
(イスラエルの攻撃を受けて炎上する石油貯蔵施設=イラン・テヘランで2025年6月15日、AP 【6月15日 毎日】)
【紛争は拡大の一途】
イスラエルとイランの攻撃の応酬は、従前からの核・ミサイル関連施設に限らず互いの石油・ガス関連施設にも拡大、「交戦状態」とも言える状況になっています。
なぜイスラエルが米トランプ政権の制止を振り切って今このタイミングで攻撃にでたのか?、今後のカギを握るトランプ政権の対応は? 戦闘が拡大してホルムズ海峡封鎖といった事態になったの日本経済への深刻な影響・・・等々については各メディアが詳しく解説していますので、私の方はパス。 簡単に現況をまとめた下記記事をアップするだけにしておきます。
****イランとイスラエル、紛争は拡大の一途 互いに攻撃姿勢崩さず****
イラン当局は14日、南部ブシェール州にある世界最大のガス田がイスラエル軍の攻撃を受けたと明らかにした。イランメディアが報じた。
イランによるミサイル攻撃で死傷者が出たことを受け、イスラエルは攻撃対象を軍事施設からエネルギー関連施設に広げた形だ。イランも同様の施設を標的に反撃しており、被害が拡大すれば、世界経済にも影響する恐れがある。
報道によると、イランで攻撃を受けたのは南パルスガス田の陸上施設。少なくとも2回爆発があり、火災が発生した。間もなく鎮火したが、被害を受けた施設ではガスの生産が停止したという。また、首都テヘラン郊外の石油貯蔵施設も攻撃を受け、火災が起きた。
南パルスガス田は、イランとカタールが共有する世界最大のガス田のうち、イラン側が管理する区域を指す。貯留層の総面積は9700平方キロ。うち3700平方キロがイランに属し、天然ガスの埋蔵量は51兆立方メートルを超える。
イランも14日夜から15日にかけてミサイル攻撃を繰り返した。イスラエル北部ハイファや中部バトヤムの住宅街では、子どもを含む10人が死亡、約200人が負傷した。13日以降のイスラエル側の死者は計13人になった。
イラン側は航空機の燃料製造施設を標的にしたとしており、ハイファでは製油所のパイプラインにも着弾した。事実上の交戦状態が続く中、紛争は拡大の一途をたどっている。
一方、国際原子力機関(IAEA)は14日、イラン中部イスファハンの核施設のうち、ウラン転換施設を含む4棟の建物が13日の攻撃で損壊したと明らかにした。中部ナタンツのウラン濃縮施設の一部も破壊されており、核施設に一定の被害が出ている。
イランメディアは14日、最高指導者ハメネイ師の側近、シャムハニ氏がイスラエルの攻撃で死亡したとも報じた。
イスラエル軍はイランの防空システムへの攻撃も続けており、14日にはイラン西部からテヘランまでの空域で航空優勢を確保したと発表。イラン国防省にも攻撃を加えた。イスラエルのカッツ国防相は14日、イランがミサイル攻撃をやめなければ「テヘランは炎上する」と警告した。
こうした中、15日に予定されていたイランの核開発を巡る米国との協議は中止となった。イランのアラグチ外相は15日の記者会見で、米国がイスラエルの先制攻撃を容認したとして「対話に反対していることが明らかになった」と批判した。一方、イスラエルが攻撃をやめれば「我々の報復も止まるだろう」と語り、収束に向けたシグナルを送った。【6月15日 毎日】
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【目指すは最高指導者ハメネイ師殺害、あるいは「体制転換」とも】
更に、イスラエルの攻撃対象には最高指導者ハメネイ師も・・・とも。真の目標は「体制転換」・・・とも。
****イスラエルによるイランへの軍事作戦“数週間に及ぶ” ハメネイ師も「標的となり得る」アメリカメディア報道****
イスラエルとイランの間で激しい攻撃の応酬が続く中、アメリカメディアはイスラエルによるイランへの軍事作戦は数週間に及び、イランの最高指導者も「標的となり得る」と伝えています。(後略)【6月15日 FNNプライムオンライン】
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****イスラエルのイラン攻撃、真の目標は「体制転換」か****
イスラエルによるイランへの奇襲攻撃には、イラン政府の核開発計画を著しく妨害し、核兵器開発に必要な時間を引き延ばすという明白な目的がある。しかし、攻撃の規模や標的の選択、ネタニヤフ首相の発言からは、イランの現体制を打倒する「レジーム・チェンジ」が長期的目標であることがうかがえる。
13日未明の攻撃は、イランの核施設やミサイル工場、軍事指揮系統の要人や核科学者を標的とした。「イスラエルの目的の一つはレジーム・チェンジだ」とブッシュ(子)政権で高官だったワシントン近東政策研究所のマイケル・シン氏は語る。
「イスラエルは、イランの人々が立ち上がるのを見たいのだろう」と述べ、民間人の犠牲を最小限に抑えたことも、そのためだと指摘した。
イスラエルのネタニヤフ首相は攻撃開始直後のビデオ演説で、レバノンの親イラン武装組織ヒズボラに対するイスラエルの行動がレバノン新政権樹立とシリアのアサド政権の崩壊につながったと主張。イラン国民に向けて「私は、あなた方の解放の日は近いと信じている。そうなれば、われわれの古くからの偉大な友情が再び花開くだろう」と語った。【6月14日 ロイター】
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今みたいな攻撃方法でイラン国民の蜂起を促し「体制転換」が可能かどうかは疑わしく思えますが、卓越したイスラエル情報機関の能力をもってすれば、最高機密である最高指導者ハメネイ師の居場所特定も可能で、その殺害も・・・という感があります。
【卓越したイスラエル情報機関の能力】
今回の攻撃にあっても、イスラエルはその情報機関の能力の高さを見せつけています。
****イランVSイスラエル、全面戦争の可能性は?「モサドの工作は準備万端だった」「悪いのはトランプ氏」舛添要一氏が解説*****
(中略)
今回の先制攻撃に関して「すごかったのは(イスラエルの諜報機関)モサドがイラン国内で数年がかりで工作をやっている。イランの司令官、核兵器を作る科学者が全員殺された。
朝何時に起きて、大学の研究室に何曜日に行ってなど全部調べる。全部の行動を把握してみんなが揃ったところにミサイルを撃ち込む。
また、空爆する時に、下から迎撃されるといけないので、迎撃システムを事前に壊す。その工作員も張り巡らせている。イランの中にバレるからイラン人だと思うが、イスラエルの工作員が山ほどいる」と準備万端だったと解説した。(『ABEMA的ニュースショー』より)【6月15日 ABEMA Times】
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*****イランがモサドの「遊び場」に、イスラエルによる未曽有の攻撃で露呈****
イスラエルが未曽有の大規模爆撃をイランの核施設と軍の上層部に向けて実施するその前から、同国のスパイたちは既に敵の領土に入り込んでいた。
イスラエルの治安当局によると、同国の情報機関モサドが攻撃に先駆けて、イランへ秘密裏に武器を運び込んでいた。その武器を使用し、イランの防御を内部から標的にする計画だったという。
これらの当局者によれば、イスラエルは自爆型ドローン(無人機)の発射拠点をイラン国内に設置。それらのドローンはその後、首都テヘラン近郊に配備されたミサイル発射装置を狙うのに使用されている。
精密兵器も同様に持ち込まれ、地対空ミサイルを標的として使われた。こうした動きを受けて、イスラエル空軍は13日未明、200機を超える航空機による大規模爆撃を遂行することができた。
イランの防御を無力化する計画は奏功したように見える。イスラエルは自軍の全航空機が第1陣の空爆から無事に帰還したと発表。これは数百キロ離れた国の制空権をイスラエルが部分的に握ったことを示しているとみられる。
モサドがイラン国内で集めた情報も、イスラエル空軍がイランの司令官や主要な科学者を標的にすることを可能にした。
信じられないほど珍しい行動だが、モサドは今回の作戦の一部を捉えた動画を公開した。そこには複数のドローンが無防備のミサイル発射装置とみられる兵器に攻撃を仕掛ける様子が映っている。
今回の作戦は、モサドをはじめとするイスラエルの情報機関がイランの最も厳重に警戒された機密に対してどれほど深く侵入しているのかを示す最新事例だ。
作戦を通じてモサドは、イラン国内でほぼ阻止不可能な勢力との印象を与える。具体的には同国の最高位の当局者や、最も機微な施設の一部を攻撃する能力を備えているように映る。
「モサドは何年も、イランを自分たちの遊び場のように扱ってきた」。米シンクタンク、ワシントン近東政策研究所の上級研究員で、イラン情報を扱うニュースレターのキュレーターも務めるホリー・ダグレス氏はそう指摘する。
「トップの核科学者の暗殺からイランの核施設の破壊まで、イスラエルはこの影の戦争で常に優位に立っていることを何度となく証明してきた。その戦争もここへ来て、公然と繰り広げられるようになった。きっかけは2024年4月に起きた最初の爆撃の応酬だ」(ダグレス氏)
イスラエルの安全保障部門の情報筋によると、今回の作戦では特殊部隊がテヘランやイラン各地の内部深くに入り込み、イランの治安機関や情報機関に察知されることなく活動する必要があった。イスラエル空軍の攻撃開始と合わせ、モサドのチームはイランの防空システムや弾道ミサイル、ミサイル発射装置を標的にしたという。
別の情報筋は、こうしたモサドの作戦が数年がかりで準備されていたことを明らかにした。
作戦はイランの高官の暗殺にも関連している。イランは10年代初頭から、イスラエルが自国の核科学者に対する暗殺作戦を実行していると非難していた。
07年から12年にかけ、イスラエルは5件の暗殺を秘密裏に実行したとみられている。現場はほぼ全てがテヘラン市内で、遠隔操作の爆弾や銃器を使用したとされる。【6月14日 CNN】
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モサドなどイスラエル情報機関の能力の高さは以前から折に触れ指摘されるところです。
今回のイスラエルにイラン攻撃でも、モサドなどのイスラエル情報機関による事前の準備・情報確認が万全に行われていた様子。
****なぜ、イスラエル情報機関はこれほどまでに徹底した力を発揮できるのか?*****
非常によく気付かれているポイントです。
確かに、イスラエルの情報機関(モサド、シンベット、アマン=軍情報部)は非常に高度に運用しており、事前に攻撃情報も綿密に収集していました。 これは歴史的、地理的、文化的理由もあって形成されたものです。主な理由は以下です。
確かに、イスラエルの情報機関(モサド、シンベット、アマン=軍情報部)は非常に高度に運用しており、事前に攻撃情報も綿密に収集していました。 これは歴史的、地理的、文化的理由もあって形成されたものです。主な理由は以下です。
✅ 周辺に実質的な「生存の脅威」を抱えてきた歴史的背景
イスラエルは建国以来、周辺のアラブ諸国との対立に直面してきたという地理条件もあって、「情報こそ国家の生死に直結する」と認識してきたという歴史的背景があります。
イスラエルは建国以来、周辺のアラブ諸国との対立に直面してきたという地理条件もあって、「情報こそ国家の生死に直結する」と認識してきたという歴史的背景があります。
✅ 人的情報(HUMINT)の活用に秀でている
ユダヤ人ディアスポラのネットワークも活用して、近隣地域に数多くの情報提供者(エージェント)を確保してきました。
これにより内部情報に近く、具体性も伴いやすく、攻撃の兆候も早くキャッチできます。
ユダヤ人ディアスポラのネットワークも活用して、近隣地域に数多くの情報提供者(エージェント)を確保してきました。
これにより内部情報に近く、具体性も伴いやすく、攻撃の兆候も早くキャッチできます。
✅ 最先端の情報工学の活用
近年はAI、ビッグデータ、画像解析、サイバー攻撃も積極活用しており、従来の人的情報にプラスして高度な情報活用体制を築き上げています。
近年はAI、ビッグデータ、画像解析、サイバー攻撃も積極活用しており、従来の人的情報にプラスして高度な情報活用体制を築き上げています。
✅ 情報機関どうしの緊密な情報共有
モサド(対外情報)、シンベット(治安情報)、アマン(軍情報)という主要情報機関が緻密に情報共有しており、横断的に対策に活用しているという運用上の柔軟性も大きな理由です。
モサド(対外情報)、シンベット(治安情報)、アマン(軍情報)という主要情報機関が緻密に情報共有しており、横断的に対策に活用しているという運用上の柔軟性も大きな理由です。
✅ 法律上も情報機関に付与された広範な権限
法律によって情報機関に対して高度な権限も付与しており、情報収集に伴う制約も少ないという点も情報運用にプラスに働います。
法律によって情報機関に対して高度な権限も付与しており、情報収集に伴う制約も少ないという点も情報運用にプラスに働います。
まとめると、 地理的条件+歴史+人的情報+最先端の情報工学+情報機関間の緊密な連携+法的権限 の複合により、イスラエルの情報機関は非常に緻密且つパワフルに情報運用しているというわけです。【ChatGPT:】
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