孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカの国家機密を暴露したスノーデン容疑者を受け入れる国は?

2013-06-30 22:54:48 | アフリカ

(壁に耳あり障子に目あり “flickr”より By EFFER LECEBE http://www.flickr.com/photos/49844949@N06/9172318451/in/photolist-eYwwHz-eN8ChN-eHd7hc-eJq1dC-eKJzVB-eWPvL9-eX8iev-eHPiRt-eNetj4-eV8BMy-eXT92U-eWTAd2-eTDTu6-eJJe6E-eVyNNQ-eU9T9k-eWZFUj-eXgvj9-eUtRYa-eXeBcv-dFTzQy-eJjErF-ePQC6K-eVtjjv-eG3xTf-eXQt3i-eKwxMY-eHbzha-eSZU8R-eSZLKa-eSMTBd)

報道内容が正確と裏付けられた場合は「大きな不祥事だ」】
元中央情報局(CIA)職員エドワード・スノーデン容疑者が暴露した、米国家安全保障局(NSA)がインターネットや電話などの個人情報を監視していた問題に関してオバマ大統領は、厳格な管理・規制に基づいて外国人を対象とした活動である、集めるのは通信内容ではなく電話番号や通信時間といったメタデータにすぎない・・・という説明で、国民の疑念をかわそうとしています。

しかしながら、実際の運用にあっては「偶発的」にアメリカ国民の情報にアクセスすることも多々あること、当局が外国人情報と関連がある判断すればかなり広範なアメリカ国民も監視対象になることも明らかになってきています。

また、アメリカ国内における情報監視活動にとどまらず、サイバー攻撃を行っているとアメリカが批判していた中国に対するハッキングをアメリカ自身が行っていたことも明るみになっています。

更に「監視」対象は広がり、同盟国EUを対象にした「監視」も報じられています。
ドイツのニュース週刊誌シュピーゲルはスノーデン容疑者が持っていた文書の内容として、NSAがワシントンのEU代表部に盗聴器を取り付け、コンピューターネットワークにも侵入、電子メールや内部文書にアクセスできる状態になっていたことや、ニューヨークにある国連本部のEU代表部とブリュッセルのEU本部でも盗聴していたということを報じています。

****欧州連合も米当局の監視対象」、独誌報道****
米国家安全保障局(NSA)がインターネットの個人情報を監視していた問題に関連し、30日発行のドイツのニュース週刊誌シュピーゲルは、NSAが欧州連合(EU)も監視の「標的」とし、ブリュッセルや米国内にあるEUの拠点に盗聴装置を取り付けていたと伝えた。

同誌は機密文書を根拠としてこのニュースを伝えた。
同誌が使った文書の中にはNSAの監視プログラム「PRISM」の存在を暴露し訴追された米中央情報局(CIA)元職員、エドワード・スノーデン容疑者(30)を通じて閲覧できた文書も含まれているという。

同誌によると、「極秘」扱いとされている2010年9月の文書には、NSAがワシントンD.C.市内のEU代表部をどのように監視しているかについての記述がある。NSAは盗聴用マイクを建物内に仕掛けたほか、コンピューター・ネットワークにも侵入して電子メールや内部文書を読める状態になっていたという。

同誌はまた、国連(UN)本部のEU代表部も同様の監視対象になっていたと述べ、リークされた機密文書には欧州諸国のことが「標的」と書かれていたと付け加えた。
監視はブリュッセルのEU本部にも及び、同誌によると5年以上前にEU理事会本部の建物(ユストゥス・リプシウス、Justus Lipsius)で電話やインターネットの盗聴・傍受装置がEUの警備専門家によって発見されたこともあったという。

EUは03年、建物内でドイツや英国、フランスなどの事務所を標的にした電話盗聴装置を発見したと発表しているが、シュピーゲル誌が言及したのがこの件なのかどうかは明らかになっていない。

シュピーゲル誌のウェブサイトはこの報道に対する反応を掲載した。その中で欧州議会のマルティン・シュルツ議長は、詳しい情報が必要だが報道内容が正確と裏付けられた場合は「大きな不祥事だ」と述べた。【6月30日 AFP】
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結局のところ。情報機関が「国家の安全・利益のため」と判断すれば、外国人・自国民にかかわらずすべての個人、敵対国・同盟国にかかわらずすべての国家について、可能な限り情報収集を行う・・・・という実態のようです。

“まあ、そんなものだろう・・・”とは感じてはいましたが、いざその実態が明るみにでると、かなり怖い社会に生きていることを改めて感じます。
「国家のため」という理由で安易に個人が監視下におかれる社会から、映画・小説で描かれるような個人が完全に国家によって管理される社会までは、ほんのわずかな距離しかないように思えます。

対テロ対策上の不都合などがあったとしても、個人通信情報へのアクセスは、建前ではなく実際運用面において厳格に管理・規制されるシステムの確立を望みます。

モスクワの空港で1週間
問題の張本人であるスノーデン容疑者は今もモスクワの空港内にとどまっているようで、その現状についてメディアの関心が集まっています。

****CIA元職員:露空港滞在1週間 生活ぶりに関心集まる****
米中央情報局(CIA)元職員のエドワード・スノーデン容疑者(30)がモスクワの空港に到着してから、29日で1週間になる。当面は空港の乗り継ぎ区域に滞在するとの観測が広がり生活ぶりにも関心が寄せられている。

香港発の便でモスクワのシェレメチェボ国際空港に23日、到着した元職員は、一時入国の査証を取得しておらず、乗り継ぎ区域に留め置かれている。

区域内にはカプセルホテルがあり、チェックインしたと伝えられた。1人部屋の料金は4時間1900ルーブル(約5700円)から1時間ごとに加算される仕組みで、シャワーなどが付いているが、半数の部屋には窓がない。

複数のロシアメディアが周辺を取材したが、元職員は目撃されておらず、ホテル関係者は宿泊の確認を避けているという。
区域内には、最重要人物(VIP)向けの休息施設や、国境警備隊の施設も存在することから、元職員がホテル以外の場所に滞在しているとの見方も消えていない。

国際社会では旅券を紛失したり、無効とされたりした旅客が、空港で長期の生活を強いられた幾つかの例が知られている。
日本に拠点を置いていた中国の人権活動家馮正虎さん(58)は、2009年11月から10年2月まで、中国に入国を拒否され続けたため、成田国際空港で寝泊まりを続けた。また難民証明書類をなくしたイラン人が17年間、パリの空港で暮らした話は、米映画「ターミナル」(2004年)の下地となった。【6月28日 毎日】
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扱いが難しい「政治カード」】
で、どこが亡命を引き受けるのか・・・という話は、エクアドル、ベネズエラ、ロシアなどが挙がっていますが、それぞれの思惑が絡んではっきりしていません。

****CIA元職員:受け入れ表明エクアドルなど 今後の対応は****
米国家安全保障局(NSA)による個人情報収集を暴露した元中央情報局(CIA)職員、エドワード・スノーデン容疑者は、旅券を無効にされたため出入国ができないままモスクワの空港の乗り継ぎ区域に滞在し、「袋小路」(ロシア情報筋)に置かれている。

一方、亡命先とされる反米左派の南米エクアドルやベネズエラは、相次いで受け入れを表明するが、米国との経済関係も無視できず、対応に注目が集まっている。

エクアドル政府は27日、米国から与えられていた関税の優遇措置を放棄するとの声明を出し「いかなる脅しも圧力も受けない」とした。米上院外交委員会のメネンデス委員長が26日、元職員の亡命を阻止しようと優遇措置の見直しに言及したことに反発した。

エクアドルは、強硬な反米姿勢を示すことで求心力を高める政治構造が確立している。同国の政治学者サンティアゴ・バサベ氏は「コレア大統領は、国際メディアの前で米国の人権侵害を批判する機会を得ることで、既に政治的得点を挙げた。亡命を認めれば国民の支持はさらに高まる」と分析する。

コレア大統領は石油収入を原資に2007年の就任から昨年までに公共事業費を6倍に拡大して学校や病院を建設。世論調査で支持率90%を得て政治基盤も盤石で、元職員が逃げ込むには最適だ。

しかし、エクアドルは輸出の48%が米国向けで、花や野菜は特恵税率を適用されている。声明発表後、米の猛反発を受けたコレア大統領は「領土内に来るまで(亡命の)手続きは始められない」とも話し、受け入れ方針を転換したのではないかとの見方も出ている。

南米の反米左派諸国の中核国であるベネズエラのマドゥロ大統領は26日、「元職員が亡命を希望するなら、ベネズエラはほぼ確実に許可を出す」と述べた。

一方、ベネズエラも日約90万バレルの原油を米国に輸出し、米国は最大の貿易相手国だ。ベネズエラもエクアドルと同様、「経済で対米依存しながら政治で米国を批判する。国民は米国批判をする政治家を好みながら米国に旅行する」(南米専門家)という南米特有の構造を持つ。

ロシアは当面、元職員の存在を利用して米国をけん制しながらも、対米関係が悪化する事態も避ける狙いだ。米国と亡命候補先に挙がる関係国の動きを見極めたうえで「次の一手」を打つ構えとみられる。
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アメリカの鼻を明かしたい思いと、アメリカによる報復の恐怖・実害・・・はかりにかけてどちらを選ぶかという国家間の政治ゲームとなっています。

一番手に名前のあがっていたエクアドルは、ちょっと腰が引けたようです。

****米副大統領がCIA元職員の亡命申請拒否を要請」 、エクアドル大統領が明かす****
エクアドルのラファエル・コレア大統領は29日、国民に向けての定例演説で、米政府当局による個人情報収集プログラムの存在を暴露してスパイ行為などの罪で訴追された米中央情報局(CIA)元職員、エドワード・スノーデン容疑者(30)の亡命申請を拒否するよう、ジョゼフ・バイデン米副大統領から電話で要請されたことを明らかにした。

コレア大統領はまた、この件については結論を下す前に米政府と協議すると話したが、最終的な判断はエクアドル政府が行うと述べた。コレア大統領は、28日のバイデン米副大統領からの電話で、「われわれは米国を尊重しており、このような状況を望んだわけではない。悪意のある一部のマスコミが報道しているように、われわれが反米国であるなどと思わないでいただきたい」とバイデン米副大統領に話したことを明かした。

コレア大統領はまた、スノーデン元職員は現時点でエクアドル国内にいないため、同容疑者の亡命申請についてエクアドル政府は手続きを始めることはできないと話し、「(元職員が)エクアドルの地を踏んだら、もし実際にそのようなことが起きたら、われわれは亡命申請の手続きを行わなければならないが、われわれが最初に意見を求める相手は米国だ」と話したという。【6月30日 AFP】
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ロシア受け入れ論もあるようですが、さすがにアメリカに喧嘩を売るようなことはロシアもしないのではないでしょうか。

****スノーデン容疑者、滞在1週間に=「ロシア受け入れ」論も****
米国家安全保障局(NSA)の情報監視活動を暴露して訴追された元中央情報局(CIA)職員のエドワード・スノーデン容疑者(30)が、香港から経由地モスクワに着いて30日で1週間になる。

同容疑者は米国のパスポート失効措置などで出発できず、一部には「このままロシアが亡命を受け入れてはどうか」(人権オンブズマン)との意見もある。

スノーデン容疑者は23日にモスクワの空港に到着。南米エクアドルに亡命申請し、当初予定では24日の中米キューバ便で大西洋を横断するとされたが、連日搭乗を見送った。パスポートの問題で航空券が買えないとの情報がある。
エクアドルのコレア大統領はそれに代わる渡航書類は交付していないと語っており、事態は「行き詰まり」(地元通信社)を見せた。

こうした中、人権オンブズマンに当たるフェドトフ大統領付属人権委員長は「スノーデン容疑者は保護に値する。ロシアに亡命申請すれば、プーチン大統領の検討は可能だ」と発言した。異論は噴出しているものの、フェドトフ氏は政権内の人物で、国内外に観測気球を上げた可能性もある。【6月29日 時事】 
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現時点で一番可能性がありそうなのは、1日にマドゥロ大統領がロシアを訪問するベネズエラではないでしょうか。
帰国するベネズエラ・マドゥロ大統領に同行してモスクワを出る可能性が指摘されています。ここで出国できないと、アメリカ映画「ターミナル」のような話にもなってきます。

****スノーデン容疑者:ベネズエラ大統領の訪露待ちか***** 
ベネズエラのマドゥロ大統領は7月1、2日にロシアとベラルーシを訪問する。訪露のタイミングから、米国家安全保障局(NSA)による個人情報収集を暴露し、モスクワの空港内に滞在中の元米中央情報局(CIA)職員、エドワード・スノーデン容疑者は、反米色の強いマドゥロ大統領のモスクワ入りを待っているのではないか、との観測も出ている。

大統領は元職員から亡命申請を受けた場合、「ほぼ確実に受け入れる」と述べており、元職員が大統領に同行してベネズエラ入りする可能性がある、とみる識者もいる。

元職員が亡命申請した南米エクアドルはベネズエラから1750キロ、飛行機で2時間半の距離。モスクワからエクアドルに直行便はなく、最終的にエクアドルに向かうにしても、大統領と共にモスクワを出るほうが容易かつ安全である可能性が高い。

ベネズエラの政治学者アンヘル・アルバレス氏は「反米左派のマドゥロ政権は大喜びで亡命を受け入れる。しかし、スノーデン氏がそう望むかは分からない」という。エクアドルのコレア大統領に比べ、マドゥロ大統領の権力基盤は不安定だからだ。

ベネズエラの対米関係は「これ以上、悪化しようがない」(アルバレス氏)状態で、2010年から双方の大使不在が続いている。

ただ、両国は6月5日、米州機構(OAS)会議が開かれたグアテマラで、ベネズエラ側の呼びかけで、ケリー米国務長官とハウア外相が会談して大使の再赴任を進めることで合意し、関係改善に踏み出したばかり。元職員がベネズエラに亡命すれば、政治カードとして使われる可能性もある。【6月29日 毎日】
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国家機密を暴露されて怒り心頭に発しているアメリカ相手に、危険な「政治カード」を使えるのはどこの国か・・・という面白い話題ではありますが、国家と個人の関係にかかわる問題の本筋ではありません。
コメント

エジプト  明日30日でモルシ大統領就任1年 反大統領派・支持派の対立で一触即発の情勢

2013-06-29 22:21:30 | 北アフリカ

(昨日ぐらいの反大統領派の抗議集会のようです “flickr” より By Mahmoud Gamal El-Din http://www.flickr.com/photos/64726814@N04/9161041651/in/photolist-eXwJvZ-eXJkxN-eXJ3ww-eXwCsa-eXwH54-eXwSZX-eXwb9n-eXHtCm-eXJdYL-eXJ2vs-eXwNCp-eXJ3PS-eXJhbL-eXJnXy-eXwcKP)

【「選挙で示された民意」か、「革命を乗っ取った」のか?】
ムバラク政権を倒した「アラブの春」で民主化を手にしたかのように見えたエジプトですが、ムスリム同胞団を支持基盤とするイスラム主義のモルシ大統領と、これに反発するリベラル・世俗派などの勢力の対立が収まらず、低迷する経済情勢への不満もあって、きわめて不安定な政治情勢が続いています。

明日30日で就任から1年を迎えるモルシ大統領ですが、大統領に反発する勢力と大統領を支持する勢力の双方が大規模なデモ・集会を予定しており、衝突の懸念が高まっています。

****エジプト:モルシ大統領就任1年 デモや集会 緊張高まる****
エジプトのモルシ大統領の就任から1年を迎える30日、政権に反発する市民団体や野党が大規模な抗議デモを計画している。一方、これに反発する政権支持派も集会を開くなどしており、緊張が高まっている。

ロイター通信によると28日にはエジプト第2の都市、アレクサンドリアで両勢力の衝突に巻き込まれ米国人男性ら2人が死亡する事態も発生した。さらに衝突が激化すれば、経済の混乱にも拍車がかかるのは必至だ。

「間違いも犯した。達成できなかった約束もある」。26日夜、テレビ演説したモルシ大統領は1年をこう振り返り、野党が不満を抱く新憲法の修正協議を提案するなど柔軟姿勢をアピール。一方で「選挙で示された民意を無視しようとする勢力がいる」と政権打倒運動をけん制した。

主要野党勢力「国民救済連合」は27日に声明を発表し、「大統領は過ちの深刻さを認識していない」と批判。予定通り、30日のデモに加わると発表した。

26日以降、各地で反政権デモが散発的に起きている。事態を受けて米国務省は28日、エジプトへの渡航を自粛するよう米国民に勧告した。

反政権運動を盛り上げる契機になったのは、「反乱」と称してカイロ在住のジャーナリストらが始めた反政権署名活動だった。発案団体によると、署名数は延べ2000万人分に達する勢いだ。

民間調査機関によると、大統領の支持率は昨年8月の72%から今月には25%に低下。タハリール広場には28日、反政権派の市民約1000人が集まり、「政権を去れ」と気勢を上げた。
30日は広場や大統領宮殿前などでデモを計画。反政権派は穏健派イスラム原理主義組織ムスリム同胞団が政権を動かしているとみており、同胞団の事務所などが襲われる恐れもある。

これに対して、同胞団などイスラム勢力は28日、カイロ近郊で集会を開き、数千人以上が参加した。「神のために」というシュプレヒコールが響く中、会社員のマフムード・サイードさん(39)は「俺たちが大統領の手足となって支えていく」とまくし立てた。

こうした中、混乱を警戒する市民は、日用品やガソリンの買いだめに走っている。【6月29日 毎日】
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反大統領派:モルシ政権擁護とアメリカを批判
上記記事にもあるように、30日を前に、すでに各地で衝突が発生しており、アレクサンドリアでのアメリカ人などの死傷者が出ています。

****デモ隊衝突で米国人ら3人死亡、エジプト北部****
イスラム主義組織出身のムハンマド・モルシ氏が大統領に当選してから1年を迎えたエジプトで28日、北部にある同国第2の都市アレクサンドリアなどで、同大統領の支持派と反対派のデモ隊が衝突し、米国人1人を含む3人が死亡した。

テレビ局が撮影した映像では、同市のシディ・ガベル地区で銃声が聞こえた後、デモ参加者が四方八方に逃げ去る様子が映し出された。 医療関係筋によると、死亡した米国人は21歳で、散弾銃の傷で病院に運ばれたという。

当局によると、アレクサンドリアのアメリカ文化センターの職員で、デモ隊の写真を撮っていた際に死亡した。首都カイロ(Cairo)にある米大使館の職員はAFPの取材に対し、「米国人1人死亡との報道を聞いた。確認を行っている最中だ」と語った。アレクサンドリアではこの他に1人が死亡している。

治安当局者や目撃証言によると、北部ポートサイドでは、正体不明の集団が反モルシ派のデモ隊に小型爆弾を投げつけ、エジプト人ジャーナリスト1人が死亡、数人が負傷した。
治安当局によると、衝突はナイルデルタのダカリヤ県とブハイラ県でも発生し、全国で少なくとも130人が負傷した。
アレクサンドリア市とダカリヤ県アガでは、モルシ大統領がかつて所属していたイスラム主義組織「ムスリム同胞団」が結成した与党・自由公正党の事務所が放火され、ブハイラ県でも同党の事務所が襲撃されたという。

一連のデモでは、反モルシ派が「革命を乗っ取った」として同大統領を非難する一方で、支持派は最後まで同大統領の正当性を擁護すると誓っている。
28日に起きた衝突は、モルシ大統領就任1周年を迎える30日に反対派が計画している大規模な抗議行動の前触れとみられている。ナイルデルタ地域では26日から27日にかけても衝突が起き、少なくとも4人が死亡した。【6月29日 AFP】
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今週初め、アメリカのアン・パターソン在エジプト大使とムスリム同胞団最高指導者代理であるカイラート・アルシャタル氏が会談を行っており、そのことはアメリカ・オバマ政権がモルシ政権を支持しているとして反大統領勢力の怒りを買っています。
抗議集会には、アメリカ大使やオバマ大統領を批判する写真・プラカードが多くみられる状況で、今回アメリカ人が攻撃対象となったのも偶然ではないように思えます。

あふれる敵意と武器
「革命を乗っ取った」としてモルシ大統領・ムスリム同胞団への批判を強める反大統領派と、イスラム主義を支持しモルシ政権を守ろうとする大統領派の間の“敵意”が沸点に達しそうな状況です。

*****リベラル派に地獄を」=イスラム主義者、敵意むき出し―エジプト****
エジプトの首都カイロで21日に行われたイスラム主義組織ムスリム同胞団出身のモルシ大統領を支持する数万人規模の集会は、日が傾くにつれ熱気を帯びた。
参加者は円陣を組み「エジプトにイスラム法を。リベラル派に地獄を」と連呼。敵対する世俗・リベラル派への敵対心をむき出しにし、大統領支持を誓っていた。

集会が開かれたカイロ・ナセルシティ地区のモスク(イスラム礼拝所)一帯は幹線道路を含め人がひしめき合い、身動きできない。人々はモルシ大統領の肖像写真を掲げ、思い思いに支持を訴えた。日が落ちると花火も上がり、陶酔感はさらに高まった。

ハンディ・スレイマンさん(59)は、北部アレクサンドリアから仲間と共にバスで駆け付けた。「モルシ大統領への忠誠心を示すために来た」と語る。モルシ大統領に対しては、世俗・リベラル派から、野党の意見に耳を傾けず、独裁色を強めていると批判されている。しかし、スレイマンさんは「公正な選挙で選ばれた大統領が独裁者のはずがない」と切り捨てた。【6月22日 時事】 
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多くの武器が集会などに持ち込まれているため、衝突が制御できない暴動化することが懸念されます。

****衝突で米国人ら2人死亡=デモ会場にあふれる武器―エジプト****
・・・・エジプトでは28日、アレクサンドリアや首都カイロなど各地で反大統領派、大統領支持派が抗議行動を展開。デモ会場には銃やナイフなどが大量に持ち込まれており、反大統領派が集結したカイロ中心部のタハリール広場では、銃の暴発で男性が足を負傷し、ほかの参加者に担ぎ出される光景も見られた。(後略)【6月29日 時事】
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“敵意”と武器がそろい、まさに一触即発の情勢です。
政治混乱が経済の低迷を招き、経済の低迷は国民の不満を強めて政治的混乱を助長する・・・という悪循環に陥っているエジプトですが、明日30日はそうした混乱のなかでのひとつのピークになりそうです。

軍:介入を辞さない姿勢をみせるも、今後の動きは不透明
混乱が現実のものとなったとき、軍の出動が命じられる事態も想定されますが、そのとき軍がモルシ政権支持で動くのか、ムバラク前大統領を見捨てたようにモルシ大統領も用済みとして処理するのか・・・不透明です。

****エジプトは「破綻国家」となるか 新たな「革命劇」への不穏な胎動*****
・・・・前述のとおり、イスラエルの安全保障を最優先課題に掲げる米国は、和平を維持するためにエジプトを援助漬けにした。

その間の政権は空軍司令官出身のムバラク大統領に率いられた軍とは一体の政権であり、民生支援も、軍事援助も全ては言わばエジプト軍にプレゼントされたようなものであった。この間、軍エスタブリッシュメントは「国家中の国家」と呼ばれる特権社会を構築した。

2011年の「革命」で、お飾りであった政権部分(ムバラク一家とその取り巻き)は切り捨てたが、軍組織の本体は無傷のまま残っている。軍が革命青年に対し常に中立的に振る舞い、後にムスリム同胞団による統治を許したのも、既に時代遅れとなりかつ綻びの見え始めたムバラク支配と心中する愚を犯すことなく、舞台裏から新たな政治体制の構築に影響力を行使する方が得策との、米国のアドバイスに従ったものであっただろう。

結果として、軍はムスリム同胞団との同居(言わば院政)を選択し、米国はその識見を尊重して現在は静観している、ということになる。このことは、次のこともまた起こり得るということだ。
即ち、早晩ムルシ政権の政治は国民の期待に応えていない、ということが明らかになり、民衆と反政府勢力の怒りが頂点に達したとき、社会不安が発生するが、ムルシ大統領がいざ、「軍の治安出動を命ず」となったときに、不服従(クーデター)を決めるのである。

それは、別の形、即ち、反政府勢力側の政権打倒に向けた結集力が弱く、いつまでたっても同胞団政権の打倒が起こりそうになく、他方で経済と治安が悪化の一途を辿っているというときには、軍最高評議会の名で戒厳令を発すれば、国民の多数は軍に拍手喝采を浴びせるであろう。肝心なことは、いずれの場合にも米国は軍部を100%支持する、ということである(後略)【選択 5月号】
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6月23日、アッ=スィースィー国防相は「エジプト国民の意志こそがわれわれを統治するものであり、われわれは名誉と高潔さを持ってこれを守る」と述べ、30日までに諸勢力が合意に至らない場合、軍の介入も辞さないことを発表しています。

****エジプト:アッ=スィースィー国防相が警告「諸勢力が1週間以内に和解しなければ軍の介入も辞さない****
2013年6月24日『アル=ハヤート』
エジプトのアブドゥルファッターフ・アッ=スィースィー国防相は、昨日(23日)晩に行われたムハンマド・ムルスィー大統領との会談前に、諸政治勢力に対し、1週間以内、すなわち今週日曜日(30日)に実施が決定されている反体制派の大統領退陣要求デモの前に合意に至らなければ「軍の介入」も辞さないと警告した。

これはアル=ファイユーム県、アル=ガルビーヤ県、カフル・アッ=シャイフ県で発生した大統領支持者と反対派の衝突で数十人の死傷者が出たことを受け、政府と反体制派の対立の激化から内戦が勃発することを危惧したものである。

アッ=スィースィー国防相は、昨日(23日)軍が開催したセミナーでの声明のなかで「正当性」に関する言及を避けた。ムルスィー大統領支持者は、この「正統性」の擁護をスローガンとして掲げて結集としている。

同大臣は「エジプト国民の意志こそがわれわれを統治するものであり、われわれは名誉と高潔さを持ってこれを守る。われわれは国民の意志を守る全責任を負い、これを侵害することを許さない。相互理解と合意の形を作り出すためにわれわれに与えられた時間は1週間である」と述べた。また同大臣は「エジプト国民を恐怖に陥れる行為を前にして黙っていることは勇敢ではない。軍が存在するなか、われわれにとって死とは、エジプト国民の一人として触れるもののなかで最も尊いものである」と述べた。

これはムルスィー大統領の支持者が先週金曜(21日)に行ったデモにおいて、反対派が大統領退陣の要求に暴力を行使した場合に「反対派を壊滅させる」と警告した脅迫に対する反応とみられる。(後略)【6月24日 「日本語で読む中東メディア」】
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この国防省の発言がクーデターを示唆したものかどうかは、エジプト国内での受け止め方においても判然としないようです。いざとういうときにどちらにも動けるように、ことさらに曖昧な発言をしているとも言えます。
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トルコ  デモ参加者批判でイスラム主義支持勢力を糾合するエルドアン首相の思惑

2013-06-28 22:56:44 | 中東情勢

(公園で開かれる夜の討論集会 “flickr”より By murat germen http://www.flickr.com/photos/62258112@N00/9139389826/in/photolist-eVBLbE-eVqnYB-eVqnDi-eVqotg-eVqkHt-eUFH6W-eUFRkj-eUFMJ9-eUG15A-eUFP4Y-eUuRTB-eUv3ri-eUuUcK-eUuCvc-eUFJMq-eUv1Si-eUuadK-eUFXMj-eUv5Rc-eUuWsR-eUGqiE-eUFybu-eUuQ5a-eUv7qv-eUuThR-eQeVay-eQeUZd-eQ3u4z-eQeM3m-eQeRsm-eTwWPZ-eTJkXw-eTwVh8-eTJkDd-eTJjd7-eTJkL7-eNZUzs-eQ3nWH-eQ3mxD-eQ3xcn-eQeWBL-eQ3wj6-eQeMN5-eQ3nxn-eQeWqj-eQeVnN-eQ3p7D-eQePiS-eQ3nbp-eQeRJf-eQeSNC)

市民による小規模な集会の輪
小さな公園の立木伐採への抗議から始まったトルコの抗議行動は専制的なエルドアン首相への反発を強めながら拡大、15日には警官隊による強制排除が行われました。
その後も、抗議行動は黙って立つだけの「無言の抵抗」などとして続けられ、22日には再びデモ隊数千人が集まり、これを警官隊が強制排除する大きな衝突が起きています。
26日未明にも1000人以上が参加する抗議運動が行われるなど抗議行動は現在も続けられており、開始からすでに1か月が経過しています。

****トルコ、広がる小集会 40カ所以上、夜の政治討論 「デモ、一過性で終わらせない****
警官隊によってデモ隊が強制排除されたトルコのイスタンブールで、市民による小規模な集会の輪が広がっている。「地方の村で交流会をしよう」「新政党を立ち上げるべきだ」――住宅地にある40カ所以上の公園で、政治を考える夜の討論集会が遅くまで続く。

中心部に近いベシクタシュ地区のアッバスアガ公園。夜9時ごろ公園の円形劇場に1千人ほどが座って見守る。観客の中から前に出てマイクを持って意見発表をする。

若い男性が「私たちには組織も指導者もない」と話し始めた。「しかし、ゲジ公園のデモを一過性で終わらせてはならない。この集まりを広げて市民議会をつくったらどうだろう」
別の若者は「私たちは新たな政党を組織するか、街頭でデモを続けて警察とやり合うか、選択しなければならない」と述べた。
若い女性が立ち、「テレビや政府の発表は、私たちが暴徒であるかのようなイメージを広げている。町や村に出かけて行き、地域の人々との交流集会を開いたらどうか」と提案した。

イスタンブールのデモは5月下旬、中心部のゲジ公園で、公園の開発に反対する運動から始まった。今月15日に警官隊が強制排除に乗り出した。
住宅地での小集会はその2日後、ベシクタシュ地区で始まった。口コミで広がり、いまでは40カ所以上で開かれ、強権的な政府のやり方に対する対抗策を話し合う。

組織化や地域間のネットワーク化も日々進む。集会の公園は住宅地にあるため拍手は禁止され、意見に賛成の場合は両手を上げ、反対は腕を交差させる、などのルールができた。

ベシクタシュ地区の集会に参加するアマル・アタコルさん(30)は「私は集会から新しい組織が生まれることを期待している。ただし、組織化には反対の声もある。市民が自主的に集まって意見を述べる場ができたことは重要だ」と語った。【6月28日 朝日】
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理想化される抗議行動の一方で、破壊行為やハラスメントも
夜な夜な公園で行われる市民の集会・・・・民主主義の原点を見るような感もありますが、こうした集会に参加する市民の思いとは別に、また、警官隊の過剰暴力的な鎮圧行動とは別に、抗議行動に伴う広範な破壊活動も行われました。

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6月2日の政府発表によれば、次のような物的被害がデモに付随して発生している。パトカー89台、市営・民営路線バス・一般車両22台、公用車15台(その中には放火されて黒こげになったものもある)、会社や店舗など94カ所、住宅1カ所、警察署1カ所,政党ビル4カ所、その他、無数のバス停、信号、道路標識、街頭監視カメラ、銀行ATM、縁石やトンネル内タイルなどが放火や破壊の被害にあった。

6月19日の発表によれば、救急車41台の被害の追加など、さらに車両関係の被害が大幅に拡大したほか、政党ビルへの襲撃も累計14件(AKP13、CHP1)へと増えている。(ネット上で閲覧できるビデオをみると、実際には、タクスィム広場やゲズィ公園周辺でもパトカーやバスが放火されたり破壊されたものが記念碑的に放置され、バリケードが築かれており、平和的デモというよりは暴動に類する現象がここでも短時間であれ起きていたことが分かる。)アンカラに住む友人は、市内中心部ではバス停はほとんど焼け焦げ、まるで戦争があったみたいだと話した。【6月25日 澤江史子 中東マガジン】
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更に、イスラム主義を強制しようとしているとしてエルドアン首相を批判する者の中には、イスラムの象徴として目立つスカーフ着用女性に対するハラスメントも見られるそうです。

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街ゆくスカーフ着用女性も同種のハラスメントの対象とされた。また、通り過ぎるときにバイクのクラクションを鳴らされたとか、中には直接的にスカーフを引きはがされそうになったとか、さらにひどい場合には、蹴られたというケースも一部、報道されている。【同上】
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6月19日ブログ「トルコ 反首相抗議運動で明らかになったエルドアン政権のメディア統制」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130619)では、首相側にによるメディア統制、自主規制して抗議行動を報じないマディアの姿勢を取り上げましたが、こうしたメディアの姿勢が批判に曝された結果、メディアは政府や警察の横暴を批判するトーンを強め、デモ側を理想化する報道を行っているとの指摘もあります。

“こうしたメディアにおいて、タクスィムのデモは、絶望的な政府の態度と対比される希望という位置づけを与えられ、治安部隊の排除活動の暴力性と、対照的に理想的な市民的抗議行動がデモ報道のほぼ全てとなった。”【同上】

反首相側によるスカーフ着用女性を標的にしたハラスメントにしても、こうした抗議行動を理想化したメディアでは十分に取り上げられていないとのことです。

支持基盤糾合を図るエルドアン首相
一方、エルドアン首相は政権支持勢力が暴発しないように一定に抑制しながらも、デモ参加者を反イスラム的な破壊行動を行う集団との批判を強めています。

****変わらぬ政権支持とエルドアン首相のデモ非難の背景****
・・・・・デモが長引くほどに、首相の演説の中では、嫌イスラムの世俗派vsイスラム派の構図でイスラム派の支持を糾合しようと、宗教的要素を強調する発言が目立つようになる。例えば、6月7日に北アフリカ外遊から戻った直後に空港で行った演説では、支持者に対して喧嘩や破壊は自分たちのとるべき態度ではないと支持者をなだめる一方、神への祈願の形式で支持者の連帯を幾度となく呼びかけた。さらに、デモ参加者がモスクに土足で上がり、酒を飲んだと非難した。(後略)【6月25日 澤江史子 中東マガジン】
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理想化された抗議行動の一方で、公園の外にいる多くの住民は破壊活動に憤り、多くの女性がハラスメントに怯える・・・という状況で、結局抗議行動への支持は広まっておらず、デモに伴うネガティブな面をイスラム主義的な立場から批判する首相率いる与党AKPの支持率も低下していないとのことです。【同上より】

ただ、与党支持率低下を示す世論調査もあるようで、このあたりは定かではありません。

****トルコ:デモ発生から1カ月 事態収束のめど立たず*****
エルドアン首相率いるAKPは穏健なイスラム主義と民主主義を掲げ、2002年から3期連続の単独政権を実現している。だが、デモ後に行われた世論調査の中には、支持率の低下を示すものもある。

これについてアダイルマス氏は、デモの中心的な役割を果たした若者を「利用した勢力がある」と指摘。野党関係者や従来の反政府勢力が後発的に便乗し、火炎瓶や石を投げて店や公的施設を破壊したため、「デモにネガティブな印象を抱いている人は多い」と反論した。一方、デモ参加者の一部が地方選挙に候補者擁立の動きを見せていることについては「破壊行為をするよりよほど建設的だ。選挙で争い、民意を問いたい」と歓迎した。【6月27日 毎日】
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公園の中では“日頃のイデオロギー的な激しい対立を超えて民主主義のために連帯する、(旧来のイスラム主義vs世俗主義といった対立や、多様な民族主義・宗教文化グループ間の対立を超えた)新しいトルコの市民のあり方”が模索されたとしても、公園の外では従来からの“世俗派vsイスラム派”の対立という構図に終始すれば、結果としてはエルドアン首相の思惑に沿うところとなるでしょう。

なお、エルドアン首相は次期大統領を目指しており、その準備として首相の権限を弱め、自分が就任する予定の大統領権限を強める方向で改憲準備を進めているとも言われています。

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今回のデモ拡大の背景には、エルドアン氏が14年の大統領選に出馬し、勝利してさらに権力の集中が進むのではないかとの強い懸念がある。軍部が1982年に制定した現在の憲法について、AKPを中心に議会で新憲法の制定準備が進められているが、「大統領の権限を大幅に拡大する内容」だ。エルドアン氏の「就任に向けた下準備」との批判もある。

これについてアダイルマス氏は、「現行憲法は、首相に大きな権力を与えている。新憲法は、こうした権限を大統領や議会に分散し、より力のバランスの取れたシステムを作るのが狙いだ」と強調。トルコの民主化には欠かせない法整備だとの見解を示した。【6月27日 毎日】
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イスラエル  ユダヤ人入植活動に絡む憎悪犯罪とマクドナルドの判断

2013-06-27 22:22:22 | 中東情勢

(深夜 壁に「Price tag Revenge(復讐)」と落書きするユダヤ人過激派「値札(Price tag)」メンバー 【Dailymotion】 http://www.dailymotion.com/video/xtr6fg_panorama-price-tag-wars_shortfilms?start=2#.Ucw7izaCiUn)

交渉再開の障害となっている入植活動
2012年11月に起きたパレスチナ・ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとイスラエルの軍事衝突の停戦合意以降も、両者の間では散発的にガザ地区からのロケット弾攻撃とイスラエルの報復空爆が行われています。

****イスラエル軍、ガザ空爆=ロケット着弾に報復****
イスラム原理主義組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ地区から発射されたロケット弾が23日夜、イスラエル南部に着弾し、イスラエル軍はガザ地区を報復空爆した。イスラエル、ガザ地区ともに負傷者はいないもよう。

イスラエル軍によると、ガザ中部の武器庫や南部のロケット弾発射施設を空爆した。ロケット弾攻撃の犯行声明は出ていないが、イスラエル軍は「ガザからのテロ攻撃には全てハマスが責任を負っている」と主張している。【6月24日 時事】
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パレスチナ・イスラエルの和平交渉は多くの難題を抱えており、現在も中断したままですが、入り口段階で大きな障害となっている問題のひとつが、パレスチナ自治区ヨルダン西岸や東エルサレムでイスラエルが続けている入植活動です。

****イスラエル、入植者住宅300戸の建設を承認 和平協議再開に暗雲****
イスラエル政府は9日、パレスチナ自治区ヨルダン西岸ラマラ近郊のユダヤ人入植地で新たに約300戸の住宅建設計画を承認したことを明らかにした。これを受けパレスチナ側は同日、和平協議再開に向けた米国の動きを妨害するものだとイスラエル政府を非難した。

数日前には、イスラエルとパレスチナを再び交渉の場につかせるべく中東訪問を予定しているジョン・ケリー米国務長官に配慮し、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がヨルダン西岸における新規住宅建設の入札凍結を命じたと伝えられたばかりだった。

国防省のヨルダン西岸管轄部隊報道官はAFPに対し、ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地ベイトエルに新規住宅296戸の建設が承認されたと認めた。今回の承認はベイトエル郊外ウルパナ地区の無許可入植地からのユダヤ人住民撤退命令の代替政策として、すでに昨年決定していたものだという。

だが、パレスチナ側の交渉責任者サエブ・アリカット氏は、住宅建設を承認するイスラエルの動きは、2010年以降、途絶えている直接対話の再開にイスラエルは関心がないことを示す米政府への明確なメッセージだと主張した。

一方、8日に伊ローマでケリー長官と会談したイスラエルのツィピ・リブニ法相はイスラエル軍ラジオ放送で、新規住宅建設の承認については既に米国側に通知してあると述べ、「米国側も理解を示し、この件について特に反応はなかった」と語った。

ケリー長官は21日か22日にイスラエルとパレスチナを訪問し、ネタニヤフ首相とパレスチナのマフムード・アッバス自治政府議長との会談に臨む。ケリー長官のイスラエルおよびパレスチナ自治区訪問は4度目。【5月10日 AFP】
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国際的には批判が多い占領地へのイスラエルの入植活動ですが、イスラエルも、イスラエル自身が違法としている入植活動に対しては、取り壊しなどの対応をとってはいます。(イスラエルが合法としている他の占領地入植を正当化する手段ではありますが)

不法入植地の取り壊しへの反発で始まった「民族主義的犯罪」】
イスラエル国内では、そうした措置に対して不満を持つユダヤ人組織「値札」によるアラブ系イスラエル人への嫌がらせなどの憎悪犯罪も増えているそうです。

****平和だったアラブ系イスラエル人の村、憎悪犯罪の標的に****
オリーブグリーン色の日産ジュークを買うのに必要な金額を何とか工面して、サファ・オスマンさん(27)は2週間前、車を購入したばかりだった。だが朝、目を覚ますと、車は憎悪に満ちた過激派らに破壊されていた。

もう運転することもできず、修理費用を捻出するめども立っていない。「自分だけでは新しいタイヤを買えない」。イスラエル・エルサレム郊外にあるアラブ人の村アブゴッシュの自宅前で動けなくなった車を見つめながら、オスマンさんは悲しそうに語った。

18日未明、ユダヤ人過激派とみられる集団が、アブゴッシュ村の車28台のタイヤを切り裂き、周りの壁に人種差別的な中傷の落書きを残していった。この事件に対して、イスラエル国内では幅広い層から非難の声が上がった。

壁には「アラブ人出て行け」「人種差別か、同化か」といったスローガンが描かれていた。「同化」はユダヤ人と非ユダヤ人の混合が進むことに対する批判的な言い回しだ。(中略)

■広がる「値札」事件
アブゴッシュ村は、イスラエルの多数派住民であるユダヤ人と極めて良好な関係を築いていることで知られており、村のレストランには大勢のイスラエル人が詰め掛ける。

オスマンさんは、東エルサレムに暮らす同じ女性の友人たちが前の週、バスの中でユダヤ人過激派に襲われて、スカーフをはぎ取られた話を聞いていた。だが今になるまで、そのような出来事を自分が経験したことは一度もなかった。

アラブ人が多数を占めるアブゴッシュ村は、エルサレムのすぐ西の丘陵にある。年2回、地元の古い教会で開催されるクラシック音楽祭で名高い。ヨルダン川西岸や東エルサレムで発生している、いわゆる「値札」事件も、同村ではこれまで一度もなかった。

事件は、平和だった村に恐怖を残した。「子どもたちは父親が職場から帰宅してベルを鳴らしても、ドアを開けようとしない。『値札』の連中がベルを鳴らしているかもしれないと恐れているんです」と、スハド・アブドルラーマンさん(34)は語った。

人種差別問題に取り組む「イスラエル反人種差別連合」のニダル・オスマン氏は、村を襲ったのはヨルダン川西岸のユダヤ人入植者である可能性が高いと語る。

「ルダン川西岸の入植者らが結成した『値札』と名乗る秘密組織がある。この組織は東エルサレムで車に放火などをしている」と、オスマン氏はAFPに述べた。

「値札」事件は当初、イスラエル当局が不法入植地の取り壊しを行ったことに対し、パレスチナ人への報復として始まった。その後、人種差別主義者や外国人嫌悪的な特徴を帯びて拡大し、より幅広い現象になっている。「値札」たちは器物損壊や公共物破壊などを行い、車やモスク、オリーブの木などに放火する。またキリスト教の聖地も標的にし、イスラエル軍の基地内にも侵入した。

最近発表された警察資料によると、2012年には「値札」による襲撃事件が623件あり、200人が逮捕され、123件の起訴があった。今年に入ってからは、襲撃事件が165件、逮捕された容疑者は76人、31件を起訴したという。警察幹部は、こういった事件はイデオロギーに動機付けられた「民族主義的犯罪」であり、警察にとって「最優先事案」だと述べている。【6月26日 AFP】
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憎悪犯罪は人間が持つ卑しい、暗い部分を見せつけるものでやりきれませんが、“イスラエル国内では幅広い層から非難の声が上がった”というのがせめてもの救いでしょうか。

マクドナルドの「イデオロギー上の理由」】
一方、入植地への出店を拒否した「マクドナルド」に対し、極右組織から不買運動の呼びかけが出ているそうです。

****マクドナルドが入植地への出店拒否、イスラエル住宅相「不買」呼び掛け****
米ファストフード大手マクドナルドのイスラエル法人が、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地への出店を拒否したと、メディア各社が26日伝えた。

地元テレビ報道によるとマクドナルド・イスラエルは、ヨルダン川西岸にイスラエルが建設したユダヤ人入植地アリエルに来年オープン予定のショッピングモール内への出店を打診されたが、「イデオロギー上の理由」から断ったという。

マクドナルドの決定を受け、極右政党「ユダヤの家」出身のウリ・アリエル住宅相は「(アリエルへの出店を)ボイコットするならば、彼ら(マクドナルド)もボイコットされると知るがいい」と述べ、イスラエル国民にマクドナルド商品の不買を呼び掛けたという。【6月27日 AFP】
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ユダヤ人入植地で活動している外国資本企業がどの程度存在しているのか知りませんが、もしあまり多くないのであれば、入植地出店は逆の批判をイスラエル国外で受けることにもなります。
そのあたりを考慮しての「イデオロギー上の理由」でしょうか。
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アフガニスタン  始まらないタリバンとの和平交渉  大統領府襲撃事件で更に暗雲

2013-06-26 23:32:20 | アフガン・パキスタン

(襲撃された大統領府 “flickr”より By DTN http://www.flickr.com/photos/54892559@N06/9136193238/in/photolist-eVknX5-eV8BK7-eVEq9c-eVEq6p-eVRQ9E-eVRQf3-eVCFLB-eVQ5RE-eVQ5WJ-eVCG52-eVQ6gE-eVQ6Py-eVCFWi-eVQ669-eVCFmZ-eVag55-eUXVwZ-eVagef-eVCFAT-eVCGet-eVQ6Kj-eVagR5-eVkpov-eVNM3j-eViJc9-eVq398-eVkGZB-eVkxeN-eVLhPD-eVbFP5-eUXVHe-eVeEgq)

【「まさか大統領府を狙った攻撃を仕掛けるとは思わなかった」】
アフガニスタンの反政府勢力タリバンがカタールのドーハに事務所を開設し、アメリカなどとの和平交渉に入る姿勢をみせているという話は、6月18日ブログ「アフガニスタン 全土での治安権限委譲  外交攻勢とテロで政権を揺さぶるタリバン」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130618)の最後に付記しましたが、交渉が後述のように入り口でもめている間に、タリバンによるアフガニスタン大統領府襲撃事件が起きています。

*****アフガン:武装集団と交戦、大統領府の警備員3人死亡****
アフガニスタンの首都カブールの大統領府近くで25日、武装集団が車を自爆させ、治安部隊と約1時間半にわたって交戦した。

内務省によると、大統領府の警備員3人が死亡、1人が負傷した。治安部隊は武装勢力3人全員を射殺した。旧支配勢力タリバンが「大統領府、国防省、米中央情報局(CIA)の拠点アリアナ・ホテルを襲撃した」との犯行声明を出した。

内務省によると、武装集団は、偽造した北大西洋条約機構(NATO)軍の身分証を提示して、大統領府や米国大使館へ向かう第1検問所を通過し、第2検問所で交戦となった。カルザイ氏が家族と暮らす大統領府まで数百メートルの地点だった。

第2検問所では、カルザイ氏の記者会見に向かう地元の記者約30人が所持品などの検査を受けていた。その場にいたアフガン人記者(27)は「軍の制服を着た男たちが車から降りて銃を乱射し、車が爆発した。タリバンは先週、和平交渉へ向けてカタールに事務所を開いたばかり。まさか大統領府を狙った攻撃を仕掛けるとは思わなかった」と語った。

タリバンとの交渉で米側代表を務めるドビンス米国務省特別代表(アフガニスタン・パキスタン担当)は24日にカブールでカルザイ大統領と会談し、25日に大統領府で記者会見する予定だったが、攻撃当時は大統領府にはいなかった模様だ。【6月25日 毎日】
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襲撃の様子については、“午前6時半ごろ、大統領府東側の検問所に国際部隊の車両を装った2台が乗り付けた。1台は通過したものの、2台目は入構許可証が偽物だと見破られ、そのまま積んでいた爆弾を爆発させた。1台目に乗っていた数人と治安部隊の間で銃撃戦となり、1時間半後、犯人5人全員の死亡が確認された。アフガン人警備員3人も死亡した。”【6月26日 朝日】と報じられています。

犯行グループについては、“アフガン当局者はロイター通信に、タリバン強硬派のハッカニ・ネットワークの仕業とみられると述べた。”【6月26日 産経】とも報じられています。

頭越しにカルザイ大統領激怒 交渉に着かないタリバン
難航が予想されているタリバンとの交渉は、スタートと言うか、厳密にはスタートする前からもめています。

14年末までに戦闘部隊をアフガニスタンから撤退させることとしているアメリカとしては、撤退後の枠組みを確立するために早期の交渉を希望しています。
タリバンが「アフガンの国土を使って外国の脅威になることを許さない」と言明して、アルカイダとの“絶縁”を示唆していることも、9.11を引き起こしたアルカイダをかくまっているタリバン政権を潰すという、アメリカがアフガニスタンに侵攻した目的に沿うものであり、アメリカにとっては好都合です。

一方、カルザイ大統領はカタールへアフガニスタン政府の交渉団を派遣することを表明していましたが、カルザイ政権の頭越しにアメリカ政府が「タリバーンと数日中に交渉する」としたため、直接交渉にこだわるカルザイ大統領は強く反発、「和平交渉がアフガン人の手によって行われないならば交渉には参加しない」「米国が伝えていた内容と全く異なる」と、交渉参加を見合わせることを表明しました。

“反発の背景には、タリバーンがこれまで、カルザイ政権を「米国の操り人形」と決めつけ、直接交渉を拒否してきた事情がある。直接交渉を後回しにされることは、政権の威信に関わる問題だった。”【6月20日 朝日】

また、タリバン側が事務所を開設した際、タリバン政権時代の旗を立て、当時自称した「アフガニスタン・イスラム首長国」を名乗ったことも、カルザイ大統領を怒らせたようです。

カルザイ大統領の激怒によって交渉の日程は遅れ、アメリカがカルザイ大統領をなだめるという展開となりました。
タリバンもカタール政府の要請を受けて、不満を表明しながらも「アフガニスタン・イスラム首長国」の表示や旗を22日までに撤去しました。

“ケリー米国務長官は19日、カルザイ大統領に電話で善処を約束。米国務省のサキ報道官によると「イスラム首長国」の看板はホスト国のカタール当局が撤去したという。
ケリー国務長官は22、23日にドーハを訪問するが、AP通信によると、ケリー氏はこの際にタリバン代表と面会する見通しという。その前後に米・タリバンの交渉が始まる観測が出ている。”【6月20日 毎日】

しかし、ケリー国務長官がドーハに到着した後も、タリバンは交渉に出てきていません。

****平交渉「タリバン次第」=事務所閉鎖も―米国務長官****
カタールを訪問中のケリー米国務長官は22日、首都ドーハでの記者会見で、延期されているアフガニスタンの反政府勢力タリバンとの和平協議に関し、「米政府やアフガン政府は交渉のテーブルに着く準備が整っている」と述べ、タリバンの姿勢次第で協議再開の是非が決まると明らかにした。

ケリー国務長官はドビンズ米特別代表(アフガニスタン・パキスタン担当)が既にドーハに到着したとしつつも、協議が再開できるかどうかは「分からない」と発言。「他の関係者は自らに課せられた義務を果たした。後はタリバンが義務を果たすかどうかにかかっている」と述べた。【6月23日 時事】
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交渉への揺さぶり?】
そんなこんなでもめていた最中の、大統領府襲撃でした。
当然のように、カルザイ大統領はこの事件を強く非難しています。

****タリバーン襲撃、アフガン和平に暗雲 政府、強く非難****
アフガニスタンの首都カブールで25日、大統領府前の検問所を反政府武装勢力タリバーンが襲撃する事件が起きた。カルザイ大統領は声明で「彼らは和平交渉をすると言う一方で、無実のアフガン人を殺している。その責任を問われる日が来るだろう」と強く非難した。交渉の行方はさらに不透明になった。(後略)【6月26日 朝日】
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アメリカは、テロを非難しつつも、早期の交渉開始を呼びかけています。
“カニングハム駐アフガン米大使は、25日のテロを非難し、タリバンに協議のテーブルにつくよう重ねて呼びかけた。”【6月26日 産経】

オバマ大統領とカルザイ大統領が和平交渉の推進を支持するとの立場を25日に確認したとの報道もありますが、大統領襲撃事件に触れられておらず、事件との時間的前後関係はよくわかりません。

****タリバンとの和平推進=米・アフガン首脳が確認****
オバマ米大統領は25日、アフガニスタンのカルザイ大統領とテレビ電話を通じて会談し、両首脳はこの中で、アフガン政府と反政府勢力タリバンの和平交渉の推進を支持するとの立場を確認した。

タリバンは18日、交渉の窓口となる対外連絡事務所をカタールの首都ドーハに開設した。しかし、米政府が個別にタリバンと協議しようとしたことや、連絡事務所にタリバン統治時代の旧アフガン国名の表札と国旗が掲げられたことにカルザイ大統領が強く反発。第1回交渉の開催は先送りされている。【26日 時事】 
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今回の事件はについては、タリバン側が交渉を有利に運ぶため“揺さぶり”をかけているとも報じられています。
ただ、“揺さぶり”にしては、交渉開始直前の大統領府襲撃というのは刺激が強すぎる感もあります。
オマル師の生存が不明なタリバンは組織的な統一をかいている状況にあり、アメリカなどとの交渉が組織内で意思統一されていない可能性もあるのでは?
組織内に交渉に反発するグループが存在し、そうした勢力による犯行とも考えられます。

【「西側諸国や(イスラム圏の世俗国家)トルコの『女性の権利』は認められない」】
なお、タリバン側の交渉にあたっての考え方については、下記のような報道もあります。
一部タリバン支配地域で女子教育が認められており、タリバンの考え方も変わったのではないか・・・といった話もありましたが、下記インタビューでは「西側諸国や(イスラム圏の世俗国家)トルコの『女性の権利』は認められない」とのことで、相変わらずのようです。
そうなると、交渉に入れたとしても、何を目指して交渉するのか難しいところです。

****タリバン:「アフガン和平に期待」…元司令官インタビュー****
米政府とアフガニスタンの旧支配勢力タリバンが和平へ向けた交渉を中東・カタールの首都ドーハで開始する。交渉でタリバン側代表を務めるタイブ・アガ氏のいとこで、タリバンの内部事情に詳しいアクバル・アガ元タリバン司令官が21日、カブールで毎日新聞の取材に応じた。

「過去10年以上にわたる戦禍の苦しみは我慢の限度を超えている」と話し、米政府・カルザイ政権双方との「和平」実現に期待を示した。

交渉の議題について、「タリバンが参加する『暫定政権』の発足と、暫定政権下での大統領選や議会選挙の実施」を挙げ、政治復帰を目標としていることを明らかにした。大統領選は来年予定されているが、カルザイ大統領は、現政権を否定する「暫定政権」の提案は受け入れないとみられる。

また、交渉に先立ち、米政府が求めている「女性の権利保障」については、「西側諸国や(イスラム圏の世俗国家)トルコの『女性の権利』は認められない」と述べた。タリバン政権は女子教育を否定し、女性の体を隠すブルカ着用を義務付けたが、これらを維持する考えを示した。

ドーハ事務所開設時、タリバンが旧政権時代の旗を掲げたことがカルザイ氏を激怒させたが、「ささいな問題だ。カルザイ氏は気に入らないことがあるたびにへそを曲げる。これでは交渉は進まない」と、懸念を示した。(後略)
【6月24日 毎日】
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アメリカ  微妙な人種問題 進む非白人化 移民制度改革法案の二面性

2013-06-25 23:07:57 | アメリカ

(アメリカ・カリフォルニア州とメキシコを隔てる“壁”(ボーダー・フィールド州立公園) 鉄道のレールを突き立てただけのこの柵は、足が濡れるのを気にしなければ簡単に通り抜けられるものですが、監視体制がどうなっているのかは知りません。“flickr”より By Kyle Mahan
なお、【2007年7月 NATINAL GEOGRAPHIC】http://nationalgeographic.jp/nng/magazine/0707/feature05/gallery/02.shtmlに、厳重なものから「?」なものまで、アメリカ・メキシコを隔てる各地のいろんな壁の興味深い写真が掲載されています。)

差別禁止・是正措置は逆差別か
アメリカにおいて、人種の問題が複雑でデリケートな問題であることは言うまでもないことです。
今でこそ人種差別的な言動はタブーとなっていますが、私が子供の頃は、アメリカはまだ「白人専用」といった看板が街に見られるような社会でしたので、最近の差別をタブー視する価値観というのはつい最近のことです。

当然がら、人々の心の中に残る差別や拒否感の問題は、公の場での差別の禁止とはまた別の問題として、黒人大統領が誕生した今も根深いものがあるのは想像に難くないところですが、このあたりの心情は、単一の民族が大多数を占める日本人にはうかがい知れない部分も多々あるかと思います。

最近目にした、アメリカの人種問題関連の話題が2件。
ひとつは、公民権運動の中心的役割を果たした「投票権法」の現在での必要性の問題です。
アメリカでは、「投票権法」によって、“過去に差別的な手段で有権者登録のハードルを高くした州や郡を指定し、選挙に関する規定を変更する際は、連邦政府の事前承認を得るよう義務づけている”そうです。

****投票に残る人種差別 制限禁じる米法の必要性、近く判決****
マーティン・ルーサー・キング牧師らが率いた公民権運動から半世紀。当時夢見たように、米国の人種差別は過去の問題になったのか。そんな根源的な問いかけに対する判決が、連邦最高裁で近く言い渡される。

訴訟の対象となっているのは、1965年に制定された「投票権法」。人種や出自を理由とした投票制限を禁じる内容で、黒人の地位向上につながった一連の公民権法の中でも効果的な役割を果たしてきた。
過去に差別的な手段で有権者登録のハードルを高くした州や郡を指定し、選挙に関する規定を変更する際は、連邦政府の事前承認を得るよう義務づけている。

だが、2010年にアラバマ州シェルビー郡が「法律の延長は議会の裁量を超えている」として提訴。事前審査や、審査対象の自治体を定めた規定の無効を求めている。
同郡の弁護士を務めるフランク・エリス氏は「半世紀前とは変わった。黒人や白人の子供が一緒に遊び、白人が多い町でも黒人の町長がいる。にもかかわらず、事前審査を課すのはあまりに重い」と話す。

訴訟は無計画に起こされたわけではない。人種を前提とした法律規定の撤廃を目指し、活動を続けてきたエドワード・ブルーム氏(61)が同郡に訴訟を提案した。「組織的な差別は米国からほとんどなくなっている。法律は『逆差別』になりかねない」とブルーム氏は解説する。

しかし、必要性を訴える人もいる。同州セルマは1965年3月、公民権運動のため行進していた黒人らに警察が暴行を加え、投票権法が生まれるきっかけとなった場所。この時、暴行を受けた民主党のジョン・ルイス下院議員(73)は「人種問題は劇的に進歩したが、後戻りは許されない」と語る。

昨年の大統領選でも有権者に特定の身分証明書の提示を求めたり、期日前投票を制限したりと、マイノリティーにとって不利となる法改正が複数の州で実施された。「いつかは、投票権法が必要ない日が来るはずだ。ただ、今はまだ問題が多すぎる」とルイス氏は話す。(シェルビー郡〈米アラバマ州〉=中井大助)【6月24日 朝日】
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もうひとつは、大学入試における積極的差別是正措置の問題。マイノリティー優遇措置が逆差別にあたるのではないかとの訴えです。

****米入試訴訟:少数人種優遇、違憲か 最高裁、差し戻し****
学生の多様性を確保するため「人種」を入学選抜基準に採用している米テキサス大学の入試制度は違憲として訴えていた積極的差別是正措置(アファーマティブ・アクション)訴訟で、米連邦最高裁は24日、下級審が「厳格な審査」をしていないとして、大学側の主張を支持した連邦控訴裁への差し戻しを命じた。
これにより、大学の入試制度が違憲となる可能性が出てきた。

2008年に同大を不合格になった白人女性のフィッシャーさんが、選ばれなかったのは同大の選抜制度により「不法に差別された」ためとして提訴。1審に続き11年の2審判決でも敗訴し、上告していた。

最高裁は「控訴裁は実際に入試制度がどう運用されているか厳密な検討なしに大学側の主張を認めた」とし、原判決を無効とした。

同措置は黒人など人種的少数派を優遇するため1960年代に導入された制度。ミシガン大法科大学院が訴えられた同様の訴訟で連邦最高裁は03年、総合的な判断材料の一つとして人種を考慮するのは「合憲」としていた。【6月25日 毎日】
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「投票権法」、積極的差別是正措置双方とも、差別是正に大きな役割は果たしたことは別として、現在ではもはや必要なく、その存続は逆差別ともなるという白人側からの訴えのようです。

そうした主張の妥当性については、最初にも述べたように日本人にはうかがい知れない部分も多々あるところで、アメリカ社会の実情もわかりませんので、ここでは触れません。

白人新生児が過半数を割る、白人の「自然減」】
ただ、近年のアメリカ社会では白人の割合が減少しており、新たな微妙な問題を今後生み出すことも想像されます。
下記は1年前の記事です。

****米国の赤ちゃん、史上初めて白人系が少数派に 米国勢調査****
米国で生まれた新生児のうち、白人系はもはや多数派ではないことが、米国勢調査局が17日に発表した統計結果で明らかになった。

米紙ニューヨーク・タイムズが報じた統計結果によると、2011年7月までの1年間に生まれた米国の新生児は、ヒスパニック、アフリカ系、アジア系、混血系など非白人系が50.4%を占め、米国史上初めて白人系が過半数を割った。

ヨーロッパからの白人移民によって建国され、初期には労働力として多数のアフリカ系の人々が奴隷として連れてこられた米国の現在の人口比の変化は、ある程度は予測されたことだった。
近年は中南米からのヒスパニック系移民が増加しており、新生児における白人系比率の低下に拍車をかけたとみられる。

ニューヨーク・タイムズ紙は米調査機関「ピュー・ヒスパニック・センターの人口統計学者、ジェフリー・パッセル氏の話として、ヒスパニック系の人口増加傾向は続くとみられると伝えた。ヒスパニック系住民の平均年齢が、出産適齢期のピークにあたる27歳だからだ。
パッセル氏によれば、2000年から2010年までの期間に米国で生まれたヒスパニック系の数は、米国に新たに移民したヒスパニック系の人数を超えたという。

一方、米国の新生児を人種別にみれば、白人系が49.6%と依然として最大のシェアを保っている。米国人全体でも白人系が63.4%で多数派だ。

米シンクタンク、ブルッキングス研究所のウィリアム・フライ氏はニューヨーク・タイムズ紙に、非白人系の新生児が白人系を上回ったこの転換点を「米国の社会が、ほとんどが白人系だったベビーブーマー時代から、よりグローバル化した多民族国家へと変容しつつある事実を示したもの」との見解を示している。【2012年5月17日 AFP】
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下記は、白人が「自然減」となったという今年6月の記事です。

****米国で白人の死亡数が出生数を上回る―近代史上初めて*****
米国の近代史で初めて白人の死亡数が出生数を上回った。今後、回復基調にある米国経済が勢いを付ける上で、マイノリティーや新たな移民が人口増加に果たす役割が大きくなるとみられる。

米国勢調査局が13日に発表した統計と、ニューハンプシャー大学の人口統計学者ケネス・ジョンソン氏による全米保健医療統計センターのデータ分析によると、2012年6月までの1年間に死亡した非ヒスパニック系白人の数は同期間の出生数を約1万2400人上回り、初めての「自然減」となった。

一方、国勢調査局のデータは、移民によって白人人口の絶対数が昨年増加したことを示した。

ブルッキングス研究所の人口統計学者ウィリアム・フレイ氏は、このデータを分析すると、非ヒスパニック系白人の人口増加が鈍化するにつれて、若年人口に占めるマイノリティーの比率が上昇していると話す。5歳未満の米国人は依然として大半(50.1%)が白人だが、ヒスパニック系やアジア系を中心とするマイノリティーが2年連続で新生児の過半数を占めているため、この比率は今後低下すると見られている。

米国の白人人口は近年増加ペースが鈍化していたが、人口統計学者は今後もしばらく出生数が死亡数を上回ると予想していた。国勢調査局は、死亡数が出生数を上回る「自然減」は2020年頃から起き始め、白人人口はその数年後から減少に転じると見込んでいた。(中略)

脆弱な景気回復を受けて多くの女性が出産を先延ばしにしていることも影響している。人口統計学者はこの傾向は反転する可能性もあるとみているが、国勢調査局のデータはそれ以上に強力かつ長期的な人口動態の変化を浮き彫りにしている。

白人人口の高齢化に伴って出産適齢期の白人女性が減少していることが、白人の出生数の低下につながっている。この傾向が変化する見込みは低く、同時にアフリカ系やヒスパニック系を含む若年成人の出産数も減少している。
人口を一定に保つ出生率を表す人口置換水準は米国の場合約2.1だが、出生率は現在これを下回る1.9となっている。【6月17日 WSJ】
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不法滞在者1100万人を社会の影から引き出す一方で、新たな不法移民を防ぐ対策強化
黒人やヒスパニック系住民のウェイトが増していることは、大統領選挙の際、こうした住民の支持が多い民主党と、逆の立場の共和党という関連でもよく取り上げられるところですが、近い将来、白人が過半数を割り込み、アメリカが少なくとも数の上では「白人の国」でなくなることは避けられない事実でしょう。

また、人口増という社会の活力を維持するためには、移民の役割が重要となってきます。そのことは、アメリカ社会の非白人化を更に加速させることになります。

人口構成が特に増加しているのはヒスパニック系で、移民の主力となっています。
特に、国境を接するメキシコからは不法移民も多く、共和党を中心に強い反発があります。
一方で、アメリカ社会がこうした移民労働力を前提にして成立しており、今後その重要性は増すことはあっても減ることはありません。不法移民にしても、その流入を許容することはできないが、既に存在するその労働力を無視することもできないという微妙なところです。

****移民受け入れ、経済成長にプラス=改革法案の早期成立要請―米大統領****
オバマ米大統領は24日、納税など一定の条件を満たした不法移民に市民権取得の道を広範に開くことを柱とした移民制度改革に関し、「移民の取り込みが経済成長や雇用創出に貢献することは、全ての財界指導者が認識している」と述べるとともに、早期の法案成立を議会に改めて促した。

移民制度改革をめぐっては、大統領提案に基づき超党派の上院議員が提出した法案が施行されれば、今後10年間で1970億ドル、その後の10年間でさらに7000億ドルの財政赤字削減が見込めるとの報告書を議会予算局(CBO)がまとめている。

大統領はこれに触れ、「今こそ改革を成し遂げるときだ」と訴えた。ホワイトハウスで開かれた移民制度改革に関する企業経営者らとの協議に先立ち記者団に語った。【6月25日 時事】 
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今回の移民制度改革法案では、“2011年12月以前に入国した不法移民は重い有罪判決を受けていないことなどを条件に、500ドル(約5万円)の罰金を支払えば「暫定的な登録移民」としての地位を申請でき、合法的に働くことができるようになるのが法案の柱。10年後に永住権、さらにその3年後に市民権の申請が可能になるという。”【5月22日 日経】ということで、不法滞在者1100万人を社会の影から引き出し、一定条件下で合法化しようというものです。
その一方で、オバマ政権は不法移民増加を批判する共和党を懐柔するため、厳しい不法移民取締り強化策を盛り込んでいます。

****軍事化」する米メキシコ国境、移民制度改革法案****
国境警備隊2万人の増員、数百キロに及ぶフェンス、無人偵察機やレーダー、センサーに数十億ドルを投入──メキシコからの不法移民流入を食い止めようと、米議会では軍事的な対抗手段が提案されている。

米上院は24日、画期的な移民制度改革法案の中で最も重要な修正案を承認したが、治安悪化に対する共和党の懸念を和らげることを意図したこの修正案は、米・メキシコ国境を西半球で指折りの厳重警戒地域にしようとしている。
批判派はこの計画を「ステロイド剤を使った国境警備」(副作用が多いという意味)と呼び、修正案策定を担当した共和党議員さえ密入国の取り締まり手段としては「やり過ぎ」かもしれないと認めている。

今回の修正案が承認されたことで、過去30年近くで最も抜本的な移民制度改革法案は上院を通過する見込みだ。法案が下院に送られた後の見通しには流動的な面もあるが、年内に成立するという楽観的な見方もある。

移民制度改革法案の主眼は、メキシコ人が大半を占める米国内の不法滞在者1100万人を社会の影から引き出し、最初の申請から13年後には市民権の申請ができるようにすることだ。さらに農業やハイテク分野での就労ビザ制度改正や、雇用証明書の電子化、包括的な出入国追跡などが盛り込まれている。

しかし、ロナルド・レーガン政権下の1986年以来となる大規模な移民制度改革法成立の可能性を高めるため、バラク・オバマ大統領率いる民主党は共和党への妥協を重ね、当局が新たな不法移民の流入に直面する事態を避けることを保証した。

そして共和党のボブ・コーカー、ジョン・ホーベン両上院議員が策定した妥協案によって、2002年にはわずか1万人だった合衆国国境警備隊は、現在の約1万8000人から3万8405人に増員される。平均すると全長3200キロの米・メキシコ国境で1キロ当たり約12人が配備されることになる。

■もうかるのは軍事企業?
修正案に賛成する議員らは、先住民居留地以外の場所にある既存の長さ約480キロの進入車両防御フェンスを、もっと厳重な「徒歩越境者防御フェンス」に変えることも望んでいる。
フェンスはさらに80キロ分を増設し、合計で約1130キロの高いフェンスを設置する計画だ。
一部のフェンスは、メキシコと米テキサス州が接し、約2020キロの自然の国境となっているリオグランデ川沿いに設置される。

さらに修正案は国境警備装備の増強も詳細に定めている。32億ドル(約3100億円)の予算を投入し、無人偵察機4機、ヘリコプター40機、ボート30隻、振動・画像・赤外線による地上無人センサー4595台、さらに数百台の固定監視カメラと移動監視システムなどを導入する。

移民制度改革法案の原案を民主党議員4人と共に策定した共和党議員4人の1人、ジョン・マケイン上院議員は21日、米FOXニュースに対し「私が勧告したであろう内容以上の内容かと聞かれれば、その通りだと答える」と語った。「しかし、われわれは人々を安心させなければならない」

ワシントンD.C.周辺では、この国境警備強化案はジョージ・W・ブッシュ大統領が2007年に命じたイラクへの米軍増派と比較され始めている。
民主党のパトリック・レーヒー上院議員は「米軍増派との比較は的を射ている。なぜならばこの法案は、米南西部の数百のコミュニティーを軍事化するものだからだ」と述べ、国境警備態勢の変更は「(米軍事・エネルギー大手)ハリバートンが欲しがるクリスマスプレゼントのリストのようだ」と冷笑した。【6月25日 AFP】
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もっとも、順調なメキシコ経済、メキシコでの出生率低下を受けて、かつてとは逆に、今やアメリカからメキシコに戻る人々の方が、アメリカへの流入を上回る現象が起きている・・・という話は、2012年6月26日ブログ「アメリカ アリゾナ州移民法に関する連邦最高裁判断 一方で、国境での人の流れに大きな変化も」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120626)で取り上げました。

事態は刻々と変化しています。従来の“不法移民取締り”的な発想では現実から遅れてしまうことも考えられます。


コメント

ミャンマー  民主化が解き放った「ビルマのビンラディン」、それを受け入れる社会的土壌

2013-06-24 22:57:28 | ミャンマー

(2012年7月24日 タイ・バンコクで行われた仏教徒アラカン族避難民のロヒンギャに対する抗議集会 仏教僧の手には「Rohingya No」の文字が “flickr”より By AJstream http://www.flickr.com/photos/61221198@N05/7691675576/in/photolist-cHFRb9-bXbbZR-egcQLH-egixTS-egivTm-egiwnq-egiBis-egcPqc-egcMbx-egcNCx-egcJUF-egcKwn-egcKE6-egiweA-egitV9-egcQiD-egcQv6-egcKP8-cSLy3u-d2JcyY-cEMSQm-cEMTd7-cEMSGm-cEMSyd-cEMTrQ-cEMSWL-cEMSrC-cEMSiU-cEMS7L-cEMTj5-egiurh-egcPWD-egcNwc-egiv2j-egcPKg-egcRmn-egiANJ-egcQcz-cSLy6b-e6wnQ3-e689S5-cEMT5J-cEMSd9)

【「パラノイア」の主張が受け入れられる土壌
仏教国ミャンマーにおいて、西部ラカイン州の少数民族ロヒンギャ族と仏教徒の衝突に端を発して、全国各地でイスラム教徒と仏教徒の対立・緊張が拡大していることは、これまでも何回か取り上げてきました。

そうした緊張を煽っている、イスラム排斥運動を展開している著名な仏教僧が問題となっています。

****ミヤンマー僧侶があおるムスリム排斥****
人口の9割を仏教徒が占めるミャンマー(ビルマ)で、少数派のイスラム教徒を排斥する動きが激化している。
象徴的なのが著名な僧侶ウィラツが主導する「969運動」だ。彼らは仏教徒が営む商店に対し、イスラム教徒の店と区別するための表示を掲げるよう呼び掛けるなど反イスラム感情をあおっている。

969運動が「手本」としているのはイギリスの極右団体「英防衛連盟(EDL)」。先月にロンドンでイギリス軍兵士がイスラム教徒2人に殺害された事件に抗議して、イスラム系移民排斥を訴える大規模デモを主導した組織だ。フェイスブックには「EDLを支持するミャンマー仏教徒」を名乗るページが開設され、EDLも969運動
にラブコールを送っている。

だが「暴力を使わずに国民を守るEDLのようになりたい」というウィラツの発言とは裏腹に、ムスリム迫害は過激化する一方だ。
バングラデシュ国境に近いラカイン州では昨年、イスラム教徒の少数民族ロヒンギヤ族が仏教徒に襲撃され、200人近くが殺害された。最近も各地でムスリムを狙った放火や襲撃事件が相次いでいる。【6月25日号 Newsweek日本版】
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「ビルマのビンラディン」とも呼ばれるこの高僧ウィラツ師は、旧軍政時代は「危険人物」とみなされ投獄されていましたが、テイン・セイン政権の進める民主化に伴う政治犯釈放によって出獄して、現在の活動を行っているそうです。

****ミャンマー:「イスラム嫌悪」広げる高僧 仏教徒に陰謀論****
敬虔(けいけん)な仏教国とされるミャンマーで仏教徒とイスラム教徒の宗教暴動が頻発している。
テインセイン大統領は「民主化への脅威だ」と危機感を募らせるが、国民の9割とも言われる仏教徒の「イスラム嫌悪」は強まるばかりだ。

そんな中、米欧メディアやイスラム教徒から暴動の「黒幕」「扇動者」と指弾され、「ビルマのビンラディン」と呼ばれる高僧の存在がクローズアップされている。

 ◇「釈迦の教えだ」
「ビンラディン(2011年、米軍により殺害)は国際テロ組織アルカイダを率いたイスラム過激派ですね。あなたも過激派ということですか?」
古都マンダレーの僧院で渦中のウィラトゥー師(45)にそう向けると「仏教は中庸の宗教で、私は釈迦(しゃか)の教えに従っているだけですよ」と笑みを返した。

師は、イスラム教徒の商店でモノを買うなといった「不買(ボイコット)」を奨励する。改宗を迫られるイスラム教徒との結婚は避けるようにとも説く。

「彼らは人口を増やして経済力をつけ、国家を乗っ取るつもりだ」とみているからだ。政府統計ではイスラム人口は4%で主にインド系。だが、専門家の間でも「統計は過少」との見方が一般的だ。

師の僧院はビルマ王朝期の創建で国内最多の約3000人の僧を擁する。古代インドで仏教を保護した大王「アショカ」の名を冠し、国民の敬意はあつい。その中で師は仏法を極めた順に上位7番目の中心的な立場にある。

師は自らの布教を、仏教の三宝(仏法僧)を意味する数字から「969運動」と呼ぶ。運動のステッカーにはアショカ王の有名な石柱をあしらった。石柱に彫られた王の紋章の車輪は「真理」を意味し、神話ではこれを回し「悪」を退治した。

師が運動を始めたのは軍政期の01年末。この年3月、アフガニスタンのバーミヤンで大仏がイスラム勢力に爆破されたのがきっかけだ。9月には米同時多発テロが起き、これら事件の背後にいたのがビンラディンだった。

師は「歴史的にイスラム教徒はジハード(聖戦)の名の下に異教徒を殺りくし、改宗を強いてはイスラム支配圏を広げてきた」と指摘する。かつてバーミヤンを含むアフガン東部からパキスタンにかけてのガンダーラでは仏教が隆盛したが、今はイスラム一色。「わが国も危ういと感じた」と振り返る。

「969」はイスラム教の聖なる数字「786」に対抗した。786は聖典コーランの冒頭にある「慈悲深き神の名において」の言葉を数字化したものだ。
ミャンマーでは元々イスラム教徒の商店で看板などによく786の数字が記されている。それが今、仏教徒の商店で969のステッカーがじわじわ増えているのだ。

 ◇「行動は自己防衛」
「私たちの行動は自己防衛です。仏教徒は穏やかで我慢強い。攻撃的なイスラム教徒から、せめて自らを守る必要があるのです」
師がそう語るように、説法でも「イスラム教徒を排撃せよ」とは言わない。ただ、ヘイトスピーチ(憎悪表現)のような誇張や陰謀論が頻繁に顔を出す。

「民主化」以降、最初の宗教暴動が起きたのは昨年6月。西部ラカイン州で仏教徒女性がイスラム教徒の男たちに集団でレイプされ、殺害された事件がきっかけだった。
師は言う。「問題を起こすのは大抵はイスラム教徒です。彼らはこの国のすべての町や村で仏教徒をレイプしています。障害者であろうが少女であろうが。しかも異教徒へのレイプを称賛し合うのです」

イスラム教徒の乗っ取り計画は、中東のオイルマネーが資金源なのだそうだ。計画遂行は21世紀中。イスラムの聖数786をそれぞれ足すと21になる、というのがその根拠だ。

 ◇英紙「パラノイア」
英紙ガーディアンは師を「パラノイア(妄想性障害)」と断じ、師の説法について、学際派で別の僧院のアリヤウオンタービウオンタ僧長(62)の反論を掲載した。「釈迦の教えとは違う」と。

当の僧長にぶつけると「そのコメントは歪曲(わいきょく)です。イスラムの脅威は歴然とした事実だ」と語り、師をビンラディンではなくインドのガンジーに重ねた。「英国の植民地支配にあらがい、英国製品の不買運動を展開し不服従を貫いた愛国者です」

実は、旧軍政は師を「危険人物」とみなし、刑務所に放り込んだ経緯がある。師が運動を始めた2年後の03年、師の出身地で軍政下では異例の宗教暴動が発生。「国家分断の阻止」を国是とする軍政は国家を不安定にした罪で禁錮25年を科す。

だがテインセイン政権は段階的に「政治囚」を釈放。昨年1月の恩赦でウィラトゥー師も出獄した。ミャンマーにとり、師は民主化が解き放った救世主なのか、疫病神なのか。【6月21日 毎日】
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偏狭な民族主義者は多分にその傾向がありますが、英紙が言うように、この「ビルマのビンラディン」ウィラツ師もイスラムの脅威に取りつかれた「パラノイア(妄想性障害)」に見えます。
問題は、そうした「パラノイア」とも思える同師の主張が広く受け入れられる土壌、イスラムに対する嫌悪感が国民の間に存在するということです。

地方で続くイスラム排斥
更に、そうした動きを止めようとせず、同調してイスラム排斥に動く地方の役人・軍人が存在することが、問題を深刻化させています。西部ラカイン州では軍も多数派仏教徒に加担して「民族浄化」が行われているとの指摘もあります。

宗教対立に対し、テイン・セイン大統領は「民主化への脅威だ」としていますが、その意図は末端には届いていないようです。

もっとも、12年11月にテイン・セイン大統領は国連の潘基文事務総長に書簡を送り、ミャンマー国内で「移民」として扱われ差別を受けているイスラム教徒の少数民族ロヒンギャ族に対し、市民権を付与するなど社会的地位の向上に努める考えを表明していますが、逆に言えば、それまでは中央政府もロヒンギャをミャンマー国民として認めてはいませんでした。

テイン・セイン大統領は12年6月に起きたラカイン州での衝突を受けて、7月12日、今回の宗派間対立への「唯一の解決策」はロヒンギャ族を第三国か、UNHCRが管理するキャンプに追放することだとし、「もしかれらを受け入れる第三国があれば送り出す」と、ロヒンギャの国外追放を主張しています。【12年8月2日 ヒューマン・ライツ・ウオッチより】この案は難民支援機関UNHCRで棄却されています。

その後9月には、テイン・セイン大統領のロヒンギャ国外追放案を支持する、ウィラツ師主導による仏教僧の大規模抗議行動が起きています。【12年9月5日 難民支援NGO"Dream for Children"より】

民主化運動指導者スー・チー氏もこの問題には口を閉ざしています。
そうした社会情勢にあって、中央政府がロヒンギャ容認に舵を切ったのは強い国際圧力があってごく最近のことですから、地方にその意向が届いていないのも想像に難くないところです。

****民族対立「改革路線に悪影響」=ミャンマー民主化で国際人権団体****
来日中の国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチのマティソン・ミャンマー上級調査員が14日、都内で記者会見し、同国の民主化路線推進による投資熱の高まりについて「未来は明るいように見えるが、課題山積の状態。中でも民族対立は(テイン・セイン)大統領の民主化路線を形無しにする恐れがある」と懸念を表明した。

マティソン氏は5~6月に数週間、ミャンマーを訪問。同氏は「中央政府が決断しても、(民族対立のある)地方の役人や軍人は改革に後ろ向きで、改革が進まない一因だ」と指摘した。

昨年以降、西部ラカイン州で続くイスラム少数民族ロヒンギャ族と多数派の仏教徒との衝突を挙げ、こうした不安定な状況は外国投資を阻害するだけだと述べた。

その上で、ミャンマーを批判するのでなく「関与を続けることが重要だ」と指摘。安倍晋三首相の訪問など最近日本がミャンマーを重視している事実にも触れつつ、国際社会が改革路線を後押しすべきだと訴えた。【6月14日 時事】 
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アジアの問題
近年、世界で多発している問題の多くがイスラムにかかわるものになっています。
イラクやアフガニスタンでの戦争、イランをめぐる対立、ナイジェリア・マリ・ソマリアなどアフリカにおけるイスラム過激派の活動、9.11なそ各地でおきるイスラム過激派によるテロ・・・。

また、イスラム内部における宗派もシリアやイラクなどで紛争・治安悪化を招いています。

更に、トルコやエジプトなどにおいては、イスラム主義と世俗主義の対立が社会を不安定化させています。

「イスラム」というと中東諸国を連想しますが、約16億人とも言われているイスラム教徒の60%はトルコを含むアジアで生活しています。【選択 6月号より】

インドネシアは世界最大のイスラム国家です。
アフガニスタン、パキスタン、中央アジア諸国、バングラデシュ、マレーシアもイスラム国家、あるいはイスラムが多数を占める国家です。
中国、インドにもイスラム教徒が多数存在しています。

そうしたなかで、フィリピンのミンダナオ島やタイの「深南部」での多数派と少数派イスラム教徒の対立、中国のウイグル族の問題、インドの根深いヒンズー・イスラムの対立・・・・など、アジア各地でイスラムとの対立・緊張が存在しています。
そして、ミャンマーでも。

イスラムとどのように向き合うかは、アメリカの対テロ戦略の問題ばかりではなく、アジア自身の問題でもあります。
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ロシア  経済停滞 進まない資源依存抗争脱却 プーチン大統領は権力基盤再構築へ

2013-06-23 21:41:05 | ロシア

(ソチ冬季五輪会場の模型 メインスタジアム、ホッケー会場(2か所)、カーリング会場、スピードスケート会場、フィギュアスケート会場など “flickr”より By Ariane Colenbrander http://www.flickr.com/photos/11778646@N06/4352480520/in/photolist-7CBAPA-7CBB6o-7CxLED-7FY2fw-7FxLBu-7FEuYw-7Fvu2v-8HVgxs-7CMmww-7E3G2q-7FuDNj-cFB7Zh-7FtXHP-7DXkit-95R4x3-95R4xj-7FzphS-7DQj8L-7DQZr1-7DQZ1E-bxNmGB-bxNnkM-bjTshQ-bjTxLU-bjTvG5-bjTxRu-bjTxX1-bxNnxi-bxNnrZ-bjTuv3-bjTu73-bxNn2D-bjTtFA-7DQiRs-7DLCoK-7DLCv8-7DLuLZ-7DMb32-7DMbgT-7DMaRK-7DLC5r-7DQYUu-7DMaWR-7DLCdt-7DQjt7-7DSvGe-7Ee86p-7DiQfh-7GKuFX-7GPqZY-7GPqG5
プーチン大統領は2月6日に現地を視察した際、ロシア五輪委員会のビラロフ副会長が代表を務める企業が担当した競技施設の建設に当初予算の6倍以上の費用が掛かり、工期も守られていないことを厳しく批判、逆鱗に触れた同氏は翌日解任されました。)

もはや「魔法の杖はない」】
ロシア経済の停滞が続いています。
2013年のGDP成長率予測は、3.6%から2.4%に下方修正されましたが、これはマイナス7.8%となった09年を除き、1999年以来で最低の数字です。
17日発表された第1・四半期の伸び率も前年同期比で1.6%で、四半期ベースでは09年以来最も低い成長率でした。
石油・天然ガス収入を再配分するだけの資源依存型のプーチン流経済モデルの限界が指摘されています。

****自慢の経済」後ずさり ロシア プーチン流、限界 「大胆な改革」踏み切れず****
 ■成長率を下方修正/バラマキ原資なし
プーチン大統領の就任から1年余りが過ぎたロシアで、経済成長の鈍化が鮮明になっている。
今年1~3月期の国内総生産(GDP)は前年同期比でわずか1・2%の伸びにとどまり、経済発展省は通年の成長率予測を3・6%から2・4%に下方修正した。石油・天然ガス収入を再配分するだけのプーチン流経済モデルが、いよいよ限界を露呈してきた。

2008~09年の世界金融危機後、ロシアの経済成長率は10年に4・5%、11年に4・3%、12年に3・4%と漸減してきた。今年の予測成長率は、マイナス7・8%となった09年を除き、1999年以来で最低となる。

これは、プーチン氏が大統領復帰前に豪語していた「年6~7%の成長」からほど遠く、主要新興国の中でも見劣りする。ベロウソフ経済発展相は4月の政府会合で「今日の状況は相当な程度、世界経済でなく、国内要因に関係している」と率直に述べた。

2000年に1期目の大統領に就任したプーチン氏は、政治・経済の両面で国家統制を強化する一方、石油・天然ガス収入を公務員給与や年金の引き上げ、国策企業への資金投下などに振り向けた。就任時に1バレル=20ドルだった石油価格の急騰に助けられ、08年春までの前回大統領期には年平均約7%の成長を達成。

通算3期目には、強権統治と“バラマキ”というプーチン政権の性格がいっそう強まっている。医師や教員の給与増額、住宅供給、軍需産業支援といったプーチン氏の公約を全て実現すると、任期の6年間で4兆8千億ルーブル(約15兆3千億円)の支出増になると試算されている。

だが、経済減速が示すのは、従来の発展モデルが頭打ちになり、バラマキの原資を見いだすことも困難になっている現実だ。最大の問題は、国家予算に占める石油・天然ガス関連の収入が50%を超え、地下資源頼みの経済構造から脱却できていないことにある。
財政赤字の回避は不可能とみられており、国際資源価格の急落に見舞われた場合の影響は甚大だ。

政権のリベラル派は企業の税負担軽減や汚職対策、投資環境改善などによる産業育成を主張。だが、現実には治安・特務機関の出身者など国粋主義のシロビキ(武闘派)が影響力を増しており、政権が大胆な改革に踏み切る兆候はない。

「停滞の時代」と呼ばれる旧ソ連後半のブレジネフ政権期に、超長期化する「プーチン時代」をなぞらえる論調も目立ってきた。【5月31日 産経】
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資源依存構造からの脱却の必要性はプーチン大統領もかねてより主張いることで、22日までサンクトペテルブルクで開催されていた「国際経済フォーラム」においても、資源依存構造からの脱却を図るべく鉄道建設など大規模事業への資金投下を表明していますが、その実現性については疑問視されています。

****プーチン大統領「もう魔法の杖ない」 露フォーラムで資源頼み懸念****
ロシア経済の魅力をアピールするため、同国西部サンクトペテルブルクで開催されていた「国際経済フォーラム」が22日、閉幕した。プーチン大統領は演説で地下資源依存の経済構造から脱却する必要性を強調し、鉄道建設など大規模事業への資金投下を表明。

しかし今年1~5月の国内総生産(GDP)が前年同期比1・8%の伸びにとどまるなど経済の減速は明らかで、楽観視する見方は少ない。

同フォーラムは、ロシアが世界経済フォーラムの「ダボス会議」を意識したものとして2000年代半ばから注目されてきた。だが、ロシア経済に好材料がない中での今回の会合について、主要メディアは投資家の間の「沈鬱ムード」とともに伝えている。(中略)

プーチン氏は会期中の演説で、過去のロシア経済を支えてきた石油・天然ガス価格の高騰が今後は望めないとの認識を示し、もはや「魔法の杖はない」と発言。着実な成長のためには労働生産性の向上と投資、技術革新が不可欠だと強調した。

プーチン氏はまた、モスクワと西部カザンを結ぶ高速鉄道の建設やシベリア鉄道の近代化、モスクワ郊外の環状道路建設に4500億ルーブル(約1兆3400億円)を投じると表明した。
ただ、プーチン氏の掲げた「課題」に新味は全くなく、投資環境改善への方策も額面通りに受け取ることは難しい。

昨年のこのフォーラムでプーチン氏は、国営大企業の「民有化」推進を約束したが、実際は大手銀ズベルバンクの株式7%強が放出されたのみだ。汚職や過度の官僚主義といった劣悪な投資環境も相変わらずで、プーチン氏に任命された「事業家オンブズマン」の活動成果は、いまだ限定的なものにとどまっている。

石油・天然ガスの収入を国家主導の大規模事業に投下する「プーチン流経済モデル」の非効率も指摘されている。南部ソチで来年行われる冬季五輪の会場建設費は500億ドル(約4兆8900億円)と、「史上最高額」に膨張した。
役人や大企業の腐敗が深刻な上、各種インフラ事業の必要性や経済効果には疑問符がつけられている。【6月23日 産経】
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【「皇帝は善良。悪いのは取り巻き」】
やはり経済減速に悩むBRICsの一角、ブラジルでは「ワールドカップより教育、貧困対策を」との抗議行動が展開されていますが、コンフェデ杯のスタジアム建設費は約2千億円、W杯開催に向けた施設整備などにかかる費用については約1兆2千億円に達するもの見られています。

ソチ冬季五輪の約4兆8900億円はそれに比べても巨額です。
それでも、国民の不満が表面化しないところがロシアの社会・政治構造です。

もっとも、国民の間に経済停滞・官僚の腐敗などへの不満がないわけではなく、与党「統一ロシア」の支持率は20%台にまで低下しています。
そこで、プーチン大統領は失策への批判を与党「統一ロシア」と、「統一ロシア」を委ねたメドベージェフ首相に押し付ける形で、新たな権力基盤の整備を本格化させています。

****ロシア:プーチン氏の超党派組織が組織拡充****
ロシアのプーチン大統領が率いる超党派組織「全ロシア国民戦線」が12日、組織の拡大に向け、中央本部の共同議長や規約などを決める。

与党「統一ロシア」に対する国民の批判が強いことから、大統領は支持基盤を「国民戦線」へ移していくとみられ、任意団体だった「国民戦線」の本格的な組織作りに乗り出した格好だ。

「国民戦線」は11〜12日に創設大会を開き、プーチン氏を代表、正式名称を「全ロシア社会運動・ロシアのための国民戦線」とする見通し。

「国民戦線」は2011年にプーチン氏の提唱で設立され、昨年3月の大統領選でプーチン陣営を支援したが、体制作りが遅れていた。保守勢力が政党や団体の枠を超えてプーチン氏の下に集まる組織を目指す。
今後、正規の社会運動団体として登録し、次期の下院選(16年)や大統領選(18年)へ向け活動を広げていく。

統一ロシアは11年末の下院選で議席数を大幅に減らし、昨年にプーチン政権が誕生した後、党首職はプーチン氏からメドベージェフ首相へ引き継がれた。
今後は「国民戦線が組織として形を整える一方で、統一ロシアやメドベージェフ氏が損な役回りを背負わされていく」(高等経済大学院のペトロフ教授)との見方も出ている。【6月12日 毎日】
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「国民戦線」(All-Russia People's Front)は各地に住民の陳情所を設け、中央と地方の政府や議会、行政機関を監視して各種問題の解決を働きかけるとのことで、“政党や議会がいっそう形骸化し、「皇帝型」の統治に傾斜する可能性も指摘されている”【6月13日 産経】と指摘されています。

“プーチン氏はこのため、人民戦線(「国民戦線」)に軸足を置くことで「統一」などから距離をとり、各種の政治勢力や政府を超越した「国民の指導者」像を前面に打ち出していく見通しだ。これは、「皇帝は善良。悪いのは取り巻き」というロシアの伝統的な庶民感情に訴える統治手法でもある”【同上】
「皇帝」とか「人民戦線」とか、なにやら先祖返りのような雰囲気もあります。

薄れるカリスマ
プーチン大統領は地方の保守層を中心に今も60%前後の支持率を維持していると見られていますが、都市部を中心にひところのカリスマが薄れてきてもいます。

****プーチン大統領は理想的統治者ではない」46%*****
ロシアの中立系世論調査機関「レバダ・センター」は10日までに、プーチン大統領が国家の統治者として理想的ではないと答えた国民が46%にのぼり、理想的だと答えた41%を上回ったとする調査結果を発表した。

調査は5月末、国内45の地域で1600人を対象に実施。専門家は社会福祉政策などの個別の問題へのプーチン大統領の対応となれば、「理想的」とする回答はさらに下がるだろうと指摘している。【6月11日 産経】
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こうした政治状況を打開するためにも、プーチン大統領としては経済再建が急務となっています。

その流れで、プーチン大統領が号令する極東開発の推進が重要であり、そのためには日本との資本・技術協力も必要となります。その先には北方領土問題の打開も・・・というのは、少し話を急ぎすぎでしょうか。




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イラン  ロウハニ師圧勝でイランは変わるか?

2013-06-22 21:48:48 | イラン

(6月15日 テヘラン 保守穏健派ロウハニ師勝利を街頭で喜ぶ若者ら この喜びが失望に変わることがないように願うばかりです。 “flickr”より By AJstream http://www.flickr.com/photos/61221198@N05/9069677466/in/photolist-ePst8q-eN8KsB-eN8Kjg-ePE5k9-eM5f4H-eHLXnc)

最高指導者ハメネイ師も強硬路線の軌道修正に舵を切ったのではないか?】
周知のように、14日投票のイラン大統領選で保守穏健派のハサン・ロウハニ元最高安全保障委員会事務局長(64)が“想定外”の形で勝利しました。

“想定外”のひとつは、当初30%台とも低調が予想された投票率が72.7%に達したことです。
“想定外”のもうひとつは、改革派の支持を集めた保守穏健派のロウハニ師が、最高指導者ハメネイ師に近いとされる保守強硬派の候補に大差をつけて、1回目の投票で過半数を獲得したことです。

“ロウハニ師は約1861万票を獲得、得票率は50.7%と過半数に達した。暫定集計では、強硬保守派のガリバフ・テヘラン市長(51)が得票率約16%、強硬保守派のジャリリ最高安全保障委員会事務局長(47)と、穏健保守派のレザイ元革命防衛隊司令官(58)が約11%などとなっている。投票率は約72%だった”【6月16日 産経】

ロウハニ師については、選挙戦終盤になって、出馬を阻まれた保守穏健派重鎮ラフサンジャニ元大統領や改革派のトップとも言えるハタミ前大統領らが進めた穏健派・改革派一本化工作によって相当の善戦は予測はされていましたが、大方は“いずれにしても決選投票になるだろう・・・”との見方でした。

制裁で疲弊する経済に苦しむ市民、改革を希望する若者らが大挙して改革にも理解を示す保守穏健派のロウハニ師に投票したために、このような“想定外”の結果になったと思われます。

****ロハニ新大統領が誕生した4つの理由****
(1)経済制裁によるイラン経済の停滞と国民生活の困窮が原動力となった。
イランは核開発問題で経済制裁を受けてきたが、とりわけ原油の輸出制限が経済を疲弊させた。外貨収入の8割を占めてきた原油輸出を止められて外貨価値が3倍を超えて急上昇。輸入品がインフレを招いて低所得者の生活を直撃した。それでも現大統領は「制裁の影響はない」と強がって民衆の怒りと反発を強めた。

(2)アメリカ、イスラエルからの武力攻撃が現実味を増し、「戦争の恐怖」が多くの民衆に行動を促した。
イラン国民は、アメリカ、イスラエルが有言実行の国であることを知っている。それどころか、ときには不言実行の挙に出る国であると信じている。

イスラエルは既にイランの核兵器保有を阻止するために核施設を空爆することを予告している。核保有まで1年とすれば、1年以内に戦争が始まることになる。「イスラエルは世界地図から消される」と広言してきた現大統領の強硬路線では戦争は避けられない。(中略)

(3)今回の選挙では、女性有権者が積極的に投票所に足を運んだと言われる。
戦争を防ぎ、生活苦を逃れ、子どもたちに明るい将来をと願って、ついに女性パワーが全開したのだろう。
メディアのインタビューでも「戦争になると思った」と話す女性の切実な声が聞かれた。
また、ロハニ師が、女性の社会進出に理解を示し、地位の向上にも前向きであったことも大きかった。

(4)最高指導者ハメネイ師も強硬路線の軌道修正に舵を切ったのではないか?
ハメネイ師はロハニ師当選後「選ばれた大統領は全国民の大統領だ。すべての人々は新大統領が偉大な大義を達成できるよう助け、誠実に協力しなければならない」と声明を発した。ロハニ師も「選挙は最高指導者が求めたものとなった」と語り、過激主義への2人の協調した対決も印象づけている。(後略)【6月20日 DIAMOND online】******************

興味深いのは、4点目に挙げられている最高指導者ハメネイ師の対応です。
保守強硬派に近いとされるハメネイ師ですが、選挙戦の段階でも、投票への呼びかけは行っていますが、保守強硬派候補者への目立った支援は行っていません。

“「この体制を認めない人もいるだろうが、イランという国のことを考えて投票に行ってほしい」
イラン大統領選の投票を2日後に控えた12日、イスラム体制の頂点に立つ最高指導者ハメネイ師は数千人を前に演説し、現体制に批判的な改革派にも投票を呼びかける異例の発言をした。演説は国営テレビでも伝えられた。
ハメネイ師はさらに、「国民は投票に最大限参加してイスラム体制との強固な結びつきを示し、敵(欧米など)を失望させる」と強調した。投票率を高めることで、イランの民主主義が機能していることを示そうとしたとみられる。”【6月18日 朝日】

また、個人的関係では、ハメネイ師とロウハニ師の関係はさほど悪くないとも報じられています。
最高指導者ハメネイ師も、このまま制裁が続く状況では国民の不満が高まり、結果的に体制の危機にもつながる・・・という懸念があって、あえてロウハニ師封じ込めには動かなかった・・・ということでしょうか。

国民は固唾(かたず)をのんで見守っている
ただ、両者の考え方には大きな差もありますので、最高指導者ハメネイ師がどこまでロウハニ師の政策を許容するかは不透明です。
結局は保守強硬派の路線を変えることは困難なのでは・・・という見方もあります。

****想定外が続いた大統領選後のイランは****
・・・・ただ聖職者であるロウハニが保守強硬派の宗教指導者らの言いなりにならないとは限らない。
アハマディネジャド大統領はここ数年、政治から宗教色を排そうと独裁的な最高指導者ハメネイ師と対立。政府から宗教関連機関への資金も削減したが、その力をそぐことはできなかった。

米ランド研究所のアリーナダー上級研究員は、「現在の強硬路線を変えるのは難しいだろう」と言う。「結局はハメネイに逆らえないからだ」。アハマディネジヤドにできなかったことが、ダークホースのロウハニにできるとは思えない。【6月25日号 Newsweek日本版】
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選挙中にロウハニ師は「すべての政治犯の釈放に努力する」と約束しました。さしあたっては、前回選挙で敗れ、その後の反政府行動の先頭にたったことから自宅軟禁状態に置かれているムサビ元首相とキャルビ元国会議長の処遇が注目されます。

保守強硬派の抵抗で、改革の試みが実現できないということになれば、ロウハニ師に集まった熱い期待は一気に冷めていくことも考えられます。

****すべての政治犯釈放へ努力」ロハニ師公約、実現するか****
 ■体制維持の中枢
ロハニ師は15日夜、国営テレビで「公約の実現に全力を尽くす」と述べた。だが、ムサビ氏とキャルビ師の解放を実現できなければ、改革派を失望させることになる。

ロハニ師は最高安全保障委員会事務局長として体制維持の中枢を担い、ハメネイ師にも忠実だ。今後、自身を大統領に押し上げた民意を背に、ハメネイ師とどう向き合うのか。ハメネイ師はどう応えるのか。

「ミールホセイン(ムサビ氏)、あなたの票を取り戻した!」。改革派のウェブサイトによると、ロハニ師の当選に歓喜した若者たちがムサビ氏の自宅周辺に集まって叫んだ。「歓声はムサビ氏の耳にも届いた」とサイトは伝えている。【6月18日 朝日】
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メディア規制についても、この選挙中、ややこれまでとは異なる流れがあったようです。
“強硬路線の軌道修正”でしょうか?
ただ、これも今後どのように推移するかは不透明です。

****崩れゆくメディア規制 大統領選で改革派を報道****
「ムサビ元首相とキャルビ元国会議長の自宅軟禁が解かれれば、有権者は大挙して投票に行く」
政府系イラン学生通信のある編集者は、部下がそう書いた原稿を「削除しないでそのまま使おう」と腹をくくった。5月5日、アフマディネジャド政権が弾圧した2人の改革派指導者に言及した、「タブー」を破る記事が配信された。

編集者は、国民の間に現政権への不満が募っているのを肌で感じていた、と振り返る。2009年の大統領選で開票の不正を疑った改革派の支持者は、大規模なデモに打って出たが、アフマディネジャド政権はメディア規制をさらに強化。選挙で敗北したムサビ氏とキャルビ師に関する報道は一切禁じるとメディア各社に通告していた。

「うちは半国営メディア。他社と違って罰を受けても更迭くらいで済む。それならば、国民のためにタブーを破ろうと思った」。配信後、上司からの叱責(しっせき)は一切なかった。

記事を読んだ他社の記者は一様に驚き、勇気づけられた。5月末に大統領選の選挙運動が始まると、改革派の動きを伝えるメディアが出はじめた。最後まで無視していた保守系ケイハン紙も、ロハニ師の当選を機に方針転換せざるを得なくなった。

「メディアがそろって規制を無視し、上司も黙認した。前代未聞だ」。地元通信社の政治記者は興奮気味に話す。ただ、最高指導者ハメネイ師やイスラム体制への批判は「越えてはならない一線」。限界を知りつつも、記者たちは「新政権ではもう少し自由になるはず」と期待する。

メディア規制の別の例として、衛星放送がある。イランでは外国の衛星放送を見ることは違法だ。英BBCや米VOAなどが流す、イランへの「批判的」な報道から国民を遮断する狙いがあるのは間違いない。
警察当局は建物の屋上などに取り付けてある衛星アンテナの没収を強めた時期もあったが、数が多すぎて追いつかない。窮余の策か、最近は妨害電波を絶え間なく発信しつづける。

社会の自由化を掲げたハタミ前政権の改革路線は、体制維持を第一とする保守派の抵抗で頓挫した。
「国民の自由を取り戻す」と訴えて当選したロハニ師の判断を、国民は固唾(かたず)をのんで見守っている。【6月21日 朝日】
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制裁が続けば国民生活の急速な立て直しは難しく、国民の高い支持はそのまま逆風へと変わりかねない
核開発に関してはロウハニ師を含むすべての候補者がこれを是認しており、また決定権は最高指導者ハメネイ師にありますので、大きな変化はないと見られています。

ただ、欧米諸国による制裁緩和に向けた柔軟な対応がロウハニ師には期待されています。
選挙中も、「核問題を解決するため、まずこちらが信頼関係を強める」と、ボールをイラン側から欧米諸国に投げることにも言及しています。

****ロハニ師「イランの核は完全に国際法の枠内に****
イラン大統領選で当選したハッサン・ロハニ元核交渉責任者は17日、テヘランで当選後初の記者会見を開き、「世界との建設的で双方向のやりとりを模索する」と述べ、アフマディネジャド現政権の対外強硬路線とは一線を画し、対話外交を展開する考えを示した。

ロハニ師は、イランのウラン濃縮活動について「完全に国際法の枠内にある」とし、核開発を継続する姿勢を明確にした。
そのうえで、「透明性を高め、国際社会との相互信頼を築いていく」との方針を示し、米欧との妥協点を探り、経済制裁が緩和されることに期待感を表明した。

米国との関係については、「双方が未来志向になる必要がある。更なる緊張は望んでいない」と説明。〈1〉米国がイランの内政に干渉しない〈2〉イランの核の権利を認める〈3〉米国が単独行動主義を改める――の三つを直接対話の条件に挙げた。

シリア情勢については、「シリア国民が解決すべき問題だ」として、米欧など他国の干渉を非難。アサド政権を支持するイランの原則を繰り返した。政策の優先順位は、制裁であえぐ「経済問題」だと強調した。【6月17日 読売】
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核開発問題の交渉はこれからの話ですが、以下のような報道がなされているなかで、シリアにどのように関与するのかも気になります。
“英インディペンデント紙(電子版)の16日の報道によると、イランはシリアのアサド政権を支援するため、精鋭部隊である革命防衛隊の兵士4000人をシリアに派遣することを決めた。”【6月16日 毎日】

限られた権限しかないロウハニ師による軌道修正は難しいであろうというのは、大方の見方です。
ただ、先述のような最高指導者ハメネイ師自身の軟化があれば、なんらかの道も・・・とも期待されます。
今回選挙のロウハニ師“圧勝”に込められた国民の期待と不満は、ハメネイ師も当然感じているところでしょうから。

****イラン次期大統領 裁量限られジレンマ****
首都テヘランでは15日夜、数万人規模の市民らが街頭でロウハニ師を祝福。ロウハニ師は、「過激主義に対する知性と穏健、発展の勝利だ」と強調した。最高指導者ハメネイ師も同日、「すべての国民が次期大統領を支えるように」などと述べた。

ロウハニ師が抱える大きな課題は、国民生活の向上と、核開発疑惑で米欧と折り合いを付けられるか-の2点で、これらを同時に実現するのは極めて難しい。

イラン国民は経済低迷に伴い苦しい生活を強いられており、これを改善するには米欧などが科す制裁を緩和できるかが重要な鍵となる。そのためには、米欧が問題視するウラン濃縮など核開発で実質的に譲歩することが必要だ。

しかし、核開発はハメネイ師が最終決定権を持つ最重要政策と位置づけられている。大統領のこの問題への裁量は限られているのが実情だ。

これとは逆に、核開発で妥協せずに制裁が続けば国民生活の急速な立て直しは難しく、国民の高い支持はそのまま逆風へと変わりかねない。その場合、国際社会から出ている期待論も一気に厳しいものになることが予想される。

シリア情勢も米欧との関係改善を阻みそうだ。シリアのアサド大統領は16日、ロウハニ師に祝電を送り、「国家主権を侵害する陰謀と対決」するよう協力を呼びかけた。

同盟関係にあるアサド政権が米欧の支援を受ける反体制派に倒されれば、イランの周辺地域への影響力低下は必至で、立場の変化は考えにくい。【6月17日 産経】
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アフマディネジャド大統領、11月に尋問
もうひとつ、アフマディネジャド大統領に関する気になる記事が。

****イラン:大統領を尋問へ…ハメネイ師との確執影響か****
イランのメディアは18日、アフマディネジャド大統領が退任後の11月に刑事裁判に出廷し、尋問を受けると一斉に報じた。

大統領は政権運営などを巡り最高指導者ハメネイ師との確執が伝えられ、大統領選挙でもハメネイ師とは別に独自候補を擁立した。権力の座から退くタイミングを見て、最高指導者の影響下にある司法当局が尋問を決めた可能性もある。

報道によると、出廷を求める召喚状は、ハメネイ師に近いラリジャニ国会議長らの告発を受け、テヘランの裁判所が5月28日に発付。大統領選の当選発表(今月15日)後の17日に送達された。

告発内容は召喚状に記されておらず、何罪で尋問を受けるか不明だ。
アフマディネジャド大統領は8月初旬に退任予定で、尋問は11月26日に行われる。

大統領選では、側近らを独自に擁立した大統領に対し、地位を利用して支援を訴えたなどとして国会議員約170人が5月13日に告発したが、今回の尋問との関係は不明だ。

一方、アフマディネジャド大統領は18日、次期大統領のロウハニ師と会談し、「国際政治の改善と国民の要望の実現に向け、さらに国が一体となることを望む」と祝意を述べた。【6月18日 毎日】
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インドネシアの森林火災で、シンガポールでは健康被害  森林火災の背景にある泥炭地開発

2013-06-21 22:06:09 | 東南アジア

(スマトラ島からの煙でかすむシンガポール夜景 【6月20日 msn Sankei Photo】http://photo.sankei.jp.msn.com/highlight/data/2013/06/20/14singapore/)

大気汚染基準指標400超で「病人と高齢者の命にかかわる」】
インドネシア・スマトラ島で起きている大規模森林火災の煙が、隣国シンガポールで深刻な健康被害を惹起しているとして、両国の間で外交問題となっています。

****シンガポールで煙害拡大、97年以降最悪 隣国の森林火災で****
都市国家シンガポールの環境保護行政当局などは19日、隣国インドネシアでの森林火災による煙霧被害が広がり、大気汚染指数が同日、1997年以降では最悪水準の数値を記録したと発表した。

地元紙ストレーツ・タイムズによると、大気汚染指数は19日に173を記録。226を観測した1997年以降、最悪となった。環境保護行政当局は指数が200を超えた場合の大気汚染は極めて不健康な水準と規定している。
シンガポールの人口は530万人。煙害被害を受け中心部のビジネス街ではマスクやハンカチを使って口元などを隠す住民の姿が見られた。

森林火災はインドネシア西部スマトラ島での違法な野焼きなどが原因で、煙霧はマラッカ海峡を越えてシンガポールに流れ込んでいる。煙害は今週初めから始まっていた。
森林火災は依然続いており、シンガポールの煙害は今後数日間解消されないとも予測した。

シンガポールのビビアン・バラクリシュナン環境・水資源相は、煙害の原因となっている事業に関与する企業への経済的圧力を求めたいと主張。インドネシアでヤシ油農園開発のための土地開墾に当たる企業にはシンガポールとマレーシアのヤシ油企業が投資しているとされる。

同相は交流サイト「フェイスブック」上で、インドネシアのバルタサル・カンブアヤ環境相と接触した際、火災発生に関与する企業名を明示したと指摘した。

今回のような煙霧の悪化は過去にもあり、1997年には推定90億米ドルともされる医療コスト負担の他、航空便やビジネス活動の支障も強いられる被害が出ていた。【6月20日 CNN】
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上記記事では“大気汚染指数は19日に173を記録”とありますが、19日午後10時には97年を超える321を記録、更に“大気汚染基準指標(PSI)は21日午前11時に400を超え、過去最高値を記録した”とのことです。「大気汚染指数」と「大気汚染基準指標(PSI)」は同じもののようです。
PSIでは、200を超えると「有害」、300で「危険」、400以上は「病人と高齢者の命にかかわる」とされています。

****シンガポールの煙害、指数400突破 高齢者らに「命の危険****
インドネシア・スマトラ島の野焼きが原因の煙害が深刻化しているシンガポールの大気汚染指数は21日、「病人と高齢者の命にかかわる」とされる400に達した。

シンガポール政府当局のウェブサイトによると、大気汚染基準指標(PSI)は21日午前11時(日本時間同日正午)に400を超え、過去最高値を記録した。政府のガイドラインは、PSI値が400超の状態が24時間以上続く場合には、子どもや高齢者、持病のある人などは窓を閉めた屋内にとどまり、運動をできるだけ避けるよう助言している。

AFPの取材に応じたシンガポール在住の開業医によれば、患者数は前週に比べて2割増加し、受診者の8割に煙霧に関連した疾患がみられるという。
また、市内では市販のマスクが不足しており、マスクを求めて通院する人もいるが、病院の在庫も底を尽きかけている状態だという。【6月21日 AFP】*********************

【現地ではインドネシア企業の他にシンガポールやマレーシアの企業も操業している】
シンガポールの苛立ちに対し、火元のインドネシア側は「シンガポールの振る舞いは子供じみている。がたがた大騒ぎすべきではない」と突き放しています。

****シンガポールは「子供っぽい」、煙害めぐりインドネシアが反論****
インドネシアのスマトラ島で発生した山火事が原因の煙霧により、大気汚染指数が「危険」水準に達したシンガポール政府は20日、インドネシア政府に「決定的な対応」を要求した。

これに対しインドネシア政府は同日、シンガポールの反応は「子供っぽい」と非難。10年以上ぶりの煙害をめぐり、両国間で舌戦が展開されている。(中略)

こうした状況を受けインドネシアの首都ジャカルタで同日、煙害への対応を協議する周辺国会合が開催されるのに先立ち、シンガポールのビビアン・バラクリシュナン環境・水資源相は、インドネシア政府に「緊急かつ決定的な対応」を要求。
「シンガポール市民の忍耐も限界だ。当然ながら怒り、苦しみ、憂慮している」「いかなる国も企業も、シンガポール市民の健康を犠牲にして大気を汚染する権利はない」と米SNSフェイスブックへの書き込みで批判した。

一方、インドネシア側も同日、直ちに反論。アグン・ラクソノ調整相(公共福祉担当)は「シンガポールの振る舞いは子供じみている。がたがた大騒ぎすべきではない」と苦言を呈し、山火事による煙害は「インドネシアが意図したものではなく、自然がもたらしたものだ」と弁解した。

また現在、煙害の責任を負うべき企業について調査中だと説明した上で、現地ではインドネシア企業の他にシンガポールやマレーシアの企業も操業しているとけん制。煙霧対策をめぐるシンガポールの財政支援についても「少額なら不要」と強がった。【6月20日 AFP】
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別にインドネシアは火災を放置している訳ではなく、人工降雨による消火も検討していると報じられています。
ただ、火災が起きている地域は「泥炭地」で、いったん火がつくと鎮火は困難です。数週間、あるいはそれ以上の期間続くことも想定されます。

****スマトラ島火災、 人工降雨で鎮火へ****
インドネシア・スマトラ島で発生している大規模な火災を大雨によって鎮火し、隣国シンガポールの上空までを厚く覆っている煙霧を解消するため、インドネシア政府は人工降雨を計画中だ。

林業省の関係者が19日、明らかにした。火災はリアウ州の泥炭地を中心に続いている。人口530万人が暮らすシンガポールの政府はインドネシア政府に対し、消火活動の強化を要請していた。今回の火災で、シンガポールでは大気汚染がここ16年で最悪のレベルに達している。

計画では、スマトラ島上空にヘリコプターを飛ばし、雲に化学物質を注入。重たい氷の結晶の生成を誘発することによって、降雨を促す。しかし、実施に向けては準備期間が必要であることから、ヘリコプターを導入できるのは早くても21日だという。

鎮火にあたってきた約100人の消防士たちは、アブラヤシ農園が大半を占める炭素含有量が多い泥炭地では、消火活動が非常に困難だと訴えていた。【6月20日 AFP】
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泥炭地の乾燥により発生する野火が大規模な森林火災につながり二酸化炭素を放出
大規模森林火災はスマトラ島だけでなく世界各地で発生しますが、スマトラ島を含めたインドネシアは火災の頻発する地域でもあります。
その背景には、気象条件以外に、バイオ燃料にも使用されるパームオイル生産のための泥炭地におけるアブラヤシのプランテーションがあることが指摘されています。

泥炭地開発による土地の乾燥が野火を容易にし、また開発のための違法な森林焼き払いも火災の大きな原因となっているそうです。
また、乾燥した泥炭地と火災を考慮すると、インドネシアはアメリカ、中国に次ぐ世界第3位のCO2排出国であるとされています。

*****インドネシア 泥炭地破壊で世界第3 位のCO2 排出国に*****
~木材・パームオイル需要と地域経済開発が元凶~
泥炭湿地帯での森林伐採、プランテーション開発等による泥炭の分解や森林火災によって排出される大量の二酸化炭素が、インドネシアを世界第3 位の温室効果ガス排出国に押し上げている。2006 年11 月、国際湿地保全連合(Wetland International)が報告した。

東南アジアの湿地地域は、広大な面積の稠密な低地雨林に覆われている。その泥炭層には現在、世界の化石燃料の利用量100 年分に相当する炭素が蓄積されている。しかし、これらの森林が伐採及び火災により急速に消失している。
この破壊の背後には、木材、紙パルプ、パームオイルに対する世界の需要と地域経済開発の促進がある。

泥炭湿地林の伐採を容易にするため湿地の水が排水路を通じて排水され、木材はその排水路から搬出される。大量の水を必要とするパームオイルや製紙用パルププランテーションに排水が使用される。泥炭は通常は水に浸かっており分解しないが、排水を通して泥炭の乾燥・分解が始まり、二酸化炭素を放出する。

更に、泥炭地の乾燥により発生する野火が大規模な森林火災につながり二酸化炭素を放出する。インドネシアでは、これら火災は何週間、ときには何ヵ月も続き、広大な面積の厚い泥炭層を燃やす。

また環境団体は、多くの火災の原因は、大規模プランテーション開発のための森林への火入れにあると指摘している。禁止されているこの森林焼き払いは、伐採に比べてはるかに手っ取り早く、安上がりな農場造成・拡張方法だ。

インドネシアの泥炭地総面積は約2 千250 万ha である。新たな研究で、近年インドネシアの泥炭地から排出される二酸化炭素は年間20 億トンに上り、うち6 億トンは乾燥した泥炭の分解、14 億トンは火災から生じることが分かった。

公式統計に基づく二酸化炭素排出量の国別ランクではインドネシアは世界で21 番目だが、この泥炭地からの排出量を含めると、米国、中国に次いで世界第3 位となる。この排出量は英国やドイツの排出量の数倍にもなり、京都議定書の下で温室効果ガス排出を削減しようとする先進国のあらゆる努力を帳消しにするという。

インドネシア政府は、最近になって泥炭地回復に乗り出した。泥炭地に関する大統領令によるとスハルト時代に食料生産のために開発された1 万2 千ha の地域の回復を図るという。

しかし一方で、世界の健康志向を背景としたパームオイルへの世界的需要拡大とバイオ燃料ブームによる利益のため、パームオイルプランテーションの大規模拡張計画も打ち出している。開発最優先の姿勢は変わらず、安上がりな拡張のために起きるであろう火入れを取り締まる有効な手立てを一向に打ち出す気配はない。

国際湿地保全連合は、泥炭地保全と回復への投資が気候変動緩和戦略の基本的部分を構成すべきであり、比較的小額の投資で温室効果ガス排出削減に大きな影響を与えることができるばかりか、干ばつと洪水の緩和、生物多様性保全、貧困削減にも役立つと言う。

目先の経済的利益を追うプランテーションの無謀な開発が泥炭地と森林の破壊をますます助長することになりかねない。それを止めることができるのは、木材や紙、パームオイル、エネルギーの消費を減らすとともに、森林地域住民に持続可能な生活手段をもたらすのを助ける国際社会と我々消費国自身の行動だけかもしれない。
【2007年2月 FoE Japan】http://www.gef.or.jp/activity/economy/stn/peat.pdf
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インドネシア・ユドヨノ政権は、こうした泥炭地開発に一定に歯止めをかける措置も打ち出してはいますが、「抜け道が多い」対策でもあるようです。

****原生林の新規開発凍結令****
2011年5月、ユドヨノ大統領は、原生林と泥炭地の開発許可の新規発行を向こう2年間凍結するという大統領訓令(Inpres)2011年第10号を出した。

ただし、エネルギー開発と食糧生産の用地は除外されている。エネルギーと食糧の増産は、ユドヨノ政権の掲げる優先政策だからである。

インドネシア政府は、先の報告書発表に先立つ2010年半ば、原生林と泥炭地の新規開発を凍結することを条件に、10億ドルの無償援助をノルウェー政府から得ることで合意していた。これは、インドネシアにとって初めてのREDDプラスの枠組みでの国際環境支援であった。

REDDプラスとは、森林減少・劣化の抑制による温室効果ガスの排出量削減(REDD:Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation)に、積極的に炭素蓄積を増やす森林管理・植林などの行動をプラスした概念である。

ユドヨノ政権は、原生林と泥炭地の新規開発を凍結するにあたって、「インドネシアは世界第3のCO2排出国」との見解を科学的分析にもとづいて是認し、国内に周知しておく必要があったのだろう。

だが、この「新規開発凍結令」は、パーム油業界や炭鉱業界からは「成長のチャンスを奪う」と反対され、環境NGOからは除外規定などの「抜け道が多い」と批判されている。

インドネシア政府は、「成長と環境のバランス」を基本方針に掲げているが、まさしく言うは易し、行うは難し。だが、その微妙なバランスを模索するほかに道はない。【2011年12月 JETRO】
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冒頭【6月20日 CNN】にあるように、“インドネシアでヤシ油農園開発のための土地開墾に当たる企業にはシンガポールとマレーシアのヤシ油企業が投資しているとされる”とのことで、シンガポールは単に煙害の被害者という訳でないようです。
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