの自身の主張を広げる狙いとみられるが、パレスチナや国際社会の反発は必至だ。
人工知能(AI)で生成された約30秒の動画では、廃虚となったガザからトンネルを抜けると近代的な高層ビルやマンションが立ち並ぶリゾート地が出現。

アップテンポのダンス音楽とともに、金色の巨大トランプ像や、空から降り注ぐ紙幣に大喜びする子供、「トランプ・ガザ」の看板を掲げたカジノ風の建物などが次々と映し出される。

ほかにも、プールサイドで日光浴する海水パンツ姿のトランプ氏とイスラエルのネタニヤフ首相や、満面の笑みで食べ物をほおばる大富豪のイーロン・マスク氏が登場。

イスラム原理主義組織ハマスのメンバーに擬したとみられるひげの男性がベリーダンサーの格好で踊ったり、トランプ氏が酒場で女性と踊ったりする戯画的な表現が盛り込まれている。

トランプ氏は今月4日、イスラエルとハマスの停戦に関連し、すべてのガザ住民をエジプトやヨルダンなどの第三国へ移住させた上で、ガザを米国が「所有」し不動産開発を行う構想を発表。ガザを「中東のリビエラ」にすると語った。

トランプ氏は今回の動画を投稿することで自身が思い描くガザの「未来予想図」の一端を表明した格好だ。【2月27日 産経】
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もちろん批判は多々ありますが、トランプ大統領はこの動画、気に入ってるとか。

では、住民を排除しての中東のリビエラで出なければ、ガザの未来はどうなるのか?

****米ガザ構想代替案「用意できた」=停戦第2段階の協議訴え―エジプト****
トランプ米大統領が公表した米国によるパレスチナ自治区ガザの所有や住民移住の構想に対し、アラブ諸国が検討している代替案について、エジプトのアブデルアティ外相は2日の記者会見で、用意ができたと語った。ロイター通信が報じた。

代替案は住民がガザ域外に出ないことを前提にしており、4日にカイロで開かれるアラブ連盟の首脳会議で提示される見通し。アブデルアティ氏は代替案が首脳会議で採択されれば、国際的な支援や資金提供を求めていく考えを強調した。

また、別の報道によれば、アブデルアティ氏はガザ停戦交渉に関し、恒久停戦を目指す第2段階の協議を開始する必要性も指摘。「困難だが、始めるための政治的な意志が必要だ」と述べた。【3月3日 時事】
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サウジアラビアは砂漠の中に全長170km(mではなくkm!!)、高さ500m、幅200mの壁状の超高層ビル群からなる新都市をつくる計画に着手していますが、その費用は1千億から2千億米ドルと推定されていおり、1兆ドルに達するという試算もあるようです。

そのほんの一部でもガザに投資されれば・・・という勝手な思いも。

いずれにしても、現在の停戦がどうなるのか? 第2段階に移行できるのか?、それとも戦闘が再開し、ハマスが壊滅するまで、ガザに人が住めなくなるまで続くのか? それによってガザの「将来」も変わります。

戦闘再開で更にガザが破壊され、住民の隠れ場もないような状態になれば、案外「中東のリビエラ」も現実味を増してくるのかも。

しかし、その“リビエラ”は旧ガザ住民の「第2のナクバ」への怨嗟で呪われた存在となり、常にテロの恐怖に怯えるリゾートになりそう。ビーチで水着姿のトランプ大統領とネタニヤフ首相がくつろぐ・・・ようなものにはならないかも。
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トランプ大統領  ガザ住民の完全移住、アメリカによるガザ再開発を公の場で表明 トランプ流の取引?

2025-02-05 23:39:39 | パレスチナ

(会談する米国のトランプ大統領(右)とイスラエルのネタニヤフ首相=米ホワイトハウスで2025年2月4日、AP【2月5日 毎日】 自身の“壮大な提案”をまくしたてるトランプ大統領の傍らで、笑いをかみ殺したようなネタニヤフ首相・・・そんな印象も)

【ガザを「中東のリビエラ」に】
トランプ大統領のパレスチナ・ガザ地区から住民を全員ヨルダン・エジプトなどに移住させ、ガザは再開発するという発想は、1月26日ブログ“トランプ大統領  ガザ住民をヨルダン・エジプトに「一掃」する「ガザ再建案」”でも取り上げました。

その時点では、トランプ大統領が大統領専用機「エアフォースワン」の機内で記者団へ語った話ということで、「どこまで本気かね・・・」という感もありましたが、再び、今度はイスラエル・ネタニヤフ首相との会談後、首相が同席する場での発言ということで、アメリカの正式な提案という形になってきています。

もちろん、後述のように、トランプ流ディールの一環という側面もあるでしょうが。

いずれにしても、公の場に持ち出したことで、トランプ提案をめぐってイスラエルや中東諸国なども反応を示し、提案が現実のものとして動き始めています。

ガザをアメリカが「所有」し、米軍派遣の可能性も視野に入れて再開発を行うとも。

****トランプ氏、アメリカの「ガザ所有」を主張 住民の「再定住」も提案****
「世界中の人に住んでもらう」アメリカのトランプ大統領がパレスチナ自治区ガザの住民「全員」を移住させたうえで、アメリカがガザを所有すると主張しました。

4日、イスラエルのネタニヤフ首相と会談したトランプ大統領。その後の会見で飛び出した発言が…

トランプ大統領
「我々がガザを所有する。破壊された建物を取り除いて、限りない雇用と住居を生み出す経済開発を行う。『中東のリビエラ』これはとても素晴らしい場所になる」

パレスチナ自治区ガザをフランス・イタリアのリゾートになぞらえ、イスラエル軍によって破壊されたガザをアメリカが経済的に発展させる計画を提案しました。記者から「アメリカ軍の兵士を送るか」と問われると…

トランプ大統領
「(Q.ガザの治安確保のために米軍部隊を派遣しますか?)もし必要ならそうする。我々がガザを引き継いで開発する」 と、派遣の可能性を否定しませんでした。

ガザには、イスラエル軍とイスラム組織ハマスの停戦合意を受けて避難先から自分たちの土地に戻る多くの住民がいます。トランプ大統領は会談で、ガザ住民は全員ガザを去り、周辺国など別の場所に「再定住」すべきだとし、こう主張しました。

トランプ大統領
「人々はガザに戻るべきではない。パレスチナ人がガザに戻りたがるのは、代わりに住む場所がないからだ。代わりの場所があればガザに戻りたいと思わないし、安全で美しいその場所に住みたがるだろう」

一連の発言は、パレスチナ国家樹立による「2国家共存」という、これまでのアメリカの中東政策をひっくり返しかねないもので、パレスチナ人の強制移住は「民族浄化」との批判もあがっています。

イスラエル ネタニヤフ首相
「あなたは歴代大統領のなかでイスラエルの最高の友人だ」

ネタニヤフ首相はトランプ大統領をこう持ち上げましたが、中東で影響力を持つサウジアラビアの外務省は、トランプ氏の会見後「パレスチナ人をその土地から追い出そうとする試みなど、パレスチナ人の正当な権利に対する、いかなる侵害も完全に拒否する」との声明を出しています。【2月5日 TBS NEWS DIG】
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確かにガザの復興は困難を極める問題です。
“先月発表された国連の被害評価報告書によると、イスラエルの爆撃による5000万トン超のがれきの撤去には21年かかり、費用は最大12億ドルに上る可能性があるとみられる。”【2月5日 ロイター】

効率性の観点で言えば、トランプ大統領の構想には一理あります。しかしながら・・・

“トランプ氏はガザについて「何十年にもわたって死と破壊の象徴だった」と語り、住民全員が域外への再定住を希望していると一方的に主張した。「彼らは地獄のような暮らしをしてきた。ガザは人が住む場所ではない。彼らが戻りたい唯一の理由は他に選択肢がないからだ」と指摘した。”【2月5日 読売】

“180万人のガザ市民は立ち去らなければならない。そして、その費用は裕福な周辺国家が負担する。”【2月5日 FNNプライムオンライン】とも

「中東のリビエラ」・・・・前回(1月26日ブログ)でも指摘したように、地上げを行って再開発・・・という不動産業者の発想です。

ガザに済むかどうかは第一義的にはガザ住民が決める話で、“ガザは人が住む場所ではない。 彼らが戻りたい唯一の理由は他に選択肢がないからだ”という決めつけには閉口します。

【米国が主導してきた第二次大戦後の世界秩序を自らの手で突き崩すトランプ大統領】
これまでのパレスチナ国家建設による「二国家共存」「二国家解決」という(イスラエルを除き)国際的に認知された枠組みを根底から覆す破壊的構想ですが、当然ながら、占領地からの住民の強制移住は国際法違反です。

ヨルダン・エジプトなど周辺国はガザ住民移住を拒否していますが、飾住民・周辺国を力でねじ伏せて強行するなら、それはロシアのウクライナ侵攻などと同様に、日本政府が否定する「力による現状変更」です。

***トランプ氏「ガザ所有」案の衝撃 和平プロセス崩壊させる破壊力、国際規範軽視際立つ****
トランプ米大統領は4日、パレスチナ自治区ガザの戦後処理を巡り、米国がガザを「所有」するとの構想を明らかにした。第2次政権発足時に表明した「領土拡大」に沿った内容だ。

一方で同構想は、米国をはじめとする国際社会が目指してきたイスラエルとパレスチナ国家による「2国家共存」に向けた和平プロセスを土台から崩すものだといえ、米国の中東外交を根本から作り替える破壊力を持つ。

トランプ氏の構想の前提となっているのは、ガザから「すべてのパレスチナ人」をエジプトやヨルダンなどの第三国へ強制移住させるとの案だ。実質的にガザを無人にし、米国が開発事業に責任を負うとする。

トランプ氏は4日の記者会見で、地中海北岸の欧州の高級保養地になぞらえ、ガザは「中東のリビエラ」になると豪語した。

同時にトランプ氏は、ガザ住民にとってはガザの域外に出ることが「幸せだ」としつつ、将来的な帰還には否定的な姿勢をみせた。

1993年のオスロ合意を起点とする中東和平プロセスは、パレスチナがヨルダン川西岸とガザを領土とする独立国家を樹立し、イスラエルとの共存を図るとの発想に基づいて積み上げられてきたものだ。歴代の米政権はこれを主導し、プロセス前進を目指してきた。

「2国家共存」支持明言せず
しかし、トランプ氏は会見で「何度も失敗してきたことを繰り返すのか」とし、「2国家共存」への支持を明言しなかった。

同氏は第1次政権の2020年にも、国際法に違反する西岸や東エルサレムのユダヤ人入植地の多くに、イスラエルの主権を認めるなどとする独自の「中東和平案」を公表している。今回浮上した米国による「ガザ所有」構想は、従来のイスラエル寄りの立場に、商業的利益を重視する自身の「米国第一」主義を加味したものだ。

トランプ氏は第2次政権で、デンマーク自治領グリーンランドやパナマ運河、カナダへの領土的野心を公言し、軍事力行使も排除しないとしてきた。ガザに対しても米軍派遣を否定はしていない。

透けてみえるのは、武力などによって当事者を無視した領土変更は認めないとする国際規範の軽視だ。トランプ氏は、米国が主導してきた第二次大戦後の世界秩序を自らの手で突き崩している。【2月5日 産経】
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【狂喜するイスラエル 反発するハマス・アラブ諸国 自分の力に酔うトランプ大統領】
前回ブログでも触れたように、今回トランプ構想と似たような、ガザの住民をエジプトのシナイ半島に強制的に移住させるという発想もあったイスラエルは、今回提案を大歓迎しています。

****「歴史的な朝」イスラエル閣僚、トランプ氏の「ガザ所有」発言を歓迎****
トランプ米大統領がパレスチナ自治区ガザ地区を「米国が所有」すると発言したことを受け、イスラエル国内では歓迎の声が上がっている。米軍が駐留してガザを支配すれば、イスラム組織ハマスによる越境攻撃やロケット弾攻撃などの脅威が取り除かれると考えているためだ。ただ、ハマスやアラブ諸国の反発は必至で、奇抜な案の実現は未知数だ。

「歴史的な朝だ」「共に世界を素晴らしくしよう」――。イスラエルメディアによると、ネタニヤフ政権の閣僚からは、トランプ氏の発言に喜びの声が相次いだ。ネタニヤフ首相の政敵のガンツ元国防相も声明で「トランプ氏は独創的かつ興味深い考えを披露した」と前向きな見方を示した。

ハマスによるガザの実効支配が始まった2007年以降、イスラエルは5回にわたって大規模な戦闘を繰り返してきた。いずれもハマスによるロケット弾攻撃などを抑止する狙いがあったが、これまで「テロ攻撃」を根絶できてはいない。

仮に同盟国の米国がガザを事実上占領すれば、イスラエルの安全保障環境は劇的に向上することになる。ネタニヤフ氏はトランプ氏との共同記者会見で、「トランプ氏は違う未来を見ている」と述べ、「注意を払う価値のあるアイデアだ」と称賛した。【2月5日 毎日】
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当然ながらハマスはもちろん、アラブ諸国は反発しています。

****「火に油注ぐ」と強く非難 トランプ大統領「ガザ所有」構想で周辺国反発****
アメリカのトランプ大統領が戦闘で荒廃したパレスチナガザ地区を所有し、経済開発をする意向を示したことを受け、イスラム組織「ハマス」や周辺国から反発が相次いでいます。

ハマスは声明で、トランプ大統領の構想は「地域の安定に役立たず火に油を注ぐだけだ」と非難しました。そのうえで「これらの無責任な発言を撤回するよう求める」としています。

1月19日から始まったガザ地区の停戦は第2段階への移行に向けて協議が始まっていますが、交渉に影響が出る恐れもあります。

イスラエルとパレスチナの「2国家解決」を支持するサウジアラビアの外務省も声明を出しました。

東エルサレムを首都とするパレスチナの独立国家樹立の立場は変わらないとして、「パレスチナ人の正当な権利に対するいかなる侵害も明確に拒否する」と強調しています。

ガザ地区の隣国でトランプ大統領がパレスチナ人の移住受け入れを要請したエジプトでは5日、外相がパレスチナ自治政府の首相と会談しました。

両者はパレスチナ人がガザを離れることなく、早期復興計画を進めることの重要性を確認したということです。【2月5日 テレ朝news】
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しかし、南米諸国に不法移民送還を受入れさせ、カナダ・メキシコに譲歩を迫ったように、トランプ大統領はアメリカの“力”を持ってすれば中東諸国に同意させるのはたやすいと考えているのでしょう。

イスラエルとの関係正常化を促したい中東の地域大国サウジアラビアが「アラブの大義」を掲げて強硬姿勢を崩していないのは、トランプ氏にとってはやや厄介でしょうが。サウジアラビアとしても「アラブの盟主」を自任するためには、ここで折れる訳にはいかないところ。ただ、ヨルダン・エジプトが賛成に転じれば、話も違ってくるかも。

【ガザ住民にとっては「第2のナクバ」 ガザに希望を持てない若者には朗報かも】
肝心のガザ住民は・・・・意見を代表する政治システムが今は存在しないので、その声を集約することはできませんが、多くのガザ住民にとっては「第2のナクバ」でしょう。(ナクバ・・・イスラエル建国時に、75万人のパレスチナ人をその土地から追い出した、パレスチナ人にとっての大惨事・大破局)

ただ、ガザに希望が持てない若者は外に移住するかも・・・という見方も。

****ガザ住民、不安と反発 第2のナクバ(大惨事)が始まる****
トランプ米大統領が4日、米国がパレスチナ自治区ガザを所有し、住民を域外に移住させるべきだと提案したことに、ガザ住民からは不安と反発の声が上がった。

1948年のイスラエル建国で約70万人のパレスチナ人が難民となった「ナクバ(大惨事)」に重ねた住民は「第2のナクバが今始まる」と嘆いた。

「パレスチナ国家樹立の可能性をなくそうとしている」。南部ハンユニスで避難生活を送るマスリーさん(54)が電話取材に応じた。

マスリーさんは「(ガザに)戻ることができないのならガザを離れない」と話す。一方で「若者にとってガザの状況は壊滅的だ。仕事はないし、多くは完全に希望を失っている」と認め、ガザから出ることを多数が受け入れるかもしれないと語った。

ハンユニスに避難するバシーティーさん(19)は、トランプ氏やイスラエルのネタニヤフ首相が「ガザ住民を自分たちの土地に住む権利を持つ人間だとみていない。殺害するか強制退去させるべき犯罪者だと考えている」と批判した。【2月5日 共同】
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【トランプ流ディールの落としどころは?】
「これは途方もなく素晴らしい考えで、最高レベルの指導者たちから称賛されている。」(トランプ大統領)【2月5日 FNNプライムオンライン】・・・トランプ大統領は自身の提案に酔っているようにも見受けられますが、問題は今後どこまで事を進める考えなのか?というあたり。

トランプ流の「ディール(取引)」では、先ずしょっぱな強烈な提案を行い、そこから相手の譲歩を引き出すというのが常套手段。今回も、国際法違反にも問われる200万人のガザ住民強制移住がすんなりと進むとは思っていないでしょう・・・多分。

では、どのあたりを「落としどころ」に考えているのか?(それとも、本当に自分に酔っているだけで何も考えていないのか)

少なくとも、この話を進めるとハマスは強く反発し、ガザ停戦合意の第2段階(イスラエルの完全撤退とハマスの人質全員解放)は難しくなります。

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トランプ氏は会見で、停戦に関し、「どうなるか分からないが、継続されることを望む」と述べた。

ただ、ネタニヤフ氏はこれまで「戦闘再開」の可能性に言及してきた。戦闘再開を主張する閣内の極右勢力の更なる離脱を防ぐ目的があるとの指摘がある。

米ニュースサイト「アクシオス」は、ネタニヤフ氏がトランプ氏に対して、「第2段階」の実施を強制しないよう説得する意向だと報じていた。【2月5日 毎日】
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今回のトランプ提案は、停戦合意の第2段階に進まず、戦闘再開したいネタニヤフ首相へのトランプ大統領の援護射撃でしょうか?

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パレスチナ・ガザ地区 イスラエルのUNRWA活動禁止法でガザ支援は著しく困難に

2025-02-04 23:33:05 | パレスチナ

(UNRWAが届けた食糧を運ぶパレスチナの人々(1月29日、ガザ地区)【2月3日 Newsweek】)

【ガザ停戦は続いているものの先は見通せない状況】
アメリカの圧倒的力を背景に関税という棍棒を振り回すトランプ大統領がもたらす世界への影響、アメリカ国内で急速に進むトランプ革命、そこで絶大な影響力を発揮して連邦政府解体を進める大富豪マスク氏・・・そうしたことに世界の注目は集まっていますが、パレスチナではイスラエルとハマスの停戦合意が何とか持続しているものの、先はまったく見通せない状況です。

****ハマスが人質3人を解放…イスラエルは183人を釈放し、ラファ検問所も開放****
イスラム主義組織ハマスは1日、イスラエルとの停戦合意に基づき、人質の男性3人を解放した。ロイター通信によると、イスラエルはパレスチナ人収監者ら183人を釈放した。

停戦合意に基づく身柄交換は今回で4回目。ハマスはパレスチナ自治区ガザ南部ハンユニスでイスラエルとフランスの二重国籍の1人を含む2人、北部ガザ市でイスラエルと米国の二重国籍の1人を、赤十字国際委員会を通じてイスラエル側に引き渡した。

1月30日の3回目の人質の解放は、大勢の戦闘員や観衆が人質を取り囲み、騒然とするなかで引き渡しが実施され、これにイスラエルが反発した。今回は、安全確保の求めを受けて仲介国が調整に入り、戦闘員や観衆が人質と距離を置く中で引き渡された。

エジプトとの境界にあるガザ南部のラファ検問所は1日、域外での治療を受けるガザのパレスチナ人負傷者らのため開放された。負傷者らのエジプトへの通行は、昨年5月にイスラエル軍が検問所を制圧して以来だ。

1月19日に始まった42日間(6週間)の停戦第1段階はおおむね合意が履行されており、数日内に第2段階以降の実施に向けた協議が始まる見込みだ。【2月1日 読売】
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恒久停戦の実現を念頭に置いた第2段階の措置には、ハマスが拘束中の人質全員の解放やイスラエル軍のガザ完全撤退が含まれます。これは第1段階(6週間の停戦 一部の人質交換)より遥かに困難。

現在訪米中のイスラエルのネタニヤフ首相は4日、トランプ大統領と会談するとされていますので、そこでイスラエル側のシナリオ、トランプ大統領の計画が議論されるのでしょう。

ただ、ネタニヤフ首相とトランプ大統領主導で進むと、1月26日ブログ“トランプ大統領  ガザ住民をヨルダン・エジプトに「一掃」する「ガザ再建案」”で取り上げたパレスチナ住民のガザからの追放みたいな、国際常識的には受け入れがたい話に突き進む危険も。

****ガザ復興に「15年」=米特使、居住不可能と強調****
中東問題を担当するウィトコフ米特使は30日、パレスチナ自治区ガザの現状について「居住不可能だ」と述べ、復興に10〜15年を要するとの見方を示した。米ネットメディア「アクシオス」が同氏とのインタビュー内容を伝えた。

ウィトコフ氏は29日、ガザを訪問し、イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦状況を視察していた。
 ウィトコフ氏は、イスラエルの攻撃により「ガザにはほとんど何も残っていない」と強調。「不発弾が多くあり、とても危険だ」と指摘した。

その上で、損傷を受けた建物やがれきの撤去に5年、ハマスの地下トンネルが張り巡らされたガザの地盤調査に数年、建物の再建に数年かかるとの見解を明らかにした。【1月31日 時事】
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一方、ヨルダン川西岸ではイスラエル軍の攻撃が続いており、不安定な状況です。

****イスラエル軍がヨルダン川西岸で軍事作戦…50人以上を殺害、100人以上を拘束****
イスラエル軍は2日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸の北部ジェニンや周辺で軍事作戦を行ったと発表した。発表によると、これまでに50人以上の武装勢力を殺害し、100人以上を拘束した。作戦は今後少なくとも数週間続くと見込んでいる。
 
軍は2日、ジェニン難民キャンプで建物23棟を爆破した。建物は「テロリストの施設」だと主張した。作戦で数十個の武器を押収し、数百の爆発物を破壊したと説明している。
 
パレスチナ通信によると、ジェニン難民キャンプや周辺では住民約1万5000人が避難を強いられた。水道管が破壊され、病院では水不足が深刻化している。
 
パレスチナ自治区ガザで停戦が1月19日に始まった後、イスラエル軍は同21日から西岸のジェニンやトゥルカレムなどで「対テロ対策」を名目に作戦を続けている。【2月3日 読売】
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【“今”の生活に困窮するガザ住民】
そうした“先”の話はまったく目途がたっていませんが、ガザ住民は“今”をどう生きるかで精一杯でしょう。
トランプ大統領に「パレスチナ人を混乱や革命、暴力のない地域に住まわせたい」と言われようが、「居住不能」と言われようが、今まで暮らしてきた土地で命と生活をつないでいくしかありません。

しかし、救援はあまりにも少なく、遅い。

****「一体どこへ戻れば?」「新しいテントに?」ガザ地区の避難民、廃墟と化した故郷へ****
パレスチナ自治区ガザ地区にある海岸沿いの道路。1月29日、これまで避難していたパレスチナ人の帰還が始まった。戦争で荒廃した自宅へ向かうパレスチナ人は、3日連続で数千人に上るという。

数カ月にわたるイスラエルによる集中的な砲撃や銃撃戦によって、ガザ北部は廃墟と化した。帰る人の表情も冴えない。「私たちの苦しみは大変なものです。誰にも想像がつかない」(パレスチナ人、以下同)

砲撃を受けてガザを脱出した後、彼女は家族と一緒に安全を追い求め、北から南まであちこちを移動し続けたという。

「停戦の日に、自分の家が破壊されたことを知りました。私は一体どこへ戻ればいいのでしょう? テントからテントに……さらに新しいテントにですか?」(『ABEMAヒルズ』より)【1月31日 ABEMA Times】
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【イスラエルのUNRWA活動禁止法でガザ支援は著しく困難に】
そうしたガザ住民支援の中核を担うのが国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA アンルワ)ですが、ハマスと通じているとしてイスラエルが国内での活動を禁止したことで、ガザ地区での支援活動が極めて困難になっています。

****イスラエル、UNRWA禁止法施行へ 国連に48時間以内の退去要求****
イスラエルのダノン国連大使は28日、イスラエルは48時間以内に国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)との協力や接触を断つと発表した。ニューヨークの国連本部で記者団に語った。

30日に施行を控えるイスラエル国内でのUNRWAの活動を禁じる新法をふまえた措置。パレスチナ自治区ガザ地区やヨルダン川西岸でUNRWAの活動は大幅に制限され、国連は他の専門機関の活動拡大など対応を迫られる。

ダノン氏は「政治的な決定ではなく、単に必要な決定だ」と語り、「(イスラム組織)ハマスやその他のテロ組織が、UNRWAに広く浸透している問題に目を背けてきたことが原因だ」と従来からの主張を繰り返した。

ガザにおける人道支援については「UNRWAの汚職とは無縁である他の国連機関と協力する用意がある」と述べ、UNRWAにはイスラエルで運営する施設から30日までに退去するよう求めた。

UNRWAのラザリーニ事務局長は28日の国連安全保障理事会に出席し、イスラエル新法の完全実施は「ガザ地区に悲惨な結果をもたらす」と指摘。「人道支援を大幅に拡大しなければならない時期に、国連の能力を低下させることは、既に壊滅的な状況にあるパレスチナの人々の生活をさらに悪化させる」と警告した。【1月29日 毎日】
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グテレス国連事務総長がイスラエルに撤回を要請していますが、もちろんイスラエルには聞く耳はありません。

イスラエルのUNRWA活動禁止法は、イスラエル国内での活動を禁じたものですが、実質的にはガザ・ヨルダン川西岸での活動を著しく阻害します。ガザへの支援物資の搬入にはイスラエル側との調整が必要で、新しい法律はUNRWAとイスラエル当局の接触を禁じています。UNRWAが物資を届けることは、これまでよりはるかに困難になります。

****UNRWA活動禁止法、イスラエルで施行…ガザやヨルダン川西岸で物資配布や医療に影響必至****
イスラエルで30日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動を禁止する新法が施行された。イスラエルは支援に向けた代替案を示しておらず、パレスチナ自治区ガザやヨルダン川西岸で人道物資の配布や医療に影響が出るのは必至だ。

UNRWAによると、30日朝もガザや西岸、東エルサレムでの診療所や学校は通常通り運営を始めた。ただ、東エルサレムではイスラエル当局の妨害を懸念し、出勤しない職員もいた。西岸の職員は「どんな制約が出るのか」と気をもんだ。

東エルサレムのUNRWA本部に勤務する日本人2人を含む国際職員の約30人は、イスラエルが滞在ビザを29日までしか認めなかったため国外へ退去した。

本部前には30日、新法の施行を祝う極右の支持者数十人が集まり、看板に落書きした。その一人、シャイ・グリック氏(38)は「UNRWAはテロを支援してきた。この土地はイスラエルに戻すべきだ」と主張した。

イスラエル国会が昨年10月に可決した法律は、2023年のイスラム主義組織ハマスによるイスラエル奇襲で職員9人の関与が判明したUNRWAに対し、イスラエルでの活動を禁止する内容だ。

ガザや西岸での物資搬入に際し調整が不可欠となるイスラエル当局との接触も禁じる。住民への支援は困難になるとみられる。イスラエル外務省の報道官は30日、取材に「UNRWAはハマスと同様の組織であり、イスラエルは接触を持たない」と述べた。

UNRWAによると、ガザでの食料や医薬品などの支援物資は当面、備蓄で賄う予定。その後は他の関係機関を通じて物資を搬入し、活動の継続を模索する。

現在、ガザでは職員約1万3000人が働き、診療所で約1500人が治療にあたる。職員の雇用は維持する方針だ。清田せいた明宏保健局長は取材に「UNRWAに代わる組織はない。活動継続の道を探りたい」と強調した。

UNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長は28日の国連安全保障理事会で「法の施行は、パレスチナ人の生活状況をさらに悪化させるだけだ」と訴えた。

◆UNRWA=1948年のイスラエル建国とその後の戦争などで故郷を追われたパレスチナ難民への支援のために49年に設立された。ガザやヨルダン川西岸のほか、ヨルダン、レバノン、シリアで約590万人に教育や医療の支援を行っている。ガザと西岸で運営する難民キャンプは27か所、学校は384校、診療所は65か所に上る。【1月30日 読売】
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パレスチナ難民への支援という事業の性格上、職員になかにハマスと心情を同じくする者が入り込むことは十分に想像できますが、「UNRWAはハマスと同様の組織」として禁止するというのもバランスを欠いているように思えます。

****UNRWA活動是非で応酬=イスラエルとパレスチナの駐日大使****
現在停戦下にあるパレスチナ自治区ガザで人道支援を行う国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)による今後の活動継続の是非を巡り、イスラエルとパレスチナの駐日大使が31日、東京都内で相次いで記者会見し、主張の応酬を繰り広げた。

2023年10月のイスラム組織ハマスによるイスラエル奇襲にUNRWA職員が参加したというのがイスラエル政府の見解。

コーヘン駐日大使は「UNRWAは信頼を裏切った」と述べ、「他の国際機関で代替可能だ」と訴えた。日本政府に対しては「ハマスが支配しないガザ」の実現に向けた関与を呼び掛けた。

これに対し、駐日パレスチナ常駐総代表部のシアム大使は「UNRWAは難民の生命線だ」と語り、日本に財政支援継続を要望。「問題の核心は、イスラエルが継続する軍事占領だ」と主張し、同国による長年にわたるパレスチナ人抑圧がハマスによる奇襲の背景にあるという認識を示した。

(中略)また、トランプ米大統領が荒廃したガザの住民をヨルダンやエジプトに移住させる提案を行ったことに関し、シアム氏は「パレスチナ人はゲームの駒ではない」と批判。コーヘン氏は「米側が答える質問だ」と明言を避けた。【1月31日 時事】 
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今のところはUNRWAの活動は続いているようですが・・・・

****UNRWA、ガザ支援活動継続 イスラエルの活動禁止法施行後も*****
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の広報担当者は31日、ジュネーブで記者会見し、イスラエルによるUNRWAの国内活動を禁止する新法が施行された30日以降も「われわれは引き続き活動を継続している。(パレスチナ自治区)ガザでの国際人道支援の要となっている」と述べた。

新法は2024年10月に可決され、今月30日からはUNRWAはイスラエル当局との接触が禁止され、活動に制限を受けることになった。UNRWAの広報担当者は「われわれは引き続きスタッフをガザに派遣し、必需物資を積んだトラックを運び込んでいる。物資の搬入と配布の継続が認められなければ、脆弱な停戦が危険にさらされる」と強調した。

ヨルダン川西岸地区と東エルサレムのパレスチナ人スタッフが投石や検問所での妨害など困難に直面していると言及。「UNRWAにまつわる誤情報が流布されており、敵対的な環境に直面している。厳しい状況に置かれており、スタッフは保護されていない」とも指摘した。

英国、フランス、ドイツは31日、新法の施行への懸念を改めて表明した。複数の人道支援組織は、物資やスタッフはイスラエルを経由するため、荒廃したガザ地区への新法の影響は大きいと指摘している。

イスラエル占領下の東エルサレムに暮らすパレスチナ難民も、UNRWAから教育、医療などのサービスを受けている。

イスラエルのサール外相は、ガザ地区への人道支援に尽力していると主張。支援は他の国際機関や非政府組織(NGO)を通じて行われるべきだと述べた。イスラエルは、UNRWAスタッフが2023年10月のイスラム組織ハマスによる奇襲攻撃に関与したとしている。【2月1日 ロイター】
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****「UNRWA(アンルワ)」とは何か?...イスラエルによる追放で新たな危機が始まる****
<パレスチナ人にとって重要な命綱となっている国際組織をイスラエルが活動禁止にしたが、代替組織はあるのか?>

イスラエル国内で国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動を禁止する法律が1月30日に施行された。
イスラエルとイスラム組織ハマスの脆弱な停戦合意が1月19日に発効したばかりの今、既に不安定な状況をさらに不安定にする恐れがある。

■UNRWAとは?
パレスチナ自治区ガザ、ヨルダン川西岸のイスラエル占領地域、東エルサレム、レバノン、ヨルダン、シリアに暮らす数百万人のパレスチナ人に食糧、教育、医療、住居などあらゆる支援を提供している。

1948年の第1次中東戦争により故郷を追われたパレスチナ難民を支援するために、49年に設立された。

ガザでは現在約1万3000人が働いている。フィリップ・ラザリーニ事務局長によると、2023年10月のイスラエルとハマスの戦闘開始以降にガザの食糧支援の約3分の2を、停戦以降も食糧支援の約60%を担っており、パレスチナ人にとって重要な命綱と見なされている。

■なぜ活動禁止に?
国連と長年、対立してきたイスラエルは、UNRWAにハマスの関係者が数多く潜入していると非難。昨年10月に今回の法律を可決した。

イスラエルはハマスが主導した23年10月の襲撃にもUNRWAの職員12人が加担したと主張。国連の調査で9人が関わった可能性があるとされ解雇された。

■今後はどうなる?
イスラエルはUNRWAに対し、占領下の東エルサレムにある全ての施設を明け渡し活動を停止するように命じた。ビザの取得や延長が困難になり、一部の外国人職員は退去を余儀なくされている。

ただし、具体的にどのような措置が取られるかについては不透明な部分が多い。
「東エルサレムを含む占領下のヨルダン川西岸地区では私たちの診療所は開いている。ガザでの人道的活動は継続中だ」と、UNRWAは1月29日にX(旧ツイッター)に投稿した。「私たちはとどまって支援を続けると約束する」

同日にイスラエルの最高裁は、活動禁止に異議を唱えたパレスチナの人権団体の申し立てを却下。「イスラエル国家の主権地域でのみUNRWAの活動を禁止する」もので、ガザやヨルダン川西岸地区では禁止していないと指摘した。

ただし、ガザへの支援物資の搬入にはイスラエル側との調整が必要で、新しい法律はUNRWAとイスラエル当局の接触を禁じている。UNRWAが物資を届けることは、これまでよりはるかに困難になりそうだ。

イスラエル外務省の報道官は、「国連機関、国際NGO、諸外国など、UNRWAの代わりとなる複数の組織が既にガザで人道支援活動を進めるために活動している」と述べている。

これに対し、その任務の範囲と、UNRWAが命を救う人道支援を日々提供し、ガザのパレスチナ人への医療と教育の主な提供者であることを考えれば、「国連のシステム内を含め、他の機関や組織がUNRWAの代替として機能できるというのは完全に間違っている」と、有力シンクタンク、国際危機グループの上級アナリスト、ダニエル・フォルティは言う。
「その空白を迅速かつ持続的に埋める組織があるとは、到底考えられない」【2月3日 Newsweek】
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“トランプ大統領は、国連人権理事会へのアメリカの関与を断ち切り、パレスチナ難民のための国連機関、UNRWAへの資金提供禁止を延長する計画だと、匿名のホワイトハウス高官がアメリカ・マスコミに語った。
(中略)
米国はUNRWAの最大の寄付国であり、年間3億ドルから4億ドルを提供していたが、2023年10月7日のハマスによるイスラエルへの致命的な攻撃に12人のUNRWA職員が参加したとイスラエルが根拠のない非難をした後、バイデンは2024年1月に資金提供を一時停止した。”【2月4日 アルジャジーラ】
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トランプ大統領  ガザ住民をヨルダン・エジプトに「一掃」する「ガザ再建案」

2025-01-26 21:48:57 | パレスチナ

(破壊された街並み=パレスチナ自治区ガザ地区北部ジャバリアで2025年1月21日、ロイター)

【イスラエル 60日の停戦期限も、レバノン南部から軍撤退せず】
昨日に続き中東情勢で「またか」と言われそうですが、昨日ブログで取り上げたレバノンについては、やはりイスラエル軍はレバノン側の停戦合意履行が不十分として期限までには撤退しないようです。

****イスラエルとヒズボラ60日の停戦期限も軍撤退せず…レバノン南部に帰還の住民3人死亡****
イスラム教シーア派組織「ヒズボラ」との間で停戦合意したイスラエルが撤収の期限を過ぎてもレバノン南部に軍を駐留させ、住民を攻撃しています。

レバノン保健省は26日、南部の地域に戻ろうとした住民がイスラエル軍の攻撃を受け、これまでに3人が死亡し、44人がけがをしたと明らかにしました。

イスラエル軍の報道官は、レバノン南部の住民に対して「通知があるまでは自宅に戻ることを禁止する」と警告しています。

去年11月から始まったイスラエルとヒズボラの60日間の停戦を巡っては、1月26日までに双方がレバノン南部から撤退し、代わりにレバノン軍が監視にあたることになっていました。

イスラエルはレバノン政府が合意の内容を実行していないと主張し、交渉を仲介するアメリカに30日間の猶予期間を設けるよう求めていました。【1月26日 テレ朝news】
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【イスラエル支持を鮮明にするトランプ大統領 2000ポンド爆弾のイスラエル供与停止を解除】
30日間の猶予期間を要請されたトランプ大統領がどのように答えたのかは知りませんが、かねてより、また1期目でもイスラエル支持の立場のトランプ大統領は、2期目でもイスラエル支持を鮮明にしています。

****トランプ政権 イスラエルへの大型爆弾供与停止措置を解除 米メディア報道、バイデン政権から方針転換*****
アメリカのトランプ政権がイスラエルに対する大型の爆弾の供与停止措置を解除したと報じられました。バイデン政権からの方針転換です。

アメリカのニュースサイト「アクシオス」は25日、トランプ政権がイスラエルに対する大型で威力の強い「2000ポンド爆弾」の供与停止措置を解除したと伝えました。

この爆弾は前のバイデン政権が去年5月、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ南部・ラファへの侵攻に反対姿勢を示すため、供与を停止していましたが、イスラエル寄りのトランプ政権の誕生で方針転換となります。

「アクシオス」はアメリカで保管されている「2000ポンド爆弾」1800発が近く、イスラエルに船で運ばれる予定だと伝えています。【1月26日 TBS NEWS DIG】
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イスラエル軍はこれまでもガザ地区の病院周辺で2000ポンド(約900kg)爆弾を使用していると報じられています。「直接病院を攻撃したわけではない」という弁解のためでしょうか。

****ガザ攻撃のイスラエル軍、ほぼ全病院の至近距離に2000ポンド爆弾投下 米研究****
イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ地区で戦争を始めてからの数週間で、強い破壊力をもつ2000ポンド(約900キロ)爆弾をほぼ全病院の至近距離に投下していたという検証結果が9日、査読付きの学術誌に発表された。

米ハーバード大学などの研究チームが爆発の衝撃でできたクレーターを分析した結果、2023年10月7日から11月17日にかけ、イスラエル軍がガザにある全病院の25%で「殺傷範囲」に2000ポンド爆弾を配備していたことが分かった。

さらに、ガザの36病院のうち83%にあたる30病院では、施設の損壊やけが人が発生する範囲内で、爆弾クレーターが見つかった。

検証結果は学術誌プロス・グローバル・パブリック・ヘルスに発表された。イスラエル軍は今もガザ北部の三つの病院に避難命令を出し、軍事作戦を再開している。ガザ保健省は全ての医療機関の保護を訴えている。

論文を発表したハーバード大学のデータアナリスト、デニス・クニチョフ氏は、病院の至近距離で2000ポンド爆弾が使用されたことについて「米国の供与したツールを使った明らかな国際人道法違反」と指摘した。

同氏は2000ポンド爆弾について、「地面に着弾すると、約1000ポンド(約450キロ)の破片をとてつもないスピードで放つ」「その威力と破片で数百メートル離れた人々を殺し、コンクリートを破壊できる」と話している。

これに対してイスラエル国防軍は、「前例のない努力を行って軍事施設や目標、工作員を正確に攻撃している」と述べ、国際法に従って「民間施設や民間人は標的としていない」と強調した。【2024年10月10日 CNN】
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今後の使い道としては、後述のようにガザ地区から住民を退去させ、残ったハマス戦闘員と推定去れる者を一網打尽にするため、あるいは、地下のトンネルや軍事利用可能な施設を破壊するため・・・・でしょうか。

【多大な時間を要するガザ復興】
ガザ地区はまだ瓦礫の中からの遺体捜索が行われている状況ですが、ほぼ全ての住民の住宅が破壊されたという状態で、今後の復興が大きな難題となっています。

****ガザ230万人のほぼ全員が家を失った 21歳女性「何もかも足りない。教育を受けることだけが支え」****
爆弾の雨が降り、パレスチナ自治区ガザの街並みは荒廃した。シェイマ・アブアラッタさん(21)にとって、15カ月続いた攻撃のトラウマを乗り越える唯一の手段は、「教育を受ける」ことだった。

コンピューターサイエンスとコンピューターエンジニアリングを学ぶアブアラッタさんは、得た知識をガザの復興に役立てたいと考えている。基本的なライフラインさえ途絶えたガザで、人々はあらゆるものが不足する中で生活している。

「私はこの国に、自分が今いる場所に留まりたい。親族や愛する人と一緒にいたい」とアブアラッタさんは言う。
綱渡りのような停戦が実現した今、パレスチナの人々は恐る恐る復興を見据え始めた。230万人の住民全体が家を失い、複数回にわたり避難を強いられただけに、一筋縄ではいかない大仕事だ。

ガザ侵攻の間、アブアラッタさんにとって唯一自分でコントロールできたのは勉強を続けることだった。攻撃開始後の最初の3カ月は何もできず、ようやくノートパソコンを開いたとき、感極まって涙がこぼれた。

北部への空爆から逃れ、ガザ中心部で電話インタビューに応じたアブアラッタさんは、「何かを達成できる機会があるというのは、これほどにも恵まれたことなのか、と感じた」と話す。

イスラエル軍の作戦でガザの大半が瓦礫の山となり、ガザ医療当局によれば、少なくとも4万7000人が命を落とした。ガザ医療当局は、がれきの下にはまだ多くの遺体が埋まっている可能性が高いとしている。

停戦合意では、ハマスに拘束されたイスラエル人と外国人98人のうち33人を解放することが決まっている。また、イスラエルは毎日600台のトラックによる支援物資の搬入を6週間許可するという。
アブアラッタさんは「国境を制限なしに開放する必要がある。何もかもが足りない」と言う。

彼女にとって懸案の1つは「電気の確保」だ。毎日テントから充電拠点まで歩き、ネットに接続する。戦火が止めば、この地域にも太陽光発電パネルが増えることを期待している。

「がれきを片付け、その上にテントを張らなければならない」と彼女は言う。「テント生活から始め、ゆっくりと発展させていく」。だが、口で言うほど簡単ではない。

<「想像を絶する」規模の人道危機>
慈善団体「セーブ・ザ・チルドレン」のアレクサンドラ・サイエ氏はトムソン・ロイター財団の取材に対し、人道上の危機は、「およそ想像を絶する」と語った。「複数の差し迫った危機が進行していて、それぞれがお互いに深く絡み合っている」

セーブ・ザ・チルドレンは、子どものための食料と水、医薬品を送ることが優先だとする。
「飢餓の影が忍び寄る中で、空腹と病気に直面している子どもたちを一刻も早く救わなくてはいけない」とサイエ氏は言う。

国連では、4200万トンに及ぶガザのがれきを撤去するには、10年以上の時間と12億ドル(1872億円)の費用がかかるだろうと述べている。

また、支援団体「アクション・アゲインスト・ハンガー」の運営トップを務めるビンセント・ステーリ氏は、淡水化プラントを動かすための燃料も不可欠だと指摘する。上水道網を修復するには金属製パイプなどの物資が必要になるが、イスラエルは今のところ、こうした品目のガザ搬入を禁止している。

「がれきの撤去を10-15年も待っていられない」とステーリ氏は言う。「復興を始め、重要な施設の復旧に着手する必要がある」

アブアラッタさんも同意する。彼女はガザを本拠とする大学がオンライン講義を中断したため、学費無料の「ユニバーシティ・オブ・ピープル(UoPeople)」でコンピューターサイエンスを学び始めた。来年には卒業できると考えている。

UoPeopleのシャイ・レシェフ総長はトムソン・ロイター財団に対し、ガザの学生への奨学金支給のために30万ドルを集めたと語った。「さらに募金が集まったとしても、ガザの学生のために、できるだけ多くの資金を集めたい」と総長は言う。

しかし、学校や大学が再建されるのを待っていては、学生たちの教育には間に合わない。
「今の子どもたち、学生たちはどうする。オンラインで教えるしかない」【1月26日 Newsweek】
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【トランプ大統領 ガザ住民をヨルダン・エジプトへ「一掃」する再建案 新たな「ナクバ」と混乱を生む懸念】
今後のパレスチナ統治については、(イスラエル・トランプ政権意外の)国際的にはパレスチナを国家承認してイスラエルとパレスチナ国家が共存する「二国家共存」「二国家解決」しかないと考えられています。

しかし、トランプ大統領は「全く異なる方法」でのガザ再建(?)を考えているようです。
現在のガザ住民(210万人とも150万人とも)をヨルダンやエジプトに移し、ガザ地区はイスラエル支配下の入植地にするというもののようです。

****トランプ氏、ガザ「一掃」計画提示 周辺国はパレスチナ人受け入れを****
ドナルド・トランプ米大統領は25日、パレスチナ自治区ガザ地区を「一掃する」計画を提案し、中東和平を実現するためにエジプトとヨルダンにガザのパレスチナ人を受け入れるよう呼び掛けた。

トランプ氏は現在のガザを「解体現場」と表現。この問題についてヨルダンのアブドラ国王と話し合ったとし、26日にはエジプトの大統領と協議する予定だと述べた。 

トランプ氏は大統領専用機「エアフォースワン」の機内で記者団に、「エジプトに(ガザの)人々を受け入れてほしい。ヨルダンにも受け入れてほしい」「(ガザには)おそらく150万人ほどがいるが、われわれはそのすべてを一掃する。その場所は何世紀にもわたって多くの紛争を抱えてきた。そして何かが起こらなければならない」と語った。 

ガザの人口240万人の大多数は、2023年10月7日のイスラム組織ハマスの対イスラエル越境攻撃を発端とした戦闘により、繰り返し避難を余儀なくされている。 

トランプ氏は、ガザの住民を移動させることは「一時的かもしれないし、長期的かもしれない」と述べた。 

その上で、「そこは今、文字通り解体現場だ。ほとんどすべてが破壊され、人々がそこで死んでいる」「だから、いくつかのアラブ諸国と協力して、彼らが平和に暮らせるかもしれない別の場所に住宅を建てる方がいい」と語った。 

イスラエルの報復攻撃により、ガザの大部分は廃虚と化した。インフラが破壊され、国連(UN)は、再建に何年もかかるとみている。【1月26日 AFP】 AFPBB News
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不動産業者的な再開発の発想でしょうか。 確かに、現地で再建するより「効率」はいいかも。
 
しかし、ずいぶんとイスラエル・アメリカに都合のいいような「再建」のようにも思えます。

ヨルダン・エジプトには「力」と「カネ」でガザ住民受入れ要求をのませるのでしょうか。
ガザ住民は? 自分たちが破壊しておいて、「平和に暮らせるかもしれない別の場所に住宅を建てる方がいい」と言われても・・・

そもそも現在のパレスチナの混乱は、1948年のイスラエル建国時にパレスチナ住民75万人を故郷から追い払ったことから起きています。パレスチナ側ではこれを「ナクバ(大惨事・大破局)」と呼んでいます。

あらたなヨルダン・エジプトへの強制移住はその「ナクバ」の拡大版再現であり、さらなる混乱を惹起するようにも思えるのですが。

似たような発想は以前からイスラエルにもあります。

****イスラエル、ガザ住民をシナイ半島に強制移住 文書流出****
イスラエルの情報省がパレスチナ自治区ガザの住民をエジプトのシナイ半島に強制的に移住させる計画案を作成していたことが判明し、物議を醸している。1948年のイスラエル建国と第1次中東戦争によってパレスチナ難民が生まれたことを想起させるためだ。

ガザには200万人以上のパレスチナ人が居住している。移住案はパレスチナ人やアラブ諸国の強い反発を呼ぶ可能性がある。(後略)【2023年10月31日 日経】
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なお、トランプ大統領は大統領令で、イスラエル占領下のヨルダン川西岸でのパレスチナ人に対する暴力に関与したユダヤ人至上主義者入植者やシオニスト団体に対する制裁を停止しました。
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パレスチナ  停戦発効 帰還を始める住民 イスラエル右派は戦闘継続要求 西岸地区では攻撃開始

2025-01-22 23:17:14 | パレスチナ

(がれきの街と化したガザ北部ジャバリアには、住民らが戻って来ている。

パレスチナ・ガザ地区の住民らは、停戦が実施されると、通りに出て喜びを表現した。しかし、自宅のあった場所に戻り、破壊の厳しい現実を目の当たりにする人が増えるにつれ、その喜びは薄れている。【1月20日 BBC】)

【組織大打撃、多大な住民犠牲も“抵抗の勝利”と主張するハマス ハマス壊滅を求め、停戦不承知のイスラエル右派 ガザ住民は?】
アメリカでのトランプ大統領就任のニュースの影に隠れた形になっていますが、パレスチナ・ガザ地区ではイスラエルとイスラム主義組織ハマスが合意し42日間(6週間)の停戦が、ハマスが解放する人質リストの提出が遅れた影響で停戦開始は当初予定から約3時間ずれ込んだものの、19日午前11時15分に始まりました。

イスラエル軍はこの遅れの間にもガザ北部などを空爆し、ロイター通信によると少なくとも13人(BBC報道では19人)が死亡したとされます。

****ガザ停戦、ハマスが人質3人解放 イスラエルも90人釈放へ****
パレスチナ自治区ガザでのイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦が19日に発効し、ハマスに拘束されている人質のうちイスラエル人の女性3人が解放され家族と再会した。

ガザでは通りに出て停戦を祝うパレスチナ人の姿が見られた。住民らは攻撃でがれきと化した自宅に戻り始めた。

イスラエル軍が公開したビデオでは解放された3人の健康状態は良好に見えた。

イスラエル占領下のヨルダン川西岸では、イスラエルの収容施設から釈放されるパレスチナ人を待つバスが待機していた。ハマスによると、人質と引き換えに釈放される最初のグループには、69人の女性と21人の10代の少年が含まれている。

停戦は19日、予定より3時間近く遅れて発効した。

バイデン米大統領は「ガザの銃声が鳴りやんだ」と述べ、停戦を歓迎。「長い道のりだった。しかし、イスラエルが米国の支援を受け、ハマスに圧力をかけたおかげで、今日ここに到達することができた」と語った。

停戦はトランプ次期米大統領の就任前日に発効した。トランプ氏が国家安全保障担当の大統領補佐官に起用するマイク・ウォルツ氏は、ハマスが合意を破れば、米国はイスラエルが「やるべきことをやる」のを支援すると述べた。

「ハマスがガザを統治することはない。それは完全に受け入れられない」と語った。【1月20日 ロイター】
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双方の合意では、停戦の第1段階でハマスが女性や高齢者、病人ら人質33人を解放し、引き換えにイスラエルが収監しているパレスチナ人を釈放することになっており、仲介国エジプトによると、釈放者は1890人以上に上るとされています。

ガザではこの停戦を歓迎しており、帰還の準備も始まっています。

****響く祝砲と歌声=帰還準備始まる―ガザ****
パレスチナ自治区ガザでは19日の停戦発効を受け、市街地に祝砲が響いた。路上に出た住民はパレスチナの曲を歌い、「神は偉大だ」と叫んで喜びを分かち合った。

現地の住民によると、停戦発効に先立ち避難先で暮らしていた人々は自宅に帰還するため荷造りを始め、避難しなかった住民らも壊れた建物の修理に取りかかった。

午前11時15分に停戦が正式に発効すると、中部ブレイジの難民キャンプでは、イスラム組織ハマスの戦闘員が小規模な行進を行った。(後略)【1月19日 時事】
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2023年10月以来の戦闘の印象としては、ハマスは壊滅的・・・に近いような大きな打撃を被り、イスラエルは多大な民間人犠牲を出しながらハマスを徹底的に叩いた・・・・というものですが、少なくとも表向きの当事者の主張はそうした印象とは異なるものもあります。

TVニュースで見ると、ハマス構成員は自分たちの抵抗がついに勝利した・・・と総括しています。上記記事の“ハマスの戦闘員が小規模な行進”というのもそうした主張のあらわれでしょう。

一方、多大な犠牲を強いられたガザ住民がどのように考えているのか・・・以前からハマスの支持率はガザ地区ではヨルダン川西岸地区より低いといったこともありますが、TVニュースでの住民インタビューではハマス支持の声もあります。

日本的な感覚では、これだけの犠牲を出したことの批判がなぜハマスに向かわないのか不思議でもありますが、そこは長年のイスラエルによって強いられてきた苦難もあっての話でしょうから、なかなか外部の人間には難しいところでもあります。

もう少し時間がたてば、ガザ住民のハマスへの「評価」も明らかになってくると思われます。

イスラエルにあっても、人質の家族、ハマス奇襲犠牲者の遺族など、立場によって今回停戦への評価は異なりますが、国内右派にはハマスを根絶やしにすることなく停戦に応じたことへの批判が強く、極右政党「ユダヤの力」を率いるベングビール氏は「ハマスへの降伏」と評し、政権を離脱しています。(ネタニヤフ政権の崩壊には至っていません)

****プラカードには「大虐殺」…道路に座り込み 停戦合意反対デモ エルサレム****
エルサレム中心部。座り込んで道路をふさぐ若者たちを警官隊が抱えて運び出す。

イスラエルとイスラム組織「ハマス」が停戦合意したことに対し抗議するため、若者を中心におよそ300人が集結した。

掲げるプラカードには「テロリストの解放 大虐殺」と書かれている。停戦合意にはハマスの人質解放と引き換えにイスラエルが拘束しているパレスチナ人の釈放が含まれている。【1月18日 ABEMA Times】
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****ガザ「6週間の停戦合意」歓喜の中、右派や遺族は屈服同然と抗議****
<イスラエルとイスラム組織ハマスが停戦で合意した。人質解放に各地で人々が歓喜に沸くなか、エルサレムでは右派や犠牲者遺族、残る人質の家族らが抗議活動を展開>

(中略)ガザとイスラエル各地で人々が歓喜に沸くなか、エルサレムでは右派や犠牲者遺族、残る人質の家族らが「屈服同然」「犠牲者の命を軽んじるな」と抗議し、警察に取り押さえられる場面も。【1月20日 Newsweek】
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****イスラエル極右閣僚、停戦合意発効前に辞任 残りの人質の解放は「武力」で****
イスラエルとイスラム組織ハマスとの間で成立したパレスチナ自治区ガザ地区に拘束されている人質の解放と停戦をめぐり、イスラエルのベングビール国家安全保障相は19日、停戦合意が発効する直前に辞任を表明した。

ベングビール氏は残りの人質について「武力行使」によって解放すべきだと述べた。 ベングビール氏はイスラエル人3人の解放を歓迎しつつ、人質の解放につながった取引を「降伏」に例えた。 

ベングビール氏はX(旧ツイッター)への投稿で、イスラエル人3人の解放を喜びつつ、「我々は降伏ではなく、武力行使や燃料供給の停止、人道援助の停止によって、残りの人質が戻ってくることを期待する」と述べた。 

ネタニヤフ政権からはベングビール氏のほかにも2人の閣僚が離脱した。こうした動きは、ネタニヤフ首相の連立政権を著しく弱体化させるとみられるが、必ずしも政権崩壊につながるわけではない。 

これとは別に、やはり極右のスモトリッチ財務相は、人質解放と停戦をめぐる合意には反対する姿勢を示してきたものの、人質3人の帰還については「喜びでいっぱいだ」と述べた。 

スモトリッチ氏は辞任していないものの、停戦合意の第1段階が終わった後に戦闘を再開しない場合には辞任すると強硬な姿勢を維持している。【1月20日 CNN】
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アメリカ・トランプ大統領は就任前からイスラエルに停戦を求めていましたが、停戦でパレスチナを安定させ、そのうえでイスラエルとサウジアラビアの関係を正常化させ、対イランの戦線を強化する・・・という目論みでしょう。

ネタニヤフ首相は、停戦を求めるアメリカのトランプ大統領と、反発する政権内の極右勢力との板挟みになり、苦しい状況が続きます・・・その停戦後のパレスチナ情勢の不安定さについては、1月16日ブログ“パレスチナ  19日から6週間の停戦合意 今後については不透明”でも取り上げたところです。

“ネタニヤフ氏は治安閣議で、安全保障の要求が満たされず、第2段階の交渉が決裂した場合、米国の協力の下で戦闘を再開できると述べた。”(米ニュースサイト「アクシオス」報道)【1月18日 毎日】

【救援物資搬入が本格化 遺体捜索もこれから】
とりあえず現状ではガザ救援が本格化しています。

****「ガザを助けろ」 トラック数百台、イスラエルとハマスの停戦合意で支援物資搬入が本格化****
イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスの停戦合意が発効した19日、パレスチナ自治区ガザに人道支援物資を搬入する動きが本格化した。ガザとエジプトの境界にあるラファ検問所には物資を積んだトラックが長蛇の列を作った。運転手らは「早くガザの人々に届けたい」などと、入域許可を待ちきれない様子で話した。

産経新聞助手が19日、エジプト政府主催のプレスツアーに参加してラファ検問所を訪れ、取材した。

首都カイロからバスで8時間超走り、検問所の前に到着した。ゲートの前には確認できただけでも150台以上のトラックが並び、みな燃料や毛布、食料、おむつなどを満載していた。

「エジプトの非政府組織(NGO)による支援物資の小麦粉40トンを積んで、10日前から待っている」。検問所の近くで会った運転手のアハメドさん(26)はそう話し、「1年以上も流血の侵略に苦しめられ、困窮しているパレスチナ人に必要な物資を運べることを、エジプト人として誇りに思う」と続けた。

ガザと境界を接するエジプトはイスラム教スンニ派が人口の9割を占め、ガザの人々への同胞意識が強い。イスラエルのガザ攻撃を受け、米国企業の製品に対する不買運動も起きた。

エジプト政府によると、この日は330台のトラックが、ラファからイスラエルの管理するケレムシャローム検問所に向かった。ロイター通信によると、バイデン米大統領は「トラック数百台が市民を助けるためにガザに入った」と述べた。

ガザの人口は推定220万人。報道によると、戦闘期間中には10日間でトラック9台しか入域できないときもあった。国連は一時、必要な物資の9%しか届いていないと推計した。

ガザに向かった運転手は電話取材に、「イスラエルは以前、車体や積載物資をすべて検査していたが、きょうは簡易になっている」と話した。

負傷してエジプトの病院で治療を受けていたというガザ出身のカメラマン、アリさん(30)は「両親と2人の兄弟はイスラエル軍に爆撃されて死亡した。ハマスは今もガザでは人気がある。ハマスに拘束されていた人質の居場所を住民が漏らさなかったことが、それを証明している」と話した。【1月20日 産経】
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最後の話は、ハマスを支援しているからか、ハマスの報復が怖いためかはわかりません。

停戦合意では1日当たりトラック600台分の支援物資を搬入するとされていますが、ロイター通信は21日、19日からの3日間で人道支援物資を積んだ2400台以上のトラックが入ったと伝えています。

食糧に加え、住宅、医療、インフラ・・・問題は山積です。そもそも、遺体の捜索すらこれからです。

一連の戦闘で約4万7000人が死亡したとされていますが、停戦が成立して捜索が始まれば数字は更に増えると予想されます。

****ガザ、約4万7000人死亡 2092世帯が家族全員殺害 現地当局****
パレスチナ自治区ガザ地区の広報当局は21日、2023年10月に始まった一連の戦闘での被害をまとめた統計を発表し、約4万7000人が死亡したほか、約1万4000人が行方不明だと明らかにした。犠牲者の7割は女性と子供で、2092世帯は家族全員が殺害されたとしている。

発表によると、戦闘が始まってから生まれた子供のうち214人が死亡した。栄養失調では子供44人が死亡したほか、3500人の子供が今後、死亡する恐れがある。また、子供7人を含む計8人が凍死した。両親もしくは片親がいない子供は3万8495人に上るという。

死者のうち1155人は医療関係者で、報道関係者も205人に上った。ガザ地区の88%が破壊され、被害額は380億ドル(約6兆円)以上と推定している。

ガザ地区では19日、42日間の停戦が始まり、がれきに埋もれた行方不明者の捜索も始まっている。戦闘継続中は探せなかった遺体が続々と見つかっており、死者数は今後も増える可能性が高い。(後略)【1月22日 毎日】
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【イスラエル軍、ヨルダン西岸地区での攻撃開始】
ここにきて「事態の不安定さ」が露見しているのが、ヨルダン川西岸地区です。

****イスラエル軍がヨルダン川西岸で「大規模作戦」50人近く死傷 西岸での軍事作戦激化か****
イスラエル軍は、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸で大規模な軍事作戦を行い、これまでに少なくとも9人が死亡しました。イスラエル軍は今後、ヨルダン川西岸での軍事行動を強めるとの見方も上がっています。

イスラエルの首相府は21日声明を出し、「テロ撲滅のため」としてパレスチナ自治区ヨルダン川西岸のジェニンで「大規模かつ重要な軍事作戦を開始した」と発表しました。

中東アルジャジーラによりますと、これまでに少なくとも9人が死亡、40人がけがをしたということです。

ジェニンには、イスラム組織ハマスやイスラム聖戦などの拠点があるとみられ、イスラエル軍は今後、こうした拠点の掃討に向けて軍事行動を強める可能性が指摘されています。

イスラエル軍はこれまでも占領するヨルダン川西岸全域で軍事作戦を行っていて、おととし10月のハマスによる奇襲攻撃以降、800人以上のパレスチナ人が死亡したとみられています。【1月22日 TBS NEWS DIG】
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“西岸での作戦開始に際し、イスラエルのネタニヤフ首相は各地の親イラン勢力に対し、「組織的に断固として立ち向かう」と述べた。ハマスは西岸にも戦闘員を有しているとされ、西岸でのイスラエルとの闘争拡大を呼びかけた。(後略)”【1月22日 産経】

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パレスチナ  19日から6週間の停戦合意 今後については不透明

2025-01-16 23:01:47 | パレスチナ

(イスラエルとハマスがガザ停戦で合意したとの知らせに歓喜するガザの人々(15日)【1月16日 BBC】)

【不透明な今後】
国際面で今日一番のニュースと言えば、当然、パレスチナ・ガザ地区の戦闘に関するイスラエルとハマスの6週間の停戦及び人質一部解放の合意(発効は1月19日)でしょう。

ここ数日“合意間近”と言われていましたので意外感はありませんが、2023年10月のハマスによる対イスラエル大規模奇襲から約1年3カ月に及び、ガザで4万6000人以上の死者を出したイスラエルの軍事作戦・ハマスの抵抗がとりあえず停止することは、まずは非常に喜ばしいニュース。

この件に関しては多くの報道がなされていますので、改めてここで取り上げる必要もないですが、一応ひとつの区切りということで簡単に。

まず、合意成立と報道はされていますが、イスラエルが正式承認したわけでもないようで、ネタニヤフ首相は「ハマスが合意の一部に異論を唱えている」【後出 産経】として“見送り”も示唆しています。

****イスラエル首相「ハマスが停戦合意を破っている」 承認見送りを示唆****
15日に発表されたパレスチナ自治区ガザ地区の停戦合意を巡り、イスラエルのネタニヤフ首相は16日、対立するガザのイスラム組織ハマスが合意を破っていると非難する声明を出した。

ハマスが合意の全てを受け入れたと通知されるまで、合意承認の閣議を招集しないと主張した。停戦が19日に予定通り発効するか注目される。

イスラエルは停戦に合意しているが、最終的に合意を閣議で承認する必要がある。一方、ハマスは声明を発表し、停戦合意を守っていると主張した。【1月16日 毎日】
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ただ、ここまで“合意”が国内外に広く報じられ、アメリカ新旧大統領が「自分の手柄だ」と言い立てているような既成事実となった状況で、今更のちゃぶ台返しはさすがのネタニヤフ首相も難しいところですので、おそらくこのまま正式に閣議承認となるのでしょう。

しかし、停戦が維持され、第2段階、第3段階と進めるかどうかは極めて不透明です。そもそも、ガザを今後誰がどのように統治するのかという大問題については何も決まっていません。

****脆弱なガザ停戦合意、難航課題は持ち越し 根深い相互不信…「戦闘終結」などハードル高く****
イスラエルとイスラム原理主義ハマスが15日にこぎつけた停戦合意は、互いに拘束する収監者と人質の身柄交換を先に進め、難航が予想される課題を後で協議する仕組みだ。恒久停戦とガザ再建の実現に向けたハードルは高く、相互不信が根深い中で、脆弱さをはらんでいる。

戦闘再燃の懸念
イスラエルのネタニヤフ首相は停戦合意を受け、米国のバイデン大統領とトランプ次期大統領に電話で謝意を伝えた。一方のハマスも、「勇敢な抵抗の成果」だと声明で合意到達を自賛した。

だが、ネタニヤフ氏は16日、ハマスが合意の一部に異論を唱えていると早くも主張。ハマスが完全に受け入れるまで治安閣議などによる合意の正式承認はできないと述べた。

合意内容に双方ともが満足しているとは言いがたい。ハマスはイスラエル軍のガザ完全撤収による「戦闘終結」を停戦の条件としてきたが、この問題は第2段階の協議に持ち越された。

米国から合意への圧力を受けたネタニヤフ政権は目標である「ハマスの壊滅」を果たせないままだ。

一部報道によると、イスラエル軍はガザとエジプトの境界地帯などで一定期間、駐留を継続する可能性がある。ガザでは今月も仕掛け爆弾や銃撃戦でイスラエル軍兵士が死傷しており、戦闘が再燃して停戦合意が崩壊する懸念は拭えない。

ガザの戦後統治見通せず
「戦闘終結」を巡る協議は、合意の枠組み全体の成否を左右する一つの焦点となる。ネタニヤフ氏はこれまで、停戦は一時的なものにとどめると繰り返し強調してきた。国内の治安のほか、連立政権に加わる極右政党や世論の反発を考慮すれば、軍の完全撤収に応じるのは容易ではない。

ハマスもイスラエルの出方を不安視している。米CNNテレビ(電子版)によると、仲介国が「戦闘終結」を受け入れるよう「イスラエルに圧力をかける」とハマスを説得したが、口頭での約束だ。

停戦合意は、長期的に最大の課題となるガザの戦後統治の具体像には触れていない。

ブリンケン米国務長官は14日、戦後統治の担い手としてパレスチナ自治政府の名前を挙げたが、統治能力を疑問視する向きは少なくない。今後、国際社会を巻き込んだ議論になる可能性もある。

停戦合意を発表したカタールのムハンマド首相兼外相は声明で、今後も米国やエジプトと緊密に協力して仲介を続けると強調。合意履行の厳しさをうかがわせた。【1月16日 産経】
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今回“合意”は、「第1段階」として6週間の停戦期間を設け、その間に人質の解放などを進めるとともに、「第2段階」となるイスラエル軍のガザからの完全撤退や、「第3段階」のガザ再建に向けた交渉を行うという内容。

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第1段階の停戦は6週間で、ハマスはガザで拘束する人質33人を解放し、イスラエル側は収監するパレスチナ人990〜1650人を釈放する。

イスラエル軍はガザから徐々に撤収し、ガザ住民の北部への帰還が始まる。1日当たりトラック600台分の支援物資がガザに搬入される。

改めて停戦の第2段階に向けた協議を行い、イスラエル軍のガザ完全撤退やさらなる人質解放について話し合われる見通しだ。【1月16日 時事】
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イスラエル軍完全撤退を含む第2段階以降は更に厳しくなります。
希望的観測としては、ハマスもいったん停戦した以上、6週間後に改めて戦闘再開というのは「そこまでの力が残っているだろうか?」といったところでしょう。

【合意の背景にハマスの孤立化】
今回の合意成立もハマスの孤立化があります。

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難航していた停戦交渉が前進したのは、イスラエルとレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラの停戦が発効した昨年11月27日以降のことだ。交渉過程に詳しい米政府高官は記者団に、それまでのハマスは「騎兵隊が助けに来てくれると信じていた」と語る。イランやその支援を受ける勢力からの援護で状況が好転することに期待をかけていた、との意味だ。

しかし、ハマスと連動してイスラエルの北部境界を脅かしていたヒズボラの大幅な戦闘力喪失がはっきりし、ハマス側の抗戦心理は揺らいだ。12月8日にはヒズボラとともに親イラン陣営を形成してきたシリアのアサド政権が崩壊。イランの弱体化でハマスはさらに域内での孤立を深めた。【1月16日 産経】
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【米現・次政権の「合作」】
そうした中東情勢の変化に、“バイデン米政権の長期に渡る仲介外交と、今月20日の発足を前に中東の不安定要因を除去したいトランプ次期政権の思惑が複合的に作用した結果”【同上】が今回合意です。

****ガザ停戦、現・次期政権の「合作」 激変した中東パワーバランス***
パレスチナ自治区ガザを巡るイスラエルとイスラム原理主義組織ハマスの停戦合意は、バイデン米政権の長期に渡る仲介外交と、今月20日の発足を前に中東の不安定要因を除去したいトランプ次期政権の思惑が複合的に作用した結果だ。中東各地に飛び火した戦闘による域内のパワーバランスの変化も交渉前進の要因となった。(中略)

こうした中(前出の“ハマス孤立化”)で、サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)、バーンズ中央情報局(CIA)長官、マクガーク中東政策調整官らを中心とするバイデン政権の交渉チームは、カタール、エジプトとともにイスラエル、ハマス双方への働きかけを加速。

ハマスはなおも解放対象の人質リストを巡って明確な返答を拒むなど煮え切らない態度を続けたが、米側がいったん交渉を打ち切る姿勢をみせると一転して歩み寄りをみせたという。

交渉チームにはトランプ次期政権で中東問題担当特使に起用されるスティーブン・ウィトコフ氏も参加した。同高官によれば、カタール首都ドーハでの詰めの協議でイスラエル側の確約が必要な場面では、マクガーク氏らが交渉を続ける間にウィトコフ氏が同国へ飛び、ネタニヤフ首相と面会してすぐにドーハへ戻るといった「連係プレー」も展開された。

バイデン政権は2023年10月にガザでの戦闘が発生して以降、人質となった米国籍保有者の解放と紛争の政治的解決を目指してきた。

一方、自身が当選すれば「戦闘はすぐに終わる」と豪語してきたトランプ次期大統領にとり、ガザ戦闘の早期終結は政治的な利益だ。ハマスの完全壊滅を掲げるネタニヤフ氏も、トランプ氏との親密な関係を維持するには停戦合意は不可欠と判断した可能性が高い。

米政権の移行期という外交的には宙ぶらりんな時期ながら、現・次期両政権の思惑が一致したことが、約15カ月に及ぶ戦闘の終結に向けた突破口を生んだ。【同上】
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バイデン大統領は、自分が提案した停戦案を外交努力で実現させたと、トランプ次期大統領は、「私が歴史的な勝利を収めたからこそ実現した」と、それぞれ“手柄”を自慢しています。

【イスラエル極右閣僚は反対】
イスラエルでは極右閣僚が反対していますが、政権を崩壊させるには至らないのではと見られています。

****極右のイスラエル国家治安相、ガザ停戦同意なら辞任と警告****
イスラエルの極右政党「ユダヤの力」を率いるベングビール国家治安相は14日、カタールで交渉が行われているパレスチナ自治区ガザ停戦と人質解放協定にネタニヤフ首相が同意した場合は辞任すると警告した。

停戦はパレスチナのイスラム組織ハマスへの危険な降伏だとし、スモトリッチ財務相に停戦協定阻止に向けた最後の試みに加わるよう要請していた。

ベングビール氏は「イスラエル国防軍(IDF)隊員の死を無駄にしないためにも、この措置は(協定の)発効を阻止し、ハマスへの降伏を回避する唯一のチャンスだ」とXに投稿した。

スモトリッチ氏は13日、合意には反対と述べる一方で、ネタニヤフ連立政権からの離脱は示唆しなかった。

停戦合意には戦闘停止と人質解放が盛り込まれ、閣僚の過半数が支持するとみられている。【1月15日 ロイター】
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とにもかくにも、ガザへの物資搬入が速やかに増強され、人道危機の状況が一日も早く緩和されることを期待します。
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