孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

「ロシアは孤立に追い込まれている」と言いきれない現実 インド・アフリカ・南米の状況

2022-04-30 23:11:45 | 国際情勢
(【4月9日 毎日】 4月7日に行われた国連人権理事会からロシアを追放する決議案採択では、採択に必要な「棄権を除く投票国の3分の2以上」にあたる93カ国が賛成したものの、加盟193カ国の過半数には届きませんでした。)

【インド 対露信頼と対米不信】
ロシアのウクライナ侵攻に関して、対米共闘パートナーの中国が自身に害が及ばないように過度な肩入れは避けながらも実質的にロシア寄りの姿勢をとっているのは当然と言えば当然ですが、ロシア包囲網を築きたいアメリカを苛立たせているのはインドの制裁不参加でしょう。

これまでも時折ふれてきたように、インド外交は伝統的に非同盟主義をとってきましたが、パキスタンとの対立などでロシアの支持を受けてきており、ロシアとは緊密な関係にあります。また、現実問題としては兵器の多くをロシアに依存しているという事情もあります。

そのため、欧米主導の対ロシア制裁に参加することもなく、ロシアとの関係を維持し、国連でのロシア非難計次には中国同様に棄権しています。

“ロシアから購入の防空ミサイル、インドが2基目を搬入…最大調達先からの武器輸入継続を鮮明に”【4月16日 読売】
“インド財務相、国境防衛でロシアの支援が必要と強調”【4月25日 ロイター】
“印、ウクライナ戦争後に21年の2倍超のロ産原油購入”【4月26日 ロイター】

ロシア産原油の購入急増に関しては、インドの苦しい台所事情もあります。

****背景に苦しいインドの台所事情***
「堪忍袋の緒」が切れつつある米国政府がロシア企業と取引するインド企業を対象に二次的制裁を発動するリスクが生じているが、インドには割安となったロシア産原油の購入を断念できない苦しい台所事情がある。

「2030年に国内総生産(GDP)が日本を抜いて世界第3位になる」と予測されるインドだが、年を追うごとに電力不足は深刻になるばかりだ。
 
主な発電燃料は原油と石炭だが、昨年10月以来、石炭の国内在庫の水準が歴史的な低さとなっている。そのせいでインドの電力の予備率は3月中旬に危機的なレベルにまで低下し、「今年の夏は大停電になってしまう」との危機感が高まっている。
 
大惨事を回避するためには石油火力発電所のフル稼働が不可欠であり、割安となったロシア産原油は「喉から手が出る」ほど欲しいのだ。
 
隣国パキスタンでは通貨安と商品高が招いたインフレの高進が原因で10日、カーン首相が失職に追い込まれた。エネルギー資源の輸入依存度が高く、ウクライナ危機後の通貨安に悩まされている点ではインドも同じだ。

「インフレ圧力が強まるインドの今年の成長率は急減速する」との予測も出ており、世界最大の民主主義国を率いるモディ首相の心中は穏やかではないだろう。西側諸国のロシア制裁に応じる余裕はなく、国内の安定をひたすら追求するしかないのが実情だと思う。
 
成長著しいインド経済の足元は極めて脆弱だと言わざるを得ない。この点を考えれば、インドが西側陣営から離反するのは時間の問題なのではないだろうか。【4月24日 デイリー新潮 藤和彦氏「“制裁破り”の動きにバイデン大統領はイライラ…ロシア産原油の購入を拡大させるインドの言い分」】
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イライラのバイデン大統領はモディ首相説得を試みていますが・・・

****米、インドにロシアへの圧力強化を働きかけ…オンライン首脳会談****
米国のバイデン大統領は(4月)11日、インドのナレンドラ・モディ首相とオンライン形式で会談した。ロシアのウクライナ侵攻を巡り、インドはバランス外交に徹して直接的な批判や対露経済制裁への参加を避けており、バイデン氏はロシアへの圧力強化の必要性を改めてモディ氏に訴えたとみられる。
 
ホワイトハウスは10日の声明で「残酷な戦争でロシアが受ける報いについて、バイデン氏は(モディ氏と)緊密な協議を続けていく」とし、対露経済制裁を巡る議論に意欲を示していた。
 
米国とインドは、11日にワシントンで外務・防衛閣僚会合(2プラス2)も予定している。オンライン首脳会談は2プラス2に先だって行われ、バイデン政権はロシアにより厳しい姿勢を取るよう、インドへの働きかけを強める構えだ。
 
一方、モディ氏は、武器調達でロシアに依存する事情や、対露強硬姿勢を取れば、対立する中国とロシアの接近を許すとの懸念をバイデン氏に伝えた模様だ。露軍の関与が疑われるウクライナでの民間人虐殺については非難した上で、「独立した調査」が必要との認識を示した。(後略)【4月12日 読売】
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アメリカとしては対中国包囲網「Quad」(クアッド)のパートナーであるインドとの関係悪化は避けたい事情もありますので、あまりに強圧的な態度もとれないといったところでしょう。

インドの側からすれば、上記のような兵器を通じたロシアとの繋がり、苦しい台所事情などのほかに、そもそもの話としてアメリカへの根強い不信感みたいなものもあるように推測されます。

****ウクライナ危機中立のインド、対露信頼と対米不信****
米国の大統領副補佐官(国家安全保障担当)の1人が最近ニューデリーを訪問し、ウクライナ戦争に関してロシアに対し、より厳しい姿勢を示すよう求めた。副補佐官インド外相との会談は友好的で、両国間の関係強化を強調するものだった。
 
しかし、ダリープ・シン副補佐官がその後の公式コメントの中で、制裁回避を助ける諸国は「さまざまな報い」を受けることになると警告したことについて、インド当局者らは、不意打ちを受けたように感じたと語った。 同会談に関わったあるインド当局者は「このような発言は、外交の場では決して使われないものであり、驚きだった」と語った。
 
その翌日、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相がインド外相と会談し、インドが購入を希望するすべての物を輸出すると申し出た後の雰囲気は全く違った。
 
次々とニューデリーを訪れた米当局者らは、ロシア政府を孤立させる取り組みにインドも加わるよう説得した。だが、傍観者の立場を変えるべきだと納得させるのは難しかった。インドは今回のウクライナ戦争で中立姿勢を維持しており、ロシアの行為に対する国連非難決議の投票で棄権に回り、対ロ制裁への参加も拒否している。

インドのこうした姿勢はある意味、必要に迫られたものでもある。ロシアが、インドに対する最大の武器供給国だからだ。しかしインドの当局者やアナリストによれば、こうした姿勢の背景には、米政府に対する不信感が今も残っていることや、ロシア政府は信頼に足るという何十年にもわたって築かれてきた確固たる信頼感も影響しているという。
 
冷戦期にインドは、公式には非同盟政策を採用していたが、実際にはロシアとの同盟を構築していた。そして、米国がインドのライバルであるパキスタンなどの国々を支持し、インドに多くの制裁を科したことから、インドとロシアの関係はより緊密になっていった。

その後年月を経て、インドと米国の関係は友好的になり、インド当局者らも同国の未来には西側諸国とのより緊密な関係が必要と考えるようになった。しかしインド当局者らによれば、同国の政策立案者らの考え方の底流には依然として強い反米感情が残っており、公の場で批判された際にこうした反感が強くなるという。
 
米当局者らは、国際経済を専門とするシン副補佐官の発言について、インドを名指しして警告を発したものではないため、重要性は低いとの見方を示している。
 
それでもインド当局者らは、このような発言はロシア政府に背を向けるのをためらわせるものだ、と述べている。彼らによれば、ロシアは信頼に足るパートナーであることを繰り返し示してきたという。

2020年に領土問題でもめる国境地帯で中国との衝突が起き、インド人20人、中国兵士4人が死亡した際には、インドの国防相が3カ月間で2回モスクワを訪問した。当時の状況を直接知る当局者によれば、この訪問の目的の1つは、武器弾薬を追加で確保し、国境地帯の防備を強化することだったという。これを受けてロシアは、ミサイル、戦車部品、その他の兵器をインドに追加供与した。

ハイデラバードのカウティリヤ・公共政策大学の学部長で、元インド国連常駐代表のサイード・アクバルディン氏は「多くの人々は、インドが危機に瀕した際にロシアとの友好関係がインドの利益に貢献したと信じている」と語った。(後略)【4月27日 WSJ】
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【「ロシアは孤立に追い込まれている」と言いきれない現実】
日本を含む欧米諸国、いわゆる西側の発想ではロシアの非道は自明のことに思え、「一部のならず者国家や中国を別にすれば、ロシアは世界から孤立している」と思いがちですが、世界的に見ると必ずしもそうは言い切れない面もあります。

****ウクライナ侵攻でもロシアは国際的に孤立していない…新経済秩序が構築される可能性も****
ロシアがウクライナに侵攻して1ヶ月が経ち、西側諸国では「ロシアは孤立に追い込まれている」との見方が常識になりつつある。非常に厳しい経済制裁を科されたことでロシアは大打撃を被り、国際社会から排除されつつあるのはたしかだが、西側諸国の対応に冷ややかな視線を送っている国々が少なくない点も見逃せない。

3月2日に国連で行われたロシア軍の即時撤退を求める決議では、国連加盟193カ国のうち141カ国が賛成したのに対し、反対はロシアを含む5カ国、棄権したのは35カ国だった。国別で見れば賛成が圧倒的多数だが、人口の総数で比較すると世界の人口(77億人)のうち53%が棄権などに回っていたことがわかる。

アフリカや中東で西側諸国のダブルスタンダードへの不満がこれまでになく強まっていることも気がかりだ。

前述の国連決議を棄権した東アフリカ・ウガンダのムセベニ大統領は、ウクライナを巡る西側諸国とロシアの対立について「アフリカは距離を置く」と表明した(3月18日付日本経済新聞)。歴史的にアフリカを搾取してきた西側諸国がウクライナだけに肩入れするのは「ダブルスタンダード」だというのがその理由だ。

同じく国連決議を棄権した南アフリカのラマポーザ大統領も17日、ウクライナにおける戦争についてNATOを非難し、「ロシア非難の呼びかけに抵抗する」と述べた。

アフリカでは難民や人道危機における国際社会の対応が「人種差別的」だと不満の声も上がっているが、中東でも「西側諸国のウクライナへの対応が中東に向けられた態度とあまりにも違う」との不信感が強まっている(3月8日付ニューズウィーク)。

欧米諸国は避難するウクライナ人に対して門戸を喜んで開放しているが、かつてシリアからの難民が流入した際、どれだけ冷たい態度をとったことか。中東地域で「白人優先主義だ」との非難は高まるばかりだ。

「外国への侵攻」という意味では米軍のイラク侵攻も同じだが、「国際社会は米国に制裁を科したのか」、「侵攻された側を支援したのか」との怒りもこみ上がってくる。

アフガニスタンからの米軍の撤退ぶりが与えた影響も小さくない。「米国はいざというときに頼りにならない」との認識を深めた中東諸国には「米国の同盟国であることは利益よりも不利益の方が大きいのではないか」との懐疑が芽生えつつあるという。

このように、「ロシアが国際的に孤立している」とする西側諸国の認識は、必ずしも国際社会全体の実態を表しているものではない。(後略)【3月26日 藤和彦氏 デイリー新潮】
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【アフリカ 強いロシアの影響力】
上記記事にもあるようにアフリカには、かつての植民地支配を行ってきた欧米への不信感と同時に、これまで(欧米が切り捨てる強権支配国家であっても)アフリカ諸国を支援してきたロシアの影響力の強さがあります。

****明らかになったロシアのアフリカへの影響力****
国連緊急特別総会における3月24日のロシア非難決議は、アフリカ各国とロシアとの距離感や各政権の民主主義のレベルを示すリトマス試験紙のような役割を果たした。また、これは近年のロシアのアフリカ大陸への軍事的、政治的影響力拡大の成果を示すものでもあった。

アフリカ諸国54カ国の内、ロシア非難決議に賛成したのがエジプト、チュニジア、ガーナ、ケニア、ニジェール、ナイジェリア、ザンビアなど28カ国であった。棄権した17カ国には、南アフリカ、アルジェリア、セネガル、アンゴラ、中央アフリカ、マリ、モザンビーク、スーダン、ジンバブエ等が含まれる。反対はエリトリア1カ国で、8カ国は投票に参加しなかった。
 
アフリカ諸国の約半数がロシア非難に賛成しないことついて、フィナンシャル・タイムズ紙のデビット・ピリングによる3月25日付け論説‘This is no time for neutrality in Africa on Ukraine’は、
① アフリカの伝統的な非同盟主義
② 対ロシア制裁による経済的、社会的影響への懸念
③ 南部アフリカ諸国については冷戦期の黒人解放運動に対するソ連の支援への恩義
④ 欧米の過去の植民地主義や欧米中心の経済的世界構造に対する反発等
の要素を上げるが、特に懸念されるのは、ロシアによる近年の軍事的支援を通じたアフリカにおける影響力拡大政策がある、と指摘している。
 
プーチンのアフリカに対する関心の背景は二つある。第一に、世界的な影響力を回復したいとのソ連時代への郷愁があり、具体的には、軍事的支援と引き換えに資源や国連の場での協力を確保するという取引である。

第二は、地域の不安定化に乗じてアフリカから欧州の影響力を排除し難民の流出などにより西ヨーロッパを包囲する地政学的な戦略である。この二つは、全体として一つの戦略を形成していると考えるべきであろう。
 
冷戦期には、ソ連は、アフリカ南部の黒人解放運動を強力に支援し、また、各国に成立した社会主義政権を政治的、経済的に支援したが、ソ連の崩壊により、これらの関係はいったん途絶えた。

しかし、2010年代に入り、プーチンがロシアの復権といった野心を高めるのと並行してアフリカへの影響力拡大に乗り出し、経済援助や投資では欧米や中国に対抗できないため、大統領警護等の治安面や反政府活動の取り締まり、武器供与や軍事訓練等への協力といった手法に頼ることとなった。これはアフリカの強権政治家や軍事政権のニーズにも応えるものであった。
 
18年時点ですでに19カ国と何らかの軍事協定を結んでおり、特に、民間軍事会社ワグナーを通じた活動が中央アフリカ、チャド、マリなど旧フランス領の国々を含めて注目されて来た。この種の民間軍事会社については、何らかの国際的規制や透明性の向上が必要であろう。
 
そして、19年には、ロシアは、アフリカ諸国の首脳を一堂に集めた第1回ロシア・アフリカ首脳会議をソチで開催し経済関係を中心とする「表」の関係における影響力拡大も誇示した。
 
これに対し、米国は、冷戦期には東西対立の観点からアフリカの、開発支援や民主化支援に積極的に関与してきたが、冷戦後は中東情勢もあり、相対的に関心が薄れたと言える。特に、トランプ政権時代にはトランプの暴言と無関心により、アフリカの信頼を大きく損なった。

バイデン政権は、国内政局がらみで黒人層を重視し、アフリカ重視の姿勢は示しているが、中国に対する対抗という面が強く、より具体的な政策表明ときめの細かい国別の対応が望まれていた。(後略)【4月12日 WEDGE】
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【南米 アメリカへの冷ややかな視線】
アフリカだけでなく南米諸国にも、長年中南米に介入してきたアメリカへの不信感があります。

****米国に「しらけた」中南米 低いウクライナへの関心****
ロシアによるウクライナ侵攻について、中南米の反応はまちまちだが、概して静かだ。ロシアや中国と強い関係のあるキューバやベネズエラがロシアを強く非難しないのは当然としても、他の国々からも厳しい声は聞かれない。

理由の一つは、ウクライナやロシアとの心理的な距離の遠さだ。実際、地理的な距離は日本とさほど変わらないが、「また遠くで大国が何かやっている」という意識が一般には強い。実際、いま筆者が滞在しているチリ南部のパタゴニア地域で、40〜50人と話してみたが、彼らからウクライナの話題が出てくることはまずなかった。中には、ウクライナ大統領の家系に詳しい人もいたが。
 
チリ共産党が2月24日にこんな宣言を発表した。「紛争の解決策としての戦争を非難する。ウクライナ紛争については、各国が自国の責任を引き受けねばならない。第一にロシアだ。しかし同時に、米国も北大西洋条約機構(NATO)も、その拡大主義、経済利権、地政学的理由からウクライナを武装化し、ロシアを刺激した結果、戦争の危機を招いた責任を自覚すべきだ」。
 
一国の左派の言葉にすぎないが、チリの、ひいては中南米の庶民の反応を代弁している。アフガニスタン紛争やイラク戦争と同じく、「どうせまたグリンゴ(米国人の蔑称)が何かたくらんでいるんだろう」と、大国のふるまいを冷たい目で傍観する態度だ。
 
南米の戦争と言えば、英国とのフォークランド紛争や各国間の国境紛争、コロンビアなどでのゲリラ戦が身近だが、大国の紛争は気分として遠いままだ。第一次・第二次世界大戦にも直接関わらず、むしろ需要増で一次産品や食料輸出が増えた国も少なくない。「大戦の危機」を代々肌で感じてこなかった。
 
もう一つは、社会が騒がないことだ。日々自給自足をどう高めるかなど、身の回りの、地元のことに目を向けている庶民にとっては国内政治さえも遠い。首都で国会が何かを決めたとしても、自分の身にふりかかるまでは、あくまでも「政治の話」として矮小化しがちだ。そもそも長年の悪政から、政治が信用されていない。メディアも同じく信頼されていない。庶民がさほど反応していない以上、政治関係者も動かない。
 
人が冷めているわけではない。戦争を否定する人が大半である。むしろ、米国にしらけているというのが正しい。長年、中南米に介入してきた米国を見てきた層にとって、悪のロシアに対抗し米国側につくというポーズは、立派な態度とは思えないのだ。【4月26日 WEDGE】
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ロシア・プーチン大統領の暴挙を擁護するつもりはありませんが、上記のように世界全体で見たとき、必ずしもロシア非難一色ではない現実があるということを念頭に置いておくことは重要でしょう。

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台湾・オーストラリア・韓国の“ウィズコロナ”対応

2022-04-28 22:52:42 | 疾病・保健衛生
【台湾 「重症者をゼロに、軽症者を効果的に管理する」】
中国と同様に「ゼロコロナ」を目指し、感染者も抑え込んできた台湾ですが、「ゼロコロナ」に固執する中国と異なり、3月から「重症者をゼロに、軽症者を効果的に管理する」方針に切り替え、感染者増大は一定に想定したうえで入境制限・行動制限の緩和を進めています。

****コロナ対策「優等生」の台湾で感染急拡大…入境制限緩和後に増加****
台湾で新型コロナウイルスの感染者が急増し、14日には過去最多の982人の感染が確認された。中国と同じように「ゼロコロナ」を目指していた台湾は、感染の封じ込めは困難として、重症者を抑える対策を取りながら、経済との両立を図る戦略への転換を始めた。
 
台湾はこれまで、感染者を施設で隔離し、接触者を徹底的に探して感染の広がりを防ぐ対策を取ってきたが、衛生部門は14日、軽症者や無症状者に対して、自宅での隔離も認めた。

蔡英文ツァイインウェン総統は6日、「重症者をゼロに、軽症者を効果的に管理する」との方向性を示しており、今回の措置はその一環だ。労働力不足も問題となっており、海外から台湾への入境についても、経済発展の観点から適切な時期に緩和していく方針を示している。

台湾はコロナ対策の「優等生」として知られ、世界各地でオミクロン株による感染が広がる中、今年に入っても感染者を抑え込むことができていた。

ところが、3月上旬にビジネス目的の入境制限などを緩和して以降、感染者が増加。4月1日には台湾内だけで100人を超え、急速に拡大した。14日の感染者は874人が台湾内で、108人が空港検疫などで確認された。
 
オミクロン株は感染力は高いが、重症化しにくいとされ、台湾でも感染者の99%以上が軽症や無症状のため、社会的な混乱は起きていない。【4月14日 読売】
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感染者数は連日増加していますが、制限緩和で経済との両立を図る戦略は変わっていません。

****台湾、感染者が連日最多を更新 緩和策も推進、中国と違い鮮明****
台湾の陳時中衛生福利部長(衛生相)は26日の記者会見で、新型コロナウイルスの新たな市中感染者が6295人確認されたと発表した。感染者の発表数は今月中旬に千人を超えて以降、連日最多を更新。

ただ、今年の感染者の99%超が無症状か軽症のため、接触者の隔離期間を短縮するなど緩和策も推進し、中国との違いを鮮明にしている。
 
台湾政府は26日から感染者の濃厚接触者らを対象とする自宅隔離の期間を現行の10日間から3日間に短縮した。隔離後の「自主防疫」期間は7日間を4日間とし、抗体検査が陰性の場合は外出が認められる。入境者の隔離期間は10日間のままだ。【4月26日 共同】
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****「ロックダウンはしない」感染者“急増”の台湾 接種会場には行列****
台湾では4月中旬から感染が急拡大し、感染者数が連日最多を更新しています。
行政院長は「上海のようなロックダウンはしない」と発言しました。

ただ、衛生当局のトップは、新規感染者数について「1日4万5000人に上る可能性がある」と警戒感をあらわにしています。

接種会場には、慌ててワクチンを打とうとする住民の列ができているものの、接種率を上げることが課題となっています。【4月27日 日テレNEWS24】
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台湾の人口は日本の約2割ですから、「1日4万5000人に上る可能性がある」というのは、日本で言えば10万人弱のレベル、2月上旬の第6波ピーク時レベルに相当します。

実際、前出【4月14日 読売】では982人、【4月26日 共同】では6295人でしたが、27日には1万人を超えています。ただ、感染者ゼロではなく“重症者ゼロ”を目標にしています。(もちろん、感染者数が増大すると、重傷者も一定に増加しますので、感染者数を抑えることは依然として重要ですが)

****台湾 コロナ新規感染者が初の1万人超え****
台湾で新型コロナウイルスの新規感染者数が初めて1万人を超えました。コロナ対策の変更が影響したとみられます。

台湾当局によりますと、27日に確認された市中感染者数は1万1353人で過去最多となりました。1万人を超えるのは初めてです。

台湾では厳格な隔離などを行う“ゼロコロナ政策”が続いていましたが、経済への影響などを考慮し、今年に入って入境制限を緩和したほか、条件を満たせば自宅での隔離を認めるなど、“ウィズコロナ”を意識した防疫対策に変更していて、感染者ゼロではなく“重症者ゼロ”を目標に掲げています。【4月28日 TBS NEWS】
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【オーストラリア 旅行者の全面受け入れを2年ぶりに再開】
オーストラリアも同様の“ウィズコロナ”政策を進めています。

****パンミック終了?感染者増加でもコロナ規制をほぼ撤廃し、正常化するオーストラリア****
オーストラリアでは、新型コロナウイルス感染症感染拡大に伴うパンデミック時に適用してきた「バイオセキュリティのための緊急パンデミック対策法」が、4月17日に失効した。(中略)

これに伴い、海外からの旅行者に課してきた「陰性」を証明する渡航前検査が不要となり、パンデミック下で入港を禁止してきたクルーズ船の寄港も可能となった。

オーストラリアの入国に際しては、海外からの渡航者に対するワクチンを2回以上接種した証明書の提出が必要なことを除けば、パンデミックに伴ってこれまで行ってきた様々な規制は、各州政府が独自に規定して残っているもの以外、ほぼ廃止されたといえる。

ところが今もオーストラリアは、連日 4万人前後の感染者を記録。ピーク時よりは減ったとはいえ、1日あたりの感染者数としては、パンデミックが始まって以来、過去最高規模であり、下のグラフ(略)でもわかるように、パンデミックを通じた感染者のほとんどが今年に入ってからとなっている。(中略)

しかし、世界に目を向ければ、オーストラリア同様に感染者が増加、もしくは上げ止まりとなっているのに、ワクチン接種状況を問うことなく、パンデミック以前のように誰でも自由に出入国が可能となっている国が増えているという。オーストラリアがこうした国々に追随して、すべての規制を廃止するのも間近なのかもしれない。(後略)
【4月27日 平野美紀氏 Newsweek】
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【韓国 文在寅大統領「ついに国民が日常を取り戻せるようになった。感無量だ」】
4月17日ブログ“韓国 「ポストオミクロン対応計画」で通常生活を目指す コロナ禍の「終わらせ方」”でも取り上げたように、韓国も同様の流れにあり、4月18日から新型コロナの行動規制がほぼ撤廃され、25日には新型コロナウイルスの等級を最高段階の1級から、インフルエンザや麻疹、水疱瘡レベルの2級に引き下げています。

感染者数は3月中旬の62万人程度をピークに、緩和措置にもかかわらず急速に減少し、4月25日段階で8万人程度となっています。

その点では、文政権の狙いが当たった数字にもなっていますが、緩和を急過ぎ過ぎているとの批判もあります。
そこは「政権交代」時期ということで、今後感染増加などの弊害が出ても「それは新政権の対応が悪かった」と言えるので転換を急いでいる・・・という指摘もあるようです。

****コロナ正常化プロセスに入った韓国、日本は韓国からの旅行者を増やすべきか****
ウィズコロナ路線を鮮明にした退任間近の文政権、次期政権はどうする?

韓国政府は4月25日、新型コロナウイルスの等級を最高段階の1級から、インフルエンザや麻疹、水疱瘡レベルの2級に引き下げた。ウィズコロナの「日常回復」を本格化させる動きで、これから4週間の移行期間に入る。
 
韓国の2級は、日本でいう「感染症法に基づく分類」の5類相当に該当する。日本でも引き下げが検討されているが、他国に倣う日本のこと、日本が実施するにはまだ時間を要することだろう。
 
日本よりも一足先に分類を引き下げた韓国は、新型コロナウイルスがエンデミック(風土化)に向かっていると判断した。
 
保険福祉部の權德喆(クォン・ドクチョル)長官は、4月15日のブリーフィングで、「オミクロン株の登場によって危険度は低くなった反面、小規模な流行は繰り返される可能性が高い」とし、「これを考慮すれば、より日常的な対応する形に防疫と医療対応を転換する必要がある」と、政府の方針転換について説明している。韓国政府はコロナとの共存を選んだということだ。

2級に引き下げられたことによって、韓国では今後、感染時の7日間隔離義務と医療機関への報告義務がなくなる。また、一般医療機関で受診することも可能となった。
 
インフルエンザ同様、かかりつけの医療機関で受診できるようになったことから、感染者の精神的負担は減少することになるだろう。と同時に、隔離義務がなくなったことから、生活費、有休休暇費、治療費の政府負担は原則終了となった。今後、感染者は個人の費用負担で完治させる必要がある。

コロナ前の日常を取り戻しつつある韓国だが……
日本でも大きく報じられているから既にご存じの方も多いと思うが、今回の等級引き下げよりも先に、韓国では4月18日からマスク着用を除くすべての防疫措置が解除された。
 
およそ2年もの間、飲食店の営業時間が短縮され、集会の人数制限が規制されてきた。ストレスの溜まる生活を強いられてきた国民、とりわけ若い世代は、自由を得ようと防疫措置解除後さっそく街に繰り出している。
 
完全回復とまではいかないが、ソウルの繁華街である江南(カンナム)の歩道は人であふれている。このまま順調にいけば、韓国は日本よりも先にコロナ禍以前の生活を取り戻すことになるだろう。
 
文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「ついに国民が日常を取り戻せるようになった。感無量だ」とコメントを出した。「新型コロナウイルス危機を乗り越えたのはK防疫などに取り組んだ文政権の成果だ」と言わんばかりだ。ほとんどの規制が緩和された現状を、文政権は最後の功績にしたいようである。

ただ、5月に新大統領に就任する尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏率いる次期政権は、「政府が5月末で隔離義務を完全解除すると決定したのは、性急すぎるアプローチだ」と、文政権の防疫措置緩和を批判している。そのため、新政権によるコロナ対策次第では、再び行動規制される日がやってくる可能性も否定できない。
 
文大統領はあと2週間ほどで退任するから、尹政権誕生後に規制緩和が仇となって国民に被害が生じたとしても、「当時は問題がなかった。悪化したのは尹政権の対応が悪いからだ」と責任転嫁すればいい。(後略)【4月26日 羽田 真代氏 JBpress】
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人出が戻った繁華街ではタクシー不足が深刻化しているとか。

****韓国でタクシー争奪戦 帰宅難民続出で1時間待ちも…背景にコロナ禍【ネタプレ国際取材部】****
私がお伝えしたいのは「韓国のタクシー難民問題」です。
約2年ぶりに飲食店の営業時間など、新型コロナに関する規制がほぼ撤廃された韓国。街には多くの人が繰り出し、賑わいを見せています。

一方、長引いたコロナ禍でタクシー運転手が激減した結果、タクシーが足りず深夜の帰宅難民が続出しているんです。(中略)

韓国全国タクシー運送事業組合によると、2022年2月時点の法人タクシーのドライバー数は7万4754人で、コロナ禍前の2019年12月と比べると2万7000人以上減少しています。

約2年にわたって続いた、飲食店の営業時間や人数制限によってタクシーの利用客が減り、収入や待遇が良く需要が増えたデリバリー・宅配業界に人材が流れたとされています。このタクシー不足は首都ソウルで特に深刻で、1時間待ってもタクシーが捕まらず、数時間かけて徒歩で帰宅する人も少なくありません。

ソウル市は、タクシー運転手の営業時間制限を緩和するなどの対策に乗り出した他、深夜バスを増便するなどしていますが、交通手段の供給不足は依然として解消されていません。

韓国のタクシーは初乗り3800ウォン(約380円)と日本に比べ非常に安く、その分運転手の待遇もいいとは言えません。今回の問題を巡っても、運転手の待遇改善がなければ供給不足は解消できないとする声も挙がっています。人出の増加とともに、いずれタクシー業界にも人が戻ってくる可能性はありますが、相当の時間を要すことになると見られます。

コロナ禍前の生活を完全に取り戻すためには、規制緩和を一方的に進めるだけではなく、取り巻く環境整備も並行しておこなっていく必要があります。【4月28日 FNNプライムオンライン】
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規制緩和を一方的に進めるだけではなく、取り巻く環境整備も並行しておこなっていく必要・・・・それも必要ですが、先ずは政府が明確な方針・戦略を示すことが前提になります。

日本の政治・社会はそういうリスクを伴う方向性を示すことに臆病というか非常に慎重です。
「これまで同様用心しましょう」と言っておけば、状況が悪化しても責任を問われない・・・という発想しかないようにも見えます。

そうした慎重姿勢の結果、犠牲が最小ですんだと主張するのでしょうが、転換の遅れにとなう「失われた機会」のコストは一顧だにされまんせん。


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ロシア  欧米による経済制裁は効果をあげているのか?

2022-04-27 23:05:02 | ロシア
(G20参加国の対ロシア制裁への対応【4月21日 テレ朝Newsより】)

【プーチン大統領「西側の制裁は失敗」 ルーブルは侵攻前水準に戻す】
欧米からの制裁を受けるロシア・プーチン大統領は「西側の制裁は失敗した」との強気の姿勢を見せています。

****欧米の経済制裁「失敗した」 プーチン氏“ロシア経済の安定”強調****
ロシアのプーチン大統領は、欧米諸国などがロシアに科した経済制裁は「失敗した」と主張した。
ロシア・プーチン大統領「対ロシア対策は失敗したと自信を持って言える。経済的な電撃作戦は失敗したことが証明された」

ロシアのプーチン大統領は18日、ロシアへの経済制裁について、金融・経済情勢を一気に揺るがしたが、わが国は耐え抜いたとの認識を示し「制裁は失敗した」と主張した。そのうえで、むしろ欧米諸国の経済が悪化していると皮肉を口にしている。

一方で、モスクワの市長は、外国企業の撤退により、およそ20万人が職を失う可能性があると危機感を示している。【4月19日 FNNプライムオンライン】
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国内向けに強気姿勢を見せざるを得ない面もありますが、部分的、短期的には制裁の効果があがっていない面もあります。言い方を変えれば、“壊滅的打撃を被っている”とは言い難い面もあります。

制裁直後に急落した通貨ルーブルはその後回復して、ウクライナ侵攻・制裁前の水準を超えるまでになっています。

****プーチン大統領「西側の制裁は失敗」ロシア制裁の一方ルーブル回復なぜ?専門家解説****
政府は19日からロシア産のウォッカやビールなどのアルコール飲料を、輸入禁止としました。防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。

日本や西側諸国は最も有効とされる“強いエネルギー制裁”について、足並みを揃えられていない状況です。その一方で、プーチン大統領から気になる発言が出ています。

プーチン大統領は18日、「西側諸国による我が国の市場にパニックを生み出す作戦は間違いなく失敗した。ロシアの経済状況は安定している」と話しました。

その根拠として挙げているのが“ルーブルの回復”です。
ルーブルの為替レートを見てみると、ウクライナ侵攻前は1ドル=80ルーブル前後で推移していました。侵攻後、ルーブルは下がり続け、3月7日は1ドル=142ルーブルまで暴落。ところが、それ以降はルーブルの価値が上がり、19日時点で1ドル=79ルーブルと、侵攻前の水準となっています。

エコノミストの崔真淑さんによりますと、ルーブルが戻った要因の一つとして、「ロシアの経常収支」を挙げています。ロシアは、西側諸国の制裁により、輸入が減っている一方で、ロシアからの輸出は、各国が石油やガスとったエネルギーを買い続けているため、結果として、経常収支は黒字が拡大しました。黒字ということは、それだけロシアが多くの外貨を獲得したということです。その外貨を自国通貨であるルーブルに変えようというニーズが高まり、ルーブル高へ繋がります。

(Q.プーチン大統領の「制裁は失敗した」という発言をどう見ますか)

かなり強がっている表現だと思います。ルーブルが元に戻したといっても、それ以外でロシア経済への影響は出てきています。だから、ロシアで反発が出ないように、国内向けには、「影響がない」と断言せざるを得ない。外資系企業が撤退して失業者が出たり、国内では物価が上がっています。ロシア経済へのさらなる影響は避けられないと思います。

(Q.西側諸国や日本は、石油や天然ガスなど、エネルギー制裁に踏み込む可能性はあるのでしょうか)

いまの段階では、ロシアに天然ガスを依存するヨーロッパ諸国は、天然ガスの禁輸には慎重な姿勢を貫いています。天然ガスの禁輸は、最後の切り札になると思いますので、ロシアが大量破壊兵器の使用に踏み切らないように、抑止するために、その切り札は、いまは温存しておいたほうがいいと思います。【4月19日 テレ朝news】
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今のルーブルの水準はかなり資本規制や強制的な外貨売却といった“人為的に制限”された結果でもあります。

****ルーブル、過大評価の可能性=カザフ中銀総裁****
カザフスタン中央銀行のガリムジャン・ピルマトフ総裁は27日、ロシアのルーブル相場が経済情勢を完全に反映していないとの認識を示した。

総裁は会見で「ルーブルはかなり大幅に上昇している。今のルーブル相場は、現状や将来の予想を完全には反映していない」と指摘。資本規制や強制的な外貨売却がルーブル高に大きく寄与しているとの認識を示した。

ロシアは、カザフスタンにとって最大の貿易相手国。ルーブルとカザフスタンの通貨テンゲは、ロシアがウクライナに侵攻した2月に急落した。【4月27日 ロイター】
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カザフスタンなど中央アジア諸国にとっては、ロシアが最大の貿易相手国であるというだけでなく、多くの労働者がロシア国内で働き、その送金が自国経済を支えている側面がありますので、ルーブルが下落するとその送金額の実質価値が下がるという国民生活を左右する死活的に重要な問題になります。

なお、ルーブル高は現在も続いています。ロシア国内の株価も上がっているようです。
“ルーブル、対ユーロで一時2年ぶり高値 株価上昇”【4月26日 ロイター】

【今年は1割前後のマイナス成長 インフレも20年ぶりの高水準】
しかし、実体経済への制裁の影響は避けられませんし、その影響が深刻化するのは“これから”でしょう。

****今年のロシア経済成長率、マイナス12.4%の可能性=経済省****
ロシア政府は、2022年の経済成長率が基本シナリオでマイナス8.8%、保守的なシナリオでマイナス12.4%になると予想している。経済省の文書で27日明らかになった。制裁の影響を受けていることが改めて浮き彫りとなった。

前ロシア財務相のアレクセイ・クドリン氏は12日、ロシア経済が今年、10%以上のマイナス成長に陥るとの見方を示していた。ソビエト連邦崩壊を受けて経済が混乱した1994年以来の大幅なマイナスとなる。

経済省は23年の経済成長率を1.3%、24年を4.6%、25年を2.8%と予測。保守的なシナリオでは1.1%のマイナス成長を見込んでいる。

新たな制裁や貿易を巡る不透明感があるため、今年のロシア経済がどの程度のタメージを受けるかは不明。政府は今年、複数回にわたって予測を修正する可能性が高い。

経済省の文書によると、今年のインフレ率は最大22.6%に加速する見通し。4月15日時点のインフレ率は17.62%だった。

保守的なシナリオによると、実質可処分所得は22年に9.7%減少する可能性がある。設備投資は25.4─31.8%減少する見通し。【4月27日 ロイター】
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****「店に行くたび値上がり」制裁下のロシアで20年ぶりインフレが国民生活直撃…ウクライナ侵攻2か月***
2か月前にウクライナに侵攻したロシア。来月の第2次世界大戦の「戦勝記念日」を前に攻勢を強めますが、国内は欧米諸国の制裁などの影響で20年ぶりのインフレの波が国民生活を直撃しています。(中略)

政府系の「世論基金」が行った最新の世論調査では、プーチン大統領を「評価する」と答えた人は77パーセントと侵攻前(64パーセント)から上昇。(中略)

ただ気になる現象も起きています。実はプーチン氏を「評価する」という人の割合は前の週と比べ5ポイントマイナスと侵攻後、初めて大きく下がっていたのです。背景にあるとみられるのが、「制裁による影響」です。

モスクワ市民 「店に行くたびに、何かが値上がりします。砂糖もひまわり油も値上がりしています」

8日時点のロシアのインフレ率はおよそ17.5パーセントと20年ぶりの高水準。品不足までは起きていないものの、砂糖の値段は今年に入って1.5倍になっています。

一方で、プーチン大統領は(中略)欧米の制裁は失敗だと強気を崩しませんが、同時に「インフレの波に対応できるようにしなければならない」と国民生活への影響を認めざるを得ない事態となっています。

さらに外国企業の相次ぐ事業停止などでモスクワだけで20万人の失業者が出るとの見方もあります。

モスクワ市民 「8月にならないと本当の制裁の影響は見えてこないと言われています」(中略)

IMF=国際通貨基金の見通しでは今年のロシアの成長率はマイナス8.5パーセント。ロシア経済のさらなる混乱も予想されています。(中略)

国内がインフレで疲弊する中でロシア側のダメージも確実に蓄積されることになります。【4月25日 TBS NEWS】
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【制裁の“足並みの乱れ”やロシア側の報復に苦しむ面も】
一方で、“強いエネルギー制裁”について、足並みを揃えられていない状況・・・・という面は確かにあります。

****ロシア原油輸出量 軍事侵攻前の去年上回る 制裁影響は限定的か****
厳しい経済制裁を科されているロシアからのタンカーを使った原油の輸出量は、今月に入って軍事侵攻前の去年を上回っていることが、民間の調査会社の分析でわかりました。インドや中国のほか、ヨーロッパでも受け入れが増えている国があり、現時点で制裁の影響は限定的との指摘が出ています。(中略)

世界の石油タンカーの運航の情報をもとに流通の状況を調査している、ベルギーの民間企業「KPLER」が分析した結果が明らかになりました。

それによりますと、ロシアから輸出され、タンカーで各国に到着する一日当たりの原油の量は、侵攻直後の落ち込みから回復し、今月は26日の時点で去年の平均をおよそ7%上回っています。

国別にみますと大幅に減っているのは ▽アメリカがマイナス83% ▽フィンランドがマイナス81% ▽ドイツがマイナス79% ▽イギリスがマイナス70%などとなっています。

一方で ▽インドが8.4倍 ▽トルコが2.4倍と大きく増えたほか ▽中国も13%増加しています。

さらに ▽イタリアが2.1倍など ヨーロッパでも受け入れが増えている国があります。

KPLERのマット・スミス主任原油アナリストは「ロシア産原油の価格が割安になっていることから、インドなどは買い増す機会と捉えている。ヨーロッパでも禁輸の措置がない国の中には購入を続けているところがある」と述べ、今のところ制裁の影響は限定的だと指摘しています。

ロシアの原油への対応 各国の足並みそろわず
ロシアの原油輸出量は世界2位の規模で、経済を支える柱になっています。ウクライナへの軍事侵攻を受けて世界最大の産油国であるアメリカは先月、ロシア産の原油の輸入を禁止する経済制裁を発表しました。

また、カナダやオーストラリアも輸入の禁止を決めたほか、イギリスも輸入を段階的に減らして年末までに停止するとしています。

ロシアからの原油に依存するEU=ヨーロッパ連合は、ロシアからの原油の輸入禁止を目指していますが、時期など詳細はまだ決まっていないほか、日本も輸入の禁止は打ち出しておらず、西側の足並みはそろっていません。

インド ロシアからの原油購入続ける意向
原油の多くを中東などに依存しているインドは、ロシアからの輸入量が全体の1~2%だとしたうえで、「原油価格が上昇する中、自国の利益になる取り引きを求めるのは自然なことだ」として、ロシアから原油の購入を続ける意向を示しています。

ロシアからのエネルギー購入をめぐっては、今月11日にアメリカの首都ワシントンで開かれたアメリカとインドの外務・防衛の閣僚協議、いわゆる「2プラス2」のあとの共同会見で、インドのジャイシャンカル外相が「ロシアからのエネルギーの購入に目を向けるのなら、ヨーロッパに注目することをすすめる。私たちの今月の購入量は、ヨーロッパが半日で買う量よりも少ないのではないか」と述べ、インドだけに注目すべきではないとする考えを示しています。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について、インドは自国の利益を最優先に対応する姿勢を示していて、制裁を強める欧米などとは一線を画しています。【4月27日 NHK】
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ロシアからの割安価格での原油輸入を急拡大しているインドについては、取り上げると長くなるのでまた別機会に。
インド以外でも。

****欧州、ロシアから石油「こっそり輸入」が急増―米華字メディア****
2022年4月25日、米華字メディア・多維新聞は、ウクライナを侵攻しているロシアに対し西側諸国がロシアからのエネルギー禁輸強化を計画する中、ロシアから欧州向けに石油がこっそりと輸出されていると報じた。

記事は、石油タンカー追跡機関TankerTrackersのデータとして、4月に入ってから現在までにロシアから欧州連合(EU)加盟国向けに輸出された石油の量が1日当たり160万バレルと、3月の130万バレルを上回っていることを紹介。

欧州各国はロシアからの石油を「不明な目的地」として輸送しており、その背景には欧州各国が経済運営を維持する上で石油を必要としており、燃料価格のさらなる高騰により歴史的なインフレの進行を防ぎたい思惑があるとした。

また、欧州諸国はロシア産石油に関する「不透明な市場」を形成してこっそりと取引を行うことで、米国からの制裁や批判を回避しようとしているとも伝えた。

記事によれば、ロシア産石油は1バレル当たりの平均価格がブレント原油基準価格よりも20〜30ドル安く、価格面で大きな魅力を持っているとのこと。欧州諸国の中でもルーマニア、エストニア、ギリシャ、ブルガリアのロシアからの石油輸出量が3月から倍以上となり、1日当たり10万バレルを超えているという。

記事は、欧州諸国がこっそりとロシア産石油を購入する「手口」について、ロシアからの輸送先を「未知の目的地」に設定していると紹介。

「未知の目的地」はもともと、海上で大きな石油タンカーに積み替えて運ぶことを意味しており、ロシア産石油を海上まで運び、そこで他国産の石油を積んだ大型タンカーへと移し替えて「ブレンド」するという「古典的な制裁回避法」が使われているのだとした。また、これまでにもイランやベネズエラなどの被制裁国からの石油輸出でも同様の手法が用いられてきたと伝えている。【4月26日 レコードチャイナ】
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ただ、ロシアの原油生産自体は大きな打撃を受けています。

****ロシアの石油生産、今年は最大17%減も 輸出も減少へ****
ロイターが27日に入手したロシア経済省の文書によると、制裁の影響により2022年の石油生産が前年比最大17%減少する可能性がある。

減少幅は石油業界が投資不足に直面していた1990年代以来の大きさとなる見込み。
ロシアの石油生産量は3月に減り始め、4月中旬までに7.5%減少した。国際エネルギー機関(IEA)は制裁の影響が5月以降に本格的に表れると予想している。(中略)

今年は石油・ガスの輸出も減少する見込み。石油輸出は2億1330万─2億2830万トン(日量427万─457万バレル)と予想。昨年は2億3100万トンだった。【4月27日 ロイター】
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石油生産・輸出はロシア経済・財政を支える大黒柱で、これが落ち込むことは経済・財政の悪化を意味します。

一方で、今日話題になっているのは、ロシアの報復による西側が被る打撃です。

****ロシア、天然ガスの供給停止を通告 ポーランドとブルガリアに****
ポーランドの国営ガス石油会社PGNiGは26日、ロシア国営ガス会社ガスプロムからポーランドへの天然ガス供給を27日に停止するとの通告を受けたと発表した。

ロシアは通貨防衛のため自国通貨ルーブルでのガス代支払いを求めていたが、ポーランドが応じなかったためとみられる。

ロイター通信によると、ブルガリアも同様に27日からのガス供給停止を通知された。ロシアが欧州各国の主要エネルギーであるロシア産ガスの供給停止に踏み切れば、ウクライナ侵攻を巡る対立の激化は必至だ。

ポーランドはベラルーシ経由の「ヤマル・ヨーロッパ」パイプラインでガスプロムからガスを輸入してきた。ポーランド政府は、一定のガス貯蔵量を確保しているほか、他国からの液化天然ガス(LNG)などの代替手段もあるため、国内供給は「安定している」としている。ただ、これまでロシア産ガスは国内消費の約5割を占めており、今後、産業用などの利用制限が必要となってくる可能性もある。

ブルガリアのエネルギー省も26日、ロシアからのガス供給停止に対し「状況に対応するための措置を講じた」と主張したが、同国ではこれまでガス輸入の約9割をロシアに頼ってきた。

米欧による制裁で、ロシアのルーブルは急落。その対策としてロシアは「非友好国」に指定した国や地域に対し、ロシア産ガスの購入代金をルーブルで支払うよう求めている。

欧州は天然ガス輸入の約4割をロシアに頼ってきた。ウクライナ侵攻後、各国はエネルギー面でのロシア依存脱却を急ぐが、ドイツなど各国が脱炭素社会に向けた移行期エネルギーとして重視するガスについては、早期に代替手段を確保するのが困難だとされる。

欧州連合(EU)は8日に発動した対露追加制裁に石炭禁輸を盛り込んだが、ガス禁輸についてはいまだ慎重論が強い。ロシアがガス供給の停止を拡大すれば、欧州の経済や暮らしに大きな影響が出る恐れがある。【4月27日 毎日】
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ロシア産のガスを止められないのは日本も同じです。“サハリン2からのLNG調達、代替難しく自発的見直しあり得ず=東ガスCFO”【4月27日 ロイター】

西側の対応の足並みが揃わない面、ロシア側の報復で苦しむ場面も確かにあります。
“我慢比べ”の面もありますが、一国で耐えるのと多くの国が協調して耐えるのでは大きな違いも。“総合的・俯瞰的”に見れば、今後のロシア経済の苦境は避けられないところでしょう。
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モルドバ  ウクライナ隣国でロシア系「未承認国家」が存在 「次はモルドバ」の不安

2022-04-26 23:04:49 | 欧州情勢
(昨年1月、ウクライナを訪問したモルドバのサンドゥ大統領(左)とウクライナのゼレンスキー大統領(右)【ukrinformより】)

【親ロシアから親欧米に舵を切ったモルドバ】
ウクライナとルーマニアに挟まれた東欧の最貧国、旧ソ連のモルドバ共和国・・・・日本にはあまり馴染みがない国です。更に、「未承認国家」沿ドニエストルとなると・・・

****モルドバ共和国****
人口約270万。公用語はルーマニア語。現在のモルドバの領土は1918年にルーマニアに編入されたが、40年にソ連がナチスドイツとの密約にもとづいて併合。91年のソ連崩壊で独立した。

その際ロシア系住民の多い東部の沿ドニエストル地域が分離独立を主張し、ロシア軍の支援を受けて政府軍と紛争に。92年7月に休戦協定が成立。以来同地域は中央政府の支配を受けず、「平和維持軍」としてロシア軍が駐留する。【2021年7月12日 日系メディア】
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****旧ソ連「未承認国家」多く 紛争再燃の危険はらむ****
旧ソ連圏には、モルドバの「沿ドニエストル」以外にも、各国政府の施政権が及ばず、一方的に独立を宣言した「未承認国家」が存在する。過去に中央政府との紛争を経ており、軍事衝突が再燃する危険をはらんでいる。

アゼルバイジャン西部のナゴルノカラバフ自治州をめぐる紛争が(2020年)9月に起き、11月の停戦までに5千人以上の死者を出したのが一例だ。
 
ナゴルノカラバフではソ連末期の1980年代後半、多数派のアルメニア系住民がアルメニアへの帰属替えを要求し、アゼルバイジャンとの紛争になった。ロシアは91年に「共和国」樹立を宣言したアルメニア側を支援し、94年に停戦。しかし対立は続き、今年(2020年)9月に紛争が再燃した。
 
ジョージア(グルジア)の南オセチア自治州とアブハジア自治共和国はそれぞれ90年代前半にジョージア中央と戦火を交え、独立を宣言した。両地域はロシアの庇護を得る形で事実上の独立状態を享受。2008年のロシアとジョージアの軍事衝突後、ロシアは両地域の独立を承認した。
 
ウクライナでは14年、東部ドネツク、ルガンスク両州の親露派武装勢力が「人民共和国」樹立を宣言し、ウクライナ軍との大規模戦闘になった。親露派はロシアの軍事支援を受けて現地の実効支配を続ける。
 
ロシアにはジョージアやウクライナの分離派地域を支援することで、両国の北大西洋条約機構(NATO)加盟を阻止する狙いもある。【2020年12月4日 産経】
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モルドバは欧州とロシアのはざまで揺れる小さな国で、ウクライナ、ジョージアとともに、2014年に欧州連合(EU)と連合協定を締結。しかし、2018年、ドドン前大統領はロシア主導のユーラシア経済連合のオブザーバー国となるなど、親ロシア路線に舵を切ります。

そのモルドバでは2020年11月に大統領選挙が実施され、親ロシア派として知られたドドン前大統領に対し、親欧米派のサンドゥ前首相が地滑り的勝利を収めて政権交代が起きました。

サンドゥ氏は、ロシア系住民が実効支配する親露分離派地域「沿ドニエストル」に駐留するロシア軍は撤収すべきだと発言し、ロシアの反発を招いています。(なお、サンドゥ氏当選時にはプーチン・ロシア大統領も一応祝電を送っています。)

2021年7月の議会選挙でも、親欧米派のサンドゥ大統領の与党「行動と連帯」が第1党の座を得ています。

【ロシア系「沿ドニエストル」で攻撃?】
親ロシアから親欧米への政権交代で、ロシアと緊張は高まっており、2021年10月には天然ガスのロシアからの供給で(モルドバはロシアにガス供給を100%依存)、ロシアが圧力をかける展開もありました。
このときは、ロシアからのガス供給が11月にも止まる可能性がありましたが、延長合意でモルドバのガス危機はひとまず回避されました。

以上のような経緯、状況にあるモルドバとロシアの関係は、ウクライナ戦争によって「次はモルドバ」と更に高まっていますが、そんなモルドバの親ロシア派支配地域「沿ドニエストル」で不審な出来事が。

****モルドバの親ロシア派地域で攻撃か****
モルドバ東部の、ロシア系住民が分離独立を宣言した「沿ドニエストル・モルドバ共和国」の「内務省」は25日、「国家保安省」の庁舎が攻撃されたと発表した。
 
攻撃が起きたのは現地時間24日午後6時ごろ。内務省によると、負傷者はいないものの、建物の窓が吹き飛ばされ、煙が上がった。攻撃には、携行型の対戦車グレネードランチャーが使用されたとの見方を示した。
 
共和国トップおよびモルドバ政府は今のところコメントを出していない。
 
ウクライナ西部と国境を接する、モルドバ東部のトランスニストリア地域では、多数派のロシア系住民が1990年に共和国の分離独立を宣言。ただ国際的には承認されていない。ロシア軍が駐留しており、約2万トン分の武器・弾薬などを保管している。 【4月26日 AFP】
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“モルドバ政府は「緊張を引き起こすことが目的」と懸念を示した。”【4月26日 朝日】

モルドバ側からロシアを刺激することは考えにくいので、ありていに言えば、敵になりすまして行動し、結果の責任を相手側やになすりつけ、それを口実に大規模な“報復”に出る・・・親ロシア派側の「偽旗作戦」の可能性も捨てきれません。

【ウクライナ侵攻で高まる「次はモルドバ」という緊張・不安】
ウクライナの隣国モルドバではロシアのウクライナ侵攻以降、「次はモルドバ」という緊張・不安が高まっています。

****ウクライナの次はモルドバか ロシア恐れる住民****
ウクライナの隣国モルドバで、ロシアの次の標的は自国ではないかとの不安が広がっている。モルドバは30年前にロシアの支援を受けた分離独立派との紛争を経験しており、人々はウクライナ情勢を見守りつつ当時を思い出して胸を痛めている。

ウクライナとの国境の町パランカで、押し寄せるウクライナ難民にコーヒーや茶を配るボランティアをしているアレクシオ・マテエフさんは、「誰もが怖がっている」とAFPに語った。

緊張の高まりを示すかのように、欧州の最貧国の一つであるモルドバは、西側諸国から異例の注目を集めている。2日には欧州連合の外相に当たるジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表、先週末にはアントニー・ブリンケン米国務長官が訪れた。

ボレル氏は首都キシニョフで2日、マイア・サンドゥ大統領と共同記者会見し、紛争の引き金になりかねない「国境の不安定化」に懸念を表明した。

親欧米政策を掲げて2020年に当選したサンドゥ大統領は、キシニョフでも「国境を越えて爆撃の音が聞こえる」として、「モルドバの安全保障リスクは深刻だ」と述べた。

■紛争の記憶
キシニョフから東に約80キロのトランスニストリア地域では、1990年に多数派のロシア系住民が「沿ドニエストル・モルドバ共和国」の分離独立を宣言したが、国際的には承認されていない。

1991年にロシア軍の支援を受けて政府軍との紛争になり、92年に停戦協定が成立した。ロシアは今も駐留軍を維持し、約2万トンの弾薬を保有している。

モルドバ政府は長年ロシア軍に撤退を求めてきたが、徒労に終わっている。

ロシアのウクライナ侵攻を受けて、モルドバでは多数の死者を出したトランスニストリア紛争のつらい記憶を思い出す人が少なくない。

アレクサンドル・タナセ元法相は「ウクライナが陥落すれば、ロシアはモルドバを片付けにかかるだろう」とフェイスブックに投稿。「クレムリン(ロシア大統領府)には、かいらい政権のための名簿がある」と確信していると主張した。

■ハイブリッド攻撃
シンクタンク「ウオッチドッグ」のアナリスト、バレリウ・パシャ氏によると、モルドバ人は隣国ルーマニアのような北大西洋条約機構加盟国としての安全保障がないことを知っているという。

パシャ氏は「すべては現場の状況次第だ。特にロシアが(ウクライナ南西部の港湾都市)オデッサ周辺を占領すれば、モルドバは危険にさらされる」との見解を示した。

パシャ氏によれば、モルドバはすでにEUに接近したことへの報復として天然ガス供給量を削減されるなど、ロシアの「ハイブリッド攻撃」の標的となっている。

一方、今回の危機でEUがウクライナに門戸を開くことになれば、モルドバにとっても好機となる。3月初め、欧州議会はロシアの「侵略」を非難する決議を圧倒的多数の賛成で採択し、ウクライナのEU加盟申請を支持した。モルドバも3日、EU加盟を正式に申請した。

サンドゥ大統領は申請について「ある種の決断は迅速かつ断固たる形で行われなければならない」と述べた。 【3月11日 AFP】
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「ロシアが怖い」と言いつつも、モルドバのつらいところは先の天然ガスでもそうですが、経済的にロシアに依存している点です。

****ウクライナ難民10万人「財政は限界」…行き詰まるモルドバ、親欧米だが経済は露依存****
ロシア軍が侵攻するウクライナから多くの難民が押し寄せたモルドバが揺れている。モルドバは3月、ウクライナに続き欧州連合(EU)への加盟を申請したが、エネルギー調達や農産物の輸出など経済的にはロシアと強く結びつく。領内に独立を主張するロシア系住民を抱えており緊張が高まる。

1人の支援に1日30ユーロ
「私は第2次世界大戦を経験し家を失う悲しみを知っている。困難な時こそ助けなければならない」
首都キシニョフの集合住宅にある自宅に、3月中旬から難民一家の4人を受け入れるマリーナ・スメシュナヤさん(85)は話した。
 
孫が通う高校で難民を受け入れる家庭を募っていることを知り、「空き部屋があるし1人で生活するよりは良い」と決断した。月2000レイ(1万3000円)の年金を生活費と難民の支援に充てている。
 
モルドバには人口の15%に相当する約40万人がウクライナから流入した。入国後、ルーマニアやドイツに向かった難民も多いが、現在も約10万人が国内にとどまっている。難民の75%は一般家庭に滞在し、善意で支援が成り立っている。
 
マリアナ・ツルカン首相顧問は「難民1人の支援に1日あたり30ユーロ(約4000円)かかる。財政的に限界」と窮状を訴える。
 
モルドバを支援するためドイツ、フランス、ルーマニアの3か国は5日、ベルリンで支援国会議を開き、6億6000万ユーロ(約900億円)の財政支援を打ち出した。

露系住民に警戒
モルドバはロシアが「勢力圏」とみなす旧ソ連の国で、ウクライナと同じく親欧米の外交方針を掲げる。だがウクライナと同様、ロシア系住民が独立を主張する。
 
モルドバ東部のロシア系住民はソ連時代末期の1990年、「沿ドニエストル共和国」の「独立」を一方的に宣言した。この地域にはロシアが1000人以上の兵力を駐留させ、モルドバ政府の実効支配が及んでいない。ロシア軍のウクライナ侵攻を受け、モルドバ側では警戒が強まっている。

輸出 行き場失う
親欧米路線の反面、モルドバはロシアとの経済的な関係が強く天然ガス輸入はロシアに100%依存する。
 
マイア・サンドゥ大統領は2日、地元メディアのインタビューで「国民とウクライナ難民のため、天然ガスや電力の供給を止めるわけにはいかない」と述べた。
 
貿易相手としてもロシアは重要だ。主要産品のリンゴは95%をロシアに輸出し、その額は8000万ドル(約100億円)に上る。だがロシア軍の侵攻でウクライナ経由の輸出が難しくなった。生産者組合のオクタビアン・オラル氏は「10万トンのリンゴが行き場を失った。ロシア向けの品種は欧州では買い手がつかない」と頭を抱える。【4月15日 読売】
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2013年にモルドバがEUに接近した際には、主要輸出品であるワインをロシアが「品質に問題がある」として輸入禁止にしたことも。

【ロシア中央軍管区司令官 「(沿ドニエステル共和国でも)ロシア語系住民への抑圧も確認されている」】
ロシアの脅威、「次はモルドバ」という不安は、より「現実的」なものになりつつあります。

****ロシア中央軍管区司令官、モルドバにも介入の考え…親ロシア派が「沿ドニエステル共和国」名乗る地域も****
ロシアによるウクライナ東部への大規模攻撃が続く中、ロシア中央軍管区の司令官がモルドバにも介入していく考えを明らかにした。

ウクライナの西隣モルドバの一部地域では、親ロシア派が「沿ドニエステル共和国」を名乗り、1990年にモルドバからの分離独立を宣言し、ロシア軍が今も駐留を続けている。
 
インタファクス通信によりますとロシア中央軍管区の司令官は「沿ドニエステル共和国」について「ロシア語系住民への抑圧も確認されている」と指摘した。
 
そのうえで、「ウクライナ南部を支配することは沿ドニエステル共和国へのもう一つのアクセスポイントとなるだろう」と述べ、モルドバにも介入していく考えを強調した。【4月22日 ABEMA Times】
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「ロシア語系住民への抑圧も確認されている」云々はウクライナ侵攻でも口実にされていることです。
モルドバ政府は否定しています。

****モルドバ、ロシアに懸念表明=「住民抑圧」根拠なし****
モルドバ外務省は22日、「(東部の親ロシア派支配地域)沿ドニエストルでロシア語を話す住民が抑圧されている」とロシア軍幹部が主張したのを受け、駐モルドバ・ロシア大使を呼んで「深刻な懸念」を表明した。ロイター通信が伝えた。
 
外務省は声明で「(幹部の)発言は根拠がなく、モルドバの主権と領土一体性を支持するロシアの立場と矛盾する」と指摘。その上で「モルドバは中立的な国家で、その原則は(ロシアにも)尊重されなければならない」と不快感を示した。【4月23日 時事】 
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上記ロシア中央軍管区司令官の発言に、ウクライナのゼレンスキー大統領も「ロシアは他の国も占領しようとしている」と警告しています。

****ゼレンスキー氏「ロシア、他国占領も」 黒海沿岸の制圧意図を警戒****
ロシアの侵攻が続くウクライナのゼレンスキー大統領は22日、「ロシアのウクライナ侵攻は始まりに過ぎない。ロシアは他の国も占領しようとしている」と警告した。

ロシア軍幹部は同日、軍事作戦の「第2段階」は、ウクライナ南部の制圧も「任務の一つ」と発言し、実現すれば親露派が実効支配するモルドバ東部の「沿ドニエストル共和国」へのアクセスを確保できるとの見通しを示していた。

「第2段階」の戦略目標に、東部ドンバス地方だけでなく、ウクライナ南部からクリミア半島、モルドバ東部の親露派勢力支配地域に至る黒海沿岸の完全制圧まで含まれていることを示唆したもので、モルドバは強く反発している。
 
ロイター通信などによると、ロシア中央軍管区のミネカエフ副司令官は22日、「ウクライナ南部を制圧すれば(モルドバ東部の親露派勢力が一方的に独立を宣言した)『沿ドニエストル共和国』へつながる道となる。そこでもロシア語系住民が弾圧されている」と表明した。ロイター通信によると、ロシアのペスコフ大統領報道官は23日現在、この件についてコメントしていない。(後略)【4月23日 毎日】
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ウクライナで手一杯のプーチン大統領が更にモルドバまで・・・とは考えにくいところですが、この際、一気に他の地域でも、あるいは自分の地域でも・・・と考える勢力があってもおかしくはありません。
クレムリンの考えと現場の考えが一致していないこともあります。

そんな不安がよぎる「沿ドニエストル・モルドバ共和国」での“出来事”です。

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中国  上海で続く過酷な「ゼロコロナ」政策 制限緩和できない疫学的、政治的事情 

2022-04-25 23:05:55 | 中国
(感染拡大は首都北京にも 上海同様のロックダウンを警戒して、北京中心部のスーパーでは朝の開店直後から食料品買いだめのための行列が【4月25日 FNNプライムオンラインより】)

【理不尽で硬直的なゼロコロナ政策を継続】
中国・上海では、今月14日頃の1日の新規感染者が2万7000人を超えるレベルからすると2万人を切るレベルと改善はしていますが、想像を超えるような厳格な対策を行っているにもかかわらず、22日には6日ぶりに増加するなど依然「高止まり」状態にあります。

素人的には、(その良し悪しは別にして)これだけやっているにも関らず、なぜ収束しないのか・・・不思議な感も。

死者数は急増していますが、これまでの感染者増大の結果として、(今後の感染が収まったにしても)しばらくは高い水準が続くでしょう。

****上海のコロナ感染者50万人突破 封鎖後、死者138人に****
中国の衛生当局は25日、新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)が続く上海市の24日の新規感染者(空港検疫などを除く)は1万9455人だったと発表した。都市封鎖が始まった3月28日からの累計は約50万3千人となり、封鎖が長引く一方、新規感染の高止まりが続いている。
 
24日には感染者51人が死亡。1日当たりの死者としては過去最多で、封鎖開始後の死者は計138人に上った。上海市によると、24日の死者の平均年齢は84.2歳で、最高齢は100歳だった。直接の死因はいずれも基礎疾患だとしている。【4月25日 共同】
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“亡くなった人の大半は、ワクチンを接種していなかったとしていて、感染爆発の収束が見えない中、高齢者へのリスクがはっきりと現れた形。”【4月25日 FNNプライムオンライン】

なぜリスクの高い高齢者へのワクチン接種をすすめてこなかったのか?・・・これも不思議。

いずれにしても、長期化するロックダウンで「食べるものがない!」といった弊害が巷に溢れていますが、当局は更に厳格な管理を行う姿勢です。

****上海市、1日の死者数が過去最多に…当局は「硬隔離」で一層の厳しい管理へ****
ロックダウンが続く中国の上海市で、過去最多となる死者が確認された。当局は封鎖エリアに新たにフェンスを設置するなど、感染対策を強化している。

先月末からロックダウンが始まった上海市で撮影された動画には、不満を抱えた市民が道路と住宅を隔てるフェンスを引き倒している様子が収められていた。
 
地元メディアによると、感染者が確認された一部の地域をより厳しく管理する「硬隔離」という通知が当局から出され、住宅の玄関をふさぐフェンスが設置されたという。(後略)【4月25日 ABEMA Times】
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“SNS「微博(ウェイボー)」の利用者は「家畜のように金属製フェンスで囲うのは、中にいる人たちの権利を全く無視している」と批判した。”【4月25日 ロイター】

おそらくこういう批判的な声は、当局によってしらみつぶしに削除されてしまうのでしょう。それでも削除しきれない声が溢れる・・・というのが上海の現状です。

****「何日もご飯食べてなかった」 上海『四月の声』SNS拡散も当局は徹底削除 北京ではロックダウンへの警戒高まる****
先週、中国のSNS上である動画が市民らによって拡散されました。

「四月の声」と題された作品。モノクロの上海の景色だけが映っていますが、新型コロナによる事実上のロックダウンで混乱する市民や医療従事者、政府関係者らが発した「声」がおよそ6分にわたり編集され流されているのです。

市民と病院担当者の会話  「正直にいうと病床が足りていない。隔離施設も空きがないし救急車もない。これが現実です」
抗議する住民  「物資をくれ物資が欲しいんだ」

地区の担当者が住民に対し涙ながらに弁明する声も。
地区担当者と住民の会話  「私も上層部から納得できる政策を出してほしい。住民に顔向けできるように。現実は何もないの。理解してほしい。この仕事は心身ともに疲れた」

登場するのは不満の声だけではありません。
警察  「漬物もたくさん食べてね」
運転手  「警察官がご飯をくれた、上海の警察は素晴らしい。何日もご飯を食べてなかった」

ところが、この「四月の声」今、中国で見られなくなっています。当局に不都合な内容と判断されたとみられ、アップロードされるたびに削除されているのです。(後略)【4月25日 TBS NEWS】
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隔離政策は問答無用」的な硬直的対応で、合理性がなく、住民への配慮もない様子。

****魂がそこにいる」から隔離!?問答無用の中国ゼロコロナ政策 世界経済に影響も****
(中略)
「そこにいた」というだけで…
私が約2週間隔離することになったのは、4月3日の夜に北京市で最大級の商業ビル「望京SOHO」にある飲食店にいたというのが理由だ。

建築家のザハ・ハディド氏がデザインしたことでも知られる望京SOHOは、オフィスと商業店舗を統合した複合施設で、敷地面積115,392平方メートル、総建設面積521,265平方メートルと地域最大級だ。ここには数百もの企業と店舗があり1万人以上の人が働いているが、テナントの一つである洋服販売店のスタッフ1人が新型コロナウイルスに感染したことが確認された。

中国当局はすぐにこのスタッフの行動履歴を確認し、3月27日から4月3日までに望京SOHOに出入りした全ての人を強制的に隔離すると決めた。

しかし、私がいた飲食店のあるビルと洋服販売店のあるビルは別の棟で、さらにその距離は100メートル以上離れている。この感染したスタッフとの接触も一切なかったが、こういった説明を担当者に伝えても「隔離は決まったこと」という一点張りで覆ることはなかった。結局、2週間自宅隔離をし、その間3回のPCR検査を受けて全て陰性であれば隔離が解除されるということになった。

「魂はまだそこで働いているというのか!」
ゼロコロナ政策を巡る余波は予期せぬ場所でも発生していた。当局は、感染者が出た望京SOHOにテナントとして入っている会社の社員の追跡調査を行ったのだが、その結果すでに退職して現在は望京SOHOで働いていない人までも隔離やPCR検査を受ける対象になった。

当局が最新の名簿ではなく2年前の2020年の名簿に基づいて調査を行ったためで「今は働いていない」と訴えても聞き入れてもらえなかったそうだ。中国のSNSにはその対象となった人達から次のような憤りの声が投稿された。

「私は1年前に望京SOHOで働いていたがそれ以来行ってない。それなのにビッグデータに取られ3日間で2回のPCR検査をすることになった。私はもう望京を離れたのに、魂はまだそこで働いているというのか! とんでもない話だ!!!」(後略)【4月24日 FNNプライムオンライン】
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【自殺増加 医療制限での死者も】
硬直的な当局対応が続くなかで、「餓死」以外にも懸念される事態が。

****封鎖の上海、自殺相次ぐ 感染死者数を上回るとの見方も****
新型コロナ対策のロックダウン(都市封鎖)が長引く中国上海市で、自殺者が相次いでいる。長期にわたって自宅から出られずに抑うつ状態の人が増えているとみられる。

医療機関に診察を拒否され命を絶った男性も。3月28日の封鎖開始から4月19日までに17人の感染者が死亡したが、これを上回るとの見方もあり、政府への批判は日増しに高まっている。
 
「診察できない。中は全て陽性患者だ」。上海の楽団員、陳順平さん(71)は激しい腹痛に襲われて病院に駆け付けたが、診察を拒否された。帰宅後に嘔吐を繰り返し、14日に自殺した。遺書には「痛みに耐えられなかった」とあった。【4月20日 共同】
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適正な医療を受けられずに死に至るという事態は上海だけでなく中国全土に広がっているようです。

****中国95%強の医療機関休業 ゼロコロナ政策で亡くなる助かるべき命****
新型コロナ対策発動で非病院は強制休業へ
日本では上海の都市封鎖(ロックダウン)の話が盛んに報じられている。実は、中国全土の複数の主要都市で何かしらの新型コロナウイルス対策として行動制限が実施されている。現在、中国では陽性者が1人でも確認されると行動制限が発動するからだ。

実施される新型コロナ対策には、医療機関の強制休業がある。新型コロナ対策が実施されている中国の都市では、全体の95%以上の医療機関が休業している。

休業させる理由は、PCR検査ができないから。万が一、新型コロナの患者が来院すると対応できないからと当局から通達されている。

中国の医療機関は、大きく分けると病院、その他の医療機関の2つに分けることができる(正確には3つ。詳細は要検索)。さらに病院には、3級、2級、1級があり、国や市、人民解放軍などが運営する大型の公立病院が3級や2級を占めており、病床数や医療従事者数、設備など条件を満たした一部の私立病院が1級の許可を得ている。

非病院は、問診所、衛生院など日本語だとクリニックと翻訳される小規模医療機関となる。非病院には、歯科や美容整形外科、中医(中国医療)、海外旅行保険が使える外国人向けの医療機関など専門院を含め医療機関全体の95%以上を占める。

新型コロナ対策が発動されると、診察できるのは病院のみとなる。病床数が多く診療科がそろう3級や2級病院は、都市部に多く、地方には少ない傾向がある。持病等で普段から通院している人は、いわゆる、かかりつけ医ではない大学病院などへ行かなければならない。そのため、治療自体を控える人も多く、持病が悪化して亡くなる人も出ている。

しかし、中国政府は統計として発表しないので、実態は完全に伏せられている。

中国政府は、新型コロナだけを徹底的に封じ込めれば良いとも受け取れるゼロコロナ政策を進めているため、ゼロコロナ政策で亡くなる人も出ている。本来、助かる命が、ゼロコロナ政策で失われている実態は、今後も明らかにされることはないのかもしれない。【4月24日 Korea World Tomes】
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【緩和すれば「死者200万人」 背景に中国製不活化ワクチンの有効性の問題?】
中国政府がここまで「ゼロコロナ」に固執する背景には、疫学的な問題と政治的な問題があります。

疫学的な面で言えば、今の中国で制限を緩和すると、欧米に比べて脆弱な医療体制もあって膨大な犠牲者を出す事態になってしまう・・・との懸念です。

****中国、ゼロコロナ継続を伝達 制限緩和なら「死者200万人」****
中国の王文濤商務相が18日に日米欧などの経済団体代表と北京の商務省で会談し、新型コロナウイルスの感染を徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策の当面の継続を伝えたことが分かった。

「政策を緩めた場合、中国で1年以内に200万人の死者が出る」との試算を示し、理解を求めた。日系企業でつくる中国日本商会の関係者が19日明らかにした。(後略)【4月19日 共同】
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世界最多の死亡者を出しているアメリカが死者約100万人ですから、中国の人口を考えれば「死者200万人」でも少ない方かもしれません。「死者200万人」の根拠ははっきりしませんが、2月段階で下記の論文が報じられていました。この論文の数字でしょうか?

****「ゼロコロナ戦略」地域の制限緩和、死者年200万人の恐れ=研究****
中国のような新型コロナウイルス感染を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ戦略」を実施している地域で人の移動を通常の水準に戻すと、年間約200万人の死亡者が出る恐れがある。中国の研究者チームが4日発表した。(中略)

しかし、全世界のワクチン接種率が95%でも、人口の流動性が2019年の水準に回復した場合、ゼロコロナの全地域で1年以内に2億3400万人超の感染者が発生し、うち6400万人が症状を訴え、200万人が死亡すると推定した。

中国の研究者チームは中国疾病管理予防センター(CCDC)の週報に掲載された論文で「人類は世界レベルで新型コロナを撲滅するために、ワクチン開発を継続し感染に対するワクチンの防御力を向上させる新たな方法を模索すべきだ」と訴えた。(中略)

研究者チームは、新しいワクチンは有症疾患や死亡に対する効果よりも感染に対する効果が重要として「新型コロナを制御する鍵は、より効果的な感染防止ワクチンの開発とその広範な使用にある」との見方を示した。【2月8日 ロイター】
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上記推論はワクチンの有症疾患や死亡に対する効果、感染に対する効果について、チリと英国での研究をもとに一定の数値を前提にしたものですが、中国製「不活化ワクチン」の有効性に対する疑念が以前からあります。

“「中国製ワクチンがオミクロン株への効果が少ないことは、中国政府も知っているじゃないですかね。だから、物理的に人流を断つロックダウンを継続しているのではないでしょうか?」と語るのは、現在、千葉県の研究所に勤める中国の医師免許を持つ中国人医師。”【4月16日 Korea World Tomes】

****[FT]「中国は外国ワクチンに切り替えを」 専門家が提言***
新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」に対する中国製ワクチンの有効性について懸念が募るなか、科学者らが中国に対し、オミクロン型の感染拡大と闘うため2種類の国産ワクチンに代わるワクチンを探すよう呼びかけている。

中国は新型コロナのパンデミック(感染大流行)下で最悪の感染急拡大に直面し、2つの問題に苦しめられている。1つは追加接種(ブースター接種)のペースの鈍さで、当局は今週、60歳以上の人口のうち3回の接種を完了した人が57%にとどまると明らかにした。もう一つは外国製ワクチンより効果が大幅に劣る国産ワクチンだ。

複数の研究は、中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)製ワクチンは、独ビオンテックや米モデルナが生産している「メッセンジャーRNA(mRNA)」ワクチンなど、より効果が高いワクチンの追加接種で免疫を補強することを推奨している。中国医薬集団(シノファーム)製ワクチンについてはデータがほとんどないため、多くの研究者は同社製ワクチンもオミクロン型にあまり効かないと考えている。

米スクリプス・トランスレーショナル研究所のエリック・トポル所長は、データは「限られている」ものの、ウイルスの死んだ部分を使って生産される「不活化ワクチン」は競合ワクチンより効果が劣り、時間とともに効果がさらに落ちると話す。(後略)(2022年4月20日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版)【4月21日 日経】
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【「ゼロコロナ」成果は中国政治体制の優位性としてきた習近平政権 今更後に引けない政治事情】
効果の劣る中国製ワクチンを外国製ワクチンで補完する・・・科学的には正しくても、政治的には到底受け入れられない提案でしょう。

中国政府が「ゼロコロナ」に固執する政治的側面に関わっていますが、中国はこれまで「ゼロコロナ」の成果を、欧米社会に対する中国政治体制の優位性として位置づけてきました。

それを今更「中国製ワクチンは外国製に比べて劣るので・・・」とは、メンツに拘る習近平主席ならずとも言えないでしょう。国際的にも「ワクチン外交」と称して、さんざん中国製ワクチンを途上国などに供与してきているので、「今更・・・」

中国政府にとって、「ゼロコロナ」放棄は、これまで主張してきた中国政治体制の優位性の否定にもなってしまいます。ましてや、今秋の党大会で3期目を目指す習近平主席としては到底許容できない選択肢です。

****中国習主席、怒り買う「ゼロコロナ」政策に固執する訳****
 国民の怒りが高まり、景気見通しが急激に悪化した場合、多くの国家指導者ならば事態を憂慮して政策を見直すだろう。

しかし、政権3期目にスムーズに移行したいはずの習近平・中国国家主席は今、新型コロナウイルス変異株オミクロンとの闘いで試練にさらされている「ダイナミックゼロコロナ」政策をさらに強めようとしている。

習氏は先週、国営メディアを引き連れて南部の海南島を訪れた際、この政策の重要性を繰り返し強調した。アナリストによると、習氏は今年強い姿を見せる必要があり、方向転換して弱さを見せることは政治的に厳禁だ。海南島での行動にはそうした背景があるという。

習氏の姿勢はまた、集団免疫もなく医療制度が貧弱な中国において、ゼロコロナ政策に代わる魅力的な選択肢が存在しないことも示している。

中国政府がこれまで新型コロナの危険性を非常に重大視してきたという事情もある。今さら方向転換すれば、新型コロナに恐怖心を抱くよう慣らされてきた国民に対して反対のメッセージを送ることになり、格好がつかない。

ナティクシスのアジア太平洋首席エコノミスト、アリシア・ガルシアヘレロ氏は「西側が見つけた回答を輸入するのではなく、ショックに対する中国独自の回答を固守したい、というのが彼の考え方だろう」と話す。「集団免疫を目指す西側のアプローチに対抗する『ダイナミックゼロコロナ』政策がそのひとつだ」という。

国民の怒りが広がっているにも関わらず、習氏がゼロコロナ政策に固執するのは、政権内部に反対勢力がおらず自身の立場が確保されているという自信の現れでもある。今年秋に開かれる5年に一度の中国共産党大会で、習氏は前代未聞の3期目へと向かう。

北京大学の政治科学講師、ヤン・チャオフイ氏は「さまざまなバックグラウンドを持つ多くの人々が声を上げていることと、その表現の強さを考えると、これは習氏が政権を握った2012年以来で最も大規模な国民の怒りの表明だ」と話す。

しかし「国民の不満の声はばらばらで、習氏に影響を及ぼせるほどの勢いには至っていない」【4月19日 ロイター】
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そいて今、世界の注目は首都北京の感染状況に集まっています。感染者が23日以降2桁台に増加、このまま上海同様のロックダウンに至るのか・・・そのあたりは長くなってしまうので、また別機会に。

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ペルー  ペルー日本大使公邸占拠事件当時と変わらぬ貧困・格差 混迷する急進左派政権

2022-04-24 23:21:11 | ラテンアメリカ
(ペルー議会で3月28日、カスティジョ大統領の汚職疑惑を巡り弾劾裁判が開かれ、同氏は就任してから法を犯したことはないと改めて無罪を訴えた。写真は3月28日、リマで撮影 【3月29日 ロイター】)

【フジモリ氏 最高裁が保釈認めるも、米州人権裁判所が認めず】
1990年にペルー大統領に就任した日系2世のアルベルト・フジモリ元大統領は、経済を回復基調に乗せ、左翼ゲリラの掃討作戦でも実績をあげましたが、一方で政権の腐敗を隠すための言論統制、貧困撲滅を目的とした強制避妊政策などの強権支配の側面も色濃く、2000年には三選を禁じた憲法規定を強引に解釈して立候補。

不正選挙の批判もあった2000年選挙で三選を果たしたものの、直後に政権の腐敗・汚職が明るみに出るなかで失脚、国際会議途中に立ち寄った東京で事実上の亡命をする事態に。(日本政府は、フジモリ元大統領は日本国籍保持者であるため、日本滞在には何の問題もないとした。【ウィキペディア】)

ペルー国内では、フジモリ氏の辞任を求めず、罷免。2006年大統領選挙出馬のために日本を離れて南米チリに向かった際に逮捕。

その後、2007年には日本の参議院選挙に国民新党(自民党を離党した亀井静香氏らが立ち上げ)から立候補するなどの紆余曲折もありましたが、母国ペルーで軍による民間人殺害への関与など、人権侵害、汚職などの罪で告発され、有罪となり服役。

恩赦を求めるとも見られる長女のケイコ・フジモリ氏の政権獲得も今一歩及ばないなかで、ここ数年は体調を崩して入退院を繰り返し、恩赦が許されたり、取り消されたり・・・と、同氏の扱いは政治マターになる状況でした。

そうした経緯を経て、下記最高裁判断でついに釈放か・・・と思われましたが・・・
同氏は動脈閉塞で心臓手術を受け、現在は日常的に人工呼吸器が必要な状態とされています。

****フジモリ元大統領の釈放、ペルー憲法裁判所が認める…禁錮25年の実刑確定から12年****
南米ペルー紙レプブリカ(電子版)によると、同国の憲法裁判所は17日、服役中のアルベルト・フジモリ元大統領(83)の釈放を認めた。
 
フジモリ氏は、在任中の人権侵害事件で2010年に禁錮25年の実刑が確定。17年12月に高齢や病気を理由に人道的恩赦を認められたが、後に取り消され、19年1月から再び収監されていた。【3月18日 読売】
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しかし、米州人権裁判所が人道的恩赦を履行すべきでないとの決定。

****フジモリ元大統領、釈放遠のく 恩赦不履行をと米州人権裁****
米州人権裁判所(本部コスタリカ)は8日までにペルー政府に対し、服役中のアルベルト・フジモリ元大統領(83)にペルーの憲法裁判所が認めた人道的恩赦を履行すべきでないとの決定を出した。ペルー政府は同人権裁の判断に従うとしており、フジモリ氏の釈放は遠のいた。
 
フジモリ氏は在任中に左翼ゲリラと間違えられた市民らが軍に殺害された事件で、禁錮25年の判決が確定して服役中。(後略)【4月9日 共同】
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【ペルー日本大使公邸占拠事件から25年 未だ変わらぬ貧困と格差】
上記概略のように単に日系2世の大統領というだけでなく、日本政界とも非常に近い関係にあったフジモリ氏ですが、同氏と日本の関りを鮮明にし、同氏の強い指導者として評価を強めた事件が1996年に起きたペルー日本大使公邸占拠事件でした。

****ペルー日本大使公邸占拠事件****
1996年12月17日夜に発生。左翼ゲリラ「トゥパク・アマル革命運動(MRTA)」の武装グループ14人が、天皇誕生日を祝うパーティー中だった首都リマの日本大使公邸を襲撃。600人を人質に立てこもり、服役中の仲間の釈放を求めた。

フジモリ政権は要求を拒否し、事件は長期化。97年4月22日、軍特殊部隊がひそかに掘った複数のトンネルを使って公邸に突入し、人質として残っていた72人のうち、日本人24人を含む71人を救出した。MRTA側は14人全員が射殺された。【4月21日 毎日】
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事件の解決から25年を迎えた22日には、首都リマで式典も行われました。

****ペルー人質事件解決25年で式典 日本大使公邸レプリカ前で****
ペルーの日本大使公邸人質事件の解決から25年を迎えた22日、首都リマの陸軍施設にある公邸の原寸大レプリカの前で軍主催の記念式典が行われ、出席したカスティジョ大統領らが犠牲者を追悼した。
 
式典には片山和之・駐ペルー日本大使や人質となった元軍関係者ら、救出作戦に参加した軍特殊部隊メンバーも出席した。(後略)【4月23日 共同】
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25年前の事件の背景となった貧困や格差の問題は今も残存し、現在のペルー政治の混乱を惹起しています。

****ペルー日本大使公邸事件25年 貧困や格差の構造、今も変わらず****
最大600人以上が4カ月間人質に取られた南米ペルーの日本大使公邸占拠事件の解決から22日で25年になる。事件の背景にあった貧困や格差の問題はその後も解消されず、ペルー社会は今、新たな混乱の渦中にある。
 
「鶏のむね肉やもも肉も、調理用ガスも買えない」
首都リマのスラム街の一つ、ビジャ・マリア・デル・トリウンフォ地区。住民有志でつくる炊き出し団体の代表、レオナルダ・アラニアさん(47)は毎日新聞の電話取材にため息をついた。以前はコメやマメの煮込みなどを毎日用意できたが、現在はより安く作れる鶏の皮や骨、野菜が入ったスープのみの日が週3日に増えた。「物価が上がり、栄養のある食事を作れなくなっている」
 
ペルーは食料品や燃料の国際価格の上昇などによるインフレに悩まされている。ロシアによるウクライナ侵攻の影響でさらに物価が高騰。国家統計情報庁によると、リマ首都圏の3月のインフレ率は前年同月比6・82%と、中央銀行の目標上限である3%を10カ月連続で超えた。インフレは特に、労働者の約75%を占める非正規雇用の庶民を直撃している。

苦境にあえぐトラック運転手や農業従事者らは3月末ごろから、国道を封鎖するなどのデモを展開した。リマではデモ隊の一部が暴徒化し、警官隊と衝突。4月6日までに少なくとも6人が死亡した。

4月中旬以降は大規模なデモは起きていないが、政府は国道を対象に30日間の非常事態宣言を出し、集会の自由を制限するなど警戒を続ける。
 
デモの原因には政治への不満もある。ペルーでは近年、汚職疑惑などで大統領が相次いで交代している。2016年以降に就任した5人目の大統領となる急進左派のカスティジョ氏も21年7月の就任以来、すでに3度、内閣が総辞職。公共工事を巡る汚職などの疑惑も浮上する。

地元紙レプブリカの今年3月の世論調査によると、支持率は24%で、不支持率は68%。5年の任期を全うできるか疑問視する声も出ている。
 
1996年に発生した日本大使公邸占拠事件も、80年代のハイパーインフレに伴う経済、社会の混乱が遠因となった。
 
事件を起こした左翼ゲリラ「トゥパク・アマル革命運動」(MRTA)は83年、貧富の差が拡大し、社会不安が高まる中で結成された。別の左翼ゲリラ「センデロ・ルミノソ」(スペイン語で「輝く道」)と並びテロを頻発させ、80年代以降に推定7万人が犠牲になったとされる。

90年に誕生した日系2世のアルベルト・フジモリ大統領はインフレを抑え込み、新自由主義政策を推進して経済を回復基調に乗せた。左翼ゲリラの掃討作戦も主導してテロを沈静化させ、95年に再選を果たす。
 
だが、社会が安定に向かうかに見えた状況下で事件は起きた。ペルー・カトリック大のダビド・スルモント教授(政治学)は「当時、MRTAはセンデロ・ルミノソと同様、既に弱体化しており、事件が最後の目立った活動だった」と指摘した上で、「フジモリ政権下で取り残された貧困層の支持を得て再起を図ることが、MRTAの目的だった」と分析する。

日本大使公邸が狙われたのは、フジモリ政権に対する日本政府の多額の援助が国民全体に行き渡っておらず、格差が拡大したとMRTAが見ていたことが理由とされる。
 
結果的に、軍特殊部隊による人質救出作戦が成功したことで、国民に支持されたのはフジモリ氏だった。スルモント氏は「作戦は世界的に評価され、フジモリ氏の政権基盤は強化された」と語る。
 
一方で、事件後も格差は残った。3選を狙うフジモリ氏の政策から貧困対策は抜け落ち、以降の歴代政権も新自由主義路線を踏襲。00年代には中国の経済成長に伴いペルーの主要産品である銅の需要が伸び、高い経済成長を遂げたが、効果的な再分配政策は打ち出されなかった。
 
調査会社イプソスによると、21年の世帯収入別の割合は、平均月収1万2647ソル(約43万6600円)の層が1%、同6135ソルの層が9%、1242〜3184ソルの層が90%。それぞれ1%、4%、95%だった03年と比べても、低収入層が圧倒的に多い状況は変わっていない。
 
日本大使公邸占拠事件で5日間、人質となった京都大の村上勇介教授(ラテンアメリカ政治)は「ペルーでは伝統的に各政党が支持者らとの利害関係で動く傾向が強い」と指摘した上で、「どの政権も自分たちの利益を優先し、社会全体に還元しようという考えに至らないことが、貧困と格差の問題が改善されない大きな原因だ」と強調する。
 
フジモリ氏は00年に連続3選を果たしたが、側近の野党買収疑惑が発覚して失脚。10年には大統領在任中の軍による市民虐殺事件に関与したとして禁錮25年の判決が確定し、収監された。18年1月に高齢や病気を理由とした恩赦で釈放されたが、9カ月後に恩赦が取り消され、再び収監された。

スルモント氏は「フジモリ氏は強い指導力を発揮したが、今では人権侵害などのイメージが強く、強権的な政治家と見られている」と話す。
 
在ペルー日本大使館によると、事件の舞台となった日本大使公邸は解体され、現在も更地のままになっている。米国務省が01年にMRTAの外国テロ組織の指定を解除するなど、左翼ゲリラは退潮した。だが、村上氏は「格差と貧困の構造を根本的に変えなければ、反政府武装組織が再び台頭する恐れがある」と警鐘を鳴らす。【4月21日 毎日】
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【急進左派カスティジョ政権の混迷】
上記記事にもあるように、今月上旬にはウクライナ情勢によるインフレから混乱が起き、30年ぶりの外出禁止令が出される事態にも。

****ペルーで物価高騰に抗議デモ ロシア経済制裁の余波****
南米ペルーで物価高騰に対する抗議デモが全国に広がり、警官隊との衝突などで6日までに5人が死亡した。カスティジョ大統領は同国史上2度目となる30年ぶりの外出禁止令を5日発令したが、反発した市民が複数の役所になだれ込むなど混乱が広がった。

物価高騰はウクライナに侵攻したロシアに対する経済制裁の影響によるものでウクライナ危機の余波が南米に及んでいる。

ロイター通信によると、ペルーでは最近2週間で燃料や肥料が値上がりした。昨年の大統領選でカスティジョ氏を支えた地方の庶民の暮らしが打撃を受け、トラック運転手や農民らが抗議に加わり、各地で幹線道路の通行を妨げた。

南部イカでは4日、料金所が放火され、デモ隊が警官隊と衝突。同日夜、カスティジョ氏は「全ての国民の基本的権利を守る」として首都リマを対象に5日限定の外出禁止令を出した。

5日のリマは幹線道路や港などで厳戒態勢が敷かれ公共交通機関も運休。バスを待っていたという45歳の男性はAP通信の取材に「子供が4人いる。1日働けなかったら食べていけない」といらだちを募らせた。

ペルー政府が外出禁止令を出したのは、フジモリ元大統領が1992年に騒乱を鎮めるため、憲法を停止し、国会を閉鎖した「自主クーデター」以来。政権基盤が不安定なカスティジョ氏が権力を掌握するため強権的な手段に出たとの観測も広がった。

同氏は昨年7月の大統領就任以降、議会で罷免決議案を2度提出され、閣僚の交代も相次いでいる。最近の支持率は約25%と低迷している。【4月7日 産経】
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昨年6月の大統領選挙で、アルベルト・フジモリ氏の長女、ケイコ・フジモリ氏(46)を僅差で破り大統領に就任した急進左派のカスティジョ大統領の統治は迷走しています。

****政治的混迷を露見させるペルー大統領の迷走****
ペルーのカスティージョ大統領の迷走ぶりは、国際的メディアの注目を浴びるまでになっている。

1月31日、バスケス首相は、国家警察における汚職への対応などで、カスティージョへの不信感を強めたこともあり、辞表を提出した。翌日、バレール議員を新首相に任命するも、過去の家庭内暴力問題が表面化し、早くも2月8日に更迭、アニバル・トレス前法務相が後任の首相に任命された。カスティージョにとり4人目の首相となる。

もともと地方の小学校教師で教員組合のストライキを指導した程度の政治経験しかないカスティージョは、党首が汚職問題で立候補できない共産主義政党ペルー・リブレの候補に担がれたに過ぎなかった。

しかし、その新鮮なイメージが首都リマでの既成政治家の権力闘争に辟易していた地方の有権者の共感を呼び、ケイコ・フジモリとの決戦投票でも僅差で勝利するという幸運が重なった。従って、カスティージョにはもともと大統領に必要な知識や経験もなかった。
 
今回の騒動で最も問題なのは、政治経験も豊富で大統領を補佐することが期待されたバスケス首相の辞任が、大統領への不信感と優柔不断を理由としている点だ。すなわち、政策上の問題ではなく、資質を問題としているのである。
 
カスティージョは、ペルー・リブレの候補として当選したが、同党は、一院制の議会の130の議席のうち32を占めるに過ぎず、中道派と右派で過半数を超えるので、政権運営のために左派急進的主張を押さえ、ペルー・リブレとあえて距離を置き始めていた。バスケス等の左派穏健派の閣僚の補佐により、中道派の支持を得て穏健な左派路線を歩む可能性も期待されていた時期もあった。
 
混乱を招いている原因は、カスティージョの種々の政策判断を補佐官らのインナーサークルが影の内閣として牛耳っており、首相や閣僚の意見よりもそれらの側近の助言が重視されたためと言われている。インナーサークルの人材は、カスティージョの地元の知り合いや縁故によるもので、また一部には腐敗の噂も付きまとっている。

カスティージョとしても他に信頼できる相談相手はおらず、このインナーサークルの意見に振りまわされているようである。(中略)
 
いずれにせよ、トレス新首相の立ち位置や、ペルー・リブレ所属の閣僚が何人か入閣したことから、カスティージョ政権が軸足を左に戻した印象がある。いずれにせよ、カスティージョが今後も側近らのインナーサークルの助言に頼るのであれば、頻繁な政策変更や発言の撤回の傾向は変わらず、政治的混迷が引き続くことは免れないであろう。

フジモリ派などの右派は、混乱を招いたカスティージョの辞任を求め、新内閣を揺さぶり弾劾の機会を今後も窺うであろう。

軍部クーデターの可能性は?
大統領、首相が議会議長や中道派と協力して、議会における多数派を形成する協約のようなものができる可能性は、大統領の能力、過去のしがらみ、利害関係の交錯から、低いと言わざるを得ない。

他方、カスティージョの議会による弾劾もハードルが高く、仮に弾劾に成功しても昇格する副大統領も同様の困難に直面するであろう。一部に、軍部のクーデタの可能性を論ずる向きもあるが、望ましくないし、現実の可能性も低いであろう。
 
大統領制の下で価値観の分裂により小党が分立する結果、議会に十分な基盤を持たない大統領と議会が対立し機能が麻痺してしまう状態は、制度的に避けられない現象であろう。前政権では、昇格した副大統領も弾劾され、結局議会で暫定大統領を選出することで政局はとりあえず安定した。
 
現在のペルーの制度の下では、さまざまな国民の要求を集約し多数派が形成される政治過程の仕組みができておらず、政治指導者にそのような問題解決の能力がないのであれば、当面現在の政治的混迷から脱出することは難しいであろう。【3月4日 WEDGE Infinity】
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上記記事でも触れられている議会による弾劾は否決され、政権は当面の政治危機は逃れています。

****ペルー議会、大統領の弾劾決議案を否決****
南米ペルーの議会は28日、カスティジョ大統領に対する弾劾の是非を問う投票を行い、賛成票が必要な数に届かず否決された。定数130の議会で弾劾を決議するには賛成が87票以上必要だったが、55票にとどまった。

当面の政治危機を逃れたものの、就任1年足らずで閣僚の辞任が相次ぐなど、厳しい政権運営が続いている。

カスティジョ氏は元教師で、昨年の大統領選に僅差で勝利したが汚職疑惑が浮上していた。採決に先立ち、同氏は就任してから法を犯したことはないと改めて無罪を訴えた。

議会で演説し、「残念なことに当選以降、わたしを罷免に追い込むことが政治およびメディアの行動の中心軸となってしまった。これを続けるわけにはいかない」と強調。無罪を主張した上で、政治および経済危機を脱するために結束を呼び掛けた。

カスティジョ氏は2016年以降で5人目の大統領。18年に当時のクチンスキ大統領が罷免決議の採決を前に辞任し、20年に議会は当時のビスカラ大統領に対する罷免を可決した。【3月29日 ロイター】
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弾劾は免れたものの、ペルー政治の混迷はしばらく続きそうです。

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西アフリカ・マリで虐殺・偽装工作に関与か、ロシアの民間軍事企業「ワグネル」 ウクライナにも派遣

2022-04-23 22:59:49 | アフリカ
(【2021年11月11日 産経】)

【マリ軍事政権 撤退する仏軍に代わってロシアの民間軍事企業「ワグネル」に乗り換え】
あまり直接的な関与をしたがらないアメリカに代わって西アフリカで軍事展開を含む直接的関与を深めてきたのが旧宗主国のフランスですが、その仏軍活動の中心にあったのがマリ。

マリ政府の要請に応じて2013年から部隊を派遣し、介入時は市民からも熱狂的に歓迎され、一時はイスラム過激派討伐で成果を治めましたが、戦いは長期化、マリ国内の軍事政権への政変による政権との関係悪化、犠牲者の増加などもあって、フランス・マクロン大統領は2月に撤収を発表しました。

****対テロ戦のマリ駐留仏軍が撤退へ 軍政との関係悪化で****
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は17日、イスラム過激派と10年近く戦ってきたアフリカのマリに駐留している部隊を撤退させると発表した。同国の軍事政権との関係悪化が理由という。

フランスが主導する多国籍部隊は声明で、2020年8月に権力を握った軍事政権による「度重なる妨害」により、マリで活動する条件が損なわれたと指摘した。マリにある3か所の駐屯地は、4〜6か月以内に閉鎖する。

フランスは、対テロ作戦のため、マリ政府の要請に応じて2013年に部隊を派遣した。しかし、過激派の活動は収まらず、ルモンド紙は「熱狂をもって始められた介入は不名誉な終わりを迎えた」と論評した。これに対しマクロン氏は、フランスがマリで失敗したとの見方を否定した。 【2月17日 AFP】
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マクロン大統領は、マリ軍事政権と「戦略も目的も共有できない」と非難しています。仏大統領府によると、仏軍は2400人、欧州部隊は900人がマリに展開していましたが、仏軍は規模を縮小してニジェールなどの近隣国に一部の部隊が残される見通しとされていました。

一方、マリ軍事政権がフランスに代わって頼ったのがロシアの民間軍事会社「ワグネル」でした。

****マリ、ロシア軍事企業に毎月11億円 米軍司令官****
米アフリカ軍のスティーブン・タウンゼンド司令官(陸軍大将)は3日、イスラム過激派の襲撃や貧困に苦しむアフリカ西部マリの軍政が、ロシアの民間軍事企業「ワグネル」に月1000万ドル(約11億円)を支払っていると語った。
 
タウンゼンド氏は電話会議でワグネルについて、傭兵(ようへい)派遣会社だと指摘。マリの安定に寄与しない「あしき存在」であり、「利益目的のためにマリにいる」と述べた。
 
その上で「マリ軍政はワグネルとの取引で毎月1000万ドルを支払っていると考える根拠がある」とし、「支払いには金や宝石の原石など天然資源が充てられているはずだ」と話した。
 
またタウンゼンド氏は「マリはワグネルと取引しているにもかかわらず、公には否定し続けている」と語った。 【2月4日 AFP】
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【プーチン政権にとって“汚い役割”をこなす傭兵集団「ワグネル」】
ロシアの民間軍事企業「ワグネル」はこれまでも、ロシア・プーチン政権が介入する地域、シリアやリビアなどでもその活動が報じられていますが、正規軍とは異なり“汚れ仕事”を厭わないこと、死者が出ても“ロシア軍の犠牲者”にはならないことで、プーチン政権にとっては便利な存在のようです。ロシアは「ワグネル」とのつながりも、その存在自体も否定していますが。

そして、世界が注目するウクライナ東部にも派遣されているということで、正規軍とは異なる非道な戦いぶりで民間人犠牲者の増加などが懸念されています。

****プーチンが動かす傭兵集団「ワグネル」の汚い役割****
<ウクライナの戦場に投入されたエリート傭兵集団の正体と使命は>
イギリス国防省は4月4日に公表した新たな分析の中で、ロシアのウラジーミル・プーチンとつながりのあるエリート傭兵組織「ワグネル・グループ」が、ウクライナ東部に派遣されていると明らかにした。(中略)

エリート傭兵部隊であるワグネル――「リーガ」の名前でも知られる――は2014年に結成され、同年のクリミア侵攻やドンバス地方での戦闘に参加。2014年から2015年にかけて、親ロシア派の分離主義勢力がドンバス内でドネツク人民共和国・ルガンスク人民共和国の創設を一方的に宣言するのを手助けしたことで、注目を集めるようになった。(中略)

創設者にはナチスのタトゥー
ニューヨーク・タイムズ紙によれば、ワグネルという組織名は、ロシア軍参謀本部情報局(GRU)の元メンバーで同組織を設立したドミトリー・ウトキンのコールサイン(呼出符号)に由来する。

ウトキンは、ナチスの指導者アドルフ・ヒトラーが好んだ作曲家「ワーグナー(ワグネル)」を自らのコールサインに選び、ナチス関連のタトゥーを複数入れているらしい。

ワグネル・グループは単一の企業体ではなく、複数の企業や組織の大規模なネットワークによって構成されている。
アメリカの複数の当局によれば、ワグネル・グループには、プーチンに近い実業家のエフゲニー・プリゴジンが資金提供を行っている。

しかしプリゴジン本人は、ワグネルとの一切のつながりを否定。ロシア政府もワグネルへの関与を否定し、ロシアでは民間軍事会社の設立は違法だとして、その存在自体を否定している。

西側の複数の国の政府や活動家らは、ワグネル・グループがアフリカでの人権侵害や、リビアおよびシリアでの戦闘に関与したと非難してきた。マリやモザンビーク、スーダンに派遣され、代理戦争を戦ってロシアの影響力を行使し、油田などの戦略的利益を奪取したこともあるという。(中略)

英情報機関・政府通信本部(GCHQ)のジェレミー・フレミング長官は、ワグネルは、ロシア軍側の死者数(公式発表数)を少なく抑えるための「捨て駒」として使われている可能性が高いと指摘した。ワグネルをウクライナに派遣することで、人権侵害行為から距離を置くこともできる。

国際行動規範協会のジェイミー・ウィリアムソン事務局長は、ワグネルはロシア軍の元兵士たちを雇い、「軍事請負組織」の機能を果たしていると指摘した。

「冷戦初期のような傭兵集団」
「ワグネルとロシア政府との間には、支配権と資金の出処という点において、明らかなつながりがある」とウィリアムソンは本誌に語った。「ロシア政府はその存在を認めていないが、ワグネルは軍事請負集団と見なされている。冷戦初期にみられたような傭兵集団に等しい存在であり、アフリカの南部、東部や西部の複数の企業がワグネルに関与しているとみられる」(後略)【4月6日 Newsweek】
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【マリでも多数の市民死亡 「ワグネル」関与か ロシアは「でっち上げ」と否定】
話を西アフリカ・マリに戻すと、民間軍事企業「ワグネル」の活動で懸念される民間人犠牲が発生しているとフランスは非難しています。

****アフリカ・マリで多数の市民死亡、ロシア軍事会社「ワグネル」が関与か…仏が重大懸念表明****
フランス外務省は4日、西アフリカのマリで、マリ軍とロシアの民間軍事会社「ワグネル」の合同作戦により多数の市民が死亡した情報があるとし、重大な懸念を表明した。

ワグネルが活動を本格化させた1月以降、人権侵害行為が横行しているとして、マリで平和維持活動を続ける国連主導の調査を求めた。

マリ政府は1日、先月下旬に中部で行ったイスラム過激派に対する掃討作戦で戦闘員203人を殺害したと発表した。だが、仏メディアなどは直後から、死者には相当数の民間人が含まれている可能性を報道している。過激派が主要民族と結びついて土着化し、戦闘員と民間人の区別が困難とも指摘されてきた。

クーデターで親仏政権が倒れたマリでは、新たな軍事政権が親ロシアの立場を取り、プーチン政権に近いワグネルが治安対策名目で活動しているとされる。

仏紙ル・モンドによると、マリ軍関係者に対して拷問など違法な尋問の方法を教えているとの疑惑もある。ワグネルは親露政権を支援するために派遣された中央アフリカでも人権侵害を非難され、露軍が侵攻中のウクライナ東部でも活動していると英国防省が確認している。【3月6日 読売】
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ロシアは、民間人虐殺やロシア民間軍事企業「ワグネル」の関与を「偽情報」、」西側諸国の「でっち上げ」と否定して、同作戦の「成功」を祝しています。

****ロシア、虐殺疑惑のマリ軍事作戦に祝意****
アフリカ西部マリ中部の町ムラで3月末に行われた軍事作戦について、ロシアは8日、テロとの戦いにおける「重要な勝利」と祝意を示した。人権団体は、同作戦で民間人が虐殺されたと主張している。
 
ロシア外務省は「マリ軍が軍事作戦を成功させ、ムラの町でイスラム武装勢力200人以上を殺害した」と発表し、「テロの脅威との戦いで重要な勝利を収めたマリ国民に祝意を伝えたい」と続けた。
 
ロシア外務省は、同作戦が民間人虐殺につながったとする人権団体の主張を「偽情報」と一蹴。
同作戦にロシア人傭兵(ようへい)が関与したとの疑惑も否定し、「ロシアの戦争犯罪への関与を強調するための」西側諸国の「でっち上げ」だと糾弾した。
 
マリ軍は同作戦でイスラム武装勢力203人を「無力化」したと発表。一方、メディアの取材や国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチなどの聞き取り調査に応じた目撃者らの証言によると、マリ兵とロシア人とみられる外国人戦闘員が民間人の虐殺やレイプ、略奪を行ったとされる。 【4月9日 AFP】
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【「集団墓地」偽装工作も】
ロシア民間軍事企業「ワグネル」の戦闘員が民間人の虐殺やレイプ、略奪を行ったかどうか・・・真偽はわかりませんが、一々批判するフランスを「ワグネル」が苛立たしく思っているのは間違いないでしょう。

そんな感情があってのことでしょうか、返還された仏軍基地に「集団墓地」を偽装して、仏軍の責任にする偽情報を流す「ワグネル」とマリ軍の「企て」(フランス側はそのように見ているようです)も報じられています。

****ロシア人傭兵、マリで仏の残虐行為でっち上げか 仏軍****
仏軍は、西アフリカ・マリの仏軍が撤退した基地近くで集団墓地が見つかったとの主張について、ロシア民間軍事企業ワグネルによるでっち上げの可能性が高いとの見方を示し、遺体を埋めるロシア人傭兵の動画もあると主張した。

動画はドローンで撮影されたもので、AFPは21日に確認した。マリ中部ゴシの基地付近で、軍服姿の白人が遺体に土をかけていた。
先に、「元兵士」で「マリの愛国者」を名乗るディア・ディアラというユーザーが埋められた遺体の映像をモザイク付きでツイッターに投稿。「仏軍がゴシの基地を去る時に残したものだ。黙ってはいられない!」として、仏軍が残虐行為を犯したと非難していた。

これに対し仏軍参謀本部は、動画を情報戦の一環と呼び、「ワグネルが開設した偽アカウントである可能性が非常に高い」と指摘した。

さらに「(イスラム過激派掃討を目的とする)バルカン作戦に参加する部隊の信用を落とすための策略であり、組織的なものとみられる。この数か月に何度も仏部隊に仕掛けられてきた情報戦の典型だ」と主張した。

米仏は、マリにワグネルの傭兵が派遣されていると指摘しているが、マリ軍事政権は同国で活動するロシア人について、傭兵ではなく「軍事教官」だと主張している。

仏軍は19日、マリ駐留部隊の撤退の一環として、仏兵300人が駐留していたゴシ基地をマリ軍に正式に引き渡した。 仏軍参謀本部は、同基地返還後に情報戦が展開される恐れがあると警告していた。【4月22日 AFP】
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“マリ軍事政権は同国で活動するロシア人について、傭兵ではなく「軍事教官」だと主張している”・・・拷問方法や残虐行為でっち上げによる情報戦などの教官でしょうか。

もちろん、仏軍に非人道的行為がないとは思いまいませんが、多数を虐殺して集団墓地に埋める・・・というのはさすがに・・・・。

「そんなことするのはロシアの傭兵だろう」と思われてしまうのは“日頃の行い”のせい、不徳の致すところでしょう。

そしてマリで起きたようなことは、ウクライナでも。

【ウクライナではチェチェンの独裁者カディロフ首長配下の「カディロフツィ」も】
なお、ウクライナについて言えば、民間軍事企業「ワグネル」同様にその残虐性が懸念されるのがチェチェンの独裁者カディロフ首長配下の「カディロフツィ」の参戦です。

****プーチン氏に尽くす残虐部隊「カディロフツィ」 ウクライナでも活動****
チェチェン人戦闘員が四方八方に銃を乱射し、ウクライナ兵の捕虜はうつろな目でひざまずき、あるいは遺体の間を引きずられていく──ロシア南部チェチェン共和国の独裁者ラムザン・カディロフ首長(45)は、自身の私兵がウクライナでロシアのために戦う様子をソーシャルメディアで自慢している。

カディロフ氏の部隊「カディロフツィ」は、チェチェンの民兵組織だ。ウクライナの人々は、侵攻してきたロシア軍の中で、カディロフツィが最も残忍だと口をそろえる。
 
カディロフ氏は、チェチェン紛争でロシア側に寝返った元独立派指導者の息子で、ウラジーミル・プーチン大統領の忠実な配下として知られる。イスラム教徒が多数派のチェチェン共和国で、拷問や処刑など深刻な人権侵害を行っていると非難されてきた。
 
カディロフ氏はプーチン氏のウクライナ侵攻を歓迎し、直ちに部隊を送ると表明。ウクライナで戦うカディロフツィの動画を誇らしげにメッセージアプリのテレグラムに投稿し、ロシアの主張をなぞって「ウクライナのナチス(・ドイツ)」と戦っていると主張している。
 
先月には、ロシア軍が包囲するウクライナ南部の港湾都市マリウポリに入ったとして、約30人の戦闘員に囲まれた自身の写真を投稿した。また、ロシア兵を拷問したウクライナ兵を発見し、直々に「罰した」と主張した。
 
カディロフツィは、チェチェンのみならず2014年のウクライナ東部紛争やシリア内戦などでも悪名が高い。
ロシアの政治的暴力に詳しいカナダ・ラバル大学のオーレリー・カンパーナ氏は、「カディロフ部隊の参戦発表とそれをめぐるプロパガンダは、敵を不安定化させる試みの一環」だと指摘する。

■恐怖の種をまく
カンパーナ氏によれば「残酷さで知られるチェチェン部隊の参加は、ウクライナ人の恐怖心をあおる」。
 
侵攻直後、プーチン氏がウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー政権を迅速に打倒するため、チェチェン人暗殺部隊を送り込んだといううわさが広まった。カディロフ氏も、ゼレンスキー氏は間もなく「前大統領」になると宣言した。
 
「ウクライナで何人のチェチェン人が戦っていて、どこに配備されているのか、正確なことは誰にも分からない」と、ロシアの政治専門家アレクセイ・マラシェンコ氏はAFPに語る。
 
カディロフ氏は先月中旬、ウクライナにいる配下は約1000人だと述べたが、真偽を確認するすべはない。カディロフ氏を支持しないチェチェン人はウクライナ政府側に付いてロシア軍と戦っている。
 
カディロフツィの残虐性については疑う余地もないが、戦果はまだ証明されていない。カディロフ氏は、配下の部隊がマリウポリ市庁舎を占拠したと勝ち誇ったように発表したが、その建物は市庁舎ではなかったことが後に公開された動画で明らかになった。
 
政治学者のコンスタンティン・カラチェフ氏は、「ウクライナでの作戦に加わることでカディロフ氏はプーチン氏への全面的な忠誠心を示し、影響力を維持しようとしている」と見ている。「カディロフ氏にとって、今回の作戦は個人的な宣伝になる」

■ロシア兵への懲罰
カディロフ氏は、プーチン氏に批判的だったロシアの野党指導者ボリス・ネムツォフ元第1副首相やジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤ氏をはじめ、数々の要人暗殺の裏で糸を引いていたとされる。
 
2015年のネムツォフ氏暗殺事件の計画を練ったのは、マリウポリでカディロフツィを指揮し、3月下旬にウクライナ軍との戦闘中に負傷したルスラン・ゲレメエフ司令官だったとみられている。
 
ウクライナでのカディロフツィについて、複数の有識者は、2014年の東部紛争で親ロシア派に対して行ったように、ロシア兵を規律に従わせる役割も担っている可能性があると指摘する。カンパーナ氏は「カディロツィの経験はウクライナ各地の抵抗を圧倒するだけでなく、ロシア軍と親ロシア派に対する懲罰として機能し得る」と記している。
 
実際、ロシア軍内にもカディロフツィの味方は少ない。「だが、プーチン氏は全面的に信頼している」「カディロフ氏個人にとって、ウクライナでの軍事作戦への参加は成功と言える」とマラシェンコ氏は述べた。【4月19日 時事】
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“ロシア軍と親ロシア派に対する懲罰として機能”・・・・士気の低さが取り沙汰されるロシア軍ですが、「戦う気のない兵士はカディロフツィが処刑する」という話でしょうか。

15世紀、コンスタンチノープルを攻略したメフメト2世率いるオスマントルコ軍は、総攻撃を命じた兵士の後方に抜刀したスルタン直属の精鋭親衛隊イェニチェリが控え、退却するような自軍兵士を切り捨てたとか・・・・いったいいつの時代の話をしているのか。

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韓国・中国朝鮮族・北朝鮮 同じ朝鮮民族ながらも微妙な関係

2022-04-22 22:40:39 | 東アジア
(漢字の看板も目立つソウル南部の加里峰洞【4月19日 Korea World Times】)

【韓国3K労働を支える在韓中国朝鮮族への「差別」】
昨日ブログ“韓国 対日重視姿勢の尹次期政権 社会では「ノージャパンはもう終わった」というような状況も”では、前置き的に日韓関係の最近の動きなど取り上げましたが、本題というか、注目した記事は下記の中国朝鮮族に対する韓国における差別問題に関する話。

****韓国で高まる反中感情 70万人中国朝鮮族 差別は改善されるのか?****
北京冬季五輪で火がついた反中感情
韓国人の反中感情がかつてなく高まっている。
韓国内には「朝鮮族」と呼ばれる朝鮮系中国人が多く住んでいるが、彼らは韓国民の厳しい視線にさらされている。

韓国人の反中感情は、今年2月、北京冬季オリンピック開会式で韓服を着た朝鮮族が登場したことで火がついた。
韓国メディアは「中国が韓国固有の文化を盗もうとしている」と反発した。またショートトラック競技で韓国人選手2人が失格となり、中国選手が金メダルを獲ったことも火に油を注いだ。

それ以外にも中国で「韓国のキムチのルーツは中国にある」という主張が現れたり、最近では、「韓国から輸入した衣料品から新型コロナウイルス感染が広がった」などという報道がなされたりして、韓国民を憤激させている。

このような状況を複雑な思いで見ているのが、韓国にいる多くの朝鮮族だ。

中国に170万人住む朝鮮族の歴史
朝鮮族とは、中国の東北3省(旧満州地方)に住む朝鮮系の人々である。韓国では韓国系中国人、中国同胞とも呼ぶ。

朝鮮族の起源は19世紀後半にさかのぼる。李氏朝鮮末、朝鮮半島の政治は乱れ、生活苦から多くの人々が中国(清)の領土に移住した。朝鮮族はそれらの人々の末裔(まつえい)である。

20世紀に入り日本が大陸に勢力を伸ばして満州国を建国すると、さらに多くの人々が朝鮮半島から満州に渡った。
彼らは大部分、日本の敗戦と満州国の滅亡の後、朝鮮半島に帰ったが、様々な事情で中国に残留した者も多かった。

その後、彼らは中国内で勃発した国共内戦や朝鮮戦争で、中国人民軍に志願するなどして中国に協力した。
その貢献が認められ、1952年には中国内の少数民族として自治権が与えられるようになった。朝鮮族の多かった吉林省には、延辺朝鮮族自治州が設置され、朝鮮語による教育も認められた。

1953年に112万人だった朝鮮族の人口は、2000年には192万人にまで増えた。その後、韓国に渡る人が増えるなどして減少傾向にあるが、2020年末の統計でも約170万人おり、中国の55の少数民族の中で13番目に多い。

韓国に大挙やってきた朝鮮族と差別
朝鮮族の人々が韓国に来るようになったのは、それほど昔ではない。韓国が中国との国交を開いた1992年以降のことである。

当初は親族訪問で少数の人々が来るにすぎなかったが、やがて韓国の発展ぶりが伝わると、漢方薬などの行商目的や出稼ぎ目的で入国する者が急増した。

韓国の賃金は中国の数倍も高く、朝鮮語ができる朝鮮族には言葉の壁もなかった。いわゆる「コリアンドリーム」である。こうして1995年には不法滞在の朝鮮族が2万人に達した。

一方、韓国人との間では摩擦も起きた。
韓国人は貧しい朝鮮族を見下し、不法滞在という弱みにつけ込んで劣悪な条件で雇用したからである。

朝鮮族の金在国は1996年に『韓国はない』(邦訳『韓国人と中国人』1998年、三五館)という本で、韓国人の朝鮮族差別を告発した。

韓国人は朝鮮族を「不法滞在し、漢方薬を無許可で販売し、麻薬を売ったり、売春をしたりする犯罪者集団とみなしている」というのである。

就労ビザ発給で一時70万人にまで増えた在韓朝鮮族
1998年、韓国をアジア通貨危機(韓国ではIMF危機とも呼ばれる)が襲う。韓国は国難を乗り越えるため、外資を導入し、外国人にも労働市場を徐々に開いていった。

2003年には、「外国人雇用許可制」を導入し、名乗り出た不法滞在者に就労ビザを与えた。これによって約18万人の不法滞在外国人が正式なビザを得たという。

さらに2007年には「訪問就業制」が施行され、朝鮮族を含む在外同胞は専門職以外の労働にも従事できるようになった。

これらの制度改革によって韓国内の朝鮮族は激増。2006年に約17万人だった朝鮮族は、2010年に40万人を越え、2020年には70万人に達した。現在は、新型コロナの影響でやや減ったとはいえ、2021年末の統計では61万4000人となっている。

ソウル南部に出現した異次元空間
韓国に住む朝鮮族は、必ずしも韓国社会に溶け込んでいるわけではない。韓国人の厳しい差別にさらされているからである。

ソウルには朝鮮族の集住地域がいくつかある。ソウル南部の加里峰洞(カリボンドン)と大林洞(テリムドン)が代表的だ。近くに工業団地があり、出稼ぎに来た多数の朝鮮族がそこで働いていたため、自然発生的に生まれた「チャイナタウン」だ。

ここには中国語(大陸式の簡体字)の看板を掲げた商店がずらりと並び、ソウルの中の異次元空間になっている。中華料理屋のメニューは羊の肉などを多く用いる中国東北地方の料理も多い。客もほとんどが朝鮮族で、韓国人はここを「治安が悪い地域」とみなして敬遠している。

今、朝鮮族の多くは、韓国の若者たちが忌避する3K労働に従事している。女性は家政婦などをする者が多い。

韓国の3K労働を支える朝鮮族。差別は解消されるか?
今年の4月4日、「韓国経済新聞」は、人手不足に悩むソウル最大の青果市場、可楽市場の様子を伝えた。韓国の若者は仕事がきついためすぐ辞めてしまう。これまで働いていた朝鮮族もコロナの影響で離職が相次いでいるそうだ。

ある卸業者は「最近は朝鮮族も韓国人並みの賃金を払わないと来てくれない」とぼやく。これはとりもなおさず、今まで朝鮮族を韓国人より低賃金で雇用していたことを意味する。

今や韓国の3K労働は朝鮮族によって支えられているといっても過言ではない。
韓国内での反中感情が高まる中、朝鮮族に対する視線はさらに厳しくなっている。

しかし、朝鮮族は韓国の産業構造の中にがっちりと組み込まれている。これまでのような「朝鮮族差別」を続ければ、いずれ韓国経済の首を絞めることにつながるのではないか。【4月19日 犬鍋 浩氏 Korea World Times】
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【若い世代に顕著な「中国嫌い」】
最近、韓国では、特に若い年齢層で日本より中国を嫌う者が多いというのはよく聞く話です。

****韓国人が「最も嫌いな国」は日本ではなく、中国! 最新世論調査結果****
今朝の韓国紙「国民日報」に興味深い世論調査の結果が出ていた。
「国民日報」はソウル五輪の年(1988年)に創刊された韓国では比較的珍しい、色のついていない中立紙で、信頼性がある。
 
同紙が世論調査会社「グローバルリサーチ」に委託して行った日米中朝4か国に関する韓国人の意識調査によると、韓国人が一番嫌いな国が中国。次いで日本、北朝鮮、米国の順になっていた。
 
「グローバルリサーチ」の調査は6月9日から12日にかけて全国成人男女約1千人を対象にオンラインで実施されていたが、韓国国民の半数以上の51.7%が最も嫌いな国として中国の名を挙げていた。特に「MZ世代」(1990年代半ばから2000年代初頭に生まれた世代)と称されている20代から30代では「嫌中」は60.3%に達していた。
 
韓国の若い世代の「嫌中」感情は毎年中国から舞う黄砂に悩まされていることに加えて新型コロナウイルスが武漢から発生したことへの反感や高高度防衛ミサイルシステム(THAAD)の配備で経済制裁を掛けられたことへの怨念、さらに高句麗や白頭山の帰属問題や韓国人の伝統民族衣装・チマチョゴリからキムチなどの食文化の起源を巡る対立などによる国民感情の悪化が背景にある。 

昨年6月から8月にかけ rて米国の世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」が韓国を含むカナダ、フランス、ドイツ、豪州など14か国で実施した中国に対する意識調査でも韓国人の75%が「中国は嫌い」と答えていた。特に30代から40代では「中国嫌い」は82%に上っていた。
 
中国に続く「嫌いな国」の2位は日本で31.2%だが、「MZ世代」では22.8%と、8.4ポイントも低かった。
 
日韓国交正常化50周年を迎えた2015年の元日に韓国で日本に関する意識調査が行われていたが、韓国人の69.5%が「日本には好感を持てない」と回答していた。6年経っても一向に国民感情が好転していないことがわかる。ちなみにこの時,日本でも内閣府による「外交に関する世論調査」(2015年12月20日)の結果が発表されていたが、「韓国に親しみを感じない」が前年よりも8.4ポイント増え、過去最高の66.4%に達していた。
 
韓国人の「嫌いな国」の3位は北朝鮮(12.6%、10.7%)で、米国は全体では2.2%、「MZ世代」では1.4%に留まった。韓国は昔も、今も親米国家であることが窺い知れる。
 
北朝鮮関連では意識調査と南北統一に関する調査も併せて行われていたが、これもまた興味深い結果が出ていた。
「北朝鮮をどうみているのか」との設問には「気にしていない国」31.0%、「隣国」19.7%、「敵性国」17.3%、「同民族同胞」17.1%、「関心がない」14.9%と回答していた。「MZ世代」では北朝鮮を同じ「韓国人」と考えているのは僅か10%に過ぎなかった。
 
また、「南北統一をどう思うか」との設問には男性は「賛成」が54.1%、「反対」が46,0%と「賛成」が「反対」を上回っていたが、逆に女性では「賛成」が36.8%、「反対」が63.2%と、「反対」が圧倒的に多かった。【2021年6月25日 辺真一氏 YAHOO!ニュース】
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韓国人の「中国が嫌い」と「日本が嫌い」を同じレベルで考えていいのか(数字にしてしまうと同じになりますが)、「嫌い」の根深さが違うと見るべきか・・・といった話はありますが。

また、中国東北部に朝鮮族が多く暮らすのは周知のところですが、中国朝鮮族が不法滞在してまで韓国で働く「コリアンドリーム」の話は初耳。

しかも、そうした中国朝鮮族が韓国の3K労働を支えている一方、韓国社会からは差別的な視線・扱いを受けているというのは興味深い話です。

日本でもアジア系外国人労働者に関する似たような労働環境・差別の話はありますが、同じ朝鮮族の間で・・・というところに「差別」の本質により迫るものを観ることができるでしょう。

【北朝鮮人女性との結婚に色めき立つ中国朝鮮族男性】
一方、中国朝鮮族は韓国だけでなく北朝鮮ともつながりがある訳で、その中国朝鮮族男性と北朝鮮女性の結婚の話。

****中国が「北朝鮮人女性と中国人男性の結婚」に驚愕した深い事情****
「北朝鮮人が外国人と結婚できる」 1分半の動画で中国が激震
昨年、東京オリンピックが開催されている頃、中国朝鮮族でシェアされまくっていた動画があった。
 
それは、北朝鮮人女性と中国朝鮮族男性が結婚したことを報告する動画だった。動画は、ショート動画アプリ「ティックトック」の中国国内版である「抖音(Douyin)」に投稿されたものだ。現在は削除されたのか、残念ながら日本からは確認できない。
 
その1分39秒の動画では、朝鮮族の男性が中朝それぞれのパスポート、平壌で取得した結婚証明書、それを中国語に訳した書類などを写し、最後に新婦である北朝鮮人女性の顔も映して終わるというものだ。
 
朝鮮族の間で、東京オリンピックや中国での厳しい新型コロナウイルス対策がどうでもいいと思えるくらい大きな話題になった理由は、「北朝鮮人が外国人と結婚できる」という事実に衝撃を受けたからだ。

「コロナ前まで年に数回、訪朝したり、こっち(中国)でも(北)朝鮮人と会ったり、交渉したりする機会が多いのですが、朝鮮の人たちは、外国人との結婚が禁止されていると思っていました。私以外の多くの朝鮮族もそう思っていたので『えー!』となって盛り上がったわけです」(瀋陽・朝鮮族貿易商)

北朝鮮では現在、国際結婚は禁止されていない
実は、日本人の北朝鮮研究者も同じ認識を持っていたようで、複数の研究者やジャーナリストへ聞いても、一般の北朝鮮人は国際結婚が禁じられていると思っていた人が多い。

北朝鮮情勢に詳しい國學院大學栃木短期大學兼任講師の宮塚寿美子氏によれば、「朝鮮民主主義人民共和国行政区域法、第4章の『家族関係第36条結婚の効力について』には、『夫婦の国籍が異なる場合は、夫婦が一緒に住んでいる国の法を、夫婦の居住地が異なる場合は夫婦と最も密接な関係がある国の法が適用されるとのこと』となっています。
 
現在、国際結婚は禁止されてはいません。ただ、北朝鮮は、現実的に外国との往来が自由ではないため、外国人との結婚が禁止が社会通念になっているのでしょう。以前は、法律で禁じていたかもしれませんが、現在は変わったようです。ベトナム人と結婚して、ハノイに住んでいる北朝鮮人女性がいたりもします」(宮塚氏)

現在、平壌にいると思われる料理人の藤本健二氏(故・金正日〈キム・ジョンイル〉総書記の元専属料理人)のように最高指導者に認められたような特殊な場合を除き、外国人との結婚は筆者も聞いたことがなかった。
 
1970年代から80年代に日本から北朝鮮へ拉致された拉致被害者に注目すると、日本人同士か韓国人を含む外国人と結婚しており、北朝鮮人と結婚したというケースは確認できない。
 
北朝鮮が女性を外国人に対してどう扱っていたかは、曽我ひとみさんの夫であった故チャールズ・R・ジェンキンス氏の著書『告白』を読むと、その一端を知ることができる。(中略)

中国富裕層は北朝鮮人女性と結婚したがる?結婚紹介ビジネスのチャンスかもしれない理由
中国人と北朝鮮人の結婚が朝鮮族で大きな話題となったのにはもう一つ理由がある。それは「結婚紹介ビジネスのチャンス到来?」と考えているからだ。
 
北朝鮮人が中国人との合法的な結婚ができるのであれば、北朝鮮人女性との結婚を望む中国人富裕層のニーズは非常に高いと朝鮮族経営者は語る。
 
実は、中国での結婚紹介サービス業は1994年に禁止になっている。ところが、その後も日本企業など外資企業はグレーな状態で盛んに結婚紹介サービスを行っていた。(中略)
 
それでも新規商売欲が旺盛な中国人なので、中国国外にある日本企業や韓国企業と業務提携して北朝鮮人との結婚紹介サービスを展開するかもしれない。
 
日本企業による結婚紹介サービスが盛んだった十数年前と異なるのは、顧客が日本人ではなく中国人へと変わっていることである。日本企業が中国人を顧客に結婚紹介業を行う時代が到来するのであろうか。【4月21日 筑前サンミゲル氏 DIAMONDonline】 
********************

あくまでも中国朝鮮族男性が北朝鮮女性を求める・・・という構図であり、中国朝鮮族女性と北朝鮮男性の関係ではないところに、両者の経済力の差が現れている・・・のでしょう。

もちろん、日本でも“嫁不足”の地方では、東南アジアなどから嫁を迎える事例は多々あります。要は結婚後の夫婦としての関係がまっとうに構築されるのであれば、迎えられた外国人女性が人間として尊重されるのであれば、何ら問題のない話です。日本人同士の男女でも経済力の差を背景にした関係というのは極めてありふれた話ですから。

もちろん、対等な人間関係を考えず、「カネで嫁を買う」みたいな話になると問題が生じます。
中国では、上海コロナの前は「鎖につながれた女性」の話題がしきりに取り上げられていましたので、そのあたりも危惧される・・・と感じた次第です。

北朝鮮と韓国の関係では、韓国で暮らす脱北者が韓国社会になじめない、差別を受けるという話は多々あります。

同じ朝鮮民族の間でも、韓国、中国朝鮮族、北朝鮮の経済格差・国情などを反映した「差別」や歪んだ関係も生じやすいという非常に興味深い事例が、差別の何たるかを考えるうえで参考になるでしょう。

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韓国  対日重視姿勢の尹次期政権  社会では「ノージャパンはもう終わった」というような状況も

2022-04-21 22:34:17 | 東アジア
(【4月21日 FNNプライムオンライン】韓国で空前のブームの「ポケモンパン」 韓国で手に入らず個人輸入する人も)

【日韓関係を重視する姿勢の尹次期政権】
なかなか改善のきっかけがつかめない日韓関係ですが、保守派の次期大統領尹錫悦氏は4月24日から日本に派遣「政策協議代表団」を派遣するなど、日韓関係改善、一番のネックになっている従軍慰安婦問題の進展に前向きな姿勢を見せています。

****15年慰安婦合意は「公式合意」 韓国次期外相候補が表明****
韓国の尹錫悦次期政権の外相候補に指名されている朴振氏は20日、従軍慰安婦問題に関する2015年の日韓合意について、記者団に「公式合意だ」と述べた。

尹次期大統領側が日韓合意への立場を表明したのは初めてとみられる。朴氏は被害者の名誉回復が最も重要だとして「韓日が共に努力する必要がある」と強調した。
 
尹氏は、歴史問題を巡り悪化した日韓関係の改善の重要性を一貫して主張してきている。朴氏の発言は、懸案の慰安婦問題について日韓合意を尊重した上で解決を目指す次期政権の姿勢を示した形だ。ただ日本側が求めてきた具体的な解決策について言及はなかった。【4月20日 共同】
******************

「公式合意」であることは文在寅大統領も認めていますが、敢えてこの時期に言及したのは“日韓合意を尊重した上で解決を目指す次期政権の姿勢を示した”ということでしょう。
問題は合意に実効性を持たせるかどうかです。

****韓国次期大統領、「慰安婦合意を復活させようとしている」の批判に「合意は文政権も認めた」と反論****
2022年4月19日、韓国・聯合ニュースによると、韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領が日本に派遣する政策協議代表団に15年の日韓慰安婦合意当時の実務責任者が含まれていることに対し、与党「共に民主党」から批判の声が上がった。これに尹次期大統領側は「慰安婦合意は現政権も、両国政府の公式合意だと認めた」と反論したという。

記事によると、尹次期大統領の関係者は同日、代表団のメンバーについて「未来志向的な日韓関係を確立していくための最高の専門家で構成されている」とした上で、上記のように述べた。

また、「今回の代表団の訪日をきっかけに、硬直した日韓関係の解決法を見い出してほしい」と期待を示したという。

現在の文在寅(ムン・ジェイン)政権は15年の日韓慰安婦合意について「被害者の意見が反映されていないため、これにより慰安婦問題が解決したとは言えない」との立場を示し、日本が10億円を拠出した「和解・癒やし財団」も解散させた。ただし、合意が「両国政府の公式合意」であることを考慮し、これを破棄したり再交渉を求めたりはしないとの立場を貫いてきた。

合意が事実上履行されていない状況で政策協議代表団に当時の実務責任者が含まれたことについて、「共に民主党」内からは「尹政権が合意に再び実効性を持たせようとしているのではないか」としてメンバーの変更を求める声が上がっていたという。

この記事を見た韓国のネットユーザーからは「親日派の本性を現した」「尹政権の外交は不安だ。特に日本とはどんな約束も合意もしないでほしい」「外交は文政権の基調を維持するべき」「だから日本は尹氏が大統領になることをあんなにも願っていたのか。ため息しか出ない」「日本はいまだに歴史を否定している。日韓関係は歴史問題を解決し、それを基に未来志向的な方法を見つけなければならない」など、尹次期大統領への批判や不安の声が数多く寄せられている。【4月21日 レコードチャイナ】
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ネット世論の反応は相変わらずですが、大統領選挙は僅差の勝負で約半数は尹錫悦氏には投票しなかった訳ですから、尹錫悦氏の方針に批判が出るのは当然、とりわけ日韓関係に関わる話となれば・・・

****韓国・尹次期大統領の「政策協議代表団」が岸田総理に就任式出席を要請****
韓国の尹錫悦次期大統領が4月24日から日本に派遣する「政策協議代表団」が、岸田総理と面会する方向で最終調整していることがJNNの取材で分かりました。

複数の政府関係者への取材で明らかになったもので、岸田総理には親書を渡す可能性が高く、5月10日に行われる尹次期大統領の就任式への出席を要請するということです。

ただ徴用工問題など日韓の間に懸案がある中で、自民党内では「前のめり感を出すべきじゃない」などと慎重論も出ていて、岸田総理がどう対応するか注目されます。【4月20日 TBS NEWS】
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これまでの経緯から慎重論が出るのはわかりますが、それではいつまでたっても何も変わらないので、この際、尹錫悦次期大統領からのアプローチに乗って、話し合える状況を先ずつくるのが賢明ではないかと思います。

岸田首相が靖国神社に真榊を奉納したことについても批判は“抑制的”とのことで、今後の関係改善に向けたサインでしょう。(韓国に辟易している多くの日本人からはブーイングでしょうが)こうしたアプローチ・サインに日本側も応えて事態改善を目指してほしいものです。うっぷん晴らしの批判ばかりしていても仕方ないので。

****韓国外相候補「日本は反省見せて」、批判は抑制 岸田首相の真榊奉納****
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)次期政権の外相候補に指名されている朴振(パク・チン)氏は21日、岸田首相が靖国神社に真榊を奉納したことについて「日本が歴史を直視し、謙虚な反省の姿勢を見せてくれることが重要だ」と記者団に述べた。

尹次期大統領は文在寅(ムン・ジェイン)政権下で悪化した日韓関係の早期改善を目指している。朴氏の発言は、直接的な批判を避け、韓国政府の従来の見解を示す程度にとどまっており、尹次期政権の対日重視姿勢に影響はなさそうだ。

韓国外務省は21日、「日本の責任ある指導者らによる供物奉納や参拝がまた繰り返されたことに深い失望と遺憾の意を表す」とする報道官論評を発表した。【4月21日 産経】
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【不買運動「NO JAPAN」も終了?】
今日、日本製品不買運動に関する記事が2件、両方とも不買運動は終わった・・・という趣旨のものです。

****韓国で日本企業の業績回復、ビールの輸入額は55%増加=ネット「ノージャパンはもう終わった」****
2022年4月19日、韓国・ヘラルド経済は「2019年の日韓関係悪化から始まった日本製品不買運動が初期に比べ勢いを失っており、ターゲットとなった日本企業の業績も回復している」と伝えた。

韓国関税庁によると、日本産ビールの輸入額は今年1〜3月期に前年同期比55%増の266万6000ドル(約3億4000万円)を記録した。特に先月は、ソーシャルディスタンスの緩和などで酒類の消費が増え、日本産ビール輸入額は150万3000ドルに達し、不買運動が始まった19年7月以降で最高値を記録した。

また最近は若者の間でウイスキーが人気を集めており、日本産ウイスキーの輸入額も増えているという。昨年は315万7000ドルで、18年に比べ約3倍の規模となっている。

日本製品不買運動の代表的なターゲットとなったユニクロだが、韓国内でユニクロを運営するエフアールエルコリアは昨年(20年9月〜21年8月)の営業利益が529億ウォンで(約5億4000万円)、営業損失883億ウォンから大幅に改善した。売上高は5824億ウォンで前年比7.5%減となっている。

ユニクロだけでなくデサント、アシックスなども黒字転換に成功した。特にデサントはゴルフラインの拡張などに後押しされ、売上高が前年比9.0%増加の5437億ウォンを記録している。無印良品は昨年の売上高が1147億ウォンと、前年比82.9%の急増を見せ、営業損失も前年の117億ウォンから45億ウォンに大幅改善した。(後略)【4月21日 レコードチャイナ】
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とりわけ“凄まじい”のが、“おまけ”として入っているシール目当ての「ポケモンパン」の異常なブーム。

***反日はどこへ?韓国で「ポケモンパン」が空前のブーム…日本文化を推す“キダルト族”が不買運動を終わらせた****
韓国で「ポケモンパン」が争奪戦となっている。買えなかった客が店で暴れたり、配送トラックを追いかけ回すなど、その人気ぶりは尋常ではない。なぜいま、ブームが起きているのか。(中略)

BTSもコンビニをハシゴ…韓国で「ポケモンパン」ブーム
FNNソウル支局 仲村健太郎記者:
こちらが韓国で社会現象となっているポケモンパンです。韓国の製パン会社が製造していて、袋には日本アニメ・ポケモンのキャラクターが描かれています。値段は日本円で約150円。2月の発売から50日で1200万個、毎秒2個から3個が売れている計算です

FNNソウル支局 仲村健太郎記者:
コンビニエンスストアには軒並み入り口に、品切れとの張り紙が掲示されていて、中には夜遅くに配送車が到着するのを待ち伏せする人もいるんです。ソウル市内のスーパーマーケットを取材すると平日にもかかわらず、朝7時から列ができ始め、50人以上が整理券を求めて並びました。最近は毎日こういった状況だそうで、週末は100人以上が並ぶこともあるそうです。皆さんのお目当ては“おまけ”として入っているシールです。(中略)

韓国メディアはその要因について“キダルト族”という言葉で表しているんですね。キダルトはキッズとアダルトを組み合わせた造語でして、子どもの頃に熱中したアニメや漫画のキャラクター製品やプラモデルなどを“大人買い”する人を指すんだそうです。(中略)

韓国では近年、このキダルトを狙った市場が急拡大してるんですね。2014年には日本円で約520億円だった市場が、2020年には約1660億円にまで伸びています。3倍伸びているわけです。

最近では、ポケモンパンのほかにも、動画配信サイトでセーラームーンやドラゴンボールといった、今の大人たちが幼かったころに熱狂した日本アニメですね。その再配信が続々行われていたり、アニメキャラクターが化粧品のパッケージになったりと、各業界がキダルト市場に期待を寄せていることが伺えます(中略)

不買運動「NO JAPAN」も終了へ…ポケモンは強かった
FNNソウル支局 仲村健太郎記者:
一方で、韓国内では日本文化がブームになることについて不満の声も上がっているんですね。実は4月、SNS上で「NO JAPAN」をもう忘れたのかと、ポケモンパンの不買を訴える声が上がったのです。

NO JAPANとは、日本製品の不買運動のことです。2019年、いわゆる徴用工問題への事実上の対抗措置として、日本が韓国への輸出管理を強化した際に、韓国がさらに対抗する形で始まりました

FNNソウル支局 仲村健太郎記者:
ポケモンパンの販売会社は著作権を持つ日本側と契約を結んでいるため、韓国でパンが売れれば売れるほど、日本側もライセンス料で潤うわけです。この状況を良く思わない韓国の一部の人たちが声を上げたのです。しかし、韓国の企業が販売するパンなんです。そのパンにまで、NO JAPANを適用するのは度が過ぎているなど、反対意見も多く、不買の動きは大きなうねりとはなっていません(中略)

FNNソウル支局 仲村健太郎記者:
NO JAPANによって、さまざまな日本ブランドが打撃を受けたのは事実です。ただ、最近は日本の会社の業績は回復傾向にあります。ユニクロは(約92億円の赤字から)約55億円の黒字に転換したほか、日本のビールの輸入額は前年より55%も増加しているんですね。全体として、韓国の日本からの輸入は、2021年は不買運動前の水準に戻っているわけです。まさにV字回復です(後略)【4月21日 FNNプライムオンライン】
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「ポケモン」だろうが何だろが、NO JAPANといった異常事態を払拭してくれるなら結構なことです。

今日、取り上げたかったのは上記のような日韓関係云々の話ではなく、中国朝鮮族、韓国、北朝鮮といった同じ民族間の微妙な、「差別」とも言えるような問題の話ですが、「韓国を取り上げる以上、日韓関係の話に触れない訳にもいかない・・・」と前置きが長くなり過ぎたので、また別機会に取り上げます。

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パキスタン  アフガニスタンを空爆 TTPをめぐる微妙な関係

2022-04-18 23:17:16 | アフガン・パキスタン
(パキスタンとアフガニスタンの国境地帯で警備に当たるパキスタン兵士(2021年9月、ロイター)【4月17日 日経】)

【パキスタン TTP掃討でアフガニスタンを爆撃 微妙な両国関係】
後にアフガニスタンのタリバンとなった旧ソ連軍と戦うムジャヒディン(イスラム戦士)を訓練し、その後もタリバンを資金・武器・退避場所などで支援してきたのが隣国パキスタン、特に軍部の中枢にある「軍統合情報局(ISI)」であることは周知の事実です。

現在もパキスタンはアフガニスタン・タリバン政権を支援していますが、両者の関係は後述のように微妙なところもあります。

その“微妙”な部分の大きな原因が、パキスタン国内で反政府テロ活動を行うイスラム武装勢力「パキスタン・タリバン運動(TTP)」の存在。2012年には女子教育の重要性を訴えたマララ・ユスフザイさんを銃撃した組織です。

パキスタン軍はこれまでも長年厳しい掃討作戦を続けていますが、TTPはアフガニスタンのタリバンと思想的にも、組織的にも近しい関係にあります。

TTPのメディア部門であるウマル・メディアは、2021年12月8日に新しいビデオを公開しました。
その映像によれば“(TTP)最高指導者のヌール・ワリ・メスードはTTPをターリバーンの支部であると明言した。また、アフガニスタン軍やアフガニスタン警察の車両を保有している事が確認され、TTPがターリバーンの恩恵を受けている事が明らかになった”【ウィキペディア】とのこと。

TTPのメンバーの多くはパキスタン軍の取り締まりを逃れるため、アフガニスタンとの国境地帯のアフガニスタン側に潜伏しているとされています。

****パキスタン軍がアフガン空爆、女性・子供含む47人死亡…越境テロ巡りタリバンと対立****
AFP通信などによると、パキスタン軍が16日、隣国アフガニスタン領内の国境付近を空爆し、女性や子供を含む少なくとも47人が死亡した。アフガン内に潜伏して越境テロを行う過激派組織を狙ったとみられる。

国内の実権を握るイスラム主義勢力タリバン暫定政権は反発し、緊張が高まっている。
 
空爆はアフガン東部のホスト、クナール両州で行われ、複数の民家が被害を受けた模様だ。タリバン側は、パキスタンの駐アフガン大使を呼び出し、抗議した。ザビフラ・ムジャヒド報道官も「戦争が始まっても、誰の利益にもならないと認識すべきだ」と批判した。
 
アフガンメディアによると、ホスト州などで住民らが大規模な抗議を行った。
 
これに対し、パキスタン外務省は17日に声明を発表し、空爆については触れずに「この数日、パキスタンの治安当局が国境付近でアフガン側から標的にされる事案が増えていた」と主張した。14日には軍兵士7人が犠牲になったという。
 
パキスタンでは、タリバンを支持するイスラム武装勢力「パキスタン・タリバン運動(TTP)」が昨年12月に政府との停戦を解消して以降、治安当局への攻撃を繰り返している。政府はTTPを含めた過激派組織がアフガン側に潜み、テロを行っているとして、タリバン側に対応を要求していた。国際社会も、アフガンが再び国際テロの温床になることを懸念している。【4月18日 読売】
***********************

タリバンとパキスタン軍の“衝突”は今年1月にも報じられています。

****タリバンとパキスタンがまさかの「仲間割れ」、現地の勢力図に大きな変化が****
<パキスタンが設置していた国境の「柵」をめぐり、両軍兵が衝突。互いを必要とするはずの両者は妥協点を見いだせるか>

昨年8月、タリバンがアフガニスタンの首都カブールを制圧すると、隣国パキスタンでは歓喜の声が上がった。なにしろタリバン運動の発祥地だし、アフガニスタンに友好的な政府ができるのは大歓迎。一貫して親米政権を支持してきた天敵インドの影響力低下も必至だ。

しかし、そんな蜜月の終わる兆しが見えてきた。両国の国境、いわゆる「デュアランド線」での不穏な動きだ。
昨年12月19日にはアフガニスタン東部の国境地帯で、パキスタン側の設置した有刺鉄線のフェンスをタリバン兵が実力で撤去した。

年末の30日にも似たような摩擦が南西部であった。フェンスの設置は2014年から、国境紛争と密輸を防ぐためと称してパキスタン側が進めていた。

この2回目の摩擦を受けてタリバン政権は強く反発。国防省の広報官は年頭の1月2日に、パキスタン側には「有刺鉄線で部族を分断する権利はない」と主張した。ここで言う「部族」は、国境の両側で暮らすパシュトゥン人(アフガニスタンでは多数派だ)を指す。別のタリバン広報官は、「デュアランド線は一つの民族を引き裂く」ものだとし、その正当性を否定した。

この国境線は1893年に英領インドとアフガニスタンの合意で成立した。だが1947年にパキスタンが独立して以来、歴代アフガニスタン政権はデュアランド線に異議を唱え続けてきた。

自分たちはパキスタンの代理勢力ではない
ただ、タリバン側の動きには他の思惑もありそうだ。自分たちはパキスタンの代理勢力ではないと、対外的に主張したいのかもしれない。多数派のパシュトゥン人にすり寄るためという見方もできる。

フェンスの存在が国境を越えた人流・物流の妨げになるという現実的な問題もある。タリバン構成員には今も、パキスタン側に家族を残している者が少なからずいる。

年明け早々、パキスタンとタリバンは交渉を通じて国境間の緊張を解くことで合意した。だが容易ではない。パキスタンの外相も「外交的に解決できると信じたい」と、心もとない発言をしている。

消息筋によれば、パキスタン政府はフェンス設置へのタリバンの理解を得つつ、越境往来を増やせるような譲歩をするつもりだという。だが、その程度でタリバンの不満は収まるまい。

それでもパキスタンに対するタリバンの経済的・外交的依存の大きさを考えれば、彼らもこれ以上の関係悪化は避けたいだろう。

パキスタン側にも、早期の事態収拾を図りたい事情がある。タリバンとの緊張が高まれば、最近パキスタン国内でテロ活動を活発化させているテロ組織パキスタン・タリバン運動(TTP)への対処が難しくなるからだ。

タリバンの仲介で、アフガニスタンを拠点とするTTPとパキスタンは昨年11月に停戦1カ月の休戦協定を結んだが、TTPはその延長を拒んでいる。交渉再開にはタリバンの協力が不可欠だ。ただしタリバンも、TTPには強く出られない。国内のTTP基地へのパキスタン軍の攻撃を黙認するという選択肢もない。

パキスタンとタリバンの関係は持ちつ持たれつだ。しかし今のタリバンは、かつてのようにパキスタンの言いなりではない。【1月13日 Newsweek】
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上記記事にタリバンには“(アフガニスタン)国内のTTP基地へのパキスタン軍の攻撃を黙認するという選択肢もない”とありますが、今回その攻撃が行われたことで、タリバンとしては“主権の侵害”とパキスタンに反発しています。

もっともタリバン中枢とパキスタン情報機関ISIはズブズブの関係でしょうから、表面上のやり取りとは違う話が水面下にあることは十分想像できます。

【昨年末 タリバン仲介のパキスタン・TTP停戦は続かず】
なお、タリバンにとっても“身内”あるいは“仲間”のTTPとパキスタン軍の戦闘状態は何かと不都合がありますので、上記記事にもあるように、昨年11月にはタリバンの仲介でTTPとパキスタンの停戦が合意されました。
TTP及びISI双方に近いとされるタリバンのシラジュディン・ハッカーニ暫定内相が中心的役割を果たしたとのこと。

“パキスタン政府、武装勢力と1カ月停戦で合意 タリバンが交渉仲介”【2021年11月9日 毎日】

“タリバンにとっては、TTPとの交渉を仲介することで、事実上の「支援国」であるパキスタンの要請に応えられるほか、国際社会に対してもテロ対策に取り組んでいることをアピールすることができる。”【同上】との思惑が指摘されています。また、下記記事によればタリバンにとってテロを繰り返すTTPは“重荷”になっていたとも。

しかし、結局この停戦は延長されませんでした。

****TTP、パキスタン政府との一時停戦終了を表明 タリバンが仲介****
パキスタンの反政府武装勢力「パキスタン・タリバン運動」(TTP)は9日の声明で、パキスタン政府との間で11月から1カ月間実施していた一時的な停戦を終了することを明らかにした。一時停戦は、TTPと友好関係にあり、パキスタンの軍情報機関とも近いとされるアフガニスタンのイスラム主義組織タリバンが仲介していた。
 
TTPは停戦終了の理由として「政府側が合意を守らなかった」と主張。具体的には、政府側が拘束する100人超のTTP構成員が解放されなかった▽政府側の和平交渉を担うメンバーが(交渉場所に)到着していない▽パキスタン軍がTTPへの攻撃を続けた――ことなどを挙げた。
 
TTPは、パキスタン西部にある部族地域を拠点とする複数の武装組織の連合体。アフガンのタリバンと友好関係にある。2012年には女子教育の重要性を訴えていたマララ・ユスフザイさんを銃撃したほか、軍などを標的としたテロを繰り返している。
 
TTPのメンバーの多くは現在、パキスタン軍の掃討作戦から逃れる形でアフガン東部に潜伏している。

一方、アフガンのタリバン暫定政権の外務省幹部によると、パキスタンでテロを繰り返すTTPの存在は、国際的な承認を目指すタリバンにとって「重荷」となっていた。

ただタリバンにとってTTPは友好関係にあるため、強制的に追い出すこともできず「パキスタン政府と和平合意を結んでもらうのが最善策」と考え、両者の仲介を試みたという。【2021年12月10日 毎日】
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【“揉める”余裕はない両国の事情】
以上のような“微妙”な関係にもあるアフガニスタン・タリバン政権とパキスタンですが、今回のパキスタンの越境攻撃が大きな問題となることはないのでは・・・・。

タリバンにとっては、なんだかんだ言ってもパキスタンは数少ない「支援国」ですし、今は国際承認を求めている状況ですから、“揉め事”は起こしたくないところでしょう。

****タリバンが収入源の麻薬禁止 生産最大、政権承認狙いか****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権は3日、アヘンの原料となるケシの栽培と麻薬の使用を禁止すると発表した。

アフガンはケシの世界最大の生産国で、タリバンの収入源となっていた。タリバンは昨年8月に政権を掌握したが、各国は正式には認めていない。暫定政権には各国の求めに応じる形で麻薬対策に乗り出し、国際承認につなげる狙いがありそうだ。
 
暫定政権のハナフィ副首相は別の作物栽培などに置き換えるための協力を国際社会に求め「世界が安全に過ごせるようにする」と語った。最高指導者アクンザダ師による命令で違反者は取り締まるとしている。【4月3日 共同】
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さんざん資金源に使ってきて、今になって「世界が安全に過ごせるようにする」と言うのも、いいたいどの口が・・・という感はありますが。

パキスタン側も、4月12日ブログで取り上げたように、カーン前首相が失職し、シャリフ新首相に変わりましたが、政変のゴタゴタが続いており、タリバンどころではないのでは。

****インフレや反発議員の大量辞職表明…パキスタン新首相誕生も混乱続く****
(中略)
不信任案可決で失職したイムラン・カーン氏にかわり、新しく首相に就任したのはシャバズ・シャリフ氏。
野党勢力をまとめあげましたが、反発する議員100人以上が辞職を宣言。さらに前職のカーン氏からは反対デモを呼びかけられています。

「経済危機に、外交も難題ばかり。内憂外患の船出」
シャリフ氏は、過去に首相を3度務めたナワズ・シャリフ氏の弟。
新首相にとって急務となるのは、前政権で悪化したインフレの沈静化と、外交面の立て直しですが、いずれも難題です。

前首相のカーン氏は、ロシアによるウクライナ侵攻の直後にプーチン大統領と会談し、国際社会の批判を浴びたほか、アフガニスタンで実権を掌握したイスラム原理主義勢力・タリバンに対する支援を巡り、アメリカとの外交が途絶えるなどしていました。

隣国インドとの関係も悪化しています。

消費者物価指数は、カーン氏の首相就任以来、2桁前後の上昇率で推移。ウクライナ侵攻によるエネルギー価格の上昇も深刻です。

これらの難題に加え、100人以上が議員辞職を表明したことに伴う大規模な補欠選挙や、パキスタンで強い政治力を持つ軍との関係構築など、いろんな難題にも向き合うことになるシャリフ新首相。今後、安定した政権運営ができるかは不透明です。【4月18日 FNNプライムオンライン】
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ただ、パキスタンの話でわかりにくいのは、政府の意図と軍の意向が往々にして異なることがある点で、軍は勝手に動いているように見えることも。
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