“壁”が破壊されたパレスチナ・ガザ地区からエジプト側への大量の住民越境については、イスラエルによる封鎖で燃料や食料などが不足し困窮が続いている“アラブの同胞”に対する同情する気分がエジプト住民側にもあったようですが、パレスチナ人の大量買付けによって物価が高騰し、ラファの地元では困惑が強まっているとも伝えられます。
商店は「1ヶ月分が1日で売れる」「宝くじに当たったみたいだ」と大喜びですが、生活用品の物価3倍から5倍に高騰しており、エジプト年金生活者からは「パンも買えない」との怒りも出てきています。
ガソリンなども旺盛なパレスチナ人の購買力にエジプト地元住民は圧倒され締め出されているようです。【1月30日 AFP】
23日に壁が破壊されて以降、ガザ人口約150万人のうち延べ70万人以上がエジプト側に入ったそうで、ガザ住民が買い出しのために使った金は3億ドル(約320億円)に及ぶとも報道されています。【1月30日 朝日】
どうしてパレスチナ人の購買力がそんなに高いのか、単に、やっとめぐり合った機会になけなしの資金をつぎ込んでいるだけなのか、それとも、もともとガザ地区の所得水準が思いのほか高いのか・・・そのあたりはよくわかりません。
アメリカ・イスラエルの“修復・正常化”への圧力もあって、エジプト政府は2度ほど境界封鎖を試みましたが、パレスチナ住民からの強い抵抗が受け、強硬手段をとって“悪者”になりたくないことから作業を停止しました。
しかし、物価高騰など自らの生活が脅かされ、越境を厳しく制限すべきだとの声が地元住民に強まりつつあるなかで、ラファへの物資補給を制限、またシナイ半島の他の地域に拡大するのを検問で制限する措置をとっていました。
更に、ラファの商店に“店を閉めるように”との指導も28日からなされました。
こうした措置もあって、ラファの商店の物資が底をつき、ガザ地区からの越境流入も大幅に減少してきました。
(越境住民の一部は「ガザに戻りたくない」と、ラファ周辺の街中の公園などで寝泊まりしているとも言われます。)
そして“壁”の取り扱いに苦慮していたエジプト政府は、ようやく破壊されたラファ周辺の境界壁の修復作業に入った模様です。【1月30日 朝日】
今回の“壁”破壊を実行した勢力ははっきりしませんが、ハマスの協力なしにはできないことも指摘されています。
ハマスは爆破への関与は否定していますが、「(爆破は)住民の惨状の現れだ」との声明を出し、住民の越境も抑制していません。
いずれにせよ、ハマスの“主導”もしくは“協力”による事件であり、その意味で、ハマスとしては「してやったり」というところか・・・と言うと、そうでもないようにも見えます。
そのあたりについては、イスラエルの治安機関関係者の「ハマスは大量越境を目の当たりにして“今の生活苦を少しでも和らげたい”という住民の願望に改めて驚かされたはずだ。前の封鎖に戻れば、ハマス支配は住民から支持されないと認識しただろう」という発言【1月30日 朝日】が当たっているように思えます。
中国でもそうですが、支配者・権力者が一番恐れ警戒するのは民衆の大規模な行動です。
今回の物資を求める圧倒的なエネルギーを見て、いくら「封鎖はイスラエルのせいだ」と主張しても、“またこれまで同様の耐乏生活をガザの住民に強いると、やがてはこの住民のエネルギーは自分達に向かうかも・・・”と不安になったのではないでしょうか。
ハマスとしては、ラファ検問所の開放に持ち込みたい意向のようで、ハニヤ最高幹部は23日、緊急協議に応じるようアッバス自治政府議長に呼びかけを行っています。
エジプトのムバラク大統領も、ハマスとアッバス議長との対話を呼びかけていますが、アッバス議長は26日、ハマスによるガザ支配を「犯罪行為」と強く非難し、交渉を拒否する意向を表明しています。
アッバス議長はイスラエルのオルメルト首相と27日エルサレムで会談、事態打開のためガザ・エジプト間の検問所を自治政府の管理下に置くよう提案したようです。【1月28日 毎日】
サウジアラビアも仲介に乗り出しています。
ハマスの指導者メシャル氏が29日、ファタハとの和解・対話再開に向け、サウジアラビアのサウド外相とリヤドで会談しました。【1月29日 時事】
アッバス議長は30日、ガザ地区とエジプトの境界管理をめぐり、ムバラク・エジプト大統領とカイロで会談。
議長は会談後、記者団に対し、ガザを実効支配するハマスに管理権限を与えることを拒否する考えを示しました。【1月30日 時事】
一方、イスラエルには「ガザの面倒はエジプトがみるべきだ」という「ガザ切り離し論」が強くなっているとも伝えられます。
イスラエルの副国防相は24日、「今や出口は対岸(エジプト側)に開いている」と指摘。電力や食料などの供給を含め、エジプトがガザに対する全責任を負うべきだとの考えを示したそうです。
これに対し、エジプト外務省報道官は直ちに「ばかげた想定だ」と反論しています。
国内のイスラム主義の伸長に神経をとがらせるエジプト政府は、ガザを支配するハマスの影響力が国内に波及する事態はなんとしても避けたい模様です。
また、パレスチナにとっても、この話はガザ地区と西岸地区の切り離しにもつながり、到底受け入れられないものです。【1月29日 毎日】
ラファ検問所の問題ひとつとっても、ファタハ自治政府とハマスの管理権限争い、エジプトの意向、さらにはイスラエルの思惑・・・いろいろあってなかなか簡単にはいかない問題のようです。
先述したようなガザ住民の強い思いを感じて、ハマス・ファタハの間で何らかの妥協が成立しないものでしょうか。
“壁”爆破という一石が起こした波紋が、政治的に膠着した事態を改善するきっかけにならないものでしょうか。
商店は「1ヶ月分が1日で売れる」「宝くじに当たったみたいだ」と大喜びですが、生活用品の物価3倍から5倍に高騰しており、エジプト年金生活者からは「パンも買えない」との怒りも出てきています。
ガソリンなども旺盛なパレスチナ人の購買力にエジプト地元住民は圧倒され締め出されているようです。【1月30日 AFP】
23日に壁が破壊されて以降、ガザ人口約150万人のうち延べ70万人以上がエジプト側に入ったそうで、ガザ住民が買い出しのために使った金は3億ドル(約320億円)に及ぶとも報道されています。【1月30日 朝日】
どうしてパレスチナ人の購買力がそんなに高いのか、単に、やっとめぐり合った機会になけなしの資金をつぎ込んでいるだけなのか、それとも、もともとガザ地区の所得水準が思いのほか高いのか・・・そのあたりはよくわかりません。
アメリカ・イスラエルの“修復・正常化”への圧力もあって、エジプト政府は2度ほど境界封鎖を試みましたが、パレスチナ住民からの強い抵抗が受け、強硬手段をとって“悪者”になりたくないことから作業を停止しました。
しかし、物価高騰など自らの生活が脅かされ、越境を厳しく制限すべきだとの声が地元住民に強まりつつあるなかで、ラファへの物資補給を制限、またシナイ半島の他の地域に拡大するのを検問で制限する措置をとっていました。
更に、ラファの商店に“店を閉めるように”との指導も28日からなされました。
こうした措置もあって、ラファの商店の物資が底をつき、ガザ地区からの越境流入も大幅に減少してきました。
(越境住民の一部は「ガザに戻りたくない」と、ラファ周辺の街中の公園などで寝泊まりしているとも言われます。)
そして“壁”の取り扱いに苦慮していたエジプト政府は、ようやく破壊されたラファ周辺の境界壁の修復作業に入った模様です。【1月30日 朝日】
今回の“壁”破壊を実行した勢力ははっきりしませんが、ハマスの協力なしにはできないことも指摘されています。
ハマスは爆破への関与は否定していますが、「(爆破は)住民の惨状の現れだ」との声明を出し、住民の越境も抑制していません。
いずれにせよ、ハマスの“主導”もしくは“協力”による事件であり、その意味で、ハマスとしては「してやったり」というところか・・・と言うと、そうでもないようにも見えます。
そのあたりについては、イスラエルの治安機関関係者の「ハマスは大量越境を目の当たりにして“今の生活苦を少しでも和らげたい”という住民の願望に改めて驚かされたはずだ。前の封鎖に戻れば、ハマス支配は住民から支持されないと認識しただろう」という発言【1月30日 朝日】が当たっているように思えます。
中国でもそうですが、支配者・権力者が一番恐れ警戒するのは民衆の大規模な行動です。
今回の物資を求める圧倒的なエネルギーを見て、いくら「封鎖はイスラエルのせいだ」と主張しても、“またこれまで同様の耐乏生活をガザの住民に強いると、やがてはこの住民のエネルギーは自分達に向かうかも・・・”と不安になったのではないでしょうか。
ハマスとしては、ラファ検問所の開放に持ち込みたい意向のようで、ハニヤ最高幹部は23日、緊急協議に応じるようアッバス自治政府議長に呼びかけを行っています。
エジプトのムバラク大統領も、ハマスとアッバス議長との対話を呼びかけていますが、アッバス議長は26日、ハマスによるガザ支配を「犯罪行為」と強く非難し、交渉を拒否する意向を表明しています。
アッバス議長はイスラエルのオルメルト首相と27日エルサレムで会談、事態打開のためガザ・エジプト間の検問所を自治政府の管理下に置くよう提案したようです。【1月28日 毎日】
サウジアラビアも仲介に乗り出しています。
ハマスの指導者メシャル氏が29日、ファタハとの和解・対話再開に向け、サウジアラビアのサウド外相とリヤドで会談しました。【1月29日 時事】
アッバス議長は30日、ガザ地区とエジプトの境界管理をめぐり、ムバラク・エジプト大統領とカイロで会談。
議長は会談後、記者団に対し、ガザを実効支配するハマスに管理権限を与えることを拒否する考えを示しました。【1月30日 時事】
一方、イスラエルには「ガザの面倒はエジプトがみるべきだ」という「ガザ切り離し論」が強くなっているとも伝えられます。
イスラエルの副国防相は24日、「今や出口は対岸(エジプト側)に開いている」と指摘。電力や食料などの供給を含め、エジプトがガザに対する全責任を負うべきだとの考えを示したそうです。
これに対し、エジプト外務省報道官は直ちに「ばかげた想定だ」と反論しています。
国内のイスラム主義の伸長に神経をとがらせるエジプト政府は、ガザを支配するハマスの影響力が国内に波及する事態はなんとしても避けたい模様です。
また、パレスチナにとっても、この話はガザ地区と西岸地区の切り離しにもつながり、到底受け入れられないものです。【1月29日 毎日】
ラファ検問所の問題ひとつとっても、ファタハ自治政府とハマスの管理権限争い、エジプトの意向、さらにはイスラエルの思惑・・・いろいろあってなかなか簡単にはいかない問題のようです。
先述したようなガザ住民の強い思いを感じて、ハマス・ファタハの間で何らかの妥協が成立しないものでしょうか。
“壁”爆破という一石が起こした波紋が、政治的に膠着した事態を改善するきっかけにならないものでしょうか。