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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

改めて「パレスチ・ガザ地区の支援拠点で連日の多くの死傷者 現地では何が行われているのか?」

2025-06-30 23:45:33 | パレスチナ
(支援拠点付近 【6月28日NHK【国連】)

【国連人権高等弁務官事務所「民間人に対する食料の「兵器化」は戦争犯罪に該当する」】
パレスチ・ガザ地区においてイスラエルと米国が主導する「ガザ人道財団(GHF)」が運営している支援拠点で、物資を求めるパレスチナ人に向けたイスラエル軍による発砲(ときに戦車の砲撃)が相次いで毎日多くの死傷者が出ていることは、6月17日ブログ“ガザ食料配給所で連日多数の死者 何が起きている? イスラエルでのアラブ系とユダヤ系の「命の不平等」”でもとらげました。

この混乱(戦争犯罪? )は今も続いています。 現地で一体何がおきているのか明快な説明がないまま、住民犠牲だけが増え続けています。

****ガザの食料「兵器化」、戦争犯罪に該当 国連が主張****
国連人権高等弁務官事務所は24日、パレスチナ自治区ガザの配給所付近で多数のパレスチナ人が殺害されていることについて、民間人に対する食料の「兵器化」は戦争犯罪に該当すると表明した。

ジュネーブで会見した同事務所の報道官は、イスラエルが支援する「ガザ人道財団」が5月下旬にガザで活動を開始して以降、同財団の配給所に向かっていた410人以上がイスラエル軍の発砲や砲撃で殺害されたと指摘。

「絶望し飢えたガザの人々は、飢え死にするか、食料を手に入れるため殺害される危険を冒すかという非人道的な選択に依然として直面している」とし「(これは)イスラエルの軍事化された人道支援メカニズムだ」と主張。

「民間人に対する食料の兵器化は、生命維持サービスの利用制限・妨害であるとともに、戦争犯罪に該当する。一定の状況下では、国際法上の他の犯罪の構成要件に該当する可能性がある」と述べた。

イスラエルがこの戦争犯罪で有罪となるのかとの質問には「法廷が判断する必要がある」と答えた。 【6月24日 ロイター】
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“パレスチナ保健省によると、5月27日以降、援助拠点や支援物資を運ぶトラックに近づいたパレスチナ人が少なくとも500人以上死亡した。保健当局や救助隊員によれば、拠点に近づく市民がほぼ毎日銃撃を受けているという。” 【6月29日 CNN】

“ある兵士は「近い場所から群衆に銃撃したこともあった。脅威を感じたことはなく、彼らは武器を持っておらず、反撃されることもなかった」と証言。 別の兵士は、警告射撃の後に逃げ惑うガザ住民を撃つよう命じられたとし、「なぜ逃げている人を撃たなければいけないのか」と疑問を呈した。 ”【6月28日 毎日】

****ガザ市民、命がけの食料調達 「食べ物を持ち帰るか、布に包まれて帰るか」****
ニダル・アル・ムグラビ、エブラヒム・ハッジャジ、オリヴィア・ル・ポワデヴィン
ガザに住む大勢のパレスチナ人と同じく、ヒンド・アルナワジャさん(38)は、家族の食料を手に入れるため、毎日何キロにも及ぶ危険な道のりを歩く。 生きて帰れることを願いながらだ。

4人の子どもを持つアルナワジャさんは、妹のマズーザさんとともに、道端のがれきの陰に身を隠した。 近くで銃声が響いたためだ。

ガザ北部ベイトラヒヤに住むアルナワジャさんは「子どもに食べ物を持ち帰って喜ばれるか、手ぶらで帰って泣かれるか、それとも遺体となって布に包まれて帰るかのどれかだ」と語る。 「これが私たちの生活だ。私たちは虐殺されている。 もう限界だ」と訴えた。

ガザの医療関係者によると、過去2日間で、国連などの支援トラックから食料を受け取ろうとしたパレスチナ人数十人が、イスラエル軍の発砲で死亡した。

医療関係者によると19日には、イスラエル軍の銃撃と軍事攻撃によって少なくとも51人が死亡した。 その中には、ガザ地区中央部にある、米国とイスラエル主導で設立された「ガザ人道財団(GHF)」が運営する施設に近づこうとした12人も含まれる。 【6月20日 ロイター】
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【イスラエルの有力紙「脅威がないことが明らかであったにもかかわらず、援助拠点に近づくパレスチナ人の群衆へ発砲するよう指揮官から命じられた」】
これまでイスラエル軍は殺到する群衆に「警告射撃」を行ったことは認めていますが、民間人への意図的な攻撃は禁じているとも。

しかし、実態はそういうものではないとの証言も。 “世界で最も道徳的な軍である”と自任するイスラエル軍は否定していますが。

****食料を待つパレスチナ人へ発砲を命令か、イスラエル軍は報道を否定****
イスラエル国防軍(IDF)は、パレスチナ自治区ガザ地区で人道支援を待つ非武装のパレスチナ人に発砲するよう兵士が命令されたとする新たな報道を否定した。 ここ数週間、食料配布所に近づいた市民が相次いで死亡しており、犠牲者は数百人に上っている。

イスラエルの有力紙ハアレツは27日、ガザに展開するイスラエル兵が、脅威がないことが明らかであったにもかかわらず、援助拠点に近づくパレスチナ人の群衆へ発砲するよう指揮官から命じられたと報じた。

同紙に匿名で証言した兵士は、援助拠点へ向かう経路を「殺戮(さつりく)の場」と表現し、そこでは差し迫った脅威がなくてもイスラエル軍が発砲すると語った。 記事によれば、イスラエル軍は最近、群衆を解散させるため砲弾を使うようになり、そのため死傷者が急増したという。

IDFは報道を否定した。 配給所に近づく市民を含め、民間人を意図的に攻撃するよう部隊に命じていないとし、民間人への意図的な攻撃を禁じていると説明した。

イスラエルのネタニヤフ首相とカッツ国防相も報道を一蹴し、世界で最も道徳的な軍であるIDFをおとしめる悪質なうそと断じた。

パレスチナ保健省によると、5月27日以降、援助拠点や支援物資を運ぶトラックに近づいたパレスチナ人が少なくとも500人以上死亡した。 保健当局や救助隊員によれば、拠点に近づく市民がほぼ毎日銃撃を受けているという。

今月のある事案では、負傷者を含む十人以上の目撃者がCNNに対し、イスラエル兵が群衆に向けて一斉射撃を繰り返したと語った。 武器の専門家は、映像の発砲音や被害者から回収された銃弾の画像がイスラエル軍の機関銃と一致すると指摘した。

IDFは、配給拠点付近の軍の陣地に接近するパレスチナ人に対して、複数の回の「警告射撃」を行ったことは認めている。 死傷者に関する報告を調査しているとも明らかにしているものの、これまで調査結果を公表していない。

ハアレツ紙によれば、軍の法務総監は、戦争法違反の可能性がある事案を調査する軍の機関に対して、援助拠点周辺での戦争犯罪をめぐる疑惑を調査するよう指示した。

死者が出た援助拠点は、イスラエルと米国が主導する「ガザ人道財団(GHF)」が運営している。 同財団はガザ南部と中部の数カ所で食料を配布しており、1カ月前の開始当初から混乱が続いている。 拠点が開くと同時に群衆が殺到し、支援物資は1時間足らずでなくなることも多い。

GHFは、イスラエルと米国がイスラム組織ハマスによる支援物資の略奪を非難したことを受け、国連の支援機構に代わる形で設立された。

ハマスは略奪をめぐる疑惑を否定しているほか、人道団体は国連の食料の大半は市民に届いていると指摘している。 【6月29日 CNN】
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****イスラエル軍法務総監、ガザ配給所の発砲巡り戦犯調査を命令=報道****
イスラエル軍法務総監は、パレスチナ自治区ガザ地区の援助物資配給拠点付近でイスラエル軍がパレスチナ民間人に故意に発砲したとの疑いを巡り、戦争犯罪の可能性に関する調査を命じた。 イスラエル紙ハアレツが27日、報じた。

ハアレツが匿名のイスラエル兵士の話として報じたところによると、兵士らは群衆を制御するために発砲を命じられ、脅威を与えているようには見えない人々に対しても不必要な致命的な武力を使用したという。

イスラエル軍は、この報道についてロイターからのコメント要請にすぐには応じていない。

また同紙は、国際法違反の可能性がある事件調査のために設置された陸軍部隊が、過去1カ月間にわたる物資配布場所付近での兵士の行動を調査する任務を負っていたと、匿名の情報筋の話として伝えた。

ガザ保健当局によると、5月下旬以降、米が支援するガザ人道財団(GHF) が運営する支援センター付近や、国連の食料輸送トラックが通過予定だった地域での死者は合計500人超に上る。 【6月28日 ロイター】
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【ガザ住民「これは援助ではない。死のわなだ」】
そもそも、「現在、4か所・5か所で配給を行っているわけですが、かつて国連がやっていたときは400か所でやっていた。(ガザ地区の)中部・南部にだけ配給の場所を作って、ガザの人たちを北から南へ移動させようとしたのではないかとみられています。 ガザの人達を完全に排除して、そこ(北部)をイスラエルの支配下にもう一度置きたいのではないかというのが一つの解釈です」(放送大学 高橋和夫 名誉教授)との指摘があります。

****住民「これは援助ではない。死のわなだ」ガザ支援物資の配給拠点で犠牲者580人超****
イランと停戦した一方で、イスラエルが攻撃を続けているのがパレスチナ自治区ガザです。 支援物資を受け取りに来た住民らの犠牲も増え続けています。 何がおきているのでしょうか。

イスラエル軍は29日、ガザ北部のガザ市などの住民に対し、南部への退避を求めました。 街の中心部にまで侵攻範囲を拡大させるとしていて、イスラム組織ハマスとの戦闘を激化させるものとみられます。

イスラエルはイランとの交戦中、そして、停戦後も変わらずガザへの攻撃を続けていて、支援物資の配給拠点周辺ではこの1か月あまりで580人以上が死亡したと伝えられています。

国連 グテーレス事務総長
「家族を養おうとしただけの人々が殺されています。食料を求めることが死刑宣告になってはいけません」

ガザ住民「これは援助ではない。死のわなだ」

ガザの人たちにとって不可欠な物資の配給でなにがおきているのか。 イスラエルの有力紙「ハーレツ」は兵士らの証言として、集まった住民らを追い払うために意図的に発砲するよう命じられていたと報じました。

ネタニヤフ首相とカッツ国防相は声明でこれを否定し、「軍の名誉を傷つけるための悪意のあるうそだ」と非難。 「兵士らは無実の人たちを傷つけないよう明確な指示を受けている」としています。 (後略)【6月30日 TBS NEWS DIG】
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アメリカとイスラエルが支援する「ガザ人道財団(GHF)」のジョニー・ムーア代表は、すべての死傷事案が拠点のすぐ近くで起きているのではないと国連等の情報の誤りを批判しています。

****ガザ人道財団トップ、「食料を届けるのが任務」と主張 配給所近くで民間人の殺害相次ぐ中****
(中略)配給拠点を運営する団体の代表は27日、すべての死傷事案が拠点のすぐ近くで起きているのではないとし、ガザ住民に食料を届けるために活動していると主張した。 ガザでアメリカとイスラエルが支援する「ガザ人道財団(GHF)」のジョニー・ムーア代表は、BBCワールド・サービスのラジオ番組「ニューズアワー」の取材に応じた。

その中で代表は、GHFの配給拠点近くで死者が出ていることは否定しないとしつつ、「全ての死亡事案が、GHFの拠点のすぐ近くだったために起きたとする主張は、事実ではない」と主張した。 そして、国連や他の国際機関は「自分たちで検証できていない情報を拡散している」と非難した。 

(中略) イスラエル紙「ハアレツ」は27日、群衆を追い払ったり解散させたりするために、非武装の民間人に発砲するよう命じられたと、複数のIDF(イスラエル軍)兵が匿名で話したと報じた。 

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、この報道を「悪意ある虚偽」だと強く否定した。 IDFはBBC宛ての声明で、「配給センターに近付く人々を含む民間人に意図的に発砲するよう命じた事実はない」と説明。 支援区域での「作戦上の対応」の改善を目指していると、IDFは付け加えた。 最近では、新たなフェンスや標識を設置し、物資供給区域への新ルートも設置したとした。

GHFのムーア氏は、「死傷事案はすべてIDFによるものだとする主張があるが、我々が知る限り、それも事実ではない」とした。 IDFはこの1カ月間、「容疑者」と呼ぶ相手や、IDF兵に脅威を与えた人物に対して「警告射撃」を行ったと、繰り返し説明している。 

■配給拠点に向かう途中で殺害、「偽情報」とGHF代表
配給拠点近くで数百人のパレスチナ人が殺害される中、ムーア氏はGHFの支援活動を擁護した。 (中略)「GHFの拠点に向かっている人々が殺されているというのは偽情報だということを、皆が理解する必要がある。我々の拠点の近くでそうした事案があったという証拠はない」 

イスラエルは、BBCを含む海外メディアがガザにジャーナリストを派遣するのを許可していない。 そのため、現地の状況を独自に検証するのは難しい。 

ムーア氏は、GHFが活動を始める以前は、国連の支援トラックの大半が、武装勢力に銃を突きつけられハイジャックされていたとも主張した。 国連は、大規模なハイジャックが起きたことを示す証拠はないとしている。

BBCがこのことを伝えると、ムーア氏は「国連は正直ではない」と反論した。 

■物資不足について
(中略) GHFはガザで5000万食分を供給することを目指している。 これは、GHFが活動を開始してからの期間でみると、1人あたり1日1食にも満たない計算になる。 最も必要としている人に食料が届いているのかと問われると、ムーア氏は活動が「不十分」だと認めつつ、5000万食は1カ月前の供給量より多いと主張した。

 ムーア氏は、GHFは規模を拡大する必要があり、国連のような組織との連携を希望していると語った。 そして、「我々の任務は明確だ。ガザの人々に食料を届けたいだけだ」と付け加えた。 

米国務省は26日、GHFに対して3000万ドル(約43億円)を拠出すると発表した。 米政府が同団体に直接的な支援を行うのは初めてとみられる。 

GHFのムーア代表は広報を専門とするキリスト教福音派の牧師で、ドナルド・トランプ米大統領を精力的に支持してきた。 前任の初代代表ジェイク・ウッド氏は、GHFの仕組みを批判して辞任した。 (後略)【6月28日 BBC】
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【トランプ大統領はネタニヤフ首相に具体的な対応を促しているもよう ガザ住民の域外移住なども】
こうしたなかで、イスラエル軍は29日、パレスチナ自治区ガザ北部に避難命令を出し、南部ハンユニスのアルマワシ地区に向けて南下するよう住民に要請しています。

****イスラエル、ガザ北部に避難命令 トランプ氏は戦争終結呼びかけ****
イスラエル軍は29日、パレスチナ自治区ガザ北部に避難命令を出した。 イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦に向けた新たな仲介の取り組みが行われる中、トランプ米大統領は戦争終結を呼びかけているが、戦闘は激化している。

トランプ氏は29日早朝、「ガザでディールを行い、人質を取り戻せ」と自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。

一方、イスラエル軍はXに投稿した声明や多くの住民に宛てたテキストメッセージで、イスラエルが人道支援地域に指定した南部ハンユニスのアルマワシ地区に向けて南下するよう北部のパレスチナ人に要請。

「(イスラエル)国防軍はこれらの地域で極めて強力な作戦を展開しており、軍事作戦はエスカレートし、強化され、テロ組織の能力を破壊するために市中心部まで西側まで拡大されるだろう」と述べた。

避難命令はジャバリア地区とガザ市の大部分に発令された。 医療関係者や住民によると、ジャバリアでは早朝にイスラエル軍の砲撃が激化し、複数の家屋が破壊され、少なくとも6人が死亡した。

ハンユニスでも、マワシ近くの難民キャンプへの空爆で5人が死亡した。 また、イスラエル軍によるガザ各地での別の空爆や銃撃で少なくとも12人が死亡し、29日の死者数は全体で少なくとも23人に上った。 【6月30日 ロイター】
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トランプ大統領はイランとの停戦を受けて、ガザ地区についても27日、「来週中にも(ガザで)停戦すると思う」と表明しています。 ということは今週中にも・・・という話になります。

****ガザ、早期戦闘停止も トランプ氏が圧力―対イラン「勝利」背景に・イスラエル****
イスラエルとイランが停戦したことを受け、パレスチナ自治区ガザでのイスラエルとイスラム組織ハマスの早期戦闘終結に向けた動きも出始めた。 今回の停戦とガザ情勢を連動させたいトランプ米大統領は27日、記者団に対して「来週中にも(ガザで)停戦すると思う」と表明。 ガザでの戦闘終結に向けて圧力を強めた形だ。

ガザ停戦にも期待感 イラン戦闘終息で人質家族ら―イスラエル
 ◇野望の考え方
ガザ情勢を巡り、トランプ氏はイスラエルのネタニヤフ首相に具体的な対応を促しているもようだ。 両首脳がどのような議論を交わしているのか詳細は明らかでないが、イスラエル紙のイスラエル・ハヨムは、両首脳がガザでの戦闘停止を含む中東戦略に関する「基本原則」で合意したと報じた。

報道によれば、米軍が22日、イスラエルの作戦を支援する形でイラン核施設を空爆した直後の電話会談で合意が交わされた。 基本原則ではエジプトなど中東4カ国が停戦後のガザを管理し、ハマスはイスラエルから連れ去った人質を解放する。 ハマス幹部のガザ追放や、「国際法違反」と批判を浴びるガザ住民の域外移住などにも踏み込んでいるという。

ただ、同紙は基本原則を「野心的構想」と位置付ける。 ハマスや、エジプトなど関係各国がこの原則をそのまま受け入れるかは不透明だ。

 ◇双方に停戦の余地
2023年10月に始まったイスラエル軍によるガザでのハマス掃討作戦は泥沼化。 ガザの死者は5万6000人以上に上り、国際社会からの批判が収まらない。 ネタニヤフ氏は、戦闘が長期化し人質奪還が進まないことで国内でも非難の矛先を向けられてきた。

だが、宿敵イランへの攻撃は世論調査で70%が支持。 欧米も自衛権の行使だと容認した。 ネタニヤフ氏は、イランに対する「勝利」で国内が高揚しているうちにガザでも事態を収束させれば、政権内の対ガザ強硬派の反対論を封じ込めることができると判断している可能性もある。 何より、イラン攻撃に加わって恩を売ったと見なすトランプ氏の停戦圧力は無視できない。

一方、アルアハラム政治戦略研究所(エジプト)のサイード・オカシャ氏は、今後のハマスの動向について、停戦に向けて厳しい条件を突き付けられれば、態度を硬化させる可能性があると指摘。 ただ、対イスラエルでハマスを支援してきたイランが弱体化した現状を「(ハマスが)合理的に判断すれば、停戦は実現する」と、合意妥結の余地があると分析した。 【6月28日 時事】
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ガザ食料配給所で連日多数の死者 何が起きている? イスラエルでのアラブ系とユダヤ系の「命の不平等」

2025-06-17 23:25:11 | パレスチナ
(「ガザ人道財団」から届いた食料や支援物資が入った袋を運ぶパレスチナの人々(15日、ガザ地区南部のラファで)【6月16日 読売】)

【食料配給によって連日の数十名程度の死者】
“ガザでは過去数週間にわたり、米国とイスラエル主導で設立された「ガザ人道財団(GHF)」が運営する施設付近などで、援助を求めるパレスチナ人がほぼ毎日、多数死亡している。”【後出 ロイター】

*****イスラエルのガザ攻撃で50人死亡、物資配給所付近での犠牲相次ぐ*****
パレスチナ自治区ガザ地区の保健省は、16日のイスラエルの攻撃により少なくとも50人が死亡したと発表した。そのうち半数は、米が支援するガザ人道財団(GHF)の援助物資配給拠点付近での犠牲者だという。イスラエルによる援助物資配給の方法を巡り、国連当局者らの間で非難の声が高まっている。

医療関係者らによると、ガザ地区最南端のラファにある援助物資配給所付近で少なくとも23人が死亡、200人が負傷。国連は、GHFによる物資の配給は不十分かつ危険であり、人道的公平性の原則に反すると非難している。

16日に援助を受けようとしたというアハメド・ファヤドさんは、「子どもたちに食べさせる援助を受けられると思って行ったが、それはわなで、実際には人が殺害された」とし、配給拠点に行かないよう呼びかけた。

イスラエルが新しい配給システムを導入して以来、連日のように銃撃があり、物資を受け取ろうとしたパレスチナ人数百人がこれまで死亡している。同システムの導入前は、ガザ住民への物資援助は主に国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)などの国連機関によって行われていた。【6月17日 ロイター】
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上記は16日の事態ですが、下記は17日朝の状況。

****イスラエル軍、ガザ食料支援拠点で少なくとも47人殺害****
パレスチナ自治区ガザ地区の民間防衛当局は17日、イスラエル軍がガザ南部ハンユニスの援助物資配給拠点周辺に集まっていた人々を攻撃し、少なくとも47人が死亡したと発表した。

ガザ民間防衛機関のマフムード・バッサル報道官がAFPに語ったところによると、17日朝、パレスチナ人数千人が小麦粉を受け取ろうとして慈善団体の支援拠点に集まっていたところ、イスラエルのドローンが市民に対して発砲。その数分後には戦車が砲弾を発射し、「多数の殉教者と負傷者」が出た。負傷者は200人を超えているという。 【6月17日 AFP】
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*****支援物資待つガザ住民51人死亡、イスラエル軍戦車が砲撃*****
パレスチナ自治区ガザ南部ハンユニスで17日、支援物資を積んだトラックを待っていたパレスチナ人少なくとも51人がイスラエル軍の戦車砲撃で死亡した。ガザ地区の保健省が明らかにした。この砲撃で200人が負傷し、うち20人以上が重体だとしている。

医療関係者や目撃者によると、ハンユニス東部の主要道路沿いで援助トラックを待っていた数千人に向けて、イスラエル軍の戦車が少なくとも2発の砲弾を発射した。 イスラエル軍のコメントは取れていない。 現地のナセル病院には多数の死傷者が運び込まれ、対応しきれない状態という。

ガザでは過去数週間にわたり、米国とイスラエル主導で設立された「ガザ人道財団(GHF)」が運営する施設付近などで、援助を求めるパレスチナ人がほぼ毎日、多数死亡している。

ガザ地区の保健省によると、16日にも南部ラファにあるGHFの援助物資配給拠点に近づいた際に、イスラエル軍の銃撃により少なくとも23人が死亡した。

これに対し、GHFは同日、4カ所の配給拠点で300万食以上を問題なく配給したと発表した。【6月17日 ロイター】
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国連が批判しているように、現在のイスラエル・アメリカ主導の食料配給方式が、あまりにも配給拠点が少なく、住民を一定地域へ誘導しているようにも見える、配給が選別的・政治的に過ぎる等々の問題があるにしても、イスラエル軍が配給を餌に住民をおびき出し、集まった住民に容赦ない銃弾・砲弾を浴びせている・・・という訳でもないでしょう。

何らかの混乱の結果、あるいは混乱を防ぐための予防的措置が現場の混乱で収集がつかない状況にもなっているのでしょう。

****誰が何のために攻撃しているのか?*****
報道によると、ガザ地区で起きている“食料配給拠点周辺での発砲”は、主にイスラエル軍(IDF)によるものです。

何が起きているのか?
イスラエル軍は、米・イスラエル支援の「ガザ人道財団」(GHF)が運営する食料配給拠点周辺にて、週のうちほぼ毎日、夜間あるいは早朝に発砲を行っており、その結果数十人単位の死者・負傷者が出ています。(中略)

積算で、配給拠点周辺に関わる死者は300~400人以上とも報告されており、負傷者は数千人にのぼっています。

なぜ起こっているのか?

イスラエル軍の主張
イスラエル軍は「拠点が戦闘地域に隣接している」「人々が軍用区域に近づく形で接近した」「警告射撃後も離れなかった」などを理由に発砲したと説明しています 

国連・人道団体の批判
国連などは、この配給モデルを“武器としての飢餓”と見なし、「人道的原則に反する」「民間人をあえて危険にさらしている」と強く批判しています。

ハマスとの関連?
ハマスは食料を「奪っている」と疑われる立場から、イスラエルが「拠点が誘導され、混乱のうちに“トラップ”として機能している」と非難しています 。
また、別途、6月11日にはGHFスタッフを狙ったハマスによる襲撃も報告されており(少なくとも5人死亡) 

補足
発砲のタイミングが拠点の朝6時前や夜6時以降に集中しており、「開所時間外は危険」として軍が明文化した結果が大きく影響しています。
一方で、ハマスもGHF関係者を実力行使で襲撃しており、一面的とは言えません 。【ChatGPT】
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朝6時前の配給開始直前、我先ににと押し寄せる人々、夕方6時の終了時間直後、終了を無視して配給を求める人々・・・そうした混乱状態を鎮めるべく警告射撃が行われ、それでも騒ぎはおさまらず多数の犠牲者を出す事態に・・・・といった状況でしょうか???

ただ、そうであったにしても毎日の犠牲者が多すぎ、本当に「適切」な事態コントロール方法がとられているのか、戦車による砲撃といった方法が妥当なのか、あまりにもパレスチナ住民の命が軽く扱われているのではないか・・・・疑問です。

【ユダヤ系とアラブ系住民の間の「命の不平等」】
不当に軽く扱われている・・・という点では、イスラエル国民に約2割存在するアラブ系住民の命も同じかも。

****浮き彫りになった「命の不平等」 アラブ系の街、逃げ場なく****
イランとの紛争が続くイスラエルで14日、アラブ系住民4人がミサイル攻撃で死亡した。これをきっかけに、民族による「命の不平等」が浮き彫りになっている。

被害を受けたアラブ系住民の街には、防空壕(ごう)などの避難設備が十分に整備されていなかったという。「イスラエルでは、空からもたらされる死は決して平等ではない」。英紙ガーディアンは、紛争下で露呈した社会の分断と不条理をこう伝えた。

地元メディア「タイムズ・オブ・イスラエル」などによると、イランが北部の工業都市ハイファを狙って放ったミサイルが、近郊のタムラに落下。

3階建ての住宅にいた女性4人は空襲警報を受け、各階の防護室に逃げ込んだが、3人は爆風で吹き飛ばされ、1人は崩れた床に押しつぶされた。

イスラエル国内では、ほとんどの地域にミサイルから身を守る地下壕などが整備されている。しかし、約3万7000人のアラブ系住民が暮らすタムラでは、避難施設の整備が遅れており、住民たちは以前からこの問題を訴えていた。

アラブ系住民は、1948年のイスラエル建国以降も領内にとどまった人々で、全人口のおよそ2割を占める。

タムラのムッサ・アブ・ルミ市長はガーディアンの取材に対し、「建国以来、政府はアラブ社会に一つの公共シェルターすら設けてこなかった」と語り、政府の人種差別的政策が防衛面での著しい格差を生んでいると批判した。

さらに交流サイト(SNS)上では、タムラの悲劇を巡り民族間の分断をあおるような投稿が相次いでいる。米CNNが確認した動画では、ユダヤ系住民がタムラへの攻撃を喜び、「村が燃えますように」と叫ぶ様子が映っていた。

ある国会議員は、こうした動画について「イスラエル社会に根付いた人種差別の文化と、深まるファシズムの表れだ」と指摘。

別の議員はX(ツイッター)で「恥ずかしく、嫌気がさす」と非難し、「(アラブ系都市に避難施設が不足していることこそが)より大きな恥だ。この国は人種差別的な政策を進めている」と投稿した。【6月17日 毎日】
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以下は、イスラエルにおけるユダヤ系住民とアラブ系住民(約2割)の間の“不平等”“格差”に関して、ChatGPTによる整理です。

****ユダヤ系住民とアラブ系住民)の間の“不平等”“格差”****
法的権利・義務上の差
法律上、イスラエルのアラブ系国民もユダヤ人も完全に「市民」として対等に扱われます。
例えば:、投票権も被選挙権もある 行政サービスも同様に利用可能 法律の保護も差別してはいない・・・というのが原則です。

しかし、ユダヤ人だけに付与された帰還法(帰還の権利、ユダヤ人ならばイスラエルに帰化して国籍を取得しやすいという法律)という法律上の差もあります。これはユダヤ人という帰属に基づく「帰還権」であり、非ユダヤ人には認められていないという点です。

また、兵役に関しても差異があります。ユダヤ人(ユダヤ教徒、ドルーズも近くに徵兵あり)に対して アラブ系住民の大多数(パレスチナ人もしくはムスリム・キリスト教徒)には兵役の義務がありません。これは法的差というよりも運用上の差です。

実生活上の差別・格差
法上の対等に対して、実生活における差別もしくは格差は確かに存在しています。

具体的には:
1.住宅:アラブ地域の住宅開発に対して行政が予算配分に消極的なので、住宅不足という問題に直面しているという批判もあります。

イスラエルの住宅行政において、ユダヤ人地域に対してより積極的に住宅地開発、道路の舗装、下水道の整備、近隣施設の建設が行われるという批判がよく上がっています。

これに対してアラブ地域は後回しにされたり、行政の許認可が非常に厳しく、結果的に住宅不足に悩まざるを得ないという問題が生まれています。 若者世帯が住宅に困って地元に住み続けるのも難しく、人口流出も伴います。

2.行政サービス:アラブの町に対して道路、学校、病院、文化施設の整備に差があるという声も少なくありません。

道路、学校、図書館、保健所 という行政サービスの格差もよく指摘されています。
ユダヤ人地域に比べ、アラブ地域は道路の舗装率が低かったり、学校の数も足りないという問題に直面しています。
結果的に学業格差も生まれ、若年層の学力差、キャリア形成の障害に繋がっています。

3.所得格差:アラブ世帯の所得水準はユダヤ世帯よりも低く、若者の失業率もユダヤ人よりも若干高めです。

世帯所得もユダヤ世帯に対して低く、パレスチナ・アラブ世帯の所得の約半分~3分の2という統計もあります。
これは主に以下に由来しています:
就業機会の不足 低賃金産業に偏って従事している 就業差別により昇進も難しく、キャリア形成に障害がある 若者の失業率もユダヤ人より約2倍という結果もあり、世代間格差も生まれます。

4.:差別体験: 就職時、家探し時、空港の検問時に差別的に扱われるという体験も頻発しており、「差別に苦しめられている」と感じるという世論調査もあります。

空港、検問所、警官による職務質問、家探し時の家主からの差別、レストラン予約時の断りもよく報告されています。

例えば:アラブのパスポート保持者が空港でより徹底して検査されたという話も頻発しています。

賃貸物件のオーナーが「ユダヤ人にだけ貸す」と表明して差別していたという事案もあり、行政法により差別は禁止しているものの、実態として差別は根強く残っているという声も少なくありません。

世論調査によっても、自身が差別されたという実体験の割合はアラブ市民の方がユダヤ市民よりも非常に大きく、「差別を日常的に感じる」と答えているという結果も出ています。【ChatGPT】
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ガザ地区 物資配布拠点近くで集まったパレスチナ人へのイスラエル軍からの攻撃か 31人が死亡

2025-06-01 22:33:12 | パレスチナ
(2025年6月1日、ガザ地区南部のラファで、食料配給センターに向かう人々がイスラエル軍の銃撃を受けたとされ、遺体を乗せたカートを押す避難民のパレスチナ人。(AFP=時事)【6月1日 ARAB NEWS】 一体何が起きたのか?)

【南部ラファに設けた物資配布拠点近くで集まったパレスチナ人へのイスラエル軍からの攻撃か】
飢えのなかで200万人超の住民が暮らす殺戮と混乱を極めるパレスチナ・ガザ地区にあっては“死の影”が日一日と濃くなっています。

****ガザ住民の「100%が飢餓の危機」 国連****
国連は30日、パレスチナ自治区ガザ地区は「地球上で最も飢餓が深刻な場所」との考えを示し、現在「人口の100%が飢餓の危機」にさらされていると警告した。

国連の人道問題調整事務所のイェンス・レルケ報道官は、「ガザは、国または国内の特定地域で、住民全員が飢餓の危機にひんしていると定義される唯一の場所だ。人口の100%が飢餓の危機にさらされている」と述べ、イスラエル当局の主張を退けた。

イスラエルは、3月2日にガザ地区への支援物資の搬入を全面的に阻止し、ガザで深刻な食料・医薬品不足が起きる中、数日前に封鎖を部分的に緩和した。

レルケ報道官はジュネーブでの記者会見で、封鎖が一部解除されてから、人道支援物資を積んだトラック900台のガザ入りがイスラエルに許可されたが、これまでのところ、ガザ側で積み荷を降ろしたのは600台のみで、さまざまな安全上の理由から、積み荷の受け取りが実際に行われたのはさらに少ない数だったと指摘。

また、トラックがガザに入ると、「必死になった人々が殺到する」ことも多く、「本来、自分たちの物であるはずの援助物資を受け取ろうとする人々のことは一切責めはしないが、われわれが望む方法で配給が行われていない」と批判した。

イスラエルのジュネーブ国際機関政府代表部大使、ダニエル・メロン氏は、OCHAは「事実を都合よく選び出し、現実とは異なる状況を伝え、イスラエルを悪魔化している」と反論している。 【5月31日 AFP】
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“イスラエルを悪魔化している”とのイスラエル側の反論ですが、6月1日早朝、南部ラファ近郊で起きた出来事は、まさに「悪魔的」とも思われます。

6月1日早朝、南部ラファ近郊で数千人の住民が援助物資配給所に向かっていたところ、イスラエル軍が攻撃した模様で、大勢の死傷者が出ています。死傷者数は報道の時間追うごとに大きくなっています。

****ガザの支援物資拠点で230人超死傷 イスラエル軍が攻撃か****
中東の衛星テレビ「アルジャジーラ」は1日、パレスチナ自治区ガザ地区の支援物資の配布拠点付近でイスラエル軍の攻撃があり、少なくとも31人が死亡し、200人が負傷したと報じた。

物資配布は米国とイスラエルが後押しする非営利組織が担っており、ガザの広報当局は「人道支援ではなく、死のわなだ」と非難。米国が仲介するイスラエルとガザ地区のイスラム組織ハマスの停戦協議にも影を落としそうだ。

報道によると、「ガザ人道財団」(GHF)が南部ラファに設けた物資配布拠点近くで攻撃があった。AP通信はイスラエル軍が発砲したとの目撃情報を伝えた。イスラエル軍は「状況を確認中だ」としている。

イスラエル軍は3月上旬、ガザ地区を封鎖し、支援物資の搬入を止めた。5月中旬に封鎖が解かれたが、イスラエルは「支援物資がハマスに横流しされている」と主張し、国連など既存の組織による支援を制約。イスラエルと米国が後押しするGHFの主導で物資配布を始めていた。

ただ、GHFの実態は不透明だ。報道によると、スイスと米国で非営利組織として登録され、「欧州連合(EU)加盟国から資金援助を受けている」としているが、詳しい拠出元は明らかにしていない。

国連がガザ地区全体で約400カ所の食料配給拠点を設けていたのに対して、GHFの拠点はわずか4カ所で、うち3カ所は南部にある。

イスラエル軍は南部に住民を強制移住させる計画だと報じられており、GHFが意図的に南部に拠点を集中させ、支援を必要とする住民を南部に追いやるのを側面支援しているとの見方もある。

今回の攻撃は、こうした状況で南部に集まった住民を標的にしており、悪質性が際立つ。拠点の警備は米国の民間軍事会社が担っているが、いずれもイスラエル軍が退避勧告を出した地域内にあり、安全確保の真剣味にも疑問符がついている。【6月1日 毎日】
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イスラエル軍は「状況を確認中だ」としている・・・とのこと。一体何が起きたのか、是非とも国際社会に明らかにしてもらいたい。

【歴史的に繰り返さる“オリエントの強制移住” トランプ大統領の「ガザ100万人、リビアへの強制移住計画」もその一例か】
“GHFが意図的に南部に拠点を集中させ、支援を必要とする住民を南部に追いやるのを側面支援している”という見方があるように、アメリカ・イスラエルは“トランプ版「中東のリビエラ」計画”のように、ガザ住民を“どこかに”強制移動させたい思いが強いようです。

5月17日ブログ“トランプ政権 不法移民のリビアへの強制送還検討 更にガザ住民100万人も リビアは依然治安混乱”でも取り上げたように、“リビアへの強制移住”という話もありました。

****トランプがぶち上げた「ガザ100万人強制移住計画」の既視感****
<トランプがぶち上げた「ガザ100万人のリビア移住計画」。荒唐無稽なのはもちろんだが、歴史を考えれば、このような「不正義」はユダヤ人が身をもって体験してきたことでもある>

トランプ政権のアメリカでは毎日のように常軌を逸したことが起こり、民主主義と経済の繁栄が急激に破壊されている。ホワイトハウスが主導するファシズムと腐敗があからさまになる日々の中で、トランプ政権がパレスチナ自治区ガザの民族浄化の計画を検討しているというニュースは、(少なくともアメリカのメディアでは)ほかの多くのニュースに埋もれ忘れられてしまった感もある。

5月16日の米NBCニュースの報道によると、トランプ政権は、最大100万人のガザの住民をリビアの砂漠に移送することを計画している。これにより、トランプ大統領が今年2月に述べたように、アメリカがガザを長期にわたり「所有」して「中東のリビエラ」に様変わりさせ、パレスチナとイスラエルの紛争を解決すると同時に莫大な利益を獲得しようという思惑なのかもしれない。

トランプは、アメリカと世界に君臨する皇帝にでもなったつもりなのだろう(もっとも、米当局はこの計画に関する報道を「事実でない」とコメントしている)。

ガザの現状は悲惨を極めている。2023年10月に今の戦争が始まって以降、イスラエル軍はガザの住宅の70%近くを一部もしくは完全に破壊。死者は5万人を超す。WHO(世界保健機関)によると、ガザの人口の約4分の1に相当する50万人近くが深刻な食糧不足に陥っている。

トランプの盟友も「極めて大きな問題」
イスラエル攻撃を行ったイスラム組織ハマスは大幅に弱体化したが、それでも戦争が始まる前の半分程度の勢力はまだ維持していて、ヨルダン川西岸に活動を広げているようだ。イスラエルへのミサイル攻撃も続けている。

イスラエル政府の極右政治家たちは、全てのパレスチナ人をガザから強制的に排除するべきだと主張。イスラエルの極右勢力とおおむね共同歩調を取るトランプ政権も、パレスチナ人排除の方法を模索してきた。

報道によると、トランプ政権は、リビア政府がガザの住民を受け入れれば、2011年以降リビアに制裁として科してきた数十億ドルの資金凍結を解除する意向だという。加えて、ガザを離れることに同意した住民には、無償で住居を提供し、給付金(金額は示されていない)を支給するという。

こうしたトランプ政権の「計画」は、世界中から非難を浴びてきた。パレスチナの人権状況を調査している国連委員会の委員長は2月の時点で、トランプのガザに対する計画を「違法」な「民族浄化」と批判。トランプの盟友であるリンゼー・グラム共和党上院議員も、この計画には「極めて多くの問題がある」と指摘していた。

ローマ皇帝ハドリアヌスの追放劇
そもそも、移住が実現可能なのか疑わしい。100万人もの人を輸送することなど可能なのか。それに、ほぼ無政府状態のリビアのどこに移住させるのか。移住先で人々はどのような生活を送るのか。
そして何より、ガザのパレスチナ人は移住を望んでいない。「パレスチナ人は祖国に深く根を張って」おり、「最後まで戦う」覚悟だと、ガザのリーダーは述べている。「パレスチナ人がどのように行動するかを決める権利は、パレスチナ人にしかない」

ある集団を丸ごと強制的に祖国から追放するという不正義がどのようなものかは、ほかならぬユダヤ人が身をもって経験してきたことだ。ローマ帝国の皇帝ハドリアヌスは西暦135年のバル・コクバの乱を鎮圧した後、ユダヤの地からユダヤ人を追放し、その地を「パレスチナ」と改名した。

イスラエル政府と「皇帝トランプ」は、2000年近くユダヤ人と世界を悩ませてきた過ちを繰り返すのだろうか?【5月31日 Newsweek】
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バル・コクバの乱は、2世紀にローマ帝国支配に対して起きたユダヤ属州での反乱であり、ユダヤ人側の指導者の名からこのように呼ばれています。

もっと有名なものではバビロン捕囚といったものも。新バビロニアの王ネブカドネザル2世により、ユダ王国のユダヤ人たちがバビロンを始めとしたバビロニア地方へ捕虜として連行され、移住させられた事件を指す。これもユダヤ人に降りかかった不幸。 最初の捕囚は紀元前597年

****オリエントの強制移住*****
古代オリエント社会においては、反乱の防止や職人の確保、労働力の確保を目的として強制移住が行われることは頻繁に見られるものであり、ユダヤ人のバビロン捕囚も基本的にこれと変わるものではない。【ウィキペディア】
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「ガザ100万人強制移住計画」もまた、“これと変わるものではない”ということか。変わったのはユダヤ人が被害者ではなく、加害者となっている点。

【イスラエル・フランスの対立鮮明に ヨルダン川西岸に「ユダヤ人のイスラエル国家」を築く(カッツ国防相) アラブ諸国外相のヨルダン川西岸訪問を拒否】
今やイスラエルはパレスチナで“やりたい放題”のようにも。
ガザ地区だけでなく、ヨルダン川西岸地区でも侵略の度合いを深めています。

****イスラエル国防相「ヨルダン川西岸にユダヤ人のイスラエル国家築く」****
イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は30日、占領下のパレスチナ自治区ヨルダン川西岸に「ユダヤ人のイスラエル国家」を築くと表明した。ヨルダン川西岸をめぐっては、イスラエル政府が前日、新たに22か所の入植地の建設を承認したばかり。

カッツ氏はこの動きについて、最近パレスチナ人を支持する発言を強めている強めているフランスのエマニュエル・マクロン大統領に対する「明確なメッセージ」だと述べた。マクロン氏はイスラエル外務省から「ユダヤ人国家に対する十字軍」を起こしていると非難されている。

ヨルダン川西岸におけるイスラエル入植地は、恒久的な平和への大きな障害とみなされており、国際法違反に当たるとして国連にたびたび非難されている。イスラエルが29日に新たな入植地の建設を発表したのを受け、国外からは厳しい批判が巻き起こった。

カッツ氏は国防省が公開した動画で、「これは、この地(ヨルダン川西岸)におけるわれわれの支配を損ない、弱めようと試みているテロ組織に対する断固たる対応だ」と主張。

「これはマクロン氏とその仲間たちへの明確なメッセージでもある。彼らは文書でパレスチナ国家を承認するだろうが、われわれは現場でユダヤ人のイスラエル国家を築く」「その書類は歴史のゴミ箱に捨てられるが、イスラエル国家は成功、繫栄するだろう」と続けた。

マクロン氏は4月、フランスは6月にもパレスチナ国家を承認する可能性があると述べた。
30日には訪問先のシンガポールで、条件付きでパレスチナ国家を承認することは「道義的義務であるだけでなく、政治的必要性でもある」と述べた。

また、イスラエルがガザの人道状況に適切に対応しない場合、欧州諸国はイスラエルに対する「集団的な立場を強固にする」べきだと主張した。

これに対しイスラエルは、マクロン氏が「ユダヤ人国家に対する十字軍」を起こしている強く反発。
イスラエル外務省は「マクロン氏はジハード(イスラム聖戦)遂行を主張するテロリストに対して圧力をかけるどころか、パレスチナ国家の樹立で報いようとしている。パレスチナ国家の建国記念日は間違いなく10月7日になるだろう」と述べた。 【5月31日 AFP】
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上記記事にもあるように、フランス・マクロン大統領とイスラエルの対立が鮮明になっています。

****ガザ見捨てれば西側諸国は「信頼失う」 マクロン氏****
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は30日、紛争で荒廃したパレスチナ自治区ガザ地区を見捨て、イスラエルに「フリーパス」を与えれば、西側諸国は世界の信頼を失うことになるだろうと述べた。

マクロン氏はシンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ会合)で、、「ガザを見捨て、イスラエルにフリーパスがあると考えるなら、たとえテロ攻撃を非難しても、われわれは信頼を失うことになるだろう」「だからこそ二重基準を拒否するのだ」と述べた。

マクロン氏はまた、欧州と米国はガザやウクライナを含む世界の危機を解決できていないと指摘。「これらの地域の危機を解決するふりをしている米国と欧州の信頼性はいずれも非常に低い」との認識を示した。  【5月31日 AFP】
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更にイスラエルは、「パレスチナ国家の設立を促進すような企てはイスラエルを害し、安全を脅かすものであり、そのような動きには協力しない」と、アラブ諸国外相のヨルダン川西岸訪問を拒否。

****イスラエルが西岸訪問「禁止」と非難 アラブ各国****
一部のアラブ諸国の外相が6月1日にイスラエル占領下のヨルダン川西岸を訪問する予定だったが、イスラエルがそれ阻止する決定を下したのを受け、同国を非難した。

ヨルダン外務省は5月31日、「ラマラを訪問し、パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長と会談する予定だった代表団の訪問をイスラエルが禁止する決定を下したことを非難する」と述べた。

サウジアラビア、エジプト、ヨルダン、バーレーンの外相が、アラブ連盟事務総長と共に会談に出席する予定だったという。イスラエルは30日遅くになって協力しないと表明し、事実上、訪問を阻止した。

イスラエル当局者は、アッバス議長は「ラマラでアラブ諸国外相との挑発的な会合を開き、パレスチナ国家の設立を促進することを意図していた」と主張。「そのような国家は間違いなくイスラエル領内におけるテロ国家となるだろう。イスラエルを害し、安全を脅かすような動きには協力しない」と述べた。【6月1日 AFP】
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【難航する停戦交渉】
アメリカの提示した60日間の停戦案については、ハマス側が恒久的な停戦に繋がる保証を求めており、これに米・イスラエルが反発しています。

****ハマスがアメリカ提示のガザ新停戦案に回答も修正要求か、米ウィットコフ中東担当特使「全く受け入れられない」 イスラエル政府高官「事実上の拒否」現地メディア****
パレスチナ自治区ガザでの停戦をめぐり、イスラム組織ハマスは、イスラエルとの交渉を仲介するアメリカが提示した新たな停戦案に回答したと発表しました。ただ、イスラエルやアメリカは回答に否定的な反応を示していて、停戦が実現するかは依然不透明な情勢です。

ハマスは5月31日に声明を出し、アメリカの提案に対して回答したことを明らかにしたうえで、生存する人質10人と18人の遺体を引き渡すと発表しました。

ただ、複数のメディアによりますと、ハマスは、ガザでの恒久的な停戦に繋がる保証を条件に付け加えることなど、提案に対して修正を求めたということです。

これに対して交渉を仲介するアメリカのウィットコフ中東担当特使はSNSで「全く受け入れられるものではなく、我々を後退させるだけだ」と非難しました。

また、イスラエルメディアによりますと、イスラエル政府の高官はハマスの回答について、「これは事実上の拒否を意味する」と話しているということです。

ガザでの恒久的な停戦や、イスラエル軍のガザからの完全撤退といったハマス側の要求にイスラエルは応じない姿勢を崩しておらず、依然として停戦合意の実現は不透明な情勢です。【6月1日 TBS NEWS DIG】
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イスラエル・ユダヤ人世論調査「征服した都市の住民を全て殺すべき、エリコの戦いのように」47%

2025-05-30 23:24:42 | パレスチナ
(WFPの倉庫に殺到し、小麦粉の袋を持ち去るパレスチナの人=パレスチナ自治区ガザ地区中部ザワイダで2025年5月28日  AP通信によると、4人が死亡した。ガザ地区では今月19日に支援物資の搬入が再開されたが、物資はごくわずかで、住民に十分に行き渡っていない。深刻な食料不足が続いている。【5月29日 毎日】)

【『旧約聖書』が伝えるエリコ大虐殺】
「旧約聖書」の中に、イスラエルの民による大虐殺である「エリコの戦い」「エリコ大虐殺」の記述があります。

****エリコ大虐殺**********
エリコ大虐殺は紀元前1300年〜紀元前1200年前後の時代に、パレスチナのエリコ(イェリコ、ジェリコ)の民(カナーン人)に対して行われたと伝えられる大量虐殺である。

イスラエル人の指導者ヨシュアと古代イスラエルの連合軍によってなされた。『旧約聖書』が伝えるところでは、エリコの民は女性や子供・乳幼児も含めて全員が虐殺されたという。【ウィキペディア】
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****ヨシュア記6章12~24節から抜粋****
「翌朝、ヨシュアは早く起き、祭司たちは主の箱を担ぎ、七人の祭司はそれぞれ雄羊の角笛を携え、それを吹き鳴らしながら主の箱の前を進んだ。武装兵は、更にその前衛として進み、また後衛として主の箱に従った。行進中、角笛は鳴り渡っていた。

彼らは二日目も、町を一度回って宿営に戻った。同じことを、彼らは六日間繰り返したが、七日目は朝早く、夜明けとともに起き、同じようにして町を七度回った。町を七度回ったのはこの日だけであった。

七度目に、祭司が角笛を吹き鳴らすと、ヨシュアは民に命じた。「鬨の声をあげよ。主はあなたたちにこの町を与えられた。

町とその中にあるものは、ことごとく滅ぼし尽くして主にささげよ。ただし、遊女ラハブおよび彼女と一緒に家の中にいる者は皆、生かしておきなさい。我々が遣わした使いをかくまってくれたからである。

あなたたちはただ滅ぼし尽くすべきものを欲しがらないように気をつけ、滅ぼし尽くすべきものの一部でもかすめ取ってイスラエルの宿営全体を滅ぼすような不幸を招かないようにせよ。」

角笛が鳴り渡ると、民は鬨の声をあげた。民が角笛の音を聞いて、一斉に鬨の声をあげると、城壁が崩れ落ち、民はそれぞれ、その場から町に突入し、この町を占領した。

彼らは、男も女も、若者も老人も、また牛、羊、ろばに至るまで町にあるものはことごとく剣にかけて滅ぼし尽くした。

彼らはその後、町とその中のすべてのものを焼き払い、金、銀、銅器、鉄器だけを主の宝物倉に納めた。」【永野牧師の部屋第1】
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天地創造の神がイスラエル人に律法(ルール)を与えます。神が与えた律法を守れば、人間は救われるのですが、人間はこれらを守ることができません・・・という旧約聖書のストーリーでは、最後まで救世主は現れませんでした。

これを引き継いだのが新約聖書で、待ち望まれた救世主がイエスであるという設定です。

従って、「旧約」「新約」というのはキリスト教的なものであり、ユダヤ教にとってはいわゆる「旧約」のみが聖典となります。【DIAMOND online “3分でわかる!『旧約聖書』と『新約聖書』”より】

この「エリコ大虐殺」をどのように解釈すべき迷うキリスト教徒も少くないようで、また、立場によって解釈も違うようです。
保守的立場:神の正義としての必然的な裁き
中間的立場:歴史的文脈と神学的意図を重視
リベラル・現代神学的立場:象徴的、または漸進的啓示として非暴力の神観に照らして再解釈【ChatGPT】

【ユダヤ人の世論調査:47%は旧約聖書に登場するエリコの戦いで住民が虐殺されたように、戦闘で征服した都市の住民を全て殺すべきだと考えてい戦闘で征服した都市の住民を全て殺すべきだと考えていると答えた】
まったく無知な「旧約聖書」の話を持ち出したのは、下記記事を読んで、いささか驚愕したため。

****イスラエル外相、自衛権を奪うのは「第二のホロコースト」と反論*****
パレスチナ自治区ガザへの軍事攻撃に批判を受けているイスラエルのサール外相は28日、「イスラエルの自衛の権利と能力を奪うことは、ただ一つのことを意味する。第二のホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)だ」と反論した。

戦争犯罪と人道に対する罪の容疑でイスラエルのネタニヤフ首相に逮捕状を出した国際刑事裁判所(ICC)や、イスラエルへの武器禁輸を求める動きなどを例示し、それらがイスラエルの自衛能力を損なっていると反発した。

さらに、イスラエルが「ユダヤ民族を抹殺しようとする古くからの願望がより強くなった」時代を生きているとも主張。エルサレムで開かれた反ユダヤ主義に関する会議で語った。

フランスと英国、カナダの3カ国首脳は先週、イタリアも28日になってイスラエルに対してガザへの軍事攻撃停止を要求した。サール氏は「新しい反ユダヤ主義はイスラエルを標的にしている」とし、「それは悪魔化、非国民化、ダブルスタンダード(二重基準)を使っている」と批判した。

フランスと英国、カナダによるイスラエルへの要求についてネタニヤフ氏は先週、敵対するイスラム組織ハマスを「勇気づけている」とし、3カ国首脳は「歴史の間違った側にいる」と非難していた。

ハマスによる2023年10月のイスラエル南部への襲撃で約1200人が死亡し、イスラエルとしては1948年の建国後で犠牲者数が最大となった。また、251人が人質としてガザに連れ去られた。これを受けてイスラエル軍はガザでハマス壊滅作戦に乗り出し、パレスチナ人約5万4000人を殺害した。

ガザを再占領し、パレスチナ人を追い出そうと企てているネタニヤフ氏は政府内の強硬派から支持を受け続けている。

イスラエル紙ハアレツが今週報じたイスラエルのユダヤ人1005人に対する世論調査によると、回答者の82%がパレスチナ人をガザから追放することを支持し、56%がイスラエルのパレスチナ人を追放することに賛成した。

また、47%は旧約聖書に登場するエリコの戦いで住民が虐殺されたように、戦闘で征服した都市の住民を全て殺すべきだと考えていると答えた。【5月29日 ロイター】
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パレスチナ人をガザから追放支持82%、イスラエルのパレスチナ人を追放支持56%も驚異的ですが、戦闘で征服した都市の住民を全て殺すべきだ、聖書「エリコ大虐殺」のように・・・・というのが47%という結果はショックでした。

パレスチナ・ガザ地区ではイスラエル軍の容赦ない攻撃により、子供を含めて老若男女の多くの犠牲者がでています。

ハマス壊滅を目指すものとされながら、一方で住民犠牲を厭わないような攻撃のスタイルには、ハマス組織の解体を目指しているとするも、住民の大人・子供を巻き込むことは厭わない・・・という雰囲気が出ています。

イスラエル軍のそうした暴力的対応の背景には“47%は旧約聖書に登場するエリコの戦いで住民が虐殺されたように、戦闘で征服した都市の住民を全て殺すべきだと考えてい戦闘で征服した都市の住民を全て殺すべきだと考えている”といった国民の考えがあるのでしょう。

【極右閣僚「今こそガザに全力で突入すべき」 ヨルダン川西岸地区における国際法に反する入植地建設拡大も】
ネタニヤフ政権に参加している極右閣僚は「今こそガザに全力で突入すべき」「ハマスを最後の一人まで殲滅する時だと檄を飛ばしています。

****イスラエル極右閣僚、ガザに「全力で突入」する時****
イスラエルの極右、イタマル・ベングビール国家治安相は30日、パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスが米国の停戦案について自分たちの要求を満たしていないと批判したことを受け、ガザに「全力」で突入すべき時だと主張した。

ベングビール氏は自らのテレグラムチャンネルへの投稿で「首相、ハマスが停戦案を再び拒否した以上、もはや言い訳はできない。混乱、ためらい、弱腰はおしまいだ。すでに多くの機会を逃してきた。ためらうことなく、全力で突入して破壊し、ハマスを最後の一人まで殲滅(せんめつ)する時だ」と述べた。 【5月30日 AFP】
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もう一人の極右閣僚はヨルダン川西岸地区における国際法に反する入植地建設を拡大する意向です。

****イスラエルの極右大臣、ヨルダン川西岸に22の入植地建設を発表****
イスラエルの極右政治家であるベツァレル・スモトリッチ財務相は29日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸に22の新たな入植地を建設する方針を明らかにした。西岸での入植地建設は、国際法上、違法とされている。

スモトリッチ氏は「入植地の発展に関する歴史的な決定を下した。ユダヤとサマリアに22の新しいコミュニティを設立し、サマリア北部での入植を再開し、イスラエル国家の東部軸を強化する」とX(旧ツイッター)に投稿した。ユダヤとサマリアとは、イスラエルが1967年以降占領しているヨルダン川西岸の一部地域を指す呼称。

さらに、「次のステップは主権だ!」とも付け加えた。

ベンヤミン・ネタニヤフ首相が党首を務めるリクード党は、テレグラムに声明を投稿し、入植地建設について「一世代に一度の決定」と称賛。また、スモトリッチ氏とイスラエル・カッツ国防相がこの計画を主導することを安全保障内閣が承認したと明らかにした。(後略) 【5月29日 AFP】
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****ヨルダン川西岸への新ユダヤ人入植地計画、英国や国連が批判****
イスラエルは29日、占領下のパレスチナ自治区ヨルダン川西岸に新たに22か所のユダヤ人入植地を建設する方針を発表し、ガザ紛争をめぐりすでに対立している英国やヨルダンなどから厳しい非難を浴びた。

英国はこの動きを「パレスチナ国家樹立への意図的な妨害」と呼び、国連のアントニオ・グテレス事務総長の報道官は、二国家解決への努力を「逆転させる」と批判した。

ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地は、国際法違反だとして国連から度々非難され、持続的な平和に対する大きな障害と見なされている。

イスラエルの安全保障内閣によって下されたこの決定は、自ら入植者でもある極右のベツァレル・スモトリッチ財務相と、入植地を監督するイスラエル・カッツ国防相によって発表された。(後略)【5月30日 AFP】
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【「ガザの人たちを爆撃しているわけではない。我々はテロ組織と戦っているのだ」・・・とは言いつつも】
一方、ガザ地区の窮状について、パレスチナ国連大使が「耐えられない!誰が耐えられるというのか!」と涙と錨の訴え。

*****パレスチナ国連大使「耐えられない!誰が耐えられるというのか!」餓死するガザの子供たちの状況を涙ながら怒りあわに****
パレスチナの国連大使が涙と怒りの訴えです。
イスラエルとパレスチナの情勢をめぐる国連安全保障理事会の会合で28日、パレスチナの国連大使が餓死するガザの子供たちの状況について涙ながらに怒りをあらわにしました。

マンスール国連大使: 耐えられない!誰が耐えられるというのか!

パレスチナのマンスール国連大使は国連安保理の会合で、食糧不足が深刻となっているガザで、餓死した子供を抱き、頭をなでながら謝る母親たちの状況は耐えがたいと涙ながらに訴えました。

また3月以降、1300人以上の子供が死亡し、4000人が負傷したと説明し、時折机をたたきながらイスラエルへの怒りをあらわにしました。

一方、イスラエルのダノン国連大使は首都ワシントンでイスラエル大使館の職員2人が21日に「パレスチナ解放」を訴える男に射殺されたことについて反ユダヤのテロだと非難しました。

また、アメリカとイスラエルが主導する支援について、国連がイスラム組織ハマスに加担し、支援を妨害していると主張しました。

ダノン氏は会合に先立ち「我々は58人の人質が解放されない限り戦いは止めない」「ガザの人たちを爆撃しているわけではない。我々はテロ組織と戦っているのだ」と強調しました。【5月29日 FNNプライムオンライン】
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「ガザの人たちを爆撃しているわけではない」とは言いつつも、ガザ住民が巻き込まれてしんでいくことには関心がなさそう。

****仏大統領、ガザ人道支援阻止でイスラエルに警告 「厳しい対応も」****
フランスのマクロン大統領は30日、イスラエルがパレスチナ自治区ガザへの人道支援を阻止し続ける場合、フランスはイスラエルに対する姿勢をより強硬なものにする可能性があると警告した。またイスラエルとパレスチナの紛争解決に向け、フランスは2国家共存案の実現に尽力するとの立場を改めて強調した。

マクロン氏は訪問先のシンガポールで同国のローレンス・ウォン首相との共同記者会見に臨み、「人道支援の封鎖は現地で耐え難い状況を生み出している」と指摘した。

「数時間から数日以内に人道状況(の改善)に見合った対応がなされなければ、当然のことながら、われわれは(国際社会と)連携した対応を強化せざるを得なくなるだろう」と述べた。フランスがイスラエル人入植者に対する制裁措置を検討する可能性にも言及した。

「しかし、イスラエル政府が態度を改め、最終的に人道的な対応がなされることを依然として期待している」とも語った。

また記者団に対し、パレスチナ国家の建設は「単なる道徳的義務であるだけでなく、政治的必要性でもある」と述べ、イスラエル・パレスチナ紛争における2国家共存案への支持を改めて表明した。【5月30日 ロイター】
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【60日間の停戦案、アメリカ提示】
停戦交渉の方は、アメリカから60日間の停戦案が出されています。

****イスラエルが60日間の停戦案合意 ハマスが承認するかは不透明****
パレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスと戦闘を続けているイスラエルは29日、アメリカが提案した60日間の停戦案に合意しました。

ホワイトハウスのレビット報道官は29日、イスラエルがアメリカの停戦案を承認したと発表しました。

イスラエルメディアによりますと、停戦案は60日間の停戦期間中にハマス側が生存している人質10人と遺体18体を解放するのに対し、イスラエル側は収監しているパレスチナ人1000人以上を釈放するというものです。

また、イスラエル側はガザ地区への人道支援物資の搬入を認め双方は恒久的な停戦に向けた協議を始めるとしています。

ただ、協議が60日間で合意に至らなければイスラエルが戦闘を再開する権利があるとされていて、ハマスが承認するかは不透明です。【5月30日 FNNプライムオンライン】
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イスラエル・米国主導の支援物資配給開始も混乱と銃撃 国連「支援を政治的・軍事的な目的と関連づけ」

2025-05-28 23:35:09 | パレスチナ
(パレスチナ自治区ガザ地区南部ラファで、米国支援のガザ人道財団から支援物資を受け取った後、イスラエル軍の発砲に警戒する避難民(2025年5月27日撮影)【5月28日 AFP】)

【イスラエルおよび米国が支援する「ガザ人道財団(GHF)」による支援物資配給開始 混乱と銃撃 国連は不参加】
イスラエル軍の支援物資搬入阻止によって飢餓の危機・医療崩壊が懸念されているパレスチナ・ガザ地区では先日2か月半ぶりに搬入が再開しましたが、未だその量は極めて不十分です。

****ガザ 支援物資搬入2カ月半ぶりに再開 子ども7万人以上が“深刻な栄養失調”****
パレスチナ・ガザ地区への支援物資の搬入が2カ月半ぶりに再開されましたが、WFP(=世界食糧計画)は7万人以上の子どもが深刻な栄養失調に直面していると発表しました。

ロイター通信が24日に入手した映像では、多くの人々が食料の入った白い袋を持ち運んでいます。19日に、2カ月半ぶりに搬入が再開された支援物資の一部が人々の元に届き始めているということです。

ただ、国連によるとイスラエルが搬入を認めたのは「小さじ1杯分に過ぎない」としており、WFPは24日、ガザの子ども7万人以上が深刻な栄養失調に直面していると発表しました。

支援物資を積んだトラック15台が略奪されるなどしており、「空腹や絶望が治安悪化を招いている」とさらなる物資搬入の必要性を訴えています。(ANNニュース)【5月25日 ABEMA Times】
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あくまでもイスラエル側が認めたものだけが搬入される状況で、境界沿いに多くのトラックが待機するなかで、域内では危機が進行しています。

****ガザ地区、医療物資の深刻な不足続く トラック51台許可待ち=WHO****
世界保健機関(WHO)は26日、パレスチナ自治区ガザで医療機器の大半が底をつき、鎮痛剤などの基礎的な医薬品の多くが枯渇しつつあると明らかにした。

WHOのバルヒー東地中海地域事務局長はジュネーブで記者団に対し「医療機器の約64%、必須医薬品の43%、ワクチンの42%が在庫ゼロの状態にある」と述べた。

バルヒー氏によると、WHOはガザ地区との境界沿いに支援物資を積載したトラック51台を待機させているが、ガザ地区に入る許可がまだ下りていない。【5月27日 ロイター】
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そうした状況で、26日、メリカとイスラエルが主導する形で支援物資の配給が始まりました。

****アメリカ、イスラエル主導の支援物資配給ガザ地区で開始と人道援助団体が発表****
人道状況の悪化が深刻なパレスチナ・ガザ地区でアメリカとイスラエルが主導する形で支援物資の配給が始まりました。

「ガザ人道財団」は26日、ガザ地区南部の緩衝地帯に拠点を開設し、支援物資の配給を開始したと発表しました。
配給した量に関しては明らかにしていませんが、「支援の流れは日を追うごとに増していく」としています。

アメリカとイスラエルが主導するこの配給の枠組みでは、イスラム組織「ハマス」に物資が略奪されないようにするとされています。

国連は中立性を保てないなどとして参加しない方針です。(後略)【5月27日 テレ朝news】
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国連や国際援助団体は、イスラエルおよび米国が支援する「ガザ人道財団(GHF)」による支援物資配給が、人道支援の基本原則である「中立性」「公平性」「独立性」を損なっていると懸念しています。

GHFの活動が、実質的に移動が困難な人々を排除し、避難をさらに強いるほか、支援を政治的・軍事的な目的と関連づけているため、世界各地での援助物資配給にとって容認し難い前例になるとしています。

また、国連のグテレス事務総長は、イスラエルが主導し米国が支援するガザへの人道援助配給計画に対し、「国際法や人道の原則のほか、公平性や独立性、中立性を尊重しない、いかなる計画にも参加しない」と明言しています。

国連としては、支援対象者をハマスとの関連で選別し政治的・軍事的な目的と関連づけるではなく、また4か所の配給所という極めて限定された形でなく、境界の封鎖を解除して大量の支援物資を必要としている者のもとへ届ければそれですむ話だ・・・という立場です。

配給開始二日目の27日、配給所には数千人が押し寄せ大混乱状態となったようです。

****ガザで支援物資の配給、米支援の団体が開始 人々が殺到し混乱****
パレスチナ・ガザ地区南部ラファで27日、アメリカとイスラエルが支援し、論議を呼んでいる団体が設置した支援物資の配給所に、数千人のパレスチナ人が殺到し、混乱が生じた。この配給所は前日に業務を開始したばかりだった。

現地の映像では、「ガザ人道財団(GHF)」がラファに設置した施設においてフェンスや盛り土が破壊され、その上を群衆が歩いている。

別の動画では、数千人の男性、女性、子どもたちが配給所の敷地に流れ込んでいる。銃声と思われる音が鳴り響く中、人々が走ったり身をかがめたりしている動画も出回っている。

目撃者は、人々が食料などの支援物資を奪い取り、混乱状態だったと話した。また、近くに駐留していたイスラエル兵らが発砲したと述べた。

GHFによると、あまりに多くの人が支援物資を手に入れようと訪れたため、スタッフらが一時退避したという。
イスラエル軍は、近くにいた兵士らが威嚇射撃をしたと説明した。

GHFは、ガザでの支援物資の配給を、国連を通さずに、自分たちが主体となって実施することを活動目的としている。アメリカの武装警備請負業者を使っている。

ガザへの支援物資の搬入は、イスラエルが11週間にわたって阻止していた。封鎖は最近、緩和されたが、専門家らは、飢餓の危機が迫っていると警告している。(中略)

GHFをめぐっては、国連や多くの援助団体が協力を拒否している。その活動が、人道主義の原則に反し、「支援を武器化」していると思われるというのが理由。

実質的に、移動が困難な人々を排除し、避難をさらに強いるほか、何千人もの人を危険にさらし、支援を政治的・軍事的な目的と関連づけているため、世界各地での援助物資配給にとって容認し難い前例になるとしている。

国連の報道官は、GHFの取り組みは「実際に必要なことから目をそらすもの」だとし、すべての検問所を再開するようイスラエルに求めた。

一方、イスラエルは、イスラム組織ハマスが支援物資を盗むのを阻止するため、現行の配給システムに代わるものが必要だと主張している。 ハマスは、自分たちは支援物資を盗んではいないと反論している。

GHFは声明で、「現場のニーズは大きい」とし、これまでに現地のNGOと協力して、食料を入れた箱約8000個(46万2000食分)を配ったとした。

また、「ハマスによる封鎖のせいで」パレスチナ人が配給地点に行くのに通常より数時間の時間がかかったと、根拠を示さず説明した。

この日の配給所での混乱について、現場にいたという男性は、「極めて困難な状況だった。(GHFは)一度に50人しか中に入れなかった」、「ついには混乱状況が発生した。人々はゲートを乗り越え、他の人々を攻撃し、すべて(の支援物資)を奪った」と、BBCアラビア語のラジオ番組で話した。

この男性は、「屈辱的な経験だった」、「私たちは飢えて苦しんでいる。お茶をいれるためのわずかな砂糖と、食料のパンを探しているだけだ」と続けた。
ある女性は、飢えと困窮で「すべての人が参っている」と述べた。「人々は疲れ切っている。食料を見つけ、子どもたちに食べさせるためなら、命を危険にさらすることさえする」。

ガザでハマスが運営する政府メディアオフィス(GMO)は、イスラエルによる支援物資の配給が「惨めに失敗した」とした。また、人々がGHFの配給所に行くのをハマスが止めようとしたことはないと主張した。

国連のステファン・デュジャリック報道官はニューヨークでの記者会見で、「『ガザ人道財団』が設置した物資配給所の周辺で撮影された映像を見ている。率直に言って、これらの映像、画像には心が痛む」と述べた。

そして、「私たちと複数の提携組織には、絶望的な状況にある人々に援助を届けるための、詳細で、原則に従い、健全に実行できる計画があり、加盟国の支持も得ている。飢饉(ききん)を防ぎ、どこだろうとすべての人々のニーズに応えるためには、人道活動の意味ある拡大が不可欠だと、私たちは引き続き強調する」と付け加えた。

国連によるこうした批判を、米国務省のタミー・ブルース報道官は「偽善の極み」だと非難。「残念なことに、いま問題なのはガザに支援物資を届けることなのに、突然、支援のスタイルや支援者の性質に関する不満が問題になってしまっている」と記者団に述べた。

GHFの独立性と中立性についてBBCから問われると、ブルース氏は、この地域での食料と支援物資の配給の方法をめぐっては「多少の意見の違い」があると認めたうえで、「私たちのほとんどは、これが良いニュースだと同意すると思う。(中略)本当の話題は、食料支援が運び込まれているということだ」と述べた。

GHFは今週末までにガザで100万人に食料を配給する予定だとしているGHFの当初の計画では、ガザ南部と中部の4カ所に配給所を設置し、パレスチナ人が支援物資を受け取れるようにする。GHFは、今週末までに100万人(ガザ人口の半分弱)に食料を供給することを目標としている。

GHFの配給所は、アメリカの請負業者が安全を確保し、イスラエル軍が周囲をパトロールする。パレスチナ人は、身分証明書のチェックとハマスとの関係についての審査を受けなければ、配給所内に入れない。

GHFのジェイク・ウッド代表は25日夜、辞任を表明した。現状のシステムでは、人道主義の原則の尊重や公平性、独立性などを実現できないと、理由を説明した。

これに対しGHFの理事会は、ウッド氏の批判は当たらないとし、「現状から利益を得ている人々」が「支援物資を運び入れることより、今の状況を引き裂くこと」に専念していると非難した。

GHFは26日、ハマスについて、支援物資の配給所で支援活動をするNGOに殺害予告をし、人々が支援物資を手に入れるのを妨害しようとしたと主張した。

ハマスはパレスチナの人々に対し、GHFに協力しないよう警告している。【5月28日 BBC】
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****配給時のチェック体制****
GHFの配給所では、支援物資を受け取るために以下のようなチェックが行われています:BBC
身分証明書の提示:受給者は身分証明書を提示し、本人確認が求められます。
ハマスとの関係の審査:イスラエル当局者は、新しい援助システムの利点の一つは受領者を選別し、ハマスとつながりのある人物を排除できることだと述べています。

これらのチェック体制は、ハマスによる支援物資の転用や押収を防ぐことを目的としていますが、国連や援助団体は、人道援助が紛争当事者とは無関係に、必要性に基づいて分配されるべきだという原則を損なうとして、GHFをボイコットしています。【ChatGPT】
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単に、数千人が押し寄せて大混乱になったというだけでなく、イスラエル軍の発砲によって47名前後が負傷する事態にもなっています。

イスラエル軍は「威嚇射撃」と説明していますが、世間常識では47名ほどが負傷する状況は「威嚇」のレベルを越えています。

****米支援のガザ配給所でイスラエル軍が発砲 47人前後が負傷 国連****
パレスチナ自治区ガザ地区南部ラファの新たな支援物資配給所で混乱が起き、47人前後が負傷した。イスラエル軍による発砲が主な原因とみられている。国連関係者が28日、明らかにした。

AFP記者によると、米国支援のガザ人道財団が運営する配給所に数千人のパレスチナ人が殺到し、混乱が生じた。イスラエルは、国連を介さずに支援物資の配給システムを新たに導入している。

イスラエルは3月2日にガザ地区への支援物資の搬入を全面的に阻止し、ガザでは深刻な食料・医薬品不足が起きていた。イスラエルは、事件が起きた数日前、封鎖を部分的に緩和したばかりだった。

被占領パレスチナ地域の国連人権高等弁務官事務所代表を務めるアジス・ソンガイ氏はスイス・ジュネーブで、「われわれの把握している情報によると、27日の事件で47人前後が負傷した」と発表。

「負傷者の大半は発砲によるもの」で、これまでに得た情報では「イスラエル国防軍が発砲していた」とし、詳しい状況を調査・確認している段階だと強調した。

イスラエル軍は27日、「部隊が施設の外で威嚇射撃」を行い、「再び制御下に置いた」と主張した。

国連や国際支援団体は、GHFとは協力しない考えを示している。GHFをめぐっては、パレスチナ側には一切関与せず、イスラエルとだけ連携していると非難が起きている。

ソンガイ氏は、「われわれは、(GHFとイスラエルによる)こうしたやり方に多くの懸念を表明してきた」とし、「昨日の事件は、GHFが行っているような状況下で食料を配給する危険性を如実に示している」と指摘した。 【5月28日 AFP】
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このイスラエル軍による「威嚇射撃」だか「警告射撃」だかで3人が死亡したとのことです。【5月28日 FNNプライムオンラインより】

【「残虐行為から目をそらすための行為だ」(UNRWAのラザリーニ事務局長)】
こうした支援物資配給と同時に、イスラエル軍は激しい攻撃も継続しています。

****ガザの学校空爆で20人死亡、イスラエル軍はハマス拠点攻撃と発表****
イスラエル軍は26日、パレスチナ自治区ガザ市の避難民を収容する学校を空爆し、地元当局によると少なくとも20人が死亡し数十人が負傷した。 医療関係者によると、負傷者の中には女性や子どもが含まれるという。

イスラエル軍は26日、ガザで25日夜間に「イスラエルの市民や国防軍に対するテロ攻撃を実行するための計画や情報収集」に使われていたイスラム組織ハマスの指令拠点を攻撃したと発表した。【5月26日 ロイター】
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来日中のUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)のラザリーニ事務局長はイスラエル主導の支援物資配給を「残虐行為から目をそらすための行為」と厳しく批判しています

****イスラエル提案のガザ支援策は「人道支援の原則に反している」 UNRWA・ラザリーニ事務局長が東京都内で会見****
来日中のUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)のラザリーニ事務局長は28日、都内で会見を行い、イスラエルが提案しているガザ支援策について、「人道支援の原則に反している」と述べました。

パレスチナ難民への支援活動を行うUNRWAのラザリーニ事務局長は28日、都内の日本記者クラブで会見し、アメリカやイスラエルなどが主導するガザ地区での支援物資の配給について、「物資の無駄遣いで、残虐行為から目をそらすための行為だ」と述べ、「人道支援の原則に反している」と批判しました。

ガザ地区には200万人が住んでいるとされていて、ラザリーニ事務局長によりますと、少なくとも1日トラック500台から600台分の支援が必要で、現在の支援は「必要な量にはほど遠い」と指摘しています。【5月28日 FNNプライムオンライン】
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【「もはや理解できない」(ドイツのメルツ首相)】
イスラエルの頑なな姿勢に欧州各国は厳しい目を向けるようになっています。
ホロコーストの歴史から、イスラエル批判を避けてきたドイツも「もはや理解できない」(メルツ首相)と。

****独首相、イスラエルに異例の厳しい警告 「もはや理解できない」****
ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は26日、イスラエルに厳しい警告を発し、パレスチナ自治区ガザ地区におけるイスラエルの戦争目的は「もはや理解できない」と述べた。

イスラエル軍がイスラム組織ハマスの壊滅を掲げて軍事作戦を拡大する中、ドイツ首相の異例の発言は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相への圧力をいっそう強めるものとなっている。

メルツ氏は公共放送・西ドイツ放送に対し「率直に言って、イスラエル軍が現在ガザ地区で何をしているのか、その目的がもはや理解できない」と発言。「過去数日間で民間人にますます甚大な被害が出ている状況は、もはやハマスによるテロとの戦いによっては正当化できない」と述べた。

また第2次世界大戦とホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の暗い歴史を踏まえ、ドイツは「地球上のどの国よりも」イスラエルに対する公的な発言に慎重でなければならないと述べた上で、「問題は、われわれが今、どれだけ明確に批判の声を上げるかということだ。歴史的な理由から私は控えめにしているが、今はもう少し明確に言う必要がある」と強調。「一線が越えられ、国際人道法が侵害されているときには、ドイツの首相も声を上げなければならない」と述べた。

さらに「われわれの立場は明確にイスラエル側だが、ガザ地区の人々の運命を無視するわけにはいかない」「ガザ地区からの追放はあってはならないし、飢餓政策もあってはならない。援助と人道物資の積極的な供給が必要だ」と続けた。 【5月27日 AFP】
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****アイルランド、イスラエル占領地と禁輸へ****
アイルランド政府は27日、国際法で違法とされている、パレスチナ自治区のイスラエル人入植地からの商品の輸入を禁止する法案の策定を承認した。欧州連合加盟国として、前例のない動きだ。

この動きは、国際司法裁判所が昨年、ヨルダン川西岸、東エルサレム、ガザにおけるイスラエルの占領が国際法に違反しているとする勧告的意見を出したのを受けたもの。

外務省報道官はAFPに対し、「政府は占領下のパレスチナ領土にある違法な入植地との商取引を禁止する法案を推進することで合意した」と語った。

閣議決定を控え、サイモン・ハリス外相は記者団に、他のEU諸国も追随することを期待していると述べた。 【5月28日 AFP】
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ガザ情勢に欧州で高まるイスラエル批判 外交団への警告射撃 米でのイス大使館職員殺害の影響は?

2025-05-23 23:27:57 | パレスチナ

(【5月22日 共同】)

【イスラエル  およそ2か月半ぶりにガザ地区への物資搬入を認めるも、そのレベルは不十分】
イスラエル・ネタニヤフ首相は18日、パレスチナ・ガザ地区への限定的な食料の搬入を再開させると表明し、3月2日以来、およそ2か月半ぶりにガザ地区の封鎖が解除されました。

飢餓が恐怖が高まるガザ地区の惨状への国際的な批判、それを背景にしたアメリカのイスラエルへの圧力もあったようです。

その一方で、ネタニヤフ首相は「ガザ全域の制圧を目指す」と主張し、地上侵攻を再開したイスラエル軍は攻勢を強め、犠牲者も増大しています。

****ガザへの食料限定搬入、米から強い圧力か 再占領視野のイスラエル政権内では不評、曲折も****
イスラエル軍は18日、パレスチナ自治区ガザで大規模な地上作戦を始めたと発表し、中東の衛星テレビ局アルジャジーラ(電子版)はガザ北部や南部一帯で同日、150人超が死亡したと伝えた。19日もガザへの攻撃で少なくとも23人が死亡したとみられる。激しい攻撃で犠牲者が急増し、人道危機も深刻化する公算が大きい。

イスラエルのネタニヤフ首相はガザを「征服」し、軍駐留を続ける方針を示した。2005年に完全撤退したガザの再占領も辞さない構えで、国際社会で批判が高まりそうだ。

ネタニヤフ政権はイスラム原理主義組織ハマスに対する人質解放の圧力を強化するとし、トランプ米大統領の中東歴訪の終了に合わせる形で、大規模軍事作戦を開始したと発表。その前から激しい空爆を行っており、ガザ保健当局は18日、過去1週間に460人超が死亡したと発表した。

一方、イスラエルのメディアは英紙タイムズの報道を基に、ガザを北部、中部、南部に3分割して、住民らの管理を強化する計画が政府内部に存在すると報じた。

それによると、イスラエル軍はガザ北端と南端に加え、各区画を隔てる境界の計4カ所に駐留。無許可で別の区画に移動することを禁じ、住居がある区画での生活を認めない可能性もある。

ネタニヤフ氏は18日、ガザへの限定的な食料の搬入を再開させると表明した。首相府は「軍の勧告に基づく決定」だとしたが、イスラエルのメディアは「米国の強い圧力」があったと報じた。

イスラエルは3月2日、ガザへの食料や燃料などの物資搬入を全面停止した。トランプ氏は今月16日、「(ガザでは)多数の人が飢えに苦しんでいる」と述べ、対応する必要性を示唆していた。

ただ、物資搬入の再開は対パレスチナ強硬派の極右政党などが参画するネタニヤフ政権の内部では不評で、搬入が継続されるかは不透明だ。【5月19日 産経】
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【欧州で高まるイスラエル批判 イスラエルの制裁やパレスチナ国家承認の検討も】
最近取り沙汰されている軍事作戦の維持・拡大を主張するネタニヤフ首相と人質解放を優先し停戦実施を求めるトランプ大統領の“不協和音”については、“アメリカのワシントン・ポストはトランプ政権が「戦争が終わらなければ、イスラエルを見捨てる」と明言していると伝えています。”【5月20日 テレ朝news】とも。

そうした状況で、欧州・カナダなどでもイスラエル批判が高まり、主戦場の一つになっています。

****英加仏、対イスラエル制裁を警告 「ガザでの軍事作戦停止せよ」****
英国、カナダ、フランスの首脳は19日、イスラエルがパレスチナ自治区ガザでの新たな軍事攻撃を停止し、援助制限を解除しなければ、制裁を科すと警告し、ネタニヤフ首相に一段の圧力をかけた。

イスラエル軍は16日に新たな作戦の開始を発表、ネタニヤフ氏は19日、ガザ地区全域を掌握する方針を示した。

英政府が発表した共同声明は「イスラエル政府による一般住民への必要不可欠な人道支援の拒否は容認できず、国際人道法に違反する可能性がある」と指摘。「われわれは、ヨルダン川西岸地区における入植地拡大のいかなる試みにも反対する。制裁を含むさらなる行動を取ることを躊躇しない」とした。

これに対してネタニヤフ氏は「英国、カナダ、フランスの指導者たちは、(2023年)10月7日のイスラエルへの大量虐殺的攻撃に対して巨額の賞金を提供しているようなもので、このような残虐行為をさらに招いている」などと反論した。

3カ国首脳は共同声明で、米国、カタール、エジプトが主導するガザでの即時停戦の努力を支持するとし、紛争の2国家解決策の一部としてパレスチナ国家を承認することにコミットしていると強調した。【5月20日 ロイター】
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こうしたイスラエル批判の高まりは、イスラエルが警戒する欧州各国によるパレスチナ国家承認にもつながってきます。

****英仏カナダ首脳、イスラエルに共同対応を警告****
イギリス、フランス、カナダの3か国首脳は19日、パレスチナ自治区ガザ地区におけるイスラエルの「看過しがたい行動」を非難し、軍事攻勢が続くようであれば共同で対応すると警告した。

イギリスのキア・スターマー首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、カナダのマーク・カーニー首相は、イスラエルによるガザへの人道支援の妨害や、ネタニヤフ政権の閣僚によるパレスチナ人の大量追放を示唆する発言を厳しく非難した。

3首脳は「ネタニヤフ政権によるこのような看過しがたい行為を黙認することはできない。イスラエルが軍事攻勢を停止せず、人道支援の制限を解除しない限り、われわれはさらに具体的な対応措置を取る」と警告した。

具体的な措置には言及しなかったものの、「二国家解決の実現に向けた一助としてパレスチナ国家を承認する用意があり、そのために他国とも連携していく」と述べている。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はこれに反論し、この共同声明はガザを支配するイスラム組織ハマスに対する「大きな賛辞」だと非難した。

またイスラエルに対しては、同日、22か国の外相がガザ地区への支援物資搬入の「即時かつ全面的な再開」を求める共同声明を発表しており、英仏カナダもこれに署名している。 【5月20日 AFP】
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支援物資搬入は部分的に認められたものの、なかなか進まない支援の現実を前に、日本も含めた日欧各国は、ガザ地区への支援物資搬入を即時に「全面再開」するよう要請する共同声明を出しています。

****日欧など22か国、ガザ支援「全面再開」をイスラエルに要請****
日本や英仏独、オーストラリアなど22か国の外相は19日、イスラエルに対し、パレスチナ自治区ガザ地区への支援物資搬入を即時に「全面再開」するよう要請する共同声明を発表した。これに先立ちイスラエルは、ガザ封鎖を部分的に解除した。

22か国外相は、「限定的に援助が再開された様子は認められるが、イスラエルは2か月以上にわたり、ガザへの人道支援を阻止していた」と指摘。

「(ガザでは)食料、医薬品、生活必需品が尽き」、「住民は飢餓に直面している」とし、「ガザの人々が切実に必要としている援助を受け取れるようにしなければならない」と訴えている。

国連は、支援物資を乗せたトラック9台のガザ入りがイスラエルに許可されたと発表した上で、この量は「大海の一滴にすぎない」と表現し、ガザが直面している人道危機に比べれば微々たるものと指摘していた。

署名国はオーストラリア、カナダ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、アイスランド、アイルランド、イタリア、日本、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポルトガル、スロベニア、スペイン、スウェーデン、英国の22か国。 【5月20日 AFP】
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中道左派のスペイン社会労働党を率いるサンチェス首相はイスラエルをの国際文化イベントから排除するよう求めています。

****イスラエルの国際イベント排除要請、スペイン首相 ガザ戦闘受け****
スペインのサンチェス首相は19日、パレスチナ自治区ガザでのイスラエルの軍事作戦を理由に、同国を欧州最大の国別対抗音楽祭「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」などの国際文化イベントから排除するよう求めた。

ロシアも、ウクライナ侵攻を理由に同様の排除措置を受けている。(中略)

サンチェス氏は芸術家らに対し、民主主義や平和など脅かされている価値観のために立ち上がるよう呼びかけ、「当たり障りのない、沈黙した、中立的な立場を取る文化部門」を擁護する人々を批判した。【5月20日 ロイター】
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イギリス、EUもイスラエルとの関係を再検討する姿勢を示しています。

****英政府、イスラエルとのFTA交渉を停止 ガザ戦闘再開・支援物資搬入制限に抗議****
スターマー英政権は20日、イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザで軍事作戦を再開させたことに抗議し、イスラエルとの自由貿易協定(FTA)の締結交渉を停止した。ヨルダン川西岸への入植活動に関わる3個人と4団体に対する追加制裁も発表した。

ラミー英外相は、イスラエルがガザへの食料や医療物資、燃料などの人道支援物資の搬入を制限していることについて「残酷で弁解の余地がない」と述べ、制限の解除を要求。ガザでの紛争が英国とイスラエルの関係を損ねているとの認識を示し、同国がこのまま物資の搬入を制限し続けるのであれば「さらなる措置を講じる」と警告した。

スターマー英首相も20日、これに先立ち議会で「イスラエルが事態を激化させたことに戦慄を覚える」と懸念を表明し、イスラム原理主義組織ハマスに捕らわれた人質を解放するには「停戦が唯一の道だ」と訴えた。

イスラエル外務省は同日、駐英イスラエル大使を呼んで説明を求めた。同省報道官はX(旧ツイッター)への投稿で、英政権の措置に対し「外部からの圧力がイスラエルの進む道を転換させることはない」とし、意に介さない立場を強調した。【5月21日 産経】
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****EU、イスラエルとの協定検証へ ガザの惨状受け****
欧州連合(EU)のカラス外交安全保障上級代表(外相に相当)は20日、パレスチナ自治区ガザの壊滅的な状況を踏まえ、イスラエルとの政治・経済関係を定めたEU・イスラエル連合協定の検証を実施すると述べた。この日開いた外相理事会で大多数が見直しを支持したとした。

イスラエルは最近、ガザへの攻撃を強化し多数の犠牲者が出ている。外交筋によると、協定の人権に関する条項をイスラエルが順守しているかを中心にした検証をオランダが提案。加盟国27カ国のうち17カ国が賛同したという。

カラス氏は「ガザの状況は壊滅的だ。イスラエルが援助物資の搬入を許可したことは歓迎するが、その規模は大海の一滴だ。援助は直ちに、妨害なく、大規模に行われなければならない」と述べた。

チェコは、EUが協定に基づく会合を開催しイスラエルに懸念を表明することが可能として検証を支持しなかった。

カラス外相は、暴力的行為を働いたイスラエル人入植者に対する制裁措置を策定したが、一加盟国に阻止されていると述べた。外交筋によると、ハンガリーが阻止しているという。【5月21日 ロイター】
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【視察中の外交団に対するイスラエル軍の警告射撃 欧州のイスラエル批判を更に刺激】
こうした欧州のイスラエル批判を更に刺激したのが、パレスチナ自治区のヨルダン川西岸ジェニンで視察中の外交団に対するイスラエル軍の警告射撃でした。

****イスラエル軍、ヨルダン川西岸で外交団に発砲 各国が猛抗議****
イスラエル軍は21日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸ジェニンで、視察中の欧州連合や各国の外交団に「警告射撃」を行ったと発表した。これを受け、イスラエルを支持している国の間からも強い非難の声が上がっている。

イスラエル軍は、外交団は承認されたルートを外れ、制限区域に入ったと主張。「警告射撃」を行い、外交団を誘導したと説明した。負傷は出ていないとしつつ、「迷惑」をかけたことに遺憾の意を表明した。

パレスチナ自治政府は、イスラエル部隊は「意図的に」発砲したと指摘した。AFPの映像には、外交団と同行記者が、銃声を受け避難する様子が捉えられている。

あるEU外交官によると、外交団は、2023年10月にガザ紛争が勃発(ぼっぱつ)して以来、イスラエル軍がもたらした破壊状況を確認するため、現地を訪れていた。

国連のアントニオ・グテレス事務総長の報道官は記者団に対し、「職務中の外交官は発砲されたり、いかなる形であれ攻撃されたりするべきではない」とし、「国連職員を含む外交官が仮に警告射撃だったしても銃撃されたことは容認できない」と述べた。

EUのカヤ・カラス外交安全保障上級代表(外相)は、イスラエルに対し「責任を追及する」よう求めた。
また、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ポルトガル、スペイン、ウルグアイの各国は、それぞれの国に駐在しているイスラエル大使を呼び出して抗議したり、イスラエル政府に直接抗議する意向を表明したりした。

パレスチナ自治政府の通信社WAFAは、外交団には英国、中国、エジプト、フランス、ヨルダン、トルコ、ロシアなど20か国以上の代表が参加していたと報じた。 【5月22日 AFP】
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【ネタニヤフ首相、「一時停戦」に応じる用意表明 しかし、米ワシントンでのイスラエル大使館職員銃撃事件でイスラエルは再度強硬路線に戻る可能性も 米国内の「反ユダヤ主義」対応は強化か】

さしものネタニヤフ首相も、こうした欧州を中心にしたイスラエル批判の高まりに対し、やや対応を軟化。

****イスラエル首相、ガザ「一時停戦」に応じる用意****
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は21日、同国の新たな軍事攻勢と人道支援への妨害に対する国際的な圧力が高まる中、「一時的な停戦」に応じる用意があると表明した。

ネタニヤフ氏は、「人質解放のために一時的な停戦の選択肢があるなら、われわれはそれに応じる用意がある」と述べた上で、イスラム組織ハマスと共闘勢力により拘束されている少なくとも20人の人質が、現在も生存しているとみられることに言及した。

その一方で、イスラエル軍が作戦終了までにパレスチナ自治区ガザ全域を制圧する方針を改めて示し、「作戦行動の自由を維持するには人道危機を回避しなければならない」と強調した。

この発言の数時間前には、ヨルダン川西岸のジェニンを視察中だった欧州連合や各国の外交団に対し、イスラエル軍が「警告射撃」を行っていたことが明らかになり、各国から強い非難の声が上がっていた。 【5月22日 AFP】
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しかし、保守層を中心としたイスラエル国内世論・ネタニヤフ首相を刺激して、こうした軟化の流れを再度強硬路線の方向に戻しかねないのが米ワシントンで起きたイスラエル大使館員2人が銃撃され死亡した事件。

****当時ユダヤ博物館でイベント開催…イスラエル大使館職員2人が銃撃され死亡 シカゴ出身の30歳男を拘束「パレスチナに自由を」繰り返し叫ぶ****
アメリカの首都ワシントン中心部でイスラエル大使館の職員2人が銃撃され死亡しました。 容疑者の男は拘束の際、「パレスチナに自由を」と叫んでいました。

警察などの発表によりますと、21日午後9時過ぎ、首都ワシントンの中心部にあるユダヤ博物館の近くでイスラエル大使館職員の男性と女性2人が銃撃され死亡しました。 ユダヤ博物館では事件当時、若手外交官らが集まるイベントが開催されていました。

在アメリカ・イスラエル大使は事件を受けて会見し、死亡した2人は交際中で、男性は来週プロポーズするため、指輪を買ったばかりだったと、明らかにしています。

警察は現場でイリノイ州シカゴ出身の30歳の男、イライヤス・ロドリゲス容疑者を拘束したと発表しました。
ロドリゲス容疑者はユダヤ博物館近くで発砲したあと、博物館内に逃げ込み、拘束された際には、「パレスチナに自由を」と繰り返し叫んでいたということです。

FBI=連邦捜査局は単独犯とみて捜査を続けています。
トランプ大統領は「反ユダヤ主義に基づく、このような恐ろしい殺人事件は、今すぐ終わらせなければならない。憎悪と過激主義はこの国に存在すべきではない」と事件を非難する投稿をしています。

イスラエルのネタニヤフ首相は22日、事件について「イスラエルに対する反ユダヤ主義で凶悪な犯行だ」と非難し、各国にある在外公館の警備の強化を指示しています。【5月22日 FNNプライムオンライン】
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ネタニヤフ政権の対応は一層頑なになるでしょうが、注目されるのは、この事件の米トランプ政権への影響。

****仏英加は「ハマスに加担」、ネタニヤフ氏が攻撃停止要求に反発****
フランス、英国、カナダの首脳が今週、イスラエルがパレスチナ自治区ガザでの新たな軍事攻撃を停止しなければ「具体的な行動」を取ると警告したことについて、イスラエルのネタニヤフ首相は、イスラム組織ハマスに手を貸したがっているなどとして非難した。

ガザでの戦闘を巡っては、現地の荒廃した様子や餓えに苦しむ人々の映像が世界中に流れる中、各国で抗議行動が起きており、イスラエルへの国際的な圧力が強まっている。

ネタニヤフ氏は、2023年10月のハマスによるイスラエルへの攻撃を念頭に、「あなた方は人道の間違った側におり、歴史の間違った側にいる」と述べ、3カ国が「大量殺人者、強姦魔、赤ん坊殺し、誘拐犯」を支援していると断じた。

イスラエル政府関係者が特に懸念しているのは、フランスを含む欧州諸国に対して、スペインやアイルランドに続いてパレスチナ国家を承認するよう求める声が高まっていることだ。

ネタニヤフ氏は、パレスチナ国家はイスラエルを脅かすと主張。米首都ワシントンで21日夜、イスラエル大使館の職員2人が銃撃を受け死亡したことを、その脅威の明確な例として挙げた。【5月23日 ロイター】
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****米国、「反ユダヤ」の取り締まり加速も イスラエル大使館員銃撃****
(中略)米国内では若者を中心に、ガザでの作戦に反対する意見が根強い。一方、トランプ政権は「反ユダヤ主義」を許容しない姿勢を鮮明にしている。今回の事件の動機や背後関係次第では、政権の対応がさらに強化される可能性もありそうだ。(中略)

トランプ外交に変化は
米国内では「反ユダヤ主義」への締め付けを進めるトランプ政権だが、外交ではイスラエルのネタニヤフ首相との溝も取り沙汰されている。5月中旬の初の本格的な外遊で中東を訪れたが、イスラエルは訪問しなかった。

トランプ氏は「平和の構築者」を自任し、ガザのイスラム組織ハマスが拘束する、米国籍を含む人質の解放に取り組んできた。解放を実現するための停戦も求めてきたとされる。

だが、政権内に極右勢力を抱えるネタニヤフ氏は、人質の解放を進めるための停戦よりも軍事作戦を優先しているとの見方があり、米側との意見の相違が指摘されている。

21日夜の米首都での事件の動機は現時点では判然としないが、今後、トランプ氏の外交姿勢に変化があるかも注目される。【5月22日 毎日】
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イスラエル  ガザでの軍事作戦を強化し、住民を南部に強制退避 更には他国への移住か

2025-05-07 23:11:19 | パレスチナ

(イスラエル・テルアビブの国防省で開かれた週次閣議に出席するベンヤミン・ネタニヤフ首相(右)とベツァレル・スモトリッチ財務相(2024年1月7日撮影)【5月7日 AFP】)

【イスラエル「作戦の強化を決定」】
“ガザ保健省によると、イスラエルが作戦を開始して以降、ガザで5万2535人が殺された。そのうち2436人は、イスラエルが3月18日に攻勢を再開して以降に死亡したという。”【5月5日 BBC】

2か月続くイスラエル軍による支援物資搬入阻止によって飢餓の危機が深刻化するパレスチナ・ガザ地区にあって、ようやくアメリカ・イスラエルの間で搬入再開の動きが出ていることは、5月3日ブログ“パレスチナ・ガザ地区 惨状への国際批判の高まりを受け、イスラエル・米、支援物資搬入再開を検討”で取り上げたばかりですが、そうした動きの一方で、(すでに充分に激しい軍事行動がなされていますが)イスラエルはガザにおける軍事作戦を強化することも決定しています。

****ネタニヤフ首相「作戦の強化を決定した」 ガザ全土を制圧する計画をイスラエルの内閣が承認****
パレスチナ自治区ガザ全土を制圧する計画を、イスラエルの内閣が承認したと報じられました。ネタニヤフ首相も「作戦の強化を決定した」と明らかにしています。

複数のイスラエルメディアは、4日から5日にわたって開かれた閣議で、イスラエル軍がガザ全土を制圧して、一定の期間占領する計画が全会一致で承認されたと報じました。

ネタニヤフ首相も「作戦の強化を決定した」と明らかにしていて、「住民は自らの安全を守るために移動させられる」ともしています。

報道では、計画にガザの住民を再び南部へと強制退避させることも含まれているとされています。

来週予定されているアメリカのトランプ大統領の中東歴訪後に、計画を実施する方針だということです。

こうしたなか、イスラエルによる戦闘拡大を支持するか問われたトランプ大統領は回答を避けました。

アメリカ トランプ大統領
「ガザの住民は飢えに苦しんでいる。食料を得られるように支援する」

トランプ氏はガザへの食料支援を行う考えを明らかにするとともに、ハマスが「支援物資をすべて取り上げている」と批判しました。

CNNテレビは、トランプ政権がハマスを介さずに支援物資を届ける新たな仕組みを検討していると伝えています。【5月6日 TBS NEWS DIG】
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今月中旬に予定されているトランプ大統領の中東訪問を待って軍事作戦が開始されるとも。

****トランプ氏の外遊終了までに人質合意が不成立ならガザで軍事作戦を開始****
アメリカ・トランプ大統領の中東訪問が終了するまでにガザ地区で拘束されている人質の解放が合意に達しなければ、イスラエルは軍事作戦を開始すると地元メディアが報じました。

トランプ大統領は13日〜16日の日程で、サウジアラビアやカタールなどを訪問します。

イスラエルメディアは5日、政府高官の話として、この外遊が終了するまでにイスラム組織ハマスと人質解放に関する合意に達しなかった場合、治安内閣で承認された軍事作戦が開始されると伝えています。

この作戦では、ガザ地区北部から南部に住民を移動させ、ハマスの戦闘員と分離する狙いがあるとしています。

人道支援の再開については、住民が南部に移動した後に実施されることも明らかにしています。(ANNニュース)【5月6日 ABEMA Times】
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人道支援の再開は住民が南部に移動した後・・・・まだしばらく時間を要するようです。また、住民を再び南部へ強制的に退避させるとのことで、人道危機の悪化は避けられ状況です。

この作戦強化に向けて準備も進んでいます。

****ガザ攻撃拡大控え予備役数万人招集 イスラエル****
イスラエルのメディアは3日、同国がパレスチナ自治区ガザ地区での軍事作戦拡大に先立ち、数万人の予備役を招集する命令を出していると報じた。

複数のメディアによると、軍は予備役に招集命令を送り始めている。イスラエルと、占領下のヨルダン川西岸の徴集兵や現役兵をガザに配置転換し、その穴埋めに予備役を充当するという。(中略)

イスラエルは、ハマスとの2か月間の停戦の進め方をめぐり行き詰まる中、3月18日にガザ全域で大規模な作戦を再開した。

ハマスの政治事務所を擁するカタールは米国とエジプトと共に、1月に発効した停戦を仲介した。しかし、新たな合意を確保する努力はここ数週間停滞しているようだ。

そうした中、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はカタールが「二枚舌で双方をもてあそんでいる」と非難。X(旧ツイッター)への投稿で、カタールは「文明の側につくのか、それともハマスの蛮行の側につくのかを決めなければならない」と述べた。 【5月4日 AFP】
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【イスラエル国内にも軍事作戦「強化・拡大」へ批判はあるものの・・・】
しかし、イスラエル国内にあっても、こうしたネタニヤフ首相の戦争拡大には首相が自身の政治的保身のために戦争を長引かせているといった批判も強くあります。

****イガザ地区での軍事作戦を「強化・拡大」へ イスラエル軍が予備役の招集を開始****
(中略)
作戦の拡大は、疲弊した予備役兵へのさらなる負担となる見通しだ。この戦争が始まって以降、5~6回招集されている兵士もいる。また、人質の家族からは、生存者を救う唯一の道だとして、政府に対してハマスと合意するよう求める声が再び上がっている。

今回の発表は、ネタニヤフ首相のガザにおける真の意図に対する新たな疑問も呼び起こしている。
人質の家族や政治的なライバルらは、首相が合意に向けた交渉を妨害し、政治的な目的で戦争を長引かせているとの批判を繰り返している。ネタニヤフ氏はこれを否定している。

また、戦争が始まってから約19カ月が経過した現在も、ネタニヤフ氏は「戦後」の具体的な計画を提示していない。

地元メディアによると、イスラエル軍は2日、ガザでの段階的な攻勢計画をネタニヤフ首相に提示した。

一方ここ数週間で、ネタニヤフ政権に対して戦闘を停止し、人質の帰還に向けた合意の実現に集中するよう求める書簡に、数千人の予備役兵が署名している。

3日夜には、イスラエル各地で抗議活動があり、戦争の終結を訴える声が上がった。最大都市テルアヴィヴでは、拘束されたままの人質の母親が、この戦争は「無意味な戦争」だと訴えた。(後略)【5月5日 BBC】
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今のところはこうした国内批判にもかかわらず、ネタニヤフ首相は戦争拡大に突き進むようです。戦争が終わったら、自身の政治生命が断たれる危険がありますので。

【住民を南部へ強制退避させ、更に域外へ・・・ ガザ住民の半数が他地域移住を希望との調査も】
住民を南部に移動させる・・・ガザ住民にとっては新たな苦難です。

****ガザ作戦拡大、「住民大半の移動」もくろむ イスラエル****
イスラエル軍は5日、安全保障内閣が前夜承認したパレスチナ自治区ガザにおける軍事作戦拡大には、住民の「大半」を移動させることが含まれると明らかにした。

政権関係者はAFPに対し、作戦の拡大計画には「ガザの征服とその領土の保持、住民を保護するための南部への移動」が含まれると述べた。

またイスラエルの治安当局幹部は「計画の中心的要素は、戦闘地区の全住民をガザ南部に移動させる大規模な避難だ」と語った。イスラエル軍の軍のエフィ・デフリン報道官も、計画中の攻勢には「ガザ住民の大半を移動させることが含まれる」と説明した。

ガザのイスラム組織ハマスによる2023年10月のイスラエル攻撃以降、ガザ住民約240万人のほぼ全員が少なくとも一度は避難を余儀なくされている。

イスラエルはパレスチナ人にガザからの退去を促しており、治安当局幹部は「自発的な移転プログラムが作戦目標の一部になる」と話した。

強制移住はパレスチナ人にとって、1948年のイスラエル建国に伴う第1次中東戦争で故郷を追われた大量追放「ナクバ(大災害)」の記憶を喚起させる。

国連のファルハン・ハク報道官は、アントニオ・グテレス事務総長が「さらなる多数の民間人の死と、ガザの一層の破壊をもたらすことは避けられない」として、イスラエルの計画に「深い懸念」を示したと伝えた。

ハク氏は「ガザは将来のパレスチナ国家の不可分な一部であり、そうあり続けなければならない」とくぎを刺した。 【5月6日 AFP】
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これでもか、これでもかと苦難がふりかかるなかで、さすがに住民のなかからは「もうガザでは暮らせない。外に出たい」という声も。

ガザ住民を地域から一掃してガザ地区をイスラエルにとって安全な“中東のリビエラ”に再開発するというトランプ大統領・ネタニヤフ首相の目論みが実現に向けて進みそうな気配も。

****パレスチナ・ガザ住民、半数が他地域移住を希望=調査****
パレスチナ自治区ガザの住民の約半数が、他地域への移住をイスラエルに申請したいと考えていることが、6日公表された調査結果で明らかになった。

調査は、西側の献金で運営するシンクタンク「パレスチナ政策・調査センター」が1―4日、ガザと、イスラエルが占領するヨルダン川西岸で合計1270人の住民を対象に実施した。同シンクタンクはヨルダン川西岸ラマラに拠点を置いている。

ガザでは49%が、イスラエルの港や空港経由で他国に移住するための支援をイスラエルに申請したいと回答し、50%は申請したくないと答えた。

イスラエル当局は、ガザを離れたい住民を支援すると表明しているものの、諸外国に対する住民受け入れの説得はほとんど進展していない。

調査ではまた、ガザ住民の48%が、ガザ各地で散発しているイスラム組織ハマスへの抗議デモを支援すると答えた。ヨルダン川西岸のパレスチナ人では、この割合が14%にとどまった。

反ハマスのデモは外部の手によって組織されていると答えたガザ住民の割合は54%で、住民の本当の意見表明だとの回答は20%にとどまった。ハマスは、イスラエルの複数の諜報機関がデモを組織していると主張している。

1年7カ月にわたるイスラエルの攻撃によってガザの大半は、がれきと化した上、同国が3月からガザへの支援物資搬入を停止したため食料不足が厳しさを増しているが、多くのパレスチナ人は、ガザを離れれば住んでいる場所をイスラエルに明け渡すことになると考えている。【5月7日 ロイター】
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トランプ大統領が言うようにガザは人が暮らすには適さない場所になっており、実際にも半数が「もう出たい」と思っている・・・ただ、トランプ大統領が無視している重要なことは、「誰がそんな状態にしたのか?」ということです。

それはハマスであり、イスラエルであり、イスラエル支援を続けるアメリカです。その犠牲を域外への脱出、あらたな「ナクバ(大災害)」という形で住民に強いるのは理不尽なことです。

国際社会はその理不尽さへの批判をもっと強めるべきですが、アラブ諸国では「大義」は建前化し(せいぜい、自国ではガザ住民を受け入れたくないという消極的反対)、世界の主要国はトランプ関税対策などに追われています。トランプ大統領の「Flood Zone」戦略(問題政策を集中的に洪水のように次々に繰り出すことで、反対者を溺死させる戦略)の成果でしょうか。

ハマスも自分たちのことしか念頭になく、住民に犠牲を強いている点ではイスラエルと同罪。“ガザ停戦交渉に「関心なし」”とは無責任です。

****ハマス幹部、現状ではガザ停戦交渉に「関心なし」****
パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスの幹部は6日、同組織がイスラエルとの停戦交渉に「もはや関心がない」と述べた。

ハマス政治部門のバセム・ナイム氏はAFPの取材に対し、「ガザで飢餓戦争と絶滅戦争が続いている限り、協議や新たな停戦案を検討する意味はない」と語った。

さらに国際社会に対し、「ガザにおける飢餓、渇き、殺戮という犯罪を止めるため、ネタニヤフ政権に圧力をかけるよう」求めた。

イスラエル軍は前日、ガザ地区での軍事作戦を拡大し、住民の「大半」を移動させると発表していた。 【5月6日 AFP】
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【極右閣僚、ヨルダン川西岸地域の併合を目論む】
イスラエルのパレスチナ破壊はガザだけにとどまらず、ヨルダン川西岸地区にも。

****イスラエル財務相「ガザは完全破壊」、ヨルダン川西岸の正式併合も示唆****
イスラエルの極右ベツァレル・スモトリッチ財務相は6日、イスラム組織ハマスとの戦争におけるイスラエルの勝利は、パレスチナ自治区ガザ地区の「完全な破壊」を意味すると述べた。

スモトリッチ氏は、イスラエルが1967年から占領しているヨルダン川西岸のイスラエル人入植地オフラで開かれた会合で、「ガザは完全に破壊される。民間人はハマスもテロリズムも存在しない南部の人道ゾーンに送られ、そこから第三国への大量出国を開始する」と述べた。

スモトリッチ氏はヨルダン川西岸についても、正式に併合することが現政権にとって「最も重要な課題の一つ」であり、来年末まで続く可能性のある任期中の実現を期待していると述べた。

スモトリッチ氏をはじめとするイスラエルの公人はここ数か月、世界の懸念を無視してヨルダン川西岸の併合をますます強く求めている。

イスラエルが併合した東エルサレムを除くヨルダン川西岸では、パレスチナ人約300万人、イスラエル人約49万人が居住している。スモトリッチ氏らイスラエル人は国際法違反の入植地で暮らしている。 【5月7日 AFP】
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“やり放題”という感も。

そうしたなかで今日もガザへの容赦ない攻撃が続いています。

****ガザ北部の学校に攻撃、パレスチナ人13人が死亡=保健当局****
パレスチナ自治区ガザの北部で7日、避難民が住む学校がイスラエル軍の攻撃を受け、パレスチナ人13人が死亡した。地元の保健当局が発表した。

医療関係者によると、ガザ市タファにあるカラマ学校を標的にした2回の攻撃があった。パレスチナメディアによると、犠牲者にはジャーナリストのヌール・アブドゥ氏も含まれている。

今のところイスラエル軍からコメントは出ていない。

保健当局によると、6日にはガザ中心部の別の学校に空爆が2回あり、女性や子どもを含む少なくとも29人が死亡。イスラエル軍は、この施設にある司令部で活動していた「テロリスト」を狙ったと説明している。

一方、イスラム組織ハマスの軍事部門「カッサム旅団」は7日、ガザ南部ハンユニスの東に展開するイスラエル装甲部隊を標的にあらかじめ仕掛けた地雷を戦闘員が爆発させたと発表。死傷者が出たという。

また、住民やハマス筋によると、付近のラファではイスラエル軍による家屋や建物の爆破・取り壊しが続いている。

イスラエル軍はすでにガザの約3分の1に相当する地域を掌握。住民を退去させ、「セキュリティーゾーン」としている更地に監視拠点を建設している。【5月7日 ロイター】
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パレスチナ・ガザ地区 惨状への国際批判の高まりを受け、イスラエル・米、支援物資搬入再開を検討

2025-05-03 22:27:37 | パレスチナ

(4月26日、ガザ市近郊の避難民キャンプで、国連機関から配布された食料を受け取るために集まったパレスチナ人【4月27日 産経】)

【イスラエルと米国 ハマスが関与しない形で搬入を再開させることを検討】
「やっと・・・」と言うべきでしょう。遅きに失してはいますが、これまでの対応を続けるよりは格段にましでしょう。

****ガザ支援物資 イスラエルと米国、近く搬入再開を合意か 米報道****
米ニュースサイト「アクシオス」は2日、イスラエルと米国が、パレスチナ自治区ガザ地区の支援物資の搬入の再開の合意に近づいていると報じた。新たな財団を設立し、イスラム組織ハマスが関与しない形で搬入を再開させることを検討しているという。

ガザ地区ではイスラエルが3月2日から、ハマスに圧力をかけるためだとして、すべての物資の搬入を停止。国連世界食糧計画(WFP)は、ガザ地区の食料備蓄が底をついたと発表するなど人道状況は深刻になっている。

アクシオスによると、物資の搬入は、各国などからの支援を受けた財団を通じて行われる。ガザ地区に食料を配布する施設を建設し、米国の民間企業が物資の配布と周囲の警備を担当する。イスラエル軍は物資の配布などには関与しないが、より広範囲の地域の警戒にあたるという。

イスラエル軍は、ハマスにさらに圧力をかけるため、近く地上作戦を拡大する予定で、4日の治安閣議で計画を承認する見込みだ。イスラエル当局者は、戦闘を拡大させる前に新たな仕組みを構築し、支援物資の搬入を再開させたい意向だという。

ロイター通信によると、イスラエル軍は2日もガザ各地を攻撃し、少なくとも25人が死亡した。2023年10月の戦闘開始以来のガザ側の死者は、5万2000人を超えている。【エルサレム松岡大地】
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【「水を巡る殺し合い」「多くの子どもや女性が静かに殺される」 ガザ住民への集団懲罰】
イスラエル軍の人道支援を含む支援物資の搬入停止によるガザの「飢餓」の惨状は連日報じられているところ。

****ガザ封鎖2カ月、食料ほぼ払底 国連「水を巡る殺し合い」と窮状訴え****
国連の援助当局者は2日、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの物資の全面封鎖が2カ月の節目を迎え、減少する物資を巡って争いが勃発していると述べた。

イスラエルは3月2日以降、ガザ地区の住民230万人へのあらゆる物資供給を完全に遮断しており、停戦中に備蓄した食糧はほぼ底をついている。これはガザ地区史上最長の封鎖となる。パレスチナ住民と援助関係者によると、30日にはガザ地区全域で少なくとも5件の略奪事件が発生した。

ガザの国連人道問題調整事務所(OCHA)のオルガ・チェレフコ氏はビデオ会見で、物資を巡る暴力が激化しているとし、「水の入手がほぼ不可能になっている。給水車が到着したばかりなのに、水を巡って殺し合いが繰り広げられている」と窮状を訴えた。

他の援助団体でも、この1週間ですでに食料が底をつき、支援活動が閉鎖の危機に瀕しているというところもある。赤十字はガザにおける人道支援は「完全崩壊」の瀬戸際にあると述べた。

イスラエルはこれまで、ガザが飢餓危機に直面しているという説を否定しており、十分な援助物資がまだあると主張している。【5月3日 ロイター】
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****「子どもや女性が静かに殺される」ガザへの支援物資搬入停止から2か月 国連がイスラエルに搬入再開求める****
パレスチナ自治区ガザへの攻撃を続けるイスラエルが支援物資の搬入を停止してから2か月となるなか、国連機関のトップは「住民が静かに殺される」などと搬入再開を訴えました。

UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関のラザリーニ事務局長は2日、イスラエルがガザへの支援物資の搬入を停止してから2か月となるのにあわせて、「ガザで生まれ、暮らしているというだけで、集団的に罰せられている」などとSNSに投稿しました。

ガザではイスラエルが食料や医薬品といった支援物資の搬入を停止して以降、人道状況が著しく悪化していて、ラザリーニ氏は「多くの子どもや女性が静かに殺される」などと搬入の再開を強く訴えました。

こうしたなか、ロイター通信は2日、地中海のマルタ沖で、ガザに支援物資を届けようとしていた民間団体の船が無人機による攻撃を受けたと報じました。船には16人が乗っていましたが、いずれもけがはないということです。

攻撃は2度あったということですが、攻撃を行った主体は分かっておらず、団体は徹底した調査を求めています。【5月3日 TBS NEWS DIG】
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マルタ沖での民間団体支援船への無人機による攻撃については以下のようにも。

****イスラエル軍ドローン、ガザ行き支援船を攻撃 活動家発表****
パレスチナ自治区ガザ地区へ向かっていた支援船を組織している活動家団体は2日、マルタ沖の国際水域でイスラエル軍のドローンによる攻撃を受けたと発表した。

同団体によれば、マルタ時間の午前0時23分、「フリーダム・フロティーラ連合」の支援船「コンシエンス号」が国際水域で攻撃を受けたという。

「武装したイスラエル軍のドローンが、非武装の民間船の船首部分を2度にわたって攻撃し、火災が発生した。船体には大きな穴が開いた」と声明は述べている。

団体はさらに、「イスラエルの大使らは各国で召喚され、国際法違反について説明責任を負うべきだ」と非難。これには、継続中のガザ封鎖と、国際水域での民間船への爆撃も含まれるとしている。

イスラエル政府からはこの主張に対する公式な発表は出ていない。

フロティーラ連合は、今回の攻撃は船の発電機を標的にした可能性があるとしており、その結果、船は電力を失って沈没の危険にさらされたという。船は遭難信号を発し、キプロスおよびイタリアから救援船が派遣された。犠牲者は報告されていない。

団体によれば、当時船には21か国からの活動家が乗船していた。活動家らは「イスラエルによる違法かつ致命的なガザ封鎖に抗議し、緊急の人道支援物資を届ける任務にあたっていた」と述べている。

イスラエルは3月2日以降、ガザへのすべての支援物資搬入を停止しており、同月中旬にはガザでの軍事作戦を再開。イスラエルとイスラム組織ハマスの紛争における2か月間の停戦は、もはや実質的に崩壊している。 【5月2日 AFP】
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“この船はマルタ島で環境活動家のグレタさんらが乗船しガザに向かう予定だった”【5月2日 日テレNEWS】とも。

こうした事態に多くの国際機関が危機的状況への警告を発しています。

****ガザ地区 支援の民間船に無人機攻撃 赤十字国際委員会は「完全崩壊の危機に直面している」人道支援に警告****
(中略)こうした中、赤十字国際委員会は2日、人道支援が「完全崩壊の危機に直面している」と警告しました。イスラエルはイスラム組織ハマスに人質解放を迫るため、3月2日以降、ガザ地区への医薬品や食料などの供給を阻止しています。

WHO=世界保健機関の幹部は1日、ガザ地区の子供たちの心身が破壊されていると述べ、栄養失調によって免疫力の崩壊が起きていると警告しました。

地元紙はイスラエル当局の話として、今週中に物資の搬入再開を検討していると伝えています。ハマスが配給に関与できない方法を検討するとしていますが、実現は難しいとの声も上がっています。【5月3日 日テレNEWS】
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上記記事最後のイスラエルの“ハマスが配給に関与できない方法を検討”ということが、冒頭記事内容になると思われます。

かつてホロコーストを経験したイスラエルによる、食料・水・医薬品も遮断するというガザ住民を230万人をガス室送りにするかのようなこれまでの対応に対し、国際的にも厳しい批判が高まっています。

****ガザ物資遮断2カ月、募る飢餓の懸念 イスラエルの対応に高まる非難 ICJ公聴会****
イスラエルがパレスチナ自治区ガザへの支援物資の搬入を全面停止していることなどを巡り、オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)で公聴会が開かれている。ガザでは食料も燃料もなくなりつつあり、多くの国が飢餓の深刻化への懸念を表明している。

イスラエルは3月2日、イスラム原理主義組織ハマスがガザで拘束する人質解放の継続を拒否したとして、支援物資のガザ搬入を完全に停止した。

公聴会は4月28日から5月2日までの日程で、約40カ国が意見を陳述。パレスチナの代表は、イスラエルが人道支援を「兵器」として使っていると非難した。国連の法律顧問はパレスチナはイスラエルの占領下にあると指摘し、イスラエルについて「住民の利益になる国連の活動を認める義務がある」と述べた。
これに対し米国は、治安を脅かしかねない組織の支援活動を受け入れる義務はないと主張し、同盟国イスラエルを擁護した。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の一部職員が約1年半前、ハマスのイスラエル奇襲に関与した疑いが浮上したことを念頭に置いた発言とみられる。

中東の衛星テレビ局アルジャジーラによると、米国とハンガリー以外の国々はほぼイスラエル批判を展開。イスラエルはICJについて「自衛権という最も基本的な権利を否定する狙いだ」(サール外相)と反発し、公聴会への出席を拒否した。

ガザへの物資搬入が遮断されて約2カ月となり、現地からの映像では食料の配給所で住民が食べ物を得ようと押し合う事態が日常化している。世界食糧計画(WFP)はガザの備蓄食料が底を突いたとし、国連は「全面的な飢餓」の懸念があると指摘する。

ガザ当局によると、飢えや栄養失調で子供ら50人以上が死亡し、少なくとも6万人に栄養失調の兆候がみられる。
カタールやエジプトが仲介するイスラエルとハマスの停戦が実現するかどうかは不明で、双方の駆け引きが続くなかでガザ住民の生存が厳しさを増している形だ。

ICJは国連の主要な司法機関で、公聴会は昨年12月、国連総会がイスラエルの対応に関して法的見解を求める決議を採択したのを受けて開かれた。【5月1日 産経】
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****イスラエルのガザ完全封鎖、「全く受け入れられない」とアイルランド外相。飢餓に襲われるパレスチナの子どもたち****
ガザ市内の慈善団体の炊き出し所で、温かい食事を求めて集まるパレスチナ人の子どもたち(2025年4月30日)
イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの支援物資の全面封鎖が2カ月以上続き、子どもたちが飢餓の脅威にさらされている。

国連児童基金(UNICEF)のキャサリン・ラッセル事務局長は、5月2日に声明を発表。ガザでは人々の生存に必要なあらゆる物資が不足し、子どもたちの間で栄養失調が深刻化している現状を報告した。

ラッセル氏は「ガザの子どもたちは容赦ない爆撃にさらされる一方で、2カ月にわたって必要不可欠な物資、サービス、そして命を救う医療を奪われてきました。支援の封鎖が続く中、子どもたちは飢餓、病気、そして死のリスクにますますさらされています。これを正当化できる理由は何一つありません」と訴えた。

支援物資は底をつきかけており、ワクチンも急激に不足している。UNICEFによると、ガザで報告される病気の4件中1件は急性水様性下痢症で、その大半は5歳未満の子どもであり、「命に関わる恐れがある」としている。

栄養失調も深刻化し、2025年の初めからすでに9000人以上の子どもが急性栄養失調の治療を受けている。このほか治療の必要な何百人もの子どもたちが、治安の悪化や避難のために治療を受けられずにいるという。

ラッセル氏は「全ての紛争当事国は、人道支援の迅速かつ妨害のない通過を認めなければいけません。また、現地住民のために国連機関が活動を行うことを許可・支援しなければなりません」と指摘している。
イスラエルは3月2日以降、ガザ住民へのあらゆる物資供給を完全に遮断している。

アイルランドのサイモン・ハリス外相は5月2日の声明で、イスラエルが2カ月以上もガザへの物資援助を封鎖していることについて、「現在の苦しみが続いていることは全く受け入れられない」と批判。

「このような状況下で命を救う支援を妨げることは、イスラエルが国際的に負っている義務に違反するものだ」とし、イスラエルに対して封鎖の即時解除を求めた。【5月3日 HUFFPOST】
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【アメリカ イスラエル擁護は変えていないものの、国際批判に配慮か】
前出【5月1日 産経】にもあるように、アメリカはイスラエル擁護の姿勢を変えていませんが、さすがに上記のような国際批判の高まりは意識せざるをえなくなっているようです。

****ガザ支援搬入認めるようイスラエル首相に要請=トランプ氏*****
トランプ米大統領は25日、今週行ったイスラエルのネタニヤフ首相との電話会談で、パレスチナ地区ガザへの食料や医薬品の搬入を認めるよう求めたと明らかにした。

ネタニヤフ氏の反応について記者団から問われると、「良い反応だった」と答えた。

イスラエルは、イスラム組織ハマスが残る全ての人質を解放するまで人道支援物資の搬入を認めておらず、ガザには3月2日以降、支援物資は届けられていない。

世界食糧計画(WFP)はこの日、ガザの食料備蓄が底を尽いたと発表した。【4月26日 ロイター】
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その結果として、冒頭記事のような対応が。

ただ事は急を要します。“ガザ地区に食料を配布する施設を建設し、米国の民間企業が物資の配布と周囲の警備を担当する。イスラエル軍は物資の配布などには関与しないが、より広範囲の地域の警戒にあたるという。ガザ地区に食料を配布する施設を建設し、米国の民間企業が物資の配布と周囲の警備を担当する。イスラエル軍は物資の配布などには関与しないが、より広範囲の地域の警戒にあたるという。”とのことですが、実際に人々の手に水・食料が届くようになるまでにはあとどのくらいの日数がかかるのでしょうか?

その間にもガザ住民の飢餓が進行し、人々の生命と健康が蝕まれていきます。

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パレスチナ・ガザ地区で進む住民排除 人道危機は制御不能 赤新月社救急隊員らの殺害

2025-04-07 23:04:06 | パレスチナ

(【4月7日 BBC】 イスラエルは当初、車列が暗闇の中でヘッドライトも緊急警光灯も点灯させず「不審に」接近してきたため、兵士らが発砲したと主張。しかし、残された動画で救急車のライトは点灯しており、救急隊員と認識しながら発砲殺害したことが判明 イスラエル側は説明を変更)

【イスラエル軍によって進む住民排除のトランプ計画】
世界がトランプ関税の衝撃で世界同時株安などに揺れ動く間も、ウクライナでも、パレスチナでも、その他の地域でも従来からの戦闘はこれまでどおり続いています。

パレスチナ・ガザ地区では“これまでどおり”と言うより“これまで以上に”といった感があり、イスラエルは攻撃を強化しています。

*****「ガザに新たな軍事区域」イスラエル首相表明 住民、物資移動さらに困難に****
イスラエルのネタニヤフ首相は2日、イスラム原理主義組織ハマスを標的に攻撃を続けるパレスチナ自治区ガザで、新たな軍事区域を設けると表明した。住民の移動や物資の輸送がさらに制限される可能性がある。

イスラエルメディアによると、軍事区域はエジプトとの境界にあるガザ最南部ラファと南部ハンユニスの間に設置される見通し。ハンユニスやラファにはイスラエル軍が退避勧告を発令しており、ラファ周辺はほぼ無人になったとする報道もある。

ネタニヤフ氏は同日、ハマスに人質を解放させるため、ガザを地域ごとに分割して圧力を強めているとも述べた。

イスラエルはハマスとの人質解放交渉が暗礁に乗り上げたのを受け、3月2日からガザへの食料などの物資流入を全面停止した。同月18日にはガザで大規模空爆を実施。ガザを南北に分断する「ネツァリム回廊」を再び占拠したほか、ラファとエジプトの間にある「フィラデルフィ回廊」も掌握している。

イスラエル軍は4月1日、ガザには1月中旬から1カ月超続いた停戦期間中に搬入された食料が残っているはずだと主張したが、国連のドゥジャリク事務総長報道官は同日、「ばかげている」と述べ、人道危機の深刻さを訴えた。

ガザ当局はイスラエル軍の爆撃による4月2日の死者は少なくとも60人に上ったと発表した。国連によると、停戦崩壊後のガザでの死者は千人を超えたもようだ。【4月3日 産経】
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下記記事の「安全地帯」という言葉、最初私は戦闘に巻き込まれているガザ住民のための安全地帯のことかと思ったのですが、どうも話の辻褄が合わない・・・ガザ住民のための安全地帯ではなく、ガザ住民を追い出して無人化し、イスラエル軍が占領するイスラエルのための安全地帯のことだったようです。

****イスラエル軍、ガザ北部に進入し「安全地帯」拡大 学校空爆*****
イスラエル軍は4日、パレスチナ自治区ガザ北部に進入し、ガザ周辺の「安全地帯」を拡大したと発表した。

北部ガザ市の東にあるシェジャイア地区で作戦を遂行しているイスラエル軍兵士らは、組織化されたルートで市民を避難させているという。イスラエルは3日にこの地域に避難勧告を出し、数百人の住民が避難していた。

一方、ガザ保健当局によると、イスラエル軍は住民が避難していたガザ市タッファ地区の学校を空爆し、女性や子どもを含む少なくとも27人が死亡した。

軍はこの校舎がイスラム組織ハマスの司令部として使用されていたとし、民間インフラを意図的に悪用しているとハマスを非難した。ハマスは民間人の中での活動を否定している。

ここ数日、イスラエル軍の支配地域拡大に向けた動きを受け、何十万人ものパレスチナ人が集団避難を始めている。

ガザ最南部のラファでは、イスラエル軍が廃墟となった町を包囲し、「安全地帯」として占領している。イスラエルは「安全地帯」として占領している地域の長期的な目的を十分に説明していない。【4月4日 ロイター】
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OCHA=国連人道問題調整事務所は4日、イスラエル軍の攻撃により、2週間で28万人を超えるガザの住民が避難を余儀なくされたと発表しました。また、ガザ地区の65パーセントが立ち入り禁止になっているか、退避命令が出ているとしています。

****ガザ、立ち入り禁止や避難対象が全体の65%に 新たに28万人が避難*****
イスラエル軍は4日も、イスラム原理主義組織ハマスを標的にパレスチナ自治区ガザ各地で攻撃を続けた。

国連によると、攻撃再開により停戦が崩壊した3月18日以降、ガザでは推計28万人が避難を余儀なくされた。域内各地で軍の避難勧告が相次いでおり、国連はガザ全体の65%が立ち入り禁止か避難対象の地域になったとした。

ガザ保健当局は4日、イスラエル軍の爆撃などにより南部を中心に少なくとも35人が死亡したと発表した。軍は同日、北部のガザ市周辺でも支配地域を拡大した。

ロイター通信によると、イスラエル政府当局者は軍事作戦について、ガザの住民を域外に移住させるとしたトランプ米大統領の2月発表の構想に沿うものだと述べた。イスラエル政府は住民の自主的な域外への退去を支援する政策も打ち出した。

イスラエルとハマスの停戦協議は双方の隔たりが埋まらず停滞しており、パレスチナの協議筋はロイターに「現在は(両者の)接触はない」と述べた。イスラエル軍は最近、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区やレバノン、シリアへの攻撃も強化している。【4月5日 産経】
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“トランプ米大統領の2月発表の構想”・・・例のガザ住民を強制移住させて、中東のリビエラに再開発するというものでしょうか。

てっきりトランプ大統領の妄想世界の話と思っていたのですが、イスラエルによってそのプランに沿う形で現実世界が変化しているようです。

【人道危機は制御不能】
事実上の停戦崩壊により、「人道危機は文字通り制御不能になっている」(OCHAのガザ担当者)といった状況に陥っています。一方、停戦交渉は進展していません。

****ガザ人道危機「制御不能」 子供1.7万人が孤児に 栄養失調も深刻****
パレスチナ自治区ガザ地区でイスラエル軍による攻撃が激化している。軍は北部や南部で一定の領土を「安全地帯」として確保する方針を示し、地上作戦を拡大。

ガザの封鎖も解除の見通しが立たず、住民は度重なる避難や物資不足にあえいでいる。イスラム組織ハマスとの戦闘開始から7日で1年半を迎える中、人道危機はもはや「制御不能」との声も出ている。

ガザ地区では1月19日に一時停戦が発効したが、イスラエルは3月18日、ハマスが要求を受け入れないとして空爆などの大規模攻撃を再開。約3週間で死者は1000人を超え、停戦合意は事実上崩壊した。(中略)

ガザ保健当局やパレスチナ中央統計局(PCBS)によると、これまでの戦闘によるガザ側の死者は3日時点で5万523人に達し、このうち約1万8000人は子供だった。子供だけで凍死者は17人、餓死者は52人に上る。また、少なくとも片方の親を亡くした子供は3万9384人で、うち約1万7000人は両親を失い孤児となった。

一時停戦後、南部へ避難していた住民は北部への帰還が認められたが、攻撃再開後は再び各地で退避を迫られている。国連人道問題調整事務所(OCHA)などによると、ガザの65%が立ち入り禁止となり、少なくとも28万人が新たに避難を余儀なくされた。

水や食料、医薬品などの不足も悪化の一途をたどっている。検問所を支配するイスラエルは3月2日、ガザ封鎖を再開して支援物資の搬入を停止。9日には電力の供給も止めた。これにより、住民の主要な「水源」である海水の淡水化装置を稼働できず、ガザの水供給量は通常の3分の1まで落ち込んだ。

小麦粉や燃料も枯渇しており、今月1日にはガザにある製パン店がすべて閉鎖に追い込まれた。OCHAのまとめでは、人口約210万人の9割にあたる195万人が食料不足に直面。妊婦と2歳未満の子供の92%は栄養不足で、6万人以上の子供が急性栄養失調で治療を必要としている。

インフラの被害も甚大だ。すでに建物の約7割と主要道路の約8割が破壊され、家屋の約9割が損壊した。187万5000人が緊急でシェルターを必要とし、「人道危機は文字通り制御不能になっている」(OCHAのガザ担当者)。

一方、停戦に向けた交渉は難航している。ロイター通信などによると、仲介国のエジプトやカタールは3月、ハマスが人質5人を解放する代わりに50日間停戦する案を提示し、ハマスは受け入れを表明した。

ところが、イスラエルは別の停戦案をハマス側に提示。さらに多くの人質解放を求めたとみられるが、ハマス幹部は今月2日、ロイター通信に「イスラエルの対案には返答しないことを決めた」と明らかにした。

双方の妥協が見えない中、ガザの人道状況は日に日に悪化している。国際社会も有効な手立てを打ち出せないのが現状だ。【4月6日 毎日】
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2か月間の停戦が終わって以来、パレスチナ人数十人がほぼ毎日殺害されています。製パン所の近くに集まっていた子供を含む住民も。

****イスラエルの空爆で44人死亡 ガザ当局発表****
パレスチナ自治区ガザの民間防衛機関は、イスラエル軍の空爆により6日に少なくとも44人が死亡したと発表した。一方、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ハマスが支配するガザからロケット弾が一斉発射されたのを受け、「強力な対応」を命じた。

イスラエルが3月18日にガザでの軍事攻撃を再開し、2か月間の停戦が終わって以来、パレスチナ人数十人がほぼ毎日殺害されている。

民間防衛機関のマフムード・バッサル報道官は「きょうの夜明け以降のイスラエルの空爆により、少なくとも44人が死亡した。そのうち21人は(南部)ハンユニスで死亡した」とAFPに語った。

バッサル氏によると、ガザ市アルトゥファ地区のアルナキール通りへの攻撃では、製パン所の近くに集まっていた6人が死亡した。その中には子ども3人が含まれていた。

ハマスは声明で、この攻撃について「意図的な子どもの殺害行為」だとし、「占領軍とそのファシスト指導者らの残忍かつ野蛮な性質を裏付けるもの」だと非難した。

一方、イスラエル軍は6日、ガザから数分間に約10発の「発射物」が発射されたと報告。そのほとんどを迎撃したとしている。これを受けて首相府は、ネタニヤフ首相が「強力な対応」を命じたと発表した。

イスラエル警察は、ガザとの境界に近いアシュケロンに破片が落ちたと指摘。救急隊員は、男性1人が負傷したと明らかにした。

ガザの保健当局によると、イスラエル軍が先月攻撃を再開して以来、ガザでは1330人以上が死亡した。 【4月7日 AFP】
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“トランプ米政権はバイデン前政権が凍結したイスラエル向けの大型爆弾などの兵器供与を再開するなど、同国支援の政策を続ける。イスラエル軍の攻撃に歯止めがかからず、さらに長期化する恐れもある。”【4月7日 産経】

【赤新月社の救急隊や国連職員ら15人が殺害され、埋められた遺体が1週間後に発見された事件 残された動画と矛盾するイスラエル軍の説明】
こうした状況で起きたのが救急車に対するイスラエル軍による救急隊員らの殺害。パレスチナ赤新月社の救急隊や国連職員ら15人が3月23日に銃撃を受け、埋められた遺体が1週間後に発見されました。

この事件に関するイスラエル軍側の説明は死亡した隊員の携帯に残された動画で否定される形にもなっています。

****ガザ救急隊員殺害、イスラエル主張に矛盾 「最後の瞬間」捉えた動画、赤新月社が公開****
パレスチナ赤新月社は5日、ガザでイスラエル軍に殺害された援助活動家リファト・ラドワン氏の携帯電話から回収した、同氏や他の救助隊員らの最期の瞬間を捉えた動画を公開した。

動画では、救急車両であることを示すマークが付いていることや、警光灯が点滅する様子がはっきりと確認できる。

国連とパレスチナ赤新月社によると、ラドワン氏は3月23日にイスラエル軍の攻撃で殺害された15人の人道支援要員の一人。

イスラエル軍は、兵士は「テロリストら」が「不審な車両」で接近してきたため発砲したとし、救急車を「無差別に攻撃したわけではない」と主張している。

軍報道官のナダブ・ショシャニ中佐は車両について、イスラエル当局から事前の許可を得ておらず、ライトを消していたと語っていた。

しかし、赤新月社が公開した動画は、イスラエル軍の主張と矛盾しているようだ。動画の中で救急車はヘッドライトをつけ、警光灯を点滅させながら走行している。

移動中の車内から撮影されたとみられる6分42秒の動画には、夜間に自動小銃の発砲が続く中、赤い消防車1台と複数の救急車が走行する様子が映っている。

車両は道路脇で別の車両の横に止まり、制服を着た男性2人が降りてくる。
動画では2人の救急隊員の声が聞こえ、1人が「車両、車両」と言い、もう1人が「事故のようだ」と応えている。数秒後、一斉射撃が始まり、画面は真っ黒になった。

赤新月社は声明で「この動画は、救急車を無差別に狙ったわけではなく、一部の車両はライトや緊急時のサインなしに不審に接近したとする占領軍の主張に対する明確な反証だ」と指摘した。 【4月6日 AFP】
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さすがにイスラエル側も当初説明を修正していますが、あくまで「ハマスに全責任がある」としています。

****イスラエル軍、ガザ救急隊員殺害で当初の説明を修正 調査は継続****
イスラエル軍は、パレスチナ自治区ガザ南部のラファ近郊で国連職員らが死亡した救急車への攻撃について、新たな詳細を明らかにし、当初の説明を修正した。ただ、現在も調査中としている。

パレスチナ赤新月社の救急隊や国連職員ら15人が3月23日に銃撃を受け、埋められた遺体が1週間後に発見された。

イスラエル軍は当初、無灯火で標識もない「不審な」車両が陣地に接近してきたため発砲したと発表していた。また、パレスチナ赤新月の車両に乗っていたイスラム組織ハマスとイスラム聖戦の戦闘員9人を殺害したと主張していた。

しかし、死亡した男性の携帯電話から回収された動画には、ライトを点灯した救急車と消防車であることが明確に示されており、制服を着た救急隊員が銃撃される様子が映っていた。

事件の唯一の生存者とされるパレスチナ赤新月の救急医療隊員も、明確な標識を付けた緊急対応車両に兵士らが発砲するのを目撃したと証言している。

イスラエル軍当局者は5日、記者団に対し、現場からの最初の報告書には灯火に関する記述がなかったと釈明した。「現時点で分かっているのは、最初の説明をした人物が誤っていたということだ。その理由を究明している」と語った。

「われわれの情報によれば、現場にはテロリストがいた。だが捜査はまだ完了していない」と述べた。過激派だと特定した根拠や証拠については、機密情報であることを理由に説明を拒否した。

また、兵士らが救急隊員に手錠をかけ、至近距離から発砲したとの報道を否定した。

「イスラエル軍が事件を隠蔽しようとした事実は一切なく、直ちに国連に通知した」と述べた。国連がすぐに遺体の回収に来なかったため、兵士は動物が近寄らないように遺体を砂で覆ったという。

道路の通行を確保するために現場にあった車両を重機で移動させたと述べたが、なぜ車両が押しつぶされ、埋められたのかは説明できなかった。

国連は先週、遺体の所在について知らされていたものの、イスラエルにより数日間現場への立ち入りを拒否されていたと指摘した。

米国家安全保障会議のヒューズ報道官は「ハマスは救急車や民間人を人間の盾としてテロに利用している」と述べ、ハマス側に責任があるとの見解を示した。

「トランプ大統領は、この戦術がイスラエルにとって対応が困難な状況を生み出していることを理解しており、ハマスに全責任があると考えている」と述べた。【4月7日 ロイター】
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救急車と消防車であることを認識し15人を殺害、遺体と押し潰した車両を埋める・・・・明確な説明をしてもらいたいものです。
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パレスチナ・ガザ地区  停戦合意破綻 攻撃を強めるイスラエル 西岸地区でも進む土地収奪

2025-03-26 23:41:22 | パレスチナ

(パレスチナ自治区ガザ南部ハンユニスで、イスラエルの攻撃で破壊された建物と子ども=20日(ロイター=共同)【3月25日 共同】)

【破綻した停戦合意 攻撃を強めるイスラエル 増加する住民犠牲】
周知のようにパレスチナ・ガザ地区では、停戦合意の第1段階を終了したものの、ハマスの人質全員解放、イスラエルの完全撤退、恒久的和平という第2段階に進めず、イスラエル・アメリカがハマスに人質全員解放を迫るなか、イスラエル軍の空爆が18日から再開、それに続いて地上作戦も再開されています。

****イスラエル、地上作戦を再開 ガザ住民に「最後通告」****
イスラエルは19日、パレスチナ自治区ガザ地区で地上作戦を再開したと発表した。ガザの住民に対しては、人質を返還し、イスラム組織ハマスを権力から排除するよう求める「最後の警告」を発した。

イスラエル軍は今週、1月の停戦開始以来最も激しい空爆を実施。ガザ民間防衛隊のマフムード・バッサル報道官は19日夜、イスラエルが空爆を再開して以来、ガザ地区で少なくとも470人が死亡したと述べた。

イスラエル軍は「安全地域を拡大し、北部と南部の間に部分的な緩衝地帯を作るために、ガザ地区の中部と南部で標的を絞った地上作戦を開始した」と発表した。

停戦維持を求める外国政府の一斉の呼び掛けにもかかわらずイスラエルが新たな爆撃を続ける中、19日には逃げる民間人の長い列がガザ地区の道路を埋め尽くした。

イスラエルのイスラエル・カッツ国防相はビデオ声明で、2007年以来ハマスが支配している「ガザ地区の住民」に「これが最後の警告だ」と述べ、「米国大統領の助言に従い、人質を返し、ハマスを排除すれば、他の選択肢が開かれるだろう。世界の他の場所に行きたい人々にはその可能性も含まれる」と語った。

ドナルド・トランプ大統領は今月、「ガザの人々へ。美しい未来が待っているが、人質がこのままならそれはない。このままなら、あなた方の命はない!」と発言していた。

2023年10月7日のハマスの攻撃で拘束された251人の人質のうち、58人が依然として拘束されている。そのうち34人については、イスラエル軍が死亡を確認している。

これまでのところ、ハマスはイスラエルの空爆に対して軍事的に反撃しておらず、ハマスの幹部は停戦合意を軌道に戻すための協議に応じる用意があると述べた。しかし、3段階から成る停戦合意を再交渉するというイスラエルの要求は拒否している。

幹部は「ハマスは交渉の扉を閉ざしていないが、新しい合意は必要ないと主張している」とAFPに説明し、イスラエルに「交渉の第2段階を開始するよう」求めた。

停戦合意の第1段階は3月初めに期限切れとなり、その後の進め方を巡る協議は行き詰まっている。 【3月20日 AFP】
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イスラエルの完全撤退を要求するハマスと、ハマスの壊滅を目指すイスラエルの間の溝はまったく埋まっておらず、第2段階のハードルは極めて高く、停戦合意が破綻するのは予想されたことでもありますが、第1段階の間にその溝を埋める何らの動きも策も知恵もなく、予どおり破綻した・・・という感があります。

「とりあえず止めればいい。あとのことは・・・・」というトランプ仲介外交の帰結でもあります。

ガザ住民は「どこへでも好きな所へ行け」と「最後の警告」をされても、住民が人質をとっている訳でもなく、他に行き場もなく、どうしようもありません。ただ攻撃の激しい場所を避けて逃げまどうだけです。

その後もイスラエル軍の攻撃は激しさを増しています。
“イスラエル軍がガザ最南部ラファを攻撃、地上作戦の範囲を拡大…停戦合意は崩壊の様相”【3月21日 読売】

イスラエル軍が包囲するラファでは住民5万人が孤立しています。

****イスラエル軍のガザ攻撃で21人死亡、ラファで住民5万人孤立****
パレスチナ自治区ガザの保健当局は24日、イスラエル軍によるガザ全域への空爆で、少なくとも21人が死亡したと発表した。イスラエル軍はエジプトとの国境に近いラファで作戦を展開し、空爆と地上攻撃を激化させている。

保健当局はイスラエルが18日にガザへの攻撃を再開して以来、約700人のパレスチナ人が死亡したと報告した。少なくとも400人の女性と子どもが含まれているという。

ラファでは、イスラエル軍が部隊を派遣したテル・アル・スルタン地区に数千人が閉じ込められていると地元当局が発表した。

声明で「近隣地域との連絡は完全に途絶えており、住民の安否は不明だ。家族はがれきの中に閉じ込められ、水も食料も医薬品もなく、医療サービスは完全に崩壊している」と訴えた。

パレスチナ民間緊急サービスは、5万人の住民がラファ地区に取り残されていると発表した。

イスラエル軍は、テル・アル・スルタンを包囲し、「テロのインフラ拠点を解体し、地域のテロリストを排除する」と表明した。【3月24日 ロイター】
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ガザ住民の犠牲者は増え続けています。
食糧も医薬品も途絶えています。

“「遺体がいたるところに」ガザの医師たち、イスラエルが数百人のパレスチナ人を殺した夜を語る”【3月22日 HUFFPOST】

****ガザ情勢「悪化の一途」=イスラエル軍猛攻、物資欠乏―レバノン側でも応酬****
イスラエル軍は、21日夜から22日にかけてもパレスチナ自治区ガザの北部などに対する激しい攻撃を続けた。中東の衛星テレビ局アルジャジーラは、猛攻で住民が行き場を失う中、空爆、砲撃と同時に地上侵攻が行われていると報道。食料や医薬品も欠乏しており、「状況は悪化の一途をたどっている」と伝えた。

地元保健当局によると、18日の大規模軍事作戦開始以降の死者は630人を超えた。過去48時間の死者は130人に達した。

イスラエルは今月2日、イスラム組織ハマスに人質を解放するよう圧力をかけることなどを目的に、ガザへの人道支援物資搬入を停止した。食糧供給の不足が次第に深刻化し、現在は「子供に1回分の食事を確保することさえできない」(アルジャジーラ)状況だ。

国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、ガザで満足に機能している病院は皆無だ。攻撃が続く中で、かろうじて一部の機能を維持している病院や仮設診療所に負傷者が次々運び込まれるが、医薬品が足りず、対応しきれない状態だ。(後略)【3月22日 時事】 
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“誤って”かどうかはわかりませんが、赤十字すら攻撃対象に
“イスラエル軍、ガザ地区の赤十字事務所を誤って攻撃”【3月25日 日テレNEWS】

最後の頼みの綱である国連も支援活動を縮小せざるを得ない状況です。

****国連、ガザ人道支援縮小 イスラエルの攻撃再開で****
国連は24日、イスラエル軍によるガザへの攻撃再開を受け、職員の安全を考慮してガザ住民に対する人道支援活動を縮小すると発表した。グテレス事務総長は「去るわけではない。住民の生存と保護に欠かせない支援は継続する」と強調した。

国連によると、ガザでは現地職員以外に国際職員約100人が活動中。縮小により国際職員の約3分の1に当たる30〜35人がガザから退去する。

ガザ停戦合意は1月19日に発効したが、今月18日のイスラエル軍の大規模空爆実施を受け停戦は事実上崩壊。19日には中部デールバラハで国連職員が利用していた施設がイスラエル軍の攻撃を受け、1人が死亡、6人が負傷した。【3月25日 共同】
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こうしたなか、この事態を招いた一方の当事者でもあるハマスに対する抗議の声もガザでは上がっているようです。当然でしょう。

****ガザで反ハマスの抗議デモ 事態収束要求、数百人参加****
中東の衛星テレビ、アルジャジーラは26日、パレスチナ自治区ガザ北部で25日にイスラム組織ハマスに対する抗議デモがあり、数百人の住民が参加したと報じた。

ガザでハマスへの抗議活動が起きるのは珍しい。住民は「戦争をやめろ」と書かれた横断幕を掲げ、イスラエル軍の攻撃激化で悪化する事態の収束を求めた。

デモでは、「食べ物がない。安全がない。水もない。もう十分だ」「ハマスは出て行け」と叫ぶ参加者もいた。

一方、パレスチナ通信によると、イスラエル軍は26日もガザ各地で攻撃を続けた。北部ジャバリヤやベイトラヒヤでは計9人が死亡。南部ハンユニスでも無人機攻撃で死傷者が出た。【3月26日 共同】
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アメリカは「4月下旬ごろまで暫定的に停戦し、その間に人質を解放する」という停戦案を提示しており、ハマスは検討中とのこと。

****「4月下旬まで」の停戦案検討か ハマス、米提示****
イスラム組織ハマスは21日、パレスチナ自治区ガザで4月下旬ごろまで暫定的に停戦し、その間に人質を解放するとした米国の提案を検討中だと明らかにした。ロイター通信が伝えた。

イスラエル軍は21日もガザ各地で空爆や地上侵攻を継続。ハマスが米国案を受け入れるまで攻撃を続ける構えで、ハマスの対応が焦点となっている。

一方、国連はイスラエル軍による18日の大規模空爆以降、ガザで200人以上の子どもが死亡したと表明した。中東メディアによると、18日以降のガザ全体の死者は600人近くに達している。

ロイターによると、停戦交渉を仲介するエジプトはハマスに対し、拘束する人質全員の解放とイスラエル軍のガザ完全撤収に関して期限を設定することを提案したという。ハマスは仲介国を通じて、イスラエル軍の攻撃停止を模索している。【3月22日 共同】
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【ネタニヤフ首相は政権維持で「大成功」】
イスラエル側は強硬な姿勢で、ハマスが人質解放に応じない場合、ガザの制圧地域を拡大して一部を併合するなどと警告しました。

****「人質解放しなければガザ一部を併合」イスラエル国防相が警告 ハマスはアメリカの提案含め協議を通じた停戦再開に前向き姿勢****
パレスチナ自治区ガザへの攻撃を再開したイスラエルの国防相は、イスラム組織ハマスが人質解放に応じない場合、ガザの制圧地域を拡大して、一部を併合するなどと警告しました。(中略)

イスラエル軍は地上作戦を再開していますが、カッツ国防相は21日、ガザの制圧地域を拡大するよう軍に指示したとの声明を出しました。「ハマスが人質解放を拒めば拒むほど、より多くの土地を失い、イスラエルによって併合されるだろう」などとして、ガザの一部を併合すると警告しています。

こうした中、ハマスは前日に続いて21日もイスラエルに向けてロケット弾2発を発射しました。

一方で、ハマスは来月下旬まで暫定的に停戦を延長し、その間に人質を解放するというアメリカの提案を含め「様々な案の検討を続けている」とし、協議を通じて停戦の再開を目指す姿勢も示しています。【3月22日 TBS NEWS DIG】
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しかし、イスラエルも非ユダヤ人が居住するガザを併合してどうするのでしょうか?
非ユダヤ人がますます増加することになりユダヤ人国家を危うくすることになります。また、パレスチナ人に選挙権などの権利を与えなかったり、追放したりすれば「人種差別国家」として国際批判を強めるだけです。 
だからこそパレスチナ人国家を樹立して「2国家共存」しかない・・・・と、イスラエル・トランプ政権以外は考えているのですが。

当面の話としては、ネタニヤフ首相はガザ攻撃再開で極右政党の協力を取り付けることで、予算案を成立させる事が出来、とりあえず自身の政治生命をつないだ形になっています。ガザ住民の多くの犠牲と引きかえに。

****イスラエル、政権維持へ「終わりなき戦闘」=ハマス壊滅は非現実的―ガザ攻撃再開から1週間****
イスラエルのネタニヤフ政権が、パレスチナ自治区ガザへの大規模攻撃を再開してから25日で1週間が経過した。政権維持のためネタニヤフ首相がイスラム組織ハマスとの停戦合意を無視し、「終わりなき戦闘」(地元紙ハーレツ)を始めたという批判が、イスラエル国内でも高まっている。

ネタニヤフ氏は戦闘再開に当たり、2023年10月のハマスによるイスラエル奇襲で拉致された人質の奪還と、ハマスの壊滅が目標だと強調した。しかし、奇襲以降ガザで長期にわたり続いた戦闘でもハマスを無力化できなかったことから、今回の大規模攻撃で組織根絶に追い込めると見込むのは非現実的だ。

元イスラエル軍情報機関トップのアモス・ヤドリン氏は、「二つの目標は段階的にしか達成できない」と指摘。それでも政権が戦闘再開を決断したのは、25年予算の議会可決を図るためだったとの見方を示す。

ネタニヤフ政権は、今年1月の停戦発効に反発して極右政党「ユダヤの力」が連立を離脱して以降、苦しい議会運営を強いられていた。今月31日までに予算を可決できなければ、憲法規定により議会は自動的に解散となり、ネタニヤフ氏は総選挙で政権の座から引きずり降ろされる可能性があった。

しかし、大規模攻撃が再開された18日、ユダヤの力はこれを評価して連立復帰を決定。予算は25日可決され、選挙は当面回避された。

ヤドリン氏はこうした政局を踏まえ、ハマスとの交渉で人質解放の道筋が付いたとしても、ネタニヤフ氏が停戦を継続させる可能性は低かったと解説。「予算可決後に首相が人質救出を優先してくれるよう願う」と述べた。【3月25日 時事】
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こうしたネタニヤフ首相の「ガザ攻撃再開」による政権維持について、その目論見は「大成功」したと伝えています。

【ヨルダン川西岸地区で進む土地収奪】
一方、ヨルダン川西岸地区でもイスラエル人入植者による土地収奪が加速しています。

****イスラエル人入植者、牧羊装いヨルダン川西岸の土地強奪 報告書****
イスラエルの入植活動を監視するNGO「ピース・ナウ」と「ケレム・ナボット」は、イスラエル人入植者は近年、牧羊拠点の設置を通じてパレスチナ自治区ヨルダン川西岸の土地の14%を奪っているとの報告書を発表した。

「悪しきサマリア人」と題する報告書は、入植者が過去3年間に奪った全ての土地の70%は「牧羊活動を装って」奪ったものだと指摘。

イスラエルが1967年から占領している西岸の入植者について、牧畜を通じてパレスチナ人の農地に進出し、パレスチナ人に対して徐々に土地への立ち入りを禁じているとしている。

また、入植者はパレスチナ人を追い出すため、「イスラエルの政府と軍の支援を受けて」嫌がらせや脅迫、暴力などを行っているとし、2022年以降、西岸全域でパレスチナ人の牧羊コミュニティー60以上がこのような方法で土地を追われたと報告している。

こうした被害の圧倒的多数は、1990年のオスロ合意でイスラエルの完全支配下となったC地区に集中している。

イスラエルの閣僚を含む極右政治家らはここ数か月、友好的なドナルド・トランプ米政権を利用して、2025年内にヨルダン川西岸の一部または全部を併合することを提案している。 【3月22日 AFP】
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ヨルダン川西岸の一部または全部を併合がイスラエルにとって良いことではないのは、ガザ併合の話と同じです。しかし、極右勢力の動きは止まりません。

こうしたなか、『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』でアカデミー賞のドキュメンタリー長編賞を受賞したヨルダン川西岸出身のハムダーン・バラール監督が入植者に襲撃された後、イスラエル軍に身柄を拘束される事態も。

****オスカー受賞のパレスチナ人監督、イスラエル軍が拘束 共同監督明らかに****
占領下のヨルダン川西岸におけるイスラエル人の入植の実態を描き、アカデミー賞のドキュメンタリー長編賞を受賞した映画『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』の共同監督の一人、パレスチナ人のハムダーン・バラール氏が24日、西岸で入植者に襲撃された後、イスラエル軍に身柄を拘束された。同じく監督を務めたイスラエル人のユヴァル・アブラハーム氏が明らかにした。

アブラハーム氏はX(旧ツイッター)に、バラール氏が「入植者の集団」に襲撃されたと投稿。「殴られて頭と腹部を負傷し、出血していた。自ら呼んだ救急車に(イスラエルの)兵士が乗り込んで来て、連行された。その後、どこにいるか分からない」とつづった。

イスラエル軍の占領に反対するNGO「ユダヤ非暴力センター」は、事件が起きたのは西岸南部の集落スシヤで、メンバーが襲撃の様子を撮影したとしている。

イスラエル軍はAFPに対し、情報の真偽を確認中だと回答した。 【3月25日 AFP】AFPBB News
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「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」は、イスラエル軍による村の破壊を阻止しようとしたマサーフェル・ヤッタ地域の住民たちの闘いを記録した映画で、第97回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画賞を受賞し、バラールさんらは3月2日の授賞式に出席していました。

その後、同氏は解放されたようです。激しい暴行を受けたようですが。

****「ノー・アザー・ランド」パレスチナ人監督、イスラエル軍から解放される。兵士からの暴行を証言「特に攻撃された」****
(中略)「ノー・アザー・ランド」で共同監督を務めたパレスチナ人のバーセル・アドラーさんはSNSで、ハムダーンさんが治療を受けている写真を添え、軍から解放されたことを報告。「彼は兵士や入植者から全身を殴打されました」と訴えた。写真からは、バラールさんの服に血がついていることがわかる。

バラールさんは、イスラエル人入植者たちが村を襲撃したとき、入植者たちはバラールさんの頭を「サッカーボールのように」蹴ったとAP通信に述べている。軍に拘束された後も目隠しをされ、イスラエルの兵士らが交代で見張りに来るたびにバラールさんを蹴ったり棒で殴ったりしたとも証言している。(後略)【3月26日 HUFFPOST】
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