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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ケニア  昨年の課税案に対する抗議・混乱から1年 形を変えて続く市民と政府の緊張

2025-06-14 23:13:38 | アフリカ
(ケニア インフルエンサー・オジュワン氏の留置場での死亡を受け、反政府を掲げデモ行進を行う人々【6月13日 CNN】)

【ケニア 1年前に課税提案で混乱 今も、依然として市民と政府の緊張が続く】
1月19日ブログ“アフリカ  政治的権利に目覚めるの若者、デジタル駆使し抗議活動 混乱に終わる危うさも”でも取り上げたように、かつては民主主義においても、経済においても、アフリカの優等生とも言われていた東アフリカのケニアでは昨年6月~7月頃、政府の増税案に抗議する若者らのデモが激化し、“警察が少なくとも60人のデモ参加者を殺害し、さらに66人を拉致した”と混乱しました。

****ケニア 2024年の出来事(自動翻訳)*****
ケニアの人権状況は、この1年間で悪化した。当局は、生活費の高騰をめぐる全国的な抗議行動に対する厳しい弾圧で、平和的な抗議行動の権利を制限した。

当局は、抗議行動の社会経済的原因に対処せず、それどころか、抗議行動を支援したとされる抗議行動のリーダー、活動家、市民社会団体に嫌がらせ、脅迫、逮捕した。

ウィリアム・ルト大統領は、彼の政権に不利な決定を下したとして、裁判所を公に脅迫した。当局が人権侵害に関与した法執行官を捜査したり、訴追したりすることはほとんどない。

心理社会的障害が現実にある、または認識されている男性、女性、子どもは、不十分な支援やメンタルヘルスサービス、偏見の蔓延により、狭い狭い空間に鎖でつながれたり閉じ込められたりし続けています。(中略)

デモ参加者に対する警察の残虐行為
6月18日から、ケニアは、国際通貨基金(IMF)の歳入目標を達成するために2024年財政法案で提案された税金をめぐり、8月まで続いた激しい街頭抗議活動に直面しました。

主に18歳から35歳までのケニア人によって組織された抗議行動は、6月25日の議会侵入でピークに達した。抗議者たちは、多くの非公式労働者が使用するパン、生理用品、モバイルマネートランスファーなどの商品やサービスに対する税金に反対した。抗議の怒りは、政府の浪費や汚職、公共サービスの悪化する無視にまで発展した。

警察は群衆に直接発砲し、抗議者や見物人を殺害した。当局は、抗議行動のリーダーと思われる人々、または議会侵入に関与した推定3,000人の抗議者の一人を追跡し続けている。

これらの人々のうちの何人かは、治安部隊の容疑者によって逮捕または誘拐され、その後強制的に失踪した。6月31日、国が資金提供するケニア国家人権委員会(KNCHR)の暫定報告書は、警察が少なくとも60人のデモ参加者を殺害し、さらに66人を拉致したと述べた。

拷問の痕跡を示す人々の遺体は、川、森林、放棄された採石場、遺体安置所に次々と現れた。当局は、これらの犯罪について、いまだに捜査や訴追を行っていない。

ケニアには、警察の残虐行為の歴史があり、治安部隊による深刻な人権侵害に対する説明責任の欠如がある。集会と結社の自由の権利に関する報告者や、超法規的、即決、恣意的処刑に関する報告者など、国連の特別報告者数人による人権侵害の調査のための訪問要請は、ケニア当局からの承認を何年も待っていた。

ケニアの税制提案における人権問題
2024年と同様に、ケニアも2023年財政法案の税制提案に対する抗議行動を経験しました。ルト大統領は、ケニア国民の90%以上が反対しているという議会報告にもかかわらず、2023年の法案に署名し、同様に強い反対にもかかわらず2024年の法案に署名する予定でした。

この税制法案は、生活費を増加させ、人権を損なう経済対策を開始したIMFプログラムの文脈で出されたものです。政府もIMFも、彼らが追求している政策が人々の経済的、社会的、文化的権利の実現にとって最善であることを確認するための影響評価を公表していません。

ケニアの保健、教育、その他人権に不可欠なサービスへの支出は減少傾向を続けており、IMFのプログラムの下では国際基準をはるかに下回っている。(後略)【Human Rights Watch】
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2025/26年度予算において、政府は新たな増税を実施しない方針を明言しました。

最近の政治状況などについては「ChatGPT」によれば、以下のように「昨年の増税デモとは性質が異なるが、依然として市民と政府の緊張が続いている」状況のようです。

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ケニアでは昨年6~7月に「#RejectFinanceBill2024」デモが激化し、激しい衝突で最終的に政府は増税案の撤回に追い込まれました(少なくとも50~60名の死者)

現在(2025年6月時点)の状況まとめ

1. 財政方針の転換
2025/26年度予算において、政府は新たな増税を実施しない方針を明言しました。 増収策は税率引き上げではなく、税収効率化や脱漏防止に軸足を置く方向です。

2. 抗議・弾圧の新たな火種
2025年6月上旬、ソーシャルメディアで警察幹部を批判したブロガー、アルバート・オジャン(Albert Ojwang)氏が拘留後に死亡。自殺説を警察が主張するも、検視で拷問の跡が明らかになり、全国で抗議が再燃しました。

現在、関連した警察官が逮捕・拘留され、国家警察監視機関が捜査を進めています。 首都ナイロビでは抗議活動が続き、デモ隊と警察の衝突も断続的に発生しています。

3. デジタル・市民活動への規制強化
5月には、財政案へのオンライン反対手段を構築したIT開発者ローズ・ンジェリ(Rose Njeri)氏が逮捕・拘留(後に保釈)。当局は彼女にサイバー法違反を適用し、国民参加ツールを“政府迷惑行為”と断定しました。

この動きは、当局が“Gen Z世代”(1995年〜2012年生まれ)や若者主体の政治活動を封じ込めようとする、戦略的な抑え込みの一環との指摘があります。

4. 政府の対話・情報戦略
昨年の失敗を踏まえ、今年は増税しない予算と合わせて政府がメディア戦略を駆使し、国内向けに「対話路線」「説明責任」を強調しているとの報道もあります。

総まとめ
現在もナイロビなど都市部では「警察の暴行に対する抗議」「言論の自由を巡るデジタルな闘い」が継続中です。

展望と懸念
オジャン氏の裁判や警察の扱いについての透明性が政策信頼の鍵となる
若者世代、特にデジタル世代による草の根運動が今後も政府にプレッシャーをかける可能性
来年の財政法案以降に、新たな抗議の火種が再燃するリスクあり

現状は「昨年の増税デモとは性質が異なるが、依然として市民と政府の緊張が続いている」フェーズといえます。
このまま国内外からの監視が続く中、政府の透明性ある対応が求められています。【ChatGPT】
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【留置場でインフルエンサー死亡】
上記記事で「抗議・弾圧の新たな火種」とされている、警察幹部を批判したブロガー、アルバート・オジャン(Albert Ojwang)氏が拘留後に死亡した件については、以下のようにも。

****ケニア人ブロガーの警察拘留中の死亡への抗議活動に警察は催涙ガス使用(自動翻訳)****
ケニア警察は月曜日、不明な状況下で警察に拘束されていたブロガーの死亡に抗議するデモに参加していた活動家に対し、首都ナイロビの中央警察署へ向かうデモ行進で催涙ガスを2回発射した。

アルバート・オジュワン氏は中央警察署で拘束中に死亡しているのが発見された。警察は死因を「独房の壁に頭をぶつけた」としているが、活動家らは死因に疑問を呈している。

オジュワン氏は金曜日、ケニア西部ホマベイで逮捕され、警察幹部に関する「虚偽の情報」をソーシャルメディアに投稿したとして、400キロ離れたナイロビまで連行された。

このブロガーの死は、2024年の財政法案に抗議するデモ中に数人の活動家や抗議者がケニア警察に殺害され、拉致されてからほぼ1年後に起きた。昨年、提案されていた増税案は撤回されたにもかかわらず、経済的な不満は依然として高い。

「私たちの要求は未だ満たされていません。失業率は昨年の10倍に膨れ上がり、殺人事件も依然として発生しています」と、人民解放党の活動家、ンドゥンギ・ギトゥク氏は述べた。「つまり、私たちの抗議活動では何も解決されなかったのです。私たちの自由は未完成です。この国は富裕層のものであり、今こそ貧困層が立ち上がるべき時です。数日後の(建国記念日に)まさにこれと同じことが起こるでしょう。」

ケニア警察は、独立警察監視局が捜査を開始したと発表した。 オジュワン氏が拘留中に死亡した際に勤務していた警察官も、捜査結果を待つ間は職場に戻らないと、ダグラス・カンジャ警察監察総監は述べた。

しかし、多くの人々は今回の捜査手続きに懐疑的だ。
「ケニア警察はこれまで真実を語ってきませんでした。負傷者は他にもいたことは分かっています。彼らは若手警察官を犠牲にすることを決めたのです。私たちはオジュワン氏をはじめ、命を落とした多くの人々のために正義を求めます」と、人権団体ボーカル・アフリカのフセイン・ハリド氏は述べた。【6月10日 AP】
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結局、警察側が謝罪する形に。 しかし抗議の声はおさまっていない様子。

****留置場でインフルエンサー死亡 警察発表に専門家が異議、市民の抗議デモ続く ケニア(自動翻訳)****
ケニアの首都ナイロビで、教員の男性が警察の留置場で死亡したことに端を発する抗議デモが続いている。12日には抗議デモに集まった市民らを解散させようと、警察が催涙弾を使用した。

死亡したのは教員で活動家だったアルバート・オジュワン氏(31)。抗議デモは9日から始まった。警察はこの前日、オジュワン氏は監房の壁に自分で頭を打ち付けて死亡したと説明していたが、専門家に反論されてその後、この説明を撤回した。

ケニアでは昨年、政府の財政法案が抗議運動を受けて撤回を余儀なくされて以来、政府批判の活動家ら数十人が行方不明になっている。これに対して若者らが反発を強めており、オジュワン氏の死で憤りに火が付いた。

地元紙によると、死亡したオジュワン氏はインターネットやSNSで強い影響力を持つインフルエンサーだった。

警察は当初の発表で、オジュワン氏は「虚偽情報を公表」した疑いで6日に逮捕され、8日に意識を失った状態で発見されたとしていた。

国営放送のKBCによると、警察は警官6人について捜査している。
オジュワン氏の死因については政府の法医学者のバーナード・ミディア氏が11日、警察の説明と異なる見解を発表。検視の結果、頭部の重傷に加えて首の圧迫跡や全身に及ぶ複数箇所の組織の損傷が見つかったことを明らかにした。

記者団に対してミディア氏は、オジュワン氏が暴行を受けて死亡したのは明らかで、「自傷はあり得ない」と断言した。

カンジャ本部長は同日、当初の説明を撤回。国家安全保障委員会で「国家警察を代表して、あの虚偽情報について謝罪する」と述べた。【6月13日 CNN】
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【財政案へのオンライン反対手段を構築したIT開発者】
また、「デジタル・市民活動への規制強化」の事例としての、財政案へのオンライン反対手段を構築したIT開発者ローズ・ンジェリ(Rose Njeri)氏が逮捕・拘留された件については・・・

****ケニアのソフトウェア開発者逮捕への怒りが高まる中、地域での弾圧が拡大(自動翻訳)****
ローズ・ンジェリは、税制改革案への反対を表明するためのツールを作成したとして、サイバー犯罪法違反の罪で起訴された。

ケニアのソフトウェア開発者でデジタル活動家である女性が、先週、法案への反対意見を表明するためのツールを作成したとして逮捕されました。彼女は、彼女の拘留に対する国民の怒りと、東アフリカのケニアとその近隣諸国における弾圧の兆候の高まりを受け、法廷で起訴され、保釈されました。(中略)

検察は起訴状の中で、彼女のツールはユーザーが国会の財務委員会に自動的にメールを送信できるようにし、「システムの正常な機能を妨害していた」と述べています。

ンジェリ氏は5月19日、Xに新しいツールを発表する投稿をしました。「2025年財政法案をワンクリックで拒否できるシンプルなプログラムを作成しました。異議申し立てを送信するには、以下をクリックしてください」と彼女は述べています。彼女は金曜日にナイロビの自宅で逮捕され、警察は彼女の電子機器を押収しました。

彼女の逮捕は国内で激しい怒りを引き起こし、政治家、市民社会のメンバー、そしてケニア国民全体がこれを非難し、彼女の釈放を求めた。(中略)

ンジェリ氏が提案した法案は、政府の歳入増加を目的とした広範な税制改革を提案する財政法案に関連している。専門家は、この法案が税負担を増大させ、ケニア国民の可処分所得を減少させる可能性があると指摘している。

昨年も同様の法案が提出され、前例のない抗議活動が引き起こされ、数十人の抗議者が殺害され、さらに多くの人が行方不明になったり拉致されたりした。デモは時間とともに縮小したが、殺害や失踪は続き、標的はネット上の批評家に移る傾向にあった。

ンジェリ氏の逮捕は、東アフリカ諸国政府による反体制派弾圧の波と指摘される一連の動きと軌を一にするものだ。(後略)【6月3日 The Guardian】
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【多くが失業状態の若者 デジタル駆使し抗議活動】
留置場で死亡したインフルエンサーのオジュワン氏にしても、逮捕されたソフトウェア開発者ローズ・ンジェリ氏にしても、政治的権利に目覚めたアフリカの若者がデジタル駆使し抗議活動を行っていること、政権側がそれを封じ込めようとしていることに関連しています。

****政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジタル駆使し抗議活動****
ケニアの民主活動家ボニフェース・ムワンギさんは過去何年にもわたって数え切れないほどのデモに参加してきたが、昨年6月と7日に行われた反政府デモはあらゆる期待を超える形になった。

ムワンギさんが目にしたのは、力強く覚醒した若者たちがソーシャルメディアを駆使し、増税が盛り込まれた予算法案への抗議を呼びかけるという今までになかった展開だ。

「デモの動員に最も力を発揮したのはZ世代だった。彼らはTikTok(ティックトック)、インスタグラム、X上に存在し、街頭に出現した人々の大多数は若者だった」とトムソン・ロイター財団に語った。

ムワンギさんは「歴史上初めてケニア人が一つの目的、つまり予算法案撤回に向けて団結した。われわれは自分たちが持つ力に目覚め、説明責任や意義ある改革を要求する活動的な市民となりつつある」と胸を張る。

こうした抗議が実を結び、ルト大統領は評判の悪かった法案を取り下げ、閣僚を更迭したほか、無駄な支出の削減を約束せざるを得なくなった。

人口構成が世界で最も若いアフリカでは、根強い汚職や拙い政治運営、生活費高騰、失業率上昇などに不満を抱える若者が主導する政治活動が広がっている。

ケニアやガーナ、ウガンダ、ナイジェリア、モザンビークなどのZ世代やミレニアル世代が昨年相次いで抗議の声を上げ、今年もそうした活動はさらに強まりそうだ。

インターナショナル・クライシス・グループのアフリカ担当プログラムディレクター、ムリティ・ムティガ氏は、若者らの不満の一因として、食料と燃料の価格を押し上げたコロナ禍やロシアとウクライナの戦争による痛手からアフリカ経済がなかなか立ち直れない点を挙げた。

ムティガ氏によると、次第に自らの権利を認識し、インターネットを通じて改革を訴える力を増している若者世代には、社会全体への恨みのような感情も高まってきている。

同氏は「若者は両親世代よりも多くを求め、受け取る情報も増えている。彼らは政治面でより行動的になり、今年はデモが増加する可能性があると思う」と述べた。(後略)【1月19日 ロイター】
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若者等の抗議の背景には“これらの若者の幻滅を、雇用機会の乏しさが助長している。国際労働機関(ILO)の調査では、サブサハラ地域の若者約5300万人の5人に1人余りは仕事や教育、職業訓練に全く縁がない。

24年にアフリカ13カ国の18歳から25歳までの5600人強を対象に実施した調査によると、回答者の4分の3は仕事を見つけるのが難しいと述べ、3分の2は政府の雇用創出に向けた取り組みに満足していないと訴えた。また5人に4人は汚職に懸念を持っているとも明かした。”という苦しい雇用状況があります。

こうした抗議行動が「アラブの春」のような失敗に終わることなく成果を出すためには、統率するリーダーが必要でしょう。
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コンゴ  カタール仲介でM23と停戦合意 M23の後ろ盾であるルワンダにも圧力が

2025-06-07 23:44:19 | アフリカ
(2025年2月6日、コンゴ民主共和国、ゴマのスタッド・ドゥ・リュニテでのM23戦闘員【6月3日 ヒューマンライツウォッチ】)

【反政府勢力M23と政府軍の戦いで、「戦略兵器」としての暴力・性暴力も】
アフリカ・コンゴ民主共和国(DRC)において、ルワンダの支援をうけているとされるツチ系反政府武装組織「3月23日運動(M23)」3との戦闘が激化・拡大していることは、これまでも取り上げてきました。


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2025年6月現在、コンゴ民主共和国(DRC)東部では、反政府武装組織「3月23日運動(M23)」と政府軍との間で激しい戦闘が続いています。

M23はルワンダの支援を受けており、北キブ州の州都ゴマや南キブ州の州都ブカブなど、主要都市を制圧しています。この攻勢により、数千人が死亡し、数十万人が避難を余儀なくされています【ChatGPT】
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そこでは激しい、むき出しの暴力・性暴力が日常的に行使されています。ときに、姓暴力は「兵器」として意図的・戦略的に使用されることも。

****コンゴ東部で幼児含む数千人が性被害、ユニセフ「戦略兵器」と警鐘****
国連児童基金(ユニセフ)は11日、今年1─2月にコンゴ民主共和国(旧ザイール)東部で発生したレイプなどの性的暴力事件約1万件について、被害者の3割以上が幼児を含む子どもだったと報告した。

コンゴの反政府勢力「3月23日運動(M23)」は今年に入り、急速に政府軍への攻勢を強め、東部の一部を制圧。子どもを含む数千人が死亡、数十万人が自宅を追われている。

ユニセフのエルダー報道官はジュネーブでの記者会見にコンゴ最大都市ゴマからビデオで出席し、レイプなどの性暴力は「戦争兵器」として利用されていると指摘。平均30分に一件の割合で発生しており、被害者には幼児も含まれていると述べた。

同氏は性暴力対策に取り組む複数の現地団体が収集したデータベースを引用。被害者の35─45%が18歳未満であることが示されたとし、「これは個別の事件でなく組織的な危機。戦争兵器であり、意図的なテロ戦術だ」と述べた。

また、資金不足から性的暴行被害者の治療に影響が出ていると報告。今週訪問した病院では、レイプ被害者120人が、直後のHIV感染を予防できる医療キットを利用できない状況だったとし「資金不足が生命を脅かしている」と述べた。

エルダー氏はコンゴにおける資金不足の理由を詳述しなかったが、他の地域では最大支援国の米国が対外援助を大幅に削減したことで人道支援プログラムが打撃を受けている。【4月14日 ロイター】
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****ルワンダ支援の反政府勢力、コンゴ民間人を拷問 アムネスティ*****
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは27日に発表した報告書の中で、コンゴ民主共和国(旧ザイール)東部で、ルワンダの支援を受ける反政府勢力「3月23日運動」が民間人を捕らえて殺害・拷問していると非難した。

M23は2021年に活動を再開して以来、ルワンダの支援を受けて、資源豊富なコンゴ東部の広大な地域を掌握している。

M23は電撃的な攻勢で2025年初頭に主要都市ゴマとブカブを制圧した後、支配地域に長期的な統治体制を敷いた。
だが、M23は支配地域の政情不安の収束に苦戦。同地域には政府軍兵士や政府側民兵がM23の目を逃れて潜伏している。

M23はゴマとブカブで定期的に強制捜査を行い、数百人の容疑者を捕らえたと主張している。

アムネスティのアフリカ東・南部地域局長を務めるティゲレ・チャグタ氏は、「M23は、公式にはコンゴ民主共和国東部に秩序をもたらすと主張しているが、その裏には被拘束者に対する恐ろしい扱いが隠されている」と述べた。

アムネスティは、ゴマとブカブにあるM23の収容施設に不法に拘束されていた民間人18人の証言を入手。うち9人はM23戦闘員による拷問を受けたとしている。

報告書によると、M23の戦闘員は証拠を一切示すことなく、拘束した人々をコンゴ政府支持派だと決めつけたという。
報告書はさらに、「数百人が過密で不衛生な監房に、十分な食料、水、衛生設備、医療も与えられずに収容されていた」としている。

証言者のうち8人は、拘束中に他の被収容者が死亡するのを目撃したと述べており、報告書は「拷問や過酷な収容環境が原因と考えられる」と付け加えている。

さらに証言者のうち2人が、M23の民兵が被収容者を殺害するのを目撃したと証言した。殺害にはハンマーや銃が使われたという。

目撃者らによると、M23の戦闘員は「しなやかな木材、板、電気ケーブル、エンジンベルト、銃床、棒切れなどで、被拘束者の背中、脚、臀部、性器を外傷の跡が残るような形で拷問した」とされる。

過酷な環境のために「互いの尿を飲まざるを得なかった」被拘束者もいたとされる。

アムネスティはM23に対し、拘束施設への独立監視員の立ち入りを認めるよう求めた。

チャグタ氏は国際社会に対し、ルワンダにM23への支援を停止させるべく圧力をかけるよう求めた。
これに対しM23の広報担当者ローレンス・カニュカ氏はX(旧ツイッター)で、チャグタ氏の告発は「奇怪で根拠のない」と非難。近日中に、アムネスティの各主張を否定する詳細な報告書を公表する予定だと付け加えた。 【5月28日 AFP】
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【カタール仲介で停戦合意】
そうした状況で国際的仲介による停戦交渉も行われています。

カタールの仲介により、コンゴ政府とM23は2025年4月に停戦に合意しました。両者は敵対行為の即時停止と、ヘイトスピーチの排除を約束しました。しかし、信頼醸成措置や捕虜の解放などを巡る対立が続いており、停戦の履行には課題が残っています。 

****コンゴ民主共和国政府とM23、戦闘停止と停戦に向けた取り組みで合意****
カタールの仲介による「率直な」協議を経て、両陣営は平和的手段による紛争終結を決意したと表明

コンゴ民主共和国と、ルワンダが支援するM23を含む民兵連合は、1月以来コンゴ東部を巻き込んでいる戦闘を終結させるため、停戦に向けて取り組むことで合意した。

水曜日の夜に発表された同様の声明の中で、政府とコンゴ川同盟(アライアンス・フルーヴ・コンゴ)は、それぞれの代表者がカタールの仲介による協議を行い、平和的手段による紛争終結を決意したと述べた。

「率直かつ建設的な協議を経て、コンゴ民主共和国とAFC/M23の代表は、停戦の実効性向上に資する停戦合意の締結に向けて取り組むことで合意した」と声明は述べた。

「双方の合意により、双方は敵対行為の即時停止、あらゆるヘイトスピーチおよび脅迫の断固たる拒否へのコミットメントを再確認し、すべての地域社会に対し、これらのコミットメントを遵守するよう呼びかける。」【4月24日 the Guardian】
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“また、カタールはコンゴ政府とM23に対して和平案を提示しましたが、両者は提案内容に懸念を示しています。アメリカも和平プロセスに関与しており、鉱物資源への投資を促進するため、夏までの合意を目指しています。”【ChatGPT】

【M23の後ろ盾ルワンダへの圧力・働きかけ】
M23を支援しているルワンダに対しても、和平への働きかけと国際圧力が。

****ルワンダ軍のコンゴ撤退要求=反政府勢力「支援」と非難決議―国連安保理****
アフリカ中部コンゴ(旧ザイール)東部で政府軍と反政府勢力「3月23日運動(M23)」の衝突が激化している問題を受け、国連安保理は(2月)21日、M23による侵攻を非難し、敵対行為の即時停止を求める決議を全会一致で採択した。また、M23を支援しているとして隣国のルワンダ軍を指弾し、同国軍に「コンゴ領土からの無条件の即時撤退」を要求した。
 
決議はまた、コンゴ軍も特定の武装組織を支援していると糾弾した。今年1月にM23が攻勢を強めて以降、安保理がコンゴ情勢を巡って決議を採択するのは初めて。決議案はフランスが起草した。

ルワンダは、自国の安全保障に関する懸念に対応していないとして「持続的な解決策にならない」と反発した。【2月22日 時事】
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****武装勢力支援のルワンダに圧力 コンゴ紛争、平和的解決求め****
ドイツ政府は4日、コンゴ(旧ザイール)東部での反政府武装勢力「3月23日運動(M23)」と政府軍との戦闘を巡り、M23を支援するコンゴの隣国ルワンダに対する新たな開発援助の停止を発表した。カナダ政府も3日、輸出規制などの制裁を公表。平和的解決を求める国際社会の圧力が拡大している。

ルワンダ政府は4日、ドイツ政府に対し「一方的に強制的な手段を講じるべきではない」と抗議。カナダ政府にも「恥ずべきことだ」と反発する声明を出した。

戦闘激化を受けて、英国も既に対ルワンダ援助の一部停止を発表。ドイツ政府は過去に合意した援助についても再検討を表明している。【3月5日 共同】
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****コンゴがルワンダと初交渉 東部紛争で、カタール仲介****
コンゴ(旧ザイール)東部で続く政府軍と反政府勢力「3月23日運動(M23)」の戦闘を巡り、コンゴのチセケディ大統領とM23を支援する隣国ルワンダのカガメ大統領が18日、カタールの首都ドーハで会談した。仲介したカタール政府が発表した。ロイター通信によると、1月の戦闘激化後、両首脳の直接交渉は初めて。

3カ国首脳は共同声明で、平和的解決に向けた協議の継続で合意したと表明した。ただM23を巡り、「テロリスト」とみなすコンゴと、支援するルワンダの隔たりは大きく、戦闘終結につながるかどうかは不透明だ。

鉱物資源が豊富なコンゴ東部では1月以降、M23が政府軍への攻勢を強め、北キブ州の州都ゴマを掌握するなど支配地域を拡大。欧米諸国は即時停戦を求め、ルワンダへの圧力を強めている。【3月19日 共同】
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ちょっと変わったところでは、教育ではコンゴ政府とM23の異例の協力体制も。

****反政府勢力支配下のコンゴ東部で、生徒たちは治安の悪化を乗り越え試験に臨む****
反政府勢力支配下のコンゴ東部では今週、数万人の中学生が国家試験を受けた。これは複雑なロジスティクス上の偉業であり、政府とM23反政府勢力間の稀な協力を必要とした。

ルワンダの支援を受ける反政府勢力は、今年初めの攻撃でコンゴ東部の二大都市を制圧し、今や自らの統治能力を示そうとしている。

一方、アフリカ諸国の首脳は、米国とドーハ(カタール)に加え、30年以上前のルワンダ虐殺に端を発する紛争に終止符を打つ和平合意の仲介に努めている。【6月6日 ロイター】
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M23が示そうとする“統治能力”には犯罪人などへの暴力・処刑も

****コンゴ民主共和国:ルワンダ支援のM23がゴマで民間人を処刑****
2月の大量殺人事件は占領地域の人々への深刻な危険を浮き彫りにする

ルワンダの支援を受けるM23武装勢力は、2025年2月22日から23日にかけて、コンゴ民主共和国東部のゴマで少なくとも21人の民間人を即決処刑したと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表した。

M23は2025年1月27日から北キブ州の州都ゴマを占拠している。目撃者によると、2月22日午後、M23戦闘員数十人を乗せた少なくとも3台のピックアップトラックがゴマのカシカ地区各地に到着した。

彼らは、かつてコンゴ軍の兵舎だったカティンド軍事キャンプの西側で7人を処刑した。さらに、少年を含む11人の遺体がキャンプ近くの建設現場で発見された。2月23日、戦闘員は人々を一斉に拘束し、強制的に徴兵するなどした。また、逃亡を試みた男性3人を殺害した。

「M23によるゴマへの残忍な支配は、コンゴ政府と同盟関係にあるとみなされる人々の間に恐怖の空気を生み出している」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのグレート・レイクス上級調査員、クレマンティーヌ・ド・モンジョワは述べた。「大量虐殺は、ならず者戦闘員によるものではなく、M23指導部があらゆる手段を講じて支配を固めようとする試みであるように思われる。」

戦闘当事者間の戦闘の報告がなく、負傷の状況から判断すると、M23戦闘員は拘束した人々を意図的に処刑した可能性が示唆されており、これは戦争犯罪に該当すると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。(後略)【6月3日 ヒューマンライツウォッチ】
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上記のように、カタール、アメリカ、更にはアフリカ諸国による停戦・和平への牽引もありますが、コンゴ東部の情勢は依然として不安定であり、和平への道のりは険しいものとなっています。国際社会の継続的な関与と、現地の人々の安全と尊厳を守る取り組みが求められています。
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スーダンと南スーダン “連鎖的・融合的な危機”に進行しつつある両国の紛争

2025-05-13 23:42:10 | アフリカ

(爆撃され炎上する南スーダンの病院【5月13日 Newsweek】)

【南スーダン 戦闘が再燃】
南スーダンではキール大統領率いる国軍とマチャル副大統領の勢力の間で戦闘が続いていましたが、2018年にキール氏とマチャル氏が権力分担と停戦で合意し、戦闘状態は落ち着きました。

しかし、今年3月にキール政権が反乱扇動容疑でマチャル氏を逮捕し、この停戦状態は破綻しています。

****南スーダンで人道危機拡大...飢餓770万人、病院も爆撃被害****
<「私たちの病院が爆撃を受けた」。国境なき医師団(MSF)が怒りの声明を出すなか、国連南スーダン人権委員会も、爆撃は「意図的」かつ戦争犯罪に相当する可能性があると非難した>

南スーダンで内戦再燃の懸念が高まっている。5月3日、北東部オールドファンガクの病院が爆撃され、少なくとも7人が死亡、20人が負傷した。

病院が攻撃された理由は不明だが、国連南スーダン人権委員会は爆撃が戦争犯罪に相当する恐れのある「意図的」なものだったと非難した。

南スーダンではキール大統領率いる国軍とマチャル副大統領の勢力の間で緊張が高まっている。2011年、長年の独立闘争を経てスーダンから分離独立した南スーダンでは民族対立が続き、13年に内戦が勃発。

18年にキールとマチャルの権力分担と停戦で合意したが、今年3月にキール政権が反乱扇動容疑でマチャルを逮捕し、破綻した。

南スーダンの紛争は、23年から続くスーダンの内戦と融合する恐れもある。世界食糧計画(WFP)は南スーダンが「重大な転換点」にあると警告。

戦闘で10万人以上が避難を余儀なくされ、人口の半分以上に当たる約770万人が飢餓に直面しているという。【5月13日 Newsweek】
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飢餓に直面する住民、子供たちへの支援も戦闘で困難になっています。

****南スーダンの衝突で6万人の栄養不良の子どもたちへの援助が阻止される****
南スーダンのナイル川沿いの戦闘により、ほぼ1カ月間、同国北東部の栄養不良の子ども6万人以上の人道支援が届かなかったと、2つの国連機関が木曜日に発表した。

国連の世界食糧計画(WFP)と子どものための機関(ユニセフ)は、国内で最も栄養不良の割合が高い上ナイル州への栄養供給が5月末までに尽きると予想していると述べました。

「緊急時に最初に苦しむのは子どもたちです。栄養物資が届かなければ、すでに限界点に達している地域で栄養不良が深刻化する可能性が高いです」と、国連WFP南スーダン事務所代表のメアリー・エレン・マクグロアーティ氏は国連WFPとユニセフの共同声明で述べています。

ナイル川は南スーダンの重要な交通動脈であり、貧しい国には舗装された道路がほとんどなく、特に多くの道路が通行不能になる雨季には困難な地形がたくさんあります。

各機関は、どの戦闘が彼らの救援物資輸送船の航路を混乱させたかを明らかにしていないが、政府軍は3月以来、ナイル川近くの地域で「ホワイト・アーミー」として知られるヌエル系民兵と戦っている。【5月8日 ロイター 自動翻訳】
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こうした南スーダンの状況を整理すると以下のようにも。

****南スーダンの現状****
2025年に入り、南スーダンでは再び深刻な政治的・軍事的危機が発生し、2018年の和平合意が崩壊の瀬戸際に立たされています。以下は、今年の主な動きです。

1. リエク・マチャル副大統領の逮捕と和平合意の崩壊
2025年3月26日、サルバ・キール大統領は、第一副大統領であり野党SPLM-IOの指導者であるリエク・マチャル氏を反乱扇動の疑いで自宅軟禁下に置きました。

この措置に対し、SPLM-IOは2018年の和平合意が事実上破綻したと宣言し、国連やアフリカ連合も内戦再燃の危険性を警告しています 。

2. 軍事衝突の激化と人道危機
マチャル氏の逮捕以降、政府軍と野党系勢力、特にヌエル族の民兵組織「ホワイト・アーミー」との間で衝突が激化しています。

3月にはマラカル周辺での戦闘により180人以上が死亡し、12万5,000人以上が避難を余儀なくされました 。また、ナイル川沿いの戦闘により、6万人以上の栄養失調の子どもたちへの人道支援が妨げられています 。

3. コレラの大流行と医療崩壊
戦闘の影響で医療インフラが崩壊し、過去20年で最悪のコレラ流行が発生しています。5月上旬の時点で、感染者は4万7,000人を超え、少なくとも870人が死亡しています。洪水による水源の汚染や、医療施設への攻撃、国際支援の減少が事態を悪化させています 。

4. 国際社会の対応と地域への影響
ドイツは3月下旬、治安悪化を理由にジュバの大使館を一時閉鎖しました 。また、隣国スーダンの内戦が南スーダンにも波及し、地域全体の不安定化が懸念されています 。

これらの事態により、南スーダンは再び全面的な内戦に突入する危機に直面しています。国連や地域機関は対話の再開と暴力の即時停止を呼びかけていますが、和平プロセスの再構築には国際社会の強力な関与が不可欠です。【ChatGPT】
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【スーダン 政府軍の首都奪還後もダルフールを支配し、ドローン攻撃を強めるRSF】
一方、北隣のスーダンでも、政府軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の間で内戦が続いています。この内戦により、これまでに約28,000人が死亡し、1,300万人以上が国内外で避難を余儀なくされています。

特にダルフール地域では、RSFによる民族浄化や大量虐殺が報告されており、国際刑事裁判所(ICC)も戦争犯罪や人道に対する罪の可能性について調査を進めています。

今年3月には首都を政府軍が奪還し、内戦状態の「転機」とも見られていました。

****スーダン、正規軍が大統領官邸奪還=衝突2年「重大な転機」か****
アフリカ北東部スーダンの正規軍は21日、対立する準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」が占拠していた首都ハルツームの大統領官邸を奪還したと発表した。約2年に及ぶ両組織間の戦闘で「極めて重大な転機」(英BBC放送)になるとみられている。

BBCなどによると、正規軍はハルツーム中心部にある大統領官邸と政府庁舎を管理下に置いた。軍報道官は国営テレビで「わが軍は敵の兵士と装備を完全に破壊し、大量の武器を押収した」と主張。「完全な勝利」まで戦闘を続けると宣言した。【3月21日 時事】 
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しかし、その後も準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」はダルフール地方での支配を強めています。

****準軍事組織が独自政府樹立宣言 スーダン****
スーダンで、国軍と内戦を続けている準軍事組織RSFが15日、独自の政府を樹立したと宣言しました。

スーダンでは、2023年4月から国軍と準軍事組織RSFの戦闘が続いていて、15日、内戦の勃発から2年を迎えました。こうした中、AP通信によりますと、RSFは、内戦勃発から2年の節目に合わせて、国軍に対抗するための独自政府の樹立を宣言しました。

RSFの司令官は、「『平和と団結の政府』の設立だ」とした上で、自身を含む15人による評議会を立ち上げ、スーダンの各地域を統治すると主張しました。

スーダンの内戦をめぐっては、国軍が首都ハルツームの奪還を宣言した一方、RSFが西部のダルフール地方で勢力を拡大していて、RSF側の宣言を受けて、スーダンの分裂と、内戦の長期化への懸念が高まっています。【4月17日 日テレNEWS】
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また、RSFは北東部ポートスーダンでドローンなどによる攻撃を行っています。

****スーダン内戦激化、準軍事組織が政府拠点をドローン攻撃****
目撃者によると、内戦が続くアフリカのスーダンで6日、準軍事組織の即応支援部隊(RSF)が北東部ポートスーダンでドローン(無人機)などによる攻撃を行い、爆発や火災が発生した。

英海事セキュリティー会社アンブリーによると、攻撃ではポートスーダンのコンテナターミナルなどが狙われた。攻撃は4日の開始以来最も激しく、2年来の内戦の激化が浮き彫りになった。

在ポートスーダンの目撃者によると、6日は港と空港の近くにあるスーダンの主要な戦略的燃料備蓄施設から巨大な黒煙が立ち上り、変電所や大統領公邸近くのホテルも攻撃を受けた。

燃料施設の破壊、空港や港湾の損壊により、支援物資の輸送や電力・ガスの供給に支障が生じ、国連が「世界最悪」と呼ぶスーダンの人道危機がさらに深刻化する恐れがある。

スーダンは2023年4月に政府軍とRSFの間で戦闘が勃発して内戦状態となった。ポートスーダンは、内戦の初期にRSFが首都ハルツームの大部分を制圧した後、スーダン政府の拠点となり、これまで比較的平穏さが保たれていた。【5月7日 ロイター】
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【“連鎖的・融合的な危機”に進行しつつあるスーダンと南スーダンの紛争】
継続するスーダンの内戦と再燃した南スーダンの戦闘は、単に“隣国の問題”ではなく、“連鎖的・融合的な危機”に進行しつつあります

****“連鎖的・融合的な危機”に進行しつつあるスーダンと南スーダンの紛争****
スーダンと南スーダンの紛争は地理的・民族的・軍事的な連関性を持っており、戦闘が融合・相互に影響し合う可能性が高まっています。実際に、2025年に入ってからその傾向が顕著になっています。以下に、主な関連性とリスクを解説します。

1. 国境地帯での戦闘拡大と越境の危険性
スーダン西部ダルフールと南スーダン北部の国境地帯(アビエイ、ユニティ州、上ナイル州など)は、両国の武装勢力が移動・活動しやすい地域。

これらの地域では部族・民族が国境を越えて生活しており、紛争が一方に留まらず、越境してもう一方に飛び火するリスクが常にあります。

2. 民族的つながりと軍事的同盟
スーダンと南スーダンには、同一または近縁の民族グループ(たとえばディンカ族、ヌエル族、フール族など)がまたがっており、部族間の連帯・復讐の連鎖が両国に影響を及ぼします。

特に、南スーダンの「ホワイト・アーミー(ヌエル族民兵)」は、スーダンのRSFや反政府勢力と協力関係にある可能性が報告されています。

3. 武器・戦闘員の移動と武装勢力の再編
両国の混乱は、武器や戦闘員の流通を活発化させる要因になります。
スーダン内戦で使われた武器が南スーダンに流出する。逆に、南スーダンで訓練された戦闘員がスーダン側で雇われる。

これは、地域全体の武装化と非国家武装勢力の台頭を加速させ、停戦や治安安定の障害になります。

4. 地域秩序の崩壊と国際社会の懸念
アフリカ連合や国連は、「スーダンと南スーダンの紛争が融合した“広域内戦”に発展する可能性」を警告しています。

特に2025年3月以降、南スーダンでの内戦再燃と、スーダンでのハルツーム奪還後の反撃(ドローン使用)により、相互干渉・共鳴的な不安定化が見られると分析されています。

例:マラカル周辺の戦闘(南スーダン)とスーダンからの影響
南スーダンのマラカルでは、2025年3月から武力衝突が再燃。
この地域はスーダンと南スーダンの戦略的中間地点であり、難民・武装勢力の流入により、局地的な紛争が国境を越える連鎖を引き起こす兆候が出ています。

結論
スーダンと南スーダンの戦争は、今や“隣国の問題”ではなく、“連鎖的・融合的な危機”に進行しつつあります。
軍事的:武装勢力の越境と連携
社会的:民族紛争の波及
人道的:避難民と感染症の広域拡散

このため、国際社会は両国を分けて対応するのではなく、地域的な安全保障枠組みでの包括的な解決策が必要とされています。【ChatGPT】
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スーダン  開戦から2年経過 戦火は止まず深刻化する人道危機 金をめぐるRSFとUAEの関係

2025-04-16 23:04:39 | アフリカ

(【VIETNAM.VN】ドバイの金を扱う店 金・宝石店が並ぶ市場(ゴールド・スーク)には常に最大10トンの金が保管されていると推定されているとか  ドバイの金とスーダンの関係は・・・】

【開戦から2年 深刻化する人道危機】
2023年4月15日に始まったアフリカ・スーダンの内戦・・・・国軍(SAF)と準軍事組織「即応支援部隊」(RSF)の統合問題を背景に、軍が主導する統治評議会議長のトップ、ブルハン国軍最高司令官と、同副議長でRSF司令官のダガロ氏の権力闘争としての武力衝突が2年にわたり続いています。

すでに数万人が死亡し(地元メディアによれば2万8000人以上が死亡)、1200万人以上が家を追われ、世界最大規模の飢餓と避難民危機が生じているいます。

最近の戦況については、国軍側が首都中心部を奪還するなど攻勢に出て、“約2年に及ぶ両組織間の戦闘で「極めて重大な転機」(英BBC放送)になるとみられている”【3月21日 時事】と報じられているものの、RSFはなお西部ダルフールを支配している・・・といった状況を、3月25日ブログ“アフリカ、コンゴとスーダンにおける紛争の現況”で取り上げました。

その後の戦況に関する情報は目にしていません。

****スーダン内戦発生から2年、周辺国介入で泥沼化 「世界最大の人道危機」 国家分裂を懸念****
アフリカ北東部スーダンで国軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の内戦が始まってから、15日で2年となった。周辺国も介入して戦闘が泥沼化し、「世界最大の人道危機」とも評される。沈静化の気配はなく、国家分裂を懸念する向きもある。

2021年にクーデターで実権を掌握した軍とRSFは統合を巡る調整がつかず、23年4月15日に軍事衝突に発展した。国軍はブルハン統治評議会議長、RSFはダガロ司令官がそれぞれ率いており、両者の権力闘争という側面もある。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると1300万人近くが避難民となり、約400万人がエジプトや南スーダン、チャドなど周辺国に逃げた。住民支援のために必要な資金の10%以下しか集まらず、清潔な水が供給できないためにコレラの蔓延(まんえん)が懸念されている。

ドイツの公共放送ドイチェ・ウェレ(電子版)は死者数は最大で推計15万人に上り、性暴力が拡大していると伝えた。スーダンの人道支援資金の半分近くを占めた米国が資金拠出を停止し、深刻な状況に拍車がかかっているとも指摘した。

当初は充実した装備を有する軍が有利だとみられたが、RSFは23年末ごろから西部ダルフール地方や首都ハルツーム近郊で攻勢を強めた。軍は今年3月末にハルツームの「解放」を宣言し、北部や東部の大半を支配しているもようだが、ダルフール周辺はRSFが制圧している。

スーダンは金や石油など地下資源が豊富で、エジプトやトルコ、カタールなどは軍を支援し、アラブ首長国連邦(UAE)はRSFを支援してきたとされる。

スーダン政府は4月10日、オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)で、「RSFによるジェノサイド(集団殺害)はUAEの支援を受けて実行された」と主張し、仮処分に当たる暫定措置命令の発出を求めた。UAEは関与を否定している。【4月15日 産経】
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スーダンに限らず、こうした紛争では女性や子供が最大の犠牲者となりがちです。

****スーダン内戦、子どもに対する重大事犯 2年で1000%増****
国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)は14日、アフリカ北東部スーダンで内戦が始まってからの2年間で、子どもに対する殺害、誘拐、手足の切断などの傷害、学校や病院への攻撃といった重大な権利侵害の件数が、1000%(10倍)増加したと発表した。

ユニセフのキャサリン・ラッセル事務局長は、スーダン国軍と準軍事組織「即応支援部隊」による2年にわたる武力衝突と避難生活により、「スーダン全土の子どもたちの生活は破壊された」と非難。「子どもに対する重大な権利侵害の数は、2年間で1000%増加した」と述べた。

たとえばユニセフがAFPに提供した統計によれば、殺害または負傷した子どもの件数は、2022年に確認された150件から、2023〜24年には推定2776件へと急増している。この数字も過小評価されている可能性が高いという。

学校や病院への攻撃も、2022年の33件から、過去2年間で約181件に増加した。

また、人道支援を必要とする子どもの数は、2023年初頭の780万人から、現在では1500万人以上に倍増している。

ラッセル事務局長は「スーダンは現在、世界で最も深刻な人道危機に直面しているが、国際社会の関心をほとんど集めていない。スーダンの子どもたちを見捨ててはならない」と訴え、「私たちには支援を拡大するための専門性と意志があるが、アクセスと持続的な資金が必要だ」と述べた。 【4月15日 AFP】
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話はそれますが、反政府勢力M23と政府軍の紛争が続くコンゴでも。

****コンゴ東部で幼児含む数千人が性被害、ユニセフ「戦略兵器」と警鐘****
国連児童基金(ユニセフ)は11日、今年1─2月にコンゴ民主共和国(旧ザイール)東部で発生したレイプなどの性的暴力事件約1万件について、被害者の3割以上が幼児を含む子どもだったと報告した。

コンゴの反政府勢力「3月23日運動(M23)」は今年に入り、急速に政府軍への攻勢を強め、東部の一部を制圧。子どもを含む数千人が死亡、数十万人が自宅を追われている。

ユニセフのエルダー報道官はジュネーブでの記者会見にコンゴ最大都市ゴマからビデオで出席し、レイプなどの性暴力は「戦争兵器」として利用されていると指摘。平均30分に一件の割合で発生しており、被害者には幼児も含まれていると述べた。

同氏は性暴力対策に取り組む複数の現地団体が収集したデータベースを引用。被害者の35─45%が18歳未満であることが示されたとし、「これは個別の事件でなく組織的な危機。戦争兵器であり、意図的なテロ戦術だ」と述べた。

また、資金不足から性的暴行被害者の治療に影響が出ていると報告。今週訪問した病院では、レイプ被害者120人が、直後のHIV感染を予防できる医療キットを利用できない状況だったとし「資金不足が生命を脅かしている」と述べた。

エルダー氏はコンゴにおける資金不足の理由を詳述しなかったが、他の地域では最大支援国の米国が対外援助を大幅に削減したことで人道支援プログラムが打撃を受けている。【4月14日 ロイター】
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スーダンにしてもコンゴにしても、アメリカ・トランプ政権の対外支援削減が状況を悪化させています。

【停戦に向け英で開催された外相会合は“外部からの干渉”をめぐり不調に終わる】
話をスーダンに戻すと、イギリスで15日、停戦に向けた協議の促進のために近隣諸国などの外相らによる会合が開かれました・・・が、あまり芳しい結果ではなかったようです。

****スーダン内戦…停戦に向け英で外相会合 アラブ諸国、共同声明への署名拒否****
内戦が続くスーダン情勢をめぐり、イギリスで15日、停戦に向けた協議の促進のために近隣諸国などの外相らによる会合が開かれました。ただ、アラブ諸国は共同声明への署名を拒否し、イギリスメディアは「外交努力が大きく後退した」と悲観的に報じています。

スーダンでは、2023年4月から国軍と準軍事組織RSFの戦闘が続いていて、15日で内戦の勃発から2年を迎えました。

こうした中、イギリス・ロンドンで15日、停戦に向けた協議の促進のために、イギリスやフランスのほかスーダンの近隣諸国などの外相らによる会合が開かれました。会合では停戦に向けた協議のほか、スーダンへの食料などの人道支援を強化することも発表されました。

会合後に出された共同議長声明では「即時かつ恒久的な停戦と紛争の終結を優先すべきだ」「スーダンのいかなる分裂も防ぐ必要性を強調した」と述べた上で、「参加国は平和的解決への努力を積極的に支援し、緊張を高めたり戦闘を長引かせたりするような外部からの干渉などを拒否する」と訴えました。

しかし、イギリスメディアによりますと、エジプトやUAE=アラブ首長国連邦などのアラブ諸国が署名を拒否したため、参加国の全会一致での共同声明の採択には至りませんでした。

イギリスのガーディアン紙は「スーダンや近隣諸国が『UAEがRSFに対して軍事支援している』と非難していたことなどから、UAEとエジプトなどが受け入れられる中立的な表現の落としどころを見つけるのに苦労していた」と指摘した上で、アラブ諸国の署名拒否は「内戦を終結させようとする外交努力が大きく後退したことを意味する」と悲観的に報じています。【4月16日 日テレNEWS】
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【内戦と関係国、特にRSFとUAEの関係】
“エジプトやUAE=アラブ首長国連邦などのアラブ諸国が署名を拒否”・・・・
冒頭【産経】に“スーダンは金や石油など地下資源が豊富で、エジプトやトルコ、カタールなどは軍を支援し、アラブ首長国連邦(UAE)はRSFを支援してきたとされる。”とあるように、エジプトとUAEでは支援する側が異なりますが、その双方が署名を拒否したということのようです。

*****スーダン内戦の両勢力を支援しているとされる外国勢力****
スーダン内戦(2023年以降に激化した国軍(SAF)と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の対立)において、両勢力を支援しているとされる外国勢力については、明確な軍事介入という形ではなく、間接的支援や政治的支援、武器供与の可能性といった形で関与している国があるとされています。以下にそれぞれの勢力に対する支援国の傾向をまとめます:

■ スーダン国軍(SAF:Sudanese Armed Forces)を支援しているとされる国

エジプト
歴史的にスーダン国軍と緊密な関係を持っており、SAFの指導者アブデル・ファッターフ・ブルハン将軍と良好な関係にある。
エジプトはRSFの影響拡大を懸念しており、SAF側に政治的・軍事的支援をしているとみられています。

チャド
RSFとは敵対関係にあるため、SAF寄りと見られる傾向がありますが、公式な軍事支援は不明瞭。

イラン(最近)
一部報道では、2023年後半からSAFがイラン製のドローン(無人航空機)を使用しているという指摘があります。
これはイランがSAFを支援している可能性を示唆しています。

■ 即応支援部隊(RSF:Rapid Support Forces)を支援しているとされる国

アラブ首長国連邦(UAE)
RSFの指導者モハメド・ハムダン・ダガロ(通称ヘメティ)と密接な関係にあるとされており、武器や資金の供与が報じられています。
RSFがUAE経由で資金を得ているという疑惑もあり、人権団体などからも注目を集めています。

ロシア(ワグネルとの関係)
ワグネル・グループ(ロシアの民間軍事会社)が以前からスーダンの金鉱山に関与しており、RSFと経済的なつながりを持っていたとされています。
武器供与や軍事訓練など、直接的な支援というよりは、資源の利権を通じた関係性と見られます。
【chatGPT】
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さらに、UAEと準軍事組織 即応支援部隊(RSF)の関係について訊くと、金(ゴールド)取引が絡んでいるようです。

****UAEと準軍事組織 即応支援部隊(RSF)の関係*****
スーダンの準軍事組織 即応支援部隊(RSF:Rapid Support Forces) と アラブ首長国連邦(UAE) の関係は、公式には否定されているものの、近年の報道や専門家の分析によって、経済的・軍事的に深い結びつきがあるとされています。以下に詳しく解説します。

RSFとUAEの関係の主なポイント
1. 金(ゴールド)取引による資金援助
RSFはスーダン国内の金鉱山、とくにダルフール地域の金鉱を掌握しています。
この金は、密輸ルートを通じてUAEへ輸出されていると多数の報道で指摘されています。

例えば、BBC や Global Witness、Al Jazeera などが報じたところによれば、RSFが採掘した金がドバイの市場に流れており、UAEはこの金の購入によってRSFに実質的な資金援助をしていると見られています。


2. 武器供与・軍事支援の疑惑
2023年の内戦激化以降、RSFが高度な兵器(無人機や重火器)を使用していることが確認されています。
一部の諜報報告では、UAEがチャドやリビア経由でRSFに武器を供給している可能性があるとされています。

アメリカの情報筋や国連専門家パネルの報告によって、UAEからの輸送機がRSF支配地域に着陸していた可能性も指摘されました。


3. ヘメティとUAE王族の関係
RSFの指導者であるモハメド・ハムダン・ダガロ(通称ヘメティ)は、UAEの皇太子ムハンマド・ビン・ザーイド(MBZ)との個人的な関係が深いとされます。

ヘメティは2010年代に、UAEおよびサウジアラビアの要請で、イエメン戦争に兵士を派遣。この時、RSFが実質的な傭兵部隊として機能し、UAEに忠誠を示しました。


4. UAEの戦略的意図
アフリカの角地域(Horn of Africa)で影響力を拡大しようとしているUAEにとって、スーダンは戦略的に重要です(紅海の対岸)。RSFを支援することで、スーダンにおける親UAE勢力の影響を維持・拡大しようとしていると考えられています。

RSFは非国家的アクターであるため、国家間条約に縛られず柔軟に協力できる点も、UAEにとって魅力的です。

国際的な反応
アメリカやEUは、UAEに対してRSFへの支援を止めるように圧力をかけていると報じられています。
しかしUAEはこれまで、RSF支援の事実を公式には否定しています。(後略)【chatGPT】
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ドバイには昔、旅行途中に2回ほど立ち寄ったことがありますが、金(ゴールド)を扱う店がたくさん並んだ一画がありました。金(ゴールド)取引が盛んなようですが、そうしたUAEにRSFが支配するスーダン西部の金鉱山から採掘された金が流れて、RSFの資金源となっているようです。

装備の面で国軍に劣るRSFが国軍に伍して戦闘を継続できるのは、そうした背景があってのことようです。

なお、chatGPTのようなAIとはあまり縁がないのですが、今回質問すると、「良い質問です」なんてお褒めの言葉も。このあたりがAIの賢いというか、あざといところで、人間と話ているような気にさせます。

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アフリカ、コンゴとスーダンにおける紛争の現況

2025-03-25 23:12:55 | アフリカ

(スーダンの国軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の戦闘で荒廃した首都ハルツームをパトロールする国軍派の戦闘員(2025年3月24日撮影【3月25日 AFP】)

【コンゴ 反政府勢力を支援するとされる隣国ルワンダに強まる国際圧力】
コンゴとスーダン、アフリカで続く二つの紛争の現状。

コンゴでは2月16日ブログ“コンゴ  反政府勢力M23の攻勢止まらず 拡大する子供への性暴力・徴兵 鉱物資源をめぐる争い”で取り上げたように、隣国ルワンダに近い東部で、ルワンダが支援しているとされる反政府勢力M23と政府軍の戦いが続いています。コンゴ政府は1月以降、衝突で7000人が死亡したと発表しています。

背景にあるのは、ルワンダの大虐殺(1994年)にも共通するツチ・フツの民族対立。M23はルワンダ・カガメ政権と同じツチ族。

もう一つの要因はコンゴの地下に眠る豊富な資源。そのために周辺国・関係国の介入を招きやすく“資源の呪い”の事例ともなっています。(このあたりの詳細は2月16日ブログ参照)

****コンゴ反政府勢力、東部要衝に進軍 政府はルワンダが支援と非難****
コンゴ民主共和国(旧ザイール)の反政府勢力「3月23日運動(M23)」が(2月)16日、東部・南キブ州の州都ブカブ中心部に進軍したと明らかにした。コンゴ政府はM23を支援する隣国ルワンダが停戦要請を無視しているとして非難した。

M23は1月下旬、北キブ州の州都ゴマを奪取後、商業の中心都市であるブカブを目指していた。ブカブ進軍で同国東部において政府の統制がさらに弱まることになる。

政府も反政府勢力のブカブ進軍を認め、ルワンダ軍も同市に入ったと非難。ただ、市全域がM23の支配下にあるわけではないとしている。

ルワンダは、同国がツチ族主導のM23と共に戦闘に加わっているというコンゴや国連、西側諸国の主張を否定し、コンゴ軍と共闘するフツ族民兵の脅威から自国を防衛していると主張している。

英外務省は声明で「M23とルワンダ軍がブカブに入ったことは、事態の深刻なエスカレーションで、地域紛争が拡大する危険性を高めている」と懸念した。

国連によると、ブカブ進軍に当たって戦闘はほとんど見られなかったという。

コンゴは、電気自動車や携帯電話のバッテリーの主要部品であるコバルトの世界最大の生産国。また、銅生産では世界第3位で、コルタン、リチウム、スズ、タングステン、タンタル、金などの鉱床もある。【2月17日 ロイター】
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上記記事にもあるようにルワンダはM23支援を否定していますが、国際社会のルワンダへの圧力が強まっています。

****ルワンダ軍のコンゴ撤退要求=反政府勢力「支援」と非難決議―国連安保理****
アフリカ中部コンゴ(旧ザイール)東部で政府軍と反政府勢力「3月23日運動(M23)」の衝突が激化している問題を受け、国連安保理は21日、M23による侵攻を非難し、敵対行為の即時停止を求める決議を全会一致で採択した。

また、M23を支援しているとして隣国のルワンダ軍を指弾し、同国軍に「コンゴ領土からの無条件の即時撤退」を要求した。

決議はまた、コンゴ軍も特定の武装組織を支援していると糾弾した。今年1月にM23が攻勢を強めて以降、安保理がコンゴ情勢を巡って決議を採択するのは初めて。決議案はフランスが起草した。

ルワンダは、自国の安全保障に関する懸念に対応していないとして「持続的な解決策にならない」と反発した。【2月22日 時事】 
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ルワンダに対しては、国連・西側諸国にはかつてのルワンダ大虐殺を阻止できず、ジェノサイドを座視したことへの“負い目”があり、これまで強い対応は取られてきませんでしたが、ここにきてその流れも変わってきたようです。

(ルワンダ大虐殺に関しては、これまでの通説(ツチ・フツの対立で起き、国際社会は見殺しにした。そして現ルワンダ大統領のカガメが救世主として大虐殺を止めた)に対する異論・検証も行われているようです)

コンゴはかつてベルギーの植民地でしたが、その形態は他のアフリカ諸国とは少し異なります。

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1885年のベルリン会議でヨーロッパ列強はアフリカ大陸を分割し、それぞれが支配する国を決めました。他の列強諸国が政府主導で植民地支配を進める一方、コンゴはベルギー国王の“私有地”として統治されることになりました。

そのため、ベルギーの法律が適用されず、他のアフリカ諸国よりも恐ろしい人権侵害が繰り広げられたのです。

それは、ベルギー王室からの一方的な行為だけではなく、元々その地域に住む人々の間でも行われるようになりました。統治の手段として、少数派の氏族(クラン)を支配層へと仕立て上げ、銃器を与えることによって他の氏族を支配させたからです。【テラ・ルネッサンス ブログ】
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このあたりの事情がコンゴの現在の混乱の遠因となっているとの指摘があります。
また、ベルギー軍はルワンダ大虐殺当時、国連PKOの主力でした。“見殺し”の責任を問われてきた立場でもあります。

そのベルギーとルワンダの関係がコンゴをめぐって悪化、断交に至っています。

****ルワンダ、ベルギーと断交 コンゴ民主の紛争巡り対立****
ルワンダ外務省は17日、隣国コンゴ民主共和国での紛争を巡り、ベルギーが「ルワンダや周辺地域を不安定化させようとしている」と非難し、断交したと発表した。

ルワンダはコンゴ東部で政府軍と戦闘を続ける反政府勢力「3月23日運動(M23)」を支援しており、即時停戦を求める欧米諸国の圧力に反発している。

ルワンダ外務省は声明で、ベルギーの外交官に対し、直ちに国外退去するよう要求。ベルギーのプレボ外相は遺憾の意を示し、対抗して同様の措置を取ると表明した。

コンゴ東部では1月以降に戦闘が激化し、M23は北キブ州の州都ゴマを制圧するなど支配地域を拡大。欧州連合(EU)が17日、ルワンダ軍やM23の幹部ら計9人を渡航禁止や資産凍結の対象に指定するなど、欧米諸国の間でルワンダへの制裁が広がっている。【3月18日 日経】
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ルワンダの反発にもかかわらず、ルワンダへの批判・制裁は強まっています。

****「優等生」ルワンダに批判 コンゴ武装勢力支援で制裁****
鉱物資源が豊富なコンゴ(旧ザイール)東部での紛争を巡り、反政府武装勢力「3月23日運動(M23)」を支援する隣国ルワンダへの批判が高まっている。

多数派フツ人がツチ人を殺りくした1994年の大虐殺後に「アフリカの奇跡」と言われる発展を遂げ「優等生」と称された。だが、M23を通じて鉱物資源の確保を狙っているとみられ、欧米諸国は態度を一変、制裁を科す動きが広がる。

ルワンダ軍の支援を受けるM23は1月以降、攻勢を強めて北キブ州の州都ゴマなどを掌握。州知事を一方的に任命して支配体制の確立を進めている。住民50万人以上が避難し、人道危機が続く。

「M23への支援を担っている」。米財務省は2月、ルワンダのカガメ大統領の側近を制裁対象に指定し、米国内の資産を凍結した。

M23を支援する背景として、コンゴに住みカガメ氏と同じ民族のツチ人を保護する名目のほか、ロシアのウクライナ侵攻など力による現状変更が横行する国際情勢に影響されたとの指摘もある。【3月25日 共同】
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【「交渉」が始まる動きも】
戦闘の方は、ようやく「交渉」が報じられるようになっています。

****コンゴ、反政府勢力と直接和平交渉か 隣国アンゴラが18日から開始と声明を発表****
アフリカ中部コンゴ(旧ザイール)で政府と反政府勢力「3月23日運動(M23)」の衝突が続いている問題で、隣国アンゴラは12日、コンゴ政府とM23が和平に向けた直接交渉を18日からアンゴラで始めると声明を発表した。

ロイター通信によると、政府報道官は実際に交渉に参加するか明言を避けた。

コンゴでは今年に入り、M23が鉱物資源の採掘拠点である東部の複数都市を制圧して衝突が激化。コンゴ政府は1月以降、衝突で7000人が死亡したと主張している。米国などはコンゴ東部と国境を接するルワンダがM23を支援しているとして非難している。【3月13日 産経】
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****コンゴがルワンダと初交渉 東部紛争で、カタール仲介****
コンゴ(旧ザイール)東部で続く政府軍と反政府勢力「3月23日運動(M23)」の戦闘を巡り、コンゴのチセケディ大統領とM23を支援する隣国ルワンダのカガメ大統領が18日、カタールの首都ドーハで会談した。仲介したカタール政府が発表した。ロイター通信によると、1月の戦闘激化後、両首脳の直接交渉は初めて。

3カ国首脳は共同声明で、平和的解決に向けた協議の継続で合意したと表明した。ただM23を巡り、「テロリスト」とみなすコンゴと、支援するルワンダの隔たりは大きく、戦闘終結につながるかどうかは不透明だ。

鉱物資源が豊富なコンゴ東部では1月以降、M23が政府軍への攻勢を強め、北キブ州の州都ゴマを掌握するなど支配地域を拡大。欧米諸国は即時停戦を求め、ルワンダへの圧力を強めている。【3月19日 共同】
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今のところ、交渉の成果に関する報道はまだ目にしていません。

【スーダン 首都中心部を国軍が奪還も、西部ダルフールを支配するRSF 増加する民間人犠牲】
スーダンでは国軍(SAF)と準軍事組織「即応支援部隊」(RSF)の統合問題を背景に、軍が主導する統治評議会議長のトップ、ブルハン国軍最高司令官と、同副議長でRSF司令官のダガロ氏の権力闘争としての武力衝突がおきています。

2023年4月15日に始まったこの内戦ではすでに数万人が死亡し(地元メディアによれば2万8000人以上が死亡)、1200万人以上が家を追われ、世界最大規模の飢餓と避難民危機が生じているいます。

バイデン前米政権は23年12月、スーダン国軍とRSFの双方が戦争犯罪をしたと判断。今年1月には、RSFが特定の民族を対象に大量虐殺(ジェノサイド)をしたと認定しています。

更にやはり1月には、スーダンの国軍トップ、ブルハン将軍に制裁を科したと発表しています。国軍が学校や病院を攻撃するなど市民に危害を加えたのが理由

戦闘の方は激しく続いており、犠牲者は増加の一途。

*****スーダン南部で200人以上殺害 準軍事組織が攻撃と人権団体****
国軍と準軍事組織、即応支援部隊(RSF)の内戦が続くアフリカ・スーダンの人権団体は18日、RSFが同国南部白ナイル州の複数の村を攻撃し、3日間で女性や子どもを含む200人以上を殺害したと表明。誘拐や逃げようとした住民への銃撃もあったとし、戦争犯罪だと非難した。

23年4月に始まった内戦は首都ハルツーム近郊や西部ダルフール地方を中心に戦闘が続き、終結の兆しは見えていない。死者は少なくとも数万人に上るとみられている。(後略)【2月18日 共同】
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戦況について、今年に入って国軍が優勢になっているとの報道を目にしています。

****スーダン軍、中部の州都に進攻 準軍事組織から奪還か****
準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」との戦闘を続けるアフリカ北東部スーダンの国軍は11日、RSFの勢力下にあった中部ジャジーラ州の州都ワドマダニに進攻したと発表した。

RSFは11日、ワドマダニを失ったと表明した。RSFはワドマダニを取り戻す考えを示しており、戦闘激化につながる可能性もある。

国軍とRSFの戦闘は2023年4月に開始。ロイター通信によると、RSFは同年12月に要衝のワドマダニを掌握した。(後略)【1月12日 共同】
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そして首都ハルツームでも、RSFに奪われていた大統領官邸を国軍が奪還したようです。

****スーダン、正規軍が大統領官邸奪還=衝突2年「重大な転機」か****
アフリカ北東部スーダンの正規軍は21日、対立する準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」が占拠していた首都ハルツームの大統領官邸を奪還したと発表した。約2年に及ぶ両組織間の戦闘で「極めて重大な転機」(英BBC放送)になるとみられている。

BBCなどによると、正規軍はハルツーム中心部にある大統領官邸と政府庁舎を管理下に置いた。軍報道官は国営テレビで「わが軍は敵の兵士と装備を完全に破壊し、大量の武器を押収した」と主張。「完全な勝利」まで戦闘を続けると宣言した。【3月21日 時事】
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“一方、RSFはスーダン西部での支配を強化している。並行政府の樹立を目指しているが、国際的な承認を得られる可能性は低い。”【3月21日 ロイター】とも。

RSFの前身は、かつて西部ダルフール地方で30万人が死亡し、「世界最悪の人道危機」とも呼ばれた虐殺を主導した民兵組織です。

もっとも、民間人犠牲を顧みない攻撃は国軍・RSFに共通したことです。
ダルフールのほぼ全域を支配するRSFに対し、国軍は市場への空爆も。

****スーダン軍、ダルフールの市場を攻撃 死者数百人 監視団体****
スーダンの内戦監視団体は25日、国軍が西部ダルフール地方の市場を空爆し、数百人を殺害したと非難した。
スーダンでは2023年4月からほぼ2年にわたり、国軍と準軍事組織「即応支援部隊」が戦闘を続けている。

両陣営の残虐行為を記録してきた有志の法律家団体「エマージェンシー・ロイヤーズ」は、スーダン軍の戦闘機がダルフール北部のトラ市場を「無差別に空爆し、民間人数百人を殺害、数十人に重傷を負わせた」と発表した。空爆が行われた日時については言及していない。

ダルフールでは通信遮断が発生しているため、AFPでは独自に死傷者数を確認できていない。また、軍はこれまでのところ取材に応じていない。

ダルフールのほぼ全域を支配するRSFは、軍が「虐殺」を行ったと非難した。(後略)【3月25日 AFP】
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現段階では内戦終結の兆しは見えていません。
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コンゴ  反政府勢力M23の攻勢止まらず 拡大する子供への性暴力・徴兵 鉱物資源をめぐる争い

2025-02-16 23:10:37 | アフリカ

(武力衝突によって、北キブ州のカニャルチニャからゴマへ、6人の子どもを連れて避難してきた母親のマシカさん。「この戦いが終わり、私たち家族が故郷の村へ戻れるように、助けてほしい」と言う(コンゴ民主共和国、2025年2月4日撮影)【2月13日 ユニセフ】)

【ツチ系反政府勢力M23 東部主要都市ゴマを制圧して南下、ブカブ空港も制圧】
アフリカ中部コンゴ(旧ザイール)で政府軍と隣国ルワンダの支援もうけているとされるツチ系反政府勢力「3月23日運動(M23)」の衝突が激化していることは、1月29日ブログ“コンゴ ルワンダ支援の反政府勢力M23の攻勢 注目される米トランプ政権の対応”で取り上げました。

コンゴで内戦が続く背景、豊富な資源の存在がそうした混乱を助長していることなどについては、上記ブログをご覧ください。

前回は、M23が東部の主要都市ゴマに侵攻・制圧したようだ・・・というあたりまででしたが、その後も、世界がトランプだ、ウクライナだ、パレスチナだと大騒ぎしている間にもM23の進撃は続いています。

****コンゴ武装勢力、南へ進軍 大統領は失地回復作戦の意向****
ルワンダが支援するコンゴ民主共和国(旧ザイール)の反政府勢力「M23」は東部最大の都市ゴマを掌握した後、29日には南キブ州の州都ブカブを目指して進軍した。コンゴのチセケディ大統領は同日夜、失地回復作戦を計画していると述べた。

チセケディ氏は国民に向け、外交的解決が望ましいとしながらも、軍事的な反撃に出る意向を示した。

東アフリカ共同体(EAC)は緊急首脳会議を開き、コンゴ東部での即時停戦を呼びかけるとともに、コンゴに対してM23と交渉するよう求めた。チケセディ氏は会議に出席せず、ルワンダのカガメ大統領は出席した。

ゴマでは29日、反政府勢力が掌握を強め、ルワンダとの国境をパトロールしていた。

ゴマ郊外のいくつかの地区では銃声が聞こえ、27日の戦闘による遺体が路上に放置され、病院はパンク状態となり、国連平和維持軍は基地に避難していた。【1月30日 ロイター】
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“国連平和維持軍は基地に避難”・・・・このあたりが国連平和維持活動の限界であり、国連は自分たちを守ってくれないと住民からも信頼されない所以でもあります。

“国連は国の安定化を図るため、長年、PKO部隊を東部地域に派遣していたが、大きな成果を挙げられず、2023年12月に撤退開始。今年12月までに撤退完了する予定だ。”【1月31日 テレ朝news】

かねてより同じツチ系のM23を支援していると見られているルワンダ軍も国境を越えたとも。

****ルワンダ軍、コンゴ越境か 東部州都へ、紛争拡大恐れ****
国連のドゥジャリク事務総長報道官は30日、コンゴ(旧ザイール)の反政府勢力「3月23日運動(M23)」を支援している疑いがある隣国ルワンダの軍部隊が、コンゴ東部南キブ州の州都ブカブを目指して越境したとの報告があると明らかにした。

M23とルワンダ軍はコンゴ東部北キブ州の州都ゴマに既に進出しているとされ、コンゴで長年続く紛争が拡大する恐れが出ている。

ドゥジャリク氏はニューヨークでの記者会見で、ゴマで散発的な戦闘が続く一方、M23もブカブに向けて南進していると説明。情勢が極めて不安定になっており、水や食料の不足から人道危機が悪化する可能性があると指摘した。【1月31日 共同】
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M23は2月4日から人道上の理由で一方的に停戦すると発表。

****コンゴ民主共和国 反政府勢力が停戦を宣言****
コンゴ民主共和国の反政府勢力「M23」は3日、SNSを更新し「人道的な理由で4日から停戦を宣言する」と一方的に声明を出しました。 停戦の期限や政府側の同意が得られているかどうか言及しておらず、実現するかは不透明です。

「M23」は東部にあるブカブを目指して進軍しているとされていますが、声明では「ブカブを占領するつもりはない」としています。(後略)【2月4日 ABEMA Times】
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しかし、どういう経緯かはわかりませんが停戦は機能せず、戦闘は継続、被害・犠牲者は拡大、M23は依然として南キブ州の州都ブカブを目指して南下しています。

****コンゴ民主共和国での衝突続く 犠牲者3000人近く 国連人権理事会が実態調査へ****
アフリカ中部のコンゴ民主共和国で、政府軍と反政府武装勢力との衝突が続くなか、国連人権理事会は3000人近くが死亡し、性暴力も増加しているとして、実態調査を行うと発表しました。

コンゴ民主共和国では、政府軍と隣国ルワンダの支援を受けているとされる反政府武装勢力「M23」との衝突が激化しています。

国連人権理事会は7日、緊急会合を開き、先月末以降、3000人近くが死亡し、性暴力が増加するなど最悪の事態が続く可能性があるとして、実態調査を行うと発表しました。

ターク国連人権高等弁務官は「もし何もしなければ、衝突が国境を越えて拡大するおそれがある」として、「悲劇的な状況を終わらせるために、影響力を持つ全ての人々がすぐに行動しなければならない」と警告しました。【2月8日 TBS NEWS DIG】
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M23はブカブ後略を開始したようです。

****コンゴ反政府勢力、東部の空港占拠=州都ブカブへ進軍か****
アフリカ中部のコンゴ(旧ザイール)東部で政府軍と衝突している反政府勢力「3月23日運動(M23)」は14日、南キブ州の州都ブカブ近郊の空港を占拠した。治安当局筋などがAFP通信に明らかにした。

M23は先に東部の主要都市ゴマを制圧。その後「人道的理由」から一方的に停戦を宣言したが、実際には進軍を続けているもようだ。占拠された空港は、ブカブ制圧に向けた最後の軍事上の障壁とされていた。【2月15日 時事】 
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“占拠された空港は、ブカブ制圧に向けた最後の軍事上の障壁とされていた”とのことですが、実際にはM23は大きな抵抗にあうことなく空港を制圧、政府軍は撤退したとの情報も報じられています。

西ヨーロッパ全体にも匹敵する広大な面積のコンゴの首都キンシャサは国土の西端にあり、政府軍にはアマゾンに次ぐ広さのコンゴ川流域熱帯雨林をはさんで遠く離れた東部地域を死守する士気はないようです。そもそも多くの武装組織が跋扈する東部地域には政府のコントロールが及んでいないと言うべきか。

首都の政権首脳にとっては、どこか遠い世界での出来事にも思えているのかも。それは言い過ぎにしても、自分たちに危害が及ぶような切実感はないかも。

【拡大する住民犠牲 性暴力や徴兵など子どもの被害増加】
戦闘拡大によって住民被害、特に子供達への性暴力や徴兵も深刻になっています。

****コンゴ民主共和国東部の情勢激化性暴力や徴兵など子どもの被害増加*****
ユニセフ(国連児童基金)事務局長のキャサリン・ラッセルは、急激に悪化するコンゴ民主共和国東部の状況を憂慮し、以下の声明を発表しました。

性暴力や徴兵など子どもの被害増加
コンゴ民主共和国東部における暴力の激化と、それが子どもや家族へ及ぼす影響に、強い危機感を抱いています。北キブ州と南キブ州では、紛争当事者が子どもに対する重大な権利侵害を行っているとの恐ろしい報告が寄せられています。性的暴行を含む性暴力は近年で最悪のレベルに達しているとのことです。

ユニセフのパートナーが報告したところによると、2025年1月27日から2月2日までの1週間に、42の保健医療施設で対応した性的暴行の件数は5倍に膨れ上がりました。手当てを受けた人のうち、30%が子どもでした。

被害者の多くが名乗り出ることをためらう傾向にあるため、実際の数ははるかに多いと思われます。 ユニセフのパートナーには、性的暴行によるHIV感染リスクを低減するための薬剤が不足しています。

ある母親は、6人の娘が食料を探している間に、武装した男たちにつかまり、次々と性的暴行を受けたことを、スタッフに語りました。一番下の娘はわずか12歳でした。

戦闘を逃れるために何度も避難
コンゴ民主共和国東部の広範囲にわたって、子どもと家族は容赦ない爆撃や銃撃にさらされ続けています。ここ数カ月の間、避難民キャンプで暮らす何千人もの弱い立場にある子どもたちは、戦闘を逃れるために何度も避難を余儀なくされています。

この混乱の中で多くの子どもが家族と離ればなれになり、武装集団による誘拐、徴兵、徴用、性暴力のリスクにさらされています。ここ2週間だけで、北キブ州と南キブ州でおとなの同伴者のいない子どもが1,100人以上も確認されており、その数は増え続けています。

ユニセフのスタッフは速やかに、おとなの同伴者のいない子どもや家族と離ればなれになった子どもを登録し、一時的な里親に預け、必要な医療や心理社会的ケアを受けられるようにしています。

この地域では、このように危機が深刻になる以前から、武装集団への子どもの徴兵は増え続けていました。 紛争当事者が若き戦士の結集を呼び掛けている今、徴兵はさらに速いペースで行われるでしょう。 

報告によると、12歳という幼い子どもたちが武装集団に徴兵されたり、参加を強要されたりしているとのことです。

紛争当事者は、子どもに対する重大な権利侵害をただちに停止し、その発生を防がなければなりません。また、国際人道法上の義務に従い、民間人と彼らの生存に不可欠なインフラとを保護するための具体的な措置を講じる必要があります。

人道支援を実施するパートナーは、支援を必要とするすべての子どもと家族に安全に、かつ妨げられることなくアクセスできなければなりません。(後略)【2月13日 ユニセフ】
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【国連やアフリカ連合 停戦を求めるも効果なし】
国連人権理事会は【2月8日 TBS NEWS DIG】にあもあるように、7日には実態調査を行うと発表、隣国ルワンダ軍には反政府勢力への軍事支援中止とコンゴ領内からの撤退を求めてはいますが、実効性はありません。

アフリカの周辺国やアフリカ連合(AU)も、停戦を求めるものの、戦闘を止める手だてを講じることが出来ません。

****コンゴ、アフリカ首脳ら停戦要求 共同声明、人道回廊設置も****
鉱物資源が豊富なコンゴ(旧ザイール)東部で続く反政府勢力「3月23日運動(M23)」と政府軍の戦闘を巡り、周辺各国の首脳らは8日、アフリカ東部タンザニアのダルエスサラームで会合を開いた。

共同声明で、即時かつ無条件の停戦と、M23がほぼ掌握したコンゴ東部の主要都市ゴマに支援を届ける人道回廊設置を求めた。

会合にはM23を支援するルワンダのカガメ大統領も出席した。欧米メディアによると、コンゴのチセケディ大統領はオンラインで参加した。

共同声明は関係国やM23による直接協議も要求した。【2月9日 共同】
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なぜこうした事態にもかかわらず、コンゴのチセケディ大統領が現地参加しなかったのか・・・知りません。ルワンダのカガメ大統領などとの確執があってのことでしょうか。

*****アフリカ連合、域内紛争対処できず コンゴ民主続く衝突****
アフリカ連合(AU)は15〜16日、エチオピアの首都アディスアベバで首脳会議を開いた。焦点はコンゴ民主共和国の東部で続く政府軍と反政府勢力の戦闘への対応だ。だが、域内で加盟国の利害がぶつかるAUが有効な手立てを打ち出すのは難しく、外交的進展は乏しかった。(後略)【2月16日 日経】
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【鉱物資源をめぐる争い】
域内で加盟国の利害がぶつかる・・・・ツチ・フツの民族問題の他、豊富な資源をめぐる利害でしょう。

****コンゴ民主共和国で政府軍と反政府勢力の衝突激化 米中は鉱物獲得の動き****
アフリカのコンゴ民主共和国で、政府軍と反政府勢力の衝突が激化している。豊富な鉱物は武装勢力の資金源になっており、中国とアメリカも資源獲得の動きを見せていて、紛争の拡大が懸念される。

■100以上の武装勢力 危険情報は「レベル4」
(中略)コンゴ民主共和国はアフリカ中部に位置し、かつてはザイール共和国という名前だった。
1960年、ベルギーから独立。面積は、アフリカの国で2番目に大きい234万5000平方キロメートル。これは日本の6倍以上にあたる。南米アマゾンと並び、“地球の片肺”と呼ばれる、コンゴ盆地の広大な熱帯林を抱える。

人口はおよそ9900万人。主な産業は、銅、コバルト、ダイヤモンド、金などの鉱業。隣国のアンゴラ、ザンビアなどにまたがって“カッパーベルト”と呼ばれる銅山地帯が広がっている。

東部地域は政府の統治が行き届いておらず、100以上の武装勢力が存在する。そのため日本の外務省の危険情報では、この地域はレベル4=退避勧告となっている。(中略)

■反政府勢力「M23」にルワンダの影 鉱物が資金源に
そして、この紛争には隣国ルワンダが介入しているとの見方がある。
コンゴ民主側は、M23を隣国ルワンダが支援していると指摘。また、国連のグテーレス事務総長もルワンダ軍に対し、M23の支持をやめることと、コンゴ民主から撤退することを要求した。

コンゴ民主から撤退とはどういうことか。
そもそも、ルワンダ軍は、国境を超えてコンゴ民主国内に入り、M23を支援していると見られている。ただし、ルワンダ側は支援を否定している。

では、ルワンダが支援しているとされる背景には、何があるのか?
紛争が起きている東部地域にも、希少鉱物がある。電子機器部品に使用されるタンタルは、世界の生産量40%がコンゴ民主産。そして、半導体部品などに使用されるタングステン。さらに金とスズもある。

これらの鉱物は、M23など武装勢力の資金源になっている側面がある。鉱物を採るための“入坑税”や“通行税”を徴収するなど、鉱物の採掘・流通・取引に介入しているという。

東京大学大学院教授・遠藤貢さんによると、「国内で採れないはずの鉱物がルワンダの主要な輸出品目になっている」といい、ルワンダがM23を通じて、コンゴ民主内の鉱物資源を手に入れている実態があると指摘している。

■コバルト狙う中国 コンゴ民主側は警戒
なかでも、大争奪戦が起きているとされる鉱物がある。
コンゴ民主は、コバルトという鉱物の一大産地。生産量は世界1位で、国内の埋蔵量は全世界の46%を占めるとみられている。

コバルトは、EV(電気自動車)のバッテリーに使用されるとあって近年、需要が急増。また、スマホのバッテリーにも使われるなど、「重要鉱物」の一つだ。

そんなコンゴ民主のコバルトの争奪戦で、他の国を大きくリードしているのが中国。
南部にある国内最大級のコバルト鉱山「テンケ・フングルーメ鉱山」は、中国企業が株式の80%を取得。ロイター通信は去年、「コンゴ民主共和国の鉱業部門は、中国企業がほぼ支配している」と伝えた。

また、コンゴ民主のチセケディ大統領は、2023年と翌24年に中国を訪問し、習近平国家主席と会談した。23年には、2国間の関係をそれまでより格上げし、「全面的戦略協力パートナーシップ」に位置付けた。

一方で、ロイター通信によると、去年11月に中国企業がコンゴ民主の鉱山会社に買収を提案したところ、コンゴ民主の国営企業も買収を提案し、中国企業の動きを阻止。政府も鉱山会社に「提案を受けないよう通達」したという。コンゴ民主は、重要鉱物の中国支配を警戒しているとみられる。

こうした“中国一辺倒”の状況をアメリカも警戒している。
カッパーベルトで採れた鉱物資源をザンビアからコンゴ民主、アンゴラを鉄道で経由して大西洋まで運ぶ「ロビト回廊」という計画が3カ国の間である。

アメリカのバイデン前大統領は2023年9月、ロビト回廊の開発への支援を表明。日本円で総額およそ6200億円を投資するとした。

さらに去年12月、バイデン前大統領はアンゴラを訪問した際、コンゴ民主のチセケディ大統領と会談し、支援強化を打ち出した。

ただ、新たにトランプ大統領が就任したことで、その関係が今後どうなるのかが注目される。【1月31日 テレ朝news】
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対外援助の90日間凍結を打ち出しているトランプ政権は、遠く離れたアフリカなどには関心はないと思われますが、利権絡みとなれば話は別でしょうか。

「かつて2000年代、小型スマートフォンやゲーム機が普及したときにタンタルを巡る争いが激化し、それが紛争の激化につながった。同じことが今回も起きる可能性がある」(東京大学未来ビジョン研究センターの華井和代氏)

こうした私達の生活を支える「紛争鉱物」に関して私達ができることは?

****「紛争鉱物」とは? 3000人死亡、集団強姦も蔓延するコンゴ民主共和国の一助となるために私たちにできること*****
(中略)
すでに生活に欠かせない電子機器。紛争に関連し、人権侵害が行われているとはいえ、ただちに手放すのは現実的ではない。

華井氏は「『コンゴの鉱物やテクノロジーを使いません』というのではなく、『透明化』していく。そこで何が行われているのかを知り、紛争に関わらないように頑張っている鉱山からはむしろ買う。労働者や地域に利益を還元することによって利益がちゃんと分配される。そういう公正な仕組みを作ろう、仕組みを支えるために消費者として声を上げていく、関心を持っていくことが必要だと思う」と提言した。【2月15日 ABEMA Times】
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南アフリカの土地収用新法を白人差別と批判するトランプ大統領 “負の歴史の清算”を求める南ア黒人層

2025-02-06 23:34:38 | アフリカ

(南アフリカ・フリーステイト州のトウモロコシ畑【2018年8月24日 Newsweek】 このような広大な農園のほとんどは未だ白人所有であり、資産の格差は結果的に所得の格差を存続させています)

【トランプ大統領 南アの土地収用に関する新法を白人への人種差別と批難 背後にはマスク氏の存在も】
アメリカ・トランプ大統領は、国際的な面だけでも、不法移民強制送還をめぐってコロンビアなどと、関税問題ではカナダ・メキシコ・中国と、昨日取り上げたパレスチナ・ガザ地区をめぐって中東諸国と、更にはグリーランドをめぐってデンマークと、パナマ運河をめぐってパナマと、NATO負担をめぐって欧州と対立し、ディール(取引)を展開しています。

もちろん、選挙期間中に「24時間で終わらせる」と豪語していたウクライナ・ロシアの問題もあります。イランをめぐる問題、地球温暖化のパリ協議・疾病対策のWHO・国際人道支援といった国際的協調からの離脱もあります。

当然ながら、国内では「革命」とも言えるような大幅・急激な政策転換も行っています。

どんな問題を取り上げても、「トランプ大統領の対応は?」ということが絡んできます。

傍目にはあまりに抱える問題が多すぎるようにも見えますが(ひとつひとつ丁寧に検討する時間はないでしょう。直観勝負でしょうか)、それでも不足しているのか、話題になることは多くありませんが南アフリカとも揉めています。

****トランプ氏、南アへの資金援助を全面的に停止へ 投稿経緯は不明****
トランプ米大統領は2日、「南アフリカが土地を没収し、特定の階層の人々を非常にひどく扱っている」と根拠なく主張し、南アフリカへの資金援助を調査完了まで全て停止すると表明した。

交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」に「米国はこれを容認せず、行動を起こす」と投稿した。

投稿に至った経緯は不明。在ワシントンの南アフリカ大使館からは業務時間外のためコメントを得られていない。

米国政府の統計によると、2023年に米国は南アフリカに対する約4億4000万ドルの援助を義務化した。

南アフリカは現在20カ国・地域(G20)の議長国。米国が議長国を引き継ぐことになっている。

南アフリカのラマポーザ大統領は先月、トランプ政権下での米国との関係について心配していないとの見解を示した。トランプ氏とは昨年11月の大統領選勝利後に祝意とともに、同政権と協力していくことを楽しみにしていると伝えたことを明らかにした。

トランプ氏は第1次政権時代、南アフリカで白人農民の大規模な殺害や土地の暴力的買収が行われているとして調査すると表明。南ア政府は当時、トランプ氏が誤解していると指摘していた。トランプ政権が調査を実施したかどうかは不明だ。

トランプ氏の盟友で実業家のイーロン・マスク氏は南アフリカ生まれ。マスク氏は23年にXで、南アフリカの極左政党が古い反アパルトヘイトの歌「ボーア人を殺せ」を歌っている動画に反応し、「彼らは南アフリカで白人の大量虐殺を公然と推進している」とした上で、ラマポーザ氏に対し「なぜ何も言わないのか?」と訴えた。【2月3日 ロイター】
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“経緯は不明”とありますが、トランプ大統領は、公益のために国家が土地を収用しやすくする南アフリカの新法を批判し、同国の白人を念頭に「特定の階級の人がひどい扱いを受けている」とも指摘しています。

そうした批判の背景には南ア出身のマスク氏の存在があります。

****トランプ氏、南アフリカ批判 マスク氏影響か****
トランプ米大統領は2日、公益のために国家が土地を収用しやすくする南アフリカの新法を批判した。同国の白人を念頭に「特定の階級の人がひどい扱いを受けている」とし、南アへの資金援助停止に言及した。

南ア生まれの実業家イーロン・マスク氏が同国で白人が差別されていると主張しており、トランプ氏の批判に影響を与えた可能性がある。南アの新法は先月、ラマポーザ大統領が署名した。

トランプ氏は自身の交流サイト(SNS)で「南アは土地を没収している。ひどい状況だ。大規模な人権侵害が起きている」と根拠を示さず糾弾。調査が終わるまで「南アへの資金援助全て打ち切る」と表明した。

ラマポーザ氏は3日の声明で、誤解を解くために米側と協議したい考えを示した。

南アではアパルトヘイト(人種隔離)で白人が取得した土地の再分配が課題になっている。白人から土地を奪うのが新法の狙いだとの見方があり、マスク氏も同調している。【2月4日 共同】
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南アフリカは「いかなる人々の土地も没収していない」と反論し、トランプ政権との協議を求めています。

****「土地没収してない」南ア大統領が反論 トランプ大統領の資金援助停止表明受け****
アメリカのトランプ大統領が南アフリカへの資金援助を全面的に停止する意向を示したことを受け、ラマポーザ大統領が反論し、「トランプ政権と協議の場を持ちたい」と声明を出しました。

トランプ大統領は2日、「南アフリカは特定の階級の人々の土地を没収し非常にひどく扱っている」と主張し、調査が終わるまで資金援助をすべて停止すると表明しました。

これに対してラマポーザ大統領は3日、「南アフリカ政府はいかなる人々の土地も没収していない」と反論しました。

また、「トランプ政権と協議することを楽しみにしている」としたうえで、「この問題に関して共通の理解を得られると確信している」と述べています。

ロイター通信によりますと、トランプ大統領は前回の大統領在任期間中にも南アフリカで多くの白人の農民が殺害されたり、土地が暴力的に買収されているとして調査すると表明していました。

その後のバイデン政権では、2023年に南アフリカに対して約4億4000万ドルの援助を義務化しています。【2月3日 テレ朝news】
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【“人種差別”か“負の歴史の清算”か? 黒人層の苛立ちで“黒いトランプ”の台頭】
問題の根っこは、アパルトヘイトを廃止した南アフリカにおいて、未だに多くの土地を白人が所有しているという現実、それに対する黒人層の苛立ちがあります。

また、南アとしてはアメリカの批判はある程度“想定内”で、アメリカの援助が以前ほどの重要性を持たなくなっている現実もあるようです。

****アメリカが南アフリカ向け援助停止を警告――その理由になった“人種差別”とは何か****
米トランプ政権は「黒人による白人への差別」を理由に、南アフリカ向け支援の停止を警告した。
南アフリカでは1月、補償なしに土地を収用できる法律が成立し、その対象には白人所有地も含まれるとみられている。

ただし、アメリカの強い拒絶反応は南アフリカにとって想定の範囲内で、あえて土地収用法を成立させたと考えられる。

「土地を没収しようとしている」
米トランプ大統領は2月2日、南アフリカ(南ア)向けの開発協力を無期限に停止すると発表した。
その理由は「土地を没収して、特定の人々をとても劣悪に扱っている」からとされた。  ここでいう特定の人々とは南ア白人を指す。

南アでは1月末、「正当で公益に資する場合」、政府は補償なしに私有地を公的管理のもとにおける土地収用法が成立した。

これが白人所有地の収用と黒人への再分配を念頭においたものであることは、もはや国際的な常識に近い。

だからこそトランプのアドバイザー、イーロン・マスクは「なぜ露骨に人種差別的な法律を成立させた?」と批判しているのだ。マスクは南ア出身だ。

国務省によると、アメリカの南ア向け援助額は約3億1800万ドル(2024年)だった。

人種差別か、歴史的清算か
批判に対して、南アのシリル・ラマポーザ大統領は「我が国は民主国家だ。法的手続きに沿ったもので、没収ではない」と反論した。

土地収用法の対象には、以下のような場合も含まれる。
・投機目的で所有されている土地
・賃借人によって実質的に管理されている土地
・放棄された土地
・所有権が不明な都市の建築物

これだけならそれほど大きな問題もないようにみえるが、実際には先述のように白人所有地も例外ではない、とみられている。

それをマスクは“人種差別”と呼ぶわけだが、一方で南アにはこれを“負の歴史の清算”と評価する人も多い。
というのは南アでは人口の9%に過ぎない白人が耕作可能地の72%を所有しているからだ。
これは18世紀以降、白人が黒人を武力で追い払って“私有地”を広げた結果だ。
 
それもあって、現在でも人口の約8割を占める黒人の平均年収は白人の約5%に過ぎない。

土地収用をめぐる対立軸
だからこそ南アでは所得格差の是正が白人所有地の収用と結びつけて語られやすい。

その裏返しでアフリカを植民地支配したヨーロッパや、あるいはやはり先住民族を武力で追い払って白人が広大な土地を“私有地”にした歴史のあるアメリカで、土地収用への拒絶反応が強いこともまた不思議ではない。

とはいえ白人所有地の収用が内外で摩擦や対立が激しくするのは避けられない。
実際、南アの隣国ジンバブエでは2000年、やはり白人所有地を補償なしに収用できる法律が成立した結果、白人の海外脱出を加速させ、かえって深刻な経済危機をもたらした。

そのため南アにも土地収用に反対する人は少なくない。
それにもかかわらず土地収用法が成立した背景にはポピュリズムとヘイトの高まりがある。

人口多数派の黒人の間には人種間格差が改善しないことへの不満が根強く、生活苦の広がりにともない、それまでタブーに近かった白人所有地の収用が2010年代末頃から公然と政治の場で語られるようになっているのだ。

“黒いトランプ”の台頭
その先頭に立つ極左政党“経済的自由のための戦士(EFF)”は、黒人の都市貧困層を主な支持基盤にしている。

EFFのジュリウス・マレマ党首は、白人など「アフリカ的でない者」や周辺アフリカ各国からの不法移民の国外退去を叫ぶ一方、「白人の特権を終わらせる」と主張して白人所有地の収容と黒人への再分配を主導してきた。
その排他的でポピュリスト的な言動は“黒いトランプ”とも呼べる。

これに対して、1994年から政権与党の座を占めてきたアフリカ民族会議(ANC)は白人所有地の収用に消極的だった。

しかし、経済停滞を背景に昨年の議会選挙でANCはかつてない大敗を喫し、単独過半数の議席数を失った。求心力の低下したANCやラマポーザ大統領は、急進的な世論に迎合する格好で、白人所有地の収用に傾いていったのである。

そこにはEFF支持者の取り込みによる求心力回復といった目的もあるとみられるが、EFFは土地収用法を「不十分」と批判している。

ともかく、こうした背景のもとで成立した土地収用法により、南アは約3億ドルの援助がアメリカからこなくなる公算が高まっているのだ。 ただし、アメリカの強硬な反応は南ア政府も織り込み済みだったと思われる。

南アには想定の範囲内?
第二次政権発足直後、トランプはイスラエル向け軍事援助などを除き、すべての国際協力を見直し、凍結すると宣言した。しかし、それ以前から「アメリカ第一」を掲げるトランプが途上国支援に熱心でないことは周知のことだった。

そのなかで南アが標的になりやすいことも、事前にある程度予測されていた。
アメリカでは保守系を中心に、この数年で「南ア支援を削減すべき」という論調が高まっていたからだ。南アが米軍と軍事演習などを行う一方、ウクライナ侵攻やガザ侵攻でアメリカの方針に協力しなかったことがその最大の要因だった。

つまり、南ア政府は「どの道アメリカが支援を減らすなら、逆に今さら遠慮しなくてもいい」と判断しやすかったといえる。

さらにそこに中国の支援があれば、トランプの威嚇に限界があっても不思議ではない。 中国政府は昨年、アフリカ向けに500億ドルの資金協力を約束し、これをラマポーザは「素晴らしい恩恵」と称賛した。

“援助停止”の限界
そのうえ南アを含むアフリカ大陸は、世界全体で見れば貧困国がいまだに多いものの、援助の重要度はかつてより低下している。

かつて援助はアフリカに流入する資金の大半を占めていた。 しかし、近年では海外に移住したアフリカ系移民による送金や海外企業による直接投資の占める割合が増えていて、2021年に限ると送金が935億ドル、海外直接投資が830億ドルで、これに対して援助は728億ドルだった。

とはいえ南ア政府もアメリカとの決定的な対立は避けたいだろう。 また、ジンバブエのように経済破綻に突き進む懸念も拭えない。

だから白人所有地を含む土地の収用を可能にする法律ができても、南ア政府が実際にそれを発動するかは未知数だ。

その一方で、アメリカの強い拒絶反応が目に見えていたのに南アがあえて土地収用法を成立させたとすれば、“援助停止”という脅し文句だけで揺さぶるのが、これまでより難しくなっていることを象徴する。

その意味で、アメリカと南アの対立の今後の展開は、アフリカ全体にも影響を及ぼす可能性が大きいといえるだろう。【2月5日 六辻障二氏 YAHOO!ニュース】
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【南ア開催のG20外相会議をアメリカ欠席】
南アとトランプ政権の対立は南アで今月開催されるG20外相会議にも波及。
ルビオ米国務長官は5日、「南アは非常に悪いことをしている。私有財産を没収している」と非難し、20カ国・地域(G20)外相会合を欠席するとX(旧ツイッター)で明らかにしています。

****米国務長官 南アでのG20会合に欠席表明 トランプ氏・マスク氏の南ア批判など受け****
アメリカのルビオ国務長官が今月、南アフリカで開かれるG20(主要20カ国)の外相会合を欠席すると表明しました。

G20の外相会合は20日から21日の日程で議長国である南アフリカのヨハネスブルクで開催されますが、ルビオ国務長官は5日、南アフリカが「非常に悪いことをしている」として、会合を欠席するとSNSで表明しました。

その理由として、南アフリカが掲げる今年のG20のテーマがトランプ政権が批判するDEIと呼ばれる多様性や公平性の理念や気候変動対策と同じであることや南アフリカで私有財産の没収が行われているからだとしています。

ルビオ長官は「アメリカの国益を推進するため、税金を無駄にしたり、反米主義を助長したりすることはしない」と強調しました。(中略)

G20の会合を欠席するというルビオ長官の判断は、こうした(トランプ大統領やマスク氏の南アへの)批判を受けたものとみられます。【2月6日 テレ朝news】
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“米国務長官がG20外相会合を欠席するのは異例。「米国第一」の外交政策を推し進めるトランプ政権が多国間協力の枠組みを軽視し、国際社会に内向き志向をあらわにした形で各国に波紋を広げそうだ。”【2月6日 時事】 

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コンゴ  ルワンダ支援の反政府勢力M23の攻勢 注目される米トランプ政権の対応

2025-01-29 23:38:58 | アフリカ
(2025年1月26日/コンゴ民主共和国、北キブ州ゴマ、郊外に避難する人々(AP通信)【1月28日 KWP News】)

【ルワンダが支援しているとされるツチ族系反政府勢力M23 コンゴ東部主要都市を掌握】
各メディアで報じられているように、アフリカ中部コンゴの東部で隣国ルワンダの支援を受けているとされる反政府勢力M23(ルワンダのカガメ政権も、コンゴのM23もツチ族系)が攻勢を強め、東部主要都市ゴマ(人口200万人)を掌握したとも。

一方、これに対し首都キンシャサではM23・ルワンダに抗議するデモが激化し、各国大使館が襲撃されるなど緊張が高まっています。

****コンゴ民主共和国 反政府武装勢力が東部の主要都市を掌握 首都にも飛び火****
アフリカ中部コンゴ民主共和国で、反政府武装勢力が東部の主要都市を掌握したと宣言しました。首都ではデモ隊が大使館を襲撃するなど、各地で緊張が高まっています。

コンゴ民主共和国で、隣国ルワンダの支援を受けているとされる反政府武装勢力「M23」は27日、東部の主要都市ゴマを掌握したと宣言しました。

コバルトなど鉱物資源が豊かなコンゴ東部では100を超える武装勢力が乱立し、政府軍とおよそ30年にわたる紛争を続けてきましたが、今月に入り、「M23」が攻勢を強めています。

国連は、今月だけで新たに40万人が避難民になったと報告しています。

「M23」は、コンゴ東部と国境を接するルワンダからの支援を受けていると指摘されていますが、ルワンダ政府はこれを否定しています。

首都キンシャサでは28日、「M23」に対する抗議デモが激化し、ロイター通信によりますと、ルワンダ大使館やアメリカ大使館など、複数の外交施設が襲撃されました。

国連のグテーレス事務総長は声明で、「より広範囲な地域紛争に発展するリスクが高まった」と懸念を示した上で、「M23」に対し攻撃を直ちに停止するよう求めています。【1月29日 TBS NEWS DIG】
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【コンゴ 豊富な地下資源と民族問題から混乱と戦争の歴史】
コンゴにおける100を超えるとされる反政府勢力・武装勢力の跋扈は再三取り上げてきました。
更に遡れば、1996年~1997年の第一次コンゴ戦争、1998年~2003年の第二次コンゴ戦争といったように、コンゴでは戦争の混乱が絶え間なく続いています。

アフリカということで世界からはあまり注目されませんが、犠牲者数で言えば、第二次コンゴ戦争の1998年から2007年の間だけでも540万人以上ということで、第二次大戦後に起きた紛争としては世界最多の死者を出しています。

政権の統治能力の欠如と言えばそれまでですが、そうした状況は、“コバルトなど鉱物資源”が戦闘のための各勢力資金源ともなり、また、周辺国の介入を招きやすいという“資源の呪い”の側面があります。 更に、ルワンダの大虐殺の背景ともなったフツ・ツチの対立も絡んでいます。

****世界に知られていない悲劇:コンゴ民主共和国****
アフリカ中部に位置するコンゴ民主共和国。人口は7,800万人に上り、その面積は西ヨーロッパに匹敵する。鉱物資源にも恵まれており、金、ダイヤモンド、銅のほかに、電化製品に欠かせないタンタル、スズ、タングステンなどを産出する。リチウムイオン電池に使用されるコバルトは世界生産量の5割以上を占める。

豊かであるかのように見えるこの国は、実は大きな混乱のなかにある。2年連続で避難民の数は世界第一であり、中東のシリアやイエメンなどの国々よりもひどい状況なのである。

2017年には一日に平均5,500、合計170万もの人々が家を捨てざるを得なかった。世界最大の避難民を生み出す原因は紛争にとどまらず、他にも国内に問題を抱えているコンゴ民主共和国だが、なかなか注目されることがないのだ。

コンゴ民主共和国が歩んできた厳しい道のり
現在のコンゴ民主共和国は、1885年のアフリカ分割に関するベルリン会議においてベルギーの領有が認められ、コンゴ自由国と呼ばれるようになった。

しかし、その実態はベルギー国王レオポルド2世の私有地であり、そのもとでゴム、象牙、土地などをめぐり現地人への過酷な収奪が行われたため、国際的な非難を受け、1908年にはベルギー政府直轄のベルギー領コンゴへと形を変えた。

その後、他のアフリカ諸国と同じように独立運動が始まり、1960年にコンゴ共和国として独立を達成した。しかし、南部カタンガ州の分離運動からコンゴ動乱に突入し、5年にわたる紛争が続いた。

この紛争は、独立を認めたはずのベルギーが、南部の豊かな鉱山地帯であるカタンガ州を分離独立させて影響力を残そうとして兵力を残し、分離独立に肩入れをした。ベルギーとアメリカの後押しを受けた軍部のモブツがクーデターにより当時の首相ルムンバを逮捕し、後にルムンバが殺害されたことで動乱が拡大した。

1965年にモブツが大統領となり軍政を敷き、一応動乱は収拾されたものの、モブツは国名をザイールに変更したのち、アメリカに支えられて独裁体制を強め、国の資源・財源を私物化したため経済成長が止まり、貧困が続いた。モブツの長期政権の中で腐敗が進行しただけでなく、人権抑圧も続き、国家としての機能が退廃した。

1994年の隣国ルワンダのジェノサイドから発生した多くの難民や武装勢力が東ザイールに滞在するようになり、それがきっかけで、ルワンダ、ウガンダなど数カ国による侵攻で1997年にモブツ政権が倒された。そしてローラン・カビラが大統領となりコンゴ民主共和国という国名に改名された。

しかしこの政権への不満を募らせたルワンダは反政府勢力を組織、国内の豊富な天然資源に対する利権も絡み、ウガンダ、ブルンジとともにコンゴ民主共和国に侵攻した。これが2回目の侵攻で、今回は政府側にアンゴラ、ジンバブエなどが応援に入り、合計8カ国による紛争となった。これが「アフリカの第一次世界大戦」とも呼ばれるものである。

カビラが暗殺され息子ジョゼフ・カビラが大統領に就任した後、2003年の和平合意が結ばれ、外国兵の撤退は実現したが、形を変えた武力紛争が部分的に続いた。

鉱物の採掘権や民族間のアイデンティティ対立、隣国の関与などの問題を抱え、武装勢力による襲撃や食料の略奪により、住民たちは不安定な生活を余儀なくされている。

このように続くコンゴ民主共和国の紛争は、1998年から2007年の間に540万人以上もの犠牲者を出しており、1950年代の朝鮮戦争以来世界最大だ。(後略)【2018年3月8日 GLOBAL NEWS VIEW】
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“M23は現在、電子機器の製造に不可欠なコルタンの採掘事業を支配している。”【1月27日 SPUTNIK】とも。

【22年末以来のM23の動き ルワンダは関与を否定】
近年では「3月23日運動」(M23、ツチ族系のルワンダ系反政府武装勢力)【外務省 海外安全HP】の攻勢が強まっており、約1年前の2023年12月24日ブログ“コンゴ 20日の大統領選挙、トラブル多発で延長 ルワンダが支援と言われるM23をめぐる動き”でも取り上げました。

ですからM23の攻勢はここ1,2か月のものではありません。更に言えば、M23は2012年にもゴマを制圧したことがあります。

下記は2023年12月24日ブログでも引用した2023年2月の記事です。

****コンゴ東部でM23をめぐる紛争続く****
(2023年)1月26日、M23は北キヴ州マシシ県のキチャンガを制圧した。昨年(2022年)10月末に本格的な攻撃を再開したM23は、ウガンダ国境の街ルチュルからゴマに向けて南下し、コンゴ軍との間で戦闘が続いてきた。

12月初めの虐殺事件を契機に、M23、そしてルワンダへの圧力が高まり、M23は占領地からの撤退を表明したのだが、それ以降ゴマ西方のマシシ方面での軍事的プレゼンスを強めている。コンゴ軍の攻撃に反撃する形で、キチャンガを制圧したと報じられている(3日付ルモンド)。

M23をめぐる紛争については、アンゴラのロウレンソ大統領がアフリカ連合(AU)および南部アフリカ開発共同体(SADC)から委任を受けて仲介役を務めており、同時にケニヤッタ元ケニア大統領が東アフリカ共同体(EAC)のファシリテーターとして調停にあたっている。

昨年(2022年)7月、(アンゴラ大統領)ロウレンソが(コンゴ大統領)チセケディと(ルワンダ大統領)カガメを首都ルアンダに招き、和平に向けた合意を得たが、停戦は続かなかった。9月以降、ケニアのイニシャティブでコンゴ東部にEAC(東アフリカ共同体)軍が展開されたが、抑止力としては機能していない。

この間、コンゴとルワンダの関係は悪化を続けている。M23の攻勢はルワンダの支援によるものだというコンゴ側の主張と、コンゴの国内問題だというルワンダ側の主張が平行線をたどっており、チセケディとカガメは相互に非難を繰り返すだけで、直接対話もできなくなっている。

国際社会のスタンスは、ルワンダにM23への支援を止めるよう求めるものだ。それに対してカガメ大統領は、M23はコンゴ国内の問題であり、問題はコンゴのガバナンスだと繰り返し、国際社会へのいらだちを隠していない。

ルワンダが何らかの形でM23への支援を行っていることは、国連専門家委員会が認めるところである。一方、コンゴ側のガバナンスに深刻な問題があること、そして紛争の中で民兵組織を利用してきたこともまた事実である。

ルワンダを締め上げれば問題が解決するわけではない。こうした状況下、戦闘の意思と能力を持つM23に引きずられる形で、紛争が拡大している。【2023年2月4日 武内進一氏 現代アフリカ地域研究センター】
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【国連平和維持部隊 「第3次内戦」の恐れを警告】
今回の衝突に関しては
“AFP通信によると過去数日間の戦闘で100人以上が死亡し、1000人近くが負傷した。【1月29日 時事】
“国連によりますとゴマやその周辺の病院は戦闘でけがをした人たちであふれ、治療が追いつかなくなっているほか、略奪や性暴力なども横行しているということです。”【1月29日 NHK】
“(28日の)銃撃戦により南アフリカの平和維持部隊員4人が死亡した。”【1月28日 ロイター】
英BBCは26日、M23の攻撃で200人以上の民間人が死亡したと伝えています。

平和維持部隊に関しては、25日までに要員13人が戦闘で死亡したという南アフリカ軍の発表もあります。
政府軍とM23の衝突における平和維持部隊のスタンスはよくわかりませんが、政府軍とともに空港などの維持にあたっていたようです。

今後、衝突は更に拡大する懸念を国連平和維持部隊は警告しています。

****コンゴ、「第3次内戦」の恐れ=東部で衝突激化、国連が警告****
アフリカ中部コンゴ(旧ザイール)で政府軍と反政府勢力「3月23日運動(M23)」の衝突が激化している事態を受け、現地で活動する国連平和維持部隊の幹部は28日、「第3次コンゴ内戦の脅威が差し迫っている」と述べ、戦闘がさらに深刻化する恐れがあると警告した。国連安保理の緊急会合で語った。

M23は隣国ルワンダ軍の支援を受けているとされ、今月に入って攻勢を拡大。東部の主要都市ゴマに侵攻し、AFP通信によると過去数日間の戦闘で100人以上が死亡し、1000人近くが負傷した。

国連コンゴ安定化派遣団(MONUSCO)の幹部はゴマからオンラインで報告を行い、「街では略奪が発生し、多くの避難民を保護しているが、われわれも安全ではない」と強調。ゴマは孤立状態にあるとして、市民の安全な退避や支援物資の搬入を可能にする「人道回廊」を早期に設置するよう国際社会に訴えた。【1月29日 時事】 
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首都キンシャサにおけるデモの参加者からは“「ルワンダと戦うべきだ」との声も上がっていて、混乱が広がる中、周辺国を巻き込んだ地域紛争に発展する懸念が高まっています。”【1月29日 NHK】とも。

M23とルワンダの関係については紆余曲折がありますので省略しますが、ルワンダの大虐殺後、虐殺に関与したフツ族系組織がコンゴで活動、それに対抗するツチ族系組織をルワンダが支援・・・といったあたりが最初のM23前身組織とルワンダ・カガメ政権の関係だと認識しています。

【アメリカ・トランプ政権はどのように対応するのか? ルワンダにはトランプ政権が認めるのではないかとの期待も】
こうした状況でルビオ米国務長官とルワンダのカガメ大統領が会談(おそらく電話会談)を行っています。

****ルワンダ大統領、米国務長官と会談 コンゴ停戦の必要性で一致****
ルワンダのカガメ大統領はルビオ米国務長官と会談し、コンゴ民主共和国(旧ザイール)東部での停戦の必要性について一致したことを29日に明らかにした。

ルワンダが支援するコンゴの反政府勢力「M23」は東部最大の都市ゴマに進軍したが、カガメ大統領はルワンダ軍とM23にゴマからの撤退を求める圧力に屈する姿勢は示さなかった。

カガメ大統領は「ルビオ長官とコンゴ東部の停戦を実現し、紛争の根本原因にきっぱり対処する必要性について生産的な会話をした」とXに投稿。

米国務省は「長官はこの地域の即時停戦を促し、全ての当事者に対し主権国の領土の一体性を尊重するよう呼びかけた」と述べた。

米政府は28日、国連安全保障理事会に対し、M23の攻撃停止に向けた措置を検討するよう要請した。

現地住民によると、ゴマでは数日間にわたって激しい戦闘が続き、店舗などが略奪されていたが、29日は散発的に銃声が聞かれた以外、総じて平穏な状態が続いている。

コンゴと国連の平和維持部隊によると、ルワンダ軍はゴマでM23を支援。ルワンダはコンゴの武装勢力から自国を守っていると主張しているが、コンゴ領内に進軍したかについては直接コメントしていない。【1月29日 ロイター】
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今後に展開についてはルワンダの方針にかかっていますが、“トランプ政権が自分たちの行動を承認するのではという期待がルワンダ側にある”との指摘もあるようです。

****M23がコンゴ東部の主要都市ゴマに侵入****
27日、反政府武装勢力M23は、東部の主要都市ゴマに侵入した。M23やそれと共闘する「コンゴ川同盟」(AFC)はゴマを制圧したと発表したが、27日時点で事態は混乱しており、完全に制圧したわけではなさそうだ。
 
これに先立つ26日、国連安保理で緊急会合が開かれ、グテーレス事務総長は、ルワンダ軍にM23への支持を止め、コンゴから撤退するよう要請した。事務総長がルワンダを名指ししたのは、これまでにないことだった。同会合では、米国、英国、フランスも、ルワンダに撤兵を呼びかけた(27日付ルモンド)。

『名前を知らない戦争』の著者スターンズは26日付ファイナンシャルタイムズ紙に論説を寄せ、紛争終結にはルワンダに圧力をかけるしかないと強調した。

M23は2012年にもゴマを制圧したが、この時は国際社会がルワンダに援助停止などの制裁措置をとり、ルワンダが支援を控えたことでM23の崩壊につながった。今回、欧米諸国はルワンダにコンゴから撤兵するよう呼びかけているが、制裁に向けた動きは今のところない。

この時期にM23がゴマを制圧した理由として、世界の関心がトランプ政権誕生に集まっているうえに、トランプ政権が自分たちの行動を承認するのではという期待がルワンダ側にあるとの指摘もある(27日付ルモンド)。

ルワンダ側のメディアは、コンゴ軍が、民兵組織ワザレンドゥ、ヨーロッパ人傭兵、ブルンジ軍、南部アフリカ共同体軍と協働し、かつてない脅威をルワンダに与えていると強調している(27日付New Times)。

1月に入ってから40万人が避難民となり、戦闘で国連平和維持部隊、南部アフリカ共同体軍にも合わせて13名の犠牲者が出ている。紛争は、大湖地域全域を不安定化させつつある。【1月28日 武内進一氏 現代アフリカ地域研究センター】
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ウクライナに侵攻したロシアも、ガザを破壊したイスラエルも、相手側の脅威をあげて自国この軍事行動を正統化しています。

トランプ大統領はアメリカの利益にならないアフリカの紛争など関心はないでしょうが、こうした紛争・地域混乱にアメリカとしてどういう姿勢で臨むのかも注目されます。

ついでに言えば、国連・欧米諸国はルワンダの大虐殺を止められなかったことで、ルワンダ・カガメ大統領に“負い目”みたいなものがあります。
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アフリカ  政治的権利に目覚めるの若者、デジタル駆使し抗議活動 混乱に終わる危うさも

2025-01-19 22:54:53 | アフリカ

(2024年7月、政府の増税策に対する抗議活動で死亡したデモ参加者を追悼する行事に参加する若者ら。ナイロビで撮影【1月19日 ロイター】)

【ケニア  生活費需品への大衆課税に若者らが反発】
アフリカ東部のケニアでは昨年6~7月、政府の増税案に抗議するデモが激化し混乱しました。

****増税案めぐる政府への抗議デモが激化 39人死亡 ケニア****
ケニアでは、増税案をめぐる政府への抗議デモが広がっていて、2日も首都ナイロビで治安部隊との衝突が起きるなど、混乱が続いています。

ケニアでは、先月25日、政府の増税案に抗議するデモが激化し、首都ナイロビにある議会にデモ隊の一部が突入したことから、死傷者が出る事態となっていました。

これを受けルト大統領は、増税案の撤回を表明しましたが、デモはおさまらず、今度は、大統領の辞任を求めデモが続いているという事です。2日もナイロビではデモ隊と治安部隊の衝突が起きています。

ケニアの人権団体によりますと、治安当局がデモ隊に向け発砲したことなどから、これまでに39人が死亡しているということです。

ルト大統領は、増税案の代わりに、政府の大幅な歳出削減を計画しているとしていますが、辞任を求める声が広がる中で、混乱が続くおそれが高まっています。【2024年7月3日 日テレNEWS】
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ケニアでは、正規の雇用ではなく、身近の様々な品物の転売など自らの知恵や才覚で(ときにドラッグや泥棒、又は買春など様々な犯罪も)生計を立てる若者らをハッスルする者「ハスラー」と呼ぶようです。

政府の増税案は生活費需品への新たな課税であり、こうした「ハスラー」など大衆に負担を課す内容でした。

ケニアのルト大統領は大衆に訴えるポピュリズムの波に乗って大統領になった政治家です。大衆の人気をつかんだはずの大統領が一転して大衆からの抗議の矢面に。

****<820億ドルの債務の責任は誰に?>大衆の支持を得たはずのケニア大統領が抗議暴動にあった理由****
フィナンシャル・タイムズ(FT)紙のアフリカ担当編集長のピリングが、7月18日付けの論説‘Kenya’s populist president has misread the popular mood’で、ケニアのルト大統領の国際的評価が国内問題により損なわれているが、その背景には根深い問題があり、既成の政治体制の改革ができればその評価を回復できるかもしれない、と論じている。要旨は次の通り。

5月、ケニアのルト大統領は、アフリカからの16年振りの国賓としてホワイトハウスでバイデンの歓迎を受けた。しかし7月になると、ルトは、国内で民衆の反乱に直面することになり、全国的な抗議運動は国会を襲撃するまでに至り、彼は内閣を解任し、増税法案を撤回した。

2022年、ルトは、自らの知恵やハードワークで生計をたてる「ハスラー」たちに働きかけることによりポピュリズムのうねりに乗って政権を獲得した。5,600万人の国民のうち300万人しか正規雇用されていないケニアで、インフォーマル経済の大衆に手を差し伸べることは、選挙の起爆剤となった。

ルトは、現職のケニヤッタの支持を得ずに出馬し、大衆に働きかける手法で国政の扉を開け、多くの点で彼の選挙革命は称賛に値する。

ルトは、都市化し十分な情報を持つ有権者にサービスや機会の提供を約束する政府との間の社会契約という現代的な考えを利用した。

しかし、民衆の感情をかき立てたルトは、もはや自らがコントロールできない力を解き放ったのだ。抗議デモにはリーダーはおらず、買収するような大物もいなければ、民族間の対立を煽るものでもない。

彼は、大統領として、正常な状態ではなく破綻しつつある財政状況を引き継いだのだ(彼は前政権で副大統領だった)。ケニヤッタ政権は、膨大な額の借金をし、使い、浪費した。

その多くは、中国が建設した40億ドルを超える鉄道等を含む贅沢なプロジェクトに浪費され、経済的見返りを得ることなくケニアの負債を増大させた。ケニヤッタは当初の220億ドルの負債に510億ドルを追加したとされる。これらの債務返済に歳入の38%が当てられこれでは持続不可能である。

ルトは、巧みな財務政策によってデフォルトを回避した。しかし、国際通貨基金(IMF)お墨付きの増税計画によって自らの支持基盤に打撃を与え、税収を現在の国内総生産(GDP)の15%から最終的には25%に拡大しなければならなかった。

フォーマルセクターの納税者の数があまりにも少なく、インフォーマルセクターの大衆から徴税することは苦痛をもたらし、平均所得が2,000ドルの国民から23億ドルを搾り取るだけでも大変なことだ。その動機が国際的な債権者への返済である場合、それは不可能であることが証明された。

ルトは、ポピュリストにしては、大衆の気持ちを読むのが下手だ。暴力と脅迫によるデモの鎮圧に失敗し、屈服せざるを得なくなった。そして今、彼は自分が属している政治家階級に怒りをぶつけている。

今後は、盗みを減らし行いを改善すると約束した。ルトがその誓約を果たすことができれば、国内外での評判を回復できるかもしれない。
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IMFの欠陥
最近のケニアにおける国民の反政府活動が暴動状態に拡大した事態については、いくつかの注目すべき側面がある。

まず、外交的には、ルト大統領は、就任後、国際金融改革や気候変動問題等について先進国に協調的な主張を行い、外国投資受入れや債務再編を避けて財政再建に努力するとの姿勢を示し、IMFや米国から評価されていた。(中略)

次に、暴動の原因であるが、直接的には、ケニアがデフォルトを回避するため、IMFからの融資を受ける条件として大幅な増税法案を成立させたことにあった。820億ドルに達するといわれる債務の二国間ベース最大の貸し手は中国である。

前任のケニヤッタ大統領はそのレガシー作りのために採算を無視して、商業上の借り入れと共に中国マネーを鉄道や高速道路などの巨大なインフラプロジェクトにつぎ込んだ。途上国の政治指導者の資質とそこにつけ込んだ中国の無責任な融資政策に問題があった。

そして、IMFの役割についてである。基礎食料品、燃料、その他の生活必需品に新たな課税を行うことは、ただでさえ貧困とインフラに苦しむ国民大衆の怒りをかうことは目に見えていたように思われる。

IMFは、当初今回の増税法案を称賛したと伝えられるが、これを実施すれば、何が起こるかについてIMF官僚は関心が無いか、理解が及ばなかったのであろうか。

このようにIMFのコンディショナリティを受け入れた結果、国民の反発を招き政情が不安定化した例は過去にも例は多く、IMFの欠陥のようにも思える。途上国に対する融資の場合、貸し手と借り手の立場は対等とは言えず、借り手は無理をしがちであることが考慮されるべきであろう。(後略)【2024年8月9日 WEDGE】
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【モザンビーク 大統領選挙での不正疑惑への抗議】
一方、アフリカ南東部(マダガスカルの対岸)のモザンビークでは昨年10月の大統領選挙で与党候補が勝利したものの、不正があったとして混乱が起きました。

****公式選挙結果発表も、政府と選管への不信は強まる****
モザンビーク選挙管理委員会(CNE)は10月24日、同月9日に投票が実施された大統領・国会・州議会議員選挙の公式集計結果を発表した。

大統領選挙では、与党モザンビーク解放戦線(FRELIMO)が擁立するダニエル・チャポ氏が得票率70.67%(有効得票491万2,762票)で勝利した。「モザンビーク発展のための楽観的な党」(PODEMOS)の後援を受け、無所属候補として立候補したベナンシオ・モンドラーネ氏は得票率20.32%(141万2,517票)で次点となった。(中略)

今回の集計結果について、国内外の市民団体や野党側勢力は疑問を呈している。EU選挙監視団は22日と25日に発表した声明で、票集計の不正や選挙結果の改変を指摘しており、CNEが発表した結果は指摘事項に対する疑念を払拭するものではないとしている。

モンドラーネ氏は24日夜に自身のフェイスブックで行ったライブ演説で、公式結果は不正なものだと述べ、支持者に対し抗議活動の継続を呼びかけた。同氏の配信は大きな注目を集め、最大同時接続数は10万を超えた。

配信翌日の25日午後から26日朝にかけ、モザンビークのほぼ全土において、主に携帯電話会社が提供するインターネット回線が不調、または遮断される事態が発生した。

モザンビークでは、モンドラーネ氏の配信やデモ隊と警察との衝突など、不正選挙への抗議に関連する動画がSNSを通じて多く拡散されており、メディアや一部の市民団体は、政府による意図的な通信制限だと訴えている。【2024年10月30日 JETRO】
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混乱は年末時点でも続いていました。(現状は把握していません)

****モザンビークで大統領選結果への抗議デモ激化…130人以上死亡、刑務所から1530人脱走****
AFP通信によると、モザンビークで大統領選の結果に対する抗議運動が激化し、(昨年12月)23〜25日の3日間で130人以上が死亡した。混乱に乗じて首都マプトの刑務所から約1530人の囚人が脱走した。

10月に行われた大統領選では、与党モザンビーク解放戦線の候補が勝利宣言し、野党は不正があったとして抗議運動を続けている。今月23日、裁判所が選挙結果を確定したことを受け、抗議運動が激化し、マプトなどで暴動に発展した。地元の選挙監視団体によると、10月以降の死者は260人、拘束者は4000人に上る。

大統領選を巡っては、SNSの使用が制限され、記者の拘束も相次ぎ、欧米の人権団体は疑義を訴えている。野党は陣営の弁護士が暗殺されたと主張している。

モザンビークはアフリカ最貧国の一つだが、液化天然ガス(LNG)が豊富で、日本企業が参画するガス開発事業が中断したままになっている。【12月28日 読売】
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【若者らの“愛国心や将来が良くなるとの期待”からの抗議行動】
ケニアでも、モザンビークでも、抗議行動の主体は、自らの権利を認識し、インターネットを通じて改革を訴える力を増している若者世代です。

“人口構成が世界で最も若いアフリカでは、根強い汚職や拙い政治運営、生活費高騰、失業率上昇などに不満を抱える若者が主導する政治活動が広がっている。”とも。

****政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジタル駆使し抗議活動****
ケニアの民主活動家ボニフェース・ムワンギさんは過去何年にもわたって数え切れないほどのデモに参加してきたが、昨年6月と7日に行われた反政府デモはあらゆる期待を超える形になった。

ムワンギさんが目にしたのは、力強く覚醒した若者たちがソーシャルメディアを駆使し、増税が盛り込まれた予算法案への抗議を呼びかけるという今までになかった展開だ。

「デモの動員に最も力を発揮したのはZ世代だった。彼らはTikTok(ティックトック)、インスタグラム、X上に存在し、街頭に出現した人々の大多数は若者だった」とトムソン・ロイター財団に語った。

ムワンギさんは「歴史上初めてケニア人が一つの目的、つまり予算法案撤回に向けて団結した。われわれは自分たちが持つ力に目覚め、説明責任や意義ある改革を要求する活動的な市民となりつつある」と胸を張る。

こうした抗議が実を結び、ルト大統領は評判の悪かった法案を取り下げ、閣僚を更迭したほか、無駄な支出の削減を約束せざるを得なくなった。

人口構成が世界で最も若いアフリカでは、根強い汚職や拙い政治運営、生活費高騰、失業率上昇などに不満を抱える若者が主導する政治活動が広がっている。

ケニアやガーナ、ウガンダ、ナイジェリア、モザンビークなどのZ世代やミレニアル世代が昨年相次いで抗議の声を上げ、今年もそうした活動はさらに強まりそうだ。

インターナショナル・クライシス・グループのアフリカ担当プログラムディレクター、ムリティ・ムティガ氏は、若者らの不満の一因として、食料と燃料の価格を押し上げたコロナ禍やロシアとウクライナの戦争による痛手からアフリカ経済がなかなか立ち直れない点を挙げた。

ムティガ氏によると、次第に自らの権利を認識し、インターネットを通じて改革を訴える力を増している若者世代には、社会全体への恨みのような感情も高まってきている。

同氏は「若者は両親世代よりも多くを求め、受け取る情報も増えている。彼らは政治面でより行動的になり、今年はデモが増加する可能性があると思う」と述べた。

<幻滅感>
アフリカは各大陸の中で最も人口増加率と若者の比率が高い。サハラ砂漠以南(サブサハラ)地域の人口の70%は30歳未満だ。

これらの若者の幻滅を、雇用機会の乏しさが助長している。国際労働機関(ILO)の調査では、サブサハラ地域の若者約5300万人の5人に1人余りは仕事や教育、職業訓練に全く縁がない。

24年にアフリカ13カ国の18歳から25歳までの5600人強を対象に実施した調査によると、回答者の4分の3は仕事を見つけるのが難しいと述べ、3分の2は政府の雇用創出に向けた取り組みに満足していないと訴えた。また5人に4人は汚職に懸念を持っているとも明かした。

こうした中で、若者が政府批判に動き始めるのは不思議ではない、と複数の専門家は話す。

ノルウェーのクリスチャンミケルセン研究所で上席研究員を務めるアスラク・オレ氏は、アフリカの若者はさえない経済成長や少ない雇用、多額の公的債務と緊縮財政に苛立ちを募らせていると指摘。その点から、公益ではなく私利私欲のために働いていると見なす政治家を糾弾していると説明した。

モザンビークでは昨年10月の大統領選で選挙管理委員会が与党モザンビーク解放戦線(FRELIMO)の候補が勝利したと発表すると、その後3カ月余りも49年わたる与党支配で生じた汚職や失業、生活費高騰への抗議デモが続いた。

ガーナでも昨年12月7日の大統領・議会選に先立ち、若者が街頭に集まって同国の債務危機や物価高に抗議した。

ある市民は、大統領選ではビジネスマン出身の新人候補に投票したと明かす。この新人が有力候補だったマハマ前大統領に勝てないと分かっていたが、今の政治にうんざりしており、デジタル経済を雇用創出や国家近代化の手段として考えられる政治家が出てきてほしかったと強調した。

<犠牲あっても>
若者の抗議活動には犠牲も伴う。警官との衝突で何百人もが拘束されたり殺害されたりしたほか、行方不明者も少なくない。

ケニアでは複数の有力人権団体から、当局が警官による殺害事件を隠蔽(いんぺい)し、Z世代のデモ参加者が絡む誘拐や不法拘束について口をつぐんでいるとの非難が出ている。

同国国家人権委員会の記録では、昨年6―12月に起きたデモで消息が分からなくなったのは82人で、29人は今も行方不明、最低でも40人は殺害された。

モザンビークでもデモ隊と警官の衝突で少なくとも278人が殺害され、2000世帯余りは隣国マラウィで難民申請中だ。

それでもナイジェリアの活動家リニュ・オデュアラさんは、若者が立ち上がる動きが衰えることはないと言い切る。

Xで80万人を超えるフォロワーがいるオデュアラさんは「若者による抗議は愛国心や将来が良くなるとの期待から生じていて、犯罪ではない。改革と、私たちの正当な権利への要求だと見てもらう必要がある」と語り、若者の声を無視することは政府にとって大きな政治的リスクになると警告した。【1月19日 ロイター】
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“若者による抗議は愛国心や将来が良くなるとの期待から生じていて、犯罪ではない”にしても、期待どおりの結果をもたらすとも限りません。

かつての「アラブの春」はほとんどの国で強権支配や内戦を惹起する形で終わりました。

“愛国心や将来が良くなるとの期待”からの抗議行動が政治・社会の改善につながるように、これまでの教訓を学ぶ必要があります。

抗議行動を統率する仕組みをどうするのかが一番重要でしょう。現在の抗議行動はSNSなどを駆使し、組織によらない活動が特徴とはなっていますが、単に不満のガス抜きではなく成果につなげるためには何らかのコントロールする仕組みなりリーダーなりが必要でしょう。

国際社会の支援は、現在の中ロとアメリカが対立・硬直した状況ではあまり期待できません。
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ウガンダ  「反LGBT法」などムセベニ大統領の超長期支配 難民対策では高い評価も

2024-11-20 23:32:40 | アフリカ

(ウガンダの難民【国連NHCR協会】)

【先進的な難民政策は国際社会から「ウガンダモデル」として評価される】
南スーダンやコンゴに隣接するアフリカ中部の内陸国ウガンダ・・・・周囲に紛争国があるため難民の流入が多く、受け入れている難民は10月末現在、172万人でアフリカ最多となっています。

出身国別では、北隣の南スーダン96万人▽西隣のコンゴ民主共和国55万人▽スーダン6万人――などと紛争が激化する周辺国から集まっています。

後述のようにウガンダに関する情報と言えばLGBTに対する厳しい政策や38年に及ぶムセベニ大統領の超長期支配みたいなもので、そうしたイメージからは非常に意外な感がありますが、難民に関しては移動の自由や就労の権利を認めるほか、居住・耕作用の土地を提供するなど先進的な政策ををとっているそうです。ただ、資金や要員の不足が課題となっているとも。【11月20日 毎日より】

****なぜ難民たちが集まる? 「アフリカの真珠」ウガンダはどんな国****
戦争、迫害、災害、貧困といった窮状にひんして、故郷を追われる人々は世界中で絶えません。アフリカ最大の難民受け入れ国でありながら、ウクライナや中東の紛争のはざまで光の当たらない国があります。ウガンダです。一体どのような国で、なぜ難民たちが集まってくるのでしょうか。

 Q ウガンダってどんな国なの?
 A アフリカ東部の内陸に位置し、面積は本州とほぼ同じ約24・1万平方キロ、人口は約5000万人です。赤道直下ですが、平均海抜は約1200メートルと高く、年間の全国平均気温は24度と快適です。英国のチャーチル元首相は植民地省高官時代にウガンダを訪問した際、豊かな自然を評して「アフリカの真珠」と呼びました。

 Q どんな歴史を持っているの?
 A 19世紀末に英国の保護領となり、1962年に独立しました。その後、クーデターが繰り返され、政情不安が続きました。ゲリラ闘争を率い86年に当時の政権を倒して大統領に就いたムセベニ氏が38年にわたり実権を握り続けています。

 Q アフリカ最大の難民受け入れ国らしいけど、どれぐらいの人が集まっているの?
 A 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、10月末時点で172万人に上ります。出身国別では、最多が北隣の南スーダンで96万人。次いで、西隣のコンゴ民主共和国55万人▽スーダン6万人――などとなっています。

 南スーダンでは2013年以降、政府軍と反体制勢力が内戦状態に陥り、数十万人が死亡したとされています。南スーダンからの大規模な難民の流入が受け入れ急増の背景にあります。

また、コンゴ民主共和国では産出される鉱物資源を巡り武装勢力による紛争が激化し、食糧不足や感染症など人道危機が深刻化しています。

 Q 難民はどんな生活を送っているの?
 A 大半は、政府が国内に設けた難民居住区と呼ばれる地域で暮らします。公式の認定数としては国内に13カ所あります。居住区は、難民が現地の人たち(ホストコミュニティー)と同じエリアで共生するのが特徴で、政府からは居住と耕作のための土地が提供されます。

原則的に自由な出入りが認められていない難民キャンプとは違い、移動の自由や就労の権利が認められています。居住区に設置された学校や医療施設を利用することもできます。先進的な難民政策は国際社会から「ウガンダモデル」として評価されています。

 Q 課題はないの?
 A 国際社会からの人道支援が減っていることが大きなネックになっています。難民政策を担当するウガンダ政府当局者によると、18年には海外から国連を通じて4億6000万ドルの人道支援が集まっていましたが、直近では1億8000万ドルにまで減少しています。

国際社会が関心を寄せるウクライナや中東での紛争の陰に隠れていることが背景にあるようです。また、大量の難民に比べて、受け入れ側の態勢が追いつかず、十分な支援が行き届きづらくなっていると指摘されています。

 Q 私たちにも何かできることはないかな。
 A ウガンダ首相府難民局のパトリック・オケロ局長は取材に「日本政府と指導者の継続的な支援と、難民に適切に対応するための多くの投資に対して敬意を表したい」と感謝を述べました。その上で「ウガンダのように多くの難民を受け入れている国々への支援を優先してほしい」と訴えています。
回答・郡悠介(社会部大阪グループ)【11月20日 毎日】
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“先進的な難民政策は国際社会から「ウガンダモデル」として評価されています”・・・始めて知りました。

多くの国で、移動や就労を認めない閉鎖的な難民キャンプとなっているのは、それなりの理由があってことです。

難民の出入りを自由にすれば、出身国に対する抵抗運動を行う勢力が国内で活動し、ひいては自国の政府に対する抵抗運動などとも連動しかねないといった、治安や政治問題があります。

また就労を認めると、地域住民の「仕事を難民に奪われる」「難民と就労を競争するため、賃金が低く抑えられる」といった不満を惹起しトラブルを起こすことも。

「ウガンダモデル」がそのあたりの問題をどのようにクリアしているのか知りたいところですが、今のところ情報がありません。

【「反LGBT法」で欧米と対立】
冒頭にも書いたようにウガンダと言えば、38年に及ぶムセベニ大統領の超長期支配です。
強権的支配というのはウガンダだけの話でもなく、むしろ欧米以外では一般的な政治形態かも。アフリカ国々はどこもそうした傾向があります。

そうした中でも近年注目されたのが「反LGBT法」

****ウガンダ、性的少数者の制限法 「重度の同性愛」最高で死刑も****
アフリカ東部ウガンダで、LGBTQ(性的少数者)の行動を大幅に制限する法律が成立した。大統領報道官の29日の発表をロイター通信が伝えた。

エイズウイルス(HIV)感染者の同性と関係を結ぶなどの「重度の同性愛」に対しては最高で死刑を科すなど厳しい内容。

議会が3月に可決した法案にあった、個人がLGBTQと自認すること自体を犯罪とする文言はなくなったが、多くは法案の内容がそのまま残った。同性愛の「促進」行為は禁錮20年と規定。LGBTQの支援団体の活動が取り締まりを受ける恐れがある。

ムセベニ大統領が29日までに法案に署名した。【2023年5月29日 共同】
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法律は実際に運用されています。23年8月には“同性と繰り返し性的関係を結ぶような「重度の同性愛」に当たる行為をしたとして、検察当局が20歳の男性を訴追した”【2023年8月29日 共同】といったニュースも

こうした「反LGBT法」に関して、LGBTの権利を擁護する欧米から強い批判があります。一方ウガンダも「欧米諸国がアフリカに同性愛を受け入れるよう強要している」と激しく反発しています。

****欧米、アフリカに同性愛受け入れ「強要」 ウガンダ****
米国が厳格な反同性愛法を理由にウガンダの政府当局者へのビザ発給を停止したのを受け、ウガンダ政府は6日、欧米諸国がアフリカに同性愛を受け入れるよう強要していると非難した。

米政府は4日、反同性愛法がウガンダの「民主化プロセスを損ない」、LGBTQ(性的少数者)コミュニティーを含む国民の人権を侵害しているとして、ウガンダの政府当局者へのビザ発給を停止した。

ウガンダのヘンリー・オリエム・オケロ外務副大臣は6日、「米国と欧州の一部の国々がアフリカ、特にウガンダに対して援助や融資と引き換えに、同性愛を受け入れるよう強要する間違った試みを行っている」とAFPに語った。

米国はウガンダで新たな同性愛法が成立した直後の6月、同国の政府高官に対するビザ発給制限の第1弾を開始。先月には、ウガンダについて、2024年1月からアフリカ成長機会法に基づく優遇措置の対象から除外すると発表した。

だが、オリエム氏は「議会と大統領の指示に従うまでで、援助がなくともわが国の開発計画は変わらない」とし、ウガンダは外国から援助を受けることなく独立したと主張。「渡航や貿易関係について条件を課すことなく、わが国の開発課題を尊重してくれる国際パートナーや国は他にもある」と述べた。

ウガンダで5月に成立した反同性愛法では、「加重同性愛」の刑罰として死刑が定められている。また、合意の上での同性愛行為にも終身刑が科される可能性がある。

米国のジョー・バイデン大統領や欧州連合、国連のアントニオ・グテレス事務総長は、同法を非難。廃止されない限り、外国からウガンダへの援助や投資が引き揚げられる可能性があると警告している。

だが保守色の濃いウガンダで同法は幅広い支持を得ており、議員らは欧米的な不道徳に対する防波堤として必要な措置だと主張している。 【2023年12月7日 AFP】
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欧米主導の世界銀行も“(2023年8月)8日、多くの国や国連から非難されているウガンダの「反LGBTQ(性的少数者)法」が世銀の価値観に反するとして、ウガンダ政府への新規融資を停止すると発表した。”【2023年8月9日 ロイター】とのこと。

LGBTの権利擁護が、“世銀の価値観”と言えるほど普遍的なものかどうかは疑問ですが。

私の世代がウガンダに関してネガティブあるいは暗いイメージを持ちがちなのは、ムセベニ大統領以前の時代のことではありますが、強烈なカリスマ性と、「人食い大統領」と呼ばれた凶暴さを併せもっていたウガンダの独裁者アミン元大統領(法学博士の肩書も持つ。身長193cmの巨漢で、東アフリカのボクシングヘビー級チャンピオンになったこともある)の影響もあるのかも。

“「虐殺した政敵の肉を食べた」などの噂を立てられた結果、「人食い大統領」というニックネームもつけられたが、実際のアミンは菜食主義者で、肉は鶏肉しか口にしたことがなかったといわれている”【ウィキペディア】

【ウガンダで暮らすスーダン難民】
話をウガンダで暮らす難民に戻すと、前述のように紛争が続くスーダンからの難民も多くいます。
その一人がネイマットさん(31)

****「強く生きられる気がする」難民172万人 受け入れ国ウガンダで今****
(戦争、迫害、災害、貧困などを理由に故郷を追われる人々は世界中で絶えない。アフリカ最大の難民受け入れ国でありながら、ウクライナや中東の紛争のはざまで光の当たらないウガンダから、難民のいまを報告する。

スーダン「忘れられた紛争」
赤茶けた大地が見渡す限り広がり、居住用の小さなテントが点在する。アフリカ東部の内陸国・ウガンダには、紛争などで周辺の国々を追われた人たちが大量に流入している。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、10月末時点で172万人。アフリカ最大、世界有数の難民受け入れ国として知られる。

10月下旬、ウガンダ中西部のキリヤンドンゴ難民居住区で、スーダンから逃れてきたネイマットさん(31)が沈痛な表情を浮かべた。「あの出来事を思い出すだけでひどく胸が痛む」

ウガンダの北にあるスーダンでは2023年4月、政府軍と、政府系の準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」による内戦が勃発。一般国民を巻き込み、UNHCRによると、人口約4600万人中、約1100万人が家を追われた。紛争地のデータ収集を行う米NPO「ACLED」は2万7000人以上が犠牲になったとしている。しかし、ウクライナや中東での戦争に埋もれ、「忘れられた紛争」と呼ばれる。

突然の襲撃 面前で夫殺され
平穏な一家の日常は突然の襲撃で断ち切られた。アフリカ北東部スーダンでは2023年4月に始まった軍事衝突が何ら罪のない一般国民に悲劇をもたらしている。

「親戚と連絡さえ取れず、誰も頼ることができない」。祖国スーダンを逃れ、ウガンダに身を寄せるネイマットさん(31)は嘆く。

10年ごろ、幼なじみでいとこのアダムさんと結婚。誠実で優しく、信心深い性格を愛し、けんかをしたこともなかった。2男2女に恵まれ、夫が営む食料品の小売店は経営が上向き、首都ハルツーム近郊で充実した日々を送っていた。

スーダンでは23年4月15日、政府系の準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」が反乱を起こした。RSFは00年代に地方の反政府勢力を攻撃するために作られた民兵組織に由来する。要員や装備を強化して政府軍に準じる役割を任されていたが、近年、政府軍への編入を巡って権力争いが激化していた。

戦闘開始から間もなく、家族での夕食後に突然外から男性の怒声と大勢の足音が聞こえてきた。「アダム、これがお前の最後の日だ」。銃を携えた覆面姿の男たち約20人が敷地の塀を乗り越え押し入ってきた。

アダムさんは両脚を銃で撃ち抜かれ、ネイマットさんは銃で腹部などを激しく殴られた。「なぜそんなことをするんだ」。アダムさんはそう叫んだ瞬間、家族の面前でナイフで首を切られ、大量に出血して絶命した。「彼らには慈悲がなく、神さえ恐れない。人間ではない」と怒りを込める。

「家にある全財産を渡せ」。脅されたネイマットさんは家にある金銭や販売用の商品、身につけていた結婚祝いのネックレスなどをかき集めて渡した。「これで何とか解放される」

しかし、蛮行は終わらず、鎖で手脚を縛られて全裸で寝室に監禁された。飲食物は与えられず、10人を超える男たちに連日暴行を受けた。数日後、意識を失い、気付いた時には病院のベッドの上だった。「ショックで全身の感覚が失われ、声すら出ず、自分が自分でないようだった」と嘆く。

ネイマットさんが後に長男ファリスさん(12)から聞いた話によると、自宅は約20日間占拠された後、男たちが気絶したネイマットさんと、監禁されていた子どもたち、そしてアダムさんの遺体を車で遠く離れた路上に運び、放置したという。ネイマットさんは残虐な手口から男たちがRSF以外にないと考えている。

次男フォウジさん(10)は父親が面前で殺されたショックで家の裏口から飛び出し、今も行方が分からない。ネイマットさんは「あの子のことを考えない日はなく、胸が張り裂けそう。でも今の私にはどうすることもできない」と涙を浮かべる。

絶望の淵で描く夢
安全のため2〜12歳の子ども3人を連れて隣国・南スーダンに逃れた。避難生活を送る中で、「ウガンダなら難民でも安心して暮らせる」といううわさが耳に入った。貨物バスの隙間(すきま)に少額の代金で乗せてもらうなどして、24年7月、ウガンダ中西部のキリヤンドンゴ難民居住区にたどり着いた。

居住区は難民がウガンダの人たち(ホストコミュニティー)と同じ地域で共生できるよう政府が国内各地に設置しており、居住・耕作用の土地が提供される。キリヤンドンゴは地元民約73万人と難民約13万人が暮らす。

「やっと人生をやり直せる」。しかし、翌8月、子どもたちと就寝中、何者かに住まいのテントを切り裂かれた。身の危険を感じて今は隣人のテントの一角で寝泊まりをさせてもらっているが、肩身は狭い。

スーダンの自宅での襲撃の際、銃で殴打された後遺症か、腹部は大きく膨れ上がっている。少し重い物を持つと激痛が走り、水をくんで運ぶこともできない。居住区の医療施設には検査機器がなく、設備の整った私設病院に行こうにも交通費や治療費が払えない。

そんな絶望の淵にあっても、一つの夢がある。少しずつお金をためて食料品の売店を開くことだ。生計を立てる以外に大切な理由があるという。「食料品店は夫がスーダンで営んでいた。夫の思いを継ぐことで、残された子どもたちと、夫を思い出しながら強く生きていける気がするから」【11月20日 毎日】
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【進まない国際社会の停戦に向けての取組】
スーダンでの準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」と政府軍の戦闘は今も続いています。国際社会の停戦に向けての取組もままならないようです。

****ロシアが拒否権行使、スーダン内戦の停戦決議案を否決 国連安保理*****
国連安全保障理事会で18日、スーダン内戦における民間人の保護と敵対行為の停止を呼びかける決議案の採決があり、ロシアの拒否権行使で否決された。ロシアは内戦当事者双方と関係を持つ。全15理事国のうち米中を含む14カ国は決議案に賛成していた。

北アフリカのスーダンでは、2023年春から国軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の内戦が続く。国連によると、人口の3割近くにあたる1400万人超が国内外に避難した。全土で人道危機が深刻化し、性暴力などの被害も数多く報告されている。

RSFは、露政府傘下の民間軍事会社ワグネルの支援を受けてきたとされる。露政府は同時に、紅海での軍事拠点確保などを目的として、武器支援を通じてスーダン国軍への影響力も強めている。

今回の決議案は、双方に敵対行為の停止や人道支援の実施へ向けた対話を呼びかける内容で、英国とシエラレオネが提案した。

否決を受けて、議長を務めたラミー英外相は「グローバルサウス(新興・途上国)のパートナーであるかのように振る舞うプーチン(露大統領)は恥を知れ」と非難し、「どれだけのスーダン人が殺され、女性がレイプされ、子どもが飢えなければならないのか」と言葉を強めた。

ロシアのポリャンスキー国連次席大使は会合で「個々の理事国の意見を安保理の決定を通じて押しつけるべきではない」と拒否権行使を正当化した。ロイター通信によると、スーダン外務省はロシアの対応を歓迎する声明を発表した。【11月19日 毎日】
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“スーダン外務省はロシアの対応を歓迎する声明を発表した”・・・このあたりの事情は良く知りません。国際社会による停戦の押しつけには反対するということでしょうか。
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