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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  造船業衰退で海軍艦艇の建造・維持に重大な支障

2025-05-21 23:31:44 | アメリカ
(【2月25日 日経】「COSCO」は、世界有数の規模を誇る中国の国際的なコンテナ輸送会社です。 コンテナの積み込みって、こういう風に10台ぐらいのクレーンを使って一気にやるんですね・・・なるほど)

【中国船籍や中国で建造された船舶が米国内の港に寄港する際、新たに手数料を徴収】
ひと月ほど前に、中国で建造された船舶がアメリカに入港する際に手数料を取る措置を始める方針を示しました。アメリカの造船業の復活と、中国の海運、造船分野での支配的立場に対抗することが目的と説明されています。

****トランプ政権 中国船舶が米国内の港寄港で手数料徴収へ****
アメリカ・トランプ政権は中国船籍や中国で建造された船舶がアメリカ国内の港に寄港する際、新たに手数料を徴収すると明らかにしました。 米中間の貿易摩擦が激しくなるなか、対立が一段と深まることも予想されます。

USTR=アメリカ通商代表部の17日の発表などによりますと、アメリカ政府は、中国船籍や中国で建造された船舶がアメリカ国内の港に寄港する際、所有者や運航する業者から新たに手数料を徴収するとしています。

貿易の相手国などに不公正な慣行があるとみなした場合に適用される「通商法301条」に基づく措置で、世界の造船市場で中国が支配的な地位を占めるなか、アメリカの造船業を復活させることがねらいだとしてます。

手数料はおよそ半年後から徴収し、積載貨物の量やコンテナの数に応じて手数料を課し、今後、段階的に引き上げるとしています。

USTRのグリア代表は「トランプ政権の措置は中国の支配を逆転させ、アメリカのサプライチェーンへの脅威に対処し、アメリカ製の船舶の需要を促進するものだ」とコメントしています。

米中間の貿易摩擦が激しくなるなか、トランプ政権による新たな措置の導入で対立が一段と深まることが予想されます。

中国は強く反発 対抗措置の可能性を示唆
これについて中国外務省の林剣報道官は18日の記者会見で「他国に損害を与え自国にも害を及ぼし、海運コストを上昇させ世界のサプライチェーンの安定を乱す」と述べ強く反発しました。

そのうえで「アメリカには多国間のルールを尊重し、ただちに誤った措置を停止するよう求める。中国は必要な措置をとり、正当な権利と利益を守っていく」と述べ、対抗措置をとる可能性を示唆しました。【4月19日 NHK】
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米中が互いに高率の関税をかけ合う中で出てきたもので、アメリカ側の中国への圧力(嫌がらせ?)の一つであることはわかるものの、“アメリカの造船業を復活”については「それは無理でしょう・・・今更・・・でも、どうして造船?」といった感じで、あまりピンときませんでした。

なお、もう少し詳しく言えば、この新たな手数料徴収は2月段階ではもっと厳しい措置が検討されていました。

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(2月)21日(現地時間)、米通商代表部(USTR)は中国海運会社に対する手数料賦課計画を発表した。来月24日には公聴会を開催する予定だ。

今回の措置には、中国の海運会社が米国の港に入る際、最大で手数料100万ドルを払わせるか、船舶トン当たり1000ドルを課す案が含まれている。また、中国の造船所で建造した船舶が米国の港に入港する際、最大で150万ドルを課し、海運会社の船団(複数の船舶を束ねる言葉)で中国製船舶が一定の割合を超える場合、差等的に少なくとも50万ドルから最大100万ドルの手数料を払わなければならない。中国の造船所に船舶を発注した海運会社が入港する際にも同様に手数料を課す。【2月25日 ハンギョレ】
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2月段階での計画に比べると、4月17日のUSTR発表は一部免除・緩和されたものになっています。

****トランプ米政権、中国製船舶に課す入港料を一部免除****
トランプ米政権は17日、中国で建造された船舶が米国内の港湾に入港する際に入港料を課す措置について、国内の輸出業者および五大湖、カリブ海、米領海を運航する船舶所有者を免除すると発表した。米通商代表部(USTR)が連邦政府官報に掲載した。

USTRは今年2月、米国の造船業を復活させるとともに海運業界における中国の支配力を低下させるため、中国製船舶が米国の港湾に入港する際に1回当たり最大150万ドルを課す措置を提案していた。提案を受け、世界の海運業界には衝撃が走った。

海運業界の幹部らはUSTRの提案について、実質的にほぼ全ての海運会社に多大な入港料が課されると懸念。追加のコストによって米国の輸出価格は割高になる一方、米国の消費者には多額のコストが転嫁されると主張した。

17日発表された修正措置では、入港料は1航海当たり1回のみ適用され、年間では最高6回まで適用される。

また海運業者の所有船舶に占める中国製船舶の比率や、中国製船舶の発注予定に基づいて入港料を課さないことも決めた。米国から石炭や穀物などを輸出するために、貨物を積載せずに米国の港湾に入港した船舶は入港料を免除される。(中略)

USTRの当初提案に対しては、米国内の港湾や海運会社、輸出入業者を含む世界の関連業界から反対意見が殺到。これを受けてUSTRは提案を修正した。【4月18日 ロイター】
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【造船業の衰退で米海軍艦艇にも影響 “部品の共食い整備”も】
いずれにしても、“アメリカの造船業を復活”はピンと来ない話でしたが、下記記事にある米造船業衰退がもたらしている米海軍への悪影響を考えると、米造船業復活は何とか対応しないといけない切実な問題でもあるようです。

****日米関税交渉、切り札は「日本の造船技術」か 米国が“造船大国”から転落の理由 海軍の艦艇にも影響が****
日米関税交渉で日本側の切り札の一つとされているのが、造船技術の提供だ。 トランプ政権は、アメリカの造船業に対して危機感をあらわにしている。

■世界一の造船大国が転落
かつて造船能力で世界一とも言われていたが…

3月、トランプ大統領は「商業や軍用の造船業を復活させる」と宣言。「ロイター通信」によると、トランプ大統領はアメリカの港湾に停泊するすべての中国製・中国籍の船舶に入港料を課すよう指示したという。

アメリカはかつて造船能力で世界一とも言われていたが、国連貿易開発会議によると、近年の船舶製造量は中国が大差でトップとなっている一方で、アメリカは低迷しているという。

CSIS(戦略国際問題研究所)は、アメリカ海軍の資料を基にアメリカの造船能力は中国の230分の1だと指摘した。

■米国の造船業が衰退した理由
保護されたアメリカの造船業は、徐々に競争力を失う
アメリカの造船業が衰退してしまった理由は何なのか? 要因の一つが、1920年に制定された「ジョーンズ法」という法律だ。

この法律は、アメリカの港湾の間を行き来する運送で使われる船舶は、アメリカ製であることを義務づけるもの。これによって、アメリカの造船業者は外国の業者との競争を免れ、安定的に受注できるようになった。

しかし外国との競争から保護されたアメリカの造船業は、徐々に競争力を失っていった。

さらに「ニューヨーク・タイムズ(1983年8月29日)」によると、1981年に就任したレーガン大統領が「非効率だ」として、アメリカの造船業への補助金を撤廃したという。

こうしたこともあって、韓国メディア「ハンギョレ」によると、現在アメリカ製のタンカーは国際価格のおよそ4倍、アメリカ製のコンテナ船はおよそ5倍のコストがかかるという。

補助金が撤廃された後、1983年〜2013年にアメリカではおよそ300の造船所が消滅し、大型商業船舶を建造できる造船所は4カ所のみとなっており、アメリカ造船業の空洞化が加速したという。

■造船業の衰退で艦艇にも影響
艦艇にも影響

造船業の衰退で、アメリカ海軍の艦艇にも影響しているという。
「ウォール・ストリート・ジャーナル」によると、アメリカには商船の造船業界がほとんどないため、艦艇は部品・原材料の供給網や労働力を共有できないという。

また、なかには第2次世界大戦前の老朽化した設備もあるほか、熟練工などが不足している問題などを抱えているという。

CSISによると、中国の軍艦のうちおよそ70%が2010年以降に進水した比較的新しい船なのに対して、アメリカ海軍の軍艦のうち2010年以降に進水したものはおよそ25%にとどまっているという。

さらに、こんな問題も指摘されている。 アメリカ会計検査院によると、艦艇などが故障して部品が足りない場合、別の艦艇などから部品を外して修理する、いわゆる“共食い整備”が増加しているという。

先月、こうした状況のなかアメリカ海軍のフェラン長官は、同盟国でもある造船数世界2位の韓国と造船数世界3位の日本を訪れ、造船での協力を求めたという。【5月5日 テレ朝news】
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世界に冠たる米海軍艦船が、“部品の共食い整備”・・・まるで制裁を受けて部品調達がままならないロシアやイランの航空機みたいな惨状で驚きの実態です。

確かに造船業が衰退すれば海軍艦船の建造もメンテンバンスもできない・・・。

****アメリカの造船業衰退の米海軍への影響は?****
アメリカの造船業の衰退は、米海軍(U.S. Navy)に対していくつかの深刻な影響を及ぼしています。以下に主な点を挙げます:

1. 艦艇建造・維持の遅延
納期の大幅な遅延:米造船業界は少数の大手造船所に依存しており、人的資源や熟練労働者の不足により艦艇の建造が予定より数年遅れるケースが多発。
メンテナンスのボトルネック:老朽艦艇のオーバーホールや整備も滞り、艦艇の稼働率が低下。

2. 艦艇の数的不足
米海軍は、中国海軍の急速な拡張(艦艇数で世界最大)に対抗するため、艦隊の規模維持・拡大を目指しているが、新造艦のペースが追いついていない。
その結果、目標とする艦艇数(例:355隻)に届かず、戦略的抑止力の低下を招く恐れがある。

3. コストの増加
労働力不足や生産性の低下により、艦艇1隻あたりの建造コストが増加。
予算超過が常態化し、他の重要な軍事プロジェクトに割く資金を圧迫。

4. 産業基盤の脆弱化
造船業界における下請け・部品供給のサプライチェーンも縮小傾向にあり、自給自足能力が脅かされている。
中国や韓国など外国企業に依存せざるを得ない部品もあり、安全保障上のリスクが存在。

5. 有事対応能力の低下
有事や戦争勃発時において、急速な艦艇増産が困難であり、持続的な戦力投射能力が制限される。
第二次世界大戦時のような「動員体制」が既に崩壊しており、戦時産業の即応性が著しく低下している。

結論
アメリカの造船業の衰退は、米海軍の即応力・戦力投射力・抑止力を総合的に低下させており、特に中国やロシアといった戦略的競争相手に対する優位性が揺らぎつつあります。この状況に対し、米政府・議会は近年、造船業への投資・労働者育成・設備近代化支援を強化し始めていますが、回復には長期的な戦略と実行力が不可欠です。【ChatGPT:】
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更に米海軍艦船における造船遅延・維持整備の問題事例を見ると・・・

****【具体例】造船遅延・維持整備の問題事例****
1. コロンビア級原子力潜水艦(Columbia-class SSBN)
米海軍の次世代戦略原潜であり、オハイオ級の後継。 全12隻建造予定で、1番艦「USS Columbia」は2031年までに就役予定。

しかし、建造開始からすでに遅延が生じており、大幅なスケジュール遅延が発生すれば、アメリカの核抑止戦力に重大な空白が生まれるリスクがある。

2. バージニア級原子力潜水艦(Virginia-class SSN)
攻撃型原潜の主力であるが、年間2隻の生産目標に対して、近年は1隻に満たない年も。
原因は、熟練溶接工・技術者不足、材料不足、造船所の整備遅れなど。

同盟国オーストラリアへの供与(AUKUS枠組み)もあり、米海軍の分も建造が追いつかないという状況に。

3. 空母「ジェラルド・R・フォード」(USS Gerald R. Ford, CVN-78)
最新鋭の空母だが、新技術の統合により度重なる技術トラブル(例:電磁式カタパルトの不具合、武器搬送装置の設計不備など)。

完成は予定より5年以上遅れ、費用も当初計画を大きく上回る(約130億ドル超)。

4.メンテナンスの遅延による艦艇の稼働率低下
米海軍の報告によると、空母・駆逐艦・原潜などの整備に予定以上の時間がかかるケースが常態化。
例:原子力空母「USS George Washington」は近代化改修に7年近くを要した(通常4年)。
結果として、実際に配備可能な艦艇の数が少なくなり、戦域における運用能力が制限される。【ChatGPT:】
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【造船大国・韓国にはチャンス ただ、直視すべき中国造船業の技術力 日本にも米海軍との連携の余地】
世界の造船業の現状を見ると、かつて日本も「造船大国」でしたが、今は完全に中国・韓国の時代です。
中国船籍や中国で建造された船舶がアメリカ国内の港に寄港する際、新たに手数料を徴収・・・とは言っても、衰退した米造船業ではいきなりの新たな造船は対応できないので、造船発注は中国でなければ韓国に・・・ということにもなります。

****韓国造船業にチャンス到来?米国が2037年までに最大448隻の船舶発注=韓国ネット「うれしい悲鳴が…」****
2025年5月19日、韓国・聯合ニュースなどは「米国政府が進めている造船産業再建事業は韓国造船業発展のチャンスであり、チャンス獲得への戦略づくりが求められる」と伝えた。

韓国経済人協会はこのほど、韓国海洋大学のリュ・ミンチョル教授に依頼しまとめた報告書を公表し、米韓造船産業の協力案を提示した。

トランプ政権の造船産業再建政策により、米国は37年までに商船、液化天然ガス(LNG)運搬船、軍艦など、403隻から最大448隻の船舶を発注すると見込まれる。

先ごろ提出された「米国の繁栄と安全のための造船・港湾インフラ法(SHIPS法)」は、「米国籍の戦略商船団を250隻に拡充」「47年までにLNG輸出貨物の15%を米国が建造した船舶で運搬」と規定している。米海軍は向こう30年間で364隻を新たに建造する計画。トランプ大統領は砕氷船40隻を発注する方針を明らかにしている。

報告書は、こうした船舶導入計画に合わせて、商船、LNG運搬船、海軍軍艦、次世代船舶など分野別の対策を講じる必要があると指摘している。

商船に関しては、米国の戦略商船団は大部分が中型船舶のため、韓国中型造船メーカーの受注拡大に向けた官民協力案作りを提言。

LNG運搬船の場合は、米国のLNG輸出増で全数を米国内で建造することは現実的に不可能と思われるが、中長期的に見て韓国メーカーの現地化を準備するべきだとしている。

海軍艦艇に関しては、戦闘用艦艇は先進武器システムと連携しているだけにメンテナンス・修理・オーバーホール(MRO)と新規建造を早期に韓国に任せる可能性は低いと分析。まずは船体の修理を中心に信頼を築いてから、徐々にプロジェクトを拡大すべきだとしている。

この他、米韓双方が利益を得られる方向の造船産業生態系を再建するためには、長期にわたる投資を通じたインフラの改善、生産性の向上、人材育成が伴う必要があるとも提言している。(後略)【5月20日 レコードチャイナ】
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冒頭で紹介したように、4月17日のUSTR発表は一部免除・緩和されたものになったことで、発注先の韓国へのシフトもやや鈍ったようです。

****中国の新造船受注、韓国を抜いて再び世界1位に―中国メディア****
中国誌・財経は20日、中国の新造船受注が韓国を抜いて世界1位に返り咲いたと報じた。

記事によると、4月の中国の新造船受注は54隻で、載貨重量トン数(DWT)ベースの世界シェアは57.8%に達した。2位と3位は韓国と日本で、韓国は41隻、38%、日本は2隻、3.8%だった。

記事は「返り咲き」という表現について、「中国が2024年まで15年連続で新造船受注で世界首位を維持していたためだ」「だが、25年の最初の4カ月は米国の政策の影響で2カ月韓国に抜かれた」と説明。

その上で、「米国の『301条調査』により最近の国際的な造船構造に変化が生じた。中国で建造された船舶を使うことで米国の港湾で高額な費用が発生する可能性を懸念した一部船主は注文先を中国から韓国に変更。

だが、4月が政策転換点となり、4月17日に発表された301条調査に基づく制限措置では高額な港湾費の徴収範囲が縮小され、中国建造の船舶を使用する国際海運会社やそれを発注する会社に対する制限が削除された。制限措置の緩和により、船主が再び中国の造船市場に戻ってきた」と伝えた。(後略)【5月21日 レコードチャイナ】
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結局、中国造船業の“技術力”が際立っているということでしょう。かつての安いだけの中国ではありません。

日本は商船では中国・韓国には太刀打ちできませんが、米海軍艦船については“同盟国”という立場で関与できるものがあるかも。特に、潜水艦建造技術などは日本は非常に優れているとも聞きますので。

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アメリカ  高関税による小売価格値上げを認めないトランプ大統領 値上げのウォルマートを批判

2025-05-18 22:06:38 | アメリカ

(【4月21日 Ipsos】関税により今後6か月間で値上がりすると考えている米国民の割合)

【トランプ関税の現在の影響 長期的には“「米国黄金時代の到来」は夢のまた夢!”】
トランプ関税は必然的にアメリカ国内の物価を押し上げますが、4月の統計数値ではまだその影響は出ていないようです。

****【速報】アメリカ4月の消費者物価指数は前年同月比2.3%上昇 伸び率3カ月連続で縮小****
アメリカの4月の消費者物価指数は前の年の同じ月に比べて2.3%上昇し、市場予想を下回りました。

アメリカ労働省が今月13日に発表した4月の消費者物価指数は前の年の同じ月に比べて2.3%上昇し、市場予想を下回りました。 伸び率は3カ月連続で縮小しています。

ガソリン価格の下落が大きな要因です。
また、トランプ政権が進める関税措置の強化が物価に反映するには、一定の時間がかかるものとみられます。

一方、物価の変動が大きい食品とエネルギーを除いた指数は2.8%の上昇と、市場予想と同じでした。【5月13日 テレ朝news】
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一方で、トランプ大統領が目論む企業の国内回帰を促し、米国内での新投資や利益増加といった国内製造業への良い反響が起きているとか。

****米企業の「国内回帰」加速 アップル、IBM…トランプ関税が生む新投資や利益増加****
米国のドナルド・トランプ大統領の対外関税引き上げには国際的にも国内的にも批判が広範である。だが同大統領が関税政策の理由としてあげた米国内の製造業の拡大には大きな反響が起きてきた。大手、中小の両方の企業が米国内での新投資や利益増加を報告し始めたのだ。

トランプ政権の政策には一般に批判的な大手テレビ局のCBSが4月30日、「これらの企業が関税が発効するにつれ、米国内の製造活動への投資を増す」というタイトルの長い報道を流した。同報道はなおトランプ関税の負の部分に光を当てながらも、米国の大手企業が次々に国内生産拡大のための投資計画を発表したことを伝えていた。

そのほとんどがこれまでの海外事業を縮小する形で米国内に新工場を造るというケースだった。その実例は以下のようだった。

▽ハイテク大手のアップルは米国に本社をおきながら製造活動はほとんど外国だったが、今後4年間に5千億ドルを投資して、米国内の工場を新稼働することを発表した
▽コンピューターと、人工知能(AI)をいまや主要分野とするIBMも今後5年間に新たに1500億ドルを投資して米国内での製造や研究開発の活動を始めると発表した。

▽半導体メーカー大手のエヌビディアもこれまでほとんどの活動が海外だったのを改め、米国内に新工場を建てることを発表した。(中略)

以上のような主要企業の米国回帰はトランプ政権の新関税政策により、海外製品の採算がこれまでと異なってくることへの懸念がある。それに加え、政治的にもトランプ政権が議会の支持を得て製造業の再強化を国家安全保障とからめて推進する施策に同調した結果だといえる。

同様の大手企業の米国内への新投資はFOXテレビやウォールストリート・ジャーナルなど他の大手メディアによっても詳しく報道された。この種の報道は米国内での製造業拡大の兆しとして、台湾の台湾積体電路製造(TSMC)、韓国の現代自動車、日本のトヨタ、ホンダなどの外国企業の米国内への直接投資の増加も伝えていた。(後略)【5月16日 産経】
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もちろん、問題は物価が上昇する、国内労働力に限界があり賃金が高い、サプライチェーンはアメリカと諸外国との間の複雑に入り組んでいるといった状況で、長期的に見て米製造業の復活が可能なのかどうかは、また別の問題でしょう。

さらに言えば全米労働総人口に占める製造業シェアも、わずか8.5%に落ち込んでおり、米製造業にかつてのような活気を取り戻そうという思いは、かなりノスタルジックなものにもなっています。

****トランプが掲げる「米国製造業の復活」に立ちはだかる3つの壁、「米国黄金時代の到来」は夢のまた夢!****
(中略)
マッキンリーは「開かれた貿易」に転換
ハイテク技術分野のシンクタンクと知られる「Information Technology & Innovation Foundation=ITIF」は昨年8月公表の研究レポートの中で、国勢調査局データで明らかになった製造業の衰退ぶりを踏まえ、次のように結論付けている:

「かつて製造業の世界リーダーだった米国は、2010年にそのタイトルを中国に明け渡し、今日、営業規模で中国に2兆4000億ドルもの差をつけられている……(共和党保守派を中心とした)ワシントンの経済専門家たちは、製造業の実態について、イデオロギーではなく、客観的な不動のデータに基づいて議論すべきである。従来型の製造業の衰退は現実であり、それを否定するのではなく、政策決定者は、グローバル・パワーとして不可欠なITなど先端技術産業の成長戦略に取り組むべきである」 

さらに、大局的見地から言えば、前世紀以来の米国経済の繁栄は、トランプ関税に象徴される保護主義ではなく、むしろ米国自らが主役を果たしてきた世界自由貿易体制の堅持によってもたらされてきた。

この点、トランプ氏がモデルとする19世紀末のマッキンリー大統領でさえも、就任当初こそ関税政策を打ち出したが、対外市場を度外視した経済運営の限界に直面。その後は各国との「開かれた貿易政策」に転換し、米国の繁栄に寄与したことは記憶に留めておくべきだ。

それでもなお、トランプ政権が今後も、製造業復活目的で関税の大ナタを振り回し、自由貿易体制をないがしろにし続けるならば、大統領就任演説で国民に約束した「米国黄金時代の到来」はおろか、逆に経済低迷を招くことになりかねない。【5月13日 WEDGE】
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【関税による値上げを認めないトランプ大統領 一般に価格統制は経済混乱をもたらす】
物価については、すでに影響があらわれている分野も。

****関税引き上げ、米住宅建設業を直撃 1戸当たりコスト1万ドル超増****
米カリフォルニア州ロサンゼルスの建設会社、ドゥイドゥイ・コンストラクションを経営するデビッド・トゥルオン氏は「ここ数か月、ほとんど全ての建築資材の価格が上がっている」とやるせなさをにじませる。(中略)

同社は最低限の利益を確保するため、住宅建設契約の見積もり価格を1平方フィート(約0.09平方メートル)当たり30〜60ドル引き上げることを余儀なくされた。建設に必要な電線やPVC(ポリ塩化ビニール)パイプ、キャビネットなどの建材が軒並み値上がりする中、建設業者からは、米国による外国製品への追加関税が早く終わり、業界の経営状況が安定を取り戻すことを求める声が上がっている。

米国最大級の業界団体の一つである全米住宅建設業協会(NAHB)が発表した4月のデータでは、建設業者の6割が「関税引き上げを理由に仕入先から原材料の値上げを通告された」と回答している。新築住宅の建設コストは1戸平均で1万900ドル高まったという。

同協会のチーフエコノミストであるロバート・ディーツ氏は、政策の不確実性が住宅建設業者に悪影響を及ぼし、正確な見積もりや重要なビジネス判断が困難になっているとの見方を示した。

米建設請負業者協会(ABC)のチーフエコノミスト、アニルバン・バス氏も、関税の影響が浮き彫りになっていると指摘する。

住宅建設コストの指標となる建築資材の価格は1〜3月に上昇を続け、年率換算で9.7%急騰。3月には鉄鋼や鉄鋼製品、銅線・ケーブルの価格がいずれも5%を超える上昇となったという。「今後も価格上昇が続けば、不確実性の高まりと相まって、工事の遅延や中止といった事態が起きる可能性もある」と警鐘を鳴らした。【5月18日 新華社】
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物価上昇は家計への負担となりますが、「トランプ関税で年約50万円負担増」という報告も。ただし、これは米中の相互追加関税が115%引き下げられる以前の推計です。

****米中流世帯、トランプ関税で年約50万円負担増 研究機関が分析****
米イエール大学バジェット・ラボは10日、トランプ政権による一連の関税措置で、米国の典型的な中流階級の世帯の負担は年3443ドル(約50万円)増えるとの調査結果を発表した。

前日にトランプ大統領は相互関税の一部の適用を90日間停止すると発表したが、発動されたその他の関税だけでも米国の世帯にとって大きな打撃となる可能性が高い。

バジェット・ラボの推計には相互関税の90日間の停止と、対中関税145%が織り込まれている。

平均的な世帯への関税の影響はさらに大きく、年4400ドル(約63万円)の負担になる。中国やその他の国の製品の代替が進んだとしても、平均的な消費者の負担は2600ドル(約37万円)にのぼるとみている。

低所得者では総収入における関税負担の割合が大きくなるため、影響はさらに大きい。

エコノミストらは貿易戦争で米経済は大幅に減速する可能性が高いと警告している。
バジェット・ラボの分析によると、米国が輸入品に課す関税と、他国が米国の製品に課す報復関税により、米国の国内総生産(GDP)成長率は1%落ち込む。また、失業率は0.5ポイント上昇し、年末までに68万5000人の雇用が失われるという。(後略)【4月11日 CNN】
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小売り大手ウォルマートのCFOは関税のための値上げの必要性を消費者に警告しています。

****ウォルマートのCFOが、数週間のうちにすべての買い物客に影響を与える「懸念すべき」大きな変更について発言****
ウォルマートの元最高責任者は、今後の変化を批判した。

ウォルマートの顧客は、今後数週間で大きな変化に備えるよう求められており、最高経営責任者(CEO)は「懸念している」と認めている。 ジョン・デビッド・レイニー最高財務責任者(CFO)は、木曜日の決算発表を受けて、すべての顧客が影響を受けると警告した。

消費者保護に最大限の努力を払っているにもかかわらず、レイニー氏はCNBCのインタビューで、この問題は小売業者単独では対処しきれないほど深刻化していることを認めた。

これは、ドナルド・トランプ大統領による関税戦争が、すでに苦境に立たされている業界に甚大な打撃を与えた後のことだ。

米中間で90日間115%の関税削減という画期的な合意が月曜日に署名された後も、税金は「依然として高すぎる」とレイニー氏は述べた。

「私たちは日常的に低価格を享受することに慣れていますが、今回の値上げ幅はどの小売業者にとっても負担が大きすぎるのです」と、同氏はCNBCに語った。「これはどのサプライヤーも吸収できる範囲を超えています。そのため、消費者が価格上昇を目の当たりにし始めるのではないかと懸念しています。」

「おそらく今月末にはその兆候が現れ始め、6月には間違いなくさらに顕著になるでしょう」と彼は付け加えた。

ベンダーと協力して顧客の価格を低く抑えていますが、「価格上昇のスピードと規模は、前例のない状況です。」(後略)【5月17日 THE US SUN  自動翻訳】
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これに怒ったトランプ大統領、「値上げを関税のせいにすべきでない」

****トランプ大統領 ウォルマートを批判「値上げを関税のせいにすべきでない」****
アメリカのトランプ大統領は関税を理由に値上げの方針を示した小売り大手のウォルマートに対し、「値上げを関税のせいにすべきではない」と批判しました。

トランプ大統領は17日、「ウォルマートは値上げを関税のせいにしようとするのをやめるべきだ」とSNSに投稿しました。

小売り大手のウォルマートは中国から雑貨や衣類など多くの商品を輸入していて、関税の影響を受けた商品が店頭に並ぶ5月下旬から値上げする方針を示していました。

トランプ大統領は「ウォルマートは去年、予想を上回る数十億ドルを稼いだ」とし、中国とウォルマートの間で関税の影響を消化すべきだと主張。「大切な顧客には何も転嫁すべきではない。私も顧客も見ているぞ!」と書き込んでいます。【5月18日 TBS NEWS DIG】
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しかし、コスト上昇による値上げを認めない価格統制的な経済政策は経済に悪影響をもたらします。

****《恐ろしいのは強制的な物価統制》トランプ大統領の「高関税政策」が世界経済にもたらす“落とし穴”とは?****
トランプ政権の高関税政策はなぜ生まれたのか。そして、日本はどのように対応をしていくべきなのか―ー。経済学者・小林慶一郎氏の寄稿「 日本は米国に何を提案すべきか 」(文藝春秋6月号)の冒頭を紹介します。
◆◆◆
トランプ政権はなぜ「高関税政策」を導入したのか
アメリカのトランプ政権の攻撃的な高関税政策には世界中が驚愕した。あきらかに自由貿易体制を傷つけるこのような政策をとる目的は、製造業に従事する米国の低中所得の白人中間層(いわゆる「忘れられた人々」)に仕事を取り戻し、彼らの生活を再興することだろう。

中間層の再興は、常識的に考えれば、国内の富裕層からカネを取って低中所得層に分配する再分配政策(社会保障政策)で対応するべき内政問題である。

ところが、国内の分断を激化させたくないトランプ政権は富裕層から低中所得層にカネを分配する所得再分配政策はやりたくない。富裕層の反発は必至で、国内の政治的な分断を激しくするからだ。そもそも自主独立を重んじるアメリカの世論は再分配政策は好まない。

トランプ政権は、国内を団結させ、かつ、中間層も再興する一石二鳥の策として高関税政策を選択したのだ。外国が米国を搾取しているという世界観で、国内で分断した富裕層と低中所得層の団結を図り、関税引き下げ交渉で外国から経済資源を奪い取れば国内の低中所得層の仕事が増えるという一石二鳥である。

外国から経済資源を奪取するとは、たとえば、外国がアメリカの製品に掛けている関税を引き下げさせてアメリカからの輸出をしやすくすることである。日本のコメがその一例だ。

また、外国の企業が高関税を払うのを嫌気してアメリカ国内に工場や事業の拠点を立地すれば米国内に雇用が生まれ、低中所得層が潤うことになる。

さらに、外国通貨の為替レートを切り上げさせて、ドル安に誘導することも米国の製造業の利得になる。ドルが安くなればアメリカから外国への輸出がしやすくなるので、米国内の労働者の仕事が増えるからだ。

この理屈では、関税の第一の意味は交渉のカードだと言える。海外から投資や雇用などを呼び込むために、極端に高い関税を掲げて外国に譲歩を迫り、多くの経済資源を外国から奪取すれば米国経済は損しないという算段なのだろう。

そのために世界経済が全体としてどれほど縮小しても構わないと考えているとすれば、トランプ政権はアメリカ・ファーストの観点からは合理的といえるかもしれない。

しかし、外国から十分な譲歩を引き出せるか分からないし、関税の影響で米国の中間層の生活が最初に痛めつけられることになるはずなので、決して目論見通りに「外国から貢物を出させて米国が肥える」とはならない可能性が高いだろう。

恐ろしいのは、物価統制
高関税政策の発表直後から金融市場は大きく動揺し、米国債の急落によって、相互関税の実施は90日間の停止に追い込まれた。もし90日間の猶予期間に関税交渉が不調だった場合には、高率の相互関税が実際に課されることになる(どうなるか予断を許さないが)。

そうなると、外国からの輸入品について関税を支払うのはまずアメリカの輸入業者だから、アメリカ国内での販売価格が上昇する。つまりアメリカの消費者から見れば関税は、外国製品に課される消費税のようなものなので、その分、アメリカの景気は悪化する。不景気になって失業が増えれば、まっさきに解雇され生活困難に陥るのは、トランプ支持者である「忘れられた人々」なのである。

経済悪化に反応してトランプ政権が高関税政策を止めるという方針転換をすればベストシナリオだが、そうならないかもしれない。恐ろしいのは、関税によって米国内の物価が上昇するのを強制的に抑えようとして、物価統制のような計画経済的手法に手を染めることである。

いまのところそのようなことは考えにくいが、ラストベルトの「忘れられた人々」の生活をよくするためには市場経済の原則を踏み越えることに躊躇しないトランプ大統領は何をするか分からない。関税を理由に値上げをしないようトランプ大統領が大手自動車メーカーに警告したという報道もある。

この先、相互関税によって海外からの輸入が減って物価が上昇しても、関税を撤廃することはメンツがつぶれるのでできないだろう。物価上昇を抑えるためにFRB(連邦準備制度理事会)が金利を上げようとしたら、トランプ政権は反対するだろう。金利が上がれば借金をしにくくなるので、打撃を受けるのは消費者ローンなどに依存する「忘れられた人々」の生活だからだ。

そうすると、関税政策によって悪化する国民生活を取り繕う方法としては、強制的な物価統制しか選択肢はなくなるかもしれない。もし物価統制が広範に始まれば、いよいよ自由経済の危機である。
(小林 慶一郎/文藝春秋 2025年6月号)【5月18日 文春オンライン】
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ベネズエラが2010年代後半に経験したハイパーインフレーションと経済崩壊の主因のひとつは、マドゥロ政権による過度な価格統制政策とされています。

マドゥロ政権は「庶民を守る」名目で強制的な価格上限を設定しました。これにより、製造・流通業者がコスト割れでの販売を強いられたため、生産停止や市場からの撤退が相次ぎました。

店頭から商品が消え、国民は長蛇の列に並ぶか、闇市(ブラックマーケット)で高額な価格で商品を買わざるを得なくなりました。
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アメリカ  トランプ政権の異論を許さない体質 その先にあるものは・・・・

2025-05-14 23:34:06 | アメリカ
(移民関税執行局(ICE)運営の移民収容施設を7日に訪れた際の、ラス・バラカ・ニューアーク市長【5月14日 JBpress】 市長はこのあと不法侵入で拘束される)

【憲法を守るべきか「分からない」】
トランプ大統領の話をしだすときりがないほど連日報道が溢れています。政策的には、好ましく思えるものもあれば(?)そうでないものも。うまくいっているものもあれば、そうでないものも。

いずれにしても、関税や世界経済、米中対立、ウクライナ、パレスチナ・・・多くの重要課題にトランプ大統領やアメリカが重要な存在として関与しているのは間違いないのですが、そのトランプ大統領およびトランプ政権下のアメリカが民主主義的価値観からずれて、次第に異質なものになりつつあるのでは(今までもアメリカ内部に存在していた側面ではあるものの、リベラリズムとか民主主義の理念といったものの影に隠れていたものが表に出てきたと言うべきか)・・・という懸念が拭えません。

そのあたりは4月20日ブログ“アメリカ  大統領の意に沿わないものを排除し、批判を許さないトランプ政権の強権的体質”でも、連邦政府職員について大統領の指示に反する行為などを理由に迅速に解雇できるようにする、大統領の意に沿わないハーバード大学や大手メディアへの圧力、司法判断の軽視などをとりあげましたが、今回もその続きみたいな話。

****トランプ氏、憲法守るべきか「分からない」 共和党内からも疑問の声****
ドナルド・トランプ米大統領は4日に放送されたインタビューで、米国の基本法である合衆国憲法を順守しなければならないかどうか分からないと述べた。

トランプ氏は1月にホワイトハウスに復帰して以来、憲法に抵触する言動を繰り返し、広範な批判を浴びている。特に、不法移民を大量に強制送還する政策では、裁判を受けることなく追放される事例も出ている。

トランプ氏は、自らが「国家緊急事態」と宣言した状況においてはそうした迅速な追放は必要であり、すべての移民に裁判を行うには「300年かかる」と主張している。

NBCの番組「Meet the Press」で司会のクリステン・ウェルカー氏が、米国民であれ外国人であれ、米国にいる人は憲法に記載されている法の適正手続きを受ける権利があるかを尋ねた際、トランプ氏は「私は弁護士ではない。分からない」と答えた。

さらに、より一般的な質問として、憲法を守る必要があると考えているかを問われると、「分からない」と繰り返した。

2日に収録されたインタビューは、放送後に政界でたちまち波紋を呼んだ。共和党内からも疑問の声が出ており、憲法保守派を自任するランド・ポール上院議員はX(旧ツイッター)に「わが国は憲法の下で統治される自由社会か、そうでないかのどちらかだ」と投稿した。【5月5日 AFP】
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日本で首相が憲法を守るべきか「分からない」と発言すれば即退場ですが、そうならないのがアメリカの興味深いところ・・・と言うか、アメリカでもトランプ大統領以外なら大問題になるのでしょうが、なぜかトランプ大統領については「まあ、トランプだから」で許されてしまう不思議さ。

【「『どうもありがとう』と言って素直に受け取ればいい」】
****トランプ氏の航空機譲り受け、与党議員からも懸念の声相次ぐ****
トランプ米大統領がカタール王室から高額(約600億円とも)の航空機を無償で譲り受ける計画を巡り、野党民主党だけでなく与党共和党議員からも懸念の声が相次いでいる。

トランプ氏は12日、カタールからの申し出を拒否するのは「馬鹿げている」と批判を一蹴。航空機は必要な改修後、大統領専用機として使用される見通し。

しかしジョン・スーン上院院内総務は記者団に「精査すべきことが数多く出てくる。この件には非常にたくさんの問題があり、非常に深刻な疑問を招くと思う」と警告した。

カタールの外交政策を長年非難してきたテッド・クルーズ上院議員はCNBCに対してこうした取引に不安を持っていると答えた上で「(カタールから提供される)航空機はスパイや監視活動の面から相当な問題を引き起こすので、今後の展開を見定めたい」と付け加えた。

ランド・ポール上院議員は、トランプ氏が航空機を受け取るのは間違いだと断言。FOXニュースの番組で「わざわざ不適切に見える行動をする価値はないと思う」と語り、自分ならば受け取らないと強調した。

民主党のチャック・シューマー上院院内総務は、トランプ氏に民間ジェット機が提供されることがなぜ、議会の承認を経ず外国政府から政府高官が贈呈品を受け取るのを禁じた憲法の規定に違反しないのか、司法長官が議会できっちり説明するべきだと主張。カタールの申し出について司法省が把握する情報を議会に報告するまでは、トランプ氏が指名した同省高官の人事承認を阻止すると表明した。【5月14日 ロイター】
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トランプ大統領は「『どうもありがとう』と言って素直に受け取ればいい」という考えですが、利益供与といった発想はないようです。 感覚としては貢物を受ける王様の発想でしょうか。日本なら「ごっつぁん体質」

シリアのシャラア暫定大統領は、トランプ大統領の訪問先のサウジアラビア・リヤドでトランプ米大統領と会談しましたが、面会を実現するためシリアの首都ダマスカスでの「トランプタワー」建設を申し出る方針とも報じられていました。【5月12日 ロイターより】

【「トランプのことは好きではない。それでどうするつもりなのか。」】
****米空港で人気インフルエンサー拘束 「トランプ氏について」考え聞かれる****
米国の左派系政治評論家でインフルエンサーの男性が12日、前日にシカゴ・オヘア国際空港で当局者に2時間以上拘束され、自身の政治姿勢について尋問されたと明らかにした。

ニュージャージー州生まれのトルコ系米国人ハッサン・パイカー氏は、ユーチューブ、X(旧ツイッター)などで数百万人のフォロワーを抱え、イスラエル批判を公然と行ってきた。

米国民や合法的な居住者が進歩主義的な意見を表明しただけで連邦職員から懲罰的な措置を取られたとする主張をめぐり、ドナルド・トランプ政権に対する批判が強まる中、パイカー氏は自身のユーチューブアカウントへの動画で率直に発言。

空港での職員とのやり取りはおおむね友好的だったと振り返りながら、職員の一人に、米国がテロ組織に指定しているイスラム組織ハマスやレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラと接触したことがあるか、さらにトランプ大統領についての考えを聞かせてほしいと言われたとしている。

パイカー氏は、「そこで初めて『これはどういう質問か』と答えた」と説明。「『なぜそんな質問を。どういう関係があるのか』とストレートに答えた」とし、「トランプのことは好きではない。それでどうするつもりなのか。これ(言論の自由)は合衆国憲法修正第1条で保障されている」と伝えたという。

過去にバーニー・サンダース上院議員らを自身のプラットフォームに招いたことのあるパイカー氏は、自分のオンラインコンテンツは一度も法律に違反したことはなく、言論内容も憲法で保障されている範囲を逸脱していないと主張。

「彼らがあんなことをするのは、私のような人や、少なくとも私と同じような立場で、同じように安全が守られていない人々の口を恐怖によってふさごうとするためだと思う」と付け加えている。

国土安全保障省の職員は12日、米メディアに対し、パイカー氏が2次保安検査の対象となったのは政治信条のためだとの見方を否定。「この人物が入国時に追加保安検査に回されたのは、よくある、合法的な手続きであり、旅行客は誰でも対象になり得る。検査完了後、速やかに解放された」と説明した。

人権団体「ディフェンディング・ライツ・アンド・ディセント」は、「このような権力の乱用は言論の自由をおとしめる行為だ」と非難している。 【5月13日 AFP】
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憲法が保障していようがいまいが、大統領を批判するものは許さない・・・という発想でしょうか。でも、それって一体どこの国の話? 中国? ロシア?

【事実上トランプ氏の「私的な政治警察」の機能を果たしていた移民取締り組織】
上記のパイカー氏は人気インフルエンサーですから、対応もそれなりだったかもしれませんが、移民となるとむき出しの暴力的対応も。

****“ゲシュタポ化”する米移民当局、トランプ政権下でやりたい放題…移民をいきなり拘束し収容、「まるでナチス」****
5月9日、ルイジアナ州の刑務所に収監されていたトルコ人留学生(30)が釈放された。米東部マサチューセッツ州の路上で3月下旬、突然覆面をした複数の私服捜査官に拘束され、収監されていたが、担当した連邦地裁判事が釈放を命じた。

6週間以上にもわたり収監されていたこの女性の名はルメイサ・オズトゥルクさん。オズトゥルクさんが拘束された瞬間は、監視カメラの映像に記録されていた。夕方とはいえまだ明るい中、携帯を手に歩いていたオズトゥルクさんがいきなり6人もの捜査官に取り囲まれ、携帯やリュックサックを取り上げられて後ろ手に手錠をかけられる様子が確認できる。

女性の、しかも無抵抗だったオズトゥルクさんが恐怖で叫び声を上げる姿は、あまりに衝撃的だ。
動画の音声からは、周辺でこの場面を録画していたと見られる市民が「これは誘拐なのか」と問う声が聞こえる。

捜査官が「警察だ」と答えると、録画していた男性は更に「(警察には)見えないぞ。なぜ顔を隠しているのだ」と追及するが、覆面捜査官らはそれには応えることなくオズトゥルクさんを連れ去っている。

この男性が怪訝に思った通り、捜査官らは警察ではない。米自由人権協会(ACLU)の声明によれば、オズトゥルクさんを拘束したのは国土安全保障省(DHS)が管轄する移民・関税執行局(ICE)の捜査官だ。移民当局が堂々と身分を偽って市民を連れ去る様は、まさにかどわかし(誘拐)のようだ。

拘束時オズトゥルクさん本人にさえ知らされてはいなかったが、実は彼女の学生ビザはこの3日前すでに取り消されていた。ルビオ国務長官は数日後、オズトゥルクさんのビザ取り消しを認めた。

政権側は、ガザ地区へのイスラエルの攻撃に批判的な彼女の姿勢が問題だと主張している。ルビオ氏はさらに、昨年全米各地で起きた破壊行動を含む抗議活動に参加するような学生や、ハマスなどのテロ組織を支援する者へのビザを取り消すとも発言した。

ところが、オズトゥルクさんは政権側が示唆するような破壊活動に参加しておらず、ハマスの支援もしていなかった。問題とされたのは、昨年3月に彼女が他の3人と共に共同執筆した大学新聞での寄稿だ。この中で、オズトゥルクさんらはパレスチナで続く虐殺行為に抗議するため、大学側にイスラエル関連企業への投資をやめるよう求めていた。

政権側はこの寄稿以外に、オズトゥルクさんが暴力行為に関与し、またそれを扇動したという証拠を提示していない。そもそもこの寄稿が暴力の煽動行為であるとは全く読み取れない。

オズトゥルクさんの釈放を命じた担当判事は、(例え外国人居住者であっても)米国憲法修正第1条に基づく言論の自由と適正手続きの権利が侵害されたというオズトゥルクさん側の主張に同意している。

移民当局によるオズトゥルクさん拘束について、マサチューセッツ州下院議員のセス・モールトン氏(民主党)は4月7日「まるでゲシュタポの所業のようだ」と発言した。

「まるでゲシュタポ」、その横暴とは
ゲシュタポとはもちろんナチスドイツにおける秘密警察のことである。ヒトラー政権下において大量虐殺につながったユダヤ人狩りや、政敵の逮捕や拷問など、極めて残忍な組織であったことで知られている。
もちろんICEは現状、拘束した移民を大量虐殺しているわけではなく、この比喩が適切かは議論の余地がある。

しかしモールトン議員は、後日ゲシュタポとICEなどの移民当局を比較した意図について、オズトゥルクさんの逮捕劇がイランや北朝鮮、中国共産党によるものに見紛うと地元ラジオに説明している。また第1次トランプ政権との違いは、現政権で大統領の側近には盲目的な信奉者しかおらず、誰もトランプ氏の権威主義的な支配を止める者がいないとその危険性を強調した。

モールトン議員の警告には、一理あるようにも思われる。現政権発足以来、職務の範囲に照らして度を越したICEの行動が連日のように各地で報道されているからだ。

4月14日、ICEはマサチューセッツ州で、車で走行中のグアテマラ人夫妻をつけまわして停止させた。ICE職員が車外から夫を別人の名前で呼び続けたため、人違いだと感じた男性は弁護士に連絡。弁護士から、自身が現場に着くまで車外に出ず何の情報も与えてはいけないと伝えられ、その通りにした。するとICE職員は、ハンマーで窓ガラスを叩き割るという暴挙に出た。

報道によれば夫妻はグアテマラを逃れてきた移民で、妻と9歳の息子はすでに亡命が認められていたが、夫の滞在資格はこれから変更予定だったとされる。犯罪歴はない。その後DHSは起訴状を提出することもなく、移民裁判所は訴訟を却下した。それにもかかわらず、夫は9日現在も拘束中とされている。

4月29日には、米南中部のオクラホマ州で早朝、ICEやFBI(米連邦捜査局)を名乗る20人余りの武装した男らが民家に突入した。地元メディアによると、男たちは寝ていた3人の女性を外に立たせて家の中を捜索し、携帯やノートパソコン、すべての現金などを「証拠」として押収した。女性らは名刺すら渡されず、どのように押収されたものを取り返せば良いのかなどの説明も受けなかったという。このうち未成年の女性は、雨の中で下着姿のまま立たされたとされる。

引っ越してきたばかりの母親の女性は、自身は米国民であり犯罪者ではないと繰り返し訴えたが当局から乱暴な扱いを受けたと主張。DHSは後日、ICEが人身売買に絡む捜査をしていたが、居住者が最近変わったため対象が間違っていたことを認めた。

明らかに凶悪犯ではない市民に対してこうした荒っぽい捜査をするICEとは、そもそもどのような組織か。

閉鎖中の刑務所を収容施設として再開
先述の通りICEはDHSに属する。DHSは2002年、前年の同時多発テロを未然に防ぐことができなかった教訓から当時のブッシュ(息子)政権によって設立された。(中略)

しかし2018年のCNN報道によると、移民活動家らの間ではICEが当時までの共和・民主両政権下において移民コミュニティを恐怖に陥れる「ならず者機関」とみなされるようになったとされている。

CNNはさらに、当時の第1次トランプ政権下において、ICEは事実上トランプ氏の「私的な政治警察」の機能を果たしていたと指摘している。国境の壁の建設や強硬な移民政策への支持を高めるため、危機感を煽る手段になっているという民主党下院議員の話も取り上げた。

民主党のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス議員は議員に選出される以前から、ICEを「ブッシュ政権の愛国者法の産物」「準軍事的な性質を日々強める執行機関」などと批判し、廃止を求めてきた。(中略)

オカシオ=コルテス議員はICEの移民収容所を「強制収容所」と呼び、劣悪な環境を批判している。釈放された留学生のオズトゥルクさんは、自身は喘息持ちで拘束中に何度も発作を起こしたが、十分な医療ケアを得られず、不衛生な環境で症状が悪化したとも証言している。

また、収容所は定員オーバーで過密度が高かったことや、イスラム教徒の女性が被るヒジャブを看護師から強引に引き剥がされたとも話した。

移民収容所では複数の死者も出ており、人権団体はその多くが防ぐことのできた死であったと報告している。

おまけに、英ガーディアン紙によればトランプ政権は現在、劣悪な環境であることを理由に閉鎖された複数の刑務所を、膨大な量の移民を収容するため再開しつつあるという。この中には職員による組織的な性的虐待や、アスベスト汚染、頻繁な刺傷事件や自殺などが報告された刑務所も含まれる。

市長すら突然拘束される異常さ
オズトゥルクさんが釈放された同日、ニュージャージー州のニューアーク市長が収容施設でICEに拘束される事件が発生した。この施設は今年2月にICEの移民収容目的で再開された刑務所で、トランプ政権が10億ドルの契約を結んだ民間企業が運営している。

米ワシントン・ポスト紙によれば、ニュージャージー州ではICEとの拘留契約の締結を禁止する法律があるが、これは一昨年連邦地裁によって一部無効とされており、州司法長官が控訴している状況だという。その上、建物が老朽化していたり、その周辺が環境汚染されていたりするにもかかわらず適切な修復が行われていないと指摘されている。

ニューアークのバラカ市長は施設が危険な上に違法であるとして、再開に反対を表明してきた。視察のためにこの施設を訪れていたところ、ICEの捜査官からいきなり拘束された。政権側はバラカ氏が不法侵入したとしている。
 映像を確認する限り、バラカ氏は入場を拒否されると素直に引き返してゲート外に出ているが、ICEはゲートの外でバラカ氏を拘束している。(中略)

米ボストン・グローブ紙は先月、トランプ政権が国土安全保障省公民権・自由人権局や移民拘留オンブズマン事務所など、様々な監督機関を解体したために、ICEの捜査官による疑わしい行為や違法行為に対処する手段はほとんどないという専門家の話を伝えている。

このため、現場の捜査官には、政権の意向に沿った大量移民送還政策を実行するためならどんな行動をしてもいいという考えが浸透していると警鐘を鳴らしている。

米国に不法入国し、凶悪犯罪を起こす移民を厳格に取り締まるのは当前のことだ。しかし、米国はこれまで合法的に亡命申請者を受け入れてきた。それにもかかわらずトランプ氏の大統領令により、当初相応な理由で米国への入国を許可されていた移民が、拘留されたり国外追放される危険が高まったりしている。(中略)

ナチスドイツでも当初は憲法により、警察の恣意的な行動が制限されていた。しかしヒトラー政権はこれを覆し、恐怖政治を実現させるゲシュタポを作った。

先日、トランプ大統領はメディアとのインタビューで合衆国憲法を遵守する必要はないのかと問われ「分かりません」と答えている。大統領就任式では合衆国憲法を守ると宣誓したはずだが、よく分からないらしい。

米国民は、ICEがゲシュタポと化すのを何としても阻止しなければならないだろう。【5月14日 楠佳那子氏 JBpress】
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憲法を守るべきか「分からない」という大統領、その大統領の「私的な政治警察」の機能を果たしていたと指摘される暴力的な取締りを行う組織・・・・一体どこの国の話か・・・アメリカの話

アメリカで怖いのは、大統領を支持する州の重武装州兵が存在し、溢れかえる銃を手にした民兵組織はすぐにでも組織できるところです。

もちろん州兵動員や戒厳令には法的規制はかかっていますが、憲法を守るべきか「分からない」ということであれば、何でもアリでしょう。

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南アからの白人“難民”を歓迎するトランプ政権 米の未来が重なり不安に駆られるトランプ大統領

2025-05-12 23:32:00 | アメリカ

(南アフリカのプレトリアの米大使館前で、ドナルド・トランプ米大統領とイーロン・マスク氏を支持する集会を開く白人(2025年2月15日撮影)【5月10日 AFP】)

【南アからの白人“難民”、早ければ今週にもアメリカに第1陣 トランプ政権は歓迎イベント】
南アフリカがアパルトヘイト時代の負の遺産である土地所有の不均衡の是正でもある土地収用法を成立させたことで、アメリカ・トランプ政権が白人の農地を奪う白人差別だとして強硬に反発していることは、これまでも取り上げてきました。

****土地収用新法をめぐる南アフリカと米トランプ政権の対立*****
(中略)アフリカは多くの疫病、貧困、紛争に昔も今も苦しんでいますが(単にそうしたネガティブな側面だけでは見る野は前述のような誤りにつながるもので、実際には、その一方で急速な経済成長をとげている地域でもあります)、そうした問題の多くがかつての植民地支配の負の遺産でもあります。

単に資源の収奪といったことにとどまらず、差別的な社会体制につながったのが南アフリカにおける人種隔離政策アパルトヘイトでした。

南アフリカはそのアパルヘイトとの戦いの過程で現在の国家を築いてきましたが、今なお制度的差別はなくなっても資産面で人種間の経済格差は大きく、この格差にどう対応するかは大きな問題です。

穏健なアプローチで時間をかけて・・・という考えもある一方で、「これ以上は待てない」と急速な方法、例えば白人所有地の収用・配分といった方法を主張する考え方もあります。

そうしたなかで南アフリカの土地収用新法をめぐって、南ア出身白人のマスク氏の影響もあって、白人に差別的な政策を行っているとしてトランプ政権が南ア政府と対立、南アで開催されたG20外相会議にルビオ米国務長官が欠席するなど混乱していることは、2月6日ブログ“南アフリカの土地収用新法を白人差別と批判するトランプ大統領 “負の歴史の清算”を求める南ア黒人層”でも取り上げました。

トランプ大統領は2月7日に南アフリカへの経済援助や支援を停止する大統領令に署名し、人種差別で財産を奪われるヨーロッパ系難民のアメリカへの受け入れを進めるとしています。

南アの白人団体は「私たちはここで未来を築くことを誓っている。どこにも行かない」とトランプ大統領が提案する移住は拒否する方針です。

この問題は南アの駐米大使をトランプ政権が国外追放する事態にまでこじれています。
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南アの白人団体はアメリカ移住は拒否していますが、これを移住のチャンスと見る白人(アフリカーナー)も多いようです。

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南アフリカのアフリカーナーとは、主にオランダ系移民をルーツとする、信教の自由を求めてアフリカに入植したヨーロッパ系白人たちの民族集団です。彼らはアフリカーンス語を母語とし、南アフリカ共和国やナミビアなどに多く居住しています。【Google検索のAIによる概要】
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****数万件もの移住要請が米国南アフリカ商工会議所に殺到****
トランプ氏は、南アフリカ出身のアフリカーナー人を人道的難民プログラムに優先的に受け入れるよう米国政府に要請し、論争を巻き起こし続けている。その結果、数万件もの移住要請が米国南アフリカ商工会議所に殺到し、同庁のシステムが混乱した。

しかし、アフリ・フォーラムやオラニア運動などの多くのアフリカーナー団体は、祖国を離れるつもりはなく、南アフリカ国内で米国の支援を期待していると主張し続けている。【2月12日 VIETNAM.VN】
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この問題をめぐっては、トランプ政権は南アからの白人“難民”受入れに積極的で今週にも第1陣がアメリカに到着予定です。

****トランプ政権、南ア白人の難民受け入れへ 来週にも=米紙****
米政府は、難民と認定した南アフリカの白人の第1陣を来週初めにも受け入れる見通し。米紙ニューヨーク・タイムズが9日、政権関係者の話や政府文書を基に伝えた。

トランプ政権はワシントン・ダレス国際空港に関係者を派遣し、南アの白人少数民族「アフリカーナ人」の到着を祝うイベントを開く。

トランプ大統領はアフリカーナ人について、主にオランダの初期入植者の子孫であり「不当な人種差別の犠牲者」だと主張。アフリカーナ人難民の再定住を連邦政府に求める大統領令を2月に出した。

南アフリカ外務省は2月、この大統領令について「事実誤認があり、南アフリカが経験してきた植民地主義とアパルトヘイトという深く痛ましい歴史を無視している」と述べた。

トランプ氏はこの大統領令に先立ち、安全保障や費用面の問題を理由に米国への全ての難民の受け入れを一時停止する大統領令に署名。紛争から逃れてきた多くのアフガニスタン人、コンゴ人などの難民数千人が審査を通過したにもかかわらず、入国を拒否された。【5月9日 ロイター】
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【南アフリカ政府 「白人差別は事実無根」】
南ア政府は「白人差別」というトランプ政権の認識に強く反発しています。

****南ア、白人再定住めぐり米に抗議 「差別の申し立ては事実無根」****
南アフリカ政府は9日、ドナルド・トランプ政権がアフリカーナー(オランダ系を中心とする南ア生まれの白人)の米国への再定住を来週にも開始すると報じられたのを受け、トランプ政権に「懸念」を表明した。

トランプ大統領は南ア政府が白人を「人種差別」していると非難しており、米メディアは8日、早ければ12日にもトランプ政権は南ア白人の第1陣を米国に迎え入れる予定だと報じた。

これに対し南ア外務省は声明で、「米国が南アからの難民とされる人々の受け入れ手続きを開始したという情報に対し、懸念を表明した」「(白人に対する)差別が行われているという申し立ては事実無根だと改めて表明する」と主張。

「たとえ差別だとの申し立てがあったとしても、難民に関する国内法および国際法で定義される迫害には当たらないとわれわれは考えている」と続けた。

南アのアルビン・ボーツ副外相が、米国のクリストファー・ランドー国務副長官に直接懸念を伝えたという。
南ア外務省は、「『難民』と称した南ア人を米国に再定住させるのは極めて遺憾だ。完全に政治的動機に基づいており、南ア憲法によって立つ民主主義に疑問を投げ掛けることを意図しているように思われる」と主張している。

同省によると、南ア政府は、米国への入国を認められる人々の地位について、難民認定希望者、難民、あるいは一般市民のいずれに該当するのか把握を求めており、さらに、こうした人々に適切な審査を実施し、刑事事件で係属中ではないことを確認するよう要請している。

同省は、「南アは、米国による『難民』の地位の評価に異議を唱えるが、希望者の出国を阻止することはない」と付け加えている。

アフリカーナーは3世紀以上前に南アに入植したオランダ人らの子孫がほとんどで、現在は南アの白人人口7.3%の大半を占める。

主にアフリカーナーが率いた政権は1994年まで、多数派の黒人から政治的・経済的権利を剥奪する残忍な人種隔離政策「アパルトヘイト」の下で、南アを支配していた。

アフリカーナーは、白人の農業従事者が殺害の標的になっていると主張している。だが、公式統計によると、同国の殺人事件の被害者の大半は都市部の若い黒人男性だ。

こうした事実にもかかわらず、アフリカーナーは「白人に対するジェノサイド(集団殺害)」が起きているとの虚偽の主張を唱え、トランプ氏もこの説を繰り返している。 【5月10日 AFP】
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【第1期政権の2018年以来、この南アの土地収用問題に執着するトランプ大統領】
非白人への差別問題には無関心なトランプ大統領が南アの白人問題には嬉々として飛びつく・・・というのは今に始まった話ではなく、第1期政権時代からのものです。 記は2018年8月24日の記事です。

****南アフリカの白人農場主の土地収用にトランプ反発 これも「虐げられた」白人のため****
<白人農場主が苦しんでいると聞いて、俄然やる気を出したトランプ。白人と黒人の格差解消に取り組む南ア政府は猛反発しているが>

南アフリカ政府が進めている白人農場主の土地収用について調査せよ──。8月22日放送の米FOXニュースの報道を受けて、ドナルド・トランプ米大統領が出した指示だ。

FOXのプレゼンター、タッカー・カールソンは南アフリカの土地収用について、「世界中が注目すべき、倫理に反する行為だ」、と主張。沈黙している「アメリカのエリート層」や、南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領を称賛したことがあるバラク・オバマ前米大統領を名指しで批判した。

トランプは放送の数時間後、「南アフリカの土地収用と、農民の大規模な殺害の実態を詳しく調査するよう、マイク・ポンペオ米国務長官に指示した」、とツイートした。

ラマポーザは7月31日、白人農場主の土地を補償なしで収用できるように憲法を改正する、との政府方針を発表。全ての主要政党が、白人から黒人に土地を再配分する改革の必要性で一致した。

南アフリカでは、人口の8%しかいない白人農家が、72%の土地を所有している。土地所有を巡る不平等な構図は、アパルトヘイト(人種隔離政策)廃止から20年以上経った今も、白人と黒人の間に根強く残る貧富の差を象徴している。

初めて「アフリカ」に関心
トランプのツイートの翌8月23日、南アフリカ政府はツイッターで、「われわれの国を分断し、植民地支配を思い起こさせる偏狭な見方を断固拒否する」、と反発。さらに、「慎重で包括的なやり方で土地改革のペースを上げていく。国を分断しない方法でだ」、と説明した。

トランプのツイート発言をまとめたサイト「Trump Twitter Archive」を検索すると、大統領就任以降、トランプが「アフリカ」という単語を使用したのは今回が初めて。

今年(2018年)1月には、移民政策を議論するための会合で、アフリカ諸国やハイチを「肥だめのような国」とも言っている。逆に「ノルウェーのような国」からの移民をもっと増やすべきだと主張したため、人種差別だと国内外で批判された。

いかにトランプが南アフリカの白人農場主を助けようとしても、アメリカの駐南アフリカ大使はまだ指名されておらずポストは空席のままで、うまくいかないだろうと、米紙ワシントン・ポストは書いた。

南アフリカ政府は補償金を巡って白人農家との交渉が行き詰ったケースで、すでに土地収用を始めている。現地紙シティー・プレスの8月19日の報道によれば、同国北東部リンポポ州にある2つの農場が、政府が提示した補償金額を拒否した結果、強制収用された。補償金は、農場側が求めた額のわずか10分の1だったという。

南アフリカの白人のロビー団体「アフリフォーラム」は、政府が土地収用を計画していると見られる190の農場のリストを公開した。だが南アフリカの農村開発・土地改革省は、リストの内容を否定した。

白人農家に対する圧力が強まるにつれて、世界各地の右派団体、とりわけ英語圏からの反発が高まっている。南アフリカの国会が土地改革に向けた政府方針を支持した今年3月以降、「南アフリカにいる白人のジェノサイド(大量虐殺)」に際し、「白人のボーア人(オランダ系やドイツ系)がアメリカに移住できるようにする緊急移民計画」をトランプに求める嘆願書に、2万3000人近くが署名した。

ジンバブエと同じ失敗の恐れも
アメリカだけではない。オーストラリアのピーター・ダットン前内相は、南アフリカの白人農家は「特段の注目に値する」と言い、彼らのビザを優先審査することを提案した。南アフリカ政府はダットンの発言を侮辱的として、撤回を求めた。

今、南アフリカの白人農家の殺害の発生率は過去20年間で最低水準だ。ただし襲撃事件に関しては、2016~2017年に478件だったのが、2017~2018年は561件まで増加した。

南アフリカ最大の農場所有者団体、アグリSAによれば、2017~2018年に殺害された白人農場主は47人。最も多かったのは1998年で、152人だった。2003~2011年は年間80~100人が殺害されたが、その後2016年までに年間60人まで減少した。もっともこれらの数字は、南アフリカの農場主を代表する別の複数の団体が否定している。

白人系の野党など土地改革の反対派は、不景気の中で強制的な土地収用を行えば経済危機になる恐れがある、と警告する。隣国ジンバブエでは2000年以降、ロバート・ムガベ前政権の下で白人の土地の強制収用を実施した結果、農地の荒廃と経済の破綻につながった。【2018年8月24日 Newsweek】
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【南アの現状にアメリカの未来が重なり不安に駆られるトランプ大統領とその支持者】
南アフリカ政府は南アからの白人“難民”「白人の土地が無償で取り上げられる」といった批判に対し、土地収用は公共の利益のために行われ、特定の人種を標的にしたものではないと説明しています。また、恣意的な収用は行われないと強調しています。

****アメリカが反対している南アフリカの土地改革政策とは何ですか?****
南アフリカの新しい土地改革政策は、補償なしでの土地の収用を可能にする収用法を可決したため、物議を醸している。

ドナルド・トランプ米大統領は、この法律は白人所有の農場の押収につながると批判したが、南アフリカはこれを「誤報」だとして否定した。

収用法案に基づき、南アフリカ政府は、公共の利益のために土地を収用する場合、一定の状況下では財産に対する「補償なし」を申し出ることができる。

トランプ氏は南アフリカ政府が土地を没収し「特定の階層の人々を非常にひどく扱っている」と非難し、今後一切の資金援助を打ち切ると誓った。

南アフリカはこれらの疑惑を否定し、ロナルド・ラモラ外務大臣は、南アフリカの新しい土地改革法の下では「私有地・財産の恣意的な収用は行われない」と述べた。

南アフリカの土地所有権はアパルトヘイトの遺産として残っており、政権終焉から30年経った今でも、農地の大半は白人が所有している。

アフリカーナー系農民の中には、2000年代初頭にジンバブエで起きたように、この新法により土地を失うことになるのではないかと懸念する人もいる。民主同盟(DA)党は、この法律は南アフリカ憲法に違反していると主張し、無効とするために訴訟を起こした。

ホワイトハウスが南アフリカへの援助を停止すると発表したことで外交上の緊張が高まった。一部の専門家は、ドナルド・トランプ米大統領の決断は、南アフリカ政府を「人種差別的な財産法」を持っていると非難し、南アフリカの白人が抑圧されているという陰謀論すら支持しているイーロン・マスク氏の影響を受けている可能性があると考えている。

野党「経済的自由闘士(EFF)」党首のジュリアス・マレマ氏は土地改革の強力な支持者だ。マスク氏が、補償なしの土地収用を支援したとして同氏に対する国際逮捕状を要求したことで、同氏は批判の的となった。マレマ氏は、南アフリカの黒人の権利のために戦っていると答えた。

南アフリカ政府報道官クリスピン・フィリ氏は、新法は土地の没収ではなく、土地所有規制に近いものだと主張した。(中略)

南アフリカ外務省はトランプ氏の政策を「不正確で、植民地主義とアパルトヘイトの歴史を認識していない」と批判した。南アフリカはまた、米国がアフリカーナーの亡命希望者を受け入れた一方で、世界の他の危機地域からの多くの亡命希望者を拒否したことは「皮肉」だと述べた。

マルコ・ルビオ米国務長官が南アフリカの「反米政策」を理由に、2月20日と21日にヨハネスブルグで開催されるG20首脳会議での交渉を欠席すると発表したことで、緊張はさらに高まった。この動きは欧州連合の立場とは対照的であり、欧州理事会のアントニオ・コスタ議長は首脳会議に先立ち、南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領に連絡を取り、支持を表明した。【2月12日 VIETNAM.VN】
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世界の他の危機地域からの多くの亡命希望者を拒否しながら、南アのアフリカーナーの亡命希望者を(歓迎イベント開くなど)ことさらに積極的に受け入る・・・白人至上主義的な臭いがプンプンとするように感じられます。

おそらくトランプ大統領の頭の中では、今後白人の割合が過半数を割り込むアメリカの現状への不安感が、黒人政権の南アのおける白人の立場にアメリカの未来を見る形で敏感に反応するのでしょう。

厄介なのは、そうした感情はトランプ大統領一人のものではなく、多くのアメリカ白人にも共通するという点であり、それ故トランプ大統領の白人至上主義的言動が少なからぬ人々に支持されのでしょう。

2020年の米国勢調査によると、白人(ヒスパニック以外)の割合は全体の57.8%でした。10年間で8.6%減少しており、これは史上初めての白人人口の減少です。2060年には、白人の割合が5割を下回ると予想されています。
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アメリカ  トランプ政権が進めるAIを活用した移民監視 米最高裁、移民の強制送還に一時停止命令

2025-04-21 23:41:12 | アメリカ
(【4月21日 FNNプライムオンライン】 19日、北京で行われた人型ロボットのハーフマラソン 優勝ロボットは最高時速12kmで約21kmのコースを2時間40分で完走したとのこと。 

こんな疲れ知らずのロボットに追われたら逃げ切れないですね・・・上空ではドローンが監視・・・個人データはAIによってすべて管理されている・・・そんな日ももうすぐ)

【AIを活用した移民監視 正確性には懸念】
監視国家と言えば中国が思い浮かびますが、アメリカも“なかなかのもの”のようで、トランプ政権下でプライバシーより国家(政権?)の利益が優先する形で、その動きは加速しているようです。

個人情報は全て政府によって把握・管理されてAIで分析され、逃げまどう不法移民・犯罪者、そして政権批判を行った一般国民を空ではドローンが、地上ではAIを駆使したロボット犬が追跡するというディストピアは映画の世界から現実へとなりつつあるようです。

****トランプ政権、移民監視にAI強化 正確性に強い懸念*****
トランプ米政権は、移民の追跡、拘束を目的とした監視システムと人工知能(AI)の活用を強化している。これにより正確性やプライバシーを巡るリスクが高まり、ほぼだれもが取り締まりの対象になりかねないとの懸念が浮上している。

国土安全保障省(DHS)をはじめとする移民管理当局は、公共の場に設置された顔認識スキャナーや南部国境で人間の動きを監視するロボット犬といったAIツールを、不法移民取り締まりの一環だと主張して利用している。

デジタル権利擁護団体、電子フロンティア財団の弁護士であるサイラ・ハサン氏によると、移民当局が使用する多くのAIツールは数年前から導入されており、過去の政権の遺産だ。

しかし現在、これらのツールの「対象範囲が大幅に拡大」している上、収集されたデータにアクセスできる当局者の層も広がっているとハサン氏は指摘する。

強化された監視網には、移民のソーシャル・メディア・アカウントを監視して個人情報を収集するバベル・ストリートのような民間請負企業のサービスも含まれている。

DHSや米税関・国境取締局(CBP)などの機関は収集された情報を利用し、移民の所在地を追跡して家系図を作成したり、逮捕令状や強制送還の決定を正当化したりする。

監視範囲の拡大を示す例として、ルビオ国務長官の下で3月に導入された「キャッチ・アンド・リボーク(捕まえてビザを取り消す)」プログラムがある。

ニュースサイトのアクシオスによると、同プログラムはAIを活用し、学生ビザ保持者をはじめとする外国人の公の発言を監視し、「(イスラム組織)ハマスその他、テロ組織に指定された組織を支援しているとみられる者」を特定するものだ。

捕捉された人は即座にビザを失う恐れがあり、ルビオ氏は実際、学生ビザや停留ビザ保持者を含む外国人300人以上のビザを取り消したと述べた。

<正確性を巡るリスク>
デジタル権利擁護団体は、AIツールが「幻覚」と呼ばれる偽の回答を生成する傾向を指摘し、移民取り締りなど精度が求められる状況での使用は危険だと指摘している。

移民権利団体「ジャスト・フューチャーズ・ロー」の執行ディレクター、パロミタ・シャー氏は、これらのツールを使用した移民の拘束は「市民権侵害に関する多くの懸念を提起している」と語った。

トランプ大統領が1月に就任して以来、不正確なAIデータに基づいて移民当局が行動した事例が数多くあると、権利擁護団体は指摘する。

トランプ氏が1月に署名した大統領令では、2023年にプライバシーと正確性の懸念から廃止された「迅速DNA検査」の再開が示唆されている。これは移民の家族関係を検証するための検査だ。

ハサン氏は「この政権が目指しているのは正確性ではないと思う。『X人の拘束に成功した』という派手なニュースを狙っているのだ」と言う。

独立系のテクノロジーアナリスト、テケンドラ・パーマー氏も、トランプ政権は正確性よりも強制送還目標の達成を優先していると指摘。「技術に欠陥があるおかげで、現政権はAIを隠れみのに、検証もせずに強制送還のゴム印を押す政策を生み出している」と語った。

DHSと移民・税関捜査局(ICE)はコメントの要請に応じなかった。

<網を広げる>
研究者らによると、監視システムは移民だけでなく、国民か否かを問わずすべての米国居住者を対象にしている。

ジョージタウン大学法科大学院の研究者らは2021年、ICEが米国成人の4分の3の運転免許証データにアクセスできるほか、公共料金記録を通じても同じ数の人々を特定できることを確認した。

同大学院のプライバシー・テクノロジーセンターの研究員、エメラルド・ツェ氏は「こうしたデータ集約ツールは、全てのデータポイントを総合してその関係性を作り出す」と指摘し、「あなたの家庭、近所、職場など、文字通り生活のあらゆる場面にいる人々が巻き込まれる可能性がある」と言う。

専門家によると、集約されたデータは、ICEがだれを拘束すべきかや、拘束した人物を解放すべきか否かなどを判断する際のアルゴリズムに投入されている。

移民当局の権限範囲も拡大している。トランプ氏の別の大統領令により、地方の法執行当局はICEが使用する全てのAIツール、そしてツールが収集した全ての個人データにアクセスできるようになった。つまり、個人データを扱い、そのデータに関連する人物を捜索できる移民当局者が従来よりも数千人増えたということだ。

ハサン氏は「連邦当局も地方当局も(AI)技術を使えるようになった。多くの情報と、技術が収集するあらゆるデータが双方の間で交換されるだろう」と予想した。【4月21日 ロイター】
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【今後国民の管理・監視でも重要な役割を担うAIロボット】
(あまりに興味深いので)話が横道にそれますが、AIヒト型ロボットについて世界の耳目を集めたのが中国で開催された人型ロボットが参加したハーフマラソン。

****中国・北京で世界初の“人型ロボット”のハーフマラソン大会…2時間40分で完走 開発の最先端を「中国のシリコンバレー」で取材 専門家から懸念の声も****
中国の首都・北京市で行われたハーフマラソン大会、スタートラインに並んでいるのは“人型ロボット”だ。 スタート地点から人型ロボットがスタートすると、ゆっくりとひざを曲げて走る姿はまるで人間のようだった。

世界初“人型ロボット”のハーフマラソン大会で2時間40分で完走

19日、世界で初めて行われたのは、人型ロボットによるハーフマラソン大会。中国の民間企業を中心に20チームが参加し、それぞれの開発企業がその実力を競った。 大型のものから小型のかわいらしいものまで、個性豊かな人型ロボットが参加した。

スポーツシューズを履いて、さっそうと走るものがいる一方で、スタート直後に制御不能になり、あわや“大惨事”になるロボットも。(中略)
その中で優勝したロボットは、最高時速12kmで約21kmのコースを2時間40分で完走した。

近年、中国のロボット業界は急速に発展し、本格的なブームを迎えている。中国でロボット産業に関わる企業の数は、今では45万社以上と4年間で約3倍になった。

「中国のシリコンバレー」で最先端の開発を取材
最先端の人型ロボットは、どこまで人間に近づいてきているのだろうか。FNNが訪れたのは、「中国のシリコンバレー」と呼ばれる広東省深セン市。

人型ロボットを開発するスタートアップ企業「UBTECH」のオフィスを訪れると、さまざまなタイプの人型ロボットが活動していた。

この企業のロボットは、現在行われている大阪・関西万博の中国パビリオンでツアーガイド役を務めていて、中国では最も注目を集めている企業の1つ。

開発した人型ロボットは、すでに一部の工場で導入試験を終えて実際に働き始めているという。実際の工場で使用されている人型ロボットの動きは、ひざや腰、手の関節もほとんど人間と同じような動きをしている。

ロボット1台による作業だけではない。 2025年3月には、中国の工場で複数の人型ロボットが協力して、同時にさまざまな作業を行うトレーニングを成功させた。 実際の工場の生産ラインで仕分け・組み立て作業などを行う姿は、まさに人間さながらの動きだ。

UBTECHの人型ロボットは、中国の自動車工場で20台搬入され活動を始めているという。
UBTECH・譚旻CBO:
私たちは、人型ロボットが社会の重大な問題の解決やニーズを満たし、生活の便利さを向上させると信じています。
実際の社会で働く人型ロボットは徐々に増えていて、現在警察と一緒にパトロールをしたり、空港の警備や接客業務にあたるなど、さまざまな場面に投入され始めている。

人型ロボットの活動は、こうした場所にとどまらない。 器用に料理をしたり、アイロンがけを行うロボットも。

中国政府は人型ロボットを「重要政策分野」に
上海にある会社では、家庭の中で働く人型ロボットの訓練も行われている。複雑な動作を可能にしているのは、導入されたAI(人工知能)だ。

ロボットは基本的な動作を教えられ、それぞれの家庭にあった動きに自らが調整できるようになることを目指している。

中国政府は、この人型ロボットを電気自動車と同様、重要政策分野に位置づけて経済を押し上げたい考えで、その市場規模は2035年までに約6兆2000億円に達するとも。

一方、中国政府が国家戦略として人型ロボットの分野で世界をリードしようとしていることに、専門家からは懸念する声も出ている。

京都外国語大学・土屋貴裕教授:
中国では、企業の成長や技術革新というのは、「国家の意向」と表裏一体で進められています。仮に中国がこの分野で国際的な標準を主導する形になれば、効率ですとか管理あるいは監視を重視する中国型のモデルというものが世界的な規範となるおそれがあります。

人型ロボットでリードを狙う中国。
アメリカや日本も人型ロボットの開発に力を入れていて、技術競争だけでなくロボットをどのような目的で使うかという点も今後大きな課題になるとみられる。(「イット!」4月21日放送より)【4月21日 FNNプライムオンライン】
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ロボコップの登場は時間の問題のようにも。管理・監視体制で重要な役割を担うようになるのでしょう。

【米最高裁、ベネズエラ移民の強制送還に一時停止命令】
AIを活用するしないにかかわらず、トランプ政権の進める移民取締りがかなり杜撰なことは、以前も取り上げた犯罪組織のメンバーと見なされて中米エルサルバドルに誤って送還された男性の件でも明らかです。

不法移民=邪悪な犯罪者という発想で、「成果」を誇るために杜撰に進められる移民狩り。
アメリカ最高裁は、その保守優勢な判事構成にもかかわらず、トランプ政権の進める移民狩りに一定の歯止めをかけています。

****米最高裁、ベネズエラ移民の強制送還に一時停止を命令****
米最高裁判所は19日未明、移民当局に拘束されている複数のベネズエラ人男性の強制送還を一時停止するようトランプ政権に命じた。男性らの弁護士は、裁判所が義務付ける司法審査なしに強制送還が実施されようとしているとし、差し止めを求めていた。

最高裁は19日未明に文書を出し、「政府には、本裁判所のさらなる命令があるまで、(同様事案で集団訴訟の原告となり得る)いかなる被拘束人も米国から送還しないよう指示する」と命じた。

同文書には署名がなかった。保守派のクラレンス・トーマス判事とサミュエル・アリト判事がこの決定内容に反対した。

問題となっていたのは、テキサス州アンソンのブルーボネット拘置所に収容されている数十人のベネズエラ人男性の処遇。アメリカ自由人権協会(ACLU)の弁護士は18日、最高裁判所を含む複数の裁判所に緊急要請書を提出し、一部の男性が既にバスに乗せられ、国外退去を告げられているとして、即時の対応を求めていた。

ACLUは、男性らは急に国外退去を告げられ、最高裁が義務付けた異議申し立てを行うような現実的な猶予が与えられなかったと主張した。

ホワイトハウスにコメントを求めたが、これまでに回答はない。

移民取り締まりの強化を掲げて当選したトランプ氏は、ベネズエラ犯罪組織のメンバーを迅速に強制送還するためとして、1798年制定の「敵性外国人法」を用いる方針を決定。

最高裁は7日、一定の制限付きで同法の適用を認める判断を出したが、その際、拘束されている人びとに対して合理的な期間内に強制送還の通知を行い、適切な場所で人身保護令状による救済を求められるようにする必要があるとの意見を付していた。

今回の案件は、この最高裁判断が示されて以降初めての強制退去措置となるものだった。【4月19日 ロイター】
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最高裁は6対3で保守派メンバーが多いなかで、アリート氏とトーマス氏以外は差し止めの判断を支持しました。

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最高裁は「政府はさらなる命令が出るまで、被拘束者集団のうち1人たりとも米国から追放してはならない」としている。

強制送還計画の中止を求める運動を主導したアメリカ自由人権協会は、最高裁の判断を歓迎。リー・ゲルレント弁護士は「(対象の)男性たちは、裁判を受ける機会もなく、恐ろしい外国の刑務所で一生を過ごす危険にさらされていた」と述べた。

これに対し政府はこの日、最高裁に対し、敵性外国人法を適用してテロリストとされる人々を国外追放することは阻止されるべきではないと申し立てた。また、たとえ阻止されたとしても、他の法律を使えばそうした追放の実行は可能だと最高裁は明示すべきだと主張した。【4月21日 AFP】
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不法移民に対するネガティブな感情も強い社会では強引な移民狩りに理解を示す国民も多いでしょうが、いつも言うように、こうした人権を軽視し、事実も軽視し、政権が自由にその力を発揮することを求める流れののもとでは、やがてはその対象は不法移民や犯罪者に限らず、政府に批判的な者にまで広がり、一切の政府批判を許さない中国のような社会にまで至る可能性があります。

そうなってしまってからでは、その状況を覆すことは極めて困難です。
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アメリカ  大統領の意に沿わないものを排除し、批判を許さないトランプ政権の強権的体質

2025-04-20 22:29:46 | アメリカ
(【4月19日 AFP】)

【大統領の意に沿わない官僚を排除 「連邦政府をようやく民間企業のように運営することが可能になる」】
日本とアメリカでは公務員・官僚の位置づけは大きく異なります。

日本では公務員の労働基本権は制約されている一方で、政治的圧力からの保護、中立性の維持のために公務員の身分は強く保障されており、民間企業のような解雇はほとんどありません。

****公務員の身分保障****
スト権などは認められていないが解雇されるケースはほとんどない

民間企業の労働者には、団結権、団体交渉権、争議権(スト権)の労働基本権(いわゆる労働三権)がすべて保障されていますが、公務員の労働三権は何らかの制限を受けています。

たとえば、警察、消防、監獄、海上保安庁、防衛庁、自衛隊などの各職員は、労働三権が全面的に否定されています。その他の公務員の場合は現業・非現業とも団結権は認められていますが、争議権が認められていません。

その代わりに、公務員の身分は法律で厳格に保障されています。政権交代などによる政治闘争から身を守り、政治介入を排して、職務の公共性、行政の継続性や中立性を維持するためです。

このため、民間の企業の従業員のように業績によって給与が大きく変動することはなく、解雇されることもほとんどありません。

また、その意に反する不利益な処分を受けた場合は、国家公務員は人事院に対し、地方公務員は人事委員会または公平委員会に対して、行政不服審査法に基づく不服申し立てをすることができます。

人事院や各委員会は審査の結果に基づいて、修正や取り消しが必要な場合には、その職員が処分によって受けた不当な取り扱いを是正するための指示をしなければならないとされています。【「日本の人事部」】
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アメリカでは政策形成にかかわるキャリア官僚に関して政治任用が行われ、通常、政権交代があれば政治任用された4千人ほどの職員が入れ替わります。

日本からすると随分と「政治的」にも見えますが、トランプ大統領はこれでも官僚組織が政権の思い通りに動かないことに不満のようで、大統領の指示に反する行為などを理由に迅速に解雇できるよう雇用規則を改定が発表されました。

トランプ大統領は「政府がついに企業のように運営される」とSNSにつづっており、業績の悪い職員を解雇して「実力主義」に変えるというのが政権の主張ですが、大統領の意に沿わない官僚の排除が狙いとみられています。

****トランプ氏「ようやく政府を民間のように」 官僚の雇用規則改定*****
トランプ米政権は18日、連邦政府の重要な政策決定に携わる政治任用以外の幹部職員らについて、雇用規則を改定すると発表した。

容易に解雇できる「任意雇用」の区分に切り替える。全職員の2%にあたる約5万人が対象。ホワイトハウスは、業績不振や不正行為、大統領の指示に反する行為などを理由に迅速に解雇できるとしている。

トランプ大統領は、自身の交流サイト(SNS)に「連邦政府をようやく民間企業のように運営することが可能になる」と投稿した。政権の方針に従わない官僚を排除するのが狙いとみられる。

米メディアによると、トランプ氏は1期目の2020年にも同様の大統領令を発令したが、翌年に就任したバイデン前大統領が無効にしていた。

トランプ氏は今年1月以降、連邦政府職員に退職を勧奨したり、各機関に試用期間中の職員を解雇するよう指示したりしている。【4月19日 毎日】
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トランプ大統領は1期目の経験からキャリア官僚の一部が大統領の意に従わないことへ、そうした官僚を簡単に解雇できないことへの不満が強く、官僚組織を「ディープステート(影の政府)」と主張して、それを解体して「腐敗した官僚から政府を取り戻す」ことを選挙公約の柱としてきました。

“トランプ政権は1月の発足後、試用期間中の職員解雇や、自発的な離職を呼び掛けるなどして公務員削減を推進。今回、官僚の政治的圧力からの保護を縮小し、さらに踏み込んだ。”【4月19日 時事】

大統領の意に沿わない官僚の排除が狙いで、アメリカ連邦政府職員連盟は「有能な公務員を、政治的な取り巻きに置き換えようとするものだ」と反対する声明を出しています。

これに対し、トランプ政権は、「キャリア官僚が大統領を個人的または政治的に支持する義務はない」とする一方で、「政権の政策を忠実に実行する義務がある」と説明しています。

「政権の政策を忠実に実行する義務がある」と言えばもっともらしく聞こえますが、「大統領、それはおかしいです。間違っています。」と言えば「クビだ!」という話で、独善的な政権運営を更に徹底したい意向のようです。

新たなは雇用規則改定は、今後正式に大統領令が出されて実施されます。

【大統領に逆らうハーバード大学への連日の圧力強化】
大統領に逆らうとどうなるのか・・・その事例が、「反ユダヤ主義」の取り締まりや多様性へ配慮したDEIの理念の放棄の要請を拒否した名門ハーバード大学(ノーベル賞受賞者162人を輩出)で、政権による執拗な圧力が続いています。

****米ハーバード大、トランプ政権のDEI見直し介入に対決姿勢 連邦予算テコに圧力****
米東部の名門ハーバード大は14日、「いかなる政府も私立大学に教育内容や入学選考、職員の採用方法を押し付けることはできない」との声明を出し、同大を含む米国内の高等教育機関から「多様性・公平性・包括性(DEI)」の理念を排除することを目指すトランプ政権を批判した。

政権側はDEI排除を迫るテコとして、同大に連邦予算から支出される研究支援など90億ドル(約1兆3千億円)の見直しを進めており、同大への圧力が強まるのは必至だ。

声明は、トランプ政権が11日にハーバード大へ送った書簡への反論として発表された。
書簡で政権は、同大への連邦予算支出を継続する条件として、理事会の改革や、DEIの理念が反映されたすべての教育プログラム、入学選考基準、職員採用方式などを「能力本位」に見直すよう要求。イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ攻撃に反対する学生デモが昨年春に頻発したことを念頭に、学内での「反ユダヤ主義」の取り締まり強化なども求めた。

これに対し同大のガーバー学長は声明で、「要求の大部分はハーバードの『知的状況』への政府による直接規制だ」と述べ、大学運営への介入を排する姿勢を示した。

米メディアによると、ハーバードへ支出されている連邦予算の多くは医療や科学研究の助成に充てられており、大学関係者は「予算が停止すれば米国の知的競争力に影響を及ぼす」と警告している。

トランプ政権は、同大のほかにも、コロンビア大やコーネル大などの名門校に対しても、DEI見直しを迫るために研究予算の凍結や廃止を進めている。

一方、米メディアによると、ハーバードの教授らのグループは14日までに、連邦予算と引き換えに大学側にDEI排除などを求めるトランプ政権の動きは「大学の独立と、大学とその学生の言論の自由を根本的に傷つけるものだ」として、支出見直しの差し止めを求める訴えを東部マサチューセッツ州の連邦地裁に起こした。【4月15日 産経】
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****トランプ大統領、ハーバード大学の免税資格取り消す可能性を示唆****
アメリカのハーバード大学がトランプ政権の要求を拒否したことを受け、トランプ大統領は、免税資格を取り消す可能性を示唆するなど圧力を強めています。

ハーバード大学は14日、トランプ大統領が要求する多様性重視プログラムの廃止などを拒否し、トランプ政権は大学への助成金22億ドルなどの凍結を発表していました。

その上でトランプ大統領は15日、自身のSNSで「大学は免税資格を失い、政治団体として課税されるべきかもしれない。免税資格は公共の利益のために行動することを条件としていることを忘れないでください」などと投稿し、改めて大学への圧力を強めました。

また、ホワイトハウスのレビット報道官も、ハーバード大学に対し、「大統領は謝罪を望んでおり、大学は謝罪すべきだ」と述べています。【4月16日 日テレNEWS】
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****トランプ氏「ハーバード大は物笑いの種」 政府の研究委託撤回を****
ドナルド・トランプ米大統領は16日、ハーバード大学を「冗談」と呼び、同大学が政府監督の受け入れを拒否したのを受け、政府の研究委託契約を撤回すべきだとの考えを示した。また報道によると、トランプ政権は内国歳入庁に対し、同大の非課税資格をはく奪するよう正式に要請した。

トランプ氏は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に、「ハーバードはもはやまともな学びの場とは言えず、世界の偉大な大学やカレッジのリストに載せるべきではない」と投稿。「ハーバードは物笑いの種だ。憎悪と愚かさを教えており、もはや連邦資金を受け取るべきではない」と主張した。(後略)【4月17日 AFP】
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****トランプ政権、ハーバード大学に外国人学生の受け入れ停止を警告****
ドナルド・トランプ米政権は16日、ハーバード大学が政府による監督指示に従わない場合、外国人学生の受け入れを禁止する可能性があると警告した。(中略)

国土安全保障省は声明で、「ハーバード大学が報告義務を履行していることを確認できない場合、外国人学生を受け入れる特権を失うことになる」と警告した。 【4月17日 AFP】AFPBB News
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****米共和党、名門ハーバード大の調査開始 「公民権法無視」の疑いで****
ドナルド・トランプ米大統領が名門大学への攻撃を強める中、共和党議員らは17日、ハーバード大学が公民権法を無視している疑いがあるとして、同大に対する調査を開始すると発表した。

共和党議員らは世界的に著名な教育研究機関であるハーバード大に対し、採用慣行や多様性プログラム、キャンパスで昨年行われた親パレスチナデモに関する資料を提出するよう求める書簡を送付した。(中略)

コマー、ステファニク両氏は、ホワイトハウスによる監査要求を拒否した同大のアラン・ガーバー学長を激しく批判している。ホワイトハウスは同大への22億ドル(約3100億円)の助成金を凍結し、さらなる報復措置をちらつかせている。

両氏はカーバー学長に対し、「ハーバード大学には、違法な差別を防ぐ能力がないのか、あるいはその意思が極めて乏しいのか、貴殿の指示の下、法令順守を回復させるために連邦当局が提案した合理的な和解案に同意することさえ拒否しているようだ」と記し、「どれほど特権を与えられていようと、いかなる機関も法を犯す権利はない」と述べた。 【4月18日 AFP】
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【大統領の意に沿わないメディアにも】
文字どおり「連日」の圧力です。
大統領の意に沿わないメディアに対しても圧力が強まっています。

****米政権、意に沿わぬ言論に圧力強める****
アメリカのトランプ政権は発足後、大統領の意に沿わない言葉や情報、報道を排除する措置をとるなど言論への圧力を強めており、その政策の影響は内外のメディアに及び始めている。

アメリカ大統領府は2月11日、「メキシコ湾」を「アメリカ湾」に変更するとした大統領令にAP通信が反しているとして、同社記者を大統領のイベント取材から締め出した。

アメリカのメディアが用語表現の手引きとしている『APStylebook』が、長い歴史があり国際的に認知されている「メキシコ湾」の名称を使い続けるとしたことが理由で、締め出しは同行取材や海外首脳との会談後の記者会見を含め続いた。

非営利組織「報道の自由のための記者委員会」やホワイトハウス記者会が抗議したが措置は継続されており、APは同月21日、憲法に違反し言論を統制するものだとして措置の撤回を求め、大統領府首席補佐官らを提訴した。

大統領府はさらに2月25日、大統領を取材できる報道機関の数が限られる際の代表取材参加メディアを大統領府側が決めると宣言した。代表取材は従来、正確な情報共有のためホワイトハウス記者会が決めたメディアが交代で行ってきた。同記者会は「アメリカの自由な報道の独立性を損なう」と抗議したが、大統領府側は多様なメディアを入れるためとしている。(中略)

トランプ政権による公務員の大量解雇で、省庁によってはメディアの取材や情報公開請求に対応する職員がいない事態も起きている。

また、政府機関のウェブサイトからはジェンダーに関わる記載、保健医療や気候変動に関するデータなど、政権の意に沿わない情報が削除され、さまざまな問題の検証や取材に影響を及ぼすおそれが出ており、ジャーナリストや研究者が連携して公的な情報を保存する取り組みも始まっている。

一方、海外では、大統領令によって開発援助を凍結し、USAID(アメリカ国際開発庁)の業務を停止させた影響が出ている。援助対象には、取材妨害が目的の訴訟から調査報道を守るプログラムや、ミャンマーやロシアの反体制民主派メディア、ウクライナやアフガニスタンの独立メディアもあり、運営資金不足に陥るところも出てくるおそれがあるとWashington Postなどが伝えている。【NHK「放送研究と調査」4月号】
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【司法判断の軽視】
司法の是正命令を実質的に無視するような運用も続いています。

****AP通信、米トランプ政権が取材制限解除の連邦地裁命令に違反と非難****
トランプ米大統領によってホワイトハウスの代表取材から締め出されたAP通信の弁護団は16日、APへの取材制限を係争中に解除するように命じた米首都ワシントンの連邦地裁命令をトランプ氏の側近が無視していることを非難する声明を出した。

弁護団は裁判所に提出した書類で、APがトランプ氏とともに移動し、大統領執務室での行事に出席する代表取材からAPの記者を排除し続けていると申し立てた。(中略)

ホワイトハウスは15日、代表取材での通信社の参加枠を廃止すると発表した。ロイターとブルームバーグを含めて参加枠に入ることが認められていたあらゆる通信社が締め出されることになる。

AP側は、通信社の参加枠廃止について命令に明らかに違反しており、APに対する一段の報復の口実に利用していると反発した。ロイターもトランプ政権の措置を非難する声明を発表した。

一方、ホワイトハウスはAPが大統領への特別なアクセスの権利を持っているわけではないと主張。ホワイトハウスの当局者は、参加枠の変更は「大統領のメッセージが対象となる読者らに確実に届くようにするとともに、イベントに応じて適切な専門知識を持つ報道機関が出席するようにするため」に必要とコメントしている。

ワシントンに取材拠点を持たない地方メディアを含めた報道機関は、米大統領の発言などで通信社のリアルタイムの報道に依存している。

APのウェブサイトによると、同社は1846年に設立され、100カ国弱の計250弱の拠点で取材活動を展開している。【4月17日 ロイター】
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司法判断を無視するかのような運用は、犯罪組織のメンバーと見なされて中米エルサルバドルに誤って送還された男性をアメリカに帰国させるようトランプ政権に求めた判断についても。

****米連邦高裁、トランプ政権に司法との対立回避を呼びかけ****
米連邦高裁は17日、犯罪組織のメンバーと見なされて中米エルサルバドルに誤って送還された男性を米国に帰国させるようトランプ政権に求めた下級審の命令を支持、トランプ政権に対し司法との対立を避けるよう求めた。

高裁は「行政府は法に従わないとの印象が広がれば、多くのものを失うことになる」とし、行政府が米国の精神にとって法の支配が不可欠と認識していることを引き続き期待していると述べた。

また、トランプ氏が自分に不利な判決を下す判事を頻繁に攻撃することで、司法に対する世間の信頼を損なおうとしているように見えると主張。トランプ氏が成功を収める可能性もあるが、同氏が法に従っていないとの見方が広がれば逆効果になり得ると指摘した。【4月18日 ロイター】
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【本来政権から独立したパウエルFRB議長も解任検討】
更に、経済政策で大統領の意に沿わない連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長を(大統領に解任の権限はないものの)解任することも検討されています。

****トランプ政権、パウエルFRB議長の解任検討****
米国家経済会議のケビン・ハセット委員長は18日、ドナルド・トランプ大統領とその政権が、連邦準備制度理事会のジェローム・パウエル議長を解任する選択肢について検討を続けていると明らかにした。

ハセット氏は、パウエル氏解任の可能性について記者団に問われると、「この問題については大統領とチームが引き続き検討していく」と答えた。

米大統領にFRB理事を解任する直接的な権限はないが、トランプ氏は解任の「理由」を証明することで、パウエル氏を退任させる長期的な手続きに着手することは可能だ。

トランプ氏は、自身が1期目に指名したパウエル氏が政治的な駆け引きをしていると頻繁に批判している。

パウエル氏は16日、トランプ氏がほぼすべての貿易相手国に課す包括的な関税は物価を押し上げ、経済成長を抑制すると指摘。FRBが「インフレ対策」と「失業対策」のどちらかを選ばなくてはならないという望ましくない立場に追い込まれる恐れがあると警告した。

これに対しトランプ氏は17日、パウエル氏を辞めさせることができると主張。「彼には満足していない。そのことは本人にも伝えてある。私が辞めてほしいと頼めばすぐさま辞めるだろう。私を信じろ」と述べた。 【4月19日 AFP】
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自身の意に沿わない官僚をクビにして、大学に圧力をかけ、メディアにも。司法判断も無視し、本来政権から独立した中央銀行トップも解任に追い込む・・・世間一般ではこういう政治は「民主主義」とは呼ばず、「強権支配」「独裁」と呼びます。

最終的には、「大統領の意に沿わない国民はエルサルバドルの刑務所に」でしょうか。
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アメリカ  「行政ミス」で強制送還した移民への対応にみるトランプ政権の危険性

2025-04-15 23:31:56 | アメリカ

(エルサルバドルの巨大刑務所「テロリスト監禁センター(Cecot)」の様子【2月4日 CNN】)

【最高裁 政権が「行政ミス」で強制送還した保護資格持つエルサルバドル人について帰国支援を命じる】
多くのメディアが詳細に報じているトランプ政権が「行政ミス」で強制送還した保護資格持つエルサルバドル人への政権の対応は、トランプ政権の性格・危険性を示しているように思えます。

****米政権、「行政ミス」で移民送還 保護資格持つエルサルバドル人****
トランプ米政権が先月、犯罪組織のメンバーらをエルサルバドルに強制送還した際、保護資格を持つエルサルバドル人男性も誤って送還していたことが1日の裁判所への提出書類で分かった。

政権は「行政上のミス」で送還したと認めたが、この男性がギャング組織MS─13のメンバーだと主張。法的権限がないため、エルサルバドルから帰国させることはできないとしている。

男性の弁護団はギャングメンバーだとする政権の主張に異議を唱え、男性の帰国を求めている。

トランプ大統領は先月15日、ベネズエラの犯罪組織「トレン・デ・アラグア」のメンバーを迅速に送還するため、敵対国の市民を拘束して送還する権限を大統領に与える「敵性外国人法」の活用を布告した。

政権は同日、この戦時法に基づき処理された強制送還者を乗せた2便と、他の規則に基づく送還者を乗せた3便目をエルサルバドルに送ったとしている。

1日の提出文書によると、男性はこの3便目に誤って乗せられていた。男性は2019年に裁判所から保護資格を得ていた。【4月2日 ロイター】
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この間違ってエルサルバドルに強制送還された男性はメリーランド州在住だったアブレゴ・ガルシア氏。

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メリーランド州在住だったアブレゴ・ガルシア氏は3月15日、250人以上の移民とともに、エルサルバドルへ送還され、巨大刑務所「CECOT(テロ監禁センター)」に収容された。

トランプ政権は、根拠を示さずにアブレゴ・ガルシア氏はギャング組織「MS-13」のメンバーだと主張している。
しかし、同氏の弁護士は、アブレゴ・ガルシア氏が2011年にアメリカに来た理由は、ギャングの暴力から逃れるためであり、いかなる犯罪も犯していないと訴えている。

また、アメリカの移民裁判所は2019年、地元ギャングから迫害を受ける可能性が高いとして、アブレゴ・ガルシア氏をエルサルバドルへの強制送還から保護する判断を下している。

アブレゴ・ガルシア氏は渡米後にアメリカ市民と結婚して、メリーランド州で板金工として働いてきた。【4月15日 HUFFPOST】
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米連邦最高裁は4月10日、エルサルバドルに送還されたアブレゴ・ガルシア氏のアメリカ帰国をトランプ政権は支援しなければならないと判断しました。

****ギャングと誤り強制送還…移民男性帰国へ政権に支援命じる 米最高裁****
アメリカの連邦最高裁判所は10日、ギャング組織のメンバーだとして誤って強制送還された中米エルサルバドル出身の移民男性について、トランプ政権に帰国に向け支援するよう命じる判断を下しました。

メリーランド州に住むエルサルバドル出身の移民男性は先月、ギャング組織のメンバーだとしてエルサルバドルに強制送還され、刑務所に収容されました。

この男性については、6年前、エルサルバドルに身柄を戻せば命を狙われる危険があるとして、裁判所が強制送還を差し止めた上で保護する措置をとっていました。

トランプ政権は、男性を誤って送還したことを認めたものの、既にアメリカを出国しているため対応しない姿勢を示していました。

ホワイトハウスのレビット報道官は今月1日、強制送還が誤りだったと認める一方、男性が「残虐なギャング組織の一員であった」とする見解を強調していました。【4月11日 日テレNEWS】
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トランプ政権は、アブレゴ・ガルシア氏はギャング組織「MS-13」のメンバーだと主張していますが、根拠を示していません。

なお、アブレゴ・ガルシア氏をエルサルバドルに送還した後、誤りだったと認めた司法省の弁護士はパム・ボンディ司法長官によりその後休職処分になっているとも。「ウソでも何でもいいから誤りを認めるな」というのがトランプ政権の方針のようですが、伝えられるトランプ氏自身の人生指針そのものです。

【トランプ大統領 帰国させない姿勢 「犯罪者がいなくなるんだから素晴らしいじゃないか」】
そのトランプ大統領は最高裁判断直後はこれに従う姿勢を見せていました。

*****「手違い」でエルサルバドルに強制送還 トランプ大統領「連邦最高裁が言うなら連れ戻す」****
アメリカ・トランプ政権が「手違い」でエルサルバドルに強制送還した移民男性について、裁判所が連れ戻しを命じたことを受けて、トランプ大統領は命令に従う考えを示しました。(中略)

アメリカ トランプ大統領
「連邦最高裁が『連れ戻せ』と言うなら私はそうする。私は連邦最高裁を尊重する」

トランプ大統領は11日、このように話し、裁判所の判断に従う考えを示しました。

裁判の中で政権側は「男性の身柄がアメリカにないため、地裁に命令を下す権限はない」などと主張。トランプ大統領は6日、男性について「凶悪なギャングのメンバーでアメリカに戻す必要はない」と話していました。【4月12日 TBS NEWS DIG】
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しかし、考えが変わったようです。「凶悪なギャングのメンバーでアメリカに戻す必要はない」という従来の主張を貫く姿勢です。

****トランプ大統領 誤って強制送還された男性を帰国させない姿勢****
トランプ政権は誤ってエルサルバドルに強制送還された移民の男性について、アメリカに帰還を求める考えがないことを示しました。

トランプ政権は先月、犯罪組織のメンバーらをエルサルバドルに国外追放した際に、強制送還が免れる保護資格を持つ男性を誤って送還していました。

トランプ大統領は14日、エルサルバドルのブケレ大統領と会談した際に、政権として男性の帰還を求める考えがないことを示しました。

ボンディ司法長官
「彼は違法にアメリカに滞在していました。現在、書類作業が必要になっています。彼をアメリカに送り返すかどうかはエルサルバドル次第です。我々に決定権はありません」

トランプ大統領
「君はとてもよくやっている」

また、ブケレ大統領も「テロリストをどうやってアメリカに密入国させるというのか。私にはアメリカに送り返す権限などない」と述べ、男性を帰還させる考えがないことを強調しました。

ブケレ氏はアメリカから国外追放された犯罪者をエルサルバドルの刑務所に受け入れると提案してきましたが、トランプ氏はブケレ氏を称賛し、可能な限り多くの犯罪者を送り込む考えを示しました。【4月15日 テレ朝news】
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エルサルバドルのブケレ大統領は4万人を収容可能な巨大刑務所を作り、ギャングを手当たり次第にここに収容し、結果的に確かに治安は改善しています。

ただ、強引な治安対策の中で人権侵害が相次ぐといった批判もありますが、トランプ大統領はブケレ大統領を賞賛していて、国を超えた治安対策でタッグを組んだ形です。

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かつて殺人事件が多発し中南米でも最悪だったエルサルバドルの治安は、2019年の大統領選で初当選したブケレ氏が非常事態宣言を発令してギャングを一掃したことで劇的に改善。

治安当局による令状なしでの容疑者の拘束を可能とし、約4万人を収容できる巨大刑務所も新たに建設した。欧米メディアによると、この刑務所では外部との面会が一切遮断されるほか、鉄格子越しに24時間監視されるなどの過酷な処遇が行われているという。

メリーランド州で妻子と4人で暮らしていたエルサルバドル国籍のアブレゴ・ガルシアさん(29)もこの刑務所に収監された。

裁判記録によると、母国での暴力から逃れるため10代で米国に不法入国。19年に入管当局に拘束されたが、移民裁判所はガルシアさんが地元でギャングに迫害される恐れがあるとしてエルサルバドルへの送還を禁じ、退去保留の命令を出した。【4月15日 毎日】
************************

ボンディ司法長官は「彼をアメリカに送り返すかどうかはエルサルバドル次第です。我々に決定権はありません」
ブケレ大統領は「私にはアメリカに送り返す権限などない」
一体誰が責任を持つのか?

トランプ大統領は「犯罪者がいなくなるんだから素晴らしいじゃないか」と開き直り。

****手違いで移民送還、米政権の対応が物議 トランプ氏は開き直り****
(中略)
14日の首脳会談では、記者団から対応を問われたトランプ氏に代わり、同席したミラー大統領次席補佐官が「彼はエルサルバドル市民だ。エルサルバドルに自国民の扱いを指図するのは非常に傲慢だ」と釈明。

ブケレ氏も「テロリストを米国に密入国させることはできない」と応じ、ガルシアさんを帰還させる考えがないことを強調した。

食い下がる記者にトランプ氏は「いつまでこの質問に答えなくてはいけないんだ。犯罪者がいなくなるんだから素晴らしいじゃないか」と開き直り、「可能な限り(移民を)エルサルバドルに送還したい。大統領にもっと巨大な刑務所を作ってもらえるか尋ねた」と話した。【4月15日 毎日】
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最高裁判断についてボンディ司法長官は“最高裁の判断については、「エルサルバドルがガルシア氏を戻したいのであればトランプ政権は支援すべき、つまり飛行機を用意しなければいけないという意味にすぎない」と主張した。”【4月15日 HUFFPOST】と矮小化しています。

【今後は「移民」だけでなく「アメリカ人の犯罪者」のエルサルバドルへの追放も検討】
「可能な限り(移民を)エルサルバドルに送還したい。大統領にもっと巨大な刑務所を作ってもらえるか尋ねた」・・・・記事では“(移民を)”と補足していますが、今後移民にとどまらない可能性も。トランプ大統領の発言も、“移民だけでなくアメリカ国民犯罪者も”という趣旨だった可能性があります。

****トランプ大統領とエルサルバドル大統領の立ち話が物議 “アメリカ人犯罪者”のエルサルバドル追放を示唆か****
アメリカのトランプ大統領とエルサルバドルのブケレ大統領との首脳会談前の立ち話が物議を醸しています。

14日、ホワイトハウスを訪問したエルサルバドルのブケレ大統領。エルサルバドル政府はそのもようをインターネット中継していました。

大統領執務室に入ってきた両首脳は、ホワイトハウス担当の記者たちが入って来る前に立ち話をしています。すると、トランプ大統領は…

アメリカ トランプ大統領
「次はホームグロウン(国産)だ。でも、あなたは場所をあと5つ作らなくてはいけない。…大きさが十分じゃないしょう」

と話しかけ、周囲から笑いがあがりました。

トランプ政権はアメリカに不法入国した犯罪組織のメンバーらを国外追放し、エルサルバドルが受け入れて巨大刑務所に収容しています。トランプ氏が言及した「ホームグロウン」はアメリカ人の犯罪者のことを意味するとみられ、アメリカ人をエルサルバドルに追放する考えを示唆したと受け取れます。

この発言の真意は定かではありませんが、トランプ氏は直後の首脳会談で「アメリカ人の犯罪者を国外追放のグループに含めたいが、そのためには法律を見なければならないだろう」と話しました。【4月15日 TBS NEWS DIG】
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「アメリカ人の犯罪者を国外追放のグループに含めたい」と明言していますので、今後、アメリカ人犯罪者もエルサルバドルの巨大刑務所に放り込み、二度とアメリカに戻れないようにする・・・・ことが検討されるようです。

【人権意識が希薄で、真実を捻じ曲げる事もいとわない政権によって決まる「犯罪者」 その先にあるのは・・・】
「犯罪者がいなくなるんだから素晴らしいじゃないか」(トランプ大統領)に賛同する方も少なくないとは思いますが、誰が「犯罪者」かを決めるの法律ですが、その法律を運用するのは政権です。

特に、政治的犯罪については運用次第です。

トランプ政権はハーバード大学に対し補助金打ち切りをてこに、学内での「反ユダヤ主義」の取り締まり強化や、DEI(多様性・公平性・包括性)の理念が反映されたすべての教育プログラム、入学選考基準、職員採用方式などを「能力本位」に見直すよう要求しており、これを拒否したハーバード大学との対立が鮮明になっています。

「反ユダヤ主義」やDEIへの対応の適否は政権が判断しますが、そうしたものが(今は補助金が出るか否かですが)将来「犯罪」扱いになる可能性もあります。政権が嫌う考えの者、政権に従わない者は「犯罪者」扱いされる危険性も

政権の意に沿わない者は、反政府的言動の「犯罪者」扱いに。そしてエルサルバドル送りに。

司法によって保護措置がとられていた者を手違いで強制送還しても、戻す考えはなく、「いつまでこの質問に答えなくてはいけないんだ。犯罪者がいなくなるんだから素晴らしいじゃないか」。将来的には移民だけでなくアメリカ人犯罪者も。犯罪かどうかの判断は政権次第。

こうした発想の根底にあるのは政権の判断を優先させた人権の軽視です。
トランプ大統領とその政権には「人権・民主主義の視点から、例え大統領であってもやってはならないことがある」という考えが希薄です。 更に言えば、真実を軽視し、都合のいいように捻じ曲げるのもトランプ大統領と政権の特徴です。

言い過ぎとの批判を覚悟で言えば、そうしたトランプ氏の発想の先にあるのは、天安門で政権に抗議した若者らを「暴徒」として戦車で踏みつぶした中国、忌み嫌うユダヤ人をガス室送りにしたナチス・・・・があるように思えます。

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アメリカ  トランプ政権下で変質する民主主義

2025-04-12 23:02:24 | アメリカ

(【2月11日 日経】)

【アメリカ民主主義の到達点でもあったDEIを否定するトランプ政権】
<DEIを否定し、移民を強制送還するトランプ政権。彼らがやっているのは、アメリカの民主主義の「土俵」を造り変える壮大な実験だ>【4月11日 江藤洋一氏(弁護士)「トランプが始めた、アメリカ民主主義を作り変える大実験の行方」 Newsweek】

****多様性、公平性、包括性(diversity, equity, and inclusion、DEI)****
DEIは、すべての人々、特に歴史的に過小評価されてきたグループやアイデンティティや障害に基づいて差別を受けてきたグループのフェアな扱いと完全な参加を促進するための組織的なフレームワークである.

「多様性(ダイバーシティ)」とは、組織的な職場の中に、アイデンティティやアイデンティティ政治などの意味でさまざまな種類の人が存在することを意味する。アイデンティティとしては、ジェンダー、民族性、性的指向、障害、年齢、文化、社会階級、宗教(英語版)、意見などが含まれる。

「公平性(エクイティ)」とは、公平な報酬や実質的な平等)など、公平性と正義の概念を意味する。より具体的には、公平性には通常、社会的格差や資源の配分へ焦点を当てることが含まれ、「歴史的に不利な立場にあった集団に意思決定権限を与えること」や、「その人固有の状況を考慮して、最終的な結果が平等になるようにするため、個人に応じて扱いを調整すること」も含まれる。

「包括性(インクルージョン)」とは、帰属意識と一体感という意味で「すべての従業員が自分の声を聞いてもらえていると感じる」経験を生み出す組織文化を構築することを意味する。【ウィキペディア】
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トランプ大統領は就任直後、連邦政府機関などでのDEIプログラムを廃止する大統領令に署名し、連邦政府や軍の人事においても反DEIの観点から行い、民間企業にも同調を求めています。

****トランプ氏「DEIはデマ!」、アップルに多様性施策廃止求める****
トランプ米大統領は26日、米アップルに対し、「多様性、公平性、包摂性(DEI)」に関する方針を廃止するよう求めた。同社の株主は前日25日の年次総会での投票で、DEIを引き続き推進する経営陣の方針を承認した。

トランプ大統領は自身の交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、アップルはDEIルールを調整するだけでなく、廃止すべきだと主張。「DEIは米国に悪影響を及ぼしてきたデマだ。DEIは終了だ!」と大文字で書き込んだ。

トランプ氏は就任直後、連邦政府機関などでのDEIプログラムを廃止する大統領令に署名し、民間企業にも同調を求めている。

アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は25日の年次総会で、同社の「強み」は最優秀の人材を採用して彼らに協力の文化を提供することに由来していると強調。ただ、新たな展開に応じて何らかの調整を行う可能性についても示唆した。

DEI施策を巡っては、メタ・プラットフォームズや、米グーグルの持ち株会社アルファベットなど米大手企業が、トランプ大統領の返り咲きを機に相次いで取り組みを後退させている。【2月27日 ロイター】
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****米政府契約維持したければDEI廃止を-トランプ政権が仏企業に迫る****
米政府と請負契約を結んでいるフランス企業は、多様性・公平性・包摂性(DEI)の慣行をやめるよう要求されていると仏経済紙レゼコーが28日報じた。

同紙によると、パリの米国大使館は仏企業に対し、米政府契約へのアクセスを維持したければ「積極的差別」の慣行を廃止するよう求めているという。

仏財務省の当局者は報道について電子メールでコメントを寄せ、こうした動きは「米政府の価値観を反映したもので、われわれの価値観ではない」と指摘。ロンバール経済・財務相が米財務長官にそう説明すると付け加えた。(後略)【3月31日 Bloomberg】
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反DEIはトランプ大統領個人だけでなく同氏を支持する人々の間に強く存在する傾向です。
DEIは白人・男性・性的多数派などへの逆差別であり、能力主義を損ねるものであり、エリート層のリベラル思想である・・・その結果、自分たちが冷遇されている、自分たちの文化が危うくされているとして、強い反感が持たれています。

****なぜトランプ支持者の右派がDEIに反対しているのか?****
一方で、トランプ支持者の多くは、DEIに対して強い反発を示している。その理由の一つは教育機関、政府、企業の一部のDEIプログラムが、人種・性別・性的指向といった要素を基準に特定のグループを優遇することで、DEIが「逆差別」と捉えられていることにある。

特に保守派の間では、DEIが「能力主義」を損なうと考えられており、特定の人種や性別に優遇措置を与える不公平な政策として認識されている。

また、政府や大企業がDEIプログラムを推進することは、個人の自由や経済的競争力を損なうものだという主張もある。

トランプ支持者の間では、DEIが「エリート主義」と結び付けられ、大学や大企業などの特定のリベラルな層による価値観の押し付けとみなされている。特に白人労働者階級の間では、「自分たちが冷遇されている」という感情が高まっており、それがDEIに対する反発の大きな要因となっている。【3月23日 「DEIと政治的対立~米国での反DEIの動き」 Think ESG】
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しかし、(行き過ぎ云々の議論は別にして)本来DEIはアメリカの自由と民主主義の到達点であり、その象徴であったと思います。その放棄はアメリカ民主主義の根幹を大きく変質させるもののようにも思えます。

****関税より根深く、影響を残すトランプの政策****
実はもう一つ気にかかる点は、トランプ氏がDEIを放棄したことだ。DEIこそアメリカの自由と民主主義の象徴だ。

(中略)民主主義社会は、尊厳を有する人の平等によって成り立つ。LGBTQやその他のマイノリティーが偏見や差別によって苦しめられることから解放されなければならない。DEIは公正な社会の在り方としてそのことを象徴的に表現している。彼らに関し、偏見も特権もあってはならない。それがアメリカの自由と民主主義の到達点だったはずだ。

だが、トランプ氏はこのDEIを放棄するという。トランプ政権は、アイビー・リーグの大学への補助金の支給を留保し、大学の内情を調査しているという。その理由が反ユダヤ主義だと言われている。

よくよく聞けば、イスラエルのガザ攻撃に対する反対デモが学内であった、という程度のことらしい。少なくとも現時点ではその程度のことしか分かっていない。学内のデモを取り締まれば、補助金の支給を再開するとでもいうつもりだろうか。馬鹿げた話だ。

イスラエル(ユダヤ人)にだけ肩入れすることは多様性(diversity)を欠く。それを補助金の支給打ち切りをちらつかせて行うことは公平(equity)な処置ではない。そうしたデモを包摂する(inclusion)ことこそがアメリカの魅力だったはずだ。アイビー・リーグの関係者がマッカーシー旋風以来ことだと危機感を募らせていることもよく理解できる。

DEIは民主主義的な意思決定に基づく政策選択の問題に尽きるものではない。それはアメリカがかつて苦しみ、内戦(南北戦争)にまで発展した奴隷制度の廃止が単なる政策選択の問題でないのと同様である。

DEIは政策に関する党派の論争からは中立的だ。DEIの放棄は、アメリカの自由と民主主義をひどく傷つけるだろう。その意味において、民主主義そのものが実験されている。

この実験は、トランプ氏の関税政策ほど耳目を集めないかもしれないが、実はもっと根深く、その影響を後世に残すだろう。【4月11日 江藤洋一氏(弁護士)「トランプが始めた、アメリカ民主主義を作り変える大実験の行方」 Newsweek】
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【選挙の仕組みを自身に有利な方向に変える動きも】
選挙を行うことが民主主義・・・という訳ではないですが、民主主義を実現・維持する方法が公正な選挙です。

トランプ政権は中間選挙に向けてこの選挙の仕組みを自分たちに有利なものに作り変えようとする動きが見れます。
そうなると上記の反DEIに見られるようなその本質においても、選挙という具体的方法においても「アメリカは民主主義国と言えなくなる」という危険性があります。

****「夏の終わりまでにアメリカは民主主義国と言えなくなる」その理由は…【報道1930】****
トランプ大統領は考えを変えたのか…“相互関税”の発動を突如90日間延期した。株価や米国債の価値低落が影響したかのように見えるが、中国などにはさらに報復の報復として125%という高い関税を課した。

GDP1位と2位の国同士のチキンレースの様相は世界経済に悪影響を与えインフレが進むのは間違いない。さすがにアメリカ国民も気づいたのか…最近トランプ人気に陰りも見えて来た。

「共和党候補がいくら選挙区に尽くしてもこの“トランプ・ペインン・トレイン(=痛みの列車)”から逃げられない」
“相互関税”を一端は延期したもののあくまで延期。90日後に再び復活することもある。トランプ氏が“改心”するとしたら何なのかを考えてみた。

笹川平和財団 渡部恒雄 上席フェロー
「中間選挙で民主党に過半数取られたら、弾劾を受ける場合があるわけで、それだけは避けたいんだろうと私は思う。やはり保身が第一に来るので…。この先かなりトランプ氏が憲法違反のようなことをやる可能性があるので…。そういうのに対して下院で過半数を民主党が持ってれば弾劾決議できるわけですよ。それをトランプ氏は一番気にするんじゃないかと…」

トランプ氏が最も心配しているのは選挙。その心配を煽るような事態がここのところ相次いでいる。先月ウィスコンシン州であった最高裁判所の判事選挙に肩入れしていたのはイーロン・マスク氏。地元の産業であるチーズの被り物まで身につけ盛り上げた。被り物だけではない。金も70億円を使ったという。共和党側の候補を支援する人の中から2人に1億5000万円を渡すキャンペーンも行った。

しかし結果は民主党側が10ポイントの差で勝利。この選挙の2日後トランプ氏はマスク氏が政権を去ることを匂わせ、逆にマスク氏は「欧州の関税はゼロにすべき」と発言した。

そして重要州ペンシルベニア州でも。州議会上院議員選挙で136年ぶりに民主党の候補者が勝った。トランプ政権の勢いが陰りを見せていることの象徴とも言われている。

(中略)“関税”というトランプ氏の政策が民主党の追い風になるという見方は渡部恒雄氏もうなずく。

笹川平和財団 渡部恒雄 上席フェロー
「物価高、インフレは民主党にとっては二重にアピールできる。“トランプ氏はウソをついた”これが一つ。それから“現職の政権がやってることは間違っている”とも言える。物価は所得が低い人ほど、株価は所得が高い人ほど影響を受けるんです」

「トランプ大統領が『この命令によって民主党支持者の投票を抑制できる』と信じているとすれば、それは民主主義にとって深刻な問題だ」
選挙に絶対負けたくないトランプ氏が手をつけた“憲法違反”かもしれないことがある。ある大統領令への署名だ。それは“選挙の有権者登録に市民権の証明書類の提示を義務付ける”というものだ。戸籍が整備された日本では理解しにくいが、この“市民権の証明”というのがアメリカでは決して簡単ではない人が少なくないらしい。米選挙監視団体の訴訟部門担当者に話を聞いた。

『キャンペーン・リーガル・センター』ブレント・ファーガソン氏
「パスポートを持っているのはアメリカ人の半分で、残りの半分は容易に取得できない人たちだ。今回の大統領令ではほかの書類(出生証明書など)も市民権の証明として認められる可能性がある。但しその基準があいまいなのだ…(中略)本質的には(パスポートを持っていない人が多い)民主党支持者が投票しづらくなるようにするものだ。トランプ大統領が『この命令によって民主党支持者の投票を抑制できる』と信じているとすれば、それは民主主義にとって深刻な問題だ」

市民権の証明書類をすぐに用意できない人は有権者の9%(約2000万人)に上るという。
トランプ氏の言い分はこうだ。 「この国は偽の投票や不正な選挙のせいでとても病んでいる」

確かに不法移民など本来投票権を持たないものが不正に投票した事例はあるが、選挙結果が変わるほどの数ではない。

この事態についてかつて日本外国特派員協会の会長を務めたジャーナリスト、ジェームズ・シムズ氏は言う…。
ジャーナリスト ジェームズ・シムズ氏
「私はパスポートを提示して投票してます。大昔は電気料金の請求書を見せて住んでることが証明できればよかった…(中略)これは有色人種特に黒人の票を抑えたい。黒人はほとんどが民主党に入れますから、それを抑えたい。…例えば黒人は病院で生まれていない場合がある。その場合出生証明書はない。これは人種に対する劣悪な政策です。投票権を奪いたいという…」

同志社大学の三牧聖子教授は、不正選挙はなくすべきなのでトランプ氏の言い分は正しいと言いつつ、この大統領令は本質的には権力闘争だと話す。

同志社大学 三牧聖子教授
「女性の間でも姓が変わった場合どうなるんだ(出生証明書と)IDが違うとか…。7000万人ほどが姓を変えている。この法律では、許可を出した側の罰則も重いんです。なので管理する側もちょっとでも怪しい場合はダメにしちゃう。実際に共和党が握っている選挙区では投票箱の数を減らすとかドライブスルーをなくすとか…」

つまり生活に余裕のある共和党支持者には関係ないが、投票所が遠くなれば投票に行けない人が民主党支持者には多くいるということらしい。

番組のニュース解説、堤氏は証明書類が免許証なのか出生証明なのか何なのかを明確化していないことが問題だと指摘する。

国際情報誌『フォーサイト』元編集長 堤伸輔氏
「明確化しないということは現場の恣意的な運用を認めてしまう。例えば投票所にいる人がどちらかの党の支持者であれば、非常に恣意的運用が偏ってしまう。だから非常に差別的…」

「夏の終わりまでにはアメリカはもはや民主主義国家とは言えなくなる」
強権を発動し続けるトランプ大統領。イエスマンで固めた人事によりトランプ氏を止める人もいさめる人もいない。まるで専制国家だ。スウェーデンの調査機関は毎年、民主主義についての調査を行っている。最新の調査報告書ではアメリカの民主主義の低下が懸念されている。その調査機関の代表はこう表現している。

『V-Dem』創設所長 リンドバーグ氏
「アメリカの政府体制は来年の報告書では間違いなく格下げになるだろう。現状のペースで行くと夏の終わりまでにはアメリカはもはや民主主義国家とは言えなくなるだろう」

夏の終わり…、それほど先のことではない。(BS-TBS『報道1930』4月7日放送より)【4月11日 TBS NEWS DIG】
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【すでに始まっている武力衝突を伴わないハイブリッド内戦 トランプ政権の言葉狩りはその延長線上に】
“民主主義の低下”にとどまらず、中間選挙での敗北が明らかになり、弾劾も視野に入ったとき、非常事態宣言のもとでトランプ支持州の州兵を動員した軍事行動で反トランプ州を制圧するといった文字通りの「内戦」の可能性も・・・と言えば陰謀論的な妄想と笑われるだけでしょうが、そんな妄想を捨てきれない危うさをトランプ政権には感じてしまいます。(白人比率は今後50%を割り込んで低下します。やるなら今でしょう)

****トランプ政権下での言葉狩りで「過去の歴史は改ざん」...アメリカの新しい現実を理解しよう****
<アメリカでDEI(多様性、公正性、包括性)を中心とした言葉が減っている。新しい文書に記載されないだけではなく、すでに公開されている過去の文書から削除されている>

トランプ政権によってもたらされる変化は激しく、かつ広範な分野に及んでおり、おそらくトランプ本人もどのような変化が起きているのか把握できていない。

この変化の多くは2021年頃には始まっており、その後じょじょに拡大してきたもので、トランプがはじめたものではない。トランプはじょじょに進んでいた変化を大きく加速させることで、「なにかが起きている」ことをわかりやすく示した。 

アメリカで進む言葉狩り 
アメリカでDEIを中心とした言葉が減っている。新しい文書に記載されないだけではなく、すでに公開されている過去の文書から削除されているのだ。 たとえばニューヨーク・タイムズの記事によると、トランプ政権発足後、政府機関の文書が数千回にわたって修正され、5千ページ以上が書き換えられた。

対象となった言葉は、「LGBTQ」「feminism」「inclusive」といったDEIに関係したものが多いが、一般的な「women」や「Black」まで対象となっていた。 さらに人種差別や気候変動に関するものなども言葉狩りの対象となっていた。 

トランプ政権下での言葉狩りの対象とほぼ同じテーマの書籍が図書館や教育現場から排除される事態が2021年から始まっており、その中心になっていたのはMoms for Libertyという組織である。 

文字通り女性の組織なのだが、実際には共和党やBreitbartあるいはTucker Carlsonなどと連携して反主流派の主張を広げていた。

その活動の一環として奴隷制度に関する話題を教育現場で扱えないようにしたり、図書館からワクチンや人種差別、LGBTQに関する書籍を排除したりしていた。 (中略)

こうした前史を踏まえると、トランプ政権が進めている言葉狩りがその延長線上にあることがわかる。 アメリカは2021年から武力衝突を伴わないハイブリッド内戦に突入しており、言葉狩りは内戦を象徴する活動のひとつだ。

内戦は2023年にピークを迎え、2024年のトランプ再選(反主流派の政権奪取)をもって内戦は掃討戦へと変わってきたように見える。 

こうした変化を推し進めているハイブリッド内戦の主役はいわゆる反主流派だ。一般的に反主流派はLGBTQを始めとするDEIに対する嫌悪と攻撃、反ワクチンや陰謀論などの反科学的主張、主流メディアや左派への反感を特徴としており、明確なイデオロギーは存在せず、その時々に会わせて主張を変えたりする。 

たとえば、コロナ禍においては反ワクチン、反ロックダウンを主張していた人々は、ロシアのウクライナ侵攻の際に親ロシア、反ウクライナの主張を始めた。極右や白人至上主義にもつながるものだが、その支持層ははるかに多いと推測される。 

民主主義国の多くで反主流派の活動が活性化しており、政治や社会に大きな影響を与えている。日本も例外ではないことは近年の選挙を見ればわかる(日本の場合は独自の要素も多いが)。 一貫した主張やイデオロギーはないものの、こうした勢力の台頭は目や耳に入ってくる言葉を変容させ、認識される現実を変えていく。(後略)【4月9日 一田和樹氏 Newsweek】
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アメリカの対外支援停止で苦慮・混乱する支援現場

2025-04-10 23:00:19 | アメリカ

(イエメン・ホデイダ南部の仮設キャンプで、配給所に水をくみに行く子ども(2025年2月19日撮影)【4月10日 AFP】)

【強まる中国の存在感 米の影響力は低下】
アメリカ・トランプ大統領の対外支援停止については3月27日ブログ“アメリカの対外支援停止の深刻な影響 中国などの肩代わりは可能か?”でも取り上げましたが、事態は改善していません。

ミャンマー大地震への対応も、米国際開発局(USAID)の実質的解体によって対応が遅れたとの批判もありました。こういう状況が続けば、支援の遅れ・不足だけでなく、アメリカにとっても影響力低下を招くことにもなります。

****ミャンマー大地震で中国が存在感、影薄い米国はトランプ氏の政策響く****
ミャンマーで3月28日にマグニチュード(M)7.7の大地震が発生すると各国が支援の提供や救助隊の派遣を行ったが、中でも特に強い存在感を発揮しているのが中国だ。救助隊の活躍ぶりがソーシャルメディア上で拡散し、政府も多額の支援を行う方針を早々に打ち出した。

一方でトランプ政権の連邦政府合理化策により、対外支援を担う米国際開発局(USAID)がまひ状態に陥っている米国は影が薄く、支援に熱心な中国との差が際立っている。

中国はミャンマーの軍事政権を支持しているため、これまでソーシャルメディアでは否定的なとらえ方をされることが多かった。しかし今回の大地震では青とオレンジの作業服を着た中国の救助隊の活動を映した動画がネット上で広がり、中国への見方が大きく変化している。

中国はこれまでに1億元(約1376万ドル)相当の支援物資を提供すると約束。テントや毛布、救急キットを含む第一陣の援助物資が3月31日にヤンゴンへ到着したという。

一方、かつては世界最大の人道支援国だった米国が申し出た支援は200万ドルと控えめ。米政府は3人の調査チームをミャンマーに派遣すると発表したが、軍事政権によるビザ発給の問題で到着が遅れている。

ミャンマーの大地震における米国の存在感の薄さから、米国はトランプ氏の政府合理化策によって災害対応能力が著しく低下していることが浮き彫りになったと、現職および元米政府高官3人がロイターに語った。

USAIDの人道支援部門のトップを務めたマーシャ・ウォン氏は、USAIDがきちんと機能していれば、都市型捜索救助隊(USAR)を48時間以内にミャンマーへ派遣することができたはずだと指摘。

実際には対応を調整するはずのスタッフの大半が解雇され、外部の協力機関も契約を打ち切られてしまったため「(米国の)不在が、他の国や組織が入り込む余地を生み出してしまった」とほぞをかんだ。

元駐ミャンマー米国大使のスコット・マーシエル氏も、ミャンマー軍事政権が大規模な米軍チームの受け入れを許可した可能性は低いとしつつも、予算削減がなければ「より迅速かつ強力な対応」が可能だっただろうと語った。

<主導権握る中国>
トランプ米政権はミャンマーの大地震発生から数時間後に、計画通りUSAIDの残りの職員のほぼ全員を解雇し、海外でのミッションを打ち切ると議会に通告した。

一方、中国は医療従事者、地震専門家、野戦病院の職員、救助犬を含む緊急援助隊を現地に派遣。中国隊は特にマンダレーやザガインなど、軍事政権の支援がほとんどとどかない地域での活動が目立った。

さらに中国は国営メディアを駆使して救助活動を発信。英語放送を行う国営の中国国際テレビ(CGTN)は、災害の震源地であるマンダレーから生中継でリポートを行う数少ない海外メディアの一つとなった。

さらに中国は救助隊の一部が雲南省から陸路により、反軍政勢力が支配する地域を通過してミャンマーに入った。アナリストのサイ・トゥン・アウン・ルイン氏は、中国が空路だけでなく陸路で救援隊を派遣する決定を下したことから、軍政と反政府勢力の双方に影響力を持っていることがうかがわれると分析。

中国は事実上、反政府勢力と軍政の支配地域をまたぐ「人道回廊」を開いたように見える形で「ソーシャルメディア上で反中感情が大幅に低下している」と付け加えた。

<米の影響力低下>
ミャンマーは中国とインドの間に位置し、両国にとって戦略的に極めて重要な国だ。米政府もミャンマー軍事政権が2021年にノーベル平和賞受賞者である民主化指導者アウンサンスーチー氏率いる民主的な政府を転覆させるまでの短い期間はミャンマーと良好な関係にあった。

ミャンマーの軍事政権は反政府勢力を弾圧し、内戦が激化しているが、軍事政権はなお中国政府の支持を受けており、反体制派の多くは軍事政権の後ろ盾となっている中国を否定的に捉えている。シンガポールのシンクタンク、ISEAS-ユソフ・イシャク研究所が2024年に実施した調査では65%が中国を信用していないと回答した。

米政府は人道支援や民主化運動への資金提供を通じてミャンマーで影響力を維持してきたが、トランプ氏による最近の予算削減でそうした力はほぼ消滅した。

マルシエル元駐ミャンマー米国大使は、ミャンマーとの関係は米国民にとっても重要だと指摘。米国が国家レベルの課題に対して国際的な支持を得られるかどうかは、その影響力の大きさによって決定的に決まるからだと理由を説明した。【4月5日 ロイター】
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【米国などの資金提供減少で5800万人が極度の食糧不足に陥る危険】
「アメリカ第一主義」のトランプ政権からすれば、「どうしてアメリカのカネを世界の人道支援などに使わなきゃいけいのか?」という不満があります。

****世界の人道援助、米はもはや大半負担せずと国務長官 「不公平」****
ルビオ米国務長官は4日、米国は世界の人道援助の大部分をもはや負担しないと述べ、他国も貢献すべきだと訴えた。

ブリュッセルで記者団に「われわれは世界の政府ではない。他国と同様に人道援助を提供し、最善の努力をする」と述べる一方、「他のニーズとのバランスを取る必要がある」とも強調した。

世界の人道援助の6─7割を米国が負担することを期待するのは公平ではないとも指摘。世界には援助に貢献すべき「豊かな国」が多数あるとし、中国やインドを名指しした。

ミャンマーで3月28日に発生した大地震を受けて米国が発表した支援は200万ドルと控えめな額にとどまった。3人の調査チームを現地に派遣することも発表したが、軍事政権によるビザ発給の問題で到着が遅れている。以前は津波や地震など世界中の災害に対し、熟練の救助要員を迅速に派遣してきた。

ルビオ氏は、対外支援を担う米国際開発局(USAID)が実質的に解体されたため地震への対応が遅れたとの批判を否定した。【4月7日 ロイター】
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アメリカがこれまで人道援助の多くを担ってきたのは、単に慈善事業という訳でもなく、そうした支援活動によって世界のリーダーとしてのアメリカの影響力を維持・強化するというソフトパワー強化のメリットがあったからでしょう。

仮に、そうしたソフトパワーにはもはや関心がないということであれば、各国が応分の負担を行うということで、もしアメリカ依存に過ぎる部分があればそこは各国で穴埋めするというのが筋でしょう。

ただ、当然ながらアメリカにも世界最大の経済大国として応分の負担をしてもらう必要があり、対外支援にはかかわらないという対応は困ります。

また、仮にそういう資金分担の変更を行うにしても、調整のための期間は責任ある対応が求められます。

****国際援助金減少で食糧難5800万人 国連世界食糧計画が警告****
国連世界食糧計画(WFP)は28日、米国などの資金提供が滞る中、緊急の食糧援助資金が確保されない限り、世界で5800万人が極度の食糧不足に陥る危険があると警告した。今後数カ月、アフリカや中東、アジアなどでの緊急支援活動を継続するには24億9000万ドルが必要だという。

WFPは、2025年の支援金が前年比で40%減少しており、パレスチナ自治区ガザ、スーダン、シリア、コンゴなど世界で危機にある28地域で食糧供給事業が危機に直面していると説明した。

WFPの幹部ラニア・ダガッシュカマラ氏は「最も危機に瀕している地域を優先し、食糧配給の効果を最大限にするよう努めているものの、命に関わる資金不足の崖が近づいている」と強調した。

WFPによると、紛争や経済問題、気候変動によって深刻な食糧不安にさらされているのは世界で3億4300万人。25年はこのうち1億2300万人の支援を目指しているが、約半数の食糧支援ができなくなる恐れがあるという。

WFPのウェブサイトによると、3月24日までに受けた25年の資金は15億7000万ドルにとどまる。24年はWFPが求めた211億ドルに対し、提供された支援金は97億5000万ドルだった。

24年に44億5000万ドル拠出した米国は、25年は現時点でその10%を下回っている。防衛力増強に向けて対外援助を削減すると発表した英国なども前年の拠出額を下回って推移している。【3月29日 ロイター】
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アメリカ以外では欧州が人道支援では大きな役割を果たしてきましたが、トランプ大統領による国際秩序変革に伴って欧州各国ともアメリカ依存を脱して防衛力強化を迫られており、その防衛費増額のしわ寄せが人道支援削減に及ぶことが懸念されます。

【米国際開発局の実質的解体の影響か、「手違い」による混乱も】
****トランプ政権がWFP(世界食糧計画)への資金提供を一部打ち切り WFP「飢餓に苦しむ人への死刑宣告に等しい」****
アメリカ・トランプ政権がWFP=世界食糧計画の複数の支援プログラムへの資金拠出を打ち切ると通告しました。WFPは「飢餓に苦しむ人への死刑宣告に等しい」と見直しを訴えています。

WFPは7日、「アメリカ政府から14か国で行われている緊急食糧支援への資金提供を打ち切るとの通告があった」と明らかにしました。「もし打ち切りとなれば、極度の飢餓に苦しむ何百万人もの人への死刑宣告に等しい」と強調し、見直しを求めています。

アメリカ国務省 ブルース報道官
「WFPと連携しているUSAID(政府開発局)の支援の85%は継続していて、活動が続いている」

アメリカ国務省の報道官は、資金提供の打ち切りは「限定的だ」と強調し、打ち切りを決めたイエメンとアフガニスタンでの活動では「資金がテログループに利益をもたらしているとの懸念がある」と指摘しました。

アメリカ政府は外国などに人道支援を行うUSAID=政府開発局の事業の83%を打ち切ったと発表していて、世界の支援活動への影響が懸念されています。【4月9日 TBS NEWS DIG】
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USAIDの事業の83%を打ち切ったというなかで「WFPと連携しているUSAID(政府開発局)の支援の85%は継続していて、活動が続いている」というのは本当でしょうか? トランプ政権の発表する数字はデマ・捏造が多いので・・・

今日世界を騒がせた追加関税の90日間延期の突然の発表のように、ことの重要性を十分に考慮しない「拙速」も目立ちます。

上記の「アメリカ政府から14か国で行われている緊急食糧支援への資金提供を打ち切るとの通告があった」という件も、すぐに「手違い」があったとの変更訂正がなされています。

****米国務省“いくつかの国への支援再開” WFPへの14か国の支援打ち切り通知…一部は「手違い」****
WFP=世界食糧計画が、アメリカ政府から14か国への支援の打ち切りを通知されたと明らかにしたことについて、アメリカの国務省は8日、いくつかの国への打ち切りは手違いによるもので、再開させたとしています。

WFPは、「アメリカ政府による14か国への資金援助と緊急食料支援の打ち切り通告を深く憂慮する」としたうえで、「飢餓に直面する何百万人もの人々への死刑宣告に等しい」とSNSに投稿していました。

ロイター通信によりますと、これについてアメリカの国務省は8日、「いくつかの国への支援が手違いで停止されたが、続けるべきものについては元に戻した」としています。

レバノン、シリア、ソマリア、ヨルダン、イラク、エクアドルの少なくとも6か国への支援は再開されるということですが、アフガニスタンやイエメンについては打ち切られたままになっています。

WFPのシンディ・マケイン事務局長は「(支援停止は)飢餓をさらに深刻化させ、世界の安全が大きく損なわれる」と懸念を示しています。【4月9日 日テレNEWS】
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多くの人命がかかっている件をあまり軽々に扱ってほしくないものです。

米国際開発局(USAID)のルウィン副局長代行は“電子メールで「支援について行ったり来たりして申し訳ない」と職員に謝罪し、「私の失敗であり、私が責任を取る」とした。”【4月9日 ロイター】

このあたりも米国際開発局(USAID)が実質的に解体されつつあることによる混乱でしょう。

現在アメリカがフーシ派を攻撃しているイエメンでの事業は打ち切られたままというのはわからないではないですが、イエメンの実情は厳しく、「じゃ、どうするのか?」という問題も。

アメリカがイエメンには支援できないなら、他の国での支援を増やして、浮いた分をイエメンに回すとか・・・。

****米援助削減でイエメンに人道危機拡大の懸念 アムネスティ****
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは10日、米国がイエメンへの対外援助を大幅に削減したことにより、同国で深刻な人道危機が拡大する恐れがあると警告した。現在、イエメンでは人口の半数以上が生存のための支援を必要としている。

ドナルド・トランプ政権は1月、対外援助事業の見直しを理由に資金の提供を停止。その後、米国際開発庁の事業のうち、実に83%が打ち切られることが発表された。

アムネスティは、米国が長年イエメン最大の人道支援国であったことから、援助削減によりイエメンの人道危機が深刻化しかねないと指摘。援助関係者によれば、栄養失調の子どもへの医療、妊産婦支援、その他の保護サービスが提供できなくなっているという。

さらに、暴力を受けた女性や少女を保護するための避難施設も数十か所が閉鎖されたと報告された。

アムネスティでイエメン問題を担当するディアラ・ハイダル氏は、「米国が突然かつ無責任に支援を打ち切ったことで、イエメンで最も弱い立場にある女性、少女、子ども、国内避難民らが壊滅的な影響を受けている」と述べ、「この決定が撤回されなければ、数百万人が必要不可欠な支援を受けられなくなる」と訴えた。

アムネスティによれば、米国はイエメン向け人道支援の約半分を担っており、2024年だけで7億6800万ドル(約1100億円)を拠出していた。

一方で、米政府は紅海におけるフーシ派の商船攻撃への対抗措置として、3月15日以降、同組織の拠点に対する空爆をほぼ毎日のように実施している。 【4月10日 AFP】AFPBB News
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人道支援だけでなく、自由な情報が得られない強権支配国家向けに情報を届ける報道機関もカット。

****トランプ政権 政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア」の資金を大幅削減 身の危険に直面する記者たち 母国に帰国すれば逮捕の危険****
猛烈な勢いでコストカットを進めるアメリカのトランプ政権。世界中で「報道の自由」を支援してきた報道機関も資金を大幅削減されようとしています。

トランプ大統領
「たくさんの金が無駄遣いされ、非常に偏ったものの見方をしている。必要ないものだ」

トランプ大統領が「不要」と指摘したのは、アメリカ政府系の報道機関。国内だけではなく、「報道の自由」が制限される国にニュースを届けてきました。ワシントンに本部があるRFA=「ラジオ・フリー・アジア」は今、閉鎖の危機にあります。(中略)

ラジオやインターネットで配信するニュースには、中国や北朝鮮などアジア各国から毎週およそ6000万人がアクセスしています。高い支持の一方で、年間91億円の予算がすべて連邦政府の助成金だったことから、トランプ大統領の歳出削減の対象になったのです。(後略)【4月8日 TBS NEWS DIG】
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トランプ関税  インフレ・景気後退を招けば自身の政治的リスクに 自滅? 再びテフロンぶり発揮?

2025-04-03 23:04:30 | アメリカ

(【4月3日 東海テレビ】)

【トランプ政権 国内評価は下がり気味】
「トランプ関税ショック」が世界中を駆け巡った1日でしたが、その話の前に最近のアメリカ国内のトランプ政権に対する国民評価について。

トランプ関税について中国、EU、あるいはその他の国(日本を含めて)が何を言おうがトランプ大統領は聞く耳を持たないでしょう。トランプ関税の今後を決めるのはアメリカ国内の政治・経済情勢しかありません。

****トランプ氏支持率2期目で最低の43%、関税や情報管理で厳しい評価****
トランプ米大統領の支持率が43%と、2期目の政権になって最低に落ち込んだことが最新のロイター/イプソス調査で分かった。関税政策への懸念や、政権の情報管理のあり方が疑問視されている点などが影響したもようだ。

調査は3月31日から4月2日まで全米の成人1486人を対象に実施。トランプ氏の支持率は、3月21−23日の前回調査に比べて2ポイント下がった。大統領復帰直後は47%だった。

第1期政権での最低支持率は2017年12月に記録した33%。

トランプ氏の経済運営を評価した人の割合は37%、生活費高騰問題に関する対応を認めた人は30%で、いずれも少数派にとどまった。

全体の52%は、輸入自動車・自動車部品の追加関税発動が身近な人に打撃をもたらし、関税引き上げはメリットより弊害が大きいと答えた。

複数の政権幹部が誤って記者を招いた通信アプリのチャットグループでイエメンへの空爆計画を議論していたとされる問題については、約74%(民主党員の91%、共和党員の55%)が「無謀」な行動だと批判し、70%はこの件でトランプ氏も責任を負うべきだとの見方を示した。

トランプ氏の外交に肯定的な評価をした人は前回の37%から34%に下がった。移民政策への肯定的な評価の割合は48%だった。【4月3日 ロイター】
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総じて政権評価は、関税も含めて、厳しい声が増えつつあるようです。そうした状況もあって、注目されていたのがウィスコンシン州最高裁判所判事を決める選挙。

今回の選挙はトランプ政権2期目の今後を占う「試金石」として注目を集め、トランプ大統領は投票日当日も自身のSNSで保守派候補の勝利を呼び掛けました。

イーロン・マスク氏はリベラル派の判事に「反対する嘆願書」に署名した有権者全員に100ドル、約1万5000円を提供すると明らかにしていました。更に、保守派候補を支援する有権者2人に100万ドル=およそ1億5000万円の小切手を贈るなど選挙運動もヒートアップ。(日本では考えられない選挙活動ですが、アメリカではOK 合法・違法以前に、有権者の反感を買う・・・というのが日本的発想)

“マスク氏が最高経営責任者(CEO)を務める電気自動車(EV)大手テスラは、自動車メーカーが販売店を持つことを禁止する規則の例外を認めないウィスコンシン州に異議を唱えている。この訴訟は、最終的に同州最高裁に持ち込まれる可能性が高い”【3月22日 AFP】という利害関係も。

****ウィスコンシン州判事選、リベラル派が勝利 トランプ氏らに痛手****
米ウィスコンシン州最高裁判所判事を決める選挙が1日実施され、リベラル派のスーザン・クロフォード氏が勝利した。同最高裁はリベラル派が4対3で多数派を維持することになり、トランプ大統領や、保守派候補を支持した実業家イーロン・マスク氏にとって敗北となった。

今回の選挙はトランプ政権に対する初期の信任投票とみられていた。

開票率75%の時点で、クロフォード氏は得票率55%と、保守派のブラッド・シメル氏(45%)をリード。シメル氏はクロフォード氏への電話や支持者への演説で敗北を認めた。(後略)【4月2日 ロイター】
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ウィスコンシン州は大統領選挙激戦州で、先の選挙ではトランプ氏の得票率が49.7%と、カマラ・ハリス副大統領の得票率48.3%を上回り勝利した州です。

一方、南部フロリダ州の2つの選挙区でも下院の補欠選挙が行われ、いずれも共和党の候補が民主党の候補に勝利しましたが、もともと共和党の強い地域。去年11月の下院選と比べると得票差は縮まっており、共和党は地盤とする保守的な地域で苦戦を強いられた格好です。【4月2日 テレ朝newsより】

【「トランプは、圧倒的な反証があるにもかかわらず、関税の力を信じている」 自滅か? 今回も危機を跳ね返すのか?】
でもってトランプ関税。 トランプ氏の言動が杜撰・不正確なのはいつもことですが、今回の関税も

****ペンギンにも関税? トランプ政権、無人島も対象に 米テレビは皮肉****
トランプ米政権が2日発表した10%の一律関税には、南極に近いオーストラリア領のハード島とマクドナルド諸島も含まれていた。アザラシやペンギンなどが生息する一方で人は住んでおらず、関税をかけようがない。ずさんな発表内容に、反発が広がりそうだ。

ハード島とマクドナルド諸島は、オーストラリア西部パースから南西4100キロ離れた場所にあり、1997年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録された。トランプ政権が2日示した資料で、10%の一律関税の対象に含まれていた。

米CNBCテレビは「無人の離島、トランプ関税の影響を免れず」と皮肉交じりに報じている。(後略)【4月3日 毎日】
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****韓国への相互関税25%ではなく26% トランプ氏発表と文書で異なる数値****
トランプ米大統領が韓国に25%の相互関税を課すと発表したが、ホワイトハウスが公表した大統領令の付属文書では26%と記載されていることが3日、分かった。ホワイトハウスは「大統領令に従うべきだ」との立場を示した。

トランプ氏が2日(現地時間)、相互関税を発表した際に手にしていた表には韓国に課す関税率が25%と表記されていた。ホワイトハウスがX(旧ツイッター)で公開した各国・地域の関税率でも韓国は25%と記載されている。

ホワイトハウス関係者は聯合ニュースの取材に対し、「調整された数値だ」とし、「大統領令の付属文書に表記された数値(26%)に従うべきだ」との認識を明らかにした。ただ、トランプ氏が発表した表と付属文書の数値が違う理由に関しては説明しなかった。

大統領令の付属文書には韓国のほか、インドやスイス、南アフリカ共和国、フィリピンなどもトランプ氏が手にしていた表より関税率が1%高く記載されている。(後略)【4月3日 聯合ニュース】
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関税率の算出根拠は明らかにされていません。

トランプ関税については、結局アメリカの消費者が負担することになる・・・・という否定的評価が一般的で、アメリカの物価上昇、景気後退の引き金を引くリスクがあります。

****得意げに発表した相互関税はトランプのオウンゴールになる****
<専門家も国民も、多くの輸入品に高関税を課せば、物価の安定という自らの公約に逆行する結果を招くと言っているのに、関税の力を過信するトランプは耳を貸さなかった>

ドナルド・トランプは2024年の大統領選で、経済を立て直し物価を引き下げることを公約に掲げ、ホワイトハウスへの復帰を果たした。しかし、2期目が始まってわずか2カ月で、その「勝ち筋」だった経済政策が逆に足かせとなりつつある。トランプの新たな通商政策が株式市場を揺るがし、消費者の間では物価上昇やインフレ長期化への懸念が広がっている。(中略)

(トランプ関税は)貿易戦争の激化と景気後退の引き金となる恐れがあり、トランプの経済運営に対する国民の信頼をさらに低下させる可能性があると、専門家や世論調査機関は指摘している。

ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディは「関税の大部分は、最終的にアメリカの消費者が価格上昇という形で負担することになる」と述べた。相手国が報復関税を課せば、アメリカ経済に悪影響を及ぼすだろうとも警告している。

「関税とその報復措置が重なれば、経済に深刻な打撃を与え、多くのシナリオで景気後退に突入する可能性がある」とザンディは分析している。

ホワイトハウスの庭で新たな関税措置の署名を行う前、トランプは「この政策は長年続いてきた不公平な貿易慣行を終わらせる経済的な独立宣言だ」と演説した。「アメリカ国民と納税者は50年以上にわたり搾取され続けてきた。もうそんなことは許さない」とトランプは強調した。(中略)

4月2日に発表されたマーケット大学法科大学院の世論調査によると、アメリカの成人の58%が「関税は経済に悪影響を及ぼす」と回答しており、約60%が「トランプの政策によりインフレが加速する」と考えていることが分かった。

CNN/SSRSの最近の調査でも、61%のアメリカ国民がトランプの関税政策を支持していないと回答している。
「選挙期間中、トランプは物価を下げ、インフレを抑えると何度も強調していた。国民の最優先事項は物価であり、それがトランプへの支持につながった」とマーケット大学法科大学院の調査ディレクター、チャールズ・フランクリンは指摘する。

しかし、最新の調査では「人々はトランプが本当にその公約を果たせるのか、ますます疑問を抱くようになっている」(中略)

トランプの関税政策は、すでに彼の支持率低下の一因となっており、共和党内にも動揺を広げている。それでも、彼はこの政策を堅持する構えだ。

「トランプは、圧倒的な反証があるにもかかわらず、関税の力を信じている」と、ワシントンのリバタリアン系シンクタンク「ケイトー研究所」の通商専門家、コリン・グラボウは批判する。「まさにオウンゴール、自滅的な政策だ」と彼は言う。【4月3日 Newsweek】
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不思議なのはこれほど広範な批判があり、世論もネガティブなのに突き進むトランプ大統領の姿勢です。よほどの確信・信念があるのでしょう。(良く言えば、多少の犠牲を払ってでも、アメリカを再び偉大にしたいという信念でしょう)

ただ、トランプ大統領が信じるようなアメリカ国内製造業の回復という効果が仮に出るとしても、時間を要するでしょう。その前にデメリットの方が。そうなると中間選挙にも影響するでしょう。

****米相互関税に政治リスク、中間選挙へ共和党に逆風も 経済への影響次第****
トランプ米大統領は3日、各国からの輸入品に対して「相互関税」を課すと発表し、米国にとって「解放の日」になると訴えた。しかし、経済改革の公約が実現しなければ、共和党への逆風となり、有権者に経済的な苦痛を与える可能性がある。

専門家によれば、トランプ氏が関税によって達成できると主張する製造業の再活性化やサプライチェーンの再構築、生産拠点の国内回帰には数年を要する見込みだ。

その一方で、米国の同盟国は米製品に報復関税を課すとみられ、消費者は物価上昇に直面し、経済は下降局面に入る可能性がある。トランプ氏はこれを「一時的な混乱」に過ぎないと主張するが、来年の中間選挙を控え、有権者がこうした痛みを受け入れるかどうかは不透明だ。

共和党は関税政策により中間選挙で敗北し、連邦議会上下院の一方もしくは両方を失う可能性がある。

トランプ氏の1期目で広報部長を務めたマイク・ダブケ氏は、トランプ氏は困難な状況に対する耐性が高いとしながらも、中間選挙の結果次第では本当の困難に直面する可能性があると語る。「懸念されるのは、トランプ氏と側近らが期待する成果がいつ現れるかだ。中間選挙まで18カ月しかない」と指摘した。

ロイター/イプソスの世論調査によると、米国民の70%が関税引き上げにより食料品や消費財の価格が上昇すると予想している。この割合は共和党支持者でも62%に達する。

関税引き上げは利益よりも害をの方が大きいと答えた人は約53%、利益の方が大きいとの回答は31%だった。また、輸入品に関税を課すことで米国の労働者が利益を得るとの見方に同意したのは31%にとどまり、48%が同意しないと答えた。

フーバー研究所の研究員で、共和党の重鎮であるミット・ロムニー、マルコ・ルビオ両氏の顧問を務めたランヒー・チェン氏は関税について、「主要リスクは経済関連だ。まず物価に対する差し迫ったリスクがあり、それがインフレ対策を掲げて当選した大統領にとって何を意味するかだ」と指摘。もうひとつの問題がリセッション(景気後退)に陥る恐れだと述べた。

<選挙を巡るリスク>
共和党内ではトランプ氏に対する不満の兆候が見え始めている。2日に行われた南部フロリダ州での連邦議会下院の2つの補欠選挙は、いずれも共和党候補が勝利したが、対立候補との得票率の差はトランプ氏が大統領選で勝利した時よりもはるかに小さかった。

また、大統領選の激戦州である中西部ウィスコンシン州の最高裁判事を選ぶ選挙は、トランプ氏や実業家イーロン・マスク氏が支持した保守派候補がリベラル派候補に破れた。

連邦議会上院はカナダに対する追加関税を撤廃する法案を可決した。共和党から4人が賛成に回った。

相互関税を発表を受け米株式先物は急落した。株価が幅広く下落すれば、確定拠出型年金401kで運用されている資産に打撃を与えることになる。(中略)

トランプ氏はバイデン大統領から堅調な経済を引き継いだ。2024年の成長率は約3%、失業率は約4%、インフレ率は3%未満だった。

しかし、経済はほころびの兆しを見せている。トランプ氏が関税政策について言及し始めてから2カ月で、家計や企業の経済見通しに対する信頼感は下降傾向にある。昨年11月の大統領選後に見られた楽観的な状況とは様変わりしており、政治リスクが高まるとの見方がでている。

一方で、トランプ氏はこれまでも有権者の間で大きな不安を引き起こしてきたが深刻な事態に陥ることはなかった、と指摘するのはグリネル大学(アイオワ州)の政治学教授バーバラ・トリッシュ氏。「今度こそ最後の一撃となり(どんな批判も跳ね返す)テフロンが傷つくと言われたことが何度もあった。しかし現実はそうならなかった」と述べた。(後略)【4月3日 ロイター】
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確かに、これまでも致命的と思われるリスクも跳ね返してきたトランプ氏ですから、多少のことでは傷つかない・・・という感じも。どうでしょうか・・・。ただ、国際関係などより、ガソリンとか卵の価格に、そして失業率に(多少のスキャンダルにはマヒしているにしても)国民は遥かに敏感です。

民主党側の対応については、「トランプ政権もまもなく自壊するので、今はジタバタせずに好きにさせておけば、遠からずトランプ大統領は政治のマットに崩れる」というアドバイスも。

****「トランプ関税」には“消耗作戦”が効果的?「政権は無能ぶりを発揮して自壊する」民主党戦略家が予測****
トランプ米大統領の関税攻勢には、ボクシングの「rope-a-dope(ロープ・ア・ドープ)」戦術(相手の消耗を待つ戦術)が効果的な対応策なのかもしれない。

日本時間3日に発表された米国の「相互関税」の中で、日本は24%と、主要工業国の中では中国の34%や韓国の25%に次ぐ高関税を課せられることになった。

これに対して米国からの輸入製品に報復関税を課したり、日本が手持ちの米国債を売却して米国に経済的圧力を加えるという対抗策も考えられるが、安全保障で「おんぶに抱っこ」のように頼っている日本としては、米国と経済面で正面衝突することはできないだろう。

しょせんは「除外をお願い」するしか道は残されていないように思えるが、「溺れる犬は石もて打て」のように、弱みを見せたらとことん攻め込むトランプ大統領の交渉術の前には逆効果だろう。

“トランプ政権は無能ぶりを発揮して自壊”
こうした折もおり、米国では先の大統領選で敗北した民主党が、党勢挽回のきっかけも掴めず混迷している状況を打破するために、思いもよらない戦術が推奨されて注目を集めている。

これを言い出したのは、民主党の戦術家のジェームス・カービル氏で、1992年の大統領選挙でビル・クリントン氏の選挙参謀としてブッシュ(父)大統領の再選を阻止する大逆転劇を演じたことで知られるが、2025年2月25日のニューヨーク・タイムズ電子版に「民主党、今や大胆な政治戦略をとる時だ」という標題の論評記事を投稿していた。

記事は、共和党政権は選挙には強いものの、政権樹立後は無能ぶりを発揮して自壊するとして、トランプ政権についても次のように予測する。

「第2期の政権において、トランプ大統領は公約に掲げた問題、つまり公共の安全、移民と国境、そして特に経済問題を優先する代わりに、連邦政府を解体することに執着しています。そしてそのために、現代史上最も無能な内閣に信頼を置いています。

例えば、連邦の予防接種活動を標的とし、60歳でセントラルパークに熊の死体を捨てるといういたずらを楽しんだ保健福祉長官、虐待的とされるヨガ中心のカルトに献身したとされる国家情報長官、WWE (世界プロレス団体)の大物が教育省長官に、元ケーブルニュースのコメンテーターが国防長官になっています。その結果、無秩序という明確な事態を招くことになるでしょう」

そしてトランプ政権への対応を次のように勧める。
「それほど時間はかからないでしょう。この政権への支持は底をつくでしょう。実際、もうすでにそれは始まっています。就任から1カ月ちょっとで、大統領の支持率はすでに2つの新しい世論調査で低下しています。国民は教育省を破壊するために投票したのではなく、卵や牛乳の価格を下げるために投票したのです。

民主党よ、共和党の自らの渦に飲み込まれるのを待ちましょう。この調子では、トランプ氏の蜜月期間は最良の場合でメモリアルデー(5月26日)までに終わるでしょうが、もっと早ければ次の30日間以内に終わるかもしれません」(後略)【4月3日 木村太郎 FNNプライムオンライン】
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