孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

スーダン  デモ隊強制排除で混乱拡大 「アフリカの天安門事件」とも

2019-06-05 22:51:15 | アフリカ

(スーダンの首都ハルツームを走行する治安部隊の車両(2019年6月4日撮影真)【6月5日 AFP】)


【統制のとれた抗議行動でいったんは合意成立】

アフリカ・スーダンでは、約4カ月間の市民の大規模反政府デモの結果、30年に及ぶ独裁支配を続けたバシル大統領(75)が411日、軍部のクーデターによって失脚しました。

 

その後、従来同様の軍による統治を目指す暫定軍事評議会と、文民統治を求める市民勢力の綱引きが続いていることは、510日ブログ“スーダン バシル失脚後の今も続く軍と市民の緊張 抗議行動の前面に立つ女性たち”で取り上げました。

 

上記ブログでは、市民勢力の抗議行動が(失礼ながら)アフリカ・スーダンのイメージとは異なり、市民自身のコントロールがよく機能して、秩序が維持されていること、また、これもイスラム国のイメージとは異なり、女性が前面に出た抗議行動が展開されていることを取り上げました。

 

こうした民主化を求める市民勢力の、軍部の介入を招かない秩序だった、粘り強い交渉が奏功して、一時は“成果”を出すかのようにも見えました。

 

****民政移行期間3年で合意、スーダン軍事評議会とデモ指導者ら****

スーダンで長期政権を崩壊させた軍事クーデター後に設置された暫定軍事評議会と、文民政権への速やかな移行を求めてきた反政府デモの指導者らは15日、完全な民政移管まで3年の移行期間を設けることで合意した。

 

一方で、新たな暫定統治機構をめぐる交渉はまだ終わっていない。
 
オマル・ハッサン・アハメド・バシル前大統領の失脚により、30年間続いた強権支配に終止符が打たれた。デモ側は文民主導の体制移行を求めているが、前大統領を打倒した軍事評議会が統治する状況が続いている。

 

軍事評議会メンバーのヤセル・アタ中将は、新たな暫定統治機構となる統治評議会の構成などで権力を分担するとの最終合意書が、デモを主導する民主化勢力の一派「自由・変革同盟」との間で今日中に締結されると述べた。

 

また、3年とされる移行期間の初めの6か月間で、ダルフールや青ナイル、南コルドファンといった紛争地の反政府勢力と和平協定を締結するという。

 

当初、軍事評議会は移行期間を2年とすることを強く主張し、一方、デモ側は4年を要求していた。

 

移行期間の年数についてはこれで合意に至ったものの、統治評議会の構成に関する重要な交渉は残ったままだ。軍事評議会は軍主導の評議会を主張しているが、デモ指導部側は過半数を文民とすることを求めている。

 

民政移行への流れとしては、現在の軍人のみから成る暫定軍事評議会に代わり、新たな暫定統治機構として統治評議会が発足された後、さらに暫定文民政権が発足されて国務を行う。

 

移行期間の終わりには、バシル前大統領失脚後初の選挙が実施される予定で、暫定文民政権はこれに向けて準備を進めていく。 【515日 AFP】AFPBB News

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“軍事評議会は移行期間を2年とすることを強く主張し、一方、デモ側は4年を要求”というのは、通常とは逆のような感じもしますが、軍部としては民主化勢力の選挙態勢が整わないうちに、軍部の影響力が及ぶ勢力が主導する形で“見せかけの”文民統治へもっていこうという思惑でしょうか。

 

【軍主導を譲らず、混乱状態へ】

しかし、結局は文民統治に消極的な軍部の考えを覆すことはできなかったようです。交渉はこの合意直後に暗礁に乗り上げます。

 

****スーダン軍事評議会、民政移行の協議を中断***

先月長期政権が崩壊したスーダンで、反政府デモの指導者らと民政移行について協議していた軍事評議会は16日、交渉を成立させるためにはさらに時間が必要だとして協議を中断した。この間、首都ハルツームでは治安状況が悪化している。

 

スーダンを長年、強権支配してきたオマル・ハッサン・アハメド・バシル前大統領の失脚後、文民政権への移行に伴う新たな暫定統治機構の構成は最も厄介な問題となっている。

 

軍事評議会と反政府デモの指導者らは、今後3年間の暫定統治機構に関する最終合意書を15日に決定する予定だった。

 

しかし、ハルツームの軍本部前で行われているデモ隊の座り込みのそばで発砲があり、少なくとも8人が負傷したとの情報が入り、暫定軍事評議会の議長を務めているアブデル・ファタハ・ブルハン大将は交渉を72時間休止すると発表した。

 

ブルハン大将は交渉再開の余地を残した一方で、反政府デモの参加者らに対し、ハルツーム市内のバリケード撤去や首都に出入りする橋や鉄道の再開を要求。さらに「治安部隊との衝突を誘発しないよう」求めた。さらに「反政府デモの中に武装した参加者が紛れ込んでおり、治安部隊に発砲している」と付け加えた。 【516日 AFP】

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“デモ隊の座り込みのそばで発砲”というのが、どのような勢力によって行われたのかは定かではありませんが、これを契機(あるいは口実)として軍部は反政府デモ勢力を力で排除する方向に動きます。

 

****軍がデモ隊に発砲、13人死亡=首都に治安部隊展開―スーダン****

軍事評議会が統治するスーダンの首都ハルツームで3日、治安部隊が軍本部前で座り込みを続けるデモ隊排除のため発砲し、現地の医療団体によると、市民13人が死亡した。(中略)

 

デモを主導する団体は「血なまぐさい虐殺だ」と軍を非難。軍政側と民政移管に向けて続けてきた協議を今後は打ち切ると表明した。

 

これに対し、軍事評議会は「強制排除の事実はない」と反論。「座り込みの隣に集まっていた反社会集団を捕らえようとしたら、座り込みの方へ逃げた。座り込んでいた若者たちが自分の考えで立ち退いた。テントはまだある」と主張した。【63日 時事】

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【暫定軍事評議会 合意破棄、9か月以内に選挙 重武装政府系民兵組織配置で死傷者拡大】

暫定軍事評議会は515日の合意を破棄し、自らの主導で9か月以内に選挙を実施することを発表。

デモ参加者30人が死亡するなど混乱も急速に拡大しています。

 

****スーダン暫定軍事評議会 「デモ指導部との合意破棄、9か月以内に選挙実施」****

スーダンのアブデル・ファタハ・ブルハン暫定軍事評議会議長は4日、民政移行を求めるデモ指導部との合意を破棄し、9か月以内に選挙を実施することを決めたと述べた。

 

首都ハルツームでは3日、軍本部前で数週間前から座り込みを続けていたデモ隊が強制排除され、デモ参加者など少なくとも30人が軍による発砲などで死亡した。

 

ブルハン議長は4日未明に国営テレビで放送された声明の中で、「軍事評議会は、民主化勢力の一派『自由・変革同盟』との交渉をやめ、これまでの合意を破棄するとともに、9か月以内に総選挙を実施することを決めた」と述べ、選挙は「地域と国際社会の監視」のもとで行われると付け加えた。

 

スーダンでは、オマル・ハッサン・アハメド・バシル大統領の強権政治に対する抗議が数か月間続いた後、暫定軍事評議会が4月にバシル大統領を失脚に追い込んだ。

 

その後暫定軍事評議会は、文民政権を樹立するため3年の移行期間を設定し、定数300の議会を設けて議席の約3分の2をデモ実施勢力から、残りをそれ以外の政治勢力から選ぶことで合意していたが、交渉は520日から中断していた。

 

3日にデモ隊から死者が出たことを受けて、自由・変革同盟は「クーデターを起こした暫定軍事評議会とのすべての政治的接触と交渉の終了」を発表した。

 

ブルハン議長は、デモ隊の強制排除で死者が出たことについて暫定軍事評議会は検事総長に調査を依頼すると述べた。 【94日 AFP】

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こうした混乱を、欧米メディアのなかには、同様に民主化要求を軍事的に排除して多数の犠牲者を出した中国の天安門事件になぞらええて「アフリカの天安門事件」と呼ぶものもあるようです。

 

この混乱について、暫定軍事評議会は強制排除実施時の不手際によるものだとして遺憾の意を表していますが・・・

(数日前までは「強制排除の事実はない」とも言っていましたが・・・)

 

****反政府デモのスーダン専門職組合、暫定軍事評議会の選挙プランを拒否 緊張続く****

スーダンの暫定軍事評議会が、3年間の民政移行期間を設けるとした反政府デモ指導部との合意を破棄して9か月以内の選挙の実施を決めたと4日に発表したことに対し、反政府デモを主導してきたスーダン専門職組合は同日これを拒否した。

 

同組合は「全面的な市民的不服従」によって暫定軍事評議会を打倒しようと支持者に呼び掛けた。

 

首都ハルツームでは3日、軍本部前で数週間前から座り込みを続けていたデモ隊が強制排除された際に多数の死傷者が出た。死者の数はこれまでに40人近くに上っている。

 

この事態について、暫定軍事評議会は強制排除実施時の不手際によるものだとして遺憾の意を表したが、スーダン専門職組合は「虐殺」に当たると主張している。

 

ハルツーム全域では緊迫した状態が続いており、重武装した政府系民兵組織「即応支援隊」の要員が多数動員されている。3日の強制排除の背後で動いたのは主に即応支援隊だったと考えられている。

 

ハルツーム一帯で治安対策が強化され、インターネットも利用できなくなっているにもかかわらず、一部地域の住民らはイスラム教の断食月「ラマダン」明けの祭り「イード・アル・フィトル」を1日早く祝い、また抗議デモをするために屋外に出ている。

 

スーダン専門職組合は、イード・アル・フィトルの祈りを4日に行って、デモで亡くなった人たちを追悼するとともに平和的な抗議行動をしようと呼び掛けていた。 【65日 AFP】AFPBB News

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“重武装した政府系民兵組織”・・・・軍の直接関与を避けながら、力の行使する際の常とう手段です。

正規の軍でないだけに、残虐行為がほとんど不可避的に発生します。(軍はそれを黙認することで、力による排除が進行します)

 

200万人の死者、400万人の家を追われた者、60万人の難民が発生している【ウィキペディア】とも言われ、「世界最悪の人道危機」とも称されたダルフール紛争で虐殺を行ったのもアラブ系民兵組織でした。

 

デモ隊を軍が強制排除した際の死者は少なくとも60人に上るとも。【65日 CNNより】

混乱は首都ハルツームだけでなく、全国に拡大しているようです。

 

****スーダン治安部隊が組織的に病院襲撃、レイプも 医師らが訴え****

スーダンの医師らは4日、同国の治安部隊が各地で病院や医療従事者を襲撃していると非難し、首都ハルツームの軍本部周辺では複数の女性がレイプされたと主張した。

 

スーダン医師連合に所属する医師の一人は、英ロンドンの王立病理学会で記者会見を開き、「彼ら(治安部隊)は権力を掌握して以来長年にわたり、スーダン各地で病院を襲撃してきた」「病院は組織的な襲撃を受け、医療従事者が容赦なく殴られてきた」と明らかにした。

 

特にダルフールやヌバ山地、青ナイルといった地域で被害が大きいという。

 

この医師はさらに、「この状況を継続させるわけにはいかない。現在スーダンで起きていることを食い止めるため、国際社会のレベルで圧力をかけるか、行動を起こすことを求める」と述べた。 【65日 AFP】

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病院襲撃、レイプ・・・(失礼ながら)いかにもスーダン的な様相を呈しています。

 

“(暫定軍事評議会議長の)ブルハン氏は3日に死亡したデモ参加者らを「殉死者」と呼び、「遺憾」の意を表したが、軍の責任には直接言及しなかった。検事総長による捜査を約束する一方、市民に「許しの精神」を示すよう呼び掛けた。” 【65日 CNN】

 

軍が「遺憾」の意を表している分、むき出しの暴力が横行したダルフール紛争当時からは“進歩した”、“軍も変わった”と考えるべきなのでしょうか?

 


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スーダン バシル失脚後の今も続く軍と市民の緊張 抗議行動の前面に立つ女性たち

2019-05-10 22:44:20 | アフリカ

(スーダンの首都ハルツームでのデモで音頭をとるアラ・サッラー。201948日【418日 クーリエ・ジャポン】)

 

【今も続く軍と市民の緊張】

アフリカ・スーダンでは、約4カ月間の市民の大規模反政府デモの結果、30年に及ぶ独裁支配を続けたバシル大統領(75)が411日、軍部のクーデターによって失脚しました。

 

しかし、実権を掌握した軍が2年間の移行政権を運営するとの宣言に市民は拒否反応を示し、暫定軍事評議会のイブンオウフ議長はわずか1日で辞任。

 

427日には、反政府デモの指導部と暫定軍事評議会は、民間人と軍人から成る合同の統治評議会の設置に合意しました。統治評議会は独立した統治組織となり、ゆくゆくは暫定的な文民政権に移行するものとされています。

 

しかし、新設される統治評議会の軍・民間人の構成などをめぐって今も軍と市民の間で緊張が続いています。

 

****スーダン反政府デモ「100万人行進」呼び掛け 軍事評議会との緊張高まる****

スーダンで430日、オマル・ハッサン・アハメド・バシル前大統領の失脚から3週間近くたった現在も暫定軍事評議会が民政移管に真剣に取り組んでいないとして、反政府デモ側が大規模な抗議集会を呼び掛けた。

 

反政府デモの指導部と暫定軍事評議会は427日、民間人と軍人から成る合同の統治評議会の新設で合意したものの、その構成をめぐり意見が対立。軍事評議会側が新評議会の定員を軍人7人と民間人3人の計10人と提案したことで、両者の溝が深まった。

 

さらにあるスーダン軍司令官は、暫定軍事評議会の議長を現在務めているアブデル・ファタハ・ブルハン・アブドルラフマン大将がそのまま新評議会の議長に就くとも発表している。

 

こうした動きに反発し、反政府デモ側は首都ハルツームの軍本部前に築いているバリケードを強化。デモを主導する民主化勢力「自由・変革同盟」は、「民政というわれわれの主要な要求を主張するため、52日に100万人のデモ行進を行う」と宣言した。

 

同じくデモを主導するスーダン専門職組合の指導者であるモハメド・ナジ・アッサム氏は、「暫定軍事評議会は民政移管に真剣ではない」と批判した。

 

反政府デモ側は新評議会の定員を15人とし、うち軍人を7人にとどめ、民間人が過半数を占める構成にするよう求めている。

 

両者の溝が深まっていることに加え、軍事評議会は429日、デモ隊との衝突で全土で計6人の治安要員が死亡したと発表。また、市場での火事や強奪も起きているという。

 

一方でデモ側の指導者らは軍事評議会に対し、ハルツームの座り込み現場以外で起きた出来事はデモ隊によるものではないと伝えたという。

 

抗議側の一団によると軍は429日夜、軍本部前のバリケードを撤去して座り込みを解散させようとしたという。

 

AFP特派員によると、430日にはハルツーム中心部に機関銃を装備した軍車両数台が配備された。 【51日 AFP】

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【市民によってコントロールされている反政府行動】

アフリカにおける政変というと、政党間の争いというよりは民族・部族を背景とした争いであることが多かったり、また、「アラブの春」が多くの中東イスラム国家で“失敗”と混乱に終わっていることもあって、スーダンのバシル大統領失脚・軍と反政府デモの対立という政変についても、個人的にはいささか先行きを懸念するような感じで見ていました。

 

しかし、今後の展開は不透明ながら、現段階における反政府デモは上記のようなイメージとは異なり、市民の手でコントロールされる形で行われているようです。

 

****検問も警備員もボランティア 民主化求めるスーダンの抗議デモの現場は****

30年にわたって長期支配を続けてきたバシル大統領が失脚したアフリカ北東部のスーダン。民衆による抗議デモが「独裁者」を追い詰め、最後は軍がクーデターを起こした。

 

だが、バシル氏が政権から去った後も、民衆は自由や民主化を求めて軍に対する抗議デモを続けている。現場の様子やデモを続ける国民の思いを取材した。

 

記者が首都ハルツームに入ったのは424日。現地の情報省から記者証を取得し、連日抗議デモが続く軍本部前に向かうと、3カ所の検問所があった。運営していたのは、抗議デモの参加者たち。武器などを持った不審者が入らないように、自分たちで警戒しているのだという。

 

現場では、太鼓をたたいたり、国旗を顔にペイントしたりした多くの若者たちが集まっていた。最高気温は42度。強烈な日差しを避けようとテントや給水所も設置され、露天商も繰り出していた。

 

気温が少しだけ下がる夕暮れ時になると、仕事を終えた人たちも加わり、数万人でごった返した。時折、デモ隊と治安部隊との衝突で負傷者は出ていたものの、幼い子どもを連れて来る人もいるなど、平和的な抗議デモが続いているように見えた。

 

特設のステージでは、デモを主催する団体のメンバーらが演説していたが、それを警備するのも民衆によるボランティア。大学職員のアブドゥラ・アルムールさん(30)は「何か役に立ちたいと思って参加した。民主的な政権ができるまで続けたい」と語った。(中略)

 

今回の抗議デモが始まったのは昨年12月。きっかけは、物価上昇やパンの価格が値上げされたことだった。現金が不足し、銀行の引き出し額は15千円程度に制限されるようになり、ガソリンスタンドでは給油不足から長蛇の列ができた。

 

デモは瞬く間に全国に広がり、経済低迷を招いたバシル氏の辞任や民主化を求める声が強まった。

 

411日、政権を長年支えてきた軍がクーデターを起こし、バシル氏を解任。事実上の軍事政権を立ち上げた。だが、国民は、バシル氏との関係が近かった軍幹部が権力の座に就くことに反発。抗議デモを続けた。

 

軍本部前では、大学生やヒジャブで頭を覆った若い女性の姿も目立った。抗議デモが始まった頃、バシル政権は現場近くのハルツーム大学を閉鎖したが、学生たちが大挙して抗議デモに参加する結果を招いた。

 

毎日のようにデモに参加しているというイスラ・ゼイダンさん(21)は「男性に比べて、女性は服装や就職、留学するのにも自由がなかった。将来世代のためにも、ここに来ている」と教えてくれた。

 

スーダン出身で、現在は学習院大学特別客員教授を務めるモハメド・アブディン氏は「他国に出稼ぎに行きやすい男性と違って、女性は国内にとどまることが多い。母国をより良くしたいという思いが強いのだろう」と説明する。

 

現地では、イスラム教徒が日の出から日没まで飲食を断つラマダン(断食月)に入り、昼間は抗議デモの参加者が減少。夜に活動が活発化しているという。

 

スーダン軍は、デモを主催する団体や野党関係者らと暫定政権の発足に向けて協議を続けている。だが、軍側を支援するサウジアラビアなどの隣国の思惑もあり、国民が求める民主化がかなうかどうかは、不透明なままだ。【510日 GLOBE+

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【飛び火を警戒する周辺国】

サウジアラビア・エジプトなど周辺国は、反政府デモの拡大・自国への飛び火を警戒しており、軍主導による「安定」を支援しています。

 

****周辺国はデモ拡大を懸念****

アラブ諸国や周辺国には、反政府デモの飛び火などを懸念し、スーダン軍を支援する動きも出ている。

 

バシル前政権と関係が深かったサウジアラビアアラブ首長国連邦は21日、食料品や石油製品を含む30億ドル(約3350億円)相当の支援を表明。スーダン軍が、サウジ主導のイエメンでの戦闘に参加していることを考慮したとみられる。

 

2013年にエジプト軍を動かして当時の政権を崩壊させた同国のシーシ大統領も、スーダンの治安悪化などに懸念を表明し、軍を支える姿勢を見せた。

 

中東・アフリカでは10年以降の民主化運動アラブの春」で、チュニジアエジプト、リビア、イエメンで長期政権が崩壊した。近年も、ジンバブエやアルジェリアで強権支配を敷いた大統領が民衆デモなどを受けて辞任した。

 

アフリカにはウガンダやカメルーン赤道ギニアなど、数十年にわたる長期政権を敷く国々がある。アフリカ連合は当初、スーダン軍主導の暫定政権を批判したが、民政移管を求める時期を「4月末」から「3カ月以内」に延ばすなど、軍側に譲歩し始めた。スーダンの新政権への影響力を維持したい思惑も透ける。【57日 朝日】

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【前面に立つ女性たち】

意外だったことの一つは、上記の市民によるコントロールが(今のところ)徹底していることですが、もう一つは、女性の参加が目立つことです。

 

(スーダンの首都ハルツームの軍本部前で424日、自由や民主化を求めて集まった女性たち=中野智明氏撮影【510日 GLOBE+】)

 

スーダンはイスラム国家ですから、社会的・宗教的に制約が多い女性が前面に出てくるというのは意外でした。

 

“特に女性たちは強権的な前政権から長く抑圧されてきた。紛争で夫や子を失った人も多く、今回の政変で民主化や平等の実現を期待する思いはとりわけ強い。”【430日 朝日】

 

存在感を示す女性に中にあって、市民革命の象徴ともなった一人の女子大生(冒頭写真)が。

 

22歳の女子大生、アラ・サラーさんが抗議する様子の動画がインターネットで広く拡散した。

白い服に身を包んだサラーさんは「革命の象徴」、さらには「ヌビアの女王」と呼ばれるようになった(ヌビアは、エジプト南部からスーダン北部にかけてのナイル川流域の地名)。“【424日 BBC】

 

****スーダン「市民革命」の象徴は22歳女子大生アラ・サッラー****

スーダン「市民革命」のアイコン
2019
48日、スーダン共和国の首都ハルツームで撮られ、ツイッターにアップされたある写真が世界中で注目されている。

白いトーブに身を包み、金色の大きな耳飾りをつけた若い女性が、乗用車のルーフパネル上に立ち、右手を挙げ、人差し指で天を指している。

この女性の名はアラ・サッラー、ハルツームで建築学を学ぶ22歳の大学生だ。

彼女をスマホのカメラで撮りアップしたのも、ラナ・H・ハロウンという地元の若い女性だ。

ハロウンがアップしたこの写真によって、サッラーは一夜にして反軍事独裁政権運動のアイコンになった。デモは201812月よりパンの値上げをきっかけにスーダン全土で始まり、20194月に入ってから激化していた。

イスラエルメディア「ハアレツ」によれば、アラ・サッラーは車上で、「われらの祖父はタハルカ、われらの祖母はカンダカ」と歌っている。タハルカはクシュ王朝の王、カンダカは古代ヌビア・スーダンの女王で、より一般的には女王戦士たちのことだという。

サッラーはすでに「現代のカンダカ」と称され、スーダン市民の権利のために闘う女性、またアラブ・ムスリム世界で女性の権利のために闘う女性たちが見習うべき模範と見なされているとハアレツは報じている。

英メディア「ガーディアン」の取材に、サッラーは次のように答えている。

「私の写真で、世界中の人々にスーダンの革命について知ってもらえたことがとても嬉しいです……抗議運動の始まり以来毎日出かけ、デモに参加してきました。祖国を愛するようにと両親が私を育ててくれたからです」

サッラーの母親は、スーダンの伝統衣装トーブのデザイナーで、父親は建設会社を経営しているとガーディアンは報じている。

トーブは、女性抗議者たちのシンボルになっており、サッラーも以前のデモでトーブをまとったときに逮捕されかけたという。

「トーブはある種の力を帯びており、カンダカたちを想起させます」とサッラーはガーディアンに語っている。

ただ、カンダカは、スーダンの多くの民族・部族のひとつを代表するのに過ぎず、ほかの共同体を排除することになりかねないとの懸念もあるとガーディアンは報じている。【418日 クーリエ・ジャポン】

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48日というと、まだ強権で知られるバシル大統領がその職にあった時期で、辞任はその三日後です。

 

そういう時期に反政府デモの先頭に立つということは、当然に大きな危険があります。

 

そのことについて聞かれたサッラーさんは、「あらゆる可能性は認識していましたが、怖くはありませんでした。銃殺されたり、腕や目をけがしていたかもしれません。何があってもおかしくなかった。誰もが尊厳と名誉とともに暮らせるより良いスーダンを思い描いたからこそ、この抗議に参加したのです。」と答えています。【424日 BBCより】

 

大きなうねりは、彼女のようなヒロイン、ヒーローを生み出します。

 

「ヌビアの女王」「現代のカンダカ」はともかく、多くの女性が男性に伍してデモに参加し、フェンスをよじ登る姿に、民主化成就後の女性の権利拡大実現を期待もするのですが・・・どうでしょうか。

 

そもそも、民主化が成就するのか、バシル大統領から軍政に変わっただけに終わるのか・・・そのあたりも未だ判然としませんが、前出の周辺国の思惑などもあって、個人的にはあまり楽観はしていません。

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南アフリカ  「マンデラはもういない」与党ANC 選挙結果によっては「共存」のかじ取りに変更も

2019-05-05 22:33:27 | アフリカ

ANCの選挙集会に集まった支持者ら=ヨハネスブルクで5日、AP55日 毎日】 未だ根強い支持者を有してはいますが、内部が朽ちている巨木の感も ラマポーザ大統領はマンデラの理想と現実のはざまで難しいかじ取りを迫られています。)

 

【腐敗の絶えない“マンデラの党” 「マンデラはもういない」との声も】

あまり情報が多くない南アフリカに関する話題。

下記記事で初めて知りましたが、今週8日には総選挙の投票が行われるようです。

 

南アフリカと言えば、ネルソン・マンデラが率いた「アフリカ民族会議(ANC)」がアパルトヘイト廃止後の政権を担ってきており、今回選挙でも勝利は確実視されています。

 

しかし、腐敗・汚職、白人と黒人の格差、黒人内部における格差、失業等々の問題にANAが有効に対応できていないという批判が次第に膨らんできており、「マンデラの党」が絶対視される状況でもなくなってきています。

 

昨年2月には、数々の「悪い噂」が絶えなかったズマ前大統領が辞任に追い込まれる事態も起きています。

 

*****岐路に立つ「マンデラの党」 南ア総選挙、8日投開票****

南アフリカ総選挙(下院、定数400、任期5年)が8日、投開票される。

アパルトヘイト(人種隔離)体制が打倒され、ネルソン・マンデラ氏(2013年死去)が初の黒人大統領に就任して25年間。以来一貫して政権を担ってきたアフリカ民族会議(ANC)が今回の選挙でも勝利する見込みだ。

 

ただ、近年のANCは金権体質に染まり「マンデラの党」の現状に失望する支持者も増えている。

 

しゃれたバーやレストランが立ち並ぶヨハネスブルクのローズバンク地区。ある週末の夜、黒人男性のフォーギブさん(25)が雨に打たれながら、客に小銭をねだっていた。

 

過去の選挙はANCに投票した。「それが当然だと思った。でも、今回は(主要野党2党に次ぐ)3番目の選択肢だね」

 

自宅は粗末な家が密集する郊外のタウンシップ(旧黒人居住区)。路上に汚臭を放つごみが放置され、道路や下水道の整備も一向に進まない。ANCに投票し続けても暮らしは良くならないと感じる。

 

歴代のANC政権は人種間の格差是正を目指し、黒人富裕層が生まれた。だが、経済成長は進まず、失業率は約27%と高止まり。黒人同士でも貧富の格差が広がり、フォーギブさんのような若年層の半数は無職だ。

 

多くの人々が日々の暮らしに不満を抱える中で、ズマ政権(09〜18年)時代に数々の汚職疑惑が発覚。ANCに対する支持離れは急速に進んだ。16年の地方選で、得票率は過去最低の53・9%。ヨハネスブルクなど大都市では国政第2党の民主同盟(DA)から市長が選出された。

 

都市部での黒人中間層の増加も党勢衰退の一因だ。この層は比較的教育レベルが高く、企業勤めをしている人も多い。また、アパルトヘイト撤廃後に生まれた「ボーンフリー」世代と呼ばれる若者は、地方の有権者のようにANCを絶対視しなくなり始めている。

 

中間層向けの住宅地が広がるミッドランド地区に住むコンサルタントのヨランダさん(26)は、与党政治家の腐敗にうんざりし、初めて野党に投票すると決めた。「両親はANC以外への投票には抵抗を感じているが、マンデラはもういない」

 

南アフリカ安全保障研究所のヤッキー・シリアーズ氏は「ANCは(黒人の経営幹部登用などを推進する)黒人優遇政策を導入したが、それが市場をゆがめた。党幹部を国営企業などの要職に送り、政権周辺が利権を独占する構造ができた」と指摘。

 

昨年就任したラマポーザ大統領は改革路線を掲げるが、「党内の抵抗を抑えて改革を進めるには今回の選挙で基盤を固める必要がある」と語った。【55日 毎日】

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ズマ前大統領に代わって南ア・ANCを率いることになったラマポーザ大統領は、南ア再生の「切り札」とも目されています。

 

****<南ア新大統領>交渉力光る「エリート」****

 南アフリカの新大統領=シリル・ラマポーザ氏(65)

28年前、黒人解放運動の指導者マンデラ氏が刑務所から釈放された直後に行った歴史的な演説の写真には、傍らに寄り添いマイクを向ける若き日の新大統領の姿が映っている。(中略)

 

卓越した交渉能力で一目置かれ、94年に黒人初の大統領に就任したマンデラ氏も自身の後継者に嘱望したとされる。

 

当時は与党内の支持が得られなかったが、実業家に転身して成功。米経済誌フォーブスによると2015年の総資産は4億5000万ドル(約478億円)に上り、民主化以降に登場した「黒人エリート」の代表格だ。(中略)

 

16日の演説では約9年間のズマ政権時にはびこった腐敗体質にメスを入れ、経済再建に取り組むことを宣言した。南ア再生の「切り札」の呼び声は高い。一方で、副大統領時代には政府の汚職への言及が少なかったのも事実だ。

 

国家経済は政権中枢に取り入った実業家に牛耳られ、白人と黒人の格差是正はおろか黒人同士の貧富の差も広がっている。かつてのマンデラ氏の右腕は、巧みな交渉術に加えて指導力を発揮し、改革を進められるか。その手腕が問われる。【2018218日 毎日】

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上記のような期待を担って登場したラマポーザ大統領ですが、マンデラなきANCの混迷は未だ改善されないようです。

 

****与党ANCの腐敗は深刻 「政治殺人」が多発****

与党アフリカ民族会議(ANC)の腐敗は深刻だ。ANCの地盤として知られる東部クワズールー・ナタール州では、ANC党内での利権争いや対立に絡んだとみられる「政治殺人」が多発している。

 

同州ウムジムクル。人口20万人弱のこの地方都市で2017年7月、ANCの地元有力議員シンディソ・マガカ氏(当時34歳)が殺害された。

 

車に乗っていた時に、2人の男が近付き自動小銃を乱射。病院に運ばれたが、2カ月後に死亡した。後部座席にいたノンツィケレロ・マファ議員(29)は「46発の銃弾が撃ち込まれた。マフィアのような手口だった」。

 

事件の背景には、地元の党幹部らが推進した公共工事があったとされる。約6年前に始まった工事計画は大幅に遅れ、費用は当初の9倍の3700万ランド(約3億円)にふくれあがった。

 

不正を疑ったマガカ氏は議会で追及し、第三者による監査を要求。その後、同調した議長や議員が相次いで殺害された。捜査当局は、マガカ氏暗殺に地元首長や党幹部が関与した疑いがあるとみて調べている。

 

ANC指導部の登竜門である青年同盟の幹事長を務めたこともあるマガカ氏の追悼式には閣僚らも参列。盟友だったタビソ・ズールー氏(37)はスピーチで「殺されたのは汚職を暴露したからだ」と公言した。

 

だが、ズールー氏はその後に尾行や盗聴を受け、友人らの家を転々とする逃亡生活を送る。ズールー氏は、ANCをマフィアに例え「血のおきてを破った(秘密を暴露した)者は始末される」と語った。

 

クワズールー・ナタール大のメアリー・デハース研究員の調査によると、同州では16年以降、政治絡みとみられる事件で約70人が死亡。被害者の大半がANC関係者で「かつての政治殺人は敵対する政党間で起きたが、今は身内で殺し合っている」と言う。【55日 毎日】

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【白人資産接収ではなく黒人優遇政策で「共存」めざす そこに腐敗を生み出しやすい土壌も】

「アフリカ民族会議(ANC)」に腐敗がはびこるのは、白人資産の接収は行わず、「共存」をはかりながら黒人優遇政策で時間かけて是正を行っていくというアパルトヘイト廃止後の事情・政策を考えると、下記記事が指摘するように、一定に“必然”とも言える要素があります。

 

しかし、そこからANCが、あるいは南アフリカが脱却できるかどうかは、単にANCと南アフリカの問題にとどまらず、混迷する世界にあって一筋の光明ともなったマンデラの理想が実現するかどうかという問題でもあります。

 

****ズマ大統領辞任の背景にある南アフリカの理想と現実****

(中略)

南アフリカで汚職が蔓延している理由

体制が大きく転換し、それまでの既得権益層から利権をはく奪し、国民各層にその利益を均霑しようという時、南アフリカに限らずどこでも、大なり小なり汚職が横行する。

 

日本でも、明治維新に際し、武士階級を廃し産業基盤たる財閥を育成した時、それなりのことはあったろうし、社会主義圏で体制転換の時、多くのオリガルキーが生まれたことは周知のことである。

 

南アフリカでもアパルトヘイトが廃止され、新生南アフリカとして再出発した時、似たような状況が生まれた。

 

というのも、南アフリカには白人が築いた一大産業構造があったからである。通常、アフリカ諸国は、こういう白人層の富裕資産を新政府が接収する。それが脱植民地化なのである。

 

しかし、南アフリカはそれをせず、白人資産はそのままとし、白人と黒人が共生する道を選んだ。マンデラ大統領が目指したレインボー・ネーションである。

 

しかし、片や、食うや食わずの黒人層がひしめき、他方で裕福に生活する白人層がいる。これでは社会は成り立たない。

 

そこで南アフリカ政府がしたのが、黒人優遇政策いわゆるアファーマティブ・アクションである。民間企業は、黒人を一定割合、幹部に登用しなければならず、また、一定割合の株を提供しなければならない等である。これにより実質的に白人資産を黒人に移転した。

 

ところが、どこでも、こういう時の資産移転を公平に行うことは難しい。結局、南アフリカに出現したのは、巨大な資産を抱える新たな黒人成金層だった。そして、この成金が生まれる過程で数々の汚職が蔓延したのである。(中略)

 

南アフリカに渦巻く「理想」と「現実」の問いかけ

しかし、これから南アフリカがどうなるか、つまり、南アフリカの帰趨がどうなるかは、単に南アフリカだけに関わることではない。

 

先に述べたとおり、南アフリカはアパルトヘイト撤廃後、通常であれば白人資産を接収するところを、マンデラ大統領の崇高な理念に従い、接収することなく白人と黒人による共生の道を選んだ。

 

その時、白人は、どうせマンデラはきれいごとを言っても、黒人が差配する新生南アフリカがこのままうまく治まるはずがない、やがて、「破綻国家」の道を歩むのは必定だ、と言った。

 

他方、黒人は、マンデラはきれいごとを言って、白人と黒人の共生などというが、それがうまくいくはずがない、どうして白人資産を接収し貧しい黒人に分け与えないのか、それをしないからいつまでたっても黒人貧困層がなくならないのだ、と言った。

 

つまり、ことは単に一つの国が安定し繁栄するかどうかを越え、より高次の、脱植民地化の過程で旧支配層と被支配層が財産接収という暴力的行為を経ることなしに、平和裏に共存することが可能かという、壮大な試みに関係することであり、さらにはまた、異なった人種がアパルトヘイトという特殊な経験を経ながらも共に一つの国家を築いていくことができるかという、崇高な理念の妥当性に関することなのである。

 

人類は理念のもとに生きることが可能なのか、あるいは所詮、現実の世界の中でしか生きられないのか、といった問いでもある。

 

もっとも、白人資産を接収したアフリカ諸国の経済が、その後その多くが立ち行かなくなっていったとの事実は、マンデラの理念の方が現実に適合し成功を収める、ということなのかもしれない。【2018222日 WEDGE

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【白人農場主の土地収用に乗り出すラマポーザ政権 “国を分断しない方法で”】

上記記事最後に指摘されている“白人資産を接収したアフリカ諸国の経済が、その後その多くが立ち行かなくなっていった”国の代表が、ムガベ前大統領のジンバブエでしょう。

 

しかし、それをもって“マンデラの理念の方が現実に適合し成功を収める、ということなのかもしれない”と言うのは、残念ながらやや楽観に過ぎるところがあります。

 

白人資産を接収したムガベ前大統領は、国際的評価はさんざんでしたが、南アフリカの貧困黒人層では人気がありました。

 

そしてラマポーザ政権も、やはり黒人優遇政策だけでは限界があるとして、白人農場主の土地収用に乗り出す考え方針を示し、白人至上主義に甘い・共鳴しているとも批判されるトランプ大統領が昨年8月にこの政策を問題視するツイートを発信したことでの騒動があったのは記憶に新しいところです。

 

****トランプ氏、南アを刺激 人種隔離政策の傷痕に踏み込む****

トランプ米大統領が南アフリカの土地政策にツイッターで「介入」し、波紋を呼んでいる。

 

南ア政府が少数派の白人が所有する農地を収用できるようにする方針だと懸念を示し、ポンペオ国務長官に調査を命じたことを明らかにした。アパルトヘイト(人種隔離)政策の傷痕に踏み込む発言に、南ア政府は強く反発している。

 

トランプ氏は22日夜、「ポンペオ国務長官に、南アの土地農地の収用問題と大規模な農家殺害について詳しく調査するよう頼んだ」とツイート。これに対し、南アフリカ政府は23日、公式ツイッターで「かつての植民地時代を思い起こさせる狭い見方を拒否する」と反発した。

 

南アフリカでは1991年、少数派の白人が大半の土地を所有する結果を生んだアパルトヘイト関連法が廃止されたが、土地所有の現状は大きく変わっていない。

 

ラマポーザ大統領は「不平等を是正する」とし、白人所有の土地を補償金なしで収用し黒人に再配分する方針を提示。7月には、これを可能にするための憲法改正を進めるとした。

 

トランプ氏のツイートの直前、保守系の米FOXテレビがこの動きを取り上げ「人種差別的な土地没収だ」と報道。「トランプ政権はこの人権の悲劇にどう対処すべきか」と、経済制裁などの可能性に言及した。トランプ氏はこの報道に反応したとみられる。

 

トランプ氏は、これまでもツイッター北朝鮮やイランを挑発してきた。視聴者が自らの支持層と重なるFOXテレビに呼応することで、11月の中間選挙に向け、南アの白人農家に同情的な白人層にアピールしたい思惑が見える。

 

米国務省のナウアート報道官は23日の会見でトランプ氏から指示があったことを認め、「補償なしの土地の没収は南アを間違った道に進ませる恐れがある」と懸念を示した。

 

トランプ氏がほのめかす南アでの白人農家の大規模殺害は確認されていない。ヘイトクライムを監視する米NGO「南部貧困法律センター」は、トランプ氏のツイートが白人至上主義者の主張に沿うものだとして「大統領が人種差別主義の考えにつかっていることを示す最も驚くべき例だ」と批判した。【2018825日 朝日】

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トランプ大統領の白人至上主義的傾向の問題はさておき、南アの白人土地収用がこれまで「共存」路線の大きな変更になるのも事実ですし、そうした政策でうまくいくのかどうかを疑問視する声もあります。

 

****南アフリカの白人農場主の土地収用にトランプ反発 これも「虐げられた」白人のため*****

<白人農場主が苦しんでいると聞いて、俄然やる気を出したトランプ。白人と黒人の格差解消に取り組む南ア政府は猛反発しているが>

(中略)ラマポーザは731日、白人農場主の土地を補償なしで収用できるように憲法を改正する、との政府方針を発表。全ての主要政党が、白人から黒人に土地を再配分する改革の必要性で一致した。

 

南アフリカでは、人口の8%しかいない白人農家が、72%の土地を所有している。土地所有を巡る不平等な構図は、アパルトヘイト(人種隔離政策)廃止から20年以上経った今も、白人と黒人の間に根強く残る貧富の差を象徴している。

初めて「アフリカ」に関心
トランプのツイートの翌823日、南アフリカ政府はツイッターで、「われわれの国を分断し、植民地支配を思い起こさせる偏狭な見方を断固拒否する」、と反発。さらに、「慎重で包括的なやり方で土地改革のペースを上げていく。国を分断しない方法でだ」、と説明した。

トランプのツイート発言をまとめたサイト「Trump Twitter Archive」を検索すると、大統領就任以降、トランプが「アフリカ」という単語を使用したのは今回が初めて。

 

今年1月には、移民政策を議論するための会合で、アフリカ諸国やハイチを「肥だめのような国」とも言っている。逆に「ノルウェーのような国」からの移民をもっと増やすべきだと主張したため、人種差別だと国内外で批判された。(中略)

南アフリカ政府は補償金を巡って白人農家との交渉が行き詰ったケースで、すでに土地収用を始めている。現地紙シティー・プレスの819日の報道によれば、同国北東部リンポポ州にある2つの農場が、政府が提示した補償金額を拒否した結果、強制収用された。補償金は、農場側が求めた額のわずか10分の1だったという。(中略)

ジンバブエと同じ失敗の恐れも

今、南アフリカの白人農家の殺害の発生率は過去20年間で最低水準だ。ただし襲撃事件に関しては、20162017年に478件だったのが、20172018年は561件まで増加した。(中略)


白人系の野党など土地改革の反対派は、不景気の中で強制的な土地収用を行えば経済危機になる恐れがある、と警告する。

 

隣国ジンバブエでは2000年以降、ロバート・ムガベ前政権の下で白人の土地の強制収用を実施した結果、農地の荒廃と経済の破綻につながった。【2018824日 Newsweek
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「慎重で包括的なやり方で土地改革のペースを上げていく。国を分断しない方法でだ」・・・・微妙なかじ取りが要求される施策ですが、これをやらないと黒人貧困層から不満を押さえられなくなっている現実があっての施策でしょう。

 

8日に行われる選挙の結果によっては、この“かじ取り”の変更を迫られることもあり得ます。

微妙なかじ取りで、あるいは、かじ取りの変更によって、マンデラの理想に近づくのか、遠のくのか・・・注目されます。

コメント

アフリカ  経済・政治・民族的要因で混乱が止まない国々 アメリカ・日本の対アフリカ支援

2019-01-19 22:54:54 | アフリカ

(スーダンの首都ハルツーム郊外で、反政府デモに向けて発射された催涙ガス=15日【1月19日 共同】)

【物価上昇・高失業率などの経済状況を契機とする混乱】
急速な人口増加が続くアフリカ、将来的には「アフリカの時代」が・・・と言われるアフリカですが、現在は未だ多くの国で混乱状態にあります。

混乱の原因は様々で、悪化する経済状況・汚職や強権支配といった政治の問題・以前からの部族対立など、いくつかの要因が絡み合ってはいますが、食料・燃料・日用品などの価格上昇や高い失業率といった経済状況の悪化を契機とし混乱が拡大するケースが多々見られます。

****ジンバブエ、強硬措置で抗議封じ込め 燃料費高騰や日用品不足で混乱*****
深刻な経済危機が続くジンバブエで、燃料費の高騰や日用品の不足をきっかけに混乱が広がっている。ムナンガグワ政権の治安当局は強硬措置で抗議行動を抑え込み、数日間で600人以上を拘束する異常事態となっている。
 
同国政府は12日、ガソリン価格を150%超引き上げて1リットル当たり3.31ドル(約364円)にすると発表。値上げは市民生活を直撃し、労働組合は14日からゼネストを呼びかけた。首都ハラレや第2の都市ブラワヨでは大半の商店や学校が閉鎖。デモ隊の一部が暴徒化し略奪も起きた。
 
これに対し、当局はインターネットを遮断し、野党支持者や人権活動家らを次々と拘束。「当局は市民に対し無差別に発砲、暴行している」(ハラレの弁護士)とされ、17日までに68人が銃撃を受けて病院に運ばれた。
 
同国では長期政権が続いたムガベ前大統領時代の2008年に年率2億%を超えるハイパーインフレを記録した後、自国通貨のジンバブエドルを廃止。代わりに米ドルなどを採用した。

だが17年に事実上のクーデターでムナンガグワ氏が大統領に就任した後も物資の輸入に必要な外貨の不足に歯止めがかからず、昨年12月のインフレ率は過去10年間で最も高い42%に達した。
 
会社員のシーラ・グンボさん(29)は「市民がゼネストを支持するのはとても生活できないから。野党関係者を逮捕しても問題は解決しない」と話した。
 
現地からの情報によると、日用品や食料の不足が慢性化し、市民が支払いに使う電子マネーや代用貨幣「ボンドノート」の価値も急落している。ハラレ市内のあるスーパーでは紙おむつのパック(24枚入り)に80ドルという法外な値札が付き、ガソリンスタンドでは給油まで数日待たされることもあるという。
 
国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のデワ・マビンガ氏は「政府は不満に耳を傾けるどころか、平和的な抗議行動まで弾圧している」と指摘。ムナンガグワ氏は経済再生に向けて外資誘致を図るが「人権侵害が横行する国にだれが投資するのか」と述べ、旧態依然とした政府対応を批判した。【1月19日 毎日】
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****焼身自殺きっかけに抗議行動、警官隊と衝突 チュニジア****
「アラブの春」の先駆けとなった北アフリカのチュニジアで、男性の焼身自殺をきっかけに、政府に抗議する若者たちと警官隊が衝突した。

背景にあるのは約3割とされる若者の高い失業率。2011年に政権を崩壊させた大規模デモも焼身自殺を機に始まっており、二の舞いを恐れる政府は警戒を強めている。
 
現地報道によると西部カセリーヌで24日、ジャーナリストの男性(32)が焼身自殺した。男性は自殺する前にネット上に動画を投稿。「政府の目を失業問題に向けさせるため、私は命を絶つ。仕事がない者は立ち上がれ」と呼びかけた。
 
呼応した数百人とみられる若者たちは24日夜、路上でタイヤを焼いたり警官隊に投石したりした。抗議行動は25日も続いた。
 
チュニジアの最近の失業率は15・5%。特に若者は約30%とされる。さらに11月の物価上昇率は7・4%で、国民は政府への不満を募らせている。
 
青果商の青年が当局の嫌がらせに抗議して焼身自殺したのは10年12月。これを機に反政府デモが全土に広がり、翌月、23年間続いたベンアリ政権が崩壊した。今回の抗議行動はその時ほど大規模ではないが、警察当局はカセリーヌでの警備を強化。抗議の拡大を食い止める構えだ。【2018年12月27日 朝日】
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****スーダン反政府デモ、死者数は24人に パンの値上げがきっかけ****
スーダン当局は12日、先月から同国全土で続く反政府デモにより、これまでに24人が死亡したことを明らかにした。
 
抗議運動は昨年12月19日、政府がパンの価格を3倍に引き上げたことをきっかけに複数の州で発生。オマル・ハッサン・アハメド・バシル大統領の辞任を求める全国的な反政府デモに発展した。
 
検察当局が設置した、一連の抗議デモでの暴力行為に関する調査委員会のアメル・イブラヒム委員長は報道陣に対し、抗議行動が始まった昨年12月19日以降、計24人が死亡したと発表した。
 
だが国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは死者数について、少なくとも40人に上るとの見解を示すなど、各人権団体は、実際の死者の総数は24人をはるかに上回り、子どもや医療スタッフも含まれていると指摘している。
 
抗議行動はこれまでに数百回発生したものの、機動隊や警備隊が催涙ガスを使用し鎮圧してきた。

人権団体や欧州連合は、治安部隊がデモ参加者に対し「実弾」を使用したと主張している。 【1月13日 AFP】
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国際人権団体アムネスティ・インターナショナルも、市民ら40人以上が死亡、千人超が当局に拘束されているとしています。【1月19日 共同】

【政治への信頼欠如、民族・部族対立を背景とした混乱】
上記の国々の場合でも、経済問題を契機とはしていますが、根底には強権的支配や長期政権への反感、問題を解決できない政治への不信感といった政治的な要因があります。

アフリカの場合、そうした政治的な問題に、往々にして民族・部族対立という要因が絡んで問題が深刻化します。

コンゴでは大統領選挙の結果が“一応”でましたが、基本的に政治への信頼がありませんので、予想されたものと違う、裏取引・密約があるのでは・・・という反発もあり、混乱も懸念されています。

****野党候補の当選発表 コンゴ民主大統領選、混乱の恐れ*****
アフリカ中部コンゴ民主共和国の昨年末に実施された大統領選挙で、選挙管理委員会は10日未明、野党候補のフェリックス・チセケディ氏が当選したと発表した。

独立以来初の民主的な政権交代につながるとの期待の一方、票の集計などを巡って不正が指摘され、混乱が続く恐れがある。
 
選管の発表によると、最大野党、民主社会進歩同盟の党首を務めるチセケディ氏が約38%の票を獲得。優勢とみられていた実業家のマルタン・ファユル氏は約34%の得票にとどまり、現職のカビラ大統領が後継指名したシャダリ元内相は約23%だった。
 
ロイター通信によると、選挙結果を巡っては、選挙監視や開票集計に関わったキリスト教系の団体がファユル氏の勝利を示唆していた。にもかかわらずファユル氏が敗れたため、国内では選管を取り込んだカビラ氏側とチセケディ氏側が手を組み、チセケディ氏を勝利させる見返りに両者による権力分担の密約を交わしたとの観測も出ている。
 
結果の発表後、ファユル氏は「投票箱の真実とはほど遠い」として、選管に正確な得票数を出すよう要求。主要な援助国のフランスも「真の結果と違っている」と批判を強めている。
 
カビラ氏は、暗殺された父親の後を継いで2001年に就任。16年末の任期切れ後も選挙の実施を先送りして権力の座にとどまっていた。欧州の援助国や野党からの圧力を受け、2年遅れでようやく選挙を実施した。
 
選挙戦では、各地で与野党の支持者や部族間の衝突が発生。混乱が続いた。【1月11日 朝日】
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上記の大統領選挙とは直接にはリンクしていないようですが、900人近い死者が出ているという民族間の衝突も報じられています。(投票は12月30日、衝突は12月16〜18日)

****コンゴ西部で民族間の衝突、約900人死亡 国連発表****
コンゴ民主共和国西部で昨年12月16〜18日、民族間の衝突が発生し、少なくとも890人が死亡した。国連人権高等弁務官事務所が16日、明らかにした
 
OHCHRが「信頼できる筋」からの情報として明らかにしたところによると、首都キンシャサから北へ約300キロ離れたマインドンベ州の4つの村で、バヌヌ人とバテンデ人によるものとみられる衝突が発生した。
 
他に少なくとも82人が負傷したと伝えられており、最終的な死傷者数はさらに増える見通し。
 
同国政府のランバール・メンドゥ報道官はAFPに対し、OHCHRが発表した死者数については認めず、「政府に報告された最新の推計によると、死者数は100人前後」と述べた。
 
今回の衝突とは無関係ながら、昨年12月30日に大統領選挙が実施された同国では、同規模の暴力抗争により、一部地域での投票の延期が要請される事態となっていた。
 
バヌヌ人とバテンデ人は長年にわたって対立を繰り広げており、今回の衝突もそれに根差したものとみられるが、直接のきっかけは、バヌヌの人々が昨年12月13日夜、自らの酋長をバテンデ人の土地に埋葬したことだった。
 
OHCHRによると、小学校2校、保健施設1軒、商業施設1軒、選挙管理委員会の事務所1軒を含む、465棟前後の建物が焼き討ちや略奪の被害を受けた。今月までに、1万6000人が4つの村から隣国のコンゴ共和国に避難したという。 【1月17日 AFP】
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民族・部族対立からの衝突はアフリカ各地で発生していますが、ナイジェリアでは“2016年以降に3600人超が死亡”とも。

****ナイジェリアでの農民と牧畜民の衝突、3年で3600人超死亡 人権団体****
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは先週、ナイジェリアで続く農民と牧畜民の衝突により、2016年以降に3600人超が死亡したと発表した。同団体は、同国政府が加害者を処罰しないため、暴力が激化していると非難している。
 
アムネスティが17日に発表した報告によると、衝突による死者は18年のみで2000人を突破。数千人もの人々が家を失ったという。
 
農民と牧畜民の間では、干ばつと人口の急増により希少になりつつある肥沃(ひよく)な土地と水利をめぐって、暴力沙汰が増加傾向にある。
 
アムネスティは「ナイジェリア当局がコミュニティー間の衝突に対する捜査を怠り、加害者に法の裁きを受けさせていない状況が、全国各地での農民と牧畜民の争いに拍車をかけた。この結果、死者数は過去3年で少なくとも3641人に上り、居住地を追われた住民もさらに膨らんでいる」と説明。(中略)

アムネスティはさらに、殺りくを阻止するため取り組みが不十分だとして同国の治安部隊を批判。「治安部隊はしばしば襲撃の現場近くに配置されているものの、また衝突が数日続く場合があるにもかかわらず、対応が遅い」と述べた。
 
襲撃が差し迫っていることを警告されていたにもかかわらず、治安部隊は殺人や略奪、家屋の焼き討ちを防ぐ措置を全く取らなかった事例もあるという。【12月23日 AFP】
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ナイジェリアでは「ボコ・ハラム」の問題もありますが、上記の農民と牧畜民の衝突、更に、キリスト教徒が多い南部とイスラム教徒が多い北部の中間地帯での宗教がらみの衝突も多発しています。

ここまで取り上げてきたのは、主だった国における状況ですが、国際的にはマイナーな多くの国々でも状況は同じでしょう。

こうした混乱をなんとかしない限り、欧州を目指すアフリカからの難民はなくなりません。

【中国に対抗するアメリカの対アフリカ戦略 ベースはやはり「アメリカ第一」】
発展の余地は大きいものの、多くの問題・課題を抱えるアフリカにおける中国の影響力拡大が近年取りざたされていますが、アメリカ・トランプ政権は対抗戦略を発表しています。

****米国の新たなアフリカ戦略、中ロへの懸念****
12月13日、トランプ政権は対アフリカ戦略を発表、それに先立ち、ボルトン安全保障担当補佐官はヘリテージ財団(保守派のシンクタンク)で、この新戦略について講演を行い、中ロのアフリカにおける行動を厳しく非難した。講演の主要点は次の通り。

新たなアフリカ戦略においては、次の3つを米国のアフリカ大陸における中核的利益とする。

第一に、米国とアフリカ諸国との貿易・商業的関係を強化し、それにより双方が利益を得る。(中略)米国は経済取引において、相互性のみを求め、服従を求めない。

第二に、過激派イスラム主義テロと暴力的紛争がもたらす脅威に対抗する。(中略)

第三に、我々は、支援に使われる米国の納税者のカネが効率的かつ効果的に使われるようにする。米国はもはや、アフリカ全土に優先順位をつけずに無差別的に援助を提供するようなことはない。非生産的で、不成功で、説明責任が果たされていない国連平和維持活動については、もはや支援しない。

新たなアフリカ戦略の下では、我々は米国の資金を、カギとなる国々、とりわけ戦略的対象に的を絞る。米国の対アフリカ支援は、米国の国益を増進し、アフリカの国々の自立への動きを助けることになろう。

競争相手たる大国、すなわち中ロは、アフリカにおける経済的・政治的影響力を急速に拡大している。

2016年から2017年における中国の対アフリカ対外投資は、64億ドルに達した。中国は、賄賂、不透明な合意、債務の戦略的利用により、アフリカを意のままにしようとしている。中国の投資ベンチャーは腐敗にまみれ、米国の開発計画と同じ環境・倫理的基準を満たしていない。(中略)

ロシアも、腐敗した経済的取引によりアフリカにおける影響力を高めている。ロシアはアフリカ中で、法の支配、透明性の高い統治にほとんど考慮を払うことなく、政治的・経済的関係を進展させている。

ロシアは国連の場での票と引き換えに武器、エネルギーを売り続け、平和と安全を損ね、アフリカの人々の利益に反している。ロシアは、自らの利益のためにアフリカから天然資源を持ち出し続けている。(中略)

要するに、中ロの略奪的行動は、アフリカの経済的成長を妨げ、アフリカの国々の財政的自立を脅かし、米国の投資の機会を阻害し、米軍の軍事的行動を妨害し、米国の安全保障上の利益に重大な脅威を与えている。(後略)【1月16日 Wedge】
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アメリカがアフリカに目を向けるのは結構なことですし、“相互性のみを求め、服従を求めない”というのも結構ですが、要するにアメリカの国益に合致する国への優先的支援を行うという話でもあり、無差別的・非生産的国連PKOは支援しないということでもあります。

この「アメリカ第一主義」からこぼれおちる国々、国際情勢に関心がないトランプ大統領が「そんな国の名前は聞いたこともない」とする国々はどうするのか?といった問題もあります。

【日本のアフリカ支援 リスクが大きいアフリカ投資には民間主導では限界も】
日本も中国に対抗する形でアフリカ支援を行っていますが、量的なところでは中国に対抗するのは難しくなっています。

質的に高いレベルの支援、真に相手国の生活改善につながる支援を・・・というところですが、現実問題としては、最初に挙げたような様々な混乱・リスクを伴うアフリカ投資は民間企業としては難しいという面があります。

****日本のアフリカ投資、停滞 300億ドル「約束」、140億ドル未達 首相表明も民間投資低調****
アフリカ支援などを話し合う7回目の「アフリカ開発会議」(TICAD7)を来年8月に控え、安倍晋三首相が2年前に約束したアフリカへの300億ドル規模(約3・4兆円)の投資実現に黄信号がともっている。

想定した民間投資が伸びず、今年9月で達成できたのは160億ドル。現地の日本企業からは見通しの甘さを指摘する声も出ている。(中略)
 
首相は2016年にあった前回のTICADで、16~18年の3年間に官民合わせて300億ドル規模を投資する方針を表明。「日本は必ず約束を守る国で、一つ残らず実行いたします」とまで言い切っていた。(中略)
 
■政情不安のリスク
南アフリカの行政首都があるプレトリアから東に約70キロ。三菱日立パワーシステムズ(MHPS)がボイラー建設を担うクシレ石炭火力発電所の建設が続いている。
 
(中略)だが、(事業主体の地元電力会社)エスコムの汚職疑惑などをめぐる経営難から建設は遅れ気味で、地元の建設作業員は「数年はずれこむだろう」と苦笑いする。
 
JETROが昨年、アフリカに進出する日系企業を対象にした調査では、約8割前後の企業がアフリカ諸国への投資リスクとして、「規制・法令の整備、運用」や「不安定な政治・社会情勢」を挙げた。
 
アフリカ諸国への投資をめぐっては、00年代から中国の存在感が急拡大した。米ジョンズ・ホプキンス大の研究機関によると、中国からアフリカ諸国への融資額は00~17年に約1400億ドル(約15兆7400億円)に達したという。
 
日本政府が促す民間投資について、アフリカ南部に駐在する日本企業の関係者は、「政府は中国への対抗心があるのかもしれないが、民間にはまだリスクが大きい」。アフリカに進出する日本の繊維業者も「中国企業は政府の支援があるから安心して投資ができる。日本企業は同じ土俵には立っていない」と語る。【12月20日 朝日】
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もはや「世界第2位の経済規模、アジア唯一の先進国」ではなくなった日本、今後労働人口は減少し、「普通の国」に移行していく日本に可能なアフリカ支援の形はどういうものか・・・難民・移民受け入れの拡大とか、発想の転換が必要かも。

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アフリカ  年明け早々の混乱が懸念されるコンゴとスーダン

2019-01-04 22:35:15 | アフリカ

(大統領選の投票所の前で抗議するコンゴ(旧ザイール)の人々=12月30日、キンシャサ【1月2日 時事】)

【コンゴ 政府・選管への不信から“混乱必至”】
年明け早々の政治混乱が懸念されているのが、豊かな鉱物資源の利権をめぐって長く紛争が続き、今も多くの武装勢力が跋扈するアフリカ中央部の「資源大国」コンゴ民主共和国。「資源の呪い」という言葉があてはまる国です。

任期が終わっても居座りを続けていたカビラ大統領の後任を決める大統領選挙が12月30日に行われましたが、投票日の延期等を含む不穏な情勢については、12月21日ブログ“コンゴ民主共和国  ノーベル平和賞受賞者を生んだ悲惨な現実 混乱が懸念される大統領選挙”でも取り上げたところです。

通常、こういう場合は上記の12月21日ブログ表題のように“混乱懸念”という表現を使用しますが、不正が強く懸念されるコンゴに関して言えば、平穏に選挙が終了するとは考えにくく、下記記事のように“混乱必至”という方が現実を的確に表しているように思えます。

****混乱必至のコンゴ民主大統領選 30日、公正選挙期待できず****
コンゴ民主共和国の大統領選が30日、カビラ大統領の任期切れから2年遅れでようやく実施される。

だが、野党地盤の一部地域での投票は来年3月まで延期されるなど、公正な選挙が到底期待できないことから、野党支持者らは強く反発。開票結果を巡って混乱するのは必至だ。
 
大統領選は主要3候補の争いだ。17年間にわたって権力の座にいるカビラ氏は腹心のラマザニ前内相を後継者に指名。野党各党は元石油会社役員のファユル氏を統一候補に立てた。だが、直後に分裂し、「民主社会進歩同盟」のチセケディ党首も出馬した。
 
米ニューヨーク大の「コンゴ研究グループ」が28日に発表した世論調査の結果によると、ファユル氏が47%の支持を集め、他候補に大差をつけた。一方で、48%が票の操作などの不正が行われるとみていると回答。さらに過半数は、ラマザニ氏が「勝利した」と発表されたとしても受け入れないとしている。
 
選管は当初23日に予定されていた大統領選を、火災で電子投票機などが焼失したとして1週間延期。さらに、新大統領は1月18日に就任という予定は変えないまま、東部ベニなど野党地盤の3地域では来年3月まで投票を延期するという決定を発表した。エボラ出血熱の流行などを理由としている。
 
野党陣営は、再三の延期は「政権の陰謀」と反発。AFP通信によると、ノーベル平和賞を受賞したムクウェゲ医師も「選挙プロセスは行き詰まっている」と危機感を示した。
 
過去2回の大統領選では、開票後に不正を主張する野党支持者と治安部隊が衝突。今回も同様の事態が想定され、南アフリカ安全保障研究所のステファニー・ウォルターズ氏は「衝突が数日間で収まるかは不明。大規模な争乱に発展する恐れもある」と述べた。【12月29日 毎日】
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コンゴでは、1960年にベルギーの植民地支配から独立して以来、指導者の暗殺やクーデターが続いてきましたが、今回、選挙によって初めて平和的に指導者が交代することになるのか注目されます。

しかし、コンゴ政府は国際的な選挙監視団の受け入れを拒んでおり、「公正な選挙」は期待できない状況です。
投票自体については大きな混乱はなかったようですが、問題はどのように集計され、どういう結果が発表されるかです。

「公正な選挙」が行われたとは思われていないだけに、カビラ大統領の後継候補の勝利が発表されても、野党側が平穏に受け入れるとは思われません。

****コンゴ民主共和国で2年越しの大統領選 初の平和的政権移行なるか****
アフリカ中部のコンゴ民主共和国で30日、大統領選の投票が始まった。現職のジョゼフ・カビラ大統領が任期切れ後も居座ったため、当初予定より2年遅れの実施となった。

選挙での大統領交代が実現すれば、1960年にベルギーから独立して以来初の平和的な政権移行となるが、カビラ氏に対する不信感や選挙への組織的な妨害行為などから混乱に陥る恐れが強いとみられている。
 
暫定的な開票結果は来年1月6日までに発表される見通し。
 
地元カトリック司教協議会は78%の投票所での監視活動に基づき、投票は「比較的平穏」に行われたとしている。一方で、治安が不安定な東部・南キブ州の投票所では、警察官1人、選管当局者1人、市民2人が衝突で死亡したとの情報がある。
 
カビラ氏は30日夜、国営テレビに登場し、国民は「平和的に、尊厳をもって」投票したとたたえた。しかし投票の再三の延期や、投票日の混乱に対する懸念、投票機の不正操作への疑いから、選挙への信頼は揺らいでいる。
 
投票日前日には、暴力行為の回避に向けた野党候補らとカビラ氏の後継指名者の協議も決裂した。野党の有力候補、マルタン・ファユル氏とフェリックス・チセケディ氏は、カビラ氏が後継指名したエマニュエル・ラマザニ・シャダリ元内相との行動規範案に署名することを拒否。選挙管理委員会が同案の変更を妨害していると非難した。 【12月31日 AFP】
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コンゴのような国では、選挙管理委員会は中立ではなく、政権と一体の組織です。
決裂した「投票日前日の協議」というのは、「どんな結果が出てもそれを受け入れ、暴力行為は行わない」といった内容のものですが、不正な操作も懸念されるなかでは、なかなかそういう承諾はできません。

“野党の支持者とカビラ政権の影響が強い治安部隊の衝突は連日続いています。開票結果の発表は来月上旬になる見込みですが、どのような結果が出ても、混乱が広がることが懸念されています。”【12月31日 NHK】

政権側はネットを遮断して、混乱が拡大することを防止しようとしているようです。

****コンゴ政府、全土でネット遮断=大統領選後の騒乱阻止と説明***
コンゴ(旧ザイール)政府は1日、全土でインターネットを遮断したことを明らかにした。12月30日投票の大統領選をめぐり不穏な空気が漂っており「大衆の騒乱」を阻止するためだと説明した。
 
野党は12月31日からネットがつながらないと政府を批判。欧米各国も早急な復旧をコンゴ政府に求めていた。

大統領選は、カビラ大統領の後継候補と野党の有力2候補の計3人が独自の集計に基づき自身の優勢をそれぞれ主張している。コンゴ政府高官は1日、「うその集計結果を大衆に吹き込む者がいて、これが騒乱の元になる」と強調。ネット遮断は政府の「責務だ」と訴えた。【1月2日 時事】
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政府・選挙管理員会への信頼がない状況では、どんな措置も不信感を増長させるだけです。

****コンゴ大統領選、カトリック教会が結果公表を強く要求****
アフリカ中部のコンゴ民主共和国で先月30日に行われた大統領選の投票をめぐり、同国で強い影響力を持つローマ・カトリック教会の組織「コンゴ・カトリック司教会議」は3日、どの候補が勝利したかは明白だと指摘し、開票結果の発表延期を示唆した選挙管理委員会に事実をきちんと公表するよう強く求めた。
 
CENCOの広報担当者は「集計データでは誰が大統領に選出されたか明確に示されている」と述べ、選管委員会に対し、真実と正義に基づいて開票結果を公表するよう求めた。(後略)【1月4日 AFP】
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まともな“出口調査”といったものもないでしょうから、“どの候補が勝利したかは明白だ”というのが、どういう情報に基づくものなのかは知りません。集計作業に関して漏れてくる情報によるものでしょうか。

とにかく、選挙管理委員会が集計結果をそのままストレートに公表してくれればいいのですが、そこが期待できない現実が、コンゴが長く混乱を続けてきたことの原因でもあります。

【スーダン 29年にわたり強権支配を続けてきたバシル大統領の退陣を求める声】
アフリカで、もうひとつ混乱が懸念されているのがスーダン。
(12月27日ブログ“アラブ世界で広がる国民不満による混乱の兆し  チュニジア、イラク、ヨルダン、スーダン、エジプト”)

****スーダンで退陣デモ 物価高不満、200人以上死傷****
アフリカ北東部のスーダンで、パンの価格が3倍に値上がりしたことなどをきっかけに各地で抗議デモが相次ぎ、29年にわたり強権支配を続けてきたバシル大統領の退陣を求める声が強まっている。デモ隊が治安部隊と衝突し、死傷者は200人以上に上っている。
 
AFP通信などによると、抗議デモは北東部のアトバラなどで19日から発生。翌日には首都ハルツームにも拡大し、経済の低迷を打開できていないバシル氏への批判が高まった。
 
25日には、大統領府周辺を行進していたデモ隊と治安部隊が衝突し、身柄を拘束される人も相次いだ。
 
発端は、今年に入って進んだ深刻な物価高だ。市民の生活に直結するパンなどの値段が高騰したほか、ガソリンなどの供給不足も重なり、インフレ率は70%になった。
 
1989年のクーデターで権力の座を握ったバシル氏は、抗議デモを受けて経済改革の実行を約束したものの、「わが国を崩壊させる者は裏切り者だ」と批判。首都などに治安部隊を配置し、地元の記者などを一時拘束するなど沈静化に躍起になっている。
 
スーダンでは、油田の8割を占めていた南部が2011年に南スーダンとして独立。石油関連製品の輸出が約75%も減り、経済悪化の要因となっている。

さらに、政権の国際テロへの関与が疑われ、米国から「テロ支援国家」に指定されており各国からの投資も伸び悩んでいる。【12月29日 朝日】
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****警察に自制要求-スーダン大統領=パン値上げ抗議デモで死者多数****
スーダンのバシル大統領は30日、首都ハルツームに警察幹部を集め「治安を維持してほしいが、警察にはもう少し強権を行使せずにやってもらいたい」と述べ、デモ隊への過剰な対応の自制を求めた。(後略)【12月31日 時事】
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混乱は、年が明けても続いています。今日がひとつのピークにもなっているようです。

(画像は“flickr”より By Etkin Haber

****スーダンの騒擾****
先月にスーダン各地で起こった経済事由による、抗議運動は4日も各地で続いていて、これに対して治安部隊は、ポートスーダン等で、催涙ガスを使って解散させようとしている模様です。

これまでに、治安部隊との衝突で、すでに19名が死亡して、デモ隊側に218名、治安部隊側に187名の負傷者が出ているとのことですが(最大野党によると死傷者の数は、死者45、負傷者1000名に上るとしている由)、労働組合、各種野党、人権活動家等は、経済的要求から、バシール大統領の退陣を求める政治的な要求に、要求を拡大していて、本日(金曜日)を「自由と変革の金曜日」と銘打って、全ての人に高下議デモに参加するように呼びかけている由。

他方、これに対してバシール大統領は3日、スーダンはこの20年外国の陰謀にさらされているとして(ただし、国名は特定せず)、またアラブの春後多くのアラブ諸国が、不安定化とテロの脅威にさらされてきたとして、スーダンはそのような不安定化の試みに直面した7国の一つだが、既に,エジプト、チュニジア、リビア、イエメン、シリア、イラクでは、これらの国の不安定化は成功しているとして、危機感を表明した由。

4日の金曜日と言えば、時差の関係もあり事態が動いているとすれば、まさに今頃のことなので、スーダン情勢の具体的な動きについては、明日まで待つ必要があるかもしれないが、取りあえず【1月4日 「中東の窓」】
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“なお、直近でヤマを迎えそうなのが、スーダン情勢である。スーダンでは昨年来、経済問題をめぐる辞任要求デモが継続し、連立を組む政党の離反や、政権を支えてきた政治家の反発も見られている。スーダン情勢の混乱は石油価格への影響のみならず、アフリカの「飢餓ベルト」で勢力を拡大するテロ組織の更なる伸長を促す可能性もある。”【1月4日 大野元裕氏 Japan In-depth】とも。

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コンゴ民主共和国  ノーベル平和賞受賞者を生んだ悲惨な現実 混乱が懸念される大統領選挙

2018-12-21 21:50:26 | アフリカ

(大統領選を控えたコンゴ民主共和国の首都キンシャサで、街角に掲げられた選挙ポスター(2018年12月19日撮影)【12月20日 AFP】)

【兵器としての性暴力】
アフリカ中央部に位置する資源大国のコンゴ民主共和国、国際的に報じられるこの国に関するニュースは残念ながら悲惨なものがほとんどです。

もちろん、現地ではノーマルな市民生活が存在し、国際ニュースにはなりにくいポジティブな面も多々あるのでしょうが・・・。

12月10日、ノルウェーのオスロでおこなわれたノーベル平和賞の授賞式で、今年の受賞者である婦人科医のデニ・ムクウェゲ氏(63)がスピーチを行いました。ムクウェゲ氏は紛争が続くコンゴで、4万人以上にものぼる性暴力の被害を受けた女性たちを治療してきました。

通常は、ノーベル賞受賞は受賞者の国とっても誇らしいものですが、ムクウェゲ氏の受賞はコンゴの悲惨な状況を世界に訴えるものです。

コンゴ政府は、ムクウェゲ氏の活動について、性的暴行で心身に傷を負った女性を助けるという「非常に重要な仕事」をしていると称賛する一方で、人道活動と政治を混同していると非難しています。

コンゴの歴史は、植民地時代も、独立後も、その豊かな資源をめぐる争いの歴史でした。

特に、1998年8月から2003年7月にかけて、ツチとフツの民族対立や資源獲得競争が原因で行なわれた第二次コンゴ戦争は、8つの周辺諸国と少なくとも25の武装勢力が関係するなかで、戦争とその余波で起きた虐殺・病・飢えで死んだ者を含めると500~600万人と言われる犠牲者を出し、「アフリカ大戦(Great War of Africa)」とも呼ばれています。

“100万人以上が家や病院等を追われ難民と化し、周辺諸国へ避難したが、この難民の一部も組織的に虐殺された。暫定政権はその後も国内すべてを掌握できず、民族対立とも相まって東部(イトゥリ州、南キヴ州、北キヴ州)は虐殺・略奪・強姦の頻発する一種の無法地帯となった。この戦争と闘争の余波は、鉱山資源の獲得競争等の原因で2013年現在も継続している。”【ウィキペディア】

武装勢力が跋扈し、政府の正常な統治が及んでいない広範な地域があることは、2018年の現在も変わりなく、ムクウェゲ氏の活動・受賞は、そうした混乱状態を背景としたものです。

****性器に銃弾、化学物質で性器に穴、乳幼児をレイプ……
「性暴力はもはや兵器だ」ノーベル平和賞ムクウェゲ氏が本当に伝えたかったこと
****
(中略)
コンゴで性暴力が繰り返される理由
長年医師として、女性たちの苦しみを目の当たりにしてきたムクウェゲさん。それは想像を絶するものでした。

7人の男にレイプされた挙句、性器を銃で撃たれた女性。化学物質を使って性器に大きな穴をあけられた女性。なかには、1歳にもならない赤ちゃんが、腹部にいたるまで完全に引き裂かれるという悲惨な事例も見てきたのです。

授賞式のスピーチで語られたのも、そうした女性たちの苦しみでした。

性暴力が繰り返される背景には、資源をめぐる争いがあります。

コンゴは、ゴムや象牙などの資源があったことで、19世紀後半、ベルギー国王の私有地として支配され、現地の住民たちは、過酷な植民地統治を受けてきました。その後、1908年にベルギーの植民地となり、1960年に独立しましたが、金やダイヤモンドなど鉱物資源にも恵まれていたことで、外国勢力による干渉が続きます。

欧米のメディアや専門家によると、資源から生まれる富をコンゴ人の手に取り戻そうと、鉱山企業の国有化政策を進めていた初代首相へのクーデターの背景には、ベルギーやアメリカ、イギリスなどの関与があったと指摘されています。

その後も、コンゴの資源を狙う近隣諸国が、政権側と武装勢力との争いに介入したり、そこに大国が資金提供をしたりしたため、戦火が絶えなかったと言われているのです。

そうした紛争によって今、大きな被害を受けているのが女性たちです。そして被害者だけでなくコミュニティを崩壊させるための「兵器」として、性暴力が利用されているのです。

ムクウェゲさんは、資源が眠る地域を支配下に置きやすくするために、政権や武装勢力が組織的に行ってきた犯罪だと訴えています。

女性に被害を与えることで、女性が中心的な役割を果たしている農業などが破綻。最終的に住民は鉱山での労働に依存せざるを得なくなります。

また、女性の性器を傷つけることで子供を産めなくさせれば、長期的にその地域の人口減少につながり、その結果、ますます資源地域を支配しやすくできるのです。

絶えることのない争い──
長年、被害女性を治療するなかで、ある時ムクウェゲさんは、負の連鎖が繰り返されていることに気付きました。ムクウェゲさんのもとを一度訪れた女性たちが、再び性暴力を受け、ムクウェゲさんのもとに運ばれてきていたのです。

さらにレイプによって生まれた子どもが、8歳でレイプの被害者になったと知って大きなショックを受けました。その時、ムクウェゲさんのなかに変化があったと言います。

「必要なのは行動だ。手術室から出てメッセージを伝えなければならない」
事態の原因そのものを解決しなければ、悲劇は止まないと考えたのです。

ノーベル平和賞のスピーチは、ムクウェゲさんにとって「メッセージを伝えなければならない」という、その思いをかなえるための、まさに絶好の機会だったのではないかと思います。

スピーチには、これまでの怒りや思いがにじみ出ていたように感じます。ムクウェゲさんの過去の演説やインタビュー、そしてコンゴの人から話を聞くと強く感じるのは、この問題が性的暴力に留まった問題ではないということです。

もちろん女性たちの被害について語ってはいるのですが、この問題は、コンゴが味わってきた過去の不公正な歴史の延長線上にあり、同時に、すべてのコンゴ人が、その外国などから受けてきた不公正な歴史の被害者だからこそ、女性たちの痛みや苦しみに共感しているのだということです。

しかし、そうしたことは、特に日本では、世の中に充分に知られていません。

「暴力はもうたくさんだ。私たちは死ぬ物狂いで平和を求めている。どうか行動を起こしてほしい」と世界に訴えるムクウェゲさん。ノーベル平和賞の受賞によって、彼のメッセージが、真に世界に広く伝わることを願っています。【12月13日 Yasuko Tazawa クーリエ・ジャポン】
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【エボラ出血熱流行も、紛争地域で十分な対応がとれず】
そのコンゴはエボラ出血熱の頻発地域ですが、現在10回目の流行に脅かされています。
流行地域は政府軍と武装勢力の衝突が続く地域でもあり、予防・治療対策が十分に行えない状況にもあります。

****「史上最悪のエボラ被害」内戦で感染対策遅れる****
アフリカ中部のコンゴ民主共和国で、エボラ出血熱の流行が拡大している。

保健省は16日、感染の疑いのある人を含め、今年7月以降に313人が死亡したと発表しており、2013〜16年に西アフリカで1万人以上が死亡した大流行に次ぐ被害となっている。
政府軍と反政府勢力による武力衝突が感染防止の取り組みを遅らせている。

東部の北キブ州ベニなどを中心に流行しており、コンゴ政府は、エボラ出血熱の被害としては「コンゴ史上最悪」と発表した。現在も1日あたり約5人のペースで、新たな感染者が出ている。

政府は8月以降、世界保健機関(WHO)と協力し、北キブ州を中心に約4万7000人にワクチンを接種したが、感染は拡大し続けている。

流行地付近で、反政府勢力の活動が活発なためだ。11月には反政府勢力の民主同盟軍(ADF)がベニの国連平和維持活動(PKO)の部隊を襲い、医療チームによる活動が一時中断した。【12月18日 読売】
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【大統領選挙の電子投票機が放火で破壊 予想される選挙後の混乱】
このような悲惨な状況が報じられるコンゴですが、任期が切れたのちも大統領にとどまっていたカビラ大統領がようやく退任を明らかにし、今月23日に大統領選挙が行われることになりました。

****平和な政権移行、焦点に 23日、コンゴ民主共和国で大統領選挙****
アフリカ中部のコンゴ民主共和国で23日、大統領選挙が行われる。1960年の独立以来初めて、平和的に指導者交代が実現するかが焦点の一つだ。

ただ、選挙管理委員会の公正性への信頼は低く、専門家は結果の受け入れを巡って、混乱が広がる恐れがあると指摘している。
 
これまでの政権交代はクーデターや内戦によるもので、現職のカビラ大統領も2001年に暗殺された父親の後を継ぐ形で大統領の座についた。

カビラ氏は16年末に憲法で上限として規定された連続2期の任期を終えた後も退陣せず、治安や準備の遅れを理由に大統領選の実施を先延ばしにしてきた。
 
憲法違反となる3選出馬こそ断念したものの、配下のラマザニ前内相を後継候補に指名。南アフリカ安全保障研究所のステファニー・ウォルターズ氏は「自らに忠実な人物を後継者に据えて、影響力を維持しようとしている」と分析する。
 
一方、野党7党は投票1カ月前に実業家のファユル氏を統一候補とすることで合意したが、翌日に分裂。最大野党・民主社会進歩同盟(UDPS)のチセケディ党首は自ら出馬して3人の主要候補が争う構図となった。
 
最新の世論調査ではチセケディ氏が首位だが、コンゴの大統領選は上位2候補による決選投票がないため、反カビラ票の分散でラマザニ氏が「漁夫の利を得る」可能性がある。

しかし、今回から導入される電子投票機について野党側が「票の操作に利用される」と反対するなど、不正選挙の懸念は大きい。

仮にラマザニ氏が当選した場合、他候補の陣営が受け入れを拒むのは必至だ。反発した野党支持者と治安部隊の衝突が危惧される。
 
コンゴは西ヨーロッパに匹敵する広大な国土を誇り、スマートフォンなどの電子機器に使われるレアメタル(希少金属)が豊富。地下資源の埋蔵量は24兆ドル(約2680兆円)相当に上るとされるが、その富は一部の支配層が独占し、貧困がはびこっている。【12月18日 毎日】
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論議を呼んでいた“今回から導入される電子投票機”が火災で使用できなくなったとのことで、選挙も1週間延期されると報じられています。

****コンゴ民主共和国、大統領選1週間延期か 倉庫火災で大量の投票機破壊****
アフリカ中部コンゴ民主共和国の選挙管理当局者は19日、23日に予定する大統領選と議会選について、1週間延期される可能性があるとAFPに明らかにした。放火と疑われる倉庫の火災によって電子投票機が破壊されたためという。(中略)
 
独立国家選挙委員会によると、火災があったのは12日。首都キンシャサで使われることになっていた電子投票機約1万台のうち、8000台近くが使用不能になったという。

首都には全国の有権者4400万人のうち11%が住む。野党側は、火災には政府が関わっている可能性があるとの見方を示している。
 
国内では選挙集会などで暴力事件が相次いでおり、NGOによると選挙運動が始まった先月22日以降、少なくとも6人が死亡した。
 
東部では武装集団による襲撃が発生しているほか、エボラ出血熱も流行している。一方、西部では16日から民族衝突が続き、人権団体のまとめによるとこれまでに82人が死亡した。【12月20日 AFP】
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“東部では・・・。一方、西部では・・・” いったいどこなら安全なのか?という感も。

放火による電子投票機破壊が、政府によるものなのか、野党側によるものなのか(電子投票に反対していたのは野党側のようですから)・・・そこらはわかりませんが、不穏な情勢であることは間違いありません。

“仮にラマザニ氏が当選した場合、他候補の陣営が受け入れを拒むのは必至だ。反発した野党支持者と治安部隊の衝突が危惧される。”・・・・野党候補が勝利した場合(選挙管理員会が素直にそれを発表した場合ですが)も、やはり与党支持勢力との衝突は危惧されます。

どちらに転んでも、平穏には終わりそうにないようにも・・・・。


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南スーダンへの武器輸出禁止をめぐる議論  “武装勢力が割拠する国を安定させるにはむしろ武器が必要”か?

2018-12-05 23:18:30 | アフリカ

(国連が目指す軍縮を象徴する、ねじれた銃の像【12月4日 withnews】)

三日前の12月2日ブログ“南スーダン 「再活性化された衝突解決合意」のもとで横行する、武装勢力によるレイプ”でも取り上げた南スーダンの話。

****12日間で150件超のレイプ被害報告、南スーダン****
南スーダンでレイプなどの性的暴行被害を受け、支援を求めて名乗り出た女性や少女が過去12日間で150人を超えた。国連機関のトップらが3日、明らかにした。

今回、マーク・ローコック国連事務次長(人道問題担当)と国連児童基金(ユニセフ)のヘンリエッタ・フォア事務局長、国連人口基金のナタリア・カネム事務局長が共同声明を発表。これによると、同国北部ベンティウ近郊では、ユニホーム姿の武装した男たちが襲撃を実行しているという。

共同声明で3機関は「これらの忌まわしい襲撃」を非難し、加害者が裁きを必ず受けるよう南スーダン当局に求めた。

国際医療支援団体「国境なき医師団」は先週、女性や少女125人が国際援助団体が設置した緊急の食料配給所へ向かう途中でレイプ被害に遭っていたと発表している。

先の共同声明によると、2018年前半に報告された被害件数は約2300件で、被害者の大半が女性と少女だった。またその20%超が子どもだという。

また報告されない被害が多いため、実際の件数ははるかに多いと指摘している。

2013年から内戦が続く南スーダンでは、性暴力被害が悲惨な水準に達している。【12月4日 AFP】
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ひどい話ですが、南スーダンにおける日常の一端にすぎない話でもあるのでしょう。

南スーダンに関しては、さすがに国連においても南スーダンに対する武器輸出の禁止という形で議論になっています。その議論について、ちょっと興味深い記事がありました。

****国連安保理で今年はぎりぎり採択、南スーダンへの武器禁輸 日本も一昨年は決議を棄権、世界はなぜ割れる?****
内戦が続く南スーダンへの武器輸出を禁じる国連安全保障理事会(安保理)の決議は、2018年にぎりぎりで採択されました。その前に提案された時は、日本も含め棄権が多く不採択でした。

内戦の当事者たちがにらみ合う国への武器売却を国際社会が控えれば、その国は平和になるのかという深いテーマです。

しかも国際社会の縮図である安保理とくれば一筋縄ではいきません。その議論を振り返ってみましょう。

今年はぎりぎり決議採択
南スーダンへの武器禁輸決議が安保理で採択されたのは2018年7月13日。その様子が詳しい英語の議事録は、安保理HPで見られます。

議事録によると、15理事国の投票結果はこうでした。

賛成=9カ国 コートジボアール、フランス、クウェート、オランダ、ペルー、ポーランド、スウェーデン、英国、米国
反対=なし
棄権=6カ国 ボリビア、中国、赤道ギニア、エチオピア、カザフスタン、ロシア

安保理での決議採択には、9カ国が賛成し、かつ「拒否権」を持つ米英仏中ロの5常任理事国のうち1国も「反対」しないことが必要です。常任理事国が「棄権」なら9カ国の賛成でOKですが、安保理では結束を示そうと全会一致へ決議案の内容が調整されることが多いのです。その役割が国連憲章で「国際の平和と安全に主要な責任」を担うとされているからです。

そんな安保理で、この決議はぎりぎりで採択されたまれなケースとなりました。

米国「狂気に兵器を与えるな」
決議の際の各国代表の演説には、各国の考え方がよく現れます。決議案を出した米国のヘイリー国連大使が最初に訴えました。

「南スーダンでの暴力に関する国連の報告書によると、今年の4〜5月に武装勢力が40の村を襲った。120人の女性がレイプされ、子ども35人を含む民間人232人が殺された」
「昨年12月に合意された停戦協定は破られている。こうした狂気を引き起こした人々になぜ兵器を与えるのか」

スーダンでの半世紀以上にわたる南北間の内戦を経て、南スーダンは2011年に独立しました。米国はその独立を支えただけに、政府の機能不全による人道問題が目に余るようです。

他の賛成の国々も、ほぼこうした主張でした。武器禁輸をしなければ内戦が長引き、罪のない人々が苦しむばかりではないか――。そんな指摘はもっともに聞こえます。南スーダンでは13年からの内戦で、国民の3分の1にあたる約400万人が国内外で避難生活を強いられています。

「アフリカへの理解欠く」
それでも決議の採択に棄権、つまり賛成しなかった国々の理由はどんなものでしょうか。米国に続いて演説した、アフリカからの2国の代表の主張はこうです。

「南スーダンでは内戦当事者たちが和平へ歩んでいる。安保理がいま制裁すればそのプロセスが揺らぐ」(エチオピア)

「この決議はアフリカへの理解に欠ける。安保理との間で信頼関係を築いてきた努力に逆行するものだ」(赤道ギニア)

いま武器禁輸をするなど逆効果だ、アフリカの実情をわかっているのかと言わんばかりですが、その実情とは何でしょう。

各理事国の代表らの発言の後、出席を許された南スーダンの代表が最後に「棄権した国々に感謝する」と語り、続けました。

「この不幸な決議で安保理が味方になったと考える反政府勢力が、政府との和平交渉を続けるだろうか」

そう考える理由を、南スーダンの代表は以前の安保理で「武器禁輸は政府を弱くし、武装勢力を強くする。長い内戦で民間人に武器が行き渡り、穴だらけの国境からは違法な武器が流れ込んでくるからだ」と述べています。

混沌とする南スーダンで何かと目立つ政府だけが縛られかねない武器禁輸などとんでもない、武装勢力が割拠する国を安定させるにはむしろ武器が必要だ、というわけです。

内戦当事者の一方として都合のいい主張にも思えます。ただ、欧州列強の植民地当時に引かれた国境で民族が分断され、内戦や難民が絶えないアフリカのジレンマとも言えます。

昔の日本のことも頭に浮かびます。幕府や薩長が主導権を握ろうと欧州列強から競って武器を買った、幕末の動乱です。

棄権の中ロ、米と火花
(中略)

自衛隊派遣の日本も棄権
では、日本はどうだったのでしょう。2018年から任期2年の非常任理事国を外れており、7月に武器禁輸決議が採択された場にはいませんでしたが、16年12月に不採択となった場にはいました。この時は米国提案の決議に賛成は7カ国、反対なし、棄権は日本を含む8カ国でした。

別所浩郎国連大使は、日本の棄権について「南スーダンでの暴力を深く懸念するが、対話は進んでおり、外交努力を続けるべきだ。日本は南スーダンの平和と安全に貢献を続ける」と説明しました。

当時、別所大使は深く語りませんでしたが、日本が「南スーダンの平和と安全」で腐心していたのは、外交努力よりも自衛隊派遣の方でした。国連平和維持活動(PKO)で首都ジュバに陸上自衛隊の部隊を送っており、しかもそこで数カ月前に大規模戦闘があったばかりだったのです。

自衛隊が戦闘に巻き込まれないように停戦が保たれることは、憲法との関係でも、隊員の安全のためにも必要でした。また、南スーダン政府がPKOを受け入れ続けることが自衛隊派遣の大前提でした。

そんな南スーダン政府と国連の関係を悪化させ、和平プロセスを不透明にしかねない武器禁輸決議には、たとえ同盟国・米国の提案でも賛成できないという背景がありました。(後略)【12月4日 withnews】
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中国・ロシアとアメリカの議論、日本の立場については、また別機会に。

面白いと思ったのは、欧米とアフリカ諸国の議論です。特に、アフリカ側の反論です。

“武器禁輸は政府を弱くし、武装勢力を強くする。長い内戦で民間人に武器が行き渡り、穴だらけの国境からは違法な武器が流れ込んでくる”“武装勢力が割拠する国を安定させるにはむしろ武器が必要だ”・・・・アメリカにおいて繰り返されている銃規制の議論をも連想させるものがあります。

合衆国憲法による個人の権利という話は別にして、繰り返される銃による惨劇を受けての銃規制の必要を主張する立場に対し、すでに銃が広く民間に行き渡っている銃社会においては、自分の身を守るためには銃が必要だという反論もあります。

もっともにも思える主張ではありますが、そうした現状を前提にする限り、銃による惨劇という現実は未来永劫なくなりません。

そこを変えようとすれば、現状の変革に向けて一歩踏み出す必要があります。

南スーダンの話で言えば、武器輸出禁止を前提にして、民間に行き渡った武器の回収に向けた努力も必要ですし、何より、武装勢力への武器提供ルートを絶つ努力が必要です。

武装勢力に武器・弾薬を提供しているのは何者でしょうか?
いわゆる武器商人的な存在でしょうか? 政府軍から武装勢力に流れる武器も相当にありそうに思えます。

ただ、そうした武器商人にしても、どこから武器は調達するのでしょうか?

ひと昔前には、ソ連解体に伴うウクライナなどからの武器流出とか、カダフィ政権崩壊後のリビアからの武器流出といった話もありましたが・・・

いずれにしても、宇宙から地上を監視できる、あるいはすべての通信を傍受できるような時代にあって、秘密裏に大量の武器弾薬を流し続けることが可能だということが不思議です。

各国の情報機関などは、一定に武器弾薬の流れを把握しているのではないでしょうか?ただ、現在はいろんな事情もあって、そうした流れを黙認している、表沙汰にはしていない・・・ということではないでしょうか?

国際社会・政府が一体となって強力にそうした武器・弾薬の流れを絶つ方向で結束すれば、絶てるのではないか・・・と素人的に思えます。

外部からの武器・弾薬の流入が止まらない限り、国内での衝突・暴力は絶えません。
国内に秩序を樹立するためには、国外からの武器・弾薬の流入を止める必要があるように思うのですが。

一方で、武器輸出大国である米中ロ英仏などは、武器取引の透明化も必要です。

****武器貿易条約、発効より履行=戦場に潤沢な銃、提供国に責任―赤十字国際委局長****
日本で20日から5日間の日程で締約国会議が開かれている武器貿易条約(ATT)について、赤十字国際委員会(ICRC)のヘレン・ダーラム国際法・政策局長が「条約の発効は第一歩にすぎない。履行が大事だ」と各国に呼び掛けている。

ATTは銃器などの輸出入の規制を各国に求めているが、イエメンやシリア、アフガニスタンなど世界各地で武装勢力は今もどこかから潤沢な武器を入手し、戦闘が止まらない。

締約国会議のため来日した20日、東京都内で時事通信社の取材に語った。局長は「武器を供給する国は必ず存在する。戦争犯罪を生み出す集団に武器を提供すれば、提供した国が責任を負う」と強調した。こうした「国家の責任」を忘れさせないよう声を上げ続けている。

冷戦後の紛争の特徴として「長期化が目立ち、都市での戦闘が多くなり、『国家』ではない『武装勢力』が戦闘の主体になることが増えた」と指摘する。その中でも「小型の銃器を入手しやすくなっていることは大きな問題で、戦闘に巻き込まれた人々の苦しみに直結する」と特に問題視している。

ICRCの活動現場は圧倒的に紛争地が多い。ATT発効前から「武器の移動を規制できないかと切実な声が戦地の現場から上がっていた」と局長は振り返った。今も戦場で弱者が犠牲になっており「問題を提起し続ける」と語った。【8月22日 時事】
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****<通常兵器会議>未締結国の参加促す報告書を採択し閉幕****
東京都内で開かれていた通常兵器の国際取引を規制する武器貿易条約(ATT)の第4回締約国会議は24日、5日間の日程を終えて閉幕した。現在97カ国・地域の加盟を増やすため、未締結国への働きかけを強めることを確認した最終報告書を採択した。
 
条約は、自動小銃など通常兵器の貿易を規制する内容で、2014年に発効した。テロ・犯罪組織に武器が流れることを防ぐため、輸出入の透明化を図ることに主眼を置いている。

ただ、武器輸出大国の米国や中国、輸入側の東南アジアの多くの国は未締結。加盟国の増加や、各国に輸出入に関する報告書の作成を促すことが焦点だった。
 
最終報告書は「武器移転の国際的規範の確立には、条約の普遍化(加盟国の増加)が不可欠」と強調。議長国を務めた日本の提案により、犯罪・テロ組織への武器の流出防止策や、加盟国の情報交換を促すための施策が盛り込まれた。
 
外務省によると、通常兵器を使った紛争や犯罪による死者は16年現在で約56万人。同省幹部は「小型武器の規制は人の命を守ることにつながる。条約履行の呼びかけは重要だ」と指摘した。【8月24日 毎日】
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コメント

アフリカ紛争国の現在は? 南スーダン、マリ、中央アフリカ

2018-11-01 23:18:55 | アフリカ

(和平協定への調印を前に握手を交わす南スーダンのサルバ・キール大統領(右)とリヤク・マシャール前副大統領(2018年9月12日撮影)【9月13日 AFP】 この指導者たちは、紛争で40万人とも言われる犠牲者出ていることをどのように考えているのでしょうか?)

【南スーダン 繰り返される停戦破棄 今回は? すでに死者は40万人 年末までに子ども2万人が餓死の危険】
昨日、久しぶりに南スーダンのニュースを目にしました。
自衛隊の国連PKO撤収後は、日本での関心は急速に低下したようにも。

「そういえば、9月に和平協定に調印して、そのあとどうなったのだろうか・・・?」というのが正直な印象。

****反政府派トップが帰還 2年ぶり****
南スーダン政府と反政府派の和平を祝う式典に出席するため、最大の反政府勢力を率いるマシャール前第1副大統領が31日、約2年ぶりに同国の首都ジュバに帰還した。

マシャール氏は2016年7月の内戦再燃後、ジュバを脱出し、南アフリカなどで亡命生活を余儀なくされていた。
 
現地からの情報によると、式典にはキール大統領やマシャール氏のほか、和平を仲介した隣国スーダンのバシル大統領ら周辺国の首脳も出席。マシャール氏は「反政府派も平和を望んでいる。和平協定を履行する用意がある」などと語った。
 
キール大統領とマシャール氏は9月に和平協定の最終文書に調印した。来年5月までに政府と反政府派による暫定統一政権を発足させ、マシャール氏は第1副大統領に復帰することになっている。
 
ただ、一部地域では今も武力衝突が続く。和平協定に基づく政治犯や反政府派メンバーの釈放などは実現しておらず、首都の治安維持にも課題を残す。

反政府派の報道官によると、マシャール氏の帰還は一時的なもので、近く再出国する見通しだ。
 
英ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の調査によると、13年12月に始まった内戦の死者は推計約40万人に上る。【10月31日 毎日】
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ちなみに、9月に調印された和平協定については、以下のように報じられていました。

****<南スーダン内戦>和平協定調印 8カ月以内に暫定統一政権****
2013年末から内戦状態が続いていた南スーダンの政府と反政府勢力各派は12日、エチオピアの首都アディスアベバで和平協定の最終文書に調印した。8カ月以内に暫定統一政権を再発足させる。

合意を着実に履行し、政府軍と武装勢力の衝突を回避できるかが焦点となる。
 
現地からの情報によると、周辺国の首脳らが見守る中、キール大統領と反政府勢力トップのマシャール前第1副大統領が合意文に署名し、握手を交わした。副大統領を現在の2人から5人に増やし、反政府勢力各派に分配。

亡命中のマシャール氏は第1副大統領に復帰する。任期は総選挙までの3年間となる。
 
ただ、これまで10回以上結ばれた停戦合意はいずれもすぐに破られており、和平の実現には曲折が予想される。米英ノルウェーの3カ国は「当事者がどの程度関与するかに懸念を持っている」との声明を発表した。
 
南スーダンは2011年にスーダンから分離独立後、キール氏とマシャール氏の権力争いから内戦状態となった。15年8月に和平協定を結び、翌年4月に暫定政権を樹立したが、首都ジュバで大規模な戦闘が起きて2カ月半で破綻した。
 
和平協議は周辺国が仲介。最終的には南スーダンの油田地帯に権益を持つ隣国スーダンが主導する形で各勢力間の交渉をまとめた。
 
合意によると、政府軍とマシャール氏配下の部隊は8カ月以内に統合される予定だが、シンクタンク米平和研究所の専門家アリ・バージー氏は「(短期間での統合は)非現実的」と指摘。

「当面は現政権が存続するが、暫定政権の発足に向けた準備が進むのか。内戦終結に向けた強い意志が見えず、合意の履行には深刻な疑問が残る」という。
 
一部の武装勢力は、キール派とマシャール派が中心の権力分担では「根本的解決にならない」として、署名を拒否している。
 
5年近い内戦では兵士らによる深刻な人権侵害が相次ぎ、経済崩壊で住民は困窮。250万人が周辺国に逃れ、1994年のルワンダ大虐殺に匹敵する「アフリカ最大の難民危機」となっていた。
 
南スーダンでは昨年5月まで、日本の陸上自衛隊が国連平和維持活動(PKO)に派遣されていた。国際協力機構(JICA)の邦人職員も内戦再燃を受けて国外に退避したが、今年8月に常駐での業務を再開している。【9月13日 毎日】
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“これまで10回以上結ばれた停戦合意はいずれもすぐに破られており・・・”
小説家マーク・トウェインの有名な言葉「禁煙なんて簡単さ。私はもう何千回もやめてきたのだから。」を連想させる事態ですが、マシャール氏が一時的にせよ帰国したということは、少なくとも今のところは停戦の大枠は維持されているようです。(一部地域の衝突はあるものの)

ただ、すでに大きすぎる犠牲を払っています。

****<南スーダン>内戦死者40万人 想定上回り衝撃****
2013年12月に始まった南スーダンの内戦が原因で死亡した人の数は従来の想定を大きく上回り、約40万人に上ると英ロンドン大学衛生熱帯医学大学院が援助団体の現地調査などを基に結論づけた。

11年から続くシリア内戦に匹敵する被害規模で、関係者に衝撃を与えている。
 
調査は、今年4月までの犠牲者数を約38万3000人と推定。うち19万人が戦闘で殺害され、ほぼ同数の人が紛争下の劣悪な衛生環境による病気や栄養不良などで死亡したという。内戦が激化した16〜17年にかけて特に多くの犠牲者が出たとしている。
 
南スーダン内戦の死者数をめぐっては、国連関係者が16年初めに約5万人という数字を示したが、その後の混乱で大幅に増えたとみられる犠牲者数についての分析結果が公表されたのは初めて。

同大学院は、実際の犠牲者数は40万人を「はるかに上回る可能性がある」としている。
 
国連によると、5年近くに及ぶ内戦では約250万人の難民が発生。国内避難民を含めると約450万人が家を追われ、人口の約6割に当たる600万人以上が深刻な食料不足に直面している。
 
南スーダン政府と反政府勢力は今月、和平協定の最終文書に調印したが、その後も戦闘が発生し、合意の履行が疑問視されている。【9月28日 毎日】
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このような悲惨な状況の常として、最も大きい犠牲は抵抗力が弱い子供たちが払うことになります。

****【南スーダン】 年末までに子ども2万人が餓死する危険****
南スーダンで子ども2万人が年末までに栄養失調によって死亡する可能性があるとされた。

国際市民社会組織セーブ・ザ・チルドレンから出された声明で、内戦が招いた状況により、南スーダンで子ども100万人を含む600万人以上に緊急の食料支援が必要であると伝えられた。

声明では、「子ども27万人が飢餓の危険に直面している。子ども約2万人が2018年末までに極度の飢餓によって死亡すると予想できる」と述べられた。

セーブ・ザ・チルドレン・南スーダンのデイドラ・キーオ代表は、「人道支援サービスの継続と拡大に向けた財政支援が確保されなければ、多数の子どもが死の危険と隣り合わせである」と述べた。

戦争の最も深刻な結果に直面しているのが子どもたちであることを思い出させた同組織は、人道支援サービスの受け取りが容易になるよう呼びかけも行った。(後略)【10月19日 TRT】
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いつも思うことですが、キール氏とマシャール氏、その他の武装勢力の指導者たちは、これだけの犠牲を国民に強いて、一体何を求めているのでしょうか?

おそらく自分の民族・部族以外は“国民”とも思っていないのでしょうし、自分の民族・部族の人々の生命・財産への関心すら怪しいものがあります。

そうした指導者しかいないところにいくら支援しても、ざるで水をすくうような感もありますが、さりとて見過ごすこともできません・・・・。

【西アフリカ・マリ 国連PKO部隊基地への襲撃も】
西アフリカのマリでは、国際テロ組織アルカイダにつながるイスラム過激派のグループが一時、北部の広い範囲を支配下に置きましたが、5年前に旧宗主国のフランスが部隊を派遣して主要な町を制圧し、過激派を排除しました。

住民の熱烈な歓迎で迎えられたフランス軍は積極果敢な作戦による成功を国際的にアピールしたかのようにも見えましたが、その後も過激派グループは広大なサハラ砂漠に潜みながら、フランス軍やマリの政府軍などに対する襲撃を繰り返しており、フランスにとっても重荷になってきています。

****サヘル5か国のテロ対策部隊司令部に爆弾攻撃 3人死亡 マリ****
西アフリカのマリで29日、サヘル5か国(G5 Sahel=ブルキナファソ、チャド、マリ、モーリタニア、ニジェール)でつくるテロ対策特別部隊「サヘル5か国合同軍」の司令部が自動車爆弾による攻撃を受け、治安筋と地元首長によれば、兵士2人と民間人1人が死亡した。負傷者も多数出ている。(中略)

同部隊は2017年、不安定な状況にある広大なサヘル地域でイスラム過激派反政府勢力や犯罪集団を撃退するため、フランスの支援を受けて創設された。司令部への攻撃はこれが初めて。(中略)

国連は26日、同部隊に参加しているマリ兵らが5月、マリ中部の市場で、しかるべき手続きを経ずに民間人12人を処刑していたとの調査結果を発表した。処刑は兵士1人が死亡したことへの報復として行われたという。

フランス軍司令部は29日、セバレでの攻撃に先立ち、同国のマリ派遣部隊、通称「バルカン」の兵士らが22日行った地元部隊との合同作戦で、イスラム過激派15人を殺害または拘束したと明らかにしていた。【6月30日 AFP】
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この「サヘル5か国合同軍」司令部襲撃の二日後にはフランス軍部隊が襲撃されています。

****マリでフランス部隊襲撃される 複数の死傷者か****
イスラム過激派が活動する西アフリカ・マリの砂漠地帯で、治安維持にあたっているフランス軍の部隊が襲撃され、複数の死傷者が出ているもようです。

マリ北部の砂漠地帯にある町、ガオで1日、治安維持にあたっているフランス軍とマリの政府軍が軍用車両でパトロールしていたところ、爆発がありました。

現地の報道によりますと、爆発物を積んだ車が部隊の車列に近づいて爆発したということで、自爆テロとみられ、複数の死傷者が出ているもようです。(後略)【7月2日 NHK】
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9月には、6月に爆弾攻撃を受けたアフリカのサヘル5か国は司令部をセバレから首都バマコへ移転しました。

マリでは、国連PKO部隊の基地も襲撃を受けています。

****マリでPKO連続攻撃 2人死亡、15人負傷****
西アフリカ・マリ北部トンブクトゥ州で27日、国連平和維持活動(PKO)部隊の基地が武装集団に襲撃され隊員2人が死亡、11人が負傷した。

約4時間後には中部モプティ州で別部隊が爆弾攻撃に遭い、4人が負傷した。国連が明らかにした。
 
トンブクトゥ州では、ロケット砲や機関銃で武装した集団が複数のピックアップトラックに分乗し襲撃。死亡した2人はブルキナファソから派遣された兵士という。モプティ州では、トーゴ兵が攻撃を受けた。(後略)【10月28日 共同】
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ここも、いつ終わるとも知れない泥沼のようです。

【中央アフリカ共和国 国連部隊と武装集団の衝突 ロシア民間軍会社の暗躍】
中央アフリカ共和国も、イスラム教徒系民兵組織「セレカ」とキリスト教徒系の民兵組織「アンチバラカ」の抗争・報復合戦を軸に、やはり泥沼の混乱が続いているようです。

****中央アフリカ、紛争により人口4分の1が避難民化 国連発表****
国連は(5月)29日、中央アフリカ共和国の人口4分の1以上が紛争により避難民化しているとした最新の集計結果を明らかにした。

国連人道問題調整事務所によれば、同国の国内避難民の数は4月時点で66万9997人に上る。

これに加えて、国内での武力衝突により近隣諸国へ逃れた避難民は57万人に及び、双方を合わせた避難民の数は合わせて、同国人口450万人のうち123万人超に達する。

世界の最貧国の一つに数えられる同国は2013年、イスラム教徒中心の武装勢力連合「セレカ」によってキリスト教徒のフランソワ・ボジゼ大統領が失脚したのを機に宗教対立を帯びた抗争に突入。

セレカ排除の支援目的でフランス軍が介入し、翌年には平和維持と治安安定化を任務とする大規模な国連部隊が配置された。

それでもなお、同国では暴力沙汰が後を絶たず不安定な状況が続いている。国土の大半はさまざまな民兵組織の手にあり、その多くがイスラム教徒やキリスト教徒を保護していると主張する一方、資源をめぐって戦闘を繰り広げている。【5月30日 AFP】AFPBB News
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国連は国連平和維持活動(PKO)のため1万3000人を派兵していますが、その国連PKOも戦闘行為の当事者となる混乱状態となっています。

****中央アフリカ首都で国連部隊と武装集団が衝突、19人死亡****
世界で最も貧しく不安定な国の一つとされる中央アフリカの首都バンギのイスラム教徒地区で、国連平和維持軍と武装集団との間で衝突が発生、国連部隊の兵士1人を含む19人が死亡し、100人以上が負傷した。
 
過去2年の間で最悪の流血の事態に憤ったPK5地区の住民ら数百人は、国連中央アフリカ多元統合安定化派遣団の拠点に押し寄せ、国連部隊によって10日に殺害されたという男性17人の遺体を並べた。

MINUSCAによると、衝突は平和維持軍が治安捜査を開始した後に起きた待ち伏せ攻撃で始まった。(後略)【4月12日 AFP】
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このように混乱が続く中央アフリカで7月30日、ロシアの民間軍事会社について取材していたロシア人ジャーナリスト3人が車で移動中に襲撃、殺害される事件があって、ロシアの民間軍事会社の活動、およびロシアで繰り返されるジャーナリスト・政敵の殺害ということで国際的に注目されました。

****中央アフリカ共和国で露ジャーナリスト3人死亡 背景に疑問が****
(中略)3人は、中央アフリカ共和国で活動するロシアの民間軍事会社、ワーグナー・グループの戦闘員について調査していた。

ワーグナー・グループは過去に、内戦の続くシリアでの活動が話題となった。最近になって、中央アフリカ共和国でも活動している可能性が浮上した。

ロシア政府と政府高官は、戦闘員とのつながりを否定している。しかしロシア政府は今年2月、国連の許可を得た上で、中央アフリカ共和国軍の訓練と軍備強化のために教官180人を派遣している。(中略)

ロシアと中央アフリカ共和国の関係は?
中央アフリカ共和国には機能している軍隊が存在せず、安全保障が喫緊の問題となっている。PKOは疲弊しており、国土の大部分は反政府組織が支配している。

そのため軍隊を復興しようという動きがあり、ここにロシアが登場する。

2017年12月、ロシア政府は国連安全保障理事会で、中央アフリカ共和国軍に対する小火器禁止に例外を設けるよう求めた。

軍隊訓練のために専門家を派遣したほか、フォースタン=アルシャンジュ・トゥアデラ大統領の警護にも何人かの警備員を送り込んでいる。【8月2日 BBC】
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以前、大規模な紛争・衝突があった南スーダン、マリ、中央アフリカでは、メディアへの露出は減っていますが、今も混乱が続いており、国連PKOも積極的な武力行使によって治安を安定させるという役割を担って活動していますが、苦戦している状況にあるようです。

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ケニア  急拡大する中国の影響力 中国式の社会システム導入 影響力を増す中国人の素行への不信感も

2018-09-07 21:41:09 | アフリカ

(ケニアで導入される中国式の治安維持システム【4月10日 NHK「クローズアップ現代」】)

欧米からの批判を一定に意識 批判への苛立ちも
中国のアフリカにおける存在感の拡大については、これまでもしばしば取り上げてきたところですが、中国とアフリカ各国が参加する「中国アフリカ協力フォーラム」首脳会合が3日~4日、北京で行われました。

習近平国家主席が開幕式で演説し、アフリカとの「運命共同体」を構築し、アフリカの経済発展のため総額600億ドル(約6兆6600億円)規模を拠出すると表明しています。

****中国、アフリカ支援6.6兆円表明 日本や欧米は警戒感****
中国とアフリカ諸国が関係強化について話し合う「中国アフリカ協力フォーラム」が3日、北京で始まった。

中国は従来の手厚い経済連携に加え、安全保障や環境問題などにも支援を広げ、アフリカ諸国の取り込みを一層強める構えを鮮明にした。日本や欧米は警戒を強めている。
 
中国アフリカ協力フォーラムは、2000年から3年ごとに中国とアフリカで交互に開催。今回はアフリカで唯一、中国と国交のないエスワティニ(旧スワジランド)を除く53カ国が代表を派遣。うち30近い国が首脳級を送り込んだ。
 
中国の習近平(シーチンピン)国家主席は開幕式での演説冒頭、台湾と断交して新たに加盟したガンビア、サントメ・プリンシペ、ブルキナファソを紹介。「熱烈な拍手で歓迎する」と呼びかけた。
 
習氏はアフリカへの支援として無償援助150億ドルを含む総額600億ドル(約6兆6500億円)の拠出を表明。これまでの借款を18年末までに償還できない一部の国に対し、債務を免除する方針も示した。
 
今後3年間で重点的に取り組む「8大行動」も発表し、500人の農業専門家の派遣や50項目の環境保護政策などを打ち出した。
 
さらに習氏は安全保障面にも支援を広げていく考えを表明した。「銃声なきアフリカ」の実現を目指すとし、アフリカ諸国が安保上の課題を自主的に解決するために「治安維持能力の向上を支援する」と語った。中国軍事筋は「今後は共同訓練なども視野に入る」としている。
 
「技術移転はアフリカのビジネスの持続的発展につながる」。南アフリカのラマポーザ大統領は開幕式で、中国に期待しつつ、新たな形での貢献を求めた。
 
習氏が発表した巨額援助だが、その規模は3年前のフォーラムで表明した額と同じだった。この間、中国もアフリカも高成長を続けたにもかかわらず、援助額の上積みはなかった。
 
中国のアフリカ進出には、資源の確保や中国製品の輸出先の拡大を目的とする「新植民地主義」との批判がつきまとう。中国の資金によるインフラ建設なども中国企業が受注し、現地の雇用には貢献していないといった指摘が根強い。
 
習指導部はこうした声を意識している模様だ。北京の外交筋は「中国政府は、援助プロジェクトへの融資のノウハウの不足を深刻にとらえている」と話す。
 
そこで、援助額はこれまで通りに据え置いた上で、気候変動対策を強調するなど、援助の質の向上を強調。さらには現地の雇用を生む工業製品などの輸入を増やす考えを示した。
 
中国がアフリカ諸国への影響力を強めていることに、日本政府関係者は「採算を度外視した支援ができる中国に日本は勝ち目がない」と懸念を深めている。(中略)

中国の浸透には欧米からも懸念の声が上がる。英BBCがフォーラム開幕日の3日、「巨額債務はアフリカ諸国を窒息させる」との専門家の指摘を伝えたほか、3月には米国のティラーソン国務長官(当時)が「中国式支援は各国の主権を弱め、長期的な成長を阻む」と批判した。【9月4日 朝日】
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中国の支援拡大に対する「新植民地主義」「債務のわな」などの批判があることは常に指摘されるところですが、中国もそのあたりには一定に配慮する方向にはあるようです。

同時に、そうした批判に対する強いいら立ちも示しています。

****過剰債務や政治問題、中国「一帯一路」で膨らむリスク****
■批判にいら立つ中国
中国外務省の華春瑩報道官は8月31日の定例記者会見で、中国は各国に厄介な負債を負わせているわけではないと述べ、スリランカとパキスタンに対する中国の融資は両国の対外債務全体から見ればわずかだと主張した。

さらに「欧米諸国からの融資は善意によるものだと称賛され、中国からの融資は邪悪なわなだと言われるのは理不尽だ」と述べた。(後略)【9月4日 AFP】
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そうした欧米・日本からの批判だけでなく、中国国内にも対外的“バラマキ”に対する批判もあるようです。

****一帯一路」提唱から5年 国内でバラマキ批判の声も****
中国の習近平国家主席が現代版シルクロード経済圏構想として「一帯一路」を提唱してから7日で5年となる。

一帯一路は中国主導で国際秩序作りを進める道でもあるが、最近、沿線の国々で対中債務拡大により中国支配が強まることへの懸念が高まっている。

中国国内でも援助のばらまき批判が表面化するなど、一帯一路は曲がり角を迎えつつある。(中略)
 
しかしマレーシアでは、マハティール首相が対中債務の増大を危惧し中国主導の大型投資案件の中止を表明。インドなどでも中国主導の国際秩序作りへの警戒論が高まっている。

一方の中国は「一帯一路は政治・軍事同盟でもなければ『中国クラブ』でもない」(習氏)と強調、国際社会の懸念の打ち消しに懸命だ。
 
ただ、米国との貿易摩擦が激化し中国経済に影響が出始める中、中国国内でも対外援助拡大を疑問視する声が表面化しつつある。
 
習氏の母校、清華大の許章潤教授は7月、「無原則にアジアやアフリカを支援していけば中国国民の生活を締め付けることになる」と直言。山東大の孫文広・元教授も8月、「中国国内にも貧しい国民が多いのに外国に金をばらまく必要があるのか」などと批判し、当局に一時拘束された。【9月3日 産経】
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【“中国化”が進むケニア アメリカを超える中国の影響力
そうしたなかにあって、東アフリカ・ケニアは中国“一帯一路”の代表事例として取り上げられることが多い国です。

“「一帯一路」国際協力サミットフォーラムでは、ケニア、エチオピア両政府が中国政府と経済・貿易協力協定に調印した。インフラ融資協力協定、内陸コンテナヤード事業融資協定、エネルギー分野協力覚書といった文書の1つ1つが、手を携えて発展する中国とアフリカの決意を示している。”【8月31日 CHINA.ORG.CN】

ケニアにおいては、単に中国からの投資という経済関係にとどまらず、顔認証システムよる治安維持などの技術も導入され、社会全体としての“中国化”の流れもあるとか。

****中国化”するアフリカ “一帯一路”はいま****
中国の一帯一路においてアフリカの玄関口に位置するケニア。10年間でGDPが倍増。急速な経済発展を遂げています。

中国が3,000億円以上を融資し、去年(2017年)5月には、首都ナイロビと東部の港を結ぶ鉄道が開通。

周辺6か国に延ばす構想も挙がっています。今、ケニアで進められる国家プロジェクトの半数近くを、中国企業が請け負っているといわれています。

「中国がケニア市場を支配しています。以前はアメリカが大きな影響力を持っていましたが、最近は中国の投資が目立ちます。」(ユナイロビ市民)

リポート:戸川武(国際部)
アフリカが中国への依存を強めているのは、経済だけにとどまりません。国のシステムにも、中国式が広がっています。

20年前にケニアに進出した、中国の通信大手「ファーウェイ」です。
今回、外国メディアとして初めて、内部の取材が許されました。オフィスで働く400人の社員の半数は中国人です。

インターネットの通信網の構築。さらには、国民の6割が利用し、ケニア経済を支えている電子マネーのシステムなどを提供しています。

“中国化”するアフリカ 広がる監視システム
(中略)
今、ファーウェイは「セーフシティ」と呼ばれる国の治安維持のシステムの導入を進めています。ケニアの2大都市に1,800台を超える4Kの高画質カメラを設置。その映像を警察がリアルタイムで監視します。システムには最新の顔認証技術が使われ、個人が特定できるといいます。(ユ中略)

こうした監視システムは、中国が世界をリードする技術です。設置されたカメラは、世界最多の1億7,000万台ともいわれ、いわば監視社会を築き、治安を維持しています。中国式の社会システムそのものをケニアに導入しようというのです。

「監視システムのおかげで中国に来た旅行客は『世界で最も安全な国だ』と言うでしょう。私たちはこの分野で経験豊富なプロなのです。」(ファーウェイ・ケニア 徐亮広報部長)

監視システムの導入を決めたのは、2013年に就任したケニヤッタ大統領です。
実はケニヤッタ大統領、過去には選挙を巡って暴動を引き起こし、対立候補の支持者を死亡させたなどとして国際的に批判されていました。

こうした中、手を差し伸べたのが中国でした。ケニアにさまざまなシステムを提供。貿易額は倍増し、最大の貿易相手国となったのです。

「ケニアの指導者は政権を守るために、欧米ではなく中国を選びました。中国はそれに乗じて、ケニア経済に食い込んだのです。」(ナイロビ大学 サミュエル・ニャンデモ博士)

セーフシティのシステムは、ケニア政府による治安維持を大きく後押ししています。
(中略)

「私たちは中国の事例をみて、同じようになりたいと思いました。急速な発展に成功した中国から多くのことを学びたいのです。」(ケニア 情報通信技術庁 ロバート・ムゴ長官)

一方で、カメラで得られる個人情報などの膨大なデータをどう管理するのか、法律はありません。安全を提供する代わりにプライバシーを脅かしかねない政府のやり方ですが、これまで目立った反対の声は上がっていないといいます。

「カメラがあるほうが安心です。プライバシーは気になりません。」「中国は犯罪から私たちを守ってくれています。監視されたってかまわないわ。」(市民)

ファーウェイは今、アフリカ12か国にセーフシティを拡大。欧米とは異なる価値観で経済や安全を最優先させる中国式がアフリカに浸透しています。【4月10日 NHK「クローズアップ現代」】
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ケニアはかつては、アフリカにおける欧米的民主化の“優等生”とも評されていましたが、今や、中国がアメリカの影響力を超えたとも。

****ケニアでの影響力、中国が初めて米国超える―中国紙****
2018年5月1日、中国日報によると、中国の在ケニア大使館はこのほど、民間調査機関IPSが実施した報告書で、「ケニアにおける中国の影響力が、15年の調査開始以来初めて米国を超えた」と発表した。澎湃新聞が伝えた。

調査は今年3月、ケニア国民2003人を対象に実施。「ケニアにとって最も重要な国」として、回答者の34%が中国と答えた。次いで米国(26%)、南アフリカ(5%)、英国(4%)の順だった。調査は15年にスタートし、今回で7回目。

中国が1位になった理由として、ケニアの基礎インフラ整備などへの積極的な投資や、アフリカ全体への援助強化などが考えられる。また、中国は昨年5月に開いた経済構想「一帯一路」フォーラムにケニヤッタ大統領を招待するなど、関係強化する意向をアピールしていた。

昨年5月には首都ナイロビと海岸部の中心都市・モンバサを結ぶ鉄道が、中国からの投資を受けて完成。ケニア国民の中国に対するイメージも大幅にアップしているとみられる。【5月20日 レコードチャイナ】
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急速に影響力を増す中国人の素行への不信感も
ただ、急速な影響力拡大にはひずみも伴います。

****ケニア警察、中国国営テレビを強制捜査 不法移民取り締まりの一環****
ケニア警察は5日、不法移民取り締まりの一環として、首都ナイロビにある中国国営テレビ局、中国グローバルテレビジョンネットワーク(中国環球電視網)のアフリカ本部を強制捜査し、複数の記者を一時拘束した。CGTNの職員がAFPに明らかにした
 
携帯電話で撮影された映像には、武装した私服警官が中国人職員を車に押し込む様子が映っていた。警官は中国人以外の外国人記者に対してもパスポートの提示を求め、提示できない場合は警察署に連行した。(中略)
 
ケニア警察のトップ、ジョセフ・ボイネット長官は、不法移民取り締まりの一環としてCGTNの強制捜査を行ったと認めた。同氏はナイロビのラジオ局、キャピタルFMに対し、「書類に問題のないことが確認されたので、CGTNで拘束した外国人は全員、釈放した」と語った。
 
一方、在ケニア中国大使館は声明で、中国人13人から助けを求める電話を受けたと発表した。うち8人がCGTNの職員で、残る5人はCGTNが入っている建物で働いていたという。中国大使館は同様の事例が最近、複数起きていると指摘し、外交ルートを通じてケニア側に懸念を表明した。

CGTNは中国国営の国際英語放送で、ナイロビと米ワシントンに主要拠点を置き、世界中で番組を放映している。(後略)【9月6日 AFP】AFPBB News
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“経済力をてこにアフリカで影響力を増す中国人の素行への不信感が背景にある”との指摘も

****ケニア、中国記者を一時拘束 背景に影響拡大への不信感か****
ケニアの警察当局が同国駐在の中国国営テレビの中国人記者らを拘束し、中国政府が7日までに抗議した。不法滞在取り締まりの一環だったが、ケニア側は抗議を受けて釈放。経済力をてこにアフリカで影響力を増す中国人の素行への不信感が背景にあるとの指摘もある。
 
中国では4日まで「中国アフリカ協力フォーラム」首脳会合が開かれ、国営テレビは中国とアフリカの友好を大々的に宣伝。中国当局は今回の関連報道を規制している。(後略)【9月7日 共同】
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特殊な個人的案件かもしれませんが、下記のような事件も。

****ケニア大統領を「猿」呼ばわり、中国人の男を国外退去処分****
ケニアで、同国在住の中国人実業家が人種差別的発言を繰り返す動画がソーシャルメディア上で広まり、ケニア政府は6日、この男を逮捕したと発表した。
 
ケニア移民局によると、逮捕されたのはリュウ・ジャクイという名の中国人で、国外退去の手続きが行われているという。
 
ツイッターなどで共有された2分半の動画には、従業員と口論になったとみられるこの男が人種差別的な暴言を繰り返す様子が捉えられている。
 
この中で男は、「ケニア人は皆、猿みたいだ。(大統領の)ウフル・ケニヤッタだってそうだ。一人残らず」と発言。
 
従業員が、そう感じるなら「中国へ帰る」べきだと言うと、男はさらに「ここは合わない。ここは嫌いだ、猿みたいなやつらもそうだ、話したくもない。臭くて貧乏でばかで黒い。嫌いなんだよ。どうして白人みたいじゃないんだ、米国人みたいじゃないんだ?」とまくしたてた。
 
その後、ケニアに居る理由はただ「金が大事」だからだと言い放った。男の職業は、動画からは不明。
 
これを受けて一部のケニア人からは、国外退去処分で済まさず訴追すべきだいう声も上がっている。【9月6日 AFP】
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習近平国家主席がいくらアフリカとの「運命共同体」を主張しても、現場の人間がこのような感覚ではいずれ破綻します。

****Mr.嫌われ力」の勝算と誤算****
中国人は「嫌われること」を気にしない。人から何を言われようが自分のやり方を曲げない。それは、自分の人生で頼りになるのが結局は自分(と家族)という考えが頭に染み付いているからだ。(中略)

ただし、「嫌われること」を気にしないあまり、中国は世界でも有数の「嫌われる国」になってしまった。他国の価値観や指摘に開き直るその姿勢は、国際社会でひんしゅくを買っている。

怒涛の成長が続く間、あるいはその余韻が十分残っているうちはいい。しかしスピードが鈍ったときには、他国の「報復」が待ち構えている。【9月11日号 Newsweek日本語版】
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ジンバブエの経済・政治を破綻させた黒人化政策・人種対立扇動 同じ轍を踏む懸念の南アフリカ

2018-08-08 22:46:09 | アフリカ

(1日、ジンバブエ・ハラレの野党、民主変革運動(MDC)の本部前で、支持者をたたきつける兵士ら【8月2日 共同】)

【「結局、クロコダイルはクロコダイルでしかなかった」】
アフリカ南部・ジンバブエの大統領選挙は、独裁者ムガベ退陣後の初の選挙として注目されました。

ただ、これまでも選挙が公正に行われず、暴力で選挙結果が覆されるような過去があること、今回選挙の事前予測で与野党候補が接戦を演じているだけに、どちらに転んでもすんなりとは結果が受け入れられそうにないことから、選挙後の混乱も懸念されていました。
(8月1日ブログ“ジンバブエ  大統領選挙の開票進む 混乱の可能性もぬぐえず、緊迫した状況に”)

結果は周知のように、現職ムナンガグワ氏が50.8%、対立候補で最大野党「民主変革運動」のチャミサ議長は44%と、ムナンガグワ氏勝利が発表されています。

しかし、野党・チャミサ議長側はこの結果発表を「ウソだ」として受け入れず、懸念されていたように抗議行動が激化、これに対し当局側が“ムガベ時代”と同じように厳しく鎮圧、デモ隊への兵士の発砲により6名の死者を出すところとなっています。

“チャミサ氏側は、ムナンガグワ氏側が選挙の不正を行ったとしてこれを強く非難、あらゆる手段に訴え戦っていく旨公言している。野党側は選管による記者会見の席上、法律の規定に反し野党側が開票作業を検証することができなかった、と非難したが、これを報じるテレビ番組は直ちに中国映画の放映に切り替えられた。”【8月8日 WEDGE】

“選挙の不正はこれから徐々に明らかになっていくだろうが、例えば今回、23名の候補者を名簿に記載するに際し、15番目のムナンガグワ氏の名前が「偶然にも」第二列目トップに記載され、有権者の目につきやすいよう工夫された、投票済用紙を軍が開票所まで運んだが、正しく運搬されたかどうか疑問だ、等と指摘されている。”【同上】

また、大統領選挙の結果発表が非常に遅れたことも、野党側の「結果を不正に操作している」との疑念を深めることにもなっています。

勝利したムナンガグワ大統領は、国民融和を訴えてはいますが・・・・。

****ジンバブエ大統領が会見「一致団結しよう****
アフリカ南部・ジンバブエの大統領選挙で勝利したムナンガグワ大統領が3日、当選後初めての会見を開き、国民に対し一致団結するよう求めた。

ムナンガグワ大統領「落ち着いた行動をとり、一致団結しよう」

さらに、ムナンガグワ大統領は、選挙で不正があったと訴える対立候補だった野党のチャミサ党首に対し、「国の現在と将来に重要な役割を担っている」と協力を求めた。

一方のチャミサ党首は、これに先立ち開かれた会見で、選挙の結果は受け入れられず、不正の証拠があるなどとして異議申し立てを行う構えを見せている。

チャミサ党首の会見場では、警察が集まったメディアを一時排除するなど、首都・ハラレでは緊張も続いていて、イギリスメディアは政情不安が今後も続く可能性を指摘している。【8月4日 日テレNEWS24】
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一方で、政権・当局は野党側への弾圧を強めています。

****ジンバブエ大統領選後に「公の場で暴動」、野党メンバー24人を起訴****
ジンバブエの大統領選挙で敗れた野党のメンバー24人が4日、投票に不正があったと訴えるデモの最中に「公の場で暴動」を起こした罪で起訴された。(中略)
 
ムナンガグワ氏は(最大野党)MDCが暴動を扇動したと非難しているが、デモ参加者らの殺害について第三者委員会を立ち上げ、調査する意向を示している。
 
(与党)ZANU-PF事務所の窓を壊し、車両に火を付けたとして「公共の場での暴動」の罪で起訴された男性16人と女性8人の野党メンバー24人は4日、裁判所に出廷。メンバーらは6日に行われる保釈聴聞まで再拘束されるという。

ただ、被告側の弁護士は、24人が警察のMDCに対する「日和見的な捜査」によって拘束されたと主張している。
 
ムナンガグワ氏は先月30日の選挙について、「自由かつ公正で、信頼できる選挙」であり、ジンバブエの国際的な孤立に終止符を打つ新しいスタートだと称賛。国際監視団は投票が平和的に行われたと評価した一方、欧州連合の団体からは公共放送などでムナンガグワ氏に関する報道が偏って伝えられ、同氏が有利な立場にあったという声も上がっている。【8月5日 AFP】
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公共放送が与党側に有利に利用されるのは多くの国で見られることで、野党側にはその不利をはね返す力量が求められますが、集計が不正に操作された・・・という話になると論外です。ただ、そのあたりの真相はわかりません。

わかりませんが、ムナンガグワ氏がムガベ時代には“側近・右腕”として野党弾圧・不正選挙を指揮する立場にあった人物だけに、選挙後の強権的な鎮圧行動も含めて、「一致団結しよう」と言われてもなかなか・・・・。

****クロコダイルの異名を持つ男の「黒すぎる経歴****
(中略)他方、開票後、デモ隊の鎮圧にあたった軍の対応は凄惨を極め、投石する群衆に軍は容赦なく発砲を繰り返した。中には背後から撃たれ死亡した者もおり、軍が逃げ惑うデモ隊に向け銃を発射したことが窺われる。
 
何と言っても、ムナンガグワ氏はムガベ前大統領の下で37年にわたりその右腕として活躍した人物であり、副大統領、国防大臣、秘密警察長官等、常にムガベ政権の要職にあった。

ムガベ前大統領治世下において多くの虐殺事件や選挙の不正があったことが知られているが、その責任者がムナンガグワ氏であったことは疑いない。

その非情ともいえるやり方に国民は「クロコダイル」のあだ名を付け恐れた。欧米メディアは「大統領はムガベ氏からムナンガグワ氏に代わったがジンバブエの強権体質はそのままだ。結局、クロコダイルはクロコダイルでしかなかった」(南ドイツ新聞)という。
 
国連はジンバブエの人権侵害に対し制裁を行っているが、ムナンガグワ氏が盛んに「ニュージンバブエ」を強調するのも、制裁解除と資本流入を狙ったパフォーマンスと見られている。

しかし今回の選挙を通し、結局、ムナンガグワ氏の強権的、抑圧的体質が露呈することになった。【8月8日 WEDGE】
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ジンバブエを混乱に陥れた黒人化政策と人種対立扇動
ジンバブエの混乱の背景には、天文学的数字に及んだハイパーインレーションに象徴される経済破綻があります。
その失政を認めず、批判勢力を力で封じ込めようとするところからムガベ時代の政治混乱も起きています。

ムガベ時代の経済失政は、白人所有農園の強制的接収という強引な黒人化政策にあったとされています。

****ジンバブエ:煽られる人種対立 ****
ジンバブエはアフリカ南部の内陸国で、南アフリカの北、コンゴの南にある。この国はかつて、アフリカ有数の安定した国だった。現在まで大統領を務めているロバート・ムガベは、アフリカで最も希望が持てる指導者の一人といわれていた。

ジンバブエは今から110年ほど前、イギリスによる支配が始まった。その後、植民してきたイギリス人ら白人は、もともと住んでいた黒人から肥沃な土地を奪い、タバコ栽培や牧畜を行う農場にした。

人口のほとんどは黒人であるため、独立して黒人中心の国を作る運動が1960年代に起きた。宗主国イギリスは黒人国家の独立を認めようとしたが、農場を経営する地元の白人たちは武装して政権を手放さず、1965年に独立宣言をして「ローデシア」を建国した。
 
周辺国は次々と黒人国家として独立する中で遅れを取ったわけだが、それが後になってプラスに働いた。周辺国のうち、農場主や行政官だった白人を独立時に追い出したところは、独立後の政府が未経験なため、政策で失敗する場合が多かった。

反対に少数派の白人政権が黒人を弾圧し続けた南アフリカは、冷戦後になって白人が政権を手放さざるを得なくなった。
 
ジンバブエも1979年までの14年間は白人政権が続き、アパルトヘイト同様、黒人は抑圧されていたが、この間ゲリラ戦闘を続けていた黒人勢力は、イギリスの支援もあって、白人を追い出さないことを条件に政権を譲り受け、国名を「ローデシア」から「ジンバブエ」に変え、改めて黒人中心の国として独立した。

この時の指導者の一人がムガベで、その後20年間、実質的に最高権力者の座を維持してきた。
 
人口1200万人のジンバブエで、白人は1%以下の7万人しかいないが、農地の6割は今も白人の農場で、黒人就労人口の1割を白人農園が雇用している。

白人の農場を没収しなかったことで、独立後もタバコを中心とする農産物の輸出を順調に続けることができた。

ジンバブエは、アフリカで黒人と白人が和合している数少ない国の一つで、隣の南アフリカがアパルトヘイトから脱却するためのモデルと考えられていた。

▼権力を守るため人種対立を煽る
ところが最近ジンバブエでは、この特長が新たな対立の火種となっている。かつて模範的な指導者といわれたムガベの政策は今や失敗し、経済は破綻したが、それを批判する国民の目を他にそらすため、白人と黒人の対立をことさらに煽り、白人農園主が何人も殺されることになった。

国家運営に失敗したら、民族対立や地域格差を煽って政治生命を維持するという、指導者の「定石」が展開されている。
 
ジンバブエは独立時の取り決めで、白人農園主から政府が土地を市場価格で買い取り、それを黒人の貧しい人々に再分配する計画だった。

だが独立後、数年間の好景気時代が過ぎると、鉱物資源の相場が下がったり、政治家の人気取りのための無理な建設事業を続けたりしたため、財政が悪化し、白人から土地を買う予算がなくなってしまった。
 
政策のまずさを野党などから批判され出した1990年、ムガベは批判をかわすため、白人から黒人への農地の移転を加速すると表明し、イギリスやアメリカ、国際機関などから資金を借り、白人の農場を政府が購入して黒人に分配した。 (中略)
 
だが、土地の配分を受けた黒人農民の多くは、輸出できる水準の作物を作るにはどうしたらいいか、という営農技術を何も教えてもらえないまま、土地だけ与えられたため、土地利用の効率は下がった。農民自身が消費する作物を作るだけの土地が増え、農産物の輸出が減ることになった。
 
その後、優先的に土地の分配を受けた人の多くが、ムガベ大統領や政府高官の親族や関係者だったことが新聞で暴露された。これを機にイギリスなどは、ムガベ政権が白人の土地を買うための資金の融資を渋り出した。

▼生活水準は独立前より下がった
窮したムガベ大統領は「イギリスの植民地となり、黒人が先祖代々耕してきた農地を白人に奪われたとき、黒人は何の補償も受けられなかった。だから今、白人が独占する農地を没収して黒人に返しても、ジンバブエ政府は何も補償する義務はない。白人が補償を求めるとしたら、その相手はイギリス政府になるはずだ」という主張を始めた。
 
この問題は、ジンバブエの独立が承認された際、ムガベを指導者とする黒人勢力と、白人農場主の勢力、イギリス政府の三者間で、独立後に白人が所有する農場を没収せず、市場価格で買い取るという合意ができていた。それに反する主張だったため、英米はジンバブエに対する支援を打ち切った。
 
1997年には、国際金融危機の影響でジンバブエの通貨も急落して外貨が底をつき、ムガベはIMFに支援を求めたが、土地問題での譲歩を拒否したため、断られた。

外貨の裏付けがないままお札を刷り続けたのでインフレがひどくなり、失業率も7割に達した。国民の平均所得は、20年前の独立当時より3割も下がってしまった。
 
1999年後半、ムガベは憲法の改訂を提案した。「政府は白人の土地を没収できる」という条項を加えることが改訂の主眼だと宣伝されたが、本当の目的は別のところにあった。改憲には、大統領経験者が一生逮捕されない権利など、自らの権力を強化する項目が、いくつも盛り込まれていた。
 
(中略)ところが、2000年2月の国民投票で、憲法改訂は55%の反対で拒否されてしまった。国民は、土地を配分するというムガベの約束を、もはや信じなくなっていた。(中略)

▼暴徒と化した独立戦争の英雄たち
投票結果が判明した後、ムガベはテレビで敗北宣言をしたが、実はその裏で、次の策略が始まっていた。この後、黒人の農民たちが白人農場に押し掛けて占拠する事件が頻発したのである。
 
全ての白人農場の25%にあたる約1000ヵ所の農場に、黒人農民が押し掛けたが、群集を率いていたのは、白人政権時代の1970年代にゲリラ戦に参加していた黒人たち、つまり独立戦争の英雄たちだった。

彼らの登場には、テレビニュースを見る国民に「黒人国家ができたときの感動を思い起こし、白人の植民地主義者を追放しよう」という民族主義を煽るムガベの意図が見えていた。
 
彼らは自発的に農場を襲ったと見せかけていたが、乗ってきたトラックは与党の所有だったし、農場内に居座った後で食料を配りにきたのは軍のトラックだった。(中略〉

最初はクワや棒しか持っていなかった黒人農民たちの中に、何週間かすると銃を持った人々が混じるようになった。2月末に始まった農場占拠は、4月になって各地で殺傷事件に発展し、十数人の白人が殺されるに至った。 (後略)
【2000年5月1日  田中 宇】
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ジンバブエと同じ轍を踏むことも懸念される南ア
今、このジンバブエのたどった道と同じような選択をしようとしている国があるようです。
アフリカ最大の経済力を有し、故マンデラのもとで国民和解を実現しようとしていた、ジンバブエの隣国・南アフリカです。

****白人の農地を無補償収用 南アの土地改革は混乱必至****
憲法を改正してまで黒人への土地再配分を目指す 与党の動きに白人系野党の反発が高まっている

南アフリカにある白人農場経営者の土地を、補償なしで収用できるように憲法を改正しよう。
そんな南ア政府の姿勢に、白人系の野党・民主同盟(DA)が反発を強めている。
 
与党・アフリカ民族会議(ANC)はかねてから、少数派の白人が所有する土地を黒人に再配分する政策を進めている。しかしアパルトヘイト(人種隔離政策)終了から今日までに、白人から黒人に所有権を移転できた土地は全体の約10%。当初目標の3分のIにすぎない。
 
問題は、土地の再分配が現行の法律で認められるかどうかだった。ラマポーザ大統領は7月31日にこの点を明確にする必要があると語り、憲法第25条の改正を進めると発表した。「補償金なしで土地を収用することについて、憲法による明確な規定を国民が望んでいることは明らかだ」
 
隣国ジンバブエでは00年以降に白人の土地の強制収用が行われたが、暴力の連鎖と経済の破綻につながっただけだった。野党陣営は、南アも同じ轍を踏む恐れがあると懸念している。
 
DAに言わせれば、政府の方針は経済成長と雇用を損ない、「南アフリカ経済の行方を混乱させる危険な賭けだ」。(中略)

反白人政党は政府に賛同
ウェスタン・ケープ大学で貧困と土地と農業に関する研究チームを率いるベン・カズンズ教授によれば、ラマポーザがこの時期に憲法改正を発表した目的は、左派政党の「経済自由の戦士(EFF)」から主導権を奪い、国内の黒人の総意に沿う姿勢を示すためだ。

「ラマポーザが与党内、とりわけズマ前夫統領寄りの派閥から圧力を受けていることは明らかだ。実際、彼には他の選択肢がなかった」
 
白人の農場経営者らは、自分たちが暴力行為の標的になり、土地を追われようとしていると訴える。実際、EFFのジュリアス・マレマ党首は支持者に、土地を略奪するよう呼び掛けている(ちなみにEFFは大統領の憲法改正発言を、政府が「基本に立ち返った」ものとして歓迎している)。(中略)
 
カズンズによれば、土地の収用方法が劇的に変化するかどうかは改正憲法の文言次第だ。「現時点では、土地収用は法的な異議申し立てや調査が可能であることを条件に、ケースバイケースで行う必要がある。ANCの主張もその範囲だから、そのままなら大問題にはならない」と彼は言う。

「もしも一方的な土地収用の動きが出て、国がそれを抑えることができなくなったら、最終的に大混乱になりかねない。だが現時点ではそこまでの状況ではない。必要なのは法で明確に定めることだが、与党はそれができていない」(後略)【8月14日号 Newsweek日本語版】
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ジュリアス・マレマのような「黒人第一」を主張する扇動家に、南ア政治全体が押し流されていきそうな状況です。
ただ、マレマの主張が国民に受ける背景、人種間の経済格差が一向に改善しないという現実に対しては、改善のメスを入れる必要があります。

ちなみに、黒人化政策を強行したムガベも国際的批判にもかかわらず、南アでは大人気だったようです。
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