孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラン  ロウハニ大統領はマクロン仲介を評価 サウジが対話路線に転換か

2019-10-03 22:36:34 | イラン

(最高指導者ハメネイ師は10月2日、イラン革命防衛隊司令官らと会談し、「米国による最大限の圧力政策は失敗した。イランは覇権主義体制に屈することはない」と強調し、「イランが望む結果に至るまで、断固として核合意の責務縮小を継続する」と語りました。【10月2日 ParsTodayより】」

 

【実現しなかったアメリカとの首脳会談】

イランをめぐる情勢。

 

アメリカ・トランプ大統領は、泥沼に引きずり込まれる恐れがある軍事的な対応には消極的で、あくまでも取引・交渉によって成果を求める姿勢で、そのためには軍事的緊張を高めるような圧力も・・・といったところです。

 

もちろん、圧力のつもりが、何らかの事情、あるいは不測の事態で実際の行使に至る・・・というのはよくある話ですが。

 

交渉の方は、核合意の強化・拡大を求めるトランプ大統領と制裁解除を求めるイランの溝が埋まっておらず、トランプ、ロウハニ両首脳が出席した国連総会での会談は結局実現しませんでした。

 

****「自分が拒否」米イラン双方主張 首脳会談巡り****

トランプ米大統領は27日、ツイッターで、米イラン首脳会談実現のためイランが制裁解除を求めたが「私はもちろん『ノー』と言った」と主張した。

 

一方、イランのロウハニ大統領は同日、英仏独3カ国首脳から米国との首脳会談に応じれば米国は制裁を全て解除するとの見通しを伝えられたが拒否したと述べ、食い違いを見せた。

 

両首脳が出席した国連総会に合わせ、ニューヨークで米イラン首脳会談の実現が期待されたが、実現しなかった理由を巡り双方が自ら拒否したと主張している。【9月28日 共同】

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一方、フランス・マクロン大統領は、自身を含めた三者電話会談を画策して動き回ったようですが、これも実現しませんでした。

 

****米仏イラン、3者電話会談に失敗 マクロン氏仲介、米誌報道****

米誌ニューヨーカー電子版は9月30日、フランスのマクロン大統領が24日夜、イランのロウハニ大統領とトランプ米大統領の3者電話会談の機会を設定したが、最終的にロウハニ師が応じなかったと報じた。

 

同誌によると、フランス側は

(1)イランの核開発を無期限に制限することに関する新たな協議入り

(2)イエメン内戦終結への協力と、ペルシャ湾航行の自由と安全をイランが約束

(3)米国が昨年再発動した対イラン制裁の解除

(4)米国がイラン産石油輸出の再開を容認

の4項目について、トランプ氏とロウハニ師による口頭での合意を取り付ける計画だった。【10月1日 共同】

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もっとも、イラン・ロウハニ大統領は、このフランス提案に前向きな姿勢を見せています。

 

*****イラン、仏仲介案ほぼ受け入れ可能 対米協議巡り=大統領*****

イランのロウハニ大統領は2日、国営テレビで生放送された閣議で、マクロン仏大統領がイランと米国に提示した仲介案はおおむね受け入れられるとの見方を示した。

ロウハニ氏は提案の一部は変更の必要があると指摘。計画ではイランが核兵器開発をしないことや、湾岸地域および航路の安全支援を求める一方、米政府には全ての制裁解除を要求しているが、イラン産原油の速やかな輸出再開も認められるべきとした。

ただロウハニ氏は、ニューヨークで先週開催された国連総会の合間に、米国から制裁に関する矛盾したメッセージを受け取ったため、交渉の可能性を損なったとした。

またトランプ米大統領が制裁強化について公言することは容認できないと指摘。一方で欧州勢はトランプ大統領に交渉する意向がある旨を非公式に伝えてきたとし、協議実現に向け模索し続けていると述べた。

ザリフ外相は国営イラン放送(IRIB)で、マクロン大統領の仲介案は「われわれの視点を含んでいない」と言及。「論点が明確な方法で提示されるまで、こうした交渉を続ける必要がある」とし、イランは核兵器の開発を推進しているわけではないと主張した。

一方、イランの最高指導者ハメネイ師の公式ウェブサイトによると、ハメネイ師はイスラム革命防衛隊の会合で、イランは「望ましい結果」に達するまでイラン核合意の履行を段階的に停止し続けていくと語った。【10月3日 ロイター】

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“イランは核兵器の開発を推進しているわけではない”というのは、穏健派のロウハニ大統領やザリフ外相の考えであるにしても、強硬派の革命防衛隊などが核開発の無期限制限に賛同するのか・・・?

 

仮に、マクロン大統領提案で交渉に入っても、イラン国内の合意形成ができるのか・・・・やや疑問も残ります。

イランの話でいつも結論となるように“最高指導者ハメネイ師の判断次第”というところでしょうか。

 

【サウジがイランとの対話路線に転換?】

上記のようなイランとアメリカ・欧州の間の話とは別に、かつてのアラブ対イスラエルの対立軸に代わって、いまや中東最大の対立軸となっているイラン・サウジアラビアの対立について、情勢が変わるかも・・・という動きも出ています。

 

イラン側の発表によれば、サウジアラビアが他の諸国の首脳を通じてロウハニ大統領にメッセージを送った・・・とのことです。

 

****イランの大統領宛てメッセージ巡る発表は不正確=サウジ高官****

サウジアラビアのジュベイル国務相(外交担当)は1日夜のツイッターへの投稿で、サウジが他国を通じてイランのロウハニ大統領にメッセージを送ったとするイラン側の発表は「正確ではない」と説明した。

イランの政府報道官は先月30日、サウジが他の諸国の首脳を通じてロウハニ大統領にメッセージを送ったと述べたが、具体的な内容には言及しなかった。

サウジは先月14日に起きた石油施設への攻撃にイランが関与したと非難している。

ジュベイル国務相は、イラン報道官の発言は「正確ではない」とし、「何が起きたかというと、友好国が事態の沈静化を図ろうとし、われわれは常に地域の安全保障と安定を目指すという自国の立場を彼らに伝えた」と説明した。

また「(緊張の)緩和は、敵対的行為を通じて地域における混乱を悪化・拡大させている当事国が働き掛けるべきだとも伝えた」と指摘。「イランの体制に関するサウジの姿勢を伝えた。われわれは最近では国連総会など、あらゆる場でこの見解を明確に表明している」と指摘した。【10月2日 ロイター】

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サウジ側は否定していますが、“火のない所に・・・”ということでいけば、サウジ側からの事態改善を求める何らかのアクションがあったのでは・・・とも推測されます。

 

“サウジは先月14日に起きた石油施設への攻撃にイランが関与したと非難している”とのことですが、あくまでも“関与”であって、イランの革命防衛隊が実行したとかいった、イランの直接的犯行を主張している訳でもありません。

 

こうしたサウジ側の対応は、事件直後から「イランだ!」と言いたてているアメリカに比べると、非常に抑制された慎重な対応に思えます。

 

大金をはたいて用意したミサイル防衛ステムが機能せず、国家の根幹である石油施設がかくも容易に攻撃にさらされたという事実を前にして、サウジとしても不用意にイランとの緊張を高め、武力衝突の危険を煽るようなことは躊躇されるのでは・・・といったことを以前のブログでも書いたことがあります。

 

あながち見当違いでもないかも。

 

****サウジがイランとの対話に転換か?イラク首相が仲介工作****

中東情勢に定評のある専門誌「ミドルイースト・アイ」によると、サウジアラビアはこのほど、軍事衝突も辞さないとしてきたイランとの関係を対話路線に方向転換した。イラクのマハディ首相が仲介した。

 

先月の石油施設への攻撃で、原油生産の半分が停止するという緊急事態を受けた決定だが、事実ならば、イランの「戦略的勝利」(アナリスト)と言えるだろう。

 

カショギ氏殺害事件から1年の重大決定

サウジアラビアの反体制派ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏がトルコ・イスタンブールの領事館で殺害されてから10月2日で1年。サウジの今回の歴史的な決定はその節目の直前に行われた。

 

同国を牛耳り、カショギ氏殺害を命じたと今なお批判されるムハンマド皇太子がこの決定に中心的な役割を果たしたのは疑いないところだろう。

 

同誌によると、イラク首相府のアッバス・ハスナウイ氏がマハディ首相の仲介工作を確認し、サウジとイラン当局者による会談場所としてバグダッドが検討されていることを明らかにした。

 

サウジはイランとの対話を開始する条件として、イランがイエメンなどでの活動を縮小し、サウジと戦争中のイエメンの反体制派フーシに対する支援を停止するよう求めている。

 

イラン側も同様に、条件を提示しているとされるが、具体的には明らかではない。

 

しかし、国営通信の報道によると、イラン政府スポークスマンは9月30日、サウジアラビアからロウハニ大統領に宛てたメッセージが一部の国の指導者を介して伝えられたと明らかにし、サウジが態度を変えるというなら歓迎する表明した。

 

アラブ専門家は「イラクを仲介にしたサウジとイランの秘密接触が始まっているのは間違いない。軌道に乗れば、ペルシャ湾情勢が激変するかもしれない。歴史的な動きだ」と指摘している。

 

同誌の報道に先立つ先週、イラクのマハディ首相がサウジアラビアのジッダを訪問し、ムハンマド皇太子と会談しており、この際にイランとの対話について話し合われたと見られている。

 

同誌はまた、米政府も今回の調停に賛同しており、イラク首相のファリハ・アルファヤド補佐官(安全保障担当)がこの問題を米側と話し合うため訪米中、とも伝えている。

 

ムハンマド皇太子は先月末に放映された米CBSテレビとのインタビューで「政治的な平和解決の方が軍事的な解決よりもはるかに良い」と述べ、イランとの対話路線に転換したことを示唆。これにイランのラリジャニ国会議長が歓迎する意向を示していた。

 

奏功したイランの“軍事的賭け”

サウジアラビア政府がイランとの対話路線に踏み切ったとすれば、それはイランの“軍事的賭け”が奏功したことを意味するものだ。

 

先月14日のサウジの石油施設への攻撃はイエメンのフーシが実行声明を出して成果を誇った。だが、高性能の無人機と巡航ミサイルの組み合わせによる精緻な攻撃をフーシの仕業とするには無理がある。

 

「イランの犯行」(ポンペオ国務長官)とまではいかなくても「イランに責任がある」(英仏独共同声明)可能性が強い。同誌はイランの支援を受けたイラクの民兵組織による攻撃と報じているが、「イラン革命防衛隊から援助を受けた武装勢力の攻撃という可能性が最も高い」(ベイルート筋)だろう。

 

イランの最高指導者ハメネイ師やロウハニ大統領ら指導部が関与していたかどうかは別にして、この“軍事的賭け”により、アブカイクにある世界最大級の石油処理施設が損傷を受け、サウジの石油生産の半分が停止してしまった。

 

石油価格が急上昇して世界経済が動揺すると同時に、米国製のパトリオット迎撃システムによって守られていたサウジ防空網の脆弱ぶりが白日の下にさらされることになった。

 

サルマン国王やムハンマド皇太子らサウジの指導層の衝撃は想像に難くない。イランと軍事対決することの意味を心底思い知らされたことだろう。

 

つまり、ペルシャ湾での戦争に勝者はなく、イランが主張するように「イランにちょっかいを出せば、ペルシャ湾全体の戦争になる」(ザリフ外相)ことをまざまざと見せつけられたからだ。

 

「いたずらに軍事的な緊張を高めるのは得策ではない。和解する必要もないが、対話路線を模索する方向に舵を切ったとイランに思わせた方がいい」(ベイルート筋)。サウジの指導層がこのように考えても不思議ではない。

 

その背景に対米不信感が芽生え始めていることも指摘できるのではないか。

 

米軍基地壊滅を想定した訓練に何を見たか

米軍は9月29日、過激派組織「イスラム国」(IS)に対する空爆など中東・北アフリカ・西南アジア地域の空軍指揮管制センターとなってきたカタールのアルウベイド基地を24時間閉鎖し、サウスカロライナ州の基地にその機能を一時的に移管する訓練を実施した。アルウベイド基地が指揮管制センターになってから初めての措置だ。

 

なぜこうした訓練が必要になったのか。それはイランとの戦争が勃発し、同基地がイランの弾道ミサイルの攻撃を受けて壊滅状態になったケースに備えてのものだった。

 

逆に言うと、米軍はイランのミサイル攻撃を完全に阻止できない現実を明らかにしたといえる。それはまた、サウジアラビアなどペルシャ湾の同盟国を完全に防衛できないことを示すことにもなった。サウジやアラブ首長国連邦(UAE)の指導者はこの訓練をどう見たのだろうか。

 

もう1つ、指導者らの気持ちに影を落とした出来事がある。国連総会が開かれていた先月24日の夜、ニューヨークでのことだ。

 

マクロン仏大統領の仲介で、トランプ大統領がロウハニ大統領と電話会談の場を設定したが、ロウハニ大統領が応じなかったという報道である。

 

ペルシャ湾岸の指導者らにとってみれば、米国の尻馬に乗ってイランと敵対してきたが、その梯子をいきなり外されかねないことを見せつけられる形になったと言えるだろう。

 

フーシとの戦争が一段と泥沼化してきたこともサウジの方針転換の一因だ。フーシが先月末の戦闘でサウジ軍兵士「2000人」を拘束したと発表したように、サウジが仕掛けたイエメン戦争はうまくいっていないどころか、大きな荷物になってしまった。

 

カショギ氏殺害事件で、サウジへの投資から撤退した多数の欧米企業が近く開かれる「砂漠のダボス会議」に復帰する見通しで、ムハンマド皇太子としては一日も早く、会議を成功させて経済発展の計画を加速させたいところだ。

 

イランとの軍事的対決が続けば、これも不可能になる恐れがある。サウジには、イランとの対話路線に転換しなければならない多くの差し迫った理由がある。【10月3日 WEDGE】

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実際のところはわかりませんが、“いたずらに軍事的な緊張を高めるのは得策ではない”とサウジ側が考えたとしても不思議ではありません。

 

特に、ムハンマド皇太子は今回の石油施設攻撃で、これまでの強硬路線がこうした事態を招いたと国内的に批判を受けているとの報道もあります。

 

****サウジのムハンマド皇太子、石油施設攻撃で王族内部からも批判****

9月14日に石油施設2カ所が攻撃を受けた後、サウジアラビアの王族や財界エリートの一部からムハンマド・ビン・サルマン皇太子(34)に対する不満が噴出している。

1人の上級外交筋や、王族や財界エリートとつながりのある5人の消息筋によると、国防相を兼任する皇太子が攻撃を防げなかったことで、サウド王家の一部有力王族から皇太子の国防手腕や政治能力への懸念が高まっている。皇太子が権力の掌握に向けて厳し過ぎる締め付けを進めてきたことも反発を招いているという。

王家とつながりのある上流階級の1人は、皇太子の統率力について「反感が多い」と吐露。「どうして今回の攻撃を察知できなかったのか」と不満をあらわにした。

この関係者は、上流階級の一部は皇太子を「信頼していない」と言っているとも付け加えた。他の消息筋4人と上級外交筋も同様の見方を示した。

王家やビジネス界とつながる関係者4人によると、皇太子のイランに対する強硬姿勢やイエメン内戦への関与が攻撃を招いたとの批判が国内の一部で出ている。先の5人の消息筋と上級外交筋によると、多額の国防費を使っていながら攻撃を防ぐことができなかった皇太子に対して失望が広がっているという。

サウジのエリート層の一部では、皇太子が権力基盤を固めようとしていることが国に害を及ぼしているとの見方もある。政府に近い関係者の1人は、皇太子は前任者よりも経験のない人材を抜擢していると指摘した。

ただ、皇太子は依然として厚い支持を受けてもいる。皇太子に忠誠を誓うグループの1人は「今回の石油施設攻撃で、皇太子が最有力王位継承者としての立場に個人的に打撃を被ることはない。皇太子は中東地域でのイランの勢力拡大を阻止しようとしているからだ。これは国を愛することに関わる問題であり、少なくとも父親である現国王が生きている限り皇太子が危険な状況に陥ることはない」と述べた。

別の上位の外交筋も、一般的なサウジ国民は今でも、強力で決断力と行動力を備えた指導者として皇太子の下での団結を望んでいると述べた。【10月3日 ロイター】

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もっとも、秘密主義のサウジアラビアの、しかも王室内部の権力闘争的な話となると、北朝鮮と同じぐらいわからないことが多く、一部の報道をうのみにすることもできません。

 

まあ、カショギ氏殺害事件、イエメンの泥沼化、石油施設攻撃・・・と、失態続きのムハンマド皇太子が、改革路線を維持するためにも、なんらかの目に見える成果を求めているというのは、ありうる話かも。

コメント

サウジ石油施設攻撃  イラン強硬派による外交プロセス潰しのためなら、報復は武力ではなく交渉促進

2019-09-17 22:57:25 | イラン

(先週末に無人機の攻撃を受けた、サウジアラビアの首都リヤド郊外にある石油施設の衛星画像。米政府提供(2019年9月15日撮影、同16日提供)【9月17日 AFP】)

 

【「あまりにも脆弱」】

今回のサウジアラビア石油施設に対する攻撃は、いまだわからないことばかりですが、ひとつはっきりしたことは、世界経済に大きな影響を与える世界最大規模の石油施設の防衛体制が非常に脆弱であるということです。

 

そのことに関連して、かねてよりフーシ派のミサイル攻撃を阻止したと豪語していたサウジのパトリオットなどのミサイル防衛システムは今回はどうしたのか?という疑問も。(これまでもサウジ側の「攻撃を阻止した」との発表は“大本営発表”で、実際は防ぎきれていないとの指摘がありましたが・・・)

 

****脆弱ぶりを露呈****

攻撃を受けたのはサウジ東部ダーランから約60キロ離れたアブカイクにある世界最大規模の石油施設と、首都リヤド東方のクライス油田。(中略)

 

とりわけ、市場やペルシャ湾岸産油国がショックだったのは、石油施設が無人機攻撃に「あまりにも脆弱」(専門家)な実態を露呈したことだ。

 

サウジは巨額の軍事費を投じて防空網などを強化しつつあるが、こうした最新のシステムが、1機1万5000ドル(160万)程度の安価な無人機にいかに無力であるかを証明してしまった。(後略)【9月17日 WEDGE「サウジ石油攻撃、イラクから発進か?トランプ氏の報復示唆で緊張」】

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攻撃は、施設の重要部分を狙ってピンポイントの正確さで行われており、攻撃能力の高さがうかがえます。

 

****フーシ派による武器増強****

フーシ派は2015年から、イエメンでサウジアラビア主導の連合軍と戦いを展開しており、そして、サウジの防衛をすり抜けることができる長距離の攻撃能力を増強していると、これまでに何度も表明している。

 

3月にはサウジの領空境界から120キロ以上入ったところにある淡水化施設をドローンで上空から撮影し、その映像を公開した。

 

また5月には、サウジの東部州から紅海までつながる主要パイプラインをドローンで攻撃し、一時的に閉鎖に追いやった。さらに6月には、少なくとも20基のミサイルとドローンでサウジを攻撃し、犠牲者を含む被害が出ている。

 

英ロンドン大学キングスカレッジのアンドレアス・クレイグ教授は、「フーシ派は近年、特に弾道ミサイルとドローン技術を大幅に増強している」と、一連の攻撃発生時にAFPの取材で述べていた。

 

フーシ派が公開した動画には少なくとも15機の無人ドローンとさまざまなミサイルが捉えられていた。フーシ派によると最新兵器には、「アルクッズ(エルサレムの意味)」と名付けられた長距離巡航ミサイルや爆弾を搭載し、1500キロ先のターゲットも攻撃できるドローン「サマド3」が含まれているという。

 

サウジアラビア主導の連合軍報道官は16日、今回の攻撃に使われた武器が「イランからのものだということをすべての状況が示している」と指摘した。

 

専門家らは、ドローンの脅威がこれからも続く見込みで、国家の防衛や反政府組織の武器をも変えていくとの見方を示している。 【9月17日 AFP「サウジ石油施設攻撃、国家防衛の見直し迫るドローンの脅威」】

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今回の攻撃については、トランプ大統領やポンペオ米国務長官、エスパー米国防長官の発言は相次いでいますが、実際に攻撃を受けたサウジアラビアからの発言がありません。

 

サウジアラビア主導の連合軍が16日、攻撃に使われた武器はイラン製だった(まあ、それはそうでしょう。誰がやったかは別にして)と発表したことぐらいでしょうか。

 

サウジの発言を私が見落としているのかもしれませんが、そうだとしても“見落とす”ぐらいのものだということでしょう。

 

単に状況を精査しているということかもしれませんが、ここから先は全くの素人の想像ですが、サウジとしては国家の根幹でもある石油施設が「あまりにも脆弱」であるという現実を踏まえて、イランとの関係を決定的に悪化させ、報復合戦に陥るような事態を懸念し、慎重に対応を検討している・・・ということかも。

 

仮にイランとの間での大規模な武力行使といった事態になれば、今回の攻撃で明らかなったように、サウジの石油施設は最初の一撃でひとたまりもないでしょう。その後の戦闘で勝とうが負けようが、いくらアメリカがトマホークをイランに撃ち込もうが、サウジにとっては国家の根幹を失うということにはかわりありません。

 

【アメリカの対イラン強硬派・・・アメリカが弱腰だからイランにつけこまれる】

一番の関心事となっている「誰がやったのか?」ということについては、いろんな考えが報じられています。

 

アメリカは「イランがやった」ということのようですが、先日のタンカー攻撃のときと同様に、決定的な証拠は示してはいません。攻撃の向きがイラン・イラク方面からのもので、イエメンからは難しい云々も、証拠としてはやや迫力を欠きます。

 

そうしたなかで、アメリカの対イラン強硬派は、直接にせよ、間接にせよ、イランの関与は間違いないという前提で、以前トランプ大統領が対イラン攻撃を直前に取りやめたように“弱腰”だからイラン側につけこまれるのだ・・・との主張です。

 

****【社説】サウジ石油施設攻撃はイランの答え ****

イランを警戒していたボルトン氏は正しかった

 

ドナルド・トランプ米大統領が2015年のイラン核合意からの離脱を表明して以来、イランは中東各地で軍事的緊張を高め、米国の決意を試してきた。

 

(中略)イランは攻撃への関与を否定しているが、直接的な衝突を避けるために代理組織を使うのがイランの常とう手段であり、他に思い当たる犯人もいない。

 

(中略)攻撃を行ったのがフーシ派ではなかったとしても、イランはイエメンでアラブ有志連合と戦うフーシ派を支援している。フーシ派はサウジ国内や紅海を航行する石油タンカーへの攻撃を激化させている。

 

もしサウジがイエメンをフーシに奪われれば、イランはアラビア半島をめぐる代理戦争にも勝利したことになる。サウジは理想的な同盟国とは言い難いが、サウジへの支援打ち切りを求める米上院議員は、イランに中東地域の覇権を握らせないための代替案を考えるべきだ。

 

ホワイトハウスによると、トランプ氏はサウジのムハンマド皇太子と電話会談し、米国による支持を約束した。しかしホワイトハウスは言葉だけで終わらせるべきではない。

 

イランはサウジに対してだけではなく、トランプ氏にも探りを入れている。「最大限の圧力」をかけるというトランプ氏の決意を試し、弱みをかぎつけている。

 

イランが夏に米国の無人機を撃墜したが、トランプ氏は軍事的報復の提案を拒否した。イランの対外工作を担うコッズ部隊のカセム・ソレイマニ司令官はこれまで、こうした抑制的な動きがあると、イラン側に分があり事態をエスカレートさせても問題ないと解釈してきた。

 

トランプ氏はイランのハッサン・ロウハニ大統領との直接会談についても前向きで、ポンペオ氏は国連総会の場での首脳会談を提案した。

 

トランプ氏はエマニュエル・マクロン仏大統領が提案したイランへの150億ドル(約1兆6200億円)の支援への支持も検討している。週末の攻撃はそうした米国の動きに対するイランの答えだ。(中略)

 

トランプ氏がジョン・ボルトン氏に謝罪することになるかもしれない。ボルトン氏は、イランがホワイトハウスの弱点を見つけてはそこを突いてくると繰り返し警告してきた。

 

そのボルトン氏は先週、イラン政策などをめぐる意見の相違から大統領補佐官を辞任した。週末の攻撃はボルトン氏が正しかったことをはっきりと証明した。トランプ政権の圧力キャンペーンは効果を上げている。今それを断念すれば、イランはこれまで以上に軍事的リスクを取るだろう。【9月17日 WSJ】

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【外交プロセス進展を阻止する狙いのイランあるいはイラン関連の強硬派の犯行か】

この種の主張は「イラン」とひとくくりにしていますが、イラン内部にはアメリカとの緊張関係を望む強硬派と、市民生活の安定を優先させ、アメリカとの関係改善を志向する穏健派の微妙なバランス・綱引きが存在します。

 

対イラン強硬派からすれば、「イランに強硬派も穏健派もない、イランはイランだ」ということなのでしょうが、そうした強硬派と穏健派の存在ということを重視すると、アメリカとの対話が取り沙汰されるようになった矢先の今回攻撃は、(新たな制約がイランに課されることにつながる)対話による緊張緩和を嫌う強硬派による対話潰しではないか・・・との推測がなりたちます。

 

その、イランおよびイランが支援するサウジ攻撃能力を持つ強硬派としては、イラン革命防衛隊、イエメンのフーシ派、イラクの民兵組織「人民動員隊(PMF)」があげられています。

 

****サウジ石油施設への攻撃、背後に潜む意図とは****

外交は難しい作業だ。対照的に、外交を停止させるのは比較的容易だ。中東地域の強硬派はそれを知っており、その認識の下、これまで長年にわたり行動してきた。

 

週末にサウジで起きた石油施設への攻撃の後でも、この経験則を頭に入れておくことが重要だ。今回の攻撃では、サウジの2つの石油施設が被害を受け、そのうち1つは世界で最も重要な原油処理施設だった。

 

攻撃が誰の仕業なのかは依然分かっていない。イランの支援を受けているイエメンの反政府武装勢力「フーシ派」は、自らの犯行だと主張している。フーシ派は、イエメンの隣国であるサウジと激しい対立を続けている。

 

しかし、マイク・ポンペオ米国務長官は、直接イランに非難の矛先を向けている。米当局者らは16日、さらに踏み込んで、イランの領土内からミサイルが発射されたことを示す情報があると語った。

 

いずれにせよ、攻撃のタイミング自体に、大いに怪しむべき点がある。攻撃が行われたのは、まさにドナルド・トランプ米大統領が今月下旬の国連総会の場でのイラン大統領もしくは外相との外交交渉を可能にするため、厳しい対イラン経済制裁の若干の緩和を検討していた時だった。フランスも、まさにこうした若干の関係改善に向けて、精力的な働きかけを行っていた。

 

しかし、突然始まった外交的動きを好ましく思わない勢力も多い。そのうち一部は、動き始めた外交プロセスを停止させるような危機を生み出すため、ミサイルを活用できる立場にある。恐らくこれが、週末の出来事の説明になると思われる。

 

容疑者リストの筆頭に挙げられるのは、イラン政府内の強硬派だ。国際社会のみならずイラン国内でも、多くの人々は、オバマ前政権下でまとめられたイラン核合意からの離脱をトランプ氏が決めたことを危機と捉えた。しかし、イラン国内の一部強硬派は、これを好機と受け止めた。

 

イラン革命防衛隊の指導者を含む強硬派は、そもそも核合意を好意的に受け止めていなかった。むしろ核合意が廃棄されれば、核および弾道ミサイル開発の取り組み強化の論理的根拠になると考えている。

 

またイランの強硬派は別のことも知っている。米国との外交的なダンスをやめることに加え、サウジの石油施設を攻撃すれば、欧州とアジアの指導者たちを怖がらせ、米国の経済制裁に対する何らかの救済措置を引き出せるかもしれないことだ。

 

もちろん、それでイランが攻撃を仕掛けたという証明にはならない。ただ単に、強硬派はサウジの施設が火を吹いているのを見て悲しいとは思わないということだ。

 

イエメンのフーシ派は、緊張を高めることに同様の関心を持つ。イランから全面的な支援を得ているフーシ派は、サウジとの代理戦争を行っているようなものだ。サウジは国際的に認知されたイエメン政府の復権を試みている。

 

フーシ派には、サウジの施設を攻撃する彼らなりの理由が多くあり、サウジによる残忍な空爆への報復として頻繁に攻撃を行っている。

 

しかし、フーシ派には外交プロセスが始まることを懸念する理由もある。彼らは、イランと米国、そして米国の友人であるサウジとの緊張を緩和させるいかなる外交プロセスからも置き去りにされかねない。

 

またフーシ派は、米議会でサウジへの支持が脆弱(ぜいじゃく)になっていることも知っているはずだ。議会では、サウジ人ジャーナリストのジャマル・カショギ氏暗殺においてサウジ政府が果たした役割や、その他の人権侵害への懸念が収まっていない。共和、民主両党の議員は週末にトランプ政権に対し、今回の攻撃を受けてサウジとフーシ派およびイランとの戦いに米国が引きずりこまれてはならないと警告した。

 

要するにフーシ派には混乱を継続させるだけの十分な動機があるということだ。また彼らは、同じことをやりがたっているイランの強硬派の代理として活動することが可能である。

 

一方、イランの別の代理勢力もある。同じような動機を持つイラクの民兵組織「人民動員隊(PMF)」だ。PMFはイラン政府の暗黙の了解とイラン革命防衛隊の活発な支援を得てイラク国内に勢力地域を確保し活動している。イスラエルはPMFをイラン強硬派の前哨基地とみなして強く懸念しており、その表れとして過去数週間、PMFの施設を攻撃している。

 

重要な点は、これら勢力―イラン国内の強硬派、イエメンのフーシ派、イラクの親イラン派―のいずれもが、外交交渉が本格的に動き出す前にそのプロセスを停止させようとする動機を持っていることだ。米国とイランの間のどんな合意であれ、そこには、イランによる周辺地域の過激派に対する支援の縮小、その見返りとして米国による貿易制裁の緩和が含まれるだろう。

 

そうした交渉に基づく結果は、現状ではとても実現しそうもないように思われる。とはいえ、そのアイデアがトランプ氏の関心をある程度引いているのは明らかだ。

 

トランプ氏は15日のツイートで、自身がイラン指導者との前提条件なしの会談を行う用意があると示唆したとの報道内容は「フェイクニュース」の典型だと指摘した。

 

しかし、トランプ氏は今夏、NBCニュースのチャック・トッド氏とのインタビューで同じ内容のことを話していた。イラン指導者との会談のために前提条件はあるのかと聞かれたのに対し、トランプ氏は「私に関する限りはない。前提条件なしだ」と答えていた。

 

中東の悪人たちの大半が承知している通り、そうした外交プロセスを阻止する最善策はアイデアがゆりかご段階にある時に始末しておくことである。【9月17日 WSJ】

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もし、今回攻撃が上記のようなイラン・アメリカの緊張を和らげる外交プロセスを阻止する目的でなされたのであれば、今回攻撃に対する「報復」は武力行使ではなく、彼らの嫌う外交プロセスを遅滞なく強力に推し進めることでしょう。

 

ただ、“イランの最高指導者ハメネイ師が17日、テヘランで演説し、「いかなるレベルであっても、二国間でも多国間であっても、我々は米国と協議しない」と述べ、トランプ米大統領が求めてきた米との直接交渉の拒否を明言した。”【9月17日 読売】ということで、現実には難しいハードルがあります。

 

【交渉に向けた圧力のつもりが“うまく行き過ぎた”との見方も】

なお、イランが交渉を有利に進めるために圧力をかけようとして攻撃を行ったが、“うまく行き過ぎた”という見方もあるようです。

 

****イランは計算違い?****

イラン指導部は最近、トランプ大統領の再選の可能性が濃厚であり、制裁で締め付けられている同国を経済的な崩壊から救うためには最終的に、トランプ氏と交渉せざるを得ないとの結論に達したと伝えられている。

 

そのためには、イラン配下の勢力を使って軍事的な緊張を作り出す一方で、トランプ氏との交渉に応じるというシグナルを送る“二重戦略”に転換したとされる。要はトランプ氏に「イランと交渉した方が再選に有利」と思わせて交渉に引き込むことが狙いだ。 

 

トランプ大統領は無条件でイランのロウハニ大統領との交渉に応じるという姿勢を示し、離脱した「イラン核合意」に代わる合意をまとめることに意欲を見せ、17日から始まる国連総会の期間に訪米するロウハニ大統領との会談が実現する可能性が取りざたされていた。

 

トランプ氏は「イラン核合意」がイランに核開発の権利を認めていたのに対し、そうした権利を与えない合意に達することに自信を示している。

 

イランが米国の主張通り、サウジ攻撃に関与していたとすれば、「これほど攻撃がうまくいくとは想定していなかったのではないか。イランと交渉しないと、地域の安定はありえないことを示すために、小規模の損害を与えるつもりが計算違いで大打撃を与えてしまった」(ベイルート筋)との見方もある。

 

狂ったシナリオにどのような結末が待ち構えているのか、米・イラン首脳会談が遠のいたことは確かなようである。【9月17日 WEDGE「サウジ石油攻撃、イラクから発進か?トランプ氏の報復示唆で緊張」】

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いろんな見方がありますが、真相はもう少し様子を見ないとわかりません。

ただ、先述のように、イラン内部の強硬派による外交プロセスを阻止する目的でなされたのであれば、今回攻撃に対する「報復」は武力行使ではなく外交プロセスの前進であるということは十分に念頭に置いておく必要があります。

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イラン問題  マクロン仏大統領、首脳会談を仲介 実現可能性は不透明 イスラエルの“影の戦争”

2019-08-27 22:02:00 | イラン

(イランのジャヴァド・ザリフ外相(左)はツイッターに、ビアリッツでエマニュエル・マクロン大統領(右)やジャン=イヴ・ル・ドリアン外相(右から2番目)らと会談した様子を投稿した【826日 BBC】)

 

【マクロン仏大統領 意表を突く米・イラン仲介】

膠着状態のアメリカとイランの対立ですが、G7のマクロン仏大統領の仲介もあって、動く可能性の兆し・・・といった程度ではありますが、アメリカ・イランが会談に言及するところとなっています。

 

もちろん、可能性について言及したといったレベルの話で、どこまで現実化するかは一切不透明ですが。それでも、その類の話が全くなくて非難の応酬に明け暮れているよりはましでしょう。

 

****仏大統領 イラン制裁一部解除を米大統領に提案****

フランス南西部で開幕したG7サミット=主要7か国首脳会議の議長国、フランスのマクロン大統領はイラン情勢の緊張緩和に向けアメリカのトランプ大統領に対し、イランに対話を促すため制裁の一部を解除することを提案しました。G7サミットはフランス南西部のビアリッツで24日、開幕しました。

開幕に先立ちフランスのマクロン大統領はアメリカのトランプ大統領と昼食をとりながら首脳会談を行い、フランスの外交筋によりますと、2時間にわたってイラン情勢のほか世界貿易や南米アマゾンの森林火災などについて協議したということです。

このうちイラン情勢についてマクロン大統領はトランプ大統領に対し、イランが核合意を順守し弾道ミサイルの問題を含むより幅広い対話に応じるよう促すため、イランの原油の輸出を対象にした制裁を一定期間、解除することを提案したということです。

外交筋によりますと、これに対しトランプ大統領はイランとの対立は望まず合意を求めていると述べたということです。

首脳会談のあとトランプ大統領はツイッターに「多くのよいことが両国に起きている」と投稿しましたが、アメリカ政府はイラン情勢についてどのような協議が行われたのか明らかにしていません。

イラン情勢は今回のG7サミットの重要議題になっており、マクロン大統領の提案がイラン情勢の緊張緩和につながるか、議論の行方が注目されます。

 

イラン外相「正しい方向」と評価

イランのザリーフ外相は、この前日の23日、パリでマクロン大統領と会談したあと、フランスの通信社AFPの取材に対して、「マクロン大統領はイランのロウハニ大統領にいくつかの提案をした。まだ至らぬ部分はあるが、正しい方向に向かっていると思う」と述べ、提案の具体的な内容は明らかにしなかったものの、マクロン大統領の提案を評価する発言をしています。【825日 NHK】

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マクロン仏大統領は、このイラン問題を提起するにあたり、意表を突く形でイランのザリフ外相をフランスに招き、G7サミット開催中の同国南西部ビアリッツで、G7と並行して会談するという異例の対応をとっています。

 

****G7閉幕 仏大統領が型破りな外交手腕を発揮****

フランス南西部ビアリッツで開催された先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)が26日に閉幕した。

 

恒例の首脳宣言は出さず、予告なしにザリフ・イラン外相を招くなど、マクロン仏大統領による型破りな外交手腕が際立つサミットとなった。

 

昨年はカナダでのG7サミットを途中で退席したトランプ米大統領も、今回は最後まで滞在し、各国首脳と談笑したり、握手を交わしたりする姿がみられた。

 

サミットでは毎回、世界の課題を列挙した包括的な首脳宣言が採択されてきたが、前回はトランプ氏が署名を拒否。今回ホスト役を務めたマクロン氏は、開幕前から宣言見送りの意向を示していた。

 

宣言の取りまとめに向けた各国の事前調整が不要になったことで、マクロン氏は議事進行の主導権を握り、25日にはザリフ氏を急きょ招待して周囲を驚かせた。

 

トランプ氏は26日朝、ザリフ氏招待についてはマクロン氏から事前に承認を求められ、これに応じていたと主張した。しかしマクロン氏はトランプ氏との共同会見で、同氏には事前に状況を知らせたものの、招待は自身の判断だったと説明した。招待はG7が目的ではなく、自国への招待だったとも言い添えた。(中略)

 

トランプ氏は会議を振り返り、意見の対立もなく和やかな雰囲気だったと述べて「一体感」を強調した。

 

トランプ氏の友好的な姿勢を各国首脳がどう受け止めたのか、はっきりとは分からない。しかしこれまで同氏に冷淡な視線を向けてきたメルケル独首相も、今回は笑顔を見せる場面があった。【827日 CNN】

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首脳宣言については、最終段階になって、サミットの合意内容を1ページの宣言文書にまとめる形がとられました。

(各国からの要請に応じてマクロン大統領が最後に方針転換したとの説明【時事】と、マクロン大統領自身が宣言作成にこだわったとの説明【毎日】の二通りの報道がありますが、宣言なしに自由な討議を目指していた経緯からすれば前者ではないでしょうか。ペーパーはマクロン大統領が自ら作成したようです。)

 

【トランプ大統領 「適切な状況が整えば(首脳会談に)応じる」】

マクロン大統領の手腕もさることながら、トランプ大統領も、今回は前回に比べると穏やかな対応を見せたようです。

 

マクロン大統領の提起したイランとの首脳会談についても「適切な状況が整えば応じる」と。これまでに比べると柔軟な姿勢を見せています。

 

****米イラン「状況整えば」首脳会談=トランプ氏、数週間内でも―仏提案も実現不透明****

フランスのマクロン大統領は26日、仏南西部ビアリッツでの先進7カ国首脳会議(G7サミット)閉幕後に記者会見し、トランプ米大統領とロウハニ・イラン大統領の会談を数週間以内に実現させたいと述べた。

 

マクロン氏と並んで会見に臨んだトランプ氏も「適切な状況が整えば応じる」と語った。9月下旬の国連総会に合わせた会談を想定しているとみられる。

 

米イラン首脳の直接会談が実現すれば、1979年のイラン革命後初めてとなる。一触即発の状態が続く米イラン関係の緊張緩和に向け、フランスや英独などが仲介しつつ、トランプ政権の要求を満たす「新たな核合意」を目指す方針。

 

だが、イラン側がより厳しい条件を受け入れるかは不透明で、会談が計画倒れに終わる可能性もある。

 

マクロン氏は、サミット参加国がイランの核兵器保有と地域の不安定化を許さないことで一致したと強調。「既存の核合意を大幅に改善するか、新たな合意を形成するための具体的方策を議論した」と語った。

 

条件については「詳細は言えない」と述べつつも、イランがより多くの核関連施設に査察を受け入れることなどの見返りとして、融資を含め「何らかの経済的補償」を提案。「ロウハニ師は会談に前向きな姿勢を示した」と明かし、実現に期待を寄せた。

 

一方、トランプ氏は核兵器と弾道ミサイルを禁止する長期間の合意が必要だと主張した。制裁下で不況に苦しむイランへの貸付資金については「米国は出さず、他の国々が拠出する」と強調した。

 

その上で「イランは素晴らしい可能性を秘めた国だ」と持ち上げた。マクロン氏の提案が「うまくいくような気がしている」と楽観する姿勢も示した。

 

マクロン氏は25日、イランのザリフ外相をビアリッツに招待し、参加国首脳を驚かせた。米側との電撃会談は実現しなかったが、トランプ氏は「時期尚早だと思った」と説明していた。【827日 時事】 

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北朝鮮との突然の会談を考えれば、イランとの会談もないことはないでしょう。

ただ、これも北朝鮮との会談からすれば、会談したから実質的成果がすぐに出るというものでもないでしょう。

それでも、日本にとっては、ホルムズ海峡有事の緊張状態よりはましでしょう。

 

【イラン・ロウハニ大統領は、「国益にかなうならば、会談をためらわない」 ハメネイ師の判断次第】

一方のイラン側の対応もまんざらではなさそうです。

 

****イラン大統領「国益にかなうならためらわず」 米との会談示唆****

アメリカとイランの緊張が高まる中、イランのロウハニ大統領は、「国益にかなうならば、会談をためらわない」と述べ、名指しこそしなかったものの、条件次第では、トランプ大統領との会談に臨む可能性を示唆しました。

 

イランのロウハニ大統領は、26日、首都テヘランで、経済政策について演説しました。この中で、敵対するアメリカのイランに対する経済制裁に言及した上で、「誰かとの会談を通して、この国の問題が解決され、国益にかなうならば、会談をためらわない。交渉や外交のための扉は開いている」と述べ名指しこそしなかったものの、条件次第では、トランプ大統領との会談に臨む可能性を示唆しました。

一方で、フランスのマクロン大統領が、トランプ大統領に対して、イランが弾道ミサイルの問題を含む幅広い対話に応じるよう促すため一定期間、イランに対する制裁を解除するよう提案したとされることについて、イランの国営テレビは26日、関係者の話として、「イラン側はミサイル開発については交渉できないとすでに回答した」と伝えました。

 

イランとしては、硬軟織り交ぜた態度を示しながら、みずからに都合の良い条件を引き出したい思惑があるものとみられます。【827日 時事】

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ただ、イラン国内向けとしては強気の姿勢を崩していません。

 

****イラン大統領、米に「最初の一歩」として制裁解除を要求****

イランのハッサン・ロウハニ大統領は27日、米国がイランに対するすべての制裁を解除することで「最初の一歩を踏み出す」よう要求した。この前日、ドナルド・トランプ米大統領は、ロウハニ大統領と会談する用意があるとの見解を示していた。

 

ロウハニ大統領はテレビで中継された演説の中で、「一歩とは制裁を引っ込めることだ。イランに対して科した、違法で、不当で、誤った制裁をすべて解除する必要がある」と述べた。 【827日 AFP】

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最終的には、最高指導者ハメネイ師の判断となります。

 

****最高指導者どう判断 イラン、米との首脳会談で*****

トランプ米大統領が2015年のイラン核合意をめぐる対立を打開するため、ロウハニ大統領との首脳会談に積極的な姿勢を示したことで、イラン指導部は米との緊張が当面は和らぐとして歓迎しているもようだ。

 

ただ、米側が求める「核・弾道ミサイル開発の停止」はイランの生命線を断つに等しい安全保障の根幹であり、和解への道筋は容易に描けないのが実情だ。

 

ロイター通信によると、ロウハニ師は公式サイトで「誰かと会談することで問題が解決されるとわかれば、ためらいはしない」と述べ、トランプ氏との会談も排除しない考えを示唆した。2人はともに9月の国連総会に出席する予定とされる。

 

しかし、イランの国政全般の決定権を握るのはロウハニ師ではなく、反米で知られる最高指導者ハメネイ師だ。同師は米側との対話は「毒」だなどと一貫して否定してきた。

 

オバマ前米政権との間で締結した核合意を離脱したトランプ政権に対する抜きがたい不信感もある。核・ミサイル開発の余地がない合意には応じず、米側とは折り合えない可能性は否定できない。(中略)

 

核、ミサイルをともに開発する余地がある限り、核爆弾の搭載可能な弾道ミサイルが製造できる可能性は残り、米の同盟国イスラエルを含む周辺の親米国家は不安に悩まされることになる。この「潜在的脅威」がイランの安全保障を支えている。

 

イランは60日ごとに核合意の履行義務を段階的に放棄すると表明しており、次の期限は9月前半に設定されている。

また、英領ジブラルタルで拿捕(だほ)されたイランのタンカーは8月中旬に解放され、イランが報復として拿捕した英タンカーをいつ解放するかにも注目が集まっている。

 

こうした問題にどう反応するかが、今後の米との対話に向けたイランの姿勢を占う試金石となりそうだ。【827日 産経】

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【イスラエル・ネタニヤフ首相が仕掛ける影の戦争

イランをめぐってもうひとつ注目される動きは、総選挙を控えたイスラエル・ネタニヤフ首相の強硬姿勢です。

イスラエルは、このところ連日シリア、イラク、レバノンのイランおよびヒズボラ関連施設への攻撃を行っています。

 

****イスラエル、3カ国で相次ぎ攻撃、イランとの影の戦争激化****

イランの同盟国であるイラク、シリア、レバノンの3カ国がこの数日、相次いで無人機やミサイルによる攻撃を受けた。イスラエルがイランとの影の戦争を激化させていると見られている。

 

レバノンのシーア派武装組織ヒズボラの指導者ナスララ師が報復を誓うなど中東情勢は新たな緊張に包まれている。

 

「やられる前に殺せ」

激化したのは824日のシリア攻撃からだ。ダマスカス南東アクラバにあるシリア駐留のイラン革命防衛隊の拠点がミサイル攻撃を受け、人権監視団体によると、少なくとも5人が死亡した。死者の中に、革命防衛隊員1人とヒズボラの戦闘員2人が含まれているという。

 

イスラエル軍は一連の攻撃の中で唯一、このシリア攻撃についてのみ認める声明を発表、「革命防衛隊のコッズ隊とシーア派民兵組織のテロリストの標的を攻撃した。彼らがイスラエルに自爆ドローンの攻撃を仕掛けようとしていたからだ」と明らかにした。コッズ隊は革命防衛隊の中で海外戦略を担うエリート部隊。神出鬼没と知られるソレイマニ将軍に率いられている。

 

この直後の25日未明。今度はレバノン・ベイルートの南郊にあるヒズボラの事務所近くで無人機1機が墜落、続いてもう1機が爆発した。この攻撃でヒズボラのメディアセンターの一部が破壊された。

 

同じ日にイラク西部アンバル州でも、イラン支援のシーア派民兵組織「カタエブ・ヒズボラ」の拠点が無人機による攻撃を受け、指揮官ら2人が死亡した。

 

この一連の攻撃に先立って7月から、イラクの4カ所でシーア派民兵組織の武器庫などが標的になる攻撃が発生しており、これもイスラエルの攻撃と見られている。

 

イスラエルのネタニヤフ首相は明確には認めなかったものの、「イランはどこにいても隠れることはできない。必要な時はいつでも、彼らに対して行動を起こす」と述べ、イラン関連施設を狙った攻撃であることを示唆した。

 

同首相はその後のツイッターでも「イスラエルを抹殺しようとする奴らがいれば、やられる前に彼らを殺せ」と先制攻撃の必要性を強調した。

 

イスラエルはこれまで、シリア駐留のイラン革命防衛隊やヒズボラなどの拠点を再三攻撃してきたが、イラクまで手を伸ばし始めたことは注目に値する。

 

イスラエルによるイラク攻撃は1981年以来初めてであり、イスラエルの行動がいかに一線を超えたものであるかが分かる。戦線を拡大しても、イランの脅威の芽を徹底的に摘み取るという断固とした決意の表れともいえるだろう。

 

だが、こうしたイスラエルの強硬方針はペルシャ湾で米国とイランが対決を激化させる中、中東情勢を一段と不安定なものにするのは必至だ。

 

報復誓うヒズボラ

今後はとりわけヒズボラの動きが焦点だ。強硬なアジテイターとしても知られるヒズボラの指導者ナスララ師がベイルートのメディアセンターが攻撃を受けた25日夜、ベカー平原で演説、イスラエルによる攻撃だと非難するとともに、レバノンからイスラエルに報復すると警告したからだ。

 

同師は緊張する現状について、イスラエルによって作られた新たな段階と指摘、「レバノンとの国境に配備されているイスラエル軍に通告する。今夜からわれわれに備えて待っていろ」と恫喝した。イスラエル国民に対しても、ヒズボラが侵略を見過ごすほど寛容ではないなどと強調した。

 

ベイルートの情報筋によると、ヒズボラはイランの意を受けて、シリアの内戦でアサド政権支援のため、最盛期には2万人の戦闘員をシリアに送り込んだ。しかし、戦死者も数千人に上ったうえ、アサド政権が内戦の勝利を確定的にしたことなどから一部が撤収、シリア派遣部隊は現在、8000人程度にまで減っていると見られている。

 

だが、ヒズボラはシリア内戦の実戦で戦闘力を一段と高めたといわれており、イスラエルにとっては大きな脅威だ。シリアに拠点を築いたヒズボラはシリア、レバノン双方からイスラエルに攻撃を仕掛けることが可能になっており、戦争になれば、イスラエルは2正面作戦を強いられることになるだろう。

 

イスラエルがこうした対外的な攻撃に出ている一方で、パレスチナ自治区ガザからも先週末、3発のロケット弾がイスラエルに向け発射され、うち1発が高速道路近くに着弾、この報復としてイスラエル軍機がガザのイスラム過激派組織ハマスの拠点などを空爆した。

 

イスラエルでは917日にやり直し総選挙が実施される予定だが、選挙に向けて周辺国やハマスに対する攻撃が一段と激化する恐れがある。

 

ネタニヤフ首相が敵対勢力から国家を防衛するという強硬姿勢を示すことで、選挙を有利に運ぼうとしかねないからだ。「そうした火遊びが大戦争を招くかもしれない」(ベイルート筋)

 

米国とイランが対決するペルシャ湾だけではなく、イスラエルを取り巻く状況も緊迫の度を強めてきた。【827日 佐々木伸氏 WEDGE Infinit

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アメリカとイランの表舞台の交渉が取りざたされるなかで、イスラエルとイラン関連勢力との影の戦争が進行しており、この両者が絡み合って今後どのように展開するのか見通せません。

 

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イラン・ホルムズ海峡の緊張 英新首相はアメリカとの連携へ? UAEはイランとの関係探る

2019-07-31 23:19:22 | イラン

(イラン港湾都市バンダルアバス沖に停泊する英船籍のタンカー「ステナ・インペロ」を監視するイラン革命防衛隊(2019721日撮影)【7月23日 AFP】)


【進まない米主導有志連合構想に、アメリカは圧力を強化 イギリスはアメリカとの連携の方向へ?】

アメリカ・トランプ政権は中東ホルムズ海峡の安全確保を目的とする有志連合構想を進めていますが、実質的にアメリカ主導の「イラン包囲網」となるため、日本や欧州各国の対応は慎重です。

 

****米、有志連合協力要請強める=日本を名指しでけん制***

トランプ米政権は中東ホルムズ海峡の安全確保を目的とする有志連合構想について、日本などの同盟国を中心に協力要請を強めている。「イラン包囲網」の色彩を帯びる米国主導の有志連合への支持が広がらず、焦りを見せているためだ。

 

トランプ大統領は26日、ジョンソン英首相、フランスのマクロン大統領と電話会談しイラン情勢について協議。有志連合への協力を求めたとみられる。

 

ポンペオ国務長官は25日、FOXニュースのインタビューで、日本や英国、フランス、ドイツ、ノルウェー、韓国、オーストラリアの国名を挙げ、有志連合への参加を迫った。

 

トランプ政権は25日、各国に対して有志連合構想に関する2回目の説明会を行ったが、米主導の構想を敬遠する国も多いのが実情だ。ポンペオ氏は具体的な国名を名指しすることでけん制する狙いもあったとみられる。

 

岩屋毅防衛相が26日、「(説明会の)報告をしっかり聞いた上で、どう対応すべきか検討したい」と述べるにとどめるなど、日本政府は有志連合への参加を明言していない。【7月27日 時事】 

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欧州各国は、イランとの核合意維持を重視する立場にあり、アメリカ主導の「イラン包囲網」に加わることでイランを刺激することを避けたい思いがあります。

 

一方で、イランとのタンカー拿捕合戦を繰り広げているイギリスが提唱する「欧州による船舶保護」構想も具体化しておらず、イギリスは独自に軍艦をホルムズ海峡に派遣しています。

 

****米主導の「有志連合」 欧州は様子見 対話を重視****

中東ホルムズ海峡で米国がタンカー護衛の「有志連合」を呼びかけたのに対し、イラン核合意の維持を掲げる英独仏3カ国は様子見の態度を続けている。

 

英前政権が提案した「欧州主導の船舶保護」は具体化しないまま。3カ国は米国の圧力に加わってイランを刺激することを避けつつ、対話による緊張緩和を探っている。

 

英国のジョンソン新首相は、トランプ米大統領から「素晴らしい首相になる」と期待されたが、イラン問題では慎重だ。両首脳は26日の電話会談でペルシャ湾情勢に触れた。英政府は2人が「パートナー国を交えて共に取り組む」必要性で合意したと発表しつつも有志連合への言及は避けた。

 

ラーブ英外相も英紙タイムズのインタビューで「欧州による取り組みは米国の支持がないとうまくいかない」と述べたが、有志連合には触れずじまいだった。

 

一方、独仏両国はイランとの外交に専心する。マクロン仏大統領は23日、イランのアラグチ外務次官とパリで面談し、ロウハニ大統領のメッセージを受け取った。最近の米欧では、イランとの最も高位の接触になった。

 

「欧州による船舶保護」構想では、パルリ仏国防相が仏紙との会見で、英独と情報共有などを協議中だとした上で「緊張を高めるような仏軍派遣は行わない」と明言した。

 

ドイツのクランプカレンバウアー国防相も「現在、重要なのは軍事より外交だ」と発言。欧州の取り組みについても、参加検討は「中身が分かってから」と述べるにとどめた。

 

欧州側が慎重なのは、武力行使の示唆で威嚇しながら対話を探るトランプ政権の手法に戸惑っているためだ。ポンペオ米国務長官は26日、米メディアで「イラン国民に呼びかけるため、必要があれば喜んで訪問する」と述べたが、イランは米国の圧力に強硬姿勢で応じており、対話実現の見通しは立っていない。

 

欧州による船舶保護が実現しない中、英国は単独で英船籍タンカーの護衛を行っている。英国防省は28日、駆逐艦「ダンカン」のペルシャ湾到着を発表。フリゲート艦「モントローズ」と共に護衛に当たる。イラン政府報道官は28日、欧州による護衛船派遣は「敵対的なメッセージになる」として反対した。

 

イラン核合意に参加する英独仏と中国、ロシアの5カ国とイランは28日、ウィーンで高官協議を実施。ロウハニ師は同日の声明で、ジョンソン氏の英首相就任を祝福し、テヘラン訪問を呼びかけ、欧州との関係改善を図ろうとしている。【7月29日 産経】

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アメリカは欧州各国に働きかけを強めており、トランプ大統領が称賛するジョンソン英首相はアメリカと連携する方向に転じたようです。ドイツは国内に意見の対立があります。

 

****ペルシャ湾の安全確保・英国は米国との連携の意向****

米国はドイツに対して航行の安全確保への任務への協力を公式に要請した。


ホルムズ海峡は石油の海上輸送の要所ですでにいくつものトラブルが発生。

最新のトラブルは英国タンカーがイラン革命防衛隊に拿捕された事件で英国政府は当初、ヨーロッパ独自の護衛活動を求めていたがジョンソン新首相は米国と連携する意向。

米国はここにきてドイツへの圧力を強めている。
ドイツ連立政府内では海軍の派遣に対して意見が大きく分かれている。有志連合への参加要請は党にきており連立政府はこれを拒否してきた。

SPDはイランへの圧力を最大限に高めようとする米国の戦略に参加する意思はなく最終的に戦争に巻き込まれるとの懸念があるから。
CSUはヨーロッパによるミッションに賛成しておりドイツは海上輸送の安全確保に寄与すべきとの意見。【7月31日 NHK・BS1】

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もっとも、このジョンソン新首相の“米国と連携する意向”に関しては、他の記事ではまだ見ていませんので、詳細は知りません。まあ、トランプ大統領と似た者同士ですから、ありえる話ではありますが。

 

【湾岸諸国ではUAEがサウジとの連携を見直し、イランとの関係を模索する方向へ】

一方、「イラン包囲網」の一翼を担う中東湾岸諸国のなかで、サウジアラビアとともに主導的な立場にあったUAEがイランとの関係を模索する方向に転じています。

 

****サウジ・UAE連合に亀裂、転変する緊張のペルシャ湾****

(中略)

UAEの離反

トランプ政権はこうしたイラン包囲網の一環として、サウジアラビアに16年ぶりに駐留部隊を派遣することで、サウジからの合意を取り付けた。すでにプリンス・スルタン空軍基地には米軍の戦闘機や部隊の一部が到着した。

 

サウジはメッカなど聖地を抱える「イスラムの守護者」。異教徒の駐留には一部から強い反対がある。

 

湾岸戦争の際には、王国指導部が米軍の駐留を許したことに反発が広がり、その急先鋒だったオサマ・ビンラディンがサウジを追放され、後に国際テロ組織アルカイダを創設したのはよく知られているところ。

 

今回の米軍駐留はサウジを牛耳るムハンマド皇太子とトランプ政権との親密な関係の上に実現したが、サウジ国内に新たな火種が生まれたことは確かだ。

 

こうした米国とサウジアラビアにとって実は深刻な事態が進行中だ。それは対イラン政策でサウジとタッグを組んできたUAEが離反の動きを見せていることだ。

 

例えば、UAEはムハンマド皇太子主導のイエメン戦争で、5000人の部隊をイエメンに派遣し、戦闘を主導してきた。

 

そもそもイエメン戦争はイラン支援の武装組織フーシ派がイエメンの実権を握ったことにサウジアラビアが反発して本格的に軍事介入。サウジが主に空爆を担ったのに対し、UAEは“兄貴分”のサウジの求めに応じて空爆の他、地上部隊を派遣して血を流した。

 

だが、UAEはこの1カ月で部隊の撤収を開始、イエメン派遣部隊を大幅に削減しつつある。「勝利できない戦争に巨額の戦費と兵力を割くことに嫌気が差した」(専門家)とされるが、実際には、ホルムズ海峡の安全航行が不安定になり、石油輸出に影響が出ることを恐れ、イランとの関係改善を図る思惑が背景にあるようだ。

 

UAEのアブドラ外相は先月、ペルシャ湾で相次いだタンカー攻撃について、「誰がやったかは明確で、確実な証拠が必要だ」として、米国やサウジアラビアが主張するイラン犯行説に大きな疑問を呈した。

 

レバノン紙によると、UAEはイランに代表団を送って航行の安全やイエメン戦争からの撤退について秘密交渉も行ったとされ、イラン包囲網の一角に穴が開きそうな雲行きだ。【7月21日 WEDGE】

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UAEとイランの関係調整については、下記のような動きも報じられています。

 

****イランとUAE、30日に海の安全保障協議を再開=学生通信****

イラン学生通信(ISNA)によると、イランは30日、伝統的に対立しているアラブ首長国連邦(UAE)との間で、海の安全保障に関する協議を再開する。明らかにペルシャ湾の緊張緩和の意図があるとみられているが、湾岸当局者は、協議は定例のもので技術的としている。

協議は2013年以来中断しているが、同地域でUAEは安全なビジネスハブとしての地歩を守りたい意向とされている。

ISNAは、「第6回協議は30日、イランを訪れているUAE沿岸警備当局者の代表7人とイラン当局者により、テヘランで行われる」と伝えた。

ISNAは情報源を明かさず、協議では国境や双方の市民の行き来、不法入国などの問題が議題になる見通しと伝えた。

湾岸当局者は、この協議は地域の緊張とは無関係と述べた。【7月31日 ロイター】

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イランとの関係改善に転じたUAEの“現実主義”については、以下のようにも・

 

****ホルムズ海峡の緊張****

(中略)
他方サウディと並んで対イラン最強硬派(何しろ彼らの立場からするとその島3つをイランに占領されている…勿論イランは自国領としている・・ことから当然か!しかし、そこは湾岸商人的というべきか、その様な建前とは別に、これまでもイランとの密輸で大儲けをしてきたのはドバイ商人等のUAE人。外貨及び貴金属等の密輸に始まり何でも密輸しているはず)のUAEに関して現実主義的というか、イランとの関係で興味深い記事があるので取り敢えず

・一つは、UAE沿岸警備隊司令官のイラン訪問で、同司令官は30日、軍事ミッションを率いてテヘランを訪問し、イラン沿岸警備隊司令官と会談した由。
両国は湾岸の安全航行問題について協議する由なるも、具体的な会議の日程は不明

・もう一つはal qods al arabi netの報じる両国間銀行(金融面)での協力です

記事はイラン金融連盟会長が30日、UAEの2つの銀行が、金融面でのイランとの協力の用意があることを表明したが現時点では実施に至っていないと語ったと報じています。

同会長は、UAEの銀行(複数)は対イラン制裁のために、西部アジアでイランが金融市場を利用できない問題で、イランと協力する用意があると語った由。またUAEに代えてオマーンを使うことも検討されたが、オマーンは国際社会でそれほどの信頼性がない由。

同会長は、イランの会社や両替商は、これまでの経験や関係から、UAEを使うことを希望しているとした由。
記事はさらに最近もイランとUAEが金融面で協力するとのうわさが流れていたとしてます(後略)【7月31日 「中東の窓」】
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イランはカタールとはすでに緊密な関係にありますので、UAEとの関係が改善すれば、湾岸諸国において「イラン包囲網」に大きな穴をあけることにもなります。

 

UAEの方針転換は、サウジ主導の大規模空爆にもかかわらず戦況が膠着しているイエメン情勢にも大きく影響しそうです。

 

サウジが米軍駐留を受け入れたのも、そうした危機感が背景にあります。

 

****イエメン内戦「泥沼化」 サウジ皇太子にもたらす危機****

イエメン内戦への軍事介入を主導してきたサウジアラビアのムハンマド皇太子が危機に直面している。サウジとともに戦ってきたアラブ首長国連邦(UAE)がイエメンの前線から撤収し始め、内戦での勝利が難しくなったからだ。

 

内戦はサウジなどがイランの影響下にあるイスラム教シーア派民兵組織、フーシ派と戦う構図。サウジが、皇太子の面目が傷つく形で撤退するとは考えにくく、米国にとってのベトナム戦争と同様、サウジの国力を衰退させかねない事態となっている。

 

サウジやUAEは2015年、フーシ派と敵対する暫定政権を支援し内戦に介入。ロイター通信は今月中旬、バベルマンデブ海峡に近いイエメン中部ホデイダ港周辺の軍事拠点2カ所の指揮権がUAEからサウジ側に移譲されたと伝えた。

 

サウジはイエメンと長さ1300キロもの国境を接し、無人機によるフーシ派の越境攻撃も続く。UAEと違い、内戦はサウジの安全保障に直結している。

 

こうした中、19日にはサウジが同国内への米軍駐留を承認したと報じられた。米軍のサウジ駐留は約16年ぶり。イランやフーシ派に対する米、サウジの強い危機感がうかがえる。

 

ただ、米紙ニューヨーク・タイムズは20日付で、皇太子が米国に特殊部隊や軍事顧問の派遣などの支援を求めてきたとの外交筋の見方を伝えた。地上戦を担ったUAE軍に対し、空爆が主任務だったサウジ軍の指導力には、共闘する民兵組織からも疑問の声が出ているという。

 

自尊心が高いといわれるムハンマド皇太子の性格からみても、サウジが“負け戦”の印象のまま内戦から撤収する事態は想定しがたい。半面、戦闘を継続すれば戦費がかさみ、原油依存からの脱却を図る構造改革の停滞は免れない。

 

皇太子はかつて改革の旗手として脚光を浴びたが、王族や富豪らを汚職罪で一斉摘発したり、反体制記者殺害事件への関与も疑われたりしてクリーンなイメージは失墜。泥沼化するイエメン内戦での勝利に固執し続ければ、石油大国サウジの国際的な評価を下げる結果にもなりかねない。【7月26日 産経】

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コメント

イラン問題で高まる緊張 各国はそれぞれの対応 イラン、イギリス、UAE、サウジそして日本

2019-07-22 01:13:24 | イラン

(ヘリコプターから英タンカーに降下するイラン革命防衛隊員の映像=19日、ホルムズ海峡付近(ロイター)【7月21日 産経フォト】)

 

【イギリス・イランのタンカー拿捕合戦でイランの孤立更に深まる流れも】

イランとイギリスの間でタンカー拿捕合戦がエスカレートしています。

 

事の起こりは、7月4日のイギリスによるジブラルタル沖でのイランタンカー拿捕

 

****英海軍、イランのタンカーだ捕 米は歓迎****

イギリス領ジブラルタル沖で、イランのタンカーがだ捕されたことについて、アメリカのボルトン大統領補佐官は4日、「素晴らしいニュースだ」と歓迎した。

ロイター通信によると、ジブラルタルの沖合で4日、イギリス海軍が、イランの原油を積みシリアに向かっていたとみられる大型タンカーをだ捕した。

イランの原油をめぐっては、アメリカが全面禁輸の経済制裁を科しているが、今回のだ捕はEU(=ヨーロッパ連合)がシリア情勢をめぐり科した制裁に違反した疑いによるものだとしている。

これに対しイラン外務省は、イギリス大使を呼び「アメリカの要請でだ捕されたのであれば、即時解放すべきだ」と抗議した。

一方、アメリカのボルトン大統領補佐官は、「素晴らしいニュースだ」と歓迎。「引き続き同盟国と共にイランとシリアの違法な貿易を阻止していく」と述べている。【7月5日 日テレNEWS24】

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一時は、イランとイギリスとの交渉進展をうかがわせるような報道もありました。

 

****英外相、イランに保証要求 「タンカーはシリア以外へ」*****

英領ジブラルタル当局によるイランの大型タンカー拿捕を巡り、ハント英外相は13日、イランのザリフ外相と電話会談し、「タンカーが(制裁対象の)シリアに向かわないとの十分な保証を得られれば解放を働き掛ける」と伝えた。ハント氏がツイッターで明らかにした。

 

ハント氏によるとザリフ氏は、対立の激化ではなく問題解決を望んでいるとの意向を示した。両国関係はこのところ急速に悪化しており、イラン側の対応が注目される。

 

ハント氏は、タンカーに積んでいる石油の出所ではなく、目的地を懸念していると伝えた。会談は「建設的だった」としている。【7月14日 共同】

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しかし、イラン・革命防衛隊は19日、「国際的な航行規則に従わなかったため」という理由で、実質的に報復と思われるによるイギリスタンカー拿捕を行ったことを発表。

 

*****イラン、「漁船衝突で調査」=英外相「危険な道」―タンカー拿捕****

イランの精鋭部隊「革命防衛隊」が緊張の高まるホルムズ海峡で拿捕(だほ)した英船籍のタンカーについて、地元港湾当局者は20日、「漁船と衝突し、漁船からの救難信号にも応答しなかった」と述べ、調査を開始したことを明らかにした。地元メディアが伝えた。

 

運航会社によれば、タンカーには船長を含めインド人やフィリピン人、ロシア人ら23人が乗っていた。ホルムズ海峡を望むイラン南部バンダルアバス港沖に停泊し、乗組員は船内待機を指示されているが、健康状態などに問題はないという。

 

一方、ハント英外相は20日、ツイッターで「イランは違法かつ不安定化を招く振る舞いによって、危険な道を歩んでいる兆候がある」と改めて懸念を表明。「断固とした対応を検討する」と強調した。英メディアによると、同国外務省はこの日、イランの代理大使を召喚した。【7月20日時事】

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拿捕されたイランタンカーに関する交渉の経緯、今回イギリスタンカーの関し、革命防衛隊が拿捕したとしとsいているのに対し、「漁船との衝突」云々の説明・・・・イラン内部における、ことを荒立てずに交渉で対処したい穏健派・ロウハニ政権と、あくまでも実力行使を誇示する強硬派・革命防衛隊との路線対立があるようにも見えます。

 

イギリス側は、対応を更にエスカレートさせる動きも見せています。

 

****英、イラン資産凍結検討 タンカー拿捕に制裁、英紙報道****

イラン革命防衛隊による英タンカー拿捕を巡り、英政府がイランへの制裁を検討していると、21日付の英紙サンデー・テレグラフが報じた。

 

イラン側が英国内に持つ資産の凍結などが案として浮上、ハント外相が22日に下院で公表する見通しという。制裁を実施すればイランの反発は必至で、緊張がさらに高まる可能性がある。

 

同紙によると、英政府は欧州連合(EU)や国連にも協調を呼び掛け、ホルムズ海峡を通過する船舶の保護をさらに強化するよう努める方針。【7月21日 共同】

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これまでイラン核合意維持の方向で努力してきた独仏もイラン・革命防衛隊によるイギリスタンカー拿捕を強く批判しており、イランは更に国際的孤立を深める状況に追い込まれる懸念があります。

 

また、イギリスをトランプ大統領主導のイラン包囲網の方向に追いやることにもなります。

 

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英国はイラン核合意の維持を支持し、米国の制裁を受けるイランに同情的だったが、今回のタンカーの拿捕合戦でイランに敵対する方向に舵を切り、トランプ政権に同調する可能性もある。

 

そうなれば、辛うじて維持されてきた核合意は完全に崩壊し、イランは自分の首を絞めることになるかもしれない。【7月21日 WEDGE】

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【サウジと協調してきたUAEはイランとの交渉で路線転換の可能性も】

一方、これまでアメリカに同調するサウジアラビアと、イエメン介入などで共同歩調をとってきたUAEには、ホルムズ海峡の緊張高まりを受けてイランとの関係改善を模索する動きも出ています。

 

*****サウジ・UAE連合に亀裂、転変する緊張のペルシャ湾*****

(中略)

UAEの離反

トランプ政権はこうしたイラン包囲網の一環として、サウジアラビアに16年ぶりに駐留部隊を派遣することで、サウジからの合意を取り付けた。すでにプリンス・スルタン空軍基地には米軍の戦闘機や部隊の一部が到着した。

 

サウジはメッカなど聖地を抱える「イスラムの守護者」。異教徒の駐留には一部から強い反対がある。

 

湾岸戦争の際には、王国指導部が米軍の駐留を許したことに反発が広がり、その急先鋒だったオサマ・ビンラディンがサウジを追放され、後に国際テロ組織アルカイダを創設したのはよく知られているところ。

 

今回の米軍駐留はサウジを牛耳るムハンマド皇太子とトランプ政権との親密な関係の上に実現したが、サウジ国内に新たな火種が生まれたことは確かだ。

 

こうした米国とサウジアラビアにとって実は深刻な事態が進行中だ。それは対イラン政策でサウジとタッグを組んできたUAEが離反の動きを見せていることだ。

 

例えば、UAEはムハンマド皇太子主導のイエメン戦争で、5000人の部隊をイエメンに派遣し、戦闘を主導してきた。

 

そもそもイエメン戦争はイラン支援の武装組織フーシ派がイエメンの実権を握ったことにサウジアラビアが反発して本格的に軍事介入。サウジが主に空爆を担ったのに対し、UAEは“兄貴分”のサウジの求めに応じて空爆の他、地上部隊を派遣して血を流した。

 

だが、UAEはこの1カ月で部隊の撤収を開始、イエメン派遣部隊を大幅に削減しつつある。「勝利できない戦争に巨額の戦費と兵力を割くことに嫌気が差した」(専門家)とされるが、実際には、ホルムズ海峡の安全航行が不安定になり、石油輸出に影響が出ることを恐れ、イランとの関係改善を図る思惑が背景にあるようだ。

 

UAEのアブドラ外相は先月、ペルシャ湾で相次いだタンカー攻撃について、「誰がやったかは明確で、確実な証拠が必要だ」として、米国やサウジアラビアが主張するイラン犯行説に大きな疑問を呈した。

 

レバノン紙によると、UAEはイランに代表団を送って航行の安全やイエメン戦争からの撤退について秘密交渉も行ったとされ、イラン包囲網の一角に穴が開きそうな雲行きだ。【7月21日 WEDGE】

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UAEのイエメンからの撤収はひと月前ほどからの動きですが、今月13日にはUAEタンカーもイラン側に“えい航”されています。

 

****ホルムズ海峡でタンカー消息絶つ=イラン「支援要請受けえい航」****

米国とイランの緊張が高まる原油輸送の要衝ホルムズ海峡を航行していたアラブ首長国連邦(UAE)の石油タンカー「リア」(全長約60メートル)が現地時間13日深夜、イラン領海内に入った後で消息を絶った。米各メディアが16日報じた。

 

報道によると、タンカーはUAEのシャルジャに向かう途中で急きょ航路を変更。イラン南部ケシム島沖合を最後に位置情報の送信が途絶えたという。

 

米メディアは、イランがタンカーを拿捕(だほ)した可能性を指摘。これに対し、イラン外務省報道官は16日、地元メディアに「ペルシャ湾内で技術的問題が起きたタンカーの支援要請を受け、修理のためイラン領海へえい航した」と主張した。ただ、UAEのメディアは当局者の話として、タンカーは救難信号を発していないと伝えた。【7月17日 時事】 

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この件に関しても、革命防衛隊は18日に、ホルムズ海峡でイランから燃料100万リットルを密輸しようとした外国のタンカーを14日に拿捕したと発表しており、修理のため云々とするイラン外交当局と見解が異なっています。

 

こうしたタンカー拿捕が、UAEとイランとの交渉を加速させるのか、あるいは頓挫させるのか・・・・

 

【サウジのイランタンカー解放は何かのシグナル?】

イランとの対決姿勢を明確にしてきたサウジアラビアについても、下記のような報道が。

 

****サウジアラビア、イランのタンカー解放=航行中に故障、費用で対立*****

イランのエスラミ道路交通・都市開発相は21日、イランと敵対するサウジアラビア西部ジッダの港に留め置かれていたイランの石油タンカー「ハピネス1」が解放されたと明らかにした。現在イラン船舶にえい航されてペルシャ湾に向けて航行中という。国営イラン通信が報じた。

 

報道などによると、タンカーは4月下旬、紅海を北上中にエンジンの故障に見舞われ、浸水して航行不能になり、最寄りのジッダに寄港した。サウジが多額の修理費を要求し、イラン側が反発するトラブルが伝えられたが、エスラミ氏は「交渉の末、今月20日に問題は解決した」と述べた。乗員も無事という。

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ランのメディアによると、ムサビ外務省報道官は「解放を仲介してくれたスイスとオマーン、必要な措置を講じたサウジの関係者に感謝する」と述べた。イランとサウジは2016年から断交している。【7月21日 時事】 

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このイランとの緊張が高まっている時期に、イラン批判の急先鋒に立つサウジによるイランタンカーを解放というのは、何かのサウジ側のイランに対するシグナルでしょうか?

 

【「米主導の有志連合」に日本は?】

アメリカ・トランプ大統領が「米主導の有志連合」を目指しており、当然に日本も対応を迫られています。

 

****護衛艦派遣か資金拠出か*****

(中略)こうした中、トランプ大統領は海軍の強襲揚陸艦「ボクサー」が18日、ホルムズ海峡でイランの武装無人機を撃墜したと公表、米国が自国民を防衛する権利を行使したと強調するとともに、「自国の船舶は自ら守るよう」あらためて呼び掛け、米主導の有志連合に参加するよう各国に求めた。

 

イラン側が米無人機を撃墜した先月の事件では、大統領は直前になって撤回したものの、いったんは報復攻撃を命令した。

 

しかし、今回は激しい非難を避けた。大統領はこのところ、イランの聖職者支配体制を転覆させるような考えがないと述べるなど融和的な姿勢を示し、イランとトランプ政権の間を調停すると提案したランド・ポール共和党上院議員の仲介工作に期待する考えも見せている。

 

だが、米国のイランを締め付ける国際包囲網構築の動きは加速している。防衛の公平分担という大統領の持論に基づくペルシャ湾の有志連合構想について、トランプ政権は19日、同盟国ら約60カ国への説明会を開催した。

 

具体的には護衛艦の派遣や、それができない場合、資金拠出などを検討するよう要請した。25日に2回目の会合を開く予定。

 

米政府は今回、イランとの対決色ではなく、あくまでも船舶の「航行の自由」を確保することを前面に出している。これは反イランを強調すれば、有志連合の結成が困難になりかねないとの危機感を反映するものだ。

 

自衛艦の派遣に慎重な日本政府はとりあえず胸をなでおろしているようだが、トランプ大統領自身から個人的に求められた場合、安倍首相はやはり重大な決断を迫られることになるだろう。【7月21日 WEDGE】

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自衛艦派遣の問題に加えて、日本はこれまでイランとも独自の関係をいじしてきた事情もあって、今後のトランプ政権の出方によっては、日本も対応に苦慮しそうです。

 

 

コメント (1)

アメリカ世論が嫌うイランを相手に繰り広げられる“ドナルド・トランプ・ショー”

2019-06-25 23:25:41 | イラン

40年前の1979年に起きた、在イラン、アメリカ大使館人質事件 目隠しをされ人質となったアメリカ大使館員ら【625日 NHK】)

 

【「10分前の中止」という“寸止め”パフォーマンス】

イランのアメリカ無人機撃墜への報復として、アメリカ・トランプ大統領がイランへの攻撃を承認した後、攻撃10分前にこれを中止したことは報道のとおり。

 

トランプ大統領は、攻撃前に150人の犠牲者が出るという話を聞いて、無人機撃墜の報復としてはバランスを失していると判断して中止したといったことを語っていますが、これはウソでしょう。

 

戦争状態にはまだない相手への警告等の意味合いの攻撃を行う場合、互いに後にひけなくなくなる人的被害を最小限にとどめるように攻撃対象を限定・選定することは常識であり、イランへの攻撃が協議された際には、真っ先に人的被害の規模について確認がなされたはずです。承認されたのちに大統領から聞かれて初めて明らかにするなんて話は絶対にありえません。

 

ではなぜトランプ大統領はいったん承認した攻撃を中止したのか?・・・・もちろん本人以外はわかりません。

 

いったんは承認したものの、本格的戦争に発展しかねないリスクの重圧を感じて心変わりしたのか?

あるいは、最初から「10分前の中止」という“寸止め”パフォーマンスを予定しており、当初の承認はそのための演出だったのか?(最初から実行する気はなかったので、150人もの人的被害を伴う大規模な攻撃がいったんは演出されたのか?)

 

この「10分前の中止」の評価はいろいろあるでしょうが(オバマ前大統領が同じことを行えば、トランプ氏は「弱腰だ!」「優柔不断だ!」と大騒ぎするでしょうが)、イランに対しても、世界に対しても、生かすも殺すもトランプ氏の心ひとつだということを改めて見せつける効果はあったでしょう。

 

また、よく言われるトランプ大統領の特徴である、何をするかわからないという「予見不能」な側面を、強く印象づけることにもなりました。

 

【「横綱の品格」を無視した「大国」アメリカのトランプ外交】

そうした「いつ攻撃が行われるかわからない」という軍事的圧力をイランに意識させながら、最高指導者ハメネイ師を制裁対象とするなど、イランへの制裁を容赦なく強めています。

 

****米、イラン最高指導者に経済制裁 「外交を軽蔑」とイラン反発****

アメリカのドナルド・トランプ大統領は24日、イランに対し強硬な追加経済制裁を科すと発表した。同国の最高指導者アリ・ハメネイ師も対象にするとしている。

 

トランプ氏は追加制裁について、イランによる米軍の偵察ドローン(小型無人機)の撃墜と、「他の多くのこと」を受けたものと説明した。

 

ハメネイ師を対象とすることについては、「イラン政権の敵対的行為に対する最終的な責任がある」ためと述べた。

 

幹部8人も対象に

BBCのバーバラ・プレットアッシャー米国務省担当編集委員は、イランの政治と軍事に関して決定権をもつハメネイ師は巨大な経済力ももっており、その最高指導者に経済制裁を科すことは大きな意味をもつと分析する。

 

また、すでにイランに経済制裁を科しているアメリカは、さらに厳しい追加制裁をすることで、同国がイランに求める核開発の中止やミサイル製造の制限などにイランを応じさせるのが狙いだという。

 

米財務省によると、追加制裁は「イラン革命防衛隊の敵意に満ちた地域的活動を監督している官僚組織の上層部」に属するイラン幹部指揮官8人も対象にしているという。

 

また、追加制裁により、「イラン指導者の経済資源へのアクセスを禁止するとともに、最高指導者や最高指導部に指名された特定の政府関係者たちも対象になる」と説明。イランによる外国の金融機関を通した取引も禁じるとしている。

 

これに対し、イランのジャヴァド・ザリフ外相はツイッターで、アメリカは「外交を軽蔑している」と反発。トランプ政権について「戦争を渇望している」と批判した。

 

一方、スティーブン・ムニューシン米財務長官は、ザリフ氏も今週内に経済制裁の対象になると述べた。(後略)【625日 BBC】

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力が相対的に劣る国は、芝居がかったスタンドプレー、道化じみた行動、いら立たせるような主張、あるいは民衆の怒りを利用するが、およそ「大国」「覇権国家」たるものは抑制的に振る舞い、世界が理解できるように予見性があり、国際社会に責任を負いながら「力の劣った国」の見え透いた行動を超越することで力を示す・・・・そういう考えが外交の「常識」とされてきました。

 

「大国」アメリカには「横綱の品格」が求められているとも言えるでしょうか。

 

横綱ということでは、白鵬の「張り手」「かち上げ」が昨年話題になったことがあります。

 

****白鵬の張り手やかち上げは禁じ手か****

大相撲名古屋場所は8日、ドルフィンズアリーナで初日を迎える。最近、やり玉に挙げられているのが横綱白鵬の張り手やかち上げ。反則技でもない取り口は、それほど批判されることなのだろうか。

 

白鵬は5月の夏場所も、張り手を何度か見せて物議を醸した。昨年末には横綱審議委員会からも苦言を呈されている。

 

過去には白鵬のかち上げで相手力士が脳振盪(しんとう)を起こしてひっくり返ったこともあるし、白鵬の張り手やかち上げを汚いとか醜いと感じる人もいるかもしれない。やる回数が多いことに不満を持つ人もいるだろう。

 

見方は人それぞれ。しかし、長年相撲を取ってきた者からすれば、ひどい取り口とも思えないし、封印を余儀なくされるのはどうかと思う。

 

相手をわざと痛めつけているのであれば問題だ。ただ勝負は甘い世界ではないし、相撲のルール上やってはいけないものでもない。(中略)普段から頭と頭がぶち当たるような稽古をしていれば、そんな張り手くらいで倒れることもないだろう。やられたら逆にやり返すくらいの気持ちで白鵬に立ち向かっていけばいい。

 

若手に感じられぬ闘志や気概

かち上げや張り差しをする方からすれば、失敗したら逆に相手に踏み込まれて一気に押し出されてしまうリスクがある。

 

張っていけば当然脇があくし、かち上げるときに背中が伸びてしまうことだってある。その隙を突いて、立ち合いから恐れることなく白鵬に強く当たっていけばいいし、立ち合いのタイミングをずらしたっていい。

 

だが、今の若手は何の対策もなく、相撲にならないことが実に多い。(後略)【201876日 元大関魁皇 日経】

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アメリカ・トランプ大統領は、横綱にありながら、「張り手」「かち上げ」はもちろん、「猫だまし」だろうが、立ち合いの変わり身だろうが、何でもあり・・・というところでしょうか。

 

相手の弱点を嗅ぎつければ、そこをグイグイ攻め立てることも厭いません。

 

【大衆の関心を引き付ける“ドナルド・トランプ・ショー”】

それが悪いのか?

少なくとも、世界の耳目を「トランプ劇場」に集めることには成功しています。

 

****トランプ氏が仕掛けるイラン劇場****

ドナルド・トランプ米大統領の先週末にかけてのイラン政策は、場当たり的であり、巧みでもあった。

 

トランプ政権の戦争への傾斜を目にしたハト派と孤立主義者らは一時パニックに陥ったが、その後、軍事攻撃が取り消されたとの発表に歓喜した。

 

一方でタカ派はオバマ前政権風の譲歩だとしてトランプ氏を批判したが、イランへのサイバー攻撃や制裁強化の公表がその怒りを静めるのに役立った。

 

その結果は何か。トランプ氏は米国のイラン政策における支配力をさらに強化した。政権内外の対立派閥は同氏の支持を得る策を練らざるを得なくなったのだ。そして、トランプ氏がイランについて発言やツイートを重ねれば重ねるほど、同氏の真意はより分かりにくくなる。

 

こうした展開に意外感はない。対中貿易やメキシコ経由の移民の問題、ベネズエラや北朝鮮、そして現在のイラン問題に至るまで、一貫性がない対応は一貫しているからだ。つまりトランプ氏は、どの歴代大統領よりタカ派的な時もあれば、ランド・ポール上院議員を興奮させるほどにハト派的な時もあるのだ。

 

トランプ大統領は、何よりもまずショーマンなのだ。ニューヨークで不動産取引を行っていたキャリア初期の1970年代からテレビのリアリティー番組の司会者時代、第3のキャリアである政治家時代を通じ、常に名声の力を理解し、うまく利用してきた。

 

つまり、米国の政治をドナルド・トランプ・ショーに変えたのだ。米国も世界も、トランプ氏の一挙手一投足にくぎ付けとなり、次の展開の予想に夢中になっている。

 

上空から降り注ぐ破壊的攻撃の脅しをツイートし、戦争の惨禍をぎりぎりのタイミングで回避し、一連の重要な首脳会談の舞台演出を行うといった行動のどれもが、世界がこれまで目にしたことのない迫真のリアリティーショーとなっている。

 

これが米国の外交政策を助けるか、それとも傷つけるかは別の問題だ。

 

しかし、北朝鮮の核問題など、解決困難な外交問題をトランプ氏の宣伝マシンの材料に変えたことは、国家戦略上の勝利ではないとしても、マーケティング巧者の勝利を意味する。

 

未解決の外交問題は通常、大統領の人気を下押しする。しかし、トランプ氏の場合、それはドラマとサスペンスを提供する筋書きとなる。金正恩朝鮮労働党委員長がレモンを提供し、それをトランプ氏がレモネードにして売るといった具合だ。

 

トランプ氏に批判的な人々は、同氏が米国および世界の政治を支配しているにもかかわらず、ケーブルテレビ(CATV)に取りつかれた何も知らないナルシシストだとして非難し続けている。

 

こうした人々が見逃しているのは、トランプ氏がメディア報道を支配する本能的な力を有しているだけでなく、パワーに関する鋭い判断力も持つことだ。

 

ロサンゼルスの社交界は、政治的なパワーに憧れを持つ世界的セレブであふれている。ハリウッドがトランプ氏を毛嫌いする理由の一つは、トランプ氏がロナルド・レーガン氏と同様にショービジネスの世界を超え、セレブとしての力を本物の力に変えているからだ。

 

トランプ大統領のイラン政策のカギは、いわゆる外交政策通が思っているよりもイランは弱く、米国が強いことをパワーに対する嗅覚から感じ取ったことにある。

 

トランプ氏の見方からすると、オバマ前大統領が結んだ核合意は、ジョン・ケリー氏(当時の米国務長官)よりはるかに賢いイランの交渉担当者による信用詐欺がうまくいった結果だ。トランプ氏が望むのは、自身がかぎ取った2国間の力関係に合致するイランとの取引だ。

 

この目標を追求するため、トランプ氏は2つの戦略を組み合わせている。

 

パブリック・ディプロマシーのレベルでは、人々を驚嘆させ、話を盛るという常とう手段を用いている。血も凍るような脅しを必要に応じて甘いささやきに切り替えるのだ。

 

パワー・ポリティクスのレベルでは、一貫してイランへの圧力を強化し続けている。イランの近隣国に武器を供与したり米国の支援を約束したりする一方、イランには制裁を強化して心理的な圧力を強めている。

 

トランプ氏は自身が進めるイラン政策が制約の下にあることを十分理解している。新たな中東戦争を引き起こせば政権が大打撃を受ける恐れがある。

 

しかし、もしイラン側が戦争を仕掛ければ別の問題だ。米国あるいはイスラエルを標的とする明確なイランによる攻撃であれば、真珠湾攻撃が米国の民主主義支持者を帝国主義の日本と戦うために団結させたように、トランプ氏の支持基盤を固めることになるかもしれない。

 

1941年当時、米国民は戦争を望んでいなかった。フランクリン・ルーズベルト大統領(当時)は日本に壊滅的な影響をもたらす経済制裁を課し、日本に対してアジアからの撤退か米国との戦争かの選択を迫った。

 

トランプ氏はイランも同様に追い詰めることが可能で、かつ制裁で弱体化したイランが戦争より後退を選択すると信じている。

 

米国の外交政策に関するトランプ氏のアプローチは、抑制、予見性、責任が国際的な覇権国家の特徴と考えるエスタブリッシュメント層を強く懸念させるものだ。力が相対的に劣る国は、芝居がかったスタンドプレー、道化じみた行動、いら立たせるような主張、あるいは民衆の怒りを利用する。一方で覇権国家はこうした見え透いた行動を超越することで力を示す。

 

それはトランプ流のアプローチではない。攻撃的でけんかっ早いトランプ氏は国内政治で使うのと同じ手法を外交政策でも使う。こうした手法が継続的な成功をもたらすのかどうかはまだ分からない。

 

しかし、注目を奪うイベントで大衆の関心を引きつけるのは、古代ローマ時代から力をもたらすための定石だったことを忘れるべきではない。【625日 WSJ】

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問題は、こうした“ドナルド・トランプ・ショー”が一時的な成果を勝ち得たとしても、長期的に見た場合、アメリカの外交政策を助けるか、それとも傷つけるか、世界の安定・平和に寄与するかどうかです。

 

個人的には、その点に関しては強い懸念を感じていますが、そのことは今回はパスします。

 

【アメリカ世論のトラウマとなったテヘランのアメリカ大使館人質事件】

相撲の「張り手」「かち上げ」同様に、派手な“ドナルド・トランプ・ショー”にもリスクが伴います。意図したように進まないと、自ら演出した言動で出口が見つからず立ち往生することにもなりかねません。

 

そうしたリスクはあるものの、イランを舞台にした“ドナルド・トランプ・ショー”がアメリカ国内で効果的なのは、アメリカ世論がイランを毛嫌いしているからでもあります。

 

****アメリカはなぜイランを嫌うのか****

緊張高まるアメリカとイラン。今週、大阪で行われるG20サミットでも主要議題となる見通しです。イランを「世界最大のテロ国家」と呼んで敵視し、軍事、経済、政治のあらゆる面で圧力を強め続けるトランプ政権。アメリカは、そもそも、なぜそこまでイランを敵視するのでしょうか。

 

アメリカとの戦争に最も近い国

「ここ2、3年の間に、アメリカとイランは戦争になると思いますか?」 アメリカで、5月に行われたある世論調査の質問です。「戦争になりそう」と答えた人の割合は、実に51%。半数を超えるアメリカ人が、イランとの戦争が現実味を帯びていると感じているのです。

これは、対北朝鮮、対ロシア、対中国を上回っています。また、別の調査では、アメリカ人の8割以上が、イランに対して否定的な見方を持っていることもわかりました。

 

40年前のある事件

その背景に何があるのか。アメリカの人たちと話していると、よく話題になる事件があります。40年前の1979年に起きた、在イラン、アメリカ大使館人質事件です。

 

イランではアメリカ資本を導入し、親米路線をとっていた国王の体制に国民が反発し、イスラム革命を起こして、王政を打倒します。そして、ホメイニ師を最高指導者とするイラン・イスラム共和国が樹立されました。

 

その年の11月、ホメイニ師を熱狂的に支持する学生たちが、首都テヘランのアメリカ大使館を占拠し、亡命した国王の身柄の引き渡しを求めて大使館の職員などを444日にわたって拘束したのです。これがきっかけとなり、翌年、両国は国交を断絶。いまも続いています。(中略)

 

この事件は、カラーテレビが普及していたアメリカで連日、大きく報じられ、衝撃を持って受け止められました。(中略)イランに対する嫌悪感を植え付けた出来事だったと多くの専門家が指摘しています。(中略)

 

トランプ政権のねらいは

トランプ政権のねらいはいったいどこにあるのか。(中略)

 

記者:トランプ政権が考えているのは、イスラム体制を転換させることなのでは?
(国務省でイラン政策を統括する)フック氏:われわれが求めているのは、イランの体制が、態度を改めることだ。イランという国家の将来を決めるのは、長年苦しめられてきたイランの国民だ。われわれはイランの国民を支持する。体制転換が目的ではない、あくまでイラン国民に寄り添っているだけだと主張しました。

 

しかし、対イラン強硬派として知られるボルトン大統領補佐官は、トランプ政権に入る前、イランの体制転換が必要だと公言していました。(中略)

 

専門家からは批判

しかし、中東の専門家からは批判も相次いでいます。

「イスラム体制は政治的にも経済的にも構造がしっかりしていて、近い将来、体制転換が起きるとは思えない。イランの態度にも大きな変化をもたらさないことは明らかで、トランプ政権に果たして戦略というものがあるのかすら疑問だ」(ジョージメイソン大学 エレン・ライプソン教授)

 

取材を通して

私は以前、中東にも駐在していましたが、イランでは、「アメリカが嫌われている」と感じる場面が多くありました。国交断絶から40年という時の流れが、お互いの不信感やそれぞれの偏った物の見方を増幅させたように感じます。そして、それを政治的に利用しようとする、双方の指導者たちの思惑も透けて見えます。(後略)【625日 NHK】

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たった一回だけのイラン観光の印象からひとつだけ付け加えれば、イランには「アメリカに死を!」と叫ぶ人々もいますが、街中にコカコーラが溢れているように、一般市民はアメリカ文化をそんなに嫌悪してはいないように感じました。

 

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イランとアメリカ 戦争は望まないが交渉上の優位性を求める戦いが その過程で不測の事態も

2019-06-20 22:50:43 | イラン

(オマーン湾で攻撃を受け炎上するタンカー 【618日 WSJ】)

 

【国際社会には「ほんとですか〜〜??」というアメリカへの不信感も】

オマーン湾で起きたタンカー2隻への攻撃については、「証拠」写真なるものを公開してイランがやったと主張するアメリカと「やってない」とするイランが対立していることは周知のとおり。

 

「真犯人」が誰かはわかりませんが、アメリカ主張に対して「どうも、アメリカの言うことは信用できないからな・・・」という国際社会のアメリカへの不信感も感じられます。

 

****イラク戦争と同じ構図か。ホルムズ海峡タンカー攻撃の「真犯人」****

(中略)

それにしても、なぜ「証拠を提示した」にも関わらず、アメリカの主張は、信じてもらえないのでしょうか?一番の理由は、「イランの動機がわからん」ということでしょう。(中略)

 

もう一つは、「アメリカが提示した証拠、説得力がイマイチ」ということでしょう。このこと、指摘している人もいます。(中略)

 

アメリカは、ウソつきすぎで信じてもらえない

もう一つ、「アメリカの話に説得力がない理由」。それは、アメリカが「ウソを多用しすぎ」ということ。なんというか、国際社会から「オオカミ少年」のように見られている。いろいろいろいろあるのですが、代表的な例を二つあげておきます。

 

一つは、イラク戦争。開戦理由は二つでした。すなわち、「フセインは、9.11を起こしたアルカイダを支援している」「フセインは、大量破壊兵器を保有している」でした。新しい読者さん、これ二つとも「大うそ」だって知ってました???????????(中略)

 

もう一つ。20138月、オバマさんは、「シリアを攻撃する!」と宣言しました。理由は、「アサド軍が化学兵器を使った」から。これもウソだった可能性が高いのです。なぜ?20135月、国連は、こんな報告書を出していた。(中略)

二つ例をあげましたが、同じような例は、たくさんあります。最近のアメリカの情報戦は非常に稚拙。日本は「米英情報ピラミッド」に組み込まれているので、こんな重要情報も拡散されないのですね。

 

アメリカはこんな感じ。それで、この国が「イランがやった!!!」と主張しても、「ほんとですか〜〜??」というリアクションになってしまうのです。【619日 北野幸伯氏 MAG2 NEWS

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シリアの化学兵器についてはともかく、イラク開戦は上記のとおりでしょう。

更にあげるなら、ベトナム戦争本格化の引き金となった「トンキン湾事件」もあります。

 

そんなこんなで「ほんとですか〜〜??」ということになりますし、しかも言っているのが平気でウソをつくトランプ大統領と、イランを攻撃したくてたまらないボルトン補佐官などですから・・・。

 

“アメリカが「ウソを多用しすぎ」ということ”に加えて、(日本・安倍政権は違いますが)欧州ドイツ・フランスなどとアメリカ・トランプ政権の溝がこれまでになく深いということも影響しているでしょう。

 

一方、イギリスがいち早くアメリカ主張に賛同したのは、従来からの米英の「特別な関係」というだけでなく、EU離脱後は(トランプだろうが何だろうが)アメリカを頼らざるを得ないという切羽詰まった状況のあらわれのようにも見えます。

 

個人的には、タンカー攻撃だけなら「ほんとですか〜〜??」というところですが、後述するような、その後の一連の攻撃・挑発の動きと併せて考えると、「(ロウハニ政権が絡んでいるかどうかはわかりませんが)やっぱり、イラン関係筋の仕業かな・・・」という感も。

 

【戦争は望んでいないトランプ大統領・イラン】

タンカー攻撃に関して、トランプ大統領は以下のようにも。

 

****石油確保での武力行使明言せず=タンカー襲撃「影響小さい」―米大統領****

トランプ米大統領は18日の米誌タイム(電子版)に掲載されたインタビューで、ホルムズ海峡付近でのタンカー襲撃を踏まえ、石油輸送路確保のため軍事力を行使する可能性について「(質問の)疑問符は、そのままにしておく」と述べ、明言を避けた。イランによる核兵器保有を阻止するためなら、武力行使をためらわないという姿勢も示した。

 

トランプ氏は、エネルギー輸出国となった米国にとって、タンカー襲撃の起きた海域の重要性は以前と比べ大幅に低下したと指摘。襲撃の影響は「今のところ、極めて小さい」と語った。

 

襲撃にイランが関与したとする米情報当局の分析に関しては「同意しない人は少ないだろう」と述べた。その一方、「(2015年の)イラン核合意調印時、イランはいつも『米国に死を』と叫んでいたが、今はあまり耳にしない」とも話し、イラン政府がここに来て米国への敵対姿勢を強めているわけではないとの見方を示した。【619日 時事】

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トランプ大統領は相手を追い詰めて有利な交渉をしたいという狙いで、カネのかかる戦争や(票につながらない)中東への関与には消極的とされています。政権内には、ボルトン補佐官らの好戦的勢力との対立があるとも言われています。

 

上記の発言には、トランプ大統領の「衝突・戦争はしたくない」という思いがにじんでいます。

 

戦争になれば壊滅的な打撃を被るイランとしても、(一部好戦的な勢力を除けば)戦争をしたくないのは当然です。

 

****イラン、「米国との戦争は起きない」=IRNA****

イラン最高安全保障委員会のシャムハニ事務局長は19日、同国と米国の間で軍事対立は起こらないと述べた。国営イラン通信(IRNA)が報じた。

シャムハニ氏は「戦争をする理由はなく、イランと米国の間で軍事対立は発生しないだろう。他国に圧力をかけようとするなかで、他国を非難することは米当局者の一般的な慣行となっている」と述べた。(後略)【619日 ロイター】

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イランは、1980年代の8年間に及ぶイラン・イラク戦争を孤立無援のなかで戦い抜いたという自信を持っていますが、当時と比べて都市化が進んだ現在は食糧を輸入に頼る経済構造に変化しており、当時の話が現在に通用する訳でもないという指摘もあります。

 

市民の不満が高まれば、体制が動揺する可能性も。

 

【レバレッジ(交渉上の相対的優位性)を巡る戦い】

戦争をしたくないというのが本音のトランプ大統領とロウハニ政権ですが、現在の対立を可能な限り有利な方向に持っていきたいということで、「最大限の圧力」かけあう両国でもあります。

 

イランは濃縮ウランの増産という核合意への「違反」に踏み切り、「このままでは合意を破棄して核開発を再開せざるを得ない、それでもいいか?」と欧州など関係国に圧力をかけています。

 

タンカー攻撃も、「いつでもホルムズ海峡の石油輸送を混乱させることができるぞ!」という示威行動だったのかも。

 

アメリカは、「イランのさらなる攻撃の抑止が目的」、「トランプ大統領は戦争を望んでいない」(ポンペオ米国務長官)としながらも、地対空ミサイル「パトリオット」1個大隊や有人・無人のISR(情報・監視・偵察)関連装備

を含む米軍約1000人規模を中東に追加派遣することを明らかにしています。

 

****米・イランの緊張増大、背後で何を駆け引き?****

イランが17日発表した濃縮ウランの増産は、急激に緊迫する中東情勢の背後にある「真実」をほぼ完璧に物語っている。

 

世界が今、目にしているのは、戦争へ向かう序章というよりは、レバレッジ(交渉上の相対的優位性)を巡る戦いだ。トランプ政権はこれまで、イランに対し著しいレバレッジを手にする一方、イランはそれに対抗するためのレバレッジを切実に必要としている。

 

だからといって戦争が起こらないという訳ではない(読み間違いをする可能性は高く、そのリスクはさらに高まっている)。

 

戦争は米・イラン双方とも望んでいる結果ではないということだ。校庭でにらみ合っている子供たちが、一線を越えずに済むことを願いながら、越える構えを見せようとするのと同じ「いちかばちか」の賭けだ。

 

イランが17日、濃縮ウランの貯蔵量が2015年の核合意で定められた上限を近く超えそうだと明らかにしたことで、米国とイランのにらみあいは一段と危険を増した。

 

イランが核合意の存続を目指す欧州諸国を脅すことで、米国の対イラン制裁に対抗するよう必死の説得を試みていることは明らかだ。

 

イランは実際、米国の制裁を回避できるような金融システムを構築するという約束を欧州諸国が果たせば、濃縮ウランの製造に関する決定は覆すことが可能だと主張している。

 

米国とイランはこの対立において、それぞれレバレッジを手に入れる2つの大きな手段を持っている。トランプ政権はイラン経済を崩壊させる経済力、そして他国を従わせる外交力を有していることを見せつけた。

 

一方、イランはここで、自らが持つ2つのレバレッジ手段で対抗できることを示す必要がある。つまり、ホルムズ海峡の石油輸送に支障を生じさせる力と、核開発を再開できる力だ。

 

イランは最近、同国が行ったとされるオマーン湾航行中の石油タンカー攻撃により、一つめの力を持っていることを示した。

 

そして目下、核活動を活発化させることで、二つめの力をちらつかせている。

 

こうした行動に出る背景には、核合意を破棄する構えを見せることで、国際社会が結束してイランに反対するのではなく、むしろイランを支持してくれることに賭けている(しかもこれは大きな賭けだ)ことがある。

 

(中略)これ(トランプ大統領の対イラン制裁)により、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は窮地に追い込まれた。(中略)

 

イランが過剰な反応を示せば、米軍による攻撃を招きかねない。もしくは、国際社会から非難され、国際的な孤立を深める結果、経済を巡る市民の不満を高めることになろう。

 

こうした状況で、ハメネイ師には3つの望ましからざる選択肢しか残されていないと(カーネギー国際平和財団のイラン担当アナリスト)サジャドプアー氏は指摘する。

 

具体的には、トランプ氏よりも長く政権の座にとどまることを目指す、新たな核合意を協議するというトランプ氏の提案を受け入れる、もしくは一段と緊張を高めるの3つだ。

 

ハメネイ師は今のところ、緊張を高める方法を選んだ。ただ、慎重に線引きされた限度内にとどめている。

 

ハメネイ師はイラン沖のホルムズ海峡を通過中の石油タンカー船への攻撃を承認することで、原油価格の高騰を通じて米国民に経済的な痛みをもたらす一方、欧州や日本、中国を脅迫し、イランに対する圧力を軽減するようトランプ政権に強要することを狙ったようだ。

 

また同時に、イランの仕業ではないとして責任を逃れることができるよう石油タンカーへの攻撃を秘密裏に行うことで、説得力のある否定論拠を維持しようとしている。

 

さらに、核合意の破棄も辞さない構えを見せる一方で、実際に破棄を宣言し、核兵器能力の取得にまい進し始めるには至っていない。

 

イラン核合意を離脱すれば、公然と石油タンカーに攻撃を加えるのと同様、世界は一丸となってトランプ氏に対抗するのではなく、イランに対抗することになるだろう。 

 

イランはまた、最後にある読みを行っているように見える。つまり、トランプ氏と同盟国の関係は不安定で、トランプ氏個人の信頼も低く、世界はイラン側の主張を信じ、イランが緊張を増大させたとみるのではない――そして、米政府を批判する――と読んでいるフシがある。

 

要するに、イランの目的は公然と戦いを誘発することではなく、レバレッジを得ることだ。リスクの高い戦略だが、不合理なものではない。【618日 WSJ】

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【いつなんどき不測の事態が起きてもおかしくない状況も】

上記のようにハメネイ師が“石油タンカー船への攻撃を承認”したのかどうかは知りません。

 

ただ、タンカー攻撃以降も、イランの影響力が強いイラクやイエメンで、アメリカ関連施設やアメリカの同盟国サウジアラビアを対象とした同種の攻撃が相次いでいます。

 

****米石油会社敷地にロケット弾=北部の基地も標的―イラク****

イラク軍は19日、南部バスラ近郊にある米石油大手エクソンモービルなどが操業する油田関連施設の敷地内にロケット弾が撃ち込まれ、3人が負傷したと明らかにした。油田の操業に影響はないという。ロイター通信が伝えた。

 

また、AFP通信によれば、この攻撃の数時間前には北部モスルの軍基地にもロケット弾が着弾した。基地には米軍が駐留しているとされる。いずれも誰が攻撃したかは不明。

 

イラクでは17日に、米軍要員も駐留する首都バグダッド北方の基地にロケット弾が着弾したばかり。米国とイランの緊張が高まる中、米国の権益を狙ったとみられる事件が続いており、イラクで活動する親イラン勢力の関与を疑う声が上がりそうだ。【619日 時事】

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****サウジ淡水化プラントにミサイル、イエメンから発射か ****

サウジアラビアの海水淡水化プラントがミサイル攻撃を受けた。隣国イエメンから発射されたとみられる。米政府高官が明らかにした。死傷者の有無は分かっていない。

 

今回の攻撃を受け、米政府機関の高官らが19日夜、ホワイトハウスに召集されたという。

 

サウジアラビア主導の連合軍はイエメン内戦に介入し、反政府武装勢力「フーシ派」と対立している。フーシ派はイランが支援しているとされる。【620日 WSJ】

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上記淡水化プラントへの攻撃と同じものかどうか判然としませんが、“al arabiya net al qods al arabi net は、hothy(フーシ派)軍報道官が、同軍のミサイル部隊が(サウジアラビア)ジャザーンのal shaqiq 発電所を巡航ミサイルで攻撃し、ミサイルは目標に正確に命中したと声明したと報じています(攻撃の日時等は不明)。”【620日 中東の窓】という情報も。

 

発電所攻撃の情報の方は、これまでの「弾道ミサイル」ではなく、イラン提供と推察される「巡行ミサイル」が使用された点に注目し、情報の真偽については「本当でしょうか?」としながらも、仮に本当ならイランのフーシ派支援について“質的変化”が生じている可能性を懸念しています。

 

更に、イランの精鋭革命防衛隊がアメリカの無人偵察機を撃墜する事態に。

 

****イラン革命防衛隊「米の無人偵察機を撃墜」 緊張高まる***

イランの最高指導者直属の精鋭部隊「イスラム革命防衛隊」は20日、同国南部のホルムズガン州のオマーン湾に近いイランの領空内で、米国の無人偵察機を撃墜したと明らかにした。政府系のファルス通信などが報じた。

 

ホルムズ海峡周辺ではタンカー攻撃事件が起きるなど、米国とイランの緊張が高まっており、偶発的な衝突が懸念されている。(後略)【620日 朝日】

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撃墜はアメリカも認めていますが、イランが「イランの領空を侵犯した」としているのに対し、アメリカは領空侵犯を否定し、国際空域を飛行していたと主張しています。

 

“イランの精鋭部隊「イスラム革命防衛隊」は20日、米国のドローンが撃墜されたことについて、米国への「明らかなメッセージ」だとし、米国の侵略には力強く対応すると表明した。”【620日 ロイター】とも。

 

アメリカ・イラン両国とも戦争を始める考えはなく、相手に圧力をかけ、交渉を有利に持っていきたいとしているだけ、両国ともに相手に甚大な被害を与える軍事力を有しており、両国間に一定の相互抑止が効くだろう・・・・というのが、一般的な見方ですが、上記のような動きが頻発すれば、いつなんどき不測の事態に発展してもおかしくもない現状でもあります。

 

大規模な衝突となれば、レバノンのシーア派武装勢力ヒズボラやイエメンのフーシ派も加わって、紛争はサウジアラビア・イスラエルを巻き込む形で容易に拡大します。(あるいはイスラエルがイラン核施設を空爆するか)

そうした事態は、中東原油に頼る日本にとっては悪夢です。

 

安倍首相のイラン訪問が今のところは成果がなかったにしても、今後とも間に入ってアメリカ・イラン双方に自重を促す取り組みを続けることは日本にとって必要なことでしょう。 

 

コメント

アメリカとイラン  十分な説明がないまま煽られる危機感

2019-05-15 22:58:52 | イラン

(攻撃を受けた船。アラブ首長国連邦のフジャイラの港で13日撮影【5月15日 Newsweek】)

 

【「戦争ではない合理的な対応」が必要(アメリカの駐サウジ大使)】

イランとアメリカの緊張関係については、512日ブログ“トランプ政権のイラン圧力強化で高まる緊張 パレスチナ・シリアにも連動か”で取り上げ、一昨日ブログでもサウジの石油タンカーがアラブ首長国連邦(UAE)沖で攻撃を受けた事件について取り上げました。

 

そのサウジ石油タンカー攻撃事件の続報。

 

****石油タンカーへの「テロ攻撃」、海上安全への脅威 サウジが声明****

サウジアラビア政府は14日、アラブ首長国連邦(UAE)の領海付近で同国の石油タンカー2隻が受けた「テロ攻撃」は、海上安全への脅威だと指摘した。サウジプレス通信が14日に伝えた。

同通信によると、サウジ内閣は声明で、エネルギー市場へ影響が及び世界経済を危険にさらす可能性があることを踏まえると、海上と石油タンカーの安全を確保することは国際社会が共有する責務だと説明した。【515日 ロイター】

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海上安全への脅威」であることはわかりますが、依然として誰が攻撃したのは判然としません。イランは関与を否定しています。

 

わけがわからないまま、危機感だけが煽られているようにも。

 

アメリカの駐サウジ大使も“合理的な対応”を求めています。

 

****サウジ石油タンカーへの攻撃、戦争ではない合理的な対応必要=米大使****

米国のジョン・アビゼイド駐サウジアラビア大使は、サウジの石油タンカーがアラブ首長国連邦(UAE)沖で攻撃を受けた事件について、米国には「戦争ではない合理的な対応」が必要だとの認識を示した。

情報活動に詳しい米当局者は13日、この事件について、イランが実行した疑いが強いが、決定的な証拠がないと明らかにした。イランは関与を否定している。

同大使はリヤドで記者団に「何が起きたのか、なぜ起きたのか、徹底的な調査が必要だ。その上で、戦争ではない合理的な対応策を検討する必要がある」と発言。「紛争は(イランの)ためにも、我々のためにも、サウジのためにもならない」と述べた。

大使の発言は14日に公表された。【514日 ロイター】

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“情報活動に詳しい米当局者は、サウジの石油タンカーが攻撃を受けた事件について、米当局はイラン軍が直接関与したというより、イランに同調するあるいは支援を受けている勢力が実施した可能性があるとみていると明らかにした。

同当局者はイエメンのイスラム教シーア派武装組織「フーシ派」やイランを後ろ盾とするイラクのシーア派武装勢力による犯行の可能性があるが、明確な証拠はないとした。”【515日 Newsweek

 

イエメン「フーシ派」はサウジの石油パイプラインもドローン攻撃しています。

「フーシ派」とすると、イラン国内のどの勢力が後ろにいるのか?という話にもなります。もし革命防衛隊が・・・ということなら、実に危険な挑発行為です。

 

ベトナム戦争へのアメリカの本格介入の引き金として利用された“トンキン湾事件”の再現にならないことを願います。

 

【説明がないまま高まる危機感】

上記のサウジ石油タンカー攻撃事件もよくわからいまま危機感が煽られていますが、今回イラン問題については、アメリカ・トランプ政権の対応全般にそうした説明不足が感じられます。

 

****米軍、イラク駐留部隊への「差し迫った脅威」の可能性警告****

米軍は14日、イランの支援を受ける勢力によるイラク駐留部隊への差し迫った脅威の可能性にあらためて懸念を示し、イラク駐留米軍は警戒態勢を強めていると明らかにした。

 

これより先、イラクとシリアで過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討に当たる米主導の有志国連合の英指揮官は、イラン傘下の武装勢力による脅威は高まっていないと発言していた。

米中央軍の報道官はこの発言について、イラン傘下の勢力に関する米国や同盟国からの情報で特定された信頼の置ける脅威に矛盾していると説明。有志国連合は警戒態勢を強めており、イラク駐留米軍に対する信頼の置ける、緊急の可能性のある脅威を引き続き注意深く監視すると述べた。【515日 ロイター】

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****米、イラク大使館員出国へ 「イランの脅威」に対応****

米国務省は15日、在イラク米大使館職員のうち、緊急性の低い業務に携わっている職員を出国させるよう指示した。大使館が発表した。米メディアは、イラクの隣国イランからの脅威が理由だと報じた。

 

首都バグダッドの大使館と、北部アルビルの領事館の職員らが対象。大使館は(1)民間交通機関でできるだけ早くイラクを離れる(2)イラクの米関連施設を避ける―などの行動を取るよう米国民に呼び掛けた。

 

イラン産原油の全面禁輸に踏み切ったトランプ米政権は、イランによる米国への脅威が高まったとして、空母打撃群や爆撃機をイラン近海に派遣している。【515日 共同】

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最大限に危機感を煽っているのが、例によってトランプ大統領です。

 

****米標的なら「イランは痛い目に」=トランプ氏が報復警告****

トランプ米大統領は13日、イラン情勢について、記者団に「もしイランが何かするなら、重大な誤りだ。彼らの方が痛い目に遭う」と語った。イランとの間で緊張が高まる中、米国の国益が攻撃の標的になった場合は強力に報復すると警告したものだ。(後略)【514日 時事】

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イラク駐留部隊への差し迫った脅威」「イランの脅威」とは何なのか?

上記【ロイター】にもあるように、有志国連合の英指揮官も疑問を呈しています。

 

****「イランの脅威は深刻化していない」 有志連合の英軍報道官、米と矛盾する見解****

イラクとシリアでイスラム過激派組織「イスラム国」の掃討を目的とした米軍主導の有志連合に加わる英軍の報道官が14日、中東におけるイランの脅威は深刻化していないと発言し、米国の主張とは矛盾する見解を示した。

 

米政府は、自国と同盟国に対するイランの脅威が差し迫っていると警告し、ペルシャ湾一帯の兵力を増強している。

 

しかし、有志連合による「生来の決意作戦」の英報道官を担当するクリス・ギカ少将は、テレビ会議システムを通じて米国防総省で会見し、「イラクとシリアでは、イランが支援する勢力の脅威は拡大していない」と断言した。

 

この発言の後、直ちに米中央軍は、イランの脅威は高まっていると反論。同軍報道官のビル・アーバン大尉は、「米国および同盟国の情報機関は同地域で、イランが支援する勢力の差し迫った脅威について確認しており、(ギカ氏のコメントは)これらの情報と矛盾する」と述べた。

 

米軍はイランの脅威に対抗するためとして過去9日間にわたり、湾岸地域の空母打撃群にB52戦略爆撃機やパトリオットミサイルなどを追加し、配備を増強していた。

 

この見解の相違は、米軍が裏付けとする情報を説明することなく、湾岸周辺の兵力を増強していることに対する疑問を強調する結果になった。

 

専門家の間では、ギカ氏のコメントに加え、米政府はイランが何を計画していると考えているのか、詳しい説明がないことから、トランプ政権が正当な理由なく中東の緊張を高めているとの疑いが生じている。

 

またイラン側も、何も計画などしていないと真っ向から否定。米国の同盟国らは、湾岸地域へのパトリオットミサイルや強襲揚陸艦の配備は偶発的な出来事が大きな紛争を誘発する可能性を高めるとして、事態が深刻化する危険性について警告している。 【翻訳編集】AFPBB News

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同盟国イギリスだけでなく、アメリカ与党内からも説明を求める声が出ています。

 

****米政権、議会とイラン問題の情報共有せず 「闇の中」と不満も****

トランプ米政権とイランの緊張が高まる中、米議員らはホワイトハウスから十分な情報が提供されていないことに不満の声を挙げている。

議員らはイラン情勢について政権から秘密裏に状況説明があってしかるべきだと訴えており、トランプ氏と同じ共和党の一部議員からもそうした不満が聞こえる。過去の政権は国家安全保障上の重要事項について、定期的に議会への説明を行ってきた。

共和党のリンゼー・グラハム上院議員は記者団に対し「われわれは皆、闇の中にいるようだ」と述べた。

ナンシー・ペロシ民主党下院議長は、ホワイトハウスに下院議員への説明を求めたが、まだ同意できないとの返答があったという。

上院関係者らによると、民主党が要請したが、上院での説明会は予定されていない。

上院外交委員会のボブ・メネンデス議員(民主党)は、イランによる米駐留部隊への脅威と米国の対応について「議会が具体的な情報を受け取るのを阻害し続ける政権の対応は正当化し難い」と述べた。

ホワイトハウスからはコメント要請への回答が得られていない。【515日 ロイター】

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サウジ石油タンカー攻撃事件がベトナム戦争介入の契機ともなった謀略“トンキン湾事件”を連想させるなら、こちらの「イランの脅威」はイラク戦争開戦の証拠とされたウソ“大量破壊兵器”をも連想させます。

 

【核合意の履行義務の一部停止】

イランは、ロウハニ大統領が表明していたように、核合意の履行義務の一部を公式に停止したと公表しています。

 

****核合意の履行停止を実行 イラン****

イランの原子力エネルギー当局者は、2015年締結の核合意の履行義務の一部を公式に停止したと述べた。ロイター通信が15日に伝えた。履行停止の方針は8日、ロウハニ大統領が表明していた。

 

当局者によると、低濃縮ウランは300キロ、重水は130トンに定められた貯蔵の上限を撤廃し、今後は無制限に貯蔵する。

 

いずれも核兵器開発に関連する物質だが、イランは余剰分を国外に搬出したり販売したりしており、核合意の上限に達するまでにはまだ余裕があるとみられる。

 

また、核兵器には濃縮度90%以上のウランが必要とされるが、核合意では濃縮度は3・67%までに制限されている。

 

ロウハニ師は核合意を離脱した米国を除く英仏独中露の当事国5カ国に60日間の猶予を設け、原油や金融などの取引が保証されなければ、規定の濃縮度を超えるウランの製造に着手するとしている。【515日 産経】

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この「核合意の履行義務の一部停止」の意味合いは、512日ブログでも触れたように、“核合意で定められた「数値」は違反するが、核兵器開発に直結する活動を困難にするという核合意の「精神」は尊重するというメッセージ”ともとれますが、いずれにしてもアメリカ・トランプ政権がこれを契機に更に圧力を強めること想定されます。

 

トランプ大統領は一応否定してみせましたが、政権内では最大12万人の部隊を派遣する案も検討されているといった話も取りざたされています。

 

****米大統領、対イラン軍事計画巡る報道否定 「派兵検討せず」****
米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は13日、当局筋の話として、イランが米軍を攻撃したり、核兵器開発を加速させたりした場合に最大12万人の部隊を派遣する案などを含む最新の軍事計画を、シャナハン米国防長官代行がトランプ政権に提出したと報じた。

トランプ氏はホワイトハウスで記者団に対し、NYTの報道を「フェイク(偽)ニュース」とし、部隊派遣などを計画していないと指摘。「このような計画が必要にならないことを願う。もしこのような計画が実行されれば、計画以上の部隊を地獄に送ることになるだろう」と述べた。【515日 ロイター】

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【ハメネイ師 「イランは抵抗の道を選んだ」】

イラン側の対応は、アメリカとの「交渉」は否定しつつ、「戦争」も否定するというもので、ハメネイ師は「イランはレジスタンス(抵抗)の道を選んだ」とも。

 

要するにトランプ大統領が任期切れで退任するとかいった事態の変化を待って「耐える」というところです。

 

****米との交渉は「毒」 戦争は否定 イラン最高指導者****

イランのイスラム教シーア派最高指導者ハメネイ師は14日、政府高官らとの会合で、2015年締結の核合意から離脱したトランプ米政権について、敵対的な態度を取っているなどと批判し、交渉に応じることは「毒」だとして拒否する考えを強調した。イランのメディアが伝えた。

 

米政権は原子力空母やB52爆撃機などをペルシャ湾周辺に派遣し、イランに対する軍事的圧力を強めているが、そうした中でも交渉姿勢に転じることはないと宣言した形だ。交渉の否定には、国内の改革派から対米融和論が高まるのを封じる狙いもうかがえる。

 

ハメネイ師は一方で、「私たちは戦争を望まないし、彼ら(米国)も同様だ。彼らはそれが利益にならないことを知っている」と戦争への懸念を打ち消し、「イランは抵抗の道を選んだ」と述べた。

 

イランの最高指導者はロウハニ大統領がトップを務める行政府のほか司法府、軍などを掌握し、国政全般に決定権を持つ。ハメネイ師は反米の保守派として知られ、発言は米国との対決で指導部を一致団結させる思惑もありそうだ。【515日 産経】

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【ロウハニ大統領 「前例のない」圧力に国民結束を呼びかけ】

耐えきれるかどうかは国内情勢にもよります。

 

****「ガソリン値上げ」報道、誤報だった イラン各地で混乱****

イランで5月初旬、反米保守強硬派の有力通信2社が特ダネとしてガソリン価格の値上げを報道したことで、市民がガソリンスタンドに殺到し、各地で混乱が起きた。

 

政府はすぐさま報道を否定。司法当局が両通信社の幹部を事情聴取するなどして事態の収拾を図ったが、騒動の背景には国内の政治対立があるのではないかとみられている。

 

イランではガソリン代に政府の補助金が充てられており、ガソリンが1リットル1万リアル(実勢レートで約7円)と、ベネズエラやスーダンと並び、世界有数の安さを誇る。ガソリン価格が上昇すると、輸送費もかさみ、物価上昇に直結するため、市民はガソリンの値上げには神経をとがらせている。2007年には値上げに端を発して首都テヘランで暴動が起きたこともある。

 

核合意から離脱したトランプ米政権がイランへの制裁を再開して以来、物価高や現地通貨の価値急落などで経済は低迷。米国がイラン産原油の完全禁輸措置に踏み切る矢先の報道とあって、国家歳入の約6割を占めるとされる原油収入の激減が予測される中、政府が予算不足からガソリンへの補助金を削減するのではないかとの観測が強まっていた時期でもあった。【514日 朝日】

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イラン国内でも危機感を煽り、この機に乗じて穏健派政権を揺さぶろうとする保守強硬派の勢力があります。

一般に、対立する両陣営の強硬派と称される勢力は、互いにもっとも敵対する言動を示しながらも、危機が高まることで自らの存在感をアピールできるという点では共通する利害関係にあります。

 

これまで革命後のイランにとって最大の試練はイラン・イラク戦争でしたが、ロウハニ大統領はそのイラン・イラク戦争当時以上の圧力を受けているとも表明し、結束を呼びかけています。

****イラン大統領、米国から「前例のない」圧力 国内の結束呼び掛け****

イランのロウハニ大統領は11日、米制裁強化に直面する中、現在の状況は1980年代のイラクとの戦争時よりも厳しいかもしれないと指摘し、この状況を乗り切るため派閥間の結束を呼び掛けた。国営イラン通信(IRNA)が伝えた。

トランプ米大統領は9日、イランに対し 核放棄に向けた交渉の席に付くよう促した上で、両国の軍事衝突の可能性を排除しないと語った。

米国は今月、イラン産原油禁輸措置を強化したほか、湾岸地域での米軍の配備を拡大させている。

ロウハニ大統領は「現在の状況が(1980─88年の)戦時よりも良いのか悪いのかはいえないが、戦時には金融機関や石油販売、輸出入に問題はなかった。あったのは武器購入への制裁だけだった」と指摘。

 

「敵からの圧力はイスラム革命史上前例のない戦争だ。しかし、私は将来に大きな期待を抱いている。われわれが結束すれば、この厳しい状況を乗り切れると確信している」と述べた。

ロウハニ大統領は、2015年の核合意から米国が昨年離脱し、制裁を再開したことを受け、国内強硬派からの批判に直面しているほか、身内の穏健派からも一部離反が出ている。【513日 ロイター】

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トランプ政権がどのような対応を示すのか、ロウハニ政権が耐えきれるのか・・・不透明です。

 

日本外務省によると、イランのザリフ外相が来日し、16日に安倍晋三首相、河野太郎外相とそれぞれ会談するそうです。

 

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トランプ政権のイラン圧力強化で高まる緊張 パレスチナ・シリアにも連動か

2019-05-12 23:17:54 | イラン

(9日、スエズ運河を通る米原子力空母エイブラハム・リンカーンを軸とする艦船群。【5月11日 朝日】)


【核合意の「精神」は守りながら「耐える」イラン】

イラン産原油禁輸の適用除外停止に続いて、イランの輸出の1割を占める鉄やアルミニウムなどの金属取引も新たな制裁の対象することで石油以外の活路をも遮断、さらには空母エーブラハム・リンカーンをペルシャ湾へ向かわせ、戦略爆撃機B52編隊もカタールの米軍基地に到着・・・・アメリカ・トランプ政権の対イラン圧力を経済的にも、軍事的にも最大限に強化しています。

 

アメリカとしては、もしイランがアメリカの挑発に乗る形で暴発(シリア駐留米軍への攻撃とか航行船舶への攻撃など)すれば、それを口実にイスラエル・サウジアラビアなどとともに一気にイランを攻撃するつもりでしょう。

 

もしイランが核合意再交渉に応じて、これまでより厳しい条件をのめば、トランプ大統領としては、「オバマによるイランに甘い合意を自分が正した」と大々的にアピールできます。

 

あるいは、イラン国内の不満が高まり、現在のイスラム体制が崩壊するような事態となれば、願ったりかなったりでしょう。

 

イランとしては、欧州も中国・ロシアもアメリカと事を構えてまでイランを支援することは期待できませんので、いまのところ“耐える”しかない状況です。

 

ロウハニ大統領の発表した対抗措置としての「核合意の一部履行停止」にそうした事情・考えがにじんでいます。

 

****「違反以上離脱未満」で核合意の「精神」を守ったイラン****

(中略)

堪え忍んできたイラン

こうした圧力の高まりに対して、イランはずっと堪え忍んできた。

 

20185月の米国による単独制裁が再開したことで、イランの外貨収入の大半を占める原油の輸出ができなくなり、適用除外によって一息つくことはできたが、それが停止されたことでさらに厳しい状況に追い込まれてきた。(中略)

 

最悪のシナリオ

こうした状況に加え、原油禁輸の適用除外が終了し、さらにアメリカが空母や戦略爆撃機を派遣する中、イランはついに打つ手がなくなり、追い込まれた状態になってきた。

 

とりわけ、イラン核合意を経済発展のための必要悪として渋々受け入れ、アメリカと交渉することすら認めたくない保守強硬派からすれば、現在のイランの経済的苦境の原因はロウハニ政権の失態であり、信じてはいけない「大悪魔」であるアメリカを信用して交渉し、合意を結んだことにあると見ている。

 

そのため、一部の保守強硬派は核合意からの離脱やアメリカとの対決も辞さないと主張し、ロウハニ大統領に圧力をかけている。

 

しかし、イランが核合意から離脱したとすれば、その先に待っているのは最悪のシナリオである。

 

イランにとって最悪のシナリオとは、核合意から離脱し、核開発を再開することで、アメリカがイランの核開発を止めることを口実に戦争を仕掛け、圧倒的な武力でイランを攻撃し、現体制が崩壊するまで戦争を続けることである。

 

しかも核開発を再開することは、これまでイランを支持し、核合意の維持に尽力してきた欧州各国からも敵視されることを意味し、アメリカが直接当事者となって戦争を仕掛ける以上、シリアやベネズエラのケースとは異なるため、ロシアや中国もアメリカと直接武力衝突する可能性のあるイランに軍事支援することは考えにくい。

 

実際、中国はアメリカがイラン制裁を強化しても、口先ではアメリカを批判するが、実際はアメリカの制裁を恐れてイランとの取引を止めている。米中貿易戦争で手一杯の状況に、さらにイランを支援してアメリカとの摩擦を高めるつもりは中国にはない。

 

つまり、イランが核合意から離脱することは、アメリカの武力行使を招くだけでなく、イランの国際的孤立をも導き出してしまうため、最悪の結果をもたらすことは明らかである。ゆえにアメリカがいかに圧力をかけてきても核合意から離脱するという選択はしないのである。

 

違反以上離脱未満

アメリカから圧力を受け、国内から保守強硬派の圧力を受けるロウハニ大統領だが、かといって核合意から離脱して核開発に邁進することもできない。

 

そんな中で選んだのが、今回の核合意の「違反以上」でありながら、「離脱未満」という選択である。(中略)

 

つまり、今回ロウハニ大統領はイラン核合意で定められた「数値」は違反するが、核兵器開発に直結する活動を困難にするという核合意の「精神」は尊重するというメッセージを発している。

 

言い換えると、ロウハニ大統領は核兵器の開発に直結するような措置、例えば遠心分離機の基数を増やす(中略)、IAEAの査察団を追放するといったことを選択していない。

 

(中略)そうなると、イランが核兵器を持つのは極めて難しい状態が継続される。これがまさに核合意の「精神」であり、ロウハニ大統領はその「精神」を尊重するというメッセージを発したのである。

 

今後の展開

今回は抑制的に対応したイランではあるが、アメリカは継続的にイランに圧力をかけ、何かきっかけがあれば偶発的に武力紛争に発展する可能性のある、厳しい状況は変わらない。

 

EUは、イランが設定した60日間の期間に何かアクションをとるつもりはなく、イランが核合意を完全に履行することを求めるとしている。(中略)

 

そのため、60日の期間が過ぎればロウハニ大統領の演説で示したように、核合意から逸脱した核開発を進めることになるだろう。

 

トランプ政権はそれを見て「イランは核合意に違反している!」と騒ぎ立てることは間違いないだろうが、しかし、それが武力行使を正当化するほどの活動ではないため、イランに対して好戦的な態度を取るボルトン補佐官やポンペオ国務長官であっても即座に軍事行動を取ることは難しいだろう(とはいえ、強引に軍事行動を始める可能性がないわけではない)。

 

さらにロウハニ大統領はアメリカが核合意に戻るつもりなら交渉に応じるという姿勢も見せているため、逆に交渉に応じようとしないアメリカに対する非難が高まると思われる(とはいえ、トランプ政権がそれを気にするとも思えない)。

 

その先にどうなるのかを予測することは難しいが、少なくともイランが期待しているのは2020年のアメリカ大統領選挙でトランプ大統領が再選されず、イラン核合意に戻ると宣言している民主党候補の誰かが当選することである。

 

つまり、イランは当面、2020年の大統領選の結果が出るまでは、「違反以上離脱未満」の状態を維持しながら、アメリカ国民の選択に自らの将来を委ねて、核合意の「精神」を尊重しながら、それまで耐え続けることを選んだのである。【510日 GLOBE+】

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問題は、“耐え続けることを選んだ”ロウハニ政権が、国内経済がさらに悪化し、市民の不満が高まる中で、国内保守強硬派の突き上げにどこまで耐えられるか・・・というところでしょう。

 

(仮に耐えたとして、2020年にトランプ再選という事態になったら、ロウハニ大統領にはもはや生き残る道はないでしょう)

 

【イランを追い詰め、軍事的緊張を高めるアメリカの思惑 “Bチーム”の存在も】

同時に、イラン国内には好戦的勢力(対立を煽ることで存在感を高め、権益を守るような勢力)が存在しますので、偶発的なアメリカとの衝突、そこからの戦闘拡大という危険性もあります。

 

更に言えば、アメリカ側にも好戦的勢力が存在し、何としてでも軍事的にイランを叩きたいということで、イランの暴発を誘導したり、イラクのときのように証拠もないないまま・・・・といった可能性も捨てきれません。

 

ベトナム戦争へのアメリカ介入の契機となった「トンキン湾事件」にも、アメリカ側のねつ造がったことが後日明らかにされています。

 

****“第二のトンキン湾事件”を懸念、米・イランの軍事的緊張高まる****

(中略)米軍は特に、ペルシャ湾を航行する木造のダウ船からのミサイル攻撃や、イラン支援のシーア派民兵組織がイラク駐留部隊に攻撃を仕掛けるのではないか、と警戒を強めているという。

 

ダウ船に移動式ミサイルの発射装置を積んだ形跡もあるとされる。米メディアによると、こうした“信頼すべき情報”はイスラエルからもたらされたとしている。

 

Bチーム”の暗躍?

ベイルートの情報筋は軍事的緊張の高まりが故意に作り上げられた可能性があると指摘する。「イランが挑発行動を起こすといった情報はすべて“ためにする”リークだ。信頼すべき情報の出所がイスラエルだというのも怪しい。ボルトン、ビビ(ネタニヤフ・イスラエル首相の愛称)2人のビン・ムハンマド(サウジアラビアとアブダビ首長国の両皇太子)の“Bチーム”が暗躍しているのではないか」。

 

Bチーム”とは反イランの4人の名前の頭文字をもじっての呼び名だ。とりわけボルトン補佐官については、ワシントン・ポストのコラムニスト、マックス・ブーツ氏が「トランプ大統領が中東への介入に後ろ向きであるため、ボルトン氏がイランに先制攻撃させようと挑発しているのかもしれない」と分析、ベトナム戦争拡大のきっかけになった「トンキン湾事件」を引き合いに出し、ペルシャ湾で“第二のトンキン湾事件”が起きることに懸念を表明した。

 

今回の軍事的緊張はイラン指導部による挑発指示が要因だったのかどうか、真相は闇の中だが、ワシントン・ポストの別のコラムニストであるデービッド・イグナティオ氏によると、イラクのシーア派民兵は最近の米軍の異常な動きが軍事行動の前触れだったと懸念した可能性があることを明らかにしている。

 

同氏によると、イラク中部ティクリート近くにある米軍基地「キャンプ・スペイサー」付近で最近、米軍ヘリが可燃物を投下して畑を焼き払った。この行動が民兵に、米軍の攻撃が切迫していると誤解を与え、民兵側が攻撃に備えた動きをし、米軍が狙われているとの誤った情報になったのかもしれない。(後略)【511日 WEDGE

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ボルトン補佐官ら“Bチーム”がねつ造してまでとも思いませんが、自分らに都合のいいように解釈して、それを利用する形で事態を拡大する・・・ということはあり得るでしょう。

 

前東京都知事の舛添 要一氏も「アメリカが自己に都合の良い情報操作をする国だということを忘れてはならない」と。

 

****イランに制裁、中東の緊張招く「トランプ第一主義」****

(中略)

ご都合主義に陥ったアメリカの外交政策

20033月にイラク戦争が勃発したが、当時国会議員だった私は、6月にイラクに入り、自衛隊派遣の事前調査を行ったことがある。この時の開戦の理由は、「イラクが大量破壊兵器を保持していること」とされていたが、その情報はアメリカによる捏造だったことが後に明らかになっている。アメリカが自己に都合の良い情報操作をする国だということを忘れてはならない。

 

もうひとつ、「独裁体制を倒してイラクに民主政を樹立する」というのも戦争の理由であった。だが、同じ中東にあるアメリカの同盟国サウジアラビアはどうなのか。

 

先のカショギ記者殺害事件にムハンマド皇太子が関与しているとされるなど、民主主義とはほど遠い国であり、イランと比較したときに遙かに民主的とは言えないだろう。この点でもダブルスタンダードである。(中略)

 

しかも、トランプの親イスラエル政策は、保守的な福音派キリスト教徒の支持を集めるための選挙戦術の一環であり、選挙で指導者を選ぶ民主主義の陥穽である。

 

49日のイスラエルの総選挙で、盟友ネタニヤフ首相の政党リクードを勝たせるために、前日に、トランプは、イランの革命防衛隊をテロ組織に指定している。

 

トランプ政権の中東政策は、安定よりも混乱を中東にもたらしている。米中貿易摩擦が世界経済を低迷させているのと同様である。

 

アメリカ第一主義とはトランプ第一主義ではないはずだ。いま彼がアメリカに取らせている態度はモンロー主義とも全く異質なものである。

 

パックス・アメリカーナの下で覇権国アメリカが、自国のことのみを考えて、世界の平和と繁栄のために大局的に行動する責任を放棄するとき、世界の未来は明るくない。

 

トランプの支持率が、直近のギャラップの調査によると46%と過去最高である。これは経済が好調なためである。しかし、ロシア疑惑をはじめ、アメリカ憲法に悖る行為が批判されている。トランプの資質同様、アメリカ民主主義の真価もまた問われているのである。【511日 舛添 要一氏 JB Press

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【パレスチナ問題との連動の可能性】

なお、いったん事あれば、イラン攻撃の先兵を買って出ると思われるイスラエル・ネタニヤフ政権ですが、先日にガザからロケット弾等700発が撃ち込まれたように、イラン攻撃が(ガザのイランに近い勢力をとおして)パレスチナ問題に飛び火する危険性はあります。

 

****今夏のガザでの本格衝突に関するパレスチナ幹部の発言*****

今回のガザを巡る衝突は、パレスチナ側から発射されたロケット弾等700発、イスラエルでの死者4名と言うあまり前例のない規模の衝突となりましたが(イスラエル紙では、このためかってイスラエル国防軍(IDF)が自慢していた対短距離ミサイル防衛網のiron dome の能力について疑問視する声も出ている模様)、イスラエルのy net news jerusalem post net は、ガザのイスラム・ジハードが、今回の衝突は本格的な武力対決の前のリハーサルのようなもので、今夏にはイスラエルとの本格的な軍事的衝突があるだろうと語ったと報じています。


これはイスラム・ジハードの指導者 Ziad al-Nakhala がレバノンのニュース局al mayadeenniに対して語ったとのことで、彼は同時に今回のガザを巡る戦いの停戦は、イスラム・ジハードがテルアビブ向けにロケットを発射しようとしていた直前に合意されたこと、およびイスラエルのパレスチナ指導者を狙った暗殺に対しては座視しないと語った由。(中略)

 

イスラム・ジハードはハマスに比したらはるかに小さい組織で、ある意味ではハマスと競合し、競争してきたイスラム過激派の一組織であるところ(イランとも密接な関係があるとされる)、上記指導者の発言は、その様な組織の宣伝と言うか、強がり的発言とも解されます。


しかし、今回の衝突ではその戦闘的姿勢が高く評価され、ガザで影響力を伸ばしているとの評価もある模様で、必ずしも実態のない強弁と解すべきではないと思われ、特に、イスラエル側やトランプ政権の動き(対イラン強硬政策やラマダン後に発表されるとされる「世紀の取引」等をも考えればなおさらのこと)、今年の夏にガザを巡る状況が過熱し、本格的軍事衝突の可能性も否定はできないと思われるので、ご参考まで。【58日 「中東の窓」】

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今回のガザ側の攻撃がここまで拡大した背景は不透明です。イスラエルの今後の対イラン攻撃を見越して、イランによる(イランを攻撃すれば、テルアビブも無事ではないぞ・・・といった)対イスラエル牽制の思惑もあったのかも・・・と想像もできます。(もっとも、ネタニヤフ首相がその程度でイラン攻撃を思いとどまるとも思えませんが)

 

【イラン原油途絶で苦しむシリア・アサド政権 クルド人勢力との関係にも影響】

アメリカの対イラン制裁強化によって、イランからシリアへの原油輸送も途絶し、シリア・アサド政権にも大きな影響を及ぼしています。

 

****内戦下シリア、石油危機 給油待ち数百メートル/タクシー運賃3倍****

シリア首都で4月、燃料切れの車を押す運転手ら

内戦下のシリアで先月以降、燃料不足が深刻化し、市民生活を圧迫している。米トランプ政権がシリアへの禁輸に加え、主な燃料調達元だったイランに対する経済制裁も再開したためだ。

 

軍事的優勢を確実にしたアサド政権だが、国内の不満は高まっている。

 

朝日新聞の電話取材に応じた市民らによると、アサド政権は4月中旬、国土の約6割に上る支配地域を対象に、政府の補助金が入った廉価な石油の販売を車1台当たり月100リットルまでに制限し始めた。

 

ただ、状況は今月も改善せず、各地で数百メートルに及ぶ給油待ちの車列ができている。都市部のバスの便数も減り、タクシーの乗車価格は2~3倍に高騰しているという。

 

北部の商都アレッポで裁縫業を営むアフマドさん(33)はミシンを動かす発電機に入れる燃料がなく、一時休業を余儀なくされた。今月になって工場を再開したが、補助金対象外で6割以上高い石油を購入し、不足分を補っている。

 

「コストは商品価格に上乗せせざるを得ない。市民は、問題を解決できない政府に怒っているが、拘束されたくないので文句は言えない」と語った。(中略)

 

 国産激減、米制裁強化も影響

産油国のシリアは内戦前には、欧州諸国に石油を輸出していた。だが、内戦で、ユーフラテス川東側の主要な油田地帯を過激派組織「イスラム国」(IS)に長期間、奪われた。一帯は現在も米国の支援を受ける少数民族クルド人の武装組織の支配下にあり、生産能力が制限されている。(中略)

 

不足分を補ったのが内戦でも政権軍を支援するイランからの原油だった。米エネルギー情報局は2015年の資料で、イランがシリアに日量で約6万バレルを提供していたとしている。

 

米国はもともとシリアへの石油輸出を禁じていたが、昨年11月にはイラン核合意離脱に伴うイラン産原油に対する禁輸制裁も再開した。さらに、イラン産原油をシリアに海上輸送したとして、9の団体や個人を制裁対象に指定。

 

秘密裏に続けられていたシリアへのイラン産原油の輸出を止めるため、シリアへの輸送に関わった船舶リストを公表するなど、海運関係者に支援しないよう警告した。

 

シリアの石油取引を取り締まることで、アサド政権へのイランの影響力をそぐと同時に、イランの収入源にも打撃を与える狙いがあるとみられている。

 

アサド政権は内戦で反体制派と過激派組織を北西部に追い込んで軍事的優勢を固めているが、クルド人の武装組織とは緊張が続く。燃料不足による市民の不満が続けば、今後、政権側がクルド人勢力との協議に向けて、譲歩を迫られる可能性もある。【512日 朝日】

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上記記事最後にある油田地帯を押さえるクルド人勢力とアサド政権の関係は興味深い点です。(アメリカの支援を受けているため、アサド政権としてもうかつには手が出せないのでしょうか)

 

上記のようにアメリカの対イラン圧力強化は、パレスチナ問題やシリア情勢とも連動する形で、中東全体を大きく揺さぶっています。

 

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イラン産原油全面禁輸  トルコ・サウジアラビアの対応 イランで高まる市民の不満の行き先は?

2019-05-03 23:07:49 | イラン

(【チャート広場】)

 

【上昇傾向の原油価格の状況で、アメリカのイラン産原油全面禁輸措置】

昨年10月以降の原油価格の推移をWTI原油先物で見ると、昨年末に1バレル=45ドル付近で底を打ち、年明けからは右肩上がりに65ドル付近まで上昇しています。(ここのところの足元は6162ドル付近まで、やや下っていますが)

 

全くの門外漢で、それ以上のことはわかりませんが、こうした原油価格をどの水準に持っていくかという各国の思惑、その結果、産油国等の国家財政がどうなるか、また世界経済がどうなるのか・・・ということは、国際政治・経済を動かす極めて重要なファクターであることは間違いないでしょう。

 

周知のように、この原油価格に大きな影響を与えるイラン産原油禁輸の厳格運用という措置が、アメリカ・トランプ政権によって実施されています。

 

****原油価格高騰に懸念 米、イラン産の禁輸を日本などに適用 大統領選向け強硬策****

トランプ米政権は2日、イラン産原油の禁輸制裁から日本など8カ国・地域に認めた適用除外の措置を打ち切った。

輸入を続ければ米国の制裁の対象になる。イランは核開発の再開も示唆しており、中東地域の不安定化や世界の原油価格の高騰が懸念されている。

 

「中東を不安定化してきた無法者国家から資金源を奪う」

ポンペオ米国務長官は4月下旬、イラン産原油の全面禁輸に踏み切る理由をこう強調。「イランと関わる国は慎重を期すべきだ」と牽制(けんせい)した。

 

トランプ大統領は昨年5月、オバマ前政権下で米英仏独ロ中6カ国とイランが結んだ核合意から一方的に離脱。これに伴って米政権は禁輸制裁を昨年11月に再開した。

 

この際は各国事情を考慮し、日本のほか中国、インド、トルコなどに180日間の適用除外の措置を講じたが、今回は例外を一切認めなかった。

 

原油埋蔵量が世界4位を誇るイランの原油の全面禁輸は市場への影響も無視できない。米政権はジアラビアなどに不足分の埋め合わせを求めているが、サウジは増産には慎重姿勢で、先行きは不透明だ。

 

トランプ氏は「史上最強の制裁」と称し、イランへの圧力を強め、体制転換も排除しない構えだ。今年4月にはイランの精鋭部隊である革命防衛隊を「外国テロ組織」に指定している。

 

トランプ氏の強硬策の背景は専ら国内事情とみられる。来年の大統領選を見据えた、最大の支持基盤のキリスト教福音派の支持固めだ。福音派が、イランと敵対するイスラエルへの支持傾向が強いため、強硬策はアピールにつながる。

 

だが、全面禁輸で原油価格が高騰すれば米市民にも影響が及ぶ。また、最大の輸入国の中国や、トルコが禁輸に反発しており、緊張が高まる懸念がある。

 

 イラン窮地、猛反発

原油輸出が国家歳入の約6割を占めるとされるイランは猛反発。イランにとっては、制裁緩和と引き換えに核開発制限を受け入れたのに米国に反故(ほご)にされ、核合意に残留する利益が見いだせなくなっている。

 

ザリフ外相は4月28日、「核不拡散条約NPT)からの脱退も選択肢の一つ」と核開発の再開を示唆。

核合意の当事者の欧州連合(EU)や英仏独は原油取引を続けるための「貿易取引支援機関(INSTEX)」を立ち上げ、米国の制裁回避を狙う。

 

だが、各国企業は制裁を恐れ、イランとの取引に消極的だ。ザリフ氏の発言はこの現状を牽制(けんせい)したものだが、実際に核開発を拡大すれば、中東で緊張が一気に高まるのは必至だ。

 

また、革命防衛隊のバゲリ司令官は同日、「イランの原油が海峡を通れないなら、他国の原油も通過できない」とホルムズ海峡の封鎖を警告。封鎖すれば世界的な影響は避けられない。

 

ロハニ大統領は「米制裁は原油輸出手段の一つを封じたにすぎない。他にも、米国が知らない方法が6種類ある」と自信を見せる。タンカーの行き先を隠しての輸出や、公海上で物資を積み替える「瀬取り」を横行させるとの見方が出ている。

 

 日本、代替調達へ対応 ガソリン、当面高止まりか

日本の石油元売り各社は既にイラン産原油の輸入を停止し、代替調達に向けた対応を始めている。月岡隆・石油連盟会長は記者会見で「原油調達先の多様化は大変重要」としつつ、「原油の安定供給が損なわれることはない」と述べた。

 

ただ、原油価格が高騰するおそれはある。米WTI原油の先物価格は、昨年12月下旬に1バレル=40ドル台前半をつけてからは上昇基調で、足元では63ドル前後。月岡氏は「60~70ドルの範囲でおさまる」とみるが、イラン以外にもベネズエラなどが政情不安で生産量を落とす可能性がある。石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之・首席エコノミストは「要因が重なり需給が引き締まれば、昨年の最高値の76ドルに向かっていく可能性がある」とみる。

 

レギュラーガソリンの店頭価格(全国平均)は1リットルあたり150円台に近づいており、当面は高止まりが続きそうだ。【53日 朝日】

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【トルコ「石油輸入先の急速な多角化は困難」 問題が多いアメリカとの関係】

大体の動きは、上記記事が網羅的に説明していますが、少し補足する記事をあげていくと、まず今回の“例外を認めない”措置で大きな痛手を受ける国のひとつがトルコです。

 

****トルコ、石油輸入先の急速な多角化困難 「製油所に適合せず」****

トルコのチャブシオール外相は2日、米国によるイラン産原油の全面禁輸措置に関連して、石油輸入先の急速な多角化は困難との考えを示した。

外相は、一部の国の石油は国内製油所の規格に適合しないとした上で「石油輸入先を短期間で多角化することはできないと思う」と指摘。「石油を第三国から調達するとなれば、製油所の改修が必要だが、それには製油所を一定期間閉鎖せねばならず、コストがかかる」と語った。

ロイターの試算によると、米国がイラン産原油の禁輸制裁を復活した昨年11月以降の4カ月間で、トルコはイランから月間平均20万9000トンの石油を輸入。これは必要量の12%に相当する。(後略)【53日 ロイター】

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正確なところは知りませんが、原油というのは、産出国によって相当に質の違いがあるということは時折耳にします。その質に対応した精製施設が必要になるということのようです。

 

この製油所の問題が実態としてどの程度影響がある話なのかは知りませんが、トルコとアメリカの関係は、シリアのクルド人勢力をめぐる対立のほか、トルコが要求するギュレン師の引き渡し問題、ロシア製ミサイル「S400」の導入問題など、極めてギクシャクしています。

 

また、エルドアン政権は先日の国内選挙での首都アンカラ・最大都市イスタンブールの敗北(イスタンブールは相変わらず敗北を認めていないのでしょうが)という試練に直面する政治的に微妙な時期にもあります。

 

エルドアン大統領としては、唯々諾々としてトランプ大統領の“命令”に従う訳にはいかない・・・というところでしょう。ただ、禁輸措置に違反してアメリカと本格的に事を構えることになるのも・・・・。

 

ついでに言えば、シリアでの(米軍に協力する)クルド人勢力の問題では、トルコとクルド勢力YPGの衝突が伝えられるなど、一触即発の状況にもあります。

 

****トルコ軍とクルド勢力の衝突****

al arabiya net は、トルコ軍とその支配する民兵とクルド勢力YPGとがafirn 及びaazazの2つの都市の周辺で激しく衝突したと報じています。(その規模や死傷者の有無等さらには具体的な日時も不明。)


この衝突は、YPGがトルコ軍装甲車を攻撃し、トルコ兵1名が死亡したことから起きたものの由。(トルコ軍によれば、この事件で兵士1名が死亡し、3名が負傷した由)


このため両都市間の道路は閉鎖されている由。両者間では緊張が高まっている由。(中略)

 

他のアラビア語メディアにはこの事件に関する記事はなく、また衝突の規模も不明で事件の重要性は不明であるが(おそらくは偶発的な衝突か?)、トルコ政府はこの地域からのクルド勢力の撤収を求め、実力行使も辞さない構えを取っているので、今後ともこの種事件が生じ、場合によっては全面的な紛争につながる可能性もあり、取り敢えず。【52日 「中東の窓」】

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トルコとYPGの衝突は、トルコと(YPGと連携する)シリア駐留米軍との衝突にも発展しかねません。

 

イラン産原油の扱いをめぐる問題は、例えば上記のようなシリア情勢という異なる問題とも密接に絡み合って、関係国間での協議・調整が図られるものと思われます。いろんな“カード”と併せての“取引”が行われるのでしょう。

 

【対イランでアメリカに協調するサウジも、石油価格に関しては利害が対立】

一方、アメリカ・トランプ政権としては、対イラン政策で上記の禁輸措置厳格運用を行うものの、その結果として原油価格上昇、アメリカ国内のガソリン価格上昇という事態になると、大きな国内的批判を浴びることにもなります。

 

冒頭記事にもあるように、南米産油国のベネズエラ情勢も極めて流動的な状況で、原油価格上昇を避けるためにはサウジアラビアの増産協力が必要になります。

 

アメリカとサウジアラビアは、対イラン包囲網をつくる上で密接な協力関係にあり、トランプ大統領はカショギ氏殺害事件で高まる米国内のサウジ批判にもかかわらず、議会に対する拒否権を行使してまで、あくまでもサウジ擁護の姿勢を崩していません。

 

****米軍のサウジ支援継続 議会、拒否権を覆せず****

米上院本会議は2日、イエメン内戦でのサウジアラビアの軍事行動に対する米軍の支援の停止を求める決議にトランプ大統領が拒否権を発動したのを受け、決議を再び採決した。

 

しかし、大統領の拒否権を覆すのに必要な3分の2以上の賛成は得られず、米軍の支援が継続されることが確定した。

 

上下両院は3月から4月にかけ、サウジ人記者殺害事件でトランプ氏がサウジのムハンマド皇太子を擁護したのを受け、サウジ支援停止決議を可決したが、トランプ氏はサウジとの同盟関係を重視する立場から拒否権発動に踏み切った。【53日 産経】

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そうした緊密な関係にあるトランプ政権とサウジアラビアの関係ではありますが、石油増産という話になると、サウジアラビアとしては価格上昇に期待するところが大きく、両国間には利害の対立があって水面下での綱引きが行われているようです。

 

****米国とサウジとの攻防激化、イラン原油禁輸で ****

トランプ米政権は2日、イラン産原油の輸入国に対する制裁適用除外ルールを撤廃し、各国に全面禁輸を求める措置を開始した。

 

産油国サウジアラビアは、必要なら生産を拡大する意向を表明しているが、価格安定に向けた供給拡大の規模を巡り、水面下ではサウジと米国が向こう数週間にわたり激しい攻防を繰り広げそうだ。

 

関係筋によると、米国はサウジとクウェートが共同所有する油田の生産再開を求めている。再開されれば、供給量を日量50万バレル押し上げる可能性がある。

 

一方、財政均衡には原油の値上がりが必要なサウジは、増産不要で米国を説得する材料として、原油供給量の過不足を示す指標の算出方法を変更するよう、他の石油輸出国機構(OPEC)加盟国に働きかけている。(中略)

 

ただ、両国はなかなか合意できずにいる。昨年9月には、サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子とクウェートの首長シーク・サバーハ・アル・アフマド・アル・サバーハ氏が会談したが、関係筋によると協議は物別れに終わった。

 

焦点は、サウジが4月下旬に必要なら増産するとした確約を果たすかどうかだ。トランプ氏は426日、ツイッターで「サウジなどと原油供給の拡大について話した。すべての関係国の意見が一致した」と述べた。関係筋によると、サウジは増産する見通しだが、増産の規模や供給時期など詳細は確約していない。(後略)【53日 WSJ】

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サウジアラビアにとって、石油価格・産出量の問題は死活的に重要な問題ですから、これもまた、唯々諾々としてトランプ大統領の“命令”に従う訳にはいかない・・・というところでしょう。

 

【イラン 高まる市民の不満】

一方、イラン。

冒頭記事では、「米制裁は原油輸出手段の一つを封じたにすぎない。他にも、米国が知らない方法が6種類ある」(ロウハニ大統領)「イランの原油が海峡を通れないなら、他国の原油も通過できない」(革命防衛隊のバゲリ司令官)という“強気“発言が紹介されていますが、非常に苦しいのは間違いないでしょう。

 

長引く制裁の影響で経済が疲弊し、市民の不満は高まっています。

 

****イランのガソリンスタンドの長い列****

米国のイラン石油に対する禁輸措置の全面適用は昨日2日からだったと思いますが、al arabiya net はイランのメディを援用して、今後の燃料価格の値上げを見越して、この日イラン各地では、ガソリンスタンドの周りに長い車の列ができた(写真)と報じています。


記事は、革命防衛隊に近い tasnim通信によると、現在補助金付のガソリンは1ガロン当たり20セントで売られているが、これが経済評議会の決定で、今後、運転手一人につき月16ガロンに制限されるとの噂が流れたためとしています。


現在この決定の実施期日は未定の由で、内務省は国民に対して、政府の発表だけを信じるようにと警告した由。【53日 「中東の窓」】

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****教員のデモと逮捕(イラン)****

もう一つイラン関係のニュースを・・・


これもal arabiya net の記事ですが、2日イランの14の州で、数万人の教員及び退職者のデモが行われ、当局は教員組合等複数のものを、集会の罪(当局の許可を得ない集会と言う意味か)で逮捕した由。


教員組合の要求は、給料の値上げ、支払いの遅れている賞与等の支払い、退職者の待遇改善、パートタイム教員の正規教員化等の由。【同上】

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****イラン経済の窮状、庶民の胃袋も直撃 ****

「インフレで肉なんていう贅沢品は買えなくなった」

 

鶏肉を買うため列に並ぶ買い物客

イラン当局は経済の混乱を鎮めるための新たな標的を定めた。食肉市場を操る連中だ。

 

イラン暦の新年を祝った45日までの2週間、イランの人々は食卓を飾るのに以前よりずっとお金が掛かることを実感した。

 

イラン中央銀行によると、仔牛(こうし)肉や牛肉は昨年に比べ67%も値上がりした。羊肉は52%、鶏肉も63%値上がりしたという。靴屋を営むアリ・モシュタギ氏(38)は、「すさまじいインフレになった去年から、肉なんていう贅沢品は買えなくなった」とこぼす。「お客も呼べない。まともな料理が出せないから」

 

食肉市場の危機はイラン人の胃袋という、おそらく最も痛いところを突いている。イランでは昨年初め、景気への不満から抗議行動が広がった。イラン政府はそうした事態の再発を避けるため、食料品価格の操作とみられる行為を取り締まっている。

 

国営メディアによると、正月の休み中、テヘランの警察当局は食肉市場を操作した疑いで43人を逮捕した。警察はまた、隠されていた鶏肉270トンと牛肉175トンを押収。後で価格を引き上げて売る狙いだったとみられている。(中略)

 

取り締まりの強化は食糧危機の深まりを示す兆候だが、その主因である通貨安は他の製品価格も押し上げている。ペルシャ暦の正月には至る所で見られる果物の価格も、昨年58%上昇した。イランの食事に欠かせない米は24%値上がりし、砂糖は39%も高くなった。

 

イラン統計庁によると、昨年のインフレ率は27%に達した。

 

当局は食肉市場の操作を取り締まる以外にも、両替商による外貨の密輸や横領、金貨市場の操作を摘発し、十数人を金融犯罪で起訴している。イラン指導層は金融犯罪が経済混乱に拍車を掛けかねないと懸念している。(中略)

 

政府は自治体が運営する店舗で安価な冷凍の輸入肉を販売し、市場価格をそれに近づけようと試みた。1人につき1カ月当たり7.7ポンド(約3.5キロ)を割り当てたこのプログラムは3月に終了したが、市場の価格を大きく押し下げるには至らなかった。

 

イランの政治指導層が二極化する中、食糧危機は分断を一層深めている。ハッサン・ロウハニ大統領を含む政府高官は、食糧不足の元凶はインフレや密輸、米国の経済制裁にあると主張している。

 

一方、強硬派はこうした危機について、2015年の核合意に対する反対や、「米国は信用ならない」との懸念が正しかったことを証明していると指摘する。ドナルド・トランプ米大統領は昨年、イランとの核合意から脱退し、制裁を再開した。

 

経済的な苦境は中間層にも影響を及ぼしている。

3人の子どもがいる買い物客の男性は、「何も買わないさ。肉のウインドーショッピングをしているだけだ」とあきらめ顔だ。「値段を調べて、家で肉の話をするのが趣味になった。誰が肉を買えるかって?金持ちだよ、貧乏人じゃない」【417日 WSJ】

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問題は、こうした市民の不満は、アメリカの望むような“体制転換”ではなく、穏健派ロウハニ政権の崩壊・より強硬な好戦的反米主義の台頭を招くだけに終わるであろうという点です。

 

パレスチナ対策にしても、イラン対策にしても、アメリカ国内選挙対策重視の観点から世界を左右する対策が決定されていくというのは世界にとっては不幸なことです。 

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