孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

多様性ということ トランプ「国に帰れ」発言 黒人女性の007 日本語NGの店もある川口市

2019-07-16 23:06:08 | 難民・移民

2019年には外国人比率が54.5%に達した川口市芝園町【714日 新山 勝利氏 東洋経済ONLINE】)

 

【白人を主とする支持層向けの再選戦略 民主党を急進左派に引き寄せる“罠”とも】

トランプ米大統領が、野党・民主党の非白人系の女性議員らを念頭に「アメリカが嫌ならば、出ていけばいい」といったツイート・発言を繰り返し、人種差別的だとの批判を浴びているとは周知のところです。

 

他の政治家だったら政治生命にかかわるような発言ですが、トランプ大統領の場合、「ああ、またか・・・」で終わってしまうところが大きな問題でもあります。アメリカ・世界には“トランプ疲れ”みたいなものも。

 

今回発言に関しては、当初、与党・共和党は音なしの構えとも言われていましたが、ここにきて、さすがに批判が出ているようです。

 

****トランプ氏「嫌なら出ていけ」発言に非白人系女性議員ら反論、与党からも批判****

米国のドナルド・トランプ大統領が、野党・民主党の非白人系の女性議員らを念頭に「米国が嫌ならば、出ていけばいい」と述べたことは極めて人種差別的だとして、民主党のみならず与党・共和党の一部からも批判を浴びている。

 

トランプ氏は14日にまずツイッターへの連続投稿で民主党議員らを攻撃し、米国が嫌なら出身地に戻ればいい、と述べた。

 

さらに15日、ホワイトハウスで行われた米国製品の広報イベント「メード・イン・アメリカ」に出席したトランプ氏は報道陣に対し、「彼らは文句しか言わない」と発言。「彼らは米国を嫌悪する人々だ」「ここが嫌ならば、出て行けばいい」などと語った。

 

さらに「(国際テロ組織)アルカイダのような米国の敵」を愛する者たちだとも述べた。

 

記者から、発言を人種差別的と捉える人が多いが気にならないかと聞かれたトランプ氏は、「心配ではない。多くの人が私に同意しているから」と答えた。

 

トランプ氏は議員の名前を挙げなかったが、同氏が念頭に置いていたのは、前回の下院選で初当選を果たした、プエルトリコ系のアレクサンドリア・オカシオコルテス氏、ソマリア生まれのイルハン・オマル氏、パレスチナ系のラシダ・タリーブ氏、アフリカ系のアヤンナ・プレスリー氏の4人とされる。いずれも民主党の女性議員だ。

 

15日のトランプ氏の発言から数時間後、4人の議員は記者会見を開き反撃した。プレスリー氏は、トランプ氏のコメントは「ゼノフォビック(外国人嫌い)で偏見の塊」だと非難し、「私たちを黙らせることはできない」と語った。

 

またオマル氏は、トランプ氏が4人の「有色」議員に「露骨に人種差別的な攻撃を行った」と述べ、「これは白人国家主義者の考え方だ」と述べた。さらにオマル氏とタリーブ氏は、トランプ氏の弾劾を求めるという従来の主張を繰り返した。

 

■冷徹で強硬な大統領選戦術?

トランプ氏の一連のコメントの直後から民主党議員らは批判していたが、共和党議員らは当初沈黙していた。しかし15日になり、トランプ氏のお膝元である与党からも非難の声が上がり始めた。

 

ツイートおよびホワイトハウスでのトランプ氏の言葉は「破壊的で人を卑しめ、不和をもたらすものであり、率直に言って非常に悪い」と批判したミット・ロムニー氏、「大統領の悪意に満ちた発言は弁解のしようがない。絶対に容認できない」と断じたリサ・マカウスキ氏ら上院議員が次々と批判を展開。

 

下院では共和党唯一のアフリカ系議員であるウィル・ハード氏が米CNNテレビに対し、トランプ氏の振る舞いは「自由世界の指導者として不適切」だと述べた。

 

トランプ氏のコメントは2020年の次期米大統領選へ向けて、白人を主とする自身の支持層へ向けてアピールする狙いがあるとみられ、人種間の緊張を引き起こし、また自らの政敵らの分裂をかき立てている。

 

バラク・オバマ前大統領の2回の大統領選で選挙参謀を務めたデービッド・アクセルロッド元大統領上級顧問はツイッターに次のように書き込んだ。

 

「一連の意図的な人種差別的投稿によって、@realDonaldTrump は標的(訳注 非白人系議員)に注目させ、民主党を彼らの擁護に走らせ、彼らを民主党全体の象徴とすることが狙いだ。これは冷徹で強硬な選挙戦術だ」「シートベルトを締めよう。大統領選が近づけば、もっとひどくなるだけだ」

@realDonaldTrump 」はトランプ大統領のツイッターのアカウント。 【716日 AFP】AFPBB News

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民主党や一部共和党内部からの批判はあるものの、トランプ大統領が言っているように、支持層の多くは「そうだ!」と喝さいを叫んでいることでしょう。

 

そのあたりが、“2020年の次期米大統領選へ向けて、白人を主とする自身の支持層へ向けてアピールする狙いがあるとみられ、人種間の緊張を引き起こし、また自らの政敵らの分裂をかき立てている。”という選挙戦略にもなる訳ですが、いくら再選のためとは言え、こんな分断を煽るようなことをしていいのか?

 

トランプ大統領は、それまで各自が“思ってはいるが、口にすることはためらわれる”ようなことを自ら口にすることで、本音で語る政治家として人気を博しています。

 

ただ、そのことは本来は理性的に対応すべきことがらについて、“本音”と称する感情の赴くままに行動することが許されるという形で、パンドラの箱を開け、世の中に憎悪や敵意が満ち溢れる形にもなっています。

 

トランプ大統領の政策がどうこう、恫喝的な外交の成果がどうこう・・・といった話よりも、この「パンドラの箱を開けてしまった」ことがトランプ政治の一番の問題ではないでしょうか?

 

話を今回の発言に戻すと、民主党がトランプ批判の流れで、急進的な4人に寄り添う形にむかうことは、トランプ大統領の仕掛けた罠にはまるものだ・・・との指摘もあります。

 

****「国に帰れ」ツイートはトランプ大統領が仕掛けた罠か 民主党が“独立愚連隊”周辺に結束****

(中略)

民主党幹部と対立する4人の“独立愚連隊”

(トランプ大統領ツイートの対象とされる)その4人というのはアレキサンドリア・オカシオ・コルテス議員(ニューヨーク州)アヤナ・プレスリー議員(マサチューセッツ州)ラシダ・タライブ議員(ミシガン州)イイハン・オマール議員(ミネソタ州)で、いずれも昨年の中間選挙で初当選した新人議員だが米国政治では極左とも言える立場をとって民主党幹部とはことごとに対立しており、党内の「独立愚連隊(squad)」とも呼ばれている。

 

また彼女らは、オカシオ・コルテス議員がプエルトリコ系、プレスリー議員とタライブ議員はアフリカ系、オマール議員はソマリア生まれといずれも白人ではないので大統領のこのツイートは「人種差別」と直ちに民主党側から非難の声が巻き起こった。(中略)

 

当然のことながら民主党内からは彼女らを支援する発言が続き、来年の大統領選への出馬を表明している民主党の候補者も全員が彼女らの主張に賛意を表明した。

 

こうなると、トランプ大統領にとっては取り返しのつかない「失言」だったように思えるが、実は大統領が計算づくで仕掛けた「罠」だったという見方もある。

 

トランプ大統領が仕掛けた罠か

反トランプの立場を貫いているNBCニュースのサイトに「トランプは民主党が急進左派に縛られるよう期待し、その通りになった」という分析記事が16日掲載された。

 

それによると、トランプ大統領は来年の大統領選で対立候補が誰であれ急進過激派に近ければ「国を率いるには過激すぎる」と攻撃して有利な立場になると計算してシナリオを作り、まず「独立愚連隊」に攻撃を仕掛けた。

 

案の定民主党内では反発が広がり、もともとは「独立愚連隊」と党内で対立していたペロシ下院議長も大統領の主張は「米国を白人第一に」とするものだと非難する声明を発表した。

 

大統領の狙い通り、民主党を「独立愚連隊」の周囲に結束させることになったわけだが、これについてNBCニュースの分析記事はこう評している。

 

「トランプが喋ったりツイートする誹謗中傷の全てが彼の天才的な駆け引きの賜物であると考えるのは間違いだが、彼のメッセージが何の思惑もなく発せられていると考えるのも間違っている」

 

民主党は、トランプ大統領の「罠」にハマったのだろうか?【716日 木村太郎氏 FNN PRIME】

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トランプ大統領がどこまで「シナリオ」を練ったのかは定かではありませんが、急進左派からの批判は怖くない、むしろ民主党が急進左派の方向に行けば自分の再選戦略には有利だ・・・ぐらいの思いはあるでしょう。

 

トランプ大統領にとっての問題は、批判が急進左派議員擁護のレベルにとどまるのか、あるいは、アメリカ建国の理念・価値観・良識に反する言動として幅広い批判に広がるかどうかですが、「どうなるか、様子を見てみよう」と言うしかないですね。

 

【最新作では「007」が黒人女性に引き継がれる設定 「ポップコーンを落とす瞬間」】

話は飛びますが、イギリスからの話題。

 

****「007」は黒人女性=来年公開の最新作、英に衝撃****

2020年公開予定の英人気スパイ映画「007」シリーズ最新作で、黒人女優のラシャーナ・リンチさんがコードネーム「007」のスパイを演じることが明らかになった。英メディアが15日までに一斉に報じた。

 

主人公ジェームズ・ボンドはこれまで通り男性俳優ダニエル・クレイグさんが演じるが、最新作ではボンドがスパイを退任し、「007」が黒人女性に引き継がれる設定になるという。

 

「007」を白人男性以外が演じるのは25作目にして初となる。報道を受け、英国では「ポップコーンを落とす瞬間だ」(デーリー・メール紙)などと衝撃が広がっている。

 

メール紙によると、最新作ではボンドが英情報機関・対外情報部(MI6)を去り、ジャマイカで余生を過ごしているところから物語が始まる。情報機関の責任者が「007、入れ」と呼ぶと、リンチさんが演じる黒人女性が登場するシーンがあるという。【716日 時事】 

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トランプ大統領やその支持者は、こういう事態がアメリカでも起きるのが嫌なのでしょうね。

 

【なし崩し的“移民大国”日本 外国人が5割を超える地域も】

一方、外国人に門戸を閉ざしているとされてきた日本も“隠れた移民大国”になりつつあるとか。

 

総務省が10日に発表した住民基本台帳に基づく今年1月1日現在の人口動態調査によれば“日本人と外国人を合わせた総計(1億2744万3563人)に占める割合も2.09%と、外国人を調査対象に加えた2013年以降、増加傾向が続いている。”【710日 毎日】というのは、報道のとおり。

 

日本人の人口減少を外国人が補う形にもなっています。

 

その結果、特定地域によっては、外国人がメインになるような地域も出現しています。

 

****日本語NG店も「川口」のディープすぎる街の姿  在留外国人数は全国3位で中国人が最も多い****

メニューは中国語だけで、日本語や英語表記は見当たらない。店員とのやりとりは基本中国語。片言の日本語や単語で行うが、わからない場合は苦笑いですごされる。

 

この店があるのは中国ではない、埼玉県川口市だ。西川口の駅前を歩くと中華料理店や中国語で書かれた看板が目に入る。

2

0194月、政府は「改正出入国管理法」を施行、外国人労働者の受け入れが拡大された。新たな在留資格の目的の1つには、深刻な人手不足に対応するための即戦力を受け入れる目的がある。事実上の移民政策の解禁で、日本が大きく舵を切ったといえる。

 

在留外国人総数は全国の自治体で3

そんな中、中国人の急増で大きく変貌した街が埼玉県川口市だ。今では外国人の入居者も増えており、「日本の未来予想図」といっても過言ではないだろう。本稿では埼玉県川口市の西川口駅前のチャイナタウン化と外国人比率が5割を超える芝園町の現状についてレポートする。

 

川口市の人口は約60万人で、県庁所在地のさいたま市に次ぐ県内2位だ。20184月より中核市(県から一部権限が移譲)となった。在留外国人総数は全国の自治体で3位、35988人いる。もちろん、埼玉県内でも1位だ。

 

川口市の国籍別で住民をまとめると、中国人が圧倒的に多いことがわかる。

 

1990年代から中国人の住民数が増加

1962年に公開された映画『キューポラのある街』は川口市が舞台。鋳物の街キューポラ(鉄の溶解戸)が多く見られ、多くの韓国・朝鮮人労働者が働き、在日朝鮮人が帰還問題で悩むシーンも描かれていた。

 

1979年当時、韓国・朝鮮の住民数は1910人、中国は86人しかいなかった。それが1993年にそれぞれ2601人、2683人になり中国が追い抜き、2019年には3047人、21036人と約7倍の差がついた。この鋭角の右肩上がりの人口増加は、今後も増えていくだろう。

 

2004年、埼玉県警が西川口駅周辺を「風俗環境浄化重点推進地区」に指定。最盛期に約200店舗もあった違法性風俗店が摘発され徐々に姿を消した。その後、撤退と入れ替わりに中国系の飲食店、商店が進出した。

 

冒頭で紹介した西川口駅近くにある大鍋料理店を訪れた。中国・東北部で食べられている大鍋料理は、東京都内などでもあまり見たことがなく、とても珍しい存在だ。ここに東北部出身の中国人が、故郷の味を求め足しげく通っている。(中略)

 

西川口駅前だけでなく、市内で中国化が進んでいるのが川口芝園団地だ。

 

川口芝園団地は1978年に入居を開始、JR京浜東北線、蕨駅から徒歩815分だ。駅は隣の蕨市にあるが、団地の住所は川口市になる。蕨駅は「埼玉都民」のアクセスとしては最適であり、池袋・新宿・渋谷・東京駅など、都心へも30分ほどでアクセスできる。団地から駅まで徒歩に時間差があるのは、大規模な団地で横長に距離があり、15号棟も連なり2400戸超もあるためだ。

 

外国人比率は5割超

川口市芝園町は川口芝園団地の9割程の面積を占めるが、2016年にとうとう外国人が日本人の人口を抜き、2019年には外国人比率が54.5%に達した。

 

現地や川口市役所などで取材したところ、住んでいる日本人は高齢者が多く、外国人のなかでは中国人比率が60%を超えているそうだ。「中国人が90%」と書いてある記事もあるが、そこまではいないという。

 

中国人は子どもの教育に関心が高く熱心だ。実は芝園団地には、日本で生まれたり日本にきたりして中国の言葉を忘れさせないため、子女たちが通う補習校の分校があった。

 

現在は生徒数が多くなり、団地近くに移転した。その補習校自体は関東を中心に10校以上あり、1500人の子どもたちが通っている。ニーズのないところに開校はしないので、これから違う街にも多くの新チャイナタウンが生まれるであろう。

 

川口芝園団地自治会は、2018年多文化共生の優秀な事例として、独立行政法人国際交流基金から「地球市民賞」を表彰された。交流イベントの開催、中国語のSNSを活用した情報発信など、自治会の地道な取り組みの結果、中国人の自治会役員も誕生し、共生の意識の根付く活気にあふれる団地が受賞理由だ。

 

川口市では2018年度からスタートする「第2次川口市多文化共生指針」を策定。外国人労働者を地域の担い手として受け入れる方針を打ち出した。

 

日本の総人口は長期の減少過程に入り、2029年に人口12000万人を下回った後も減少を続け、2053年には1億人を割り9924万人となり、いまから45年後の2065年には8808万人になると推計されている(内閣府「令和元年版 高齢社会白書」)。

 

そのとき、日本にはどのような多文化、共生がはかられているのであろうか。【714日 新山 勝利氏 東洋経済ONLINE

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こういう記事を目にしたとき、「日本はどうなってしまうのか!」とネガティブに反応する人々も多いことでしょう。

 

私などは、逆に「日本語NG店? 面白そう。日本国内で外国気分が味わえるじゃない」なんて考えてしまいます。

 

もちろん、外国人が増加していくことは多くの問題を惹起します。「共生」に向けては多大な努力が必要です。それは当然のことです。

 

ただ、ネガティブな反応からは憎悪しか生まれませんが、ポジティブに向き合えば、なんらかの共生に向けた道筋も開けるのでは・・・とも考えます。

 

また、外国人をトラブルメーカーに追い込む一番の理由は、周囲のネガティブな反応だと思っています。

 

何よりも、「ここは我々の土地だ。よそ者は来るな!国に帰れ!」というのは、自らの品性を卑しめる言動に思えて、愛する日本がそんな偏狭で卑しい国になってほしくないと思っています。

コメント

トランプ米政権の不法移民対策  メキシコをねじ伏せ、米国内では一斉検挙へ 中米への支援は停止

2019-06-22 22:54:48 | 難民・移民

(米メキシコ国境を流れるリオグランデ川を越え、米国入りを目指す中米からの移民【6月13日 WSJ】)

 

【トランプ大統領「私は移民が大好き」】

トランプ大統領は「壁」や「ゼロ・トレランス(不寛容)」政策に象徴されるように、移民の流入に非常に厳しい姿勢を支持層向けにアピールしていますが、それはあくまでも「不法」移民の話であって、ヒスパニック系でも「(正規の)移民は大好き」だそうです。

 

****「移民大好き」 トランプ氏、ヒスパニック系有権者に猛アピール****

2020年大統領選で2期目を目指すと正式に発表したドナルド・トランプ米大統領は20日、米スペイン語テレビ局「テレムンド」の番組に出演し、「私は移民が大好き」と述べてヒスパニック系有権者にアピールした。

トランプ大統領がスペイン語チャンネルのインタビューに応じるのは、今回が初めて。

 

司会者のホセ・ディアスバラルト氏から、不法移民を厳格に取り締まる「ゼロ・トレランス(不寛容)」政策や、不法移民の親子の引き離し政策、未成年時に親に連れられて不法入国した移民の救済制度「DACA(ダカ)」の打ち切りなどについて質問されたトランプ氏は、「私は移民が大好きだ」と答えた。
 
さらに「あなたの言っているのは、不法移民のことだろう」「私はこれまで移民にはとても親切にしてきたからね」とトランプ氏は発言。

 

「この国は移民によって成り立っている」と述べた上で、工場の人手不足を補うため、移民をいっそう歓迎するとも主張した。トランプ氏は、就任後に米国内の工場労働者の仕事を取り戻したと豪語している。

 

トランプ氏はまた、ヒスパニック系米国人の失業率が史上最も低い水準になったのも自身の任期中だと主張。世論調査ではヒスパニック系の支持率が17ポイント上昇しており、自分はヒスパニック系住民の間で人気があると得意げに語った。

 

その上で、人気の理由は全て、トランプ政権の移民・国境政策のおかげだとコメント。「ヒスパニック系の人々が、厳格な国境管理を求めているからだ」「彼らは、流入してきた人々が職を奪う事態を望まない。犯罪者の流入も望んでいない。彼らは誰よりも国境のことを知っている」などと述べた。 【6月21日 AFP】

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まあ・・・・そういうことのようです。大統領本人が言っていますので。

 

【メキシコに対応を迫るアメリカ 圧力に抗えないメキシコ、国内には「米国はわれわれの国を収容所にしようとしている」との批判も】

アメリカには1000万人超の不法移民がいるそうです。

これだけの数になると、法律上の違反云々の問題を超えて、現実問題としてアメリカ社会を構成する大きな要素になっているとも言えます。

 

また、これだけの不法移民が存在するということは、アメリカ経済・社会がそうした人々を必要としてきたということを示すものでもあるでしょう。

 

これまでの経緯から隣国メキシコからの不法移民が多数を占めてはいますが、近年はメキシコ経済の好調さのため、メキシコ人に関しては流入より帰国の方が多く、メキシコ人割合は半数を割っています。現在の主流は中米からの移民です。

 

****米不法移民人口 、メキシコ人半数割り込む 50年ぶり****

米国に滞在している不法移民のうち、メキシコ人の比率が2017年に50%を割り込んだことが最新の調査で明らかになった。少なくとも1965年以降では初めて。

 

米シンクタンクのピュー研究所が実施した調査では、米南部国境における過去何十年にもわたる状況の変化が浮き彫りになった。暴力や貧困から逃れるためエルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスなどの中米諸国から流入する移民が増える一方、仕事を求めて米国にやってくるメキシコ人が減った。

 

調査によると、2017年に不法に米国内に滞在していた外国人は1050万人と推計される。このうちメキシコ人は490万人で、全体に占める比率は47%となった。米国内に不法滞在するメキシコ出身者数は、ピーク時の2007年の690万人から約200万人減少している。(中略)

 

今回の調査報告書は12日に発表された。共同執筆者であるパッセル氏は、「正式な承認を得ていないメキシコ人の入国は依然として続いているが、出国するメキシコ人の方がずっと多い」と指摘した。

パッセル氏によれば、この減少は米国側国境での警備強化とメキシコ国内経済の改善の結果とみられる。

 

パッセル氏は「人々は(米国に行く代わりに)メキシコ国内を移動している」と指摘。近年、農業や製造業での雇用機会が増加していると付け加えた。「メキシコ国内に雇用を提供する多数の工場が存在し、人々は海外へ行く必要がない」という。

 

同報告書によれば、メキシコ人移民が出国して減少した分は、中米、アジア諸国からの移民が取って代わっている。

 

過去8カ月間で中米から何十万人もの移民が家族連れないし子どものみでやって来ているため、国境の米職員に大きな負担がかかっている。

 

トランプ大統領は先週、メキシコを通じて米国に向かう中米出身者の流れを抑制するためにメキシコ当局が対策を強化しなければ、メキシコに追加関税を課すと警告。メキシコ政府は、同国南部の国境に国家警備隊を配置することに同意したほか、米当局が米国の判事による判断を待つ難民申請者をより多くメキシコに送還できるようにすることにも同意した。

 

連邦政府のデータによると、米国の国境では2014年以降、85万1000人を超える中米出身者が不法入国で逮捕されている。そのほぼ全員は、本国に送還されれば安全が脅かされるとして、難民としての保護を求めている。

 

子連れの場合は米国内で釈放され、移民判事が米国での滞在が容認されるかを判断するのを待つことになるが、この手続きが終わるまでには何年もかかる場合がある。

 

ピュー研究所によると、米国に不法滞在する外国人の総数は近年、1050万人前後で横ばいに推移している。

【6月13日 WSJ】

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メキシコ人不法移民は減少しているにしても、「メキシコが中米からの移民を有効に阻止していないから、彼らがアメリカにやってくる」と、トランプ大統領の怒りの矛先はメキシコに向けれており、上記記事にあるような関税圧力をかける形で、メキシコが国境管理を厳格化することなどで一定の合意に達していますが、それがうまくいかないときは・・・という話が合意には含まれているようです。

 

****トランプ氏、文書ちらつかせ合意内容うっかり漏らす メキシコ不法移民対策****

アメリカのドナルド・トランプ大統領は11日、メキシコと7日に合意した不法移民対策の詳細の一部をうっかり漏らした。

 

トランプ大統領は記者団に対し、国内への不法移民の流入に歯止めをかけることを目的とした対策について、「適切な時に」メキシコ側から発表させたい考えだと述べ、詳細は明らかにしなかった。

 

ただ、この時トランプ大統領が手にしていたのは、合意内容の詳細が書かれた1枚の紙だった。これを終始ちらつかせなが取材に応じたため、メディアが撮影した写真によって内容が明らかになった。

 

この合意には、複数のラテンアメリカの国がアメリカによる関税措置を免れるために難民申請手続きを進めることになるとみられる、地域難民計画への言及が含まれていた。

 

メキシコ側の発表

メキシコのマルセロ・エブラルド外相は10日、合意内容の一部をすでに公表しており、同国は「45日後」に移民対策の効果が出ているかを評価するという。

 

メキシコは現在、アメリカを目指す移民の流入を食い止めるため、同国南側のグアテマラ国境に国家警備隊6000人を派遣している。

 

この対策が失敗に終わった場合について、エブラルド外相は、メキシコはアメリカが求める「安全な第3国」に指定されるだろうと述べた。これは、メキシコ領を通過する難民申請者は、アメリカではなくメキシコで申請を行なう必要が生じることを意味する。

 

外相によると、アメリカはこの措置にこだわっており、早急に実施したがっているものの、同国は直ちには応じなかったという。(中略)

 

仮にメキシコが45日以内に移民を食い止められなければ、他の国々もこの問題に引き込まれる。

アメリカを目指す移民が経由地として通過するブラジルやパナマ、グアテマラと、難民申請手続きの負担を分担させられるかどうか、協議が行なわれる見通しだ。

 

エブラルド外相は、アメリカ側の交渉担当者がメキシコ国内を通過する「移民をゼロ」にするよう求めてきたが、それは「不可能な任務」だと述べた。【6月12日 BBC】

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“うっかり漏らす”とありますが、文書が写真撮影されることを見越したトランプ大統領による意図的「リーク」でしょう。わざとらしいパフォーマンスです。

 

政治課題をこういうTV番組的な演出レベルに引き下げているところが、トランプ大統領の問題でもあります。

 

メキシコのロペスオブラドール大統領は、トランプ米政権と合意した不法移民対策強化の予算を、大統領専用機の売却などで工面する方針を明らかにしていますが、メキシコに責任を負わせるやり様に、メキシコ国内では反発も強いようです。

 

“メキシコで高まる対米反発、関税見送りも関係悪化”【6月10日 WSJ】

“米と合意の不法移民対策、メキシコ与党内で批判噴出”【6月17日 ロイター】

 

メキシコ内相は「いかなる国家警備隊であっても、2000人や3000人のキャラバンを止めることは不可能だ」とコメントし、グアテマラ国境に配備する国家警備隊の活用に懐疑的な見方を示しています。

 

メキシコ下院議長は、“米国の「安全な第三国」要求を受け入れれば、主権を失うことになるとし、「米国はわれわれの国を収容所にしようとしている」と批判。トランプ氏は「経済テロ」でメキシコに圧力をかけているが、メキシコはそれに屈するべきでない、と主張した。”【6月17日 ロイター】とのこと。

また、メキシコが国境管理を厳しくしても、結局は越境補助をビジネスとする人身売買業者を喜ばすだけとの指摘も。

“米メキシコ合意の不法移民対策、人身売買業者に恩恵か”【6月10日 AFP】

 

トランプ米政権は14日、難民申請中の不法移民をメキシコで待機させる合意に基づき、南部テキサス州エルパソからメキシコ側に約200人の移民を送還しています。これまで1日約100人だった人数枠を倍増させた形で、メキシコ外相は「無制限に受け入れない」と強調していますが、アメリカ側への反発が強まっているメキシコでは今後問題化する可能性もあります。【6月15日 時事より】

 

かなり端折りましたが、この問題に関するメキシコ側の反発は上記のように強く、今後については不透明です。

 

****メキシコ、米国との貿易戦争に勝てる 対立回避すべき=大統領****

メキシコのロペスオブラドール大統領は17日、メキシコは米国との貿易戦争に勝てると述べた。ただ、勝ったとしても割りに合わない勝利で、メキシコはこのような対立は回避した方が良いとの考えを示した。(後略)【6月18日 ロイター】

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要するに、「泣く子とアメリカには勝てない」ということで、大統領専用機の売却まで決意したメキシコ大統領は国内的了解を求めています。

 

短期的には圧倒的な力を拠り所とした強気なトランプ外交の“勝利”とも言えますが、長期的に見た場合、アメリカへの不信感を高めるこういう対応がアメリカの利益になるのかははなはだ疑問です。このあたりは、他の外交懸案事項についても同様です。

 

その点では、南シナ海で「大国」の力を振りかざす中国と“似た者同士”にも。

 

【国外退去命令が出されている不法移民、約2000世帯の一斉検挙へ】

一方、トランプ大統領は、アメリカ国内の不法移民について、明日23日にも一斉検挙に乗り出す予定です。

 

****トランプ氏、不法移民2000世帯の一斉検挙を23日実施と指示か 米報道****

ドナルド・トランプ米大統領は移民税関捜査局に対し、国外退去命令が出されている不法移民、約2000世帯について、早ければ23日に一斉検挙を行うよう指示した。米メディアが21日に報じた。(中略)

 

移民家族の一斉検挙は、テキサス州ヒューストンやシカゴ、ニューヨークやマイアミなどを含む最高10都市で、夜明け前の強制捜査とともに開始されると思われる。

 

CNNによると、ケビン・マカリーナン国土安全保障長官代行は、この作戦に全面的に賛成しているわけではない。ワシントン・ポストによると、同氏はICEに対し、弁護士を雇っていたものの法的手続きを放棄して姿を消してしまった不法移民、約150世帯を中心に対処するよう働き掛けてきた。

 

米国は現在、母国でのギャング組織による暴力と貧困から逃れて来た中米諸国の移民が大量に流入する問題に直面している。トランプ氏は、こうした移民流入を「侵略」と呼び、不法移民との闘いを主要政策に掲げている。 【6月22日 AFP】

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“一斉検挙”ということで、かつての“赤狩り”のようなヒステリックなものもイメージしましたが、一応、国外退去命令が出されている不法移民、約2000世帯に限定したもののようです。

 

それでも、1000万人をこえる不法移民社会に与えるインパクトは強烈でしょう。

 

法律違反を犯していると言えばそれまでですが、問題は1000万人をこえる不法移民の多くがアメリカ社会のなかでそれなりの役割を担いながらも、いつ摘発されるかわからないという不安とともに生活しているというあたりです。

 

アメリカのTVドラマ・映画では、制約された権利のもと、そうした不安を抱えて生きる不法移民が、ごく日常的な存在として頻繁に描かれています。

 

不法移民約2000世帯は、拘束後に本国に送還される見通しです。

人道上の理由などから不法移民に寛容な政策を取る「聖域都市」と呼ばれる自治体や人権団体から批判が続出していますので、今後の問題ともなりそうです。

 

メキシコも不法移民対策に乗り出すようですが、こちらはより穏健な方法のようです。

 

****1ドルで母国に帰れます=メキシコの格安航空、中米不法移民に呼び掛け****

メキシコの格安航空会社(LCC)ボラリスは21日、同国内で暮らす中米出身の不法移民に向け、1ドル(約107円)で母国に帰ることができるキャンペーンを発表した。EFE通信が伝えた。同国は米国入りを目指す中米出身者の中継点で、多くの不法移民が滞留している。

 

「家族再会プログラム」と称するボラリス社のキャンペーンは、「現在メキシコで暮らす不法移民のうち、自発的に母国に帰りたい中米人」が対象。身分証明書か出生証明書、旅券があれば1ドルと税金で出身国への航空券を手にすることができる。同社は「不法移民問題の代替的な解決策」と説明している。【6月22日 時事】 

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こんな生ぬるい方法では誰も暴力と貧困がはびこる母国には帰らない・・・という話かもしれませんが。

 

【中米3カ国に対する援助停止を発表 米国内には超党派の異論も】

根本的な問題は、母国に暴力と貧困がはびこっていることで、そこをなんとかしない限り、単に移民を希望する者を母国の檻に閉じ込め、自分たちの社会を壁で守ろうとするだけの話になります。

 

不法移民も好き好んで“不法”に入国している訳でもなく、暴力と貧困がはびこる母国では暮らせない、一方でアメリカは正規にはなかなか入れないというなかでの選択でしょう。

 

しかし、流れは逆光しているようにも。

 

****中米3カ国への援助停止=不法移民対策「不十分」と断定―米政府****

米国務省は17日、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスの中米3カ国に対する援助停止を発表した。トランプ大統領はかねて、米国に向かう不法移民の流出阻止で十分な対策を講じていないとして、3カ国への援助停止を通告していた。

 

米メディアによると、停止された援助は2017、18の両年度に議会で承認された総額5億5000万ドル(約600億円)。

 

同省のオルタガス報道官は17日の記者会見で「米国に向かう不法移民を減らすため、3カ国の政府がわれわれの満足できる具体的行動を起こさない限り、援助計画に基づく新たな資金を提供しない」と述べた。【6月13日 時事】 

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この対応には、アメリカ国内の与野党に異論があるようです。

 

****米超党派議員、中米3カ国への援助削減再考を要求 国務長官に書簡****

米下院外交委員会の共和、民主両党のトップはポンペオ国務長官に書簡を送り、中米3カ国への援助を削減する計画を再考するよう訴えた。援助削減は中国の影響力拡大につながると警告している。(中略)

 

外交委のエンゲル委員長(民主党)とマッコール委員(共和党)は23日公表した書簡で「援助は成果を伴っており、改善の余地はあるものの、援助削減は非生産的で、米国に押し寄せる移民の増加につながるとわれわれは考える」と表明。

 

また、援助削減は安定したパートナーとしての米国の信頼性に疑問を生じさせ、中国をはじめとする敵対国が米援助削減の穴埋めを狙うようになると警告した。(後略)【4月24日 ロイター】

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今回の援助停止を発表は、こうした超党派の異論を押し切ってのものです。

コメント

オーストラリアの難民収容施設 日本の入管施設 期間もわからない長期収容に自殺者も

2019-05-31 23:45:41 | 難民・移民

(【2018118日 望月 優大 現代ビジネス】)


【オーストラリア 移民・難民政策に厳しい保守党が政権維持】

518日に行われたオーストラリア総選挙では、事前の「野党・労働党有利」の予想に反して政権与党・保守党が勝利しました。

 この結果は、南シナ海で中国に対峙する日米豪の協調にも関係してきますが、そのあたりの話は今回はパス。

 

「移民の国」オーストラリアにあって、保守党は基本的には移民・難民政策には厳しい対応をとっています。

ただ、移民増加の影響にネガティブな世論を前に、野党側にも表立っての反対はないようです。

 

****移民の国、豪州のジレンマ 政権、年3万人受け入れ減へ****

4人に1人以上が外国生まれのオーストラリで、与党・保守連合政権が18日の総選挙を前に、移民受け入れ抑制策を打ち出した。大都市の人口過密化が理由だが、多様性を大事にしてきた社会に矛盾するような動きには批判も出ている。

 

 ■都市部で人口増、住宅が高騰

シドニー中心部から西に電車で30分の住宅地、ストラスフィールド地区で駅前を行き交う人々は、アジア系や中東系が目立つ。

 

「この国のルールを守れるなら移民を受け入れるべきだ。人は人でしょ」

トルコ出身で、豪州に住んで10年になるマット・イルマズさん(34)は新たな移民抑制策に不満げだ。

 

政府は3月、2012年から設けてきた永住権を与える移民の受け入れ枠を、年19万人から16万人に減らすと発表した。モリソン首相は「都市部の人口増による混雑の問題に取り組む」と説明した。

 

政府の統計局が17年6月までの1年間で分析したシドニーの人口増加要因は、83・9%が移民。人口約4万人のストラスフィールドでも豪州生まれは37%にすぎず、インドや中国、韓国など外国生まれが多数を占める。

 

人口増は住宅価格に影響する。不動産情報サイト「ドメイン」によると、シドニーの戸建て住宅の平均価格(3月)は約102万8千豪ドル(約7800万円)で、5年間で20万豪ドル上がった。(中略)

 

政府は地方に住んで働くことを条件にする就労ビザの創設も3月に発表した。このビザだと、永住権申請は地方に3年以上住むことが条件。「永住したいなら、しばらく地方に住みなさい」という制度だ。(中略)

 

中国系移民2世の大学生ヘレナさん(17)は「なぜ移民だけが地方に行かなければならないのか。誰もが地方に行きたくなる政策にするべきだ」と話した。

 

 ■人手足りない、地方では歓迎

地方が人手不足に悩む現実もある。(中略)

 

 ■選挙目前、野党もダンマリ

豪州は1970年代に白人を優先する白豪主義を廃止。非白人の移民や難民を受け入れてきた。多文化社会づくりに逆行するような移民抑制策には経済界が反対の声を上げた。

 

豪商工会議所のジェームズ・ピアソン最高経営責任者は「失望している。必要な技能を持った人材を探すのがさらに難しくなる」との談話を発表した。昨年12月に同会議所が出した報告書は「移民受け入れは我が国のDNA。多様性は革新を生み、生活を豊かにする」と強調。若い移民の労働力が経済成長率を押し上げるとも主張した。

 

移民政策に詳しいシドニー大のアンナ・バウチャー准教授も「移民のせいにするのは簡単だが、都市インフラが貧弱な状況には交通政策など様々な要因がある。永住権付与を年3万人減らして解決するわけではない」と批判する。

 

ただ、生活環境の悪化を感じる世論を前に、最大野党労働党も移民受け入れ枠削減に反対せず、与野党とも新たなインフラ計画を競って打ち出している。人口増への対応の遅れを問う議論は聞こえてこない。【517日 朝日】

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パプアニューギニアに放置された難民 自殺者が相次ぐ

上記の正規の手続きを踏む移民の話ですが、密航船などでやってくる不法移民・難民に関しては、“オーストラリア版グアンタナモ”と呼ばれるほど環境が悪い本土外の劣悪な条件の施設送りにする対応をとっており、人権上の問題からの批判も絶えません。(2017227日ブログ“オーストラリアの難民収容施設問題 国際刑事裁判所(ICC)の捜査を要求する動きも”など)

 

そうした収容施設に置き去りにされている人々は、移民・難民政策に厳しい保守党が政権を維持したことは「ショック」でもあったようです。

 

****パプアニューギニアで難民が「日常的」に自殺未遂、民兵投入へ****

南太平洋パプアニューギニアのマヌス島にある難民キャンプで自殺未遂が「日常的」に発生していることから、警察は高まる緊張に対応するために民兵を警官隊として派遣した。地元警察が31日、AFPに明らかにした。

 

パプアニューギニアの民兵は暴力的な取り締まり手法で悪名高い。

 

マヌスでは、オーストラリアを目指しながら豪政府がとる強硬な難民政策のため送られてきた移民や難民たちがキャンプ生活を強いられている。マヌスやナウルに送還された移民や難民たちは、行き場を失ったまま何年も放置状態にある。

 

オーストラリアで今月18日に実施された総選挙では、難民受け入れに前向きな野党の勝利が期待されていたが、予想に反して対移民強硬派のスコット・モリソン首相率いる保守連合が勝利し、マヌスでは絶望した難民らの自殺が急増している。

 

世界的な人権賞を受賞したスーダン人難民活動家のアブドルアジズ・アダム氏も、オーストラリアでの総選挙以後、マヌスでは少なくとも31人が自殺を図ったとツイッターで訴えている。

 

マヌス州警察のデービッド・ヤプ署長によると、これまでに難民らの間で起きた深刻な自殺未遂は10数件だが、軽度の自殺未遂はほぼ毎日発生している。ヤプ所長は、こうした事態を受けて重武装した民兵を警官隊として難民キャンプに派遣したと明らかにした。派遣期間は3か月間だという。

 

だが、この民兵組織は過去にレイプや殺人などで非難されていることから、今後マヌス島における緊張の増大が懸念される。 【531日 AFP

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【長期化する日本の入管施設でも】

将来を悲観した施設入所者が自殺・・・という話は、日本の入管施設でも耳にする話です。

もちろん、施設の条件・待遇は日本とマヌスやナウルでは比べようもないぐらいの差はあるでしょうが、将来の見通しがないまま長期間拘束状態が続き、絶望するという基本構図には共通するものがあります。

 

520日ブログの“外国人材”問題でも取り上げたように、経済難民を排除する政策変更で難民申請は半減し、一方で難民認定数は年間42人に倍増しています。

 

倍増はしましたが、42人ということで、“ほとんど難民申請が認められない”という事態は変わっていません。

 

申請が認められない者は退去命令により帰国することになりますが、中にはいろんな事情で帰るに帰れない人がおり、不法滞在として入管施設に収容されることになります。

 

****「インド戻れば殺される」入管に長期収容、命絶った男性*****

不法滞在の外国人の収容の長期化は、収容者が自殺する事態にもなった。法務省は「気の毒な境遇の収容者もいるが、ルールはルール」との立場だが、専門家からは、難民申請者らに対する日本の姿勢の問題を指摘する声も出ている。

 

不法滞在の外国人、収容が長期化 半年以上が700人超

茨城県牛久市郊外にある法務省の東日本入国管理センターには7月末の時点で、収容期間が6カ月以上になる男性が約330人暮らす。出身は約40カ国。全員が、日本政府から退去を命じられている。

 

インド北西部パンジャブ州出身のディーパク・クマールさん(当時31)もその一人だった。だが、4月13日、シャワー室で自殺した。

 

極貧家庭の5人きょうだいの末っ子。家族らによると、インドでは靴職人として働いたが、月収は家族7人で計7千~8千ルピー(1万2千円程度)。同州の1人あたりの平均月収すら下回る。家計を助けるため金融会社でも働いたところ、借金を肩代わりする羽目になった。「殺す」と脅され、身を守るために2017年4月、「安全」と聞いた日本へやってきた。

 

だが、ビザは短期滞在しか認められない「乗り継ぎ」名目。不法滞在を理由に17年7月、東京入管に収容された。「インドに戻れば殺される」と、帰国は拒否。難民認定を申請したが、結果は不認定。センターの外に出られる仮放免の申請も認められなかった。

 

命を絶ったのは、仮放免不許可を知った翌日。収容者仲間は「絶望した」と推し量り、インドに住む兄のサンジブさん(35)は「弟は重罪を犯したわけではないのになぜ、死に追い込まれたのか」と悔しがる。

 

センターでは5月中旬にも40代の日系ブラジル人、30代のカメルーン人、20代のクルド系トルコ人が相次いで自殺未遂をした。支援団体「牛久入管収容所問題を考える会」の田中喜美子代表は「いずれも将来を悲観してのこと。20年以上面会を続けているが、これだけ短期間に自殺未遂が続くのは初めてだ」と話す。

 

収容者が不満を抱く理由の一つは、生活の制約の多さだ。同センターは1日のうち約18時間を、最大5人がいる部屋で過ごさなければならず、プライバシーがない。6時間弱の「自由時間」は卓球をしたり、部屋と部屋とを行き来したりできるが、敷地内の運動場で過ごせるのは40分だけ。外部との面会、連絡も限られた時間しか許されない。

 

「オリに入れられて、自由を奪われて。犬と一緒。精神的におかしくなる」

こう話すトルコ国籍のクルド人男性(23)は12歳のとき、両親に連れられて来日した。「望んで日本にきたわけじゃない。日本のごはんを食べて、日本の慣習で育った。トルコに知り合いは誰もおらず、うまれた街の名前しかわからない」

 

一度は仮放免が認められたが、無許可で居住県外に出たとして16年5月に収容された。その後、仮放免を10回申請しているが、すべて退けられている。

 

別のトルコ国籍のクルド人男性(23)も「ここの生活には将来がない。不安で頭がいっぱいになる」と話す。民族を理由にトルコで集団暴行を受けたことがあると主張し、16歳の時、親戚のいる日本にやってきたという。

 

15年8月から8カ月収容された後に仮放免されたが、その間に働いたり、許可なく居住県外に出たりしたとして、17年4月に再収容された。日本人女性と結婚して、わずか1週間後のことだった。

 

「パパはいつ戻るの」。月に1度の面会で娘にそう聞かれても、ことばに詰まる。男性は吐き捨てるように言った。

「刑期のわかっている刑務所の方がまだマシなんじゃないか」

 

得られない在留許可「異常な事態」

現在、長期収容者の6割以上は難民申請中だ。難民は条約で「人種や宗教、政治的意見などを理由に迫害を受ける恐れがある人」と定義されている。日本も条約に加入しているが、運用は厳格で、昨年は1万9628人が難民申請をしたのに対し、認められたのは20人だけだった。「人道的な配慮」で特別に在留が許可されたのも45人だった。

 

難民とは別に、家族状況や素行などを考慮し、法相が裁量で決める「在留特別許可」もある。外国人問題に詳しい指宿昭一弁護士は、長期収容者の状況を精査すれば、この対象になる人が多い可能性があると指摘する。ただ、ここ数年は日本人の配偶者や子どもがいても、許可が出ないケースが相次いでいるという。

 

法務省の担当者は「在留特別許可はガイドラインにのっとっており、厳しくも甘くもしていない」と話すが、17年に許可を得たのは1255人で、12年の2割程度。現在、在留資格のない約50人を担当しているという指宿弁護士は「多くが従前なら認められていたが、全く許可が出なくなっている。異常な事態だ」と語った。【2018923日 朝日】

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【「帰るに帰れない人々」を精神的に追い詰める現行制度・運用】

****追い込まれる長期収容外国人「帰るに帰れない人々」をどう捉えるか****

外国人労働者の受け入れ拡大を目指す政府の入管難民法改定案。今週から国会での審議が始まるとされ、注目度が高まっている。

 

その一方で、近年法務省・入国管理局の施設に長期間(6ヵ月以上)収容される外国人の数が増えていることをご存知だろうか。2016年末は313人だったそれが、わずか1年半後の187月末には709人へと2倍以上に増加した。

 

収容外国人全体に占める長期収容者の割合も同期間に28%から54%へとほぼ倍増している(朝日新聞)。

 

日数に上限のない収容、度重なる自殺や自殺未遂、職員による暴行、不十分な医療アクセス、シャワー室への監視カメラの設置、退去強制による家族の分断――これらのショッキングな報道に接し、この問題をどう捉えるべきか困惑している方も多いのではないか。つい昨日のことだが、6人部屋に17人を監禁し、そのまま24時間以上施錠という報道もなされた。(中略)

 

これ(冒頭グラフ)を見ると明確に分かる通り、長期の被収容者が全体に占める割合が目に見えて増えているのは昨年、つまり2017年からだ。(中略)

 

このデータに現れる変化は指宿弁護士の現場感覚とも符合していた。

3年前くらいまでは私の感覚だと原則78ヵ月で仮放免されるというのが一般的な形でした。(中略)それが今は78ヵ月なんてありえない。1年もありえない。私の依頼者で最長2年半です。仲間の弁護士が大阪で国賠訴訟やっている件だと、こないだやっと仮放免されましたけど3年半ですよ」

 

やはり数年前から入管の収容に関する運用のルールが変わり、結果として収容が長期化しているということのようだ。

 

多くの人は帰る

ここで「収容」とはそもそも何なのか、その位置付けを簡単に確認しておきたい。

 

入管施設に収容されるのは、日本に滞在する正規の資格(在留資格)を持っていなかったり、持っている在留資格では認められていない活動(就労など)をしたために、「退去強制」の対象であると入管に認定された(およびその認定の審査中の)外国人である。

つまり、収容の位置付けは、退去強制という行政措置の前段階、準備段階ということになる。したがって、「入管施設への収容」と「刑務所への収容」は、その見た目は似ていても意味が全く違う。後者は罪に対する罰であるが、収容は罰ではないのだ。

 

では、退去強制を命じられた外国人たちは実際どうしているのか。ここまでの文章の流れ上少し驚かれるかもしれないが、実はその多くはすぐに出国をしている。しかも「強制」退去と言いながら自費での出国が95%以上だ。(中略)

 

長期化する収容の多くは、過酷な収容という仕打ちを受けてもなお「帰れない」人々の問題であるということだ。指宿弁護士もこう語る。

 

「退去強制令書が出たら多くの人は帰るんですよ。例えば旅行のビザで入ってきてちょっと働いてやろうという人は、捕まって収容されて強制退去ということになったら普通は帰ります。(逆に)帰れない人っていうのはそれなりの理由があるんですよね」

 

入管から「帰れ」と言われて「帰れる人」と「帰れない人」がいる。では帰れない人々は一体なぜ帰れないのだろうか?

 

「帰るに帰れない」理由

指宿弁護士はこう続ける。

「日本人や永住者と結婚していたり、子どもが学校に通っていたりする人。20年、30年と日本に暮らしていて今さら帰る場所がない人。あるいは難民認定申請者で、難民認定は日本ではほとんどされないんだけど、帰ったら現実問題として命がどうなるかわからない人。あるいはそこまでいかなくても自分の国に帰っても生活ができない、ひどい目に遭うという人。色々な理由で帰れない人たちがたくさんいます」

 

「収容というのは送還の準備期間であって、送還のために圧力をかける手段ではないはずなんです。それが悪用されているんです。収容されて、追い詰められて、病気になってくる人が多い、精神的にも肉体的にも。1年を越えると何らかの病気を持っている人がほとんどだと思います。

 

そういう状況の中で追い詰めて帰国させようとしている。

本人たちにすれば、もう追い詰められると帰るか死ぬかしかないという気持ちになってしまうわけですよ。

 

だから自殺者や自殺未遂者が相次いでいるのは偶然じゃなくて、自殺する直前なのか自殺するところまでなのかわからないけれど入管がわざと追い詰めているんですよね。

 

もちろん自殺させることが目的ではないと思いますけど、ギリギリのところまで追い詰めて、それで自分でお金を払って帰ってもらうというのが目的なんでしょう」

 

退去強制を命じられても「帰るに帰れない人々」がいる。現在の入管政策が行っていることは「帰るに帰れない人々」にそれでもなお「帰れ」と言い、そして実際に帰る決心をするまでは無期限に閉じ込めるということだ。

 

あくまで出国の準備期間として作られた「収容」という制度が、被収容者をして最悪の場合には自死にまで追い込む装置になってしまう背景にはこういう構造が存在するのだ。(中略)

 

さらに問題なのが、(中略)退去強制決定後の収容に法定の上限期間が無いことだ。

 

(中略)「理屈の上では100年でも収容できるんですよ。だから、以前は入管なりの常識で78ヵ月で仮放免されていたものが、入管のフリーハンドで23年収容してみようと思えばいくらでも収容できちゃう。ここに恐ろしいところがある。

 

刑務所はそんなことはできないじゃないですか。懲役1年だけど最近治安が悪いからこの人は2年入れておこう、そんなことをしたら憲法違反になりますよね。でも入管にはそれができてしまう。とにかく入管の裁量は大きく、ほとんどオールマイティです」(中略)

 

「帰るに帰れない人々」をどう捉えるか

(中略)在留資格を持たない非正規滞在者の中には、バブル期から平成の時代にかけて日本の労働力不足を補ったり、日本人がやりたがらない「3K労働」に従事したりしてきた最下層の外国人労働者たちも多く含まれる。

 

つまり、日本社会の側がかれらを必要としてきた側面もあるのであって、かれらが帰るに帰れなくなった理由は日本社会の側にもあるのだ。近年では技能実習の厳しい労働現場から逃げ出さざるを得なかった者も増えている。

 

しかし、現実には収容はどんどん長期化し、メディアが入管と一緒になって非正規滞在者をバッシングするかのような番組まで散見される。(中略)

 

収容政策の厳しさが注目を集めている今だからこそ、収容政策のあり方を見つめ直すだけに留まらず、その対象となっている非正規滞在者たち、「帰るに帰れない人々」が一体どんな人々なのか、改めて想像し直すことも必要ではないだろうか。【2018118日 望月 優大 現代ビジネス】

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コメント

日本  更に拡大が見込まれる外国人労働者 “外国人材”ではなく“人間”としての受入れ態勢を

2019-05-20 23:14:50 | 難民・移民

(【4月14日 朝日】)

【急増する外国人労働者 しかし、依然として外国人受入れに厳しい日本社会】

日本政府観光局(JNTO)によれば、2018年の年間訪日外国人数は前年比8.7%増の31191900人で統計開始以来の最高記録を更新しています。

 

また、周知のように日本では深刻な人手不足の解消を外国人に頼る改正入管法が4月に施行され、政府の構想どおりにいけば外国人労働者が大きく増えることになっています。

 

現在でも、(工場労働者の実態を目にする機会は私はありませんが)コンビニとか外食チェーン店、格安宿泊施設などでは、ごく普通にアジア系外国人が働いているのを目にします。

 

しかし、日本社会が外国人に開かれているか・・・という話になると、また別問題で、日本社会は依然として外国人に対して門戸を閉ざしている面が強く存在します。

 

****難民認定申請、前年比47%減 認定は昨年の2倍の42人****

法務省は27日、2018年の難民認定申請数などを公表した。申請数は前年比9136人(約47%)減の1万493人で8年ぶりに減少。

 

難民認定されたのは同22人増の42人、認定されなかったものの人道的配慮で在留が認められたのは同5人減の40人だった。難民保護の迅速化を図るため、昨年1月に開始した就労目的などの申請を抑制する運用が影響しているとみられる。

 

難民認定申請数は10年3月に、申請から半年後に就労を認める運用が始まったことなどから急増。そこで法務省は昨年1月、難民の可能性が高い申請者には就労が可能な在留資格を速やかに与える一方、明らかに難民に該当しない理由を訴えたり、再申請を繰り返したりする申請者には新たな資格を与えない運用に切り替えた。

 

申請者の国籍は74カ国。最多はネパールの1713人で、(2)スリランカ1551人(3)カンボジア961人(4)フィリピン860人(5)パキスタン720人――と続き、この5カ国で申請総数の約55%を占めた。一方、世界で難民認定申請者を多く出しているとされる5カ国(アフガニスタン、イラク、シリア、ベネズエラ、コンゴ民主共和国)の申請者は計50人だった。

 

申請処理数は前年比2129人増の1万3502人。認定された42人は、コンゴ民主共和国13人▽イエメン、エチオピア各5人▽アフガニスタン、中国各4人▽イラン、シリア各3人――など。認定者増加について担当者は「乱用的・誤用的な申請が減り、審査業務が進んだのが一因」とみている。

 

法務省は27日、18年に入管法違反で強制退去手続きをとった外国人数も公表。前年比2583人増の1万6269人で、1万86人が不法就労をしていた。【327日 毎日】

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難民認定数が2倍になったといっても“42人”・・・・ほんとんど認められていないと言うべきでしょう。

 

難民・移民流入で揺れる欧州や、アフリカ・中東からの難民受け入れ国となっているトルコやヨルダンなどで“万人”単位(国よっては“十万人”単位)の数字が問題となっている状況とは雲泥の差があります。

 

****なぜ日本の難民認定数は著しく少ないのか?****

(中略)日本で難民認定数が極めて少ない理由として、軍事政権下のミャンマーからの民主活動家が多くの申請を行っていた時期は例外として、難民が多数発生する地域から日本が遠く離れていることや、言語的・文化的な違いが障壁になっていることから、日本には真の難民が来ていないという見方もある。

 

しかし、紛争が長期化・複雑化し、多数の難民が発生しているシリアからの難民申請について、日本では201712月までに約80人が申請をしたのに対し、大半は人道配慮による在留が許可されたにすぎず、難民認定は12人にとどまっている。

 

また、集団的な虐殺がされるなどミャンマーで民族浄化の対象となっている少数民族のロヒンギャについても、これまでに約120人が申請を行ったのに対し、19人が難民認定、約80人が人道配慮による在留許可を得たにすぎず、それ以外の約20人は在留許可も与えられていない状況にある。

 

このような状況は、必ずしも日本には真の難民が来ていないのではなく、日本の難民認定の基準が著しく厳しいことを示唆している。(後略)【20187月 ヒューライツ大阪】

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外国人を受け入れることについて強い抵抗があるのは法制度だけではなく、社会全体の意識の問題が根底にあるように見えます。

 

****外国人施設「反対」、遠い対話****

住宅の軒先に、いくつもののぼりがはためく。「住環境の破壊 ダメ!絶対!」「子ども達の安全・安心を守れ」。昨年秋、大阪府摂津市にある住宅地の風景が変わった。

 

約1500世帯が暮らすこの地区には、古くから代々続く家も多い。そこに外国人技能実習生を受け入れる監理団体が研修施設を計画し、反対運動が巻き起こった。計画によると来日直後の実習生に約1カ月間、日本語や生活習慣を教え、最大60人余りが暮らせる。

 

(中略)しかし、この件については対話の糸口を見いだせない。「実習生と言葉が通じない」「怖い」という漠然とした不安を聞き、「ならば、なぜ不安なのか、どうしたら解消するのか話し合えばいい」と思った。しかし、「とにかく反対」「なぜ、反対しないのか」とたたみかけられ、話を進められなかった。

 

反対運動について「地元住民が猛反発」などと複数の報道が批判的に取り上げたことも、人々の感情を複雑にした。いまは、施設の立地条件や監理団体の計画の進め方などへの不満がより強く打ち出されている。反対運動を続ける住民の男性(63)は取材に対し、「不特定多数が出入りする施設を、住宅街の真ん中に建てる必要があるのか」と憤った。

 

互いの不安の正体を直視しあえないまま、議論を深められずにいる。

    *

背景の違う人々への理解はどうしたら進むのか。日系3世で、各地の日系コミュニティーを研究する武蔵大教授のアンジェロ・イシさん(51)は壁を目の当たりにしてきた。

 

来日したのは1990年。バブル景気のただ中のこの年、就労制限のない在留資格が与えられたのが日系人の2世、3世だった。製造業の労働者を中心に各地で急増した。自治体やコミュニティーによっては共生する態勢が大きく進んだが道は平坦(へいたん)ではなかった。

 

ゴミ出しをめぐるトラブルや生活習慣の違いなど、日本人との差異ばかりに目が向けられてきたと指摘する。「『トラブルを引き起こす存在』というイメージがつくられてしまった」

 

イシさん自身は留学生として来日したが、引っ越しのたび「外国人だから」という理由で入居を拒まれることが続いた。

 

多くの労働者が職を失った2008年のリーマン・ショック後には、職を失い苦境に陥る日系人も出た。政府は、当分日本に戻らないことを条件に、今度は帰国の費用を支給する施策を打ち出した。

 

「手切れ金か」と指摘され、日系人を労働力の調整弁に使う身勝手さへの批判は出たものの、社会に外国人労働者を位置づける議論はこのときも広がらなかったと、イシさんは残念に思っている。

 

「外国人の大多数は、目立たず、ごく普通に暮らしてきた。そこに視線を向けて議論をしなければ、警戒感はなくならない」【54日 朝日】

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【想像の中の外国人への不安】

当然、異なる文化・習慣の人々とともに暮らすことになれば様々な問題が発生しますが、そうした問題をどのように解決していくのか・・・という方向ではなく、そうした面倒な人々は頭から断るといった対応が目に付きます。

 

外国人への不信感・拒否感は、実際の外国人との付き合いの結果生まれたというより、まだ見ぬ“想像上”の外国人への抵抗感であることも多いようにも思われます。

 

****想像の移民におびえるよりも*****

移民はやっぱり移民と呼んだ方がいいのかもしれない。衆議院立憲会派の中川正春議員(68)は最近そう考える。

 

7年前の民主党政権時代、内閣府の特命大臣として共生社会を担当した。就任直後に「移民基本法を作りたい」と発言したら抗議が殺到した。「移民を容認するのはけしからん」

 

移民という言葉を使うと反発が強くなるようだった。その後、外国人材などといった言葉に言い換えてきた。中川議員に限らない。政界はこの言葉の使用にずっと及び腰だった。

 

「そうやって真っ向から問題を考えるのを避けてきたのでは」と振り返る。「移民ではないと言いながら技能実習生や日系定住外国人などは実質的に移民として受け入れる二枚舌をやってきた。これではなかなか本物の政策はできない」

 

移民という言葉はやっかい者のイメージをまといがちだが、問題の多くは仕組みの方にあると言う。「職業選択の自由がなく、使用者にいじめられても低賃金で働き続けなければならない。そんな環境から逃げると犯罪だとなる」

 

議員は三重の高校から米国の大学に進んだ。不法移民家庭の出身だった親友は名門大学を出て医師となった。そんな例をいくつも目の当たりにした。「人間の才能は環境によって花開く。日本もそんな人たちを活力にしていくべきです」

 

今は、日本で暮らす外国人にとってまず必要なのは言葉の習得と考え、その法整備に与野党の仲間と取り組んでいる。(中略)

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人々が不安を抱くのは、しばしば現実の中の外国人より想像の中の外国人だ。

 

フランスで移民排斥を掲げる右翼政党への支持は、移民系の住民が多いパリでは低い。ドイツでは旧東独のドレスデンなどが移民や難民排斥の運動拠点だが、旧西独に比べて移民の数は少ない。

 

日々、同じ街に暮らしていれば誤解が生じても話せば理解は進む。だが、これからやってくる外国人は不安をかき立てやすい。トラブルメーカー、雇用を奪う者、文化の破壊者……。政治家の仕事はそこにつけ込むことではない。現実的解決への道筋をつけることだ。

 

フランスの人口統計学者、フランソワ・エランは著書「移民とともに――計測・討論・行動するための人口統計学」の日本語版(林昌宏訳)序文で、日本での「移民の増加は国の文化的な均質性にとって有害」という考え方に、これまでも日本文化は「明治時代進駐軍の支配という衝撃を乗り越えてきた」と反論する。「移民の人口に占める割合が2%ではなく10%になったからといって脅かされるようなことがあるのだろうか」

 

想像の移民におびえるよりも、現実の移民と向き合う。そのためにも、移民は移民と呼んだ方がいいと思う。【519日 編集委員・大野博人氏 朝日】

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【現状の問題が改善されないまま拡大する“外国人材”受入れ】

現実には“外国人材”といった言葉で糊塗した形で、人間としての労働者が今後増加することへの日本社会の対応が遅れていることは、いろんなところで指摘されているところです。

 

人間として許容できる賃金・労働条件を確実にするのは、まずもって最低限のスタートラインですが、そこすら現状の問題が改善されないまま、新た制度による受け入れ拡大が図られようとしています。

 

****日本でまた中国人技能実習生への賃金未払いが発生、早急な対策が必要****

2019429日、日本新華僑報は日本でまた中国人技能実習生への賃金未払いが発生したと伝えた。

記事は、「青森県むつ市の77歳の社長が、4人の中国人技能実習生を含む15人の従業員に賃金を支払わなかったとして、むつ労働基準監督署により書類送検された。容疑は最低賃金法違反である」と伝えた。(中略)

記事は、「昨年2月に、青森県青森市の成邦商事株式会社が、15人の中国人技能実習生を含む31人の従業員に、月100時間を越える時間外労働をさせて書類送検されたほか、今年3月にも八戸市にある縫製会社が、ベトナム人技能実習生に賃金を適正に支払わなかったとして書類送検されている」と指摘した。

その上で、「青森県で連続して同様の問題が発生していることは、日本の労働力不足が深刻であることを説明しており、そのため政府は外国人労働力を導入する新たな政策が必要になった。また、日本政府も『口だけで行動せず』、監督不行届であるため問題が次々と発生し、関係する部門の行動も遅く効率が悪い」と批判した。

このため記事は、「中国人技能実習生を含む外国人労働者の権益を守るため、日本社会はこの方面で早急な対策が必要だ。さもないと、日本の労働力市場は圧力が緩和したとしても、日本社会の国際的名誉は落ちるだろう」と警告した。【429日 レコードチャイナ】

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こうした実態をチェックする制度も実態に追いついていません。

 

****働く外国人、守るには 監督機関を新設、でも「成果乏しい****

 ■「落差」ある検査結果

「暴力に抗議したら強制帰国させられた」「妊娠2カ月で帰国か中絶か迫られた」――。外国人労働者を支援しているNPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」(東京・上野)には、技能実習生からの相談がいまも続々と舞い込む。

 

途上国の外国人に日本の技術を学んでもらう目的で1993年に始まった技能実習制度を巡っては、賃金の未払いや長時間勤務の強制などの労働法違反の行為が減らないことへの批判が高まり、2017年11月に実習生の保護策を強化した技能実習適正化法(技能実習法)が施行された。

 

新法で、監督権限がある認可法人「外国人技能実習機構」が新設された。実習機構が、受け入れ窓口である商工会などの監理団体や、職場に受け入れている企業に立ち入り検査し、実習生への不正行為があれば、政府と連携して罰則を科せるようにした。

 

「実績」はどうか。「実習生保護という点では成果は乏しい」と、移住連代表理事の鳥井一平さんは言う。

 

約2500の監理団体のうち実習機構の検査で不正が明らかになり、許可が取り消されたのは1団体。業務停止や改善命令の行政処分はゼロだ。

 

4万8千社あるといわれる受け入れ企業に関しては、実習機構に認定された実習計画を取り消されたのは8社の151人。改善命令を受けたのは三菱自動車1社にとどまる。

 

法務省が賃金未払いなどの不正行為があったと認定した監理団体や企業数は17年まで毎年200を大きく超えていた(18年は未公表)。実習機構の検査結果との「落差」は大きい。

 

実習機構は、行政処分の手前の「改善勧告」を少なくとも1400団体・企業に出していることを明らかにし、「勧告後も改善されない場合は行政処分に踏み切る」と強調する。(中略)

 

 ■チェック追いつかず

新制度にはもう一つ狙いがあった。受け入れ人数の大幅増だ。少子高齢化で若手の労働者が急減するなか、景気拡大が重なり2010年代半ばごろから人手不足が深刻化していたためだ。

 

(中略)こうした技能実習システムの急膨張に実習機構のチェックが追いついていない。18年4月から9月に実施した企業への実地検査は2600件。これだと「企業への検査は3年に1回」という低めの目標の実現さえ不可能だ。

 

実習機構の人員は昨年度より241人増えて587人となったが、当初から専門家らは「受け入れ枠の拡大は、保護強化策が効果を発揮する態勢が整い、制度の改善が確認されてからの話だ」(自由人権協会の旗手〈はたて〉明理事)と警鐘を鳴らしていた。

 

技能実習制度の「構造問題」も切り込み不足のままだ。ほとんどの技能実習生は来日する前、現地の人材派遣会社やブローカーに多額の手数料や謝礼を払っている。借金を背負った実習生は、日本では就労環境が悪くても我慢せざるを得なくなり、受け入れ側が図に乗って不正行為に走っていた。

 

新制度に合わせて、日本政府は実習生の送り出し国と、悪質な仲介業者を排除する取り決めを結ぶことにした。現在、最多の人材の送り出し国のベトナムなど13カ国と結んでいるが、取り決めが相手国を法的に拘束するわけではない。

 

 ■懸念残る「特定技能」

(中略)特定技能はこうしたまやかしをやめ、「労働者として正面から受け入れる制度」と評価された。一方で「実習制度と同じ過ちをおかすのではないか」との懸念が広がっている。

 

特定技能も、外国で人材を集めて日本に送り出すのは実習制度と同様の民間業者だ。応募者から様々な名目で金品を搾取する恐れがある。

 

実習生のように多額の借金を背負って来日したすえに、受け入れ企業に「逃げられない」とつけ込まれて酷使される可能性があるのだ。報酬も「日本人と同等以上」としているが、技能実習法で同じように約束されている実習生の大半は最低賃金で働いている。

 

国内外で「人身売買」とまで指弾されている実習制度を教訓に、外国人の人権を保護し、安心した就労・生活環境を提供する体制を整えないと新資格は根付かないだろう。

 

それは外国人との共生を巡る課題そのものでもある。

人口が加速度的に減少している日本は早晩、外国人を「労働者」ではなく「国民」として受け入れることが避けられなくなる。特定技能は「移民国家」への覚悟を問うている。【520日 織田一氏 朝日】

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外国人労働者の問題に限らず、個人の生き方・価値観、ジェンダーに関する問題等々、多様性を認め合う社会になってもらいたいのですが・・・。

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絶望的な格差が生む命がけの人々の流れ 「壁」が深める分断

2019-05-17 22:52:22 | 難民・移民

(高台から壁の向こうの米国側を見つめる人たち=メキシコ・ティフアナ【5月6日 GLOBE+】)

 

【欧州が門戸を閉ざし、南米経由で「ダリエンギャップ」を超えてアメリカを目指す人々】

アフリカから欧州を目指す人々、中南米からアメリカを目指す人々などの移民・難民に関する記事は多々あります。

 

どれも心に重く残るものがありますが、受け入れ国側にも無条件では受け入れられない事情(自分たちの利益を守りたいという思い)もあり、どうしたらいいのか・・・というところでは答えが見つかりません。

 

そうした記事の比較的最近のもののなかから、特に印象に残ったものをいくつか。

 

アメリカでトランプ大統領が壁で追い払おうとしている、主に中米「北の三角地帯」と呼ばれるホンジュラス、エルサルバドル、グアテマラの3カ国からアメリカを目指す人々はよく取り上げられており、それはそれで悲惨なのですが、その中にはアフリカ・アジア各地からの人々も混じっているそうです。

 

欧州への入国が難しくなったため、南米エクアドルやブラジルからコロンビア経由でアメリカを目指すためのようです。

 

また、そのように南米からアメリカをめざす場合、パナマにはルートの空白地帯「ダリエンギャップ」という「壁」が存在するそうで、彼らはそこを命がけで乗り越えてアメリカを目指すとか。

 

****4年で100倍、アメリカを目指す移民はなぜパナマのジャングルを目指すのか****

「エクソダス」壁を越える移民たち

南北アメリカ大陸は地図上ではつながってみえるが、車で渡ることはできない。北米アラスカから南米パタゴニアまで縦断する「パンアメリカン・ハイウェー」が途切れる空白地帯「ダリエンギャップ」があるからだ。

密林と湿地。マラリアや毒蛇。麻薬カルテルと武装組織。直線距離で100キロほどの「空白地帯」に潜むいくつもの危険が、豊かな北米への道を阻む「壁」になってきた。

 

ところがここ数年、ダリエンギャップを越え、遥かアフリカやアジアから米国を目指す移民たちが増えている。その先の道のりも、「エクソダス」(大量脱出)と呼ばれる移民集団の出現で一変しているという。何が起きているのか。

 

■おもちゃ屋2階の安宿

「ホテル・グッドナイトに行け」

南米から北米を目指す移民が集まる中継地と聞き、コロンビア北部メデジンからバスで9時間かけて着いた港町トゥルボ。材木が積まれた船着き場で移民がいそうな場所を尋ねると、一言、そう言われた。

 

それは、移民局のそばのおもちゃ屋の上にある安宿だった。「Good Nigth」とつづりを間違えた看板を掲げた2階からフロントに入ると、受付の女性のポロシャツの胸には、今度は「Goog Night」の刺繍。案の定、スペイン語しか通じない。

 

それでも、移民が集まる理由はこの宿の名にあった。宿帳にはインドやパキスタン、ガーナやエリトリアなどアジアやアフリカの国々の名が並ぶ。

 

ホテルの通路に、カメルーン人が集まっていた。同国では少数派の英語圏住民で、政府軍に家を焼かれ国を逃れたという。元大学生の男性(25)は「英語名のホテルだから言葉が通じるかも」と、ここを選んだ。同じ境遇の仲間を見つけ、ともにダリエンギャップを越えて北米を目指す。「家で兵士に射殺されるのを待つより、密林で死ぬ方を選ぶ。命がけです」

 

窓のない部屋の壁を見ると、「心配するな、神とともにある」と英語の小さな落書きがあった。

 

■「速度を落とせば転覆する」

翌朝、郊外の波止場からダリエン湾を渡るボートに乗り込むと、すし詰めの乗客45人のうち、41人が移民で、中には子どもも10人いた。ビーチリゾートの町に向かう一般の定期便だが、オフシーズンのいまは、移民船のようになっていた。

 

出発するや小さなボートは荒波を猛スピードで進む。すぐに波しぶきで目を開けていられなくなった。10秒ごとに波がしらを越え、乗客の体がそろって宙に舞い、着水のたびに椅子に打ち付けられて悲鳴が上がる。歯を折りかねない。慌ててハンカチを口に含もうとしたが、手すりから手を離せなかった。(中略)

 

■「天国」への道

船旅を終えた移民たちは夜明け前、「コヨーテ」と呼ばれる密航手引き人とともに数十人の集団になって、町はずれの山道から自然保護区のジャングルに入るという。その入り口には、看板が立っていた。

 

「El Cielo」。スペイン語で「天国」を意味する。いくつもの山を越えて崖を下り、川を渡った先に、天国を思わせる美しい湖沼があるという。だが道中は、誘拐や強盗、置き去りといった危険に満ち、けがや熱帯病で歩けなくなっても助けは来ない。港に面した宿のオーナー、ネシー・ホハナ(30)は「捨てられた服と人骨、とりわけ子どもの骨がよく見つかる」と話した。(中略)

 

■ジャングル最奥の多国籍な村

川を十数回渡り、いくつもの牧場を通り抜けて5時間半。隣町に着いた時には日が暮れかけていた。移民たちはこの密林の奥を、小川の水をすすり、ビスケットを食べながら1週間ほどかけて越えて、パナマ側にある人の住む村を目指す。

 

私は、パナマ市から移民が到着する地を目指した。その一つで、少数民族が暮らすジャングル最奥の村バホチキトを訪ねると、まるで国際会議を思わせるような多国籍の顔ぶれであふれかえっていた。

 

川べりで水浴びするハイチ人やペルー人、高床式住居の木陰には青いターバンを巻いたインド人。人口約250人の村に世界中からの移民が約450人も集まっていた。

 

国境警備隊の詰め所の黒板には、ネパールやスリランカといったアジア、コンゴやカメルーンなどのアフリカ、キューバなどのカリブ海まで、20を超す国名と人数がチョークで殴り書きされていた。

 

移民が増えたのは2015年ごろという。体を壊す人も少なくなく、前日にもアフリカ系の人の水死体が見つかっていた。村はずれの墓地には、土を盛ったばかりの跡があった。

 

女性や子どもの姿も目立つ。近くの村で会ったハイチ人女性は15人のグループで6日間、密林を歩いた。「食べ物がなくて本当に大変で、マラリアになった人もいます。でも子どもは米国で産みたいんです」と膨らんだおなかをさすった。

 

■コロンビアからパナマへ、4年で100倍

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の統計を見ると、コロンビアからパナマに入った外国人は11年に300人足らずだったのが、15年と16年は約3万人に。わずか4年で100倍に膨らんだ。

 

その出身国はアフリカ、アジアを中心に約50カ国に及ぶ。なぜわざわざ南米に渡り、危険なダリエンギャップに身を投じて北米を目指すのか。

 

UNHCR中米キューバ地域代表ジョバンニ・バス(48)は、「欧州に向かう地中海ルートが困難になり、だれもが代替ルートを探していた」と話す。中東やアフリカなどから難民が殺到した15年の「欧州難民危機」で欧州諸国が門戸を狭めたため、代わりに米州に向かうようになった、というのだ。「密林を抜ける危険が、十分に理解されているとはとても思えない」

 

この新しい流れの中で、米州に目を向けた移民の「玄関口」になったのが、多くの国からビザなしで入国できるエクアドルや、五輪やワールドカップで外国人労働力を受け入れてきたブラジルだ。

 

国を逃れざるをえない人、貧しい母国に帰らずに豊かな国を目指す人。ダリエンギャップはこうして、彼らが明日を描くのに、どうしても越えなければならない「壁」になっていった。

 

 

ダリエンギャップを越えた移民たちはその後、さらに北上し、「北の三角地帯」と呼ばれるホンジュラス、エルサルバドル、グアテマラの3カ国から米国を目指す人たちの波に流れ込んでいく。

 

警察やギャングを恐れ、人目を避けて身を潜める「伏流水」だった移民の流れが突然、堂々とした「大河」に変貌したのは昨年10月のことだ。数千人規模のキャラバンを組んで米国境に迫り、中間選挙を前にした米大統領トランプが「侵略者だ」と非難したことで世界中のメディアの注目を集めた。

 

「エクソダス」(大量脱出)と呼ばれ、「完全にゲームを変えた」とも言われるキャラバンの背景に何があるのか。私は同行することにした。(後略)【5月6日 GLOBE+】

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【大量難民が出ている内戦国イエメンに命がけで渡る人々】

一方、激しい内戦と飢餓・コレラに苦しみ大量の難民を出している中東イエメンにアフリカ各地から命がけで渡ろうとする人々が絶えないそうです。イエメン経由でサウジアラビアを目指す人々です。

 

****密入国、内戦のイエメンへ アフリカから死の危険冒しても/はびこる密航業****

中東イエメンは内戦で「世界最悪の人道危機」と言われ、約18万人が周辺国に逃れている。ところが、逆にイエメン密入国するアフリカの若者が後を絶たない。さらに北隣の産油国サウジアラビアに渡って稼ぐためだ。

 

イエメンと海峡を隔てて約30キロのジブチ。首都ジブチから北へ向かう幹線道路に、1・5リットルのペットボトルを手に歩く若者を50人以上見かけた。ほとんどが隣国エチオピア出身で、国境から150キロ以上歩いて密航船が出るオボックを目指す。

 

エチオピア中部出身のムハンマド・イドリスさん(22)がのどの渇きを訴えて記者の車を止めた。手には水を入れるために拾った食用油の容器。気温は38度。野宿しながら国境から15日かけて歩いてきた。

 

イドリスさんは1年半前にも密航船でイエメンに入ったが、武装した男らに拘束され、親族は身代金を要求された。そのとき受けた拷問の傷が首筋に残る。解放後にサウジで羊飼いとして2カ月働き、不法滞在強制送還。だが故郷は仕事もなく貧しい。危険を冒してでも再びサウジに渡ることを決めた。

 

持ち物は刃渡り10センチのさびた護身用ナイフと2枚の顔写真。「途中で死んで顔がわからなくなっても写真があれば誰かわかるから」

 

ジブチは以前からサウジなど裕福な産油国への経由地になっていたが、2012年ごろから人の流れが増加。国際移住機関(IOM)によると、隣国ソマリアなどから出る者と合わせると、16年に11万7千人がイエメンに渡り、17年も9万9千人。大半がエチオピア人で、一部にソマリア人もいる。

 

夏場の気温は50度になり、のどの渇きや病で息絶える者もいる。船は強風や高波、客の乗せ過ぎで時折、転覆する。内戦状態と知らずに入ったイエメンで戦闘に巻き込まれたり、誘拐されたりすることもある。無事にたどり着けるのは、ごく一部だ。

 

オボック周辺には、対岸のイエメン人らと共謀して密航ビジネスで稼ぐ業者がいる。沿岸警備隊などが取り締まるが、当局者は「海岸線は100キロ以上あり、密航業者が動くのは夜中。すべてを止めるのは難しい」と話す。

 

「我々の助けなしでサウジにたどり着くのは不可能だ」。モウラと名乗る密航業者の男(48)はそう断言した。エチオピアやイエメンにネットワークを持つ「ビッグボス」の下で働いていると自慢した。(中略)

 

内戦下のイエメンに事情を知らない人々を送り込む点をどう思うのかと問うと「やつらは知っているさ」と反論し、こう付け加えた。「需要があるからビジネスをする。それだけだ」

 

 ■貧困背景、裕福なサウジ目指す

(中略)それでも多くの若者が流れ込むのは経済上の理由だ。中国などの支援で急速な経済発展を遂げるエチオピアだが、17年の1人当たり国民総所得は740ドル(約8万1千円)で、2万90ドルのサウジの27分の1程度。しかも都市と農村の格差が大きい。

 

「サウジに行けば金持ちになって仕送りもできる」といった密航業者の話が「サクセスストーリー」として広まる。

 

中部の農村出身のアブドルファッターハ・ムハンマドさん(19)は、家族が財産の牛1頭を売って密航業者に払う約6万円を工面。家は貧しく、8人兄妹の末っ子のムハンマドさんは学校には5年通っただけだ。

 

イエメンの内戦は知らず、ジブチで国際機関の説得を受けて思いとどまった。「金を作って送り出してくれたのに、家族にどう説明すればいいのか。期待されていたから帰るのも怖い」(5月16日 朝日)

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【「壁」で分断された二つの世界】

そして壁をはさんで分断される二つの世界。

 

****流れ作業で移民に有罪判決 壁が分かつ世界の現実****

米大統領トランプが掲げ、米社会を揺さぶり続けるメキシコとの国境の壁建設計画の現場をみようと2017年8月、私は米国とメキシコの国境3200キロをたどった。

 

四半世紀をかけて築かれた1100キロにおよぶ「壁」の周辺には、毎年数十万人が検挙され、数百もの遺体が見つかる異様な世界が広がっていた。

 

米南西部アリゾナ州ツーソンの地方裁判所。証言台にラフな格好の男性6人と女性1人が、弁護士に付き添われて横一列に並んでいた。数日前に不法入国容疑で逮捕されたメキシコなどからの移民だった。

 

「通関施設を通らずに入国しましたか」。裁判長が英語で、日時と場所だけを替えた通りいっぺんの質問をすると、移民たちはスペイン語で一言「シー(はい)」と答える。審理は1人わずか1分40秒。全員に有罪判決が言い渡され、すぐ次の7人が入ってきた。

 

「オペレーション・ストリームライン」(流れ作業)の名の通り、ベルトコンベヤー式に進む裁判に私は戸惑った。移民に犯歴をつけて再犯時の刑を重くし、再び越境するのを思いとどまらせる狙いで2005年に始まった。人権を軽視した「移民処理工場」との批判が絶えない。

 

だが、彼らは命があるだけまだ幸運かもしれない。私はツーソンにある移民の支援団体の事務所で、「デスマップ」(死の地図)と呼ばれる地図を見たときの悪寒を思い出した。国境周辺の広大な砂漠が無数の点で赤く染まっていた。一つ一つが遺体の発見場所だ。

 

「移民はどんどん砂漠の奥地に向かっています」。地図をつくっている団体の代表ダイナ・ベア(66)は、硬い表情を見せた。

 

米側で国境管理強化を求める声が強まり、1990年代に西海岸の都市部に壁ができると、2000年代には東の砂漠に回り道する移民が増加。

 

人里離れて警備が手薄な砂漠にあえて踏み込み、途中で力尽きたとみられる移民の遺体が年に百数十体も見つかるようになり、地元に動揺が広がった。

 

自動小銃で武装した自警団ができる一方、ベアたち支援団体が砂漠に水タンクを置く活動を始めた。

 

私は自警団や支援団体に同行して3日間、国境近くの砂漠を回った。雨期で緑は豊かだったが、気温は40度を超え、足元はトゲのあるサボテンだらけで、毒蛇もいる。「3週間もあれば白骨化し、身元も死因も分からなくなってしまう」。検視官の話にぞっとした。

 

国境は高さ5メートルほどの鉄柵で仕切られ、センサーを備えた監視塔が周囲を見下ろしている。この「壁」を越えたメキシコ・ノガレスは、米国を目指す移民の拠点だ。

 

夕方に支援施設を訪ねると、礼拝堂の床の上で数人が力尽きたように寝入っていた。マイクロバスが横付けされると、この日強制送還されたばかりの移民が続々と入ってきた。

  

「水が尽きてから2日間歩き続けた。たくさんの遺体を見た」(農場作業員)

「マフィアの許可なく壁を越えると殺される。金が払えないなら麻薬を背負えと言われた」(車塗装工)

移民たちは、追い詰められた様子で苦境を訴えた。

 

10年代に入ると、砂漠に加え、国境の東半分に沿って流れるリオグランデ川での遺体発見が相次ぐようになる。治安が悪化した中米から逃れ、川を渡ろうとする移民が急増したためだ。

 

トランプ政権が真っ先に目をつけたのも、この川だった。壁建設計画を示し、地元で激しい反対運動が起きていた。

四半世紀の間に雇用確保やテロ防止、麻薬対策など様々な理由で、壁は延び続けた。ひとたびできると、壁を隔てて新しい二つの世界が生まれていく。

 

その現実を取材の終盤に、西海岸で米国と国境を接するメキシコ北部ティフアナで出会った家族が教えてくれた。鉄柵を握りしめた看護師ベロニカ・ルビオ(41)の視線の先、壁の向こうに、生後3カ月のめいソフィアの姿があった。目を細めても、抱きしめることはできない。壁がつくった冷徹な現実だった。(後略)【5月3日 GLOBE+】

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【それでも「壁」を超える人々】

「壁」を築いて排除しようとしても、命がけで壁を越える彼らを思いとどまらせることはできません。

 

****「必死に壁をジャンプした」****

彼らの旅の終着点は、米国との国境を高さ5メートルほどの壁で阻まれたメキシコ国境の町ティフアナ。難民申請の窓口に行くと面接までに数週間待たされるため、壁を乗り越えて米国境警備隊に出頭する移民が多いという。

 

彼らはその後、施設に収容されたり、監視用のGPS機器をつけられたりしながら、米国内で審査の結果を待つことになる。(中略)

 

移民支援団体「ボーダーエンジェルズ」のウゴ・カストロ(47)は、壁を越える彼らの姿を思い起こした。「必死だった。地元住民にも迷惑がられ、もう待てない、と思ってジャンプしていったよ」

 

■得をしたのは誰だ

エクソダスが押し寄せたのは、米中間選挙の直前だった。(中略)トランプには最高の贈り物で、完璧なタイミングだった」という専門家もいた。得をしたのは、トランプだった。

 

そして、再選に向けて動き出したトランプは「壁をつくれ」に続く新しいキャッチフレーズをつくった。「壁を完成させろ」。国家非常事態を宣言し、中米3カ国への援助停止を表明した。

 

国境を閉鎖すると脅されたメキシコは4月下旬、数百人の移民の一斉逮捕に踏み切った。逃れた移民たちは貨物列車の屋根に飛び乗って、北を目指した。

 

■なぜ壁を越えるのか

ダリエン湾を渡るボートが出るトゥルボから米国境に面したティフアナまで、飛行時間でわずか10時間ほど。移民たちが命がけでたどる約7000キロの道のりを眼下に見ながら、日本のパスポートを持っているというだけで、自由に、そして安全を考えた上で目的地に行ける「特権」が不条理に思えた。

 

貧困、治安、政情不安など理由は様々だが、移民たちに共通しているのは、母国で生きることへの絶望だ。

 

失意の弱者たちは今、集団になることで、かつてない力を手に入れた。それが、グローバル化の恩恵を受けた国で格差にあえぐ弱者をいらだたせる。その連鎖が「自国第一主義」を加速させていく。

 

しかし、「壁」を築いて排除しようとしても、命がけで壁を越える彼らを思いとどまらせることはできない。その過程で多くの命が失われ、分断が深まっていく。

 

回り道のように見えても、人々が母国で希望を持てるようにするために、手を携えるしかない。移民集団の出現は、特権を享受している私たちにその責任を問いかけている。【5月6日 GLOBE+】

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欧州  今年も移民・難民問題への対応に苦慮することが予想される 

2019-01-02 22:52:55 | 難民・移民
【移民・難民はイタリアからスペインへ そのスペインでも受け入れに批判的勢力が台頭】
欧州への移民・難民の数字については、以下のようにも。(出典はアラビア語メディアですが、元データは国連難民高等弁務官事務所の資料のようです)

****海を越えた欧州への難民統計のグラフ****

【https://www.alquds.co.uk/الهجرة-عبر-البحر-الأبيض-المتوسط/】
現在でも地中海を越えて欧州へたどり着こうとする難民(非合法移民を含む)は後を絶たないようですが、国連難民高等弁務官事務所の資料により難民マップです。

右側の上の赤い文字は「陸路又は海路欧州にたどり着いた難民」 2018年は119,336とあります。

赤丸は主要到着場所で、右からギリシャ31,867名、イタリア23,192名、スペイン62,479名です(イタリアが極めて少ないのは、新政府が受け入れを拒否し、多くの難民がスペイン等に向かっているからです)

左下の棒グラフは、毎年の死者及び行方不明者の数です。
その右の折れ線グラフ(左端が2018年と、通常とは逆の表示なので注意)は、毎年海路欧州に到着した難民数の変化です(後略)【12月30日 「中東の窓」】
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イタリアの「同盟・五つ星」連立政権が受け入れに消極的なため、難民船はスペインに向かうことが増え、結果、上記のようにスペインが最大の受け入れ国になっています。

****移民311人乗せた船がスペイン入港、数か国に拒まれクリスマスも洋上で****
リビア沖で救出されたアフリカ・中東出身の移民311人を乗せた救助船が28日、スペインに入港した。移民らは欧州の複数国に入港を拒否され、クリスマスも洋上で過ごしていた。
 
スペインのNGO「プロアクティバ・オープン・アームズ」の救助船「オープン・アームズ」が同国南部の町アルヘシラス近郊の港に入港すると、乗っていた移民らは拍手喝采した。
 
移民らはソマリア、シリア、コートジボワールなど19の国々の出身者で、3分の1以上に当たる139人が未成年。スペインの赤十字社の担当者によると、健康状態は概ね良好だという。
 
移民らは21日、3隻の船に乗っていたところを救助されたが、イタリアとマルタから入港を拒否された。スペイン政府によると、リビア、フランス、チュニジアもプロアクティブ・オープン・アームズからの入港許可要請に応じなかった。
 
スペインは今年8月に慈善団体の救助船の入港と乗船していた移民の入国を認めていたが、受け入れはそれ以来となる。
 
国際移住機関によると、今年に入ってイタリアもしくはマルタに向かっている途中で死亡した移民は1300人以上に上る。欧州を目指す移民にとって地中海の航海は、死の危険と隣り合わせだ。
 
スペインは今年、ギリシャとイタリアに代わり、欧州に入る移民の主要な到着先となった。IOMによれば、今年に入って海路でスペインに到達した移民は5万6000人を超え、その一方で、769人以上が到着前に死亡している。 【12月29日 AFP】AFPBB News
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“乗っていた移民らは拍手喝采した”とのことですが、受け入れ側は人道と政治的影響の間での苦渋の選択でもあります。スペインでも受け入れに反対する新興右翼勢力が拡大しています。

****「反移民」右翼、欧州を席巻 寛容な姿勢のスペインでも****
アフリカから地中海を渡る移民・難民が押し寄せるスペイン南部アンダルシアの州議選(定数109)で2日、「不法移民の取り締まり強化」を掲げる新興右翼政党ボックス(VOX)が同国の州議会で初の議席となる12議席を獲得した。

受け入れに前向きな与党中道左派の社会労働党は大きく後退した。欧州で移民・難民問題をテコに右翼政党が躍進する構図が、いっそう鮮明になっている。

「アンダルシア州の人々は歴史をつくった!」
2日夜、州都セビリア。開票結果が判明して同州議会の12議席獲得が決まると、VOXのサンティアゴ・アバスカル党首(42)は支持者と喜びあった。
 
VOXは2015年の前回同州議選の得票率はわずか0・5%。今回も世論調査に基づく事前予想では5議席程度だったが、その倍以上となる大躍進だ。
 
一方、与党・社会労働党は47議席から33議席に、2大政党の一翼を担う野党・国民党も33議席から26議席に後退し、既成政党の退潮を印象づけた。
 
VOXは13年に設立。「無秩序な不法移民流入反対」を掲げ、欧州議会選、総選挙、州議選を通じて今回初の議席を獲得した。欧州メディアには同党を「極右」と呼ぶところもある。
 
VOXの追い風になったのは移民・難民問題だ。スペインでは今年、地中海を越えて移民・難民5万2千人が上陸。前年同期の3倍以上の増加だ。

背景には今年、イタリアで「反移民」を掲げる政党「同盟」が連立政権に参加した事情がある。同盟党首のサルビーニ副首相は地中海を渡る移民・難民の上陸を繰り返し拒否。移民・難民は行き先をスペインに変えた。
 
モロッコと目と鼻の先のアンダルシア州には、毎日のように移民・難民が小型船で地中海を渡ってくる。社会労働党のサンチェス首相が率いる現政権は前向きに受け入れてきた。
 
これに対し、同州南端アルヘシラス市のホセイグナシオ・ランダルセ市長は朝日新聞の取材に「世論は圧力鍋のようなもの。いずれたまった不満は爆発する。無計画に受け入れを続ければ、移民を拒む右翼が勢いづくだろう」と語った。

「反移民」旗印に連携
フランスの右翼政党「国民連合」(前国民戦線)のルペン党首は2日、VOXの躍進を受けて、ツイッターに「おめでとう、我々の友よ。素晴らしいスコアだ」と投稿した。欧州ではこの1年、「反移民・難民」を掲げる政権の誕生や政党の躍進が目立った。
 
こうした右翼政党は来年5月の欧州議会選に狙いを定め、連携して勢力拡大を目指している。11月16日には欧州各国の右翼政党がブルガリアの首都ソフィアに集まり、欧州議会選に向けた戦略を練った。参加者によると、「反移民・難民」を共通政策に掲げることで合意したという。
 
ルペン氏は会合後、記者会見し、「何百万人もの移民・難民が流入するのを望んでいるのが欧州連合(EU)だ。EUは国境管理ができていない。それが嫌だから英国もEUからの離脱を決めたのだ」と訴えた。(後略)【12月4日 NHK】
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【実効があがらないEUの難民対策 5月の欧州議会選挙では極右勢力躍進の予想】
「何百万人もの移民・難民が流入するのを望んでいるのが欧州連合(EU)だ」(ルペン氏)というのは、明らかなウソ・デマゴーグです。
望んでいる訳ではありませんが、一部差別主義者のように、移民・難民は蹴散らし、海に沈んでもかまわない・・・とも考えていませんので、その対応に苦慮しているだけです。

極右政党台頭・世論の右傾化を受けて、EUも受け入れ厳格化の方向にありますが、実効は上がっていません。

****欧州は受け入れ厳格化****
アフリカの人々が欧州で受け入れられる可能性は年々、狭まっている。

ドイツでは移民・難民の排斥を訴える右翼政党が台頭。メルケル政権は入国審査を厳格化し、強制送還を加速させた。

イタリアでも、右派「同盟」党首のサルビーニ副首相が地中海を渡る人たちを支援するNGOを「人身売買ビジネスの共犯者」と非難し、受け入れを厳格化する法律を成立させた。
 
欧州連合は9月の非公式の首脳会議で、アフリカへの投資を促進して経済状況を良くし、欧州への移民・難民の流入を減らす方針を確認。イタリアが沿岸警備の船を提供するリビアや、チュニジアなどとも連携を深めることで合意した。

また、地中海を渡る前に不法移民と難民を見極める事実上の審査施設をアフリカ側に作るとしたが、施設設置に応じた国はない。【2018年10月28日 朝日】
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今年5月には欧州議会選挙が行われますが、移民・難民に対する厳しい世論を受けて、極右会派が増大することが予想されています。

****5月の欧州議会選挙、極右会派が議席数増加へ****
ロイターが欧州連合(EU)加盟28カ国における最新の国民投票結果や信頼できる世論調査を分析したところによると、2019年5月の欧州議会における極右会派の議席数が増加する見通しだ。

分析によれば、反EUを掲げる英独立党(UKIP)やイタリアの反体制派「五つ星運動」などから成る極右政党の会派「自由と直接民主主義の欧州(EFDD)」は、体制が変わらなければ、45議席から58議席に増加する見通し。
またマリーヌ・ルペン氏が率いるフランスの極右政党「国民戦線」やウィルダース氏が党首を務めるオランダの極右野党「自由党」などが構成している「ヨーロッパ国民戦線(ENF)」は、イタリアにおける極右「同盟」の人気上昇などにより、議席数を35議席から62議席に伸ばすことが想定される。

両極右会派の議席数合計は78議席から119議席に増加。欧州議会の議員定数が751議席から705議席に削減されるため、両極右会派の議席割合は10.4%から16.9%となる。(後略)【2018年9月13日 ロイター】
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こうした極右勢力はEU懐疑派でもあり、EUの存在そのものへの疑問・批判が表面化することになり、難民もんだでも統一的対応を更に困難にすると思われます。

【長期化する難民の問題】
ハンガリーなど欧州各国が受け入れを拒否、あるいは消極化する一方で、欧州での豊かな生活を求めて、密航業者に大金を支払い、命がけで海を渡る人々は途絶えていません。

結果、長期間「滞留」する移民・難民が増加しています。

*****欧州めざす難民・移民、主要ルートが袋小路に 受け入れ遅滞、ギリシャで足止め****
欧州を目指す難民・移民の主要経路だった東地中海のルートが滞っている。欧州側での受け入れが進まず、ギリシャで足止めが長期化。トルコではシリア難民の定住が進んでいる。
 
エーゲ海に面するトルコ西部イズミル県のバーデムリ。(中略)ギリシャのレスボス島がわずか15キロ先にあるため、難民らが渡るルートになっている。

3年前には数日おきに100人を超える姿が見られたが、今は1カ月に1度くらい。1グループは約30人で、複数の子どもを連れた人が多い。こうした「渡し場」がバーデムリに10カ所ほどある。

国際移住機関によると、2014~16年に地中海経由で欧州に渡った難民や移民の3分の2(約104万8千人)がトルコからギリシャを経由した。その半数超がシリア人。遠くアフガニスタンから逃れてくる人もいる。
 
16年3月、欧州連合(EU)とトルコは、ギリシャへの「密航者」をトルコに送還する代わり、同数のシリア難民を欧州がトルコから直接受け入れる、とする流入抑制策で合意した。トルコは沿岸の警戒を強め、このルートを使う人は今年1~9月で約2万3千人にまで減った。
 
イズミルでゴムボートに乗る寸前、荒れた海を見て断念したシリア人男性(33)は「仮にギリシャに到達してもトルコに送還される。密航に命をかける意味はなくなった」と話した。

 ■地元知事「これ以上は限界」
レスボス島に着いた難民が最初に登録するモリアの難民キャンプは、3千人の収容人員を大幅に超える7400人が暮らし、周囲の山肌までテントが広がっている。
 
北エーゲ地域の衛生局が9月に出した報告書は、キャンプ内で食事をする場所やトイレが不衛生で、周辺の環境を悪化させているとして、ギリシャ政府に改善を求めた。同地域のクリスティアーナ・カロギル知事は「これ以上の受け入れは経済的にも社会的にも限界だ」と訴える。
 
トルコが取り締まりを強めたとはいえ密航は後を絶たない。そのうえEU側の受け入れの動きが鈍く、難民申請手続きの遅れから島に滞留する人口は増え続けている。
 
12人でテント暮らしをするパレスチナ・ガザ出身のカメル・ユセフさん(25)は密航業者に1500ドルを払い、7月にたどり着いた。「難民申請手続きの指定日は1年後。待つしかない。ここは戦争はないが食べ物もない。朝食に3時間並んでも、もらえないこともある」とこぼす。
 
冬は零下の寒さになり、積雪もある。キャンプで難民を支援する国際人権団体アムネスティのエイリニ・ガイタヌさんは「土の上のシートに寝ている難民にとっては生命の危機が来る」と心配している。

 ■シリア難民、増えるトルコ定住
トルコではシリア難民が増え続けている。EUとの合意時点で約270万人。2年経った今は359万人まで増えた。ほとんどが市街地で暮らす。
 
トルコ政府は16年、アラビア語によるシリア人生徒向けの教育センターを順次閉鎖し、トルコの教育制度で学ばせる方針を決めた。長期滞在するシリア人の子どもを社会で円滑に受け入れる狙いがあるとされる。
 
シリア北部・アレッポから逃れてきたオメイメ・ガザールさん(13)はイスタンブール近郊で地元中学校に通う。「戦争が終わればシリアに戻りたい」と話すが、シリア人同士の会話もトルコ語になりがちだ。

衣料品の仲買業を営む父モハメドさん(46)は「シリアの治安が安定し、インフラが復旧するのは相当先のことだ。少なくとも今後10年はトルコで暮らす」。
 
アサド政権が優位を固めた内戦状況も帰国を鈍らせている。15年にアレッポから逃れ、イスタンブールで不動産会社に勤めるアハマドさん(26)は「戻れば罰せられる。罰を逃れても徴兵がある。シリアは愛しているが、アサドのシリアで死ぬのはごめんだ」。
 
トルコ政府はシリアの混乱が始まった直後から国境を開き、難民を受け入れてきた。アサド政権が倒れて新政権ができれば難民は帰るとの見込みがあった。
 
だが過激派組織「イスラム国」(IS)の台頭で国境地帯の治安が悪化。難民も急増したため、16年に国境の厳重管理に転換。それでも後を絶たない密入国や1日約400人生まれる新生児によって、シリア人の人口は増え続けている。
 
トルコ・ドイツ大学(イスタンブール)のムラット・エルドアン教授は、トルコ社会での反発は比較的少ないとしながらも「トルコ人はシリア難民と将来をともにしたいとは思っていない」と指摘する。6月の大統領選挙では与野党いずれも、シリア難民の帰還を促すと約束した。
 
エルドアン教授は「難民の多くを帰せないことはトルコ政府もわかっている。しかし、公式にトルコ社会に統合する政策を採れば、難民の定住に弾みがついてしまうジレンマがある」と話す。【2018年11月27日 朝日】
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こうした長期化する難民の存在は世界各地で見られる現象で、大きな問題を生み出しつつあります。

****長期化する難民1340万人、見えない終わり****
あまり報道されてこなかった、もう一つの難民問題 

アフリカや中東から命をかけて地中海を渡り、ヨーロッパを目指す移民のニュースは近年、大きく報道されている。一方で、ここ数十年の間、これとは異なる、世界的な難民危機が深刻さを増しており、これについてはメディアもほとんど取り上げていない。

現在、1300万人以上の人々が、国連が定義する「長期化する難民状態」に陥っている。「長期化する難民状態」とは、同一国籍の2万5000人以上が、受け入れ国で5年以上暮らしている状態を指す。

そうした難民は中東、アフリカ、アジア、南米に存在し、受け入れ国では、難民の滞在が長期的な危機へと発展している。
 
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、住む場所を追われた人は世界中でおよそ6850万人にのぼり、そのうち2540万人が難民として自国を離れている。彼らのうちほぼ10人に9人は、教育、医療、雇用がすでにひっ迫した発展途上国で暮らしている。

たとえば、200万人を超えるアフガニスタン難民は現在、イランとパキスタンに分かれて滞在しているが、この数字は1979年、ソビエト連邦によるアフガン侵攻をきっかけに発生した難民が今に至ったものだ。
 
エジプトは、世界で最も長期化した難民状態を抱えている国であり、イスラエル・パレスチナ紛争の難民を数十年前から受け入れている。

エジプト、そして世界中にいるそうした難民たちにとって、旅の終わりはまだ見えていない。【12月26日 NATIONAL GEOGRAPHIC】
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問題は多々あって、ここでは取り上げきれませんが、ひとつの見方からすれば、大きく騒がれた欧州への移民・難民は冒頭グラフにもあるように急速に減少しつつあるのも事実です。

極右勢力のように、最初から移民・難民を敵視するような姿勢ではなく、冷静に受け入れ可能な方策を探ろうとすれば、コントロール可能な範囲にも収まりつつあるとも言えます。そうした現実的対応を困難にするのが極右・排外勢力によるネガティブな扇動です。

一定の外からの労働人口流入を必要としているのは、欧州も日本も同じでしょう。
コメント

世界第4位の外国人労働者受け入れ国・日本 “事実上の移民受け入れ”に向けた政策転換 準備は?

2018-10-21 22:01:58 | 難民・移民

【10月14日 朝日】

「『ガイジンは苦手』と言っている場合じゃない。多文化共生は私たちの必修科目です」

【「移民政策」とは違うと強調する日本政府 しかし、やってくるのは「人間」】
「移民政策」はとらないとしている日本でも、「人手不足」を背景に、外国人労働者の受け入れを単純労働まで広げようという新しい在留資格制度がスタートすることは報道のとおりです。

****新在留資格、生煮え 外国人受け入れ拡大「来春」、単純労働も****
外国人労働者の受け入れを単純労働まで広げようという新しい在留資格の骨子が、12日公表された。

人手不足に悩む業界などに突き動かされ、今秋の臨時国会に出入国管理法などの改正案を提出し、来年4月のスピード導入をめざす。

「永住」につながる仕組みも盛り込まれたが、政府は「移民政策」とは違うと強調する。その制度設計には課題も多い。

 ■長期滞在、技能熟練なら可能に 移民?永住?政府は否定
(中略)日本はこれまで、医師や弁護士など「高度な専門人材」は海外から積極的に受け入れつつ、単純労働については就労目的の在留資格がなく、大きな転換となる。
 
政権は一方で、「移民政策をとる考えはない」(安倍晋三首相)と何度も強調してきた。山下貴司法相も12日の会見で「深刻な人手不足の状況に対応するため、真に必要な分野に限り、一定の専門性技能をもつ外国人を受け入れる。期限を設けることなく外国人を受け入れるものではない」と述べ、「移民政策ではない」とした。
 
新たな在留資格「特定技能」は技能の熟練度に応じて「1号」「2号」と分かれている。1号は家族帯同が認められず、在留期限は最長で5年間だが、より熟練した2号は家族帯同が可能になり、「高度な専門人材」と同様、定期的な審査をクリアすれば在留資格も更新が可能になる。さらに、日本に10年間滞在すれば、永住許可の要件の一つも満たす。
 
(中略)ある官邸幹部は「移民政策でないことの肝は、期限の設定や家族帯同を認めない点などに表れている」と話した。2号への移行は高いハードルになる可能性がある。

 ■人手不足条件、介護・外食など候補 対象業種、なし崩し拡大も
(中略)新しい在留資格が認められるのは「不足する人材の確保を図るべき産業上の分野」とした。候補に挙がるのは介護、外食、漁業、建設業や農業などの14分野。法務省は年内にも、省令で対象分野を決める見通しだ。
 
法務省幹部は、分野の絞り方について「公的な指標などを用いて人手不足の程度を調べる」と話す。業種別の有効求人倍率などが参考にされそうだ。
 
外国人労働者に資格を与える業務の対象を「相当程度の知識または経験を要する」ものとし、外国人の日本語能力も「生活に支障がないか」を確かめるとした。

ただ、技能の具体的な水準や測る手法などは、定まっていない。試験は各分野を所管する省庁が定めることになっているが、実際には、各業界団体などで運営する既存の検定試験などが下地になるとみられる。(中略)

だが、こうしたルールも業界の要望に押され、なし崩し的に広がる可能性がある。国際貢献を旗印に1993年に始まった「外国人技能実習制度」では、受け入れる業界団体の要望を受けて、職種や作業を拡大してきた。制度開始時は17だった職種は77まで広がった。
 
対象分野に入らないとみられているコンビニエンスストアでは、業界団体の日本フランチャイズチェーン協会が対象業種にコンビニを盛り込むよう政府に要望することも検討している。【10月13日 朝日】
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おそらく日本の「人手不足」は景気による強弱はあるにせよ、少子高齢化を背景に慢性的・長期的なもので、かつ、今後次第に深刻化するものでしょう。その対応は不可避であり、外国人労働者の受け入れ拡大は今後も続くでしょう。

その際、「労働力」としてしか見ない現行制度では、「人間」としての外国人労働者の立場を困難なものにし、いろんな社会的軋轢・トラブルのもとにもなります。それは外国人労働者への反発を強め、社会全体の変質をも惹起します。

****外国人に選ばれる国」めざすが 家族帯同、最長10年できず****
外国人労働者については、人手不足に悩む先進各国で奪い合いが激しくなりつつあり、政府は新しい在留資格を「外国人に選ばれる国」(菅官房長官)をめざしたものだとする。
 
外国人技能実習制度では、最低賃金で働くケースが多く、実習先の変更もできない。新資格では、日本人と同等以上の報酬額の確保を義務づけたり、同じ分野で転職可能にしたりする配慮が盛り込まれた。
 
一方、特定技能1号の外国人の生活や日本語習得をサポートする登録支援機関には、国は直接関与せず、技能実習生の監理団体と同様に民間団体に委ねられる。
 
技能実習生に認めていない家族の帯同は1号でも認めず、2号なら認めることにしている。1号は3年間の経験のある技能実習生なら、無試験で取得できることにする。実習生から1号に移るケースも多くなりそうで、最長で実習生で5年、1号で5年の計10年間家族と離ればなれになる。
 
家族を呼び寄せることをめざし、2号の取得に挑む外国人も出そうだが、詳しい条件や試験といった詳細の設計はこれからだ。さらに2号の資格を得て家族と暮らしても、景気悪化などで対象分野の「人手不足」がなくなれば職を失い、帰国させられる可能性もある。
 
外国人労働者の実態に詳しい川上資人弁護士は、家族の帯同を認めないことは「人間の自然なあり方に反しており、国際的な基準に照らしてもあり得ない」と批判。「2号の取得者がほとんど出ない、絵に描いた餅のような資格にならぬよう今後の議論を注視することが大事だ」と指摘する。【同上】
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事態が深刻化してから「労働力を呼んだら、来たのは人間であった」と気づいても、外国人労働者、日本社会双方にとって不幸なことにもなります。

****知らずに増えた移民外国人の不都合な真実 もはや彼ら抜きに経済は回らないが課題も****
いま日本のカタチが変わろうとしている。

決して大げさな話ではない。おそらく後世の人にとって、2018〜19年は、国のあり方がはっきり変わった歴史的なターニングポイントとして知られているはずだ。これまで「移民政策は断じてとりません」と繰り返してきた政府が、“事実上の移民受け入れ”に向けて大きく舵を切ったのである。(中略)

こうした矢継ぎ早の政策発表のウラにあるのは、深刻な労働力不足である。
2018年現在、最新の有効求人倍率は1.63倍。政府はこの数値を好景気の指標として使うが、要するに現場で人手が足りていない何よりの証拠だ。

政策と実態のねじれ
いま街で見掛ける外国人労働者のほとんどは留学生や技能実習生だが、彼らは本来的な意味での労働者ではない。(中略)

日本で暮らす外国人の数は2017年末の時点で250万人を超えた。これは名古屋市の人口(約230万人)よりも多い。そのうち労働者は約128万人で、さいたま市の人口(約126万人)に匹敵する。

ともに法務省が統計を取り始めてから過去最高の数値である。都内に限っていえば、いまでは20代の若者の10人に1人が外国人という割合だ。

コンビニだけでなく、ドラッグストアやファミリーレストラン、ハンバーガーショップ、牛丼チェーンなどなど、さまざまな場所が働く外国人の姿であふれている。

もちろん世界的に見れば、日常的に外国人が多いという状況は珍しいことではない。だが、政府は「断じて移民政策はとらない」と明言してきたのに外国人労働者の数が増えている。これはいったいどういうことだろうか。

政府の方針をわかりやすくいえば、「移民は断じて認めないが、外国人が日本に住んで働くのはOK、むしろ積極的に人手不足を補っていきたい」ということだ。(中略)

とりあえず10月下旬からの臨時国会には注目だが、消費税率が3%→5%→8%、そして10%と段階的に高まってきたように、外国人労働者の受け入れ枠も(なんとなく)知らないうちに増えていくのかもしれない。

留学生が労働力不足を補う現状
本を書くにあたって、多くの“コンビニ外国人”に取材をした。そのほとんどが日本語学校か専門学校に通う留学生だった。

彼らは、「原則的に週28時間まで」のアルバイトが法的に許されている。「原則的に」というのは、夏休み期間などは週40時間のアルバイトが認められるためだ。学生がより長く働けるように長期休暇が多いことをウリにしている日本語学校もある。

週に28時間では時給1000円で計算しても月収は11万円ほどにしかならないが、世界的に見るとこの制度はかなり緩い。たとえばアメリカやカナダなどは、学生ビザでは原則的にアルバイト不可、見つかれば逮捕される。

つまり、コンビニなどでアルバイトをしている留学生は、学生であると同時に、合法的な労働者でもあるのだ。

彼らも仕事を求めているし、現場からは労働力として期待されている。需要と供給を一致させているのは、日本の人口減に伴う深刻な人手不足だろう。実際、留学生の9割以上が何らかのアルバイトに携わっている。

いま日本は「留学ビザで(割と簡単に)入国して働ける国」として世界に認識されている。しかし、ここに大きな問題がある。

日本語学校などに籍をおく留学生の多くは、入学金や授業料、現地のブローカー(エージェント)への手数料などで100万〜150万円という金額を前払いする必要があり、その多くが借金を背負って来日しているのだ。

借金を返済するためには働く必要がある。だが、原則28時間という労働時間を守っていたのでは、生活費を賄うのがやっと。中には強制送還覚悟で法律を破って28時間以上働く留学生もいるし、借金を背負ったまま帰国する留学生も少なくない。

日本語学校を卒業して大学まで通い、日本で就職したいと願う留学生たちも、3割程度しかその夢をかなえることができない。

世界第4位の移民受け入れ国
ユネスコの「無形文化遺産」に登録された和食も、いまや外国人の労働力なしには成り立たない。(中略)
現実として、外国人労働者抜きに日本経済はもう回らない。わたしたちの生活は彼らの労働力抜きには成り立たない。

OECD(経済協力開発機構)の発表では、日本はすでに世界第4位の外国人労働者受け入れ国である(本の執筆時はまだ5位だった)。

国の政策とは別に、外国人との共生に取り組む自治体も増えはじめている。横浜市では独自にベトナムの医療系大学などと提携して、留学生を迎え入れることを決めた。近い将来、大規模な不足が予想されている介護職に就いてもらうための人材確保だ。留学に関する費用や住居費なども市が一部負担するという。

2010年から外国人を積極的に呼び込んでいる広島県安芸高田市の浜田一義市長はこう言っていた。
「今後、ウチのような過疎の自治体が生き残っていく道は世界中に外国人のファンを作ることだ。『ガイジンは苦手』と言っている場合じゃない。多文化共生は私たちの必修科目です」

個人としては、外国人の受け入れには賛成の立場だが、これまで国政レベルでも十分な議論がなされたとは思えず、彼らの生活保障に関する法整備など、受け入れの準備はほとんどされてない。このままなし崩し的に受け入れを進めていいものだろうか。

移民の問題を語るときによく引用されるスイスの小説家の言葉を最後に紹介する。
〈労働力を呼んだら、来たのは人間であった――〉【10月21日 芹澤 健介氏 東洋経済ONLINE】
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急増するベトナム人留学生・技能実習生
最近特に急増しているのがベトナムからの留学生・技能実習生という名の外交人労働者です。

“法務省によると、日本に暮らすベトナム人は07年は3万6131人だったが、17年は26万2405人と約7倍に急増。良好な日越関係や日本の労働力不足を背景に増え続け、フィリピンを抜き、中国、韓国に次ぐ多さとなった。技能実習生は15年末は5万7581人だったが、16年末に最も多かった中国を抜き、17年末は12万3563人。2年間で2倍となった。”【10月14日 朝日】

****留学生が急増 ベトナムの日本大使館が悪質あっせん業者排除****
ベトナムでは日本への留学生の急増に伴って、悪質なビザ申請を行うあっせん業者が増えていることから、現地の日本大使館は特に悪質な業者の申請を受け付けないことを決めました。

日本国内の日本語学校などで学ぶベトナム人留学生は、ことし6月末現在で8万人余りと、5年前の4倍近くに急増しています。ただ、現地のあっせん業者の中には「日本で学びながらアルバイトをすれば、数十万円稼げる」などと誤った説明をして、留学希望者を集めている業者が少なくないのが実態です。

ベトナムの首都ハノイにある日本大使館は、こうした悪質な業者を排除しようと、去年からビザの申請者本人に対する面接を実施しています。

この中には、留学に必要な日本語能力の証明書を提出しているにもかかわらず、全く日本語が話せなかったり、渡航の目的について「働きに行きます」と答えたりする申請者が全体の1割から2割に上っているということです。

このため大使館では、こうした事例が去年から何度も続いている12の業者を特に悪質な業者として大使館のホームページ上に公表し、来月から半年間、ビザの申請を受け付けないことを決めました。

ベトナム人留学生の中には、日本で働くことを見込んで多額の借金をして来日する若者も多く、窃盗などの犯罪に手を染めるケースもあることから、日本大使館ではベトナム当局とも連携しながら悪質な業者の排除に努めたいとしています。【9月30日 NHK】
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こうしたベトナムからの留学生急増の背景には、日本経済の事情があります。また、現地ベトナムでは留学生送り出しが「産業」ともなっています。

****ベトナム人が夢見る「1カ月で年収が稼げる国」 偽装留学生の闇****
(中略)その背景には、日本側の事情がある。政府は2008年から「留学生30万人計画」を進めていた。

しかし11年に福島第一原発事故の影響もあって、留学生全体の7割近くを占めていた中国人が減少に転じた。中国経済が発展し、日本へ出稼ぎに行くメリットが薄らいだことも減少に拍車をかけた。

そこで政府は留学生を確保するため、ビザの発給基準を大幅に緩めた。結果、ベトナム人を中心に出稼ぎを目的とする“偽装留学生”の流入が起き始める。

日本に留学すれば、月20万〜30万稼げる
ベトナム経済も成長しているとはいえ、恩恵は一般庶民にまで届いていない。共産主義国で、かつ賄賂大国という事情もあって、政府の有力者にコネのない若者には生き難い国でもある。

海外への出稼ぎ希望者は多いが、行き先は台湾や韓国、もしくは実習生を受け入れる日本などに限られる。そんななか、日本への「留学」の道が開かれたのだ。
 
ただし、よほどの富裕層でなければ、日本の留学ビザを取得するための経済力はない。ベトナムの庶民が日本へ留学するためには、斡旋業者に頼り、ビザ取得に必要な証明書類をでっち上げてもらうしかないのだ。
 
「日本に留学すれば、月20万〜30万円は簡単に稼げる」
出稼ぎブームの初期には、そんな甘い言葉で若者を勧誘する斡旋業者も多かった。「20万〜30万円」といえば、ベトナム庶民の年収に匹敵する金額だ。

留学生のアルバイトとして認められる「週28時間以内」という法律を守っていれば稼げないが、事情を知らないベトナム人たちは業者のもとへ殺到した。そして、でっち上げの数字が並ぶ書類を準備してもらい、続々と日本へ出稼ぎに行くことになった。
 
斡旋業者には、日本へ留学生を送り出せば1人当たり数十万円が入る。留学希望者が支払う手数料に加え、受け入れ先となる日本側の日本語学校から1人の留学生につき10万円程度のキックバックがあるからだ。物価水準が日本の10分の1程度のベトナムでは、日本への留学生送り出しは「産業」と呼べるほどだ。
 
斡旋ビジネスには、現地の日本人が関わっているケースも目立つ。受け入れ先の日本語学校とのやり取りなどが生じるからだ。
 
「ハノイで複数の日本語学校を経営し、1億円以上も稼いだと豪語している日本人もいる」(現地在住の日本人)
 行政機関や銀行に賄賂を払い、ビザ取得に必要な書類をでっち上げ、日本へと留学生を送り込んでのことだ。(後略)【10月11日 出井康博氏 WEDGE Infinity】
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こうした事情を背景に専門学校で学ぶ外国人学生も増えていますが、定員を上回る学生を受け入れてしまい、発覚して退学・帰国を余儀なくされるといったトラブルも。

また、日本における労働・生活のなかで死にいたる外国人留学生や技能実習生も増えています。

****いびつな政策の犠牲者」ベトナム人実習生らの相次ぐ死****
日本で暮らす外国人留学生や技能実習生が増える中、仕事や生活で追い詰められ、命を落とす若者もいる。ベトナム人の尼僧がいる東京都内の寺には、そんなベトナムの若者の位牌が増え続けている。外国人が働きやすい環境の整備や暮らしへのサポートが必要だと、専門家は訴える。(後略)【10月14日 朝日】
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繰り返しになりますが、「人間」としての外国人労働者をどのように日本社会に迎え入れるかを議論する必要があります。

制度的準備とともに、日本側の意識の改革、覚悟も必要になります。

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日本、世界第4位の移民大国へ 「新たな在留資格」で拡大する外国人労働者 「共生」に向けた課題も

2018-09-23 22:06:30 | 難民・移民

(ベトナムから来日したばかりの実習生。日本語などの研修会の合間に、友だちと持ち寄った弁当を囲む=大阪市中央区【9月2日 朝日】 日本が国際社会・アジア世界で重きをなそうというのであれば、日本に期待して来日した彼らの笑顔が消えることのないような社会環境を作ることが不可欠な第一歩でしょう)

外国人急増で日本社会の風景を変える大きな政策転換となる可能性も 拙速だとの指摘も
日本で働く外国人労働者や日本を訪れる外国人観光客が急増しているというのは今更の話ですが、私のように鹿児島の田舎町に住んでいると、さほど実感する機会も少ないのが実情です。

せいぜい、鹿児島市に出かけた際に、「ああ、なるほど中国系観光客が多いね・・・」と感じるぐらいです。

ただ、たまに東京などに出かけると、ファストフード店では働いているのも外国人なら客も外国人・・・・といった光景を目にして、「そういうことね・・・」とも思ったりもします。

そういう状況にあっても、日本は“外国人に門を閉ざしている”という従来からのイメージ(それは現在でもある面では事実ですが)がありますので、下記のような“日本は世界第4位の移民大国だ”という記事を見ると、ちょっと驚きます。

****日本で暮らす外国人が増加、移民流入4位に上昇****
2018年9月5日、華字紙・日本新華僑報は、「日本は世界4位の移民国家に上昇した」とする記事を掲載した。以下はその概要。

外国人の優秀な人材パワーの助けを借りて日本の技術面の起業力を上げ、国際競争力を強化しようと、日本政府は近年、外国人留学生枠を拡大し、外国人の在留資格の制限を緩和している。さらに、日本に定住する外国人への優待措置を立法化し、多文化を尊重した活力ある共生社会を目指している。

経済協力開発機構(OECD)の外国人移住者統計によると、2015年の日本への流入者は約39万人で、世界で4番目の移民大国へと上昇している。

日本への移住者は「有効なビザを保有し、90日以上在留予定の外国人」を計上しているという。トップ10は、ドイツ(約201万6000人)、米国(約105万1000人)、英国(約47万9000人)、日本(約39万1000人)、韓国(約37万3000人)、スペイン(約29万1000人)、カナダ(約27万2000人)、フランス(約25万3000人)、イタリア(約25万人)、オーストラリア(約22万4000人)となっている。

日本は10、11年の7位から12〜14年に5位、15年は4位と徐々に上昇している。15年の日本への移住者を国・地域別で見ると、最も多いのが中国で、以下、ベトナム、フィリピン、韓国、米国、タイ、インドネシア、ネパールと続く。(後略)【9月6日 レコードチャイナ】
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上記は2015年の数字ですから、現在ではイギリスを抜いて第3位にも上昇しているかも。(イギリスはEU離脱騒動で、むしろ減少傾向ではないでしょうか)

6月に安倍首相が外国人労働者の受け入れを拡大していく意向を示し、外国人労働者の増加を見据え、法務省も入国在留管理庁の設置に向けて動いている・・・という状況で、この外国人労働者の増加傾向はさらに加速することが予測されています。

****<外国人労働者の新在留資格>****
政権が想定している在留資格は、一定の技術水準と日本語能力を身につけた外国人を対象に、最長で5年の在留を認める内容。

業種を所管する省庁が定めた試験で一定の知識や技術を確かめるほか、必要な日本語能力も調べる。技能実習生の場合は3年の経験があれば試験を免除する。

新たな在留資格では家族は帯同できないが、滞在中により高い専門性が確認されれば、長期滞在や、家族帯同も認められる可能性がある。【8月14日 朝日】
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****働く外国人、拡大へ一気 「移民はだめだが」最長5年の在留資格****
外国人労働者の受け入れ拡大に向け、安倍政権が新たな在留資格の創設へ動き出した。人手不足に悩む業界や中小企業からの要望が、受け入れ拡大に消極的だった政権の背中を押した。

働く外国人が急増し、日本社会の風景を変える大きな政策転換となる可能性がある。期待感が広がる一方、対象拡大は拙速だとの指摘も多い。

 ■菅長官が主導
政権の方針転換を主導したのは、急激に進む人手不足に危機感を抱いた菅義偉官房長官だった。
「介護施設を開設しても介護福祉士不足で使えない。なんとかしてほしい」
 
昨秋、菅氏の元に民間の介護事業者からこんな声が寄せられた。調査を指示すると、介護施設が人材不足で定員の8割程度までしか受け入れられないという結果が出た。厚生労働省の需給推計では、2025年度には、介護人材は約34万人不足すると見込む。
 
少子高齢化も踏まえ、早期に対策を講じた方がいい――。菅氏が安倍晋三首相に掛け合うと、首相は「移民政策はだめだけど」と釘を刺しつつ、「必要なものはやっていこう」と応じた。

 ■政権やむなく
(中略)内閣支持率を底支えする経済を腰折れさせないためには、外国人労働者の受け入れ拡大はやむを得ないとして政権は一気に推し進め、6月の「骨太の方針」には新たな在留資格を設ける構想が入った。
 
政権は来年4月の制度開始を目指し、秋の臨時国会に関連法案を出す方針。新たな在留資格の対象業種は建設業や農業など、単純労働を含む分野にも広がる見通しだ。

厚労省は単純労働への外国人受け入れに消極的だったが、同省幹部は「大きな流れの中で異論が言える状況ではなかった」と振り返る。

 ■すでに不可欠
一方、日本社会は既に、外国人労働者なしでは成り立たなくなっている。厚労省の統計では、17年に日本で働く外国人は過去最高の約127万9千人。5年間で約60万人増え、日本の就業者の約2%にあたる。

もっとも、正式に労働者として受け入れられたのは高度な専門人材とされる約24万人のみ。その他は留学生のアルバイト(約26万人)や「国際貢献」を名目にした技能実習生(約26万人)らが多くを占める。
 
特に技能実習制度は格安な労働力の確保策になっているとの指摘が絶えず、違法な長時間労働などの不正が社会問題化している。16年に成立し、昨秋施行された技能実習適正化法では制度の期間や対象職種を拡大し、受け入れ先への監督を強化させたばかりだ。

 ■課題置き去り
その課題の検証もできないまま、新しい在留資格は「導入ありき」で進む。

政権は外国人人口の増加に伴って在留管理を強化するため、法務省の入国管理局を「庁」に格上げすることや、外国人支援策の強化も検討しているが、来春までの準備期間は半年余りしかない。(中略)

 ■業界も動き急 製造・小売り・外食
(中略)「骨太の方針」は、生産性向上や国内人材の確保の取り組みをしてもなお、外国人材の受け入れが必要と認められる業種が新たな在留資格の対象になるとの「考え方」は示しているが、具体的な対象業種は明記していない。

 ■説明あいまい
「外国人技能実習制度とどう違うのか」「求められる技術レベルや日本語能力の水準は」。説明会では、制度の仕組みの説明を求める質問が出た。

経産省の担当者は「法務省から中身の説明がまだない」「(骨太に)書いてある以上のことは分からない」などとあいまいな答えに終始する一方、「要件さえ満たせば製造業も対象になる」と力説した。前のめりな経産省にせかされるように、人手不足に悩む業界は対象業種に加えてもらおうと慌ただしく動き出している。(中略)
 
 ■拡大ありきで
外国人なしでは営業が難しい小売り・外食業界の関心も高い。コンビニ各社が加盟する日本フランチャイズチェーン協会は、技能実習制度の対象職種にコンビニの運営業務を加えるよう求める申請を検討してきた。

ローソンの竹増貞信社長は「人手不足なので、きちんとしたルールができ、受け入れ側も順守する形で新たな制度を活用できればいい」と新たな在留資格に期待をにじませる。

外食企業でつくる日本フードサービス協会も、新たな在留資格の対象に加えるよう政府に要請していく方針だ。受け入れ拡大ありきの動きが広がっている。【同上】
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コンビニや外食産業が新たな在留資格に期待しているのは上記のとおり。

****コンビニも対象業種に? 外国人受け入れ拡大、新たな在留資格 業界団体、国に要望検討****
(中略)日本のコンビニで働く外国人労働者は、大手3社だけで5万人を超える。大手3社の従業員全体の6%強にあたり、全国のチェーン店の運営に不可欠な存在になっているが、「大半が留学生」(大手コンビニ関係者)で、原則として週28時間までしか働けない。(中略)
 
(日本フランチャイズチェーン協会会長の)中山氏は会見で「外国人留学生が働きやすい環境整備が必要。フランチャイズシステムは研修の場所として優れた経験を積める」とも述べ、留学生がより柔軟にコンビニで働けるよう要望していく考えも示した。
 
政権が想定している新たな在留資格は、一定の技術水準と日本語能力を身につけた外国人を対象に最長で5年の在留を認める内容。人手不足に悩む業界や中小企業からの要望が、外国人労働者の受け入れ拡大に消極的だった政権の背中を押した。

今秋の臨時国会に関連法案が提出され、対象業種は省令で定めることになりそうで、建設業や農業など、単純労働を含む分野にも広がる見通しだ。

 ■「不景気、考えているか」
ただ、格安な労働力の確保策になっているとの批判が絶えない技能実習制度の課題の検証も十分にできないまま、新たな在留資格は「創設ありき」で進んでおり、拙速な外国人の受け入れ拡大を懸念する声も出ている。

BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は「外国人労働者が増えると賃金は上がらないだろう。企業にとっては安い労働力が入るメリットがあるが、景気が悪くなった時のことも考えているのか。人手不足を理由に拙速に物事を決めているのではないか」と指摘する。(後略)【9月20日 朝日】
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「技能」という建前と「単純労働力」という実態の乖離がもたらしている、“奴隷労働”とか“逃亡、その後の違法在留・犯罪”といった技能実習制度の問題はここではパスします。

“「技能」に縛られた実習生という立場は、人手不足の業界にとっては助かるが、出稼ぎ労働者に近いのが実態の実習生たちは職場に不満があっても働くしかない。そこにトラブルが起きやすい構図が生まれる。”【9月2日 朝日】

同じ過ちを繰り返すことがないように期待します。

また、外国人労働者の増加にともなって「見えない子供たち」の問題も生じています。

“政府の統計をみると、国内には、学校に通っていない外国籍の6~17歳の子どもが最大で約7万人いる。どこで何をしているのか、実態は知られていない。”【9月4日 朝日】

いつも言うように、受け入れる以上は「共生」に向けた本腰を入れた取り組み・対応がないと、「外国人が増えたせいで・・・」といった排外的感情を増長させることになったり、受け入れた外国人に惨めな思いをさせたり、日本社会・外国人の双方に悪い結果をもたらします。

産業界が外国人労働力を求めているのは欧米も同じです。
難民問題で大きく揺れるドイツでも・・・

****政府、難民申請者認める新法検討****
「少子化と労働者不足に対応するために新たな移民法の制定を要求する」
 
独アウトドア用品大手「ファウデ」のアンツィエ・フォンデービッツ社長は昨年9月、メルケル首相あてに、こんな手紙をしたためた。求めたのは、すでに就労した難民希望者に滞在許可を与えることだ。
 
同社でも12人の難民希望者が縫製作業に従事しているが、6人が認定されなかった。住居を探したり、ドイツ語を教えたりと生活基盤のために様々な投資をしてきた。「人道的な理由だけでなく、経済的にも彼らを失うのは大きな損失だ」と同社のリザ・フィードラーさん(31)は話す。
 
同社発の運動の輪は瞬く間に広がり、110社が名を連ねて有力政治家への働きかけを強めている。そこで労働社会省は、就労意思のある難民申請者に広く滞在を認める新法の検討を始めた。内務省が反対していて予断を許さないが、年内にも結論を出す予定だ。
 
ドイツは戦後の高度成長期、トルコなどと二国間協定を結び、多くの労働者を受け入れた。移民系と呼ばれる人々の割合は全人口の約24%に達する。【9月6日 朝日】
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アメリカでも産業界は移民労働力を求めていますが、トランプ大統領がまったく別の視点から受け入れを拒んでいるのは周知のところです。

増加する不法滞在者の長期収容 全く許可が出なくなった在留許可
日本も労働力は欲しいけど移民はダメ・・・という立場で、その点では難民・移民への門戸は依然として厳しいものがあります。

そうしたなかで、不法滞在者の扱いが問題にもなっています。

****不法滞在の外国人、収容が長期化 半年以上が700人超****
ビザの有効期限を過ぎても日本にとどまるなどして不法滞在となり、法務省の施設に長期収容される外国人が増えている。

母国への強制送還が困難な人がいることや、法務省が施設外での生活を認める「仮放免」の審査を厳しくしたことなどが理由で、今年7月末の時点では収容期間が6カ月以上の人が700人を超えた。

収容者の自殺や自殺未遂も起きているが、法務省は抜本的な解決策を見いだせずにいる。

「インド戻れば殺される」入管に長期収容、命絶った男性
法務省によると、在留資格を持たない不法滞在者の収容施設は全国に17カ所あり、2017年は1万8633人が新たに収容された。本人が同意すれば送還の手続きが進むが、拒否をしたり、母国が旅券の発給を拒んだりすると出口が見えなくなる。
 
16年末に収容されていた1133人中、6カ月以上の「長期収容者」は313人(約28%)だったが、17年末は1351人中576人(約43%)と人数、割合がともに増加。今年に入ってからも急増し、7月末時点で1309人中709人(約54%)だった。収容が5年を超える人もいる。
 
同省入国管理局の君塚宏警備課長によると、収容の長期化が進んだきっかけのひとつは、東京入国管理局が10年に強制送還しようとしたガーナ国籍の男性(当時45)が飛行機の中で死亡したこと。

男性を「猿ぐつわ」や結束バンドで拘束し、前かがみの姿勢を取らせていたことが問題となり、3年弱は強制送還がなされず、再開後は帰国を拒否する収容者が増えたという。また、難民申請中は強制送還されないことが知られ、申請する収容者も多くなった。
 
人道的な理由から施設外での生活を認める仮放免の対象者の減少も影響している。人数が増え、刑事事件に関与する仮放免者も出たことなどから、法務省は15年から審査を厳格化。同年末は3606人に認めていたが、17年末は3106人にとどまった。
 
収容の長期化に伴い、自殺者も出ている。茨城県牛久市郊外にある東日本入国管理センターでは今年4月、約9カ月間収容されていたインド人男性(当時31)がシャワー室で首をつって自殺。5月にも自殺未遂者が相次いだ。
 
君塚課長は「長期収容を減らす最も効果的な対応策は強制送還だ」と語るが、すぐに収容の長期化を解消する手段はないという。「現状を変えるのであれば、国民的な議論を進め、在留資格を拡大するしかないのではないか」と話す。【9月23日 朝日】
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****得られない在留許可「異常な事態****
現在、長期収容者の6割以上は難民申請中だ。難民は条約で「人種や宗教、政治的意見などを理由に迫害を受ける恐れがある人」と定義されている。

日本も条約に加入しているが、運用は厳格で、昨年は1万9628人が難民申請をしたのに対し、認められたのは20人だけだった。「人道的な配慮」で特別に在留が許可されたのも45人だった。
 
難民とは別に、家族状況や素行などを考慮し、法相が裁量で決める「在留特別許可」もある。外国人問題に詳しい指宿昭一弁護士は、長期収容者の状況を精査すれば、この対象になる人が多い可能性があると指摘する。

ただ、ここ数年は日本人の配偶者や子どもがいても、許可が出ないケースが相次いでいるという。
 
法務省の担当者は「在留特別許可はガイドラインにのっとっており、厳しくも甘くもしていない」と話すが、17年に許可を得たのは1255人で、12年の2割程度。現在、在留資格のない約50人を担当しているという指宿弁護士は「多くが従前なら認められていたが、全く許可が出なくなっている。異常な事態だ」と語った。【9月23日 朝日】
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相手は同じ人間です。法律を正しく運用しているだけ・・・では済まない問題もあります。
この話に関しては論じるべき問題は多々ありますが、それはまた別機会に。
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イタリア新政権  移民・難民船を“たらい回し”にして「勝利!」とする“良識”

2018-06-13 22:51:47 | 難民・移民

(地中海で救助され、救助船アクエリアス号への乗船を待つ移民ら【6月12日 AFP】〉

大幅に減少はしたものの、依然高水準にある移民・難民の犠牲者
国際移住機関(IOM)によると、中東・アフリカから船で渡る「地中海ルート」(主にリビア・チュニジアからイタリアなどを目指す)で欧州に到着した難民・移民は、2016年は約36万3000人だったが、17年は約17万1000人に半減したとのことですが、依然として命がけの渡航、そして遭難のニュースはよく目にします。

****地中海、2日間で約1500人の移民救助****
地中海で24〜25日に約1500人の移民が救助された。イタリアの沿岸警備隊が明らかにした。
救助活動にはイタリア海軍やNGO団体、欧州対外国境管理協力機関(フロンテックス)がチャーターした船舶も参加していた。
 
25日には別々に行われた七つの救助活動で、欧州を目指して地中海を渡ろうとしていた移民1050人が救助された。救助活動に参加したドイツの2つのNGOは、過密状態の船舶3隻からそのうちの半数近い450人を救助したと明かした。
 
3隻目の船に乗っていた移民たちが救助される際、現場にリビアの巡視船が接近してきたため、リビアに送還されることを恐れた一部の移民が海に飛び込んだ。だが、巡視船は一定の距離を保っていたため、ドイツの両NGOに全員が救助された。
 
24日、イタリア海軍は移民69人を救助。フロンテックスによる移民の密航を取り締まる「トリトン作戦」に参加しているポルトガル海軍は296人を救助した。
 
国際移住機関によれば、今回救助された移民を除き、イタリアでは今年に入ってから1万800人の移民が登録されているが、この数字は昨年同期比では約80%減となっている。【5月26日 AFP】
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“玄関口”イタリアには14年以降、リビアから海を渡り60万人余りの難民が押し寄せました。
2017年夏にはリビアとの間で繁栄する密入国ビジネスの取り締まりを促す取り決めを交わし、これが貢献し、昨年イタリアに到着した難民は前年比33%減少しました。【2月2日 WSJより】

今年は登録者数で見る限りは、“昨年同期比では約80%減”と、さらに大きく減少しているようです。

欧州全体で見ても、“欧州連合(EU)の欧州庇護支援事務所(EASO)は1日、2017年の欧州30カ国への難民申請件数が約70万7000件と、前年比43%減少したことを明らかにした。16年の申請件数は戦後の最高だった15年の140万件をやや下回っていた。”【同上】と減少傾向にあります。

ただ、今年これまでに欧州を目指して地中海で死亡した移民・難民数は785人【6月19日号 Newsweek日本語版】とのこと。
IMOによれば昨年2017年の死者は3116人ということですから、犠牲者数も減少傾向にはありますが、依然高い水準にあるとも言えます。

****<チュニジア沖>不法移民100人死亡 今年最悪の犠牲者数****
国際移住機関(IOM、本部ジュネーブ)は7日までに、チュニジア中部スファクス沖で不法移民を乗せた漁船が2日夜に沈没し、少なくとも100人が死亡したとみられると発表した。

AP通信によると、今年地中海で起きた海難事故では最悪の犠牲者数という。
 
IOMによると、漁船には約180人が乗っていたとみられ、これまでに60人の死亡を確認。約50人は行方不明だが死亡した可能性が高いという。68人は救助された。

漁船は2日夕にチュニジアを出発し、同日午後10時45分ごろに救難信号を発信。最大90人乗りだったとみられ、定員を大幅に超過していた。
 
乗っていたのは大半がチュニジア人だが、リビアやモロッコ、マリ、カメルーン出身者もいた。現地報道によると、欧州への密航費用として1人あたり2000〜3000チュニジア・ディナール(約8万4000〜12万6000円)を密航業者に支払っていたという。

チュニジアのシャヘド首相は6日、密航を防止できなかったとしてブラヘム内相を更迭した。(後略)【6月8日 毎日】
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アフリカ難民船たらい回し イタリア・ポピュリズム新政権が上陸拒否 スペインに押し付け「勝利だ!」】
こうした状況にあって、移民・難民船が各国が受け入れを拒否して“たらい回し”される事態にも。

****地中海で立ち往生の移民600人超、スペインが受け入れ表明 伊は拒否****
ローマ(CNN) 600人以上の移民を乗せた船が地中海で立ち往生している問題で、スペイン政府は11日、東部バレンシアへの入港を認める方針を発表した。これに先駆けイタリアでは、ポピュリズムを掲げる新政権が船の受け入れを拒否していた。

行き場をなくしているのは国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」とドイツの慈善団体「SOSメディテラ」が運営する船舶「アクアリウス号」。

9日夜から10日朝にかけ、リビア沿岸でゴムボートに乗った移民の救出作業を行った。MSFによると、伊沿岸警備隊から現在位置にとどまるよう指示を受け、10日以降はマルタ島とシチリア島の間の海域に足止めされているという。

救助された移民のうち120人以上は身寄りのない未成年で、妊婦も7人いる。MSFは15人が薬品による重いやけどを負っており、低体温症にかかっている人も複数いるとしている。

過去に前例がないとも指摘される今回の救出作業を統括した人物は11日、スペインの国営ラジオの取材に答え、船内の食料が残り1日分しかないと明かした。

スペインのサンチェス首相は同日、人道上の災厄を回避するため、アクアリウス号と乗船者をバレンシアに寄港させることを発表した。同船の現在位置はバレンシアからおよそ1280キロの距離にあり、到着まで3日かかるとみられている。

これに対し、10日の時点でアクアリウス号の寄港拒否を表明していたイタリアのサルビーニ内相は、スペイン政府の受け入れ発表後即座にソーシャルメディアへコメントを投稿。「勝利だ!629人の移民が乗ったアクアリウス号はスペインへ向かう。最初の目的を果たした!」と述べた。同氏は反移民をうたう政党「同盟」の党首も務める。

イタリアのコンテ首相もフェイスブックへの書き込みでスペイン政府の意向を歓迎。「重要な転機だ」「イタリアの要請が聞き入れられるようになってきた」との見解を示した。

一方、イタリア同様アクアリウス号の寄港を認めない方針を示したマルタの政府は、同船に食料やビスケット、飲料水を届けた。

スペインに上陸する移民の数は増加傾向が続いており、国際移住機関(IOM)によると、2018年はここまで前年比で50%増えている。これに対してイタリアでは、75%前後の減少が見られるという。【6月11日 CNN】
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****イタリアが拒否した移民救助船、スペインが受け入れ****
(中略)1週間前に就任したばかりのサンチェス首相は、アクエリウス号はバレンシア港に入港すると述べた。
また首相府は、「人権への責務に基づき、人道的惨事を防ぎ、これらの人々に安全な港を提供することは我々の義務である」としている。

欧州評議会はスペインの動きを歓迎。ドゥニャ・ミヤトビツ人権委員長は、「海での人命救助は、国家が常に支持すべき責務」とツイートした。

マルタのジョゼフ・ムスカット首相はツイッターでスペインへの感謝を述べた一方、イタリアは国際ルールを破り、こう着状態を招いたと話した。

また、マルタはアクアリウス号に新鮮な支援物資を送ると明らかにしたうえで、「こうしたことが再び起きないよう、座って話し合うべきだ。これは欧州の問題だ」と述べた。(後略)【6月12日 BBC】
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もちろん、大量の移民・難民が押し寄せる“玄関口”となっているイタリアの苦悩はわかります。
移民・難民の受け入れについて、様々な立場・見解があることもわかります。

全員の受け入れは拒否する考えもあるでしょう。

ただ、そうであるにしても、幼児・妊婦、負傷者などを含む大勢の人々を十分な食料もなく海上に放置し、他国へ追いやったことについて「勝利だ!」とする感覚には、“寒い”ものを感じます。

いつも言うように、『蜘蛛の糸』で「この糸は俺のものだ。下りろ。」と叫ぶカンダタのイメージが重なります。お釈迦様は悲しいお顔をされているのでは・・・。

EUのダブリン条約の改正を求めるイタリア新政権
イタリアにあっては、大衆迎合主義(ポピュリズム)政党「五つ星運動」と極右政党「同盟」という“異色”の組み合わせで連立政権が誕生したことは周知のところです。

肌合い、政策の違いはありますが、既成政治を批判し、EUに対し懐疑的な面は共通するものもあります。

特に「同盟」は移民排斥を掲げており、難民・移民受け入れには厳しい対応をとることが予想されています。

****欧州の難民キャンプにはなれない」 極右のイタリア新内相が警告****
イタリアのポピュリスト連立新政権の内相兼副首相に就任した極右政党「同盟」のマッテオ・サルビーニ書記長は3日、南部シチリア島にある移民・難民の収容施設を訪れ、「イタリアは欧州の難民キャンプにはなれない」と述べるとともに、難民キャンプ化するのを防ぐには「良識」が必要だと訴えた。
 
サルビーニ内相は、難民の主要上陸地点の一つとなっているシチリア島ポッツァッロを訪問し、自身の政治基盤強化につながってきた反移民政策をアピール。炎天下に集まった支持者らに向け「イタリアとシチリア島は、欧州の難民キャンプにはなれない」と語った。

「不法移民はビジネスと化しているとの私の確信は、誰も否定できない。子どもたちを死なせることで金もうけする連中がいることを思うと、怒りがこみあげてくる」(サルビーニ氏)
 
この演説の後でサルビーニ氏は難民・移民の収容施設内に入り、今月1日に人権団体の船に救助されポッツァッロに上陸した移民ら約158人と面会した。
 
イタリア沿岸警備隊と協力して行われた救助活動の数時間前、サルビーニ氏は内相に就任。イタリアに「到着する移民の人数を減らし、国外退去者の人数を増やすにはどうしたら良いか」を省内の専門家に相談すると発言していた。また、2日には「不法滞在者に優しい時代は終わった。荷物をまとめて出て行く準備をせよ」と述べていた。
 
一方でサルビーニ氏は、新政権について「移民に対して強硬路線は取らず、ただ良識の一つを採用する」だろうとも語った。【6月4日 AFP】
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サルビーニ氏にとっては、「勝利だ!」とする感覚は“良識”のようです。
いずれにしても、移民・難民政策をめぐって、今後EUとの間で軋轢がありそうです。

****反移民政策に近隣国懸念=イタリア新政権「公平な負担」主張****
イタリアの新興政党「五つ星運動」と右派政党「同盟」(旧北部同盟)による連立政権が発足し、移民排斥を掲げる同盟のサルビーニ書記長が内相に就任した。

コンテ首相は6日の演説で、欧州連合(EU)内の難民受け入れ政策の見直しを主張。伊国内の難民や移民が流出すれば周辺国に多大な影響が及ぶ可能性があり、EUや近隣国は警戒感を強めている。
 
地中海を挟んで中東やアフリカに近いイタリアやギリシャでは、2015年をピークに大量の難民が流入。同盟は、雇用不安や治安悪化を背景に支持を広げた。
 
コンテ首相は6日、難民が最初に到達した国での保護申請処理を義務付けた「ダブリン規則」に関し、「根本的な見直しを要求する」と述べ、EU内での「公平な負担」を主張。サルビーニ氏も内相就任後、「(イタリアが)欧州の難民キャンプであってはならない」と強調した。
 
これに対しコロン仏内相は、「イタリアも国際的な枠組みの中で(難民問題に)取り組まなければならない」と述べ、けん制した。
 
EU内でもイタリアやギリシャの負担軽減に向けた改革が議論されてきたが、合意には至っていない。今後、難民を追い出したいイタリアと、流入を阻止したい周辺国の間で、せめぎ合いが激化しそうだ。【6月7日 時事】 
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EUを悪玉にするポピュリスト的主張には誤解も 自分たちがやるべきことをやっていないのが一番の問題
イタリアが移民・難民の玄関口になっているのは事実ですが、イタリアが不相応に多数の移民・難民を受け入れている、EUに押し付けられている・・・というポピュリスト的な主張には誤解もあるとの指摘もあります。

****EUのせいだ」はもう通用しない****
EU悪玉論で支持をつかんだポピュリズム政権は自国が抱える問題の根本的な解決を迫られることに   
ダニエル・グロー(欧州政策研究センター所長)

(中略)2党の政策には違いも多々あるが、イタリアが抱える問題の多くを「ヨーロッパ」のせい、EUのルールと共有の原則のせいにしている点は共通だ。
 
イタリアの有権者は、EUが北アフリカからの難民を自分たちの国だけに押し付けていると考え、不公平感を抱いている。

実際、リビアから地中海経由でヨーロッパに押し寄せている難民の大半はイタリアに上陸するか、救助されてイタリアに連れて来られる。そうした難民の多くが、より豊かな生活を求めてヨーロッパを目指した「経済難民」であることもまた事実だ。
 
そうではあっても、イタリアは割に合わないほど多くの難民を受け入れているというポピュリストの主張は間違っている。

2014年以降、イタリア当局に提出された難民申請は約40万件。これはEU全体の件数390万件の約H%に当たり、
EU全体の人口に対するイタリアの人目とほぼ同程度だ。
 
イタリアの難民危機が特に深刻に見えるのは、制度上の不備でほかのEU加盟国に比べて難民認定手続きや不認定者の強制送還に手間取っているためだ。

また、イタリアでは難民の多くが住宅不足の都市部に集中しているため、ますます難民が街にあふれているように見える。
 
新たに発足した連立政権はEUのダブリン条約の改正を求めるだろう。この条約では、原則として難民が最初に足を踏み入れた国が認定手続きを行うことになっている。

この取り決めを見直すのは結構だが、それでイタリアの難民問題が解決するわけではない。難民受け入れの割合は今と変わらないからだ。
 
ポピュリスム政権の主張とは裏腹に、イタリアの難民問題はイタリア政府の手で解決できる。必要なのは認定手続きが迅速に進むよう制度を見直し、難民に空き住宅を斡旋するなど統合を進める政策を実施することだ。

選挙で勝つには有効でも
経済問題も同様だ。ポピュリスト政治家は財政赤字と債務残高の上限を定めたEUの財政ルールのせいで、景気刺激のための財政出動ができないと言う。

だが、このルールはユーロ加盟国全てに課されている。ユーロ圈の平均よりも常に成長率が低いイタリアが自国経済の不振をEUの財政規律のせいにするのは筋違いだ。
 
確かに、08年の世界的な金融危機とそれに続くユーロ危機で最も打撃を受けたユーロ圏の国々は、緊縮財政を強いられたために回復が遅れたとも言える。

だがそうだとしても、他の国々はとっくに危機を脱している。
 
そもそもイタリアはEUに何度も財政赤字の上限超えを大目に見てもらっている立場。財政規律を強いられているせいで景気後退が長引いているというのは下手な言い訳にすぎない。
 
EU経済が再び成長軌道に乗り、難民危機もやや緩和したため、EU主要国はEU改革とユーロ改革の道筋を探りつつある。

しかしイタリアが共通のルールや健全財政の基本的原則に背を向けるなら、改革は頓挫する。 

それはEUにとっては懸念材料だが、今の状況はユーロ危機のピーク時とは全く違う。イタリアの連立政権の発足を受け、市場にもひとまず安堵感が広がった。

ポピュリスム政権ができてイタリアは困るにしても、ユーロが脅かされることはないと、投資家は判断したようだ。
 
そこにはヨーロッパ各国のポピュリスム政党が学ぶべき教訓がある。国内の問題を何でもEUのせいにすれば、選挙では勝てるかもしれないが、国際的な孤立は避けられない。EUを悪玉に仕立てるのは、長い目で見れば勝ち目のない戦略だ。【6月19日号 Newsweek日本語版】
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“認定手続きが迅速に進むよう制度を見直し、難民に空き住宅を斡旋するなど統合を進める”ことが、サルビーニ氏の“良識”に合致すればいいのですが・・・。
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ロヒンギャ難民  栄養失調・ジフテリアなどの人道危機 難航が予想される帰還作業

2018-01-09 22:25:25 | 難民・移民

(ロヒンギャ難民キャンプ【12月19日 PR TIMES】)

難民キャンプで深刻化する人道危機
昨年アジアで起きた大きな問題のひとつが、ミャンマー西部ラカイン州でのイスラム系少数民族ロヒンギャに対する民族浄化と国際批判される迫害の問題でした。

周知のように、65万人ほどのロヒンギャ難民が隣国バングラデシュに流入して越年する事態となっています。

経済的に、自国のことだけでも手が回らないバングラデシュですから、食糧や環境など、大量の難民が厳しい状況に置かれていることは誰しも想像に難くないところです。

実際、人道危機の状況が伝えられており、ミャンマーへの帰還が進まないなかで事態は深刻化しています。

****ロヒンギャ難民の子供、4分の1が栄養失調で命の危機 ユニセフ****
国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)は22日、ミャンマーからバングラデシュに逃れたイスラム系少数民族ロヒンギャ難民のうち、5歳未満の子供の4分の1が、生死にかかわる深刻な栄養失調に陥っていると発表した。
 
今年10月22日から11月27日の間に3回実施された調査の結果、過密状態にある難民キャンプに収容された乳幼児の約25%が急性栄養失調となっていることが分かったという。

スイス・ジュネーブで記者会見したユニセフのクリストフ・ブリアラク報道官は「調査を受けた子供たちの半数近くが貧血、40%が下痢、最大60%が急性呼吸器感染症を患っている」と述べた。
 
ミャンマーのラカイン州では、軍事作戦によって今年8月以降に難民化したロヒンギャの数が65万5000人を超えており、うち約半数が子供となっている。国連(UN)は、この軍事作戦は民族浄化であるとの見方を示している。【2017年12月23日 AFP】
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食糧不足だけでなく、衛生環境の劣悪さからの感染症も当初から懸念されていましたが、現在、ジフテリアが蔓延する状況となっています。

****ロヒンギャ難民に感染症広がる=人道危機、深刻に―バングラ****
ミャンマー西部ラカイン州で迫害を受けたイスラム系少数民族ロヒンギャが、隣国バングラデシュに大量脱出を始めてから4カ月超が経過した。ロヒンギャ難民の数は推計65万人超。

過密で衛生状態が悪化した難民キャンプでは、「予防接種で防げる」(専門家)はずの感染症ジフテリアが子供らの間で広がり、死者も増えており、人道危機は深刻度を増している。
 
バングラデシュ南東部コックスバザール周辺には約10カ所のキャンプがある。国連児童基金(ユニセフ)などによると、昨年11月中旬以降に難民キャンプ内で確認されたジフテリア感染が疑われる症例は3000件以上に達し、28人が死亡した。死者の約半数は子供だ。
 
発症した子供らは、ラカイン州で予防接種を受けていなかった可能性が高い。現場で支援に当たるユニセフの日本人職員、ロビンソン麻己さん(38)は喉の腫れや発熱を引き起こすジフテリアについて、「通常、致死率は5〜10%ほど。日本にいれば死亡例はあまり聞かないと思う」と指摘。他国での勤務経験がある同僚の医師も「実際の感染者はめったに見ない」と語る。
 
ロヒンギャの大量流入で、キャンプの衛生施設整備などの支援が追いつかないことも、病気の流行に拍車を掛けている。「テントはあっても、その中で地面に直接座って生活せざるを得ず、トイレなどの排水がすぐそばを流れている場所もある」(ロビンソンさん)という。
 
ミャンマーとバングラデシュ両政府は昨年11月、ロヒンギャの早期帰還で合意、今年1〜2月には帰還事業が始まる予定だ。だが、ラカイン州では多くの家が燃やされたとされ、帰還後もロヒンギャの生活環境の改善は大きな課題となる。
 
ロビンソンさんは「バングラデシュは日本から遠く、なかなか伝わらないが、問題は悪化している」と強調。支援の継続を呼び掛けている。【1月6日 時事】
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熱帯地域にあるバングラデシュですが、今年は史上最低レベルの寒波にも襲われ、8日は国内の数か所で、2.6度まで冷え込んだと報じられています。

この寒波の影響で北部では少なくとも9人が死亡しています。【1月8日 AFPより】

難民キャンプがある地域は南部ですので上記のような寒波はないとは思いますが、粗末なテント暮らしのロヒンギャ難民への影響も懸念されます。

帰還作業を急ぎたいバングラデシュ政府
いずれにしても、難民キャンプは飽和状態で、地元住民の負担や不満も高まっています。ロヒンギャが国内のイスラム過激派組織に勧誘される恐れなど治安上の懸念も指摘されています。

バングラデシュ政府には大量のロヒンギャ難民は“重荷”ともなっており、以前批判を受けて立ち消えとなった無人島への移送計画も浮上しています。

****<ロヒンギャ難民>バングラ、治安に懸念 無人島に10万人****
バングラデシュは、隣国ミャンマーで武力衝突が発生しロヒンギャ難民が急増した8月以降、国境を開放し、60万人超を受け入れた。だが、難民流入による治安悪化に対する国民の懸念は強い。

政府が推進中の無人島に難民を一時期移住させる計画は、ミャンマーへの帰還作業が難航した場合に備え、難民を「隔離」することで国民の批判をかわす狙いがありそうだ。
 
バングラは1978年と92年、ミャンマーと難民帰還の合意を交わし、これまでに約24万人を戻した。両国は先月、今回の難民危機を受け改めて帰還に向けた覚書を交わしたが、ミャンマー側は難民に紛れたロヒンギャの武装勢力は受け入れを拒否する方針を示しており、難民の選定作業は難航が予想される。
 
ロヒンギャ難民を巡っては、難民キャンプが麻薬の密売や人身売買など「犯罪の温床」とも言われてきた。またロヒンギャの武装組織の戦闘員は10月、毎日新聞の取材に対し、難民キャンプに「少なくとも30人のメンバーがいる」と証言、当局が警戒を強めている。
 
無人島移住計画は法王訪問直前の先月28日、政府に承認された。地元メディアなどによると、約2億8000万ドル(約315億円)をかけてベンガル湾のテンガルチャール島に居住区を整備し、2019年までに約10万人を移送するという。
 
この島は06年、本土から約60キロ沖合に土が堆積(たいせき)してできた。広さは約3万ヘクタールだが、雨期にはサイクロンや高潮のため大部分が水没すると言われる。

15年から計画の検討が始まったが、「非人道的」との批判を受け棚上げになっていた。今回の大量の難民流入で再浮上した格好だ。
 
ダッカ大のデルワル・ホセイン教授は無人島計画について「(ロヒンギャ難民は)地元経済や治安への影響は大きく、将来的にはテロの懸念もある。政府は住民の不安を考慮したのだろう」と話す。

また、難民の帰還条件としてミャンマーでの居住証明が必要だとするミャンマー政府の立場は、身分証を持たずに逃れた多くの難民が除外されると指摘し「本当にミャンマーが帰還を望むならば条件を緩和すべきだ。政治的意思がなければ解決しない」と語った。【2017年12月2日 毎日】
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“地元紙によると、政府高官は約10万人を移送する方針を示した。政府は12月から島で住居や道路、水道などのインフラ整備を始め、移送は来年5月ごろに始めたい考えだという。ロヒンギャの帰還後には、バングラデシュの貧困層の居住地区にする可能性もあるという。”【2017年11月29日 朝日】とも。

ただ、半年ほどで準備を進めるのは現実的ではなく、また移住を強行したり、移住後に災害がおきたりすると国際的批判を浴びることにもなるので、移住計画は難民に厳しい国内世論向けの“総選挙前のポーズ”にすぎないとの指摘もあるようです。【上記朝日より】

ただ、難民による無秩序な伐採による環境破壊、避難民の一部が安い賃金で道路工事やバイクタクシーの仕事を始めたことで、地元の人の賃金が下がり始めるような事態など、地元住民との軋轢が高まっているのも現実です。

****バングラ側にも焦り****
ロヒンギャの人たちの帰還について、両国政府は(2017年11月)23日、2カ月後から手続きを始めることで合意書を交わしたが、文書は公開されず、具体的な方法は不明のままだ。
 
90年代の当時の軍事政権の迫害で、25万人以上がミャンマーからバングラデシュに逃れた際は、92年に両国が帰還手続きに合意し、多くが帰還した。
 
ミャンマー側はこの時の合意に沿って「ミャンマー国内に居住を証明する身分証」を持つロヒンギャを受け入れるとしている。

しかし、今後同じ事態を避けたいバングラデシュ側は、ロヒンギャの国籍認定にまで踏み込んだ明確なルール作りを求め、綱引きは続く。
 
「1年以内の帰還完了」を求めるバングラデシュ政府側には、早期に問題を解決したい事情がある。
「長引けば来年末の総選挙でロヒンギャ問題が争点になる」と同国首相府の幹部は取材に明かした。国民の不満が高まれば政権への打撃になりかねず、同国のハシナ首相も「(ロヒンギャ問題は)重荷になっている」と焦りを隠せない。
 
バングラデシュ政府による正式な「難民認定」作業も進まない。IOMの担当者は、「居住が長期化することを恐れているからではないか」とみている。
 
ミャンマー側も、ロヒンギャが元の村に戻れる環境作りを進められていない。難民の動きを調査しているIOMやUNHCRによると、帰還したいと希望する難民はほとんどいないという。UNHCRの担当者は、「治安への不安から、数年キャンプで暮らすと話す人が多い」と話す。【2017年11月28日 朝日】
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バングラデシュ政府は昨年末に、10万人の帰還を1月中に始めることを発表しています。
ミャンマー政府は、の帰還受け入れを1月23日から実施する予定とも報じられています。

****ロヒンギャ10万人のミャンマー帰還を1月中に開始へ 帰還拒否で調整難航も****
ミャンマー西部ラカイン州からイスラム教徒少数民族ロヒンギャが隣国バングラデシュに大量に流入している問題について、バングラデシュ政府は30日までに、難民のうち10万人が1月中に本国への帰還を開始できる見込みであることを明らかにした。

ただ、ミャンマーに戻ることを拒否する難民も多く、順調に手続きが進むかは不透明だ。
 
英字紙ダッカ・トリビューンなどが伝えた。両政府は11月23日にロヒンギャの平和的な帰還で合意し、方法などを協議していた。
 
バングラデシュのオバイドゥル・カデル運輸相によると、今月29日に第1陣となる10万人分のリストをミャンマー側に手渡したという。バングラデシュ政府は難民を記録したデータベースを作成済みで、2016年以降にバングラデシュに移り住んだロヒンギャが帰還の対象となる見通し。(後略)【2017年12月30日 産経】
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国軍襲撃事件で帰還作業は更に難航か
帰還に関しては、ミャンマー側がミャンマーでの居住証明が必要だとしていることや、多くの難民が帰還後の治安への不安から帰還を望んでいない等の問題がありますが、ここへきてラカイン州でのロヒンギャ武装勢力による国軍襲撃事件が起きており、帰還作業への影響が懸念されています。

****武装組織がミャンマー軍襲撃、ロヒンギャ軍が犯行声明 難民帰還作業に影響も****
ミャンマー西部ラカイン州で国軍の車両が武装集団に襲われる事件があり、昨年8月に治安当局と衝突したイスラム教徒少数民族ロヒンギャの武装集団の中核組織「アラカン・ロヒンギャ救世軍」(ARSA)が7日、犯行声明を出した。
 
ミャンマー政府は、隣国バングラデシュに渡ったロヒンギャ難民の帰還受け入れを23日から実施する予定だが、ARSAと国軍の衝突が再び拡大すれば、帰還作業などに影響が出る可能性がある。
 
襲撃は5日午前、ラカイン州北部の中心都市マウンドー郊外であり、現地メディアによると、兵士6人が負傷し、うち1人は重傷。兵士を移送中の車両が遠隔操作の地雷とみられる爆発物で攻撃された後、近くで待ち伏せしていた武装集団から銃撃を受けた。
 
犯行声明は、ARSAの掃討作戦を昨年9月5日以降は停止したとのアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相の説明が「あからさまな嘘」だと批判。ミャンマー国軍によるロヒンギャの女性や子供への「無差別殺人」が続いているとして、国軍への攻撃を正当化した。【1月7日 産経】
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事件を受けて国軍の掃討作戦が再び激化すれば、もともと受け入れ態勢が整っていなかった難民帰還は更に困難となります。そうした危険な場所に帰りたい難民は多くはないでしょう。

ただ、“帰還したいと希望する難民はほとんどいない”【前出 朝日】とは言うもの、国軍の暴力さえ収まれば一日も早く帰還したいとして、バングラデシュ側の難民キャンプにも入らず、国境の緩衝地帯で帰還を待つ人々も多くいるようです。

****<ロヒンギャ>少しでも母国近くに ミャンマー帰還うかがう****
60万人を超えるミャンマーの少数派イスラム教徒「ロヒンギャ」難民が流入したバングラデシュ南東部コックスバザール郊外のトンブルライト。

浅い小川の向こうに、ビニールシートで作られた粗末な小屋が並んでいるのが見える。避難してきたロヒンギャが暮らすキャンプだ。「ここから先はだめだ」。バングラ側から小川を渡ろうとすると、国境警備隊員に制止された。「川の真ん中が国境で、その先はミャンマーだ。外国人は行ってはならない」
 
国境である川と、ミャンマー側が設置した国境フェンスとの間は「ゼロポイント」と呼ばれる緩衝地帯だ。幅数十メートルのわずかな土地に、約6000人が暮らす。多くはミャンマー国境近隣の村から逃れ、帰還のチャンスをうかがう人たちだ。
 
「私の母国はミャンマーだ。他国に住みたくはない。ここなら母国の空気が吸える」。ミャンマー西部ラカイン州の村から逃れてきたムハンマド・アリフさん(42)はバングラ側で取材に応じ、緩衝地帯にとどまる理由をこう語った。
 
ロヒンギャの武装集団とミャンマーの治安部隊との武力衝突が起きた8月25日未明。アリフさんは突然の銃声にとび起きた。「戦争か?」。妻と母、4人の子供を外に連れ出し、近くの森に隠れた。

村は軍の掃討作戦の対象になったとみられ、その日朝に戻ると、家は焼かれていた。再び森に戻った後、27日の夜を待ってミャンマー側の国境フェンスを乗り越えたが、川岸でバングラの国境警備隊に制止された。緩衝地帯で数日過ごした後、警備隊は国境を開放したが、ここに残るのも選択肢に思えた。
 
ただ、緩衝地帯での暮らしは楽ではない。国境開放後、住民は小川を越えてバングラ側で買い物や支援物資の受け取りができるようになったが、近くには医療施設もない。それでも、バングラ内のキャンプへ向かう住民は少ないという。
 
「我々がバングラのキャンプに行かないのは、恒久的な難民になりたくないからだ」。緩衝地帯のキャンプリーダー、ムハンマドさん(51)はこう語り、母国への帰還実現に期待を示す。一方で、ミャンマー政府への不信感も強い。「帰還するにあたっては、ミャンマー政府に奪われた国籍が我々に与えられ、身の安全も保障されることが必要だ」と訴える。
 
国境の小川沿いを歩くと、難民の小屋の奥にミャンマー側が設置したフェンスが見えた。その向こうに赤いシャツの人影がのぞく。「ミャンマー軍だ。ああやって時々、監視に来る」。ムハンマドさんが吐き捨てるように言った。【2017年12月26日 毎日】
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ミャンマー側にも、バングラデシュ側にも正式に把握されていない、こうした緩衝地帯で待つ人々の帰還を、ミャンマー政府がすんなり受け入れるのでしょうか?難しいようにも思えます。

声が聞こえてこないスー・チー氏
ラカイン州での治安状況の安定にしても、難民の帰還作業にしても、非常に難しい作業ではありますが、これまで同様、この問題に関するスー・チー国家顧問の声が聞こえてこないのは非常に残念なことです。

****U2ボノ氏、スー・チー氏は「辞任を」 ロヒンギャ問題で姿勢転換****
ミャンマーでイスラム系少数民族ロヒンギャが迫害を受けているとされる問題で、アイルランドのロックバンド「U2」のボーカル、ボノ氏は、ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問は辞任すべきとの見解を示した。ボノ氏は自宅軟禁下にあった当時のスー・チー氏の支持者として知られていた。
 
ボノ氏は、米情報誌ローリング・ストーン最新号に掲載された同誌創刊者のジャン・ウェナー氏とのインタビューで、ロヒンギャをめぐる状況を考えると「吐き気がする」と表明。

「あらゆる証拠が示していることを信じられず、本当に気分が悪くなった。だが、民族浄化は実際に起きている。それを知っている彼女(スー・チー氏)は退陣しなければいけない」と語った。
 
また、スー・チー氏は辞任すべきかをあらためて問われると、「最低でも、もっと意見を発信すべきだ。それで人々が聞く耳を持たなければ、辞任すべきだ」と語った。
 
一部の専門家らは、仏教徒が多数を占めるミャンマーではロヒンギャに嫌悪感を抱く人が多いことから、スー・チー氏は政治的リスクを取らない判断をしたとみている。また、同氏はいずれにせよ軍を統率する立場にはないとの見方もある。
 
ボノ氏はこうした見方について、「彼女は国を軍政に戻したくないのかもしれない。しかし、状況が私たちの見解通りなのであれば、彼女はすでに国を軍に渡している」と述べた。【2017年12月29日 AFP】
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もちろん、スー・チー氏の立場に立てば・・・という話はありますが、軟禁状態を脱して彼女が今の地位にあるのは、人権問題に関する強い国際世論があったからです。ロヒンギャ問題で同様の国際世論に“内政干渉”として苛立つ今の姿勢はいささか・・・・。
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