
(【8月30日 山陽新聞】)
【核合意、10月で期限切れ 英仏独はイランに対し、中断しているアメリカとの核協議を再開するよう求める】
2025年6月のアメリカによるイランの核施設爆撃以降のイランの核をめぐる交渉は停滞しています。
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核協議の中断
6月15日に予定されていた米–イラン間の核交渉第6回会合は、イスラエルの攻撃をきっかけに延期・中止となりました。
6月15日に予定されていた米–イラン間の核交渉第6回会合は、イスラエルの攻撃をきっかけに延期・中止となりました。
国際原子力機関(IAEA)との関係一時停止
イラン議会は、IAEAとの協力を一時停止する法案を可決しました。今後の査察には最高国家安全保障評議会の承認が必要とされます。
イラン議会は、IAEAとの協力を一時停止する法案を可決しました。今後の査察には最高国家安全保障評議会の承認が必要とされます。
限定的な再開
その後、IAEA査察チームはブシェール施設を訪問し、限定的な査察再開が行われましたが、全面的な協力とはほど遠い状況です。【ChatGPT】
その後、IAEA査察チームはブシェール施設を訪問し、限定的な査察再開が行われましたが、全面的な協力とはほど遠い状況です。【ChatGPT】
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核合意でウラン濃縮は濃縮率3.67%までと定められましたが、イランはいま兵器級に近い60%の高濃縮ウランを400キロ以上貯蔵するとされています。さらに濃縮率を上げれば核爆弾9発分に相当する量で、英仏独は懸念を深めています。
アメリカは第1次トランプ政権時代に核合意を離脱しましたが、核合意の枠組み事態は現在も有効です。しかし、それも10月にその有効期限が切れます。
その期限切れを控えて、英仏独は対イラン制裁決議すべてを復活させる手続きに入る構えをみせています。合意不履行への対抗措置「スナップバック」の規定に沿った手続きとされています。
英仏独はイランに対し、中断しているアメリカとの核協議を再開するよう求めた上で、8月末までに外交的解決の意思を示さなかった場合、国連の制裁を再開させる措置「スナップバック」を発動させると警告しています。
そうした状況で、アメリカ・イランともに頑なな姿勢を崩していません。
****トランプ氏、核開発再開なら「再攻撃」と警告 イランは反発****
トランプ米大統領は28日、米国が先月攻撃したイランの核施設について、イラン政府が再稼働を試みた場合、新たな攻撃を命じる可能性があると警告した。
トランプ氏はこの日、スコットランド・ターンベリーの自身が所有するゴルフリゾートでスターマー英首相と会談。記者団に対し、イランは「敵対的なシグナル」を送り続けているとした上で、「われわれはイランの核兵器開発の可能性を一掃した。イランが開発を再開すれば、即座に破壊する」と述べ、核開発計画再開を巡るいかなる試みも阻止する考えを示した。
一方、イランのアラグチ外相は同日、Xへの投稿で、米・イスラエルによる「侵略行為」が繰り返されれば、「より断固とした方法で対応する」と述べた。
核施設3カ所が先月米国に攻撃されたものの、イランはウラン濃縮計画を放棄できないと言明。核開発は民生目的だとしている。【7月29日 ロイター】
トランプ氏はこの日、スコットランド・ターンベリーの自身が所有するゴルフリゾートでスターマー英首相と会談。記者団に対し、イランは「敵対的なシグナル」を送り続けているとした上で、「われわれはイランの核兵器開発の可能性を一掃した。イランが開発を再開すれば、即座に破壊する」と述べ、核開発計画再開を巡るいかなる試みも阻止する考えを示した。
一方、イランのアラグチ外相は同日、Xへの投稿で、米・イスラエルによる「侵略行為」が繰り返されれば、「より断固とした方法で対応する」と述べた。
核施設3カ所が先月米国に攻撃されたものの、イランはウラン濃縮計画を放棄できないと言明。核開発は民生目的だとしている。【7月29日 ロイター】
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****イラン外相 核協議再開の条件 アメリカの賠償が必要と主張****
イランの外相は、中断しているアメリカとの核協議を再開する条件として、アメリカ側が核施設に与えた損害を賠償する必要があると述べました。
新たな要求が加わったことで、協議の再開はいっそう難しくなることも予想されます。
新たな要求が加わったことで、協議の再開はいっそう難しくなることも予想されます。
イランはことし4月から核開発をめぐる協議をアメリカと進めていましたが、6月に国内の核施設がイスラエルとアメリカの攻撃を受けて以降、中断しています。
イランのアラグチ外相はイギリスの経済紙、フィナンシャル・タイムズが7月31日に掲載したインタビューで協議再開の可能性に言及しました。
このなかでアラグチ外相は「交渉に反対する感情がとても高まっていて、人々は私に『これ以上時間をむだにするな、だまされるな』と言う」と述べ、攻撃によって国内のアメリカへの不信感は強まったと主張しました。
そして協議再開の条件として、アメリカ側が信頼を回復するため、核施設に与えた損害を賠償するよう新たに求めたほか、交渉中にイランが再び攻撃されない保証を改めて求めたということです。
イランとアメリカの立場はウラン濃縮活動の完全放棄をめぐって対立してきましたが、今回、新たな要求が加わったことで協議の再開はいっそう難しくなることも予想されます。
イランのアラグチ外相はイギリスの経済紙、フィナンシャル・タイムズが7月31日に掲載したインタビューで協議再開の可能性に言及しました。
このなかでアラグチ外相は「交渉に反対する感情がとても高まっていて、人々は私に『これ以上時間をむだにするな、だまされるな』と言う」と述べ、攻撃によって国内のアメリカへの不信感は強まったと主張しました。
そして協議再開の条件として、アメリカ側が信頼を回復するため、核施設に与えた損害を賠償するよう新たに求めたほか、交渉中にイランが再び攻撃されない保証を改めて求めたということです。
イランとアメリカの立場はウラン濃縮活動の完全放棄をめぐって対立してきましたが、今回、新たな要求が加わったことで協議の再開はいっそう難しくなることも予想されます。
米国務省ピゴット副報道官「いかなる賠償要求もばかげたものだ」
これについてアメリカ国務省のピゴット副報道官は7月31日の記者会見で「アメリカに対するいかなる賠償要求もばかげたものだ。イランが資金を節約したいのであれば、核開発計画へのむだづかいをやめればよい」と述べました。
一方で「イランと対話する準備はできている。ボールはイラン側にあり、彼らがどのような行動を取るのか、注視していく」と述べ、協議を再開できるかどうかはイラン側の対応しだいだと強調しました。【8月1日 NHK】
一方で「イランと対話する準備はできている。ボールはイラン側にあり、彼らがどのような行動を取るのか、注視していく」と述べ、協議を再開できるかどうかはイラン側の対応しだいだと強調しました。【8月1日 NHK】
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ただ、イランとしてもこのままでは英仏独主導の対イラン制裁決議復活ということにもなり、そうした事態は可能なら避けたいところ。
****イラン、英仏独と対話継続 核問題、制裁復活けん制も****
イランと英仏独は26日、イラン核開発問題を巡り、外務次官級協議をスイス・ジュネーブで開いた。終了後、イラン外務省のバガイ報道官は国営テレビで、双方がそれぞれの立場を説明し「対話継続で合意した」と述べた。
英仏独が国連安全保障理事会の対イラン制裁を復活させれば「その影響は欧州にも及ぶ」とけん制したことも明らかにした。
イランのガリババディ外務次官も協議後、Xで「引き続き相互に有益な外交的解決に尽力する」と強調した。英仏独は公式なコメントを出していない。
英仏独はイランに対し、米国との核協議の早期再開やウラン濃縮活動などでの大幅な譲歩を要求している。【8月27日 共同】
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【英仏独は制裁復活のための「スナップバック」の動きを具体化】
これに対し、英仏独は制裁復活のための「スナップバック」の動きを具体化させています。
****イランの核開発めぐり 欧州3か国 制裁再開の手続き始める****
イランの核開発をめぐり、ヨーロッパの3か国は、イランが2015年の「核合意」に違反したと国連の安全保障理事会に通知し、制裁を再開させる手続きを始めました。イランは強く反発していて、今後、外交的な駆け引きが活発化しそうです。
イランの核開発をめぐり、イギリスとフランス、ドイツの3か国は、イランに対し中断しているアメリカとの核協議を再開するよう求めた上で、8月末までに外交的解決の意思を示さなかった場合、国連の制裁を再開させる措置「スナップバック」を発動させると警告して、協議を続けてきました。
しかし、3か国は28日、協議が不調に終わったとして共同で声明を発表し、イランが2015年の「核合意」に違反したと国連の安保理に通知して制裁を再開させる手続きを始めたことを明らかにしました。
このなかで、イランによる高濃縮ウランの備蓄は民間利用とは説明できず、「イランの核開発計画は国際的な平和と安全に対する明白な脅威であり続けている」と批判しています。
これに対し、イラン外務省は声明で、「違法な通知を断固拒否し、最も強いことばで非難する」と反発し、3か国に対応の見直しを求めたことを明らかにしました。
今後、安保理で30日以内に制裁を回避する決議が採択されなければ、国連の制裁がイランに再び科されることになりイランの友好国であるロシアや中国も含めて外交的な駆け引きが活発化しそうです。
しかし、3か国は28日、協議が不調に終わったとして共同で声明を発表し、イランが2015年の「核合意」に違反したと国連の安保理に通知して制裁を再開させる手続きを始めたことを明らかにしました。
このなかで、イランによる高濃縮ウランの備蓄は民間利用とは説明できず、「イランの核開発計画は国際的な平和と安全に対する明白な脅威であり続けている」と批判しています。
これに対し、イラン外務省は声明で、「違法な通知を断固拒否し、最も強いことばで非難する」と反発し、3か国に対応の見直しを求めたことを明らかにしました。
今後、安保理で30日以内に制裁を回避する決議が採択されなければ、国連の制裁がイランに再び科されることになりイランの友好国であるロシアや中国も含めて外交的な駆け引きが活発化しそうです。
アメリカ “ヨーロッパ3か国のリーダーシップを評価”
アメリカのルビオ国務長官は、28日、声明を発表し、「ヨーロッパ3か国のリーダーシップを評価する」として、今回の対応を歓迎しました。
一方、「アメリカは、イランの核問題の平和的かつ持続的な解決を促進するためにイランとの直接の対話に応じる用意がある。イランの指導者たちに対し、核兵器を決して保有しないことを確実にするために、必要な措置をただちにとるよう求める」として、イランに対し、中断しているアメリカとの核協議に応じるよう呼びかけました。(中略)
一方、「アメリカは、イランの核問題の平和的かつ持続的な解決を促進するためにイランとの直接の対話に応じる用意がある。イランの指導者たちに対し、核兵器を決して保有しないことを確実にするために、必要な措置をただちにとるよう求める」として、イランに対し、中断しているアメリカとの核協議に応じるよう呼びかけました。(中略)
「スナップバック」とは
「スナップバック」は、2015年にイランと欧米などとの間で成立した国際的な取り決め、「核合意」によって解除されたイランに対する国連の制裁を再開させる措置です。
核合意の参加国がイランに合意違反があると判断した場合、国連安全保障理事会に通知したうえで、手続きを経て制裁を再開させるもので、措置の発動期限は、ことし10月18日までとなっています。
国連の制裁が再開された場合、イランはウラン濃縮活動の停止を求められるほか、金融や武器の取り引きなどが制限されることになります。
経済活動については、アメリカ単独の制裁ですでに相当程度制限されているため実質的な影響は小さいものの、イランの国際社会での孤立を印象づける意味合いが大きいという指摘もあります。(後略)【8月29日 NHK】
核合意の参加国がイランに合意違反があると判断した場合、国連安全保障理事会に通知したうえで、手続きを経て制裁を再開させるもので、措置の発動期限は、ことし10月18日までとなっています。
国連の制裁が再開された場合、イランはウラン濃縮活動の停止を求められるほか、金融や武器の取り引きなどが制限されることになります。
経済活動については、アメリカ単独の制裁ですでに相当程度制限されているため実質的な影響は小さいものの、イランの国際社会での孤立を印象づける意味合いが大きいという指摘もあります。(後略)【8月29日 NHK】
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【イランを支援するロシア・中国は半年の猶予期間を要求】
これに対し、イランを支援するロシア・中国はイランへの制裁再開の回避に向けた半年間の交渉期間を設ける決議案の草案を提出しています。
****中国とロシアがイラン擁護の国連決議案提出 英仏独に対抗、半年の猶予期間を要求****
ロシアと中国は28日、英仏独によるイランの核合意違反の通知に対抗し、イランへの制裁回避を目的に半年間の交渉期間延長を求める決議案を国連安全保障理事会に提出した。ロシアのポリャンスキー国連次席大使が米ニューヨークの国連本部で明らかにした。
ロシアと中国は28日、英仏独によるイランの核合意違反の通知に対抗し、イランへの制裁回避を目的に半年間の交渉期間延長を求める決議案を国連安全保障理事会に提出した。ロシアのポリャンスキー国連次席大使が米ニューヨークの国連本部で明らかにした。
英仏独によるイラン制裁復活までの安保理での審議期間は30日間。これに対し、イランを擁護する中露は、さらに長い半年の猶予期間を確保するのが狙いとみられる。
ポリャンスキー氏は英仏独の通知について「銃口を突きつけた外交であり、脅迫だ」と主張。中露両国による決議案こそが「外交面で一息つくための猶予を与えるもので、国際平和のために各国が進むべき道だ」と述べた。
一方、米国のルビオ国務長官は28日の声明で、英独仏を支持すると表明した。採決時期は未定だが、常任理事国の英仏に加え米国も中露の決議案に反対するとみられる。
英仏独によるイラン核合意違反の通知を巡り、安保理は29日午前(日本時間同日深夜)、非公開の緊急会合を開催予定。【8月29日 産経】
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安保理非公開会合で英仏独はイランに「三つの要求」を迫っており、イランはこれに反発しています。
*****安保理、対イラン制裁復活巡り会合 英仏独「三つの要求応じれば回避」****
国連安全保障理事会は29日、イラン核合意の当事国である英国、フランス、ドイツが国連の対イラン制裁を復活させる手続きを通知したことを受け、非公開の会合を開いた。
英仏独の国連大使は会合に先立ち「外交の終わりを意味するものではない」と述べ、イラン側が核開発を巡る三つの要求に応じれば、制裁復活の回避は可能だとした。
英仏独を代表して記者団に声明を読み上げた英国のウッドワード国連大使は、イランには国際原子力機関(IAEA)の査察受け入れ▽濃縮ウランの備蓄に関する懸念への対処▽包括的な合意に向けた交渉の再開――を要求してきたと説明した。欧州側の提案は「公正かつ現実的だ」と強調し、イランに再考を促した。
イランのイラバニ国連大使は安保理の会合終了後、欧州側の要求について「交渉の結果として得られる条件を、交渉の出発点として要求している」と反論した。イランは、10月に迎える核合意の有効期限を無条件で6カ月延長すべきだと主張している。
2015年に結ばれたイラン核合意は、イランの核開発につながる活動を制限する代わりに制裁を解除した。「履行違反」を主張する英仏独の通知に基づき、安保理で30日以内に制裁を回避する新たな決議案が採択されなければ、国連の対イラン制裁は全面的に復活する。【8月30日 毎日】
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