(【7月28日 時事】 カリフォルニア、ニューヨークでハリス氏がどれだけ圧勝しようが、テキサスなど南部州でトランプ氏がどれだけ勝とうが関係ありません。支持が拮抗している上記激戦州をどれだけ取れるかで勝敗が決まります。)
【禍福は糾(あざな)える縄の如し】
禍福は糾(あざな)える縄の如し・・・この世の幸不幸は表裏をなしていて、何が不幸のもとになり、何が幸福をもたらすかわからないという意味合いですが、「もしトラ」ではなくもはや「確トラ」とも言われていたトランプ前大統領の最近の状況もそんな感じ。
高齢バイデン大統領では戦えない、別の候補に差し替えるべきという声は昨年段階からありましたが、現実問題として現職大統領が「自分がやる」と言っている以上、これを止めるのは非常に大きな政治的エネルギーを要します。
また、誰を後釜に据えるのかでも、「ハリス副大統領もパッとしないし・・・」ということでまとまりませんでした。
そんな状況でずるずると「バイデンvs.トランプ」を引きずってここまできていたのですが・・・・
討論会でのバイデン大統領の目を覆うような失態、「神に選ばれた者」を演出することにもなった銃撃事件・・・もはやトランプ氏で確定という状況にもなりましたが、逆にそのことが民主党側の危機感を一気に高め、バイデン氏出馬辞退に、そしてもはや時間もないことから「ハリスしかいない」ということでハリス副大統領での急速な一本化へとつながる事態に。
討論会でのバイデン氏の失敗と銃撃事件というトランプ氏にとっては願ってもない都合のいい展開が、逆に、これまでは出来なかった候補者交代というトランプ氏とっては好ましくない事態を現実のものにしたという意味で、「禍福は糾(あざな)える縄の如し」という印象があります。
民主党側の候補者交代については、遅すぎるとか、今までの数か月の時間は何だったのかという議論もありますが、おそらく、むしろどん底に追い込まれての一発逆転をかけた短期決戦というのが、結果的には一番勝機につながるパターンになっているように思われます。
もし、もっと早い段階で交代していたら、民主党内はゴタゴタしただろうし、終盤での銃撃事件というトランプ氏側の“切り札”に対抗することはできなかったように思われます。その意味でも「禍福は糾(あざな)える縄の如し」でしょう。
【ハリス氏の追い上げによって混戦状態に】
そのハリス氏の追い上げによって、選挙戦は再びどちらに転ぶかわからない混戦状態になっています。
****米大統領選支持率ほぼ拮抗、ハリス氏のリードわずか1%ポイント****
ロイター/イプソスが実施した最新の世論調査によると、11月の米大統領選に向けて民主党の大統領候補となる見通しのハリス副大統領と共和党候補のトランプ前大統領の支持率がほぼ拮抗している。
28日までの3日間、登録有権者876人を含む米国の成人1025人を対象にオンラインで実施された調査によると、ハリス氏の支持率は43%、トランプ氏は42%で、ハリス氏がわずか1%ポイントリードしている。誤差は3.5%ポイント。
約1週間前の調査では、ハリス氏への支持が44%、トランプ氏が42%となっていた。
ハリス氏はバイデン大統領が選挙戦撤退を表明して以降の10日間で、民主党の大統領候補指名に向けた支持を固めてきた。
調査ではハリス氏に好意的な見方を持つ有権者が46%、好意的でない見方をする有権者が51%となり、過去1カ月でハリス氏の好感度が上がった。7月2日まで実施されたロイター/イプソス調査では好意的な見方が40%、好意的でない見方は57%だった。
この期間にトランプ氏の好感度はほとんど変化せず、最新の調査によると、好意的な見方は41%、好意的でない見方は56%。
調査ではまた、登録有権者が経済、移民、犯罪についてはトランプ氏のアプローチを、医療保険についてはハリス氏の計画を選好していることが分かった。【7月31日 ロイター】
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いつも言われるように、州単位で争われるアメリカ大統領選挙の仕組みからして、問題なのは全米レベルの支持率ではなく、大半の州は勝負がほぼ決まっている状況で、激戦州をどちらかとるかという点です。
以前は激戦州でトランプ氏が圧倒的に優勢でしたが、ハリス氏がだいぶ追い上げているようです。
****ハリス氏支持率、激戦6州で勢い 4州でリード=BBG調査****
30日公表されたブルームバーグ・ニュースとモーニング・コンサルトの世論調査によると、民主党の大統領候補となる見通しのハリス副大統領の支持率が激戦7州のうち6州で共和党候補トランプ前大統領との差を縮めたり、逆転もしくはリードを拡大したりするなど勢いを見せている。
24─28日に実施した調査で、ハリス氏はミシガン州でトランプ氏を11%ポイント差でリード。アリゾナ、ウィスコンシン、ネバダ各州では2%ポイント差をつけた。
トランプ氏はペンシルベニア州で4%ポイント差、ノースカロライナ州では2%ポイント差でハリス氏をリードしている。ジョージア州では両氏が並んだ。
トランプ氏がバイデン氏との対決を想定した前回調査と比べてハリス氏を追い上げたのはウィスコンシン州のみだった。
1─5日に実施された前回調査では、トランプ氏がアリゾナ州で3%ポイント差、ジョージア州で1%ポイント差、ネバダ州で3%ポイント差、ノースカロライナ州で3%ポイント差、ペンシルベニア州では7%ポイント差でバイデン氏をリード。バイデン氏はミシガン州で5%ポイント差、ウィスコンシン州で3%ポイント差でリードしていた。【7月31日 ロイター】
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現状はほぼ互角に並んだ状態。追い上げるハリス氏の勢いが今後も持続するのか、それとも「御祝儀」的に終わるのか・・・。
【トランプ氏の「思い込み」外交でアメリカの影響力は低下】
個人的にはいつも言っているように、私はトランプ氏は受け入れられません。それは政策以前の人間性の面が大きいかも。平気でウソをつき、人権にかかわる価値観を軽視し、民主主義の価値観も踏みにじる・・・
もちろん人は誰でもきれいごとだけではすみませんが、トランプ氏の場合はあまりにもそれがあからさまで、人格が破綻しているように思えます。
****トランプ氏、障害者差別か おいが証言、陣営は否定****
米共和党のトランプ前大統領のおい、フレッド・トランプ氏は30日放送のABCテレビのインタビューで、トランプ氏が大統領在任中、障害者は「死ぬべきだ」と発言していたと明らかにした。トランプ陣営は「完全な捏造だ」と否定した。
一族の内幕を描いた本を30日に出版したフレッド氏は、2020年5月に障害者の権利促進のためホワイトハウスの大統領執務室でトランプ氏と面会した際、トランプ氏は障害者は「金がかかる。死ぬべきだ」と言い放ったと振り返った。
フレッド氏の息子も障害者で、数年前に支援を求めたところ、トランプ氏は「君の息子は君を認識していない。彼を死なせろ」と言ったという。【7月31日 共同】
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ひとによっては、こういうトランプ氏のきれいごと、従来の価値観、ポリティカルコレクトネスにとらわれない姿勢を好ましく思うのでしょう。 そこらは好みというか、価値観の問題ですが、トランプ氏のような考え方の先にある世界がどのようなものになるのか大いに懸念されます。
政策レベルで見た場合のトランプ氏の問題については、外交面を中心に下記記事にまとめられています。
****トランプの「思い込み」外交で崩れゆくアメリカの優位性...失われる建国以来の「強さの源」とは?****
<米中関係・ウクライナ戦争・中東情勢──トランプとバンスのコンビは国際社会におけるアメリカの影響力を低下させるだけでなく、大統領の権限を強化することで政府の他の機関の「弱体化」まで目論んでいる>
民主党の新たな大統領候補にカマラ・ハリス副大統領が指名される見込みとなり、民主党の巻き返しに期待が高まっているが、共和党の指名候補であるドナルド・トランプ前大統領に分があることに変わりはない。
アメリカの国益が大きく懸かっているだけに、トランプが再び舵を取ることになったら、米外交がどうなるか慎重に見極めておく必要がある。
まず良い点から見ていこう(いや、良い点などないとムキにならないでほしい。ごく手短に触れるだけだ)。
少なくとも口先では、トランプも副大統領候補のJ・D・バンスも、新保守主義者(ネオコン)とリベラルの介入主義者がこの30年余り推進し、無残に失敗してきた外交政策、つまり自由主義陣営の盟主として国際社会で指導力を発揮する政策にノーを突き付けている。
現実主義者の間では、この点を評価してトランプが優勢なこと、そしてバンスと組んだことを歓迎する向きもある。
あいにくだが、トランプとバンスのコンビの良い点はこれで終わりだ。私に言わせれば、2人に期待する現実主義者は大局を見失っている。
問題はトランプとバンスが世界におけるアメリカの地位について時代錯誤的な幻想を抱いていることだ。
彼らはネオコンと違って、アメリカが世界のリーダーであるべきだとは思っていないが、ほかの国は何でもアメリカの言うことを聞いてくれると思い込んでいる。だからアメリカは好き勝手なことができるし、他国との関係を重視せずとも一国だけでやっていける、と。
だがアメリカの「一極支配時代」でさえ、そうは問屋が卸さなかった。中国がアメリカと肩を並べる経済大国となり、インド、ブラジル、南アフリカ、トルコなどが米中のはざまで「漁夫の利」を得ようとしている今、そんな考えは通用しない。
今日の世界でアメリカは、他国の思惑や出方をうかがいつつ熟達した外交で国益を追求すべきで、一国主義が許されると思ったら大間違いだ。(中略)
1日で戦争を終わらせる?
トランプは自分の魅力で北朝鮮の最高指導者・金正恩(キム・ジョンウン)を手なずけ、核開発をやめさせられると本気で思い込んでいた。制裁関税を科しても、中国は報復しないだろうと高をくくってもいた。
「ディールの達人」を自称するわりに他国との交渉では大した見返りなしにやすやすと譲歩。イランとの核合意や気候変動対策の国際的な枠組みであるパリ協定など、アメリカの国益にとって極めて重要な合意から次々に離脱した。
こうしたやり方は2期目にはさらにエスカレートしそうだ。2期目のトランプ政治を予想するには、保守派シンクタンクのヘリテージ財団が発表した「プロジェクト2025」が参考になる。
そこには国務省を弱体化させる措置が列挙されている。例えば、新大統領の就任日に世界各国に駐在する米大使に一人残らず辞表を提出させるという案......。
それ以上に重要なのは、この文書が掲げる外交政策は基本的に同盟国にも敵対国にも最後通牒を突き付け、有無を言わさずアメリカの要求をのませるものだということ。これは恫喝であって外交ではない。
外交の中でも特に経済に関わるトランプの政策は国益を大きく損ないかねない。1期目に彼が仕掛けた対中貿易戦争は、米経済に恩恵以上に大きな損失をもたらした。
それに懲りずに、トランプは再選されたら「倍賭け」する気でいる。ただ前回と違って、中国だけでなく貿易相手国に軒並み高関税を課す考えだ。
こうした保護貿易主義が自国経済の成長を妨げることは経済学の常識だが、トランプはそれを堂々と公約に掲げている。
問題は保護主義の脅威だけではない。国際社会における影響力を支えるのは経済力だ。2期目のトランプ政権下では米経済の不振が予想され、国際政治の舞台でアメリカの影響力はさらに低下する恐れがある。
アメリカが直面している主な戦略的課題についても、楽観はできそうにない。中国をアメリカの利益に対する長期的な挑戦者と見なしている点は、トランプもほとんどの人も変わらない。問題は、彼の対中政策が矛盾だらけだということだ。
1期目の就任直後にTPP(環太平洋経済連携協定)から離脱したことは、東アジアでアメリカの経済的影響力を維持するための取り組みを台無しにした。
また、中国が台湾を攻撃した場合にアメリカは台湾を支援するべきか、トランプは以前から疑問視している。しかし、中国がアジアの現状を修正しやすくする(そして、世界最先端の半導体メーカーのいくつかを支配下に置く可能性がある)ことは、中国を牽制するという願望と矛盾する。
共和党のタカ派は、核実験禁止条約から脱退して核実験を再開することも強く求めているが、これは中国が新たな核兵器を開発してアメリカと肩を並べようとする取り組みを後押しすることになる。
ヨーロッパに関しては、自分なら24時間以内にロシアとウクライナの戦争を終わらせることができるというトランプの主張は、いかに現地の状況を理解していないかを物語っている。
ウクライナの支援を継続して持続可能な外交的解決を強く推し進めることと、単にウクライナを見捨てることは、天と地ほどの差がある。
同様に、ヨーロッパの同盟国と新たな役割分担を慎重に交渉して実行に移すことと、拙速な撤退や、より多くの支出を迫る威圧的で辛辣な手法は大きく違う。
そして、バイデンの中東政策は大失敗だが、トランプの1期目も基本的に同じような政策で、同じように効果はなかった。
イスラエルが望むものを何でも与え、パレスチナ問題を無視しても犠牲はないと考え、地域の重要な敵対国との対話を拒否する一方で、注文の多い依存国家との「特別な関係」の追求を重視した。
トランプは2015年の核合意から離脱してイランに「最大限の圧力」をかけ、地域の緊張をあおり、イランを核保有に向けて大きく前進させた。アメリカの中東政策は何十年も失敗を重ねてきたが、トランプがホワイトハウスに戻っても、今より良くなることはないだろう。
「強い大統領」を目指す弊害
ほかにもトランプと共和党は、長期的にアメリカを弱体化させる政策を採用する可能性が高い。彼らは移民受け入れの壁を引き上げ、数百万人を国外に追放するつもりだ。その多くが現在は有給で雇用され、アメリカの長期的な成長見通しに貢献している事実を無視している。
中国や日本、韓国、ドイツなど大半の強国と違って、アメリカの人口は今後100年にわたり増え続ける見込みだ。労働人口が若く、年齢に伴う退職者が少ないという優位性を維持できるかどうかは、移民の受け入れに懸かっているのだ。
オラクル、アップル、テスラ、アマゾンをはじめ、数え切れないほど多くの成功した企業の創業者を見て分かるとおり、才能ある移民を引き付けてその子孫の忠誠心を獲得できることは、アメリカの建国以来の強さの源だ。トランプとバンスはそれを切り捨てようとしている。
環境問題でも、アメリカは大きく後退する。トランプは最高裁の後押しを受けて、気候変動などさまざまな環境破壊の要因に取り組んできた努力をなかったことにするだろう。
トランプとバンスが描くアメリカの未来に不安をかき立てられる理由は、もう1つある。彼らは基本的に大統領の権限を強化して、政府の他の部分をできる限り弱体化させたいと考えているのだ。
現代社会は非常に複雑であり、維持するためには強力で効果的な政治的・社会的制度が必要だということを、彼らは理解していない。非効率的で略奪的な国家より悲惨なのは、国家が全く存在しないことだ。
この数十年、共和党政権も民主党政権も無駄なことをやり続けてきたが、それでもアメリカは非常に大きな優位性を維持している。アメリカが世界で有利な地位を獲得することにつながった制度の多くを骨抜きにしたいという明らかな願望を持つトランプに、2期目を託すことは極めて無謀な賭けだ。【7月31日 Newsweek】
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“ほかの国は何でもアメリカの言うことを聞いてくれると思い込んでいる”“恫喝であって外交ではない”
同意です。