孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ  収まらない混乱 「国際社会は何か解決策を提示できるだろうか」

2015-10-31 23:07:47 | パレスチナ

(治安部隊の催涙弾を投げ返そうとするパレスチナの若者 Mohamad Torokman-REUTERS 【10月27日 Newsweek】)

国際社会も動いてはいるものの・・・
9月中旬、イスラエルのエルサレム旧市街にあるイスラム教・ユダヤ教双方の聖地「ハラム・アッシャリフ」(ユダヤ教呼称「神殿の丘」)で起きたパレスチナ人とイスラエル治安当局との衝突から一気に拡大した感のある混乱が、パレスチナ人の全面的な抵抗運動に拡大する危機をはらんでいることは、10月12日ブログ「パレスチナ イスラエルのガザ空爆 ハマスは「波状攻撃」呼びかけ 高まる第3次インティファーダの危機」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20151012)などでも取り上げてきました。

事態を鎮静化させるため、国際社会も動いてはいます。

****国連事務総長、イスラエルとパレスチナの緊張緩和を呼び掛け****
国連の潘基文(バン・キムン)事務総長は20日、イスラエルとパレスチナの間で暴力事件や衝突が相次いでいる状況について、イスラエルとパレスチナ双方は「危険な深み」にあると警告し、制御不能な状態となる前に鎮静化に向け速やかに行動を起こさなければならないと訴えた。

潘事務総長は、イスラエルとパレスチナの衝突に国際社会が懸念を強める中、緊張緩和を目指してエルサレムを急きょ訪問した。(中略)

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談した潘事務総長は、「暴力の爆発につながり得る不満と不安を増大する可能性がある」として武力を乱用しないよう呼び掛けた。

ネタニヤフ首相はこれに対し、「イスラエルは、あらゆる民主主義国家が国民を守るために取るであろう行動に出ている」「われわれは決して、過剰な武力行使はしていない」と強く反論した。

潘事務総長は、パレスチナ自治政府のマハムード・アッバス議長とも会談する予定。【10月21日 AFP】
******************

ただ、国連事務総長の行動で何かが変わるとは殆ど期待できないのが、残念な国連の現状です。

24日には、アメリカ、ロシア、EU、国連の4者にウイーンで会談し、「重大な懸念」を表明しています。

****挑発的言動の自制呼び掛け=イスラエル・パレスチナに―中東4者****
中東和平を仲介する米国、ロシア、欧州連合(EU)、国連の4者は23日、声明を出し、イスラエルとパレスチナの衝突が続いていることに「重大な懸念」を表明し、挑発的言動の自制を当事者に呼び掛けた。

ケリー米国務長官とラブロフ・ロシア外相ら4者の代表は23日、ウィーンで会談した。4者は近く特使を現地に送り、イスラエルとパレスチナの2国家共存による問題解決に向けた具体的措置を働き掛ける予定。【10月24日 時事】 
*****************

この日は同じウイーンでシリア問題に関するケリー米国務長官とラブロフ・ロシア外相らの会談も行われており、なんとなくシリア問題の“ついで”に行われた・・・という感も。パレスチナ問題でロシアが顔を出すのもそんなところでしょうか。

ウクライナ問題で国際的に締め出されていたロシアとしては、国際的交渉の表舞台に復帰したというところかも。

実質的にイスラエル・パレスチナへの働きかけが期待できるのはアメリカですが、ケリー米国務長官は4者会談に先立つ22日、ベルリンでイスラエル・ネタニヤフ首相と会談しています。

****<米国務長官>イスラエル首相と会談・・・「自制を****
エルサレムの聖地などを巡りイスラエルとパレスチナの衝突が激化している問題で、ケリー米国務長官は22日、訪問先のベルリンで、イスラエルのネタニヤフ首相と会談し、「扇動と暴力を止めることが極めて重要だ」と、双方に自制を求めた。

一方、ネタニヤフ氏は「テロ攻撃はパレスチナ自治政府のアッバス議長が扇動している」と批判し、強硬な姿勢を示した。

双方の衝突は先月、エルサレム旧市街にあるユダヤ教とイスラム教の聖地を巡る対立から拡大。記者会見でケリー氏は「批判の応酬を越え、具体策を決めることが重要」と話し、仲介を急ぐ意向を表明した。(後略)【10月23日 毎日】
******************

これを受けて、ケリー米国務長官は24日、アッバス・パレスチナ自治政府議長、ヨルダンのアブドラ国王とそれぞれ会談して聖地に監視カメラを設けることなどで合意しています。

****聖地の緊張緩和へ新措置=パレスチナ議長らと会談―米長官****
ケリー米国務長官は24日、訪問先のヨルダンの首都アンマンで、アッバス・パレスチナ自治政府議長、ヨルダンのアブドラ国王とそれぞれ会談し、エルサレムの聖地をめぐるイスラエルとパレスチナの緊張緩和に向けた方策を協議した。

AFP通信によると、同長官は会談後、イスラエルと、聖地を管轄するヨルダンが、24時間稼働の監視カメラ設置などの新たな措置を取ることで合意したと述べた。

カメラ設置はアブドラ国王の提案といい、ケリー長官は「聖地の神聖さが侵害されるのを防ぐという点で、ゲームチェンジャー(形勢を一変させる出来事)になり得る」と語った。

エルサレム旧市街にあるイスラム教聖地ハラム・アッシャリフ(ユダヤ教呼称「神殿の丘」)をめぐっては、ユダヤ人入植者らが現在禁止されているユダヤ人による礼拝行為を認めるよう訴えていることをパレスチナが強く警戒。

ヨルダンも「聖地の現状を変えるいかなる試み」も認めないとイスラエルをけん制している。これに対し、イスラエルは「現状を維持する」と何度も強調している。

アッバス議長は、ケリー長官に「イスラエルが最初にやるべきことは、聖地の現状を維持し、挑戦的なユダヤ人入植者の入場を止めることだ」と強調。イスラエル側の対応を見て今後の動きを決めると述べた。会談には、パレスチナの和平交渉責任者アリカット氏らも同席した。【10月25日 時事】
****************

イスラエルのネタニヤフ首相は24日夜、声明で、パレスチナとの対立の原因となっているエルサレムの聖地について、「イスラエルは言葉でも行動でも現状を維持する」と述べ、礼拝行為はイスラム教徒に限定するとの従来の方針を改めて確認しています。

ただ、パレスチナ人への敵対的姿勢は変わっていません。

****イスラエル首相、「パレスチナ人がユダヤ人虐殺進言」主張で物議****
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が、パレスチナ人指導者がナチス・ドイツの独裁者アドルフ・ヒトラーにホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を進言したと示唆し、誤った歴史認識だとして広く物議を醸している。

ネタニヤフ首相は20日の世界シオニスト会議で行った演説で、ヒトラーが1941年にエルサレム大ムフティー(イスラム教指導者)、ハッジ・アミン・フサイニ)師と面会するまでは、ユダヤ人根絶を計画していなかったと示唆した。

「ヒトラーは当時、ユダヤ人を根絶するのではなく、追放したがっていた」
「フサイニ師がヒトラーと面会し、『ユダヤ人を追放したら、ここにやって来る』と伝えた。『では彼らをどうしたらいいのか』と聞かれると、『焼け』と答えた」

この発言は広く批判を呼び、パレスチナ人指導者やイスラエル野党が、ネタニヤフ首相は歴史を歪曲していると非難。歴史家らも事実と相反する内容だと指摘し、ネット上では同首相をあざける声が相次いだ。

ネタニヤフ首相は21日、自分の発言がヒトラーを免罪するものだという非難は「馬鹿げている」と述べたが、ナチスに同調していたフサイニ師が影響を及ぼしたとの主張は固守した。

「ヒトラーは600万人の根絶という最終的解決に責任がある。この決定をしたのは彼だった」
「(しかし)欧州のユダヤ人を根絶するようヒトラーや、(ナチス・ドイツ外相のヨアヒム・フォン・)リッベントロップ、(親衛隊長官のハインリッヒ・)ヒムラーに進言した同師の役割を無視することも同じように馬鹿げている」【10月22日 AFP】
******************

【「インティファーダは必要ない」なら、解決のためにアラブ諸国や国際社会が何をしてくれるのか?】
監視カメラで事態が収まるとも思われませんが、今回の混乱は組織的なものというより住民レベルの個別的衝突が同時多発的に噴出しているという側面が強く、それだけに関係国首脳の意思表示だけでは収まらない側面があります。

****名前はまだない」パレスチナの蜂起 - 酒井啓子 中東徒然日記****
・・・・根本的な問題は、1993年のオスロ合意以降も一向に退去しないどころか、ますます増加するイスラエルの入植地にある。

入植地住民とそれを「守る」イスラエルの治安部隊に対して、それらに生活空間を脅かされ続け、将来も今も展望の見えない環境に置かれた西岸やガザ、東エルサレムなどのパレスチナ人は、過去二回のインティファーダで憤懣を爆発させてきた。

2001年以降は、圧倒的なイスラエルの力と国際社会の無視の前に、パレスチナ人の抵抗は押しつぶされ、数年毎に勃発するガザでのハマースによるイスラエル攻撃を除けば、あたかも勝負はついたかのようだった。

だが、それでもパレスチナ各地で、反発と抵抗と不満の爆発は繰り返し発生していた。(中略)

この「蜂起」、名前がまだないだけではなく、これまでのインティファーダとさまざまな点で差異が見られる。

まず、パレスチナ側もイスラエル側も、組織的なものというより住民レベルの個別的衝突が同時多発的に起きている、ということ。

イスラエル側は入植者の独断的行動が目立つし(イスラエルの元議員で和平派のウリ・アブネリは、「イスラエルで今一番力を持ち国家を乗っ取ろうとしているのは、イスラエルの入植者たちだ」と苦言を呈している)、パレスチナ側は、ハマースもPLOも指導者として頼るに足らず、と公言してやぶさかでない若者が中心だ。

二つ目の特徴は、蜂起の主体となるパレスチナ人の多くが若者で、オスロ合意を知らない世代だということだ。1993年に結ばれたオスロ合意に、期待することもがっかりすることもない、ただ最初から失敗のなかで生活してきた。彼らにとっては、イスラエルとの和平は何の良いイメージもない。

また、西岸やガザなどのパレスチナ自治地域のパレスチナ人だけではなく、イスラエル国内のイスラエル国籍を持つパレスチナ人の間で蜂起が広がっていることも、特徴のひとつだ。

こうした若者たちが、ツイッターや動画サイトを駆使して、既存組織に拠らない行動の広がりを実現している。イスラエルのリクード党員がこの状況を表現してこう言った。「ビン・ラーディンとザッカーバーグが一緒になったようなもの」。

この、名前がまだない蜂起に、国際社会は何か解決策を提示できるだろうか。

イスラエルとパレスチナ、ヨルダンとの協議を終えたケリー国務長官は、「事態の鎮静化に向けて、新たな措置を取ることで合意した」と述べた。だが、PLOもハマースも知ったことかとするパレスチナの若い世代や、国家をのっとらんばかりの勢いのイスラエルの入植者といった、本当の蜂起の当事者にこの「合意」が届くだろうか。

むしろ、蜂起の根幹には、当事者の声を掻き消してきた国際社会や域内諸国へのあきらめがある。
この間、周辺アラブ諸国はISやシリア内戦にかまけて、パレスチナに耳を傾けてこなかった。

それどころか、いまやイスラエルと湾岸アラブ産油国の接近は、公然の事実である。湾岸首長国が保有する航空会社は、堂々とイスラエル領海上空を飛行する。自由シリア軍らしき負傷兵士が、ゴラン高原を経由してイスラエルで治療を受ける。

「周辺諸国が自国の利害にかまけていたからこそ、パレスチナ問題でイスラエルを利する形になったんじゃないか」、と批判するアラビア語紙もないではない(ヨルダンのドゥストゥール紙やレバノンのムスタクバル紙など)。

だが一方で、サウディアラビア資本の英字紙「アラブ・ニュース」は、言う。「暴力では解決しない、インティファーダは必要ない」(10月15日)。

「インティファーダは必要ない」なら、解決のためにアラブ諸国や国際社会が何をしてくれるのか? その回答がない限り、蜂起は終わらない。【10月27日 酒井啓子氏 Newsweek】
*******************

少なくとも、うわべだけにも思えるネタニヤフ首相の現状維持発言や、聖地への監視カメラ設置は回答にはならないでしょう。

6か月の男の赤ちゃんがイスラエル軍が使用した催涙弾のガスを吸い込み、呼吸困難で死亡
今月だけでパレスチナ・イスラエル双方で70人を超える犠牲者を出していますが、一頃に比べると事件を伝える報道の頻度は低下したような気もします。

それでも事件は散発しています。

****パレスチナ少女射殺、警官を刃物で襲撃か ヨルダン川西岸****
パレスチナ自治区ヨルダン川西岸のイスラエル入植地で25日、イスラエル国境警察の警察官を刃物で刺そうとしたとされる17歳のパレスチナ人少女が射殺された。同地域ではこの他にも刃物を使った襲撃事件が相次ぎ、イスラエル人2人が負傷した。警察が発表した。

またパレスチナ治安当局筋によると、さらにオリーブの摘み取りをしていたパレスチナ人男性1人がイスラエル人入植者に数回にわたり銃撃され、重傷を負った。【10月26日 AFP】
****************

****パレスチナ人の遺体返還求めデモ 多数のけが人****
スラエル人を襲ったなどとして射殺されたパレスチナ人の遺体の返還を求めて、パレスチナ人数百人が抗議デモを行い、一部の若者とイスラエル軍が衝突して多数のけが人が出ました。

聖地を巡る対立をきっかけに、今月に入ってパレスチナ人がイスラエル人を襲う事件が相次いでいることを受けて、イスラエル政府は葬儀に多数の参列者が集まれば新たな衝突につながるおそれがあるとして、現場で射殺したパレスチナ人の遺体を一時的に遺族に返還しない対抗措置をとっています。

ヨルダン川西岸の都市ヘブロンでは27日、周辺でイスラエル軍に射殺されたパレスチナ人11人の遺体が返還されていないとして、住民数百人が抗議デモを行い、その後、一部の若者とイスラエル軍が衝突して多数のけが人が出ました。

また、ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地の近くでも、パレスチナ人2人がイスラエル兵をナイフで刺したとしてその場で射殺され、兵士はけがをして病院に運ばれました。

パレスチナのメディアによりますと、今月1日以降のパレスチナ側の死者は60人に上り、このうちおよそ半数はイスラエル人を襲ったなどとしてその場で射殺されました。

一方、同じ期間にイスラエル側でも10人が死亡していて、イスラエルとパレスチナの対立は、去年夏のガザ地区を巡る戦闘以降、最も激しくなっています。【10月28日 NHK】
********************

更に、痛ましい事件が新たに起きており、今後への影響が懸念されます。

****パレスチナ人乳児 イスラエル軍の催涙ガスで死亡****
イスラエル軍とパレスチナ人の衝突が相次ぎ緊張が続くなか、パレスチナ人の生後6か月の赤ちゃんがイスラエル軍が使用した催涙ガスを吸って呼吸ができなくなって死亡し、パレスチナ側の強い反発が予想されます。

パレスチナ暫定自治政府の保健省などによりますと30日、ヨルダン川西岸のベツレヘム近郊の村でパレスチナ人とイスラエル軍との衝突が起き、衝突現場近くの住宅にいた6か月の男の赤ちゃんがイスラエル軍が使用した催涙弾のガスを吸い込み、呼吸困難で死亡したということです。

また、パレスチナ暫定自治区のラマラで起きた衝突では、石を投げた若者をイスラエル軍の軍用車両が追いかけてはねる瞬間や、けがをした若者を搬送しようとする救急隊員をイスラエル兵が暴力を振るって妨害する様子が現場を取材していたパレスチナのテレビ局で生中継されました。

一方、この日はヨルダン川西岸や東エルサレムでパレスチナ人がイスラエルの治安部隊などを刃物で襲い、パレスチナ人合わせて3人が治安部隊に銃で撃たれ、このうち2人が死亡しました。

エルサレムの聖地を巡る対立をきっかけに激化した一連の衝突で、今月に入ってから双方の死者は合わせて70人以上に上っていて、乳児を含む新たな犠牲にパレスチナ側のさらなる反発が予想されます。【10月31日 NHK】
*****************

シリア難民の男児が遭難死亡した写真は欧州・世界に大きな衝撃を与え、その後の展開に影響をもたらしました。
乳児が呼吸困難で死亡・・・これも人々の感情を強く刺激する可能性がありますが、その方向は「混乱の拡大」です。
コメント

南シナ海でのアメリカの「航行の自由」作戦 今は両国とも抑制的対応 今後の対応に苦慮する中国 

2015-10-30 23:02:00 | 中国

(アメリカ海軍が派遣したイージス駆逐艦「ラッセン」【10月27日 日経】)

中国側にも、これ以上の関係悪化を避ける動き
南シナ海・南沙(英語名スプラトリー)諸島で、中国がスービ(中国名・渚碧)礁などに造成した人工島から12カイリ(約22キロ)以内にアメリカ海軍がイージス駆逐艦「ラッセン」を航行させ、中国海軍のミサイル駆逐艦「蘭州」と巡視艦「台州」がこれを追尾し警告したという件については各メディアで詳しく報じられています。

中国の南シナ海における一方的な領有権主張・影響力拡大に対抗し、「航行の自由」を主張する形でアメリカのこの地域における力を誇示するものとして、アメリカ・オバマ政権が近く実施するのでは・・・と見られていた作戦ですが、最悪の場合、米中の軍事衝突も懸念されていました。

当然ながら中国からの反発などは出ていますが、今のところは米中双方とも「抑制的」に行動しているようです。

****米中、抑制的な姿勢 米艦の南シナ海航行、対話を重視****
南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島で中国が領有権を主張する人工島から12カイリ(約22キロ)内に米海軍のイージス駆逐艦が進入したことについて、米中両政府とも、抑制的な姿勢を保ち続けている。両国関係を極端に悪化させたくない思惑が双方にあるためだ。

カーター国防長官は27日、米駆逐艦の進入後に開かれた上院軍事委員会の公聴会で「国際法が許すあらゆる場所で、必要があればいつでも飛行、航行、作戦をする」とし、数カ月以内に再び派遣する計画を公表。だが、詳しい作戦内容については回答を控えた。

特に抑制的だったのが外交を担う国務省だ。カービー報道官は27日の会見で、「南シナ海問題についての懸念を中国側に伝え続ける」と述べ、対話を重視する考えを示した。ケリー国務長官は「両国が引き続き関係を深めていきたいと考えている」とも言及した。

米国防総省当局者によると、イージス駆逐艦ラッセンは、南シナ海の北から南に向かって約72カイリ(約133キロ)を5時間かけて航行。中国が滑走路を建設しているスビ礁のほか、台湾が実効支配する太平島やベトナムが領有権を主張する岩礁の12カイリ内を通った。「どの国にも肩入れしない」(カービー氏)という立場を明確にするためだ。

習近平(シーチンピン)国家主席は9月の首脳会談で、埋め立てた岩礁について「軍事拠点化するつもりはない」と明言。その直後に米国が軍事行動に出たことで、中国側が南シナ海でのさらなる埋め立てや防空識別圏設定などの対抗措置をとりかねないからだ。ワシントンの軍事筋は「できるだけ騒ぎ立てずに粛々と作戦を進めたいのが本音だ」と語る。

中国側も、外交ルートで「強烈な抗議」を伝えつつも、抑制的な反応を見せている。中国外務省の陸慷報道局長は28日の定例会見で「中国側は一貫して対話による解決を主張している」と強調した。

米駆逐艦の進入前は、中国国内には「警告射撃もできる」(尹卓少将)、「米艦船に体当たりしてもいい」(共産党機関紙・人民日報系の環球時報)など、強硬な主張もあった。だが、進入後は環球時報が28日付社説で「中国人は理性的に対応すべきだ」と冷静な対応を呼びかけるなど、これ以上の関係悪化を避ける動きが出始めている。

中国側は今回、進入した米駆逐艦に対し、軍艦2隻による追跡と警告にとどめた。対抗措置も辞さない構えを見せつつ、米側の出方を慎重に見極める構えだ。【10月29日 朝日】
*******************

軍事的には未だアメリカに及ばないとされる中国としては、もし軍事衝突となって不利な結果となれば、政権の威信が大きく揺らぎ、不測の政治情勢に追い込まれるリスクがあります。

アメリカとしても、核大国・中国と実際に事を構えるリスクは負いたくないところです。
経済関係、気候変動問題・その他国際問題で、中国の協力を必要としており、決定的な対立はアメリカにとってもメリットがありません。

【「落としどころ探り合い」】
アメリカは、今回の巡視作戦を今後数週間から数か月間実施するとの方針を日本など関係国に連絡しています。
「落としどころ」を探る動きが水面下で続くものと思われます。

****米中のシグナルは・・・・「落としどころ探り合い****
小原凡司・元駐中国防衛駐在官

今回の南シナ海における米海軍の活動は唐突に始まったものでなく、今年5月の段階で米国防総省が、将来的に人工島の12カイリ以内に米軍の艦艇が入る可能性に言及していた。オバマ大統領は9月の米中首脳会談で中国側が態度を変えなければ、対応のステージを上げる考えだったのだろう。

米国が派遣したのは、対空、対水上、対潜水艦などすべてに対処できる能力を持つ駆逐艦だった。万が一、中国が軍事的な対抗措置をとった場合、米国は中国と軍事衝突を恐れていないことを示したものだ。

ただ、米側が求めているのは、米軍がこの海域で自由に活動できることで、領土紛争でフィリピンやベトナムを支持して活動することが目的ではない。

派遣した艦船は1隻で、中国に誤ったシグナルを与えないように気をつかっている。艦隊を送ると、中国に何らかの危害を加えようとしているのではないかと認識させ、米国も望まない衝突を起こす可能性がある。

中国は、言葉では激しく反発するが、実際の対応は米艦船の航行自体を妨害したわけでもなく、抑制的だった。米国との軍事衝突は何としても避けたいので、水面下で米国側に働きかけて「落としどころ」を探っているとみられる。

ただ、中国は南シナ海で譲歩の姿勢を見せることもできない。抑制的な対応への反発が強まり、国内世論が持たないと中国指導部が考えれば、中国の方が対抗手段のレベルを上げ、緊張が高まる可能性もある。【10月28日 産経】
*******************

****米中海軍トップが会談 南シナ海航行の沈静化はかる****
中国海軍トップの呉勝利司令官は29日夜、米海軍の艦船が南シナ海・南沙諸島で中国が埋め立てた人工島の12カイリ内を航行したことを受け、米海軍制服組トップのジョン・リチャードソン作戦部長と初めてテレビ会談した。

中国国防省はこれに先立つ定例会見で、テレビ会談の実施を発表。米中両軍の緊張が指摘される中、衝突回避に向けて米軍と意思疎通ができていることを強調し、事態の沈静化をはかる狙いとみられる。(後略)【10月29日 朝日】
*******************

今後とも「落としどころ」を模索する米中間の協議は行われていくでしょうが、中国側が「核心的利益」において譲歩することは難しく、なかなか「落としどころ」が見えないのも事実です。

あり得るのは、中国がASEANの場で協調路線をアピールするような形で、「一時休戦」的な形に持ち込む・・・といったところでしょうか。

ASEANは、フィリピンやベトナムなど対中強硬派だけでなく、カンボジアなど親中国国も存在し、中国との経済関係を重視せざるを得ない各国は中国との決定的対立を望んでいませんので、中国としても“それなりの”結果をだすことも可能です。

習近平国家主席が11月5〜7日の日程で、対中強硬派でもあるベトナム(ただ、ベトナムも国境を接する中国との関係には腐心しています)とシンガポールを公式訪問すると発表しています。

****米国との「一時休戦」に持ち込みたい中国****
・・・・その米国にしても、南シナ海における「航行の自由」作戦で中国側を挑発する意図はない。だから、たった1隻のイージス艦の出動にとどめた。

米国の確認したいことは、公海における軍艦の無害通航が保証されていること、さらに本来国際法において領海の設定が認められていない人工島に接近し、その原則が適用されているかどうかを確認することにある。これらの行動は、決して挑発的なものではないというのが米国の立場である。

そうであるならば、米中両国にとって、「航行の自由」作戦をもって軍事的緊張関係に入るのは過剰反応ということになる。

中国もそれを内心では理解し始めていると思われる。「人民網」によると、習近平主席は訪英前にロイター通信のインタビューにこう述べたという。

「南中国海は中国の対外経済往来の重要な通路だ。中国はいかなる国よりも南中国海の平和、安全、安定を必要としている。中国は南中国海情勢が乱れることを望んでおらず、ましてや自ら混乱をもたらすことはない」

「現在、中国はASEAN諸国と『南中国海における関係国の行動宣言』の全面的で有効な実行に積極的に努力しながら、『南中国海における行動規範』協議を積極的に努力している」

「中国は南中国海の周辺諸国と共に、制度と対話を通じて争いを管理し、交渉と協議を通じて争いを平和的に解決し、協力と共同開発を通じて互恵、ウィン=ウィンを積極的に諮り、各国が国際法に基づき享受する南中国海の航行と上空飛行の自由を守り、南中国海を平和、友好、協力の海とするべく努力する。関係方面も南中国海の平和・安定維持に向けた域内諸国の努力を尊重するべきだ」

英国訪問直前の習近平主席のこの発言から窺えるのは、米国との「一時休戦」であり、ASEAN諸国との協調姿勢の模索である。

こうした流れが、南シナ海における永続性のある和平・協調の枠組み作りに結びつくのであれば、大変結構な話である。

しかし、中国が戦略としての南シナ海支配の野望を放棄するとは思えない。習近平主席の発言は、いわば「その場しのぎ」の戦術であって、米国の「航行の自由」作戦もこの方法でやり過ごそうとしているだけだろう。

早晩、南シナ海の緊張は再燃する。それは疑いないことだろう。中国の南シナ海における軍備増強の動きに目が離せない。【10月29日 阿部 純一氏 JB Press】
*****************

前出の小原凡司氏(元駐中国防衛駐在官)は以下のようにも。

****一隻の米イージス艦の出現で進退極まった中国****
・・・・表に出ない部分で、中国が譲歩できる部分があるのか? 中国は、サイバー攻撃や衛星破壊、電磁妨害等に関する問題で、米国の懸念を払しょくできるような譲歩はできるかもしれない。

しかし、これは、中国にとっては、米国に対する抑止の対等性を放棄させるものでもある。(中略)

と言って、このまま放置すれば、米海軍艦艇に自由に行動させ続ける中国指導部に対する国民の非難は高まるだろう。中国指導部は、「監視、追跡、警告」といった抑制的な対応では済まされなくなる。 そうなれば、中国は、米海軍艦艇を排除するために、針路妨害等の強硬な手段を採らざるを得なくなる可能性もある。

その結果、万が一、米海軍艦艇に損害が出るようなことになれば、米国は自衛権を発動するかもしれない。軍事力の行使だ。(中略)

米海軍に対処しても、しなくても、中国は追い込まれてしまう。米国は、「航行の自由」作戦を継続する。中国が、米国が納得する譲歩を模索できる時間はさほど長くないかもしれない。中国は、厳しい選択を迫られている。【10月29日 Newsweek】
******************

中国国内世論や敵対勢力との関係で、対応のエスカレートや政治的危機も
「落としどころ」を探る間、上記【産経】記事最後にもあるように、中国側は今後、「弱腰」批判の国内世論にうまく対応する必要があります。

単に「世論」だけでなく、国内で粛清運動の形で権力闘争を進めてきた習近平政権には、その分、党内・軍部に“敵”も多く、そうした権力闘争絡みで強気の対応に出ざるを得なくなる事態もありえます。あるいは、敵対勢力に政治的に追い詰められる場面も。

****習主席、就任以来最大のピンチ 米艦進攻に打つ手なし 不気味な軍、上海閥****
・・・・一方の習氏はこれまで、東シナ海や南シナ海、インド洋、中央アジア、東欧、中東にまたがる「覇権拡大路線」で国内世論の支持を得て、軍の統制も強めてきた。

9月3日に行った「抗日戦争勝利70周年」記念式典では、軍の掌握が進んだとみて、余剰兵員の「30万人削減」を表明する演説を行った。削減で浮いた人件費など600億元(約1兆2000億円)を、兵器や装備のハイテク化につぎ込む考えだ。ただ、ロイター通信など複数の欧米メディアは、軍の将校クラスを中心に不満が高まっていると報じている。

米国艦船の派遣などでメンツを潰された習氏に、中国共産党や人民解放軍の内部から「排撃」の狼煙が上がるのか。

前出の佐藤氏は「習氏は追い込まれている。上海閥の残党や軍の不満分子から、いつ排除されてもおかしくない」と分析した。これまでも指摘されてきた「クーデター」や「暗殺」が現実味を帯びてきたようだ。

さらに、佐藤氏は1962年のキューバ危機の再来も指摘する。
当時のソ連のフルシチョフ第1書記は「(西側諸国を)葬ってやる!」と恫喝していたが、核戦争の恐怖がピークに達したキューバ危機で、最後はケネディ米大統領に「譲歩」して、中距離弾道ミサイルをキューバから撤去した。

佐藤氏は、これが失脚の一因になった例を挙げて、「習氏が同じようなケースをたどる可能性も十分ある」との見方も示している。【10月30日 夕刊フジ】
******************

もっとも、習近平主席の政治的立場については従来より、上記のような“敵対勢力”との対立で非常に不安定な立場にあるとの見方と、権力闘争を進め「毛沢東以来の『赤い権力者』」(BBC)となったとの見方の両方があります。

29日に閉幕した中国共産党の重要会議、中央委員会第5回全体会議(5中全会)で、すべての夫婦に2人の子供を産むことを認めて「一人っ子政策」を廃止することとなった件についても、習近平政権の“強さ”を指摘する向きもあります。

******************
中国では一人っ子政策で4億人の人口増加を抑制したとされる。地方の農村にまで張り巡らされた計画出産部門の人員や予算は、地方政府にとって大きな利権だ。

歴代指導者は一人っ子政策を緩和したくても、地方や関係機関の抵抗が強く、阻まれ続けた。これを突破した習主席の権力基盤が固まっていることは間違いない。【10月30日 時事】 
*******************

仲裁裁判所:フィリピンの訴えについて審理を開始
話を南シナ海に戻すと、アメリカの「航行の自由作戦」の他に、フィリピンが常設仲裁裁判所に仲裁を求めていた件も動き出しています。

****常設仲裁裁判所、南シナ海問題の「管轄権ある」 中国の反論退ける****
オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所(PCA)は29日、各国が領有権を争う南シナ海の島々をめぐりフィリピンが仲裁を求めている問題について、同裁判所が管轄権を持つと判断した。中国の激しい反発が予想される。

国際社会が懸念を強めているこの問題についてフィリピン政府は、同国と中国の双方が批准している国連海洋法条約に基づいて解決すべきだと主張。一方中国側は、この問題はPCAの管轄外だとして、仲裁手続きを拒否していた。

PCAは声明で、フィリピンの訴えを検討した結果、「この問題は南シナ海の島々の主権に関わる問題であり、従って同裁判所の管轄ではない、という(中国の)主張を退けた」ことを明らかにした。

代わりにPCAはこの問題が、「同条約の解釈と適用に関する両国間の係争」を反映したものであり、同裁判所が管轄権を有すると判断した。(中略)

PCAは一方で、2013年に最初の申し立てを行ったフィリピンに対し、必ずしも同国に有利な判断が示されるとは限らないと強調した。

審理は今後ハーグで非公開で行われ、最終判断が下されるのは来年以降になる見通し。【10月30日 AFP】
*****************

もっとも、PCAが管轄権を直接認めたのは、フィリピンが主張した15項目のうち、中国が人工島造成を進める南沙(英語名スプラトリー)諸島のミスチーフ(中国名・美済)礁などが領海の起点とならない暗礁に当たるのかや、中沙諸島・スカボロー礁でフィリピン住民の漁業活動を中国が違法に妨害しているかなど7項目に限られ、“最大の焦点となる中国の「九段線」が国際法に違反するかどうかについては管轄権に関する判断を避けており、本格審理でのフィリピン側の主張や、手続きに参加していない中国の出方に左右されることになりそうだ。”【10月30日 時事】とのこと。

小平以来の“韜光養晦”を止めて、“中国の夢”を実現すべく強気の姿勢にでている習近平政権ですが、そのツケが回ってきているとも言えます。
これを機に、中国の外交姿勢が穏健な方向に転じれば幸いですが、そうはなかなか・・・。
コメント (1)

難民・移民流入に軋む欧州社会・・・スウェーデンの場合

2015-10-29 23:00:24 | 難民・移民

(スウェーデンで急きょ建設された難民用テント村 “flikr”より By askyog

厳しい北欧スウェーデンの冬の寒さに対応できるのか・・・とも思えますが、35㎡の内部は電気で暖房もなされているとか。それでも、当局としても苦肉の策であることは認めており、できるなら使いたくないと。【http://www.thelocal.se/20151016/sweden-to-erect-tents-for-hundreds-of-refugees
なお、下の内部写真と上のテント村写真が同一のものかはよくわかりません。


【「そしてその変化は、良い方向への変化ではない」】
戦乱のシリアなど中東やアフリカ・アジアなどから「安全で豊かな国」欧州を目指す難民・移民の大波は未だ収まっておらず、受け入れ側欧州の社会・政治体制を揺るがす状況となっています。

****地中海渡った移民ら70万人超、欧州政情変化を危惧****
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は27日、地中海を渡って欧州に到着した移民・難民の数が、今年に入って70万人を超えたと発表した。

今年、紛争や貧困から必死に逃れようとしてギリシャ沿岸にたどり着いた人々は56万2355人に上り、またイタリアには約14万人が到着したという。

UNHCRは、欧州の他の国々に入った人々も考慮すると、欧州大陸沿岸に到着した人々の総数は70万5200人以上で、うち2割が子どもだとしている。

国際移住機関(IOM)は、欧州諸国が危機対応に苦慮するなか、移民・難民の流入の勢いは天候の悪化などにもかかわらず弱まる気配を見せていないと指摘している。

■EU大統領、政情の大規模な変化を危惧
欧州理事会のドナルド・トゥスクEU大統領(常任議長)は、フランス・ストラスブールの欧州議会で、「ロシアの空爆を受けているシリアのアレッポやその他の地域から(到着する)難民の新たな波」を警告し、「状況はさらにもっと悪化するだろう」と述べた。

さらに、「(今回の移民・難民危機は)もっと危険なことに、欧州の政情に大規模な変化をもたらす可能性をはらんでいる。そしてその変化は、良い方向への変化ではない」と述べた。【10月28日 AFP】
*******************

欧州側では、ドイツなど一部の国に集中する難民・移民を各国で広く分担しようとしていますが、中東欧の反対などでうまくいっていません。
また、最大のシリア難民受け入れ国であり、欧州への出発窓口となっているトルコとの協力で、難民・移民の流入を抑えようともしていますが、これも現段階では効果を上げるには至っていません。

そうした困難な状況が続くなかで、国境にフェンスを設置するなど欧州各国の分断が進み、国内にあっては反移民感情を背景した政治勢力が台頭するなどの動きが見られます。

****スイス総選挙、移民規制を訴える右派政党が躍進****
4年に1度のスイス連邦議会の総選挙が18日、投開票された。下院(定数200)では、難民や移民が欧州に押し寄せている現状を背景に、移民規制などを訴える右派政党の国民党と急進民主党が躍進した。スイス公共放送協会が伝えた。(中略)

欧州連合(EU)に入っていないスイスは、欧州への難民や移民の主要な目的地にはなっていないが、人口約830万人の小国の国民が抱く不安が、選挙結果にも反映された格好だ。【10月19日 朝日】
********************

****<ポーランド>上下院選右派過半数 欧州に増幅する難民警戒****
25日に実施されたポーランド上下院選挙で、欧州に押し寄せる難民・移民の受け入れに反対する右派の最大野党「法と正義」が過半数を獲得し、8年ぶりに政権に返り咲く見通しとなった。

中道右派「市民プラットフォーム」を中心としたコパチ政権は、欧州連合(EU)の難民受け入れ案に応じたが、新政権下で方針が変更される可能性も出ている。欧州では難民らへの市民の警戒感を追い風に、右派政党が躍進する流れが鮮明になってきた。(後略)【10月26日 毎日】
******************

スイスは以前から移民排斥的な傾向の強い国ですから、予想された動きです。
2010年11月30日ブログ「スイス 国民投票で、外国人犯罪者の強制送還を厳格化」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20101130
2014年12月9日ブログ「移民増加に揺れる欧州 イギリス:移民規制強化をEUに求める、実現できなければ・・・離脱?」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20141209

ポーランドも、ウクライナ難民をすでに受け入れてうることなどを理由に、当初EUからのシリア難民受け入れ要請に消極的だったように、イスラム系難民には強い抵抗のある地域であり、これも想定内の動きです。

問題は、これまで難民受け入れ姿勢をリードしてきたドイツの動向ですが、ドイツにおいても相次ぐ移民施設に対する放火・襲撃、ケルン市長選挙候補者が政府の難民政策への不満持つ男性に刺される事件、移民受け入れに反対する団体「西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人(PEGIDA)」の大規模デモ、ドイツそして欧州を難民受け入れの方向でリードしてきたメルケル首相の支持率低下などが報じられています。

難民受け入れの最前線に位置するバイエルン州では、メルケル政権の連立パートナーであるキリスト教社会同盟(CSU)のゼ―ホーファー州首相が、今度の日曜日までに事態の改善を図るようにメルケル首相に強く警告する事態ともなっています。

スウェーデン:人口比では最多の難民申請を受理
メルケル首相も「正念場」を迎えているといった状況ですが、そのあたりの話は多くのメディアに取り上げられているところでもありますので、今日はスウェーデンの状況を。

スウェーデンはドイツと共に難民受け入れに前向きに対応し、人口当たりでみるとドイツを遥かに上回る難民をすでに受け入れています。

しかし、そのスウェーデンでも、あまりの急変・大量流入に“軋み”が表面化してきています。

****19万人の難民に悲鳴を上げるスウェーデン****
今年、難民認定を求めてスウェーデンにやって来る人々は、移民局の当初の予測の2倍以上に膨れ上がり、約19万人に上ると見られている。今週、移民局が発表した今回の予測によると、そのうち4万人は保護者のいない子供だという。

さらに来年2016年には、10万〜17万人の難民申請者が押し寄せ、そのうち最大で3万3000人が保護者のいない子供だと予想されている。

移民局では今年7月、今年の難民申請の総数を7万4000人と予測していた。しかし現時点ですでにその2倍以上の難民申請が出されている。移民局長アンデシュ・ダニエルソンは、新たな予測と同時に発表した声明で、「これまでで最多の難民がヨーロッパとスウェーデンで難民申請を行っている。前例のない事態だ」と述べている。

さらに声明では、移民局が難民申請に対応しきれない窮状を訴えている。「難民申請の急増によって、移民局がスムーズに申請を受け入れられないのが現状だ」。今年末までに、2万5000人〜4万5000人分の収容施設が不足すると見られている。

難民対応に必要な予算も膨大なものになる。16年には約70億ドル、17年には約86億ドルの負担がスウェーデンにのしかかってくる。

これまでと同じ待遇は無理
移民局では現在、難民収容の緊急対策を検討している。仮設テントや教会、軍の兵舎などの他、「刑務所の施設利用」や古い防空壕の活用も視野に入れている。

移民局次長のミカエル・リベンビクは、「収容施設に関して言えばすでに非常事態だ。毎日1500人が難民を申請しているが、移民局も毎日1000人分を遥かに超える収容施設を探さなければならない」と話している。「努力はするが、従来のような対応はできない」

リベンビクは、ヨーロッパに難民が押し寄せる現状では、まったく新しい形のEUの協力体制とスウェーデンの受け入れ態勢が必要だ、と言う。

スウェーデンの難民問題担当相モーガン・ヨハンソンも、難民急増に関する地元メディアの取材に対して、「今はなんとか屋根だけは提供できているが、今後も難民が増え続ければ、スウェーデンでは対応しきれなくなるのは明白だ」と、答えている。

ヨーロッパの統計情報サイト「ユーロスタット」によると、スウェーデンは昨年以降、人口100万人あたり8365人と、人口比では最多の難民申請を受理している。同様の統計では、ドイツの受け入れ数は100万人あたり2513人だった。今年の4〜6月期では、スウェーデンはドイツ、フランス、イタリアに次ぐ数の1万100人の難民申請を受け入れている。【10月23日 Newsweek】
*****************

相次ぐ襲撃・テロ
難民受け入れ施設への襲撃事件も、ドイツ同様に相次いでいます。

****スウェーデンの難民施設で火災相次ぐ 放火か****
難民を積極的に受け入れてきた北欧のスウェーデンで、難民の受け入れ施設などが燃える火災が相次いでいて、警察は放火とみて捜査しています。

スウェーデン南部のムンケダルの難民の受け入れ施設で、20日の朝、火災が発生しました。施設では14人の難民が生活をしていて、けが人はありませんでしたが、地元の警察は、燃え方に不自然な点があるとして放火の疑いで捜査を始めました。

スウェーデンでは、ほかにも、この1週間で、身寄りのない難民の子どもたちなど難民の受け入れを予定していた3つの施設で火災があり、いずれも警察が放火とみて捜査を進めています。
スウェーデンでは、ことし1月から先月までに7万3000人以上の難民申請が出されていて、EU=ヨーロッパ連合の加盟国の中では、人口比で最も多くの難民を受け入れていますが、政府の難民政策に強く反発する極右勢力の存在も指摘されています。(後略)【10月21日 NHK】
*****************

10月22日には、映画「スター・ウォーズ」の悪役ダース・ベイダーに似た黒いマスクとヘルメット姿で学校に現れた男性が、刃渡り約1メートルの剣や大型ナイフで難民・移民の生徒らを襲うという特異な事件も発生して話題となりました。

****<スウェーデン学校襲撃>動機「人種差別や移民排斥」に衝撃****
スウェーデンの地方都市で起きた学校襲撃事件が、スウェーデン社会に衝撃を与えている。同国は移民や難民を積極的に受け入れてきたが、警察当局が容疑者の襲撃動機を人種差別や移民排斥とほぼ断定したためだ。ロベーン首相は「暗黒の日だ」と語り、移民や難民を排斥する動きを非難した。

地元メディアによると、警察当局は警官に撃たれて病院で死亡した容疑者の自宅から、犯行を示唆する文書を押収し、動機をほぼ解明した。22日に起きた事件では教師や子供の4人が死傷。死亡した生徒は3年前にソマリアから来た難民で、重傷の生徒はシリア難民だという。

ロベーン首相は事件当日の夜、学校があるトロルヘッタンを訪れ、犠牲者に哀悼の意を示すと共に「互いにいたわり、共にスウェーデンを守ろう」と、移民や難民との共存を呼びかけた。

また、フリドリン教育相は地元メディアに「単なる学校への攻撃ではなく、国全体への攻撃だ」と話し、移民や難民排斥の動きを非難した。23日には、現場の学校前で人種差別や移民排斥に反対するデモがあった。

スウェーデンは第二次世界大戦以降、労働力不足解消と人道的見地から多くの移民や難民を受け入れてきた。
1980年以降、186万人に滞在許可を与えており、同国統計局によると全人口963万人の約2割が外国生まれか、両親が外国生まれだ。今年だけでもシリアなどからの難民19万人を受け入れるとしている。

一方、反発も起きている。難民が一時的に住居として使っているテントなどへの放火事件が今年に入って多発。自治体によっては、襲撃を避けるため難民を収容する場所を公表しないケースもある。

反移民を掲げる政党の支持率は20%で、昨年より7ポイント支持を伸ばしている。

トロルヘッタンは同国第2の都市イエーテボリの北約72キロにある人口約5万の工業都市。同国の自動車メーカー「サーブ」の本社機能や工場があったが、3年前に閉鎖された。
他の都市と同様に移民や難民を受け入れており、昨年は外国出身者3046人が移り住んだ。襲撃された学校も約400人の生徒の半数以上が移民系だという。【10月24日 毎日】
*******************

移民反対の極右政党、与党を上回る支持率
政治情勢で言えば、今年8月には極右野党のスウェーデン民主党の露骨な移民排斥ポスターが物議を醸しています。

****スウェーデン極右の「物乞い排除」広告、撤去へ****
スウェーデンの首都ストックホルムの地下鉄構内に最近掲示された、「物乞い排除」を呼び掛ける政治広告について、交通公社が撤去することを決めた。あまりに露骨なスローガンに対して約1000人の反対派が抗議行動に出たためだ。

問題となった政治広告を仕掛けたのは、移民反対を政策として掲げる、極右野党のスウェーデン民主党。広告の文言は、海外からの観光客に向けて、物乞いが引き起こす「迷惑」を謝罪する内容だった。

市中心部にある地下鉄「エステルマルム広場」駅のエスカレーターの天井には、「スウェーデンでご迷惑をかけて申し訳ありません」と英語で書かかれていた。

「強引な物乞いが深刻な問題になっています! 国際的なブローカーが金と引き替えに送り込んできた移民たちです。スウェーデン政府は必要な対策を講じません。しかし我々はやります。――我々はスウェーデン民主党! 2018年の見違えるようなスウェーデンに、またお越しください!」。2018年は、スウェーデンの次の総選挙の年だ。

また別の広告では、通りで寝ているホームレスの写真の上に「スウェーデンはこれよりもっとましなはずだ」というスローガンが大書されている。(中略)

スウェーデンの放送局SVTの調査による推計では、国内で物乞いをするEU圏内からの移民は約4000人いて、そのほとんどがルーマニアかブルガリア出身だという。この一年でその数は倍増している。

スウェーデン民主党は、スコットランドの日刊紙「ザ・スコッツマン」の取材に対し、広告のスローガンは「人種差別」ではなく、法と秩序の欠陥を糾弾したものだ、と弁明している。【8月7日 Newsweek】
********************

その極右野党・スウェーデン民主党の支持率は、移民受け入れに寛容な与党・社会民主党を上回る勢いにあるとか。

****世論調査で極右政党が最大支持 スウェーデン****
前回の欧州議会選挙では反移民・反EUを掲げる右翼政党が躍進するなど、近年の市民の右傾化を示す動きはヨーロッパ各地で見られる。これまで移民に対する寛容な態度で知られた北欧諸国も例外ではない。

世論調査会社YouGov の調査結果によると、過激な反移民思想で知られるスウェーデン民主党が、同国与党で移民受け入れに寛容な社会民主党(23.4%)を上回る25.2%の支持を集め、トップとなった。

民主党は2010年に初めて議席を獲得。昨年9月の総選挙では12.9%の得票率で第3党になるなど、急速に支持を集めている。同党はスウェーデンへの移民数を大幅に減らすことを政策の中心に掲げている。

同党は今年、首都ストックホルムの地下鉄構内に移民の物乞いを謝罪する広告を張り出して大規模な抗議を受けるなど、その過激な反移民キャンペーンが問題視されている。(中略)

YouGovの世論調査については、参加者の選出がランダムではないとの批判がある。この調査ではオンラインで集めた1527人にインタビューを実施したが、これは参加者自らが登録して参加するものであった。(中略)
また同国の別の世論調査会社Novusも今月中に調査結果を発表することを予定しているが、その結果はYouGovとは異なったものになるという。

YouGovの結果の正当性には疑問が残るものの、国民の間で政府およびEUの移民政策に対する不満が高まっているのは確かではないかと思われる。

スウェーデンの次の総選挙は2018年9月に予定されているが、それまでに政府とEUが何らかの対応を取らなければ、過激な右翼政党の更なる躍進を許しかねない。

もちろんこれは他のEU諸国にも言えることであり、EUの移民・難民政策は本格的な見直しが迫られている。【8月20日 THE INDiv JOURNAL】
*******************

YouGovの世論調査の妥当性についてはわかりませんが、別の調査で、スウェーデン民主党は26.5%、社会民主党が24.1%という数字もあるようですので【自動翻訳ページで不自然な日本語ですが、http://www.apg29.nu/index.php?hl=ja&artid=21521】、あながち見当はずれな数字でもないようです。

一方で、スウェーデンに移送された移民・難民からは「寒すぎる」との不満が出ているとか。

****寒すぎる」、移民がバス降車拒否 スウェーデン****
スウェーデンに渡った移民が、移送された村が「寒すぎ」て孤立した場所にあると主張し、一部が移送されたバスから降りることを拒否するなど、当局との間でこう着状態にあることが27日、明らかになった。

25日夕方、ノルウェーとの国境に近いリメツフォシェンにバスで移送された約60人のシリア人とイラク人は、難民申請の審査が行われる間、木造家屋が建ち並ぶ村に滞在することになった。

しかし、自分たちが移送された場所が、一番近い町から数十キロ離れた森の中だと知ると、3分の1はバスから降りることを拒否。多くが、大都市かドイツに連れていってほしいと要求した。

「ここに住むように言われたが、全員には不可能だ。子どもたちや妊娠した女性もいる。ここは寒すぎるし、店もなく、医者もいない」と、シリア移民の1人はテレビ局SVTに語った。

スウェーデン移民庁(MV)は、週に1万人もの難民らを受け入れているため、関係施設などでは対応が追い付かなくなってきていると述べた。

AFPの取材に応じたMVの報道官によれば、代わりの解決策はないものの、27日夕方、移民らのうち約15人と話し合いを進めたという。また、移民が移送先を拒否するケースはまれだという。

人口980万人のスウェーデンは、今年だけで最高19万人の難民申請があると予測しており、1人当たりの移民受け入れ率は欧州連合(EU)諸国の中で最も高い。

気温が氷点下30度まで下がることもあるスウェーデンの長く暗い冬は、温暖な国々から渡航してきた移民たちにとっては大きな試練となっている。【10月28日 AFP】
*******************

「寒さ」だけが問題ではないのでしょうが、難民受け入れに苦慮しているスェーデン国民の不興を買うかも。

・・・・だからと言って門を閉ざしていいのか?】
いずれにしても、あまりに急激な大量流入にとまどい、反発も高まるスウェーデン・その他の欧州各国ですが、個人的には、そういう困難な状況にありながらも、なお受け入れ姿勢を堅持しようとする人々も少なくないことの方にむしろ関心がもたれます。

難民・移民の受入が多くの問題を伴うことであることは言うまでもないことですが、だからと言って門を閉ざしていいのか?
固く閉ざした門の内側での「それみたことか!難民受け入れなんて土台無理なんだよ!」といった類の議論と言うのは、「闘う君の歌を 闘わない奴等が笑うだろう」といった感も。
コメント (1)

アフガニスタン地震 山間部・紛争地域のため未だつかめぬ被害の全容 支援を拒むパキスタン政府

2015-10-28 22:16:09 | アフガン・パキスタン

【10月27日 ANN】震源に近いタジキスタンについては情報がありません。


(地震発生後に校舎を出ようとして女子生徒たちが折り重なり倒れ、12人が圧死、25人が負傷。校舎の外に残されていた女子生徒たちの靴(26日、アフガニスタン・タクハル州) 【10月27日 BBC】)

被害はアフガニスタン・パキスタン両国に 更に増加が懸念される犠牲者
アフガニスタン北部で26日午後1時半(日本時間同6時)ごろ発生した地震(マグニチュード7.5)の地震が発生した被害が拡大しています。

未だ被害の全容が把握されていない状況ですが、現段階では、アフガニスタンと隣国パキスタン合わせて382人(内訳はアフガンが115人、パキスタンが267人)【10月28日 読売】と報じられています。

今回の地震は、震源の深さが約210キロと非常に深かったため被災の範囲が広いのが特徴で、パキスタンとアフガニスタンの国土の北側のほぼ3分の1から半分の地域に及ぶとも。【10月28日 朝日より】

ただ、震源が深いため、地表の揺れは同規模地震に比べれば小さかったとも思われます。

****アフガニスタン、パキスタンでM7.5の地震 数百人死亡****
・・・・USGS(米地質調査所)は当初、地震の規模をM.7.7と発表した後、M7.5に下方修正したが、それでも強い揺れだったことに変わりはない。世界全体でM7.0を超える規模の地震は年間平均20回くらいしか発生しない。

しかし今回の場合、震源が深かった。今年4月にネパール東部に甚大な被害をもたらしたM7.8の地震は深さ8キロだったが、それに比べて今回の揺れはかなり深い(ネパールでは4月の本震の後には5月初めにM7.3の余震が起きている)。

同様に、2005年のカシミールでの大地震はM7.6で深さはわずか26キロだった。今回の揺れは深さ200キロ以上で、揺れの範囲は広かったが、地表の揺れそのものはほかの地震ほどではなかったようだ。(後略)【10月27日 BBC】
*******************

パキスタンに比べアフガニスタンの数字が比較的少ないのは、山間部であることや、政府支配が十分に及んでいないタリバン支配地域もあることなどから、被害の実態が把握されていないことによるもので、今後、数字は増加するのではないかと懸念されます。

また、そうした地域であるがために救助活動も難航しています。

****山間部の救助難航=死者320人、さらに増加か―アフガン地震****
26日に発生したアフガニスタン北東部を震源とする地震で、アフガン、パキスタン両政府は27日、被害の大きかった地域に救助・支援チームを派遣した。

ただ、震源に近い山間部では通信や交通が遮断されており、被害の全容は明らかになっていない。両国で確認された死者は323人、負傷者は1800人を超え、今後さらに増加するとみられる。

少なくとも229人が死亡したパキスタンでは、救助・医療チームをアフガンとの国境近くの山間部に派遣。空軍輸送機やヘリコプターで被災者支援のための食料品やテント、毛布などを空輸した。

北西部ペシャワルの自治体幹部は「市内では多くの民家や建物が倒壊した。いまだ多数ががれきの下敷きになっており、住民が協力して救出作業に当たっている」と語った。地元メディアによると、山間部では少なくとも45カ所で土砂崩れが発生し、道路をふさいでいるという。

アフガンで確認された死者はいまだ94人にとどまっている。ガニ大統領は災害対策機関に被害実態の把握を急ぐよう指示。しかし、道路などのインフラが未整備の北部地域では、反政府勢力タリバンの支配が強い。救助活動は難航している。

タリバン指導部は27日、「ムジャヒディン(イスラム戦士)に被災者を支援し、慈善団体の活動を手助けするよう指示した」と声明を出した。しかし、現指導部に反発する武装勢力も多く、国際機関や外国のNGOが被災地で救助活動を行うのは難しいとみられる。【10月27日 時事】 
******************

タリバン:「救助活動を妨害しないよう指示」とは言うものの・・・
上記記事にあるように、タリバンは国際支援団体に対し、被災者の救助をためらわないよう求めるとともに、戦闘員に対して救助活動を妨害しないよう指示しています。

****タリバン、アフガン地震の国際救助活動を妨害しないと表明****
アフガニスタン北部で26日に発生したマグニチュード(M)7.5の地震による死者数が増加するなか、同国の反政府武装勢力タリバンは27日、国際支援団体に対し、被災者の救助をためらわないよう求めるとともに、戦闘員に対して救助活動を妨害しないよう指示した。

同国では、不安定な治安情勢が救助活動の最大の障害となっており、これまでに何度も支援団体が武装組織の標的となっている。

こうしたなかタリバンは、国際支援団体による救助活動を妨害しないと表明し、戦闘員に対しても被災者を支援するよう命じた。

当局によると、これまでに確認された死者数は、パキスタンで228人、アフガニスタンで少なくとも115人。4000戸以上の家屋が被害を受けたという。
今後、遠隔地との交通や通信手段が復旧するに伴い、死者数はさらに増加すると予想されている。

首都カブールでは、北大西洋条約機構(NATO)がアフガン治安部隊との協力を進めているが、危険を考慮し、依然として被災地域までの交通手段などについて調査している段階だという。【10月28日 ロイター】
*********************

最高指導者オマル師の死亡発表を受けてタリバンの新指導者となったマンスール師は、和平交渉にも前向きだったということで、そうした比較的穏健な姿勢のあらわれでしょうか。

これを契機にタリバンとアフガニスタン政府の間の何らかのコンタクトがあれば、不幸な災害にあって救いともなるのですが、そこまで望むのは無理でしょうか。

もっとも、マンスール師はタリバン内における支配を“一応”確保した形にはなっていますが、先述のような和平交渉に対する姿勢などへの反発から批判勢力も存在すると見られ、どこまで統制が及んでいるのかわかりません。

被害があった地域でタリバンが行政庁舎や警察署を占拠したといったことも報じられています。
こうした行動がマンスール師指導でなされているのか、反指導部勢力なのか・・・わかりません。
いずれにせよ、救助活動には大きな障害となります。

***アフガン地震の被災地、タリバンが行政庁舎占拠****
アフガニスタン北部のタハール州ダルカド郡で28日、旧支配勢力タリバンが行政庁舎や警察署を占拠した。
同州は26日に起きた大地震の被災地で、救援活動への影響が懸念される。

地元当局者によると、タリバンは28日未明に攻撃を始め、政府側の治安部隊少なくとも6人が死亡した。

タハール州など同国北部では最近、タリバンが支配地域を広げている。
タリバンは27日の声明で、「慈善団体は救援物資の配布を自粛しないよう求める」と述べ、被災地支援に協力する姿勢を示していた。(後略)【10月28日 読売】
******************

パキスタン政府「われわれは、この状況に十分に対処できる」】
被災地がイスラム武装組織との戦闘状態にあるのはパキスタン側も同様です。

****紛争地、各所に検問所****
今回の地震のもう一つの特徴は、被災地が紛争地と重なっていることだ。

塀の上から転落し、頭骨を骨折したアブドラさん(18)はアフガンとの国境沿いに広がる部族地域内のモーマンド地区から運ばれてきた。アフガン側に潜む反政府勢力「パキスタン・タリバーン運動(TTP)」とパキスタン軍の間で国境を挟んだ砲撃や銃撃が続いている場所だ。

付き添いの親族の男性は「病院までの道中、軍の検問所が10カ所ほどあり、5時間かかった」と話す。

部族地域の南端にある南ワジリスタン地区では27日も、アフガン側に潜むTTPとみられる武装勢力とパキスタンの治安部隊が国境越しに交戦し、軍当局によると兵士7人が死亡した。【10月28日 朝日】
***************

パキスタンでは、政府・軍も国際支援団体の現地立ち入りを拒否しています。

****アフガン地震】死者約370人に 国際救援拒否で被害が拡大 NGO「官僚主義が支援の妨げ****
アフガニスタン北部で26日に起きた地震で、死者数は27日、アフガン、パキスタン、インドの3カ国で370人を超えた。米国やインド、国連はアフガンとパキスタンに支援の用意があると表明したが、パキスタンは受け入れない意向を示しており、支援の遅れが被害を拡大させかねない懸念が生じている。

各国メディアの報道によれば、死者はアフガンで115人、パキスタンで260人、インドで1人。

インドのモディ首相は26日、パキスタンのシャリフ首相に弔意と支援の用意を伝えた。米政府は「支援の準備はできている」とし、国連人道問題調整室(OCHA)も「パキスタン政府が進めている救援の努力を支える用意がある」との声明を発表した。

しかし、パキスタンのラシード情報放送・国家遺産相は記者会見で、「われわれは、この状況に十分に対処できる」と述べ、当面は国際社会に支援を求めないことを明らかにした。

パキスタンが支援受け入れに慎重なのは、軍情報機関が外国の政府機関や民間団体の活動に神経をとがらせ、特に、国際団体などの支援活動が諜報活動の隠れみのになっているとの疑念を抱いているためだ。

パキスタンは今年6月、イスラマバード近郊に潜伏していた国際テロ組織アルカーイダのウサマ・ビンラーディン最高指導者が2011年に米軍部隊の急襲で殺害されたことに関し、ビンラーディン潜伏の情報収集に関与したとの疑いをかけ国際非政府組織(NGO)「セーブ・ザ・チルドレン」の事務所を閉鎖したこともある。

しかし、セーブ・ザ・チルドレンはこれを否定、事務所は間もなく再開され、カーン内相は地元紙に、このNGOが事件に関与した証拠はないと述べている。

イスラマバードの国際NGOの幹部は産経新聞に「政府の対応はとても遅く、官僚主義が支援の妨げになっている。支援に空白ができれば住民への福祉を口実に活動するイスラム過激派に付け入る隙を与える」と訴えた。【10月28日 産経】
*******************

パキスタンでは10年前にも7万人以上が死亡した大地震があり、その復興が未だ進んでいません。
そうしたことも考えると、「われわれは、この状況に十分に対処できる」というパキスタン当局の言葉はとても額面どおり受け取ることはできません。

****<パキスタン地震10年>学校再建まだ半分 屋外で勉強も****
7万人以上が死亡したパキスタン地震の発生から10年が過ぎた。

政府や国際社会は復興に向け支援を続けてきたが、国内で頻発するテロなどのため復興はまだ道半ばだ。特に学校教育は深刻で、政府の地震再建復興庁によると、被災した学校5808校のうち再建されたのは半分にとどまる。

復興庁トップのアブバクル・アミン・バジュワ暫定副長官も「教育の再生が最優先課題だ」と強調する。大規模な被害が発生した北西部バラコットを訪ねると、今もなお子供たちは薄暗い手作りの仮設校舎や屋外で勉強していた。

地震は2005年10月8日朝、インドに近いパキスタン北東部で発生し、規模を示すマグニチュードは7.6だった。復興庁によるとパキスタンだけで7万3338人が死亡、12万8304人が重傷を負った。(中略)

パキスタンは昨年、女子教育の必要性を訴えるマララ・ユスフザイさん(18)がノーベル平和賞を受賞し、教育の現状に注目が集まった。

国連の統計によるとパキスタン全体の識字率(15〜24歳)はこの10年で約10ポイント上昇し、15年の推定値は75.59%。

だが、国内各地で頻発するテロなどのために被災地の学校再建にまで手が回っていないのが実情だ。復興庁のバジュワ暫定副長官は「アクセスの悪さや治安の悪化で復興が遅れている」と語った。【10月9日 毎日】
****************

災害被災者の人命救助より、閉鎖的な政府・軍の思惑・都合が優先されるというのはパキスタンに限った話ではありませんが、その国の人命・市民生活をないがしろにした姿勢を反映したものとも言えます。
コメント

ミャンマー  迫る総選挙 仏教ナショナリズムからのスー・チー批判も

2015-10-27 22:27:57 | ミャンマー

(5月27日、ミャンマーの最大都市ヤンゴンで、イスラム系少数民族ロヒンギャの難民船問題の解決を求める国際世論に反発するデモの参加者ら 【5月27日 時事】)

完璧とはほど遠いものの、重要な一歩
ミャンマーでは11月8日、民政移管後初の総選挙が行われます。前回総選挙はボイコットしたアウン・サン・スー・チー氏率いる最大野党「国民民主連盟(NLD)」がどこまで議席を伸ばせるかが注目されています。

軍出身のテイン・セイン大統領のもとで想像されなかったスピードで民主化が進展したミャンマーですが、もとより、その民主化は未だ不十分であり、少数民族問題や多数派仏教徒による宗教的不寛容の問題など、懸念される課題も少なくありません。

軍人に4分の1の議席を割り当て、スー・チー氏の大統領資格を認めない現行憲法の問題もあります。

国民的人気が高いスー・チー氏にしても、かつての民主化運動の象徴ではなく、現実政治における指導者としてどれほどの力量があるのかは不明確で、疑念を示す向きもあります。

ただ、そうした問題は多々あるにせよ、今後の更なる民主化にむけての重要な一歩であることは間違いなく、その結果が注目されます。

****ミャンマー総選挙は歴史的な一歩(社説 *****
(2015年10月26日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
5年前、ミャンマーの軍事政権が恐る恐る民主化への道を歩み始めたとき、どこまで進むのかを疑う見方が多かったのは当然だ。

移行はまだ明らかに完了していない。これは軍事政権が政治・経済的な利益を巧みに守りながら進めてきたコントロールされたプロセスだ。

だが、何も変わっていないという懐疑派の見方は誤りだ。ミャンマーは5年前とはまるで異なる国だ。以前よりもずっと世界との関わりを深め、抑圧が減り、必ずしも啓発的とはいかないまでも市民社会が発展しつつある。

来月、この民主化のプロセスがもう一歩進められる。同国で半世紀以上ぶりに本当の意味での民主的な総選挙が実施されるのだ。

総選挙は、民族間の分断が多く見られる人口5300万人の同国全土で11月8日に実施されるが、完璧とはほど遠いものになるだろう。

軍部が国会で4分の1の議席を自動的に確保し、憲法は野党の党首、アウン・サン・スー・チー氏が大統領になることを実質的に禁じている。憲法は外国籍の子どもを持つ者は大統領になれないと定めており、同氏にはそれに該当する子どもが2人いる。

一部の少数民族による世界で最も長い内戦が続く国境地帯に住む多くの人々も投票できない。迫害を受けるイスラム教徒少数民族「ロヒンギャ」の大半もそうだ。

それでも、この選挙は決定的な一歩になる。数十年ぶりに同国の国民は国会の形を決め、そこから次期大統領が出るであろう党を選ぶ機会が与えられたのだ。同国の選挙制度では、国会の両院と軍がそれぞれ副大統領を指名し、その中から国会が大統領を選出する。

議席の4分の1はカーキ色の制服組に確保されているため、国民民主連盟(NLD)が確実に勝つためには議席の67%を得る必要がある。

たとえ大々的な不正が行われなかったとしても、NLDに明白な勝利が保証されているわけではなく、現職のテイン・セイン氏がなんとか権力の座に返り咲く可能性はまだある。

■スー・チー氏を大統領に
NLDが大差で勝利を収めた場合、状況はややこしくなる。最近のインタビューでスー・チー氏は「大統領でなければ、国を導くことはできないのか」と述べ、物事を水面下で操ることをほのめかした。

同氏は(インドの)ソニア・ガンジー氏になぞらえられることを拒んだが、スー・チー氏の発言は、ほぼ無能だったシン政権をガンジー氏が陰で操っていた当時のインドの不満足な状況と、不気味なほど同じように聞こえる。

NLDが選挙で勝って十分な過半数を確保したなら、軍が憲法を改正してスー・チー氏が直接大統領になれるようにする方がはるかに良いだろう。

実際のところ、スー・チー氏も民主主義自体も万能薬ではない。同氏が民主化の象徴から政治家に転身するのは容易ではない。

政策面では、特に経済や長くくすぶっている少数民族問題では同氏はあいまいなことが多い。皮肉にも、政治的な解決に必要な譲歩は軍の方が行いやすいだろう。

同国は依然として非常に貧しく不平等な国だ。無法であることも多く、たちの悪い宗教的不寛容さにあふれている。軍以外の政府組織も弱い。

外国人はいまだに、投資するに足る人的あるいは物理的な能力が同国にあるかについて懐疑的だ。これを複雑にしている背景には、米国が同国への制裁の方針をまだ展開していることがある。

ミャンマーの軍部は権力から退くことで歴史をつくった。その点は称賛に値する。だが、来月の総選挙やその後の大統領選出を巡る争いで勝つのが誰であれ、蜜月は短いだろう。

軍が不確かな民主主義を譲り渡そうとしているこの国は、60年間に及んだ権威主義の悪政による傷を負っている。【10月26日 日経】
******************

まずは総選挙が公正に行われることを期待しますが、公正な選挙を取り仕切るべき選挙管理委員会が与党・大統領の強い影響下にあり、10月8日ブログ「ミャンマー 総選挙まで1か月 選挙後の政権主導に意欲を見せるスー・チー氏」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20151008)でも指摘したような「不公正」が懸念されます。

あろうことか、選挙管理委員会は与党に不利な形勢にある総選挙自体を延期するといった提案も行いました。

さすがにこれは批判も強く、撤回されています。

****ミャンマー総選挙、延期提案後に撤回 選管委員長*****
ミャンマー選挙管理委員会のティンエー委員長は13日、主要政党代表との協議で7月に北・西部で起きた洪水を理由に11月8日の総選挙の延期を提案した。

アウンサンスーチー氏の野党・国民民主連盟(NLD)は反対。選管は13日夜、一転して国営テレビで提案を撤回する声明を出した。(中略)

13日の延期提案後、総選挙で躍進が予想されるNLDの幹部は「与党が劣勢のため延期したいようだ」と反発。
協議に出なかった野党からも「2008年の憲法制定時の国民投票は巨大サイクロン被害の直後でも強行したではないか」と批判が出た。

結局、選管は同日夜に提案撤回の声明を発表。「延期した際に起こりうる事態を配慮した」と説明した。国内外から批判が高まることを考慮したとみられる。

元軍人のティンエー氏はテインセイン大統領と国軍士官学校同期で元USDP下院議員。その中立性には疑念が持たれている。【10月14日 朝日】
*******************

意図的な選挙への干渉以外にも、選挙態勢が十分に整っていないことからくる混乱も予想されます。
選管発表の「有権者名簿」に相当な欠落(意図的なものか、単なる事務的ミスなのかはわかりませんが)があることは前回ブログでも取り上げました。

東京での在外投票でもその点が問題となっています。

****<ミャンマー総選挙>東京で在外投票 名簿不備で混乱も****
11月8日のミャンマー総選挙の在外投票が東京都品川区の大使館で行われている。日本に住む有権者が民主化の進展を願って訪れているが、有権者名簿の不備で投票できない人も続出している。

在日ミャンマー人は約1万2000人だが、選管が確認している有権者は約1000人。多くの人が「名簿に名前がない」という。国営紙によると、東京の大使館に送るはずの投票用紙がエジプトに送られるなど、事務的なミスも相次いだ。(中略)

日本での投票は17〜23日のはずだったが、混乱を受けて2日間延長される予定。シンガポールや韓国でも同じような混乱が生じている。ミャンマーのメディアによると、約3万4000人が在外投票を申請した。【10月23日 毎日】
*******************

“在日ミャンマー人は約1万2000人だが、選管が確認している有権者は約1000人”・・・随分と数字に開きがありますが、例えば在日ミャンマー人が当局に把握されることを警戒して大使館とのコンタクトをとっていない・・・といった類の要素があるのかどうかは知りません。

いずれにしても、信頼に足る選挙でないと、選挙後に敗者が結果受け入れを拒否して更に混乱するといったこともあります。

仏僧の全国組織が反NLDキャンペーンを展開
選挙結果予測については、国民的人気が高いアウンサンスーチー氏の野党・国民民主連盟(NLD)の優勢がかねてより言われており、スー・チー氏としては“圧勝”の形で選挙後の主導権を握りたいところです。

ただ、そのスー・チーにとって厄介な動きも伝えられています。

ミャンマーでは、西部ラカイン州のイスラム教徒少数民族ロヒンギャと仏教徒の対立などを背景に、イスラムへ不寛容な仏教ナショナリズムの動きが一部僧侶に扇動される形で広まっています。

これまでスー・チー氏は、圧倒的多数を占める仏教徒世論に配慮する形で、ロヒンギャの人権保護支援は明らかにしてきませんでした。そのことは、人権団体等からは、批判も浴びてきました。

ただ、仏教徒支持・ロヒンギャ批判も明確にしない対応に、仏教徒側からもスー・チー批判が高まっているようです。

****民族対立、反スーチーの街 仏教徒、「イスラム教徒寄り」不満 ミャンマー総選挙****
11月投開票のミャンマー総選挙で、優勢とみられている野党・国民民主連盟(NLD)のアウンサンスーチー党首が16日、9月からの選挙戦で初めて西部ラカイン州に入った。

同州は多数派の仏教徒と少数派のイスラム教徒が対立。仏教徒の間では、イスラム教徒寄りとみられているスーチー氏への反発が強く、難しい対応を迫られている。
 
「私たちが選挙で勝って、体制を変えたい」
スーチー氏は同日、同州南部タウンゴウの集会で支持を訴えた。

会場の運動場には数千人が集まったが、演説後に厳しい質問攻めにあった。「NLDが政権を取ったら、イスラム教徒が力をつけるのではないか」「スーチー氏は仏教を重んじていないと言われるが」

スーチー氏は「民主主義国では政府は国民の意思に反したことはできない」と直接的な回答を避けた。

実は、今回の同州の遊説で、州都シットウェーなどがある州北部への訪問は見送られていた。住民の反スーチー感情が、南部よりも激しいためだ。

シットウェーでは、最大都市ヤンゴンの街角で見かけるスーチー氏の写真やポスターが一切見られない。
「ここでは誰もスーチー氏を好きじゃない」。市場の青果店主ピューシェーさん(50)は言う。「彼女はイスラム教徒寄りだから」

同州では2012年、州内多数派の仏教徒のラカインとイスラム教徒のロヒンギャが衝突。双方に計約200人の死者が出て、約14万人が避難民になった。シットウェーでも同年6月に大規模な衝突が起き、家々が焼かれた。

スーチー氏は同月、ヤンゴンを訪れ、解決を訴えたイスラム教徒男性らに語った。「多数派は寛大で同情的であるべきだ。宗教や民族にかかわらず、みな仲良くしてほしい」

この一言が、ロヒンギャを隣国バングラデシュからの移民と見なすラカインから強い反発を招いた。市民団体リーダーのタントゥンさん(58)は今でも、「不法移民を少数派と見なすのは納得できない」と語る。

上下両院の664議席のうち軍人枠を除く498議席を争う選挙戦では、NLDは、テインセイン大統領が率いる与党・連邦団結発展党(USDP)に対して優勢とみられている。

だが、同州で支持を広げるのは、ラカイン政党のアラカン民族党(ANP)だ。
同州の議席数は民選議席の約6%の29。選挙戦全体への影響は少ないものの、エーヌセイン副党首(58)は「我々と競えるのは与党だけだ」と胸を張る。

 ■ロヒンギャ、投票権奪われ失望
12年の衝突でシットウェー市内から郊外に逃れたロヒンギャの人たちは、今も避難民キャンプで暮らす。周辺の村も含め、一帯には10万人以上が住むという。

だが、地元選挙管理委員会の関係者によると、このうち投票権があるのは約100人だけ。ラカインなどの要求を受け入れたテインセイン政権が「国民」以外の投票権を奪ったからだ。(中略)

ロヒンギャを巡っては今年前半、厳しい環境を脱しようと数千人が周辺国に船で逃れ、問題になった。

スーチー氏は12年の衝突以降、ロヒンギャ問題について語ろうとしない。多数派の仏教徒の支持を失いたくないからとみられる。

だが、そのことを、今度は国際人権団体などから批判されている。宗教や民族の問題は、選挙戦を通じてスーチー氏にとって重い課題となっている。【10月17日 朝日】
*********************

仏教徒側のスー・チー批判はラカイン州にはとどまらないようです。

****<ミャンマー総選挙>仏僧の全国組織が反スーチー氏姿勢****
◇「イスラム寄り」と批判
ミャンマー総選挙(11月8日投票)を巡り、アウンサンスーチー氏が率いる最大野党「国民民主連盟(NLD)」に対し、仏僧の全国組織が反NLDキャンペーンを展開している。

スーチー氏の姿勢を「イスラム教徒寄り」とみなしているからだ。仏教徒が国民の9割を占めるこの国で仏僧の影響力は絶大だが、投票行動にどう反映されるかは不透明だ。

この組織は民政移管後の2013年6月に結成された「仏教保護機構」(通称マバタ)。仏教徒とイスラム教徒の対立激化に伴い仏教ナショナリズムが高揚する中で急拡大。今や全国屈指の「圧力団体」となり、機構によると、全国50万余の仏僧のうち推定30万の仏僧が機構を支持している。

機構は結成の翌7月、仏教徒保護法の素案をテインセイン大統領に提出。最終的に500万人の賛同署名を集めた。素案は今年8月、大統領の後押しもあり四つの関連法として施行、結実した。

宗教対立の原因の一つに、機構は「イスラム教徒人口の急増」を挙げており、出産間隔を3年以上あけるよう求める「人口抑制法」はその一つ。罰則はないが、多産とされるイスラム教徒が主な標的とみられ、NLDは国会で「人権侵害だ」と反対した。

関連法にはイスラム教が認める一夫多妻の禁止の他、異教徒間の結婚、改宗の制限もある。イスラム教徒男性と結婚した仏教徒女性が、イスラム教に強制改宗させられている事例が目立つ、との事情を反映させた。

スーチー氏は宗教対立について、仏教界への配慮もあり「微妙な問題」として発言を控えてきたが、機構は、仏教徒保護法への姿勢に反発。選挙戦に入った今年9月以降、「法律に反対する候補や政党に投票しないように」とのキャンペーンを本格化させた。

機構には、軍政期にスーチー氏と「民主化」で共闘した仏僧も多く、穏健派から急進派まで幅広い。中央執行委のメンバーで、イスラム排斥運動を主導してきたウィラトゥー師は「NLDが選挙に勝てば、カラー(ベンガル系イスラム教徒=ロヒンギャ=への蔑称)がこの国を統治する」などと危機感をあおる。

ミャンマーの仏僧は世俗の政治には関与しない、との不文律があり、選挙権もない。憲法は宗教の政治利用を禁じており、NLDは9月、「仏教組織が政治に関与している」と中央選管に申し立てた。

だが、選管は「政党や候補者による宗教の政治利用を防ぐのが我々の責務。仏僧に対しては何もできない」と釈明。イエトゥ大統領報道官も「民主的な社会では誰でも自分の意見を表明できる」と機構を擁護した形だ。

機構は全国に250の支部を置く。仏僧が各地で与党「連邦団結発展党(USDP)」への投票を説いているとみられ、一部メディアは「政権や与党が背後で動かしている」との見方を伝えている。

スーチー氏は遊説先で聴衆から「本当にイスラム教徒を優遇するのか」といった質問を浴びている。彼女は「あるグループの組織的なデマだ。こうした憲法違反行為になぜ(適切な)措置が取られないか、考えてほしい」(西部ラカイン州での演説)と説明している。【10月25日 毎日】
*******************

NLDは「イスラム教徒寄り」批判を避けるため候補者からイスラム教徒をはずすなどの対応もとっていますが、それでもなお・・・というところです。

イスラム教徒・ロヒンギャ対応だけでなく、冒頭記事にも“皮肉にも、政治的な解決に必要な譲歩は軍の方が行いやすいだろう”とあるように、スー・チー氏が前面に出て軍部など既存勢力との対決姿勢を示すと、政治対立で事態が膠着することも懸念されます。

こうした「現実政治」のなかで人権擁護・民主化といった政治理念をどこまで貫くことができるのか・・・現実政治家としての力量が問われる問題です。
コメント (1)

シリア情勢 存在感を強めるロシアが「和平案」を提示 今後の協議の軸に

2015-10-26 22:51:39 | 中東情勢

(23日ウイーンで行われた4か国外相会談 左からトルコ外相、アメリカのケリー国務長官、サウジアラビア外相、ロシアのラブロフ外相 【10月24日 ANNニュース】)

シリア情勢を巡って主導権を握ろうとするロシア
シリア・アサド大統領が20日、急きょモスクワを訪問し、プーチン大統領と何やら重要な話をしたのでは・・・という件は、21日ブログ「シリア・アサド大統領がロシア訪問 プーチン大統領と話し合われた内容は?」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20151021)で取り上げました。

その後、ロシアの積極的な動きが目立ちます。

23日には、ロシアはアメリカ、トルコ、サウジアラビアの関係国との4か国外相会談をウィーンで行い、停戦や移行政権の在り方などについて協議したものと思われます。

空爆でシリアにおける存在感を強めたロシアが、今後のシリア情勢についてもイニシアティブをとっていこうとする思惑が見て取れます。

****シリア情勢 4か国外相会談 隔たり埋まらず****
内戦が続くシリア情勢の事態打開に向けて、アメリカとロシア、それにトルコとサウジアラビアの4か国の外相による会談が行われましたが、アサド政権への対応を巡って立場の隔たりは埋まらず、来週にも再び協議を行うことになりました。

アメリカとロシア、それにトルコとサウジアラビアの4か国の外相は23日、激しい内戦が続くシリア情勢を巡って、オーストリアのウィーンで会談を行いました。

会談はおよそ2時間にわたりましたが、アサド政権への対応を巡って立場の隔たりは埋まらず、アサド大統領の退陣を求めるアメリカのケリー国務長官は記者会見で、「30日にも、より広範な会議の開催を目指すことで一致した」と述べて、協議を継続する方針を示しました。

一方、ロシアのラブロフ外相は記者団に「アサド大統領への対応について、われわれの立場をはっきりさせた」と述べ、アサド政権を支持する姿勢に変わりがないことを強調しました。そのうえで、事態打開のために、協議にイランやエジプトも加えることを提案したと述べました。

また、ラブロフ外相は、4か国の外相会談に先立ち、シリアの隣国で親米国家のヨルダンの外相と会談し、シリア上空でのロシアの軍事行動について両国が連携していくことで合意したと明らかにしました。

ロシアとしては、親米国の切り崩しを図ることでシリア情勢を巡って主導権を握ろうというねらいもあるものとみられます。【10月24日 NHK】
***************

アサド政権はロシアの軍事介入が功を奏して危機を脱した感がありますので、欧米・反政府勢力が求めていた速やかなアサド退陣は遠のいています。

逆に、短期的にはアサド大統領が移行政権に関与することは止む得ない・・・という空気が、欧州各国やトルコなどにも広がっています。

今回の協議、そして今後の協議においては、そこらのアサド大統領の処遇、「延命」条件が問題となります。

****米ロ外相、シリア情勢で会談=和平プロセスを議論―ウィーン****
・・・・ロシアのプーチン大統領は20日、モスクワでアサド大統領と会談。シリア危機打開は「全政治勢力が参加する政治プロセスによって可能だ」と述べ、アサド大統領退陣を要求する欧米をけん制した。

政治解決への貢献の用意も表明し、親ロ政権の存続を見据えながら、交渉を主導したい意欲をうかがわせた。

ロシアの関与拡大でアサド政権の勢力が回復に向かい、早期退陣のシナリオは後退してきた。反アサド政権を鮮明にしてきたトルコは、アサド大統領が政権移行過程に一定期間関わることを容認する姿勢を見せ始めている。

米ロをはじめ関係国にとっては、アサド大統領に即時退陣は求めないものの、最終的に政権を手放させる手順で一致できるかが当面の課題。その際、アサド氏の「延命」を認める条件が焦点になりそうだ。

一方、米国はロシアによる軍事介入について「内戦を悪化させる」と批判。過激派組織「イスラム国」ではなく、穏健な反体制派が主な攻撃対象になっていることを問題視している。

米国はロシアとの間で、共通の敵は「イスラム国」という認識も共有したい考えだ。【10月23日 時事】 
*******************

当然ながらすぐに話がまとまるのでもありませんが、シリアに軍事展開し、アサド大統領自身への影響力を有するロシアがリードする形で今後の継続協議を進める形も予想されます。

また、これまでISだけでなく反政府派を攻撃対象としていると批判されていたロシアですが、“『自由シリア軍(FSA)』と呼ばれる組織を含む、愛国的な反体制派”も空爆支援する用意があるとのことです。

****ロシア、シリアの反体制派に航空支援申し出****
シリアで空爆を続けるロシアは24日、欧米諸国が支援し、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」やバッシャール・アサドシリア大統領の政府軍と戦闘を続ける穏健派の反体制派組織に航空支援をする用意があると述べた。

ロシアを電撃訪問したアサド大統領とウラジーミル・プーチン露大統領の会談後、セルゲイ・ラブロフ露外相は、内戦で疲弊したシリアにおいて、大統領及び議会選挙実施に向けた動きを呼びかけた。

ロシアの提案に対し、シリアの反体制派は不信感を露わにし、ロシアがまず反体制派への空爆を止めるべきで、選挙の可能性を語るのは早過ぎるとし、現在の状況下から支援を拒否した。

ラブロフ外相は、ロシア1テレビのインタビューで、「われわれは、『自由シリア軍(FSA)』と呼ばれる組織を含む、愛国的な反体制派も支援する用意がある」と話した。

専門家らは、ロシアからのISとの戦闘におけるシリア反体制派への航空支援の申し出が、ロシア政府の政策転換を意味する可能性があると語る。【10月25日 AFP】
*******************

欧米の支援を受ける自由シリア軍(FSA)は軍事的には存在感を弱めており、その実態も統一性に欠けるとも言われています。
また、ロシアなどは、穏健派などというものが存在するのか?イスラム過激派との境があるのか?と怪しんでいます。

そうしたロシアの自由シリア軍(FSA)への疑念・皮肉が“『自由シリア軍(FSA)』と呼ばれる組織”というもってまわった表現に込められているようにも見えます。

ロシアとしては間口を広げることをアピールして、アサド政権側だけでなく、シリア全体に関与していく姿勢を国際社会に印象付けたいところでしょう。

いずれにしても、打倒目標のアサド政権を強力に支えているのがロシアですから、自由シリア軍(FSA)としても「じゃ、お願いします」とはおいそれとは言えない話で、上記のとおり“支援を拒否した”とのことです。

一方、反体制派を標的にしている、民間人犠牲が大勢でている・・・との批判があるロシア空爆ですが、ロシアがシリアで拠点にしている空軍基地をメディアに公開して、その透明性と存在感をアピールしています。

****ロシア軍 シリア国内の基地を初公開****
内戦が続くシリアで過激派組織IS=イスラミックステートを対象に空爆を行っているとするロシア軍は、シリア国内の空軍基地を、NHKなど外国のメディアに初めて公開し、ロシアがISへの対応で重要な役割を果たしていることをアピールしました。

ロシアは、シリアのアサド政権の要請を受けて、先月30日から、シリア国内で空爆を続けていますが、欧米などは、過激派組織ISだけでなく欧米側が支援する反政府勢力に対しても、ロシアが空爆して、アサド政権へのてこ入れを図っていると批判しています。

こうしたなか、ロシア軍は、空爆の拠点としているシリア北西部ラタキア郊外の空軍基地を、このほどNHKなど外国のメディアに初めて公開しました。(中略)

今回の基地公開には、アメリカのIS対策が行き詰まりを見せるなかで、ロシアが重要な役割を果たしていることを内外に強く印象づけるねらいがあるとみられます。【10月25日 NHK】
******************

ロシア提案「アサドが立候補しないことに関するプーチン大統領の保証」】
このように随分と活発に動いているロシアですが、25日にはロシア提案の「和平案」も報じられています。
“議会選挙と大統領選を実施して移行政権を樹立する内容で、合意成立から1年半以内の実現を目指す”という内容とか。

****シリア内戦:露が和平案、1年半で移行政権****
アラブ紙アッシャルク・アルアウサトは25日、シリア内戦終結に向けたロシア政府の和平案の概要を報じた。

議会選挙と大統領選を実施して移行政権を樹立する内容で、合意成立から1年半以内の実現を目指す。アサド大統領は25日、将来的な大統領選への出馬に意欲を表明した。

アサド氏はロシア和平案に沿って政権延命を図る構えとみられるが、米欧や反体制派は移行政権からのアサド氏排除を求めており、反発は必至だ。

シリアへの軍事介入をてこに存在感を増したロシアは、和平に向けた動きでも主導権を握りそうだ。

シリアの首都ダマスカスで25日にアサド氏と会談したロシア国会議員らによると、アサド氏は「もしシリア国民の求めがあるのならば、大統領選への参加は否定しない」と発言、権力維持に意欲を表明した。ロシア通信が報じた。

アサド氏は議会選と大統領選の時期について憲法改正して早期に実施することを検討する可能性も示した。

同紙によるとロシア和平案では、まずアサド政権軍と穏健な反体制派「自由シリア軍」の戦闘を停止。移行政権樹立の後、政権軍と自由シリア軍を統合し、共通の敵と戦うことを目指す。

ロシアのラブロフ外相は24日に放送された国営テレビのインタビューで、シリア情勢正常化に向けた政治プロセスの一環として大統領選と議会選の実施を呼び掛けた。【10月25日 毎日】
*******************

上記記事では、和平案の内容がいまひとつわかりません。
特に、アサド大統領が大統領選挙に出馬して権力を維持することもあるというのでは、まとまりそうもない話です。

23日のウイーンでの4か国外相会談では、まず米ロ2か国の会談が行われていますが、【10月26日 野口雅昭氏 中東の窓】によれば、このときロシア・ラブロフ外相がアメリカ・ケリー国務長官に対して、シリア問題の政治的解決に関する詳しい提案を含んだペーパーを手渡したとal qods alarabi (ロンドン発行のアラビア語日刊紙)が報じているそうです。

その提案骨子は以下のとおりだそうです。

****ロシア提案の骨子*****
1、ロシア、米国と有志の空爆の対象を再検討し、総ての政治解決に反対する勢力を対象のリストに加える

2、政府軍と反政府軍の総ての戦線における停戦

3、自由シリア軍及び国内反政府派を含む対話会議の準備。その結果、総ての逮捕者の釈放、議会及び大統領選挙の準備、恩赦、憲法改正のための国民一致内閣の設立,大統領権限の首相への移管に合意すること

4、アサドが立候補しないことに関するプーチン大統領の保証、然し、アサド家又は政権の他の者の立候補は可能なこと

5、政府軍及び自由シリア軍、さらにその下にある部隊や治安部隊の統一

6、総ての反政府派、活動家、内外の反政府軍に対する恩赦に関するロシアの保証、これと引き換えにアサドの裁判の免除に関する保証

7、総てのアサド支持者に対する制裁の解除、総ての国、勢力の総ての勢力に対する軍事援助の停止、戦闘の停止

8、合意が安保理で法的根拠を得た後も、合意履行の保証としてのロシア軍のシリアにおける存在の維持
【10月26日 野口雅昭氏 中東の窓】
********************

“4、アサドが立候補しないことに関するプーチン大統領の保証”というのがポイントになりますが、【10月25日 毎日】にもあるように、アサド大統領は大統領選への参加は否定していません。

このあたりについて、アサド・プーチン両大統領の間でどのような話になっているのかは知りません。
“落としどころ”とは別に、アサド大統領としても一応主張してみた・・・という話でしょうか。
20日、アサド大統領がモスクワに急行したのも、このあたりの話ではないでしょうか。

提案骨子のあちこちに“ロシアの保証”という文言がでてくるように、現地に強力な軍を展開しており、また、アサド政権の命運を預かる立場にあるロシアの存在があって初めてシリアでの停戦・和平が成立することを感じさせるものとなっています。

ただ、このままではあまりに“ロシア色”が強いので、今後、アメリカなどは、アメリカやトルコ・サウジアラビアなど周辺国の関与を含めた内容に持っていこうとするのかも。

言い換えれば、そういう形で話が進み、米ロのバランスがとれれば、シリア停戦の現実味も増します。

まだ“提案がなされた”段階で、今後について詮索するのは早すぎますが、これを契機に和平に向けた協議が本格化するのであれば、プーチン大統領としてはシリアでなかなかうまく立ち回った(アメリカ・オバマ大統領の存在がかすむぐらいに)とも評価できます。

上記【中東の窓】の野口雅昭氏などは、“卓越した外交手腕で、戦略なきオバマの政策と比較すると月とすっぽん位の差があるような気がします”とも。

まあ、そこまで言ってはオバマ大統領が気の毒にも思えます。いたずらに存在を競うのではなく、ロシアなどの提案も受け入れて和平を現実のものとしていく、そうした度量も重要です。
ただ、「またしてもロシア・プーチンにしてやられた」との批判がアメリカ国内外で出そうですが・・・。

いずれにしても、これからの話ですが。
コメント

遅れるネパール大震災復興 政治対立から復興庁設置も未だ マデシ問題でインドからの物流も途絶える

2015-10-25 22:24:43 | 南アジア(インド)

(給油を求めるバイクや車が1キロ近く並ぶガソリンスタンド前。先頭の人は3日前から並んでいるという=カトマンズ、貫洞欣寛撮影【10月25日 朝日】)

新憲法は制定されたものの・・・
ネパールにおいて、今年4月の大地震からの復興が進んでいないこと、また、新憲法制定をめぐる政治混乱が続いていることは、8月24日ブログ「ネパール 進まない震災復興 新憲法案がようやく制憲議会へ 従来政治から疎外されてきた勢力の反対も」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150824)で取り上げました。

2か月が経過した今も、基本的には事態は変わっていません。

政治面について言えば、7年越しでもめていた新憲法がようやく9月に制定され、形の上では相当の進展が見られました。

****ネパール新憲法、7年越し制定へ 法案を承認****
新憲法の制定作業を続けてきたネパール制憲議会は(9月)16日夜、同国を7州からなる連邦共和制国家とする新憲法案を承認した。

ヤダブ大統領が20日に憲法を公布する予定だ。2008年から7年にわたり混乱を繰り返しながら続いた憲法制定プロセスは、これで終了することになる。

新憲法はネパールを7州からなる連邦共和制国家と規定した。議会は二院制。大統領は象徴的存在で、首相が実権を握る。

ネパールでは06年、直接統治で強権支配しようとしたギャネンドラ国王が民主化要求運動で実権を失い、民政に復帰。国軍と内戦を続けた共産党毛沢東主義派(毛派)と政府側との和平合意も成立した。08年には新憲法をつくるための制憲議会選挙が行われ、同議会が王制廃止を決議した。【9月18日 朝日】
********************

また、共産党毛沢東主義派(毛派)とその他政党の確執から争いが絶えないネパールの政治情勢ではありますが、今月11日には議会第二党である統一共産党のオリ氏が毛派の支持も得て首相に決まっています。

****ネパール新首相にオリ氏 大地震の復興担う****
ネパール議会は11日、新憲法制定を受けて首相選を実施、第2党の統一共産党(UML)議長のK・P・オリ氏(63)を新首相に選出した。ネパールは9千人以上の犠牲者を出した4月の大地震からの復興途上にあり、オリ氏の政治手腕が問われる。

ネパールは9月20日、7州の連邦制とする新憲法を7年に及ぶ議論の末にまとめ、公布した。

首相選には、直前まで首相だった第1党、ネパール会議派総裁のコイララ氏も出馬したが、オリ氏は、第3党のネパール共産党毛沢東主義派などの支持で過半数を獲得した。【10月11日 共同】
*******************

マデシ問題に中国・インドの綱引きも重なって・・・・
これで4月の大地震からの復興が軌道に乗るかと言えば・・・なかなかそうもいかないようです。
再建を担うはずの復興庁がいまだに設置されていないため、国外からの援助資金も宙に浮いた形になっています。

更に、新憲法制定をめぐる過程で、「マデシ問題」が顕在化し、ネパール経済は混乱状態にあります。

インド国境に近い南部低地に生活する「マデシ」は、血縁・言語・文化の面でインドとの関係が強い人々です。
もともとネパール南部地域にはインド系住民マデシが住んでいたいましたが、60年代の開発でインドからの移民が急増しました。

マデシを通じてインドの影響力が強まることを恐れた国王は、政府や軍の主要ポストからマデシを排除し、市民権獲得も困難にするなど、従来の政治的枠組みから疎外されてきました。

しかし、2008年の総選挙でマデシを基盤とする政党が躍進するなど、近年その権利主張が高まっています。

****マデシ***
マデシ(英: Madhesh)はネパール南部に東西に広がる細長い平原地帯、「マデス」「テライ」または「タライ」ともいわれる地域に住む人々。

国土面積の17%、人口の48%を占め、1100万人が住む。土地は肥沃である。南はインドに接する。

文化的には北インドのそれに近い。(中略)また、カースト制度も丘陵部のそれと違って、インドの制度に近い。【ウィキペディア】
***************

人口の48%を占めるということで、“少数民族”とも言えない一大勢力です。
マデシ系諸政党は“一つのマデシ”としてインド国境地帯全体に細長い一つの自治区をつくることを強く主張していますが、新憲法制定においてこれは認められませんでした。

このため、マデシ側(及び、これに協力するインド側)は、インド国境の物流を実力で止めて政府に圧力をかける事態となっています。

****インド住民「圧迫だ」・・・・ネパール、新憲法交付で対印関係悪化 中国台頭や地方議会選にらむ****
ネパールで公布された新憲法をめぐり、隣国インドが親インド住民の「マデシ」の権利擁護を要求し、両国関係が悪化している。

国境では物資を運ぶトラックが通行できなくなり、ネパールではガソリンなどが不足している。ネパールはこれをインドの圧力とみなし、反発を強めている。

インドに近いネパール南部に住むマデシは、新憲法で、州の新たな区割りなどによってマデシの議席が十分確保されず、マデシに多いインドからの帰化民などが首相などの要職に就けなくなるとして、抗議行動を続けてきた。しかし、ネパール制憲議会は今月16日、マデシの要求を振り切る形で新憲法案を承認した。

マデシを支援してきたインドはジャイシャンカル外務次官を派遣し、マデシのデモ隊と治安部隊の衝突で40人以上の死者が出ていることに懸念を伝えた。そのうえで、「全当事者の総意で問題を解決すべきだ」と見直しを迫ったが、ネパール側は聞き入れず、憲法は20日に公布された。

インドがマデシに肩入れするのは、マデシは国境を接するインド東部ビハール州に住む住民と血縁関係を持つ人が多く、言語などの文化を共有しているからだ。

インドとしては、王制崩壊後のネパールで中国の影響力が強まっているだけに、マデシの政治力確保は重要な課題といえる。

また、このままでは近く行われるビハール州議会選で、モディ印首相の与党、インド人民党(BJP)に逆風が吹く恐れがあり、容易に譲歩できない状況にある。

国境でのトラックなどの通行遮断により、ネパールは27日から自動車の使用規制を余儀なくされたが、通行遮断の原因や責任をめぐっても両国の主張は食い違う。

インド政府が「インドの貨物業者が(デモによる)治安上の懸念に苦情を訴えている」と説明していることに25日、駐ネパール印大使を呼んで「(インド側が)供給網の遮断を取り除く必要がある。治安上の問題はまったくない」と抗議した。

ネパール紙カトマンズ・ポストによれば、ネパールの約20の政党は、インドの圧力に屈しないことを決めた。カトマンズでは、インドを非難するデモも起きている。

ただ、ネパールは、マデシとの対話を続け、正式な手続きを踏めば憲法は修正できるとしている。ヒマラヤの内陸国は、物資供給を含め経済をインドに大きく依存しており、今後の動きが注目される。【9月27日 産経】
*******************

この混乱で、11月に予定されていたカーター元米大統領のネパール訪問が取りやめになっています。
(大統領を止めてからの国際的活動の方が評価が高いカーター氏は、8月、脳の4カ所に進行性のメラノーマ(悪性黒色腫)があると診断されたことを明らかにしていますが、健康状態はどうなのでしょうか?)

****カーター元米大統領の訪問中止=国境封鎖で燃料不足―ネパール****
国際NGO「ハビタット・フォー・ヒューマニティ」は8日、11月に予定していたカーター元米大統領のネパール訪問を取りやめると発表した。

ネパールでは9月に新憲法が公布されて以降、憲法反対派がインドとの国境地帯を封鎖して物流を阻害。このため、燃料や食料品不足が深刻化していることが中止の原因という。

カーター氏は同NGOの活動の一環として、4月の大地震で被害を受けたネパール中部チトワン地区を訪れ、住宅建設を支援する予定だった。NGOは「燃料などの生活必需品不足が深刻で、活動に携わる人々の安全を保証できないと判断した」と説明した。【10月9日 時事】 
******************

宙に浮く国際資金援助
こうしたマデシ問題からの経済混乱、政治対立からの復興庁設置の遅れによって、ヒマラヤ山間部が多いためただでさえ難しい大地震復興は手つかず状態に放置されています。

****ネパール、復興手つかず 大地震から半年 政治対立、届かぬ資金・燃料****
9千人近い死者を出したネパール大地震から25日で半年になる。再建を担うはずの復興庁がいまだに設置されないうえ、国内の政治対立からインドとの国境が封鎖されてガソリンなどの輸入がこの1カ月近くストップ。

復興に向けた作業は進まず、被災した人々の暮らしに影を落とす。

「村に戻りたいが、戻る家もないし、お金もない」
北東部シンドゥパルチョーク出身のマウサム・サンワルさん(23)はつぶやいた。地震で家を失い、妻や9カ月の娘とともに首都カトマンズの空き地でテント暮らしを続ける。この空き地には被災者ら約4600人が今もテントで生活する。政府の支援はない。

「もうすぐ冬になる。テントで娘が大丈夫なのか心配だ」
ネパールは山岳国。カトマンズは標高1千メートルを超え、冬の朝晩は5度以下の冷え込みは珍しくない。

6月にカトマンズであった支援国会合で、各国や世界銀行などは計44億ドル(約5300億円)の支援を表明した。日本も学校や住宅の再建などに2億6千万ドルの支援を発表した。

だが、ネパール政府を経由して流れるはずの資金の多くは、手つかずのままだ。資金の受け皿となる復興庁が設置されていないためだ。設置法案の議会上程は9月にずれ込み、議会では各派から修正要求が相次ぎ、まだ承認されていない。

国際協力機構(JICA)ネパール事務所によると、日本が支援を決めた2億6千万ドルのうち、以前の無償援助で建てた学校の修復など復興庁を経ずに行う事業は順調に進んでいるが、復興庁経由となる学校と住宅再建事業の計約2億ドル分は動いていない。

加えて、新憲法制定を巡る政治対立が燃料不足をもたらした。ネパールでは9月20日に新憲法が公布されたが、その直後から、人口の半数を占める南部の政党や住民らが人口数に比例した議会の議席配分などの修正を求め、インドとの国境で座り込んで封鎖したのだ。

ネパールは輸入の多くをインドに頼っており、ガソリンやプロパンガスなどの不足が深刻になっている。JICAの学校再建工事に影響が出るなど、復興の足かせともなっている。

カトマンズのガソリンスタンド前には、給油を求めるバイクや車が1キロ近い長い列を作っている。会社員ティカ・ガミレさん(43)は、スタンド前に泊まり込んで3日。「地震直後より今の方が苦しい」とため息をついた。

国連は23日、「冬が迫っている。8万世帯以上が今も食料と避難場所を求めている」との声明を出し、復興庁の早期設置と国境封鎖の解消を求めた。

 ■オリ首相「復興庁、数日でメド
ネパールのオリ首相が24日、朝日新聞などの取材に応じた。遅れている復興庁設置について「作業を急ぎ、これから数日でめどをつける」と述べた。

新憲法に不満を募らせる南部の住民らがインドとの国境を封鎖し、国内が深刻な燃料不足に陥っていることについては「タマネギやジャガイモは問題なく輸入されているのに、燃料だけが入ってこない。インドとの友情を維持したいが、生き延びる必要がある」と述べ、中国からの輸入を検討していることを示唆した。

さらに「憲法は改正することが出来る」とも述べ、より大きな権限を求める南部住民と交渉し、憲法を改正する用意があることも示唆した。【10月25日 朝日】
******************

アルピニストの野口健氏の支援活動も報告されていますが、山間部の道路が寸断された状態で、物理的に復興作業は困難を極めています。更に、政治が足を引っ張っていてはどうにもなりません。

****ネパール大震災・・・被災現場を歩いてわかる現地のニーズ**** 
4月に発生したネパール大震災。ヒマラヤで被災し、現地に滞在しながら自身に何ができるのだろうかと考え続けた。

まず始めたのがエベレスト街道の集落の被害調査。同時に「ヒマラヤ大震災基金」を立ち上げた。多くの村人が住居を失っていたので家族が過ごせる大型テントを約600張(はり)、村々に届けたが、これが大仕事。

被災地は雨期に突入しており、道中至る所で土砂災害に見舞われている。頑丈な大型テントは1張50キロ以上の重量になり、約600人のポーターやロバを必要とした。彼らが無事に戻ってくるまでハラハラさせられた。

次に取り掛かったのは住宅再建のための軍資金づくりだ。現金を被災者に直接手渡すことに抵抗を示す人もいるが、彼らがいま何を必要としているのか、現場を歩き回りながら聞き続けた。

物資も重要だが、同時に住居なり、山小屋を再建しなければ自立はできない。震災後、大工の人件費や資材費は高騰している。村々のリーダーを集め、協議を重ねたうえで各家族に現金を直接手渡した。

観光客も激減したままだ。村人の多くはガイドや山小屋経営に携わっているだけに極めて深刻だ。人は食べていかねばならない。被災現場を歩き続けていると時々のニーズがわかる。日本にいてはそれを感じることはできない。

次のプランは集落周辺の斜面への植林活動。土砂災害対策である。植林されている斜面では土砂災害が少ないということも今夏の現地調査で感じてきたことだ。

再建現場を訪れて驚いたのは震災前と全く同じ方法で家を建て直していることだ。これでは同規模の震災が起これば同じように破壊されてしまう。

先日、世界的な建築家の坂茂さんにお会いした。坂さんはボール紙などで作られた紙筒を壁や梁(はり)などに使用する仮設住宅を世界中の被災地に建ててこられた。

木材が手に入りにくい山間部においても大変魅力的であり、日本の耐震基準をクリアしている。実現すれば日本の技術がネパールを救う。坂さんのお話に新たな希望を感じていた。

27日、ネパール大震災のシンポジウム(詳細は野口健HPで)を行う。多くの方に参加をお願いしたい。【10月22日 産経】
*******************
コメント

国連設立70年 機能不全が言われて久しい安保理  変容するPKO

2015-10-24 23:31:30 | 国際情勢

(発足70年を記念しライトアップされた米ニューヨークの国連本部=23日、ロイター 【10月24日 毎日】)

【「国連の青い旗は全人類にとって希望の旗印だ」】
今日10月24日は国連が誕生して70年を迎える日ということで、国連のシンボルカラーの青色に染めるイベントが東京スカイツリーや中国の万里の長城など世界約60か国、約200か所で行われるそうです。

ただ、世界平和と人類幸福をリードすべき国連の設立70年記念行事としては、やや小規模で地味な感も。
そのあたりが、国連の置かれている現状、抱えている問題の多さを反映しているとも言えます。

国連総会は23日、国連設立70年を迎えるのを機に記念宣言を採択しました。
採択された宣言は、人権の尊重、女性の権利の重要性に触れ、「貧困の撲滅が世界最大規模の課題だ」と訴えた。先月採択された2030年までの新しい開発目標の実現に向けて取り組む決意を強調しています。

しかし、国連70年の歴史は、理想と現実のギャップの歴史でもあります。

****<国連>「青い旗は希望の旗印」・・・発足から70年 光と影****
国連は24日、発足から70年を迎えた。第二次世界大戦を防げなかった反省を踏まえて創設され、加盟国はこの間51から4倍近い193に増えた。

一方、内戦5年目のシリアでは犠牲者が20万人を突破するなど、紛争や抑圧で家を追われた人々は世界中で6000万人に達し、戦後最悪の状況が続いている。国連憲章第1条に掲げられた「国際平和と安全の維持」という理想の実現は、まだ遠い。

国連総会は23日、記念会合を開催。潘基文(バンキムン)事務総長は「70年たった今も、国連の青い旗は全人類にとって希望の旗印だ」と評価する一方「我々の取り組みはまだ完全ではない。暴力と貧困、疾病、虐待は今でも多くの人々を苦しめている」と強調。

「よりよい世界のために強い国連が必要だ」と述べ「すべての人にとって、より良く、明るい将来を目指すという誓約を再確認しよう」と呼びかけた。会合では「国連憲章の目的と原則を今後も変わることなく守っていく」ことなどを誓った決議が採択された。(後略)【10月24日 毎日】
*******************

大国の利害対立で機能しない安保理 拒否権を手放さない米中ロ
国連の抱える問題は多岐にわたり、それらへの回答が明示できるのであれば世界平和と人類幸福も達成できるという、即ノーベル平和賞ものですが、当然ながら明確な処方箋は未だありせん。

多岐にわたる問題のなかの大きなもののひとつが安保理の機能不全、その中核にある安保理常任理事国の拒否権の問題です。

****時代遅れの構造****
第2次世界大戦後に誕生した国連は、人類の未来への最大の希望として迎え入れられた。その当時からの課題が、世界情勢の変化に取り残されないことだ。

だが、国連の主要機関である安全保障理事会は、いまだに戦後から脱し切れていない。安保理の常任理事国は、戦勝国の中国、フランス、ロシア、英国、米国が独占したままで、それぞれが拒否権を行使できる。

まさにこうした組織の停滞性が、シリアやウクライナの危機に際して国連がうまく対応できていないとの批判を引き起こしている。

コフィー・アナン前事務総長は最近、「新たに常任理事国の数を増やさなければ、 世界情勢に対する安保理の影響力は次第に低下するだろう」と述べた。しかし、常任理事国は独占的な権力を手放す、ないしはそれを分かち合うことに対し極端に消極的だ。(中略)

ジュネーブのスイス国連大使、アレクサンダー・ファーゼル氏は、小さな改革は可能だと考える。「安保理の作業方法は改善された 。公開討論の導入がその好例で、理事会の透明性を向上させようという努力がうかがえる。

また、(大量残虐行為の防止や終結を目的とした決議では拒否権を発動しないといった提案では)フランスのような常任理事国ですらこれを支持するなど、理解が広がっている」【10月23日 スイスインフォ】
******************

第二次世界大戦の主な戦勝国である常任理事国(アメリカ・イギリス・フランス・ロシア・中国)の一か国でも反対すれば何も行動が起こせないという拒否権の乱発は、冷戦下の多くの紛争や、現在のシリアやパレスチナの問題の解決を遅らせてきた大きな要因です。

拒否権の是非はさておき、この拒否権問題を何らかの形で改革するためには国連憲章改正が必要であり、そのためには総会での議決の他、拒否権を持つ常任理事国すべての批准が必要です。ということは、実現は殆ど不可能に近いとも言えます。

非人道的な虐殺行為が発生した場合、常任理事国は拒否権を発動しない・・・という「行動規範」も多くの国によって署名されていますが、肝心の常任理事国のロシア、中国、そしてアメリカが賛同していません。

****国連70年】安保理「機能不全」打開に日本など104カ国が「反対しない」誓約に署名 中露米は賛同せず****
国連創設から24日で70年となるのを前に、加盟国(193カ国)の半数以上にあたる104カ国は23日、非人道的な虐殺行為が発生した場合、安全保障理事会に提出された関連決議案に反対しないと誓約する「行動規範」に署名した。

シリア内戦の解決を目指す決議案にロシアと中国が拒否権を行使するなど、安保理が「機能不全」に陥っている状況を打開するためのもので、常任理事国からはフランスと英国が賛同したものの、ロシアと中国、米国は賛同しなかった。

規範作成を主導したのはリヒテンシュタインなど27カ国で作る「ACT」グループ。規範は、虐殺や戦争犯罪阻止に向けた「説得力ある決議案に(誓約国は)反対しない」と規定。発生した「暴力」を「虐殺」と認定するのは事務総長であると規定している。

現在の非常任理事国からはスペインが賛同したほか、2016〜17年に非常任理事国を務める日本やウクライナ、ウルグアイも賛同した。ドイツやイタリアなどの大国も賛同した。

署名に先立ち、フランスのファビウス外相は9月下旬、虐殺行為があった場合、常任理事国5カ国は拒否権を使うべきでないと提言し、約75カ国が賛意を示した。

しかし、中露は拒絶を表明したほか、パレスチナ問題関連の決議案に拒否権を行使してきた米国も慎重姿勢を見せていた。

国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」(HRW)は23日、「(多くの加盟国が署名したことで)虐殺問題の決議案に反対すれば、より多くの『政治コスト』が伴うことになった」と指摘した。

潘基文(パン・ギムン)事務総長は同日、国連本部で行われた創設70年の記念討論会合で、「国連の青い旗は人類全体にとって希望の旗だ。より良き世界の構築に向け、強い国連が必要だ」と強調した。【10月24日 産経】
*****************

この問題に意欲を見せている(その真意はわかりませんが)のがフランスです。

フランスはすでに2001年の段階で、国連安全保障理事会の常任理事国は、大量虐殺のような犯罪行為に歯止めを掛ける事案に関しては拒否権の行使を控えるべきだという提案を持ち出しており、今年9月28日の一般討論演説で、オランド大統領「大規模な残虐行為に関して、安全保障理事会常任理事国が拒否権を使えなくなることを望む」と、改めてこの問題を提起しています。

フランスの構想は、国連憲章改正まで踏み込まず、自主規制にとどまるものですが、“「大衆受けを狙った提案だ。フランスが自国の拒否権を制限したければ、どうぞ、おやりなさい」。ロシアのチュルキン国連大使は先月の記者会見で、フランスの「本気度」をあざ笑った。”【10月24日 毎日】とのこと。

【「1国1票」の国連総会 肥大化して非効率な国連組織
大国利害が対立した際の安保理の機能不全も問題ですが、それでは安保理を機能を縮小して、代わりに国連総会の意思決定をより重視する方向がいいのか・・・というと、躊躇するところもあります。

12~13億人の人口を有する中国やインド、あるいは米ロといった国も1票、失礼ながら多くの人が名前も聞いたことがない国、人口1万人ほどのナウルやツバルなども1票という現状にあって、こうした「1票の格差」の問題とは別に、総会決議の重みに懐疑的になることもあります。

10月6日、国連の関連事業などで便宜を図る見返りに、中国の不動産事業者らから計130万ドル(約1億5000万円)を超す賄賂を受け取った疑いで、元国連総会議長がアメリカ連邦検察によって逮捕される事件がありました。

逮捕されたアッシュ元国連総会議長は、カリブ海の島国アンティグア・バーブーダ出身ですが、私はこの国の名前を始めて聞きました。人口は9万人ほどの国のようです。日本で言えば、ちょっとした市程度の人口です。

そうした国から国連に送り出された人間が、権限は少ないとは言え、一般討論の司会などを担当する国連総会議長(事務総長に次ぐ国連の顔とも)に地域の持ち回りで決まるという国連総会とは一体何なのか?という疑問も。
相当に偏見に満ちた疑念であることは認めますが・・・。

肥大化した国連組織の非効率性も問題とされています。

***ニーズの増加***
国連で最大の権力を持つ安保理が1945年代に留まっている一方で、実際のオペレーションにおいて国連は、ニーズに応じて拡大の一途をたどってきた。

職員の総数は8万5千人。年間予算は400億ドル(約4兆7700億円)と、20年間で約4倍に膨れ上がった。だが、資金面では、専門機関の間の熾烈(しれつ)な競争が妨げとなり、困難な状況が続いている。

現在国連は、独自の予算で独自に総会を開く20の専門機関を抱える巨大な組織に成長した。ところが全体を概観・統括する組織が存在しない。世界保健機関(WHO)がエボラ熱流行の兆しをもっと早く把握できなかったのは、この複雑化した構造のためだと批判されている。

「個人的には、国連の問題は規模が拡大したからではなく、組織が個々に分断されている点にあると思う。スタッフ採用にせよ、支出にせよ、適切に管理するのは至難の業だ。さらに、この巨大な組織を管理する実務面が、加盟国によって押し付けられた国連独自のルールで細部まで規定されており、身動きが取れなくなっている」(モラー事務局長)【10月23日 スイスインフォ】
*****************

【「平和維持」から「平和強制部隊」へ
機能不全を言われながらも、国連が拡大してきた任務が平和維持活動(PKO)です。

“1945年に発足した国連の功績の1つは平和維持活動(PKO)だ。紛争が絶えないアフリカなど16カ国に総勢12万人以上を展開。PKO部隊が派遣されたインドシナが今、「繁栄のエンジンになっている」(国連外交筋)のは、部隊派遣の成果といっていい。【10月23日 産経】

拡大するPKOは、当初の「平和維持」という任務から、平和が存在しないとも言える地域で、武力によって強制的に平和を作り出す任務へと変容しつつあります。

****PKO拡大、近づく危険 コンゴ民主共和国に「介入旅団****
・・・・強力な部隊が不可欠だ――。国連安全保障理事会は13年、PKOの「例外」として介入旅団の設置を決めた。任務は「武装勢力の無害化」「攻撃作戦」と明記された。住民や国連への攻撃を待つ必要はない。

このPKO「コンゴ民主共和国安定化ミッション(MONUSCO)」のトップ、マーティン・コブラー事務総長特別代表は「無害化とは、最終的に武装勢力(の脅威)を消すということだ。投降に応じなければ、攻撃を加える。これが基本方針だ」と言い切った。

拡大するPKOは、新たな課題にも直面している。その一つが、テロ組織などとの「非対称戦」にどう対処するかだ。

「PKOは非対称戦に向いているか? 私はノーと答える」
6月の国連安保理。西アフリカ・マリに展開するPKOのマイケル・ロレスゴールド軍事司令官が訴えた。

ロレスゴールド氏が今春赴任したマリでは、アルカイダ系武装勢力が、PKO隊員を狙った仕掛け爆弾(IED)や自爆攻撃を繰り返す。世界で最も危険な任地になっている。

ロレスゴールド氏の訴えは、対テロの前線に部隊を出しておいて、十分な訓練も施さない安保理への不満とも受け止められた。

PKOに詳しいジョージ・ワシントン大のポール・ウィリアムズ准教授は「マリやコンゴの部隊は、維持する平和があると想定できない地域に出ている。コンゴの介入旅団は殺傷的な武力行使を認められており、平和『維持』ではなく、住民を標的にする武装勢力に対する平和『強制』の任務になっている」と話す。【10月24日 朝日】
******************

アメリカの思惑 中国の影響力拡大 日本の対応
こうしたPKOの変容を、アメリカが「国際的な負担分散」として推進しているという実態もあります。

****負担分散」米は強化主張****
・・・・そんな中、さらにPKOを強化するよう呼び掛けるのが米国だ。米国は、自国の直接の脅威でない問題には多国間の「集団的行動」で対応する方針で、PKOを「国際的な負担分散」と位置づける。

9月にオバマ大統領も出席し、ハイレベル会合を国連本部で開催。約50カ国が貢献策を表明し、約4万人の新たな要員派遣が可能になった。

一方、対テロの現場への深入りを懸念する声も根強い。ノーベル平和賞受賞者ラモス・ホルタ氏(東ティモール元大統領)ら専門家が出した国連報告書は「対テロ軍事作戦」は当事国や地域連合軍の役割だとして、PKOに負わせるべきではないと主張した。

PKOに詳しい米ニューヨーク大のリチャード・ゴーワン教授は「安保理の常任理事国、特に米英仏には、より強力な部隊をPKOに求める衝動がある。国連報告書は、PKOを武力行使の方向にプッシュしすぎないで欲しいとの警告だ」と指摘している。【同上】
******************

日本は現在、南スーダンのPKOに自衛隊が参加していますが、日本もPKOの変容に対応して、派遣している陸上自衛隊の武器使用基準を緩和し、来年5月の部隊交代に合わせて任務に「駆けつけ警護」を追加する方針です。

ただ、武装勢力から住民を守るため、強力なパトロールで住民に安心を与えると同時に武装勢力を威圧し、必要に応じて武装勢力と交戦する、平和強制のための「介入旅団」への参加は想定していないとのことです。

****自衛隊の参加「想定しない****
9月に成立した安全保障関連法の国会審議で、政府は自衛隊派遣の対象が拡大されても、紛争当事者間の停戦合意成立などの「PKO参加5原則」は変えないと説明した。政府関係者は「5原則があるので、介入旅団への参加は想定していない」と話す。

一方で、安保法により、離れた場所で襲われた他国軍や民間人を助けに向かう「駆けつけ警護」が可能になった。
また、自衛隊員が武器を持って巡回や検問などの地元住民を守る活動に参加できるようになる。

こうした任務を行うため、武器の使用基準も緩和された。例えば駆けつけ警護に向かう途中、妨害する武装勢力を排除するために武器が使えるようになる。【同上】
*****************

現在、PKOへの派遣人員の多い国はインド、バングラディシュ、パキスタン、エチオピア、ルワンダなどで、経済面で遅れている国が「費用獲得」を主たる目的にPKOに参加する場合があるとも言われています。

そうしたPKO参加部隊の起こす犯罪行為も問題となっています。

一方、中国・習近平国家主席は9月29日の国連総会演説で、PKOに対応するための8000人規模の待機部隊を設立することを明らかにしています。
今後、この分野でも存在感を強める方針のようです。

PKO予算でも中国は日本を抜き、発言権を強めそうです。

****中国のPKO予算2位に=16〜18年、日本3位に低下―国連試算****
2016〜18年の国連平和維持活動(PKO)予算の分担率試算が21日までにまとまり、日本が米国に次ぐ2位から3位に低下する一方、中国が6位から2位に浮上したことが分かった。(後略)【10月22日 時事】
**********************

15日に行われた安全保障理事会の非常任理事国5カ国の入れ替え選挙で、日本は当選回数は国連史上最多の11回となる非常任理事国に選出されています。

日本は安保理の枠組みを改正して常任理事国となることを、ドイツ・インド・ブラジルとともに働きかけていますが、自国の利益を損なう可能性のある国々(韓国や中国など)の反対が強く、実現は難しそうです。

常任理事国を希望という話になると、これまで以上のPKOなどへの関与を求められることも考えられますが、そのあたりを政府はどのように考えているのでしょうか?

個人的には、PKOに参加する以上は住民保護のための武力行使を求められるような場面もやむを得ないと考えています。ただ、そうした武力行使が不必要に拡大しないためにも制度的制約はあった方がいいとも考えています。
コメント

イギリスの中国傾斜を揶揄・批判する声は多いが・・・・

2015-10-23 22:48:49 | 欧州情勢

(エチオピア・アディスアベバで9月20日、中国資本によってサブサハラ(サハラ砂漠以南の地域)では初の例となる、近代的な路面電車(トラム)が開業しました。【9月28日 AFP】)

英国内外にあふれる「中国傾斜」批判
「大英帝国」時代の1793年、イギリスの外交官ジョージ・マカートニーは通商条約締結を求め清朝の乾隆帝に謁見しましたが、朝貢使節が皇帝に対して行う中国式の儀礼である三跪九叩頭の礼(三回跪き、九回頭を地に擦りつける)をするよう要求されました。

マカートニーはこれを拒み、最終的には清側が譲歩する形でイギリス流に膝を屈して乾隆帝の手に接吻することで落ち着きました。しかし貿易改善交渉、条約締結は拒絶され、帰国することに。【ウィキぺディアより】

時代は下って21世紀

*****21世紀の朝貢外交とダライ・ラマ効果****
・・・・2012年5月にキャメロン首相がダライ・ラマ14世と会見したことに中国は猛反発、一気に関係を冷却化させた。独仏が中国との関係を深め、次々と恩賜を戴くなか、英国だけがそでにされるという状況が続いた。

「ダライ・ラマ効果」という言葉がある。2010年にドイツ人研究者が発表した論文「Paying a Visit: The Dalai Lama Effect on International Trade」で使われた言葉だ。ダライ・ラマ14世と首脳が会見した国は、その後、対中輸出が2年間にわたり平均8.1%減少することを論証した研究である。【10月22日 高口康太氏 Newsweek】
*****************

その後、キャメロン政権は人権問題に関する批判を封じて実利外交に転換。
経済成長促進のため、中国との関係強化を最優先に掲げ、ことし3月には、アメリカの反対を押し切って中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を日米欧先進7カ国(G7)の中で最初に表明しました。

中国企業による原発投資についても、安全保障面から議会内に慎重論がある中で、オズボーン財務相が主導して押し切っています。【10月21日 毎日より】

そして今月19日、キャメロン首相は習近平国家主席を異例とも言われる厚遇でイギリスに迎え、習主席は「(両国が)黄金時代を迎えた」とも。

****英中、経済強化で合意 習主席「黄金時代迎えた****
・・・・「我々が直面する課題に一緒に取り組んでいくことに合意できた」
キャメロン首相は21日の首脳会談後の共同記者会見で、習主席に視線を送りながらそう話した。

経済関係の強化だけでなく、貧困問題など世界規模の課題に取り組む「包括的パートナーシップ」を結んだとし、両国は「新しい時代を迎えた」と総括した。

これを受ける形で習氏は「(両国が)黄金時代を迎えた」と宣言した。【10月22日 朝日】
*********************

こうしたイギリス・キャメロン首相の中国への傾斜ぶりに、国内外から多くの批判・嘲りがなされています。

****英メディア、習主席酷評 銭ゲバ外交で女性記者が辛辣質問「モラルはどこに・・・・****
英国を訪問中の中国の習近平国家主席に対し、英国メディアが警戒感を示している。

政府や王室の厚遇ぶりや、総額400億ポンド(約7兆4000億円)の契約締結などを連日トップ級で報じているが、人権問題を抱える共産党独裁国家や、経済最優先で「赤い帝国」にすり寄る自国政府に対して、「カネ、カネ、カネ…」などと批判的な視点で切り込んでいるのだ。「極東の未知なる指導者」への不信感も強そうだ。

キャメロン英首相と習氏は21日、ロンドン中心にある首相官邸で英中首脳会談を行った。会談後の共同記者会見では、BBCの女性記者が中国の人権問題に絡めて、強烈な質問を投げかけた。

女性記者「英国民が、民主的でもなく、透明性が足りず、人権について極めて憂慮すべき態度を取っている国との、通商拡大を歓迎するべき理由を教えてください」

やや顔を引きつらせた両首脳は、「人権を話すには経済関係の発展が重要だ」(キャメロン氏)、「中国は人権の保護を大変重視している。世界中どこをみても、人権問題は常に改善の余地がある」(習氏)と述べるにとどまった。

キャメロン氏率いる保守党政権の最大の政治テーマは、将来の展望が開けない「国内経済の活性化」だ。そこで、目をつけたのが、チャイナマネーといえる。

英国は今年3月、AIIB(アジアインフラ投資銀行)への参加を先進国の中でいち早く表明し、中国の歓心を買っていた。

首脳会談後、キャメロン氏は、中国とエネルギー協力などで総額400億ポンドの契約を締結したと語った。英南部サマセット州で2025年に完成予定の原発に、中国企業が60億ポンド(約1兆1000億円)を出資し、事業の33・5%の株式を取得することで合意したという。ロイター通信などが報じた。

このほか、経済協力のメニューには、新高速鉄道建設への中国企業の参入など、安全性や性能に疑問のあるものが並ぶ。チャイナマネーのためなら、背に腹は変えられないということか。

ただ、英国メディアは先月以降、チベットやウイグルでの人権弾圧が指摘される中国や、経済最優先で、同盟国・米国ですら懸念を示す自国政府の「中国傾斜」について、批判を隠していない。

有力経済紙、フィナンシャル・タイムズは「米国の最も信頼できる同盟国が、中国の特別な友人になれるのか?」「政府は、人権などの他の問題で中国に従う立場を取らなければならないと決めている」などと報じた。ガーディアン紙も、中国経済に依存するリスクについて言及した。

エコノミスト誌は「英国は無自覚なまま中国との距離を急速に縮めている」と警戒感を示し、保守系週刊誌のザ・スペクテーターは「カネ、カネ、カネだ。それがすべてだ。モラルはどこに行ったのか」と嘆いた。

BBCは、中国による鉄鋼のダンピング攻勢の影響で大量の失業者が出ていることをリポート。労働者が政府を批判するコメントも流した。BBCはさらに、文化大革命時代の毛沢東主席の映像を流し、習氏が毛氏に匹敵する権力の持ち主と紹介した。(中略)

評論家の宮崎正弘氏は「経済的に厳しい中国と英国が、本音を隠して接近している」といい、続ける。
「習氏とすれば、窮地にある中国経済を活性化させるため、人民元建て国債を発行してくれる英国にすがっている。アヘン戦争でやられた恨み節も話していない。英国としては、国債発行で莫大な手数料を得られる。金融街シティが潤えばいいのだろう。英国は情報機関がしっかりしているので、中国の苦しい現状は把握しているはずだ。中国は『米英同盟分断』も狙っているが、英国はそこは対象外だろう」【10月23日 夕刊フジ】
***********************

BBCの女性記者の人権問題に関する質問については、キャメロン首相は習主席の顔色を窺い心配そうでしたが、習主席の方は、当然に想定された質問ですから、「われわれは現実に即した人権発展の道を見つけた。人権は大切であるが、世界を見渡せば、すべての国で改善が必要な状況にある」とかわしています。

人権問題で批判される国との経済関係強化への批判のほか、通信機器や原子力といった安全保障に強くかかわる分野における中国資本の進出への懸念も指摘されています。

キャメロン首相としては、こうした国内外の批判は想定内のものでしょう。
財政再建を進めるイギリスとしては、老朽化が進む国内インフラ更新の資金に「中国マネー」を期待するのと同時に、今後拡大が見込まれる人民元取引を取り込むことで、国際金融センター・ロンドンの地位強化を図りたい考えであると指摘されています。【10月21日 毎日より】

どんなに批判されようと、嗤われようと、あるいは最大の同盟国アメリカから警告されようが、今のイギリスに必要なのは「中国マネー」であるとの判断のうえでの中国接近でしょうから、それはそれで尊重すべき宰相の決断です。

確実に強まっている中国の影響力
中国との関係強化を求めている(それを“なびく”と表現するかは別にして)はイギリスだけではありません。

****独首相、29日に訪中****
中国外務省は23日、ドイツのメルケル首相が29、30の両日に中国を公式訪問すると発表した。習近平国家主席や李克強首相らと会談し、経済協力強化などを話し合う。【10月23日 時事】
*****************

中国の経済的・政治的影響力の大きさと、今後それらがますます増大するであろうことを考えれば当然の流れでしょう。

中国の対外進出を示すものとして、アジア、ロシア、中南米、アフリカなどで展開されている、あるいは計画されている国際的巨大プロジェクトが多々ありますが、個人的に最近印象に残ったのは、エチオピアでの路面電車の件でした。

****エチオピア首都で路面電車開業、中国の大規模な出資で完成****
エチオピア・アディスアベバで20日、サブサハラ(サハラ砂漠以南の地域)では初の例となる、近代的な路面電車(トラム)が開業した。

アフリカ第2位の人口を抱える同国の首都アディスアベバでは、中国の大規模な投資によって完成にこぎつけたこのインフラプロジェクトを、経済発展における重要な一歩を画するものとして歓迎する声が上がっている。

開通式のリボンカット・セレモニーが行われる前には、すでに数百人もの住民たちが、1日で最大6万人の利用が見込まれる路面電車にいち早く乗車しようと列をつくった。

全2路線の総延長距離が34キロという路面電車は、中国鉄道グループ株式会社(CREC)が建設。総工費4億7500万ドル(約570億円)のうち85%は、中国輸出入銀行が出資した。

第1便に乗り込もうと、2時間も列に並んだというデレジェ・ダバさんは、「とてもわくわくしており、エチオピア人として誇りに思う。私たちは長い間、この時を待ちわびていた。路面電車のおかげで公共交通機関の不足が緩和されるだろう」と話した。

内中心部のカフェで働くダバさんの場合、路面電車が開通したことにより、これまでは1時間かかった通勤時間が、わずか20分にまで短縮されるという。現在のところは2路線中、南北を結ぶ路線のみの開通となっているが、来月には東西を結ぶ路線が開通する予定となっている。

また運賃は、住民たちが利用しやすいよう、30セント(約36円)未満にまで低く抑えられている。【9月28日 AFP】
********************

世界が注目する、資金力に物を言わせた巨大プロジェクトだけでなく、こうした住民生活に密着した分野でも中国の影響力が拡大しているようです。
本来なら、こうしたものこそ日本の支援で実現してほしかった感があります。

インドネシア高速鉄道敗退の反省
中国と日本の“力比べ”が注目された案件としては、インドネシアにおける高速鉄道建設がありますが、周知のように日本は敗退しました。

日本はインドネシアにとって最大の援助供与国ですから、日本側には「当然の日本の計画が採用されてしかるべき・・・」との思いもあったでしょう。

しかし、“2000年代に入ってからは、日本からインドネシアに対する援助の金額が減少しつつあることに加え、インドネシアからの円借款の償還が増えているため、全体としては貸す金額よりも返済される金額の方が多い状況になっている。”“インドネシア政府に対して影響力を及ぼせる有力政治家も、日本にはいまや存在しない”【10月22日 川村晃一氏 フォーサイト】というのが現実です。

*****上から目線」を改めよ****
・・・・いまのインドネシアに「日本ロビー」は存在しない。
しかし、たとえそのような人物がいたとしても、日本の新幹線がインドネシアに採用されたかどうかは分からない。
インドネシアは、スハルトという大統領1人の一存ですべてが決まる独裁体制から、民主体制へと大きく変貌した。

また、インドネシアにとって、日本はもはや最大の友好国ではない。
インドネシアと手を結びたいと考える国は、世界に数多く存在する。インドネシアは、この中から自国にとって最も有利な相手を選べるのである。

日本は、今回の「敗戦」を、「最大の援助供与国」という過去の地位に甘え、いつまでもインドネシアが日本に頼ってくるであろうという「上から目線」の態度をあらためるきっかけとしなければならない。【同上】
**********************

願望ではなく、現実を直視した戦略を
中国経済の“崩壊”を予想する指摘は多々あります。
共産党一党支配の将来的危うさを指摘する声も多々あります。

ただ、そうしたものは昔から多々ありましたが、今日の状況に至っています。
経済について言えば、どこの国であれ、何らかの“重大な調整局面”が訪れるのは当然のことですが、それが“崩壊”と言えるかどうか・・・・?

日本でこの種の議論が今も昔も氾濫しているのは、多分にそうなって欲しいという“願望”の変形でしょう。

もちろん中国の国内統治には是正すべき問題が多々あります。
外交においても、眉をひそめたくなるも多々あります。
日本との関係で、苛立ちを感じるものも多々あります。

しかし、いつの日か厄介な中国が消えてなくなる日が来てほしいという“願望”と、かつてアジア世界においては日本が唯一の先進工業国であったという過去の栄光にすがってみても仕方がありません。

また、“力勝負”を挑むだけでは、状況は益々不利になります。
頼りにするアメリカの支援も・・・・どうでしょうか。

****10年後の中国、影響力増=米はアジア介入に消極的―日米中韓世論調査****
日米中韓4カ国でこのほど実施された世論調査で、今後10年間にわたってアジアにおける中国の影響力が増大するとの回答が、いずれも半数を上回った。一方、米国の10年後の影響力は「現状維持」とみる回答が各国で最も多かった。日本の民間団体「言論NPO」が20日、調査結果を発表した。

10年後の中国が影響力を増すとみるのは、日本では60%、米国で52%と半数を越えた。中韓では8割以上だった。

オバマ米政権は、アジア太平洋に安保戦略の重心を移すリバランス(再均衡)政策を打ち出している。ただ、米国の影響力が増大するとの回答は日中韓で3割に満たず、米国でも31%にとどまった。

アジア地域での米軍駐留に関しては、「現状維持」を求める答えが日米韓で半数を超えた。

他方、米国民の間では、米軍の東アジアでの紛争介入に消極姿勢が広がっている。尖閣諸島をめぐる日中の軍事衝突への介入に64%が反対。北朝鮮による日本や韓国への侵略では賛否が4割台で拮抗(きっこう)した。【10月20日 時事】 
********************

もちろん、日本と中国の間には、英中関係などとは比較にならないいろんな事情がありますので、同じような対応になるものでもありません。ましてや“叩頭”外交を勧めるものでもありません。

ただ、世界で、日本の周囲で現実に起きていること、これから起こるであろうことを直視し、また、日本が避けられない少子高齢化社会という未来を踏まえて、中国や世界への向き合い方を考えていく必要があります。

****英中首脳がパブで乾杯・・・習氏側要望、庶民の味も****
キャメロン英首相は22日夕、中国の 習近平 ( シージンピン )国家主席をロンドン近郊の首相別邸近くにあるパブに案内した。

ノーネクタイ姿の両首脳はビールで乾杯。庶民の味フィッシュ・アンド・チップスをつまんだり、居合わせた客らと談笑したりした。

地元紙の報道によると、習氏側が事前にパブ行きを要望していたという。【10月23日 読売】
*******************

訪米ではローマ法王の影に隠れ、オバマ大統領との対立も解けなかった習主席ですが、イギリスでの居心地は満足しているのではないでしょうか。
コメント (1)

温暖化対策 COP21に向けて噴出する議論 京都議定書に代る新たな枠組み合意は可能か?

2015-10-22 23:48:18 | 環境

(米航空宇宙局(NASA)の科学者チームの発表によれば、今後100~200年間で100センチ以上の海面上昇が起きるのは避けられないとのこと。また、グリーンランドた南極の氷床が急速に崩壊すると、100~200年間で最大3メートルの海面上昇が起こり得る・・・とも 【8月27日 AFP】 氷床は気温上昇でジワジワ解けるのではなく、あるとき巨大な塊が崩落するとのこで、その時海面も一気に上昇するのでしょう。)

米中の削減目標提示で、合意に向けて“弾み”も
***************
地球温暖化対策を巡っては先進国だけに温室効果ガスの削減を義務づけた「京都議定書」に代わり、すべての国が参加する2020年以降の新たな枠組みについて、来月30日からパリで開かれる国連の会議、COP21での合意を目指しています。

この会議を前に190余りの国が実務者レベルで交渉を行う最後の作業部会が日本時間の19日、ドイツのボンで始まりました。【10月20日 NHK】
***************

これまで温暖化に対する自国の対策については、途上国が削減義務を負わないことから京都議定書から離脱したアメリカ、先進国に削減義務を負わせることで自国の経済成長への影響を避けてきた中国、この両国が昨年11月に削減目標を公表、温暖化対策は9月25日の米中首脳会談でも両国が合意できた数少ない成果ともなっています。

レガシーづくり励むアメリカ・オバマ政権は、巨大ハリケーンや今も続く西部の大干ばつなど、度重なる自然災害によって気候変動問題へ真剣に取り組む必要を感じ始めているようにも見えます。
中国は、この問題でイニシアティブを取ることで、国際的な影響力をたかめようという思惑もあるようです。

*****<米中首脳会談>習氏、温暖化対策は前向き****
中国の習近平国家主席は25日、米中首脳会談に合わせ、途上国への資金支援など新たな地球温暖化対策を表明した。

世界最大の温室効果ガス排出国で、対策に後ろ向きだった中国の方針転換をオバマ米大統領は歓迎。
11月末からパリで開かれる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)での新たな温暖化対策の国際枠組み合意に向け、弾みがつきそうだ。

中国は、温暖化対策を進める途上国に対し200億元(約3800億円)の支援を表明した。これまで「温暖化の責任は先進国にある」などを理由に「途上国」として振る舞っていた中国が支援する側に回ることは、温暖化対策の責任をある程度認めたと言える。

COP21では2020年以降に途上国も含めたすべての国が参加する新枠組み合意を目指している。しかし、交渉は難航しており、先進国から途上国への資金支援が合意のカギを握っている。

また、中国はこれまで地方レベルで試験的に実施していた温室効果ガス排出量取引制度を17年に中国全土に拡大する方針を表明した。昨年11月に示した「30年ごろをピークに二酸化炭素(CO2)排出を減少させる」という目標達成に向けた初めての具体策だ。主要産業を対象に排出量の上限を定め、達成できない場合は、別の企業などが削減した分を購入して目標達成する仕組み。

米中は昨年11月にそろって削減目標を表明。米国は、国内の火力発電所から排出されるCO2を大幅に削減する規制案をまとめ、中国にも対策を働きかけてきた。

温暖化対策の新枠組み合意を政権のレガシー(遺産)と位置づけるオバマ大統領と、国際的な影響力を拡大したい習氏の思惑が一致しており、COP21で合意を主導する狙いがあるとの見方もある。

一方、日本は、削減目標の国連への提出が7月にずれ込み、国の地球温暖化対策計画の策定も遅れている。

中国の環境政策に詳しい明日香寿川(あすか・じゅせん)・東北大教授(環境政策学)は「評価できる内容だ。途上国への資金支援は途上国と先進国の対立解消に役立つ。排出量取引導入は日本の先を行っている」と話す。【9月26日 毎日】
********************

各国の目標提出期限とされていた10月1日、世界第3位の排出国ながら、これまで削減目標を国際的に公約してこなかったインドが、温室効果ガスの排出量について、2030年に国内総生産(GDP)当たり05年比で33〜35%削減する目標を国連に提出したことで、各国の目標が出そろいました。

*****主要国の温室効果ガス削減目標*****
 中国 2030年にGDP当たり05年比60〜65%減(遅くとも30年を排出のピークとする)
 米国 25年に05年比26〜28%減
 欧州連合 30年に1990年比40%以上減
 インド 30年にGDP当たり05年比33〜35%減
 ロシア 30年に90年比25〜30%減
 日本 30年に13年比26%減
 韓国 30年に対策を取らなかった場合に比べ37%減
 カナダ 30年に05年比30%減
 ブラジル 30年に05年比43%減
 メキシコ 30年に対策を取らなかった場合に比べ25%減
 インドネシア 30年に対策を取らなかった場合に比べ29%減
 豪州 30年に05年比26〜28%減
 南アフリカ 遅くとも25年を排出のピークとする【10月2日 毎日】
**********************

ぶり返す「先進国」「途上国」の問題
米中の合意で“新たな温暖化対策の国際枠組み合意に向け、弾みがつきそうだ”とのことではありますが、実際ふたを開けてみると、従来からの先進国対途上国の対立もあらわになって、簡単ではなさそうです。

****温暖化対策作業部会 合意草案に反発相次ぐ****
・・・・議長が作成した合意文書の草案について、発展途上国グループの代表の南アフリカが「途上国の利益を損なうもので著しくバランスを欠いている」として修正を求める意見を表明しました。

政府関係者などによりますと、このあとの会合でも途上国からは草案について、自然災害による被害の補償や被害対策などで先進国による資金支援が明確でないことや、排出削減を進めるべき先進国の責任が途上国と明確に区別されていないことなどについて反発が相次いだということです。

これを受けて議長が2日目までに途上国側の意見を盛り込んで、新たに草案を作り直すことになり、合意に向けた交渉は今後も難航が予想されます。(後略)【10月20日 NHK】
*******************

議長が作成した合意文書の当初草案では、「先進国」「途上国」との記述はなく、全ての国が「それぞれ国情にあわせて」対策を進めるとしていました。
これに先進国の責任を問う途上国が反発し、合意案に「先進国」「途上国」の表現が復活しました。

****温暖化責任、問う声再び 対策議論、国連作業部会 「先進」「途上」の二分表現復活****
新たな温暖化対策の国際枠組みを議論する国連の作業部会で、各国の対策に「差」を設ける議論が焦点になっている。

次期枠組みには全ての国が参加し、温室効果ガス削減や経済力が弱い国への支援に取り組むが、いまの温暖化を招いた先進国や、現在の排出量が多い新興国の責任を問う声が高まっている。
議論の行方によっては、日本を含む先進国により多くの負担が求められる可能性もある。
 
「これはバランスを欠く。条約の原則を書き換えるものだ」。19日にドイツ・ボンで始まった作業部会の冒頭、途上国を代表して南アフリカが切り出した。

批判したのは、共同議長がまとめた次期枠組みの骨格となる合意案。「先進国」「途上国」との記述はなく、全ての国が「それぞれ国情にあわせて」対策を進めるとしている。反発を受け、合意案に先進国、途上国の表現が復活した。

京都議定書では「共通だが差異ある責任」という原則に基づき、先進国のみに削減を義務づけ、途上国を支援する枠組みにした。

しかし、いまや世界の排出量の6割を途上国が占める。中国やインドなどの新興国は排出量が急増し、経済力もつけてきた。日本や米国は「差異ある責任」は認めつつも、「旧来型の二分論はのめない」と主張。新興国は削減だけでなく、資金支援でも応分の負担をするよう求める。

途上国も一枚岩ではなくなってきている。温暖化の被害を受けやすい南太平洋の島国は、新興国に対しても削減を求める。

中南米諸国は「途上国も応分の負担を」と、自らも削減や資金支援を打ち出し、合意をまとめようとしている。中国は、独自に約3800億円の支援を表明して途上国の支持を得ようとしている。(後略)【10月22日 朝日】
*****************

南太平洋の島国は、“気候変動による海面上昇などで直接的な影響を受ける途上国の間で焦燥感が高まっている。これらの国々は先進国に加え途上国も積極的な温室効果ガス排出量削減に取り組むべきだと声高に主張。気候変動の原因を作ってきた先進国の責任追及を重視する従来の途上国の立場とは一線を画している。”【10月21日 産経】との立場です。

中南米諸国については、“氷河消失による洪水や水不足などに直面する南米のペルーやチリ、コロンビアなども「全ての国が法的拘束力を受け入れるべきだ」との声をあげる。”【同上】とのこと。

アメリカ、中国、インドに関しては
********************
ただし途上国と位置づけられてきた中国は6月末に国連に提出した文書で「パリでの合意は法的拘束力を持つことになる」としながらも、先進国と途上国の責任に差をつけるよう強調。インドも先進国を追及する姿勢を崩していない。

また米国ではオバマ大統領が気候変動問題に積極的だが、排出量削減は経済活動の足かせになると懸念する共和党主導の議会が障害になることは確実だ。コーカー上院外交委員長は「法的拘束力がある合意は条約とみなされ、上院での批准が必要になる」として、オバマ政権を牽制している。【同上】
********************

東日本大震災後に原発が停止し、今後の原発利用を含めたエネルギー政策に関する国民的合意が明確でない日本は目標作成に苦慮し、従来「05年度比」としてきた基準年を「13年度比」に置き換えることで見かけ上の削減率を上積みする対応も。

ただ、“京都議定書の基準年の90年比にすると、日本の目標は約18%減にとどまり、温暖化の被害を受けやすい島しょ国などから上積みを求める声が出そうだ。”【4月30日 毎日】との指摘もあります。

従来から繰り返されている「先進国」「途上国」の議論について言えば、現在の危機を招いた先進国が大きな責任を負っており、もし全ての国が参加する対策が途上国の成長を妨げるというのであれば、厳しい規制によって先進国の豊かさを犠牲にしてでも、結果的にゆるい規制の途上国に所得・富を移転してでも、地球全体の利益を考える・・・というのが正論でしょう。

もちろん、「自分の収入が減るとき、職が失われるとき、そんなことが言えるのか?」という話にもなりますし、現実問題として先進国の経済が停滞・後退すれば、一番しわ寄せが行くのが途上国でもあります。

ただ個人的には、目先の自分の利益を追求することに終始した議論というのも、つまらない話のように思えます。バランスの問題でしょうが。
欧州の先進国に押し寄せる難民の問題も似たような話でしょう。

【「2度目標」では不十分との指摘も
COP21など現在の温暖化対策は、「地球の温暖化を産業革命前と比べて2度以下に抑える」ということを基本に構築されており、その対策がまとまらず、すったもんだしています。

しかし、そもそも「2度目標」が達成できても安全は保証されない、これまでの予想よりずっと危険な事態が起こる・・・という話もあるようです。

*****温暖化がもたらす想定外の未来*****
・・・そして今、気候変動研究の第一人者であるジェームズ・ハンセンが、「2度目標」に大きな疑問を投げ掛けた。

温室効果ガスの排出量を現在の目標よりも速いペースで削減しなければ、今世紀末までに海面上昇は数メートルに達する恐れがある。そうなれば現在の子供たちが生きている問に、東京、上海、香港、ニューヨーク、ロンドンなどの沿岸都市は人が住めなくなる。政治家やメディアは、2度目標を安全なガードレールのように考えているが、2度の温暖化でも非常に危険だ・・・・。(中略)

ハンセンは88年、米上院の公聴会で地球温暖化の危険性について証言。誰よりも早く気候変動の脅威を「予言」
した人物と考えられており、今回の論文にも大きな注目が集まっている。(後略)【8月25日号 Newsweek日本版】
*****************

ハンセン氏らは、地球上の氷床が解けて、予想よりもずっと早いペースで海面が上昇していると主張しています。
まあ、そうなのかもしれませんし、違うかもしれません。

ただ、今の「2度目標」を前提にした対策もままならないのに、それでもダメだと言われても・・・困ります。
被害が現実のものとならない限り、こうした問題には本腰がはいらないのが現実です。
そして、その時にはすでに手遅れのことも多々あるのでしょう。
私はかまいませんが、若い人たちは大変です。
コメント