孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラク  時間を要しそうなモスル奪還

2016-02-29 21:05:34 | 中東情勢

(バグダッドの市民生活 “flickr”より By Ziyad MattiBy)

テロ活動を活発化させるIS
イラク情勢については、1月23日ブログ「イラク モスル奪還へ・・・・スンニ派住民とシーア派政府の対立、独自性を強めるクルド人勢力の問題も」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160123)で取り上げたところですが、激しい内戦状態にあり、最近では停戦実施ということもあって連日刻々とメディア報道がなされているシリアに比べ、同じISとの戦いの場になっているイラクに関しては殆ど情報を目にすることがありません。

戦況的には、昨年12月に西部アンバル県の県都ラマディを制圧し、ファルージャで奪還作戦を遂行していると思われます。

報道が少ないのは、状況が落ち着いているから・・・・ということであれば結構な話ですが。
ただ、その「状況」も危ういものがあります。

****<イラク>バグダッドテロ、70人死亡…近郊でも35人殺害****
 ◇IS犯行声明
イラクの首都バグダッド北東部のイスラム教シーア派居住地域サドルシティーで28日、2度にわたって自爆テロがあり、少なくとも70人が死亡、100人以上が負傷した。

シーア派を敵視する過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出した。ISはバグダッドの西方でも治安施設などを襲撃し、警察官ら35人を殺害。首都周辺では今年に入って最大規模の犠牲者が出た。

現地からの報道によると、現場はサドルシティーの繁華街。バイクに乗った襲撃犯が相次いで自爆した。
またバグダッド中心部から約25キロ西のアブグレイブでもISの襲撃が相次ぎ、治安要員17人が殺害された。警察官ら多数が拉致されたとの情報もある。バグダッドの西約50キロの街でも治安施設が襲撃され、警察官18人が殺害された。【2月29日 毎日】
******************

シリア・イラクにおける支配地域でみると、ISは次第に劣勢に立たされているように見えますが、その分、今後は上記のようなテロ活動を活発化させることが予想されます。

また、ISはそうしたテロに「少年兵」を多用していると指摘されています。

****<IS>少年兵が急増 1年で89人死亡 39%自爆****
イラクとシリアで活動する過激派組織「イスラム国」(IS)の少年兵の死者数が、2015年1月からの13カ月で89人に上ることが、米ジョージア州立大の研究者らの調査で明らかになった。

在英の反体制派組織による調査より倍以上多い期間もあり、研究者らは「ISによる子供の動員は、前例のないペースで増えている」と指摘している。

調査は同大のミア・ブルーム教授らが実施し米陸軍士官学校テロ戦闘センターの機関誌2月号に掲載された。それによると、ISが死亡を公表した18歳以下とみられる少年兵らの写真や個人データをインターネット上で収集し、データベース化して死亡時の状況などを調べた。

死因別では、89人のうち39%は自動車爆弾による自爆攻撃で、33%は銃撃戦などだった。死亡地域は51%がイラク、36%がシリアだった。推定年齢は約60%が「思春期」(12〜16歳)で「思春期前」(8〜12歳)も6%いた。

ブルーム教授らは、ISの少年兵の死者数がこれまでの推計より多いとの分析も示している。シリア内戦での犠牲者数などを集計している在英の組織「シリア人権ネットワーク」の調査では、15年1〜7月の少年兵の死亡は8人だった。しかし、今回の調査では同期間に少なくとも21人が死亡していることが判明したという。

自爆テロ攻撃で死亡した少年兵の死者数は、15年1月に6人だったが同年11月以降は11〜14人で推移。研究者らは「ISによる子ども、若者の徴用は加速している」と指摘した。【2月22日 毎日】
*******************

詳細はわかりませんが、ちょっと気になるニュースも。

****イラクで放射性物質盗難か=IS入手の恐れ****
ロイター通信は17日、独自に入手したイラク環境省の文書などを基に、同国南部バスラ付近にある米国の油田関連会社の施設で保管されていた放射性物質が昨年11月、何者かに盗まれたと報じた。

イラクでは、過激派組織「イスラム国」(IS)が強い勢力を誇る。治安当局者は「ISの手に渡ることを懸念している」と述べ、放射性物質をまき散らす「ダーティー・ボム(汚い爆弾)」に転用される恐れもあるとの認識を示した。【2月18日 時事】
*******************

イラク政府は、相変わらずの政治混乱
こうした状況にあって、IS掃討作戦を行っている有志連合は“「ISをできるだけ早く打倒する」ことで合意した”とのこと。

****IS攻撃強化で有志連合が合意 「できるだけ早く打倒****
過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討作戦を実施している米国主導の有志連合が11日、ブリュッセルで国防相級の会合を開いた。オブザーバーを含む49カ国が参加。ISへの攻撃を強化することで合意した。

米国は、ISが支配するイラク北部の大都市モスルや、シリア北部ラッカへの攻撃を強化することを提案。有志連合に参加する28カ国は共同声明で「ISをできるだけ早く打倒する」ことで合意した。

サウジアラビアなどが積極的な地上部隊導入について、カーター米国防長官は会合後の記者会見で、あくまでイラクなど地元の警察や軍を強化して、対応するべきだとの認識を示した。【2月12日 朝日】
*******************

「ISをできるだけ早く打倒する」・・・・あまりにも当たり前な話で、「合意」と呼べるのかかどうか?
要するに、これまで以上のことは行わない・・・ということでしょう。

“あくまでイラクなど地元の警察や軍を強化して、対応するべき”・・・・そうしたイラク側対応を担うイラク政府の状況は・・・・あまり芳しくないようです。

********************
・・・・一方、政府内部では最近、再び政治対立が深刻化し、挙国一致体制が揺らいでいる。

アバディ首相は2014年9月の組閣時、対ISで結束するため、党派や宗派に配慮した閣僚人事を行った。だが、首相は2月上旬、景気や治安を巡る国民の不満を背景に、内閣改造によって行政経験者や学者らを起用する意向を表明。

これに主要政党が反発し、改造案は宙に浮いている。首相に対しては、改革派からも圧力がかかっている。
26日にはバグダッド中心部でシーア派指導者サドル師が呼びかけた改革要求デモに数十万人以上の市民が参加している。【前出 2月29日 毎日】
**********************

相変わらず、充分に当事者能力を発揮できる状態ではないようです。
ラマディ制圧当時、アバディ首相は「ラマディの次はモスルを奪還する」と豪語していましたが、モスルはかなり遠そうです。
コメント

イラン国会議員選挙  改革・穏健保守派躍進の勢い ロウハニ政権の対外協調路線を国民が支持

2016-02-28 22:14:55 | イラン

(白い紙で覆われた絵をのぞこうとする少女。中にはイスラム風に顔などを隠していない女性の絵が描かれている【2月15日 Newsweek】)

改革・穏健派躍進 テヘランでは全30議席独占
欧米諸国との間で核開発問題で合意を取り付け、市民生活を疲弊させてきた経済制裁解除を実現した保守穏健派ロンハニ大統領の進める協調・改革路線が基盤を固めるのか、あるいは保守強硬派の巻き返しで政治的求心力を失う形になるのか・・・注目されていたイランの国会議員選挙が、専門家会議選挙と併せて26日に行われました。

専門家会議は、執行機関たる行政府の長である大統領を超える存在として、行政・司法・立法の三権の上に立ち、また、軍の最高司令官として国政の最終決定権を有する最高指導者の選出と罷免の権限があり、76歳と高齢の現最高指導者ハメネイ師の後継体制を決める可能性があります。

ロウハニ大統領は「経済的、政治的尊厳への第一歩が核合意だった。次の一歩はこの選挙だ」と、改革・穏健保守派への支持を訴えてきました。

改革・穏健保守派が議会での多数派を握れば、ロウハニ政権の求心力が高まり、外資がイランへ進出しやすくするための法整備などが加速し、経済も活性化するものとみられています。

一方、米国を「敵」とみなし、イスラム教シーア派聖職者や保守的な商人層を支持基盤とする強硬保守派は、ロウハニ大統領が掲げる外国からの投資増大が進めば、国内の産業や商業が大きな打撃を受けるなどと主張し抵抗を強めていました。

投票率については、“投票率(速報値)は約60%だが、同国内務省は開票が進むにしたがって「増えるだろう」としており、最終的には2012年の前回議会選の約64%を上回る可能性がある。”【2月27日 産経】とのことです。

保守強硬派は組織票に依存しており、投票率が上がれば、浮動票が改革・穏健保守派に流れると言われています。

“その改革派は、投票率を上げることに力を注ぐ。20日の集会で、アレフ元第1副大統領は「投票所に行き、候補者全員の名前を書こう」と繰り返した。合間にポップ音楽を生演奏し、親しみやすさをアピール。ロハニ氏も24日、国民全員の携帯電話に「投票に行こう」とメッセージを送った。”【2月26日 朝日】

まだ開票が続いている段階ですが、ロウハニ大統領を支持する改革・穏健保守派が躍進する形勢にあるようです。

****<イラン国会議員選>改革・穏健派躍進 核合意を評価****
イラン内務省は28日、26日に実施されたイランの国会(定数290)議員選の途中経過を発表した。

首都テヘランでは、ロウハニ大統領支持派の改革・穏健派連合が全30議席を独占。地方の選挙区でも議席を大きく伸ばす見通しで、核合意の実績を評価された大統領支持派が躍進する情勢となっている。

全国レベルでは現段階で、反大統領派の強硬派が過半数を維持しているが、改革派が影響力を強めるのは確実だ。最終結果は29日朝に発表される見通し。

また、最高指導者の選出権限を持つ「専門家会議」(定数88)でも、テヘラン地区では改革・穏健派連合が躍進。連合の主導的立場のラフサンジャニ元大統領がトップで、ロウハニ師が3位に続く。

内務省の発表では、投票率は約60%(暫定値)。強硬派系ニュースサイト「タスニム通信」によると、国会議員選は141人の当選が確実となり、強硬派79人▽改革派38人▽独立系18人▽穏健派5人▽不明1人。

一定得票に届かない候補は決選投票に進むため、現段階で勢力の断定はできないが、改革派は現有16議席から議席を伸ばす。

ロウハニ師は昨年7月、核開発を巡って欧米など6カ国と合意し、経済制裁の解除を引き出した。
また、2013年8月の就任以来、暴力と過激主義に対抗する取り組みの必要性を訴えてきた。27日にも、スイスのシュナイダー大統領との共同記者会見で、過激派対策への「世界的な協力」が必要と強調した。

議会で支持基盤を固め、核合意同様、強硬派が消極的な対外融和路線を促進したい考えだ。

イランは人口約8000万人のうち約6割が、1979年の革命を知らない30歳以下の若者。抑圧的な慣習に違和感を感じ、表現の自由や女性の地位の拡大などを掲げるロウハニ政権に同調する層が広がり、大統領派躍進の一因となっている。【2月28日 毎日】
*********************

前回2012年の国会議員選では改革派は選挙不正への不信から多くが選挙をボイコットしており、選挙戦はもっぱら大統領(当時のアフマディネジャド大統領)派と反大統領派の保守派内の争いとなりました。

“改選前の勢力は改革派が1割、保守強硬派が4割程度。他に中道の保守穏健派や独立派がある”【2月27日 朝日】

国会は昨年10月、最終的に賛成多数で核合意を承認しましたが、議員290人中、賛成が161人、反対が59人、棄権・欠席が70人でした。

前回選挙の事情から、今回は改革・穏健保守派が増加するのは当然予想されていたところですが、首都テヘラン選挙区で全30議席を獲得するというのは、やはりロウハニ大統領の進める協調・改革路線への国民の期待が強いことが窺われます。

なお、定数290議席のうち、5議席が非ムスリムの宗教的少数派に割り当てられているそうです。

また、定数290に対して4844人が立候補していますが、投票は記名式で複数の候補者を書くことができる方式です。従って定数30を1111人が競う首都テヘランでは、最大30人の氏名を書けるそうです。【2月26日 朝日より】
集計はさぞかし大変でしょう。その割には早い段階で数字が出ているようです。

核合意・制裁解除で追い風に乗る改革・穏健保守派ですが、大きな壁は選挙の前の立候補段階にありました。

*********************
国会議員への立候補申請者は過去最多の約1万2000人。

最高指導者ハメネイ師の影響下にある「護憲評議会」は事前審査で6229人の立候補を認めたが、1次審査で改革派約3000人のうち99%を「最高指導者への忠誠がない」などの理由で不適格と判断。最終審査でも認定されたのは少数だった。

一方、専門家会議の選挙では、イラン革命(1979年)を主導した初代最高指導者ホメイニ師の孫、ハッサン・ホメイニ師(43)が事前審査で失格とされた。同師は改革・穏健派連合に近い立場。連合勢力は祖父のカリスマ性を継ぐ人気にあやかり、国会議員選挙で追い風が吹くことを期待したが、勢いをそがれた。

ただ、事前審査に国民の不信が高まり、連合勢力には逆に好材料となっている。【2月26日 毎日】
*********************

これまでも何度も取り上げてきたように、この不透明な資格審査が恣意的に運用され、改革・穏健保守派は選挙に参加することも難しい情勢にあります。

ただ今回は、ロウハニ大統領らの強い抗議で、ようやく一部が復活したことで、一定に選挙戦に臨むことが可能となっています。

【“弱腰”オバマ外交がもたらした世界の緊張緩和とイランの国内改革
核問題の合意に関しては立場によって評価も分かれますが、個人的には、イランの暴走を抑え、世界の危険を緩和するものとして、また、イラン国内の民主化・改革を後押しするものとして評価しています。

****硬軟両様か蜜月化か 米・イラン関係****
ニューヨーク・タイムズ紙は1月17日付で「イランとの取引ゆえに、世界はより安全になった」との社説を掲載し、核合意の実施、制裁解除などを歓迎しています。社説の要旨は、次の通り。

外交で達成された歴史的進歩
多くの人が決して来ないと言ってきた時が来た。イランは2015年の米などとの核合意を履行した。その結果、世界はより安全になった。

国際原子力機関(IAEA)は1月16日、イランが8.5トン以上の濃縮ウランをロシアに搬出し、1万2千以上の遠心分離機を廃棄し、プルトニウム製造用のアラクの原子炉にコンクリートを注ぎこんだことを確認した。

1月17日、オバマ大統領は「イランが爆弾を作るすべての道を閉ざした」、イランとの関与が「重要問題の解決への窓」を開けた、中東での戦争によらず、外交でこの歴史的進歩が達成された、と述べた。

今後も取引が厳格に守られることを確保するという難しい問題はある。その確保は米、ロ、中、欧州の義務である。イランは核施設について継続的なIAEA査察を受けるので、だますのは難しくなる。それに爆弾のための核物質を作ろうとしても1年以上かかる。合意の前には2〜3か月でできた。

この合意は忍耐強い外交、オバマ大統領の核問題を交渉により解決するとの先見の明ある決意の有効性の証明である。また、ロウハニ大統領とザリフ外相は核合意と履行を建設的態度で追求した。

恩赦が示す将来的な両国協力の可能性
またWP紙のレザイアン特派員と他3人の釈放を祝うときでもある。米は制裁違反で逮捕されたイラン人7名を恩赦した。別に米国人1名も自由になった。紛争の解決には妥協がいる。これらは将来、米国とイランが協力する可能性を示す。

イランは10名の米水兵(誤ってイラン領海にはいった2隻の乗組員)を釈放した。イランの強硬派の軍が2隻に乗り込み、捕らえられた水兵の写真を公開(たぶんジュネーブ条約違反)した。

通常ならば、これは危機になっただろう。米国の強硬派はオバマとイランを非難しただろう。しかしケリー国務長官とザリフ外相の数回の電話の後、ハメネイは事件を解決しようとするロウハニとザリフを支持した。対決が核取引を危険にさらすと双方とも知っていた。

もちろん、核合意の順守も米人の釈放も、イランがその他の国連決議や米国法違反で批判されないことを意味しない。拘束された米国人がイランを出た後、オバマはミサイル実験に関与した11のイラン企業と個人に制裁を課した。

イラン批判者は、制裁解除でイランが1000億ドルの資金を得、地域の不安定化のために使うことを恐れている。しかしロウハニは来月の議会選挙を前に国民の生活改善を図ることに重点を置くだろう。

このイランとの取引は北朝鮮交渉へのモデルでもありうる。【2月18日 WEDGE】
*******************

今回選挙の結果はまだ定かではありませんが、改革・穏健保守派が議会主導権を握る形になれば、“弱腰”との悪評高いオバマ外交による核合意は、イラン民主化を後押しし、世界の緊張緩和に資するものとなったと評価できると考えます。

もちろん、イラン国内の改革は平坦な道のりではなく、“今回の選挙結果にかかわらず、強硬保守派は、護憲評議会や最高指導部の親衛隊的性格を持つ革命防衛隊などを通じて政治・社会に強い影響力を持つだけに、今後も両者のせめぎ合いが続きそうだ。”【2月25日 産経】とも。

特に、経済制裁解除の変化がすぐにはあらわれない場合、国民の強い期待が失望に変わることでロウハニ政権への強い逆風となることが危惧されます。


コメント

シリア  様々な問題は抱えつつも停戦へ より恒久的な和平枠組みへ向けた取り組みを

2016-02-27 22:12:13 | 中東情勢

(シリア・ヨルダン国境付近の砂漠に取り残されたシリア難民【2月24日 NHK】)

停戦 概ね戦闘は鎮静化
2011年の民主化運動から内戦に突入したシリアは、多くの市民の命を奪い、膨大な人々が住む家を失い逃げ惑っています。

欧州に逃れようとした難民も、周辺国の入国制限により行く手を阻まれています。
欧州各国も難民受け入れを巡り揺れ動いており、各国及びEUの変質をも誘発しています。

****シリア難民 入国拒否の1万人超が砂漠地帯に****
国際的な人権団体、アムネスティ・インターナショナルは、世界の人権状況に関する報告書を発表し、内戦が続くシリアからの新たな難民の受け入れを、周辺国が制限し始め、入国を拒否された1万人を超える人が砂漠地帯に取り残されていると指摘しています。

イギリス・ロンドンに本部を置くアムネスティ・インターナショナルは、24日、世界の人権状況に関する報告書を発表しました。

報告書では、内戦が続くシリアについて、アサド政権や過激派などの武装勢力による戦争犯罪や人権侵害が繰り返され、これまでに犠牲者が25万人に上っているとしています。

また、戦闘や空爆などから逃れようと国外に脱出したシリア難民は去年までに460万人に上り、周辺国は新たな難民の受け入れを制限し始めていて、このうちヨルダンで入国を拒否されたおよそ1万2000人がシリア国境付近の砂漠地帯に取り残されていると指摘しています。

一方、ヨーロッパでは、およそ50万人のシリア難民がたどり着いていますが、多くの国が、国力に見合った難民の受け入れをしていないと批判しています。

また、日本について、難民と認められた人数は、おととし11人にとどまり、難民認定の基準が明確ではないと指摘しています。【2月24日 NHK】
******************

国外に逃れた難民460万人のほか、国内避難民が650万人とも700万人とも言われていますので、人口2100万人のシリア国民の半数が住む場所を失っています。

また、およそ50万人近い住民が政府軍や反政府勢力に包囲された地域に暮らしていて、食料が届かないため餓死する人が相次ぐなど、人道危機が深刻化しています。

こうした状況で、反体制派とアサド政権双方の後ろ盾となっているアメリカとロシアが呼びかけた停戦が27日午前零時から実施されており、現段階では概ね戦闘行為は停止しているようです。

****シリア停戦発効 戦闘おおむね鎮静化か****
シリアで、アサド政権と反政府勢力の間の停戦が発効して12時間となります。今のところシリア国内では双方の戦闘はおおむね鎮静化しているもようで、このまま停戦が維持されるかが焦点となっています。

シリアでは、アメリカとロシアが呼びかけた停戦案を政権側と反政府側の主要な勢力の双方が受け入れ、27日午前0時(日本時間の27日午前7時)停戦が発効しました。

イギリスを拠点に内戦を監視している人権団体によりますと、西部や南部では停戦に応じていない反政府勢力の一部と政府軍の衝突が起きたものの、今のところ戦闘はおおむね鎮静化しているということです。

激戦地となってきた北部のアレッポ周辺の状況について、反政府勢力の活動家は27日午前、NHKの取材に対し、「けさになってからはアレッポでは何も起きていない。今も静かな状況が続いている」と話しました。

ただ、シリア国営通信によりますと、中部のハマ県では、車に積まれた爆弾が爆発して2人が死亡したということで、今回、停戦の対象に含まれない過激派組織IS=イスラミックステートなどによる攻撃の可能性があります。

シリアでは2011年の民主化運動をきっかけに内戦に突入し戦闘が続いてきましたが、政権側、反政府側が本格的な停戦に乗り出すのは初めてのことです。

しかし、テロ組織との戦いを掲げるアサド政権と反政府勢力の一部の戦闘などが再燃する可能性があり、このまま停戦が維持されるかが焦点となっています。(後略)【2月27日 NHK】
******************

もちろん、今回停戦がいつまで続くかについては懐疑的な見方は以下にも取り上げるように多々あります。各国の思惑も様々です。

そうであったとしても、とにもかくにも戦火が停止したということは特筆すべきことであり、更に恒久的な和平の枠組みを目指した努力がこの間を利用してなされることを強く希望します。

停戦崩壊を招く様々な要素
停戦の実態が非常に危ういものであることは事実です。

アサド政権は「ISやヌスラ戦線、それに関連するテロ組織に対する戦いは続ける前提」で受け入れる方針を表明、反体制派の主要団体「高等交渉委員会(HNC)」や、シリアのクルド人民兵組織、人民防衛部隊(YPG)を主体とする「シリア民主軍(SDF)」も停戦を受け入れるとアメリカに通告しています。

しかし、停戦の対象外として攻撃が継続されるIS及びヌスラ戦線との間の戦闘は今後も継続します。
ヌスラ戦線のゴラニ指導者は「停戦は恥だ。決着は戦場でつけろ」と停戦を拒絶し、政権側への攻勢を強めるよう呼びかけています。

また、ヌスラ戦線と共闘する有力組織「アフラル・シャム」のようなイスラム過激派組織も戦闘を継続するものと思われます。

“政権、反体制派の双方とも、停戦期間を利用して勢力拡大を図らないよう相手に警告しており、偶発的な衝突から停戦は崩壊する恐れがある”【2月27日 毎日】とも。

一番の懸念は、政権側及びロシアの「その他のテロリスト」への対応です。どこまでを対象として、実際にどのような形で攻撃が行われるのか・・・、それ次第では反体制派側の反発から停戦が崩壊することも十分考えられます。

****シリア情勢】「2週間」停戦に現実味 反体制派と政権側が同意表明 アサド氏「テロリスト」との戦闘は継続****
・・・・ただ、アサド氏とプーチン氏は、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)と国際テロ組織アルカーイダ系のヌスラ戦線や「その他のテロリスト」との戦闘継続は必要との認識でも一致。

政権側が「テロリスト」と呼ぶ範囲には反体制派も含まれることから、停戦が実現しても持続するかは極めて不透明だ。

実際、シリア軍は24日の声明で、首都ダマスカス近郊の町ダラヤを掌握する反体制派にイスラム過激派が含まれているとして攻撃を継続すると表明した。

一方、ケリー米国務長官は24日、停戦維持にはアサド政権を支援するロシアやイランの「誠実な対応」が不可欠だと牽制(けんせい)した。

ただ、米国が支援するHNCにはヌスラ戦線と密接な関係にある武装組織も参加していて、米国が停戦案でヌスラ戦線への攻撃を容認していることに対する反発もあることから、停戦の試みが頓挫するのは時間の問題との見方も強い。【2月25日 産経】
****************

クルド系勢力とトルコの関係も微妙です。トルコが単独で米ロの主導する枠組みを壊すとも思えませんが、上記のような事情で政権側・反体制派の衝突が再燃すれば、それに応じて・・・ということも考えられます。

****トルコ首相「停戦合意に縛られない」 シリア内戦****
内戦が続くシリアをめぐり、米国とロシアが呼びかけている27日からの停戦について、トルコのダウトオール首相は25日、「停戦はシリアにとって有効。トルコを縛るものではない」と断言した。

トルコは今月13日以降、シリア北部で伸長するクルド系勢力を警戒し、越境砲撃を続ける。停戦が実現しても、両者の緊張は続く可能性が高い。

ダウトオール氏は25日、中部コンヤで記者団に対し、「シリアの停戦実現を支持する」と発言。その上で、シリアのクルド系組織「民主統一党」(PYD)の軍事部門「人民防衛隊」(YPG)を名指しし、「『停戦になれば、トルコは何もしない』と考え、トルコ国内でのテロを支援すべきではない。トルコの安全が脅かされる事態になれば、トルコは誰に相談することもなく必要な対応を取る」と強調した。(後略)【2月26日 朝日】
*****************

一方、反体制派から退陣を要求されているアサド大統領は4月13日に議会選挙を行うと発表しており、停戦後に向けた正当性強化を狙っています。

****4月13日に議会選=退陣要求阻止へ先手か―シリア****
国営シリア・アラブ通信によると、アサド大統領は22日、人民議会(定数250)選の投票日を4月13日とする大統領令を出した。シリア内戦の停戦実現に向けた動きが活発化する中、反体制派や欧米の退陣要求を退けるために先手を打った形だ。

人民議会選は2012年5月以来。議員の任期は4年のため、16年中の実施が見込まれていたものの、内戦激化で不透明な状況に陥っていた。

反体制派はほとんど選挙に参加できない可能性が高く、大統領支持派の圧勝が見込まれる。アサド大統領は選挙により「国民の信任を得た」と訴え、政権の正統性を主張していくとみられる。【2月23日 時事】 
*********************

この選挙については、“アサド氏はこの発表で、自らが権力にとどまる意向であることをあらためて示したことになり、この点も反体制派をはじめ、サウジアラビアやトルコなど反アサド勢力は認めることができまい。
仮に停戦が実現したとしても、国土の半分をISに支配されている中で4月までに正当な選挙を実施するのは不可能だ。そもそも2200万人の国民の半分が難民になり、450万人が海外に流出している現状を考えれば、「アサド氏の主張は茶番にすぎない」(ベイルート筋)。”【2月24日 WEDGE】とも。

反体制派の反発が強まるのは避けられないでしょう。

戦争以上に非人道的行為はない
なんだかんだで、問題が山積しているのは事実ですが、その問題をあげつらうよりは、なんとか亀裂を速やかに修復し、停戦が継続する方向での努力が望まれます。

その過程でアサド大統領の優位性が明らかになったとしても、それはやむを得ないものと考えます。
アサド政権抜きにシリアの安定は実現できないのが現実です。

政権側にこれまでに非人道的行為があっても、内戦を再開させるよりはアサド政権を含んだ和平枠組みを作る方がましです。戦争以上に非人道的行為はありません。

ロシアの影響力が云々といったことも、住民の命に比べれば些末な問題です。

デミストゥラ国連シリア特別代表は27日未明の記者会見で、停戦が続けば、今月3日から中断している国連仲介の和平協議を3月7日に再開すると発表しています。
コメント

インド  ヒンズーとイスラムの微妙な関係

2016-02-26 02:41:48 | 南アジア(インド)

(デリー郊外の世界一大きなヒンズー寺院「スワーミナーラーヤン・アクシュルダム」) 

インドを旅行中です。

北インドに色濃いイスラムの雰囲気
昨日は、エローラやアジャンタの石窟寺院観光の拠点となるアウランガーバードで、美しいミナレット(イスラム様式の尖塔)と丘の上の砦が残る「ダウラターバード」を観光したのち、飛行機で首都デリーに移動。

今日はデリー市内のムガル帝国時代の「赤い砦 レッド・フォート」や、インド最大のイスラム寺院「ジャマー・マスジット」などを観光、オールドデリーの雑踏の雰囲気を味わったりもしました。

デリー市内の歴史的建造物を観光して感じるのは、それらの多くがイスラムの遺跡であるということです。
そもそも、都市名の最後についている「~バード」はイスラムの“街”を表す言葉だそうです。

2,3年前に旅行したパキスタンのイスラマバードやラホールの歴史的建造物に雰囲気がよく似ています。

インド最後の王朝である「ムガル帝国」が北インドおよびパキスタンを支配したイスラム王朝であること、北インドにあっては、ムガル帝国以前もイスラム王朝が続いていたことから、パキスタンと北インドに雰囲気の似たイスラム建築が多いことは当然のことと言えます。

ヒンズー王朝が続いた南インドでは、ヒンズー文化が保護され、例えばマドゥライの巨大ヒンズー寺院など、ヒンズー色の強いスポットが多くあります。

一方、周知のようにインドは、イスラム国家を標榜するパキスタンと異なり複合宗教国家ではありますが、ヒンズー教徒が約8割を占め、イスラム教徒は13~14%に過ぎません。

そうした人口比にあって、ヒンズー至上主義的な人民党のモディ政権のもとで、牛を殺したら重罰を科すなど、ヒンズー的価値観を重視した施策などがとられるようになっていることなどは、これまでもこのブログでも取り上げてきました。

新しいヒンズースッポト
こうした歴史的経緯、現在の社会情勢も踏まえて、デリー市内にヒンズー文化を感じさせる観光スッポトがないのか探すと、ひとつ大きなヒンズー寺院があります。それが冒頭写真の「スワーミナーラーヤン・アクシュルダム」です。

「世界一大きなヒンズー寺院」としてギネス登録もされている寺院ですが、2005年完成と、つい最近建造されたものです。そうした「特定宗教集団が最近建築したもの」とのことで訪れる外国人観光客はあまり多くありませんが、広大な敷地内にはフードコートなどもあって地元住民の憩いの場ともなっています。

このヒンズー寺院「スワーミナーラーヤン・アクシュルダム」の特徴の一つは、徹底したセキュリティ・チェックです。

カメラ・携帯・バッグなどの持ち込みは一切禁止されており、入場時に空港よりも厳しいボディ・チェックが行われます。

ヒンズー寺院ということで、パキスタン絡みのイスラム過激派によるテロを警戒しているのでしょう。
そうしたテロ警戒の姿勢に、イスラムを意識した、ややとげとげしいものも感じます。

カメラが持ち込めないので、寺院に関する小冊子を購入して、それに掲載されている写真をカメラ撮影したのが冒頭写真です。

世界一大きなヒンズー寺院「スワーミナーラーヤン・アクシュルダム」のもう一つの特徴は、まったくヒンズー的イメージと異なることです。

まず、寺院の構造自体が、南インドに多い、けばけばしい極彩色の装飾にあふれた大きな塔門(ホープラム)を配したものとは全く違うつくりです。

壁面・内部は手彫りの装飾が全面に配されていますが、色彩は単一色で統一されています。
内部は金色・銀色も多用されています。

ヒンズー寺院ですから、シバ神やビシュヌ神などの彫像もありますが、血がしたたるような生首を手にぶら下げているようなおどろおどろしいものではなく、いたって穏やかな姿です。

天井にはキリスト教の天使を思わせるような彫像も配されており、本当にこれはヒンズー寺院なのか?という感もあります。

ひとことで言えば、「ヒンズーだって、こんな素晴らしいもの、きれいなものが作れるのですよ!」と、しきりに訴えているような感じです。
ヒンズー教徒のガイド氏も「素晴らしいでしょう」「きれいですね」と連発しています。

そのほかにも、いろいろ興味深いものが。
ヒンズー寺院とはいっても、ヒンズーの聖人「スワーミナーラーヤン」を称えることが眼目の施設で、彼の就業の様子など絵画等が多く飾られていますが、それらは仏陀の修行・悟りの様子と類似している感も。

建物の基部に配されたゾウをメインにした多くの彫像は、わかりやすく、写実的ではありますが、芸術とは全く縁のない私の目にも、あまり芸術的という感じではありません。

真新しいせいもあるのかも。500年後、1000年後には芸術的感動を伝えるようなものになっているのかも。

全体的に、「ヒンズーはこんなに素晴らしいのだ。イスラムなんかには負けないぞ!」というような雰囲気を感じます。私の思い過ごしでしょうか。

そんなこんなで面白いスポットです。
コメント

韓国 THAAD配備問題での中国“恫喝”に反発  中国国内では北朝鮮政策変更の気運も

2016-02-25 10:51:32 | 東アジア

http://flagman.top/ru/tag/thaad-ru/

中国大使の“恫喝”に韓国は反発を強める
北朝鮮の核実験や事実上の長距離弾道ミサイル発射という事態を受けて、韓国はアメリカの最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」の在韓米軍配備を進める方向で加速しています。

ただ、THAAD配備には中国が強く反対しており、そういう中国への配慮も一定にあってか、THAAD運営規約の締結は突然に延期されました。

*****THAAD規約の締結延期 中国外相の訪米を考慮か*****
韓国国防部が23日、米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」の在韓米軍配備問題を議論する韓米共同実務団の運営規約の締結を延期すると明らかにし、その背景に関心が集まっている。

国防部は22日午後、規約を23日午前11時ごろ締結すると明らかにしたが、この日午前10時すぎ、締結が1〜2日ほど遅れると伝えた。その理由については「最終調整する部分が残っているため」(同部関係者)としている。

韓米は北朝鮮が事実上の長距離弾道ミサイルを発射した今月7日、THAAD配備に関する公式協議を始めると発表し、配備の日程や場所など具体的な問題を協議する共同実務団の構成に向けた話し合いを進めてきた。

規約は共同実務団の人員構成、会議の議題、報告体制、会議録の作成ルールなどを定めた文書。韓米はこれを締結した上でTHAAD配備問題を協議する予定にしている。

土壇場での締結延期の背景をめぐっては、さまざまな見方が出ている。その一つが、中国の王毅外相が米ワシントンで23日(米東部時間)に行うケリー米国務長官との会談結果を見守るためという分析だ。

中国は、在韓米軍にTHAADが配備されれば米国のミサイル防衛網が日本を越えて朝鮮半島までひっくるめた巨大な体系に拡大し、本土や沿岸への米軍などの接近を拒絶する自国の「接近阻止・領域拒否(A2AD)」戦略が一定部分、無力化されると警戒し、配備に強く反対している。

特に、今回の会談は核実験や事実上のミサイル発射を受けた国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁レベルをめぐり、米中が事実上の「最後の談判」を行う場となるため、米国にはこのタイミングで規約締結を発表して中国を刺激したくないという思いがあるとみられる。締結延期を提案したのは米国側とも伝えられる。

また、安保理の制裁決議案が今週中にも採択されるとみられていることから、鍵を握る中国を採択前に不必要に刺激したくないという韓米政府の意向が反映されたとの見方もある。そのため、THAAD配備をめぐる韓米共同実務団の初会議は安保理の制裁決議案が採択された後になるとの観測も出ている。

ただ、国防部の関係者は「国連レベルでの対北制裁と韓米同盟レベルのTHAAD配備問題は別の事案だ」と強調している。【2月23日 産経】
*********************

中国が最近進めてきた「中韓蜜月」とも言われる対韓国接近政策は、こうしたTHAAD配備を韓国に思いとどまらせることも大きな目的とも言われていますが、北朝鮮の「暴走」、それを止められない中国の限界は、韓国を再びアメリカとの関係強化の方向へ回帰させています。

“ 北朝鮮の核やミサイル発射実験を受け、中国側が従来通り対話を重視する一方、韓国側は南北経済協力の象徴だった開城(ケソン)工業団地の操業を中断するなど、温度差が目立っている。朴槿恵(パク・クネ)大統領の支持層からは、北朝鮮問題での協力が見込めないとして、朴大統領の中国重視政策を見直すべきだとの声が強まっている。”【2月24日 毎日】

****中国外交戦略の失敗か****
2月17日付の本コラム<対北朝鮮制裁に賛同の用意あり――中国訪韓し、韓国のTHAADの配備を牽制>で書いたように、中国としては「国連安保理における北朝鮮制裁に賛同するから、韓国にTHAADを配備することだけはやめてくれ」といったニュアンスの交換条件を韓国に打診した形跡が見える。

その中国の一種の「交換条件」を全面的に否定するような記事が、2月20日付の韓国の「中央日報」日本語版に出ている。タイトルは韓国政府「中国の対北朝鮮制裁と関係なくTHAADを継続して推進」。

これは明らかに中国外交の負けだ。
戦略的な中国にしては、珍しくすでに敗北していると言っても過言ではない。(後略)【2月22日 遠藤 誉氏 Newsweek】
****************

韓国を何とか繋ぎ止めたい中国ですが、露骨な恫喝ともとれるような姿勢は、逆に韓国側の反発を強めています。

****中国駐韓大使「中韓関係は一瞬のうちに破壊されうる」 THAADの韓国配備を牽制****
中国の邱国洪駐韓大使は23日、韓国の野党幹部と会談し、米軍の最新鋭地上配備型迎撃システム、THAADの韓国配備について「中国の安全保障に大きな影響を及ぼす」と反対した上で、「中韓関係を今のように発展させるのに多大な努力が必要だった。こうした努力は1つの問題のために一瞬のうちに破壊されうる。簡単には回復しない」と韓国を強く牽制した。野党報道官が明らかにした。【2月24日 産経】
*******************

****中国大使の発言に韓国政界が不快感 THAAD配備問題****
韓国政府は米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」の韓国配備の可能性に強く反発し、韓中関係への影響にまで言及した邱国洪・駐韓中国大使の発言に不快感を示した。

外交部当局者は24日、邱大使の前日の発言について「THAAD配備問題がなぜ発生したのか根本から振り返るのが道理だ」と反論。THAAD配備問題は、北朝鮮の核・ミサイルの脅威から始まり、これに対応するため防衛レベルでTHAAD配備の可否を検討中であるという考えをにじませた。

外交部は邱大使の発言について、「必要な措置を取っている」と明らかにし、外交ルートでの抗議の可能性を示唆した。

韓中関係については「信頼の土台の上に両国が共に努力することが重要だ」と指摘。邱大使の発言の問題点を指摘しながらも韓中関係への影響を懸念し、対応レベルを慎重に見いだそうとする姿勢を見せた。

韓国にとって、北朝鮮の4回目の核実験や事実上の長距離弾道ミサイル発射に対する国連安全保障理事会の制裁決議はもちろん、今後の北朝鮮核問題の解決や朝鮮半島の統一をめぐり中国の協力が必要なためだ。外交部はソウルの中国大使館に、邱大使の具体的な発言内容についての確認を要請したとされる。

だが、韓国政府周辺では邱大使の発言に対する不満がくすぶる。中国を代表する外交官として自国の利益を代弁するのは当然だが、発言の内容やレベルが度を越しているという指摘が聞かれる。

邱大使の外交官としての資質を疑問視する声も上がっている。外交関係者の間では韓国の安保主権事項であるTHAAD配備問題について、邱大使が韓中関係や韓国の安全保障に問題が生じる恐れがあると言及したことは、事実上、脅迫に近く内政干渉に当たるのではないかという批判が出ている。(後略)【2月24日 聯合ニュース】
*****************

中国国内でも「北朝鮮は中国にとって負担」】
一方、中国にとっても北朝鮮の暴走は苛立たしい問題で、結果的に国際社会における中国のメンツをつぶし、実際問題としてもTHAAD配備問題のような中国の安全保障を損なうことにもなります。

北朝鮮をアメリカの影響力を国境に近づけないための緩衝地帯として維持したいという中国の基本戦略から、北朝鮮の体制動揺に至るような強硬な対北朝鮮政策は中国としてはとれない・・・・というのが一般的な見方であり、米韓の北朝鮮圧力を強めるようにとの要請にも応じていませんが、北朝鮮に対し全く何もしていない訳でもないようです。

****中国が北朝鮮に「独自制裁」か 金融機関の決済など滞る、貿易に影響=中国メディア****
中国メディアの環球網は23日、韓国での報道を引用して、中国工商銀行が、対北朝鮮業務を凍結している可能性があると報じた。さらに、中国企業から「貿易がストップする見込み」などの証言を得たという。

環球網によると、韓国の東亜日報が22日付で、中国工商銀行丹東支店が、北朝鮮側との決済業務を凍結したと報じた丹東は遼寧省にある、「中朝国境の街」だ。両国の貿易活動の重要拠点だ。

工商銀行の関係者は環球網の取材に対して「事実を把握してから回答する」などと、言明を避けたという。

環球網によると、丹東で北朝鮮との貿易事業などを営む会社の責任者が、「(中国の金融機関による)中国企業と北朝鮮間の決算業務は、2015年12月ごろから停止された」と述べた。(中略)

上記の企業責任者によると、北朝鮮との石炭貿易は3月1日から中止される。同責任者は「おそらく、北朝鮮の衛星打ち上げに対する禁輸制裁だろう」と述べたという。

中朝間の貿易は、従来の半分に減らされる見通しで、中央政府からの指示がすでに出たとの見方もある。「5月には回復するようだが、北朝鮮の態度次第」とされ、北朝鮮から鉱物資源を輸入する中国企業からも「今は状況を見つめる。早く正常化してほしい」との意見が出ているという。【2月23日 Searchina】
**********************

北朝鮮の中国国益に反するような暴走に対し、中国国内でも「北朝鮮は中国にとって負担」という考えが強まっているとも。

****中国紙が社説、当局の意向を反映か****
中国メディアの環球時報は15日、「ますます多くの中国人の朝鮮(北朝鮮)に対する見方がが変かしつつある」と題する社説を発表した。

同社説は、「北朝鮮は中国にとって負担」と考える人が増えていると指摘。さらに、「外交は民意だけで決めるものではない」と指摘した上で、「民意は中国の外交戦略の基礎」と主張した。

記事は冒頭部分で、中国は北朝鮮の隣国であり、北朝鮮の核問題で中国は大きな外交的圧力を受けるようになったと指摘した。

中国の一般庶民の「対北朝鮮観」としては、伝統的には朝鮮戦争を支援して米国とも戦った「友情」関係であり、一部の人は北朝鮮を「バリア」と見なしてきたと解説。「バリア」とは、北朝鮮が「在韓米軍を中国の国境まで来させない存在」であることを意味する。

しかし、北朝鮮が中国の強い反対にも関わらず核実験を繰り返して中国の国益を大きく損ねており、北朝鮮国内の「人権蹂躪」も伝わってきている関係で、「中国人の北朝鮮政権」に対する見方は変化しつつあるという。

決定的な変化は、中国人の間で北朝鮮を「友好国家」と見なす人が減少し、「悪の隣人」と思う人が増えていることという。

同社説によると、北朝鮮について異なる主張を持つ専門家2人に尋ねたところいずれも、北朝鮮を「悪の隣人」と見なす中国人の比率は「6割。あるいはそれ以上」に達したとの考えを示した。

 社説はさらに、「外交とは高度に専門的であり、民意は具体的な外交政策の“指揮棒”たりえない」と指摘した上で、「民意は現代中国の外交戦略の基礎」と主張。「対北朝鮮政策と民意の乖離が大きくなるほど、中国政府が(民意の反発という)政治的代償をを支払わねばならない可能性が増大する」として、北朝鮮がこれまでの方針を変えない場合には、中国が現状の対北朝鮮政策を維持することは、国内政治の面でも難しくなっていくと主張した。

社説は、米国のような「単純な制裁論」は否定したが、中国国内でも「ピョンヤンに、孤立の本当の痛みを感じさせてやれ」との世論が強まりつつあると主張。また、北朝鮮の核実験場が中国との国境に近いことも、同問題が「中国国内で爆発する潜在性がある」ことの理由のひとつという。

同社説は、北朝鮮問題について、中国が今後、採用すべき方法については言及しなかった。ただし、「われわれに、知恵と決心が欠如したことはない」、「北朝鮮の核問題を、われわれが乗り越えられないような障害物にしておくわけにはいかない」と主張した。

環球時報系のニューサイト、環球網は同社説を転載した上で、「北朝鮮は中国にとってのバリアであるとの考え方を再検討すべきと思いますか?」とのアンケートを実施した。日本時間15日午後3時現在、「再検討すべきだ」は回答者の71.8%、「すべきでない」は28.2%と、現状における北朝鮮の存在は、中国の国益にとって負担面が大きいとの見方を示す人の方が多い。

環球時報の社説は、中国当局の意向を、少なくとも間接的には反映したものと考えてよい。【2月16日 Searchina】
***********************

万一、北朝鮮の暴走が更に加速して米韓との軍事衝突といった事態にでもなれば、北朝鮮は中国に対し中朝軍事同盟を理由として、北朝鮮側に立って米韓側への参戦を求めてくると思われますが、中国にとってはアメリカとの戦争に巻き込まれるという悪夢でしかありません。

そこまでには至らなくても、中国の意向に従わない北朝鮮に苛立ちを強める中国が、対北朝鮮政策を軌道修正する可能性は十分にあり得るとも思われます。
コメント

インド  時を超えて人々を魅了する「アジャンタ」壁画

2016-02-24 02:13:56 | 南アジア(インド)

(「アジャンタ石窟群」第1窟の憂いをたたえた「蓮華手菩薩」は、アジャンタ石窟壁画のなかでも最高傑作と評され、1949年に焼損した法隆寺金堂の勢至菩薩像に影響を与えたといわれています。)

現実世界では・・・・
インドを旅行中です。

連日取り上げている、デリー近郊での低位カースト優遇策に関する暴動は沈静化に向かっていると報じられています。

ただ、現地の方に訊くと、衝突はジャイプールに広がっているとか、「死者が19人」というのも公式発表であり、土に埋められ「失踪者」扱いされる者が大勢いるとか・・・穏やかならざる話も聞きます。

本当のところはわかりませんが、公式発表が信用されていないということが問題です。
日本や欧米とは違い、ここはインドですから・・・・

****インド首都で水不足深刻化=暴徒が水路破壊、復旧2週間*****
インドの首都ニューデリーが水不足にあえいでいる。近郊で発生したカースト集団による暴動で、人口約1700万人を抱える首都に水を供給していた水路の一部が破壊され、政府当局は23日、復旧に最大2週間を要するとの見通しを発表した。数千世帯への水道水供給が停止しており、当局は節水を呼び掛けている。

隣接するハリヤナ州で発生したデモは、公務員就職や大学入試での優遇措置を求めて暴徒化。幹線道路や線路を遮断して放火を繰り返した上、首都への水供給の約45%を担っていた水路を破壊した。

州政府が「デモ隊の要求を受け入れる」と約束したため、暴動は沈静化に向かっている。一時は水不足が原因で休校を決めたニューデリー市内の学校も授業を再開。

しかし、治安回復の遅れで水路復旧は進まず、浄水場の稼働率は5割程度にとどまっている。【2月23日 時事】 
******************

世界に目を向けると、シリアでは、実効性が伴うかどうかはわかりませんが、停戦の話も動いています。
南シナ海では、中国がレーダー施設を建設し軍事化を進める一方、アメリカの地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」の韓国配備を巡って、中国と米韓の綱引きも・・・などいろいろあるようです。

アジャンタ・・・・時を超えて
そうした世俗の話から離れて、人類の歴史にかかわる浮世離れした話を。

昨日のエローラ石窟寺院群に続いて、今日は「アジャンタ石窟寺院群」を観光してきました。
エローラは仏教、ヒンズー教、ジャイナ教が混合した遺跡ですが、アジャンタは純粋に仏教遺跡です。

*****アジャンター石窟群****
アジャンター石窟(寺院)群とは、インドのマハラーシュートラ州北部、ワゴーラー川湾曲部を囲む断崖を550mにわたって断続的にくりぬいて築かれた大小30の石窟で構成される古代の仏教石窟寺院群のことをいう。【ウィキペディア】
******************

開窟年代は、前期(第1期)と後期(第2期)に区分され、前期は紀元前1世紀から紀元後2世紀、後期は5世紀後半から6世紀頃とされています。

昨日紹介したエローラの「カイラーサナータ」がそのスケールの大きさで見る人々に迫るのに対し、アジャンタは壁画に残された時間を超えた優美さで人々を魅了します。

それにしても、特別な保存措置を行った訳でもないのに、1500~2000年の時を経て、鮮やかな色彩が残っているのが不思議でもあります。

観光客がもっと少なくて、「喜多郎」(若い方はご存知ないでしょうが)の音楽でも流れていたら、現実世界を忘れて天女が舞う世界に浮遊してしまいそうです。

5000年前のドレス

(5000年前のものと判明した「世界最古のドレス」【2月23日 NATIONAL GEOGRAHPIC)】)

「人類の歴史」を感じる話題がエジプトからも。

****世界最古のドレス、5000年前のものと判明****
20世紀初めにエジプトのある墓地で見つかった麻のドレスが、新たな分析により5000年以上前のものであることがわかった。織物の衣服としては、これまで見つかった中で最古のものだ。縫い方もプリーツの付け方も美しく、当時の社会の繁栄を物語っている。

「タルカン・ドレス」と呼ばれるこの衣服が発見されたのは奇跡と言っていい。植物の繊維や動物の皮で作られた古代の衣料は、ほとんどが崩れてばらばらになってしまうからだ。(中略)

このドレスと近い年代のもので、現代まで残っている衣服は数えるほどしかなく、それも、単に体に巻き付けたり、体を緩やかに覆ったりするものばかりだ。

一方、このタルカン・ドレスは、古代のオートクチュールといえる。腕にぴったり添う袖とVネックの首元、幾重もの細かいプリーツがあしらわれたデザインは現代に通じるものがあり、もし百貨店に並んで売られていても違和感はないだろう。

これほど細部まで手の込んだドレスは、専門の職人でなければ作れなかったはずだ。そうした職人が存在したということは、既に豊かで階層化の進んだ社会ができていたはずだ。事実、5000年前のエジプトには、ちょうど、1人の支配者の下に初めて統一された王朝が登場していた。

ひじや両脇にあるしわからは、このドレスが単に儀式のために作られたのではなく、実際に着用されていたことがうかがえる。(中略)

こんなドレスを着られたのは、上流階級の人々だけだっただろう。(後略)【2月23日 NATIONAL GEOGRAHPIC】
********************

“腕にぴったり添う袖とVネックの首元、幾重もの細かいプリーツがあしらわれたデザイン”・・・とても5000年前のものとは思えません。

日本は縄文時代ですが、早期の縄文土器に繊維を押し付けた跡が見られたり、旧石器時代に衣服を縫ったであろう針が発掘されていることから、縄文人も早い段階から服を着ていたであろうと推測されているようです。土偶も筒状の上着と、ズボンをはいています。

もちろん、胸元に幾重もの細かいプリーツといったものではなかったでしょうが。

古代の遺跡や文物を見ると、文化というものがある地域で突然のように開花し、やがて時の流れの中に消えていく、そして別の地域で別の文化が・・・・という文化の不均一性を感じます。

その意味では、現代はかつてないほど文化の均一化が進行している時代のようにも。
ただ、そうした流れに伴って、より直接的な均一化を求める「難民・移民」が押し寄せたり、欧米的な価値基準で進む均一化に対し、イスラムなどのアイデンティティを重視する反発も起きたり・・・といった問題も生じます。
コメント

インド  果てしなき「情念」が生み出した奇跡 エローラ石窟寺院群の「カイラーサナータ」

2016-02-23 02:12:43 | 南アジア(インド)

(100年を要して岩山からノミで削り出されたエローラの「カイラーサナータ」 世界遺産というのは、こういうものを言うのでしょう。)

果てしなき「情念」が生み出した奇跡
インドを旅行中で、中部デカン高原の都市、アウランガーバードにいます。

今日22日は、世界的に有名な(高校の世界史の教科書に載っていたと思います)「エローラ石窟寺院群」を観光しました。

デカン高原の岩肌に、仏教・ヒンズー教・ジャイナ教の34の石窟寺院が穿たれている「エローラ」ですが、その「エローラ」を代表するのが第16窟のヒンズー教寺院「カイラーサナータ」です。

ラーシュトラクータ朝の君主クリシュナ1世(位756年 - 775年)の命により、カイラス山(須弥山、ヒンドゥー教ではシヴァ神が住むとされる)をイメージして掘られたものと考えられています。

寺院全体に装飾が施された「カイラーサナータ」は幅45m × 奥行85m × 高さ32m。
これだけであれば、美しく大きな寺院ではありますが、よそでも同様のものは存在するでしょう。

ただ、「カイラーサナータ」が世界の他の建築物と全く異なるのは、この巨大な寺院が岩山の裾野を文字通りくりぬいて建築されているということです。

8世紀後半のことですから、岩を削る道具はノミだけです。

「カイラーサナータ」の完成までには、20万トンの岩を掘り出し、100年の歳月を必要としたと言われています。
エジプトのピラミッドなどに比肩しうる壮大な事業です。

人間はときに想像もできないようなことを行います。
100年を要して岩山から「カイラーサナータ」を掘り出すという行為をなさしめたものは一体何だったのか?

王命と言えばそれまでですが、世界を驚かせるものをつくりたいという思いでしょうか?神の住む世界をこの世に作り出したいという思いでしょうか?

その根底にある、人をして途方もない行為に駆り立てる「情念」とも言うべきものを感じさせるのが「カイラーサナータ」です。

カーストデモは鎮静化したものの、死者は19名
こうした壮大な「情念」に比べれば、現実世界では実にチマチマしたことで争っています。

一昨日、昨日も触れた、低位カーストに対する優遇措置を自分たちにも認めるように・・・とのことで起きた暴動は、ようやく沈静化したものの死者19人を出し、騒動の影響で首都ニューデリーは水不足の危機に見舞われているようです。

****カーストデモ暴徒化で19人死亡、200人負傷 水路閉鎖で首都水不足 インド****
インド北部ハリヤナ州で、公務員採用などでの優遇措置を求めるカースト集団の暴動が先週から続き、州政府によると22日までに少なくとも19人が死亡、200人以上が負傷した。抗議行動は22日朝にかけて鎮静化したという。

一方、暴徒らが用水路を閉鎖したあおりで、隣接する首都ニューデリーでは深刻な水不足が発生している。

デモを率いているのは「ジャート(Jat)」と呼ばれる農民らのカースト。公務員採用や大学入試の優先割り当てを求めている。

インドは、国内最悪の被差別者を社会の主流に取り込むべく、低位カースト向けに優先枠を設けているが、他の集団は自分たちが締め出されていると反発している。

ハリヤナ州内では21日にも新たな暴動や店舗への放火が発生し、州政府の高官によると、1人が銃撃で、別の1人がデモ隊同士の衝突で死亡した。

1週間に及ぶデモが暴動に発展したのを受け、州内では20日、発砲許可を得た兵士が多数配置されていた。

地元警察によると21日には、暴動の中心地となっているハリヤナ州ロータク(Rohtak)県で、暴徒が警察署を襲撃して放火。署に隣接する店舗20棟と学校も内部を破壊されたという。

州当局によると、19日に死者が出たのを受けて州内の複数の県で夜間外出禁止令が出されたが、一部を除いて22日までに解除されたという。

一方、同州に隣接するニューデリーの水処理場へ水を運ぶ用水路が、暴徒によって閉鎖されたと伝えられ、同市当局は市内全域での給水制限を発表。22日にはすべての学校が休校になると述べた。

今回の問題をめぐり、ジャート指導部と連邦政府のラジナート・シン内相、インド人民党(BJP)が政権を握るハリヤナ州政府の3者が、デリーで会談。州のBJP幹部は会談後、記者団に対して「州議会の次の会期中にジャートに優先枠を与える法制化を行うことを決めた」と述べ、州政府がジャート側の要求を受け入れたことを明らかにした。【2月22日 AFP】
*******************

絶え間ないクラクション
ところで、アジアの国々を旅行していると、目で見る視覚以外にも、嗅覚・聴覚で感じるものがあります。

まとわりつくような空気に漂う香辛料のかおりもそうしたものです。

鳥のさえずりや、サルの鳴き声で目が覚める・・・・というのも、そうしたひとつです。
街中であれば、ホテルの部屋にいても絶え間なく聞こえてくる車のクラクションも、ここは日本じゃないんだ・・・と感じさせるものです。

下記は、日本人と中国人の比較ですが、「交通マナー」やクラクションについては、インドや東南アジア諸国も同様です。

****中国人が見た日本の交通事情「他人に迷惑をかけないルール」を称賛****
・・・・また、街中ではクラクションが鳴り響く中国とは異なり、日本では1週間の滞在期間中にクラクションを耳にしたのはわずか1度だけだったと紹介。

みなが交通ルールを守って運転するため、クラクションを鳴らす必要がないと指摘したうえで、「日本人のあいだでは“辛抱強く待つ”習慣が醸成されていた」と伝えている。【2月22日 Searchina】
****************

部屋の中で聞いている分は、異国情緒を感じさせるものですみますが、タクシーなどに乗っていると、クラクションを鳴らしながら、わずかなスペースにでも突っ込んでいく運転は、ときに恐怖です。

また、歩いているとき背後からクラクションを鳴らしながら迫る車やバイク、横断しようとする者にそのままのスピードで突っ込んでくる車・・・・これも怖いです。

結果、インドでは“2013年の統計では、全土で約24万人が交通事故で死亡した”【1月16日 産経】とのことです。
コメント

インド  ネパールとの「マデシ」問題決着  学生指導者逮捕で抗議活動

2016-02-22 03:05:25 | 南アジア(インド)

【2月19日 AFP】

被差別カーストへの優先枠をめぐる暴動激化
インドを旅行中です。

今日(日本時間では「昨日」になりますが 時差は3時間半)は、首都デリーからアウランガーバードに飛行機で移動。
明日から、アジャンタ・エローラ石窟寺院を見学の予定です。

昨日も触れた「カースト」絡みの暴動が治まっていないようです。

**************
カーストはインドに残る身分差別。出自や先祖の職業などにより数千の集団に分かれる。カースト差別は憲法上、禁止されているが今も存在しており、政府は対策の一つとして被差別カーストへの優先枠を設けている。だが、別のカーストが枠の割り当てを求めたり「逆差別」と批判したりすることが、しばしばある。【2月20日 朝日】
**************

****インド 優遇策求めるデモ暴徒化 日系企業にも影響******
インドで歴史的に差別されてきた人たちへの優遇策を、ほかの人たちにも適用するよう求めるデモが暴徒化して、これまでに4人が死亡し、現地に進出する日系企業の操業にも影響が出ています。

インドでは、カースト制と呼ばれる階級制度のもと、歴史的に差別されてきたカーストの人たちには、現在社会的な地位の向上のため、公務員の採用や大学入試で優先枠が割り当てられています。

インドの首都ニューデリーに隣接するハリヤナ州では、「ジャート」と呼ばれるカーストの集団が、自分たちにも公務員採用の優先枠を与えるよう求めるデモを続けていて、19日から20日にかけて一部が暴徒化し、バスや鉄道の駅舎、それに商業施設などに放火しました。

地元メディアによりますと、これまでに4人が死亡したということです。

インド政府は、軍の部隊を動員するとともに、暴動が起きている地区などに外出禁止令を出しました。この影響で、インドの自動車最大手でスズキの子会社の工場が部品の運び入れに支障が出たとして、20日午後に操業を停止しました。

インドでは特定のカーストへの優遇策について、ほかのカーストからは不公平だとして反発があり、去年も優遇策をほかのカーストにも適用するよう求めるデモが起きています。【2月21日 NHK】
*******************

【2月21日 読売】によれば、“治安部隊との衝突で21日までに少なくとも10人が死亡した”とのこと。
また、首都への水道供給も不足し始めるなど、影響は次第に拡大しているとも。

こういうニュースを日本国内で聞くと、「デリーの観光は大丈夫だろうか?」とも考えますが、現地では、少なくとも観光客には全く影響は感じられません。

学生運動指導者逮捕への抗議活動
ニューデリーではもうひとつ、騒動が起きています。

****インド、公立大学に国旗掲揚を義務付け 学生逮捕の抗議デモ****
インド政府は18日、国内の一流公立大学20校に対し国家の団結を促すために国旗掲揚を義務付けた。一方、首都ニューデリーなどでは学生自治会委員長の逮捕に抗議する学生たちによる大規模なデモが行われた。

ニューデリーの名門ジャワハルラル・ネール大学で学生自治会委員長を務めるカンハイヤ・クマルさん(32)は12日、デモ行進で反国家的なスローガンを叫んだとして警察に逮捕された。

これに対し、18日にはニューデリーで学生ら約5000人が「クマルを釈放せよ」「国家によるテロリズムを打破せよ」などと叫びながら市中心部を行進。

インドでの学生による抗議運動としては、ここ数年来では最大規模のものとなった。コルカタなど複数の都市でもクマルさんとJNUへの連帯を示すデモが行われた。

クマルさんは右派が掲げるナショナリズムを公に批判してきたため、クマルさんの逮捕には政権批判を抑え込む目的があるとデモ参加者らはみている。

デモ参加者の1人はAFPに「われわれが今日、ここに集まったのは人権と言論の自由を守るためだ」と述べ、「政府は国民を反国家的だと決めつけて刑務所に入れることはできない」と批判した。【2月19日 AFP】
***************

抗議する学生も国旗を掲げており、学生運動指導者の逮捕への抗議と国旗がどのように関連しているのかは、全く知りません。

なお、ホテルを周辺を国旗を掲げた若者たちが数人バイクで気勢をあげながら通り抜けていきましたが、この抗議活動のひとつだったのでしょうか?

【「マデシ」をめぐるネパールとの対立がネパール首相訪印で決着
外交関係では、隣国ネパールとの間でもめていた、ネパール新憲法に抗議する親インド住民「マデシ」の問題が、ようやく決着したようです。

インドからの食糧・医薬品などの搬入がストップして、ネパールの震災からの復興を大きく遅らせていました。

****ネパール国境封鎖、震災復興に影 インドから燃料入らず****
ネパールで、政治対立からインドとの国境が9月下旬から封鎖され、燃料などの輸入が止まったままになっている。

来日したネパールの記者団体ネパールプレス評議会役員のキショール・シュレスタ氏は、朝日新聞の取材に「4月の大地震から復興に立ち上がろうというときに、日常生活に深刻な影響が続いている」と訴えた。

ネパールでは9月20日に新憲法が制定された。その直後から、人口の過半数を占める南部の住民らが「人口数に比例した権限が与えられていない」などとしてインド国境に座り込み、封鎖した。

インドはネパールの生活必需品の主な輸入先で、中でも、燃料不足が深刻になっている。

シュレスタ氏は「燃料がないため多くの人が冬の屋外で火をたいて調理をしている。病院では薬や酸素ボンベも足りない」という。

ネパールのオリ首相は、文化的にインドに近い南部住民を通じてネパールへの影響力を強めたいインド政府による、事実上の経済封鎖とみる。インド政府は「ネパールの国内問題」と関与を否定している。

シュレスタ氏は「ネパール経済が独り立ちするためにも、日本と一層の協力関係を築きたい」と話した。【2015年12月27日 朝日】
***************

インド側には“文化的にインドに近い南部住民を通じてネパールへの影響力を強めたい”思惑があって、マデシの抗議活動を支援していると言われていましが、インドが燃料などをストップさせれば、中国から補う形にもなって、ネパールを中国へ追いやることになりかねない・・・との懸念もありました。

****ネパール首相、19日にインド訪問 関係改善へ****
ネパールのシン首相顧問は8日、産経新聞に対し、オリ首相が今月19日にインドを初訪問することでインドと暫定合意したと明らかにした。

物流が停止している両国の国境付近では5日、ネパール新憲法に抗議する親インド住民「マデシ」が設置していた障害物を両国の住民が強制撤去し、トラックの運行が再開した。国境封鎖問題で悪化したインドとネパールの外交関係が改善に向けて動き出した。

ネパール政府は、20日にモディ印首相と首脳会談を行う方向で調整している。昨年10月に首相に就任したオリ氏の初外遊となる。

ネパールでは昨年9月、新憲法が制定されたが、南部の「マデシ」住民が権利拡大を求めて抗議運動を行い、インド国境の主要道路の封鎖を始めた。燃料を含む物流の大半をインドからの輸入に頼るネパールでは物資不足が起き、オリ氏は「インドによる非公式の国境封鎖」と非難。インドはこれを真っ向から否定してきた。

こうした中、ネパール議会は先月、マデシの要求を一部受け入れ、選挙制度を見直す憲法改正案を採択し、インドも歓迎を表明した。

しかしマデシは、最大の要求である州区割りが是正されていないとして抗議を続けていた。ネパールは、中国から新たな燃料供給の約束を取り付けており、インド側では「圧力はネパールを中国になびかせ逆効果」(元軍高官)との声が上がっていた。

ネパールでは、新首相は物流を含め関係の深いインドを初外遊先に選ぶのが通例。オリ氏は訪中を優先するのではないかとの見方もくすぶっていたが、インドはネパールを自国側に手繰り寄せた形だ。ただ、マデシは「封鎖は終わっていない」としており、火種を残している。【2月8日 産経】
*****************

こうした流れのなかで、ネパール・オリ首相が訪印しました。

****印ネパール首脳会談、関係正常化を表明 道路整備協力など合意*****
ネパールのオリ首相がインドを初訪問し、ニューデリーで20日、モディ印首相と初会談した。

インドは昨年9月、ネパールで公布された新憲法について、親インド住民「マデシ」の権利擁護を求めて不満を表明。マデシがインドとの国境を封鎖して両国関係が悪化していたが、憲法改正を受けて封鎖解除とオリ氏の訪印が実現した。

オリ氏は会談後の記者会見で、「数カ月間続いていた誤解は、もう存在しない」と述べ、関係正常化を表明した。

会見ではモディ氏も、「すべての当事者との政治的対話を行うという原則に従い、ネパールは憲法のあらゆる問題を満足に解決できると信じている」とし、「両国関係はオリ氏の指導力のもとで、より強まるだろう」と関係改善を強調した。オリ氏は「インドとの関係は重要だ」と応じた。

両首脳は会見の席上、インドからネパールへの送電線使用を開始するセレモニーを行った。また両国は、インド国境に近いネパール南部の道路整備を急ぐ合意文書などに調印した。
 
ネパールの新憲法をめぐっては、マデシが、新たな州区割りなどによって、議席が十分確保されなくなったとして抗議し、インド政府も憲法公布直前にジャイシャンカル外務次官を派遣して、「全当事者の総意で問題を解決すべきだ」と見直しを迫っていた。

マデシは主要国境を封鎖したため、インドからの燃料を含む物流がほぼ停止した。オリ氏は「インドによる非公式の国境封鎖」と非難し、インドはこれを否定してきた。

しかし、先月の憲法改正でマデシの要求が一部満たされ、マデシは約4カ月半にわたった封鎖を解除していた。オリ氏は中国にすり寄る姿勢も示していたが、伝統的な友好国であるインドとの良好な関係を修復させた。【2月20日 産経】
*******************

最後に、中国から見た、日本人とインド人の比較に関する記事を。

****日本人はインド人に学んだ方がよいのでは? 真面目すぎる日本人、「陽気で臆せずちゃらんぽらん」にも効用が=中国メディア****
中国メディアの易発達新聞はこのほど、「真面目すぎる日本人、インドのおじさんに学ぶべきだよ!」と題する文章を掲載した。筆者は日本人の真面目な性格を高く評価した上で、最近になり知ったインド人が日本人とは全く異なることに驚き、日本人はもっと「鈍感力」を持った方がよいと主張した。

インド人の性格が日本人と「正反対」と痛感したのは、インドを旅行した際という。インドでの会話は、英語を使うことになる。英語の上手な人はもちろん多いが、記事によると、英語が苦手でもインド人は、自分の間違いを気にしない。とにかく、どんどん話す。

「them」とすべきところを、すべて「he」として、平気で話しつづける人がいた。否定の「not」も入れないことがあるので、聞いている方は混乱する。主語の位置がおかしいのはしょっちゅう。それでもなんとか会話は成立する。

文章は、インド人の「相手に伝えよう」という情熱を高く評価。混乱気味で進む会話だが不愉快になることはなく、いい加減な英語でも臆面なく話すインド人には、一種の「吸引力」さえ感じると言う。そして、一生懸命に自分の考えを伝えようとしたインド人には、よいイメージが残ることになると主張した。

筆者は次に、日本人の英会話に思いを巡らせた。特に得意な人でないかぎり、日本人は「正確な英語を話そう」ということにとらわれすぎてしまう。会話しながらも「しまった。今の英語は間違っていた」と反省しきり。あまりにも真面目すぎるので失敗を恐れ、結局は、言葉数がどんどん少なくなっていくと指摘した。

文章は、正式なビジネスの会話でもないかぎり、「おしゃべりで、文法の正しさは些末なこと」と指摘し、せっかくの交流の機会なのに、文法の正確さにこだわるあまり、意思疎通ができなくなってしまうのは「本末転倒」と批判した。

文章は、インド人を「面の皮が厚い」、「鈍感力にあふれている」と評した。そして「日本人は真面目すぎる。インド人の鈍感力が加われば、日本人は世界最強のはず」と力説した。そして最後に、日本人に対して「インドのおじさんと、おしゃべりしてみると良いですよ」とつけ加えた。(後略)【2月20日 Searchina】
****************

語学に関しては、指摘のように、まず使うことを恐れないというのが大切であり、私を含めた日本人が英語を苦手としている大きな原因でしょう。

「陽気で臆せずちゃらんぽらん」なインド人の問題は、またいろいろあるのでしょうが。
「自分たちのやり方を押し通そうとする」中国人の問題も。
コメント

インド  トラやヒョウより厄介な人間

2016-02-21 11:02:57 | 南アジア(インド)

【2月11日 AFP】

今、福岡空港で飛行機を待っています。
インドへ1週間ほど行ってきます。
今回の目的地は、アジャンタとエローラの石窟寺院という、ベタな観光地です。
いつものように、一人旅です。

そんな訳で、最近のインドの話題を探すと、いかにもインドらしい話題が。

****インド東部の市街地 ゾウ大暴れ 100棟超が被害****
インド東部で、市街地に迷い込んだ野生のゾウがおよそ7時間にわたって街の中で暴れ、100棟を超える建物に被害が出るなど一時、騒然となりました。

インド東部、西ベンガル州の都市シリグリで、10日朝、野生の雌のゾウ1頭が近くの森から市街地に迷い込みました。

ゾウは興奮した様子で街の中を走り回り、住宅や小屋などの建物に体当たりして壊したり、止めてあったバイクを次々と踏みつぶしたりしました。

現地からの報道によりますとけが人はいませんでしたが、100棟を超える建物に被害が出たということです。
現場では、迷い込んできたゾウを一目見ようと大勢の住民が集まって大混雑する一幕もあり、地元当局は大勢の人に取り囲まれたと感じたゾウがパニックになった可能性があると見ています。

ゾウはおよそ7時間後、麻酔銃でおとなしくなったところをクレーンを使ってトラックの荷台に乗せられ、森に帰されました。

ロイター通信は、野生動物の専門家の話としてインドでは経済成長に伴う開発で野生のゾウの生息地が失われ、ゾウが人里に迷い込みトラブルになるケースが増えていると伝えています。【1月11日 NHK】
*******************

ゾウもいますが、ヒョウだっています。

****インド・バンガロールでまたヒョウ騒ぎ、130の学校が閉鎖****
数日前にヒョウが5人を負傷させる騒ぎがあったばかりのインド南部バンガロール(Bangalore)で11日、再びヒョウの目撃情報があり、付近の130の学校が閉鎖した。教育当局が述べた。

7日に敷地内に侵入したヒョウが捕獲された学校から6キロほど離れた地区で、女性がヒョウを目撃したとの情報があり、パニックが広がった。森林局職員によると、目撃情報があった場所の周辺を捜索したものの、ヒョウは見つからなかったという。【2月11日 AFP】
**********************

しかし、ゾウやヒョウより厄介で怖いのは人間です。

インドは周知のようにヒンズー教徒が多数派ですが、イスラム教徒なども大勢います。
両社の対立は、インドの抱える最大の問題のひとつですが、ヒンズー至上主義とも言われるモディ首相のもとで、ヒンズー的価値観を強要するような空気が濃くなっています。

モディ首相自身がそういう言動をすることは多くはないとは思いますが、首相に政治的に近い勢力がヒンズー至上主敵言動を強めることを黙認しているとも。

****「牛肉食べた」イスラム教徒を集団殺害の容疑、15人訴追 インド*****
インドのウッタルプラデシュ州の警察は26日までに、牛肉を食べたり家内での保存が疑われたイスラム教徒の50歳男性が住民の集団暴行で殺害されたと報告した。15人が殺人罪で訴追された。

事件は今年9月、人口が6000人以上の地域で発生。イスラム教徒は2家族しかおらず、鍛冶(かじ)職人だった被害者の男性はそのうちの1世帯に属していた。

事件では被害者の自宅も襲われて略奪を受け、高齢の母親や22歳の息子も殴打されるなどした。息子は重傷で病院に運ばれたという。

被害者の自宅の冷蔵庫には牛肉があるとの情報も流れ、地元警察は科学捜査の結果を待っている。

ンドで圧倒的な多数派を占めるヒンドゥー教は牛を神聖視しており、殺害などはウッタルプラデシュ州を含む大半の地域で禁じられ、犯せば罪となる。

同国内ではここ数カ月間、少なくとも2人のイスラム教徒男性が牛肉を運んだり、牛の密輸に加わったとのうわさが流れる中で襲撃される事件が起きていた。【2015年12月26日 CNN】
******************

もともと、「法治」の意識があまり定着していないようにも思えます。

****群衆がアフリカ女子学生を暴行、交通事故の報復か インド****
インド南部バンガロール)の警察当局は4日、タンザニア人女子学生(21)を暴行し車に火を付けたとして、5人を逮捕した。アフリカ人運転手が起こした自動車死亡事故に怒った群衆が、たまたま現場近くを通りがかった女子学生らに報復として襲い掛かったとみられる。

警察に3日に出された被害届によると、この女子学生は先月31日夜、友人男性と車に乗っていたところを襲撃された。現場近くでは、その少し前に、スーダン人運転手の車に地元女性がひかれて死亡する事故が起きていた。

現地紙タイムズ・オブ・インディアが被害届の内容として報じたところによると、女子学生は「車に火を付けられた。群衆が私のTシャツを強く引っ張ったので、シャツは裂けて脱げてしまった。皆が殴ってくるので、私たちは命からがら逃げた」「友人と私はバスに飛び乗ったが、運転手は発車しようとせず、他の乗客によって私たちはバスの外に放り出された。私にシャツをくれた通りすがりの人も、同じように殴られていた」などと訴えている。

被害届によれば女子学生は、現場にいた警察官に助けを求め、自分はタンザニア人で交通事故とは関係ないと強調したが、警官は「どこから見てもそっくりだ」などと言って助けてくれなかったという。【2月5日 AFP】
********************

宗教対立と並んで、インド社会の抱える最大の問題のひとつがカースト制の問題。

なかなか外部の人間にはわかりづらい問題ですが、社会的に差別される低カーストを支援する政策が、上位カーストからすると「逆差別」と映るという、非常に微妙な問題もあるようです。

*****<インド>低カーストの優遇要求デモ暴徒化 衝突で3人死亡****
インド北部ハリヤナ州ロータクで19日、カーストの優遇措置の適用を求めるデモが暴徒化し、治安部隊と衝突した。地元民放NDTVによると、治安部隊の発砲などで少なくとも3人が死亡、多数の負傷者が出た。治安当局はロータクや周辺地域に外出禁止令を出し警戒を強めている。

地元メディアによると、デモを起こしているのは「ジャート」と呼ばれる農業者中心のカースト集団。公務員の採用や大学入試などで低カーストを優遇する制度の適用を求めている。

デモは数日前から始まり、幹線道路や鉄道の線路に座り込み交通を妨害。一部が暴徒化し、州政府の閣僚の自宅や警察車両、ショッピングモールなどに放火した。デモは周辺地域にも広がっており、軍が警戒に当たっている。ハリヤナ州は首都ニューデリーに隣接しているため、混乱が続けば首都の物流に影響する可能性もある。

カースト制度はインドの伝統的な階級制度で、出自により数千の集団に分かれる。低カースト層は差別の対象になってきたため、政府は公務員の採用などで特定のカーストを優遇しているが、上位カーストからは「逆差別だ」との批判もあり、カースト単位のデモがたびたび発生している。【2月20日 毎日】
******************

今、ニューデリーのホテルにいます。
上海からデリーの飛行機が4時間遅れ、深夜2時到着予定が、朝の6時に。
その関係で、ホテルでのチェックインもゴタゴタ。

まあ、なんとか部屋に入れました。とりあえずアップします。疲れた。
コメント

中国  習氏を「核心」とする「忠誠心競争」 強まる管理・統制にあって異論も

2016-02-19 22:37:02 | 中国

【2月16日 読売】

【「習総書記は党中央の指導の核心だ」】
中国共産党内部あるいは政権内部の権力争いについては、外部からはなかなかわからないものがあります。

習近平国家主席についても、腐敗・汚職の粛清運動の形で対抗勢力をけん制し、その権力基盤が強固になっているという見方と、まったく逆に、そうした権力闘争の結果、党・政権・軍部内部に不満・批判を抱え、権力基盤は不安定であるとする見方があります。

大手メディアの報道は概ね、前者の立場が強いようです。
下記記事によれば、習氏を「核心」とする「忠誠心競争」が広がっているそうです。

****習氏は核心」表現相次ぐ=地方指導者から、権力集中反映か―中国****
中国でこのところ、習近平共産党総書記(国家主席)を「党中央の核心」と位置付ける発言が地方の党指導者から相次いでいる。

胡錦濤前総書記は任期中の10年間、集団指導体制を崩さず、「核心」という表現は使われなかったが、習氏は党トップに就任してから権力集中を進めており、「核心」の表現は党内のこうした現実を反映したものとみられる。

中国共産党では、毛沢東、トウ小平、江沢民の歴代最高指導者は第1〜第3世代の「核心」と位置付けられたが、胡氏の場合は「胡錦濤同志を総書記とする党中央」と呼ばれた。2012年11月に就任した習総書記もこれを踏襲したが、反腐敗闘争や軍の大規模改革で、党・軍での権力基盤を固めつつあり、昨年12月末の党重要会議では「党全体が中央に倣え」と強く指示した。

各地の党委員会機関紙などによると、四川省の王東明党委書記と天津市の黄興国党委書記代理が主宰した1月11日の会議はそれぞれ「習総書記という核心を断固守る」との姿勢を強調。15日に李鴻忠湖北省党委書記が主宰した会議は「習総書記は党中央の指導の核心だ」とさらに踏み込んだ。

14日には首都・北京市の郭金竜党委書記も「いかなる時より強い指導の核心を必要としている」と述べるなど、地方トップが習氏への「忠誠」を競い合っている状況だ。【2月1日 時事】 
*******************

こういう動きが始まると、沈黙を守るのは“不満・批判分子”と見なされますので、皆がこぞって・・・と、加速します。

****習氏は党の「核心」・・・地方トップの忠誠表明続々****
中国の地方トップから、 習近平 ( シージンピン )・共産党総書記(国家主席)を党内で別格の存在であることを意味する「核心」と位置付ける発言が相次いでいる。

中国メディアによると、15日までに、中国本土の31の省・直轄市・自治区のうち、すでに約20人が表明した。習氏が自らの更なる権威化を目指し、党幹部の「忠誠度」を試しているとの見方も出ている。(後略)【2月16日 読売】
********************

郭伯雄、徐才厚の両制服組トップを失脚においこんだ軍部についても、従来「軍区」から新たな「戦区」に変更する改革を行っています。

****習近平主席、中国人民解放軍の5つの「戦区」発足宣言****
中国国営中央テレビ(CCTV)によると、中国人民解放軍戦区成立大会が1日、北京で行われ、習近平国家主席(中央軍事委員会主席兼務)が新しく発足した東部、西部、南部、北部、中部の五つの戦区の司令官と政治委員に軍旗を授与した。習主席は「各戦区には平和を維持し、戦争に勝つ使命がある」と訓示した。

中国人民解放軍はこれまで、北京、瀋陽、蘭州、済南、成都、南京、広州の7つの軍区があった。習指導部による軍改革の一環で5つに統合され、名称も軍区から戦区に変更された。

反腐敗キャンペーンで昨年までに胡錦濤時代を支えた郭伯雄、徐才厚の両制服組トップが失脚したため、習指導部は軍内の組織再編を通じて軍の掌握を進めたい思惑があるといわれる。(中略)

この日発表された戦区の区分けと本部所在地は昨年まで伝えられたものはかなり違っており、区分けの際に軍現場で激しい主導権争いがあった可能性もある。【2月1日 産経】
*******************

軍部の改革はいろんな要素が絡む問題でしょうが、やはり軍部への大きな影響力がないと実現できませんし、また改革を行うことで、一層その影響力が強化されるようにも思われます。

メディア統制を強める習政権】
こうした党内・政権内部での立場を強化し、軍部への影響力も強めるように見える習近平政権ですが、一方で、民衆には不満も鬱積しており、国民に対しては管理・統制を強めていること、習近平政権になってから、報道の自由への弾圧が一段と厳しくなってきたことは、2月1日ブログ“中国 「チョコレート少女自殺事件」に見る格差と民衆の不満、その不満を封じ込めようとする当局”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160201でも取り上げました。

管理・統制は、海外メディアにも及んでいます。

*****中国、海外メディア制限 G20取材 景気減速“ヤリ玉”警戒*****
中国上海市で26〜27日に開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議をめぐり、取材を希望する海外メディア記者の受け入れ人数を、中国政府が大幅に制限していることが分かった。G20の会議で参加国の記者に制限を加えるのは極めて異例だ。

中国財政省はインターネット経由でG20取材の記者登録を受け付けた。だが、日本を含むG20メンバー国のメディアで、登録申請したものの「承認しない」と拒否される記者が続出した。中国財政省は「受け入れ態勢の限界」を理由に、記者の人数に制限を加えていることを認めた。承認状況はまちまちで、統一された基準はないもようだ。

上海の会議では、中国の景気減速や人民元安を震源とする金融市場の大幅な変動が議題に上る可能性が高い。中国を“ヤリ玉”にあげる報道がなされることへの懸念が、当局による記者の人数制限という動きに結びついた恐れがある。

テロへの警戒も理由のひとつだが、異例の取材制限は、先行き不透明な中国経済への不安をあおり、逆効果にもなりかねない。G20の議長国を初めて務める中国政府に対し、国際社会から批判も出そうだ。【2月19日 産経】
*******************

また、習近平氏自身が中央メディアを相次いで視察しており、管理強化の狙いとも指摘されています。

****中央メディアを相次ぎ視察=世論の主導権狙う―中国主席****
中国の習近平国家主席は19日、共産党機関紙・人民日報、国営の新華社通信、中央テレビ(CCTV)を相次ぎ視察した。インターネット上などで共産党・政府に対する「異論」が高まる中、中央メディアをそろって訪れることで、世論の主導権を握り、管理を強化する狙いがありそうだ。

中央テレビによると、習主席は夜の看板ニュース番組「新聞聯播」のスタジオで、アナウンサーの席に座った。人民日報では「新メディアセンター」を訪れ、中国版ツイッター「微博」や中国版LINE「微信」などの運営状況に関心を示した。 【2月19日 時事】
**********************

【「環球時報」編集長「言論の自由は社会の活力と切り離せない関係にある」】
こうした“批判を許さない”雰囲気が強まるなかで、共産党機関紙傘下にある「環球時報」の幹部が“批判を容認すべし”との異例の発言を行っているとか。

****中国政府は批判を「容認すべきだ」 言論統制に反対 中国紙「環球時報」編集長が異例のつぶやき****
中国共産党機関紙、人民日報の傘下にある国際情報紙、環球時報の幹部が中国版ツイッター「微博」で、「中国政府は非建設的な批判であっても一定程度まで容認すべきだ」と、言論統制を強める当局への“反旗”とも受け取れる異例の発言を行い、話題となっている。

この発言を今月14日に投稿したのは同紙の胡錫進編集長。直接的な当局批判となる表現は微妙に避けながらも、「言論の自由は社会の活力と切り離せない関係にある」などと踏み込んだ。発言は19日夕の段階でも削除されていない。

微博の一般ユーザーからは「よく発言した」との賛意のほか、「(言論の自由は)当たり前のことなのに弱腰すぎる」「編集長の身の安全は大丈夫か」など、数千件のコメントが寄せられている。

中国では社会の暗部を取材した記者が相次ぎ拘束されるなど、報道機関に対する監視が一段と強まっているが、本来は情報統制する側に近い胡氏による発言だけに、関心が集まった。

一方で胡氏は、「公費で欧州へ旅行に行った」などとして1月に警告処分を受けており、当局との間で業務上の何らかの摩擦が起きている可能性もある。【2月19日 産経】
********************

胡編集長の発言がどういう事情によるものかはわかりませんし、習近平政権の管理・統制強化の流れがこれで変わるものでもないでしょう。

ただ、微博の一般ユーザーから数千件のコメントが寄せられているというように、国民一般には共産党による管理・統制への不満が強まっているのも事実でしょう。

ふつふつと沸き立つ不満に蓋をすることは、やがて蓋を吹き飛ばすような事態を招く、従って、一定に自由な批判も容認すべきだ・・・・と考えるのか、あるいは、かつてのソ連では「グラスノスチ」(情報公開)が国民の反共産党感情を一気に高め、最終的にはソ連解体を招く結果となった、だから、政権批判につながるような言動は許してはならないと考えるのか。

習政権は後者のようですが、情報発信が格段に容易になったネット社会の現代にあって、そうした対応がいつまで通用するのか・・・疑問もあります。
コメント