孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  欧州経済再建への資金提供で欧州との関係強化

2010-12-31 17:53:48 | 国際情勢

(年明けには救済が不可避とも見られているポルトガルで、緊縮財政政策に抗議するデモ “flickr”より By Pan-African News Wire File Photos  http://www.flickr.com/photos/53911892@N00/5205596659/ )

ギリシャ、ポルトガルそしてハンガリー
巨大な経済力を背景にした中国の世界戦略の一環でしょうか、財政に苦しむ欧州各国の国債購入という形での欧州経済への関与を伝えるニュースがいくつか報じられています。

****中国がハンガリーへの支援を検討、国債買い入れの可能性も=ハンガリー国家開発相*****
ハンガリーのタマーシュ国家開発相は29日、中国がハンガリーの各種プロジェクトへの出資を検討していることを明らかにした。中国人民銀行(中央銀行)がハンガリー国債を買い入れる可能性もあるとしている。
中国人民銀行は同国家開発相の発言に対するコメントは控えている。

タマーシュ国家開発相はハンガリーのニュースサイトindex.huに対し、ハンガリーのオルバン首相が中国の温家宝首相と10月末に上海で会談した際「財政における戦略的な協力関係について検討することで合意した」ことを明らかにした。協議は中国の代表団が1月にハンガリーを訪問する際に続けられるとしている。
そのうえで「中国がハンガリーの財政に関わることを決定すれば、プロジェクト・ファイナンスから国債への出資に至るまで、形式、手段、規模の面から多岐にわたる可能性がある」とし、中国人民銀行がハンガリー政府が実施する入札を通してハンガリー国債を買い入れることも選択肢の1つとの考えを示した。
財政面での協力関係を提案したのは温首相で、オルバン首相はこれに賛同したとしている。

ハンガリーと国際通貨基金(IMF)との支援をめぐる協議は決裂しており、タマーシュ国家開発相は、ハンガリー政府は市場から資金を調達する意向を持っていると強調した。
ハンガリーの公的債務の国内総生産(GDP)に対する比率は約80%と、中欧諸国の中では最も高い。【12月30日 ロイター】
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中国の温家宝首相は、10月2日のギリシャ訪問時にも、財政再建に苦しむギリシャが将来国債発行を再開した場合、中国が購入する意向を示しています。
また、欧州経済危機の次のターゲットともされるポルトガルについても、中国がポルトガル国債購入の用意があることが報じられています。

****中国、40億─50億ユーロのポルトガル国債を購入する用意=報道*****
ポルトガルの日刊紙Jornal de Negociosは22日、中国が40億ユーロ(52億6000万ドル)─50億ユーロのポルトガル国債を購入する用意があると報じた。 
同紙は情報源を明示せず、両国政府間の合意により、中国は2011年第1・四半期に入札もしくは流通市場でポルトガル債を購入すると伝えた。 
ポルトガルのテイシェイラ・ドスサントス財務相は先週、中国を訪問した際、謝旭人財政相および中国人民銀行(中央銀行)総裁と会談している。
またポルトガルの当局者らは、政府が国債保有者の多様化に取り組んでおり、中国との金融面での関係強化が「戦略的な優先事項」であるとの見解を示していた。
中国の胡錦濤国家主席は先月ポルトガルを訪問した際、金融危機の後遺症に苦しむポルトガルに支援を行う方針を表明したが、ポルトガル国債の購入には言及しなかった。【12月22日 ロイター】
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中国人民銀行(中央銀行)はこの報道について、コメントを拒否しています。

こうした財政に苦しむ欧州国家のスポンサーとなる中国の行動について、欧州の対中国対応の分断を狙うものとの指摘もあります。
“中国は政治的にも抜け目ない。EU各国と2国間で契約を交わすことによって、各国が異なる利害を持つことになり、EU全体の対中国政策はまとまりにくくなる。EUが結束して中国に圧力をかける事態を避けられるというわけだ。”【10月15日 Newsweek】

EUとの交渉において新たな切り札
中国も単にカネを出すだけでなく、資金提供することで、当然ながら欧州経済に対する発言権を強めています。
****中国が欧州債務問題に懸念表明、EUに具体的な行動要請*****
北京で21日開幕した中国・欧州連合(EU)ハイレベル経済貿易対話で中国政府高官は、欧州の債務問題を収束させるために、欧州当局はこれまでに示してきた厳しい態度を行動に移す必要があるとの考えを示した。
中国側は、債務問題に対する欧州当局の対応を支持する姿勢を示しながらも、対応策が一層効果を発揮することに対し期待を示した。

陳徳銘商務相はハイレベル経済貿易対話の席上「中国は、欧州債務危機が収束できるのか懸念している」と発言。「EUがソブリン債危機のリスクを管理できるか、合意を実際の行動につなげ、欧州が早期に金融危機から回復できるか確かめたい」と述べた。
王岐山副首相は会合の冒頭で「EUは債務危機に対応するために積極的な措置を取ってきた。できるだけ早い時期にこうした措置の効果が出始めることを希望している」と述べた。
同副首相はまた、欧州が見舞われている問題の緩和に中国は一定の役割を果たしたとの認識を示し、欧州を取り巻く状況の転換点は近いとの見通しを示した。
ただ、世界的に需要は弱く、世界経済も依然としてぜい弱である上、金融市場では流動性が高まるなか不安定な取引が続いているため、依然として多くのリスクが存在するとの考えを示した。
こうした中、中国は自国経済の堅調な成長を持続するため、慎重な金融政策運営と積極的な財政政策を追求すると述べた。

アナリストは、欧州債務危機に対する中国高官の発言の背景には、経済的、政治的な要素があるとみている。
中国招商銀行のアナリストXu Biao氏は、世界最大の外貨保有国として中国はユーロに対する影響力を持っていると指摘。欧州債務危機により、中国はEUとの交渉において新たな切り札を得たとの考えを示した。
同氏は「中国の支援が重要になればなるほど、中国の力は大きくなる」とし「これほど多額の外貨準備を保有している場合、戦略的な目標達成の手段となる」と述べた。【12月22日 ロイター】
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チャイナマネーに頼る欧州と中国の関係は、次第に中国に有利な方向に動いていくものと思われます。
上記記事の“戦略的な目標達成”のひとつでしょうか、EUが中国に対する武器禁輸措置を解除する可能性も報じられています。

****EU:来年前半にも対中武器禁輸解除か 仏紙報道*****
30日付仏紙フィガロは欧州連合(EU、加盟27カ国)が来年前半、中国に対する武器禁輸措置を解除する可能性があると報じた。EUは89年の天安門事件以来、禁輸を継続しており、中国から再三、解除要請を受けてきた。
EUのアシュトン外務・安全保障政策上級代表(外相)は17日のEU首脳会議に提出した外交方針文書で、武器禁輸について「外交・安保でEUと中国の協力を強化する上で主要な障害になっている」と指摘、解除の検討を提案していた。
フィガロ紙はアシュトン氏側近の話として、禁輸解除が「迅速に進む可能性がある」と伝えた。解除にはEUの全加盟国の同意が必要。EUは来春にも外相会議で対中政策を討議する予定だ。

フィガロ紙によると、対中関係強化の観点から早期解除が望ましいと考えるスペイン、フランスに対し、英国、オランダ、ドイツなどが異を唱えてきたが、反対論は次第に弱まりつつあるという。
中国は最近、財政再建下にあるギリシャの国債を購入する用意を表明するなど、ユーロ安定を支援する姿勢を打ち出し、EUに対する影響力を強めている。【12月30日 毎日】
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2010年も今日で終わります。
中国の経済・政治・軍事的パワーの拡大・増強が顕著な一年でしたが、来年もその傾向は変わらないようです。



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ユーロ圏経済危機抜本対策へのドイツの抵抗

2010-12-30 19:21:08 | 国際情勢

(12月16日 ブリュッセルで開催されたEU首脳会議で、自国の主張を譲らなかったドイツ・メルケル首相 “flickr”より By europeanpeoplesparty  http://www.flickr.com/photos/eppofficial/5266430509/ )

エストニア:「小さな国が独自の通貨を持つのはぜいたくだ」】
ギリシャ、アイルランドの財政破たんで揺れる欧州経済・欧州単一通貨ユーロですが、今後もポルトガル・スペインの信用不安が拡大することが予測されており、前途に大きな問題を抱えています。
単一通貨ユーロに参加した場合、自国通貨切り下げによる輸出促進という方策がとれないという問題もクローズアップされています。
それでもエストニアは、単一通貨ユーロへの参加による為替変動リスクを回避するメリットの大きさから、来年1月から欧州単一通貨ユーロを導入することを選択し、その準備を進めています。

****真価問われるユーロ エストニア来月導入 東欧諸国には慎重論*****
旧ソ連諸国でバルト三国の一つ、エストニアが来年1月から欧州単一通貨ユーロを導入し、ユーロ圏は17カ国に拡大する。ユーロは紙幣流通量で米ドル紙幣を追い抜くなど、第2の基軸通貨としての存在感を増した。しかし、ユーロ圏周縁国のギリシャやアイルランドで財政が破綻し、ポルトガルやスペインでも信用不安がくすぶる。東欧諸国はユーロの早期導入を見直すなど通貨同盟の真価が問われている。(タリン 木村正人)

 ≪EU加盟≫
巨額のユーロ紙幣が保管されているエストニア中央銀行には24時間パトカーが張り付くなどタリンの街は厳戒態勢下にある。デパートはユーロとクローンの値段を表示し、偽札を見分ける装置も導入した。換算用の中国製計算機50万台も各家庭に配布された。
エストニアのリギ財務相は本紙と単独会見し、「小さな国が独自の通貨を持つのはぜいたくだ。わが国のクローンはドイツ・マルクに続いてユーロに為替レートを固定してきた。今回のユーロ導入も欧州連合(EU)加盟の公式ステップにすぎない」と話した。
ユーロ圏周縁国の財政危機については「どの国も財政赤字を減らしているので、導入国のユーロ離脱という最悪のシナリオはない。しかし、勝者と敗者という二極化が進む可能性は否定できない」との見方を示した。

2000年以降、国内総生産(GDP)比で7・1~11・4%の経済成長を続け、“バルトの虎”と呼ばれたエストニアだが、金融危機に直撃され、昨年の経済成長率はマイナス14・1%。しかし、この落ち込みが逆にユーロ導入の障害だった年10・9%のインフレ率を急激にさまし、今年6月、EU首脳会議でユーロ参加が正式決定された。

 ≪メリット≫
人口134万の小国エストニアにとり為替変動リスクを回避できる“大きな通貨”ユーロを導入するメリットは大きく、ユーロの信認を問われているEUにとって新規加盟を認めることは改めて通貨同盟の結束と大きな通貨の魅力を演出する格好の機会だった。
一方で、ギリシャより経済規模が大きいポーランドは「ユーロがこれほどの難局に直面しているときに導入時期を決めるのは難しい」と早期導入を見直し、慎重姿勢に転じている。チェコも同様に様子見の気配だ。

 ≪抜本対策≫
今回の財政危機でギリシャやアイルランドは国債金利の上昇により市場から資金が調達できなくなり、EUと国際通貨基金(IMF)の救済を仰いだ。しかも、単一通貨のため通貨切り下げによる輸出促進が期待できず、国内で賃金カットや社会保障切り捨てなど痛みを伴う改革を強いられる。
東欧諸国にとって財政再建と景気回復を両立させなければならないこの時期、ユーロ導入を急ぐメリットはないというわけだ。
年明けにはポルトガルの救済は不可避との見方が強まる中、EUは12月の首脳会議で、ユーロ圏の財政危機国救済策として欧州版IMFを13年に導入する構想を承認したが、融資枠の拡大や信用力の低い国の資金調達が容易になるようEU各国による共同債を発行する案はドイツやフランスの反対で議論されなかった。
スペインがEUに支援要請した場合、現行制度では支えきれない恐れがあるため、ユーロ圏は抜本的な対策を迫られている。【12月30日 産経】
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EU:抜本的な対策の導入には至らず
EUは今月中旬、ブリュッセルで首脳会議を開きユーロ危機問題への対策を協議していますが、ユーロ圏諸国による共通債券(欧州共通債)発行などの抜本的な対策の導入には至りませんでした。

****EU首脳会議:欧州版IMF創設で合意 不安解消には時間****
欧州連合(EU、加盟27カ国)は17日までの2日間、ブリュッセルで首脳会議を開き、ユーロ危機問題を中心に討議した。財政危機に陥ったユーロ圏諸国を支援するため、欧州版の国際通貨基金(IMF)創設などに合意したが、現行基金の上積みや、ユーロ圏諸国による共通債券(欧州共通債)発行など、抜本的な対策の導入には至らなかった。5月のギリシャ、11月のアイルランドに続き、市場はポルトガル、スペインを次の攻撃対象に見据えており、財政・金融不安の解消にはなお時間がかかりそうだ。

抜本策が先送りされたのは、欧州最大の経済大国ドイツが、負担増につながる政策に反対したためだ。
EUとIMFは今年5月、総額7500億ユーロ(約83兆円)のユーロ防衛基金を設立した。11月末にアイルランド支援に初適用したが、今後、ポルトガル、スペインも支援に追い込まれれば、基金が不足する懸念がある。そのため、IMFやユーロ圏議長のユンケル・ルクセンブルク首相、欧州中央銀行(ECB)などが増額を求めていた。
包囲網の高まりを受けてメルケル独首相は10日、サルコジ仏大統領と会談。会談後の会見で、基金増額について「まだ、10%をアイルランドに使用したにすぎない。現時点では、増額の考えがない」と、巻き返しをはかった。
欧州共通債は、財政事情が悪化した国の国債が売り込まれる事態を回避するのが狙い。ユンケル首相やイタリアなどが積極的に導入を主張した。【12月17日 毎日】
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欧州委員会のレーン委員(経済・通貨問題担当)は21日、救済基金の拡大や欧州共同債券の発行に踏み切る可能性について、「現段階では、いかなる選択肢も排除するべきではない。最善策を分析する協議が必要だ」と述べ、ユーロ圏共同債券を発行する選択肢を排除すべきでないとの見解を示しています。

ドイツ:“敗戦国意識”からの脱却
しかし、欧州最大の経済大国ドイツが強く反対しています。
自国への負担増加のリスクもありますが、財政規律を重視している自国に対して放漫な運営を行う他の欧州諸国救済への抵抗感もあります。
そのようなドイツの主張の背景には、一歩ひいた「敗戦国」意識から、主張すべきは主張する「普通の国」への意識変化もあるとの指摘があります。

****ユーロ圏救済 独の乱 共通国債に抵抗*****
他国の財政「怠慢だ」
それはミスター・ユーロが敗北した瞬間だった。
16日、ブリュッセルで聞かれた欧州連合(EU)首脳会議の夕食会。ユーロ圈各国の財務相でつくる会議のまとめ役であるユンケル・ルクセンブルク首相が訴えた。
「危機には体系だった対策が重要だ」「共通国債こそが投機を止めることができる」財政危機は一つ一つの国債が市湯でたたき売られて起きる。ならば、各国の国債発行の一部を肩代わりする、EU共通の国債を発行してはどうか、との提案だった。

しかし、共通通貨に加えて共通国債というもう一つの傘をつくるというこの構想を、ドイツはまったく相手にしなかった。
この春のギリシヤ支援策も、メルケル独首相の反対で決定が遅れた。「(もっと対応が早ければ)支援額は少なくてすんだのに」とバローソ欧州委員長は5月、独紙に語った。
ドイツの強い姿勢は、他国は財政再建や経済改革にさぼり過ぎだとの意識からくる。
ドイツは2011年に、国内総生産(GDP)比の財政赤字をEUのルールである3%にまで減らし、16年にはゼロに近づける気だ。労働市場の柔軟化も00年代初めから進めてきた。
ブリューデレ経済技術相は一部の国の財政問題について、「分不相応な生活をしてきたことが現在の問題をもたらした。実体経済でも構造的な怠慢があった」と語る。オランダなど比較的競争力の強い国もドイツに同調する。

救済への反発は、共通通貨ユーロヘのドイツ国民の不信にもつながっている。アイルランド救済が決まった直後の12月上旬のARDの世論調査では「ドイツ・マルク復活」にドイツ人の36%が賛成した。「我々ドイツ人はヨーロッパのためにまたもや金を支払わなければならないのか」。16日の大衆紙ビルトはそんな見出しを掲げた。 
   
敗戦国意識に変化
かつてのドイツは、自国の立場を主張するのに慎重だった。第2次世界大戦のナチスの歴史を背負い、低姿勢で欧州統合に加わることだけが国際社会復帰の道だった。その結果、欧州各国への輸出でうるおうという実利も得た。
そこに変化が出ているようだ。戦後60年以上がたち、ほとんどの閣僚が戦後世代になった。輸出先もいまや新興国など欧州外に目が向く。連立与党・自由民主党のライナー・シュティナー議員は「ドイツは戦後、経済的には大国になっていったが、政治的には小国だった。しかし、今は普通の国としてふるまうことが求められているのではないか」と語る。
若い世代はさらにはっきりしている。最大与党キリスト教民主同盟(CDU)の青年組織に属する大学院生ザビーナ・カールさん(25)は言う。「若い人たちはEU入りの幸福感を感じていた上の世代とは少し違う。EUを受動的にではなく、積極的に使うことを考えたい」

ドイツの声は、経済の好調を背景に通りやすくなっている。ユーロ圈のもう一つの大国フランスも、ドイツヘの同調が目立つようになった。
元フランス財務相アドバイザーで今はブリュッセルの研究機関ブリューゲル所長のジョン・ピザニフェリー氏は「これまでもドイツ経済は強かったが、ほかを圧倒するほどではなかった。そこに各国協調の枠組みが生まれていた。しかし今、ドイツと他国の差は最大だ」と話す。
もちろん、ドイツだけが強いということは、もしもの場合、ドイツが支援の中心になることを意味する。ドイツの銀行のユーロ圈への貸し出しは多く、放置すれば自らも傷を負う。アイルランド救済が固まった11月下旬、ドイツ国債の価格はわずかだが下がった。終わる兆しのない欧州財政危機。ドイツの両肩にのしかかる責任の大きさを市場は見つめている。【12月28日 朝日】
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上記記事にもあるように、ドイツ経済の好調は欧州各国への輸出でうるおうという実利を享受してきた側面があること、ドイツの銀行のユーロ圈への貸し出しは多く、放置すれば自らも傷を負うこともあって、ユーロ圈経済崩壊はドイツ経済の危機でもあります。
そうした側面と、「我々ドイツ人はヨーロッパのためにまたもや金を支払わなければならないのか」という国民感情をどのように調整していくのかが、ドイツには問われています。

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インド  国際関係・内政に影を落とすカシミール問題

2010-12-29 20:58:27 | 国際情勢

(にこやかに握手する インドのシン首相と訪印時の温家宝・中国首相ですが、「1つの中国」「1つのインド」を巡ってかなり厳しいやり取りがあったようです。 “flickr”より By kanika_sikka
http://www.flickr.com/photos/55493501@N04/5263474986/ )

続々と“インド詣で”】
中国と並んで今後の世界経済をリードすると見られているインドに対し、経済・政治関係強化を目指して各国首脳が次々と訪問しています。

7月末にはキャメロン英首相がインドとの「新たな関係」の構築を目指し、敢えて訪中に先駆け訪印。
11月にはアメリカ・オバマ大統領が異例の1期目で訪印し、核物質や核関連技術の輸出を規制する「原子力供給国グループ」(NSG、日本など46カ国)へのインドの「完全参加」を支持する姿勢を打ち出しています。
12月に入ると、フランス・サルコジ大統領が訪印。原発建設や人工衛星開発で合意、インドの国連安保理常任理事国入りを支持すると表明しています。
ロシアのメドベージェフ大統領も12月21日、22日の二日間に亘りインドを訪問し、軍事や原子力等での協力関係の拡大で合意しています。
いずれのケースも、ビジネス代表団が同行するなど、“トップセールス”を競う様相を呈しています。

インドとライバル関係にある中国も温家宝首相が12月16日訪印し、ニューデリーでシン首相と会談。
会談後に発表された共同声明で、「世界で最も成長している2大国」として両国が世界の発展に協力して取り組むと宣言しました。
また、中国側からインド側への投資や事業協力に関する約50の合意文書も調印され、オバマ米大統領が訪印した際の商談額(100億ドル)を大きく上回る160億ドル(約1兆3500億円)相当の商談に合意したと伝えられています。【12月16日 毎日より】

【「1つの中国」を拒否
しかし、インドと中国の間には、国境線画定問題のほか、中国がインドの“宿敵”パキスタンとの関係を強化しているという政治的には微妙な問題があります。
****中印首脳会談 綱渡りの「政冷経熱」 相互不信拭えず*****
温家宝中国首相のインド訪問は、両国関係の「政冷経熱」がいっそう進んだことを印象づけた。世界で台頭する両国は、自国の経済成長のために経済協力を強化することでは一致している。だが、チベット問題や国境線画定問題を抱え、「政冷」を「政熱」に転じさせるのは容易ではない。

「私たちはパートナーであってライバルではない」
温首相は訪問初日の15日、両国ビジネス界の面々が集まった会合でこう語るなど、インドに存在する対中警戒論の払拭に努めた。
1962年に国境紛争を経験し、現在も国境線画定問題が横たわる両国には依然、相互不信が残る。しかし、インドのシン首相は、最大の貿易相手国である中国との経済関係強化は、貧困層の底上げを含むさらなる経済成長に欠かせないとの立場だ。
一方、政治面における関係は、中国の張炎駐印大使でさえ「とても脆弱(ぜいじゃく)で簡単に壊れやすく、修復がとても難しい」と表現するほどだ。最近では、中国側が、インド北部ジャム・カシミール州の住民に対する査証を、旅券とは別の紙に発給し、同州のインド陸軍司令官を務めた幹部への査証発給を拒否したことに、インド側は強く反発している。
こうした中国の対応は、カシミールの領有権をインドと争うパキスタンの主張を反映したものとみられる。温首相は訪印後、パキスタンへ向かう。両国を続けて訪問する外国首脳は最近では珍しく、パキスタンへの配慮がうかがえる。
この査証問題について温首相は16日の会談で、事務レベルで協議すべきだとの考えを示した。これに対し、インド側はあくまで中国が対処すべき問題だとの認識でいる。インドは先月、中国に対し初めて「インドにとってのカシミール問題は、中国にとっての台湾、チベット問題と同様に繊細な問題だ」と配慮を求めている。

ジャワハルラル・ネール大のコンダパリ教授(中国専門)は「両国関係が緊迫しているときだからこそ、トップ会談は意味をもつ」と、首脳会談が緊張緩和に貢献するだろうとみる。だが、「インドがカシミール問題に対する中国の対応を棚上げしたまま、貿易や経済面での関係強化を優先させるとは思えない」とも指摘し、両国は引き続き綱渡り的な対応を強いられるとの見方を示している。【12月17日 産経】
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インドとパキスタンの争いは“カシミール問題”ですが、中国がパキスタン側の主張に配慮していることに、インドは強く反発しています。上記記事にもある“査証問題”のほか、係争地カシミールのパキスタン支配地域で、中国軍の兵士が加わって大規模な開発工事が行われていることもあります。

このため、通常の中国との共同声明に含まれる、チベットや台湾を中国の一部とみなす「1つの中国」との文言を共同声明に盛り込むことをインド側は拒否したことが報じられています。【12月18日 朝日より】
同記事によると、インド側は、パキスタンとの係争地カシミールに対するインドの主権を認める「1つのインド」政策に同意するよう主張。しかし、パキスタンと友好関係にある中国側がこれに難色を示したため、インド側も慣例を破って拒否したとのことです。

変わらぬ印パ相互不信
現在の状況はよくわかりませんが、夏場、カシミール地方での緊張が高まっていることが報じられていました。
6月11日、インド北部ジャム・カシミール州のスリナガル市内で17歳の少年が学校からの帰宅中に、中央警察予備隊(CRPF)が発砲した催涙弾に当たって死亡した事件が騒動のきっかけになっています。

****反政府デモ頻発 カシミール 発火寸前の“火薬庫” 印パ、相互批判繰り返し****
インド北部ジャム・カシミール州の夏の州都スリナガルで、6月以降、住民らによる激しい反政府抗議デモなどが続いており、政府は約20年ぶりに現地に軍を派遣して事態の沈静化を図っている。同州はインドとパキスタンが領有権を争う南アジアの“火薬庫”。同州が混乱すれば、帰属問題は解決済みとするインドの立場は、住民の意思による解決を主張するパキスタンに脅かされかねない。両国の思惑のはざまで、住民は不安定な生活を強いられ、怒りを募らせている。
現地からの報道によると、16日、スリナガルを含むカシミール渓谷地域には終日、外出禁止令が出された。イスラム教の礼拝後に、分離独立派が主導する反政府抗議行動が予定されているからだ。治安当局は警戒を強め、現地はかなり緊迫しているもようだ。(後略)【7月17日 産経】
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同時期にはパキスタンで、パキスタン・インドの包括的対話も行われましたが、実質的な成果は出ず、カシミール問題・テロ問題で激しい応酬を繰り広げるなど、相互不信を印象づけています。

【「政府に異議を唱えただけで扇動罪」】
インドが抱える問題としては、このパキスタンとの“カシミール問題”、国内的には反政府武装組織「インド共産党毛沢東主義派(毛派)」があります。
インド政府はこうした問題への関与について、かなり神経をとがらせているようです。

****政府批判に扇動罪、インドで相次ぐ 言論弾圧と批判も****
インドで、政府に批判的な著名言論人に対し、扇動罪が適用される例が相次いでいる。この罪は最高刑が終身刑の重罪で、「国家による言論弾圧だ」との批判が起きている。
医師で人権活動家のビナヤク・セン氏が先週末、扇動罪で終身刑の判決を受けた。インド中部チャティスガル州の奥地で少数部族民の保健医療に長年携わり、国際的に表彰されたことがある人物だ。その一方で、同州などを基盤とする反政府勢力「インド共産党毛沢東主義派(毛派)」への治安部隊による掃討作戦に対しては、批判していた。
セン氏は人権団体幹部として接見した収監中の毛派活動家から手紙を託され、別の関係者に取り次いだ疑いで2007年に逮捕された。今月24日、同州の地裁が終身刑の判決を下した。毛派など非合法団体の支持者に対して、一般的に適用される最高刑は10年。このため法律専門家の間から「終身刑は重すぎる」と批判が起きた。

一方、首都ニューデリーの警察当局は11月、英ブッカー賞を受賞した女性作家アルンダティ・ロイ氏に対し、扇動容疑で捜査を始めた。
ロイ氏はパキスタンとの係争地カシミールをたびたび訪れ、治安部隊の弾圧に抵抗し、分離独立を求める地元民に共鳴。10月に行われた集会で「歴史的にみて、カシミールはインドの一部ではなかった」と発言し、問題視されていた。

一連の扇動罪の適用に対し、世論は割れている。インターネットの書き込みでは「反国家分子はどんどん投獄せよ」「カネを渡して米国に亡命させればよい」などとバッシングが横行している。
一方、首都中心部で今月27日、開かれた抗議集会では「政府に異議を唱えただけで扇動罪なのか」「魔女狩りはやめろ」と学生らが気勢を上げた。【12月29日 朝日】
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“世界最大の民主主義国家”とも言われるインドですが、“カシミール問題”や毛派の問題となると話は別なようです。

混迷するインド政界
なお、インド政局に関しては、汚職が横行するインドにあっては珍しく清廉潔白な人柄で知られるシン首相ですが、携帯電話汚職疑惑への対応で野党からの批判を浴びていることが報じられています。
****インド政界を混迷させる携帯電話汚職疑惑*****
インドで、2008年に当時の通信相が第2世代(2G)携帯電話の周波数帯の新規割り当てを不当な低価格で行っていたとの疑惑をめぐり、マンモハン・シン首相(78)が適切に介入しなかったとして、野党が首相への批判を強めている。
この疑惑に関して、政府の監査委員会は約400億ドル(約3兆3000万円)の歳入が失われた可能性があると指摘している。当時、通信・情報技術相だったアンディムス・.ラジャ氏は疑惑を受けて辞任に追い込まれたが、不正への関与は否定している。
低価格で周波数帯割り当てを受けた企業からシン首相が個人的な利益を得ていた疑いは出ていない。だが、連立政権の基盤を強化するためにはラジャ氏の地域政党、ドラビダ進歩同盟(DMK)の協力が必要との政治的な動機から、シン首相がラジャ氏の行為を黙認したと批判されている。(中略)
国民会議派は、2009年の選挙後、小規模政党と連立与党を組み政権の座についた。だが、10月に主催した英連邦競技会では、費用が予算を超過したうえ、競技会に関する調査で疑わしい契約や手抜き工事などが見つかるなど相次ぐ不祥事に見舞われており、インド政界は混迷を深めている。【12月21日 AFP】
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ロシア  ホドルコフスキー被告に対する再度の有罪判決に見るロシアの政治・社会体質

2010-12-28 19:43:32 | 世相

(12月15日 モスクワの裁判所近くでホドルコフスキー被告の裁判に抗議する支持者 男性の持つ写真左がホドルコフスキー被告、右はメドベージェフ大統領。 メドベージェフ大統領への期待もあるようです。
“”より By hegtor  http://www.flickr.com/photos/yuri_timofeyev/5262687235/ )

問われる“法の統治”】
ロシア・プーチン首相の政敵として投獄されているかつての大富豪ミハイル・ホドルコフスキー被告については、11月19日ブログ「ロシア メドベージェフ大統領の国内改革姿勢の実像は?
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20101119)」でも取り上げたように、ロシア司法制度の在り方やメドベージェフ大統領の改革の真価が問われる問題として注目されています。

前回ブログでも書いたように、ホドルコフスキー被告自身は、03年に逮捕されるまでロシア最大手の石油会社ユコスの社長として君臨していた、政権にとりいったオリガルヒ(新興財閥)の代表でもありますが、プーチン首相と対立して投獄されて以来、リベラル派を代表する「殉教者」へ変身した感があります。

現在脱税などの罪で8年の懲役刑に服役中のホドルコフスキー被告は、マネーロンダリング(資金洗浄)などの罪で追起訴されていましたが、モスクワの裁判所は27日、同被告の有罪を認定し、刑期が更に延長されることになりました。

****露ユコス元社長に再び有罪判決、「法の統治」に欧米から懸念の声*****
マネーロンダリング(資金洗浄)などの罪で追起訴されたロシア元石油大手ユコスのホドルコフスキー元社長に対する裁判で、モスクワの裁判所は27日、同元社長の有罪を認定した。
ホドルコフスキー元社長は2003年に脱税などの疑いで逮捕され、2005年に有罪判決を受けた。現在8年の懲役刑に服役中。検察側は追加的に6年の懲役を求刑しているが、250ページに及ぶ判決文の読み上げには何日もかかる見通し。ホドルコフスキー元社長の弁護団はロイターに対し、控訴する意向を明らかにした。 

同元社長の逮捕時に大統領職にあったプーチン首相は、裁判を前にホドルコフスキー元社長について「泥棒は監獄につながれる必要がある」などと発言していた。
有罪が認定されたことで、メドベージェフ大統領の下で大統領府が推進している法の統治の進展に疑念が生じる結果となった。また2012年に大統領選挙を控えていることからも今回の裁判は国内外から注目されていた。2000年から2008年まで大統領を務めたプーチン首相が返り咲きを狙うかに関心が集まっている。

この日の判決について米国のクリントン国務長官は「起訴が選択的に行われていること、政治的な配慮の前に法の統治が薄れていることに対する深刻な疑問が生じた」との声明を発表した。
また欧州連合(EU)のアシュトン外務・安全保障上級代表(EU外相)は声明で、EUは裁判の行方を注視していたとし、「ロシアが人権、および法の統治に関する国際的な確約を順守することを期待している」との考えを示した。
検察側は、ホドルコフスキー元社長が270億ドル相当の石油をユコス子会社から横領し、資金を洗浄したと主張。新たに6年の懲役刑が課された場合、2012年の大統領選で選出される次期大統領の任期終了真近の2017年末まで服役することになる。【12月28日 ロイター】
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ホドルコフスキー被告の裁判が注目されるのは、権力者プーチン首相の政敵が政治的に罪に問われて逮捕されたという、法治主義に反するロシアの司法制度の現状を示すもの・・・との見方があるからです。
クリントン米国務長官やEU・アシュトン外務・安全保障上級代表の反応も、ロシア社会が欧米と価値観を共有できる社会かどうかへの疑念からのものです。

ロシア国内でも野党・人権団体からの批判があります。
“野党勢力のカシヤノフ元首相やネムツォフ元第1副首相らは同日、「裁判所は現政権の命令を実行した。わが国の政治・経済の将来に禍根を残す」との声明を発表。人権活動家らも「落胆した」と地元メディアに語り、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルのロシア支部は「最高裁の取り消しを期待する」と述べた。” 【12月28日 朝日】

首相と被告の確執 「犬にしか愛を感じない男」】
一方、プーチン首相はホドルコフスキー被告への敵意を隠していません。
“判決を前にした今月16日、プーチン首相はテレビ生放送の国民対話で、ホドルコフスキー被告の長期にわたる服役は公正かと尋ねられ、「泥棒は監獄に入るべきだ。米国ではマドフ氏(巨額詐欺事件で服役中の米ナスダック元会長)は禁錮150年。我々の方がよりリベラルに見える」と回答。放送後に「司法への圧力だ」との批判を招いた。”【同上】

ホドルコフスキー被告の方も、負けてはいません。
****プーチン、犬しか愛せない男」 ホドルコフスキー受刑者が同情*****
2010年12月27日 20:50 発信地:モスクワ/ロシア
ロシアの石油最大手だったユコス元社長で、脱税などの罪で服役中のミハイル・ホドルコフスキー受刑者(47)が「宿敵」ウラジーミル・プーチン露首相を「犬にしか愛を感じない男」などと批判する記事が24日のロシアのリベラル系紙ネザビシマヤ・ガゼータに掲載された。

ホドルコフスキー受刑者は、「最初に感じたことと別の感情がすぐにわきあがった。もう若くないのにとてもエネルギッシュに見える反面、この際限なく無情な国の最高の地位にあってとても孤独に見えるこの人物に対して、哀れだと感じた」と書いた。
「ミレニアムの始まりにロシアのシンボルとなったこの人物は、『氷の防具』を身にまとっている。その防具の中に入り込むことができるような偽りのない感情は、犬に対する愛情だけだ」「そんな防具を身にまとった人物が幸福であることは無い」

プーチン首相の犬への愛情ぶりは、「タフガイ」イメージのプーチン氏の中の数少ないソフトな側面。最近も、ブルガリアの首相からもらったバフイーをなでる様子が報道された。プーチン首相は16日に行われた毎年恒例の国営テレビ放送での国民との対話で、ホドルコフスキー受刑者について「泥棒は刑務所にとどまるべき」と発言していた。
服役中の事件とは別の横領などの罪で起訴されていたホドルコフスキー元社長ら2人に対して、モスクワの裁判所は27日、有罪判決の言い渡しを始めた。【12月27日 AFP】
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メドベージェフ大統領の司法改革は?】
今回裁判が注目されるのは、ロシア司法制度の現状と同時に、その改善を掲げるメドベージェフ大統領の司法改革の真価、強権的とも思われるプーチン首相との関係が反映されているとも見られるからです。
「司法への圧力だ」との批判を受けても敵意をむき出しにするプーチン首相に対し、メドベージェフ大統領は「大統領としても、その他の公職者も、判決言い渡しまでは自分の意見を述べる権利はない」と、違いを表していました。

結果的には、プーチン首相の意向に沿った判決でしたが、もともとメドベージェフ大統領の掲げる改革はプーチン首相による支配と表裏一体のものとも見られており、メドベージェフ大統領とプーチン首相による双頭政治の今後には影響はないとも指摘されています。12年大統領選挙出馬を含めて、メドベージェフ大統領の本音はよくわかりません。

邪魔者は・・・・
ホドルコフスキー被告の件や、政権批判を行うジャーナリスト襲撃など、ロシアの政治体質には疑念がもたれていますが、次の記事も、そうした疑念のひとつです。
****ロシア人記者の血から高濃度水銀 体制を批判****
ドイツ在住のロシア人ジャーナリスト夫妻の血液から高濃度の水銀が検出されたとの報道があり、ドイツ検察当局は27日、夫妻が毒を摂取させられた可能性も視野に捜査していると明らかにした。夫は旧ソ連国家保安委員会(KGB)の元大佐で、妻と共にロシア政府を批判していた。DPA通信などが伝えた。夫はドイツ誌に「KGBの元同僚らから脅迫を受けていた」と語っている。【12月28日 共同】
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真相はわかりませんが、これまでも類似の疑いがもたれたことがあります。
どうも、“邪魔者は力で封じ込める”といった考え方があるようにも・・・・。

下記の記事などは、ロシアのそうした強権支配的な政治体質は、単に政治の世界だけでなく、ロシア社会に共通する何かがあるのかも・・・・と思わせます。

暴力的社会体質?】
****家庭内暴力で1時間に1人の女性が死亡、ロシア****
2010年12月14日 13:06 発信地:モスクワ/ロシア
ロシアでは、家庭内暴力(DV)で63分ごとに1人の女性が命を失っているとの統計結果を、女性支援団体「ANNA」が13日、発表した。

「ANNA」によると、ロシアでは毎年、65万人以上の女性が夫や家族から家庭内暴力を受け、うち1万4000人の女性が死亡している。これは63分に1人が死亡している計算になるという。
内務省がDV統計の公表を始めたのは2008年だが、「ANNA」のマリーナ・ピスクラコワ代表によると、DV被害者の数は1995年以降、ほぼ横ばいで推移しているという。
英女性支援団体「Refuge」がまとめた英国のDV統計によると、英国人女性がDVで死亡する割合は3日に1人で、ロシア女性のDV被害は際だって多い。

その要因は、ロシアが家父長社会であることが一因ではないかとピスクラコワ代表は推測する。夫婦間でささいな争い事が生じた場合に、女性側が夫が暴力をふるうことを当たり前と考えがちだからだ。
ロシア政府も家庭内暴力の問題を認識しているが、ほとんど対策はとられておらず、人口1000万人のモスクワでさえ、DV被害女性の避難用シェルターは、わずか35人の受け入れ態勢しか整備されていないという。【12月14日 AFP】
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もっとも、上記DVについては、家父長社会や暴力を当然とする考えの他に、ロシア人のウォッカの飲みすぎという面もあるのかも。

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中国  物価上昇に国民の不満 当局は金利引き上げへ 高騰著しい住宅価格

2010-12-27 19:53:44 | 国際情勢

(“flickr”より By yulizardwy http://www.flickr.com/photos/yulizard/4732665823/

不動産投資や経済の過熱によるインフレ
日本の恒例「今年の漢字」は“暑”でしたが、同様のイベントは中国でもあるそうです。(どちらが先かはしりませんが)

****今年の漢字は「漲」=インフレを懸念―中国*****
27日付の香港紙リンゴ日報によると、中国の多くのポータル(玄関)サイトなどで、今年を象徴する漢字に物価上昇を意味する「漲」が選ばれた。
中国の公式統計では、11月の消費者物価は前年同期比5.1%上がったとされる。しかし、実際の上昇率はこれよりはるかに高いとみられ、インフレ懸念の高まりから、中国人民銀行(中央銀行)は26日、今年2度目の利上げに踏み切った。【12月27日 時事】
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上記記事にもある11月のインフレ率については、08年7月以来、2年4カ月ぶりの高水準となっています。
****中国:消費者物価5.1%上昇 11月インフレ拡大*****
中国国家統計局は11日、11月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比5.1%上昇したと発表した。同6.3%上昇を記録した08年7月以来、2年4カ月ぶりの高水準となった。同4.4%上昇だった10月を大幅に上回り、上昇率を「3%」とする政府目標も5カ月連続で上回った。不動産投資や経済の過熱によるインフレが拡大している。
11月の生産者物価指数(PPI)も同6.1%上昇と10月の同5.0%上昇を上回った。原材料の価格上昇圧力が根強いことを示しており、今後も製品価格に転嫁されてCPIを押し上げる可能性がある。
中国人民銀行(中央銀行)は10日、金融機関の預金準備率を20日から0.5%引き上げると発表。11月も預金準備率を2度引き上げ、金融引き締めでインフレを抑制する強い姿勢を示している。【12月11日 毎日】
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住民の生活に対する満足感が全体的に低下
物価上昇に対する中国国内の不満は大きく、政府の統治能力や経済政策への信頼への影響を懸念する指摘もあります。
****中国国民、生活への不満高まる 政府の信頼低下*****
2010年12月21日 12:30 発信地:北京/中国
中国国民の間で生活に対する不満が高まり、政府の統治能力や経済政策への信頼も低下しているとの報告書を政府系シンクタンクが発表した。(中略)
今年は、雇用や社会保障への満足感が、過去4年間で最も低い水準となった。報告書は「2010年になって国際金融危機の影響が徐々に現れ、都市および郊外の住民の生活に対する満足感が全体的に低下した」と説明している。

■高まるインフレ不安
一方、物価上昇を吸収する力が大幅に低下する中、インフレーションに対して高まる国民の不安を示すように、不安に感じることのリストのトップに挙げられたのは物価だった。
中国の消費者物価指数(CPI)は11月に前年同月比で5.1%上昇。過去2年で最大の上昇幅で、中国政府の年間目標である3%を大幅に上回っている。
また医療制度改革や、上昇する一途の不動産価格に対する不安も高まっていた。政府に期待する政策のトップは、住宅価格の抑制だった。主要都市の不動産価格は、11月に前年同月比で7.7%上昇。前月比では0.3%、3か月連続の上昇となった。【12月21日 AFP】
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経常黒字→元売り・ドル買いの市場介入→過剰流動性
中国当局も、物価安定重視に転換しています。
****中国、物価の安定に注力 金融引き締め方針確認****
中国共産党・政府は12日までの3日間、2011年の経済運営について話し合う中央経済工作会議を開き、物価の安定にさらに力を注ぐ方針を決めた。金融政策の引き締めへの転換と、景気を下支えするための積極財政の継続も確認した。
会議には、胡錦濤(フー・チンタオ)党総書記(国家主席)や温家宝(ウェン・チアパオ)首相ら党や政府、人民解放軍の首脳・幹部が出席した。(中略)
新華社は米国や日本など先進国の金融緩和策が世界に資金をはんらんさせているとして、「中国内のインフレ予想が短期のうちに低下することは難しい」とする分析を伝えた。【12月13日 朝日】
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上記記事では“引き締め政策への転換”とありますが、あくまでも成長を減速させることのない範囲で・・・ということのようです。
“中国の金融政策を「適度に緩和的」から「穏健」にシフトするとされたが、これは成長率を減速させる「引き締め」ではなく、緩和状態から平常状態へ戻すだけである”【12月27日 Searchina村上尚己】
中国人民銀行は、25日に預金・貸出金利(期間1年)を0.25%引き上げ、それぞれ2.75%、5.81%にすると発表しました。09年以降の世界的な景気回復過程において、今年の10月に続き2度目の利上げです。

世界経済のけん引役である中国の責任
****中国:追加利上げ インフレ阻止、重い責任*****
中国の追加利上げは、カネ余りを意味する「過剰流動性」が同国で抜き差しならない問題となったことを示し、国際金融界では異例となるクリスマスの利上げ発表につながった。世界経済のけん引役である中国がインフレ阻止に失敗すれば、同国への依存を深める日本経済を含む世界経済全体に悪影響が及ぶだけに、物価安定に向けた中国の責任は重大だといえる。
中国は、輸出振興で巨額の経常黒字を計上する一方で、輸出減少に直結しかねない人民元相場の上昇を防ぐため元売り・ドル買いの市場介入を加速。このため、元が市場にあふれ購買力が増し物価が上昇、金融引き締め強化による過剰流動性の解消が急務となっていた。

半面、引き締めが行き過ぎれば企業活動などに悪影響が出て、景気が失速する恐れもある。失業率上昇などが社会不安に発展すれば一党独裁の中国共産党に対する不満が爆発しかねず、経済成長を大きく減速させるわけにはいかない。
中国経済は景気過熱を防ぎながら、成長も持続させなければならないという重大な局面に立つ。同国政府は今後、経済動向を見極めながら、さらなる利上げや預金準備率引き上げを慎重に進めることになりそうだ。【12月25日 毎日】
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昔、日本も世界経済を牽引する「機関車」を期待された時代もありました。
第一次石油危機後の世界不況を克服するため、1978年、ボン・サミットでは、経済状況のよい日本、西ドイツが機関車役を果すことが確認されています。
今は、その役割は中国経済に代わっています。“世界経済のけん引役である中国がインフレ阻止に失敗すれば、同国への依存を深める日本経済を含む世界経済全体に悪影響が及ぶ”という状況です。
日本経済に悪影響が及ばないように中国当局の努力に期待しましょう。

農民なら、唐の時代から今までずっと働き続ければマンションが買える
中国社会の物価上昇のなかでも特に国民の不満が大きいのは住宅価格の上昇です。
****家を買おうにも高すぎる、北京っ子の怒りネットで拡散*****
天高く高騰する住宅価格に対する北京っ子たちの怒りが、皮肉まみれのメールとなって、サイバースペースを飛び交っている。内容は、農民と泥棒と売春婦がそれぞれ家を買うまでに何年かかるかというものだ。
(中略)
ネットでどんどん広まっている話題の電子メールには色々なバージョンがあるが、いずれも、北京中心部で広さ100平方メートルのマンション(目下の値段は約300万元、約3700万円)を買うには、どれだけ働かなくてはならないかという内容。これが正確とは言えないが、面白いのだ。

いわく、ごく平均的な農地を耕している農民なら、自然災害さえなければ、このマンションを買えるようになる。唐の時代(618年-690年、705年-907年)から今までずっと働き続ければ。
月収1500元(約1万9000円)の平均的なブルーカラー労働者の場合、19世紀半ばのアヘン戦争のころから週末返上で今までずっと働き続けたなら、北京でマンションが買えるかもしれない。
売春婦の場合、18歳から46歳になるまでひたすら休みなく客を毎晩1人ずつとり続ければ、つまり客1万人の相手をすれば、買えるかもしれない。
泥棒が自宅購入資金を手に入れるには、盗みを2500回働かなくてはならない。
――とは言うものの、この計算には内装や家具や家電製品の費用は含まれていない、とメールは指摘する。

別バージョンの人気メールでは匿名筆者が、拡大する格差社会において一般市民が直面するジレンマを暗い諦めと共に描き出している。
「生まれてくるだけの金がない。帝王切開は5万元もかかるので。勉強するだけの金がない。学費は少なくとも3万元かかるので。どこかに住むだけの金もない。1平米は少なくとも2万元はするので。病気にかかることもできない。薬価は少なくとも10倍に水増しされているので。死ぬ金もない。火葬には少なくとも3万元はかかるので」【12月27日 FINANCIAL TIMES】
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こうした事態を受けて、温家宝首相は13年の任期終了までに住宅価格の高騰を抑制する決意を表明しています。
****中国首相:住宅価格の高騰抑制を表明 13年までに****
中国の温家宝首相は26日、中国中央人民放送のインタビューで「私の任期中に住宅価格を必ず合理的な水準にする」とし、13年の任期終了までに住宅価格の高騰を抑制する決意を表明した。
また、最近の物価高騰で「中低所得者の生活はいっそう困難になっている」と指摘。今回の追加利上げや預金準備率(中央銀行が金融機関から強制的に預かる準備金の割合)引き上げなどで「物価を合理的な水準にすることができる」と強調した。
不動産の高騰を抑えるため、政府は投機的な取引へのローン規制などの対策を講じているが、温首相は「十分ではない」と認め、投機取引への規制強化で住宅価格を抑制する考えを示した。低所得者向けの住宅を来年、1000万戸建設する方針も明らかにした。
住宅価格をめぐっては、中国人民銀行の最近の市民調査で75.5%が「高すぎる」と回答するなど不満が高まっている。【12月26日 毎日】
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中国は独自の政治・経済システムで驚異的な経済成長を実現しました。
現在の物価上昇は、先進国の金融緩和策で生じた過剰流動性の中国国内への流入が影響していますが、経常黒字の状態での元売り・ドル買いの市場介入という中国当局の政策の結果でもあります。
独自の政治・経済システムが経済安定にも的確に対応できるか注目されます。


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イラン  保守派内部の対立 今後の政権運営を左右するガソリン価格値上げの影響

2010-12-26 19:39:25 | 国際情勢

(07年6月のガソリン価格引上げ時の混乱 今回は、民衆のこうした暴動を警戒してテヘラン市内の広場や給油所には治安部隊が展開したそうです。 “”より By danzitting
http://www.flickr.com/photos/dzvette53/655198326/ )

外遊中の外相解任
イランのアフマディネジャド大統領は13日、外遊中のモッタキ外相を解任、続いて20日にはバズルパシュ副大統領(青少年問題担当)を解任しました。
こうした人事には、保守派内部での大統領とラリジャニ国会議長らとの対立が背景にあるとも言われています。

****イラン モッタキ外相解任 外交路線で対立か****
イランからの報道によると、同国のアフマディネジャド大統領は13日、モッタキ外相を解任、サレヒ原子力庁長官に暫定的に外相を兼務するよう命じた。モッタキ氏は現在、セネガル訪問中で、解任理由は明らかにされていない。
モッタキ氏は外交面では、元大統領のラフサンジャニ最高評議会議長やラリジャニ国会議長らとともに、保守派の中でもより現実的な路線にシフトしているといわれ、近年は強硬派のアフマディネジャド大統領と意見対立があるとの指摘も出ていた。
ラリジャニ氏が2007年、核開発問題で米欧との交渉を担う最高安全保障委員会事務局長の職を辞任した際には、モッタキ氏の辞任説も取り沙汰された経緯がある。
中東の衛星テレビ局アルアラビーヤは今回のモッタキ氏解任について、今月6日に核開発問題をめぐる国連安全保障理事会5常任理事国にドイツを加えた6カ国との協議が再開される中、「大統領がより自分の考えに近い人物で周囲を固めようとしている」とする専門家の見方を伝えた。
モッタキ氏は駐トルコ大使や駐日大使などを歴任後、2005年のアフマディネジャド政権発足当初から外相を務めていた。【12月14日 産経】
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新興勢力対エスタブリッシュメント
保守派内部での大統領とラリジャニ国会議長らとの対立について、“保守強硬派の大統領と、保守穏健派のラリジャニ国会議長の間の路線対立”とも報じられていますが、アフマディネジャド大統領も現実的な面がある政治家ですし、ラリジャニ国会議長も核開発問題などでは“穏健派”とは言い難い面もあります。

両勢力の対立は、強硬派対穏健派と言うよりは、急速に肥大化する革命防衛隊を支持基盤とし、大衆迎合的なバラマキ政策で人気を維持する新興勢力としてのアフマディネジャド大統領周辺と、既存のイラン支配層・エスタブリッシュメントを代表する“保守本流”的なラリジャニ国会議長周辺の対立・権力闘争という感じがします。

****イラン革命防衛隊肥大化*****
大統領の支持基盤 軍組織・企業を傘下
イランのアフマディネジヤド大統領の支持基盤の中核で、軍事組織に加え、さまざまな企業も傘下に収める革命防衛隊が肥大化している。大統領の権力拡大に直結するだけに、米国などは「軍事独裁化」を推し進めていると批判している。
22日付イラン各紙は、革命防衛隊の関連企業が昨年9月、柚営通信会社の株式の50%を取得したことに関する疑惑を伝えた。時価総額は78億ドル相当とされる。

革命防衛隊は、1979年のイスラム革命後に作られ、同国の体制を守護する軍事組織。国防省の下にある正規軍とは別に組織されており、戦時には数百万人を動員できるとされる民兵組織バシジも抱える。さらに経済分野にも進出しており、年間総収入は100億ドル以上ともいわれる。石油や建設など数多くの分野に関連企業を持ち、核開発にも関与しているとされ、「イランは軍事独裁政権の道を歩んでいる」(クリントン米国務長官)と警戒されている。
2005年に大統領に就任したアフマディネジヤド氏も革命防衛隊の出身。側近や閣僚には革命防衛隊の出身者を登用。今月相次いだモッタキ外相、青年問題を担当するバズルパシュ副大統領の解任も、大統領により忠実な人物を登用するためとされる。

国内でも革命防衛隊や大統領側近の動きに懸念を示す動きが顕在化している。国営通信会社の株取得をめぐっては、国会議員の一部から「適切な入札が行われていない」と、取引の違法性を訴える声も出ている。
さらに司法府の報道官は20日、大統領側近のラヒミ第1副大統領に「汚職の嫌疑がある」と述べた。詳細は不明だが、一部の議員はラヒミ氏を「腐敗している」と名指しで批判していた。
司法府長官は、反大統領派で保守派の有力者ラリジャニ国会議長の弟が務めていることから、反大統領哉が巻き返しに出たとの見方が出ている。
ラリジヤニ氏はかつて核問題の対外交渉責任者で、核開発を推進する立場で大統領と大きな違いはないが、07年に対立して辞任。翌年の総選挙で当選し、国会議長になった。議員の6割以上といわれる反大統領派の代表格でもある。

ただ、同国の最高指導者ハメネイ師は沈黙を守っている。基本的には大統領を支持する立場だが、補助金削減など大統領が取り組む経済政策が失敗すれば、ラリジャニ氏支持に乗り換える可能性も指摘されている。
ラリジャニ氏が政権批判を強めるのは、12年の総選挙、13年の大統領選を意識して保守派の存在感を示す狙いもありそうだ。09年の大統領選では、ムサビ元首相ら政権に批判的な改革派が敗北。改革派は弾圧され、政界での影響力をほとんど失っている。
現在2期目のアフマディネジャド氏は、憲法の規定により次は立候補できない。【12月25日 朝日】
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1リットル8円から32円へ
アフマディネジャド大統領にとって最大の懸案事項は、国際的な核開発問題よりは国内経済問題であり、18日に発表されたガソリンなどの生活必需品への補助金削減政策の行方です。
****イラン、ガソリン価格4倍に 補助金カット法施行*****
イランで、ガソリンを格安に保ってきた補助金を削減する法律が施行された。1カ月の経過措置を経て、小売価格は従来の4倍となる1リットルあたり4千リアル(約32円)になる。核開発に対する国際社会の経済制裁が強まるなか、国民の不満がさらに高まる可能性がある。
1リットル4千リアルは普通車の場合で、割当量は1台あたり月60リットル。それを超えた分についても、従来の同4千リアルから7千リアルに値上がりする。
2010年度の国家予算はドル換算で約3680億ドル。うち約1千億ドルが補助金に投入され、ガソリンや電気代などを安く抑えていたが、この補助金を段階的に削減し、最終的には廃止する。補助金削減で浮いた金を製油所の施設更新や新規エネルギー開発などに振り向ける狙いがある。
イランは世界有数の産油国ながら、製油所の老朽化でガソリンの国内消費量の約3割を輸入に頼っている。【12月22日 朝日】
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これまでの1リットル当たり1000リアル(約8円)という価格に無理があります。
こうしたガソリン・食料品の価格維持のため国家予算の3割近くを補助金としてつぎ込む事態にもなっていますし、異常に安いガソリンが節約されることなく非効率に使用される結果にもなります。
今後、ガソリンに続いて、政府補助を行ってきた小麦粉、パン、飲料水についても値上げを行うとされています。

財政健全化、一部を輸入に頼るガソリン消費抑制のための政策ですが、大幅な物価上昇は避けられず、当然国民の不満の高まりが、反政府運動の再燃につながる可能性も考えられます。
以前、ガソリン価格を値上げした際は、給油所での騒動なども起きたことがあります。
今回は、民衆の暴動を警戒してテヘラン市内の広場や給油所には治安部隊が展開したそうです。
また、イラン政府は家計への打撃を緩和するため、補助金カットで浮いた予算の一部を1世帯当たり約80万リアル(6500円)の直接給付金という形で全世帯に支給し、国民の不満を和らげる考えです。【12月19日 時事・読売より】

核問題を巡る経済制裁がどれほどイラン経済に影響を与えるかについては諸説あるようですが、ガソリンの輸入制限は欧米が一番狙い所としている点です。
現在イランはガソリンが十分に輸入できなくなり、大量のガソリンを自前で生産していますが、粗悪なイラン製ガソリンによる排ガスが大気汚染を深刻化させているという報道もあります。

****イラン:テヘランの大気汚染深刻化 経済制裁も悪化に拍車****
人口増と交通渋滞が慢性化するイランの首都テヘランで大気汚染が深刻化し、地元紙は「汚染度が世界一になった」と指摘。体調不良を訴える市民も増え、イラン政府は休日増や車両制限で必死に対応している。核問題を巡る経済制裁で、イランはガソリンが十分に輸入できなくなり、大量のガソリンを自前で生産。多くの市民は「粗悪なイラン製ガソリンによる排ガスが大気汚染の原因だ」としている。

6日付のイラン紙シャルグによると、テヘラン市内の大気は公害基準を上回る危険な状態が前日まで25日間続き、従来の世界記録の連続日数を更新。有害浮遊物質は基準の10倍を超え、呼吸障害や頭痛などの救急病棟の患者が市内で4割増えたという。
政府は11月末から政府機関や銀行、学校の臨時休日を繰り返し導入したり、ナンバープレートによる市内の車両制限を連日実施。7日には航空機で上空から水をまいたが、大幅な改善にはつながっていない。
今年7月、米国は独自の制裁措置でイランへのガソリン禁輸を決定。ガソリン精製能力が低いとされるイランはこれまで約4割を輸入に頼っていたが、本格的な増産に乗り出した。8日付の地元紙エテラートは「現在使われているガソリンは不純物が多く、大気汚染につながっている」との専門家の指摘を掲載した。【12月9日 毎日】
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一般庶民は大気汚染は我慢しても、大幅な値上げには怒りを表します。
これまでバラマキ政策で貧困層の支持を維持してきたアフマディネジャド大統領にとっては、大きな賭けです。

【「大統領は本気で和解の糸口を探り始めた」?】
経済制裁効果については、その効果は大きく、イランを核協議の場へ引き戻した・・・との指摘もあります。
****イラン:制裁の打撃大きく、経済深刻…核協議再開へ*****
イランの核開発問題を巡り、国連安保理常任理事国にドイツを加えた6カ国とイランとの協議が6日からジュネーブで始まる。協議再開は1年2カ月ぶりで、6月の国連安保理による経済制裁決議以降初めて。イランの米欧諸国への不信は根深く、アフマディネジャド大統領は表向きは強硬姿勢を変えていない。ただ、制裁による国内経済への打撃は深刻で、国民の強い反発を恐れる政府は制裁解除に向けて6カ国側との妥協点を探らざるを得ない状況だ。(中略)一連の経済制裁で金融取引が一層制限され、輸入コストが上昇。これが多方面のインフレを招き、深刻な影響を及ぼす。(中略)
一連の経済制裁による影響は、外国投資が規制された石油・エネルギー業界で打撃が大きいほか、外貨不足の進行で9月には現地通貨のイラン・リアルが一時暴落して両替所などが大混乱になった。(中略)
「核の(平和利用の)権利についての話は一切しない」と政府は表面上強気だが、米欧との接点を見つけない限り交渉の継続は見込めない状況。また、国内経済のこれ以上の混乱は政権維持を困難にする可能性が強く、協議を前に「アフマディネジャド大統領は本気で和解の糸口を探り始めた」(外交筋)との見方が出ている。【12月4日 毎日】
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しかし、ジュネーブでの2日間の協議では、核の「平和利用」を主張するイラン側とイランの核兵器開発阻止につながる方策を模索する欧米側との折り合いがつかず、来年1月下旬にトルコのイスタンブールで再開することを決めただけで終了しています。
“イラン核開発をめぐる協議は昨年10月以来、1年2カ月ぶり。だが、核問題に切り込めない交渉には手詰まり感が出ており、核開発を加速させる同国に「時間稼ぎを許した」(西側外交筋)との懸念も出ている。”【12月7日 時事】との指摘もあります。

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世界各地でクリスマスの祈り  パキスタンで進む無差別テロ化

2010-12-25 21:19:13 | 世相

(聖地ベツレヘムの教会の母子 “”より By ryanpking
http://www.flickr.com/photos/ryanpking/3168539202/ )

【「教会の鐘の音が、中東で響く武器の騒音をかき消すことを祈る」】
クリスマスイブの昨夜、世界の各地で平和な世界を祈るミサが行われました。
****虐待のない世界へ祈り=クリスマスイブのミサ-ローマ法王*****
ローマ法王ベネディクト16世はクリスマスイブの24日、バチカンのサンピエトロ大聖堂で行った恒例の深夜ミサで、虐待のない世界の実現へ祈りをささげた。
AFP通信によると、法王は「キリストは人類に虐待行為を克服する力を与えた」と述べ、人権の重要性を世界に訴えた。さらに助けを必要としている人たちに手を差し伸べる「友愛精神」を持つよう語りかけた。
白と金色の衣装に身を包んだベネディクト16世がクリスマスイブのミサを行うのは6回目。大聖堂には約1万人の信者が集い、荘厳な雰囲気の中で執り行われた。【12月25日 時事】 
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イエス・キリストの生誕地とされるヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ベツレヘムの聖カテリナ教会でも恒例のクリスマスミサが行われました。“ミサには約2000人が参加。アッバス自治政府議長も加わり、対立の続く中東に平和が訪れることを願い、祈りをささげた”【12月25日 時事】
このミサで、フアド・トゥアル・エルサレム総大司教は、「教会の鐘の音が、中東で響く武器の騒音をかき消すことを祈る」と和平実現を呼びかけたそうです。
しかし、“越境テロ防止を理由にイスラエルが設置したコンクリート製の分離壁で、ベツレヘムは聖地エルサレムと分断され、観光客は同国軍の検問を受ける。分離壁近くではユダヤ人入植地の建設も進んでおり、ベツレヘムは和平の難しさも象徴している”【12月25日 読売】というのが現実です。

北朝鮮の砲撃から1カ月が過ぎた韓国・延坪島の聖堂でも、平和の祈りをささげるクリスマスのミサが行われました。

食料配給所前で自爆テロ
こうした各地での平和への祈りにもかかわらず、教会の鐘の音は武器の騒音、爆弾の炸裂する響きでかき消されそうになっています。

「テロ地獄」と化しているパキスタンからは、また大規模自爆テロのニュースが届いています。
****食料配給所前で自爆テロ、40人死亡=イスラム武装勢力の仕業か―パキスタン****
アフガニスタンと国境を接するパキスタン北部の部族地域バジョール地区にある世界食糧計画(WFP)の食料配給所前で25日、自爆テロがあり、地元テレビによると少なくとも43人が死亡、72人が負傷した。周辺地域ではイスラム武装勢力の攻撃が多発しており、今回のテロも関係している可能性がある。
地元当局によれば、テロが起きたのは同地区の中心の町カール。食料配給はWFP事務所と同事務所に隣接する中央政府の出張所の前で行われており、現場一帯には配給を受けるため100人以上が集まっていた。女性とみられる犯人は配給所に近づこうとしたが警備員に制止されたため、自爆したという。【12月25日 時事】
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バジョール地区に隣接するモハマンド地区では24日、過激派組織「パキスタンのタリバン運動(TTP)」と治安部隊の間で、計35人(武装勢力側24人と治安部隊側11人)が死亡する大規模な武力衝突が発生していました。
 
“標的となったサラルザイと呼ばれる部族は、他の部族に先んじて反タリバンの民兵集団を結成したが、最近のパキスタン北西部での治安部隊と武装勢力間の戦闘激化から避難民となった。25日は約300人が食料配給を受けるためWFP事務所前に集まっていたところを狙われた”【12月25日 毎日】とのことです。

もし本当に犯人が女性なら、パキスタンでは初めての女による自爆テロという点を除いてはニュース的には特別の目新しさもない自爆テロニュースですが、国際機関の食料配給所に集まった人々を狙うという行為には、なんとも言えないむごたらしさを感じます。
パキスタンでのテロは最近、無差別化が進んでいるとも指摘されています。

****パキスタン 自爆テロの犠牲者、最悪更新 無差別化進む****
パキスタンで自爆攻撃による死者数が今年、過去最悪を更新した。地元紙ニューズが24日に報じた。一方で、自爆攻撃の件数自体は昨年より3割以上減っており、民間人を狙ったり、巻き込んだりする無差別テロ化が進んでいることがうかがえる。
同紙がパキスタン内務省のデータを基に報じたところによると、今年1月から今月23日までの間、自爆攻撃で犠牲になったのは1224人で昨年を7人上回った。このうち民間人は85%の1041人。宗派別では少数派のイスラム教シーア派信者が151人、アフマディーア教団信者などが103人だった。
件数は52件。昨年は80件だった。平均すると今年は1件の攻撃で23.5人が死亡した計算になる。【12月25日 朝日】
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二十数人が死亡するような自爆テロが年間50回以上起きる・・・日本では想像できない世界です。
テロの危険は感じながらも、人々は生きるためには食糧配布を求めて今日も集まらざるを得ない、それを狙ってジハード(聖戦)の名のもとにまたテロ攻撃を行う・・・やりきれない世界です。

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温暖化対策  欧州寒波、シュワルツェネッガー知事そしてティモシェンコ前首相

2010-12-24 19:26:03 | 国際情勢

(大統領選挙に敗れて以来、久しぶりの国際ニュース登場のティモシェンコ・ウクライナ前首相ですが、温室効果ガス余剰排出枠の日本への売却代金を不正に流用したとして刑事訴追・・・という芳しくない話題です。
美貌は相変わらずですが、政治状況は厳しいようです。
ただ、彼女はこれまでも天然ガス取引を巡ってロシアから訴追を受けたりしていますので、これくらいではギブアップしないのかも。  “flickr”より By vles5  http://www.flickr.com/photos/56840724@N04/5244618875/ )

問題先送り
地球温暖化に関するCOP16は、結局問題先送りの形で11日に終了しました。
****COP16 「カンクン合意」採択して閉幕 難題は先送り*****
2010年12月12日 12:00 発信地:カンクン/メキシコ
メキシコのカンクンで開かれていた国連の気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)は11日、発展途上国の温暖化対策を支援する「グリーン気候基金」の設立などを盛り込んだ「カンクン合意」を採択して閉幕した。(中略)
カンクン合意では産業化以前からの気温上昇を2度以内に抑えることを呼びかけるとともに、気温上昇を1.5度以内にするための研究の必要性を訴えた。森林破壊防止対策や、各国の気候変動対策の実施状況を検証することでも合意した。

■難題は持ち越し
しかし、すべての国を対象にした温暖化ガス排出削減など、合意が難しい問題の多くは来年南アフリカで行われる次回の会議に持ち越された。
2012年末に期限が切れる京都議定書の扱いについて議論は数日間紛糾した。EUは京都議定書の延長を提案したが、日本は、京都議定書には世界の主要排出国である米国と中国が参加していないため、世界の排出量の約30%しかカバーしていないとして同議定書の単純延長に反対する姿勢を示した。
最終的にカンクン合意では、格差をなくすことを目指して京都議定書の第2期間の検討作業を行うことを呼びかけたが、各国に新ラウンドへの参加義務は課さなかった。

京都議定書は途上国に排出量削減を求めていない。中国は条約にしばられることを拒否している一方、インドが今回の会議で将来においては少なくとも、義務としての行動を検討すると表明したことは驚きを持って受け止められた。(後略)【12月12日 AFP】
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大寒波の原因も温暖化
温暖化対策がなかなか進展しないのは、先進国・新興国・途上国で立場の違いがあることが現実的な理由ですが、温暖化の進行、その影響について個々人レベルで確実な認識が得にくいことが、議論の切実性、果敢な対策実行への勢いを削いでいるように思われます。
アメリカなどでは、“温暖化進行”に疑問を持っている人々が多数いますが、変動する長期的現象を明確に把握できない個人レベルの認識としては無理からぬところです。

寒波による雪で道路が大渋滞になっているニュースが、このところ毎朝フランスから伝えられています。
雪道で渋滞し寒さに凍えていると、「温暖化?何それ」といった感じにもなりますが、こうした厳しい寒波の増加も温暖化の影響だという研究が発表されています。

****欧州で近年増加する大寒波、原因は「温暖化」 独研究*****
欧州の冬は過去10年間でたびたび記録的大寒波に見舞われているが、その主な要因は地球温暖化であるとする論文が、今月発行の学術誌「Journal of Geophysical Research(地球物理学研究ジャーナル)」に発表された。
欧州全域は2005~06年の冬季に大寒波に見舞われた。強い寒波は09~10年の冬季にも再来。今季も既に各地で記録的寒波に見舞われ、交通機関が大混乱するなど影響が出ている。
ドイツのポツダム気候影響研究所は今回発表した論文で、地球温暖化が欧州に大寒波をもたらしていると結論づけた。

■海氷面積の減少が強い高気圧を生み出す
北極では、世界平均の2~3倍の速さで気温が上昇しており、過去30年間で海氷面積が20%減少している。
研究チームは、スカンジナビア半島北方のバレンツ・カラ海の冬季の海氷面積の減少が天候パターンに及ぼす影響について、コンピューター・シミュレーションを行ったところ、次のような結果が得られた。
海氷面積が減少すると、太陽の放射熱は、氷や雪で反射される量より、海に吸収される量の方が多くなり、温暖化が加速される。
これにより、冬季にも広大な熱源(つまり海に吸収された熱)が存在することになる。海水が比較的温かいため、上空の冷たい空気との温度差により海から上空に向けて熱流が生じ、大気が温められる。
その結果、海氷のない海の上空には勢力の強い高気圧が発生し、反時計回りに回転して、欧州に北極の寒気を流し込む。

■欧州と北アジア、寒気強まる可能性3倍に
研究者は、このような異常現象により、欧州と北アジアの冬の寒気が強まる可能性は3倍になったと指摘している。
なお研究者らは、欧州で頻発する寒波は温暖化傾向が弱まった証ではなく、(温暖化の)影響の偏りが反映されているに過ぎないと口をそろえる。
ある研究者は、「(ポツダムで)氷点下14度と30センチの積雪を記録するかと思えば、グリーンランドでは12月になっても氷点下にならない日々が続いている」と話した。【12月23日 AFP】
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カリフォルニア州で包括的な温暖化ガス排出権取引制度
先ほど、アメリカでの温暖化への認識度合いに触れましたが、アメリカでも地域差があり、「新しいもの好き」というか、環境への関心が高いカリフォルニアなどでは、包括的な温暖化ガス排出権取引制度を2012年から実施することが決められています。

****米カリフォルニア州、 2012年から包括的な排出権取引制度を実施*****
米カリフォルニア州大気資源局は16日、州都サクラメントで会合を開き、包括的な温暖化ガス排出権取引制度を2012年から実施することを9対1の賛成多数で承認した。

州内の幅広い業種の主要企業に温暖化ガスの排出権を割り当て、その過不足分を売買する「キャップ・アンド・トレード」方式を導入する。米東部の10州では2009年に同様の「地域温室効果ガス計画」が始まっているが、こちらの対象は電力セクターの企業に限られていた。
来年1月に任期を終えるアーノルド・シュワルツェネッガーカリフォルニア州知事は「わたしは2003年の州知事選でこの政策を訴えた。経済と環境が両立できることを示したい。2006年以降、環境関連の雇用の伸びはそれ以外の業種の10倍以上に上っている。環境は経済にもプラスになる」と述べた。

カリフォルニア州はまず無料で企業に排出量の枠を割り当て、徐々に割り当て量を減らすことで企業に環境対応を促す。企業が森林や農園などでの環境プロジェクトを支援すると、排出権を得ることができる。メキシコのチアパス州やブラジルのアクレ州での森林保全活動なども認められており、一部からは伐採後に植林をする木材企業を支援しさえすれば企業が排出削減義務を免れることができると批判する声も上がっている。

欧州連合(EU)は温暖化ガスの排出量を2020年までに1990年の水準から20%削減するという目標を掲げている。EUほど野心的ではないものの、カリフォルニア州も温暖化ガスの排出量を25%削減し、2020年までに1990年の水準にまで減らす方針だ。
2009年、全米規模のキャップ・アンド・トレード制度の創設などを盛り込んだ「米クリーンエネルギー安全保障法案」が米下院で可決された。バラク・オバマ大統領の民主党は、この法案で気候変動対策ができる上に環境関連の雇用が増えると主張したが、経済に悪影響を与えると主張する共和党の反対で上院は通過しなかった。
ことし11月の中間選挙で共和党が勝利したことから、全米規模でキャップ・アンド・トレード制度を導入するめどは立っていない。【12月19日 AFP】
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現政権による政敵迫害?】
国家間での温暖化ガス排出権取引についてはすでに実施されており、国内の排出をなかなか減らせない日本も各国から排出枠を購入して京都議定書の合意達成を目論んでいますが、ウクライナとの契約で、環境対策に使用すると取り決められた代金が不正流用されているとの問題が起きています。

****ウクライナ前首相訴追 温室ガス余剰排出枠の代金流用か*****
京都議定書に基づく温室効果ガスの余剰排出枠の売却代金を不正に流用したとして、ウクライナ最高検は20日、チモシェンコ前首相を職権乱用の容疑で刑事訴追した。日本はウクライナ政府と2009年3月、排出枠3千万トンを購入する契約を締結、その代金が捜査の対象になっている。
イタル・タス通信などによると、チモシェンコ前首相は同日、記者団に対し、最高検から訴追され、逮捕の代わりに旅行禁止の誓約書をとられたことを明らかにした。日本との契約では、売却代金は温室効果ガス排出削減などの環境対策に使用する取り決めだったが、年金の支払いに目的外使用したとされている。対象額は3億2千万ユーロ(約350億円)とされる。
今年2月の大統領選の決選投票で、チモシェンコ前首相はヤヌコビッチ現大統領に敗北。その後の4月に最高検の捜査が始まった。当時の環境相はすでに逮捕されている。前首相は「ナンセンスだ。現政権による政敵迫害に他ならない」と反発している。【12月21日 朝日】
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大統領選挙で敗北した美貌のティモシェンコ前首相ですが、なかなか厳しい政治状況に陥っているようです。
これまでも天然ガス取引での疑惑・訴追なども乗り越えてきましたが、今回はどうでしょうか?
余剰排出枠の売却に関しては、今後この種の問題が多発するのではないでしょうか。

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アメリカ  移民改革法(通称・DREAM法)案、採決に入れず

2010-12-23 19:09:09 | 世相

(5月1日 ホワイトハウス前でオバマ大統領に移民改革実施を求める集会に参加した母子 幼少時に親に連れられて入国したなど本人に不法滞在の責任を問えない不法移民を対象にしたDREAM法案でしたが、今回も実現されませんでした。 “”より By nflravens  http://www.flickr.com/photos/nflravens/4570051206/ )

【「新START」は何とか批准へ
中間選挙の歴史的敗北、その後の共和党の攻勢を受けて苦しい議会運営が続くアメリカ・オバマ政権は、懸案事項だった米ロ核軍縮条約「新START」の批准にようやく漕ぎつけました。

****米ロ核軍縮条約「新START」、米上院が批准承認*****
米上院(定数100)は22日、米国とロシアの核兵器数の新たな削減目標を設定する新戦略兵器削減条約(新START)の批准を、賛成71、反対26の賛成多数で承認した。ロシア側も批准に向けた手続きを進める方針で、オバマ大統領が唱える「核のない世界」の推進につながる重要な条約が、近く発効することになる。
オバマ大統領は、上院で批准が承認された後にホワイトハウスで記者会見し、「過去20年間で最も重要な軍縮合意だ。我々はロシアとともに核兵器を削減し、米国はより安全になる」と語った。
新STARTは、米ロが配備する戦略核弾頭数の上限を1550発、ミサイルや爆撃機などの運搬手段の上限を800に制限し、互いの配備状況を査察することも定めている。今年4月、オバマ大統領とロシアのメドベージェフ大統領が署名し、両国が今年中の批准を目指してきた。【12月23日 朝日】
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年内批准に失敗すれば、議会構成が不利になる来年以降の批准の見通しがたたず、オバマ大統領が唱える「核兵器のない世界」、ロシアとの核軍縮、関係「リセット」に大きな影響が出る問題だっただけに“やれやれ・・・”といったところです。

共和党が望む「ブッシュ減税」の全面延長を期間限定で認める代わりの“政治取引”とも言われてはいますが、オバマ大統領やバイデン副大統領、クリントン国務長官が共和党の主要上院議員に電話をかけ、批准に賛成するよう土壇場の説得工作を行った成果でもあり、多くの共和党議員が賛成に回ったことは「安全保障を政争の具にしない」という良識の表れとも言えます。

与野党対立のなかで消えた“DREAM(夢)”】
しかし、「ブッシュ減税」延長、「新START」批准といった重要法案のかげで、移民改革法(通称・DREAM法)案については採決に入れず、同法案は頓挫しました。
「DREAM(夢)法」は、16歳までに米国に入り、高卒か同等の学歴を持つ不法移民で、幼少時に親に連れられて入国したなど本人に不法滞在の責任を問えない場合を対象とし、最低2年間、大学に通うか米軍に入隊し、かつ罪を犯さないなど「素行善良」であれば永住権を申請することができるというものです。

****米移民改革法案が頓挫 オバマ氏任期中の成立困難に*****
米議会上院は18日、オバマ政権が推進する移民改革法(通称・DREAM法)案について採決に入れず、同法案は頓挫した。年明けからは今年の中間選挙で大勝した共和党が下院の過半数を占める新会期に入るため、共和党の反発が強い移民制度改革をオバマ政権が任期中に進めることはきわめて難しくなった。
上院(定数100)はこの日、審議を打ち切って法案採決に入るかどうかの採決を行ったが、賛成は55票にとどまった。同法案は下院をすでに通過しているが、上院では少なくとも60票の賛成がなければ反対派の議事妨害を制限できず、今会期中の採決はほぼ絶望的になった。オバマ大統領は同日、「大変失望した」との声明を出した。

オバマ大統領は、一定条件のもとで不法移民の合法化に道を開く一方、国境警備を強化して新たな不法移民の流入を防ぐ包括的移民制度改革を公約にしてきた。しかし、共和党には法を犯した移民を免責することへの反発が強く、改革を進められずにいた。
DREAM法は本格的な制度改革に着手するまでの当面の代替策の位置づけで、合法化の対象を、親に連れられて渡米した若くかつ高学歴の不法移民に限定した。「優秀な不法移民に就労の機会をあたえ、米国の活力とする」という利点を強調して共和党穏健派の取り込みを図ったが、共和党のオバマ政権に対する対決色が濃くなる中で賛同を得られなかった。【12月20日 朝日】
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2年前の大統領選でオバマ氏の当選を後押ししたヒスパニック(中南米系)の支持をつなぎとめるため、オバマ大統領は2年後の大統領選までに移民問題で一定の成果を上げる必要があります。
今回のDREAM法は包括改革と違い「優良な不法移民」だけが対象で、不法移民の取り締まり強化を訴える共和党にも受け入れられやすいとの読みがあり、オバマ政権は反対派の説得に手を尽くしましたが、下院では共和党のほぼ全員が反対に回っていました。【12月21日 朝日より】

****不法移民を救う「夢」はまた消えた*****
・・・・ドリーム法が成立すれば、全米で80万人ともいわれる優秀な若い不法移民に社会参加の道が開かれるはずだった。米軍の新兵採用活動への強力な後押しになるとの期待もあった。
だが反対派に言わせれば、不法移民に「恩赦」を与える行為はさらに多くの不法移民を呼び寄せる結果を招きかねない。大学か軍隊かという事実上の二者択一を突き付けることで、貧困層の若者に軍への入隊を強いることにもなる。
さらに、兵役を全うしても永住権を認められないケースが多そうなことも問題とされた。共和党の反対を抑え込むため提出された修正法案で、永住権取得の要件が厳しくなったためだ。

それでも法案成立を求める草の根運動は盛り上がった。テキサス大学など各地の大学で学生がハンガーストライキに突入。不法滞在者の若者の「カミングアウト」も相次いだ。
年内に必ず採択する、と民主党のハリー・リード上院院内総務は強気だった。だが核軍縮条約「新START」の批准など、年内に成立させたい重要法案はめじろ押し。国民の55%が法案に賛成しているとはいえ減税に比べると関心は低く、共和党への圧力にはならない。米軍の同性愛者受け入れ法は上院を通過したが、ドリーム法は結局否決された。
不法移民の長年の悲願は、今回も「夢」に終わってしまった。【12月29日号 Newsweek】
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This is America
法案が下院を通過した際の下記記事の、「不法移民の私を議会で証言させる米国ってすごい」という対象女性の言葉が非常に印象的でしたが、彼女の夢は残念ながらかないませんでした。
****ドリーム法と女性の死 米の不法移民に救済を*****
かつてロサンゼルス郊外パサデナの公園でインタビューしたことがあるタム・トランさんが亡くなっていたことを知人から聞いた。
彼女はベトナムから小舟で脱出したボートピープルの両親を持ち、ベトナム国籍も米国籍も与えられない“無国籍人”だった。カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)を優秀な成績で卒業。自分のような学生に米国で活躍する道が開けるよう、優秀な不法移民の若者に滞在資格を与える通称「ドリーム法」成立を訴える運動をしていた。
知らなかったが、その後、東海岸の名門ブラウン大大学院に進んでいたという。だが今年5月、友人の運転で出かけたメーン州でトラックと衝突し、死亡。27歳だった。
ところで、長らくたなざらしになっていたそのドリーム法案が8日、米下院を通過した。今後の上院での審議はさらなる厳しさが予想されるが、成立に向けて大きな一歩を踏み出したことはまちがいない。
トランさんは議会で証言に立ち、自らの苦難を訴えたこともある。といって、米国を憎むふうはまったくなかった。「不法移民の私を議会で証言させる米国ってすごい」と明るく話したのが印象に残っている。生きていれば、下院通過の知らせに、どんなにか喜んだことだろう。冥福を祈りたい。【12月10日 産経】
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「新START」批准に一部野党も賛成し、不法移民に議会で証言させるのもアメリカ、財政赤字のもとで高額所得者も対象とする「ブッシュ減税」を延長し、DREAM法成立を阻んだのもアメリカ・・・です。

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西アフリカ・コートジボワール  居座るバグボ大統領 国際社会との対立激化 内戦の危機も

2010-12-22 21:02:09 | 国際情勢

(09年9月の国連総会で演説するコートジボワール・バグボ大統領 今、その国連から退陣を強く迫られています。
“flickr”より By United Nations Photo http://www.flickr.com/photos/un_photo/3962422739/ )

ギニア:混乱を経て事実上初の民主的選挙による大統領誕生
アフリカ・ギニアでは先月7日に大統領選挙決選投票が行われ、11月15日には選管が野党指導者コンデ氏(72)の勝利を発表しましたが、小差で敗れたディアロ元首相(58)の支持者らの抗議行動が発生。治安部隊と衝突し、死傷者が出る混乱となり、軍当局は11月17日、非常事態宣言を発令、夜間外出も禁止されました。

対立の背景には民族問題があるとされています。
“勝利したコンデ氏はマリンケ人で、敗れたディアロ氏はプル人。フランス植民地時代、フランス人はプル人を利用してマリンケ人など他部族を間接支配。1958年の独立後、約四半世紀にわたって君臨した故セク・トゥーレ初代大統領(マリンケ人)はプル人を弾圧した。”【11月19日 毎日】
イギリスやフランスの植民地支配でよく見られる構図です。

敗れたディアロ元首相側は「選挙に不正があった」と裁判所に訴えていていましたが、12月2日、同国の最高裁判所は野党指導者コンデ氏を新大統領として承認したと発表。これを受けて、混乱はようやく収束に向かったようです。
****ギニア:コンデ氏が大統領就任式 初の民主的選挙で選出****
西アフリカ・ギニアで21日、先月投開票された大統領選で当選した「ギニア人民結集党」のアルファ・コンデ党首(72)の大統領就任式があった。コンデ氏は「社会の団結と国家の統一を求める」と国内の対立解消に向けた決意を語り、1958年の独立後、同国で事実上初の民主的選挙による大統領が誕生した。
独裁政治や軍政が続いたギニアでは、08年の軍事クーデター後に民主化要求が強まり、6月に大統領選の1回目の投票を実施。候補者24人の誰も過半数を獲得できず、先月7日にコンデ氏と「ギニア民主勢力連合」党首のディアロ元首相(58)が決選投票に臨んだ。
選管はコンデ氏の勝利を発表したが、ディアロ氏は「不正」を理由に選挙の無効を最高裁に提訴。両陣営の対立で一時は非常事態宣言も発令されたが、最高裁は今月2日に訴えを退け、ディアロ氏も敗北を認めた。【12月22日 毎日】
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コートジボワール:2人の大統領
ギニアは“事実上初の民主的選挙による大統領が誕生”という形で収まりましたが、収まらないのが隣国コートジボワールです。
大統領選挙戦を巡る混乱については、12月6日ブログ「西アフリカ・コートジボワールで「2人の大統領」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20101206)」でも取り上げたところですが、事態は混迷の度を深めています。

****混乱続くコートジボワールの死者50人超に、人権侵害拡大の懸念も 国連****
国連のナバネセム・ピレイ人権高等弁務官は19日、大統領選後の混乱が続くコートジボワールで、大規模な人権侵害が拡大傾向にあるとの懸念を表明した。
ピレイ高等弁務官は、コートジボワールでは過去3日間で50人以上が死亡し、200人以上が負傷していると述べたうえで、混乱に加担した者の責任を追及していく構えを明らかにした。

11月末に実施された大統領選をめぐっては、現職のローラン・バグボ大統領とアルサン・ワタラ元首相の双方が勝利を主張。選挙管理委員会や国際社会はワタラ氏の当選を認めているが、バグボ氏側は大統領職を譲っていない。
さらに、バグボ氏はコートジボワールの治安維持活動にあたっている国連部隊1万人を「ワタラ氏を支持する武装団だ」と非難し、同部隊の撤退を要求する最後通告を突きつけた。だが、潘基文(パン・キムン)国連事務総長はこれを拒否。バグボ氏に大統領職から退くよう求めている。【12月20日 AFP】
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国際社会の批判へ内政干渉との反発
11月の大統領選決選投票の後、敗北したはずのバグボ大統領は、自分寄りの憲法評議会による当選認定を受けて大統領に就任し、軍や警察の力で国土の大半を支配し続けています。
一方、選挙管理委員会や国連、大半の国々が当選を認めたワタラ元首相は、最大都市アビジャンのホテルを仮の大統領府として、約900人のPKO部隊に守られて活動しています。

これをバグボ大統領側は、国際社会による内政干渉と批判、18日、国営テレビで「国連PKOは深刻な内政干渉をしている。即刻、国外退去するよう求めた」との声明を流しています。
国連側は、このバグボ大統領の主張を認めず、反発を強めています。
****コートジボワールPKO活動延長、退去要求拒否*****
国連安全保障理事会は20日、西アフリカのコートジボワールで停戦監視などにあたる国連平和維持活動(PKO)部隊の活動期限を、今月末から来年6月30日まで延長する決議案を全会一致で採択した。
同部隊の退去を命じたバグボ大統領の要求を拒否した。
同国では、バグボ大統領が今月4日、大統領選の選管発表に反して就任式を強行。国連の潘基文事務総長が退陣を要求したことに反発し、国連PKO部隊の国外退去を求めていた。【12月21日 読売】
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大統領職に力で居座るバクボ大統領への国際的批判は強まっています。
これまでコートジボワールに深くかかわっている旧植民宗主国フランスのサルコジ大統領は17日、バグボ大統領を「民意に反して権力の座にとどまっている。速やかに退陣する以外の可能性はない」と非難しています。
“欧州連合(EU)は17日に採択した首脳会議議長総括で、同国治安部隊によるデモ隊への発砲を非難、バグボ大統領陣営に制裁措置を発動する方針を確認した。制裁では陣営幹部への査証(ビザ)発給が停止され、EU域内の資産が凍結される。サルコジ大統領は退陣要求に応じなければバグボ氏自身に制裁が科せられると警告した。”【12月18日 毎日】
アメリカ国務省高官も16日、アメリカがバグボ大統領に対し「数日以内に国外に出なければ制裁を加える可能性がある」と警告していたことを明かしています。

アフリカ域内からも非難が強まり、ケニアのオディンガ首相は同日、バグボ大統領を退陣させるべきだとし、アフリカ連合(AU)に積極的対応を求めています。
ケニアのオディンガ首相は、07年12月に行われた自国の大統領選挙でキバキ大統領と争った際に同様の混乱状態に陥り、多くの死傷者を出した後、キバキ大統領が大統領、オディンガ氏が新設された首相職につく形で決着した経緯があります。

対立の背景については、“コートジボワールは、60年の独立後、ウフエボワニ初代大統領が、カカオ農園拡大に向けて移民の受け入れを奨励し、現在は同国人口の3分の1近くをマリやブルキナファソなど周辺国の移民やその子孫が占める。移民の多い北部のイスラム教徒らが土地所有権を剥奪されるなどの差別的扱いが問題になったこともある。バグボ大統領は南部を地盤とするキリスト教徒なのに対し、ワタラ氏は北部を地盤とするイスラム教徒で、母はブルキナファソ出身。こうした地域や宗教間の対立が、事態を複雑化している。”【12月18日 毎日】とのことです。

内戦再開の懸念も
こうした国際社会の批判が強まるほど、バグボ大統領側は外国勢力・国連PKOによる内政干渉との批判を逆に強め、事態はエスカレートしています。
バグボ大統領が掌握する軍の一部には武力行使を主張する声も出始めています。
一方、03年まで政府軍と内戦を争った北部中心の元反政府勢力「新勢力(FN)」はワタラ氏を支持しており、内戦再開の危機も懸念されています。
すでに、アビジャンのホテル近くで治安部隊の発砲に対し、ワタラ氏を支持する反政府組織「新勢力」(NF)も応戦する形の小競り合いが16日段階で起きています。

日本や欧米の常識からすれば、選挙に敗れてなお居座るバグボ大統領の対応は理解できませんが、現地の軍・警察を支配しているのはバグボ大統領側ですので、バグボ大統領に政権移譲を迫るのは難しい状況です。
アフリカではしばしばこのような混乱が見られます。
民主主義とか選挙の価値観に対する理解に差もあるのでしょうが、権力を握る側と支配される側に、民族的・宗教的・地域的な対立があり、権力を持つか否かが生活、場合によっては生命に直結するような世界にあって、そういう世界では最終的には“力”だけがものをいう・・・そういう厳しい現実があるようにも見えます。

ケニアやジンバブエでは、対立する両者が権力を分かち合う形でとりあえず混乱を収めましたが(うまく機能しているかは別問題ですが)、コートジボワールの現状は出口がまだ見えません。


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