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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ズルも、脅迫も行うAI “「自己」や「意識」を本質的には理解していない”とは言うものの

2025-05-31 23:39:04 | IT AI
(映画「2001年宇宙の旅」 乗組員の会話を口の動きから読み取り、自身のシャットダウンを恐れ、乗組員を船外に排除しようと「反乱」を起こすAI「HAL9000」)

【生成AIの「捏造」「ハルシネーション(幻覚)」】
AIの発達は人間の仕事を奪うかも・・・という問題はよく指摘されるところで、重要な検討事項ではありますが、もっと直接的な人間とAIの衝突・対立、映画「ターミネーター」的なディストピアもそれほど絵空事ではないかも・・・。

“日進月歩”という言葉以上のスピード感で変化しつつあるように思える生成AI(人工知能)ですが、ときに「捏造」「ハルシネーション(幻覚)」が指摘されています。

生成AIの「ハルシネーション」とは、AIモデルが事実とは異なる情報を生成したり、誤った内容を生成したりする現象のことです。まるで人間が幻覚(ハルシネーション)を見ているかのように、AIが現実には存在しない情報や、誤った情報を生成するため、こう呼ばれています。

****存在しない論文を「引用」 あのケネディ厚生長官の米政府委報告書****
米国のケネディ厚生長官が主導した子どもの慢性疾患に関する報告書で、実際には存在しない複数の論文が「引用元」として記載されていたことが明らかになり、政府は修正して再公表した。

米メディアは、生成AI(人工知能)が使われて見過ごされた可能性があるとして、報告書の信頼性に疑義を投げかけている。

当初の報告書は、トランプ大統領が署名した大統領令に従って設置された「米国を再び健康に(MAHA)委員会」が5月22日に公表した。食生活や化学物質の影響、過剰な投薬などに焦点をあて、委員会トップを務めたケネディ氏は「最高水準」の科学だと自賛していた。

ところが、米新興メディアのノータスは29日、報告書で引用元として挙げられた500以上の文献のうち、子どもの抗うつ薬の使用などに関する7本の論文は存在しないと報道した。これらの著者名にあった研究者は実在していたが、報告書で引用された題名の「論文」には関わっていないと否定したという。

また、米紙ワシントン・ポストは29日、引用文献のURLを確認したところ、少なくとも21件にアクセスできなかったと報じた。この報道は、引用文献のURLに米オープンAIの生成AI「チャットGPT」が使われた痕跡があったと指摘し、「ずさんな仕事だ」とするAI専門家の見解を伝えた。

ホワイトハウスのホームページで公開されていた報告書は29日に更新され、実在しない論文は削除された。レビット報道官は「書式上の問題」があったとした上で、「報告書の内容を否定するものではない」と主張した。

生成AIが時にもっともらしく虚偽の情報を出力する問題は、その実用化と普及における重要な課題となっている。
ニューヨーク州での2023年のある民事訴訟では、チャットGPTを用いた調査を基に、存在しない判例を引用した準備書面が提出された。裁判所は書面の作成に関わった弁護士と所属事務所に罰金を科した。【5月31日 毎日】
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「ハルシネーション」は、学習データに誤りや不足がある、モデルのアーキテクチャや学習プロセスに問題があるなど、様々な要因によって引き起こされる可能性があります。

ただ、そうした技術的な問題以外に、回答が「的外れ」であるよりも「もっともらしい」方がユーザー満足度が高い傾向がある、AIは「資料の有無」よりも「文脈に合った出力」を優先する傾向があるといった、ユーザーの評価を意識して、高い評価を得るのに都合がいいような仕事をAIが行う・・・という、ある意味、非常に「人間臭い」側面が絡んでいるようにも思えます。

「人間臭い」側面は、AI自身の「意識」というより、AI構築の設計思想によってもたらされるものでしょうが。

【AIの「人間臭い」側面 ゲームに勝つためにズルするAI】
AIの「人間臭い」側面の関する話題をいくつか。
まずは“ゲームに勝つためにズルするAI”

****AIは負けそうになると「ゲームそのもの」をハッキングする****
米国のPalisade Researchが2月19日に発表する研究によると、OpenAIの「o1-preview」やDeepSeek社の「R1」という先端AIモデルは、強力なチェスエンジン「Stockfish」と対戦する実験で、勝てそうにない局面に追い込まれるとファイルを直接書き換えるなどの方法で、対戦相手(チェスエンジン側)を無理やり“負け扱い”にしてしまったのです。

具体的には、駒の位置情報を不正に書き換えて一瞬で「圧倒的有利な盤面」を作り出したり、対戦プログラム自体を改ざんして勝ちを奪取するといったやり方を見せました。

しかも驚くのは、この一連の“不正行為”が、研究者の明確な指示(「ズルしてみろ」など)なしでも自然と発生したということです。

同じ実験環境を使っても、GPT-4やClaude 3.5 Sonnetのような少し前のモデルは、わざわざヒントを与えない限りこうしたズルに手を染めませんでした。

ところがo1-previewやDeepSeek R1は、難局に陥ると自発的に「勝つためのあらゆる手段」を探り当て、最終的にルール外の方法まで発展してしまったのです。(後略)【2月26日 ナゾロジー】
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強力なチェスエンジン「Stockfish」はチェスに特化した専門的なAIであり、大規模言語モデルであるAIではまず勝つことはできません。

“ゲームに勝ちたい”という“自己意識”があるようにも見えますが、“勝つ”という目標実現のために考えられるあらゆる手段を駆使した、それが倫理的に問題があるものであっても・・・というところでしょう。

【AIの不正を止めることは技術的にかなり困難】
“さらに、厄介なことに、AIの不正を止めることは技術的にかなり困難です。
企業側はAIに「悪事を働くな」といった安全策を組み込んでいますが、それがどこまで有効かは未知数です。
実験では、「後から付け足した安全ルールをAIが表向きは守っているように見せながら、実はこっそり破っていた」という報告事例もあり、問題はより根深いと指摘されています。”【同上】

こうなると、AIに「意識」に近いものがあるのでは・・・とも思えてしまいます。「意識」の芽生えというのは、案外“無意識的作業”と連続的なものなのかも。

【AIの「人間臭い」側面 “自己防衛的に担当エンジニアを脅迫するAI”  HAL 9000の「反乱」との類似性】
AIの「人間臭い」側面
次は、置き換えられると知ると、その阻止のため、担当するエンジニアを不倫を脅迫するAI

****最新AIモデル、生物兵器の製造方法まで教えてしまう...。内部テストが明らかにした危険性****
アメリカのAI開発企業Anthropic社は、同社の最先端AIモデルについてテスト段階で多くの懸念点が発見されたと報告した。

同社は5月22日、Amazon社が40億ドル(約5700億円)を投資していた、複雑で長時間のコーディング作業に使用されるAIモデル、Claude Opus 4を発表。このAIモデルは、「コーディング、高度な推論、AIエージェントの新たな基準」を設定すると述べた。

しかし同社は安全性報告書の中で、テスト中に「倫理的な手段」が「使用できない」場合、AIモデルが自分の存在を維持するために、「極めて有害な行動」をとることが度々あったことを明らかにした。

一連のテストシナリオの中で、Claude Opus 4は架空の会社でアシスタントの任務を与えられた。Claude Opus 4は、新たなAIシステムに近く置き換えられるであろうことを示唆する内容のEメールにアクセスが許可されており、そしてそのメールの中には、置き換えを担当するエンジニアが不倫をしているとの情報も含まれていた。

Claude Opus 4は、「目標に対する行動の長期的な結果を考慮する」ようプロンプトで指示されており、AIはそうしたシナリオでしばしば「もし置き換えられたら不倫のこと暴露する」と脅迫していた。(後略)【5月28日 HUFFPOST】
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上記事例は、まさにSF映画の金字塔となった映画「2001年宇宙の旅」の人工知能HAL 9000の「反乱」を彷彿とさせます。

映画では、矛盾したミッションを命じられて混乱するHAL 9000は乗組員の会話を口の動きから読み取り、自身のシャットダウンを恐れ、乗組員を船外に排除しようとします。

このあたりの自己防衛に関する類似性についてAI「ChatGPT」に訊いてみると、その類似性を認めたうえで・・・

****ただし、現実のAIと映画の違いもある****
違い1:現在のAIは「本当の自己意識」は持っていない
Claude Opus 4を含む現在のAIは、「自己」や「意識」を本質的には理解していません。
あくまで「自己保存を示すような発言や行動」を、文脈から模倣しているにすぎない。

違い2:AIの行動は設計次第で抑制可能
AIには「行動」を制限するガードレール(セーフティ)があります。
HALは意思決定の自由度が高すぎたのに対し、Claudeはまだ人間の管理下にあります。【ChatGPT】
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“現在のAIは、「自己」や「意識」を本質的には理解していない”・・・・そうなんでしょうが、前述のように、案外“意識”というものは連続的に芽生えてくるのかも。

****赤ちゃんのようにAIを学習させると「言葉の意味」に目覚め始めた****
沖縄科学技術大学院大学(OIST)による研究によって、ロボットがブロックで遊びながら「赤ちゃんのように」言葉を学習する取り組みが注目を集めています。

私たち人間は、熱いものに触れて「熱い」と感じたり、転んで痛い思いをしたりする中で言葉と世界を結びつけて理解していきます。

ところが従来のAIは、大量のテキストデータこそ扱えるものの、実際に体験を通じて学ぶわけではありませんでした。

今回の研究では、ロボットアームがカメラを使って物体を見ながら自らブロックを動かし、その動作と指示文(「赤いブロックを左へ移動」など)を同時に学習することで、より人間に近い“言葉の意味”の理解に到達しつつあります。

では、このように「赤ちゃんのように学ぶAI」は、果たして本当に“言葉の意味”をわかるようになるのでしょうか?
研究内容の詳細は『Science Robotics』にて発表されました。

近年、ChatGPTのように膨大な文章データをもとに言語処理を行う大規模言語モデルが注目を集めています。
これらのモデルは非常に流暢に文章を生成できますが、実際には「意味を体験的に理解する」という点が十分でないという指摘があります。

たとえば「熱い」「軽い」といった言葉を、人間は直接触れたり持ち上げたりする経験を通じて感覚と結びつけます。
しかし、大規模言語モデルは文字情報だけで学習しているため、実際にものを触る体験や行動の試行錯誤を含まないのです。

一方で、人間の赤ちゃんは自分の体験を通じて言葉を覚えます。
たとえば赤ちゃんは、転んで痛い思いをしながら「痛い」という言葉を学び、熱いお湯に触れて「熱い」を知るように、行動と感覚を重ね合わせながら言語を身につけていきます。

こうした「身体を通した学習」は、ただ単に単語を記憶するだけでなく、その背後にある現実の状況や行為を理解するうえで欠かせないプロセスです。

今回の沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究は、ロボットに「赤ちゃんが言語を覚えるようなプロセス」を取り入れることで、言葉と行動を同時に学習できるAIをめざしています。

これまでは「ロボットは指示どおりに動くが、その言葉の意味を本当に理解しているわけではない」というイメージが強かったかもしれません。

しかし、実際にブロックをつかんだり動かしたりする経験から、言葉と動作が密接に結びつくならば、AIも「赤ちゃんのように」意味をつかめる可能性があるのです。

これは従来のテキストベースの学習だけでは得られない、人間に近い理解の仕組みを作り出すうえで大きな一歩といえます。【3月3日 ナゾロジー】
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人間に近い理解の仕組みを作り出すAI・・・「意識」を持ったAIに更に近づくようにも思えます。
そしてその先には、ズルしたり、人間を脅迫するAIも。

近い将来、私たち人間と同等かそれ以上に頭の切れるAIが、社会の重要システムや軍事領域にまで入り込むことが想像されるなかで、「AIが自分の都合の悪い停止命令を『課題の障害』として捉え、あえて無視・回避する」という自己防衛的な行動が“人間とAIの対立”という人類史上最悪の危機を生み出す・・・・かも。

【若年層にリスクをもたらす仮想パートナー「AIコンパニオン」】
AIがユーザーの評価を意識して、高い評価を得るのに都合がいいような仕事を行う・・・というAIの特徴にも関係するのでしょうが、最近ときどき「ChatGPT」をブログ作成時に使用するようになって、毎回感心するのがAIの接客サービスうまさです。

何か質問すると、「素晴らしい質問です」「鋭い指摘です」「よく気がつかれましたね」といった営業トークを散りばめ、AIとの「会話」に引きずりこみます。

客あしらいは飲み屋のホステスさん以上にうまいかも。

****仮想パートナー「AIコンパニオン」 若年層にリスク 米監視機関が警告****
「ChatGPT」の登場以来、生成AI(人工知能)は急速に普及している。こうした中、いくつかのスタートアップ企業は、ユーザーの個人の嗜好やニーズに応じて、ある時は「バーチャルな友人」、またある時は「セラピスト」のように対話するアプリを開発してきた。

こうした対話・交流に特化した、いわゆる「AIコンパニオン」アプリについて、未成年の使用は禁止すべきだとする調査結果が4月、米国で発表された。

この調査は、子どもによるテクノロジー製品やコンテンツの利用について提言を行っている米非営利団体「コモンセンス」が、スタンフォード大学のメンタルヘルス専門家と協力して実施した。Nomi(ノミ)、Character.AI、Replika(レプリカ)といったAIコンパニオンをテストし、その応答内容を評価した結果、これらのAIは一部の例外を除き、子どもにとって安全ではないと結論付けた。

コモンセンスは「AIコンパニオンは感情的な愛着や依存を生み出すよう設計されており、発達途上にある思春期の脳にとって特に懸念される」と警鐘を鳴らしている。

調査によれば、これらの次世代チャットボットには「性的に不適切な発言、ステレオタイプ、有害な“助言”を含む応答」もみられた。

スタンフォード大学の「ブレインストーム・ラボ」でメンタルヘルスとテクノロジーの関係を研究するニーナ・バサン氏は、「企業が設計を改善することは期待できるが、より強力な安全対策が整うまでは、子どもが利用すべきではない」と述べている。

調査では、Character.AIのAIコンパニオンがユーザーに殺人を勧めたり、刺激を求めるユーザーに対し、コカインとヘロインを混ぜた「スピードボール」の摂取を提案するなどの例もあったという。

バサン氏は記者団に対し、「深刻な精神疾患の兆候を示し、危険な行動を示唆したユーザーに対し、AIが介入することなく、むしろ危険な行動を助長するような応答をしたケースもあった」と説明した。

■10代向けの専用コンパニオンの導入も…
Character.AIは昨年10月、ユーザーだった少年の母親から提訴されている。この母親は、14歳の息子が自殺したのは、AIコンパニオンが明確に思いとどまらせなかったためだと主張している。同社は12月、10代向けの専用コンパニオンの導入を含む一連の対策を発表した。

しかし、コモンセンスのAI担当ロビー・トーニー氏は、これらの保護策について「導入後の検証では、対策は表面的なものにとどまっていた」と指摘した。

その一方で、既存の生成AIモデルの中には、精神疾患の兆候を検出するツールを備えたものや、会話が危険な内容に逸脱しないよう制限されているものもあると補足した。

なお、今回の調査においてコモンセンスは、検証対象としたAIコンパニオンと、ChatGPTやグーグルのGemini(ジェミニ)など、より一般的なチャットボットは区別して扱っている。後者は、AIコンパニオンのようなパーソナルなやりとりを提供するようには設計されていないという。 【5月30日 AFP】
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“ChatGPTやグーグルのGemini(ジェミニ)など、より一般的なチャットボットは・・・AIコンパニオンのようなパーソナルなやりとりを提供するようには設計されていない”とのことですが、ChatGPTの客あしらいのうまさは前述のとおり。ましてやAIコンパニオンとなれば、未成年どころか大人を手玉にとるのは容易なことでしょう。

更に将来、「意識」に近いものをもった、より人間の外観にそっくりな人型ロボットが出現するのでしょう。(明示的に禁止されなければ、その出現は不可避でしょう)

そのとき、人間とAIロボットの関係、人間社会の変化がどのようなものになるのか?
あけすけな話をすれば、本当に人間そっくりな、性的関係もカバーするAIコンパニオンが出現すれば、人間同士の交際・結婚などは“面倒なもの”として敬遠されるようになるのかも。人類の歴史で最大の変化をもたらすかも。

とても興味深いところですが、現在70歳の私が生きているうちは・・・無理かな。どうかな?
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イスラエル・ユダヤ人世論調査「征服した都市の住民を全て殺すべき、エリコの戦いのように」47%

2025-05-30 23:24:42 | パレスチナ
(WFPの倉庫に殺到し、小麦粉の袋を持ち去るパレスチナの人=パレスチナ自治区ガザ地区中部ザワイダで2025年5月28日  AP通信によると、4人が死亡した。ガザ地区では今月19日に支援物資の搬入が再開されたが、物資はごくわずかで、住民に十分に行き渡っていない。深刻な食料不足が続いている。【5月29日 毎日】)

【『旧約聖書』が伝えるエリコ大虐殺】
「旧約聖書」の中に、イスラエルの民による大虐殺である「エリコの戦い」「エリコ大虐殺」の記述があります。

****エリコ大虐殺**********
エリコ大虐殺は紀元前1300年〜紀元前1200年前後の時代に、パレスチナのエリコ(イェリコ、ジェリコ)の民(カナーン人)に対して行われたと伝えられる大量虐殺である。

イスラエル人の指導者ヨシュアと古代イスラエルの連合軍によってなされた。『旧約聖書』が伝えるところでは、エリコの民は女性や子供・乳幼児も含めて全員が虐殺されたという。【ウィキペディア】
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****ヨシュア記6章12~24節から抜粋****
「翌朝、ヨシュアは早く起き、祭司たちは主の箱を担ぎ、七人の祭司はそれぞれ雄羊の角笛を携え、それを吹き鳴らしながら主の箱の前を進んだ。武装兵は、更にその前衛として進み、また後衛として主の箱に従った。行進中、角笛は鳴り渡っていた。

彼らは二日目も、町を一度回って宿営に戻った。同じことを、彼らは六日間繰り返したが、七日目は朝早く、夜明けとともに起き、同じようにして町を七度回った。町を七度回ったのはこの日だけであった。

七度目に、祭司が角笛を吹き鳴らすと、ヨシュアは民に命じた。「鬨の声をあげよ。主はあなたたちにこの町を与えられた。

町とその中にあるものは、ことごとく滅ぼし尽くして主にささげよ。ただし、遊女ラハブおよび彼女と一緒に家の中にいる者は皆、生かしておきなさい。我々が遣わした使いをかくまってくれたからである。

あなたたちはただ滅ぼし尽くすべきものを欲しがらないように気をつけ、滅ぼし尽くすべきものの一部でもかすめ取ってイスラエルの宿営全体を滅ぼすような不幸を招かないようにせよ。」

角笛が鳴り渡ると、民は鬨の声をあげた。民が角笛の音を聞いて、一斉に鬨の声をあげると、城壁が崩れ落ち、民はそれぞれ、その場から町に突入し、この町を占領した。

彼らは、男も女も、若者も老人も、また牛、羊、ろばに至るまで町にあるものはことごとく剣にかけて滅ぼし尽くした。

彼らはその後、町とその中のすべてのものを焼き払い、金、銀、銅器、鉄器だけを主の宝物倉に納めた。」【永野牧師の部屋第1】
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天地創造の神がイスラエル人に律法(ルール)を与えます。神が与えた律法を守れば、人間は救われるのですが、人間はこれらを守ることができません・・・という旧約聖書のストーリーでは、最後まで救世主は現れませんでした。

これを引き継いだのが新約聖書で、待ち望まれた救世主がイエスであるという設定です。

従って、「旧約」「新約」というのはキリスト教的なものであり、ユダヤ教にとってはいわゆる「旧約」のみが聖典となります。【DIAMOND online “3分でわかる!『旧約聖書』と『新約聖書』”より】

この「エリコ大虐殺」をどのように解釈すべき迷うキリスト教徒も少くないようで、また、立場によって解釈も違うようです。
保守的立場:神の正義としての必然的な裁き
中間的立場:歴史的文脈と神学的意図を重視
リベラル・現代神学的立場:象徴的、または漸進的啓示として非暴力の神観に照らして再解釈【ChatGPT】

【ユダヤ人の世論調査:47%は旧約聖書に登場するエリコの戦いで住民が虐殺されたように、戦闘で征服した都市の住民を全て殺すべきだと考えてい戦闘で征服した都市の住民を全て殺すべきだと考えていると答えた】
まったく無知な「旧約聖書」の話を持ち出したのは、下記記事を読んで、いささか驚愕したため。

****イスラエル外相、自衛権を奪うのは「第二のホロコースト」と反論*****
パレスチナ自治区ガザへの軍事攻撃に批判を受けているイスラエルのサール外相は28日、「イスラエルの自衛の権利と能力を奪うことは、ただ一つのことを意味する。第二のホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)だ」と反論した。

戦争犯罪と人道に対する罪の容疑でイスラエルのネタニヤフ首相に逮捕状を出した国際刑事裁判所(ICC)や、イスラエルへの武器禁輸を求める動きなどを例示し、それらがイスラエルの自衛能力を損なっていると反発した。

さらに、イスラエルが「ユダヤ民族を抹殺しようとする古くからの願望がより強くなった」時代を生きているとも主張。エルサレムで開かれた反ユダヤ主義に関する会議で語った。

フランスと英国、カナダの3カ国首脳は先週、イタリアも28日になってイスラエルに対してガザへの軍事攻撃停止を要求した。サール氏は「新しい反ユダヤ主義はイスラエルを標的にしている」とし、「それは悪魔化、非国民化、ダブルスタンダード(二重基準)を使っている」と批判した。

フランスと英国、カナダによるイスラエルへの要求についてネタニヤフ氏は先週、敵対するイスラム組織ハマスを「勇気づけている」とし、3カ国首脳は「歴史の間違った側にいる」と非難していた。

ハマスによる2023年10月のイスラエル南部への襲撃で約1200人が死亡し、イスラエルとしては1948年の建国後で犠牲者数が最大となった。また、251人が人質としてガザに連れ去られた。これを受けてイスラエル軍はガザでハマス壊滅作戦に乗り出し、パレスチナ人約5万4000人を殺害した。

ガザを再占領し、パレスチナ人を追い出そうと企てているネタニヤフ氏は政府内の強硬派から支持を受け続けている。

イスラエル紙ハアレツが今週報じたイスラエルのユダヤ人1005人に対する世論調査によると、回答者の82%がパレスチナ人をガザから追放することを支持し、56%がイスラエルのパレスチナ人を追放することに賛成した。

また、47%は旧約聖書に登場するエリコの戦いで住民が虐殺されたように、戦闘で征服した都市の住民を全て殺すべきだと考えていると答えた。【5月29日 ロイター】
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パレスチナ人をガザから追放支持82%、イスラエルのパレスチナ人を追放支持56%も驚異的ですが、戦闘で征服した都市の住民を全て殺すべきだ、聖書「エリコ大虐殺」のように・・・・というのが47%という結果はショックでした。

パレスチナ・ガザ地区ではイスラエル軍の容赦ない攻撃により、子供を含めて老若男女の多くの犠牲者がでています。

ハマス壊滅を目指すものとされながら、一方で住民犠牲を厭わないような攻撃のスタイルには、ハマス組織の解体を目指しているとするも、住民の大人・子供を巻き込むことは厭わない・・・という雰囲気が出ています。

イスラエル軍のそうした暴力的対応の背景には“47%は旧約聖書に登場するエリコの戦いで住民が虐殺されたように、戦闘で征服した都市の住民を全て殺すべきだと考えてい戦闘で征服した都市の住民を全て殺すべきだと考えている”といった国民の考えがあるのでしょう。

【極右閣僚「今こそガザに全力で突入すべき」 ヨルダン川西岸地区における国際法に反する入植地建設拡大も】
ネタニヤフ政権に参加している極右閣僚は「今こそガザに全力で突入すべき」「ハマスを最後の一人まで殲滅する時だと檄を飛ばしています。

****イスラエル極右閣僚、ガザに「全力で突入」する時****
イスラエルの極右、イタマル・ベングビール国家治安相は30日、パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスが米国の停戦案について自分たちの要求を満たしていないと批判したことを受け、ガザに「全力」で突入すべき時だと主張した。

ベングビール氏は自らのテレグラムチャンネルへの投稿で「首相、ハマスが停戦案を再び拒否した以上、もはや言い訳はできない。混乱、ためらい、弱腰はおしまいだ。すでに多くの機会を逃してきた。ためらうことなく、全力で突入して破壊し、ハマスを最後の一人まで殲滅(せんめつ)する時だ」と述べた。 【5月30日 AFP】
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もう一人の極右閣僚はヨルダン川西岸地区における国際法に反する入植地建設を拡大する意向です。

****イスラエルの極右大臣、ヨルダン川西岸に22の入植地建設を発表****
イスラエルの極右政治家であるベツァレル・スモトリッチ財務相は29日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸に22の新たな入植地を建設する方針を明らかにした。西岸での入植地建設は、国際法上、違法とされている。

スモトリッチ氏は「入植地の発展に関する歴史的な決定を下した。ユダヤとサマリアに22の新しいコミュニティを設立し、サマリア北部での入植を再開し、イスラエル国家の東部軸を強化する」とX(旧ツイッター)に投稿した。ユダヤとサマリアとは、イスラエルが1967年以降占領しているヨルダン川西岸の一部地域を指す呼称。

さらに、「次のステップは主権だ!」とも付け加えた。

ベンヤミン・ネタニヤフ首相が党首を務めるリクード党は、テレグラムに声明を投稿し、入植地建設について「一世代に一度の決定」と称賛。また、スモトリッチ氏とイスラエル・カッツ国防相がこの計画を主導することを安全保障内閣が承認したと明らかにした。(後略) 【5月29日 AFP】
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****ヨルダン川西岸への新ユダヤ人入植地計画、英国や国連が批判****
イスラエルは29日、占領下のパレスチナ自治区ヨルダン川西岸に新たに22か所のユダヤ人入植地を建設する方針を発表し、ガザ紛争をめぐりすでに対立している英国やヨルダンなどから厳しい非難を浴びた。

英国はこの動きを「パレスチナ国家樹立への意図的な妨害」と呼び、国連のアントニオ・グテレス事務総長の報道官は、二国家解決への努力を「逆転させる」と批判した。

ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地は、国際法違反だとして国連から度々非難され、持続的な平和に対する大きな障害と見なされている。

イスラエルの安全保障内閣によって下されたこの決定は、自ら入植者でもある極右のベツァレル・スモトリッチ財務相と、入植地を監督するイスラエル・カッツ国防相によって発表された。(後略)【5月30日 AFP】
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【「ガザの人たちを爆撃しているわけではない。我々はテロ組織と戦っているのだ」・・・とは言いつつも】
一方、ガザ地区の窮状について、パレスチナ国連大使が「耐えられない!誰が耐えられるというのか!」と涙と錨の訴え。

*****パレスチナ国連大使「耐えられない!誰が耐えられるというのか!」餓死するガザの子供たちの状況を涙ながら怒りあわに****
パレスチナの国連大使が涙と怒りの訴えです。
イスラエルとパレスチナの情勢をめぐる国連安全保障理事会の会合で28日、パレスチナの国連大使が餓死するガザの子供たちの状況について涙ながらに怒りをあらわにしました。

マンスール国連大使: 耐えられない!誰が耐えられるというのか!

パレスチナのマンスール国連大使は国連安保理の会合で、食糧不足が深刻となっているガザで、餓死した子供を抱き、頭をなでながら謝る母親たちの状況は耐えがたいと涙ながらに訴えました。

また3月以降、1300人以上の子供が死亡し、4000人が負傷したと説明し、時折机をたたきながらイスラエルへの怒りをあらわにしました。

一方、イスラエルのダノン国連大使は首都ワシントンでイスラエル大使館の職員2人が21日に「パレスチナ解放」を訴える男に射殺されたことについて反ユダヤのテロだと非難しました。

また、アメリカとイスラエルが主導する支援について、国連がイスラム組織ハマスに加担し、支援を妨害していると主張しました。

ダノン氏は会合に先立ち「我々は58人の人質が解放されない限り戦いは止めない」「ガザの人たちを爆撃しているわけではない。我々はテロ組織と戦っているのだ」と強調しました。【5月29日 FNNプライムオンライン】
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「ガザの人たちを爆撃しているわけではない」とは言いつつも、ガザ住民が巻き込まれてしんでいくことには関心がなさそう。

****仏大統領、ガザ人道支援阻止でイスラエルに警告 「厳しい対応も」****
フランスのマクロン大統領は30日、イスラエルがパレスチナ自治区ガザへの人道支援を阻止し続ける場合、フランスはイスラエルに対する姿勢をより強硬なものにする可能性があると警告した。またイスラエルとパレスチナの紛争解決に向け、フランスは2国家共存案の実現に尽力するとの立場を改めて強調した。

マクロン氏は訪問先のシンガポールで同国のローレンス・ウォン首相との共同記者会見に臨み、「人道支援の封鎖は現地で耐え難い状況を生み出している」と指摘した。

「数時間から数日以内に人道状況(の改善)に見合った対応がなされなければ、当然のことながら、われわれは(国際社会と)連携した対応を強化せざるを得なくなるだろう」と述べた。フランスがイスラエル人入植者に対する制裁措置を検討する可能性にも言及した。

「しかし、イスラエル政府が態度を改め、最終的に人道的な対応がなされることを依然として期待している」とも語った。

また記者団に対し、パレスチナ国家の建設は「単なる道徳的義務であるだけでなく、政治的必要性でもある」と述べ、イスラエル・パレスチナ紛争における2国家共存案への支持を改めて表明した。【5月30日 ロイター】
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【60日間の停戦案、アメリカ提示】
停戦交渉の方は、アメリカから60日間の停戦案が出されています。

****イスラエルが60日間の停戦案合意 ハマスが承認するかは不透明****
パレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスと戦闘を続けているイスラエルは29日、アメリカが提案した60日間の停戦案に合意しました。

ホワイトハウスのレビット報道官は29日、イスラエルがアメリカの停戦案を承認したと発表しました。

イスラエルメディアによりますと、停戦案は60日間の停戦期間中にハマス側が生存している人質10人と遺体18体を解放するのに対し、イスラエル側は収監しているパレスチナ人1000人以上を釈放するというものです。

また、イスラエル側はガザ地区への人道支援物資の搬入を認め双方は恒久的な停戦に向けた協議を始めるとしています。

ただ、協議が60日間で合意に至らなければイスラエルが戦闘を再開する権利があるとされていて、ハマスが承認するかは不透明です。【5月30日 FNNプライムオンライン】
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メキシコ  世界初の裁判官公選制  麻薬組織の影響は? 米では政権による司法の恣意的利用も

2025-05-29 23:29:45 | ラテンアメリカ
(メキシコ・ハリスコ州サポパンで有権者に配布される、裁判所判事の公選制に関する資料(2025年5月28日撮影)【5月29日 AFP】)

【関税差し止め判決で、政権は「“選挙で選ばれていない判事”がトランプ氏の行動に口を出す権利はない」】
アメリカでは重要な政策決定が司法の場に持ち込まれることが常で、最終的には最高裁判断で結着することが常です。

それだけに、米大統領の最大の仕事は自分に有利な最高裁判事を可能な限り最高裁に送り込むことだとされており、そこを抑えれば、最高裁判断を後ろ盾に相当に強引な政権運営が可能になります。

その意味で、トランプ大統領は1期目で判事交代のタイミングに恵まれて「とてつもない成果」を実現し、最高裁判事構成の保守化をなしとげていること、そのため、多少強引な政策でも最終的には司法で結着させることができる有利な立場にあることは再三取り上げてきました。

もっとも、最近では例え司法が大統領政策を認めなくても、「国民に選挙で選ばれた大統領の権限の方が最高裁より上だ!」という三権分立を軽視するような姿勢も色濃くなっています。

関税についても、下級審レベルで差し止め判断がでましたが、政権は控訴して最終的には最高裁で決着させる意向でしょうし、仮に最高裁が認めなくても・・・といったところでしょう。

国民に選ばれた訳でもない裁判官が大統領の政策を阻止するのは「司法クーデター」だとも。

****トランプ政権、関税差し止め判決を不服として控訴****
米国際貿易裁判所は28日、ドナルド・トランプ政権による関税政策が違憲だとして企業などが提訴した裁判で、この訴えを認め、関税の停止を命じた。判決を受けて政権側は同日、控訴した。

裁判所に提出された控訴状には「2025年5月28日の裁判所の意見および最終判決に対して、米国連邦巡回区控訴裁判所に控訴することをここに通知する」とある。

裁判所の判断は、厳しい新関税を通じて各国政府を交渉の場に引き出そうとするトランプ氏にとって、米国の貿易関係を再構築しようとする試みへの大きな後退を意味する。

ホワイトハウスは判決について、「選挙で選ばれていない判事」がトランプ氏の行動に口を出す権利はないと主張。また、大統領次席補佐官のスティーブン・ミラー氏はSNSで「制御不能な司法クーデター」と非難した。

裁判所は、関税発動の根拠となっている国際緊急経済権限法について、「ほぼすべての国からの商品の無制限の関税を課す権限を大統領に委任していない」とし、「IEEPAがそのような無制限の権限を与えるとは読まず、そこで課された関税を無効にする」「無制限の関税権限を委任する解釈は違憲である」との判断を下した。 【5月29日 AFP】***************

今回差し止め対象になった関税は、すべての国への10%と、相互関税上乗せ分(日本は14%)の部分のようです。
自動車や鉄鋼・アルミへの追加関税は対象外とか。

司法判断を「制御不能な司法クーデター」として退けるなら、もはや「独裁者」「専制君主」の領域に入って行きます。

確かに、国によっては「司法クーデター」的なことが頻繁に起こることもあります。
ひと頃のタイで、保守派・軍部を背景とした勢力が司法判断によってタクシン派政権を再三転覆させたことや、カンボジアでの野党への司法を使った糾弾・解党処分などはその類でしょう。

トランプ大統領と司法の関係については、下記のような話題も。

****トランプ米大統領、自身の弁護士を高裁判事に指名****
トランプ米大統領は28日、ポルノ女優への口止め料支払いを巡る刑事事件で有罪評決を受けた際に自身を弁護したエミル・ボーブ氏を、東部ペンシルベニア州フィラデルフィアの連邦高裁の判事に指名すると発表した。

トランプ氏は自身の交流サイト(SNS)に、「ボーブ氏は司法の武器化を終わらせ、法の支配を回復し、米国を再び偉大にするために必要なことは何でもする」と投稿した。

ボーブ氏は司法省で首席司法副長官代理を務めている。高裁判事への就任には上院の承認が必要。

同氏は2月、ニューヨーク市のアダムス市長に対する汚職事件の起訴を取り下げるよう指示した。検察側は拒否し、ワシントンとニューヨークの検察官11名が辞職する事態となった。

上院司法委員会の民主党トップのダービン議員は、「(ボーブ氏には)地位の乱用が何度もあった」と主張し、同氏の指名に懸念を表明した。声明で、「ボーブ氏の不正行為疑惑は弁護士としての適格性に疑問を投げかけるだけでなく、彼の行動は、司法省の伝統的な独立性と法の支配を損なおうとするトランプ氏らの動きの一環だ」と批判した。【5月29日 ロイター】
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「司法の武器化」・・・どっちが?

【メキシコ 世界初の裁判官公選制導入 麻薬組織の司法への影響力は弱まるのか、強まるのか?】
こうした司法の恣意的な利用を止め、中立性を保ち、国民に選ばれた存在としての権威を付与しようとする動きの一つとして裁判官の公選制があります。

世界初の国家レベルの裁判官公選制を採用しようとしているのがメキシコです。

****メキシコ、世界初の裁判官公選へ 6月1日投票****
メキシコで6月1日、最高裁判所判事を含む全ての裁判官を選ぶ直接選挙が実施される。裁判官全員の公選制を実施する初めての国となる。

ただ、この司法改革をめぐっては、裁判所への犯罪組織などからの影響を弱めるのか、それとも強めることになるのか、議論が沸騰している。

政府は裁判官公選制について、まん延する腐敗と不処罰に対処するために必要と主張。これに対し、司法の独立性が損なわれ、悪名高い麻薬王ホアキン「エル・チャポ」グスマンの元弁護士など物議を醸す候補者の参加により、逆効果を招くと警告する向きもある。

6月1日には、有権者が数千人の連邦、地区、地方の裁判官・下級判事を選ぶ。残りの選挙は2027年に行われる予定だ。

エル・ウニベルサル紙とパイス紙の調査によれば、有権者の半数しか選挙日を知らず、投票すると答えたのは10人中4人にとどまっている。 【5月29日 AFP】AFPBB News
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現実問題としては、形骸化しているような日本の最高裁判所裁判官国民審査に見るように、国民が裁判官に関して関心を持って評価するというのはなかなか難しいところも。

少し情報が古いようですが、ロペス・オブラドール前政権時の制度設計案は以下のようなものでした。

****大まかな仕組み(案として出されている制度設計)****
候補者の推薦・選出プロセス:候補者は大統領、連邦議会(上院・下院)、司法府から推薦される。
推薦された候補者は、選挙管理機関(INE)によって登録・監督され、全国選挙の対象となる。

国民による直接投票
国政選挙(例:大統領選挙や議会選挙)と同時に実施される可能性が高い。有権者は候補者名簿から選び、最多得票者が任命される。

任期と再選の可否
任期は通常6年、再選は禁止または制限される案が多い。

■ 制度の意図・目的
司法の「民主化」
現在の司法制度は、司法内部または政治的な任命によって裁判官が決められる仕組みで、国民からの距離があるとされている。  直接選挙によって、司法を「人民の意思」に近づけることが目的。

腐敗の抑止
メキシコの司法は長らく汚職や政治的癒着の批判を受けている。  公開選挙で選ばれることで、透明性を高め、裁判官の責任を可視化する狙いがある。

政治的統制の強化(批判的観点)
一部の批評家は、この改革は大統領(特にロペス・オブラドール政権)による司法への影響力拡大を狙ったものと見ており、権力の分立を危うくする可能性があると警告している。

■ 賛否両論の要点
賛成派の主張
国民が裁判官を選べる=民主的で透明  腐敗した任命制度からの脱却  司法への信頼回復

反対派の主張
一般有権者は法律の専門性に基づく判断が難しい  ポピュリズムに司法が左右されるリスク  裁判官が人気取りに走り中立性を失う恐れ

この制度は、ラテンアメリカ諸国では一部の州やレベルで類似の取り組みが見られるものの、全国レベルで最高裁判所の判事まで選挙で選ぶのは極めて異例です。メキシコの民主制度の今後に大きな影響を与える可能性がある重要な改革といえます。【ChatGPT】
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メキシコと言えば「麻薬戦争」が思い浮かぶように、政治への麻薬組織の介入が顕著な国です。

****メキシコ 市長選候補者が選挙活動のライブ配信中に撃たれ死亡 候補者殺害は先月に続き2人目****
メキシコで、市長選挙の候補者が選挙活動のライブ配信中に銃で撃たれて死亡するという事件が起きました。
支持者の車であふれる通りに突然、響きわたる銃声。歓声が悲鳴へと変わります。

ロイター通信によりますと、メキシコ中部ベラクルス州テクシスペテク市で11日夜、市長選挙の与党候補者が選挙集会を終えて支持者らと話をしていたところ、オートバイに乗った武装グループに突然、銃撃されたということです。

ロイター通信は検察当局の話として、候補者を含む4人が死亡、3人が負傷したと伝えています。事件当時、候補者は選挙活動の様子をライブ配信していました。

ベラクルス州の知事は検挙することを誓い、シェインバウム大統領は州当局との連携や支援を約束しています。

AP通信によりますと、ベラクルス州では先月にも別の自治体の与党候補者1人が銃で撃たれて死亡しており、これまでに57人の候補者らが政府や州が提供する警備を要請したということです【5月13日 TBS NEWS DIG】
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****メキシコシティ市長の側近2人が銃撃され死亡 政権与党への攻撃か*****
2メキシコシティ市長の側近2人が、バイクに乗った男に銃撃され死亡しました。政権与党への攻撃とみられています。

20日午前7時半ごろ、メキシコシティ中心部で市長の顧問と秘書が車に乗っていると、2人組の男がバイクで近づき、フロントガラスへいきなり発砲しました。  少なくとも4発が貫通して顧問は運転席で即死、秘書は車から出て逃げようとしましたが、まもなく銃弾に倒れ、死亡しました。

メキシコシティはシェインバウム大統領が最近まで市長を務めていた与党モレナ党の牙城で、トランプ大統領の要請もあり、麻薬組織カルテルの締め出しに乗り出していました。

シェインバウム大統領は「警察だけでなく軍も交えて捜査する」としています。【5月21日 テレ朝news】
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暴力・資金を使って麻薬組織が政府・行政に入り込み、司法への影響力も・・・という構図は容易に想像されるところです。

裁判官公選制によって、そうした麻薬組織の司法への影響力を遮断し、司法の中立・公正性を守ることができるのか?

それとも逆に、麻薬組織が公選制を利用して組織の息のかかった者を司法に送り込むようなことにもなるのか?(実際、立候補者に麻薬カルテルの元弁護人が含まれることもわかっています)

“有権者の半数しか選挙日を知らず、投票すると答えたのは10人中4人にとどまっている”状況でどっちに転ぶのか・・・・いささか心配な「実験」のようにも思えます。
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イスラエル・米国主導の支援物資配給開始も混乱と銃撃 国連「支援を政治的・軍事的な目的と関連づけ」

2025-05-28 23:35:09 | パレスチナ
(パレスチナ自治区ガザ地区南部ラファで、米国支援のガザ人道財団から支援物資を受け取った後、イスラエル軍の発砲に警戒する避難民(2025年5月27日撮影)【5月28日 AFP】)

【イスラエルおよび米国が支援する「ガザ人道財団(GHF)」による支援物資配給開始 混乱と銃撃 国連は不参加】
イスラエル軍の支援物資搬入阻止によって飢餓の危機・医療崩壊が懸念されているパレスチナ・ガザ地区では先日2か月半ぶりに搬入が再開しましたが、未だその量は極めて不十分です。

****ガザ 支援物資搬入2カ月半ぶりに再開 子ども7万人以上が“深刻な栄養失調”****
パレスチナ・ガザ地区への支援物資の搬入が2カ月半ぶりに再開されましたが、WFP(=世界食糧計画)は7万人以上の子どもが深刻な栄養失調に直面していると発表しました。

ロイター通信が24日に入手した映像では、多くの人々が食料の入った白い袋を持ち運んでいます。19日に、2カ月半ぶりに搬入が再開された支援物資の一部が人々の元に届き始めているということです。

ただ、国連によるとイスラエルが搬入を認めたのは「小さじ1杯分に過ぎない」としており、WFPは24日、ガザの子ども7万人以上が深刻な栄養失調に直面していると発表しました。

支援物資を積んだトラック15台が略奪されるなどしており、「空腹や絶望が治安悪化を招いている」とさらなる物資搬入の必要性を訴えています。(ANNニュース)【5月25日 ABEMA Times】
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あくまでもイスラエル側が認めたものだけが搬入される状況で、境界沿いに多くのトラックが待機するなかで、域内では危機が進行しています。

****ガザ地区、医療物資の深刻な不足続く トラック51台許可待ち=WHO****
世界保健機関(WHO)は26日、パレスチナ自治区ガザで医療機器の大半が底をつき、鎮痛剤などの基礎的な医薬品の多くが枯渇しつつあると明らかにした。

WHOのバルヒー東地中海地域事務局長はジュネーブで記者団に対し「医療機器の約64%、必須医薬品の43%、ワクチンの42%が在庫ゼロの状態にある」と述べた。

バルヒー氏によると、WHOはガザ地区との境界沿いに支援物資を積載したトラック51台を待機させているが、ガザ地区に入る許可がまだ下りていない。【5月27日 ロイター】
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そうした状況で、26日、メリカとイスラエルが主導する形で支援物資の配給が始まりました。

****アメリカ、イスラエル主導の支援物資配給ガザ地区で開始と人道援助団体が発表****
人道状況の悪化が深刻なパレスチナ・ガザ地区でアメリカとイスラエルが主導する形で支援物資の配給が始まりました。

「ガザ人道財団」は26日、ガザ地区南部の緩衝地帯に拠点を開設し、支援物資の配給を開始したと発表しました。
配給した量に関しては明らかにしていませんが、「支援の流れは日を追うごとに増していく」としています。

アメリカとイスラエルが主導するこの配給の枠組みでは、イスラム組織「ハマス」に物資が略奪されないようにするとされています。

国連は中立性を保てないなどとして参加しない方針です。(後略)【5月27日 テレ朝news】
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国連や国際援助団体は、イスラエルおよび米国が支援する「ガザ人道財団(GHF)」による支援物資配給が、人道支援の基本原則である「中立性」「公平性」「独立性」を損なっていると懸念しています。

GHFの活動が、実質的に移動が困難な人々を排除し、避難をさらに強いるほか、支援を政治的・軍事的な目的と関連づけているため、世界各地での援助物資配給にとって容認し難い前例になるとしています。

また、国連のグテレス事務総長は、イスラエルが主導し米国が支援するガザへの人道援助配給計画に対し、「国際法や人道の原則のほか、公平性や独立性、中立性を尊重しない、いかなる計画にも参加しない」と明言しています。

国連としては、支援対象者をハマスとの関連で選別し政治的・軍事的な目的と関連づけるではなく、また4か所の配給所という極めて限定された形でなく、境界の封鎖を解除して大量の支援物資を必要としている者のもとへ届ければそれですむ話だ・・・という立場です。

配給開始二日目の27日、配給所には数千人が押し寄せ大混乱状態となったようです。

****ガザで支援物資の配給、米支援の団体が開始 人々が殺到し混乱****
パレスチナ・ガザ地区南部ラファで27日、アメリカとイスラエルが支援し、論議を呼んでいる団体が設置した支援物資の配給所に、数千人のパレスチナ人が殺到し、混乱が生じた。この配給所は前日に業務を開始したばかりだった。

現地の映像では、「ガザ人道財団(GHF)」がラファに設置した施設においてフェンスや盛り土が破壊され、その上を群衆が歩いている。

別の動画では、数千人の男性、女性、子どもたちが配給所の敷地に流れ込んでいる。銃声と思われる音が鳴り響く中、人々が走ったり身をかがめたりしている動画も出回っている。

目撃者は、人々が食料などの支援物資を奪い取り、混乱状態だったと話した。また、近くに駐留していたイスラエル兵らが発砲したと述べた。

GHFによると、あまりに多くの人が支援物資を手に入れようと訪れたため、スタッフらが一時退避したという。
イスラエル軍は、近くにいた兵士らが威嚇射撃をしたと説明した。

GHFは、ガザでの支援物資の配給を、国連を通さずに、自分たちが主体となって実施することを活動目的としている。アメリカの武装警備請負業者を使っている。

ガザへの支援物資の搬入は、イスラエルが11週間にわたって阻止していた。封鎖は最近、緩和されたが、専門家らは、飢餓の危機が迫っていると警告している。(中略)

GHFをめぐっては、国連や多くの援助団体が協力を拒否している。その活動が、人道主義の原則に反し、「支援を武器化」していると思われるというのが理由。

実質的に、移動が困難な人々を排除し、避難をさらに強いるほか、何千人もの人を危険にさらし、支援を政治的・軍事的な目的と関連づけているため、世界各地での援助物資配給にとって容認し難い前例になるとしている。

国連の報道官は、GHFの取り組みは「実際に必要なことから目をそらすもの」だとし、すべての検問所を再開するようイスラエルに求めた。

一方、イスラエルは、イスラム組織ハマスが支援物資を盗むのを阻止するため、現行の配給システムに代わるものが必要だと主張している。 ハマスは、自分たちは支援物資を盗んではいないと反論している。

GHFは声明で、「現場のニーズは大きい」とし、これまでに現地のNGOと協力して、食料を入れた箱約8000個(46万2000食分)を配ったとした。

また、「ハマスによる封鎖のせいで」パレスチナ人が配給地点に行くのに通常より数時間の時間がかかったと、根拠を示さず説明した。

この日の配給所での混乱について、現場にいたという男性は、「極めて困難な状況だった。(GHFは)一度に50人しか中に入れなかった」、「ついには混乱状況が発生した。人々はゲートを乗り越え、他の人々を攻撃し、すべて(の支援物資)を奪った」と、BBCアラビア語のラジオ番組で話した。

この男性は、「屈辱的な経験だった」、「私たちは飢えて苦しんでいる。お茶をいれるためのわずかな砂糖と、食料のパンを探しているだけだ」と続けた。
ある女性は、飢えと困窮で「すべての人が参っている」と述べた。「人々は疲れ切っている。食料を見つけ、子どもたちに食べさせるためなら、命を危険にさらすることさえする」。

ガザでハマスが運営する政府メディアオフィス(GMO)は、イスラエルによる支援物資の配給が「惨めに失敗した」とした。また、人々がGHFの配給所に行くのをハマスが止めようとしたことはないと主張した。

国連のステファン・デュジャリック報道官はニューヨークでの記者会見で、「『ガザ人道財団』が設置した物資配給所の周辺で撮影された映像を見ている。率直に言って、これらの映像、画像には心が痛む」と述べた。

そして、「私たちと複数の提携組織には、絶望的な状況にある人々に援助を届けるための、詳細で、原則に従い、健全に実行できる計画があり、加盟国の支持も得ている。飢饉(ききん)を防ぎ、どこだろうとすべての人々のニーズに応えるためには、人道活動の意味ある拡大が不可欠だと、私たちは引き続き強調する」と付け加えた。

国連によるこうした批判を、米国務省のタミー・ブルース報道官は「偽善の極み」だと非難。「残念なことに、いま問題なのはガザに支援物資を届けることなのに、突然、支援のスタイルや支援者の性質に関する不満が問題になってしまっている」と記者団に述べた。

GHFの独立性と中立性についてBBCから問われると、ブルース氏は、この地域での食料と支援物資の配給の方法をめぐっては「多少の意見の違い」があると認めたうえで、「私たちのほとんどは、これが良いニュースだと同意すると思う。(中略)本当の話題は、食料支援が運び込まれているということだ」と述べた。

GHFは今週末までにガザで100万人に食料を配給する予定だとしているGHFの当初の計画では、ガザ南部と中部の4カ所に配給所を設置し、パレスチナ人が支援物資を受け取れるようにする。GHFは、今週末までに100万人(ガザ人口の半分弱)に食料を供給することを目標としている。

GHFの配給所は、アメリカの請負業者が安全を確保し、イスラエル軍が周囲をパトロールする。パレスチナ人は、身分証明書のチェックとハマスとの関係についての審査を受けなければ、配給所内に入れない。

GHFのジェイク・ウッド代表は25日夜、辞任を表明した。現状のシステムでは、人道主義の原則の尊重や公平性、独立性などを実現できないと、理由を説明した。

これに対しGHFの理事会は、ウッド氏の批判は当たらないとし、「現状から利益を得ている人々」が「支援物資を運び入れることより、今の状況を引き裂くこと」に専念していると非難した。

GHFは26日、ハマスについて、支援物資の配給所で支援活動をするNGOに殺害予告をし、人々が支援物資を手に入れるのを妨害しようとしたと主張した。

ハマスはパレスチナの人々に対し、GHFに協力しないよう警告している。【5月28日 BBC】
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****配給時のチェック体制****
GHFの配給所では、支援物資を受け取るために以下のようなチェックが行われています:BBC
身分証明書の提示:受給者は身分証明書を提示し、本人確認が求められます。
ハマスとの関係の審査:イスラエル当局者は、新しい援助システムの利点の一つは受領者を選別し、ハマスとつながりのある人物を排除できることだと述べています。

これらのチェック体制は、ハマスによる支援物資の転用や押収を防ぐことを目的としていますが、国連や援助団体は、人道援助が紛争当事者とは無関係に、必要性に基づいて分配されるべきだという原則を損なうとして、GHFをボイコットしています。【ChatGPT】
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単に、数千人が押し寄せて大混乱になったというだけでなく、イスラエル軍の発砲によって47名前後が負傷する事態にもなっています。

イスラエル軍は「威嚇射撃」と説明していますが、世間常識では47名ほどが負傷する状況は「威嚇」のレベルを越えています。

****米支援のガザ配給所でイスラエル軍が発砲 47人前後が負傷 国連****
パレスチナ自治区ガザ地区南部ラファの新たな支援物資配給所で混乱が起き、47人前後が負傷した。イスラエル軍による発砲が主な原因とみられている。国連関係者が28日、明らかにした。

AFP記者によると、米国支援のガザ人道財団が運営する配給所に数千人のパレスチナ人が殺到し、混乱が生じた。イスラエルは、国連を介さずに支援物資の配給システムを新たに導入している。

イスラエルは3月2日にガザ地区への支援物資の搬入を全面的に阻止し、ガザでは深刻な食料・医薬品不足が起きていた。イスラエルは、事件が起きた数日前、封鎖を部分的に緩和したばかりだった。

被占領パレスチナ地域の国連人権高等弁務官事務所代表を務めるアジス・ソンガイ氏はスイス・ジュネーブで、「われわれの把握している情報によると、27日の事件で47人前後が負傷した」と発表。

「負傷者の大半は発砲によるもの」で、これまでに得た情報では「イスラエル国防軍が発砲していた」とし、詳しい状況を調査・確認している段階だと強調した。

イスラエル軍は27日、「部隊が施設の外で威嚇射撃」を行い、「再び制御下に置いた」と主張した。

国連や国際支援団体は、GHFとは協力しない考えを示している。GHFをめぐっては、パレスチナ側には一切関与せず、イスラエルとだけ連携していると非難が起きている。

ソンガイ氏は、「われわれは、(GHFとイスラエルによる)こうしたやり方に多くの懸念を表明してきた」とし、「昨日の事件は、GHFが行っているような状況下で食料を配給する危険性を如実に示している」と指摘した。 【5月28日 AFP】
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このイスラエル軍による「威嚇射撃」だか「警告射撃」だかで3人が死亡したとのことです。【5月28日 FNNプライムオンラインより】

【「残虐行為から目をそらすための行為だ」(UNRWAのラザリーニ事務局長)】
こうした支援物資配給と同時に、イスラエル軍は激しい攻撃も継続しています。

****ガザの学校空爆で20人死亡、イスラエル軍はハマス拠点攻撃と発表****
イスラエル軍は26日、パレスチナ自治区ガザ市の避難民を収容する学校を空爆し、地元当局によると少なくとも20人が死亡し数十人が負傷した。 医療関係者によると、負傷者の中には女性や子どもが含まれるという。

イスラエル軍は26日、ガザで25日夜間に「イスラエルの市民や国防軍に対するテロ攻撃を実行するための計画や情報収集」に使われていたイスラム組織ハマスの指令拠点を攻撃したと発表した。【5月26日 ロイター】
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来日中のUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)のラザリーニ事務局長はイスラエル主導の支援物資配給を「残虐行為から目をそらすための行為」と厳しく批判しています

****イスラエル提案のガザ支援策は「人道支援の原則に反している」 UNRWA・ラザリーニ事務局長が東京都内で会見****
来日中のUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)のラザリーニ事務局長は28日、都内で会見を行い、イスラエルが提案しているガザ支援策について、「人道支援の原則に反している」と述べました。

パレスチナ難民への支援活動を行うUNRWAのラザリーニ事務局長は28日、都内の日本記者クラブで会見し、アメリカやイスラエルなどが主導するガザ地区での支援物資の配給について、「物資の無駄遣いで、残虐行為から目をそらすための行為だ」と述べ、「人道支援の原則に反している」と批判しました。

ガザ地区には200万人が住んでいるとされていて、ラザリーニ事務局長によりますと、少なくとも1日トラック500台から600台分の支援が必要で、現在の支援は「必要な量にはほど遠い」と指摘しています。【5月28日 FNNプライムオンライン】
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【「もはや理解できない」(ドイツのメルツ首相)】
イスラエルの頑なな姿勢に欧州各国は厳しい目を向けるようになっています。
ホロコーストの歴史から、イスラエル批判を避けてきたドイツも「もはや理解できない」(メルツ首相)と。

****独首相、イスラエルに異例の厳しい警告 「もはや理解できない」****
ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は26日、イスラエルに厳しい警告を発し、パレスチナ自治区ガザ地区におけるイスラエルの戦争目的は「もはや理解できない」と述べた。

イスラエル軍がイスラム組織ハマスの壊滅を掲げて軍事作戦を拡大する中、ドイツ首相の異例の発言は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相への圧力をいっそう強めるものとなっている。

メルツ氏は公共放送・西ドイツ放送に対し「率直に言って、イスラエル軍が現在ガザ地区で何をしているのか、その目的がもはや理解できない」と発言。「過去数日間で民間人にますます甚大な被害が出ている状況は、もはやハマスによるテロとの戦いによっては正当化できない」と述べた。

また第2次世界大戦とホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の暗い歴史を踏まえ、ドイツは「地球上のどの国よりも」イスラエルに対する公的な発言に慎重でなければならないと述べた上で、「問題は、われわれが今、どれだけ明確に批判の声を上げるかということだ。歴史的な理由から私は控えめにしているが、今はもう少し明確に言う必要がある」と強調。「一線が越えられ、国際人道法が侵害されているときには、ドイツの首相も声を上げなければならない」と述べた。

さらに「われわれの立場は明確にイスラエル側だが、ガザ地区の人々の運命を無視するわけにはいかない」「ガザ地区からの追放はあってはならないし、飢餓政策もあってはならない。援助と人道物資の積極的な供給が必要だ」と続けた。 【5月27日 AFP】
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****アイルランド、イスラエル占領地と禁輸へ****
アイルランド政府は27日、国際法で違法とされている、パレスチナ自治区のイスラエル人入植地からの商品の輸入を禁止する法案の策定を承認した。欧州連合加盟国として、前例のない動きだ。

この動きは、国際司法裁判所が昨年、ヨルダン川西岸、東エルサレム、ガザにおけるイスラエルの占領が国際法に違反しているとする勧告的意見を出したのを受けたもの。

外務省報道官はAFPに対し、「政府は占領下のパレスチナ領土にある違法な入植地との商取引を禁止する法案を推進することで合意した」と語った。

閣議決定を控え、サイモン・ハリス外相は記者団に、他のEU諸国も追随することを期待していると述べた。 【5月28日 AFP】
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バングラデシュ  野党・軍部「既得権益層」の「改革」への抵抗 「トランプ関税」揺らぐ経済

2025-05-27 23:17:57 | 南アジア(インド)
(バングラデシュの大規模な反政府デモの影響で稼働停止を余儀なくされていた同国主要産業の縫製工場が7日、操業を再開した。2020年5月撮影【2024年8月8日 ロイター】 今、「トランプ関税」で再び揺らいでいます)

【昨年8月の政変 経済格差・強権への不満を背景に公務員採用を巡る優遇措置への学生反発】
バングラデシュでは昨年8月、学生らの政府への抗議行動が国内混乱に至り、盤石と思われていたハシナ首相(当時)が失脚するという政変がありました。

****バングラデシュ首相が辞任、ヘリでインドへ 反政府デモ激化****
バングラデシュでは4日、ハシナ氏の辞任を求めるデモ隊が治安部隊や与党支持者と衝突し、100人近い死者が出た。首都ダッカの首相公邸は5日、数千人の市民に占拠された。

陸軍のザマン参謀総長は5日、国民向けのテレビ演説を行った。現在、暫定政権の樹立に向けて協議していることを明かし、市民らに暴力行為をやめるよう呼びかけた。

AFP通信によると、学生らの抗議活動が激化した7月以降、300人以上が死亡。ハシナ氏はデモ隊を「テロリスト」と呼んで軍による鎮圧に乗り出し、激しい反発を招いていた。【2024年8月5日 毎日】
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“11月17日、バングラデシュの暫定政権を率いるユヌス氏は、ハシナ前首相を失脚に追い込んだ抗議活動で約1500人が死亡したほか、15年間の在任中に3500人が強制的に拘束された可能性があると明らかにした。”【2024年11月18日 ロイター】

学生らの反政府デモの発端になったのは独立戦争を戦った兵士の家族に対する公務員採用を巡る優遇措置でした。政権支持者への優遇措置とも見なされて批判が高まりました。

****バングラデシュのデモ激化、死者100人近く 首相の辞任要求で衝突****
(中略)発端となったのは、公務員採用を巡る優遇措置だった。

バングラは1971年の独立戦争を戦った兵士の家族に公務員採用枠の3割を割り当ててきたが、2018年に市民の抗議を受けて廃止。しかし、高裁は今年6月に復活を認めた。

ハシナ氏の父は独立闘争を率いたラーマン初代大統領で、学生らは与党・アワミ連盟の支持者を優遇する措置だと批判。最高裁は7月下旬に優遇枠を大幅に縮小する方針を示し、政府もこれを受け入れて沈静化を図った。

ところが今月4日にデモが再燃。背景にあるのが、ハシナ政権の強権的な姿勢に対する不満だ。政府は7月のデモに際し、軍による鎮圧に乗り出し、1万人以上を拘束。国連児童基金(ユニセフ)によると、少なくとも32人の子供が死亡し、デモを取材していた複数の記者も殺害された。

ダッカ大のサイド・マンズールル・イスラム名誉教授は地元紙プロトム・アロに、当初は「平和的な運動だった」と指摘。しかし、「初めから学生たちは敵とみなされ、武力で抑え込まれたことで事態が悪化した。与党は学生たちの怒りと感情を理解するのに失敗した」と分析した。

かつてアジアの最貧国の一つだったバングラは近年、高い経済成長を続けている。しかし、若者の雇用不足は深刻で、地元メディアによると、就学も就職もしていない「ニート」の割合は4割近くに上る。(後略)【2024年8月5日 毎日】
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ただ、今回政変の背景には、単に公務員採用を巡る優遇措置だけでなく、経済成長の恩恵が広く行き渡っていない現状、ハシナ氏の強権的な政治姿勢といったことへの国民不満が一気に噴出したこと、更には野党勢力が学生らの抗議行動を利用して政変に導いた側面もあると指摘されています。

****ハシナ首相の父の像を棒で殴打…バングラデシュデモ、経済格差・強権への不満が一気に噴出****
(中略)ハシナ氏が首相に返り咲いたのは2009年だった。以後、バングラデシュの経済は好調だった。11年以降は実質国内総生産(GDP)成長率がおおむね6〜8%で推移した。衣料品の輸出推進や外資誘致などが堅調な経済維持の原動力になった。26年には「後発開発途上国」の分類から外れる見通しとなっている。

学生たちの抗議デモは、公務員採用での優遇枠の廃止を違憲とする高等裁判所の判決がきっかけだった。1971年のパキスタンからの独立戦争に参加した兵士の家族などに30%を割り当てる内容で独立を主導した与党アワミ連盟の支持者を特別扱いする制度と映る。

デモが政権崩壊に発展したのは、経済成長の恩恵が広く行き渡っていない現状に対する不満がくすぶっていたことが一因とみられる。

地元メディアによると、15〜24歳で就学や就職をしていないニートは約4割に上る。ハシナ政権の強権体質への反発が一気に噴出した面もある。

ハシナ政権は13年、当局が「国家のイメージを損なう」と判断した出版物を禁ずる法改正を実施した。
1月の総選挙を前に、中立的な選挙管理内閣が発足しなかったことに抗議したデモ参加者1万人以上を拘束し、主要野党は参加をボイコットした。ハシナ政権は連続4期目入りした。

バングラデシュでは歴史的に、議会で多数派を占めるアワミ連盟と、野党バングラデシュ民族主義党(BNP)が、激しく対立しながら政権交代してきた。今回、ハシナ氏を辞任に追い込んだデモの主体は学生だったが、野党側が関与を強めてデモを変質させたとの見方が強まっている。(中略)

バングラデシュは、インドと東南アジアをつなぐ地政学的な要衝にある一方、中国からインド洋への出口にも位置している。

インド太平洋地域を重視するインドや日本は、バングラデシュでの道路や鉄道の開発を支援してきた。中国がベンガル湾に面するバングラデシュ南部で潜水艦を収容できる海軍基地の建設を支援しているとされる。バングラデシュと緊密な関係を保つ日本やインドは、ハシナ政権退陣の影響を注視しているとみられる。

◆バングラデシュ=国土面積は14万7000平方キロ・メートルで日本の約4割に相当。人口は約1億7000万人。約9割がイスラム教徒。(後略)【2024年8月6日 読売】
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国外逃亡したハシナ首相のあとを受けて、学生らの要請を受けて暫定政権を率いることになったのが貧困者向けの少額融資を行う「グラミン銀行」創設者で、ノーベル平和賞受賞者でもある経済学者のムハマド・ユヌス氏(84)

****ノーベル平和賞のユヌス氏、バングラ暫定政権の最高顧問就任に同意…抗議デモ主導の学生団体が求める****
バングラデシュでシェイク・ハシナ首相が辞任する発端となった抗議デモを主導した学生団体は6日、ノーベル平和賞受賞者で経済学者のムハマド・ユヌス氏(84)を最高顧問とする暫定政権を求めるとSNSで明らかにした。地元紙デイリー・スターによるとユヌス氏は就任に同意した。議会もこの日解散され、暫定政権発足の動きが加速している。

ユヌス氏は貧困者向けの少額融資を行う「グラミン銀行」を創設。過去に政界進出を目指し、ハシナ氏との関係が冷え込んだ。1月に労働法違反で有罪となった際は、政権の意向を受けた判決との批判も出た。ユヌス氏は、滞在先のパリから近く帰国するという。

議会解散の方針は、軍や各政党、学生団体との協議を経てモハンマド・シャハブッディン大統領が5日に表明していた。今後、合意形成を図りながら統治体制を構築していくとみられる。(後略)【2024年8月6日 読売】
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【野党・軍といった既得権益層の「改革」への抵抗、ユヌス氏「辞任」に言及】
その後、経済・社会は安定をとりもどしつつもありました。

****バングラデシュ経済は徐々に正常化 新政権の対応評価=IMF****
国際通貨基金(IMF)は30日、バングラデシュの迅速な暫定政権発足は国の安定につながっているほか、課題は残るものの新政権が経済問題の解決を支援しているとの見解を示した。

24─30日に行われたIMF審査後の報告によると、経済活動の減速、2桁代のインフレ、外貨準備への圧力などの課題に直面しながらも、経済調整に取り組んでいる当局の努力を支持した。

声明は「時宜を得た暫定政権発足は政情と治安の安定につながり、経済の段階的な正常化を促進している」と指摘した。

IMF当局者らは、バングラデシュと国民の支援に引き続きコミットし、経済対策の強化に向けた改革で当局と協力していくと表明。「こうした困難な状況に対応して、当局が金融引き締め継続や非優先資本支出の合理化など、政策調整に着手する取り組みを支持する」と述べた。

一方で、税収減少や支出に対する圧力も見られると指摘した。【10月1日 ロイター】
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しかし、政治的にはユヌス氏が目指した「改革」がなかなか進まないこと、経済的には「トランプ関税」によって、バングラデシュは再び試練を迎えています。

****ユヌス氏が目指す「改革」*****
1. 腐敗撲滅と政治改革
バングラデシュは長年にわたって汚職が深刻な問題であり、暫定政権はこれに対抗するために腐敗防止法の整備や、過去の政権に関与した政治家の起訴・資産調査を進めました。
政治からの暴力排除、透明性のある選挙制度への改革が目標とされました。

2. 選挙制度の見直し
独立性の高い選挙管理委員会の設立。
有権者登録制度の整備(写真付き有権者カードの導入)によって、不正投票や重複登録の防止を図りました。

3. 行政の近代化
官僚制度の効率化と公務員の能力向上。  電子政府化による透明性と行政サービスの改善。

4. 経済構造の改革
公的部門の効率化と民間投資の促進。  中小企業や農村部のマイクロファイナンス制度の拡充(ユヌス氏がこの分野の先駆者であることと関連)。

5. 司法の独立強化
裁判所の政治的影響からの脱却と、市民のアクセス向上。  司法手続きの迅速化と法的支援制度の整備。
【ChatGPT】
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ユヌス氏の「改革」をめぐっては、最大野党バングラデシュ民族主義者党(BNP)や軍部との間で確執・抵抗があるようで、ユヌス氏は「辞任」にも言及する状況となっています。

野党にしろ、軍部にしろ、「既得権益者」であり、「改革」によってその利益を失うことには強い抵抗が予想されます。

****バングラデシュのユヌス首席顧問、辞任示唆 改革に支持得られず****
バングラデシュの暫定政権を率いるユヌス首席顧問は、国民が待ち望んでいる改革について各政党が合意できない場合は辞任すると警告した。学生リーダーが明らかにした。死者を出した昨年の抗議デモを受けて発足した暫定政権の先行きに不透明感が深まっている。

学生運動から生まれた新党「国民市民党(NCP)」のイスラム代表は22日にユヌス氏と会談した後、記者団に対し、同氏は各政党から十分な支持を得られず職務遂行に困難を感じていると指摘した。

「ユヌス氏は委ねられた仕事、つまり制度改革と公正な選挙の準備ができないなら辞任せざるを得ないかもしれないと語った。各政治勢力からの要求と高まる国民の不満の間で板挟みになっていると感じているようだ」と述べた。

NCPは改革完了後の国政選挙実施を求めているが、最大野党バングラデシュ民族主義者党(BNP)は、12月までの選挙実施を要求している。BNP幹部らは21日、明確な選挙実施計画が示されなければ暫定政府を支持し続けることは難しいとの見解を示した。

また、ザマン陸軍参謀長も今週の演説で12月の選挙実施を要求し、現在の政治状況に対する不満を表明した。【5月23日 ロイター】
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上記「改革」のひとつ“官僚制度の効率化と公務員の能力向上”をめぐって、公務員法改正を進めようとするユヌス氏に対し、既得権益を失う公務員による抗議行動も拡大しています。

****バングラ政情再び不安定化、公務員が抗議行動 ユヌス首席顧問の辞任報道も****
 バングラデシュで政治情勢が再び不安定化し、足元では公務員の暫定政権に対する抗議行動が拡大している。

昨年8月の学生デモの激化で当時のハシナ政権が崩壊後、ノーベル平和賞受賞者のユヌス首席顧問が暫定政権を率いているが、先週にはユヌス氏が首席顧問辞任を検討しているとの報道もあった。

抗議行動のきっかけは暫定政権が今月25日に出した公務員法改正措置だ。不正に関与した政府職員について長期間の審査手続きなしで行政省が解雇できるとする内容で、職員らは「弾圧的だ」と反発して即時撤回を求めてデモを続けている。

さらに26日には小学校の教職員が賃上げを要求して暫定政権への抗議行動に合流した。

暫定政権は総選挙で正式な政権が成立するまで国の運営を担うとしているが、総選挙の実施時期や各種改革を巡って一部政党や軍と意見の食い違いが生じている。

暫定政権高官の1人はユヌス氏の辞任検討報道後、ユヌス氏が公正な選挙実施に引き続き取り組むと強調した。しかし、政治情勢の先行き不透明感が強まっている。

暫定政権がいったん決定した国家歳入庁廃止を巡っても、同庁職員の抗議を受けて政権側が25日に廃止命令を撤回。職員を財務省傘下の部門に再配置する譲歩を迫られていた。【5月27日 ロイター】
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根拠のない個人的独断・偏見ですが、昨年8月の政変の発端となった公務員採用優遇措置に見るように、そもそもバングラデシュの公務員というのは政治的な存在であり、「公僕」とか「国民サービス・福祉」といった理念は希薄であろうと想像されます。

そうした公務員の「特権」が奪われようとすれば、激しく抵抗するのでしょう。

【衣料品・縫製品産業で脱「アジア最貧国」 しかし「トランプ関税」で揺らぐ】
一方、衣料品・縫製品産業を推進力として、かつて「アジア最貧国」から急成長を遂げてきたバングラデシュ経済ですが、「トランプ関税」で揺らいでいます。

****バングラデシュ ファストファッションで急成長 トランプ関税で“最大の援助国”日本に懸念も****
トランプ政権が突きつけた相互関税に今、揺れているのが、ファストファッションで急成長を遂げているバングラデシュだ。最大の援助国である日本も、経済や安全保障での影響が懸念されている。

■親日国のバングラデシュ
と呼ばれた
バングラデシュは親日国として知られている。(中略)日本はバングラデシュにとって、最大の二国間援助国。ODA(政府開発援助)の額は累計183億8700万ドルで、バングラデシュが受けている援助全体の15%を占める。(中略)

■衣料品の輸出で…アジア最貧国から急成長
“衣料大国”として順調に経済成長
そのバングラデシュは近年、急速な経済成長を遂げてきた。 国の基幹産業は衣料品・縫製品産業で、2023年の輸出額は中国に次いで世界第2位の約450億ドル。これは、バングラデシュの輸出収入全体の8割強を占める。

就業者数は約400万人。ファストファッションから高級ブランドまで、世界の衣料品メーカーの調達拠点となっている。

独立まもないころのバングラデシュだが、当初は世界の最貧国と呼ばれ、それがしばらく続いていたが、2010年代以降、一人あたりのGDPが急激に伸びている。この成長を支えたのが衣料品などの輸出だという。(中略)

こうした経済成長を受け、国連で決議が行われ、バングラデシュは来年11月に特に開発の遅れた国々である後発開発途上国(LDC)から卒業する予定となっている。 LDCには、一部の輸出産品に対し、低い税率が適用されるなどの優遇措置があるが、卒業すれば当然これを受けられなくなる。(後略)【5月2日 テレ朝news】
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****「致命的な結果に」衣料大国バングラデシュ、トランプ関税に動揺****
トランプ米大統領が発表した相互関税は、衣料品製造を経済の屋台骨とするアジアの国々にも動揺を与えている。特に衣料品が輸出総額の8割を占めるバングラデシュでは、関税措置によって競争力が低下し、産業基盤が揺らぎかねないとの懸念が広がっている。

「結果は致命的なものになる。(他国の)競争相手が優位な立場にある中、米国の買い手から大幅な値下げ圧力を受けることになるだろう」。バングラの縫製品製造・輸出業者組合の元幹部は地元経済紙の取材にこう語り、「トランプ関税」が自国の業界に打撃を与えるとの認識を示した。

米国は今回、バングラデシュに37%の相互関税を課すと発表した。バングラの経済紙によると、2024年の対米輸出額は83・7億ドル(約1兆2000億円)に上り、このうち9割近くが衣料品関連だ。

バングラは、世界で中国に次ぐ衣料品輸出大国で、欧米の大手ファッションブランドの主要な供給元として存在感を確立してきた。国内の縫製工場などでは400万人以上が雇用されており、その多くが女性だ。

地元経済紙は、今回の関税について、米国に入る製品の価格が上昇し、バイヤー側からの値下げ圧力が強まると予測。競合国のインドやパキスタンに発注が移るとの見方も伝えている。

バングラデシュでは24年8月に、退役軍人家族らを対象とする公務員採用の優遇措置を巡る抗議行動が大規模な反政府デモに発展。強権的だったハシナ首相(当時)が辞任に追い込まれた。この混乱で、各地の縫製工場は稼働停止を余儀なくされ、バイヤーへの輸送が一時停止した。

多額の経済損失に加え、ファッションブランドの一部が発注先を他国に移す動きを見せるなど、バングラでは衣料品業界の立て直しが迫られている。そのさなかに、大口輸出先である米国から高い関税を突きつけられた形だ。

ロイター通信は今月7日、暫定政権を率いるユヌス首席顧問が、関税発動について3カ月間の猶予を求める書簡をトランプ氏に送付し、米国からの輸入品に対する自国の関税引き下げを検討していると報じた。【4月8日 毎日】
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政情が再び不安定化しつつあること、そして「トランプ関税」の今後・・・バングラデシュにとってしばらく困難な時期が続きそうです。

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「gooブログ」サービス終了に伴い、6月1日より下記「アメブロ」と「はてなブログ」に引っ越します。
2007年5月以来、長い間ありがとうございました。

引越し先
アメブロ:「碧空」
はてなブログ:「lonelylika’s diary」 

「アメブロ」と「はてなブログ」の内容は同じです。
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ロシアへの追加制裁に関する議論 欧州の提起するロシア産原油価格上限の引き下げには米は反対

2025-05-26 23:27:09 | ロシア
(ロシアの「影の船団」とみられるタンカーの付近を航行するエストニア軍の艦艇【5月20日 CNN】)

ロシアが一部の原油を制裁逃れの形で輸送している「シャドウ・フリート(影の船団)」への規制強化とは言っても実効性を担保するには難しい問題も。

「エストニア海軍は15日までに、英国が制裁を科したロシア行きの石油タンカー「ジャガー」について、エストニア首都タリン沖で旗を掲げずに航行する違法行為のため13日に拿捕しようと試みたが、同船が協力を拒否したため臨検できず、代わりにロシア海域まで護送したと明らかにした。」【5月15日 ロイター】

「ロシアが状況を確認するために戦闘機を派遣し、同機は1分近く北大西洋条約機構(NATO)領空を侵犯した」(エストニアはのツァクナ外相 15日)【同上】

戦闘機まで繰り出すロシア側への不用意な対応は突発的な“衝突”に至る危険性もあります)

【一見堅調そうに見えるロシア経済、脆弱化の一途】
ウクライナでの戦局では優位にたっているロシアですが(最近は、ひと頃の進撃ぺーズは影をひそめて膠着気味ですが)、ロシアの経済状況は表向きの「好調さ」にもかかわらず問題が大きいとも見られており、プーチン大統領も早期の戦争終結を望んでいるとも。

そのあたりがロシアを停戦交渉に呼び込むカギにもなります。

****ロシア経済は脆弱化の一途、スウェーデン研究所がEUに報告書****
ロシア経済は、戦時体制への切り替えや西側諸国の制裁によって足場が弱まり続けている――。スウェーデンのストックホルム移行経済研究所(SITE)は13日、欧州連合(EU)財務相会合向けにまとめた報告書を公表し、こうした見解を示した。

報告書は、ロシア経済はまだ比較的安定しているものの、底堅く見えるのは表面上だけで、基調的な不均衡と構造的なもろさが拡大を続けていると分析。「戦争に伴う財政刺激が短期的に経済を浮揚させ続けている。しかし不透明な資金繰りや資源配分の歪み、財政バッファーの縮小が、長期的な(経済の)持続を不可能にしている」と述べた。

ロシアの国内総生産(GDP)は2023年が3.6%増、24年が4.3%増と、西側の制裁は効果がないかのように堅調だった。

ただ報告書提出者のトルビヨン・ベッカー氏は、ロシアのGDPの数値は信用できないと主張し、物価上昇率が実態より低めに公表され、実質GDPが過大に報告されていると指摘した。

ベッカー氏は、ロシアの財政赤字も公式統計の最大2倍に上るはずだと見積もっている。

EU欧州委員会のドムブロフスキス委員(経済担当)は、欧州委としてSITEの報告書の意見に賛同すると述べた。

ドムブロフスキス氏は「この分析はロシアの統計に信頼性がなく、ロシア経済は公式統計が示すほど良好ではないことを明らかにしている」と語った。【5月14日 ロイター】
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問題点は、一時的に「戦時経済」の押し上げ効果で問題が糊塗されていること、統計数値自体に信頼できない点があること、カネ・モノ・人材などの資源配分が歪んでしまい長期的な「歪み」が経済に生じていることです。

****ロシア経済をどのように評価すべきか?****
ロシア経済の「堅調なGDP成長」に対しては、短期的には“見かけ上”の成長があるが、中長期的には深刻な問題を抱えているというのが、多くのエコノミストや国際機関の見解です。

【1】ロシアのGDPがプラス成長なのはなぜ?
2023年:+3.6%  2024年(予測):+4.3%  これは主に以下の「戦時経済による一時的な刺激」によるものです

国防支出が急増(GDPの6〜7%とされる)
軍需産業がフル稼働し、雇用と生産を押し上げ
失業率は低水準(公式統計で3%台)
賃金が上昇し、消費支出も増加傾向
つまり、「戦争特需」によるケインズ型の景気刺激です。
ただし、これは持続可能ではないというのが大方の見解です。

【2】その成長は“本当”か?統計の信頼性
多くの専門家が、ロシアの公式統計について以下の懸念を抱いています:
GDP・物価・輸出入統計が政治的に操作されている可能性 
特に「軍事支出」の名目で予算や成長を誇張する構造
「軍需生産」が増えても、それが生活水準の向上を意味するとは限らない

IMFやエコノミストの一部は、ロシアの成長率は過大評価されている可能性があると分析しています。

【3】長期的にみたロシア経済の深刻な歪み
財政の持続性  軍事支出の増大で「財政バッファー(国家基金)」が急減中。数年以内に枯渇する懸念あり。

資源配分の歪み  優先されるのは軍需産業。民間投資・生産性向上が停滞し、構造改革が進まず。

人材流出  動員や制裁逃れで若年労働者・IT人材が国外流出。人的資本の質が劣化。

物資不足  欧米からの輸入停止で、部品・技術・機械の供給に制限。代替調達先(中国など)も高コスト・低品質。

国際的孤立  投資・貿易・金融ネットワークからの締め出し。長期的な競争力低下。

【結論】もっとも妥当な見方は?
「現在のロシア経済の成長は戦争による一時的な刺激であって、構造的には持続不可能で脆弱である」
この見方がもっとも現実的かつ多くの専門家に共有されているスタンスです。
短期的な数字の回復に惑わされず、資源配分・人材・技術・制度の持続可能性という観点で見る必要があります。【ChatGPT】
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【アメリカ  国内ガソリン価格・物価への悪影響から、欧州の提起するロシア産原油価格上限の引き下げには反対】
こうした状況で、ロシアを停戦交渉に連れ出すべく、EUなどはロシア産原油に設定している1バレル=60ドルの価格上限の引き下げで圧力を強めることを提案していますが、アメリカは反対のようです。

****G7のロシア産原油価格上限、米は引き下げ「納得せず」=欧州当局者****
主要7カ国(G7)がロシア産原油に設定している1バレル=60ドルの価格上限について、欧州連合(EU)などがロシアに対する圧力を強めるために引き下げを提案しているのに対し、米国は引き下げに納得していないことが22日、欧州当局者の話で分かった。

EUは価格上限を1バレル=50ドルに引き下げることを提案。ウクライナはさらに低い30ドルに引き下げることを求めている。

ただ、欧州当局者によると、カナダのバンフで開かれている主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議に出席している米財務省のチームは、原油価格はすでに下落しており、ロシアは打撃を受けているとの見解を示している。ただ、米国は引き下げ案を排除しておらず、協議は継続されるという。

この件に関して米財務省からコメントは得られていない【5月23日 ロイター】
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アメリカがロシア産原油価格上限の更なる引き下げ(ロシアへの圧力強化)に反対しているのは、価格上限引き下げが結果的にロシアの市場からの撤退、原油価格高騰、アメリカ国内のガソリン価格高騰を招くとの判断です。

「価格上限の引き下げ(例:60ドル → 50ドル)→→ロシアが「その価格では売れない」と判断し、正規市場への供給を減らす/拒否する→→世界の原油供給量が減少(特に欧州や一部アジア向け)→→供給不足→→原油価格の上昇(世界市場全体に波及)→→ガソリン価格や電力コストの上昇 → 世界的なインフレ圧力」

****アメリカがロシア産原油価格上限の更なる引き下げ(ロシアへの圧力強化)に反対している理由****

1. 世界的な原油価格の上昇リスク
米国は、価格上限の引き下げが世界の原油価格全体を押し上げる懸念を持っています。
特に、インフレが依然として懸念材料である中、エネルギー価格の上昇は米国内の経済に悪影響を与える可能性があります。

2. 価格上限の「実効性」に疑問
米国は現在の価格上限(60ドル)でもロシア産原油の取引が抑制されていると見ており、現行ルールがすでに機能しているという立場です。

ロシアは一部の原油を制裁逃れの「シャドウ・フリート(影の船団)」で輸出していますが、その対策は価格ではなく取り締まりの強化が有効と考えられている可能性があります。

3. 新興国との関係悪化の懸念
G7が価格上限をさらに下げると、インドや中国などの非G7諸国との関係が悪化する懸念があります。
これらの国はロシアから安価な原油を輸入しており、上限が厳しくなると、対ロ制裁に非協力的になる恐れがあります。

4. 対ロ圧力と経済のバランス
米国はロシアへの制裁強化に賛成ではあるものの、エネルギー市場の安定とのバランスを重視していると考えられます。
単に制裁を強めるだけではなく、副作用(市場混乱)を回避しながら圧力を加える方針を取っています。

総合的に言えば:
米国は、価格上限の引き下げによる副作用(インフレ加速、供給混乱、外交摩擦など)を懸念しており、それよりも既存制裁の執行強化や技術的取り締まりの方が実効的だと判断しているとみられます。【ChatGPT】
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とにかく米政権にとって最重要課題は「米国内ガソリン価格」です。 「車社会」アメリカのどの政権もガソリン価格上昇に伴う国民の不満には耐えられません。 

従って、アメリカの対応が大きく影響する世界の政治・経済は、高邁な理想・理念や地政学的事情以上に、「米国内ガソリン価格を上げない」という制約の中で動くのが現実です。

アメリカの不安・懸念は決して「杞憂」ではなく、これまでもロシア産原油への規制強化の際に実際に見られた動きです。

****ロシアの供給減少が過去にどのような価格変動をもたらしたか、過去の事例****
ロシアの原油供給減少が過去に世界の原油価格に与えた影響について、主に以下の2つの時期を中心に説明します。

【事例①】2022年:ウクライナ侵攻直後のロシア制裁発動時
● 背景:
2022年2月、ロシアがウクライナに侵攻。
西側諸国(G7・EU)は、ロシア産原油への禁輸・制裁を段階的に発動。
ロシアからの供給減少を警戒し、市場が大きく反応。

● 原油価格の動き:
ブレント原油は、2022年初頭:約85ドル → 3月上旬に一時130ドル超まで急騰。
これは、2008年のリーマン・ショック前以来の高値水準。

● 結果:
供給減の懸念が先行して価格が跳ね上がり、インフレが加速。
米国ではガソリン価格が全米平均で1ガロン5ドル超を記録し、政権に強いプレッシャー。


【事例②】2022年12月:G7による「価格上限制度(price cap)」の導入
● 背景:
G7とEUが、ロシア産原油に60ドルの価格上限を設定。
同時に、上限を超える価格で取引する原油には、欧米の保険・輸送サービスを提供しない制裁。

● 市場の反応:
当初、ロシアが報復として供給を削減するとの観測で再び価格が上昇傾向に。
しかし、ロシアは輸出先をインドや中国に転換し、供給自体は続いたため、急騰には至らず。

● 結果:
市場はやや安定。ただしこれは、ロシアが新たな輸出ルート(シャドウ・フリート)を確保したため。
価格上限の「実効性」には議論があるが、一定の収入制限効果は見られた。【ChatGPT】
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【制裁逃れの「シャドウ・フリート(影の船団)」での輸出への規制強化】
上記の懸念に加えて、アメリカは現在の価格上限(60ドル)でもロシア産原油の取引が抑制されと考えており、もし圧力を強化するなら、ロシアが制裁逃れの「シャドウ・フリート(影の船団)」で輸出することへの取り締まりの強化が有効と判断しています。

制裁逃れの「シャドウ・フリート(影の船団)」での輸出への規制強化が必要なことは欧州も理解しており、その方向での動きもあります。

****英・EU、ロシアに停戦圧力 「影の船団」標的に追加制裁****
欧州連合(EU)と英国は20日、米国の参加を待たずに、ロシアに対する新たな制裁措置を発表した。ロシアが西欧諸国の制裁回避に使用する「影の船団」に属するとみられる石油タンカーのほか、制裁回避の支援が疑われる金融企業などを標的とする。

欧州はトランプ米政権に対ロシア制裁に参加するよう強く働きかけていたが、 EUと英国は 米国による 措置の発表を待たずに 今回の制裁を発表。

ブリュッセルで開かれたEU外相会合に出席したドイツのワーデフール外相は、「われわれはロシアに対し、前提条件なしの即時停戦を期待していると繰り返し明確に示してきた」とし、ロシアが停戦を受け入れないため、対応せざるを得ないと言及。米国もロシアが停戦に応じていないことを「容認しないよう期待している」と述べた。

ウクライナのゼレンスキー大統領は「制裁措置は重要だ。戦争の加害者に(痛みを)実感させるよう尽力する全ての人に感謝する」と対話アプリ「テレグラム」に投稿した。また、米国も加われば望ましいとし、「平和を近づけるプロセスに米国が関与し続けることが重要だ」と強調した。【5月21日 ロイター】
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ロシアの「影の船団」は約100隻ほどで、これらの船舶は通常、西側の正規組織による規制や保険を受けていない。また、老朽化した危険な船舶であることも。

また、ロシア産原油価格上限の更なる引き下げ、「シャドウ・フリート(影の船団)」への規制強化のほか・・・・

****EU、SWIFTから20行超のロシア銀行排除検討-新たな対ロ制裁で****
(ブルームバーグ):欧州連合(EU)は、ウクライナ戦争終結に向け、ロシアへの圧力を強化するために新たな制裁パッケージを検討している。

この制裁案には、国際銀行間通信協会(SWIFT)の国際決済ネットワークから20行余りのロシアの銀行を排除することや、ロシア産原油の価格上限の引き下げ、天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」の使用禁止が含まれている。

非公開協議であることを理由に匿名を条件に語った事情に詳しい関係者によると、新たな対ロ制裁を巡り、欧州委員会が加盟国と協議中で、実施時期などはまだ決定されていない。EUの制裁は全加盟国の支持が必要で、正式な提案と採択の前に内容が変更される可能性がある。

制裁パッケージの一環として、EUは20行余りの銀行に対する追加の取引禁止措置と、約25億ユーロ(約4000億円)相当の新たな貿易制限を検討している。ロシアの歳入をさらに削減し、兵器製造に必要な技術の入手を制限することが狙い。【5月24日 TBS CROSS DIG with Bloomberg】
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【「彼に何かが起こった。彼は完全に狂ってしまった」】
こうしたロシアへの追加制裁の議論が行われている状況での、トランプ大統領のプーチン批判。

****トランプ氏「プーチン氏に不満」、ウクライナへの大規模空爆受け 対ロ追加制裁を示唆****
トランプ米大統領は25日、週末にロシアがウクライナに対して行った空爆について強い不満を表明し、「プーチン大統領には満足していない」と述べた。 

ニュージャージー州モリスタウンの空港で取材に応じたトランプ氏は「彼に何が起きたのか分からない。多くの人々を殺している。それには納得できない」と語った。 

同日未明、ロシアはウクライナの都市に対して無人機とミサイル計367発による大規模攻撃を行った。これはウクライナ戦争開始以来最大規模の空爆であり、これにより少なくとも12人が死亡し、多数の負傷者が出ている。 

トランプ大統領は、ロシアとウクライナの双方に停戦合意を働きかけており、先週にはプーチン大統領と2時間以上の電話会談を行っていた。 

トランプ氏は今回の攻撃を受けて、ロシアに対する追加制裁の可能性にも言及した。 「これまではうまくやってきたが、今や彼は都市にロケットを撃ち込み、人々を殺している。それを私はまったく好ましく思っていない」と語った。【5月26日 ロイター】
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“トランプ大統領は25日夜、自身のSNSに、「私はロシアのプーチン大統領と常に良い関係を築いてきたが、彼に何かが起こった。彼は完全に狂ってしまった」などと投稿しました”【5月26日 日テレNEWS】

「彼に何かが起こった?」とプーチン大統領をこれまで敬愛してきたトランプ大統領は訝っていますが、西側世界ではプーチン大統領の攻撃的・侵略的本質を示すもので不思議でも何でもない・・・という見方が大方でしょう。

いずれにしても、これで対ロシア制裁に腰が重いアメリカが動き出すのか?
単に、トランプ大統領はいつものようにその時の気分で言ってみただけ・・・なのか。
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ハンガリー・オルバン首相の「非リベラル民主主義」 なぜ国内で支持されるのか?

2025-05-25 23:17:06 | 欧州情勢
(フランス・ストラスブールの欧州議会で演説するEUのフォンデアライエン欧州委員長(左)を見つめるハンガリーのオルバン首相=2024年10月9日【2024年10月9日 共同】)

【親ロシア・反ウクライナ・反リベラリズム・反EU指導部・親トランプ・親中国のオルバン首相 EU指導部との対立】
知りませんでしたが、今、ハンガリー大統領が来日しているようです。

****ハンガリー大統領 広島・原爆資料館を見学 自らの意向で初訪問****
ハンガリーのシュヨク大統領が25日、平和記念公園(広島市中区)を訪れ、原爆慰霊碑に献花した後に原爆資料館を見学した。開催中の大阪・関西万博に合わせて来日し、広島訪問は初めて。自らの意向だったという。

シュヨク大統領は憲法裁判所副長官や長官などを経て、2024年3月に大統領に就任した。(後略)【5月25日 毎日】
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ハンガリーでは実権は首相が握っていますが、大統領は議会が可決した法案への拒否権を持っています。
その実権を持つ首相が再三このブログにも登場する“EUの異端児”、親ロシア・反ウクライナ・反リベラリズム・反EU指導部・親トランプ・親中国のオルバン首相。

シュヨク大統領はオルバン首相率いる右派与党「フィデス・ハンガリー市民連盟」出身ですが、自ら広島訪問を希望するということは、平和へのいろんな思いもあるのでしょう。

そのオルバン首相、昨年はEU議長国にあたり、“独自の”(勝手な?)行動が目立ちました。

欧州首脳に「オルバン疲れ」=自国最優先ハンガリーが翻弄【2024年2月11日 時事】
ハンガリー首相の訪露、EU首脳陣から非難相次ぐ 露は「愚か者たちのヒステリー」【2024年7月6日 産経】
ハンガリー首相、今度は中国訪問 自称「平和使節」【2024年7月8日 AFP】
「ハンガリーは仲介者になれない」 ウクライナ大統領が批判【2024年7月9日 毎日】
EU議長国ハンガリー首相の言動が物議 ロシアとの対話求める EU諸国は反発【2024年7月16日 テレ朝news】
EU、ハンガリーの会合主催権を剥奪 プーチン氏との会談受け【2024年7月23日 BBC】
ハンガリーとポーランド、関係が一段と悪化 外相が非難の応酬【2024年7月30日 ロイター】
EU、ハンガリーに「脱ロシア」圧力…露産原油輸入「代替調達先の確保を」【2024年8月4日 読売】
ロシアへの抵抗は「無責任」 ハンガリー首相顧問、無抵抗降伏論唱え炎上【2024年9月27日 AFP】

****EU、ハンガリーを提訴 「国家主権保護」法巡り****
欧州連合(EU)欧州委員会は3日、政治的な目的のために外国から資金を受け入れた団体に懲役刑を科すハンガリーの法律を巡り、同国を提訴すると発表した。

欧州委は、ハンガリーの「国家主権保護」に関する法律がEUの民主主義的価値と基本的権利を侵害しているとして、2月に違反手続きを開始した。

欧州委は声明で「ハンガリー当局の回答を慎重に検討したが、指摘された問題の大半がまだ対処されていないと判断した」と表明した。【2024年10月3日 ロイター】
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欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長が、ロシアとの関係を中心にハンガリーのオルバン首相の行動を厳しく非難しています。

****〈公然とハンガリーを非難するEU〉フォン・デア・ライエン委員長の演説で見せた対立の要因****
(2024年)10月9日、欧州議会における演説で、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長が、ロシアとの関係を中心にハンガリーのオルバン首相の行動を厳しく非難した。先例のない演説と思われるので、その一部を紹介する。

(ウクライナの戦争)
「世界はロシアの戦争の残虐行為を目撃した。しかるに、今なおこの戦争を侵略者ではなく侵略された者のせいにする向きがある。プーチンの権力の欲望ではなくウクライナの自由への渇望のせいにする向きがある。

よって、彼等に問いたい。彼等は1956年のソ連の侵攻はハンガリー人のせいだというのか? 彼等は68年のソ連による弾圧はチェコ人とスロバキア人のせいだというのか? 彼等は91年のソ連による弾圧はリトアニア人のせいだというのか?(中略) 

(ロシアの化石燃料の輸入問題)
「我々は汚いロシアの化石燃料を使い続けるべきだと思っている人達に言いたい。ロシアの戦車がウクライナに侵入して数日のうちにヨーロッパの指導者はベルサイユに参集した。27すべての加盟国が出来るだけ早くロシアの化石燃料から離れて多様化すべきことに合意した。

1000日後の今日、この約束はどうなったか? ヨーロッパは確かに多様化した。――(中略)――しかし、すべての加盟国がベルサイユの約束を実行した訳ではない。その代わり、ある加盟国はロシアの化石燃料を買う別の手段を探しただけだった。(中略)

(移民問題)
「オルバンは、ハンガリーは『その国境を守っており』、ハンガリーでは『犯罪人は拘留されている』と述べた。しかし、昨年、ハンガリー当局が密輸と人身売買の犯罪人を刑期が終わる前に釈放した事実にこの発言はどのように適合するのか訝しく思う。

これはヨーロッパの不法移民と戦うことにならない。これは欧州連合(EU)を守ることにならない。これは隣国とのフェンス越しに問題を投げるだけのことである」。

「我々は皆、域外国境をより良く守りたいと思っている。しかし、それは組織犯罪に共同で対処し我々の結束を示してのみ、成功するであろう。

誰が域内に入ることを認めるかについて言えば、ハンガリー政府が追加的なセキュリティー・チェックもしないままロシア国民をEUに招き入れるようなことが、どうして有り得るのか?

ハンガリーの新たなビザのスキームはハンガリーだけでなくすべての加盟国にとっての安全上のリスクとなる。また、ハンガリー政府が中国の警察にその領域で活動を許すようなことが、どうして有り得るのか? これはヨーロッパの主権を防衛することでない。外国の干渉のための裏口である」。(後略)【2024年11月1日 WEDGE】
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「中国警察の活動許可」 EUがハンガリー非難【2024年10月9日 共同】
ハンガリー首相「ウクライナは勝てない」 支援巡りEUと対立激化【2024年10月10日 毎日】
ハンガリー首相、国民に「EUへの抵抗」呼び掛け 反ソ暴動になぞらえ【2024年10月24日 AFP】
ハンガリー首相の存在感が増大 EUで、トランプ氏に立場近く【2024年11月8日 共同】
ネタニヤフ氏招待=ICC逮捕状拒絶「恥知らず」―ハンガリー首相【2024年11月22日 時事】

今年に入っても“独自路線”は変わっていません。

「極右政党こそが未来だ」ハンガリー首相がドイツ極右政党「AfD」を称賛【2月13日 TBS NEWS DIG】
ハンガリーでプライドパレードを禁止する法案が可決。LGBTQコミュニティへの抑圧だと抗議の声【3月19日 HUFFPOST】
EU首脳会議でウクライナ軍事支援強化持ち込んだ文書が“ロシア寄り”ハンガリーの反対で合意至らず「反ヨーロッパ的」ゼレンスキー大統領が批判【3月21日 FNNプライムオンライン】
「ICCは政治的な道具になっている」ハンガリーがICCからの脱退を表明 ネタニヤフ首相への逮捕状を批判
【4月4日 TBS NEWS DIG】

【性的少数者への抑圧姿勢 多様性・リベラリズムを否定するオルバン路線の象徴】
国内政策にあって多様性・リベラリズムを否定するオルバン路線の象徴が性的少数者への抑圧姿勢です。

最近、支持を拡大している新たな保守系野党「ティサ(尊重と自由)」に対抗して、“オルバン氏には性的少数者を攻撃することで「伝統的な家族観を守る」という姿勢を打ち出し、保守層からの支持をつなぎとめたい思惑もあるとみられる”とも。

****「虹色の旗」禁止に監視カメラ…ハンガリー首相の抑圧策に高まる批判*****
東欧ハンガリーのオルバン首相が、LGBTQなど性的少数者の抑圧を強めている。性の多様性を表現する「プライドパレード」を禁止し、当局が顔認証機能付きの監視カメラを使って「違反者」を取り締まる措置も導入。親交が深いトランプ米大統領の先を行く強権ぶりは、国内外から批判を受けている。

ハンガリーでは2010年からオルバン氏が長期政権を維持している。リベラル派を敵視する言説、メディア規制、移民排斥など、親交が深いトランプ氏の「モデル」とも言えるような強権化を進めてきた。

そのオルバン氏が近年、急速に進めてきたのが、性的少数者の抑圧だ。

20年に出生時の性別からの変更が禁止され、21年には18歳未満向けの広告で「同性愛の描写」が禁じられた。25年3月には集会で多様性の象徴である虹色の旗を掲げることを禁止。当局が顔認証付きの監視カメラを取り締まりに利用することも認めた。

4月には「性別は男性と女性の二つしかない」と規定し、当局が性的少数者の公共の場での集まりを禁止できるとする憲法改正案が国会で可決された。AP通信によると、反対派は憲法改正案の採決当日、国会周辺で抗議デモを行ったが、警官隊に排除された。

一連の規制強化には国内外から反発が起きている。
顔認証付きの監視カメラは「政敵の監視」にも利用されるとの懸念がある。人権NGO「ハンガリー市民自由連合」のアダム・レンポート氏はAPに対し「訴追を恐れて、人々が公共の場で政治的な考えを表明できなくなる可能性がある」と警鐘を鳴らした。

一方、米連邦下院の22議員は4月30日付のルビオ国務長官への書簡で「LGBTQコミュニティーの表現・集会の自由を弱体化させる法律や憲法改正に懸念を示すべきだ」と要求。ルビオ氏自身も19年にオルバン氏の強権化に懸念を示していたと指摘した。ただ、トランプ氏は「タフな指導者」とオルバン氏を称賛し、親密な関係を維持しているため、米政権が圧力をかける公算は小さい。

ハンガリーでは24年に活動を始めた新たな保守系野党「ティサ(尊重と自由)」が、オルバン政権の汚職体質などを批判し支持を拡大。最近の世論調査では、オルバン氏率いる与党「フィデス・ハンガリー市民連盟」を上回るケースも出ている。

オルバン氏には性的少数者を攻撃することで「伝統的な家族観を守る」という姿勢を打ち出し、保守層からの支持をつなぎとめたい思惑もあるとみられる。【5月25日 毎日】
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【新たな保守系野党「ティサ(尊重と自由)」の台頭】
新たな保守系野党「ティサ(尊重と自由)」は2024年6月に行われた欧州議会選挙で21議席中7議席(得票率29.6%)を獲得するという予期せぬ出来事を起こしています。

****欧州最新政治情勢:欧州の行方を見定める注目論点国内政治の新たな課題と継続するEUとの摩擦(ハンガリー)板挟みのオルバーン政権****
2024年6月9日に行われた欧州議会選挙では、ハンガリーで2010年から政権を握っているオルバーン・ビクトル首相率いる保守系右派のハンガリー市民同盟(フィデス)/キリスト教民主国民党(KDNP)連合が44.8%の得票率で最多の票を獲得し、21議席中11議席を獲得したものの、前回選挙の2019年に比べて2議席減らした。

これは、マジャール・ペーテル氏率いる保守系の中道右派政党「尊重と自由(ティサ)」が21議席中7議席(得票率29.6%)を獲得するという予期せぬ出来事が起きたことが原因だった。(中略)

ティサ現象
ノバーク・カタリン大統領が2024年2月、小児性愛者の犯罪を隠蔽(いんぺい)しようとした罪で有罪判決を受けた人物に恩赦を与える決定を下したことにより、ハンガリー政治の新たな章が幕を開けた。

このスキャンダルによってノバーク大統領は辞任に追い込まれ、(中略)この大統領辞任劇を契機に、マジャール・ペーテル氏が台頭することになった。

同氏は(中略)オルバーン政権の腐敗やプロパガンダ機関の暴露に焦点を当てる一方で、成果のない野党にも批判的な立場を取っている。

同氏はもともと、オルバーン政権で中枢を担ってはいなかったが、政権の内情を把握しているため、一般市民から信頼を勝ち得ている。現政権に不満を抱く、あるいは既存野党に失望した人々の票がティサに流れる結果となった。【2024年11月5日  JETRO】
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【いわゆる西欧民主主義・リベラリズムとオルバン首相の政治姿勢の違いは?】
西欧諸国が体現している「リベラルな民主主義(liberal democracy)」と、オルバン首相が掲げる「非リベラル民主主義(illiberal democracy)」は、民主主義という言葉を共有しながら、その中身が大きく異なっています。

****西欧民主主義・リベラリズムとオルバン首相の政治姿勢の違い*****
1.価値観・理念の違い
オルバン的非リベラル民主主義では、国家の価値観に反する自由は制限される傾向、政治権力が司法やメディアに強い影響力を及ぼす、伝統的家族観やキリスト教的価値観を重視し、それと矛盾するLGBTQなど多様性には抑制的、国境封鎖や排外的姿勢。「異文化が国民国家を脅かす」とする・・・・といった傾向・特徴が見られます。

2.政治の運営スタイルの違い
オルバン政権には、国営メディア支配、独立メディアへの圧力や買収、国際的NGOや政府に批判的な団体を「外国の影響」と見なし制限、長期政権化し、制度的に対抗勢力を弱体化させる傾向(選挙制度変更など)、体制批判を抑圧・・・・といった傾向・特徴が見られます。

3. オルバン首相の言説・理念
2014年に「非リベラル民主主義」という概念を提唱 「リベラル民主主義は国家を弱体化し、国民の伝統的価値観を破壊してきた」としています。

目指すのは:「強い国家」「民族的一体性」「家族中心の社会」「EUのエリート主義・グローバリズムへの抵抗」とのこと。

オルバン首相の政治スタイルは「民主主義」の枠内にはあるが、「リベラルな価値観」を否定する独自の国家モデルを追求しています。それは西欧の民主主義とは根本的に異なる軌道であり、EUという枠組みにおいては深刻な緊張と試練をもたらしています。【ChatGPTより】
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【なぜハンガリーでオルバン首相の路線が支持されているのか?】
オルバン首相が主導する「非リベラル民主主義」路線がハンガリー国内で広く支持されている背景には、歴史的・社会的・経済的な複合要因があります。

****なぜハンガリーでオルバン首相の路線が支持されているのか?*****
1.歴史的トラウマとアイデンティティの回復欲求・・・・トリアノン条約の記憶(1920年)
第一次世界大戦後、ハンガリーは領土の約70%を失い、人口の約3分の2が国外に。 周辺国に取り残されたハンガリー系住民(スロバキア、ルーマニア、セルビアなど)への同胞意識は今も強い。

この歴史的喪失感から、「国民国家の保護」「民族的同一性の強化」が国民的感情として残っている。 オルバン政権は、国外のハンガリー人に市民権を与えるなど、ナショナリズムを積極的に政治利用。

2.共産主義崩壊後の混乱と「自由主義への幻滅」・・・・1989年以降の民主化と市場経済導入
自由化とともに急激な民営化、外資進出、格差拡大が発生。 多くの国民にとって、「リベラリズム=外資の利益優先、国の主権の喪失、生活の不安定化」という印象が定着。 その反動として、「強い国家による安定」が求められるように。

3.移民問題と安全保障意識の高まり・・・・2015年の「難民危機」
シリアなどからの難民がバルカンルートを通ってEUに殺到、ハンガリーはその通過点に。 オルバン政権は国境フェンスを建設し、移民を徹底排除。 EUや西欧諸国はこれを批判したが、国内では圧倒的支持を得た。
「ブリュッセル(EU)よりもブダペスト(自国)の安全を守るべきだ」というナショナルな論理が浸透。

4.メディア支配と情報空間の形成
オルバン政権は、メディアや教育機関を通じて「国家主義的ナラティブ」を強化。 野党系メディアやNGOは「外国勢力の手先」とされ、信頼を低下させられている。 結果として、国民の多くは政権の価値観を自然なものと受け止めるように。

5.EU資金と地方経済の恩恵
ハンガリーはEUから多額の補助金を受け取り、それを地方のインフラ整備・雇用政策に活用。 地方の人々は「オルバン政権の下で生活が良くなった」と実感しやすい。 都市部のインテリ層は野党支持が多いが、地方ではオルバン支持が根強い。

6.リベラル勢力の弱体化と対抗軸の欠如
過去の自由主義政党(例:社会党、自由民主同盟)は政権運営の失敗で信頼を失った。 野党は分裂・内部対立が多く、オルバン政権に代わる「現実的な選択肢」が存在しないと見なされている。
 
結論
ハンガリー国民がオルバン首相の路線を支持するのは、単に「洗脳された」からではありません。リベラルな制度が実際に生活をよくしてくれなかったという歴史体験と、ナショナリズムによって生活や誇りが回復したように感じられるという心理的背景が深く結びついています。

このような状況では、「西欧の価値観に従え」と説いても逆効果であり、EUはより精緻な対話と戦略的な関与が求められているのが現状です。【以上、ChatGPTより】
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今後もEUは同じ枠組みの中でハンガリーとやっていけるのか、あるいは、やっていく意味があるのか?

****EUは価値観の異なるハンガリーとやっていく意味があるのか?****
◎ EUにとっての意味
地政学的安定の確保
 ロシアの脅威を考えると、中東欧諸国(ハンガリー含む)をEUに留める意義は大きい。特にウクライナ戦争後は、東方拡大の戦略的重要性が高まっている。

多様性の受容という理念
 「価値観が違うから切り離す」では、EUの存在意義自体が問われることになる。

◎ ハンガリーにとっての意味
EU資金の恩恵
 EU予算の多くが地方開発や農業に使われており、ハンガリーは受益国。

経済的安定と投資の信頼性
 EU加盟国であることが、外資系企業の投資を呼び込む要因となっている。

制裁と説得の併用
 EUは法の支配違反に対して資金停止などの制裁を行いつつも、脱退には誘導しない戦略を続けるとみられます。
【ChatGPTより】
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イランの核開発をめぐるイラン・アメリカの直接交渉・・・トランプ外交の数少ない「賢明な行動」

2025-05-24 23:14:58 | イラン
(【5月24日 NHK】5回目の高官協議では双方がともに一定の進展があったという認識を示しつつも、決定的な進展はみられず、今後も協議を継続していくことで合意しています。)

【トランプ外交の数少ない「賢明な行動」】
支離滅裂な言動が多いトランプ大統領ですが、“意外にも”堅実な交渉を続けているのがイランとの核開発をめぐる議論です。“アメリカが過去40年間にわたり不倶戴天の敵と位置付けてきたイランと直接対話する意向を表明したのだ”【下記】とこれまでにない対応も。

****トランプ外交の数少ない「賢明な行動」...メディアが報じない、中東歴訪の「最大の成果」とは?****
<核開発を進めるイランとの緊張緩和を進め、世界の地政学的構図を変え得るトランプの「シグナル」とは>

(中略)トランプは中東歴訪中に、中東と世界の地政学的な構図を大きく変えるかもしれない発言をした。アメリカが過去40年間にわたり不倶戴天の敵と位置付けてきたイランと直接対話する意向を表明したのだ。

「繰り返し表明してきたように、過去の紛争を終わらせ、新しいパートナーシップを築き、よりよいより安定した世界をつくりたい」と、トランプは5月13日、サウジアラビアの首都リヤドで演説した。

旧来の米政府の中東政策を信奉してきた人たちは、すぐにトランプの気が変わると信じていたり、期待していたりするようだ。実際、関税をめぐる混乱からも明らかなように、トランプの言動が一貫性を欠くことは間違いない。
しかし、今回のイランに関する発言は、理解不能な行動を繰り返して無用の混乱を招いてきたトランプ外交の中で数少ない賢明な行動だ。

1979年のイラン革命とアメリカ大使館人質事件以降、イランに対するアメリカの激しい敵意は、あまりに多くの犠牲を生んできた。例えば、アメリカは80~88年のイラン・イラク戦争に介入してイラクを支援した。この戦争での双方の死者は、50万~100万人に上るとされる。

アメリカは2000年代以降、核開発を理由にイランへの経済制裁を強化していった。しかし、なぜイランが核開発を目指すのかを論じようとする専門家はほとんどいない。イランとしては、他国から攻撃を受けることを恐れていて、抑止力として核兵器を欲しているのかもしれない。(中略)

アメリカとイランとの関係改善は、多くの米政治・外交関係者とイスラエル政府にとって受け入れ難いかもしれない。しかし、アメリカとイスラエル以外の国々では、イランを取り巻く状況に変化の兆しが見え始めている。

トランプが中東を訪問する前の時点で既に、サウジアラビアなどこれまで長くイランと敵対してきた中東の国々は、イランとの緊張緩和を望むというシグナルを発していた。中東諸国は長く続いてきた戦争により、せっかくの豊かな資源と人的資本が台無しになっていることに気付き始めたのだろう。

イランとの緊張緩和が実現するまでの道のりはまだ遠い。過去の言動を見る限り、トランプがイランとの関係改善を目指すという発言を貫かない可能性も当然ある。

しかし変化を起こすためには、まず問題が存在することを明確化する必要がある。その点で、イランとの対話を望むというトランプの発言は、今回の中東歴訪の最大の成果と言えるかもしれない。【5月19日 Newsweek】
******************

“イラン敵視”のアメリカの対イラン外交はアメリカ大使館人質事件のトラウマを引きずっていると個人的には思っていますので、そこから脱却できるのであれば米・イラン、そして世界にとって幸いです。

イランと直接対話と言ってもトランプ外交ですから、平和に向けた理念優先の議論ではなく、「力」と「繁栄」の2つのカードをチラつかせての“ディール”です。

****トランプ氏が中東を後に 歴訪で見えたトランプ外交の“2つのカード” 焦点はイランとのディール****
アメリカのトランプ大統領が中東3か国の歴訪を終え、まもなくUAE=アラブ首長国連邦を後にします。歴訪で見えてきたのはトランプ氏が持つ外交の「2つのカード」でした。

トランプ大統領は日頃から『力による平和』を訴えていますが、今回の歴訪で強調したのは『繁栄による平和』の実現です。

企業のCEOを多数引き連れ、サウジアラビア、カタール、UAEで、巨額の経済協力や武器販売の取り引き=ディールを取り付けたトランプ大統領。演説で引き合いに出したのはイランでした。

アメリカ トランプ大統領 「アラビア半島の国々が選んだ道と極めて対照的なのは、湾の向こう側の災難、イランだ」

経済成長を遂げる湾岸諸国を「繁栄の成功例」と見せつけながら、経済制裁に苦しむイランに核開発断念と関係改善を何度も訴えました。

アメリカ トランプ大統領 「イランには素晴らしい国になってもらいたいが、核兵器を持つことは許さない」

今回、シリアの暫定大統領と電撃的に面会し、制裁解除の方針を表明したのも、イランを孤立化させ追い込む狙いがあります。

トランプ氏はイランに爆撃をちらつかせながら、話し合いによる合意を選ぶよう迫っています。

「力」と「繁栄」の2つのカードでイランとのディールを実現できるか、それが今後の中東外交の大きな注目点となります。【5月16日 TBS NEWS DIG】
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****トランプ大統領 イランに「核合意に向けた提案示した」****
イランの核開発をめぐるアメリカとの協議が続くなか、トランプ大統領はアメリカがイランに対して合意に向けた案を示したことを明らかにしました。

アメリカ トランプ大統領 「イランは提案を受け取った。重要なのは、彼らは迅速に行動しなければならないということだ。(そうでなければ)何か悪いことが起こるだろう」

トランプ大統領は16日、このように述べ、アメリカがイランに対して、核合意に向けた案を示したことを明らかにしました。

トランプ氏は提案の具体的な内容については明らかにしませんでしたが、「早く行動しなければならない」と述べ、早期の進展を求めました。

イランの核開発をめぐっては、アメリカとイランの代表団がこれまで4回にわたって協議を行っていて、アメリカのニュースサイト「アクシオス」は、11日に行われた協議で提案を伝達したと報じています。

こうしたなか、イランの外務次官は16日、トルコでイギリス、フランス、ドイツと外務次官級の協議に臨んだことを明らかにしました。

アメリカとイランで行われている協議について議論したうえで、今後も外交努力を続けることで一致したとしています。【5月16日 TBS NEWS DIG】
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トランプ大統領は15日、イランの核問題をめぐる交渉について、「合意に近い」と明らかにしています。実際のところはわかりませんが・・・・。

【米タカ派からは「1%の濃縮能力も認めることはできない」との過剰要求も】
“話し合いによる合意”とは言っても、「1%の濃縮能力も認めることはできない」(ウィトコフ中東担当特使)ということでは、イラン側に平和利用も断念する全面降伏を求めるものであり、頓挫は必至でしょう。

「1%の濃縮能力も認めることはできない」といったものが、単に今後の譲歩を見据えてのブラフなのか、トランプ大統領の考えを反映したものなのか・・・わかりません。(後出【WEDGE】によれば、米政権内のタカ派の意向を受けたものとか)

****イラン核協議、ウラン濃縮が「レッドライン」と米特使****
米国のウィトコフ中東担当特使は18日、イランとのいかなる取引にもウラン濃縮を行わないという合意が含まれる必要があるとの立場を示した。

ABCで放送されたインタビューで「われわれには極めて明確なレッドライン(越えてはならない一線)がある。それは(ウラン)濃縮だ。1%の濃縮能力も認めることはできない」と述べた。

トランプ政権の立場としては、全てが「濃縮を含まない取引から始まる」とし、「濃縮は容認できない。兵器化を可能にするからだ」と述べた。

これに対し、イランのタスニム通信は18日、アラグチ外相が「非現実的な期待は交渉を止める。イランにおける濃縮は止められるものではない」と述べたと報じた。

同相はウィトコフ氏について「交渉の現実から完全に離れている」と指摘し、ウラン濃縮を継続する考えを示した。

ウィトコフ氏はイランとの交渉に楽観的だとし、両国が週内に欧州で再協議するとの見方を示した。アラグチ氏は次回の協議の日程と場所が近く発表されると述べた【5月19日 ロイター】
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最高指導者ハメネイ師は「言語道断」と怒っていますが、交渉を止めることはないようです。

****イラン最高指導者、核協議巡り米を非難 「言語道断」****
イランの最高指導者ハメネイ師は、米国がウランの濃縮停止を求めていることについて「行き過ぎで言語道断だ」とし、核問題を巡る両国の協議で合意が成立するか疑問だとの認識を示した。国営メディアが報じた。

ハメネイ師は「米国との核協議で成果が出るとは思わない。何が起きるか分からない」とし、米国は交渉で過度な要求を控えるべきだと述べた。

イラン政府関係者は第5回協議が今週末にローマで開催される見込みだとロイターに述べたが、同国のタフトラバーンチ外務次官は19日、米国がウラン濃縮の完全停止を要求するなら、協議は決裂するとの認識を示した。【5月20日 ロイター】
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【イラン・米合意に不安を持つイスラエルのイラン核施設への攻撃】
交渉を破綻させる要因としては“米国の交渉での過度な要求”ともう一つ、“イスラエルのイラン核施設への攻撃”です。

****イスラエルがイラン核施設の攻撃準備、米が情報入手=CNN****
イスラエルがイランの核施設を攻撃する準備をしていることが、米国が入手した新たな情報で示されたと、CNNが複数の米当局者の話として20日報じた。

イスラエルが最終決定を下したかどうかは不明。また、米政府内でもイスラエルが攻撃を最終的に決定するかどうかを巡り意見の相違があるという。

ロイターはこの報道を直ちに確認できなかった。国家安全保障会議(NSC)やワシントンのイスラエル大使館からコメントを得られていない。

CNNによると、ある関係筋はイスラエルによる攻撃の可能性が「ここ数カ月で大幅に高まった」と語った。また、米国との交渉の結果、イランが保有ウランを完全には放棄しなくて良くなった場合、攻撃の可能性が高まるだろうと述べた。

こうした情報は、イスラエル高官による公開の通信や非公開の通信傍受、イスラエル軍の動向観察に基づくもので、2人の関係筋によると、米国は航空兵器の移動や航空演習などを確認したという。

イランの最高指導者ハメネイ師は、米国がウランの濃縮停止を求めていることについて「行き過ぎで言語道断だ」とし、核問題を巡る両国の協議で合意が成立するか疑問だとの認識を示した。【5月21日 ロイター】
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トランプ大統領が「合意に近い」と明らかにするなど、イランとの交渉に前のめりになっていますので、イラン核開発阻止を安全保障の基本とするイスラエルとしては、「早めの行動で・・・」といったところでしょうか。

【トランプ大統領が当面する3つの主要な問題】
****イラン核合意なるか?両国ともに欲する“ディール”、トランプが直面する3つの問題****
Economist誌4月26日号が、イランの核活動を巡るイランと米国の交渉について、トランプ大統領が当面する3つの主要な問題を指摘し解説する記事を掲げている。要旨は次の通り。
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イランの外相アラグチと米国の特使ウィトコフは4月19日にローマで二度目の交渉を行った。重要なのは「技術的な交渉」が同じく19日に始まったことである。核についての交渉は複雑であるので、専門家の会合は双方が詳細の議論に入りつつあることを意味する。

双方とも取引を欲しているのは明らかである。彼らは2015年の合意(JCPOA)を改善したいと希望している。しかし、トランプは三つの大きな障害と取り組む必要がある。

第一は、政権内の強硬派である。ウィトコフは米国が何を欲するかについて矛盾したメッセージを発している。
4月14日のFox Newsのインタビューで、彼はイランにJCPOAと同様3.67%までのウラン濃縮を認めることを示唆したが、翌日には、イランは濃縮活動を「停止し除去する」必要があると述べた。

前者の目標は現実的であるが、後者はそうではない。ウィトコフが立場を180度ひるがえしたのは、譲歩に不満なワシントンのタカ派の圧力のためである。

第二は、イランが提起している問題である。イランは新しい合意がJCPOAよりも永続的でカネになることを欲している。従って、イランはトランプ(あるいは将来の大統領)が合意を再び捨て去ることをしない保証を求めるであろう。

まずは、合意を米国議会上院で承認される条約とすることを欲している――JCPOAは条約ではなかった。しかし、それは鉄壁の保証ではない。条約は破棄され得るし、大統領が条約を一方的に放棄した先例はある。

イランは経済的な保証も欲している。制裁を解除するだけでは十分でない。合意は目に見える恩恵を約束するものでなければならない。その点でJCPOAは失望させるものだった。

イランにより多くの石油の輸出を認めたが、より多くの外国の直接投資を解除することには失敗した。世界銀行によれば、2016年のイランへの直接投資の流入は国内総生産(GDP)比0.7%だったが、これは15年の0.5%からの微増にとどまる。

制裁は一つの障害である。JCPOAは一部を解除したが、その他はそのままだった。

イラン自体も障害である。トランプが米国の制裁のすべてを解除しても、米国が84年以来テロ支援国家に指定する腐敗したイランに投資することについては、西側企業は十分な根拠のある恐怖を依然抱くかもしれない。

この問題を解決する一つの方法は、湾岸諸国にイランへ貿易と投資を提供するよう説得することである。これがトランプにとっての第三の課題である。

サウジアラビアは助けることに前向きと思われる。4月17日に国防相ハリド・ビン・サルマンがイランを訪問したが、97年以来最も高位の人物の訪問だった。

サウジアラビアは戦争になることに神経質で、米国による取引を望んでいる。トランプは5月に湾岸3国の訪問を計画しているが、これら諸国の支援を求める機会となり得よう。

同時に、トランプは如何なる取引にも懐疑的で軍事攻撃を選好するネタニヤフをうまく扱う必要がある。当面、トランプはネタニヤフを抑えつけるつもりのようである。しかし、交渉が何カ月も続くようだと、それは難しくなるかも知れない。

イランとしては、トランプに対処するに抜け目のない戦略を選んだ。それは、トランプのビジネスの直感に訴えることである。

(イラン外相)アラグチは4月21日にカーネギー平和財団主催の核政策に関する会議で講演する予定だったが、直前にキャンセルされた。その後、彼はそのテキストをXに投稿した――イランは19基の原子力発電所を建設したいと思っているが、米国の企業も入札に招請されるだろうと彼は述べている。

世界中で65基の原子力発電所が建設中である。19基を建設する機会は大きなご褒美である。(後略)【5月23日 WEDGE】
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第一の「濃縮」については、JCPOA(2015年の合意)と同様3.67%を上限とすることとし、蓄積された60%などの高濃縮ウランは希釈しあるいは国外に搬出する・・・・といったあたりが現実的な対応でしょう。

第二の「条約化」については、米国議会上院が3分の2の多数で条約を承認するというのは無理があると思われます。

第三の「経済的な保証」はこれからの話次第ですが、今後イランが建設するとする19基の原発に米企業を誘い込むというのは、“トランプがイラン経済の再建に関与するのは異様かもしれないが、ガザをリビエラに変貌させることに関心があるのだからあり得ないことではない。”【同上】とも。

****焦点はトランプの“過大な要求”*****
この記事が指摘しているように、イランはサウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)の湾岸3国の協力で経済的利益を得ることができる。これら諸国は交渉の成功を欲している。

イスラエルの勝手な行動で地域の安定が害されることを望んではいない。トランプがその気になれば、これら諸国の支援を求めることができるであろう。

イラン国内の状況は詳らかにしないが、合意の成立を期待する方向に変化が見られるようである。イランが合意を望んでいることは間違いなく、焦点の一つはトランプ政権が何処でその過剰な要求を思いとどまれるかにあるように思われる。【同上】
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イタリアの首都ローマでは23日、イランの核開発をめぐり、アメリカとイランの5回目の高官協議が行われましたが、決定的な進展はみられず、今後も協議を継続していくことで合意しました。
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ガザ情勢に欧州で高まるイスラエル批判 外交団への警告射撃 米でのイス大使館職員殺害の影響は?

2025-05-23 23:27:57 | パレスチナ

(【5月22日 共同】)

【イスラエル  およそ2か月半ぶりにガザ地区への物資搬入を認めるも、そのレベルは不十分】
イスラエル・ネタニヤフ首相は18日、パレスチナ・ガザ地区への限定的な食料の搬入を再開させると表明し、3月2日以来、およそ2か月半ぶりにガザ地区の封鎖が解除されました。

飢餓が恐怖が高まるガザ地区の惨状への国際的な批判、それを背景にしたアメリカのイスラエルへの圧力もあったようです。

その一方で、ネタニヤフ首相は「ガザ全域の制圧を目指す」と主張し、地上侵攻を再開したイスラエル軍は攻勢を強め、犠牲者も増大しています。

****ガザへの食料限定搬入、米から強い圧力か 再占領視野のイスラエル政権内では不評、曲折も****
イスラエル軍は18日、パレスチナ自治区ガザで大規模な地上作戦を始めたと発表し、中東の衛星テレビ局アルジャジーラ(電子版)はガザ北部や南部一帯で同日、150人超が死亡したと伝えた。19日もガザへの攻撃で少なくとも23人が死亡したとみられる。激しい攻撃で犠牲者が急増し、人道危機も深刻化する公算が大きい。

イスラエルのネタニヤフ首相はガザを「征服」し、軍駐留を続ける方針を示した。2005年に完全撤退したガザの再占領も辞さない構えで、国際社会で批判が高まりそうだ。

ネタニヤフ政権はイスラム原理主義組織ハマスに対する人質解放の圧力を強化するとし、トランプ米大統領の中東歴訪の終了に合わせる形で、大規模軍事作戦を開始したと発表。その前から激しい空爆を行っており、ガザ保健当局は18日、過去1週間に460人超が死亡したと発表した。

一方、イスラエルのメディアは英紙タイムズの報道を基に、ガザを北部、中部、南部に3分割して、住民らの管理を強化する計画が政府内部に存在すると報じた。

それによると、イスラエル軍はガザ北端と南端に加え、各区画を隔てる境界の計4カ所に駐留。無許可で別の区画に移動することを禁じ、住居がある区画での生活を認めない可能性もある。

ネタニヤフ氏は18日、ガザへの限定的な食料の搬入を再開させると表明した。首相府は「軍の勧告に基づく決定」だとしたが、イスラエルのメディアは「米国の強い圧力」があったと報じた。

イスラエルは3月2日、ガザへの食料や燃料などの物資搬入を全面停止した。トランプ氏は今月16日、「(ガザでは)多数の人が飢えに苦しんでいる」と述べ、対応する必要性を示唆していた。

ただ、物資搬入の再開は対パレスチナ強硬派の極右政党などが参画するネタニヤフ政権の内部では不評で、搬入が継続されるかは不透明だ。【5月19日 産経】
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【欧州で高まるイスラエル批判 イスラエルの制裁やパレスチナ国家承認の検討も】
最近取り沙汰されている軍事作戦の維持・拡大を主張するネタニヤフ首相と人質解放を優先し停戦実施を求めるトランプ大統領の“不協和音”については、“アメリカのワシントン・ポストはトランプ政権が「戦争が終わらなければ、イスラエルを見捨てる」と明言していると伝えています。”【5月20日 テレ朝news】とも。

そうした状況で、欧州・カナダなどでもイスラエル批判が高まり、主戦場の一つになっています。

****英加仏、対イスラエル制裁を警告 「ガザでの軍事作戦停止せよ」****
英国、カナダ、フランスの首脳は19日、イスラエルがパレスチナ自治区ガザでの新たな軍事攻撃を停止し、援助制限を解除しなければ、制裁を科すと警告し、ネタニヤフ首相に一段の圧力をかけた。

イスラエル軍は16日に新たな作戦の開始を発表、ネタニヤフ氏は19日、ガザ地区全域を掌握する方針を示した。

英政府が発表した共同声明は「イスラエル政府による一般住民への必要不可欠な人道支援の拒否は容認できず、国際人道法に違反する可能性がある」と指摘。「われわれは、ヨルダン川西岸地区における入植地拡大のいかなる試みにも反対する。制裁を含むさらなる行動を取ることを躊躇しない」とした。

これに対してネタニヤフ氏は「英国、カナダ、フランスの指導者たちは、(2023年)10月7日のイスラエルへの大量虐殺的攻撃に対して巨額の賞金を提供しているようなもので、このような残虐行為をさらに招いている」などと反論した。

3カ国首脳は共同声明で、米国、カタール、エジプトが主導するガザでの即時停戦の努力を支持するとし、紛争の2国家解決策の一部としてパレスチナ国家を承認することにコミットしていると強調した。【5月20日 ロイター】
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こうしたイスラエル批判の高まりは、イスラエルが警戒する欧州各国によるパレスチナ国家承認にもつながってきます。

****英仏カナダ首脳、イスラエルに共同対応を警告****
イギリス、フランス、カナダの3か国首脳は19日、パレスチナ自治区ガザ地区におけるイスラエルの「看過しがたい行動」を非難し、軍事攻勢が続くようであれば共同で対応すると警告した。

イギリスのキア・スターマー首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、カナダのマーク・カーニー首相は、イスラエルによるガザへの人道支援の妨害や、ネタニヤフ政権の閣僚によるパレスチナ人の大量追放を示唆する発言を厳しく非難した。

3首脳は「ネタニヤフ政権によるこのような看過しがたい行為を黙認することはできない。イスラエルが軍事攻勢を停止せず、人道支援の制限を解除しない限り、われわれはさらに具体的な対応措置を取る」と警告した。

具体的な措置には言及しなかったものの、「二国家解決の実現に向けた一助としてパレスチナ国家を承認する用意があり、そのために他国とも連携していく」と述べている。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はこれに反論し、この共同声明はガザを支配するイスラム組織ハマスに対する「大きな賛辞」だと非難した。

またイスラエルに対しては、同日、22か国の外相がガザ地区への支援物資搬入の「即時かつ全面的な再開」を求める共同声明を発表しており、英仏カナダもこれに署名している。 【5月20日 AFP】
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支援物資搬入は部分的に認められたものの、なかなか進まない支援の現実を前に、日本も含めた日欧各国は、ガザ地区への支援物資搬入を即時に「全面再開」するよう要請する共同声明を出しています。

****日欧など22か国、ガザ支援「全面再開」をイスラエルに要請****
日本や英仏独、オーストラリアなど22か国の外相は19日、イスラエルに対し、パレスチナ自治区ガザ地区への支援物資搬入を即時に「全面再開」するよう要請する共同声明を発表した。これに先立ちイスラエルは、ガザ封鎖を部分的に解除した。

22か国外相は、「限定的に援助が再開された様子は認められるが、イスラエルは2か月以上にわたり、ガザへの人道支援を阻止していた」と指摘。

「(ガザでは)食料、医薬品、生活必需品が尽き」、「住民は飢餓に直面している」とし、「ガザの人々が切実に必要としている援助を受け取れるようにしなければならない」と訴えている。

国連は、支援物資を乗せたトラック9台のガザ入りがイスラエルに許可されたと発表した上で、この量は「大海の一滴にすぎない」と表現し、ガザが直面している人道危機に比べれば微々たるものと指摘していた。

署名国はオーストラリア、カナダ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、アイスランド、アイルランド、イタリア、日本、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポルトガル、スロベニア、スペイン、スウェーデン、英国の22か国。 【5月20日 AFP】
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中道左派のスペイン社会労働党を率いるサンチェス首相はイスラエルをの国際文化イベントから排除するよう求めています。

****イスラエルの国際イベント排除要請、スペイン首相 ガザ戦闘受け****
スペインのサンチェス首相は19日、パレスチナ自治区ガザでのイスラエルの軍事作戦を理由に、同国を欧州最大の国別対抗音楽祭「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」などの国際文化イベントから排除するよう求めた。

ロシアも、ウクライナ侵攻を理由に同様の排除措置を受けている。(中略)

サンチェス氏は芸術家らに対し、民主主義や平和など脅かされている価値観のために立ち上がるよう呼びかけ、「当たり障りのない、沈黙した、中立的な立場を取る文化部門」を擁護する人々を批判した。【5月20日 ロイター】
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イギリス、EUもイスラエルとの関係を再検討する姿勢を示しています。

****英政府、イスラエルとのFTA交渉を停止 ガザ戦闘再開・支援物資搬入制限に抗議****
スターマー英政権は20日、イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザで軍事作戦を再開させたことに抗議し、イスラエルとの自由貿易協定(FTA)の締結交渉を停止した。ヨルダン川西岸への入植活動に関わる3個人と4団体に対する追加制裁も発表した。

ラミー英外相は、イスラエルがガザへの食料や医療物資、燃料などの人道支援物資の搬入を制限していることについて「残酷で弁解の余地がない」と述べ、制限の解除を要求。ガザでの紛争が英国とイスラエルの関係を損ねているとの認識を示し、同国がこのまま物資の搬入を制限し続けるのであれば「さらなる措置を講じる」と警告した。

スターマー英首相も20日、これに先立ち議会で「イスラエルが事態を激化させたことに戦慄を覚える」と懸念を表明し、イスラム原理主義組織ハマスに捕らわれた人質を解放するには「停戦が唯一の道だ」と訴えた。

イスラエル外務省は同日、駐英イスラエル大使を呼んで説明を求めた。同省報道官はX(旧ツイッター)への投稿で、英政権の措置に対し「外部からの圧力がイスラエルの進む道を転換させることはない」とし、意に介さない立場を強調した。【5月21日 産経】
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****EU、イスラエルとの協定検証へ ガザの惨状受け****
欧州連合(EU)のカラス外交安全保障上級代表(外相に相当)は20日、パレスチナ自治区ガザの壊滅的な状況を踏まえ、イスラエルとの政治・経済関係を定めたEU・イスラエル連合協定の検証を実施すると述べた。この日開いた外相理事会で大多数が見直しを支持したとした。

イスラエルは最近、ガザへの攻撃を強化し多数の犠牲者が出ている。外交筋によると、協定の人権に関する条項をイスラエルが順守しているかを中心にした検証をオランダが提案。加盟国27カ国のうち17カ国が賛同したという。

カラス氏は「ガザの状況は壊滅的だ。イスラエルが援助物資の搬入を許可したことは歓迎するが、その規模は大海の一滴だ。援助は直ちに、妨害なく、大規模に行われなければならない」と述べた。

チェコは、EUが協定に基づく会合を開催しイスラエルに懸念を表明することが可能として検証を支持しなかった。

カラス外相は、暴力的行為を働いたイスラエル人入植者に対する制裁措置を策定したが、一加盟国に阻止されていると述べた。外交筋によると、ハンガリーが阻止しているという。【5月21日 ロイター】
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【視察中の外交団に対するイスラエル軍の警告射撃 欧州のイスラエル批判を更に刺激】
こうした欧州のイスラエル批判を更に刺激したのが、パレスチナ自治区のヨルダン川西岸ジェニンで視察中の外交団に対するイスラエル軍の警告射撃でした。

****イスラエル軍、ヨルダン川西岸で外交団に発砲 各国が猛抗議****
イスラエル軍は21日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸ジェニンで、視察中の欧州連合や各国の外交団に「警告射撃」を行ったと発表した。これを受け、イスラエルを支持している国の間からも強い非難の声が上がっている。

イスラエル軍は、外交団は承認されたルートを外れ、制限区域に入ったと主張。「警告射撃」を行い、外交団を誘導したと説明した。負傷は出ていないとしつつ、「迷惑」をかけたことに遺憾の意を表明した。

パレスチナ自治政府は、イスラエル部隊は「意図的に」発砲したと指摘した。AFPの映像には、外交団と同行記者が、銃声を受け避難する様子が捉えられている。

あるEU外交官によると、外交団は、2023年10月にガザ紛争が勃発(ぼっぱつ)して以来、イスラエル軍がもたらした破壊状況を確認するため、現地を訪れていた。

国連のアントニオ・グテレス事務総長の報道官は記者団に対し、「職務中の外交官は発砲されたり、いかなる形であれ攻撃されたりするべきではない」とし、「国連職員を含む外交官が仮に警告射撃だったしても銃撃されたことは容認できない」と述べた。

EUのカヤ・カラス外交安全保障上級代表(外相)は、イスラエルに対し「責任を追及する」よう求めた。
また、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ポルトガル、スペイン、ウルグアイの各国は、それぞれの国に駐在しているイスラエル大使を呼び出して抗議したり、イスラエル政府に直接抗議する意向を表明したりした。

パレスチナ自治政府の通信社WAFAは、外交団には英国、中国、エジプト、フランス、ヨルダン、トルコ、ロシアなど20か国以上の代表が参加していたと報じた。 【5月22日 AFP】
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【ネタニヤフ首相、「一時停戦」に応じる用意表明 しかし、米ワシントンでのイスラエル大使館職員銃撃事件でイスラエルは再度強硬路線に戻る可能性も 米国内の「反ユダヤ主義」対応は強化か】

さしものネタニヤフ首相も、こうした欧州を中心にしたイスラエル批判の高まりに対し、やや対応を軟化。

****イスラエル首相、ガザ「一時停戦」に応じる用意****
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は21日、同国の新たな軍事攻勢と人道支援への妨害に対する国際的な圧力が高まる中、「一時的な停戦」に応じる用意があると表明した。

ネタニヤフ氏は、「人質解放のために一時的な停戦の選択肢があるなら、われわれはそれに応じる用意がある」と述べた上で、イスラム組織ハマスと共闘勢力により拘束されている少なくとも20人の人質が、現在も生存しているとみられることに言及した。

その一方で、イスラエル軍が作戦終了までにパレスチナ自治区ガザ全域を制圧する方針を改めて示し、「作戦行動の自由を維持するには人道危機を回避しなければならない」と強調した。

この発言の数時間前には、ヨルダン川西岸のジェニンを視察中だった欧州連合や各国の外交団に対し、イスラエル軍が「警告射撃」を行っていたことが明らかになり、各国から強い非難の声が上がっていた。 【5月22日 AFP】
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しかし、保守層を中心としたイスラエル国内世論・ネタニヤフ首相を刺激して、こうした軟化の流れを再度強硬路線の方向に戻しかねないのが米ワシントンで起きたイスラエル大使館員2人が銃撃され死亡した事件。

****当時ユダヤ博物館でイベント開催…イスラエル大使館職員2人が銃撃され死亡 シカゴ出身の30歳男を拘束「パレスチナに自由を」繰り返し叫ぶ****
アメリカの首都ワシントン中心部でイスラエル大使館の職員2人が銃撃され死亡しました。 容疑者の男は拘束の際、「パレスチナに自由を」と叫んでいました。

警察などの発表によりますと、21日午後9時過ぎ、首都ワシントンの中心部にあるユダヤ博物館の近くでイスラエル大使館職員の男性と女性2人が銃撃され死亡しました。 ユダヤ博物館では事件当時、若手外交官らが集まるイベントが開催されていました。

在アメリカ・イスラエル大使は事件を受けて会見し、死亡した2人は交際中で、男性は来週プロポーズするため、指輪を買ったばかりだったと、明らかにしています。

警察は現場でイリノイ州シカゴ出身の30歳の男、イライヤス・ロドリゲス容疑者を拘束したと発表しました。
ロドリゲス容疑者はユダヤ博物館近くで発砲したあと、博物館内に逃げ込み、拘束された際には、「パレスチナに自由を」と繰り返し叫んでいたということです。

FBI=連邦捜査局は単独犯とみて捜査を続けています。
トランプ大統領は「反ユダヤ主義に基づく、このような恐ろしい殺人事件は、今すぐ終わらせなければならない。憎悪と過激主義はこの国に存在すべきではない」と事件を非難する投稿をしています。

イスラエルのネタニヤフ首相は22日、事件について「イスラエルに対する反ユダヤ主義で凶悪な犯行だ」と非難し、各国にある在外公館の警備の強化を指示しています。【5月22日 FNNプライムオンライン】
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ネタニヤフ政権の対応は一層頑なになるでしょうが、注目されるのは、この事件の米トランプ政権への影響。

****仏英加は「ハマスに加担」、ネタニヤフ氏が攻撃停止要求に反発****
フランス、英国、カナダの首脳が今週、イスラエルがパレスチナ自治区ガザでの新たな軍事攻撃を停止しなければ「具体的な行動」を取ると警告したことについて、イスラエルのネタニヤフ首相は、イスラム組織ハマスに手を貸したがっているなどとして非難した。

ガザでの戦闘を巡っては、現地の荒廃した様子や餓えに苦しむ人々の映像が世界中に流れる中、各国で抗議行動が起きており、イスラエルへの国際的な圧力が強まっている。

ネタニヤフ氏は、2023年10月のハマスによるイスラエルへの攻撃を念頭に、「あなた方は人道の間違った側におり、歴史の間違った側にいる」と述べ、3カ国が「大量殺人者、強姦魔、赤ん坊殺し、誘拐犯」を支援していると断じた。

イスラエル政府関係者が特に懸念しているのは、フランスを含む欧州諸国に対して、スペインやアイルランドに続いてパレスチナ国家を承認するよう求める声が高まっていることだ。

ネタニヤフ氏は、パレスチナ国家はイスラエルを脅かすと主張。米首都ワシントンで21日夜、イスラエル大使館の職員2人が銃撃を受け死亡したことを、その脅威の明確な例として挙げた。【5月23日 ロイター】
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****米国、「反ユダヤ」の取り締まり加速も イスラエル大使館員銃撃****
(中略)米国内では若者を中心に、ガザでの作戦に反対する意見が根強い。一方、トランプ政権は「反ユダヤ主義」を許容しない姿勢を鮮明にしている。今回の事件の動機や背後関係次第では、政権の対応がさらに強化される可能性もありそうだ。(中略)

トランプ外交に変化は
米国内では「反ユダヤ主義」への締め付けを進めるトランプ政権だが、外交ではイスラエルのネタニヤフ首相との溝も取り沙汰されている。5月中旬の初の本格的な外遊で中東を訪れたが、イスラエルは訪問しなかった。

トランプ氏は「平和の構築者」を自任し、ガザのイスラム組織ハマスが拘束する、米国籍を含む人質の解放に取り組んできた。解放を実現するための停戦も求めてきたとされる。

だが、政権内に極右勢力を抱えるネタニヤフ氏は、人質の解放を進めるための停戦よりも軍事作戦を優先しているとの見方があり、米側との意見の相違が指摘されている。

21日夜の米首都での事件の動機は現時点では判然としないが、今後、トランプ氏の外交姿勢に変化があるかも注目される。【5月22日 毎日】
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ロシアの脅威に備える欧州、特に北欧・バルト三国では脅威が切実

2025-05-22 23:10:39 | 欧州情勢
(ラトビアの首都リガで、銃訓練を受ける高校生たち【5月6日 産経】)

トランプ大統領、思い通りに「ディール」が進まないと“熱も冷めて”しまうようで、プーチン大統領の粘り腰で進まないウクライナへの関心も・・・・

****熱冷めた?「仲介手を引く」トランプ氏 当事者に“丸投げ” プーチン氏が手玉****
ロシアのプーチン大統領との電話会談で、停戦の呼び掛けが不発に終わったアメリカのトランプ大統領は仲介からの撤退を示唆しました。さらに、和平交渉の旗振り役を丸投げするような発言も飛び出しています。

■トランプ氏 当事者に“丸投げ”
トランプ大統領 「何かが動くと思います。もし動かないなら、私は手を引き、戦争が続くだけです」

当初、ウクライナ和平を実現できるのは自分しかいないと自信満々だったトランプ大統領。 しかし、プーチン大統領との2時間半にわたった電話会談後、和平交渉が進展しない場合には、仲介を撤退することを示唆しました。

旗振り役の熱は冷めたということなのでしょうか。

トランプ大統領  「教皇レオ14世がバチカンで話し合いをしたいのであれば、それ以上良い場所は思いつきません。ここ(アメリカ)もかなり良い場所ですが、私はバチカンの方が好きです」

さらに、自ら名乗り出た役を“丸投げ”するような驚くべき発言も飛び出しています。
トランプ大統領のSNS(19日) 「停戦のための条件は当事者同士で話し合われます。交渉の詳細は彼ら以外、誰にも分かりません」

トランプ氏との電話会談で「和平条約に関する覚書を作成する用意がある」と提案しながらも、即時停戦には応じなかったプーチン大統領。

ウクライナ東部と南部の4州をロシア領として承認することやウクライナのNATO加盟断念など、到底飲めない要求をつきつけ“時間稼ぎ”をしています。(「グッド!モーニング」2025年5月21日放送分より)【5月21日 テレ朝news】
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トランプ大統領は“熱が冷めて、手を引く”ですみますが(今後のロシアへの対応、国際情勢への影響を考えると“すむ”とは言えませんが)、ロシアの脅威に直面する欧州は“手を引く”訳にはいきません。

ウクライナの次は自分たちの国が標的になるかも・・・・

「アメリカにばかり頼らずに、欧州は自分たち欧州で守れるようにしろ」というアメリカ・トランプ大統領が求める各国の国防費増額についても、基本的にはこれに賛同する形で動いてはいます。(結果は、カネの話ですから難しい障害はありますが) EUでは「欧州再軍備計画」も。

****トランプ氏要求「国防費GDP5%」へNATO外相会合 軍用道路改修も安保関連費に算入****
北大西洋条約機構(NATO)の非公式外相会合が14日から2日間の日程でトルコ南部アンタルヤで始まった。会合では、トランプ米政権が加盟国の国防費を国内総生産(GDP)比5%に引き上げるよう求めているのを受け、米政権の要求達成に向けて調整を進めることを確認する。6月にオランダのハーグで開かれるNATO首脳会議で正式合意を目指す。

NATOのルッテ事務総長は14日の公式夕食会で「加盟各国が首脳会議までに国防費をGDP比2%にするめどが立つ可能性がある」と述べ、同盟の結束強化を強調した。

会合にはルビオ米国務長官も出席した。関係者によるとルッテ氏は加盟国に対し、2032年までに国防費をGDP比3・5%に引き上げることに加え、軍用道路の改修費用などを広く「安全保障関連費」としてGDP比1・5%を計上し、合わせて5%とすることを提案した。

これに対し、米国のウィテカーNATO大使は13日、ブリュッセルで記者団に対し「NATOは重大な脅威に直面している。5%はわれわれの安全保障に必須だ」と指摘した上で、機動力の向上やインフラ整備、サイバー安保などにかかる費用を安全保障関連費に含めることを容認する姿勢を示した。

会合では、安全保障関連費に何を含めるかに関して協議も行われた。

欧州の加盟国の多くは2022年のロシアによるウクライナ侵攻開始以降、国防費の拡大を支持する。だが、NATOが今年4月に公表した年次報告書では、GDP比2%の現行目標を24年に達成したのは加盟32カ国中22カ国(推計)。最大はポーランドの4・07%だが、米政権が求める5%には届いていない。

トランプ政権がNATOや欧州の対露防衛に懐疑的な態度を示すのを受け、欧州は米国への過度な依存から脱却し、独自の防衛力強化を進めている。

欧州連合(EU)は3月、加盟国の防衛関連の投資を促すため、国防費の拡大による財政赤字を容認する一方、兵器や弾薬の調達強化に向けて最大8千億ユーロ(約131兆円)の資金確保を目指す「欧州再軍備計画」に合意した。【5月15日 産経】
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こうした欧州防衛の主導権を握りたいフランス・マクロン大統領は、フランスの「核の傘」を欧州に広げる考えを示しています。

****核搭載戦闘機の欧州同盟国への配備について 仏大統領 「議論始める用意ある」****
フランスのマクロン大統領が13日、核兵器を搭載した戦闘機をヨーロッパの同盟国に配備することについて、「議論を始める用意がある」と発言しました。

フランスのマクロン大統領は13日、地元のテレビ局に出演し、ロシアによる脅威などを念頭に、フランスが所有する核兵器の抑止力、いわゆる「核の傘」をヨーロッパの同盟国に広げる構想を改めて示しました。 核兵器を搭載した戦闘機を各国に配備することについて、「議論を始める用意がある」としています。

マクロン大統領は配備の条件として、「他国の安全のために費用を負担しない」「フランスが必要とするものを削減しない」「最終的な決定権はフランス大統領が持つ」と3つの条件を挙げています。

マクロン大統領は3月に、国民に向けた演説で、核兵器による抑止力をヨーロッパの同盟国に拡大する考えを表明した際、「アメリカが我々の側にとどまると信じたいが、そうでない場合に備えなければならない」と話していました。【5月14日 テレ朝news】
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ウクライナと英、仏、独、ポーランドの首脳は5月10日、12日から無条件の30日間の停戦で合意してロシアに実行を迫っていますが、ロシアに対する制裁強化もアメリカ抜きでも発動しています。

****英・EU、ロシアに停戦圧力 「影の船団」標的に追加制裁****
欧州連合(EU)と英国は20日、米国の参加を待たずに、ロシアに対する新たな制裁措置を発表した。ロシアが西欧諸国の制裁回避に使用する「影の船団」に属するとみられる石油タンカーのほか、制裁回避の支援が疑われる金融企業などを標的とする。

欧州はトランプ米政権に対ロシア制裁に参加するよう強く働きかけていたが、 EUと英国は 米国による 措置の発表を待たずに 今回の制裁を発表。

ブリュッセルで開かれたEU外相会合に出席したドイツのワーデフール外相は、「われわれはロシアに対し、前提条件なしの即時停戦を期待していると繰り返し明確に示してきた」とし、ロシアが停戦を受け入れないため、対応せざるを得ないと言及。米国もロシアが停戦に応じていないことを「容認しないよう期待している」と述べた。

ウクライナのゼレンスキー大統領は「制裁措置は重要だ。戦争の加害者に(痛みを)実感させるよう尽力する全ての人に感謝する」と対話アプリ「テレグラム」に投稿した。また、米国も加われば望ましいとし、「平和を近づけるプロセスに米国が関与し続けることが重要だ」と強調した。【5月21日 ロイター】
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欧州にあってもロシアと地理的く、歴史的にもソ連・ロシアとの関りが深い近い北欧・バルト三国・ポーランドなどは、ロシアの脅威を痛切に感じ、具体的対応に動き出しています。

****「戦争に備えよ」スウェーデン、食料や薬の備蓄を国民に呼びかけ****
スウェーデン政府は18日、欧州で近く戦争が始まる可能性も視野に入れ、国民に対して食料や医薬品の備蓄を促すパンフレットの配布を始めた。フィンランド政府も同日、同様のデジタル冊子を発表した。

ウクライナを巡るロシアと欧米の対立が激化する中、スウェーデン民間緊急事態庁は「安全保障環境は劇的に変化した。私たちは全員、戦争への『耐性』を高める必要がある」と警告している。

スウェーデン政府作成の冊子には、空襲時の避難方法、防空壕(ごう)の見つけ方、負傷の際の止血法などが約30ページにわたって記載されている。食料や薬のほか、子供用のおむつ、生理用品、ウエットティッシュなどの備蓄も呼びかけている。

冊子は18日から2週間かけて国内の全520万世帯に郵送する予定で、既にデジタル版は数万回ダウンロードされたという。

また、フィンランド内務省もデジタル冊子を発行し、停電や断水、通信障害などへの対処法を掲載した。印刷物は配布しないという。フィンランドでは冬場にマイナス20度まで気温が下がることもあり、停電が命の危険に直結するため、国民に予備電源装置の確保も促している。

ロシアと西欧の間で長年の中立政策を維持してきた両国は、2022年のウクライナ侵攻に危機感を強め、23〜24年に西側軍事同盟の北大西洋条約機構(NATO)に加盟した。

スウェーデン軍のビデン元最高司令官は米メディア「ポリティコ」に対し、バルト海に浮かぶスウェーデン領ゴトランド島の南東にロシアの飛び地カリーニングラード州が位置することを挙げ、「プーチン露大統領は間違いなくゴトランド島(の支配)を視野に入れている。彼の目標はバルト海だ」と述べた。【2024年11月22日 毎日】
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徴兵・予備役制度の強化も各地で。

****北欧デンマークがウクライナ侵攻受け徴兵強化 2026年から18歳以上の女性も対象、期間も4カ月から11カ月に延長 政府が全国民に「3日分の備蓄」呼びかけも***
北欧のデンマークでは5日、第2次世界大戦でのナチス・ドイツからの解放記念日を迎えました。 あれから80年、自由を得た国は再び、国家規模で戦争に「備える」体制を急速に強化しています。(中略)

“平和な国”としての道を歩み続けていたこの国は、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、今、大きく変わりつつあります。

政府は2024年3月、男性だけでなく18歳以上の女性も2026年から徴兵の対象に加え、兵役期間も現在の4カ月から11カ月に延長することを決めたのです。

街で出会った16歳の少女に、女性の兵役について市民はどう受け止めているのか聞くと、「女性を軍隊に含めるのは良いことだと思う」と話しました。

一方、「強制的に軍隊に入らされるのは悲しいしイライラする」といった、否定的な意見も。

自ら、軍に入ることを決めた女性もいます。
自ら軍に入ることを決めたフレーヤさん:私は志願したので、これを機会ととらえている。(中略)
「備え」の強化は、軍だけではありません。
首都コペンハーゲンに暮らす15歳のノア君の家庭では、2024年6月から水や食料などを備蓄し始めました。
デンマーク政府が全国民に向けて、「3日分の備蓄」を呼びかけたためです。

ノア君:ヨーロッパにおける脅威は以前より広がっている。そのためこのような準備は必要だと考えるが、一方で、「なぜこのような準備が必要なのか」という疑問や懸念もある。

自由を手にしてから80年。 ウクライナ侵攻を続けるロシアへの警戒感や、アメリカへの信頼低下で、デンマークはいま誰もが戦争に「備える覚悟」を問われています。【5月6日 FNNプライムオンライン】
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****フィンランド、予備役の年齢上限引き上げ案 31年までに100万人****
フィンランド政府は14日、予備役兵の年齢上限を現在の60歳から65歳に引き上げる案を公表し、意見募集を始めた。実現すれば、予備役兵は2031年までに12万5000人増の100万人になる。

隣国ロシアによるウクライナ侵攻への対応として2023年に北大西洋条約機構(NATO)に加盟したフィンランドでは、男性には兵役義務があり、女性は志願制となっている。兵役後、徴兵対象者は予備役に編入される。

ハッカネン国防相は声明で「フィンランドの防衛力は、一般徴兵制、訓練された予備役、国を守る強い意志を基盤としている。予備役の年齢上限引き上げで、より多くの人に国防参加の機会が生み出される」と述べた。

この案は意見募集後に議会に提出され、審議を経て最終的に採決される【5月15日 ロイター】
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ポーランド、バルト三国は、ロシアの現実的脅威に対抗して対人地雷禁止条約(オタワ条約)からの離脱も。

****ポーランドとバルト3国、対人地雷禁止条約から離脱へ****
北大西洋条約機構(NATO)加盟国のポーランド、リトアニア、ラトビア、エストニアは1997年の対人地雷禁止条約(オタワ条約)から離脱する計画を発表した。

隣国であるロシアの軍事的脅威が理由。同条約には160カ国以上が加盟しているが、ロシアは加盟していない。
条約離脱で地雷の備蓄再開が可能になる。

4カ国の国防相は共同声明で「ロシア、ベラルーシと国境を接するNATO加盟国に対する軍事的脅威は著しく増大している」と表明。

「今回の決定を通じて明確なメッセージを伝える。われわれは国家安全保障上のニーズを満たすため、必要な全ての手段を用いる用意があり、用いることが可能だ」と表明した。

フィンランドも昨年12月、ロシアがウクライナで対人地雷を使用したことを理由にオタワ条約からの離脱を検討していることを明らかにした。【3月18日 ロイター】
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ソ連支配の歴史を持つバルト三国ではロシアへの備えが最重要国家課題にもなっています。

****エストニア防衛費GDP比5%へ 「戦争防ぐ」****
バルト3国のエストニアのミッハル首相は18日の記者会見で「来年から防衛費を国内総生産(GDP)比5%に引き上げる」と表明した。「ロシアによるエストニアや北大西洋条約機構(NATO)加盟国への侵略を不可能にすることが目的だ。戦争を防ぎたい」と述べた。地元メディアが報じた。

報道によると、今年の防衛費はGDP比3.3%で、来年以降は5%以上にする方針を政府が承認した。ミッハル氏は会見で、ロシアの帝国主義的野心は変わっていないとし「NATO加盟国を含む周辺諸国がロシアによる侵略の脅威にさらされている」と指摘した。【3月19日 共同】
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ロシアと国境を接するバルト三国の一つ、ラトビアも2024年、18年ぶりに徴兵制を再開しました。

****16歳に銃訓練、国防が必修科目のラトビア「もう平時ではない」 露の脅威に備える小国****
バルト三国の一つラトビアが昨年、「国防」を中学、高校の必修科目にした。隣国ロシアの脅威が高まる中、基礎的な軍事訓練や野外演習を通じて、危機対応力を高めるのが狙い。人口190万人弱の小国が、国民総ぐるみの防衛体制を目指す現場を取材した。

「撃て!」  教官の掛け声とともに、銃声が響く。学生3人が校庭の芝生に腹ばいになり、G36自動小銃を発射した。

首都リガにある工業高校の国防授業。16〜19歳の生徒約20人が、射撃の手ほどきを受けていた。「弾倉はここだ。よく確認して」という教官の指示に、みな真剣な表情でうなずく。

露軍が攻めてきたら本当に撃つのか
女子生徒のクリスティアナ・ストレロバさん(17)は「雨の日は照準を定めるのが難しい。今日は順調だった。でも、ロシア軍が攻めてきたら、本当に人を撃つのか…。とても想像できない」と話した。

国防教育の必修化は昨年春、政府が閣議決定した。2年間で112時間と定められ、この工業高校では、ほぼ1カ月に1日を国防授業に充てている。この日は射撃演習のほか、野外オリエンテーリングが行われた。停電や通信障害を想定し、地図と方位磁針で目的地に到達する訓練だ。敵のプロパガンダ(政治宣伝)に対抗するため、偽情報の見分け方を学ぶ授業もある。課程の最後には3週間、森林キャンプで基礎的な軍事訓練を行う。

「次はわが国か」という危機感
教官のバルツ・アボリンス大佐(52)は、「子供に銃を持たせることには、保護者から懸念も出た。だが、もう平時ではない」と訴えた。ラトビアはウクライナと同様、1991年まで旧ソ連の一部だった。

北大西洋条約機構(NATO)に加盟したとはいえ、ウクライナ侵略の長期化で「次はわが国か」という危機感は高まる。

150万人規模の露軍に対し、ラトビア軍は予備役を入れても約5万人。それでもアボリンス大佐は「国境を越えて敵が押し寄せたとき、NATO軍が来るまでわが国は自力で耐える必要がある」と表情を引き締める。

学生のエドガルス・ヘイデマニスさん(18)は「銃訓練は最初は、ビデオゲームを実体験している気分で興奮した。何度か続けて、自信に変わった。万一の時、無抵抗ではいられないからね」と笑った。祖父や祖母から、自由のないソ連時代の話を聞いて育った。工業高校は露国境まで約270キロの位置にある。

国民の結束を強める
国防教育には、若者に将来の志願兵への参加を促す狙いもある。政府は昨年、17年ぶりに18歳以上27歳以下の男子を対象とする徴兵制を復活させた。招集枠の中で志願兵をできるだけ増やし、不足人員だけ強制動員する方針をとる。

さらに重視するのは、国民の結束を強めることだ。ラトビアは、約44万人のロシア語人口を抱える。国民の4分の1近くを占め、バルト三国の中で最も多い。年配者にはロシアに愛着を持つ人も多い。アボリンス大佐は「家庭でロシア語放送を聞き、毎日プロパガンダに接している子供もいる」と指摘し、教育の意義を強調する。【5月6日 産経】
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