
(【2月25日 日経】「COSCO」は、世界有数の規模を誇る中国の国際的なコンテナ輸送会社です。 コンテナの積み込みって、こういう風に10台ぐらいのクレーンを使って一気にやるんですね・・・なるほど)
【中国船籍や中国で建造された船舶が米国内の港に寄港する際、新たに手数料を徴収】
ひと月ほど前に、中国で建造された船舶がアメリカに入港する際に手数料を取る措置を始める方針を示しました。アメリカの造船業の復活と、中国の海運、造船分野での支配的立場に対抗することが目的と説明されています。
****トランプ政権 中国船舶が米国内の港寄港で手数料徴収へ****
アメリカ・トランプ政権は中国船籍や中国で建造された船舶がアメリカ国内の港に寄港する際、新たに手数料を徴収すると明らかにしました。 米中間の貿易摩擦が激しくなるなか、対立が一段と深まることも予想されます。
USTR=アメリカ通商代表部の17日の発表などによりますと、アメリカ政府は、中国船籍や中国で建造された船舶がアメリカ国内の港に寄港する際、所有者や運航する業者から新たに手数料を徴収するとしています。
貿易の相手国などに不公正な慣行があるとみなした場合に適用される「通商法301条」に基づく措置で、世界の造船市場で中国が支配的な地位を占めるなか、アメリカの造船業を復活させることがねらいだとしてます。
手数料はおよそ半年後から徴収し、積載貨物の量やコンテナの数に応じて手数料を課し、今後、段階的に引き上げるとしています。
貿易の相手国などに不公正な慣行があるとみなした場合に適用される「通商法301条」に基づく措置で、世界の造船市場で中国が支配的な地位を占めるなか、アメリカの造船業を復活させることがねらいだとしてます。
手数料はおよそ半年後から徴収し、積載貨物の量やコンテナの数に応じて手数料を課し、今後、段階的に引き上げるとしています。
USTRのグリア代表は「トランプ政権の措置は中国の支配を逆転させ、アメリカのサプライチェーンへの脅威に対処し、アメリカ製の船舶の需要を促進するものだ」とコメントしています。
米中間の貿易摩擦が激しくなるなか、トランプ政権による新たな措置の導入で対立が一段と深まることが予想されます。
米中間の貿易摩擦が激しくなるなか、トランプ政権による新たな措置の導入で対立が一段と深まることが予想されます。
中国は強く反発 対抗措置の可能性を示唆
これについて中国外務省の林剣報道官は18日の記者会見で「他国に損害を与え自国にも害を及ぼし、海運コストを上昇させ世界のサプライチェーンの安定を乱す」と述べ強く反発しました。
そのうえで「アメリカには多国間のルールを尊重し、ただちに誤った措置を停止するよう求める。中国は必要な措置をとり、正当な権利と利益を守っていく」と述べ、対抗措置をとる可能性を示唆しました。【4月19日 NHK】
そのうえで「アメリカには多国間のルールを尊重し、ただちに誤った措置を停止するよう求める。中国は必要な措置をとり、正当な権利と利益を守っていく」と述べ、対抗措置をとる可能性を示唆しました。【4月19日 NHK】
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米中が互いに高率の関税をかけ合う中で出てきたもので、アメリカ側の中国への圧力(嫌がらせ?)の一つであることはわかるものの、“アメリカの造船業を復活”については「それは無理でしょう・・・今更・・・でも、どうして造船?」といった感じで、あまりピンときませんでした。
なお、もう少し詳しく言えば、この新たな手数料徴収は2月段階ではもっと厳しい措置が検討されていました。
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(2月)21日(現地時間)、米通商代表部(USTR)は中国海運会社に対する手数料賦課計画を発表した。来月24日には公聴会を開催する予定だ。
今回の措置には、中国の海運会社が米国の港に入る際、最大で手数料100万ドルを払わせるか、船舶トン当たり1000ドルを課す案が含まれている。また、中国の造船所で建造した船舶が米国の港に入港する際、最大で150万ドルを課し、海運会社の船団(複数の船舶を束ねる言葉)で中国製船舶が一定の割合を超える場合、差等的に少なくとも50万ドルから最大100万ドルの手数料を払わなければならない。中国の造船所に船舶を発注した海運会社が入港する際にも同様に手数料を課す。【2月25日 ハンギョレ】
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2月段階での計画に比べると、4月17日のUSTR発表は一部免除・緩和されたものになっています。
****トランプ米政権、中国製船舶に課す入港料を一部免除****
トランプ米政権は17日、中国で建造された船舶が米国内の港湾に入港する際に入港料を課す措置について、国内の輸出業者および五大湖、カリブ海、米領海を運航する船舶所有者を免除すると発表した。米通商代表部(USTR)が連邦政府官報に掲載した。
USTRは今年2月、米国の造船業を復活させるとともに海運業界における中国の支配力を低下させるため、中国製船舶が米国の港湾に入港する際に1回当たり最大150万ドルを課す措置を提案していた。提案を受け、世界の海運業界には衝撃が走った。
海運業界の幹部らはUSTRの提案について、実質的にほぼ全ての海運会社に多大な入港料が課されると懸念。追加のコストによって米国の輸出価格は割高になる一方、米国の消費者には多額のコストが転嫁されると主張した。
17日発表された修正措置では、入港料は1航海当たり1回のみ適用され、年間では最高6回まで適用される。
また海運業者の所有船舶に占める中国製船舶の比率や、中国製船舶の発注予定に基づいて入港料を課さないことも決めた。米国から石炭や穀物などを輸出するために、貨物を積載せずに米国の港湾に入港した船舶は入港料を免除される。(中略)
USTRの当初提案に対しては、米国内の港湾や海運会社、輸出入業者を含む世界の関連業界から反対意見が殺到。これを受けてUSTRは提案を修正した。【4月18日 ロイター】
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【造船業の衰退で米海軍艦艇にも影響 “部品の共食い整備”も】
いずれにしても、“アメリカの造船業を復活”はピンと来ない話でしたが、下記記事にある米造船業衰退がもたらしている米海軍への悪影響を考えると、米造船業復活は何とか対応しないといけない切実な問題でもあるようです。
****日米関税交渉、切り札は「日本の造船技術」か 米国が“造船大国”から転落の理由 海軍の艦艇にも影響が****
日米関税交渉で日本側の切り札の一つとされているのが、造船技術の提供だ。 トランプ政権は、アメリカの造船業に対して危機感をあらわにしている。
■世界一の造船大国が転落
かつて造船能力で世界一とも言われていたが…
3月、トランプ大統領は「商業や軍用の造船業を復活させる」と宣言。「ロイター通信」によると、トランプ大統領はアメリカの港湾に停泊するすべての中国製・中国籍の船舶に入港料を課すよう指示したという。
アメリカはかつて造船能力で世界一とも言われていたが、国連貿易開発会議によると、近年の船舶製造量は中国が大差でトップとなっている一方で、アメリカは低迷しているという。
CSIS(戦略国際問題研究所)は、アメリカ海軍の資料を基にアメリカの造船能力は中国の230分の1だと指摘した。
■米国の造船業が衰退した理由
保護されたアメリカの造船業は、徐々に競争力を失う
アメリカの造船業が衰退してしまった理由は何なのか? 要因の一つが、1920年に制定された「ジョーンズ法」という法律だ。
この法律は、アメリカの港湾の間を行き来する運送で使われる船舶は、アメリカ製であることを義務づけるもの。これによって、アメリカの造船業者は外国の業者との競争を免れ、安定的に受注できるようになった。
しかし外国との競争から保護されたアメリカの造船業は、徐々に競争力を失っていった。
さらに「ニューヨーク・タイムズ(1983年8月29日)」によると、1981年に就任したレーガン大統領が「非効率だ」として、アメリカの造船業への補助金を撤廃したという。
こうしたこともあって、韓国メディア「ハンギョレ」によると、現在アメリカ製のタンカーは国際価格のおよそ4倍、アメリカ製のコンテナ船はおよそ5倍のコストがかかるという。
補助金が撤廃された後、1983年〜2013年にアメリカではおよそ300の造船所が消滅し、大型商業船舶を建造できる造船所は4カ所のみとなっており、アメリカ造船業の空洞化が加速したという。
■造船業の衰退で艦艇にも影響
艦艇にも影響
造船業の衰退で、アメリカ海軍の艦艇にも影響しているという。
「ウォール・ストリート・ジャーナル」によると、アメリカには商船の造船業界がほとんどないため、艦艇は部品・原材料の供給網や労働力を共有できないという。
また、なかには第2次世界大戦前の老朽化した設備もあるほか、熟練工などが不足している問題などを抱えているという。
CSISによると、中国の軍艦のうちおよそ70%が2010年以降に進水した比較的新しい船なのに対して、アメリカ海軍の軍艦のうち2010年以降に進水したものはおよそ25%にとどまっているという。
さらに、こんな問題も指摘されている。 アメリカ会計検査院によると、艦艇などが故障して部品が足りない場合、別の艦艇などから部品を外して修理する、いわゆる“共食い整備”が増加しているという。
先月、こうした状況のなかアメリカ海軍のフェラン長官は、同盟国でもある造船数世界2位の韓国と造船数世界3位の日本を訪れ、造船での協力を求めたという。【5月5日 テレ朝news】
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世界に冠たる米海軍艦船が、“部品の共食い整備”・・・まるで制裁を受けて部品調達がままならないロシアやイランの航空機みたいな惨状で驚きの実態です。
確かに造船業が衰退すれば海軍艦船の建造もメンテンバンスもできない・・・。
****アメリカの造船業衰退の米海軍への影響は?****
アメリカの造船業の衰退は、米海軍(U.S. Navy)に対していくつかの深刻な影響を及ぼしています。以下に主な点を挙げます:
1. 艦艇建造・維持の遅延
納期の大幅な遅延:米造船業界は少数の大手造船所に依存しており、人的資源や熟練労働者の不足により艦艇の建造が予定より数年遅れるケースが多発。
メンテナンスのボトルネック:老朽艦艇のオーバーホールや整備も滞り、艦艇の稼働率が低下。
2. 艦艇の数的不足
米海軍は、中国海軍の急速な拡張(艦艇数で世界最大)に対抗するため、艦隊の規模維持・拡大を目指しているが、新造艦のペースが追いついていない。
その結果、目標とする艦艇数(例:355隻)に届かず、戦略的抑止力の低下を招く恐れがある。
3. コストの増加
労働力不足や生産性の低下により、艦艇1隻あたりの建造コストが増加。
予算超過が常態化し、他の重要な軍事プロジェクトに割く資金を圧迫。
4. 産業基盤の脆弱化
造船業界における下請け・部品供給のサプライチェーンも縮小傾向にあり、自給自足能力が脅かされている。
中国や韓国など外国企業に依存せざるを得ない部品もあり、安全保障上のリスクが存在。
5. 有事対応能力の低下
有事や戦争勃発時において、急速な艦艇増産が困難であり、持続的な戦力投射能力が制限される。
第二次世界大戦時のような「動員体制」が既に崩壊しており、戦時産業の即応性が著しく低下している。
結論
アメリカの造船業の衰退は、米海軍の即応力・戦力投射力・抑止力を総合的に低下させており、特に中国やロシアといった戦略的競争相手に対する優位性が揺らぎつつあります。この状況に対し、米政府・議会は近年、造船業への投資・労働者育成・設備近代化支援を強化し始めていますが、回復には長期的な戦略と実行力が不可欠です。【ChatGPT:】
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更に米海軍艦船における造船遅延・維持整備の問題事例を見ると・・・
****【具体例】造船遅延・維持整備の問題事例****
1. コロンビア級原子力潜水艦(Columbia-class SSBN)
米海軍の次世代戦略原潜であり、オハイオ級の後継。 全12隻建造予定で、1番艦「USS Columbia」は2031年までに就役予定。
しかし、建造開始からすでに遅延が生じており、大幅なスケジュール遅延が発生すれば、アメリカの核抑止戦力に重大な空白が生まれるリスクがある。
2. バージニア級原子力潜水艦(Virginia-class SSN)
攻撃型原潜の主力であるが、年間2隻の生産目標に対して、近年は1隻に満たない年も。
原因は、熟練溶接工・技術者不足、材料不足、造船所の整備遅れなど。
同盟国オーストラリアへの供与(AUKUS枠組み)もあり、米海軍の分も建造が追いつかないという状況に。
3. 空母「ジェラルド・R・フォード」(USS Gerald R. Ford, CVN-78)
最新鋭の空母だが、新技術の統合により度重なる技術トラブル(例:電磁式カタパルトの不具合、武器搬送装置の設計不備など)。
完成は予定より5年以上遅れ、費用も当初計画を大きく上回る(約130億ドル超)。
4.メンテナンスの遅延による艦艇の稼働率低下
米海軍の報告によると、空母・駆逐艦・原潜などの整備に予定以上の時間がかかるケースが常態化。
例:原子力空母「USS George Washington」は近代化改修に7年近くを要した(通常4年)。
結果として、実際に配備可能な艦艇の数が少なくなり、戦域における運用能力が制限される。【ChatGPT:】
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【造船大国・韓国にはチャンス ただ、直視すべき中国造船業の技術力 日本にも米海軍との連携の余地】
世界の造船業の現状を見ると、かつて日本も「造船大国」でしたが、今は完全に中国・韓国の時代です。
中国船籍や中国で建造された船舶がアメリカ国内の港に寄港する際、新たに手数料を徴収・・・とは言っても、衰退した米造船業ではいきなりの新たな造船は対応できないので、造船発注は中国でなければ韓国に・・・ということにもなります。
****韓国造船業にチャンス到来?米国が2037年までに最大448隻の船舶発注=韓国ネット「うれしい悲鳴が…」****
2025年5月19日、韓国・聯合ニュースなどは「米国政府が進めている造船産業再建事業は韓国造船業発展のチャンスであり、チャンス獲得への戦略づくりが求められる」と伝えた。
韓国経済人協会はこのほど、韓国海洋大学のリュ・ミンチョル教授に依頼しまとめた報告書を公表し、米韓造船産業の協力案を提示した。
トランプ政権の造船産業再建政策により、米国は37年までに商船、液化天然ガス(LNG)運搬船、軍艦など、403隻から最大448隻の船舶を発注すると見込まれる。
先ごろ提出された「米国の繁栄と安全のための造船・港湾インフラ法(SHIPS法)」は、「米国籍の戦略商船団を250隻に拡充」「47年までにLNG輸出貨物の15%を米国が建造した船舶で運搬」と規定している。米海軍は向こう30年間で364隻を新たに建造する計画。トランプ大統領は砕氷船40隻を発注する方針を明らかにしている。
報告書は、こうした船舶導入計画に合わせて、商船、LNG運搬船、海軍軍艦、次世代船舶など分野別の対策を講じる必要があると指摘している。
商船に関しては、米国の戦略商船団は大部分が中型船舶のため、韓国中型造船メーカーの受注拡大に向けた官民協力案作りを提言。
LNG運搬船の場合は、米国のLNG輸出増で全数を米国内で建造することは現実的に不可能と思われるが、中長期的に見て韓国メーカーの現地化を準備するべきだとしている。
海軍艦艇に関しては、戦闘用艦艇は先進武器システムと連携しているだけにメンテナンス・修理・オーバーホール(MRO)と新規建造を早期に韓国に任せる可能性は低いと分析。まずは船体の修理を中心に信頼を築いてから、徐々にプロジェクトを拡大すべきだとしている。
この他、米韓双方が利益を得られる方向の造船産業生態系を再建するためには、長期にわたる投資を通じたインフラの改善、生産性の向上、人材育成が伴う必要があるとも提言している。(後略)【5月20日 レコードチャイナ】
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冒頭で紹介したように、4月17日のUSTR発表は一部免除・緩和されたものになったことで、発注先の韓国へのシフトもやや鈍ったようです。
****中国の新造船受注、韓国を抜いて再び世界1位に―中国メディア****
中国誌・財経は20日、中国の新造船受注が韓国を抜いて世界1位に返り咲いたと報じた。
記事によると、4月の中国の新造船受注は54隻で、載貨重量トン数(DWT)ベースの世界シェアは57.8%に達した。2位と3位は韓国と日本で、韓国は41隻、38%、日本は2隻、3.8%だった。
記事は「返り咲き」という表現について、「中国が2024年まで15年連続で新造船受注で世界首位を維持していたためだ」「だが、25年の最初の4カ月は米国の政策の影響で2カ月韓国に抜かれた」と説明。
その上で、「米国の『301条調査』により最近の国際的な造船構造に変化が生じた。中国で建造された船舶を使うことで米国の港湾で高額な費用が発生する可能性を懸念した一部船主は注文先を中国から韓国に変更。
だが、4月が政策転換点となり、4月17日に発表された301条調査に基づく制限措置では高額な港湾費の徴収範囲が縮小され、中国建造の船舶を使用する国際海運会社やそれを発注する会社に対する制限が削除された。制限措置の緩和により、船主が再び中国の造船市場に戻ってきた」と伝えた。(後略)【5月21日 レコードチャイナ】
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結局、中国造船業の“技術力”が際立っているということでしょう。かつての安いだけの中国ではありません。
日本は商船では中国・韓国には太刀打ちできませんが、米海軍艦船については“同盟国”という立場で関与できるものがあるかも。特に、潜水艦建造技術などは日本は非常に優れているとも聞きますので。