
(ケニア インフルエンサー・オジュワン氏の留置場での死亡を受け、反政府を掲げデモ行進を行う人々【6月13日 CNN】)
【ケニア 1年前に課税提案で混乱 今も、依然として市民と政府の緊張が続く】
1月19日ブログ“アフリカ 政治的権利に目覚めるの若者、デジタル駆使し抗議活動 混乱に終わる危うさも”でも取り上げたように、かつては民主主義においても、経済においても、アフリカの優等生とも言われていた東アフリカのケニアでは昨年6月~7月頃、政府の増税案に抗議する若者らのデモが激化し、“警察が少なくとも60人のデモ参加者を殺害し、さらに66人を拉致した”と混乱しました。
****ケニア 2024年の出来事(自動翻訳)*****
ケニアの人権状況は、この1年間で悪化した。当局は、生活費の高騰をめぐる全国的な抗議行動に対する厳しい弾圧で、平和的な抗議行動の権利を制限した。
当局は、抗議行動の社会経済的原因に対処せず、それどころか、抗議行動を支援したとされる抗議行動のリーダー、活動家、市民社会団体に嫌がらせ、脅迫、逮捕した。
ウィリアム・ルト大統領は、彼の政権に不利な決定を下したとして、裁判所を公に脅迫した。当局が人権侵害に関与した法執行官を捜査したり、訴追したりすることはほとんどない。
心理社会的障害が現実にある、または認識されている男性、女性、子どもは、不十分な支援やメンタルヘルスサービス、偏見の蔓延により、狭い狭い空間に鎖でつながれたり閉じ込められたりし続けています。(中略)
デモ参加者に対する警察の残虐行為
6月18日から、ケニアは、国際通貨基金(IMF)の歳入目標を達成するために2024年財政法案で提案された税金をめぐり、8月まで続いた激しい街頭抗議活動に直面しました。
主に18歳から35歳までのケニア人によって組織された抗議行動は、6月25日の議会侵入でピークに達した。抗議者たちは、多くの非公式労働者が使用するパン、生理用品、モバイルマネートランスファーなどの商品やサービスに対する税金に反対した。抗議の怒りは、政府の浪費や汚職、公共サービスの悪化する無視にまで発展した。
警察は群衆に直接発砲し、抗議者や見物人を殺害した。当局は、抗議行動のリーダーと思われる人々、または議会侵入に関与した推定3,000人の抗議者の一人を追跡し続けている。
これらの人々のうちの何人かは、治安部隊の容疑者によって逮捕または誘拐され、その後強制的に失踪した。6月31日、国が資金提供するケニア国家人権委員会(KNCHR)の暫定報告書は、警察が少なくとも60人のデモ参加者を殺害し、さらに66人を拉致したと述べた。
拷問の痕跡を示す人々の遺体は、川、森林、放棄された採石場、遺体安置所に次々と現れた。当局は、これらの犯罪について、いまだに捜査や訴追を行っていない。
ケニアには、警察の残虐行為の歴史があり、治安部隊による深刻な人権侵害に対する説明責任の欠如がある。集会と結社の自由の権利に関する報告者や、超法規的、即決、恣意的処刑に関する報告者など、国連の特別報告者数人による人権侵害の調査のための訪問要請は、ケニア当局からの承認を何年も待っていた。
ケニアの税制提案における人権問題
2024年と同様に、ケニアも2023年財政法案の税制提案に対する抗議行動を経験しました。ルト大統領は、ケニア国民の90%以上が反対しているという議会報告にもかかわらず、2023年の法案に署名し、同様に強い反対にもかかわらず2024年の法案に署名する予定でした。
この税制法案は、生活費を増加させ、人権を損なう経済対策を開始したIMFプログラムの文脈で出されたものです。政府もIMFも、彼らが追求している政策が人々の経済的、社会的、文化的権利の実現にとって最善であることを確認するための影響評価を公表していません。
ケニアの保健、教育、その他人権に不可欠なサービスへの支出は減少傾向を続けており、IMFのプログラムの下では国際基準をはるかに下回っている。(後略)【Human Rights Watch】
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2025/26年度予算において、政府は新たな増税を実施しない方針を明言しました。
最近の政治状況などについては「ChatGPT」によれば、以下のように「昨年の増税デモとは性質が異なるが、依然として市民と政府の緊張が続いている」状況のようです。
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ケニアでは昨年6~7月に「#RejectFinanceBill2024」デモが激化し、激しい衝突で最終的に政府は増税案の撤回に追い込まれました(少なくとも50~60名の死者)
現在(2025年6月時点)の状況まとめ
1. 財政方針の転換
2025/26年度予算において、政府は新たな増税を実施しない方針を明言しました。 増収策は税率引き上げではなく、税収効率化や脱漏防止に軸足を置く方向です。
2. 抗議・弾圧の新たな火種
2025年6月上旬、ソーシャルメディアで警察幹部を批判したブロガー、アルバート・オジャン(Albert Ojwang)氏が拘留後に死亡。自殺説を警察が主張するも、検視で拷問の跡が明らかになり、全国で抗議が再燃しました。
現在、関連した警察官が逮捕・拘留され、国家警察監視機関が捜査を進めています。 首都ナイロビでは抗議活動が続き、デモ隊と警察の衝突も断続的に発生しています。
3. デジタル・市民活動への規制強化
5月には、財政案へのオンライン反対手段を構築したIT開発者ローズ・ンジェリ(Rose Njeri)氏が逮捕・拘留(後に保釈)。当局は彼女にサイバー法違反を適用し、国民参加ツールを“政府迷惑行為”と断定しました。
この動きは、当局が“Gen Z世代”(1995年〜2012年生まれ)や若者主体の政治活動を封じ込めようとする、戦略的な抑え込みの一環との指摘があります。
4. 政府の対話・情報戦略
昨年の失敗を踏まえ、今年は増税しない予算と合わせて政府がメディア戦略を駆使し、国内向けに「対話路線」「説明責任」を強調しているとの報道もあります。
総まとめ
現在もナイロビなど都市部では「警察の暴行に対する抗議」「言論の自由を巡るデジタルな闘い」が継続中です。
展望と懸念
オジャン氏の裁判や警察の扱いについての透明性が政策信頼の鍵となる
若者世代、特にデジタル世代による草の根運動が今後も政府にプレッシャーをかける可能性
来年の財政法案以降に、新たな抗議の火種が再燃するリスクあり
現状は「昨年の増税デモとは性質が異なるが、依然として市民と政府の緊張が続いている」フェーズといえます。
このまま国内外からの監視が続く中、政府の透明性ある対応が求められています。【ChatGPT】
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【留置場でインフルエンサー死亡】
上記記事で「抗議・弾圧の新たな火種」とされている、警察幹部を批判したブロガー、アルバート・オジャン(Albert Ojwang)氏が拘留後に死亡した件については、以下のようにも。
****ケニア人ブロガーの警察拘留中の死亡への抗議活動に警察は催涙ガス使用(自動翻訳)****
ケニア警察は月曜日、不明な状況下で警察に拘束されていたブロガーの死亡に抗議するデモに参加していた活動家に対し、首都ナイロビの中央警察署へ向かうデモ行進で催涙ガスを2回発射した。
アルバート・オジュワン氏は中央警察署で拘束中に死亡しているのが発見された。警察は死因を「独房の壁に頭をぶつけた」としているが、活動家らは死因に疑問を呈している。
オジュワン氏は金曜日、ケニア西部ホマベイで逮捕され、警察幹部に関する「虚偽の情報」をソーシャルメディアに投稿したとして、400キロ離れたナイロビまで連行された。
このブロガーの死は、2024年の財政法案に抗議するデモ中に数人の活動家や抗議者がケニア警察に殺害され、拉致されてからほぼ1年後に起きた。昨年、提案されていた増税案は撤回されたにもかかわらず、経済的な不満は依然として高い。
「私たちの要求は未だ満たされていません。失業率は昨年の10倍に膨れ上がり、殺人事件も依然として発生しています」と、人民解放党の活動家、ンドゥンギ・ギトゥク氏は述べた。「つまり、私たちの抗議活動では何も解決されなかったのです。私たちの自由は未完成です。この国は富裕層のものであり、今こそ貧困層が立ち上がるべき時です。数日後の(建国記念日に)まさにこれと同じことが起こるでしょう。」
ケニア警察は、独立警察監視局が捜査を開始したと発表した。 オジュワン氏が拘留中に死亡した際に勤務していた警察官も、捜査結果を待つ間は職場に戻らないと、ダグラス・カンジャ警察監察総監は述べた。
しかし、多くの人々は今回の捜査手続きに懐疑的だ。
「ケニア警察はこれまで真実を語ってきませんでした。負傷者は他にもいたことは分かっています。彼らは若手警察官を犠牲にすることを決めたのです。私たちはオジュワン氏をはじめ、命を落とした多くの人々のために正義を求めます」と、人権団体ボーカル・アフリカのフセイン・ハリド氏は述べた。【6月10日 AP】
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結局、警察側が謝罪する形に。 しかし抗議の声はおさまっていない様子。
****留置場でインフルエンサー死亡 警察発表に専門家が異議、市民の抗議デモ続く ケニア(自動翻訳)****
ケニアの首都ナイロビで、教員の男性が警察の留置場で死亡したことに端を発する抗議デモが続いている。12日には抗議デモに集まった市民らを解散させようと、警察が催涙弾を使用した。
死亡したのは教員で活動家だったアルバート・オジュワン氏(31)。抗議デモは9日から始まった。警察はこの前日、オジュワン氏は監房の壁に自分で頭を打ち付けて死亡したと説明していたが、専門家に反論されてその後、この説明を撤回した。
ケニアでは昨年、政府の財政法案が抗議運動を受けて撤回を余儀なくされて以来、政府批判の活動家ら数十人が行方不明になっている。これに対して若者らが反発を強めており、オジュワン氏の死で憤りに火が付いた。
地元紙によると、死亡したオジュワン氏はインターネットやSNSで強い影響力を持つインフルエンサーだった。
警察は当初の発表で、オジュワン氏は「虚偽情報を公表」した疑いで6日に逮捕され、8日に意識を失った状態で発見されたとしていた。
国営放送のKBCによると、警察は警官6人について捜査している。
オジュワン氏の死因については政府の法医学者のバーナード・ミディア氏が11日、警察の説明と異なる見解を発表。検視の結果、頭部の重傷に加えて首の圧迫跡や全身に及ぶ複数箇所の組織の損傷が見つかったことを明らかにした。
記者団に対してミディア氏は、オジュワン氏が暴行を受けて死亡したのは明らかで、「自傷はあり得ない」と断言した。
カンジャ本部長は同日、当初の説明を撤回。国家安全保障委員会で「国家警察を代表して、あの虚偽情報について謝罪する」と述べた。【6月13日 CNN】
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【財政案へのオンライン反対手段を構築したIT開発者】
また、「デジタル・市民活動への規制強化」の事例としての、財政案へのオンライン反対手段を構築したIT開発者ローズ・ンジェリ(Rose Njeri)氏が逮捕・拘留された件については・・・
****ケニアのソフトウェア開発者逮捕への怒りが高まる中、地域での弾圧が拡大(自動翻訳)****
ローズ・ンジェリは、税制改革案への反対を表明するためのツールを作成したとして、サイバー犯罪法違反の罪で起訴された。
ケニアのソフトウェア開発者でデジタル活動家である女性が、先週、法案への反対意見を表明するためのツールを作成したとして逮捕されました。彼女は、彼女の拘留に対する国民の怒りと、東アフリカのケニアとその近隣諸国における弾圧の兆候の高まりを受け、法廷で起訴され、保釈されました。(中略)
検察は起訴状の中で、彼女のツールはユーザーが国会の財務委員会に自動的にメールを送信できるようにし、「システムの正常な機能を妨害していた」と述べています。
ンジェリ氏は5月19日、Xに新しいツールを発表する投稿をしました。「2025年財政法案をワンクリックで拒否できるシンプルなプログラムを作成しました。異議申し立てを送信するには、以下をクリックしてください」と彼女は述べています。彼女は金曜日にナイロビの自宅で逮捕され、警察は彼女の電子機器を押収しました。
彼女の逮捕は国内で激しい怒りを引き起こし、政治家、市民社会のメンバー、そしてケニア国民全体がこれを非難し、彼女の釈放を求めた。(中略)
ンジェリ氏が提案した法案は、政府の歳入増加を目的とした広範な税制改革を提案する財政法案に関連している。専門家は、この法案が税負担を増大させ、ケニア国民の可処分所得を減少させる可能性があると指摘している。
昨年も同様の法案が提出され、前例のない抗議活動が引き起こされ、数十人の抗議者が殺害され、さらに多くの人が行方不明になったり拉致されたりした。デモは時間とともに縮小したが、殺害や失踪は続き、標的はネット上の批評家に移る傾向にあった。
ンジェリ氏の逮捕は、東アフリカ諸国政府による反体制派弾圧の波と指摘される一連の動きと軌を一にするものだ。(後略)【6月3日 The Guardian】
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【多くが失業状態の若者 デジタル駆使し抗議活動】
留置場で死亡したインフルエンサーのオジュワン氏にしても、逮捕されたソフトウェア開発者ローズ・ンジェリ氏にしても、政治的権利に目覚めたアフリカの若者がデジタル駆使し抗議活動を行っていること、政権側がそれを封じ込めようとしていることに関連しています。
****政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジタル駆使し抗議活動****
ケニアの民主活動家ボニフェース・ムワンギさんは過去何年にもわたって数え切れないほどのデモに参加してきたが、昨年6月と7日に行われた反政府デモはあらゆる期待を超える形になった。
ムワンギさんが目にしたのは、力強く覚醒した若者たちがソーシャルメディアを駆使し、増税が盛り込まれた予算法案への抗議を呼びかけるという今までになかった展開だ。
「デモの動員に最も力を発揮したのはZ世代だった。彼らはTikTok(ティックトック)、インスタグラム、X上に存在し、街頭に出現した人々の大多数は若者だった」とトムソン・ロイター財団に語った。
ムワンギさんは「歴史上初めてケニア人が一つの目的、つまり予算法案撤回に向けて団結した。われわれは自分たちが持つ力に目覚め、説明責任や意義ある改革を要求する活動的な市民となりつつある」と胸を張る。
こうした抗議が実を結び、ルト大統領は評判の悪かった法案を取り下げ、閣僚を更迭したほか、無駄な支出の削減を約束せざるを得なくなった。
人口構成が世界で最も若いアフリカでは、根強い汚職や拙い政治運営、生活費高騰、失業率上昇などに不満を抱える若者が主導する政治活動が広がっている。
ケニアやガーナ、ウガンダ、ナイジェリア、モザンビークなどのZ世代やミレニアル世代が昨年相次いで抗議の声を上げ、今年もそうした活動はさらに強まりそうだ。
インターナショナル・クライシス・グループのアフリカ担当プログラムディレクター、ムリティ・ムティガ氏は、若者らの不満の一因として、食料と燃料の価格を押し上げたコロナ禍やロシアとウクライナの戦争による痛手からアフリカ経済がなかなか立ち直れない点を挙げた。
ムティガ氏によると、次第に自らの権利を認識し、インターネットを通じて改革を訴える力を増している若者世代には、社会全体への恨みのような感情も高まってきている。
同氏は「若者は両親世代よりも多くを求め、受け取る情報も増えている。彼らは政治面でより行動的になり、今年はデモが増加する可能性があると思う」と述べた。(後略)【1月19日 ロイター】
ムワンギさんが目にしたのは、力強く覚醒した若者たちがソーシャルメディアを駆使し、増税が盛り込まれた予算法案への抗議を呼びかけるという今までになかった展開だ。
「デモの動員に最も力を発揮したのはZ世代だった。彼らはTikTok(ティックトック)、インスタグラム、X上に存在し、街頭に出現した人々の大多数は若者だった」とトムソン・ロイター財団に語った。
ムワンギさんは「歴史上初めてケニア人が一つの目的、つまり予算法案撤回に向けて団結した。われわれは自分たちが持つ力に目覚め、説明責任や意義ある改革を要求する活動的な市民となりつつある」と胸を張る。
こうした抗議が実を結び、ルト大統領は評判の悪かった法案を取り下げ、閣僚を更迭したほか、無駄な支出の削減を約束せざるを得なくなった。
人口構成が世界で最も若いアフリカでは、根強い汚職や拙い政治運営、生活費高騰、失業率上昇などに不満を抱える若者が主導する政治活動が広がっている。
ケニアやガーナ、ウガンダ、ナイジェリア、モザンビークなどのZ世代やミレニアル世代が昨年相次いで抗議の声を上げ、今年もそうした活動はさらに強まりそうだ。
インターナショナル・クライシス・グループのアフリカ担当プログラムディレクター、ムリティ・ムティガ氏は、若者らの不満の一因として、食料と燃料の価格を押し上げたコロナ禍やロシアとウクライナの戦争による痛手からアフリカ経済がなかなか立ち直れない点を挙げた。
ムティガ氏によると、次第に自らの権利を認識し、インターネットを通じて改革を訴える力を増している若者世代には、社会全体への恨みのような感情も高まってきている。
同氏は「若者は両親世代よりも多くを求め、受け取る情報も増えている。彼らは政治面でより行動的になり、今年はデモが増加する可能性があると思う」と述べた。(後略)【1月19日 ロイター】
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若者等の抗議の背景には“これらの若者の幻滅を、雇用機会の乏しさが助長している。国際労働機関(ILO)の調査では、サブサハラ地域の若者約5300万人の5人に1人余りは仕事や教育、職業訓練に全く縁がない。
24年にアフリカ13カ国の18歳から25歳までの5600人強を対象に実施した調査によると、回答者の4分の3は仕事を見つけるのが難しいと述べ、3分の2は政府の雇用創出に向けた取り組みに満足していないと訴えた。また5人に4人は汚職に懸念を持っているとも明かした。”という苦しい雇用状況があります。
こうした抗議行動が「アラブの春」のような失敗に終わることなく成果を出すためには、統率するリーダーが必要でしょう。