孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラン  14日総選挙 アフマディネジャド大統領の強硬路線の評価は?

2008-03-13 14:05:45 | 国際情勢
イランの国会議員選挙が明日14日投票されます。

国際的に問題となっている核開発については、イラン国内では「平和利用」目的の核開発としてコンセンサスがあり争点とはなっていないそうで、高い失業率やインフレという経済問題が一番の争点になっています。
保守派が支配する護憲評議会は、事前の候補者資格審査で改革派の立候補予定者の多くを拒否しているため、04年の前回総選挙に続き、保守派の圧勝が確実な情勢となっています。

保守派内部は、アフマディネジャド大統領とラフサンジャニ最高評議会議長(元大統領)の争いかと思っていたのですが、そうではなく、保守派の中でアフマディネジャド大統領を支持する保守強硬派と、核開発などをめぐる大統領の対外強硬姿勢を“強硬な発言を繰り返し必要以上に国際的孤立を招いている”として批判する2大勢力が競っており、その外にラフサンジャニ最高評議会議長(元大統領)のグループがあって、改革派がこれと協調するという構図のようです。【3月13日 産経】

アフマディネジャド大統領は2005年の就任以来、これまでに国内全30州を訪問し、インフラ開発計画を“ばら撒いて”いるとかで、支持基盤の貧困層の取り込みをはかっています。
こうした活動は地方・貧困層には効果を生むとも考えられますが、一方でインフレを助長するとの批判もあるようです。【3月11日 AFP】

改革派は多数の候補が失格とされ、議席全体の半数しか候補者を擁立できていませんが、ハタミ前大統領を中心にラフサンジャニ最高評議会議長(元大統領)の中道派も加えた「改革派連合」を結成して選挙戦に臨んでいます。
ハタミ前大統領は1997-2005年に大統領を務めた後、2年間は沈黙を保っていましたが、ここのところ活発にアフマディネジャド大統領の政策批判を行っており、政界復帰を目指しているとみられています。
改革派にはハタミ前大統領以外に、改革派には珍しくテヘラン以外に支持基盤を持つキャルビ氏のグループもいるそうです。
【3月12日 AFP】

いずれの陣営も、ある程度結果の見えている今回総選挙よりは、来年6月に予定されている大統領選挙をにらんでの攻防のようです。

イラン関連の最近のニュースとしては、イラクやアフガニスタンの米軍を統括する中央軍のウィリアム・ファロン司令官(海軍大将)が11日辞表を提出、ゲーツ国防長官がこれを受理したと報道されました。
米月刊誌「エスクワイア」最新号は、対イラン政策をめぐり、平和的解決を求める司令官が、強硬姿勢を変えないブッシュ大統領らの政策を「役に立たない」と批判するなど対立が続いているとの記事を掲載して話題になりましたが、今回辞任はこの対イラン政策の違いによるものと推測されています。

平和的解決を求めるファロン司令官の辞任で、対イラン開戦に近づいたのか・・・ということについては、ゲーツ国防長官は、「ばかげたことだ」と述べ、強く否定したそうです。
そうならいいのですが。

米独立系シンクタンク「Center for a New American Security(CNAS)」と『フォーリンポリシー(Foreign Policy)』誌が、米軍の少佐以上の現役・退役米軍人3437人を対象に行った共同調査によると、アメリカがイランに武力行使するとの見方が広がっていることについて、現時点で米軍が新たな戦闘で成功するとの見通しは「あまり妥当でない」と「全く妥当でない」との回答が80%に上ったそうです。
ちなみに、この調査によると、米軍はイラクで「危険なまでに過度の負担を強いられている」と見る回答者は88%に達したそうで、イラク・アフガンで疲弊した米軍の実態が窺われます。【3月10日 AFP】

こうした実態を踏まえて、軍内部にはイラク派遣の早期縮小を求める声が強く、ブッシュ大統領と対立があるとの指摘もあります。
そうした軍の立場からすると、イラン攻撃なんてとんでもないというところなのでしょう。

もっとも、イラン攻撃を狙っている国はアメリカ以外にもイスラエルがあります。
イスラエルの情報機関は9日、イスラエルが直面している脅威に関する報告書を発表。
当面の脅威としてパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスのロケット弾攻撃を、最大の脅威にイランの核開発計画を挙げています。【3月10日 AFP】

先日来日したイスラエルのスネ前副国防相は5日、東京都内で記者会見し、核開発を続けるイランに対し国際社会が実効性のある経済制裁などの対応を取らなければ、イランの核施設に対する武力行使も辞さないとの考えを示し、「08年が決断の年になる」と警告したとか。【3月6日 毎日】

最初のイラン総選挙の話に戻ると、このようなアメリカ・イスラエルに根強いイラン攻撃論をどう考えるかで、アフマディネジャド大統領の強硬路線を支持するか否かということになってきます。


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