孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  “政治の季節”北戴河会議を前に飛び交う“ウワサ”は変化の予兆か?

2018-07-31 21:59:37 | 中国

(上海 習近平国家主席のプパガンダ看板に墨汁をぶちまける女性【7月9日 Radio Taiwan International】)

【「墨汁事件」以来、ささやかれる“ウワサ”】
中国では、共産党の指導部や長老らが河北省の避暑地に集まり、人事や重要政策について非公式に議論する「北戴河会議」が間もなく始まります。

この“政治の季節”を前にして、憲法改正で国家主席の任期制限を撤廃し、「一強体制」を確立したと思われている習近平国家主席の政治的立場に揺らぎがあるのでは・・・との“ウワサ”が囁かれています。

“ウワサ”の発端は、上海の一人の女性が習近平主席の看板に墨汁をぶっかけた・・・という“事件”でした。

****急展開! 習近平「没落」で中国政治のリベラル化がやってくる****
今月になり、中国政治のゴシップがかまびすしいのはご存知だろうか。いわく、習近平の懐刀が事実上の失脚状態にある。またいわく、習近平はこれから実権を奪われてレームダック化する……云々。

真偽のほどはともかく、中国国内の政情に関心を持つ在外中国人や、国外の中国ウォッチャーの間では注目を集めている話だ。

習近平の看板に墨汁をぶっかけた
発端となったのは、7月4日朝7時前に上海のビジネス街・陸家嘴で発生した「墨汁事件」である。これは同日、上海市内に暮らす董瑶琼という女性が「私は中国共産党による洗脳に反対する」「習近平の独裁的で専制的な暴政に反対する」と述べ、街角にあった政権のプロパガンダ看板上の習近平の顔に墨汁をぶっかけたものだ。

事件後、董瑶琼さんは自宅に警官がやってきた様子をツイッターで実況した後で行方不明になる。(中略)

中国ではかつて毛沢東時代に行き過ぎた権力集中と個人崇拝によって国家体制が硬直化し、多数の政治的迫害や社会の発展の停滞を招いた。そのため1980年前後に鄧小平が権力を握って以降はこれらが強く戒められてきた。

だが、2013年の習近平政権の成立以来、習近平はこれらのタブーを無視。自分自身や父親の習仲勲に対する個人崇拝をなかば公然と復活させ、政権第2期となった今年春には国家主席の任期制を廃止したり、憲法に「習近平新時代中国特色社会主義思想」と自身の名前を冠した思想を盛り込むなど、やりたい放題となっていた。

これは現代中国版「裸の王様」なのか?
当然、これに違和感を持つ中国人は少なからずいた。しかし党内では人事権を事実上は握っている習近平の権勢が強すぎ、国内では庶民層を中心に習近平の人気が高すぎるために、アンチ習近平の声は従来は意外なほどに表面化せずにきた。(中略)

今回の墨汁事件は、上海の若い女性が「みんな薄々は思っていたけれど誰もしなかったことをした」という、童話の「裸の王様」みたいな事件である。逆に言えば、習近平政権成立以来の中国国内では、この程度の行為すらもみんなビビってやらなくなっていたのだ。

メディアも習近平に「反乱」?
歴史はつまらないことから動き出す。この墨汁事件後、中国国内では興味深い動きが出はじめた。例えば7月9日、党機関紙『人民日報』のトップページに「習近平」の文字を含んだ見出しが一切出なくなった。

加えて7月15日にも同様の現象が観察された。1週間のうち何度も習近平に一切言及しないトップ紙面が組まれるのは政権成立以来はじめてのことだ。

また、7月11日には国営通信社・新華社のウェブ版が「華国鋒は誤りを認めた」という過去の歴史記事を突如として再配信し、中国のネット上で盛んに転載された。

華国鋒は1976年に党主席に就任した後、毛沢東時代の文化大革命式の政治を改めることなく自身の個人崇拝キャンペーンを推進したが政治力が足りずに失敗。経済の失策もあって、鄧小平から批判を受けて失脚した人物だ。新華社の記事は間もなく削除されたが、「文革風」の政治姿勢を見せる習近平を遠回しに当てこする目的があったのは明らかだった。

習近平は2016年2月、人民日報・新華社と国営テレビのCCTVを視察して「媒体姓党」(メディアの姓は党=メディアは共産党の指導下にあるべし)キャンペーンをおこない報道統制を強めたことがあったが、「統制される側」は相当な不満を持っていたであろうことは想像に難くない。上海の墨汁事件をきっかけに、人民日報や新華社がこっそりと従来の不満を表明する挙に出たのだろう。

また、7月12日には北京二龍路派出所が地域の会社に「習近平の写真・画像やポスターおよび宣伝品」を撤去するよう通知を出していたことがネット上で暴露されたとされる。陝西省で実施されていた、学術研究の形をとった習近平への個人崇拝運動の中止も報じられている。

すでに腹心は失脚? さらに習近平失脚のウワサも
中国上層部の動きは外部からうかがい知れないが、さらにガセネタ寸前のウワサのレベルではさまざまな話が出つつある。

たとえば、習近平の個人崇拝キャンペーンの仕掛け人である王滬寧・党中央書記処常務書記(序列5位)の最近の動向が確認できなくなり、事実上の失脚説が出ている。

王滬寧は党の最高機関・常務委員会のメンバーの1人であり、健康問題以外での党常務委員の失脚は、仮に事実ならば「政変」と呼ばれるべき事態だ。

また、フランスの『RFI』中国語版や香港の諸報道によると、江沢民・胡錦濤・朱鎔基ら党の大物OBグループが近年の習近平への個人崇拝に不満をつのらせ、政治局拡大会議を開いて習近平を失脚状態に追い込むことを画策する動きがあるという。これはかつての華国鋒が追い落とされたプロセスを参考にしたものだとされる。

上記のウワサによれば、習近平の失脚後に台頭が見込まれているのが、現在は実権のない政治協商会議主席に押し込められている党内序列4位の汪洋だ。(中略)

党長老の"秘密会議"に注目
習近平の失脚や汪洋の台頭はもちろん、王滬寧の失脚説ですらもただのウワサである。

だが、真偽はさておき火のないところに煙は立たない。中国の内部でなんらかの政治的な変動が起きているのはほぼ間違いないだろう。

習近平政権は現在、アメリカとの貿易摩擦の拡大にともなう経済混乱に苦しんでおり、これは政権発足以来の最大の失点であるともみなされている。

(意地の悪い見方をすれば、上海の墨汁事件は反習近平派の政治勢力がなんらかの後ろ盾になって実行された可能性もある。共青団派の政治家の一部は、中国国内の人権活動家や民主化運動家のグループと一定程度のコネを持っていると見られるからだ。)

今年も夏の盛りになると、党長老も参加する中国共産党の毎年恒例の秘密会議、北戴河会議が開催される予定だ。その結果次第では習近平体制になんらかのほころびが生まれることになるかもしれない。(後略)【7月23日 安田 峰俊氏 文春オンライン】
*****************

一方、こうした“ウワサ”をもっともらしく取り上げて失脚の可能性まで論じる中国ウォッチャーを嗤う見方もあります。

****習近平氏失脚を論じる愚****
今週は、このコラムにしては珍しく、中国内政に関する「噂話」を真正面から取り上げる。理由は、ゴシップの中身もさることながら、この程度のことを大々的に報じるいい加減な中国関連記事が日本は勿論、世界にも少なくないからだ。

最近はトランプ氏、金正恩氏、プーチン氏による田舎芝居の影で中国の出番がなかったからだろうか。まずは事実関係と噂の内容のみを可能な限り客観的に述べよう。

(中略 上記【文春】記事で取り上げている事柄が列挙されています。)

他にもあるが、もう十分だろう。これだけの事実と噂話だけで中国専門家の一部は実に尤もらしい解説をやってのける。大したものだ。

習近平氏の権力集中と個人崇拝に対する不満が、民主活動家だけでなく、党長老や国営メディア関係者の間にも高まりつつあり、習近平派の要人や習近平氏自身も失脚した可能性があるのだという。

本当かね?確か習近平氏は現在外遊中、帰国後は避暑地・北戴河で毎年恒例の共産党幹部非公式会議に臨むはずだ。

よく考えてみたら、毎年「北戴河会議」の前後はこの種の面白可笑しい噂が氾濫する時期でもある。中国に限らないことだが、ある国の内政分析には公開情報をじっくりと読み込む努力が不可欠だと痛感する。(後略)【7月25日 宮家邦彦氏 Japan In-depth】
******************

素人としては、“火のないところに煙は立たない”と言われれば、「そうかもね・・・」と思うし、“本当かね?”と言われれば、これまた「そうかもね・・・」と思うしかありません。

内憂外患の状況で臨む北戴河会議】
習近平主席にとって、国内の欠陥ワクチン事件、国外の米中貿易戦争と、内憂外患の厳しい状況であることは間違いないでしょう。

****内憂外患の中、習近平国家主席が帰国 外遊中に欠陥ワクチンや米大使館爆発事件・・・・北戴河どうなる****
今月19日から中東・アフリカを歴訪していた中国の習近平国家主席が29日、帰国した。

外遊中に欠陥ワクチンの大量接種事件が発覚したほか、北京の米国大使館付近では爆発事件が発生。
米国との貿易摩擦問題でも効果的な手を打てない中、中国共産党の内外で習氏への不満が表面化しつつある。

内憂外患を抱える習氏は間もなく、正念場の党重要会議、北戴河(ほくたいが)会議に臨む。
 
習氏は今回の歴訪を通じ、新興5カ国(BRICS)首脳会議の場などを利用して、「多角的な貿易体制維持」「保護主義反対」で各国と足並みをそろえ、トランプ米政権を牽制(けんせい)することにひとまず成功した。
 
誤算だったのは外遊中に不祥事が起きたことだ。中国の大手製薬会社の欠陥ワクチンが21万人以上の子供に接種されていたことが判明し、保護者から怒りの声が上がった。警察当局は同社幹部らを大量拘束したが、後手に回った政府への批判が起きている。
 
26日には、北京の米国大使館付近で爆発事件が発生。当局が内モンゴル自治区出身の男(26)を拘束して調べている。動機は不明だが、当局は「精神状態が不安定だった」としており、「個人的問題」で事態を収拾しようとしている。
 
習氏をめぐっては外遊前から異変が起きていた。7月初めには、若い女性が「習氏の独裁、暴政に反対する」と叫びながら、習氏の看板に墨汁をかける映像をインターネットに投稿。女性は当局に拘束された後、精神的に問題があるとみなされ専門の病院に収容されたと報じられている。
 
当局が習氏への批判に敏感なのは、近く河北省で北戴河会議が始まるためだ。すでに江沢民(こう・たくみん)元国家主席ら長老が外交政策の見直しなどを求める書簡を党中央に出したとの情報もある。【7月29日 産経】
******************

個人崇拝傾向には“変化”か?】
で、その北戴河会議ですが、党のスローガンから習氏の名前が激減しているという“変化”が見られるとか。

****北戴河会議控え・・・・スローガンから「習近平」消えた 宣伝部門の閣僚級解任、王滬寧氏は雲隠れ****
中国共産党の指導部や長老らが河北省の避暑地に集まり、人事や重要政策について非公式に議論する「北戴河会議」が間もなく始まる。

米中貿易摩擦の激化を受けて習近平総書記(国家主席)への批判が党内外で表面化しつつある中、重要会議の拠点でも党のスローガンから習氏の名前が激減し、習指導部の苦しい立場をうかがわせている。(中略)
 
北戴河の厳戒態勢は例年通りだが“異変”もある。
「新時代の中国の特色ある社会主義思想の偉大な勝利を勝ち取ろう」。街中では会議のために新設した真新しい看板が目につく。

ただ大半は、同思想に本来冠されるべき「習近平による」との表現を省略している。鉄道駅前には習氏の名前が含まれる大看板があったものの、これを含めて習氏の肖像画や写真は全く確認できず、その名前を含むスローガンも数カ所しか見当たらなかった。
 
習氏に対する個人崇拝の動きが一転して抑制され始めたきっかけは米中貿易摩擦の泥沼化だ。習氏は経済政策の実権を李克強首相から奪い、対米交渉もブレーンの劉鶴副首相に一任しており、状況悪化の責任は不可避といえる。

また自国礼賛映画「すごいぞ、わが国」などに象徴される、低姿勢を貫く外交路線「韜光養晦(とうこうようかい)」からの脱却が、米国の対中警戒心をあおってきた側面もある。
 
宣伝部門の異変は人事にも及びつつある。党中央宣伝部の蒋建国副部長は7月25日、国務院の新聞弁公室主任(閣僚級)の解任を突然発表された。

その上司にあたるイデオロギー・宣伝部門の最高責任者、王滬寧(おう・こねい)政治局常務委員は、同月中旬に開かれた党の中央財経委員会会議への出席を最後に公式報道から姿を消し、宣伝工作の失敗の責任を取らされるとの臆測も浮上している。
 
党関係者は今年の北戴河会議の最大テーマについて「中米貿易戦争」とした上で「主戦論の声は非常に小さく、和睦派が大勢を占めている」と指摘する。

習氏もトランプ米政権との安定的な関係は重視しているものの、米側は「協議を継続する意思がない」(クドロー米国家経済会議委員長)として習氏を名指しで批判した。主戦論者の黒幕として事実上認定された格好で、宣伝部門の“尻尾”を切るだけで政治責任を逃れられるかは不透明だ。
 
昨年の党大会では慣例を破って最高指導部に後継候補を昇格させず、今年3月の全国人民代表大会(全人代)では憲法改正で国家主席の任期制限撤廃に踏み切った習氏だが、その3期目続投の野望には暗雲が垂れ込めている。【7月31日 産経】
*******************

【産経】はこの種の話題が好きなようで、習近平氏の個人崇拝に関して、下記の記事も。

****知能レベルの低いこと」習近平主席母校の教授が個人崇拝批判 体制派知識人も反旗 異例の事態****
中国の習近平国家主席の母校、清華大の教授が7月下旬、指導者への個人崇拝を厳しく批判し、国家主席の任期復活や天安門事件の再評価を要求する論文を発表、中国内外で波紋が広がっている。体制側の知識人が中国共産党指導部に“反旗”を翻すのは異例の事態だ。
 
発表した清華大法学院の許章潤教授(55)は安徽省出身。西南政法大を卒業後、オーストラリアのメルボルン大に留学し法学の博士号を取得した。
 
7月24日、北京の民間シンクタンクを通じてインターネット上に公開した論文で、許氏は「国民は今、国家発展や生活安全の危機にひんしている」と指摘。今年3月の全国人民代表大会(国会に相当)で国家主席の任期を撤廃した憲法改正などを問題視した。
 
任期撤廃に関しては「改革開放(の成果)を帳消しにし、恐怖の毛沢東時代に中国を引き戻し、滑稽な、指導者への個人崇拝をもたらすものだ」と非難。任期制に復帰するよう求めた。
 
特に、指導者への個人崇拝については「今すぐブレーキをかけなければならない」と主張。「なぜこのような知能レベルの低いことが行われ、なぜ理論家や研究者といわれる人々が抵抗しなかったのか、反省すべきだ」と痛烈に批判した。
 
さらに1989年に大学生らの民主化運動を武力鎮圧した天安門事件に関し、「今年か(発生30年を迎える)来年の適当な時期の再評価」を要求。「これらのことは現代政治の一般常識であり、国民全ての願いだ」と党に再考を促した。
 
許氏の論文について、天安門事件で失脚した趙紫陽元首相の秘書を務めた鮑●氏(●=杉の木へんを丹)は賛意を示す一方、許氏の安全を危惧している。
 
現在、中国本土では許氏の論文がネットで閲覧できなくなっている。
 
中国では最近、習氏への個人崇拝に対する批判が表面化している。5月にも名門、北京大で「毛沢東は個人崇拝を推し進め…人民は無数の災禍を経験した」「習氏は個人崇拝を大々的に推進している…警戒を強めるべきだ」などとする壁新聞が出現、関心を集めた。【7月30日 産経】
******************

国家主席任期撤廃や個人崇拝への批判はともかく、天安門事件再評価となると、習近平主席の政治的立場だけでなく、共産党支配体制の見直しともなる大問題です。

「墨汁事件」から上記の個人崇拝批判まで、一連の“出来事”が(失脚云々はともかく)何らかの中国政治の変化を予兆するものなのか、単なる“ウワサ”“ガセネタ”を惹起しているだけなのか・・・わかりません。

まあ、北戴河でスローガンから「習近平」消えたということであれば、近年の行き過ぎた個人崇拝に対する何らかの“揺り戻し”があるのかも・・・という感はしますが。
コメント

カンボジア総選挙  最大野党排除で与党圧勝 批判的な欧米、中国を意識する日本の今後の対応は?

2018-07-30 22:33:03 | 東南アジア

(カンボジアのプノンペンで下院選の投票を済ませ、インクの付いた手を見せるフン・セン首相(2018年7月29日撮影)【7月30日 AFP】)

最大野党を排除しての与党圧勝という茶番
昨日行われたカンボジア総選挙は、最大野党・救国党を解党に追い込んだフン・セン首相率いる与党・人民党がシナリオどおり議席の9割超を獲得する圧勝する(与党独自集計では全議席獲得という情報もあるようですが、人民党114、フンシンペック党6、草の根民主党5といった数字が関係筋からは示されているようです)という、およそ民主主義とは無縁の“茶番”となっています。

フン・セン首相が最大野党・救国党を解党に追い込み、前党首サム・レンシー氏はフランスへ亡命、ケム・ソカ党首ら野党幹部を拘束するといった政治弾圧を行っているのは、前回選挙で救国党に追い上げられ、このままでは政権を失うとの危機感があったものと見られています。

弾圧に対する首相側の表向きの言い方としては、「反逆者を排除した」「正当な政府を転覆しようとする野党や陰で糸を引く外国人らの試みは、厳格な法的措置によって阻止された」ということになります。

****カンボジア首相 「反逆者の排除」成功をアピール、29日に総選挙****
カンボジア下院総選挙の投開票を2日後に控えた27日、フン・セン首相が首都プノンペンで開かれた選挙集会で演説し、最大野党の解党に言及して「反逆者の排除」に成功したとアピールした。有力な野党が存在しない中、カンボジアの事実上の一党独裁は続く見通しだ。
 
(中略)フン・セン首相はいつもの大げさな表現で総選挙の勝利を誓うとともに野党勢力を攻撃した。野党勢力の多くの人は投獄、政治亡命、国内での潜伏などの憂き目にあっている。

フン・セン首相はCNRPの解党に言及し、「最近、政府転覆を企てた反逆者どもを排除する法的措置を取った」と語った。「やつらを厳しく排除していなかったら今ごろカンボジアは戦場となっていただろう」
 
1990年代以降、自身の政権下でカンボジアが平和とある程度の繁栄を享受してきたというのが、フン・セン首相が訴える実績の柱だ。

カンボジアは1990年代初めに内戦を脱し、クメールルージュとも呼ばれたポル・ポト派を消滅させている。CPPは年率6〜7%ほどの成長率でカンボジア経済を押し上げている。

ある支持者は、「CPPと共にわが国は成長している。学校も、平和も、あらゆるものを手にしてきた」「7月29日、わが党は大勝利を手にするだろう」と語った。

総選挙には20党が候補者を出しているが、これらの多くは新党か素性のあやしい党で、選挙に正統性を与えるために参加したと批判されている。

国際人権連盟のデビー・ストサード事務局長は26日、「カンボジアの選挙は、フン・セン氏の独裁的支配を延命させるためのごまかしだ。カンボジアをさらに悲惨で抑圧された状態に陥れるものだ」と指摘した。【7月27日 AFP】
***************

フン・セン首相がカンボジア国民ともに内戦の地獄を生き抜き、内戦後の復興をリードしてきたのは事実ですが、最大野党を排除して政権を維持することを正当化できるものでもありません。

“カンボジアで長きにわたった内戦が終わり、国連の下で復興に向けた総選挙が1993年に実施されて25年。経済は徐々に発展を遂げ、首都プノンペンの表情は見違えるようになった。だが、農村部との格差は広がるばかり。フン・セン政権の「1強政治」が続くなか、物言えぬ閉塞(へいそく)感も社会に広がりつつある。”【7月25日 朝日】という長期政権の弊害も強くなっています。

当然ながら、救国党側は、今回選挙を強く批判しています。

****カンボジア総選挙 最大野党幹部「民主主義は死んだ****
(中略)去年、フン・セン政権によって解党に追い込まれ、今回の選挙に参加できなかった最大野党・救国党のムー・ソクア副党首は30日、インドネシアの首都ジャカルタで記者会見を開き、「選挙が行われた7月29日はカンボジアの民主主義が死んだ日となった」と述べて、選挙に正当性はないと強く主張しました。

また国家反逆の疑いで逮捕された救国党党首の娘で、党の幹部でもあるケム・モノビチア氏は、「フン・セン政権を非難するだけでは現状を変えることはできない。行動は言葉より強い力を持つ。関係国には選挙の支援を打ち切ったアメリカやEU=ヨーロッパ連合のように、カンボジアに対して適切な措置を検討してほしい」と述べて、フン・セン政権に対して厳しい対応を取るよう国際社会に訴えました。【7月30日 NHK】
******************

また、救国党の前党首、サム・レンシー氏は、滞在先のフランスで「われわれは、すべての国民に今回の選挙を認めないよう求めるとともに、デモ行進を行ったり、国際社会に対してフン・セン政権に制裁を科すよう求めたりするなど、あらゆる平和的な手段で抗議するよう呼びかける」と述べ、引き続き抵抗していく考えを示しています。

ボイコットか、選挙参加で権利主張か・・・悩ましい選択
今回、選挙戦への参加を許されなかった最大野党・救国党は選挙のボイコットを訴えており、与党圧勝は確実としても、その投票率が注目されました。

****カンボジア、29日に下院選 与党、投票率上昇に躍起****
カンボジア下院選が29日、投開票される。解散を強いられ選挙に参加できなかった旧最大野党側は投票ボイコットを呼び掛けるが、圧勝が濃厚なフン・セン政権はあの手この手で投票率を上げ、選挙での信任を国際社会に訴える構えだ。
 
2013年の前回下院選で与党カンボジア人民党に肉薄したカンボジア救国党は昨年11月、政府転覆計画に関わったとして解散に追い込まれた。国外逃亡中のサム・レンシー元党首らは不当な選挙だとし、国民に投票に行かないよう呼び掛けている。
 
選挙運動最終日の27日、与党はプノンペンで数万人規模の集会を開いた。【7月27日 共同】
******************

“あの手この手”には、当然金品による誘導もあるでしょうし、地域社会における公然、あるいは暗黙の圧力もあるでしょう。投票時に二重投票防止のために指にインクがつけられますので、投票したかどうかは一目瞭然です。厳しい監視の目が光る地方では不利益を恐れて投票に行かざるを得ない実情もあります。

野党側の中にも、ボイコット戦術には異論があります。

****投票率、焦点に カンボジア総選挙、あす投開票***
カンボジア下院(定数125)の総選挙が、29日に投開票される。選挙戦の最終日となった27日、与党・人民党などが最後の訴えをし、投票を呼びかけた。前回総選挙で躍進した最大野党・救国党が解党され、与党の勝利は揺るがない情勢だが、救国党側は投票のボイコットを呼びかけており投票率が焦点になりそうだ。(中略)

一方、政治の変革を掲げて初めて総選挙に挑む野党・草の根民主党は、世界遺産のアンコールワットがある中部シエムレアプで最後の選挙運動を行った。創設者の一人のヤン・セン・コマ氏は「自立したカンボジアをつくるには、我々に投票することが最良の選択だ」と訴えた。

2013年の前回総選挙では最大野党の救国党が4割以上を得票し、人民党に迫ったが、政権転覆を謀ったとして最高裁が昨年11月に解党を命じた。救国党の勢いを、フン・セン政権が恐れたためとみられている。今回の選挙では、救国党が得た約300万票の行方に注目が集まっている。

救国党元幹部らは、自らが参加できない選挙は「フェイク(偽)だ」として、投票ボイコットを呼びかけている。前回、救国党に投票したシエムレアプのトゥクトゥク(3輪タクシー)運転手の男性(43)は「今回は行かない」と話す。

一方で、救国党の支持者らの間には「投票の権利は行使したい」という声もあり、草の根民主党の支持に回る動きもある。

政府・与党にとっては、ボイコットが広がって投票率が下がれば、選挙の「正当性」を主張しにくくなるだけに、有権者らに投票に行くよう「圧力」をかけているとの指摘もある。

前回の投票率は70%近くあり、「60%を切るようなことになると、与党にとっては厳しいのでは」とNGO関係者は話す。

欧米諸国はすでに正当性を認めておらず、選挙支援から手を引いている。投票日を前に国際人権団体なども改めて批判しており、投票率が低ければ非難がさらに強まる可能性がある。【7月28日 朝日】
*******************

「草の根民主党(GDP)」については以下のようにも。

****逆境の中でも希望を捨てずに独立系の政党活動を続ける人々****
・・・・このような状況では、2018年の総選挙は自由で公正な選挙とはいえないという見解が国際社会で強まっているが、逆風の中、農家と市民を母体とし、民主的な政党活動を続ける新しい政党がある。草の根民主党(Grassroots Democratic Party: GDP)である。

GDPは2015年8月2日に、「クメールのためのクメール(Khmer for Khmer:KfK)」という社会ネットワークの仲介により、元NGO代表、10か所の地方の農家グループ・リーダー、教員、労組メンバー、若者などによって創立された。

KfKは民主的で豊かな社会を実現するためには、一般の人々が政治過程に参加し、民主的に運営される政党活動が重要であることを広めていた。(中略)

GDPの主要な構成員は、多様な市民や農家で、二大政党である救国党や人民党が政策論議ではなく党首間の誹謗中傷に終始し、党運営もトップダウンであることに共感できず、GDPのボトム・アップ・アプローチや農業政策、ジェンダー政策など政策に共鳴して支持者となった人たちだ。(中略)

党首と事務局長はGDP党員の投票によって選出されている。(後略)【5月8日 SYNODOS】
******************

不正な環境で行われる選挙に対し、ボイコットによって不正をアピールするか、あるいはあくまでも参加して権利を主張するか・・・・多くの選挙でも問題となる悩ましい選択ですが、草の根民主党は選挙参加の結果、5議席程度を獲得する・・・との情報もあります。

注目された投票率は、82%超と前回選挙を大幅に上回ったとされています。

****投票率 大幅アップはなぜ****
今回の総選挙の投票率は82.17%で、与党・人民党と最大野党・救国党が激しく競り合った前回、5年前の投票率69.61%を12ポイント余りも上回りました。

しかし、投票者数で比べてみると、今回が688万5000人余り、前回は673万5000人余りで、今回は前回よりおよそ2%しか増えていません。

一方、有権者数は、今回が838万人なのに対して前回は967万5000人で、国の発展に伴って人口は増えているにもかかわらず、有権者数はこの5年間でおよそ130万人も減ったことになります。

これについて、カンボジアの選挙管理委員会は、前回の有権者登録で二重登録などの不備があったためだと説明しています。今回の投票率が前回を大幅に上回ったのは、有権者数の数え直しによるところが大きくなっています。

ただ、投票率が80%を超えたのは15年前、2003年の総選挙以来で、フン・セン政権としては高い投票率を基に選挙の正当性を訴えるものとみられます。【7月30日 NHK】
****************

母数となる有権者数が前回までは大幅に水増しされていた・・・という話のようです。そこを是正したため投票者数は変わらないが、投票率は大幅にアップした・・・。

事情はともあれ、高い投票率は与党側にとっては都合のいい数字です。
“フン・セン首相は投票締め切り後、自身のフェイスブックに「同胞たちは民主主義の道を選び、権利を行使した」と書き込んだ。”【7月30日 AFP】

ただ、“一党独裁的な支配下での選挙では「投票者への脅迫や票の買収により投票率が膨らむ」(豪グリフィス大のリー・モーゲンベッサー氏)傾向があるとの見方も出ている。”とも。【同上】

前回は1.6%だった無効票が、今回は8%以上に増加しているとの情報もあります。

選挙から手を引いた欧米、制裁は? 全面支援の中国 及び腰の日本
いずれにしても、与党の“勝ち”は勝ちです。問題は、今後どうなるかです。

****<カンボジア>欧米の経済制裁、市民「懸念****
29日投開票されたカンボジアの下院総選挙を受け、フン・セン首相の強権姿勢を批判してきた米国や欧州連合(EU)などがどう対応するかが今後の焦点の一つとなる。

市民の間には経済制裁を心配する声も強い。一方、権力の維持に「成功」したフン・セン氏が、過去と同様に、一定程度柔軟姿勢に転じるとの見方もある。
 
フン・セン氏の強権政治に対し、米国やEUなどは繰り返し非難声明を出してきた。また、米国は「民主主義を傷つける行為」に関与した個人らへのビザ(査証)発給制限措置も発表した。ただ、いずれも後発の途上国向けの特別な特恵関税制度は維持している。
 
一方、中国はフン・セン政権を支持する。中国にとってカンボジアは現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」のパートナーであり、南シナ海問題で中国を支持してくれる大事な国。中国企業の進出や投資も盛んだ。
 
これらを背景にカンボジア経済は好調に推移し「フン・セン首相の強気の背景にもなっていた」(カンボジアのNGO代表)。だが、欧米が関税引き上げなどの経済制裁に乗り出せば、衣料品や革靴など輸出産業に打撃を与えるのは必至だ。
 
50代の公務員男性は「自分の知る人はみな経済制裁を心配している。もし発動されれば経済危機が起きる。中国は物を買ってはくれない」と話す。
 
この男性は「フン・セン首相は選挙で勝てるか自信が持てず、強硬姿勢を貫いたのだろう。だが彼は融通が利くタイプだ」と言う。選挙後、欧米の圧力が高まれば、5年間政治活動を禁じられた救国党幹部らの復帰を認めるなど、妥協する可能性もあるとみる。
 
先のNGO代表も「与野党の共存に向けた対話が始まることを期待したい」と話す。カンボジアでは選挙などをめぐり与野党間の激しい「対立」と「合意」が繰り返されてきた。その当事者が、30年以上実権を握るフン・セン氏だからだ。
 
一方、日本は今回、欧米などとは一線を画した対応を取った。投票の様子を視察した藤田幸久参院議員(国民民主)は「カンボジアがさらに中国寄りとなることを日本政府は心配するが、言うべきことは言わねば。カンボジアに直接働きかけられるのは、日本だけなのだから」と話す。
 
東南アジアでは強権的な統治が目立ち、隣国タイは2014年にクーデターで軍事政権が発足して以降、民政復帰に向けた総選挙は実施されていない。プノンペンの警備員、チャン・ナリットさん(37)は「とにかく選挙は実施され、新政権も発足する。タイよりましではないか」と話した。

 ◇汚職など深刻化恐れ
高橋宏明・中央大文学部教授(東洋史)の話 
今後、フン・セン首相周辺への権力集中がさらに進み、非民主的・権威主義的体制が強まる恐れがある。汚職や政治腐敗もさらに深刻化するかもしれない。(中略)
 
国際社会は選挙の正当性をどう評価するかが焦点になるが、制裁を科す可能性は低いだろう。

日本は選挙を巡る人権弾圧の情報を集め、もし生命に危険が及ぶケースがあった場合は厳重に抗議すべきだ。その上で、欧米が重視する自由と民主主義だけでなく、富の公平・公正な分配や社会的弱者の支援といった価値観を明確に提示しながら友好関係を発展させる必要がある。【7月29日 毎日】
****************

欧米が不正選挙への批判を強めるなかで、日本はフン・セン政権を支える中国に対抗して選挙協力してきた経緯があります。

****日本、カンボジアへの支援と投資を拡大、ライバル中国に対抗****
2018年7月23日、中国メディアの参考消息網によると、米テレビ局CNBCのニュースサイトは19日、「日本がカンボジアで、ライバルである中国の影響力に対抗するため、同国への支援と投資を拡大し存在感を高めようとしている」と報じた。

CNBCは、今月29日のカンボジア総選挙について「日本と中国による東南アジア諸国への影響力争いの代弁者になっている」とし、世界第二の経済大国・中国が、カンボジアの選挙管理委員会に対し、投票所やノートパソコン、その他機器のために2000万ドル(約22億円)を提供したのに対し、日本も1万個の投票箱など750万ドル(約8億3000万円)相当の援助を提供したと伝えた。

その上で記事は「これらの貢献は驚くべきことではない」とし、「このアジアの二つの大国は、カンボジアと深いつながりがある」と指摘。

中国は現代版シルクロード経済圏構想として知られる大陸をまたぐインフラ建設プログラム「一帯一路」を通じてカンボジアに十数億ドルの融資を提供しているのに対し、「日本もその足跡を残し始めている」とした。

記事は、「開発途上国での存在感を高めようとしている日本は今年4月、カンボジアに総額9000万ドル(約100億円)以上の助成金と貸付金を提供することで合意した」とし、タイ・ナレースワン大の専門家の話として「日本の外交政策は、カンボジアにおける中国の影響力への対抗を意図したものだ」と伝えている。【7月24日 レコードチャイナ】
*****************

直接的な利害が少ない欧米と日本では立場が違う・・・ということでしょうが、日本国内でも選挙支援する日本政府への在住カンボジア人の抗議デモなども行われました。

さすがに日本政府も25日、今回は選挙監視団を送らないと表明。関係筋は「さすがに正当性があるとは言えず、政府としての監視団派遣は難しいと判断したようだ」と話しています。

中国の立場は明快です。
「順調に選挙が実施されたことに祝賀の意を表する」(耿爽(こうそう)副報道局長)と、中国が事実上の後ろ盾となっているフン・セン首相率いる与党の大勝を歓迎しています
 
"今回の選挙について欧米から批判の声が上がっている点について、耿氏は「選挙はカンボジアの内政だ。国際社会はカンボジアの安定の維持と発展のために建設的な手助けをするよう求める」とけん制した。耿氏は両国の密接な関係を「運命共同体」などと表現した・・・”【7月30日 毎日】
コメント

ロシア  年金受給年齢の大幅引き上げに高まる国民批判 プーチン支持率も急降下

2018-07-29 21:44:41 | ロシア

(ロシア首都モスクワで、政府が提案した年金支給開始年齢引き上げ計画への抗議集会に参加したロシア共産党支持者と左派活動家ら(2018年7月28日撮影)【7月29日 AFP】)

【「彼らは皆、棺桶の中で年金を受け取ることになる」】
欧米とロシアの対立が続く中で開催されたため、影響も懸念されたサッカーW杯でしたが、大きなトラブルもなく終了し、プーチン大統領はしごく満足の様子です。

****サッカーW杯でロシアのイメージ「好転」=プーチン氏、FIFA会長らに****
ロシアのプーチン大統領は6日、サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会を訪れた各国のファンがインターネット交流サイト(SNS)を通じてロシアに対する好印象を発信しているため、「ロシアに関する多くの固定観念は崩れ去った」と述べ、イメージが好転しているとの見方を示した。
 
国際サッカー連盟(FIFA)のインファンティノ会長や往年の名選手らとモスクワで会談して語った。プーチン氏は「人々はロシアがもてなし好きの国であり、訪れた人に対して好意的であることが分かっただろう」と強調した。(後略)【7月6日 時事】
***************

“(ロシアへの)イメージが好転している”というのは、どうでしょうか?

***************
・・・・欧米と日本では、主要メディアの論調でも、政府のスタンスでも、「現在のロシアは犯罪国家」という事実への認識に大きな乖離がある。

欧米では、プーチン政権が西側の民主主義陣営に挑戦して「新冷戦」が始まっており、そのためには手段を選ばないロシアがもはや犯罪国家と呼べる邪悪な存在になってきたことに対する警戒感が高まっているのに対し、日本ではそう認識する人はまだ多くない。・・・・【7月20日 黒井 文太郎氏 JB Press】
***************

欧米世界でも、トランプ大統領のように自国情報当局よりプーチン大統領を信用するというロシアファンもいますが、その話は別機会に。

今日の話題は、“皇帝”プーチン大統領が気にかける必要があるのは、外国におけるロシアのイメージよりは、ロシア国内における国民の怒りかも・・・・という話です。

****ロシア、年金支給年齢引き上げ案に数万人が抗議 大統領の退陣要求も****
ロシア各地で28日、年金支給開始年齢を引き上げる政府計画への抗議デモが行われ、数万人が参加した。政府提出の年金改革法案が国会で審議され、同案への反発が高まる中、共産党がデモを主催した。
 
デモは許可を得て行われたもので、主催者発表によれば首都モスクワでは最大10万人が参加した。一方、報道された参加者数はこれを大きく下回り、1万人前後と伝えられている。
 
デモは極東、シベリアや西部にある数十の市町で実施された。モスクワでは参加者が「プーチンに年金を渡して引退させろ!」と声をそろえ、「私たちは年金で暮らしたい。働きながら死にたくない」などのスローガンが書かれた横断幕を掲げた。
 
年金改革案はウラジーミル・プーチン大統領率いる与党の支持を受けており、市民が公に反対を表明することは少ないが、今回はすでに290万人が抗議の請願に署名。与党に追従することの多い共産党も反対している。
 
プーチン大統領は今年3月の大統領選で年金改革に言及しなかった上に、過去には年金支給開始年齢は引き上げないと公約していた。国営世論調査会社VTsIOMによると、同大統領の支持率は5月には80%だったが、今月は64%に低下した。
 
ロシアの年金支給開始年齢はソビエト連邦時代に定められた女性55歳、男性60歳のままとなっており、今回の年金改革法案はこれを女性63歳、男性65歳まで段階的に引き上げるとしている。
 
共産党のゲンナジー・ジュガーノフ党首は、ロシア人男性の平均寿命は60歳代前半だとし、「彼らは皆、棺桶の中で年金を受け取ることになる」と述べた。【7月29日 AFP】
*******************

クリミア併合で得た圧倒的な支持率を維持し、先の大統領選挙でも圧勝したプーチン大統領ですが、その支持率が“5月には80%だったが、今月は64%に低下した”ということで、国民の怒りのほどがわかります。

“世界銀行の統計によると、ロシア人男性の平均寿命は短く、66歳を超えて生きると予測される人の割合は2016年の時点で57%前後にとどまっていた。”【7月29日 CNN】とのことですから、「彼らは皆、棺桶の中で年金を受け取ることになる」という批判も一定に道理です。

なぜロシア人男性の寿命がこんなに短い(66.5歳)のか・・・というのも本来は大問題です。女性は77歳ほどで10歳の開きがあります。今でこそ66歳になりましたが、2000年から2005年にかけてはロシアの男性の平均寿命は、ずっと60歳を切った推移となっているデータもあるようです。

簡単に触れると、原因は“ウォッカ”にあるとよく言われます。
ウォッカの多飲は、アルコール中毒症のほかに、暴力、自殺、事故、内臓疾患(がん、肝疾患、肺炎、膵炎など)がアルコールの大量摂取者の死亡率を拡大させているとも。

では、なぜそんなにアルコールに依存するのか? 寒さだけが原因ではないでしょう。
また、医療体制についても、裕福な世帯の多くは新たな民間の医療サービスを受けられますが、多くの貧困世帯では正規外の支払いを求められるため、無料の公的医療サービスすら受けられないという問題があるとも。【「ロシア人(男性)の平均寿命が短いのはなぜだろうか?」 より】

平均寿命の問題の背後には、いろんな社会問題もありそうです。

中年期になると極端に仕事が見つからなくなる女性にも怒りの声
怒っているのは“もらえる前に死んでしまう”男性だけではなく、8歳も受給年齢が引き上げられる女性も同じです。

****ロシア年金支給8歳引き上げ、「再就職難民」の中高年女性らが怒りの声****
ロシア政府が年金支給開始年齢の引き上げ計画を発表したことで怒りの声が広がっている。ロシア国民が政策に対してこうした反応を示すのはあまり例がない。中でも特に、この年金改革によって苦労を強いられることになると主張しているのが、就職難にあえぐ年代の女性たちだ。(中略)

ロシア人男性の平均寿命は66歳で、年金を受け取る前に多くの人が亡くなってしまうかもしれないとの批判も直ちに起きたが、女性たちは別の理由で怒っている。年金を受け取れるまでやり繰りするために職探しをしても、中年期になると極端に仕事が見つからなくなるのだ。

「年金も受け取れず無職になることを女性たちは不安に思っています」と、モスクワ在住のタチアナ・ボロチコワさんは話した。既に1万7000ルーブル(約3万円)の国民年金は受け取っているが、経理の仕事を続けている。
 
多くの女性は、定年を迎える年代に年金支給開始を8年も引き上げるのはバランスを欠いていると憤る。(中略)

年配の男性なら、お金に困れば短期の肉体労働もできるが、それが女性となると、低賃金の仕事ですらなかなか雇ってもらえない。55歳での年金受給は、少なくとも中高年女性たちに対するセーフティーネットにはなっていたとゾルキナさんは話す。

(中略)一方、仏パリを拠点とするロシア人アナリストのタチアナ・スタノバヤさんは、ロシア人は早期年金を「社会的不公正に対する一種の補償」だと見なしているのだと説明した。

「ロシア人は、人生においてさまざまなこと、政治的権利が限られていることにも耐える覚悟をしています。だからこそ、(早期年金は)もらって当然、社会的に勝ち得た権利だと捉えているのです」
 
ウラジーミル・プーチン大統領は極めて高い支持率を維持していたが、年金改革を承認したことを機に下落した。国民が政府に怒りを表明するという異例の事態に発展したロシアでは今、改革撤回を求めるオンライン署名者が250万人を超えている。【7月13日 AFP】
*******************

国民批判に、“良き皇帝”として見直しを指示するプーチン大統領
年金改革は財政がひっ迫するロシアが避けて通れない問題であることは事実ですし、国民の痛みを伴う改革はロシアだけでなく大抵の国で大きな政治問題となり、頓挫することが多々あります。

ある意味では、支持率80%を誇った“皇帝”プーチン大統領だからこそできる改革でもあります。

ただ、受給開始年齢引き上げのニュースを「埋もれさせる」ため、改革はW杯開幕日に発表するというやり方がやや姑息でもありました。受給開始年齢引き上げだけでなく、付加価値税も18%から20%に上がります。

あまりの不人気ぶりに、プーチン大統領は自分の責任ではないかのように、計画見直しを指示しています。

****ロ大統領、不人気の年金改革案を見直しへ****
プーチン・ロシア大統領は20日、定年の年齢引き上げ計画を見直す方針を明らかにした。財政均衡化には改革が必要とされているが、改革案は大統領支持率の低下や全国での抗議行動を招いており、見直しは改革の後退を示唆するものとなる。

政府の支持を得て議会に提出された法案は、定年の年齢を男性は60歳から65歳に、女性は55歳から63歳に引き上げる内容で、下院で行われた改正法案の第1読会で可決されている。

しかしプーチン大統領は、カリーニングラードを訪れた際、「最終決定は下されていない。この案件について、あらゆる意見と視点を聞く必要がある」と述べた。

大統領は、政府は年金制度改革の必要性に背を向けているわけではないと釈明したうえで、改革を好きになれないと指摘。「定年の年齢引き上げに関連するさまざまな選択肢のどれも、気に入らない。政府内の人々もほとんど気に入っていないと断言できる」と述べた。【7月23日 ロイター】 
*****************

痛みを伴う改革もロシアのさまざまな経済問題の解決にはほとんど役立ちそうにない
ロシアにとっての問題は、“こうした痛みを伴う改革もロシアのさまざまな経済問題の解決にはほとんど役立ちそうにない”ことであるとの厳しい見方があることです。

****W杯に隠れた年金改革、プーチン政権のリスクに****
・・・・年金受給開始年齢引き上げは、もっと前にやるべきだったといっていい。年金の財源不足を補うため国内総生産(GDP)の2%に相当する予算を振り替える必要を減らすためだ。

受給年齢引き上げは付加価値税の税率引き上げや石油業界の税制改革とともに、プーチン氏が5月に発表した8兆ルーブル(約14兆円)の医療、教育、住宅プログラムの財源確保への寄与を目的としている。

■不人気の改革
だが、サッカーの盛り上がりで注意がそれているにもかかわらず、この年金改革は極めて不人気だ。改革の責任を不運なメドベージェフ首相に押しつけたものの、プーチン氏の支持率はここ約5年で最低水準に落ち込んだ。
 
1日のデモが抗議デモのめったにない都市や社会層で起こったことは、当局への警鐘といえる。労働組合や普段は政府に忠実で操り人形同然の野党も、反汚職ブロガーのアレクセイ・ナワルニー氏の支持者らと共に抗議デモに参加した。

年金改革はプーチン氏の重要な支持基盤である高齢者や地方の労働者を直撃した。ロシアの81の地域のうち47地域で、男性の平均寿命は新たな年金受給開始年齢に届いていない。
 
それでも、抗議デモが政権の安定を揺るがす水準に達することはないだろう。プーチン氏は必要なら「良き皇帝」のごとくメドベージェフ氏のチームに年齢の引き上げ幅を縮めるよう命じて、改革の本質は維持しつつ妥協したかにみせることが可能だ。
 
だが、それよりも深刻な問題は、こうした痛みを伴う改革も、ロシアのさまざまな経済問題の解決にはほとんど役立ちそうにないことだ。

既に50代後半や60代前半のロシア人の多くは年金を補うため仕事を続けており、労働力不足の助けにはほとんどならない。こうした人々の状況は悪くなるだけで、付加価値税が上がれば、実質所得はさらに圧縮される。
 
ロシア最大の課題は成長を押し上げるための生産性向上だ。08年から17年までの成長率は年率平均1%にとどまっており、ロシア経済発展省は18年の成長率を1.9%と見込んでいると伝えられる。

これから定年退職者を支える若者のために、高い能力を伴う高賃金の仕事をもっと創出する必要もある。

■政府支出が優先
専門家が長年繰り返し指摘してきた通り、これには投資環境の改善や財産権の強化、独立した司法制度の確立が必要だ。

だが、ロシア政府はその代わりに、プーチン氏が5月に発表した計画に象徴されるように、政府支出が民間投資に取って代わり続けることを選んでいる。
 
こうした財政支出は、次の10年間の早い時期までに、成長を少し高め始めると同時に、エリート層がレントシーキング(都合のいいようにルールを変えて寡占利益を追求すること)をする機会も維持するだろう。

それでプーチン氏は24年までの通算4期目の任期を全うできるかもしれない。だが、W杯の輝きが色あせて時間がたてば、ロシアの人々はこれまでより貧しくなってしまうだろう。【7月3日 日経】
*********************

司法制度改革を含めて、市場が有効に機能するように経済・社会の環境を抜本的に見直し、高い生産性を目指す必要があるとのことですが、それは一部エリート層と一体となったプーチン政治の否定でもあり、プーチン大統領のもとでは期待できないものです。

【「テレビvs.冷蔵庫」の闘い 若者は海外移住を希望
ロシア国民も、そうしたプーチン政治の問題を実感するようにもなりつつあるとも。

****プーチン長期政権にひずみ・・・・国民による「テレビvs.冷蔵庫」の闘いとは****
・・・・政権運営は一見安定しているように見える。しかし今、ロシアは国際原油価格の大暴落に端を発する原油安、ルーブル安、さらにクリミア併合やシリア空爆に抗議して欧米諸国が科す制裁という「経済の3重苦」を抱え、国民の生活はここ数年で急速に苦しくなってきている。

国民の間でいま起きているのが「テレビvs.冷蔵庫」の闘いだという。

「プーチン政権は3大テレビを国営化して、クリミア併合やシリア空爆、その他でロシア軍が華々しい勝利を得つつあるとのニュースを垂れ流してきました。国民は食べ物が不足しても、テレビを見れば安心することができた。しかし、最近インターネットの普及によって、必ずしもテレビが事実を伝えるわけではないと悟るようになり、国民は“空っぽの冷蔵庫”を心配し始めるようになってきているのです」(プーチン研究の第一人者として知られる政治学者の木村汎さん)(後略)

今後は一般国民からだけでなく、側近のエリートたちの不満が爆発するかもしれないと木村さんは予想する。【7月1日 AERA dot.】
******************

ロシアの若者らは、自国の将来にあまり希望を抱いていないようにも見えます。

****ロシアの若者、3人に1人が海外移住を希望 世論調査****
ロシア人の若者およそ3人に1人が、自国を離れて海外で生活したいと希望していることが、3日に発表された調査結果で明らかになった。
 
国営世論調査会社VTsIOMが18歳〜24歳を対象に実施した調査によると、移住を希望しているという回答者は31%。その中で最も人気のある移住先はドイツで、回答者の16%に上った。米国が7%、スペインが6%と続いた。
 
ロシアは現在、サッカーW杯の開催国として国際的な注目を浴びている一方で、ウラジーミル・プーチン大統領の前任期中に生活の質が悪化。近年は国際舞台での孤立を深めている。
 
さらに同国がウクライナからクリミア半島を併合したことで西側諸国が制裁を課し、経済面で打撃を受けている。
 
VTsIOMのトップを務めるステパン・リボフ氏は、今回の調査結果について、ロシア人の若者が「自国の恐ろしい現実から逃れたい」というよりも、「外の世界に対してますます開放的になっている」ことを示すと説明している。【7月3日 AFP】
******************

「外の世界に対してますます開放的になっている」というポジティブな解釈もあるようですが、どうでしょうか・・・。

いずれにしても、プーチン大統領は年金改革が惹起した国民不満の責任をメドベージェフ首相になすりつける形で“見直し”を行い“良き皇帝”として君臨し続けるのでしょうが(当初から、批判を受けてのある程度の見直しは織り込み済みかも)、それはロシアにとってよいことかどうかはわかりません。
コメント

イスラエル  多数派の権利行使、「ユダヤ人国家」法 ガザ地区とゴラン高原方面双方で脅威も

2018-07-28 22:56:06 | 中東情勢

(ユダヤ人国家法制定に抗議するアラブ系議員【7月20日 ロイター】)

【「イスラエルではユダヤ人だけが自決権を持つ」 アラブ系市民への差別合法化の批判も
保守強硬派とされるイスラエル・ネタニヤフ首相は、2015年総選挙でアラブ系市民の脅威に言及するなど扇動的な手法で極右・宗教保守勢力の票も吸収する形で、戦前予想を覆して勝利、極右勢力や宗教右派などとの連立政権を樹立。

こうしたネタニヤフ首相の右傾化は、当時のアメリカ・オバマ政権との関係を非常に悪化させる、イスラエルにとっては危険な選択でもありました。

しかし、そのアメリカがトランプ政権に代わると、エルサレム首都容認・大使館移転で強力にネタニヤフ政権を後押しするようになりました。

アメリカと協調したイラン敵視政策、国際的に批判を浴びる入植政策へのアメリカの後押しなどもあって、ネタニヤフ政権はさらに強硬姿勢を強めています。

イスラエルは全人口の2割近くをアラブ系住民が占めており、独立宣言では、「すべての居住者の利益のために」国家の発展に尽力することや、「宗教、人種、性別に関わらずすべての居住者の完全に平等な社会的、政治的権利」を確立する必要があること、「国連憲章の原則」を遵守することがうたわれています。

そうした建国の理念を無視するような露骨な“ユダヤ人第一主義”ともとれる「ユダヤ人国家」法が国会で承認されました。

同法には、「イスラエルはユダヤ人にとって歴史的な母国であり、民族自決権はユダヤ人の独占的権利」とされています。

****自らを「ユダヤ人国家」と定めたイスラエルは、建国の理念も捨て去った****
イスラエル国会は19日、「イスラエルではユダヤ人だけが自決権を持つ」ことを定めた「国民国家法」を可決した。全人口の2割近くを占めるアラブ系住民は「人種差別、アパルトヘイト(人種隔離政策)を合法化するもの」と猛反発している。

新法では、アラビア語が公用語から「特別な地位」に格下げされたほか、パレスチナ自治政府が将来の首都と主張する東エルサレムをも含む「統一エルサレム」がイスラエルの首都と宣言。またイスラエルは「ユダヤ人の歴史的な国土」だと明記した。

ユダヤ人に「唯一の民族自決権」があると定めたこの法律を、反対派は人種差別的だと猛反発し、イスラエルが「アパルトヘイト(人種隔離)国家」になりつつある証拠だと糾弾している。

国会での審議は約8時間に及び、最終的に賛成62、反対55の賛成多数で可決した。

イスラエルでは4月にトランプ米大統領も出席して、建国70周年の祝賀行事が開催されたばかり。一方で、パレスチナのガザ地区ではパレスチナ人による抗議行動が続き、イスラエル軍の制圧で死者が出ているさなかの法案可決だった。

権利を否定されたアラブ系住民
国民国家法は象徴的な意味合いが強いが、全人口の約2割を占める180万人のアラブ系住民にとっては大きな痛手だ。

1948年のイスラエル建国にあたって、約75万人のパレスチナ人が国外へ逃れたり住居を追われたりしたが、その後も国内にはアラブ系が少数派として暮らしている。

こうしたアラブ系イスラエル人は法律上は平等の扱いを得ているものの、活動家によればアラブ系はあくまで「2級市民」で、雇用、教育、医療、住宅取得などあらゆる面で差別を受けているという。

法案は国会採決の最終段階で、レウベン・リブリン大統領やアビハイ・マンデルブリト司法長官ら反対派からの批判を受け、いくつかの条項を変更した。

地元紙「タイムズ・オブ・イスラエル」によると、この法律は憲法と同等の位置付けをされる「基本法」で、他の裁判の判例の基準となり、通常の法律よりも撤廃するのが難しい。

当初の法案では、ユダヤ人だけが住むことができるコミュニティを明文化し、関連の判例がない場合にはユダヤ教の儀式規則が他の法律よりも優先されることなどが盛り込まれていた。

こうした条項は変更されたが、可決した新法でも「ユダヤ人入植の拡大」について、イスラエル政府が「奨励して促進する国家的価値」と明確に支持している。

アラブ系議員のアフマド・ティビは、同法が「民主主義の死」を意味し、「衝撃と悲しみ」をもって受け止めたと語っている。

一方、右派政党リクードの党首、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「イスラエルのユダヤ人国家としての地位を将来に渡って保証する法律」と語っている。政府は引き続き少数派の権利を保護するが、「多数派もまた権利を有し、多数派が判断を下す」とも通告した。

アラブ少数派の法的権利擁護センター「アダラー」は声明を出し、この法律が「イスラエルの人種的、宗教的特性がユダヤだけに限られることを保証し、ユダヤ人市民が享受する特権を擁護するものだ。同時にパレスチナ人市民への差別を恒久化し、パレスチナ人の排斥、差別、体系的不平等を合法化する」と非難する。

アダラーのハサン・ジャバリーン所長は、法律には「アパルトヘイトの主要な要素」がすべて含まれていると主張し、それらは「倫理的に問題なだけでなく、国際法上もはっきりと禁止されている」と反発する。

「統治権と民主的自治権が唯一ユダヤ人だけにあると規定したことで、イスラエルは差別を合憲化し、ユダヤ人優位を制度の根幹に据えることを明言した」と話す。(後略)【7月20日 Newsweek】
*******************

この「ユダヤ人国家」法を「ヒトラー精神の再出現」と激しく批判したのがトルコのエルドアン大統領。
ネタニヤフ首相は「エルドアン氏はシリア人やクルド人を虐殺し、何万人もの国民を投獄している」「トルコは暗黒の独裁国家」と応酬しています。まあ、どっちもどっち・・・という感も。

毎週金曜日に繰り返されるガザ地区境界の混乱
国内的右傾化の背景には、対外的緊張の高まりもあるように思われます。
ガザ地区境界での衝突は依然として続いています。

****イスラエル 兵士1人死亡 ガザ境界でハマスが銃****
パレスチナ自治区ガザとイスラエルの境界で20日、ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエル兵を銃撃し、兵士1人が死亡した。2014年夏の大規模軍事衝突以降、ガザ関連で任務中のイスラエル兵が死亡したのは初めて。

イスラエル軍は報復として、ハマスの施設など68カ所を戦車で砲撃するなどした。
 
20日はガザ境界でのデモもあり、この際の衝突や報復攻撃でパレスチナ人計4人が死亡、120人が負傷した。【7月22日 毎日】
*****************

毎週金曜日になると同じような事態が繰り返されています。

“アラビア語メディア及びhaaretz net 等は、27日境界付近の衝突でミスラエル兵の銃撃、催涙類ガスによりパレスチナ人2名が死亡し(うち1名は14歳の児童)、246名(または184名、haaretz net によれば90名)が負傷したと報じています。”【7月28日 「中東の窓」】

イスラエルは、ガザ地区からの“風船攻撃”にも苛立ちを募らせています。

****<ガザ地区ルポ>若者ら重火器に風船攻撃で応戦****
パレスチナ自治区ガザ東部のイスラエル領との境界付近で、イスラエルや米国に抗議するパレスチナ人とイスラエル軍による衝突が3月末に始まってから100日以上が過ぎた。

イスラエル軍の重火器に、ガザの若者たちは発火物をくくりつけた風船やたこを飛ばして応戦。イスラエル領内で火災を頻発させている。

ローテク攻撃に業を煮やしたイスラエル側は、ガザ封鎖をさらに強化する方針だ。(後略)【7月13日 毎日】
******************

“イスラエルメディアによると、7月上旬までに約1000カ所で火災が起き、農地や自然保護区など約40平方キロが焼失。農作物や家畜などの被害は3億5000万円以上とされる。”【同上】とも。

ロケット弾・迫撃砲による攻撃も続いているようです。

こうした緊張の高まりに、国連は「戦争の瀬戸際」にあるとして、双方へ自制を呼びかけています。

****イスラエルとガザは「戦争の瀬戸際」、国連が自制呼びかけ****
イスラエルとパレスチナのガザ地区の間で衝突が激化している状況について、国連の特別調整官が「戦争の瀬戸際」と位置付け、双方に自制を促した。

イスラエル国防軍によると、これに先立ちガザからイスラエルには200発の発射体が撃ち込まれ、その報復として、イスラエルは数十回の空爆を行った。

国連のニコライ・ムラデノフ中東和平プロセス特別調整官は15日にガザ地区で行った記者会見で、「昨日、我々は戦争の瀬戸際にいた」と述べ、イスラエルとガザの衝突を「誰も望まない衝突、誰もが敗者となる衝突」と形容した。

ガザでは人道状況が悪化し、政情や治安も悪化しているとムラデノフ氏は述べ、「(ガザの)住民の生活は一層困難になっている。手持ちの現金は限られ、経済は崩壊し、電気や水は乏しい」「ガザに住むパレスチナ人200万人が現在のように劣悪な状況で暮らしているのを、黙って見過ごすことはできない」と力を込めた。

その上で、パレスチナ人に対しては「平和的な抗議活動の維持」を求め、パレスチナの各勢力に対してはロケット弾や迫撃砲などの発射を中止するよう要求した。

イスラエルに対しては、ガザへの反応に自制を求め、狙撃手には「子どもを撃たないでほしい」と呼びかけた。
イスラエルは4月にパレスチナ人のデモが激化して以来、ガザとの境界フェンスでパレスチナ人を実弾で射撃しているとして批判されている。

在イスラエル米大使館のエルサレム移設に抗議して5月14日に行われたデモでは、イスラエル軍によってパレスチナ人60人が殺害された。このうち8人は子どもだった。

イスラエルは、デモ参加者に対しては過剰な武力を行使していないと主張。ガザを実効支配する武装組織ハマスがデモを組織しているとして非難している。【7月17日 CNN】
******************

パレスチナ側にはイスラエルに対抗できる戦闘能力がありませんので、「戦争の瀬戸際」というのはいかがなものか・・・という感も。ただ、偶発的混乱を機に、苛立ちを強めるイスラエル側が一気に軍事行動を本格化させる可能性はあります。

ゴラン高原方面:アサド政権支配地域拡大により、イランの進出を警戒
一方、シリア・アサド政権が支配地域を拡大して迫るゴラン高原方面の情勢にもイスラエルは神経を尖らせています。イスラエルの最大の懸念は、シリア政府軍を支援するイラン・ヒズボラがこの地域に進出してくることです。

24日にイスラエル国防軍は、シリア軍のスホイ戦闘機がイスラエル領空に約2キロ侵入した時点で、地対空パトリオットミサイルを2発発射し撃墜したと明らかにいしました。

****撃墜、シリア緊迫 イスラエル、イランを警戒****
24日に起きたイスラエル軍によるシリア軍機の撃墜で、関係国間の緊張が高まっている。イスラエルは、敵対するイランの部隊がシリアの政権軍支援を名目に自国近くに進出してくることに神経をとがらせる。
 
イスラエル軍は、シリア軍の戦闘機が「イスラエル領空に約2キロ侵入した」と説明した。イスラエルが1967年の第3次中東戦争でシリアから奪い、占領しているゴラン高原の上空とみられる。
 
イスラエル軍はシリア方面への対空防衛を強化していた。23日には、内戦が続くシリアから発射されたロケットが自国領に及ぶ危険があったとして、中距離の対空防衛システム「デービッド・スリング」を初めて作戦で使用した。
 
イスラエルが神経をとがらせているのは、ゴラン高原と隣接するシリア南部地域をアサド政権軍が制圧しつつあるためだ。
 
シリア内戦で反体制派が支配してきたダラアを中心とする南部地域に対し、アサド政権軍は6月中旬から本格的な攻勢をかけてきた。

イスラエルと敵対するイランは、アサド政権軍を支援。精鋭部隊の革命防衛隊などを派遣している。この地域にイランの部隊が出てくれば、イスラエルと直接向き合うことになり、緊張は極度に高まる。
 
イスラエルは、イランを排除するため、アサド政権軍の後ろ盾であるロシアにも外交ルートで接近していた。ネタニヤフ首相は11日、モスクワでプーチン大統領と会談し、イラン部隊がシリアから撤退すれば、アサド政権打倒を目指さないとの考えを伝えた。
 
ネタニヤフ首相は23日には、イスラエルを訪問したロシアのラブロフ外相、制服組トップのゲラシモフ参謀総長らと会談した。
 
イスラエルメディアなどによると、ロシアは、イラン部隊がイスラエル領から100キロ以内に近づかないよう緩衝地帯を設ける案を提示した。しかしイスラエルは長距離ミサイルに懸念を示し、イラン部隊の完全撤退を求めたという。
 
関係国の思惑が交錯する中で発生したシリア軍機の撃墜は、不測の事態を招きかねない。

 一方、シリア内戦でアサド政権軍が優位を固める中、「イランはシリアからの出口戦略を模索している」と語るイラン政府関係者もいる。

イランにとって、いま外交の最重要課題は、核合意を破棄した米トランプ政権の経済制裁への対応だ。この関係者は「部隊の撤収という選択肢は、イスラエルと蜜月にある米国に制裁緩和を求める取引材料になりうる」と話す。【7月26日 朝日】
******************

シリアでは、アメリカに代わり、ロシア・プーチン大統領が調停役を担っています。

ロシアがイランを捨ててまでイスラエルに協力する背景には、イスラエル全人口のおよそ5分の1を占めるロシア系ユダヤ人約150万の存在が指摘されています。

“東西冷戦崩壊後、旧ソ連から大量流入したためで、国内にはロシア語テレビや新聞もある。旧ソ連で迫害された彼らは左派嫌いが顕著で、イスラエル右派を熱烈に支持する。同国の極右政党を率いるリーベルマン国防相も旧ソ連モルドバ出身だ。”【7月24日 三井美奈氏 産経】

上記のように、イスラエルはガザ地区とゴラン高原方面の両方で脅威を抱えています。

****悪化し続けるガザ情勢****
・・・・毎度のと言っては何ですが、毎週金曜日になると同じことの繰り返しのように、境界線の近くで衝突が起き、多数の死傷者が出ていますが、haaretz は、それにもかかわらず、ハマスは紛争を望んで居らず、仲介をしてきたエジプトも慎重な楽観論を維持しているとしています

しかし、y net news は解説として、イスラエルはゴラン高地方面(北部戦線)とガザ(南部戦線)の2つで、重大な脅威に面していて、このままでいけば両方面で重大な決断をする(要するに地上進攻等の大規模攻撃のことか)ことを迫られることになるとしています。

特にガザ方面では、IDFの抑止戦略は破産したとしており、要するにパレスチナ側からの挑発に対して、それに倍する力で対応することで、それ以上の衝突の拡大を抑えるという戦略が、破産して、IDFとしては事態を鎮静化するすべを失っているということのようです。

また、北部においても、イスラエルのロシアを通じる働きかけにもかかわらず、政府軍は境界線の目と鼻の先にせまっている(確か昨日のアラビア語メディアには、数メートル先、などと言う記事もあったかと思う)が、そもそも政府軍は内戦当初から兵士の少ないことに苦しんできていて、それを革命防衛隊やヒズボッラーその他シーア派民兵で補ってきたのが実情ですから、今後イスラエル隣接地域に政府軍以外の武装勢力が入ってくる可能性はあるでしょう

ということで、今すぐどうと言うことではないかもしれませんが、イスラエルを巡る状況が大幅にエスカレートする可能性が出てきているように思われます。【7月28日 「中東の窓」】
*******************

戦闘能力がないハマスも、アメリカへの対応で手いっぱいのイランも、イスラエルとの戦闘を望んではいないでしょうが、緊張が高まれば“不測の事態”も起きえます。特に、イスラエル側が強硬姿勢を強めている現状では。

“倍返し”(“十倍返し”と言うべきか)がイスラエルの基本姿勢です。

****イスラエル、入植地で住宅400戸建設へ ナイフ襲撃事件受け****
イスラエルのアビグドル・リーベルマン国防相は27日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸内の入植地に住宅400戸を建設すると明らかにした。同地区でイスラエル人3人がパレスチナ人に刃物で襲われ、1人が死亡した事件を受けた措置だという。(中略)
 
事件を受けてリーベルマン国防相は27日、「テロリズムに対する最良の答えは入植地の拡大だ」とツイッターに投稿。エルサレム北方の入植地アダムで新たに住宅400戸を建設すると発表した。(後略)【7月28日 AFP】
******************
コメント

イエメン  紅海でサウジ石油タンカー攻撃 イエメン難民に戸惑う韓国世論

2018-07-27 22:17:22 | 中東情勢

(韓国の首都ソウルで行われた済州島に到着しているイエメン難民の受け入れに反対する反移民デモ(2018年6月30日撮影)。【7月14日 AFP】)

【“ホルムズ海峡封鎖”をめぐるイラン・米大統領の口論
イランとトランプ米大統領の対立は周知のところです。

“トランプ政権は5月、オバマ前政権が主導して米英仏独中ロの6カ国がイランと結んだ核合意から離脱し、緩和していた経済制裁復活を表明した。さらに6月、猶予期間の11月4日までに、日本や欧州など各国に対し、イラン産原油の輸入を完全に停止するよう求めた。イランの最大の収入源である原油を市場から排除して追い込み、米国に優位な新たな核合意を実現させる狙いだ。”【7月23日 朝日】

イランが国際関係が緊張した際の切り札としてちらつかせるのが“ホルムズ海峡封鎖”であり、実際、イラン・イラク戦争時にはタンカー攻撃が、湾岸戦争では機雷敷設による海峡封鎖が行われました。

今回もイラン革命防衛隊高官が7月4日に言及し、米海軍は航海の自由と通商の自由な流れを確実に確保する用意ができているとの立場を示して応戦していました。

この“ホルムズ海峡封鎖”をめぐるやりとりは、さらに政治的レベルをあげて、両国大統領、イラン最高指導者間の非難応酬ともなっています。

****イラン大統領、ホルムズ海峡封鎖を示唆 原油禁輸で米などけん制****
イランのロウハニ大統領は22日、トランプ米政権がイラン産原油の輸入停止を各国に呼び掛けていることを受け、禁輸が実行された場合にホルムズ海峡を封鎖する可能性を示唆した。イラン学生通信が伝えた。

ロウハニ氏は、イランは湾岸諸国やホルムズ海峡において支配的立場にあると強調。「政治の基本というものを理解しているなら、イランの原油輸出停止など口にしないはずだ。イランはこれまでずっと地域の海路の安全を保障している」と語った。

イランの最高指導者ハメネイ師は21日、原油輸出が不可能になれば、湾岸諸国からの原油輸出阻止に踏み切る可能性を示唆したロウハニ氏への支持を表明した。

ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾の間にある海峡で、原油輸送の大動脈。イランは過去にも米国の敵対的行動に対抗して、ホルムズ海峡の封鎖を警告したことがある。【7月23日 ロイター】
*****************

****トランプ氏「米国を二度と脅すな」 イラン大統領に警告****
トランプ米大統領は22日夜、ツイッターでイランのロハニ大統領に対し、「米国を二度と脅してはならない」と警告した。

トランプ政権は日本や欧州などにイラン産原油の全面輸入禁止を求めているが、ロハニ師が対抗措置としてホルムズ海峡の封鎖をほのめかしたことに反発した。両国間の緊張が高まる恐れがある。

トランプ氏は米東部時間の22日午後11時半前、「イランのロハニ大統領へ」として投稿。すべて大文字で「米国を二度と脅してはならない。さもないと、過去の歴史でもほとんど無いような報いを受けることになる。我々はもはや、(イランの)暴力や死という狂った言葉を我慢するような国ではない。気をつけろ!」と激しい言葉で非難した。(後略)【7月23日 朝日】
****************

イラン大統領や最高指導者が“ホルムズ海峡封鎖”に言及するのは、それだけイラン経済、ひいてはロウハニ政権が厳しい状況にあることのあらわれでしょう。

“5月にトランプ政権が経済制裁の復活を表明して以来、欧州企業などが次々とイランから撤退する可能性を示唆。対外融和路線で外資を呼び込んで経済成長をめざしてきた保守穏健派のロハニ師は国内で窮地に立たされている。”【同上】

紅海側のバブエルマンデブ海峡で、サウジタンカーへのイエメン・フーシ派の攻撃
一方、ホルムズ海峡より先に石油運搬タンカーへの攻撃が表面化したのが、ホルムズ海峡とはアラビア半島を挟んで反対側の・紅海側のバブエルマンデブ海峡。

7月25日、イエメン反政府勢力・フーシ派によるサウジアラビア石油タンカーへの攻撃が行われたもようです。

****イエメン武装組織、紅海で石油タンカー2隻攻撃 サウジが輸送停止措置****
紅海で25日、航行中のサウジアラビアの石油タンカー2隻がイエメンの反政府武装組織「フーシ派」の攻撃を受けた。けが人や原油の流出はなかったとされるが、サウジ政府は紅海とインド洋を結ぶ主要航路を通過するすべての原油輸送を一時的に停止した。

サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコによると、攻撃されたのは同国の海運会社バリが運営する積載能力200万バレルの輸送船2隻。うち1隻がわずかに損傷したという。「負傷者も原油の流出も報告されていない」としている。

これに先立ち、サウジ主導の連合軍はサウジの石油タンカー1隻がフーシ派の「テロ攻撃」を受けたと発表していた。また、親フーシ派のテレビ局は、フーシ派がサウジの軍艦1隻を標的にしたとも報じている。

サウジのハリド・ファリハエネルギー産業鉱物資源相は国営メディアを通じて声明を出し、紅海への南側の入り口に当たるバブエルマンデブ海峡を通過するすべての石油類の積荷の輸送を「安全が確保されるまで」一時停止したと明らかにした。同海峡は世界で最も通行量の多い海上輸送ルートの一つとなっている。

連合軍はこれまでも、紅海に面するイエメン西部の港湾都市ホデイダを押さえるフーシ派が、国際海運の大動脈である紅海を通る船舶の脅威になっていると繰り返し警鐘を鳴らしてきた。

ホデイダをめぐっては、連合軍の支援を受けるイエメンの親政府派が、国連が仲介する和平協議にチャンスを与えるとして攻撃を中断しているが、アラブ首長国連邦はこうした取り組みが不発に終わればホデイダを「解放」すると警告している。【7月26日 AFP】
*********************

紅海側バブエルマンデブ海峡はイエメンに面し、幅は約30キロ、石油・液化天然ガス輸送においてはホルムズ海峡同様に重要な動脈です。

“長期化すれば原油価格に影響が出る可能性がある。(中略)船舶関係者はロイターに、アジア方面への船舶に大きな影響はないが、欧州や米国に向かう船の輸送費が上がる可能性があるとしている”【7月27日 産経】
かつて、ホルムズ海峡封鎖が話題になったとき、サウジラビアの原油をパイプラインで紅海側に運んで、紅海側から輸送することも検討されたかと思います。

なお、今回のタンカー攻撃がどういう形で行われたのか(陸上からか海上からか、どの地点で攻撃されたのかなど)、その詳細は報じられていません。

ましてや、背景にフーシ派を支援するイランの関与があるのかどうかも定かではありませんが、こうしたイエメンでの重要戦略にはイランが関与しているのでは・・・との推測も多いようです。

イランにとって、ホルムズ海峡だけでなく、もうひとつのルート・バブエルマンデブ海峡も実質的に封鎖できることを示すことで、アメリカへの大きな圧力をかけることができるのか・・・、あるいは、“虎の尾を踏む”ことになるのか・・・・。(なお、ロウハニ大統領はアメリカへの警告で「ライオンのしっぽで遊んではいけない。後悔することになる」と語っていました。似たような表現があるようです。)

サウジアラビア等のアラブ連合空軍は27日早朝からフージ派が支配するイエメン・ホデイダ県の各所に対して、猛烈な空爆を加えているとのことで、上記タンカー攻撃への報復措置と思われます。

もっとも、イエメン情勢はどうなっているのか、よくわかりません。
焦点となっていた港湾都市ホデイダ攻防についても、“ホデイダをめぐっては、連合軍の支援を受けるイエメンの親政府派が、国連が仲介する和平協議にチャンスを与えるとして攻撃を中断している”【前出AFP】という状況が続いていますが、どうなったのか?上記のサウジ等の空爆で、戦闘再開となったのか・・・よく知りません。

思いがけずイエメン難民が大挙流入した韓国の戸惑い
「世界最悪の人道危機」とも言われるイエメンの内戦は、資源も乏しいアラブ最貧国の争いということで、国際的にも関心が薄く「忘れられた戦争」とも言われ、イラン・サウジアラビアの代理戦争という側面でかろうじて話題性を保っているような状況で、日本など東アジア世界からすると、遠いところの戦争というイメージでもありました。

しかし、そのイエメン内戦の影響が思わぬ形で及んでいるのがお隣韓国。

****イエメン難民の大挙流入に戸惑う韓国・済州島 人道危機にも受け入れ拒否感強く***
韓国南部の済州島(チェジュド)に今年、内戦が続くイエメンを逃れ約560人の人々が自由と平和を求めてやってきた。

30日以内の滞在なら同島では査証不要(ノービザ)という制度を利用したもので、ほぼ全員が韓国政府による難民認定を切望している。

だが、韓国ではイエメン人受け入れへの拒否感は強い。韓国政府はイエメン人へのノービザを急遽(きゅうきょ)、廃止し新たな流入を食い止めたが、問題はくすぶり続けている。

「帰れない…」
済州市内のバスターミナル近くで話し込んでいたイエメン人男性4人が取材に応じてくれた。サレム・アブダールさん(30)は昨年イエメンを脱出。ソマリア、スーダン、エジプト、マレーシアを経て、今年5月初旬、済州島にたどり着いた。「軍の包囲を越えないと脱出できなかった。イエメンでは10代のいとこが殺された」という。
 
「6カ月は済州島にいられます」とアブダールさんは先月発給された外国人登録証を見せてくれた。筆者も持っているものだが、在留資格の項目には「その他」と記されていた。
 
「済州島の人々は親切だけど、僕らは歓迎されていない」。5月中旬に来たクセム・ムアイヤドさん(30)は、この2カ月間で自分たちを取り巻く現実を痛感した。

一方で「イエメンではコレラが大発生して久しいが、薬もない。帰ろうにも帰れない」とため息をついた。

大半が難民申請
流入は今年突然、急増した。イエメンからノービザで入国できるマレーシア経由での韓国入りが大半で、昨年12月にマレーシアからの直行便が開設されたことで拍車がかかった。済州出入国外国人庁によると、今年ノービザで済州島に来たイエメン人は561人。500人余りが男性という。
 
「前例がなく大変でした」。同庁の朴峻●(パク・ジュンヒョン)行政支援チーム長は数カ月前を振り返った。庁舎前には難民認定を申請するイエメン人が集まり、イスラム教の祈りをささげたりもした。
 
韓国政府は6月1日、済州島に続々と来るイエメン人をノービザの対象から除外。また、済州島からの韓国本土への渡航も禁止した。事実上の流入食い止めと島への封じ込めだ。
 
しかし、今年やってきた者のうち、アブダールさんやムアイヤドさんを含む549人がすでに難民認定を申請している。認定されない場合、異議申し立てや行政訴訟が認められる。

ただ、韓国では過去、全申請者のうち難民認定されたのは4%にすぎない。韓国法務省では6~8カ月かかっている審査を2~3カ月に短縮するため同庁の審査官や通訳を増員した。

済州市中心部にある済州難民センターの周辺では、イエメン人を頻繁に見かける。済州島に来たものの金がなくては生活できない。同センターでは一時的な就職相談にのっている。
 
バッサム・アロタブさん(30)はイエメンに妻と9歳の息子を残し、いとこ(22)とともに今年、済州島に来た。イエメンでは運転手や雑貨商をやって生計を立てていたという。「稼がないと生きていけない。できることは何でもやる」と思いは切実だ。
 
紹介される仕事は漁業や農業が多い。だが、慣れない海の仕事での船酔いや習慣の違いにより、仕事が続かない者も多いようだ。

沈黙する住民
「世界最悪の人道危機」と呼ばれるイエメン内戦に対し、韓国国内の認識は極めて低い。市内の観光案内所で「最近イエメン人が多いそうですが」と聞くと、「イエメン人なんてこの辺にはいませんよ!」と嫌な顔をされた。数十メートル離れた道の向こうにはイエメン人の男性数人がいる。
 
「人道・人権問題であるのは分かるが、問題は彼らの本質だ」と済州市のタクシー運転手(59)は言う。「生活習慣が異なる彼らにここでの生活は幸せなのでしょうか」とも。
 
同情しつつも、済州島では人々の多くがイエメン人二分問題について自ら語ろうとしない。「職が奪われる」といった反発に加え、特に多いのがイスラム教徒への警戒心だ。
 
世論調査では韓国民の約半数がイエメン難民受け入れに反対。大統領府の国民請願サイトでは「イエメン人受け入れ反対」の請願が70万件を超えた。
 
「開かれた難民行政。ひとつになる大韓民国」「平和の島、済州」。済州出入国外国人庁と済州道庁の玄関に大書された文字が皮肉に映る。「僕らに何が起きたのかを分かってほしい」とムアイヤドさん。韓国で直面する拒絶感にも、希望だけは捨ててはいない。【7月18日 産経】
******************

日本同様に難民という概念自体になじみが薄い韓国では、トランプ大統領に象徴されるような世界各地で見られる強烈な反移民感情も起きているようです。

しかし韓国には、文在寅大統領の両親が朝鮮戦争当時、北朝鮮から逃れてきた避難民だったという歴史もあります。

****済州島に押し寄せたイエメン難民、「反移民感情の高まりが韓国でも」と海外メディア****
2018年7月20日、韓国南部の済州島に押し寄せた中東イエメンからの難民。韓国内では反発が強まり、大統領府の掲示板では受け入れ拒否の請願に70万人以上の署名が集まった。海外メディアは「欧州を席巻し、米国でトランプ氏を大統領に押し上げた反移民感情の高まりが韓国でも繰り返されている」と伝えている。(中略)

難民の増加に韓国政府は6月になって済州島へのビザなし入国を許可している国からイエメンを除外。難民が韓国本土への渡航ができないよう措置を取ったが、国内では強烈な反発起き、AFP通信によると、韓国のポータルサイト「ネイバー」に投稿された「政府は狂っているのか?やつらは私たちの娘をレイプするイスラム教徒だぞ」というコメントには、数千人が賛同を示した。

中央日報によると、ソウルでは14日、 インターネットコミュニティー「難民反対国民行動」が「イエメン難民受け入れ反対、ノービザ・難民法廃止」集会を開催。難民法と済州ノービザ制度廃止などを政府に促した。

主催団体はイエメン難民申請者らについて、「彼らは政治的迫害を避けて韓国に来た難民ではなく就業を目的とした経済的移住民だ」と指摘。「欧州の多くの国が難民を受け入れて残酷な犯罪にさらされており、被害者はほとんどが女性と子どもたちだ。われわれは難民法改正を望まない。改正案で国民を愚弄(ぐろう)し、だまさずに難民法を即時廃止せよ」などと主張しているという。

こうした背景に関してAFP通信は「人口(約5000万人)のうち外国人はわずか4%程度で、それも中国や近隣の東南アジア諸国からの人々が大半」と指摘。「韓国では難民という概念自体になじみが薄い」との見方を示している。

イエメン難民問題をめぐり、英紙「ガーディアン」は文在寅大統領の両親が朝鮮戦争当時、北朝鮮から逃れてきた避難民だったことに言及。どう対応するかに「避難民の息子が沈黙している」と皮肉っている。

同紙はイエメン難民に対して最も批判的なのは保守系のキリスト教団体で、韓国国民の49%が難民受け入れに反対し、39%が賛成しているという世論調査の結果もあると説明。

一方で、世論の反発を承知で難民の宿泊料を割引したり、食料・衣類・寝具などを寄付したりする済州島の住民がいるとも紹介している。【7月22日 Record china】
***************

事態の背景として、“韓国はこれまで、難民とは無縁の国だった。1993年から2013年6月までに難民申請した人は5500人に過ぎない。ところが、2013年7月にアジアで初めて「難民法」が施行されたことを機に、世界に「アジアの他の国に比べて難民に寛容だ」との認識が広まった結果、今年は1万8000人が難民申請をした。また、SNSに「済州島は難民にとって暮らしやすい場所」などの書き込みがあったことも、済州島に難民が急増するきっかけの1つとなった。”【7月25日 Record china】とも。

「やつらは私たちの娘をレイプするイスラム教徒だぞ」・・・・非常に偏見・差別に満ちた反応ですが、日本のネットユーザーに多い韓国嫌いの人たちの多くは、反移民・難民の傾向もあるようですから、今回は韓国国内の強い反移民感情の高まりには賛同するのでしょう。

一方で、韓国国内には難民への積極対応を求める声もあるようです。

****イエメン難民はなぜ韓国・済州島へ押し寄せた****
・・・・また、ソウル新聞によると、韓国政府の積極的な対応を求める声も多い。済州平和人権研究所「ワット」のシン・ガンヒョプ所長は「ここまで大規模な難民の流入も、本土への渡航禁止措置も初めて。そのため混乱に陥っている」とし、「政府は問題を済州市に任せるのではなく、人道的な解決に積極的になるべき」と主張した。

公益法センター「アピール」のチョン・スヨン弁護士は「難民を法律支援しているため、国民から批判的な声を聞くことも多い」とした上で、「そうした視線の背景には、私たちがイスラム国家や難民をよく知らないために生じる恐怖心がある」と指摘した。

その他、韓国の大学教授の一部も「韓国はこれまで、国際的な地位に見合わず難民問題に消極的な態度を見せてきた。韓国は朝鮮戦争の時に外国から支援を受けた上、国連の難民条約にも加入しているため、政府が粘り強く国民を説得しなければならない」などと主張している。【7月25日 Record china】
******************

本来リベラルな人道を重視する左派政権・文在寅大統領の真贋が問われる案件です。
コメント

パキスタン総選挙  テロ再燃 女性の投票を阻む壁 中国「一帯一路」構想への影響

2018-07-26 22:20:22 | アフガン・パキスタン

(パキスタンのモーリプール村で、女性たちに選挙に行くように話すソーシャルワーカーで地方議会の議員でもあるビスミラ・ヌール氏(左、2018年7月7日撮影)【7月22日 WSJ】)

【「反汚職」と「反軍」の争いは、軍部支援の「反汚職」の勝利
25日に行われたパキスタン総選挙は、同国における政治実権を握る軍部と距離を置き、その軍部によって排除されたとみられるシャリフ元首相率いる勢力と、軍部の後押しを受けシャリフ政権の汚職体質を批判する元クリケット有名選手カーン氏の率いる勢力との争いとなりました。

****反汚職」か「反軍」か=下院選、25日投票―パキスタン****
・・・・今月上旬の世論調査では、反汚職を掲げる第3党パキスタン正義運動(PTI)と、軍の政治介入を批判する第1党イスラム教徒連盟シャリフ派(PML―N)が伯仲。(中略)

「もしここにいる候補者が汚職に手を染めたら、私が監獄にたたき込む」。PTIのイムラン・カーン党首(65)は23日深夜、激戦区の東部ラホールで開かれた選挙集会で声を張り上げた。

南アジアや英国で人気のクリケットの元パキスタン代表でキャプテンを務めたクリーンなイメージで売り込み、今月、汚職で有罪判決を受け収監されたPML―Nの事実上のリーダー、シャリフ元首相(68)との差異を強調。

演説を聴いた大学生ハムザ・ナビードさん(21)は「汚職がなくなれば海外からの投資が増え、経済が成長し雇用が安定する」と期待を寄せた。

一方、パキスタンで最強の権力を握るとされる軍の「静かなクーデター」を批判するのがPML―N。過去にクーデターを起こされた経緯から軍と距離を置いていたシャリフ氏の汚職疑惑は、軍に仕組まれたものだと主張する。

23日はシャリフ氏の腹心で首相を継いだアバシ前首相(59)がイスラマバードで「(市民の)投票に尊厳を」と訴え、軍の政治介入を止めようと気勢を上げた。

ラホールの文房具商モハンマド・ズベイルさん(36)は「シャリフ氏は教育、医療、道路を与えてくれた。クリケット選手に国は治められない」と語った。

反汚職と反軍の姿勢以外に「政策に大きな差は無い」(政治評論家アミール・ラナ氏)状況。大勢は25日中にも判明する見通しだ。【7月24日 時事】 
*********************

事前調査では支持率などは拮抗していましたが、“勢い”には差がありました。

****ポスターはがされ…総選挙前にパキスタンで進む与党離れ****
パキスタンの総選挙が25日、投開票される。与党は政治介入を強める軍部と対立し、思うような選挙運動ができない。逆に、軍部と蜜月関係の野党第2党は勢いづく。(中略9

同国で最大の人口を抱えるパンジャブ州。与党「イスラム教徒連盟シャリフ派(PML―N)」(改選前議席190)の地盤だが、州都ラホールの街頭で目立つのは、野党のポスターや旗だ。「どんどん与党のポスターがはがされる」と与党支持の運転手ニクラス・マスィさん(36)は言う。与党離れを物語る現象だ。「元気のない党に票を預ける仲間は少ない」とマスィさんは語った。

与党は堅調な経済成長で、財界などから強い支持を得てきた。だが軍の元トップの訴追や、隣国インドへの融和姿勢から、軍部との関係が悪化した。

幹部が次々に失脚し、13日には与党を率いるシャリフ元首相が資産隠しの罪で収監された。党幹部への銃撃や逮捕状のない拘束も続く。

テレビ各局は与党の選挙運動の報道を控える。ラホールが拠点のテレビ局幹部は取材に対し、「軍部の嫌がらせを避けるためだ」と説明した。

軍に近い野党 与党と並ぶ
一方、躍進しそうなのが野党第2党の「正義運動(PTI)」(同31)。党首はクリケットの元スター選手イムラン・カーン氏。「政権を奪取して汚職を一掃する」と訴える。

また反米感情や隣国への敵対心をあおって若者の支持をひき付ける。いずれも軍部の意に沿う主張だ。順調に選挙運動を進め、地盤の北西部に加え、パンジャブ州で与党の切り崩しを狙う。

昨年まで与党が圧倒していた民間世論調査の支持率は、6月調査でPML―Nが26%、PTIが25%と並んだ。逆転を伝える調査もある。(中略)

両党の連立候補として注目されるのが、野党第1党の「人民党(PPP)」(同47)だ。南部シンド州を地盤にブット元首相の長男ビラワル氏が率いる。同じ6月の世論調査で支持率は16%。ビラワル氏は軍部との対抗姿勢で与党と一致。「連携の用意がある」と与党に秋波を送る。【7月24日 朝日】
*****************

結果は、軍部に担がれたポピュリズム政党・パキスタン正義運動(PTI)が圧勝しましたが、過半数には届いていないようです。

****反汚職」の野党が勝利宣言=変革期待、政権交代も―パキスタン下院選****
任期満了に伴い25日に実施されたパキスタン下院選(定数342)で、「反汚職」を掲げる第3党の野党パキスタン正義運動(PTI)幹部は26日、報道陣に対し「(第1党として)われわれが政府を形成する」と述べ、事実上の勝利宣言を行った。

ただ、単独での過半数確保は困難な情勢で、PTIが政権を樹立できるかは、今後の連立協議の結果次第となる。
 
PTIは、変革を求める若者を中心に支持を集め、女性や非イスラム教徒に割り当てられる特別枠を除いた272議席のうち、110議席超を確保する勢い。第1党だったイスラム教徒連盟シャリフ派(PML―N)は65議席程度に減らす見込み。
 
PTIは選挙戦で、これまでPML―Nや第2党パキスタン人民党(PPP)などによる特権階級中心の政治が続いてきたと主張。南アジアや英国の人気スポーツ、クリケットの元スター選手だったイムラン・カーン党首(65)を前面に押し出して変革を訴え、支持を広げた。
 
PML―Nは昨年7月、軍と距離を置いていた実質的代表のシャリフ元首相(68)が汚職疑惑で首相職を失い、投票日直前に有罪判決を受けて収監されたことを「軍による政治介入だ」と批判。軍と関係が近いとされるPTIを攻撃したが、伸び悩んだ。
 
PTIが掲げる反汚職や教育問題への取り組みといった11項目の政策目標には「具体性がない」(パンジャブ大のシャビール・アフマド・カーン准教授)という指摘もある。実際に政権を担い、経済成長や雇用確保などの変革を成し遂げられるかは不透明だ。【7月26日 時事】 
******************

PTIを軸に、協力関係にある少数政党との連立政権になるとみられています。
もともと、パキスタン政治における最強勢力は軍部でしたが、今後はさらにその傾向が強まることが予想されます。

再燃が懸念される“テロ地獄”】
カーン氏の政治手腕、軍部との関係は今後の話として、今回選挙で気になった現象は、このところは静まったかに思われていたテロの再燃です。

****パキスタン治安部隊、149人が死亡した自爆攻撃の首謀者殺害****
パキスタンの治安部隊は20日、情勢が不安定な同国南西部バルチスタン州マストゥングで先週発生し、少なくとも149人が死亡した選挙集会での自爆攻撃の首謀者を殺害した。当局が明らかにした。

今回の作戦は、同州カラート県にある村の住宅に、ヒダヤット・ウラー容疑者と特定されたイスラム過激派組織「イスラム国」の工作員がいるとの情報提供を受けて実施された。(中略)

自爆攻撃としては同国史上最多の犠牲者を出したマストゥングでの事件については、ISが犯行声明を出している。(中略)

ただ、2014年に北西部のペシャワルにある学校が襲撃され、武装勢力による襲撃事件としては同国史上最多となる、主に子どもたち150人超が犠牲となった事件以降、パキスタンでは暴力沙汰が著しく減少している。

同国の軍部は学校襲撃事件を受けて、アフガニスタンとの国境に接する部族地域で武装勢力に対する作戦を強化し、劇的な治安の改善につながった。

だが専門家らはかねてから、パキスタンは過激主義の根本的な原因に対処しておらず、武装勢力はマストゥングでの自爆攻撃のように、大掛かりな襲撃を実行する能力を維持していると警鐘を鳴らしている。【7月22日 AFP】****************

7月22日には、北西部カイバル・パクトゥンクワ州デライスマイルカーンで、パキスタン正義運動(PTI)の州議会選立候補者が乗った車を狙った自爆テロがあり、地元当局によると候補者とその運転手が死亡しています。

パキスタン全土では総選挙の安全を確保するため、軍37万人以上、警察官45万人が配備されましたが、投票日の25日には、南西部バルチスタン州の州都クエッタで投票所を狙った自爆攻撃があり、少なくとも30人が死亡、数十人が負傷しています。

女性の政治参加と、これを阻む壁
“反汚職と反軍の姿勢以外に「政策に大きな差は無い」”という争いでしたが、女性の政治参加という観点では重要な試みもありました。パキスタンはマララさん銃撃事件にみられるように、女性の社会参加に対する根強い反発が強い地域です。

****************
パキスタン選挙管理委員会は、各選挙区で投票の少なくとも10%を女性が占めていなければ、選挙結果を無効にすると宣言した。選挙管理委員会によると、2000万人近くが新たに選挙人名簿へ登録をしたが、うち913万人が女性だったという。

人口約2億700万人のパキスタンでは家父長制が根強く、女性の権利向上のための闘いが長らく続いている。今回の選挙規定の変更もその一歩となる。

2013年の選挙では男女の不均衡を正す取り組みはほとんどされず、結局男性の選挙人名簿への登録数が女性を約1100万人上回った。【7月22日 AFP】
*****************

この流れをつかもうとする動き、一方で従来どおり女性の政治参加を阻もうとする動きのせめぎあいもあったようです。

****女性が投票を禁じられた村、選挙が家父長制に逆らう手段に パキスタン****
パキスタン・パンジャブ州にあるモーリプール村の男性たちは1947年頃、女性たちが選挙に行くことを禁止した。それ以来、女性たちはその規則に従ってきた――今年までは。パキスタンの選挙法が改定され、女性たちの選挙に対する姿勢も大きく変わるかもしれない。

少なくとも、パキスタン中部の都市ムルタンから60キロほど離れた村で、強い日差しを逃れムラサキフトモモの木の下に集まっている大勢の女性にとって、これは希望だ。

だが、女性たちがAFPの取材を受けているのを腹立たし気に見ている男性たちが、7月25日に行われる選挙に女性たちを行かせるかどうかは別の問題だ。

村の長老たちは、投票所に行くことが女性たちの「名誉を汚す」として、何十年も女性が選挙に行くことを禁止してきた。

「名誉」という言葉は、南アジアに広がる家父長制度をよく言い表している。「名誉」はしばしば、夫を自分で選んだり、家の外で働いたりするなど伝統的保守主義に逆らう女性の殺害や抑圧を正当化する。(後略)【7月22日 AFP】
*****************

結局、上記モーリプール村の女性は、厳しい現実の前で投票を断念しました。
ただ、変化を経験した地域もあったようです。

****夫に逆らい投票を誓った女性たち、しかし最終的には断念 パキスタン****
女性の投票を禁じていたパキスタンの村で、女性たちが男性に逆らい、25日の総選挙に初めて投票に行くと宣言していたが、最終的に投票所に現れた女性は一人もいなかった。

民主主義の基本である選挙権を女性たちが行使することなく終わった理由は、夫たちに脅迫されたからだという。(中略)
村の選挙人名簿に記載されているのは、男性約8000人に対し、女性は約3200人。だが、選挙管理委員会や村唯一の投票所を取材したAFP記者によると、女性は結局、1人も投票に現れなかったという。
 
AFPの取材に応じたタンヤ・ビビさんは「私たちは、もし投票に行けば離婚すると、夫たちから脅されたのです」と言いながら、学校内に設置された投票所の中には入らずに通り過ぎた。
 
一方、男性たちは身分証を握りしめ、長蛇の列を作っていた。並んでいたムハンマド・シャムシェーさんは「私たちは投票に来ているが、女性たちは投票したことがない。それが、私たちが守り続けてきた古い伝統だからだ」と語った。
 
女性に投票を呼び掛ける活動を行っていた弁護士のカシル・アッバス氏さえもが、最終的には妻を投票所に連れて行かなかった。「村人たちが私の家族を避けるようになるかもしれないと思うと怖かった」と、アッバス氏は語った。
 
地元のNGOに所属するビスミラ・イラム氏は、村のモスクが、女性は投票所に行くべきではないとする声明を出したのだと述べた。(中略)

■「とてもうれしい」
今回の総選挙を前にしてパキスタン選挙管理委員会は、各選挙区の投票数の少なくとも10%が女性票でない場合には、選挙結果を無効にすると宣言していた。これを受けて、女性による投票が増加することへの期待が高まっていた。(中略)

投票数の全容はまだ明らかになっていないが、ラホールやカラチなどの主要都市では、投票所前で女性たちの列も見られた。(中略)

他の保守的な地方都市の女性たちは、モーリプールよりも良い経験をしたようだ。特に顕著だったのが、北西部カイバル・パクトゥンクワ州のローワーディール地区だ。ここも女性による投票が許可されたのは初めてだった。
 
サマルバグ町在住で3人の子を持つバクト・サニア・ビビさんは、AFPの取材に対し「今日、投票に行った。自分の基本的な権利を手にして、とてもうれしく感じる」と語った。
 
またコト町在住で同じく初めて投票したサジダ・ハリームさんは、2013年と2015年の選挙では投票を阻止されたと述べた。
 
社会福祉学の修士号を持つハリームさんはAFPの取材に対し、「いつも、『なぜ男性たちが私たちのことを決めるのだろうか。私たち女性が彼らのことを決められるだろうか?』と思っていた」と話し、「今日、私は完全なパキスタン人になったと感じる。18歳の時から否定されてきた自分の権利を手に入れたのだから」と続けた。【7月26日 AFP】
**************

女性の政治参加を促す取り組みが今後も加速することを期待します。

政権交代で中国「一帯一路」構想の中核事業見直しか
もうひとつ、今回選挙の影響としては、前政権が接近した中国との関係が、汚職・腐敗の温床として見直される可能性があります。この点では、マーレシアのマハティール氏復活とも重なり、中国にとっては厳しい局面です。

****中国「一帯一路」構想、パキスタンで暗雲 *****
中国による貸し出しを伴う不透明な取引で壁が露呈

米国の強大な影響力に取って代わり、世界の地政学的地図を塗り替えようとする中国にとって、パキスタン初の地下鉄路線「オレンジライン」の建設は、その勝利への第一歩を誇示するはずだった。

中国国営企業が資金を融通し、建設も手掛けるオレンジラインは、同国北東部の都市ラホールを高架で走る路線。中国はパキスタンで計画する総額620億ドル(約6兆9000億円)のインフラ計画の第一弾として、建設費用20億ドルを投じて空調完備の地下鉄を開通させるつもりだ。

これによりムガル帝国および大英帝国の植民地支配が残した過去の遺物を一掃し、中国が世界的に展開するインフラ攻勢のショーケースになることが期待された。

だが実際は、中国の目指す現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」に、想定外のつまずきが生じていることを示す象徴的事例となった。

中国による計画開始から3年、パキスタンは債務危機に近づいている。オレンジラインのような大規模事業のために中国からのローンや輸入が急増したことが一因だ。パキスタン当局はオレンジラインを運営するには政府の補助金が必要になると話す。(中略)

パキスタン総選挙の投開票が迫る中、勢いづく野党はオレンジラインをはじめ中国主導のプロジェクトの詳細な資金状況を公表すると約束している。(中略)

今年の秋口にはこうした問題が顕在化する見通しだ。パキスタンの新政権は国際通貨基金(IMF)に2013年以来となる緊急支援を要請する公算が大きい。

救済が行われる場合、借り入れや支出に制限が課されることとなり、一帯一路構想の中核をなす「中国パキスタン経済回廊(CPEC)」が計画縮小に追い込まれる可能性がある。(中略)

またIMFは今後、「中パ経済回廊」の既存プロジェクトについても、パキスタンの新政権に透明性の向上を求めるとみられる。現政権は競争入札を用いることなく、不透明な取引によって無駄の多い政治的プロジェクトに資金を流用していると批判を浴びていた。

「オレンジラインのような取引を秘密にすることはあり得ない」。反汚職を掲げる野党パキスタン正義運動(PTI)のチャウドリー・ファワド・フセイン報道官はこう語った。

同氏によると、PTIは中パ経済回廊を支持するものの、全ての取り決めを議会に明らかにし、審議を受けるべきだと主張している。(中略)

「赤字垂れ流しの巨大プロジェクトを建設する真の理由はいつも多額のリベートだ」。野党PTIの党首でクリケットの元スター選手イムラン・カーン氏は3月にこうツイートした。(後略)【7月24日 WSJ】
*********************

経済合理性に依らず、政治的思惑と腐敗・汚職に動機づけられた計画は政変によって容易に覆りますが、国民批判を惹起することで、そうした政変を引き起こす原因ともなります。
コメント

中国  食・医薬品の安全性への不信感 消毒済み食器をお茶ですすぐ

2018-07-25 13:50:04 | 中国

7月24日 中国の貴州省・広西チワン族自治区の観光を終えて、四川省・成都の空港で大阪行きのフライトを待っています。

これでなんとか無事に帰国できそうです。(蚊に刺されまくってボコボコになっている両足が“無事”と言えればですが)

冒頭写真は、成都の空港で食べた昼食。お湯を注いで待てばご飯が食べられるインスタント食品です。

さすがに激辛料理の本場・四川省だけあって、半端ない辛さです。赤いものは極力避けて食べた結果が下の写真。

辛い物は嫌いではありませんが、こんなもの全部食べたら確実におなかをこわします。(旅の前半、貴州省(四川省の隣)でも辛い料理を食べ過ぎたせいか、体調を崩しました。)

カップ麺のようなインスタント食品ですから、すべてがバカ高い空港売店でも10元(170円)
こんなものを食べている貧乏人は私ぐらいです。

完全な一人旅なら、炒飯ですますとか、こんな調子で旅行中の食費はそんなにかかりません。(いろいろ頼みたくても、どんな料理かわからないので頼めないということもありますし、大皿料理が多い中国は、一人で注文するのには不向きです。)

今回は貴州でも広西でも、ガイド同行で、昼・夕食はガイド・ドライバーも一緒に食事して、代金は三人分私が負担するスタイルでした。

そうなると、炒飯ですますという訳にもいきませんので、一回の食事代は2000円ぐらい、多いときは1日で5000円~6000円ぐらいになって、結構な負担になります。

その分、毎回その土地の名物とか、珍しいものとか食べることができましたが。(広西で食べたものを紹介した前々回ブログを参照)

今回旅行で食事の際に、ほとんどの店で目にしたのが下記画像の、小皿やお椀をパックしたもの。

http://huaihua.blog5.fc2.com/blog-entry-673.html

中国ではかつては(他のアジア諸国は現在でも)、テーブルに置かれている箸やスプーンを、やはり卓上のティッシュで拭いてから使用するといったことが一般に行われていました。

店の清潔さに関する信頼がなく、自分の身は自分で守るということです。

それからすると、消毒済みの食器がビニールパックされているというのは、“文明の一大進歩”でしょう。

なお、このパックは1元(約17円)の料金がかかる・・・との説明もありますが、今回旅行では全く意識しませんでした。料理代金に含まれていたのか?
「食器を清潔に保つという当然に店側が行うべきことへ、どうして客がカネを払わなければいけないのか!」との批判もあったようですので、最近は料金を明示しない、あるいは店負担としているのでしょうか?

ただ、安全性への信頼は生まれていないようで、多くの人がパックから取り出した食器をお茶でかるくすすいで使用します。
店側も、陶器のポットになみなみと入れたお茶と一緒に、すすいだお茶を捨てる洗面器を一緒にもってきます。

このお茶は広西では、ほんのりとした甘みを出す甘草に決明子など加えた優れもので、そんな食器洗いに使うのはもったいない感も。

中国の食材等の安全性に対する疑念は、日本でも強くありますが、地元住民にも信頼されていないようです。

****またも下水油事件、食品会社も「残飯由来」と知りつつ使用―北京市****
北京市メディアの新京報によると、同市房山区人民法院(裁判所)で14日、食品廃棄物やごみなどから食用にすることを目的で再生した油、いわゆる「下水油」を扱ったとされる被告4人に対する審理が行われた。

被告はいずれも犯行の事実を認めたという。被告のうち1人は、「下水油」と知っていながら購入して調味料の原料にした食品会社関係者という。

被告4人のうち2人は夫婦で、2013年から北京市内の大興区などの飲食店で残飯を大量に仕入れ、油を抽出していた。

中華料理では火鍋と呼ばれる鍋料理やその他の一部料理で、唐辛子の実そのもの、つまり日本風に言えば「鷹の爪」を風味づけのために大量に使うことがある。そのように使われた唐辛子の大部分は食べ残される。

2人は主に残飯中の唐辛子を取り出して油を抽出するとともに、唐辛子そのものを改めて油で揚げたり粉状に加工して食材として販売していた。

容疑者の1人は飲食店経営者で、前記2人が売る油が「下水油」と知りながら購入し、店で使っていた。

残りの1人は、前記2人が売る唐辛子や油を食品廃棄物から再生されたものと知りつつ購入し、自社製品の調味料の原料として使っていた食品加工会社の関係者だ。

同被告は「風味をつけるのに効果があり、安かったので使った」と供述したという。ただし記事によると、「下水油」などを使った調味料を仕入れて販売したことのある卸売業者は、「客から味が悪いと言われたので、扱わなくなった」と述べたという。

記事によると、作られた下水油のかなりの部分は正規の食品加工会社に売られていた。食品加工会社は油などをさらに、飲食店や鍋料理の「スープの素」を作る会社に売っていた。

記録によると、食品会社の下水油の仕入れ価格は1キログラム当たり3.6元(約62円)で出荷価格は6元(約104円)だったという。 (中略)

なお、中国では飲食店付近の下水などから取り出した油を再生して食用油などとして販売する事件が相次いたことで、「地溝油(下水油)」の言い方が定着した。

現在では残飯や食品廃棄物など、食材として認められない物から作られた食用油全般を「地溝油」と呼ぶことが定着した。【6月16日 レコードチャイナ】
*******************

個人的には、上記「下水油」に関しては同情的です。
多くの国で何億人もの人々が飢えで苦しんでいる世界にあって、食材の再利用は一概に責められるべきものだとは思いません。

安全性に留意して再利用・加工され、そういう「再利用品」であることを明示し、格安で提供されるということであれば、資源の有効利用とも言えるでしょう。(「そんなもの誰が食べるか!」との声もあるかもしれませんが・・・・)

少し事情は異なりますが、日本など世界各地で賞味期限を過ぎた食材が大量に“生ごみ”として廃棄されるのは“犯罪的”とも言えますし、そうした賞味期限に過度にこだわる社会も“病的”だと考えています。

話を中国にもどすと、中国の食品などの安全性に関しては、いくら利益のためとはいっても”やっていいことと、悪いことがあるだろうに・・・・”と思うことも多々あります。

中国の人々が国産品を信用せず、外国で爆買いしている粉ミルクなどの件もそのひとつです。
(2008年に粉ミルクにタンパク質量偽装のためメラミンが多量に含まれていることが発覚。乳幼児5万4千人が腎臓結石を患い、4人が死亡したとも)

食品だけでなく、医薬品の品質・安全性にも大きな疑問が。

****中国、不適合ワクチンで世論激怒 子ども数十万人接種****
中国で、国の販売基準に適合しない予防効果不明の混合ワクチンが大量に流通、数十万人の子どもらが接種していたことが発覚し、衝撃が広がっている。

中国では違法薬品が市場に出回る事案が後を絶たない。今回は子どもの命に関わりかねないため、親らの怒りが爆発。国の管理責任も取り沙汰され、当局は世論の沈静化に躍起になっている。

李克強首相は22日「道徳的に許せる最低ラインを越えた」として真相究明を指示。しかし李氏は2016年にワクチンの違法販売事件が判明した際も「レッドラインだ」として再発防止を指示していただけに、国民の怒りの火に油を注いでいる。【7月23日 共同】
*********************

粉ミルクにしても、上記ワクチンにしても、“レッドライン”は当然ですが、健康被害が出ることが予想されにもかかわらず、なぜそんなことをするのか、発覚したときのリスクをどのように考えているのか疑問にも思います。

こうした底がみえないような深い安全性軽視の社会風潮もあっての、消毒済みパック食器のお茶によるすすぎでもあります。

追記
25日19時 ようやく帰宅しました。
上記ワクチン事件の続報。中国政府には苦しい展開になっているようです。

****中国ワクチンスキャンダル、贈収賄告発投稿が拡散 安全性に不安高まる****
中国製薬業界の腐敗疑惑をめぐる書き込みがインターネットで大反響を呼び、中国人の間でふたたび商品の安全性に対する不安が高まっている。

今回のワクチン製造大手による不正疑惑は、既に揺らいでいた規制当局に対する信頼を完全に失墜させるとともに、見識を高めてきた中国の消費者がいらだちを強めていることも浮き彫りにした。

製薬会社、長春長生生物科技が狂犬病ワクチン生産に関する記録を捏造(ねつぞう)していたことが発覚し、同ワクチンの製造中止を命じられたと初めて報道されたのは1週間以上前のこと。

しかし先週末になって、長春長生生物科技が低品質な商品を市場に流通させるために贈賄などの不正行為を長年にわたって行ってきたとする投稿が拡散したことを受けて、ソーシャルメディア上で同社に対する怒りが爆発した。

この投稿の出所や信ぴょう性についてはいまだに確認がとれていない。しかし、中国の検閲当局はこの投稿の拡散を防ごうと躍起になっており、削除と拡散のいたちごっことなっている。

扱いの難しい国家的な問題がめずらしく世間に公表された中、大勢の怒れるユーザーがこの投稿や、商品の安全性関する別の情報をシェアしている。

中国の国家食品薬品監督管理総局は先週、問題の狂犬病ワクチンは長春長生の工場から出荷されたものではないと発表した。しかし長春長生は、品質基準を満たしていない別のワクチンを出荷したことを認めている。

このワクチンはジフテリア・百日ぜき・破傷風の3種混合ワクチンで、品質基準を満たしていないことを規制当局が明らかにした。長春長生は、接種25万回分のこのワクチンを昨年山東省に販売したと明らかにしている。

■続く暴露、政府上層部にも焦り?
圧力が高まる中、さらに暴露が続いた。河北省当局は23日、別の製薬会社、別の製薬会社、武漢生物制品研究所が製造した品質基準を満たしていない3種混合ワクチンが15万人近くに接種されたと明らかにした。

この問題は、中国産の医薬品に対する根強い不安を再燃させた。不安に駆られた親たちはインターネットに向かい、輸入ワクチンの入手に関する情報を交換している。

北京の小児科医院で24日、幼い娘とともに順番待ちをしていた母親は、「この国のワクチンなんてもう信用できない」と語った。この母親は政府が無料で提供するワクチンではなく、お金を払ってでも輸入ワクチンの接種を娘に受けさせたいと言う。

中国政府は対応に乗り出した。CFDAは、中国には品質を保証する包括的な制度が存在しているので外国産ワクチンの「必要性は皆無」と主張している。

当局は一連の調査の実施を発表すると共に、何らかの過失があった場合、厳しい処罰を下すと明言した。

国営メディアによると中東・アフリカを歴訪中の習近平国家主席は23日、製薬会社の行動について「卑劣そのもの、衝撃的だ」と語った。この件に関する政府上層部の焦りを反映したものとみられる。

CFDAは22日夜、長春長生に全製品の製造中止を命じ、警察が刑事事件として捜査を開始したと発表した。

長春長生の本社がある吉林省は24日、政府当局者が関与した贈収賄事件の捜査を開始すると発表。省都長春市の警察は同日夜、長春長生の女性会長ら15人を逮捕したと発表した。【7月25日 AFP】
****************

ついでに、食の安全性への国民の不信感に関する“スイカ”の話題も

****買ったスイカから大量の泡噴出、「薬品か」との不安広がる―中国****
中国では、江西省ガン州市(「ガン」はへん部分が「章」、つくり部分は「夂」の下に「貢」)の住人が、1日前に買ったスイカから大量の泡が噴出したとSNSに投稿したことから、「何か化学成分が注入されていたのでは」などと不安が広がった。江南都市報が伝えた。

投稿によると、スイカを買ったのは21日で、床の上に放置しておいた。翌22日に切って食べようとしたところ、スイカから大量の白い泡が噴出していることに気付いた。近くに熱源はなく、スイカに触れてもいなかったという。

泡を噴き出したスイカの写真が添えられていたこともあり、同投稿は注目を集めた。「何か化学成分が注入されていたのでは」と不安を示す人もいた。「スイカの売り手が新鮮そうに見せかけようとして水分を注射したのでは」「砂糖水ではないか」などとする投稿もあった。いずれにせよ、古いスイカを新しく見せかけようとして、何かしたのではないかと考える人が多かった。

ガン州市農業食糧局の職員の一人は、スイカは家に持ち帰った時点で亀裂が入っていた可能性があると指摘。高温により内部で発酵が進み、大量の泡を出した可能性があるという。また、最近は大雨が続いたので収穫が遅れ、畑で水につかっていたスイカもあるので、その水がスイカの内部に入り込んで変質を引き起こした可能性もあるという。同職員は、泡を吹いたスイカについて、食べてはならないと説明した。

スイカ栽培を手掛けている男性は、スイカを買う場合にはまず、外観をよく見てほしいと説明。外皮に破損があったり、カビのためにまだらができている場合があるからだ。次にたたいて音を聞く。くぐもったような音ならば、熟れすぎていると思われる。スイカに柄がついていれば、やはり観測すべきで、光沢があればスイカは新鮮で、乾いていたり黄色っぽかった場合、熟れすぎているという。

中国では2011年、江蘇省や河北省で収穫直前のスイカが畑で次々に「爆発」したことが話題になった。メディアは「畑のあちこちから『ボン!』、『ボン!』と音が響いた」、「畑は、まるで地雷原だ」と伝えた。

原因は成長を促す「膨張促進剤」を乱用したことで、スイカがごく小さい段階に限って使わねばならないのに、収穫直前にも使い、しかも雨が続いたことでスイカが急速に水分を取り込んだためとされている。スイカをほぼ全滅させてしまった農民は、「小さいのも爆発する、中ぐらいのも爆発する、大きいのも爆発する、全部爆発する」と嘆いたという。

スイカの場合、多くのネット民にとって「爆発」の記憶が鮮やかであり、「食の安全」に対する不信感も根強いことから、スイカが泡を噴出した件に関心が寄せられたようだ【7月25日 レコードチャイナ】
*****************
コメント

中国  サービスの質 お金持ちと一般庶民

2018-07-24 00:21:57 | 中国

(中国では数ある地方都市のひとつにすぎない貴州省貴陽ですが、高層建築が建ち並ぶさまは圧巻でもあります)

観光モードから帰国モードへ
中国の貴州省と広西チワン族自治区の観光を終えて、今日(7月23日)は四川省・成都にいます。

今朝、広西の南寧を飛行機でたって帰国の途についたのですが、フライトの乗継がよくなく、今日は成都で1泊、明日昼のフライトで大阪へ。大阪でまた1泊して、鹿児島に帰るのは明後日。

三日がかりの帰国で時間をとられ、鹿児島帰着後は空港から職場へ直行というスケジュールです。

そんな帰国後のタイトなスケジュールが待っていますので、今日は成都のホテルで、滞っていたネット情報の整理などしてグダグダしています。

本来なら、せっかく初めての成都にやってきたのですから、しかも13時着で午後の時間が空いているということですから、成都観光に出かけるところですが、上記のような帰国後のことのほか、すでに“帰国モード”になっており、都心まで観光にでかける“気力”がありません。

成都は三国志の蜀の都ということで、その方面の史跡もあります。ただ、三国志は嫌いではありませんが、劉備や孔明の人形を見に出かけるほどのファンでもありません。

本当は、成都郊外に三星堆博物館という古代文明の博物館があって、是非見学したいのですが、そこまで行くとなると時間的に難しいものがあり、今回はパスしました。

四川省は九塞溝や四姑娘山など有名観光地もあるので、また来る機会があるでしょう。

前日も書いたように、蚊に刺されまくった足が強烈に痒いのも観光テンションを下げていますし、往路のときと同じように、四川航空提供の無料トランジットホテルにたどりつくのに1時間あまりも要したこともテンションを下げました。

(四川航空は無料トランジットホテルを提供してくれるのはいいのですが、もう少し不案内な外国人のための配慮をしてもらいたいものです。フロアの航空会社職員に尋ねても、さっぱり要領を得ず、「何をしてほしいのか、このスマホに入力してください」という英語メッセージを表示したスマホを差し出されました・・・・。四川航空のサービスカウンターからあちこちに電話してもらい、やっと送迎の手配ができました。予約時の話では、ホテルの人間が出口で待っているということだったのですが、ウソです。)

そんなこんなで、ホテルでグダグダしています。

日本旅行で一泊15万円のホテルに泊まるお金持ち
経済が急成長する中国にはお金持ちがたくさんいて、大勢日本にもやってくる・・・・というのは、今更の話です。

貴州省を案内してもらったガイド氏は、私の仕事が終わったら、中国人3人を連れて北海道観光に行くとのことでした。

日本にも中国系ガイドはいるのに、わざわざ中国からガイドを同行するということから、相当な“お金持ち”であることがわかります。

そのガイド氏が「日本には一泊15万円のホテルがありますか?」との質問。
その“お金持ち”が、阿寒湖で「一番いいホテルに泊まりたい」とのことで、予定されているのが一泊15万円のホテルだそうです。

ホテル名を聞くと、私も北海道旅行の際に露天ぶろを日帰り入浴しようかと考えた有名ホテルです。
ネットで確認すると、一人5万円、三人で15万円という部屋があるようです。

サービスに関する日本と中国の差
お金持ちが自分のお金で豪華なホテルに泊まることを貧乏人がとやかく言う筋合いはありませんし、日本経済にとっては大いに感謝すべきところでしょう。

ただ、高価なホテルで丁寧なサービスを受けられるというのは、別に日本でなくても、中国でも、世界各地でも同じです。

“日本らしさ”を体感してもらうためには、そんな豪華なホテルでなくても、ごく普通のホテルでも丁寧な対応・サービスを受けられるということを知ってほしい・・・という感も。

中国のサービスの質も昔に比べると格段に向上はしています。
先ほども、ホテル併設のコンビニで買い物をしている際、カメラも持った両手で商品を抱えながら買い物をしていると、女性店員が抱えている商品を受け取りにきてくれました。

昔は、店員が商品を投げて渡す・・・・と、言われていましたが。

ただ、一泊15万円の話を聞いた日に宿泊したホテル(地方都市ではありますが、ある程度の規模のホテル)では、フロントの女性は何か食べ物をかじりながら客の応対をしていました。

また、朝食の場所を尋ねると、中国語が理解できないことを知りながらも、中国語で一方的に話すと、下を向いてスマホに・・・・。 言葉が通じないのでどう説明すればいいかわからなかったのでしょうが、そういう場合は、連れて行くといった対応があるでしょう。ほんの10mほど行って指させばわかる話です。

日本的なサービスに慣れていると、「なんだ、この対応は?」と思うようなこともしばしばあります。

一般庶民の生活は?】
上記の金持ちの話を聞いた広西でのガイド氏の話では、貴州省には特産品の茅台酒(マオタイ酒)で大儲けしているお金持ちが多いとか。

日中国交回復時に田中首相の乾杯などで日本でも有名になった茅台酒。昔から茅台酒は手に入らないと言われていますが、今はもっと難しいとか。

一方で、普通の人の暮らしぶりはどうなだろう・・・・ということで、南寧のホテルに貼ってあった求人広告。

「前台接待」というのがフロント係でしょうか。
「提成」は営業職の歩合のようなものですが、一般職種ではボーナス的な付加給でしょうか。
「全勤奨」は皆勤手当でしょう。

仮に基本給と併せて3000元として、約5万円。内陸地方都市ですから、北京・上海とは違います。
ただ、中国の場合、食事・宿舎が付与されることが多いようですから、日本との比較は難しいものもあります。

なお、2018年の一人当たりGDPは63402元(約108万円 月額約9万円)とのことです。

****一人当たり名目GDP」から見た中国の国民の豊かさについて****
中国経済は、鄧小平氏が主導した「改革・解放」路線が奏功して、1980年代初頭より、わが国の高度成長期並みの高度成長を続けてきた。

しかし、近年では陰りが見えて、成長率(実質GDPの伸び率)は1桁台に低下するとともに漸減傾向にある。それでも、IMF(国際通貨基金)が7月24日に発表した「世界経済見通し」によると、中国に関しては本年が6.7%、来年が6.4%であり、1~2%程度の低成長率に止まる日本や米国などの先進諸国と比べると、中国はなお十分に高い成長軌道を維持している、と言えよう。
 
このようにして、長年にわたり高度成長を遂げてきた中国であるが、一人一人の国民も豊かになり生活水準を向上させてきたと言えるだろうか。

この国民の豊かさや生活水準を国際比較する上で手掛かりとなるデータの代表格が、「各国の一人当たり名目GDP(ドルベース)」である。

これに関しては、内閣府が毎年末に発表する「国民経済計算年次推計(フロー編)」に掲載される「主要国の一人当たり名目GDP」表があり、その最新データ(16年12月22日発表)を見ると、中国は8,028ドル(2015年)であった。一方で、日本は34,522ドル(同)、米国は56,066ドル(同)であり、中国は米国の7分の1、日本の4分の1程度に止まっている。

つまり、中国は発展著しいとは言いながらも、これらの計数から見る限りは、その国民は、日米等の先進諸国の国民と比べるとまだまだ貧しいように見える。
 
しかしながら、中国の場合、こうした統計指標だけではその生活水準や豊かさを語れない固有の事情がある、と言うべきであろう。

それは、以下の3つである。一つ目が、上記の数値は「全国平均」に過ぎないことである。中国の場合、経済発展に伴い富裕層と貧困層との格差が著しくなっているが、格差が著しいほど「平均」は意味をもたなくなるものであり、中国における個々人の生活水準の実態を知る上で、「全国平均」は参考程度の意味しかないことに留意すべきであろう。

二つ目が、為替レートの問題である。「一人当たり名目GDP」は各国比較のためにドルベースでの算出が不可欠であることから、為替レートに大きく左右される。

仮に、人民元の対ドルレートが実力よりも安過ぎるとしたら、上記の数値(ドルベース)も過小評価されている可能性がある。

例えば、いわゆる「ビックマック平価」で計算した中国人民元の対ドルレートは、現実の市場レートと比べて約5割も過小評価されている。そして、ビックマック平価こそが長期的な実力ベースの為替レートだとすると、それにより計算した中国のドル建ての「一人当たり名目GDP」も一気に倍増することとなる。

そして、三つ目であるが、これが最も深刻な問題と言える。それは、国民所得統計などの中国の「公式統計の信憑性」に関して、かねてより疑問が呈されている点である。
 
このようにして、中国人が豊かになったかを国際比較する上で、「一人当たり名目GDP」の数値では限界があることは間違いなさそうである。

ただ、内閣府の上記統計は、各国ごとに過去20年の数値も示しており、中国について見ると、1996年には709ドルに過ぎなかった一人当たり名目GDPが、2015年には8,028ドルと、20年間に11倍強も急増している。

その一方で、同じ20年間に日本人の一人当たり名目GDPの数値は38,446ドルから34,522ドルと、1割強の減少である。

つまり、長引く景気の低迷を背景として、日本人の豊かさや生活水準も低迷を続けてきた一方で、中国人は日本人に急速にキャッチアップしてきた事実が推測できるだろう。
 
なお、「一人当たり名目GDP」の指標は客観的なデータであるが、これに加えて、ある途上国に行った際の、「その国の首都の街並みが何年くらい前の東京か」、の印象からも、そこの国民の豊かさが推測できるのでは、と筆者は考える。

例えば、カトマンズ(ネパール)は明治半ばくらいの東京、ビエンチャン(ラオス)は戦前の東京、そして、筆者が2年間滞在したシンガポールでは東京とほぼ同等、又は東京よりも先行しているとの印象をかつて受けた。
 

では、中国はどうか。10年ほど前であるが、「今の中国は何年前の日本か」、の質問への回答として、「40年前説」がしばしば唱えられた。その根拠の一つが夏季五輪や万博に関する開催の時期であり、日中間でほぼ40年の開きがあった(五輪は東京が1964年で北京は2008年)。

では、「バブル経済」に関してはどうか。わが国では1980年代後半にバブルが発生したが、中国でも、海外送金の規制強化などで国内のマネーが不動産に集中し、株価も16年初めの底値から再上昇に転じているのが足もとの状況である。また、民間債務の対GDP比が200%超と、日本のバブル末期の水準にある。

日本でのバブル崩壊の始まりは1990年代初頭であった。中国経済に関する最大の懸念材料であるバブル崩壊が近未来に起きるとなると、日本より約30年遅れ、ということになる。【2017年7月27日 野間修氏 SBI大学院】
**********************

「今の中国は何年前の日本か」・・・・・非常に難しい問いですが、少なくとも「40年前説」はすでに過去のものでしょう。ここ10年で中国が劇的に変化しています。

少なくとも都市部の景観に関する限りは、立ち並ぶ高層建築は日本の先を行っているようにも見えます。(もちろん、日本は地震の制約があって高層建築は規制されていますが、それにしても、貴陽や南寧のような地方都市ですら40階建てぐらいの建築物が並ぶ様は、圧倒的でもあります。しかも、あちこちでクレーンが稼働しています。不動産バブルの話はありますが・・・・)

生活スタイルにしても、スマホ決済のような新技術が、カエル飛びのように一気に一般化する現象も見られます。
(田舎の村の店で水を買ったとき、現金で支払ったところ、現金取引があまりないせいか店ではお釣りの1元札がなかなかみつからず、女性店員から「どうしてスマホを使わないの!」と怒られました。)

明日の夜には関空に着きます。
成都からのフライトは4時間あまり。やはり近いというのは助かります。
コメント

中国・広西チワン族自治区 ちょっと変わった食べ物

2018-07-23 10:40:51 | 中国

(竹筒香肉 本文参照)

中国を旅行中です。
貴州省と広西チワン族自治区の“滝めぐり”(黄果樹瀑布や徳天瀑布)や少数民族のお祭り(プイ族の「六月六」)などの観光日程を終えて、今日(7月22日)は広西の南寧にもどってきました。

乗継の便が悪く、明日はまず成都に移動、明後日は大阪へ。さらに翌日鹿児島へと、三日がかりで帰国します。

目下の最大の悩みは、“痒み” 旅行中半ズボンを着用していたので、膝から下が蚊に刺されまくりボコボコになっています。

もちろん、昨日の筏下りなど、あちこちで刺された記憶はあるのですが、今日になって一気に痒みが襲ってきました。(今日の車内か食事場所に蚊がいたのでしょうか?)

あいにく持参のかゆみ止めも空になってしまい、ホテルへのチェックインもそこそこに、ホテル付近の薬店でかゆみ止めを購入。

手足に塗りまくると、薄荷のにおいで咳き込みそうになるぐらいです。

もちろん、安全性の面では日本の薬が信頼できますが、その分、成分の種類・量も制限されています。

一方、中国やアジア諸国の薬は、何がどれだけ入っているか得体のしれないところはありますが、副作用さえ出なければ、作用は日本の薬より強力かも・・・・そんなイメージです。

体質的なものか、一度刺されたところが数か月も慢性化することがあり(新たに刺されると、その数か月前のものまで痒くなります)、前回のインド旅行中にもかゆみ止めを買ったのですが、これがよく効き、帰国後も使用していました。

今は、とにかくこの痒みを抑えないと・・・という緊急事態ですので、中国の“得体のしれない”効果に期待しています。

薄荷系の強い刺激で、痒みもだいぶ抑えられています。

貴州省では辛い料理を食べ過ぎたせいか体調を崩したので、広西チワン族自治区では極力刺激の強いものは避けました。

一人だけだと、食べるものは非常に限定されてくるのですが、今回はガイド同行なのでかなりバラエティーに富んだ内容になりました。その一部を紹介。


昨日の昼に食べた料理。周囲に並んでいるのはパッションフルーツを半分に切ったもの。その中に骨付き豚肉が。パッションフルーツは屋久島でもつくっています。

酸味がある果肉と豚肉が・・・というところですが、豚肉が硬過ぎました。


べトナム風春巻  川向こうはベトナムで、地元の人なら往来も許されていますので、メニューにも“越南”という文字がよく見受けられます。


昨夜の料理で、右手前は川エビを揚げたものですが、左手前は“竹筒香肉”

長さは10cmあまりで、竹を開くと、中央にもち米、上下に肉が(冒頭画像)。これはかなりいけます。


今朝食べた巻粉  長さ25cmほどのブニョブニョした太いものを3本椀にいれて、汁をかけて食べます。中にはひき肉などの具材が包まれています。


巻粉の作り方  お盆に手前の白い液体(多分、米の粉を溶いたもの)を薄くのばし、加熱します。


反対側にいる女性が、押し出されて出てくるお盆の上に具材をのせて、クルクルと包み込み、できあがり。麺より手間がかかります。 

中国も南方では、麺よりはこうしたものの方が好まれるとか。
巨大なワンタンのようでもあり、非常に食べやすく、朝食には最適なメニューです。

なお、この地方では“虫”もよく食べるようです。
もちろん私は試していません。食堂の窓に張られた写真を撮影。あえて不鮮明にした訳でもありませんが、不鮮明な方がいいかも。


写真は“虫の盛り合わせ” もちろん単品でも頼めます。お好きな方はどうぞ。
コメント

中国  ベトナム国境の街でWiFiに苦戦

2018-07-22 10:54:44 | 中国

(中国・ベトナム国境にかかる徳天瀑布 左側の滝がベトナム、右側の滝が中国 黄果樹瀑布もアジア第一を謳っていましたが、こちらもアジア第一級 背景のカルスト地形の山並みを含めた全体的景観としては徳天瀑布の方が大きいかも)

ブログ更新できるのはいつになるか・・・・
現在、中国の広西チワン族自治区を旅行中です。

今日(7月20日)は自治区の中心都市・南寧から列車・自動車を乗り継いで、ベトナム国境が近い地域にやってきました。

その目的は、明日訪れる予定の、ベトナム国境にかかる「徳天大瀑布」、カルスト地形で有名な桂林にも似た「明仕田園」です。

ただ、今は雨期で、日中も激しいにわか雨がありましたが、夜も本格的な雨が降っています。稲光も・・・。
明日はどうでしょうか・・・・。滝の水量が多い時期ということで、小雨程度は覚悟のうえですが。

そうした天候に加えて、国境近い山奥に入ってきたせいで、ネットがうまくつながりません。
先ほど少しつながったのですが、またすぐにつながらなくなってしまいました。

日本からレンタルで持参した、中国ネット規制をかいくぐる「VAN付」ルーターもつながりません。

このエリアには明日も宿泊しますので、この下書きをアップできるのがいつになるのかわかりません。

(レンタル元に問い合わせたところ、国境が近いのでベトナムの電波を拾ってしまうからではないか・・・とのこと。確かに、ホテルの窓から見る200mぐらい先はベトナムです。

21日の観光終了が、再度トライしたところ一旦はつながっていたのですが、夕方からまたつながらなくなりました。)

20日は移動の途中に、やはり滝がメインの「通霊大峡谷」というところにも寄って2時間ほど渓谷を散策したのですが、貴州省のほうでもっと規模の大きい渓谷を訪ねたばかりですので、観光自体はさほどのインパクトはありませんでした。

熱帯雨林気候のなかで採取される薬草の類が散策路で売られており、仕事柄そちらが興味深いものがありました。

なにより驚いたのが、入り口のトイレ。
「きたない」とかの話ではなく、左右の男性用・女性用の間に「Unisex Toilet(第三衛生間)」のスペースが設けられていたこと。

私はてっきり、「第三の性」とか、トランスジェンダーの関係かと思い、「北京・上海ならともかく、こんな国境も近い山奥で・・・・中国はそういう方面に寛容だという話はあまり聞かないけど・・・・」と。

でも、さきほど画像を確認すると、車イスや子供をつれた両親のイラストが表示されています。

“Unisex”というのは、介護などが必要な者と一緒に男女誰でも使えるという意味だったのですね。認識不足・早合点で大変失礼しました。

好き嫌いは別にして、日本を意識?】
中国に反日感情があり、日本に嫌中感情があります。
中国の人々が日本・日本人のことをどのように見ているのか・・・一番知りたいところではありますが、1週間や10日間ほどの旅行ではうかがい知ることはできません。

ネット上には、中国人が日本を訪れて、その清潔さ・気配り・秩序などに感心した・・・という類の情報は毎日のように目にしますが、ただ、話の前提として、「中国世論は皆日本のことを嫌っているが・・・・」という部分が隠れているとも考えられます。

ただ、好きにしろ、嫌いにしろ、日本のことが“気になる”ようではあります。
好きと嫌いは紙一重であり、表裏でもあります。その対極は無関心です。“気になる”存在であれば、“嫌い”も、やがては“好き”に転じることも。

****なぜ一部の韓国人が中国文化を軽視する一方で、日本人はリスペクトをするのか=中国メディア****
中国メディア・東方網は15日、「一部の韓国人が中国を軽視するのに対して、どうして日本人は中国や中国文化に敬意を持っているのか」とする記事を掲載した。

記事は、「中国5000年の歴史の中で、中国文明は日本、韓国、ベトナムを含む東アジア諸国に深い影響を与え、独特の『漢文化圏』を構成した。しかし、近代に入ると中国は徐々に西洋諸国に遅れを取るようになり、日本や韓国は西洋から学ぶようになっていった」と紹介した。
 
そして、「各国のSNS上における、日本人と韓国人の中国に対する態度はまるで違う。一部の韓国人は、中国の多くの部分について軽視しており、中国人に対して『優越感』を持っている。その一方で、日本人の大多数は中国文化を崇拝しているのだ」としている。

そのうえで、「一部の韓国人は、韓国の歴史が中国と日本という2つの超大国からダメージを受けたと考えている。そして、自国が小ささに不安を感じているために、現代の韓国人は中国や日本と関わりを持ちたくないのだ。

また、韓国ではスポーツ、文化、歴史の分野で自国民の自信を高めようとする傾向がある。経済的には先進国として、いまだ発展途上国である中国に対する優越感を持ち、文化的にも多くのものを自国が起源だと主張する。中国人の寛容な心も、韓国人による中国に対する優越感を助長しているのだ」と論じた。

一方で日本人については、「礼儀正しさと顕著さで知られており、どんな国の人に対しても礼をもって接する。それは中国人相手でも同じだ。

そして、日本のメディアは中国ついて比較的客観的に報じる。特に、サッカーに関する報道では、ありのままを伝えており、報道に対する日本人の評論も現実に即したものと言える」と評価している。【7月18日 Searchina】

****漢字を捨てた韓国に対し、日本の「使い続ける」判断は「敬服に値する」=中国メディア****
日本でも使用されている「漢字」はその名のとおり、中国で生まれた文字だ。韓国やベトナムもかつては漢字が広く使用されていたが、両国ともすでに漢字の使用を廃止し、独自の文字を使用している。漢字文化圏のうち、今も日常的に漢字が使われている国は中国を除けば日本だけとなっている。

中国メディアの快資訊はこのほど、日本や朝鮮半島、さらにはベトナムでは1000年以上にわたって漢字が使用されてきたと指摘する一方、今も漢字が使われているのは日本だけだと伝え、漢字の使用を廃止しなかった日本の判断は「敬服に値する」と伝えている。

日本では漢字とひらがな、カタカナを織り交ぜて文字を表記しており、古い文献や資料などは漢字で表記されていることが多い。記事はあくまでも実用性を重んじ、漢字を使用し続けている日本は「漢字を捨てなかったことで、古い知識や文化を捨てずに済んだ」と主張。

長期にわたって使用されてきた文字を捨てるということは、文化の継承において非常に不利なことだが、韓国やベトナムは中国の影響を排除したいがために漢字を捨て、それによって古い文化も一緒に捨ててしまったと主張した。

さらに、韓国は漢字を捨てる一方で、韓国国内では「漢字は韓国で生まれた」という「漢字韓国起源説」なるものが存在するとし、こうした態度は矛盾していると論じた。日本もかつては漢字廃止論が存在したものの、あくまでも実用性を優先して漢字を廃止しなかったことは「正しい判断だった」と主張、その判断は「敬服に値する」と伝えている。【7月18日 Searchina】
******************

敬服に値するかどうかはともかく、共通の文字文化を持っていることは旅行中でも非常に便利ですし、文化を共有しているという認識は、おそらく相互理解を進めるうえで重要なファクターでしょう。


****日本の一般市民の中国に対する考え方、われわれが思うほど悪くないかも=中国メディア****
中国メディア・今日頭条は17日、「日本人は中国のことをどう見ているのだろうか」とし、日本の一般市民の「対中意識」について紹介する記事を掲載した。

記事は、「周知のとおり、わが国と日本にはとても長い付き合いがある。唐の時代には日本から遣唐使が派遣され、中国文化を学んでいった。しかしその後、両国間で不愉快な出来事が発生し、両国間には一定の偏見が存在するようになったのだ。では日本人は中国をどう見ているのか。その答えは意外なものだった」としたうえで、日本の街で聞いた中国や中国人のイメージを紹介している。

まず、ある年配の市民が「中国はわれわれの兄弟。昔から付き合いがあるじゃないか。前は関係は良かったけれど、兄弟であってもケンカすることはあるからね」と語ったことを伝えた。

また、「中国人は自分のリズムで物事をやろうとする。どんな状況でもハイテンポで、道を歩くのも速い。そして、前へ前へと詰めようとする」という若い女性の意見を紹介。

さらに別の女性が「中国に行ったことがあるが、みんな友好的。メディアで見る中国とは違う。私は中国がいい国だということを知っている」と話したとしている。

記事は「日本人の回答を通し、実は日本の人たちはわれわれ中国に対して比較的友好的であり、多くの人が中国のことを嫌っていないことがわかった。われわれ中国人に対して複雑な感情を持っているものの、それでも日中両国は互いにリスペクトすべきだと考えているのだ」と伝えた。【7月19日 Searchina】
*****************

もっとも、日本は海で囲まれた島国ですから“外の状況”も気になりやすい面がありますが、中国内陸部の成都とか貴陽・南寧のエネルギッシュな人々を眺めていると、「この人たちにとっては、日本を含めて外の世界のことなどどうでもいいことなのかも・・・」といった印象も。

22日の朝 ホテルをチェックアウトして車で移動中 国境から少し離れるとWiFiが使えるようになりました。
コメント